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▶ ヴァレオ システム テルミクの特許一覧

<図1a>
  • 特表-らせん抵抗器を有する電気加熱装置 図1a
  • 特表-らせん抵抗器を有する電気加熱装置 図1b
  • 特表-らせん抵抗器を有する電気加熱装置 図2
  • 特表-らせん抵抗器を有する電気加熱装置 図3
  • 特表-らせん抵抗器を有する電気加熱装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】らせん抵抗器を有する電気加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230712BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20230712BHJP
   H05B 3/44 20060101ALI20230712BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20230712BHJP
   H05B 3/64 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B60H1/22 611Z
B60H1/03 C
H05B3/44
B60H1/22 671
H05B3/10 A
H05B3/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580252
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2021066176
(87)【国際公開番号】W WO2021259716
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】2006584
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】アルノー、フェーブル
(72)【発明者】
【氏名】ベセム、ナジャー
(72)【発明者】
【氏名】オスカル、エドゥアルド、アルコセール
【テーマコード(参考)】
3K092
3L211
【Fターム(参考)】
3K092PP11
3K092QA04
3K092QB44
3K092RA06
3K092VV22
3L211BA22
3L211DA50
3L211GA49
(57)【要約】
自動車用の伝熱流体を加熱するための電気加熱装置(1)が開示される。前記電気加熱装置(1)は、内部で前記伝熱流体が伝熱流体用入口(3a)と伝熱流体用出口(3b)との間において通流することが意図される管状キャビティ(32)を備える加熱チャンバ(3)を規定するハウジングを備え、前記管状キャビティ(32)の内部において、第1内側らせん抵抗器(31a)と第2外側らせん抵抗器(31b)とを有する電気加熱素子(31)が延び、前記第2外側抵抗器(31b)は、前記第1内側抵抗器(31a)を取り囲み、前記第1抵抗器(31a)および前記第2抵抗器(31b)は、互いに対して対向する巻き方向を有し、前記管状キャビティ(32)の内部において、前記伝熱流体用入口(3a)と前記伝熱流体用出口(3b)との間にらせん状伝熱流体流が生成されるように、前記伝熱流体用入口(3a)は、前記管状キャビティ(32)に対して接線方向に配置され、前記伝熱流体流の前記らせん巻き方向は、前記第2外側抵抗器(31b)の前記巻き方向に対して反対である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の伝熱流体を加熱するための電気加熱装置(1)であって、前記電気加熱装置(1)は、内部で前記伝熱流体が伝熱流体用入口(3a)と伝熱流体用出口(3b)との間において通流することが意図される管状キャビティ(32)を備える加熱チャンバ(3)を画定するハウジングを備え、
前記管状キャビティ(32)の内部において、第1内側らせん抵抗器(31a)と第2外側らせん抵抗器(31b)とを有する電気加熱素子(31)が延びる、電気加熱装置(1)において、
前記第2外側抵抗器(31b)は、前記第1内側抵抗器(31a)を取り囲み、
前記第1抵抗器(31a)および前記第2抵抗器(31b)は、前記伝熱流体用入口(3a)から前記伝熱流体用出口(3b)に向かう方向において、互いに対して対向する時計回りまたは反時計回りの巻き方向を有し、
前記管状キャビティ(32)の内部において、前記伝熱流体用入口(3a)と前記伝熱流体用出口(3b)との間に、時計回りまたは反時計回りのらせん状伝熱流体流が生成されるように、前記伝熱流体用入口(3a)は、前記管状キャビティ(32)に対して接線方向に配置され、前記らせん状伝熱流体流の前記巻き方向は、前記第2外側抵抗器(31b)の前記巻き方向に対して反対である、
ことを特徴とする電気加熱装置(1)。
【請求項2】
前記第1内側らせん抵抗器(31a)および前記第2外側らせん抵抗器(31b)は、前記管状キャビティ(32)の前記回転軸(X)を中心として巻き回されるターンを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項3】
前記第1抵抗器(31a)および前記第2抵抗器(31b)は、前記管状キャビティ(32)の前記回転軸(X)に沿って一定の巻き直径を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項4】
前記管状キャビティ(32)は、横方向管状壁(22a)を有し、前記横方向管状壁(22a)は、当該横方向管状壁(22a)の各端部にそれぞれ配置された第1端部壁(22b)と第2端部壁(22c)との間で延び、前記伝熱流体用入口(3a)は、前記横方向管状壁(22a)に配置される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項5】
前記伝熱流体用入口(3a)は、前記管状キャビティ(32)の前記回転軸(X)を通る平面に対して実質的に垂直に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項6】
前記伝熱流体用出口(3b)は、前記管状キャビティ(32)の前記第1端部壁(22b)および前記第2端部壁(22c)のうちの一方に、前記管状キャビティ(32)の前記回転軸(X)に対して実質的に平行に配置される、
ことを特徴とする請求項4および5のいずれか一項に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項7】
前記伝熱流体用出口(3b)は、前記第1端部壁(22b)または前記第2端部壁(22c)の縁部に配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項8】
前記管状キャビティ(32)は、円錐台形状である、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項9】
前記伝熱流体用入口(3a)は、前記管状キャビティ(32)の第1端部に配置され、前記伝熱流体用出口(3b)は、前記第1端部の反対側の、前記管状キャビティ(32)の第2端部に配置される、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の電気加熱装置(1)。
【請求項10】
前記第1らせん抵抗器(31a)および/または前記第2らせん抵抗器(31b)の前記ターンは、一定のピッチを有する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の電気加熱装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、特に自動車の内部の暖房、換気および/または空調設備用の伝熱流体を加熱および通流させるための電気装置の分野である。より具体的には、本発明は、高電圧電力供給ネットワークを装備した電気自動車またはハイブリッド自動車においてこのような設備に使用される電気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱機関を有する自動車の内部の熱処理を目的とする空気は、空気流と伝熱流体との熱交換により、ラジエータを介して加熱される。ハイブリッド車両または電気車両の場合、熱エネルギー源を形成する電気加熱装置が知られている。電気加熱装置には、この加熱装置に内蔵された電気加熱素子の温度を上昇させるように、一般に高電圧の電流が流れる。こうして、加熱すべき伝熱流体は、電気加熱装置を通って流れ、電気加熱素子に接触する。これにより、電気加熱素子と伝熱流体との間で熱エネルギーの交換が行われる。次いで、この伝熱流体は、車室用に意図された空気流を加熱するように、暖房、換気および/または空調設備内に配置されたラジエータに流れ込む。
【0003】
電気加熱素子は、通常、例えば単数または複数の加熱抵抗器である電気加熱手段からなる。伝熱流体が電気加熱装置内で特に電気加熱素子に沿って通流する際、伝熱流体と電気加熱素子との間における熱交換の質に変化が生じ得る。この結果、電気加熱素子に、時間の経過とともにその効果を低下させ得るホットスポットが形成され得る。また、これにより、伝熱流体がより高いまたはより低い温度を有する領域が生じ得る。このため、電気加熱装置の出口において、伝熱流体の温度が変化する結果となり得る。そして、例えばラジエータにおいて、したがって乗っている人の快適性に影響が及ぼされ得る。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を少なくとも部分的に克服し、改良された電気加熱装置を提供することである。
【0005】
したがって、本発明は、自動車用の伝熱流体を加熱するための電気加熱装置であって、前記電気加熱装置は、内部で前記伝熱流体が伝熱流体用入口と伝熱流体用出口との間において通流することが意図される管状キャビティを備える加熱チャンバを画定するハウジングを備え、
前記管状キャビティの内部において、第1内側らせん抵抗器と第2外側らせん抵抗器とを有する電気加熱素子が延びる、電気加熱装置において、
前記第2外側抵抗器は、前記第1内側抵抗器を取り囲み、
前記第1抵抗器および前記第2抵抗器は、前記伝熱流体用入口から前記伝熱流体用出口に向かう方向において、互いに対して対向する時計回りまたは反時計回りの巻き方向を有し、
前記管状キャビティの内部において、前記伝熱流体用入口と前記伝熱流体用出口との間に、時計回りまたは反時計回りのらせん状伝熱流体流が生成されるように、前記伝熱流体用入口は、前記管状キャビティに対して接線方向に配置され、前記らせん状伝熱流体流の前記巻き方向は、前記第2外側抵抗器の前記巻き方向に対して反対である、
電気加熱装置に関する。
【0006】
本発明の一態様によれば、前記第1内側らせん抵抗器および前記第2外側らせん抵抗器は、前記管状キャビティの前記回転軸を中心として巻き回されるターンを形成する。
【0007】
本発明の他の一態様によれば、前記第1抵抗器および前記第2抵抗器は、前記管状キャビティの前記回転軸に沿って一定の巻き直径を有する。
【0008】
本発明の他の一態様によれば、前記管状キャビティは、横方向管状壁を有し、前記横方向管状壁は、当該横方向管状壁の各端部にそれぞれ配置された第1端部壁と第2端部壁との間で延び、前記伝熱流体用入口は、前記横方向管状壁に配置される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、前記伝熱流体用入口は、前記管状キャビティの前記回転軸を通る平面に対して実質的に垂直に配置される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、前記伝熱流体用出口は、前記管状キャビティの前記第1端部壁および前記第2端部壁のうちの一方に、前記管状キャビティの前記回転軸に対して実質的に平行に配置される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、前記伝熱流体用出口は、前記第1端部壁または前記第2端部壁の縁部に配置される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、前記管状キャビティは、円錐台形状である。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、前記伝熱流体用入口は、前記管状キャビティの第1端部に配置され、前記伝熱流体用出口は、前記第1端部の反対側の、前記管状キャビティの第2端部に配置される。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、前記管状キャビティの前記第1端部における直径は、前記管状キャビティの前記第2端部における直径よりも大きい。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、前記第1らせん抵抗器および/または前記第2らせん抵抗器の前記ターンは、一定のピッチを有する。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、前記第1らせん抵抗器の前記ターンの前記ピッチと、前記第2らせん抵抗器の前記ターンの前記ピッチとは、同一である。
【0017】
本発明の他の一態様によれば、前記第1抵抗器および前記第2抵抗器は、管状素線により各々形成され、前記素線の直径は、その全長に亘って一定である。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な例示としてなされる以下の説明を読み、添付図面を参照することで、より明瞭かつ明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a図1aは、電気加熱装置の概略的な斜視図である。
図1b図1bは、図1aの電気加熱装置の概略分解斜視図である。
図2図2は、図1aの電気加熱装置の長手方向断面の概略的な図である。
図3図3は、図1aの電気加熱装置の横方向断面の概略的な図である。
図4図4は、電気加熱素子の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面において、同一の要素には同一の参照番号を付す。
【0021】
以下の実施形態は、例である。説明では単数または複数の実施形態について言及がなされるが、これは、必ずしも、各言及が同一の実施形態に関することを意味するものではない、または特徴が単一の実施形態にしか適用されないことを意味するものではない。異なる実施形態の個々の特徴を、他の実施形態を提供するために組み合わせる、および/または交換することができる。
【0022】
本明細書において、特定の要素またはパラメータにインデックスが付され得る。例えば、第1要素または第2要素、第1パラメータおよび第2パラメータ、さらにまたは第1基準および第2基準等である。この場合、類似しているが同一ではない要素またはパラメータまたは基準を区別して表示するために単純にインデックスを付すことが重要である。このようなインデックスは、ある要素、パラメータまたは基準の別のものに対する優先順位を意味するものではない。このような名称は、本発明の範囲を逸脱せずに容易に変更され得る。同様に、このインデックスは、例えば任意の基準を評価するための時系列的な順序を意味するものでもない。
【0023】
図1aは組み立てられた状態の電気加熱装置1の概略的な斜視図を示し、図1bは分解した状態の電気加熱装置1の概略的な斜視図を示す。
【0024】
電気加熱装置1は、内部で伝熱流体が通流することが意図されている少なくとも1つの加熱チャンバ3を画定するハウジングを有している。より具体的には、加熱チャンバ3は、管状キャビティ32を有している。管状キャビティ32の内部において、伝熱流体が、伝熱流体用入口3a(図3に図示)と伝熱流体用出口3b(図2に図示)との間にある加熱チャンバ3に流入および流出することが意図されている。伝熱流体用入口3aおよび伝熱流体用出口3bは、ともに前記管状キャビティ32に開口している。管状キャビティ32は、特に、回転軸Xを中心として延びる横方向管状壁22aを有し得る。横方向管状壁22aの各端部に、第1端部壁22bおよび第2端部壁22cがそれぞれ配置されている。
【0025】
この管状キャビティ32の内部において、伝熱流体を加熱することが意図された少なくとも1つの電気加熱素子31が延びている。電気加熱素子31は、特に加熱チャンバ3、より具体的には管状キャビティ32を閉鎖する。このため、伝熱流体は、伝熱流体用入口3aと伝熱流体用出口3bとの間でしか通流できない。したがって、電気加熱素子31は、第2端部壁22cを有し得る。
【0026】
電気加熱装置1は、電気加熱素子31の電気コネクタへのアクセスを許容する、加熱チャンバ3の延長部4も有し得る。この延長部4は、カバー41により閉鎖され得る。伝熱流体は、この延長部4内を通流しない。
【0027】
また、電気加熱装置1は、内部に電子管理プリント回路基板51が配置される凹部5を有している。この凹部5は、特に、これを閉鎖するキャップ52を有し得る。凹部5は、プリント回路基板51および電気加熱素子31の電力供給を可能にするための電気コネクタ(図示せず)も有する。プリント回路基板51は、一般に低電圧電流(例えば12~48V)で電力供給され、電気加熱素子31は、一般に高電圧電流(電気自動車の場合、例えば500Vを超え得る)で電力供給される。
【0028】
伝熱流体用入口3aは、特に管状キャビティ32の第1端部に配置され得る。一方、伝熱流体用出口3bは、第1端部の反対側の、管状キャビティ32の第2端部に配置され得る。これにより、伝熱流体は、電気加熱素子31の全長に亘って通流することができる。
【0029】
図2の断面図に示すように、管状キャビティ32は、特に、装着状態において水平方向に対して傾斜し得る。管状キャビティ32のこのような傾斜により、特に、頂部に蓄積し得る潜在的な気泡がより良好に排出され得る。
【0030】
管状キャビティ32の第2端部は、装着状態において、管状キャビティ32の第1端部よりも高い高さに配置され得る。こうして、気泡は、伝熱流体用出口3bを通って排出され得る。気泡の排出をさらに容易にすべく、伝熱流体用出口3bを管状キャビティ32の頂部に配置してもよい。
【0031】
伝熱流体用出口3bは、特に、管状キャビティ32の第1端部壁22bおよび第2端部壁22cのうちの一方に、前記管状キャビティ32の回転軸Xに対して実質的に平行に配置され得る。図2に示す例において、伝熱流体用出口3bは、第1端部壁22bに配置されている。したがって、伝熱流体用入口3aは、管状キャビティ32の反対側の端部に、すなわち第2端部壁22cに近接して配置され得る。
【0032】
さらに図2によれば、管状キャビティ32は、円錐台形状であり得る。これが意味することは、管状キャビティ32の一方の端部が、その反対側の端部の断面よりも大きい直径の断面を有するということである。より詳細には、管状キャビティ32の直径は、伝熱流体用入口3aが配置されるその第1端部において、伝熱流体用出口3bが配置される前記管状キャビティ32の第2端部における直径よりも大きい。
【0033】
図3に示すように、管状キャビティ32の内部において、伝熱流体用入口3aと伝熱流体用出口3bとの間に、時計回りまたは反時計回りのらせん状伝熱流体流が生成されるように、伝熱流体用入口3aは、管状キャビティ32に対して接線方向に配置される。より詳細には、入口3aは、管状キャビティ32の横方向管状壁22aに配置され得る。伝熱流体用入口3aは、特に、管状キャビティ32の回転軸Xを通る平面に対して実質的に垂直に配置され得る。これにより、伝熱流体の流れは、管状キャビティ32の内壁の形状に一致するため、伝熱流体用出口3bに至るまでらせん状のプロファイルを有する流れを得ることができる。
【0034】
図4により詳細に示すように、電気加熱素子31は、特に、第1内側らせん抵抗器31aおよび第2外側らせん抵抗器31bを有している。これらの第1抵抗器31aおよび第2抵抗器31bは、特に、管状キャビティ32の回転軸Xを中心として巻き回されている。より具体的には、第2外側抵抗器31bは、第1内側抵抗器31aを取り囲んでいる。また、第1抵抗器31aおよび第2抵抗器31bは、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において、互いに対して対向する時計回りまたは反時計回りの巻き方向を有している。したがって、第1抵抗器31aが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において時計回りの巻き方向を有する場合、第2抵抗器31bは、同一方向において反時計回りの巻き方向を有するであろう。同様に、第1抵抗器31aが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において反時計回りの巻き方向を有する場合、第2抵抗器31bは、同一方向において時計回りの巻き方向を有するであろう。第1抵抗器31aおよび第2抵抗器は、特に、管状素線により各々形成され得る。素線の直径は、その全長に亘って一定である。
【0035】
第1抵抗器31aおよび第2抵抗器31bは、より詳細には、管状キャビティ32の回転軸Xに沿って一定の巻き直径を有し得る。したがって、電気加熱素子31は、管状キャビティ32の内部において円筒形のプロファイルを有している。
【0036】
図2だけでなく図4にも示すように、第1抵抗器31aおよび第2抵抗器31bのターンは、一定のピッチを有し得る。さらに、第1内側抵抗器31aのターンのピッチと、第2内側抵抗器31bのターンのピッチとは、同一であり得る。特に、これにより、電気加熱素子31の製造が容易となり得るだけでなく、管状キャビティ32の内部において伝熱流体が均一に加熱され得る。
【0037】
図4において、伝熱流体用入口3aおよび伝熱流体用出口3bは、灰色の矢印で示されている。第2外側抵抗器31bの巻き方向は、管状キャビティ32の内部において伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向におけるらせん状伝熱流体流の巻き方向に対して反対である。したがって、第2抵抗器31bが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において時計回りの巻き方向を有する場合、らせん状伝熱流体流は、同一方向において反時計回りの巻き方向を有するであろう。同様に、第2抵抗器31bが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において反時計回りの巻き方向を有する場合、らせん状伝熱流体流は、同一方向において時計回りの巻き方向を有するであろう。これにより、伝熱流体用の接線方向入口3aと組み合わせることで、電気加熱装置1の性能を向上させることができる。特に、伝熱流体と電気加熱素子31との間での熱交換係数を向上させることができる。
【0038】
伝熱流体用の接線方向入口3aと電力7kWの電気加熱素子31とを有する電気加熱装置1についてシミュレーションが実施された。電気加熱素子31の内部において、流量0.1726kg/s、入口温度70℃の伝熱流体が通流する。これらのシミュレーションでは、管状キャビティ32の特性、例えば体積、直径、長さは同一である。
【0039】
第2外側抵抗器31bのターンが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において、伝熱流体流と同一方向に、時計回りまたは反時計回りに巻き回されている場合、以下の結果が得られる。
伝熱流体の出口温度:81.4℃
伝熱流体の圧力損失:12mbar
電気加熱素子31の最高温度:190℃
キャビティ32における100℃以上の温度を有する伝熱流体の割合:9.5%
キャビティ32における100℃以上の温度を有する伝熱流体の割合:0.07%
【0040】
第2外側抵抗器31bのターンが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において、伝熱流体流に対して反対方向に、時計回りまたは反時計回りに巻き回されている場合、以下の結果が得られる。
伝熱流体の出口温度:81.5℃
伝熱流体の圧力損失:13mbar
電気加熱素子31の最高温度:178.8℃
キャビティ32における100℃以上の温度を有する伝熱流体の割合:1.4%
キャビティ32における100℃以上の温度を有する伝熱流体の割合:0.02%
【0041】
これらのシミュレーションから、第2外側抵抗器31bのターンが、伝熱流体用入口3aから伝熱流体用出口3bに向かう方向において、伝熱流体流に対して反対方向に巻き回されている場合、電気加熱素子31の最高温度はより低いことが分かる。これは、電気加熱素子31においてホットスポットが少ないことを意味する。したがって、電気加熱素子31と伝熱流体との間の熱交換は、管状キャビティ32の内部においてより均一となる。これにより、キャビティ32において100℃以上の温度を有する伝熱流体の割合が低くなる結果となる。また、管状キャビティ32内での伝熱流体の温度がより均一になる。さらに、伝熱流体の圧力損失は、制限されたままとされる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
【国際調査報告】