(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】テトラヒドロイソキノリン類誘導体の塩、その製造方法及びその医薬学的応用
(51)【国際特許分類】
C07D 413/14 20060101AFI20230712BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20230712BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230712BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20230712BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
A61K31/4725
A61P25/00
A61P31/22
A61P3/10
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521813
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2021102261
(87)【国際公開番号】W WO2022001847
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010625224.7
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510116819
【氏名又は名称】浙江海正薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Hisun Pharmaceutical CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.46 Waisha Road,Jiaojiang District,Taizhou,Zhejiang 318000,P.R.China
(71)【出願人】
【識別番号】521508896
【氏名又は名称】上海昂睿医薬技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Aryl Pharmtech Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Building 3, 301 Minqiang Road, Songjiang, Shanghai, 201612, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ヤンホイ
(72)【発明者】
【氏名】モン、リーチェン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、シアンコイ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ、ウェイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】コン、ヨンシアン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、タイワン
(72)【発明者】
【氏名】フー、タイシャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、レイ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB02
4C063CC52
4C063DD15
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC70
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZB33
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸の薬学的に許容される塩、その製造方法、この薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、及び治療剤として、特にアンギオテンシンII2型受容体の拮抗剤としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸と有機塩基又は無機塩基と形成したアルカリ金属塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩である、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸の薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記アルカリ金属塩は、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選択され、好ましくはナトリウム塩である、請求項1に記載の薬学的に許容される塩。
【請求項3】
【化1】
である、請求項1又は2に記載の薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的に許容される塩の製造方法であって、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸を金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ金属アルコキシドと反応させる工程を含む、方法。
【請求項5】
前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムから選択され、好ましくは水酸化ナトリウムであり、
前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選択され、
前記アルカリ金属重炭酸塩が重炭酸ナトリウム及び重炭酸カリウムから選択され、
前記アルカリ金属アルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、及びカリウム-t-ブトキシドから選択され、好ましくはナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
治療有効量の請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的に許容される塩と薬学的に許容される担体とを含有する、医薬組成物。
【請求項7】
一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛、又は関連する神経疾患を治療又は予防するための薬物の作製における、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的に許容される塩又は請求項6に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
アンギオテンシンII2型受容体の拮抗剤の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的に許容される塩又は請求項6に記載の医薬組成物の使用。
【請求項9】
一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛、又は関連する神経疾患を治療するための薬剤として用いられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的に許容される塩又は請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
アンギオテンシンII2型受容体を阻害するための薬剤として用いられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的に許容される塩又は請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月1日に中国特許庁に出願された発明の名称「テトラヒドロイソキノリン類誘導体の塩、その製造方法及びその医薬応用」である中国特許出願202010625224.7の優先権を主張し、その内容は援用により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸の薬学的に許容される塩形態、その製造方法、その薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、及び治療剤として、特にアンギオテンシンII2型受容体の拮抗剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
神経因性疼痛は、神経系に発生した一次性損傷又は機能障害による慢性疼痛疾患であり、病変の部位によって末梢神経因性疼痛と中枢神経因性疼痛に分けられ、外傷や、炎症、感染、圧迫などの様々な原因に起因し、例えば、糖尿病性神経痛(DNP)、帯状疱疹後神経痛(PHN)、一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害などに起因する可能性がある。現在、神経因性疼痛の臨床治療に用いられている薬物としては、主に抗てんかん薬、抗うつ薬及び麻酔性鎮痛薬があり、例えば、ガバペンチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬が挙げられる。しかし、これらの薬物は、特異性なし、治療効果が不十分であるし、認知の変化や、過鎮静、吐き気、耐性、依存性などの重篤な副作用を有するし、臨床薬のニーズをまだまだ満たしていない。そこで、神経因性疼痛の病因を研究し、薬効作用の明確な標的を見つけ、神経因性疼痛を効果的に治療可能なかつ副作用が少ない新型の薬物を開発する必要がある。
【0004】
アンギオテンシンII受容体は、アンギオテンシンIIをリガンドとするGタンパク質共役受容体であり、レニン-アンギオテンシン系に重要な構成部分である。アンギオテンシンII受容体の主要なサブタイプには、1型受容体(AT1R)と2型受容体(AT2R)が含まれる。アンギオテンシンIIは、約30%のアミノ酸配列だけを共有するAT1RとAT2Rの主要なリガンドとして、両者と同様の親和力を持っている。
【0005】
AT2Rは様々な胚性組織で豊富に発現され、成体の正常組織にはあまり分布していないが、組織損傷後に発現が増加することがある。AT2Rは血圧調節、神経成長、疼痛管理、心筋再生に関連しているので、AT2Rを標的とする薬物によって心血管機能を改善、神経因性疼痛を緩和する可能性がある。オーストラリアのSpinifex社が開発した化合物olodanrigan(EMA401)は、現在臨床第II相にある、高選択性のAT2R拮抗剤の候補薬であり、糖尿病性神経痛、帯状疱疹後神経痛などの神経因性疼痛に良好な治療効果を有する。また、Spinifex社はAT2R拮抗剤EMA-400も開発している。WO93/23378には、その構造を有するOlodanrigan及びEMA-400の製造方法が記載されている:
【0006】
【0007】
現在、AT2R拮抗剤に関しては、WO2016113668、WO2015003223及びWO2013110135などの一連の特許出願が開示されており、AT2R拮抗剤の研究と応用がよく進んでいるが、臨床薬のニーズを満たすにはまだ程遠く、まだ改善の余地があり、新しいAT2R拮抗剤、特に新しい選択的AT2R拮抗剤の研究と開発を継続する必要がある。
【0008】
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(化合物1m)は、アンギオテンシンII2型受容体の拮抗剤であり、その作製と生物活性がWO2019242599に開示されている。しかし、この化合物は、水溶解性が不十分で、薬物動態特性も理想的ではなく、その適用が大幅に制限されている。このように、その溶解性及び薬物動態特性をどのように改善するかは、先行技術の課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、この化合物の塩、特にそのナトリウム塩が特に有利な水溶性及び著しく改善された薬物動態特性を有することを意外に見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(化合物1m)の薬学的に許容される塩、その製造方法、及びこの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、ならびに治療剤として、特にアンギオテンシンII2型受容体の拮抗剤としてのその使用を提供する。ここで、前記薬学的に許容される塩は、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸と有機塩基又は無機塩基と形成したアルカリ金属塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩であり、そのナトリウム塩が特に好ましい。
【0011】
この塩形成形態は、一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛又は関連する神経疾患の治療に優れた活性を有し、溶解度が明らかに改善され、動物における薬物動態特性が良好であり、毒性が低く、神経疾患の治療用製剤の作製に適している。
【0012】
【0013】
本発明に係るアルカリ金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩から選択され、好ましくはナトリウム塩である。
【0014】
本発明の式(1m)の化合物の典型的な薬学的に許容される塩としては、以下のものが挙がられるが、これらに限定されない:
【0015】
【0016】
また、本発明は、式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩の製造方法に関する。該製造方法は、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸を金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ金属アルコキシドと反応させる工程を含む。前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムから選択され、好ましくは水酸化ナトリウムであり、前記アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選択され、前記アルカリ金属重炭酸塩は、重炭酸ナトリウム及び重炭酸カリウムから選択され、前記アルカリ金属アルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、及びカリウム-t-ブトキシドから選択され、好ましくはナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドである。
【0017】
通常、上記の作製プロセスは、冷却、常温又は加熱条件下で行うことができる。ただし、当業者に知られているように、異なる塩形成反応は反応温度に影響されるが、本発明の塩形成反応の温度は常温から用いられる溶剤の沸点までの温度範囲にあり、当業者なら、当技術分野における従来の技術的手段により、特定の塩形成反応に対する最好の反応温度を容易に決定することができる。
【0018】
また、本発明は、治療有効量の式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。また、本発明は、一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛又は関連する神経疾患を治療するための医薬品の製造におけるこの医薬組成物の使用を提供する。
【0019】
また、本発明は、一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛又は関連する神経疾患を治療するための医薬品の製造における、式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0020】
また、本発明は、アンギオテンシンII2型受容体の拮抗剤の製造における、式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0021】
また、本発明は、一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛又は関連する神経疾患を治療する方法にも関し、前記方法は、治療を必要とする患者に有效治療量の式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩又はその医薬組成物を投与することを含む。
【0022】
また、本発明は、アンギオテンシンII2型受容体を式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩又はその医薬組成物と接触させることを含むアンギオテンシンII2型受容体の阻害方法にも関する。
【0023】
また、本発明は、一次性神経障害、二次性神経障害、末梢神経障害、機械的神経損傷若しくは生化学的神経損傷による神経障害、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛又は関連する神経疾患を治療するための薬剤として使用される、式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩又はその医薬組成物にも関する。
【0024】
また、本発明は、アンギオテンシンII2型受容体を阻害するための薬剤として用いられる、式(1m)の化合物の薬学的に許容される塩又はその医薬組成物にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<発明の詳細な説明>
反対の記載がない限り、明細書及び特許請求の範囲における用語は、以下の意味を有する。
【0026】
「医薬組成物」は、本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩又はプロドラッグを他の化学成分とともに含む混合物を意味し、薬学的有効成分に加えて、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤などの他の成分も含む。医薬組成物は、生体への投与を促進し、有効成分の吸収、ひいては生物活性の発揮を促進するためのものである。
【0027】
<本発明に係る化合物の合成方法>
本発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を提供する。
【0028】
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸の塩基付加塩は以下の方法:
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸を、水と混和した有機溶剤中で金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ金属アルコキシドと反応させること、により作製することができる。
【0029】
ここでは、前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムから選択され、好ましくは水酸化ナトリウムであり、
前記アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選択され、
前記アルカリ金属重炭酸塩は、重炭酸ナトリウム及び重炭酸カリウムから選択され、
前記アルカリ金属アルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド及びカリウム-t-ブトキシドから選択され、好ましくはナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドである。
【0030】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために使用されるが、本発明の範囲及び精神を限定するものではない。
【0031】
<実施例>
実施例においては、式(1m)で表される化合物及びその薬学的に許容される塩(例えば化合物1)の作製及び関連する構造同定データが記載されている。なお、以下の実施例は、本発明を限定するのではなく、本発明を説明するために用いられている。1H NMRスペクトルはブルカー装置(400MHz)で測定したものであり、化学シフトがppmで表される。テトラメチルシランを内部標準(0.00ppm)として使用した。1H NMRの表示方法:s=一重線、d=二重線、t=三重線、m=多重線、br=ブロード、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線。結合定数が提供される場合、その単位はHzである。
【0032】
マススペクトルはLC/MS機器で測定したものであり、イオン化モードがESI又はAPCIであった。
【0033】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートとしては煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲルプレートを使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されるシリカゲルプレートの規格は0.15mm~0.2mm、薄層クロマトグラフィー分離精製物の規格は0.4mm~0.5mmであった。
【0034】
カラムクロマトグラフィーには、一般的に、煙台黄海シリカゲル200~300メッシュのシリカゲルを担体として使用した。
【0035】
別段の指定がない限り、以下の実施例では、すべての温度は摂氏温度であり、出発原料及び試薬としては、市販されているか又は既知の方法に従って合成したものを使用した。ただし、市販の原料及び試薬をさらに精製せずにそのまま使用した。別段の指定がない限り、市販のメーカーには、Aldrich Chemical Company、ABCRgmbH & Co.KG、アクロス オーガニクス、広賛化工科技有限公司、及び景顔化工科技有限公司などが含まれるが、これらに限定されない。
CDCl3:重水素化クロロホルム。
DMSO-d6:重水素化ジメチルスルホキシド。
【0036】
特に断りのない限り、実施例において反応の溶液は水溶液を指す。
【0037】
化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー溶離剤系及び薄層クロマトグラフィーで精製した。溶離剤系は、A:石油エーテルと酢酸エチルとの溶剤系、B:ジクロロメタンとメタノールとの溶剤系、C:ジクロロメタンと酢酸エチルとの溶剤系から選択された。溶剤系における溶剤の体積比は化合物の極性によって異なるが、酢酸などの酸性試薬又はトリエチルアミンなどの塩基性試薬を少量加えて調整してもよい。
【0038】
<実施例1>
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸ナトリウム
【0039】
【0040】
【0041】
ステップ1
(Z)-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アクリル酸メチル
(±)-BOC-A-ホスホノグリシントリメチルエステル1b(9.8g、33mmol)とテトラメチルグアニジン(4.0g、34.4mmol)をテトラヒドロフラン100mLに溶解し、反応液を0℃に下げ、2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド1a(7.0g、28.7mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5mL)を加え、室温下で一晩反応させた。反応終了後、減圧下で濃縮させ、酢酸エチル(40mL)を加えて残留物を溶解させ、10%クエン酸溶液(30mL)及び飽和食塩水(30mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:A系)で精製し、(Z)-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アクリル酸メチル1c(9.5g、白色固体)を収率80%で得た。
MS m/z(ESI):314.0 [M-100]
【0042】
ステップ2
(S)-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピオン酸メチル
(Z)-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アクリル酸メチル1c(5.0g、12.0mmol)、(R)-N-ジフェニルホスフィン-N-メチル-(S)-2-(ジフェニルホスフィン)フェロセニルエチルアミン(90mg、0.06mmol)及ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボラート(100mg、0.024mmol)をメタノール50mLに溶解し、水素置換を3回行い、水素を入れた風船を取り付け、室温下で一晩反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:A系)で精製し、(S)-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピオン酸メチル1d(3.2g、無色油)を収率64%で得た。
MS m/z(ESI):316.0 [M-100]
【0043】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.48- 7.32 (m, 5H), 7.23 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.98-6.96 (m, 2H), 6.78 (dd, J = 6.4, 2.0 Hz, 1H), 4.96 (q, J = 10.4 Hz, 2H), 4.20 (td, J = 8.8, 5.2 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.55 (s, 3H), 3.05 (dd, J = 13.4, 5.0 Hz, 1H), 2.71 (dd, J = 13.2, 10.0 Hz, 1H), 1.30 (s, 9H).
【0044】
ステップ3
(S)-2-アミノ-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)プロピオン酸メチル塩酸塩
(S)-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピオン酸メチル1d(3.2g、7.7mmol)を1,4-ジオキサン10mLに溶解し、塩化水素の1,4-ジオキサン溶液(9.6mL、38.5mmol、4M)を加え、室温下で2時間反応させた。反応終了後、減圧下で濃縮させ、(S)-2-アミノ-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)プロピオン酸メチル塩酸塩1e(2.7g、白色固体)を収率100%で得た。
MS m/z(ESI):316.0 [M+1]
【0045】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.62 (s, 3H), 7.47 -7.32 (m, 5H), 7.03-7.02 (m, 2H), 6.81 - 6.78 (m, 1H), 4.94 (q, J = 11.2 Hz, 2H), 4.04 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.50 (s, 2H), 3.05 (d, J = 7.2 Hz, 2H).
【0046】
ステップ4
(S)-5-(ベンジルオキシ)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル塩酸塩
(S)-2-アミノ-3-(2-(ベンジルオキシ)-3-メトキシフェニル)プロピオン酸メチル塩酸塩1e(1.3g、3.7mmol)を2N希塩酸(26mL)に溶解し、アルゴン置換を3回行い、室温下で30分間攪拌し、ホルムアルデヒド水溶液(2.8mL、37mmol、37wt.%)とテトラヒドロフラン(5mL)を順次加え、さらにアルゴン置換を3回行い、室温下で一晩反応させた。反応終了後、反応液にアセトニトリルを加え、減圧下で濃縮させることを複数回繰り返し、(S)-5-(ベンジルオキシ)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル塩酸塩1f(400mg、白色固体)を収率30%で得た。
MS m/z(ESI):328.0 [M+1]
【0047】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.12 (s, 2H), 7.45 - 7.33 (m, 5H), 7.05 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.96 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 4.41 (dd, J = 10.8, 5.2 Hz, 1H), 4.22 (q, J = 15.6 Hz, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.21 (dd, J = 17.2, 5.2 Hz, 1H), 2.92 (dd, J = 17.6, 11.2 Hz, 1H).
【0048】
ステップ5
(S)-5-(ベンジルオキシ)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル
(S)-5-(ベンジルオキシ)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル塩酸塩1f(80mg、0.22mmol)、2-クロロ-6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール1g(37mg、0.22mmol)及びトリエチルアミン(91μL、0.66mmol)をテトラヒドロフラン2mLに溶解し、50~60℃で5時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、減圧下で濃縮させ、得られた残留物を薄層クロマトグラフィー(展開剤:A系)で精製し、(S)-5-(ベンジルオキシ)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル1h(60mg)を収率59%で得た。
MS m/z(ESI):462.9 [M+1]
【0049】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.49-7.29 (m, 6H), 7.06 (dd, J = 7.8, 2.2 Hz, 1H), 6.96-6.86 (m, 3H), 5.19 (dd, J= 6.4, 2.4 Hz, 1H), 5.05 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 4.95 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.90 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 4.76 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.66-3.61 (m, 4H), 2.94 (dd, J = 16.4, 6.4 Hz, 1H).
【0050】
ステップ6
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-5-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル
(S)-5-(ベンジルオキシ)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル1h(600mg、1.3mmol)と10%パラジウム炭素(300mg、50%w)をメタノール10mLに溶解し、水素を入れた風船を取り付け、水素置換を4回行い、室温下で一晩反応させた。反応終了後、反応液を珪藻土でろ過し、珪藻土酢酸エチルとメタノール(V:V=1:1)の混合溶剤(100mL×3)、ジクロロメタン(100mL×3)で順次洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮させ、粗生成物(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-5-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル1i(500mg)を収率100%で得た。
MS m/z(ESI):372.9 [M+1]
【0051】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.86 (br, 1H), 7.50 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 8.6, 5.4 Hz, 1H), 7.10-7.04 (m, 1H), 6.88 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.25 (dd, J = 6.4, 2.4 Hz, 1H), 4.81 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.59 (s, 3H), 3.46 (dd, J = 16.2, 1.8 Hz, 1H), 3.04 (dd, J = 16.8, 6.4 Hz, 1H).
【0052】
ステップ7
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル
2-(クロロメチル)-5-メトキシピリジン塩酸塩1j(113mg、0.72mmol)、炭酸カリウム(149mg、1.08mmol)及び(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-5-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル1i(100mg、0.27mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド6mLに順次溶解し、70℃で6時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、酢酸エチル100mLと水50mLを加え、分液し、有機相を収集し、水相を酢酸エチル(50mL×2)で抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮させ、粗生成物(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル1k(133mg)を収率100%で得た。キャラクタリゼーションのために、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離剤:B系)によりさらに分離及び精製した。
MS m/z(ESI):493.9 [M+1]
【0053】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.30 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.32-7.29 (m, 2H), 7.07 (dd, J = 7.8, 2.2 Hz, 1H), 6.96- 6.86 (m, 3H), 5.21 (dd, J = 6.4, 2.4 Hz, 1H), 5.12 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.05 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 4.91 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 4.77 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.87 (s, 3H), 3.67 (dd, J = 16.4, 2.4 Hz, 1H), 3.63 (s, 3H), 3.02 (dd, J = 16.4, 6.4 Hz, 1H).
【0054】
ステップ8
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル1k(133mg、0.27mmol)をテトラヒドロフラン4mLに溶解し、塩化カルシウム(481.74mg、4.34mmol)のイソプロパノールと水(V:V=2:1)の混合溶液3mLを加え、さらに水酸化ナトリウム溶液(56mg、1.4mmol)3mLを加え、室温下で一晩反応させた。反応終了後、酢酸エチル80mLと水100mLを加え、反応液の酸塩基度を1M希塩酸でpH=5~6に調整し、分液し、有機相を収集し、水相を酢酸エチル(50mL×2)で抽出し、有機相を合わせ、有機相を飽和食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮させ、得られた残留物を分取カラムで単離し、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸1m(15mg)を収率12%で得た。
MS m/z(ESI):479.9 [M+1]
【0055】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.30 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.52-7.48 (m, 2H), 7.34 (dd, J = 8.6, 5.0 Hz, 1H), 7.09-7.01 (m, 3H), 5.07 (dd, J = 6.2, 2.6 Hz, 1H), 5.00 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.93 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.79 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 4.66 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.83 (s, 3H), 3.51 (dd, J = 16.0, 2.4 Hz, 1H), 3.00 (dd, J = 16.2, 6.6 Hz, 1H).
【0056】
ステップ9
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸ナトリウム
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸1m(0.40g、0.84mmol)を酢酸エチル6mLに加え、氷水浴で攪拌しながらNaOH/エタノール溶液(0.05g/mL、0.668mL)を加え、pHを7~8にした。溶液を濃縮乾固させ、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸ナトリウム1(0.42g)を収率100%で得た。
MS m/z(ESI):480.2 [M+1]
【0057】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.26 (s, 1H), 7.62 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.24 (dd, J = 8.2, 4.9 Hz, 1H), 7.01-6.90 (m, 3H), 4.93 (s, 2H), 4.71 (s, 2H), 4.66 (d, J= 5.5 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.67 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 2.78 (dd, J= 16.1, 6.4 Hz, 1H).
【0058】
<実施例2>
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸リチウム
【0059】
【0060】
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸1m(0.20g、0.42mmol)を酢酸エチル6mLに加え、氷水浴で攪拌しながらLiOH/エタノール溶液(0.2M、2.1mL)を加え、pHを7~8にした。溶液を濃縮乾固させ、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸リチウム2(0.205g)を収率100%で得た。
MS m/z(ESI):480.2 [M+1]
【0061】
<実施例3>
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸カリウム
【0062】
【0063】
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸1m(0.20g、0.42mmol)を酢酸エチル6mLに加え、氷水浴で攪拌しながらKOH/エタノール溶液(0.2M、2.1mL)を加え、pHを7~8にした。溶液を濃縮乾固させ、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸カリウム3(0.215g)を収率100%で得た。
MS m/z(ESI):480.2 [M+1]
【0064】
<実施例4>
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸カルシウム
【0065】
【0066】
(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸1m(0.20g、0.42mmol)をテトラヒドロフラン20mLに加え、氷水浴で攪拌しながら水酸化カルシウム/水溶液(0.01M、21mL)を加え、pHを7~8にした。溶液を濃縮して凍結乾燥させ、(S)-2-(6-フルオロベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-6-メトキシ-5-((5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸カルシウム4(0.208g)を収率100%で得た。
MS m/z(ESI):480.2 [M+1]
【0067】
試験例:
<溶解度実験>
従来の溶解度の測定方法に従って、リン酸塩緩衝液PBS(pH7.4)、メタノール、0.1%HCl及び水の4つの異なる系における本発明に係る化合物の溶解度を測定した。結果を次の表に示す:
【0068】
【0069】
結論:本発明に係る化合物のナトリウム塩(化合物1)はその遊離酸(化合物1m)に比べて溶解度が明らかに改善された。
【0070】
上記の表の結果から、ナトリウム塩化合物1は化合物1mに比べて水への溶解度が200倍以上増加したことが分かっており、これは予想外であった。
【0071】
<生物学的評価>
試験例1:本発明に係る化合物によるヒトAT2Rリガンド結合拮抗活性の試験
アンギオテンシンIIタイプ2受容体(AT2R)は、神経細胞の分化と再生、細胞増殖と血管新生、及び骨量の維持に関与している。AT2R阻害剤は、疼痛及び異常な神経再生疾患の治療に使用し、腫瘍細胞の増殖を抑制し、骨量を増加させることが可能である。以下の方法では、AT2リガンドへの結合の試験により、AT2Rに対する本発明に係る化合物の拮抗度を検討した。
【0072】
【0073】
【0074】
2.試薬調製
(1)10mMヒトアンギオテンシンII(アンギオテンシンIIヒト):10mgのアンギオテンシンIIヒト(純度99.09%)を0.947mLの脱イオン水に溶解し、分注後、-80℃で保存した。
【0075】
(2)化合物原液の作製
標準方法に従って、試験化合物(化合物1m及び化合物1~4)をジメチルスルホキシドに溶解し、それぞれ10mMの原液(stock solution)として作製した。
【0076】
(3)Tag-liteアンギオテンシン受容体赤色アゴニスト:8600nMの原液を調製し、分注後、-80℃で保存した。
【0077】
(4)1X Tag-Lite Buffer(TLB):5X TLBを脱イオン水で1Xに希釈した。
【0078】
3.実験手順
(1)適量の1X TLBを調製し、十分に混合した。
【0079】
(2)試験化合物を5倍希釈し、合計10個の濃度の勾配を作成した。
【0080】
(3)ステップ(2)で希釈した化合物をそれぞれ160nL/ウェルで作業プレート(3657、Corning)に移し、200g、室温、1分間にした。
【0081】
(4)40μlの1X TLBを上記作業プレートに加え、室温条件下で200gで1分間遠心分離し、シェーカーで15分間振動してよく混合した後、室温条件下で200gで1分間遠心分離しておいた(化合物の作業濃度は4Xであった)。
【0082】
(5)Tag-liteアンギオテンシン受容体赤色アゴニスト(8600nM原液)を1X TLBで12nMに希釈しておいた。
【0083】
(6)5mLの1X TLBを15mL遠心管に入れた。
【0084】
(7)37℃の水浴中で1本のTb標識付けAT2R細胞を、氷が完全に溶けるまで解凍した(1~2分間)。
【0085】
(8)解凍された細胞を工程(6)における1X TLBに素早く移し、穏やかに混合した後、室温下で1200gで5分間遠心分離した。
【0086】
(9)上澄みを徐々に吸引して廃棄し、1mLの1X TLBで細胞を再懸濁してよく混合した後、再びに1.7mLの1X TLBを加えてよく混合した後、室温下で放置しておいた。
【0087】
(10)10μLの細胞を各試験ウェルに加え、室温下で200gで3秒間遠心分離し、そして5μLの工程(4)における化合物作業液4Xを対応するウェルに加え、さらに、5μLのステップ(5)で希釈した4X Tag-liteアンギオテンシン受容体赤色アゴニストを各試験ウェルに加えた。
【0088】
(11)反応プレートを室温下で200gで1分間遠心分離し、25℃室温下で1時間静置した後、室温下で200gで1分間遠心分離した。Envision HTRFマイクロプレートリーダーを使用してデータを収集し、非線形フィッティング式を使用してIC50を算出した。
【0089】
(12)AT1Rに対する本発明に係る化合物の拮抗活性のIC50測定方法は、Tb標識付けAT2Rの代わりにTb標識付けAT1R細胞を用いた以外には、以上の方法と同様に行った。
【0090】
4. 実験結果
AT2R拮抗活性について測定した本発明に係る化合物のIC50値を以下の表に示す。
【0091】
【0092】
結論:(1)本発明に係る化合物のナトリウム塩(化合物1)は、その遊離酸(化合物1m)に比べてAT2Rに対して有意な拮抗活性を有したことが認められた。
【0093】
(2)本発明に係る化合物のナトリウム塩(化合物1)及びその遊離酸(化合物1m)は、AT1Rに対する拮抗のIC50値>10μMであり、AT1Rに対して拮抗活性が見られなかった。
【0094】
このように、AT2Rに対する本発明に係る化合物の拮抗作用は高度に選択的であったことが分かった。
【0095】
<薬物動態試験>
1.実験の目的
SDラットを被試動物とし、本発明に係る化合物をラットに静脈内注射又は胃内投与し、LC/MS/MS法で異なる時点での血漿中の薬物濃度を測定し、ラット体内における本発明に係る化合物の薬物動態特性を考察した。
【0096】
2.実験方案
2.1.実験薬品と動物
化合物1m及び化合物1~4
維通利華実験動物技術有限公司から購入した6匹の健康な成体Sprague Dawley(SD)雄ラット
【0097】
2.2 薬剤の調製と投与
(1)薬剤の調製
化合物1mを76.32mg秤量し、12.72mLの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)に溶解し、化合物が完全に懸濁されるまで1分間ボルテックスし、最終濃度が6mg/mLとなるように調製した。
【0098】
化合物1を76.61mg秤量し、12.768mLの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)に溶解し、化合物が完全に懸濁されるまで1分間ボルテックスし、最終濃度が6mg/mLとなるように調製した。
【0099】
化合物2~4を秤量し、適量の.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)に溶解し、化合物が完全に懸濁されるまで1分間ボルテックスし、最終濃度が6mg/mLでとなるように調製した。
【0100】
(2)投与
半分が雄で半分が雌の6匹の健康な成体SDラットを各群3匹ずつに2群に分けた。一晩絶食させた後、本発明に係る化合物1m又は化合物1~4を投与量60mg/kgで胃内投与(po)により投与した。
【0101】
2.3 サンプルの採取
投与前と投与後0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間に頸静脈から約0.25mLの血液を採取し、抗凝固用ヘパリンナトリウムを加えた。採取した血液サンプルを氷の上に置き、(遠心条件:7000回転/分、5分間)遠心分離で血漿を収集した。この血漿を分析まで-70℃以下で保存した。
【0102】
2.4 サンプルの前処理
血漿サンプルを100μL採取し、そこに300μLのメタノール(内部標準作業液としてロラタジンを800ng/mL含む)を加え、5分間ボルテックスし、10000回転/分で10分間遠心分離し、1μLの混合液を採取してLC-MS/MSに注入して、分析を行った。
【0103】
3.薬物動態パラメータの結果
本発明に係る塩化合物及び陽性対照化合物(化合物1m)の薬物動態パラメータを以下の表に示す。
【0104】
【0105】
結論:本発明に係る化合物のナトリウム塩(化合物1)は、その遊離酸(化合物1m)と比較して、血中薬物濃度および曲線下面積が明らかに改善され、血中薬物濃度が50倍以上向上し、曲線下面積が14倍以上向上した。驚くべきことに、本発明のナトリウム塩は、他の塩(例えばリチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩)に対して有意な薬物動態特性を有し、血中薬物濃度及び曲線下面積の両方ともが明らかに改善され、予想外の技術効果を有することが見られた。
【国際調査報告】