(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】金属材料を溶解および/または加熱するためのプラント、ならびに該プラントに電気エネルギーを供給する方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/22 20060101AFI20230713BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20230713BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H05B6/22
H05B6/06 311
F27D11/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022570500
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 IT2021050152
(87)【国際公開番号】W WO2021234752
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102020000011920
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514165990
【氏名又は名称】ダニエリ オートメーション ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モルテーニ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】モルデグリア、アントネロ
【テーマコード(参考)】
3K059
4K063
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB16
3K059AC02
3K059AC32
3K059AC54
3K059AD03
3K059AD05
3K059AD33
3K059CD02
4K063AA04
4K063BA02
4K063CA02
4K063CA06
4K063FA42
4K063FA48
(57)【要約】
実施形態は、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラント、ならびに電気エネルギーを供給するための対応する方法に関する。プラントは、少なくとも1つの誘導炉(11)と、誘導炉(11)に電気エネルギーを供給するための手段(12)とを備え、電力供給手段(12)は、交流電流電力網(14)に接続されている少なくとも1つの変圧器(13)と、変圧器(13)の下流に配置されている少なくとも1つの整流器(15)と、整流器デバイス(15)の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータ(16)と、金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイル(17)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの誘導炉(11)と電力供給手段(12)とを備える、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントであって、
前記電力供給手段(12)は、交流電流電力網(14)に接続されている少なくとも1つの変圧器(13)と、前記変圧器(13)の下流に配置されている少なくとも1つの整流器(15)と、前記整流器(15)の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータ(16)と、金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイル(17)とを備えるプラント(10)であって、
前記電力供給手段(12)が、前記コンバータ(16)の上流に配置されて、前記電力網(14)によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給することができる、少なくとも1つの代替エネルギー源(18)を備え、
前記プラントが、1以上のパラメータに応じて、前記電力網(14)および前記代替エネルギー源(18)との間で、一方、他方または両方を選択するように構成される管理ユニット(31)を備える、ことを特徴とする、プラント。
【請求項2】
前記代替エネルギー源(18)が、前記コンバータ(16)の上流に配置された少なくとも1つの直流電流接続システム(24)によって前記誘導炉(11)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記誘導炉(11)が、前記コンバータ(16)の下流かつ前記コイル(17)の上流に配置されて、無効電力を低減して、最大限の有効電力を前記コイル(17)に伝達するように構成される、少なくとも1つの調整回路(21)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラント。
【請求項4】
前記誘導炉(11)が、複数のコイル(17)と、前記複数のコイル(17)の各々の上流に配置されている複数の対応コンバータ(16)とを備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項5】
前記代替エネルギー源(18)が、水力発電所(25)、風力発電所(26)または太陽光発電所(27)から選択される再生可能エネルギー源を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項6】
前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)と前記誘導炉(11)との間に位置付けられて、前記誘導炉(11)を給電するために使用されないときに、前記代替エネルギー源(18)によって生成される電気エネルギーの蓄積を可能にするように構成される、少なくとも1つの蓄積デバイス(29)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)が、化石燃料を燃焼させることによって電気エネルギーを得るように構成される、非再生可能エネルギー源(30)を備え、前記非再生可能エネルギー源(30)は、ガスタービンまたは補助電流発生器を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項8】
前記管理ユニット(31)が、前記電力網(14)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコストのうちの1以上のパラメータと、前記誘導炉(11)が必要とするエネルギー量とを監視し、少なくとも各作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給するために、前記電力網(14)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)の一方、他方、または両方を選択するように構成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項9】
少なくとも1つの誘導炉(11)と、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給するための手段(12)とを備え、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラント(10)に電気エネルギーを供給する方法であって、
前記電力供給手段(12)は、交流電流電力網(14)に接続されている少なくとも1つの変圧器(13)と、前記変圧器(13)からの出口における交流電流を直流電流に変換するために前記変圧器(13)の下流に配置されている少なくとも1つの整流器(15)と、前記整流器(15)からの出口における直流電流を交流電流に変換するために前記整流器デバイス(15)の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータ(16)と、金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイル(17)とを備え、
前記方法は、前記電力網(14)によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、前記電力網(14)とは異なりかつ独立して前記誘導炉(11)に関連付けられている前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)によって、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給し、1以上のパラメータに応じて、前記電力網(14)および前記代替エネルギー源(18)との間で、一方、他方または両方を選択することを提供する、方法。
【請求項10】
前記電力網(14)および前記代替エネルギー源(18)によって供給されるエネルギーの作動状態、エネルギー利用可能性、およびコストのうちの1以上のパラメータと、前記誘導炉(11)が必要とする電気エネルギーの量とを検出および/または監視し、少なくとも、検出された状態と前記誘導炉(11)が必要とするエネルギーの量との両方または一方に応じて、前記誘導炉(11)に給電するために前記電力網(14)と前記代替エネルギー源(18)との間で、一方、他方、または両方を使用するかどうかを決定することを提供することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントに関する。特に、本プラントは、金属材料の溶解および/または加熱を行う少なくとも1つの誘導炉を備える。
【0002】
本発明は、誘導炉を備える、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントにおいて、電気エネルギーを供給する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
溶解または加熱する金属生成物を導入する誘導炉を備える、金属材料を加熱および/または溶解するためのプラントが知られている。
誘導炉は、電力網からエネルギーを取り出して、それを炉の電気構成要素に送る電力供給手段に関連付けられている。
【0004】
知られているように、誘導炉は、冶金において、電磁誘導の原理に従って金属材料を溶解または加熱するために使用される。誘導加熱は、金属業界で広く利用されており、いくつかの利点、例えば、高速生産速度、高エネルギー効率、必要な場所のみへの局在化された熱を提供する。誘導炉は、低エネルギー消費量または不要な過熱、高いプロセス制御および再現性、仕上げ製品の優れた品質、メンテナンスがほとんど必要ないこと、生産ラインへの統合のしやすさ、裸火および有毒な煙霧がないことによる高い安全性、小型化および自由空間の増大を提供する。
【0005】
誘導炉は、例えば、交流電流電力網に接続されている変圧器と、変圧器からの出口における交流電流を直流電流に整流するために前記変圧器の下流にある整流器と、整流器からの出口における直流電流を交流電流に変換するために整流器の下流に配置されているコンバータと、コイルを通過する金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイルとを備えることができる。
【0006】
コイルまたはスパイラルは、一般に、発生する磁場が、加熱する金属製品に均一に当たるように、加熱される金属材料を通過させるチャンバを取り囲んでいる。
【0007】
例えば、鉄鋼業界において鉄鋼の生産に使用される溶解プラントおよび/または加熱プラントは、プラントおよび使用する誘導炉のサイズの両方または一方によって、高電力供給(通常数十メガワット(MW))を必要とすることも知られている。
【0008】
そのため、十分なエネルギー供給を得るには、溶解プラントおよび加熱プラントの両方または一方が電力網に継続的に接続されている必要がある。さらに、三相交流電流の吸収は、生産量に応じるので、炉によって生産される溶解材料が多くなるほど、購入しなければならない電気エネルギー量も多くなる。
【0009】
従来の解決策の1つの欠点は、公共電力網に常に接続している必要があることである。
別の欠点は、電力網からの電気エネルギーの取得は、特に、ある地理的地域においては高価になる可能性があり、または、重大な社会経済的事象の後に高価になる可能性があり、推定される供給コストも相当増大する可能性があることである。
【0010】
そのため、いくつかの製鉄所は、例えば、電力網によって供給される電気エネルギーのコストが比較的低い期間中に、生産を集中させることを余儀なくされている。
さらに、電力網の停電の可能性がある場合に、プラントと生産とを停止する必要があり、その結果、生産性の損失、ひいては生産バッチの引渡しの遅延が生じる。
【0011】
特許文献1の文書は、溶解炉のための既知の加熱インダクタを説明しており、交流線電流をまず直流電流に整流して、その後、インダクタのコイルに送る交流電流に変換する。電気エネルギーは、従来の電力網によって供給される。
【0012】
特許文献2の文書は、電気エネルギーを蓄積してユーザに供給する装置および方法を説明しており、装置は、電力網と、蓄積ユニットに接続されている再生可能エネルギー供給ユニットとを備える。この解決策の主たる目的は、実際には、電力網の代替として利用するために再生可能エネルギー供給ユニットによって供給される電気エネルギーを蓄積することである。
【0013】
特許文献3は、電力網に接続されている家庭用ユーザデバイス、および再生可能エネルギー源によって供給されるエネルギー蓄積デバイスに電気エネルギーを供給する装置用の制御ユニットを説明しており、制御ユニットは、ユーザデバイスを蓄積デバイスまたは電力網に交互に接続するために、蓄積デバイスの状態を監視する。
【0014】
これら最近の解決策は、特に、家庭用ユーザデバイスについて述べており、工業プラント、特に、非常に高い供給電力、すなわち、数十メガワット程度を要する、金属材料を加熱および/または溶解するためのプラントでの用途には適していない。
【0015】
そのため、現在の技術水準の欠点の少なくとも1つを克服することのできる、誘導炉を備える金属材料を加熱および/または溶解するためのプラントを完全なものにするニーズがある。
【0016】
具体的に、本発明の1つの目的は、エネルギー供給コスト、ひいては生産コスト全体を削減するために、電力網とは少なくとも部分的に独立して作動することのできる、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントを提供することである。
【0017】
1つの目的は、また、最も深刻な場合には数日も続く可能性のある、電力網での停電現象による加工プラントまたは処理プラントの運転停止のリスクを低減させることである。
別の目的は、公共電力網からのエネルギーの使用を削減して、この電力網でもたらされる消費量を低減させることである。
【0018】
別の目的は、電力網からの電気エネルギーの供給を制限することを可能にする、金属材料を加熱および/または溶解するための、誘導炉を備えるプラントに電力を供給する方法を完全なものにすることである。
【0019】
金属材料を加熱および/または溶解するためのプラントを全日および夜間の両方または一方にわたって作動させることも目的である。
本発明によってもたらされる別の便益および利点は、また、公共電力網によるエネルギーの生産が再生可能エネルギー源によって完全には生成されていない場合、CO2排出量を削減することが可能なことである。
【0020】
出願人は、現在の技術水準の欠点を克服し、これらおよびその他の目的および利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具現化した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】中国実用新案第208675572号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3361595号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202008012031号明細書
【発明の概要】
【0022】
本発明は、独立請求項に記載され、特徴を述べられている。従属請求項は、本発明の他の特徴または主な独創的なアイデアの変形を説明している。
上記目的に従い、本発明による金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントは、少なくとも1つの誘導炉と電力供給手段とを備え、電力供給手段は、交流電流電力網に接続されている少なくとも1つの変圧器と、変圧器からの出口における交流電流を直流電流に変換するために変圧器の下流に配置されている少なくとも1つの整流器と、整流器デバイスからの出口における直流電流を交流電流に変換するために整流器の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータと、金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイルとを備える。
【0023】
本発明の一態様によると、電力供給手段は、電力網とは異なりかつ独立して、コンバータの上流で誘導炉に接続され、電力網によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、誘導炉に電気エネルギーを供給するために選択的に利用可能な、少なくとも1つの代替エネルギー源も備える。
【0024】
代替エネルギー源のおかげで、電力網とは独立して、誘導炉に少なくとも部分的に給電し、場合により電力網から溶解プラントおよび/または加熱プラントを少なくとも一時的に切断することを可能にし、またはいずれの場合も、時間に応じて電力網からのエネルギーの供給を削減し、場合により、エネルギーの供給を比較的高価ではない時間帯に制限することが可能である。
【0025】
さらに、代替エネルギー源の存在は、電力網の不具合または停電がある場合であっても溶解プラントおよび/または加熱プラントを利用することを可能にする。
【0026】
代替エネルギー源は、電力網と同時であっても誘導炉に電気エネルギーを供給することができるため、電力供給手段は、そのたびごとに誘導炉に供給される電気エネルギーの調整に高い融通性を得ることを可能にし、給電すべき負荷の需要または変動の両方に応じて電気エネルギーの供給を最適化することを可能にし、さらに、電力網からの引き出しを最小化してコストを最小化するためにもなる。
【0027】
代替エネルギー源は、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングするのに適するとともに、コンバータデバイスへの電力供給の向上された信頼性および質を保証するのに適した、コンバータの上流に接続されている少なくとも1つの直流電流接続システム、例えば、いわゆる「DCリンク」によって誘導炉に接続することができる。
【0028】
誘導炉は、コンバータの下流かつコイルの上流に配置されて、無効電力を低減して、最大限の有効電力をコイルに伝達するように構成される、少なくとも1つの調整回路も備えることができる。
【0029】
また、いくつかの実施形態において、誘導炉は、複数のコイルと、該コイルの各々の上流に配置されている複数の対応コンバータとを備えることができる。
代替エネルギー源は、水力発電所、風力発電所または太陽光発電所から選択される再生可能エネルギー源を備えることができる。
【0030】
本プラントは、少なくとも1つの代替エネルギー源と誘導炉との間に位置付けられて、誘導炉を給電するために使用されないときに、代替エネルギー源によって生成される電気エネルギーの蓄積を可能にするように構成される、少なくとも1つの蓄積デバイスも備えることができる。
【0031】
こうして、蓄積されるエネルギーは、後の時点、例えば代替エネルギー源が利用できないとき、または十分なエネルギーが供給されないときに、使用することができる。
代替エネルギー源は、化石燃料を燃焼させることによって電気エネルギーを得るように構成される、非再生可能エネルギー源を備えることができ、非再生可能エネルギー源は、ガスタービンまたは補助電流発生器を含む群から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態において、本プラントは、1以上の動作パラメータに応じて、電力網と代替エネルギー源との間で、一方、他方または両方を選択するように構成される管理ユニットを備えることもできる。
【0033】
特に、管理ユニットは、電力網および少なくとも1つの代替エネルギー源から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコストのうちの1以上のパラメータと、誘導炉が必要とするエネルギー量とを監視し、少なくとも各作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、誘導炉に電気エネルギーを供給するために、電力網および少なくとも1つの代替エネルギー源の一方、他方、または両方を選択するように構成することができる。
【0034】
1つの利点は、例えば、少なくとも1つの代替エネルギー源からのエネルギーの利用可能性が低くなる場合、または公共電力網に停電が生じる場合でも、高電力負荷の運転を維持することができることである。
【0035】
有利なことに、管理ユニットは、負荷のエネルギー需要を補うために、電力網によって供給されるエネルギーの利用可能性、エネルギーコスト、および少なくとも1つの代替エネルギー源から利用可能なエネルギーとの統合の程度、のうちの1以上のパラメータを検出することができる。
【0036】
このように、それぞれの場合において、最も適切な供給エネルギー源、すなわち、電力網によって供給されるエネルギーか、または少なくとも1つの代替エネルギー源によって供給されるエネルギーかを、エネルギーコストにも基づいて選ぶことが可能である。そのため、これにより、エネルギー不足またはその過剰なコストの場合に、生産の低下または加工プラントの運転停止をしなければならないことが防止される。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも1つの誘導炉と、誘導炉に電気エネルギーを供給するための手段とを備える、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントにおいて、電気エネルギーを供給する方法を含む。方法は、電力網によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、電力網とは異なりかつ独立して誘導炉に関連付けられている少なくとも1つの代替エネルギー源によって、誘導炉に電気エネルギーを供給することに供する。
【0038】
本方法は、電力網および代替エネルギー源によって供給されるエネルギーの作動状態、エネルギー利用可能性、およびコストのうちの1以上のパラメータと、誘導炉が必要とする電気エネルギーの量とを検出および/または監視し、少なくとも、検出された状態と誘導炉が必要とするエネルギーの量との両方または一方に応じて、誘導炉に給電するために電力網と代替エネルギー源との間で、一方、他方、または両方を使用するかどうかを決定することに供することもできる。
【0039】
本発明のこれらおよびその他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して非制限的な例として挙げる以下のいくつかの実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係る、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ここで、本発明の考えられる一実施形態を詳細に述べるが、そのうちの一実施例を添付の図面に示している。この実施例は、本発明の例示として提供しており、本発明の制限と理解してはならない。
【0042】
図1を参照して、金属材料を溶解および/または加熱するための本発明によるプラント10は、少なくとも1つの誘導炉11と、誘導炉11に電気エネルギーを供給するための手段12とを備える。
【0043】
電力供給手段12は、交流電流電力網14に接続されている少なくとも1つの変圧器13と、変圧器13からの出口における交流電流を直流電流に変換するために変圧器13の下流に配置されている少なくとも1つの整流器15と、整流器デバイス15からの出口における直流電流を交流電流に変換するために整流器15の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータ16と、金属材料、例えば、コイル17を通過する金属品を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイル17とを備える。
【0044】
整流器デバイス15とコンバータ16との間には、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングするのに適するとともに、コンバータ16への電力供給の向上された信頼性および質を保証するのに適した、DCリンクとも呼ばれる直流電流接続システム24も存在することができる。
【0045】
電力供給手段12は、電力網14とは異なりかつ独立して、コンバータデバイス16の上流で誘導炉11に接続されて、電力網14によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、誘導炉11に電力エネルギーを供給するように構成される、少なくとも1つの代替エネルギー源18も備える。
【0046】
電力網14は、例えば、高電圧、特に交流電流、所定の電圧値、電流値および電力網周波数値を有する電気エネルギーを供給することができる。
電力網14の下流には、高電圧エネルギーを中電圧エネルギーに変換するように構成される高電圧/中電圧(HV/MV)変圧器32が設けられている。
【0047】
変圧器32の下流には、誘導炉11に給電するのに適した中電圧値に中電圧エネルギーを変換するように構成される、中電圧/中電圧(MV/MV)変圧器とすることのできる変圧器13が設けられている。
【0048】
変圧器13には、星形または三角形に配設されて、整流器デバイス15による整流に関してよりよい結果を出す交流波を得るためにオフセット相を有する、変圧器2次側を設けることができる。
【0049】
整流器デバイス15は、例えば、1対のサイリスタブリッジ19またはダイオードブリッジを備えることができる。
考えられる解決策によると、整流器デバイス15は、ダイオード、SCR(Silicon Controlled Rectifier:シリコン制御整流器)、GTO(Gate Turn‐Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、IGCT(Integrated Gate‐Commutated Thyristor:集積化ゲート転流型サイリスタ)、MCT(Metal-Oxide Semiconductor Controlled Thyristor:金属酸化膜半導体制御サイリスタ)、BJT(Bipolar Junction Transistor:バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal‐Oxide Semiconductor Field‐Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)およびIGBT(Insulated‐Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を含む群から選択されるデバイスを備える。
【0050】
コンバータデバイス16は、例えば、図示されるように、トランジスタ20、例えばIGBTブリッジ、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタを備えるインバータであり得る。考えられる解決策によると、コンバータデバイス16は、例えば、SCR(シリコン制御整流器)、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、IGCT(集積化ゲート転流型サイリスタ)、MCT(金属酸化膜半導体制御サイリスタ)、BJT(バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)およびIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を含む群から選択されるデバイスを備える。
【0051】
コンバータ16の下流かつコイル17の上流には、無効電力を低減して、最大限の有効電力をコイル17に伝達するように構成される調整回路21を設けることができる。調整回路21は、無効電力を低減させることのできる、少なくとも1つのインダクタ22および少なくとも1つのコンデンサ23、またはコンデンサ23のバンクを備えることができる。
【0052】
図1で分かるように、本誘導炉11は複数の誘導コイル17を備えることができ、溶融または加熱を施す金属生成物を加熱するために必要な磁場を発生させるために、その各々に電流を通すことができる。
【0053】
コイル17の各々は、コイル17の上流に配置されている対応するコンバータデバイス16に関連付けることができる。
コンバータデバイス16の各々は、同じ直流電流接続システム24に接続することができる。
【0054】
代替エネルギー源18は、好ましくは、整流器デバイス15の出力とコンバータデバイス16の入力との間に配置されている少なくとも1つの直流電流接続システム24によって、誘導炉11に接続されている。
【0055】
直流電流接続システム24は、述べたように、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングするのに適するとともに、入力時に安定したクリーンな直流電圧を必要とするコンバータデバイス16への電力供給の向上された信頼性および質を保証するのに適した、いわゆる「DCリンク」回路または接続とすることができる。
【0056】
直流電流接続システム24は、直流電気エネルギーを蓄積して、コンバータ16と整流器15との間に、したがってその上流に接続されている電力網14、または代替エネルギー源18との間に、分離を生むように構成することもできる。このように、起こりうる電力変動は、直流電流接続システム24によって部分的にフィルタリングされて、電力網14および/または代替エネルギー源18の側へのその影響を低減させる。
【0057】
代替エネルギー源18は、水力発電所25、風力発電所26または例えば複数の太陽光パネル28が設けられた太陽光発電所27から選択される1以上の再生可能エネルギー源を備えることができる。
【0058】
代替エネルギー源18は、直流電流または交流電流を供給することができ、後者の場合、エネルギー源18はそれ自体のコンバータデバイスまたはその他のものを設けて、誘導炉11に関連付けられている直流電流接続システム24との接続を可能にすることができる。
【0059】
プラント10は、代替エネルギー源18と誘導炉11との間に位置付けられて、誘導炉11に給電するために使用されないときに、代替エネルギー源18によって生成される電気エネルギーの蓄積を可能にするように構成される、蓄積デバイス29を備えることもできる。
【0060】
この場合、誘導炉11には、代替エネルギー源18によって生成される電気エネルギーによって直接的にも、さらに、例えば代替エネルギー源18が利用できないときに、蓄積デバイス29によって間接的にも、給電することができる。
【0061】
蓄積デバイス29は、電力網14に追加して、またはその代替として、使用することができる。
代替エネルギー源18は、化石燃料を燃焼させることによって電気エネルギーを得るように構成される1以上の非再生可能エネルギー源30を備えることができ、非再生可能エネルギー源30は、ガスタービンまたは補助電流発生器を含む群の中で選択される。
【0062】
プラント10は、有利なことに、管理ユニット31を設けることができ、これは、例えば1以上のプロセッサを備えることができる。
管理ユニット31は、1以上のパラメータに応じて、誘導炉11に電気エネルギーを供給するために、電力網14と代替エネルギー源18との間で、一方、他方または両方を選択するように構成される。このように、稼働ニーズとの関連で、また、電気エネルギーのコストとの関連でも、電力網14と代替エネルギー源18との一方または他方、両方によって供給される電気エネルギーを増加または減少させることが可能である。
【0063】
管理ユニット31は、電力網14および少なくとも1つの代替エネルギー源18から利用できる電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコストのうちの少なくとも1つのパラメータを監視するように構成することができる。
【0064】
管理ユニット31は、誘導炉11が必要とするエネルギーの量を監視して、少なくとも各作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、誘導炉11に電気エネルギーを供給するために、電力網14と代替エネルギー源18との間で、一方、他方または両方を選択するように構成することもできる。
【0065】
実質的に、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラント10の誘導炉11において電気エネルギーを供給するための本方法は、電力網14とは異なりかつ独立して誘導炉11に関連付けられている少なくとも1つの代替エネルギー源18によって、電力網14によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、誘導炉11に電気エネルギーを供給することに供する。
【0066】
本方法は、電力網14および代替エネルギー源18によって供給されるエネルギーの作動状態、エネルギー利用可能性、およびコストのうちの1以上のパラメータと、誘導炉11が必要とする電気エネルギーの量とを検出および/または監視し、少なくとも検出された状態および/または誘導炉が必要とするエネルギーの量に応じて、誘導炉11に給電するために電力網14と代替エネルギー源18との間で、一方、他方または両方を使用するかどうかを決定することに供することができる。
【0067】
蓄積デバイス29も存在する場合、電力供給方法は、作動状態、すなわち、その中に存在する充電量を監視して、電力網14および代替エネルギー源18の両方または一方によって供給されるエネルギーに追加して、および/またはその代替として、蓄積デバイス29によって供給されるエネルギーを使用するかどうか、また、該エネルギーをどのように使用するかを決定することに供することもできる。
【0068】
請求項によって定義される本発明の分野および範囲を逸脱することなく、ここまでに説明してきた、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラント10ならびに電気エネルギーを供給する方法に、部品の変更および/または追加を行えることは明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの誘導炉(11)と電力供給手段(12)とを備える、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラントであって、
前記電力供給手段(12)は、交流電流電力網(14)に接続されている少なくとも1つの変圧器(13)と、前記変圧器(13)の下流に配置されている少なくとも1つの整流器(15)と、前記整流器(15)の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータ(16)と、金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイル(17)とを備えるプラント(10)であって、
前記電力供給手段(12)が、前記コンバータ(16)の上流に配置されて、前記電力網(14)によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給することができる、少なくとも1つの代替エネルギー源(18)を備え、
前記プラントが、1以上のパラメータに応じて、前記電力網(14)および前記代替エネルギー源(18)との間で、一方、他方または両方を選択するように構成される管理ユニット(31)を備
え、
前記代替エネルギー源(18)が、前記コンバータ(16)の上流に配置された少なくとも1つの直流電流接続システム(24)によって前記誘導炉(11)に接続され、前記直流電流接続システム(24)が、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングするように構成されるとともに、前記コンバータ(16)への電力供給の向上された信頼性および質を保証するのに適した、DCリンクである、ことを特徴とする、プラント。
【請求項2】
前記誘導炉(11)が、前記コンバータ(16)の下流かつ前記コイル(17)の上流に配置されて、無効電力を低減して、最大限の有効電力を前記コイル(17)に伝達するように構成される、少なくとも1つの調整回路(21)を備えることを特徴とする、請求項
1に記載のプラント。
【請求項3】
前記誘導炉(11)が、複数のコイル(17)と、前記複数のコイル(17)の各々の上流に配置されている複数の対応コンバータ(16)とを備えることを特徴とする、請求項1
または2に記載のプラント。
【請求項4】
前記代替エネルギー源(18)が、水力発電所(25)、風力発電所(26)または太陽光発電所(27)から選択される再生可能エネルギー源を備えることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項5】
前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)と前記誘導炉(11)との間に位置付けられて、前記誘導炉(11)を給電するために使用されないときに、前記代替エネルギー源(18)によって生成される電気エネルギーの蓄積を可能にするように構成される、少なくとも1つの蓄積デバイス(29)を備えることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項6】
前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)が、化石燃料を燃焼させることによって電気エネルギーを得るように構成される、非再生可能エネルギー源(30)を備え、前記非再生可能エネルギー源(30)は、ガスタービンまたは補助電流発生器を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
前記管理ユニット(31)が、前記電力網(14)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコストのうちの1以上のパラメータと、前記誘導炉(11)が必要とするエネルギー量とを監視し、少なくとも各作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給するために、前記電力網(14)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)の一方、他方、または両方を選択するように構成されることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項8】
少なくとも1つの誘導炉(11)と、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給するための手段(12)とを備え、金属材料を溶解および/または加熱するためのプラント(10)に電気エネルギーを供給する方法であって、
前記電力供給手段(12)は、交流電流電力網(14)に接続されている少なくとも1つの変圧器(13)と、前記変圧器(13)からの出口における交流電流を直流電流に変換するために前記変圧器(13)の下流に配置されている少なくとも1つの整流器(15)と、前記整流器(15)からの出口における直流電流を交流電流に変換するために前記整流器デバイス(15)の下流に配置されている少なくとも1つのコンバータ(16)と、金属材料を溶解および/または加熱するための少なくとも1つのコイル(17)とを備え、
前記方法は、前記電力網(14)によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、前記電力網(14)とは異なりかつ独立して前記誘導炉(11)に関連付けられている前記少なくとも1つの代替エネルギー源(18)によって、前記誘導炉(11)に電気エネルギーを供給し、1以上のパラメータに応じて、前記電力網(14)および前記代替エネルギー源(18)との間で、一方、他方または両方を選択することを提供
し、
前記代替エネルギー源(18)は、前記コンバータ(16)の上流に配置された少なくとも1つの直流電流接続システム(24)によって前記誘導炉(11)に接続され、前記直流電流接続システム(24)は、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングするように構成されるとともに、前記コンバータ(16)への電力供給の向上された信頼性および質を保証するのに適した、DCリンクである、方法。
【請求項9】
前記電力網(14)および前記代替エネルギー源(18)によって供給されるエネルギーの作動状態、エネルギー利用可能性、およびコストのうちの1以上のパラメータと、前記誘導炉(11)が必要とする電気エネルギーの量とを検出および/または監視し、少なくとも、検出された状態と前記誘導炉(11)が必要とするエネルギーの量との両方または一方に応じて、前記誘導炉(11)に給電するために前記電力網(14)と前記代替エネルギー源(18)との間で、一方、他方、または両方を使用するかどうかを決定することを提供することを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【国際調査報告】