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2023-531189条件的に活性な抗CD46抗体、抗体断片、それらの免疫コンジュゲート及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】条件的に活性な抗CD46抗体、抗体断片、それらの免疫コンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230713BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 39/44 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230713BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230713BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20230713BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/44
A61K39/395 Y
A61K51/10 100
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K47/65
A61K38/07
A61K31/7034
A61K31/704
A61K31/537
A61K31/5517
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577490
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021037400
(87)【国際公開番号】W WO2021257542
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/040,913
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】520478172
【氏名又は名称】バイオアトラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ショート ジェイ エム
(72)【発明者】
【氏名】フレイ ガーハード
(72)【発明者】
【氏名】チャング フウェイ ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジン
(72)【発明者】
【氏名】シン チャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB24
4C076BB25
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA12
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA23
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA24
4C085AA25
4C085AA26
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086CB22
4C086EA08
4C086EA10
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA50
(57)【要約】
CD46タンパク質に特異的に結合する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を有する単離ポリペプチド、ならびにCD46タンパク質に結合する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む抗体および抗体断片。また、本ポリペプチドと、本ポリペプチドを含む抗体および抗体断片とを含む免疫コンジュゲート、医薬組成物およびキットも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む単離ポリペプチドであって、
軽鎖可変領域は配列L1、L2、およびL3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有し、
L1配列はRAX1QX2IX3NYLN(配列番号1)であり、
L2配列はYTSSLX45 (配列番号2)であり、
L3配列はQQYIKLPWT(配列番号3)であり、および
重鎖可変領域は配列H1、H2、およびH3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有し、
H1配列はGGSVSSYDIS(配列番号8)であり、
H2配列はVIWTDGGTNYNSAFMS(配列番号9)であり、
H3配列はVYDGYPWFAY(配列番号10)であり、
式中、X1がSまたはLであり、X2がGまたはWであり、X3がSまたはAであり、X4がHまたはFであり、X5がSまたはEであり、ただし、X1、X2、X3、X4およびX5は、同時にそれぞれS、G、S、HおよびSであることはできない、ポリペプチド。
【請求項2】
L1配列が、RASQWISNYLN(配列番号12)、RASQGIANYLN(配列番号15)およびRALQGISNYLN(配列番号22)のアミノ酸配列から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
L2配列が、YTSSLFS(配列番号17)およびYTSSLHE(配列番号19)のアミノ酸配列から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
以下の6つのCDRのセットから選択される6つのCDRのセットを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および 配列番号10;
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および 配列番号10;並びに
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【請求項5】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む単離ペプチドであって、各軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、独立して、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択されるアミノ酸配列の対に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有し、および、ヒトCD46タンパク質に特異的に結合する、単離ペプチド。
【請求項6】
配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択される配列の対を有する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む、請求項5に記載の単離ペプチド。
【請求項7】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む単離抗体または抗体断片であって、
軽鎖可変領域は配列L1、L2、およびL3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有し、
L1配列はRAX1QX2IX3NYLN(配列番号1)であり、
L2配列はYTSSLX45 (配列番号2)であり、
L3配列はQQYIKLPWT(配列番号3)であり、および
重鎖可変領域は配列H1、H2、およびH3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有し、
H1配列はGGSVSSYDIS(配列番号8)であり、
H2配列はVIWTDGGTNYNSAFMS(配列番号9)であり、
H3配列はVYDGYPWFAY(配列番号10)であり、
式中、X1がSまたはLであり、X2がGまたはWであり、X3がSまたはAであり、X4がHまたはFであり、X5がSまたはEであり、ただし、X1、X2、X3、X4およびX5は、同時にそれぞれS、G、S、HおよびSであることはできない、単離抗体または抗体断片。
【請求項8】
L1配列が、RASQWISNYLN(配列番号12)、RASQGIANYLN(配列番号15)、およびRALQGISNYLN(配列番号22)のアミノ酸配列から選択される、請求項7に記載の抗体または抗体断片。
【請求項9】
L2配列が、YTSSLFS(配列番号17)およびYTSSLHE(配列番号19)のアミノ酸配列から選択される、請求項7に記載の抗体または抗体断片。
【請求項10】
以下の6つのCDRのセットから選択される6つのCDRのセットを含む、請求項7に記載の抗体または抗体断片。
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;並びに
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【請求項11】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片であって、各軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、独立して、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択されるアミノ酸配列の対に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有し、およびヒトCD46タンパク質に特異的に結合する、抗体または抗体断片。
【請求項12】
配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、並びに配列番号21および13から選択される配列の対を有する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む、請求項7に記載の抗体または抗体断片。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片のいずれかとヒトCD46への結合と競合する、単離抗体または抗体断片。
【請求項14】
抗体または抗体断片が、腫瘍微小環境における条件の値において、非腫瘍微小環境で生じる同条件の異なる値と比較して、CD46タンパク質に対する高い結合活性を有する、請求項7~13の何れか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項15】
条件がpHである、請求項14に記載の抗体または抗体断片。
【請求項16】
前記腫瘍微小環境におけるpHが、5.0~6.8の範囲であり、前記非腫瘍微小環境におけるpHが、7.0~7.6の範囲である、請求項15に記載の抗体または抗体断片。
【請求項17】
少なくとも約1.5:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約50:1、少なくとも約70:1、または少なくとも約100:1の、腫瘍微小環境におけるpHでの前記ヒトCD46タンパク質に対する結合活性と、非腫瘍微小環境における異なるpHでの前記CD46タンパク質に対する結合活性との比を有する、請求項7~16のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項18】
請求項7~17のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片を含む、免疫コンジュゲート。
【請求項19】
前記免疫コンジュゲートが、化学療法剤、放射性原子、細胞分裂阻害剤、および細胞傷害剤から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項18に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項20】
少なくとも2つの前記薬剤を含む、請求項19に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項21】
前記少なくとも1つの薬剤が、放射性剤である、請求項18から20の何れか一項に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項22】
前記放射性剤が、α放出体、β放出体、およびγ放出体から選択される、請求項21に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項23】
前記抗体または抗体断片、および前記少なくとも1つの薬剤が、リンカー分子に共有結合される、請求項18~22のいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項24】
1つの前記少なくとも1つの薬剤が、マイタンシノイド、アウリスタチン、ドラスタチン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、およびアントラサイクリンから選択される、請求項18から23のいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項25】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項7~17のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗体断片、または請求項18~24のいずれか一項に記載の免疫コンジュゲートと、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項26】
張化剤をさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
約135mg、235mg、335mg、435mg、535mg、635mg、735mg、835mg、935mg、1035mg、1135mg、1235mg、または1387mgのポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または免疫コンジュゲートの量を含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の単回投与量。
【請求項28】
135~235mg、235~335mg、335~435mg、435~535mg、535~635mg、635~735mg、735~835mg、835~935mg、935~1035mg、1035~1135mg、1135~1235mgまたは1235~1387mgの範囲のポリペプチド、抗体または抗体断片または免疫コンジュゲートの量を含む、請求項25または26に記載の医薬組成物の単回投与量。
【請求項29】
免疫チェックポイント阻害剤分子をさらに含む、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記免疫チェックポイント阻害剤分子が、免疫チェックポイントに対する抗体または抗体断片である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記免疫チェックポイントが、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、VISTA、BTLA、OX40、CD40、4-1BB、PD-1、PD-L1、GITR、B7-H3、B7-H4、KIR、A2aR、CD27、CD70、DR3、およびICOSから選択される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記免疫チェックポイントが、CTLA4、PD-1、またはPD-L1である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項33】
CTLA4、PD1、PD-L1、AXL、ROR2、CD3、HER2、B7-H3、ROR1、SFRP4、およびWNTタンパク質から選択される抗原に対する抗体または抗体断片をさらに含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
がんを治療する方法であって、がんを有する患者に、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項7~17のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗体断片、請求項18~24のいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、または請求項25~33のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項35】
診断または治療のためのキットであって、前記キットが、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項7~17のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗体断片、または請求項18~24のいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、あるいは請求項25~33のいずれか一項に記載の医薬組成物と、診断または治療のために前記抗体もしくは抗体断片、前記免疫コンジュゲート、および/または前記医薬組成物を使用するための説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年6月18日に出願された米国仮出願第63/040913号の優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に具体的に援用される。
ASCII テキスト配列表の参照による資料の援用
2021年5月25日に作成された「BIAT-1032WO_ST25」という名前のテキストファイルとして本明細書とともに提出された配列表(サイズ13,000バイト)は、その全体が参照により本明細書に援用される。
(技術分野)
本開示は、抗CD46抗体、抗体断片ならびにそのような抗体および抗体断片の免疫コンジュゲートならびに診断および治療方法における抗体、抗体断片および免疫コンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD46は、膜補因子タンパク質またはMCPである。広く発現しているI型膜貫通タンパク質であるが、エキソンの交互スプライシングとグリコシル化の結果、多くのアイソフォームが存在する。近年、Karosiら、Laryngoscope 118:1669-1676(2008年9月)は、14種類のアイソフォームが検出されたことを報告した。mRNAは染色体1q32に位置する単一遺伝子から転写され、広範な代替スプライシングを経て、様々なタンパク質アイソフォームをコードする複数の転写産物が生成される。14個のエキソンのうち、1-6番目のエキソンはすべてのCD46タンパク質アイソフォームに保存されているが、7-9番目のエキソンは可変的に利用されるセリン・スレオニン・プロリン(「STP」)に富む領域をコードしており、タンパク質アイソフォームの超変異性を高めているようである。エキソン11と12はCD46の膜貫通領域をコードし、エキソン13と14はタンパク質の細胞質側末端をコードしている。
【0003】
最も長いmRNA転写物であるバリアントA(NM_002389)は、遺伝子の14個のエキソン全てからの配列を含んでいる。エキソン7、8、9、13の可変スプライシングにより、CD46の14種のアイソフォームの大部分が生成されると考えられている。エキソン8の代替的な挿入または除外により、66kDaと56kDaのタンパク質アイソフォームが主に観察されている。エキソン13の代替挿入/除外は、分子の細胞質側末端のコードされた配列に変化をもたらし、これらの変化は細胞内輸送、安定性、およびタンパク質のシグナル伝達特性に影響を与える可能性が示唆された。
【0004】
Karosi et al.に記載されているとおり、CD46 mRNAアイソフォームDは、CD46遺伝子のエキソン1-6、8-12および14からなり(配列NM_153826に相当、タンパク質NP_722548をコードする)、アイソフォームFはエキソン1-6、9-12および14(配列NM_172353に相当、NP_758863をコードする)、アイソフォームJはエキソン1-6、8、10-12および14(配列NM_172356に相当、NP_758866をコードする)を含む。具体的には、CD46分子は4つのN末端SCR(short consensus repeat)モジュール(「Sushi」ドメイン:4システインで1-3,2-4の連結トポロジー)から構成されている。これらのSCRドメインは、遺伝子の最初の6つのエキソンによってコードされている。SCR2、3、4モジュールはC3b/C4b結合と制御活性を持ち(後述)、SCR1モジュールとSCR4の遠位配列は補体制御機能には必須ではない。エキソン7-9とエキソン10に交互に利用される膜近位細胞外配列は、主にO-結合型糖鎖を介して、高度にグリコシル化されている。
【0005】
本開示の目的のために、用語「CD46」は、文脈上他に指示されない限り、そのスプライスバリアントまたは免疫反応性断片を含む上記の任意のタンパク質、およびそのようなタンパク質、スプライスバリアントまたは断片をコードする任意の核酸配列を意味するとみなされるものとする。
【0006】
CD46には多くの生物学的機能があるとされており、その多くは免疫系の制御に関与している。CD46の主要な免疫調節機能の一つは、高等真核生物の自然免疫応答の一部である補体タンパク質による損傷から宿主細胞を保護するための補体タンパク質の調節である。具体的には、CD46は補体タンパク質C3bおよびC4bの第I因子を介したタンパク質切断のための補因子である。CD46は、C3bを不活性な断片に切断する分子であるC3コンバーターゼを活性化し、不適切な補体活性化から保護することが示されている。(Liszewski and Atkinson Human Genomics, Complement regulator CD46: genetic variants and disease associations (2015)9:7を参照)
【0007】
CD46は、自然免疫における役割に加え、獲得免疫反応も制御している。CD46を介したシグナルは、T細胞の増殖と、抗炎症サイトカインであるIL-10を大量に産生することを特徴とするTr1と呼ばれる特定のクラスの制御性T細胞への分化をもたらす。また、精子はCD46を高レベルで発現していることから、CD46は生殖に関与しており、おそらく精子と卵子の融合に関与していることが示唆されている。CD46は胎盤にも高発現しているようで、母体による免疫拒絶反応から胎児を保護するのに役立っているのかもしない。
【0008】
また、CD46は赤血球を除くほとんどの正常なヒトの細胞に偏在して発現していることが示されている。例えば、CD46は上皮細胞で強く発現し、リンパ球や内皮では中程度の発現、破骨細胞、骨細胞、間質細胞、筋肉細胞など他の細胞では弱い発現であるという報告がある。CD46は広く発現しているため、多くのヒト病原体が、感染の前段階として細胞に結合するための受容体または共受容体として利用する戦略を発展させてきた。これらの病原体には、ヒトヘルペスウイルス6、麻疹ウイルス、アデノウイルスのいくつかの血清型、常在菌のナイセリア科(the Neisseria family)の病原種などが含まれる。ある種のレトロウイルスは、CD46の模倣体を表面に持つことによって、補体媒介免疫から回避すると考えられている(Stoiber et al, Molecular Immunology 2005; Saifuddin et al, J Gen Virol, 1997)。
【0009】
正常細胞での存在に加え、特定の癌ではCD46の発現レベルが増加する可能性がある。例えば、CD46発現の上昇は、乳癌(Thorsteinssonら、APMIS 106:869-78 (1998); Hofmanら、Breast Cancer Res.Treat.32:213-9 (1994)); 結腸/大腸癌(Andrewら、Cancer Res. 50: 5225-30 (1990); Koretzら、Br. J. Cancer 68:926-31 (1993); Juhlら、J. Surg.Oncol.64:222-30 (1997);Bjorgeら、Cancer Immunol.Immunother.42:185-92 (1996)); 肺癌(Varsanoら、Clin.Exp. Immunol.113:173-82 (1998); Varsanoら、Am.J. Respir.Cell.Mol.Bioi.19:522-9 (1998)); 卵巣癌(Bjorgeら、Int.J. Cancer 70: 14-25 (1997));腎臓癌(Blok et al. Lab.Invest.80:335-44 (2000);Gorterら、Lab.Invest.74:1039-49 (1996)); 膵臓癌(Juhlら、J. Surg.Oncol.64:222-30 (1997));および前立腺癌(Jarvis et al. J. Allergy Clin.Immunol 99 (NO. I, PART 2):S215 (1997); Liu, Cancer Res. 60:3429-3434 (2000))に報告されている。 WO 02/18948 および WO 01/88537も参照。
【0010】
本発明は、特にがんの診断および治療のための、治療上および診断上の使用に好適な、低減したまたは最小の副作用を伴う抗CD46抗体または抗体断片を提供することを目的とする。これらの抗CD46抗体または抗体断片のいくつかは、非腫瘍微小環境に存在するCD46に対する結合活性または結合親和性と比較して、腫瘍微小環境におけるCD46に対する高い結合活性または結合親和性を有する場合がある。これらの抗CD46抗体または抗体断片は、典型的には、既知の抗CD46抗体または抗体断片と少なくとも同等の有効性を有する。さらに、本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、正常組織に存在する非腫瘍微小環境においてCD46に対する比較的低い結合活性または結合親和性を有する結果、当該分野で公知のモノクローナル抗CD46抗体と比較して低減した副作用を示す可能性がある。これらの利点は、腫瘍に発現するCD46のより選択的な標的化を提供し、腫瘍微小環境に存在するCD46に対する抗体の選択性の結果として、より高い投与量のこれらの抗CD46抗体または抗体断片の使用を可能にすることができ、それによって、望ましくない副作用が対応して増加することなく、より効果的な治療処置が実現され得る。
【0011】
(発明の概要)
一態様において、本発明は、ヒトCD46に特異的に結合する単離ポリペプチドを提供する。単離ポリペプチドは、配列L1、L2、およびL3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域であって、
L1配列はRAX1QX2IX3NYLN(配列番号1)であり、
L2配列はYTSSLX45 (配列番号2)であり、
L3配列はQQYIKLPWT(配列番号3)である軽鎖可変領域、および
配列H1、H2、およびH3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域であって、
H1配列はGGSVSSYDIS(配列番号8)であり、
H2配列はVIWTDGGTNYNSAFMS(配列番号9)であり、
H3配列はVYDGYPWFAY(配列番号10)である重鎖可変領域
を含み、
式中、X1がSまたはLであり、X2がGまたはWであり、X3がSまたはAであり、X4がHまたはFであり、X5がSまたはEであり、ただし、X1、X2、X3、X4およびX5は、同時にそれぞれS、G、S、HおよびSであることはできない。
【0012】
上記ポリペプチドは、アミノ酸配列RASQGISNYLN(配列番号5)、RASQWISNYLN(配列番号12)、RASQGIANYLN(配列番号15)およびRALQGISNYLN(配列番号22)から選ばれるL1配列を有していてもよい。上記ポリペプチドは、アミノ酸配列YTSSLHS(配列番号6)、YTSSLFS(配列番号17)およびYTSSLHE(配列番号19)から選択されるL2配列を有していてもよい。前述の各実施形態において、L1およびL2配列のうちの1つは、配列番号5の野生型L1配列および配列番号6の野生型L2配列以外でなければならない。
【0013】
一実施形態において、上記ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する6つのCDRのセットを含む:
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【0014】
別の実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、各軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、独立して、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択されるアミノ酸配列の対に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有しており、および前記単離ポリペプチドはヒトCD46タンパク質に特異的に結合する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、配列番号11、13、14、16、18、20および21から選択されるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドに関する。
【0016】
別の実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、および 配列番号21および13から選択される配列の対を有する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、配列L1、L2、およびL3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域であって、
L1配列はRAX1QX2IX3NYLN(配列番号1)であり、
L2配列はYTSSLX45 (配列番号2)であり、
L3配列はQQYIKLPWT(配列番号3)である軽鎖可変領域、および
配列H1、H2、およびH3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域であって、
H1配列はGGSVSSYDIS(配列番号8)であり、
H2配列はVIWTDGGTNYNSAFMS(配列番号9)であり、
H3配列はVYDGYPWFAY(配列番号10)である重鎖可変領域を含み、
式中、X1がSまたはLであり、X2がGまたはWであり、X3がSまたはAであり、X4がHまたはFであり、X5がSまたはEであり、ただし、X1、X2、X3、X4およびX5は、同時にそれぞれS、G、S、HおよびSであることはできない、単離抗体、またはその断片に関する。
【0018】
一実施形態では、上記抗体または抗体断片は、アミノ酸配列RASQGISNYLN(配列番号5)、RASQWISNYLN(配列番号12)、RASQGIANYLN(配列番号15)およびRALQGISNYLN(配列番号22)から選択されるL1配列を有していてもよい。上記抗体または抗体断片は、アミノ酸配列YTSSLHS(配列番号6)、YTSSLFS(配列番号17)およびYTSSLHE(配列番号19)から選択されるL2配列を有していてもよい。抗体または抗体断片の前述の各実施形態において、L1およびL2配列のうちの1つは、配列番号5の野生型L1配列および配列番号6の野生型L2配列以外でなければならない。
【0019】
別の実施形態では、抗体または抗体断片は、以下の6つのCDRのセットから選択される6つのCDRのセットを含んでいてもよい。
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および 配列番号10、または
配列番号15、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【0020】
一実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むことができ、各領域は、独立して、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択されるアミノ酸配列の対に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有しており、および前記抗体または抗体断片はヒトCD46タンパク質に特異的に結合する。
【0021】
一実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択される配列の対を有する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むことができる。
【0022】
一実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、ヒトCD46への結合について、上記の抗体または抗体断片のいずれかと競合する。
【0023】
前述の各実施形態において、抗体または抗体断片は、腫瘍微小環境における条件の値において、非腫瘍微小環境で生じる同条件の異なる値と比較して、CD46タンパク質に対する高い結合活性を有していてもよい。一実施形態では、条件はpHである。
【0024】
一実施形態では、結合活性は、結合親和性によって測定される。前述の各実施形態において、単離ポリペプチド、抗体または抗体断片はpH6.0における抗原結合活性が、親ポリペプチド、親抗体または抗体断片のpH6.0における同じ抗原結合活性と比較して、少なくとも70%であってよく、ポリペプチド、抗体または抗体断片はpH7.4における抗原結合活性が、親ポリペプチド、抗体または抗体断片のpH7.4における同じ抗原結合活性と比較して、50%未満、または40%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満であってもよい。抗原結合活性は、CD46タンパク質との結合であってもよい。
【0025】
前述の各実施形態において、抗原結合活性は、ELISAアッセイにより測定されてもよい。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、上述した本発明の抗体または抗体断片のいずれかを含むイムノコンジュゲートを提供する。免疫コンジュゲートにおいて、抗体または抗体断片は、化学療法剤、放射性原子、細胞分裂阻害剤および細胞傷害剤から選択される薬剤にコンジュゲートされていてもよい。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または免疫コンジュゲートを薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0028】
医薬組成物の単回投与量は、約135mg、235mg、335mg、435mg、535mg、635mg、735mg、835mg、935mg、1035mg、1135mg、1235mg、または1387mgのポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または免疫コンジュゲートの量を含むことができる。
【0029】
医薬組成物の単回投与量は、135~235mg、235~335mg、335~435mg、435~535mg、535~635mg、635~735mg、735~835mg、835~935mg、935~1035mg、1035~1135mg、1135~1235mgまたは1235~1387mgの範囲のポリペプチド、抗体または抗体断片または免疫コンジュゲートの量を含むことができる。
【0030】
医薬組成物の前述の実施形態の各々は、免疫チェックポイント阻害剤分子をさらに含み得る。免疫チェックポイント阻害剤分子は、免疫チェックポイントに対する抗体または抗体断片であり得る。免疫チェックポイントは、LAG3、TIM3、TIGIT、VISTA、BTLA、OX40、CD40、4-1BB、CTLA4、PD-1、PD-L1、GITR、B7-H3、B7-H4、KIR、A2aR、CD27、CD70、DR3、およびICOSから選択され得、または免疫チェックポイントはCTLA4、PD-1またはPD-L1であり得る。
【0031】
医薬組成物の前述の実施形態の各々は、PD1、PD-L1、CTLA4、AXL、ROR2、CD3、HER2、B7-H3、ROR1、SFRP4、およびWNTタンパク質から選択される抗原に対する抗体または抗体断片をさらに含み得る。WNTタンパク質は、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11およびWNT16から選択することができる。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、上記の本発明のポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、免疫コンジュゲートまたは医薬組成物のうちのいずれかを含む、診断または治療のためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、リンカーペイロードに結合した本発明の例示的な条件的に活性な抗CD46抗体(以下、「CAB ADC」)の、pH6.0でのヒトCD46への結合活性を示す。酵素結合免疫吸着法(ELISA)により測定したものである。図1において、BA-133-00-01はリンカーペイロードに結合したベンチマーク(BM)野生型抗体(以下「WT ADC」)である。
【0034】
図2図2は、ELISAで測定した、図1で試験した本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCのpH7.4におけるヒトCD46への結合活性を示す。
【0035】
図3図3は、ELISAで測定した、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCのcyno CD46へのpH6.0での結合活性を示す。
【0036】
図4図4は、ELISAで測定した、図3で試験した本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCのpH7.4におけるcyno CD46への結合活性を示す。
【0037】
図5図5は、ELISAによって測定された、pH滴定下における本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCのヒトCD46に対する結合活性を示す図である。
【0038】
図6図6は、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、ヒトCD46を発現するHEK 293細胞へのpH6.0での結合活性を示す。蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって測定したものである。
【0039】
図7図7は、FACSで測定した、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、ヒトCD46を発現するHEK 293細胞へのpH7.4での結合活性を示す。
【0040】
図8図8は、FACSで測定した、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、CD46を発現するColo205細胞に対するpH6.0での結合活性を示す。
【0041】
図9図9は、FACSで測定した、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、CD46を発現するColo205細胞に対する、pH7.4での結合活性を示す。
【0042】
図10図10は、FACSで測定した、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、cyno CD46を発現するHEK 293細胞へのpH6.0での結合活性を示す。
【0043】
図11図11は、FACSで測定した、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、cyno CD46を発現するHEK 293細胞に対するpH7.4での結合活性を示す。
【0044】
図12図12は、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、ヒトCD46を発現するHEK293細胞に対するpH6.0における細胞殺傷活性を示す。
【0045】
図13図13は、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、ヒトCD46を発現するHEK293細胞に対するpH7.4における細胞殺傷活性を示す。
【0046】
図14図14は、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、CD46を発現するColo205細胞に対するpH6.0における細胞殺傷活性を示す。
【0047】
図15図15は、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCの、CD46を発現するColo205細胞に対するpH7.4における細胞殺傷活性を示す。
【0048】
図16図16は、本発明の例示的な抗CD46 CAB ADCおよびWT ADCによる処置の腫瘍異種移植マウスの腫瘍体積への影響を示す。
【0049】
図17図17に、本発明の代表的な条件的に活性な抗体のタンパク質配列を示す。
【0050】
定義
本明細書において提供される実施例の理解を容易にするため、ある高頻度に使用される用語を本明細書において定義する。
【0051】
測定された量に関連して、本明細書で使用される「約」という用語は、測定を行い、測定の目的および使用される測定装置の精度に見合った測定を行い、取り扱いを行う当業者によって予測されるであろう測定量の通常の変動を指す。別段の指示がない限り、「約」は、提供された値の+/-10%の変動を指す。
【0052】
本明細書で使用される「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の合計の強度を指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含め、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態は、以下に記載されている。
【0053】
本明細書で使用される「親和性成熟(affinity matured)」抗体という用語は、1つ以上の重鎖可変領域または軽鎖可変領域において1つ以上の改変を有する抗体を指し、かかる改変を有しない親抗体と比較して、かかる改変は、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす。
【0054】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、アミノ基(--NH2)およびカルボキシル基(--COOH)を含有する任意の有機化合物を指し、好ましくは、遊離基として、または代替的にペプチド結合の一部として縮合した後のいずれかである。「20個の天然にコードされたポリペプチドを形成するα-アミノ酸」は当該技術分野で理解され、アラニン(alaまたはA)、アルギニン(argまたはR)、アスパラギン(asnまたはN)、アスパラギン酸(aspまたはD)、システイン(cysまたはC)、グルタミン酸(gluまたはE)、グルタミン(ginまたはQ)、グリシン(glyまたはG)、ヒスチジン(hisまたはH)、イソロイシン(ileまたはI)、ロイシン(leuまたはL)、リジン(lysまたはK)、メチオニン(metまたはM)、フェニルアラニン(pheまたはF)、プロリン(proまたはP)、セリン(serまたはS)、スレオニン(thrまたはT)、トリプトファン(tipまたはW)、チロシン(tyrまたはY)、およびバリン(valまたはV)を指す。
【0055】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子、ならびに抗原のエピトープに結合することができる免疫グロブリン分子の断片、例えば、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、およびSCA断片を指す。これらの抗体断片は、その由来である抗体の抗原(例えばポリペプチド抗原)に選択的に結合する能力をいくらか保持しているものであり、当該技術分野において周知の方法を用いて作製することができ(例えば、Harlow and Lane,前掲を参照)、以下のとおり、さらに説明される。 抗体を使用して、免疫親和性クロマトグラフィーによって分取量の抗原を単離することができる。かかる抗体の様々な他の使用は、疾患(例えば、腫瘍形成)の診断および/または病期分類、ならびに疾患(例えば、腫瘍形成、自己免疫疾患、AIDS、心血管疾患、感染症など)を治療するための治療用途のためである。キメラ抗体、ヒト様抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体は、ヒト患者への投与に特に有用である。
【0056】
Fab断片は、抗体分子の一価の抗原結合断片からなり、酵素のパパインで抗体分子全体を消化することによって産生され、無傷の軽鎖および重鎖の一部からなる断片を得ることができる。
【0057】
抗体分子のFab’フラグメントは、全抗体分子をペプシンで処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖と重鎖の一部分とからなる分子を生じさせることによって得ることができる。このように処理した抗体分子1つにつき2つのFab’フラグメントが得られる。
【0058】
抗体の(Fab’)2フラグメントは、続く還元なしに全抗体分子を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる。(Fab’)2フラグメントは、2つのジスルフィド結合によって一体に保持された2つのFab’フラグメントの二量体である。
【0059】
Fv断片は、軽鎖の可変領域と、2つの鎖として発現される重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作断片として定義される。
【0060】
本明細書で使用される「抗体断片」という用語は、無傷の抗体が結合する抗原に結合する無傷抗体の一部を含む無傷の抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「抗CD46抗体」、「CD46抗体」、および「CD46に結合する抗体」という用語は、抗体がCD46を標的とする際に診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でCD46に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗CD46抗体の、関連していない非CD46タンパク質への結合の程度は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)によって測定した場合、CD46タンパク質への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、CD46タンパク質に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗CD46抗体は、異なる種からのCD46の間で保存されているCD46のエピトープ、例えば、CD46の細胞外ドメインに結合する。
【0062】
本明細書で使用される「結合」という用語は、抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に応じた相互作用を有する、抗体の可変領域またはFvと抗原との相互作用を指す。例えば、抗体の可変領域またはFvは、一般的にタンパク質というよりも、特定のタンパク質の構造を認識して、それに結合する。本明細書で使用される場合、「特異的に結合する(specifically binding)」または「特異的に結合する(binding specifically)」という用語は、抗体可変領域またはFvが、他のタンパク質とよりも特定の抗原と、頻繁に、迅速に、長い持続時間、および/または高い親和性で、結合または会合することを意味する。例えば、抗体の可変領域またはFvは、他の抗原に結合するよりも高い親和性で、結合活性(avidity)で、容易に、および/または長い持続時間、その抗原と特異的に結合する。別の例では、抗体の可変領域またはFvは、多反応性の天然抗体によって(すなわち、ヒトで天然に見られる様々な抗原に結合することが知られている天然の抗体によって)一般に認識される関連タンパク質または他の細胞表面タンパク質、あるいは抗原に対する親和性よりも実質的に高い親和性で、細胞表面タンパク質(抗原)に結合する。しかしながら、「特異的に結合する」は、別の抗原の排他的な結合または検出不可能な結合を必ずしも必要とせず、これは、「選択的結合」という用語によって意味される。一例では、抗体の可変領域またはFv(または、他の結合領域)の「特異的結合」は、抗原に結合し、抗体の可変領域またはFvが、100nM以下、例えば50nM以下、例えば、20nM以下、例えば、15nM以下、または10nM以下、または5nM以下、2nM以下、または1nM以下の平衡定数(KD)で抗原に結合することを意味する。
【0063】
本明細書で使用される「がん」および「がん性」という用語は、典型的には、無調節の細胞増殖/増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは説明する。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。かかるがんのより具体的な例としては、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、大腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、白血病および他のリンパ増殖性障害、ならびに様々な種類の頭頸部がんが挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。
【0065】
本明細書で使用される「化学療法剤」という用語は、がんの治療に有用な化学物質を指す。化学療法剤の例としては、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、ウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい);経口α-4インテグリン阻害剤のCDP323;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグリレイト化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標)、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシンおよびアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、アンギジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、およびカルボプラチンなどの白金剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))などのチューブリン重合による微小管の形成を防ぐビンカ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMF(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイン酸などのレチノイド;クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))などのビスホスホネート)、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC-α、Raf、H-Ras、および上皮成長因子受容体(EGF-R)などの異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ、Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤;ピクサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義を参照されたい);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義を参照されたい);ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))などのセリン・スレオニンキナーゼ阻害剤;ロナファルニブ(SCH6636、SARASAR(商標))などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略語)などの上記の2つ以上の組み合わせ;ならびにFOLFOX(5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))による治療レジメンの略語)が挙げられる。
【0066】
本明細書で定義される化学療法剤としては、がんの増殖を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療剤」が挙げられる。それらは、それら自体がホルモンであってもよく、限定されないが、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標)、トリオキシフェン、ケオキシフェン、およびSERM3などの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、を含む混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン;フルベストラント(FASLODEX(登録商標))およびEM800(エストロゲン受容体(ER)の二量体化を遮断し、DNA結合を阻害し、ER代謝回転を増加させ、かつ/またはERレベルを抑制し得る薬剤など)のアゴニスト特性のない純粋な抗エストロゲン;ホルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))などのステロイド性アロマターゼ阻害剤を含むアロマターゼ阻害剤、ならびにアナストラゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアミノグルテチミドなどの非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、ならびにボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、および4(5)-イミダゾールを含む他のアロマターゼ阻害剤;リュープロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプトレリンを含む黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロンなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロールおよびプレマリンなどのエストロゲン、フルオキシメステロンド、全トランスレチオン酸、ならびにフェンレチニドなどのアンドロゲン/レチノイドを含む性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);フルタミド、ニルタミド、およびビカルタミドなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組み合わせ、が含まれる。
【0067】
本明細書で使用される「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りが異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0068】
本明細書で使用される「条件的に活性な抗体」という用語は、非腫瘍微小環境の条件下と比較して、腫瘍微小環境の条件下でより活性である抗CD46抗体を指す。腫瘍微小環境における条件としては、非腫瘍微小環境と比較して、より低いpH、より高い濃度の乳酸およびピルビン酸、低酸素、より低い濃度のグルコース、およびわずかに高い温度が挙げられる。例えば、条件的に活性な抗体は、正常体温では事実上不活性であるが、腫瘍微小環境においてより高い温度で活性である。さらに別の態様では、条件的に活性な抗体は、正常な酸素化された血液中では活性が低いが、腫瘍中に存在する低酸素化の環境下では、より活性が高い。さらに別の態様では、条件的に活性な抗体は、正常生理学的pH7.2~7.8において活性が低いが、腫瘍微小環境に存在する酸性pH5.8~7.0下または6.0~6.8でより活性である。腫瘍微小環境には、当業者に既知の他の条件が存在し、本発明における条件としても使用することができ、その下では、抗CD46抗体がCD46タンパク質に対して異なる結合親和性を有する。
【0069】
本明細書で使用される「細胞分裂阻害剤」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の増殖を停止させる化合物または組成物を指す。したがって、細胞分裂阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく低減するものであり得る。細胞分裂阻害剤のさらなる例としては、G0/G1停止またはM期停止を誘導することによって、細胞周期進行を遮断する薬剤が挙げられる。ヒト化抗Her2抗体であるトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))がG0/G1停止を誘導する細胞分裂阻害剤の一例である。古典的なM期遮断剤としては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤(ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンなど)が挙げられる。G1を停止する特定の薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CなどのDNAアルキル化剤も、S期停止に溢流する。さらなる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled”Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”by Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば13頁、に見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、両方ともイチイ樹に由来する抗がん剤である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセルの半合成類似体(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の構築を促進し、脱重合を妨げることによって微小管を安定化させ、細胞内の有糸分裂の阻害をもたらす。
【0070】
本明細書で使用される「細胞傷害剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは阻止する、かつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤としては、限定されないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体)、化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤)、増殖阻害剤、核酸分解酵素などの酵素およびその断片、抗生物質、細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素などの毒素で、その断片および/またはバリアントを含む、ならびに以下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)の軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと対合し、2つの抗原結合部位を生成するよう強制される。
【0072】
本明細書で使用される「検出可能に標識する」という用語は、物理的または化学的な手段によって、いずれか直接的にまたは間接的に、その検出または測定が、試料中の抗原の存在を示す任意の物質を指す。有用な検出可能標識の代表的な例としては、限定されるものではないが、以下のもの:光吸収、蛍光、反射、光散乱、燐光、または発光特性に基づき直接または間接的に検出可能な分子またはイオン;放射性により検出可能な分子またはイオン;核磁気共鳴または常磁性により検出可能な分子またはイオンが挙げられる。例えば、光吸収性または蛍光に基づいて間接的に検出可能な分子群の中には、適切な基質を、例えば、非光吸収性分子から光吸収性分子に、または非蛍光性分子から蛍光性分子に変換させる様々な酵素が含まれる。
【0073】
本明細書において使用される用語「診断」は、疾患または障害に対する対象の感受性の測定、対象が疾患または障害を現在罹患しているか否かに関する決定、疾患または障害を罹患している対象の予後診断(例えば、前転移または転移癌性状態、癌の病期、または治療法に対する癌の応答性の同定)、および治療方針(例えば、治療法の効果または効力に関する情報を提供するための対象病態のモニタリング)を指す。一部の実施形態では、本発明の診断方法は、早期がんの検出において特に有用である。
【0074】
本明細書で使用される「診断剤」という用語は、直接的または間接的に検出することができ、診断目的で使用される分子を指す。診断剤は、対象または試料に投与されてもよい。診断剤は、それ自体が提供され得るか、または条件的に活性な抗体などのビヒクルにコンジュゲートされ得る。
【0075】
本明細書で使用される「エフェクター機能」という用語は、抗体のアイソタイプによって異なる抗体のFc領域に起因する、それらの生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、およびB細胞活性化が挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」という用語は、所望の治療的または予防的な結果を達成するのに必要な投与量および期間について有効な量を指す。
【0077】
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列のFc領域およびバリアントのFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から重鎖のカルボキシ末端まで伸びる。しかしながら、Fc領域のC末端のリジン(Lys447)は存在してもしなくてもよい。本明細書で特に明記しない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載されているように、EU付番システム(EUインデックスとも呼ばれる)に従っている。
【0078】
本明細書で使用される「フレームワーク」または「FR」という用語は、相補性決定領域(重鎖ではCDRまたはH1~3、軽鎖ではL1~3)の残基以外の可変ドメインの残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、CDR配列およびFR配列は、VH(またはVL)において、一般に、以下の順序で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0079】
「完全長抗体」、「無傷抗体」、または「全抗体」という用語は、抗原結合可変領域(VHまたはVL)、ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む抗体を指す。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、完全長抗体を、異なる「クラス」に割り当てることができる。完全長抗体には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分割され得る。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は、よく知られている。
【0080】
本明細書で使用される「機能保存的バリアント」という用語は、タンパク質または酵素中の所与のアミノ酸残基が、ポリペプチドの全体的な立体構造および機能を改変することなく変更されているものを指し、これには、限定されないが、類似の特性(例えば、極性、水素結合ポテンシャル、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性など)を有するアミノ酸でのアミノ酸置換が含まれる。保存されたアミノ酸として示されたもの以外のアミノ酸は、タンパク質において異なる場合があり、その結果、機能が類似する任意の2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸のパーセント配列類似性が変化する場合あり、例えば、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づくクラスター法などの整列スキームに従って決定された場合、70%~99%であり得る。「機能保存的バリアント」はまた、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定した場合、少なくとも60%のアミノ酸同一性、好ましくは、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも85%、さらに好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%を有するポリペプチドを含み、それが比較される天然タンパク質または親タンパク質と同じまたは実質的に類似の特性または機能を有する。
【0081】
本明細書で使用される「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞(かかる細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、継代回数にかかわらず、初代形質転換細胞およびそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてよく、突然変異を含有し得る。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が本明細書に含まれる。
【0082】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列、またはヒト抗体のレパートリーもしくは他のヒト抗体のコード配列を利用する非ヒト源に由来するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0083】
本明細書で使用される「ヒト化」抗体という用語は、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDRのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体の定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0084】
本明細書で使用される「免疫コンジュゲート」という用語は、限定されないが、細胞傷害剤を含む、1つ以上の異種分子にコンジュゲートされる抗体である。
【0085】
本明細書で使用される「個体」または「対象」という用語は、哺乳動物を指す。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0086】
本明細書で使用される「細胞増殖または増殖の阻害」という用語は、細胞の増殖(growth)または増殖(proliferation)を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%減少させることを意味し、細胞死を誘導することを含む。
【0087】
本明細書で使用される「単離された」抗体という用語は、その天然の環境の成分から分離されたものである。一部の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC))によって決定した場合、95%超または99%超の純度まで精製される。抗体純度の評価方法の概説としては、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B,vol.848,pp.79-87,2007を参照されたい。
【0088】
本明細書で使用される「抗CD46抗体をコードする単離核酸」という用語は、単一のベクターまたは別個のベクターにおけるかかる核酸分子、および宿主細胞内の1つ以上の場所に存在するかかる核酸分子を含む、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指す。
【0089】
本明細書で使用される「転移」という用語は、がん細胞が原発腫瘍から分散し、リンパ管および/または血管に浸透し、血流を通して循環し、体内の他の場所の正常な組織中の遠位の病巣(転移)で増殖することを支持するすべてのCD46が関与するプロセスを指す。特に、転移の基礎をなし、CD46によって刺激または媒介される、増殖、移行、足場非依存性、アポトーシスの回避、または血管新生因子の分泌などの腫瘍細胞の細胞事象を指す。
【0090】
本明細書で使用される「微小環境」という用語は、組織または身体の他の領域とは、不変的または一時的、物理的または化学的な違いを有する組織または身体の任意の部分または領域を意味する。腫瘍の場合、本明細書で使用される「腫瘍微小環境」という用語は、腫瘍が存在する環境を指し、腫瘍内の非細胞領域、および腫瘍組織の直外であるががん細胞自体の細胞内区画には関係しない領域である。腫瘍および腫瘍微小環境は、密接に関連し、常に相互作用する。腫瘍はその微小環境を変化させることができ、微小環境は腫瘍の増殖および拡散に影響を及ぼし得る。典型的には、腫瘍微小環境は、5.0~7.0の範囲内、または5.0~6.8の範囲内、または5.8~6.8の範囲内、または6.2~6.8の範囲内の低いpHを有する。他方で、正常な生理学的pHは、7.2~7.8の範囲である。腫瘍微小環境はまた、血漿と比較して、グルコースおよび他の栄養素の濃度が低いが、乳酸の濃度が高いことも知られている。さらに、腫瘍微小環境は、正常の生理学的温度よりも0.3~1℃高い温度を有し得る。腫瘍微小環境は、Gillies et al.,”MRI of the Tumor Microenvironment,”Journal of Magnetic Resonance Imaging,vol.16,pp.430-450,2002で考察されており、その全体が参照により本明細書に援用される。「非腫瘍微小環境」という用語は、腫瘍以外の部位における微小環境を指す。
【0091】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に存在する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能性のあるバリアント抗体は除外され、かかるバリアントは概して少量存在している。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して特異的な異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して特異的である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技法によって作製することができ、限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含み、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法および他の例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0092】
本明細書で使用される「裸抗体(naked antibody)」という用語は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。裸抗体は、医薬製剤に存在してもよい。
【0093】
本明細書で使用される「添付文書」という用語は、治療製品の市販のパッケージに習慣的に含まれる説明書を指し、かかる治療製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む。
【0094】
本明細書で使用される参照ポリペプチド配列に関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」という用語は、配列を整列させ、必要に応じて最大のパーセント配列同一性を達成するようにギャップを導入し、任意の保存的置換を配列同一性の一部として考慮せず、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列するための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的の場合、アミノ酸配列同一性のパーセント値は、配列比較のコンピュータプログラムであるALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成され、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)にユーザ文書とともに提出されており、米国著作権登録番号TXU510087のもとで登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.から公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用するには、コンパイルする必要がある。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0095】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bと、それとの、またはそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bと、それとの、またはそれに対する、特定のアミノ酸配列同一性%を有する、またはそれを含む所与のアミノ酸配列A、と表現することもできる)は、以下のように計算される:
分数X/Yの100倍
(式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によりAおよびBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一マッチとしてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。 アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが理解されるであろう。特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、前項に記載されているように得られる。
【0096】
本明細書で使用される「医薬製剤」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性を有効にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して許容されない毒性のある追加の成分を含まない製剤を指す。
【0097】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、対象に対して無毒である活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が挙げられる。
【0098】
本明細書で使用される「精製された」および「単離された」という用語は、本発明による抗体またはヌクレオチド配列を指し、示された分子が、同じ種類の他の生体高分子の実質的な不在下で、存在することを指す。本明細書で使用される「精製された」という用語は、好ましくは、同じ種類の生体高分子の少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも85重量%、さらにより好ましくは、95重量%、最も好ましくは、少なくとも98重量%が存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、ポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指すが、分子は、組成物の基本的特徴に有害な影響を与えないいくつかの追加の塩基または部分を含み得る。
【0099】
本明細書で使用される「組換え抗体」という用語は、抗体をコードする核酸を含む組換え宿主細胞によって発現される抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体、またはその抗原結合断片)を指す。組換え抗体を産生するための「宿主細胞」の例としては、(1)哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、COS、骨髄腫細胞(Y0細胞およびNS0細胞を含む)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、Hela細胞およびVero細胞、(2)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21およびTn5、(3)植物細胞、例えば、ニコチアナ属に属する植物(例えば、Nicotiana tabacum);(4)酵母細胞、例えば、サッカロマイセス属(例えば、Saccharomyces cerevisiae)またはアスペルギルス属(例えば、Aspergillus niger)に属するもの、(5)細菌細胞、例えば、Escherichia coli細胞またはBacillus subtilis細胞など、が挙げられる。
【0100】
本明細書で使用される「単鎖Fv」(「scFv」)という用語は、共有結合されたVH::VLヘテロ二量体であり、これは通常、ペプチドでコードされたリンカーによって連結された遺伝子をコードする、VHおよびVLを含む遺伝子融合から発現される。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。二価および多価の抗体断片は、一価scFvの会合によって自発的に形成され得るか、またはペプチドリンカーで一価scFvを結合することによって生成され得る(二価sc(Fv)2など)。
【0101】
用語「治療有効量」の本発明の抗体は、任意の医学的処置に適用可能な合理的なベネフィット・リスク比で、当該がんを治療するのに十分な量の抗体を意味する。しかしながら、本発明の抗体および組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する特定の治療有効用量のレベルは、様々な要因に依存し、治療される障害および障害の重症度、使用される特定の抗体の活性、使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全般的な健康、性別、および食生活、使用される特定の抗体の投与時間、投与経路、および排泄率、治療期間、使用される特定の抗体と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医療分野で既知の同様の要因が含まれるであろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、当該技術分野で既知である。
【0102】
本明細書で使用される「治療」、「治療する」、または「治療すること」という用語は、治療される個体の自然経過を改変する試みにおける臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理の過程でのいずれかで行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患進行速度の低減、疾患状態の寛解または緩和、ならびに寛解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0103】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、悪性または良性にかかわらず、すべての腫瘍細胞増殖および増殖、ならびにすべての前がん性およびがん性細胞および組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるように互いに排他的ではない。
【0104】
本明細書で使用される「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、概して類似の構造を有し、各ドメインが、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)、および3つの相補性決定領域(CDR)を含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい)。 単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合の特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して、特定の抗原に結合する抗体を単離して、それぞれ、相補的なVLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.,vol.150,pp.880-887,1993、Clarkson et al.,Nature,vol.352,pp.624-628,1991を参照されたい。
【0105】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
(発明を実施するための形態)
【0106】
例示的な目的で、本発明の原理が、様々な例示的な実施形態を参照することによって説明される。本発明のある特定の実施形態が本明細書に具体的に説明されるが、当業者は、同じ原理が他のシステムおよび方法に同等に適用可能であり、それに使用され得ることを容易に理解するであろう。本発明の開示される実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、示される任意の特定の実施形態の詳細に限定されないことを理解されたい。加えて、本明細書で使用される専門用語は、説明を目的とし、限定を目的とするものではない。さらに、特定の方法は、特定の順序で本明細書に提示されるステップを参照して説明されるが、多くの場合、これらのステップは、当業者によって理解され得るように任意の順序で実行することができ、したがって、新規の方法は、本明細書に開示されるステップの特定の配置に限定されない。
【0107】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。さらに、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用され得る。「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、および「から構築される(constructed from)」という用語も互換的に使用され得る。
【0108】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、パーセント、比率、反応条件などを表すすべての数は、「約」という用語が存在するか否かにかかわらず、すべての事例において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないと指示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって取得されようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、かつ通常の丸め手法を適用することによって、解釈されるべきである。本開示の広範な範囲を述べた数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例に示された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に起因する特定の誤差を本質的に含んでいる。
【0109】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独での使用、または本明細書に開示される各々の他の成分、化合物、置換基、またはパラメータのうちの1つ以上と組み合わせての使用について開示されているものとして解釈されるべきであることを理解されたい。
【0110】
また、本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータの各量/値または各量/値の範囲は、本明細書に開示される任意の他の成分、化合物、置換基、またはパラメータについて開示される各量/値または各量/値の範囲と組み合わせて開示されているものとして解釈されるべきであり、したがって、本説明の目的のために、本明細書に開示される2つ以上の成分、化合物、置換基、またはパラメータについての量/値または量/値の範囲の任意の組み合わせも、互いに組み合わせて開示されていることを理解されたい。
【0111】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限と組み合わせて開示されるものと解釈されるべきであることがさらに理解される。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と組み合わせることによって導かれる4つの範囲の開示として解釈されるべきである。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限などと組み合わせることによって導かれる9つの範囲の開示として解釈されるべきである。さらに、説明または例で開示される構成要素、化合物、置換基、またはパラメータの特定の量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他箇所で開示される同じ構成要素、化合物、置換基、またはパラメータの範囲の任意の他の下限または上限あるいは特定の量/値と組み合わせて、その構成要素、化合物、置換基、またはパラメータの範囲を形成することができる。
【0112】
抗CD46抗体
本発明の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、各々、米国特許第8,709,755号および第8,859,467号に開示されている方法を使用して、親抗体から得られた。重鎖可変領域および軽鎖可変領域を生成するこの方法、ならびに抗体および抗体断片を生成する方法は、米国特許第8,709,755号および第8,859,467号に開示されており、これによって参照により本明細書に援用される。
【0113】
一態様において、本発明は、ヒトCD46に特異的に結合する単離ポリペプチドを提供する。単離ポリペプチドは、配列L1、L2、およびL3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域であって、
L1配列はRAX1QX2IX3NYLN(配列番号1)であり、
L2配列はYTSSLX45 (配列番号2)であり、
L3配列はQQYIKLPWT (配列番号3)である軽鎖可変領域、および
配列H1、H2、およびH3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域であって、
H1配列はGGSVSSYDIS (配列番号8)であり、
H2配列はVIWTDGGTNYNSAFMS(配列番号9)であり、
H3配列はVYDGYPWFAY(配列番号10)である重鎖可変領域を含み、
式中、X1がSまたはLであり、X2がGまたはWであり、X3がSまたはAであり、X4がHまたはFであり、X5がSまたはEであり、ただし、X1、X2、X3、X4およびX5は、同時にそれぞれS、G、S、HおよびSであることはできない。
【0114】
上記ポリペプチドは、アミノ酸配列RASQGISNYLN(配列番号5)、RASQWISNYLN(配列番号12)、RASQGIANYLN(配列番号15)およびRALQGISNYLN(配列番号22)から選ばれるL1配列を有していてもよい。上記ポリペプチドは、アミノ酸配列YTSSLHS(配列番号6)、YTSSLFS(配列番号17)およびYTSSLHE(配列番号19)から選択されるL2配列を有していてもよい。前述の各実施形態において、L1およびL2配列のうちの1つは、配列番号5の野生型L1配列および配列番号6の野生型L2配列以外でなければならない。
【0115】
一実施形態において、上記ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する6つのCDRのセットを含む:
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および 配列番号10、または
配列番号15、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【0116】
別の実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、各軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、独立して、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択されるアミノ酸配列の対に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有しており、および前記単離ポリペプチドはヒトCD46タンパク質に特異的に結合する。
【0117】
別の実施形態では、本発明は、配列番号11、13、14、16、18、20および21から選択されるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドに関する。
【0118】
別の実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、および 配列番号21および13から選択される配列の対を有する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。
【0119】
別の実施形態では、本発明は、配列L1、L2、およびL3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域であって、
L1配列はRAX1QX2IX3NYLN(配列番号1)であり、
L2配列はYTSSLX45 (配列番号2)であり、
L3配列はQQYIKLPWT (配列番号3)である軽鎖可変領域、および
配列H1、H2、およびH3を有する3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域であって、
H1配列はGGSVSSYDIS (配列番号8)であり、
H2配列はVIWTDGGTNYNSAFMS(配列番号9)であり、
H3配列はVYDGYPWFAY(配列番号10)である重鎖可変領域を含み、
式中、X1がSまたはLであり、X2がGまたはWであり、X3がSまたはAであり、X4がHまたはFであり、X5がSまたはEであり、ただし、X1、X2、X3、X4およびX5は、同時にそれぞれS、G、S、HおよびSであることはできない、単離抗体またはその断片に関する。
【0120】
一実施形態では、上記抗体または抗体断片は、アミノ酸配列RASQGISNYLN(配列番号5)、RASQWISNYLN(配列番号12)、RASQGIANYLN(配列番号15)およびRALQGISNYLN(配列番号22)から選択されるL1配列を有していてもよい。上記抗体または抗体断片は、アミノ酸配列YTSSLHS(配列番号6)、YTSSLFS(配列番号17)およびYTSSLHE(配列番号19)から選択されるL2配列を有していてもよい。抗体または抗体断片の前述の各実施形態において、L1およびL2配列のうちの1つは、配列番号5の野生型L1配列および配列番号6の野生型L2配列以外でなければならない。
【0121】
別の実施形態では、抗体または抗体断片は、以下の6つのCDRのセットから選択される6つのCDRのセットを含んでいてもよい。
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号12、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号15、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および 配列番号10、または
配列番号15、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10、または
配列番号22、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【0122】
一実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むことができ、各領域は、独立して、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または 配列番号21および13から選択されるアミノ酸配列の対に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有しており、および前記抗体または抗体断片はヒトCD46タンパク質に特異的に結合する。
【0123】
一実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、配列番号11および13、配列番号14および13、配列番号16および13、配列番号18および13、配列番号20および13、または配列番号21および13から選択される配列の対を有する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むことができる。
【0124】
一実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、ヒトCD46への結合について、上記の抗体または抗体断片のいずれかと競合する。
【0125】
前述の各実施形態において、抗体または抗体断片は、腫瘍微小環境における条件の値において、非腫瘍微小環境で生じる同条件の異なる値と比較して、CD46タンパク質に対する高い結合活性を有していてもよい。一実施形態では、条件はpHである。一実施形態では、結合活性は、結合親和性によって決定される。
【0126】
前述の各実施形態において、単離ポリペプチド、抗体または抗体断片はpH6.0における抗原結合活性が、親ポリペプチド、親抗体または抗体断片のpH6.0における同じ抗原結合活性と比較して、少なくとも70%であってよく、ポリペプチド、抗体または抗体断片はpH7.4における抗原結合活性が、親ポリペプチド、抗体または抗体断片のpH7.4における同じ抗原結合活性と比較して、50%未満、または40%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満であってもよい。抗原結合活性は、CD46タンパク質との結合であってもよい。
【0127】
前述の各実施形態において、抗原結合活性は、ELISAアッセイにより測定されてもよい。
【0128】
これらの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体および抗体断片は、CD46、特にヒトCD46に特異的に結合することができる。これらの重鎖可変領域のうちの1つと、これらの軽鎖可変領域のうちの1つとの組み合わせを含む抗体または抗体断片は、腫瘍微小環境のpH(例えば、pH6.0~6.8)において、非腫瘍微小環境のpH(例えば、pH7.0~7.6)においてよりも高いCD46に対する結合活性を有することが見出されている。その結果、本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、典型的な正常な(非腫瘍)組織微小環境におけるCD46に対するそれらの結合活性と比較して、腫瘍微小環境におけるCD46に対して、より高い結合活性を有する。
【0129】
したがって、本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、非腫瘍微小環境のような正常な組織におけるCD46に対する結合の低減に起因して、非条件的に活性な抗CD46抗体と比較して、低減した副作用を示すと予想される。また、本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、当該技術分野で既知のモノクローナル抗CD46抗体と同等の有効性を有することが期待される。この特徴の組み合わせは、低減した副作用に起因して、より高い投与量のこれらの抗CD46抗体または抗体断片の使用を可能にし、これがより効果的な治療オプションを提供することができる。
【0130】
他の実施形態では、相補性決定領域の外側の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、この出願で考察される置換、挿入、および欠失の原理に従って変異されて、これらのバリアントを提供することができる。なおさらなる実施形態では、定常領域を修飾して、これらのバリアントを提供することができる。 さらにさらなる実施形態では、相補性決定領域および定常領域の以外の重鎖および軽鎖可変領域の両アミノ酸配列が、これらのバリアントを提供するために修飾されてもよい。
【0131】
これらのバリアントを誘導する際、本明細書に記載のプロセスが案内役となる。重鎖可変領域および軽鎖可変領域のバリアントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾としては、例えば、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または残基への挿入、および/または残基の置換が挙げられる。本発明の抗体または抗体断片は、所望の特性、例えば、ヒトCD46に対する抗原結合性および/または条件付活性を有していれば、欠失、挿入、置換を任意に組み合わせて到達することが可能である。
【0132】
置換、挿入、および欠失バリアント
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体または抗体断片バリアントが提供される。置換変異誘発の目的の部位としては、CDRおよびフレームワーク領域(FR)が挙げられる。保存的置換は、表1に、「保存的置換」の見出しの下で示されている。より実質的な変化は、表1に、「例示的な置換」の見出しの下で提供され、アミノ酸側鎖のクラスに関しては、以下でさらに説明される。アミノ酸置換を目的の抗体または抗体断片に導入することができ、その生成物を、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、または免疫原性の減少についてスクリーニングすることができる。
【0133】
アミノ酸は、一般的な側鎖の特性に従ってグループ化され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0134】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0135】
1つの種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の相補性決定領域の残基を置換することを伴う。一般に、さらなる試験のために選択されて得られるバリアントは、親抗体に対してある生物学的特性の改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の減少)を有し、および/または親抗体のある生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術、例えば、本明細書に記載のものを使用して簡便に生成することができる。簡潔に述べると、1つ以上のCDR残基を突然変異させ、バリアント抗体をファージ上でディスプレイさせ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0136】
例えば、抗体親和性を改善するために、CDRにおいて改変(例えば、置換)を行ってもよい。かかる改変は、CDR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.,vol.207,pp.179-196,2008を参照)、および/またはSDR(a-CDR)において行うことができ、得られたバリアントVHまたはVLを、結合親和性について試験する。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology,vol.178,pp.1-37,2001に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、多様性は、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド特異的変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、ライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、1回当たり4~6個の残基)がランダム化されるCDR特異的なアプローチを伴う。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にCDR-H3およびCDR-L3を標的化することが多い。
【0137】
ある実施形態において、置換、挿入、または欠失は、このような変更が抗原に結合する抗体または抗体断片の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のCDR内で生じてよい。例えば、結合活性または結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)は、CDRにおいて行われ得る。かかる改変は、CDRの「ホットスポット」またはSDRの外側であり得る。上記に提供されるバリアントVHおよびVL配列のある特定の実施形態では、各CDRは、改変されていないか、または1つ、2つまたは3つ以上のアミノ酸置換を含まないかのいずれかである。
【0138】
突然変異誘発のために標的化することができる抗体の残基または領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells,Science,vol.244,pp.1081-1085,1989により記載されるとおり「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基または標的残基の群(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)が特定され、中性または負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置き換えられて、抗体または抗体断片と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。さらなる置換は、最初の置換に対して機能的な感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。代替的または追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造により、抗体または抗体断片と抗原との間の接触点が特定される。かかる接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的とされてもよく、または排除されてもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうかを決定してもよい。
【0139】
アミノ酸配列挿入としては、1残基~100以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲であるアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端またはC末端に、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPT)またはポリペプチドの融合が挙げられる。
【0140】
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列の修飾が企図される。例えば、抗体の結合、活性、親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。非ヒト動物に由来する抗体のVHおよびVL中のCDRのみを、単にヒト抗体のVHおよびVL中のFRに移植することによって、ヒト化抗体が産生される場合、抗原結合活性は、非ヒト動物に由来するもとの抗体の抗原結合活性と比較して、低下することが知られている。CDRのみならずFRにおいても、非ヒト抗体のVHおよびVLのいくつかのアミノ酸残基が、抗原結合活性に直接的または間接的に関連していると考えられる。したがって、これらのアミノ酸残基を、ヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基で置換すると、結合活性が低減するであろう。この問題を解決するためには、ヒトCDRで移植された抗体において、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、抗体への結合に直接関連するアミノ酸残基、またはCDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、または抗体の三次元構造を維持し、抗原への結合に直接関連するアミノ酸残基を特定する試みが必要になる。減少した抗原結合活性は、特定されたアミノ酸を、非ヒト動物由来のもとの抗体のアミノ酸残基で置換することによって、増加させることができる。
【0141】
改変および変化は、本発明の抗体の構造中で、およびそれらをコードするDNA配列中で作製することができ、所望の特徴を有する抗体をコードする機能的分子を依然として得る。
【0142】
アミノ配列の変更を行う際には、アミノ酸の親水性指標を考慮してもよい。タンパク質に相互作用の生物学的機能を付与する際の親水性アミノ酸指標の重要性は、当該技術分野で一般に理解されている。アミノ酸の相対的な親水性の特徴は、得られるタンパク質の二次構造に寄与することが受け入れられており、続いて、タンパク質と、他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義する。各アミノ酸には、それらの疎水性および電荷特徴に基づいて親水性指数が割り当てられており、それらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、スレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)である。
【0143】
本発明のさらなる目的は、本発明の抗体の機能保存的バリアントも包含する。
【0144】
2つのアミノ酸配列は、より短い配列の全長と比べて80%超、好ましくは、85%超、好ましくは、90%超のアミノ酸が同一であり、または約90%超、好ましくは、95%超が類似(機能的に同一)である場合、「実質的に相同」または「実質的に類似」である。好ましくは、類似または相同の配列は、例えば、GCG(Genetics Computer Group,Program Manual for the GCG Package,Version 7,Madison,Wis.)パイルアッププログラム、またはBLAST、FASTAなどの配列比較アルゴリズムのうちのいずれかを使用した整列によって特定される。
【0145】
例えば、あるアミノ酸は、活性の認識可能な損失なしでタンパク質構造中で他のアミノ酸により置換することができる。タンパク質の相互作用キャパシティおよび性質がタンパク質の生物学的機能活性を定めるため、あるアミノ酸置換をタンパク質配列中で、および無論、そのDNAコード配列中で作製することができる一方、それにもかかわらず、同様の特性を有するタンパク質を得る。したがって、本発明の抗体または抗体断片の配列、あるいは当該抗体もしくは抗体断片をコードする対応するDNA配列において、それらの生物学的活性を著しく損なうことなく、様々な変更が行われ得ることが企図される。
【0146】
当該技術分野では、特定のアミノ酸は、類似の親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換されてもよく、依然として同様の生物学的活性を有するタンパク質をもたらし、すなわち、依然として生物学的機能で同等なタンパク質が得られることが知られている。
【0147】
上記概略のとおり、したがって、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。種々の上記の特徴を考慮する例示的な置換は当業者に周知であり、それとしては、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。
【0148】
グリコシル化バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗CD46抗体または抗体断片は、抗体または抗体断片がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が生成または除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって都合よく達成され得る。
【0149】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物は、改変され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、分岐二分岐オリゴ糖を含み、概して、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって結合されている。例えば、Wright et al.TIBTECH,vol.15,pp.26-32,1997を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。一部の実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の改変は、ある改善された特性を有する抗体バリアントを作出するために作製することができる。
【0150】
一実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)結合するフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されているように、MALDI-TOF質量分析によって測定されるように、Asn297に結合したすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計に対して、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の位置約297に位置するアスパラギン残基(Fc領域残基のEu付番)を指すが、Asn297は、抗体におけるわずかな配列のバリエーションのために、位置297の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、位置294~300に位置し得る。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.,vol.336,pp.1239-1249,2004、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.,vol.87,pp.614-622,2004が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.,vol.249,pp.533-545,1986、米国特許公開第US2003/0157108A号、およびWO2004/056312A1(特に実施例11))、ならびにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.,vol.87,pp.614-622,2004;Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,vol.94,pp.680-688,2006、およびWO2003/085107が挙げられる。
【0151】
二分岐オリゴ糖を含む抗体バリアントが、さらに提供され、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖が、GlcNAcによって二分される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、およびUS2005/0123546に記載されている。また、Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。かかる抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、およびWO1999/22764に記載されている。
【0152】
Fc領域バリアント
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書に提供される抗CD46抗体または抗体断片体のFc領域に導入されることによって、Fc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含み得る。
【0153】
ある特定の実施形態では、本発明は、すべてではないが一部のエフェクター機能を有する抗体バリアントが企図され、これにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(ADCCなど)が不要であるかまたは有害である用途の場合、望ましい候補となる。インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害性アッセイを実施して、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能を保持することを確保することができる。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方、単核細胞は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現については、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.,vol.9,pp.457-492,1991の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.83,pp.7059-7063,1986も参照されたい)およびHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.82,pp.1499-1502,1985、米国特許第5,821,337号(Bruggemann et al.,J.Exp.Med.,vol.166,pp.1351-1361,1987も参照されたい)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,Calif.)、およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,Wis.)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.95,pp.652-656,1998に開示されているような動物モデルにおいて評価され得る。C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合できず、したがって、CDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,vol.202,pp.163-171,1996、Cragg,M.S.et al.,Blood,vol.101,pp.1045-1052,2003、およびCragg,M.S,and M.J.Glennie,Blood,vol.103,pp.2738-2743,2004を参照されたい)。また、FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.,vol.18,pp.1759-1769,2006を参照されたい)。
【0154】
低減されたエフェクター機能を有する抗体または抗体断片のバリアントとしては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329のうちの1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体としては、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、および327のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体が挙げられる。
【0155】
FcRへの結合が改善または減少したある種の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312号、およびShieldsら、J. Biol.Chem., vol.9, pp.6591-6604, 2001を参照)。
【0156】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、および/または334における置換(残基のEU付番)を有するFc領域を含む。
【0157】
一部の実施形態において、変更された(すなわち、改善され、または縮小した)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変更、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、およびIdusogie et al.J.Immunol.、vol.164,pp.4178-4184,2000に記載のものが、Fc領域中で作製される。
【0158】
母体IgGの胎児への移行に関与する新生児型Fc受容体(FcRn)(Guyer et al.,J.Immunol.,vol.117,pp.587-593,1976およびKim et al.,J.Immunol.,vol.24,p.249,1994)への結合の改善および半減期の増加を伴う抗体は、US2005/0014934に記載されている。これらの抗体は、それに1つ以上の置換を有するFc領域を含み、Fc領域のFcRnへの結合を改善する。かかるFcバリアントには、Fc領域の残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上において置換を有するバリアントが含まれる(例えば、Fc領域の残基434の置換、米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature,vol.322,pp.738-740,1988、米国特許第5,648,260号、同第5,624,821号、およびWO94/29351も参照されたい。
【0159】
システインエンジニアリング抗体バリアント
ある特定の実施形態では、抗CD46抗体または抗体断片の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン改変抗体、例えば、「thioMAb」、を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、抗体がアクセス可能な部位で、残基の置換が生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が、抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書にさらに記載されるように、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物部分などの他の部分にコンジュゲートして、免疫コンジュゲートが作製され得る。ある特定の実施形態では、以下の残基のうちの任意の1つ以上が、システインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat付番)、重鎖のA118(EU付番)、および重鎖Fc領域の5400(EU付番)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成され得る。
【0160】
抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗CD46抗体または抗体断片は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含むようにさらに修飾され得る。抗体または抗体断片の誘導体化に好適な部分としては、限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ならびにデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水におけるその安定性から、製造上の利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐でも非分岐でもよい。抗体または抗体断片に結合するポリマーの数は異なっていてもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、限定されないが、改良されるべき抗体または抗体断片の特定の特性または機能、誘導体が所定の条件下で療法に使用されるかどうかなどを含む、考慮事項に基づいて決定することができる。
【0161】
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体または抗体断片と非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.102,pp.11600-11605,2005)。放射線は、任意の波長であってもよく、限定されないが、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含む。
【0162】
本発明の抗CD46抗体もしくは抗体断片、またはそれらのバリアントは、腫瘍微小環境における条件下でのCD46への結合活性または結合親和性が、非腫瘍微小環境における条件下よりも高い。一実施形態において、腫瘍微小環境中の条件および非腫瘍微小環境中の条件は、両方のpHである。したがって、本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、pH約5.0~6.8でCD46タンパク質に選択的に結合することができるが、正常非腫瘍微小環境で遭遇するpH約7.2~7.8ではCD46に対する結合活性または結合親和性が低い。実施例3及び6に示すように、抗CD46抗体または抗体断片は、pH6.0において、pH7.4よりもCD46に対する結合活性または結合親和性が高い。
【0163】
特定の実施形態では、本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、腫瘍微小環境における条件下でのCD46との解離定数(Kd)が、約≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、または10-8M~10-13M、または10-9M~10-13M)である。一実施形態では、非腫瘍微小環境における条件での、CD46との抗体または抗体断片のKdと、腫瘍微小環境における同じ条件でのKdとの比は、少なくとも約1.5:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約50:1、少なくとも約70:1、または少なくとも約100:1である。
【0164】
別の実施形態では、非腫瘍微小環境における条件での、CD46との抗体または抗体断片の結合活性と、腫瘍微小環境における同じ条件での結合活性との比は、少なくとも約1.5:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約50:1、少なくとも約70:1、または少なくとも約100:1である。
【0165】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイを使用して、目的の抗体およびその抗原のFabバージョンで行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、Fabを、非標識抗原の滴定系列の存在下で最小濃度の(125I)標識抗原で平衡化し、次いで抗Fab抗体でコーティングされたプレートを用いて、結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)のウシ血清アルブミンで2~5時間室温(およそ23℃)でブロッキングする。非吸着プレート(Nunc#269620)中、100pMまたは26pMの[125I]-抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致している)。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションは、平衡に到達することを確実にするために、より長い時間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、混合物を捕捉プレートに移して、室温でインキュベートする(例えば、1時間)。次いで、溶液を除去し、プレートをPBS中の0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、プレートを、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間カウントする。競合結合アッセイで使用するために、最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を選択する。
【0166】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、固定化抗原CM5チップを用いて、25℃で、約10応答単位(RU)で測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を供給業者の説明書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化させる。抗原を、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングされたタンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応の基をブロックする。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、25℃で、約25μl/分の流量で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBS中に注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合センサグラムおよび解離センサグラムを同時に適合させることによって、単純一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算される。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオンレートが106-1-1を超える場合、オンレートは、PBS(pH7.2)中の20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃における蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nmバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光クエンチ技法を使用して、ストップフローを装備した分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000系SLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定されるように、抗原の濃度を増加させながら、決定することができる。
【0167】
本発明の抗CD46抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る。一実施形態では、抗CD46抗体断片、例えば、抗体断片から形成されるFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはF(ab’)2断片、および多重特異性抗体が用いられる。別の実施形態では、抗体は、完全長抗体、例えば、無傷のIgG抗体、または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。ある抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.、vol.9,pp.129-134,2003参照。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthuen,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.、(Springer-Verlag,New York)、pp.269-315(1994)参照;国際公開第93/16185号パンフレット;および米国特許第5,571,894号明細書および同第5,587,458号明細書も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0168】
本発明のダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。例えば、ダイアボディの例について、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90,pp.6444-6448,1993を参照されたい。また、トリアボディおよびテトラボディの例は、Hudson et al.,Nat.Med.,vol.9,pp.129-134,2003に記載されている。
【0169】
一部の実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体断片を含み、重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部、または抗体の軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,Mass.、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
【0170】
抗体断片は、種々の技術、例として、限定されるものではないが、本明細書に記載のとおりインタクト抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生により作製することができる。
【0171】
一部の実施形態では、本発明の抗CD46抗体は、キメラ抗体であり得る。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.81,pp.6851-6855,(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、抗体のクラスまたはサブクラスが、親抗体のクラスまたはサブクラスと比較して変更された「クラススイッチ(class switched)」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0172】
ある特定の実施形態では、本発明のキメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、かかる非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、CDR(またはその一部)が、非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)が、ヒト抗体配列に由来する。また、ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。一部の実施形態では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0173】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008に概説されており、さらに、例えば、Riechmann et al.,Nature,vol.332,pp.323-329,1988、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.86,pp.10029-10033,1989、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods,vol.36,pp.25-34,2005(SDR(a-CDR)グラフトについて記載)、Padlan,Mol.Immunol.,vol.28,pp.489-498,1991(「再表面形成(resurfacing)」について記載)、Dall’Acqua et al.,Methods,vol.36,pp.43-60,2005(「FRシャフリング」について記載)、ならびにOsbourn et al.,Methods,vol.36,pp.61-68,2005およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,vol.83,pp.252-260,2000(FRシャフリングに対する「誘導選択(guided selection)」アプローチについて記載)に記載されている。
【0174】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、限定されないが、「最良適合(best-fit)」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.,vol.151,p.2296,1993を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.89,p.4285,1992およびPresta et al.J.Immunol.,vol.151,p.2623,1993を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008を参照されたい)、およびFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.,vol.272,pp.10678-10684,1997およびRosok et al.,J.Biol.Chem.,vol.271,pp.22611-22618,1996を参照されたい)が挙げられる。
【0175】
一部の実施形態では、本発明の抗CD46抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある実施形態において、結合特異性のあるものはCD46についてのものであり、他方は別の抗原についてのものである。ある実施形態において、二重特異性抗体は、CD46の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、CD46を発現する細胞に対して細胞毒性剤を局在化させるために使用することもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0176】
多重特異性抗体を作製するための技法としては、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature,vol.305,pp.537-540,1983、WO93/08829、およびTraunecker et al.,EMBO J.vol.10,pp.3655-3659,1991を参照されたい)、および「ノブインホール(knob-in-hole)」工学(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられる。また、多重特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果(electrostatic steering effects)を操作すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al.,Science,vol.229,pp.81-83,1985を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,vol.148,pp.1547-1553,1992を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90,pp.6444-6448,1993を参照されたい)、および一本鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,vol.152,pp.5368-5374,1994を参照されたい)、ならびに三重特異性抗体を調製すること(例えば、Tutt et al.J.Immunol.,vol.147,pp.60-69,1991に記載されている)によっても作製され得る。
【0177】
「オクトパス抗体(Octopus antibody)」を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を有する改変抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0178】
本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、US2016/0017040に詳細に記載されている組換え方法および組成物を使用して産生され得る。
【0179】
本発明の抗CD46抗体または抗体断片の物理的/化学的特性および/または生物学的活性は、当該技術分野で既知の様々なアッセイによって試験および測定され得る。これらのアッセイのいくつかは、米国特許第8,853,369号に記載されている。
【0180】
B. 免疫コンジュゲート
別の態様では、本発明はまた、免疫コンジュゲートを提供し、化学療法剤もしくは化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、および放射性同位体などの1つ以上の細胞傷害剤にコンジュゲートされた抗CD46抗体または抗体断片を含む。
【0181】
一実施形態では、免疫コンジュゲートは、抗体-薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)であり、抗体または抗体断片が1つ以上の薬物にコンジュゲートされ、限定されないが、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、および欧州特許第EP0425235B1号を参照されたい)、モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDFなどのアウリスタチン(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および同第5,780,588号、ならびに同第7,498,298号を参照されたい)、ドラスタチン、カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、および同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.,vol.53,pp.3336-3342,1993、ならびにLode et al.,Cancer Res.,vol.58,pp.2925-2928,1998を参照されたい)、ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.,vol.13,pp.477-523,2006、Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters,vol.16,pp.358-362,2006、Torgov et al.,Bioconj.Chem.,vol.16,pp.717-721,2005、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.97,pp.829-834,2000、Dubowchik et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters,vol.12,vol.1529-1532,2002、King et al.,J.Med.Chem.,vol.45,pp.4336-4343,2002、および米国特許第6,630,579号を参照されたい)、メトトレキサート、ビンデシン、タキサン(ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなど)、トリコテセン、ならびにCC1065が挙げられる。
【0182】
別の実施形態では、免疫コンジュゲートは、酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体または抗体断片を含み、限定されないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、エクソトキシンA鎖(緑膿菌Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。
【0183】
別の実施形態では、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体または抗体断片を含み、放射性コンジュゲートを形成する。放射性コンジュゲートの産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、またはヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、および鉄などの核磁気共鳴(NMR)画像法のためのスピンラベル(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)を含んでもよい。
【0184】
一部の実施形態では、免疫コンジュゲートは、α放出体、β放出体、およびγ放出体から選択され得る放射性剤を含む。α放出体の例は、211At、210Bi、212Bi、211Bi、223Ra、224Ra、225Ac、および227Thである。β放出体の例は、67Cu、90Y、131I、153Sm、166Ho、および186Reである。γ放出体の例は、60Co、137Ce、55Fe、54Mg、203Hg、および133Baである。
【0185】
抗体/抗体断片と細胞傷害剤とのコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science,vol.238,pp.1098-,1987に記載されているように調製され得る。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内の細胞傷害剤の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.,vol.52,pp.127-131,1992、米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0186】
本明細書に含まれるイムノコンジュゲートは、以下を明示的に企図するものであるが、これに限定されるものでないが、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Ill.,U.S.Aから)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SLAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋試薬で調製された免疫コンジュゲートが挙げられる。
【0187】
ADCの例示的な実施形態は、腫瘍細胞を標的とする抗体または抗体断片(Ab)、薬物部分(D)、およびAbをDに結合するリンカー部分(L)を含む。 一部の実施形態では、抗体は、リジンおよび/またはシステインなどの1つ以上のアミノ酸残基を介して、リンカー部分(L)に結合される。
【0188】
例示的なADCは、Ab-(L-D)pとしての式Iを有し、式中、pは、1~約20である。一部の実施形態では、抗体にコンジュゲートされ得る薬物部分の数は、遊離システイン残基の数によって制限される。一部の実施形態では、遊離システイン残基は、本明細書に記載の方法によって抗体アミノ酸配列に導入される。式Iの例示的なADCとしては、限定されないが、1、2、3、または4個の改変システインアミノ酸を有する抗体が挙げられる(Lyon et al.,Methods in Enzym.,vol.502,pp.123-138,2012)。一部の実施形態では、1つ以上の遊離システイン残基が既に改変を使用せずに抗体中に存在し、その場合、既存の遊離システイン残基を使用して抗体を薬物にコンジュゲートすることができる。一部の実施形態において、抗体は、1つ以上の遊離システイン残基を生成するために抗体のコンジュゲーション前に還元条件に曝露される。
【0189】
リンカーを使用して、部分を抗体にコンジュゲートして、ADCなどの免疫コンジュゲートを形成する。好適なリンカーは、WO2017/180842に記載されている。
【0190】
抗体にコンジュゲートされ得るいくつかの薬物部分は、WO2017/180842に記載されている。
【0191】
薬物部分には、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ)も含まれる。
【0192】
ある特定の実施形態では、免疫コンジュゲートは、高放射性原子を含んでもよい。種々の放射性同位体が放射性コンジュゲート抗体の産生に利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体が挙げられる。一部の実施形態において、免疫コンジュゲートを検出に使用する場合、それは、シンチグラフィー試験のための放射性原子、例えば、Tc99もしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング(MRI)としても公知)用のスピン標識、例えば、ジルコニウム-89、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含み得る。ジルコニウム-89は、様々な金属キレート剤に複合体化され、例えば、PET画像撮影のために抗体にコンジュゲートされてもよい(WO2011/056983)。
【0193】
放射標識または他の標識は、既知の方法で免疫コンジュゲートに組み込んでもよい。例えば、ペプチドは、例えば、1つ以上の水素の代わりに1つ以上のフッ素-19原子を含む好適なアミノ酸前駆体を使用して生合成または化学合成され得る。一部の実施形態では、Tc99、I123、Re186、Re188、およびIn111などの標識は、抗体中のシステイン残基を介して結合され得る。一部の実施形態では、イットリウム-90は、抗体のリジン残基を介して結合され得る。一部の実施形態では、IODOGEN法(Fraker et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,vol.80,pp.49-57,1978)を使用して、ヨウ素-123を組み込むことができる。“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”(Chatal,CRC Press 1989)は、特定の他の方法を記載している。
【0194】
ある特定の実施形態では、免疫コンジュゲートは、プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートされた抗体を含んでいてもよい。一部のかかる実施形態では、プロドラッグ活性化酵素は、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照されたい)を、抗がん剤などの活性薬物に変換する。かかる免疫コンジュゲートは、一部の実施形態では、抗体依存性酵素媒介プロドラッグ療法(「アデプト」)において有用である。抗体にコンジュゲートされ得る酵素としては、限定されないが、リン酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ、硫酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ、無毒な5-フルオロシトシンを抗がん薬の5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ、セラチアプロテアーゼ、熱分解、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(カテプシンBおよびLなど)などのペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なプロテアーゼ、D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼなど、それぞれ、グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用な炭水化物切断酵素、β-ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なβ-ラクタマーゼ、ペニシリンVアミダーゼおよびペニシリンGアミダーゼなどのそれぞれフェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基を持つアミン窒素で誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なペニシリンアミダーゼ、が挙げられる。一部の実施形態では、酵素は、当該技術分野で周知の組換えDNA技法によって、抗体に共有結合され得る。例えば、Neuberger et al.,Nature,vol.312,pp.604-608,1984を参照されたい。
【0195】
コンジュゲートにおける薬物負荷は、抗体当たりの薬物部分の平均数であるpによって表される。薬物負荷は、抗体当たり1~20の薬物部分の範囲であり得る。本発明のコンジュゲートは、1~20の薬物部分の範囲を有し得る。コンジュゲーション反応からのコンジュゲートの調製に使用する抗体当たりの薬物部分の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、およびHPLCなどの従来の手段によって特徴付けることができる。
【0196】
いくつかの抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の場合、薬物負荷は、抗体上の結合部位の数によって制限され得る。例えば、上記の特定の例示的な実施形態のように、結合がシステインチオールである場合、抗体は、1つまたはいくつかのシステインチオール基のみを有してもよく、またはリンカーが結合され得る1つまたはいくつかの十分に反応性のあるチオール基のみを有してもよい。ある特定の実施形態では、より高い薬物負荷、例えば、p>5では、特定の抗体-薬物コンジュゲートの凝集、不溶性、毒性、または細胞透過性の喪失を引き起こし得る。ある特定の実施形態では、ADCの平均薬物負荷は、1~約8、約2~約6、または約3~約5の範囲である。実際、特定のADCの場合、抗体当たりの薬物部分の最適比は、8未満であってもよく、約2~約5であってもよいことが示されている(米国特許第7,498,298号)。
【0197】
ある実施形態において、理論上の最大数よりも少ない薬物部分を、コンジュゲーション反応の間に抗体にコンジュゲートさせる。抗体は、例えば、以下に考察されるように、薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応しないリジン残基を含有し得る。一般に、抗体は、薬物部分に連結され得る多くの遊離および反応性システインチオール基を含有しない。実際、抗体中のほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある特定の実施形態では、抗体は、ジチオスレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元されて、部分的または全体的な還元条件下で、反応性のシステインチオール基を生成し得る。ある特定の実施形態では、抗体は、リジンまたはシステインなどの反応性求核基を明らかにするために変性条件に供される。
【0198】
ADCの負荷(薬物/抗体比)は、異なる方法で、例えば、(i)抗体に対する薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲーションの反応時間または温度を制限すること、および(iii)システインチオール修飾の部分的または限定的な還元条件によって調節され得る。
【0199】
C.診断および検出のための方法および組成物
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗CD46抗体または抗体断片のいずれかは、定量的または定性的のいずれかで、生体試料中のCD46の存在を検出するために使用され得る。ある特定の実施形態では、生体試料は、乳房、膵臓、食道、肺および/または脳の細胞または組織などの細胞または組織を含む。
【0200】
本発明のさらなる態様は、CD46発現レベルが身体内の少なくとも1つの位置で正常な生理学的レベルから増加または減少するがんまたは別の疾患を診断および/またはモニタリングするための、本発明の抗CD46抗体または抗体断片に関する。
【0201】
好ましい実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、検出可能な分子または物質、例えば、上記の蛍光分子、放射性分子または当分野において公知の任意の他の標識により標識することができる。例えば、本発明の抗体または抗体断片は、放射性分子で標識され得る。例えば、好適な放射性分子としては、限定されないが、123I、124I、111In、186Re、および188Reなどのシンチグラフィー研究に使用される放射性原子が挙げられる。また、本発明の抗体または抗体断片は、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-I11、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄などの核磁気共鳴(NMR)イメージングのためのスピン標識でも標識され得る。抗体の投与後、患者内の放射標識抗体の分布が検出される。任意の好適な既知の方法を使用することができる。一部の非限定的な例としては、コンピュータ断層撮影(CT)、ポジトロン放射断層撮影(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光、化学発光、および超音波撮影が挙げられる。
【0202】
本発明の抗体または抗体断片は、CD46過剰発現に関連する癌および疾患の診断および病期分類に有用であり得る。CD46過剰発現に関連する癌としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、膠芽腫や神経線維腫症などのグリア細胞腫瘍、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、ヘパトーマ(肝細胞癌)、乳癌、結腸癌、メラノーマ、大腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肉腫、血液がん(白血病)、星細胞腫、および各種頭頸部癌等、またはCD46発現または過剰発現の過剰増殖性疾患を含み得る。
【0203】
本発明の抗体または抗体断片は、CD46発現が増加または減少する癌以外の疾患の診断に有用であり得る。 (可溶性または細胞CD46形態の両方をそのような診断に使用することができる。典型的には、かかる診断方法は、患者から得られた生体試料の使用を伴う。生体試料は、診断またはモニタリングアッセイに使用され得る対象から得られた様々な試料の種類を包含する。生体試料としては、限定されないが、生物起源の血液および他の液体試料、生検標本またはそれに由来する組織培養物もしくは細胞などの固体組織試料、ならびにその子孫が挙げられる。例えば、生物学的試料としては、CD46過剰発現に関連する癌、および好ましい実施形態において、神経膠腫、胃癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌および子宮内膜癌を有すると疑われる個体から回収される組織試料から得られる細胞が挙げられる。生体試料は、臨床試料、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液、および組織試料を包含する。
【0204】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の抗体を使用して対象からの細胞上のCD46を検出することにより対象におけるCD46過剰発現に関連する癌を診断する方法である。特に、前記方法は、
1) 対象の生物学的試料を、本発明による抗体または抗体断片と、抗体または抗体断片がCD46を発現する生物学的試料の細胞との複合体を形成するのに好適な条件下で接触させるステップ;ならびに
(b) 前記複合体を検出および/または定量するステップ(前記複合体の検出は、CD46過剰発現に関連する癌を示す)を含み得る。
【0205】
癌の進行をモニタリングするため、方法による方法を異なる時点において繰り返して試料への抗体結合が増加または減少するか否かを決定することができ、それから、癌が進行、退縮または安定しているか否かを決定することができる。
【0206】
特定の実施形態において、本発明は、CD46の発現または過剰発現に関連する疾患を診断する方法を提供する。 このような疾患の例としては、がん、ヒト免疫障害、血栓疾患(血栓症およびアテローム血栓症)、および心血管疾患を挙げることができる。
【0207】
一実施形態では、診断または検出の方法に使用するための抗CD46抗体または抗体断片が提供される。さらなる態様において、生体試料中のCD46の存在を検出する方法が提供される。さらなる態様において、生物学的試料中のCD46の量を定量する方法が提供される。ある実施形態において、本方法は、生物学的試料を、本明細書に記載の抗CD46抗体または抗体断片と、CD46への抗CD46抗体または抗体断片の結合を許容する条件下で接触させること、および抗CD46抗体または抗体断片とCD46との間で複合体が形成されるか否かを検出することを含む。かかる方法は、インビトロまたはインビボで実施してもよい。一実施形態において、抗CD46抗体または抗体断片は、治療法に適格の対象を選択するために使用される。 一部の実施形態では、治療は、抗CD46抗体または抗体断片を対象に投与することを含む。
【0208】
ある実施形態において、標識抗CD46抗体または抗体断片が提供される。標識としては、限定されないが、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色標識、電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)、ならびに、間接的に(例えば、酵素反応または分子相互作用によって)検出される酵素またはリガンドなどの部分が挙げられる。例示的な標識としては、限定されないが、放射性同位体(32P、14C、125I、3H、および131I)、またはフルオロフォア(希土類キレート、またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなど)、ルセリフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号))、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ならびにグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼなど)、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化するカップリングされた酵素(例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼ)、ビオチン/アビジン、バクテリファージ標識、安定なフリーラジカルなどが挙げられる。
【0209】
D.医薬製剤
抗CD46抗体または抗体断片は、細胞殺傷活性を有する。 この細胞殺傷活性は、複数の異なる細胞株のタイプに及ぶ。さらに、これらの抗原または抗体断片は、細胞傷害剤にコンジュゲートされると腫瘍サイズを低減させ得、低減した毒性を示し得る。したがって、抗CD46抗体、その断片または免疫コンジュゲートは、CD46発現に関連する増殖性疾患の治療に有用であり得る。抗体、断片、または免疫コンジュゲートは、単独で、または任意の好適な薬剤もしくは他の従来の治療と組み合わせて使用することができる。
【0210】
抗CD46抗体または抗体断片を使用して、CD46の発現、過剰発現、または活性化に関連する疾患を治療することができる。CD46発現の要件以外で治療することができる癌または組織の種類には、特に制限はない。 例えば、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、膠芽腫や神経線維腫症などのグリア細胞腫瘍、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、ヘパトーマ(肝細胞癌)、乳癌、結腸癌、メラノーマ、大腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肉腫、血液がん(白血病)、星細胞腫、および各種頭頸部癌等を含む。より好ましい癌は、膠芽細胞腫、胃癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌および子宮内膜癌である。
【0211】
抗CD46抗体または抗体断片は自然免疫応答の強力な活性化因子であり、したがって、ヒト免疫障害、例えば、敗血症の治療において使用することができる。 本発明の抗CD46抗体または抗体断片は、免疫化、例えば、ワクチンのためのアジュバントとして、ならびに例えば、細菌、ウイルスおよび寄生虫に対する抗感染剤として使用することもできる。
【0212】
抗CD46抗体または抗体断片は、血栓疾患、例えば、静脈および動脈血栓症ならびにアテローム血栓症から保護し、それを予防し、または治療するために使用することができる。抗CD46抗体または抗体断片は、心血管疾患から保護し、それを予防し、または治療するため、ならびにウイルス、例えば、ラッサおよびエボラウイルスの侵入を予防し、または阻害するため、ならびにウイルス感染を治療するために使用することもできる。
【0213】
本明細書に記載の治療方法の実施形態の各々において、抗CD46抗体、抗体断片、または抗CD46抗体もしくは抗体断片の免疫コンジュゲートは、治療が求められる疾患または障害の管理に関連する従来の方法と一致する様式で送達され得る。本明細書の開示に従い、有効量の抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートは、かかる治療を必要とする対象に、疾患または障害を予防または治療するのに十分な時間および条件下で、投与される。したがって、本発明の一態様は、CD46の発現に関連する疾患の治療が必要とされる対象に治療的有効量の本発明の抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートを投与することを含む、CD46の発現に関連する疾患を治療する方法に関する。
【0214】
投与の場合、抗CD46抗体、抗体断片、または免疫コンジュゲートは、医薬組成物として製剤化され得る。抗CD46抗体、抗体断片、または免疫コンジュゲートを含む医薬組成物は、医薬組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化することができる。 かかる方法では、治療分子は、典型的には、薬学的に許容される担体を含有する混合物、溶液、または組成物と組み合わせられる。
【0215】
薬学的に許容される担体は、レシピエント患者によって許容され得る物質である。滅菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の好適な薬学的に許容される担体は、当業者によく知られている(例えば、Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,19th ed.1995)を参照されたい)。製剤は、1つ以上の賦形剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防止するアルブミンなどをさらに含んでもよい。
【0216】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量、およびレジメンは、治療される状態、病気の重症度、患者の年齢、体重、および性別などに当然依存する。 これらの検討事項は、当業者が考慮して好適な医薬組成物を配合することができる。 本発明の医薬組成物は、局所投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、または眼内投与などのために製剤化することができる。
【0217】
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤のために、薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特定の等張無菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなどまたはそのような塩の混合物)、または例えば、無菌水もしくは生理食塩水の添加時に注射液の構成を可能とする乾燥、特に凍結乾燥組成物中で存在し得る。
【0218】
一部の実施形態では、時に「安定剤」としても知られる張化剤は、組成物中の液体の張性を調整または維持するために存在する。タンパク質および抗体などの大きな荷電性の生体分子とともに使用される場合、それらは、「安定剤」と称されることが多く、なぜなら、それらがアミノ酸側鎖の荷電基と相互作用することで、分子間相互作用および分子内相互作用の可能性を低下させることができるためである。張化剤は、医薬組成物の0.1~25重量%、好ましくは1~5重量%の任意の量で存在し得る。好ましい張化剤としては、多価糖アルコール、好ましくはグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどの三価以上の糖アルコールが挙げられる。
【0219】
さらなる賦形剤としては、以下のうちの1つ以上として機能し得る薬剤が挙げられる:(1)増量剤、(2)溶解促進剤、(3)安定剤、および(4)ならびに変性または容器壁への付着を防止する薬剤。かかる賦形剤としては、多価糖アルコール(上に列挙)、アミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン)、有機糖または糖アルコール(例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール)、硫黄含有還元剤(例えば、ウレア、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム)、低分子量タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース)、二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース)、三糖(例えば、ラフィノース)ならびに多糖(例えば、デキストリンまたはデキストラン)が挙げられ得る。
【0220】
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を助けるとともに、撹拌で誘導される凝集から治療タンパク質を保護するために使用することができ、これはまた、活性の治療タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく、製剤が剪断表面の負荷に曝露されることを可能にする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの濃度範囲で存在してもよい。
【0221】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用可能な陰イオン性洗剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、およびスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。陽イオン性洗剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0222】
投与に使用される用量は、種々のパラメータに応じて、特に、使用される投与方式、関連病変、または代替的に所望の治療期間に応じて適合させることができる。医薬組成物を調製するために、有効量の抗体または抗体断片を、薬学的に許容される担体または水性培地中に溶解または分散させることができる。
【0223】
注射用に好適な剤形には、滅菌水溶液または分散液、ゴマ油、ピーナッツ油またはプロピレングリコール水溶液を含む製剤、および無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末が含まれる。すべての場合で、形態は無菌でなければならず、容易に注射できる程度の流体である必要がある。製造および保存の条件下で安定でなければならず、また、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護される必要がある。
【0224】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性な化合物の溶液は、界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製することもできる。通常の保存および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。
【0225】
抗CD46抗体または抗体断片は、中性または塩形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が挙げられ、無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸など)、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。また、遊離カルボキシル基で形成される塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など)、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来し得る。
【0226】
担体はまた、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌剤によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的な吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0227】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、上に列挙されたもの以外の成分を1つ以上含む適切な溶媒に、必要量の活性化合物を組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、滅菌ビヒクルに様々な滅菌活性成分を組み込むことによって調製され、基本の分散媒と、上に列挙されたものから必要とされる他の成分と、を含有する。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技法であり、予め濾過滅菌されたその溶液から、活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末を得る。
【0228】
また、直接注射のために、より多くの溶液、またはより高い濃度の溶液の調製も企図され、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を使用することで、非常に迅速な浸透がもたらされ、小さな腫瘍領域に高濃度の活性剤が送達されることが想定される。
【0229】
製剤化の際、溶液は、投薬製剤と適合性のある様式で、かつ治療的に有効な量で投与される。製剤は、上に記載の注射用溶液の種類などの様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。
【0230】
水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて、溶液を好適に緩衝し、液体希釈剤を最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にする必要がある。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に好適である。これに関連して、用いることができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知である。例えば、1投与量を1mlの等張NaCl溶液中で溶解させることができ、1000mlの皮下点滴療法用液体に添加し、または提案される注入部位に注射することができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580参照)。投与量のいくらかの変動が、治療される対象の病態に応じて必然的に生じる。投与の責任者は、いずれにしても、個々の対象に適切な用量を決定する。
【0231】
抗体または抗体断片は、治療混合物内に1用量あたり0.0001~10.0ミリグラム、または約0.001~5ミリグラム、または約0.001~1ミリグラム、または約0.001~0.1ミリグラム、または約0.1~1.0またはさらには約10ミリグラムを送達するように配合することができる。複数回用量を選択される時間間隔において投与することもできる。
【0232】
静脈内注射または筋肉内注射などの非経口投与のために製剤化された化合物に加えて、他の薬学的に許容される剤形としては、例えば、経口投与のための錠剤または他の固形物、徐放カプセル、ならびに現在使用されている任意の他の剤形が挙げられる。
【0233】
ある特定の実施形態では、抗体または抗体断片を宿主細胞に導入するために、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が企図される。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者に既知である。
【0234】
ナノカプセルは、概して、安定した再現性のある方法で、化合物を捕捉することができる。細胞内ポリマーの過負荷による副作用を回避するために、このような超微細粒子(0.1μm前後のサイズ)は、一般に、インビボで分解され得るポリマーを使用して設計される。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が本発明における使用のために企図され、このような粒子は容易に作製することができる。
【0235】
リポソームは、水性媒体中に分散しており、多層同心円状二重層小胞(多層状小胞(multilamellar vesicle、MLV)とも称される)を自発的に形成するリン脂質から形成される。MLVは、一般に25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、コア内に水溶液を含有する、直径が200~500Åの範囲の小さな単層小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0236】
本明細書に記載の抗CD46抗体または抗体断片を含有する医薬製剤は、所望の純度の程度を有するそのような抗体または抗体断片を1つ以上の任意選択の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。薬学的に許容される担体は、一般に、使用される投与量および濃度においてレシピエントに無毒であり、限定されないが、緩衝剤(リン酸、クエン酸、および他の有機酸など)、酸化防止剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムなど)、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベンまたはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール)、低分子量ポリペプチド(約10残基未満)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなど)、単糖、二糖、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖類(スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体)、ならびに/または非イオン性界面活性剤(ポリエチレングリコール(PEG)など)が挙げられる。
【0237】
本明細書における例示的な薬学的に許容可能な担体としては、間質液(insterstitial)薬物分散剤、例えば可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)がさらに挙げられる。rHuPH20を含む、特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0238】
例示的凍結乾燥抗体製剤が、米国特許第6,267,958号明細書に記載されている水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号明細書及び国際公開第2006/044908号パンフレットに記載されるものが挙げられ、後者の製剤は酢酸ヒスチジン緩衝液を含む。
【0239】
本明細書における製剤は、治療される特定の適応症に対する必要に応じて、2つ以上の活性成分も含有し得る。 好ましくは、互いに悪影響を与えない相補的な活性を有する成分を単一の製剤に組み合わせてもよい。例えば、本発明の抗CTLA4抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートに加えて、EGFRアンタゴニスト(エルロチニブなど)、抗血管新生剤(VEGFアンタゴニストなどで、抗VEGF抗体であり得る)、または化学療法剤(タキソイドまたは白金剤など)を提供することが望ましい場合がある。かかる活性成分は、意図された目的に効果的な量で、組み合わせて存在するのが好適である。
【0240】
一実施形態では、本発明の抗CD46抗体、抗体断片、または免疫コンジュゲートは、CTLA4、PD1、PD-L1、AXL、ROR2、CD3、HER2、B7-H3、ROR1、SFRP4、およびWNTタンパク質(WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16を含む)から選択される抗原に対する別の抗体または抗体断片と製剤中に組み合わされる。組み合わせは、2つの別個の分子の形態であってもよく、すなわち、本発明の抗CD46抗体、抗体断片、または免疫コンジュゲート、および別の抗体または抗体断片である。代替的に、組み合わせはまた、単一分子の形態であってもよく、CD46および他の抗原の両方に結合活性または結合親和性を有し、したがって、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を形成する。
【0241】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法によって、または界面重合によって調製されるマイクロカプセルに封入されてもよい。 例えば、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中、またはマクロエマルジョン中に、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルを使用してもよい。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0242】
持続放出調製物を調製することができる。持続放出調製物の好適な例としては、抗体または抗体断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、マトリックスは、成形品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルであり得る。
【0243】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に、無菌である。滅菌は、例えば、濾過滅菌膜を介した濾過によって容易に達成され得る。
【0244】
E.治療方法および組成物
本明細書に提供される抗CD46抗体または抗体断片のいずれかを、治療方法に使用することができる。一態様では、医薬として使用するための抗CD46抗体または抗体断片が提供される。さらなる態様において、癌(例えば、乳癌、非小細胞肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、膵臓、脳、腎臓、卵巣、胃、白血病、子宮内膜、結腸、前立腺、甲状腺、肝臓の癌、骨肉腫、および/または黒色腫)の治療において使用される抗CD46抗体または抗体断片が提供される。ある特定の実施形態では、治療方法に使用するための抗CD46抗体または抗体断片が提供される。ある実施形態において、本発明は、個体に有効量の抗CD46抗体または抗体断片を投与することを含む、癌を有する個体を治療する方法において使用される抗CD46抗体または抗体断片を提供する。ある実施形態において、本発明は、個体に有効量の抗CD46抗体または抗体断片を投与することを含む、免疫障害(例えば、自己免疫障害)、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、血栓症)、感染性疾患(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)または糖尿病を有する個体を治療する方法において使用される抗CD46抗体または抗体断片を提供する。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、下記のものを投与することをさらに含む。さらなる実施形態において、本発明は、血管新生の阻害、細胞増殖の阻害、免疫機能の阻害、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)の阻害、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)の阻害、および/または腫瘍間質機能の阻害において使用される抗CD46抗体または抗体断片を提供する。
【0245】
特定の実施形態において、本発明は、個体の血管新生の阻害、細胞増殖の阻害、免疫機能の阻害、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)の阻害、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)の阻害、および/または腫瘍間質機能の阻害の方法において使用される抗CD46抗体または抗体断片を提供し、前記方法は、個体に有効量の抗CD46抗体または抗体断片を投与して血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を阻害し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を阻害し、腫瘍血管系発生(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害することを含む。上記いずれかの実施形態に係る「個体」は、好ましくは、ヒトである。
【0246】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造または調製における抗CD46抗体または抗体断片の使用を提供する。一実施形態において、医薬品は、癌(一部の実施形態において、乳癌、非小細胞肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、膵臓、脳、腎臓、卵巣、胃、白血病、子宮内膜、結腸、前立腺、甲状腺、肝臓の癌、骨肉腫、および/または黒色腫)の治療用である。さらなる実施形態において、医薬品は、癌を有する個体に有効量の医薬品を投与することを含む、癌を治療する方法において使用される。さらなる実施形態において、医薬品は、個体に有効量の抗CD46抗体または抗体断片を投与することを含む、免疫障害(例えば、自己免疫障害)、心血管障害(例えば、アテローム動脈硬化症、高血圧、血栓症)、感染性疾患(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)または糖尿病を治療する方法において使用される。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、下記のものを投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、医薬は、血管新生、細胞増殖、免疫機能、炎症性サイトカインの分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージ由来)、腫瘍血管構造(例えば、腫瘍内血管構造または腫瘍関連血管構造)、および/または腫瘍間質機能を阻害するための薬剤である。さらなる実施形態において、医薬は、個体の血管新生の阻害、細胞増殖の阻害、免疫機能の阻害、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)の阻害、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)の阻害、および/または腫瘍間質機能の阻害の方法において使用され、前記方法は、個体に有効量の医薬を投与して血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を促進し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を誘導し、腫瘍血管系発生(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害することを含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0247】
さらなる態様では、本発明は、がんを治療するための方法を提供する。一実施形態において、本方法は、そのような癌を有する個体に有効量の抗CD46抗体または抗体断片を投与することを含む。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの下記の追加の治療剤を投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0248】
さらなる態様において、本発明は、免疫障害(例えば、自己免疫障害)、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、血栓症)、感染性疾患(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)または糖尿病を治療する方法を提供する。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの下記の追加の治療剤を投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0249】
さらなる態様では、本発明は、個体において、血管新生、細胞増殖、免疫機能、炎症性サイトカインの分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージ由来)、腫瘍血管構造(例えば、腫瘍内血管構造または腫瘍関連血管構造)、および/または腫瘍間質機能を阻害するための方法を提供する。一実施形態において、本方法は、個体に有効量の抗CD46抗体または抗体断片を投与して血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を促進し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を誘導し、腫瘍血管系発生(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害することを含む。一実施形態において、「個体」は、ヒトである。
【0250】
さらなる態様において、本発明は、例えば、上記治療方法のいずれかにおいて使用される、本明細書において提供される抗CD46抗体または抗体断片のいずれかを含む医薬製剤を提供する。一実施形態において、医薬製剤は、本明細書において提供される抗CD46抗体または抗体断片のいずれかおよび薬学的に許容可能な担体を含む。別の実施形態において、医薬製剤は、本明細書において提供される抗CD46抗体または抗体断片のいずれかおよび少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、下記のものを含む。
【0251】
上に記載の各治療およびそれぞれの治療において、本発明の抗体または抗体断片は、単独で、免疫コンジュゲートとして、または治療中の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与され得る。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、抗血管新生剤である。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、VEGFアンタゴニスト(一部の実施形態では、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)である。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、EGFRアンタゴニスト(一部の実施形態では、エルロチニブ)である。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、化学療法剤および/または細胞分裂阻害剤である。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、タキソイド(例えば、パクリタキセル)および/または白金剤(例えば、カルボプラチナ)である。 ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、患者の免疫または免疫系を増強する薬剤である。
【0252】
上記のかかる併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤に含まれる)、ならびに個別投与を包含し、この場合、抗体または抗体断片の投与は、追加の治療剤および/またはアジュバントの投与の前に、同時に、および/または後に生じ得る。抗体または抗体断片もまた、放射線療法と併用され得る。
【0253】
抗CD46抗体または抗体断片は、良好な医療行為と一致する様式で、配合し、投薬し、投与することができる。これに関連する検討事項の因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医師に公知の他の因子が挙げられる。抗体または抗体断片は、必ずしも必要はないが、任意選択的に、当の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体または抗体断片の量、障害または治療の種類、および上で考察された他の要因に依存する。これらは、概して、本明細書に記載される同じ投与量および投与経路で、または本明細書に記載の投与量の約1~99%で、または経験的/臨床的に適切であると判断された任意の投与量および任意の経路によって使用される。
【0254】
疾患の予防または治療のために、抗体または抗体断片の適切な投与量(単独でまたは1つ以上の他の追加の治療薬と組み合わせて使用する場合)は、治療する疾患の種類、抗体または抗体断片の種類、疾患の重症度および経過、抗体または抗体断片が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴および抗体または抗体断片に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。抗体または抗体断片は、患者に一度に、または一連の治療にわたって好適に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、約1μgの抗体または抗体断片/kg患者の体重~40mgの抗体または抗体断片/kg患者の体重は、例えば、1回以上の別個の投与によるか、または連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初回候補投与量であり得る。1つの典型的な1日投与量は、上述の要因に応じて、約1μgの抗体または抗体断片/kg患者の体重~100mgの抗体または抗体断片/kg患者の体重以上の範囲であり得る。数日以上にわたる繰り返し投与の場合、状態に応じて、治療は、疾患症状の所望の抑制が生じるまで一般に持続するであろう。かかる用量は、例えば、毎週または3週間毎に断続的に投与され得る(例えば、患者が約2~約20回、または例えば、約6回の用量の抗体または抗体断片を受容する)。より高い初回負荷用量、次いで1回以上のより低い用量を投与することができる。しかしながら、他の投与レジメンが有用な場合がある。この治療法の進行は、慣用の技術およびアッセイにより容易にモニタリングされる。
【0255】
対象の疾患の予防または治療のために投与され得る本発明の抗CD46抗体または抗体断片の具体的な投与量は、抗体または抗体断片の約0.3、0.6、1.2、18、2.4、3.0、3.6、4.2、4.8、5.4、6.0、6.6、7.2、7.8、8.4、9.0、9.6または10.2mg/患者の体重kgでありうる。特定の実施形態では、投与量は、0.3~2.4、2.4~4.2、4.2~6.0、6.0~7.8、7.8~10.2、10.2~12、12~14、14~16、16~18または18~20mgの抗体または抗体断片/患者の体重kgの範囲であってもよい。二重特異性抗体の形態で、別の免疫チェックポイント阻害剤または別の抗体もしくは抗体断片と組み合わせて、あるいは免疫コンジュゲートとして投与される場合、抗体または抗体断片の投与量は同じである。 さらに、抗CD46活性を有するポリペプチドは、抗体または抗体断片と同じ量で投与される。
【0256】
本発明の医薬製剤の1回の投与量は、約45μgから約13600mgの本発明の抗体または抗体断片、あるいは約45μgから約5440mgの抗CD46抗体または抗体断片の量を含むことができる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬製剤の単回投与量は、135mg~1387mgの本発明の抗CD46抗体または抗体断片、または135、235、335、435、535、635、735、835、935、1035、1135、1235、1387mgなどの量を含んでもよい。特定の実施形態では、医薬製剤の単回投与量における本発明の抗CD46抗体または抗体断片の量は、135~235、235~335、335~435、435~535、535~635、635~735、735~835、835~935、935~1035、1035~1135、1135~1235、1235~1387mgの範囲である。医薬製剤の単回用量における抗体または抗体断片の量は、二重特異性抗体の形態で、別の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、または免疫コンジュゲートとして、または本明細書に開示される別の抗原に対する別の抗体もしくは抗体断片と組み合わせて投与される場合、同じままである。さらに、抗CD46活性を有するポリペプチドは、抗体または抗体断片と同じ量で、医薬製剤の単回投与に含まれるであろう。
【0257】
一実施例では、抗CD46抗体または抗体断片は、免疫チェックポイント阻害剤分子にコンジュゲートされ得るか、または免疫チェックポイント阻害剤と二重特異性抗体の一部を形成し得る。
【0258】
組み合わせは、本出願で開示される抗CD46抗体または抗体断片、および別個の分子としてまたは二重特異性抗体として投与される免疫チェックポイント阻害剤分子であり得る。かかる二重特異性抗体は、CD46への結合活性および免疫チェックポイントへの第2の結合活性を有する。
【0259】
免疫チェックポイントは、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、VISTA、BTLA、OX40、CD40、4-1BB、PD-1、PD-L1、およびGITRから選択され得る(Zahavi and Weiner,International Journal of Molecular Sciences,vol.20,158,2019)。さらなる免疫チェックポイントとしては、B7-H3、B7-H4、KIR、A2aR、CD27、CD70、DR3、およびICOSが挙げられる(Manni et al.,Immune checkpoint blockade and its combination therapy with small-molecule inhibitors for cancer treatment,Bbacan,https://doi.org/10.1016/j.bbcan.2018.12.002,2018)。
【0260】
免疫チェックポイントは、好ましくは、CTLA4、PD-1、またはPD-L1である。
【0261】
上記の製剤または治療方法のいずれも、抗CD46抗体の代わりに、またはそれに加えて、本発明の抗体断片または免疫コンジュゲートを使用して実施され得ることを理解されたい。
【0262】
腫瘍を撲滅するための宿主の免疫機能の向上は、関心が増加している主題である。従来の方法としては、(i)APCの増強、例えば(a)外来のMHCのアロ抗原をコードするDNAを腫瘍に注入すること、または(b)生検腫瘍細胞を、腫瘍の免疫抗原認識の確率を増加させる遺伝子でトランスフェクションすること(例えば、免疫刺激サイトカイン、GM-CSF、共刺激分子B7.1、B7.2)、(iii)養子細胞免疫療法、または活性化腫瘍特異的T細胞による治療が挙げられる。養子細胞免疫療法は、腫瘍浸潤宿主Tリンパ球を単離すること、例えば、IL-2もしくは腫瘍またはその両方による刺激を通して、インビトロで集団を拡大することを含む。さらに、機能不全の単離T細胞を、本発明の抗PD-L1抗体のインビトロ適用により活性化することもできる。次いで、そのように活性化されたT細胞を、宿主に再投与してもよい。 これらの方法のうちの1つ以上を、本発明の抗体、抗体断片、または免疫コンジュゲートの投与と組み合わせて使用することができる。
【0263】
がんに対する伝統的な療法には、以下が含まれる:(i)放射線療法(例えば、放射線療法、X線療法、照射)、またはがん細胞を死滅させ、腫瘍を縮小させるための電離放射線の使用。放射線療法は、外部ビーム放射線療法(EBRT)を介して、または内部で近接照射療法を介して投与することができる、(ii)化学療法、または一般に急速に分裂細胞に影響を与える細胞傷害性薬の適用、(iii)標的療法、またはがん細胞の調節解除されたタンパク質に特異的に影響を与える薬剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤のイマチニブ、ゲフィチニブ;モノクローナル抗体、光力学療法)、(iv)免疫療法、または宿主の免疫応答の増強(例えば、ワクチン)、(v)ホルモン療法、またはホルモンの遮断(例えば、腫瘍がホルモン感受性である場合)、(vi)血管新生阻害剤、または血管の形成および成長の遮断、ならびに(vii)緩和ケア、または疼痛、悪心、嘔吐、下痢および出血を低減するためのケアの質を改善することを対象とした治療。モルヒネおよびオキシコドンなどの鎮痛薬、オンダンセトロンおよびアプレピタントなどの制吐剤は、より積極的な治療レジメンを可能にすることができる。
【0264】
がんの治療において、がん免疫の治療のための前述の従来の治療のうちのいずれかは、抗CD46抗体または抗体断片の投与の前に、後に、または同時に行われ得る。加えて、抗CD46抗体または抗体断片は、腫瘍結合抗体(例えば、モノクローナル抗体、毒素コンジュゲートモノクローナル抗体)の投与および/または化学療法剤の投与などの従来のがん治療の前に、後に、または同時に投与され得る。
【0265】
F.製品およびキット
本発明の別の態様では、抗CD46抗体または抗体断片と、上に記載の障害の治療、予防、および/または診断に有用な他の材料とを含む製品が提供される。製品は、容器と、容器にまたは容器と関連付けられたラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、静脈内輸液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、組成物を、それ自体で、あるいは状態の治療、予防、および/または診断に有効な別の組成物と組み合わせて保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内輸液バッグ、または皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体または抗体断片である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選択される状態を治療するために使用されることを示す。さらに、製品は、(a)第1の容器(組成物がその中に含有され、組成物が抗体または抗体断片が含まれる)、および(b)第2の容器(組成物がその中に含有され、組成物がさらなる細胞傷害剤またはそれ以外の治療剤を含む)を含んでいてもよい。本発明のこの実施形態における製品は、組成物を特定の病態を治療するために使用することができることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは、またはさらに、製品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0266】
上記の製品のいずれも、抗CD46抗体または抗体断片の代わりに、またはそれに加えて、本発明の免疫コンジュゲートを含み得ることを理解されたい。
【0267】
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの本発明の抗体または抗体断片を含むキットを提供する。本発明のポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または抗体薬物コンジュゲートを含有するキットは、CD46発現(増加または減少)の検出において、または治療もしくは診断アッセイにおいて使用される。本発明のキットは、固体支持体、例えば、組織培養プレートまたはビーズ(例えば、セファロースビーズ)にカップリングされた抗体を含み得る。例えば、ELISAまたはウェスタンブロットにおける、インビトロでのCD46の検出および定量のための抗体を含有するキットを提供することができる。検出に有用なかかる抗体は、蛍光標識または放射標識などの標識とともに提供され得る。
【0268】
キットは、それらの使用に関する説明書をさらに含む。一部の実施形態では、説明書は、インビトロ診断キットに関して、米国食品医薬品局によって要求される説明書を含む。一部の実施形態において、キットは、試料中の脳脊髄液の存在または不存在を、前記試料中のCD46の存在または不存在に基づき診断するための説明書をさらに含む。一部の実施形態では、キットは1つ以上の抗体または抗体断片を含む。他の実施形態では、キットは、1つ以上の酵素、酵素阻害剤または酵素活性化剤をさらに含む。さらに他の実施形態では、キットは、1つ以上のクロマトグラフィー化合物をさらに含む。さらに他の実施形態では、キットは、分光学的アッセイ用に試料を調製するために使用される1つ以上の化合物をさらに含む。さらなる実施形態において、キットは、指示薬の強度、色スペクトル、または他の物理的属性に従ってCD46の存在または不存在を解釈するための比較参照材料をさらに含む。
【0269】
以下の実施例は、本開示の抗CD46抗体の例示であるが、これに限定されない。当該技術分野で通常遭遇し、かつ当業者には明らかである様々な条件およびパラメータの他の好適な修正および適合は、本開示の範囲内である。
【実施例
【0270】
以下の6つのCDRのセットを有する本発明の抗体または抗体断片は、実施例において試験された。
配列番号12、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号15、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号5、配列番号17、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;
配列番号5、配列番号19、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10;並びに
配列番号22、配列番号6、配列番号3、配列番号8、配列番号9、および配列番号10。
【0271】
実施例1:条件的に活性な抗CD46抗体のhuCD46への結合活性
条件的に活性な抗CD46抗体のヒトCD46への結合活性を、BM(ベンチマーク)抗体を対照として使用して、ELISAによって測定した。pH6.0およびpH7.4における条件的に活性な抗CD46抗体のヒトCD46への結合のEC50値を表1に、結合活性を図1および2にまとめた。
【0272】
実施例2:条件的に活性な抗CD46抗体のcyno CD46への結合活性
条件的に活性な抗CD46抗体のcyno CD46に対する結合活性をELISA法により測定し、図3および4に示した。条件的に活性な抗CD46抗体のpH6.0とpH7.4におけるcyno CD46への結合のEC50値を表2にまとめた。
【0273】
実施例3:条件的に活性な抗CD46抗体のヒトCD46に対する結合活性
pH滴定による条件的に活性な抗CD46抗体のヒトCD46への結合活性も同様にELISA法で測定した。図5を参照されたい。ヒトCD46に対する条件的に活性な抗CD46抗体のpH変曲点を表3にまとめた。
【0274】
実施例4:FACSで測定した、条件的に活性な抗CD46抗体の結合活性
ヒトCD46を発現する293細胞を用いてFACS解析を行った。条件的に活性な抗CD46抗体は、ヒトCD46を発現している293細胞に対して、pH6.0において、pH7.4よりも高い結合活性を一貫して示した。図6および7参照。条件的に活性なヒト化抗CD46抗体による、ヒトCD46を発現する293細胞への結合のEC50値を表4にまとめた。
【0275】
実施例5:FACSで測定した、条件的に活性な抗CD46抗体の結合活性
CD46を発現するColo205細胞に対する条件的に活性な抗CD46抗体の結合活性を、pH6.0とpH7.4でFACSにより測定した。条件的に活性な抗CD46抗体は、pH6.0において、pH7.4よりもColo205細胞に対して高い結合活性を一貫して示した。図8および9参照。条件的に活性な抗CD46抗体によるCD46を発現するColo205細胞への結合のEC50値を表5にまとめた。
【0276】
また、cyno CD46を発現する293細胞を用いて、同様のFACS解析を行った。また、条件的に活性な抗CD46抗体は、pH6.0の方がpH7.4よりもcyno CD46を発現する293細胞に対して常に高い結合性を示した。図10および11参照。条件的に活性な抗CD46抗体によるcyno CD46を発現する293細胞への結合のEC50値を表6にまとめた。
【0277】
実施例6:ヒトCD46を発現する293細胞のin vitroでの細胞殺傷
ヒトCD46を発現する293細胞を用いて、pH値6.0および7.4におけるヒトCD46を発現する293細胞のin vitroでの細胞殺傷について解析した。条件的に活性な抗CD46抗体による293細胞のin vitroでの殺傷を図12および13に示す。条件付き活性抗CD46抗体による293細胞の細胞殺傷に関するIC50値を表7に示す。
【0278】
実施例7:CD46を発現するColo205細胞の抑制における条件的に活性な抗CD46抗体の細胞傷害性
条件的に活性な抗体は、CD46を発現するColo205細胞を、腫瘍微小環境pHの6.0と正常生理学的pHの7.4で処置するために使用した。条件的に活性な抗体は、正常生理学的pHよりも腫瘍微小環境のpHでより大きな阻害率(IR%)を誘導した。図14および15。IC50値は以下の表8に示す。
【0279】
実施例8:条件的に活性な抗体のColo205CDX皮下投与モデルにおけるin vivo有効性試験
本研究の目的は、雌BALB/cヌードマウスの皮下Colo 205ヒト大腸がん異種移植モデルにおいて、試験品のin vivoでの抗腫瘍効果を評価することであった。
略語
【0280】
実験デザイン
表1-1.実験デザインの説明
【0281】
実験方法および手順
細胞培養
Colo205腫瘍細胞(ATCC, Manassas, VA, cat # ATCC(登録商標) CCL-222TM)は、単層培養として、10%熱不活性化牛胎児血清、100U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地で37℃、空気中の5%CO2で維持した。腫瘍細胞を、トリプシン-EDTA処置によって週2回、ルーチン的に継代した。指数的増殖期に増殖した細胞を採取し、腫瘍接種のためにカウントした。
【0282】
腫瘍接種および動物群分け
各マウスの右脇腹に、Colo205腫瘍細胞(5x106)を0.2mLのPBSで皮下接種し、腫瘍を発生させた。処置は、平均腫瘍サイズがおよそ204mm3に達したときに、腫瘍接種後11日目に開始した。動物を、Excelベースの層別ランダム化プログラムを使用して、腫瘍体積に応じて群に割り当てた。各群は、8匹の腫瘍保有マウスからなった。試験品は表1-1に示す実験計画に従って投与した。
【0283】
試験品調製
表2-1.試験品調製の説明
【0284】
観察
研究における動物の取り扱い、ケア、および治療に関連するすべての手順は、実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)のガイダンスに従い、WuXi AppTecの動物実験委員会(IACUC)によって承認されたガイドラインに従って行った。日常的なモニタリングでは、腫瘍増殖に対する治療の影響や、運動性、餌や水の消費量(見た目のみ)、体重の増減(週2回測定)、眼/毛髪マッティングなどの通常の行動、その他プロトコルに記載された異常な影響について毎日チェックした。死亡および観察された臨床症状は、各サブセット内の動物数に基づいて記録された。
【0285】
腫瘍の測定とエンドポイント
主要なエンドポイントは、腫瘍の増殖を遅らせることができるかどうかということであった。腫瘍の大きさはノギスを用いて週2回2次元で測定し、計算式を用いて算出した。V=0.5a x b2、式中、aとbはそれぞれ腫瘍の長径と短径である。腫瘍の大きさはT/C、TGI、RTVの値の計算に使用された。
T/C値(パーセント)は、抗腫瘍有効性の指標であり、TおよびCは、それぞれ、所与の日における処置群および対照群の平均体積である。
各処置群のTGIを、以下の式を使用して計算した:TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100;Tiは、所与の日における処置群またはアイソタイプ群の平均腫瘍体積であり、T0は、0日目における処置群またはアイソタイプ群の平均腫瘍体積であり、Viは、Tiと同じ日におけるビヒクル対照群の平均腫瘍体積であり、V0は、0日目におけるビヒクル群の平均腫瘍体積である。
個々のRTV(相対腫瘍体積)は、特定の日における腫瘍体積を0日目におけるその体積で割ることによって計算した。各マウスのRTV値を個別に算出し、各群の平均RTVの算出に使用した。
【0286】
サンプリング
初回投与後24時間および96時間(2回目投与直前)に群ごと3匹のマウスからそれぞれ50~60μLの血清を採取した。
【0287】
統計分析
異なる時点における各群の平均腫瘍体積および標準誤差を計算した(表3-1)。投与開始後25日目(全群にマウスが残っている最終日)に得られたデータについて、ビヒクル群と試験品群との腫瘍体積の差の統計解析を行った。一方、投与開始後32日目(全試験品群にマウスが残っている最終日)に得られたデータについて、アイソタイプ群と他の試験品群との腫瘍体積の差の統計解析を行った。
一元配置分散分析を行って、群間の平均腫瘍体積およびRTVを比較した。有意なF統計量を得、群間の比較をGames-Howell検定で実行した。すべてのデータは、IBM(登録商標)SPSS Statistics(登録商標)ソフトウェア(バージョン17.0)を使用して分析した。p値<0.05を統計的に有意であるとみなした。
【0288】
腫瘍体積
各群の平均腫瘍体積を表3-1に示す。
表3-1 腫瘍体積
【0289】
腫瘍増殖抑制効果の解析
表3-2 ビヒクル群と比較した場合の腫瘍増殖抑制効果(Day25のデータに基づく)。
【0290】
表3-3 アイソタイプ群との比較による腫瘍増殖抑制効果(Day32のデータに基づく)
【0291】
腫瘍増殖曲線
腫瘍増殖曲線を図16に示す。図16において、データは平均値±SEMを示す。
【0292】
まとめと考察
本研究では、条件的に活性な抗体の治療効果をColo205ヒト大腸異種移植モデルを用いて評価した。処置後の各時点における各群の腫瘍サイズを表3-1、表3-2、図16に示す。ビヒクル群の平均腫瘍サイズは、投与開始後25日目に1,288mm3(RTV=6.43±0.69)に達した。ビヒクル群およびアイソタイプ群のすべてのマウスは、PG-D32で安楽死させた。その他の群については、4回目の投与から4週間後まで観察を延長した。
いずれの試験品も有意な抗腫瘍活性を示した(TGI>93%、p値<0.002、PG-D25)。試験品BAP133-LP1またはBA-133-00-01(BM)とBA-133-04-04 LP1を3mg/kgの用量で投与すると、ほとんどのマウスで完全寛解に至る劇的な抗腫瘍活性を示した。BA-133-04-01 LP1、BA-133-04-02 LP1、BA-133-04-03 LP1、BAP133-2-02-12 LP-1で腫瘍体積の明らかな減少が認められたが、これらの群では最終投与後10日目に腫瘍の再増殖(regrown)が認められるマウスが複数いた。BAP133-2-02-12 LP-1処置により、試験開始時の腫瘍増殖は遅延したが、投与停止後数日で腫瘍増殖速度が逆転した(図16)。
アイソタイプ処置(B12-LP1)は、ビヒクル処置と比較して、ほとんど効果がなかった(T/C=84.86%,TGI=17.99%,p値=0.954,PG-D25)。
全投与期間および観察期間において、重度の体重減少や死亡/罹患事象は観察されなかった。このように、指定された用量での試験品の投与に関連して、明らかな毒性は観察されなかった。
【0293】
実施例9: SPR解析により測定した条件的に活性な抗CD46抗体の結合活性
抗CD46抗体の結合動態を、SPR2/4機器(Sierra Sensors,Hamburg,Germany)および平坦なアミンセンサチップ上の表面プラズモン共鳴によって測定した。SPRセンサは、4つのフローセル(FC1~FC4)を含有し、各フローセルは、個々にまたは群でアドレス指定され得る。huCD46-HisはFC2に、cynoCD46-HisはFC4に固定化された。FC2およびFC4のコントロールサーフェスとして使用したFC1およびFC3には、タンパク質は固定化されていない。
【0294】
すべての注入は、25μL/分の流量および25℃で行った。センサ表面を1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(200mM/50mM)で480秒間活性化した。ヒトCD46-His(10mMのNaAc中2μg/mL、pH5.0)を480秒間注入し、1Mのエタノールアミン-HClを480秒間注入することによって表面を不活性化した。cynoCD46-Hisは、10mM NaAc緩衝液 pH4.5に希釈した以外は、huCD46-Hisに記載した条件と同じ条件で固定化された。コントロールサーフェスはタンパク質を注入しない以外は同じ条件を使用して活性化および非活性化した。PBST緩衝液(0.05% TWEEN20TMを含むPBS pH7.4)を、表面調製のための泳動用緩衝液として使用した。泳動用溶液を、30mMの重炭酸ナトリウムでPBSTに切り替え、分析物を注入する前に、図に示されるようにpHを調整した。第1の分析物を注入する前に、機器を泳動用溶液で1時間平衡化した。
【0295】
対応する泳動溶液で希釈した100μLの分析対象物(34.25nM,13.70nM,6.85nM,3.42nM,1.37nM,および0.0nM)をフローセル1、2または3、4上に注入した。オフレートを360秒間測定した。相互作用分析の各サイクル後、6μLの10mMグリシン(pH2.0)を注入することによって、チップ表面を再生した。固定化タンパク質を含まないフローセル1および3を参照減算のためのコントロールサーフェスとして使用した。
【0296】
さらに、緩衝液のみを分析物(0nMの分析物)として有するデータを、各泳動から減算した。提供された分析ソフトウェアAnalyzer R2(Sierra Sensors)を用いて、1:1の結合モデルを使用して、二重に減算されたデータを適合させた。200kDaの分子量を使用して、分析物のモル濃度を計算した。
【0297】
ヒトCD46およびcyno CD46に対する条件的に活性な抗CD46抗体のpH6.0、pH6.5およびpH7.4での結合活性をSPR分析により測定し、それぞれ以下の表9および表10に示した。
【0298】
実施例の実験プロトコル

実施例1および2
【0299】
製剤
試験品を最初に、pH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液中で300ng/mLに希釈した。次いで、3000ng/mLの試験品を、pH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液中で3倍連続希釈した。
【0300】
PH親和性ELISAアッセイ
1) ELISAプレートを、100μLの炭酸塩-重炭酸塩コーティング緩衝液中の 1μg/mLの組換えヒトCD46抗原またはCynoCD46抗原でコーティン グする。
2) シーリングフィルムでプレートを覆い、4℃で一晩インキュベートする。
3) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
4) 200μLのpH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液 をウェルに分注することによってウェルを2回洗浄し、内容物を完全に吸引する。
5) 200μLのpH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液 をウェルに添加する。プレートをシーリングフィルムで覆い、室温で60分間、 50rpmに設定されたプレートシェーカーに置く。
6) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
7) 試験品をpH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液中、 3000ng/mLで始まる3倍希釈で連続希釈する。
8) 100μL/ウェルの希釈された試験品をプレートに添加する。
9) プレートをシーリングフィルムで覆い、室温で60分間、50rpmに設定された プレートシェーカーに置く。
10) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
11) 200μLのpH6.0またはpH7.4のELISA洗浄緩衝液をウェルに分 注することによってウェルを3回洗浄し、内容物を完全に吸引する。
12) pH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液中でHRP 二次抗体を1:2500に希釈する
13) pH6.0またはpH7.4のELISAインキュベーション緩衝液中で希釈し た100μLのHRP二次抗体を各ウェルに添加する。
14) プレートをシーリングフィルムで覆い、室温で60分間、50rpmに設定され たプレートシェーカーに置く。
15) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
16) 200μLのpH6.0またはpH7.4のELISA洗浄緩衝液をウェルに分 注することによってウェルを3回洗浄し、内容物を完全に吸引する。
17) ウェル当たり50μLのTMB基質溶液を、プレートのすべてのウェルに分注す る。室温で約2分15秒間または2分間インキュベートする。
18) ウェル当たり50μLの1NのHClを、プレートのすべてのウェルに添加す る。PerkinElmer、EnSpire 2300 Multilabe l Readerを使用して、プレートを450nmで読み取る。
【0301】
実施例3
【0302】
製剤
試験品を、pH5.5~pH7.4の範囲の様々なpHのELISAインキュベーション緩衝液中で10ng/mLに希釈した。
【0303】
PH範囲ELISAアッセイ
1) ELISAプレートを、100μLの炭酸塩-重炭酸塩コーティング緩衝液中の 1μg/mLの組換えヒトCD46抗原でコーティングする。
2) シーリングフィルムでプレートを覆い、4℃で一晩インキュベートする。
3) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
4) 200μLの様々なpHのインキュベーション緩衝液をウェルに分注することに よってウェルを2回洗浄し、内容物を完全に吸引する。
5) 200μLの様々なpHのインキュベーション緩衝液(pH5.5、6.0、 6.2、6.5、6.7、7.0、および7.4)をウェルに添加する。プレート をシーリングフィルムで覆い、室温で60分間、プレートシェーカー(200rp mに設定)に置く。
6) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
7) 様々なpHのインキュベーション緩衝液(pH5.5、6.0、6.2、6.5、 6.7、7.0、および7.4)中の試験物質を30ng/mLに連続希釈する。
8) 100μL/ウェルの希釈された試験物質をプレートに添加する。
9) プレートをシーリングフィルムで覆い、室温で60分間、プレートシェーカー (200rpmに設定)に置く。
10) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
11) 200μLの様々なpHの洗浄緩衝液(pH5.5、6.0、6.2、6.5、 6.7、7.0、および7.4)をウェルに分注することによってウェルを3回 洗浄し、内容物を完全に吸引する。
12) HRP二次抗体を、様々なpHのインキュベーション緩衝液(pH5.5、 6.0、6.2、6.5、6.7、7.0、および7.4)中で1:2500に 希釈する。
13) 様々なpHのインキュベーション緩衝液(pH5.5、6.0、6.2、 6.5、6.7、7.0、および7.4)中で希釈した100μLのHRP二次 抗体を各ウェルに添加する。
14) プレートをシーリングフィルムで覆い、室温で60分間、プレートシェーカー (200rpmに設定)に置く。
15) プレートをデカントし、重ねたペーパータオルに軽く叩いて残った液体を除く。
16) 200μLの様々なpHの洗浄緩衝液(pH5.5、6.0、6.2、6.5、 6.7、7.0、および7.4)をウェルに分注することによってウェルを3回 洗浄し、内容物を完全に吸引する。
17) ウェル当たり50μLのTMB基質溶液を、プレートのすべてのウェルに分注す る。室温で3分間インキュベートする。
18) ウェル当たり50μLの1NのHClを、プレートのすべてのウェルに添加す る。PerkinElmer EnSpire 2300 Multilabe l Readerを使用して、プレートを450nmで読み取る。
【0304】
実施例4および5
【0305】
製剤
試験品を最初にpH6.0またはpH7.4のFACS緩衝液中で30μg/mLに希釈し、次いでpH6.0またはpH7.4のFACS緩衝液中で3倍連続希釈した。
細胞培養
293-huCD46および293-cynoCD46細胞は、安定細胞株培養液(MEM + 10% FBS + 1mg/mL G418)を用いて維持した。CD46を発現するcolo205細胞(ATCC、Cat#CCL222)をcolo205培養液(RPMI1640+10%FBS)で維持した。細胞を週2回、ルーチン的に継代培養した。細胞を指数関数的増殖期中に採取し、プレーティングのためにカウントした。
【0306】
試験抗体を使用した細胞染色
1) ベンダーの説明書に従って、T-75フラスコおよび培養液に3×106個の細胞 を播種する。
2) FACS分析当日、培養培地を除去し、廃棄する。
3) 細胞層をPBS溶液で簡単にすすぐ。
4) T-75フラスコの各々に1.5mLのDetachin溶液を添加する。細胞層 が分散するまで待つ。
5) 対応する細胞株に4.5mLの培養培地を添加し、穏やかなピペッティングによっ て細胞を再懸濁する。
6) 細胞をプールし、細胞懸濁液を50mLコニカルチューブに移す。
7) トリパンブルー染色で細胞を数えた後、4℃で5分間、1500rpmで遠心分離 する。
8) PBSで細胞を1回洗浄する
9) pH6.0またはpH7.4のFACS緩衝液に3.5×106細胞/mLに細胞 を再懸濁する。
10) 96ウェルU底プレートに、100μLのpH6.0またはpH7.4のFAC S緩衝液中の3.5×105細胞をアリコートする。
11) 細胞を遠沈し、緩衝液を廃棄する。
12) 試験品をpH6.0またはpH7.4のFACS緩衝液中、30μg/mLで始 まる3倍希釈で連続希釈する。
13) 100μL/ウェルの希釈された試験品を細胞に添加し、ウェルを穏やかに混合 し、氷上で1時間、振盪(200rpm)しながらインキュベートする。
14) 細胞を、4℃で5分間、1500rpmで遠心分離する。細胞を150μLのp H6.0またはpH7.4の洗浄緩衝液で2回洗浄する。
15) ヤギ抗ヒトIgG AF488抗体をpH6.0またはpH7.4のFACS緩 衝液で1:300に希釈する。
16) 100μLの上記のステップからの希釈された抗体を細胞に添加し、光から保護 して 、氷上で45分間、振盪(200rpm)しながらインキュベートす る。
17) 細胞をペレット化し、150μLのpH6.0またはpH7.4の洗浄緩衝液で 3回洗浄する。
18) 細胞を1×PBS中に希釈された4%PFAで、室温で10分間固定し、次いで 細胞を1×PBSで洗浄する。
19) 細胞を100μLの1×PBSに再懸濁する。
20) Ex488nm/Em530nmを使用して、NovoCyteフローサイト メーターによって細胞を分析する。各データポイントで少なくとも5,000個 のシングレット細胞を収集する。
【0307】
FACSデータ解析
GraphPad Prismソフトウェアバージョン7.03を用いて、細胞シングレット中のAF488のMFIをプロットした。
【0308】
実施例6および7
【0309】
細胞培養
293-huCD46細胞は、安定細胞株培養液(MEM+10%FBS+1mg/mL G418)で維持した。CD46を発現するcolo205細胞(ATCC、Cat#CCL222)をcolo205培養液(RPMI1640+10%FBS)で維持した。細胞を週2回、ルーチン的に継代培養した。細胞を指数関数的増殖期中に採取し、プレーティングのためにカウントした。
【0310】
製剤
1) 10×試験品ADCまたはB12アイソタイプADC のストックをpH6.0ま たはpH7.4のアッセイ培地で、50μg/mLから5倍連続希釈する。
2) プレートを遠心分離し、培養液を静かに除去した後、ADCを添加する前に90μ LのpHアッセイ用培地を添加する。
3) 3000個の細胞が入ったウェルに、連続希釈した10×ADCまたはB12サン プルストックを10μL加える(最終開始濃度は5μg/mL)。
4) 処理した細胞を37℃、5%CO2インキュベーターで72時間培養する
【0311】
CELLTITER-GLO発光細胞生存率アッセイ
1) 使用前にCellTiter-Gloバッファーを解凍し、室温に平衡化させる。
2) 使用前に凍結乾燥したCellTiter-Glo基質を室温に平衡化させる。
3) CellTiter-Glo 基質の入った琥珀色の瓶に CellTiter-Glo バッファーの液体を全量移し、凍結乾燥酵素/基質混合物を再構成する。これによりCellTiter-Glo試薬が形成される
4) 軽くボルテックスしながら混合し、均質な溶液を得る。
5) プレートとその内容物を室温に平衡させる。
6) 各ウェルに70μLのCellTiter-Glo試薬を添加する。100rpmのオービタルシェーカーで2分間混合し、細胞溶解を誘導する。
5) 発光シグナルを安定化させるため、プレートを室温で10分間インキュベートする。
6) SpectraMax i3Xプレートリーダーで発光を記録する。
【0312】
データ解析
試験抗体の異なる投与量の阻害率を濃度応答発光信号でプロットし、IC50を算出した。データはGraphPad Prismソフトウェアで解釈された。
【0313】
本発明の構造および機能の詳細とともに、本発明の多くの特徴および利点が前述の説明に記載されているが、しかしながら、本開示は例示的なものに過ぎず、特に付属の特許請求の範囲が表現されている用語の広範な一般的な意味によって示される完全な範囲において、本発明の原理内の部品の形状、サイズおよび配置に関する事項で、詳細な変更が行われ得ることを理解されたい。
【0314】
本明細書に言及されるすべての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用されるか、代替的にそれらが特に信頼される開示を提供する。 出願人は、開示された実施形態を公衆に捧げることを意図しておらず、開示された修正または変更が文字通り特許請求の範囲内に含まれない可能性がある限り、それらは均等論の下で本発明の一部であるとみなされる。
【0315】
本発明のポリペプチド(抗体を含む)配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
【配列表】
2023531189000001.app
【国際調査報告】