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特表2023-531201血液悪性腫瘍の治療のための二重特異性CD123×CD3ダイアボディの使用
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  • 特表-血液悪性腫瘍の治療のための二重特異性CD123×CD3ダイアボディの使用 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】血液悪性腫瘍の治療のための二重特異性CD123×CD3ダイアボディの使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20230713BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230713BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230713BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230713BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
A61K39/395 N
A61P35/02
C07K16/46
G01N33/53 M
G01N33/574 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577592
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021036520
(87)【国際公開番号】W WO2021257334
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/041,051
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521187196
【氏名又は名称】ノッティンガム トレント ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン ジャン ケニス
(72)【発明者】
【氏名】ルテラ セルジオ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は特に、上述のような投与の前の上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定する方法であって、前記方法は:
(a)1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の発現に対して、前記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に、前記患者由来の細胞試料中での1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップ;並びに
(b)前記1つ以上の標的遺伝子の発現が、前記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の前記発現に対して増大していることが分かった場合に、前記患者を、CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好適な応答者として識別するステップであって、前記1つ以上の標的遺伝子は:SERPHINH1、NOTCH2、FCGR3A/B、FPR1、FBP1、PDGFA、CRABP2、THBS1、ICOS、及びCD8Bからなる群から選択される、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は:
(i)前記1つ以上の標的遺伝子の前記発現;及び
(ii)1つ以上の基準遺伝子であって、前記1つ以上の基準遺伝子の発現が前記血液悪性腫瘍と特徴的な関連を有しない、1つ以上の基準遺伝子
を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記患者の前記1つ以上の基準遺伝子のベースライン発現に対して、前記1つ以上の標的遺伝子の前記発現を評価するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は:
(a)前記血液悪性腫瘍に罹患している個体、若しくは複数の前記個体の集団;又は
(b)前記血液悪性腫瘍の治療のためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対して良好な応答性を有していなかった個体、若しくは複数の前記個体の集団;又は
(c)前記血液悪性腫瘍の治療のためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対して良好な応答性を有していた個体、若しくは複数の前記個体の集団
の、前記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、前記患者の前記1つ以上の標的遺伝子の前記発現を評価するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記集団における前記1つ以上の標的遺伝子の相対発現レベルは、前記個体の集団から得られた細胞試料における遺伝子発現レベルを平均することによって確立される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者は:
(a)前記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内である、
前記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルを示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は更に、前記患者が前記治療に対する好適な応答者であると判定された場合に、前記患者に治療投薬量の前記CD123×CD3二重特異性分子を投与するステップを含み、
前記CD123×CD3二重特異性分子の前記投与は、前記患者の体内の血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
血液悪性腫瘍を治療する方法であって、前記方法は:
(a)請求項1~6のいずれか1項の方法を採用して、患者が、前記血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定するステップ;
(b)前記患者が前記治療に対する好適な応答者であると判定された場合に、治療投薬量の前記CD123×CD3二重特異性分子を前記患者に投与するステップ
を含み、
前記CD123×CD3二重特異性分子の前記投与は、前記患者の体内での前記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激する、方法。
【請求項9】
前記細胞試料は骨髄試料である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記発現の評価、又は前記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの前記判定は:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の遺伝子発現レベルを判定するステップ;及び
(b)前記標的遺伝子発現レベルを、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルと比較するステップ
によって実施される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記発現の評価、又は前記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの前記判定は:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料に関する各標的遺伝子の生RNAレベルを測定するステップであって、前記遺伝子発現プラットフォームは、ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む、ステップ;及び
(b)内部基準遺伝子の測定されたRNAレベルを用いて、前記標的遺伝子に関する測定された前記生RNAレベルそれぞれに、相対発現値を割り当てるステップ
によって実施される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の基準遺伝子は、ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBBのうちの1つ以上を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
遺伝子シグネチャスコアを前記1つ以上の標的遺伝子に関して決定する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子シグネチャスコアは:
(a)ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での、各前記標的遺伝子に関する前記生RNAレベルを測定するステップ;
(b)測定された前記生RNAレベルそれぞれを、前記ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化し、また任意に各RNA値を標準に対して更に正規化するステップ;
(c)各正規化済みRNA値を対数変換するステップ;
(d)前記シグネチャ内の各標的に関する対数変換済みRNA値を合計するステップ;及び
(e)正規化・対数変換済みRNA値の合計を、前記シグネチャ内の前記標的遺伝子の個数で除算して、遺伝子シグネチャスコアを生成するステップ
を含むプロセスによって決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)前記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子スコアに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、前記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記CD123×CD3二重特異性分子は、scFvを含む二重特異性抗体又は二重特異性分子である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記CD123×CD3二重特異性分子は、JNJ‐63709178、XmAb14045、又はAPVO436である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CD123×CD3二重特異性分子は、2つ、3つ、又は4つのポリペプチド鎖を有する共有結合型二重特異性ダイアボディである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ダイアボディは:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号23のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1のポリペプチド鎖及び前記第2のポリペプチド鎖はジスルフィド結合によって互いに共有結合している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者の前記血液悪性腫瘍は:急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML);CMLの急性転化;CMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);リヒター症候群;CLLにおけるリヒター症候群の転化;有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の前記血液悪性腫瘍はAMLである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者の前記血液悪性腫瘍は、化学療法に対して不応性である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記CD123×CD3二重特異性分子の前記治療投薬量は、約30、約60、約100、約200、約300、約400、及び約500ng/患者の体重kg/日からなる群から選択される少なくとも1つの用量を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記治療投薬量は持続注入によって投与される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者はヒト患者である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、連邦規則法典第37巻第1.821節以下による1つ以上の配列表を含み、これらの配列表は、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1301_0167P1_ST25.txt、2020年6月17日作成、サイズ:31,062バイト)において開示されており、上記ファイルは、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は特に、上述のような投与の前の上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【背景技術】
【0003】
I.CD123
CD123(インターロイキン3受容体α、IL‐3Ra)は、40kDa分子であり、インターロイキン3受容体複合体の一部である(非特許文献1)。インターロイキン3(IL‐3)は、多能性幹細胞の赤血球、骨髄及びリンパ系前駆細胞への早期分化を促進する。CD123は、CD34+コミット前駆細胞上で発現される(非特許文献2)が、CD34+/CD38-正常造血幹細胞によっては発現されない。CD123は、好塩基球、肥満細胞、形質細胞様樹状細胞によって発現され、単球、マクロファージ、及び好酸球によって多少発現され、好中球及び巨核球によってはわずかしか又は全く発現されない。一部の非造血組織(胎盤、精巣のライディッヒ細胞、特定の脳細胞要素、及び一部の内皮細胞)はCD123を発現するが、発現は大半が細胞質性である。
【0004】
CD123は、白血病性芽球及び白血病幹細胞(LSC)によって発現されることが報告されている(非特許文献3、4)。ヒトの正常前駆体集団では、CD123は造血前駆細胞(HPC)のサブセットによって発現されるものの、正常な造血幹細胞(HSC)によっては発現されない。CD123はまた、形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球によって、並びに程度はより低いものの単球及び好酸球によって発現される(非特許文献5~9)
【0005】
CD123は、急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)を含む広範な血液悪性腫瘍において、悪性細胞で過剰発現されることが報告されている(非特許文献7)。CD123の過剰発現は、AMLの予後不良に関連している(非特許文献10)。
【0006】
II.CD3
CD3は4つの別個の鎖で構成されたT細胞共受容体である(非特許文献11)。哺乳類では、この複合体は、1つのCD3γ鎖、1つのCD3δ鎖、及び2つのCD3ε鎖を含有する。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と会合して、Tリンパ球中で活性化シグナルを生成する。CD3が存在しない場合、TCRは適切に会合せず、崩壊する(非特許文献12)。CD3は、全ての成熟T細胞の膜に結合し、実質的に他の全ての細胞タイプの膜に結合しないことが分かっている(非特許文献13~15を参照)。
【0007】
III.AML及びMDS
急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)は、一般に休眠している(即ち急速に分裂しない細胞である)ため細胞死(アポトーシス)及び従来の化学療法剤に対する耐性を有する、白血病性幹細胞(LSC)の小さな集団で発生し、それによって永続化すると考えられる。LSCは、高レベルのCD123発現を特徴とし、これは、正常なヒト骨髄中の、対応する正常な造血幹細胞には存在しない(非特許文献4、3)。CD123は、AMLの45%~95%、有毛細胞白血病(HCL)の85%、及び急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL)の40%で発現される。CD123発現は、以下の他の複数の悪性腫瘍/前悪性腫瘍にも関連する:慢性骨髄性白血病(CML)前駆細胞(急性転化CMLを含む);ホジキン/リード・シュテルンベルグ(RS)細胞;形質転換された非ホジキンリンパ腫(NHL);一部の慢性リンパ性白血病(CLL)(CD11c+);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL)のサブセット(16%、最も未成熟、大半が成人)、形質細胞様樹状細胞(pDC)DC2悪性腫瘍、及びCD34+/CD38-骨髄異形成症候群(MDS)骨髄細胞悪性腫瘍。
【0008】
AMLは、形質転換された骨髄前駆細胞の、骨髄中での増殖及び蓄積を特徴とするクローン性疾患であり、これは最終的に造血不全につながる。AMLの発生率は年齢と共に上昇し、高齢の患者ほど、若年の患者に比べて治療成績が悪くなるのが典型的ある(非特許文献16)。残念ながら現在、AMLに罹患したほとんどの成人は、この疾患によって死亡している。
【0009】
AMLの治療はまず、寛解の導入(導入療法)に焦点を合わせる。寛解が達成されると、治療は、このような寛解の確保(寛解後療法又は地固め療法)、及び場合によっては維持療法に焦点を合わせるようにシフトされる。AMLのための標準的な寛解導入パラダイムは、アントラサイクリン/シタラビンの併用による化学療法であり、またこれに続いて、集中治療に耐える患者の能力、及び化学療法単独での治癒の可能性に応じて、(通常は導入期間中に使用されたものと同一の薬剤をより多い用量で使用した)地固め化学療法、又はヒト幹細胞移植が行われる(例えば非特許文献17を参照)。
【0010】
導入療法に頻繁に使用される作用剤としては、シタラビン及びアントラサイクリンが挙げられる。シタラビン(AraCとしても公知)は、DNA合成に干渉することによって、がん細胞(及び他の急速に分裂する正常な細胞)を殺滅する。AraC治療に関連する副作用としては:白血球産生の減少の結果としての、感染症に対する耐性の低下;血小板産生の減少の結果としての出血;及び赤血球細胞の潜在的減少による貧血が挙げられる。他の副作用としては、悪心及び嘔吐が挙げられる。アントラサイクリン(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン)は、DNA及びRNA合成の阻害、DNAの高次構造の破壊、並びに細胞損傷性遊離酸素ラジカルの産生を含む、複数の作用機序を有する。アントラサイクリンの最も重要な副作用は心毒性であり、これにより、投与される生涯用量がかなり制限され、その有用性もある程度制限される。
【0011】
幹細胞移植は、初回又はその後の寛解における、AMLに罹患した患者の抗白血病療法の最も有効な形態として確立されている(非特許文献17)。しかしながら残念なことに、新たに診断されたAMLの治療における大幅な進歩にもかかわらず、患者の20%~40%は、標準的な導入化学療法で寛解を達成せず、第1完全寛解に達した患者の50%~70%は、3年以内の再発が予測される。再発時の、又は抵抗性疾患を有する患者のための最適な戦略は、依然として不確実である(非特許文献18~23を参照)。よって新規の治療戦略が必要とされている。
【0012】
IV.二重特異性分子
非単一特異性分子(例えば二重特異性抗体、二重特異性ダイアボディ、BiTE(登録商標)抗体等)の提供は、異なる複数のエピトープを発現する細胞を共連結及び共局在化する能力という、天然抗体等の単一特異性分子を上回る有意な利点を提供する。従って二重特異性分子は、療法及び免疫診断を含む広範な用途を有する。二重特異性により、様々な用途におけるダイアボディの設計及び操作に高い柔軟性がもたらされ、これにより、多量体抗原への結合活性の強化、異なる抗原の架橋、及び両方の標的抗原の存在に依存する特定の細胞タイプへの指向性標的化が提供される。特に重要なのは、異なる複数の細胞の共連結、例えば細胞傷害性T細胞等のエフェクタ細胞の、腫瘍細胞に対する架橋である(非特許文献24、25)。
【0013】
天然抗体よりも高い能力を有する分子を提供するために、広範な組み換え二重特異性抗体フォーマットが開発されており(例えば特許文献1~7)、これらの大半は、リンカーペプチドを用いて、更なる結合タンパク質(例えばscFv、VL、VH等)を、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG若しくはIgM)に、若しくはこれらの中に融合させるか、複数の抗体結合部分(例えば2つのFab断片若しくはscFv)を互いに融合させる。別のフォーマットは、リンカーペプチドを用いて、結合タンパク質(例えばscFv、VL、VH等)を、CH2‐CH3ドメイン等の二量体化ドメインに、又は別のポリペプチドに融合させ(特許文献8~11)、また他のフォーマットでは、CL及びCH1ドメインがそれぞれの自然な位置から交換される、並びに/又はVL及びVHドメインが、2つ以上の抗原に結合できるように多様化される(特許文献12、13)。
【0014】
当該技術分野は更に、2つ以上の異なるエピトープ種に結合できるダイアボディを産生できることに言及している(例えば非特許文献26を参照)。安定した共有結合型ヘテロ二量体非単一特異性ダイアボディが記載されている(例えば特許文献14~18、非特許文献27~29を参照)。このようなダイアボディは、1つ以上のシステイン残基を、採用されたポリペプチド種それぞれに組み込む。例えば、システイン残基をこのような構造のC末端に付加すると、ポリペプチド鎖間のジスルフィド結合が可能となり、2価分子の結合特性に干渉することなく、結果として得られるヘテロ二量体を安定させることができることが示されている。更に、ダイアボディ様ドメインを含む3価分子が記載されている(例えば特許文献19、20を参照)。ダイアボディエピトープ結合ドメインはまた、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は他の単核細胞で発現される、CD3、CD16、CD32、又はCD64といったいずれの免疫エフェクタ細胞の表面決定因子を指向することもできる。多くの研究において、エフェクタ細胞決定因子、例えばFcγ受容体(FcγR)に結合するダイアボディは、該エフェクタ細胞を活性化することも分かった(非特許文献25、30、特許文献14~18)。通常、エフェクタ細胞の活性化は、Fc‐FcγR相互作用による、エフェクタ細胞への抗原結合抗体の結合によってトリガされ、従ってこの点に関して、ダイアボディ分子は、Fcドメインを含むかどうかにかかわらず、(例えば当該技術分野において公知の、又は本明細書で例示されている、いずれのエフェクタ機能アッセイ(例えばADCCアッセイ)においてアッセイされるような)Ig様の機能を示し得る。腫瘍細胞とエフェクタ細胞とを架橋することにより、ダイアボディは、エフェクタ細胞を腫瘍細胞の付近に運ぶだけでなく、効果的な細胞殺滅をもたらす(例えば非特許文献31を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/003116号
【特許文献2】国際公開第2009/132876号
【特許文献3】国際公開第2008/003103号
【特許文献4】国際公開第2007/146968号
【特許文献5】国際公開第2009/018386号
【特許文献6】国際公開第2012/009544号
【特許文献7】国際公開第2013/070565号
【特許文献8】国際公開第2005/070966号
【特許文献9】国際公開第2006/107786号
【特許文献10】国際公開第2006/107617号
【特許文献11】国際公開第2007/046893号
【特許文献12】国際公開第2008/027236号
【特許文献13】国際公開第2010/108127号
【特許文献14】国際公開第2006/113665号
【特許文献15】国際公開第/2008/157379号
【特許文献16】国際公開第2010/080538号
【特許文献17】国際公開第2012/018687号
【特許文献18】国際公開第2012/162068号
【特許文献19】国際公開第2015/184203号
【特許文献20】国際公開第2015/184207号
【非特許文献】
【0016】
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【非特許文献28】Veri, M.C. et al. (2010) “Therapeutic Control Of B Cell Activation Via Recruitment Of Fcgamma Receptor IIb (CD32B) Inhibitory Function With A Novel Bispecific Antibody Scaffold,” Arthritis Rheum. 62(7):1933-1943
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【非特許文献30】Holliger et al. (1999) “Carcinoembryonic Antigen (CEA)-Specific T-cell Activation In Colon Carcinoma Induced By Anti-CD3 x Anti-CEA Bispecific Diabodies And B7 x Anti-CEA Bispecific Fusion Proteins,” Cancer Res. 59:2909-2916
【非特許文献31】Cao et al. (2003) “Bispecific Antibody Conjugates In Therapeutics,” Adv. Drug. Deliv. Rev. 55:171-197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
CD123発現性悪性細胞のT細胞標的転換細胞殺滅を仲介できる、CD123及びCD3を標的とするいくつかの二重特異性分子が開発中である(例えばVey, N., et al. (2017) “Interim Results From A Phase 1 First-In-Human Study Of Flotetuzumab, a CD123 x CD3 Bispecific DART Molecule In AML/MDS,” Annals of Oncology, 28(S5)5, mdx373.001; Godwin, C.D., et al. (2017) “Bispecific Anti-CD123 x Anti-CD3 AdaptirTM Molecules APVO436 and APVO437 Have Broad Activity Against Primary Human AML Cells In Vitro” Blood. 130(S1): 2639; Forslund, A., et al. (2016) “Ex Vivo Activity Profile of the CD123xCD3 Duobody (Registered Trademark) Antibody JNJ-63709178 Against Primary Acute Myeloid Leukemia Bone Marrow Samples” Blood 128(22):2875を参照)。しかしながら、T細胞を血液悪性腫瘍の位置へと標的化できる二重特異性結合分子を採用するための努力は、十分に成功しているとは言えない。従って、CD123×CD3二重特異性結合分子を用いた血液悪性腫瘍の治療のための新規の戦略を開発することについて、満たされていない需要が存在し続けている。本発明はこの需要、及び以下に記載される他の需要に直接対処する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は特に、上述のような投与の前の上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【0019】
詳細には、本発明は、患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定する方法を提供し、上記方法は:
(a)1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の発現に対して、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記患者由来の細胞試料中での1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップ;並びに
(b)上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、上記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の上記発現に対して増大していることが分かった場合に、上記患者を、CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好適な応答者として識別するステップであって、上記1つ以上の標的遺伝子は:SERPHINH1、NOTCH2、FCGR3A/B、FPR1、FBP1、PDGFA、CRABP2、THBS1、ICOS、及びCD8Bからなる群から選択される、ステップ
を含む。
【0020】
本発明は更に、上記方法が:(i)上記1つ以上の標的遺伝子の上記発現;及び(ii)その発現が血液悪性腫瘍と特徴的な関連を有しない1つ以上の基準遺伝子を評価する、上記方法の実施形態を提供する。
【0021】
本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の基準遺伝子のベースライン発現に対して上記1つ以上の標的遺伝子の上記発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0022】
本発明は更に、血液悪性腫瘍に罹患している個体の、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、ある患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、血液悪性腫瘍に罹患している上記個体の、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、又は第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記方法の実施形態を提供する。
【0023】
本発明は更に、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療されなかった個体(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体)、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、ある患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、良好に治療されなかった上記個体又は上記個体の集団の1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、又は第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記方法の実施形態を提供する。
【0024】
本発明は更に、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療された個体(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体)、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、ある患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、良好に治療された上記個体又は上記個体の集団の上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、第1四分位数以内(即ち下25%以内)、第2四分位数以内(即ち下25%~50%)、又は第3四分位数以内(即ち下50%~75%)である、上記方法の実施形態を提供する。
【0025】
本発明は更に、上記集団における上記1つ以上の標的遺伝子の相対発現レベルが、上記個体の集団から得られた細胞試料における遺伝子発現レベルを平均することによって確立される、上記方法の実施形態を提供する。
【0026】
本発明は更に、上記患者が:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内である、
上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルを示す、上記方法の実施形態を提供する。
【0027】
本発明は更に、上記患者が:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第2四分位数以内である、
上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルを示す、上記方法の実施形態を提供する。
【0028】
本発明は更に、上記患者が:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い、
上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルを示す、上記方法の実施形態を提供する。
【0029】
本発明は更に、上記患者が上述のような治療に対する好適な応答者であると判定された場合に、上記患者に治療投薬量の上記CD123×CD3二重特異性分子を投与するステップを更に含み、上記CD123×CD3二重特異性分子の上記投与が、上記患者の体内の血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激する、上記方法の実施形態を提供する。
【0030】
本発明は更に、血液悪性腫瘍を治療する方法を提供し、上記方法は:
(a)上述の実施形態のうちのいずれか1つの方法を採用して、患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定するステップ;
(b)上記患者がこのような治療に対する好適な応答者であると判定された場合に、治療投薬量の上記CD123×CD3二重特異性分子を上記患者に投与するステップ
を含み、
上記CD123×CD3二重特異性分子の投与は、上記患者の体内での血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激する。
【0031】
本発明は更に、上記治療の開始後に、上記患者から得られた細胞試料中での上記1つ以上の標的遺伝子の発現を、1回以上評価するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0032】
本発明は更に、上記細胞試料が骨髄又は血液試料である、上記方法の実施形態を提供する。特に本発明は、上記細胞試料が骨髄試料である、上記方法の実施形態を提供する。
【0033】
本発明は更に、上記患者の骨髄の試料中での、上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルを検出するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルを検出するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0034】
本発明は更に、特にCD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記患者の骨髄の試料中での、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現レベルを検出するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0035】
本発明は更に、発現の評価、又は上記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの判定が:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の遺伝子発現レベルを判定するステップ;及び
(b)標的遺伝子発現レベルを、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルと比較するステップ
によって実施される、上記方法の実施形態を提供する。
【0036】
本発明は更に、発現の評価、又は上記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの判定が:
(a)遺伝子発現プラットフォームで、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の生RNAレベルを判定するステップであって、上記遺伝子発現プラットフォームは、ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む、ステップ;及び
(b)内部基準遺伝子の測定されたRNAレベルを用いて、上記標的遺伝子に関する測定された上記生RNAレベルそれぞれに、相対発現値を割り当てるステップ
によって実施される、上記方法の実施形態を提供する。
【0037】
本発明は更に、上記1つ以上の基準遺伝子が、ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBBのうちの1つ以上を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0038】
本発明は更に、上記1つ以上の標的遺伝子に関して遺伝子シグネチャスコアを決定する、上記方法の実施形態を提供する。本発明の特定の実施形態では、上記遺伝子シグネチャスコアは、各上記標的遺伝子の上記生RNAレベルから:
(a)ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での、各上記標的遺伝子に関する上記生RNAレベルを測定するステップ;
(b)測定された上記生RNAレベルそれぞれを、上記ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化し、また任意に各RNA値を標準に対して更に正規化するステップ;
(c)各正規化済みRNA値を対数変換するステップ;
(d)上記シグネチャ内の各標的に関する対数変換済みRNA値を合計するステップ;及び
(e)正規化・対数変換済みRNA値の合計を、上記シグネチャ内の上記標的遺伝子の個数で除算して、遺伝子シグネチャスコアを生成するステップ
を含むプロセスによって決定される。
【0039】
本発明は更に:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0040】
本発明は更に:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第2四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0041】
本発明は更に:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0042】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が、scFvを含む二重特異性抗体又は二重特異性分子である、上記方法の実施形態を提供する。
【0043】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が、JNJ‐63709178、XmAb14045、又はAPVO436である、上記方法の実施形態を提供する。
【0044】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が、2つ、3つ、又は4つのポリペプチド鎖を有する共有結合型二重特異性ダイアボディである、上記方法の実施形態を提供する。
【0045】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が:
(a)配列番号6のCDRを含むVHCD123ドメイン;及び
(b)配列番号10のCDRを含むVLCD123ドメイン
を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0046】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が:
(a)配列番号6を含むVHCD123ドメイン;及び
(b)配列番号10を含むVLCD123ドメイン
を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0047】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が:
(a)配列番号14のCDRを含むVHCD3ドメイン;及び
(b)配列番号1のCDRを含むVLCD3ドメイン
を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0048】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が:
(a)配列番号14を含むVHCD3ドメイン;及び
(b)配列番号1を含むVLCD3ドメイン
を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0049】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖
を含むダイアボディであり、上記第1のポリペプチド鎖及び上記第2のポリペプチド鎖はジスルフィド結合によって互いに共有結合している、上記方法の実施形態を提供する。
【0050】
本発明は更に、上記患者の血液悪性腫瘍が:急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML);CMLの急性転化;CMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);リヒター症候群;CLLにおけるリヒター症候群の転化;有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、上記方法の実施形態を提供する。
【0051】
本発明は更に、上記患者の血液悪性腫瘍がAML、MDS、BPDCN、又はT‐ALLである、上記方法の実施形態を提供する。
【0052】
本発明は更に、上記患者の血液悪性腫瘍が、化学療法(CTX)に対して不応性である、例えばシタラビン/アントラサイクリン系細胞傷害性化学療法に対して不応性である、又は低メチル化剤(HMA)化学療法に対して不応性である、上記方法の実施形態を提供する。
【0053】
本発明は更に、芽球細胞(癌細胞)のCD123の発現のレベルを、正常な末梢血単核細胞(PBMC)によって発現される対応するベースラインレベルCD123と比較して決定するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0054】
本発明は更に、上記発現のレベルが、CD123の細胞表面発現を測定することによって決定される、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、CD123の細胞表面発現が、発現のベースラインレベルに対して少なくとも約20%増大する、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、CD123発現の増大が、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する上記患者の応答性を高める、上記方法の実施形態を提供する。
【0055】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子の有効投薬量が、約30、約60、約100、約200、約300、約400、及び約500ng/患者の体重kg/日からなる群から選択される、上記方法の実施形態を提供する。
【0056】
本発明は更に、上記治療投薬量が持続注入として投与される、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、約30ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与し、次に約60ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与し、次に約100ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与し、次に約200ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与し、次に約300ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与し、次に約400ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与し、次に約500ng/kg/日の治療投薬量を1日にわたって持続注入で投与する、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記治療投薬量が、最長で更に21日にわたる、持続注入によって投与される約500ng/kg/日の投与を更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0057】
本発明は更に、上記患者がヒト患者である、上述の全ての方法の実施形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1A~1Cは、例示的なダイアボディ分子の全体的構造を示す。図1Aは、2つのエピトープ結合ドメイン、ヘテロ二量体促進ドメイン、及びシステイン含有リンカーを有する2鎖CD123×CD3二重特異性ダイアボディ(フロテツズマブとしても知られる「DART‐A」)の、第1及び第2のポリペプチド鎖の構造を提供する。図1B~1Cは、3つのポリペプチド鎖で構成される、2つのエピトープ結合ドメインを有するCD123×CD3二重特異性ダイアボディの全体的構造を提供する。上記ポリペプチド鎖のうちの2つは、CH2及びCH3ドメインを有し、従って会合した鎖はFcドメインの全体又は一部を形成する。VL及びVHドメインを含むポリペプチド鎖は更に、ヘテロ二量体促進ドメイン及びリンカーを含む。システイン残基は、リンカーに(図1A及び1B)、並びに/又はヘテロ二量体促進ドメインに(図1C)、存在してよい。同一のエピトープを認識するVL及びVHドメインは、同一の濃淡又は塗りつぶしパターンを用いて示されている。
図2図2は、フロテツズマブに対する完全奏効(完全寛解(CR)、部分的な血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)、不完全な血液学的回復を伴う完全寛解(CRi))に関連する上位10個の遺伝子の発現を示す。このコホート内での各遺伝子の発現を、-2から+2へとスケーリングした。治療後の患者の応答、並びに研究に組み入れた時点での状態及び免疫クラスタが、上部の複数の行に示されている。免疫クラスタ状態は、過去に詳述されているように定義された(Vadakekolathu J, et al. (2020) “Immune Landscapes Predict Chemotherapy Resistance And Immunotherapy Response In Acute Myeloid Leukemia,” Sci Transl Med. 12:eaaz0463)。
図3図3は、完全奏効、部分奏功、及び無奏功を示す患者に関する10遺伝子シグネチャスコアをプロットしている。
図4図4は、再発した不応性AMLの患者からのベースライン骨髄試料における、10遺伝子分類因子スコアと、免疫細胞型特異的な生物活性シグニチャスコアとの間の、相関係数をまとめたヒートマップである。
図5図5は、フロテツズマブからの高白血病活性から、10遺伝子シグネチャスコア及びELN細胞遺伝学的リスクの単独での又は組み合わされた場合の予測能力を測定する、AUROC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は特に、上述のような投与の前の上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【0060】
上述のように、化学療法耐性及び再発は、急性骨髄性白血病(AML)に罹患した小児及び成人の死亡の重大な原因であり続けている。従来の化学療法を受けても、患者のうちの26.9%しか、5年を超えて生存しないと予想される。
【0061】
急性骨髄性白血病(AML)に罹患した患者における治療アプローチは、30年以上にわたってあまり変化していない。標準的な最前線の療法は、ダウノルビシンと組み合わせて投与されるシタラビンの、2薬剤レジメン(いわゆる7+3導入療法、本明細書中では「CTX」と略される)である。低メチル化剤(本明細書中では「HMA」と略される)デシタビン及びアザシチジンは一般に、比較的高齢の患者に、又はCTXレジメンが適合しないと考えられる患者に投与される。しかしながら、文献による推定では、患者のうちの最高45%が、標準的な最前線の化学療法に対して不応性であることが示されている。従来の細胞傷害性化学療法の更なる強化は、これらの薬剤によって一般に誘発される正常細胞に対する急性かつ長期の副作用の重篤度を理由として、実行不可能とみなされてきた(Tasian, S.K. (2018 “Acute Myeloid Leukemia Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapy: How Far Up The Road Have We Traveled?,” Ther. Adv. Hematol. 9(6):135-148; Przespolewski, A. et al. (2018) “Advances In Immunotherapy For Acute Myeloid Leukemia” Future Oncol. 14(10):963-978; Shimabukuro-Vornhagen, A. et al. (2018) “Cytokine Release Syndrome,” J. Immunother. Cancer. 6(1):56 pp. 1-14; Milone, M.C. et al. (2018) “The Pharmacology of T Cell Therapies,” Mol. Ther. Methods Clin. Dev. 8:210-221; Dhodapkar, M.V. et al. (2017) “Hematologic Malignancies: Plasma Cell Disorders,” Am. Soc. Clin. Oncol. Educ. Book. 37:561-568; Kroschinsky, F. et al. (2017) “New Drugs, New Toxicities: Severe Side Effects Of Modern Targeted And Immunotherapy Of Cancer And Their Management,” Crit. Care 14;21(1):89)。
【0062】
T細胞と結合する二重特異性抗体は、炎症誘発性サイトカインの放出を刺激する。このようなサイトカインは、直接的な細胞傷害性によって、並びに免疫細胞を活性化させて腫瘍部位に動員することにより、抗白血病的効能を増大させることができる(Hoseini, S.S. et al. (2107) “Acute Myeloid Leukemia Targets For Bispecific Antibodies,” Blood Cancer Journal 7:e522, doi:10.1038/bcj.2017.2; pp. 1-12)。特に、フロテツズマブというCD123×CD3二重特異性結合分子を用いた治療は、再発/不応性(「R/R」)AMLのフェーズ1/2試験で試験されている。血液悪性腫瘍を引き起こす癌細胞を選択的に標的とする、免疫療法の優れた能力にもかかわらず(例えばKoch, J. et al. (2017) “Recombinant Antibodies to Arm Cytotoxic Lymphocytes in Cancer Immunotherapy,” Transfus. Med. Hemother. 44:337-350; Lichtenegger, F.S. et al. (2017) “Recent Developments In Immunotherapy Of Acute Myeloid Leukemia,” J. Hematol. Oncol. 10:142, pp. 1-20を参照)、T細胞を血液悪性腫瘍の位置に標的化できる二重特異性結合分子を採用するための努力は十分に成功していない。
【0063】
従って、免疫療法を含む新規の治療戦略の発見は、依然として優先事項である。免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境(「TME」)を有するAML患者は、無再発生存期間が有意に短いことが過去に報告されており、これは標準的な導入化学療法に対する不応性を示唆している(Vadakekolathu, J. et al. (2017) “Immune Gene Expression Profiling in Children and Adults with Acute Myeloid Leukemia Identifies Distinct Phenotypic Patterns,” Blood 130:3942A)。更に、特定の遺伝子発現シグネチャが、CD123×CD3二重特異性分子であるフロテツズマブに対する応答と相関することが報告されている(Vadakekolathu J, et al. (2020) “Immune Landscapes Predict Chemotherapy Resistance And Immunotherapy Response In Acute Myeloid Leukemia,” Sci. Transl. Med. 12(546):eaaz0463)。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子発現シグネチャ(gene expression signature)」は、特定の細胞タイプ及び/又は生物学的プロセスに特徴的な遺伝子のグループの遺伝子発現のパターンを指すことを意図したものである(例えばStenner, F. et al. (2018) “Cancer Immunotherapy and the Immune Response in Follicular Lymphoma,” Front. Oncol. 8:219 doi: 10.3389/fonc.2018.00219, pages 1-7; Cesano, A. et al. (2018) “Bringing The Next Generation Of Immuno-Oncology Biomarkers To The Clinic,” Biomedicines 6(14) doi: 10.3390/biomedicines6010014, pages 1-11; Shrestha, G. et al. (2016) “The Value Of Genomics In Dissecting The RAS-Network And In Guiding Therapeutics For RAS-Driven Cancers,” Semin. Cell Dev. Biol. 58:108-117; Gingras, I. et al. (2015) “CCR 20th Anniversary Commentary: Gene-Expression Signature in Breast Cancer--Where Did It Start and Where Are We Now?,” Clin. Cancer Res. 21(21):4743-4746; Eberhart, C.G. (2011) “Molecular Diagnostics In Embryonal Brain Tumors,” Brain Pathol. 21(1):96-104; Baylin, S.B. (2009) “Stem Cells, Cancer, And Epigenetics,” StemBook, ed. The Stem Cell Research Community, StemBook, doi/10.3824/stembook.1.50.1, pages 1-14; Asakura, M. et al. (2009) “Global Gene Expression Profiling In The Failing Myocardium,” Circ. J. 73(9):1568-1576; Shaffer, A.L. et al. (2001) “Signatures Of The Immune Response,” Immunity 15(3):375-385; Staudt, L.M. et al. (2005) “The Biology Of Human Lymphoid Malignancies Revealed By Gene Expression Profiling,” Adv. Immunol. 87:163-208を参照)。観察された遺伝子発現シグネチャ、及び/又は変更された(若しくは変更されていない)1つ以上の生物学的プロセスに起因する該シグネチャの変化を用いて、病原性の医学的状態の存在、性質、及び/又は重篤度を評価できる。
【0065】
本発明の中心的な態様は、CD123×CD3二重特異性結合分子であるフロテツズマブを採用した療法を含む、CD123×CD3二重特異性結合分子を採用した療法に対する好ましい応答を予測する、独自の「10遺伝子発現シグネチャ(10-Gene Expression Signature)」の特定に関する。「10遺伝子発現シグネチャ」の10個の遺伝子は:SERPHINH1、NOTCH2、FCGR3A/B、FPR1、FBP1、PDGFA、CRABP2、THBS1、ICOS、及びCD8Bである。本発明は部分的に、不応性血液悪性腫瘍(例えば急性骨髄性白血病)に罹患した患者の特定の亜集団が、CD123×CD3二重特異性結合分子(例えばフロテツズマブ)を用いた治療に特に適しているという認識に由来する。この亜集団のメンバーは、上記メンバーが、上述のような10遺伝子発現シグネチャの発現の上昇を示すことができることによって、容易に同定できる。
【0066】
I.本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子を用いた治療に特に好適な患者集団の同定
A.「遺伝子発現シグネチャ」の決定方法
ある患者が、10遺伝子発現シグネチャの発現の上昇を示すかどうかを判断することによって、本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に特に適しているかどうかを識別するために、患者から得られた細胞試料に由来するRNA試料を評価して、これが、上記シグネチャと相関して発現する1つ以上の「標的(target)」遺伝子の発現の増大のエビデンスとなるかどうかを判断する。このような評価は、遺伝子発現の既存の検出及び/若しくは測定を利用してよく、又はこのような遺伝子発現を検出及び/若しくは測定する1つ以上のステップを組み込んだものであってもよい。本明細書中で使用される場合、用語「細胞試料(cellular sample)」は、細胞又は細胞の抽出物を含有する試料を指す。
【0067】
ある患者が、CD123×CD3二重特異性結合分子を採用した療法に対する好ましい応答に対する応答の特徴である10遺伝子発現シグネチャを示すかどうかの判断において使用するためのRNA又はタンパク質のソースとして、いずれの細胞試料を採用してよい。特定の実施形態では、このような遺伝子発現の比較は、患者又はドナーの集団の骨髄(BM)試料から、又は血液試料から、又は芽球細胞(癌細胞)から得られたRNAを使用して実施される。ドナーの集団の上述のような細胞からRNAを得て、ベースライン発現レベルを提供する場合、採用された発現レベルの平均を使用してよい(例えば幾何平均を採用してよい)。多数の異なる基準集団を、このような遺伝子発現の比較に使用してよい。特定の実施形態では、患者が示す少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを:血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団;上記基準発現レベルの決定時に上記血液悪性腫瘍に罹患していて、血液悪性腫瘍の治療に対する良好な応答性を有していなかった個体の集団(即ちCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団);及び/又は上記基準発現レベルの決定時に上記血液悪性腫瘍に罹患していて、その後、血液悪性腫瘍が、本発明の方法及び組成物を用いて良好に治療された個体の集団(即ちCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)において示される、上記標的遺伝子の発現レベルと比較する。比較対象集団が、血液悪性腫瘍に罹患している集団である場合、このような集団は好ましくは、同一の血液悪性腫瘍に罹患している個体を患者として含む。このような集団は、化学療法剤を用いた過去の治療後に再発した、及び/又は化学療法剤を用いた治療に対して不応性であった(即ち一次不応性の)個体を含んでよい。比較対象集団が、CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた、又は有していなかった個体の集団である場合、上記集団は好ましくは、同一の血液悪性腫瘍に罹患している個体を患者として含む。
【0068】
本明細書中で使用される場合、遺伝子の発現は、ベースライン又は他の比較対象(例えばある集団におけるこのような遺伝子の発現)に対して、その発現が少なくとも約10%多い、少なくとも約20%多い、少なくとも約30%多い、少なくとも約40%多い、少なくとも約50%多い、少なくとも約60%多い、少なくとも約70%多い、少なくとも約80%多い、少なくとも約90%多い、少なくとも約1.5倍多い、少なくとも約2倍多い、少なくとも約2.5倍多い、少なくとも約3倍多い、少なくとも約3.5倍多い、少なくとも約4倍多い、少なくとも約4.5倍多い、少なくとも約5倍多い、少なくとも約5.5倍多い、少なくとも約6倍多い、少なくとも約6.5倍多い、少なくとも約7倍多い、少なくとも約7.5倍多い、少なくとも約8倍多い、少なくとも約8.5倍多い、少なくとも約9倍多い、少なくとも約10倍多い場合に、「増大している(increased)」と表現される。あるいはこのような増大を、「log2倍率変化(log2-fold change)」に関して記述できる。発現の増大に関して、例えば0.4のlog2倍率変化は約30%多い発現に相当し;0.5のlog2倍率変化は約40%多い発現に相当し;0.6のlog2倍率変化は約50%多い発現に相当し;0.7のlog2倍率変化は約60%多い発現に相当し;0.8のlog2倍率変化は約70%多い発現に相当し;0.9のlog2倍率変化は約90%多い発現に相当し;1のlog2倍率変化は2倍の増大に相当し;1.5のlog2倍率変化は2.8倍の増大に相当し;2のlog2倍率変化は4倍の増大に相当し;2.5のlog2倍率変化は5.7倍の増大に相当し;3のlog2倍率変化は8倍の増大に相当し;3.5のlog2倍率変化は11.3倍の増大に相当し;4のlog2倍率変化は16倍の増大に相当する。log2倍率変化は一般に、計数をアレイデータと比較する際に使用され、t検定にも適当である。
【0069】
あるいは上記増大は、「遺伝子シグネチャスコア(gene signature score)」に関して記述され、ここでは、標的遺伝子の各クラスタの発現を測定し、1つ以上のハウスキーピング遺伝子及び/又は内部標準に対して正規化して合計することにより、単一の遺伝子シグネチャスコアが生成される。任意に、正規化の後かつ合計の前に、各標的遺伝子の発現に対して対数変換及び/又は重み付けを実施してよい。上記スコアを算出するための方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書では特定の方法を提供する(後述の実施例1を参照)。
【0070】
また、患者の10遺伝子シグネチャスコアは、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0071】
また、患者の10遺伝子シグネチャスコアは、血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0072】
また、患者の10遺伝子シグネチャスコアは、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療された個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアの、少なくとも第1四分位数以内(即ち下25%以内)である、上記遺伝子シグネチャスコアの少なくとも第2四分位数以内(即ち下25%~50%)である、少なくとも第3四分位数以内(即ち下50%~75%)である、85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0073】
10遺伝子シグネチャスコアの増大の発見は、本発明のCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である。
【0074】
一実施形態では、患者は、標的遺伝子の発現が、評価対象の患者における、該患者が健康だったときの若しくは該患者が血液悪性腫瘍の診断を受ける前の上記遺伝子の発現のベースラインレベルに対して、又は該患者の化学療法治療レジメンの経過中の、若しくは該患者のCD123×CD3二重特異性結合分子を伴う治療レジメンの経過中のある時点における該遺伝子の発現に対して、「増大している」かどうかを判断することによって、10遺伝子発現シグネチャの上昇を示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。
【0075】
第2の実施形態では、患者は、1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における1つ以上のこのような標的遺伝子発現の平均又は重み付きベースラインレベルと比較することによって、10遺伝子発現シグネチャの上昇を示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。上記平均又は重み付きベースラインレベルよりも多く発現する標的遺伝子は、「増大した」発現のレベルを示すと表現され、本発明の方法及び組成物は、このような患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。例えば本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。
【0076】
第3の実施形態では、患者は、1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを、過去に本発明の方法及び組成物を用いて血液悪性腫瘍が良好に治療されなかった個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団)における1つ以上のこのような標的遺伝子発現の平均又は重み付きベースラインレベルと比較することによって、10遺伝子発現シグネチャの上昇を示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。上記平均又は重み付きベースラインレベル以上に発現する標的遺伝子は、「増大した」発現のレベルを示すと表現され、本発明の方法及び組成物は、このような患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。例えば本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。
【0077】
第4の実施形態では、患者は、1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを、過去に本発明の方法及び組成物を用いて血液悪性腫瘍が良好に治療された個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)における1つ以上のこのような標的遺伝子発現の平均又は重み付きベースラインレベルと比較することによって、10遺伝子発現シグネチャの上昇を示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。上記平均又は重み付きベースラインレベル以上に発現する標的遺伝子は、「増大した」発現のレベルを示すと表現され、本発明の方法及び組成物は、このような患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。例えば本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内(即ち下25%以内)の、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第2四分位数以内(即ち下25%~50%)の、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第3四分位数以内(即ち下50%~75%)の、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第4四分位数以内の(即ち下75%より高い)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に、更に好適である。
【0078】
特定の実施形態では、標的遺伝子の発現が「増大している」かどうかは、該標的遺伝子の発現レベルを、疾患に関連しない又は疾患状態の結果として発現の増大を示さない1つ以上の遺伝子(「基準(reference)」遺伝子)の発現レベルと比較することによって判断される。基準遺伝子は異なる複数のレベルで発現することが多いため、基準遺伝子の発現の幾何平均を利用して、スケーリング計数を算出できる。幾何平均は、データセット内のサンプル値毎に各遺伝子を乗算し、得られた積のn乗根(nは上記セット内の数の個数である)を求めることによって得られる。幾何平均は、一連の数値の中央傾向を示すという点で算術平均と類似している。しかしながら、算術平均とは異なり、幾何平均は、プローブ間の計数レベルの大きさの変動に対する感度が低い。試料のコホートにわたって生物学的シグネチャを比較する際、1つ以上の「基準遺伝子」のセットからの幾何平均を用いて、データセットにわたる個々の試料を正規化することにより、生物学的遺伝子間の比較を、試料の質量入力及び試料の品質等の技術的変動による差異から独立させることができる。
【0079】
好ましい「基準遺伝子」は、正常な細胞及び悪性細胞において同一のレベルで恒常的に発現される。基本的な細胞機能の維持に必要な遺伝子等のハウスキーピング遺伝子(Eisenberg, E. et al. (2003) “Human Housekeeping Genes Are Compact,” Trends in Genetics. 19(7):362-365; kon Butte, A.J. et al. (2001) “Further Defining Housekeeping, Or "Maintenance," Genes Focus On 'A Compendium Of Gene Expression In Normal Human Tissues’,” Physiol. Genomics. 7(2):95-96; Zhu, J. et al. (2008) “On The Nature Of Human Housekeeping Genes,” Trends in Genetics 24(10):481-484; Eisenberg, E. et al. (2013) “Human Housekeeping Genes, Revisited,” Trends in Genetics. 29(10):569-574)が、基準遺伝子の好ましいクラスである。
【0080】
更なる実施形態では、本発明のCD123×CD3結合分子療法は更に、抗ヒトPD‐L1抗体等の抗ヒトPD‐L1結合分子、又はヒトPD‐L1結合ドメインを有するダイアボディの投与を含んでよい。この実施形態に従って使用してよい抗ヒトPD‐L1結合分子としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブが挙げられる(例えば米国特許第9,873,740号;米国特許第8,779,108号を参照)。アテゾリズマブ(WHO Drug Information, 2015, Recommended INN: List 74, 29(3):387)、デュルバルマブ(WHO Drug Information, 2015, Recommended INN: List 74, 29(3):393-394)、及びアベルマブ(WHO Drug Information, 2016, Recommended INN: List 74, 30(1):100-101)の完全重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、当該技術分野において公知である。
【0081】
更なる代替実施形態では、本発明のCD123×CD3結合分子療法は更に、抗ヒトPD‐1抗体等の抗ヒトPD‐1結合分子、又はヒトPD‐1結合ドメインを有するダイアボディの投与を含んでよい。この実施形態に従って使用してよい抗ヒトPD‐1結合分子としては:ニボルマブ(5C4、BMS‐936558、ONO‐4538、MDX‐1106としても公知、Bristol‐Myers SquibbがOPDIVO(登録商標)として市販)、ペンブロリズマブ(旧称ランブロリズマブ、MK‐3475、SCH‐900475としても公知、MerckがKEYTRUDA(登録商標)として市販)、EH12.2H7(BioLegendが市販)、ピジリズマブ(CAS登録番号1036730‐42‐3、CT‐011としても公知、CureTech)、レチファンリマブ(CAS登録番号2226345‐85‐1、MGA012としても公知)、及びDART‐I(国際公開第2017/019846号で開示)が挙げられる(例えば米国特許第5,952,136号;米国特許第7,488,802号;米国特許第7,521,051号;米国特許第8,008,449号;米国特許第8,088,905号;米国特許第8,354,509号;米国特許第8,552,154号;米国特許第8,779,105号;米国特許第8,900,587号;米国特許第9,084,776号;国際公開第2004/056875号;国際公開第2006/121168号;国際公開第2008/156712号;国際公開第2012/135408号;国際公開第2012/145493号;国際公開第2013/014668号;国際公開第2014/179664号;国際公開第2014/194302号;国際公開第2015/112800号;国際公開第2017/019846号;及び国際公開第2017/214092号も参照)。
【0082】
B.例示的な「標的」遺伝子
表1は、標的遺伝子と、10遺伝子シグネチャにおいて特定される各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なGenBank(登録商標)登録番号とを開示する。
【0083】
【表1】
【0084】
C.例示的な「基準」遺伝子
正常な細胞及び悪性細胞において同一のレベルで恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子は、基準遺伝子の1つの例示的なクラスを構成する。ハウスキーピング遺伝子としては、一般的な遺伝子発現に関与する遺伝子(例えば転写因子、リプレッサ、RNAスプライシング因子、翻訳因子、tRNA合成酵素、RNA結合タンパク質、リボソームタンパク質、ミトコンドリアリボソームタンパク質、RNAポリメラーゼ、タンパク質プロセシング因子、熱ショックタンパク質、ヒストン、細胞周期調節因子、アポトーシス、癌遺伝子、DNA修復/複製等をコードする遺伝子)、代謝に関与する遺伝子(例えば:炭水化物代謝、クエン酸サイクル、脂質代謝、アミノ酸代謝、NADHデヒドロゲナーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、ATPases、リソソーム酵素、プロテアソームタンパク質、リボヌクレアーゼ、チオレダクターゼ等の酵素をコードする遺伝子)、細胞構造の完全性に関与する遺伝子(例えば細胞骨格タンパク質、オルガネラ合成に関与するタンパク質、ミトコンドリアタンパク質等をコードする遺伝子)、並びに細胞表面タンパク質(例えば細胞接着タンパク質、イオンチャネル及びトランスポータ、受容体、HLA/免疫グロブリン/細胞認識タンパク質等をコードする遺伝子)、及びキナーゼ/シグナリングタンパク質(例えば成長因子、組織壊死因子、カゼインキナーゼ等)に関与する遺伝子が挙げられる。この目的に好適な基準遺伝子は、以下をコードする遺伝子を含む:
・ステロール調節要素結合タンパク質(例えばATF1、ATF2、ATF4、ATF6、ATF7、ATF7、BTF3、E2F4、ERH、HMGB1、ILF2、IER2、JUND、TCEB2等);
・リプレッサ(例えばPUF60等);
・RNAスプライシングタンパク質(例えばBAT1、HNRPD、HNRPK、PABPN1、SRSF3等);
・翻訳因子(例えばEIF1、EIF1AD、EIF1B、EIF2A、EIF2AK1、EIF2AK3、EIF2AK4、EIF2AK1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、EIF2S2、EIF3A、EIF3B、EIF3D、EIF3G、EIF3I、EIF3H、EIF3J、EIF3K、EIF3L、EIF3M、EIF3S5、EIF3S8、EIF4A1、EIF4A2、EIF4A3、EIF4E2、EIF4G1、EIF4G2、EIF4G3、EIF4H、EIF5、EIF5、EIF5A、EIF5AL1、EIF5B、EIF6、TUFM等);
・tRNA合成酵素(例えばAARS、AARS2、AARSD1434、CARS、CARS2、DARS、DARS2、EARS2614、FARS2、FARSA、FARSB、GARS、HARS、HARS2、IARS、IARS2、KARS、LARS2、MARS、MARS2、NARS、NARS2、QARS、RARS、RARS2、SARS、TARS、VARS2、WARS2、YARS、YARS2436等);
・RNA結合タンパク質(例えばELAVL1等);
・リボソームタンパク質(例えばRPL5、RPL8、RPL9、RPL10A、RPL11、RPL14、RPL25、RPL26L1、RPL27、RPL30、RPL32、RPL34、RPL35、RPL35A、RPL36AL、RPS5、RPS6、RPS6KA3、RPS6KB1、RPS6KB2、RPS13、RPS19BP1、RPS20、RPS23、RPS24、RPS27、RPN1等);
・ミトコンドリアリボソームタンパク質(例えばMRPL9、MRPL1、MRPL10、MRPL11、MRPL12、MRPL13、MRPL14、MRPL15、MRPL16、MRPL17、MRPL18、MRPL19、MRPL2、MRPL20、MRPL21、MRPL22、MRPL23、MRPL24、MRPL27、MRPL28、MRPL3、MRPL30、MRPL32、MRPL33、MRPL35、MRPL36、MRPL37、MRPL38、MRPL4、MRPL40、MRPL41、MRPL42、MRPL43、MRPL44、MRPL45、MRPL46、MRPL47、MRPL48、MRPL49、MRPL50、MRPL51、MRPL52、MRPL53、MRPL54、MRPL55、MRPL9、MRPS10、MRPS11、MRPS12、MRPS14、MRPS15、MRPS16、MRPS17、MRPS18A、MRPS18B、MRPS18C、MRPS2、MRPS21、MRPS22、MRPS23、MRPS24、MRPS25、MRPS26、MRPS27、MRPS28、MRPS30、MRPS31、MRPS33、MRPS34、MRPS35、MRPS5、MRPS6、MRPS7、MRPS9等);
・RNAポリメラーゼ(例えばPOLR1C、POLR1D、POLR1E、POLR2A、POLR2B、POLR2C、POLR2D、POLR2E、POLR2F、POLR2G、POLR2H、POLR2I、POLR2J、POLR2K、POLR2L、POLR3C、POLR3E、POLR3GL、POLR3K等);
・タンパク質プロセシングタンパク質(例えばPPID、PPIE、PPIF、PPIG、PPIH、CANX、CAPN1、CAPN7、CAPNS1、NACA、NACA2、PFDN2、PFDN4、PFDN5、PFDN6、SNX2、SNX3、SNX4、SNX5、SNX6、SNX9、SNX12、SNX13、SNX17、SNX18、SNX19、SNX25、SSR1、SSR2、SSR3、SUMO1、SUMO3等);
・熱ショックタンパク質(例えばHSPA4、HSPA5、HSPA8、HSPA9、HSPA14、HSBP1等);
・ヒストン(例えばHIST1H2BC、H1FX、H2AFV、H2AFX、H2AFY、H2AFZ等);
・細胞周期タンパク質(例えばARHGAP35、ARHGAP5、ARHGDIA、ARHGEF10L、ARHGEF11、ARHGEF40、ARHGEF7、RAB10、RAB11A、RAB11B、RAB14、RAB18、RAB1A、RAB1B、RAB21、RAB22A、RAB2A、RAB2B380、RAB3GAP1、RAB3GAP2、RAB40C、RAB4A、RAB5A、RAB5B、RAB5C、RAB6A、RAB7A、RAB9A、RABEP1、RABEPK、RABGEF1、RABGGTA、RABGGTB、CENPB、CTBP1、CCNB1IP1、CCNDBP1、CCNG1、CCNH、CCNK402、CCNL1、CCNL2、CCNY、PPP1CA、PPP1CC、PPP1R10、PPP1R11、PPP1R15B、PPP1R37、PPP1R7、PPP1R8、PPP2CA、PPP2CB552、PPP2R1A、PPP2R2A、PPP2R2D、PPP2R3C、PPP2R4、PPP2R5A、PPP2R5B、PPP2R5C、PPP2R5D、PPP2R5E、PPP4C、PPP4R1、PPP4R2、PPP5C、PPP6C、PPP6R2、PPP6R3、RAD1、RAD17、RAD23B、RAD50、RAD51C、IST1等);
・アポトーシスタンパク質(例えばDAD1、DAP3、DAXX等);
・癌遺伝子タンパク質(例えばARAF、MAZ、MYC等);
・DNA修復/複製タンパク質(例えばMCM3AP、XRCC5、XRCC6等);
・代謝タンパク質(例えばPRKAG1、PRKAA1、PRKAB1、PRKACA、PRKAG1、PRKAR1A、PRKRIP1等);
・炭水化物代謝タンパク質(例えばALDOA、B3GALT6、B4GALT3、B4GALT5、B4GALT7、GSK3A、GSK3B、TPI1、PGK1、PGAM5、ENOPH1、LDHA、TALDO1、TSTA3);
・クエン酸サイクルタンパク質(例えばSDHA、SDHAF2、SDHB、SDHC、SDHD等);
・脂質代謝タンパク質(例えばHADHA等);
・アミノ酸代謝タンパク質(例えばCOMT等);
・NADHデヒドロゲナーゼ(例えばNDUFA2、NDUFA3、NDUFA4、NDUFA5、NDUFA6、NDUFA7、NDUFA8、NDUFA9、NDUFA10、NDUFA11、NDUFA12、NDUFA13、NDUFAF2、NDUFAF3、NDUFAF4、NDUFB2、NDUFB3、NDUFB4、NDUFB5、NDUFB6、NDUFB7、NDUFB10、NDUFB11、NDUFB8、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFC2、NDUFS5、NDUFV2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFS7、NDUFS8、NDUFV1、NDUFV2等);
・シトクロムCオキシダーゼ(例えばCOX4I1、COX5B、COX6B1、COX6C、COX7A2、COX7A2L、COX7C、COX8、COX8A、COX11、COX14、COX15、COX16、COX19617、COX20、CYC1、UQCC、UQCR10、UQCR11、UQCRB、UQCRC1、UQCRC2、UQCRHL591、UQCRQ、ATPase、ATP2C1、ATP5A1、ATP5B、ATP5C1、ATP5D、ATP5F1、ATP5G2、ATP5G3、ATP5H、ATP5J、ATP5J2、ATP5J2、ATP5L、ATP5O、ATP5S、ATP5SL、ATP6AP1、ATP6V0A2、ATP6V0B、ATP6V0C、ATP6V0D1、ATP6V0E1、ATP6V1C1、ATP6V1D、ATP6V1E1、ATP6V1F、ATP6V1G1、ATP6V1H、ATPAF2、ATPIF1等);
・リソソームタンパク質(例えばCTSD、CSTB、LAMP1、LAMP2、M6PR等);
・プロテアソームタンパク質(例えばPSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4、PSMA5、PSMA6、PSMA7、PSMB1、PSMB2、PSMB3、PSMB4、PSMB5、PSMB6、PSMB7、PSMC2、PSMC3、PSMC4、PSMC5、PSMC6、PSMD1、PSMD10、PSMD11、PSMD12、PSMD13、PSMD14、PSMD2、PSMD3、PSMD4、PSMD5、PSMD6、PSMD7、PSMD8、PSMD9、PSME2、PSME3、PSMF1、PSMG2、PSMG3、PSMG4591、UBA1、UBA2、UBA3、UBA5、UBA52、UBAC2、UBALD1、UBAP1、UBAP2L、UBB、UBC、UBE2A、UBE2B、UBE2D2、UBE2D3、UBE2D4、UBE2E1、UBE2E2、UBE2E3、UBE2F、UBE2G2、UBE2H、UBE2I、UBE2J1、UBE2J2、UBE2K、UBE2L3、UBE2M、UBE2N、UBE2NL989、UBE2Q1、UBE2R2、UBE2V1、UBE2V2、UBE2W、UBE2Z、UBE3A、UBE3B、UBE3C、UBE4A、UBE4B、USP10、USP14、USP16、USP19、USP22、USP25、USP27X073、USP33、USP38、USP39、USP4、USP47、USP5、USP7、USP8、USP9X590等);
・リボヌクレアーゼ(例えばRNH等);
・チオレダクターゼ(例えばTXN2、TXNDC11、TXNDC12、TXNDC15、TXNDC17、TXNDC9、TXNL1、TXNL4A、TXNL4B、TXNRD1、細胞骨格、ANXA6、ANXA7、ARPC1A、ARPC2、ARPC5L、CAPZA2、CAPZB、RHOB、RHOT1、RHOT2、TUBB、WDR1等);
・オルガネラ合成に関与するタンパク質(例えばBLOC1S1、BLOC1S2、BLOC1S3、BLOC1S4、BLOC1S6、AP1G1、AP1M1、AP2A1、AP2A2、AP2M1、AP2S1、AP3B1、AP3D1、AP3M1、AP3S1、AP3S2、AP4B1、AP5M1、ANXA6、ANXA7、AP1B1、CLTA、CLTB、CLTC等);
・ミトコンドリアタンパク質(例えばMTX2等);
・細胞表面タンパク質(例えばAP2S1、CD81、GPAA1、LGALS9、MGAT2、MGAT4B、VAMP3等);
・細胞接着タンパク質(例えばCTNNA1、CTNNB1、CTNNBIP1、CTNNBL1、CTNND1458等);
・イオンチャネル及びトランスポータタンパク質(例えばABCB10、ABCB7、ABCD3、ABCE1、ABCF1、ABCF2、ABCF3、CALM1、MFSD11、MFSD12、MFSD3、MFSD5、SLC15A4、SLC20A1、SLC25A11、SLC25A26、SLC25A28、SLC25A3、SLC25A32、SLC25A38、SLC25A39、SLC25A44、SLC25A46、SLC25A5、SLC27A4、SLC30A1、SLC30A5、SLC30A9、SLC35A2、SLC35A4、SLC35B1、SLC35B2、SLC35C2、SLC35E1、SLC35E3、SLC35F5、SLC38A2、SLC39A1、SLC39A3、SLC39A7、SLC41A3、SLC46A3、SLC48A1、受容体、ACVR1、ACVR1B、CD23等);
・HLA/免疫グロブリン/細胞認識タンパク質(例えばBAT1、BSG、MIF、TAPBP等);
・キナーゼ/シグナリングタンパク質(例えばADRBK1、AGPAT1、ARF1、ARF3、ARF4、ARF5、ARL2、CSF1、CSK、DCT、EFNA3、FKBP1A、GDI1、GNAS1、GNAI2、HAX1、ILK、MAPKAPK2、MAP2K2、MAP3K11、PITPNM、RAC1、RAP1B、RAGA、STK19、STK24、STK25、YWHAB、YWHAH、YWHAQ、YWHAZ等);
・成長因子(例えばAIF1、HDGF、HGS、LTBP4、VEGFB、ZFP36L1、組織壊死因子、CD40、カゼインキナーゼ、CSNK1E、CSNK2B等);及び
・雑多なタンパク質(例えばALAS1、ARHGEF2、ARMET、AES、BECN1、BUD31、CKB、CPNE1、ENSA、FTH1、GDI2、GUK1、HPRT、IFITM1、JTB、MMPL2、NME2、NONO、P4HB、PRDX1、PTMA、RPA2、SULT1A3、SYNGR2、TTC1、C11Orf13、C14orf2、C21orf33、SPAG7、SRM、TEGT、DAZAP2、MEA1等)。
【0085】
例示的なハウスキーピング遺伝子としては、表2に列挙されているものが挙げられる。表2はまた、各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を提供する。これらの遺伝子(及び/又はそのスプライス多様体)のいずれの組み合わせ又は部分的組み合わせを採用してもよい。
【0086】
【表2】
【0087】
特定の実施形態では、以下の基準遺伝子が利用される:ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBB。
【0088】
D.標的及び基準遺伝子の発現を評価するための例示的方法
ベースライン又は1つ以上の基準遺伝子に対する1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを明らかにするために、評価される各標的遺伝子に対応する細胞試料中のmRNAの量を決定し、ベースライン又は1つ以上の基準遺伝子に対応するmRNAの発現に対して正規化する。このような分析を達成するために、いずれの好適な方法を採用してよい。ある例示的な方法は、nCOUNTER(登録商標)分析システム(NanoString Technologies, Inc.)を採用する。nCOUNTER(登録商標)分析システムでは、試料のRNAを、遺伝子特異的レポータプローブ及びキャプチャプローブのセットの存在下で、上記試料RNAが上記プローブにハイブリダイズできるようにするために十分な条件でインキュベートする。各レポータプローブは蛍光バーコードを担持し、各キャプチャプローブは、データ収集のためにハイブリダイズされた複合体を剛性支持体に固定化できるビオチン部分を含有する。ハイブリダイズ後、余剰のプローブを除去し、上記支持体を自動蛍光顕微鏡で走査する。標的分子毎にバーコードを計数する。データ分析は、nSolver(登録商標)4.0分析ソフトウェア(NanoString Technologies, Inc.)等を用いて実施できる。実施例1で提示されているデータは、PanCancer IO360(商標)遺伝子発現パネルキット(NanoString Technologies、Inc.)を用いて得られたものであり、上記キットは、770の異なる遺伝子(腫瘍、腫瘍微小環境、及び免疫応答の境界における主要な経路をカバーする750の遺伝子と、データの正規化に使用できる20の内部基準遺伝子(表5))のためのプローブのセットを内包する。10遺伝子シグネチャスコアは、以下のように算出される:
・各遺伝子に関する生データ数を、各サンプルに対して選択されたハウスキーピング(HK)遺伝子(例えばABCF1、NRDE2、G6PD、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、UBB)の幾何平均に対して正規化する。
・次に、HK正規化データを、IO360パネル標準、好ましくは試験試料と同一のカートリッジで実行した標準に対して正規化する。
・次に、正規化された各遺伝子数を対数変換する。
・各正規化・対数変換済みRNA値を1つに合計する。
・正規化・対数変換済みRNA値の合計を、該シグネチャ内の標的遺伝子の個数(即ち10)で除算して、単一のスコアを生成する。
【0089】
II.例示的なCD123×CD3二重特異性結合分子
A.JNJ‐63709178
JNJ‐63709178は、サイレンシングされたFc機能を有するヒト化IgG4二重特異性抗体である。この抗体は、Genmab DuoBody(登録商標)技術を用いて生成されたものであり、腫瘍細胞上のCD123、及びT細胞上のCD3の両方に結合できる。JNJ‐63709178は、T細胞をCD123発現性腫瘍細胞に動員して、これらの腫瘍細胞の試験管内での殺滅を誘発できる(MOLM‐13、OCI‐AML5、及びKG‐1;EC50=0.51‐0.91nM)。JNJ‐63709178は、国際公開第2016/036937号、Gaudet, F. et al. (2016) “Development of a CD123 x CD3 Bispecific Antibody (JNJ-63709178) for the Treatment of Acute Myeloid Leukemia (AML),” Blood 128:2824;及びForslund, A. et al. (2016) “Ex Vivo Activity Profile of the CD123 x CD3 Duobody (Registered Trademark) Antibody JNJ-63709178 Against Primary Acute Myeloid Leukemia Bone Marrow Samples,” Blood 128:2875において開示されており、これらの文献は参照により本出願に援用される。JNJ‐63709178並びに/又は関連抗体:13RB179、13RB180、13RB181、13RB182、13RB183、13RB186、13RB187、13RB188、13RB189、CD3B19、7959、3978、7955、9958、8747、8876、4435及び5466の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、国際公開第2016/036937号において開示されている。
【0090】
B.XmAb14045
XmAb14045(ビベコタマブとしても公知)は、CD123結合ドメイン及び細胞傷害性T細胞結合ドメイン(CD3)の両方を含む腫瘍指向性抗体である。XmAb二重特異性Fcドメインは、これら2つの抗原結合ドメインの足場として機能し、XmAb14045に対して、長い循環半減期、安定性、及び製造の容易さを付与する。XmAb14045によるCD3の結合は、CD123発現性腫瘍細胞の、極めて強力で標的化された殺滅のために、T細胞を活性化する(米国公開特許第2017/0349660号;Chu, S.Y. et al. (2014) “Immunotherapy with Long-Lived Anti-CD123 x CD3 Bispecific Antibodies Stimulates Potent T Cell-Mediated Killing of Human AML Cell Lines and of CD123+ Cells in Monkeys: A Potential Therapy for Acute Myelogenous Leukemia,” Blood 124(21):2316、これらの文献は参照により本出願に援用される)。XmAb14045及び類似のCD123×CD3二重特異性結合分子の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、米国公開特許第2017/0349660号、及びWHO Drug Information, Proposed INN: List 120, 2018, 32(4):658-660において開示されている。
【0091】
C.APVO436
APVO436は、抗CD123 scFv部分及び抗CD3 scFv部分を有するADAPTIR(商標)CD123×CD3二重特異性結合分子である。上記scFv部分はそれぞれ、ADCC/CDCエフェクタ機能を無効化するように修飾されたFcドメインに結合する。APVO436は、低nM範囲内のEC50値でヒトCD123及びCD3発現性細胞に結合すること、及び低いエフェクタ:標的比において、CD123発現性腫瘍細胞株に対する強力な標的特異的活性を示すことが開示されている。APVO436は、一次AML被験者試料及び正常ドナー試料を用いた実験において、CD123発現性細胞の枯渇を伴う内因性T細胞活性化及び増殖を強力に誘発できることが開示されている。APVO436(Comeau, M.R. et al. (2018) “APVO436, a Bispecific anti-CD123 x anti-CD3 ADAPTIRTM Molecule for Redirected T-cell Cytotoxicity, Induces Potent T-cell Activation, Proliferation and Cytotoxicity with Limited Cytokine Release,” AACR Annual Meeting April 2018, Abstract 1786; Godwin, C.D. et al. (2017) “Bispecific Anti-CD123 x Anti-CD3 ADAPTIRTM Molecules APVO436 and APVO437 Have Broad Activity Against Primary Human AML Cells In Vitro,” American Society of Hematology Annual Meeting, December 2017, Blood 130:2639; Comeau, M.R. et al. (2017) “Bispecific anti-CD123 x anti-CD3 ADAPTIRTM Molecules for Redirected T-cell Cytotoxicity in Hematological Malignancies,” AACR Annual Meeting April 2017, Abstract 597)。APVO436 CD123×CD3二重特異性結合分子の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、国際公開第2018/057802A1号において開示されている。
【0092】
D.DART‐A
DART‐A(フロテツズマブとしても公知、CAS番号:1664355‐28‐5)は、本発明の例示的なCD123×CD3二重特異性結合分子である。DART‐Aは、CD123のエピトープ及びCD3のエピトープに同時に特異的に結合できる、配列最適化二重特異性ダイアボディCD3(「CD123×CD3」二重特異性ダイアボディ)である(米国公開特許第2016‐0200827号、国際公開第2015/026892号、Al-Hussaini, M. et al. (2016) “Targeting CD123 In Acute Myeloid Leukemia Using A T-Cell-Directed Dual-Affinity Retargeting Platform,” Blood 127:122-131, in Vey, N. et al. (2017) “A Phase 1, First-in-Human Study of MGD006/S80880 (CD123 x CD3) in AML/MDS,” 2017 ASCO Annual Meeting, June 2-6, 2017, Chicago, IL: Abstract TPS7070、これらの各文献は参照によりその全体が本出願に援用される)。DART‐Aは、同様の組成の他の非配列最適化CD123×CD3二重特異性ダイアボディに比べて強化された機能的活性を示すことが分かっているため、「配列最適化(sequence-optimized)」CD123×CD3二重特異性ダイアボディと呼ばれる。国際出願番号PCT/US2017/050471は、患者にDART‐Aを投与するための特定の投薬レジメンを記載しており、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0093】
DART‐Aは、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含む(図1)。この二重特異性ダイアボディの第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に、N末端、CD3に結合できるモノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)(VLCD3)、介在リンカーペプチド(リンカー1)、CD123に結合できるモノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VHドメイン)(VHCD123)、及びC末端を含むことになる。
【0094】
このようなVLCD3ドメインに関する例示的な配列は、配列番号1:
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQQ KPGQAPRGLI
GGTNKRAPWT PARFSGSLLG GKAALTITGA QAEDEADYYC ALWYSNLWVF
GGGTKLTVLG
である。
【0095】
VLCD3の抗原結合ドメインは:
CDRL1(配列番号2):RSSTGAVTTSNYAN
CDRL2(配列番号3):GTNKRAP
CDRL3(配列番号4):ALWYSNLWV
を含む。
【0096】
このようなリンカー1に関する例示的な配列は、配列番号5:GGGSGGGGである。このようなVHCD123ドメインに関する例示的な配列は、配列番号6:
EVQLVQSGAE LKKPGASVKV SCKASGYTFT DYYMKWVRQA PGQGLEWIGD
IIPSNGATFY NQKFKGRVTI TVDKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARSH
LLRASWFAYW GQGTLVTVSS
である。
【0097】
VHCD123の抗原結合ドメインは:
CDRH1(配列番号7):DYYMK
CDRH2(配列番号8):DIIPSNGATFYNQKFKG
CDRH3(配列番号9):SHLLRASWFAY
を含む。
【0098】
第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に、N末端、CD123に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD123)、介在リンカーペプチド(例えばリンカー1)、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)、及びC末端を含むことになる。このようなVLCD123ドメインに関する例示的な配列は、配列番号10:
DFVMTQSPDS LAVSLGERVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYSY
PYTFGQGTKL EIK
である。
【0099】
VLCD123の抗原結合ドメインは:
CDRL1(配列番号11):KSSQSLLNSGNQKNYLT
CDRL2(配列番号12):WASTRES
CDRL3(配列番号13):QNDYSYPYT
を含む。
【0100】
このようなVHCD3ドメインに関する例示的な配列は、配列番号14:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS TYAMNWVRQA PGKGLEWVGR
IRSKYNNYAT YYADSVKDRF TISRDDSKNS LYLQMNSLKT EDTAVYYCVR
HGNFGNSYVS WFAYWGQGTL VTVSS
である。
【0101】
VHCD3の抗原結合ドメインは:
CDRH1(配列番号15):TYAMN
CDRH2(配列番号16):RIRSKYNNYATYYADSVKD
CDRH3(配列番号17):HGNFGNSYVSWFAY
を含む。
【0102】
本発明の配列最適化CD123×CD3二重特異性ダイアボディを、上記第1及び第2のポリペプチドがその長さに沿ってシステイン残基を介して互いに共有結合するように、操作する。このようなシステイン残基は、上記ポリペプチドのVLドメインとVHドメインとを隔てる介在リンカー(例えばリンカー1)に導入してよい。あるいは、第2のペプチド(リンカー2)を、例えば上記ポリペプチド鎖のN末端からVLドメインまで、又はC末端からVHドメインまでの位置において、各ポリペプチド鎖に導入する。このようなリンカー2に関する例示的な配列は、配列番号18:GGCGGGである。
【0103】
上記ポリペプチド鎖を、反対の電荷のポリペプチドコイルを含有するように更に操作することによって、ヘテロ二量体の形成を促進できる。従ってある特定の実施形態では、ポリペプチド鎖のうちの一方を、その残基がpH7において負の電荷を形成する「Eコイル(E‐coil)」ドメイン(配列番号19:EVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEK)を含有するように操作し、2つのポリペプチド鎖のうちのもう一方を、その残基がpH7において正の電荷を形成する「Kコイル(K-coil)」ドメイン(配列番号20:KVAALKEKVAALKEKVAALKEKVAALKE)を含有するように操作することになる。このような荷電ドメインの存在は、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖との間の会合を促進し、従ってヘテロ二量体化を助長する。
【0104】
どのコイルを第1のポリペプチド鎖又は第2のポリペプチド鎖に提供するかは重要ではない。しかしながら、本発明のある例示的な配列最適化CD123×CD3二重特異性ダイアボディ(「DART‐A」)は、以下の配列(配列番号21):
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQQ KPGQAPRGLI
GGTNKRAPWT PARFSGSLLG GKAALTITGA QAEDEADYYC ALWYSNLWVF
GGGTKLTVLG GGGSGGGGEV QLVQSGAELK KPGASVKVSC KASGYTFTDY
YMKWVRQAPG QGLEWIGDII PSNGATFYNQ KFKGRVTITV DKSTSTAYME
LSSLRSEDTA VYYCARSHLL RASWFAYWGQ GTLVTVSSGG CGGGEVAALE
KEVAALEKEV AALEKEVAAL EK
を有する第1のポリペプチド鎖を有する。
【0105】
DART‐Aの鎖1は:配列番号1‐配列番号5‐配列番号6‐配列番号18‐配列番号19で構成される。DART‐Aの第1のポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号22:
caggctgtgg tgactcagga gccttcactg accgtgtccc caggcggaac
tgtgaccctg acatgcagat ccagcacagg cgcagtgacc acatctaact
acgccaattg ggtgcagcag aagccaggac aggcaccaag gggcctgatc
gggggtacaa acaaaagggc tccctggacc cctgcacggt tttctggaag
tctgctgggc ggaaaggccg ctctgactat taccggggca caggccgagg
acgaagccga ttactattgt gctctgtggt atagcaatct gtgggtgttc
gggggtggca caaaactgac tgtgctggga gggggtggat ccggcggcgg
aggcgaggtg cagctggtgc agtccggggc tgagctgaag aaacccggag
cttccgtgaa ggtgtcttgc aaagccagtg gctacacctt cacagactac
tatatgaagt gggtcaggca ggctccagga cagggactgg aatggatcgg
cgatatcatt ccttccaacg gggccacttt ctacaatcag aagtttaaag
gcagggtgac tattaccgtg gacaaatcaa caagcactgc ttatatggag
ctgagctccc tgcgctctga agatacagcc gtgtactatt gtgctcggtc
acacctgctg agagccagct ggtttgctta ttggggacag ggcaccctgg
tgacagtgtc ttccggagga tgtggcggtg gagaagtggc cgcactggag
aaagaggttg ctgctttgga gaaggaggtc gctgcacttg aaaaggaggt
cgcagccctg gagaaa
である。
【0106】
DART‐Aの第2のポリペプチド鎖は、以下の配列(配列番号23):
DFVMTQSPDS LAVSLGERVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYSY
PYTFGQGTKL EIKGGGSGGG GEVQLVESGG GLVQPGGSLR LSCAASGFTF
STYAMNWVRQ APGKGLEWVG RIRSKYNNYA TYYADSVKDR FTISRDDSKN
SLYLQMNSLK TEDTAVYYCV RHGNFGNSYV SWFAYWGQGT LVTVSSGGCG
GGKVAALKEK VAALKEKVAA LKEKVAALKE
を有する。
【0107】
DART‐Aの鎖2は:配列番号10‐配列番号5‐配列番号14‐配列番号18‐配列番号20で構成される。DART‐Aの第2のポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号24:
gacttcgtga tgacacagtc tcctgatagt ctggccgtga gtctggggga
gcgggtgact atgtcttgca agagctccca gtcactgctg aacagcggaa
atcagaaaaa ctatctgacc tggtaccagc agaagccagg ccagccccct
aaactgctga tctattgggc ttccaccagg gaatctggcg tgcccgacag
attcagcggc agcggcagcg gcacagattt taccctgaca atttctagtc
tgcaggccga ggacgtggct gtgtactatt gtcagaatga ttacagctat
ccctacactt tcggccaggg gaccaagctg gaaattaaag gaggcggatc
cggcggcgga ggcgaggtgc agctggtgga gtctggggga ggcttggtcc
agcctggagg gtccctgaga ctctcctgtg cagcctctgg attcaccttc
agcacatacg ctatgaattg ggtccgccag gctccaggga aggggctgga
gtgggttgga aggatcaggt ccaagtacaa caattatgca acctactatg
ccgactctgt gaaggataga ttcaccatct caagagatga ttcaaagaac
tcactgtatc tgcaaatgaa cagcctgaaa accgaggaca cggccgtgta
ttactgtgtg agacacggta acttcggcaa ttcttacgtg tcttggtttg
cttattgggg acaggggaca ctggtgactg tgtcttccgg aggatgtggc
ggtggaaaag tggccgcact gaaggagaaa gttgctgctt tgaaagagaa
ggtcgccgca cttaaggaaa aggtcgcagc cctgaaagag
である。
【0108】
DART‐Aは、ヒト及びカニクイザル細胞によって配列されるようなCD123及びCD3に同時に結合できる能力を有する。DART‐Aの提供はT細胞の活性化を引き起こし、芽球の減少を仲介し、T細胞膨張を促進し、T細胞活性化を誘発し、標的癌細胞の標的転換殺滅を引き起こすことが分かった(表3)。
【0109】
【表3】
【0110】
より詳細には、DART‐Aは、最高活性の50%(EC50)を達成するために必要な濃度がng/mL未満の範囲で、強力な標的転換殺滅能力を示し、これは、CD123発現の程度が高い標的細胞株(Kasumi‐3(EC50=0.01ng/mL))、CD123発現の程度が中程度の標的細胞株(Molm13(EC50=0.18ng/mL)及びTHP‐1(EC50=0.24ng/mL))、並びにCD123発現の程度が中程度のうちの低い方であるか又は低い標的細胞株(TF‐1(EC50=0.46ng/mL)及びRS4‐11(EC50=0.5ng/mL))におけるCD3エピトープ結合特異性とは無関係である。同様に、DART‐A標的転換殺滅は、異なるドナーに由来するT細胞を含む複数の標的細胞株でも観察され、またCD123を発現しない細胞株では標的転換殺滅は観察されなかった。結果を表4にまとめる。
【0111】
【表4】
【0112】
更に、ヒトT細胞及び腫瘍細胞(Molm13又はRS4‐11)を組み合わせて、NOD/SCIDガンマ(NSG)ノックアウトマウスに皮下注射した場合、MOLM13腫瘍は、0.16、0.5、0.2、0.1、0.02、及び0.004mg/kgの用量レベルにおいて有意に阻害された。0.004mg/kg以上の用量が、MOLM13モデルにおいて活性であった。RS4‐11モデルと比較した場合にMOLM13モデルにおいて腫瘍成長の阻害に関連するDART‐Aの用量がより少ないことは、MOLM13細胞がRS4‐11細胞よりも高いCD123発現レベルを有することを実証する試験管内データと一致しており、これは、MOLM13細胞における試験管内でのDART‐A仲介細胞傷害性に対する感度の上昇と相関していた。
【0113】
DART‐Aは、AML患者由来の一次AML試験片(骨髄単核球(BMNC)及び末梢血単核球(PBMC))に対して活性を有する。一次AML骨髄試料をDART‐Aと共にインキュベートすると、これに付随する残留T細胞(CD4及びCD8の両方)の膨張と、T細胞活性化マーカー(CD25及びKi‐67)の誘発とを伴う、経時的な白血病細胞集団の枯渇がもたらされた。CD8及びCD4 T細胞の両方における、グランザイムB及びパーフォリンレベルの上方制御が観察された。一次AML骨髄試料をDART‐Aと共にインキュベートすると、未処理の対照、即ち対照DARTに比べて、経時的な白血病細胞集団の枯渇がもたらされた。T細胞を計数し(CD8及びCD4染色)、活性化(CD25染色)をアッセイすると、未処理の、即ち対照DART試料に比べて、DART‐AではT細胞が膨張して活性化された。またDART‐Aは、ヒトPBMC及びカニクイザルPBMCの両方において、pDC細胞の枯渇を仲介できることが分かり、カニクイザルpDCは、わずか10ng/kgのDART‐Aの点滴のわずか4日後に枯渇した。サイトカインであるインターフェロンガンマ、TNFアルファ、IL6、IL5、IL4、及びIL2のレベルの上昇は、DART‐Aで処置した動物では観察されなかった。これらのデータは、DART‐A仲介標的細胞殺滅が、グランザイムB及びパーフォリン経路を介して仲介されたことを示している。
【0114】
CD123陰性標的(U937細胞)又は対照DARTでは活性が観察されず、これは、観察されたT細胞の活性化が、標的細胞結合に強く依存していたこと、及びDART‐AによるCD3の1価結合は、T細胞の活性化をトリガするには不十分であったことを示している。
【0115】
要約すると、DART‐Aは、TCRのCD3εサブユニットに結合して、いくつかの血液悪性腫瘍において上方制御される抗原であるCD123を発現する細胞に対してTリンパ球を標的転換する、抗体ベースの分子である。DART‐Aは、ヒト及びカニクイザルの抗原に同様の親和性で結合し、両方の種からのT細胞を標的転換してCD123+細胞を殺滅する。週毎にDART‐Aの用量を増加させながら1週間に4又は7日の注入を受けたサルは、処置の開始の72時間後に、循環CD123+T細胞の枯渇を示し、これは、投薬スケジュールに関係なく、4週間の処置全体を通して持続した。循環T細胞の減少も発生したが、4日の投薬スケジュールでは、サルにおける後の注入の前のベースラインに回復し、これはDART‐A仲介型の固定化と一致していた。DART‐Aの投与は、循環PD1+T細胞を増大させたが、TIM‐3+T細胞を増大させず;更に、処置後のサル由来のT細胞の生体外分析により、標的転換された標的細胞の溶解が変化していないことが示され、これは疲弊が発生していないことを示している。細胞傷害性は、DART‐Aの最初の注入後、最小限の一過性のサイトカイン放出に制限されたが、後続の投与の後では、用量を増加させ、CD123+骨髄前駆細胞の減少を伴う赤血球量の最小限の可逆的減少が発生した場合であっても制限されなかった。
【0116】
E.更なる二重特異性ダイアボディ分子
Fc領域を含み、かつ図1Bに示されている一般構造を有する、DART‐Aの別のバージョンは、米国公開特許第2016‐0200827号に記載されている。FcドメインのCH2及びCH3ドメインを含有する例示的なポリペプチドは、配列(配列番号25)(「ノブ担持」Fcドメイン):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLWCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGX
(ここでXはKであるか、又は不在である);
及び配列(配列番号26)(「ホール担持」Fcドメイン):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLSCAVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLVSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNRYTQKS LSLSPGX
(ここでXはKであるか、又は不在である)
を有する。
【0117】
例示的なDART‐A w/Fc構築物の第1のポリペプチドは、N末端からC末端への方向に、N末端、CD123に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD123)、介在リンカーペプチド(リンカー1)、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)、リンカー2、Eコイルドメイン、リンカー5、ペプチド1、FcドメインのCH2及びCH3ドメインを含有するポリペプチド、並びにC末端を含むことになる。例示的なリンカー5は、配列:GGGを有する。例示的なペプチド1は、配列:DKTHTCPPCP(配列番号29)を有する。従って、このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第1のポリペプチドは:配列番号10‐配列番号5‐配列番号14‐配列番号18‐配列番号19‐GGG‐配列番号29‐配列番号25(ここでXはKである)で構成される。
【0118】
このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第1のポリペプチドの例示的な配列は、配列(配列番号27):
DFVMTQSPDS LAVSLGERVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYSY
PYTFGQGTKL EIKGGGSGGG GEVQLVESGG GLVQPGGSLR LSCAASGFTF
STYAMNWVRQ APGKGLEWVG RIRSKYNNYA TYYADSVKDR FTISRDDSKN
SLYLQMNSLK TEDTAVYYCV RHGNFGNSYV SWFAYWGQGT LVTVSSGGCG
GGEVAALEKE VAALEKEVAA LEKEVAALEK GGGDKTHTCP PCPAPEAAGG
PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA
KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS
KAKGQPREPQ VYTLPPSREE MTKNQVSLWC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP
ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT
QKSLSLSPGK
である。
【0119】
このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第2の鎖は、N末端からC末端への方向に、N末端、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)、介在リンカーペプチド(リンカー1)、CD123に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD123)、リンカー2、Kコイルドメイン、並びにC末端を含むことになる。よって、このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第2のポリペプチドは:配列番号1‐配列番号5‐配列番号6‐配列番号18‐配列番号20で構成される。このようなポリペプチドは、配列(配列番号28):
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQQ KPGQAPRGLI
GGTNKRAPWT PARFSGSLLG GKAALTITGA QAEDEADYYC ALWYSNLWVF
GGGTKLTVLG GGGSGGGGEV QLVQSGAELK KPGASVKVSC KASGYTFTDY
YMKWVRQAPG QGLEWIGDII PSNGATFYNQ KFKGRVTITV DKSTSTAYME
LSSLRSEDTA VYYCARSHLL RASWFAYWGQ GTLVTVSSGG CGGGKVAALK
EKVAALKEKV AALKEKVAAL KE
を有する。
【0120】
このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第3のポリペプチド鎖は、IgG FcドメインのCH2及びCH3ドメインを含むことになる。例示的なポリペプチドは、ペプチド1(DKTHTCPPCP;配列番号29)と、FcドメインのCH2及びCH3ドメイン(配列番号26、ここでXはKである)とで構成され、配列番号30:
DKTHTCPPCP APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED
PEVKFNWYVD GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK
CKVSNKALPA PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLSCAVK
GFYPSDIAVE WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLVSKL TVDKSRWQQG
NVFSCSVMHE ALHNRYTQKS LSLSPGK
の配列を有する。
【0121】
別の最適化された抗CD3結合ドメインを含む追加のCD123×CD3二重特異性ダイアボディは、国際公開第2019/160904号において提供されている。特にこのようなダイアボディは、配列番号6のVHCD123ドメインを含み、VLCD123ドメインは配列番号10であり、更にFc領域を含む。
【0122】
III.医薬製剤
本発明の組成物は、医薬組成物の製造において有用なバルク薬剤組成物(例えば不純又は非滅菌組成物)、及び医薬組成物(即ち被験者又は患者への投与に好適な組成物)を含み、これらはいずれも単位剤形の調製に使用できる。このような組成物は、予防又は治療的有効量のCD123×CD3二重特異性結合分子と、薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0123】
例示的な医薬製剤は、CD123×CD3二重特異性結合分子及び水性安定剤、並びに任意に薬学的に許容可能な担体を含む。
【0124】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」は、動物、より詳細にはヒトの体内への送達に好適なものとして、規制当局に承認されている、又は米国薬局方若しくは別の一般に認識されている薬局方に記載されている、希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全及び不完全)、賦形剤、又はビヒクルを指すことを意図したものである。このような薬学的担体は、無菌液体、例えば水及び油であってよく、油は、石油由来、動物由来、植物由来、又は合成によるもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に担体として使用できる。生理食塩水、並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に駐車用溶液のための液体担体として採用できる。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。必要に応じて、上記組成物は少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有してよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル、粉体、徐放性製剤等の形態を取ることができる。
【0125】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば活性作用剤の量を示すバイアル、アンプル又はサシェ等の気密性コンテナ中の液体製剤、凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別個に、又は単位剤形にまとめて混合された状態で供給される。組成物を注入によって投与する場合、組成物は、滅菌された薬学的グレードの水又は食塩水を内包する注入ボトルを用いて吐出できる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合できるように、注射用無菌水又は食塩水のアンプルを提供できる。
【0126】
本発明はまた、CD123×CD3二重特異性結合分子を単独で又は安定剤若しくは薬学的に許容可能な担体と組み合わせて内包する1つ以上のコンテナを含む、医薬パック又はキットも提供する。更に、疾患の治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は治療剤も、上記医薬パック又はキットに含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数で充填された1つ以上のコンテナを含む、医薬パック又はキットも提供する。任意に、このような1つ以上のコンテナに、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知を関連付けることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。
【0127】
IV.キット
本発明は、CD123×CD3二重特異性結合分子、(例えば保管、投薬量、適応症、副作用、対抗適応症等に関連する)説明資料、並びに任意に上述の方法で使用できる安定剤及び/又は担体を含む、キットを提供する。このようなキットでは、CD123×CD3二重特異性結合分子は、アンプル、バイアル、サシェ等の気密性コンテナ内にパッケージでき、上記気密性コンテナは、内包されている上記分子の量を示すことができる。上記コンテナは、ガラス、樹脂、プラスチック等のいずれの薬学的に許容可能な材料で形成してよい。このようなキットのCD123×CD3二重特異性結合分子は、気密性コンテナ内の液体溶液、滅菌凍結乾燥粉体、又は無水濃縮物として供給でき、例えば水又は生理食塩水を用いて、被験者への投与に適当な濃度に再構築できる。このような液体又は凍結乾燥材料は、その元のコンテナ内で2~8℃で保管する必要があり、また上記材料は、再構築後約24時間以内、約12時間以内、約6時間以内、約5時間以内、約3時間以内、又は約1時間以内に投与する必要がある。上記キットは、1つ以上のコンテナ内に、癌の治療に有用な1つ以上の他の予防及び/若しくは治療剤を更に含むことができ、並びに/又は癌に関連する1つ以上の癌抗原に結合する1つ以上の細胞傷害性抗体を更に含むことができる。特定の実施形態では、上記他の予防又は治療剤は化学療法剤である。他の実施形態では、上記予防又は治療剤は生物学的治療剤又はホルモン療法剤である。上記キットは、使用のための説明書、又は他の印刷された情報を更に含むことができる。
【0128】
更に、疾患の治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は治療剤も、上記医薬パック又はキットに含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数で充填された1つ以上のコンテナを含む、医薬パック又はキットも提供する。任意に、このような1つ以上のコンテナは、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。
【0129】
V.投与方法
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤は、有効量の本発明の分子、又は本発明の融合タンパク質若しくはコンジュゲート分子を含む医薬組成物を、被験者に投与することによる、疾患、障害又は感染症に関連する1つ以上の症状の治療、予防及び改善のために提供できる。ある態様では、上記組成物は実質的に精製される(即ち上記組成物の効果を制限する、又は望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。ある具体的実施形態では、被験者は動物、好ましくは非霊長類(例えばウシ属、ウマ科、ネコ科、イヌ科、げっ歯類等)又は霊長類(例えばカニクイザル等のサル、ヒト等)といった哺乳類である。ある特定の実施形態では、被験者又は患者はヒトである。
【0130】
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤を投与する方法としては、非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)が挙げられるがこれらに限定されない。ある具体的実施形態では、上記CD123×CD3二重特異性結合分子は、静脈内投与される。組成物は、いずれの便利な経路によって、例えば注入によって投与してよく、他の生物学的活性作用剤と共に投与してよい。
【0131】
注入による投与は、注入ポンプを用いて達成できる。「注入ポンプ(infusion pump)」は、患者の体内に流体を制御下で、特に所定の速度で長期間にわたって送達する、医療デバイスである。注入ポンプは物理的に動力供給されてよいが、より典型的には電気によって動力供給される。一部の注入ポンプは「据置型(stationary)」注入ポンプであり、患者のベッドサイドで使用するために設計されている。「移動式(ambulatory)」注入ポンプと呼ばれる他の注入ポンプは、携帯式又はウェアラブルなものとして設計される。「シリンジ(syringe)」ポンプは、送達対象の流体がチャンバのリザーバ(例えばシリンジ)内に保持されている注入ポンプであり、可動ピストンを用いて、上記チャンバの容積、従って流体の送達を制御する。「エラストマ(elastomeric)」注入ポンプでは、流体が伸縮性のバルーンリザーバ内に保持され、バルーンの伸縮自在の壁による圧力によって流体の送達が実施される。「蠕動(peristaltic)」注入ポンプでは、複数のローラのセットが可撓性配管を挟んで、その長さに沿って下がり、流体を押し出す。「マルチチャネル(multi-channel)」注入ポンプでは、流体を複数のリザーバから複数の速度で送達できる。「スマートポンプ(smart pump)」は、コンピュータ制御流体送達システムを備えた注入ポンプであり、有害な薬物相互作用のリスクに応じて、又はポンプのパラメータが指定された限界を超えて設定されている場合に、警告を発することができる。注入ポンプの例は公知であり、例えば[著者不明]2002 “General-Purpose Infusion Pumps,” Health Devices 31(10):353-387;及び米国特許第10,029,051号、米国特許第10,029,047号、米国特許第10,029,045号、米国特許第10,022,495号、米国特許第10,022,494号、米国特許第10,016,559号、米国特許第10,006,454号、米国特許第10,004,846号、米国特許第9,993,600号、米国特許第9,981,082号、米国特許第9,974,901号、米国特許第9,968,729号、米国特許第9,931,463号、米国特許第9,927,943号等において提供されている。
【0132】
特定の実施形態では、患者が治療レジメン中に移動できるように、本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤は、1つ以上の移動式ポンプによって促進される注入によって、投与される。特定の実施形態では、本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤は、持続注入で投与される。ある具体的実施形態では、7日間持続注入レジメンは、3日間にわたる約30ng/患者の体重kg/日の治療投薬量、及びこれに続く4日間にわたる約100ng/kg/日の治療投薬量(例えば、3日間にわたる30ng/患者の体重kg/日の治療投薬量、及びこれに続く4日間にわたる100ng/kg/日の治療投薬量、等)を含む。別の具体的実施形態では、7日間持続注入レジメンは、1日にわたる約30ng/患者の体重kg/日の治療投薬量、これに続く1日にわたる約60ng/kg/日の治療投薬量、これに続く1日にわたる約100ng/kg/日の治療投薬量、これに続く1日にわたる約200ng/kg/日の治療投薬量、これに続く1日にわたる約300ng/kg/日の治療投薬量、これに続く1日にわたる約400ng/kg/日の治療投薬量、及びこれに続く1日にわたる約500ng/kg/日の治療投薬量を含む。特定の実施形態では、このような7日間持続注入レジメンの後に21日間持続注入レジメンが続き、ここでは、21日間にわたって500ng/kg/日の治療投薬量が投与される。特定の実施形態では、上記21日間持続注入レジメンの後に21日間持続注入レジメンが続き、ここでは、約500ng/kg/日の治療投薬量が、上記21日レジメンの各週の1~4日目に投与され、各週の5~7日目には一切の治療投薬量が投与されない。
【0133】
上述の治療経過のいずれにおいて、腫瘍微小環境内のCD8+Tリンパ球の割合を更に監視してよい。このような監視は、CD123×CD3二重特異性結合分子の投与前、CD123×CD3結合分子療法の経過中、及び/又はCD123×CD3結合分子療法の1回のサイクルの完了後に実施してよい。
【0134】
VI.本発明の組成物の使用
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、CD123の発現に関連する、又はこれを特徴とする、いずれの疾患又は状態を治療するために使用できる。特に本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、血液悪性腫瘍を治療するために使用できる。本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、化学療法不応性血液悪性腫瘍を含む血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本明細書中で使用される場合、化学療法不応性血液悪性腫瘍は、2回以上の導入試行に対して不応性である、最初のCRが6ヶ月未満である、又は2サイクル以上の低メチル化剤を用いた治療の後に失敗する、血液悪性腫瘍である。
【0135】
よって、限定するものではないが、このような分子は:急性骨髄性白血病(AML)(一次化学療法不応性AMLを含む);CMLの急性転化、及びCMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座)を含む、慢性骨髄性白血病(CML);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);リヒター症候群、又はCLLにおけるリヒター症候群の転化を含む、慢性リンパ性白血病(CLL);有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫の診断又は治療に採用できる。本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は更に、上述の状態の治療のための医薬品の製造に使用できる。
【0136】
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、急性骨髄性白血病(AML、一次化学療法不応性急性骨髄性白血病を含む)、血液骨髄異形成症候群(MDS)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、又は急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL)の治療における使用に特に好適である。
【実施例
【0137】
ここまで本発明を概説してきたが、以下の実施例を参照することによって、本発明は更に容易に理解されるだろう。これらの実施形態は例示として提供されており、特段の記載がない限り、本発明の限定となることを意図したものではない。
【0138】
実施例1
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子を用いた治療に特に好適な患者集団の遺伝子発現シグネチャ
血液悪性腫瘍、特にAMLに罹患した患者の遺伝子の発現パターンと、CD123×CD3二重特異性結合分子療法の好ましい結果との間の相関を実証するために、フロテツズマブ(NCT#02152956、例示的なCD123×CD3二重特異性結合分子)のフェーズ1/2臨床試験に登録した再発又は不応性AML患者から個別の同意の下で得られた骨髄(「BM」)試料から、RNAを単離した。
【0139】
所定の免疫遺伝子シグネチャスコアを含む770の免疫関連遺伝子の発現を、例示的なCD123×CD3二重特異性分子であるフロテツズマブで治療された患者のサブグループのベースライン骨髄試料において、調査した。簡潔に述べると、NanoString PanCancer IO360(商標)アッセイを用いて、推奨される第2相用量(recommended phase 2 dose:RP2D)のフロテツズマブで処置された再発/不応性AMLの患者のサブグループ(n=38)の骨髄試料における、14の免疫細胞型及び32の免疫腫瘍学シグネチャの存在量を含む、770の遺伝子の発現を調べる(ベースラインにおいて収集された38の骨髄試料、並びに処置時に収集された34の骨髄試料(サイクル1後[n=25]及びサイクル2後[n=9])。IO360遺伝子数は、基本的に以下のようにして、nCounter(登録商標)system(NanoString Technologies,Inc.)を用いて生成された:RNA(~100ng/試料)を未分画の骨髄穿刺液から抽出し、ハイブリダイゼーションのために、レポータ及びキャプチャプローブ混合物と共にインキュベートした。高解像度セッティングを用いて、nCounter FLEX分析システム上で転写物数を分析した。本明細書中で詳述されているように、レポータコード数(reporter code count:RCC)出力ファイルを使用して、遺伝子シグネチャスコアを算出する。NanoStringによって記述される所定のシグネチャに対するシグネチャスコアを、基本的に国際公開第2020/092404号、及びVadakekolathu J, et al. (2020) “Immune Landscapes Predict Chemotherapy Resistance And Immunotherapy Response In Acute Myeloid Leukemia,” Sci. Transl. Med. 12(546):eaaz0463に記載されているような、生物学的に関連する遺伝子セットの事前に定義された線形結合(重み付き平均)を用いて算出した。更に、順位付けされた遺伝子のリスト(χ2値)を、Orange3ソフトウェアパッケージ(バージョン3.25.0)を用いて生成した。教師なし階層クラスタリング(ユークリッド距離、完全結合)。
【0140】
過去に報告されているように、1次導入失敗(primary induction failure:PIF)/早期再発(early relapse:ER)の患者は、晩期再発(late relapse:LR)を示す患者に比べて高い免疫浸潤を示した。PD‐L1及び炎症性ケモカインスコアは、PIF/ERのHMA処置された患者において、LRに比べて高かった。腫瘍炎症シグニチャスコア(tumor inflammation signature score:TIS)は、抗原プロセシング機構及び炎症性ケモカインスコアと相関していた(P<0.0001)が、これは、強いT細胞炎症を起こした試料における、抗原提示及びT細胞化学誘引の発生を示唆するものである(Vadakekolathu J、et al. (2020) “Immune Landscapes Predict Chemotherapy Resistance And Immunotherapy Response In Acute Myeloid Leukemia.” Sci. Transl. Med. 12(546):eaaz0463)。
【0141】
遺伝子発現パネルの770の免疫関連遺伝子を順位付けすることによって、更なる分析を実施した。この順位付けは、完全寛解(CR)、不完全な血液学的回復を伴う完全寛解(CRi)、又は部分的な血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)として定義される、例示的なCD123×CD3二重特異性分子であるフロテツズマブに対する完全奏効に関連する上位10個の遺伝子を包含する倹約的な(parsimonious)発現シグネチャを特定した。10個の特定された遺伝子:CD8B、CRABP2、FCGR3A/B、FBP1、FPR1、ICOS、NOTCH2、PDGFA、SERPINH1、及びTHBS1は、上の表1に列挙されている。表1は、各遺伝子の代表的かつ非限定的なNCBI受託番号も提供する。例示的なCD123×CD3二重特異性分子であるフロテツズマブに対する完全奏効に関連するこれら10個の遺伝子の発現を示すヒートマップは、図2に提供されている。新たに特定された10遺伝子シグネチャスコアは、患者コホート全体にわたる遺伝子発現の平均合計として算出された。この10遺伝子シグネチャの発現は、研究登録時にPIF/ERである患者において、LR、及び免疫クラスタスコアが高いか又は中程度である患者に比べて高かった。図3は、患者の応答(完全奏効、部分奏功、又は無奏功)に応じて10遺伝子シグネチャスコアをプロットしており、抗白血病応答を示す患者の10遺伝子シグネチャスコアが高いことを示している。図4で提示されているヒートマップに示されているように、この10遺伝子シグネチャスコアは、好中球、マクロファージ、及び骨髄細胞タイプを含む所定の免疫遺伝子シグネチャスコアの発現(NanoString)によって決定される、骨髄免疫浸潤の程度、並びに炎症性ケモカイン、及びT細胞炎症を起こしたIFN‐γ駆動型のTMEを反映した他のシグネチャスコアと相関していた。いずれの特定のメカニズムによって束縛されるものではないが、シグニチャ中の遺伝子は、CD8B、免疫チェックポイントICOS及びNOTCH2を含み、これらは全て、フロテツズマブ等のCD123×CD3二重特異性結合分子によって再活性化される可能性がある、T細胞駆動型の、強く免疫抑制された腫瘍微小環境を反映していることに留意されたい。この点で、Notchシグナル伝達の増大は、結腸直腸癌の患者におけるCD8T細胞浸潤の増進、及びT細胞応答の阻害と相関している。更に、Notch1シグナル伝達ではなくNotch2が、リンパ腫の実験モデルにおいて抗腫瘍活性を有する細胞傷害性Tリンパ球の生成に決定的に必要であり、グランザイムBの転写活性化因子として作用する。
【0142】
機能性タンパク質会合ネットワークの分析を、STRING(string‐db.org)を用いて実施した。これらのデータは、完全奏効に関連する10個の遺伝子が、抗原結合及びプロセシング、VEGF活性化受容体活性、Notchシグナル伝達、癌並びにTヘルパー1型(Th1)及び2型(Th2)の分化におけるマイクロRNA調節に関連する、オントロジ及び経路に富むことを示した(表5)。これらのデータは、フロテツズマブ等のCD123×CD3二重特異性結合分子からの抗白血病応答の促進における、強化された持続的な抗原提示の潜在的な役割を裏付けるものである。
【0143】
【表5】
【0144】
研究の登録時点の欧州白血病ネット(European Leukemia Net:ELN)リスク疾患状態の予測能力(Dohner H、et al., 2017, “Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel.” Blood 129(4): 424-47)と、例示的なCD123×CD3二重特異性結合分子であるフロテツズマブの抗白血病活性に関する10遺伝子シグネチャスコアとを測定したAUROC曲線が、個別に又は組み合わせて図5に示されており、また標準誤差及び信頼区間が表6で提供されている。特筆すべきこととして、10遺伝子シグネチャスコアのAUROC値は、単独で考慮した場合には0.854であり、ELNリスクカテゴリと併せた場合には、ELNリスクカテゴリ単独の場合の0.672に対して0.904であった。更に、CD123×CD3二重特異性結合分子フロテツズマブを用いた処置によって、免疫浸潤、PD‐L1発現、抗原提示、及びIFN‐γシグナル伝達遺伝子シグネチャのレベルの上昇によって示唆されるように、TMEが調節された。
【0145】
【表6】
【0146】
本明細書において言及されている全ての公刊物及び特許は、個々の公刊物又は特許出願それぞれの全体が参照により本明細書に援用されていることが具体的かつ独立に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用されている。本発明をその具体的実施形態に関して説明したが、更なる修正形態が可能であり、本出願は、本発明が属する分野の公知の方法又は慣例の範囲内であるような、及びこれまでに挙げた必須の特徴に適用できるような、本開示からの逸脱を含む、本発明の原理に概ね従う本発明のいずれの変形、使用又は改変を包含することを意図していることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023531201000001.app
【国際調査報告】