(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】ピリミジン誘導体及びその製造方法並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20230713BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230713BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230713BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230713BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230713BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230713BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230713BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230713BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230713BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230713BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230713BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230713BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230713BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230713BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230713BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230713BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C07D401/14
A61K31/506
A61P3/10
A61P7/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P31/00
A61P31/10
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579075
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2021104379
(87)【国際公開番号】W WO2022002270
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010629992.X
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520001383
【氏名又は名称】盛世泰科生物医薬技術(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】ユー チアン
(72)【発明者】
【氏名】ディン ジューピン
(72)【発明者】
【氏名】タン ムーリン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルー チン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シェン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン シューシェン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063AA05
4C063BB09
4C063CC29
4C063DD12
4C063EE01
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
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4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC351
4C084ZC352
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC42
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA51
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC20
4C086ZC35
(57)【要約】
本願は、ピリミジン誘導体及びその製造方法並びに使用に関し、前記ピリミジン誘導体は、一般式(I)で示される化合物若しくはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、メソマー、ラセミ体、若しくはそれらの混合物の形態、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグから選ばれる。当該ピリミジン誘導体は、優れたCDK阻害効果と機能を示している。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される化合物若しくはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、メソマー、ラセミ体、若しくはそれらの混合物の形態、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグから選ばれるピリミジン誘導体であって、
【化1】
式中、R
1とR
2は、互いに独立してフッ素、塩素から選ばれ、
R
3は、水素、フッ素、又はヒドロキシ基から選ばれ、
Aは、メチレン基、又は共有結合から選ばれ、
Qは、炭素原子、又は窒素原子から選ばれ、ただし、
Qが炭素原子である場合に、Xは、-NR
4R
6であり、
Qが窒素原子であり且つR
3が水素である場合に、Xは、-R
5であり、
Qが窒素原子であり且つR
3がフッ素又はヒドロキシ基である場合に、Xは、C
1~C
3アルキル基、C
3~C
7シクロアルキル基又はR
5であり、
R
4は、水素、C
1~C
3アルキル基から選ばれ、
R
5は、
【化2】
であり、ただし、R、R’とR”は、互いに独立して水素、C
1~C
3アルキル基から選ばれ、
R
6は、C
1~C
3アルキル基、C
3~C
7シクロアルキル基又はR
5であることを特徴とするピリミジン誘導体。
【請求項2】
一般式(I)で示される化合物では、
Qが窒素原子であり且つR
3が水素である場合に、R
5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれ、
Qが窒素原子であり且つR
3がフッ素又はヒドロキシ基である場合に、Xは、エチル基又はR
5であり、ただし、R
5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれ、
又は、
Qが炭素原子である場合に、R
4は、水素又はメチル基であり、R
6はメチル基、エチル基又はR
5であり、ただし、R
5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のピリミジン誘導体。
【請求項3】
一般式(I)で示される化合物では、
R
1とR
2は、いずれもフッ素であり、R
3は、水素であり、Aは、メチレン基、共有結合から選ばれ、Qは、窒素原子であり、R
5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれ、
又は、R
1とR
2は、いずれもフッ素であり、R
3は、フッ素であり、Aは、メチレン基、共有結合から選ばれ、Qは、窒素原子であり、Xは、エチル基であり、
又は、R
1とR
2は、いずれもフッ素であり、R
3は、水素又はフッ素であり、Aは、メチレン基、共有結合から選ばれ、Qは、炭素原子であり、R
4は、水素又はメチル基であり、R
6は、メチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であることを特徴とする請求項1に記載のピリミジン誘導体。
【請求項4】
一般式(I)で示される化合物は、下記の構造を有する化合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のピリミジン誘導体。
【化3A】
【化3B】
【化3C】
【請求項5】
既存の化合物I-AとI-Bを環化させてベンゾイミダゾールI-Cを生成し、I-Cをボロン酸ピナコールエステルに変換した後、SuzukiカップリングによってI-Dと反応してI-Eを生成し、最後にI-Eと相応の2-アミノピリジンをBuchwald-Hartwigカップリングによって反応させて一般式Iの構造を生成する方法(1)、
【化4】
(2)
【化5】
(3)
【化6】
からいずれか1つ又は複数選ばれる方法であって、
式中、R
1、R
2、R
3、A、Q、Xは、請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体の対応する基団と同じものであり、Yは、ハロゲン元素であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体の製造方法。
【請求項6】
医薬組成物の製造における請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体の活性成分としての使用。
【請求項7】
前記医薬組成物は、細胞増殖異常疾患、感染症(例えば、ウイルス感染症(例えば、ヘルペス、HIV)、真菌感染症など)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、骨関節炎など)、自己免疫疾患(例えば、乾癬、ループス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎など)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化、術後血管狭窄、再狭窄など)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、放射線によって引き起こされる血液毒性疾患(例えば、骨髄抑制、好中球減少症、白血球減少症、貧血)を治療する薬物であり、
任意選択で、前記細胞増殖異常疾患を治療することは、がんを治療することであり、さらに、任意選択で、前記がんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、悪性の星細胞腫と乏突起神経膠腫成分を有する神経膠腫など)、食道がん、胃がん、肝がん、膵臓がん、結腸・直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がんなど)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、原発性若しくは転移性扁平上皮がんなど)、腎がん、皮膚がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、肉腫、脂肪肉腫、骨軟骨腫、骨腫、骨肉腫、精上皮腫、精巣腫瘍、子宮がん(例えば、子宮頸がん、子宮内膜がんなど)、頭頸部腫瘍(例えば、上顎骨がん、喉頭癌、咽頭がん、舌がん、口腔がんなど)、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)、真性多血症、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)、甲状腺腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、胆嚢がん、胆管がん、絨毛上皮腫、又は小児がん(例えば、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、血管肉腫、胎児性精巣腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肝芽腫、腎芽腫など)から選ばれ、さらに、任意選択で、前記がんは、乳がん又は卵巣がんであり、さらに、任意選択で、前記乳がんは、トリプルネガティブ乳がんであることを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体を活性成分として含み、さらに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を1種又は複数種含む医薬組成物であって、
任意選択で、さらに別の1種又は複数種の抗がん剤を活性成分として含み、前記抗がん剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、テモゾロミド、窒素マスタード、ジブロモマンニトールなど)、白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、テガフール、ゲムシタビン、カペシタビン、フルベストラント、ペメトレキセドなど)、植物由来アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンフルニン、トポテカンなど)、抗体医薬品(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブなど)、抗腫瘍性ホルモン薬(例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、デュタステリド、デキサメタゾン、タモキシフェンなど)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、レナリドミドなど)、アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン、レトロゾール、アナストロゾールなど)、VEGFR若しくはEGFR阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、ラパチニブなど)、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス、シロリムス、ゾタロリムスなど)、PI3Kキナーゼ阻害剤(例えば、BKM-120、XL-147、BEZ-235など)、B-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、GSK-2118436など)、又はAKT阻害剤(例えば、ペリホシン、MK-2206など)などから選ばれ、別の1種又は複数種の抗がん剤として好ましくは、アロマターゼ阻害剤であり、より好ましくは、レトロゾール又はアナストロゾールであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体を含むCDK阻害剤であって、任意選択で、CDKは、CDK2、CDK4、CDK6を含むことを特徴とするCDK阻害剤。
【請求項10】
請求項5に記載の製造方法を用いて請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体を製造するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載のCDK阻害剤の製造方法。
【請求項11】
医薬組成物の製造における請求項9に記載のCDK阻害剤を活性成分としての使用。
【請求項12】
前記医薬組成物は、細胞増殖異常疾患、感染症(例えば、ウイルス感染症(例えば、ヘルペス、HIV)、真菌感染症など)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、骨関節炎など)、自己免疫疾患(例えば、乾癬、ループス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎など)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化、術後血管狭窄、再狭窄など)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、放射線によって引き起こされる血液毒性疾患(例えば、骨髄抑制、好中球減少症、白血球減少症、貧血)を治療する薬物であり、
任意選択で、前記細胞増殖異常疾患を治療することは、がんを治療することであり、さらに、任意選択で、前記がんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、悪性の星細胞腫と乏突起神経膠腫成分を有する神経膠腫など)、食道がん、胃がん、肝がん、膵臓がん、結腸・直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がんなど)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、原発性若しくは転移性扁平上皮がんなど)、腎がん、皮膚がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、肉腫、脂肪肉腫、骨軟骨腫、骨腫、骨肉腫、精上皮腫、精巣腫瘍、子宮がん(例えば、子宮頸がん、子宮内膜がんなど)、頭頸部腫瘍(例えば、上顎骨がん、喉頭癌、咽頭がん、舌がん、口腔がんなど)、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)、真性多血症、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)、甲状腺腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、胆嚢がん、胆管がん、絨毛上皮腫、又は小児がん(例えば、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、血管肉腫、胎児性精巣腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肝芽腫、腎芽腫など)から選ばれ、さらに、任意選択で、前記がんは、乳がん又は卵巣がんであり、さらに、任意選択で、前記乳がんは、トリプルネガティブ乳がんであることを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項9に記載のCDK阻害剤を活性成分として含み、さらに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を1種又は複数種含む医薬組成物であって、
任意選択で、さらに別の1種又は複数種の抗がん剤を活性成分として含み、前記抗がん剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、テモゾロミド、窒素マスタード、ジブロモマンニトールなど)、白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、テガフール、ゲムシタビン、カペシタビン、フルベストラント、ペメトレキセドなど)、植物由来アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンフルニン、トポテカンなど)、抗体医薬品(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブなど)、抗腫瘍性ホルモン薬(例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、デュタステリド、デキサメタゾン、タモキシフェンなど)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、レナリドミドなど)、アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン、レトロゾール、アナストロゾールなど)、VEGFR若しくはEGFR阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、ラパチニブなど)、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス、シロリムス、ゾタロリムスなど)、PI3Kキナーゼ阻害剤(例えば、BKM-120、XL-147、BEZ-235など)、B-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、GSK-2118436など)、又はAKT阻害剤(例えば、ペリホシン、MK-2206など)などから選ばれ;別の1種又は複数種の抗がん剤として好ましくは、アロマターゼ阻害剤であり、より好ましくは、レトロゾール又はアナストロゾールであることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2020年7月3日に中国国家知識産権局へ提出された、出願番号が202010629992.Xで、発明の名称が「ピリミジン誘導体及びその製造方法並びに使用」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願が全体として参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、化合物に関し、より詳しく言えば、ピリミジン誘導体及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍が細胞周期の異常に関係しており、腫瘍細胞の殆どには有糸分裂に関わるシグナル伝達タンパク質の多くの変異と抗有糸分裂に関わるシグナル伝達タンパク質の欠陥と、腫瘍細胞のゲノム不安定性(GIN)と染色体不安定性(CIN)があり、この3種類の基本的な細胞周期の欠陥がいずれも直接的に又は間接的にサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の制御喪失によって引き起こされることが多くの検討によって見つけ出された。CDKはその調節サブユニット・サイクリン(cyclins)と結合することによって役割を発揮し、4つの主要なクラスのサイクリン(A-,B-,D-,E-型サイクリン)は細胞周期全体の異なる段階で異なる役割を発揮し、少なくとも16種類の哺乳類サイクリンが同定されている。サイクリンCyclin B/CDK1、Cyclin A/CDK2、Cyclin E/CDK2、Cyclin D/CDK4、Cyclin D/CDK6、Cyclin T1/CDK9及び他のヘテロ二量体(CDK3とCDK7を含む)は細胞周期が進行する上での重要な調節因子である。Cyclin/CDKヘテロ二量体の他の機能としては、転写、DNA修復、分化及びプログラム細胞死に対する調節がある(Morgan DO.Cyclin-dependent kinases:engines,clocks,and microprocessors.Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.(1997)13:261-291)。
【0004】
関連の検討からサイクリン依存性キナーゼの活性増加又は異常な活性化がヒト腫瘍の形成につながることが示されている。実際には、ヒト腫瘍の形成は一般にCDKタンパク質自体又はその調節因子の変動に関係している。CDK4とCDK6は相同性が高く、CDK4単一遺伝子ノックアウトネズミには糖尿病の症状と細胞欠陥があり、CDK6単一遺伝子ノックアウトネズミには造血細胞の増殖欠陥により軽度の貧血症状が発生し、CDK4とCDK6(CDK4/6)二重遺伝子ノックアウトには造血前駆細胞の増殖能力が損われるため、二重ノックアウトネズミの後期胚死滅がもたらされるという検討から見つけ出された。腫瘍細胞では、CDK4/6-Cyclin D/Rb(リン酸化網膜芽細胞腫遺伝子)シグナル伝達経路の過剰活性化が一般的に発見される。様々な細胞内及び細胞外の有糸分裂シグナルの刺激で、Cyclin Dが高度に発現されて、CDK4/6タンパク質とCyclin Dの相互作用が調節され、CDK4/6の局在化とキナーゼ活性が促進される。活性化されたCDK4/6はRbをリン酸化することによって、Rb-E2F複合体を解離させて、遊離E2Fを核内に放出して、タンパク質の転写を調節し、細胞周期の進行を開始させる。上皮細胞悪性腫瘍では、CDK4の過剰活性化が一般的に発見され、肉腫、血液がんなどの間葉系細胞腫瘍では、CDK6の過剰活性化が一般的に発見される。乳がん担がんマウスモデルを構築して行った実験では、野生型ヌードマウスの全てに腫瘍が形成されていたが、CDK4ノックアウトヌードマウスには全く腫瘍が形成されていない。抗CDK4 siRNAでCDK4の発現を妨害すると、ヌードマウスにおける腫瘍の増殖が明らかに阻害されていることが分かった。
【0005】
インビトロ実験では、例えば、p16、p27などの天然に存在するCDKのタンパク質阻害剤が肺がん細胞株の増殖を阻害できることが見つけ出された。また、がんではサイクリンE(CDK2の調節サイクリン)が常に過剰発現されることも検討で見つけ出された。これまでに、サイクリンEの増幅又は過剰発現が乳がんの予後不良に関係していると認識されている(Keyomarsi et al.,Cyclin E and survival in patients with breast cancer.N Engl J Med.(2002)347:1566-75)。サイクリンE2(CCNE2)の過剰発現は乳がん細胞の内分泌抵抗性に関係しており、関連の報告によると、CDK2を阻害するとタモキシフェン抵抗性とCCNE2過剰発現細胞においてタモキシフェン又はCDK4阻害剤に対する感受性を回復できる(Caldon et al.,Cyclin E2 overexpression is associated with endocrine resistance but not in sensitivity to CDK2 inhibition in human breast cancer cells.Mol Cancer Ther.(2012)11:1488-99;Herrera-Abreu et al.,Early Adaptation and Acquired Resistance to CDK4/6 Inhibition in Estrogen Receptor-Positive Breast Cancer,Cancer Res.(2016)76:2301-2313)。関連の報告によると、サイクリンEの増幅はHER2+乳がんでトラスツズマブへの抵抗性に寄与している(Scaltriti et al.,Cyclin E amplification/overexpression is a mechanism of trastuzumab resistance in HER2+breast cancer patients,Proc Natl Acad Sci.(2011)108:3761-6)。また、関連の報告によると、サイクリンEの過剰発現は基底様(basal-like)乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)及び炎症性乳がんでも機能を発揮している(Elsawaf&Sinn,Triple Negative Breast Cancer:Clinical and Histological Correlations,Breast Care(2011)6:273-278 Alexander et al.,Cyclin E overexpression as a biomarker for combination treatment strategies in inflammatory breast cancer,Oncotarget(2017)8:14897-14911)。サイクリンE1(CCNE1)の増幅又は過剰発現も、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がん及び他のがんの予後不良に関係している(Nakayama et al.,Gene amplification CCNE1 is related to poor survival and potential therapeutic target in ovarian cancer,Cancer(2010)116:2621-34;Etemadmoghadam et al.,Resistance to CDK2 Inhibitors Is Associated with Selection of Polyploid Cells in CCNE1-Amplified Ovarian Cancer,Clin Cancer Res(2013)19:5960-71;Au-Yeung et al.,Selective Targeting of Cyclin E1-Amplified High-Grade Serous Ovarian Cancer by Cyclin-Dependent Kinase 2 and AKT Inhibition,Clin.Cancer Res.(2017)23:1862-1874;Ayhan et al.,CCNE1 copynumber gain and overexpression identify ovarian clear cell carcinoma with a poor prognosis,Modern Pathology(2017)30:297-303;Ooi et al.,Gene amplification of CCNE1,CCND1,and CDK6 in gastric cancers detected bymultiplex ligation-dependent probe amplification and fluorescence in situ hybridization,Hum Pathol.(2017)61:58-67;Noske et al.,Detection of CCNE1/URI(19q12)amplification by in situ hybridisation is common in high grade and type II endometrial cancer,Oncotarget(2017)8:14794-14805)。CDK1、CDK2、CDK5及びCDK9を阻害するために使用される低分子阻害剤ディナシクリブ(Dinaciclib、MK-7965)については、現在、乳がんと血液がんに関する臨床開発が行われている。CDK2、CDK7及びCDK9を阻害するセリシクリブ(Seliciclib)(roscovitine又はCYC202)と化学療法の組み合わせによる晩期固形腫瘍の治療も行われている。
【0006】
腫瘍の増殖を阻害するための他にも、CDK阻害剤は、心血管障害(例えば、再狭窄、アテローム性動脈硬化と異常な細胞増殖によって引き起こされる他の血管障害)の治療、様々な感染因子(例えば、真菌、原生動物寄生虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫)、DNA・RNAウイルス)によって引き起こされる疾患の治療、様々な自己免疫疾患の改善にも用いられる。また、関節炎ラットモデルでは、関節の腫れがp16発現アデノウイルスによって殆ど抑制されており、CDK阻害剤が他の細胞増殖障害(例えば、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする乾癬、糸球体腎炎、ループス)にも有効であることが検討で見つけ出された。
【0007】
また、細胞周期のうち、G1期からS期へ移行する細胞及びG2期からM期へ移行する細胞はDNA損傷因子(例えば、電離放射線(IR))に極めて敏感であり、細胞がG1期からS期に移行する過程では少なくとも3種のサイクリン依存性キナーゼ(CDK2、CDK4、CDK6)及びその調節サブユニット・サイクリンが共同でRbファミリータンパク質をリン酸化して調節する必要があるということも研究で見つけ出された。選択的CDK4/6阻害剤は細胞G1期の停止を誘導して、造血幹細胞/前駆細胞のDNA損傷因子(例えば、IR)に対する耐性を高め、放射線によって引き起こされる様々な血液毒性(例えば、骨髄抑制、好中球減少症、白血球減少症、貧血など)を効果的に軽減できる。
【0008】
また、CDK2の過剰発現は細胞周期の異常な調節に関係していることが検討で見つけ出された。サイクリンE/CDK2複合体はG1期からS期への移行、ヒストン生合成及び中心体複製に対する調節で重要な役割を果たす。サイクリンD/CDK4/6及びサイクリンE/CDK2はRbの漸進的リン酸化に対してG1転写因子E2Fを放出し、S期への移行を促進する。S期の初期のサイクリンA/CDK2の活性化が内因性基質のリン酸化を促進し、DNAの複製とE2Fの不活性化が許可されるため、S期が完了する(Asghar et al.,The history and future of targeting cyclin-dependent kinasesin cancer therapy,Nat.Rev.Drug.Discov.2015;14(2):130-146)。
【0009】
CDK4とCDK6を選択的に阻害する阻害剤を開示している特許出願としては、WO2003062236、WO2006008874、WO2009126584などが挙げられる。巨大な努力が払われていたにもかかわらず、CDK2を標的とする薬剤がどれも承認されていないため、新しい活性プロファイルを有するCDK阻害剤、特にCDK2を標的とするCDK阻害剤を見つけ出す必要がある。
【0010】
当該背景技術の部分で開示される内容は、本願の背景についての全体的な理解を深めるためのもので、当該内容が当業者に知られている先行技術を構成すると承認するか又は何らかの形でそれを示唆するものと見なすべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願の目的は、新規な構造を有するピリミジン誘導体及びその製造方法並びに使用を提供することにある。当該ピリミジン誘導体は、優れたCDK阻害効果と機能を示している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願は、上記の目的を達成するためになされ、一般式(I)で示される化合物若しくはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、メソマー、ラセミ体、若しくはそれらの混合物の形態、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグから選ばれる、ピリミジン誘導体を提供する。
【化1】
式中、R
1とR
2は、互いに独立してフッ素、又は塩素から選ばれ、
R
3は、水素、フッ素、又はヒドロキシ基から選ばれ、
Aは、メチレン基、又は共有結合から選ばれ、
Qは、炭素原子、窒素原子から選ばれ、ただし、
Qが炭素原子である場合に、Xは、-NR
4R
6であり、
Qが窒素原子であり且つR
3が水素である場合に、Xは、-R
5であり、
Qが窒素原子であり且つR
3がフッ素又はヒドロキシ基である場合に、Xは、C
1~C
3アルキル基、C
3~C
7シクロアルキル基又はR
5であり、
R
4は、水素、又はC
1~C
3アルキル基から選ばれ、
R
5は、
【化2】
であり、R、R’とR”は、互いに独立して水素、C
1~C
3アルキル基から選ばれ、
R
6は、C
1~C
3アルキル基、C
3~C
7シクロアルキル基又はR
5である。
【0013】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物で、Qが窒素原子であり且つR3が水素である場合に、R5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれる。
【0014】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物で、Qが窒素原子であり且つR3がフッ素又はヒドロキシ基である場合に、Xは、エチル基又はR5であり、R5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれる。
【0015】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物で、Qが炭素原子である場合に、R4は、水素又はメチル基であり、R6は、メチル基、エチル基又はR5であり、R5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素、メチル基から選ばれる。
【0016】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物で、R1とR2は、いずれもフッ素であり、R3は、水素であり、Aは、メチレン基、又は共有結合から選ばれ、Qは、窒素原子であり、R5におけるR、R’とR”は、互いに独立して水素又はメチル基から選ばれる。
【0017】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物で、R1とR2は、いずれもフッ素であり、R3は、フッ素であり、Aは、メチレン基又は共有結合から選ばれ、Qは、窒素原子であり、Xは、エチル基である。
【0018】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物で、R1とR2は、いずれもフッ素であり、R3は、水素又はフッ素であり、Aは、メチレン基、共有結合から選ばれ、Qは、炭素原子であり、R4は、水素又はメチル基であり、R6は、メチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基である。
【0019】
可能な一実施形態では、一般式(I)で示される化合物は、下記の構造を有する化合物から選ばれる。
【化3A】
【化3B】
【化3C】
【0020】
本願は、さらに、ピリミジン誘導体の製造方法を提供する。前記製造方法は、下記の方法からいずれか1つ選ばれる。
(1)既存の化合物I-AとI-Bを環化させてベンゾイミダゾールI-Cを生成し、I-Cをボロン酸ピナコールエステルに変換した後、SuzukiカップリングによってI-Dと反応してI-Eを生成し、最後にI-Eと相応の2-アミノピリジンをBuchwald-Hartwigカップリング反応(バックワルド・ハートウィッグアミノ化)によって反応させて代表的な構造Iを生成する。
【化4】
(2)
【化5】
(3)
【化6】
式中、R
1、R
2、R
3、A、Q、Xは、前記ピリミジン誘導体の対応する基と同じものであり、Yは、ハロゲン元素である。
【0021】
本願は、さらに、医薬組成物の製造における前記ピリミジン誘導体の活性成分としての使用を提供する。
【0022】
可能な一実施形態では、前記医薬組成物は、細胞増殖異常疾患、感染症(例えば、ウイルス感染症(例えば、ヘルペス、HIV)、真菌感染症など)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、骨関節炎など)、自己免疫疾患(例えば、乾癬、ループス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎など)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化、術後血管狭窄、再狭窄など)又は神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、放射線によって引き起こされる血液毒性疾患(例えば、骨髄抑制(myelosuppression)、好中球減少症、白血球減少症、貧血)を治療する薬物である。
【0023】
可能な一実施形態では、前記細胞増殖異常疾患を治療することは、がんを治療することであり、任意選択に、前記がんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、悪性の星細胞腫と乏突起神経膠腫成分を有する神経膠腫など)、食道がん、胃がん、肝がん、膵臓がん、結腸・直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がんなど)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、原発性若しくは転移性扁平上皮がんなど)、腎がん、皮膚がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、肉腫、脂肪肉腫、骨軟骨腫、骨腫、骨肉腫、精上皮腫、精巣腫瘍、子宮がん(例えば、子宮頸がん、子宮内膜がんなど)、頭頸部腫瘍(例えば、上顎骨がん、喉頭癌、咽頭がん、舌がん、口腔がんなど)、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)、真性多血症、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)、甲状腺腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、胆嚢がん、胆管がん、絨毛上皮腫、又は小児がんなど(例えば、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、血管肉腫、胎児性精巣腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肝芽腫、腎芽腫など)から選ばれる。
【0024】
可能な一実施形態では、前記がんは、乳がん又は卵巣がんである。
【0025】
本願は、さらに、前記ピリミジン誘導体を活性成分として含み、さらに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を1種又は複数種含む医薬組成物を提供する。
【0026】
可能な一実施形態では、前記医薬組成物は、さらに別の1種又は複数種の抗がん剤を活性成分として含み、前記抗がん剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、テモゾロミド、窒素マスタード、ジブロモマンニトールなど)、白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、テガフール、ゲムシタビン、カペシタビン、フルベストラント、ペメトレキセドなど)、植物由来アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンフルニン、トポテカンなど)、抗体医薬品(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブなど)、抗腫瘍性ホルモン薬(例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、デュタステリド、デキサメタゾン、タモキシフェンなど)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、レナリドミドなど)、アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン、レトロゾール、アナストロゾールなど)、VEGFR若しくはEGFR阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、ラパチニブなど)、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス、シロリムス、ゾタロリムスなど)、PI3Kキナーゼ阻害剤(例えば、BKM-120、XL-147、BEZ-235など)、B-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、GSK-2118436など)、又はAKT阻害剤(例えば、ペリホシン、MK-2206など)などから選ばれ、好ましくは、アロマターゼ阻害剤であり、より好ましくは、レトロゾール又はアナストロゾールである。
【0027】
本願は、さらに、疾患の治療方法を提供する。前記方法は、疾患の治療を必要とする対象に有効量の前記ピリミジン誘導体を投与するステップを含み、前記疾患は、細胞増殖異常疾患、感染症(例えば、ウイルス感染症(例えば、ヘルペス、HIV)、真菌感染症など)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、骨関節炎など)、自己免疫疾患(例えば、乾癬、ループス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎など)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化、術後血管狭窄、再狭窄など)又は神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、放射線によって引き起こされる血液毒性疾患(例えば、骨髄抑制、好中球減少症、白血球減少症、貧血)である。
【0028】
可能な一実施形態では、前記細胞増殖異常疾患は、がんであり、任意選択で、前記がんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、星細胞腫と乏突起神経膠腫を含む神経膠腫など)、食道がん、胃がん、肝がん、膵臓がん、結腸・直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がんなど)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、原発性若しくは転移性扁平上皮がんなど)、腎がん、皮膚がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、肉腫、脂肪肉腫、骨軟骨腫、骨腫、骨肉腫、精上皮腫、精巣腫瘍、子宮がん(例えば、子宮頸がん、子宮内膜がんなど)、頭頸部腫瘍(例えば、上顎骨がん、喉頭癌、咽頭がん、舌がん、口腔がんなど)、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)、真性多血症、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)、甲状腺腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、胆嚢がん、胆管がん、絨毛上皮腫、又は小児がんなど(例えば、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、血管肉腫、胎児性精巣腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肝芽腫、腎芽腫など)から選ばれる。
【0029】
可能な一実施形態では、前記がんは、乳がん又は卵巣がんである。
【0030】
可能な一実施形態では、前記乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。
【0031】
可能な一実施形態では、前記方法は、別の1種又は複数種の抗がん剤を活性成分として併用することをさらに含み、前記抗がん剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、テモゾロミド、窒素マスタード、ジブロモマンニトールなど)、白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、テガフール、ゲムシタビン、カペシタビン、フルベストラント、ペメトレキセドなど)、植物由来アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンフルニン、トポテカンなど)、抗体医薬品(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブなど)、抗腫瘍性ホルモン薬(例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、デュタステリド、デキサメタゾン、タモキシフェンなど)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、レナリドミドなど)、アロマターゼ阻害剤(aromataseinhibitors)(例えば、エキセメスタン、レトロゾール、アナストロゾールなど)、VEGFR若しくはEGFR阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、ラパチニブなど)、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス、シロリムス、ゾタロリムスなど)、PI3Kキナーゼ阻害剤(例えば、BKM-120、XL-147、BEZ-235など)、B-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、GSK-2118436など)、又はAKT阻害剤(例えば、ペリホシン、MK-2206など)などから選ばれる。好ましくは、アロマターゼ阻害剤であり、より好ましくは、レトロゾール又はアナストロゾールである。
【0032】
本願は、さらに、前記ピリミジン誘導体を含むCDK阻害剤を提供する。
【0033】
可能な一実施形態では、CDKは、CDK2、CDK4、CDK6を含む。
【0034】
本願は、さらに、前記製造方法を用いて請求項1~4のいずれか1項に記載のピリミジン誘導体を製造するステップを含む前記CDK阻害剤の製造方法を提供する。
【0035】
本願は、さらに、医薬組成物の製造における前記CDK阻害剤の活性成分としての使用を提供する。
【0036】
可能な一実施形態では、前記医薬組成物は、細胞増殖異常疾患、感染症(例えば、ウイルス感染(例えば、ヘルペス、HIV)、真菌感染症など)、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、骨関節炎など)、自己免疫疾患(例えば、乾癬、ループス、1型糖尿病、糖尿病性腎症、多発性硬化症、糸球体腎炎など)、心血管疾患(例えば、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化、術後血管狭窄、再狭窄など)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、放射線によって引き起こされる血液毒性疾患(例えば、骨髄抑制、好中球減少症、白血球減少症、貧血)を治療する薬物である。
【0037】
可能な一実施形態では、前記細胞増殖異常疾患を治療することは、がんを治療することである。
【0038】
可能な一実施形態では、前記がんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、悪性の星細胞腫と乏突起神経膠腫成分を有する神経膠腫など)、食道がん、胃がん、肝がん、膵臓がん、結腸・直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がんなど)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、原発性若しくは転移性扁平上皮がんなど)、腎がん、皮膚がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、肉腫、脂肪肉腫、骨軟骨腫、骨腫、骨肉腫、精上皮腫、精巣腫瘍、子宮がん(例えば、子宮頸がん、子宮内膜がんなど)、頭頸部腫瘍(例えば、上顎骨がん、喉頭癌、咽頭がん、舌がん、口腔がんなど)、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)、真性多血症、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)、甲状腺腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、胆嚢がん、胆管がん、絨毛上皮腫、又は小児がん(例えば、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、血管肉腫、胎児性精巣腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肝芽腫、腎芽腫など)から選ばれる。
【0039】
可能な一実施形態では、前記がんは、乳がん又は卵巣がんである。
【0040】
可能な一実施形態では、前記乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。
【0041】
前記CDK阻害剤を活性成分として含み、さらに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を1種又は複数種含む医薬組成物である。
【0042】
可能な一実施形態では、前記医薬組成物は、さらに別の1種又は複数種の抗がん剤を活性成分として含み、前記抗がん剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、テモゾロミド、窒素マスタード、ジブロモマンニトールなど)、白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、テガフール、ゲムシタビン、カペシタビン、フルベストラント、ペメトレキセドなど)、植物由来アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンフルニン、トポテカンなど)、抗体医薬品(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブなど)、抗腫瘍性ホルモン薬(例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、デュタステリド、デキサメタゾン、タモキシフェンなど)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、レナリドミドなど)、アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン、レトロゾール、アナストロゾールなど)、VEGFR若しくはEGFR阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、ラパチニブなど)、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス、シロリムス、ゾタロリムスなど)、PI3Kキナーゼ阻害剤(例えば、BKM-120、XL-147、BEZ-235など)、B-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、GSK-2118436など)、又はAKT阻害剤(例えば、ペリホシン、MK-2206など)などから選ばれ、別の1種又は複数種の抗がん剤として好ましくは、アロマターゼ阻害剤であり、より好ましくは、レトロゾール又はアナストロゾールである。
【0043】
本願は、さらに、CDK活性の阻害を必要とする対象に有効量の前記ピリミジン誘導体を投与するステップを含むCDK活性阻害方法を提供する。
【発明の効果】
【0044】
本願のピリミジン誘導体は、優れたCDK阻害効果と機能を示しており、特にCDK2、CDK4、CDK6を阻害する。アベマシクリブ(Abemaciclib)よりも低いIC50値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本願の目的、技術的解決手段及び利点がより明瞭になるよう、実施例を用いて本願に係る技術的解決手段を明瞭かつ完全に説明する。言うまでもないが、説明される実施例は本願の実施例の一部に過ぎず、実施例の全てではない。当業者が本願の実施例に基づいて新規性のある作業を行うことなく他の実施例を得た場合、そのいずれも本願の保護範囲に属する。
【0046】
また、本願をより一層に説明するために、以下の実施形態では多くの詳細が示されている。当業者は、たとえ一部の詳細がなくても、本願が同様に実施され得ることを理解できる。一部の実施例では、本願の趣旨を引き立てるために、当業者に知られる原料、構成要素、方法、手段などを詳しく説明していない。
【0047】
特に明記しない限り、明細書と特許請求の範囲の全体において、用語「含む」又はその同等な形態(例えば、「含有する」又は「含有している」など)は記載されている構成要素又は構成部分を含んでいるが、他の構成要素又は他の構成部分が排除されていないように理解される。
【0048】
用語「アルキル基」は、1から20個の炭素原子の直鎖基と分枝鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。好ましくは、1から10個の炭素原子を含むアルキル基であり、より好ましくは、1から6個の炭素原子を含むアルキル基であり、最も好ましくは、1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、中でも最も好ましくは、メチル基である。非限定的な例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基、及びその様々な分岐異性体などを含む。より好ましくは、1から6個の炭素原子を含む低級アルキル基であり、非限定的な例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基などを含む。アルキル基は置換されてもよいし置換されなくてもよく、置換された場合、置換基は、任意の利用可能な接続部位で置換されてもよく、前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、アミノ基、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基から独立して選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0049】
用語「シクロアルキル基」は、飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式の環状炭化水素置換基を指し、シクロアルキル基の環は、3から20個の炭素原子を含み、好ましくは3から12個の炭素原子を含み、より好ましくは3から10個の炭素原子を含み、最も好ましくは3から6個の炭素原子を含み、中でも最も好ましくは、シクロプロピル基又はシクロペンチル基である。単環式シクロアルキル基の非限定的な例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含み、好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基である。多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環又は架橋環のシクロアルキル基を含む。シクロアルキル基は任意選択で置換されてもよいし置換されなくてもよく、置換された場合、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、アミノ基、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基から独立して選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0050】
用語「アルコキシ基」は、-O-(アルキル)基と-O-(非置換のシクロアルキル)基を指し、前記アルキル基、シクロアルキル基は上記で定義したとおりである。非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを含む。アルコキシ基は任意選択で置換されてもよいし置換されなくてもよく、置換された場合、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、アミノ基、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基から独立して選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0051】
「ハロアルキル基」は、アルキル基が1つ又は複数のハロゲンによって置換されたものを指し、アルキル基は、上記で定義したとおりである。
【0052】
「ヒドロキシ基」は、-OH基を指す。
【0053】
「ヒドロキシアルキル基」は、ヒドロキシ基によって置換されたアルキル基を指し、前記アルキル基は、上記で定義したとおりである。
【0054】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指し、好ましくは、フッ素又はヨウ素である。
【0055】
「アミノ基」は、-NH2を指す。
【0056】
「シアノ基」は、-CNを指す。
【0057】
「ニトロ基」は、-NO2を指す。
【0058】
「オキソ基」は、=Oを指す。
【0059】
「カルボキシ基」は、-C(O)OHを指す。
【0060】
「カルボン酸エステル基」は、-C(O)O(アルキル)基又は(シクロアルキル)基を指し、前記アルキル基、シクロアルキル基は、上記で定義したとおりである。
【0061】
「任意選択」又は「任意選択で」は、続いて説明される事項又は状況が発生してもよいが、必ずしもそうとは限らないことを意味し、当該記述には、当該事項又は状況が発生する場合と発生しない場合が含まれる。例えば、「任意選択でアルキル基によって置換されるヘテロシクロアルキル基」は、アルキル基が存在してもよいが、必ずしもそうとは限らないことを意味し、当該記述には、ヘテロシクロアルキル基がアルキル基によって置換される場合とヘテロシクロアルキル基がアルキル基によって置換されない場合が含まれる。
【0062】
「置換された」は、基団の1つ又は複数の水素原子、好ましくは最大5個、より好ましくは1から3個の水素原子が互いに独立して対応する数目の置換基によって置換されることを指す。言うまでもないが、置換基が化学的に可能なサイトにのみ位置し、当業者は特段の作業をしなくても(実験又は理論から)可能な又は不可能な置換を決定できる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基が不飽和(例えば、オレフィン性)結合を有する炭素原子と結合する時は非安定な可能性がある。
【0063】
【0064】
化合物2の合成:
化合物1(3.0g、24.6mmol)、化合物A(5.03g、27.0mmol)を室温下でTHF(80mL)に溶解し、3滴の酢酸を加えて、30分間撹拌した後、数回に分けてナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(15.6g、73.8mmol)を加え、完了したら室温下で一晩撹拌した。50mLの炭酸ナトリウム水溶液を加えて、酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濾過、濃縮して化合物2の粗生成物(7.8g)を得た。
【0065】
化合物4の合成:
化合物2の粗生成物(7.8g、26.7mmol)、化合物3(7.17g、22.3mmol)を室温下で1,4-ジオキサン(150mL)に溶解し、Pd2(dba)3(2.0g、2.23mmol)、Xantphos(2.5g、4.46mmol)、炭酸カリウム(4.6g、33.45mmol)を加えて、窒素置換を4回行った後に加熱して5時間還流させた。500mLの水を加えて、ジクロロメタンで4回抽出した後、有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濾過、濃縮して化合物4の粗生成物を得、さらに酢酸エチル(150mL)で30分間スラリー化した後、濾過、乾燥して化合物4(13g)を得た。
【0066】
化合物5の合成:
化合物4(13.0g、25mmol)を室温下でジクロロメタン(50mL)に溶解し、15mLのトリフルオロ酢酸を加えて、室温下で一晩撹拌した。濃縮した後、飽和炭酸ナトリウム溶液でpHを8~9に調整し、ジクロロメタンで5回抽出した後に有機相を合わせ、乾燥濃縮した後、カラムクロマトグラフィーにかけてメタノール/ジクロロメタンでグラジエント溶出して化合物5(6g)を得、ただし、メタノールの体積比を0~10%に調整した。
【0067】
1979の合成:
化合物5(6g、12.5mmol)、ブロモエタノール(1.9g、15.1mmol)を室温下でDMF(50mL)に溶解し、DIPEA(4.9g、37.7mmol)、ヨウ化カリウム(触媒量)を加えた後、80℃に加熱して5時間反応させた。LC-MSで反応の終了を検出したら、DMFを濃縮除去した後、そのままカラムクロマトグラフィーにかけてメタノール/ジクロロメタンでグラジエント溶出して化合物1979の粗生成物(3.5g)を得、ただし、メタノールの体積比を0~10%に調整し、さらに100mLの酢酸エチルで30分間スラリー化し、濾過して1979(3.0g)を得た(LCMS,M+1:523)。
【0068】
【0069】
化合物1の合成:
化合物A(7.9g、39mmol)、化合物B(10g、47mmol)を室温下でDMF(50mL)に溶解し、炭酸セシウム(19g、58mmol)を加えて、120~125℃に加熱して5時間反応させた。室温に冷却し、200mLの水を加えて30分間撹拌した後、濾過し、乾燥した後、酢酸エチルと石油エーテルの混合溶媒で30分間スラリー化した後、濾過して化合物1の粗生成物(8.3g)を得た。
【0070】
化合物2の合成:
化合物1の粗生成物(8.3g)を室温下でメタノール(150mL)に溶解し、Pd/C(1.6g)を加えて、水素置換を3回行った後に室温下で一晩撹拌した。濾過し、母液を濃縮して粗生成物を得、さらに酢酸エチルと石油エーテルの混合溶媒で30分間スラリー化した後、濾過して化合物2(5.3g)を得た。
【0071】
化合物4の合成:
化合物2(5.3g、17.2mmol)、化合物3(5.1g、15.8mmol)を室温下で1,4-ジオキサン(50mL)に溶解し、Pd2(dba)3(0.72g、0.8mmol)、Xantphos(0.9g、1.7mmol)、炭酸カリウム(3.2g、72mmol)を加えて、窒素置換を4回行った後に加熱して5時間還流させ、100mLの水を加えて、濾過し、さらに固体をエタノール(150mL)で30分間スラリー化した後、濾過、乾燥して化合物4(8.4g)を得た。
【0072】
化合物5の合成:
化合物4(8.4g、14.2mmol)を室温下でジクロロメタン(50mL)に溶解し、15mLのトリフルオロ酢酸を加えて、室温下で一晩撹拌した。濃縮した後、飽和炭酸ナトリウム溶液でpHを8~9に調整し、ジクロロメタンで5回抽出した後に有機相を合わせ、乾燥濃縮した後、カラムクロマトグラフィーにかけて0~10%メタノール/ジクロロメタンで溶出して化合物5(5g)を得た。
【0073】
1963の合成:
化合物5(3.2g、6.5mmol)、ブロモエタノール(0.9g、7.8mmol)を室温下でDMF(30mL)に溶解し、DIPEA(1.72g、13.3mmol)、ヨウ化カリウム(触媒量)を加えた後、80℃に加熱して5時間反応させた。LC-MSで反応の終了を検出したら、DMFを濃縮除去して、そのままカラムクロマトグラフィーにかけて0~10%メタノール/ジクロロメタンで溶出して化合物1963(1.6g)の粗生成物を得、さらに100mLの酢酸エチルで30分間スラリー化し、濾過して1963(1.3g)を得た(LCMS,M+1:537)。
【0074】
【0075】
化合物2の合成:
化合物1(18g、76mmol)、炭酸セシウム(24.6g、76mmol)を室温下でTHF(90g)に加え、温度を0~5℃に下げて、温度を10℃未満に制御してイソプロピルアミン(4.5g、76mmol)を滴下し、完了したら室温下で5時間反応させて、LC-MSで反応の終了を検出したら、濾過、濃縮して22gの赤褐色の固体を得た。前記赤褐色の固体(22g、79mmol)をエタノール(80mL)と水(20mL)の混合溶液に加えて、塩化アンモニウム(7.94g、148mmol)、そして鉄粉(25.3g、454mmol)を加え、還流するまで温度を上げて1時間反応させ、LC-MSで反応の終了を検出したら、水とEAを加えて撹拌し、濾過して、水相をEAで抽出し、乾燥濃縮して、カラムクロマトグラフィーにかけてPEで溶出して化合物2(茶色の液体12.1g)を得た。
【0076】
化合物3の合成:
化合物2(3g、12.14mmol)を水(12mL)と濃塩酸(6mL)の混合物に加え、ヒドロキシ酢酸(4.6g、60.7mmol)を加えて、還流するまで加熱して3時間反応させて、LC-MSで反応の終了を検出したら、温度を下げて炭酸ナトリウム溶液でpHを約8~9に調整して、EAで抽出し、乾燥濃縮して黄色の固体化合物3(3.1g)を得た。
【0077】
化合物4の合成:
化合物3(3g、10.44mmol)をDCM(30mL)に加え、温度を0~5℃に下げて、10℃未満に限定してDast試薬(2.02g、12.54mmol)を滴下し、室温下で反応させた後、還流下反応させ、Dast試薬(0.6g)を追加して、引き続き還流下24時間反応させて、LC-MSで殆どの原料が転化していることを検出したら、温度を下げて、炭酸水素ナトリウムでpHを8に調整して、DCMで抽出し、カラムクロマトグラフィーにかけて0~5%EAで溶出して黄色の固体化合物4(0.9g)を得た。
【0078】
化合物5と化合物6のワンポット合成:
化合物4(0.92g、3.2mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.96g、3.8mmol)、酢酸カリウム(0.62g、6.36mmol)、Pd(dppf)Cl2(0.22g、0.64mmol)をこの順にジオキサン(30mL)に加え、窒素の保護下で、温度を上げて還流下2時間反応させ、LC-MSで反応の完了を検出したら、温度を下げて、炭酸ナトリウム(0.67g、6.36mmol)、化合物B(0.53g、3.2mmol)を化合物5の反応系に加えて、Pd(dppf)Cl2(0.11g、0.32mmol)、そして水(7mL)を加えて、窒素の保護下で、温度を80~90℃に上げ2時間反応させて、LC-MSで反応の完了を検出したら、温度を下げて水を加え、EAで抽出して、乾燥濃縮し、カラムクロマトグラフィーにかけて0~15%EAで溶出して、黄色の固体化合物6(0.62g)を得た。
【0079】
化合物1984の合成:
化合物6(0.15g、0.44mmol)、化合物7(0.11g、0.484mmol)をジオキサンに加え、Pd2(dba)3(44.4mg、0.044mmol)、Xantphos(51mg、0.088mmol)、炭酸カリウム(91.2mg、0.66mmol)を加え、窒素の保護下で、温度を上げて還流下反応させ、LC-MSで反応の終了を検出したら、温度を下げて、水を加え、DCMで抽出し、プレートから黄色の固体化合物1984(98mg)をかき取った(LCMS,M+1:525)。
【0080】
実施例4:他の製造例
他の化合物製造例は、次のとおりである。
【化10A】
【化10B】
【化10C】
【0081】
実施例5:CDK2キナーゼ活性の測定
インビトロCDK2キナーゼ活性を下記の方法によりテストした。
最終反応バッファー:
100mM 4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、pH 7.5、
0.1%ウシ血清アルブミン、
0.01%Triton X-100、
1mM ジチオトレイトール、
5mM 塩化マグネシウム、
10μM オルトバナジン酸ナトリウム、
10μM β-グリセロリン酸ナトリウム、
10μM ATP、
1%DMSO(テスト化合物からのもの)、
基質ペプチド:1μM FAM-PKTPKKAKKL-OH、FAMは5-カルボキシフルオレセイン、
0.1nM CDK2/ヒトサイクリンA(Millipore、カタログ番号14-448-23984)。
【0082】
384ウェルプレートに5μLのバッファーを加え、0.1μLのテスト化合物(DMSO、最高濃度の100倍)、そして5μLの基質ペプチドバッファーを加えた。25℃下で6時間培養して、EDTAで反応を停止した。電気泳動解析装置を起動した(Caliper LabChip(登録商標)3000 Drug Discovery System、青色レーザー(480nm)励起、緑色CCD(520nm)でCCD2検出)。CDK2キナーゼ活性に対するテスト化合物の阻害効果の詳細は表1に示されるとおりである。
【0083】
実施例6:CDK4キナーゼ活性の測定
インビトロCDK4キナーゼ活性を下記の方法でテストした。
最終反応バッファー:
100mM 4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、pH7.5、
0.1%ウシ血清アルブミン、
0.01%Triton X-100、
1mM ジチオトレイトール、
5mM 塩化マグネシウム、
10μM オルトバナジン酸ナトリウム、
10μM β-グリセロリン酸ナトリウム、
25μM ATP、
1%DMSO(テスト化合物からのもの)、
基質ペプチド:1μM FAM-RRFRPASPLRGPPK-NH2フラグメント、FAMは5-カルボキシフルオレセイン、
5nM CDK4/ヒトサイクリンD(Life Tech、カタログ番号PV4400-1754389F)。
【0084】
384ウェルプレートに5μLのバッファーを加え、0.1μLのテスト化合物(DMSO、最高濃度の100倍)、そして5μLの基質ペプチドバッファーを加えた。25℃下で6時間培養して、EDTAで反応を停止した。電気泳動解析装置を起動した(Caliper LabChip(登録商標)3000 Drug Discovery System、青色レーザー(480nm)励起、緑色CCD(520nm)でCCD2検出)。CDK4キナーゼ活性に対するテスト化合物の阻害効果の詳細は表1に示されるとおりである。
【0085】
実施例7:CDK6キナーゼ活性の測定
インビトロCDK6キナーゼ活性を下記の方法でテストした。
2nM CDK6/ヒトサイクリンD3(Carna、カタログ番号04-107)
最終反応バッファー:
100mM 4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、pH 7.5、
0.1%ウシ血清アルブミン、
0.01%Triton X-100、
1mM ジチオトレイトール、
5mM 塩化マグネシウム、
10μM オルトバナジン酸ナトリウム、
10μM β-グリセロリン酸ナトリウム、
300μM ATP、
1%DMSO(テスト化合物からのもの)、
基質ペプチド:Dyrktide、
384ウェルプレートに5μLのバッファーを加え、0.1μLのテスト化合物(DMSO、最高濃度の100倍)、そして5μLの基質ペプチドバッファーを加えた。25℃下で3時間培養して、EDTAで反応を停止した。電気泳動解析装置を起動した(Caliper LabChip(登録商標)3000 Drug Discovery System、青色レーザー(480nm)励起、緑色CCD(520nm)でCCD2検出)。CDK6キナーゼ活性に対するテスト化合物の阻害効果の詳細は表1に示されるとおりである。
【0086】
実施例8:MDA-MB-468細胞活性の測定
MDA-MB-468(ATCC、カタログ番号HTB-132)、
RPMI 1640(Invitrogen、カタログ番号22400089)、
FBS(Hyclone、カタログ番号SV30087.03)、
Pen Strep(Hyclone、カタログ番号SV30010)、
CellTiter-Glo(Promega、カタログ番号G7573)、
培地:89%RPMI 1640、10%FBS、1%Pen Strep。
300個のMDA-MB-468細胞と50μLの培地をプレートに加え、100μLのPBSバッファーを加えて、37℃/5%CO
2の条件下で24時間培養し、10個のテストポイントでテスト化合物のサンプルを採取して、当該サンプルをそれぞれ4重のDMSOで希釈して、250nLをプレートに加え、37℃/5%CO
2の条件下で5日間培養して、各プレートに25μLのCellTiter-Gloを加えて、15秒回転させて遠心分離し(1000rpm)、10分間振盪して混合させ(400rpm)、マイクロプレートリーダーEnvisionを起動して結果を読み取った。MDA-MB-468細胞活性に対するテスト化合物の阻害効果の結果詳細は表1に示されるとおりである。
[表1]
CDK2キナーゼ活性、CDK4キナーゼ活性、CDK6キナーゼ活性及びMDA-MB-468細胞活性に対する実施例化合物のIC
50データ
【表1】
*:Invest New Drugs(2014)32,825-837。
**:アベマシクリブ(Abemaciclib)に測定されたことは、CDK6/CycD1の活性を阻害するCDK6/CycD1である。
【0087】
以上から分かるように、本願のピリミジン誘導体は、優れたCDK阻害効果と機能を示しており、特にCDK2、CDK4、CDK6を阻害する。アベマシクリブ(Abemaciclib)よりも低いIC50値を示している。また、Xがメトキシ基、ヒドロキシ基又はイミノ基を含む場合、非常に優れた効果を有する。
【0088】
なお、上記の実施例は、本願の技術的解決手段を説明するためのもので、限定を加えるためではない。前記実施例を参照して本願を詳しく説明しているが、当業者が理解しているように、依然として前記各実施例で記載されている技術的解決手段に対して修正を、又はその一部の技術的特徴に対して同等な置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の趣旨が本願の趣旨と範囲から逸脱することはない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本願に係るピリミジン誘導体は、優れたCDK阻害効果と機能を示しており、特にCDK2、CDK4、CDK6を阻害する。アベマシクリブ(Abemaciclib)よりも低いIC50値を示しているため、活性成分として様々な疾患(例えば、細胞増殖異常疾患、感染症、炎症性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患又は神経変性疾患、放射線によって引き起こされる血液毒性疾患など)の治療に用いることができる。
【国際調査報告】