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特表2023-531254イオン液体中での金属及び/又はメタロイド化合物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】イオン液体中での金属及び/又はメタロイド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/02 20060101AFI20230713BHJP
   C01G 9/00 20060101ALI20230713BHJP
   C01B 3/08 20060101ALI20230713BHJP
   C01B 13/32 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C01G9/02 B
C01G9/00 B
C01B3/08 Z
C01B13/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580108
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 GB2021051575
(87)【国際公開番号】W WO2021260360
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】2009470.2
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522497722
【氏名又は名称】ナノモックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOMOX LTD
【住所又は居所原語表記】The Royal Institution,21 Albemarle St,London,W1S 4BS United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】マラレ、フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、カイラ ローレン セドランスク
(72)【発明者】
【氏名】ハレット、ジェイソン パトリック
【テーマコード(参考)】
4G042
4G047
【Fターム(参考)】
4G042DA01
4G042DA02
4G042DA03
4G042DB08
4G042DB24
4G047AA02
4G047AA04
4G047AA05
4G047AB02
4G047AD04
(57)【要約】
本開示は、金属化合物を製造する方法を提供する。本方法は、金属源を反応混合物と接触させることを含み、反応混合物は、イオン液体と酸化剤とを含み、それによって金属化合物を製造することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及び/又はメタロイド化合物の製造方法であって、金属及び/又はメタロイド源を反応混合物と接触させることを含んでおり、ここで前記反応混合物がイオン液体及び酸化剤を含み、それによって前記金属及び/又はメタロイド化合物を製造するようになっている方法。
【請求項2】
前記金属及び/又はメタロイド源が、純金属、純メタロイド、不純金属、不純メタロイド、合金、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物からなる、又は含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属及び/又はメタロイド源が、金属又は合金を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属及び/又はメタロイド源が、アルミニウム、アンチモン、ヒ素、アスタチン、バリウム、ベリリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、セシウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、ディスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、金、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、ルテチウム、マグネシウム、マンガン、水銀、モリブデン、ネオジム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、ポロニウム、カリウム、プラセオジム、レニウム、ロジウム、ルビジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、セレン、シリコン、銀、ナトリウム、タンタル、テルル、テルビウム、トリウム、ツリウム、スズ、チタン、タングステン、ウラン、バナジウム、イッテルビウム、イットリウム、亜鉛及び/又はジルコニウムからなる又はそれを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記金属及び/又はメタロイド化合物が、酸素、窒素、リン、ハロゲン、硫黄、セレン、炭素及び/又は水素を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記金属及び/又はメタロイド化合物が、酸化基(O)又は水酸化基(OH)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤が、水、過酸化水素、オゾン、酸素、ハロゲン(例えばフッ素、塩素、ヨウ素又は臭素)、硝酸カリウム及び/又は鉱酸からなる又はそれを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法により水素ガスが副産物として生成され、前記方法がさらに水素ガスを回収することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記イオン液体が陽イオンと陰イオンからなり、融点又は350℃未満である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記陽イオンが、任意に置換された正電荷の3~15員複素環又は任意に置換された正電荷の5~15員複素芳香環である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記陽イオンが、下記である、請求項11に記載の方法。
ここで、R1からR14は、独立して、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-24シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16、-SO3R15、-OSO3R15、-COR15、-COOR15、-NO2、-Cl、-Br、-F、-Iのいずれかであり、又は、R1からR14の2つは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に置換された3から15員環を形成し、ここで、R15及びR16は、独立して、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【請求項13】
前記陽イオンが、下記である、請求項10に記載の方法。
ここで、R1からR6は、独立して、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16、-SO3R15、-OSO3R15、-COR15、-COOR15、-NO2、-Cl、-Br、-F又は-Iであり、又は、R1からR6のうちの2つは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に置換された3から15員環を形成し、ここで、R15及びR16は、独立して、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【請求項14】
前記陰イオンが、F-,Cl-,Br-,I-,ClO4 -,BrO4 -,NO3 -,NC-,NCS-,NCSe-,
又は負に帯電した金属錯体であり、ここでR17からR22が独立して、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16,-SO3R15,-OSO3R15,-COR15,-COOR15,-NO2,-Cl,-Br,-F又は-Iであり、又は、R17からR22の2つは、それらが結合する原子と一緒に、任意に置換された3から15員環を形成し、ここでR15とR16は独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである、請求項10から13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記無機液体が、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物、硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド又はメチルイミダゾリウム塩化物である請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物が、1:1,000と1,000:1の間、1:750と750:1の間、1:500と500:1の間、1:250と250:1の間、1:100と100:1の間、1:25と25:1の間、1:100と100:1の間、1:100と100:1の間、1:50と50:1の間、1:25と25:1の間、1:15と15:1の間、1:10と10:1の間、1:7と7:1の間又は1:6と5:1の間の重量比である、前記イオン液体と前記酸化剤とからなる、又はそれを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、1:1000と100:1の間、1:500と50:1の間、1:250と10:1の間、1:100と5:1の間、1:80と3:1の間、1:70と21の間、1:60と1:1の間又は1:50と1:2の間のモル比でイオン液体と酸化剤からなるか、又は含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記金属及び/又はメタロイド源と前記反応混合物を、-50℃と500℃の間、-25℃と400℃の間、0℃と300℃の間、5℃と200℃の間、又は10℃と175℃の間の温度で接触させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記金属及び/又はメタロイド源と前記反応混合物を少なくとも1分、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間又は少なくとも48時間接触させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記金属及び/又はメタロイド化合物を前記イオン液体から分離することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、分離後の前記イオン液体を精製することを含む方法。
【請求項22】
前記金属及び/又はメタロイド化合物を加熱し、前記金属及び/又はメタロイド化合物を化学的に反応させ、さらなる金属及び/又はメタロイド化合物を提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記さらなる金属及び/又はメタロイド化合物が、金属酸化物又はメタロイド酸化物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
キュプロ-亜鉛-オキソ-塩化物錯体。
【請求項25】
請求項24に記載の錯体であって、以下を含むことを特徴とする錯体:
- 1から75at.%の銅、
- 0.1から20at.%の亜鉛、
- 5から90at.%の酸素、及び
- 0.1~30at.%の塩素。
【請求項26】
錯体が、実質的に図13に示すようなエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルを有する、請求項24又は25に記載の錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物や水酸化物を含むがこれに限定されない、金属及び/又はメタロイド化合物の製造方法に関するものである。金属及びメタロイド化合物は、微粒子、ナノオブジェクト、又はフィルムなど、いくつかの形態で得られる場合がある。
【背景技術】
【0002】
産業プロセスが環境に与える影響を低減する世界的な傾向がある。これは、廃棄物の削減、エネルギー消費量の削減、環境負荷の軽減に焦点を当てた、産業界のさまざまな変化に言い換えられる。幾つかの事例では、これらの改善は既存の技術に対する適度な適応により達成され、そして、他の場合では技術に対するパラダイムシフト的なアプローチが実施される事でこれらの課題に対処される。金属ベース合成の分野では、特に金属酸化物(又はその近縁種)の形成において、ほとんどが小規模(実験室)であるが、いくつかの取り組みが行われている。しかし、これらの技術開発による約束の多くは、乗り越えられないコストや工業的な需要に対応するための規模が実現できないなどの理由で、実現されていない。金属酸化物を大規模に生産する一般的な方法(ナノ粒子、マイクロ粒子、又はフィルム)は、金属を酸化させるために高温を必要としたり、酸のような危険な化学物質を利用したりするため、持続可能では無い。現在、金属酸化物の合成経路への取り組みには2つの方面が存在する。十分な量を製造する事と、粒子形態や粒子径を制御する必要性がしばしば指摘される用途を含むアプリケーションに的を絞った合成をする事である。特に関連する例としては及び、ナノサイズの粒子や膜を必要とする用途が挙げられ、それらは、要求される仕様(及び公差)で規模に到達する事が困難である。
【0003】
イオン液体は、従来のイオン塩が強い相互作用を示すのに対し、陽イオンと陰イオンの引力が弱い為に融点が低い塩である。これは、構成イオンの非対称性、大きさなどの性質によるものである。この弱い引力は多くの場合において、室温以下の広い温度範囲でこれらの物質を液体とする。イオン液体は、従来の有機溶媒と比較して、揮発性が極めて低く、不燃性で化学的・熱的に安定である、熱伝導率・イオン伝導率が高い、熱容量が大きいなどの特徴がある。これらの特徴から、イオン液体の使用は、危険性を低減(それにより安全性が向上)し、環境負荷を低減する。
【0004】
イオン液体は包括的な用語であり、採用する個々の陽イオンと陰イオンによって定義されるため、化学的性質は非常に広範囲であり得る。金属酸化物(及びその他の金属ベース材料)の製造に関しては、非常に多くの異なるイオン液体が存在するため、形成される粒子のサイズと形状を制御するために適切な特性を持つ溶媒を設計することが可能である。金属ベース種(金属酸化物など)の合成では、イオン液体が導体として機能することで、電気化学反応(酸化・還元など)や化学反応の発生を容易にするという追加の利点がある。
【0005】
イオン液体を含む溶液を用いた粒子、特にナノ粒子の合成については、いくつかの研究が報告されている。しかし、これまでの研究は、焦点が限られていた。これは、ナノ粒子と他の反応生成物の分離の容易さ、イオン液体のリサイクル性、などの製造可能な(ナノ)粒子の狭い範囲の検討に限定されており、既知のアプローチの実用化には限界がある。また、イオン液体のコストは非常に高いため、イオン液体の実用性を高めるためには、使用後にイオン液体をリサイクルする手順が必要である。
【0006】
イオン液体中でナノ粒子を用意する方法として文献や先行特許で発表されているほとんどの方法は、金属塩や有機金属化合物などの還元性金属前駆体を金属源として使用している。これにはいくつかの欠点がある。
【0007】
特に、金属塩は、金属含有量に換算すると、一般的に高価である。金属塩の中には、金属から工業的に製造されるものもあり、これは、より多くのエネルギー消費、処理工程、使用される化学物質、及び発生する廃棄物を暗示する。また、金属塩に含まれる陰イオンはイオン液体系に蓄積し、イオン液体をリサイクルするための処理コストが増加させるが、製品に共沈して汚染を招いたり、精製のための余分な工程が発生したりして、最終的にエネルギー消費量、設備投資コスト、化学物質の消費量及び廃棄物の発生量が増加することにつながる場合がある。
【0008】
また、先行技術の水熱法、特にナノ粒子の場合、粒子の凝集という問題が報告されており、これには界面活性剤や安定化剤が必要である。
【0009】
本発明は、先行技術に伴う問題点を克服しようとする本発明者らの取り組みから生まれたものである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、金属及び/又はメタロイド化合物を製造する方法が提供され、この方法は、金属及び/又はメタロイド源を反応混合物と接触させることを含み、反応混合物はイオン液体と酸化剤とを含み、それによって金属及び/又はメタロイド化合物を製造することを特徴とする。
【0011】
イオン液体(IL)は、電気伝導性を有する。このため、イオン液体は、従来の有機溶媒とは異なり、イオン液体に浸した金属やメタロイド源を酸化反応させることができる。さらに、イオン液体は自己組織化が可能であり、これを利用して結晶の核生成や成長をテンプレート化のメカニズムとして用いることができる。イオン液体の分子組織は、溶液条件の関数として、得られる金属及び/又はメタロイド化合物種の化学的性質だけでなく、形態/特性/サイズも制御できることが実証されている。この能力を利用すれば、所望の最終生成物の非常にうまく制御された合成(すなわち、調整能力)が可能となる。さらに、溶液中での自己組織化の特性は、粒子の凝集や合体などの望ましくない挙動を低減、あるいは排除するために、粒子の懸濁液を界面活性剤や他の同様のメカニズムを削減して、さらには、それらなしで安定化させることができるという利点もある。これにより、良い反応制御や生成物の分離の改善された容易さ(IL回収の可能性をも持つ)を含む、合成経路のさらなる利点がもたらされる。
【0012】
上記の方法で製造された金属及び/又はメタロイド化合物は、化学反応の触媒として、燃料電池内、センシングデバイス内、スーパーキャパシタ内、又は、電池部材として使用される場合がある。
【0013】
金属及び/又はメタロイド源は、純金属、純メタロイド、不純金属、不純メタロイド、合金、金属含有化合物、メタロイド含有化合物、又は金属及び/又はメタロイドイオンを含む溶液を含む、又はそれらから構成されている場合がある。いくつかの実施形態では、金属及び/又はメタロイド源は、金属源である。金属源は、純金属、不純金属、合金、又は金属含有化合物を含むか、又はそれらから構成される場合がある。
【0014】
不純物である金属及び/又はメタロイドは、回収又はリサイクルされた金属及び/又はメタロイドである場合がある。金属及び/又はメタロイド含有化合物中の金属及び/又はメタロイドは、ゼロの、又は低い酸化状態を有する場合がある。金属及び/又はメタロイドは、電気化学的又は化学的反応によってさらに酸化され得る場合、低い酸化状態を有することが理解されるであろう。金属及び/又はメタロイド源は、複合構造体を備える場合がある。複合構造は、他の材料内の金属及び/又はメタロイドを含んでいてもよい。金属及び/又はメタロイド源は、固体、液体であるか、溶液中に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、金属及び/又はメタロイド源は、固体である。金属及び/又はメタロイド源は、ナノメートルからメートル規模の大きさであってよいことが理解されるだろう。金属及び/又はメタロイド源は、インゴット、シート、ワイヤ、チューブ、固体バー又は粉末を含んでいてもよい。
【0015】
金属及び/又はメタロイド源は、アルミニウム、アンチモン、ヒ素、アスタチン、バリウム、ベリリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、セシウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、ディスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、金、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、ルテチウム、マグネシウム、マンガン、水銀、モリブデン、ネオジム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、ポロニウム、カリウム、プラセオジム、レニウム、ロジウム、ルビジウム、ルテニウム、サマリウム。スカンジウム、セレン、ケイ素、銀、ナトリウム、タンタル、テルル、テルビウム、トリウム、ツリウム、スズ、チタン、タングステン、ウラン、バナジウム、イッテルビウム、イットリウム、亜鉛及び/又はジルコニウムを含む、又はそれらから構成される場合がある。アンチモン、ヒ素、アスタチン、ホウ素、ゲルマニウム、ポロニウム、セレン、ケイ素及びテルルは、メタロイドであることが理解されるだろう。
【0016】
合金は、2種類以上の金属から構成される場合がある。合金は、鉄合金、水銀合金、スズ合金、銅合金、アルミニウム合金、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、銀合金、金合金及び/又はビスマス合金である場合がある。鉄合金は、アルニコ(すなわち、鉄、アルミニウム、ニッケル及びコバルトを含む合金)、鋳鉄、ニッケル-鉄合金又は鋼である場合がある。水銀合金は、アマルガムである場合がある。錫合金は、バビットメタル(例えば、錫とアンチモンからなり、任意にさらに鉛、銅及び/又はヒ素を含む合金)又はピューター(例えば、錫、アンチモン、銅及びニスマス、及び任意に銀からなる合金)である場合がある。アルミニウム合金は、マグネシウム-アルミニウム合金である場合がある。ニッケル合金は、ニクロム(すなわち、ニッケルとクロム、及び任意に鉄からなる合金)又はニッケル-チタン合金である場合がある。コバルト合金は、コバルト-クロム合金(例えば、ステライト)である場合がある。銀合金は、スターリングシルバーである場合がある。金合金は、ホワイトゴールドである場合がある。ビスマス合金は、ウッドメタル(例えば、ビスマス、鉛、錫及びカドミウムを含む合金)である場合がある。
【0017】
特定の冶金的処理又は加工後の表面処理は必要ない。しかしながら、本方法は、そのような処理を含んでいてもよく、本方法を強化するために採用されてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、反応混合物と接触させる前に、金属及び/又はメタロイド源を化学的及び/又は機械的に洗浄、研磨及び/又はエッチングすることを含む。
【0018】
「金属及び/又はメタロイド化合物」という用語は、金属又はメタロイドを含む無機又は有機金属化合物を指すと理解されるだろう。金属及び/又はメタロイドは、アルミニウム、アンチモン、ヒ素、アスタチン、バリウム、ベリリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、セシウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、ディスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、金、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、ルテチウム、マグネシウム、マンガン、水銀、モリブデン、ネオジム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、ポロニウム、カリウム、プラセオジム、レニウム、ロジウム、ルビジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、セレン、ケイ素、銀、ナトリウム、タンタル、テルル、テルビウム、トリウム、ツリウム、スズ、チタン、タングステン、ウラン、バナジウム、イッテルビウム、イットリウム、亜鉛及び/又はジルコニウムである場合がある。いくつかの実施形態では、金属及び/又はメタロイド化合物は、1種類の金属及び/又はメタロイドのみからなる。代替的な実施形態では、金属及び/又はメタロイド化合物は、2つ以上の異なる金属及び/又はメタロイドを含む場合がある。
【0019】
金属及び/又はメタロイド化合物は、酸素、窒素、リン、ハロゲン、硫黄、セレン、炭素及び/又は水素を含む場合がある。酸素は、酸化基(O)の形態である場合があり、水素と結合して水酸化基(OH)を提供し、窒素と結合して硝酸塩基を提供し、又はリンと結合してリン酸塩基を提供することができる。ハロゲンは、フッ素、塩素、ヨウ素、又は臭素である場合がある。硫黄は、硫化物(S)の形態、又は、酸素と結合して硫酸塩(SO4)を提供する形態である場合がある。炭素は、酸素と結合して炭酸基(CO3)の形態である場合がある。したがって、金属及び/又はメタロイド化合物は、金属及び/又はメタロイド酸化物、金属及び/又はメタロイドハライド、金属及び/又はメタロイド硫化物、金属及び/又はメタロイドセレニド、金属及び/又はメタロイド硫酸塩、金属及び/又はメタロイド炭酸塩、無機又は有機酸の金属及び/又はメタロイド塩、金属及び/又はメタロイドヒドロキシド又は複合構造を有する金属及び/又はメタロイド化合物、異なる陰イオン又はその塩もしくは溶媒和物を含む有機金属混合物である場合がある。
【0020】
いくつかの実施形態では、金属及び/又はメタロイド化合物は、塩化亜鉛水酸化物一水和物、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄又は塩化第二銅三水和物である。
【0021】
金属及び/又はメタロイド化合物は、ナノ粒子、マイクロ粒子、又はフィルムを定義する場合がある。ナノ粒子、マイクロ粒子及び/又はフィルムは、単分散及び/又は秩序化される場合がある。
【0022】
「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法が999ナノメートル以下である粒子であると理解されるだろう。好ましくは、少なくとも1つの寸法は、750ナノメートル以下、500ナノメートル以下、250ナノメートル以下、又は100ナノメートル以下である。
【0023】
金属及び/又はメタロイド化合物は、一次元(1D)、二次元(2D)又は三次元(3D)ナノ粒子を定義する場合がある。1Dナノ粒子は、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノニードル、ナノヘリックス、ナノスプリング、ナノリング、ナノリボン、ナノチューブ、ナノベルト、又はナノコームである場合がある。2次元粒子は、ナノシート、ナノプレート、又はナノペレットである場合がある。3次元ナノ粒子は、ナノ球、ナノスフェロイド、ナノ立方体、ナノピラミッド、ナノバイピラミッド、ナノタンポポ、ナノスノーフレーク、ナノ八面体、ナノトランケートキューブ、ナノ立方八面体、ナノトランケート八面体、又は、超分岐ナノロッドなどのナノ針葉樹ウニ状高次構造体である場合がある。
【0024】
「微粒子(microparticle)」は、すべての寸法が100ナノメートルより大きい、250ナノメートルより大きい、500ナノメートルより大きい、750ナノメートルより大きい粒子である場合がある。いくつかの実施形態では、微粒子は、すべての寸法が1μm以上である粒子である。「微粒子」は、少なくとも1つの寸法が999μm以下である粒子であると理解されるだろう。
【0025】
金属及び/又はメタロイド化合物は、固体基板の表面に付着していても、付着していなくても製造することができる。
【0026】
フィルムは、固体基板を横切って配置された少なくとも1つの層を備える材料である場合がある。フィルムは、単一の層から構成される、又は、複数の層を備える場合がある。フィルムは、ナノメートルからマクロまでの厚さを定義する場合がある。
【0027】
金属及び/又はメタロイド源は、固体基板を画定する場合がある。金属及び/又はメタロイド化合物は、結晶質、又は非晶質である場合がある。
【0028】
「酸化剤」という用語は、酸化還元反応中に他の反応物から電子を除去することができ、したがって電子受容体として作用する物質を指すと理解されるだろう。代替的に、又は追加的に、酸化剤は、電気陰性原子を物質に移動させることができると見なされる場合がある。電気陰性原子は、酸素である場合がある。物質は、金属及び/又はメタロイド源である場合がある。酸化剤は、水、過酸化水素、オゾン、酸素、ハロゲン(例えばフッ素、塩素、ヨウ素又は臭素)、硝酸カリウム及び/又は鉱酸を含む、又はそれらから構成される場合がある。鉱酸は、硫酸及び/又は硝酸を含む場合がある。酸化剤は、任意の物理的状態(すなわち、固体、気体、液体又は溶液中)にあることができ、イオン液体と混和性、部分混和性又は非混和性であることができる。いくつかの実施形態では、酸化剤は水である。
【0029】
本方法により、副産物として水素ガスが生成される場合がある。特に、酸化剤が水である場合又は水を含む場合に、水素が生成される場合がある。本方法は、水素ガスを回収することを含む場合がある。回収は、捕獲の別の言葉であることが理解されよう。水素ガスは、貯蔵され、及び/又はさらなる用途に使用される場合がある。エネルギー生産など、複数の用途で水素ガスが使用されることが理解されよう。したがって、副産物としての水素ガスの生産は有益であり得る。
【0030】
イオン液体は、陽イオンと陰イオンとからなる組成物であると理解される場合がある。イオン液体は、350℃未満、300℃未満、250℃未満、200℃未満、又は150℃未満の融点、より好ましくは100℃未満、50℃未満、又は25℃未満の融点を有する場合がある。イオン液体は、-300℃以上350℃以下、-250℃以上300℃以下、-200℃以上250℃以下、-150℃以上200℃以下、又は-100℃と150℃の間、より好ましくは-50℃と100℃の間である融点を有する場合がある。一つの実施形態において、イオン液体は、0℃と100℃の間、25℃と90℃の間、50℃と85℃の間、又は65℃と75℃の間の融点を有する。代替の実施形態では、イオン液体は、-25℃と50℃の間、又は0℃と25℃の間の融点を有する。
【0031】
陽イオンは、正に帯電した原子を含む分子である場合がある。正に帯電した原子は、窒素(N)、リン(P)又は硫黄(S)である場合がある。陽イオンは、有機分子又は無機分子又は原子である場合がある。
【0032】
いくつかの実施形態では、陽イオンは、正に帯電した金属陽イオンである。
【0033】
いくつかの実施形態において、陽イオンは、任意に置換された正に帯電した3から15員複素環又は任意に置換された正に帯電した5から15員複素芳香環である。好ましくは、陽イオンは、任意に置換された正に荷電した4から8員複素環又は任意に置換された正に荷電した5から8員複素芳香環であり、ここで、複素環又は複素芳香環は、1つ又は複数の窒素原子を含む。より好ましくは、陽イオンは、任意に置換された正に荷電した5から6員複素環又は任意に置換された正に荷電した5から6員複素芳香環であり、ここで、複素環又は複素芳香環は、1つ以上の窒素原子を含む。好ましくは、窒素原子のうちの1つは正に帯電している。
【0034】
いくつかの実施形態では、陽イオンは、以下の通りである。
【0035】
【0036】
ここで、R1からR14は、独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-24シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16、-SO3R15、-OSO3R15、-COR15、-COOR15、-NO2、-Cl、-Br、-F、もしくは-Iであり、又は、R1からR14の2つは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に置換された3から15員環を形成する。ここで、R15及びR16は、独立してH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【0037】
R1からR14のうちの2つが、それらが結合している原子とともに形成する任意に置換された3から15員の環は、任意に置換されたC3-15シクロアルキル、任意に置換された3から15員の複素環、任意に置換された5から15員の芳香環又は任意に置換されたC6-12アリールである場合がある。
【0038】
好ましい実施形態では、陽イオンは、以下の通りである。
【0039】
【0040】
R1からR5は、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、又は任意に置換されたC2-24アルキニルである場合がある。より好ましくは、R1からR5は、H、任意に置換されたC1-12アルキル、任意に置換されたC2-12アルケニル、又は任意に置換されたC2-12アルキニルである。最も好ましくは、R1からR5は、H、任意に置換されたC1-6アルキル、任意に置換されたC2-6アルケニル、又は任意に置換されたC2-6アルキニルである。R1は、メチルである場合がある。R2は、Hである場合がある。R3は、n-ブチル又は水素である場合がある。R4はHである場合がある。R5はHである場合がある。したがって、陽イオンは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム又は1-メチルイミダゾリウムである場合がある。
【0041】
代替の実施形態では、陽イオンは、以下の通りである。
【0042】
【0043】
ここで、R1からR6は、独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16、-SO3R15、-OSO3R15、-COR15、-COOR15、-NO2、-Cl、-Br、-Fもしくは-Iであり、又は、R1からR6のうちの2つは、それらが結合している原子と共に、任意に置換された3から15員環を形成する。ここで、R15及びR16は、独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【0044】
陽イオンは下記である場合があり、
【0045】
R1からR4は、H、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、又は任意に置換されたC2-24アルキニルである場合がある。より好ましくは、R1からR4は、H、任意に置換されたC1-12アルキル、任意に置換されたC2-12アルケニル、又は任意に置換されたC2-12アルキニルである。最も好ましくは、R1からR4は、H、任意に置換されたC1-6アルキル、任意に置換されたC2-6アルケニル、又は任意に置換されたC2-6アルキニルである。R1はブチルである場合がある。R2はメチルである場合がある。R3はメチルである場合がある。R4はHである場合がある。従って、カチオンは-N、N-ジメチルブチルアンモニウムである場合がある。
【0046】
陰イオンは、ハロゲン化物、負に帯電した原子又は非局在化した負電荷を含む分子である場合がある。分子は、有機分子であっても無機分子である場合がある。
【0047】
したがって、陰イオンは、F-,Cl-,Br-,I-,ClO4 -,BrO4 -,NO3 -,NC-,NCS-,NCSe-,
【0048】
ここでR17からR22は独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16、-SO3R15、-OSO3R15、-COR15、-COOR15、-NO2、-Cl,-Br、-Fもしくは-Iであり、又は、R17からR22の2つが、それらが結合している原子とともに、任意に置換された3から15員環を形成する。ここで、R15及びR16は独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【0049】
R17からR22のうちの2つが、それらが結合している原子とともに形成する任意に置換された3から15員の環は、任意に置換されたC3-15シクロアルキル、任意に置換された3から15員の複素環、任意に置換された5から15員の複素芳香環又は任意に置換されたC6-12アリールである場合がある。
【0050】
いくつかの実施形態において、陰イオンは、F-、Cl-、Br-又はI-である。陰イオンは、Cl-である場合がある。
【0051】
いくつかの実施形態では、陰イオンは、以下の通りである。
【0052】
R17は、H、任意に置換されたC1-12アルキル、任意に置換されたC2-12アルケニル、任意に置換されたC2-12アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR15、-SR15、-CN、-NR15R16、-SO3R15、-OSO3R15、-COR15、-COOR15又はNO2である場合がある。R17は、-OR15又は-SR15である場合がある。好ましくは、R17は、-OR15である。R15は、H、任意に置換されたC1-12アルキル、任意に置換されたC2-12アルケニル、任意に置換されたC2-12アルキニルである場合がある。好ましくは、R15は、Hである。
【0053】
あるいは、陰イオンは、以下である場合がある。
【0054】
R17及びR18は、独立して、H、任意に置換されたC1-12アルキル、任意に置換されたC2-12アルケニル、任意に置換されたC2-12アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリル-Cl、-Br、-F又は-Iである場合がある。R17及びR18は、独立したH、任意に置換されたC1-6アルキル、任意に置換されたC2-6アルケニル又は任意に置換されたC2-6アルキニルである場合がある。好ましくは、R17及びR18は独立して、任意に置換されたC1-3アルキルであり、最も好ましくはR17及びR18はそれぞれ、任意に置換されたメチルである。アルキル、アルケニル及び又はアルキニルは、好ましくは1つ又は複数のハロゲン、好ましくはフッ素で置換されている。従って、R17及びR18は、それぞれ、CF3である場合がある。
【0055】
いくつかの実施形態では、陰イオンは、テトラフルオロボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサレート)ボレート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネート又はp-トシレートである。
【0056】
陰イオンは、負に帯電した金属錯体である場合がある。例えば、陰イオンは、金属ハロゲン化物錯体である場合がある。好ましくは、四ハロゲン化アルミニウム錯体、四ハロゲン化鉄錯体及び/又は四ハロゲン化亜鉛錯体等の金属四ハロゲン化物錯体である。金属ハロゲン化物錯体は、テトラクロロアルミネート、テトラクロロフェレート、ブロモトリクロロフェレート、テトラクロロ亜鉛酸ジアニオン、又はジブロモジクロロ亜鉛酸ジアニオンである場合がある。
【0057】
従って、無機液体としては、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、又はメチルイミダゾリウムクロライドである場合がある。
【0058】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、特に指定しない限り、任意に置換された飽和直鎖又は分枝炭化水素を指す。該又は各任意置換アルキルは、任意に置換されたC1-12アルキル又は任意に置換されたC1-6アルキルである場合がある。
【0059】
用語「アルケニル」は、任意に置換された、オレフィン性不飽和炭化水素基を指し、非分岐又は分枝であることができる。該又は各任意置換されたアルケニルは、任意に置換されたC2-12アルケニル又は任意に置換されたC2-6アルケニルである場合がある。
【0060】
用語「アルキニル」は、任意に置換された、アセチレン性不飽和炭化水素基を指し、それは分岐していないか又は分岐していることができる。該又は各任意置換されたアルキニルは、任意に置換されたC2-12アルキニル又は任意に置換されたC2-6アルキニルである場合がある。
【0061】
該又は各アルキル、アルケニル及び/又はアルキニルは、非置換であるか、又は任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたフェニル、オキソ、-OR23、-SR23、-CN、-NR23R24、-SO3R23、-OSO3R23、-COR23、-COOR23、-NO2、-Cl、-Br、-F又は-Iの1以上で置換することができる。ここでR23及びR24は独立してH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル又は任意に置換されたフェニルである。
【0062】
「アリール」は、任意に置換された芳香族6から12員炭化水素基を指す。任意に置換されたアリールは、任意に置換されたフェニルである場合がある。アリールは、非置換であるか、又は任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シクロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、-OR23、-SR23、-CN、-NR23R24、-SO3R23、-OSO3R23、-COR23、-COOR23、-NO2、-Cl、-Br、-F又は-Iの一つ以上で置換することができる。ここでR23及びR24は独立してH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-24シロアルキル又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【0063】
「シクロアルキル」は、任意に置換された、非芳香族、飽和、部分飽和、単環式、二環式又は多環式の炭化水素員環系を指す。
【0064】
"ヘテロアリール"又は"ヘテロ芳香環"は、少なくとも1つの環原子がヘテロ原子である任意に置換された、単環式又は二環式の芳香環系を指す。該又は各ヘテロ原子は、酸素、硫黄及び窒素からなる群から独立して選択される場合がある。
【0065】
"複素環(heterocycle)"又は"複素環(heterocyclic ring)"は、少なくとも1つの環原子がヘテロ原子である、任意に置換された、単環式、二環式又は架橋分子を指す。該又は各ヘテロ原子は、独立して、酸素、硫黄及び窒素からなる群から選択される場合がある。
【0066】
該又は各シクロアルキル、複素環(heterocycle)/複素環(heterocyclic ring)及び/又はヘテロアリール/ヘテロ芳香環は、非置換とされることができ、又は、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-6シロアルキル、任意に置換されたC6-12アリール、oxo、-OR23、-SR23、-CN、-NR23R24、-SO3R23、-OSO3R23、-COR23、-COOR23、-NO2、-Cl、-Br、-F又は-Iの1以上で置換されることが出来る。ここでR23とR24は独立してH、任意選択的に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC2-24アルケニル、任意に置換されたC2-24アルキニル、任意に置換されたC3-24シクロアルキル、又は任意に置換されたC6-12アリールである。
【0067】
この方法は、金属及び/又はメタロイド源をイオン液体及び酸化剤の一方と接触させて第1の混合物を形成し、その後、第1の混合物をイオン液体及び酸化剤の他方と接触させてそれによって反応混合物を形成し、同時に金属及び/又はメタロイド源を反応混合物に接触させることを含む場合がある。
【0068】
あるいは、本方法は、反応混合物と金属及び/又はメタロイド源とを接触させる前に、イオン液体と酸化剤とを接触させて、反応混合物を形成することを含む場合がある。
【0069】
反応混合物は、イオン性液体と酸化剤から構成される場合がある。あるいは、反応混合物は、1つ以上の添加物をさらに含む場合がある。1つ以上の添加物は、触媒、安定剤及び/又は分子溶媒を含む場合がある。
【0070】
分子溶媒は、アセトニトリル、ジクロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、メチルtert-ブチルエーテル(TBME)、アミン(例えば、トリメチルアミン又はピリジン)、トルエン、ヘプタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、N、N′-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、アルコール(例えば、i-ブタノール、i-アミルアルコール又は1,2-プロパンジオール、グリセロール)、エステル(例えば、酢酸i-ブチル、酢酸i-アミル、酢酸グリコール、y-バレロラクトン又はジエチルサクシネート)、エーテル(例えば、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)又はエチルtert-ブチルエーテル(ETBE))、炭化水素(例えば、d-リモネン、ターペンティン又はp-シメン)、双極性アプロティック溶剤(例えば、炭酸ジメチル、炭酸エチレンプロピレン又はシラン)、乳酸エチル、有機酸(例えば、酢酸、乳酸エチル、テトラヒドロ葉酸(THFA))、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン(MIBK))、アルコキシアミン、アミド(例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)など)又はこれらの組合せである。
【0071】
安定化剤は、長鎖アルキルカルボン酸、長鎖アルキルアミン、ポリマーなどの長鎖アルキル系界面活性剤である場合がある。したがって、安定化剤は、COOR25、P(O)(OH)R25R26、P(O)R25R26R27、NR25R26R27、XNR25R26R27R28、R25OH又はポリマーである場合があり、ここでR25は任意置換のC5-50アルキル、任意置換C5-50アルケニル又は任意置換C5-50アルキニルである。R26からR28は、独立したH、任意に置換されたC1-24アルキル、任意に置換されたC1-24アルケニル又は任意に置換されたC1-24アルキニルであり、Xは、ハロゲン化物である。R25は、任意に置換されたC10-30アルキル、任意に置換されたC10-30アルケニル、又は任意に置換されたC10-30アルキニルである場合がある。したがって、安定化剤は、オレイン酸、ビス-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸、ステアリン酸、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、1,2-ヘキサンジオール、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、N、N-ジメチルヘキサデシルアミン、トリ-n-オクチルフォスフィンオキシド、エチレングリコール又はポリ(ビニルピロリドン)である場合がある。
【0072】
反応混合物は、イオン液体と酸化剤とを、1:1,000と1,000:1との間、1:750と750:1との間、1:500と500:1との間、1:250と250との間、1:100と100:1の間、より好ましくは1:50と50:1の間、1:25と25:1の間、又は1:15と15:1の間、最も好ましくは1:10と10:1の間、1:7と7:1の間、又は1:6と5:1の間の重量比で含む、又はそれらから構成される場合がある。一実施形態において、反応混合物は、1:10と2:1の間、1:8と1:1の間、1:6と1:2の間、又は1:5と1:4の間の重量比でイオン液体と酸化剤を含むか又はそれらから構成されていてもよい。代替の実施形態では、反応混合物は、1:5と10:1の間、1:1と8:1の間、2:1と6:1の間、又は3:1と4:1の間の重量比でイオン液体と酸化剤を含むか、それらから構成される場合がある。さらなる代替の実施形態では、反応混合物は、イオン液体と酸化剤とを、1:10と5:1との間、1:5と2:1との間、又は1:2と1:1との間の重量比で含むか、それらから構成される場合がある。
【0073】
反応混合物は、1:1,000と100:1の間、より好ましくは1:500と50:1の間、1:250と10:1の間又は1:100と5:1の間、最も好ましくは1:80と3:1の間、1:70と2:1の間、1:60と1:1の間又は1:50と1:2の間のモル比のイオン液体及び酸化剤を含む、又はそれらから構成される場合がある。一実施形態において、反応混合物は、1:100と1:5の間、1:90と1:10の間、1:80と1:20の間、1:70と1:30の間、1:60と1:40の間又は1:55と1:45の間のモル比でイオン液体及び酸化剤を含む、又はそれらから構成される場合がある。代替の実施形態では、反応混合物は、1:50と4:1の間、1:40と3:1の間、1:20と2:1の間、1:10と1:1の間、1:5と1:2の間又は1:4と1:3の間のモル比でイオン液体と酸化剤を含む、又はそれらから構成される場合がある。さらなる代替の実施形態では、反応混合物は、1:50と1:4の間、1:40と1:6の間、1:30と1:8の間、1:20と1:10の間、又は1:18と1:13の間のモル比でイオン液体と酸化剤を含む、又はそれらから構成される場合がある。
【0074】
金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、1:100と100:1の間、1:80と80:1の間、1:50と50:1の間、1:20と20:1の間、1:10と10:1の間、1:5と5:1の間又は1:2と2:1の間の重量比で提供される場合がある。
【0075】
金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、-50℃と500℃の間、より好ましくは-25℃と400℃の間又は0℃と300℃の間、最も好ましくは5℃と200℃の間又は10℃と175℃の間の温度で接触される場合がある。一つの実施形態において、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、25℃と200℃の間、50℃と190℃の間、100℃と180℃の間、125℃と170℃の間、又は140℃と160℃の間の温度で接触される。代替の実施形態において、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物とは、25℃と200℃との間、50℃と190℃との間、75℃と180℃との間、100℃と150℃との間、又は110℃と130℃との間の温度で接触される。さらなる代替的な実施形態において、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、20℃と150℃の間、40℃と100℃の間、又は60℃と80℃の間の温度で接触される。さらに別の実施形態では、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、0℃と150℃の間、10℃と100℃の間、20℃と75℃の間、又は30℃と50℃の間の温度で接触される。さらにさらなる実施形態において、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、0℃と100℃の間、5℃と50℃の間、10℃と30℃の間、又は15℃と25℃の間の温度で接触される。
【0076】
金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、1kPaと100,000kPaとの間、10kPaと10,000kPaとの間、20kPaと1,000kPaとの間、40kPaと500kPaとの間、60kPaと250kPaとの間、80kPaと150kPaとの間、90kPaと110kPaとの間、又は95kPaと105kPaとの間の圧力で接触される場合がある。金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、大気圧下で接触される場合がある。大気圧が101.325kPaであることは理解されるだろう。
【0077】
金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、少なくとも1分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間又は少なくとも48時間接触される場合がある。いくつかの実施形態において、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7.5日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間又は少なくとも60日間接触される。
【0078】
金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、1分から500日の間、1時間から200日の間、12時間から100日の間、24時間から80日の間、又は48時間から70日の間接触される場合がある。いくつかの実施形態では、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、1分から25日の間、1時間から10日の間、3時間から5日の間、6時間から4日の間、8時間から2日の間、又は12時間から36時間の間にわたって接触される。いくつかの実施形態において、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、1日から50日の間、2日から30日の間、3日から20日の間、又は4日から10日の間にわたって接触される。代替的な実施形態では、金属及び/又はメタロイド源と反応混合物は、30日から100日の間、又は40日から70日の間で接触される。
【0079】
金属及び/又はメタロイド源は、好ましくは、固体である。反応混合物は、好ましくは、液体である。反応混合物の液体体積に対する金属及び/又はメタロイド源の表面積の比率は、0.001と100ml/mm2の間、0.01と10ml/mm2の間、0.05と1ml/mm2の間、0.1と0.5ml/mm2の間、又は0.15と0.3ml/mm2の間である場合がある。
【0080】
本方法は、金属及び/又はメタロイド化合物をイオン液体から分離することを含む場合がある。金属及び/又はメタロイド化合物は、濾過及び/又は遠心分離によってイオン液体から分離される場合がある。金属及び/又はメタロイド化合物のサイズに応じて、本方法は、従来の濾過、超濾過又はナノ濾過の使用を含むことができる。
【0081】
固体上に形成された粒子は、イオン液体-酸化剤相への溶解度が低い。さらに、酸化剤は反応中に消費され、固相に移行する。そのため、イオン液体相には不純物がほとんど含まれない場合がある。したがって、イオン液体相を容易に再利用することが可能である。本明細書に記載された反応からリサイクルされたイオン液体は、リサイクルされていない新しいイオン液体の熱的及び化学的安定性の特性を保持する。さらに、本明細書に記載された反応の複数のバッチを通してイオン液体を再利用し続けることが可能である。例えば、本明細書に記載の反応は、元のイオン液体で1回、2回、3回、4回、5回又はそれ以上繰り返すことができる。
【0082】
したがって、本方法は、分離後にイオン液体を精製することを含む場合がある。様々な例示的な実施形態において、分離されたイオン液体は、例えば、アルミナ、活性炭、ゼオライト又はシリカゲルなどの吸収性材料のカラムにイオン液体を通すことによって精製される場合がある。また、分離したイオン液体から揮発性不純物を加熱により除去することも可能である。このような加熱は、真空下又は大気圧下で行うことができ、空気中又は窒素やアルゴンなどの不活性ガス下で行うことができる。金属不純物は、電着によって除去されることができる。金属及び/又はメタロイド源から発生する場合がある金属不純物は、化学的又は電気化学的方法、例えば、キレート剤を用いる又は用いない液-液抽出、反応混合物の温度を下げることによる選択的結晶化、電解槽での電着又は化学剤による沈殿によって除去することができる。
【0083】
本方法は、金属及び/又はメタロイド化合物を加熱して、金属及び/又はメタロイド化合物を化学的に反応させ、さらなる金属及び/又はメタロイド化合物を提供することを含む場合がある。本方法は、金属及び/又はメタロイド化合物を反応混合物から分離することに続いて、金属及び/又はメタロイド化合物を加熱することを含む場合がある。本方法は、金属及び/又はメタロイド化合物を空気又は酸素中で加熱することを含む場合がある。本方法は、金属及び/又はメタロイド化合物を少なくとも50℃、少なくとも100℃、少なくとも200℃、少なくとも300℃、少なくとも400℃又は少なくとも450℃の温度で加熱することを含む場合がある。この方法は、金属及び/又はメタロイド化合物を、50℃と1000℃の間、100℃と900℃の間、200℃と800℃の間、300℃と700℃の間、400℃と600℃の間又は450℃と550℃の間の温度で加熱することを含むものである場合がある。本実施形態において、金属及び/又はメタロイド化合物は、水酸化物基及び/又はハロゲン化物を含む場合がある。また、更なる金属及び/又はメタロイド化合物は、金属酸化物又はメタロイド酸化物である場合がある。
【0084】
本方法は、バッチプロセスとして実施される場合がある、あるいは、本方法は、連続プロセス又は半連続プロセスとして実施される場合がある。例えば、本方法が連続プロセスとして実施される場合、イオン液体、酸化剤、及び金属及び/又はメタロイド源は、常に反応器に導入される事が出来る。
【0085】
本発明者らは、第1の態様の方法を用いて、新規な化合物を製造する場合がある事を注記する。
【0086】
第2の態様によれば、キュプロ-亜鉛-オキソ-塩化物錯体が提供される。
【0087】
錯体は、銅、亜鉛、酸素、塩素を含む場合がある。
【0088】
錯体は、1と75at.%の間の銅、より好ましくは2と50at.%の間、又は5と45at.%の間の銅、最も好ましくは10と40at.%の間、20と35at.%の間又は25と30at.%の間の銅を含む場合がある。
【0089】
錯体は、0.1と20at.%の間の亜鉛を含む場合があり、より好ましくは0.5と10at.%の間、又は1と5at.%の間の亜鉛、最も好ましくは1.5と4at.%の間、又は2と3at.%の間の亜鉛を含む場合がある。
【0090】
錯体は、5と90at.%の間の酸素、より好ましくは10と85at.%の間、又は20と80at.%の間の酸素、最も好ましくは40と75at.%の間、50と70at.%の間、又は60と65at.%の間の酸素を含む場合がある。
【0091】
錯体は、0.1と30at.%の間の塩素、より好ましくは0.5と20at.%の間、又は1と10at.%の間の塩素、最も好ましくは2と8at.%の間、3と7at.%の間、又は4と6at.%の間の塩素を含む場合がある。
【0092】
この錯体は、実質的に図13に示すようなエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルを有する場合がある。
【0093】
本明細書に記載された全ての特徴(添付の請求項、要約及び図面を含む)、及び/又はこのように開示された任意の方法又はプロセスの全てのステップは、かかる特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで上記の側面のいずれかと組み合わされる場合がある
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明をより良く理解するために、また、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、次に、例として、添付の図面を参照する。
図1図1は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.98溶液、70±1℃)に曝露した亜鉛基板の走査電子顕微鏡(SEM)像であり、4日間曝露後のZnOナノロッド(平均サイズ90±40nm)を示す。
図2図2は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.75溶液,20±1℃)に26日間暴露した後の亜鉛基板のSEM画像であり、六角形のナノロッド(平均サイズ150±30nm)の頂点を示す。
図3図3は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.75溶液,20±1℃)に15日間暴露した後の亜鉛基板のSEM画像であり、塩化亜鉛水酸化物一水和物(Zn5(OH)8Cl2-H2O)結晶板を示す。厚さ2.5±μ1.5m、直径19±8μmと推定される。
図4図4は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.98溶液at20±1℃)に曝露した亜鉛基板のSEM像で、44日間曝露後に平均長21±6μmの複数のZn(OH)2八面体を示したものである。
図5図5A及びBは、それぞれ焼成前のε-Zn(OH)2八面体及びZn5(OH)8Cl2-H2O(ZHC)粒子のSEM画像である。図5Cは、混合Zn(OH)2及びZHC粉末のX線回折(XRD)スペクトルであり、両方の化合物のシグナルを示しており、主要ピークの回折パターンに(x)ZHC及び(+)ε-Zn(OH)2のラベルを付している。図5D及び5Eは、それぞれ焼成後のε-Zn(OH)2八面体及びZHC粒子のSEM像である。図5Fは、ZnOからの信号のみを示す焼成サンプルのXRDスペクトルであり、メインピークは(▲)ZnOとラベル付けられている。
図6図6は、亜鉛基板を1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド溶液に曝露した際に得られた最も代表的な構造をまとめたものである。
図7図7は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.98溶液、20±1℃)に18日間暴露した後の真鍮基板のSEM画像であり、六角形のナノロッド(平均サイズ1.0±0.2μm)の頂部を示している。
図8図8は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.98溶液,70±1℃)に8時間暴露した後の鉄基板のSEM像であり、500±100nmFe2O3立方体(cubes)と4±1μm立法八面体(cuboctahedra)構造を形成していることを示す。
図9図9は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.98溶液,70±1℃)に3.5日間暴露した後の鉄基板のSEM画像であり、直径115±5nmの六角形の酸化鉄板を形成していることを示す。
図10図10は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(ΧH2O=0.98溶液、70±1℃)に15日間暴露した銅基板のSEM画像であり、平均辺径1.7±0.5μmの塩化第二銅三水酸化物Cu2(OH)3Cl結晶の形成を示す。
図11図11は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物(水分量60wt%、40±1℃、pH=3、質量比1:1攪拌速度250rpm)に7日間暴露した後の亜鉛基板のSEM像であり、平均長900±100nmのZnOナノロッドを形成していることを示す。
図12図12は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物(水分量98mol%、室温)に18日間暴露した後の黄銅基板のSEM像であり、コアから放射状に広がるキュプロ-亜鉛-オキソ-塩化物錯体の針状結晶の形成を示す。
図13図13は、図12のキュプロ-亜鉛-オキソ-塩化物錯体のエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
(実施例)
実施例1 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中でのZnの直接酸化による亜鉛基板上での直径90nmの六方晶酸化亜鉛(ZnO)ナノロッドの合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた円盤状の亜鉛(純度>99.95%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。この金属基板を脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、70℃に予熱した含水率98mol%(82wt%)の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、フロロカーボンフィラメントを用いて浸漬した。金属表面積と液量との比は0.2mLmm-2であった。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を、70℃の対流式オーブンに4日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。これにより、図1に示すように、平均サイズ90±40nmの六角形の酸化亜鉛(フラットトップ)が形成された。
【0096】
実施例2 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中でのZnの直接酸化による亜鉛基板上の直径150nmの六方晶酸化亜鉛ナノロッドの合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた円盤状の亜鉛(純度>99.95%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。この金属基板を脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、70℃に予熱した含水率75mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、フルオロカーボンフィラメントを用いて浸漬させた。金属表面積と液量との比は0.2mLmm-2であった。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を、20℃の対流式オーブンに26日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。これにより、図2に示すように、平均サイズ150±30nmの六角形の酸化亜鉛(フラットトップ)が形成された。
【0097】
実施例3 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中でのZnの直接酸化による塩化亜鉛水酸化物一水和物(Zn 5 (OH) 8 Cl 2 -H 2 O)プレートの合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた円盤状の亜鉛(純度>99.95%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。この金属基板を脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、70℃に予熱した含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、フルオロカーボンフィラメントを用いて浸漬させた。金属表面積と液量との比は0.2mLmm-2であった。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を、70℃の対流式オーブンに15日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。その結果、図3に示すように、平均厚さ2.5μm、平均サイズ19μmの塩化亜鉛水酸化物一水和物(Zn5(OH)8Cl2-H2O)板状結晶など、さまざまな構造体が形成された。
【0098】
実施例4 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液中でのZnの直接酸化による水酸化亜鉛(Zn(OH) 2 )の八面体の合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた円盤状の亜鉛(純度>99.95%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。この金属基板を脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、室温で、フルオロカーボンフィラメントを用いて44日間浸漬した。金属表面積と液量との比は0.2mLmm-2であった。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。その結果、図4に示すように、平均エッジサイズ21±6μmの水酸化亜鉛(Zn(OH)2)八面体結晶など、さまざまな構造体が形成された。
【0099】
実施例5 塩化1ブチル3メチルイミダゾリウム溶液中での亜鉛の方向酸化によって得られたサンプルの焼成を介した、塩化亜鉛水酸化物一水和物(Zn 5 (OH) 8 Cl 2 -H 2 O)板状結晶及び水酸化亜鉛(Zn(OH) 2 )八面体の焼成によるZnO構造の合成
実施例4で調製した構造体(Zn(OH)2八面体とともに、実施例3で示したものと同様の(Zn5(OH)8Cl2-H2O)板状結晶)を、表面を引っ掻いて基板から機械的に除去し、回収した。回収した両種を含む粉末をTGA装置で常温から650℃まで5℃/分の速度で加熱した。焼成工程は550℃で終了した。焼成後の生成物はZnOのみを含み、一般に初期化合物の全体的な結晶形状を保存し、多孔性が増加した。例えば、図5に描かれているように、Zn(OH)2八面体はZnO八面体に変換され、(Zn5(OH)8Cl2-H2O)プレート状結晶はZnOプレート状結晶に変換された。
【0100】
実施例6 異なる条件での比較
本発明者らは、異なる反応条件を用いて得られた構造を比較し、その結果を以下の表1に示した。また、その構造を図6に示す。
【0101】
(表1)
表1:亜鉛ディスクを1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に接触させたときに得られる必然的な代表構造のまとめ
【0102】
すべての実験のILは1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物であった。IL-1はSigma-Aldrich社製、純度>98%、IL-2はIolitec社製、純度>99%である。図6に示すように、[A]はZnO平頂六角棒、[B]はε-Zn(OH)2八面体、[C]はZHC板、[D]はZnO短桿(丸端と尖端)、[E]はZnO針、[F]は平頂六角ナノ棒、[G]はZnO厚晶、[H]はZnO立体針華(3D needle flower)、[I]はZnO立体厚晶華(3D thick crystal flower)を示す。
【0103】
実施例7 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中での真鍮の直接酸化による直径1μmの六方晶酸化亜鉛(ZnO)ナノロッドの合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた真鍮(Cu63%、Zn37%、d=18mm、厚さ0.125mm)のディスクを使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、室温で、フルオロカーボンフィラメントを用いながら18日間浸漬した。金属表面積と液量比は0.2mLmm-2であった。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。その結果、図7に示すように、平均サイズ1.0±0.2μmの水酸化亜鉛ZnO六角棒状結晶など、さまざまな構造体が形成された。
【0104】
実施例8 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中での鉄の直接酸化による500nm立方体及び4μm立法八面体の酸化鉄の合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた鉄のディスク(純度99.99%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、70℃に予熱した含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、フルオロカーボンフィラメントを用いて浸漬させた。金属表面積と液量比は0.2mLmm-2であった。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を、70℃の対流式オーブンに8日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。この結果、図8に示すように、500±100nmのFe2O3立方体及び4±1μmの立方八面体構造が形成された。
【0105】
実施例9 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中での鉄の直接酸化による直径115nmの六角形酸化鉄プレートの合成
直径0.8mmの穴が1つ開いた鉄のディスク(純度99.99%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、70℃に予熱した含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、フルオロカーボンフィラメントを用いて浸漬させた。金属表面積と液量比は0.2mLmm-2であった。溶液と懸濁した金属基板を入れた容器を、70℃の対流式オーブンに3.5日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。これにより、図9に示すように、直径115±5nmの六角形の酸化鉄プレートが形成された。
【0106】
実施例10 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中での銅の直接酸化による塩化第二銅三水酸化物(Cu 2 (OH) 3 Cl)の合成
直径0.8mmの穴を1つ開けたディスク状の銅(純度>99.9%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、70℃に予熱した含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液に、フルオロカーボンフィラメントを用いて浸漬させた。金属表面積と液量比は0.2mLmm-2であった。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を、70℃の対流式オーブンに15日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。この結果、図10に示すように、平均エッジサイズ1.7±0.5μmの双角錐型塩化第二銅三水酸化物Cu2(OH)3Cl結晶が形成された。
【0107】
実施例11 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中での亜鉛細粒の直接酸化による酸化亜鉛(ZnO)ナノロッドの合成
酸化亜鉛ナノ粒子の合成は、酸化亜鉛顆粒(20-30メッシュ)を水分94mol%(60wt%)の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物水溶液中で酸化することを介して行われた。pHを調整する際に、濃塩酸を脱イオン水(100mL)中にpHが3になるまで滴下して添加した。その後、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物を60wt%の水の濃度になるまで添加した。デシケーションチューブ内の亜鉛細粒に対して、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物溶液を1:1の質量比で添加した。攪拌速度はインキュベーター(New Brunswick Scientific, Innova 42 Incubator Shaker Series)で回転速度250rpmとし、40℃で7日間かけて合成を実施した。実験終了後、酸化亜鉛生成物を遠心管(ファルコン、50mL)に入れ、水2分量と無水エタノール1分量を用いて洗浄し、生成物を溶液から効果的に分離するために、それぞれの洗浄の間に40分間遠心分離を行った。イオン液体はロータリーエバポレーターで回収した。洗浄後、生成物を真空オーブンで150℃、一晩焼成した。この手順により、図11に示すように、平均長さ700±200nmのZnOナノロッドが形成された。
【0108】
実施例12 硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム中でのニッケルの直接酸化によるニッケルベース化合物の合成
ニッケルのディスク(純度>99.98%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、150℃に予熱した含水率75mol%(24wt%)の硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム溶液3mlに浸漬した。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を150℃の対流式オーブンに48時間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。これにより、基板表面に緑色の固体が形成された。
【0109】
実施例13 硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム中でのニッケルの直接酸化によるアルミニウムベース化合物の合成
アルミニウムの円盤(純度>99.999%,d=18mm,厚さ0.125mm)を使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で調製した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥し、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、150℃に予熱した含水率75mol%の硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム溶液3ml中に浸漬した。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を150℃の対流式オーブンに48時間置いた。実験終了後、基板は白色の固体に変化していた。
【0110】
この方法は、副産物として水素ガスを発生させることに留意されたい。理論に縛られることを望まないが、本発明者らは、起こり得るいくつかの反応があることを注記する:
2Al + 6H2O--> 2Al(OH)3 + 3H2
2Al(OH)3 --> Al2O3 + 3H2
Al + 2H2O--> AlOOH + 1.5H2
【0111】
発明者らは、水素ガスを捕獲することが可能であることを注記する。
【0112】
実施例14 硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム中でのニッケルの直接酸化によるチタン系化合物の合成
チタン製の座金(グレード2,d=18mm,厚さ0.125mm)を使用した。脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で金属基板を作製した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、150℃に予熱した含水率75mol%の硫酸水素ブチルジメチルアンモニウム溶液3ml中に浸漬した。溶液と浮遊金属基板を入れた容器を150℃の対流式オーブンに48時間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。この結果、溶液中に白色の固体沈殿物が形成された。
【0113】
実施例15 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド中での銅の直接酸化による銅(II)ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの合成
直径0.8mmの穴を1つ開けたディスク状の銅(純度99.9%、d=18mm、厚さ0.125mm)を使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、室温で1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドにフルオロカーボンフィラメントの助けを借りて浸漬させた。金属表面積と液体体積の比は0.2mLmm-2であった。イオン液体と浮遊金属基板を入れた容器を、150℃の真空オーブンに68日間置いた。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。この結果、基板表面に緑色の固体が形成された。
【0114】
実施例16 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物中での黄銅の直接酸化によるキュプロ-亜鉛-オキソ-塩化物錯体の合成
直径0.8mmの穴を1つ開けた真鍮(Cu63%、Zn37%、d=18mm、厚さ0.125mm)のディスクを使用した。金属基板は、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄し、室温で準備した。その後、サンプルは105℃で45分間乾燥後、デシケーターで30分間冷却された。この金属基板を、含水率98mol%の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物水溶液にフルオロカーボンフィラメントを用い、室温で18日間浸漬させた。金属表面積と液体体積の比率は0.2mLmm-2であった。実験終了後、基板を溶媒から取り出し、脱塩水で急冷した後、脱塩水、工業用変性アルコール、アセトンで洗浄した。これにより、図12に示すように、芯から放射状に広がるキュプラ-亜鉛-オキソ-塩化物錯体の針状結晶が形成された。EDXスペクトルを図13に示すが、この錯体の原子比はCu:Zn:O:Clで11:1:25.1:2であることが判明した。
【0115】
(結論)
本発明者らは、イオン液体と水の混合液中で金属を直接酸化することにより、ナノ/マイクロ材料(結晶性及び非晶質)の酸化的イオン温度合成(OIS)を実証した。水の含有量、温度、暴露時間を調整することで、異なる種を得ることができる。
【0116】
金属の直接酸化(OIS)によるナノ粒子の製造にイオン液体と酸化剤を含む混合物を使用することで、産業界のニーズに合わせた物理化学的特性を持つマテリアルバイデザイン(ヘテロ構造、コアシェル構造、表面を改質した金属など)の合成に利用できる可能性がある。さらに、これらの溶媒と金属/メタロイドを組み合わせて使用することで、より費用対効果が高く、環境に優しいプロセスで、さまざまなナノ及びマイクロ材料の大規模合成を実現できる可能性がある。
【0117】
特定の理論に縛られるわけではないが、本明細書で論じる反応の過程で、金属/メタロイド前駆体はまず酸化剤によって酸化され、次に金属/メタロイドイオンを安定化できるイオン液体の極性領域に部分的に可溶化されると考えられている。このような環境下で金属/メタロイドの濃度が上昇し、臨界濃度に達すると、金属/メタロイド化合物の核形成が起こる。これらの化合物はさらに成長し、動力学的及び/又は熱力学的制御により、微粒子又はナノ粒子に形成される。粒子は、溶液中で個々の粒子として成長することも、前駆体表面に付着してフィルム又は複合材料を形成することもできる。イオン液体は、特定の前駆体及び酸化剤に特化した溶媒環境を提供するように選択される場合がある。したがって、本明細書に記載の合成経路によって、任意の組成及び形態の微粒子又はナノ粒子を製造することが出来得る。
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【国際調査報告】