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特表2023-531256チーグラー・ナッタ触媒システムおよびこれを用いる重合プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタ触媒システムおよびこれを用いる重合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20230713BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580113
(86)(22)【出願日】2021-06-26
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2021055724
(87)【国際公開番号】W WO2021260664
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】202021027295
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511269587
【氏名又は名称】リライアンス、インダストリーズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RELIANCE INDUSTRIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、ヴィレンドラクマール
(72)【発明者】
【氏名】トリヴェディ、パルシヴ ムクンドクマール
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AB02
4J128AC05
4J128BA00B
4J128BA02A
4J128BB00B
4J128BB01A
4J128BC15A
4J128BC36A
4J128DB03A
4J128DB08A
4J128EB02
4J128EB04
4J128EC01
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA03
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA09
4J128GA21
4J128GB02
4J128GB07
(57)【要約】
チーグラー・ナッタ触媒システムおよびそれによる重合プロセス
本発明はチーグラー・ナッタ触媒 システムであって、次の内容で構成される:前駆触媒と共触媒および選択性制御剤に関する。前駆触媒はマグネシウム化合物、 チタン化合物、多座配位性内部供与体から成り、ここに、内部供与体はテトラエチル 3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’- テトラカーボネートである。また、本発明はチーグラー・ナッタ触媒システムを使用するオレフィンの重合プロセスに関する。本発明のチーグラー・ナッタ触媒システムは水素反応性が非常に高いため、低分子量から高分子量のポリオレフィン生産に使用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から構成されるチーグラー・ナッタ触媒 システム
(a)触媒システムの総重量のうち2wt%~10 wt%の前駆触媒であって、ここに、前記の前駆触媒は次から構成される:
- マグネシウム化合物
- チタン化合物
- 多座配位性内部供与体
(b)触媒システムの総重量のうち83 wt%~95 wtの共触媒
(c)触媒システムの総重量のうち1~8 wt%の選択性制御剤
【請求項2】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記の多座配位性内部供与体とはテトラエチル 3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’- テトラカーボネートである。
【請求項3】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記マグネシウム化合物は塩化マグネシウム (MgCl2)と水酸化マグネシウム (Mg(OH)2)とマグネシウム アルコキシド (Mg(OR)2)からなる群から選択される少なくとも一つである。
【請求項4】
請求項3に請求される触媒システムであって、ここに、前記のマグネシウム アルコキシドはマグネシウム メトキシド、マグネシウム エトキシド、マグネシウム イソ-プロポキシド、マグネシウムn-ブトキシド、マグネシウム フェノキシドからなる群から選択される少なくとも一つである。
【請求項5】
請求項1において請求される触媒システムであって、ここに、前記のチタン化合物はチタンハロゲン化合物である。
【請求項6】
請求項5において請求される触媒システムであって、ここに、前記のチタンハロゲン化合物は四塩化チタンである。
【請求項7】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記の共触媒 メチルアルミノキサン (MAO)、トリエチル アルミニウム (TEAL)、トリ イソブチル アルミニウム (TIBAL)、塩化ジエチルアルミニウム (DEAC)からなる群から選択される少なくとも一つである。
【請求項8】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記の選択性制御剤はシクロヘキシル メチル ジメトキシシラン、シクロヘキシル メチル トリメトキシシラン、4-エトキシ安息香酸エチル、シクロフェニル メチル ジメトキシシラン、シクロフェニル メチル トリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも一つである。
【請求項9】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記の前駆触媒は前駆触媒の総重量のうち5~10 wt%の多座配位性内部供与体から構成される。
【請求項10】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記共触媒対前記の前駆触媒のモル比は 200~300の範囲であり、前記共触媒対前記の選択性制御剤のモル比は 20~40の範囲である。
【請求項11】
請求項1に請求される触媒システムであって、ここに、前記の共触媒の前記の前駆触媒に対するモル比が 250で前記の共触媒の前記の選択性制御に対するモル比は 30である。
【請求項12】
請求項1に請求する触媒システム
(a)触媒システムの総重量のうち3~8 wt% を占める前記前駆触媒であって、ここに、前記前駆触媒は前駆触媒の総重量のうち.5~10wt%の内部供与体を含む。
(b)触媒システムの総重量のうち85~94 wt%の前記の共触媒
(c)触媒システムの総重量のうち3~7 wt%の前記選択性制御剤
【請求項13】
チーグラー・ナッタ触媒システムの調製プロセスであって、同プロセスは多座配位性内部供与体を含む前駆触媒を少なくとも一つの共触媒および少なくとも一つの選択性制御剤に追加してチーグラー・ナッタ触媒 システムを取得する手順から構成される。
【請求項14】
チーグラー・ナッタ触媒システムを使用したオレフィンの重合プロセスであって、前記のプロセスは以下のステップから構成される:
(i)以下を追加する
a.前駆触媒と共触媒および選択性制御剤で成るチーグラー・ナッタ触媒 システム
b.炭化水素媒液
リアクターの不活性雰囲気内で第一のスラリーを取得する
(ii)前記の第一のスラリーを収納しているリアクターにオレフィンを第一の所定圧力で投入して第二のスラリーを取得する
(iii)前記の第二のスラリーを所定温度および第二の所定圧力下で重合させ、連鎖終結剤を添加して、ポリオレフィンを取得する。
【請求項15】
請求項14に請求されるプロセスであって、ここに、前記の炭化水素媒液はペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソペンタンから成る群から選択される少なくとも一つの媒体である。
【請求項16】
請求項14で請求されるプロセスであって、ここに、前記連鎖終結剤は水素である。
【請求項17】
請求項14で請求されるプロセスであって、ここに、前記所定温度は65 ℃~75 ℃の範囲である。
【請求項18】
請求項14で請求されるプロセスであって、ここに、前記の第一と第二の所定圧力は4.0 kg/cm2 ~ 6.0 kg/cm2の範囲である。
【請求項19】
ポリエチレンの調製プロセスであって、前記プロセスは以下の手順から構成される:
(i)以下を追加する
・チーグラー・ナッタ触媒 システムであって、次の内容で構成される:前駆触媒と共触媒および選択性制御剤
・n-ヘキサン
リアクターの不活性雰囲気内で第一のスラリーを取得する
(ii)前記の第一のスラリーを収納しているリアクターにエチレンガスを圧力 5.0 kg/cm2 で投入し、第二のスラリーを取得する
(iii)前記の第二のスラリーを 70 ℃、圧力5.0 kg/cm2で重合させ、次に連鎖終結剤に水素を使用してポリエチレンを取得する。
【請求項20】
ポリプロピレンの調製プロセスであって、前記のプロセスは以下の手順から構成される:
(i)以下を追加する
・チーグラー・ナッタ触媒 システムであって、次の内容で構成される:前駆触媒と共触媒および選択性制御剤
・n-ヘキサン
リアクターの不活性雰囲気内で第一のスラリーを取得する
(ii)前記の第一のスラリーを収納しているリアクターにプロピレンガスを圧力5.0 kg/cm2で投入して第二のスラリーを取得する
(iii)前記の第二のスラリーを 70 ℃、圧力5.0 kg/cm2で重合させ、次に連鎖終結剤に水素を使用してポリプロピレンを取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はチーグラー・ナッタ触媒システムおよびこれを用いる重合プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明技術の背景
下記の背景情報は本発明に関するものであって、必ずしも先行技術に関するものであるとは限らない。
超高分子量(UHMW)ポリマーには多種類の重要な商業的用途がある。例えば、UHMWポリエチレン(UHMWPE)は防弾布や医療用途および微小多孔性フィルムを含む製品において有用な場合があるほかにも、UHMWポリプロピレン(UHMWPP)は微小多孔性フィルムの生産における添加剤として高溶融性高強度ゲル紡績布の形で利便性があることがわかっている。また、低分子量ポリプロリンは自動車用途に必須のものである。
【0003】
異なる最終用途のために分子量が多様に存在するポリオレフィンが必要である。低分子量および高分子量ポリマーの生産では異なる触媒システムが使用される。さらに、従来のポリオレフィンの調製プロセスはポリマーを水素分解して目的の低分子量ポリマーを取得することである。しかし、水素分解すると望ましくない分子量配分を持つ生成物や副産物の発生にもつながる。
従って、これを置き換え上記の不利を軽減する触媒システムの必要性が認識される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の目的
本発明の目的の一部は少なくとも1つの実施例を本明細書において取り上げることでじゅうぶんであるが、以下のものである。
先行技術の持つ一つまたは複数の課題を改善するかまたは少なくとも有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
本発明の他の態様として、低分子量から高分子量のポリマーの生産用チーグラー・ナッタ触媒システムを提供する。
費用効率が高く経済的なチーグラー・ナッタ触媒システムを提供することが本発明のさらにもう一つの目的である。
また、本発明の他の態様としてチーグラー・ナッタ触媒システムを使用してオレフィンの重合プロセスを提供する。
本発明のその他の目的と優位性は本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない以下の説明によってさらに明らかとなる。
【0005】
発明の要約
本発明は触媒システムの総重量のうち 2 wt%~10 wt% の前駆触媒、触媒システムの総重量のうち83 wt%~ 95 wt%の共触媒さらに触媒システムの総重量のうち1 wt%~8 wt%の選択性制御剤から成るチーグラー・ナッタ触媒システムに関する。前駆触媒はマグネシウム化合物、チタン化合物、多座配位性内部供与体から成り、ここに、内部供与体はテトラエチル 3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’- テトラカーボネートである。さらに、本発明はチーグラー・ナッタ触媒システムの調製プロセスに関しており、ここに、同プロセスは多座配位性内部供与体を含む前駆触媒に少なくとも一つの共触媒および少なくとも一つの選択性制御剤を添加してチーグラー・ナッタ触媒 システムを取得する手順から構成される。また、本発明はチーグラー・ナッタ触媒システムを使用するオレフィン重合プロセスに関する。同プロセスは炭化水素媒液内に前駆触媒と共触媒および選択性制御剤を含んで構成されるチーグラー・ナッタ触媒システムを不活性雰囲気下でリアクターに追加して第一のスラリーを取得する手順から構成される。オレフィンを第一のスラリーを入れたリアクター内に第一の所定圧力で導入し第二のスラリーを取得する。次に、第二のスラリーを所定温度および第二の所定圧力でもって重合し、連鎖終結剤を添加し、ポリオレフィンを取得する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
ここに記載の実施形態をもってこの分野の技能者であれば本発明の範囲を完全かつ余すところなく把握することができる。個別コンポーネントに関連していくつもの詳細を記載して本発明の実施形態を完全に把握しうる。この分野の技能を有する者であれば、実施形態に記載の明細をもって本発明の範囲を制限するものと解釈することはできないことは明白である。実施形態によっては周知の工程や周知の装置構造、周知の技法を詳細に説明していない。
【0007】
本発明において、記載されている用語は特定の実施例を説明するためにのみ使用しており、その用語をもって本発明の範囲を限定するものととらえてはならない。本発明において使用する名詞は文脈上単数扱いとすべき場合を除き、複数の事物も同時に含むものとする。「から構成される」、「を含む」や「をもって構成する」「から成る」といった用語はそれ以外のものも含む可能性を含む遷移的語句であって、このため本明細書に記載する機能や特長、整数、手順、操作、要素、モジュール、ユニットあるいはコンポーネントの存在を規定するものであるが、それ以外の機能や整数、手順、操作、要素、コンポーネント、コンポーネントのグループの存在や追加を排除するものではない。本発明の方法と工程に開示されている特定の手順の順序は、説明あるいは図解されている性能が必ずしも必須の要素であるとは限らないものと解釈すべきものである。また、追加あるいは代替の手順も使用しうるものと把握すべきものである。
【0008】
異なる最終用途のために分子量が多様に存在するポリオレフィンが必須である。低分子量および高分子量ポリマーの生産に異なる触媒システムが使用される。さらに、従来のポリオレフィンの調製プロセスはポリマーを水素分解して目的の低分子量ポリマーを取得することである。しかし、水素分解すると望ましくない分子量配分を持つ生成物や副産物の発生にもつながる。
【0009】
本発明は同じ触媒システムを使用して低分子量から高分子量のポリマーも生産可能な水素反応性が高い触媒システムを提供する。
本発明はオレフィン重合専用の固有な多座配位性内部供与体から構成されるチーグラー・ナッタ触媒 システムを提供する。
【0010】
第一の態様において、本発明は触媒システムの総重量のうち 2 wt%~10 wt% の前駆触媒、触媒システムの総重量のうち83 wt%~ 95 wt%の共触媒また触媒システムの総重量のうち1 wt%~8 wt%の選択性制御剤から成るチーグラー・ナッタ触媒システムを提供する。前駆触媒はマグネシウム化合物とチタン化合物と多座配位性内部供与体から成る。
【0011】
本発明に従い、内部供与体はテトラエチル 3,3、3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’- テトラカーボネートである。テトラエチル-3,3、3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’-テトラカーボネートの構造を以下に示す。
【0012】
【化1】
【0013】
マグネシウム化合物は塩化マグネシウム (MgCl2)と水酸化マグネシウム (Mg(OH)2)とマグネシウム アルコキシド (Mg(OR)2)からなる群から選択される少なくとも一つである。本発明の一実施形態において、マグネシウム アルコキシドはマグネシウム メトキシド、マグネシウム エトキシド、マグネシウム イソプロポキシド、マグネシウムn-ブトキシド、マグネシウム フェノキシドからなる群から選択される少なくとも一つである。本発明の代表的一実施形態において、マグネシウム化合物はマグネシウムエトキシドである。
【0014】
チタン化合物はチタンハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも一つである。本発明の一実施形態において、チタンハロゲン化物は四塩化チタンである。
本発明に従い、共触媒は メチルアルミノキサン (MAO)、トリエチル アルミニウム (TEAL)、トリ イソブチル アルミニウム (TIBAL)、塩化ジエチルアルミニウム (DEAC)からなる群から選択される少なくとも一つである。本発明の代表的一実施形態においては本発明に従い共触媒はトリエチル アルミニウム (TEAL)である。
【0015】
本発明に従い、選択性制御剤は シクロヘキシル メチル ジメトキシシラン、シクロヘキシル メチル トリメトキシシラン、4-エトキシ安息香酸エチル、シクロフェニル メチル ジメトキシシラン、シクロフェニル メチル トリメトキシシラン、ジシクロペンチル ジメトキシシランからなる群から選択される少なくとも一つである。本発明の代表的一実施形態に従い、選択性制御剤はジシクロペンチル ジメトキシシランである。
【0016】
本発明に従い、前駆触媒は前駆触媒の総重量のうち5~10 wt%の内部供与体を含む。本発明の一実施形態において、前駆触媒は前駆触媒の総重量のうち6~8 wt% の内部供与体を含む。本発明の代表的一実施形態において、前駆触媒は 前駆触媒の総重量のうち7.52 wt%の内部供与体を含む。
【0017】
本発明に従い、共触媒対前駆触媒のモル比は 200~300の範囲であり、共触媒対選択性制御剤のモル比は 20~40の範囲である。本発明の代表的一実施形態において、共触媒対前駆触媒のモル比は 250、共触媒対選択性制御剤のモル比は30である。
【0018】
本発明の一実施形態において、本チーグラー・ナッタ触媒システムは触媒システムの総重量のうち3~8 wt%の前駆触媒、触媒システムの総重量のうち85~94 wt%の共触媒および触媒システムの総重量のうち3~7 wt%の選択性制御剤から成る。
【0019】
第二の態様において本発明はチーグラー・ナッタ触媒システムの調製プロセスを提供する。同プロセスは多座配位性内部供与体を含む前駆触媒に少なくとも一つの共触媒および少なくとも一つの選択性制御剤を追加してチーグラー・ナッタ触媒 システムを取得する手順から構成される。
【0020】
第三の態様において本発明はチーグラー・ナッタ触媒システムを使用するオレフィン重合プロセスを提供する。同プロセスは炭化水素媒液内に前駆触媒と共触媒および選択性制御剤を含んで構成されるチーグラー・ナッタ触媒システムを不活性雰囲気下でリアクターに追加して第一のスラリーを取得する手順から構成される。
【0021】
本発明の一実施形態において、炭化水素媒液はペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチル シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソペンタンから成る群から選択する少なくとも1つのものである。本発明の代表的一実施形態に従い、炭化水素媒液はn-ヘキサンである。
オレフィンを第一のスラリーを格納したリアクター内に第一の所定圧力で導入し第二のスラリーを取得する。
【0022】
本発明の一実施形態において、オレフィンはエチレンおよびプロピレンから成る群から選択する。本発明の一実施形態において、オレフィンはエチレンである。本発明の一実施形態において、オレフィンはプロピレンである。
本発明の実施形態において、第一の所定圧力は4.0 kg/cm2~6.0 kg/cm2の範囲である。本発明の代表的一実施形態において第一の所定圧力は5.0 kg/cm2である。
【0023】
次に、第二のスラリーを所定温度および第二の所定圧力で重合して、連鎖終結剤を添加しポリオレフィンを取得する。
本発明の一実施形態において、連鎖終結剤は水素である。
本発明の一実施形態において、所定温度は65 ℃~75 ℃の範囲である。本発明の代表的一実施形態において、所定温度は70 ℃である。
本発明の一実施形態において、第二の所定圧力は4.0 kg/cm2~6.0 kg/cm2の範囲である。本発明の代表的一実施形態において、第二の所定圧力は5.0 kg/cm2である。
【0024】
本発明の一実施形態において、ポリエチレンを調製するプロセスはn-ヘキサン内に前駆触媒と共触媒および選択性制御剤を含んで構成されるチーグラー・ナッタ触媒システムを不活性雰囲気下でリアクターに添加してから構成される。エチレンガスを第一のスラリーを格納したリアクター内に圧力5.0 kg/cm2で投入し第二のスラリーを取得する。次に、第二のスラリーを 70 ℃、圧力5.0 kg/cm2で重合させ、連鎖終結剤に水素を使用してポリエチレンを取得する。
【0025】
本発明による別の実施形態において、ポリプロピレンを調製するプロセスはn-ヘキサン内に前駆触媒と共触媒および選択性制御剤を含んで構成されるチーグラー・ナッタ触媒システムを不活性雰囲気下でリアクターに追加する手順から構成される。プロピレンガスを第一のスラリーを入れたリアクター内に圧力 5.0 kg/cm2で導入し第二のスラリーを取得する。次に、第二のスラリーを 70 ℃、圧力5.0 kg/cm2で重合させ、次に連鎖終結剤に水素を使用してポリプロピレンを取得する。
【0026】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および超高分子量ポリプロピレン (UHMWPP)である。本発明の一実施形態において、ポリオレフィンはUHMWPE(超高分子ポリエチレン)である。本発明のもう一つの実施形態において、ポリオレフィンはUHMWPP(超高分子ポリプロピレン)である。
本発明の一実施形態において、UHMWPEは平均分子量20 万から550 万の範囲、分子量分布5~12の範囲、かさ密度範囲 0.25~0.39 g/cc、21.6 kgを190 ℃で測定したときメルトフローインデックス (MFI) の範囲0.05~10 g/minであることを特徴とする。
【0027】
本発明の一実施形態において、UHMWPPは平均分子量1 百万、分子量分布3~13の範囲、かさ密度範囲 0.23~0.30 g/cc、21.6 kgを230 ℃で測定したときメルトフローインデックス (MFI) の範囲0.1~36 g/minであることを特徴とする。
さらに、本発明はUHMWPP ファイバーの調製プロセスを提供する。同プロセスはゲルの調製およびゲルの紡績、次に高温延伸処理してファイバーを取得する手順から構成される。UHMWPP ファイバーの直径を異なる延伸比で測定する。また、UHMWPP ファイバーのヤング率を計算する。
【0028】
本発明の発明人は固有な多座配位性内部供与体 (テトラエチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’-テトラカーボネート)およびオレフィン重合用のその他の化合物から構成されるチーグラー・ナッタ触媒システムを発明した。こうした多座配位性触媒システムでは分子量が100万から550万の低分子量から高分子量のポリオレフィンが生産される。さらに、この発明で開発されたチーグラー・ナッタ触媒システムは水素との反応性に非常に優れるためMFI(メルトフローインデックス)が高いポリプロピレンを提供する。
【0029】
使用された内部供与体はオレフィン重合および触媒の活性に対して決定的に重要な役割をする。内部供与体の存在によりポリマーの立体規則性および分子量特性の制御が可能であり、ポリマー処理およびポリマーの機械的特性に直接効果が及ぶ。
【0030】
本発明の触媒システムは安価かつ容易に入手可能な試薬を用いる。以上より、本発明の統合工程は経済的である。
本発明のプロセスは室温で実行される。従って、本発明のプロセスはエネルギー効率が高い。
実施形態に関する前記の説明は解説のために行ったものであって、本発明の範囲をこの説明の範囲のみに限定することを意図していない。特定の実施例の個々のコンポーネントは概してその特定の実施形態に限定されるものではなく、相互に入れ替え可能である。こうした亜種を本発明とは異なるものと見なすことはできず、全てのこのような亜種は本発明の範囲に含むものと見なされる。
【0031】
本発明を以下の限定されることのない実施形態によってさら説明する。但し、以下の例は説明のためにのみ既述されており、本発明の範囲を限定するものとは解釈されてはならない。以下の実験は大規模化して工業/商業スケールにでき、得られる結果は工業スケールまで外挿することができる。
【0032】
実験内容
実験1:チーグラー ナッタ前駆触媒の調製
例1:US8633124B2に記述のあるマグネシウム アルコキシド (10 gm) 前駆物質は 230 ml の等量のTiCl4とクロロベンゼンを窒素雰囲気下10 ℃でリアクターに添加して混合物を取得する。この混合物を 10℃で10分維持し冷却後の混合物を取得する。冷却された混合物にテトラエチル 3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビインダン-5,5’,6,6’- テトラカーボネート (内部供与体)を 7.0 g 添加し、110 ℃ で 60 分攪拌して反応混合物を取得する (触媒調製のステージI)。反応生成物内の固形物を沈殿させ、別途の上澄み液を取得した。上澄み液の層カンターで乾燥させて除去して第一の反応質量を取得した。このようにして取得された反応質量に四塩化チタン (115 ml) とクロロベンゼン (115 ml)の混合物を添加し、110℃で30分攪拌し、第二の反応質量を取得した (触媒調製のステージII)。第二の反応質量内の固形物を沈殿させ、別途の上澄み液を取得した。上澄み液をデカンターで乾燥させて除去し、四塩化チタン (115 ml)とクロロベンゼン (115 ml)の混合物とともに0.6 ml 塩化ベンゾイルを混ぜ、110℃で30分攪拌し、第三の反応質量を取得した (触媒調製ステージIII)。第三反応質量内の固形物を沈殿させ、別途の上澄み液の層を取得した。この上澄み液の層をデカンターで乾燥させて除去し、前駆触媒を含む混合生成物を取得した。三段階の処理後、固形前駆触媒をろ過し、毎回 100 mlの n-ヘキサンで4回洗浄し、窒素流の中で50℃で乾燥させ、茶色の前駆触媒を取得した。表-1に前駆触媒の組成分析を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実験2:重合プロセス
例 2-5:チーグラー・ナッタ触媒システムを用いるプロピレンの重合
例 1 の前駆触媒(0.07 g) をTEAL/Ti モル比が250 となるように TEAL (トリエチル アルミニウム) (n-ヘキサン溶液内の10%) 共触媒 (21 ml)と、さらに、Al/SCのモル比が 30となるように SCA としてジシクロペンチル ジメトキシシラン (n-デカン溶液内の5%) (2.3 ml) と混合してチーグラー ナッパ (ZN) 触媒システムを取得する。この触媒システムをn-ヘキサン (2000 ml)の入った不活性雰囲気のリアクターに追加し、第一のスラリーを取得した。圧力5.0 kg/cm2でプロピレンガスを第一のスラリーが入ったリアクターに投入して第二のスラリーを取得した。この第二のスラリーを重合させ、リアクターの圧力を5.0 kg/cm2、リアクター内温度を 70 ℃ に維持し、水素 [0 ml、1 kg/cm2 (300ml)、2 kg/cm2 (600ml)、 3 kg/cm2 (900ml)]を添加して、重合を停止させ、目標分子量のポリプロピレンを取得した。
【0035】
比較例:チーグラー・ナッタ触媒システムを用いるプロピレンの重合
既知の内部供与体であるジエステル ジイソブチル フタレート (DIBP) を含むチーグラー・ナッタ触媒を使用した点を除き、例 2に説明されているものと同じ実験手順を行った。
【0036】
メルトフローインデックス (MFI)を同定するため、異なる水素濃度 (1 kg/cm2、2 kg/cm2、 3 kg/cm2)および H2 不在の下でも重合させた。触媒の生産性、ポリプロピレンのかさ密度 (BD)、キシレン可溶分、平均粒子サイズ、メルトフローインデックス、Mw(分子量)、多分散指数 (PDI)を表 2に掲げる。
【0037】
【表2】
【0038】
表 2から本発明のチーグラー ナッタ前駆触媒は高い生産性があることがわかる(~1-2.8 Kg PP/g cat)。しかし内部供与体にジエステル ジイソブチル フタレート (DIBP)を使用した比較例ではこれより生産性が低い (0.7 Kg PP/g cat)。また連鎖終結剤 (水素)を増やすとポリプロピレンの MFIも増え、分子量は減る。すなわち本発明の触媒システムにはより高い水素反応性があることが示されている。従って、連鎖終結剤の濃度を変えることにより、目標分子量のポリプロピレンを本触媒を使用して生産可能となる。
【0039】
例 6-9:チーグラー・ナッタ触媒システムを用いるエチレンの重合
例 2-5と同じ実験手順をそれぞれに適用したが、 エチレンを使用し、ジシクロペンチル ジメトキシシランは使用しなかった例外はある。
メルトフローインデックス (MFI)を同定するため、異なる水素濃度 (1 kg/cm2、2 kg/cm2、 3 kg/cm2)および H2 不在の下でも重合させた。触媒の生産性、ポリプロピレンのかさ密度 (BD)、平均粒子サイズ、メルトフローインデックス、Mwを表 3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
表 3から本発明のチーグラー ナッタ前駆触媒には非常に高い生産性があることがわかる(~10-14.5 Kg PE/g cat)。また連鎖終結剤 (水素)を増やすとポリエチレンの MFIも増え、分子量は減る。すなわち本発明の触媒システムにはより高い水素反応性があることが示されている。従って、連鎖終結剤の濃度を変えることにより、目標分子量のポリプロピレンを本触媒を使用して生産可能となる。
【0042】
実験3:UHMWPP ファイバーの調製
ゲルの調製: 例 2で取得した平均分子量120万ポリマー樹脂UHMWPP (70 g)をデカリン1000 ml に 0.7 gの Irganox 1010 (N, N'-1,6-ヘキサンジイルビス[3,5-ビス-4-ヒドロキシフェニルプロパンアミド])と0.7 gの Irgafox 168 (トリス(2,4-ジ-タート-ブチルフェニル)亜リン酸エステル)安定化剤とともにリアクター内で150 ℃で1 時間攪拌して均質な溶液を取得する。この溶液 をリアクター内で室温まで冷却してゲルを取得し、これを紡績用に移動した。
【0043】
ゲル紡績: 4ゾーンスクリュー押出機で同ゲルを紡績した。ゲルを適切に加熱されたゾーンに通し紡績溶液を取得した。押出後、加熱した紡績溶液を円錐形紡績穴付き型に通し、冷却して結晶化させ、UHMWPPファイバーを取得した。ファイバーの押出速度は最大 5 rpmとした。UHMWPP ファイバーを20 cm のエアギャップを通して自由に押し出し、水浴させて冷却すると同時に延伸ローラーに通し、水浴で冷却した。各ローラーの延伸速度は紡績中にファイバーが破損しないように設定した。紡績に成功後はファイバーをシングルヘッドワインダーで回収し、下流処理および熱延に進む。
【0044】
高温延伸処理:加熱延伸は加熱したゴデットを使用して行った。ゴデットの速度は加熱延伸中にファイバーが破損しないように設定した。ファイバーは毎回1:2、1:5、1:8、 1:10の異なる比率で引き伸ばした。ここで使用した延伸比は回収ローラーの速度対フィードローラーの速度として定義される。どのゴデットも 150℃ に加熱し、処理中にファイバーが溶融しないようにした。
【0045】
サイクル S1は延伸比1:2倍に匹敵する。以下、S2が1:5倍、S3とS4はそれぞれに1:8、1:10での高温延伸に匹敵する。ファイバーの直径はテストの前に顕微鏡 (FESEM) で測定し、引張強度の計算に用いた。異なる延伸比におけるUHMWPP ファイバーの直径およびヤング率を表 4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表 4から、引張/延伸比1:10に匹敵するS4において熱延UHMWPP ファイバーのヤング率が最も高い(784 MPa)。ファイバー調製プロセスにおけるポリマーの引張比すなわち延伸比は、一方向パターンにポリマー鎖を整合し、このため機械的強度が増大する。従って表 4に示されるように延伸比の増大にともないヤング率も増大することが明らかである。しかし、ある程度まで延伸すると機械的特性が変化せず、ファイバーの延伸が困難となり、ファイバーが破断するまでに及ぶこともある。
【0048】
技術進歩
上記に説明されている本発明は、以下の特徴を持つチーグラー・ナッタ触媒システムの実現に限定することなく含むいくつかの技術的利点を提供する:
- 低分子量から高分子量のポリオレフィンを生産する
- 水素反応性が非常に高い
- 費用効果が高く経済的である
【0049】
本発明の実施例ならびに様々な特長および優位性の詳細を限定することのない実施例を参照することによって以下に説明する。確立している既存のコンポーネントならびに処理技術についての説明は省略し、本発明の実施例についての理解を不要に困難にしないようにした。本発明に使用されている例は単に本発明の実施例を実用化可能にする方法の理解を容易にし、この分野の技能を持つ者が本発明の実施例を実施することを可能にすることのみを目的としている。従って、例によって本発明の実施例の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0050】
前記の具体的実施形態に関する記述は、本発明の実施形態が持つ一般的性質をじゅうぶんに明らかにしているので、現状の知識を適用することにより、前記の一般的概念から乖離することなく前記の具体的実施形態を異なる用途のために変更および/または適合することができ、従って、適合/変更は本発明の実施形態と同等の物としての意味、およびその範囲で、理解されることが意図されるべきであり、意図されている。本明細書に使用されている句節の用法や用語は説明目的のためであって限定するために使用されてはいない。従って、本明細書に記載された実施例は優先的実施例に基いて説明されていると同時に、同分野の技能を有する者は本明細書に記載された実施例が本明細書で説明された実施例の意図および範囲で変更しても実践可能であることが認められる。
【0051】
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。
本明細書に含まれている文書、行為、素材、デバイス、商品または同類のものについての議論は本発明開示のための文脈を成す目的のためにのみ含まれている。任意のまたはすべての以上の事項が既知の発明技術の基礎の一部を構成するまたは本出願優先日以前に任意の場所に存在していた本発明関連分野における共有されている一般的知識であるという是認と解釈されてはならない。
【0052】
異なる物理的パラメータ、変数、寸法や数量を表す数値は概数であって、パラメータ、変数、寸法や数量に代入された数値より高い/低い値は本発明の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に異なる記載がなされている場合はこの限りではない。
優先実施形態の異なる構成要素及び構成要素の部分を相当強調してきたが、多くの実施形態が可能であって、発明の原理から乖離することなく優先実施形態には多くの変更も可能である。本発明または優先実施形態ならびにその他の実施形態の特質を修正できることは本発明分野の専門的技能を有する者には明らかであって、この際、以上の説明的事項が単に本発明を説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されてはならないことを明確に理解する必要がある。
【国際調査報告】