(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】ドリル工具用の金属切削インサート及びドリル工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20230713BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B23B51/00 T
B23B27/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580430
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021060366
(87)【国際公開番号】W WO2022002456
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カールバーリ, ホーカン
(72)【発明者】
【氏名】ハルストレム, パトリック
【テーマコード(参考)】
3C037
3C046
【Fターム(参考)】
3C037BB00
3C037BB08
3C046CC01
3C046CC06
(57)【要約】
ドリル工具用の金属切削ドリルインサート(100、400)であって、対向する上面(101、401)及び底面(102、402)であって、切削ドリルインサートの対称軸が、上面(101、401)と底面(102、402)との間に延在し、周側面(103、403)が、該上面と該底面との間に延在し、上面(101、401)が、すくい面(104、404)を備え、側面(103、403)が、逃げ面(105、405)を備える、対向する上面(101、401)及び底面(102、402)を備える、ドリル工具用の金属切削ドリルインサート(100、400)。金属切削ドリルインサートは、少なくとも1つの段付き切れ刃(106、406)であって、少なくとも1つの段付き切れ刃(106、406)が、該少なくとも1つの段付き切れ刃に沿って連続的なチップを切削するように構成されており、該少なくとも1つの段付き切れ刃が、上面(101、401)のすくい面(104、404)と側面(103、403)の隣接する逃げ面(105、405)との交差部に形成されており、金属切削インサートの上面に面する上面図において、少なくとも1つの段付き切れ刃が、第1の部分刃(108、508)と第2の部分刃(109、509)との間の遷移刃(107、507)によって形成された段部を備える、少なくとも1つの段付き切れ刃(106、406)をさらに備え、金属切削インサート(100、400)の上面(101、401)に面する上面図において、該段部が、対称軸に対して半径方向に、第1の距離h1だけ延在し、金属切削インサート(100、400)の周側面(103、503)に面する側面図において、該段部が、底面から上面に向かう方向に、第2の距離h2だけ延在し、ここで、0.8・h1≦h2≦1.2・h1であることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリル工具用の金属切削ドリルインサート(100、400)であって、
対向する上面(101、401)及び底面(102、402)であって、前記切削ドリルインサートの対称軸が、前記上面と前記底面との間に延在し、周側面(103、403)が、前記上面と前記底面との間に延在し、前記上面(101、401)が、すくい面(104、404)を備え、前記側面(103、403)が、逃げ面(105、405)を備える、対向する上面(101、401)及び底面(102、402)と、
少なくとも1つの段付き切れ刃(106、406)であって、前記少なくとも1つの段付き切れ刃(106、406)が、前記少なくとも1つの段付き切れ刃に沿って連続的なチップを切削するように構成されており、前記少なくとも1つの段付き切れ刃が、前記上面(101、401)の前記すくい面(104、404)と前記側面(103、403)の隣接する前記逃げ面(105、405)との交差部に形成されており、金属切削インサートの前記上面に面する上面図において、前記少なくとも1つの段付き切れ刃が、第1の部分刃(108、508)と第2の部分刃(109、509)との間の遷移刃(107、507)によって形成された段部を備える、少なくとも1つの段付き切れ刃(106、406)と
を備え、
前記金属切削インサート(100、400)の前記上面(101、401)に面する前記上面図において、前記段部が、前記対称軸に対して半径方向に、第1の距離h1だけ延在し、
前記金属切削インサート(100、400)の前記周側面(103、503)に面する側面図において、前記段部が、前記底面から前記上面に向かう方向に、第2の距離h2だけ延在し、ここで、0.8・h1≦h2≦1.2・h1であることを特徴とする、
ドリル工具用の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項2】
前記第2の距離h2が、0.9・h1≦h2≦1.1・h1であることを特徴とする、請求項1に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項3】
前記第2の距離h2が、0.95・h1≦h2≦1.05・h1であることを特徴とする、請求項1に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項4】
前記第1の距離h1が、前記第2の距離h2に実質的に等しいことを特徴とする、請求項1に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項5】
前記段付き切れ刃が、前記第1の部分刃に連結されたコーナ刃(510)を備え、前記コーナ刃が、前記インサートのさらなる段付き切れ刃の第2の部分刃に連結されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項6】
コーナ部刃が、前記段付き切れ刃の前記第1の部分刃からさらなる前記段付き切れ刃の前記第2の部分刃まで連続した刃を提供することを特徴とする、請求項4に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項7】
前記遷移刃が、湾曲刃を有し、前記湾曲刃が、前記上面図及び前記側面図において同じ形状を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項8】
前記インサートが、前記インサートの前記上面(101)と前記底面(102)との間に延在する貫通孔を備え、その貫通孔が、前記対称軸に沿って位置合わせされており、前記対向する上面及び底面を通って延在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項9】
複数の段付き切れ刃(106)が、前記対称軸の周りに対称に配置されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項10】
前記遷移刃が、前記金属切削ドリルインサートの周りで反時計回り方向に前記段付き切れ刃に沿って移動するときに、前記上面図の前記対称軸に対して正の半径方向に段部を提供することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の金属切削ドリルインサート(100、400)。
【請求項11】
穿孔シャフト(702)及びマウントシャンク(703)を有する細長いドリル本体(701)を備える、金属切削ドリル工具(700)であって、
前記金属切削ドリル工具(700)が、前記穿孔シャフト(702)の端部に取り付けられた、請求項1から10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのドリルインサート(100、100’)をさらに備えることを特徴とする、
金属切削ドリル工具(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル工具用の金属切削インサートに関し、より詳細には、段付き切れ刃を有する金属切削インサートに関する。
【0002】
また、本発明は、ドリル工具に関する。
【背景技術】
【0003】
現代の除去製造において、ドリリングは重要な作業であり、特に金属のドリリングは要求の厳しい作業であることが判明している。
【0004】
金属のドリリングでは、交換可能な金属切削インサートを備えるドリル工具が、特にCNC作業においてよく使用される。前述のタイプの最新のドリル工具は、ドリル穴の中央領域をドリリングするための中央インサートと、ドリル穴の周縁領域の材料を除去するための周縁インサートと、を備えることが多い。異なる切削幾何学的形状に起因して、中央インサート及び周縁インサートは、多くは異なる幾何学的形状を採用する。中央インサートの最近の幾何学的形状は、第1の部分刃から第2の部分刃への滑らかな遷移を有する段付き刃を採用している。滑らかな遷移は、一般に遷移刃又は遷移領域と呼ばれる。滑らかな遷移は、ドリリングされた材料から所定の長さの連続的なチップを切削するのに有利である。チップ制御は、現代のCNC金属のドリリングにおいて最も重要であり、特にチップ排出は、ドリル穴の表面仕上げに大きな影響を及ぼし、ドリル速度にも影響を及ぼす。
【0005】
段付き刃を採用するインサートには、段付き切れ刃からインサートの解放側にわたって移動する切削チップには遷移領域において温度の上昇があるという事実に起因して問題がある。この温度の上昇は、インサートの寿命、特に遷移刃に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
したがって、遷移領域において温度が低下するような金属切削インサートの改良が必要とされている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、遷移領域の温度を低下させる改良された金属切削インサートを提示することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に定義された特徴を有する金属切削インサートによって達成される。
【0009】
本発明者らは、段付き刃の遷移領域における温度の上昇が、遷移領域におけるチップの圧迫によって引き起こされることを認識した。本発明者らは、インサートの上面図に見られる従来の段部に加えて、金属切削インサートの側面図における段付き刃の段部を組み込むことにより、このような温度の上昇が低減され得ることを認識した。
【0010】
本発明による金属切削インサートは、対向する上面及び底面であって、切削ドリルインサートの対称軸が、上面と底面との間に延在する、対向する上面及び底面を備え、周側面が、該上面と該底面との間に延在する。上面が、すくい面を備え、側面が、逃げ面を備え、少なくとも1つの段付き切れ刃が、該少なくとも1つの段付き切れ刃に沿って連続的なチップを切削するように構成されており、該少なくとも1つの段付き切れ刃が、上面のすくい面と側面の隣接する逃げ面との交差部に形成されており、金属切削インサートの上面に面する上面図において、該少なくとも1つの段付き切れ刃が、第1の部分刃と第2の部分刃との間の遷移刃によって形成された段部を備え、金属切削インサートの上面に面する上面図において、該段部が、対称軸に対して半径方向に、第1の距離h1だけ延在し、金属切削インサートの周側面に面する側面図において、該段部が、底面から上面に向かう方向に、第2の距離h2だけ延在し、ここで、0.8・h2≦h1≦1.2・h2であることを特徴とする。上面図に見られる段部は、金属切削インサートの側面図に見られる段部と一致する。
【0011】
一実施形態によれば、第2の距離h2は、0.9・h1≦h2≦1.1・h1である。このようにして、遷移領域の温度上昇が軽減される。
【0012】
一実施形態によれば、第2の距離h2は、0.95・h1≦h2≦1.05・h1である。このようにして、遷移領域の温度上昇がさらに軽減される。
【0013】
一実施形態によれば、第1の距離h1は、第2の距離h2に実質的に等しい。このようにして、遷移領域の温度上昇が好ましい方法で低減される。
【0014】
一実施形態によれば、段付き切れ刃は、第1の部分刃に連結されたコーナ刃を備え、該コーナ刃は、インサートのさらなる段付き切れ刃の第2の部分刃に連結されている。
【0015】
一実施形態によれば、コーナ部刃は、段付き切れ刃の第1の部分刃からさらなる段付き切れ刃の該第2の部分刃まで連続した刃を提供する。このようにして、コーナ刃は、金属切削インサート全体の周りに連続した刃が形成されることを可能にする。
【0016】
一実施形態によれば、遷移刃は、湾曲刃を有し、湾曲刃は、該上面図及び該側面図において同じ形状を有する。このようにして、最小の圧迫力がチップ上に作用し、それによって遷移領域の温度が低下する。
【0017】
一実施形態によれば、インサートは、インサートの上面と底面との間に延在する貫通孔を備え、その貫通孔は、該対称軸に沿って位置合わせされており、対向する上面及び底面を通って延在する。
【0018】
一実施形態によれば、複数の段付き切れ刃が、該対称軸の周りに対称に配置されている。一実施形態によれば、該遷移刃は、該金属切削ドリルインサートの周りで反時計回り方向に該段付き切れ刃に沿って移動するときに、上面図の対称軸に対して正の半径方向に段部を提供する。このようにして、第2の部分刃は、金属切削インサートがドリル工具に取り付けられたとき、半径方向において常に第1及び第2の部分刃の最も外側の刃である。
【0019】
本発明はまた、穿孔シャフト及びマウントシャンクを有する細長いドリル本体を備える、金属切削ドリル工具に関する。金属切削ドリル工具は、穿孔シャフトの端部に取り付けられた、本明細書に記載の実施形態による少なくとも1つのドリルインサートをさらに備える。
【0020】
本発明のさらなる利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0021】
次に、本発明の実施形態を添付の図面に関して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による金属切削インサートの斜視図である。
【
図2】
図1に示す金属切削インサートの上面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示す金属切削インサートの側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による金属切削インサートの斜視図である。
【
図5】
図4に示す金属切削インサートの上面図である。
【
図6】
図4及び
図5に示す金属切削インサートの側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるドリリング工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明による第1の実施形態を示す
図1~
図3を参照する。これらの図では、全体として100で指定されたドリル工具用の金属切削ドリルインサートが開示されており、
図4では、全体として400で指定されている。金属切削ドリルインサート100は、対向する上面101、401及び底面102、402を備え、切削ドリルインサートの対称軸が、上面101、401と底面102、402との間に延在し、周側面103、403が、該上面と該底面との間に延在する。上面101、401は、すくい面104、404を備え、側面103、403は、逃げ面105、405を備える。金属切削ドリルインサートは、少なくとも1つの段付き切れ刃106、406をさらに備え、少なくとも1つの段付き切れ刃106、406は、該少なくとも1つの段付き切れ刃に沿って連続的なチップを切削するように構成されている。少なくとも1つの段付き切れ刃は、上面101、401のすくい面104、404と側面103、403の隣接する逃げ面105、405との交差部に形成されている。金属切削インサートの上面に面する上面図において、該少なくとも1つの段付き切れ刃は、第1の部分刃108、508と第2の部分刃109、509との間の遷移刃107、507によって形成された段部を備える。
【0024】
金属切削ドリルインサートは、金属切削インサート100、400の上面101、401に面する上面図(
図2参照)において、該段部は、対称軸に対して半径方向に、第1の距離h1だけ延在することを特徴とする。金属切削インサート100、400の周側面103,503に面する側面図(
図3を参照)において、該段部は、底面から上面に向かう方向に第2の距離h2だけ延在し、ここで、0.8・h1≦h2≦1.2・h1である。上面図及び側面図の両方に段部を有することにより、チップの圧迫が回避され、したがって温度が大幅に低下する。
【0025】
上面図に見られる段部は、金属切削インサートの側面図に見られる段部と一致する。
【0026】
別の実施形態では、第2の距離h2は、0.9・h1≦h2≦1.1・h1である。
【0027】
さらに別の実施形態では、第2の距離h2は、0.95・h1≦h2≦1.05・h1である。
【0028】
好ましい実施形態では、第1の距離h1は、第2の距離h2に実質的に等しい。これは、理論的には、遷移刃にわたるチップ排出に関連する最適な温度低下のための最適な段部高さである。これにより、連続的なチップの形成及び遷移刃の摩耗の低減が実現することとなる。
【0029】
次に、全体として400で指定された金属切削ドリルインサートの第2の実施形態を示す
図4~
図6を参照する。金属切削ドリルインサートの第2の実施形態は、
図1~
図3を参照して本明細書で上述した第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態は、第1の部分刃508に連結されたコーナ刃(510)を備える段付き切れ刃406を備え、該コーナ刃510は、インサート500のさらなる段付き切れ刃(406’)の第2の部分刃(509’)に連結されている。
【0030】
コーナ刃510は、インサート500の周りに連続した段付き切れ刃が形成されることを可能にする。コーナ部刃は、段付き切れ刃の第1の部分刃からさらなる段付き切れ刃の該第2の部分刃まで連続した刃を提供する。
【0031】
次に、
図5及び
図6を参照する。
図5には、第2の実施形態による金属切削インサートが上面図で開示されており、
図6には、同じインサートが側面図で開示されている。遷移刃507は湾曲刃を有し、湾曲刃は、
図5の該上面図及び
図6の該側面図において同じ形状を有する。
【0032】
金属切削ドリル500インサートは、インサートの上面401と底面402との間に延在する貫通孔511を備え、その貫通孔は、対称軸411に沿って位置合わせされており、対向する上面401及び底面402を通って延在する。
【0033】
図5では、複数の段付き切れ刃406、406’が対称軸の周りに対称に配置されている。
【0034】
さらに、
図5は、該遷移刃507が、該金属切削ドリルインサートの周りで反時計回り方向に該段付き切れ刃406、406’に沿って移動するときに、上面図の対称軸に対して正の半径方向に段部を提供することを開示している。
【0035】
図7には、一実施形態による金属切削ドリル工具が開示されており、全体として700で指定されている。ドリル工具700は、長手方向軸704を中心とする穿孔シャフト702及びマウントシャンク703を有する、細長いドリル本体701を備える。ドリル工具700は、穿孔シャフト702の端部に取り付けられた、先行請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つのドリルインサート100、100’、400、400’をさらに備える。
【0036】
穿孔シャフトはまた、効率的なチップ排出及びチップ制御のために、各インサートに関連するドリルフルート705、705’を提示する。
【0037】
図8には、インサートを有する穿孔シャフトの端部に面する図が開示されており、ドリル工具700は、図のRで示すように、長手方向軸704の周りを反時計回り方向に回転するように構成されている。
【国際調査報告】