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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】スマートカードにおける負荷整合
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20230713BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20230713BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20230713BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G06K19/07 260
G06K19/077 260
G06K19/07 080
G06K19/07 180
H01Q1/50
H04B5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580437
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2021066961
(87)【国際公開番号】W WO2022002691
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/045,615
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502442681
【氏名又は名称】アイデックス バイオメトリクス エーエスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ベンクリー、フレッド・ジー.・ザ・サード
【テーマコード(参考)】
5J046
5K012
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB11
5J046TA03
5K012AA03
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC08
5K012AC10
5K012AE13
(57)【要約】
スマートカードインレイが、誘導アンテナと、容量性ネットワークと、を備える。誘導アンテナは、(i)カード端末とワイヤレスに通信することと、(ii)カード端末に誘導結合することを介して、カード回路に電力供給することと、を行うように構成されている。容量性ネットワークは、誘導アンテナと並列に接続されている。容量性ネットワークは、第2のキャパシタと直列の第1のキャパシタを備える。第2のキャパシタは、カード回路と並列に接続可能である。第1のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、第2のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、比C/Cは、容量性ネットワークによって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、カード回路のインピーダンスに整合させるようなものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカードインレイであって、
(i)カード端末とワイヤレスに通信することと、(ii)前記カード端末に誘導結合することを介して、カード回路に電力供給することと、を行うように構成された誘導アンテナと、
前記誘導アンテナと並列に接続された容量性ネットワーク、前記容量性ネットワークは、第2のキャパシタと直列の第1のキャパシタを備え、前記第2のキャパシタは、カード回路と並列に接続可能である、と、を備え、
ここにおいて、前記第1のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、前記第2のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、比C/Cは、前記容量性ネットワークによって低減されたような前記カード端末のインピーダンスを、前記カード回路のインピーダンスに整合させるようなものである、スマートカードインレイ。
【請求項2】
前記誘導アンテナおよび前記容量性ネットワークは、電力結合回路を形成しており、前記電力結合回路は、前記カード端末の駆動信号共振周波数と一致する共振周波数を有する、請求項1に記載のスマートカードインレイ。
【請求項3】
前記カード端末の駆動信号共振周波数は、非接触型集積回路カード規格ISO/IEC 14443によって規定されている、請求項2に記載のスマートカードインレイ。
【請求項4】
前記第1および第2のキャパシタは、固定キャパシタである、請求項2または請求項3に記載のスマートカードインレイ。
【請求項5】
前記カード回路を更に備え、ここにおいて、前記カード回路は、前記誘導アンテナを介して、前記カード端末とワイヤレスに通信するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のスマートカードインレイ。
【請求項6】
前記カード回路から前記誘導アンテナへ変調された通信信号を送信するように構成された、前記カード回路から前記誘導アンテナへの別個の電気的接続を更に備え、前記別個の電気的接続は、前記カード回路を前記第1のキャパシタと前記誘導アンテナとの間の点に接続しており、それによって、前記変調された通信信号が、前記容量性ネットワークをバイパスして、前記カード回路から前記誘導アンテナへ送られることを可能にしている、請求項5に記載のスマートカードインレイ。
【請求項7】
前記カード回路は、ユーザのバイオメトリックデータを感知するように構成されたバイオメトリックセンサを備える、請求項5または請求項6に記載のスマートカードインレイ。
【請求項8】
前記カード回路は、前記感知されたバイオメトリックデータから前記ユーザのアイデンティティを照合するためのバイオメトリック照合プロセスを実行するように構成されたバイオメトリックプロセッサを更に備える、請求項7に記載のスマートカードインレイ。
【請求項9】
前記誘導アンテナと並列に接続された更なる容量性ネットワークを更に備え、前記更なる容量性ネットワークは、第4のキャパシタと直列の第3のキャパシタを備え、前記第4のキャパシタは、更なるカード回路と並列に接続可能であり、
ここにおいて、前記第3のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、前記第4のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、比C/Cは、前記更なる容量性ネットワークによって低減されたような前記カード端末のインピーダンスを、前記更なるカード回路のインピーダンスに整合させるようなものである、請求項1~8のいずれか一項に記載のスマートカードインレイ。
【請求項10】
前記カード回路の前記インピーダンスは、前記更なるカード回路の前記インピーダンスとは異なり、前記比C/Cは、前記比C/Cとは異なる、請求項9に記載のスマートカードインレイ。
【請求項11】
前記誘導アンテナと、前記容量性ネットワークと、前記更なる容量性ネットワークとの組合せは、前記カード端末の駆動信号共振周波数と一致する共振周波数を有する、請求項9または請求項10に記載のスマートカードインレイ。
【請求項12】
前記第3および第4のキャパシタは、固定キャパシタである、請求項9~11のいずれか一項に記載のスマートカードインレイ。
【請求項13】
前記更なるカード回路を更に備え、ここにおいて、前記更なるカード回路は、ユーザのバイオメトリックデータを感知するように構成されたバイオメトリックセンサを備える、請求項1~6に従属する請求項9~12のいずれか一項に記載のスマートカードインレイ。
【請求項14】
前記更なるカード回路は、前記感知されたバイオメトリックデータから前記ユーザのアイデンティティを照合するためのバイオメトリック照合プロセスを実行するように構成されたバイオメトリックプロセッサを更に備える、請求項13に記載のスマートカードインレイ。
【請求項15】
前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとの間から前記カード回路へ、前記第3のキャパシタと前記第4のキャパシタとの間から前記更なるカード回路へのものとは異なる電流を駆動するように構成された請求項9~14のいずれか一項に記載のスマートカードインレイ。
【請求項16】
前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとの間から前記カード回路へ、前記第3のキャパシタと前記第4のキャパシタとの間から前記更なるカード回路へのものよりも低い電流を駆動するように構成された、請求項15に記載のスマートカードインレイ。
【請求項17】
複数のインレイセグメントを備え、前記誘導アンテナおよび前記容量性ネットワークは、前記複数のインレイセグメントにわたって分散されている、請求項1~16のいずれか一項に記載のスマートカードインレイ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のスマートカードインレイを備えるスマートカード。
【請求項19】
スマートカードであって、
カード回路と、
請求項1~8のいずれか一項、または請求項1~8のいずれか一項に従属するときの請求項17に記載のスマートカードインレイと、
を備えるスマートカード。
【請求項20】
スマートカードであって、
カード回路と、
更なるカード回路と、
請求項9~16のいずれか一項、または請求項9~16のいずれか一項に従属するときの請求項17に記載のスマートカードインレイと、
を備えるスマートカード。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、スマートカード上の電力供給回路に関する。回路は、例えば、バイオメトリック機能を有し得る。
【0002】
スマートカードは、埋め込まれた集積回路チップおよび内部メモリを含むデバイスを指す。内部メモリは、集積回路チップ上に位置し得るか、またはカード内に埋め込まれた別個のチップであり得る。スマートカードは、プラスチックカード、キーフォブ、腕時計、ウェアラブル、電子パスポート、およびUSBベースのトークン、ならびにモバイルフォンにおいて使用される加入者識別モジュール(SIM)を含む、多種多様なフォームファクタで存在する。
【0003】
スマートカードは、接触型カードあり得るか、非接触型カードであり得るか、または接触型および非接触型カードとして動作することが可能であり得る。非接触型カードは、直接の物理的接触なしに、カード端末と通信する。典型的に、非接触型カードは、電波を介してカード端末と通信する。非接触型カードは、カード端末から放出されるRF信号等の電磁信号を受信するためのアンテナを含み得る。同様に、カードからのデータは、カードのアンテナによって、カード端末に戻すように通信され得る。非接触型カードは、RF信号から電力を回収すること(harvesting)によって、電力供給される。
【0004】
図1は、カード端末101から典型的な非接触型スマートカード102に電力を伝送するための回路を例示する。近距離無線通信(NFC)ドライバソース103は、駆動信号を生成し、これは、カード端末101の誘導アンテナ104を、スマートカード102の誘導アンテナ105に誘導結合することを介して、スマートカード102にワイヤレスに送信される。誘導アンテナ105と並列のキャパシタ106は、カード回路107に電力を結合するための電力結合回路として機能する。インダクタンスLおよびキャパシタンスCの値は、電力結合回路の共振周波数が駆動信号のものと一致するように同調されるように、製造時に選ばれる。電力結合回路の共振周波数fは、次によって与えられる:
【0005】
【数1】
【0006】
非接触型スマートカードは、非接触型集積回路カードについての業界標準ISO/IEC 14443に規定された要件を満たすことが望ましい。ISO/IEC 14443規格は、カード端末から送られるRF駆動信号のキャリア周波数が13.56MHzであることを規定している。ISO/IEC 14443規格はまた、非接触型スマートカードが、画定された動作空間(operating volume)内に置かれたとき、正常に機能すべきであることを必要とする。動作空間とは、非接触型スマートカードと、カード端末のいわゆる「ランディング面(landing plane)」との間に画定される3D空間である。ランディング面は、カード端末がカードとワイヤレスに通信することを可能にするために、非接触型カードを近接させる必要がある、カード端末の領域である。典型的に、ロゴが、ランディング面上に位置して、それがランディング面であることをユーザに識別させる。
【0007】
初期の世代のスマートカードは、限られたオンカード機能、典型的にRFID回路のみを有していた。このオンカード回路の所要電力(power requirements)は、比較的低かった。スマートカード技術が発展するにつれて、オンカード回路は、ますます多様で複雑な機能を実装することが求められてきた。例えば、スマートカードのユーザを識別することを目的として、およびユーザのアイデンティティが照合(verified)されていることに基づいて許可されるべき支払い等の別のアクションのために、スマートカードにバイオメトリックセンサを組み込むことが知られている。このような更なる機能をスマートカード上のカード回路に組み込むことは、カード回路による増大された所要電力につながった。
【0008】
カード回路の機能に電力供給するために必要とされる全てのエネルギーが、カード端末から受信される駆動信号から導出されなければならず、この駆動信号は、ISO/IEC 14443規格によって規定される13.56MHzの周波数のままである。より複雑な機能を有するこれらのスマートカードを動作させるのに十分な電力をカード端末から導出するためには、ユーザは、典型的に、スマートカードをカード端末のランディング面により近づけなければならない。典型的に、ユーザは、カード端末のランディング面の2cm以内にスマートカードを持って行き、トランザクションの持続時間の間、その範囲内にスマートカードを維持する必要がある。場合によっては、スマートカードの機能を動作させるために、スマートカードとカード端末のランディング面との間の接触が必要とされる。これは、スマートカードの有用性に影響を及ぼす。
【0009】
カード端末のランディング面からより離れた距離でかざしたときに、非接触型スマートカードが動作することを可能にすることによって、非接触型スマートカードの有用性を向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様によれば、スマートカードインレイであって、(i)カード端末とワイヤレスに通信することと、(ii)カード端末に誘導結合することを介して、カード回路に電力供給することと、を行うように構成された誘導アンテナと、誘導アンテナと並列に接続された容量性ネットワーク、容量性ネットワークは、第2のキャパシタと直列の第1のキャパシタを備え、第2のキャパシタは、カード回路と並列に接続可能である、と、を備え、ここにおいて、第1のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、第2のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、比C/Cは、容量性ネットワークによって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、カード回路のインピーダンスに整合させるようなものである、スマートカードインレイが提供される。
【0011】
誘導アンテナおよび容量性ネットワークは、電力結合回路を形成し得、電力結合回路は、カード端末の駆動信号共振周波数と一致する共振周波数を有する。
【0012】
カード端末の駆動信号共振周波数は、非接触型集積回路カード規格ISO/IEC 14443によって規定され得る。
【0013】
第1および第2のキャパシタは、固定キャパシタであり得る。
【0014】
スマートカードインレイは、カード回路を更に備え得、ここにおいて、カード回路は、誘導アンテナを介して、カード端末とワイヤレスに通信するように構成される。
【0015】
スマートカードインレイは、カード回路から誘導アンテナへ変調された通信信号を送信するように構成された、カード回路から誘導アンテナへの別個の電気的接続を更に備え得、別個の電気的接続は、カード回路を第1のキャパシタと誘導アンテナとの間の点に接続しており、それによって、変調された通信信号が、容量性ネットワークをバイパスして、カード回路から誘導アンテナへ送られることを可能にしている。
【0016】
カード回路は、ユーザのバイオメトリックデータを感知するように構成されたバイオメトリックセンサを備え得る。
【0017】
カード回路は、感知されたバイオメトリックデータからユーザのアイデンティティを照合するためのバイオメトリック照合プロセスを実行するように構成されたバイオメトリックプロセッサを更に備え得る。
【0018】
スマートカードインレイは、誘導アンテナと並列に接続された更なる容量性ネットワークを更に備え得、更なる容量性ネットワークは、第4のキャパシタと直列の第3のキャパシタを備え、第4のキャパシタは、更なるカード回路と並列に接続可能であり、ここにおいて、第3のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、第4のキャパシタは、キャパシタンスCを有し、比C/Cは、更なる容量性ネットワークによって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、更なるカード回路のインピーダンスに整合させるようなものである。
【0019】
カード回路のインピーダンスは、更なるカード回路のインピーダンスとは異なり得、比C/Cは、比C/Cとは異なる。
【0020】
誘導アンテナと、容量性ネットワークと、更なる容量性ネットワークとの組合せは、カード端末の駆動信号共振周波数と一致する共振周波数を有し得る。
【0021】
第3および第4のキャパシタは、固定キャパシタであり得る。
【0022】
カード回路は、誘導アンテナを介して、カード端末とワイヤレスに通信するように構成され得る。
【0023】
更なるカード回路は、ユーザのバイオメトリックデータを感知するように構成されたバイオメトリックセンサを備え得る。
【0024】
更なるカード回路は、感知されたバイオメトリックデータからユーザのアイデンティティを照合するためのバイオメトリック照合プロセスを実行するように構成されたバイオメトリックプロセッサを更に備え得る。
【0025】
スマートカードインレイは、第1のキャパシタと第2のキャパシタとの間からカード回路へ、第3のキャパシタと第4のキャパシタとの間から更なるカード回路へのものとは異なる電流を駆動し得る。
【0026】
スマートカードインレイは、第1のキャパシタと第2のキャパシタとの間からカード回路へ、第3のキャパシタと第4のキャパシタとの間から更なるカード回路へのものよりも低い電流を駆動し得る。
【0027】
スマートカードインレイは、カード回路から誘導アンテナへ変調された通信信号を送信するように構成された、カード回路から誘導アンテナへの別個の電気的接続を更に備え得、別個の電気的接続は、カード回路を第1のキャパシタと誘導アンテナとの間の点に接続しており、それによって、変調された通信信号が、容量性ネットワークをバイパスして、カード回路から誘導アンテナへ送られることを可能にしている。
【0028】
スマートカードインレイは、複数のインレイセグメントを備え得、誘導アンテナおよび容量性ネットワークは、複数のインレイセグメントにわたって分散されている。
【0029】
別の態様によれば、スマートカードインレイを備えるスマートカードが提供される。
【0030】
別の態様によれば、カード回路と、スマートカードインレイと、を備えるスマートカードが提供される。
【0031】
別の態様によれば、カード回路と、更なるカード回路と、スマートカードインレイと、を備えるスマートカードが提供される。
【0032】
次に、本開示は、添付の図面を参照して、例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、カード端末から典型的な非接触型スマートカードに電力を伝送するための回路を例示する。
図2図2は、カード端末から、インピーダンス整合電力結合回路を有するスマートカードに電力を伝送するための回路を例示する。
図3図3は、通信信号を変調するために、カード回路からスマートカードアンテナへの専用の別個の電気的接続を有することによって修正された図2のスマートカードを例示する。
図4図4は、カード端末から、異なるオンカード回路のための2つのインピーダンス整合電力結合回路を有するスマートカードに電力を伝送するための回路を例示する。
図5図5は、通信信号を変調するために、カード回路からスマートカードアンテナへの専用の別個の電気的接続を有することによって修正された図4のスマートカードを例示する。
図6図6は、インレイをサンドイッチ状に挟むプラスチック層を備えるスマートカードを例示する。
図7図7は、予め形成されたカードにおけるキャビティに回路構成要素を適用する方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は、非接触型スマートカードおよび「デュアルインターフェース」スマートカードに関する。デュアルインターフェーススマートカードは、物理的通信インターフェースを介した接触モードと、非接触型通信インターフェースを介した非接触モードとの両方で、カード端末と通信することが可能なものである。以下の説明は、それらが非接触モードで動作しているときのデュアルインターフェースカードに適用される。
【0035】
以下で説明されるように、本明細書で説明されるスマートカードの回路は、背景技術のセクションで説明されたスマートカードと比較して、カード端末のランディング面からより離れた距離でかざしたときに、スマートカードが動作することを可能にすることによって、スマートカードの有用性を向上させることを可能にする。これは、カード端末からスマートカードのカード回路への電力の伝送を改善することによって達成され、それによって、スマートカードをカード端末からより離してかざしたときに、カード回路を動作させるのに十分な電力が利用可能であることを可能にする。カード回路への電力伝送における改善は、電力結合回路によって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、カード回路のインピーダンスに整合させる、スマートカード上の1つまたは複数の電力結合回路を利用することによって達成される。
【0036】
以下の説明は、カード端末と相互作用するスマートカードに言及する。スマートカードは、プラスチックカード、キーフォブ、ドングル、セキュリティトークン(例えば、USBトークン)、電子パスポート、またはモバイルフォンで使用される加入者識別モジュール(SIM)を含む、いくつかのフォームファクタのうちのいずれか1つを有し得る。スマートカードは、モバイルフォンまたはスマートフォン等の通信デバイスに一体化されたデバイス内に実装され得る。スマートカードは、ブレスレット、腕時計、手袋/一対の手袋、ピン(例えば、ブローチ)、またはバッジ等の、ウェアラブルデバイスであり得る。カード端末は、例えば、カードリーダ、ATM、またはポイントオブセール端末であり得る。
【0037】
スマートカードは、従来のスマートカードと同じサイズおよび形状であるカード本体を有し得る。代替として、カード本体は、従来のスマートカードとは異なるサイズおよび/または形状を有し得る。カードは、1つの寸法が、他の寸法の両方よりも大幅に小さい、例えば、他の寸法のいずれの10%よりも小さい、直方体の形状であり得る。カードの厚さは、0.5mm~2.0mmであり得る。カードは、ID-1カードについてISO 7810規格に記載された物理的寸法を満たし得る。
【0038】
非接触モードで動作する非接触型スマートカードまたはデュアルインターフェーススマートカードは、それらのアンテナがカード端末から通信を受信する間に、そのアンテナにおいてRFフィールドから電力を回収する。図1の電力結合回路は、カード端末からのRF通信から回収されるように利用可能であったものよりもはるかに低い所要電力を有しているカード回路(RFID回路等)に電力を伝送するために設計された。このため、カード回路への電力伝送の効率は、問題ではなかった。しかしながら、図1の電力結合回路は、より高い所要電力を有するより複雑なカード回路であっても、使用され続けている。
【0039】
図1を参照すると、誘導アンテナ105のインダクタンスLおよびキャパシタ106のキャパシタンスCは、両方が製造時に固定および設定されており、これにより、図1に示されるように接続されたときのそれらの共振周波数は、ドライバソース103のものと一致する。インダクタンスLの設計自由度は、ほとんどない。インダクタンスLは、誘導アンテナ105に、誘導アンテナ104と共に共振変成器(resonant transformer)を形成させるように、選ばれる。したがって、例えば、カードにおいて、アンテナは、典型的に、カードの外周部(periphery)周りのカードのプラスチック層に埋め込まれた二巻線または三巻線である。式1を参照すると、電力結合回路の共振周波数が固定されており、また、インダクタンスLが一般に固定されているので、キャパシタンスCも固定されることになる。したがって、LおよびCの値は、カード回路107への負荷電流に関係なく一定である。
【0040】
カード端末(すなわち、ドライバソース103および誘導アンテナ104)のインピーダンスは高い。例えば、カード端末の内部抵抗は、数kΩのオーダーであり得る。対照的に、カード回路107のインピーダンスは低い。例えば、カード回路の内部抵抗は、数百Ωであり得る。カード端末とカード回路との間のインピーダンスにおける不一致のために、信号反射が高く、したがって、カード端末からカード回路への電力伝送が不十分になる。カード回路の所要電力が低かった間は、この不十分な電力伝送は、問題ではなかった。しかしながら、カード回路の所要電力は、より多くの機能がカード回路に一体化されるにつれてより高くなる。
【0041】
図2は、カード端末201からスマートカード202に電力を伝送するための回路を例示し、スマートカード202は、電力結合回路によって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、カード回路207のインピーダンスに整合させる電力結合回路を有する。カード端末201は、図1を参照して説明されたものと同じである。具体的には、NFCドライバソース203は、駆動信号を生成し、これは、カード端末201の誘導アンテナ204をスマートカード202の誘導アンテナ205に誘導結合することを介して、スマートカード202にワイヤレスに送信される。スマートカード202のアンテナ205は、導電性材料の1つ、2つ、3つまたはそれ以上のコイルを備え得る。アンテナは、ワイヤアンテナであり得る。代替として、アンテナは、プリントアンテナであり得る。
【0042】
スマートカードは、誘導アンテナ205と並列に接続された容量性ネットワーク206を備える。容量性ネットワーク206は、直列に接続された第1のキャパシタ208および第2のキャパシタ209を備える。信号線210が、第1のキャパシタ208と第2のキャパシタ209との間の点211において、容量性ネットワーク206に接続されている。この信号線210は、カード回路207に接続されている。信号線212が、第2のキャパシタ209と誘導アンテナ205との間の点に接続されている。この信号線212は、カード回路207に接続されている。したがって、カード回路207は、第2のキャパシタ209と並列に接続されている。
【0043】
誘導アンテナ205と並列のキャパシタ208および209は、カード回路207に電力を結合するための電力結合回路として機能する。インダクタは、インダクタンスLを有する。第1のキャパシタは、キャパシタンスCを有する。第2のキャパシタは、キャパシタンスCを有する。第1のキャパシタと第2のキャパシタの両方が、固定キャパシタであり得る。それらのキャパシタンス値は、製造時に選択される。インダクタンスL、キャパシタンスCおよびキャパシタンスCの値は、電力結合回路の共振周波数が駆動信号のものと一致するように同調されるように、製造時に選ばれる。駆動信号の中心周波数は、規格ISO/IEC 14443によって規定されている。これは、現在13.56MHzである。電力結合回路の共振周波数fは、次によって与えられる:
【0044】
【数2】
【0045】
上記で説明されたように、インダクタンスLの設計自由度は、ほとんどない。しかしながら、共振周波数fが、カード端末201からの駆動信号の中心周波数に同調されることを条件として、CおよびCの値には、設計自由度がある。
【0046】
キャパシタ208および209は、タップ出力210上のカード回路207への負荷電流を容量的に分割するように機能する。CおよびCの値は、比C/Cが、容量性ネットワークによって調節された(moderated)カード端末のインピーダンスを、カード回路のインピーダンスに整合させるように選ばれる。換言すれば、容量性ネットワークは、インピーダンス分割器として機能する。具体的には:
【0047】
【数3】
【0048】
または、次のように再整理される:
【0049】
【数4】
【0050】
ここで、Zterminalは、カード端末のインピーダンスであり、Zcard circuitryは、カード回路207のインピーダンスである。
【0051】
誘導アンテナ204における巻数Nに対する誘導アンテナ205における巻数Nも、インピーダンス整合に影響を及ぼす。具体的には:
【0052】
【数5】
【0053】
ここで、Zterminalは、カード端末のインピーダンスであり、Zcardは、カード回路207と、誘導アンテナ205と、容量性ネットワーク206と、を含む全体としてのカード202のインピーダンスである。式3および式4は、2つのインダクタ204および205が同じ巻数を有するときに適用される。換言すれば、N=Nである。このシナリオでは、カード端末のインダクタンスが、カードのインダクタンスに整合され、これは、カード端末から全体としてのスマートカードへの電力伝送の効率を最大化する。
【0054】
カード回路207は、誘導アンテナ205を介して、カード端末201とワイヤレスに通信する。カード回路207は、ISO/IEC 14443規格に規定されているように、キャリア信号の振幅変調を介してデータを伝達し得る。具体的には、カード回路は、負荷変調によって、カード端末に誘導結合された信号の振幅を変調し得る。カード回路は、図2に示される回路の内外に負荷をスイッチングし(switch a load in and out)得る。これは、カード端末に結合された信号の電圧を、崩壊および拡張させる。この電圧の変調は、カード端末によって検出され、ISO/IEC 14443規格にしたがって、データとして解釈される。典型的に、信号の5~10%がこのようにして変調される。
【0055】
図2の回路では、スマートカードのインダクタ205によって、カード端末のインダクタ204に誘導結合される、カード回路207における負荷変調の割合は、
【0056】
【数6】
【0057】
のファクタ(factor)によって、容量性ネットワークによって低減される。したがって、誘導アンテナ205においてXの電流変調を生成するためには、カード回路207は、
【0058】
【数7】
【0059】
の電流変調を生成する。比C/Cの一例が、4である。この例では、カード回路は、1.25のファクタによって、変調を乗算する必要がある。これは、追加の電力を必要とする。
【0060】
図3は、図2のスマートカードの回路への修正を例示する。図3は、カード回路207から誘導アンテナ205への専用の別個の電気的接続301が存在することを除いて、図2と同じである。この専用の別個の電気的接続301は、点302において、カード回路に合流し(meet)、第1のキャパシタ208と誘導アンテナ205との間の点303において、電力結合回路に合流する。例えば、専用の別個の電気的接続301は、容量性ネットワーク206への/からの信号線210および212が接続されている、カード回路207上の(1つまたは複数の)電力ピンと比較して、カード回路207上の別個のピン302に接続され得る。カード回路は、上記で説明されたような負荷変調を介して、カード端末とワイヤレスに通信する。しかしながら、図3の例では、変調された電流は、信号線301を介して、誘導アンテナ205に送信される。したがって、信号線301は、カード回路207によって変調される浮遊電流源として機能する。これは、容量性ネットワークをバイパスし、したがって、容量性ネットワークの容量分割をバイパスする。したがって(スマートカード上のわずかな信号損失を無視すると)、誘導アンテナ205においてXの電流変調を生成するために、カード回路207は、Xの電流変調を生成する。したがって、専用の別個の電気的接続301は、カード回路207が、図2に示される回路よりも少ない電力を使用して、信号変調を介してカード端末201と通信することを可能にする。
【0061】
図2および図3を参照して説明されたスマートカードのカード回路207は、ISO/IEC 14443規格に規定されているように、カード端末201とデータ通信およびデータ転送するという、カードの一次機能(the primary function)を実行するための回路を備える。通信回路は、プロセッサと、メモリと、を備える。メモリは、一次機能の論理機能(logic functions)を実行するために、プロセッサによって実行可能なコードを非一時的に記憶する。この一次機能の例となる実装形態は、金融取引を実行すること、ある環境の領域へのカードユーザの物理的アクセス(例えば、建物へのアクセス)を提供すること、ユーザを識別もしくは認証すること、または個人ユーザ情報(例えば、医療情報および記録)を取り出すことである。カードの一次機能を実行するためのこの通信回路は、埋め込みチップ、例えばICチップであり得る。それは、単一の集積回路として実装され得る。それは、いわゆるセキュアエレメント(Secure Element)であり得る。
【0062】
カード回路207は、追加として、二次機能を実行するための回路を含み得る。例えば、カード回路207は、バイオメトリック機能を有する回路を含み得る。バイオメトリック機能は、好都合には、単一の集積回路上に実装され得る。好適には、バイオメトリック回路は、プロセッサと、メモリと、を有するバイオメトリックコントローラを備える。メモリは、バイオメトリック回路の論理機能を実行するために、プロセッサによって実行可能なコードを非一時的に記憶する領域を有する。メモリはまた、バイオメトリック検証データ(biometric validation data)を記憶する領域を有し得る。
【0063】
バイオメトリック回路は、ユーザのバイオメトリックデータを感知するためのバイオメトリックセンサを備える。バイオメトリックセンサの性質は、使用されるべきバイオメトリックデータのタイプに依存することになる。いくつかの例は、指紋をキャプチャするための指紋センサ、顔画像、網膜画像、もしくは虹彩画像をキャプチャするためのカメラ、静脈パターンをキャプチャするための静脈パターンセンサ、音声パターンをキャプチャするためのマイクロフォン、または動きデータをキャプチャするための加速度計である。バイオメトリック回路は、複数のタイプのバイオメトリックデータをキャプチャするために、または同じタイプのバイオメトリックデータの複数のインスタンスをキャプチャするために、すなわち、例えば、カードの両側で同時に指紋をキャプチャするために、複数のセンサを含み得る。
【0064】
バイオメトリック検証データは、カードの許可されたユーザ(authorised user)についての参照バイオメトリックデータを表す。代替として、このようなバイオメトリック検証データは、通信回路に記憶され得る。バイオメトリックセンサによってキャプチャされたバイオメトリックデータは、バイオメトリック認識または認証プロセスにおいて使用される。このようなプロセスでは、バイオメトリックデータは、例えば、次のプロセス、すなわち、指紋認識、虹彩認識、静脈認識、網膜認識、音声認識、行動認識、顔認識等のうちの1つによって、それが許可されたユーザを表すかどうかを評価するために、検証データと比較される。この比較は、バイオメトリック回路において、例えば、プロセッサによって行われ得る。代替または追加として、この比較は、通信回路におけるプロセッサによって行われ得る。
【0065】
バイオメトリック回路は、通信回路から(論理的および/または物理的に)分離され得る。例えば、バイオメトリック回路および通信回路は、それぞれがカード内に埋め込まれた個別の構成要素(別個のICチップ等)であり得る。
【0066】
カード回路は、異なる二次機能を有し得る。例えば、カード回路は、ディスプレイ機能、キーパッド機能、オーディオ機能、および、例えばGPSチップ等を使用するロケーション機能のうちの1つまたは複数を有する回路を含み得る。
【0067】
一次機能と二次機能は、相互作用し得る。通信回路およびバイオメトリック回路を例にとると、カード端末へのいくつかの通信は、ユーザのアイデンティティが、バイオメトリックセンサによって感知されたバイオメトリックデータを介して照合されるまで、保留され得る。バイオメトリック照合プロセスの一部または全部が、バイオメトリック回路から受信されたバイオメトリックデータを使用して、通信回路において行われ得る。
【0068】
カード回路207の全てが、誘導アンテナ204、205の誘導結合を介して、カード端末201によって電力供給される。
【0069】
カード回路207が、一次機能を実装するための第1の構成部品(componentry)と、二次機能を実装するための第2の構成部品と、を有するとき、第1および第2の構成部品の所要電力は、著しく異なり得る。第2の構成部品は、第1の構成部品よりも著しく多くの電力を必要とし得るか、逆もまた同様である。例えば、バイオメトリックセンサは、動作するために通信回路よりも著しく多くの電力を必要とする。第1および第2の構成部品の時間的な所要電力(temporal power requirements)は、異なり得る。例えば、所与の時間において、第1および第2の構成要素は、両方が動作し得るか、または一方が低電力モードでありながら、他方が正常に動作し得る。
【0070】
図4は、例となるスマートカードを例示し、これは、(i)ISO/IEC 14443規格に規定されているように、カード端末201とデータ通信およびデータ転送するという、カードの一次機能を実行するためのカード回路207と、(ii)カードの二次機能を実行するための更なるカード回路401と、を有する。この二次機能は、例えば、上に列挙されたもののうちの1つであり得る。例えば、二次機能は、バイオメトリック照合のものであり得、更なるカード回路は、バイオメトリックセンサと、プロセッサおよびメモリを備えたバイオメトリックコントローラと、を備える。
【0071】
図4は、カード端末201から、スマートカード202のカード回路207に電力を伝送するための回路を例示し、スマートカード202は、電力結合回路によって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、カード回路207のインピーダンスに整合させる電力結合回路を有する。
【0072】
図4はまた、カード端末201から更なるカード回路401に電力を伝送するための回路を例示し、これは、更なる電力結合回路によって低減されたようなカード端末のインピーダンスを、更なるカード回路のインピーダンスに整合させる更なる電力結合回路を有する。したがって、スマートカードは、2つのインピーダンス整合電力結合回路を有し、一方は、カード回路207のためのものであり、他方は、更なるカード回路401のためのものである。
【0073】
カード端末201は、図2を参照して説明されたものと同じである。誘導アンテナ205、容量性ネットワーク206、およびカード回路207は、図2を参照して上記で説明された通りである。
【0074】
更なるカード回路401は、更なる容量性ネットワーク402を介して、誘導アンテナ205に接続されている。更なる容量性ネットワーク402は、誘導アンテナ205と並列に接続されている。更なる容量性ネットワーク402は、直列に接続された第3のキャパシタ403および第4のキャパシタ404を備える。信号線405が、第3のキャパシタ403と第4のキャパシタ404との間の点406において、更なる容量性ネットワーク402に接続されている。この信号線405は、更なるカード回路401に接続されている。信号線407が、第4のキャパシタ404と誘導アンテナ205との間の点408に接続されている。この信号線407は、更なるカード回路401に接続されている。したがって、更なるカード回路401は、第4のキャパシタ404と並列に接続されている。
【0075】
誘導アンテナ205と並列のキャパシタ403および404は、更なるカード回路401に電力を結合するための更なる電力結合回路として機能する。第3のキャパシタ403は、キャパシタンスCを有する。第4のキャパシタ404は、キャパシタンスCを有する。第3のキャパシタと第4のキャパシタの両方が、固定キャパシタであり得る。それらのキャパシタンス値は、製造時に選択される。インダクタンスLならびにキャパシタンスC、C、CおよびCの値は、誘導アンテナ205と、容量性ネットワーク206と、更なる容量性ネットワーク402との組合せが、駆動信号のものと一致するように同調された共振周波数を有するように、製造時に選ばれる。駆動信号の中心周波数は、規格ISO/IEC 14443によって規定されている。これは、現在13.56MHzである。誘導アンテナと、容量性ネットワークと、更なる容量性ネットワークとの組合せの共振周波数fは、次によって与えられる:
【0076】
【数8】
【0077】
キャパシタ403および404は、タップ出力405上の更なるカード回路401への負荷電流を容量的に分割するように機能する。CおよびCの値は、比C/Cが、更なる容量性ネットワークによって調節されたカード端末のインピーダンスを、更なるカード回路のインピーダンスに整合させるように選ばれる。換言すれば、更なる容量性ネットワークは、インピーダンス分割器として機能する。具体的には:
【0078】
【数9】
【0079】
ここで、Zterminalは、カード端末のインピーダンスであり、Zfurther card circuitryは、更なるカード回路401のインピーダンスである。
【0080】
カード回路207のインピーダンスと更なるカード回路401のインピーダンスとの両方が、カード端末のインピーダンスより小さい。しかしながら、カード回路207のインピーダンスは、更なるカード回路401のインピーダンスとは異なり得る。この場合、比C/Cは、比C/Cとは異なる。これは、カード端末のインピーダンスを、カード回路207のインピーダンスと整合させるように、容量性ネットワーク206によって低減させ、それとは別に、更なるカード回路401のインピーダンスと整合させるように、更なる容量性ネットワーク402によって低減させることを可能にする。
【0081】
カード回路207および更なるカード回路401の動作電流要件は、著しく異なり得る。したがって、点211において容量性ネットワーク206からカード回路207にタップオフされる電流(図4でILOAD+IMODULATIONとして示される)は、点406において更なる容量性ネットワーク402から更なるカード回路401にタップオフされる電流(図4でILOAD′として示される)とは、著しく異なり得る。
【0082】
例えば、更なるカード回路401は、カード回路207よりも高い動作電流要件を有し得る。これは、カード回路207がカード端末201とワイヤレスに通信するための通信回路であり、更なるカード回路が(上記で説明されたように)ユーザのアイデンティティを照合するためのバイオメトリック回路である例に当てはまる。バイオメトリック構成要素は、一般に、通信回路よりも多くの電力を消費する。例えば、異なる電流要件に対応するために、比C/Cは、2:1であり得、一方、比C/Cは、4:1であり得る。したがって、回路および更なる回路への電力の結合を分離することによって、別個の電流経路がそれぞれに設けられる。これは、バイオメトリック回路に印加される電流ILOAD′よりも低い電流ILOAD+IMODULATIONが、通信回路に印加されることを可能にする。したがって、電圧VMODULATIONは、ISO/IEC 14443規格に記載されているように通信回路に印加される。
【0083】
更なるカード回路401は、カード回路207よりも低い動作電流要件を有し得る。カード端末との通信に加えてバイオメトリック照合を実行するスマートカードを例にとると、カード回路207は、(i)ISO/IEC 14443規格に規定されているように、カード端末201とデータ通信およびデータ転送するという、カードの一次機能を実行するための回路と、(ii)電力管理回路と、(iii)バイオメトリック照合を実行するための、プロセッサおよびメモリを有するバイオメトリックコントローラと、を有する集積構成要素であり得る。この例では、更なるカード回路は、感知素子と、ASICと、を有するバイオメトリックセンサのみを備える。この例では、更なるカード回路は、カード回路よりも低い動作電流要件を有し得る。
【0084】
図4のカード回路207は、図2に関して上記で説明されたように、誘導アンテナ205を介してカード端末201とワイヤレスに通信する。
【0085】
図5は、図4のスマートカードの回路への修正を例示する。この修正は、図3を参照して説明されたものと同じである。図5は、カード回路207から誘導アンテナ205への専用の別個の電気的接続301が存在することを除いて、図4と同じである。この専用の別個の電気的接続301は、図3を参照して説明した通りである。したがって、専用の別個の電気的接続301は、カード回路207が、図4に示される回路よりも少ない電力を使用して、信号変調を介してカード端末201と通信することを可能にする。
【0086】
図2および図3は、単一のカード回路をインピーダンス整合させるための単一の電力結合回路を例示する。図4および図5は、2つの電力結合回路を例示し、一方は、カード回路をインピーダンス整合させるためのものであり、他方は、更なるカード回路をインピーダンス整合させるためのものである。当業者であれば、同じ原理が、3つ以上の別個のカード回路をインピーダンス整合させることに適用され、更なる容量性ネットワークが、各追加のカード回路について組み込まれていることを理解されよう。
【0087】
スマートカード上に組み込まれ得る多くの異なるタイプのカード回路が存在する。同じタイプのカード回路、例えば、通信回路を提供するためのセキュアエレメントでさえも、例えば、それらのメモリおよび処理能力の違いにより、それらの所要電力の点で異なる。したがって、キャパシタンス値C、C(およびオプションで、C、C)は、当該カード回路に固有である。
【0088】
本明細書で説明される各スマートカードは、層状構造を有し得る。図6に示されるように、この層状構造は、カード材料(例えば、プラスチック)の1つまたは複数の下層601と、カード材料(例えば、プラスチック)の1つまたは複数の上層602と、を備え得る。カード材料の上層および下層は、1つまたは複数のインレイ603をサンドイッチ状に挟む。複数のインレイ603が存在する場合、それらのインレイは、互いに電気的に接続されている。本明細書で説明される回路構成要素604は、(1つまたは複数の)インレイおよび/またはカード材料層の間で分散される。
【0089】
(1つまたは複数の)インレイは、従来のスマートカード以下のサイズおよび形状を有する。例えば、(1つまたは複数の)インレイは、ID-1カードについてISO 7810規格に記載された物理的寸法よりも小さいサイズおよび形状を有する。例えば、(1つまたは複数の)インレイは、0.2~0.3mmの厚さを有し得る。(1つまたは複数の)インレイの基部は、PVC、PC、PET-TまたはTeslin(登録商標)等の可撓性プラスチックで構成され得る。図2の例を参照すると、以下の回路構成要素、すなわち、誘導アンテナ205と、容量性ネットワーク206と、信号線210および212とが、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられている。図3を参照すると、以下の回路構成要素、すなわち、誘導アンテナ205と、容量性ネットワーク206と、信号線210、212および301とが、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられている。図4を参照すると、以下の回路構成要素、すなわち、誘導アンテナ205と、容量性ネットワーク206と、更なる容量性ネットワーク402と、信号線210、212、405および407とが、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられている。図5を参照すると、以下の回路構成要素、すなわち、誘導アンテナ205と、容量性ネットワーク206と、更なる容量性ネットワーク402と、信号線210、212、405、407および301とが、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられている。
【0090】
これらの回路構成要素は、プラスチック層601、602の間に(1つまたは複数の)インレイをサンドイッチ状に挟む前に、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられる。(1つまたは複数の)インレイがプラスチック層601、602の間に配置されると、次いで、ホットラミネーションプロセスが、プラスチック層601、602の間に(1つまたは複数の)インレイを融着させる(fuse)ために使用され得る。ホットラミネーションは、層を互いに結合させるために、熱および圧力を使用する。
【0091】
カード回路207もまた、プラスチック層601、602の間に(1つまたは複数の)インレイをサンドイッチ状に挟む前に、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられ得る。更なるカード回路401もまた、プラスチック層601、602の間に(1つまたは複数の)インレイをサンドイッチ状に挟む前に、(1つまたは複数の)インレイ上に取り付けられ得る。この場合、カード回路207および更なるカード回路401(存在する場合)は、他の回路構成要素とともに、ホットラミネーションプロセス中に存在している。これは、熱および/または圧力により損傷を受けることがないカード回路207および更なるカード回路401(存在する場合)に適した方法である。
【0092】
代替として、カード回路207および更なるカード回路401のうちの1つまたは複数は、ホットラミネーションプロセスより前に、(1つまたは複数の)インレイに取り付けられていない場合がある。代わりに、(1つまたは複数の)インレイは、上記で説明された回路構成要素のみを備える。カード回路207および/または更なるカード回路401のための接点が、カード回路207および/または更なるカード回路401へのその後の接続のために、適切な点において(1つまたは複数の)インレイに追加される。(1つまたは複数の)インレイは、プラスチック層601、602の間にサンドイッチ状に挟まれ、ホットラミネーションプロセスが、層を互いに結合させるために使用される。この時点では、カード回路207および/または更なるカード回路401は、構造の一部ではない。ホットラミネーションプロセスに続いて、1つまたは複数のキャビティ701、702が、カード703の上面に作られ、これらは、(1つまたは複数の)インレイ上の接点704まで下方に延在する。これらキャビティは、例えば、ミリングまたはエッチングによって形成され得る。次いで、カード回路207および/または更なるカード回路401は、(図7の矢印によって例示されるように)そのキャビティ内に配置され、例えば、導電性接着剤、ワイヤボンド、銅パッド等を使用して、(1つまたは複数の)インレイ上の接点に電気的に接続される。これにより、(1つまたは複数の)インレイ上の電気回路が完成する。次いで、カード回路207および/または更なるカード回路401は、例えば、接着剤を使用して、および/または、カード回路207および/または更なるカード回路401の上部と、カード703の表面との間に封止剤またはカード材料の層を適用することによって、カード内へと固着され得る。これは、ホットラミネーション中に加えられる熱および/または圧力により損傷を受けるカード回路207および/または更なるカード回路401に適した方法である。
【0093】
更なる代替例では、カード回路207および/または更なるカード回路401のいくつかの構成要素部品は、ホットラミネーションプロセスより前に、(1つまたは複数の)インレイに取り付けられ、他の構成要素部品は、ホットラミネーションの後に追加され得る。例えば、ホットラミネーション中に加えられる熱および圧力に耐性があるそれらの構成要素は、ホットラミネーションより前に、(1つまたは複数の)インレイに取り付けられ得、一方、ホットラミネーション中に加えられる熱および/または圧力により損傷を受け得るそれらの構成要素は、上記で説明されたキャビティ方法を使用して、ホットラミネーションプロセスの後にカードに追加され得る。カード回路がバイオメトリック機能を有する、本明細書で説明された例では、バイオメトリックコントローラ(これは、ホットラミネーションの熱および圧力に耐性がある)は、ホットラミネーションより前に、(1つまたは複数の)インレイに取り付けられ得、一方、バイオメトリックセンサ(これは、ホットラミネーションの熱および圧力に弱い(sensitive))は、後にカードに追加され得る。バイオメトリックセンサは、上記で説明されたように、カード内に形成されたキャビティ内に追加される。
【0094】
ホットラミネーションが上記で説明されたが、プラスチック層と(1つまたは複数の)インレイとを互いに融着させる他の方法も、使用され得る。例えば、コールドラミネーションプロセスが使用され得る。
【0095】
本明細書で説明されるスマートカードは、スマートカード上に容量性ネットワークを組み込むことによって、カード端末からスマートカード回路への電力伝送の効率を向上させる。これらの容量性ネットワークのキャパシタは、ISO寸法要件を満たす能力に影響を及ぼすことなく、かつ従来のスマートカード製造プロセスを中断する必要なく、スマートカード内の可撓性インレイに追加され得る。カード回路に対する変更は必要ない。スマートカード内の誘導アンテナに対する変更は必要ない。スマートカード端末に対する変更は必要ない。カード端末に対する変更は必要ない。
【0096】
本明細書で説明されるように、カード端末のインピーダンスをカード回路のインピーダンスに整合させることによって、信号反射が大幅に低減され、したがって、カード回路への電力伝送がはるかにより効率的になる。最大で50%の効率の向上が達成された。これは、スマートカードをカード端末のランディング面からより離してかざしたとき、スマートカードが、カード回路を動作させるのに十分な電力をカード端末から導出することを可能にする。以前は十分に電力供給されるためには、ランディング面から2cmのところでかざさなければならなかったスマートカードの場合、電力伝送効率における50%の向上は、それがランディング面から4cmのところでかざされ、動作するために十分に電力供給され得ることを意味する。したがって、本明細書で説明された回路は、非接触モードで動作する非接触型スマートカードおよびデュアルインターフェーススマートカードの有用性を向上させる。
【0097】
上述した例では、電力という用語は、エネルギー利用可能性のあらゆる関連する特徴を指すと理解される。例としては、利用可能なエネルギー(available energy)、電圧、電流および電力、またはこれらの任意の組合せが含まれる。
【0098】
本出願人は、本明細書で説明された各個々の特徴と、2つ以上のそのような特徴の任意の組合せとが、本明細書で開示された任意の問題を解決するのかどうかとは無関係に、かつ特許請求の範囲を限定することなく、そのような特徴または組合せが、当業者の通例の一般的知識に照らして全体として本明細書に基づいて実施されることが可能な程度まで、本明細書によって、分離して、そのような特徴または組合せを開示している出願人は、本発明の態様が、任意のそのような個々の特徴または特徴の組合せで構成され得ることを示す。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】