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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】眼病態の処置のためのDNA構造
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20230713BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230713BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
C12N15/62 Z
A61K31/711
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/10
A61P9/00
A61P43/00 105
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580806
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2021068085
(87)【国際公開番号】W WO2022003063
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2006898
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521463311
【氏名又は名称】アイヴェンシス
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ボルデ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】オルハン,エリゼ
(72)【発明者】
【氏名】ビゴー,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】バゲージ,ロナルド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZB211
4C086AA01
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は主に、眼病態の処置に使用するための、及び眼病態を患っている患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入のための、DNA構造に関し;それは特に、第一の治療用タンパク質をコードする第一の配列と、第一の治療用タンパク質とは異なる、第二の治療用タンパク質をコードしている第二の配列とを含むことを特徴とし、該DNA構造は、毛様体筋への注射、それに続く毛様体筋細胞への電気的導入によって患者に投与される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼病態の処置におけるその使用のためのDNA構築物であって、該DNA構築物は、該眼病態を有する患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的とし;
該DNA構築物は、それが
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球においてDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)以下をコードしている第一のヌクレオチド配列
-第一の治療用タンパク質、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)、
(d)患者の眼球においてこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター、
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列、
(f)以下をコードしている第二のヌクレオチド配列
-第一の治療用タンパク質とは異なる、第二の治療用タンパク質、及び
-この第二の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
(該シグナルペプチドは、第二の治療用タンパク質のN末端において、前記の第二の治療用タンパク質の配列と連続している)、
(g)患者の眼球におけるこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター、及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とし;
該DNA構築物は、毛様体筋への注射、それに続く毛様体筋細胞への電気的導入によって患者に投与される、該DNA構築物。
【請求項2】
第一の治療用タンパク質が、抗VEGF型タンパク質、特にS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブからなる群より選択された抗VEGF型タンパク質、特に配列番号3のペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトであることを特徴とする、請求項1に記載のDNA構築物。
【請求項3】
第一の治療用タンパク質が、配列番号1の配列に対して少なくとも75%の同一率を有するヌクレオチド配列によってコードされ、より特定すると配列番号2のヌクレオチド配列によってコードされている、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項4】
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質は、より特定するとアフリベルセプトである)、及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードしている、請求項1~3のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項5】
第二の治療用タンパク質が、配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとデコリンである、請求項1~4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項6】
第二の治療用タンパク質が、配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列によってコードされ、特に、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12のヌクレオチド配列からなる、特に配列番号7の配列及び配列番号11の配列からなる群より選択された配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項7】
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)、及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードし;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである)、及び
-配列番号13のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードする、請求項1~6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項8】
複製起点が、細菌の複製起点であり、特に大腸菌(Escherichia coli)の天然プラスミドR6Kに由来する複製起点であり、特に、大腸菌の天然プラスミドR6kのR6Kガンマの複製起点、特に配列番号31の配列である、請求項1~7のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項9】
それが環状形であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項10】
前記構築物が裸のDNAであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項11】
眼病態が、網膜変性症、特に滲出型又は萎縮型加齢黄斑変性(ARMD);糖尿病性網膜症(DR);網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);近視性脈絡膜新生血管(CNV);ぶどう膜炎、特に非感染性ぶどう膜炎;網膜色素変性症及び緑内障からなる群より選択された網膜変性症であることを特徴とし、より特定すると、網膜変性症は、加齢黄斑変性(ARMD)、特に(滲出型)新生血管型のARMD;糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視力の低下;網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);及び近視性脈絡膜新生血管(CNV)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項12】
眼病態の処置のための、患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的としたDNA構築物であって、それが
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球におけるDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)以下をコードしている第一のヌクレオチド配列
-第一の治療用タンパク質(前記の第一の治療用タンパク質は、配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド、特に配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)、
(d)患者の眼球におけるこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター、
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列、cc
(f)以下をコードしている、第二のヌクレオチド配列
-第二の治療用タンパク質(前記の第二の治療用タンパク質は、配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとデコリンである)、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド、特に配列番号13のペプチド配列のシグナルペプチド
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)
をコードしている、第二のヌクレオチド配列、
(g)患者の眼球においてこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター、及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とする、DNA構築物。
【請求項13】
c)第一のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードしているヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有し、特に配列番号2の配列である配列、及び
-シグナルペプチドをコードしている配列番号5のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-デコリンをコードしているヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12の配列からなる群より選択され、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードしている配列番号14のヌクレオチド配列
を含む、請求項12に記載のDNA構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ウイルス的遺伝子療法による眼病態の処置における、新規DNA構築物及びその適用に関する。本発明の方法は、より特定すると、最大数か月間持続し得る期間中、2つの治療用タンパク質の標的化された眼内産生を可能とする該DNA構築物に関する。本発明のDNA構築物及びその使用は、より特定すると、関心対象の治療用タンパク質の長期間持続する眼内産生のための、DNA構築物の毛様体筋への注射、それに続く電気的導入を用いた、網膜の病態の処置に適している。
【0002】
先行技術
代謝性疾患及び炎症性疾患又は加齢に関連した失明は、かなり漸増し、公衆衛生の観点から欧州及び世界中においてますます重大な社会問題を課している。失明の主な原因は、加齢黄斑変性(ARMD)、糖尿病性網膜症(DR)、ぶどう膜炎、緑内障、網膜色素変性症、眼損傷後の出血、及び網膜剥離を含む、網膜の病態に関連する。失明に至る加齢黄斑変性(ARMD)は、8.7%という次元の有病率を有し、50歳以上の人口のほぼ26%に発症する。加齢黄斑変性は、人口の高齢化により、公衆衛生及び社会福祉の大きな問題となりつつある。糖尿病の発症率の持続的な大幅な増加は、糖尿病性網膜症(DR)の主因であり、これが、今度は、公衆衛生及び科学研究の優先事項となりつつある。統計は、2型糖尿病が、現在から2030年までに、人口の4.5%超に発症し、そのほぼ30%が、糖尿病性網膜症を患うであろうことを示す。最終的には、ぶどう膜炎は、一群の炎症性眼疾患を代表し、その有病率は1/1000であり、発症率は0.5/1000であると推定されている。ぶどう膜炎は、失明の症例の10%の原因であり、それ故、上記の疾患よりは稀であるが、若年労働年齢患者において大きな社会的及び経済的影響を及ぼす。緑内障は、世界中の不可逆的失明の第二の原因である。世界中の緑内障を有する人数は、2020年の7600万人から2040年には1億1100万人まで増えると予測されている。緑内障は、網膜神経節細胞変性及び視野欠損によって特徴付けられる、進行性の視神経症を誘発する、異常な眼内圧によって特徴付けられる。眼内圧は現在、唯一のリスク因子であり、そのための処置は存在する。しかしながら、緑内障による傷害は、眼内圧の低下にも関わらず、患者のほぼ50%に存続する。網膜色素変性症は、網膜の周辺部で、次いで黄斑にまで進行する、光受容体の進行性消失によって特徴付けられる、網膜の臨床的及び遺伝的に異質な群の遺伝性障害を代表する。視覚障害は一般的に、夜盲症及び進行性視野欠損によって現れる。その有病率は、1/3000から1/5000である。網膜色素変性症の原因である50個を超える遺伝子が、現在までに同定されている。
【0003】
これらの特定の病態の処置のために、眼内又はさらには硝子体内への治療剤の注射が開発された。2006年には、最初の抗VEGF型(VEGF:血管内皮増殖因子)治療用タンパク質が、加齢黄斑変性における脈絡膜新生血管の処置のために、眼内経路によって投与された。本発明者らは特に、抗VEGF型タンパク質の一例として、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)を言及し得、これは加齢黄斑変性及び糖尿病性黄斑浮腫における脈絡膜新生血管の処置用に販売許可が得られている。治療用タンパク質、特に組換えタンパク質の眼内注射はそれ以来、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、及び静脈閉塞における黄斑浮腫の処置に一般的となっている。
【0004】
眼病態に対する持続的な効果を確実にするために、上記の抗VEGF抗体は、1か月に1回、又はせいぜい2か月に1回、患者に応じて投与される。それ故、処置が完全に効果的であるように、抗VEGF抗体の投与頻度を決定するために、各患者のモニタリングが必要である。このモニタリングにより、患者、介護者、及び看護スタッフにはかなりのストレスが生じ、その結果、処置は、長期的に最適以下及び無効となることが多い(Ciulla 2020, Ophthalmology Retina 2020;4: 19-30)。さらに、この処置法は、患者の眼球内の治療用タンパク質のレベルの変化を誘発し、すなわち、注射時においては高い濃度(ピーク)、及び次第に減少し次回の注射までにゼロに向かう傾向がある濃度を誘発する。それ故、治療用タンパク質の濃度は一定せず、処置の全期間において至適ではない。さらに、硝子体内投与に関連した副作用のリスクは、繰り返し投与する度に増加する(Schargus 2020, Clinical Ophthalmology 2020: 14 897-904)。
【0005】
眼病態の中でぶどう膜炎は、患者の眼の虹彩、毛様体、又は脈絡膜に発症する炎症性プロセスとして定義され、これらの3つの要素がぶどう膜を形成している。それは、その原因が依然として不明であるが一般的には2種類(感染性ぶどう膜炎及び非感染性ぶどう膜炎)ある、いくつかの異なる病態を網羅する一般用語である。虹彩又は毛様体に発症し、西洋諸国において最もよくあるぶどう膜炎である、前部ぶどう膜炎;前部硝子体に発症する中間部ぶどう膜炎;及び、脈絡膜と網膜に発症する後部ぶどう膜炎に区別される。非感染性ぶどう膜炎は自己免疫成分を有することが多い。HLA-B27抗原に関連した急性前部ぶどう膜炎は、ぶどう膜炎の主な原因を代表する(Rothova et al., Br J Ophthalmol. 1992; 76:137-41)。さらに、前部ぶどう膜炎は、サルコイドーシスなどの多くのリウマチ疾患を伴って見られる。感染が原因ではない後部ぶどう膜炎は、ベーチェット病、フォークト・小柳・原田病、散弾状脈絡膜網膜症などを伴うことが多い。
【0006】
コルチコイドを用いての経口及び/又は局所経路による処置は、非感染性後部ぶどう膜炎の処置に広く使用される。さらに、最も難治性の病態では、免疫抑制剤を処置に加えて、副腎皮質ステロイドの抗炎症作用を増加させてもよい。これは特にであって専らではないが、シクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、及びクロラムブシルに関する。過去約10年間、眼底に炎症を有する非感染性ぶどう膜炎の処置のために近年承認された、ヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)を含む、抗TNFα抗体を使用した処置も使用することができた。
【0007】
以下の治療用化合物(シクロスポリンA、ラパマイシン、タクロリムス、及び抗TNFα抗体)の使用への臨床試験が、これらの化合物の有効性及び安全性を評価するために実施され、よって、ベーチェット病などの自己免疫性眼病態を処置することができた。しかしながら、これらの治療用化合物の全身投与は、長期には多くの副作用をもたらし、その中のいくつかについては、それらの局所投与が、少ない有効性又は患者による低い耐容性を与えることが示された。
【0008】
それ故、上記の処置法は、いくつかの欠点を有する。全身経路及び局所経路によって投与された治療用化合物により、数多くの副作用が生じる。硝子体内注射によって投与された組換えタンパク質は、頻繁に投与されなければならず、各回の投与の間に濃度の大きな変動がある。これらの反復注射は依然として患者にとって極めて面倒かつストレスであり、また、影響(眼内圧の上昇、眼内炎症、眼内炎、白内障など)を引き起こし得る。したがって、最終的には多くの患者はそれらの処置を中止する。
【0009】
この問題を克服するために、本発明者らは以前に、特に出願FR3031112号に示されているように、手術による介入の回数及び/又は頻度を減少させ、それ故、患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的としたDNA構築物の適用を通して、治療用タンパク質の安定かつ一定した数か月間の産生を確実にしながら、眼内注射の侵襲的側面を低減することを提案した。この構築物は、複製起点、患者の眼球におけるDNAの発現を可能とするプロモーター、患者の眼球におけるDNAの発現を促進する1つ以上の配列、及び眼病態の処置におけるその活性のために選択された治療用タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含み、該構築物は、毛様体筋への直接注射、それに続く電気的導入により、眼球に送達される。
【0010】
しかしながら、上記の眼病態の処置は、2つの活性治療用成分、活性治療用成分の有効性を増強するための第二の化合物、又は2つのペプチドサブユニットからなる化合物の適用を必要とし得る。
【0011】
上記の方法の脈絡において、したがって、患者に、2種類のDNA構築物(第一の種類は、関心対象の第一の分子の発現を可能とするが、第二の種類は、関心対象の第二の分子の発現を可能とするという点で異なる)を含む組成物を投与することが想定され得る。しかしながら、このような方法は、(i)2つの製品の開発が必要となり、これにより開発及び生産のコストは増加し、別々に及び組み合わせて服用される各製品の活性及び安全性を評価することが必要となるであろうこと、(ii)投与することのできる2つの活性治療成分の各々の最大用量を半分にするという、用量の観点からかなりの制約を課すであろうこと、そして最後に(iii)標的化された細胞に浸透するこれらの各構築物の量の完全な制御は可能ではなく、その結果、眼のレベルで発現される関心対象のこれらの分子の比率に関して不確実性をもたらすであろう点で、理想的ではないだろう。このような制約及び不確実性は、病態の処置の脈絡において望ましくない。
【0012】
本発明者らは結果として、本発明の脈絡において、関心対象の2つのタンパク質をコードしている配列を含むDNA構築物を採用することを提案する。
【0013】
発明の要約
それ故、本発明は第一に、眼病態の処置におけるその使用のためのDNA構築物に関し、該DNA構築物は、該眼病態を有する患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的としており;
該DNA構築物は、それが
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球におけるDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)-第一の治療用タンパク質、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
をコードしている第一のヌクレオチド配列
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)、
(d)患者の眼球においてこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列;
(f)-第一の治療用タンパク質とは異なる、第二の治療用タンパク質、及び
-この第二の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
をコードしている第二のヌクレオチド配列
(該シグナルペプチドは、第二の治療用タンパク質のN末端において、前記の第二の治療用タンパク質の配列と連続している);
(g)患者の眼球におけるこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とし;
該DNA構築物は、毛様体筋への注射、その後の毛様体筋細胞への電気的な導入によって患者に投与される。
【0014】
事実、全ての予想に反して、関心対象の分子をコードしている1つではなく2つの配列の導入の結果である、DNA構築物のサイズの有意な増加は、毛様体筋への該構築物の直接的な注射だけでなく電気的導入の工程も含んでいる、上記に示されているような方法の脈絡において、標的化された細胞へのその浸透能に対して負の影響を及ぼさない。
【0015】
結果として、本発明の方法及び構築物は、全ての予想に反して、
-2つの活性成分、又は、1つの活性成分と、該活性成分の活性/有効性を増強するのに適した化合物のインサイツでの産生を可能とすることによって、眼病態の処置の可能性を高めるだけでなく;
-手術による介入の回数及び/又は頻度の減少、及び結果として、治療用タンパク質の安定で持続的な数か月間におよぶ産生を確実にしながらの、眼内注射の侵襲的側面の低減の観点から、上記に示された方法の利点を、それらを減少させることなく、維持することを有利に可能とする。
【0016】
1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一の治療用タンパク質は、抗VEGF型タンパク質、特にS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブからなる群より選択された抗VEGF型タンパク質、特に配列番号3のペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである。
【0017】
1つの実施態様によると、第一の治療用タンパク質は、配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有するヌクレオチド配列によってコードされ、より特定すると配列番号2のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0018】
1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第二の治療用タンパク質は、配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとデコリンである。
【0019】
1つの実施態様によると、第二の治療用タンパク質は、配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列によって、特に配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のヌクレオチド配列からなる、より特定すると配列番号7の配列及び配列番号1の配列からなる群より選択された配列、特に配列番号11の配列によってコードされる。
【0020】
1つの実施態様によると、本発明のその使用のためのDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである);及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードし;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである);及び
-配列番号13のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードしているようなものである。
【0021】
1つの実施態様によると、上記のようなDNA構築物の複製起点は、細菌の複製起点であり、特に大腸菌(Escherichia coli)の天然プラスミドR6Kに由来する複製起点であり、特に、大腸菌の天然プラスミドR6kのR6Kガンマの複製起点、特に配列番号31の配列である。
【0022】
本発明のDNA構築物は、鎖状形であっても環状形であってもよく、特に環状形である。特定の実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状プラスミドである。
【0023】
特定の実施態様では、DNA構築物は裸のDNA構築物である。
【0024】
1つの実施態様によると、上記のようなその使用のためのDNA構築物は、眼病態が、網膜変性症、特に滲出型又は萎縮型の加齢黄斑変性(ARMD);糖尿病性網膜症(DR);網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);近視性脈絡膜新生血管(CNV);ぶどう膜炎、特に非感染性ぶどう膜炎;網膜色素変性症及び緑内障からなる群より選択された網膜変性症であることを特徴とし、より特定すると、網膜変性症は、加齢黄斑変性(ARMD)、特に(滲出型)新生血管型のARMD;糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視力の低下;網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);及び近視性脈絡膜新生血管(CNV)からなる群より選択されることを特徴とする。
【0025】
本発明はさらに、眼病態の処置のための、患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的としたDNA構築物に関し、これはそれが
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球におけるDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)-第一の治療用タンパク質(前記の第一の治療用タンパク質は、配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド、特に配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)
をコードしている第一のヌクレオチド配列;
(d)患者の眼球におけるこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列;
(f)-第二の治療用タンパク質(前記の第二の治療用タンパク質は、配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとデコリンである)、及び
-第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド、特に配列番号13のペプチド配列のシグナルペプチド
(このシグナルペプチドは、第二の治療用タンパク質のN末端において、前記の第二の治療用タンパク質の配列と連続している)
をコードしている、第二のヌクレオチド配列;
(g)患者の眼球においてこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とする。
【0026】
特に、本発明のDNA構築物は、
c)第一のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードしているヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有し、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードしている配列番号5のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-デコリンをコードしているヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群より選択され、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードしている配列番号14のヌクレオチド配列
を含むようなものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明のDNA構築物(プラスミドA)を示す。
図2図2は、単一の治療用タンパク質(トランスフェリン-プラスミドAに使用されるのと同じ配列)しかコードしていないので、本発明によらないDNA構築物を示し、後者は、ちょうどプラスミドAのように、CMV型プロモーターの制御下にある(プラスミドa')。
図3図3は、本発明の構築物(プラスミドA)又はトランスフェリンしかコードしていないので本発明によらない構築物(プラスミドa')(後者は、プラスミドAと同じプロモーターの制御下にある)の、ラットの両眼の毛様体筋への投与後3~30日間(横軸:電気的導入(0日目)後の日数)のラットの眼液中の配列番号17の配列のトランスフェリン濃度(縦軸:pg/mL)の変動を示す。したがって、各群のラットには、記載された2つからの特定の構築物が投与された。
図4図4は、該ラットの両眼の毛様体筋への本発明の構築物(プラスミドA)の投与後3~30日間(横軸:電気的導入(0日目)後の日数)のラットの眼液中の配列番号22の配列の抗TNFα融合タンパク質の濃度(縦軸:pg/mL)の変動を示す。
図5図5は、本発明のDNA構築物(プラスミドB)を示す。
図6図6は、単一の治療用タンパク質(アフリベルセプト-プラスミドBで使用されたのと同じ配列、すなわち、配列番号2の配列)しかコードしていないので本発明によらないDNA構築物を示し、後者は、ちょうどプラスミドBのように、CAG型プロモーターの制御下にある(プラスミドb')。
図7図7は、本発明の構築物(プラスミドB)又はアフリベルセプトしかコードしていないので本発明によらない構築物(プラスミドb’)(後者は、プラスミドBと同じプロモーターの制御下にある)の、該ラットの両眼の毛様体筋への投与後3~21日間(横軸:電気的導入(0日目)後の日数)のラットの眼液中の配列番号3の配列のアフリベルセプト濃度(縦軸:pg/mL)の変動を示す。したがって、各群のラットには、記載された2つからの特定の構築物が投与された。
図8図8は、本発明の構築物(プラスミドB)の、該ラットの両眼の毛様体筋への投与後3~21日間(横軸:電気的導入(0日目)後の日数)のラットの眼液中の配列番号8の配列のデコリン濃度(縦軸:pg/mL)の変動を示す。
図9図9は、本発明のDNA構築物(プラスミドC)を示す。
図10図10は、処置(横軸)の関数としての、重度の漏出(グレード3)を生じる作用の比率(縦軸:グレード3の脈絡膜新生血管病変の比率%)を示す。左:ビヒクル(対照)。右:プラスミドC。
【0028】
詳細な説明
定義
本発明の文書の脈絡において、眼病態に関連した「処置する」及び「処置」という用語は、は該病態の減少、又はさらには中断を示す。
【0029】
本発明の文書において使用されるような「患者」という用語は好ましくは、哺乳動物(ヒト以外の哺乳動物を含む)、より特定するとヒトを示す。
【0030】
「第一のヌクレオチド配列」及び「第二のヌクレオチド配列」という用語は、本発明の文書において、後者を読んでいる間に、これらの2つの配列間及びそれらがコードするタンパク質間の明確な区別を可能とするために使用される。
【0031】
前記のヌクレオチド配列は発現カセットに相当し、これらの各カセットは、本明細書において以後に定義されている通りである。
【0032】
しかしながら、「第一のヌクレオチド配列」及び「第二のヌクレオチド配列」というこれらの用語は、これらの配列/発現カセットが本発明の構築物中に存在する順番を示すことを目的としない。したがって、1つの実施態様によると、本発明の構築物を読むという意味では、第一のヌクレオチド配列は、第二のヌクレオチド配列の前に存在してもよい。別の実施態様では、本発明の構築物を読むという意味では、第二のヌクレオチド配列は、第一のヌクレオチド配列より前に存在していてもよい。
【0033】
上記に示されているものによると、「第一のヌクレオチド配列」は、第一の治療用タンパク質をコードしている配列と、シグナルペプチドをコードしている配列とを含み、これらの配列は、「第一のヌクレオチド配列」内に、お互いに具体的に示されているような順番で、すなわち、シグナルペプチドをコードしている配列は、シグナルペプチドが第一の治療用タンパク質のN末端にあるように、すなわち、シグナルペプチドをコードしている配列が、第一の治療用タンパク質をコードしている配列の5’にあるように存在している。
【0034】
さらに、上記に示されているものによると、「第二のヌクレオチド配列」は、第二の治療用タンパク質をコードしている配列と、シグナルペプチドをコードしている配列とを含み、これらの配列は、「第二のヌクレオチド配列」内に、お互いに具体的に示されているような順番で、すなわち、シグナルペプチドをコードしている配列は、シグナルペプチドが第二の治療用タンパク質のN末端にあるように、すなわち、シグナルペプチドをコードしている配列が、第二の治療用タンパク質をコードしている配列の5’にあるように存在している。
【0035】
2つのアミノ酸配列間又は2つの核酸配列間の「同一率」は、本発明の意味において、比較窓を通して、2つの最適にアラインさせた配列を比較することによって決定される。
【0036】
したがって、比較窓におけるヌクレオチド配列の一部は、2つの配列間の最適なアラインメントが得られるように、参照配列(これらの付加又はこれらの欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(例えば「ギャップ」)を含んでいてもよい。
【0037】
同一率は、比較される2つの配列について同一のアミノ酸(又は同一の核酸塩基)が観察される位置の数を決定し、次いで、2つのアミノ酸間(又は2つの核酸塩基間)で同一である位置の数を、比較窓における位置の総数で割り、次いで、乗じて%の結果とすることにより計算され、よって、それらの間の2つの配列のアミノ酸同一率(又はヌクレオチド同一率)の比率が得られる。
【0038】
比較のための配列の最適なアライメントは、公知のアルゴリズムを使用してコンピューターによって実施され得る。
【0039】
全体的に好ましくは、配列同一率は、CLUSTAL Wソフトウェア(バージョン1.82)を使用して決定され、パラメーターは以下のように固定される:(1)CPU MODE=ClustalWmp;(2)アラインメント=「完全」;(3)アウトプットフォーマット=「aln w/numbers」;(4)アウトプット順序=「aligned」;(5)カラーアラインメント=「no」;(6)KTUP(ワードサイズ)=「デフォールト」;(7)窓の長さ=「デフォールト」;(8)スコアタイプ=「パーセント」;(9)TOPDIAG=「デフォールト」;(10)ペアギャップ=「デフォールト」;(11)系統樹/ツリータイプ=「なし」;(12)マトリックス=「デフォールト」;(13)ギャップオープン=「デフォールト」;(14)エンドギャップ=「デフォールト」;(15)ギャップ伸長=「デフォールト」;(16)ギャップ距離=「デフォールト」;(17)ツリータイプ=「cladogram」及び(18)ツリーギャップ距離=「hide」。
【0040】
本発明の意味では、参照アミノ酸配列に対して少なくとも80%のアミノ酸同一率を有するアミノ酸配列は、該参照配列に対して少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一率を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
本発明の意味では、参照ヌクレオチド配列に対して例えば少なくとも80%のヌクレオチド同一率を有するヌクレオチド配列は、該参照配列に対して少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一率を有するヌクレオチド配列を含む。
【0042】
DNA構築物
上記のように、本発明はまず、眼病態の処置における、その使用のためのDNA構築物に関する。
【0043】
この構築物は、眼病態を有する患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的な導入を目的とする。
【0044】
さらに、本発明のDNA構築物は、それが(a)細菌又は原核生物の複製起点を含むことを特徴とする。
【0045】
特定の実施態様によると、前記複製起点は特に、細菌の複製起点であり、例えば、大腸菌型の複製起点であり得、より特定すると大腸菌の天然プラスミドR6Kに由来する複製起点からなる群より選択され得、特に、大腸菌の天然プラスミドR6kのR6Kガンマ複製起点;及びpUC OriCの複製起点であり得る。
【0046】
大腸菌の天然プラスミドR6Kに由来する複製起点は特に、特許EP1366176B2号に定義されている。
【0047】
さらに、本発明のDNA構築物は、それが(b)患者の眼球内にDNAの発現を促進する1つ以上の配列を含むことを特徴とする。DNAの発現を促進するこのような配列は、当業者にはよく知られ、例えば、エンハンサー型の配列であり、増幅配列又は活性化配列とも呼ばれる。本発明者らは例えば、サイトメガロウイルス(CMV)及び/又はサルDNA SV40を有する腫瘍ウイルスに由来するエンハンサー配列を言及し得る。
【0048】
さらに、本発明のDNA構築物はまた、それが(c)特に第一の治療用タンパク質をコードする第一のヌクレオチド配列並びに(f)第一の治療用タンパク質とは異なる、特に第二の治療用タンパク質をコードする第二のヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。
【0049】
特定の実施態様によると、本発明のDNA構築物は、治療用タンパク質の2つのコード配列のみを含み、すなわち、2つの発現カセットのみを含み、これらの各発現カセットは、治療用タンパク質のための2つのコード配列のうち1つを含む。
【0050】
これらの第一及び第二の治療用タンパク質は特に、眼病態に対するそれらの作用について公知であるタンパク質から選択され得る。
【0051】
これらの2つのタンパク質の効果は、相加的であっても相補的であってもよい。さらに、これらの2つのタンパク質のうち1つは、本発明のDNA構築物から出発して産生された他のタンパク質の治療活性に対して増強作用を有していてもよい。
【0052】
特に、互いに異なる、第一及び第二の治療用タンパク質は、例えば、
(i)配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである);
(ii)抗線維化特性を有するタンパク質、例えばBMP7タンパク質(骨形成タンパク質7)、抗TGF(腫瘍増殖因子)β型タンパク質、抗FGF(線維芽細胞増殖因子)2型タンパク質、抗CTGF型タンパク質(結合組織増殖因子)、特に配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである);
(iii)抗炎症特性を有するタンパク質、特に抗TNF型タンパク質、例えばヒトTNFR(腫瘍壊死因子受容体)-Is、ヒトTNFR―Is/マウスIgG1、レネルセプト、又はヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質、より特定すると抗TNFα型タンパク質、特にヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質(Peppel et al.,J Exp Med, 174: 1483-1489 - Murphy et al., Arch Ophthalmol, 22: 845-851)、より特定すると配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質;
(iv)抗VEGF(血管内皮増殖因子)型タンパク質、特にS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブからなる群から選択されたタンパク質、特に配列番号3のペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである);
(v)抗血管形成特性を有するタンパク質、例えばアンジオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン、抗アンジオポエチン-2型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗PLGF(胎盤増殖因子)型タンパク質、抗PDGF型タンパク質;及び
(vi)補体、例えば補体因子I(CFI)、及び配列番号26の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定すると補体因子Hである)の活性化を調節するタンパク質
からなる群より選択され得る。
【0053】
特に、(i)配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質は、配列番号17の配列に対して少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%の配列同一率を有するタンパク質を含む。特に、このタンパク質はより特定するとトランスフェリン(すなわち、配列同一率17の配列に対して100%の配列同一率を有するタンパク質)である。
【0054】
特に、(ii)配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質は、配列番号8の配列に対して少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%の配列同一率を有するタンパク質を含む。特に、このタンパク質はより特定するとデコリン(すなわち、配列番号8の配列に対して100%の配列同一率を有するタンパク質)である。
【0055】
特に、(iii)配列番号22の配列の融合タンパク質に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質は、配列番号22の配列に対して少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%の配列同一率を有するタンパク質を含む。特に、このタンパク質はより特定すると、配列番号22の配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質である。
【0056】
特に、(iv)配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質は、配列番号3の配列に対して少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%の配列同一率を有するタンパク質を含む。特に、このタンパク質はより特定するとアフリベルセプト(すなわち、配列番号3の配列に対して100%の配列同一率を有するタンパク質)である。
【0057】
特に、(vi)配列番号26の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質は、配列番号26の配列に対して少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%の配列同一率を有するタンパク質を含む。特に、このタンパク質はより特定すると補体因子H(すなわち、配列番号26の配列に対して100%の配列同一率を有するタンパク質)である。
【0058】
特に、互いに異なる、第一及び第二の治療用タンパク質のコード配列は、例えば、
(i)トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列であるヌクレオチド配列;
(ii)抗線維化特性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、例えばBMP7タンパク質(骨形成タンパク質7)、抗TGFβ型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗CTGF型タンパク質(CTGF:結合組織増殖因子)、特にデコリンをコードするタンパク質、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列からなる群より選択される、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列、より特定すると配列番号11の配列である配列;
(iii)抗炎症特性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、特に抗TNF型タンパク質、例えばヒトTNFR-Is、ヒトTNFR-Is/マウスIgG1、レネルセプト、又はヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質、より特定すると抗TNFα型タンパク質、特にヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、より特定すると配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有する配列;
(iv)抗VEGF型のタンパク質、例えばS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列、特に配列番号2の配列;
(v)抗血管形成特性を有するタンパク質、例えばアンジオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン、抗アンジオポエチン-2型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗PLGF型タンパク質、抗PDGF型タンパク質をコードする配列;及び
(vi)補体、例えば補体因子I(CFI)及び補体因子H、特に補体因子H、より特定すると配列番号25の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列の活性化を調節するタンパク質をコードする配列
からなる群より選択され得る。
【0059】
「第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列」は、以前に示されているような「第一のヌクレオチド配列」及び「第二のヌクレオチド配列」として理解されず、むしろ、本発明の第一のヌクレオチド配列内及び第二のヌクレオチド配列内に存在し、第一及び第二の治療用タンパク質を具体的にコードする配列である。
【0060】
1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一又は第二の治療用タンパク質は、配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質であり、このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである。
【0061】
特に、本発明のDNA構築物は、第一のヌクレオチド配列又は第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである);及び
-配列番号18のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードすることを特徴とし得る。
【0062】
したがって、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列の1つは特に、トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列であり得、特に配列番号16の配列である。
【0063】
特に、本発明のDNA構築物は、第一のヌクレオチド配列又は第二のヌクレオチド配列が、
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号20のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0064】
1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物によってコードされる第一及び第二の治療用タンパク質はそれぞれ:
-配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである);及び
-抗TNFα型のタンパク質、特に配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質、より特定すると配列番号22の配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質
である。
【0065】
したがって、1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ:
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列である配列;及び
-抗TNFα型タンパク質をコードする配列、特に配列番号22のペプチド配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、特に配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するヌクレオチド配列
である。
【0066】
炎症及び酸化ストレスは、緑内障によって引き起こされる眼内圧上昇後の加齢黄斑変性又は緑内障性神経症などの網膜変性の重要な構成要素である。特に、TNFαの眼内濃度上昇が緑内障の眼に観察され(Tezel et al., 2001, Invest Ophthalmol Vis Sci. 2001 Jul; 42(8): 1787-94)、げっ歯類の眼へのTNFαの注射は、視神経の軸索変性及び網膜の神経節細胞のプログラム死を誘発する(Kitaoka 2006, Invest Ophthalmol Vis Sci. 2006; 47: 1448-1457)。鉄のレベルを調節する遺伝子の発現の上昇も、緑内障の眼に観察され、このことは鉄によって誘発される酸化的ストレスが、緑内障の発病に役割を果たしている可能性があることを示唆する(Farkas et al., 2004)。抗TNF抗体及び鉄キレート剤、例えばトランスフェリンの投与は、鉄によって媒介される炎症及び酸化的ストレスの両方を有利に低減させることを可能とする。
【0067】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号20のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-抗TNFα型タンパク質をコードするヌクレオチド配列、特に配列番号22のペプチド配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、特に配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、特に配列番号21の配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号23のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0068】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである);及び
-配列番号18のペプチド配列のシグナルペプチド
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定すると配列番号22の配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質である);及び
-配列番号23のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードしていることを特徴とし得る。
【0069】
別の実施態様によると、本発明のDNA構築物によってコードされる第一及び第二の治療用タンパク質はそれぞれ
-配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである);及び
-抗線維化特性を有するタンパク質、特に配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである)
である。
【0070】
したがって、1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ:
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列である配列;及び
-抗線維化特性を有するタンパク質、例えばBMP7タンパク質(骨形成タンパク質7)、抗TGFβ型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗CTGF型タンパク質(結合組織増殖因子)、特にデコリンをコードするタンパク質、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列からなる群より選択された、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列、より特定すると配列番号11の配列である配列
である。
【0071】
緑内障、特に主に開放隅角緑内障は、線維柱帯の線維化後の眼内圧の上昇によって、並びに、網膜の神経節細胞減少及び視神経変性によって特徴付けられる。緑内障の現在の処置は、眼内圧を減少させるが、神経変性の進展を止めることができない。神経保護作用を有する薬剤、例えば抗TNF抗体又はトランスフェリンの投与は、デコリンなどの抗線維化作用を有利に増強させ、眼内圧の減少並びに網膜及び視神経の変性の防御の両方を可能とする。
【0072】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に、配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号20のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-デコリンをコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列からなる群より選択された、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列、より特定すると配列番号11の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号14のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0073】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号17の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとトランスフェリンである);及び
-配列番号18のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードし;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである);及び
-配列番号13のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードすることを特徴とし得る。
【0074】
1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一又は第二の治療用タンパク質は、抗VEGF型タンパク質、特に配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)である。
【0075】
特に、本発明のDNA構築物は、第一のヌクレオチド配列又は第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである);及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードすることを特徴とし得る。
【0076】
したがって、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列の1つは特に、抗VEGF型抗体のタンパク質、特にS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列であり得、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列であり得、特に配列番号2の配列である。
【0077】
特に、本発明のDNA構築物は、第一のヌクレオチド配列又は第二のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号5のヌクレオチド配列
を含む
ことを特徴とし得る。
【0078】
別の実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質はそれぞれ:
-抗線維化特性を有するタンパク質、特に配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである);及び
-抗VEGF型タンパク質、特に配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)
である。
【0079】
したがって、1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ:
-抗線維化特性を有するタンパク質、例えばBMP7タンパク質(骨形成タンパク質7)、抗TGFβ型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗CTGF型タンパク質(結合組織増殖因子)、特にデコリンをコードするタンパク質をコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列からなる群より選択された、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列である配列;及び
-抗VEGF型抗体のタンパク質、特にS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列、特に配列番号2の配列
である。
【0080】
抗線維化活性成分の存在は、抗VEGF抗体の作用を有利に増強することを可能とし、よって、標的の眼病態の処置におけるこの化合物の有効性は向上する。特に、最適な間隔で抗VEGF抗体の注射を受ける患者でさえも、網膜下の線維症の発症が、時と共に患者の半数超に出現し、時の経過と共に抗VEGF抗体の有効性は減少することが観察された(Daniel et al. 2014, Ophthalmology 121, 656-666)。さらに、抗VEGF抗体に応答しない加齢黄斑変性患者における網膜下線維症の発症は、抗VEGF抗体に対する弱い治療応答の原因として同定された(Cohen et al. 2012, Retina 32, 1480-1485)。
【0081】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号5のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-デコリンをコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及びは配列番号12の配列からなる群より選択された、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号14のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0082】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号5のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-デコリンをコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7の配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号14のヌクレオチド配列を含むことを特徴とし得る。
【0083】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号5のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-デコリンをコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号11の配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号14のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0084】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである);及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードし;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号8の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとデコリンである);及び
-配列番号13のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードすることを特徴とし得る。
【0085】
別の実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質はそれぞれ:
-抗TNFα型のタンパク質、特に配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質、より特定すると配列番号22の配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質;
-抗VEGF型のタンパク質、特に配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)
である。
【0086】
したがって、1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ:
-抗TNFα型のタンパク質をコードする配列、特に配列番号22のペプチド配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、特に配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するヌクレオチド配列;及び
-抗VEGF型のタンパク質、例えばS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列、特に配列番号2の配列
である。
【0087】
抗TNFα抗体の活性成分の存在は、抗VEGF抗体の効果を有利に増強することを可能とし、よって、標的の眼病態の処置におけるこの化合物の有効性は向上する。特に、VEGFは、網膜の透過性を誘発するが、TNFαなどの炎症性物質も、特に抗VEGF抗体による処置に応答しない患者において、糖尿病性網膜症患者に観察される場合があるように、血管透過性をもたらし得ることは周知である(Arias L. et al.; Retina 2010, 30: 1601e1608及びSfikakis et al.; Diabetes Care 2010, 33: 1523e1528)。近年の試験は、VEGF及びTNFαが、異なる機序によって透過性を誘発することを示唆する。
【0088】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-抗TNFα型のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、特に配列番号22のペプチド配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、特に配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、特に配列番号21の配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号23のヌクレオチド配列を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列、特に、配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号5のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0089】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定すると、配列番号22の配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質である);及び
-配列番号23のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードし;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである);及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードすることを特徴とし得る。
【0090】
別の実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質はそれぞれ:
-補体、特に配列番号26の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このアミノ酸配列はより特定すると補体因子Hである)の活性化を調節するタンパク質、;
-抗VEGF型タンパク質、特に配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである)
である。
【0091】
したがって、1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ:
-補体、例えば補体因子I(CFI)及び補体因子H、特に補体因子Hをコードする配列、より特定すると配列番号25の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列の活性化を調節するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;及び
-抗VEGF型のタンパク質、例えばS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列
である。
【0092】
補体代替経路の活性化は、加齢黄斑変性の重要な構成要素である。この活性化により、膜侵襲複合体が形成され、マクロファージが動員され、インフラマソームの関与するサイトカインの産生に伴う炎症が誘導される。補体因子Hは、補体の自己活性化の調節に関与している。タンパク質の機能に影響を及ぼす、補体H因子をコードする遺伝子のいくつかの多形変異体は、滲出型及び萎縮型の2つの型の加齢黄斑変性を発症する強力な易罹患性を付与する。逆に、補体H因子の眼内注射による代替経路の阻害は、脈絡膜新生血管の動物モデルにおいて新生血管を低減する。したがって、補体の活性化を調節する活性成分及び抗VEGF抗体、例えばアフリベルセプトの投与は、加齢黄斑変性に関連した新生血管及び炎症の両方を有利に低減することが可能である。
【0093】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-補体、例えば補体因子I(CFI)及び補体因子H、特に補体因子H、より特定すると配列番号25の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列の活性化を調節するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号28のヌクレオチド配列
を含み;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列;及び
-シグナルペプチドをコードする配列番号5のヌクレオチド配列
を含むことを特徴とし得る。
【0094】
特に、本発明のDNA構築物は、
(c)第一のヌクレオチド配列が、
-補体、特に配列番号26の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定すると補体因子Hである)の活性化を調節するタンパク質;及び
-配列番号27のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードし;そして
(f)第二のヌクレオチド配列が、
-配列番号3の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するタンパク質(このタンパク質はより特定するとアフリベルセプトである);及び
-配列番号4のペプチド配列のシグナルペプチド
をコードすることを特徴とし得る。
【0095】
さらに、本発明のDNA構築物は、第一のヌクレオチド配列がまた、第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチドをコードすることも特徴とする。
【0096】
この種類のシグナルペプチドは、当業者にはよく知られている。このシグナルペプチドは、例えば、配列番号4のペプチド配列のヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)(これは例えば配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされ得る)又は配列番号29のペプチド配列のHTLV-1エンベロープのシグナルペプチド(これは例えば、配列番号30のヌクレオチド配列によってコードされ得る)であり得る。それはまた、問題の治療用タンパク質の天然ペプチドシグナルは、例えば
-配列番号13のペプチド配列の、デコリンの天然シグナルペプチド(これは例えば配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされ得る);
-配列番号18のペプチド配列の、トランスフェリンのシグナルペプチド(これは例えば、配列番号19のヌクレオチド配列によって又は配列番号20のヌクレオチド配列によってコードされ得る);
-抗TNFα型のタンパク質のシグナルペプチド、特にヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む天然ペプチドシグナル融合タンパク質(このシグナルペプチドは、配列番号23のペプチド配列を有する)(これは例えば配列番号24のヌクレオチド配列によってコードされ得る);又は
-配列番号27のペプチド配列の、H因子の天然シグナルペプチド(これは例えば配列番号28のヌクレオチド配列によってコードされ得る)
であり得る。
【0097】
上記のように、このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質と連続し、すなわち、それは第一の治療用タンパク質のN末端で直接融合し、それ故、シグナルペプチドをコードする配列は、第一の治療用タンパク質をコードする配列の5’にある。
【0098】
さらに、本発明のDNA構築物は、第二のヌクレオチド配列が、第二の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチドもコードすることを特徴とする。
【0099】
このシグナルペプチドは例えば、配列番号4のペプチド配列のヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)(これは例えば配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされ得る)又は配列番号29のペプチド配列のHTLV-1エンベロープのシグナルペプチド(これは例えば配列番号30のヌクレオチド配列によってコードされ得る)であり得る。それはまた、問題の治療用タンパク質の天然シグナルペプチド、例えば
-配列番号13のペプチド配列の、デコリンの天然シグナルペプチド(これは例えば、配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされ得る);
-配列番号18のペプチド配列の、トランスフェリンの天然シグナルペプチド(これは例えば配列番号19のヌクレオチド配列によって又は配列番号20のヌクレオチド配列によってコードされ得る);
-抗TNFα型のタンパク質のシグナルペプチド、特にヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む天然シグナルペプチド融合タンパク質(このシグナルペプチドは配列番号23のペプチド配列を有する)(これは例えば、配列番号24のヌクレオチド配列によってコードされ得る);又は
-配列番号27のペプチド配列の、H因子の天然シグナルペプチド(これは例えば配列番号28のヌクレオチド配列によってコードされ得る)
でもあり得る。
【0100】
このシグナルペプチドは、第一のヌクレオチド配列によってコードされるシグナルペプチドと同一であっても異なっていてもよく、好ましくは、第一のヌクレオチド配列によってコードされるシグナルペプチドとは異なる。
【0101】
上記のように、このシグナルペプチドは、第二の治療用タンパク質と連続し、すなわちそれは、第二の治療用タンパク質のN末端に直接融合し、それ故、シグナルペプチドをコードする配列は、第二の治療用タンパク質をコードする配列の5'にある。
【0102】
特定の実施態様によると、第一のヌクレオチド配列によってコードされるシグナルペプチド、及び第二のヌクレオチド配列によってコードされるシグナルペプチドは、互いに独立して、配列番号4、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号27及び配列番号29のペプチド配列からなる群より選択される。
【0103】
1つの実施態様によると、第一のヌクレオチド配列によってコードされるシグナルペプチドをコードする配列、及び第二のヌクレオチド配列によってコードされるシグナルペプチドをコードする配列は、互いに独立して、配列番号5、配列番号14、配列番号19、配列番号20、配列番号24、配列番号28及び配列番号30のヌクレオチド配列からなる群より選択される。
【0104】
さらに、本発明のDNA構築物はまた、それが
(d)本発明の構築物の第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター並びに(g)本発明の構築物の第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーターを含むことを特徴とする。
【0105】
これらのプロモーターは、同一であっても異なっていてもよい。特定の実施態様によると、これらの2つのプロモーターは、互いに異なる。
【0106】
前記プロモーターは例えば、CAG型のプロモーターであってもCMV型のプロモーターであってもよい。
【0107】
さらに、本発明のDNA構築物は、それが(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列、及び(h)第二のヌクレオチド配列の3'におけるポリアデニル化配列を含むことを特徴とする。
【0108】
ポリアデニル化配列は、特に、当業者にはよく知られている配列AATAAAの保存モチーフを含む。
【0109】
これらの2つのポリアデニル化配列は、互いに同一であっても異なっていてもよい。1つの実施態様によると、それらは互いに異なる。
【0110】
これらのポリアデニル化配列は、例えば、RBG型(ウサギβグロビン)又はBGH(ウシ成長ホルモン)のポリアデニル化配列であり得る。
【0111】
最後に、上記のように、本発明のDNA構築物は、注射によって患者の毛様体筋に投与され、その後、毛様体筋の細胞に電気的に導入される。
【0112】
特定の実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状形である。
【0113】
本発明の1つの実施態様では、DNA構築物は裸のDNA構築物である。
【0114】
本発明の1つの実施態様によると、本発明のDNA構築物は、環状形の裸のDNA構築物である。
【0115】
本発明の1つの実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状形の裸のDNA構築物であり、その中の、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ、
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号16の配列である配列;及び
-抗TNFα型のタンパク質をコードする配列、特に配列番号22のペプチド配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、特に配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するヌクレオチド配列
である。
【0116】
本発明の1つの実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状形の裸のDNA構築物であり、その中の、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ、
-抗線維化特性を有するタンパク質、例えばBMP7タンパク質(骨形成タンパク質7)、抗TGFβ型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗CTGF型タンパク質(結合組織増殖因子)、特にデコリンをコードするタンパク質をコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列からなる群より選択される、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列、より特定すると配列番号11の配列である配列;及び
-抗VEGF型のタンパク質、例えばS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列
である。
【0117】
1つの実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状形の裸のDNA構築物であり、その中の、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ、
-トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列、特に配列番号15の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列、特に配列番号16の配列である配列;
-抗線維化特性を有するタンパク質、例えばBMP7タンパク質(骨形成タンパク質7)、抗TGFβ型タンパク質、抗FGF2型タンパク質、抗CTGF型タンパク質(結合組織増殖因子)、特にデコリンをコードするタンパク質をコードするヌクレオチド配列、より特定すると配列番号6の配列に対して少なくとも70%の配列同一率を有するヌクレオチド配列、より特定すると配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列からなる群より選択される、特に配列番号7の配列又は配列番号11の配列、より特定すると配列番号11の配列である配列
である。
【0118】
本発明の1つの実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状形の裸のDNA構築物であり、その中の、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ、
-抗TNFα型タンパク質をコードする配列、特に配列番号22のタンパク質配列のヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列、特に配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一率を有するヌクレオチド配列;及び
-抗VEGF型のタンパク質、例えばS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する、特に配列番号2の配列である配列
である。
【0119】
本発明の1つの実施態様では、本発明のDNA構築物は、環状形の裸のDNA構築物であり、その中の、本発明のDNA構築物の第一及び第二の治療用タンパク質をコードする配列はそれぞれ、
-補体、例えば補体因子I(CFI)及び補体因子Hの活性化を調節するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、特に補体因子Hをコードする配列、より特定すると配列番号25の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列;及び
-抗VEGF型のタンパク質、例えばS-Flt1、アフリベルセプト、コンベルセプト、ブロルシズマブをコードするヌクレオチド配列、特にアフリベルセプトをコードする配列、より特定すると配列番号1の配列に対して少なくとも75%の配列同一率を有する配列、特に配列番号2の配列である配列
である。
【0120】
本発明はまた、眼病態の処置のための患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的としたDNA構築物に関し、それは、
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球においてDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)-第一の治療用タンパク質(前記の第一の治療用タンパク質はアフリベルセプトである);及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド(このシグナルペプチドは、前記の第一の治療用タンパク質のN末端において、第一の治療用タンパク質の配列と連続している)
をコードしている第一のヌクレオチド配列;
(d)患者の眼球におけるこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列;
(f)-第二の治療用タンパク質(前記の第二の治療用タンパク質はデコリンである)、及び
-この第二の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド(該シグナルペプチドは、前記の第二の治療用タンパク質のN末端において、第二の治療用タンパク質の配列と連続している)
をコードしている、第二のヌクレオチド配列;及び
(g)患者の眼球においてこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とする、該DNA構築物
ことを特徴とする。
【0121】
上記のDNA構築物の適用
上記に定義されているようなDNA構築物は特に、眼病態の処置を目的とする。
【0122】
本発明の眼病態は、網膜変性症である。
【0123】
この網膜変性症は特に、滲出型又は萎縮型の加齢黄斑変性(ARMD);糖尿病性網膜症(DR);網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);近視性脈絡膜新生血管(CNV);ぶどう膜炎、特に非感染性ぶどう膜炎;網膜色素変性症及び緑内障からなる群より選択され得る。
【0124】
糖尿病性網膜症は特に、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視力の低下、硝子体内出血、網膜剥離、又は血管新生緑内障を示すことを意図する。
【0125】
特定の実施態様によると、特に眼病態の処置のために使用される本発明の構築物が、第一及び第二の治療用タンパク質として、上記に定義されているようなアフリベルセプト及びデコリンを含む場合、該眼病態は、より特定すると、加齢黄斑変性(ARMD)、特に滲出型;糖尿病性網膜症(DR);網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);及び近視性脈絡膜新生血管(CNV)からなる群より選択され得、より特定すると、加齢黄斑変性(ARMD)、特に(滲出型)新生血管型のARMD;糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視力低下;網膜静脈閉塞、特に中心網膜静脈閉塞(CRVO)又は分岐網膜静脈閉塞(BRVO);及び近視性脈絡膜新生血管(CNV)からなる群より選択され得る、網膜変性症である。
【0126】
糖尿病性網膜症は特に、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視力低下及び増殖型糖尿病性網膜症に観察される新生血管の形成を示すことを意図する。
【0127】
上記されているように、本発明のDNA構築物は、眼の筋肉である毛様体筋に注射され、そこで電気的に導入される。本発明に使用される公知の非ウイルス的な遺伝子療法技術は、眼の筋肉へのDNA構築物の注射、次いで電気的な導入であり、これにより毛様体筋の細胞の一過性透過及びDNAの遊走を誘発して、DNA構築物のトランスフェクションを最適化する。このDNAの電気的導入技術(電気穿孔法又は電気的透過処理法とも呼ばれる)は適用が容易であり、信頼性があり、患者にとって安全である。ウイルスベクターとは対照的に、DNAの電気的導入は、免疫応答を誘発せず、このようにして導入された遺伝子の長期発現を可能とする。さらに、レンチウイルス及びレトロウイルスで実施された試験は、後者が、宿主ゲノムにそれらが組み込まれる間に挿入突然変異を誘発し易いことを示す。ここで記載されたDNA構築物は、この種の欠点がなく、生成及び操作がし易く、免疫応答を誘発せず、よって、それらは完全に、患者、特にヒト患者の遺伝子療法に適している。
【0128】
本発明によると、DNA構築物は、毛様体筋に注射される。なぜなら、毛様体筋は、その位置のお陰で、均一かつ持続的にタンパク質を産生することができ、全眼球内にこれらのタンパク質の拡散を促進することができるからである(Blocquel et al. "Plasmid electrotransfer of eye ciliary muscle: principles and therapeutic efficacy using hTNF-alpha soluble receptor in uveitis", FASEB J. 2006 Feb; 20(2): 389-91)。平滑筋細胞は、低い再生率を示し、水晶体のいずれかの側でよく分布している。産生される予定のタンパク質の量は、トランスフェクトされる筋肉の表面積に比例する(Touchard "The ciliary smooth muscle electrotransfer: basic principles and potential for sustained intraocular production of therapeutic proteins", J Gene Med. 2010 Nov; 12(11): 904-19)。したがって、本発明の関心対象のタンパク質、特に上記のような治療用タンパク質の産生は、全眼球内で均一かつ一定であり、これはこの眼球に限定されるだろう。本発明者らは、一例として、特許出願EP2266656号に記載の電気的導入法に言及し得、これは、毛様体組織及び/又は眼外筋肉組織のレベルでDNAを含有し得る、組成物の注射法に関する。
【0129】
毛様体筋は、角膜輪部の近く及び強膜のすぐ後ろで毛様体の一部を形成する。それ故、後者への本発明のDNA構築物の注射は、網膜下への注射とは対照的に非常に僅かに侵襲的であり、それ故、有利には本発明のDNA構築物の注射部位となる。
【0130】
別の態様によると、本発明はまた、眼病態の処置のためのDNA構築物の使用に関し、該DNA構築物は、該眼病態を有する患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的とし;該DNA構築物は、それが
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球においてDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)-第一の治療用タンパク質、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
をコードしている第一のヌクレオチド配列
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)、
(d)患者の眼球においてこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列;
(f)-第一の治療用タンパク質とは異なる、第二の治療用タンパク質、及び
-この第二の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
をコードしている第二のヌクレオチド配列
(該シグナルペプチドは、第二の治療用タンパク質のN末端において、前記の第二の治療用タンパク質の配列と連続している);
(g)患者の眼球におけるこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とし;
該DNA構築物は、毛様体筋への注射、その後の毛様体筋の細胞への電気的な導入によって患者に投与される。
【0131】
別の態様によると、本発明はまた、毛様体筋への注射、その後の毛様体筋細胞への電気的導入による患者へのDNA構築物の投与を含む、眼病態の処置法に関し、
該DNA構築物は、該眼病態を有する患者の眼球の筋肉細胞への核酸の非ウイルス的導入を目的とし;該DNA構築物は、それが
(a)細菌又は原核生物の複製起点、特に細菌の複製起点、
(b)患者の眼球においてDNAの発現を促進する1つ以上の配列、
(c)-第一の治療用タンパク質、及び
-この第一の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
をコードしている第一のヌクレオチド配列
(このシグナルペプチドは、第一の治療用タンパク質のN末端において、前記の第一の治療用タンパク質の配列と連続している)、
(d)患者の眼球においてこの第一の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;
(e)第一のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列;
(f)-第一の治療用タンパク質とは異なる、第二の治療用タンパク質、及び
-この第二の治療用タンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチド
をコードしている第二のヌクレオチド配列
(該シグナルペプチドは、第二の治療用タンパク質のN末端において、前記の第二の治療用タンパク質の配列と連続している);
(g)患者の眼球におけるこの第二の治療用タンパク質の発現を可能とするプロモーター;及び
(h)第二のヌクレオチド配列の3’におけるポリアデニル化配列
を含むことを特徴とする。
【0132】
本発明はここで、より詳細に、以下の実施例を用いて以下に記載され、この実施例は説明のためだけに提示される。
【0133】
実施例1
本発明者らは、ラットの眼の硝子体における、本発明のDNA構築物(プラスミド)にコードされる2つの治療用タンパク質の発現を、毛様体筋へのこのDNA構築物の電気的導入後に実証した。
【0134】
プラスミド
-配列番号17の配列のヒトトランスフェリンをコードする配列番号16の配列(そのシグナルペプチドをコードする配列は配列番号20の配列である);
-並びに、配列番号22の配列のヒト免疫グロブリンIgG1(ヒトTNFR-Is/ヒトIgG1)の定常断片にヒンジを介して結合したTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードする配列番号21の配列(そのシグナルペプチドをコードする配列は配列番号24の配列である);
-CMV型プロモーターの制御下にあるこれらの2つの配列
を含んでいる、プラスミドAと称される、本発明のDNA構築物をまず、従来の方法によって調製し、これは図1Aに示されている。上記の関心対象のタンパク質をたった1つしか(すなわち、配列番号17の配列のヒトトランスフェリンをコードする配列番号16の配列)コードしていないので、シンプルと呼ばれる、比較構築物も、プラスミドA構築物と類似したプラスミド骨格を用いて、類似した方法によって調製され、関心対象のタンパク質をコードする配列のみがまた、CMV型プロモーターの制御下にある。この比較プラスミド(プラスミドa'と呼ばれる)は図2に示されている。
【0135】
動物
7週令のロングエバンスラッットは、ARVOプロトコール(視覚と眼科学研究協会会議)の規定に従って使用される。ラットは、プラスミド(1つの眼あたり30μg)の両側注射及び0日目(D0)の電気的導入前に、ケタミン(40mg/kg)及びキシラジン(4mg/kg)の用量の筋肉内注射によって麻酔される。6匹のラットを、各々の分析時間(3日目、7日目、14日目、21日目、及び30日目)のために使用する。
【0136】
各分析時間において、ラットを、致死用量のペントバルビタール(400mg/kg)の投与によって安楽死させ、その後、動物から眼球を除去し、眼液(硝子体液及び眼房水)を採取し、分析まで-80℃で保存する。
【0137】
ラットの毛様体筋のレベルでの電気的導入
電気的導入は、経強膜アプローチ(Touchard "The ciliary smooth muscle electrotransfer: basic principles and potential for sustained intraocular production of therapeutic proteins", J Gene Med. 2010 Nov; 12(11): 904-19)によって注射経路を改変しつつ、Blocquel et al. "Plasmid electrotransfer of eye ciliary muscle: principles and therapeutic efficacy using hTNF-alpha soluble receptor in uveitis" (FASEB J 2006; 20:389-391)に記載されている通りに実施される。プラスミドは、適切なシリンジを使用して、動物の毛様体筋に、10μLのトリス-EDTA NaCl溶液中30μgの比率で注射される。
【0138】
電気インパルスは、直径250μmの特殊なイリジウム/白金電極を用いて投与される。この内部電極は、既存の経強膜トンネルに導入される。外部電極は、眼の形状に合うようにカーブしたステンレス鋼の薄いシートであり、内部電極とは反対側の角膜輪部のレベルに配置される。電気的導入は、Touchard et al. (J Gene Med. 2010 Nov; 12(11): 904-19)に記載のと類似した電気穿孔装置によって発生させた、8つの単極性方形波電気インパルス(200V/cm、10ミリ秒、5Hz)の速度で実施される。
【0139】
試験結果
眼液の試料は、プラスミドの注射、それに続く電気的導入(0日目)後から3日目(D+3)、7日目(D+7)、14日目(D+14)、21日目(D+21)及び30日目(D+30)に採取される。これらの各試料について、試料中に存在するヒトトランスフェリン及び/又は配列番号22の配列の抗TNFα融合タンパク質の量を測定するために、ELISAアッセイが実施される。
【0140】
このようにして、平均濃度が、時間の経過と共に各群について計算される。
【0141】
得られた結果が:
-本発明によらない構築物と比較した、本発明の構築物による3日目から30日目までに採取された眼液中で産生されたヒトトランスフェリン濃度(pg/mL)を示す図3において;及び
-3日目から30日目までに採取された眼液中で産生された配列番号22の配列の抗TNFα融合タンパク質の濃度(pg/mL)を示した図4において
示されている。
【0142】
これらの図面の検証は、抗TNFα融合タンパク質及びヒトトランスフェリンの濃度が、本発明の構築物を受けたラットにおいて経時的に一定であることを示す。
【0143】
したがって、これらの実験は、関心対象のタンパク質の1つではなく2つのコード配列の存在のために、非常に大きなサイズである本発明の構築物の適用が、標的細胞に効果的に浸透し、関心対象の部位のレベルで該構築物によってコードされる2つのタンパク質の発現を可能とするという事実を実証する。
【0144】
さらに、それらはまた、極めて意外なことに、これらの中のたった1つのタンパク質しかコードしていない構築物と比較して、それがコードするタンパク質をより安定に経時的に産生する、本発明の構築物の能力も示す(図3)。
【0145】
実施例2
本発明者らは、実施例1に使用されるものとは異なる本発明のプラスミドを使用して、実施例の第二の実験プロトコールにおいて行なわれた観察を確認した。
【0146】
プラスミド
-配列番号8の配列のデコリンをコードする配列番号7の配列;
-並びに、配列番号3の配列のアフリベルセプトをコードする配列番号2の配列;
-それぞれCMV型及びCAG型のプロモーターの制御下にあるこれらの2つの配列
を含む、プラスミドBと称される、本発明のDNA構築物がまず、従来の方法によって調製され、これは図5に示される。上記の関心対象のタンパク質をたった1つしか(すなわち、配列番号3の配列のアフリベルセプトをコードする配列番号2の配列)コードしていないので、シンプルと呼ばれる、比較構築物も、プラスミドB構築物と類似したプラスミド骨格を用いて、類似した方法によって調製され、関心対象のタンパク質をコードする単一の配列も、CAG型プロモーターの制御下にある。関心対象のこのタンパク質の発現カセットは、よって、2つの構築物において同一である。この比較プラスミド(プラスミドb'と呼ばれる)は図6に示されている。
【0147】
このプロトコールに使用される動物は、実施例1に記載の通りである。6匹のラットは、各々の分析時間(3日目、7日目、14日目及び21日目)において使用される。
【0148】
各分析時間において、ラットを、致死用量のペントバルビタール(400mg/kg)の投与によって安楽死させ、その後、動物の眼球を除去し、眼液(硝子体液及び眼房水)を採取し、分析まで-80℃で保存される。
【0149】
電気的導入は、実施例1に記載の通りに実施される。
【0150】
試験結果
眼液の試料を、プラスミドの注射、それに続く電気的導入(0日目)後から3日目(D+3)、7日目(D+7)、14日目(D+14日目)及び21日目(D+21)に採取する。これらの各試料について、試料中に存在するデコリン及び/又はアフリベルセプトの量を測定するために、ELISAアッセイが実施される。
【0151】
このようにして、平均濃度が、時間の経過と共に各群について計算される。
【0152】
得られた結果は、
-特に本発明によらない構築物と比較した、本発明の構築物による3日目から21日目までに採取された眼液中で産生されたアフリベルセプト濃度(pg/mL)を示す図7において;及び
-3日目から21日目までに採取された眼液中で産生されたデコリンの濃度(pg/mL)を示した図8において
示されている。
【0153】
これらの図面の検証は、本発明のプラスミドが、関心対象の2つの治療用タンパク質の発現を可能とすることを示す。
【0154】
したがって、これらの実験は、関心対象のタンパク質の1つではなく2つのコード配列の存在のために、非常に大きなサイズである本発明の構築物の適用が、標的細胞に効果的に浸透し、関心対象の部位のレベルで該構築物によってコードされる2つのタンパク質の発現を可能とすることを実証する。
【0155】
さらに、実施例1に上記で示されたように、それらはまた、極めて意外なことに、これらの中のたった1つのタンパク質しかコードしていない構築物と比較して、それがコードするタンパク質をより安定に経時的に産生する、本発明の構築物の能力も示す。
【0156】
実施例3
さらに、本発明者らはまた、実施例1及び2に使用されるのとは異なる本発明のプラスミドを使用して、実験プロトコールにおいて上記でなされた観察を確認した。
【0157】
プラスミド
-CMV型プロモーターの制御下にある、配列番号8の配列のデコリンをコードする配列番号11の配列;
-並びに、CAG型プロモーターの制御下にある、配列番号3の配列のアフリベルセプトをコードする配列番号2の配列
を含む、プラスミドCと称される、本発明のDNA構築物がまず、従来の方法によって調製され、これは図9に示される。
【0158】
動物
7~8週令のブラウンノルウェーラットを、ARVOプロトコール(視覚と眼科学研究協会会議)の規定に従って使用する。ラットは、プラスミド(1つの眼あたり30μg)又はビヒクル(10μL)の両側注射及び0日目(D0)の電気的導入前に、ケタミン(40mg/kg)及びキシラジン(4mg/kg)の用量の筋肉内注射によって麻酔される。6匹のラットが各処置のために使用される。電気的導入は、実施例1に記載の通りに実施される。
【0159】
3日目に、脈絡膜新生血管が、全ての動物において、網膜の数か所におけるレーザー光凝固によって誘発される(1つの眼あたり4~5回のレーザーの衝撃)。
【0160】
試験結果
病変から14日後(D17)、新生血管の血管漏出が、蛍光血管造影、及び、以下の表による血管漏出の重症度の関数としてのスコアの帰属によって評価される。
【0161】
観察グレード
過蛍光0
強度又はサイズの増加を伴わない僅かな過蛍光1
サイズの増加を伴わない、後期に強度の増加する過蛍光(中程度の漏出)2
後期におけるサイズ及び強度の増加を伴う、早期漏出を伴う、過蛍光(重度の漏出)3
【0162】
得られた結果は図10に示され、特に、処置の関数としての重度の漏出(グレード3)を伴う影響の比率を示す。
【0163】
この図面を検証すると、本発明のプラスミドは、ビヒクルを受けた動物と比較して、重度の新生血管漏出を示した影響の回数の38%の減少をもたらすようである。
【0164】
配列表
配列番号1:アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列
【表1】
【0165】
配列番号2:アフリベルセプトをコードするヌクレオチド配列
【表2】
【0166】
配列番号3:アフリベルセプトのペプチド配列
【表3】
【0167】
配列番号4:TPAシグナルペプチドのペプチド配列
【表4】
【0168】
配列番号5:TPAシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表5】
【0169】
配列番号6:デコリンをコードするヌクレオチド配列
【表6】
【0170】
配列番号7:デコリンをコードするヌクレオチド配列
【表7】
【0171】
配列番号8:デコリンのペプチド配列
【表8】
【0172】
配列番号9:デコリンをコードするヌクレオチド配列
【表9】
【0173】
配列番号10:デコリンをコードするヌクレオチド配列
【表10】
【0174】
配列番号11:デコリンをコードするヌクレオチド配列
【表11】
【0175】
配列番号12:デコリンをコードするヌクレオチド配列
【表12】
【0176】
配列番号13:デコリンの天然シグナルペプチドのペプチド配列
【表13】
【0177】
配列番号14:デコリンの天然シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表14】
【0178】
配列番号15:トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列
【表15】
【0179】
配列番号16:トランスフェリンをコードするヌクレオチド配列
【表16】
【0180】
配列番号17:ヒトトランスフェリンのペプチド配列
【表17】
【0181】
配列番号18:ヒトトランスフェリンの天然シグナルペプチドのペプチド配列
【表18】
【0182】
配列番号19:トランスフェリンの天然シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表19】
【0183】
配列番号20:トランスフェリンのシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表20】
【0184】
配列番号21:ヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介してTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(Peppel et al., J Exp Med, 174: 1483-1489 - Murphy et al., Arch Ophthalmol, 22: 845-851)。
【表21】
【0185】
配列番号22:ヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片にヒンジを介してTNFαに対するヒト受容体p55の細胞外ドメインを含む融合タンパク質のペプチド配列(Peppel et al., J Exp Med, 174: 1483-1489 - Murphy et al., Arch Ophthalmol, 22: 845-851)。
【表22】
【0186】
配列番号23:配列番号22の配列のタンパク質の天然シグナルペプチドのペプチド配列
【表23】
【0187】
配列番号24:配列番号23の配列のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表24】
【0188】
配列番号25:補体因子Hをコードするヌクレオチド配列
【表25】


【0189】
配列番号26:補体因子Hのペプチド配列
【表26】
【0190】
配列番号27:因子Hの天然シグナルペプチドのペプチド配列
【表27】
【0191】
配列番号28:因子Hの天然シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表28】
【0192】
配列番号29:HTLV-1エンベロープのシグナルペプチドのペプチド配列
【表29】
【0193】
配列番号30:HTLV-1エンベロープのシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
【表30】
【0194】
配列番号31:E.coliR6Kプラスミドガンマの複製起点の配列
【表31】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023531289000001.app
【国際調査報告】