IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカルの特許一覧 ▶ アシスタンス ピュブリク−オピトー ドゥ パリの特許一覧 ▶ ソルボンヌ・ユニヴェルシテの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ ドゥ パリの特許一覧

特表2023-531305術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。
<>
  • 特表-術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。 図1A
  • 特表-術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。 図1B
  • 特表-術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。 図2A
  • 特表-術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。 図2B
  • 特表-術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】術前補助療法後の固形癌患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法。
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230713BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230713BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230713BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/68
C12Q1/6837 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580863
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2021067738
(87)【国際公開番号】W WO2022002873
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20305730.2
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】パージュ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ギャロン,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ゼイトゥン,ギュイ
(72)【発明者】
【氏名】キリロフスキー,アモス
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
術前補助療法後に固形がんに罹患している患者の再発および/または死亡のリスクを予測する方法
現在、局所進行がんの治療を個別化するためのバイオマーカーはない。本発明者らは、局所進行直腸癌において、診断用生検に適応した免疫スコア(ISB)が術前補助療法(nT)に対する反応を予測し、臓器保存戦略(ウォッチ・アンド・ウエイト)に適格な患者をより適切に定義できるかどうかを評価した。nTで治療された後根治手術を受けたLARC患者の2つの独立したコホート(n1=131、n2=118)からの生検は、CD3+およびCD8+T細胞について免疫染色され、デジタル病理学によって定量化されてISBが決定された。nT後の免疫関連遺伝子の発現が調査された(n=64患者)。結果は、nTおよび無病生存率(DFS)に対する反応と相関していた。ISB予後パフォーマンスは、ウォッチ・アンド・ウエイトによって治療された多中心コホート(n=73患者)でさらに評価された。本発明者らは、ISBが独立したパラメーターであり、DFSを予測する前(P<0.001)およびnT後(P<0.05)のイメージングよりも有益であることを示した。ISBとnT後の画像診断を組み合わせることで、臓器保存戦略の恩恵を受けることができる非常に優れた応答者を識別することができた。したがって、本発明は、術前アジュバント療法後の固形癌患者の再発および/または死亡を予測する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのパラメーターを評価する工程を含む、術前補助療法後の固形癌患者の再発および/または死亡のリスクを予測する方法であって、第1のパラメーターが術前補助療法の前に決定された免疫応答であり、第2のパラメーターは、術前補助療法後に決定された臨床応答であり、前記パラメーターの組み合わせは、再発および/または死亡のリスクを示す、前記方法。
【請求項2】
患者が原発性癌または転移性癌に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者が局所進行癌に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者が局所進行直腸癌に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
術前補助療法が、放射線療法、化学療法、標的療法、ホルモン療法、免疫療法、またはそれらの組み合わせからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
術前補助療法が、放射線療法と化学療法との組み合わせからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
免疫応答が、術前補助化学療法の前に患者から得られた生検腫瘍サンプルにおいて決定された1つまたは複数の免疫マーカーを定量化することによって評価される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
免疫マーカーが、CD3+細胞の密度、CD8+細胞の密度、CD45RO+細胞の密度、GZM-B+細胞の密度、CD103+細胞の密度および/またはB細胞の密度を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
免疫マーカーが、CD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度、CD3+細胞の密度およびCD45RO+細胞の密度、CD3+細胞の密度GZM-B+細胞の密度、CD8+細胞の密度およびCD45RO+細胞の密度、CD8+細胞の密度およびGZM-B+細胞の密度、CD45RO+細胞の密度およびGZM-B+細胞の密度、またはCD3+細胞の密度およびCD103+細胞の密度を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
腫瘍生検サンプルにおけるCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度が決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
免疫マーカーが、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2、およびTBX21からなる群からの1つ以上の遺伝子の発現レベルを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
免疫マーカーが、GZMH、IFNG、CXCL13、GNLY、LAG3、ITGAE、CCL5、CXCL9、PF4、IL17A、TSLP、REN、IHH、PROM1およびVEGFAからなる群からの1つ以上の遺伝子の発現レベルを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
免疫マーカーが、ヒト適応免疫応答を代表する少なくとも1つの遺伝子の発現レベルおよびヒト免疫抑制応答を代表する少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
ヒト適応免疫応答を代表する少なくとも1つの遺伝子が、CCL5、CCR2、CD247、CD3E、CD3G、CD8A、CX3CL1、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、IFNG、IL15、IRF1、ITGAE、PRF1、STAT1およびTBX21からなる群から選択され、およびヒト免疫抑制応答を代表する前記少なくとも1つの遺伝子は、CD274、CTLA4、IHH、IL17A、PDCD1、PF4、PROM1、REN、TIM-3、TSLP、および VEGFAからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫応答が、以下の工程:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中の1つまたは複数の免疫マーカーを定量化すること;
b)前記1つまたは複数の免疫マーカーについて工程a)で得られた各値を、前記癌に罹患している患者の参照群から前記1つまたは複数の免疫マーカーのそれぞれについて得られた値の分布と比較すること;
c)前記1つ以上の免疫マーカーについて、工程a)で得られた各値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値または中央値を計算すること
を含むスコアリングシステムによって評価される、請求項7記載の方法。
【請求項16】
免疫応答が、以下の工程:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中のCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度を定量化すること;
b)工程a)で得られた各密度値を、前記癌に罹患している患者の参照群から得られた値の分布と比較すること;
c)工程a)で得られた各密度値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値を計算すること
を含む連続スコアリングシステムによって評価される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
免疫応答が、下記工程:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中のCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度を定量化すること;
b)工程a)で得られた各密度値を、前記癌に罹患している患者の参照群から得られた値の分布と比較すること;
c)工程a)で得られた各密度値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値を計算すること;および
e)工程d)で得られた算術平均値を、パーセンタイルの所定の参照算術平均値と比較すること、および
f)パーセンタイルの平均値が、パーセンタイルの参照基準算術平均値よりもそれぞれ低いか高いかに応じて、「低い」または「高い」スコアを割り当てること
を含む非連続スコアリングシステムによって評価される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
免疫応答が、下記工程:
a)前記患者から得られた腫瘍生検サンプル中のCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度を定量化すること;
b)工程a)で得られた各密度値を、前記癌に罹患している患者の参照群から得られた値の分布と比較すること;
c)工程a)で得られた各密度値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値を計算すること;および
e)工程d)で得られたパーセンタイルの算術平均値を、2つの所定の参照算術平均値パーセンタイルと比較すること、および
f)算術平均値が以下:
-パーセンタイルの所定の最低参照算術平均値よりも低い(「低い」)
-パーセンタイルの2つの所定の参照算術平均値の間に含まれる(「中間」)
-パーセンタイルの最高の所定の参照算術平均値よりも高い(「高い」)
のいずれであるかに応じて、「低」「中」または「高」のスコアを割り当てること
を含む非連続スコアリングシステムによって評価される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
臨床応答が、ctDNAのレベルの評価によって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
臨床応答が、画像化によって評価される腫瘍体積の減少の評価によって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
臨床応答が、X線撮影法、超音波画像法、磁気共鳴法、シンチグラフィー、またはトモグラフィー放出ポジトロン/コンピューター断層撮影法(PET/CT)によって評価される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
臨床応答が、ycTNMスコアリングシステムによって評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
以下の工程:
a)少なくとも2つのパラメーターを評価すること、ここで、第1のパラメーターは術前補助療法の前に決定された免疫応答であり、第2のパラメータは術前補助療法の後に決定された臨床応答である
b)アルゴリズム出力を取得するために、工程a)で評価されたパラメーターを含むかまたはそれからなるデータに対してアルゴリズムを実施することであって、実施工程が、コンピューターによって実施される、及び
c)工程b)で得られたアルゴリズム出力から再発および/または死亡のリスクを決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
臨床応答が、ycTNM=0-Iである場合、免疫スコア(例えばパーセンタイルの算術平均または中央値)が高いほど、再発および/または死亡のリスクが低く、および患者の生存期間(例えば無病生存期間など)が長いほど、臓器保存戦略を決定することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
臨床応答が、ycTNM=0-Iであり、免疫スコアが「高い」と分類される(例えば、パーセンタイルの算術平均または中央値が「高い」と分類される)と決定された場合、患者の再発および/または死亡のリスクが低く、患者の生存期間が長くなるため、臓器保存戦略を決定することができる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分野、特に腫瘍学および免疫学分野に属する。
【0002】
発明の背景
大腸癌は世界で3番目に多い癌であり、特に若年者での罹患率が増加している(1)。局所進行直腸癌(LARC)では、ネオアジュバント化学放射線療法(nCRT)に続いて根治手術が国際的なガイドラインで推奨されている(2,3)。腫瘍の再発と患者の生存は、ネオアジュバント治療(nT)に対する反応の質に強く影響される(4-6)。LARC患者の管理における最近の進歩は、nTに完全奏効する臨床的特徴と画像的特徴を持つ患者では、直腸切断を回避すること(温存戦略;例えば、Watch and Wait)が可能であることを示している(7,8)。これらの患者は許容できる治療成績であるが、約25%は早期に腫瘍の再増大を来す(9)。nCRTの効果を予測する分子マーカーは現在のところなく、非奏効例におけるnTの最適化または変更、温存療法に適した患者の選択など、治療方針の決定を導くことができない(3)。
【0003】
電離放射線は、適応性T細胞を介した免疫反応を促進/強化する能力を有し、これは局所腫瘍の退縮、遠隔腫瘍の抑制と拒絶のメカニズムに作用する(すなわち、abscopal効果)(10-12)。このことは、nT前の腫瘍部位の自然免疫反応の質と強さが、nTに対する反応の大きさに影響を与え、反応の予測マーカーとなる可能性を示唆している。さらに、腫瘍部位の自然免疫反応は、手術のみで治療される大腸がんを含む様々ながん(13)において、良好な予後と関連付けられている(14,15)。最近のデジタルパソロジーと画像解析の進歩により、免疫評価の臨床的応用が可能になった(16)。これらの技術を駆使して、大腸がんの標準的な免疫学的評価法である「イムノスコア」(IS:腫瘍とその浸潤縁におけるCD3+およびCD8+ T細胞密度の組み合わせ)が開発された。ISは、国際的な検証研究により、I-III期の大腸がんにおけるその頑健性と予後判定能力が確認されている(17)。このように、ISは腫瘍部位における自然免疫反応の信頼性の高い評価法を提供する。
【0004】
直腸癌の予備的研究により、治療前の唯一の試料である生検で腫瘍の自然免疫反応を評価できることが示唆されている(18-20)。直腸癌治療前の初回生検(ISB)で行われるImmunoscoreは、腫瘍の初期免疫反応の質を評価し、それが直腸癌治療への反応の程度と臨床結果に影響を与える可能性があるという利点を持っている。
【0005】
発明の概要。
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。特に、本発明は、術前補助療法後の固形癌に罹患した患者の再発及び/又は死亡のリスクを予測するための方法に関する。
【0006】
発明の詳細な説明。
本発明者らは、癌の生検標本に対して実施した生検適応型Immunoscore(ISB)とネオアジュバント放射線化学療法(nCRT)後の画像診断を組み合わせることによって、nCRTに対して組織学的に完全奏効(残存腫瘍なし)した患者群を識別し、低侵襲治療戦略(例えばWatch-and-Waitまたは低侵襲手術)の恩恵を受け、障害や無駄となる直腸切断術を回避することを明らかにした。
【0007】
定義
本明細書において、「腫瘍」という用語は、悪性か良性かを問わず、すべての新生物細胞の成長および増殖、ならびにすべての前がんおよびがん性の細胞および組織を指す。
【0008】
本明細書で使用する場合、「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる哺乳類における生理的状態を指すか、または記述する。本明細書で使用される用語「癌」は、癌腫、(例えば、in situ癌腫、浸潤癌腫、転移性癌腫)及び前悪性状態、それらの組織学的起源に依存しない新形態の変化を含む。用語「癌」は、罹患した組織または細胞凝集のいかなるステージ、グレード、組織形態学的特徴、侵襲性、攻撃性または悪性度にも限定されることはない。特に、ステージ0癌、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、グレードI癌、グレードII癌、グレードIII癌、悪性癌、原発癌が含まれる。
【0009】
本明細書で使用する場合、「原発性がん」という用語は、体内の最初の、または、最初の腫瘍を指す。原発性腫瘍のがん細胞は、体内の他の部位に広がり、新たな、または二次的な腫瘍を形成することがある(すなわち、転移)。
【0010】
本書では、「局所進行がん」という用語は、臓器組織で発生したがんが、他の部位には転移しないが、近くの組織やリンパ節に転移したがんを指す。
【0011】
本明細書において、「転移性がん」とは、がんが最初に発生した場所から体内の別の場所、特にリンパ節に転移したがんを指す。
【0012】
本明細書で使用する場合、用語「大腸癌」は、大腸癌を小腸より下の腸管(すなわち、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、および直腸を含む大腸(コロン))の細胞の癌によって特徴付けられる病状として定義する十分に受け入れられている医療上の定義を含んでいる。さらに、本明細書で使用される場合、用語「大腸癌」は、さらに、十二指腸および小腸(空腸および回腸)の細胞の癌によって特徴付けられる、医学的状態も含む。本明細書で使用する場合、用語「マイクロサテライト不安定大腸癌」は、マイクロサテライト不安定性を特徴とする大腸癌を指す。
【0013】
本明細書では、「マイクロサテライト不安定性」または「MSI」という用語は一般的な意味を持ち、短い反復DNA配列(または「マイクロサテライト」)における挿入-欠失変異の蓄積として定義され、DNAミスマッチ修復(MMR)欠損の癌細胞の特徴であるとされている。MLH1、MSH2、MSH6、PMS2を含むいくつかのMMR遺伝子のいずれかが不活性化すると、MSIが生じる可能性がある。もともと、MSIはリンチ症候群(LS)患者におけるMMR遺伝子の生殖細胞系の欠陥と相関があり、大腸がん(CRC)患者の90%以上がMSIを示すことが明らかにされていた。その後、生殖細胞系列のMMR変異を持たない患者に発生する散発性CRCの約12%にもMSIが生じ、これらの患者のMSIはプロモーターメチル化によるMLH1遺伝子発現のサイレンシングに起因することが認識されるようになった。CRCにおけるMSIの判定は、当分野でよく知られたルーチンの方法で行われる。
【0014】
本明細書で使用する場合、「再発」という用語は、局所的(例えば、治療前にあった場所)または遠隔的(例えば、転移)な癌の再発を意味する。
【0015】
本明細書で使用されるように、本発明の文脈における「リスク」という用語は、特定の期間にわたって事象が発生する確率に関連し、被験者の「絶対」リスク又は「相対」リスクを意味することができる。絶対リスクは、関連する時間コホートに対する実際の観察後の測定値を参照するか、又は関連する時間期間にわたって追跡された統計的に有効な過去のコホートから開発された指標値を参照して測定することができる。相対リスクとは、低リスクコホートの絶対リスク又は平均的な集団リスクと比較した被験者の絶対リスクの比率をいい、臨床リスク因子の評価方法によって異なる場合がある。オッズ比(ある検査結果に対する陽性事象と陰性事象の割合)も一般的に使用される(オッズは式p/(l-p)に従っており、pは事象の確率、(1-p)は事象なしの確率)、無変換に使用される。本発明の文脈における「リスク評価」または「リスクの評価」は、事象または疾患状態が発生し得る確率、オッズ、または可能性、事象の発生率、またはある疾患状態から別の疾患状態への変換を予測することを包含する。リスク評価はまた、以前に測定された集団を基準とした絶対的または相対的な観点から、将来の臨床パラメーター、従来の実験室の危険因子値、または再発の他の指標を予測することを包含することができる。本発明の方法は、転換のリスクの連続的又はカテゴリー的な測定を行うために使用することができ、従って、転換のリスクがあると定義された被験者のカテゴリーのリスクスペクトルを診断し定義することができる。
【0016】
本明細書では、「再発までの時間」または「TTR」という用語は、最初のイベントとしての第二原発がんまたは再発の証拠なしに死亡した場合の最初の再発までの時間(年)を指すために使用される。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「生存時間」は、「無増悪生存期間」、「無死亡生存期間」及び「全生存期間」を含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、本発明の文脈における「無増悪生存期間」または「PFS」という用語は、治療中および治療後に、治療する医師または治験責任医師の評価に従って、患者の疾患が悪化しない、すなわち、進行しない期間の長さを意味する。当業者であれば理解できるように、患者の無増悪生存期間は、同様に位置する患者の対照群の平均または平均無増悪生存期間と比較して、患者が、疾患が進行しない期間を長く経験する場合に、改善または増強される。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「無病生存期間」または「DFS」は、当該技術分野においてその一般的意味を有し、無作為化から腫瘍の再発または死亡までの時間として定義され、それは典型的にアジュバント治療設定において使用される。この用語は、「無再発生存期間」としても知られている。
【0020】
本明細書で使用される場合、本発明の文脈における「全生存」または「OS」という用語は、患者群内の患者の平均生存時間を指す。当業者であれば理解できるように、患者が、患者の別のサブグループと比較して統計的に有意に長い平均生存時間を有する患者のサブグループに属する場合、患者の全生存は改善又は増強される。全生存期間の改善は、患者の1つ以上のサブグループで明らかであっても、患者集団を全体として分析した場合には明らかでない場合がある。
【0021】
本明細書で使用する場合、「短い生存時間」という表現は、被験者が、被験者の一般集団で観察される中央値(または平均値)より低い生存時間を有することを示す。被験者が短い生存時間を有する場合、被験者が「予後不良」であることを意味する。逆に、「生存期間が長い」という表現は、被験者が、被験者の一般集団で観察される中央値(または平均値)よりも高い生存期間を有することを意味する。生存期間が長い場合、「予後が良い」ことを意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、癌治療のための、抗腫瘍剤、及び/又は抗血管、及び/又は抗間質、及び/又は免疫刺激又は抑制、及び/又は血球増殖剤、及び/又は放射線療法、及び/又は高熱、及び/又は低体温を適宜連続的に又は同時に投与することを意味する。これらの投与は、アジュバントおよび/またはネオアジュバントモードで実施することができる。このようなプロトコールの構成は、定義された治療ウィンドウ内の各単剤の用量、適用の時間枠、および投与の頻度において変化し得る。現在、様々な薬剤および/または物理的方法の組み合わせ、および様々なスケジュールが検討されている。
【0023】
本明細書で使用する場合、「術前補助療法」または「ネオアジュバント療法」という用語は、例えば化学療法、放射線療法、標的療法、ホルモン療法および/または免疫療法を含むことができる治療パネルからなる術前処理レジメンで、原発腫瘍を縮小し、それによって局所療法(例えば手術)をより破壊的でないかより効果的にする、または保存手術を可能にするか臓器温存を可能にする目的で行われることを指す。
【0024】
本明細書において、「化学療法」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、化学療法剤を患者に投与することからなる治療を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「化学療法剤」という用語は、例えば、悪性細胞および組織に対して選択的に破壊的または選択的に毒性である(すなわち、薬物)またはなる(すなわち、プロドラッグ)化学化合物を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「免疫療法」は、当該技術分野における一般的な意味を有し、免疫原性薬剤、すなわち免疫応答を誘導、増強、抑制、またはその他の方法で変更することができる薬剤を投与することからなる治療法を指す。いくつかの実施形態では、免疫療法は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することからなる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「免疫チェックポイント阻害剤」は、当該技術分野における一般的な意味を有し、免疫阻害性チェックポイントタンパク質の機能を阻害する任意の化合物を指す。本明細書で使用される場合、用語「免疫チェックポイントタンパク質」は、当該技術分野においてその一般的な意味を有し、シグナルを上げる(刺激性チェックポイント分子)かまたはシグナルを下げる(抑制性チェックポイント分子)かのいずれかでT細胞により発現される分子を指す。免疫チェックポイント分子は、当技術分野において、CTLA-4およびPD-1依存性経路と同様の免疫チェックポイント経路を構成すると認識されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev Cancer 12:252-264;Mellmanら、2011.Nature 480:480-489を参照されたい)。阻害性チェックポイント分子の例には、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3及びVISTAが含まれる。阻害には、機能の低下と完全な遮断が含まれる。好ましい免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を特異的に認識する抗体である。多数の免疫チェックポイント阻害剤が知られており、これらの既知の免疫チェックポイントタンパク質阻害剤に類似して、代替の免疫チェックポイント阻害剤が(近い)将来に開発される可能性がある。免疫チェックポイント阻害剤には、ペプチド、抗体、核酸分子および低分子が含まれる。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニストCTLA-4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニストおよびBTLAアンタゴニストを挙げることができる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「放射線治療」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、電離放射線を用いた治療を指す。電離放射線は、治療されている領域(標的組織)の細胞を、その遺伝物質を損傷することによって傷つけ、または破壊し、これらの細胞が成長を続けることを不可能にするエネルギーを沈着させる。一般的に使用される放射線治療には、X線などの光子が使用される。X線は、そのエネルギー量に応じて、体の表面または深部のがん細胞を破壊するために使用される。X線ビームのエネルギーが高いほど、X線は標的組織の深部まで到達することができる。線型加速器やベータトロンは、より大きなエネルギーを持つX線を発生させる。機械を使って放射線(X線など)をがんの部位に集中させることを外部照射療法という。ガンマ線も放射線療法に使用される光子の一種である。ガンマ線は、特定の元素(ラジウム、ウラン、コバルト60など)が分解、つまり崩壊する際に放射線を放出することで自然に発生する。いくつかの実施形態では、放射線療法は外部放射線療法である。外部放射線療法の例には、従来の外部ビーム放射線療法;異なる方向から腫瘍の形状に密接に適合するように成形されたビームを送達する三次元コンフォーマル・放射線療法(3D-CRT);強度変調放射線療法(IMRT)、例えば.ヘリカルトモセラピーなど、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射し、腫瘍の形状に応じて放射線の量を変化させる治療法、コンフォーマル陽子線治療、スキャンと放射線技術を組み合わせて腫瘍のリアルタイム画像を提供し放射線治療を誘導する画像誘導放射線治療(IGRT)などがある。手術中に腫瘍に直接放射線を照射する術中放射線療法(IORT)、1回の治療で小さな腫瘍領域に大量の放射線を正確に照射する定位放射線手術、1日に2回以上の放射線治療を行う過分割放射線療法(例えば、連続過分割加速放射線療法(CHART))、1回当たりの放射線治療量が多く、分割数が少ない低分割放射線療法がある。
【0029】
本明細書で使用する「低分割放射線療法」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を持ち、放射線の総線量を大量に分割し、1日1回以下の治療を行う放射線療法を指す。
【0030】
いくつかの実施形態において、用語「接触型放射線治療」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、照射(例えば、低エネルギーX線治療)が、治療されるべき組織と接触することが意図されるアプリケータを含む装置で実施される放射線治療を指す。接触型放射線治療。典型的には、接触放射線療法はパピヨン技法を含む(Sun Myint A, Stewart A, Mills J, et al. Treatment: the role of contact X-ray brachytherapy (Papillon) in the management of early rectal cancer.Colorectal Dis. 2019;21 Suppl 1:45-52)。
【0031】
本明細書において、「標的療法」という用語は、腫瘍の発生や発癌性シグナル伝達に関与する特定のクラスのタンパク質を標的とする療法を意味する。例えば、血管内皮増殖因子に対するチロシンキナーゼ阻害剤は、癌の治療に使用されている。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ホルモン療法」または「ホルモン療法」という用語は、癌の成長を促進し得るホルモンの作用を低減、遮断、または阻害することからなる療法を指す。本明細書では、「ホルモン療法剤」という用語は、抗アンドロゲン(ステロイド性抗アンドロゲンおよび非ステロイド性抗アンドロゲンを含む)、エストロゲン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストおよびLHRHアンタゴニスト、ならびにホルモンアブレーション療法を指す。
【0033】
本明細書では、「手術」という用語は、乳房切除術、乳腺切除術、リンパ節切除術、センチネルリンパ節郭清術など、癌組織の除去のために行われる手術方法に適用される。特に、「根治的手術」という用語は、「根治的郭清」とも呼ばれ、「保存的手術」よりも広範囲で、治療目的のために腫瘍とその転移の両方を除去することを意図した手術である。
【0034】
本明細書において、「アジュバント療法」という用語は、通常、原発巣の外科的切除後に、転移の危険性があり、かつ/または再発の可能性が高い癌に罹患した患者に、追加治療として行われるあらゆるタイプの癌治療を指す。このようなアジュバント治療の目的は、予後を改善することである。補助療法は、放射線療法および療法、好ましくはホルモン療法、化学療法、免疫療法、モノクローナル抗体療法などの全身療法から構成される。
【0035】
本明細書で使用する場合、「応答性」という用語は、応答を達成する患者、すなわち、癌が根絶、減少、または改善される患者を指す。従って、患者は、「応答者」として認定される。本発明によれば、応答者は客観的な応答を有するので、この用語は、術前補助療法後に疾患が進行していないような安定化した癌を有する患者を包含することはない。非応答者」又は「難治性」患者は、術前補助療法後に癌が縮小又は改善を示さない患者を含む。本発明によれば、「非応答者」という用語は、安定化した癌を有する患者も含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「臨床応答」は、当技術分野でよく知られている任意の臨床方法によって評価される術前補助療法に対する応答を指す。例えば、臨床応答は、全身的介入後の腫瘍の大きさが、画像化及び/又はバイオマーカーの定量化によって測定される初期の大きさ及び寸法と比較され得るところで評価され得る。したがって、特に、臨床的反応は、術前補助療法の開始後の腫瘍質量及び/又は体積の変化、及び/又は術前補助療法後の遠隔転移までの時間若しくは死亡までの時間の延長を指す。奏効は、定量的に記録してもよいし、「変化なし」(NC)、「部分寛解」(PR)、「完全寛解」(CR)または他の定性的基準のような定性的な方法で記録してもよい。臨床的反応の評価は、術前補助療法の開始後、例えば数時間後、数日後、数週間後、好ましくは数ヶ月後に行うことができる。奏功の評価の典型的なエンドポイントは、術前補助療法を終了した時である。これは、典型的には術前補助療法開始後3ヶ月である。
【0037】
本明細書で使用する場合、「免疫細胞」という用語は、免疫反応に関与する細胞を指す。免疫細胞は造血系由来のものであり、B細胞やT細胞などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、顆粒球などの骨髄系細胞などがある。
【0038】
本明細書で使用する場合、「免疫応答」という用語は、腫瘍細胞に対する選択的損傷、破壊、又は人体からの排除をもたらす自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を含む。例示的な免疫応答には、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生及び細胞性細胞傷害性が含まれる。さらに、免疫応答という用語は、T細胞の活性化によって間接的に作用する免疫応答、例えば、抗体産生(体液性応答)およびサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化を含む。
【0039】
本明細書で使用する場合、「バイオマーカー」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、試料中で検出可能な任意の分子を指す。このような分子には、ペプチド/タンパク質、または核酸およびその誘導体が含まれ得る。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「免疫マーカー」は、腫瘍に対する癌患者の免疫応答の状態を示す、検出可能、測定可能、定量可能な任意のパラメーターから構成される。本明細書において、関心のある様々な免疫マーカーの各々の名称は、HUGO遺伝子命名委員会からのデータベースを含む国際的に認められた遺伝子配列及びタンパク質配列データベースにおいて見出される、対応する遺伝子の国際的に認められた名称を指す。本明細書において、注目する様々な免疫マーカーの各々の名称は、国際的に認知された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースであるGenbankにおいて見出される、対応する遺伝子の国際的に認知された名称を指すことも可能である。これらの国際的に認識された配列データベースを通じて、本明細書に記載される関心のある免疫マーカーの各々に対応する核酸配列及びアミノ酸配列を、当業者によって検索することができる。免疫マーカーは、腫瘍部位における免疫系からの細胞の存在、又はその数若しくは密度を含む。免疫マーカーはまた、腫瘍部位における免疫系からの細胞によって特異的に産生されるタンパク質の存在、又はその量も含む。また、免疫マーカーには、宿主の特定の免疫反応の上昇に関連する遺伝子の発現レベルを示す任意の生物学的物質の、腫瘍部位における存在、またはその量も含まれる。したがって、免疫マーカーには、免疫系からの細胞によって特異的に産生されるタンパク質をコードするゲノムDNAから転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の腫瘍部位での存在、またはその量が含まれる。したがって、免疫マーカーには、腫瘍組織内に動員されるBリンパ球、Tリンパ球、単球/マクロファージ樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、およびNK-DC細胞などの免疫系からの細胞によって特異的に発現される表面抗原、または代わりに前記表面抗原をコードしているmRNAが含まれる。例示的に、免疫マーカーとして使用される関心のある表面抗原には、T細胞またはT細胞サブセットによって発現されるCD3、CD4、CD8およびCD45ROが含まれる。例えば、CD3抗原の発現、又はそのmRNAの発現が免疫マーカーとして使用される場合、本発明による方法の工程a)における、この免疫マーカーの定量化は、全てのTリンパ球及びNKT細胞を含む患者の適応免疫応答のレベルを示すものである。例えば、CD8抗原の発現、又はそのmRNAの発現を免疫マーカーとして用いる場合、本発明による方法の工程a)におけるこの免疫マーカーの定量化は、細胞傷害性Tリンパ球を含む患者の適応免疫応答のレベルを示すものである。例えば、CD45RO抗原の発現、又はそのmRNAの発現が免疫マーカーとして使用される場合、本発明による方法の工程a)におけるこの免疫マーカーの定量化は、メモリーTリンパ球又はメモリーエフェクターTリンパ球を含む患者の適応免疫応答のレベルを示すものである。さらに例示的に、免疫マーカーとして使用されるタンパク質には、パーフォリン、グラニュライシン、またグランザイムBのような、免疫系からの細胞によって特異的に産生される細胞溶解タンパク質も含まれる。
【0041】
本明細書で使用する「適応免疫応答を代表する遺伝子」という表現は、腫瘍における適応免疫応答のアクターである細胞によって発現される、または腫瘍における適応免疫応答の定着に寄与する任意の遺伝子を意味する。適応免疫応答は、「獲得免疫応答」とも呼ばれ、抗原依存的なT細胞サブタイプの刺激、B細胞の活性化、抗体産生、から構成される。例えば、適応免疫応答の細胞には、細胞傷害性T細胞、TメモリーT細胞、Th1細胞およびTh2細胞、活性化マクロファージおよび活性化樹状細胞、NK細胞およびNKT細胞などが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0042】
本明細書で使用する「免疫抑制応答を代表する遺伝子」という表現は、腫瘍における免疫抑制応答の作用因子である細胞によって発現される、または腫瘍における免疫抑制応答の定着に寄与する任意の遺伝子を意味する。例えば、免疫抑制応答は、以下:
- T細胞サブタイプの抗原依存性刺激の共抑制:遺伝子CD276、CTLA4、PDCD1、CD274、TIM-3またはVTCN1(B7H4)、
- マクロファージや樹状細胞の不活性化、NK細胞の不活性化:遺伝子TSLP、CD1A、またはVEGFA、
- がん幹細胞マーカーの発現、分化および/または発がん:PROM1、IHH。
- 腫瘍環境で産生される免疫抑制タンパク質の発現:遺伝子PF4、REN、VEGFA。
例えば、免疫抑制反応の細胞には、未熟な樹状細胞(CD1A)、制御性T細胞(Treg細胞)、IL17A遺伝子を発現するTh17細胞などがある。
【0043】
本明細書で使用する場合、「試料」という用語は、本発明の方法を実施する目的で対象から得られる任意の試料を指す。いくつかの実施形態では、試料は、体液(例えば、血液試料)、細胞の集団、又は組織である。このような体液の例としては、血液、唾液、涙、精液、膣分泌物、膿、粘液、尿及び糞便が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「血液試料」という用語は、全血試料、血清試料及び血漿試料を意味する。血液試料は、静脈穿刺又は指針を含む当技術分野で既知の方法によって得られてもよい。血清試料及び血漿試料は、当技術分野で既知の遠心分離法によって得てもよい。試料は、アッセイを実施する前に、適切な緩衝液で希釈してもよい。
【0045】
本明細書で使用する場合、「腫瘍生検試料」という用語は、患者の原発性腫瘍で実施された生検、または患者の原発性腫瘍から離れた転移性試料で実施された生検から得られる腫瘍試料を意味する。例えば、大腸癌に罹患した患者の腸で行われた内視鏡的生検が挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「パラメーター」という用語は、本発明による方法を実施する際に評価される任意の特性を意味する。本明細書で使用される場合、「パラメーター値」という用語は、パラメーターに関連する値(例えば、数値)を意味する。
【0047】
本明細書において、「スコア」という用語は、数学的アルゴリズム又は数式において1つ以上のパラメーターを組み合わせることによって得られる数値を意味する。パラメーターの組み合わせは、例えば、各発現レベルに定義され指定された係数を乗じ、そのような積を合計してスコアをもたらすことによって達成され得る。スコアは、連続スコアリングシステムまたは非連続スコアリングシステムであり得るスコアリングシステムによって決定されてもよい。
【0048】
本明細書において、「スコアリングシステム」という用語は、反応(免疫反応または臨床反応)の程度を推定する手段として、合意された数値スケールの適用が使用されるあらゆる方法を指す。
【0049】
本明細書で使用する「自動採点システム」という用語は、採点システムの一部または全部が機械(例えばコンピューター)により制御され、実施されることを意味し、これにより人間の入力が限定される。
【0050】
本明細書において、「連続採点システム」という用語は、入力される1つ以上の変数が連続的である採点システムを指す。連続的」という用語は、変数がその最小値と最大値との間の任意の値を取り得ることを示す。いくつかの実施形態では、連続的な採点システムに入力される値は、変数の実際の大きさである。いくつかの実施形態では、連続採点システムに入力される値は、変数の絶対値である。いくつかの実施形態では、連続採点システムに入力される値は、変数の正規化された値である。逆に、「非連続採点システム」または「バイナリ採点システム」という用語は、各変数が予め定められた「ビン」(例えば、「高」、「中間」、または「低」)に割り当てられることを指す。例えば、評価対象の変数がCD3+T細胞の密度である場合、連続スコアリングシステムでは、関数に入力される値はCD3+T細胞の密度であり、非連続スコアリングシステムでは、まず密度値が「高密度」、「中密度」、または「低密度」に該当するかどうかを分析する。したがって、CD3+細胞/mm2が1000個、CD3+細胞/mmが500個の2つのサンプルを考えると、連続スコアリングシステムに入力する値はそれぞれ500と700となり、非連続スコアリングシステムに入力する値は、それらが該当するビンによって決まる。「high bin 」が500と1000cells/mmの両方を含む場合、各サンプルの非連続スコアリングシステムに値1が入力される。「高」と「低」のビンの間のカットオフ値が500と1000cells/mmの間のどこかにある場合、「高」の値が最初のサンプルの非連続採点システムに入力され、「低」の値が2番目のサンプルの非連続採点システムに入力されるであろう。このようなカットオフ値を決定する有用な方法は、考えられるすべてのカットオフ値に基づいて受信者操作曲線(ROC曲線)を構築し、ROC曲線上の1点をROCプロットの左上隅(0/1)に最も近づけるように決定することである。もちろん、ほとんどの場合、カットオフ値は、そのカットオフ値によって決定される感度と特異度の組み合わせが、調査する問題に対して最も有益な医療情報を提供するものを選ぶという、あまり正式ではない手順で決定されることになる。これらの値は、連続スコアリングシステムと非連続スコアリングシステムの違いを説明するためのものであり、請求項に記載されていない限り、いかなる意味でも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0051】
本明細書で使用する場合、「TNM分類」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を持ち、国際がん対策連合(UICC)により公表された分類を意味する。UICC TNM分類は、癌の病期分類のための国際的に受け入れられた標準である。UICC TNM分類は、解剖学に基づくシステムであり、腫瘍の原発性および局所リンパ節の範囲、ならびに転移の有無が記録される。TNMの個々の側面はカテゴリーと呼ばれる。Tカテゴリーは、原発腫瘍の範囲を記述する Ta、T0、Tis、T1、T2、T3、T4、Tx Nカテゴリーである。Nカテゴリーは、所属リンパ節転移の有無と範囲を記述する N0, N1, N2, N3, Nx。Mカテゴリーは、遠隔転移の有無(M0, M1, Mx)を表す。in situのがんは0期に分類される。多くの場合、発生臓器に限局した腫瘍はその程度に応じてI期またはII期、局所的に広範に広がったもの、所属リンパ節へのものはIII期、遠隔転移のあるものはIV期と分類される。術前補助療法を行った後に臨床的分類または病理学的分類を決定したことを示すために、TNM分類には接頭辞として「y」が付き、ycは臨床的分類、ypは病理学的分類を示す。初回の集学的治療中あるいはその後に分類が行われた場合には、cTNM分類あるいはpTNM分類に「y」の接頭辞が付く。したがって、ycTNMまたはypTNMは、それぞれの検査時に実際に存在する腫瘍の程度を分類する。以下は、「y」の接頭辞の使い方を説明するものである。ある患者が直腸腫瘍を患っている。術前画像診断では、腫瘍は直腸脂肪周囲に進展している。直腸周囲リンパ節の腫大が1個あり、遠隔転移の所見はない。患者は術前化学放射線療法を受ける。手術前、臨床検査、放射線検査で腫瘍は確認されず、臨床的完全奏効が得られている。手術が行われ、病理検査の結果、粘膜下層に浸潤した残存腫瘍が認められる。16個のリンパ節に腫瘍を認めないが、1個のリンパ節にムチンレイクを認める。この患者の場合、TNM分類は
- 治療前:cT3N1M0
- ネオアジュバント療法後:ycT0N0M0
- 手術後:ypT1N0M0
である。
【0052】
本明細書で使用する場合、「イムノスコア」という用語は、実施例に記載したように、患者から得られた腫瘍生検試料において決定されたCD3+およびCD8+T細胞密度の組合せを意味する。Immunoscore(登録商標)は、INSERM(Institut National De La Sante Et De La Recherche Medicale)-France)の登録商標である。特に、Insermは、01、05、09、10、42および44クラスの国際登録番号1146519により、アメリカ合衆国で正式に保護されている商標「IMMUNOSCORE」の所有者である。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語「パーセンタイル」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、観測値のグループにおける観測値の所定の割合が下回る値を示す統計で使用される尺度を指す。例えば、20パーセンタイルは、オブザベーションの20%が見出されるかもしれない値(またはスコア)である。同様に,オブザベーションの80%は,20%より上に見られる。パーセンタイルという用語とパーセンタイルランクという関連用語は、規範参照テストのスコアの報告でよく使われる。例えば、あるスコアが86パーセンタイルの場合、86はパーセンタイルランクで、観測値の86%以下に相当する(86パーセンタイルとは対照的で、観測値の86%以下、つまりすべてのスコアが100パーセンタイルであることを意味する)。25パーセンタイルは第1四分位(Q1)、50パーセンタイルは中央値または第2四分位(Q2)、75パーセンタイルは第3四分位(Q3)としても知られている。一般に、パーセンタイルと四分位は分位数の特定の種類である。
【0054】
本書で使用する「算術平均値」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を持ち、2つ以上の数値または変数を合計し、次に数値または変数の数で割ることによって得られる量を意味する。
【0055】
本明細書で使用する場合、「中央値」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を持ち、データサンプル、母集団、または確率分布の上位半分と下位半分を分離した値を意味する。データセットについては、「中央」の値と考えることができる。
【0056】
本書では、「組み合わせ」または「結合」という用語は、数学的な公式またはアルゴリズムを用いて、ある数のパラメーターを選択し、これらのパラメーターを特定のグループに配置することが可能であると定義される。
【0057】
本明細書で使用する「循環腫瘍DNA」または「ctDNA」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を持ち、がん細胞に由来し、血流中に見出されるDNAを指す。
【0058】
本書では、X線、γ線、β線、高速電子線などの高エネルギー放射線を含む透過放射線を利用した記録技術を「ラジオグラフィー」と呼ぶことにする。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「超音波画像」は、患者の身体の内部構造のリアルタイム画像(又は「ソノグラム」)を生成するために音波(例えば、20,000Hz以上の周波数)を用いる医療画像モダリティを意味する。いくつかの実施形態では、患者の身体の内部構造は、光に対して不透明であることができる。用語「超音波イメージング」、「ソノグラフィー」、及び「音響イメージング」は、本明細書において互換的に使用され得る。本明細書で使用されるように、用語「三次元」超音波は、三次元で有効かつ正確である超音波画像を指すことができる。三次元超音波モダリティの一例は、造影超音波(「CEUS」)撮像を含むことができる。
【0060】
本書では、「磁気共鳴イメージング」または「MRI」(磁気共鳴断層撮影(MRT)とも呼ばれる)という用語は、身体の構造および機能を可視化するために放射線医学で最も一般的に使用されている医療イメージング技術に関するものである。MRIは、身体のあらゆる面を詳細に画像化することができる。MRIは電離放射線を使用せず、強力な磁場を用いて体内の水中の(通常は)水素原子の核磁化を整列させる。高周波磁場は、この磁化の整列を系統的に変化させ、水素原子核にスキャナーで検出可能な回転磁場を発生させるために使用される。この信号をさらに磁場で操作することで、体内の画像を構築するのに十分な情報を得ることができる。スキャナーの中に横たわると、動物の体内の水分子に多く含まれる水素原子核(=陽子)が、強い主磁場に整列する。そこで、主磁場と直交するように高周波で発振する第2の電磁場をパルス的に印加し、陽子の一部を主磁場から押し出す。このプロトンがドリフトして主磁場に戻ると、検出可能な高周波信号が放出される。脂肪と筋肉など異なる組織のプロトンは異なる速度で再調整されるため、身体の異なる構造を明らかにすることができる。
【0061】
本書では、シンチグラフィーとは、放射性同位元素を利用して、放射線源を有する生体の二次元画像を得る記録技術であるとしている。シンチグラフィーとは、放射性同位元素を用いて、放射線源のある身体の二次元画像を得る記録技術である。放射能を感知するカメラを体の上に置くことで、目的の細胞や臓器の画像を作成することができる。粒子は、ガンマカメラ、ポジトロン放出断層撮影装置(PET)、単一光子放出コンピュータ断層撮影装置(SPECT)等の適切な装置で検出することができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ポジトロン放出断層撮影」又は「PET撮影」という用語は、特に生体の画像を撮影するためのPETの使用を指すために本明細書で使用される。この用語は、技法の結果として受け取った動的画像及び静的画像の両方を含むことが理解される。「陽電子放出断層撮影」(PET)は、体内の機能的プロセスの3次元画像又は映像を生成する核医学イメージング技術である。PETスキャナーは、生物学的に活性な分子に乗って体内に導入されたポジトロン放出核種(トレーサー)から間接的に放出されるガンマ線のペアーを検出する。そして、体内の3次元空間におけるトレーサー濃度の画像をコンピューター解析により再構築する。
【0063】
本明細書において、「コンピュータ断層撮影」または「CT」という用語は、デジタル幾何学処理を用いて、単一の回転軸の周りに撮影された大量の二次元X線画像から物体内部の三次元画像を生成する断層撮影を用いた医療画像法を意味する。本明細書で使用する用語は非排他的なものであり、CTに基づく方法とPET/CTのような組み合わせの方法を含む。
【0064】
本明細書で使用する「アルゴリズム」という用語は、1つ以上の連続的なパラメータを取り、出力値を計算する任意の数学的方程式、アルゴリズム、分析的またはプログラムされたプロセス、または統計的手法であり、「インデックス」または「インデックス値」と呼ばれることもある。
【0065】
本明細書で使用するように、「デジタル病理学」という用語は、デジタル化された標本スライドから生成された情報に基づくデータ管理に焦点を当てた病理学の下位分野である。このような画像は、形状や色、テクスチャなどの組織の特徴を表す特徴を画像内に有することが理解されよう。これらの特徴は、コンピュータを利用した技術により定量的に抽出することができる。
【0066】
本発明の方法
本発明は、少なくとも2つのパラメータを評価するステップを含む、術前補助療法後の固形癌に罹患した患者の再発および/または死亡のリスクを予測する方法に関し、ここで、第1のパラメータは術前補助療法前に決定した免疫応答であり、第2のパラメータは術前補助療法後に決定した臨床応答であり、前記パラメータの組み合わせは、再発および/または死亡のリスクを示すことを特徴とする、術前補助療法を行う方法に関する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、再発までの時間を予測するのに特に適している。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、患者の生存期間を予測するために特に好適である。特に、本発明の方法は、癌患者の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)及び/又は無病生存期間(DFS)を予測するために特に好適である。より詳細には、本発明の方法は、無病生存期間を予測するために特に好適である。
【0069】
がん
典型的には、上記方法に供される患者は、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば、肝周囲癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば、骨芽腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨肉腫、線維肉腫)骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨異形成線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、多発性骨髄腫)、脳・中枢神経系癌(例. 髄膜腫、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワンノーマ、胚芽腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例:非浸潤性乳管癌、乳房切除術、乳房切除術、乳房切除術、乳房切除術、乳房切除術、乳房切除術、乳房切除術など。非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、小葉癌、女性化乳房)、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌(例:子宮内膜腺癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌、子宮内膜癌。 子宮内膜腺癌、腺癌、乳頭状漿液腺癌、明細胞癌)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例:絨毛癌、小細胞癌)、膵臓癌(例:膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌)。 カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞がん)、喉頭・下咽頭がん、肝臓がん(血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞がんなど)、肺がん(例. 小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔・副鼻腔癌(例:エステシオネーロブラストーマ、正中線肉芽腫)、鼻咽頭癌、神経芽腫、口腔・中咽頭癌、卵巣癌、すい臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(胚性横紋筋肉腫、肺胞性横紋筋肉腫、多形横紋筋肉腫など)、唾液腺癌、皮膚癌(メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌など)、胃癌、精巣癌(セミノーマ、非セミノーマ胚細胞癌など)、胸腺癌、甲状腺癌(濾胞癌、未分化癌、低分化癌、髄膜癌など)など、胸腺がん、甲状腺がん(濾胞がん、未分化がん、低分化がん、甲状腺髄様がん)、膣がん、外陰がん、子宮がん(子宮平滑筋肉腫など)などからなる群から選択される固形癌に罹患していてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、患者は、原発性癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は局所進行癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は、II期のTNM癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は、III期のTNM癌に罹患している。
【0071】
いくつかの実施形態では、患者は、転移性癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は、ステージIVのTNM癌に罹患している。
【0072】
いくつかの実施形態において、患者は、食道癌、直腸癌、結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌又は肝臓癌に罹患している。
【0073】
いくつかの実施形態では、患者は、大腸癌、より詳細には直腸癌に罹患している。いくつかの実施形態において、患者は局所進行直腸癌に罹患している。
【0074】
術前補助療法。
いくつかの実施形態では、術前補助療法は、放射線療法、化学療法、標的療法、ホルモン療法、免疫療法、またはそれらの組み合わせからなる。いくつかの実施形態では、術前補助療法は、放射線療法と化学療法との組み合わせからなる。
【0075】
術前補助標的療法に使用できる標的の非限定的な例としては、HER1/EGFR(EGFRvIII、リン酸化(p-)EGFR、EGFR:Shc、ユビキチン化(u-)EGFR、p-EGFRvIII);ErbB2(p-ErbB2、p95HER2(truncated ErbB2)、p-p95HER2、ErbB2:Shc、ErbB2:PI3K、ErbB2:EGFR、ErbB2:Erb3、ErbB4);ErbB3(p-ErbB3、truncated ErbB3、ErbB3:PI3K、p-ErbB3: PI3K, ErbB3:Shc); ErbB4 (p-ErbB4, ErbB4:Shc); c-MET (p-c-MET, truncated c-MET, c-Met.HGF complex): HGF複合体);AKT1(p-AKT1);AKT2(p-AKT2);AKT3(p-AKT3);PTEN(p-PTEN);P70S6K(p-P70S6K);MEK(p-MEK);ERK1(p-ERK1);ERK2(p-ERK2)。PDK1(p-PDK1); PDK2(p-PDK2); SGK3(p-SGK3); 4E-BP1(p-4E-BP1); PIK3R1(p-PIK3R1); c-KIT(p-c-KIT); ER(p-ER); IGF-1R(p-IGF-1R, IGF-1R: IRS、IRS:PI3K、p-IRS、IGF-1R. PI3K);INSR(p-INSR);FLT3(p-FLT3);HGFR1(p-HGFR1);HGFR2(p-HGFR2);RET(p-RET);PDGFRA(p-PDGFRA);PDGFRB(p-PDGFRB);VEGFR1(p-VEGFR1、VEGFR1: PLCγ、VEGFR1:Src);VEGFR2(p-VEGFR2、VEGFR2:PLCγ、VEGFR2:Src、VEGFR2. ヘパリン硫酸、VEGFR2: VE-カドヘリン);VEGFR3(p-VEGFR3);FGFR1(p-FGFR1);FGFR2(p-FGFR2);FGFR3(p-FGFR3);FGFR4(p-FGFR4)である。TIE1(p-TIE1); TIE2(p-TIE2); EPHA(p-EPHA); EPHB(p-EPHB); GSK-3β(p-GSK-3β); NFKB(p-NFKB), IKB(p-IKB,p-P65. IKB);BAD(p-BAD、BAD. 14-3-3); mTOR(p-mTOR); Rsk-1(p-Rsk-1); Jnk(p-Jnk); P38(p-P38); STAT1(p-STAT1); STAT3(p-STAT3); FAK(p-FAK); RB(p-RB); Ki67; p53(p-p53); CREB(p-CREB); c-JUN(p-c-JUN); c-Src(p-c-Src);パキシリン(p-paxillin);GRB2(p-GRB2)、Shc(p-Shc)、Ras(p-Ras)、GAB1(p-GAB1)、SHP2(p-SHP2)、GRB2(p-GB2)、CRKL(p-CRKL)、PLCγ(p-PLCγ)、PKC(すなわち、p-PKCα、p-PKCβ、p-PKCδ)、アドゥシン(p-adducin)、RB 1(p-RB 1)、およびPYK2(p-PYK2)の阻害剤から選択される。
【0076】
このような阻害剤の例としては、武田薬品から入手可能なTAK165などの有機小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤CP-724,714(PfizerおよびOSI)などがある。EGFRに優先的に結合するが、HER2とEGFRが過剰発現している細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能)、経口HER2およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤のGW 72016(Glaxoから入手可能)、PKI-166(Novartisから入手可能);カネルギブ(CI-1033;ファルマシア)などのパン HER 阻害剤;dual-HER 阻害剤。イマチニブメシレート(Gleevec(登録商標))などの非選択的HER阻害剤;MAPK細胞外調節キナーゼI阻害剤CI- 1040(ファルマシアから入手可能);PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリンなどのキナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;CGP 59326、CGP 60261およびCGP 62706などのピロロピリミジン類;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含むティルフォスチン;PD-0183805(ワーナ-ランバー);キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(米国特許第5.5,804,396);ZD6474(アストラゼネカ);PTK-787(ノバルティス/シェリングAG);CI-1033(ファイザー)などのパンHER阻害剤;PKI166(ノバルティス);GW2016(グラクソ・スミスクライン);CI-1033(ファイザー);PKI-166(ファイザー);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Sugen);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1CI1(Imclone);または以下の特許公報のいずれかに記載されるようなものである:米国特許第5,804,396号;WO99/09016(アメリカンサイアナミッド);WO98/43960(アメリカンサイアナミッド);W097/38983(ワーナーランバート);WO99/06378(ワーナーランバート);WO99/06396(ワーナーランバート);WO96/30347(ファイザー);W096/33978(ゼネカ);W096/3397(ゼネカ);及びWO96/33980(ゼネカ)。いくつかの実施形態では、HER阻害剤は、EGFR阻害剤である。EGFR阻害剤は、当技術分野でよく知られている(Inhibitors of erbB-1 kinase ;Expert Opinion on Therapeutic Patents Dec 2002, Vol.12, No.12, Pages 1903-1907, Susan E Kane.)。Expert Opinion on Therapeutic Patents Feb 2006, Vol.16, No.2, Pages 147-164. Peter Traxler がん治療におけるチロシンキナーゼ阻害剤(その2). Expert Opinion on Therapeutic Patents Dec, 1998, Vol.8, No.12, Pages 1599-1625)。このような薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体や有機小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(参照、米国特許4,943,533、Mendelsohnら)およびその変種、例えば、キメラ化225(C225またはセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))および再形成ヒト225(H225)(参照、WO 96/40210,Imclone Systems Inc.);フォリーヒト、EGFR標的抗体であるIMC-11F8(Imclone);II型変異EGFRと結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されているEGFRと結合するヒト化抗体およびキメラ抗体(米国特許第5,891,996号);およびEGFRと結合するヒト抗体、例えばABX-EGF(WO98/50433、Abgenix参照);EMD 55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer.32A:6606、Eur. J. Cancer 32A:636-640 (1996));EMD7200(matuzumab)EGFR結合についてEGFおよびTGF-αの両方と競合するEGFRに対するヒト化抗体;およびmAb806またはヒト化mAb806(Johnsら、J.Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004))。抗EGFR抗体は、細胞障害性薬剤とコンジュゲートして、免疫コンジュゲートを生成してもよい(例えば、EP659,439A2、Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRに結合する有機小分子の例としては、ZD1839またはゲフィチニブ(IRESSA(登録商標);Astra Zeneca);CP-358774またはエルロチニブ(TARCEVA(登録商標);Genentech/OSI);およびAG1478、AG1571(SU 5271;スゲン);EMD-7200が含まれる。いくつかの実施形態では、HER阻害剤は、ダコミチニブ(PF-00299804)などの低分子有機分子汎HER阻害剤である。いくつかの実施形態では、HER阻害剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、カナーチニブ、バンデタニブからなる群から選択される。アファチニブ、TAK-285(HER2およびEGFRデュアル阻害剤)、ARRY334543(HER2およびEGFRデュアル阻害剤)、Dacomitinib(パンErbB阻害剤)、OSI-420(デスメチルエルロチニブ)(EGFR阻害剤)、AZD8931(EGFR.ErbB阻害剤、EGFR.ErbB阻害剤、EGF2およびEGFR.ErbB阻害剤、EGFR.ErbB阻害剤)、EGFR, HER2およびHER3阻害剤)、AEE788(NVP-AEE788)(EGFR、HER2およびVEGFR 1 12阻害剤)、Pelitinib(EKB-569)(パンErbB阻害剤)、CUDC-101(EGFR、HER2およびHDAC阻害剤)、XL647(HER2およびEGFR阻害剤のデュアル剤)です。BMS-599626 (AC480) (HER2とEGFRのデュアル阻害剤)、PKC412 (EGFR、PKC、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼとS6キナーゼ阻害剤)、BIBX1382 (EGFR阻害剤)、AP261 13 (ALK とEGFR阻害剤)がある。阻害剤のセツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブはモノクローナル抗体、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチイブ、ネラチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、アファチニブはチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0077】
例示的なホルモン療法剤としては、酢酸シプロテロン、アビラテロン、フィナステリド、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、エチルスチルベストロール(DES)、酢酸メゲストロール、フォスファストロール、エスタムスチンリン酸、リュープロリド、トリプトレリン、ゴセレリン、ヒストレリン、ブセレリン、アバレリックス、デガレリックス等があるが、それらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、術前補助放射線療法は、接触型放射線療法である。
【0079】
術前アジュバント化学療法で使用できる化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミドなどのアルキル化剤が含まれるが、これらに限定されない:ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン等のアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ、カルボコン、メトレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンとブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリューセロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンモールおよびカリケアマイシンオメガル)などの抗生物質;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートや5-フルオロウラシル(5-FU)などの葉酸類似体sデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸等の葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート;デフォアミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセルおよびドキセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例:CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;および薬学的上記のいずれかの許容される塩、酸または誘導体。
【0080】
術前補助免疫療法に使用できる免疫チェックポイント阻害剤としては、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗PDL2抗体、抗TIM-3抗体、抗LAG3抗体、抗IDO1抗体、抗体、抗TIGIT抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、抗BTLA抗体、および抗B7H6抗体等が挙げられる。
【0081】
抗CTLA-4抗体の例は、米国特許第5,811,097号;国特許第5,811,097号;5,811,097;5,855,887;6,051,227;6,207,157;6,682,736;6,984,720;そして7,605,238に記載されている。1つの抗CDLA-4抗体は、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675、206)である。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、CTLA-4に結合する完全ヒトモノクローナルIgG抗体であるイピリムマブ(10D1、MDX-D010としても知られる)である。
【0082】
PD-1およびPD-L1抗体の例は、米国特許第7,488,802号;7,943,743;8,008,449;8,168,757;8,217,149、およびPCT公開特許出願番号:WO03042402、WO2008156712、WO2010089411、WO2010036959、WO2011066342、WO2011159877、WO2011082400、およびWO2011161699に記載されている。いくつかの実施形態では、PD-1遮断薬には、抗PD-L1抗体が含まれる。特定の他の実施形態では、PD-1遮断薬には、抗PD-1抗体およびニボルマブ(MDX1106、BMS936558、ONO4538)などの類似の結合タンパク質、PD-1に結合し、そのリガンドPD-L1およびPD-L2によるPD-1の活性化をブロックする完全ヒトIgG4抗体;ランブロリズマブ(MK-3475またはSCH900475);PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体;CT-011PD-1に結合するヒト化抗体;AMP-224はB7-DCの融合タンパク質である;抗体のFc部分;PD-L1(B7-H1)遮断用のBMS-936559(MDX-1105-01)を含む。
【0083】
他の免疫チェックポイント阻害剤には、可溶性Ig融合タンパク質であるIMP321などのリンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)阻害剤がある(Brignoneら、2007、J. Immunol. 179:4202-4211)。
【0084】
その他の免疫チェックポイント阻害剤としては、B7阻害剤、例えば、B7-H3阻害剤、B7-H4阻害剤などが挙げられる。特に、抗B7-H3抗体MGA271(Looら、2012年、Clin. Cancer Res. July 15 (18) 3834)が挙げられる。
【0085】
その他の免疫チェックポイント阻害剤としては、TIM3(T-cell immunoglobulin domain and mucin domain 3)阻害剤(Fourcade et al, 2010, J. Exp. Med. 207:2175-86およびSakuishiら、2010、J. Exp. Med. 207:2187-94)を含む。例えば、阻害剤は、TIM-3の発現又は活性を阻害し、TIM-3シグナル伝達経路を調節又はブロックし、及び/又はTIM-3のガレクチン-9への結合を阻害することができる。TIM-3に対して特異性を有する抗体は、当該技術分野において周知であり、典型的には、WO2011155607、WO2013006490及びWO2010117057に記載されている。
【0086】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、好ましくはIDO1阻害剤である。IDO阻害剤の例は、WO2014150677に記載されている。IDO阻害剤の例には、1-メチル-トリプトファン(IMT)、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-アラニン)、6-ニトロ-トリプトファン、6-フルオロ-トリプトファン、4-メチル-トリプトファン、5-メチルトリプトファン、6-メチル-トリプトファン、5-メトキシ-トリプトファン、5-ヒドロキシ-トリプトファン、インドール3-カルビノール、3,3’-ジインドリルメタン、没食子酸エピガロカテキン、5-Br-4-Cl-インドキシル1,3-ジアセテート、9-ビニルカルバゾール、アセメタシン、5-ブロモトリプトファン、5-ブロモインドキシルジアセテート、3-アミノナフトイン酸、ピロリジンジチオカルバメート、4-フェニルイミダゾール、ブラシニン誘導体、チオヒダントイン誘導体、β-カルボリン誘導体またはブラシレキシン誘導体。好ましくは、IDO阻害剤は、1-メチル-トリプトファン、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、6-ニトロ-L-トリプトファン、3-アミノ-ナフトイン酸およびβ-[3-ベンゾ(b)チエニル]、アラニンまたはその誘導体もしくはプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIGIT(T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン)抗体である。
【0088】
術前補助療法の前の免疫応答の評価。
いくつかの実施形態では、免疫応答は、術前補助化学療法の前に、患者から得られた生検腫瘍試料において決定された少なくとも1つの免疫マーカーを定量化することによって評価される。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、患者から得られた腫瘍生検試料中の少なくとも1つの免疫マーカーを定量化するステップを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、腫瘍生検試料は、原発腫瘍に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍生検試料は、転移巣に由来する。
【0090】
いくつかの実施形態では、腫瘍生検試料は、特に組織学または免疫組織化学法、フローサイトメトリー法、およびゲノムおよびプロテオーム解析を含む遺伝子またはタンパク質発現解析を通じて、1つまたは複数の免疫マーカーをさらに定量化するために腫瘍から除去された組織片または切片を含む。もちろん、腫瘍生検試料は、様々な周知の収集後の調製および保存技術(例えば、固定、保存、凍結など)にかけることができる。サンプルは、新鮮、凍結、固定(ホルマリン固定など)、または包埋(パラフィン包埋など)することができる。通常、腫瘍生検サンプルはホルマリンで固定され、パラフィン(ワックス)やエポキシなどの固い固定剤に埋め込まれる。この固定剤は金型に入れられ、後で硬化して容易に切断できるブロックを生成する。次に、ミクロトームを使用して材料の薄切片を作成し、スライドガラスに載せて、免疫組織化学に(BenchMarkR XTなどのIHC自動化を使用して、染色されたスライドを取得する。)。腫瘍組織サンプルは、組織マイクロアレイ(TMA)と呼ばれるマイクロアレイで使用できる。TMAは、最大1000個の個別の組織コアがアレイ状に組み立てられたパラフィンブロックで構成され、多重組織学的分析を可能にする。この技術により、DNA、RNA、またはタンパク質レベルのいずれかで、組織標本中の分子標的を一度に迅速に可視化できる。TMA技術は、WO2004000992、US8068988、Olliら、2001年、Human Molecular Genetics、Tzankovら、2005年、Elsevier コノネンら 1198;Nature Medicineに記載されている。
【0091】
前記実施形態において、免疫マーカーの定量化は、典型的には、後述の免疫組織化学(IHC)aによって行われる。前記実施形態において、免疫適応反応のマーカーの定量化は、典型的には、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを決定することによって実施される。
【0092】
いくつかの実施形態では、マーカーは、免疫系からの細胞の存在、又はその数若しくは密度を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、免疫系からの細胞によって特異的に産生されるタンパク質の存在、又はその量を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、宿主の特定の免疫反応の上昇に関連する遺伝子のレベルを示す任意の生物学的物質の存在、又はその量を含む。したがって、いくつかの実施形態では、マーカーは、免疫系からの細胞によって特異的に産生されるタンパク質をコードするゲノムDNAから転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の存在、又はその量を含んでいる。いくつかの実施形態では、マーカーは、Bリンパ球、Tリンパ球、単球/マクロファージ樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、及びNK-DC細胞を含む免疫系からの細胞によって特異的に発現される表面抗原、又は代わりに、前記表面抗原をコードするmRNAを含む。
【0093】
つ以上の免疫マーカーを用いて本発明の方法を実施する場合、工程a)において定量化される別個の免疫マーカーの数は、通常100個未満であり、ほとんどの実施形態において50個未満である。本発明の方法を用いて正確で信頼性の高い予後を得るために必要な免疫マーカーの数は、定量化のための技術の種類によって顕著に異なる場合がある。例示的に、本発明の方法が目的のタンパク質マーカーのin situ免疫組織化学的検出によって行われる場合、少数の免疫マーカーの組み合わせで高い統計的有意性を見出すことができる。例示的に、1つのマーカーのみ、または2つのマーカーの組み合わせで、高い統計的有意性が得られることが開示されている。さらに例示的に、本発明の方法が目的の遺伝子マーカーの遺伝子発現解析によって行われる場合、少数の免疫マーカーで高い統計的有意性が得られた。特定の理論に束縛されることを望むことなく、本発明者らは、本発明の方法が、免疫マーカーの定量化のために遺伝子発現解析を用いることによって行われ、10種類の免疫マーカーの組み合わせ、より好ましくは15種類の免疫マーカーの組み合わせ、最も好ましくは20種類の免疫マーカー、またはそれ以上を用いることによって、高い統計関連性(10-3より低いP値)に到達すると考えている。
【0094】
典型的には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47の組み合わせが挙げられる。48、49、及び50の異なる免疫マーカーを定量してもよく、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の免疫マーカーの組み合わせ、より好ましくは2、3、4、5、又は6の免疫マーカーの組み合わせが挙げられる。
【0095】
多数の特許出願が、本発明の方法において使用され得る、免疫応答の状態を示す多数の免疫マーカーを記載している。典型的には、WO2015007625、WO2014023706、WO2014009535、WO201386374、WO2013107907、WO2013107900、WO2012095448、WO2012072750及びWO2007045996(全て参照により組み込まれる)に記載の免疫応答の状態を示す免疫マーカーを用いることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、WO2007045996に記載されているものである。
【0097】
いくつかの実施形態において、使用され得る免疫マーカーは、免疫系からの細胞の細胞密度である。いくつかの実施形態では、免疫マーカーは、CD3+細胞の密度、CD8+細胞の密度、CD45RO+細胞の密度、GZM-B+細胞の密度、CD103+細胞の密度及び/又はB細胞の密度を含む。より好ましくは、免疫マーカーは、CD3+細胞の密度とCD8+細胞の密度、CD3+細胞の密度とCD45RO+細胞の密度、CD3+細胞の密度とGZM-B+細胞の密度、CD8+細胞の密度とCD45RO+細胞の密度、CD8+細胞の密度とGZM-B+細胞の密度、CD45RO+細胞の密度とGZM-B+細胞の密度又はCD3+細胞の密度とCD103+細胞の密度を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、CD3+細胞の密度及びCD8+細胞の密度は、腫瘍生検試料において決定される。
【0099】
いくつかの実施形態では、B細胞の密度も測定されてもよい(WO2013107900及びWO2013107907を参照されたい)。いくつかの実施形態では、DC細胞の密度も測定されてもよい(WO2013107907を参照)。
【0100】
典型的には、WO2013186374に開示された方法が、腫瘍試料中の免疫細胞の定量化に使用され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、18s、ACE、ACTB、AGTR1、AGTR2、APC、APOA1、ARF1、AXIN1、BAX、BCL2、BCL2L1、CXCR5、BMP2、BRCA1、BTLA、C3、CASP3、CASP9、CCL1、CCL11、CCL13、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL5、CCL7、CCL8、CCNB1、CCND1、CCNE1、CCR1、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCRL2、CD154、CD19、CD1a、CD2、CD226、CD244、PDCD1LG1、CD28、CD34、CD36、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD40LG、CD5、CD54、CD6、CD68、CD69、CLIP、CD80、CD83、SLAMF5、CD86、CD8A、CDH1、CDH7、CDK2、CDK4、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEACAM1、COL4A5、CREBBP、CRLF2、CSF1、CSF2、CSF3、CTLA4、CTNNB1、CTSC、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CYP1A2、CYP7A1、DCC、DCN、DEFA6、DICER1、DKK1、Dok-1、Dok-2、DOK6、DVL1、E2F4、EBI3、ECE1、ECGF1、EDN1、EGF、EGFR、EIF4E、CD105、ENPEP、ERBB2、EREG、FCGR3A、CGR3B、FN1、FOXP3、FYN、FZD1、GAPD、GLI2、GNLY、GOLPH4、GRB2、GSK3B、GSTP1、GUSB、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HLA-B、HLA-C、HLA-、MA、HLA-DMB、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DPA1、HLA-DQA2、HLA-DRA、HLX1、HMOX1、HRAS、HSPB3、HUWE1、ICAM1、ICAM-2、ICOS、ID1、ifna1、ifna17、ifna2、ifna5、ifna6、ifna8、IFNAR1、IFNAR2、IFNG、IFNGR1、IFNGR2、IGF1、IHH、IKBKB、IL10、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL17、IL17R、IL17RB、IL18、IL1A、IL1B、IL1R1、IL2、IL21、IL21R、IL23A、IL23R、IL24、IL27、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL31RA、IL4、IL4RA、IL5、IL6、IL7、IL7RA、IL8、CXCR1、CXCR2、IL9、IL9R、IRF1、ISGF3G、ITGA4、ITGA7、インテグリンアルファE(抗原CD103、ヒト粘膜リンパ球、抗原1;αポリペプチド)、遺伝子hCG33203、ITGB3、JAK2、JAK3、KLRB1、KLRC4、KLRF1、KLRG1、KRAS、LAG3、LAIR2、LEF1、LGALS9、LIRLB3、LRP2、LTA、SLAMF3、MADCAM1、MADH3、MADH7、MAF、MAP2K1、MDM2、マイカ、MICB、MKI67、MMP12、MMP9、MTA1、MTSS1、MYC、MYD88、MYH6、NCAM1、NFATC1、NKG7、NLK、NOS2A、P2X7、PDCD1、PECAM-、CXCL4、PGK1、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、PLAT、PML、PP1A、CXCL7、PPP2CA、PRF1、PROM1、PSMB5、PTCH、PTGS2、PTP4A3、PTPN6、PTPRC、RAB23、RAC/RHO、RAC2、RAF、RB1、RBL1、REN、ドロシャ、SELE、SELL、SELP、SERPINE1、SFRP1、SIRPベータ1、SKI、SLAMF1、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、SMAD2、SMAD4、SMO、SMOH、SMURF1、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7、SOD1、SOD2、SOD3、SOS1、SOX17、CD43、ST14、STAM、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK36、TAP1、TAP2、TBX21、TCF7、TERT、TFRC、TGFA、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2、TIM-3、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF11A、TNFRSF18、TNFRSF1A、TNFRSF1B、OX-40、TNFRSF5、TNFRSF6、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF10、TNFSF6、TOB1、TP53、TSLP、VCAM1、VEGF、WIF1、WNT1、WNT4、XCL1、XCR1、ZAP70、ZIC2である、WO2007045996の表9に列挙された1つ以上の遺伝子または対応するタンパク質の発現レベルを含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、免疫マーカーは、WO2014023706(参照により組み込まれる)に記載されているものである。この実施形態の下では、ヒト適応免疫応答を代表する単一の遺伝子及びヒト免疫抑制応答を代表する単一の遺伝子(一対の遺伝子)の発現レベルEL1が、本発明の方法において評価される。
【0103】
いくつかの実施形態では、適応免疫応答を代表する遺伝子は、Th1適応免疫、細胞傷害性応答、または記憶応答のための同時調節遺伝子のクラスターから選択され、Th1細胞表面マーカー、インターロイキン(またはインターロイキン受容体)、またはケモカインまたは(ケモカイン受容体)をコードし得る。いくつかの実施形態では、適応免疫応答を代表する遺伝子は、以下からなる群から選択される:
-CXCL13、CXCL9、CCL5、CCR2、CXCL10、CXCL11、CXCR3、CCL2およびCX3CL1からなるケモカインおよびケモカイン受容体のファミリー、
-以下からなるサイトカインのファミリー:IL15、
-IFNG、IRF1、STAT1、STAT4、およびTBX21で構成されるTH1ファミリー
-ITGAE、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CD247、CD69、およびICOSからなるリンパ球膜受容体のファミリー、
-GNLY、GZMH、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、およびPRF1からなる細胞毒性分子のファミリー、
及びキナーゼLTK。
【0104】
いくつかの実施形態では、適応免疫応答を代表する遺伝子は、CCL5、CCR2、CD247、CD3E、CD3G、CD8A、CX3CL1、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、IFNG、IL15、IRF1、ITGAE、PRF1、STAT1及びTBX21からなる群より選択される。
【0105】
いくつかの実施形態において、適応免疫応答を代表する遺伝子は、典型的には、共変調適応免疫遺伝子の群から選択されてもよく、一方、免疫抑制遺伝子は、免疫細胞(例えば、樹状細胞)の不活性化を代表し、免疫抑制応答の誘導に寄与してもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、免疫抑制応答を代表する遺伝子又は対応するタンパク質は、CD274、CTLA4、IHH、IL17A、PDCD1、PF4、PROM1、REN、TIM-3、TSLP、及びVEGFAからなる群から選択される。
【0107】
本発明を実施するための好ましい条件下では、適応免疫応答を代表する遺伝子は、GNLY、CXCL13、CX3CL1、CXCL9、ITGAE、CCL5、GZMH、IFNG、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、LTK、PRF1、STAT1、CD69、CD247、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21からなる群から選択され、免疫抑制応答を代表する遺伝子はPF4、REN、VEGFA、TSLP、IL17A、PROM1、IHH、CD1A、CTLA4、PDCD1、CD276、CD274、TIM-3およびVTCN1(B7H4)からなる群から選択される。
【0108】
適応的な遺伝子と免疫抑制的な遺伝子を1つずつ組み合わせると、より頻繁に有意性が認められる遺伝子があるため、最も好ましい遺伝子は以下:。
-適応的免疫反応を代表する遺伝子:CD3G、CD8A、CCR2、GZMA
-免疫抑制応答を代表する遺伝子:REN、IL17A、CTLA4およびPDCD1
である。
本発明を実施するためのさらに好ましい条件下では、適応免疫応答を代表する遺伝子および免疫抑制応答を代表する遺伝子が、上記表1および表2の遺伝子からなる群よりそれぞれ選択される。
【0109】
2組の遺伝子(合計4組)の好ましい組み合わせは:
- CCR2、CD3G、IL17AおよびREN、および
- CD8A、CCR2、RENおよびPDCD1
である。
【0110】
いくつかの実施形態では、免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、WO2014009535(参照により組み込まれる)に記載されているものである。免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2及びTBX21からなる群からの1又は複数の遺伝子の発現レベルを含むことができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、WO2012095448(参照により組み込まれる)に記載されているものである。免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、GZMH、IFNG、CXCL13、GNLY、LAG3、ITGAE、CCL5、CXCL9、PF4、IL17A、TSLP、REN、IHH、PROM1及びVEGFAからなる群からの1又は複数の遺伝子の発現レベルを含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、WO2012072750(参照により組み込まれる)に記載されているものである。免疫応答の状態を示す免疫マーカーは、miR.609、miR.518c、miR.520f、miR.220a、miR.362、miR.29a、miR.660、miR.603、miR.558、miR519b、miR.494、miR.130a、またはmiR.639を含むことができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、上記のように1つまたは複数の免疫マーカーの定量値を入力するスコアリングシステムによって評価される。
【0114】
いくつかの実施形態では、スコアリングシステムは連続スコアリングシステムである。 いくつかの実施形態では、連続スコアリングシステムは、1つまたは複数の免疫マーカーの絶対定量値を入力する。いくつかの実施形態では、連続スコアリングシステムは、患者から得られた腫瘍生検サンプルで決定された細胞密度の絶対定量値を入力する。いくつかの実施形態では、連続スコアリングシステムは、CD3+細胞密度の絶対定量値およびCD8+細胞密度の絶対定量値を入力する。これらの実施形態によれば、スコアリングシステムは連続変数(すなわちスコア)を出力する。
【0115】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、以下の工程を含む連続採点システムによって評価される:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中の1つまたは複数の免疫マーカーを定量化すること;
b)前記1つまたは複数の免疫マーカーについて工程a)で得られた各値を、前記癌に罹患している患者の参照群から前記1つまたは複数の免疫マーカーのそれぞれについて得られた値の分布と比較すること;
c)前記1つ以上の免疫マーカーについて、工程a)で得られた各値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値または中央値を計算すること。
【0116】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、以下の工程を含む連続スコアリングシステムによって評価される:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中のCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度を定量化すること;
b)工程a)で得られた各密度値を、前記癌に罹患している患者の参照群から得られた値の分布と比較すること;
c)工程a)で得られた各密度値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値を計算すること。
【0117】
いくつかの実施形態では、採点システムは非連続システムである。いくつかの実施形態では、スコアリングシステムは、1つまたは複数の免疫マーカーの絶対定量値が所定のビンに割り当てられる非連続システムである。いくつかの実施形態では、スコアリングシステムは、患者から得られた腫瘍生検サンプルで決定された細胞密度の絶対定量値が「高」または「低」ビンに割り当てられる非連続システムである。いくつかの実施形態では、スコアリングシステムは、患者から得られた腫瘍生検試料において決定されたCD3+およびCD8+細胞密度の絶対定量値が「高」または「低」ビンに割り当てられる非連続システムである。したがって、これらの特定の実施形態によれば、細胞密度値は、所定の基準値と比較され、したがって、細胞密度が所定の基準値よりも低いか高いかに応じて、「低」ビンまたは「高」ビンに割り当てられる。これらの実施形態によれば、採点システムは、「低」、「中」および「高」などの不連続変数を出力する。
【0118】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、以下の工程を含む非連続スコアリングシステムによって評価される:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中の1つまたは複数の免疫マーカーを定量化すること;
b)前記1つまたは複数の免疫マーカーについて工程a)で得られた各値を、前記癌に罹患している患者の参照群から前記1つまたは複数の免疫マーカーのそれぞれについて得られた値の分布と比較すること;
c)前記1つ以上の免疫マーカーについて、工程a)で得られた各値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値または中央値を計算すること;及び
e)工程d)で得られたパーセンタイルの算術平均値または中央値を、所定の参照算術平均値またはパーセンタイルの所定の中央値と比較すること、及び
f)パーセンタイルの算術平均値または中央値がそれぞれ、所定の参照算術平均値またはパーセンタイルの所定の中央値よりも低いか高いかに応じて、「低い」または「高い」スコアを割り当てること。
【0119】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、以下の工程を含むスコアリングシステムによって評価される:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中のCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度を定量化すること;
b)工程a)で得られた各密度値を、前記癌に罹患している患者の参照群から得られた値の分布と比較すること;
c)工程a)で得られた各密度値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値を計算すること;及び
e)工程d)で得られた算術平均値を、パーセンタイルの所定の参照算術平均値と比較すること、及び
f)パーセンタイルの算術平均値が所定の基準パーセンタイル算術平均値よりもそれぞれ低いか高いかに応じて、「低い」または「高い」スコアを割り当てること。
【0120】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、以下の工程を含むスコアリングシステムによって評価される:
a)前記患者から得られた腫瘍生検試料中のCD3+細胞の密度およびCD8+細胞の密度を定量化すること;
b)工程a)で得られた各密度値を、前記癌に罹患している患者の参照群から得られた値の分布と比較すること;
c)工程a)で得られた各密度値について、工程a)で得られた値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること;
d)パーセンタイルの算術平均値を計算すること;及び
e)工程d)で得られたパーセンタイルの算術平均値を、2つの所定の参照算術平均値パーセンタイルと比較すること、及び
f)算術平均値が以下:
-パーセンタイルの所定の最低参照算術平均値よりも低い(「低い」)
-パーセンタイルの2つの所定の参照算術平均値の間に含まれる(「中間」)
-パーセンタイルの最高の所定の参照算術平均値よりも高い(「高い」)
のいずれであるかに応じて、「低」「中」または「高」のスコアを割り当てること。
【0121】
いくつかの実施形態では、非連続スコアリングシステムは、実施例に記載の免疫スコアである。
いくつかの実施形態では、免疫応答を評価するためのスコアリングシステムは、本明細書の後および実施例に記載されるデジタル病理学を含む。
いくつかの実施形態では、スコアリングシステムは自動スコアリングシステムである。
【0122】
免疫マーカーを定量化する方法:
本明細書に含まれる細胞型、タンパク質型または核酸型の免疫マーカーを定量化するための当業者に知られている方法のいずれかを、本発明の癌予後方法を実施するために使用することができる。したがって、サンプル中のタンパク質または核酸を検出および定量化するための、当技術分野で周知の標準および非標準(新興)技術のいずれかを容易に適用することができる。
【0123】
本発明の免疫マーカーの発現は、転写された核酸またはタンパク質の発現を検出するための多種多様な周知の方法のいずれかによって評価され得る。そのような方法の非限定的な例としては、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、または核タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質機能または活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸逆転写方法、および核酸増幅方法が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、マーカーの発現は、抗体(例えば、放射性標識、発色団標識、フルオロフォア標識、ポリマー骨格抗体、または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質またはタンパク質-リガンドペアのタンパク質またはリガンド(例:ビオチン-ストレプトアビジン)、またはマーカータンパク質と特異的に結合する抗体フラグメント(例:一本鎖抗体、単離された抗体超可変ドメインなど)その通常の翻訳後修飾の全部または一部を受けたマーカータンパク質、またはそのフラグメントを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、免疫マーカーまたは免疫マーカーのセットは、当技術分野で知られている免疫組織化学法のいずれかを用いて定量化することができる。
【0126】
典型的には、さらなる分析のために、最初に腫瘍の1つの薄切片を、目的の1つの免疫マーカーに対する標識抗体とともにインキュベートする。洗浄後、目的の免疫マーカーに結合している標識抗体は、標識抗体によって担持される標識の種類、たとえば放射性、蛍光または酵素ラベルに応じて、適切な技術によって明らかにされる。複数のラベリングを同時に実行できる。
【0127】
免疫組織化学は、典型的には、i)腫瘍生検サンプルをホルマリンで固定すること、ii)前記腫瘍生検サンプルをパラフィンに包埋すること、iii)前記腫瘍生検サンプルを染色用の切片に切断すること、iv)前記切片を免疫マーカーに特異的な結合パートナーと共にインキュベートすること、v)前記切片をすすぐこと、vi)前記切片を典型的にはビオチン化された二次抗体と共にインキュベートすること、vii)抗原抗体複合体を典型的にはアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体で明らかにすることを含む。したがって、腫瘍生検試料は、最初に、免疫マーカーを有する結合パートナーと共にインキュベートされる。洗浄後、免疫マーカーに結合した標識抗体は、標識抗体が持つ標識の種類、例えば放射性、蛍光または酵素ラベルに応じて、適切な技術によって明らかにされる。複数のラベリングを同時に実行できる。あるいは、本発明の方法は、増幅システム(染色シグナルを増強するため)および酵素分子に結合された二次抗体を使用し得る。そのような結合二次抗体は、例えばDako製、EnVisionシステムから市販されている。対比染色、例えばヘマトキシリンとエオシン、DAPI、ヘキストを使用することができる。他の染色方法は、自動化、半自動化、または手動システムを含む、当業者に明らかな任意の適切な方法またはシステムを使用して達成することができる。
【0128】
例えば、1つまたは複数の標識を抗体に付着させることができ、それによって標的タンパク質(すなわち、免疫マーカー)の検出が可能になる。例示的な標識には、放射性同位体、フルオロフォア、リガンド、化学発光剤、酵素、およびそれらの組み合わせが含まれる。一次および/または二次親和性リガンドに結合できる標識の非限定的な例には、蛍光染料または金属(例えばフルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレスカミン)、発色団染料(例えばロドプシン)、化学発光化合物(例えば管腔、イミダゾール)および生物発光タンパク質(ルシフェリン、ルシフェラーゼなど)、ハプテン(ビオチンなど)を含む。さまざまな他の有用な蛍光体および発色団が、Stryer L (1968) Science 162:526-533 および Brand L and Gohlke J R (1972) Annu.Rev.Biochem.41:843-868 に記載されている。アフィニティーリガンドは、酵素(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ラクタマーゼなど)、放射性同位体(3H、14C、32P、35S、125Iなど)および粒子(金など)で標識することもできる。さまざまなタイプの標識を、さまざまな化学反応、例えばアミン反応またはチオール反応を使用して親和性リガンドに結合させることができる。しかしながら、アミンおよびチオール以外の他の反応基、例えばアルデヒド、カルボン酸、グルタミンを使用することができる。目的のタンパク質を検出するための様々な酵素染色法が当技術分野で知られているたとえば、酵素相互作用は、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどのさまざまな酵素、またはDAB、AEC、Fast Redなどのさまざまな色原体を使用して視覚化できる。いくつかの実施形態では、標識は量子ドットである例えば、量子ドット(Qdots)は、免疫組織化学、フローサイトメトリー、およびプレートベースのアッセイを含むアプリケーションの増加するリストにおいてますます有用になりつつあり、したがって、本発明と併せて使用され得る。Qdotナノクリスタルは、感度と定量のための非常に明るいシグナルを含む独自の光学特性、例えばイメージングと分析のための高い光安定性を持っている。単一の励起源が必要であり、コンジュゲートの範囲が拡大しているため、幅広い細胞ベースのアプリケーションで有用である。Qdotバイオコンジュゲートは、利用可能な最も明るい従来の色素に匹敵する量子収量を特徴としている。さらに、これらの量子ドットベースのフルオロフォアは、従来の色素よりも10~1000倍多くの光を吸収する。下にあるQdot量子ドットからの発光は狭く対称的であるため、他の色との重なりが最小限に抑えられ、隣接する検出チャネルへのブリードスルーが最小限に抑えられ、クロストークが減衰するが、より多くの色を同時に使用できるという事実にもかかわらず、他の例では、抗体は、標識された結合パートナーまたは抗体を介して検出できるペプチドまたはタンパク質にコンジュゲートすることができる。間接IHCアッセイでは、標識されていないため、最初の結合パートナーの結合を検出するために二次抗体または2つ目の結合パートナーが必要である。
【0129】
いくつかの実施形態では、得られた染色標本は、検出可能なシグナルを観察し、染色のデジタル画像などの画像を取得するためのシステムを使用してそれぞれ画像化される。画像取得の方法は、当業者に周知である。例えば、サンプルが染色されると、例えば、正立または倒立光学顕微鏡、走査共焦点顕微鏡、カメラ、走査またはトンネリング電子顕微鏡、キャニングプローブ顕微鏡、イメージング赤外線検出器などの任意の光学または非光学イメージング装置を使用して、染色またはバイオマーカー標識を検出することができる。。いくつかの例では、画像をデジタルでキャプチャできる。得られた画像は、サンプル中の免疫チェックポイントタンパク質の量、関心のあるマーカーに対して陽性の細胞の絶対数、または関心のあるマーカーに対して陽性である細胞の表面を定量的または半定量的に決定するために使用できる。IHCでの使用に適した様々な自動サンプル処理、スキャンおよび分析システムが当技術分野で利用可能である。このようなシステムには、自動染色および顕微鏡スキャン、コンピューター化された画像解析、連続切片比較(サンプルの向きとサイズの変動を制御するため)、デジタルレポートの作成、およびサンプルのアーカイブと追跡(どの組織切片が配置されたかのスライドなど)が含まれる。従来の光学顕微鏡とデジタル画像処理システムを組み合わせて、免疫染色サンプルを含む細胞や組織の定量分析を行う細胞イメージングシステムが市販されている。たとえば、CAS-200システム(Becton,Dickinson&Co.)を参照されたい。特に、検出は手動で、またはコンピュータープロセッサおよびソフトウェアを含む画像処理技術によって行うことができる。このようなソフトウェアを使用して、例えば、画像は、当業者に知られている手順を使用して、例えば、染色の質または染色強度を含む要因に基づいて、構成、較正、標準化、および/または検証することができる(例えば、公開された米国特許公開番号US20100136549)。画像は定量的または半定量的に分析され、サンプルの染色強度に基づいてスコア付けされる。定量的または半定量的組織化学とは、組織化学検査を受けたサンプルをスキャンしてスコアリングし、特定のバイオマーカー(すなわち、免疫チェックポイントタンパク質)の存在を定量する方法をいう。定量的または半定量的な方法では、画像化ソフトウェアを使用して染色密度または染色量を検出するか、訓練を受けたオペレーターが結果を数値的にランク付けする人間の目による染色を検出する方法を使用できる。たとえば、画像は、ピクセルカウントアルゴリズムと組織認識パターン(例:Aperio Spectrumソフトウェア、Automated Quantitatative Analysisプラットフォーム(AQUARプラットフォーム)、またはIlasticおよびCalopixソフトウェアを使用したTribvn)、および染色の程度を測定または定量化または半定量化するその他の標準的な方法、例えば、米国特許No.8,023,714;米国特許第7,257,268号。米国特許第7,219,016号;米国特許第7,646,905号;公開された米国特許公開番号US20100136549および20110111435;キャンプら(2002)Nature Medicine、8:1323-1327;Bacusら。(1997)Analyt Quant Cytol Histol,19:316-328)を参照のこと。全染色面積の合計に対する強い陽性染色(茶色の染色など)の比率を計算し、スコアを付けることができる。検出されたバイオマーカー(すなわち、免疫チェックポイントタンパク質)の量は定量化され、陽性ピクセルのパーセンテージおよび/またはスコアとして示される。たとえば、量は正のピクセルのパーセンテージとして定量化できる。いくつかの例では、量は、染色された面積のパーセンテージ、例えば陽性ピクセルのパーセンテージとして定量化される。例えば、試料は、少なくともまたは約少なくともまたは約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%,13%,14%,15%,16%,17%,18%,19%,20%,21%,22%,23%,24%,25%,26%,27%,28%,29%,30%,31%,32%,33%,34%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85総染色面積と比較して、%、90%、95%以上の陽性ピクセルを有する。例えば、その量は、対象のマーカーに対して陽性の細胞の絶対数として定量化することができる。いくつかの実施形態では、試料の組織化学的染色の強度または量の数値表現であり、試料中に存在する標的バイオマーカー(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)の量を表すスコアが試料に与えられる。光学密度または面積のパーセンテージの値には、整数スケールなどのスケーリングされたスコアを与えることができる。
【0130】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、i)免疫マーカーと選択的に相互作用することができる結合パートナーを使用することにより、自動スライド染色システムによって得られた組織切片の1つまたは複数の免疫染色切片を提供すること、ii)工程i)のスライドのデジタル化を高解像度スキャンキャプチャにより進めること、iii)デジタル画像上で組織切片のスライスを検出すること、iv)同じ表面を有する均一に分散されたユニットを有するサイズ基準グリッドを提供すること、ここで、前記グリッドは、分析される組織切片のサイズに適合している、v)各ユニットの染色細胞の強度または絶対数を検出、定量化、および測定することから構成される工程を含む。
【0131】
多重組織分析技術は、腫瘍生検サンプル中のいくつかの免疫チェックポイントタンパク質を定量化するのに特に役立つ。前記技術は、単一の腫瘍生検サンプルから少なくとも5つ、または少なくとも10以上のバイオマーカーを測定できるようにする必要がある。さらに、技術がバイオマーカーの局在化を維持し、癌細胞および非癌細胞におけるバイオマーカーの存在を区別できることが有利である。前記方法には、例えば、米国特許6,602,661、6,969,615、7,214,477、7,838,222;米国公開2011/0306514(参照により本明細書に組み込まれる);Chung & Hewitt、Meth Mol Biol、Prot Blotting Detect、Kurlen & Scofield編、536:139-148、2009年、各参考文献は、層化されブロッティングされた膜、紙、フィルターなどの上に組織切片の最大8枚、最大9枚、最大10枚、最大11枚、またはそれ以上の画像を作成することを教示している、に教示されている重層免疫組織化学(L-IHC)、重層発現スキャニング(LES)または多重組織免疫ブロッティング(MTI)が含まれる。L-IHC/MTI プロセスを行うのに有用なコーティングされたメンブレンは、20/20 GeneSystems, Inc.(Rockville, MD)から入手できる。
【0132】
いくつかの実施形態では、L-IHC法は、新鮮であるか保存されているかにかかわらず、様々な組織サンプルのいずれに対しても実施することができる。サンプルには、10%の通常の緩衝ホルマリンで定期的に固定され、病理部門で処理されたコア針生検が含まれていた。組織ブロックから標準的な厚さ5μmの組織切片を、L-IHCに使用する荷電スライド上に切り出した。したがって、L-IHCは、組織切片から複数のバイオアフィニティコーティングされた膜に転写された分子のコピーを得て、本質的に組織の「画像」のコピーを生成することにより、組織切片内の複数のマーカーのテストを可能にする。パラフィン切片の場合、当技術分野で知られているように、組織切片を脱パラフィンし、例えば切片をキシレンまたはNEO-CLEARRなどのキシレン代替物、および段階的エタノール溶液に曝露する。切片は、パパイン、トリプシン、プロテイナーゼKなどのプロテイナーゼで処理することができる。次いで、例えば、スタックを通してタンパク質などの組織分子を導くための直径0.4μmの細孔を有する厚さ10μmのコーティングされたポリマー主鎖の複数のシートを含む膜基材のスタックが、組織切片上に配置される。流体および組織分子の動きは、膜表面に対して本質的に垂直になるように構成されている。切片のサンドイッチ、メンブレン、スペーサー紙、吸収紙、重りなどを熱にさらして、組織からメンブレンスタックへの分子の移動を促進することができる。組織のタンパク質の一部は、スタックのバイオアフィニティーでコーティングされた膜のそれぞれに捕捉される(20/20Gene Systems,Inc.,Rockville,MDから入手可能)。したがって、各膜は組織のコピーを含み、標準的な免疫ブロッティング技術を使用して異なるバイオマーカーを調べることができる。これにより、単一の組織切片で実行されるマーカープロファイルの無制限の拡張が可能になる。タンパク質の量は、スタック内の組織から離れた膜では低くなる可能性があり、これは、たとえば、組織サンプル内の分子の量が異なる場合、組織サンプルから放出される分子の移動度が異なる場合、膜への分子の結合親和性が異なる場合に発生する可能性があり、移動の長さなど、値の正規化、コントロールの実行、組織分子の移動レベルの評価などを手順に含めて、膜内、膜間、膜間で発生する変化を補正し、膜内、膜間、および膜間の情報の直接比較が可能になる。したがって、総タンパク質は、例えば、標準的な試薬および方法を使用してタンパク質などの利用可能な分子をビオチン化し、次いで膜を、当技術分野で知られているような、標識アビジンまたはストレプトアビジン;ブロット・ファスト・ステイン、ポンソー・レッド、ブリリアント・ブルー・ステインなどのタンパク質ステインに暴露することによって結合ビオチンを明らかにすることによって定量化することができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、本方法は、バイオマーカーを測定するために多重組織インプリンティング(MTI)技術を利用し、この方法は、複数のバイオマーカー、場合によっては少なくとも6つのバイオマーカーを可能にすることによって、貴重な生検組織を保存する。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明の一部として使用することもできる代替の多重組織分析システムが存在する。1つのそのような技術は、質量分析ベースの選択反応モニタリング(SRM)アッセイシステム(「液体組織」、OncoPlexDx(Rockville,MD)から入手可能である。)である。その技術は、米国特許第7,473,532号に記載されている。
【0135】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、GE Global Research(Niskayuna、NY)により開発されたマルチプレックスIHC技術を利用したものである。その技法は、米国公開2008/0118916及び2008/0118934に記載されている。そこでは、蛍光プローブをサンプルに結合させた後にシグナルを検出するステップ、次にプローブを不活性化した後にプローブを別のターゲットに結合させて検出および不活性化し、すべてのターゲットが検出されるまでこのプロセスを継続するステップを含む複数のターゲットを含む生体サンプルについて順次分析が行われる。
【0136】
いくつかの実施形態では、マルチプレックス組織イメージングを、蛍光(例えば、蛍光体または量子ドット)を使用する場合に実行することができる。蛍光体または量子ドット)を使用する場合、マルチスペクトルイメージングシステムで信号を測定することができる。マルチスペクトルイメージングは、画像の各ピクセルにおける分光情報を収集し、得られたデータをスペクトル画像処理ソフトウェアで分析する技術である。例えば、電子的に連続的に選択可能な異なる波長で一連の画像を撮影し、そのデータを扱うために設計された分析プログラムを利用することができる。このようにして、色素のスペクトルが高度に重複している場合、あるいは色素が共局在している場合、あるいは試料中の同じ場所で発生している場合でも、スペクトル曲線が異なれば、システムは複数の色素から同時に定量情報を取得することができる。多くの生体材料は、高いエネルギーの光で励起されると、より低いエネルギーの光を放出する自己蛍光を発する。この信号により、画像やデータのコントラストが低下することがある。マルチスペクトル画像処理機能を持たない高感度カメラでは、蛍光信号と一緒に自家蛍光信号も増加してしまうだけである。マルチスペクトル画像処理は、組織からの自家蛍光を混合しない、または分離することができ、それによって達成可能な信号対雑音比を増加させることができる。
簡単に言えば、以下の工程:
i)患者から得られた腫瘍組織マイクロアレイ(TMA)を提供すること、ii)次にTMA試料を目的の免疫チェックポイントタンパク質の特異性を有する抗抗体で染色すること、iii)TMAスライドをさらに上皮細胞マーカーで染色して腫瘍と間質の自動セグメンテーションを助けること、iv)次にTMAスライドを、マルチスペクトル画像システムを使用してスキャンすること、v)スキャンした画像を、強力なパターン認識アルゴリズムにより、特定の組織の検出、定量化、およびセグメンテーションを可能にする自動画像分析ソフトウェア(例.Perkin Elmer Technology)を使用して処理すること、
によって定量化を実施することが可能である。
機械学習アルゴリズムは、通常、間質から腫瘍をセグメント化し、ラベル付けされた細胞を識別するために事前に訓練されていた。
【0137】
患者から得られた腫瘍サンプルにおける遺伝子の発現レベルの決定は、当技術分野でよく知られた技術のパネルによって実施することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、この遺伝子によって産生されるmRNAの量を決定することによって評価される。
【0139】
mRNAの量を決定する方法は、当技術分野でよく知られている。例えば試料(例えば、患者から調製された細胞または組織)に含まれる核酸は、まず標準的な方法に従って、例えば溶解酵素または化学溶液を用いて抽出されるか、または製造者の指示に従って核酸結合樹脂によって抽出される。こうして抽出されたmRNAは、次にハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット分析)および/または増幅(例えば、RT-PCR)により検出される。好ましくは、定量的または半定量的なRT-PCRが好ましい。リアルタイム定量的または半定量的RT-PCRは、特に有利である。
増幅の他の方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列ベース増幅(NASBA)、RNAの定量的新世代配列決定(NGS)などが含まれる。
【0140】
少なくとも10ヌクレオチドからなり、本明細書で関心のあるmRNAに対して配列相補性または相同性を示す核酸(複数可)は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとしての有用性を見出す。そのような核酸は、完全に同一である必要はないが、典型的には、同等のサイズの相同領域と少なくとも約80%同一であり、より好ましくは85%同一、さらに好ましくは90~95%同一であることが理解される。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションを検出するために、検出可能な標識などの適切な手段と組み合わせて核酸を使用することが有利であろう。多種多様な適切な指標は、蛍光性、放射性、酵素性または他のリガンド(例えば、アビジン/ビオチン)を含む、当該技術分野で知られている。
【0141】
プローブは、典型的には10~1000ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸からなり、例えば10~800、より好ましくは15~700、典型的には20~500ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸である。プライマーは、通常、10~25ヌクレオチドの間の短い一本鎖核酸であり、増幅されるべき目的の核酸と完全にまたはほぼ完全に一致するように設計される。プローブおよびプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に対して「特異的」であり、すなわち、それらは好ましくは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下(最高融解温度Tmに対応し、例えば、50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC。SCCは0.15M NaCl、0.015M Na-citrateである)。
【0142】
上記増幅・検出方法において、プライマーまたはプローブとして使用され得る核酸は、キットとして組み立てることができる。このようなキットには、コンセンサスプライマーおよび分子プローブが含まれる。好ましいキットは、増幅が起こったかどうかを判定するために必要な成分も含む。キットはまた、例えば、PCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応制御プライマー;ならびに特定配列の増幅および検出のための説明書を含み得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫マーカーの発現は、バイオマーカー(そのDNA、RNA又はタンパク質について)にデジタルオリゴヌクレオチドバーコードでタグ付けし、バーコードの数を測定又はカウントすることによって評価され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを提供する工程と、RNAを増幅および特異的プローブとのハイブリダイゼーション、より詳細には定量または半定量RT-PCRの手段によって受ける工程を含む。
【0145】
開示された方法を用いて製造されたプローブは、in situ hybridization(ISH)手順(例えば、蛍光in situ hybridization(FISH)、発色in situ hybridization(CISH)、銀in situ hybridization(SISH))または比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)などの核酸検出に使用することができる。
【0146】
In situハイブリダイゼーション(ISH)は、メタフェーズまたはインターフェースの染色体調製物(スライドにマウントされた細胞または組織サンプルなど)のコンテキストで標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)を含むサンプルを、標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)に対して特異的にハイブリダイズ可能または特異的に標識したプローブと接触させることを含む。スライドは任意に前処理され、例えば、均一なハイブリダイゼーションを妨害するパラフィンや他の物質を除去することができる。サンプルとプローブは共に、例えば二本鎖核酸を変性させるために加熱処理される。プローブ(適切なハイブリダイゼーションバッファーに配合)とサンプルを、ハイブリダイゼーションが起こるのに十分な条件と時間(通常、平衡に達するまで)で結合させる。染色体標本は洗浄され、過剰なプローブが除去される。
【0147】
例えば、ビオチン化プローブは、フルオレセイン標識アビジンまたはアビジン-アルカリホスファターゼを使用して検出することができる。蛍光色素の検出には、蛍光色素を直接検出するか、あるいは、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識アビジンと共に試料をインキュベートすることができる。必要に応じて、ビオチン結合ヤギ抗アビジン抗体とのインキュベーション、洗浄、FITC結合アビジンとの再インキュベーションにより、FITCシグナルを増幅させることができる。酵素活性による検出の場合、サンプルは、例えば、ストレプトアビジンとインキュベートし、洗浄し、ビオチン結合アルカリホスファターゼとインキュベートし、再度洗浄し、(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)バッファ中で)予め平衡化することが可能である。in situハイブリダイゼーション手順の一般的な説明については、例えば、米国特許第4,888,27号明細書を参照されたい。第4,888,278号を参照されたい。
【0148】
FISH、CISH、およびSISHのための多数の手順が、当技術分野で知られている。例えば、FISHを行うための手順は、米国特許第5,447,841号;同第5,472,842号;および同第5,427,932号に記載されている。第5,447,841号;第5,472,842号;および第5,427,932号;および例えば、Pinkelら、Proc.Natl.Acad.Sci.83:2934-2938、1986;Pinkelら、Proc.Natl.Acad.Sci.85:9138-9142、1988;およびLichterら、Proc.Natl.Acad.Sci.85:9664-9668,1988に記載されている。CISHは、例えば、Tannerら、Am.J.Pathol.157:1467-1472、2000、および米国特許第6,942,970号に記載されている。追加の検出方法は、米国特許第6,280,929号明細書に提供されている。
【0149】
FISH、CISH、SISHの手順には、感度、分解能、その他の望ましい特性を向上させるために、多くの試薬や検出スキームを併用することができる。上述したように、蛍光色素で標識したプローブ(蛍光色素やQUANTUM DOTS(登録商標)を含む)は、FISHを行う際に直接光学的に検出することができる。あるいは、プローブは、ハプテンなどの非蛍光分子で標識することができる(以下の非限定的な例:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、および種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリル、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノン、クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物およびそれらの組合せ)、リガンドまたは他の間接的に検出可能な部分などで、プローブをラベル化してもよい。このような非蛍光分子で標識されたプローブ(およびそれらが結合する標的核酸配列)は、次に、サンプル(例えば、プローブが結合している細胞または組織サンプル)を、選択されたハプテンまたはリガンドに特異的な抗体(または受容体、または他の特異結合パートナー)等の標識検出試薬に接触させて検出することが可能である。検出試薬は、フルオロフォア(例えば、QUANTUM DOT(登録商標))または他の間接的に検出可能な部位で標識することができ、またはフルオロフォアで標識することができる1つまたは複数の追加の特異的結合剤(例えば、二次抗体または特異抗体)と接触させることができる。
【0150】
他の例では、プローブ、または特異的結合剤(抗体、例えば一次抗体、受容体、または他の結合剤など)は、蛍光性または発色性組成物を検出可能な蛍光、着色または他の検出可能な信号(例えば、SISHにおける検出可能金属粒子の沈着におけるように)に変換することができる酵素で標識される。上に示したように、酵素は、関連するプローブまたは検出試薬に直接またはリンカーを介して間接的に付着させることができる。適切な試薬(例えば、結合試薬)および化学物質(例えば、リンカーおよび付着化学物質)の例は、米国特許出願公開番号2006/0246524;2006/0246523、および2007/0117153に記載されている。
【0151】
標識されたプローブ特異的結合剤対を適切に選択することにより、単一のアッセイ(例えば、単一の細胞もしくは組織試料上、または複数の細胞もしくは組織試料上)において複数の標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)を容易に検出するための多重検出スキームを製造できることは、当業者には理解されよう。例えば、第1の標的配列に対応する第1のプローブは、ビオチンなどの第1のハプテンで標識することができ、第2の標的配列に対応する第2のプローブは、DNPなどの第2のハプテンで標識することができる。サンプルをプローブに曝露した後、結合したプローブは、サンプルを第1の特異的結合剤(この場合、第1の蛍光体、例えば、第1のスペクトル的に異なるQUANTUM DOT(登録商標)で標識したアビジン、例えば、585mnで発光する)、および第2の特異的結合剤(この場合、第2の蛍光体(例えば、705mnで発光する第2の蛍光体)で標識された抗DNP抗体または抗体フラグメント)である。他の分光学的に異なる蛍光体を用いて、プローブと結合剤のペアを多重検出スキームに追加することができる。直接法、間接法(1段階、2段階、またはそれ以上)の多くのバリエーションが想定されるが、これらはすべて開示されたプローブおよびアッセイの文脈に適している。
【0152】
プローブは、典型的には10~1000ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸からなり、例えば10~800、より好ましくは15~700、典型的には20~500の長さの一本鎖核酸である。プライマーは、典型的には、10~25ヌクレオチドの間の短い一本鎖核酸であり、増幅されるべき目的の核酸と完全にまたはほぼ完全に一致するように設計される。プローブおよびプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に対して「特異的」であり、すなわち、それらは、好ましくは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(最高融解温度Tmに対応し、例えば、50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC。SCCは0.15M NaCl、0.015M Na-citrateである)。
【0153】
上記増幅・検出方法に用いられる核酸プライマーまたはプローブは、キットとして組み立てることができる。このようなキットには、コンセンサスプライマー及び分子プローブが含まれる。好ましいキットは、増幅が起こったかどうかを判定するために必要な成分も含む。キットはまた、例えば、PCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応制御プライマー;ならびに特定配列の増幅および検出のための説明書を含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを提供する工程と、RNAを増幅および特異的プローブとのハイブリダイゼーション、より詳細には定量または半定量RT-PCRの手段によって受ける工程を含む。
【0155】
別の好ましい実施形態では、発現レベルは、DNAチップ分析によって決定される。このようなDNAチップ又は核酸マイクロアレイは、マイクロチップ、スライドガラス又はマイクロスフィアサイズのビーズであり得る基板に化学的に付着した異なる核酸プローブで構成される。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカまたはシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラス、ニトロセルロースなどで構成することができる。プローブは、約10~約60塩基対のcDNAやオリゴヌクレオチドなどの核酸から構成される。発現レベルを決定するために、被験者のサンプルは、任意で最初に逆転写を受け、標識され、ハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイと接触し、マイクロアレイ表面に付着したプローブ配列に相補的である標的核酸間の複合体を形成することにつながる。標識されたハイブリダイゼーション複合体は、その後検出され、定量化または半定量化することができる。標識は、様々な方法、例えば、放射性標識または蛍光標識を用いることにより達成され得る。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変形が、当業者に利用可能である(例えば、Hoheiselによるレビュー、Nature Reviews、Genetics、2006、7:200-210を参照されたい)。
【0156】
遺伝子の発現量は、絶対発現量として表現してもよいし、正規化発現量として表現してもよい。本方法ではどちらの値も使用することができる。遺伝子の発現量の評価方法として定量PCRを用いる場合、実験開始時のわずかな差が何回か繰り返した後に大きな差をもたらす可能性があるため、遺伝子の発現量は正規化発現量として表すことが望ましい。
【0157】
いくつかの実施形態では、nCounter(登録商標) Analysisシステムは、内在性遺伝子発現を検出するために使用される。nCounter(登録商標) Analysisシステムの基礎は、アッセイされる各核酸標的に割り当てられた固有のコードである(国際特許出願公開番号WO 08/124847、米国特許番号8,415,102、Geissら、Nature Biotechnology. 2008. 26(3): 317-325;これらの内容は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。コードは、アッセイされる各ターゲットに固有のバーコードを作成する一連の着色された蛍光スポットで構成されている。プローブのペアは、各DNAまたはRNAターゲット、ビオチン化キャプチャープローブと蛍光バーコードを運ぶレポータープローブのために設計されている。このシステムをナノレポーターコードシステムとも呼ぶ。レポータープローブとキャプチャープローブは、各ターゲットに対して合成される。レポータープローブは、少なくとも、第1のシグナルを構成する光を発する1つ以上のラベルモノマーが付着している第1のラベル付着領域と、少なくとも、第1のラベル付着領域と重ならない第2のラベル付着領域と、第2のシグナルを構成する光を発する1つ以上のラベルモノマーと、第1のターゲット固有の配列を含み得る。好ましくは、各配列特異的レポータープローブは、1つ以下の遺伝子にハイブリダイズすることができる標的特異的配列を含み、オプションとして少なくとも3つ、または少なくとも4つのラベル付着領域を含み、前記付着領域は、それぞれ少なくとも第3シグナル、または少なくとも第4シグナルを含む、光を発する1以上のラベルモノマーを含んでいる。捕捉プローブは、第2の標的特異的配列;及び第1のアフィニティタグを含むことができる。いくつかの実施形態では、捕捉プローブは、1つ以上の標識付着領域も含み得る。好ましくは、レポータープローブの第1の標的特異的配列とキャプチャープローブの第2の標的特異的配列は、検出されるべき同じ遺伝子の異なる領域にハイブリダイズする。レポータープローブとキャプチャープローブはすべて1つのハイブリダイゼーション混合物(プローブライブラリー)にプールされる。各ターゲットの相対的な存在量は、単一の多重化ハイブリダイゼーション反応において測定される。この方法は、腫瘍組織サンプルとプローブライブラリーを接触させ、サンプル中の標的の存在によりプローブペア-標的複合体が形成されるようにすることからなる。この複合体は、その後精製される。より具体的には、試料をプローブライブラリーと結合させ、溶液中でハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーション後、三者混成複合体(プローブ対とターゲット)は、捕捉プローブとレポータープローブに存在するユニバーサル配列に相補的なオリゴヌクレオチドを連結した磁気ビーズを用いて2段階の手順で精製される。この二重の精製プロセスにより、最終的に除去されるため、大過剰のターゲット特異的プローブでハイブリダイゼーション反応を完了まで駆動することができ、したがって、サンプルの結合とイメージングを妨害することがない。ハイブリダイゼーション後の全てのステップは、カスタム液体ハンドリングロボット(Prep Station, NanoString Technologies)でロボット的に処理される。精製された反応物は、通常、Prep Stationによってサンプルカートリッジの個々のフローセルに供給され、キャプチャープローブを介してストレプトアビジンでコーティングされた表面に結合し、電気泳動によってレポータープローブが伸長され、固定化される。サンプルカートリッジは、処理後、全自動のイメージングおよびデータ収集装置(Digital Analyzer, NanoString Technologies)に移される。各サンプルをイメージングし、ターゲットのコードが検出された回数をカウントすることにより、ターゲットのレベルを測定する。各サンプルについて、結合面の約10mmに相当する600のFOV(1376X1024ピクセル)がイメージングされる。典型的なイメージング密度は、多重化の程度、サンプル投入量、およびターゲット全体の存在量によって、視野あたり100~1200のレポーターがカウントされる。データは、サンプルごとのターゲットごとのカウント数をリスト化したシンプルなスプレッドシート形式で出力される。このシステムは、ナノリポータとともに使用することができる。ナノレポーターに関する追加の開示は、国際公開番号WO 07/076129およびWO07/076132、ならびに米国特許公開番号2010/0015607および2010/0261026に見出すことができ、これらの内容は全体として本書に組み込まれる。さらに、核酸プローブおよびナノレポーターという用語は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO2010/019826および米国特許公開番号2010/0047924に記載の合理的設計(例えば、合成配列)を含むことができる。
【0158】
一般に、発現量は、患者の癌病期の判定に関係のない遺伝子、例えば、構成的に発現するハウスキーピング遺伝子の発現量と比較して、遺伝子の絶対発現量を補正することにより正規化される。正規化に適した遺伝子としては、アクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1、TFRCなどのハウスキーピング遺伝子を挙げることができる。この正規化により、あるサンプル、例えば、患者サンプルの発現レベルを別のサンプルの発現レベルと比較したり、異なる供給源からのサンプルを比較したりすることができる。
【0159】
術前補助療法後の臨床的反応の評価。
いくつかの実施形態では、術前補助療法後の臨床的奏効は、当該技術分野において周知の任意の方法によって評価される。典型的には、臨床的奏効は、画像診断(CTスキャン、MRI、IRMエコースキャンなど)、生検、液体生検、細胞診、循環血液中で測定される腫瘍バイオマーカーマーカーのレベル、ctDNAのレベル、循環腫瘍細胞のレベル、及び/又は切除された腫瘍の病理解析によって評価される。
【0160】
いくつかの実施形態では、臨床応答は、ctDNAのレベルの評価によって決定される。ctDNAのレベルを決定する方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、その方法は、WO2012/028746に記載されている。したがって、Q-PCRは、前記レベルを決定するための好ましい方法である。いくつかの実施形態において、本方法は、核標的核酸配列を増幅及び定量する工程を含む本発明によれば、核標的核酸配列は、核ヒトゲノムに存在する配列である。したがって、当業者は、適切な核標的核酸配列を容易に選択することができる。癌に罹患している患者の無細胞核酸は、腫瘍由来の核酸と非腫瘍由来の核酸とで構成されている。したがって、いくつかの実施形態では、核標的核酸配列は、変異体標的核酸配列、すなわち、関心のある腫瘍性変異を有する核酸である。したがって、癌細胞に由来する核酸のみを定量するために、腫瘍由来の変異を選択することが重要である。いくつかの実施形態では、変異は、KRAS遺伝子またはTP53遺伝子に位置する。例えば、変異は、TP53(394、395、451、453、455、469、517、524、527、530、586、590、637、641、724、733、734、743、744、817、818、819、820、839、844、916)またはPIK3CA(1530、1624、1633、1634、1636、1656、3140、3140)からなる群より選ばれる遺伝子に存在する。KRAS変異は、上記のような任意の変異を含み得る。典型的には、標的核酸配列は、160塩基対から210塩基対の間の長さを有する。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、160;165;170;175;180;185;190;195;200;205;または210塩基対の長さを有する。
【0161】
いくつかの実施形態では、臨床反応は、固形腫瘍間の反応評価の標準的な基準として使用されてきた腫瘍体積の減少の評価によって決定される。いくつかの実施形態では、腫瘍体積の減少は、画像化によって評価される。
【0162】
いくつかの実施形態において、臨床的反応は、X線撮影によって評価される。例えば、腫瘍体積の減少は、乳癌に罹患している患者に対してマンモグラフィーによって評価される。
【0163】
いくつかの実施形態では、臨床応答は、超音波画像化によって評価される。いくつかの実施形態では、超音波画像化は、三次元超音波画像化である。いくつかの実施形態では、超音波画像化は、プライマリーカラードップラーの使用を含む。ドップラー超音波血管造影は、次のようなパラメーターの評価を含む:流れの兆候の数、ピーク流速、抵抗指数(RI)及び脈動指数(PI)。また、新生血管と呼ばれる腫瘍の異常な血管構造を非侵襲的に評価することも可能である。このような腫瘍の血管構造の変化は、病理組織学的な反応と相関があるため、血管構造の研究は、主に局所進行乳がんにおいて、術前補助療法に対する反応を評価するための補完的なツールとして使用することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、臨床的反応は、磁気共鳴によって評価される。磁気共鳴画像は、術前補助療法に対する反応をモニタリングする際に評価されるX線撮影の精度を高め、したがって、可能な保存的手術の評価において関連性がある。
【0165】
いくつかの実施形態では、臨床応答は、シンチグラフィーによって評価される。いくつかの実施形態では、キレート金属は、Tc、In、Ga.Y、Lu、Re、Cu、Ac、Bi、Pb、Sm、Sc、Co、Ho、Gd、Eu、Tb、またはDyである。いくつかの実施形態では、金属は同位体、例えば放射性同位体である。いくつかの実施形態では、同位体は、Tc-94m、Tc-99m、ln-11、G-67、Ga-68、Y-86、Y-90、Lu-177、Re-186、Re-188、Cu-64、Cu-67、Co-55、Co-57、Sc-47、Ac-225、Bi-213、Bi-212、Pb-212、Sm-153、Ho-166、又はDy-166である。いくつかの実施形態では、シンチグラフィーは、核医学イメージングで使用される薬剤であるテクネチウム(99mTc)セスタミビの使用を含む。この薬剤は、放射性同位体テクネチウム-99mが6つの(sesta=6)メトキシイソブチルイソニトリル(MIBI)リガンドに結合した配位錯体である。99mTc-sestamibiの癌における蓄積と排出のメカニズムには、治療に対する腫瘍の反応に重要な細胞プロセスが関与している。
【0166】
いくつかの実施形態では、臨床反応は、トモグラフィー放出陽電子/コンピューター断層撮影法(PET/CT)により評価される。陽電子放出断層撮影法(PET)は、体内の生化学的又は生理学的プロセスを画像化するための強力な技術である。病気の代謝や生物学的活動は、常に病気の解剖学的証拠に先行している。PETは、X線、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(コンピューター解剖学的画像診断に代わるものではなく、体内の正常または病気の組織で起こっている簡単な分子プロセスの特徴を追加する生物学的画像診断技術である。陽電子とは、電子の反粒子である。陽電子は原子の核から放出されると、短い距離しか移動しない。この数ミリメートルの移動中に隣接する原子が電離し、陽電子はエネルギーを失い減速する。そして、陽電子は電子と対になって消滅相互作用を起こし、511KeVの消滅光子のペアを生成し、反対方向に移動してPET放射線検出器に到達し、画像化される。PET画像とCT画像の融合は、解剖学的・生理学的情報の正確な部位の相関に非常に有効である。PETによる腫瘍イメージングでは、2-[18F]-フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース(18F-FDG)という放射性医薬品が最も広く使用されている。18F-FDGは、生化学的には天然に存在するグルコースと非常によく似た化学構造を持つ非生理的化合物であり、細胞のグルコース代謝の外部マーカーとして機能する。多くのがん細胞はグルコースをより多く使用するため、細胞のグルコース代謝を非侵襲的に画像化できることは、腫瘍学的な応用において重要である。腫瘍における放射性核種の絶対量的な取り込みを測定することで、悪性組織と良性組織を区別することができる。標準取り込み値(SUV)と呼ばれ、腫瘍の代謝機能の測定に有用である。
【0167】
いくつかの実施形態では、腫瘍体積の減少は、術前補助療法の前と後の腫瘍の画像を位置合わせすることによって評価される。いくつかの実施形態では、画像を位置合わせすることにより、ピクセル単位又はボクセル単位での変化の定量化が可能になる。例えば、磁気共鳴画像(MRI)、コンピューター断層撮影(CT)、二次元平面X線、ポジトロン放出断層撮影(PET)、超音波(US)、光イメージング(すなわち、蛍光、近赤外線)など、多種多様な画像モダリティから得られる画像を使用して、状態、範囲、進行、したがって臨床反応に関する詳細な洞察を提供するために、画像コントラストの変化を検出し、空間的に表示する、非常に感度の高いアプローチを提供することができる。蛍光、近赤外線(NIR)、生物発光など)、単一光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)などがある。所定の装置ソース(例えば、MRI、CT、X線、PETおよびSPECT)内では、様々なデータを生成することができる。例えば、MRI装置は、拡散、灌流、透過性、正規化及び分光学的画像を生成することができ、これらは、例えば、1H、13C、23-Na、31P及び19F、過偏極ヘリウム、キセノン及び/又は13C MRIを含むがこれらに限定されない分子を含み、運動パラメータマップも生成するのに使用されることができる。PET、SPECT、CT装置は、コンピューター画像をコンピューターモデルに適合させることで、静的画像だけでなく、動態パラメーターを生成することも可能である。画像データは、ソースやモダリティに関係なく、定量化(すなわち、物理的な単位を持つ)または正規化(すなわち、画像が外部のファントムまたは既知の一定の特性または画像ボリューム内の定義された信号に対して正規化)マップとして提示することができ、画像を患者間で比較することや、異なる走査セッションで取得したデータを比較することができる。
【0168】
いくつかの実施形態では、臨床的応答は、採点システムによって評価される。いくつかの実施形態では、臨床応答は、非連続的な採点システムによって評価される。いくつかの実施形態では、臨床的奏効は、ycTNM採点システムによって評価される。いくつかの実施形態では、完全臨床応答(cCR)は、元の腫瘤が検出不能になったときに達成されたと見なされる。いくつかの実施形態では、部分奏効(cPR)は、二次元腫瘍測定値における50%以上の減少を表す。いくつかの実施形態では、進行性疾患(cPD)は、二次元の測定値が20%以上増加した場合に検出される。いくつかの実施形態において、他の全ての臨床的反応は、安定病変(cSD)として分類される。
【0169】
アルゴリズムの使用
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、アルゴリズムの使用を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、以下の工程を含む。
a)少なくとも2つのパラメーターを評価すること、ここで、第1のパラメーターが術前補助療法の前に決定された免疫応答であり、第2のパラメーターが術前補助療法の後に決定された臨床応答である、
b)アルゴリズム出力を得るように、工程a)で評価されたパラメーターを含むか、またはそれらからなるデータに対してアルゴリズムを実施すること、ここで、実施する工程は、コンピューターで実施される;および
c)工程b)で得られたアルゴリズム出力から、再発および/または死亡のリスクを決定すること。
【0171】
アルゴリズムの非限定的な例には、係数または指数などの合計、比、および回帰演算子、バイオマーカー値の変換および正規化(性別、年齢、または民族性などの臨床パラメーターに基づくそれらの正規化スキームを含むが、限定されない)、ルールおよびガイドライン、統計分類モデル、ならびに過去の集団で訓練されたニューラルネットワークが含まれる。このようにアルゴリズムの非限定的な例としては、ロジスティック回帰、線形回帰、ランダムフォレスト、分類回帰木(C&RT)、ブースト木、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジーネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、多層パーセプトロン、多層フィードフォワードネットワークなどのパーセプトロン、サポートベクター機械(例えば、以下の通り。カーネル法)、多変量適応回帰スプライン(MARS)、レベンベルグ-マルカールトアルゴリズム、ガウス-ニュートンアルゴリズム、ガウス混合物、勾配降下アルゴリズム、学習ベクトル量子化(LVQ)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。パラメーターの組み合わせにおいて特に使用されるのは、線形および非線形方程式、ならびに前記パラメーターのレベルと術前補助療法に対する客観的反応との間の関パラメーターための統計的分類分析である。特に興味深いのは、相互相関、主成分分析(PCA)、因子回転、ロジスティック回帰(LogReg)、線形判別分析(LDA)などの確立した技術を含むパターン認識機能を利用した構造および構文統計分類アルゴリズム、およびリスクインデックス構築の方法である。Eigengene線形判別分析(ELDA)、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト(RF)、再帰的分割木(RPART)、ならびに他の関連する決定木分類技術、シュランクセントロイド(SC)、ステップAIC、Kth-最近傍、ブースティング、決定木、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシンおよび隠れマルコフモデル、などである。当業者によく知られているCox、Weibull、Kaplan-Meier、Greenwoodモデルなど、生存時間およびイベントまでの時間ハザード分析において他の技術を使用することもできる。
【0172】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、機械学習アルゴリズムの使用を含んでいる。機械学習アルゴリズムは、教師あり学習アルゴリズムから構成されてもよい。教師あり学習アルゴリズムの例としては、平均-依存性推定量(AODE)、人工ニューラルネットワーク(例えば、バックプロパゲーション)、ベイズ統計学(例えば。ベイズ統計(例:ナイーブベイズ分類器、ベイズネットワーク、ベイズ知識ベース)、事例ベース推論、決定木、帰納論理プログラミング、ガウスベイズ帰、データ処理のグループ法(GMDH)、学習自動化、学習ベクトル量子化、最小メッセージ長(決定木、決定グラフ、その他。 )、遅延学習、インスタンスベース学習 Nearest Neighbor Algorithm、アナロジカルモデリング、PAC(Probably approximately correct learning)学習、知識獲得手法であるリップルダウン規則、シンボリック機械学習アルゴリズム、サブシンボリック機械学習アルゴリズム、サポートベクター機械、ランダムフォレスト、分類器のアンサンブル、ブートストラップ集約(バギング)、ブースティングなどが挙げられる。教師あり学習は、回帰分析及び情報ファジーネットワーク(IFN)などの序列分類を含んでいてもよい。あるいは、教師あり学習法は、AODE、線形分類器(例えば、フィッシャーの線形判別器、ロジスティック回帰、ナイーブベイズ分類器、パーセプトロン、サポートベクターマシン)、二次分類器、k-最近傍、ブースティング、決定木(例えば、C4.5、ランダムフォース)、ベイズネットワーク、隠れマルコフモデルなどの統計分類から構成されてもよい。また、機械学習アルゴリズムは、教師なし学習アルゴリズムで構成されてもよい。教師なし学習アルゴリズムの例としては、人工ニューラルネットワーク、データクラスタリング、期待値最大化アルゴリズム、自己組織化マップ、放射状基底関数ネットワーク、ベクトル量子化、生成地形図、情報ボトルネック法、IBSEADを挙げることができる。教師なし学習は、Aprioriアルゴリズム、Eclatアルゴリズム、FP-growthアルゴリズムなどのアソシエーションルール学習アルゴリズムから構成される場合もある。また、Single-linkage clusteringやConceptual clusteringなどの階層的クラスタリングが用いられてもよい。あるいは、教師なし学習は、K-meansアルゴリズム及びFuzzyクラスタリングなどのパーティショナルクラスタリングから構成されてもよい。いくつかの実施形態において、機械学習アルゴリズムは、強化学習アルゴリズムからなる。 強化学習アルゴリズムの例としては、時間差学習、Q-学習、及び学習オートマトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代替的に、機械学習アルゴリズムは、データ前処理を含んでいてもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、周知のコンピュータープロセッサー、メモリユニット、記憶装置、コンピュータソフトウェア、及び他の構成要素を用いてコンピューター上で実行される。典型的には、コンピューターはプロセッサを含み、このプロセッサは、そのような動作を定義するコンピュータープログラム命令を実行することによってコンピューターの全体的な動作を制御する。コンピュータープログラム命令は、記憶装置(例えば、磁気ディスク)に格納され、コンピュータプログラム命令の実行が望まれるときにメモリにロードされてもよい。コンピューターは、ユーザとコンピューターとの対話を可能にする他の入出力装置(例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタンなど)も含む。当業者であれば、実際のコンピューターの実装が他の構成要素をも含み得ることを認識するであろう。
【0174】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、クライアント-サーバ関係で動作するコンピューターを使用して実装される。典型的には、このようなシステムにおいて、クライアントコンピュータは、サーバコンピュータから遠隔に位置し、ネットワークを介して相互作用する。クライアント-サーバ関係は、それぞれのクライアントコンピュータ及びサーバコンピュータ上で動作するコンピュータプログラムによって定義され、制御されてもよい。いくつかの実施形態では、結果は、LED又はLCDを用いるなどして、表示用のシステム上に表示されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、バックエンド構成要素、例えばデータサーバとして、またはミドルウェア構成要素、例えばアプリケーションサーバを含む、またはフロントエンド構成要素、例えばユーザが実装と対話できるグラフィカルユーザインターフェースまたはWebブラウザを有するクライアントコンピュータ、または1つまたは複数のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンド構成要素の任意の組み合わせ、を含む計算システムにおいて実装されることができる。システムの構成要素は、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体、例えば通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えば、インターネットが挙げられる。コンピューティングシステムは、クライアント及びサーバを含むことができる。クライアントとサーバは、一般に、互いに離れており、通常、通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバーの関係は、それぞれのコンピューター上で実行されるコンピュータープログラムによって生じ、互いにクライアント・サーバー関係を有する。
【0175】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、ネットワークベースのクラウドコンピューティングシステム内に実装される。このようなネットワークベースのクラウドコンピューティングシステムでは、ネットワークに接続されているサーバ又は別のプロセッサが、ネットワークを介して1つ又は複数のクライアントコンピュータと通信する。クライアントコンピュータ(例えば、電話、タブレット、またはラップトップコンピュータなどのモバイルデバイス)は、例えば、クライアントコンピュータ上に常駐して動作するネットワークブラウザアプリケーションを介してサーバと通信してよい。クライアントコンピュータは、サーバにデータを格納し、ネットワークを介してデータにアクセスしてもよい。クライアントコンピュータは、データの要求やオンラインサービスの要求を、ネットワークを介してサーバーに送信することができる。サーバーは、要求されたサービスを実行し、データをクライアントコンピュータに提供することができる。また、サーバは、クライアントコンピュータに所定の機能(例えば、計算の実行、画面への所定のデータの表示など)を実行させるように適合されたデータを送信することができる。例えば、医師は、パラメータ(すなわち入力データ)をオンに登録してもよく、次に、インターネットを介して広域ネットワーク(WAN)などの長距離通信リンクを介してデータを、データ分析モジュールを有するサーバに送信し、アルゴリズムを実行し、最終的に出力(例えばスコア)をモバイルデバイスに返すことになる。
【0176】
いくつかの実施形態では、出力結果は、臨床的意思決定支援(CDS)システムに組み込むことができる。これらの出力結果は、電子医療記録(EMR)システムに組み入れることができる。
【0177】
言い換えれば、コンピュータープログラム製品とシステムとの間の相互作用は、本発明の方法を実行することを可能にする。したがって、本発明の方法は、コンピューターで実施される方法である。これは、この方法が、少なくとも部分的にコンピューターで実施されることを意味する。特に、いくつかの工程を受信データによって達成されることを条件として、各ステップはコンピューターで実施することができる。
【0178】
システムは、デスクトップコンピュータである。変形例では、システムは、ラックマウントコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、またはスマートフォンである。
【0179】
いくつかの実施形態では、計算機は、リアルタイムで動作するように適合され、及び/又は、組み込みシステムであり、特に、飛行機などの乗り物に搭載される。本実施例では、システムは、計算機と、ユーザインタフェースと、通信装置とから構成される。計算機は、システムXのレジスタ及び/又はメモリ内の電子的又は物理的量によって表されるデータを、レジスタ又は他の種類の表示装置、送信装置又はメモリ装置のメモリ内の物理的データに対応する他の同様のデータで操作及び/又は変換するよう適合された電子回路である。具体例として、計算機は、モノコアまたはマルチコアプロセッサ(中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)など)、プログラマブル論理回路(特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理装置(PLD)、プログラマブル論理アレイ(PLA)など)、状態機械、ゲート論理および個別のハードウェア部品を含む。計算機は、特に計算を行うことによってデータを処理するように適合されたデータ処理ユニットと、データを格納するように適合されたメモリと、コンピューター可読媒体を読むように適合されたリーダーを含む。ユーザインタフェースは、入力装置と出力装置を含む。入力デバイスは、システムのユーザがシステムに情報またはコマンドを入力することを可能にするデバイスである。本実施例では、入力デバイスはキーボードである。あるいは、入力装置は、ポインティングデバイス(マウス、タッチパッド、デジタル化タブレットなど)、音声認識装置、アイトラッカー、触覚装置(モーションジェスチャー分析)である。出力装置は、グラフィカル・ユーザー・インターフェースであり、システムのユーザーに情報を提供するために適合された表示装置である。本実施例では、出力装置は、出力を視覚的に提示するための表示画面である。他の実施形態では、出力装置は、プリンタ、拡張及び/又は仮想ディスプレイユニット、出力の可聴プレゼンテーションのためのスピーカ又は他の音発生装置、振動及び/又は臭いを発生するユニット、又は電気信号を発生するよう適合されたユニットである。
【0180】
いくつかの実施形態では、入力デバイスと出力デバイスは、インタラクティブスクリーンなどのマンマシンインターフェースを形成する同じコンポーネントである。
【0181】
通信装置は、システムの構成要素間の単方向または双方向の通信を可能にする。例えば、バス通信システム、入出力インターフェースなどである。
【0182】
通信装置の存在により、ある実施形態では、計算機の構成要素を互いに遠隔にすることができる。
【0183】
コンピュータ・プログラム・プロダクトは、コンピューター可読媒体を構成する。コンピューター可読媒体は、計算機の読取装置によって読み取ることができる有形の装置である。注目すべきは、コンピューター可読媒体は、ラジオ波または他の自由に伝播する電磁波、例えば光パルスまたは電子信号のような一過性の信号そのものではないことである。そのようなコンピューター―可読記憶媒体は、例えば、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁気記憶装置、半導体記憶装置、またはそれらの任意の組み合わせである。より具体的な例の非網羅的なリストとして、コンピューター可読記憶媒体は、パンチカードまたは溝内の隆起構造などの機械的に符号化されたデバイス、ディスケット、ハードディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EROM)である。EEPROM)、光磁気ディスク、SRAM(Static Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリースティック、フロッピーディスク、フラッシュメモリー、SSD(Solid State Drive Disc)、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)などのPCカードなどである。
【0184】
いくつかの実施形態では、コンピュータープログラムは、コンピューター可読記憶媒体に格納される。コンピュータープログラムは、1つ以上の記憶された一連のプログラム命令からなる。そのようなプログラム命令は、データ処理ユニットによって実行されるとき、本発明の方法のステップの実行を引き起こす。例えば、プログラム命令の形態は、ソースコード形態、コンピューター実行可能形態、又はソースコードとコンピューター実行可能形態との間の任意の中間形態、例えばインタープリタ、アセンブラ、コンパイラ、リンカー又はロケータを介してソースコードの変換から生じる形態などである。変形例では、プログラム命令は、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路の設定データ(例えばVHDL)、またはオブジェクトコードである。典型的には、プログラム命令は、オブジェクト指向プログラミング言語(FORTRAN、C++、JAVA、HTML)、手続き型プログラミング言語(例えばC言語)のような、一つ以上の言語の任意の組み合わせで書かれる。
【0185】
いくつかの実施形態では、プログラム命令は、アプリケーションによく見られるように、ネットワークを介して外部のソースからダウンロードされる。このような場合、コンピュータープログラム製品は、プログラム命令をその上に格納したコンピューター読み取り可能なデータキャリア、またはプログラム命令をその上に符号化したデータキャリア信号から構成される。それぞれの場合において、コンピュータープログラム製品は、データ処理ユニットにロード可能であり、データ処理ユニットによって実行されたときに本発明の方法の実行を引き起こすように適合された命令からなる。実施形態によれば、実行は、システム、すなわち単一のコンピューター、または複数のコンピューター間の分散システム(特にクラウドコンピューティングを介して)において、全体的または部分的に達成される。
【0186】
いくつかの実施形態では、上述の方法は、多くの方法、特に、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装される。特に、工程は、システムまたはシステムを構成する特定の装置との相互作用によってステップを実現するように適合されたモジュールまたはステップの実行を引き起こすように適合されたコンピューター命令によって実施される。また、連続する2つの工程は、考慮される実施形態に応じて、実際には、実質的に同時に、または逆の順序で実行され得ることに留意されたい。
【0187】
本発明の方法の適用:
本発明の方法は、術前補助療法後の臨床的判断を方向付けるために特に好適である。
【0188】
いくつかの実施形態では、患者が再発及び/又は死亡の低リスクであろうと結論付けられたとき、臓器保存戦略が決定されてもよい。局所進行癌における術前補助療法、腫瘍切除、及び術後補助療法の標準的な使用は、過去数十年にわたって腫瘍学的転帰を途方もなく改善してきた。しかしながら、これらの改善は、重大な罹患率及び貧しい生活の質という代償を伴う。本発明の方法は、QOLを維持しながら例外的に良好な臨床転帰を示す患者の特定のサブグループを特定する利点を提供する。患者の要求及び生活の質を維持することへの関心によって駆動され、本発明の方法は、応答者患者の生活の質が維持され得るように、臓器保存戦略だけでなく監視及び待機戦略を実施するための強力なツールを提供する。より詳細には、本発明の方法は、特に高齢者の周術期の病的状態及び死亡のリスクを管理するために特に適している。より詳細には、本発明の方法は、大腸癌に罹患した患者において、最終的に生活の質の低下につながる肛門機能、性機能、および排尿機能の十分な喪失を防止するために特に好適である。
【0189】
特に、臨床反応がycTNM=0-Iの場合、Immunoscore(例えば、パーセンタイルの算術平均値又は中央値)が高いほど、再発及び/又は死亡のリスクが低く、患者の生存時間(例えば、無病生存時間)が長くなるので、臓器保存戦略を決定することができる。
【0190】
特に、臨床反応がycTNM=0-Iであり、Immunoscoreが「高」と分類された(例えば、パーセンタイルの算術平均値または中央値が「高」と分類された)と判断された場合、患者は再発および/または死亡のリスクが低く、したがって患者の生存時間は長くなり、したがって、臓器保存戦略を決定することができると判断された。
【0191】
いくつかの実施形態では、患者が再発および/または死亡のリスクが高く、したがって生存期間が短いと結論付けられると、次に根治手術と補助療法が決定される。
【0192】
したがって、本発明の方法は、術前補助療法後の根治手術の可否を判断するために特に好適である。
【0193】
本発明は、以下の図および実施例によってさらに説明される。ただし、これらの実施例および図は、本発明の範囲を限定するものとして、何ら解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0194】
図1A】A)ycTNM=0またはI、B)ycTNM=II,IIIまたはIVの患者におけるISB Low,ISB Intermediate(Int.),ISB Highによる無病生存率、ネオアジュバント療法後の画像診断で決定された。傾向に対するP検定(P(tft))は、傾向に対する対数順位検定で決定する。
図1B】A)ycTNM=0またはI、B)ycTNM=II,IIIまたはIVの患者におけるISB Low,ISB Intermediate(Int.),ISB Highによる無病生存率、ネオアジュバント療法後の画像診断で決定された。傾向に対するP検定(P(tft))は、傾向に対する対数順位検定で決定する。
図2A】A)ycTNM=0またはI、B)ycTNM=II、IIIまたはIVの患者において、連続変数(ISB平均スコア、%)として表したISBによる2年および5年無病生存率の確率(Cox比例ハザード回帰モデルで)。
図2B】A)ycTNM=0またはI、B)ycTNM=II、IIIまたはIVの患者において、連続変数(ISB平均スコア、%)として表したISBによる2年および5年無病生存率の確率(Cox比例ハザード回帰モデルで)。
図3】ネオアジュバント後の画像診断でycTNM=0またはI、ycTNM=II、IIIまたはIVと判定された患者におけるISB低対中(Int)および低対高によるハザード比を示した無病生存率のフォレストプロット。
【0195】
実施例
患者および方法
患者集団
生検が可能で、nTと直腸間膜全摘術(TME)による根治手術を受けたLARC患者(n1=131、n2=118)の2つのレトロスペクティブ連続コホートについて解析した。コホート1はモノセントリックコホート、コホート2はマルチセントリックコホートであった(表1)。組み入れ期間は1999年から2016年までであった。ネオアジュバント治療と手術の基準は各施設で定義された。全体では64.2%が男性で、診断時年齢の中央値は65歳(四分位範囲[IQR]=53.3~74.1)であった。患者はnT(短期[3.7%]または長期[96.3%]の放射線コース;5-フルオロウラシルベースの化学療法[CT;82%];18%はCTを受けていない)により治療されていた。直腸腫瘍は、骨盤磁気共鳴画像および胸部/腹部コンピューター断層撮影画像から得られるベースライン病期情報に従って、cTNM(UICC TNM第8版)I(1.2%),II(27.3%),III(71.5%)に分類された。さらに、nT(ycTNM 0-1)が完全/ほぼ完全奏効し、その後Watch-and-Wait戦略をとった患者(n = 73)のコホートも解析した(表2)。コホート1+2のDFSの追跡期間中央値は45,4ヶ月(IQR=25,7-65,6)であった。各コホートのDFS、TTR、OSのフォローアップ期間とイベント数を表3に示す。本試験は、各施設の倫理審査委員会の承認を得ている。
【0196】
臨床結果
腫瘍退縮グレード(TRG)スコアリングシステムを用いて、nTに対する腫瘍反応の度合いにより患者を比較した。i/Dworak分類(21)完全(Dworak 4)、完全近く(Dworak 3)、中程度(Dworak 2)、最小(Dworak 1)、退縮なし(Dworak 0)に定義、ii/ネオアジュバント直腸(NAR)スコア分類(5)、方程式[5pN-3(cT-pT)+12]^2/961を用いて計算され、低(<8)、中(8-16)、高(>16)に分類された。iii/ypTNM期、すなわち術後の病理学的TおよびN評価、iv/腫瘍のダウンステージ(4)は完全(ypT0N0)、中間(ypT1-2N0)、弱い/ない(ypT3-4またはN+)と定義される。手術を受けた患者については、無病生存期間(DFS)については手術日からの局所再発、全身再発、死亡、再発までの時間(TTR)については再発、全生存期間(OS)についてはあらゆる原因による死亡をイベントとして扱った。Watch-and-Wait戦略で管理されたすべての患者は、臨床的完全奏効(ycTNM0)とみなされ、厳格な監視プロトコールが提供された。
【0197】
免疫組織化学
診断のために行われた全患者の初回生検は、全施設から回収された。4μmのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織切片2枚を、CD3+(2GV6,0.4μg/mL、Ventana,Tuscon,USA)に対する抗体で免疫化学的に処理した。4μg/mL;Ventana,Tuscon,AZ,USA)およびCD8+(C8/144B,3μg/mL;Dako,Glostrup,Denmark)に対する抗体を用いて、既述のプロトコル(17)に従って、Ultraview Universal DAB IHC Detection Kit(Ventana,Tuscon,AZ,USA)により明らかにし、メイヤーのヘマトキシリンで対比染色を行った。
【0198】
生検に基づくイムノスコア(ISB)判定
染色した組織切片のデジタル画像を、倍率20倍、解像度0.45μm/pixelで得た(Nanozoomer HT、浜松、日本)。正常組織と低・高悪性度異形成関連病変を除いた腫瘍成分の抽出は、経験豊富な病理医(CL)によって行われた。腫瘍領域のCD3+およびCD8+T細胞の平均密度は、Developer XD画像解析ソフトウェア(Definiens、ミュンヘン、ドイツ)の専用ISモジュールで決定した。染色強度の平均と分布は、内部染色品質管理としてモニターされた。最終的な品質チェックは、ソフトウェアによって検出された非特異的な染色を除去するために行われた。ISBの測定は、観察者間の強い再現性を示した大腸癌のISの国際的な検証コホートでImmunoscore(IS)を決定するために使用された方法から直接導き出されたものである(17)。各患者の腫瘍領域のCD3+およびCD8+T細胞密度を、患者コホート全体について得られたものと比較し、適宜パーセンタイルに変換した。次に、2つのパーセンタイル(CD3およびCD8)の平均を、3つのISBカテゴリーのいずれかに変換した(図1B)。ISB低(0-25%)、ISB中(25-70%以上)、ISB高(70-100%以上)である。ISB判定は、試験エンドポイントに対して盲検下で行われた。
【0199】
RNA 抽出と NanoString テクノロジーによるトランスクリプトーム解析
nT後の生検と対応する手術標本の両方が入手できた全患者(コホート1および2;n=62)およびnT治療を受けなかった大腸がん患者(n=13)の20μm FFPE腫瘍組織切片からのトータルRNAをRecoverAll(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit (Ambion ThermoFisher, Monza, Italy) を用いて単離した。nTを行った患者と行わなかった患者の腫瘍の進展度TおよびNステージの分布は、統計的な差異を示さなかった。単離したRNAの質と量をAgilent RNA 6000 Nano kit (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)と anoDrop 2000(ThermoFisher Scientific,Waltham,USA)を用いて測定し、各サンプルの100-400ngRNAを44の免疫関連遺伝子の自社パネル(Nanostring Technologies, Seattle, WA, USA)でプロセッシングした。レポーター-キャプチャープローブのペアをハイブリダイズし、プローブ/ターゲット複合体を固定化し、nCounterアナライザーでカウントした。バックグラウンド減算を生データに適用し、陽性対照と内部ハウスキーピング遺伝子(GUSB、SP2)の幾何平均に基づく正規化を、nSolver Analysisソフトウェア、バージョン2.5を用いて行った。
【0200】
統計解析とデータの可視化
統計解析とデータの可視化は、Rソフトウェアバージョン3.5.1とアドオンのsurvival,survminer,ggpubr,ggplot2,rms and coinパッケージを使用して行った。ISBと臨床的特徴の間の関連は、独立性のカイ二乗検定またはFisher検定によって評価された。CD3+細胞密度とCD8+細胞密度の間の関連性は、ピアソンの相関係数rと関連するP値によって測定された。生存率の一変量解析は、log-rank検定とCox比例ハザードモデルで行った。生存曲線はKaplan-Meier法で推定した。生存曲線における順序の違いを検出するために、survminerパッケージの傾向に関するlog-rank検定が実施された。多変量生存分析は、すべての共変量の同時影響を検証するためにCox比例ハザードモデルで行った。各共変量の比例ハザード仮定(PHA)は、cox.zph関数を用いて検定された。生存リスクに対する各パラメータの相対的重要性は、Harrellのrms Rパッケージのカイ二乗によって評価された。ISBとnTの順序応答レベル間の関連は、片側線形-片側線形関連検定を用いて評価された。nT反応レベルとCD3+、CD8+T細胞密度および遺伝子強度との関連は、Kendallの相関検定、T検定、Mann-Whitney U検定によって評価された。転写解析における治療反応レベルの検定には、Benjamini and Hochberg法により偽発見率を抑制したWilcoxon検定を用いた。ycTNM病期とISBを比例オッズ順序ロジスティック回帰モデルに含めて、nTに対する病理組織学的な良好な反応を予測した。P値<0.05は統計的に有意であるとみなした。主成分分析(PCA)は、FactoMineRとfactoextraパッケージのPCAとfviz_pca_ind関数で実施した。線形加重カッパは、IS計算における切除腫瘍と生検標本間の一致度を測定するために使用された。
【0201】
結果
直腸癌診断組織における生検ベースのImmunoscore(ISB)判定
nTで治療したLARC(n=322)の診断目的で行った最初の腫瘍生検でCD3+リンパ球と細胞障害性CD8+細胞の評価を行った。免疫染色強度は、画像解析ソフトウェアで染色された細胞の有効な検出とカウントを確実にするためにモニターされた(示されていない)。バイオマーカーの品質管理で7例が除外され(2.8%)、臨床データの品質管理で4例が除外された(1.2%)。腫瘍内のCD3+およびCD8+T細胞の密度の中央値は、それぞれ1363細胞/mm2および274細胞/mm2であった(データは示さず)。CD3+/CD8+T細胞の比率は患者間で大きく変動し、両マーカー間の決定係数(r2)は0.58であった(データ未掲載)。ISBはCD3+とCD8+のT細胞密度から導き出された(データは示さず)。腫瘍内のCD3およびCD8密度は、全患者で観察された密度を参照してパーセンタイルに変換された。CD3とCD8のISB平均パーセンタイルは、各生検について計算された(ISB平均スコア)。2つのコホート間で平均スコアの差は観察されなかった(データは示されていない)。平均スコアをISBスコアシステムに変換すると、全体の22.7%、52.5%、24.8%の患者がそれぞれISB Low、Intermediate、Highであった。特に、ISB中級は、コホート1(43.5%)に比べ、コホート2(61.9%)でより多く見られた。
【0202】
生検に基づくイムノスコア(ISB)の予後予測値との関連性
ISBの分布解析では、年齢、性別、腫瘍の位置との関連は示されなかった(表1)。ISB予後性能の大きさと再現性を、2つの独立したコホートで検証した。コホート1(n1=131)では、ISBによって層別化された患者間のDFSに有意差が認められた(傾向に関するP検定[Ptft]=0.012;HR[High vs Low]=0.21(95% CI 0.06-0.78))。ISB Highの患者は再発リスクが低く、5年DFSは91.1%(95%CI 82.0-100)に対し、ISB Lowの患者では65.8%(95%CI 49.8-86.9)であった。これらの結果は、独立した2番目のコホート(n2=118;Ptft=0.021;HR[High vs Low]=0.25,95%CI 0.07-0.86)でも確認された。UICC-TNMステージIの腫瘍を持つ3人の患者を除いても、同様の結果が得られた(データは示されていない)。プール解析(n=249)では、ISBで層別した患者群間の有意差が単変量解析で証明され(データは示さず)、TTR(P<0.001)、DFS(P<0.005)、OS(P=0.04; データ示さず)のカプラン-マイヤー曲線で示されるようになった。
【0203】
生検に基づくイムノスコア(ISB)とネオアジュバント治療への反応性
我々は、ISBの予後的価値が、少なくとも部分的にはISBとnTの反応の質との関係の結果であるかどうかを調べた。ネオアジュバント治療の効果の質は、ネオアジュバント後6~8週目に画像診断(ycTNM)と切除腫瘍の顕微鏡検査、Dworak分類、腫瘍退縮評価システム、ypTNM、ダウンステージ、NARスコアで評価される。我々のコホート(n=249人)では、高いCD3+およびCD8+T細胞密度は、Dworak分類とypTNM病期の両方で評価したnTに対する良い反応と有意に関連していた(すべてP<0.005;データは示されていな)。CD3+とCD8+のパーセンタイルの平均値(ISB平均スコア)は、NARスコア、Dworak分類、ypTNMステージングと相関があった(データは示さず)。ISBのレベルおよび分布は、nTに対する腫瘍の反応性と正の相関があった(データは示さず)。ISB高値患者は、非応答のDworak 0群には見られず、腫瘍細胞が検出されない患者(すなわちDworak 4群)の52.9%がISB高値であった(P=0.0006)。同じ相関がypTNM、腫瘍のダウンステージ、NARにも見られた(データは示していない)。NARスコアリングシステムによると、nTに対する良好な反応者は、ISB高群ではISB低群の6倍であった(データ未提示)。次に、nT後の腫瘍サンプル(Dworak 0-4、n=62)について、44の免疫関連遺伝子を分析することにより、nTの免疫的影響を調べた(データは示されていない)。遺伝子発現レベルは、患者によって大きく異なっていた(データは示していない)。教師なし階層型クラスタリングにより、31.7%(n=19)の患者がnT後に局所的な免疫活性化の徴候を示した(データ示さず)。nT後の免疫活性化状態は、治療前のCD3+およびCD8+T細胞(すなわちISB)の密度と正の相関があった(データ示さず)。非応答腫瘍(Dworak 0-1)は、nT治療を受けなかった腫瘍と比較して、同様に低いレベルの免疫関連遺伝子の発現を示した(データは示されていない)。ネオアジュバント治療に部分/完全奏効した患者は、適応免疫(CD3D、CD3E、CD3Z、CD8A)、Th1指向(TBX21/Tbet.STAT4)、活性化に関連する遺伝子が有意に高発現していた。STAT4)、活性化(CD69)、細胞傷害性(GZMA、GZMH、GZMK、PRF1)、免疫チェックポイント(CTLA-4、LAG3)、ケモカイン(CCL2、CCL5、CX3CL1)などが、nT非応答者と比較して、有意に高い発現を示していました(データ未掲載)。このことは、自然適応型細胞傷害性免疫反応(ISB)の質、nT後の免疫活性化の有無、nTへの反応性の程度との関連を示唆している。主成分分析(PCA)による遺伝子発現データの解析では、nTに対する反応の程度によって異なる遺伝子発現パターンが示され、nTに対する反応と免疫環境との間に存在すると考えられる関連性がさらに強化されました(データは示していない)。「2次元と3次元の組み合わせが、最も正確に反応者/非反応者を識別することができた。
【0204】
生検適応免疫スコア(ISB)-患者ケアを最適化するためのバイオマーカー
我々は、ISBが、(i)nT前(すなわち初回画像診断、cTNM(UICC TNM第8版))、(ii)nT後(すなわちnT後の画像診断、ycTNM)、(iii) 術後(病理検査、ypTNM)の臨床・病理基準と組み合わせた場合に、価値ある予後情報をもたらすかどうかを検討した。Cox多変量解析では、ISBはcTNM(ISB高対ISB低:HR=0.2、P<0.001)およびycTNM(ISB高対ISB低:HR=0.25、P=0.039)など他の臨床病理学パラメータより強いDFS予測マーカーであった。ISBはさらに、ypTNMと組み合わせてもDFSと関連する有意な独立したパラメータであることに変わりはなかった(表4)。画像診断で定義されるnT後の完全奏効の精度は不完全であることが知られている。したがって、臨床的完全奏効者のうち、残存腫瘍がない(すなわち組織学的完全奏効)のは25~50%にすぎない(22~24)。ISBと画像診断を併用した場合(ycTNM)、ycTNM単独と比較して組織学的著効者(ypTNM 0-I)の予測精度が向上した。nTに良好な反応を示した患者32人中3人(ycTNM=0-I、n=32)が遠隔再発を経験し、局所再発は観察されなかった。重要なことは、ISB Highの患者には再発が見られなかったことである(図1A、B、2A、B、3)。このように、ISBは非常に良好な結果を得ることができ、Watch and Wait戦略の対象となる患者を選択するのに役立つと思われる。
【0205】
Watch-and-Wait戦略で管理された患者におけるISB
Watch-and-Wait戦略で治療された一連の患者(n=73)において、ISBと関連する臨床転帰を評価するために、最初の診断用生検を回収した。全体として、23%がISB高、51%がISB中、26%がISB低と分類された。再発までの時間は、ISBで層別化された患者間で有意差があった(P[High vs Low]=0.025;データは示されていない)。ISB高値の患者では、フォローアップ期間中に再発の証拠は認められなかった。Cox比例ハザード回帰モデルでは、5年無再発生存率はISB平均スコアにより46%から89%の範囲であった(データは示されていない)。Cox多変量解析では、ISBは年齢、腫瘍部位、cTNM分類(UICC TNM第8版)とは無関係に、患者のTTRと関連していた(P[高対低]=0.04;データは示さず)。
【0206】
考察
この研究は、(i)ISBによって評価される腫瘍内自然免疫の質、(ii)nT後のin situ免疫反応の強度、(iii)nT後の腫瘍退縮の範囲、および(iv)再発防止と生存という点での臨床インパクトの関連を強調するものであった。臨床的な観点から、ISBはLARC患者のnT後の反応の質、再発と死亡のリスクの両方について信頼性の高い推定を提供する。ISBと画像診断を組み合わせることで、nT後の緊密なサーベイランス戦略の恩恵を受けられる完全な臨床的奏効を得た患者をさらに特定することができ、その結果、障害が残って役に立たない直腸切断手術を避けることができるだろう。
【0207】
ISBは、ルーチン診断の生検で、追加の医療処置なしに実施することができる。免疫細胞浸潤の厳密で標準化された定量化は、IS colon研究(17)と同様に達成された。
【0208】
本研究では、ISBはnTに対する腫瘍の反応性と正の有意な相関があった。この観察は、我々の以前の予備的な結果(18)や、免疫細胞浸潤の光学的半定量的評価を用いた研究(19,20,25)と一致するものであった。ISB Low群(コホートの22.7%)では、完全奏効(NARスコアが低い)した患者はわずか5%であり、このことは、補助療法(26)、免疫療法(27)、薬剤再配置などのnTの最適化や変更により、これらの患者に、より良い奏効が得られる可能性があることを示唆している。我々は、nT後のin situ細胞傷害性適応免疫反応の徴候と炎症性インターフェロンI型関連分子の産生と治療への反応との間に関連があることを証明した。I型IFNは、樹状細胞の成熟と提示能力およびリンパ節への移動を促進することにより、抗腫瘍免疫において重要な役割を担っている(28)。この免疫状態は、nT以前から存在する自然免疫反応の質と強度に影響される。ISB高値は、nT依存性の腫瘍細胞死を促進するだけでなく、Watch-and-Waitのような臓器温存戦略において局所再発を避けるために不可欠となりうる定常免疫成分の存在を促進する可能性がある。注目すべきは、ISB高値患者がほとんど良い反応を示さなかったことで、治療抵抗性が独立した腫瘍内在因子(29)または抑制性微小環境の存在によっても導かれることが強調されている(30)。直腸の根治的切除は機能的転帰、即座の罹患率、さらには死亡率をもたらすため、nT後の臨床的完全奏効が得られるネオアジュバント治療は臓器温存戦略の可能性を提起している(31)。しかし、nCRT後の画像診断(ycTNM)は、病期の過不足により、病理学的完全奏効を予測する精度が低い(32)。重要なことは、ISB高奏功者では再発が見られなかったことである。さらに、ISBは画像診断で評価された非常に良好な奏効例(ypTNM 0-I)の精度予測を高め、臓器温存戦略(Watch-and-Wait)で治療された患者のサブグループを特定し、非常に良好な転帰を示した。現在、Watch-and-Wait戦略の対象となる良好な反応者を選択するのに役立つバイオマーカーはない(9)。これらの結果は、nTに対するISB高完全奏効患者だけでなく、現在不完全奏効患者に分類されている遅発性完全奏効患者(すなわち「ほぼ完全奏効患者」)を含む臓器温存候補者の選択に大きな影響を与える可能性がある(33)。
【0209】
この研究にはいくつかの限界がある。あらかじめ定義されたカットポイント(すなわち25%および70%)に関連する免疫密度は、研究対象コホートの臨床的特徴と密接に関連している。カットポイントとして使用された密度は、手術前にnTで治療されたLARC患者に関連するものである。さらに、ISBの評価は最初の生検で行われた。これは、腫瘍のごく一部(TME後に得られる腫瘍ブロックの切断面の10-15%)のみを分析し、生検に存在しない浸潤縁を分析しないことを意味する。切除腫瘍におけるISBとISの対応関係を評価するために、33の大腸癌生検とその関連切除腫瘍を解析したところ、これら二つの標本の間に部分的な相関が認められた(データは示していない、カッパ=0.45、p=0.0004)。すべての不一致は、2つの連続したカテゴリーのISの間だけで観察された。このように表面解析が限定的であり、浸潤縁がないにもかかわらず、ISBの予後的価値は維持されていた。これは、ネオアジュバント治療による二次的な構造変化のために、手術片が入手できないか解析不可能な場合の最初の診断生検における免疫評価の正確性を示唆する。また、術後検体でISを実施した場合、nTに対する反応性の予測値を評価することはできない。さらに、nT後の組織学的変化は深いため(腫瘍とその浸潤縁の明確な境界がない)、nT後の標本でのISは実行不可能である。本研究は、様々な国から来日し、実臨床で標準治療を受けた患者を対象に実施された。標本の大きさ、患者のケアの種類にもかかわらず、ISBに関連する強力で一定の予後値は、この検査の頑健性と一般化可能性を浮き彫りにしている。ミスマッチ修復、KRAS、BRAFの状態などの予後予測パラメーターは、本研究では入手できなかったため、ISスコアリングシステムによる多変量解析には含まれなかった。しかし,MSI+の症例は直腸癌では稀であり(5%未満)(34),我々は最近,ISが大腸癌のMSI,KRAS,BRAFの状態と関連したときに生存の独立した予後パラメーターであることを証明した(35)。本研究で対象とした直腸癌のほとんどは腺癌であった。組織学的サブタイプによるサブ解析は、研究対象のコホートが大規模な多施設構成であり、病理組織学的な記述のレベルが不均一で、粘液癌、印環細胞癌、腫瘍出芽の効果が明らかに小さく、十分な検出力でそれらの相対的予後影響に対処できないために実施することができない。この研究は、しばしば個人診療所で行われ、場合によっては容易に利用できない初期診断生検の重要性を強調するものである。直腸癌患者は、最初に免疫状態(ISB)を評価するために、民間の病理診療所、クリニック、教育病院が密接に連携することで利益を得ることができるだろう。この資料は、ネオアジュバント治療の前に利用できる唯一の資料であるため、近い将来、直腸癌患者の個人的な医療ファイルの一部となり、不可欠なものとなる可能性がある。ISBは直腸癌の個別化集学的治療を促進し、特にベースラインでISB高腫瘍を有し、画像診断で腫瘍退縮の兆候を示す患者には有効であろう。これらの患者は保存的治療から最も恩恵を受け、ひいてはQOLを維持することができるはずである。
【0210】
結論として、ISBは(i)nT後の腫瘍反応性の予測、(ii)nT後の局所病変の再ステージ化、(iii)臨床転帰の予測に使用可能であることが示唆された。この方法は、特にベースラインでISB高腫瘍を有し、画像診断で腫瘍退縮の兆候を示す直腸癌の個別化集学的治療を促進することができる。これらの患者は保存的治療から最も恩恵を受け、ひいてはQOLを維持することができるはずである。ISBは、レトロスペクティブにもプロスペクティブにも、より大規模なWatch-and-Waitコホートで検証されるのはまだ先である。このような検証は、International Watch-and-Wait Databaseを用いた国際共同研究および現在進行中のOPERA臨床試験(NCT02505750)において計画されている。
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】
【0213】
【表3】
【0214】
【表4】

【0215】
引用文献
本出願を通して、様々な参考文献が、本発明が関係する最新技術を説明している。 これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
【表5-1】
【0216】
【表5-2】
【0217】
【表5-3】
【0218】
【表5-4】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】