(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】トリプタミンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07D 209/16 20060101AFI20230713BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230713BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230713BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C07D209/16 CSP
A61P25/18
A61P25/24
A61K31/4045
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580938
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 CA2021050907
(87)【国際公開番号】W WO2022000091
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501708
【氏名又は名称】リユニオン・ニューロサイエンス・カナダ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ブライソン、ネイサン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA31
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA12
4C086ZA18
(57)【要約】
本発明は、トリプタミンプロドラッグ化合物を提供する。式(I)
【化1】
[式中、各記号は明細書中に記載されるとおりである]で表される化合物、又はその塩若しくは双性イオンは、5HT2A受容体アゴニスト活性を有する活性型に変換され、うつ病の治療のための薬剤として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)(II)、(III)若しくは(IV):
【化1】
[式中、
(1)R1、R2及びR6は、独立して、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル又はアリールアルキルから選択され;
(2)R4は、
a.-X-CO2H(ここで、Xは、-OH又は-CO2Hで置換されていてもよい、直鎖状、環状又は分枝した、飽和又は不飽和の炭素鎖であるか;アルキル又はCO2Hで置換されていてもよい芳香族環である)であるか;又は
b.
【化2】
(ここで、R9はX-CO2Hであり、Xは(2)aで定義したとおりであり、R10は、水素、-OH又は-CO2Hで置換されていてもよい、直鎖状若しくは分枝したアルキル又はアリールアルキルである)であり;
(3)R5は、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル、アリールアルキル又はO-R5’(ここで、R5’は、水素、直鎖状又は分枝したアルキルである)であり;
(4)R7及びR8は、
a.独立して、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル、若しくはアリールアルキルから選択されるか、又は
b.一緒になって、アルキルで置換されていてもよい非芳香族N含有ヘテロ環を形成する]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは双性イオン。
【請求項2】
(1) シロシン-4-スクシネート
【化3】
(2) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-スクシネート
【化4】
(3) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-フマレート
【化5】
(4) シロシン-4-メチル-5-スクシネート
【化6】
(5) N,N-ジメチルイソトリプタミン-6-スクシネート
【化7】
(6) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレート
【化8】
(7) N-メチル-N-イソプロピルトリプタミン-4-グルタレート
【化9】
(8) シロシン-4-グルタレート
【化10】
(9) N,N-ジエチルトリプタミン-4-グルタレート
【化11】
(10) N,N-ジエチルトリプタミン-4-スクシネート
【化12】
及び
(11) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-(3,3-ジメチルグルタレート)
【化13】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(1)R1、R2及びR6が、独立して、H若しくは直鎖状C
1~5アルキルから選択される;
(2)R4が-X-CO2H(ここで、Xは、OH又はCO2Hで置換されていてもよい、直鎖状又は分枝したC
1~5炭素鎖である)である;
(3)R5が、水素、直鎖状若しくは分枝したC
1~5アルキル、アリールアルキル若しくはO-R5’(ここで、R5’は、水素、直鎖状又は分枝したC
1~5アルキルである)である;及び/又は
(4)R7及びR8が、独立して、H若しくは直鎖状若しくは分枝したC
1~5アルキルから選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R7及びR8が、同一であるか又は異なっており、直鎖状又は分枝したC
1~4アルキルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R7及びR8が、それぞれ、メチル又はイソプロピルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、OH又はCO2Hで置換されていてもよい直鎖状C1~C3鎖である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
Xが直鎖状C3鎖である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
R7及びR8がいずれもメチルであるか、R7及びR8がいずれもイソプロピルであるか、又は、R7及びR8の一方がメチルであり他方がイソプロピルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
【請求項10】
経口製剤又は注入可能な製剤を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
注入用溶液剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶液剤のpHが、約3.0~7.0、好ましくは4.0~6.0、より好ましくは4.5~5.5である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
有効量の請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む、精神障害を治療する方法。
【請求項14】
前記精神障害がうつ病である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
精神障害、例えばうつ病を治療する医薬の製造における、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
精神障害、例えばうつ病の治療に使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
ヒドロキシトリプタミン又はヒドロキシイソトリプタミンを含むトリプタミンを適切な無水溶媒中で環状無水物と反応させることを含む、請求項1に記載の化合物を製造する方法。
【請求項18】
前記溶媒が、pKaが4~約9の塩基を含み、得られた化合物が双性イオンとして単離される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒がピリジンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が請求項2に記載の化合物である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記トリプタミンが、4-ヒドロキシ-イソプロピルトリタミン又はシロシンであり、前記環状無水物が無水コハク酸又は無水グルタル酸である、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、米国仮出願第63/045,901号(出願日:2020年6月30日、発明の名称:TRYPTAMINE PRODRUGS)、米国仮出願第63/109,095号(出願日:2020年11月3日、発明の名称:TRYPTAMINE PRODRUGS)及び米国特許出願第17/364,047号(出願日:2021年6月30日、発明の名称:TRYPTAMINE PRODRUGS)についての優先権を主張する。米国仮出願第63/045,901号、同第63/109,095号及び米国特許出願第17/364,047号の全内容は、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、新規のトリプタミン化合物、当該化合物を製造及び使用する方法、当該化合物を含む組成物、並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
トリプタミンは、5HT受容体とも呼ばれるセロトニン受容体に結合し活性化させる、3-アミノエチルインドールの一種である。サイケデリック状態は、5HT2A受容体アゴニストによるセロトニン受容体2A体の活性化によって達成される可能性がある。この受容体に対する内因性物質は、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)である。トリプタミンである3-(2-アミノエチル)インドールも、内因性神経伝達物質である。
【0004】
セロトニン受容体系は、5HT1Aアンタゴニストで一般的に治療される、うつ病及び抑うつ状態と関連づけられている(Affective Disorders: Depression in Neuropsychopharmacology and Therapeutics, Chapter 6, First Edition. Ivor S. Ebenezer, 2015)。より最近では、5HT2Aアゴニストがうつ病のための医薬としての潜在能力を示している(Carhart-Harris 2018 Psychopharmacology)。
【0005】
サイケデリック状態を生じさせ、従来の医療において使用されてきたトリプタミン分子は、気分障害、苦悩、うつ病等の治療に対する治療能力を有する可能性がある。例えば、アヤワスカはジメチルトリプタミン(DMT)の天然体であるが、これはモノアミン酸化酵素阻害薬と組み合わせた場合に摂取でき、変動するものの6~15時間持続し得る、長時間のサイケデリック状態を生じさせる。DMTはまた、脳内で少量発生することが天然において見いだされており、神経伝達物質として作用する可能性がある。
【0006】
リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)は、穀物のライムギで見いだされる真菌類に由来する天然物のジエチルアミド誘導体であり、これもまた、最長で8~12時間のサイケデリック状態を生じさせる。
【0007】
シロシビンは、シビレタケ属(Psilocybe)のキノコに見いだされる天然の植物系トリプタミンであり、約6~8時間という長時間のサイケデリック状態を生じさせる。シロシビンは1958年に初めて合成され、現在、うつ病の治療薬として調査されている。シロシビンはプロドラッグであり、シロシンがin vivoにおける活性種である。シロシビンは、シロシンの4-ヒドロキシ基にリン酸エステルが結合したもので、シビレタケ属のキノコ又は薬物を経口摂取した場合、腸内でこの結合が切断される:
【0008】
【0009】
シロシンの単純な単官能性有機エステルが報告されている。低級アルコキシラジカル修飾シロシンも記載されている。硫酸エステル結合シロシンが製造されており、他の一塩基及び二塩基鉱酸修飾シロシンが記載されている。酢酸シロシンは、アンダーグラウンドのサイケデリックサブカルチャーで知られており、使用されている。
【0010】
サイケデリック物質は、うつ病を治療するのに効果的であり、精神療法と関連づけられると、うつ病を治療するのにより一層効果的であることが示されている(Watts 2020 J Contextual Behavioral Science)。
【0011】
恐らく最も早くに記録されたアルバート・ホフマン(Albert Hoffman)の業績以後、合成されたトリプタミン物質の数は限られている。さまざまなトリプタミン物質について構造-活性関係が記載されている(Claire 1988)。
【0012】
疎水性又は水溶性に乏しい薬物、例えばテストステロン、ハロペリドール、クロラムフェニコール又はエストラジオールの水溶性で注入可能な形態のためのプロドラッグ送達系の構成要素として、コハク酸エステル及び他の二酸官能基が検討されてきた(Silverman and Holladay, Chapter 9.2: Prodrugs and Drug Delivery Systems in The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action (3rd Ed), 2014)。コハク酸のテトラヒドロカンナビノールエステルが、緑内障の治療薬として特許されている。しかし、エステル開裂は常に迅速ではなく、予測可能でなく、薬物と結合する部分の構造に依存する可能性があり、したがって、調査されなくてはならない(Anderson 1984 JPharmaSci)。酵素であるエステラーゼがin vivoにおけるプロドラッグエステル基の活発な開裂を担い、さまざまな組織におけるエステラーゼの量と特異性の種ごとの差異が、調査及び最適化を複雑にしている(Bahar 2012 JPharmSci)。
【0013】
この背景技術は、本発明の基本的な理解と関連していると考えられる。しかし、これらが特許請求する本発明のいずれかの側面に対する先行技術であることを認めるものではない。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、投与するとin vivoで活性体に変換され、5HT2Aアゴニストとして作用する、新規のトリプタミン化合物に関する。この明細書に記載の化合物は、精神障害、例えば単極性及び双極性抑うつ状態を含む抑うつ状態、例えば、限定するものではないが、うつ病、全般性不安に由来するうつ病、大うつ病、治療抵抗性うつ病及び産後うつ病の治療に有用である可能性がある。
【0015】
一側面において、本発明は、式(I)(II)、(III)若しくは(IV)で表されるトリプタミン若しくはイソトリプタミン化合物:
【0016】
【0017】
[式中、
(1)R1、R2及びR6は、独立して、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル、好ましくはC1~5アルキル、又はアリールアルキルから選択され;
(2)R4は、
a.-X-CO2H(ここで、Xは、-OH又は-CO2Hで置換されていてもよい、直鎖状、環状又は分枝した、飽和又は不飽和の炭素鎖(好ましくはC1~5アルキル)であるか、アルキル又はCO2Hで置換されていてもよい芳香族環である)であるか;又は
b.(R9)(R10)N-(ここで、R9はX-CO2Hであり、Xはこれまでに述べたとおりであり、R10は、水素、-OH又は-CO2Hで置換されていてもよい、直鎖状若しくは分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)又はアリールアルキルである)であり;
(3)R5は、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)、アリールアルキル又はO-R5’(ここで、R5’は、水素、直鎖状又は分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)である)であり;
(4)R7及びR8は、
a.独立して、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)、若しくはアリールアルキルから選択されるか、又は
b.一緒になって、好ましくはヘテロ環状構造全体が12個超の原子を含まない、アルキルで置換されていてもよい非芳香族N含有ヘテロ環を形成する]
又はその薬学的に許容される塩若しくは双性イオンに関する。
【0018】
別の側面において、本発明は、ヒドロキシトリプタミン、例えば4-ヒドロキシ及び5-ヒドロキシトリプタミン並びに6-ヒドロキシ及び7-ヒドロキシイソトリプタミン、並びにサイケデリックトリプタミン類の他の構造的又は機能的類似体の二酸エステルを含む。
【0019】
一部の態様において、R7及びR8は、同一であるか若しくは異なっており、直鎖状若しくは分枝したC1~4アルキルであるか;又は同一であるか若しくは異なっており、メチル若しくはイソプロピルであり;例えば、R7及びR8はいずれもメチルであるか、R7及びR8がいずれもイソプロピルであるか、又は、R7及びR8の一方がメチルであり他方がイソプロピルである。
【0020】
一部の態様において、XはOH又は-CO2Hで置換されていてもよい直鎖状C1~C3鎖であり、例えば、Xは無置換の直鎖状C3鎖である。
【0021】
別の側面において、本発明は、この明細書に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物に関する。一部の態様において、組成物は、経口製剤又は注入可能な製剤を含む。
【0022】
別の側面において、本発明は、有効量のこの明細書に記載の化合物を投与する工程を含む、精神障害を治療する方法を含む。一部の態様において、精神障害は、単極性及び双極性抑うつ状態を含む抑うつ状態、例えば、限定するものではないが、うつ病、全般性不安に由来するうつ病、大うつ病、治療抵抗性うつ病及び産後うつ病である。
【0023】
別の側面において、本発明は、精神障害を治療するための、又は精神障害例えばうつ病を治療する医薬の製造における、この明細書に記載の化合物の使用に関する。
【0024】
別の側面において、本発明は、ヒドロキシトリプタミン又はヒドロキシイソトリプタミンを含むトリプタミンを適切な無水溶媒中で環状無水物と反応させることを含む、この明細書に記載の化合物を製造する方法に関する。一部の態様において、溶媒は、4~9のpKaを有する塩基を含み、得られた化合物は双性イオンとして単離される。一部の態様において、トリプタミンは、4-ヒドロキシ若しくは5-ヒドロキシトリプタミン又は6-ヒドロキシ若しくは7-ヒドロキシイソトリプタミンを含む。一部の態様において、溶媒はピリジンである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、2mg/kgのN,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレートを皮下投与した後の、時間に対する4-OH-DiPTの血中濃度(ng/ml)を示すグラフである。
【
図2】
図2は、1.4mg/kgのN,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレートを皮下投与した後における、4-OH-DiPTの血中濃度(ng/ml)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本発明の態様は、新規の合成トリプタミンプロドラッグを含む。プロドラッグは、精神障害、例えば、限定するものではないが、大うつ病、治療抵抗性うつ病及び産後うつ病を含む、うつ病の治療に有用である可能性がある。この明細書では、「精神障害」という用語は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)を参照することにより診断される障害を含む、メンタルヘルスの専門家が心理的障害又は精神障害と診断する可能性がある障害を含む。
【0027】
「治療すること」、「治療する」又は「治療」という用語は、この明細書では、防止的、すなわち、予防的処置と、対症的処置、すなわち、患者の疾患、障害又は状態の進行を軽減する、緩和する、又は遅らせることの両者を包含する。
【0028】
この明細書では、「サイケデリック状態」は個人が経験する変性意識状態であり、これは、強化された感覚認知、知覚のゆがみ若しくは幻覚、及び/又は多幸感若しくは絶望感を含んでいてもよい。サイケデリック状態は、サイケデリック薬物、例えばDMT(ジメチルトリプタミン)、LSD、メスカリン又はシロシビンにより生じると説明されている。他の公知のサイケデリック薬物としては、N-メチル-N-イソプロピルトリプタミン(MiPT)及びN,N-ジイソプロピルトリプタミン(DiPT)の4-ヒドロキシ類似体が挙げられる。
【0029】
本発明は、サイケデリック状態を誘発するか又はサイケデリック状態と関係することなく有益な治療的効果をなおももたらす、ヒドロキシインドール5HT2Aアゴニストのプロドラッグを含む。プロドラッグは、精神障害を治療するのに有効であることが知られている他の治療法、例えば、心理療法、電気痙攣療法と組み合わせて使用してもよく、及び/又は、他の医薬化合物、例えば、三環系抗うつ薬(TCA)、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、選択的ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOAI)又は他の抗うつ薬の同時に使用してもよい。好ましい態様において、治療は、例えば、1回の治療後に1か月超、好ましくは3か月超、より好ましくは6か月超の持続的効果を生じさせる可能性がある。一部の態様において、追加の療法は必要ではない可能性がある。
【0030】
化合物
「化合物」は、この明細書では、配座異性体(例.シス、トランス異性体)及び全ての光学異性体(例.エナンチオマー及びジアステレオマー)、ラセミ体、ジアステレオマー及びこのような異性体の他の混合物、並びに溶媒和物、水和物、同形体、多形体、互変異性体、エステル、塩及びプロドラッグを含む、薬学的に許容される誘導体又は変形体を含む。「プロドラッグ」という表現は、投与後にin vivoでいくつかの化学的又は生理学的工程(例えば、加水分解、酵素的開裂若しくは加水分解、又は代謝が所望の薬物形態に変換する)を介して薬物(又は「活性型」)を放出する、薬物前駆体である化合物を指す。本発明は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩をその範囲に含む。したがって、「薬学的に許容される塩」という語句は、明示的に逆の記述がなされない限り、この明細書に記載された全ての化合物の記載に暗黙のうちに含まれる。
【0031】
一部の態様において、本発明の化合物は、容易に精製、製剤化され、安定であるプロドラッグ化合物を含み、好ましくは、臨床状況における好都合な使用のために速やかに作用を発現し排泄される、可溶性の高い薬物をもたらすために使用されてもよい。一部の態様において、化合物は双性イオンとして生成されてもよく、これは薬学的に許容される塩に変換されてもよい。
【0032】
一部の態様において、本発明の化合物は、好ましくはプロドラッグ部分をin vivoにおいて速やかに開裂させて、活性ファーマコフォアを生じ、例えば4時間と経たずに、好ましくは2時間未満、より好ましくは1時間未満で、90%の変換が生じてもよい。プロドラッグは、それ自体、薬理活性が低い、ほとんどない又はまったくなくてもよいが、患者に投与されたときに、例えば加水分解的開裂により活性化合物に変換されてもよい。
【0033】
トリプタミン、例えばシロシン又は他のヒドロキシトリプタミン若しくはイソトリプタミンの二酸ヘミエステルは、これまでに記載されていない。薬物が可溶性である場合は、通常、プロドラッグ戦略は必要ではないことから、二酸と4-ヒドロキシトリプタミン又は5-ヒドロキシトリプタミンとを組み合わせるプロドラッグ戦略は提唱されていない可能性が高い。したがって、この明細書に記載の二酸ヘミエステルプロドラッグ戦略は、新規で進歩性があると考えられる。
【0034】
一側面において、本発明は、式(I)(II)、(III)若しくは(IV)で表されるトリプタミン若しくはイソトリプタミン化合物:
【0035】
【0036】
[式中、
(1)R1、R2及びR6は、独立して、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル、好ましくはC
1~5アルキル、又はアリールアルキルから選択され;
(2)R4は、
a.-X-CO2H(ここで、Xは、-OH又は-CO2Hで置換されていてもよい、直鎖状、環状又は分枝した、飽和又は不飽和の炭素鎖(好ましくはC
1~5アルキル)であるか、アルキル又はCO2Hで置換されていてもよい芳香族環である);又は
b.
【化4】
【0037】
(ここで、R9はX-CO2Hであり、Xは(2)aで定義したとおりであり、R10は、水素、-OH又は-CO2Hで置換されていてもよい、直鎖状若しくは分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)又はアリールアルキルである)であり;
(3)R5は、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)、アリールアルキル、又はO-R5’(ここで、R5’は、水素、直鎖状又は分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)である)であり;
(4)R7及びR8は、
a.独立して、水素、直鎖状若しくは分枝したアルキル(好ましくはC1~5アルキル)、若しくはアリールアルキルから選択されるか、又は
b.一緒になって、好ましくはヘテロ環状構造全体が12個超の原子を含まない、アルキルで置換されていてもよい非芳香族N含有ヘテロ環、例えば、ピロリジン(NC4環)、ピペリジン(NC5環)又はモルホリン(NC4O環)を形成する]
又はその薬学的に許容される塩若しくは双性イオンを含む。
【0038】
それ自体又は別の置換基の一部としての「アルキル」は、親アルカンの単一の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、飽和で分枝、直鎖又は環状一価炭化水素ラジカルを指す。「アルキル」という用語はシクロアルキルを含む。代表的なアルキル基としては、メチル;エチル;プロピル類(例.プロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イル);ブタニル類(butanyls)(例.ブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチルプロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチルプロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イル)等が挙げられるが、これらには限定されない。一部の態様において、アルキル基は1~20個の炭素原子(C1~C20アルキル)を含む。他の態様において、アルキル基は1~10個の炭素原子(C1~C10アルキル)を含む。更に他の態様において、アルキル基は1~6個の炭素原子(C1~C6アルキル)又は1~4個の炭素原子(C1~C4)を含む。C1~C6アルキルは、「低級アルキル」としても知られる。
【0039】
「アリールアルキル」という用語は当技術分野の用語であり、この明細書では、アリール基で置換されたアルキル基、例えばC1~6アルキル基を指し、アリール基は、アルキル基を通じて主分子に連結している。アリールアルキルの例はベンジル基、すなわち、フェニルメチル基である。
【0040】
「置換された」は、明記された基又はラジカルを修飾する際に使用される場合、明記された基又はラジカルの1つ以上の水素原子が、同一であるか又は異なる置換基でそれぞれ互いに独立に置き換えられていることを意味する。「置換された」という用語は、当技術分野において一般的な1つ以上の置換基を具体的に想定及び許容する。しかし、化合物の有用な特質に悪影響を与えることも、その機能に有害に干渉することもないように置換基が選択されるべきである点を、当業者は一般に理解している。
【0041】
「置換されていてもよい」という用語は、置換基である基の存在又は非存在を表す。すなわち、これは「置換されているか又は無置換の」を意味する。例えば、置換されていてもよいアルキルは、無置換のアルキルと置換されているアルキルの両者を含む。明記された基を置換するために使用する置換基は、通常は、これまでに述べたさまざまな基から選択される同一であるか又は異なる基の1つ以上で更に置換されていてもよい。
【0042】
これらのプロドラッグ構造は、エステル官能基R4-CO-の加水分解又は代謝後に、活性なヒドロキシインドール5HT2Aアゴニストに変換される。
【0043】
一部の非限定的な例において、化合物は、4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(シロシン又は4-OH-DMT)、4-ヒドロキシ-N,N-ジエチルトリプタミン(4-OH-DET)、4-ヒドロキシ-N,N-ジイソプロピルトリプタミン(4-OH-DiPT)、4-ヒドロキシ-N-メチル-N-イソプロピルトリプタミン(4-OH-MIPT)、5-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、4-メチル-5-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン及び4-ヒドロキシ-5-メチル-N,N-ジアルキルトリプタミンといったトリプタミン構造の二酸エステルを含む。一部の態様において、化合物は、N,N-ジメチルトリプタミン(シロシン)、N,N-ジイソプロピルトリプタミン(4-OH-DiPT)又はN-メチル-N-イソプロピルトリプタミン(4-OH-MiPT)の4-ヒドロキシ誘導体の、4-及び5-置換ヘミコハク酸エステル、ヘミグルタル酸エステル及びクエン酸エステルを含む。
【0044】
一部の態様において、化合物は、R1、R2、R5、R6がそれぞれ水素であり;Xが直鎖状C1~4アルキルであり;R7及びR8がそれぞれメチルである、式I、II、III又はIVで表される化合物を含む。好ましい態様において、化合物は、式I又はIIで表される化合物であり、XがC2アルキルであり、したがって、シロシンの4-又は5-ヘミコハク酸エステルを形成する。
【0045】
一部の態様において、化合物は、R1、R2、R5、R6がそれぞれ水素であり;Xが直鎖状C1~C4アルキル鎖であり;R7及びR8がそれぞれイソプロピルである、式I、II、III又はIVで表される化合物を含む。一部の態様において、化合物は、式I又はIIで表される化合物であり、XがC2アルキルであり、したがって、4-又は5-ヒドロキシ ジイソプロピルトリプタミンのヘミコハク酸エステルを形成している。一部の態様において、化合物は、式I又はIIで表される化合物であり、XがC2アルケンであり、したがって、4-又は5-ヒドロキシ ジイソプロピルトリプタミンのヘミフマル酸エステルを形成する。一部の態様において、化合物は、式I又はIIで表される化合物であり、XがC3アルキル鎖であり、したがって、4-又は5-ヒドロキシ ジイソプロピルトリプタミンのヘミグルタル酸エステルを形成する。
【0046】
一部の態様において、R7及びR8は、それぞれ、サイケデリック状態を誘発する化合物の能力を保持又は増強することを基準にして選択される。R7又はR8がC4より長くなれば、トリプタミンのサイケデリック活性が低下することが知られている。しかし、このような化合物がサイケデリック状態を伴わずに有益な治療的効果を生じさせることができる5HT2Aアゴニストであるならば、これらも本発明の範囲内である。
【0047】
一部の態様において、本発明の化合物は二酸の双性イオンである。したがって、Xが直鎖状で飽和のアルキルである場合、二酸は、限定されるものではないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸(ペンタン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)及びスベリン酸(オクタン二酸)を含む、一般的な直鎖状アルキルα,ω-二酸を含んでいてもよい。Xが直鎖状アルケンである一部の態様において、二酸は、酸、例えばマレイン酸、フマル酸又はグルタコン酸を含んでいてもよい。他の態様において、二酸は、分岐酸、例えばシトラコン酸、メサコン酸、2,2-ジメチルコハク酸;置換された酸、例えばタルトロン酸、2-(2-ヒドロキシエチル)-マロン酸、α-ヒドロキシグルタル酸;クエン酸;又は芳香族環に有機置換基を有していてもよいアリール二酸、例えばフタル酸、イソフタル酸及びp-フタル酸を含んでいてもよい。
【0048】
一部の態様において、化合物は以下のうちの1つであってもよい:
(1) シロシン-4-スクシネート
【化5】
【0049】
(2) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-スクシネート
【化6】
【0050】
(3) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-フマレート
【化7】
【0051】
(4) シロシン-4-メチル-5-スクシネート
【化8】
【0052】
(5) N,N-ジメチルイソトリプタミン-6-スクシネート
【化9】
【0053】
(6) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレート
【化10】
【0054】
(7) N-メチル-N-イソプロピルトリプタミン-4-グルタレート
【化11】
【0055】
【0056】
(9) N,N-ジエチルトリプタミン-4-グルタレート
【化13】
【0057】
(10) N,N-ジエチルトリプタミン-4-スクシネート
【化14】
【0058】
(11) N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-(3,3-ジメチルグルタレート)
【化15】
【0059】
一部の態様において、二酸修飾トリプタミン又はイソトリプタミンは安定(酸化及び加水分解)で、容易に合成し精製できる。二酸修飾トリプタミン又はイソトリプタミンは、好ましくは、生体マトリックス中で二酸修飾のない薬物を超える可溶性を示し、優れた薬物候補となる。さらに、二酸修飾トリプタミンは、好ましくは、in vivoにおける加水分解の速度が相対的に高く、プロドラッグを薬物の活性体へと迅速に変換する。これにより、より再現性のある薬物動態プロファイルを含む、プロドラッグの改善された望ましい薬物動態を得ることができる。これらの特性は、インドールの性質、インドールに結合したさまざまな置換基及び二酸エステルの性質に依存する可能性がある。安定性及び加水分解の速度は実験により決定できる。
【0060】
一部の態様において、化合物は、R4が(R9)(R10)N-(ここで、R9及びR10はカルバミン酸エステル残基であり、これまでに定義されている)である、トリプタミンのカルバミン酸エステルを含んでいてもよい。一部の態様において、カルバミン酸エステル官能基は、カルバミン酸エステルを介して連結した、双性イオン性アミノ官能化モノ又はジカルボン酸を含み、これらとしては、限定されるものではないが、双性イオン性化合物、例えば:
- 天然及び非天然の中性又はアニオン性アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸;
- 直鎖状アルキルα,ω-アミノ酸、例えば3-アミノプロピオン酸、4-アミノ酪酸;
- 他の分枝アミノ酸及び芳香族アミノ酸、例えば4-アミノ安息香酸
が挙げられる。
【0061】
一部の態様において、本発明は、R4が、1つより多くの非エステルカルボキシ官能基、例えば4-ヒドロキシトリプタミンのクエン酸エステル誘導体(V)又は4-ヒドロキシトリプタミンのグルタミン酸カルバミン酸エステル(VI)を含む、双性イオン性化合物を含んでいてもよい:
【0062】
【0063】
一部の態様において、双性イオン性化合物は、好ましくは、中性又はわずかに酸性のpHで安定である。インドールのヒドロキシ官能基のアシル化により、置換されたフェノール性化合物及びインドールに代表的な酸化反応を特異的に防止でき(Manevski 2010 Drug Metabolism and Disposition and Napolitano 1989 Tetrahedron)、一方で、可溶性も保たれる。一部の態様において、双性イオンは、要求される効力/有効性を達成するため、中性及び薬学的に許容されるpH値(3~8)で十分な可溶性(>30mg/ml)を有する。従来、非プロドラッグファーマコフォアであるトリプタミンは、良好な可溶性及び安定性を達成するために、酸性媒体中に置いて保持しなければならない。酸性媒体は、注入可能な製剤としての使用を妨げる可能性があり、刺激を引き起こす可能性がある。
【0064】
双性イオンの態様はまた、一般的な医薬用溶媒、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン又はこれらの混合物からの再結晶により、好都合に精製及び単離することを可能にしてもよい。
【0065】
二酸部分はin vivoで代謝により開裂され、抑うつ状態の治療、例えばサイケデリック関連精神療法における使用に必要と考えられているサイケデリック状態を達成するのに、十分な用量と動態の有効成分をもたらす。これは、持続時間が8時間未満、好ましくは6時間未満、より好ましくは4時間未満のサイケデリック体験を生じさせる好都合な処方を設計する際に、特に有利である。この意味で、加水分解が必要であることは追加的な段階であり、遊離薬物(ヒドロキシ官能基がアシル化されていない)の注入と比較して、向精神特性の発現を遅くできる。発現がわずかに遅いことは、特にサイケデリック未経験の患者において不安を引き起こす可能性のある突然の発現を回避するため、一部の場合では好ましい場合がある。したがって、好ましい態様において、発現の速さはエステル及び加水分解に必要とされる標的酵素の関数である可能性がある、代謝の速度によって制御されてもよい。
【0066】
一部の態様において、ある特定のプロドラッグ二酸部分、例えばコハク酸エステルは、吸入又は経鼻吸収による乱用の潜在的可能性を減少させる可能性がある。双性イオンであることから、エステラーゼ活性を欠く組織で迅速に吸収される可能性は低い。さらに、双性イオンは受動的な機序によって脳内に直接吸収されない可能性が高い。腸内における開裂の速度はより遅く、吸収が非アシル化型より遅くなる可能性があり、乱用の意図を有する人が求めると考えられる「ラッシュ」感及びピーク速度を遅らせる可能性がある。
【0067】
製造方法
この明細書に記載の化合物は、以下で説明する方法又は類似の方法を、合成有機化学の技術分野において公知の合成法と共に使用し、又は当業者が理解するそれらの変形版により、合成できる。好ましい方法としては、以下で説明する方法が挙げられ得るが、これらには限定されない。反応は、使用する試薬及び材料にとって適当であり、影響を受ける反応に適した溶媒又は溶媒混合物中で実施される。提示される反応と分子上に存在する官能性が整合しているという点を、有機合成の当業者は理解する。これには、本発明の所望の化合物を得るために合成工程の順序を変更するか、又はある処理スキームではなく別の処理スキームを選択する際、当業者の技能の範囲内で判断を必要とする場合がある。
【0068】
以下の反応における保護及び脱保護は、当技術分野において一般的に知られている手順によって行われてもよい(例えば、Greene, T.W. et al, Protecting Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, Wiley (1999)参照)。有機合成の一般的方法及び官能基転換は、Trost, B.M. et al, eds., Comprehensive Organic Synthesis: Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry, 1st Edition, Pergamon Press, New York, NY (1991); March, J., Advanced Organic Chemistryに見いだされる。
【0069】
4-及び5-ヒドロキシトリプタミンは、当技術分野においてBaumann et al. (Beilstein 2011, 7, 442)、Shulgin (The Vaults of Erowid: TiHKAL: The Chemical Story, by Alexander and Ann Shulgin)及びFricke (Eur Chem J 2019, 25, 897)、並びに米国特許第3075992号及びChen (JOC 1994, 3738)に記載の方法を採用することによって製造できる。
【0070】
例えば、この明細書に記載のコハク酸エステルプロドラッグ化合物を、対応するヒドロキシインドール及び二酸無水物から出発する、スキーム1に概説する合成スキームを使用して製造してもよい。当業者が認識する実験条件に適している可能性のある反応条件、例えば温度、時間、溶媒が選択され、手順が選択される。反応条件に適合する置換基に対する制限は当業者には容易に理解でき、そのような場合は、別の又は類似の方法を使用しなければならない。
【化17】
当業者には容易に思い浮かぶように、他の二酸無水物を使用して他の二酸プロドラッグを製造してもよい。
【0071】
以下のスキーム2を利用して、無水グルタル酸を使用してグルタル酸エステルプロドラッグ化合物を製造してもよい:
【化18】
【0072】
当業者は、適切な条件及び溶媒を容易に選択できる。二酸無水物との反応は、ジクロロメタン及びトリエチルアミン、又はピリジン中で起こり得る。一部の態様において、溶媒は、pKaが4~9の塩基を含有する。ピリジンを使用する場合、生成物は、双性イオンとして純粋な形態で反応混合物から直接沈殿する。
【0073】
固体の双性イオンを、適切な溶媒中における無水HCl(気体)の添加、又は無水エーテルHCl若しくはジオキサンHCl中でトリチュレートすることによって、適切な塩、例えば塩酸塩に変換してもよい。
【0074】
また、二酸ヘミエステルプロドラッグの合成を、当業者に周知の他のさまざまな方法及び技法(Rautio, Nature Rev in Drug Discovery 2018, 17, 559)を使用して、例えば、二塩化物、ジ-N-ヒドロキシスクシンイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド及びDMAPを使用)、ジ-イミザドリド(imizadolide)(カルボニルジミジゾール(dimidizole)を使用)、又は活性ヘテロ環状種のヒドロキシ形態を有する二酸の他の活性化形態といった、二酸の無水物又は二重活性化形態を使用して行ってもよい。二活性化形態を使用する場合、2~25倍過剰の二重活性化二酸を使用して、2つのトリプタミンが二酸に共有結合するのを回避することが好ましい。
【0075】
同様に、当業者はこれらの方法を6-又は7-ヒドロキシイソトリプタミンに適用できる。
【0076】
製剤及び組成物
本発明はまた、1種以上の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/又は希釈剤、並びに任意に1種以上のさらなる治療剤と共に製剤化された、治療有効量のこの明細書に記載の化合物の1つ以上を含む、薬学的に許容される組成物を提供する。この明細書に記載の化合物を単独で投与することは可能であるが、化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
【0077】
「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む組成物を意味する。「薬学的に許容される担体」とは、当技術分野において動物、特に哺乳動物への生物活性薬剤の送達が一般に認められている媒体を指し、投与の形態及び剤形の性質に応じて、すなわち、アジュバント、賦形剤又はビヒクル、例えば希釈剤、浸透圧補完剤、保存剤、フィラー、流動調節剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、調味剤、着香剤、抗細菌剤、抗真菌剤、滑沢剤、ポリマー、可溶化剤、安定化剤、抗酸化剤及び分散化剤を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者にとって傷害性でないという意味で「許容され」なければならない。
【0078】
この明細書では、「経口」投与は、胃又は腸内への摂取のために飲み込むことを含み、舌、舌下、頬側及び中咽頭投与を更に含む。本発明の化合物を、適切な手段によって、例えば、錠剤、カプセル剤(これらの各々は徐放性又は持続放出性製剤を含んでいてもよい)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、懸濁剤(ナノ懸濁剤、マイクロ懸濁剤、噴霧乾燥分散剤を含む)、シロップ剤及び乳剤といった経口投与によって;舌下投与(例.薄膜、発泡錠剤又は舌下で自発的に溶解する錠剤として)によって;皮下、静脈内、筋肉内注入又は輸液技術(例.滅菌注入用水性又は非水性溶液剤、懸濁剤)といった非経口投与によって;例えば吸入スプレーによる鼻粘膜への投与を含む経鼻投与によって;又は坐剤等の直腸投与によって、この明細書に記載の使用又は方法のいずれかのために投与できる。
【0079】
この明細書に記載の化合物の投与計画は、当然ながら、既知の要因、例えば特定の薬剤の薬物動態学的及び薬理学的特質並びにその投与の形態及び経路;レシピエントの種、年齢、性別、健康、医学的状態及び体重;症状の性質及び程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎及び肝機能;並びに所望される効果、によって変動することになる。選択される投与量は、この明細書に記載の特定の化合物及び医薬組成物の活性、化合物のエステル、塩又はアミドのいずれを使用するか、投与の時間、使用する化合物の排泄又は代謝の速度、吸収の速度及び程度、治療期間、患者に投与する可能性のある他の薬物、使用する化合物と組み合わせて使用する化合物及び/又は材料、並びに医学の分野において周知の類似の要因を含むさらなる要因に依存してもよい。
【0080】
一般に、治療のためのプロドラッグの投与量は、その効果を求めて使用する場合、1回投与当たり約0.001~約500mg、好ましくは1回投与当たり約0.01~約200mg、最も好ましくは1回投与当たり約0.1~約50mg、例えば10、20、30、40、50、100又は200mgとなる。静脈内投与では、最も好ましい用量は、一定速度の注入で、約0.01~約10mg/kg/分となる。
【0081】
本発明の化合物を1日1回投与してもよく、1日の全ての投与量を複数回に分割して投与、例えば1日2回、3回又は4回投与してもよい。あるいは、毎週、隔週又は毎月の投与であってもよい。好ましい態様にでは、抗うつ効果に必要な投与は1回又は2回のみで、1、2、3若しくは6か月、又はそれより長く持続する可能性がある。
【0082】
錠剤の場合、用量に応じて、薬物は、剤形の1重量%~80重量%、より典型的には剤形の5重量%~60重量%であってもよい。錠剤は一般に、薬物に加えて崩壊剤を含有する。崩壊剤の例として、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、結晶セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン及びアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%~25重量%、好ましくは5重量%~20重量%となる。
【0083】
錠剤に凝集性を付与するため、一般に結合剤が使用される。適切な結合剤としては、結晶セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然及び合成ガム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤はまた、希釈剤、例えばラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、結晶セルロース、デンプン及びリン酸水素カルシウム二水和物を含有していてもよい。
【0084】
錠剤はまた、界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80、並びに流動化剤、例えば二酸化ケイ素及びタルクを含んでいてもよい。存在する場合、界面活性剤は通常、錠剤の0.2重量%~5重量%で、流動化剤は通常、錠剤の0.2重量%~1重量%である。
【0085】
一般に、錠剤はまた、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物を含有する。滑沢剤は一般に、錠剤の0.25重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%である。
【0086】
他の慣用の成分としては、抗酸化剤、着色料、調味剤、保存剤及び矯味剤が挙げられる。
【0087】
代表的な錠剤は、最大で約80重量%の薬物、約10重量%~約90重量%の結合剤、約0重量%~約85重量%の希釈剤、約2重量%~約10重量%の崩壊剤、及び約0.25重量%~約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0088】
錠剤用ブレンドを直接又はローラーによって圧縮して、錠剤を形成してもよい。あるいは、錠剤用ブレンド又はブレンドの一部は、打錠の前に、湿式、乾式若しくは溶融造粒され、溶融凝固され、又は押出されてもよい。最終的な製剤は、1つ以上の層を含んでいてもよく、被覆されていても被覆されていなくてもよく;又はカプセル化されていてもよい。
【0089】
錠剤の処方は“Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1”, by H. Lieberman and L. Lachman, Marcel Dekker, N.Y., N.Y., 1980 (ISBN 0 8247 6918 X)で詳しく考察されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
経口投与のための代表的なカプセル剤は、本発明の化合物の少なくとも1つ(例.25mg)、ラクトース(例.75mg)及びステアリン酸マグネシウム(例.15mg)を含有する。混合物を60メッシュの篩に通し、ゼラチンカプセル1号に充填する。
【0091】
液体製剤としては、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。このような製剤を軟又は硬カプセル剤中のフィラーとして使用してもよく、通常、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース又は適切な油、並びに、1種以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含む。また、液体製剤を、例えばサシェから固体を再構成することによって調製してもよい。
【0092】
また、本発明の化合物を、血中、筋肉又は内臓に直接投与してもよい。非経口投与のための適切な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内及び皮下が挙げられる。非経口投与のための適切なデバイスとしては、針(マイクロニードルを含む)を伴う注射器、無針注射器及び注入技術が挙げられる。
【0093】
非経口製剤は、通常、塩、炭水化物といった賦形剤、及び、pH調整又は緩衝化剤(好ましくはpH3.0~7.0、好ましくは4.0~6.0、より好ましくは4.5~5.5)を含有してもよい水溶液であるが、一部の用途では、滅菌非水性溶液として、又は適切なビヒクル(例.滅菌パイロジェンフリー水又は事前に調製した即時混合用水性緩衝液)と共に使用される乾燥形態として、より適切に製剤化されてもよい。浸透圧を制御するために浸透圧調整剤を配合してもよい。
【0094】
治療現場において滅菌条件で再構成するための、例えば凍結乾燥による非経口キットの調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術を使用して容易に実現できる。
【0095】
代表的な注入可能な製剤は、本発明の化合物の少なくとも1つ(例.25mg)を滅菌濾過溶液として無菌的にバイアル中に入れ、無菌的に凍結乾燥し、密閉することによって製造する。使用のために、バイアルの内容物を、例えば2mLの注入用の生理食塩水、並びに、場合によっては適量の浸透圧補完剤及びわずかに酸性から中性のpH(例.pH4~7)を達成するためのpH調整剤と混合して、低刺激の注入可能な製剤を製造し、プロドラッグの可溶性及び/又は安定性を維持する。
【0096】
上述した投与形態のいずれかで使用するために、本発明の化合物を、その可溶性、溶解速度、矯味、生物学的利用能及び/又は安定性を改善するように、シクロデキストリン及びその適切な誘導体又はポリマーを含有するポリエチレングリコールといった可溶性巨大分子体と組み合わせてもよい。
【0097】
例えば、薬物シクロデキストリン複合体は、大半の剤形及び投与経路に対して概ね有用であることが見いだされている。包接複合体と非包接複合体の両者を使用してもよい。薬物との直接的な複合体形成の別法として、シクロデキストリンを補助的添加剤として、すなわち、担体、希釈剤又は溶解補助剤として使用してもよい。これらの目的で最も一般的に使用されるのは、α、β及びγシクロデキストリンであり、その例は、国際公開第91/11172号、第94/02518号及び第98/55148号(これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見いだすことが可能である。
【0098】
選択した投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用してもよい本発明の化合物及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来法によって薬学的に許容される剤形に製剤化される。本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量は、特定の患者、組成物及び投与の形態にとって望ましい治療的応答を達成するのに有効な量の有効成分が得られるように、変動してもよい。
【0099】
当技術分野において通常の技能を有する医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し処方できる。例えば、医師又は獣医は、医薬組成物中の本発明の化合物の投与を、所望の治療的効果を達成するために必要とされるより低い量で開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0100】
一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療的効果を生じさせるのに有効な最低用量である化合物の量となる。このような有効量は、一般に上述した要因に依存する。
【0101】
この明細書では、「治療有効量」とは、治療される障害の症状の1つ以上をある程度軽減する、投与される化合物の量を指す。うつ病の治療に関し、治療有効量とは、うつ病の重症度を低下させる効果を有する量を指す。うつ病重症度は、周知の構造化された評価ツール、例えばStructured Clinical Interview for DSM-5(SCID-5)及びGRID-Hamilton Depression Rating Scale(GRID-HAMD)を使用して評価できる。治療有効量は、サイケデリック状態に必要とされる量より少なくてもよい。
【0102】
1回以上の投与において有効投与量を投与できる。本発明の目的では、薬物、化合物又は医薬組成物の有効投与量は、直接的又は間接的に、予防的又は治療的処置を実現するのに十分な量である。臨床の状況において理解されるように、薬物、化合物又は医薬組成物の有効投与量は、別の療法、薬物、化合物又は医薬組成物と共に達成してもよいし、そうでなくてもよい。
【0103】
治療方法及び使用
本発明の新規のプロドラッグを用いた治療は、臨床又は潜在性のうつ病を実質的に緩和する可能性があり、特にうつ病の治療のための精神療法と組み合わせて使用した場合、再発を回避する可能性がある。有効量のシロシビンの投与が抑うつ症状の迅速及び大幅な減少をもたらしたことが知られており、多くの対象は4週間の経過観察を通じて寛解を達成する(Davis et al.)。理論に束縛されるものではないが、サイケデリック状態が有益な効果と関連していると考えられるが、5HT2Aアゴニストである一部の化合物はサイケデリック状態を伴うことなく所望の治療的効果をもたらす可能性がある。本発明の一側面は、有益な治療的状態をもたらす5HT2Aアゴニストのプロドラッグを含む。
【0104】
一般に、本発明は、5HT2Aアゴニストによって緩和される可能性がある疾患若しくは障害を治療するための本発明の化合物の使用、5HT2Aアゴニストによって緩和される可能性がある疾患若しくは障害を治療する医薬を製造するための本発明の化合物の使用、又は、5HT2Aアゴニストによって緩和される可能性がある疾患若しくは障害を治療する方法を含む。
【0105】
一部の態様において、本発明は、精神障害を治療するための本発明の化合物の使用を含んでいてもよい。一部の態様において、本発明は、うつ病、特に薬物抵抗性うつ病を治療するための、本発明の化合物の使用を含んでいてもよい。治療することが可能な他の状態としては、がんのような進行した病気における不安及び全般的な不安障害を含む不安障害、大うつ病性障害を含むうつ病、産後うつ病、群発頭痛、強迫性障害、素行障害を含むパーソナリティー障害、アルコール、ニコチン、オピオイド及びコカイン依存を含む薬物依存、並びにギャンブル障害を含む他の依存症、摂食障害及び身体醜形障害、慢性疼痛、又は慢性疲労が挙げられる。
【0106】
一部の態様において、本発明は、精神障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を含んでいてもよい。一態様において、うつ病を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法が提供される。うつ病は、薬物抵抗性うつ病又は大うつ病性障害であってもよい。
【0107】
例えば、うつ病と診断された患者は、訓練を受けた精神療法士によって治療に先立ってスクリーニングされ、次いで投与のために準備されてもよい。投与では、本発明の化合物が0.01~0.3mg/kgの滅菌溶液を患者に注入してもよい。患者は、投与の継続時間中、好ましくは目隠しをされたまま座らせられる。安全のため、訓練を受けた医療専門家が、投与の全体をモニタリングしてもよく、投与は最長で12時間継続してもよい。一部の場合、患者のために音楽が演奏されてもよい。薬物が排除されたと医療専門家が判断できたとき、精神療法士はサイケデリック体験に関するいずれかの質問によって患者を補助してもよく、その後、患者を帰宅させてもよい。
【0108】
治療に関連して発生する可能性があるあらゆる不安を更に緩和するため、医師は投与量を分割することを選択し、これにより、完全な効果を達成するための全ての量を投与する前に精神作用の初期発現を低下させてもよい。
【0109】
一部の態様において、本発明の化合物による治療を、同時又は連続のいずれかで、別の抗うつ薬による治療と組み合わせてもよい。好ましい態様において、本発明の化合物による治療は精神療法と組み合わされ、精神療法は治療の前又は後に行ってもよい。治療の前である場合、本発明の化合物の投与に患者の治療の意図を集中させてもよい。後である場合、精神療法を好ましくは本発明の化合物の投与の48時間以内に行い、本発明の化合物の投与中に生じた可能性のある、あらゆる感覚、感情、視覚又は思考を患者がまとめる手助けをすると共に、抗うつ成績を改善するための思考又は行動パターンの最も良い変更方法について、精神療法士が助言できるようにする。必要に応じて、本発明の化合物の投与後、例えば最長で更に3か月、投与中に患者に生じたあらゆる経験又は学習を患者がまとめることを手助けするために、精神療法を継続してもよい。
【実施例】
【0110】
本発明を以下の実施例を参照して記載できる。これらの実施例は例示のためのみに提供される。全ての用語、名称、略称又は頭字語は、当業者が一般的に理解するものである。双性イオン形態で示される化合物は、当業者が容易にその中性形態を想起でき、逆もまた同様である。
【0111】
化合物がグルタロイル若しくはスクシノイル、又はヘミグルタル酸エステル若しくはヘミコハク酸エステルと称される場合、コハク酸エステル又はグルタル酸エステルと同じであると理解される。例えば、シロシンの4-ヘミグルタル酸エステルは、シロシン-4-グルタレート又はN,N-ジメチルトリプタミン-4-グルタレートと同じである。同様に、4-OH-DiPTの4-ヘミグルタル酸エステルは、N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレートと同じである。
【0112】
実施例1 シロシンの4-ヘミコハク酸エステル
4-ヒドロキシインドールを、Kargbo 2020 ACS Omegaに記載の方法又はその方法を適宜適合させた方法により製造した。すなわち、4-アセトキシインドールをメチル-t-ブチルエーテル(MTBE)中で塩化オキサリルと反応させ、得られた中間体をジメチルアミンでクエンチした。インドール-オキサリル-ジメチルアミドをテトラヒドロフラン(THF)中の水素化リチウムアルミニウム(LAH)で還元して4-アセトキシ-3-(N,N-ジメチルアミノエチル)インドールを得、水性塩基を使用して脱保護し、4-ヒドロキシ ジメチルトリプタミン(シロシン)を得た。
【0113】
4-ヒドロキシトリプタミンを、トリエチルアミンを有するジクロロメタン(DCM)中で、N,N-ジメチルアミノピリジンを触媒として過剰の無水コハク酸と反応させて、シロシン-4-スクシネートを得た。沈殿物を形成させ、デカンテーション及びDCMを用いたトリチュレーションの後、これを回収した。固体を塩酸で酸性化し、クロマトグラフィーによって精製し、溶媒の蒸発後、回収した。NMRによって構造を確認した。HPLCによって純度を決定した。
【0114】
実施例2 4-ヒドロキシ ジイソプロピルトリプタミン(4-OH-DiPT)の4-ヘミコハク酸エステル
4-アセトキシインドールをMTBE中で塩化オキサリルと反応させ、得られた中間体をジイソプロピルアミンでクエンチした。得られたオキサリルアミドをTHF中の水素化リチウムアルミニウム(LAH)で還元して4-アセトキシ-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールを得、水性塩基で脱保護して4-ヒドロキシ-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールを得た。撹拌子の入った250mL丸底フラスコ中に4-OH-DiPT(5.8g、22.3mmol、1当量)を添加し、ジクロロメタン(28mL、5× V)中に溶解させ、室温で撹拌した。次いで、無水コハク酸(1.3当量)を撹拌溶液にゆっくりと添加し、得られた懸濁液を室温で一晩撹拌した。反応物中に形成された沈殿物をデカンテーション及びDCMを用いたトリチュレーションによって回収した。固体を塩酸で酸性化し、クロマトグラフィーによって精製し、溶媒の蒸発後、回収した。NMRによって構造を確認した。HPLCによって純度を決定した。
【0115】
実施例3 4-OH-DiPTの4-ヘミフマル酸エステル
4-ベンジルオキシインドールを、フリーデルクラフト触媒の存在下、ジエチルエーテル中で塩化オキサリルと反応させ、得られた中間体をジイソプロピルアミンでクエンチする。得られたオキサリルアミドをTHF中の水素化リチウムアルミニウム(LAH)で還元して4-ベンジルオキシ-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールを得、そしてこれをH2及びPd/Cを使用して脱保護して4-ヒドロキシ-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールを得る。この物質をジクロロメタン中で過剰の活性化させたフマル酸(N-ヒドロキシスクシンイミド)と反応させ、その後、酸溶液で未反応の全てのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルをクエンチし、4-フマロイル-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールを得る。
【0116】
実施例4 5-ヒドロキシ-4-メチル ジメチルトリプタミンの5-ヘミコハク酸エステル
4-メチル-5-ヒドロキシインドール(1)を、K2CO3の存在下、ACN中で塩化ベンジルと反応させて5-ベンジルオキシ-4-メチルインドールを得、次いで、フリーデルクラフト触媒の存在下、ジエチルエーテル中で塩化オキサリルと反応させ、得られた中間体をジメチルアミンでクエンチする。得られたオキサリルアミドをTHF中の水素化リチウムアルミニウム(LAH)で還元して4-メチル-5-ベンジルオキシ-3-(N,N-ジメチルアミノエチル)インドールを得、H2及びPd/Cで脱保護して、4-メチル-5-ヒドロキシ-3-(N,N-ジメチルアミノエチル)インドールを得る。この物質を、ジクロロメタン中で、N,N-ジメチルアミノピリジンを触媒として無水コハク酸と反応させて、4-メチル-5-スクシノイル-3-(N,N-ジメチルアミノエチル)インドールを得る。
【0117】
実施例5 N,N-ジメチルイソトリプタミン-6-スクシネート
Glennon(JMedChem 1984)に概説されている方法に従い、NaHを使用した5-BzO-インドールのN-アルキル化によって、6-O-ベンジル ジメチルイソトリプタミンを製造する。ベンジル基をPd/C/H2を使用する接触水素化で除去してOH官能基を得、次の工程で無水コハク酸によりスクシニル化して、標記化合物を得る。
【0118】
実施例6 N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレート
1.2mLの無水DCMの入った、オーブンで乾燥させた50mL丸底フラスコ中に無水グルタル酸(0.205g、1.8mmol、1.8当量)を添加し、懸濁液をAr雰囲気下で撹拌した。1.5mLの4-OH-DiPT(0.26g、1mmol、1当量)の無水DCM溶液を添加し、次いで、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(37mg、0.3mmol、0.3当量)及びトリメチルアミン(0.18mL、1.3当量)を添加し、得られた懸濁液を、Ar雰囲気下、室温で一晩撹拌した。
【0119】
混合物をデカンテーションし、数滴の無水MeCNを加えた無水DCM(3mL)を用いて固体をトリチュレートした。懸濁液を1Mの塩酸(約1.1当量)で酸性化し、濃縮乾固した。粗生成物をC18逆相カラムクロマトグラフィー(40g、A:H2O中の0.05%HCl、B:MeCN中の0.05%HCl)によって精製した。
【0120】
NMRによって構造を確認した。HPLCによって純度を決定した(>97%)。固体を1M HCl-ジオキサン中に再懸濁してHCl塩を形成させ、濾過し、エーテルで洗浄し、乾燥させた。収率>95%、純度>95%、DSC吸熱 174℃。固体を最大で50mg/mlとなるまで水に溶かし、凍結乾燥して、白色「ケーキ」を形成させることができた。
【0121】
実施例7 3,3-ジメチルグルタル酸と4-ヒドロキシ ジイソプロピルトリプタミンのヘミエステル
実施例6に記載の化学量論及びパラメータを用いて、4-ヒドロキシ-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールをピリジン中で無水3,3-ジメチルグルタル酸と反応させて、4-スクシノイル-3-(N,N-ジイソプロピルアミノエチル)インドールを得た。反応物中に形成された沈殿物をデカンテーション及びTHF中でのトリチュレーションによって回収した。固体をDCMで洗浄し、乾燥させた。NMRによって構造を確認した。
【0122】
実施例8 シロシン-4-グルタレート
4-ヒドロキシ ジメチルトリプタミン(シロシン)を、トリエチルアミンを含有するジクロロメタン(DCM)中で過剰の無水グルタル酸と反応させて、シロシン-4-グルタレートを得た。別の例では、反応をピリジン中で行った。いずれの場合も沈殿物が形成され、デカンテーション及びTHFを用いたトリチュレーションの後、これを回収した。固体をDCMで洗浄し、乾燥させた。NMRによって構造を確認した。
【0123】
反応生成物を1M HCl-エーテル中に懸濁させて対応するHCl塩の生成物を得、これを濾過して高い収率及び純度で回収した。
【0124】
実施例9 N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレートのHCl塩
アルゴン雰囲気下の三口1L丸底フラスコ中に4-OH-DiPT(31.8g、0.122mol、1当量)を添加し、160mLの無水ピリジンに溶解させた。15分間の撹拌後、無水グルタル酸(18.1g、0.158mol、1.3当量)を少量ずつ添加した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌した。
【0125】
無水DCM(160mL)を懸濁液に添加し、これを0℃で2時間冷却した。固体を濾過し、60mLの冷無水DCMで洗浄し、一晩乾燥させた。
【0126】
乾燥させた固体を、0℃において、160mLの無水DCM、その後160mLの無水THF、次いで160mLの無水DCMを用いてトリチュレートした。乾燥後、収率72%及びHPLC純度98.1%で、33.0gを得た。双性イオンの構造を1H-NMR(DMSO-d6)及びMSによって確認した[M+H]+=375.2。
【0127】
100mL丸底フラスコ中に18mLの無水ジエチルエーテルHCl溶液(ジオキサン中4M、2.4mL、9.6mmol、1.2当量)をゆっくりと添加し、室温で10分間撹拌した。上記双性イオン(3.0g、8.0mmol)を分割して添加し、得られた懸濁液を2時間撹拌した。固体を濾別し、6mLのEt2Oで洗浄した。固体を乾燥させて、3.16gの対応するヘミエステルトリプタミンHCl塩(収率96%、HPLC純度99.0%、[M+H]+=375.1)を得た。
【0128】
実施例10 シロシンのヘミグルタル酸エステル
シロシンを温THF中で1.2当量の無水グルタル酸と反応させてシロシン-4-グルタレートを得、これまでに述べた方法に従って反応混合物から沈殿させる。沈殿物を濾過によって回収し、冷1:1DCM/THFで洗浄し、乾燥させる。
【0129】
実施例11 4-OH-DiPTの4-ヘミマロン酸エステル
4-OH-DiPTをピリジンに溶解させ、過剰のマロン酸及び1.2当量のDCCと室温で18時間カップリングさせた。反応混合物をフラッシュカラム(5部の珪藻土)に通し、プロドラッグ化合物を含有する最初の画分を沈殿及び洗浄により単離した。収率約50%。HPLC純度>95%。
【0130】
実施例12 血清中におけるプロドラッグ加水分解の相対的速度
プールされた男女混合ヒト血漿(2ml)、マウス血漿、ラット血漿及びイヌ血漿を37℃で平衡化させた。実施例9の化合物を、1.0ug/mLの濃度となるように添加した。混合物のアリコート(50uL)を指定された時間(0、0.004、0.5、1、2及び4時間)抜き取り、200uLのメタノール/アセトニトリル(1:1)でクエンチした。試料をボルテックスし、分析まで-80℃で保存した。アッセイは3回行った。対照試料を、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)及び模擬胃液(SGF、pH2)中で処理した。HPLC-MSによって試料の分析を実施して、各被験試料中のプロドラッグ及び薬物の量を決定した。表1は、実験のさまざまな時点における残留プロドラッグの平均濃度を示す。実験は、血漿中でのプロドラッグの迅速な酵素的開裂と、関連する生物学的媒体中での低速の非酵素的加水分解を示す。
【0131】
【0132】
実施例13 ラットにおける薬物動態
実施例9で得た化合物を、滅菌溶液(2mg/ml)を用い、1.4~2mg/kgでラットに注入(静脈内及び皮下)した。15分、30分、45分、60分、120分、240分及び360分後に採血し、薬物及びプロドラッグについてLCMSで分析した。プロドラッグ及び活性種のPKプロファイルを得、各投与の経路について相対的な生物学的利用能を求めた。
【0133】
薬物の活性を示すため、PK-PD型曲線を作成した(
図1及び2)。齧歯類において、プロドラッグは迅速に活性体に変換されたため、観察されなかった。4-OH-DiPTのi.v.及びs.c.投与に関するPKパラメータを表2に示す。
【0134】
【0135】
いくつかの例で、頭部痙攣縮反応(HTR)又は激しい震え(WDS:Wet Dog Shakes)が、目視による観察及び関連する筋肉痙攣縮の計数によって記録された。一般に、HTRの強度は4-OH-DIPTの血中濃度に比例し、PKプロファイルのTmaxにおいて頭部痙攣縮の強度が最も高かった。
【0136】
図1は、2mg/kgのN,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレートを皮下投与した後の、時間に対する4-OH-DiPTの血中濃度(ng/ml)を示す。
【0137】
静脈内投与又は皮下注入した1.34mg/mlの4-OH-DiPT HClの薬物動態分析を、同一の条件で並行して実施した。
図2は、各投与についての、時間に対する4-OH-DiPTの血中濃度(ng/ml)を示す。s.c.投与及び静脈内投与の場合、活性種による変動が大きいことは直ちに明らかである。PKパラメータを表3に示す。
【0138】
【0139】
実施例17 ヒトボランティアにおける薬物動態
実施例6で得た化合物(N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレート)を、滅菌溶液(1mg/ml)を用いた皮下注入によって、0.1~0.6mg/kgの用量でヒトボランティアに投与する。5分、15分、30分、45分、60分、120分、240分、480分及び24時間後に採血する。LCMSによって、試料を薬物及びプロドラッグについて分析する。標準化した質問票を使用して主観的な効果を測定する。PK分析は、注入から約45分後における最大血中濃度(CMax)を示す。主観的な効果は、血中レベルと相関する精神作用の強度を示す。
【0140】
実施例2で得た化合物(4-OH-DiPTの4-ヘミコハク酸エステル)を、50mgのプロドラッグを含有する錠剤の経口摂取により、ヒトボランティアに投与する。5分、15分、30分、45分、60分、120分、240分、480分及び24時間後に採血する。LCMSによって、試料を薬物及びプロドラッグについて分析する。標準化した質問票を使用して主観的な効果を測定する。PK分析は、摂取から約90分後におけるCMaxを示す。主観的な効果は、血中レベルと相関する精神作用の強度を示す。
【0141】
実施例18 治療における使用
実施例6の化合物(N,N-ジイソプロピルトリプタミン-4-グルタレート)を、うつ病を患うヒト患者に、i.m.若しくはs.c.注入(約25mg;0.4~0.5mg/kg)、又は錠剤による経口投与(約50~200mg;0.8~3.2mg/kg)によって投与する。別の例では、実施例6の化合物(4-OH-DiPTの4-ヘミグルタル酸エステル)を同様に投与する。投薬に先立ち、うつ病スコアの測定によって患者を選択し、除外(例.精神病の病歴、望ましくない心臓状態、妊娠)のためにスクリーニングし、最終的に、患者は投薬に対する意志を表明するように勧められる。静かな診察室で、転倒を避けるために傾いているが無拘束の姿勢に患者を安静にさせて投与する。患者の両目を覆い、音楽を流す。薬物を投与する。4時間後、患者は薬物の効果を感じなくなったと報告すると、監督下で起き上がるように求められる。患者は、正常に感じると立つこと(監督下で)を許可され、コントロールできていると感じると動き回ることを許可される。1時間後、患者は帰宅させられる。その後24時間以内に、患者は投薬について詳しく語るために診察室に戻って精神療法士に会う。患者は質問票によるうつ病スコアを記録し、再び帰宅させられる。患者は、定期的な間隔で抑うつ症状の再発について診察を受ける。
【0142】
実施例19 注入可能な製剤のキット
塩酸塩としての実施例6における化合物25mg(滅菌粉末又は凍結乾燥物)を用いてバイアルを準備する。別のバイアルに、70mMのNa2HPO4を有する1mlの滅菌濾過溶液を入れる。溶液の最終的なpHは4.0~5.0である。これら2つの構成要素が、治療現場での皮下注入のための薬物製品の再構成用キットを構成する。
【0143】
参考文献
この明細書で言及する全ての刊行物、特許、特許出願などは、以下のものを含め、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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20. Rautio, J., Meanwell, N. A., Di, L., & Hageman, M. J. (2018). The expanding role of prodrugs in contemporary drug design and development. Nature reviews. Drug discovery, 17(8), 559-587. https://doi.org/10.1038/nrd.2018.46
21. Shulgin, A. T., & Shulgin, A. (2017). Tihkal: the continuation. Transform Press.
22. Silverman, R. B., & Holladay, M. W. (2014). Prodrugs and Drug Delivery Systems. The organic chemistry of drug design and drug action. Elsevier Academic Press.
23. Watts, R., & Luoma, J. B. (2020). The use of the psychological flexibility model to support psychedelic assisted therapy. Journal of Contextual Behavioral Science, 15, 92-102.
24. 英国特許出願公告第942548号、第912714号及び米国特許第9630941号
【0144】
定義及び解釈
本発明の記載を例示及び説明のために提示したが、本発明の開示された形態に完全に一致するか又は限定されることを意図するものではない。本発明の範囲及び主旨から逸脱することのない、多くの変更形態及び変形形態が当業者には明らかであるはずである。本発明の原理及び実際の適用を最良に説明し、想定される特定の使用に適するように、さまざまな変更を有するさまざまな態様について他の当業者が本発明を理解できるようにするために、態様を選択し記載した。以下の記載が本発明の具体的な態様又は特定の使用に関する限りでは、特許請求される発明を例示するのみであって、これを限定するのではないことを意図している。
【0145】
本明細書に添付された特許請求の範囲における、全ての手段又はステップ・プラス・ファンクション要素の対応する構造、材料、行為、及び等価物は、具体的に特許請求されるように、他の特許請求された要素と組み合わせて機能を実施するための任意の構造、材料、又は行為を含むと意図される。
【0146】
明細書中での「一態様」、「態様」等に対する言及は、記載される態様が特定の側面、特徴、構造、又は特質を含んでいてもよいが、必ずしも全ての態様がその側面、特徴、構造、又は特質を含んでいる必要はないことを意味する。また、かかる語句は、明細書の他の部分において言及される同じ態様を指していてもよいが、必ずしもそうである必要はない。さらに、特定の側面、特徴、構造、又は特質がある態様と関連して記載されている場合、かかる側面、特徴、構造、又は特質を他の態様と組み合わせる、作用させる又は連結することは、かかる連結又は組合せが明示的に記載されていようとされていまいと、当業者の知識の範囲内である。換言すれば、任意の要素又は特徴を異なる態様における他の任意の要素又は特徴と組み合わせてもよく、ただし、両者間で明白若しくは本質的な不適合があるか、又はその組合せが具体的に除外されている場合はその限りではない。
【0147】
特許請求の範囲を、任意による要素を除外するように記述してもよい点に更に留意されたい。この表明それ自体は、クレーム要素の列挙又は「消極的な」限定の使用との関連における、排他的な用語法、例えば「だけ」、「のみ」等の使用に対する、前提として働くことを意図している。「好ましくは」、「好ましい」、「選ぶ」、「任意に」、「~してもよい」という用語及び類似の用語は、言及されている要素、項目、条件又は工程が、本発明の任意による(必要とされない)特徴であることを意味するために使用される。
【0148】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈により別段の規定が明白になされない限り、複数形の照応を含む。「及び/又は」という用語は、この用語が関係する項目のうちの任意の1つ、項目の任意の組合せ、又は項目の全てを意味する。
【0149】
当業者が理解するように、あらゆる全ての目的のために、特に書面による説明を提供するという点で、この明細書に記載の全ての範囲はまた、あらゆる全ての可能な部分範囲及びその部分範囲の組合せ、並びにその範囲を構成する個々の値、特に整数値を包含する。記載された範囲(例.重量パーセント又は炭素基)は、その範囲内にある各々の具体的な値、整数、小数、又は単位元を含む。列挙されたいずれの範囲も、十分に記載しており、同じ範囲を少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、又は10等分に分割できるとたやすく認識できる。非限定的な例として、この明細書に記載した各範囲を、下位3分の1、中位3分の1及び上位3分の1等に容易に分割できる。
【0150】
これもまた当業者が理解するように、この明細書に記載の全ての範囲、及び全ての文言、例えば「~」、「最大で」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~未満」、「~超」「~以上」等は、記載される数を含み、かかる用語は、上記で解説されるとおり、続けて部分範囲に分割できる範囲を指す。
【国際調査報告】