(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】暗色クロム層を基板に電着させる方法および少なくとも片面が暗色クロム層で完全に覆われた基板
(51)【国際特許分類】
C25D 3/08 20060101AFI20230713BHJP
C25D 3/10 20060101ALI20230713BHJP
C25D 3/06 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
C25D3/08
C25D3/10
C25D3/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501840
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2021085213
(87)【国際公開番号】W WO2022123019
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテック ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベルケム エズカヤ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヴァハター
【テーマコード(参考)】
4K023
【Fターム(参考)】
4K023AA02
4K023AA11
4K023BA03
4K023BA06
4K023CB13
4K023DA02
(57)【要約】
本発明は、暗色クロム層を基板上に電着させる方法および少なくとも片面が暗色クロム層で完全に覆われた基板に関する。本方法は、コロイド粒子を含む水性三価クロム電気めっき浴を利用することを含み、基板を50℃以上の温度を有するすすぎ液で処理する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗色クロム層を基板上に電着させる方法であって、
(a)基板を準備する工程、
(b)以下の
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオン用の1つまたは2つ以上の錯化剤と、
(iii)コロイド粒子と、
(iv)酸化数+5以下の硫黄原子を有する1つまたは2つ以上の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を準備する工程、
(c)前記基板と前記電気めっき浴とを接触させ、前記暗色クロム層が前記基板上に電解堆積し、前記基板の少なくとも片面を完全に覆うように電流を流す工程、
(d)電解堆積した前記暗色クロム層を備える前記基板をすすぎ液で処理する工程であって、前記すすぎ液が50℃以上の温度を有し、工程(d)の間は電流を流さない、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記コロイド粒子が、ケイ素、アルミニウムおよび炭素からなる群から選択される1つまたは2つ以上の化学元素、好ましくはケイ素およびアルミニウムを含み、最も好ましくは、前記コロイド粒子が化学元素アルミニウムを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コロイド粒子がナノ粒子を含み、好ましくはナノ粒子である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記コロイド粒子が、100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらにより好ましくは50nm以下、最も好ましくは40nm以下、非常に最も好ましくは30nm以下、さらに最も好ましくは20nm以下の粒子サイズを有する粒子を少なくとも含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
化学元素ケイ素を含む前記コロイド粒子がシリカ、好ましくはシリカコロイド粒子を含む、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
化学元素アルミニウムを含む前記コロイド粒子が酸化アルミニウムを含み、好ましくは酸化アルミニウムコロイド粒子である、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
化学元素炭素を含む前記コロイド粒子がナノダイヤモンドを含み、好ましくはナノダイヤモンドコロイド粒子である、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、前記コロイド粒子が、前記水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.05g/L~100g/L、好ましくは0.1g/L~80g/L、より好ましくは0.25g/L~60g/L、さらにより好ましくは0.5g/L~45g/L、最も好ましくは0.75g/L~35g/L、さらに最も好ましくは1g/L~20g/Lの範囲の総量で存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(iv)がチオシアン酸アニオンを含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(iv)が、
- 少なくとも、酸化数+5以下の硫黄原子を有し、付加的に窒素原子、好ましくはアミノ基を有する有機硫黄含有化合物を含み、
- より好ましくは、(iv)が、少なくとも酸化数+5以下の硫黄原子を有するアミノ酸を含み、
- 最も好ましくは、(iv)が少なくともメチオニンを含む、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも片面を完全に覆う前記暗色クロム層が、L
*a
*b表色系に準拠して、55以下、好ましくは53以下、より好ましくは51以下、さらにより好ましくは50以下、さらによりいっそう好ましくは49以下、最も好ましくは47以下、またさらに最も好ましくは45以下の最高のL
*値L2
*を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも片面を完全に覆う前記暗色クロム層が、L
*a
*b表色系に準拠して、+6以下、好ましくは+5以下、より好ましくは+4以下、さらにより好ましくは+3以下、最も好ましくは+2以下の最高のb
*値b2
*を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
少なくとも片面が暗色クロム層で完全に覆われた基板であって、前記少なくとも片面を完全に覆う前記暗色クロム層が、
- 最低のL
*値L1
*および最高のL
*値L2
*、
- 最低のa
*値a1
*および最高のa
*値a2
*、ならびに
- 最低のb
*値b1
*および最高のb
*値b2
*、
を有し、ここで、
【数1】
によると、ΔEは、前記少なくとも片面を完全に覆う前記暗色クロム層を基準にして0.0001~3.5、好ましくは0.0001~3、より好ましくは0.0001~2.5、さらにより好ましくは0.0001~2.3、最も好ましくは0.0001~2の範囲であり、
- L2
*は50以下である、
基板。
【請求項14】
b2
*が+7以下、好ましくは+6以下、より好ましくは+5以下、さらにより好ましくは+4以下、最も好ましくは+3以下である、請求項13記載の基板。
【請求項15】
前記暗色クロム層がアルミニウムおよび/またはケイ素、好ましくはアルミニウムを含む、請求項13または14記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗色クロム層を基板上に電着させる方法および少なくとも片面が暗色クロム層で完全に覆われた基板に関する。本方法は、コロイド粒子を含む水性三価クロム電気めっき浴を利用することを含み、50℃以上の温度を有するすすぎ液で基板を処理する工程を含む。
【0002】
発明の背景
クロム層の誕生当初から、暗色クロム層への関心が示されていた。暗色六価クロム層から始まり、今日では、環境受容性の高まりから三価クロム層へと焦点が大きく移行している。
【0003】
通常、各クロム層、特に暗色クロム層は、L*a*b*色空間系を参照した色値を特徴とする。値L*は輝度(または明度と称されることもある)を定義するが、値a*およびb*は、それぞれのクロム層の色を定義する。100のL*値は拡散白色を定義するが、0のL*値は濃い黒色である。a*およびb*の値は、正の場合も負の場合もあり、a*値は緑色(負)および赤色(正)を表し、b*値は青色(負)および黄色(正)を表す。a*およびb*の組合せが0の場合は、ニュートラルな灰色を表し、L*値が低いほど(例えば50以下)、濃いニュートラルな黒色に変わる。
【0004】
それぞれの水性三価クロム電気めっき浴の化学組成および/またはその堆積パラメーターに応じて、多様なL*a*b*値が生成し得る。これらの変動が顕著であるほど、2つの電気めっきクロム層の光学的差がより明白となる。
【0005】
最近では、特に暗色クロム層に経時的に或る特定の色の不安定さが見られることが観察されている。すなわち、堆積直後に暗色クロム層が或る特定のL*a*b*値を有し、これが、その後、数日および数週間で経時的に少なくとも僅かにシフトする。結果として、望ましくない色変化または少なくとも知覚が生じる。大抵の場合、これは多くの装飾用途に許容できない。
【0006】
また、十分に長い時間の後に、この変化が終わることが観察されている。言い換えると、数週間またはさらには数ヶ月にわたる可能性がある十分な時間の後に色が安定し、更なる顕著な変化が生じなくなる。残念なことに、商業的観点からすると、最終的な利用の前にそのような長時間にわたってそれぞれの商品を保管することは許容されない。したがって、加速老化または人工老化が試験されている。
【0007】
米国特許出願公開第2020/094526号明細書は、黒色めっき樹脂部品およびその製造方法に関する。80℃の温水中に比較的短時間浸漬することを含む様々な老化試験が開示されている。
【0008】
かかる加速老化では、比較的短時間で許容可能な結果および或る特定の色安定性が得られるが、独自の実験から、特に堆積プロセスにおいて様々な電流密度が局所的に必要とされる場合、領域全体にわたる色の均一性/分布が十分でない場合が多いことが示されている。結果として、均一な色知覚が損なわれることがあり、装飾用途では特に許容可能でない。
【0009】
したがって、改善された暗色電気めっきクロム層を提供するための改善された方法および電気めっき浴を提供することが継続的に求められている。
【0010】
発明の課題
本発明の課題は、さらに、上記の不利益を克服し、特により均一な色知覚を可能にし、ひいては比較的急速な加速老化を損なうことなく色の均一性を増加させる、暗色クロム層を基板上に電着させる方法を提供することであった。
【0011】
また、本発明の課題は、かかる特性を有するそれぞれの基板を提供することであった。
【0012】
発明の概要
これらの課題は、本発明、すなわち暗色クロム層を基板上に電着させる方法であって、
(a)基板を準備する工程、
(b)以下の
(i)三価クロムイオンと、
(ii)上記三価クロムイオン用の1つまたは2つ以上の錯化剤と、
(iii)コロイド粒子と
(iv)酸化数+5以下の硫黄原子を有する1つまたは2つ以上の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を準備する工程、
(c)基板を上記電気めっき浴と接触させ、暗色クロム層が基板上に電解堆積し、基板の少なくとも片面を完全に覆うように電流を流す工程、
(d)電解堆積した暗色クロム層を備える基板をすすぎ液で処理する工程であって、すすぎ液が50℃以上の温度を有し、工程(d)の間は電流を流さない、工程
を含む、方法によって解決される。
【0013】
本発明との関連では装飾用途が重要視される。このため、本発明との関連では、暗色クロム層は、好ましくは装飾暗色クロム層を指す。したがって、本発明の方法は、上記基板の少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層を有する基板に焦点を合わせたものである。言い換えると、暗色クロム層は上記基板の第1の面を少なくとも完全に覆う。最も好ましくは、これは表側面であり、本発明との関連では、この面は基板の視覚的/光学的に認識される面である。大抵の場合、これはエンドユーザーによって視覚的に認識されるように設計された装飾基板であるのが好ましい。好ましくは、任意にさらに少なくとも1つの面も暗色クロム層によって完全に覆われる。2つ以上の面が暗色クロム層によって完全に覆われる場合(すなわち第2、第3の面等)、最も好ましくは、本発明との関連では、より大きな表面積を有する面(好ましくはエンドユーザーによって視覚的に認識される面)に焦点を合わせる。このことは、好ましくは本発明による基板にも当てはまる。
【0014】
以下の実施例のセクションに示すように、少なくとも片面が暗色クロム層によって完全に覆われた基板は、色の均一性の改善(すなわちΔEの低下)を示し、それによりリスクが低下する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の方法の工程(a)では、基板を準備する。
【0016】
基板が非金属基板を含み、好ましくはプラスチック基板を含む本発明の方法が好ましい。
【0017】
非金属基板、好ましくはプラスチック基板がアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、それらの混合物および/またはそれらの複合材、好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、それらの混合物および/またはそれらの複合材を含む本発明の方法が好ましい。かかるプラスチック基板、特にABSおよびABS-PCは、典型的には自動車部品等の装飾用途に使用される。
【0018】
基板、好ましくは非金属基板、より好ましくはプラスチック基板が少なくとも1つの金属層を(最も好ましくは付加的に)備える本発明の方法が好ましい。好ましくは、少なくとも1つの金属層は銅層、銅合金層、ニッケル層、ニッケル合金層およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
工程(a)の後かつ工程(c)の前に、
(a1)基板を前処理し、好ましくは基板を洗浄し、最も好ましくは基板を脱脂および/または酸洗いする工程
を含む本発明の方法が好ましい。
【0020】
好ましくは、脱脂は電解脱脂を含む。
【0021】
好ましくは、酸洗いは酸、好ましくは無機酸と接触させることを含む。
【0022】
工程(a1)に続いて水洗浄を行うことが好ましい。
【0023】
本発明の方法の工程(b)では、上記水性三価クロム電気めっき浴を準備する。
【0024】
上記電気めっき浴は水を含み、電気めっき浴の全体積を基準にして、好ましくは少なくとも55体積%以上、より好ましくは65体積%以上、さらにより好ましくは75体積%以上、さらによりいっそう好ましくは85体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上、最も好ましくは95体積%以上が水である。最も好ましくは、水が唯一の溶媒である。
【0025】
水性三価クロム電気めっき浴が酸性であり、好ましくは1.5~5.0、より好ましくは2.1~4.6、さらにより好ましくは2.4~4.2、よりいっそう好ましくは2.7~4、最も好ましくは3.0~3.8の範囲のpHを有する本発明の方法が好ましい。pHは、好ましくは塩酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムで調整される。
【0026】
水性三価クロム電気めっき浴は、(i)三価クロムイオンを含む。
【0027】
上記電気めっき浴において、三価クロムイオンが電気めっき浴の全体積を基準にして5g/L~35g/L、好ましくは6g/L~32g/L、より好ましくは7g/L~29g/L、さらにより好ましくは8g/L~26g/L、さらによりいっそう好ましくは9g/L~23g/L、最も好ましくは10g/L~22g/Lの範囲の総濃度を有する本発明の方法が好ましい。
【0028】
好ましくは、三価クロムイオンは三価クロム塩、好ましくは無機クロム塩および/または有機クロム塩、最も好ましくは無機クロム塩に由来する。好ましい無機クロム塩は、塩化物アニオンおよび/または硫酸アニオン、好ましくは硫酸アニオンを含む。非常に好ましい無機クロム塩は、塩基性硫酸クロムである。好ましい有機クロム塩は、カルボン酸アニオン、好ましくはギ酸アニオン、酢酸アニオン、リンゴ酸アニオンおよび/またはシュウ酸アニオンを含む。
【0029】
水性三価クロム電気めっき浴において、三価クロムイオンが任意の鉄イオン(任意であるが、場合によっては好ましい鉄イオンに関しては、下記を参照されたい)とともに、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして、水性三価クロム電気めっき浴内の全遷移金属イオンの80mol%以上、好ましくは90mol%以上、より好ましくは93mol%以上、さらにより好ましくは96mol%以上、最も好ましくは98mol%以上を占める本発明の方法が好ましい。
【0030】
水性三価クロム電気めっき浴は、(ii)上記三価クロムイオン用の1つまたは2つ以上の錯化剤を含む。
【0031】
かかる化合物は、三価クロムイオンを溶液中に保持する。好ましくは、1つまたは2つ以上の錯化剤は、(iv)の化合物ではなく、したがって好ましくは(iv)とは異なる。
【0032】
水性三価クロム電気めっき浴において、1つまたは2つ以上の錯化剤が有機酸および/またはその塩、好ましくは有機カルボン酸および/またはその塩、最も好ましくは1つ、2つもしくは3つのカルボン酸基を含む有機カルボン酸および/またはその塩を含む本発明の方法が好ましい。
【0033】
有機カルボン酸および/またはその塩(好ましくは、さらには上記1つ、2つもしくは3つのカルボン酸基を含む有機カルボン酸および/またはその塩)は、好ましくは置換基で置換されているか、または非置換である。好ましい置換基は、アミノ基および/またはヒドロキシル基を含む。好ましくは、置換基はSH部分および/またはSCN部分を含まない。
【0034】
より好ましくは、有機カルボン酸および/またはその塩(好ましくは、さらには上記1つ、2つもしくは3つのカルボン酸基を含む有機カルボン酸および/またはその塩)は、アミノカルボン酸(好ましくはα-アミノカルボン酸)、ヒドロキシルカルボン酸および/またはその塩を含む。好ましい(α-)アミノカルボン酸は、グリシン、アスパラギン酸および/またはその塩を含む。好ましくは、アミノカルボン酸(好ましくは、それぞれα-アミノカルボン酸)は、(iv)による化合物ではなく、より好ましくは硫黄含有アミノカルボン酸ではなく(好ましくは、それぞれ硫黄含有α-アミノカルボン酸ではない)、最も好ましくはメチオニンではない。1つまたは2つ以上の錯化剤が(iv)とは別個であることが特に好ましい。
【0035】
1つまたは2つ以上の錯化剤が、ギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、アスパラギン酸および/またはその塩、好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸および/またはその塩、より好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸および/またはその塩、さらにより好ましくはギ酸、酢酸および/またはその塩、最も好ましくはギ酸および/またはその塩を含む本発明の方法がより好ましい。
【0036】
1つまたは2つ以上の錯化剤が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして5g/L~200g/Lの範囲、好ましくは8g/L~150g/Lの範囲、より好ましくは10g/L~100g/Lの範囲、さらにより好ましくは12g/L~75g/L、さらによりいっそう好ましくは15g/L~50g/Lの範囲、最も好ましくは20g/L~35g/Lの範囲の総濃度を有する本発明の方法が好ましい。
【0037】
水性三価クロム電気めっき浴は、(iii)、すなわちコロイド粒子を含む。
【0038】
水性三価クロム電気めっき浴がコロイド懸濁液である本発明の方法が好ましい。これは上記コロイド粒子の存在による。しかしながら、非常に希薄なコロイド懸濁液が好ましい。
【0039】
コロイド粒子が、ケイ素、アルミニウムおよび炭素からなる群から選択される1つまたは2つ以上の化学元素、好ましくはケイ素およびアルミニウムを含み、最も好ましくはコロイド粒子が化学元素アルミニウムを含む本発明の方法が好ましい。
【0040】
コロイド粒子がナノ粒子を含み、好ましくはナノ粒子である本発明の方法が好ましい。好ましくは、コロイド粒子は1000nm未満、好ましくは500nm未満の粒子サイズを有し、より好ましくはコロイド粒子の少なくとも90%が500nm未満の粒子サイズを有し、最も好ましくはコロイド粒子の少なくとも90%が150nm未満の粒子サイズを有する。
【0041】
上記コロイド粒子が、体積基準で100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらにより好ましくは50nm以下、最も好ましくは40nm以下、非常に最も好ましくは30nm以下、さらに最も好ましくは25nm以下の平均粒径D50を有する本発明の方法が好ましい。
【0042】
上記コロイド粒子が、100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらにより好ましくは50nm以下、最も好ましくは40nm以下、非常に最も好ましくは30nm以下、さらに最も好ましくは20nm以下の粒子サイズを有する粒子を少なくとも含む本発明の方法がより好ましい。最も好ましくは、100nmの粒子サイズを超えない。
【0043】
化学元素ケイ素を含むコロイド粒子がシリカを含み、好ましくはシリカコロイド粒子である本発明の方法が好ましい。
【0044】
化学元素アルミニウムを含むコロイド粒子が酸化アルミニウムを含み、好ましくは酸化アルミニウムコロイド粒子である本発明の方法が好ましい。
【0045】
上記コロイド粒子が酸化アルミニウムを含み、好ましくは酸化アルミニウムコロイド粒子である本発明の方法が最も好ましい。
【0046】
化学元素炭素を含むコロイド粒子がナノダイヤモンドを含み、好ましくはナノダイヤモンドコロイド粒子である、本発明の方法が好ましい。
【0047】
工程(b)において、上記コロイド粒子が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.05g/L~100g/L、好ましくは0.1g/L~80g/L、より好ましくは0.25g/L~60g/L、さらにより好ましくは0.5g/L~45g/L、最も好ましくは0.75g/L~35g/L、さらに最も好ましくは1g/L~20g/Lの範囲の総量で存在する本発明の方法が好ましい。
【0048】
水性三価クロム電気めっき浴は、(iv)酸化数+5以下の硫黄原子を有する1つまたは2つ以上の硫黄含有化合物を含む。好ましくは、その酸、塩、異性体(isoform)およびベタインが含まれる。しかしながら、硫酸アニオンは(iv)に含められない。
【0049】
場合によっては、上記1つまたは2つ以上の硫黄含有化合物が二価硫黄原子を含む本発明の方法が好ましい。
【0050】
工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして1mmol/L~1150mmol/L、好ましくは16mmol/L~900mmol/L、より好ましくは30mmol/L~800mmol/L、さらにより好ましくは70mmol/L~700mmol/L、最も好ましくは110mmol/L~595mmol/Lの範囲の総濃度で(iv)を含む本発明の方法が一般に好ましい。
【0051】
場合によっては、(iv)が、酸化数+5以下の硫黄原子を有する少なくとも1つの無機硫黄含有化合物を含む本発明の方法が好ましい。しかしながら、他の場合では、(iv)が、酸化数+5以下の硫黄原子を有する少なくとも1つの有機硫黄含有化合物を含む本発明の方法が好ましい。また他の場合では、(iv)が、酸化数+5以下の硫黄原子を有する少なくとも1つの無機硫黄含有化合物と、酸化数+5以下の硫黄原子を有する少なくとも1つの有機硫黄含有化合物とを含む本発明の方法が好ましい。
【0052】
(iv)がチオシアン酸アニオンを含み、好ましくは少なくともチオシアン酸アニオンを含む本発明の方法が好ましい。本発明との関連で、チオシアン酸アニオン(すなわちSCN-)は無機であるとみなされ、官能基としてチオシアネート部分を含む有機化合物は、有機チオシアネートとみなされる。好ましくは、無機チオシアン酸アニオンは、チオシアン酸塩(例えばチオシアン酸アンモニウム、カリウム、ナトリウム)またはチオシアン酸によって存在する。
【0053】
水性三価クロム電気めっき浴において、チオシアン酸アニオンが電気めっき浴の全体積を基準にして1mmol/L~400mmol/L、好ましくは3mmol/L~350mmol/L、より好ましくは5mmol/L~300mmol/L、さらにより好ましくは8mmol/L~250mmol/L、さらによりいっそう好ましくは12mmol/L~200mmol/L、最も好ましくは15mmol/L~180mmol/Lの範囲の総濃度を有する本発明の方法が特に好ましい。
【0054】
(iv)が、
- 少なくとも酸化数+5以下の硫黄原子を有し、窒素原子、好ましくはアミノ基をさらに有する有機硫黄含有化合物を含み、
- より好ましくは、(iv)が、少なくとも酸化数+5以下の硫黄原子を有するアミノ酸を含み、
- 最も好ましくは、(iv)が少なくともメチオニンを含む、
本発明の方法が好ましい。
【0055】
場合によっては、好ましくはチオシアン酸アニオンを含む上記の無機硫黄含有化合物に加えて、これが適用されるのが好ましい。しかしながら、他の場合では、好ましくはチオシアン酸アニオンを含む上記の無機硫黄含有化合物の代わりに、これが適用されるのが好ましい。後者の場合、(iv)は上記有機硫黄含有化合物の少なくとも1つのみを含む。
【0056】
好ましくは、酸化数+5以下の硫黄原子を有するアミノ酸は、酸化数+5以下の硫黄原子を有するα-アミノ酸、最も好ましくは酸化数+5以下の硫黄原子を有するタンパク質を構成するアミノ酸を含む。最も好ましくは、これはメチオニンおよび/またはシステインを含む。
【0057】
水性三価クロム電気めっき浴において、酸化数+5以下の硫黄原子を有し、窒素原子(好ましくは、少なくとも酸化数+5以下の硫黄原子を有するアミノ酸、より好ましくは上記α-アミノ酸)をさらに有する有機硫黄含有化合物が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして10mmol/L~550mmol/L、好ましくは30mmol/L~480mmol/L、より好ましくは60mmol/L~410mmol/L、さらにより好ましくは80mmol/L~350mmol/L、さらによりいっそう好ましくは100mmol/L~280mmol/L、最も好ましくは130mmol/L~200mmol/Lの範囲の総濃度を有する本発明の方法が好ましい。
【0058】
水性三価クロム電気めっき浴において、(iv)が、
- 酸化数+5以下の硫黄原子を有する少なくとも1つの無機硫黄含有化合物、好ましくはチオシアン酸アニオン、
および/または(好ましくはおよび)
- 少なくとも酸化数+5以下の硫黄原子を有し、窒素原子、好ましくはアミノ基をさらに有する有機硫黄含有化合物、より好ましくは酸化数+5以下の硫黄原子を有するアミノ酸、最も好ましくはメチオニン
を含む本発明の方法が特に好ましい。
【0059】
このため、場合によっては、水性三価クロム電気めっき浴が、2つまたは3つ以上の(iv)の化合物、最も好ましくはチオシアン酸アニオン、メチオニン、酸および/またはその塩を含む本発明の方法が好ましい。
【0060】
場合によっては、水性三価クロム電気めっき浴が以下の化合物(その塩を含む)の1つまたは2つ以上を含む本発明の方法がさらにより好ましい:
(1)2-(2-ヒドロキシ-エチルスルファニル)-エタノール、
(2)チアゾリジン-2-カルボン酸、
(3)チオジグリコールエトキシレート、
(4)2-アミノ-3-エチルスルファニル-プロピオン酸、
(5)3-(3-ヒドロキシ-プロピルスルファニル)-プロパン-1-オール、
(6)2-アミノ-3-カルボキシルメチルスルファニル-プロピオン酸、
(7)2-アミノ-4-メチルスルファニル-ブタン-1-オール、
(8)2-アミノ-4-メチルスルファニル-酪酸、
(9)2-アミノ-4-エチルスルファニル-酪酸、
(10)3-カルバミミドイルスルファニル-プロパン-1-スルホン酸、
(11)3-カルバミミドイルスルファニル-プロピオン酸、
(12)チオモルホリン、
(13)2-[2-(2-ヒドロキシ-エチルスルファニル)-エチルスルファニル]-エタノール、
(14)4,5-ジヒドロ-チアゾール-2-イルアミン、
(15)チオシアン酸、
(16)2-アミノ-4-メタンスルフィニル-酪酸、
(17)1,1-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-1λ*6*-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-オン、
(18)プロパ-2-イン-1-スルホン酸、
(19)メタンスルフィニルメタン、
(20)2-(1,1,3-トリオキソ-1,3-ジヒドロ-1λ*6*-ベンゾ[d]イソチアゾール-2-イル)-エタンスルホン酸
【0061】
好ましくは、上記の化合物は、水性三価クロム電気めっき浴内の(iv)、最も好ましくは化合物(1)~(16)および(19)を指す。
【0062】
好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴は、更なる化合物を含むか、または好ましくは、以下に概説するように特定の化合物を含有しない。
【0063】
工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、好ましくは水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.1mmol/L~10mmol/L、好ましくは0.4mmol/L~8mmol/L、より好ましくは0.8mmol/L~6mmol/L、さらにより好ましくは1.2mmol/L~4mmol/L、最も好ましくは1.5mmol/L~2.5mmol/Lの範囲の濃度でFe(II)イオンをさらに含む本発明の方法が好ましい。
【0064】
多くの場合、上記Fe(II)イオンは、電気めっき性能に肯定的な影響を及ぼす。さらに、場合によっては、クロム層が鉄を含むことが好ましい。
【0065】
工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、好ましくは水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.2mol/L~1.3mol/L、より好ましくは0.3mol/L~1.1mol/L、さらにより好ましくは0.4mol/L~1.0mol/L、さらによりいっそう好ましくは0.5mol/L~0.9mol/L、最も好ましくは0.6mol/L~0.8mol/Lの範囲の濃度で硫酸アニオンをさらに含む本発明の方法が好ましい。好ましくは、硫酸イオンは三価クロムイオンの供給源、例えば塩基性硫酸クロムによって存在する。硫酸イオンは、上記電気めっき浴の伝導性に良好に寄与する。
【0066】
工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴がハロゲンアニオン、好ましくは水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.1mol/L~6mol/Lの範囲の総濃度、より好ましくは0.5mol/L~5mol/L、さらにより好ましくは1mol/L~4.5mol/L、さらによりいっそう好ましくは1.5mol/L~4.2mol/L、最も好ましくは2mol/L~3.9mol/Lの範囲の総濃度のハロゲンアニオンをさらに含む本発明の方法が好ましい。
【0067】
ハロゲンアニオンが、好ましくは水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.5mol/L~5mol/L、より好ましくは0.8mol/L~4.7mol/L、さらにより好ましくは1.3mol/L~4.5mol/L、さらによりいっそう好ましくは1.8mol/L~4mol/L、最も好ましくは2.3mol/L~3.7mol/Lの範囲の総濃度の塩化物アニオンを含む本発明の方法がより好ましい。塩化物イオンは、好ましくは塩化物塩および/または塩酸、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化クロム(少なくとも全塩化物イオンの一部として)および/またはそれらの混合物に由来する。通常、塩化物イオンは伝導性塩のアニオンとして存在する。非常に好ましい伝導性塩は塩化アンモニウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムであり、塩化アンモニウムが最も好ましい。
【0068】
工程(b)において、ハロゲンアニオンが、好ましくは塩化物イオンに加えてまたはその代わりに臭化物アニオンを含む本発明の方法が好ましい。臭化物イオンは通常、望ましくない六価クロム種のアノード形成を回避する。好ましくは、臭化物イオンは、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして3g/L~20g/Lの範囲、好ましくは4g/L~18g/Lの範囲、より好ましくは5g/L~16g/Lの範囲、さらにより好ましくは6g/L~14g/Lの範囲、最も好ましくは7g/L~12g/Lの範囲の濃度を有する。臭化物イオンは、好ましくは臭化物塩、好ましくは臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウムおよび/またはそれらの混合物に由来する。好ましくは、硫酸イオンを水性三価クロム電気めっき浴に利用する場合、臭化物イオンも存在する。
【0069】
工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴がアンモニウムイオンをさらに含む本発明の方法が好ましい。
【0070】
工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が1つまたは2つ以上のpH緩衝化合物をさらに含む本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、1つまたは2つ以上のpH緩衝化合物は、(ii)および(iv)とは別個である(すなわち異なる)。すなわち、好ましくは、1つまたは2つ以上のpH緩衝化合物はカルボン酸を含まず、好ましくは有機酸を含まない。
【0071】
多くの場合、水性三価クロム電気めっき浴において、1つまたは2つ以上のpH緩衝化合物がホウ素含有化合物、好ましくはホウ酸および/またはホウ酸塩、最も好ましくはホウ酸を含む本発明の方法が好ましい。好ましいホウ酸塩は、ホウ酸ナトリウムである。
【0072】
水性三価クロム電気めっき浴において、1つまたは2つ以上のpH緩衝化合物が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして30g/L~250g/Lの範囲、好ましくは35g/L~200g/Lの範囲、より好ましくは40g/L~150g/Lの範囲、さらにより好ましくは45g/L~100g/Lの範囲、最も好ましくは50g/L~75g/Lの範囲の総濃度を有する本発明の方法が一般に好ましい。このことは、さらにより好ましくは上記ホウ素含有化合物、さらによりいっそう好ましくは上記ホウ酸塩に加えた上記ホウ酸、最も好ましくはホウ酸に当てはまる。最も好ましくは、1つまたは2つ以上のpH緩衝化合物は、ホウ酸を含むが、ホウ酸塩を含まない。このため、水性三価クロム電気めっき浴が、好ましくは水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして35g/L~90g/L、好ましくは40g/L~80g/L、より好ましくは50g/L~70g/L、最も好ましくは56g/L~66g/Lの範囲の総濃度でホウ酸を含む本発明の方法が最も好ましい。
【0073】
しかしながら、幾つかの他の場合では、水性三価クロム電気めっき浴は、別個のpH緩衝化合物を明確に含まない。むしろ、上記三価クロムイオン用の1つまたは2つ以上の錯化剤は、三価クロムイオンの錯化剤として働くだけでなく、さらにpH緩衝化合物として働くような量で存在し、そのように選択される。本発明との関連では、これはあまり好ましくはないが、可能である。
【0074】
水性三価クロム電気めっき浴が、亜鉛を含むイオンおよび/または化合物を実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。好ましくは、暗色クロム層は、亜鉛を実質的に含まず、好ましくは全く含まない。
【0075】
水性三価クロム電気めっき浴が化成処理組成物ではない本発明の方法が好ましい。言い換えると、水性三価クロム電気めっき浴は、化成コーティングおよび/または亜鉛もしくは亜鉛合金層上への塗布には適していない。またさらに言い換えると、本発明の方法は、化成コーティング方法ではない。
【0076】
基板が亜鉛および亜鉛合金層を実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。
【0077】
水性三価クロム電気めっき浴がフッ化物イオンを実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。好ましくは、暗色クロム層はフッ素を実質的に含まず、好ましくは全く含まない。
【0078】
水性三価クロム電気めっき浴がリン酸アニオンを実質的に含まず、好ましくは全く含まず、より好ましくはリン含有化合物を実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。好ましくは、クロム層はリンを実質的に含まず、好ましくは全く含まない。
【0079】
水性三価クロム電気めっき浴が亜硫酸アニオンを実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。
【0080】
水性三価クロム電気めっき浴が、酸化数+6のクロムを含む化合物を実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。このため、上記電気めっき浴は、六価クロムを実質的に含まず、好ましくは全く含まない。これは特に、六価クロムを水性三価クロム電気めっき浴に少なくとも意図的には添加しないことを意味する。しかしながら、これは陽極に不可避的に微量で形成される六価クロムを除外するものではない。
【0081】
場合によっては、水性三価クロム電気めっき浴がコバルトを含むイオンおよび/または化合物を実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。好ましくは、クロム層はコバルトを実質的に含まず、好ましくは全く含まない。しかしながら、他の場合では、水性三価クロム電気めっき浴がコバルトを含むイオンおよび/または化合物を含む本発明の方法が好ましい。好ましくは、クロム層は、このような場合にはコバルトを含む。コバルトは環境上問題があるが、場合によっては暗色化効果、好ましくは付加的な暗色化効果をもたらす。
【0082】
水性三価クロム電気めっき浴が可溶性アルミニウム化合物(その塩を含む)を実質的に含まず、好ましくは全く含まず、好ましくは溶解アルミニウムイオンを含まない本発明の方法が好ましい。
【0083】
水性三価クロム電気めっき浴がニッケルイオンを実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。場合によっては、最大150ppmの典型的なNi汚染が観察されるが、これは基本的に許容可能であり、したがってニッケルイオンを実質的に含まないとみなされる。このため、場合によっては、ニッケルイオンが水性三価クロム電気めっき浴の総重量を基準にして0ppm~200ppm、好ましくは1ppm~150ppm、最も好ましくは2ppm~100ppmの範囲の濃度を有することが好ましい。しかしながら、最も好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴はニッケルを含まない。
【0084】
環境上問題のあるニッケル種およびコバルト種を回避することが一般に好ましい。これにより、一般に廃水処理および浴の処分がそれほど複雑でなくなる。加えて、暗色クロム層を得るためにニッケルもコバルトも必ずしも必要とされない。
【0085】
水性三価クロム電気めっき浴がスルファミン酸およびその塩を実質的に含まず、好ましくは全く含まない本発明の方法が好ましい。
【0086】
本発明の方法の工程(c)では、基板を水性三価クロム電気めっき浴と接触させ、暗色クロム層が基板上に電解堆積し、基板の少なくとも片面を完全に覆うように電流を流す。好ましくは、暗色クロム層は暗色クロム合金層を含む。言い換えると、本発明との関連での暗色クロム層は、好ましくは暗色クロム合金層を同様に指す。好ましくは、本書全体を通した特徴は、好ましくは暗色クロム合金層にも同様に当てはまる。
【0087】
工程(c)における電流が、好ましくは3A/dm2~30A/dm2、より好ましくは4A/dm2~25A/dm2、さらにより好ましくは5A/dm2~20A/dm2、最も好ましくは6A/dm2~18A/dm2の範囲の直流である本発明の方法が好ましい。
【0088】
工程(c)において、少なくとも1つのアノードが提供および利用される本発明の方法が好ましい。少なくとも1つのアノードは、好ましくはグラファイトアノード、貴金属アノードおよび混合金属酸化物アノード(MMO)からなる群から選択される。
【0089】
好ましい貴金属アノードは、白金めっきチタンアノードおよび/または白金アノードを含む。
【0090】
好ましい混合金属酸化物アノードは、酸化白金被覆チタンアノードおよび/または酸化イリジウム被覆チタンアノードを含む。
【0091】
工程(c)において電解堆積したクロム層が0.05μm~1μm、好ましくは0.1μm~0.8μm、より好ましくは0.125μm~0.6μm、最も好ましくは0.15μm~0.5μmの範囲の層厚を有する本発明の方法が好ましい。
【0092】
工程(c)において1分間~20分間、好ましくは2分間~15分間、より好ましくは3分間~10分間接触を行う本発明の方法が好ましい。
【0093】
工程(c)において20℃~60℃、好ましくは25℃~52℃、より好ましくは30℃~45℃の範囲の温度で接触を行う本発明の方法が好ましい。
【0094】
本発明の方法の工程(c)では、L*a*b*色空間系に準拠した明度値L*、ならびにa*およびb*値を有する暗色クロム層、特に基板の少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層を基板上に電解堆積する(すなわち、これは電気めっき暗色クロム層である)。通常、L*、a*およびb*値は、暗色クロム層によって完全に覆われた上記少なくとも片面において最高および最低のL*値(それぞれL2*およびL1*)、最高および最低のa*値(それぞれa2*およびa1*)、ならびに最高および最低のb*値(それぞれb2*およびb1*)を有するように僅かに変化する。各々の最高値および最低値が互いに近いほど、全体的な色知覚がより均一となる。
【0095】
暗色クロム層が好ましくは黒色である本発明の方法が好ましい。すなわち、これは好ましくは電気めっき黒色クロム層である。このことは、好ましくは本発明の基板にも当てはまる(下記を参照されたい)。
【0096】
上記少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層が、L*a*b表色系に準拠して、30~55、好ましくは33~53、より好ましくは35~51、さらにより好ましくは37~50、さらによりいっそう好ましくは39~49、最も好ましくは40~47、またさらに最も好ましくは41~45の範囲のL*値を有する本発明の方法が好ましい。
【0097】
上記少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層が、L*a*b表色系に準拠して、55以下、好ましくは53以下、より好ましくは51以下、さらにより好ましくは50以下、さらによりいっそう好ましくは49以下、最も好ましくは47以下、またさらに最も好ましくは45以下の最高のL*値L2*を有する本発明の方法がより好ましい。
【0098】
上記少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層が-1.5~+3、好ましくは-1~+2.5、最も好ましくは-0.5~+2の範囲のa*値を有する本発明の方法が好ましい。
【0099】
上記少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層が+3以下、好ましくは+2.5以下、より好ましくは+2以下、最も好ましくは+1.5以下の最高のa2*値を有する本発明の方法がより好ましい。最も好ましくは、最高のa2*値は少なくとも正である。
【0100】
上記少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層が-1.5~+6、好ましくは-1.2~+5、より好ましくは-0.9~+4、さらにより好ましくは-0.7~+3、さらによりいっそう好ましくは-0.5~+2.7、最も好ましくは-0.3~+2.5、またさらに最も好ましくは0~+2.2の範囲のb*値を有する本発明の方法が好ましい。
【0101】
上記少なくとも片面を完全に覆う暗色クロム層が、L*a*b表色系に準拠して、+6以下、好ましくは+5以下、より好ましくは+4以下、さらにより好ましくは+3以下、最も好ましくは+2以下の最高のb*値b2*を有する本発明の方法がより好ましい。
【0102】
工程(c)の前に、基板上に少なくとも1つの金属または金属合金層を堆積させる少なくとも1つの金属めっき工程、最も好ましくは少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層を堆積させる少なくとも1つのニッケルめっき工程をさらに含む本発明の方法が好ましい。多くの場合、2つまたはさらには3つのかかる金属めっき工程が好ましくは含まれる。
【0103】
最も好ましくは、少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層は、少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または(好ましくはまたは)少なくとも1つのサテンニッケル層、最も好ましくは少なくとも1つの光沢ニッケル層を含む。
【0104】
少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層が少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含み、好ましくは上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含む本発明の方法がより好ましい。少なくとも1つの半光沢ニッケル層は、好ましくは任意である。最も好ましくは(適用される場合)、上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層の前に少なくとも1つの半光沢ニッケル層を堆積させる。
【0105】
少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層が少なくとも1つのMPSニッケル層(すなわち、非導電性粒子含有ニッケル層)を含み、好ましくは上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含み、最も好ましくは上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層、さらには上記少なくとも1つの半光沢ニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含む本発明の方法も好ましい。本発明との関連で、MPSは、MPSニッケル層が非導電性微粒子を含み、これが暗色クロム層にミクロ細孔を生じることを表す。少なくとも1つのMPSニッケル層は、好ましくは任意である。
【0106】
場合によっては、MPSニッケル層が暗色クロム層に隣接する本発明の方法が好ましい。
【0107】
他の場合では、暗色クロム層が少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または少なくとも1つのサテンニッケル層に隣接する本発明の方法が好ましく、これが多くの場合に好ましく、最も好ましくは少なくとも1つの光沢ニッケル層と組み合わせる。
【0108】
好ましくは、暗色クロム層は層スタックの一部である。
【0109】
本発明の方法の工程(d)では、工程(c)から得られた基板をすすぎ液で処理し、すすぎ液は50℃以上の温度を有し、工程(d)の間は電流を流さない。このため、工程(d)は無電解工程であり、最も好ましくは単なるすすぎ工程である。言い換えると、好ましくは外部電流を流さず、好ましくは、化学的還元剤はこの工程に必要とされない。さらに、工程(c)および(d)は別個の工程、すなわち個々の工程であり、その後、最初に工程(c)、続いて工程(d)を行う。
【0110】
本発明との関連で、工程(d)は、暗色クロム層の所望の暗色の色調の迅速かつ直接的な形成を可能にし、加速老化工程とみなされるため非常に重要な工程である。工程(d)に適用される温度は、工程(c)に利用される温度ではないが、好ましくは工程(d)に利用される温度は、工程(c)に利用される温度よりも高い。
【0111】
工程(d)における処理を55℃~99℃、好ましくは60℃~95℃、より好ましくは63℃~91℃、さらにより好ましくは66℃~88℃、さらによりいっそう好ましくは69℃~85℃、最も好ましくは72℃~83℃の範囲の温度で行う本発明の方法が好ましい。
【0112】
工程(d)においてすすぎ液が水を含み、すなわち好ましくは水性であり、好ましくは実質的に水のみである本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、すすぎ液は水からなる。
【0113】
工程(d)において、すすぎ液での処理がすすぎ液への浸漬である本発明の方法がより好ましい。しかしながら、場合によっては、工程(d)において、すすぎ液での処理がすすぎ液の流れ、好ましくはすすぎ液の一定の流れとの接触を含む本発明の方法が好ましい。
【0114】
工程(d)における処理を2分間~90分間、好ましくは3分間~75分間、より好ましくは4分間~60分間、さらにより好ましくは6分間~50分間、最も好ましくは8分間~40分間、さらに最も好ましくは10分間~35分間にわたって行う本発明の方法が好ましい。
【0115】
本発明の方法は、好ましくは追加のすすぎ、洗浄、前処理および/または後処理の工程等の更なる工程を除外しないのが好ましい。好ましくは、下記実施例で定義される工程は、本書全体を通して説明される一般的方法にも同様に当てはまる。好ましい後処理工程は、好ましくは無機および/もしくは有機シーラントによるシーリング工程、ならびに/または指紋防止組成物との接触工程を含む。
【0116】
本発明は、さらに、基板の片面を少なくとも完全に覆う暗色クロム層を備える具体的に定義される基板に関する。本発明は特に、少なくとも片面が暗色クロム層で完全に覆われた基板であって、上記少なくとも片面を完全に覆う上記暗色クロム層が、
- 最低のL
*値L1
*および最高のL
*値L2
*、
- 最低のa
*値a1
*および最高のa
*値a2
*、ならびに
- 最低のb
*値b1
*および最高のb
*値b2
*
を有し、ここで、
【数1】
によると、ΔEは、上記少なくとも片面を完全に覆う上記暗色クロム層を基準にして0.0001~3.5、好ましくは0.0001~3、より好ましくは0.0001~2.5、さらにより好ましくは0.0001~2.3、最も好ましくは0.0001~2の範囲であり、
- L2
*は50以下である、
基板に関する。
【0117】
本発明の方法に関する上記の事柄は、好ましくは本発明の具体的に定義される基板にも同様に当てはまる(技術的に適用可能な場合)。このことは、最も好ましくは本発明の方法について定義されるL*a*b*値および層厚に当てはまる。しかしながら、本発明の基板の以下の特徴は、好ましくは本発明の方法にも当てはまる(本書において上記で既に言及されていない場合)。
【0118】
L2*が49以下、好ましくは48以下、より好ましくは47以下、さらにより好ましくは46以下、さらによりいっそう好ましくは45以下、最も好ましくは44以下、またさらに最も好ましくは43以下である本発明の基板が好ましい。
【0119】
b2*が+7以下、好ましくは+6以下、より好ましくは+5以下、さらにより好ましくは+4以下、最も好ましくは+3以下である本発明の基板が好ましい。
【0120】
暗色クロム層がアルミニウムおよび/またはケイ素、好ましくはアルミニウムを含む本発明の基板が好ましい。
【0121】
暗色クロム層が粒子、好ましくはアルミニウムおよび/またはケイ素を含む粒子、最も好ましくはアルミニウムを含む粒子を含む本発明の基板がより好ましい。
【0122】
好ましくは、暗色クロム層は暗色クロム層と基板との間の唯一の金属層ではない。
【0123】
暗色クロム層に加えて、少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層を暗色クロム層の下に備える本発明の基板が好ましい。
【0124】
上記少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層が少なくとも1つの光沢ニッケル層または少なくとも1つのサテンニッケル層を含む本発明の基板が好ましい。これが最も好ましい。
【0125】
上記少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層が少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含み、好ましくは上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含む本発明の基板が好ましい。少なくとも1つの半光沢ニッケル層は、好ましくは任意である。最も好ましくは、少なくとも1つの半光沢ニッケル層はそれぞれ、基板に最も近い全てのニッケルおよびニッケル合金層のそれぞれのニッケルおよびニッケル合金層である。
【0126】
上記少なくとも1つのニッケルおよび/またはニッケル合金層が少なくとも1つのMPSニッケル層を含み、好ましくは上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含み、最も好ましくは上記少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または上記少なくとも1つのサテンニッケル層、さらには上記少なくとも1つの半光沢ニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含む本発明の基板が好ましい。本発明との関連で、MPSは微孔性を表す。
【0127】
上記少なくとも1つのMPSニッケル層が片側で暗色クロム層に面し、反対側で上記少なくとも1つの光沢ニッケル層または上記少なくとも1つのサテンニッケル層に面する本発明の基板が好ましい。
【0128】
上記少なくとも1つの半光沢ニッケル層が上記少なくとも1つの光沢ニッケル層または上記少なくとも1つのサテンニッケル層の下にある本発明の基板が好ましい(基板に向かって上方から見て定義される)。
【0129】
暗色クロム層が層スタックの一部であり、層スタックが、基板に向かって上方から見て定義される(隣接してまたは隣接せずに)、
(i)暗色クロム層と、
(ii)任意に、少なくとも1つのMPSニッケル層と、
(iii)少なくとも1つの光沢ニッケル層および/または(好ましくはまたは)少なくとも1つのサテンニッケル層と、
(iv)任意に、少なくとも1つの半光沢ニッケル層と
を備える本発明の基板が好ましい。
【0130】
場合によっては、層スタックは、好ましくはシーラント層および/または指紋防止層を、最も好ましくは暗色クロム層上に備える。両方が適用される場合、好ましくはシーラント層が初めに適用され、続いて指紋防止層が適用され、好ましくはこれが最も外側の層を形成する。
【0131】
特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を限定することなく、本発明の趣旨を以下の実施例においてさらに説明する。
【0132】
実施例
(a)基板の準備:
以下の実施例については、主に銅層を上に備えるプラスチック基板を模倣するために銅パネル(100mm×70mm)を基板として使用した。
【0133】
第1の工程では、基板を室温(RT)にて100g/LのUniclean(登録商標) 279(Atotechの製品)での電解脱脂によって洗浄した。その後、銅パネルを10体積%H2SO4で酸洗いし、続いて水ですすいだ。
【0134】
第2の工程では、洗浄し、すすいだ基板をニッケルめっきに供し、銅パネルの上に光沢ニッケル層を得た(パラメーター:4A/dm2で10分;UniBrite 2002、Atotechの製品)。
【0135】
(b)水性三価クロム電気めっき浴の準備
以下の塩基水性三価クロム電気めっき浴を使用した:
128g/Lの塩基性硫酸クロム
46g/Lのギ酸
60g/Lのホウ酸
12g/Lの臭化アンモニウム
100g/Lの塩化アンモニウム
110g/Lの塩化カリウム
30g/Lのメチオニン
15g/Lのチオシアン酸カリウム
2mmol/LのFe(II)イオン
【0136】
最終pH値は3.5であった。
【0137】
コロイド粒子の追加量およびその種類を下記表1にまとめる。「CE」は比較例を表し、「E」は本発明による実施例を表す。
【0138】
【0139】
(c)基板と上記電気めっき浴との接触
グラファイトアノードを有し、基板がカソードとして設置されたハルセルで電気めっきを行った。約35℃の温度を有する水性三価クロム電気めっき浴に5Aの電流を3分間流した。空気撹拌によって撹拌を達成した。結果として、それぞれの暗色電気めっきクロム層がニッケルめっき銅パネルの具体的に定義される光学領域に完全に堆積することで、そうでなければその表側面が完全に覆われる典型的なプラスチック基板が模倣された。
【0140】
(d)すすぎ液による基板の処理
その後、暗色クロム層を有する基板を、すすぎ工程において熱水(80℃)で、上記水の入ったビーカーに基板を浸漬することによって30分間すすいだ。
【0141】
すすぎ工程後に、基板を15日間貯蔵して一定の色平衡を達成した。その後、L*a*b*色空間系に準拠したL*a*b*値を光学面の様々な位置で決定した(コニカミノルタ株式会社のCM-700 D分光光度計;CIE標準照明装置D65および10°標準観測者)。黒色および白色の標準を用いて分光光度計の較正を行った。
【0142】
基板の左端から3.5cm(かつ基板の下端から2cm;左端がアノード側に向く)~左端から1cmの範囲でL*a*b*値を決定した。この領域では、典型的には光学面全体にわたる最高および最低のL*a*b*値を決定する。このため、それぞれ最高および最低の値を決定し、下記表2にまとめる。
【0143】
【0144】
表2は、本発明による全ての実施例(すなわちE1~E5)について、ΔEがそのそれぞれの比較例(すなわち、それぞれCE1およびCE2)と比較して減少していることを示す。このため、L*、a*およびb*によって定義される全体的な色の印象は、より均一である。
【0145】
特にE4は、比較的低いΔEと併せた3未満の非常に望ましいb*値を示す。
【0146】
さらに、実施例E4およびE5は、比較的高濃度のチオシアン酸アニオンが概して、使用する粒子の種類とは無関係に実施例E1~E3と比較してより低いb*値をもたらすことを示す。このことは、好ましくは輝度L*にも当てはまる。
【0147】
加えて、実施例4は、ニュートラルブラックの色調に非常に密接に関連する+3未満の非常に望ましいb*値に達する唯一の実施例である。
【0148】
通常、3.5を超えるΔE(CE2を参照されたい)は殆ど所望されない。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗色クロム層を基板上に電着させる方法であって、
(a)基板を準備する工程、
(b)以下の
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオン用の1つまたは2つ以上の錯化剤と、
(iii)コロイド粒子と、
(iv)酸化数+5以下の硫黄原子を有する1つまたは2つ以上の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を準備する工程、
(c)前記基板と前記電気めっき浴とを接触させ、前記暗色クロム層が前記基板上に電解堆積し、前記基板の少なくとも片面を完全に覆うように電流を流す工程、
(d)電解堆積した前記暗色クロム層を備える前記基板をすすぎ液で処理する工程であって、前記すすぎ液が50℃以上の温度を有し、工程(d)の間は電流を流さない、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記コロイド粒子が、ケイ素、アルミニウムおよび炭素からなる群から選択される1つまたは2つ以上の化学元
素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コロイド粒子がナノ粒子を含
む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記コロイド粒子が、100nm以
下の粒子サイズを有する粒子を少なくとも含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
化学元素ケイ素を含む前記コロイド粒子がシリ
カを含む、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
化学元素アルミニウムを含む前記コロイド粒子が酸化アルミニウムを含
む、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
化学元素炭素を含む前記コロイド粒子がナノダイヤモンドを含
む、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、前記コロイド粒子が、前記水性三価クロム電気めっき浴の全体積を基準にして0.05g/L~100g/
Lの範囲の総量で存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(iv)がチオシアン酸アニオンを含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(iv)が、
- 少なくとも、酸化数+5以下の硫黄原子を有し、付加的に窒素原
子を有する有機硫黄含有化合物を含
む、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも片面を完全に覆う前記暗色クロム層が、L
*a
*b表色系に準拠して、55以
下の最高のL
*値L2
*を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも片面を完全に覆う前記暗色クロム層が、L
*a
*b表色系に準拠して、+6以
下の最高のb
*値b2
*を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【国際調査報告】