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特表2023-531324キシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】キシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/18 20060101AFI20230713BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20230713BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C12P7/18
C12P19/02
C12N1/21
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509790
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2021134586
(87)【国際公開番号】W WO2022142969
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011606471.9
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】515126422
【氏名又は名称】浙江工▲業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽 徐浩
(72)【発明者】
【氏名】羅 家星
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】胡 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】方 順成
(72)【発明者】
【氏名】柳 志強
(72)【発明者】
【氏名】蔡 雪
(72)【発明者】
【氏名】張 曉健
(72)【発明者】
【氏名】鄭 裕国
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC05
4B064AF02
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC08
4B064CC24
4B064CD09
4B064CD22
4B064DA16
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BB15
4B065BB26
4B065BB40
4B065BC10
4B065CA07
4B065CA60
(57)【要約】
本発明はキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法に関し、キシロース二次母液とキシロース濃縮液との混合液を発酵し、発酵過程で後続のグルコースの代わりにキシロース二次母液を流加することによって、発酵系中のグルコース含有量を安定にするとともに、一部のキシロースを提供し、このように、グルコースの使用量を減少させ、コストを低下させるだけではなく、系のキシロースを安定的に維持し、全転化率を向上させる。本発明では、混合発酵や流加などで添加されるキシロース二次母液によって発酵系中アラビノース、マンノースなどの不純物である糖の含有量を常に発酵菌株により代謝可能な範囲にし、後続の精製を容易にし、しかもキシリトールの純度を向上させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロース加水分解液のイオン交換前液にアルカリ液を添加し、その後活性炭で脱色し、脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て、次に、濃縮液の光屈折が約60%~65%となるまで低温真空濃縮を行い、キシロース濃縮液を得る、キシロース濃縮液を製造するステップ1と、
組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、OD600=5~6となるまで培養し、シード液を得る、菌株を活性化しシード液を製造するステップ2と、
発酵タンクに殺菌後の発酵培地を添加して、シード液を加え、OD600>20となるまで培養する、発酵タンクによる拡大培養のステップ3と、
キシロース濃縮液とキシロース二次母液とを所定の割合で混合した混合液を発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を85g/L~90g/Lに維持し、系中のグルコース濃度が10g/Lよりも小さくなると、キシロース二次母液を流加し、グルコース濃度が10g/Lに維持され、グルコースの全添加量がキシロースの質量の35%~40%となるように制御し、120g~130gのコーンスティープリカー乾燥粉末溶液を用いて調製した高濃度溶液0.2L~0.5Lを発酵過程で流加する、第1バッチの流加発酵のステップ4と、
第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ4の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、最終発酵液のキシリトール濃度が一定になると発酵を終了する、第2バッチの流加発酵のステップ5とを含む、ことを特徴とするキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項2】
ステップ1は、具体的には、キシロース加水分解液のイオン交換前液に0.4%~0.5%のCa(OH)を添加し、30rpm~50rpmで15min~30min撹拌し、pH3.0~3.5に制御し、その後活性炭を0.3%~0.5%の質量比で添加して脱色し、温度を60℃~70℃に制御して、30rpm~60rpmで60min~90min撹拌することを含むことを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項3】
ステップ1では、低温真空濃縮の条件は、真空ポンプ圧-0.085MPa~-0.095MPa、水浴温度60℃~70℃、回転数50rpm~60rpm、凝縮水流速150mL/min~200mL/minであることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項4】
ステップ2では、前記菌株は組換え大腸菌IS5-Mであることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項5】
ステップ2では、LB液体培地の構成成分は、ペプトン10g/L、酵母粉5g/L、塩化ナトリウム10g/L、固体寒天1.5%~2%であり、シード培地の構成成分は、ペプトン7.5g/L、酵母粉7.5g/L、塩化ナトリウム10g/L、グルコース20g/Lであることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項6】
ステップ3では、前記発酵培地の構成成分はグルコース10g/L、コーンスティープリカー乾燥粉末24g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、KHPO 3g/L、NaHPO・12HO 9g/L、NHCl 1g/Lであり、前記発酵タンクの培養条件は、37℃、400rpm、pH6.5~7、溶存酸素30%~35%であることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項7】
ステップ3では、9.5h~11h培養することを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項8】
ステップ4では、前記キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比が7~9:1~3であることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項9】
ステップ4では、前記第1バッチの流加発酵の発酵条件は30℃、pH7、溶存酸素20%~25%であることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【請求項10】
総発酵時間が約75h~85hであることを特徴とする請求項1に記載のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖アルコール製造の技術分野に関し、特にキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キシロースを製造する過程で、トウモロコシ穂軸などの原料から、酸加水分解、脱色、イオン交換、濃縮、結晶化、遠心分離、乾燥などの工程を経て結晶キシロースが得られ、遠心分離では、大量のキシロース母液が得られ、この母液はクロマトグラフィーにより再びキシロースを抽出することができ、クロマトグラフィー分離過程で抽出残液、すなわちキシロース二次母液が同時に得られる。キシロース二次母液はグルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、キシロースなどの多種類の単糖を含み、生産条件、バッチによって含有量が変動するため、合理的に利用することが困難である。現在、キシロース二次母液の多くは混合シロップとしてカラメル色素の生産に用いられており、付加価値が低い。
【0003】
現在、生物発酵法を用いてキシリトールを製造する方法は通常、ヘミセルロース加水分解液又はグルコースなどを発酵原料とし、効率の高い酵母菌又は大腸菌の遺伝子操作菌を用いて発酵を行うものであり、例えば開示番号がCN105671013A、CN110835621A、CN106661540Aの特許である。現在の発酵技術では、発酵の生産効率を満たすために、多くの場合、過程中に材料を補充する必要があり、その中の多くはグルコースを添加し、菌株の生産と発酵に必要な炭素源を提供し、これによって、発酵コストと発酵過程の制御の難度が増加し、多くの場合に発酵終点にグルコースが残留するため、発酵液の還元糖が高くなり、後続の発酵液の精製に不利である。
【0004】
開示番号CN101921810Aの特許は、L-アラビノースを炭素源とすることができないカンジダを用いてキシロース母液を発酵することで、母液中のグルコース及びガラクトースを消費し、脱色、イオン交換、濃縮、結晶化などの工程により、キシリトール、L-アラビノースの混合結晶を得る。開示番号CN101705253Aの特許は、アルコール酵母及びキシリトール酵母を用いてキシロース母液を順次発酵させ、エタノール、キシリトール及びアラビノース製品をそれぞれ得る。開示番号CN101857523Aの特許は、キシロース母液を用いてキシリトールとアラビトールを同時に生産する。これらの研究はいずれもキシリトールの母液発酵を利用してキシリトールを調製し、キシリトールの二次母液はキシリトール母液に比べて、キシリトールの含有量が低く、約10%(キシリトール母液は約50%~60%)であり、キシリトールの転化を直接に行うのに適しておらず、また、キシリトールの二次母液中の母液の固形分含有量は高く、希釈してから発酵に用いる必要があり、これによって、キシリトールの濃度をさらに下げたため、発酵液中のキシリトール濃度が低すぎて、抽出、精製の価値がない。
【0005】
以上の研究に共通の問題は、キシロース母液だけを炭素源と発酵原料とするため、発酵効率が低く、いずれもキシロース二次母液の発酵利用には適さないことである。キシロース二次母液を用いてキシリトールを製造するには、従来技術の更なる改良と向上が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、キシロース二次母液とキシロース濃縮液を所定の割合で混合して発酵することによって、材料の初期グルコース含有量を向上させて後続のグルコース流加量を減少させ、後続のグルコースの代わりにキシロース二次母液を流加することによって、キシロース二次母液中のキシロース含有量が低く、キシリトール転化率が低く、発酵操作のステップが複雑であり、生産コストが高いという問題を解決し、これによって、キシロース二次母液の付加価値を高めるという目的を達成させるキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のように達成される。
【0008】
キシロース加水分解液のイオン交換前液にアルカリ液を添加し、その後活性炭で脱色し、脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て、次に低温真空濃縮を行い、濃縮液の光屈折が約60%~65%となるまで、キシロース濃縮液を得る、キシロース濃縮液を製造するステップ1と、
組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、OD600=5~6となるまで培養し、シード液を得る、菌株を活性化しシード液を製造するステップ2と、
発酵タンクに殺菌後の発酵培地を添加して、シード液を加えて、OD600>20となるまで培養する、発酵タンクによる拡大培養のステップ3と、
キシロース濃縮液とキシロース二次母液とを所定の割合で混合した混合液を発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を85g/L~90g/Lに維持し、系中のグルコース濃度が10g/Lよりも小さくなると、キシロース二次母液を流加し、グルコース濃度が10g/Lに維持され、グルコースの全添加量がキシロースの質量の35%~40%となるように制御し、コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度の溶液0.2L~0.5Lを発酵過程で流加する、第1バッチの流加発酵のステップ4と、
第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ4の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、最終発酵液のキシリトール濃度が一定になると発酵を終了する、第2バッチの流加発酵のステップ5と、を含むキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法を提供する。
【0009】
さらに、ステップ1では、具体的には、キシロース加水分解液のイオン交換前液に0.4%~0.5%のCa(OH)を添加し、30rpm~50rpmで15min~30min撹拌し、pH3.0~3.5に制御し、その後活性炭を0.3%~0.5%の質量比で添加して脱色し、温度を60℃~70℃に制御して、30rpm~60rpmで60min~90min撹拌することを含む。さらに、ステップ1では、低温真空濃縮の条件は、真空ポンプ圧-0.085MPa~-0.095MPa、水浴温度60℃~70℃、回転数50rpm~60rpm、凝縮水流速150mL/min~200mL/minを含む。
【0010】
さらに、ステップ2では、前記菌株は組換え大腸菌IS5-Mである。該菌株は開示番号CN105671013Aの特許に記載されている。
【0011】
さらに、ステップ2では、LB液体培地の構成成分は、ペプトン10g/L、酵母粉5g/L、塩化ナトリウム10g/L、固体寒天1.5%~2%であり、シード培地の構成成分はペプトン7.5g/L、酵母粉7.5g/L、塩化ナトリウム10g/L、グルコース20g/Lである。
【0012】
さらに、ステップ3では、前記発酵培地の構成成分は、グルコース10g/L、コーンスティープリカー乾燥粉末24g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、KHPO 3g/L、NaHPO・12HO 9g/L、NHCl 1g/Lであり、前記発酵タンクの培養条件は、37℃、400rpm、アンモニア水で調整された後のpH6.5~7、溶存酸素30%~35%である。
【0013】
さらに、ステップ3では、9.5h~11h培養する。
【0014】
さらに、ステップ4では、前記キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比が7~9:1~3である。
【0015】
さらに、ステップ4では、前記第1バッチの流加発酵の発酵条件は30℃、pH7、溶存酸素20%~25%である。
【0016】
さらに、総発酵時間が約75h~85hである。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比べ、本発明のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法は以下の特徴を有する。
【0018】
(1)キシロース二次母液とキシロース濃縮液を所定の割合で混合することによって、発酵前期の利用可能な炭素源の含有量を向上させることができ、菌株初期の成長増殖に有利であり、これにより、キシリトール転化率を向上させる。
【0019】
(2)グルコースの代わりにキシロース二次母液を流加することによって、発酵系中のグルコース含有量を安定にしながら、一部のキシロースを提供し、これにより、グルコースの使用量を減少させ、コストを低下させるだけではなく、系のキシロースを安定的に維持し、全転化率を向上させる。
【0020】
(3)キシロース二次母液は、抑制物が少なく、菌株の成長発達に影響を与えず、また、殺菌しないままで使用することができる。
【0021】
(4)2バッチで流加して発酵することにより、発酵系中のキシロース含有量を安定的に維持することができ、菌株の形質転換に有利であり、発酵液中のキシリトール濃度を高め、また、発酵初期においてキシロースなどの糖の濃度が高すぎて、菌株の高浸透圧条件での成長抑制をもたらし、転化率低下を招くということを回避する。
【0022】
(5)混合発酵や流加などで添加されるキシロース二次母液によって発酵系中のアラビノース、マンノースなどの不純物である糖の含有量を常に発酵菌株により代謝可能な範囲にし、後続の精製を容易にし、キシリトールの純度を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。なお、ここで説明される特定実施例は本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0024】
本発明のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法の好適な実施例は、ステップ1~ステップ5を含む。
【0025】
ステップ1、キシロース濃縮液を製造した:キシロース加水分解液のイオン交換前液にアルカリ液を添加し、その後活性炭で脱色し、脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て、次に低温真空濃縮を行い、濃縮液の光屈折が約60%~65%となるまで、キシロース濃縮液を得た。
【0026】
ステップ2、菌株活性化及びシード液製造:組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、OD600=5~6となるまで培養し、シード液を得た。
【0027】
ステップ3、発酵タンクによる拡大培養:発酵タンクに殺菌後の発酵培地を添加して、ステップ2で得られたシード液を加え、OD600>20となるまで培養した。
【0028】
ステップ4、第1バッチの流加発酵:ステップ1で製造されたキシロース濃縮液とキシロース二次母液とを所定の割合で混合した混合液を発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を85g/L~90g/Lに維持し、系中のグルコース濃度が10g/Lよりも小さくなると、キシロース二次母液を流加し、グルコース濃度が10g/Lに維持され、グルコースの全添加量がキシロースの質量の35%~40%となるように制御し、コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度の溶液0.2L~0.5Lを発酵過程で流加した。
【0029】
ステップ5、第2バッチの流加発酵:第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ4の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、最終発酵液のキシリトール濃度が一定になると発酵を終了した。
【0030】
キシロース母液及びキシロース二次母液の成分含有量を検出し、結果を以下の表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
上記の表から分かるように、キシロース母液はキシロース濃度が高く、他の糖の含有量が低く、キシロース二次母液はキシロース濃度が低く、グルコース含有量が高く、しかも、酢酸、フルフラール、HMFなどの抑制物が小さく、キシロース母液よりもキシリトール発酵に適しており、グルコースの代わりとして好適な発酵原料である。
【0033】
キシロース濃縮液とキシロース二次母液を所定の割合で混合し、発酵に利用可能な一連の原料液を得た。混合原料液を検出し、混合原料液中の各糖アルコール成分の含有量を取得し、具体的には、以下の表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
他の割合も本系の発酵に利用できるが、キシロース濃度が低いので、発酵のために占有する空間が大きくなり、経済的利益が低いので、詳しく説明しないが、本発明の特許範囲内である。
【0036】
本発明に使用されるキシロース濃縮液はトウモロコシ穂軸の加水分解液であってもよく、半セルロースを豊富に含む他のバイオマス原料、例えばバガス、製紙廃材などであってもよい。本発明では、キシロース二次母液はグルコースを豊富に含む他の白下(massecuite)液の代わりとして利用できる。
【0037】
以下、特定実施例を参照して本発明の方法をさらに説明する。
【0038】
<実施例1>
本発明のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法の第1実施例は、ステップ11~ステップ15を含む。
【0039】
ステップ11、キシロース濃縮液を製造した:キシロース加水分解液のイオン交換前液に0.4%のCa(OH)を添加し、50rpmで15min撹拌し、pHを3.2に制御し、その後活性炭を0.4%の質量比で添加して脱色し、温度を60℃に制御して、60rpmで90min撹拌した。脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て低温真空濃縮を行い、真空ポンプ圧-0.095MPa、水浴温度60℃、回転数60rpm、凝縮水流速約200mL/minに設定して、濃縮液の光屈折が約65%となると、発酵に適しているキシロース濃縮液を得た。
【0040】
ステップ12、菌株活性化及びシード液製造:組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、培養して、OD600=5のシード液を得た。
【0041】
ステップ13、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地3.5Lを添加し、ステップ12で製造したシード液0.5Lを加えて、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積4.5L、培養時間約10hの条件で、OD600=21となるまで培養した。
【0042】
ステップ14、第1バッチの流加発酵:ステップ11で製造されたキシロース濃縮液とキシロース二次母液を9:1の割合で混合した混合液1Lを発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を90g/Lとした。発酵条件:30℃、pH7、溶存酸素20%~25%。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース200gを添加する必要がある。混合液中にグルコースが既に存在しているので、キシロース二次母液を流加することで残りのグルコースを補充する必要があり、合計で1.1Lのキシロース二次母液の補充が必要とされる。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液約0.4Lを発酵過程で流加し、発酵終了後作動体積は約7Lになった。
【0043】
ステップ15、第2バッチの流加発酵:第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ14の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、キシロース濃縮液とキシロース二次母液の混合液(キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比は9:1)1.5Lを発酵タンクに加え、このときの系のキシロース濃度は約88g/Lであった。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース300gを添加する必要がある。グルコースの代わりとしてキシロース二次母液を提供し、キシロース二次母液1.6Lを流加して補充した。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液0.4Lを発酵過程で流加し、キシリトール濃度が一定になると、発酵を終了した。発酵終了後作動体積は約10.5Lになった。
【0044】
合計でキシロース1465gは発酵系に添加され、グルコースは計500g節約された。
【0045】
該実施例で発酵が終了した発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は121.4g/L、転化率は87%であり、アラビノースは5.5g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0046】
<実施例2>
本発明のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法の第2実施例は、ステップ21~ステップ25を含む。
【0047】
ステップ21、キシロース濃縮液を製造した:キシロース加水分解液のイオン交換前液に0.5%のCa(OH)を添加し、30rpmで30min撹拌し、pHを3.0に制御し、その後活性炭を0.5%質量比で添加して脱色し、温度を70℃に制御して、30rpmで60min撹拌した。脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て低温真空濃縮を行い、真空ポンプ圧-0.085MPa、水浴温度70℃、回転数50rpm、凝縮水流速約150mL/minに設定して、濃縮液の光屈折が約60%となると、発酵に適しているキシロース濃縮液を得た。
【0048】
ステップ22、菌株活性化及びシード液製造:組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、培養して、OD600=5.5のシード液を得た。
【0049】
ステップ23、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地4.0Lを添加し、ステップ22で製造したシード液0.5Lを加えて、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積5.0L、培養時間約10hの条件で、OD600=23となるまで培養した。
【0050】
ステップ24、第1バッチの流加発酵:ステップ21で製造されたキシロース濃縮液とキシロース二次母液を7:3の割合で混合した混合液1.4Lを発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を89g/Lとした。発酵条件:30℃、pH7、溶存酸素20%~25%。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース230gを添加する必要がある。混合液中にグルコースが既に存在しているので、キシロース二次母液を流加することで残りのグルコースを補充する必要があり、合計で0.95Lのキシロース二次母液の補充が必要とされる。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液約0.5Lを発酵過程で流加し、発酵終了後作動体積は約8Lになった。
【0051】
ステップ25、第2バッチの流加発酵:第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ24の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、キシロース濃縮液とキシロース二次母液の混合液(キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比は7:3)2.2Lを発酵タンクに加え、このときの系のキシロース濃度は約88g/Lであった。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース360gを添加する必要がある。グルコースの代わりとしてキシロース二次母液を提供し、キシロース二次母液1.5Lを流加して補充した。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液0.5Lを発酵過程で流加し、キシリトール濃度が一定になると、発酵を終了し、発酵終了後作動体積は約12.5Lになった。
【0052】
合計でキシロース1657gは発酵系に添加され、グルコースは計590g節約された。
【0053】
該実施例で発酵が終了した発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は114.1g/L、転化率は86%であり、アラビノースは5.4g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0054】
<実施例3>
本発明のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法の第3実施例は、ステップ31~ステップ35を含む。
【0055】
ステップ31、キシロース濃縮液を製造した:キシロース加水分解液のイオン交換前液に0.4%のCa(OH)を添加し、50rpmで15min撹拌し、pHを3.5に制御し、その後活性炭を0.3%の質量比で添加して脱色し、温度を60℃に制御して、60rpmで90min撹拌した。脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て低温真空濃縮を行い、真空ポンプ圧-0.095MPa、水浴温度60℃、回転数60rpm、凝縮水流速約200mL/minに設定して、濃縮液の光屈折が約65%となると、発酵に適しているキシロース濃縮液を得た。
【0056】
ステップ32、菌株活性化及びシード液製造:組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、培養して、OD600=6のシード液を得た。
【0057】
ステップ33、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地3.5Lを添加し、ステップ32で製造したシード液0.5Lを加え、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積4.5L、培養時間約9.5hの条件で、OD600=21となるまで培養した。
【0058】
ステップ34、第1バッチの流加発酵:ステップ31で製造されたキシロース濃縮液とキシロース二次母液とを9:1の割合で混合した混合液1Lを発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を90g/Lとした。発酵条件:30℃、pH7、溶存酸素20%~25%。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース200gを添加する必要がある。混合液中にグルコースが既に存在しているので、キシロース二次母液を流加することで残りのグルコースを補充する必要があり、合計で1.1Lのキシロース二次母液の補充が必要とされる。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液約0.4Lを発酵過程で流加し、発酵終了後作動体積は約7Lになった。
【0059】
ステップ35、第2バッチの流加発酵:第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ34の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、キシロース濃縮液とキシロース二次母液の混合液(キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比は7:3)2.0Lを発酵タンクに加え、このときの系のキシロース濃度は約90g/Lであった。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース330gを添加する必要がある。グルコースの代わりとしてキシロース二次母液を提供し、キシロース二次母液1.4Lを流加して補充した。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液0.5Lを発酵過程で流加し、キシリトール濃度が一定になると、発酵を終了し、発酵終了後作動体積は約11Lになった。
【0060】
合計でキシロース1511gは発酵系に添加され、グルコースは計530g節約された。
【0061】
該実施例で発酵が終了した発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は122.4g/L、転化率は89%であり、アラビノースは5.6g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0062】
<実施例4>
本発明のキシロース二次母液の発酵を用いたキシリトールの製造方法の第4実施例は、ステップ41~ステップ45を含む。
【0063】
ステップ41、キシロース濃縮液を製造した:キシロース加水分解液のイオン交換前液に0.4%のCa(OH)を添加し、50rpmで15min撹拌し、pHを3.3に制御し、その後活性炭を0.3%の質量比で添加して脱色し、温度を60℃に制御して、60rpmで90min撹拌した。脱色終了後、濾過して精製キシロース液を得て低温真空濃縮を行い、真空ポンプ圧-0.095MPa、水浴温度60℃、回転数60rpm、凝縮水流速約180mL/minに設定して、濃縮液の光屈折が約65%となると、発酵に適しているキシロース濃縮液を得た。
【0064】
ステップ42、菌株活性化及びシード液製造:組換え大腸菌株IS5-Mを利用して、LBプレート及びLB液体培地で菌株を活性化し、シード培地に接種し、培養して、OD600=5のシード液を得た。
【0065】
ステップ43、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地4.0Lを添加し、ステップ42で製造したシード液0.5Lを加えて、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積4.5L、培養時間約11hの条件で、OD600=24となるまで培養した。
【0066】
ステップ44、第1バッチの流加発酵:ステップ31で製造されたキシロース濃縮液とキシロース二次母液とを9:1割合で混合した混合液1.1Lを発酵タンクに加えて、流加発酵を行い、発酵系中のキシロース濃度を90g/Lとした。発酵条件:30℃、pH7、溶存酸素20%~25%。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース220gを添加する必要がある。混合液中にグルコースが既に存在しているので、キシロース二次母液を流加することで残りのグルコースを補充する必要があり、合計で1.2Lのキシロース二次母液の補充が必要とされる。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液0.2Lを発酵過程で流加し、発酵終了後作動体積は約7.5Lになった。
【0067】
ステップ45、第2バッチの流加発酵:第1バッチの発酵においてキシロース濃度<30g/Lとなると、ステップ44の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、キシロース濃縮液とキシロース二次母液の混合液(キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比は8:2)1.8Lを発酵タンクに加え、このときの系のキシロース濃度は約88g/Lであった。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース330gを添加する必要がある。グルコースの代わりとしてキシロース二次母液を提供し、キシロース二次母液1.6Lを流加して補充した。キシロース二次母液を流加して、グルコース含有量を約10g/Lに制御した。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液120g~130gを用いて調製した高濃度溶液0.4Lを発酵過程で流加し、キシリトール濃度が一定になると、発酵を終了し、発酵終了後作動体積は約11Lになった。
合計でキシロース1588gは発酵系に添加され、グルコースは計550g節約された。
【0068】
該実施例で発酵が終了した発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は125.6g/L、転化率は87%であり、アラビノースは5.8g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0069】
上記の例から明らかなに、この各割合のキシロース濃縮液とキシロース二次母液は発酵系に適用でき、また、キシロース二次母液の流加はグルコースの使用量をさらに減少できる。
【0070】
(比較例1)
該比較例は、ステップ(D11)~ステップ(D15)を含む。
【0071】
ステップ(D11)、キシロース濃縮液を製造した:実施例1のステップ11の製造方法と同様であるので、詳しく説明しない。
【0072】
ステップ(D12)、菌株活性化及びシード液製造:実施例1のステップ12の製造方法と同様であるので、詳しく説明しない。
【0073】
ステップ(D13)、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地5.5Lを添加し、ステップ(D12)で製造したシード液0.6Lを加えて、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積6.5L、培養時間約9.5hの条件で、OD600=21となるまで培養した。
【0074】
ステップ(D14)、第1バッチの流加発酵:ステップ(D11)で製造されたキシロース濃縮液をそのまま流加発酵を行った。発酵タンクにキシロース濃縮液1.2Lを加え、発酵系中のキシロース濃度を85g/Lとし、グルコース260gを添加して十分の補酵素NADPHを提供し、コーンスティープリカー乾燥粉末溶液0.5Lを発酵過程で流加し、発酵終了後作動体積は約8.4Lになった。
【0075】
ステップ(D15)、第2バッチの流加発酵:ステップ(D14)の方法によって発酵タンクにキシロース濃縮液1.7Lを加えて、発酵系中のキシロース濃度を88g/Lとし、グルコース380gを添加して十分の補酵素NADPHを提供し、コーンスティープリカー乾燥粉末溶液0.4Lを発酵過程で流加し、発酵終了後作動体積は約10.5Lになった。
【0076】
合計でキシロース1600gは発酵系に添加され、グルコースを節約するどころか、グルコース640gは消費された。
【0077】
該比較例で発酵終了後の発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は124.9g/L、転化率は82%であり、アラビノースは3.8g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0078】
(比較例2)
該比較例はステップ(D21)~ステップ(D25)を含む。
【0079】
ステップ(D21)、キシロース濃縮液を製造した:実施例2のステップ21の製造方法と同様であるので、詳しく説明しない。
【0080】
ステップ(D22)、菌株活性化及びシード液製造:実施例2のステップ22の製造方法と同様であるので、詳しく説明しない。
【0081】
ステップ(D23)、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地4.5Lを添加し、ステップ(D22)で製造したシード液0.6Lを加えて、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積5.5L、培養時間約10hの条件で、OD600=22となるように培養した。
【0082】
ステップ(D24)、第1バッチの流加発酵:ステップ(D21)で製造されたキシロース濃縮液とキシロース二次母液とを9:1割合で混合した混合液1.2Lを発酵タンクに加え、発酵系中のキシロース濃度を90g/Lとした。後ではいずれのグルコース及びグルコース含有材料も補充されなかった。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液0.5Lを発酵過程で流加し、系の体積を約7.2Lとした。系にはグルコースは7.7g/Lしか含有されず、このとき、NADPHを転化するのにグルコースが十分ではなく、キシリトール転化率は低く、キシロース濃度は低下できなかった。
【0083】
ステップ(D25)、第2バッチの流加発酵:約35h後(正常状態では第1バッチの流加発酵の終了時間)、ステップ(D24)の方法によって第2バッチの流加発酵を行い、キシロース濃縮液とキシロース二次母液の混合液(キシロース濃縮液とキシロース二次母液との混合比は9:1)1.5Lを発酵タンクに加え、このとき、発酵系中のキシロース濃度は86g/Lになり、コーンスティープリカー乾燥粉末溶液0.5Lを発酵過程で流加し、系の体積を約9.5Lとした。系にはグルコースは7.2g/Lしか含有されず、後ではいずれのグルコース及びグルコース含有材料も補充されなかった。約40h発酵後、発酵を手動で停止した。
【0084】
合計でキシロース1358gは発酵系添加され、グルコースが補充されないことにより、キシリトール転化率は大幅に低下した。
【0085】
該比較例で発酵を終了した発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は58.6g/L、転化率は41%であり、アラビノースは2.2g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0086】
(比較例3)
該比較例は、ステップ(D31)~ステップ(D34)を含む。
【0087】
ステップ(D31)、キシロース濃縮液を製造した:実施例4のステップ41の製造方法と同様であるので、詳しく説明しない。
【0088】
ステップ(D32)、菌株活性化及びシード液製造:実施例4のステップ42の製造方法と同様であるので、詳しく説明しない。
【0089】
ステップ(D33)、発酵タンクによる拡大培養:15L発酵タンクに殺菌後の発酵培地3.5Lを添加し、ステップ(D32)で製造したシード液0.5Lを加えて、37℃、400rpm、アンモニア水で調整されたpH6.5~7、溶存酸素30%~35%、作動体積4.5L、培養時間約10.5hの条件で、OD600=22となるまで培養した。
【0090】
ステップ(D34)、完全流加発酵:キシロース濃縮液とキシロース二次母液とを9:1割合で混合した混合液を発酵させた。混合液2.5Lを発酵タンクに直接添加し、このとき、キシロース濃度は約180g/Lであった。以上に基づいて計算したところ、十分の補酵素NADPHを提供するために、理論的にはグルコース500gを添加する必要がある。混合液中にグルコースが既に存在しているので、キシロース二次母液を流加することで残りのグルコースを補充する必要があり、合計で2.7Lのキシロース二次母液の補充が必要とされる。コーンスティープリカー乾燥粉末溶液約0.8Lを流加し、発酵終了後作動体積は約10.5Lになった。
【0091】
合計でキシロース1465gは発酵系に添加され、グルコースは500g節約された。
【0092】
該比較例で発酵を終了した発酵液についてHPLC検出を行ったところ、発酵液中のキシリトール濃度は108.2g/L、転化率は78%であり、アラビノースは5.3g/L残留され、キシロースは6.4g/L残留され、グルコースやマンノースなど、不純物である糖は検出されなかった。
【0093】
上記の各実施例及び各比較例の実験データを表にまとめて、比較結果を以下の表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
比較例1と実施例1の比較から分かるように、発酵タンクにてキシリトール発酵を行うのには、大量のグルコースが消費され、キシロース二次母液を流加することによって、グルコースを添加せずにキシリトールの転化を達成でき、また、キシロース二次母液を殺菌処理する必要もなく、このため、操作が簡単で、実施されやすい。
【0096】
比較例2と実施例2の比較から明らかに、キシリトール発酵において、グルコースの流加が不可欠なことであり、グルコースが不足すると、キシリトール転化率は低下してしまう。キシロース二次母液の流加は、グルコースの添加と類似の作用を果たし、グルコースの消費量を減少させ、コストを低下させる一方、補充したキシロースは系中のキシロース濃度を向上させ、転化率をさらに向上させる。
【0097】
比較例3と実施例3の比較から明らかに、キシリトール発酵において、一次流加によりキシロースなどの初期の含有量が高すぎ、菌株の成長が抑制され、転化率が悪影響を受け、また、発酵液にはキシロース残留が検出されるので、これは後続の精製に悪影響を及ぼす。
【0098】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われる全ての修正、等同置換や改良などは本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】