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特表2023-5313492つの色層に基づいたエレクトロクロミックデバイスおよびそのエレクトロクロミックデバイスを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】2つの色層に基づいたエレクトロクロミックデバイスおよびそのエレクトロクロミックデバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/153 20060101AFI20230714BHJP
   G02F 1/1523 20190101ALI20230714BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20230714BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20230714BHJP
   G02F 1/1516 20190101ALN20230714BHJP
【FI】
G02F1/153
G02F1/1523
G02F1/15 506
G02F1/155
G02F1/1516
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552940
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 US2020035407
(87)【国際公開番号】W WO2021242267
(87)【国際公開日】2021-12-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521095259
【氏名又は名称】アンビライト・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジアングオ・メイ
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DB04
2K101DB05
2K101DC02
2K101DC12
2K101DC42
2K101DC43
2K101DC44
2K101DC52
2K101DC62
2K101DC64
2K101DD01
2K101EC12
2K101EJ11
2K101EK31
(57)【要約】
1つの色素色層および1つの構造色層を有するエレクトロクロミックデバイスが開示される。色素色層は、電場によって着色状態と脱色状態との間で可逆的で階調度のある切換を可能にするエレクトロクロミック材料を含む。着色状態では、エレクトロクロミックデバイスは、飽和した色素-構造の加算色を呈する。脱色状態では、構造色が徐々に消え、光透過状態になる。これら2つの色層間を結合した色が、より広い色範囲および角度依存する光学応答を有する本開示のデバイスを実現する。生体模倣カモフラージュの潜在能力を呈示するために、多重化しパターン形成したデバイスがさらに製造されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミックデバイスであって、
色素色材料を含む色素色層と、
構造色材料を含む構造色層と
を備え、
前記色素色層が、電場による着色状態と脱色状態との間での可逆的な切換を可能にするエレクトロクロミック材料をさらに含み、
前記エレクトロクロミック材料が、閉じた電気回路中に存在し、
前記色素色層と前記構造色層との両方が、エレクトロクロミックデバイスの光路上に配設され、
前記色素色層と前記構造色層とが、前記光路に沿って重なって配設され、前記色素色層および前記構造色層の上部層が、前記エレクトロクロミックデバイスが角度依存する光変化を生成することを可能にする透過率および厚さを有する、エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記構造色層が、電解質をさらに含み、前記構造色材料が、前記電解質中に埋め込まれる、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記エレクトロクロミックデバイスが、2つの電極をさらに備え、前記色素色層および前記構造色層が、前記2つの電極間に挟まれる、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記エレクトロクロミックデバイスが、2つの電極をさらに備え、前記色素色層および前記構造色層が、横方向に配設される前記2つの電極間に横方向に配置される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記エレクトロクロミックデバイスが、液体セル構造設計を採用する、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記エレクトロクロミックデバイスが、2つの電極をさらに備え、前記色素色層が、前記2つの電極間に挿置され、前記構造色層が、前記2つの電極のうちの1つの外面上に配設される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
前記色素色層中の前記エレクトロクロミック材料が、1つまたは複数の酸化還元活性の無機または有機ベースのエレクトロクロミック材料から選択される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記構造色材料が、リソグラフィ技法によって生成される材料、液晶、ブロック共重合体、およびコロイド粒子を含む材料の1つまたは複数のグループから選択される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記構造色材料が、結晶性ドメインおよびアモルファスドメインを含む準安定コロイド結晶を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
前記構造色材料が、非閉鎖充填SiO/エチルグリコールコロイド結晶を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項11】
前記色素色層が、エレクトロクロミック共役高分子を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項12】
前記色素色層が、エレクトロクロミック共役高分子を含み、前記構造色材料が、電解質の中に埋め込まれる非閉鎖充填SiO/エチルグリコールコロイド結晶を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項13】
エレクトロクロミックデバイスを作るための方法であって、
エレクトロクロミック材料を含む色素色層を作成するステップと、
構造色層を作成するステップと、
前記エレクトロクロミックデバイスを組み立てるステップであって、それにより、
前記エレクトロクロミック材料が、閉じた電気回路中に配置され、
前記色素色層と前記構造色層とが、互いに対して直接隣接して、または他の区画によって離間されてのいずれかで配置され、前記色素色層および前記構造色層の上部層が、前記エレクトロクロミックデバイスが角度依存する光変化を生成することを可能にする透過率および厚さを有し、
前記構造色層が、電解質の中に埋め込まれる、または、独立した層として配置される、
ステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記エレクトロクロミックデバイスが、可撓性であり、
前記方法が、前記エレクトロクロミックデバイスを所望の形状に形成するために、組立の前または後に、前記エレクトロクロミックデバイスの各層を形状へと切断するおよび/または曲げるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、パターン形成した電極を作成するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、新規のエレクトロクロミックデバイスに関し、より詳細には、色素色層および構造色層を含む新規のエレクトロクロミックデバイスに関し、エレクトロクロミックデバイスを作成するための方法も対象にする。
【背景技術】
【0002】
頭足動物、魚、および蝶などのいくつかの動物は、コミュニケーション、カモフラージュ、捕食、または体温調節の手段として、皮膚の発色状態を動的に変えることが可能である。1つの種類の器官および1つの種類の細胞が、それらの着色状態を主に担っており、すなわち、それぞれ、色素胞および虹色素胞である。色素胞は、大量の色素細胞を含み、通常は放射状筋肉に取り付けられる器官である。筋肉の拡大および縮小により、これらの色素細胞が、可逆的に広がること、または小さくて目に見えない点(面積で、0.1mm)へと縮むことができる。このプロセスによって、必要に応じて、動物に、階調のある透明度またはパターンに動的に変えさせる。虹色素胞は、非常に薄い細胞のスタックであって、それらのナノ結晶によって特定の波長での光の反射からもたらされる構造色を生じさせる。ナノ結晶が光を偏光して、角度に依存する色をもたらし、これによって動物が捕食者から隠れることが可能になる。これらの2つの器官は、皮膚のすぐ下にあって相乗的に機能し、このことによって、より広い色範囲、透明度、および角度に依存する視認性を表すことなどといった、それらのどちらも単独では達成できない色の可変性が提供される。そのような協調作用によって、動物が、その周りの環境に対して、すばらしい色適応性を呈することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自然から学んで、色素色(色素胞)と構造色(虹色素胞)の両方を結合するのは、より複雑で動的な色を作り出す効果的な方法であり、したがって、保護コーティング、機能性表示、およびカモフラージュプラットフォームなどといった様々な機能の要件に合致することができる。しかし、この努力は、今までほとんど実現しておらず、エレクトロクロミックデバイス中での色素色と構造色の調整可能な結合は報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に記載されるものは、新規のエレクトロクロミックデバイスおよびエレクトロクロミックデバイスを作成するための方法である。
【0005】
本開示は、色素色層および構造色層を備えるエレクトロクロミックデバイスを記載する。色素色層が光の吸収によって色を生成する色素色材料を含む一方で、構造色層は、反射および屈折などといった、周期的構造物と光の物理的相互作用によって色を生成する構造色材料を含む。構造色層は、角度依存する光変化を有する、構造色材料を含む。両方の色層は、光路に沿って配置される。光路に沿った上部色層は、開示されるエレクトロクロミックデバイスが、対応する用途用の、顕著な角度依存する光変化を発生することを可能にする透過率および厚さを有する。顕著な角度依存する光変化は、異なる色もしくは異なる光強度またはその両方についての変化を含む場合がある。いくつかの実施形態では、準安定コロイド結晶ベース構造色層は、例示的なエレクトロクロミックデバイス中の光路に沿って、エレクトロクロミック共役高分子(ECP)ベース色素色層の上に配設される。構造色層は、約1mmの厚さ、および、アモルファスドメインにおけるUV-可視範囲の大部分にわたって少なくとも75%の透過率を有する。-1.3Vと2.5Vの間の電圧を印加すると、下のECPベース色素色層は部分的に脱色し、デバイスは、裸眼で観察できる視野角の増加とともに、視認性が低下する視認性変化を呈する。
【0006】
色素色層と構造色層は、直接隣接して、または他の区画によって離間されてのいずれかで配置することができる。少なくとも色素色層がエレクトロクロミック材料を含み、エレクトロクロミック材料は、エレクトロクロミックデバイス内の閉じた電気回路中に配置される。いくつかの実施形態では、光路に沿った構造色層の上のすべての他の区画は、透明である。2つの色層間のこの結合によって、開示されるエレクトロクロミックデバイスが、電圧を印加することにより、飽和着色状態と光学的な透明状態との間で可逆的に切り換えることが可能になる。そのことによって、単独ではいずれも達成することができない、色範囲がやはり広がり、色表現能力が向上する。さらに、開示されるエレクトロクロミックデバイスは、角度依存する光変化、すなわち、視野角が増えるとブルーシフトする色を呈し、特定の電圧で、ある角度からだけ見ることができる。
【0007】
本明細書に記載される様々な実施形態は、本開示中の光路に沿った2つの色層の位置に関係する。いくつかの実施形態では、構造色層は、光路に沿って色素色層の上に配置される。いくつかの実施形態では、色素色層は、光路に沿って上部に配置される。上部色層は、本開示のエレクトロクロミックデバイスが対応する用途用に、顕著な角度依存する光強度変化を発生することができるよう、透過率および厚さを有する。2つの色層は、直接隣接して、または、他の区画によって離間されてのいずれかで配置することができる。
【0008】
本明細書に記載される様々な実施形態は、本開示中の、少なくとも色素色層についてのエレクトロクロミック材料に関係する。いくつかの実施形態では、色素色層がエレクトロクロミック材料を含む一方で、構造色層は、エレクトロクロミック材料を含まない。いくつかの実施形態では、色素色層と構造色層の両方が、エレクトロクロミック材料を含む。エレクトロクロミック材料は、無機材料と有機材料の両方から選択することができる。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック共役高分子(ECP)が、デバイス中のエレクトロクロミック材料として使用される。いくつかの実施形態では、アクリレート置換プロピレンジオキシチオフェン(ProDOT)高分子がデバイス中で使用される。
【0009】
本明細書に記載される様々な実施形態は、本開示中のエレクトロクロミックデバイスを組み立てるための構造設計を対象とする。本明細書に記載される構造設計は、2つの色層を備える。2つの色層は、直接隣接して配置することができる。いくつかの実施形態では、電極間に挟まれる2つの色層を有するサンドイッチ構造設計が使用される。いくつかの実施形態では、2つの横方向に配される電極間に横方向に配置される2つの色層を有する横方向構造設計が使用される。いくつかの実施形態では、液体電解質および1つより多くない液体色層を有する、液体セル構造設計が使用される。2つの色層は、他の区画によって離間することもできる。言い換えれば、色素色層が2つの電極の間に挿置される一方で、構造色層が2つの電極のうちの1つの外面上に配設される。いくつかの実施形態では、構造色材料は、既存のECD上に直接コーティングすることができる。少なくとも色素色層がエレクトロクロミック材料を有する。エレクトロクロミック材料を有する色層は、エレクトロクロミックデバイス中の閉じた電気回路中に配置される。両方の色層がエレクトロクロミック材料を含むとき、異なる用途のために、共有可能な、または別個の電気回路を使用することができる。構造色層が絶縁色材料を含むとき、構造色材料を電解質の中に埋め込んで1つの統合構造色層を形成することができる。または構造色材料を既存のECD上に直接コーティングすることができる。言い換えれば、色素色層が2つの電極間に挿置される一方で、構造色層は、2つの電極のうちの1つの外面上に配設される。構造色層が導電性色材料を含むとき、構造色材料は、1つの統合構造色層を形成するために、もしくは個別の層を直接形成するために電解質の中に埋め込むこと、または既存のECD上に直接コーティングすることのいずれかができる。
【0010】
色素色層中のエレクトロクロミック材料は、1つもしくは複数の酸化還元活性の無機もしくは有機ベースのエレクトロクロミック材料、またはそれらの任意の組合せから選択される。例示的な無機色素色材料は、とりわけ、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Cu、Ce、もしくはZnの1つもしくは複数の酸化物、または、混合金属酸化物、ドープ金属酸化物、またはそれらの任意の組合せから選択することができる。例示的な有機色素色材料は、とりわけ、ポリ(デシルビオロゲン)およびその派生物を含むビオロゲン、ポリピロールおよびその派生物、ポリチオフェンおよびその派生物、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)およびその派生物、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)およびその派生物、ポリフランおよびその派生物、ポリフルオレンおよびその派生物、ポリカルバゾールおよびその派生物、ならびにそれらの共重合体を含むエレクトロクロミック導電性高分子、金属高分子、金属フタロシアニン、または、ベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン系、もしくはジケトピロロピロール系を含む受容体を含有する共重合体、またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、色素色層は、電場によって着色状態と脱色状態との間で切り換えることができるエレクトロクロミック共役高分子(ECP)を含む。いくつかの実施形態では、色素色層は、たとえば、黒色をもたらすECP黒といった、様々な色を有するアクリレート置換プロピレンジオキシチオフェン(ProDOT)高分子を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、構造色層材料は、1つまたは複数の構造色材料から選択することができる。例示的な材料としては、リソグラフィ技法によって作成される材料(たとえば、磁気ナノ粒子)、液晶(たとえば、安息香酸コレステリルおよびその派生物、リン脂質系、ZnCl)、ブロック共重合体(たとえば、PS-b-P2VP、PLA-b-PnBA)およびコロイド粒子(たとえば、SiO、ZnO、Agナノ粒子)が挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、構造色層材料は、結晶性ドメインとアモルファスドメインの両方を含む準安定コロイド結晶を含む。アモルファスドメインは、色素色層のための妨げられていない光路を形成するために、光を何らかの程度透過する必要がある(たとえば、透明または半透明)。結晶性ドメインは、構造色を生じさせる。いくつかの実施形態では、構造色層は、結晶性ドメインとアモルファスドメインの両方を含む、SiO/EG(エチルグリコール)非閉鎖充填コロイド結晶を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、すぐ上で記載したエレクトロクロミックデバイスを作成する方法を対象とする。方法は、色素色層および構造色層の作成を含む。少なくとも色素色層がエレクトロクロミック材料を含み、上部色層は、開示されるエレクトロクロミックデバイスが、対応する用途用の顕著な角度依存する光変化を発生することを可能にする好適な透過率および厚さを有し、構造色材料は、1つの統合構造色層を形成するために電解質の中に埋め込むこと、または何らかの絶縁色材料が存在する場合既存のECD上に直接コーティングすることができる。最終的なエレクトロクロミックデバイスは、閉じた電気回路中に配置されるエレクトロクロミック材料で製造される。両方の色層は、光路に沿って配置される。2つの色層は、直接隣接して、または他の区画によって離間されてのいずれかで配置することができ、光路に沿った構造色層の上のすべての他の区画は、透明であってよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミックデバイスを作るための方法は、ECPを含む色素色層の作成と、電解質の中に埋め込まれる非閉鎖充填コロイド結晶を含む統合構造色層の作成と、透明基板、電極、電解質層、およびイオン貯蔵層を有する閉じた電気回路中に両方の色層を配置することによる、サンドイッチ構造設計を有する最終的なデバイスの製造とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、基板および各層からの材料が可撓性であるとき、組立の前または後で各層を所望の形状に切断および曲げることができ、そのため、デバイス全体を、ウェアラブル電子デバイスまたは湾曲した電子デバイスを含む様々な用途用の所望の形状へと製造することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、パターン形成した電極および基板を使用して多重化したデバイスを組み立てることができ、そのため、デバイスは、高解像度ディスプレイ用、および計算的なプログラミングを用いたカモフラージュパターン構築用に使用することができる。
【0018】
裸眼または機械によって検出できる、動的な色結合およびユニークな角度依存する光変化に起因して、本開示中のエレクトロクロミックデバイスは、たとえば、偽造を防止する包装、紙幣、または物品、のぞき防止スクリーン、ロゴ表示、カモフラージュ目的を有する車両、有害な波長を反射するためのデバイスの保護コーティングを含む様々な用途で使用することができる。
【0019】
本技術の様々な実施形態のある種の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の原理が利用される例示の実施形態を記載する以下の詳細な説明、および以下の添付の図面を参照すれば、本技術の特徴および利点のより良好な理解が得られる。本発明を説明するため、図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態の態様を示す。しかし、本発明は、図に示される正確な配置および手段に限定されないことを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1(A)】1つの例示的なエレクトロクロミックデバイス(ECD)の例示的な動作メカニズムを示す図である。図1(A)は、例示的な実施形態による、電気的動作あり(上部)および電気的動作なし(下部)の、本開示の記載される例示的なECDの構造設計および光路を図示する概略図である。
図1(B)】1つの例示的なエレクトロクロミックデバイス(ECD)の例示的な動作メカニズムを示す図である。図1(B)は、一実施形態による、2段階遷移プロセス期間に、結合した色が、小さいまたはゼロの視野角から見ることができる一方で、大きい角度θからは見ることができなくなることを図示する概略図である。
図2】1つの例示的な実施形態による、ECDの例示的なサンドイッチ構造設計を図示する断面図である。
図3】1つの例示的な実施形態による、ECDの横方向構造設計を図示する斜視図である。
図4】1つの例示的な実施形態による、ECDの例示的な液体セル構造設計を図示する図である。
図5(A)】本開示のいくつかの実施形態による、色素色層として使用されるECP黒の、着色状態および脱色状態における画像でのサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
図5(B)】本開示のいくつかの実施形態による、色素色層として使用されるECP黒の、電圧が-1.3Vから2.7Vの間で切り替わるときの550nmにおける透過率変化を示すグラフである。
図6(A)】本開示のいくつかの実施形態による、構造色層として使用される準安定コロイド結晶の、光学顕微鏡画像である。
図6(B)】本開示のいくつかの実施形態による、構造色層として使用される準安定コロイド結晶の、反射スペクトルのグラフである。
図6(C)】本開示のいくつかの実施形態による、構造色層として使用される準安定コロイド結晶の、準安定コロイド結晶の結晶性ドメインのSEM画像である。
図6(D)】本開示のいくつかの実施形態による、構造色層として使用される準安定コロイド結晶の、準安定コロイド結晶のアモルファスドメインのSEM画像である。
図7】1つの例示的な実施形態による、サンドイッチ構造設計におけるエレクトロクロミックデバイスを形成するための製造プロセスを図示する流れ図である。
図8(A)】本開示のいくつかの実施形態による、電圧が-1.3Vから2.7Vに増加するときのECDのスペクトルであって、色素色としてのECP黒の、透過スペクトルの図である。
図8(B)】本開示のいくつかの実施形態による、電圧が-1.3Vから2.7Vに増加するときのECDのスペクトルであって、構造色としてのコロイド結晶の、反射スペクトルの図である。
図9(A)】1つの例示的な実施形態による、-1.3Vの電圧における、色変化を説明するためのエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図9(B)】1つの例示的な実施形態による、1.2Vの電圧における、色変化を説明するためのエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図9(C)】1つの例示的な実施形態による、1.7Vの電圧における、色変化を説明するためのエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図9(D)】1つの例示的な実施形態による、2Vの電圧における、色変化を説明するためのエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図9(E)】1つの例示的な実施形態による、2.4Vの電圧における、色変化を説明するためのエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図9(F)】1つの例示的な実施形態による、2.7Vの電圧における、色変化を説明するためのエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図10(A)】ECPが脱色状態であるときの、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスであって、エレクトロクロミックデバイスが、構造色層として緑色コロイド結晶を、色素色層としてECPを含む場合の、ECPマゼンタを含むデバイスのスペクトルのグラフである。
図10(B)】ECPが脱色状態であるときの、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスであって、エレクトロクロミックデバイスが、構造色層として緑色コロイド結晶を、色素色層としてECPを含む場合の、ECP緑を含むデバイスのスペクトルのグラフである。
図10(C)】ECPが脱色状態であるときの、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスであって、エレクトロクロミックデバイスが、構造色層として緑色コロイド結晶を、色素色層としてECPを含む場合の、ECP青を含むデバイスのスペクトルのグラフである。
図11(A)】ECPが着色状態であるときの、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスであって、エレクトロクロミックデバイスが、構造色層として緑の鮮やかなコロイド結晶を、色素色層としてECPを含む場合の、ECPマゼンタを含むデバイスのスペクトルのグラフである。
図11(B)】ECPが着色状態であるときの、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスであって、エレクトロクロミックデバイスが、構造色層として緑の鮮やかなコロイド結晶を、色素色層としてECPを含む場合の、ECP緑を含むデバイスのスペクトルのグラフである。
図11(C)】ECPが着色状態であるときの、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスであって、エレクトロクロミックデバイスが、構造色層として緑の鮮やかなコロイド結晶を、色素色層としてECPを含む場合の、ECP青を含むデバイスのスペクトルのグラフである。
図12(A)】小さい角度15°でECP黒を含む例示的なエレクトロクロミックデバイスの対応する透過率および反射スペクトルの図であって、黒線が透過率を表し、灰色線が反射を表す、図である。
図12(B)】大きい角度60°でECP黒を含む例示的なエレクトロクロミックデバイスの対応する透過率および反射スペクトルの図であって、黒線が透過率を表し、灰色線が反射を表す、図である。
図13(A)】1つの例示的な実施形態による、魚形状のエレクトロクロミックデバイスの小さい視野角における、結合した色および視認性の変化を示す画像である。
図13(B)】1つの例示的な実施形態による、魚形状のエレクトロクロミックデバイスの大きい視野角における、結合した色および視認性の変化を示す画像である。
図14(A)】1つの例示的な実施形態による、-1.3Vの電圧における、15°から75°に変化した入射角における、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスの透過スペクトルのグラフである。
図14(B)】1つの例示的な実施形態による、1.2Vの電圧における、15°から75°に変化した入射角における、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスの透過スペクトルのグラフである。
図14(C)】1つの例示的な実施形態による、1.8Vの電圧における、15°から75°に変化した入射角における、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスの透過スペクトルのグラフである。
図14(D)】1つの例示的な実施形態による、2.7Vの電圧における、15°から75°に変化した入射角における、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイスの透過スペクトルのグラフである。
図14(E)】入射角が15°から75°に変化し、異なる電圧で反射に著しい違いがないときの、同じエレクトロクロミックデバイスの反射スペクトルのグラフである。
図15】1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する光変化および電場可変性を説明する画像である。視野角は、左から右に0°、45°、70°であり、印可電圧は、上から下に-1.3V、1.5V、2.7Vである。
図16(A)】高強度の前面光の下で、視野角が0°である、1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する変化を説明する画像である。
図16(B)】高強度の前面光の下で、視野角が45°である、1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する変化を説明する画像である。
図16(C)】高強度の前面光の下で、視野角が70°である、1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する変化を説明する画像である。
図16(D)】高強度の背面光の下で、視野角が0°である、1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する変化を説明する画像である。
図16(E)】高強度の背面光の下で、視野角が45°である、1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する変化を説明する画像である。
図16(F)】高強度の背面光の下で、視野角が70°である、1つの例示的な実施形態による、例示的なエレクトロクロミックデバイスの角度依存する変化を説明する画像である。
図17(A)】電気的調整を用いて中立状態を示す、玩具の熊の腕に取り付けられた、着用可能な、タコにパターン形成した例示的なエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図17(B)】電気的調整を用いて隠れた、玩具の熊の腕に取り付けられた、着用可能な、タコにパターン形成した例示的なエレクトロクロミックデバイスの画像である。
図18(A)】1つの例示的な実施形態による、花の中に置かれた、蝶の形状の例示的なエレクトロクロミックデバイスの画像であって、中立状態を示す画像である。
図18(B)】1つの例示的な実施形態による、花の中に置かれた、蝶の形状の例示的なエレクトロクロミックデバイスの画像であって、電気的に作動した後に透明になった画像である。
図18(C)】1つの例示的な実施形態による、花の中に置かれた、蝶の形状の例示的なエレクトロクロミックデバイスの画像であって、同じ電気的条件下で別の角度から見たときに再び見ることができる画像である。
図19(A)】1つの例示的な実施形態による、例示的な多重化したエレクトロクロミックデバイスの、3×3配列を図示する概略図である。
図19(B)】曲げることができる、この例示的な多重化したデバイスの画像である。
図19(C)】電場を用いて選択的に作動される前の、同じ多重化したデバイスの画像である。
図19(D)】電場を用いて選択的に作動された後の、同じ多重化したデバイスの画像である。
図19(E)】電場を用いて選択的に作動される前の、同じ多重化したデバイスの画像である。
図19(F)】電場を用いて選択的に作動された後の、同じ多重化したデバイスの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記載では、本発明の様々な実施形態の完全な理解を行うために、ある特定の詳細が記載される。しかし、本発明がこれらの詳細なしで実行できることを当業者なら理解されよう。さらに、本発明の様々な実施形態が本明細書に開示される一方、当業者の普通の一般的な知識にしたがって、多くの適応および修正を本発明の範囲内で行うことができる。そのような修正としては、ほぼ同じ方法で同じ結果に達するため、本発明の任意の態様についての知られている均等物を代用することが挙げられる。
【0022】
文脈で別段に規定しない限り、本明細書および特許請求の範囲を通して、「備える(comprise)」という言葉、および「comprises」、「comprising」などといった、その変形体は、「含むが、限定しない」というオープンで、包含的な意味に解釈するべきである。本明細書を通して、値の数値範囲への言及では、範囲を規定する値を含む、範囲内に入る、各個別の値を個々に参照する簡潔な表現として働くように意図され、各個別の値は、ここで個々に言及されたかのように、本明細書に組み込まれる。加えて、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確な指示がない限り、複数への言及を含む。
【0023】
本明細書の全体にわたる「1つの実施形態」または「実施形態」に対する言及は、本実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたる様々な場所での「1つの実施形態では」または「実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態のことを言ってはおらず、いくつかの事例中であってよい。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態中で任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0024】
本明細書に記載される様々な実施形態は、1つの色素色層と、1つの構造色層とを備えるエレクトロクロミックデバイス(ECD)を対象とし、少なくとも色素色層は、エレクトロクロミック材料を含み、デバイス中の他の区画で閉じた電気回路中に配置される。光路に沿った上部色層は、開示されるECDが、対応する用途用の、用途の広い色表現ならびに顕著な角度依存する光変化を表示することを可能にする透過率および厚さを有する。開示されるデバイスによって表示され知覚される色は、2つのタイプの色発生源によって結合される。一方は、デバイスを通って透過した光であり、他方は、デバイスからの反射光である。透過光は、主に、光を吸収した後に色素色層を通して透過した光からもたらされる。反射光は、主に、構造色層によって選択的に反射された光からもたらされる。だから、拡張された色表現は、色素色層からの透過スペクトルと、構造色層からの反射スペクトルの色結合によって生成することができる。角度依存する光変化は、構造色層の角度依存する反射からもたらされ、これが、本開示のECDの調整能力をさらに拡大する。
【0025】
本明細書に記載される様々な実施形態は、本開示中の光路上の2つの色層の位置に関係する。いくつかの実施形態では、構造色層は、光路に沿って色素色層の上に配置される。いくつかの実施形態では、色素色層は、光路に沿って上部に配置される。上部色層は、本開示のエレクトロクロミックデバイスが、対応する用途用に、顕著な角度依存する光変化を発生することができるよう、透過率および厚さを有する。
【0026】
本明細書に記載される様々な実施形態は、本開示のエレクトロクロミックデバイス中の、少なくとも色素色層についてのエレクトロクロミック材料に関係する。いくつかの実施形態では、色素色層がエレクトロクロミック材料を含む一方で、構造色層は、エレクトロクロミック材料を含まない。いくつかの実施形態では、色素色層と構造色層の両方が、エレクトロクロミック材料を含む。
【0027】
本開示の作動メカニズムは、図1(A)中の図解のようにエレクトロクロミック材料を含み、光路に沿って構造色層の背面上に置かれる色素色層を有するいくつかの例示的な実施形態によってさらに説明される。裸眼または検出器によって検出され知覚される色は、2つのタイプの色発生源からの結合した色である。一方は、光を吸収した後に色素色層を通して透過したデバイスの背面からの光からの透過光であり、他方は、構造色層によって反射された光からの反射光である。色素色層が電場によって活性化されて脱色状態であるとき、色素色層の透過率が全可視範囲にわたって高く、そのため、開示されるECDの透過率は、全可視範囲にわたって高い。したがって、図1(A)の上の図解に示されるように、より多くの背面光が色素色層を通過し、緑色構造色と結合して、透明近くまで薄く見えさせることができる。対照的に、図1(A)の下の図解に示されるように、色素色層が着色状態であるとき、色素色層からの透過率が低いために、開示されるECDの透過率は、全可視範囲にわたって低く、(裸眼を含む)検出器によって知覚される光は、主に、構造色層からの前面光反射を含み、したがって、プラットフォームは、構造色層の色を表す。この着色-無色切換は、可逆的である。
【0028】
上で述べた色の結合および透過率制御に加えて、本開示の記載したECDによって、角度依存する光変化も達成することができる。図1(B)の上部に示されるように、小さい(15°)入射角でECDを見るとき、後方の色素色層からの透過光が構造色を通ってECDの前面に進み、反射光と結合する。図1(B)の下部に示されるように、より大きい(60°)入射角で見るとき、構造色層の反射光が(1つの例によれば、より低い強度に)変化し、ECDの前面で角度依存する光変化をさらにもたらす。
【0029】
本明細書に記載される様々な実施形態は、本開示中のエレクトロクロミックデバイスを組み立てるための構造設計を対象とする。本明細書に記載される構造設計は、2つの色層を備える。2つの色層は、直接隣接して配置することができる。いくつかの実施形態では、電極間に挟まれる2つの色層を有するサンドイッチ構造設計が使用される。いくつかの実施形態では、2つの横方向に配される電極間に横方向に配置される2つの色層を有する横方向構造設計が使用される。いくつかの実施形態では、液体電解質および1つより大きくない液体色層を有する、液体セル構造設計が使用される。2つの色層は、他の区画によって離間することもできる。いくつかの実施形態では、構造色材料は、既存のECD上に直接コーティングすることができる。少なくとも色素色層がエレクトロクロミック材料を有する。エレクトロクロミック材料を有する色層は、エレクトロクロミックデバイス中の閉じた電気回路中に配置される。両方の色層がエレクトロクロミック材料を含むとき、異なる用途のために、共有可能な、または別個の電気回路を使用することができる。構造色層が絶縁性色材料を含むとき、構造色材料は、1つの統合構造色層を形成するため電解質の中に埋め込むことができ、または既存のECD上に直接コーティングすることができる。構造色層が導電性色材料を含むとき、構造色材料は、1つの統合構造色層を形成するために、もしくは個別の層を形成するために電解質の中に埋め込むこと、または既存のECD上に直接コーティングすることのいずれかができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックデバイスは、1つの例示的な実施形態にしたがって図2に示されるような、サンドイッチ構造設計中に描かれる。2つの色層は、本開示のエレクトロクロミックデバイスの他の区画間に挟まれる。1つの統合構造色層を形成するために、構造色材料は、構造色材料が絶縁性構造色材料を含むときに既存のECD上に直接コーティングすること、または電解質の中に埋め込むことができる。本開示の例示的なエレクトロクロミックデバイスは、図2に示されるように、電解質の中に埋め込まれる、統合構造色層を有する。例示的なエレクトロクロミックデバイス200は、第1の透明基板206と、第1の透明基板206上に配設される第1の透明電極208と、第1の透明電極208上に配設される色素色層202と、色素色層202上に配設される電解質の中に埋め込まれる構造色層204と、電解質の中に埋め込まれる構造色層204上に配設されるイオン貯蔵層210と、イオン貯蔵層210上に配設される第2の透明電極212と、第2の透明電極212上に配設される第2の透明基板214と、第1の透明電極208および第2の透明電極212に接続される電源218とを含む。色層(202および204)のうちの少なくとも1つがエレクトロクロミック材料を含み、光路に沿った上部色層は、顕著な角度依存する光変化を可能にする透過率および厚さを有する。光路は、開示されるエレクトロクロミックデバイス中で、2つの色層204、202、ならびに、他の区画206、208、210、212、および214を通って進む。いくつかの実施形態では、光路に沿った構造色層の上のすべての他の区画が、透明であってよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックデバイスは、横方向設計で描かれる。図3における例示的なエレクトロクロミックデバイス300に示されるように、2つの色層は、開示される例示的なエレクトロクロミックデバイス中の2つの電極間に横方向に配置される。光路は、2つの色層、電解質、および透明基板を貫通する。光路は、2つの電極またはイオン貯蔵層を貫通する必要がない。言い換えれば、光路は、開示されるエレクトロクロミックデバイスと同じ平面にない。2つの電極およびイオン貯蔵層は、それらが光路の外にあってよいため、透明である必要がない。可視または近IRにおいて透明な、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または任意の他の好適な材料であってよい透明基板306は、2つの横方向に堆積した電極308および312を備える。2つの色層すなわち構造色層304および色素色層302は、電極312のうちの1つ上に直接コーティングされる。イオン貯蔵層310は、他の電極308上に堆積される。電解質溶液316は、デバイス全体をカバーするように広がる。光路は、開示されるエレクトロクロミックデバイス中で、2つの色層302および304、電解質316、ならびに透明基板306を貫通する。光路は、2つの電極308および312またはイオン貯蔵層310を貫通する必要がない。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックデバイスは、図4に示されるような、液体セル構造設計で描かれる。液体セル構造設計では、電解質は液体形状である。2つの色層のうちの1つについての材料が、液体形状であってよい。液体セル構造設計は、2つの色材料の異なる物理状態で変化する。いくつかの実施形態では、電解質が液体形状であるとき、両方の色材料を、好適な着色状態を上部にして、作動電極上に堆積することができる。いくつかの実施形態では、色材料のうちの1つが液体形状であるとき、液体色材料が電解質中に溶けることができる一方で、他方の非液体色材料は、作動電極上に堆積される。図4は、液体色素色材料を有する例示的な液体セルデバイス400を示す。構造色層404が第1の透明電極408上に堆積され、イオン貯蔵層410が第2の透明電極412上に堆積される。液体電解質416中に溶けた液体色素材料402が、液体セル418の中に流し込まれる。2つの透明電極408および412が、液体セル418の中に挿入される。液体セルデバイス400は、漏れのない動作をするためにさらに密封される。
【0033】
色素色層中のエレクトロクロミック材料は、1つもしくは複数の酸化還元活性の無機もしくは有機ベースのエレクトロクロミック材料、またはそれらの任意の組合せから選択される。例示的な無機色素色材料は、とりわけ、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Cu、Ce、もしくはZnの1つもしくは複数の酸化物、または、混合金属酸化物、またはドープ金属酸化物、またはそれらの任意の組合せから選択することができる。例示的な有機色素色材料は、とりわけ、ポリ(デシルビオロゲン)およびその派生物を含むビオロゲン、ポリピロールおよびその派生物、ポリチオフェンおよびその派生物、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)およびその派生物、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)およびその派生物、ポリフランおよびその派生物、ポリフルオレンおよびその派生物、ポリカルバゾールおよびその派生物、ならびにそれらの共重合体を含むエレクトロクロミック導電性高分子、金属高分子、金属フタロシアニン、または、ベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン系、もしくはジケトピロロピロール系を含む受容体を含有する共重合体、またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0034】
本開示の記載されるエレクトロクロミックデバイス中の構造色層のための構造色材料は、限定しないが、リソグラフィ技法によって作成される材料(たとえば、磁気ナノ粒子)、液晶(たとえば、安息香酸コレステリルおよびその派生物、リン脂質系、ZnCl)、ブロック共重合体(たとえば、PS-b-P2VP、PLA-b-PnBA)およびコロイド粒子(たとえば、SiO、ZnO、Agナノ粒子)を含む材料のグループから選択することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、色素色層がエレクトロクロミック材料としてエレクトロクロミック高分子(ECP)を含む。ECPは、透過光を可逆的で迅速に調節し、こうして、電場の調整によってプラットフォームの透過率を制御することができる。1つの実施形態では、色素色層がECP黒を含む一方で、構造色層は、鮮やかな緑の構造色を呈する非閉鎖充填SiO/EG(エチルグリコール)コロイド結晶を含む。電場は、下にある色素色層から来る光を可逆的で迅速に調節し、こうして、全デバイスの表示色を制御することができる。角度依存する光変化をやはり達成することができる。着色-脱色遷移プロセスの中間で、結合した色は、比較的小さい視野角またはゼロの視野角から見ることができ、より大きい角度からは見ることができない。
【0036】
いくつかの実施形態では、色素色層と構造色層の両方が、エレクトロクロミック材料を含む。たとえば、色素色層は、その光学特性が、印可される電場に基づいて、脱色状態と着色状態(暗い青)の間で切り換えることができるアモルファスタングステン酸化物を含む。構造色層は、逆乳白色微孔構造を有する(ポリウレタンなどの)半透明高分子を含む。タングステン酸化物の上部に高分子を層状にすることによって、結合した色を得ることができる。電場が動作している下で、イオンが高分子の中に貫入して高分子を膨張させ、このことによって、結晶の距離変化、したがって色変化がもたらされる。アモルファスタングステン酸化物と高分子の両方に異なる電圧を印加することによって、記載されるエレクトロクロミックデバイスは、様々な結合した色および角度依存する光変化を表示する。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示の固体またはゲルベースのエレクトロクロミックデバイスを作成する方法は、対電極上に直接堆積されるイオン貯蔵層を有する2つの電極間に挟まれる、または横方向に堆積される、1つの色素色層および1つの構造色層を有する2つの薄膜色層を形成するステップと、閉じた電気回路を形成するため電解質を追加し、電解質を固定するステップとを含む。2つの色層薄膜は、他の区画に直接隣接して、または他の区画によって離間してのいずれかで配置することができる。何らかの絶縁構造色材料があるとき、構造色材料を、電解質の中に埋め込むこと、または、既存のECD上に直接コーティングすることのいずれかができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示の液体セルエレクトロクロミックデバイスを作成する方法は、異なる色材料で変わる。いくつかの実施形態では、電解質が液体状態であるとき、作動電極上に2つの色層を堆積するステップであって、上層は、開示されるECDが、対応する用途用の、用途の広い色表現および顕著な角度依存する光変化を表示することを可能にする透過率および厚さを有する、ステップ、対電極上にイオン貯蔵層を堆積するステップ、電解質を追加するステップ、およびデバイスの密封をするステップ。いくつかの実施形態では、色材料のうちの1つが液体形状であるとき、液体色材料を液体電解質と混合するステップ、作動電極上に他の色材料を堆積するステップ、対電極上にイオン貯蔵層を堆積するステップ、電解質と液体色材料の混合溶液を追加するステップ、およびデバイスの密封をするステップ。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックデバイスを作成する方法は、別の既存のエレクトロクロミックデバイスを含む。構造色層は、薄膜を形成するため、既存のエレクトロクロミックデバイス上に直接堆積することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、膜へとコーティングされる、色材料を溶解可能な溶液での堆積プロセスは、限定しないが、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、スリットコーティング、ロールツーロールコーティング、転写コーティング、ワイヤバーコーティングを含む、種々の従来型溶液適合性コーティング技法のうちの任意の1つで実現することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、色素色層は、透過光を可逆的で迅速に調節し、こうして、電場の調整によってプラットフォームの透過率を制御することができるエネルギー貯蔵材料として、エレクトロクロミック高分子(ECP)などのエレクトロクロミック材料を含む。いくつかの実施形態では、色素色層は、たとえば、ECP黒といった、様々な色を有するアクリレート置換プロピレンジオキシチオフェン(ProDOT)高分子を含む。いくつかの実施形態では、色素色層としてのECP黒は、光路に沿って構造色層の背面上に配置される。電場は、下にある色素色層から来る光を可逆的で迅速に調節し、こうして、全デバイスの表示色を制御することができる。図5(A)の書込は、ECP黒が酸化され還元されたとき、図5(B)中の550nmにおける透過率の変化によってやはり示されるように、着色状態と脱色状態との間で可逆的に切り換えることができるECP黒の画像を示す。
【0042】
いくつかの実施形態では、構造色層は、結晶性ドメインとアモルファスドメインの両方を含む、40%単分散シリカナノ粒子と60%EG/PEGDAゲルマトリックスからなる非閉鎖充填SiO/EG(エチルグリコール)コロイド結晶を含む。図6(A)中の光学顕微鏡画像は、結晶性ドメインとアモルファスドメインの相分離を明瞭に示す。結晶性ドメインは、周期的に配置されるシリカナノ粒子を含み、矢印1で明るい点によって示されるような鮮やかな緑がもたらされる一方で、アモルファスドメインは、ランダムに分散したナノ粒子を含み、こうして、矢印2によって示されるような暗い区域を表示する。図6(B)は、準安定コロイド結晶の反射スペクトルを示す。結晶性ドメインは、実線によって示されるように、ほぼ単一波長の光(約530nm)の高い反射率によって、鮮やかな緑の構造色を生じさせる一方で、点線によって示されるアモルファスドメインの低い反射率は、下にある色素色層のための、妨げられていない光路を形成する。分子レベルから2つの領域を理解するのを助けるため、図6(C)および図6(D)からのSEM画像が、それらの構造的差異を呈示する。図6(C)からのSEM画像がシリカナノ粒子が結晶構造へと自己集合したときの結晶性ドメインを示す一方で、図6(D)からのSEM画像は、EG/PEGDA中に分散したシリカナノ粒子の非周期的配置としての、均質なアモルファスゲルマトリックスを示す。
【0043】
1つの例示的な実施形態では、色素色層用にECP黒を有し、構造色層用に非閉鎖充填SiO/EG(エチルグリコール)コロイド結晶を有する本開示のサンドイッチ構造ECDを作成する方法は、図7に示されるような複数のステップを含む。ステップ1は、ITOコーティングしたガラス上でのECP黒を有する色素色層702の作成であり、ステップ2は、ITOコーティングしたガラス上でのNbを有するイオン貯蔵層710の作成であり、ステップ3~5は、電解質中に埋め込まれるコロイド結晶層を形成することによる、構造色層704の作成ステップであり、ステップ6は、2つの色層(702および704)およびイオン貯蔵層710および他の区画の最終組立プロセスである。(ステップ1および2を除く)各ステップは、窒素充填したグローブボックスの内側で操作される。ITOコーティングしたガラス上でのECP黒を有する色素色層702の作成は、クロロフォルム中にECPを溶かして、40mg/ml ECP/クロロフォルム溶液を形成するステップと、その後の、1500RMPのスピン速度でITOコーティングしたガラス上にECP/クロロフォルム溶液をスピンコーティングするステップと、90°のオーブンの内側で乾燥させて、デバイスが着色されるときの最小量の透過率に影響を及ぼさない好適な厚さを有するECP薄膜(ステップ1)を形成するステップとを含む。ITOコーティングしたガラス上でのNbを有するイオン貯蔵層710の作成は、ITOコーティングしたガラスへの、ゾル-ゲル反応を介したエトキシドニオブ溶液を使用するNb薄膜の作成、150℃で10分間のアニール、および20分間の紫外オゾンによる有機残渣の除去ステップを含む。構造色層704の作成は、室温で、EG(エチレングリコール、4.5%)、PEGMA (ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、1.5%)およびエタノール(94%)の混合液中に均等にSiO粒子を分散させるステップと、90℃で2時間の間オーブン中でエタノールを除去し、過飽和のSiO/EGコロイド溶液を形成するステップと、ある距離の間隔を有する2つのガラス部片間に挟んで過飽和のSiO/EGコロイド溶液を配置するステップとを含む(ステップ3)。コロイド溶液が、2つのガラス部片間の中空チャネル内に均等に広がり、10分間擾乱されることなく放置されて、SiOナノ粒子の一部が析出して結晶性ドメインを形成する一方で、他のものは、アモルファスドメインとして溶媒中に溶けたままとなった後に、この相分離構造は、10分間市販のUV光の下で照らされた後、架橋によって固定される(ステップ4)。たとえば、図16中のタコのパターンを有するデバイスおよび図17に示される蝶のパターンを有するデバイスといったパターン形成したデバイスを作るため、特別のパターン(たとえば、タコまたは蝶)を有する、中空にパターン形成した粘着性フォトマスクが、コロイド結晶溶液の上に配置され、その後UV硬化する。この場合、マスクによってカバーされないコロイド溶液は、一部のSiOナノ粒子で固体ゲルを形成し、析出して結晶性ドメインを形成し、一部はアモルファスドメインとして溶媒中に依然として均等に溶けている。UV後に、マスクのカバーした部分の下で残っている液体のコロイド溶液が洗い流され、パターン形成した固体ゲルを後に残す。ゲル電解質は、1:1の体積比でPEGDA500、0.2 M LITFSI/PCを混合し、窒素充填したグローブボックス中で一晩撹拌することによって作成される。次いで、十分な電解質が追加されて固定され、電解質で形成した構造色層を埋め込む(ステップ5)。構造色層704として電解質中に埋め込まれるコロイド結晶は、この場合、ステップ1で形成されたITOコーティングしたガラス上に堆積した色素層702と、ステップ2で形成した別のITOコーティングしたガラス上に堆積したイオン貯蔵層710との間に挟まれて、最終的なサンドイッチ構造を形成する(ステップ6)。ステップ6でさらなる電解質が追加されて固定され、安定で閉じた電気回路を形成する。
【0044】
いくつかの実施形態では、下にある色素色層がECP黒エレクトロクロミック材料を含み、光路に沿った色素色層の上の構造色層は、非閉鎖充填SiO/EG(エチルグリコール)コロイド結晶を含み、エレクトロクロミック材料を含まない。色素色層は、着色状態と脱色状態との間で切り換えることができるエレクトロクロミック材料、ECP黒を含む。-1.3Vの電圧を有するECP黒の着色状態では、ECP黒は、図8(A)中の最も低い透過率曲線によって示されるように、全可視範囲にわたって低い透過率を有しており、このことは、非常に限定された光が色素色層を貫通することができることを意味する。こうして、着色状態では、色素色層は、図5(A)の左下の書込のように、着色状態でのECP黒の画像によって示される、ECP黒の色(たとえば、この実施形態中の黒)を示す。対照的に、2.7Vの電圧を有するECP黒の脱色状態では、ECP黒は酸化され、図8(A)中の最も高い透過率曲線および図5(A)中の右上の書込のような脱色状態でのECP黒の画像によって示されるように、その吸収ピークが赤方にシフトし、そのことによって、徐々に透明になる。脱色状態は、負のバイアス(-1.3V)を印可することによる、エレクトロクロミック高分子の還元で、再び着色状態に戻して切り換えることができ、こうして、エレクトロクロミックデバイスにとって再び反射が支配的となる。1つの例示的な実施形態による、図9(A)~図9(F)中の、-1.3Vから2.7Vの様々な電圧における色変化画像によって示されるように、この変化は、様々な電圧を有するステップでやはり調整し、こうして、グレースケール変化を実現することができる。
【0045】
2つの色層間の色の結合は、色表現を拡大する、より用途の広い色を生成することができる。いくつかの実施形態では、色素色層として、様々なECP(着色状態で、ECPマゼンタが紫色を示し、ECP緑が緑色を示し、ECP青が青色を示す)が使用され、それぞれ構造色層としての緑のコロイド結晶と対にされて、2つの色層間の色の相互作用を呈示する。3つの異なるシステムからのエレクトロクロミックデバイスのスペクトルおよび表示される色のブロックが、(ECPが脱色状態であるとき)図10(A)~図10(C)および(ECPが着色状態であるとき)図11(A)~図11(C)に記録されて比較されており、図10(A)がECPマゼンタを含むECDについてであり、図10(B)がECP緑を含むECDについてであり、図10(C)がECP青を含むECDについてである。黒線が透過率に対応し、灰色線が反射率に対応する。黒の数字は、ECDの透過率スペクトルから計算したR、G、Bの値であり、灰色の数字は、ECDの反射スペクトルから計算したそれらの値である。各組のR、G、Bの値に対応する色は、それぞれ、ECDの透過率としてビーム1によって、ECDの反射率としてビーム2によって右に表される。最も右側の認知しうる色のブロックは、ビーム1およびビーム2からのR、G、Bの値を加えることによって予測される。図11(A)~図11(C)は、ECPが着色状態のとき、2種類の色を組み合わせることによって、エレクトロクロミック高分子またはコロイド結晶のいずれかだけで生成することができないより多くの色を生成できることを示す。図11(A)~図11(C)と比較して、図10(A)~図10(C)中のスペクトル検出および色計算は、ECPが脱色状態であるとき、コロイド結晶の追加によって、色の追加は影響をあまり受けないことを示す。これは、各高分子の脱色状態では、下にあるECPからの透過した白色光が目の認知を支配して、構造色からの反射光を薄くさせるためである。
【0046】
上で述べた色の結合および透過率制御に加えて、本開示の記載したエレクトロクロミックデバイスによって、角度依存する光変化も達成することができる。図1(B)中の図解によって示されるように、着色-脱色遷移プロセスの中間で、結合した色は、比較的小さい視野角またはゼロの視野角から見ることができ、より大きい角度からは見ることができない。ECPの透過率は、1.2Vの電圧を印加するとき、図12中の黒線によって示されるように、異なる入射角で、ほとんど同じままとなる。コロイド結晶構造色層は、図12(A)中の灰色線のように、低い入射角15°でより高い反射率を示すが、図12(B)中の灰色線のように、高い入射角60°でより低い反射率を示す。したがって、ECPの遷移プロセスの処理中に、大きい入射角からの色が最初に消え、デバイス全体の色は、入射角の増加とともに、可視から不可視へとなる。この角度依存する光変化は、2つの色層として組み込まれるECP黒および緑色コロイド結晶を有する魚形状のエレクトロクロミックデバイスによって、図13(A)~図13(B)にさらに呈示される。1.2Vの電圧が印加されるとき、ECPは、遷移プロセスの途中であって、図13(A)中の魚の中の明るい色によって示されるように、小さい角度から鮮やかな緑色を見ることができる。しかし、視野角を増やすことによって、魚は、図13(B)中のより暗い色によって示されるような、鮮やかさが低い色をもたらす。
【0047】
本開示の、電圧と視野角の両方の影響からの強度変化をさらに呈示するため、2つの色層としてECP黒および緑色コロイド結晶を有する例示的なエレクトロクロミックデバイスが再び採用される。デバイスは、-1.3V、1.2V、1.7、および2.5Vの電圧をステップ状に印可され、その結果、ECP黒は、徐々に着色状態から脱色状態にされる。これらの4つのステップの期間に、デバイスの透過率(図14(A)~図14(D))および反射率(図14(E))が、15°から75°を15°のステップで検出される。-1.3V(A)、1.2V(B)、1.7V(C)、および2.5V(D)の様々な電圧で、様々な透過率スペクトルが検出される。異なる線は異なる視野角を表す。図14は、透過率が、電圧の増加とともに(約0%~約60%)増加することを示す。様々な視野角の中で、最大の視野角75°における透過率が、他のより低い視野角におけるものよりも速く増加し、これは、75°における透過率曲線が、-1.3V、1.2V、1.7Vの電圧における曲線の最も底部から(図14(A)~図14(C)に示される)、2.7Vの電圧における曲線の最も上部(図14(D)に示される)に進むことによって呈示される。図14(E)は、視野角の増加にともなった、劇的な反射率の減少(>60%から<10%)およびより短い波長へのシフトを示す。
【0048】
本開示の角度依存する光変化は、図15中の画像によってやはり呈示される。視野角は、左から右に、0°、45°、70°、印可電圧は、上から下に、-1.3V、1.5V、2.7Vである。第1の行(-1.3V)では、視野角が0°から45°に、また70°に変わると、鮮やかな緑色が、青緑に、また青に変わる(図15(A)から図15(C)に図示される)。同様に、1.5Vの電圧を有する中間の行では、視野角が増えると、角度依存する光変化は、図15(D)~図15(F)中で徐々に消える青緑色として観察することができる。対照的に、2.7Vの電圧を有する最後の行では、デバイスは、任意の角度から透明になる一方で、任意の角度から、有意の色変化を観察することはできない。
【0049】
本開示の、電圧と視野角の両方の影響からの強度変化をさらに呈示するため、この角度依存する光変化についての周囲光の影響を評価するために、2つの色層としてECP黒および緑色コロイド結晶を有する例示的なエレクトロクロミックデバイスが再び採用され、その影響は、図16(A)~図16(C)中の(見る側と同じ側の)強い前面周囲光、および図16(D)~図16(F)中の(見る側と反対側の)強い背面光の下で撮影された画像によって示される。視野角は、左から右に、0°、45°、70°である。図16(A)に示されるように、見る側と同じ側の強い前面周囲光で、強い反射強度が観察され、反射光が知覚される光の中で支配的となる。構造色層からの反射強度は角度依存性であるため、図16(A)~図16(C)は、異なる角度の間の角度依存する光変化を示す。対照的に、見る側と反対側の強い背面周囲光で、強い透過強度が観察され、透過光が知覚される光の中で支配的となる。透過光は角度依存性でないため、図16(D)~図16(F)に示されるように、任意の角度で有意な色変化を見ることができない。こうして、明らかな角度依存する光変化がない。
【0050】
本開示中のエレクトロクロミックデバイスは、角度依存する光変化を有するカモフラージュ能力を示し、これは、専用の角度制御および電場調整を通して実現され、その結果、開示されるエレクトロクロミックデバイスは、情報の受容体に対するその位置にしたがって、色を選択的に表すことができる。いくつかの実施形態では、カモフラージュ能力は、(図17(A)~図17(B)に示されるように)タコのパターンおよび(図18(A)~図18(C)に示されるように)蝶のパターンで、例示的なエレクトロクロミックデバイスによってさらに呈示される。例示的なエレクトロクロミックデバイスは、2つの色層として、ECP黒と緑色コロイド結晶の両方を組み込む。デバイス組立の前に、コロイド結晶は、UV光およびフォトマスクの助けで所望のパターンへと印刷される。次いで、コロイド結晶がUV光の下で架橋され、次いで、ガラスを開いた後に転写され、エチルグリコール溶液を使用して残っている液体を洗い流す。固形化コロイド結晶は、2つのコーティングした電極(作動電極上のECP黒、対電極上のイオン貯蔵層)間に挟まれ、余分の液体電解質が間に同様に充填され、再度のUV架橋が後に続いて、組立が終了する。エレクトロクロミックデバイスを形成する区画が可撓性であるため、デバイス全体は、所望に応じて着用可能なように、任意の形状へと切断することができる。図17(A)に示されるように、玩具の熊の腕に取り付けられた本デバイスは、着色状態のタコの形状を示す。正の電圧の間、ECP黒が透明になり、タコは、図17(B)に示されるように消える。この表示-非表示プロセスは、電圧の切換で可逆的である。同様に、ECP黒が正の電圧(0.8V)で、着色状態と部分的な脱色状態との間で切り換えると、花の中の蝶の形状のデバイスは、(図18(A)のように)表示し、また(図18(B)のように)部分的に環境中で非表示にすることができる。図18(B)では、部分的な脱色状態は、角度依存する光変化を表示するために意図的に採用される。0.8Vの同じ正の電圧で、図18(C)に示されるように、異なる角度から見ると、蝶の形状をより視認することができるようになる。呈示したように、自然の中の動物をまねるために、所望のパターン形成したデバイスを作成することができ、電場を調整すれば、プラットフォームは、透明になることによって、または、周囲の色をまねることおよび角度依存する色を発生することによってでさえ、容易にカモフラージュを実現することができる。色を結合することによって、より広い色範囲がデバイスに与えられ、このことによって、色表現が拡大され、電気調整可能な角度依存する光変化によって、潜在的なカモフラージュ用途がさらに促進される。
【0051】
いくつかの実施形態では、多重化したデバイスを、パターン形成した電極/基板で作成することもできる。図19(A)は、多重化したデバイスの3×3配列の概略を示し、ここでは、各円が1つの電気的に調整可能な能動区域を表す。パターン形成した電極は、それぞれ(「+」および「-」によって示される)電源に接続される。図19(B)は、曲げることができる最終的なデバイスを示しており、これは、結局、単一の電場制御の下で同じ多重化したデバイス内に角度多様性をもたらす。しかし、多重化したデバイスは、様々な選択的作動によって、電気的に調整することもできる。本開示の角度依存する光変化ならびにその電気的調整能力によって、多重化したデバイス上でさらに多くの用途の広い色を生成することができる。図19(C)~図19(F)は、増大した電場を用いて選択的に作動される前(左)および後(右)の、3×3配列の多重化したデバイスの画像を示す。これらの多重化したデバイスは、高解像度ディスプレイ用、および計算的なプログラミング後のカモフラージュパターン構築用に使用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、多重化したデバイスを作成する方法は、デバイスを組み立てる前の基板への変更プロセスをさらに含む。1つの例示的な実施形態では、ITOガラスまたはPET-ITO基板が、互いに対して2cmの間隔を有する、パターン形成した平行な縞状のテープで接着され、次いで、10分間、10% HCL中に浸される。次いで、基板が取り出され、HCLを取り除くために3回DI水で洗浄される。次いで、パターン形成した平行なテープがはがされ、パターン形成したITO基板が得られる。
【符号の説明】
【0053】
200 エレクトロクロミックデバイス
202 色素色層
204 構造色層
206 第1の透明基板
208 第1の透明電極
210 イオン貯蔵層
212 第2の透明電極
214 第2の透明基板
218 電源
300 エレクトロクロミックデバイス
302 色素色層
304 構造色層
306 透明基板
308 電極
310 イオン貯蔵層
312 電極
316 電解質溶液
400 液体セルデバイス
402 液体色素材料
404 構造色層
408 第1の透明電極
410 イオン貯蔵層
412 第2の透明電極
416 液体電解質
418 液体セル
702 色素色層
704 構造色層
710 イオン貯蔵層
図1(A)】
図1(B)】
図2
図3
図4
図5(A)】
図5(B)】
図6(A)】
図6(B)】
図6(C)】
図6(D)】
図7
図8(A)】
図8(B)】
図9
図10(A)】
図10(B)】
図10(C)】
図11(A)】
図11(B)】
図11(C)】
図12(A)】
図12(B)】
図13
図14(A)】
図14(B)】
図14(C)】
図14(D)】
図14(E)】
図15
図16A)】
図16B)】
図16C)】
図16D)】
図16E)】
図16F)】
図17
図18A)】
図18B)】
図18C)】
図19(A)】
図19(B)】
図19(C)】
図19(D)】
図19(E)】
図19(F)】
【国際調査報告】