(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】インターカレーション型アノード材料及び変換型アノード材料のブレンドを含むアノードを有するリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230714BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230714BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230714BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230714BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230714BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230714BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230714BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230714BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20230714BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20230714BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20230714BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0569
H01G11/38
H01G11/30
H01G11/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559770
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021025736
(87)【国際公開番号】W WO2021203086
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513198814
【氏名又は名称】シラ ナノテクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】グレブ ユーシン
(72)【発明者】
【氏名】アダム カイドシ
(72)【発明者】
【氏名】バレンチン ルレビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス イングル
(72)【発明者】
【氏名】コスチャンティン トルケニウク
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AA05
5E078AB01
5E078AB02
5E078BA12
5E078BA18
5E078BA31
5E078BA42
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
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5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ06
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ19
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA19
(57)【要約】
一態様はLiイオン電池に向けられ、Liイオン電池はアノード電極及びカソード電極と、アノード電極とカソード電極とをイオン結合する電解質と、アノード電極とカソード電極とを電気的に分離するセパレータとを備え、アノード電極は変換型アノード材料及びインターカレーション型アノード材料の混合物を含み、変換型アノード材料は約1400mAh/gから約2200mAh/gの範囲の中央値比可逆容量を示し、変換型アノード材料は約88%から約96%の範囲の初回サイクルクーロン効率を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極及びカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極とをイオン結合する電解質と、
前記アノード電極と前記カソード電極とを電気的に分離するセパレータと、
を備え、
前記アノード電極は、変換型アノード材料及びインターカレーション型アノード材料の混合物を含み、
前記変換型アノード材料は、約1400mAh/gから約2200mAh/gの範囲の中央値比可逆容量を示し、
前記変換型アノード材料は、約88%から約96%の範囲の初回サイクルクーロン効率を示す、Liイオン電池。
【請求項2】
前記変換型アノード材料は、約40重量%から約60重量%のSiを含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項3】
前記変換型アノード材料は、コアシェルナノ複合材粒子を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項4】
前記コアシェルナノ複合材粒子の外側シェルの平均厚は、約1nmから約20nmの範囲である、請求項3に記載のLiイオン電池。
【請求項5】
前記変換型アノード材料は、前記電解質に到達できない1以上の内部細孔を備える、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項6】
前記1以上の内部細孔の体積は、約0.1~約1cm
3/gの範囲である、請求項5に記載のLiイオン電池。
【請求項7】
前記1以上の内部細孔の平均サイズは、約1nmから約50nmの範囲である、請求項5に記載のLiイオン電池。
【請求項8】
前記変換型アノード材料は、約1~約2g/cm
3の範囲の密度を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項9】
前記変換型アノード材料は、約1~約25m
2/gの範囲の比表面積を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項10】
前記変換型アノード材料は、約2nmから約40nmの範囲に体積平均サイズを有するSi含有ナノ粒子を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項11】
前記変換型アノード材料は、約2重量%未満の酸素(O)を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項12】
前記変換型アノード材料は、約0.5重量%未満の水素(H)を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項13】
前記変換型アノード材料は、約6重量%から約60重量%の炭素(C)を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項14】
前記変換型アノード材料は、コアシェル構造を示し、
前記コアシェル構造のシェルは、sp
2結合炭素を含む、
請求項13に記載のLiイオン電池。
【請求項15】
ラマンGバンドの強度に対するラマンDバンドの強度の比率(I
D/I
G)は、約532nmの波長において作動するレーザーが装備されたラマン分光器を用いて、粉末として構成されて前記変換型アノード材料に記録される場合に、約0.7から約2の範囲にある、請求項13に記載のLiイオン電池。
【請求項16】
いずれの集電装置箔部品も除外した前記アノード電極が、約400mAh/gから約1200mAh/gの範囲の重量容量を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項17】
前記アノード電極、前記カソード電極又はその両方が、約3~約4.5mAh/cm
2又は約4.5~約8mAh/cm
2の範囲の可逆面積容量を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項18】
前記アノード電極は、軟質カーボン、硬質カーボン、合成グラファイト又は天然グラファイトを含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項19】
いずれの集電装置箔部品も除外した前記アノード電極が、約1.2g/cm
3から約1.8g/cm
3の範囲の密度を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項20】
前記アノード電極は、ポリマー又はコポリマーバインダーを含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項21】
いずれの集電装置箔部品も除外した前記アノード電極は、約2重量%から約7重量%のポリマー又はコポリマーバインダーを含む、請求項20に記載のLiイオン電池。
【請求項22】
前記ポリマー又はコポリマーバインダーは、アルギン酸及びその各種塩、ポリアクリル酸(PAA)若しくはその塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸若しくはその塩、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はそれらの組合せを含む、請求項20に記載のLiイオン電池。
【請求項23】
前記カソード電極は、Ni、Co、Mn、Fe又はそれらの組合せを含むインターカレーション型カソード材料を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項24】
前記電解質は、1以上のエステル及び1以上の環状カーボネートの両方を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項25】
前記1以上のエステルの体積分率は、前記電解質における全溶媒の分率として、約20体積%から約90体積%の範囲である、請求項24に記載のLiイオン電池。
【請求項26】
前記1以上のエステルは1以上の分岐エステルを含み、該1以上の分岐エステルは分子あたり平均約5個と約7個の間の炭素(C)原子を有するエステル分子を含む、請求項24に記載のLiイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年4月3日出願の米国仮特許出願第63/005044号、発明の名称「LITHIUM-ION BATTERY ANODES COMPRISING BLENDS OF INTERCALATION-TYPE CARBONACEOUS ANODE MATERIALS AND CONVERSION-TYPE ANODE MATERIALS AND COMPOSITIONS OF BATTERY CELLS COMPRISING SAME」の利益を主張し、当該出願はその全体において参照によりここに明示的に取り込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概略としてエネルギー貯蔵デバイスに関し、より具体的には電池技術などに関する。
【背景技術】
【0003】
それらの比較的高いエネルギー密度、比較的高い比エネルギー、軽量性及び長寿命の可能性にある程度起因して、広範なウェアラブル可搬家電製品、電気自動車、グリッドストレージ、宇宙及び他の重要な用途のための高度な二次電池が望ましい。
【0004】
一方、従来のLiイオン二次電池が商業的に普及していくのにもかかわらず、特に、とりわけ、バッテリ給電される陸、海及び空での輸送手段(無人又は自動運転車両を含む)、家電製品、ドローン及び宇宙用途における潜在的な用途のために、それらの電池の更なる開発が必要とされている。高い比容量及び体積容量、形成サイクル中の充分に低い不可逆Li損失、長いサイクル寿命、低温及び高温双方での安定した性能、速い充電及び高いレート性能を与える能力を有するアノードの作製が、電池コストを低減するとともに体積及び重量電池エネルギー密度を増加させるためには重要となる。残念ながら、そのような電極を生産する従来のルートでは、所望の性能特性は実現されず、余計な労力及びコストが必要となることが多く、レート性能及び安定性が不要に低くなってしまうことが多い。
【0005】
したがって、依然として、電池セル、構成要素/成分及び他の関連する材料並びに製造プロセスの改善のニーズがある。
【発明の概要】
【0006】
以下に、ここに開示される1以上の態様に関する簡略な概要を示す。したがって、以下の概要は全ての考えられる態様に関する網羅的な全体像とみなされるべきではなく、以下の概要は全ての考えられる態様に関する主要若しくは重要な要素を特定し又はいずれかの特定の態様に関連する範囲を規定するものとみなされるべきでもない。したがって、以下の概要は専ら、ここに開示するメカニズムに関する1以上の態様に関する特定の概念を以下に提示する詳細な説明に先行して簡略な形式で提示する目的のものである。
【0007】
一態様において、Liイオン電池は、アノード電極及びカソード電極と、アノード電極とカソード電極とをイオン結合する電解質と、アノード電極とカソード電極とを電気的に分離するセパレータとを含み、アノード電極は変換型アノード材料及びインターカレーション型アノード材料の混合物を含み、変換型アノード材料は約1400mAh/gから約2200mAh/gの範囲の中央値比可逆容量を示し、変換型アノード材料は約88%から約96%の範囲の初回サイクルクーロン効率を示す。
【0008】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約40重量%から約60重量%のSiを含む。
【0009】
一部の態様では、変換型アノード材料は、コアシェルナノ複合材粒子を含む。
【0010】
一部の態様では、コアシェルナノ複合材粒子の外側シェルの平均厚は、約1nmから約20nmの範囲である。
【0011】
一部の態様では、変換型アノード材料は、電解質に到達できない1以上の内部細孔を備える。
【0012】
一部の態様では、1以上の内部細孔の体積は、約0.1~約1cm3/gの範囲である。
【0013】
一部の態様では、1以上の内部細孔の平均サイズは、約1nmから約50nmの範囲である。
【0014】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約1~約2g/cm3の範囲の密度を示す。
【0015】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約1~約25m2/gの範囲の比表面積を示す。
【0016】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約2nmから約40nmの範囲に体積平均サイズを有するSi含有ナノ粒子を含む。
【0017】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約2重量%未満の酸素(O)を含む。
【0018】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約0.5重量%未満の水素(H)を含む。
【0019】
一部の態様では、変換型アノード材料は、約6重量%から約60重量%の炭素(C)を含む。
【0020】
一部の態様では、変換型アノード材料はコアシェル構造を示し、コアシェル構造のシェルはsp2結合炭素を含む。
【0021】
一部の態様では、ラマンGバンドの強度に対するラマンDバンドの強度の比率(ID/IG)は、約532nmの波長において作動するレーザーが装備されたラマン分光器を用いて、粉末として構成されて変換型アノード材料に記録される場合に、約0.7から約2の範囲にある。
【0022】
一部の態様では、いずれの集電装置箔部品も除外したアノード電極が、約400mAh/gから約1200mAh/gの範囲の重量容量を示す。
【0023】
一部の態様では、アノード電極、カソード電極又はその両方が、約3~約4.5mAh/cm2又は約4.5~約8mAh/cm2の範囲の可逆面積容量を示す。
【0024】
一部の態様では、アノード電極は、軟質カーボン、硬質カーボン、合成グラファイト又は天然グラファイトを含む。
【0025】
一部の態様では、いずれの集電装置箔部品も除外したアノード電極が、約1.2g/cm3から約1.8g/cm3の範囲の密度を示す。
【0026】
一部の態様では、アノード電極は、ポリマー又はコポリマーバインダーを含む。
【0027】
一部の態様では、いずれの集電装置箔部品も除外したアノード電極は、約2重量%から約7重量%のポリマー又はコポリマーバインダーを含む。
【0028】
一部の態様では、ポリマー又はコポリマーバインダーは、アルギン酸及びその各種塩、ポリアクリル酸(PAA)若しくはその塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸若しくはその塩、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はそれらの組合せを含む。
【0029】
一部の態様では、カソード電極は、Ni、Co、Mn、Fe又はそれらの組合せを含むインターカレーション型カソード材料を含む。
【0030】
一部の態様では、電解質は、1以上のエステル及び1以上の環状カーボネートの両方を含む。
【0031】
一部の態様では、1以上のエステルの体積分率は、電解質における全溶媒の分率として、約20体積%から約90体積%の範囲である。
【0032】
一部の態様では、1以上のエステルは1以上の分岐エステルを含み、1以上の分岐エステルは分子あたり平均約5個と約7個の間の炭素(C)原子を有するエステル分子を含む。
【0033】
ここに開示する態様に関連する他の課題及び有利な効果は、添付図面及び詳細な説明に基づいて当業者に明らかとなる。
【0034】
添付図面は、本発明の実施形態の説明を補助するために提示され、専ら実施形態の説明のために提供され、その限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、ここに記載する構成要素、成分、材料、方法及び他の技術又はそれらの組合せが種々の実施形態に従って適用され得る例示の(例えば、Liイオン)電池を示す。
【
図2】
図2は、ブレンドアノードの例示的形成において使用され得るC含有変換型アノード粒子の例示的ラマンスペクトルを示す。
【
図3】
図3は、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図4】
図4は、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【
図5A】
図5Aは、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【
図5B】
図5Bは、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【
図6】
図6は、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【
図7A】
図7Aは、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【
図7B】
図7Bは、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【
図8】
図8は、適切な組成及び特性を有するブレンドアノードの例示の性能特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の態様を、本発明の具体的実施形態に向けられた以下の説明及び関係する図面において開示する。用語「本発明の実施形態」は記載される特徴/構成、有利な効果、プロセス又は作動モードを本発明の全ての実施形態が含むことを要件とせず、代替実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく考案され得る。さらに、本発明の周知の要素は、他のより関連性の高い詳細を不明瞭としないように詳細には記載されず、又は省略され得る。
【0037】
以下の説明は(簡略化のため及び便宜上、かつ現在のLi技術の普及のため)二次及び一次Li及びLiイオン電池の背景で特定の例を説明する場合があるが、種々の態様が他の二次及び一次電池(Naイオン、Mgイオン、Kイオン、Caイオン、Alイオン及び他の金属イオン電池、アニオンイオン(例えば、Fイオン)電池、デュアルイオン電池、アルカリ電池、酸電池、固体電池など)、その他、各種電解質及び(例えば、一方の電極が電池状であり、他方がスーパーキャパシタ状である)各種ハイブリッドデバイスを有する電気化学キャパシタ(二重層キャパシタ及びいわゆるスーパーキャパシタを含む)に適用可能となり得ることが分かるはずである。
【0038】
以下の説明は複数の特定のタイプのカソード又はアノード材料のための材料形成の特定の例を説明する場合があるが、種々の態様が他の種々の電極材料に適用可能となり得ることが分かるはずである。
【0039】
以下の説明は特定のポリマー又はコポリマーバインダーを含む多孔質電極の調製の背景において特定の実施形態を説明する場合があるが、他のタイプのバインダー若しくはバインダーの混合物を含む多孔質電極又はバインダーを全く含まない多孔質電極に種々の態様が適用可能となり得ることが分かるはずである。
【0040】
以下の説明は特定の伝導性添加物を含む多孔質電極の調製の背景において特定の実施形態を説明する場合があるが、他のタイプの添加物若しくは添加物の混合物を含む多孔質電極又は伝導性添加物を全く含まない多孔質電極に種々の態様が適用可能となり得ることが分かるはずである。
【0041】
本発明のいずれかの実施形態に関してここに記載するいずれの数値範囲も、関連する数値範囲の上限及び下限を規定するだけでなく、上限及び下限が特徴付けられる精度のレベルに一致する単位又は増分においてその範囲内の各別個の値の暗示的な開示としても意図される。例えば、50μmから1200μmの数値距離範囲(すなわち、1の単位又は増分の精度のレベル)は、1の単位又は増分での介在数51から1199が明示的に開示されているかのように[50、51、52、53、・・・、1199、1200]の集合を(μmで)包含する。他の例では、0.01%から10.00%の数値パーセンテージ範囲(すなわち、100分の1の単位又は増分の精度のレベル)は、100分の1の単位又は増分での介在数0.02から9.99が明示的に開示されているかのように[0.01、0.02、0.03、・・・、9.99、10.00]の集合を(%で)包含する。よって、任意の開示される数値範囲によって包含される介在数のいずれかも、それらの介在数が明示的に開示されていたかのように解釈されることが意図され、それにより、いずれのそのような介在数もそれ自体の、より広い範囲内に収まる小範囲の上限及び/又は下限を構成し得る。それにより、各小範囲(例えば、上限及び/又は下限としてより広い範囲からの少なくとも1つの介在数を含む各範囲)は、より広い範囲の明示的開示によって暗示的に開示されているものとして解釈されることが意図される。
【0042】
以下、種々の段階において粒子を含む電池電極組成物を参照する。例えば、それらの製造後に、電極粒子(例えば、アノード活性材料粒子、カソード活性材料粒子など)が、個々の粒子が自由移動する乾燥粉末として構成され得る。その後、それらの乾燥粉末粒子は、溶媒、バインダー及び/又は他の材料と混合されて(例えば、液相又は実質的に液相の)スラリーを構成することになる。そして、そのスラリーが(例えば、集電装置に)鋳造されて電極を形成し、その後に乾燥され得る。電極粒子は、電極として鋳造されると、バインダーを介して相互に結合され、もはや自由移動しないが、それでも粒子は活性材料の膨張などによって電池作動中にいくらか移動し得る。
【0043】
図1は、ここに記載する構成要素/成分、材料、方法及び他の技術又はそれらの組合せが種々の実施形態に従って適用され得る例示の金属イオン(例えば、Liイオン)電池100を示す。ここでは説明の目的で円筒形電池を示すが、角柱形電池、コイン形状電池又はパウチ(積層型)電池を含む他のタイプの構成も所望に応じて使用され得る。例示の電池100は、負極アノード102、正極カソード103、アノード102とカソード103の間に介在するセパレータ104、セパレータ104を浸漬する電解質(不図示)、電池筐体105、及び電池筐体105を封止する封止部材106を含む。
【0044】
Liイオン電池において利用される従来の電極は、(i)活性材料、伝導性添加物、バインダー溶液、及び場合によっては界面活性剤又は他の機能的添加物を含むスラリーの形成工程、(ii)スラリーを金属箔(例えば、ほとんどのLiイオン電池アノードについてはCu箔、及びほとんどのLiイオン電池カソードについてはAl箔)に鋳造する工程、(iii)鋳造された電極を乾燥させて溶媒を完全に蒸発させる工程、及び(iv)均一圧延による乾燥電極のカレンダー処理(高密度化)工程によって生産され得る。
【0045】
円筒形及び他の電池は、(i)アノード/セパレータ/カソード/セパレータの挟み込みを組み立てる/積層する(いわゆるジェリーロールに巻く)工程、(ii)積層体(すなわち、ジェリーロール)を電池ハウジング(筐体)に挿入する工程、(iii)電解質を電極及びセパレータの細孔に(及び筐体の残余の領域にも)多くの場合に真空下で充填する工程、(iv)電池セルを(多くの場合に真空下で)予め封止する工程、(v)電池が(例えば、1回以上)低速充放電されるいわゆる「形成」サイクルを行う工程、(vi)形成ガスを除去し、セルを封止し、顧客に出荷する工程によって生産され得る。
【0046】
液体電解質及び固体電解質の双方が、ここでの設計に使用され得る。このタイプのLi系電池のための例示的電解質は、有機溶媒の混合物(カーボネートの混合物など)中において単一Li塩(Liイオン電池のためのLiPF6など)で構成され得る。他の適切な有機溶媒は、ニトリル類、エステル類、スルホン類、スルホキシド類、リン系溶媒、シリコン系溶媒、エーテル類などを含む。一部の設計例では、そのような溶媒は修飾されてもよい(例えば、スルホン化又はフッ素化されてもよい)。一部の設計例では、電解質は、イオン液体(一部の設計例では、中性イオン液体、他の設計例では、酸性及び塩基性イオン液体)を含んでいてもよい。一部の設計例では、電解質は、各種塩の混合物(例えば、Li及びLiイオン二次電池には、複数のLi塩の混合物又はLi及び非Li塩の混合物)を含んでいてもよい。
【0047】
Liイオン電池電解質で用いられる最も一般的な塩は、例えば、LiPF6であり、あまり一般的でない塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2O4)2)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))、各種リチウムイミド類(SO2FN-(Li+)SO2F、CF3SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF2CF3、CF3SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、CF3OCF2SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2CF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2C6F5又はCF3SO2N-(Li+)SO2PhCF3など)などを含む。Naイオン、Mgイオン、Kイオン、Caイオン及びAlイオン電池のための電解質は、それらの電池が開発の早期段階にあるため、よりエキゾチックであることが多い。一部の設計例では、そのような電解質は、異なる塩及び溶媒を含み得る(場合によっては、特定の用途についてイオン液体が有機溶媒に代替し得る)。
【0048】
Liイオン電池で利用される特定の従来のカソード材料は、インターカレーション型のものである。このカソードでは、金属イオンが、電池の充電又は放電中にそのような材料の格子間位置にインターカレーションされてそれを占有する。このカソードは、インターカレーション型活性材料を排他的な活性材料タイプ(すなわち、非従来型活性材料)として使用し、作動(サイクル)中に非常に小さな体積変化しか経験しない。このカソードはまた、高い密度(例えば、約3.8~6g/cm3)を示し得る。そのようなインターカレーション型カソードの説明のための例は、これらに限定されないが、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム酸化物(NMCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケル酸化物(LNO)、リチウム金属(例えば、鉄(Feまたは「F」)若しくはマンガン(Mnまたは「M」)又は混合)リン酸エステル(例えば、リン酸鉄リチウム(LFP)又はリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)などのLMP)、リチウム金属ケイ酸塩(Li2MSiO4)、とりわけ、表面コーティングを備え又は個々の粒子内で勾配組成を示すもの及びそれらの各種混合物を含む他の各種インターカレーションカソード材料を含む。ポリフッ化ビニリデン又はポリジフッ化ビニリデン(PVDF)は、これらの電極に使用される最も一般的なバインダーである。カーボンブラック及びカーボンナノチューブは、使用される最も一般的な伝導性添加物である。
【0049】
Liイオン又はLi二次電池のための変換型(変位型、化学変換型、真の変換型など)のカソード材料は、インターカレーション型カソード材料と比較して、より高いエネルギー密度、より高い比エネルギー又はより高い比容量若しくは体積容量を与え得る。例えば、フッ素系カソードは、場合によっては約300mAh/gを超える(電極レベルでは約1200mAh/cm3よりも大きい)それらの非常に高い容量に起因して顕著な技術的可能性を与え得る。例えば、Liがない状態において、FeF3は712mAh/gの理論比容量を与え、FeF2は571mAh/gの理論比容量を与え、MnF3は719mAh/gの理論比容量を与え、CuF2は528mAh/gの理論比容量を与え、NiF2は554mAh/gの理論比容量を与え、PbF2は219mAh/gの理論比容量を与え、BiF3は302mAh/gの理論比容量を与え、BiF5は441mAh/gの理論比容量を与え、SnF2は342mAh/gの理論比容量を与え、SnF4は551mAh/gの理論比容量を与え、SbF3は450mAh/gの理論比容量を与え、SbF5は618mAh/gの理論比容量を与え、CdF2は356mAh/gの理論比容量を与え、ZnF2は519mAh/gの理論比容量を与える。フッ化物の(例えば、合金の形態の)混合物は、複合則に従って概算された理論容量を与え得る。一部の設計例では、混合金属フッ化物の使用は、有利となり得ることがある(例えば、より高いレート、より低い抵抗、より高い実容量又はより長い安定性を与え得る)。完全にリチウム化された状態では、金属フッ化物は、金属及びLiFクラスタ(又はナノ粒子)の混合物を含む複合材に変換する。変換型金属フッ化物カソードの全体的可逆反応の例は、CuF2系カソードについては2Li+CuF2⇔2LiF+Cu、又はFeF3系カソードについては3Li+FeF3⇔3LiF+Feを含み得る。金属フッ化物系カソードは、Liがない状態、部分的にリチウム化された状態、又は完全にリチウム化された状態のいずれにおいても調製され得ることがわかるはずである。
【0050】
有望な変換型Liイオン電池カソード(又は場合によってはアノード)の材料の他の例は、(Liがない状態において)硫黄(S)又は(完全にリチウム化された状態において)リチウム硫化物(Li2S)である。サイクル中に活性材料の溶解を低減するため、電気伝導性を向上するため、又は一部の設計例ではS/Li2S電極の機械的安定性を向上するために、多孔質S、Li2S、多孔質S-C(ナノ)複合材、Li2S-C(ナノ)複合材、Li2S-金属酸化物(ナノ)複合材、Li2S-C-金属酸化物(ナノ)複合材、Li2S-C-金属硫化物(ナノ)複合材、Li2S-金属硫化物(ナノ)複合材、Li2S-C-混合金属酸化物(ナノ)複合材、Li2S-C-混合金属硫化物(ナノ)複合材、多孔質S-ポリマー(ナノ)複合材、又はS、Li2S若しくはその両方を含む他の複合材若しくは(ナノ)複合材を有利に利用することができる。一部の設計例では、この(ナノ)複合材は、伝導性カーボンを有利に含み得る。一部の設計例では、この(ナノ)複合材は、金属酸化物又は混合金属酸化物を有利に含み得る。一部の設計例では、この(ナノ)複合材は、金属硫化物又は混合金属硫化物を有利に含み得る。一部の例では、混合金属酸化物又は混合金属硫化物は、リチウム金属を含み得る。一部の例では、混合金属酸化物は、チタン金属を含み得る。一部の例では、リチウム含有金属酸化物又は金属硫化物は、積層構造を示すことがある。一部の例では、金属酸化物若しくは混合金属酸化物又は金属硫化物若しくは混合金属硫化物は、有利にはイオン及び電気伝導性であり得る。一部の例では、他の各種インターカレーション型活性材料が、金属酸化物又は金属硫化物の代わりに又はそれに加えて利用され得る。一部の設計例では、そのようなインターカレーション型活性材料は、S又はLi2Sの電荷蓄積量(例えば、Li/Li+に対して約1.5~3.8V以内)付近の潜在的範囲に電荷蓄積量(例えば、Li挿入/抽出容量)を示す。
【0051】
残念ながら、Liイオン電池に用いられる多くの変換型電極では、性能の限界が問題となる。(ナノ)複合材の形成は、少なくとも部分的にそのような限界を克服し得る。例えば、一部の設計例における(ナノ)複合材は、電圧ヒステリシスの減少、容量利用率の向上、レート性能の向上、機械的及び場合によっては電気化学安定性の向上、体積変化の減少、及び/又は他のポジティブな属性を与え得る。そのような複合カソード材料の例は、これらに限定されないが、LiF-Cu-Fe-Cナノ複合材、LiF-Ni-Fe-Cナノ複合材、LiF-Mn-Fe-Cナノ複合材、LiF-Ni-Mn-Fe-Cナノ複合材、LiF-Cu-CuO-Cナノ複合材、LiF-Ni-NiO-Cナノ複合材、LiF-Cu-Fe-CuO-Cナノ複合材、LiF-Ni-Fe-NiO-Cナノ複合材、LiF-Cu-Fe-CuO-Fe2O3-Cナノ複合材、LiF-Ni-Fe-NiO-Fe2O3-Cナノ複合材、FeF2-Cナノ複合材、FeF2-Fe2O3-Cナノ複合材、FeF3-Cナノ複合材、FeF3-Fe2O3-Cナノ複合材、CuF2-Cナノ複合材、CuO-CuF2-Cナノ複合材、LiF-Cu-Cナノ複合材、NiF2-Cナノ複合材、NiO-NiF2-Cナノ複合材、LiF-Ni-Cナノ複合材、LiF-Cu-C-ポリマーナノ複合材、LiF-Fe-C-ポリマーナノ複合材、LiF-Ni-C-ポリマーナノ複合材、LiF-Cu-CuO-C-ポリマーナノ複合材、LiF-Fe-Fe2O3-C-ポリマーナノ複合材、LiF-Fe-金属-ポリマーナノ複合材、LiF-Fe-金属1-金属2-ポリマーナノ複合材、及びLiF、FeF3、FeF2、MnF3、CuF2、NiF2、PbF2、BiF3、BiF5、CoF2、SnF2、SnF4、SbF3、SbF5、CdF2若しくはZnF2又は他の金属フッ化物若しくはオキシフッ化物又はそれらの合金若しくは混合物、又はFe、Mn、Cu、Ni、Pb、Bi、Co、Sn、Sb、Cd、Co、Zn又は他の金属若しくは金属合金を含むとともに、任意選択的に金属酸化物及びそれらの合金又は混合物を含む他の多数の多孔質ナノ複合材を含む。一部の例では、金属硫化物又は混合金属硫化物が、上記(ナノ)複合材における金属酸化物に代えて又はそれに加えて使用され得る。一部の例では、金属フッ化物ナノ粒子が、多孔質カーボンの細孔に(例えば、活性化カーボン粒子の細孔に)浸透されて、それらの金属フッ化物-Cナノ複合材を構成し得る。一部の例では、上記複合材粒子はまた、金属酸化物(混合金属酸化物、金属オキシフッ化物又は混合金属オキシフッ化物など)又は金属硫化物(混合金属硫化物など)を含み得る。一部の例では、混合金属酸化物又は混合金属硫化物は、リチウム金属を含み得る。一部の例では、リチウム含有金属酸化物又は金属硫化物は、積層構造を示すことがある。一部の例では、金属酸化物若しくは混合金属酸化物又は金属硫化物若しくは混合金属硫化物は、有利にはイオン及び電気伝導性であり得る。
【0052】
一部の例では、各種インターカレーション型活性材料が、Liイオン電池カソードにおける金属酸化物、金属硫化物、金属フッ化物又はオキシフッ化物の代わりに又はそれに加えて利用され得る。一部の設計例では、そのようなインターカレーション型活性材料は、金属フッ化物、金属オキシフッ化物、金属硫化物若しくは他の変換型活性材料と同じ電位範囲において(例えば、同じカソードに存在する場合)又は付近の電位範囲(例えば、Li/Li+に対して約1.5~4.2V)において電荷蓄積量(例えば、Li挿入/抽出容量)を示し得る。一部の例では、上記金属酸化物は、(例えば、サイクル中の金属腐食及び溶解を低減又は防止するために)金属フッ化物、オキシフッ化物又は硫化物(又は他の適切な変換型カソード)を封じ込め、有利には液体又はゲル状若しくはポリマー状の電解質との金属フッ化物(又はオキシフッ化物若しくは他の変換型活性材料)の直接の接触を防止(又は大幅に低減)し得る。一部の例では、ナノ複合材粒子は、カーボンシェル又はカーボンコーティングを備え得る。一部の設計例では、そのようなコーティングは、粒子の電気伝導性を高めることができ、液体電解質との金属フッ化物(又はオキシフッ化物若しくは他の変換型活性材料)の望ましくない直接の接触を防止(又は大幅に低減)することもできる。一部の設計例では、上記フッ化物含有(ナノ)複合材粒子は、リチウム化されていない状態、完全にリチウム化された状態及び部分的にリチウム化された状態において使用され得る。
【0053】
Liイオン電池において利用される一部の従来のアノード材料は、インターカレーション型のものでもある。従来のインターカレーション型Liイオン電池における最も一般的なアノード材料は、合成若しくは天然グラファイト、軟質若しくは硬質カーボン又はそれらの種々の混合物などのようなカーボンである。PVDF、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸及びそれらの各種塩、ポリアクリル酸(PAA)及びそれらの各種塩はそれら電極に使用される最も一般的なバインダーの一部であるが、他のバインダーも適宜好適に使用され得る。カーボンブラック及びカーボンナノチューブは、それら電極に使用される最も一般的な伝導性添加物の一部である。
【0054】
Liイオン電池での使用のための変換型(とりわけ、合金化型、変位型、化学変換型を含む)アノード材料は、インターカレーション型アノードと比較して、より高い重量及び体積容量を与える。例えば、シリコン(Si)は、インターカレーション型グラファイト(又はグラファイト状)アノードと比較して、約10倍高い重量容量及び約3倍高い体積容量を与える。しかしながら、SiはLi挿入中に大幅な(約300体積%もの)体積膨張を受けるので、一部の設計例におけるSi含有アノードの厚さの変化及び機械的故障を誘発し得る。さらに、Si(及びSiのリチウム化中に形成し得る何らかのLi-Si合金化合物)は、比較的低い電気伝導性及び比較的低いイオン(Liイオン)伝導性が問題となる。Siの電気及びイオン伝導性は、グラファイトのものよりも低い。一部の設計例では、種々の形状及びサイズの(ナノ)複合材Si含有(ナノ)粒子又は(これらに限定されないが、各種Si-カーボン複合材、Si-金属複合材、Si-ポリマー複合材、Si-金属-ポリマー複合材、Si-カーボン-ポリマー複合材、Si-金属-カーボン-ポリマー複合材、Si-セラミック複合材、又は種々の形状及び形態のナノ構造Si又はナノ構造若しくはナノサイズSi粒子を含む他のタイプの多孔質複合材を含む)並びにそれらの組合せの形成は、Liイオン挿入及び抽出中の体積変化を減少させることができ、そして、二次(再充電可能)Liイオンセルにおいて、より良好なサイクル安定性をもたらすことができる。Si含有ナノ複合材アノードに加えて、合金化型活性材料を含む上記ナノ複合材アノードの他の例は、これらに限定されないが、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ガリウム、ヒ素、リン、銀、カドミウム、インジウム、錫、鉛、ビスマス、それらの各種合金などを含むものを含む。合金化型活性材料を含む(ナノ)複合材アノードに加えて、他の興味深いタイプの高容量(ナノ)複合材アノードは、金属酸化物(シリコン酸化物、リチウム酸化物、他の金属酸化物及び亜酸化物などを含む)、金属窒化物(シリコン窒化物並びに他の金属窒化物及び亜窒化物を含む)、金属リン化物(リチウムリン化物並びに他の金属リン化物及び亜リン化物を含む)、金属水素化物(メタルハイドライドを含む)など、並びにそれらの各種混合物、合金及び組合せを含み得る。そのような材料組成物はまた、それらの電気化学性能を高めるために又は他の利益を実現するために、他の元素によってドーピングされてもよい。
【0055】
ここで用いるように、Liイオン電池のための「ブレンド」アノードとは、活性(Liイオン蓄積)材料のブレンドを含むアノードであって、ブレンドの少なくとも1つの成分がインターカレーション型(例えば、炭素質の)活性材料(とりわけ、天然若しくは合成グラファイト、軟質若しくは硬質カーボン又はそれらの各種混合物など)からなり、ブレンドの少なくとも他の1つの成分が変換型(合金化型を含む)の活性材料からなるブレンドをいう。
【0056】
一部の設計例では、(例えば、炭素質の)活性材料を含むブレンドの少なくとも1つのインターカレーション型成分は、ブレンドアノードにおける全活性材料の約20重量%~約98重量%に寄与する。
【0057】
一部の設計例では、(例えば、炭素質の)活性材料を含むブレンドの少なくとも1つの変換型成分は、ブレンドアノードにおける全活性材料の約2重量%~約80重量%に寄与する。
【0058】
一部の適用例では、不活性材料(例えば、集電装置箔、セパレータなど)の相対分率を低減するために、電極の高い面積容量負荷を生成することが非常に有利となることがあり、それは、有利には、約4.0~約20.0mAh/cm2、一部の設計例では約4.0~約7.0mAh/cm2、一部の設計例では約7.0~約10.0mAh/cm2、一部の設計例では約10.0~約20.0mAh/cm2の範囲であり得る。しかしながら、純粋にインターカレーション型(例えば、炭素質の)アノード(グラファイト又は軟質若しくは硬質カーボン)が上記の高い面積負荷によってLiイオン電池の設計で使用される場合、アノードの通常の厚さは(所与の適用例について)適温での電池充電速度特性は不要に低い数値(例えば、室温付近における約0から約80%充電状態(SoC)への充電について約40分~約2000分又はそれ以上)に減少してしまうほどに大きくなる(例えば、約70~350ミクロン)。本開示の1以上の実施形態は、中程度の面積負荷(例えば、約1.0~約4.0mAh/cm2)及び最重要なものとして高い面積負荷(例えば、約4.0~約20.0mAh/cm2)について、実質的により低い電極厚及び実質的により速い充電時間を実現する種々のルートに関する。一部の設計例では、そのようなルートの一部は、有利には、以下の(i)及び(ii)を含む、いわゆるブレンドアノードの使用を伴い得る。(i)少なくとも1つのタイプのインターカレーション型(例えば、炭素質の)アノード材料粒子(例えば、天然若しくは合成グラファイト、軟質若しくは硬質カーボン又はそれらの各種混合物)及び(ii)対応するインターカレーション型アノード活性材料よりも実質的に高い体積容量を示す少なくとも1つのタイプの変換型(合金化型を含む)のアノード材料粒子(例えば、Si、Sn、Sb、Ge、Al、Mg、Zn、Ga、P、Ag、Cd、In、Pb、Bi又はそれらの各種混合物及び合金を含むもの、並びに酸化物、窒化物、水素化物、リン化物及び各種ドーピング物を有する組成物を含む他の金属含有組成物を含むもの)。前述したように、Si含有変換型(合金化型を含む)のアノード粒子は、それらの、より高い比容量、豊富なSi及びより低いSiのコストのために特に有望となる。一部の設計例では、ブレンドアノードの変換型(合金化型を含む)の活性アノード材料粒子が、それらの組成における全ての(非炭素)金属及び準金属の分率として、約50~約100原子%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、ブレンドアノードの変換型(合金化型を含む)の活性アノード材料粒子が、約700mAh/gから約2800mAh/g(一部の設計例では約1400~1500mAh/gから約2200mAh/g、一部の設計例では約700mAh/gから約1200mAh/g、他の設計例では約1200mAh/gから約1400mAh/g、他の設計例では約1400mAh/gから約1500mAh/g、他の設計例では約1500mAh/gから約1600mAh/g、他の設計例では約1600mAh/gから約1700mAh/g、他の設計例では約1700mAh/gから約1800mAh/g、他の設計例では約1800mAh/gから約2200mAh/g、他の設計例では約2200mAh/gから約2800mAh/g)の範囲に比可逆容量を示すことが好適となり得る。一部の設計例では、異なる容量を有する変換型活性粒子の範囲がブレンドアノードの設計に使用される場合、それらの比可逆容量の重量平均値が約700mAh/gから約2800mAh/gの範囲に留まることが有利となり得る。高すぎる値の重量平均比容量は、(例えば、比容量の約50~60%超において)特に高温において、高い分率の変換型活性材料を含むブレンドされた組成物を有するセルにおいて不要に速い劣化を誘発してしまう場合がある。一部の設計例では、ブレンドアノードの変換型(合金化型を含む)の活性アノード材料粒子が約80%から約98%(一部の設計例では約80%から約85%、他の設計例では約85%から約90%、他の設計例では約90%から約93%、他の設計例では約93%から約98%)の範囲に初回サイクルクーロン効率を示すことが好適となり得る。一部の設計例では、異なる初回サイクルクーロン効率を有する様々な変換型活性粒子がブレンドアノードの設計で使用される場合、それらの初回サイクルクーロン効率の重量平均値が約80%から約98%の範囲に留まることが有利となり得る。一部の設計例では、変換型(合金化型を含む)のアノード活性材料粒子が、そのような粒子内の全元素の分率として、約20~約90重量%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(例えば、ブレンドされた)アノードが、これらに限定されないが、グラファイト、カーボン及びSi含有活性変換型(合金化型を含む)のアノード活性粒子(Si、Ge、Sn、Sb、Zn、H、C、S、P、O、N、Ca、Mg、Al、Ag、In、Bi、Pb、Fe、V、Sr、Baなど)の全成分(不活性成分を含む)を含む(例えば、活性材料のブレンドにおける)全アノード活性材料の総重量の分率として、約2重量%から約74重量%のSiを含むことが好適となり得る。
【0059】
一部の設計例では、ブレンドにおける純粋な変換型アノード粒子の代わりに、その表面上の又はその細孔内のコーティング又は粒子として物理的にそれと混合され又はそれに付着された変換型(例えば、Si含有)材料を有するインターカレーション型(例えば、炭素質の)粒子(例えば、グラファイト又はグラファイト状のもの)を利用し、その結果としてインターカレーション及び変換の双方の電気化学的挙動を示す複合粒子を構成してもよい。この場合、上記複合材のインターカレーション型成分と変換型成分との重量分率の相対比及びそれらの対応する容量に応じて、複合粒子の(可逆)比容量は、約400mAh/gから約1400~1800mAh/gの範囲となり得る(ただし、約2800mAh/gまでのより高い値も一部の設計例では達成され得る)。一部の設計例では、そのような混合インターカレーション/変換型複合粒子は、好ましくは約80%から約98%(一部の設計例では、より好ましくは約88%から約98%)の範囲に初回サイクルクーロン効率を示し得る。そのような複合粒子は、ブレンドアノードを構成するために、同様にインターカレーション型(例えば、グラファイト又はグラファイト状などの炭素質の)粒子と混合され得る。
【0060】
ブレンドアノードの総体積容量(単位体積あたりの容量)及び総比(重量)容量(単位質量あたりの容量)に対する(i)インターカレーション型炭素質活性材料(例えば、グラファイト含有)及び(ii)変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、シリコン含有)の相対寄与率は、特定の電池(例えば、Liイオン)適用要件及び対応する活性材料の特性に応じて変動し得る。例えば、一部の変換型(例えば、シリコン含有)アノード材料では、対応するインターカレーション型活性材料(例えば、グラファイト含有)よりも、高いコスト、初回サイクル中での大きな体積変化、後続のサイクル中での大きな体積変化、大きな初回サイクル損失、速い劣化、高温での劣った性能又は他の劣った特性が問題となる場合がある。そのような変換型(例えば、シリコン含有)アノード材料の一部は、高温蓄電時(例えば、充電状態、例えば、約70%から約100%の充電状態SOCにおいて約60~80℃の電池蓄電)又は高温作動時(例えば、約40~80℃)のガス化を防止するために、電池設計における電解質の望ましくない成分を同様に必要とし得る。この場合及び他の場合において、例えば、一部の設計例では、ブレンドアノードにおいてより小さな分率の変換型活性材料を使用することが有利となり得る。他の設計例では、例えば、それらの体積及び重量容量を最大化するために、ブレンドアノードにおいてより高い分率の変換型活性材料を使用することが有利となり得る。ただし、ほとんどの場合では、インターカレーション型炭素質活性材料(例えば、グラファイト)が、放電され、脱リチウム化され、多くの場合には実質的にLiがない状態において(変換型活性材料が約3重量%から約50重量%、一部の設計例では約5重量%から約25重量%を構成するように)ブレンドアノードにおける活性材料の総重量の約50重量%から約97重量%を構成することが有利となり得る。一部の設計例では、インターカレーション型(例えば、炭素質の)活性材料(例えば、グラファイト)が(完全に膨張され、完全に充電され、完全にリチウム化された状態において)ブレンドアノードの総体積の約20体積%から約90体積%に寄与することが有利となり得る。一部の設計例では、インターカレーション型炭素質活性材料(例えば、グラファイト)が(mAh/cm2の単位で)ブレンドアノードの総面積容量負荷の約10%から約85%に寄与し、それにより変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、シリコン含有)がブレンドアノードの総面積容量の約15%から約90%の範囲に寄与することが有利となり得る。一部の設計例では、インターカレーション型炭素質活性材料(例えば、グラファイト)が(放電され、脱リチウム化され、多くの場合には実質的にLiがない状態において)ブレンドアノードの総可逆容量の約10%から約85%に寄与することが有利となり得る。したがって、上記設計例では、変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、シリコン含有)が(完全に放電され、脱リチウム化され、多くの場合には実質的にLiがない状態において)ブレンドアノードの総可逆容量の約15%から約90%に寄与することが有利となり得る。
【0061】
一部の設計例では、インターカレーション型(例えば、炭素質の)活性材料(例えば、とりわけ、天然若しくは合成グラファイト若しくはグラファイト状材料又はそれらの組合せなどのグラファイト)は、変換型活性材料に対するそのより良好な電気化学安定性のためではなく、その(例えば、高密度化又はカレンダー処理時の)より高い変形可能性、より良好な熱特性、熱暴走時の放熱の低減、又は純粋な変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、シリコン含有)の性能を向上する他の属性のために、ブレンドアノードに添加され得る。これらの場合、比較的小さな分率(例えば、面積容量の約30%以下、又は約50重量%以下)の炭素質活性材料でさえも、一部の設計例では、ブレンドアノードを構成する際に有利に添加され得る。
【0062】
広範な変換型活性材料が、ブレンドアノードに利用され得る。しかしながら、著者は、変換型(合金化型を含む)のアノード材料粒子(又は変換型活性材料を含む複合粒子)の特定のサイズの分布、特定の密度範囲、特定の組成、特定の表面特性、特定の容量、及びサイクル中の特定範囲の体積変化が、ブレンドアノードを有するLiイオン電池での適用例については特に有利となり得ることを特定した。
【0063】
特に、高容量変換型(合金化型を含む)のアノード粉末(又は変換型活性材料を含む複合粒子を含み得る粉末の混合物)であって(i)初回サイクル中での適度に高い(例えば、約8~180体積%の間、場合によっては約8~220体積%の間の)平均体積変化率、後続の充放電サイクル中での適度な(例えば、約4~60体積%の間、場合によっては約4~80体積%の間の)平均体積変化率を示し、(ii)約0.2~約40ミクロン(より好ましくは約0.3~約20ミクロン、一部の設計例では好ましくは約1~約10ミクロン、さらに一部の設計例では好ましくは約2~約6ミクロン)の範囲の平均サイズ(例えば、平均径)を示し、(iii)約0.1~約100.0m2/g(一部の設計例ではより好ましくは約0.25~約25.0m2/g、一部の設計例では約0.5~約10m2/g、一部の設計例では約1~約5m2/g)の範囲の平均比表面積を示す、アノード粉末が、製造性及び性能特性の観点においてブレンドアノードにおける適用例について特に有望となり得る。一部の設計例では、略球体(又は楕円体)形状のそれらの変換型活性粒子(又は変換型活性材料を含む複合粒子)が、ブレンドアノードのレート性能及び体積容量を最適化するためにさらに有望となり得る。
【0064】
さらに、多数の金属イオン(例えば、Liイオン)電池セル設計について、ブレンドアノードにおける初回サイクル損失が約1%から約16%(一部の設計例では約1%から約4%、一部の設計例では約4%から約6%、一部の設計例では約6%から約8%、一部の設計例では約8%から約10%、一部の設計例では約10%から約16%)の範囲となることが有利となり得る。Liイオン電池のアノードにおける、より小さな初回サイクル損失が、全セルにおけるLiイオン電池のカソードがより小さな不可逆Li容量(例えば、約0%から約15%、一部の設計例では約2%から約10%)を示す場合の一部の設計例について特に有利となる。一般的に、カソードにおける不可逆容量損失が小さいほど、ブレンドアノードにおける好適な初回サイクル損失は小さくなる。このように、インターカレーション型(例えば、炭素質の)材料(例えば、グラファイト、カーボン又はグラファイト混合物、一部の設計例では、初回サイクルにおいて上記材料は約2%から約10%の範囲となり得る不可逆Li容量損失を経験し得る)初回サイクル損失、及びインターカレーション型(例えば、炭素質の)材料によって寄与される比容量の分率(例えば、ブレンドアノードの総比容量の約10%から約80%)に応じて、変換型材料における理想的な初回サイクル損失がセル設計(例えば、負対正電極負荷比、不可逆Li容量を含むカソード特性、電解質組成など)によって決定されることになる。
【0065】
またさらに、前述したように、一部の適用例では、ブレンドアノードは、適度な電極容量負荷(例えば、約1~4mAh/cm2の間)又は好ましくは高い電極容量負荷(例えば、約4~20mAh/cm2の間の)において生産される際にLiイオン電池における所望の性能特性(例えば、理想に近い初回サイクル損失、充分に高い充電速度、所望の温度範囲における充分に安定したサイクル性能、充電状態又は高温サイクルにおける高温蓄電時の少ないガス化、サイクル中の小さい体積変化、寿命終了時までの少ない膨出など)を達成することが特に重要となり得る。ブレンドアノードにおけるそのような特性の組合せを達成することは、それらの負荷においては困難な場合があり、特に水系(又は水相溶性)スラリー処理については些細なことではない。例えば、ブレンドアノードに対して従来的に使用されている変換型アノード材料では、高い(例えば、約20~約40%の範囲の)初回サイクル損失、電解質との接触表面積の不可逆的成長、固体電解質界面(SEI)層の不安定性及び結果としてのサイクルLiイオンの損失、より速い劣化、サイクル中の不要に大きな体積変化、寿命終了時における不要に大きな膨出、並びに他の望ましくない特性が問題となる場合があり、これはそれらの適切な重量分率を(ブレンドアノードにおける活性材料の総重量に対して)約2~5重量%に(一部の特殊な設計例では10重量%まで)制限し、それらの比容量寄与率を約5~40%に制限し、多くの場合、パウチセルにおける使用を阻害(それらの用途をハードケース角柱及び円筒セルに制限してしまう)又は約3~6.5mAh/cm2を超える負荷におけるそれらの使用を阻害してしまう。本開示の1以上の実施形態は、そのようなブレンドアノードの制限の少なくとも一部(又は全部)を(少なくとも部分的に)克服することに向けられ、従来の現行技術によって知られている又は示されているものを超える性能を実現し、以下の特性の1つ、2つ又はそれ以上を達成する:(i)(ブレンドアノードにおける従来の活性材料と同等以上の重量分率についての)より長いサイクル寿命、(ii)より高い重量%変換型活性材料(例えば、同等以上のサイクル寿命についてブレンドアノードにおける総容量の約5~50重量%及び/又はそれらの対応する比容量寄与率の範囲から約10~80%までの範囲において)、(iii)(変換活性材料の同等以上の重量分率又は同等以上の比容量寄与率についての)より小さい寿命終了時までの電池膨出、(iv)同等以上の充電速度又はサイクル寿命について、より高い面積容量負荷(例えば、約4~20mAh/cm2)、(v)パウチ(ソフトケース)セルでの使用能力、(vi)(変換型活性材料の同等以上の重量分率についての)より低い初回サイクル損失、(vii)(同じサイクル寿命についての)より高い比容量、(viii)Liイオン電池における(変換型活性材料の同等以上の重量分率について又は変換型アノード材料の同等以上の比容量寄与率についての)約80~100%SOCにおける高温(例えば、約60~80℃)蓄電時のより少ないガス化。
【0066】
異なるアーキテクチャの高容量変換型(合金化型を含む)のアノード粉末は、本開示の1以上の実施形態によるブレンドされた金属イオン(例えば、Liイオン)電池アノードの設計例において有利に使用され得る。
【0067】
一部の設計例では、高容量変換型(合金化型を含む)のアノード粉末は、複数の凝集ナノ複合材を含む多孔質複合材を含み得る。ナノ複合材の各々は、(i)(i、a)非炭素4A族元素(Si、Snなど)又はLi若しくはその混合物と電気化学合金を構成する他の金属のナノ粒子の3次元不規則配列集合体を含む樹状粒子、又は(i、b)炭素の(これらに限定されないが、ナノフレーク、ナノファイバ、長細い、楕円の又は略球体のナノ粒子を含む種々の形状の)ナノ粒子、又は非炭素4A族元素(Si、Snなど)若しくはLiと電気化学合金を構成する他の金属のナノ粒子で修飾された伝導性ポリマーの、3次元不規則配列集合体を含む樹状粒子、及び(ii)樹状粒子の表面に堆積した電気伝導性材料のコーティングを備える。ナノ複合材の各々は、複数の凝集ナノ複合材における隣接ナノ複合材の樹状粒子の少なくとも一部分と電気的に接続する樹状粒子の少なくとも一部分を有する。一部の設計例では、上記多孔質複合材は、(iii)凝集ナノ複合材の表面の少なくとも一部分に配されたLiイオン透過層をさらに備えていてもよく、リチウムイオン透過層は、多孔質複合材における非炭素4A族元素によって占有される体積の約0.5~約3倍の範囲の多孔質複合材内の総細孔体積を構成する。一部の設計例では、電気伝導性材料のコーティング又はLiイオン透過層は、カーボン又はポリマーを含み得る。一部の設計例では、多孔質複合材内の細孔体積の有意な部分(例えば、約50~100%、好ましくは約90%~約100%)は、組み立てられたセルにおいて、電解質溶媒によって到達可能ではない。一部の設計例では、多孔質複合材における全細孔の総体積分率は、約10体積%から約70体積%(例えば、一部の設計例では約10体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約50体積%、他の設計例では約50体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%)の範囲となり得る。一部の設計例では、多孔質複合材において全細孔(閉細孔及び開細孔を含む)の総体積は、約0.07cm3/gから約1.3cm3/g(例えば、一部の設計例では約0.07cm3/gから約0.1cm3/g、他の設計例では約0.1cm3/gから約0.2cm3/g、他の設計例では約0.2cm3/gから約0.3cm3/g、他の設計例では約0.3cm3/gから約0.4cm3/g、他の設計例では約0.4cm3/gから約0.5cm3/g、他の設計例では約0.5cm3/gから約0.6cm3/g、他の設計例では約0.6cm3/gから約0.7cm3/g、他の設計例では約0.7cm3/gから約0.8cm3/g、他の設計例では約0.8cm3/gから約0.9cm3/g、他の設計例では約0.9cm3/gから約1.0cm3/g、他の設計例では約1.0cm3/gから約1.1cm3/g、他の設計例では約1.1cm3/gから約1.2cm3/g、他の設計例では約1.1cm3/gから約1.3cm3/g)の範囲となり得る。大きすぎる細孔体積及び小さすぎる細孔体積の両方とも、アノード(ブレンドアノードなど)の不要に速い劣化又は劣った性能をもたらしてしまう場合がある。一部の設計例では、上記複合材における(Siなどのような非炭素4A族元素又はLi若しくはその混合物と電気化学合金を構成する他の金属の)ナノ粒子の平均サイズは、約2nmから約250nmの範囲となり得る。一部の設計例では、複数の凝集ナノ複合材を備え、電解質溶媒から到達可能でない多孔質複合材における細孔の平均サイズは、約0.5nmから約100nmの範囲となり得る。一部の設計例では、細孔の一部分(例えば、約10体積%以上)は、スリット形状又は略スリット形状のものであり得る。一部の設計例では、複数の凝集ナノ複合材を含む多孔質複合材は、約2原子%から約82原子%のsp2結合炭素含み得る。一部の設計例では、複数の凝集ナノ複合材を含む多孔質複合材は、約0.5重量%から約25重量%の(一部の設計例では少なくとも部分的に炭化され得る)ポリマーを含み得る。一部の設計例では、多孔質複合粒子が、そのような粒子の総重量の分率として、約20重量%から約90重量%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、多孔質複合粒子が、そのような粒子内の全元素の分率として、約10原子%から約80原子%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、多孔質複合粒子が、そのような粒子内の全元素の分率として、約2原子%から約84原子%のCを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子が、そのような粒子内の全元素の分率として、約1~5重量%未満のOを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子が、そのような粒子内の全元素の分率として、約2~10重量%未満の窒素(N)を含むことが好適となり得る。
【0068】
多数の適切な技術が、多孔質材料又は成分の多孔度又は細孔体積を決定するのに使用され得る。多くの場合、開細孔の細孔サイズ分布は(例えば、g/cm3で測定されるような)総細孔体積を測定するのに最も適した技術を示唆し得る。細孔は、細孔サイズに応じて、一般的には3つのカテゴリ:(i)ミクロポア(2nm未満)、(ii)メソポア(2~50nm)及び(iii)マクロポア(50nm超)に分類される。例えば、ガス吸着等温線を収集することによって(例えば、窒素吸着等温線又はアルゴン吸着等温線:窒素又はアルゴン吸着等温線を取集するには、77Kなどの一定温度における相対圧力の関数として吸着されたガスを測定することが非常に一般的である)、開ミクロポア、開メソポア及び小さな開マクロポア(一般的には100~200nm未満)の体積を有効に測定することができる。この技術は、一般的には吸着ガスの特定の平均密度を推定する。ほとんどの場合、そのような密度は、吸着収集温度における液化ガスの密度として近似的に推定される。(例えば、大気圧におけるガス液化又は沸騰温度、窒素の場合には77Kなどにおいて)約0.99気圧の圧力において細孔に吸着されるガス(例えば、窒素ガス)の総量(例えば、質量)を測定し、ガス密度を知ることによって、細孔の総体積を計算することができる(吸着ガスの体積は細孔の体積として近似される)。この(例えば、cm3で測定される)体積は、液体窒素の密度によって除算された吸着窒素の質量として近似され得る。そして、(cm3/gで測定される)比細孔体積は、測定細孔体積(cm3)を多孔質吸着剤の質量(g)で除算することによって計算され得る。多孔度(%)を計算するためには、多孔質吸着剤における固体のおおよその密度を知る必要があり得る。例えば、多孔質材料が多孔質カーボンからなる場合、固体カーボンの「真の」密度(約2g/cm3として近似されることが多い)を推定する必要があり得る。例えば、多孔質カーボン粉末の比細孔体積が0.5cm3/gとして測定される場合、1gの固体カーボンによって占有される体積も1/2=0.5cm3となるため、その多孔度を50%と推定することができる。約3~6nmよりも大きな開細孔を有する固体については、いわゆる水銀多孔度測定を用いることができる。水銀ポロシメータは、高圧を生成し、多孔質材料によって占められる水銀の圧力及び体積の両方を同時に測定する。水銀多孔度測定では、多孔質サンプルを(例えば、真空引きすることによって)排気してからサンプルを水銀で囲む装置が用いられる。細孔によって占められる体積を測定することによって、多孔質固体の細孔体積及び多孔度を同様に測定することができる。ただし、水銀は、一般的には妥当な圧力(一般的には、使用される水銀多孔度測定系に応じて、207MPa(30000psia)又は414MPa)において最小の細孔を貫通することはできず、その体積は測定値から除外されることになる。水銀多孔度測定は、総細孔体積を計算しようとする粉末及びバルクの物体(例えば、セパレータ又は電極)の両方に対して使用され得る。さらに、バルク物体の総(開及び閉)多孔度(例えば、セパレータ又は電極、双方ともcm3/g単位又は%)も、物体の各成分の重量分率及びその成分のおおよその密度が分かれば、それらの質量及び外体積(例えば、厚さ及び面積)を測定することによって特定され得る。閉細孔の体積は、(総細孔体積が既知であり又は密度測定値に基づいて推定され得るものと仮定して)開細孔体積の測定値から推定され得る。密度は、液体又は気体(例えば、窒素又はアルゴン)ピクノメトリを用いて測定され得る。なお、材料(例えば、粉末又はバルク)の体積は、その気体が押しのけた体積によって特定される(別名アルキメデスの法則)。この技術は、開ミクロポアを含まない材料に対して(そのような小さな細孔における気体又は液体濃縮を回避するために)最も適し得る。
【0069】
一部の設計例では、高容量変換型(合金化型を含む)のアノード粉末は、コアシェル複合材アーキテクチャを示し得る。この複合材は、(i)電池作動中にLiイオンを蓄積及び放出するように設けられた活性材料(Siなどの非炭素4A族元素又はLi若しくはその混合物を有する電気化学合金を構成する他の金属など)であって、それにより金属イオンの蓄積及び放出が活性材料の実質的な(例えば、約40~400%の)体積の変化をもたらす活性材料、(ii)体積の変化に適応する活性材料との組合せで配置された折畳みコア(例えば、ここで使用するように、折畳みコアとは、後続のサイクル中に変形を受けることなく活性材料膨張に適応可能な細孔空間を画定するように1以上の形成サイクル中に永久的かつ不可逆的な塑性又は非弾性変形を受けるコアをいう)、並びに(iii)活性材料及びコアを少なくとも部分的に封じ込めるシェル(例えば、ここで使用するように「少なくとも部分的に」は、部分的に又は完全に、を意味する)であって、活性材料によって蓄積及び放出されるLiイオンに対して実質的に透過性である材料から形成されたシェルを備え得る。一部の設計例では、折畳みコアは、(例えば、1以上の形成サイクル中に活性材料膨張によってある程度画定され得る)複数の開細孔又は閉細孔を介して体積の変化を吸収する多孔質材料から構成される。一部の設計例では、コアの多孔質材料は、多孔質でかつ電気伝導性の(例えば、sp2結合された)カーボン材料又は伝導性ポリマーを含み得る。一部の設計例では、活性材料は、コアの多孔質材料によって散在されていてもよい。一部の設計例では、コアは、モノリシック粒子として構成されてもよい。一部の設計例では、多孔質材料は、(一部の設計例では相互貫入され得る)1以上の湾曲された直線又は平面骨格で構成された多孔質基板を備えていてもよい。一部の設計例では、コアにおける多孔質材料の平均細孔サイズは、約0.5nmから約50nm(一部の設計例では、約0.5nmから約10nm)の範囲となり得る。一部の設計例では、細孔の有意な部分(例えば、20~100体積%)が、有利にはスリット形状又は略スリット形状であり得る。一部の設計例では、折畳みコアは1個、2個又はそれ以上の空隙(より大きな細孔)をさらに備えていてもよく、それは活性材料と直接接触していてもよい。一部の設計例では、空隙の平均サイズは、約10nmから約100nmの範囲となり得る。一部の設計例では、空隙の少なくとも有意な部分(例えば、約20~100体積%)の形状は、略球形又は楕円形であり得る。一部の設計例では、上記コアシェル複合粒子における全細孔(空隙を含む)の総体積分率は、約10体積%から約70体積%(例えば、一部の設計例では約10体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約50体積%、他の設計例では約50体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%)の範囲となり得る。一部の設計例では、上記コアシェル複合粒子における全細孔(空隙を含む)の総体積は、約0.07cm3/gから約1.3cm3/g(例えば、一部の設計例では約0.07cm3/gから約0.1cm3/g、他の設計例では約0.1cm3/gから約0.2cm3/g、他の設計例では約0.2cm3/gから約0.3cm3/g、他の設計例では約0.3cm3/gから約0.4cm3/g、他の設計例では約0.4cm3/gから約0.5cm3/g、他の設計例では約0.5cm3/gから約0.6cm3/g、他の設計例では約0.6cm3/gから約0.7cm3/g、他の設計例では約0.7cm3/gから約0.8cm3/g、他の設計例では約0.8cm3/gから約0.9cm3/g、他の設計例では約0.9cm3/gから約1.0cm3/g、他の設計例では約1.0cm3/gから約1.1cm3/g、他の設計例では約1.1cm3/gから約1.2cm3/g、他の設計例では約1.1cm3/gから約1.3cm3/g)の範囲となり得る。大きすぎる細孔体積及び小さすぎる細孔体積の両方とも、アノード(ブレンドアノードなど)の不要に速い劣化又は劣った性能をもたらしてしまう場合がある。
【0070】
一部の設計例では、コアシェル粒子におけるシェルは、活性材料及びコアを少なくとも部分的に封じ込めて活性材料の酸化を防止する保護コーティングを備え得る。一部の設計例では、シェルは活性材料及びコアを少なくとも部分的に封じ込める多孔質コーティングを備えていてもよく、多孔質コーティングは体積の変化にさらに適応する複数の開細孔又は閉細孔を有する。一部の設計例では、多孔質コア材料及び/又は多孔質コーティングにおけるそのような細孔の少なくとも一部分は、充填材料で充填され得る。一部の設計例では、この充填材料は、カーボンを含み得る。一部の設計例では、上記シェル材料の少なくとも一部分は、化学気相蒸着(CVD)によって堆積され得る。一部の設計例では、上記シェル材料の少なくとも一部分は、原子層堆積(ALD)によって堆積され得る。一部の設計例では、シェルは、内側層及び外側層を備える複合材料であってもよいし、任意選択的に1以上の介在層を備えていてもよい。一部の設計例では、内側層は保護コーティング層又は多孔質コーティング層の一方であり、外側層は保護コーティング層又は多孔質コーティング層の他方である。一部の設計例では、シェルの少なくとも一部分は、CVD堆積によるsp2結合炭素を含み得る。一部の設計例では、シェルの少なくとも一部分は、ポリマー層(一部の設計例では、CVD堆積されたポリマー)を備え得る。一部の設計例では、コアシェル複合粒子の1以上は、それぞれの複合粒子における全元素の分率として、約2原子%から約82原子%のsp2結合炭素を含み得る。一部の設計例では、コアシェル複合材は、約0.5重量%から約25重量%の(一部の設計例では少なくとも部分的に炭化され得る)ポリマーを含み得る。一部の設計例では、コアシェル複合粒子の1以上がその粒子の総重量の分率として、約20重量%から約90重量%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、コアシェル複合粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約10原子%から約70原子%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、多孔質複合粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約2原子%から約84原子%のCを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約1~5重量%未満のOを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約2~10重量%未満の窒素(N)を含むことが好適となり得る。
【0071】
一部の設計例では、高容量変換型(合金化型を含む)のアノード粉末は(ナノ)複合材粒子を含んでいてもよく、それは(i)電池作動中にイオンを蓄積及び放出するように設けられた活性材料(例えば、非炭素4A族元素(Siなど)又はLiと電気化学合金を構成する他の金属)であって、それによりイオンの蓄積及び放出が活性材料の体積の実質的変化(例えば、約40体積%以上)をもたらす活性材料、及び(ii)活性材料が配置された多孔質電気伝導性スキャフォールドマトリクスを含み、スキャフォールドマトリクスは活性材料を構造的に支持し、活性材料を電気的に相互接続し、活性材料の体積の変化に少なくとも部分的に適応する。一部の設計例では、多孔質スキャフォールドマトリクスは、有利には多孔質モノリシック粒子であり得る。
【0072】
一部の設計例では、上記各(ナノ)複合材粒子は、活性材料及びスキャフォールドマトリクスを少なくとも部分的に封じ込めるシェルをさらに備えていてもよく、シェルは活性材料によって蓄積及び放出されたLiイオンに対して実質的に透過性である。一部の設計例では、シェルは、電解質溶媒分子に対して実質的に非透過性の材料から構成された保護層を備えていてもよい。一部の設計例では、シェルはまた、活性材料層を備えていてもよく、スキャフォールドマトリクス内に配置された活性材料は第1の活性材料から構成され、活性材料層は第2の活性材料から構成される。一部の設計例では、第1の活性材料は、第2の活性材料に対して実質的に高い容量を有する。一部の設計例では、シェルは、スキャフォールドマトリクスよりも小さな平均細孔サイズを有する多孔質層を備えていてもよい。一部の設計例では、スキャフォールドマトリクス内に配置された活性材料は第1の活性材料から構成されてもよく、シェルの多孔質における少なくとも一部の細孔は第2の活性材料で浸透されてもよい。一部の設計例では、シェルは、内側層及び外側層を備える複合材料であってもよい。一部の設計例では、内側層はスキャフォールドマトリクスよりも小さな平均細孔サイズを有する多孔質層であってもよく、外側層は(i)電解質溶媒分子に対して実質的に非透過性の材料から構成された保護層、及び/又は(ii)スキャフォールドマトリクス内に配置された活性材料とは異なる活性材料から構成された活性材料層として作用し得る。一部の設計例では、上記シェル材料の少なくとも一部分は、CVD又はALDによって堆積され得る。一部の設計例では、シェルの少なくとも一部分が、CVD堆積されたsp2結合炭素を含んでいてもよい。一部の設計例では、シェルの少なくとも一部分が、ポリマー層を備えていてもよい。一部の設計例では、複合粒子の1以上は、それを中心にスキャフォールドマトリクスが配置される活性材料コアを備えていてもよく、それにより、スキャフォールドマトリクス内に配置された活性材料は第1の活性材料から構成されてもよく、活性材料コアは第2の活性材料から構成されてもよい。一部の設計例では、第1の活性材料は、第2の活性材料に対して実質的に高い容量を有し得る。一部の設計例では、複合粒子の各々又は一部は、スキャフォールドマトリクスの外表面からスキャフォールドマトリクスの中心に向かって延在する外部チャネル細孔を備えていてもよく、イオンの平均拡散距離を減少させることによって、スキャフォールドマトリクス内に配置された活性材料へのイオンのより速い拡散のためのチャネルを提供する。一部の設計例では、外部チャネル細孔の少なくとも一部は、(i)スキャフォールドマトリクスとは異なる微細構造を有する多孔質材料、(ii)スキャフォールドマトリクス内に配置された活性材料とは異なる活性材料、及び/又は(iii)固体電解質材料によって、少なくとも部分的に充填されてもよい。一部の設計例では、電池作動中の体積変動活性材料の体積の変化は、スキャフォールドマトリクスの対応する体積の変化を約100%よりも大きく超える。一部の設計例では、体積変動活性材料は、種々の形状(例えば、一部の設計例では、略球形、楕円形、パンケーキ形、小フレーク形状、又は長細い/繊維状形状など)のナノ粒子(又は架橋ナノ粒子)の形態であってもよい。一部の設計例では、活性材料の上記ナノ粒子の平均サイズは、約3nmから約100nmの範囲となり得る。一部の設計例では、多孔質マトリクス材料の体積平均化特性細孔サイズは、約0.5nmから約50nmの範囲となり得る。一部の設計例では、多孔質マトリクス材料の表面積平均化特性細孔サイズは、約0.5nmから約50nmの範囲となり得る。一部の設計例では、細孔の有意な部分(例えば、約20~100体積%)は、有利にはスリット形状又は略スリット形状のものであり得る。一部の設計例では、細孔の一部分(例えば、約5~75体積%)は、平均的なスリット形状又は略スリット形状の細孔よりも約2~100倍大きな平均細孔サイズを有する球形又は略球形の細孔を含み得る。一部の設計例では、体積変動活性材料は、そのような略球形の細孔と直接接触していてもよい。一部の設計例では、多孔質スキャフォールドマトリクスにおける総(例えば、平均)細孔体積は、約20体積%から約95体積%(例えば、一部の設計例では約20体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約50体積%、他の設計例では約50体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%、他の設計例では約70体積%から約80体積%、他の設計例では約80体積%から約90体積%、他の設計例では約90体積%から約95体積%)の範囲となり得る。一部の設計例では、多孔質スキャフォールドマトリクスにおける全細孔の総体積は、約0.12cm3/gから約10cm3/g(例えば、一部の設計例では約0.12cm3/gから約0.3cm3/g、他の設計例では約0.3cm3/gから約0.6cm3/g、他の設計例では約0.6cm3/gから約1.0cm3/g、他の設計例では約1cm3/gから約2cm3/g、他の設計例では約2cm3/gから約3cm3/g、他の設計例では約3cm3/gから約4cm3/g、他の設計例では約4cm3/gから約5cm3/g、他の設計例では約5cm3/gから約6cm3/g、他の設計例では約6cm3/gから約7cm3/g、他の設計例では約7cm3/gから約8cm3/g、他の設計例では約8cm3/gから約9cm3/g、他の設計例では約9cm3/gから約10cm3/g)の範囲となり得る。一部の設計例では、上記(ナノ)複合材粒子(電池作動中にイオンを蓄積及び放出するように設けられ、それによりイオンの蓄積及び放出が約40体積%以上の活性材料の体積の実質的変化をもたらす活性材料を含む)における全細孔の総(例えば、平均)体積分率は、約10体積%から約70体積%(例えば、一部の設計例では約10体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約50体積%、他の設計例では約50体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%)の範囲となり得る。一部の設計例では、上記(ナノ)複合材粒子における全細孔の総(例えば、平均)体積は、約0.07cm3/gから約1.3cm3/g(例えば、一部の設計例では約0.07cm3/gから約0.1cm3/g、他の設計例では約0.1cm3/gから約0.2cm3/g、他の設計例では約0.2cm3/gから約0.3cm3/g、他の設計例では約0.3cm3/gから約0.4cm3/g、他の設計例では約0.4cm3/gから約0.5cm3/g、他の設計例では約0.5cm3/gから約0.6cm3/g、他の設計例では約0.6cm3/gから約0.7cm3/g、他の設計例では約0.7cm3/gから約0.8cm3/g、他の設計例では約0.8cm3/gから約0.9cm3/g、他の設計例では約0.9cm3/gから約1.0cm3/g、他の設計例では約1.0cm3/gから約1.1cm3/g、他の設計例では約1.1cm3/gから約1.2cm3/g、他の設計例では約1.1cm3/gから約1.3cm3/g)の範囲となり得る。大きすぎる細孔体積及び小さすぎる細孔体積の両方とも、アノード(ブレンドアノードなど)の不要に速い劣化又は劣った性能をもたらしてしまう場合がある。
【0073】
一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上は、それぞれの複合粒子における全元素の分率として、約2原子%から約82原子%のsp2結合炭素を含み得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上は、約0.5重量%から約25重量%の(一部の設計例では少なくとも部分的に炭化され得る)ポリマーを含み得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子の総重量の分率として、約20重量%から約90重量%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約10原子%から約70原子%のSiを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約2原子%から約84原子%のCを含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上の有意な部分(例えば、約10~100重量%)は、略球形、楕円形又はパンケーキ状の形状を示し得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の有意な部分(例えば、約10~100重量%、一部の設計例では、約50重量%から約100重量%)は、約500nmから約20ミクロンの平均サイズを示し得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約1~5重量%未満の酸素(O)を含むことが好適となり得る。一部の設計例では、(ナノ)複合材粒子の1以上がその粒子内の全元素の分率として、約2~10重量%未満の窒素(N)を含むことが好適となり得る。
【0074】
一部の設計例では、個々の変換型活性粒子の一部又は全部は、活性材料(例えば、Si)の分布の勾配を中心から表面に向けて示し得る(例えば、粒子の中心により大きな重量%のSiを含み、それぞれの複合粒子の表面付近に(例えば、存在する場合には半径計数シェルの約10~20%付近に)より小さな重量%のSiを含み、又は粒子の中心により大きな体積%のSiを含み、それぞれの複合粒子の表面付近に(例えば、存在する場合には半径計数シェルの約10~20%付近に)より小さな体積%のSiを含み得る)。一部の設計例では、個々の変換型活性粒子の一部又は全部は、多孔度の分布の勾配を中心から表面に向けて示し得る(例えば、複合粒子の表面付近(例えば、半径の約10%付近)よりも中心に有意に(例えば、約20%以上)大きな細孔体積を備え、又は複合粒子の表面付近(例えば、半径の約10%付近)よりも中心に有意に(例えば、約20%以上)大きなサイズの細孔を備える)。
【0075】
一部の設計例では、ブレンドアノード(一部の設計例では、バインダー、伝導性添加物及び溶媒との混合後)を鋳造するのに使用される変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、Si含有)粉末(それは、一部の設計例では、異なる粉末の混合物であってもよい)が低い中央値重量%の水素(H)を示すことが有利となり得る。一部の設計例では、Hの中央値分率が約0.5重量%以下であることが有利となり得る(一部の設計例ではHの分率が約0.1重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.05重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.01重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.001重量%以下であることがより有利となる場合がある)。一部の設計例では、ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるコアシェル型の変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、Si含有)粉末(それは、一部の設計例では、異なる粉末の混合物であってもよい)がシェル内で低い中央値重量%の水素(H)を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、Hの中央値分率が約0.5重量%以下であることが有利となり得る(一部の設計例ではHの分率が約0.1重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.05重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.01重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.001重量%以下であることがより有利となる場合がある)。一部の設計例では、それらの組成においてカーボン材料を含むブレンドアノードを鋳造するのに使用される変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、Si含有)複合粉末(それは、一部の設計例では、異なる粉末の混合物であってもよい)がそのカーボン成分内で低い中央値重量%の水素(H)を有することが有利となり得る。一部の設計例では、カーボンにおけるHの中央値分率が約0.5重量%以下であることが有利となり得る(一部の設計例ではHの分率が約0.1重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.05重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.01重量%以下であることがより有利となる場合があり、一部の設計例ではHの分率が約0.001重量%以下であることがより有利となる場合がある)。
【0076】
一部の設計例では、変換型(合金化型を含む)の活性材料(例えば、Si含有)粉末(それは、一部の設計例では、異なる粉末の混合物であってもよい)が、ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型(例えば、一部の設計例では、グラファイトなどの炭素質)活性材料粉末(それは、一部の設計例では、異なる粉末の混合物であってもよい)の中央値Dv50サイズ(例えば、有効径)よりも約2倍から約40倍の範囲で小さい中央値Dv50サイズ(例えば、有効径)を示すことが有利となり得る。
【0077】
一部の設計例では、(例えば、より高い充填密度を実現するため、又はブレンド電極における成分の(空間における)好適な分布を達成するため、など)変換型活性材料粉末が、その表面の丸み又は不規則性によって説明される形状を示し、そのアスペクト比(一部の設計例では、約1から約50の範囲となり得る)がインターカレーション型活性材料粉末の形状(それは一部の設計例では、異なる粉末の混合物となり得る)に定性的に同等となることが有利となり得る。例えば、インターカレーション型活性材料粒子が芋(ポテト)形状及び約1.1から約1.6の中央値アスペクト比を示す場合には、一部の設計では、約1から約2.4~3.2の中央値アスペクト比(インターカレーション型活性材料のアスペクト比の約1.5~2倍以内のアスペクト比)を有する球形又は楕円形(例えば、芋形状又は扁平球形状)の粒子を用いることが有利となり得る。一部の設計例では、インターカレーション型活性材料粉末がより不規則な表面特徴及びより広い分布のアスペクト比(一部の設計例では、約1から約50の範囲となり得る)を示し得る場合でも、変換型活性アノード材料粒子が、より丸みを帯びた表面特徴(一部の設計例では、例えば、これらに限定されないが、扁平球形状、芋形状などを含む略球形又は略楕円形)を有する形状を示し、大部分の(例えば、約50~100重量%の)粒子のアスペクト比が約1から約5の範囲(一部の設計例では、約1から約2の範囲)にあることが好適となり得る。
【0078】
一部の設計例では、変換型活性材料粒子(又は複合粒子を含む変換型活性材料)はSiOxの一般組成を有するシリコン酸化物を含んでいてもよく、xは約0.2から約1.2の範囲となり得る。一部の設計例では、上記粒子はSiO2マトリクスに浸漬されたSiナノ粒子を含んでいてもよく、マトリクスはセルにおけるサイクル中のSiの体積変化の一部を収容するので、その電気化学性能を安定させる。一部の設計例では、上記粒子は、サイクル中のそれらの電気伝導性又は安定性を高めるために(例えば、コーティング又は複合材の一部として)伝導性炭素質材料も含み得る。一部の設計例では、酸素原子の高い電気陰性度に起因して、Li挿入時(例えば、セル放電時、リチウム化時)にLiの一部は(例えば、Li4SiO4又は他の組成物として)上記粒子内にトラップされることで不可逆的に消失し、ブレンドアノードにおいて(又はスタンドアロンアノード材料として)使用される場合に、不要に低い初回サイクルクーロン効率をもたらしてしまう。一部の設計例では、そのような初回サイクル損失を低減するために、上記材料を含むアノードは、例えば、電気化学的な事前リチウム化によって、又はアノード表面上にLi金属含有粒子若しくはコーティングを付加することによって、セルに組み入れられる前に事前リチウム化され得る。そのような電極レベルでの事前リチウム化は、不要に高いコスト及び複雑さをセルの作製に追加してしまう。一部の設計例では、粉末レベルでのSiOx系材料の事前リチウム化は、一般的に安価となり得る。残念ながら、一部の設計例では、初回サイクル損失の大部分を補償するレベルまで粒子が事前リチウム化されると、その粒子は通常、非常に反応性が高くなるため、少量のLiしか上記材料に有効に予め挿入されない場合がある。一般的に使用される(例えば、水系)スラリーコーティングの場合、過剰な量の添加Liが上記粒子の電気化学ポテンシャルを、それらがスラリー溶媒(水)と反応開始するレベルまで低減し得る。そのような反応中に、粒子が酸化されて水性スラリーにLiを浸出させる一方で、水が減少し得る(それにより、水素気泡が発生する)。場合によっては、カーボンコーティングは、そのようなプロセスを停止するにはあまり役立たない。なぜなら、部分的にリチウム化したカーボン(リチウム化されたシリコン酸化物と化学平衡となるのに充分なLiを含むカーボン)はLiイオンに対して透過性であるためであり、それは、水の減少が停止するレベルまで粒子の電気化学ポテンシャルが増加するほど残余のLiの残余量が小さくなるレベルまで(例えば、LiyC6+yH2O→y/2H2(g)+yLiOH+C6として)容易にカーボンを通過して水に浸出する(それは、電池セルにおける初回サイクル損失の少量の低減しか与えない)。
【0079】
一部の設計例では、水(又は水蒸気)との接触における副反応を誘発することなくSiOx含有材料における初回サイクル損失を補償するために、他の(非Li)高電気陽性金属を用いてSiO2含有粉末を部分的に低減することが有利となり得る。一部の設計例では、移動性が少なくかつ(例えば、+1よりも大きなイオン電荷及び/又はより大きなイオンサイズを有することに起因して)カーボンコーティングを透過せず、それによりカーボンでコーティングされた(カーボンで封じ込められた)粒子の水系スラリー又は水分含有環境に曝露時に浸出することができない金属を選択することがさらに有利となり得る。一部の設計例では、カーボンコーティングが2以上の成分を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、カーボンコーティングの少なくとも1つの成分が、予め堆積された有機材料(例えば、これらに限定されないが、例えば、石油ピッチ、コールタールピッチ又は植物由来ピッチなどのピッチを含む天然若しくは合成ポリマー又は樹脂)のコーティングの炭化によって堆積されると有利となり得る。一部の設計例では、カーボンコーティングの少なくとも1つの成分が熱水プロセス又はソルボサーマルプロセスによって堆積されると有利となり得る。一部の設計例では、この層の厚さは、約2nmから約200nmの範囲となり得る。一部の設計例では、この層がコンフォーマルとなる(粒子表面の全部又は大部分を封じ込める)ことが好適となり得る。炭化カーボンは、多くの場合、細孔を含み得る。一部の設計例では、そのような炭化カーボンにおける細孔体積は、約0.02cm3/gから約0.7cm3/gの範囲となり得る。一部の設計例では、金属イオンによって潜在的に残る細孔を閉塞してその透過性を最小化するために、カーボンコーティング(粒子を囲むシェル)の少なくとも一部分として、気相蒸着カーボン(例えば、化学気相蒸着(CVD)カーボン)を用いることが有利となり得る。多数の適切な前駆物質、これらに限定されないが、とりわけ、プロピレン、アセチレン、エチレン、メタンなどがCVDカーボン堆積について使用され得る。一部の設計例では、そのようなCVD堆積カーボンの体積分率は、コーティングの全カーボンの分率として、約2体積%から約100体積%の範囲となり得る。一部の設計例では、炭化カーボン層及び気相蒸着カーボンの組合せの使用が、材料の伝導性を高めるだけでなく水との望ましくない反応からその内部を保護する効果的なカーボンシェルの形成に特に有利となり得る。一部の設計例では、そのようなコーティング(シェル)の少なくとも一部分がSiOx(例えば、SiO2)還元後に堆積されることが非常に有利となり得る。一部の設計例では、マグネシウム金属(Mg、2+の原子価、72pmのMg2+イオンサイズ、及び0.98のLi電気陰性度値よりも若干大きいが1.90のSi電気陰性度値よりも小さい1.31の電気陰性度値を有する)が、Si-O-Mgの全体組成(Si、O及びMgの相対分率はここでは説明の簡明化のために省略するが、そのような分率は本開示の背景において当業者に理解されるものである)を構成するSiOx還元(それは、例えば、少なくとも部分的にSiO2マトリクスをMgO、Mg-Si合金及びMg2SiO4に還元し得る)に利用され得る。このプロセスは、高温において行われ得る(プロセスは、シリコン酸化物のマグネシウム熱還元として知られている)。しかしながら、このプロセスは、材料の表面積を増加させてしまい、その機械特性を低下させてしまい、初回サイクル損失における実質的減少を誘発するのに過剰なMgの量を必要としてしまい、他の制限をもたらしてしまう。他の設計例では、カルシウム(Ca、2+の原子価、100pmのイオンサイズ、及び1.00の電気陰性度値を有する)を利用して、Si-O-Caの全体組成を構成して部分的に初回サイクル損失を補償することが有利となり得る。他の設計例では、ストロンチウム(Sr、2+の原子価、118pmのイオンサイズ、及び0.95の電気陰性度値を有する)を利用して、Si-O-Srの全体組成を構成して初回サイクル損失を補償することが有利となり得る。他の設計例では、バリウム(Ba、2+の原子価、135pmのイオンサイズ、及び0.89の電気陰性度値を有する)を利用して、Si-O-Baの全体組成を構成して部分的に初回サイクル損失を補償することが有利となり得る。他の設計例では、スカンジウム(Sc、3+の原子価、74.5pmのイオンサイズ、及び1.36の電気陰性度値を有する)を利用して、Si-O-Scの全体組成を構成して部分的に初回サイクル損失を補償することが有利となり得る。他の設計例では、イットリウム(Y、3+の原子価、90pmのイオンサイズ、及び1.22の電気陰性度値を有する)を利用して、Si-O-Yの全体組成を構成して部分的に初回サイクル損失を補償することが有利となり得る。一部の設計例では、(例えば、より良好な電気化学的な挙動を実現する観点で、又はより好適な合成条件を利用する観点で)SiOx化合物を(部分的に還元された材料の全体重量に対して少なくとも約1重量%の重量分率を各々が有する)2、3又はそれ以上の金属によって還元し、それによりSi-O-M1-M2、Si-O-M1-M2-M3若しくはSi-O-M1-M2-M3-M4又は他の化合物を構成することが有利となり得る。なお、M1、M2、M3及びM4は、とりわけ、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Zr、Li、Na、Cs、Kを含む金属の群から選択される。一部の設計例では、(M1、M2、M3、M4などのうちの)上記金属の1以上が+1以上の原子価(例えば、+2、+3など)を有することが有利となり得る。しかしながら、水と接触する場合の上記金属の多くは、水酸化物(その一部は一部の用途では有害である)を生成する場合があり、対応する金属イオンが水に浸出しないように上記組成物(Si-O-M1、Si-O-M1-M2、Si-O-M1-M2-M3、又はSi-O-M1-M2-M3-M4など)を封じ込める効果的な保護コーティング(シェル)を生成することが特に重要となり得る。一部の設計例では、そのようなシェルは、カーボン(例えば、一部の設計例では、CVD堆積されたカーボン及び/又は炭化されたポリマー若しくは樹脂層を含む)を含み得る。一部の設計例では、水透過性酸化物(例えば、Al2O3、TiO2又はCr2O3など)の1以上の非常に薄い(例えば、約0.2~10nmの平均厚さ範囲、一部の設計例では約0.5~3nmの平均厚さ範囲の)層が、シェルの成分(それは一部の設計例では、伝導性カーボンを含み得る)として上記粒子の外表面に堆積され得る。一部の設計例では、上記酸化物は、ゾルゲルプロセスによって又はALDプロセスによって堆積され得る。
【0080】
一部の設計例では、シリコン酸化物又はシリコン金属酸化物の代わりに、変換型活性材料粒子(又は複合粒子を含む変換型活性材料)の一部又は全部が、シリコン窒化物、シリコン金属窒化物、シリコンオキシ窒化物又はシリコン金属オキシ窒化物を含み得る。一部の設計例では、窒素(N)の存在は、材料の電気及びイオン伝導性を向上し、粒子表面におけるSEIの特性をさらに向上し得る。一例では、シリコン(オキシ)窒化物の一般組成はSiOxNyとなり得る。なお、xは約0.0から約1.2の範囲であり、yは好ましくは約0.05から約0.8の範囲となり得る。一部の設計例では、上記粒子の一部又は全部はSi3N4(又はSi2N2O)マトリクスに浸漬されたSiナノ粒子を含んでいてもよく、マトリクスはセルにおけるサイクル中のSiの体積変化の一部に適応することでその電気化学性能を安定させる。一部の設計例では、Nの分布は、SiOxNy及び関連する材料内で完全に均一ではないこともある。例えば、粒子の一部若しくは全部の表面付近又は結晶粒界でのより高いN含有量が、一部の設計例では有利となり得る。一部の設計例では、粒子の一部又は全部の中心から表面へのN分布における勾配があってもよい。一部の設計例では、そのような粒子の一部又は全部は、サイクル中のそれらの電気伝導性又は安定性を向上するために、(例えば、コーティング又は複合材の一部として)伝導性炭素質材料を含んでいてもよい。一部の設計例では、Liイオン電池における上記材料での初回サイクルLi損失を低減するために、粒子の一部又は全部が、例えば、電気化学事前リチウム化によって、又はSi-N-M1、Si-O-N-M1、Si-N-M1-M2、Si-O-N-M1-M2、Si-N-M1-M2-M3、Si-O-N-M1-M2-M3、Si-N-M1-M2-M3-M4、Si-O-N-M1-M2-M3-M4などの組成物を構成するために(部分的に還元された材料の全体重量に対して少なくとも約1重量%の重量分率を各々が有する)1、2、3又はそれ以上の金属を上記材料のバルクに添加することによって、セルに組み入れられる前に電気陽性金属でドーピングされてもよい。なお、M1、M2、M3及びM4は、とりわけ、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Zr、Li、Na、Cs、Kを含む金属の群から選択される。一部の設計例では、(M1、M2、M3、M4などのうちの)上記金属の1以上が+1以上の原子価(例えば、+2又は+3など)を有することが有利となり得る。一部の設計例では、対応する金属イオンが水と反応せず、水に浸出しないように上記組成物(Si-N、Si-O-N、Si-N-M1、Si-O-N-M1、Si-N-M1-M2、Si-O-N-M1-M2、Si-N-M1-M2-M3、Si-O-N-M1-M2-M3、Si-N-M1-M2-M3-M4、又はSi-O-N-M1-M2-M3-M4など)を封じ込める効果的な保護コーティング(シェル)を生成することが有利となり得る。一部の設計例では、そのようなシェルは、カーボンを含み得る。一部の設計例では、カーボンコーティングが2以上の成分を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、カーボンコーティングの少なくとも1つの成分が、予め堆積された有機材料(例えば、天然若しくは合成ポリマー又は樹脂)コーティング炭化によって堆積されると有利となり得る。一部の設計例では、カーボンコーティングの少なくとも1つの成分が熱水プロセス又はソルボサーマルプロセスによって堆積されると有利となり得る。一部の設計例では、この層の厚さは、約2nmから約200nmの範囲となり得る。一部の設計例では、この層がコンフォーマルとなる(粒子表面の全部又は大部分を封じ込める)ことが好適となり得る。上記のように、炭化カーボンは、多くの場合、細孔を含み得る。一部の設計例では、その細孔の体積は、約0.02cm3/gから約0.7cm3/gの範囲となり得る。一部の設計例では、金属イオンによって潜在的に残る細孔を閉塞してその透過性を最小化するために、カーボンコーティング(粒子を囲むシェル)の少なくとも一部分として、気相蒸着カーボン(例えば、CVDカーボン)を用いることが有利となり得る。一部の設計例では、そのようなCVD堆積カーボンの体積分率は、コーティングの全カーボンの分率として、約2体積%から約100体積%の範囲となり得る。一部の設計例では、炭化カーボン層及び気相蒸着カーボンの組合せの使用が、材料の伝導性を高めるだけでなく水との望ましくない反応からその内部を保護する効果的なカーボンシェルの形成に特に有利となり得る。一部の設計例では、水透過性酸化物(例えば、Al2O3、TiO2又はCr2O3など)の1以上の非常に薄い層(例えば、約0.2~10nmの平均厚さ範囲、一部の設計例では約0.5~3nmの平均厚さ範囲)が、シェルの成分(それは一部の設計例では、伝導性カーボンを含み得る)として上記粒子の一部又は全部の外表面に堆積され得る。一部の設計例では、上記酸化物は、ゾルゲルプロセスによって又はALDプロセスによって堆積され得る。
【0081】
一部の設計例では、明白に異なるタイプの変換(合金化を含む)又は変換含有複合粒子の2以上の混合物が、インターカレーション型炭素質(例えば、グラファイト又はグラファイト状)化合物を添加することなく、Liイオン電池のアノードの設計に利用され得る。これは、一部の設計例では、初回サイクル損失、サイクル安定性、熱安定性、価格及び他の特性の特定値を達成するのが有利となり得るからである。例えば、Si系ナノ複合材粒子(ほとんど乃至全くOがなく、又はほとんど乃至全くNがない)は非常に低い初回サイクル損失、優れた安定性及び比較的高い価格を示し得る一方で、SiOx系又はSiOxNy系複合粒子は、より高い初回サイクル損失、より低い安定性及びより低い価格を示し得る。そのような粒子をブレンドすることによって、理想的な(又は充分に理想に近い)初回サイクル損失、(所与の適用について)充分な安定性及び適度な価格のアノードを達成することができる。他の例では、変換(又は変換含有)粒子の1つの種類はより高い初回サイクル損失及び非常に高いレート性能を示し得る一方で、変換(又は変換含有)粒子の他の種類はより低い初回サイクル損失及びより低いレート性能を示し得る。上記粒子を1つのアノードに合成することによって、一部の設計例では、理想的な(又は理想に充分に近い)初回サイクル損失、及び容量の少なくとも一部分について充分に速いレート性能を達成することができる。一部の設計例では、上記変換(合金化を含む)変換含有複合粒子の各々の相対分率は、アノードにおける全活性材料の総重量の%として、約1重量%から約99重量%(例えば、好ましくは約5重量%から約95重量%、より好ましくは約10重量%から約90重量%、一部の設計例ではより好ましくは約20重量%から約80重量%)の範囲となり得る。一部の設計例では、上記変換又は変換含有複合粒子の2種類又は全種類が、インターカレーション型炭素質材料を含まないブレンドアノードでの使用について上述したものと類似の(又はそれと同じの)物理特性、組成及び形態を示していてもよい。例えば、一部の設計例では、上記変換又は変換含有複合粒子の2種類又は全種類がSiを含んでいてもよい。一部の設計例では、上記粒子の2種類又は全種類におけるSiの重量平均分率は、約20重量%から約80重量%の範囲となり得る。上述したように、一部の設計例では、上記粒子の2種類又は全種類は、好ましくは(i)初回サイクル中に適度に高い平均体積変化(例えば、約8~180体積%)を示し、後続の充放電サイクル中に適度な平均体積変化(例えば、約4~50体積%)を示し、(ii)平均サイズを約0.2から約40ミクロン(一部の設計例では、より好ましくは約0.3~約20ミクロン)の範囲に示し、(iii)平均比表面積を約0.1~約100.0m2/g(一部の設計例では、より好ましくは約0.25~約25.0m2/g)の範囲に示す。上述したように、一部の設計例では、上記粒子の2種類又は全種類が、内部(閉)細孔を含んでいてもよい。一部の設計例では、そのような細孔の総体積は、約0.07cm3/gから約1.3cm3/gの範囲となり得る。
【0082】
一部の設計例では、明白に異なる種類のインターカレーション型粒子(例えば、異なる前駆物質から生成され、異なる温度で熱処理され、又は実質的に異なるサイズ、形状若しくは表面コーティングを有するグラファイト粒子、異なる前駆物質から生成され、異なる温度で熱処理され、又は実質的に異なるサイズ、形状若しくは表面コーティングを有する硬質カーボン粒子若しくは軟質カーボン粒子など)の2、3又はそれ以上の混合物が、変換型(合金化型を含む)のアノード材料を含む金属イオン(例えば、Liイオン)電池のためのブレンドアノードの設計に有利に利用され得る。これは、一部の設計例では、異なるインターカレーション型材料の混合物が、所望の温度範囲において、アノード密度、アノード体積容量、アノードサイクル安定性、アノード初回サイクルクーロン効率及びアノードレート性能(例えば、充電速度性能)の優れた(所与の適用例について、より望ましい)組合せを提供し得るためである。一部の設計例では、ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型炭素質粉末(それは、一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物であってもよい)が中央値D50サイズ(Dv50、体積分布の中央値)を約2.5ミクロンから約25ミクロン(一部の設計例では約2.5μmから約5μm、一部の設計例では約5μmから約7μm、一部の設計例では約7μmから約10μm、一部の設計例では約10μmから約15μm、一部の設計例では約15μmから約20μm、一部の設計例では約20μmから約25μm)の範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計例では、ブレンドアノードの充填密度(及びその結果として体積容量)を高めるため、異なるサイズのインターカレーション型炭素質粉末を用いることが有利となり得る。一部の設計例では、ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型炭素質粉末(それは、一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物であってもよい)が可逆容量を約300mAh/gから約380mAh/g(一部の設計例では約300mAh/gから約340mAh/g、一部の設計例では約340mAh/gから約350mAh/g、一部の設計例では約350mAh/gから約360mAh/g、一部の設計例では約360mAh/gから約380mAh/g)の範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計例では、(一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物を含むスラリーから鋳造され得る)ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型炭素質粉末が初回サイクルクーロン効率を約75%から約99%(一部の設計例では約75%から約85%、一部の設計例では約85%から約90%、一部の設計例では約90%から約95%、一部の設計例では約95%から約96%、一部の設計例では約96%から約97%、一部の設計例では約97%から約99%)の範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計例では、(一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物を含むスラリーから鋳造され得る)ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型炭素質粉末が中央値BET比表面積(SSA)を約0.5m2/gから約30m2/g(一部の設計例では約0.5m2/gから約1m2/g、一部の設計例では約1m2/gから約2m2/g、一部の設計例では約2m2/gから約3m2/g、一部の設計例では約3m2/gから約4m2/g、一部の設計例では約4m2/gから約6m2/g、一部の設計例では約6m2/gから約10m2/g、一部の設計例では約10m2/gから約30m2/g)の範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計例では、より高いBET SSAは、より高い初回サイクル損失及びより速いレート性能をもたらし得る。一部の設計例では、(一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物を含むスラリーから鋳造され得る)ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型炭素質粉末が(例えば、ヘリウムピクノメーターによって測定されるような)真の中央値密度を約1.9g/cm3から約2.27g/cm3(一部の設計例では約1.9g/cm3から約1.95g/cm3、一部の設計例では約1.95g/cm3から約2.00g/cm3、一部の設計例では約2.00g/cm3から約2.05g/cm3、一部の設計例では約2.05g/cm3から約2.10g/cm3、一部の設計例では約2.10g/cm3から約2.15g/cm3、一部の設計例では約2.15g/cm3から約2.20g/cm3、一部の設計例では約2.20g/cm3から約2.27g/cm3)の範囲に示すことが有利となり得る。一部の設計例では、(一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物を含むスラリーから鋳造され得る)ブレンドアノードを鋳造するのに使用されるインターカレーション型炭素質粉末が水素(H)の低い中央値重量%を示すことが有利となり得る。一部の設計例では、Hの中央値分率が約0.5重量%以下であることが有利となり得る(一部の設計例ではHの分率が約0.1重量%以下であることがより有利な場合もあり、一部の設計例ではHの分率が約0.05重量%以下であることがより有利な場合もあり、一部の設計例ではHの分率が約0.01重量%以下であることがより有利な場合もあり、一部の設計例ではHの分率が約0.001重量%以下であることがより有利な場合もある)。一部の設計例では、(一部の設計例では、異なるカーボン粉末の混合物を含むスラリーから鋳造され得る)ブレンドアノードを鋳造するのに使用される少なくとも所定分率(例えば、約20重量%から約100重量%)のインターカレーション型炭素質粉末が表面層(シェル)を備えることが有利となり得る。一部の設計例では、このシェルの中央値厚さは、約0.50nmから約200.0nm(一部の設計例では約0.50nmから約2.00nm、一部の設計例では約2.00nmから約5.00nm、一部の設計例では約5.00nmから約10.00nm、一部の設計例では約10.00nmから約20.00nm、一部の設計例では約20.00nmから約200.00nm)の範囲となり得る。一部の設計例では、上記シェルは、1層、2層、3層又はそれ以上の別個の層を備え得る。一部の設計例では、そのシェルは、主に(例えば、約20重量%から約100重量%で)カーボンを備え得る。一部の設計例では、そのようなカーボン含有シェルの少なくとも一部分は、予め堆積された有機材料(例えば、これらに限定されないが、例えば、石油ピッチ、コールタールピッチ又は植物由来ピッチなどのピッチを含む天然若しくは合成ポリマー又は樹脂)のコーティングの炭化(熱分解)によって堆積され得る。一部の設計例では、カーボンコーティングの少なくとも1つの成分が熱水プロセス又はソルボサーマルプロセスによって堆積されると有利となり得る。一部の設計例では、シェルの少なくとも一部分は、CVD(これに限定されないが、カーボンCVDを含む)によって又はALDによって堆積され得る。一部の設計例では、シェルの少なくとも一部分(又はシェル層の一部分)は、セラミック材料(例えば、とりわけ、硫化物、酸化物、オキシ窒化物、オキシフッ化物材料、一部の設計例では約0.001重量%から約100重量%)を含み得る。一部の設計例では、セラミック材料は、以下の電気陽性元素:C、Li、H、Mg、Sr、Ba、Sc、Y、Zr、Al、Ti又はCrの少なくとも1つを含み得る。一部の設計例では、セラミック材料は、以下の電気陰性元素:O、N、S、Se、P、Fの少なくとも1つを含み得る。
【0083】
一部の設計例では、ブレンドアノードにおけるインターカレーション型粒子の少なくとも1種類が天然又は人工グラファイトであると有利となり得る。多くの場合、天然グラファイトは、カレンダー処理(アノードの高密度化)中に変形し易く、それはブレンドアノードの一部の設計例における使用に有益となり得る。結果として、より高い電極密度が、一部の設計例におけるブレンドアノードにおいて取得され得る。またさらに、天然グラファイトは、より高い体積容量及び/又はより高い初回サイクルクーロン効率を示し得る。適度に高い(例えば、約4mAh/cm2を超える)可逆面積容量負荷の「通常の」純粋なインターカレーション型アノードの設計において人工及び天然グラファイトの混合物が使用される場合、人工グラファイトの分率は実質的に高くなり得る(例えば、約5重量%から約20重量%の範囲の所定重量%の天然グラファイトで構成され、人工グラファイトの重量%が約80重量%から約95%の範囲となる)。これは、高負荷電極について、高い分率の天然グラファイトを有するインターカレーション型アノードは、より捻れたアノードを形成する傾向となり、結果として遅い充電速度又は速い劣化が問題となるためである。一部の設計例では、様々な設計検討事項が、変換型アノード材料を含むブレンドアノードの設計に用いられ得る。特に、変換型活性材料の実質分率(例えば、総容量の約15%から約90%)を含むブレンド電極についての一部の設計例では、より高い分率の天然グラファイト(例えば、ブレンドアノードにおける全種類のグラファイトアノード材料の分率として約20重量%から約100重量%、一部の設計例では約20重量%から約30重量%、一部の設計例では約30重量%から約50重量%、一部の設計例では約50重量%から約75重量%、一部の設計例では約75重量%から約100重量%)を利用することが有益となり得る。場合によっては、容量の高い側の分率は変換型活性材料から来るものであり、(グラファイト粒子のサイズに対して)より大きなサイズの変換型活性材料粒子が、より高い分率の天然グラファイトがブレンドアノードの一部の設計例において利用されていることと相関し得る。一部の設計例では、ブレンドアノードにおける少なくとも1種類のインターカレーション型粒子が楕円形、芋状形状又はパンケーキ状形状を示すことが有利となり得る。一部の設計例では、ブレンドアノードにおけるインターカレーション型粒子の約10~100重量%が楕円形、芋状形状、扁平球形又はパンケーキ状形状を示すことが有利となり得る。
【0084】
一部の設計例では、ブレンドアノードにおける少なくとも1種類のインターカレーション型粒子が、以下の(i)「非グラファイト」硬質カーボン(球形、楕円形又は芋形状の硬質カーボン粒子を含む)、(ii)混合カーボン(軟質カーボン-硬質カーボン)材料(球形、楕円形又は芋形状の粒子を含む)又は(iii)軟質カーボン(これらに限定されないが、メソカーボンミクロビーズMCMBを含む球形、楕円形又は芋形状のカーボン粒子を含む)のうちの1つを含むことが有利となり得る。上記非グラファイトカーボンは、天然又は合成グラファイトと比較してより高い初回サイクル損失、より低い密度、より低い体積容量、より高い平均充電電位、より高い平均放電電位及びより高いレート性能を示し、又は(例えば、特に、高い充電又は放電速度、例えば、約2Cから約20Cレートに対応する電流密度に規則的に曝露される場合に)より良好なサイクル安定性を示し得る。
【0085】
一部の適用例では、Liイオン電池の作製コストを低減し、スラリー/鋳造電極の作製における有毒な溶媒の使用を減少させるために、ブレンドアノードの作製に乾燥電極処理を用いること又は水系スラリーを用いることが非常に有利となり得る。しかしながら、場合によっては、活性材料ブレンドの異なる活性成分の表面の密度及び/又は濡れ特性(例えば、親水性)の相違に起因して、水系スラリー処理の場合に高品質で高い均一性のブレンドアノードを達成することは困難となり得る。結果として、生成されるブレンドアノードでは、(所望の温度範囲における)劣ったレート性能、サイクル安定性、体積容量又は他の望ましくない性能特性が問題となり得る。本開示の1以上の実施形態は、この制限を克服することに向けられる。
【0086】
一部の設計例では、ブレンドアノードにおける活性材料(インターカレーション及び変換型活性材料を含む)の大部分(例えば、約50~100重量%、好ましくは約75重量%から約100重量%、一部の設計例では約85重量%から約100重量%、一部の設計例では約90重量%から約100重量%、一部の設計例では約95重量%から約100重量%)が純水(又はブレンドアノードスラリーの適宜の溶媒)と接触する際に同様の(例えば、約±25度以内、一部の設計例では約±10度以内、一部の設計例では約±5度以内の)濡れ角を示すことが有利となり得る。一部の設計例では、ブレンドアノードにおける活性材料の大部分(例えば、約50~100重量%、好ましくは約75重量%から約100重量%、一部の設計例では約85重量%から約100重量%、一部の設計例では約90重量%から約100重量%、一部の設計例では約95重量%から約100重量%)が(例えば、ポリマー又はコポリマーバインダーがスラリーにおける場合と同じ濃度で、例えば、スラリーのpHと同じpHで使用される場合に)ブレンドアノードの作製に使用されるバインダーの水溶液(又はバインダーの混合物若しくはバインダー及び界面活性剤の混合物)と接触する際に同様の(例えば、約±20度以内の)濡れ角を示すことが有利となり得る。一部の設計例では、ブレンドアノードにおける活性材料の大部分(例えば、約50~100重量%、好ましくは約75重量%から約100重量%、一部の設計例では約85重量%から約100重量%、一部の設計例では約90重量%から約100重量%、一部の設計例では約95重量%から約100重量%)が、ブレンドアノードの作製に使用される水又はバインダーの水溶液(又はバインダーの混合物若しくはバインダー及び界面活性剤の混合物)と接触する際に約90度以下の(一部の設計例では約90度から約80度、一部の設計例では約80度から約70度、一部の設計例では約70度から約60度、一部の設計例では約60度から約45度、一部の設計例では45度以下の)濡れ角を示すことが有利となり得る。例えば、粉末における接触角は、例えば、(i)静的試験(管における毛細管上昇についてのラプラス方程式に基づく)又は(ii)ウォッシュバーン法(毛細管現象によって粉末床を透過する液体(例えば、水)の重量の測定値に基づく)若しくは他の適宜の方法を用いることによって決定され得る。
【0087】
一部の設計例では、(例えば、水若しくは水性バインダー溶液と接触する1以上の活性材料においてより低い濡れ角を実現するため、又はスラリーに使用される異なる種類の活性材料において同等の濡れ角を実現し若しくはブレンド電極において成分の(空間における)好適な分布を達成するため、など)、以下の技術(i)~(iv)のうちの1以上を用いることによって(ブレンドアノードで使用される)少なくとも1つの活性粉末材料の表面を処理することが有利となり得る。(i)気相表面酸化(例えば、以下の:酸素原子、酸素イオン、酸素含有ラジカル、水分子(H2O)、OH-アニオン/ラジカル、H+カチオン、ハロゲン(例えば、F2分子又はF-アニオンなど)又はハロゲン(例えば、F)含有ラジカル、窒素原子、窒素イオン、アンモニア、三フッ化窒素(NF3)、窒素含有ラジカルうちの1以上の存在下での気体環境において、とりわけ酸化種をいくつか挙げると、一部の設計例では、熱酸化、プラズマ誘起酸化、オゾン誘起酸化が利用され得る)、(ii)液相化学酸化(例えば、粉末をH2SO4、HNO3などの酸化性酸又はそれらの混合物(又は酸の溶液)にそれらの沸点付近までの温度で曝露すること、粉末を過酸化水素(H2O2)又は過酸化水素の溶液に曝露することによる)、(iii)電気化学酸化、(iv)還元(例えば、気体)環境における熱処理(例えば、官能基の一部又は大部分を除去すること、表面末端を変化させることなど)、H2、N2、Ar、He、それらの混合物、真空などにおける(例えば、約400℃から約1000℃の範囲の温度での)熱処理など。一部の設計例では、(例えば、スラリーに使用される異なる種類の活性材料において同等の濡れ角を実現するため、又は異なる活性材料においてバインダー若しくは伝導性添加物と同等の親和性を達成するため、など)、炭素質インターカレーション型の活性材料の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%)及び変換型(合金化型及び混合変換インターカレーションを含む)の活性材料の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%)の表面を同じ技術又は同じ技術の組合せを用いることによって(一部の設計例では、同一又は同様のパラメータ、処理媒体の組成、処理の温度、処理の圧力などを用いることによって、)処理することが有利となり得る。
【0088】
一部の設計例では、(例えば、スラリーに使用される異なる種類の活性材料において同等の濡れ角を実現するため、又は異なる活性材料においてバインダー若しくは伝導性添加物と同等の親和性を達成するため、など)、炭素質インターカレーション型の活性材料の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%)及び変換型(合金化型及び混合変換インターカレーションを含む)の活性材料の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%)の表面を同様(又は同一)の組成の(一部の設計例では、同様の組成及び同様の微細構造の)表面層(シェル又はシェルの成分)によってコーティングすることが有利となり得る。一部の設計例では、この表面層は、個々の粒子の表面の有意な部分(例えば、約20~100%)をコーティングし得る。
【0089】
一部の設計例では、炭素質インターカレーション型の活性材料の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%)及び/又は変換型(合金化型及び混合変換インターカレーションを含む)の活性材料の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%)の表面上の表面層は、以下の技術(i)~(xii)のうちの1つ、2つ又はそれ以上を用いることによって堆積され得る。(i)熱処理あり又はなしでの熱水性堆積、(ii)熱処理あり又はなしでのソルボサーマル堆積、(iii)後続の炭化あり又はなしでの有機材料(例えば、これらに限定されないが、例えば、石油ピッチ、コールタールピッチ又は植物由来ピッチなどのピッチを含む天然若しくは合成ポリマー又は樹脂)でのコーティング、(iv)後続の熱処理又は炭化あり又はなしでの有機金属性材料でのコーティング、(v)後続の熱処理又は炭化あり又はなしでの金属有機性材料でのコーティング、(vi)熱処理あり又はなしでのCVD、(vii)熱処理あり又はなしでのALD、(viii)熱処理あり又はなしでのゾルゲル法、(ix)熱処理あり又はなしでの無電解堆積、(ix)熱処理あり又はなしでの電気めっき、(x)熱処理あり又はなしでのレイヤーバイレイヤー(LbL)堆積、(xi)熱処理あり又はなしでの電気泳動堆積、(xii)熱処理あり又はなしでの物理気相蒸着(PVD)(例えば、スパッタリング)。一部の設計例では、上記層は、粉末に堆積され得る。一部の設計例では、粉末は、上記コーティング層をより均一に又は速く堆積させるために、有利には撹拌され得る。一部の設計例では、上記層は、電極上に堆積され得る。一部の設計例では、この電極上の堆積は、ロールトゥロールであり得る。
【0090】
一部の設計例では、(各種性能特性について、特に水性スラリーから調製されたブレンドアノードについて)炭素表面層付き複合変換型活性材料粒子(合金化型粒子及び混合変換/インターカレーション粒子を含む)が、ラマン分光法調査で検出された特定のスペクトルシグネチャを示すことが有利となり得る。特に、一部の設計例では、複合変換型粒子の大部分(例えば、約50~100重量%)のラマンスペクトルにおける炭素Dバンドと炭素Gバンドとの強度の比(ID/IG)(例えば、約532nmの波長で作動するレーザーを用いて測定され、例えば、約1000から約2000の波数cm-1のスペクトル範囲において、この範囲における線形バックグランド減算後に2つのガウシアンピークをフィッティングすることによって解析される)が、約0.7のID/IGから約2.7のID/IG(一部の設計例では約0.7から約2.0、一部の設計例では約0.9から約2.1)の範囲となることが有利となり得る。なお、これらの範囲は、D及びGピークの絶対強度の比(ガウシアンモデルを用いて2つのGピーク及び2つのDピークによってスペクトルをフィッティングし、最も高いGピーク及び最も高いDピークの強度/高さを用いることによって得られる)を用いるものであり、積分強度(D及びGピークの各々の下部面積)の比を用いるものではない。しかしながら、一部の設計例では、Gピークに対するDピークの積分強度(対応するピークの下部面積)の比(ガウシアンモデルを用いて2つのGピーク及び2つのDピークによってスペクトルをフィッティングし、両ガウシアンモデルGピーク(IG総面積)の下部面積の合計を計算し、両ガウシアンモデルDピーク(ID総面積)の下部面積の合計を計算し、これら2つの合計の比(ID総面積/IG総面積)を計算することによって得られる)が約0.7から約2.7(又は一部の設計例では4)の範囲となることが有利となり得る。他の設計例では、比は、約0.7から約2.0である。
【0091】
一部の設計例では、炭素含有複合変換型粒子の大部分のラマンスペクトルにおける炭素Gバンドの半値幅(FWHM)(例えば、約532nmの波長で作動するレーザーを用いて測定され、例えば、約1000から約2000の波数cm-1のスペクトル範囲において、この範囲における線形バックグランド減算後の2つのガウシアンピークをフィッティングすることによって解析される)が約10cm-1から約150cm-1(一部の設計例では、約50cm-1から約100cm-1)の範囲となることが有利となり得る。
【0092】
一部の設計例では、(ブレンドアノードの各種性能特性について)炭素表面層付き変換型活性材料粒子(合金化型粒子及び混合変換/インターカレーション粒子を含む)の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%、一部の設計例では好ましくは約50重量%から約100重量%)が(例えば、ラマン分光法、X線回折又は関連の若しくは他の適切な技術を用いることによって)推定される面内結晶サイズLaの中央値の炭素層を約10オングストローム(1.0nm)から約300オングストローム(30nm)(一部の設計例では約1.2nmから約4.5nm、一部の設計例では約1.7nmから約2.5nm)の範囲に有すると有利となり得る。一部の設計例では、炭素含有変換型活性材料粒子(合金化型粒子を含む)の少なくとも一部(例えば、約20~100重量%、一部の設計例では、好ましくは約50重量%から100重量%)が(例えば、ラマン分光法、X線回折又は関連の若しくは他の適切な技術を用いることによって)推定される面内結晶サイズLaの中央値の炭素を約10オングストローム(1.0nm)から約300オングストローム(30nm)(一部の設計例では約1.2nmから約4.5nm、一部の設計例では約1.7nmから約2.5nm)の範囲に含むと有利となり得る。
【0093】
一部の設計例では、(i)炭素表面層付き変換型活性材料粒子(合金化型粒子及び混合変換/インターカレーション粒子を含む、一部の設計例ではSi含有)の大部分(例えば、約50重量%以上)及び(ii)インターカレーション型炭素質活性材料粒子(これに限定されないが、炭素表面層付きを含む)の大部分(例えば、約50重量%以上)の双方が、炭素のラマンスペクトル(例えば、約532nmの波長で作動するレーザーを用いて測定され、例えば、線形バックグランドを減算し、ガウシアンモデルを用いて2つのGピーク及び2つのDピークによって炭素スペクトルをフィッティングしてID/IG計算のために最も高いGピーク及び最も高いDピークの強度/高さを用いることによって、約1000から約2000の波数cm-1のスペクトル範囲において解析される)におけるID/IG強度比(一部の設計例では、積分強度比ID総面積/IG総面積)を約0.7から約2.7(一部の設計例では約0.7から約2.0、一部の設計例では約0.9から約2.1)の範囲に示すことが有利となり得る。
【0094】
一部の設計例では、(i)炭素表面層付き変換型活性材料粒子(合金化型粒子及び混合変換/インターカレーション粒子を含む、一部の設計例ではSi含有)の大部分(例えば、約50重量%以上)及び(ii)インターカレーション型炭素質活性材料粒子(これに限定されないが、炭素表面層付きを含む)の大部分(例えば、約50重量%以上)の双方が、ラマンスペクトルにおける炭素Gバンドの(FWHM)(例えば、約532nmの波長で作動するレーザーを用いて測定され、例えば、約1000から約2000の波数cm-1のスペクトル範囲において、この範囲における線形バックグランド減算後の2つのガウシアンピークをフィッティングすることによって解析される)が約10cm-1から約150cm-1(一部の設計例では、約50cm-1から約100cm-1)の範囲となることが有利となり得る。
【0095】
一部の設計例では、(i)炭素表面層付き変換型活性材料粒子(合金化型粒子及び混合変換/インターカレーション粒子を含む、一部の設計例ではSi含有)の大部分(例えば、約50重量%以上)及び(ii)インターカレーション型炭素質活性材料粒子(これに限定されないが、炭素表面層付きを含む)の大部分(例えば、約50重量%以上)の双方が、(例えば、ラマン分光法、X線回折又は関連の若しくは他の適切な技術を用いることによって)推定される面内結晶サイズLaの中央値の炭素を約10オングストローム(約1.0nm)から約300オングストローム(約30nm)(一部の設計例では約1.2nmから約4.5nm、一部の設計例では約1.7nmから約2.5nm)の範囲に含むと有利となり得る。
【0096】
一部の設計例では、多孔度(活性アノード粒子、バインダー及びアノード内の伝導性添加物の間に残されて電解質で充填された間隔によって占有された電極における体積分率)は、Liイオン電池セル設計におけるブレンドアノードの適用に対して慎重に最適化される必要がある。ブレンドアノード内の高すぎる多孔度は、一部のLiイオン電池の体積エネルギー密度を低下させてしまう。同時に、(所与の適用例について)不十分な多孔度は、非常にイオン伝導的な電解質の量が小さくなるにつれて充電又は放電時のLiイオンの移動が遅くなることに起因して、Liイオンセルの適用例における許容できないほど速い劣化又は許容できないほど低い電力若しくは充電速度能力をもたらし得る。不十分な多孔度によって誘発される問題は、(約3.5~4mAh/cm2を超える)高い電極負荷について特に有害となり得る。場合によっては、より小さい電極多孔度は、より小さなアノード厚を有するアノードでは許容され得る。同様に、一部の設計例では、より大きな電極細孔体積が、より大きなブレンドアノード厚及びより高いブレンドアノードでの面積容量負荷に対して必要となり得る。
【0097】
高密度の電極を生成する従来の一手順は、(i)スラリー調製、(ii)集電装置箔への電極鋳造、(iii)乾燥、続いて(iv)鋳造された電極の圧延(「カレンダー処理」ともいう)を行い、それらの密度を高め、電極表面を平坦化し(電極表面粗さを約1~20ミクロンから約0.1~0.5ミクロン以下に低減し)、電極の電気伝導性を高め、(場合によっては)電極の凝集性又は集電装置への接着性を高め、電極多孔度を最適値まで低減し、他の所望の結果を達成することを伴う。セルへの組み入れの前のブレンドアノードの理想的な多孔度及び密度は多数の要因(セル作動条件及びセル性能要件に対するブレンドアノードの組成から面積容量負荷まで)に依存するが、ブレンド電極の一部の設計例では、乾燥及びカレンダー処理された電極の多孔度は、好ましくは、約5体積%から約50体積%(一部の設計例では、約15体積%から約35体積%)の範囲となり得る。同様に、一部の設計例では、セルへの組み入れの前のブレンド(カレンダー処理された)アノードにおける全活性粒子の充填効率は、好ましくは、約50体積%から約75体積%(一部の設計例では、約55体積%から約70体積%)の範囲であり、細孔体積の残り(約25体積%から約50体積%)はバインダー、伝導性添加物及び細孔によって占有され得る。また、一部の設計例では、大部分のブレンドアノードの密度(集電装置箔の質量及び体積を考慮しない)は、好ましくは、約1.0g/cm3から約2.0g/cm3(一部の設計例では、約1.1g/cm3から約1.6g/cm3)の範囲となり得る。
【0098】
一部の設計例では、ブレンドアノードの変換型(例えば、Si含有)活性材料における初回充電(リチウム化)に誘発される体積増加は、ブレンドアノードのインターカレーション型(例えば、炭素質)材料における初回充電体積増加と比較して大きくなり得る。このように、一部の設計例では、初回充電時において、ブレンドアノードは、Liイオンパウチセルにおいてサイクル作動される場合の純粋にインターカレーション型の(例えば、炭素質の)アノードと比較して、より大きな厚さの増加を経験し得る。同時に、純粋にインターカレーション型(例えば、グラファイト系)のアノードは、パウチセルにおいて通常の負-正(NP)容量負荷比(例えば、約1.05から約1.20)のLiイオンセルにおける約0~10%の放電深さ(DOD)から約90~100%のDODの範囲においてサイクル作動される(初回充電前に事前リチウム化されず、サイクル中に有意な圧力(例えば、約1気圧以上)はかけられない)場合に、初回「形成サイクル」後で寿命終了時までの平均厚さの実質的(例えば、約2~12%の)増加を示し得る。しかしながら、一部の設計例では(例えば、充分に高いサイクル寿命及び他の望ましい特性を達成するために)、Liイオン電池セル設計において純粋な形態で使用され(アノードが、炭素質インターカレーション型活性アノード材料とのブレンドなしに、例えば、グラファイトとのブレンドなしに、変換型活性アノード材料、バインダー及び添加物のみからなる場合)かつ約1.05から約1.20の負-正(NP)容量負荷比でパウチ型Liイオンセルにおいて約0~10%のDODから約90~100%のDODの範囲においてサイクル作動される(初回充電前に事前リチウム化されず、サイクル中に有意な圧力(例えば、約1気圧以上)はかけられない)場合に、初回「形成」サイクル(又は一部の設計例では数サイクル、2~5初期サイクル)を超えて寿命終了時まで、約0~10%の放電深さ(DOD)において厚さの最小の電極レベル平均の増加(例えば、厚さの約0.0~約4.0%の平均の増加、一部の設計例では約0.0~約2%、一部の設計例では約0.0~約1%)を示すブレンドアノードにおいて上記変換型活性材料粒子(又は少なくともそれら変換型活性材料の少なくとも有意な分率、例えば、アノードにおける全ての変換型活性材料粒子の総量に対して、一部の設計例では約20~100重量%、一部の設計例では約50~100重量%、一部の設計例では約80~100重量%)を用いることが好ましい場合がある。一部の設計例では、Liイオン電池セル設計において純粋な形態で使用され(アノードが、変換型活性アノード材料、バインダー及び添加物のみからなり、炭素質インターカレーション型活性アノード材料とブレンドされず、例えば、グラファイトとブレンドされない場合)かつ約1.05から約1.20の負-正(NP)容量負荷比でLiイオンセルにおいて約0~10%の放電深さ(DOD)から約90~100%のDODの範囲においてサイクル作動される(初回充電前に事前リチウム化されず、サイクル中に有意な圧力(例えば、約1気圧以上)はかけられない)場合に、サイクル200回まで(一部の設計例では400サイクルまで、一部の設計例では800サイクルまで)、初回「形成」サイクル(一部の設計例では数サイクル、2~5初期サイクル)を超えて、約0~10%のDOD(例えば、約0.0~約4.0%、一部の設計例では約0.0~約2%、一部の設計例では約0.0~約1%)において厚さの最小の電極レベル平均の増加を示すブレンドアノードにおいて上記変換型活性材料粒子(又は少なくとも変換型活性材料の少なくとも有意な分率、例えば、アノードにおける全ての変換型活性材料粒子の総量に対して、一部の設計例では約20~100重量%、一部の設計例では約50~100重量%、一部の設計例では約80~100重量%)を用いることが好ましい場合がある。
【0099】
一部の設計例では、バインダーの量、種類及び各種特性又はバインダー成分(例えば、電解質における膨出、機械特性、活性粒子及び集電装置に対する接着性など)は、広範な容量負荷、ただし、特に約3.5~4mAh/cm2を超えるものについてはLiイオン電池セル(例えば、様々な温度での様々な電流密度におけるサイクル安定性、レート性能など)におけるブレンドアノードの性能特性に大きな影響を有し得る。正確な最適バインダー組成及び特性は、多くの場合、ブレンドアノードにおける個々の活性材料成分のサイズ、形状、表面の化学的性質及び体積変化並びにそれらの関連する分率に依存し得る。しかしながら、特定のバインダー組成が特に良好に作用することが見いだされており、バインダーの特定の特性が、広範なブレンド(例えば、Si含有)アノードにわたって良好な性能に特に重要となり得る。
【0100】
一部の設計例では、(例えば、ブレンドアノードに用いられる個々のインターカレーション型活性材料粉末及びそれらの混合物について、並びにブレンドアノードに用いられる個々の変換型活性材料粉末及びそれらの混合物について)全ての個々の成分に対して良好に作用するものと同じバインダー(又はバインダーの成分)をブレンドアノードの調製に用いることが有利となり得る。一部の設計例では、ブレンド電極におけるバインダーの最適付近(例えば、約±50%以内、一部の設計例では±25%以内)の重量分率を(電極における全ての固体又はスラリーにおける全ての固体の分率として)特定するために、線形合成モデルを有効に用いることができる(ブレンド電極におけるバインダーの重量%はインターカレーション型活性材料のみを含むスラリー及び変換型活性材料のみを含むスラリーにおけるバインダーの最適付近重量%を特定し、それらにブレンドアノードにおけるインターカレーション型活性材料及び変換型活性材料の対応する重量分率を乗じることによって推定され得る)。なお、バインダーが2以上のバインダー成分を含む一部の場合では、バインダーにおけるその成分の最適な比は、ブレンドアノードにおける異なる活性材料成分に対して実質的に異なり得る。さらに、一部の設計例では、ブレンドアノードに対するバインダーの上記成分の最適な比は、線形合成モデルを用いることによって推定されてもよい。
【0101】
広範なブレンドアノードのためのバインダー(又はバインダーの成分)として良好に作用し得る適切かつ比較的一般的なポリマー(又はポリマー混合物の成分)の説明のための例は、決してこれらに限定されないが、スチレンブタジエンゴム(SBR)などの弾性ポリマーナノ粒子をさらに含むものを特に含むカルボキシメチルセルロース(CMC)系バインダー(これらに限定されないが、Na-CMC、Li-CMC、K-CMCなど及びそれらの混合物を含み、一部の設計例では、多くの場合、Li塩が特に好適となり得る);ポリアクリル酸(PAA)及びそれらの各種塩(これらに限定されないが、Na-PAA、Li-PAA、K-PAA、Ca-PAAなど及びそれらの混合物を含み、一部の設計例では、多くの場合、Li-PAA塩が特に好適となり得る);(ポリ)アルギン酸及び(ポリ)アルギン酸の各種塩(Na-アルギン酸エステル、Li-アルギン酸エステル、Ca-アルギン酸エステル、K-アルギン酸エステル、その他多数及びそれらの各種混合物、一部の設計例では、多くの場合、Li-アルギン酸エステルが特に好適となり得る);マレイン酸及びそれらの各種塩(例えば、Li、Na、Kなど、一部の設計例では、多くの場合、Li-塩が特に好適となり得る)、各種(ポリ)アクリル酸(これに限定されないが、アクリル酸ジメチルアミノエチル、その他多数を含む)、各種(ポリ)アクリルアミド、各種ポリエステル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、(ポリ)エチレン酸化物(PEO)、(ポリ)ビニルアルコール(PVA)、シクロデキストリン、無水マレイン酸、メタクリル酸及びその各種塩(Li、Na、Kなど、一部の設計例では、多くの場合、Li塩が特に好適となり得る)、各種(ポリ)エチレンイミン(PEI)、各種(ポリ)アミドイミド(PAI)、各種(ポリ)アミドアミン、各種他のポリアミン系ポリマー、各種(ポリ)エチレンイミン、スルホン酸及びそれらの各種塩、各種カテコール基含有ポリマー、各種リグニン含有又はリグニン由来ポリマー、各種エポキシ、各種セルロース由来ポリマー(これらに限定されないが、ナノセルロース繊維及びナノ結晶、カルボキシエチルセルロースなどを含む)、キトサン、他のポリマー(例えば、好ましくは水溶性ポリマー)並びにそれらの各種コポリマー及び混合物を含む。
【0102】
一部の設計例では、ブレンドアノードが水系スラリーから鋳造されると有利となり得る。電解質への曝露に対して膨出を示さず又は比較的小さな(例えば、約0.0001~5体積%、一部の設計例では、約0.001体積%から約2体積%の)膨出しか示さないポリマーの有意な部分を含むバインダー(例えば、バインダーにおける全ての固体の約15~100重量%、一部の設計例では、約50~100重量%)は、ブレンドアノードの設計において特に良好に作用し得る。
【0103】
一部の設計例では、実質的に体積変化する変換型活性アノード材料粒子を含むブレンドアノードのためのバインダーが、実質的に異なる形状、スラリー溶媒における実質的に異なる溶解度(例えば、一部の設計例では約2倍以上異なり、一部の設計例では1つの成分が全く可溶性でなくてもよい)、電解質における実質的に異なる膨出(例えば、約2倍以上異なる)及び/又は実質的に異なる機械特性(例えば、弾性率、弾性度など、約2倍以上異なる)の2以上の異なる成分を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、弾性ナノ粒子(例えば、約10nmから約500nmの範囲の平均サイズを有する)をより不安定な及び/又は水溶性のバインダー(例えば、上述したCMC、Na-CMC、Li-CMC、K-CMC、アルギン酸、Na-アルギン酸エステル、Li-アルギン酸エステル、PAA酸、Na-PAA、Li-PAA、混合CMC塩、混合アルギン酸塩、混合PAA塩、各種アクリルバインダー、各種アルギン酸エステル、それらの各種混合物及びコポリマーなどを含む)と組み合わせて用いてそれらの不安定な性質を克服し、小さな及び大きな(例えば、Si含有)複合粒子の双方とともに効果的に利用されることが有利となり得る。一部の設計例では、弾性ナノファイバ若しくはナノリボン(例えば、約2nmから約500nmの範囲の平均径、約10.0nmから約500000.0nmの範囲の平均長、及び約3:1から約10000:1の範囲の平均アスペクト比を有する)又は弾性フレーク(例えば、約1nmから約500nmの範囲の平均厚、約10.0nmから約500000.0nmの範囲の平均長、及び約3:1から約10000:1の範囲の平均アスペクト比を有し、一部の設計例では孔を有する)が、従来の弾性ナノ粒子に代えて又はそれに加えて、有利に使用され得る。上記粒子の組成の適切な例は、これらに限定されないが、適切なエラストマーの中でも、SBR、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリエチレンプロピレン、スチレンエチレンブチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシエチレン、イソプレン、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリエーテルブロックアミド、ポリシロキサン及びそれらの各種コポリマー(ポリジメチルシロキサンなど)、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル、それらの各種混合物及びコポリマーを含む。一部の設計例では、上記弾性ナノ粒子(又はナノファイバ若しくはナノフレーク)の適切な質量分率は、(ブレンドアノードにおける総バインダー含有量の分率として)約5重量%から約70重量%の範囲となり得る。一部の従来の純粋にインターカレーション型アノード(例えば、グラファイト系)は球状SBR粒子(一部の設計例では、弾性的とされ得る)を含んでいてもよいが、これらは一般的には、バインダーの総重量分率の約15%から約50重量%しか含まない。これに対して、一部の設計例では、弾性ナノ粒子(又はナノファイバ若しくはナノフレーク)(SBR又は上述したものを含む他の弾性材料からなる)の重量分率が変換型アノード(例えば、Si含有)における約55重量%から約95重量%の範囲となることが有利となり得る。体積変化するナノ複合材粒子のサイズ、体積変化の値及びそれらの形状は、弾性粒子の最適な分率に影響を与え得る。場合によっては、より大きな体積変化、より大きな粒子、及び(例えば、フレーク形状又はランダム形状の粒子との対比で)より球形状の(例えば、略球形状又は芋形状の)粒子は、バインダーにおいて、より大きな分率の弾性粒子を必要とし得る。このように、ブレンドアノードにおける弾性粒子の相対分率は、線形合成モデルを用いることによって推定され得る。一部の設計例では、上記弾性粒子が特定の機械特性を示すことが有利となり得る。一部の設計例では、弾性ナノ粒子(又はナノファイバ若しくはナノフレーク)の最大伸張(破断伸び)は、好ましくは約20.0%から約10000.0%(一部の設計例では、約50.0%から約5000.0%)の範囲となり得る。一部の設計例では、弾性ナノ粒子(又はナノファイバ若しくはナノフレーク)の降伏歪みは、好ましくは約20%を超え得る(一部の設計例では、弾性ナノ粒子の降伏歪みは約100%を超え得る)。
【0104】
一部の設計例では、ブレンドアノードに水溶性コポリマーバインダーを用いることが有利となり得る。一部の設計例では、コポリマーバインダーは、(例えば、室温又は高温においてバインダー内での塑性変形を有して充電中に変換型活性材料粒子内での体積変化に適応すること、又は同様に室温又は一部の設計例では高温において行われ得るカレンダー処理中の電極変形に適応することが望ましい場合)単純直鎖構造を備えていてもよい。他の設計例では、コポリマーバインダーは、架橋されてもよい。一部の設計例では、架橋されたコポリマーバインダーは(例えば、水中での、例えば、膨出又は溶解を軽減するように)スラリーにおいて利用され得る。一部の設計例では、架橋は、電極鋳造の後に行われ得る。一部の設計例では、一部の架橋を(例えば、カレンダー処理中及び/又は後の塑性変形及び応力解放を可能とするように)電極カレンダー処理の後に誘発させることが有利となり得る。一部の設計例では、初期膨張後の電極の機械的強度/整合性/安定性を高めるために、電池組立て後に(例えば、いわゆる「形成サイクル」中に又は初期電極膨張後に)架橋を誘発することが有利となり得る。
【0105】
一部の設計例では、水溶性コポリマーバインダーは、以下の成分:酢酸ビニル(又はブチル、メチル若しくはプロピルなど)、アクリル酸ビニル(又はブチル、メチル若しくはプロピルなど)、ビニル(又はブチル、メチル若しくはプロピルなど)アルコール、酢酸ビニル(又はブチル、メチル若しくはプロピルなど)-アクリル、ビニル(又はブチル、メチル若しくはプロピルなど)アクリレート、スチレン-アクリル、アルギン酸(又はその塩、例えば、Na、K、Ca、Mg、Li、Sr、Cs、Ba、Laなどの塩)、アクリル酸(又はその塩、例えば、Na、K、Ca、Mg、Li、Sr、Cs、Ba、Laなどの塩)、ビニル(又はブチル、メチル若しくはプロピルなど)シロキサン(などのシロキサン)、ピロリドン、ステレン、各種スルホン酸エステル(例えば、とりわけ、スチレンスルホン酸エステル)、各種アミン(四級アミンを含む)、各種ジシアンジアミド樹脂、アミドアミン、エチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0106】
一部の設計例では、水溶性コポリマーバインダーは、セルロースを含み得る。一部の設計例では、このセルロース含有バインダーは、ナノセルロース(ナノファイバ)を含み得る。一部の設計例では、ナノセルロースは、分岐又は樹状セルロースナノファイバを含み得る。一部の設計例では、ナノセルロース含有バインダーは、ブレンドアノードにおける優れた性能のための強い接着性の少なくとも更に1つのバインダー成分(例えば、CMCなど)を含み得る。一部の設計例では、ナノセルロース含有バインダーは、水溶性であり得る。
【0107】
一部の設計例では、コポリマーバインダーは、ポリ(アクリルアミド)を含み得る(すなわち、アクリルアミド(-CH2CHCONH2-)サブユニットを含む)。一部の設計例では、このポリ(アクリルアミド)含有コポリマーバインダーは、水溶性であり得る。一部の設計例では、このポリ(アクリルアミド)含有コポリマーバインダーは、アクリル酸、カルボン酸、アルギン酸又はその金属塩(例えば、これら酸のNa、K、Ca、Mg、Li、Sr、Cs、Ba、Laなどの塩)も含み得る。上記及び他の付加物が(例えば、スラリーの安定性を実現するため、など)、ポリマーのイオン特性、その溶解度、並びに溶媒及び活性(電極)粒子の双方との相互作用を微調整するのに利用され得る。
【0108】
一部の設計例では、各種ユニットのなかでもとりわけ、アニオン伝導性不均一系ポリマー(アルコキシシラン/アクリレート又はエポキシアルコキシシランなど)、各種アニオン伝導性相互貫入ポリマーネットワーク、各種アニオン伝導性ポリ(イオン液体)(架橋イオン液体)又はポリ(アクリロニトリル)、各種アニオン伝導性ポリクオタニウム、四級アンモニウム(例えば、ベンジルトリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウムなど)を含む各種アニオン伝導性の塩、アンモニウム基を含む各種アニオン伝導性コポリマー、ノルボルネンを含む各種アニオン伝導性コポリマー、シクロアルケン(例えば、シクロオクテン)、メタクリレート、ブチルアクリレート、ビニルベンジル又はポリ(フェニレン)を含む各種アニオン伝導性コポリマー、有機塩素化合物(例えば、エピクロロヒドリンなど)を含む各種アニオン伝導性コポリマー、エーテルを含む各種アニオン伝導性コポリマー、二環式アミン(例えば、キヌクリジン)、各種アニオン伝導性ポリ(イオン液体)(架橋イオン液体)、その他のアミン(例えば、エチレンジアミンなどのようなジアミン、モノアミン)を含む各種アニオン伝導性コポリマー、ポリ(エーテルイミド)を含む各種アニオン伝導性コポリマー、各種多糖類(例えば、キトサンなど)、キシリレン、グアニジン、ピロジニウムが、本開示の1以上の実施形態の背景におけるブレンドアノードのためのコポリマーバインダー(又はポリマー/コポリマーバインダー混合物の成分)として有利に使用され得る。一部の設計例では、適切なコポリマーバインダーは、カチオン性でかつ高電荷であってもよい。
【0109】
一部の設計例では、種々のカチオン伝導性ポリマー(相互貫入ポリマーネットワークを含む)及び架橋イオン液体(例えば、約10-10Ssm-1以上のカチオン伝導性を有する)が、本開示の1以上の実施形態での背景におけるバインダー又はバインダーの成分としてブレンドアノードに有利に使用され得る。一部の設計例では、このポリマーは、有利にはLiイオンに対して(Li又はLiイオン電池の場合)中~高伝導性(例えば、約10-10Ssm-1以上、より好ましくは、約10-6Ssm-1以上)を示し得る。
【0110】
一部の設計例では、各種電気伝導性ポリマー又はコポリマー(例えば、好ましくは約10-2Ssm-1以上の電気伝導性のもの)、特に水溶性のもの(又は少なくとも水系電極スラリーにおいて処理可能なもの)が、本開示の1以上の実施形態の背景におけるブレンドアノードのためのバインダー又はバインダーの成分(例えば、バインダー混合物の成分又はコポリマーバインダーの成分)として有利に使用され得る。特に、硫黄(S)含有ポリマー/コポリマーであって芳香族環も含むものが、有利に利用され得る。一部の例では、Sは(例えば、ポリ(チオフェン)(PT)におけるように又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)におけるように)芳香族環に存在してもよいし、一方、他の例では、Sは(例えば、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)におけるように)芳香族環の外部に存在してもよい。一部の設計例では、適切な伝導性ポリマー/コポリマーは、ヘテロ原子として窒素(N)も含み得る。N原子は、例えば(ポリ(ピロール)(PPY)、ポリカルバゾール、ポリインドール又はポリアゼピンなどにおけるように)芳香族環に存在してもよいし、(例えば、ポリアニリン(PANI)におけるように)芳香族環の外部に存在してもよい。一部の伝導性ポリマーは、(例えば、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレンなどにおけるように)ヘテロ原子を有さなくてもよい。一部の設計例では、主鎖は(例えば、ポリ(アセチレン)(PAC)又はポリ(パラフェニレンビニレン)(PPV)などにおけるように)二重結合を備えていてもよい。一部の設計例では、ポリマー/コポリマーバインダーが(例えば、イオン基がポリマー骨格に共有結合された高分子電解質におけるように、又はイオン基が実際のポリマー骨格の一部であるイオネンにおけるように)アイオノマーを含むことが有利となり得る。一部の設計例では、2以上のアイオノマーのポリマー混合物を用いることが有利となり得る。一部の設計例では、このアイオノマーは、両逆電荷(例えば、一方が負、他方が正)を搬送することができる。負電荷を搬送することができるアイオノマーの例は、これに限定されないが、各種脱プロトン化化合物を含む(例えば、スルホン化ポリスチレンにおけるように、スルホニル基の部分が脱プロトン化される場合)。正電荷を搬送することができるアイオノマーの例は、これに限定されないが、とりわけPEDOTなどの各種共役ポリマーを含む。両逆電荷を有する2つのアイオノマーの適切なポリマー混合物の例は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸エステルである。一部の設計例では、伝導性ポリマー及び他の機能性を与える(例えば、最大バインダー伸張を大幅に増加させるエラストマーとして作用し、活性材料若しくは集電装置への結合を強化するように作用し、又は水若しくは他のスラリー溶媒における可溶性を高めるように作用するなど)他のポリマーの両方を含むポリマー又はコポリマーバインダーを用いることが有利となり得る。
【0111】
一部の設計例では、コポリマーバインダーは、有利には、ブレンドアノードのためのハライドアニオン(例えば、塩化物アニオン、フッ化物アニオン、臭化物アニオンなど)を含み得る。一部の設計例では、コポリマーバインダーは、有利には(例えば、塩化アンモニウムにおけるように、例えば、ハライドアニオンに加えて)アンモニウムカチオンを含み得る。一部の設計例では、コポリマーバインダーは、有利には硫黄(S)を含み得る。一部の設計例では、コポリマーバインダーは、有利には(例えば、アンモニウムカチオンに加えて)アリル基を含み得る。例えば、このコポリマーバインダーは、有利にはジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)又はジアリルジエチルアンモニウムクロライド(DADEAC)を含み得る。上記コポリマーバインダー成分の他の適切な例は、(これらに限定されないが)いくつか挙げると、塩化メチルアンモニウム、N,N-ジアリル-N-塩化プロピルアンモニウム、臭化メチルアンモニウム、臭化エチルアンモニウム、臭化プロピルアンモニウム、臭化ブチルアンモニウム、フッ化メチルアンモニウム、フッ化エチルアンモニウム、フッ化プロピルアンモニウム、フッ化ブチルアンモニウムを含み得る。
【0112】
一部の設計例では、ブレンドアノードのためのコポリマーバインダーは、それらの構造内にポリ(アクリルアミド)及びハロゲン化アンモニウム(例えば、塩化アンモニウム)の両方を含み得る。適切な一例として、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAMAC)が、本開示の背景におけるコポリマーバインダーとして有利に使用され得る。一部の設計例では、このPAMACコポリマーバインダーは、わずかな量(例えば、約5~10重量%未満)のアクリル酸、カルボン酸若しくはアルギン酸又はその金属塩(例えば、これら酸のNa、K、Ca、Mg、Li、Sr、Cs、Ba、Laなどの塩)をさらに含み得る。
【0113】
ブレンドアノードにおけるバインダーの相対重量分率は、活性材料成分の特性及びそれらの相対分率に依存する。ブレンドアノードにおける過剰なバインダー含有量は、例えば、電極の体積容量を低下させてしまい、又は電極多孔度を低下させて屈曲度を増加させてしまい、結果としてエネルギー密度若しくは電力密度又はその両方に悪影響を及ぼしてしまう場合がある。一部の設計例では、過剰なバインダー含有量及び不十分な残余細孔体積はまた、サイクル中の過度に増加した抵抗成長に起因して早期故障を誘発し得る。最終的に、より高いバインダー含有量は、総材料コストを増加させ得る。一方、過少なバインダーは、ブレンドアノードに充分な機械的強健性を与えることができず、サイクル中の早期電極故障又は一部の設計例では集電装置からの剥離を誘発し得る。しかしながら、多くの適用例について、適切なバインダー分率は、ブレンドアノードについて(集電装置箔の重量を考慮しない)約0.5重量%から約15重量%(一部の設計例では約0.5重量%から約2.0重量%、他の設計例では約2.0重量%から約6.0重量%、他の設計例では約6.0重量%から約8.0重量%、他の設計例では約8.0重量%から約10.0重量%、他の設計例では約10.0重量%から約12.0重量%、他の設計例では約12.0重量%から約15.0重量%)の範囲となる。
【0114】
一部の設計例では、カーボンナノチューブ(多層、二層、単層を含む)、カーボンナノファイバ及び他の1次元(1D)カーボン材料、剥離グラファイト、グラフェン、グラフェン酸化物(多層、二層、単層などを含む)及び他の2次元(2D)カーボン材料、カーボンブラック又はカーボンオニオン及び他のゼロ次元(0D)カーボン材料、並びに各種樹状(例えば、接続又は分岐された)炭素粒子、小グラファイト粒子及び他の3次元(3D)構造のカーボン材料が、ブレンドアノード構成における伝導性炭素添加物として効果的に使用され得る。一部の設計例では、0D、1D及び2D材料(例えば、ナノ粒子、ナノファイバ又はナノフレーク)の形態の伝導性酸化物、炭化物又は金属が、伝導性添加物として好適に利用され得る。一部の設計例では、伝導性ナノ粒子又はナノファイバは、分岐され又は樹状であり得る。一部の設計例では、伝導性添加物及び活性粒子は、逆の電荷を有し得る。一部の設計例では、伝導性添加物及び/又は活性粒子は、それらの表面に付着した官能基を有し得る。一部の設計例では、鋳造又はカレンダー処理後の電極の加熱が、伝導性添加物と活性粒子の間の化学結合の形成を誘発し得る。最適な含有量は設計例の間で大きく変わり得るが、一部の設計例によるブレンドアノードは、約0.01重量%から約6重量%の伝導性添加物を含み得る。一部の設計例では、アノードにおける過剰な含有量の伝導性添加物は、体積容量を低下させ、細孔の屈曲度を増加させ又は初回サイクル損失を増加させてしまい、結果としてエネルギー密度若しくは電力密度又はその両方に悪影響を与えてしまう場合がある。最終的には、より高い含有量の伝導性添加物は、総材料コストを増加させ得る。一方、過少量の伝導性添加物は、ブレンドアノード内に充分な電気伝導性を与えることができず、その機械的安定性を低下させ、その電力レートも低下させ、一部の設計例では電極抵抗を増加させ得る。このように、一部の設計例では、バインダー及び伝導性添加物の量を、1以上の他の所望の電池特性(例えば、充分に良好な機械的安定性、充分に低い抵抗、充分に高い電力、集電装置箔への充分に良好な接着性など)が所望の用途及び用途特有の仕様について達成されるレベルまで低下させることが一般に望ましい。
【0115】
一部の設計例では、(例えば、セルレート性能、安定性若しくは製造容易性について又は他の考慮すべき点について)伝導性添加物(例えば、カーボンナノチューブ、グラフェンリボン、カーボンフレーク、カーボンブラック、カーボンファイバ、金属ナノファイバ、金属フレーク又は金属ナノ粒子)を活性材料粒子の少なくとも一部(例えば、2~100重量%)の外表面に化学結合することが有利となり得る。一部の設計例では、この伝導性添加物は、活性材料の表面上で成長させられてもよい。一部の設計例では、活性材料粉末の表面上の伝導性添加物の成長は、気相蒸着技術(例えば、触媒支援CVDを含むCVD)を用いることによって行われてもよい。一部の設計例では、伝導性添加物は、インターカレーション型(例えば、炭素質)活性材料の表面上に化学的に付着され又は成長させられてもよい。一部の設計例では、伝導性添加物は、変換型(例えば、Si含有)活性材料の表面に化学的に付着され又は成長させられてもよい。
【0116】
一部の設計例では、ポリマー若しくはコポリマーバインダーの少なくとも一部分(例えば、2~100重量%)及び/又は伝導性添加物の少なくとも一部分(例えば、2~100重量%)を、ブレンド電極組立ての前に活性粒子の少なくとも一部(例えば、2~100重量%)の表面に(例えば、スラリー浸透、鋳造、乾燥及びカレンダー処理によって)付着させることが有利となり得る。電極がスラリーから調製される場合、一部の設計例では、ポリマー若しくはコポリマーバインダーの少なくとも一箇所及び/又は伝導性添加物の少なくとも一部分をスラリー混合の前に活性粒子の少なくとも一部の表面に付着させることが有利となり得る。
【0117】
電極のカレンダー処理後に、「スプリングバック」効果(初期圧縮後の電極の、あるレベルまでの膨張)が起こり得る。異なる種類の伝導性添加物及び異なる量の伝導性添加物が、スプリングバックの度合いに影響を与え得る。例えば、伝導性添加物として使用されるカーボンナノチューブ又はナノファイバは、カーボンブラック伝導性添加物と比較して大きなスプリングバック量をもたらすことになる。同様に、一例ではより多くの量のナノチューブ若しくはナノファイバ、又は場合によってはより大きな直径及び/若しくは長さのナノチューブ及びナノファイバは、より大きなスプリングバック量をもたらすことになる。一部の設計例では、異なる種類のナノチューブ及びナノファイバ(例えば、異なる微細構造、組成など)が、異なる量のスプリングバックをもたらすことになる。一部の設計例では、カーボンナノチューブを含むブレンドアノードの好適な電極特性を活かしつつも「スプリングバック」効果のよくある望ましくない影響を軽減又は最小化するために、一部の設計例では、ブレンドアノードにおける比較的小さい総量(例えば、最も好適な特性を達成する、カーボンナノチューブのサイズ及び特性、ブレンドアノードにおける活性材料粒子のサイズ、形状及び密度並びにブレンドアノードにおけるバインダーの種類に応じて、約0.01重量%から約3.0重量%、一部の設計例では約0.01重量%から約0.1重量%、他の設計では約0.1重量%から約0.2重量%、他の設計では約0.2重量%から約0.3重量%、他の設計では約0.3重量%から約0.4重量%、他の設計では約0.4重量%から約0.5重量%、他の設計では約0.5重量%から約0.6重量%、他の設計では約0.6重量%から約0.7重量%、他の設計では約0.7重量%から約0.8重量%、他の設計では約0.8重量%から約0.9重量%、他の設計では約0.9重量%から約1.0重量%、他の設計では約1.0重量%から約1.5重量%、他の設計では約1.5重量%から約2.0重量%、他の設計では約2.0重量%から約3.0重量%)のカーボンナノチューブを用いることが有利となり得る。同様に、一部の設計例では、比較的小さな直径(例えば、約0.6nmから約6nmの範囲における個々のチューブの中央値直径)のカーボンナノチューブを用いることが有利となり得る。一部の設計例では、カーボンナノチューブがカーボンブラック伝導性添加物との組合せで使用される場合、カーボンブラックがブレンドアノードにおける全ての伝導性炭素添加物の大部分(例えば、約50.01重量%から99.99重量%、一部の設計例では約75重量%から約99重量%)を含むことが有利となり得る。
【0118】
ブレンドアノードコーティングの特定の機械特性を達成することで、電池におけるそれらの優れた性能が可能となる。例えば、一部の設計例では、ブレンドアノードコーティングが、電池使用時(例えば、初回から最後のサイクルの全サイクルを考慮する場合)に想定されるアノードコーティング厚の増加全体と同等(約20%以内)の又は有意に(例えば、コーティング厚の増加全体に対して約20~500%)超過する(凝集)破壊までの引張歪み(又は破断までの伸張)を示すことが有利となり得る。例えば、ブレンドアノードコーティング厚が、例えば、セル組入れからセル寿命の終了まで約10%増加する場合には、一部の設計例では、このブレンドアノードが約8%から約60%の故障までの引張歪みを示すことが有利となり得る。なお、理想的な場合では、故障までの関連の歪みは、集電装置の面に垂直な軸に沿う歪みであり、理想的には電極が電解質に浸漬される場合に測定されるべきである。しかしながら、一部の設計例では、集電装置の面に垂直な軸に沿う故障までの歪みを評価する方が容易となり得る。電池構成に使用されるものと厳密に同じ電解質及びおおよその電解質組成(例えば、主要な溶媒(例えば、電解質組成における全溶媒に対して約20~100重量%)及びおおよその塩組成を約±50%以内で特定することによって決定される)に電極が浸漬される時に測定を行うのは難しい場合もある。このように、場合によっては、集電装置の面に垂直な軸に沿いかつおおよその電解質組成(一部の設計例では、溶液に添加される塩を有さない)における故障までの歪みの上記測定は、充分に良好な近似となり得るものであり、アノードコーティングの構成に使用され得る。実際に、コーティングは、異なる方向に沿う故障までの歪みの観点で相対的に等方的機械特性を示し得る。一部の設計例では、標準的引張り試験のアプローチをドッグボーンサンプル幾何形状において自立型コーティングに適用することによってコーティングの面における故障までの歪みを測定することで上手くいく場合がある。全体として、相対厚の変化(及び結果としてコーティングに対する所望の故障までの歪み)は、ブレンドアノードの特性及び組成並びにセル構成(例えば、パウチセル対円筒セル対コイン型セル、ソフトケース対ハードケースなど)に依存する。ただし、ブレンドアノードの大部分について、ブレンドアノードにおける(集電装置箔のものに平行な方向に測定されるような)故障までの歪みの(一部の設計例での)好適な最小値の範囲は、電解質で飽和した(適切な電解質で浸透された)コーティングに対して約5%から約150%変動し得る。
【0119】
一部の設計例では、鋳造されたブレンドアノードのコーティング(活性材料、バインダー及び伝導性添加物の混合物からなる)の圧縮降伏強度が、コーティングの不可逆的高密度化が活性材料の破壊強度を超えることなくカレンダー処理によって実現され得るように、充分に低いことが有利となり得る。一部の設計例では、約600MPa以下の圧縮降伏強度が好適となり得る。一部の設計例では、約300MPa以下の降伏強度が好適となり得る。一部の設計例では、約150MPa以下の降伏強度が好適となり得る。
【0120】
一部の設計例では、ブレンドアノードをセルに集積しつつ、コーティングが折曲げ及び巻取りプロセス中に大きな曲げ応力を受けることになり、これは集電装置からのコーティングの剥離をもたらしてしまう場合がある。したがって、カレンダー処理されたブレンドアノードのコーティングは、約100mmから約2mmの範囲のマンドレル径についての円筒マンドレル曲げ試験に耐えることができるように充分に集電装置に密着されることが有利となり得る。
【0121】
一部の設計例では、ブレンドアノードのコーティングの接着強度は、有利には、180度剥離試験を用いてカレンダー処理後に評価され得る。剥離試験は、例えば、3M(登録商標) 401Mテープの0.5インチ幅のストリップをコーティングに接着し、集電装置からコーティングの20mm長ストリップを2mm/sで剥離するのに必要な平均の力を測定することによって実行され得る。一部の設計例では、セル構成において、約0.01Nから約50Nの範囲(一部の設計例では約0.05Nから約50Nの範囲、一部の設計例では、より好ましくは約0.1Nから約10Nの範囲)における上記力の平均値を示してサイクル中に集電装置へのコーティングの充分に強固な接着を確保する上記ブレンドアノードを生成及び使用することが有利となり得る。
【0122】
一部の設計例では、コーティング-集電装置界面における最大剪断応力が界面に対する疲労限界以下となること、又は約1000~10000サイクル前に疲労故障が起こらない充分に低い分率の剪断強度であることが好適となり得る。
【0123】
広範な銅(Cu)箔が、低電位アノード(グラファイト又はブレンドアノードに基づくものなど)におけるアノード集電装置として従来的には使用されている。しかしながら、本開示の1以上の実施形態の背景において、そのような集電装置の一部は、望ましくない体積変化を経験する場合があり、場合によっては、集電装置に接着する高容量変換型アノード粒子の体積変化の性質に起因してサイクル中(特に、初回のいわゆる「形成」サイクル中に)に破損する場合がある。同時に、一部の設計例では、集電装置箔が電極における応力に起因して有意に(例えば、各寸法において約1~6%以上)膨張することも望ましくない場合がある。このように、一部の設計例では、ほとんどの市販セルに使用される通常のCu箔よりも高い硬度、高い弾性率及び高い破壊靭性の箔を利用することが有利となり得る。一部の設計例では、金属(例えば、Cu)集電装置箔の好適な平均厚は、約4ミクロンから約18ミクロン(一部の設計例では、約7ミクロンから約11ミクロン)の範囲となり得る。
【0124】
純Cu箔に加えて、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、鋼(ステンレス鋼を含む)、バナジウム(V)、それらの合金、その他Cuが豊富な(例えば、約85~99.8原子%のCu)合金などの金属を含む他の金属箔、並びに少なくも1つの略純粋なCu(例えば、約99.5~100原子%のCu)及び少なくとも1つのCuの乏しい(例えば、約0~99.5原子%のCu)層を含む積層金属箔が、一部の設計例では効果的に利用され得る。一部の設計例では、ブレンドアノードのための集電装置箔は、純粋なインターカレーション型炭素質アノードに使用されるものよりも良好な機械特性(いくつか挙げると、高い強度、高い破壊靭性、クリープ及び疲労に対する高い弾力性など)を示し得る。
【0125】
上記代替の金属は、薄箔形態(例えば、約5~18μm)で生成することがより困難となり、より高価となる場合がある。さらに、上記代替の金属は、より低い電気伝導性を示す場合がある。種々の理由のために、この材料は、アノード集電装置として従来の市販Liイオン電池セルには使用されていない。一方、本開示の1以上の実施形態の背景において、一部の設計例では、ブレンドアノードの集電装置箔がNi、Ti、Fe若しくは他の金属又はCu合金(純Cuではなく)を含んで所望の性能及び機械的安定性を実現することが有利となり得る。一部の設計例では、このアノード集電装置箔は、薄く(例えば、約5~18μm)、約5~100重量%のTi、Ni、Feを含み得る。一部の設計例では、薄い(例えば、約0.01~3μmの範囲で)Ni、Ti、Feの表面に銅(Cu)のコーティング又は炭素系箔(又はメッシュ若しくは発泡剤)集電装置を生成することも有利となり得る。一部の設計例では、Cuの堆積は、電気めっき、スパッタリング、又は他の適宜の方法によって行われ得る。一部の設計例では、Cuの層は、とりわけ、以下の:(i)電極に対する接着性を有利に向上すること、(ii)電気伝導性を有利に向上すること、及び(iii)タブの溶接性を有利に向上することの利点を与え得る。一部の設計例では、Cu箔の強度及び機械特性は、Ni、Fe、Ti、Mg又は他の適宜の元素(好ましくは低電気化学電位においてLiとの最小合金化をしめすもの)を約2重量%超の量で含むCu合金を利用することによって高められてもよい。
【0126】
従来のセルは、一般的に、アノード集電装置として固体金属箔(例えば、Cu箔)を用い、カソード集電装置として固体金属箔(例えば、Al箔)を用いる。一方、一部の設計例では、本開示の各態様によるブレンドアノードは、ブレンドアノードのより高い体積容量に起因して(例えば、高容量変換型活性材料の存在に起因して)純グラファイト(又は炭素系)アノードよりも実質的に薄くてもよい。またさらに、サイクル中の変換型活性材料における体積変化に起因して、上記ブレンドアノードは、一部の設計例ではサイクル中の集電装置箔への接着性を低下させ得る。上記電池セルが機械的に損傷した場合(例えば、歪められ、凹みを付けられ、又は貫通された場合など)、Cu箔集電装置はカソード集電装置(例えば、Al箔)と直接接触し得る。結果として、生成された内部短絡が、発火又は爆発さえも誘発するような有意な量のセルエネルギーを直ちに放散させることになる。一部の設計例では、変換型又はブレンドアノードを備えるセルにおける潜在的な損傷を軽減するために、絶縁ポリマー層(多孔質又は高密度、機械的強化繊維、ナノファイバ、フレーク又はナノフレークあり又はなし)が電気伝導性金属表面層(例えば、上述したように、アノード集電装置のためのCu若しくは他の金属、及び/又はカソード集電装置のためのAl若しくは他の金属)内に封入された多層(例えば、サンドウィッチ状)構造体を集電装置が備えることが有益となり得る。この場合、集電装置の急速な加熱がポリマー溶融及び集電装置の破壊(例えば、溶着と同様)を誘発することで、放出される総エネルギーを低減又は最小化し、それにより潜在的な損傷を低減又は最小化する。一部の設計例では、金属層が平均厚を約0.1ミクロンから約4.0ミクロンの範囲に示すことが有益となり得る。一部の設計例では、ポリマー層が平均厚を約2.0ミクロンから約12.0ミクロンの範囲に示すことが有益となり得る。一部の設計例では、ポリマー層におけるポリマーは、熱可塑性であってもよい。一部の設計例では、ポリマー層における熱可塑性ポリマーが比較的低い温度(例えば、約100~約200℃)での溶融を示すことが有益となり得る。
【0127】
一部の設計例では、アノード集電装置の強度及び機械特性並びに電極への接着性は、炭素、金属(例えば、Ni、Fe、Ti及び他の金属並びにCuを含む金属合金)、セラミック(例えば、酸化物、窒化物、炭化物など)のポリマー(ナノ)ファイバ、ナノチューブ、ナノワイヤ、フレーク、ナノフレーク又は各種樹状若しくは分岐粒子を集電装置のバルクに組み込むことによって、又はこのファイバ、ナノチューブ、ナノワイヤ、フレーク、ナノフレーク又は各種樹状若しくは分岐粒子をアノード集電装置の表面上に堆積させることによって、強化され得る。一部の設計例では、上記複合集電装置の平均厚は、約3~約25ミクロンの範囲となり得る。より小さな厚さは特定の適用例についての要求機械強度又は伝導性を与えるのに充分ではなく、より大きな厚さはセルの体積又は重量エネルギー密度を低下させてしまい、それらのコストを特定の適用例について非現実的なレベルまで増加させてしまう。
【0128】
特定の(例えば、グラファイトアノードを有する)市販のセルで使用されるほとんどの市販の箔(例えば、Cu箔)は、通常は電気めっきによって生成される。これらは、箔配向に対して垂直に配向された結晶粒(「柱状粒」ということもある)を示し、かつ/又は制限された最大伸張及び破壊靭性を示し得る。しかしながら、一部の設計例では、ローリング(例えば、圧延)によって生成された箔は、体積変化する変換型活性材料粒子を有する上記ブレンドアノードの少なくとも一部での使用に有利となり得る。なぜなら、そのような粒子は、より高い強度、より高い破壊靭性及びより良好な疲労耐性を示すためである。一部の設計例では、上記箔は、有利には、箔の面(又は表面)に平行な方向に平坦化(又は伸張)される粒(例えば、結晶粒)示し得る。一部の設計例では、この粒の平均アスペクト比は、有利には2.0超であってもよい(例えば、約2.0から約1000.0の範囲となり得る)。一部の設計例では、箔の面における粒の平均サイズ(例えば、長さ)は、約0.2ミクロンから約4000ミクロンの範囲となり得る。一部の設計例では、ロール箔(あるいは、「ロール薄化金属箔」という)は、使用される前にアニーリングされて、残留内部応力の量を減少させ、平均粒サイズを増加させ、及び/又は箔の延性を増加させてもよい。ただし、ロール箔では、低い表面粗さの問題があり、その結果として電極への接着性が弱くなり得る。一部の設計例では、上面/表面層を備えるロール箔を用いると有利となり得る。一部の設計例では、層は、ロール箔のバルク/中心部分と類似又は同じ金属組成を示し得る。一部の設計例では、電極表面への接着性を増加させるように表面粗さを高めるために、この上面/表面層は、ロール箔上への電気めっき若しくは他の手段によって堆積され、又はエッチング、レーザー微細加工、機械的手段若しくは他の手段によって生成されてもよい。一部の設計例では、上記層のための所望の範囲の厚さは、(例えば、箔の各側について)約50nmから約7ミクロンの範囲となり得る。
【0129】
一部の設計例では、ブレンドアノードに使用される集電装置箔が比引張強度を約400MPaから約2000MPa(一部の設計例では、約500MPaから約1000MPa)の範囲に示すことが好適となり得る。
【0130】
ブレンドアノードを有する高性能Liイオン電池における使用のための電解質は、ブレンドアノードの適切な組成及び特性を特定するために一部の設計例において使用され得る混合則とは対照的に、純粋なインターカレーション型(例えば、グラファイト)アノード及び純粋な変換型(例えば、Si含有)アノードを有するLiイオン電池において使用される電解質の単純な混合物を含まないことが多い。これは、純粋な変換型(例えば、Si含有)アノード(例えば、プロピレンカーボネート、PC溶媒)において使用される電解質成分の一部が(例えば、グラファイト系構造体への溶媒分子のコインターカレーションに起因して)グラファイト含有アノードの早い故障をもたらし得るためである。同様に、グラファイトアノードの表面に安定した固体電解質界面(SEI)層を形成する電解質組成物の一部は、一部の設計例では、変換型(例えば、Si含有)アノード粒子の表面に安定したSEIを形成することができない場合がある。
【0131】
なお、一部の設計例では、同一のブレンドアノード及び異なるカソードを備えるセルに対して(例えば、高圧(Li/Li+に対して約4.35Vよりも高い電圧、一部の設計例では、Li/Li+に対して約4.45Vよりも高い電圧で充電する)インターカレーション型カソード、低圧(Li/Li+に対して約4.0V未満の電圧で充電する)インターカレーション型カソード、中圧(Li/Li+に対して約4.0~4.35Vの間)のインターカレーション型カソード、Sを含む変換型カソード、Fを含む変換型カソードなどを含む様々な電圧で作動する様々なインターカレーション型に対して)異なる電解質組成物が最も好適な性能を提供する場合もある。
【0132】
インターカレーション型カソード及び純粋なインターカレーション型アノード又はブレンドアノードを有するLiイオン電池のための従来の電解質は、一般に、1~2重量%の他の有機添加物とのカーボネート溶媒の混合物において0.8~1.2Mの単一Li塩(LiPF6など)の溶液で構成される。一般的な有機添加物は、ニトリル類、エステル類、スルホン類、スルホキシド類、亜リン酸系溶媒、シリコン系溶媒、エーテル類などを含み得る。この添加物溶媒は、変性(例えば、硫化又はフッ素化)されてもよい。
【0133】
一部の設計例では、他の(LiPF6だけでなく)Li塩又は塩混合物が、(一部の設計例では、LiPF6塩と組み合わせて)ブレンドアノードを有するLiイオンセルに好適に使用され得る。これらの塩の例は、これらに限定されないが、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF6)、ヘキサフルオロ珪酸リチウム(Li2SiF6)、ヘキサフルオロアルミン酸リチウム(Li3AlF6)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2O4)2)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))、各種リチウムイミド(SO2FN-(Li+)SO2F(LiFSI)、CF3SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF2CF3、CF3SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、CF3OCF2SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2CF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2C6F5 又はCF3SO2N-(Li+)SO2PhCF3など)などを含む。一部の設計例では、上記塩は有意な分率のHFを含まないことが特に有利となり得る。一部の設計例では、上記塩のpHが約6.0から約10.0(一部の設計例では、約7.0から約9.0)を範囲とすることが有利となり得る。
【0134】
一部の設計例では、上記塩は、Li塩(又はそれらの溶媒和対応物)が(低下した融点の)共晶系を構成するように選択されてもよい。一例では、複数のLiイミド塩(例えば、SO2FN-(Li+)SO2F及びCF3SO2N-(Li+)SO2CF3塩の混合物、CF3SO2N-(Li+)SO2CF3及びCF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF3の混合物、又はCF3SO2N-(Li+)SO2CF3及びCF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF2CF3の混合物など)が、上記系を構成し得る。一部の設計例では、上記塩及びそれらの相対分率は、凝固点降下を誘発するように選択され得る。一部の設計例では、塩の最も好適な相対分率は、(この凝固点降下によって)凝固点を最小化するように選択され得る。一部の設計例では、電解質融点をさらに降下させ、SEI特性を向上し、及び活性材料又はそれらの成分の溶解を減少させるように、他のLi及び非Li塩が、少量(例えば、約0.001Mから約0.500M)だけ添加されてもよい。一部の設計例では、非Li塩は、Mg、K、Ca又はNaの塩であってもよい。一部の設計例では、非Li塩は、希土類金属(例えば、La)の塩であってもよい。
【0135】
2以上の塩(例えば、3種の塩、4種の塩又は5種の塩など)を利用する一部の設計例では、(Li又はLiイオン二次電池の場合)塩の少なくとも1つがLiPF6を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、1つの他の塩もLiの塩であることがさらに有利となり得る。少なくとも1つの他の(非LiPF6)塩が、Li/Li+に対して約0.3~2.3V以下へのアノード電位の低下に応じて、電解質において電気化学的に不安定となる(例えば、アノードにおいて分解する)ことがさらに有利となり得る。一部の設計例では、塩の分解が、Li/Li+に対して約0.3V以上において、より好ましくはLi/Li+に対して約1V以上(及び一部の設計例では、より好ましくはLi/Li+に対して約1.5V以上)で起こることが有利となり得る。電解質における非LiPF6塩が、Li/Li+に対して約0.3V以上において、より好ましくはLi/Li+に対して約1V以上(及び一部の設計例では、より好ましくはLi/Li+に対して約1.5V以上、又はさらにLi/Li+に対して約2.0V以上)において、電解質還元を誘発又は触媒することがさらに有利となり得る。電解質における(例えば、部分的に分解された)非LiPF6塩が、電解質における溶媒分子の少なくとも一部と反応してオリゴマーを形成することがさらに有利となり得る。一部の設計例では、非LiPF6塩は、LiFSI塩であり得る。またさらに、LiPF6塩及びLiFSI塩の両方を含む電解質の場合、LiPF6塩及びLiFSI塩のモル分率の比は、好ましくは約100:1から約1:1の範囲であり得る。厳密に最適な比は、電極の特徴、利用される電解質溶媒混合法、及びサイクル作動レジーム(温度、セル電圧範囲など)に依存し得る。一部の設計例では、非LiPF6塩は、フッ化リン酸リチウム(LiPO2F2又はLFO)であり得る。またさらに、LiPF6塩及びLiFSI塩の両方を含む電解質の場合、LiPF6塩及びLFO塩のモル分率の比は、好ましくは約100:1から約1:1の範囲であり得る。厳密に最適な比は、電極の特徴、利用される電解質溶媒混合法、及びサイクル作動レジーム(温度、セル電圧範囲など)に依存し得る。
【0136】
ブレンドアノード(又はより広義には、変換(合金化を含む)型の活性材料を含むアノード)を含むセルの一部の設計例では、電解質における総塩濃度を約0.8Mから約2.4M(一部の設計例では約0.8Mから約1.2M、他の設計例では約1.2Mから約1.4M、他の設計例では約1.4Mから約1.6M、他の設計例では約1.6Mから約1.8M、他の設計例では約1.8Mから約2.0M、他の設計例では約2.0Mから約2.2M、他の設計例では約2.2Mから約2.4M)の範囲に有し、一方で、電解質混合物における小分率の少なくとも1つの少なくとも部分的にフッ素化された溶媒を、電解質における全溶媒の分率として、約1体積%から約30体積%(一部の設計例では約1体積%から約12体積%、他の設計例では約12体積%から約30体積%)の範囲で利用することが有利となり得る。電解質溶媒混合物が直鎖又は環状分子の双方を含むことがさらに有利となり得る。一部の設計例では、直鎖分子の少なくとも一部は、有利には分岐され得る(1以上の分岐を備え得る)。
【0137】
一部の設計例では、電解質が、環状分子共溶媒のうちのエチレンカーボネート(EC)を電解質中に(例えば、電解質の全溶媒の分率として約1体積%から約30体積%の範囲で、一部の設計例では約1体積%から約3体積%、他の設計例では約3体積%から約6体積%、他の設計例では約6体積%から約10体積%、他の設計例では約10体積%から約15体積%、他の設計例では約15体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約25体積%、他の設計例では約25体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約35体積%、他の設計例では約35体積%から約40体積%で)含むことが好適となり得る。一部の設計例では、電解質が、環状分子共溶媒のうちのプロピレンカーボネート(PC)を電解質中に(例えば、電解質の全溶媒の分率として約1体積%から約30体積%の範囲で、一部の設計例では約1体積%から約3体積%、他の設計例では約3体積%から約6体積%、他の設計例では約6体積%から約10体積%、他の設計例では約10体積%から約15体積%、他の設計例では約15体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約25体積%、他の設計例では約25体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約35体積%、他の設計例では約35体積%から約40体積%で)含むことが好適となり得る。一部の設計例では、電解質が、環状分子共溶媒のうちのビニレンカーボネート(VC)又はビニルエチレンカーボネート(VEC)を電解質中に(例えば、電解質の全溶媒の分率として約0.1体積%から約12体積%の範囲で、一部の設計例では約0.1体積%から約1体積%、他の設計例では約1体積%から約2体積%、他の設計例では約2体積%から約3体積%、他の設計例では約3体積%から約4体積%、他の設計例では約4体積%から約5体積%、他の設計例では約5体積%から約6体積%、他の設計例では約6体積%から約7体積%、他の設計例では約7体積%から約8体積%、他の設計例では約8体積%から約12体積%で)含むことが好適となり得る。一部の設計例では、環状分子の少なくとも1つが、フッ素原子を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、電解質が、フルオロエチレンカーボネート(FEC)共溶媒を電解質中に(例えば、電解質の全溶媒の分率として約0.1体積%から約12体積%の範囲で、一部の設計例では約0.1体積%から約1体積%、他の設計例では約1体積%から約2体積%、他の設計例では約2体積%から約3体積%、他の設計例では約3体積%から約4体積%、他の設計例では約4体積%から約5体積%、他の設計例では約5体積%から約6体積%、他の設計例では約6体積%から約7体積%、他の設計例では約7体積%から約8体積%、他の設計例では約8体積%から約12体積%で)含むことが好適となり得る。一部の設計例では、電解質における全ての環状共溶媒の総分率が、電解質における全溶媒の約10体積%から約40体積%を構成することが有利となり得る。
【0138】
一部の設計例では、電解質がEC又はPCの分岐類似体を(例えば、電解質における全溶媒の分率として約1体積%から約30体積%の範囲で)含むことが好適となり得る。使用されるEC及びPCの分岐類似体の例は、これらに限定されないが、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4,5-トリメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。
【0139】
一部の設計例では、電解質が、1以上のエステル共溶媒を電解質に(例えば、電解質の全溶媒の分率として合計約20体積%から約90体積%の範囲で、一部の設計例では約20体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%、他の設計例では約70体積%から約80体積%、他の設計例では約80体積%から約90体積%で)含むことが好適となり得る。
【0140】
一部の設計例では、電解質が、1以上の分岐エステル共溶媒を電解質に(例えば、電解質の全溶媒の分率として合計約20体積%から約90体積%の範囲で、一部の設計例では約20体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%、他の設計例では約70体積%から約80体積%、他の設計例では約80体積%から約90体積%で)含むことが好適となり得る。
【0141】
一部の設計例では、電解質が、1以上の分岐カーボネート共溶媒を電解質に(例えば、電解質の全溶媒の分率として合計約5体積%から約60体積%の範囲で、一部の設計例では約5体積%から約10体積%、他の設計例では約10体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約60体積%で)含むことが好適となり得る。
【0142】
一部の設計例では、直鎖(又は分岐)分子共溶媒の少なくとも1つが(分子あたり)1個、2個又はそれ以上のフッ素原子を含むことも有利となり得る。一部の設計例では、直鎖(又は分岐)分子共溶媒の少なくとも1つが(分子あたり)1個、2個又はそれ以上の窒素原子を含むことも有利となり得る。
【0143】
以下の電解質組成物が、ブレンドアノードを有するLi及びLiイオンセルでの使用に有益となり得る。これらの電解質組成物は、以下の成分の1以上を含み得る:(a)低融点(LMP)溶媒又は溶媒混合物、(b)通常融点(RMP)溶媒又は溶媒混合物、(c)添加物(ADD)溶媒又は溶媒混合物(例えば、アノード電解質界面特性を向上し、カソード電解質界面特性を向上し、Li塩を安定化し、又は他の有用な機能性を与えるように添加される)、(d)主(MN)Li塩又はLi塩混合物、(e)添加物(ADD)塩又は塩混合物(必ずしもLi系ではない)(例えば、アノード電解質界面特性を向上し、カソード電解質界面特性を向上し、Li塩を安定化し、又は他の有用な機能性を与えるように添加される)、(f)他の機能的添加物(OFADD)(例えば、セル安全性を高めるように添加される)。なお、LMP溶媒又はLMP溶媒混合物は、好ましくは、電解質における全溶媒の体積の約10~約95体積%に寄与し得る(高容量ナノ構造化又はブレンドアノードを有するセルについて、LMP溶媒のより好適な体積分率は約20体積%から約90体積%、一部の設計例では約20体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約75体積%、他の設計例では約75体積%から約90体積%の範囲となり得る)。なお、RMP溶媒又はRMP溶媒混合物は、好ましくは、電解質における全溶媒の体積の約5~約90体積%に寄与し得る(一部の設計例では約5体積%から約10体積%、他の設計例では約10体積%から約15体積%、他の設計例では約15体積%から約20体積%、他の設計例では約20体積%から約25体積%、他の設計例では約25体積%から約30体積%、他の設計例では約30体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約90体積%となり得る)。なお、ADD溶媒又は溶媒混合物は、好ましくは、電解質における全溶媒の体積の約0~約6体積%、一部の設計例では電解質における全溶媒の体積の約0~12体積%に寄与し得る。特定の適用例についてのLMP、RMP及びADD溶媒又は溶媒混合物の最適な体積分率の特定の値は、各要因の中でもとりわけ、所与の適用例におけるセル作動電位、セル作動(又はセル蓄電)温度、面積容量負荷、電極の厚さ及び屈曲度、セルに望ましい充電及び放電の速度に依存し得る。
【0144】
例えば、LMP溶媒又は共溶媒としての使用のための適切なエステルの例は、これらに限定されないが、いくつか例を挙げると、各種ギ酸エステル(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ヘプチルなど)、各種酢酸エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチルなど)、各種プロピオン酸エステル(例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ヘプチルなど)、各種酪酸エステル(例えば、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、酪酸アミル、酪酸ヘキシル、酪酸ヘプチルなど)、各種吉草酸エステル(例えば、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸ブチル、吉草酸アミル、吉草酸ヘキシル、吉草酸ヘプチルなど)、各種カプロン酸エステル(例えば、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプロン酸ブチル、カプロン酸アミル、カプロン酸ヘキシル、カプロン酸ヘプチルなど)、各種ヘプタン酸エステル(例えば、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸プロピル、ヘプタン酸ブチル、ヘプタン酸アミル、ヘプタン酸ヘキシル、ヘプタン酸ヘプチルなど)、各種カプリル酸エステル(例えば、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸ブチル、カプリル酸アミル、カプリル酸ヘキシル、カプリル酸ヘプチルなど)、各種ノナン酸エステル(例えば、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、ノナン酸プロピル、ノナン酸ブチル、ノナン酸アミル、ノナン酸ヘキシル、ノナン酸ヘプチルなど)、各種デカン酸エステル(例えば、デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸ブチル、デカン酸アミル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチルなど)、2-メチルプロピオン酸メチル、2,2-ジメチルプロピオン酸メチル(トリメチル酢酸メチルともいう)、2-メチル酪酸メチル、2-メチルプロピオン酸エチル(イソ酪酸エチルともいう)、2,2-ジメチルプロピオン酸エチル(トリメチル酢酸エチルともいう)、2-メチル酪酸エチル、3-メチル酪酸メチル(イソ吉草酸メチルともいう)、3-メチル酪酸エチル(イソ吉草酸エチルともいう)、2-フルオロ-2-メチルプロピオン酸エステル、2-フルオロプロピオン酸メチル、2-メチル-3-シアノプロピオン酸メチル、イソ酪酸-2,2,2-トリフルオロエチル、イソ酪酸-2-シアノエチル、イソ酪酸-2,5-ジシアノペンチル、イソ酪酸-2-(2,2-ジオキシド-3H-1,2-オキサチオール-4-イル)エチル、イソ酪酸-4-(メチルスルホニル)ベンジル、イソ酪酸-2-((ジフルオロホスホリル)オキシ)エチル、イソ酪酸-2-((1,3,2-ジオキサホスホラン-2-イル)オキシ)エチル、イソ酪酸-2-((トリメトキシシリル)オキシ)エチル、ピバル酸-2-(アジドメトキシ)エチル、イソ酪酸アリル、プロピオン酸but-2-イン-1-イル、及び上記エステル類をフッ素化したものを含み得る。
【0145】
電解質におけるRMP溶媒としての使用に(又は電解質におけるRMP溶媒混合物の作製に)適した溶媒の例は、各種カーボネート(フッ素化非環式カーボネートは、高圧カソードを有するセルにおける使用に対して特に有利となり得る)、各種スルホン酸(例えば、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホンなど)及び各種スルホキシド、各種ラクトン、各種亜リン酸系溶媒(例えば、メチルホスホン酸ジメチル、リン酸トリフェニル、2-フルオロ-1,3,2-ジオキサホスホラン2-オキシド、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-1,3,2-ジオキサホスホラン2-オキシドなどの各種直鎖及び各種環状ホスホン酸エステル及びリン酸エステル)、各種シリコン系溶媒、各種の高融点エステル(例えば、約マイナス(-)50℃以上の融点のエステル)、各種エーテル(例えば、ジオキソラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム及びポリエチレンオキシドなど)、各種環状エステル系分子(例えば、ブチロラクトン類及びバレロラクトン類)、各種ジニトリル(例えば、スクシノニトリル、アジポニトリル及びグルタロニトリル)並びに各種イオン液体(例えば、イミダゾリウム類、ピロリジニウム類、ピペリジニウム類などが高圧カソードを備えるセルにおいて特に有用となり得る)を含み得る。RMP溶媒は、(完全に又は部分的に)フッ素化されてもよい。(Liイオン電池において)最も広く使用されているフッ素化溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)である。FECは、より安定した(エチレンカーボネートECと比較して多く架橋された)SEIを形成するのに役立つが、その過剰な使用(例えば、約6~12体積%以上)はまた、特に高温において、及び/又はLi/Li+に対して約4.2V以上で作動する高圧カソードを備えるセルにおいて、セル性能の低下をもたらし得る。電解質におけるADD溶媒としての使用に(又は電解質におけるADD溶媒混合物の作製に)適した溶媒の例は、とりわけ、各種カーボネート(フッ素化カーボネートを含む)、各種スルホン(フッ素化物を含む)、各種スルホキシド(フッ素化物を含む)、各種ラクトン(フッ素化物を含む)、各種リン系溶媒(フッ素化物を含む)、各種シリコン系溶媒(フッ素化物を含む)、各種エーテル(フッ素化物を含む)、各種ニトリル及びジニトリルを含み得る。ニトリル及びジニトリルにはアノードにおける好ましくないSEI形成の問題があるが、小量(例えば、場合によっては約10体積%以下、場合によっては約5体積%以下、場合によっては約2体積%以下)では、電解質混合物におけるそれらの適用例は、特に高圧カソードが利用される場合に、電解質伝導性及びセル性能を向上し得る。場合によっては(例えば、高い(例えば、約20体積%以上の)含有量のいわゆる「SEI形成物」が電解質において利用される場合)、ニトリル及びジニトリルは、LMP溶媒混合物の成分でもあり得る。
【0146】
ここで使用するように、LMPとは、例えば、約マイナス(-)150℃から約マイナス(-)60℃の範囲など、一般に閾値以下(例えば、マイナス(-)60℃以下)となる(溶媒又は溶媒混合物の)融点のことをいう。ここで使用するように、RMPとは、例えば、約マイナス(-)60℃から約プラス(+)30℃の範囲など、一般に閾値以上(例えば、マイナス(-)60℃以上)となる(溶媒又は溶媒混合物の)融点のことをいう。更なる例では、LMPは、約マイナス(-)140℃から約マイナス(-)70℃、又は約マイナス(-)120℃から約マイナス(-)80℃などのより狭い範囲における(溶媒又は溶媒混合物の)融点をいう場合もある。
【0147】
本開示の1以上の実施形態では、電解質におけるLMP溶媒(又はLMP溶媒混合物の少なくとも1つの主要な成分)が約+50℃超の(より好ましくは約+70℃超、さらにより好ましくは約+80℃超の)沸点を示すことがさらに有利となり得る。
【0148】
一部の設計例では、各種環状、直鎖又は分岐エステル(例えば、γ-バレロラクトン、γ-メチレン-γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサラクトン、α-アンゲリカラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン、γ-ブチロラクトン、δ-ヘキサラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、フタリド、γ-カプロラクトン、プロピオン酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、吉草酸メチル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸ブチル、酪酸ブチル、プロピオン酸プロピル、2-メチルプロピオン酸メチル、2,2-ジメチルプロピオン酸メチル(イソ酪酸メチルともいう)、2-メチル酪酸メチル、2-メチルプロピオン酸エチル(イソ酪酸エチルともいう)、2,2-ジメチルプロピオン酸エチル、2-メチル酪酸エチル、2-フルオロ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-フルオロプロピオン酸メチル、2-メチル-3-シアノプロピオン酸メチル、イソ酪酸-2,2,2-トリフルオロエチル、イソ酪酸-2-シアノエチル、イソ酪酸-2,5-ジシアノペンチル、イソ酪酸-2-(2,2-ジオキシド-3H-1,2-オキサチオール-4-イル)エチル、イソ酪酸-4-(メチルスルホニル)ベンジル、イソ酪酸-2-((ジフルオロホスホリル)オキシ)エチル、イソ酪酸-2-((1,3,2-ジオキサホスホラン-2-イル)オキシ)エチル、イソ酪酸-2-((トリメトキシシリル)オキシ)エチル、ピバル酸-2-(アジドメトキシ)エチル、イソ酪酸アリル、プロピオン酸but-2-イン-1-イルなど)(一部の設計例では官能基を有さず、一部の設計例では追加の官能基を有する(例えば、ハロゲン、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、アミン、アミド、イミド、ニトリル、スルホニル、カルボン酸、リン酸エステルなど))、各種環状、直鎖又は分岐エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、フラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2-エチルテトラヒドロフラン、4-メチルピラン、ピラン、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、4-メチル-1,3-ジオキサン、ジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、メトキシエタン、ジオキサン、ジオキソラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、tert-ブチルメチルエーテルとしても知られているメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、イソブチルメチルエーテル、1-メトキシ-2-メチルプロパン、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、ジイソプロピルエーテル、プロピルtert-ブチルエーテル、1-メチルエチル2-メチルプロピルエーテル、2,2-ジメチルプロピルエチルエーテル、イソブチンプロピルエーテルなど)(一部の設計例では官能基を有さず、一部の設計例では追加の官能基を有する(例えば、ハロゲン、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、アミン、アミド、イミド、ニトリル、スルホニル、カルボン酸、リン酸エステルなど))、各種無水物(例えば、無水グルタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、無水酪酸、無水イソ酪酸など)(一部の設計例では官能基を有さず、一部の設計例では追加の官能基を有する(例えば、ハロゲン、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、アミン、アミド、イミド、ニトリル、スルホニル、カルボン酸、リン酸エステルなど))並びに上記溶媒及びそれらの混合物をフッ素化したものが、LMP混合物におけるLMP溶媒又は共溶媒として有利に利用され得る。
【0149】
一部の設計例では、異なる官能基を選択された電解質溶媒に(例えば、無水物、エーテル、エステルなどのLMP若しくはLMP混合物における溶媒の少なくとも一部に、又はRMP若しくはRMP混合物による溶媒の少なくとも一部に)添加することは、特定の適用例において種々の有利な効果を与え得る。例えば、(アルカン、メトキシ、アミンなどの)電子供与材料を添加することは、還元電位を低下させる(すなわち、還元をより困難とする)場合があり、それは、特定の溶媒に対してその還元が回避又は最小化される必要がある場合(例えば、上記溶媒がSEIを形成するのに使用されないがセル作動温度において電極細孔内の高いイオン伝導性を維持するのに添加される場合)に有利となり得る。他の例では、(フッ素、エステル、ニトロ基などの)電子求引材料を添加することは、溶媒還元電位を上昇させる(還元をより容易とする)場合があり、これはその溶媒が安定的なSEI形成の成分として使用される場合に有利となり得る。一例では、(他の電解質溶媒成分が還元される前に)高電位において上記SEIを形成することは、電極表面における他の溶媒(例えば、より不安定なSEI、よりイオン伝導性の低いSEI又はより好適でない他の特徴のSEIを形成する溶媒)の望ましくない還元を防止し得る。さらに、上記溶媒は、カソードが高電極電位(例えば、Li/Li+に対して約4.4V以上)に曝露される場合、より高い酸化電位を与え得る(向上した安定性を維持すること、漏れ速度を低減することなどのために有利となり得る)。
【0150】
電子求引材料の場合、上記溶媒又は共溶媒における選択水素原子のフッ素原子による(例えば、種々のフッ素化反応又は他のメカニズムを用いることによる)置換は、一部の設計例では特に有利となり得る。具体的には、適用例において既に合理的に正しく作用している(例えば、いくらか安定的なSEI層を形成している)電解質溶媒/共溶媒(例えば、LMP及び/又はRMP電解質溶媒成分)は、特にブレンドアノードを備える変換型がセル構成において利用される場合、少なくとも部分的なフッ素化から追加的に利益を得る(例えば、増加したサイクル安定性又は他の利点を示す)ことができる。この反応は、サイクル中に(例えば、保護アノードSEI又はカソードSEI層の安定性の強化によって)SEI形成電位を上昇させ、電極の電気化学的安定性を高めることができる。適切な例は、各種フッ素化エステル、各種フッ素化エーテル、LMP成分の場合に各種フッ素化無水物、及びRMP成分の場合に各種他のフッ素化溶媒(カーボネート、ニトリル、スルホン、より大きなエステルなどを含む)を含む。最適なフッ素化又はフッ素化溶媒の含有量は適用例ごとに変わり得ることが分かるはずである。例えば、過剰なフッ素化又はフッ素化溶媒の多用は、一部の適用例では(例えば、電池カソードが高温(例えば、約40℃以上)及び高作動電位(例えば、Li/Li+に対して約4.4V以上)に曝され得る場合)望ましくない場合がある。さらに、過剰なフッ素化又はフッ素化溶媒の多用は、セパレータ又は電極の一部の電解質湿潤を低減し、したがって特により低い温度において容量の利用及びレート性能を低下させる場合がある。フッ素化溶媒の最適な含有量は、セル作動並びに電極及びセパレータ表面の化学的性質及び特性に依存し得る。
【0151】
一部の設計例では、それらの構造における二重結合(例えば、溶媒分子あたり1個、0個又は2個以上の二重結合)又は化学的若しくは電気化学的反応に応じてポリマーを形成する他の機会を示す(例えば、LMP又はRMP電解質溶媒成分の成分としての)溶媒(共溶媒)の使用は、(例えば、アルケン重合による)より安定的なSEIの形成に有利となり得る。二重結合及びフッ素の両方を含む溶媒分子は、好適な特徴(例えば、向上した安定性など)を有するSEIを形成するのに特に有望となり得る。同様に、(例えば、プロパンスルホンなどのアルケン又は様々なヘテロ原子を含む環状構造体を有する溶媒において)開環重合を受け得る溶媒(共溶媒)も、一部の設計例では、より安定的なSEIを形成するそれらの能力に起因して電解質成分として有利に利用され得る。適切な二重結合分子の例は、ビニレンカーボネート、無水マレイン酸、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シクロヘキス-2-エン-1-オン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン、シクロヘキサ-3,5-ジエン-1,2-ジオン、シクロペンタ-2,4-ジエン-1-オン、フラン-2(5H)-オン、ジアリルカーボネート、メチルアリルカーボネート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、酢酸ビニルトリメチル、イソ吉草ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、酪酸アリル、イソ酪酸アリル、トリメチル酢酸アリル、イソ吉草アリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルを含み得る。
【0152】
一部の設計例では、それらの構造における塩素-炭素結合(例えば、溶媒分子あたり1個、0個又は2個以上の塩素-炭素結合)又は好適な特性のSEIを形成する他の機会を示す(例えば、LMP又はRMP電解質溶媒成分の成分としての)溶媒(共溶媒)の使用は、電荷移動抵抗特性(例えば、向上した安定性など)に有利となり得る。塩素-炭素結合分子の例は、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ヘキサクロロ-1,3-ブタジエン、クロロエチレンカーボネート、4,5-ジクロロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-クロロ-5-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-クロロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-クロロ-1,3-ジオキソール-2-オン、4-(クロロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オンを含み得る。
【0153】
一部の設計例では、電解質組成における溶媒の混合物を有することが有益となる場合があり、その1以上は広い電気化学安定性ウィンドウを示し、その1以上の他のものは(少なくとも電解質塩との組合せにおいて)より狭い電気化学安定性ウィンドウを示す。一部の設計例では、電解質溶媒の少なくとも一部の電気化学安定性ウィンドウの差が約1Vを超えることが有益となり得る。一部の設計例では、LMP溶媒混合物の少なくとも1つの成分が(少なくとも同じ電解質塩で使用される場合に)RMP溶媒混合物の少なくとも1つの成分よりも高い電気化学安定性ウィンドウを示すことが有利となり得る。
【0154】
一部の設計例では、適切な電解質組成物におけるLMP溶媒が、最適な性能のための特定の分子サイズを示すことが有利となり得る。LMP分子の最適なサイズ又はサイズ分布は、電極の特徴、利用される電解質溶媒混合法及びセルサイクルレジーム(温度、電圧範囲など)に依存し得る。一例では、(例えば、2以上のLMP溶媒が利用される場合のLMP溶媒混合物、又は単一溶媒LMP組成物における)平均的なLMP分子は、好ましくは溶媒分子あたり約9個の原子から約30個の原子を含み得る。一部の設計例では、(例えば、LMP溶媒混合物、又は単一溶媒LMP組成物における)平均的なLMP分子は、その分子構造内に約3個から約10個の炭素原子を含む。一部の設計例では、より小さなLMP分子(特に、より小さな直鎖分子)は、セルサイクル安定性の低下をもたらし得る。一部の設計例では、より大きなLMP分子(特に、より大きな直鎖分子)は、セルの望ましくないレート性能の低下をもたらし得る。一部の設計例では、直鎖エステルがLMP溶媒の成分として使用される場合、そのエステルが分子あたり平均約3個から約9個の炭素原子を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、LMP溶媒が側鎖(追加の官能基)を有するエステルを含む場合、そのエステルが分子あたり平均約4個から約12個の炭素原子を含むことが有利となり得る。一部の設計例では、分子あたり(平均)4~8個の炭素原子を有する(LMP共溶媒における)平均的なエステル分子が、セルにおける最も安定的な性能を与え得る。一部の設計例では、分子あたり(平均)5~7個の炭素原子(一部の設計例では、分子あたり5個の炭素原子)を有する(LMP共溶媒における)平均的なエステル分子が、セルにおける最も安定的な性能を与え得る。一部の設計例では、LMP溶媒の約50体積%以上が分子あたり(平均)5又は6個の炭素原子を有するエステル分子を含むことが有利となり得る。
【0155】
(例えば、ブレンドアノードを有し、高圧インターカレーションカソードを有する一部のセルに対して)適切な電解質混合物においてエステルが共溶媒として使用される一部の設計例では、電解質溶媒におけるエステルの総分率が、電解質における全溶媒の総体積分率として、約20体積%から約90体積%(直鎖又は分岐エステルを含む一部の設計例では、約20体積%から約40体積%、他の設計例では約40体積%から約50体積%、他の設計例では約50体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%、他の設計例では約70体積%から約80体積%、他の設計例では約80体積%から約90体積%)の範囲となることが有利となり得る。一部の設計例では、より低いエーテル分率及びより高いエーテル分率が、特に高温においてサイクル安定性の顕著な低減をもたらし得る。
【0156】
エステルが(例えば、ブレンドアノードを有し、高圧インターカレーションカソードを含むインターカレーションカソードを有する一部のセルについて)適切な電解質混合物において共溶媒として使用される一部の設計例では、分岐エステルが、電解質における全エステルの約40体積%から約100体積%(一部の設計例では、約40体積%から約50体積%、他の設計例では約50体積%から約60体積%、他の設計例では約60体積%から約70体積%、他の設計例では約70体積%から約80体積%、他の設計例では約80体積%から約100体積%)を構成すると有利となり得る。より高い分率の分岐エステルの使用は、カソードにおける(特に、高電圧において又は高温において)ガス化を減少させ、サイクル寿命を向上し、寿命終了時のセル膨出を減少させ、他の性能又は安全性の利益を与え得る。この利益の一部は、インターカレーション型材料(例えば、グラファイト又は軟質カーボン若しくは硬質カーボン)を含まない純粋な変換型アノードを備えるセルにも当てはまり得る。
【0157】
一部の設計例では、電解質溶媒混合物において同じ化学式であるが異なる分子構造の2個、3個又はそれ以上の分岐又は直鎖エステルの組合せを用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。例えば、以下の分岐又は直鎖エステルの2個、3個又はそれ以上の組合せが用いられてもよい:イソ酪酸エチル(C6H12O2)、イソ吉草酸メチル(C6H12O2)、プロピオン酸イソプロピル(C6H12O2)、酢酸イソブチル(C6H12O2)、ギ酸イソアミル(C6H12O2)、吉草酸メチル(C6H12O2)、酪酸エチル(C6H12O2)、プロピオン酸プロピル(C6H12O2)、酢酸ブチル(C6H12O2)及びギ酸アミル(C6H12O2)。あるいは、他の例では、以下のエステルの2個、3個又はそれ以上の組合せを用いる:イソ吉草エチル(C7H14O2)、カプロン酸イソメチル(C7H14O2)、吉草イソエチル(C7H14O2)、酪酸イソプロピル(C7H14O2)、プロピオン酸イソブチル(C7H14O2)、酢酸イソアミル(C7H14O2)、ギ酸イソヘキシル(C7H14O2)、カプロン酸メチル(C7H14O2)、吉草酸エチル(C7H14O2)、酪酸プロピル(C7H14O2)、プロピオン酸ブチル(C7H14O2)、酢酸アミル(C7H14O2)、ギ酸ヘキシル(C7H14O2)。あるいは、他の例では、以下のエステルの2個、3個又はそれ以上の組合せを用いる:イソ酪酸メチル(C5H10O2)、イソプロピオン酸エチル(C5H10O2)、酢酸イソプロピル(C5H10O2)、ギ酸イソブチル(C5H10O2)、酪酸メチル(C5H10O2)、プロピオン酸エチル(C5H10O2)、酢酸プロピル(C5H10O2)、ギ酸ブチル(C5H10O2)。
【0158】
一部の設計例では、電解質において、例えば、炭素原子数が3以下で異なる類似の化学式の2個、3個又はそれ以上のエステルの組合せ(及び一部の設計例ではエステル又は無水物の組合せ)を用いること(例えば、C5H10O2、C6H12O2及びC7H14O2の化学式の分岐(又は直鎖)エステルの組合せを用いること)が(セル性能の向上、例えば、レートの向上又は安定性の向上などについて)有利となり得る。一部の設計例では、エステル(又はエーテル若しくは無水物)の上記組合せが個々の溶媒(例えば、個々のエステル、個々のエーテル又は個々の無水物)の各々よりも低い融点を示す場合に有利となり得る。
【0159】
一部の設計例では、電解質において官能基を有するエステル及び官能基を有さないエステルの組合せ(及び一部の設計例では、エーテルの組合せ又は無水物の組合せ)を用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。一部の設計例では、上記エステル(又はエーテル)の直鎖(又は分岐若しくは環状)部分が、(例えば異なる)官能基の存在がこれらエステル(又はエーテル)を分離するように、同一又は類似であることが有利となり得る。
【0160】
分岐及び直鎖エステル、分岐及び環状エステル、環状及び直鎖エステル又は分岐、直鎖及び環状エステルの組合せ(及び一部の設計例ではエステル及びエーテルの組合せ)が用いられる場合並びにそれらが官能基を有する場合の一部の設計例では、エステル又はエーテルの少なくとも一部が官能化されないままであることが(セル性能の向上について)有利となり得る。
【0161】
一部の設計例では、電解質において分岐及び直鎖エステル、分岐及び環状エステル、環状及び直鎖エステル、又は分岐、直鎖及び環状エステルの組合せを用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。
【0162】
一部の設計例では、直鎖、分岐又は環状エステルの組合せが用いられる場合及びそれらの少なくとも一部が官能基を有する場合、直鎖、分岐又は環状エステルの少なくとも一部が同じ官能基を有することが(セル性能の向上について)有利となり得る。
【0163】
一部の設計例では(各種エステルの混合物が使用される場合)、電解質混合物における直鎖又は分岐エステルが同じ化学テール(同じR基)を示し又は同じサブクラスに属することが有利となり得る。
【0164】
一部の設計例では、電解質においてエーテル及びエステルの組合せを用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。一部の設計例では、エステル分子における炭素原子数がエーテル分子における炭素原子数を6以上超えないこと(例えば、エーテル分子に2又は3個の炭素原子を有するとともにエステル分子に5、6又は7個の炭素原子を有する)が有利となり得る。
【0165】
一部の設計例では、電解質においてエステル、エーテル及び無水物(例えば分岐)の組合せを用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。
【0166】
一部の設計例では、エステル、エーテル及び無水物の組合せが用いられる場合、そのエステル(又はエーテル若しくは無水物)の直鎖(又は分岐若しくは環状)部分が、(例えば異なる)官能基の存在がこれらエステル(又はエーテル若しくは無水物)を分離するように、同一又は類似であることが有利となり得る。
【0167】
一部の設計例では、電解質において2以上の(例えば、直鎖、分岐又は環状)無水物の組合せを用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。
【0168】
(高圧カソードを有するセルを用いる)一部の設計例では、RMP溶媒の成分としてスルホンを用いることが(セル性能の向上について)有利となり得る。一部の設計例では、スルホンが、電解質調合における全RMP溶媒の約17体積%から約97体積%を構成することが有利となり得る。一部の設計例では、スルホンが、環状及び直鎖(又はより一般的には環状ではない)スルホンの両方を含むことが有利となり得る。
【0169】
図2は、適切な変換型Si含有及びC含有活性粒子の例示的ラマンスペクトルを示し、複合粒子及び炭素含有コーティング層についての好適なカーボンシグネチャ及び好適な(例えば、より高い)I
D/I
G比を示す。特に、ラマンスペクトルは、伝導性カーボンコーティング層を備えるシェルを有する(例えば、粉末として構成される)変換型Si含有複合粒子で構成されるサンプルAについて示し、サンプルBも、伝導性カーボンコーティング層を備えるシェルを有する(例えば、粉末として構成される)変換型Si含有複合粒子で構成される。より高いI
D/I
G比は、一部の設計例では、ブレンドアノードにおいて、より良好な安定性及びレート性能に対応し得る。
【0170】
図3は、(a)(活性材料の総重量に対して)約19.2重量%の略球形状の適切な変換型Si含有活性材料粒子、5~10m
2/gの範囲及び1~2ミクロン範囲内の中央値サイズ(直径)のBET SSA、及び(b)(活性材料の総重量に対して)約81.8重量%の不規則形状の人工グラファイト粒子、1~1.5m
2/gの範囲及び12~20ミクロン範囲内の中央値D
v50サイズ(平均寸法)のBET SSAを含む例示的な適切な水性スラリーコーティングブレンドアノードを示す。これらのグラファイト粒子は、約340mAh/gまでの可逆容量及び約94%までの初回サイクルクーロン効率を示す。これらのSi含有活性材料粒子は、1500~1700mAh/gの範囲の可逆容量及び約92%までの初回サイクルクーロン効率を示す。ブレンドアノードはまた、2成分CMC/SBRバインダー(混合されたCMC及びSBRの総重量に対して約25重量%及び約75重量%のCMC及びSBRの相対分率を有する)を含む。ブレンドされた(カレンダー処理された)アノードの密度は1.3~1.5g/cm
3の範囲に推定された。ブレンドアノードにおける活性粒子の充填効率は、58~65体積%の範囲にあると推定された。
【0171】
図4は、グラファイト又はブレンドアノードと整合されたLCOカソードを備えるセルについての例示的な放電電圧曲線を示し、ブレンドアノードの42%の容量をSi含有多孔質ナノ複合材粉末によって与えた。この特定の例では、Si含有多孔質ナノ複合材粉末は略球形状であり、コアシェル構造及び以下の特徴を示した:平均粒子サイズ(直径)が約1~約2ミクロンの範囲であり、比表面積が約2.5~約25m
2/gの範囲であり、閉細孔体積が約0.2cm
3/gから約0.8cm
3/gの範囲であり、総多孔度が約20体積%から約70体積%の範囲であり、伝導性sp
2結合炭素を含み、532nmの波長で作動するレーザーを用いて測定した場合に約1から約2の範囲のラマンD及びGバンドのピーク強度のI
D/I
G比を示し、約40重量%から約50重量%のシリコン(Si)を含み、2重量%未満の酸素(O)を含んでいた。ブレンドアノードは、CMC及びSBRブレンドバインダー並びにカーボンナノチューブ炭素添加物を含んでいた。ブレンドセル電解質は、40%以上の低融点エステルをLMP共溶媒として含んでいた。
【0172】
図5Aは、グラファイトアノードの例示的選択性能特徴(初回サイクルリチウム化容量、脱リチウム化容量、初回サイクル損失及び初回サイクルクーロン効率)対Si含有粒子:本開示の態様において説明した微細構造、化学的性質及び特徴を有する多孔質コアシェルシリコン含有ナノ複合材粉末又はカーボンコーティングシリコン酸化物粉末、によって寄与される総容量の異なる%によるブレンドアノードの上記特徴を示す。ブレンドアノードは、CMC及びSBRブレンドバインダーを含んでいた。
【0173】
図5Bは、グラファイトアノードの例示的選択性能の特徴(初回サイクル面積リチウム化容量、初回サイクルクーロン効率、初回サイクル面積可逆容量)対Si含有粒子:本開示において説明した微細構造、化学的性質及び特徴を有する多孔質コアシェルシリコン含有ナノ複合材粉末又はカーボンコーティングシリコン酸化物粉末、によって寄与される総容量の異なる%によるブレンドアノードの上記特徴を示す。ブレンドアノードは、CMC及びSBRブレンドバインダーを含み、伝導性添加物を含まなかった。活性材料は、ブレンドアノードの約97重量%まで寄与した(Cu集電装置箔の重量は考慮せず)。
【0174】
図6は、LCOカソード、並びにCMC及びSBRブレンドバインダー、カーボンナノチューブの伝導性添加物を有し、2種は適切であり1種は適切でない3種のLiPF
6系電解質において適切な組成及び特性のSi含有ナノ複合材粒子によって与えられる(残余はグラファイトによって与えられる)約42%の容量を有するブレンドアノードに基づく例示的な完全セルのサイクル安定性を示す。適切でない電解質は、有意な分率のPC共溶媒(29体積%)を含み、ECを含まなかった。適切な電解質は、VC若しくはEC又はその両方及び高体積分率のエステル共溶媒(それぞれ、58体積%又は48体積%)を含んでいた。これらのエステル共溶媒分子は、分子あたり平均5炭素原子を有していた。これらのセルは、適度な容量負荷(3~3.5mAh/cm
2可逆)を有して構築され、約C/2レートで2.5~4.4V内においてサイクル作動した(反復して充放電された)。
【0175】
図7Aは、層状インターカレーション型カソード(LCO)並びにインターカレーション型アノード(グラファイト)又は適切な組成及び特性のコアシェルSi含有多孔質ナノ複合材粒子若しくはカーボンコーティングシリコン酸化物(SiOx)粒子によって与えられた24%及び42%のアノード面積容量を有するブレンドアノードに基づく例示的完全セルの容量及び容量保持率を示す。適切なSi系多孔質ナノ複合材粒子によるブレンドアノードにおいて、優れたサイクル安定性(グラファイトアノードよりは若干劣る)が示された。一部の設計例では、LCOがNCM又はNCAカソード、特にNi豊富なカソードに置換された場合に、さらに良好なサイクル安定性が達成可能であった。
【0176】
図7Bは、層状Ni豊富インターカレーション型カソード(NCM-811)並びに適切な組成及び特性のコアシェルSi含有多孔質ナノ複合材粒子又はカーボンコーティングシリコン酸化物(SiOx)粒子によって与えられた20%、33%、41%及び49%のアノード面積容量を有するブレンドアノードに基づく例示的完全セルの面積容量及び容量保持率を示す。適切なSi系多孔質ナノ複合材粒子によるブレンドアノードにおいて、優れたサイクル安定性(グラファイトアノードよりは若干劣る)が示された。セルは、2.5~4.2Vの電圧範囲においてC/2レートでサイクル作動した。
【0177】
図8は、ブレンドアノードにおけるSi含有ナノ複合材粒子が寄与した異なる%の容量を有する例示的なアノード(0及び100%を除き、アノードはグラファイト系又は純粋にSi含有ナノ複合材系のいずれかである)についての、モデル化された容量及び形成損失に対する実験的に得られた容量及び形成損失の例示的比較を示す。
【0178】
一部の設計例では、ブレンドアノードの変換型アノード材料は、以下の好適な特徴、組成又は特性の1つ、2つ若しくはそれ以上又は全部を示し得る:約1400mAh/gから約2200mAh/gの範囲の中央値比可逆容量、約88%から約96%の範囲の初回サイクルクーロン効率、その組成における約40重量%から約60重量%のSi(Siは約2nmから約40nmの範囲の体積平均サイズを有する分散Siナノ粒子の形態で存在する)、コアシェルナノ複合材粉末形態、約1nmから約20nmの範囲の外側シェルの平均厚、約0.1~約1cm3/gを範囲とする細孔体積及び約1nmから約50nmを範囲とする平均内部細孔サイズを有する、組み入れられたセルにおける電解質に到達できない内部細孔の内部多孔度、約1~約2g/cm3の範囲の平均密度、約1~約25m2/gの範囲の比表面積、約2重量%未満の酸素(O)、約0.5重量%未満の水素(H)、約6重量%から約60重量%の炭素(C)(この炭素の特性は、約532nmの波長で作動するレーザーが装備されたラマン分光器を用いて変換型アノード材料粉末に対して記録される場合にラマンGバンドに対するラマンDバンドの強度比(ID/IG)が約0.7から約2の範囲となるようなものである)、コアシェル構造(シェルはsp2結合炭素を含む)。
【0179】
一部の設計例では、ブレンドアノードは、以下の好適な特徴、組成又は特性:約400mAh/gから約1200mAh/gの範囲の重量容量(集電装置箔の重量を入れない)、約3~約4.5mAh/cm2(例えば、電子デバイス用)又は約4.5~約8mAh/cm2(例えば、電気自動車用)の範囲の可逆面積容量のうちの1つ、2つ若しくはそれ以上又は全部を示し、以下:軟質カーボン、硬質カーボン、合成(又は人工)グラファイト、天然グラファイト、約1.2g/cm3から約1.8g/cm3の範囲の密度(集電装置の重量を入れない)のうちの少なくとも1つを備え、約2重量%から約7重量%のポリマー又はコポリマーバインダーを含み(集電装置の重量を入れない)、バインダーに以下のポリマー又はコポリマー:PAA又はその塩、CMC、アルギン酸又はその塩、SBRのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0180】
一部の設計例では、適切なブレンドアノードを有するLiイオン電池セルは、以下の遷移金属:Ni、Co、Mn、Feの少なくとも1つを含むインターカレーション型カソード材料を含み得る。一部の設計例では、このカソードは、LCO、NCM、NCA、LMO、NCMA及び関連するカソード材料を備え得る。他の設計例では、このカソードは、LFP、LFMP、他のオリビン型及び関連するカソード材料を含んでいてもよい。
【0181】
説明のための一例において、以下の(a)~(d)を含むLiイオン電池セルが開示される:(a)適切な組成(例えば、上述のようなグラファイト又は軟質カーボンとSi含有活性材料のブレンド)の多孔質ブレンドアノードであって、特性が、約380mAh/gから約800mAh/gの範囲の比容量(全ての活性材料、伝導性添加物及びバインダーの質量及び体積を考慮するが、集電装置の重量及び体積を入れない)、約3mAh/cm2から約6.5mAh/cm2の範囲の面積可逆容量負荷、及び約15体積%から約50体積%の範囲の多孔度を示す多孔質ブレンドアノード、(b)多孔質インターカレーション型カソード(LCO、NCM、NCA、NCMA、LMO、LFP、LMFPなど又はそれらの混合物など)であって、約150mAh/gから約240mAh/gの範囲の比容量(全ての活性材料、伝導性添加物及びバインダーの質量及び体積を考慮するが、集電装置の重量及び体積を入れない)、約2.7mAh/cm2から約6.0mAh/cm2の範囲の面積可逆容量負荷、及び約10体積%から約30体積%の範囲の多孔度を示す多孔質インターカレーション型カソード、(c)多孔質セパレータであって、セラミック(一部の例では、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムなど)及びポリマー成分の双方を含み、(積層又はロールセルにおいて圧縮された場合に)約5ミクロンから約15ミクロンの範囲の総厚及び約30体積%から約75体積%の範囲の総多孔度を備える多孔質セパレータ、(d)多孔質アノード、セパレータ及びカソードに浸透する液体電解質であって、電解質は(i)合計約0.1体積%から約2体積%の量において1個、2個、3個又はそれ以上のニトリル(例えば、カソードの安定性を向上するのに添加される)、(ii)合計約60体積%から約92体積%の量の1個、2個、3個又はそれ以上のエステル(イソ酪酸エチル、イソ吉草メチル、プロピオン酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸イソアミル、吉草メチル、酪酸エチル、プロピオン酸プロピルなど又はそれらの混合物など)、(iii)合計約6体積%から約39.9体積%の量の1個、2個、3個又はそれ以上の環状カーボネート(FEC、VC、VEC、PC、ECなど又はそれらの混合物など)の混合物に溶解された約1Mから約1.6Mの濃度のLi塩(LiPF6、LFO、LiNO3、LiFSI、LiTFSIなど又はそれらの混合物など)を含み、総Liイオン電池セル容量は約1.5Ahから約150Ahの範囲となる、液体電解質。この特定の説明のための例では、電解質はほとんど(例えば、約0~10体積%しか)又は全く直鎖又は分岐カーボネートを含まない。LCOカソードの場合、セルは、例えば、約4.4~4.5Vまで充電され得る。NCA、NCM又はNCMAカソードの場合、セルは、例えば、約4.2~4.35Vまで充電され得る。
【0182】
一部の設計例では、適切なブレンドアノードを有するLiイオン電池セルに使用される電解質は、有利には(他の共溶媒の中でもとりわけ)LMP共溶媒及び環状カーボネートとしての両エステル(直鎖若しくは分岐エステル又は他の種々の組合せ)を含み得る。一部の設計例では、エステルは、有利には(例えば、アノードSEIの安定性の向上及びより長いサイクル安定性について)主に(又は専ら)分岐エステルであってもよい。一部の設計例では、エステル(例えば、分岐エステル、又は分岐及び直鎖エステルの混合物)の体積分率は、電解質における全溶媒の分率として約20体積%から約90体積%の範囲となることが有利となり得る。一部の設計例では、エステル(例えば、分岐エステル、又は直鎖及び分岐エステルの混合物など)の分子は、分子あたり平均約5個~約7個の炭素(C)原子を有し得る。一部の設計例では、この電解質混合物は、さらにニトリル添加物を含んでいてもよい。
【0183】
本記載は、いずれの当業者も本発明の実施形態を製造又は使用可能とするように提供される。しかしながら、それらの実施形態に対する種々の変形が当業者には直ちに明らかとなるため、本発明はここに開示される特定の調合、プロセス工程及び材料に限定されないことが分かるはずである。すなわち、ここに規定される包括的原理は、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極及びカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極とをイオン結合する電解質と、
前記アノード電極と前記カソード電極とを電気的に分離するセパレータと、
を備え、
前記アノード電極は、変換型アノード
粒子及びインターカレーション型アノード
粒子の混合物を含み、
前記変換型アノード
粒子は、約1400mAh/gから約2200mAh/gの範囲の中央値比可逆容量を示し、
前記変換型アノード
粒子は、約88%から約96%の範囲の初回サイクルクーロン効率を示す、Liイオン電池。
【請求項2】
前記変換型アノード
粒子は、約40重量%から約60重量%のSiを含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項3】
前記変換型アノード
粒子は、コアシェルナノ複合材粒子を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項4】
前記コアシェルナノ複合材粒子の外側シェルの平均厚は、約1nmから約20nmの範囲である、請求項3に記載のLiイオン電池。
【請求項5】
前記変換型アノード
粒子は、前記電解質に到達できない1以上の内部細孔を備える、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項6】
前記1以上の内部細孔の体積は、約0.1~約1cm
3/gの範囲である、請求項5に記載のLiイオン電池。
【請求項7】
前記1以上の内部細孔の平均サイズは、約1nmから約50nmの範囲である、請求項5に記載のLiイオン電池。
【請求項8】
前記変換型アノード
粒子は、約1~約2g/cm
3の範囲の密度を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項9】
前記変換型アノード
粒子は、約1~約25m
2/gの範囲の比表面積を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項10】
前記変換型アノード
粒子は、約2nmから約40nmの範囲に体積平均サイズを有するSi含有ナノ粒子を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項11】
前記変換型アノード
粒子は、約2重量%未満の酸素(O)を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項12】
前記変換型アノード
粒子は、約0.5重量%未満の水素(H)を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項13】
前記変換型アノード
粒子は、約6重量%から約60重量%の炭素(C)を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項14】
前記変換型アノード
粒子は、コアシェル構造を示し、
前記コアシェル構造のシェルは、sp
2結合炭素を含む、
請求項13に記載のLiイオン電池。
【請求項15】
ラマンGバンドの強度に対するラマンDバンドの強度の比率(I
D/I
G)は、約532nmの波長において作動するレーザーが装備されたラマン分光器を用いて、粉末として構成されて前記変換型アノード
粒子に記録される場合に、約0.7から約2の範囲にある、請求項13に記載のLiイオン電池。
【請求項16】
いずれの集電装置箔部品も除外した前記アノード電極が、約400mAh/gから約1200mAh/gの範囲の重量容量を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項17】
前記アノード電極、前記カソード電極又はその両方が、約3~約4.5mAh/cm
2又は約4.5~約8mAh/cm
2の範囲の可逆面積容量を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項18】
前記インターカレーション型アノード粒子は、軟質カーボン、硬質カーボン、合成グラファイト
及び/又は天然グラファイトを含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項19】
いずれの集電装置箔部品も除外した前記アノード電極が、約1.2g/cm
3から約1.8g/cm
3の範囲の密度を示す、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項20】
前記アノード電極は、ポリマー又はコポリマーバインダーを含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項21】
いずれの集電装置箔部品も除外した前記アノード電極は、約2重量%から約7重量%のポリマー又はコポリマーバインダーを含む、請求項20に記載のLiイオン電池。
【請求項22】
前記ポリマー又はコポリマーバインダーは、アルギン酸及びその各種塩、ポリアクリル酸(PAA)若しくはその塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸若しくはその塩、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はそれらの組合せを含む、請求項20に記載のLiイオン電池。
【請求項23】
前記カソード電極は、Ni、Co、Mn、Fe又はそれらの組合せを含むインターカレーション型カソード材料を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項24】
前記電解質は、1以上のエステル及び1以上の環状カーボネートの両方を含む、請求項1に記載のLiイオン電池。
【請求項25】
前記1以上のエステルの体積分率は、前記電解質における全溶媒の分率として、約20体積%から約90体積%の範囲である、請求項24に記載のLiイオン電池。
【請求項26】
前記1以上のエステルは1以上の分岐エステルを含み、1以上の該分岐エステルは分子あたり平均約5個と約7個の間の炭素(C)原子を有するエステル分子を含む、請求項24に記載のLiイオン電池。
【請求項27】
前記1以上の環状カーボネートは、プロピレンカーボネート(PC)を含まない、請求項24に記載のLiイオン電池。
【請求項28】
前記1以上の環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)及び/又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む、請求項24に記載のLiイオン電池。
【請求項29】
前記電解質は、PCを含まない、請求項1に記載のLiイオン電池。
【国際調査報告】