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特表2023-531375がん治療における使用のためのベルバラフェニブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】がん治療における使用のためのベルバラフェニブ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230714BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
   C07D 495/04 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
C07D495/04 105Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573226
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 US2021032667
(87)【国際公開番号】W WO2021242547
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/030,171
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515182071
【氏名又は名称】ハンミ ファーム.カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANMI PHARM.CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, テ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ユン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ノ, ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】チャン, マシュー ツン-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マレク, シヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, イビン
(72)【発明者】
【氏名】イェン, イヴァナ イェン イェン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071DD40
4C071EE13
4C071FF05
4C071HH17
4C071HH28
4C071JJ01
4C071JJ05
4C071LL01
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB26
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
ベルバラフェニブの使用のための方法であって、BRAFV600E変異、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASG12R変異、KRASG13D変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASG13D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61L変異、NRASQ61R変異、及びNRASG12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有するがんを処置するための、ベルバラフェニブの使用のための方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるがんを処置するための方法であって、有効量のベルバラフェニブを前記ヒト対象に投与することを含み、前記がんが、BRAF変異、KRAS変異、及びNRAS変異から選択される少なくとも1つの変異を有する、方法。
【請求項2】
前記がんが、BRAFV600E変異、BRAFG468R変異、BRAFV599E変異、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASG12R変異、KRASG13D変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASG13D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61L変異、NRASQ61R変異、NRASG12C変異、NRASQ61L変異、及びNRASG13D変異から選択される少なくとも1つの変異を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんが、黒色腫、腎芽細胞腫、GIST、CRC、肉腫、胆嚢がん、膀胱がん、甲状腺がん、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、BRAFV600E変異を有するCRC、KRASG12C変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、BRAFV600E変異を有する甲状腺がん、BRAFG468R変異を有する甲状腺がん、KRASG12R変異を有する甲状腺がん、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、KRASG12C変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、及びそれらのいずれかの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、KRASG12V変異を有する肉腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASG13D変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61R変異、及びNRASG12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1日当たり200mgのベルバラフェニブ~1日当たり1300mgのベルバラフェニブが前記ヒト対象に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
450mg BIDのベルバラフェニブを前記対象に投与することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
がんを治療するための前記方法が、前記ヒト対象における扁平上皮がん腫の発生の非存在を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが黒色腫であり、
前記ベルバラフェニブ治療の前に、前記ヒト対象が、免疫療法、BRAFV600E療法、又は免疫療法とBRAFV600E療法との組み合わせによる処置後に疾患進行を経験した、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
対象においてがんを治療するための方法であって、有効量のベルバラフェニブを前記対象に投与することを含み、前記がんが、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、KRASG12C変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、BRAFV600E変異を有する甲状腺がん、BRAFG468R変異を有する甲状腺がん、KRASG12R変異を有する甲状腺がん、及びそれらのいずれかの組み合わせである、方法。
【請求項13】
前記がんが、黒色腫、腎芽細胞腫、GIST、CRC、肉腫、胆嚢がん、膀胱がん、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが、KRASG12V変異を有する肉腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1日当たり200mgのベルバラフェニブ~1日当たり1300mgのベルバラフェニブが前記対象に投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
450mg BIDのベルバラフェニブを前記対象に投与することを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
がんを治療するための前記方法が、前記対象における扁平上皮がん腫の発生の非存在を特徴とする、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが黒色腫であり、
前記ベルバラフェニブ治療の前に、前記対象が、免疫療法、BRAFV600E療法、又は免疫療法とBRAFV600E療法との組み合わせによる治療後に疾患進行を経験した、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年5月26日に出願された米国仮出願第63/030,171号の優先権利益を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の分野は、概して、がん治療に関する。
【背景技術】
【0003】
RAS遺伝子は、ヒトがんにおいて最も頻繁に変異したがん遺伝子である。RASアイソフォームの中で、KRASが最も頻繁に変異しており(86%)、NRASがこれに続き(11%)、これは主に皮膚黒色腫で変異している(28%)。Cox AD,Fesik SW,Kimmelman AC,et al,“Drugging the undruggable RAS:Mission possible?”,Nat Rev Drug Discov 13:828-51,2014;Hilmi Kodaz,Osman Kostek,Muhammet Bekir Hacioglu,et al.,“Frequency of RAS Mutations(KRAS,NRAS,HRAS)in Human Solid Cancer“,EJMO 1:1-7,2017;and Cancer Genome Atlas N,“Genomic Classification of Cutaneous Melanoma”,Cell 161:1681-96,2015を参照されたい。RAS変異体駆動型がんの前臨床モデルは、腫瘍の開始及び維持におけるKRAS及びNRASの役割を実証している。しかしながら、今日まで、PI3K及びMEKの阻害等のその下流エフェクター経路を標的とすることによるRAS変異体腫瘍の処置における臨床的成功は限られていた。
【0004】
3つのサブタイプ(A-RAF、B-RAF、C-RAF)からなるRAFキナーゼファミリーは、RASの下流のMAPKシグナル伝達経路の重要な構成要素である。RAF遺伝子、特にコドンV600のBRAFにおける変異は、悪性黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、及び肺がんを含む様々ながんにおいて同定されている。Davies H,Bignell GR,Cox C,et al.,“Mutations of the BRAF gene in human cancer”,Nature 417:949-54,200を参照されたい。BRAF V600変異は、BRAFが単量体としてシグナル伝達することを可能にし、それによって下流のMAPKシグナル伝達経路を構成的に活性化する。
【0005】
ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、及びエンコラフェニブ等のBRAF単量体阻害剤の発見は、BRAFV600変体腫瘍を有する患者の治療の著しい進歩をもたらしたが、それにもかかわらず、治療応答の持続性は、BRAF二量体化に大きく収束するBRAF増幅、BRAFスプライスバリアント及びRAS変異を含む様々な耐性機構、並びにBRAF V600単量体療法に対する耐性のために制限されている。Sullivan RJ,Flaherty KT,“Resistance to BRAF-targeted therapy in melanoma”Eur J Cancer 49:1297-304,2013を参照されたい。さらに、これらのBRAFV600阻害剤はまた、BRAF野生型及びKRAS変異体細胞株においてMAPKシグナル伝達経路を逆説的に活性化し、その結果、BRAF及びCRAFの二量体化、並びにRAS依存的様式でのMEK及びERKシグナル伝達の活性化をもたらすことが示されている。Heidorn SJ,Milagre C,Whittaker S,et al.,“Kinase-dead BRAF and oncogenic RAS cooperate to drive tumor progression through CRAF”,Cell 140:209-21,2010;及びBlasco RB,Francoz S,Santamaria D,et al.,“c-Raf,but not B-Raf,is essential for development of K-Ras oncogene-driven non-small cell lung carcinoma”,Cancer Cell19:652-63,2011を参照されたい。問題なことに、V600療法を受けている患者の5~20%が扁平上皮がん腫(SCC)を発症し、これはおそらくMAPK経路の逆説的な活性化を介して引き起こされる。
【0006】
進行性黒色腫の治療選択肢は、単剤療法(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)又は併用(例えば、イピリムマブ+ニボルマブ)として使用され得るいくつかの免疫療法剤の承認によって有意に改善されている(Raedler 2015;Ribas et al.2015;Robert et al.2019)。複数の第III相試験(Seth et al.2020)からのデータに基づいて、これらの治療法は、進行した疾患状況において、NRAS変異体黒色腫を含むBRAF WT黒色腫について推奨される初期処置である。しかしながら、抗PD-1剤単独又は併用での進行後の明確な標準治療はなく、患者は典型的には更なる免疫療法又は化学療法で処置される。
【0007】
NRAS変異陽性黒色腫は29%の有病率を有し、BRAF WT黒色腫のサブセットである。現在のところ、NRAS変異を有する黒色腫の患者に対する特異的標的療法はない。したがって、この患者集団は、上記のように治療選択肢が限られており、抗PD-1治療の進行後又はその後に満たされていないニーズが高い。
【0008】
したがって、KRAS、NRAS及びRAF変異を有するがんの改善された処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様では、本開示は、ヒト対象におけるがんを処置するための方法であって、有効量のベルバラフェニブをヒト対象に投与することを含み、がんが、BRAFV600E変異、BRAFG468R変異、BRAFV599E変異、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASG12R変異、KRASG13D変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61R変異、NRASQ61L変異、NRASG13D変異、及びNRASG12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有する方法に関する。
【0010】
他の幾つかの態様では、本開示は、対象においてがんを治療するための方法であって、有効量のベルバラフェニブを対象に投与することを含み、がんが、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、KRASG12C変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、BRAFV600E変異を有する甲状腺がん、BRAFG468R変異を有する甲状腺がん、KRASG12R変異を有する甲状腺がん、及びそれらのいずれかの組み合わせである、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、用量漸増期における患者の状態のCONSORT図である。用量漸増期では、完全分析セット(FAS、有効性集団)は72人の患者のうち67人を含んだ。同意の撤回(n=2)、有害事象(n=2)、又は疾患の進行若しくは治療効果の欠如(n=1)のために投与後腫瘍応答評価を受けていない5名の患者をFASから除外した。
【0012】
図2図2は、用量拡大期における患者の状態のCONSORT図である。用量拡大期では、FASは63人の患者のうち57人を含んでいた。包含/除外基準の違反(n=1)又は確認されたPD又は治験責任医師の判断による有効性の欠如(n=3)のために、投与後の腫瘍応答評価がない4名の患者をFASから除外した。
【0013】
図3図3は、用量漸増期における各評価可能な患者におけるベースラインからの標的病変のサイズ及び特異的遺伝子変異の最良の腫瘍応答パーセンテージ変化のプロットである。
【0014】
図4図4は、用量漸増期の全患者の無増悪生存期間(図4A)、用量漸増期のNRASm黒色腫患者の無増悪生存期間(図4B)、用量拡大期の全患者の無増悪生存期間(図4C)、及び用量拡大期のNRASm黒色腫患者の無増悪生存期間(図4D)のプロットを示す。
【0015】
図5図5は、用量拡大期における各評価可能な患者におけるベースラインからの標的病変のサイズ及び特異的遺伝子変異の最良の腫瘍応答パーセンテージ変化のプロットである。
【0016】
図6図6は、用量漸増期における部分奏効までの時間に対する治療期間のプロットである。
【0017】
図7図7は、用量拡大期における部分奏効までの時間に対する治療期間のプロットである。
【0018】
図8A図8Aは、BRAF V600変異体、NRAS変異体、KRAS変異体及びRAS/RAF野生型腫瘍細胞株における細胞生存率の阻害についてのベムラフェニブのプロットである。
図8B図8Bは、BRAF V600変異体、NRAS変異体、KRAS変異体及びRAS/RAF野生型腫瘍細胞株における細胞生存率の阻害についてのベルバラフェニブのプロットである。
【0019】
図9図9は、NRAS変異体細胞及びBRAF変異体細胞における様々な濃度でのベルバラフェニブのコロニー成長の阻害についてのクローン原性アッセイの結果を示す。
【0020】
図10A図10Aは、BRAFV600変異を有する、NRAS変異を有する、KRAS変異を有する、又はRAS/RAF野生型の細胞株における細胞生存率のベムラフェニブ阻害のプロットである。
図10B図10Bは、BRAFV600変異を有する、NRAS変異を有する、KRAS変異を有する、又はRAS/RAF野生型の細胞株における細胞生存率のベルバラフェニブ阻害のプロットである。
【0021】
図11図11は、BRAF V600E変異体、NRAS変異体及びRAS/RAF野生型黒色腫細胞株における細胞生存率のベルバラフェニブ阻害のプロットである。
【0022】
図12A図12Aは、ダブラフェニブによる毎日の治療及びベルバラフェニブによる毎日の治療についての29日間の治療期間にわたるA375腫瘍体積(mm)の変異体黒色腫同系モデル研究の結果のプロットである。
図12B図12Bは、ダブラフェニブによる毎日の治療及びベルバラフェニブによる毎日の治療についての14日間の治療期間にわたるHCT-116腫瘍体積(mm)の変異体黒色腫同系モデル研究の結果のプロットである。
図12C図12Cは、ダブラフェニブによる毎日の治療及びベルバラフェニブによる毎日の治療についての28日間の治療期間にわたるSK-MEL-30腫瘍体積(mm)の変異体黒色腫同系モデル研究の結果のプロットである。
【0023】
図13図13は、ベルバラフェニブによる治療の経過中のBRAFV600E変異体がんを有する患者における循環腫瘍BRAFV600E MAF DNA(ctDNA)レベル対ベースラインレベルのプロットである。
【0024】
図14図14は、ベルバラフェニブによる治療の経過中のKRAS及びNRAS変異体がんを有する患者における循環腫瘍KRAS/NRAS MAFレベルのDNA(ctDNA)対ベースラインレベルのプロットである。
【0025】
図15A図15Aは、ベルバラフェニブによる治療後のBRAF変異体がんを有する患者における循環腫瘍BRAFV600E MAF DNA(ctDNA)のプロットである。
図15B図15Bは、ベルバラフェニブによる治療後のNRAS変異体がんを有する患者における循環腫瘍NRASmut MAF DNA(ctDNA)のプロットである。
図15C図15Cは、ベルバラフェニブによる治療後のKRAS変異体がんを有する患者における循環腫瘍KRASmut MAF DNA(ctDNA)のプロットである。
【0026】
図16A図16Aは、治療開始時のNRASQ61R黒色腫を有する患者のCTスキャンを示す。
図16B図16Bは、矢印で示される病変を有する450mg BIDの用量のベルバラフェニブによる8週間の治療後の患者のCTスキャンを示す。
図16C図16Cは、治療開始時のBRAFV600E結腸がんを有する患者のCTスキャンを示し、図16Dは、矢印で示される病変を有する450mg BIDの用量のベルバラフェニブによる8週間の治療後の患者のCTスキャンを示す。
【0027】
図17A図17Aは、ベルバラフェニブ療法が安定した疾患若しくは部分奏効を達成したか、又は疾患が進行した、BRAFV600E結腸がん、BRAFV600E黒色腫及びBRAFV600E腎芽細胞腫を有する患者についての、ベルバラフェニブ治療サイクル時間に対するBRAFV600E MAF ctDNAの結果を示す。
図17B図17Bは、ベバラフェニブ処置が安定した疾患又は部分奏効を達成した、NRASmut黒色腫及びNRASmut粘膜黒色腫を有する患者についての、ベルバラフェニブ治療サイクル時間に対するNRAS変異体MAF ctDNAの結果を示す。
図17C図17Cは、ベルバラフェニブ治療が安定した疾患を達成したか、又は疾患が進行した、KRASmut結腸がん、KRASmut膵臓がん、KRASmut子宮内膜がんを有する患者についての、ベルバラフェニブ治療サイクル時間に対するKRAS変異体MAF ctDNAの結果を示す図である。
【0028】
図18図18は、ベルバラフェニブとBRAFとの結合を示す共結晶構造の図である。
【0029】
図19A】19Aは、RAF阻害剤ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、及びエンコラフェニブのBRAFへの結合を示す共結晶構造の描写である。
図19B図19Bは、BRAFに対するpan-RAF阻害剤ベルバラフェニブ及びLXH-254の結合を示す共結晶構造の描写である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示によれば、化合物ベルバラフェニブは、BRAF及びCRAFのアイソフォームの選択的阻害を提供する非常に強力かつ選択的なII型RAF二量体阻害剤(pan-RAF阻害剤)であることが発見された。BRAFV600選択的単量体阻害剤とは対照的に、ベルバラフェニブは、非BRAFV600変異体細胞ではMAPK経路を活性化しないが、代わりに、BRAF及びCRAF二量体を阻害することによってMAPKシグナル伝達の抑制を維持し、BRAFV600変異及びRAS変異体の両方の腫瘍で細胞増殖の減少及び抗腫瘍活性の増加をもたらすことが発見された。ベルバラフェニブがヒト対象において良好に忍容されることが更に発見された。ベルバラフェニブ療法が扁平上皮がん腫の発症の非存在下で行われ得ることが更に発見された。ベルバラフェニブは、当該ベルバラフェニブ治療の前に、対象が免疫療法、BRAFV600E療法、又は免疫療法とBRAFV600E療法との組み合わせによる治療後に疾患進行を経験した黒色腫の治療に有効であることが更に発見された。
【0031】
特定の結合理論に束縛されるものではないが、図18及び図19Bは、BRAFに結合したpan-RAF阻害剤ベルバラフェニブの特定の共結晶構造を示す。19Aは、RAF阻害剤ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、及びエンコラフェニブのBRAFへの結合を示す共結晶構造の描写である。
【0032】
ベルバラフェニブは、PCT出願国際公開第2013/100632号に開示されており、化学名4-アミノ-N-(1-((3-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド(本明細書では式(I)と呼ばれる)を有し、以下の化学構造を有する:
【0033】
ベルバラフェニブは、対象における特定のがんの治療に有効であることが発見されている。本開示の範囲内の対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ又はネコを含むがこれらに限定されない哺乳動物である。いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0034】
ベルバラフェニブは、好適には、その立体異性体、幾何異性体及び互変異性体、並びに溶媒和物、代謝産物、同位体、薬学的に許容され得る塩又はプロドラッグの形態であり得る。いくつかの特定の態様では、ベルバラフェニブは、その薬学的に許容される塩である。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性と特性を保持する塩を指し、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない。ベルバラフェニブの例示的な酸塩としては、限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩が挙げられる。いくつかの態様では、塩は、ビス-塩酸塩、ビス-硫酸水素塩、ビス-p-トルエンスルホン酸塩、ビス-エタンスルホン酸塩、及びビス-メタンスルホン酸塩からなる群から選択される。いくつかの態様では、塩は、ビス-塩酸塩又はビス-メタンスルホン酸塩である。一態様では、塩はビス-メタンスルホン酸塩である。
【0035】
ベルバラフェニブは、適切には、非晶質形態又は結晶形態のいずれかであり得る。いくつかの態様では、塩は結晶性である。いくつかのそのような態様では、塩はビス-メタンスルホン酸塩である。いくつかの特定の態様では、ビス-メタンスルホン酸塩は、Cu-Kα光源で照射したときに、5.6°、7.1°、7.6°、11.4°、15.1°、15.4°、16.6°、18.2°、20.4°、21.5°、22.3°、22.7°、23.1°、24.4°、24.9°及び25.6°の回折角20±0.2°の値のピークから選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ若しくは10のピーク、3つ以上のピーク、又は5つ以上のピークを有する粉末X線回折(PXRD)パターンを特徴とする。いくつかの態様では、塩はビス-塩酸塩である。いくつかの特定の態様では、ビス塩酸塩は、Cu-Kα光源で照射した場合に、5.89°±0.2°、7.77°±0.2°、8.31°±0.2°、11.80°±0.2°、16.68°±0.2°、23.22°±0.2°、23.69°±0.2°、26.89°±0.2°、27.51°±0.2°、及び29.53°±0.2°の回折角2θ値におけるピークから選択される3つ以上のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とするI型多形である。固体形態(結晶性又は非晶質)は、CuKα(1.54056Å)線及び回転を使用して、25°C、並びに40.0KV及び100mAで動作する、ドイツのBRUKER AXS製のD8 ADVANCEに記録されたPXRDによって適切に決定することができる。
【0036】
ベルバラフェニブは、1つ以上の薬学的に許容され得る担体、アジュバント、及び/又は賦形剤と共に、カプセル、錠剤(丸剤)、粉末、シロップ、分散液、懸濁液、エマルジョン、溶液等の形態で適切に製剤化され得る。適切な液体担体の非限定的な例としては、水;生理食塩水;水性デキストロース;グリコール;エタノール;石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油;及びそれらの組み合わせが挙げられる。適切な医薬アジュバント/賦形剤の非限定的な例としては、デンプン、セルロース(例えば、微結晶セルロース)、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、タルク、D-マンニトール、グルコース、ラクトース、タルク、ゼラチン、フマル酸、フマル酸塩、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ベルバラフェニブはまた、保存剤、安定剤、湿潤剤又は乳化剤、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤等の更なる従来の医薬添加剤と共に適切に製剤化され得る。このような組成物は、いかなる事象においても、対象への適切な投与のために適切な薬用量を調製するように、有効量のベルバラフェニブを含有するであろう。ベルバラフェニブは、経口的に対象に適切に投与され得る。
【0037】
いくつかの態様では、ベルバラフェニブは、経口投与用のフィルムコーティング錠の形態であり得る。そのような適切な錠剤は、遊離塩基当量基準で50mg、100mg又は150mgのベルバラフェニブを含み得る。いくつかのこのような態様では、錠剤は、ベルバラフェニブ及び不活性成分D-マンニトール、フマル酸、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム(野菜)、フマル酸ステアリルナトリウム及びフィルムコーティング混合物を含む。いくつかのそのような態様では、錠剤は、ベルバラフェニブ及び不活性成分微結晶性セルロース、ラクトース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びフィルムコーティング混合物を含む。フィルムコーティングは当技術分野で公知である。いくつかの態様では、フィルムコーティング混合物は、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、マクロゴール/ポリエチレングリコール、タルク、及び黄色酸化鉄を適切に含み得る。いくつかの態様では、活性成分は、例えばベルバラフェニブ2HCl等のベルバラフェニブを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0038】
本開示の様々な態様のいずれかにおいて、がんは、黒色腫、腎芽細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸直腸がん(CRC)、肉腫、胆嚢がん、膀胱がん、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。一態様では、がんは黒色腫である。一態様では、がんは腎芽細胞腫である。一態様では、がんはGISTである。一態様では、がんはCRCである。一態様では、がんは肉腫である。一態様では、がんは胆嚢がんである。一態様では、がんは膀胱がんである。
【0039】
いくつかの態様では、がんは、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、BRAFV600E変異を有するCRC、KRASG12C変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、BRAFV600E変異を有する甲状腺がん、BRAFG468R変異を有する甲状腺がん、KRASG12R変異を有する甲状腺がん、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0040】
いくつかの態様では、がんは、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、KRASG12C変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、及びそれらのいずれかの組み合わせである。
【0041】
いくつかの態様では、がんは、KRASG12V変異を有する肉腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0042】
いくつかの態様では、がんは、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASG12R変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASG13D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61L変異、NRASQ61R変異、BRAFV600E変異、BRAFG468R変異、BRAFV599E変異、NRASQ61L変異、NRASG12C変異、及びKRASG13D変異から選択される少なくとも1つの変異を有する。幾つかの態様では、がんは、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRAG12C変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61R変異、及びNRASG12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有する。
【0043】
いくつかの態様では、がんは、BRAF変異とNRAS変異、BRAF変異とKRAS変異、又はKRAS変異とNRAS変異等の2つの変異を有する。一態様では、がんは、BRAF変異とNRAS変異を有する。そのような一態様では、がんは、BRAFV600E変異及びNRASQ61L変異を有する。
【0044】
本開示のいくつかの態様では、有効量のベルバラフェニブを含む、がんを処置するための医薬組成物が提供される。いくつかのそのような態様では、がんは、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、BRAFV600E変異を有するCRC、KRASG12C変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、BRAFV600E変異を有する甲状腺がん、BRAFG468R変異を有する甲状腺がん、KRASG12R変異を有する甲状腺がん、及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの変異を有する。。いくつかのそのような態様では、がんは、KRASG12V変異を有する肉腫、BRAFV600E変異を有する腎芽細胞腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASG12C変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、KRASG12D変異を有する胆嚢がん、KRASG12C変異を有するCRC、KRASQ61H変異を有するCRC、KRASG12D変異を有するCRC、KRASG13D変異を有するCRC、KRASG12D変異を有する膀胱がん、KRASG12V変異を有する膀胱がん、及びそれらのいずれかの組み合わせである。いくつかのそのような態様では、がんは、KRASG12V変異を有する肉腫、NRASG12D変異を有する黒色腫、NRASQ61K変異を有する黒色腫、NRASQ61R変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有する黒色腫、BRAFV600E変異を有するGIST、及びそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、がんは、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASG12R変異、KRASG13D変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASG13D変異、NRASQ61K変異、NRASQ61L変異、NRASQ61R変異、BRAFV600E変異、BRAFG468R変異、BRAFV599E変異、NRASQ61L変異、及びNRASG12C変異.から選択される少なくとも1つの変異を有する。幾つかの態様では、がんは、KRASG12V変異、KRASG12D変異、KRASG12C変異、KRASQ61H変異、NRASG12D変異、NRASQ61K変異、NRAQ61R変異、及びNRASG12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有する。いくつかのそのような態様では、がんは、BRAF変異とNRAS変異、BRAF変異とKRAS変異、又はKRAS変異とNRAS変異等の2つの変異を有する。一態様では、がんは、BRAF変異とNRAS変異を有する。そのような一態様では、がんは、BRAFV600E変異及びNRASQ61L変異を有する。任意のそのような組成物の態様では、がんは、黒色腫、腎芽細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸直腸がん(CRC)、肉腫、胆嚢がん、膀胱がん、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。一態様では、がんは黒色腫である。そのような一態様では、がんは腎芽細胞腫である。そのような一態様では、がんはGISTである。そのような一態様では、がんはCRCである。そのような一態様では、がんは肉腫である。そのような一態様では、がんは胆嚢がんである。そのような一態様では、がんは膀胱がんである。
【0045】
ベルバラフェニブの用量は、最大耐量に対する応答を誘発するのに十分な用量の範囲であり得る。例えば、特定の用量に拘束されることなく、1日用量は、適切には100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、又は1300mg、及びそれから構築される任意の範囲、例えば100mg~1300mg、200mg~1300mg、600mg~1300mg、700mg~1200mg、又は800mg~1000mgであり得る。ベルバラフェニブは、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回投与することができる。いくつかの態様では、ベルバラフェニブは1日1回投与される。いくつかの態様では、ベルバラフェニブは1日2回投与される。一態様では、ベルバラフェニブは、450mg BIDで投与され得る。投与は、食物と共に、又は食物なしで行うことができる。投与スケジュールは、適切には、28日間のスケジュールの毎日であってもよく、又は28日間のスケジュールの21日間以上であってもよい。
【実施例
【0046】
実施例1
【0047】
第I相用量漸増試験(NCT02405065)及び用量拡大試験(NCT02405065)を、BRAF、KRAS、及び/又はNRAS遺伝子に変異を有する局所進行性及び/又は転移性固形腫瘍を有する患者で行った。これらの研究は、RAS及び/又はBRAF変異を有する複数のタイプのがんにおけるベルバラフェニブの安全性、耐容性及び早期臨床的有効性を実証した。
【0048】
適格患者は、固形腫瘍応答評価基準バージョン1.1(RECIST v.1.1)に従って測定可能又は評価可能な疾患を有していた。Eisenhauer EA,Therasse P,Bogaerts J,et al.,“New response evaluation criteria in solid tumours:revised RECIST guideline(version 1.1)”,Eur J Cancer 45:228-47,2009を参照されたい。全ての患者は、1つ以上の先行治療ラインで進行していたか、又は研究登録時に利用可能な標準治療を有していなかった。追加の適格基準には、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス≦2及び平均余命≧12週間が含まれた。心血管異常を平均QTcF>440msecとして有する患者を用量拡大期から除外した。
【0049】
ベルバラフェニブの用量漸増を、最初の用量制限毒性(DLT)が観察されるまでPK誘導急速漸増法を使用して行い、続いてローリング6(rolling six)デザインの修正フィボナッチ法を使用した(図1)。最大耐量(MTD)を超えない用量レベルで、治療中の腫瘍生検を提供することができた追加の患者をバックフィルコホートに登録して、追加の薬力学(PD)データを取得した。
【0050】
患者は、1日1回50mg(QD)から1日2回800mg(BID)までに割り当てられた用量レベルでの経口投与によってベルバラフェニブを受けた。ベルバラフェニブの開始用量は、50mg QDとして選択され、これは、前臨床試験によるラットにおける動物の10%(STD10)の重度の毒性用量の1/10のヒト等価用量である。Administration USDoHaHSFaD,“S9 Nonclinical Evaluation for Anticancer Pharmaceuticals”,2010を参照されたい。サイクル1は、患者が1日目に割り当てられた用量レベルでベルバラフェニブの単回用量を受け、その後7日間のウォッシュアウト期間が続く薬物動態(PK)評価から開始した。その後の治療サイクルは21日間の連続投与であった。
【0051】
最初のサイクル中にDLTを決定した。各用量コホートの最後に、安全性及びPKデータをDLT評価について再検討し、次の用量レベルへの用量漸増を継続するかどうかを決定した。本明細書で使用される場合、DLTは、調査中の疾患又は疾患進行と無関係であると評価された毒性として定義され、DLT評価は、NCI-CTCAE、バージョン4.03に従ってサイクル1(用量漸増コホート)で実施された。サイクル1の21連続日の間の薬物コンプライアンスが少なくとも80%である場合、評価は許容可能であると考えられる。
【0052】
非血液学的毒性は、以下によって示される:脱毛症を除くグレード3以上の毒性。最高用量の制吐薬治療にもかかわらず、グレード3以上の悪心又は嘔吐。最高用量での下痢止め治療にもかかわらず、グレード3以上の下痢。グレード4の好中球減少症を伴うグレード3以上の感染(ANC<500/mm)。QTc延長(>500msec又はベースラインから>60msecの増加)。
【0053】
血液学的毒性は、以下によって示される:グレード4の好中球減少症(ANC<500/mm)が7日間以上持続。38.5℃以上の発熱を伴うグレード4の好中球減少症(ANC<500/mm)。グレード4の血小板減少症(PLT<25,000/mm)が>4日間持続。
【0054】
治療への不十分な曝露は、以下によって示される。毒性による2週間以上の用量遅延。21日間連続したベルバラフェニブの毒性による80%未満の薬物コンプライアンス。
【0055】
他の毒性を以下に示す。確認された角膜潰瘍。ベースラインレベルよりも重度であり、臨床的に関連性があり、支持療法に対して難治性であり、SRMでのDLTとして決定される毒性。
【0056】
用量拡大期は、特定のがん型を有する患者におけるベルバラフェニブの抗腫瘍活性を更に評価するように設計され、6つのコホートから構成された:NRAS変異体(NRASm)黒色腫、BRAF変異体(BRAFm)黒色腫、BRAFm結腸直腸がん(CRC)、KRAS変異体(KRASm)非小細胞肺がん(NSCLC)、KRASm膵管腺がん(PDAC)、及び他のBRAF又はRAS変異陽性がんを有する患者のバスケットコホート(図2)。患者は、用量漸増期で決定された推奨用量(RD)ある、28日間の連続サイクルで450mg BIDの経口用量でベルバラフェニブを投与された。全ての患者は、疾患進行又は忍容できない毒性等の中止基準を満たすまで試験にとどまった。
【0057】
この試験は、ヘルシンキ宣言、臨床試験実施基準ガイドライン、及び地元の保健局に提出され承認された保証の規定に従って実施した。プロトコルは、各参加施設の施設内審査委員会によって承認された。任意の研究手順の開始前に、全参加者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0058】
用量漸増では、プロトコルで指定された定義によってDLTを評価した。プロトコルに従って、3人の患者においてDLTがなかった場合、又は6人の患者において1人未満のDLTがあった場合、用量漸増が許可された。6人の患者のうち2人を超える患者がDLTを経験した場合、用量レベルは忍容されないと考えられ、次に低い用量をMTDとして決定した。RD決定は、用量漸増期の患者からの有効性、安全性、忍容性及びPK/PDの累積データの包括的評価に基づいて行った。
【0059】
有害事象(AE)をAEの発生率、重症度及び関連性によって記録し、国立がん研究所-有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE)バージョン4.03に従って等級付けした。ベルバラフェニブの安全性及び忍容性を、AE、バイタルサイン、身体検査、心電図、心エコー図(ECHO)/マルチゲート収集(MUGA)スキャン、及び実験室試験に基づいて評価した。
【0060】
腫瘍応答評価を、ベースライン及び中断までの2回の治療サイクルごとの終了時にRECISTバージョン1.1を使用して治験責任医師によってX線写真で実施した。安全性評価(安全性セット)には、ベルバラフェニブの1回以上の用量を受けた全ての患者が含まれ、有効性評価(完全解析セット)には、少なくとも1回の用量のベルバラフェニブを受け、少なくとも1回の用量後腫瘍応答評価を受けた対象が含まれた。
【0061】
ベルバラフェニブのPK評価のためのプロトコルで定義された時点で、投与前及び投与後に血液試料を収集した。完全PK分析を実施して、AUC0-last、AUC0-∞、AUC0-24、Cmax、Tmax、Vss/F、CL/F、及びt1/2を含むPKパラメータを推定した。薬力学(PD)評価を、患者から採取した保管組織又は新鮮腫瘍組織及び血液試料に対して遡及的に行った。ベルバラフェニブによるMAPK経路阻害を、MAPK経路遺伝子の発現並びに腫瘍組織における免疫組織化学によるpMEK及びpERKレベルの変化を測定することによって決定した。
【0062】
用量漸増期の72人の患者及び用量拡大期の63人の患者を含む合計135人の患者が第I相試験に登録された。患者の基本情報及びベースライン特性を表1に要約する。表1中:「ECOG」は、米国東海岸がん臨床試験グループを指す;「CRC」は結腸直腸がんを指す;「PDAC」は膵管腺がんを指す;「NSCLC」は非小細胞肺がん腫を指す;「GIS」は消化管間質腫瘍を指す;「その他」は、胆嚢(n=2)、悪性新生物(n=1)、腎芽細胞腫(n=1)、胸腺(n=1)、ファーター膨大部(n=2)、胆管細胞がん(n=2)、乳房(n=1)及び子宮内膜(n=1)を含む。「変異、n(%)」では、各相の1名の患者がBRAF遺伝子とNRAS遺伝子の両方に変異を有していた。
【0063】
【表1】
【0064】
用量漸増期の72人の患者のうち、57人の患者が用量漸増コホートに登録され、15人の患者がバックフィルコホートに登録された(図1)。以前の治療の数の中央値は3(範囲0~7)であった。変異に関しては、29人の患者がBRAFに変異を有する腫瘍を有し、30人の患者がKRASに変異を有し、14人の患者がNRASに変異を有し、1人の患者がBRAFとNRASの両方の変異を有し、両方の群についてカウントした。がんの最も一般的なタイプは、結腸直腸がん(42人の患者)及び黒色腫(25人の患者)であった。
【0065】
用量拡大期では、局所的に試験された変異状態及び腫瘍タイプに基づいて、63人の患者を6つの事前に指定されたコホートに登録した(図2):NRASm黒色腫(10人の患者)、BRAFm黒色腫(7人の患者)、BRAFm CRC(7人の患者)、KRASm PDAC(9人の患者)、KRASm NSCLC(2人の患者)、及び任意の他のRAS又はRAF変異体固形腫瘍のバスケットコホート(28人の患者)。
【0066】
用量漸増期では、50人の患者をプロトコルごとの用量決定のために評価可能であるとみなした。用量漸増コホートの57人の患者のうち、サイクル1中に試験から離脱した患者を含む、毒性なしに80%未満のコンプライアンスを有した7人の患者をDLT評価から除外した。50人の患者のうち4人がDLTを経験し、グレード3の発疹が3人の患者で(200mg BID、650mg BID及び800mg BIDにおいて)、グレード2のざ瘡様皮膚炎が1人の患者(800mg BID)で80%未薬の満物コンプライアンスをもたらした。全てのDLTは、ベルバラフェニブの中断及び/又は併用薬投与後に可逆的であった。800mg BIDでは、6名の患者のうち2名がDLTを経験し、したがって、650mg BIDをベルバラフェニブのMTDとみなした。耐容性、安全性、有効性及びPKデータの全体的評価の後、更なる研究における単一薬剤ベルバラフェニブのRDを、450mg、1日2回(BID)と決定した。
【0067】
用量漸増及び用量拡大の全体的な安全性の概要(n=135)を表2に示す。全用量にわたって最も頻繁に報告された治療下で発現した有害事象(TEAE)は、ざ瘡様皮膚炎(37.0%)、発疹(23.7%)及び掻痒症(22.2%)であった。450mg BIDのRDでは、74名の患者のうち15名(20.3%)で用量減少が発生し、そのうち12名(16.2%)が薬物有害反応(ADR)によるものであり、74名の患者のうち21名(28.4%)が用量中断を必要とし、そのうち17名(23.0%)がADRによるものであった。3人の患者(4.1%)は、グレード3の胆管炎、グレード4の高カリウム血症、又はグレード4のざ瘡様皮膚炎のために治療を恒久的に中止した。表2中:「TEAE」は、治療下で発現した有害事象を指す;「ADR」は、薬物関連有害物質を指す。グレード3/4のADRの大部分は、支持療法で可逆的かつ管理可能な皮膚科学的毒性であった。扁平上皮がん腫(SCC)の症例は報告されなかった。重篤なTEAEが30名の患者(22.2%)で発生し、そのうち12名(8.9%)がベルバラフェニブに関連していた。
【0068】
【表2】
【0069】
ベルバラフェニブのPKパラメータを、用量漸増期の48名の患者及び用量拡大期の35名の患者において推定した。結果を以下の表3及び表4に示す。表中:「AUClast」は、0時間から最後の測定可能な濃度までの血漿中濃度-時間曲線下面積を指す;「AUC0-∞」は、0時間から無限大までの血漿中濃度-時間曲線下面積を指す;「AUC24」は、TからT24までの曲線下面積を指す;「Cmax」は最大濃度を指す;「Tmax」は、Cmaxに達するまでの時間を指す;「t1/2β」は最終排出半減期を指す;「QD」は、1日1回を指す;「BID」は1日2回を指す。AUCは、コホート1では0(投与前)から48時間まで、他のコホートでは0から168時間まで測定された濃度に基づいて計算した。中央値及び範囲が提示されているTmaxを除いて、平均及び変動係数が提示されている。リファンピンを併用した200 QD投薬レジメンの一人の患者は、その患者のAUC及びCmaxが同じコホートの他の患者のAUC及びCmaxよりもはるかに低かったため、分析から除外され、これは、いかなる特定の理論にも拘束されないが、ベルバラフェニブが生体内変換されるリファンピンによる薬物代謝酵素の誘導から生じた可能性がある。
【0070】
ベルバラフェニブ血漿標的曝露は、200mg BIDから達成され、平均血漿濃度は、50mg QDから650mg BIDまで用量比例様式で線形性を示した。単回用量のTmax中央値は3.0~4.5時間(QD)及び15.5~24.0時間(BID)であり、定常状態でのt1/2中央値は65.1~106.1時間(QD)及び32.3~66.4時間(BID)であった。用量拡大期における450mgのBIDにおいて、35名の患者の曝露の中央値は、用量漸増における同じ用量レベルについて観察された中央値と類似しており、450mgのBIDにおいて有効な曝露に達したという知見と一致していた。ベルバラフェニブによるオンターゲット阻害及び経路阻害を確認するために、患者組織を、pMEK及びpERKを含むMAPK経路エフェクターについて分析したところ、結果として、ベルバラフェニブで処置した患者においてpMEK及びpERKの低下が観察された(データは示していない)。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
用量漸増期において、ベルバラフェニブに対する腫瘍応答を、少なくとも1つの投与後腫瘍応答評価を受けた67名の患者において評価した。腫瘍応答を、200mg QDの用量レベルから観察した。7名の患者(10.4%)が部分奏効(PR)の最良全奏効を達成し、27名の患者(40.3%)が安定疾患(SD)を達成した(表3、図3)。図3からの部分奏効結果を以下の表5に要約する。
【0074】
【表5】
【0075】
7人のレスポンダーの中で、4人の患者が、25週間の無増悪生存期間(mPFS)中央値を有する(95%CI、4.8推定不能)を有する、NRAS変異体黒色腫であった(9人の登録したNRASm黒色腫患者のうち44%)。以下の表6及び図4を参照されたい。表6中:「pts」は患者を指す;「mel」は黒色腫を指す」;「unconf.」は未確認を指す;「conf.」は確認を指す;「BORR」は、最良総合効果率を指す;「PFS」は無増悪生存を指す;「DOR」は応答の持続時間を指す;「NE」は推定不能を示す。BORR(%)=(CR又はPRとして最良総合効果を示した対象の数/対象の総数)*100。ORR(%)=(CR又はPRとして確認された最良総合効果を有する対象の数/対象の総数)*100。DCR(%)=(CR、PR又はSDとして最良総合効果を有する対象の数/対象の総数)*100。表6のDORの行において:は、1人の患者がAEのために中断したことを示す(G2 疲労、G2 鬱);は2人の患者が進行中であることを示す;及びは1人の患者が進行中であることを示す。
【0076】
【表6】
【0077】
NRASm黒色腫の4人中3人のレスポンダーが以前の免疫療法で進行し、ベルバラフェニブに応答した。以下の表7を参照されたい。表7中:「PR」は部分奏効を指す;「SD」は安定疾患を指す;「PD」は進行性疾患を指す;「BOR」は最良総合効果を指す。
【0078】
【表7】
【0079】
用量拡大期では、NRASm黒色腫の10人の患者のうち、2人の患者(20%)がPRを達成し、4人の患者(40%)がSDを有した。疾患制御率(DCR:PR+SD)は60%であった(上記表5及び図5を参照されたい)。図5からの部分奏効結果を以下の表8に要約する。
【0080】
【表8】
【0081】
PRを有する2名の患者もまた、免疫療法における以前の進行について注目され、ベルバラフェニブに応答した。BRAFm黒色腫コホートでは、6人の患者のうち2人(33%)がPRを達成し、DCRは83%であった。BRAFm CRCコホートでは、6人の患者のうち2人(33%)がPRを達成した。ベルバラフェニブによる疾患制御(PR又はSD)が、以前のBRAFV600E阻害剤において進行した(用量漸増及び用量拡大からの)BRAFV600E変異体黒色腫又はCRCを有する6人の患者において観察された。表9を参照されたい。表中、「BRAFi」はBRAF阻害剤を指す;「uPR」は、折り畳まれていないタンパク質応答を指す;「cPR」は確認された部分奏効を指す。表9において、各患者の相は用量漸増相であり、状況は緩和的であった。
【0082】
【表9】
【0083】
BRAFm GIST、KRASm肉腫及びKRASm膀胱がんを有する患者(それぞれn=1)でも応答が認められ、腫瘍応答期間はそれぞれ36週間、18週間及び33週間であった。さらに、6人の患者(BRAFV600E黒色腫[n=3]、NRASG12C黒色腫[n=1]、BRAFV600EGIST[n=1]、KRASG12C[n=1])が1年を超えて治療を維持した。図6及び図7は、用量漸増期及び用量拡大期におけるPRまでの時間で治療期間を示す。
【0084】
図6の10回の最長期間の処置を以下の表10に要約する。
【0085】
【表10】
【0086】
図7の7つの最長期間の処置を以下の表11に要約する。
【0087】
【表11】
【0088】
結果は、ベルバラフェニブが450mg BIDのRDで一般に良好に忍容され、臨床的に示されるように、ADRが主にグレード1/2であり、管理可能であり、治療中断及び/又は支持療法で可逆的であったことを示している。最も頻繁に報告されたTEAEは、ざ瘡様皮膚炎、発疹、及び掻痒症を含む皮膚科学的毒性であった。ベルバラフェニブの安全性プロファイルは、それら又は他のMAPK経路標的化阻害剤に匹敵すると予想される。ベルバラフェニブ治療でSCCの症例が観察されなかった。SCCの発症は、臨床的に承認されたBRAF阻害剤で観察される。
【0089】
ベルバラフェニブの第I相試験は、NRASm及びBRAFV600E変異体腫瘍を有する患者において臨床活性を実証した。特に、NRASm黒色腫患者(用量漸増における44%の最良総合効果率[BORR]及び24.9週間のPFS並びに用量拡大における20%のBORR、表5)で観察されたベルバラフェニブの有効性は、NRAS駆動型MAPK活性化がRAF二量体阻害によって効果的に阻害され得るという臨床的証拠を提供する。この結果はまた、BRAF及びCRAF二量体を効果的に遮断するII型RAF二量体阻害剤が、RAS変異体に関連して逆説的活性化を誘導する、BRAFV600阻害剤、すなわちベムラフェニブ、ダブラフェニブ及びエンコラフェニブとは異なる臨床活性プロファイルを有することを示唆する。ビニメチニブで処置されたNRAS変異体黒色腫患者における最近の臨床データは、ダカルバジン対照と比較して、15%の全奏効率、2.8ヶ月のmPFS、及びOSにおける有意差のないことを報告した(NEMO研究)。Dummer R,Schadendorf D,Ascierto PA,et al.,“Binimetinib versus dacarbazine in patients with advanced NRAS-mutant melanoma(NEMO):a multicentre,open-label,randomised,phase 3 trial”,The Lancet Oncology 18:435-445,2017を参照されたい。黒色腫のこの亜集団における中程度の応答は、MAPKシグナル伝達のより強い抑制が全生存利益のために必要であり、複数のリンパ節でMAPK経路を標的化することがより永続的な有効性を提供し得ることを示唆している。Ryan MB,Corcoran RB,“Therapeutic strategies to target RAS-mutant cancers”,Nat Rev Clin Oncol 15:709-720,2018を参照されたい。さらに、ベルバラフェニブに対する顕著な応答が、以前に免疫療法で処置されたか、又は以前のBRAFV600E療法で処置され、進行した黒色腫患者においてさえも観察された(表6及び7)。19人のNRAS変異体黒色腫患者のうち、12人は事前の免疫療法レジメンを受けており、5人は免疫療法で進行した後にベルバラフェニブに応答した。したがって、ベルバラフェニブは、標準的な免疫療法レジメンに失敗した黒色腫患者にとって有益なその後の戦略であり得る。
【0090】
NRAS変異体黒色腫で観察された応答に加えて、BRAFV600E変異体黒色腫を有する3名の患者において応答が観察され、したがって、MAPK変化型黒色腫腫瘍におけるベルバラフェニブの活性が裏付けられた。これらの患者の一部は、ベムラフェニブ及びダブラフェニブを含む事前のBRAF治療を受けており、進行していた。1つの症例では、患者がBRAFV600E変異とNRAS変異の両方を保有していることが観察され、この症例を更に詳しく調べると、NRAS変異が、BRAF標的化療法による41ヶ月の治療後に獲得されたことが観察された。この患者は、最初にBRAF標的化療法に対して完全奏効を達成したが、その後のNRAS変異の獲得によって証明されるように、後に耐性を発症した。この患者は、ベルバラフェニブで9ヶ月にわたって処置され、部分奏効を達成した。BRAF阻害単独は、腫瘍におけるNRASmサブクローンの濃縮をもたらすことが知られており、BRAFV600阻害剤で処置された患者の14%でNRAS変異が同時に起こる。Trunzer K,Pavlick AC,Schuchter L,et al.,“Pharmacodynamic effects and mechanisms of resistance to vemurafenib in patients with metastatic melanoma”,J Clin Oncol 31:1767-74,2013を参照されたい。BRAF治療に対する耐性の機序が、BRAF治療耐性細胞株に対するベルバラフェニブの裏付けとなる前臨床データと一致して、RAF二量体化に大きく収束することを考えると(Namgoong G,S.H.Kim THS,Bae IH,et al:A selective and potent pan-RAF inhibitor,HM95573 exhibits high therapeutic potential as a next-generation RAF inhibitor by direct inhibition of RAF kinase activity in BRAF or RAS mutant cancers.European Journal of Cancer 69:S127,2016を参照されたい)、1つの理論の下で、特定の理論に縛られることなく、前述の患者におけるベルバラフェニブの活性は、RAF二量体の阻害を介して駆動された可能性がある。
【0091】
重度に前処置されたBRAF変異体CRC患者(6人中2人の患者;BORR33%)で観察された応答は、非黒色腫BRAF変異体腫瘍におけるベルバラフェニブの強力な阻害機能を裏付けている。これらの結果はまた、5%~9%の奏効率を示したBRAFV600E変異体CRC腫瘍におけるBRAF阻害剤単独療法の履歴データと対照的である。Corcoran RB,Atreya CE,Falchook GS,et al.,“Combined BRAF and MEK Inhibition With Dabrafenib and Trametinib in BRAF V600-Mutant Colorectal Cancer”,Journal of Clinical Oncology 33:4023-4031,2015;Kopetz S,Desai J,Chan E,et al.,“Phase II Pilot Study of Vemurafenib in Patients With Metastatic BRAF-Mutated Colorectal Cancer”,Journal of Clinical Oncology 33:4032-4038,2015;及びFalchook GS,Long GV,Kurzrock R,et al.,“Dabrafenib in patients with melanoma,untreated brain metastases,and other solid tumours:a phase 1 dose-escalation trial”,Lancet 379:1893-901,2012を参照されたい。これらの違いはまた、ベルバラフェニブと臨床的に承認されたBRAF阻害剤との間の作用機序の違いを強調している可能性が高い。BRAFV600変異体CRCにおけるエンコラフェニブと、ビニメチニブと、セツキシマブとの三重の組み合わせの臨床結果の改善(111人の患者においてORR26%)が最近報告された。Kopetz S,Grothey A,Yaeger R,et al.,“Encorafenib,Binimetinib,and Cetuximab in BRAF V600E-Mutated Colorectal Cancer”,N Engl J Med,2019を参照されたい。しかしながら、三重の組み合わせを受けた患者の58%がグレード3以上のAEを経験した。対照的に、単一薬剤としてのベルバラフェニブは、好ましい安全性プロファイルで同じ患者集団において中程度の有効性を示しており、MEK及びEGFRの阻害剤との組み合わせの適切な候補となっている。
【0092】
ベルバラフェニブは、KRAS変異体腫瘍を有する患者において限られた疾患制御を提供することが観察された。
【0093】
本実験データは、ベルバラフェニブによる連続1日2回経口治療が、NRAS-及びBRAFV600E変異体黒色腫並びにBRAFV600E変異体CRC腫瘍において有望な臨床治療活性を提供することを示している。
【0094】
実施例2
【0095】
ベルバラフェニブを評価して、RAF単量体及び二量体の阻害能力を測定した。結果を表12及び13に報告する。表12において:「A375」は、BRAFV600E変異を有するA375ヒト黒色腫細胞株を指す;「IPC298」とは、NRASQ61L変異を有するIPC298皮膚黒色腫細胞株のことを指す;「A549」は、KRAS変異を有するA549肺腺がん細胞株を指す;「CSFR1」は、CSFR1遺伝子を指す;「DDR1」は、ジスコイジンドメイン受容体DDR1を指す;「DDR2」は、ジスコイジンドメイン受容体DDR2を指す。表13において:「%P/T-MEK」は、P-MEKと総MEKの比を指す;「コーン1」は、阻害剤の第1の(最低の)濃度を指す;「コーン2」は、阻害剤の第2の(中間)濃度を指す;「コーン3」は、第3(最高)の阻害剤濃度を指す。表13において、LXH254は、CAS番号:1800398-38-2及び以下の構造を指す:
【0096】
【表12】
【0097】
【表13】
【0098】
実施例3
【0099】
以下の変異を有するBRAF及びNRAS変異体腫瘍株におけるpan-RAF二量体阻害能力について、ベムラフェニブに対してベルバラフェニブを評価した:BRAFV600;KRASホットスポット;NRASホットスポット;及びRAS/RAF野生型。細胞スクリーニングを、3日間の細胞生存率研究においてベムラフェニブ又はベルバラフェニブで処置したBRAFV600変異体、NRAS変異体、KRAS変異体、及びRAS/RAF野生型細胞を含む142の細胞株(肺、卵巣、結腸、乳房、脳、胃、及び子宮)のパネルにわたって行った。IC50値(μM)は、非線形回帰分析を使用して4パラメータフィットを使用して決定した。ベムラフェニブの結果を図8Aに示し、ベルバラフェニブの結果を図8Bに示す。結果は、ベルバラフェニブが、BRAFV600変異体腫瘍細胞株及びNRAS変異体腫瘍細胞株を阻害するpan-RAF二量体阻害剤であることを示す。したがって、ベルバラフェニブは、BRAF及びNRAS変異体黒色腫において活性である。
【0100】
実施例4
【0101】
ベルバラフェニブをクローン原性アッセイにおいてNRAS及びBRAFに対する阻害能力について評価した。細胞を、ある濃度範囲にわたって4つの濃度のベルバラフェニブで処置し、8日間培養し、次いで、クリスタルバイオレットで染色した。結果を図9に示し、図中、「HT29」は、BRAFV600E変異を有するヒト結腸直腸腺がん細胞株HT-29を指す;「A375」は、BRAFV600E変異を有するヒト黒色腫細胞株を指す;「MEL-JUSO」は、NRASQ61L変異を有するヒト黒色腫細胞株MEL-JUSOを指す;「IPC-298」は、NRASQ61L変異を有するヒト黒色腫細胞株を指す。図9の最高濃度の染色された細胞は、図8と相関する。結果は、ベルバラフェニブがin vitroでBRAFV600E及びNRAS変異体細胞株におけるコロニー細胞増殖を阻害することを示している。
【0102】
実施例5
【0103】
ベムラフェニブ及びベルバラフェニブを、BRAFV600変異を有する、NRAS変異を有する、KRAS変異を持有する、及びRAS/RAF野生型変異を有する細胞株に対して濃度範囲にわたって評価した。細胞スクリーニングを、3日間の細胞生存率研究においてベムラフェニブ又はベルバラフェニブで処置したBRAFV600変異体、NRAS変異体、KRAS変異体、及びRAS/RAF野生型細胞下部を含む27の皮膚細胞株のパネルにわたって行った。IC50値(μM)は、非線形回帰分析を使用して4パラメータフィットを使用して決定した。BRAFV600E変異体、NRAS変異体及び野生型の黒色腫細胞株についての細胞生存率データを、ベルバラフェニブによる3日間の治療の後で評価した。
【0104】
IC50(μM)をもたらす第1の結果セットを、ベムラフェニブについては図10Aに示し、ベルバラフェニブについては図10Bに示す。
【0105】
ベルバラフェニブの結果の第2のセットを図11に示す。ベルバラフェニブを、以下の細胞株に対して1nM~40,000nMの濃度範囲にわたって評価した:BRAFV600E変異を有するヒト黒色腫細胞株であるWM-266-4;BRAFV600E変異を有するヒト黒色腫細胞株であるSK-MEL-28;BRAFV600E変異を有するヒト黒色腫細胞株であるIGR-37;BRAFV600E変異を有するヒト黒色腫細胞株であるA375;NRASQ61L変異を有するヒト黒色腫細胞株であるIPC-298;NRASQ61L変異を有するヒト黒色腫細胞株であるMelJuSo;NRASQ61K変異を有するヒト黒色腫細胞株であるSK-MEL-30;NRASQ61L変異を有するヒト黒色腫細胞株であるGAK;及びヒト黒色腫細胞野生型細胞株であるMewo。結果を、濃度に対するDMSOに正常な対照の%で報告する。
【0106】
図10A図10B及び図11は、ベルバラフェニブがin vitroでBRAFV600E変異体及びNRAS変異体の黒色腫腫瘍細胞株において単剤活性を示すという結果を示す。結果は、ベムラフェニブはBRAFV600E変異体細胞株を阻害することができるが、NRAS変異体、KRAS変異体、又はRAS/RAF野生型の細胞株を阻害することができないことを更に示す。
【0107】
実施例6
【0108】
変異体黒色腫同系モデル研究では、ダブラフェニブ及びベルバラフェニブを、A375、HCT-116及びSK-MEL-30の細胞株の対照について経時的に評価した。HCT-116は、KRASG13D変異を有するヒト結腸がん細胞株である。
【0109】
図12Aは、以下を用いた29日間の治療期間にわたるA375腫瘍体積(mm)の結果を表す:対照の1日1回の29日間の経口投与(n=8);29日間にわたる1日1回の100mg/kgのダブラフェニブの経口投与(n=8);29日間にわたる1日1回の3mg/kgのベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=8);29日間にわたる1日1回の10mg/kgベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=8);及び29日間にわたる1日1回の30mg/kgのベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=8)。
【0110】
図12Bは、以下を用いた14日間の治療期間にわたるHCT-116腫瘍体積(mm)の結果を表す:対照の1日1回の14日間の経口投与(n=7);14日間にわたる1日1回の100mg/kgのダブラフェニブの経口投与(n=7);14日間にわたる1日1回の10mg/kgベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=7);及び14日間にわたる1日1回の30mg/kgのベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=7)。
【0111】
図12Cは、以下を用いた28日間の治療期間にわたるSK-MEL-30腫瘍体積(mm)の結果を表す:対照の1日1回の28日間の経口投与(n=8);28日間にわたる1日1回の100mg/kgのダブラフェニブの経口投与(n=8);28日間にわたる1日1回の15mg/kgベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=8);及び28日間にわたる1日1回の30mg/kgのベルバラフェニブ(HM95573)の経口投与(n=8)。
【0112】
結果は、ベルバラフェニブがBRAF、KRAS及びNRAS変異体に対して強力なin vivo抗腫瘍活性を示すことを示している。ベルバラフェニブは、A375(BRAFV600E変異体)又はSK-MEL-30(NRASQ61K変異体)異種移植マウスモデルにおいて、ビヒクル又はダブラフェニブのいずれよりも腫瘍体積を減少させるのに有効である(n=8/群、平均腫瘍体積±SEM)。
【0113】
実施例7
【0114】
循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床評価では、ベルバラフェニブを、BRAFV600E変異体のがんを有する患者で評価した。結果を以下の表14及び図13に示す。図13は、C1D1(サイクル1、1日目)におけるBRAFV600E MAFと比較した、BRAFV600E変異体対立遺伝子頻度(MAF)の変化%の結果を示す。ctDNAは、Foundation Medicineから入手可能なFoundation ACT(登録商標)血液ベースの循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイによって測定した。
【0115】
【表14】
【0116】
結果は、臨床応答を有した全ての患者においてBRAFV600E対立遺伝子が減少することを示している。結果は、安定疾患(SD)を有する患者においてC1D15(サイクル1、15日目)後に対立遺伝子頻度が再び増加することを更に示す。
【0117】
実施例8
【0118】
循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床評価では、ベルバラフェニブを、NRAS変異体のがんを有する患者で評価した。結果を以下の表15及び図14に示す。図14は、C1D1(サイクル1、1日目)におけるKRAS/NRAS MAFと比較した、KRAS/NRAS MAFの変化%の結果を表す。
【0119】
【表15】
【0120】
結果は、RAS対立遺伝子が治療により安定であるか又は増加することを示す。
【0121】
実施例9
【0122】
循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床評価では、ベルバラフェニブを、BRAF、NRAS及びKRAS変異体がんを有する患者で評価した。結果を図15A(BRAF変異)、15B(NRAS変異)及び15C(KRAS変異体)に示す。図では、結果を、それぞれ患者スクリーニングで測定された値と比較した、BRAFV600E MAF(図15A)、NRAS変異体MAF(図15B)及びKRAS変異体MAF(図15C)における変化%で示す。図中、「CRC」は結腸がんを指す;「Mel」は黒色腫を指す;「Neph」は腎芽細胞腫を指す;「MUO」及び「?」はそれぞれ、未知の起源の転移を指す;「End」は内分泌を指す;「Pane」は膵臓を指す;「PD」は進行性疾患を指す;「PR」は部分奏効を指す;及び「SD」は安定疾患を指す。
【0123】
結果は、PD患者よりもPR/SDにおいて対立遺伝子頻度のより顕著な減少があることを示す。結果は、BRAF変異体患者及びNRAS変異体患者では明らかな効果を更に示すが、KRAS変異体患者では効果がより弱い。データは更に、ctDNAが進行に関するバイオマーカーであることを示す。
【0124】
実施例10
【0125】
図5及び関連する表8に示すように、臨床試験で応答した患者のうちの2人のctDNAを、患者スクリーニング時のctDNAと比較して、治療期間にわたって評価した。ctDNAは、Foundation Medicineから入手可能なFoundation ACT(登録商標)血液ベースの循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイによって測定した。
【0126】
図16Aは、治療開始時のNRASQ61R黒色腫を有する患者のCTスキャンを示し、図16Bは、450mg BIDの用量のベルバラフェニブによる8週間の治療後の患者のCTスキャンを示す。図16Cは、治療開始時のBRAFV600E結腸がんを有する患者のCTスキャンを示し、図16Dは、450mg BIDの用量のベルバラフェニブによる8週間の治療後の患者のCTスキャンを示す。データは、レスポンダー症例が血漿NRASQ61R又はBRAFV600EのctDNAの減少と相関することを示す。
【0127】
図17A~17Cは、KRAS変異体患者に対するBRAFV600E及びNRASmut患者の血漿ctDNAレベルにおけるドライバー変異の縦断的変化を示す。図17Aは、ベルバラフェニブ療法が安定した疾患若しくは部分奏効を達成したか、又は疾患が進行した、BRAFV600E結腸がん、BRAFV600E黒色腫及びBRAFV600E腎芽細胞腫を有する患者についての、ベルバラフェニブ治療サイクル時間に対するBRAFV600E MAF ctDNAの結果を示す。図17Bは、ベバラフェニブ処置が安定した疾患又は部分奏効を達成した、NRASmut黒色腫及びNRASmut粘膜黒色腫を有する患者についての、ベルバラフェニブ治療サイクル時間に対するNRAS変異体MAF ctDNAの結果を示す。図17Cは、ベルバラフェニブ治療が安定した疾患を達成したか、又は疾患が進行した、KRASmut結腸がん、KRASmut膵臓がん、KRASmut子宮内膜がんを有する患者についての、ベルバラフェニブ治療サイクル時間に対するKRAS変異体MAF ctDNAの結果を示す図である。データは、PR/SDにおける対立遺伝子頻度の低下がPD患者よりも顕著であることを示す。
【0128】
実施例11
【0129】
ベルバラフェニブのin vitroキナーゼ阻害選択性及び活性を、189種のキナーゼに対するキナーゼパネルアッセイ、並びにZ’-lyte(登録商標)生化学アッセイ、Lantha(登録商標)結合アッセイ、及びAdapter(登録商標)アッセイを使用することによる選択されたキナーゼに対するその後の確認アッセイにおいて評価した。
【0130】
下記の表16に報告されるように、ベルバラフェニブは、10種のキナーゼ、すなわち、BRAF、BRAFV599E、RAF-1(CRAF)Y340D Y341D、CSF1R(FMS)、DDR1、DDR2、EPHA2、EPHA7、EPHA8及びEPHB2に対して1μMで90%超の酵素活性阻害を示した。6種の選択されたキナーゼに対する確認アッセイ(表16)において、ベルバラフェニブは、(IC50=41nM)、BRAFV599E(7nM)、RAF-1(CRAF)、Y340D Y341D(2nM)、CSF1R(FMS)(44nM)、DDR1(77nM)及びDDR2(182nM)に対して強力な阻害効果を示した。BRAF(41nM)及びBRAFV599E(7nM)に対するベルバラフェニブの阻害効果は、ベムラフェニブの阻害効果(それぞれ38及び11nM)に匹敵したが、RAF-1(CRAF)Y340D Y341Dについては、ベルバラフェニブ(2nM)は、ベムラフェニブ(12nM)よりも6倍強力であった。
【0131】
【表16】
*BRAF DNAのGCリッチなエクソンに3つの余分なヌクレオチドが見出されたため、BRAFV600E変異をBRAFV599Eと命名した。
†Tyr340/Tyr341のアスパラギン酸への保存された活性化変異(RAF-1 Y340D Y341D)は、RAF-1活性を構成的に増加させる。RAF-1活性化には、Pak(p65Pak)によるSer338での、及びSrcファミリーキナーゼによるTyr340/Tyr341でのRAF-1のリン酸化が必要である。
【0132】
実施例12
【0133】
BRAFV600変異を有する黒色腫におけるそれらの有効性にもかかわらず、ベムラフェニブ及びダブラフェニブは、RAS変異体及びRAS/RAF野生型に対して無効であるだけでなく、ERK活性化も誘導することが知られている。このため、ベムラフェニブに対するベルバラフェニブの間のMAPKシグナル伝達経路阻害プロファイルを、BRAFV600E変異体(SK-MEL-28及びA375)及びNRAS変異体(SK-MEL-2及びSK-MEL-30)の黒色腫細胞を用いて調べた。
【0134】
表17に示されるように、SK-MEL-28及びA375BRAFV600E変異体の黒色腫細胞において、ベルバラフェニブ及びベムラフェニブの両方がMEK及びERKのリン酸化を阻害した。これに対して、NRAS変異体黒色腫細胞(SK-MEL-2及びSK-MEL-30)では、ベムラフェニブではなく、ベルバラフェニブのみがMEK及びERKのリン酸化に対する阻害効果を示した。MEK及びERKリン酸化に対するベルバラフェニブのin vitro細胞IC50値は、SK-MEL-2ではそれぞれ335nM及び204nMであり、SK-MEL-30細胞株ではそれぞれ388nM及び258nMであり、ベムラフェニブの対応する値は、SK-MEL-2及びSK-MEL-30細胞株の両方において10μM超であった。
【0135】
【表17】
【0136】
実施例13
【0137】
黒色腫細胞株におけるベムラフェニブ対他のBRAF阻害剤、ベムラフェニブ及びダブラフェニブのin vitro細胞増殖阻害活性を、ベムラフェニブ/ダブラフェニブ感受性BRAFV600E変異を有するSK-MEL-28及びA375細胞株、並びにNRAS変異を有するベムラフェニブ/ダブラフェニブ耐性黒色腫細胞株、SK-MEL-2(NRASQ61R)及びSK-MEL-30(NRASQ61K)の両方において評価した。結果は表18に報告されており、ベルバラフェニブは、ベムラフェニブ/ダブラフェニブ感受性BRAF変異体黒色腫細胞株だけでなく、ベムラフェニブ/ダブラフェニブ耐性NRAS変異体黒色腫細胞株も強力に阻害したことを示している。SK-MEL-28、A375、SK-MEL-2及びSK-MEL-30細胞株について、それぞれ69、57、53及び24nMのGI50が決定された。予想通り、ベムラフェニブ及びダブラフェニブは、SK-MEL-28及びA375黒色腫細胞株において阻害活性を示したが、SK-MEL-2及びSK-MEL-30黒色腫細胞株では示さなかった。
【0138】
【表18】
【0139】
実施例14
【0140】
KRAS変異体細胞株に対するベルバラフェニブ対他のBRAF阻害剤(ベムラフェニブ及びダブラフェニブ)のin vitro MAPKシグナル伝達阻害活性を、CRC細胞株HCT116(KRASG13D)及びLovo(KRASG13D)、並びにNSCLC細胞株Calu-6(KRASQ61K)で更に調査した。表19に示されるように、ベムラフェニブ及びダブラフェニブではなく、ベルバラフェニブのみが、HCT116、Lovo及びCalu-6細胞株においてMEK及びERKのリン酸化に対する阻害効果を示した。MEK及びERKリン酸化に対するベルバラフェニブのin vitro細胞IC50値は、それぞれ、HCT116において2,698nM及び253nMであり、Lovoにおいて10μM超(10μMで37%阻害)及び267nMであり、Calu-6細胞株において367nM及び590nMであった。ベムラフェニブ及びダブラフェニブの対応するIC50値は、HCT116、Lovo、及びCalu-6細胞株において10μM超であった。
【0141】
【表19】
ベルバラフェニブは、MEKのリン酸化を10μMで37%阻害した。
【0142】
実施例15
【0143】
他のBRAF阻害剤、ベムラフェニブ及びダブラフェニブに対するベルバラフェニブのin vitro細胞増殖阻害活性を、BRAF変異体CRC細胞株:HT-29及びColo-205(両方ともBRAFV600E);KRAS変異体CRC細胞株:LS174T(KRASG12D)、LS513(KRASG12D)、HCT116(KRASG13D)及びLovo(KRASG13D);並びにKRAS変異体NSCLC細胞株:Calu-6(KRASQ61K)及びCalu-1(KRASG12C)で更に調査した。結果を表20及び21に報告する。
【0144】
ベルバラフェニブ及びベムラフェニブは、BRAF変異体CRC細胞株HT-29及びColo-205(GI50範囲=47~118nM)において細胞増殖阻害に対して同等の活性を示したが、ダブラフェニブは、GI50<0.1nMでそれらの細胞において最も強力な細胞増殖阻害効果を示した。ベルバラフェニブは、LS174T、LS513、HCT116及びLovoを含むin vitroで試験した全てのKRAS変異体CRC細胞株においてGI50値がそれぞれ258、62、177及び51nMで細胞増殖を阻害した(表20)。KRAS変異体NSCLC細胞株の細胞増殖阻害に対するベルバラフェニブの活性も、Calu-6及びCalu-1(それぞれ179nM及び749nMのGI50)で観察された(表21)。ダブラフェニブはまた、Lovo(KRAS変異体、CRC)細胞株(GI50=214nM)、並びにCalu-6及びCalu-1(KRAS変異体、NSCLC)細胞株(それぞれ618nM及び904nMのGI50)において、in vitroでの細胞増殖阻害を示した。しかしながら、ダブラフェニブの活性は、Calu-1細胞を除いて、ベルバラフェニブよりも約3~4倍弱かった。ベムラフェニブは、KRAS変異体細胞における増殖の阻害に対して活性を示さなかった。
【0145】
【表20】
【0146】
【表21】
【0147】
実施例16
【0148】
BRAF又はKRAS変異細胞株に対するベルバラフェニブ対他のBRAF阻害剤、ベムラフェニブ及びダブラフェニブのin vitro細胞増殖阻害活性を、BRAF変異体甲状腺細胞株:SNU790、FRO、B-CPAP、NPA、8505C、ARO(全てBRAFV600E)、及びSNU80(BRAFG468R);並びにKRAS変異体甲状腺がん細胞株、CAL-62(KRASG12R)で更に調査した。結果を表22に要約する。
【0149】
ベルバラフェニブ及びダブラフェニブは、7つ全てのBRAF変異体甲状腺がん細胞株において細胞増殖阻害に対する活性を示した(GI50、<1μM)。ベムラフェニブは、SNU790、B-CPAP及びNPA、BRAF変異体甲状腺がん細胞株において、GI50値<1μMで細胞増殖阻害効果を示した。さらに、ベムラフェニブ又はダブラフェニブではなく、ベルバラフェニブのみが、CAL-62(KRASG12R)甲状腺がん細胞における細胞増殖阻害に対して活性を示し、GI50値は479nMであった。
【0150】
【表22】
【0151】
実施例17
【0152】
ベルバラフェニブのin vivo抗腫瘍活性を、NRASG13D変異体K1735同系マウス黒色腫モデルにおいて調べた。1群あたり7匹の動物を、ビヒクル(対照)、及び7.5又は15mg/kgの用量のベルバラフェニブを強制経口投与により1日1回処置した。表23に示されるように、22日目において、ベルバラフェニブに対する最大阻害率(mIR)は、7.5mg/kgにおいて48.2%であり、15mg/kgにおいて54.7%であった。阻害率(%)=(処置群の1平均相対腫瘍重量/対照群の平均相対腫瘍重量)×100。
【0153】
【表23】
【0154】
実施例18
【0155】
NRASQ61K変異を有するSK-MEL-30ヒト黒色腫細胞株を異種移植したマウスモデルにおいて、ベルバラフェニブのin vivo抗腫瘍活性を調べた。1群あたり5匹の動物を、ビヒクル(対照)、及び10又は30mg/kgの用量のベルバラフェニブで、14日目まで強制経口投与により1日1回処置した。
【0156】
表24に示されるように、ベルバラフェニブの経口投与は、用量依存的な抗腫瘍活性をもたらし、それぞれ、10及び30mg/kg、q.d.で70.3%(15日目)及び80.0%(15日目)の最大阻害率をもたらした。ベルバラフェニブによる治療は、体重減少を伴わずに忍容性が高かった。背部の発毛の臨床兆候が観察された。
【0157】
【表24】
【0158】
実施例19
【0159】
NRASQ61K変異を有するSK-MEL-30ヒト黒色腫細胞株を異種移植したマウスモデルで、第2の実験において、ベルバラフェニブのin vivo抗腫瘍活性を調べた。1群あたり5匹の動物を、ビヒクル(対照)、及び10又は30mg/kgの用量のベルバラフェニブで、21日目まで強制経口投与により1日1回処置した。
【0160】
表25に示されるように、ベルバラフェニブの経口投与は、用量依存的な抗腫瘍活性をもたらし、それぞれ、10及び30mg/kg、q.d.で36.7%(21日目)及び74.6%(21日目)の最大阻害率をもたらした。
【0161】
【表25】
【0162】
実施例20
【0163】
BRAFV600E変異を有するHT-29CRC細胞株を異種移植したマウスモデルの実験において、ベルバラフェニブのin vivo抗腫瘍活性を調べた。1群あたり5匹の動物を、ビヒクル(対照)、及び30mg/kgの用量のベルバラフェニブで、21日目まで強制経口投与により1日1回処置した。
【0164】
表26に示すように、ベルバラフェニブの経口投与では、30mg/kgで59.8%(22日目)の最大阻害率の抗腫瘍活性が得られた。
【0165】
【表26】
【0166】
実施例21
【0167】
KRASQ61K変異を有するCalu-6NSCLC細胞株で異種移植されたマウスモデルの実験において、ベルバラフェニブのin vivo抗腫瘍活性を調べた。1群あたり5匹の動物を、ビヒクル(対照)、及び3、10又は30mg/kgの用量のベルバラフェニブで、17日目間強制経口投与により1日1回処置した。
【0168】
表27に示されるように、ベルバラフェニブの経口投与は、用量依存的な抗腫瘍活性をもたらし、3、10及び30mg/kg、q.d.でそれぞれ53.5%(18日目)、79.3%(15日目)及び86.3%(12日目)の最大阻害率を示した。
【0169】
【表27】
【0170】
実施例22
【0171】
抗PD1/PD-L1療法を含む最大2種類の全身抗がん療法を受けたNRAS変異体転移性又は切除不能な局所進行性皮膚黒色腫を有する患者における単剤としてのベルバラフェニブの安全性、薬物動態及び活性を評価するために、第Ib相多施設試験を行う。
【0172】
この研究には、NRAS活性化変異を有する、測定可能な疾患(RECIST vl.1に従う)である、米国がん合同委員会、第8改訂版(Amin et al.2017)によって定義される進行性黒色腫を有する患者が登録されるであろう。
【0173】
患者は、スクリーニング前の5年以内に、地元の保健局によって承認された臨床変異試験(例えば、米国食品医薬品局[FDA]が承認した試験、米国病理医協会、E.U.各国でのCEマーキング[欧州適合性]in vitro診断、又は等価物)の使用を通じて、地元の検査室によって決定されたように、黒色腫腫瘍組織におけるNRAS突然変異陽性状態の記録(保管されているか、又は新規に取得される)を有するであろう。NRAS変異陽性状態は、エクソン2のNRAS遺伝子コドン12、13及びエクソン3のコドン61に生じる変異として定義される。
【0174】
最大15人の患者が登録され、各28日間サイクルの1~28日目に錠剤形態の300mg又は400mgのベルバラフェニブを1日2回(BID)投与される。ベルバラフェニブは、食事から30分以内に投与される。
【0175】
試験治療のPKプロファイル及び免疫原性応答を特徴付けるため、投与前後の様々な時点で血液試料を採取する。PKパラメータは、サイクル1、1日目及び定常状態に適切な場合、非コンパートメント法を使用して、投薬からの時間に対するベルバラフェニブの血漿中濃度から導出される:Cmax、tmax、公称時間0から時間tまでの濃度-時間曲線下面積(AUC)(AUC0-t)。さらに、ベルバラフェニブの血漿中濃度を個々の値として報告し、適切な場合及びデータが許す場合に要約する。個々の及び平均のベルバラフェニブ濃度を治療群及び日ごとにプロットする。ベルバラフェニブ濃度データを、確立された集団PKモデルを使用して他の試験からのデータと共にプールして、データによって保証されるクリアランス、分布容積及びAUC等のPKパラメータを導出することができる。関連するPKパラメータと用量、安全性、有効性又はバイオマーカーの結果との潜在的な相関関係を調べることができる。
【0176】
スクリーニング時(他の適格基準が満たされた後)、試験治療開始6週間後、及び疾患進行時の時点で、最低5人の患者が3回の連続生検を受ける必要がある。これらの患者からの追加の生検は、調査者の裁量で収集することができる。
【0177】
この明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、かつ任意の当業者による任意のデバイス又はシステムの作製及び使用、並びに任意の組み込まれる方法の実行を含む、本発明の実施を可能にするために、実施例を使用する。本発明の特許取得の対象となる範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と実質的な差異を有さない同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19A
図19B
【国際調査報告】