(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】抽出方法
(51)【国際特許分類】
C09F 3/00 20060101AFI20230714BHJP
C11B 1/10 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C09F3/00
C11B1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577621
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 AU2021050622
(87)【国際公開番号】W WO2021253083
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522488661
【氏名又は名称】エッセンシャル クイーンズランド プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】マウントフォート,ラモン ダドリー
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059BA12
4H059BA29
4H059BC13
4H059CA12
4H059EA21
(57)【要約】
本開示は、樹脂性木材から、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて、テルペン及びロジンを抽出して、それによって樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための方法及び装置に関する。ロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための装置は、樹脂性木材を薬剤を用いて処理するための処理チャンバを備える。処理チャンバは、樹脂性木材から抽出されたロジン及びテルペン画分を分離するための蒸留チャンバと連通している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための方法であって、前記樹脂性木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理する/前記薬剤と接触させて、それによって前記樹脂性木材から前記ロジン及び/又はテルペン画分を抽出する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記樹脂性木材を少なくとも部分的に細分化又はデサイジングする初期工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記樹脂性木材を細分化する前記初期工程と、前記樹脂性木材を前記薬剤を用いて処理することとの間の期間が、約8週間以下、約4週間以下、又は約2週間以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂性木材から抽出された前記ロジン画分及び前記テルペン画分を分離する工程を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ロジン画分及び前記テルペン画分を分離することが、少なくとも部分的に蒸留によって実行されて、前記テルペン画分を含む、前記テルペン画分から本質的になる、又は前記テルペン画分からなる留出物、及び前記ロジン画分を含む、前記ロジン画分から本質的になる、又は前記ロジン画分からなる残留物流を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記留出物から前記テルペン画分を分離する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤を用いて処理された前記樹脂性木材を加熱して、それから前記薬剤及び/又は前記テルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去する後続の工程を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記樹脂性木材を前記薬剤を用いて処理する前記工程が、約15分~約120分の時間実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂性木材を前記薬剤を用いて処理する前記工程が75℃~約155℃の温度で実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂性木材を前記薬剤を用いて処理する前記工程が、約10psi~約75psiの圧力で実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記樹脂性木材が、前記薬剤を用いた逆電流/逆流方式で処理される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂性木材から抽出された前記ロジン及び/又はテルペン画分が、汚染物質を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記テルペン画分が、その少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約80重量%のピネンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記テルペン画分が、汚染物質を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記テルペン画分が、その約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、又は約1重量%未満のテルペンポリマーを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記テルペン画分が、その約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の合成パイン油を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ロジン画分が、約8以下のガードナー色数を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ロジン画分が、汚染物質を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ロジン画分が、約160~約175の酸価を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ロジン画分が、その約15重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%の範囲のアビエチン酸含有量を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法に従って生成された、テルペン画分。
【請求項22】
単離されたテルペン画分であって、
(a)前記単離されたテルペン画分の少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約80重量%のピネンを含む、
(b)汚染物質を実質的に含まない、
(c)前記単離されたテルペン画分の、約25重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、又は約1重量%未満のテルペンポリマーを含む、及び
(d)前記単離されたテルペン画分の、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の合成パイン油を含む、のうちの1つ以上である、単離されたテルペン画分。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法に従って生成された、ロジン画分。
【請求項24】
単離されたロジン画分であって、
(a)約8以下、約5以下、又は約3以下のガードナー色数を含む、
(b)汚染物質を実質的に含まない、
(c)約160~約175の酸価を含む、
(d)前記単離されたロジン画分の約15重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%の範囲のアビエチン酸含有量を含む、のうちの1つ以上である、単離されたロジン画分。
【請求項25】
ポリマーを作製する方法であって、請求項23若しくは24に記載のロジン画分、及び/又は請求項21若しくは22に記載のテルペン画分を処理して、それによって前記ポリマーを作製する工程を含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法に従って生成された、ポリマー。
【請求項27】
エステルを作製する方法であって、請求項23若しくは24に記載のロジン画分、及び/又は請求項21若しくは22に記載のテルペン画分を処理して、それによって前記エステルを作製する工程を含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法に従って生成された、エステル。
【請求項29】
樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための装置であって、前記樹脂性木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理するための処理チャンバを備える、装置。
【請求項30】
前記処理チャンバが、逆電流抽出器であるか、又は逆電流抽出器を備える、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記処理チャンバと連通している蒸留チャンバを更に備え、前記蒸留チャンバは、前記樹脂性木材から抽出された前記ロジン及びテルペン画分を分離するためのものである、請求項29又は30に記載の装置。
【請求項32】
前記処理チャンバと連通している脱溶媒器を更に備え、前記脱溶媒器は、前記薬剤を用いて処理された前記樹脂性木材を加熱して、それから前記薬剤及び/又は前記テルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去するためのものである、請求項29~31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記蒸留チャンバと連通している分離器を更に備え、前記分離器は、前記蒸留チャンバによって生成された留出物から前記テルペン画分を少なくとも部分的に分離するためのものである、請求項29~32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
スクラブデバイスを更に備える、請求項29~33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
前記処理チャンバが、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる前記薬剤を含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法において使用するための、請求項29~35のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月16日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2020/901996号からの優先権を主張し、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、樹脂性木材からテルペン及びロジンを抽出するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ロジン(又はコロフォニー)及びテルペン(又はテルペンチン)の商業的供給源として認められているものが3つ存在する。これらとしては、化学的パルプ化(即ち、トール油、並びにCSTから誘導されたロジン及びテルペン)、活木の手動又は半手動のタッピング(即ち、ガムロジン及びガムテルペンチン)、及び溶媒抽出(即ち、木材ロジン及び木材テルペンチン)が挙げられる。
【0004】
化学的パルプ化は、典型的には、強塩基及び酸を使用して、木材を分解し、このプロセスの副生成物としてロジン及びテルペンが排出される。そうすることで、このプロセスによって誘導されるロジン及びテルペンは、パルプ化プロセスからの有意なレベルの汚染物質(例えば、硫化物及びスルフェート化合物)を含有し得、これらは、次いで、様々な濾過及び蒸留プロセスを通じて除去されなければならない。したがって、このようなロジン及びテルペンからの微量化学物質又は汚染物質の完全な除去は、一般に、商業的に実行可能ではない。加えて、木材中の利用可能なロジン及びテルペンの完全な回収は、化学的パルプ化プロセスでは、例えば、ピッチ及びその中の他の化合物への分解に起因して不可能である。パイン化学物質を抽出する手段としての化学的パルプ化は、重金属及び有毒化合物の環境への排出など、いくつかの環境への悪影響を更に提示し得る。
【0005】
ガムタッピングは、活木の機械的な切断、削り取り、傷つけ、又は穴あけの様々な方法を使用して行われる。しかしながら、このプロセスから商業的に実行可能な収量を得るために、傷が、ブリードし続け、その抽出物を排出することを確実にするために、化学的刺激剤が、典型的に使用される。これらの刺激剤としては、エテホン及び硫酸などの酸及びホルモンを挙げることができる。そのような化学物質は、得られたロジン及びテルペンの物理的組成に悪影響を及ぼし得る。例として、酸はテルペンを重合させ、樹木に天然に存在するよりも高い濃度のジテルペン及びトリテルペンをもたらし得る。これらのテルペンポリマーはまた、α-及びβ-ピネンなどのモノテルペンに比べると、あまり求められていない。したがって、ガムタッピングのプロセスは、典型的には、添加された化学物質を除去するための洗浄工程を必要とし、多くの場合、微量の化学物質が依然残っている。この洗浄工程はまた、汚染された水が一般的に塩水である廃棄物流も作り出す。
【0006】
木材ロジン及びテルペンは、一般に、樹木の切り株及び溶媒を使用して抽出される。溶媒は、典型的には、ヘキサン、メチルエチルケトン、又は別の炭化水素である。プロセスは、溶媒中で木材を洗浄し、その後、生成された濃縮物を、溶媒、ロジン、及びテルペンに蒸留するものである。これにもかかわらず、この溶媒抽出プロセスからの得られた木材ロジン及びテルペンは、依然として、顕著に微量の溶媒及び他の汚染物質を含有し得る。加えて、このプロセスによって生成される木材ロジンは、一般に、収量に悪影響を及ぼし、ロジンを変性する可能性がある、更なる脱色プロセスを必要とする。
【0007】
したがって、これらの最終製品に対する損傷が少ない可能性があり、及び/又はより環境に配慮し得る、樹脂性木材からロジン及びテルペンを抽出するための改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、樹脂性木材を、テルペン系溶媒であるか、又はテルペン系溶媒を含む薬剤を用いて処理することによって、このような木材からのテルペン及びロジンのより効率的で、改善された抽出と、不要な化学物質による汚染物質の低減されたレベルとがもたらされ得るという驚くべき発見に部分的に基づいている。
【0009】
第1の態様では、本開示は、樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための方法であって、樹脂性木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理して、それによって樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出する工程を含む、方法を提供する。
【0010】
好適には、本方法は、薬剤を用いる処理の前に、樹脂性木材をチッピングするなど、少なくとも部分的に細分化する初期工程を更に含む。いくつかの例では、樹脂性木材を細分化する初期工程と、樹脂性木材を薬剤を用いて処理することとの間の時間が、約12時間以下、約8時間以下、約4時間以下、約2時間以下、又は約1時間以下であり得る。
【0011】
好適には、本方法は、樹脂性木材から抽出されたロジン画分及びテルペン画分を分離する工程を更に含む。いくつかの例では、ロジン画分及びテルペン画分を分離することは、少なくとも部分的に蒸留によって実行されて、テルペン画分を含む、テルペン画分から本質的になる、又はテルペン画分からなる留出物、及びロジン画分を含む、ロジン画分から本質的になる、又はロジン画分からなる残留物流を生成する。ある特定の例では、本方法は、留出物からテルペン画分を分離又は回収する工程を更に含む。
【0012】
特定の例では、本方法は、それから薬剤及び/又はテルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去するために、薬剤を用いて処理された樹脂性木材を加熱する、例えば蒸気処理する後続の工程を含む。
【0013】
好適には、樹脂性木材を薬剤を用いて処理する工程は、樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するのに十分又は好適な条件下で、一定時間実行される。いくつかの例では、樹脂性木材を薬剤を用いて処理する工程は、約15分~約120分の時間実行される。様々な例では、樹脂性木材を薬剤を用いて処理する工程は、約75℃~約155℃の温度で実行される。いくつかの例では、樹脂性木材を薬剤を用いて処理する工程は、約10psi~約75psiの圧力で実行される。
【0014】
好適には、樹脂性木材は、逆電流又は逆流方式において、薬剤を用いて接触又は処理される。
【0015】
特定の例では、樹脂性木材から抽出されたロジン及び/又はテルペン画分は、汚染物質を実質的に含まない。
【0016】
ある特定の例では、薬剤は、樹脂性木材から抽出されたテルペン画分から少なくとも部分的に誘導される。これに関して、本方法は、樹脂性木材から抽出されたテルペン画分及び/又は処理工程に使用するための薬剤をリサイクルする更なる工程を含み得る。
【0017】
いくつかの例では、樹脂性木材は、薬剤を用いる処理の前には実質的に未処理である。
【0018】
様々な例では、樹脂性木材は、1つ以上の樹脂性木材の丸太及び/又は切り株に少なくとも部分的に由来するか、又はそれらを含む。
【0019】
第2の態様では、本開示は、第1の態様の方法に従って生成されたテルペン画分を提供する。
【0020】
上記態様のいくつかの例では、テルペン画分は、テルペン画分の少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約80重量%のピネンを含む。
【0021】
上記態様の様々な例では、テルペン画分は、汚染物質を実質的に含まない。
【0022】
上記態様の特定の例では、テルペン画分は、テルペン画分の約25重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、又は約1重量%未満のジテルペン及びトリテルペンなどのテルペンポリマーを含む。
【0023】
上記態様のある特定の例では、テルペン画分は、テルペン画分の約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の合成パイン油を含む。
【0024】
第3の態様では、本開示は、第1の態様の方法に従って生成されたロジン画分を提供する。
【0025】
上記態様のある特定の例では、ロジン画分は、約8以下、約5以下、又は約3以下のガードナー色数を有する。
【0026】
上記態様の様々な例では、ロジン画分は、汚染物質を実質的に含まない。
【0027】
上記態様の特定の例では、ロジン画分は、約160~約175の酸価を有する。
【0028】
上記態様のいくつかの例では、ロジン画分は、ロジン画分の約15重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%の範囲のアビエチン酸含有量を含む。
【0029】
第4の態様では、本開示は、
(a)単離されたテルペン画分の少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約80重量%のピネンを含む、
(b)汚染物質を実質的に含まない、
(c)単離されたテルペン画分の、約25重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、又は約1重量%未満のテルペンポリマーを含む、及び
(d)単離されたテルペン画分の、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の合成パイン油を含む、のうちの1つ以上である、単離されたテルペン画分を提供する。
【0030】
第5の態様では、本開示は、
(a)約8以下、約5以下、又は約3以下のガードナー色数を含む、
(b)汚染物質を実質的に含まない、
(c)約160~約175の酸価を含む、
(d)単離されたロジン画分の約15重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%の範囲のアビエチン酸含有量を含む、のうちの1つ以上である、単離されたロジン画分を提供する。
【0031】
第6の態様では、本開示は、ポリマーを作製する方法であって、第1の態様の方法に従って生成されたロジン画分及び/又はテルペン画分を処理して、それによってポリマーを作製する工程を含む、方法を提供する。
【0032】
第7の態様では、本開示は、第6の態様の方法に従って生成されたポリマーに関する。
【0033】
第8の態様では、本開示は、エステルを作製する方法であって、第1の態様の方法に従って生成されたロジン画分及び/又はテルペン画分を処理して、それによってエステルを作製する工程を含む、方法を提供する。
【0034】
第9の態様では、本開示は、第8の態様の方法に従って生成されたエステルに関する。
【0035】
第10の態様では、本開示は、樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための装置であって、樹脂性木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理するための処理チャンバを備える、装置を提供する。
【0036】
いくつかの例では、処理チャンバは、逆電流抽出器であるか、又は逆電流抽出器を備える。
【0037】
ある特定の例では、装置は、処理チャンバと連通している蒸留チャンバを更に備え、蒸留チャンバは、樹脂性木材から抽出されたロジン及びテルペン画分を分離するためのものである。
【0038】
様々な例では、装置は、処理チャンバと連通している脱溶媒器を更に備え、脱溶媒器は、薬剤を用いて処理された樹脂性木材を蒸気又は加熱油によるなどの加熱、処理をして、薬剤及び/又はそこからのテルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去することが可能である。
【0039】
特定の例では、装置は、蒸留チャンバと連通している凝縮器などの分離器を更に備え、分離器は、蒸留チャンバによって生成された留出物からテルペン画分を分離するためのものである。
【0040】
いくつかの例では、装置は、スクラブデバイスを更に備える。
【0041】
好適には、装置は、第1の態様の方法に使用するためのものである。
【0042】
本明細書全体を通して、別段の指示がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、記載された整数又は整数の群が1つ以上の他の記載されていない整数又は整数の群を含み得るように、排他的ではなく包括的に使用される。
【0043】
逆に、「からなる(consist)」、「からなる(consists)」、及び「からなる(consisting)」という用語は、記載された整数又は整数の群が必要又は必須であり、他の整数が存在し得ないように、排他的に使用される。「から本質的になる」という句は、記載された整数又は整数の群が必要又は必須であるが、記載された整数又は整数の群の活性又は作用を妨害しない又はそれに寄与しない他の要素が任意選択的であることを示す。
【0044】
また、不定冠詞「a」及び「an」は、単一の不定冠詞として、又は不定冠詞が参照する単一の対象を2つ以上又はそれ以上排除するものとして読まれるものではないことが理解されるであろう。例えば、「a」タンパク質は、1つのタンパク質、1つ以上のタンパク質、又は複数のタンパク質を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された量、濃度、比、又は割合の変動又は公差を指す。このような公差及び差異の程度は、当業者によく理解されている。典型的には、このような公差及び差異は、本明細書に記載される装置及び方法の構造、機能、及び/又は実現形態を損なわない。好ましくは、「約」は、記載された量、濃度、比、又は割合を、10%、5%、2%以下、又は1%上回る、又は下回ると定義される。
【0046】
単なる例として、本開示の実施形態は、添付の図面を参照して以下により完全に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本開示の特定の実施形態による装置又はシステムの概略図である。
【
図2】丸太(A)及び切り株(B)の木材チップのサイズ分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示は、部分的には、樹脂性木材からロジン及びテルペンを抽出する新規な方法の同定から生じる。特に、これらの新規な方法は、汚染物質又は微量の化学物質を含まないか、又は最小限に抑え、したがって下流での使用により適している、改良されたロジン及びテルペン画分の生成を提供する。加えて、本明細書に記載される方法は、典型的には、より低い資本及び運用コストを有し、及び/又はより効率的であり得、及び/又は改善された収量を示し得、及び/又は当該技術分野において以前に記載されたものよりも環境に配慮し得るものである。
【0049】
本開示は、自己持続性及び自己生成溶媒、即ち、樹脂性木材中に天然に存在するテルペンを使用する、樹脂性木材由来のロジン及びテルペンの生成のための非破壊的溶媒系抽出方法を提供する。この構成により、本抽出方法は、既存のロジン及びテルペンの生成方法に典型的に見出られるような、任意の試薬又は微量の化学物質の残留物を有しない、又は実質的に有しないロジン及びテルペン画分を有利に生成し得る。本開示の方法による溶媒抽出はまた、改善された効率を提供し得、ロジン及びテルペン画分の抽出は、当該技術分野で既知の他の溶媒抽出プロセスの半分程度の時間ですむ(例えば、約30分~約45分のみ)。この改善された効率は、酸化及びテルペン重合などのロジン及びテルペン画分の任意の化学的及び/又は物理的変化を最小限に抑え、これは、その価値及び有用性に対して有害であり得る。更に、これは、生成バッチ間の変動を最小限に抑え得、バッチ間で最大10%以上のより大きな変動性を示し得る他の先行技術の方法に対して、本開示の方法によって誘導されるロジン及びテルペン画分は、典型的には、バッチ間で化学的組成の同じ又は1%以内の変動性を示す。抽出プロセスはまた、更なる溶媒の除去を必要としない、テルペン画分からのロジン画分の単一の分離工程に起因して、先行技術の方法よりも典型的に単純である。これに関して、先行技術の溶媒抽出方法は、典型的には、樹脂性材料が溶媒処理によって木材から除去され、次いで、任意の保持溶媒が蒸気処理によって処理された木材から回収される、2工程プロセスを伴う(例えば、Beglinger,E.(1958)、樹脂性木材の蒸留を参照されたい)。廃棄物流も最小限に抑えられ、有害な化学物質を燃やし、又は塩分を含んだ汚染水を排出する必要がない。
【0050】
一態様では、本開示は、樹脂性木材から成分又はその誘導体を含むロジン画分及び/又はテルペン画分を抽出するための方法であって、樹脂性木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理して、それによって樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出する工程を含む、方法にある。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ロジン」という用語は、広義には、針葉樹や軟材樹などの異なる種の樹脂性樹木から得られる樹脂を指す。ロジンの組成物は、それらの供給源に応じてある程度変化し得るが、それらは通常、主成分として、成分又はその誘導体を含む不飽和モノカルボン酸などの樹脂酸を含む。これに関して、ロジン中の異なる樹脂酸の割合は、ロジンが得られた軟材又は針葉樹種によって変化し得る。例として、ロジンは、85~95%の樹脂酸を含有し得る。一般に、ロジンは、主にアビエチン酸(例えば、50%~80%)、及びより低い程度ではジヒドロアビエチン酸(例えば、5%~30%)、及びピマル酸(例えば、5%~30%)を含有する。ロジンはまた、イソプロミン酸、パルストリン酸、及びネオアビエチン酸も含み得る。
【0052】
「テルペン」及び「テルペンチン」という用語は、本明細書では互換的に使用され、様々な植物、特に針葉樹によって生成される大きくかつ多様な種類の有機化合物を指す。理解されるように、テルペン又はテルペンチンの主成分は、α-ピネン、β-ピネン、及び3-カレンなどの不飽和炭化水素モノテルペンである。
【0053】
広義には、「樹脂性木材」とは、樹脂の一部分を含有する木材を指す。樹脂性木材は、一般に、寄生虫及び病気に対する保護機構として樹脂を分泌するマツのような柔らかい木材種と関連するが、チーク、沈香、アカシアなどの樹脂性の硬材種も含み得る。いくつかの例では、樹脂性木材は、テルペン画分を含有する。他の例では、樹脂性木材は、ロジン画分を含有する。更なる例では、樹脂性木材は、テルペン画分及びロジン画分を含有する。
【0054】
特定の例では、樹脂性木材は、針葉樹の木材を含むか、針葉樹の木材からなるか、又は針葉樹の木材から本質的になる。したがって、本明細書における「樹脂性木材」への任意の言及は、針葉樹の木材を包含することが理解され得る。したがって、本開示の任意の態様、実施例、実施形態、又は特徴に関する本明細書の任意の記載で、「樹脂性木材」の用語で記載されているものは、針葉樹の木材にも等しく適用されると理解されるであろう。本明細書で一般的に使用される場合、「針葉樹の木材」という用語は、例えば、モミ、カラマツ、トウヒ、スギ、ヒノキ、イチイ、及びマツの種類などの、針葉樹の木材から得られる繊維質塊を指す。非限定的な例としては、カリビアンマツ、スラッシュマツ、コロラドトウヒ、バルサムモミ、ダグラスモミ、インセンスマツ、エリオットマツ、プリックリートウヒ、バンクスマツ、ラジアータマツ、ホワイトストウヒ、ブロードツイスマツ、及びセコイアが挙げられる。
【0055】
樹脂性木材は、樹木若しくは針葉樹の単一の種類若しくは種、又はそれらの組み合わせ(例えば、1、2、3、4、5などの種類又は種)に由来し得る、及び/又は非変性及び/又は変性され得る。樹脂性木材はまた、トランスジェニック(即ち、遺伝子組み換え)であり得、枝、丸太、根、及び切り株などの樹木又は植物の任意の部分に由来し得る。
【0056】
いくつかの例では、樹脂性木材は、実質的に丸太に由来する。当業者であれば理解するであろうが、「丸太」という用語は、広い意味で使用されるべきであり、典型的には、少なくとも部分的に樹皮が剥がされたものであり得るか、又は全て又は実質的に全ての樹皮を保持し得る、収穫された樹木の単位を指す。
【0057】
他の例では、樹脂性木材は、実質的に切り株に由来する。一般に、「切り株」という用語は、伐採又は収穫された樹木の残部(例えば、樹木の基部)で、少なくとも根の部分が地中に延在するものを指す。切り株は、実質的に樹皮を剥がしたものであり得るか、又は一部若しくは実質的に全ての樹皮を残したものであり得る。同様に、切り株は、本開示の方法において使用する前に、それらの根の一部分又は実質的に全てを除去し得る。
【0058】
本開示のために、樹脂性木材は、薬剤を用いる処理の前に、樹木採取又は切り株除去操作など、加工業者によって加工され得る。
【0059】
本方法は、例えば、プランテーションなどから樹脂性木材を収穫する初期工程を更に含み得ることが想定される。特定の例では、樹脂性木材を収穫してから、樹脂性木材を薬剤を用いて処理するまでの期間は、約12週間以下(例えば、約12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1週間、又はその中の任意の範囲)、約4週間以下、約2週間以下、又は約1週間以下である。この目的のために、本発明者らは、この時間枠が蒸発によるテルペン画分の損失を有利に最小限に抑え、それによってその収率を最大化し、その色及び反応性に悪影響を及ぼし得る樹脂性木材中のロジン画分の酸化の影響を最小化することを見出した。好ましくは、樹脂性木材は、収穫後及び薬剤を用いる処理の前に、ほとんど又はまったく更なる加工又は処理を受けない(即ち、樹脂性木材は本質的にその天然状態にある)。
【0060】
本明細書で使用される場合、「処理する」又は「処理」は、例えば、接触、水浸、蒸気含浸、噴霧、懸濁、液浸、飽和、浸漬、湿潤、すすぎ、大気圧機械的精製、含浸、洗浄、沈水、及び/又は任意の変形、及び/又はこれらの組み合わせを指し得る。
【0061】
当業者に理解されるように、樹脂性木材を処理する工程は、単純に、薬剤を含有する浴への樹脂性木材の通過を含み得る。他の例では、樹脂性木材を処理する工程は、樹脂性木材がバッチ槽を通過することを含み、バッチ槽は、薬剤を再循環する。
【0062】
ある特定の例では、樹脂性木材は、薬剤と逆電流又は逆流方式で接触又は処理される。「逆流」又は「逆電流」という用語は、処理チャンバなどで処理される樹脂性木材が概して一方向に流れるか、又は運ばれるのに対し、処理プロセスによって抽出された薬剤及び/又はテルペン/ロジン画分が反対方向に流れることを意味すると理解される。例として、樹脂性木材を処理する工程は、回転抽出器、ループ型抽出器、ドラッグチェーン抽出器、及び/又は連続ベルト抽出器への樹脂性木材の通過を含む。
【0063】
好適には、樹脂性木材を薬剤を用いて処理する工程は、樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するのに十分又は好適な条件下で、一定時間実行される。
【0064】
この目的のために、処理工程は、少なくとも部分的に、約60℃~約155℃、又はその中の任意の範囲、例えば、限定されないが、約70℃~約140℃、又は約75℃~約130℃の温度で好適に行われる。好適には、処理温度は、処理工程が実行される圧力でのロジン画分の融点よりも高い(例えば、大気圧で約73℃を超える)。同様に、処理温度は、処理工程が実行される圧力でのテルペン画分(例えば、ピネン)の沸点よりも好適に低い(例えば、大気圧で約155~156℃未満)。特定の例では、処理工程は、約60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃、130℃、131℃、132℃、133℃、134℃、135℃、136℃、137℃、138℃、139℃、140℃、141℃、142℃、143℃、144℃、145℃、146℃、147℃、148℃、149℃、150℃、151℃、152℃、153℃、154℃、155℃、又はその中の任意の範囲の温度で行われる。特定の例では、処理工程は、約75℃~約155℃の温度で行われる。
【0065】
更に、処理工程は、約5分~約240分又はその中の任意の範囲、例えば、限定されないが、約5分~約100分、又は約10分~約90分の時間実行され得るか、又は行われ得る。ある特定の例では、処理工程は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240分、又はその中の任意の範囲の時間行われる。特に好ましい例では、処理工程は、約15分~約120分の時間行われる。
【0066】
処理工程に関して、薬剤は、樹脂性木材の約10重量%~約200重量%又はその中の任意の範囲、例えば、限定されないが、約20重量%~約150重量%、約30重量%~約100重量%、又は約50重量%~約70重量%の量(即ち、薬剤と樹脂性木材との比)で好適に存在する。特定の実施形態では、薬剤は、樹脂性木材の約10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、100重量%、101重量%、102重量%、103重量%、104重量%、105重量%、106重量%、107重量%、108重量%、109重量%、110重量%、111重量%、112重量%、113重量%、114重量%、115重量%、116重量%、117重量%、118重量%、119重量%、120重量%、121重量%、122重量%、123重量%、124重量%、125重量%、126重量%、127重量%、128重量%、129重量%、130重量%、131重量%、132重量%、133重量%、134重量%、135重量%、136重量%、137重量%、138重量%、139重量%、140重量%、141重量%、142重量%、143重量%、144重量%、145重量%、146重量%、147重量%、148重量%、149重量%、150重量%、151重量%、152重量%、153重量%、154重量%、155重量%、156重量%、157重量%、158重量%、159重量%、160重量%、161重量%、162重量%、163重量%、164重量%、165重量%、166重量%、167重量%、168重量%、169重量%、170重量%、171重量%、172重量%、173重量%、174重量%、175重量%、176重量%、177重量%、178重量%、179重量%、180重量%、181重量%、182重量%、183重量%、184重量%、185重量%、186重量%、187重量%、188重量%、189重量%、190重量%、191重量%、192重量%、193重量%、194重量%、195重量%、196重量%、197重量%、198重量%、199重量%、200重量%、又はその中の任意の範囲で存在する。
【0067】
好適には、樹脂性木材は、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理される。これに関して、薬剤は、テルペン系溶媒とみなされ得る。本明細書に記載されるもの及びこれらの混合物を含む、テルペンは、薬剤の約50重量%~約100重量%、又はその中の任意の範囲、例えば、限定されないが、薬剤の約60重量%~約80重量%、約70重量%~約90重量%、又は約80重量%~約100重量%の量で薬剤中に存在し得る。本開示の特定の例では、テルペンは、薬剤の約50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、100%重量%、又はその中の任意の範囲の量で薬剤中に存在する。本開示の特に好ましい例では、テルペンは、薬剤の約90重量%~約100重量%の量で存在する。
【0068】
更なる実施形態では、薬剤のテルペンは、少なくとも部分的に、樹脂性木材及び/又は樹脂性木材を処理するために以前に使用された薬剤から以前に抽出されたテルペン画分から回収、リサイクル、又は誘導されたものである。これに関して、回収、リサイクル、又は誘導されたテルペンは、部分的又は完全に精製(purified)又は精製(refined)された形態であり得る。これに関して、本方法は、樹脂性木材から抽出されたテルペン画分及び/又は処理工程における薬剤として使用するための薬剤をリサイクルする更なる工程を含み得る。したがって、薬剤は、それによって抽出されたテルペン画分と同じ又は類似の組成のテルペンを含み得る。加えて、本明細書に記載される回収又はリサイクルされたテルペンは、「高純度」又は技術的グレード/精製(例えば、97%超の純度)のテルペン又はテルペンチンに変換することなく、本開示において使用するのにより好適かつ/又は有利になるように、精製又は濾過などの1つ以上のプロセスに供され得る。
【0069】
好適には、本開示の方法は、樹脂性木材中に存在するロジン及び/又はテルペン画分を少なくとも部分的に抽出する。この目的のために、本方法は、樹脂性木材中に存在するロジン及び/又はテルペン画分の100%又は100%未満を抽出し得る。特定の例では、本方法は、本明細書に記載される方法を用いて処理する前に、樹脂性木材中に存在するロジン及び/又はテルペン画分の量と比較して、又はそれらの量に対して、樹脂性木材中に存在するロジン及び/又はテルペン画分の約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、又はその中の任意の範囲の抽出及び/又は回収をもたらし得る。
【0070】
好適には、樹脂性木材は、本明細書に記載される方法による処理のために細分化又は断片化された形態である。この目的のために、樹脂性木材は、チップ、フレーク、ストランド、ペレットなどを含み得る。したがって、本態様の方法は、薬剤を用いる処理の前であるが、樹脂性木材の収穫後に、樹脂性木材をデサイジング(desizing)、細分化、断片化、若しくは低減化する(例えば、チッピング、研削、フレーキング、細断、粉砕)の先の又は先行する工程を更に含む。これに関して、丸太及び切り株などの固形木材は、それらの処理の前に、それらからのロジン及び/又はテルペン画分の抽出を促進するために、より小さな片又は断片、例えば、ストランド、繊維、フレーク、及び/又はチップに好適に細分化される。いくつかの例では、樹脂性木材は、本明細書に記載されるものなどの目標粒子径を達成するためのデサイジング工程に供される。したがって、樹脂性木材は、上記のものなどの1つ又は複数の樹脂性樹木に由来する木材チップ又はフレークを好適に含む。木材は、従来の木材チッパー及び/又はハンマーミルが好ましい、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって細分化され得ることが更に想定される。
【0071】
上記を考慮すると、樹脂性木材は、約0.01cm3~約1cm3(例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1cm3、又はその中の任意の範囲)の体積を有する木材部分を含み得る。
【0072】
更に、薬剤によって処理される樹脂性木材は、約0.03cm2~約0.5cm2(例えば、約0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5cm2、又はその中の任意の範囲)の表面積を有する木材部分を含み得る。
【0073】
更に、樹脂性木材は、約0.01cm~約1cm(例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1cm、又はその中の任意の範囲)の長さ、幅、又は直径などの寸法を有する木材部分を含み得る。いくつかの例では、木材部分の寸法は、約0.1~約0.35cmである。
【0074】
上記に基づいて、本態様の方法は、適切なサイズ及び/又はその表面積を確保するために、薬剤を用いる処理の前に樹脂性木材をスクリーニングする工程を更に含み得る。このスクリーニング工程によって除去又は選択される樹脂性木材の部分は、次いで、薬剤を用いる処理のために適切なサイズ又は表面積が達成されるまで、更なる細分化工程に供され得る。したがって、樹脂性木材は、処理の前にスクリーニングされて、これらの上記の値のいずれかよりも大きい体積、表面積、及び/又は寸法を有する木材部分を除去し得る。いくつかの例では、樹脂性木材を、処理の前にスクリーニングして、約0.15cm超、約0.20cm超、約0.25cm超、約0.30cm超、約0.35cm超、約0.40cm超、約0.45cm超、又は約0.50cm超の長さ、幅、又は直径などの寸法を有する木材部分を除去する。
【0075】
一般に、樹脂性木材を細分化する初期工程と、樹脂性木材を薬剤を用いて処理することとの間の時間は、約12時間以下(例えば、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.25、0.1時間、又はその中の任意の範囲)、約8時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、約15分以下、又は約5分以下であり得る。これに関して、当業者は、樹脂性木材を処理する工程が、本細分化工程のほぼ直後に生じ得ることを理解するであろう。繰り返しになるが、これにより、テルペン画分及びロジン画分が、蒸発に起因するテルペン部分の損失、及び/又は酸化に起因するロジン画分の品質への悪影響がなく、可能な限り長く丸太又は木材の芯に保持されることが保証される。
【0076】
好適には、本態様の方法は、樹脂性木材から抽出されたテルペン画分からロジン画分を分離する工程を更に含む。本明細書で使用される場合、「テルペン画分からロジン画分を分離する」という用語は、ロジン及びテルペンを含有する分子の混合物を、より高い濃度のロジンを有するか、又は実質的にロジンを含有する分子の第1の画分と、薬剤からのテルペンを含むより高い濃度のテルペンを含有するか、又は実質的にテルペンを含有する分子の第2の画分とに分離することを意味する。これに関して、テルペン画分は、薬剤もまたテルペンを含み、好ましくは本明細書に記載されるように、以前に樹脂性木材から抽出されたテルペン画分から誘導されるため、薬剤と共にロジン画分から分離され得ることが理解されるであろう。このような分離は、蒸留、分画、クロマトグラフィー分離、結晶化、抽出などの、当該技術分野において既知の任意の方法又は手段によって実行され得ることが想定される。
【0077】
いくつかの例では、それぞれのロジン及びテルペン画分は、蒸留によって少なくとも部分的に分離される。「蒸留」という用語は、化学的成分を、それぞれの成分の沸点及び特定の温度及び圧力における蒸気圧の差に基づいて、蒸気相又は蒸気流及び液体相又は液体流に物理的に分離するプロセスを指す。蒸留は、典型的には、蒸留カラム又はチャンバ内で実行され、通常、一連の垂直間隔のプレートを含む。供給流は、中間点で蒸留カラムに入り、蒸留カラムを2つのセクションに分割する。上部セクションは、整流セクションと称され得、下部セクションは、ストリッピングセクションと称され得る。各プレートで凝縮及び気化が起こり、テルペン画分などのより低い沸点成分が蒸留カラムの上部に上がり、ロジン画分などのより高い沸点成分が下部に下がる。再ボイラは、熱エネルギーを加えるために、蒸留カラムの基部に位置する。当業者であれば理解するであろうが、エネルギーの回収及びプロセス流のリサイクルを適用して、プラントの効率を向上させ得る。本開示のために、ロジン画分を含む、ロジン画分からなる、又はロジン画分から本質的になる「下部」生成物又は液体流は、次いで、蒸留カラムの基部から直接除去され得る。還流ポンプは、一般に、留出物の一部分を蒸留カラムにポンプで戻すことによって、蒸留カラムの整流セクション内の流れを維持するために使用される。
【0078】
凝縮器は、典型的には、蒸留カラムの上部に位置し、それに動作可能に接続されて、蒸留カラムの上部から発する蒸気又は気体流を凝縮し、留出物を生成する。蒸留カラムと共に用いられ得る関連する凝縮器及び液体分離容器は、任意の従来の設計のものであり得る。本開示において、留出物は、好適には、テルペン画分、及びテルペン画分を抽出するために使用される薬剤、及び蒸留プロセスにおいて蒸気が使用される場合、任意選択的に水画分を含む。したがって、本方法は、特に、留出物が、例えば、水画分を含む場合、テルペン画分及び/又は薬剤を留出物から分離する工程を更に含み得る。
【0079】
好適には、供給速度、供給圧力、供給温度、カラム圧力、カラム温度、還流速度、蒸留時間などの蒸留条件は、蒸留カラム内のロジン及びテルペン画分(薬剤を含む)の効率的な分離に適している。
【0080】
特定の例では、蒸留工程中、テルペン画分、ロジン画分、及び薬剤の混合物は、約150℃~約250℃まで加熱される。
【0081】
当業者によって理解されるように、この態様の方法の1つ以上の工程、又はその一部は、圧力下又は真空下でも実行され得る。例として、本開示の方法の1つ以上の工程、又はその一部は、約0psi~約120psi、又はその中の任意の範囲、例えば、限定されないが、約25psi~約75psi、又は約40psi~約60psiの圧力で実行される。本開示の特定の例では、方法の1つ以上の工程、又はその一部は、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120psi、又はその中の任意の範囲の圧力で実行される。いくつかの例では、樹脂性木材を薬剤を用いて処理する工程、又はその一部は、約10psi~約75psiの圧力で実行される。様々な例では、テルペン画分及びロジン画分を分離する工程、又はその一部は、約25psi~約120psiの圧力で実行される。
【0082】
好適には、本態様の方法は、それから薬剤及び/又はテルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去するために、薬剤を用いて処理された樹脂性木材を加熱又は加熱処理する後続の工程を更に含む。このような加熱は、処理された樹脂性木材から薬剤及びテルペン画分の残留部分を熱蒸発させるために、当該技術分野において既知の任意の方法又は手段によって実行され得ることが想定される。特定の例では、処理された樹脂性木材は、約150℃~約300℃(例えば、約150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300℃、又はその中の任意の範囲)の温度で熱処理される。この熱処理工程はまた、約5分~約30分(例えば、約5、10、15、20、25、30分、又はその中の任意の範囲)の時間実行され得る。
【0083】
特定の例では、樹脂性木材は、薬剤で処理された後、脱溶媒器又は脱溶媒器-トースターなどで蒸気処理されて、更なる気体流を生成する。この更なる気体流は、蒸気に由来する水画分からの薬剤及びテルペン画分の更なる部分の分離を容易にするために、更なる凝縮器などの更なる分離器と接触し得る。薬剤/テルペン画分と水画分との間の密度の差を考慮すると、より密度の低い薬剤/テルペン画分がより密度の高い水画分の上部に浮遊している状態での分離に重力分離が使用され得る。次いで、薬剤及びテルペン画分の残留部分を、更なる分離器又は凝縮器から除去し、必要に応じて中央貯蔵容器に移し得る。
【0084】
樹脂性木材は、本明細書に記載される方法による処理に続いて、下流での使用を有し得ることが理解されるであろう。例として、処理された樹脂性木材は、マルチング、動物用寝床(工程で殺菌されていることに起因)、更なる化学的生成のためのリグニン及び/又はセルロースの浄化又は濃縮された供給源、並びに木材ペレット又はバイオ燃料の原料として利用され得るが、これらに限定されない。いくつかの例では、処理された樹脂性木材は、当該技術分野において既知の方法(例えば、クラフトパルプ化、PCT/AU2015/050389も参照されたい)によってなど更に処理されて、紙、板紙、及び織物生成に好適なセルロース材料を生成する。他の例では、処理された樹脂性木材は、当該技術分野において既知の方法(例えば、PCT/AU2015/050390を参照されたい)によってなど更に処理されて、下流発酵性糖及びバイオ燃料生成に好適である部分的に加水分解されたリグノセルロース材料を生成する。
【0085】
いくつかの例では、本方法は、残留気体流の最終スクラブ工程を更に含む。これに関して、分離器又は凝縮器のうちの1つ以上からの残留気体流を、湿式スクラバ又は当該技術分野で既知の他のスクラブデバイスなどのスクラブデバイスと接触させて、あらゆる更なる残留テルペン画分及び/又はそれからの薬剤を除去し得る。次いで、この更なる残留テルペン画分及び/又は薬剤を、更に別の分離器又は凝縮器又はデカンティングによって分離し得、テルペン画分及び薬剤のための中央貯蔵容器に移し得る。
【0086】
好適には、本態様の方法によって樹脂性木材から抽出されたロジン及び/又はテルペン画分は、当該技術分野で既知の他の溶媒又はタッピング抽出方法(例えば、ヘキサン、メチルエチルケトン、炭化水素、石油化学物質、硫化物、スルフェート、重金属、酸、成長ホルモンなど)について存在し得るような、汚染物質を含まないか又は実質的に含まない(例えば、画分の約0.5重量%、0.2重量%、0.1重量%又は0.05重量%以下の汚染物質を有する)。
【0087】
いくつかの例では、テルペン画分は、画分の約50重量%~約100重量%のピネン(例えば、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100重量%、又はその中の任意の範囲)を含む。本明細書で使用される場合、「ピネン」という用語は、式(1S,5S)-2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト-2-エンの二環式モノテルペン化学的化合物を指す。自然界に存在するピネンの構造異性体には、α-ピネン及びβ-ピネンの2つが存在し、両方ともキラルである。本明細書で使用される場合、ピネンは、α-ピネン、β-ピネン、又はこれらの混合物、例えば50-50混合物であり得る。当業者によって理解されるように、テルペン画分の成分及び/又はピネンのパーセンテージは、例えば、樹脂性木材の種類、種、及び年数と共に変化し得る。
【0088】
樹脂性木材から抽出されたテルペン画分は、好適には、テルペン画分の約25重量%未満(例えば、約25重量%、24重量%、23重量%、22重量%、21重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4.5重量%、4重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%、2重量%、1.5重量%、1重量%、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%、0.1重量%未満、又はその中の任意の範囲)のジテルペン及びトリテルペンなどのテルペンポリマーを含む。これに関して、テルペン画分は、テルペンポリマーを含まないか、又は実質的に含まないとみなされ得る。「テルペンポリマー」という用語は、本明細書において、テルペンから誘導される1つ以上の構造的繰り返し単位を含有するオリゴマー又はポリマーを指すように使用される。これらは、例えば、ホモポリマー及びコポリマーを含み得る。
【0089】
樹脂性木材から抽出されたテルペン画分は、好適には、テルペン画分の約15重量%未満(例えば、約15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4.5重量%、4重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%、2重量%、1.5重量%、1重量%、0.5重量%、0.4%重量%、0.3%重量%、0.2%重量%、0.1重量%未満、又はその中の任意の範囲)のテルペンアルコールなどの合成パイン油を含む。これに関して、テルペン画分は、合成パイン油を含まないか、又は実質的に含まないとみなされ得る。この目的のために、本抽出方法に酸が存在しないことは、α-及びβ-ピネンの合成パイン油への変換を有利に防止又は最小限に抑える。
【0090】
好適には、樹脂性木材から抽出されたロジン画分は、ほぼ無色又は非常に淡い色である。ある特定の例では、ロジン画分は、約8以下(例えば、約8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、及びその中の任意の範囲)のガードナー色数を有する。特定の例では、ロジン画分は、約5以下のガードナー色数を有する。他の例では、ロジン画分は、約3以下のガードナー色数を有する。これに関して、本方法は、先行技術の溶媒抽出方法の既知の欠点である、色がほとんど又は全くないロジン画分の生成を有利に促進する(例えば、US4,906,733を参照されたい)。
【0091】
本明細書で使用される場合、「ガードナー色」という用語は、視覚スケールを指し、元々は、ロジンなどの市販の化学製品の色を説明するために開発された。ガードナースケールの値が小さいほど、化学製品の色は淡くなる。ロジン画分の着色は、Lovibondディスクとの比較など、当該技術分野で既知の任意の手段によって決定され得る。当業者は、M、N、WG、WW、X、及びXAからロジン色を定義するものなど、色を定義するカラーチャートが、ロジン画分の色を推定するために、又はガードナースケールの代替としても使用され得ることを更に理解するであろう(例えば、X又はWWは、ガードナースケールで5である)。特定の例では、本明細書に記載されるロジン画分は、当該技術分野において既知であるような、任意の更なる脱色工程(例えば、脱色剤との接触)に供されていない(例えば、US4,906,733を参照されたい)。
【0092】
特定の例では、ロジン画分は、約160~約175(例えば、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、及びその中の任意の範囲)の酸価を有する。ある特定の例では、ロジン画分は、約162~約170の酸価を有する。一例では、ロジン画分は、約165の酸価を有する。当業者は、酸価が、1グラムの化学物質、又はこの場合はロジン又はロジン誘導体を中和するために必要な、ミリグラム単位の水酸化カリウム(KOH)の質量であることを理解するであろう。この目的のために、酸価は、ロジン画分中に存在するカルボン酸基の量の尺度である。ロジン画分の酸価の決定は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、終点を決定するための指示器を使用する、好適な溶媒中のロジンの溶液のKOHを用いる滴定などによって実行され得る(例えば、ASTM法D 465-05(2010)に記載されているように)。
【0093】
好適には、ロジン画分は、ロジン画分の約15重量%~約35重量%(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35重量%、又はその中の任意の範囲)の範囲のアビエチン酸含有量又は濃度を含む。いくつかの具体的な例では、ロジン画分のアビエチン酸含有量は、ロジン画分の約15重量%~約25重量%又は約15重量%~約20重量%である。1つの特定の例では、ロジン画分のアビエチン酸含有量は、約20%である。当業者は、アビエチン酸がロジンの主要成分であり、18位のカルボキシ基によって置換されたアビエタ-7,13-ジエンであるアビエタンジテルペノイドであることを理解するであろう。
【0094】
更なる態様では、本開示は、上記方法に従って生成されたテルペン画分を提供する。
【0095】
したがって、テルペン画分は、上記のものであり得る。
【0096】
いくつかの例では、テルペン画分は、テルペン画分の少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約80重量%のピネン(例えば、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100重量%、又はその中の任意の範囲)を含む。
【0097】
様々な例では、テルペン画分は、汚染物質を実質的に含まない。
【0098】
特定の例では、テルペン画分は、テルペン画分の約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、又は約1重量%未満のジテルペン及びトリテルペンなどのテルペンポリマーを含む。
【0099】
ある特定の例では、テルペン画分は、テルペン画分の約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の合成パイン油を含む。
【0100】
関連する態様では、本開示は、以下の特徴:
(a)単離されたテルペン画分の少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約80重量%のピネンを含む、
(b)汚染物質を実質的に含まない、
(c)単離されたテルペン画分の、約25重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、又は約1重量%未満のテルペンポリマーを含む、及び
(d)単離されたテルペン画分の、約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の合成パイン油を含む、のうちの1つ以上を含む、単離されたテルペン画分を提供する。
【0101】
特定の例では、単離されたテルペン画分は、単離されたテルペン画分の少なくとも約75重量%のピネンを含み、汚染物質を実質的に含まず、単離されたテルペン画分の約2.5重量%未満のテルペンポリマー、及び単離されたテルペン画分の約2.5重量%未満の合成パイン油を含む。
【0102】
本開示の目的のために、「単離された」とは、その天然状態から除去されたか、又はそうでなければ人為的な操作に供された材料を意味する。単離された材料は、その天然状態で通常それに付随する成分を実質的又は本質的に含み得ないか、又はその天然状態で通常それに付随する成分と共に人工的な状態になるように操作され得る。好適には、単離された物質は、天然又はほぼ天然の形態である。
【0103】
別の態様では、本開示は、第1の言及された態様の方法に従って生成されたロジン画分にある。
【0104】
したがって、ロジン画分は、上記のものであり得る。
【0105】
ある特定の例では、ロジン画分は、約8以下のガードナー色数を有する。
【0106】
様々な例では、ロジン画分は、汚染物質を実質的に含まない。
【0107】
特定の例では、ロジン画分は、約160~約175の酸価を有する。
【0108】
別の関連する態様では、本開示は、以下の特徴:
(a)約8以下、約5以下、又は約3以下のガードナー色数を含む、
(b)汚染物質を含まないか、又は実質的に含まない、
(c)約160~約175(例えば、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、及びその中の任意の範囲)の酸価を含む、
(d)単離されたロジン画分の約15重量%~約35重量%(例えば、約15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、及びその中の任意の範囲)、約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%の範囲のアビエチン酸含有量を含む、のうちの1つ以上を含む、単離されたロジン画分を提供する。
【0109】
特定の例では、単離されたロジン画分は、約3~約5の範囲のガードナー色数を含み、汚染物質を含まないか、又は実質的に含まず、約163~約170の酸価を含み、及び約17%~約22%の範囲のアビエチン酸含有量を含む。
【0110】
ある特定の例では、単離されたロジン画分は、約3のガードナー色数を含み、汚染物質を含まないか、又は実質的に含まず、約165の間の酸価を含み、及び約20%のアビエチン酸含有量を含む。
【0111】
別の態様では、本開示は、ポリマーを作製する方法であって、本明細書に記載される方法に従って生成されたロジン画分及び/又はテルペン画分を化学的処理などの処理をして、それによってポリマーを作製する工程を含む、方法を提供する。いくつかの例では、本方法は、ロジンポリマーを作製することに関し、当該方法は、本明細書に記載される方法に従って生成されたロジン画分を処理して、それによってロジンポリマーを作製する工程を含む。他の例では、本方法は、テルペンポリマーを作製することに関し、当該方法は、本明細書に記載される方法に従って生成されたテルペン画分を処理して、それによってテルペンポリマーを作製する工程を含む。
【0112】
関連する態様では、本開示は、上記態様に従って生成されたポリマーに関する。
【0113】
「ポリマー」という用語は、同じ種類であっても異なる種類であっても、テルペン及びロジンモノマー単位などのモノマー単位を重合させることによって調製される化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(即ち、1つの種類のモノマーのみから調製されたポリマー)、及び「インターポリマー」という用語(即ち、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマー)を包含する。
【0114】
重合されたロジン化合物は、典型的には、高いレベルの顔料分散能力、混和性、凝集性及び接着性、及び他の特性を有し、したがって、印刷インク、塗料、感圧接着剤又は接着剤、及びフラックスなどの幅広い種類の分野において、結合剤又は添加剤として有利に使用される。テルペンポリマーは、バイオプラスチック及びバイオ燃料としても利用され得る。
【0115】
重合されたロジン化合物及び重合されたテルペン化合物を生成するために、様々な方法が利用されている。これらは、例えば、溶媒(例えば、トルエン又はキシレンなどの有機溶媒)、並びに/又は酸触媒(例えば、脂肪族スルホン酸、ギ酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、金属触媒、及びフリーデルクラフツ触媒などの触媒を使用することを含み得る。
【0116】
別の態様では、本開示は、エステルを作製する方法であって、本明細書に記載される方法に従って生成されたロジン画分及び/又はテルペン画分を処理して、それによってエステルを作製する工程を含む、方法を提供する。この方法は、ロジン画分及び/又はテルペン画分を、アルコールなどのエステル化剤を用いてエステル化することを含み得る。
【0117】
いくつかの例では、本方法は、ロジンエステルを作製することに関し、当該方法は、本明細書に記載される方法に従って生成されたロジン画分を処理して、それによってロジンエステルを作製する工程を含む。
【0118】
他の例では、本方法は、テルペンエステルを作製することに関し、当該方法は、本明細書に記載される方法に従って生成されたテルペン画分を処理して、それによってテルペンエステルを作製する工程を含む。
【0119】
「エステル」という用語は、少なくとも1つの-OH(即ち、ヒドロキシル)基が、-O-アルキル(即ち、アルコキシ)基によって置換されている、酸(例えば、有機又は無機)から誘導される化学的化合物を広く定義する。
【0120】
ロジン画分のカルボン酸基は、グリセロール、ペンタエリスリトール、メタノール、及びトリ-エチレングリコールなどの1つ以上のアルコールとの反応を通してロジンエステルに変換され得る。いくつかの例では、エステル又はロジンエステルは、ロジンのグリセロールエステルであるか、又はロジンのグリセロールエステルを含む。例として、ロジン画分を、食品グレードのグリセリンなどのグリセリンを用いて反応又は処理して、グリセロールエステルを生成し得る。ロジンのグリセロールエステルは、グリセリルアベイテート又はエステルガムとしても既知である油溶性食品添加剤を表す。ロジンのグリセロールエステルは、一部の食品及び飲料の安定剤及び/又は増粘剤として機能する。それは、水中で油を懸濁しておくための食品、飲料、及び化粧品に使用される食品グレード材料である。ロジンのグリセロールエステルを含有する例示的な食品及び飲料としては、果実及び柑橘風味のソーダ、レモネード、ビタミン強化水、スポーツドリンク、チューインガム、フルーツコーティング、及び製菓用インクが挙げられる。
【0121】
関連する態様では、本開示は、先の態様の方法に従って生成されたエステルに関する。
【0122】
最終の態様では、本開示は、樹脂性木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための装置又はシステムであって、樹脂性木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理するための処理チャンバを備える、装置又はシステムを提供する。
【0123】
いくつかの例では、処理チャンバは、上記のものなどの逆電流抽出器であるか、又は逆電流抽出器を備える。
【0124】
ある特定の例では、装置は、処理チャンバと連通している蒸留チャンバを更に備え、蒸留チャンバは、樹脂性木材から抽出されたロジン及びテルペン画分を分離するためのものである。
【0125】
様々な例では、装置は、処理チャンバと連通している脱溶媒器を更に備え、脱溶媒器は、薬剤を用いて処理された樹脂性木材を、蒸気処理などの加熱をして、薬剤及び/又はそこからのテルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去することが可能である。
【0126】
特定の例では、装置は、蒸留チャンバと連通している凝縮器などの分離器を更に備え、分離器は、蒸留チャンバによって生成された留出物からテルペン画分を分離するためのものである。
【0127】
いくつかの例では、装置は、湿式スクラバなどのスクラブデバイスを更に備える。
【0128】
いくつかの例では、装置は、連続的又は半連続的方式で動作するように構成されている。
【0129】
好適には、装置は、第1の態様の方法に使用するためのものである。
【0130】
装置又はシステム10の特定の実施形態が
図1に示される。
図1を参照すると、装置10は、処理チャンバ20に入る前に、樹脂性木材を細分化するための第1のシュレッダー15を備える。樹脂性木材が第1のシュレッダーによって細分化されると、樹脂性木材の任意の大きすぎる部分及び/又は小さすぎる部分を取り除くためにスクリーン16に移される。これらの大きすぎる部分は、次いで、第2のシュレッダー(図示せず)に移され得るか、又は第1のシュレッダー15に戻されて、それらを処理用に好適なサイズに低減させ得る。
【0131】
スクリーニングプロセスに続いて、樹脂性木材の適切なサイズの部分は、処理チャンバ20と連通している保管ビン17に移される。保管ビン17は、その中に保管されている樹脂性木材を水平にし、処理チャンバ20に入る樹脂性木材の量を制御するように機能し、処理チャンバ20は、先に記載されたように、テルペンを含む薬剤を用いて処理される樹脂性木材を受容するための入口を備える。
【0132】
処理チャンバ20は、上記で提供されたものなど、使用者が指定した温度及び/又は圧力下で、樹脂性木材を薬剤を用いて逆流方式で処理するように設計されている。好適には、処理チャンバ20内にある間、樹脂性木材の撹拌がほとんど又はまったくない。提供される実施形態では、処理チャンバ20は、ロトセル抽出器などの回転抽出器であるか、又は回転抽出器を含み、回転抽出器は、一般に、その中に樹脂性木材を受容するために複数の分離された処理セル(図示せず)を含有する円筒形チャンバを備える。円筒形チャンバ21は、所望の速度で中央シャフトの周りを回転し、一方、薬剤は、分離された処理セルに噴霧として塗布される。これに関して、処理チャンバ20は、樹脂性木材上に薬剤を噴霧するための多数のノズル又は噴霧塗布器(図示せず)を含み得る。
【0133】
処理チャンバ20を通って移動しながら、樹脂性木材は、噴霧塗布器によって処理セル内で漸進的に処理される。噴霧塗布器は、薬剤を樹脂性木材上に送り、その後、薬剤、テルペン画分及び/又はロジン画分がそこから排出され、重力又は真空によってそれぞれの収集トレイに収集される。「新鮮な」薬剤(即ち、ロジン画分を含有しないか、又は低濃度のみを含有する薬剤)は、処理サイクルの終了時又はその近くに噴霧塗布器によって提供され、その後、最終又は遠位収集トレイに入り、処理チャンバ20を通る樹脂性木材の移動に対抗して流れる。
【0134】
これに関して、収集トレイに収集された薬剤は、次いで、パイプ又は導管を通してそれぞれの噴霧器にポンプで戻される。この方式で、処理チャンバ20は、樹脂性木材の薬剤を用いる連続的又は半連続的逆電流処理又は樹脂性木材の薬剤との接触を可能にして、最小限の薬剤使用で、そこからロジン及びテルペン画分を部分的又は完全に除去する。最も近位の収集トレイに収集された薬剤は、典型的には、樹脂性木材から抽出された最高濃度のテルペン及びロジン画分を含有し、その後、パイプによって蒸留カラム25に移される。したがって、最も清浄な又は最も新鮮な薬剤は、「最も清浄な」樹脂性木材に接触し、最も高い濃度のロジンを有する薬剤は、処理チャンバ20に入るとすぐに樹脂性木材に接触する。
【0135】
代替の例では、回転抽出器は、処理チャンバ20を通る樹脂性木材の移動を容易にするベルトコンベヤなどのコンベヤによって置換され得ることも理解されるであろう。
【0136】
図1から見ることができるように、装置10は、処理チャンバ20と流体又は気体連通している蒸留カラム25を更に含み、蒸留カラムは、テルペン画分及び薬剤のロジン画分からの分離を促進するように構成されている。本実施形態について、蒸留カラム25は、連続蒸気蒸留カラムであり、蒸気蒸留は、当該技術分野において既知のように、従来の蒸気蒸留方法によって行われ得る。蒸留チャンバ25は、一連の垂直間隔のプレート26、その基部に位置付けられた再ボイラ27、及びその上部分に接続され、それと流体連通している第1の凝縮器30を備える。薬剤、テルペン画分、及びロジン画分を含有する処理チャンバ20からの供給流は、入口(図示せず)を介して、その中間点で又はその中間点に向かって蒸留カラム25に入り、プレートに接触し、これによって、薬剤、テルペン画分、及び添加された蒸気からの水画分を含有する気体流と、ロジン画分を含有する液体流との生成がもたらされる。ロジン画分を含有する液体流は、蒸留カラム25の基部に集まり、次いで、貯蔵容器35に保管するために、蒸留カラム25から直接除去され得る。
【0137】
気体流は、蒸留チャンバ25内で上昇し、第1の凝縮器30内に集まり、成分のテルペン画分、薬剤、及び水画分を冷却して留出物とする。それぞれの密度に基づいて、テルペン画分及び薬剤は、重力によって水画分から分離され、次いで、デカントされ、中央貯蔵チャンバ40に移され得る。
【0138】
図1を参照すると、装置10は、脱溶媒器50を更に備え、樹脂性木材は、薬剤を用いる処理後に、脱溶媒器50に移され得る。脱溶媒器50は、過熱蒸気を用いて処理された樹脂性木材を熱処理するように設計されている。脱溶媒器50は、床を有するチャンバを備え、床の上には、その上に樹脂性木材を受容するための一連の透過性トレイが位置付けされている。トレイは、蒸気(及び/又は油などの他の加熱媒体)によって加熱され、蒸気を通過して、樹脂性木材を加熱及び浸透させ得る。したがって、蒸気、並びに気化した薬剤の残留部分及びテルペン画分の混合物を含有する更なる気体流は、脱溶媒器50内で、それに動作可能に接続された第2の凝縮器60に上向きに流れる。第1の凝縮器30と同様に、第2の凝縮器60は、過熱蒸気に由来する水画分から薬剤及びテルペン画分の残留部分を分離するように設計されている。分離されると、薬剤及びテルペン画分の残留部分は、中央保管チャンバ40に移され得る。
【0139】
図1に示されるように、装置は、湿式スクラバ70を更に備える。当業者は、湿式スクラバ70が、各凝縮器30、60が、廃棄気体又は揮発性気体ベント(図示せず)を有し、密封され、湿式スクラバ70にパイプによって接続されることで、高圧又は過圧から装置又はシステム10を保護するように設計されていることを理解するであろう。湿式スクラバ70は、第1及び第2の凝縮器30、60に由来する気体流に水を噴霧し、あるレベルの油を通して気体流を泡立てて、テルペン含有気体などの任意の凝縮されていない気体を更に捕捉することによって機能する。このプロセスは、凝縮器30、60を通る良好な蒸気又は気体流を確実にし、最後に任意の非凝縮性気体のために大気に到達するためにわずかな真空を生成する好適な位置にある真空ポンプ80によって制御され得る。湿式スクラバ70によって抽出された任意のテルペン画分は、中央保管チャンバ40に更に移され得る。
【0140】
本開示の特定の態様は、針葉樹の木材への本開示の例示的な用途を示す以下の番号付けされた記述に記載される。本開示は、針葉樹の木材に対するこれらの例示的な用途に限定されないことが理解されるであろう。
【0141】
1.針葉樹の木材から成分又はその誘導体を含むロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための方法であって、針葉樹の木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理する/薬剤と接触させて、それによって針葉樹の木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出する工程を含む、方法。
【0142】
2.針葉樹の木材を細分化する初期工程を更に含む、記述1に記載の方法。
【0143】
3.針葉樹の木材を細分化する初期工程と、針葉樹の木材を薬剤を用いて処理することとの間の期間が、約8週間以下、約4週間以下、又は約2週間以下である、記述2に記載の方法。
【0144】
4.針葉樹の木材から抽出されたロジン画分及びテルペン画分を分離する工程を更に含む、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
5.ロジン画分及びテルペン画分を分離することが、少なくとも部分的に蒸留によって実行されて、テルペン画分を含む、テルペン画分から本質的になる、又はテルペン画分からなる留出物、及びロジン画分を含む、ロジン画分から本質的になる、又はロジン画分からなる残留物流を生成する、記述4に記載の方法。
【0146】
6.留出物からテルペン画分を分離する工程を更に含む、記述5に記載の方法。
【0147】
7.薬剤を用いて処理された針葉樹の木材を加熱して、それから薬剤及び/又はテルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去する後続の工程を更に含む、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
8.薬剤を用いて針葉樹の木材を処理する工程が、約15分~約120分の時間実行される、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
9.薬剤を用いて針葉樹の木材を処理する工程が75℃~約135℃の温度で実行される、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
10.薬剤を用いて針葉樹の木材を処理する工程が、約10psi~約75psiの圧力で実行される、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
11.針葉樹の木材が、薬剤を用いた逆電流/逆流方式で処理される、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
12.針葉樹の木材から抽出されたロジン及び/又はテルペン画分が、汚染物質を実質的に含まない、先行記述のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
13.記述1~12のいずれか1つに記載の方法に従って生成された、テルペン画分。
【0154】
14.少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%のピネンを含む、記述13に記載のテルペン画分。
【0155】
15.テルペン画分が、汚染物質を実質的に含まない、記述13又は14に記載のテルペン画分。
【0156】
16.約20%未満、約10%未満、約5%未満、約2.5%未満、又は約1%未満のジテルペン及びトリテルペンなどのテルペンポリマーを含む、記述13~15のいずれか1つに記載のテルペン画分。
【0157】
17.記述1~12のいずれか1つに記載の方法に従って生成された、ロジン画分。
【0158】
18.約8以下のガードナー色数を有する、記述17に記載のロジン画分。
【0159】
19.ロジン画分が、汚染物質を実質的に含まない、記述17又は18に記載のロジン画分。
【0160】
20.約160~約175の酸価を有する、記述17~19のいずれか1つに記載のロジン画分。
【0161】
21.針葉樹の木材からロジン及び/又はテルペン画分を抽出するための装置であって、針葉樹の木材を、テルペンを含む、テルペンからなる、又はテルペンから本質的になる薬剤を用いて処理するための処理チャンバを備える、装置。
【0162】
22.処理チャンバが、逆電流抽出器であるか、又は逆電流抽出器を備える、記述21に記載の装置。
【0163】
23.処理チャンバと連通している蒸留チャンバを更に備え、蒸留チャンバは、針葉樹の木材から抽出されたロジン及びテルペン画分を分離するためのものである、記述21又は22に記載の装置。
【0164】
24.処理チャンバと連通している脱溶媒器を更に備え、脱溶媒器は、薬剤を用いて処理された針葉樹の木材を加熱して、それから薬剤及び/又はテルペン画分の残留部分を少なくとも部分的に除去するためのものである、記述21~23のいずれか1つに記載の装置。
【0165】
25.蒸留チャンバと連通している分離器を更に備え、分離器は、蒸留チャンバによって生成された留出物からテルペン画分を少なくとも部分的に分離するためのものである、記述21~24のいずれか1つに記載の装置。
【0166】
25.スクラブデバイスを更に備える、記述21~25のいずれか1つに記載の装置。
【0167】
26.記述1~12のいずれか1つに記載の方法において使用するための、記述21~25のいずれか1つに記載の装置。
【0168】
本発明が容易に理解され、実用化され得るように、特定の好ましい実施形態は、以下の非限定的な実施例によって記載される。
【実施例】
【0169】
実施例1
この実施例は、本明細書に記載される方法によって処理される樹脂性木材のデサイジング及びサイズ分布に関する。
【0170】
木材加工
数トンの樹脂性マツの切り株及び丸太を、供給設定において高速でフェルメールグラインダーに通過させて、その後ハンマーミルに供給される大きなチップを作成する。チップをビン供給ホッパーに投入し、処理プロセスへの流量を調節する。ビンの供給は、コンベア上に流れて、木材チップの流れをハンマーミルに向ける。
【0171】
この実施例では、チップサイズを1/8インチ~1/2インチ(3.175mm~12.7mm)の寸法に低減させ、この範囲からの偏差を最小限に抑えることが目的であった。3mm未満の微細チップは、ふるいを通過し得、問題なく抽出器に入り得る。
【0172】
木材チップのサイズ分布のデータを
図2A~Bに示す。これらの図に示されるように、デサイジングされた樹脂性木材の大部分は、抽出器又は処理チャンバにおける後続の処理に好適なサイズである。
【0173】
【0174】
かさ密度
●チッパー及びハンマーミルを通過した丸太からの木材チップのかさ密度:312.65kg/m3
●フェルメールグラインダー及びハンマーミルを通過した切り株からの木材チップのかさ密度:266.9kg/m3
【0175】
実施例2
この実施例は、本明細書に記載される方法に基づく、テルペン及びロジン抽出のためのプラント操業条件の一実施形態を提供する。
【0176】
供給速度
処理チャンバ又は抽出器の容積、及び処理される木材チップの現在のかさ密度を考慮すると、本システムは、切り株の場合はそのまま1日当たり約125トン、又は丸太の場合は1日当たり150トンに対応する。
【0177】
抽出器の条件/溶媒供給
●木材チップのフル回転は1.5時間-抽出器での保持時間
○抽出剤を用いる洗浄時間:約45分~約60分(例えば、約53分)
○抽出器内での溶媒と木材との比(即ち、固体と液体との比)は、約0.50~0.60(木材チップ及び溶媒の流れに応じて、約0.3~約1.5の範囲)である。
○6つの溶媒噴霧器を回転の前半を過ぎたあたりに配置して、木材チップに抽出剤を塗布する
○抽出器内の残り時間(約40~50分)は、出口シュートの前の木材チップの排出、及び出口時間である。
●溶媒/薬剤洗剤用木材チップの温度は、約90~100℃である。抽出器内の温度を維持するために、各再循環ライン上に加熱器が存在する。
●50L/分、90℃での抽出器への溶媒/薬剤供給速度
【0178】
脱溶媒器
次いで、抽出器からの溶媒/薬剤処理された木材チップを脱溶媒器に供給する。溶媒/薬剤処理された木材チップは、約25%の溶媒飽和(乾燥木材チップ重量+25%テルペン)である。木材チップが段階1~5から移動するのに要した時間=1分30秒であり、生蒸気注入による5段階の最終保持時間=約9分である。
【0179】
蒸留チャンバ
それぞれのロジン及びテルペン画分は、上記のように、蒸留チャンバ内で相互に分離され得る。
【0180】
結果
テルペン:
●現在観察されている収率:平均=丸太では約1.1%、切り株では約4.3%、範囲=1~5%(樹脂性木材の初期原料の組成に依存)
●色:麦わら色から淡黄色
ロジン:
●生成されたロジンの色:半透明の赤褐色
●酸価:観測範囲=160~175
●滴点:観察範囲=69~75℃
●収率:平均=約8%、範囲は約5~20%(樹脂性木材の初期原料の組成に依存)
【0181】
表2及び3は、本明細書に記載される方法によって抽出されたロジン及びテルペン画分の物理化学的特性の例を提供する。
【0182】
【0183】
【0184】
本明細書全体を通して、本開示を任意の1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本開示の好ましい実施例を記載することを目的としてきた。したがって、本開示に照らして、本開示の範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施例において様々な修正及び変更が行われ得ることが、当業者に理解されるであろう。
【0185】
本明細書で言及される全てのコンピュータプログラム、アルゴリズム、特許、及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】