IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クイェルベルク−シュティフトゥングの特許一覧

特表2023-531428ワイヤ状のフィラーと少なくとも1つのレーザビームを用いた溶接方法
<>
  • 特表-ワイヤ状のフィラーと少なくとも1つのレーザビームを用いた溶接方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ワイヤ状のフィラーと少なくとも1つのレーザビームを用いた溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230714BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230714BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230714BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/00 N
B33Y50/02
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577647
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2021066078
(87)【国際公開番号】W WO2021255012
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102020207573.5
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516333780
【氏名又は名称】クイェルベルク-シュティフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュニック ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ブロッケ ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ジルツェ フランク
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA37
4E168CA00
4E168KA04
4E168KA15
(57)【要約】
溶接方法では、ワイヤ状のフィラー及び処理対象の少なくとも1つのワークピース(3)の表面に向けられる少なくとも1つのレーザビームを使用し、ワイヤ状のフィラー(1)が、それに応じて設計されたワイヤ送り機構(2)によってワークピース(3)の表面の方向に前進する。ワイヤ状のフィラー(1)は、少なくとも1つのレーザビーム(5)のエネルギーを用いて、特定の表面の真上に配置された領域において、送り動作中に連続的に溶融される。ワイヤ状のフィラー(1)及びワークピース(3)は電圧源に接続され電気回路を形成する。電圧、電流及び/又は電気抵抗が測定され、ワイヤ送り動作及び/又は少なくとも1つのレーザビーム(5)のパワーを制御する変数として使用される。電圧及び/又は電流が所定の閾値を下回る、又は電気抵抗が所定の閾値を超える場合には、少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作するパワーが低下するか、少なくとも1つのレーザビーム(5)がオフになるかオンにならず、溶接処理の開始、停止、又は中止が開始する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ状のフィラー及び処理対象の少なくとも1つのワークピース(3)の表面に向けられる少なくとも1つのレーザビームを使用する溶接方法であって、
ワイヤ状のフィラー(1)が、それに応じて設計されたワイヤ送り機構(2)によって前記ワークピース(3)の表面の方向に前進し、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)のエネルギーを用いて、特定の表面の真上に配置された領域において、送り動作中に連続的に溶融される工程と、
前記ワイヤ状のフィラー(1)及びワークピース(3)が電圧源に接続され電気回路を形成する工程と、
前記電気回路における電圧、電流及び/又は電気抵抗が測定され、ワイヤ送り動作及び/又は前記少なくとも1つのレーザビーム(5)のパワーを制御する変数として使用される工程と、
前記電圧及び/又は前記電流が所定の閾値を下回るか、又は前記電気抵抗が所定の閾値を超える場合には、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作する前記パワーが低下するか、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)がオフになるかオンにならず、溶接処理の開始、停止、又は中止が開始する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
電流が前記電気回路内を流れない場合、又は前記電気抵抗が10Ω~1000Ωの範囲になった場合に、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)がオフになるかオンにならないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電子評価ユニット(6)において制御変数の少なくとも1つの一次導関数が決定され、前記特定の制御変数の前記一次導関数の絶対値が所定の閾値を超えた場合、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作する前記パワーが低下するか、オフになることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電子評価ユニット(6)において前記制御変数の少なくとも1つの一次導関数が決定され、前記特定の制御変数の前記一次導関数の絶対値が所定の閾値を超えた場合、前記ワイヤ送りが制御されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記電圧源が最大電圧48Vで動作することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作する前記パワーが低下した後、又は前記ワイヤ状のフィラー(1)の送り動作を実行する際前記少なくとも1つのレーザビーム(5)がオフになった後は、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)の前記パワーを通常の動作パワーに戻すように増加させ、又は前記少なくとも1つのレーザビーム(5)をオンに戻すことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記特定の制御変数の閾値が不足するか超過した場合、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作する前記パワーは、ワイヤ状のフィラー(1)の溶融が起こらないように低下することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作する前記パワー又は前記少なくとも1つのレーザビーム(5)は100ms以内に低下するか又はオフにされることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が動作する前記パワーが低下した後又は前記少なくとも1つのレーザビーム(5)が遮断され、前記特定の閾値以上又は以下の前記特定の制御変数の値が低下した後は、前記少なくとも1つのレーザビーム(5)の前記パワーを前記通常の動作パワーまで増加させるか、又は前記少なくとも1つのレーザビーム(5)を再度オンにすることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ状のフィラーと少なくとも1つのレーザビームを用いた溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属積層造形技術においても使用され得る、ワークピースの一体結合の形成又は肉盛溶接は、原理的にはレーザ照射とワイヤ状のフィラーを用いることが知られている。
【0003】
また、「ワイヤ状」という用語は、その外側側方領域の凸面を完全に有していない充填材のリボンを包含すると理解されるものである。また、芯のあるフィラーを使用することも可能である。
【0004】
指向性エネルギー堆積法として知られているものを用いた部品の溶接及びその上に構築する金属積層造形技術は、長年にわたって最新技術であった。近年、ワイヤ材料を横方向又は同軸方向に供給することができるレーザを用いたアプリケーションも増えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤを用いた溶接方法の基本的な問題は、特にレーザを用いた処理では、ワイヤの位置が正確に決まっていない場合に、ワイヤのバーンバック(少なすぎるワイヤ)又はバードネスト(多すぎるワイヤ)が発生することである。この問題は、本質的に処理の開始時に存在する。最初に部品や特定の表面にワイヤを配置する必要がある。処理中に、例えば処理間隔のばらつきなどの不規則性があると、ワイヤのバードネストが発生することがある。これは、ワイヤを座屈させ、その結果、処理を中断させる(いわゆるワイヤジャム)可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、処理の開始時に、ワイヤが特定の材料又は部品の表面に載置され接触した際に、ワイヤ型フィラーの位置決めを監視することである。更に、この処理において、ワイヤ状のフィラーがワークピース又は部品と常に接触していることが保証されるべきであり、従ってワイヤ状のフィラーがその上で引き裂かれ、焼き戻されるのを回避することができ、ワイヤ状のフィラーが特定の表面と充分に接触する滑らかな処理を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法による発明により達せられる。本発明の有利な実施の形態及び改良は、従属請求項に記載される特徴を用いて実施することができる。
【0008】
この方法では、ワイヤ状のフィラー及び少なくとも1つのレーザビームは、それ自体公知の方法で、処理対象の少なくとも1つのワークピースの表面に向けられる。ワイヤ状のフィラーは、それに応じて設計されたワイヤ送り機構によってワークピースの表面の方向に前進し、少なくとも1つのレーザビームのエネルギーを用いて、特定の表面の真上に配置されたワイヤ状のフィラーの領域において、送り動作中に連続的に溶融される。
【0009】
ワイヤ状のフィラー及び材料は、電圧源に接続され、電気回路を形成する。
【0010】
電気回路における電圧、電流及び/又は電気抵抗が測定され、ワイヤ送り動作及び/又は少なくとも1つのレーザビームのパワーを制御する変数として使用され、電圧及び/又は電流が所定の閾値を下回る、又は電気抵抗が所定の閾値を超える場合、少なくとも1つのレーザビームが動作するパワーが低下するか、少なくとも1つのレーザビームがオフになるか、オンにならない。また、信号は、処理の開始、停止、又は中止を開始するために使用することができる。
【0011】
ワイヤ状のフィラーに共に向けられる複数のレーザビームが使用される場合、これらのレーザビームの少なくとも1つをオフにすることによっても、パワーの低下を達成することができる。
【0012】
少なくとも1つのレーザビームは、有利には、電流が電気回路内を流れないときにオフになるか、オンにならないことが可能である。また、これを電気抵抗が10Ω~1000Ωの範囲になったときにも行うことができる。
【0013】
また、電子評価ユニットにおいて制御変数の少なくとも1つの一次導関数を決定する選択肢もある。特定の制御変数の一次導関数の絶対値が所定の閾値を超える場合、少なくとも1つのレーザビームが動作するパワーが低下するか、又は少なくとも1つのレーザビームがオフになる。
【0014】
しかしながら、電子評価ユニットにおいて制御変数の少なくとも1つの一次導関数を決定することも可能であり、特定の制御変数の一次導関数の絶対値が所定の閾値を超えるとき、ワイヤ送りを制御することができる。
【0015】
増加を判断することによって、より早く応答する選択肢が存在する。例えば、実際にワイヤ状のフィラーと材料との間に導電性接触が存在しなくなるまで待つ必要はない。これにより、例えば電流が急激に低下したり、電気抵抗が急激に上昇したりした場合に、より早く応答することができる。このようにして、それぞれの一次導関数の絶対値が0.5より大きくなった時点で既に応答していることが可能である。
【0016】
電圧源は、0Vを超える電圧、例えば約5Vで動作させることができる。但し、電圧は48V以下である必要がある。
【0017】
少なくとも1つのレーザビームが動作するパワーが低下した後、又はワイヤ状のフィラーの送り動作を実行する際少なくとも1つのレーザビームがオフになった後、少なくとも1つのレーザビームのパワーを通常の動作パワーに戻すように増加させ、又は少なくとも1つのレーザビームをオンに戻すことができる。その結果、電気接続状態となり電気回路に電流が流れるようにワイヤ状のフィラーの先端がワークピース面に対してワークピース面の方向に向く適切な位置関係になったときに再び処理が継続できる。なお、この処理では、必要に応じて、再び電力を増加させるか、少なくとも1つのレーザビームを再び点灯させる前に、待機期間を設けてもよい。
【0018】
特定の制御変数の閾値が不足するか超過した場合、フィラーの溶融が起こらないように少なくとも1つのレーザビームが動作するパワーを低下させる必要がある。このようにして、ワイヤ状のフィラーにおける欠陥及び傷ならびに焼き戻しを回避することができる。
【0019】
この処理では、少なくとも1つのレーザビームが動作するパワー、又は少なくとも1つのレーザビームは、100ms以内に低下する又はオフになる必要がある。
【0020】
少なくとも1つのレーザビームが動作するパワーが低下した後又は少なくとも1つのレーザビームが遮断され、特定の制御変数の値が特定の閾値以上又は以下になった後は、少なくとも1つのレーザビームのパワーを通常の動作パワーまで増加させるか、又は少なくとも1つのレーザビームのスイッチを再度オンすることができる。このようなことは、例えば電気回路にそれなりに大きな電流が流れているとき、それに見合うだけの電圧があるとき、あるいは電気抵抗値が十分に低下して小さな値となった場合に起こり得る。
【0021】
このようにして、適切な条件が揃い、特にワイヤ状のフィラーがワークピース面に対して適切に配置された場合に、溶接処理を自動的に再開させることができる。
【0022】
本発明は、以下の例により記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る方法を実行するために適した装置の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ワイヤ状のフィラー1は、ワイヤ送り機構2によりワイヤガイド4を介してワークピース3の表面の方向に移動する。ワイヤガイドは、電圧源(不図示)の端部に接続される。電圧源の第2端部は、ワークピース3に電気伝導的に接続されている。
【0025】
更に、レーザビーム5は、ワークピース表面の方向を向くワイヤ状のフィラー1の先端に向けられ、ワイヤ状のフィラー1の材料は、連続的に溶融され、溶接に使用される。
【0026】
電子評価ユニット6は、ワイヤガイドの電気電圧源の接続接点とワークピース3との間に位置している。電子評価ユニット6は、電気回路における電圧、電流及び/又は電気抵抗を決定し、これをワイヤ送り動作の制御変数及び/又は本説明の一般的な部分に記載されているように少なくとも1つのレーザビーム5のパワーとして使用するように設計されている。この目的のため、電子評価制御ユニット6は、線7及び8を介して、ワイヤ送り機構2又はレーザ放射源又はレーザ放射源の制御装置(いずれも不図示)に接続され、ワイヤ送り動作又はレーザビーム5のパワーに影響を及ぼす。
図1
【国際調査報告】