IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特表2023-531431Wee-1阻害剤としてのピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-オン誘導体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】Wee-1阻害剤としてのピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-オン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20230714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230714BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C07D487/04 143
C07D487/04 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K31/519
C07D519/00 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577673
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2021100347
(87)【国際公開番号】W WO2021254389
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010557580.X
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519416819
【氏名又は名称】ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WIGEN BIOMEDICINE TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 11, LIBING ROAD 67, ZHANGJIANG HI‐TECH PARK, SHANGHAI 201203, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ホウシン
(72)【発明者】
【氏名】チエン,リュイ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF01
4C050GG03
4C050GG04
4C050HH04
4C072MM01
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB06
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、一般式(1)の新規化合物および/またはその薬学的に許容される塩、一般式(1)の化合物および/またはその薬学的に許容される塩を含有する組成物、それらを調製するための方法、ならびに抗腫瘍薬の調製におけるWee-1阻害剤としてのそれらの使用、に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される構造を有する化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物であって、
【化1】
(式中、
mは、1、2または3の整数であり、
Xは、NまたはCHであり、
Aは2価以上のアリール、2価以上のヘテロアリール、2価以上のシクロアルキル-アリール、2価以上のヘテロシクロアルキル-アリール、または2価以上のヘテロシクロアルキル-ヘテロアリールであり、
は、C1~C6アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、-CH(C3~C6)シクロアルキルまたはC3~C5アルケニルであり、
は、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキルまたは(4~6員)ヘテロシクロアルキルであり、ここで、前記アルキル、前記シクロアルキルおよび前記ヘテロシクロアルキルは、以下の基:H、ハロゲン、OH、MeまたはOMeのうちの1~3つで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、CN、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキルまたはC1~C3アルコキシであり、
各Rは、独立して、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、NMe置換C1~C3アルキル、NMe置換C1~C3アルコキシ、
【化2】
NMe、C3~C6シクロアルキル、(4~12員)ヘテロシクロアルキルまたは-CH(4~12員)ヘテロシクロアルキルであり、ここで、前記(4~12員)ヘテロシクロアルキルは、1~3つのRで任意に置換されていてもよく、Rは、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、シアノ置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、ハロゲン置換C3~C6シクロアルキル、
【化3】
NRまたは-(C1~C3アルキル)-NRであって、ここで、RおよびRは、独立して、HもしくはC1~C3アルキルであるか、あるいはRおよびRは、それらが両方とも結合しているN原子とともに4員~7員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、2つのRは、C原子と一緒に、C2~C3アルキレンを形成し得、ここで、RまたはRは、ヘテロ原子に結合されるとき、ハロゲンではあり得ない。)
【請求項2】
が、Me、Et、
【化4】
である、請求項1に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項3】
が、Me、Et、
【化5】
である、請求項1または請求項2に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項4】
が、H、F、Me、Et、
【化6】
CF、OMeまたはOEtである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項5】
前記一般式(1)において、
【化7】
が、以下の基:
【化8】
であり、式中、mは、1、2または3の整数であり、各Rは、独立して、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、NMe置換C1~C3アルキル、NMe-置換C1~C3アルコキシ、
【化9】
NMe、C3~C6シクロアルキル、(4~12員)ヘテロシクロアルキルまたは-CH(4~12員)ヘテロシクロアルキルであり、ここで前記(4~12員)ヘテロシクロアルキルは、1~3つのRで任意に置換されていてもよく、Rは、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、シアノ置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、ハロゲン置換C3~C6シクロアルキル、
【化10】
NRまたは-(C1~C3アルキル)-NRであって、ここで、RおよびRは、独立してHもしくはC1~C3アルキルであるか、あるいはRおよびRは、それらが両方とも結合しているN原子とともに4員~7員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、2つのRは、C原子と一緒に、C2~C3アルキレンを形成し得、ここで、RまたはRは、ヘテロ原子に接続されるとき、ハロゲンではあり得ない、
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項6】
前記一般式(1)において、各Rが、独立して、H、F、Cl、Me、Et、
【化11】
CF、CHCF、CHOH、CHCHOH、OMe、OEt、
【化12】
NMe
【化13】
であり、ここで、2つのRは、C原子と一緒に、スピロシクロプロピル
【化14】
またはスピロシクロブチル
【化15】
を形成し、Rは、H、ハロゲン、CN、OH、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、シアノ置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、ハロゲン置換C3~C6シクロアルキル、NH、NHMe、NMe
【化16】
である、請求項5に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項7】
前記一般式(1)において、
【化17】
が、以下の基:
【化18】
である、請求項6に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項8】
前記化合物が、以下の構造:
【化19】
のうちの1つを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項9】
治療有効量の有効成分と薬学的に許容されるアジュバントとを含有する医薬組成物であって、前記有効成分が、請求項1~8のいずれか1項に記載の一般式(1)で示される化合物またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含み、前記薬学的に許容されるアジュバントが、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤である、医薬組成物。
【請求項10】
Wee-1阻害剤の調製における、請求項1~8のいずれか1項に記載の一般式(1)の化合物またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の使用、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項11】
Wee-1が介在する関連疾患を処置するための医薬を調製することにおける、請求項1~8のいずれか1項に記載の本発明の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の使用、または請求項9に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により本明細書中で援用される、2020年6月17日に出願された中国特許出願第202010557580.Xに対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、医薬化学の分野に関し、特に、Wee-1キナーゼに対する阻害作用を有する新規化合物、その調製方法、および抗腫瘍薬の調製におけるこの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Wee-1プロテインキナーゼは、細胞周期チェックポイントにおける重要な負の制御タンパク質である。細胞周期チェックポイントには、G1期(細胞休止期)からS期(DNA合成期)へ移行するG1チェックポイント、G2期(細胞分裂準備期)からM期(細胞分裂期)へ移行するG2チェックポイント、M期の中期(細胞分裂中期)から後期(細胞分裂後期)へ移行する紡錘体チェックポイントが含まれる。G2期チェックポイントでは、Wee-1プロテインキナーゼが重要な役割を担っている。M期への細胞の移行はCDK1キナーゼ活性に依存しており、Wee-1はCDK1タンパク質のTyr15をリン酸化することでCDK1の活性を阻害し、細胞がM期(細胞分裂期)に移行するのを防止している。一方、ポロキナーゼ(polo kinase)がWee-1をリン酸化すると、Wee-1タンパク質の分解が活性化され、M期への細胞の移行が促進される。このように、Wee-1のキナーゼ活性がG2チェックポイントの活性を決定し、それによってG2期からM期への細胞の移行が調節される。
【0004】
細胞周期チェックポイントは、主にDNA損傷後に活性化され、細胞内のDNAの修復に重要な役割を担っている。細胞周期チェックポイントが正常に活性化されると、細胞周期が阻害され、DNAの修復が促進される。チェックポイントの機能が阻害されると、DNAの損傷を修復することができなくなり、細胞はアポトーシスを起こす。正常細胞と比較して、複数の腫瘍細胞は、G1期チェックポイントの重要なタンパク質であるp53タンパク質の機能低下により、主にG2期チェックポイントの活性化に依存してDNA損傷を修復し、アポトーシスを回避している。従って、G2期チェックポイントを阻害することにより、腫瘍細胞を選択的に死滅させることができる。G2期チェックポイントにおけるWee-1キナーゼ活性の重要な役割は、Wee-1キナーゼがDNA損傷後の腫瘍細胞の修復や死滅を決定し、Wee-1活性を阻害することでDNA損傷後の修復されない腫瘍細胞がM期に移行し、アポトーシスを誘導することを示唆する。
【0005】
Wee-1は、G2チェックポイントでの役割に加え、DNA合成、DNA相同修復、染色体ヒストンの翻訳後修飾など、腫瘍の発生や進行に密接に関係する機能に関与していることが研究により示されている。Wee-1の発現は、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、黒色腫、肺癌などの多くの腫瘍において、非常に増加している。Wee-1の高発現は、腫瘍の発現または予後不良と正の相関関係があり、Wee-1キナーゼが腫瘍の発生および進行に関与している可能性が示唆されている。in vitroの細胞モデルおよびin vivoの動物モデルを用いた研究から、DNA損傷を誘発しながらWee-1の活性を阻害することで、様々な腫瘍の成長を有意に阻害できることが示されている。
【0006】
したがって、Wee-1キナーゼに対して特異的で活性の高い低分子阻害剤の開発は、腫瘍治療、特にP53欠失などのG1チェックポイントが損なわれた腫瘍をターゲットとすることに対して、重要な臨床的価値を有するであろう。
【0007】
現在、AstraZeneca社のWee-1阻害剤AZD-1775は、臨床第II相段階に入り、30を超える臨床試験が進行中で、良好な治療効果が確認されている。AZD-1775に関連する特許としては、米国特許出願公開第20070254892号、国際公開第2007126122号、欧州特許出願公開第2213673号、国際公開第2008133866号、国際公開第2011034743号などがある。また、Abbott社およびAbbvie社も、Wee-1阻害剤に関する研究を行っている。関連特許としては、主に米国特許出願公開第2012220572号、国際公開第2013126656号、国際公開第2013012681号、国際公開第2013059485号、国際公開第2013013031号などがある。Almac社のWee-1阻害剤に関する特許としては、国際公開第2014167347号、国際公開第2015019037号、国際公開第2015092431号、国際公開第2018011570号、国際公開第2018062932号、国際公開第2019138227号などがある。GirafpharmaのWee-1に関連する特許としては、国際公開第2019074979号、および国際公開第2019074981号などがある。ZenoのWee-1研究に関連する特許には、国際公開第2018028008号および国際公開第2019173082号がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第20070254892号
【特許文献2】国際公開第2007126122号
【特許文献3】欧州特許出願公開第2213673号、
【特許文献4】国際公開第2008133866号
【特許文献5】国際公開第2011034743号
【特許文献6】米国特許出願公開第2012220572号
【特許文献7】国際公開第2013126656号
【特許文献8】国際公開第2013012681号
【特許文献9】国際公開第2013059485号
【特許文献10】国際公開第2013013031号
【特許文献11】国際公開第2014167347号
【特許文献12】国際公開第2015019037号
【特許文献13】国際公開第2015092431号
【特許文献14】国際公開第2018011570号
【特許文献15】国際公開第2018062932号
【特許文献16】国際公開第2019138227号
【特許文献17】国際公開第2019074979号
【特許文献18】国際公開第2019074981号
【特許文献19】国際公開第2018028008号
【特許文献20】国際公開第2019173082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、研究中のWee-1阻害剤にはまだいくつかの問題がある。例えば、AZD-1775の代謝特性は十分ではなく、最適化の余地が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(概要)
本発明は、一般式(1)で示される構造を有する化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化1】
式中、
mは、1、2または3の整数であり、
Xは、NまたはCHであり、
Aは2価以上のアリール、2価以上のヘテロアリール、2価以上のシクロアルキル-アリール、2価以上のヘテロシクロアルキル-アリール、または2価以上のヘテロシクロアルキル-ヘテロアリールであり、
は、C1~C6アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、-CH(C3~C6)シクロアルキルまたはC3~C5アルケニルであり、
は、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキルまたは(4~6員)ヘテロシクロアルキルであり、ここで、前記アルキル、前記シクロアルキルおよび前記ヘテロシクロアルキルは、以下の基:H、ハロゲン、OH、MeまたはOMeのうちの1~3つで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、CN、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキルまたはC1~C3アルコキシであり、
各Rは、独立して、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、NMe置換C1~C3アルキル、NMe置換C1~C3アルコキシ、
【化2】
NMe、C3~C6シクロアルキル、(4~12員)ヘテロシクロアルキルまたは-CH(4~12員)ヘテロシクロアルキルであり、ここで、前記(4~12員)ヘテロシクロアルキルは、1~3つのRで任意に置換されていてもよく、各Rは、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、シアノ置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、ハロゲン置換C3~C6シクロアルキル、
【化3】
NRまたは-(C1~C3アルキル)-NRであって、ここで、RおよびRは、独立して、HもしくはC1~C3アルキルであるか、あるいはRおよびRは、それらが両方とも結合しているN原子とともに4員~7員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、2つのRは、C原子と一緒に、C2~C3アルキレンを形成し得、ここで、RまたはRは、ヘテロ原子に結合されるとき、ハロゲンではあり得ない。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、Me、Et、
【化4】
である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、Me、Et、
【化5】
である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、Rは、H、F、Me、Et、
【化6】
CF、OMeまたはOEtである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、
【化7】
は、以下の基:
【化8】
であり、式中、mは、1、2または3の整数であり、各Rは、独立して、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、NMe置換C1~C3アルキル、NMe-置換C1~C3アルコキシ、
【化9】
NMe、C3~C6シクロアルキル、(4~12員)ヘテロシクロアルキルまたは-CH(4~12員)ヘテロシクロアルキルであり、ここで前記(4~12員)ヘテロシクロアルキルは、1~3つのRで任意に置換されていてもよく、Rは、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、シアノ置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、ハロゲン置換C3~C6シクロアルキル、
【化10】
NRまたは-(C1~C3アルキル)-NRであって、ここで、RおよびRは、独立してHもしくはC1~C3アルキルであるか、あるいはRおよびRは、それらが両方とも結合しているN原子とともに4員~7員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、2つのRは、C原子と一緒に、C2~C3アルキレンを形成し得、ここで、RまたはRは、ヘテロ原子に接続されるとき、ハロゲンではあり得ない。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、独立して、H、F、Cl、Me、Et、
【化11】
CF、CHCF、CHOH、CHCHOH、OMe、OEt、
【化12】
NMe
【化13】
であり、ここで、2つのRがC原子と一緒に、スピロシクロプロピル
【化14】
またはスピロシクロブチル
【化15】
を形成し、ここでRは、H、ハロゲン、CN、OH、C1~C3アルキル、ハロゲン置換C1~C3アルキル、ヒドロキシル置換C1~C3アルキル、シアノ置換C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、ハロゲン置換C3~C6シクロアルキル、NH、NHMe、NMe
【化16】
である。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、
【化17】
は、以下の基:
【化18】
である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、前記化合物、異性体または薬学的に許容される塩は、
【化19】
から選択される。
【0018】
本発明は、さらに、薬学的に許容される賦形剤または担体と、本発明の一般式(1)の化合物またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、を有効成分として含有する医薬組成物を提供することを意図している。
【0019】
本発明は、さらに、Wee-1が介在する関連疾患を処置するための医薬を調製することにおける、本発明の化合物、またはその異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の使用を提供することを意図している。
【0020】
本発明の前述の一般的説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものと理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義および説明
本明細書で使用される以下の用語および語句は、特に明記しない限り、以下の意味を有することを意図している。特定の用語または語句は、他に具体的に定義されていない限り、不確実または不明瞭とみなされるべきではなく、共通の定義にしたがって解釈されるべきである。
【0022】
本明細書において、商品名に言及する場合、その対応する商品またはその有効成分を指すことが意図される。本明細書において、「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適しているそれらの化合物、組成物および/または製剤に対して、使用される。
【0023】
用語「薬学的に許容される塩」は、薬物投与のために生体に大きな刺激をもたらさないか、または前記化合物の生物学的活性および特性を消滅させない化合物の形態を指す。ある特定の態様において、薬学的に許容される塩は、一般式(1)の化合物を、酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸、アスパラギン酸、およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸、と反応させることによって得られる。
【0024】
薬学的に許容される塩は、溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体を含むことを理解されたい。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含み、水およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒との結晶化の際に選択的に形成される。溶媒が水の場合は水和物が、溶媒がエタノールの場合はアルコラートが形成される。一般式(1)の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法に従って好都合に調製または形成される。例えば、一般式(1)の化合物の水和物は、水/有機溶媒の混合溶媒からの再結晶によって好都合に調製され、使用される有機溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エタノールまたはメタノールを含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書で言及される化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態の両方で存在し得る。一般に、溶媒和形態は、本明細書で提供される化合物および方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0025】
他の特定の例では、一般式(1)の化合物は、非晶質、粉砕、およびナノ粒子形態を含むが、これらに限定されない種々の形態で調製される。さらに、一般式(1)の化合物は、結晶形態を含み、また、多形体であってもよい。多形体は、化合物の同じ元素の種々の格子配列を含む。多形体は、通常、種々のX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形態、光学的特性、電気的特性、安定性、および溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、および保存温度などの種々の要因により、単結晶が優勢になる場合がある。
【0026】
別の態様では、一般式(1)の化合物は1つ以上の立体中心を有し、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、および単一ジアステレオマーの形態で生じる。存在しうる不斉中心は、分子上の様々な置換基の性質によって決まる。これらの不斉中心により、それぞれ独立して2つの光学異性体が生じ、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体を含むことを意味する。
【0027】
特に指示のない限り、立体中心の絶対配置は、くさび形結合
【化20】
および破線形結合
【化21】
で表され、くさび形結合または破線形結合
【化22】
は、波線
【化23】
で表される。
【0028】
本発明の化合物は、前記化合物を構成する原子の1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、前記化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素125(125I)およびC-14(14C)などの放射性同位体で標識され得る。本発明の化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲に包含される。
【0029】
本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩は、安全かつ有効な量の範囲で、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩と薬学的に許容される賦形剤または担体とを含有する種々の製剤、に調製され得、ここで「安全かつ有効な量」とは、重篤な副作用を引き起こすことなく状態を著しく改善するのに充分な化合物の量であることを意味している。化合物の安全かつ有効な量は、処置される対象の年齢、状態、処置の経過、および他の特定の状態に従って、決定される。
【0030】
「薬学的に許容される賦形剤または担体」とは、ヒトでの使用に適し、かつ、充分な純度および低毒性を有していなければならない、1つ以上の適合性のある固体または液体の充填剤またはゲル物質を指す。薬学的に許容される賦形剤または担体の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウムまたは酢酸セルロース)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(Tween(登録商標)など)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、着色剤、香料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、パイロジェンフリー水、などが挙げられる。
【0031】
本発明の化合物は、投与される場合、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)または局所的に、投与され得る。
【0032】
特に指定しない限り、「アルキル」は、1~6個の炭素原子を含む直鎖状および分岐状の基を含む飽和脂肪族炭化水素基を意味する。メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルなどの、1~4個の炭素原子を含む低級アルキルが好ましい。本明細書で使用される場合、「アルキル」は、非置換および置換アルキル、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルキルを含む。好ましいアルキルは、CH、CHCH、CF、CHF、CFCH、i-Pr、n-Pr、i-Bu、c-Pr、n-Buおよびt-Buから選択される。
【0033】
特に指定しない限り、「アルキレン」は、上記で定義した2価のアルキルを指す。アルキレンはまた、スピロシクロアルキルも含む。アルキレンの例としては、メチレン、エチレン
【化24】
スピロシクロプロピル
【化25】
スピロシクロブチル
【化26】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
特に指定しない限り、「シクロアルキル」は、1つ以上の環が1つ以上の二重結合を含み得るがいずれも完全に共役なπ電子系を有していない3員~14員の全炭素単環式脂肪族炭化水素基を指し、例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキサン、およびシクロヘキサジエンなどが挙げられる。
【0035】
特に指定のない限り、用語「ヘテロシクロアルキル」は、炭素原子と、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子からなる飽和または部分飽和の非芳香族環状基を指す。環状基は、単環式であっても多環式であってもよい。本発明において、前記ヘテロシクロアルキルにおけるヘテロ原子の数は、好ましくは、1、2、3または4であり、前記ヘテロシクロアルキルにおける窒素原子、炭素原子または硫黄原子は、任意に酸化されていてもよい。また、前記窒素原子は任意にさらに他の基で置換され、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩を形成し得る。ヘテロシクロアルキルの例としては、アジリジニル、アゼチジン-1-イル、N-アルキルアゼチジン-3-イル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、モルホリン-4-イル、チオモルホリン-4-イル、チオモルホリン-S-オキサイド-4-イル、ピペリジン-1-イル、N-アルキルピペリジン-4-イル、ピロリジン-1-イル、N-アルキルピロリジン-2-イル、ピペラジン-1-イル、4-アルキルピペラジン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
特に指定しない限り、「アルコキシ」は、エーテル酸素原子を介して分子の残部に結合するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシなどの1~6個の炭素原子を含むものである。本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、非置換および置換アルコキシ、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルコキシを含む。好ましいアルコキシは、OCH、OCF、CHFO、CFCHO、i-PrO、n-PrO、i-BuO、n-BuOおよびt-BuOから選択される。
【0037】
特に指定しない限り、「アリール」は単環式または多環式の芳香族炭化水素基を指す。例えば、単環式のアリール環は、1つ以上の炭素環式芳香族基と縮合し得る。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびフェナントリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
特に指定しない限り、「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子(O、SまたはN)を含む芳香族基を指し、それは単環式または多環式であり、例えば、単環式ヘテロアリール環は、1個以上の炭素環式芳香族基または他の単環式ヘテロシクリル基と縮合し得る。ヘテロアリールの例としては、ピリジル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、インドリル、ベンズイミダゾリル(benzimidazolyl)、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾピリジル、およびピロロピリミジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
特に指定しない限り、「アルケニル」は、1~14個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の基を含む、炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を指す。ビニル、1-プロペニル、1-ブテニルまたは2-メチルプロペニルなどの1~4個の炭素原子を含む低級アルケニルが、好ましい。
【0040】
特に指定しない限り、「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を指し、1~14個の炭素原子を含む直鎖状および分枝状の基を含む。エチニル、1-プロピニルまたは1-ブチニルなどの1~4個の炭素原子を含む低級アルキニルが、好ましい。
【0041】
特に指定しない限り、それ自体によるまたは他の置換基の一部としての用語「ハロゲンで置換された」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を指す。さらに、「ハロアルキル」は、モノハロアルキルまたはポリハロアルキルを含むことを意図している。例えば、「ハロゲン化C1~C3アルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロプロピル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意図しているが、これらに限定されない。
【0042】
用語「員環」は、任意の環状構造を含む。用語「員」は、環を形成する主鎖原子の数を指すことを意図している。例えば、シクロヘキシル、ピリジル、ピラニルおよびチオピラニルは、6員環であり、シクロペンチル、ピロリル、フラニルおよびチエニルは、5員環である。
【0043】
用語「部分(moiety)」は、分子の特定の部分または官能基を指す。化学部分は、一般に、分子に含まれる、または分子に結合する化学物質を指すとみなされる。
【0044】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じる可能性があるが、必ずしも生じないことを意味し、その記載には、その事象または状況が生じる例および生じない例が含まれる。
【0045】
化合物の合成
本発明の一般式(1)の化合物の調製方法を以下に具体的に記載するが、これらの具体的な方法は本発明を限定するものではない。
【0046】
上記の式(1)の化合物は、標準的な合成技術、周知の技術を本明細書に記載の方法と組み合わせて使用して、合成され得る。さらに、本明細書に記載される溶媒、温度および他の反応条件は異なっていてもよい。化合物の合成のための出発物質は、合成的にまたは商業的に入手することができる。本明細書に記載の化合物および種々の置換基を有する他の関連化合物は、March,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY,4th Ed.,(Wiley 1992);CareyおよびSundberg,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY,4th Ed.,Vols.AおよびB(Plenum 2000、2001)、ならびにGreenおよびWuts、PROTECTIVE GROUPSIN ORGANICSYNTHESIS,3rd Ed.,(Wiley 1999)に見出される方法を含む、周知の技術および出発物質を用いて合成され得る。化合物を調製するための一般的な方法は、本明細書に記載される式に種々の基を導入するための適切な試薬および条件を使用することによって、変更され得る。
【0047】
1つの態様において、本明細書に記載された化合物は、当該技術分野で周知の方法に従って調製される。ただし、反応物、溶媒、塩基、使用する化合物の量、反応温度、反応に要する時間などの方法に関わる条件は、以下の記載に限定されない。また、本発明の化合物は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の種々の合成方法を任意に組み合わせて簡便に調製され得、このような組み合わせは、本発明が関連する当業者によって容易に決定され得る。1つの態様において、本発明は、下記方法Aを用いて調製される一般式(1)の化合物の調製方法も提供する。
【0048】
方法Aは、以下のステップ:まず、化合物A1をR-Yと反応させて化合物A2を生成するステップ;化合物A2を化合物A3とカップリング反応させて化合物A4を生成するステップ;さらに化合物A4を化合物A5と反応させて目的化合物A6を生成するステップを含み、そして、
【化27】
が、一級アミンおよび二級アミンの保護基を含む場合は、さらに保護基を取り除いて目的化合物を得る必要がある。
【0049】
【化28】
【0050】
上記反応式において、A、R、R、R、Rおよびmは上記定義の通りであり、YはOH、BrまたはIであり、QはCHS、CHSO、CHSO、Br、Cl、Iなどである。
【0051】
治療的使用
本明細書に記載の化合物または組成物は、一般にWee-1キナーゼを阻害するのに有用であり、したがって、Wee-1キナーゼ活性に関連する1つ以上の障害を処置するのに有用であり得る。したがって、特定の実施形態では、本発明は、Wee-1キナーゼが介在する障害を処置するための方法を提供し、この方法は、処置を必要とする患者に、本発明の化合物またはその薬学的に許容される組成物を投与するステップ、を含む。
【0052】
本発明の化合物で治療できる癌としては、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む骨髄腫、骨髄異形成症候群、および骨髄増殖症候群)、固形癌(前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、および軟部組織癌などの癌腫、骨肉腫、ならびに間質性腫瘍)などがあるが、これらに限定されない。
【0053】
(詳細な説明)
上記の化合物、方法および医薬組成物の様々な特定の態様、特徴および利点は、以下のように詳細に記載され、これにより本発明が明らかになる。以下の詳細な説明および実施例は、参考のために特定の実施形態を記述していることを理解されたい。本発明の説明を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更または修正を加えることができ、そのような均等物も、本明細書で定義される本発明の範囲内に入る。
【0054】
すべての実施例において、H-NMRスペクトルをVian Mercury400核磁気共鳴装置で記録し、化学シフトをδ(ppm)で表した;分離用シリカゲルは特に指定がなければ200~300メッシュのシリカゲルを使用し、溶離液の比率は体積比であった。
【0055】
本発明では、以下の略号を使用する。CDClは重水素化クロロホルム;CuIはヨウ化第一銅;DCMはジクロロメタン;DIPEAはジイソプロピルエチルアミン;DMFはジメチルホルムアミド;EAは酢酸エチル;hは時間;KCOは炭酸カリウム;LC-MSは液体クロマトグラフィー質量分析計;m-CPBAはm-クロロペルオキシ安息香酸;MeI(CHI)はヨウ化メチル;mLはミリリットル;MeOHはメタノール;minは分;MSはマススペクトル;NaHCOは重炭酸ナトリウム;NaSOは硫酸ナトリウム;NMRは核磁気共鳴;℃は摂氏度;PEは石油エーテル:r.tは室温;TFAはトリフルオロ酢酸;トルエンはメチルベンゼン、を表す。
【実施例
【0056】
調製例1:2-アリル-1-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-6-(メチルチオ)-1,2-ジヒドロ-3H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-オン(中間体B1)の調製
【0057】
【化29】
【0058】
ステップ1:化合物A-1の合成
50mLの反応フラスコ中において、6-ブロモ-3-ピリダジノール(826mg、4.72mmol)およびKCO(1.3g、9.44mmol)をDMF(10mL)に添加し、続いてMeI(0.6mL、9.44mmol)を添加した。混合物を室温で撹拌し、反応をTLC(PE/EA=1/1)でモニターした。反応完了後、水(50mL)を添加して反応をクエンチした。混合物をEA(50mL×2)で抽出し、有機相を得た。有機相を飽和ブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸留してEAを除去し、冷ヒドラジンを添加してDMFを除去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=3/1)により精製して、化合物A-1(705mg、収率79%)を得た。ESI-MS m/z: 189 [M+H]+
【0059】
ステップ2:化合物B-1の合成
50mL反応フラスコ中において、化合物A-1(621mg、3.55mmol)および2-プロペニル-6-(メチルチオ)-1,2-ジヒドロ-3H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-オン(607mg、2.73mmol、合成については米国特許第2019106427号を参照)を添加し、ジオキサン(20mL)に溶解し、続いてCuI(520mg、2.73mmol)およびKCO(528mg、2.73mmol)を添加した。混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱した。N,N’-ジメチルエチレンジアミン(0.59mL、5.46mmol)を添加した。反応系を95℃に加熱し、撹拌した。反応をTLC(PE/EA=1/1)でモニターした。反応完了後、反応フラスコを室温まで冷却した。混合物を減圧下で蒸留し、EA(50mL×2)で抽出して、有機相を得た。有機相を飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により精製して、化合物B-1(309mg、収率34%)を得た。ESI-MS m/z: 333 [M+H]+。
【0060】
化合物B-1の合成と同様の手順により、以下の中間体B2~B45を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1:2-アリル-1-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-6-((4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)-1,2-ジヒドロ-3H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-オン(化合物1)の合成
【0063】
【化30】
【0064】
50mLの反応フラスコ中において、化合物B-1(100mg、0.3mmol)をトルエン(10mL)に溶解し、m-CPBA(76mg、0.33mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、DIPEA(0.2mL、1.58mmol)および4-(4-メチルピペラジン)アニリン(74.6mg、0.39mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌し、反応をTLC(DCM/MeOH=10/1)でモニターした。反応完了後、混合物をEA(30mL×2)で抽出し、有機相を得た。有機相を飽和ブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=100/1)により精製して、化合物1(75mg、収率54%)を得た。
【0065】
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 8.80 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.87 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.43-7.31 (m, 2H), 7.03 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 6.96-6.84 (m, 2H), 5.68 (ddt, J = 16.6, 10.1, 6.3 Hz, 1H), 5.15-4.95 (m, 2H), 4.60 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.25-3.13 (m, 4H), 2.64-2.56 (m, 4H), 2.36 (s, 3H); ESI-MS m/z: 474 [M+H]+
【0066】
実施例2~30:化合物2~30の合成
化合物1の合成と同様の手順で、B2~B30を出発物質として表2の目的化合物2-30を得ることができる。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例31
【0069】
【化31】
【0070】
ステップ1:化合物C-1の合成
50mLの反応フラスコ中において、化合物B-3(107mg、0.3mmol)をトルエン(10mL)に溶解し、M-CPBA(76mg、0.33mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、DIPEA(0.2mL、1.58mmol)およびtert-ブチル4-(4-アミノベンゼン)ピペラジン-1-カルボキシレート(100mg、0.36mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌し、反応をTLC(DCM/MeOH=20/1)でモニターした。反応完了後、混合物をEA(30mL×2)で抽出し、有機相を得た。有機相を飽和ブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=100/1)により精製して、化合物C1(135mg、収率77%)を得た。ESI-MS m/z: 588 [M+H]+
【0071】
ステップ1:化合物31の合成
20mLの反応フラスコ中において、化合物C-1(117mg、0.2mmol)をDCM(5mL)に溶解させ、氷塩浴で冷却しながらTFA(1mL)を添加した。添加後、混合物を室温で3時間撹拌し、反応をTLC(DCM/MeOH=20/1)でモニターした。反応完了後、混合物をDCM(50mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液でアルカリ性に調整し、次いで液体分離を行った。有機相を飽和ブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=50/1)により精製して、化合物31(58mg、収率59%)を得た。
【0072】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.80 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.84 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.43-7.34 (m, 2H), 7.00 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 6.94-6.87 (m, 2H), 5.66 (ddt, J = 16.7, 10.1, 6.4 Hz, 1H), 5.40-5.28 (m, 1H), 5.08 (dd, J = 10.1, 1.3 Hz, 1H), 5.00 (dd, J = 17.1, 1.4 Hz, 1H), 4.66 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 3.25-3.14 (m, 4H), 2.60 (t, J = 5.0 Hz, 4H), 1.38 (d, J = 6.7 Hz, 6H); ESI-MS m/z: 488 [M+H]+
【0073】
実施例32~341:化合物32~341の合成
化合物1および化合物31の合成と同様の手順により、表1における種々の中間体を出発物質として、表3における目的化合物32~341を得ることができる。
【0074】
【表3】
【0075】
実施例342:Wee-1キナーゼに対する化合物の阻害活性のアッセイ
Wee-1キナーゼに対する化合物の阻害活性を、Lanthra ScreenWee-1 kinasekit(Invitrogen)を用いて測定した。DMSOで勾配希釈した化合物5μL、Wee-1キナーゼ(最終濃度5nM)5μL、Eu-Anti-GST抗体(最終濃度2nM)混合物5μL、および、kinase tracer178(最終濃度50nM)5μLをよく混合した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、読み取った。DMSO溶媒対照群との比較に対して、Wee-1キナーゼに対する化合物の阻害活性のIC50を算出した。
【0076】
【表4】
【0077】
Aは、IC50が30nM以下であることを示す。
Bは、IC50が30nMより大きく100nM以下であることを示す。
Cは、IC50が100nMより大きいことを示す。
【0078】
表4のデータから分かるように、本発明の化合物は、Wee-1キナーゼに対して強い阻害作用を有する。
【0079】
実施例343:HT29細胞に対する抗増殖活性のアッセイ
3000個のHT29細胞を384ウェルプレートに播種した(Fisher 142762)。細胞を一晩壁に付着させた後、勾配において希釈した化合物を添加した。72時間後、CellTiter-Lumi(Beyotime C0068XL)を添加し、細胞内のATPの含有量を測定した。細胞の増殖を評価し、細胞増殖に対する化合物の阻害のIC50を算出した。
【0080】
【表5】
【0081】
Aは、IC50が1μM以下であることを示す。
Bは、IC50が1μMより大きく3μM以下であることを示す。
Cは、IC50が3μMより大きいことを示す。
【0082】
表5のデータから分かるように、本発明の化合物は、HT-29細胞に対して強い抗増殖活性を有する。
【0083】
実施例344.マウスにおける薬物動態評価
化合物を、2mg/kgの用量での静脈内注射により、および10mg/kg(0.5%CMC-Na懸濁液)の用量での強制経口投与により、投与した。各群15匹の雄ICRマウスを選択し、各マウスを3匹ずつ離散的に3つの時点で採血した。採血の時点は、投与前、投与後5分、15分、30分、1時間、3時間、5時間、8時間、12時間、24時間であった。投与後の各時点で、マウスの眼窩または心臓から80μLの血液を採取した。全血試料をEDTA Kを含むチューブに採取し、4℃で10分間遠心分離(1500~1600rmp/分)して血漿を分離し、試料分析用に-90℃~-60℃で冷蔵庫に保存した。血漿中の化合物濃度は液体クロマトグラフィータンデム質量分析計で測定し、血漿中濃度時間曲線にしたがって、対応する薬物動態パラメータを得た。
【0084】
【表6】
【0085】
NAは、データがないことを示す。
【0086】
上の表から分かるように、化合物3は良好な経口吸収特性を有し、その半減期(t1/2)、最大血漿中濃度(Cmax)、薬物時間曲線下面積(AUC0-t)、経口バイオアベイラビリティ代謝パラメータ等のすべてが、対照薬AZD-1775のものよりも優れていることが確認された。経口吸収性が良好であることは、薬効の向上、投与量の削減、コスト削減において大きな意義がある。
【0087】
さらに実験により、本発明の他の化合物も良好な経口吸収特性を有し、それらの半減期(t1/2)、最大血漿中濃度(Cmax)、薬物時間曲線下面積(AUC0-t)、経口バイオアベイラビリティ代謝パラメータなどがすべて、対照薬であるAZD-1775のものよりも優れていることが証明された。
【国際調査報告】