(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】機能性添加剤としてイソシアネートと可塑剤との混合物を含むアスファルト組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20230714BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20230714BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230714BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20230714BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K5/29
C08L75/04
C08K5/12
E01C7/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577677
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2021065228
(87)【国際公開番号】W WO2021254815
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデマール・シャッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ツァイリンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ボーカーン
(72)【発明者】
【氏名】ダグ・ヴィーベルハウス
(72)【発明者】
【氏名】イラン・オテロ・マルティネス
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AG01
2D051AG11
4J002AG001
4J002CK022
4J002EH097
4J002EH137
4J002EH147
4J002ER006
4J002FD027
4J002FD142
4J002FD146
4J002GL00
(57)【要約】
熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して0.1~8質量%のイソシアネートと、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アゼレート類、アセテート類、ブチレート類、バレリエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、ジベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、ホスフェート類、セバケート類、スルホンアミド類、エポキシエステル類、トリメリテート類、グリセロールエステル類、スクシネート類、鉱油、及びポリマー可塑剤、又はそれらの混合物からなる群から選択される、組成物の総質量に対して0.1~8質量%の可塑剤と含む、アスファルト組成物であって、ポリマー可塑剤が、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、アスファルト組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して0.1~8質量%のイソシアネートと、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アゼレート類、アセテート類、ブチレート類、バレリエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、ジベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、ホスフェート類、セバケート類、スルホンアミド類、エポキシエステル類、トリメリテート類、グリセロールエステル類、スクシネート類、鉱油、及びポリマー可塑剤、又はそれらの混合物からなる群から選択される、組成物の総質量に対して0.1~8質量%の可塑剤と含む、アスファルト組成物であって、前記ポリマー可塑剤が、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、アスファルト組成物。
【請求項2】
前記イソシアネートが、少なくとも2.0の官能価を有する、請求項1に記載のアスファルト組成物。
【請求項3】
前記イソシアネートが、モノマーMDI、ポリマーMDI、MDIプレポリマー、TDI、及びHDIからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項4】
前記イソシアネートが、ポリマーMDIである、請求項1から3のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項5】
前記ポリマーMDIが、25℃で10~5000cps/mpasの範囲の粘度を有する、請求項4に記載のアスファルト組成物。
【請求項6】
ポリマーMDIの量が、前記組成物の総質量に対して0.5~5.0質量%の量である、請求項4又は5に記載のアスファルト組成物。
【請求項7】
前記可塑剤が、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、及び鉱油、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項8】
前記可塑剤が、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジイソブチルテレフタレート、ジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、及びフェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステル、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項9】
前記可塑剤が、ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート、フェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステル、及びジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項10】
可塑剤の量が、前記組成物の総質量に対して0.5~5.0質量%の量である、請求項1から9のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項11】
熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの可塑剤に対する比が、80:1~1:80の範囲にある、請求項1から10のいずれか一項に記載のアスファルト組成物。
【請求項12】
以下の工程:
a) 出発アスファルトを110~190℃の温度に加熱する工程、
b) 所望の量のイソシアネート及び所望の量のそれぞれの可塑剤を添加する工程であって、所望の添加剤を添加する順序が決定的なものではないか、又はそれぞれのイソシアネート及び前記それぞれの可塑剤を別々に混合し、混合物として添加する、工程、
c) 工程b)の後に、反応混合物を、110~190℃の範囲の温度で少なくとも2時間にわたって撹拌するか、又は2~180秒の範囲の時間にわたって均質化する工程、並びに任意選択的に
d) 反応の終了をIR分光法によって決定する工程
を含み、前記反応が酸素雰囲気下にある、請求項1から11に記載のアスファルト組成物を調製するための方法。
【請求項13】
工程a)及び工程c)における温度が同じであり、110~165℃の範囲にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アスファルト混合組成物を調製するための、請求項1から11に記載のアスファルト組成物の使用。
【請求項15】
前記アスファルト混合組成物のための粒状材料が、5~100質量%の再生アスファルト舗装の粒状材料を含む、請求項14に記載のアスファルト組成物の使用。
【請求項16】
舗装用途のための、請求項14又は15に記載のアスファルト組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に、イソシアネートと、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アゼレート類、アセテート類、ブチレート類、バレリエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、ジベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、ホスフェート類、セバケート類、スルホンアミド類、エポキシエステル類、トリメリテート類、グリセロールエステル類、スクシネート類、鉱油、及びポリマー可塑剤、又はそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤とを含む、アスファルト組成物であって、ポリマー可塑剤が、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、アスファルト組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、アスファルト組成物を調製するための方法、及び舗装用途のためのアスファルト混合組成物における使用にも関する。本発明のアスファルト組成物は、例えばアスファルトの有効温度範囲としての機能的温度範囲の増加、弾性の増加及び変形の可能性の低下、高いRAP含有量を有するアスファルト混合組成物の改善されたアスファルト混合物作業性/圧縮性、優れたわだち掘れ抵抗(rutting resistance)及び疲労挙動、並びに改善された低温性能(十分な弾性による高い耐亀裂性)を示す。
【背景技術】
【0003】
一般に、アスファルトは、アスファルテン及びマルテンに分類される異なる分子種を含有するコロイド状の材料である。粘弾性及び熱可塑性であるアスファルトは、極度の寒さから極度の暑さにわたる範囲の温度で特性が変動する問題がある。アスファルトは、暑い天候では柔らかくなり、極度の寒さでは亀裂が入る傾向がある。低温では、アスファルトは脆くなり、亀裂が入りやすくなるが、高温では、アスファルトは柔らかくなり、物理的特性が失われる。
【0004】
舗装は、それらの性能寿命の間に継続的に酸化及びエージングし、剛性及び脆性の増加と、応力を緩和する能力の低下との結果として、耐久性の問題がもたらされる。更に、再生アスファルト舗装(RAP)材料の使用を増やして一次資源を節約し、CO2排出量を削減するには、RAPに由来するバインダーを高比率で含有するアスファルトバインダー、並びに対応するアスファルト混合組成物のレオロジー特性及び性能特性の回復の改善が必要である。
【0005】
アスファルト混合組成物中のRAP材料の含有量が高いことには、多くの課題が伴う。アスファルト混合組成物の加工性は、酸化エージングプロセスによるエージングされたアスファルトバインダーが高い軟化点を示し、したがってより粘性が高くなるために低い。したがって、そのようなアスファルト混合組成物には、より高い加工温度が必要である。更に、脆性及び剛性のRAP材料を多量に用いると、アスファルト混合組成物の耐低温亀裂性が大きく損なわれる。RAPに由来するバインダーを高比率で含有するアスファルトバインダー、並びに対応するアスファルト混合組成物の言及された性能特性及びレオロジー特性を改善することが非常に望ましい。従来の技術水準の改質剤は、エージングされたRAPアスファルトを再生し(いわゆる再生剤)、すなわち、軟化点が低下し、高いRAP比率を含むアスファルト混合組成物に必要な圧縮温度が低下し(より良好な作業性/圧縮性)、高いRAP含有量を有するアスファルト混合組成物の耐低温亀裂性が増加する。しかしながら、再生RAPアスファルト混合組成物の高温性能、すなわち、わだち掘れ抵抗及び疲労挙動は改善されないか、又は減少さえする。
【0006】
イソシアネート等の熱硬化性反応性成分をバインダーとして、より一般的には改質剤としてそれぞれ追加すると、アスファルトの物理的特性をアスファルトが曝される温度範囲にわたってより一定に保つこと及び/又はこの温度範囲にわたって物理的特性を改善することができる。
【0007】
バインダー又は改質剤を添加することによって改質されたそのようなアスファルトは、当技術分野で何年も知られている。しかしながら、アスファルト業界では、改善されたアスファルトがなおも必要とされている。これは、部分的に、現在知られているポリマー改質アスファルトに多くの欠陥があることに起因する。これらは、例えば永久変形(わだち掘れ)、曲げ疲労、水分、低温作業での弾性の低下に対する敏感性を含む。
【0008】
WO 01/30911 A1には、組成物の総質量に対して約1~8質量%のポリマーMDIを含むアスファルト組成物であって、ポリマーMDIが少なくとも2.5の官能価を有する、アスファルト組成物が開示されている。これはまた、2時間未満の反応時間を使用して該アスファルト組成物を調製するための方法にも関する。生成物MDIアスファルトの形成は、生成物の粘度の増加によって、又はより好ましくは動的機械分析(DMA)によって測定される。
【0009】
WO 01/30912 A1には、アスファルト及び水に加えて乳化可能なポリイソシアネートを含む水性アスファルトエマルションが開示されている。これはまた、該エマルションを含む骨材組成物、及び該組成物を調製するための方法にも関する。
【0010】
WO 01/30913 A1には、組成物の総質量に対して約1~5質量%のポリマーMDIベースのプレポリマーを含むアスファルト組成物であって、ポリマーMDIが、少なくとも2.5の官能価を有する、アスファルト組成物が開示されている。これはまた、該アスファルト組成物を調製するための方法にも関する。
【0011】
EP 0 537638 B1には、ビチューメン100質量部に対して0.5~10質量部の官能化ポリオクテナマーと任意選択的に架橋剤とを含有するポリマー改質ビチューメン組成物において、ポリオクテナマーが、主にtrans-ポリオクテナマーであり、カルボキシル基、並びにこれらから誘導される基、例えばマレイン酸を含有することを特徴とする、ポリマー改質ビチューメン組成物が開示されている。
【0012】
US 2015/0191597 A1には、アスファルトとポリマーブレンドとを含むアスファルトバインダー組成物であって、ポリマーブレンドが、酸化された高密度ポリエチレンと、マレイン化ポリプロピレン、ポリエチレンホモポリマー、高結晶性ポリエチレン及びそれらの組合せから選択される別のポリマーとを含む、アスファルトバインダー組成物が開示されている。ポリマーの特定のブレンドをアスファルトバインダー組成物に添加すると、PG範囲が広がり、アスファルトバインダー組成物のUTIが増加することが見出された。
【0013】
WO 2018/228840 A1には、バインダー成分の架橋をもたらし、且つ強力な弾性ポリマーネットワークを生成する熱硬化性反応性化合物によるアスファルトバインダーの改質が開示されており、これは、低温特性を維持しながら改善された物理的特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 01/30911 A1
【特許文献2】WO 01/30912 A1
【特許文献3】WO 01/30913 A1
【特許文献4】EP 0 537638 B1
【特許文献5】US 2015/0191597 A1
【特許文献6】WO 2018/228840 A1
【特許文献7】EP 19198042.4
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Das Bitumen-Typisierungs-Schnell-Verfahren」、Alisovら、Strasse und Autobahn、2018年8月
【非特許文献2】「Modifzierung bestimmen」、M.Sutor-Fiedler、Asphalt&Bitumen 05/2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、従来技術に関連するすべての欠点、例えば、高いRAP量を有するアスファルト混合組成物の制限された弾性特性、低いわだち掘れ抵抗、制限された疲労挙動、制限された有効温度間隔、及び低い作業性を回避することができ得るアスファルト組成物及び関連する調製方法を手に入れることが非常に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の対象のうちの1つは、高いRAP含有量を有するアスファルト混合組成物の優れたわだち掘れ抵抗及び疲労挙動、改善された低温性能、十分な弾性による高い耐亀裂性、並びに改善されたアスファルト混合物作業性に関して改善された物理的特性を示すアスファルト組成物及びアスファルト混合組成物を提供することであった。更に、それぞれのアスファルト組成物及びアスファルト混合組成物の調製方法を提供すべきであった。
【0018】
アスファルト組成物の異なる物理的特性は、当技術分野で知られている様々な試験によって測定され、実験の項で詳細に説明される。
【0019】
ここで特許請求されている発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、以下で使用される用語は限定することを意図してはいないと理解されたい。更に、用語を定義する際に使用される以下の例は、それぞれの用語の定義が所与の例によって限定されないと理解されるべきである。
【0020】
アスファルト/ビチューメン/アスファルトバインダー/アスファルト組成物
本発明によると、「アスファルト」、「ビチューメン」、「アスファルトバインダー」、及び「アスファルト組成物」という用語は、等価的に使用される。一般に、アスファルトは、アスファルテン及びマルテンに分類される異なる分子種を含有するコロイド状の材料である。
【0021】
アスファルト/ビチューメン/アスファルトバインダー/アスファルト組成物は、未改質であっても、又は改質されていてもよい。未改質のアスファルト/ビチューメン/アスファルトバインダー/アスファルト組成物(又は舗装グレードのビチューメン/舗装グレードのアスファルト(バインダー)とも呼ばれる)は、例えば、針入グレード(=penグレード)50/70又は70/100であり得る(DIN EN 1426によって決定される針入度)。改質されたアスファルト組成物は、例えば、ポリマー改質ビチューメン(PmB)であり得る。それぞれのポリマーは、熱可塑性エラストマー、ラテックス、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され得る。熱可塑性エラストマーは、例えば、スチレンブタジエンエラストマー(SBE)、スチレンブタジエンスチレン(SBS)、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)であり得る。SBS改質ビチューメンの例は、PmB25/55-55RCである。
【0022】
粒状材料/骨材
本発明によると、「粒状材料」という用語は、「骨材(aggregate)」又は「骨材(aggregates)」とも記載され得る成分を説明するために類似的に使用される。更に、本発明によると、粒状材料又は骨材は、砂利、砂、充填材、及び細骨材のうちの1つ又は複数を含み得る。この点に関して、本明細書では、追加の特定の及び/又は好ましい実施形態が開示されている。
【0023】
再生アスファルト舗装
本発明によると、「再生アスファルト舗装」(RAPとも略される)、「リサイクルアスファルト」、「再生アスファルト」、「再生アスファルト舗装材料」、及び「再生アスファルト混合物」という用語は、「アスファルトと骨材とを含有する再加工された舗装」と記載されることもある材料を説明するために類似的に使用される。
【0024】
アスファルト混合組成物/アスファルト混合物
本発明によると、「アスファルト混合組成物」及び「アスファルト混合物」という用語は、骨材/粒状材料と、再生アスファルトと、任意の種類の添加剤(例えば、熱硬化性反応性化合物、繊維、再生剤、反応性改質剤、可塑剤、ワックス、界面活性剤等)と、アスファルト/ビチューメン/アスファルトバインダー/アスファルト組成物(改質又は未改質)との混合物を説明するために使用される。
【0025】
回収アスファルト/回収ビチューメン/回収アスファルトバインダー
本発明によると、「回収アスファルト」又は「回収ビチューメン」又は「回収アスファルトバインダー」という用語は、アスファルト混合組成物から抽出されたアスファルト/ビチューメン/アスファルトバインダーを説明するために使用される。それぞれの回収手順を以下に説明する。
【0026】
弾性応答及び回復不可能なクリープコンプライアンス(Jnr)は、アスファルトが定められた時間にわたって一定の荷重を受ける多重応力クリープ回復(MSCR)試験で計算される。特定の期間の総変形は%で与えられ、バインダーの弾性の尺度に対応する。
【0027】
ベンディングビームレオメータ(BBR)は、低温でのアスファルトの剛性を決定するために使用され、通常は、アスファルトの曲げ剛性を指す。これらのパラメータは、アスファルトバインダーの低温亀裂に抵抗する能力を示す。BBRは、アスファルトバインダーの低温グレードを決定するために使用される。
【0028】
したがって、熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して0.1~8質量%のイソシアネートと、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アゼレート類、アセテート類、ブチレート類、バレリエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、ジベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、ホスフェート類、セバケート類、スルホンアミド類、エポキシエステル類、トリメリテート類、グリセロールエステル類、スクシネート類、鉱油、及びポリマー可塑剤、又はそれらの混合物からなる群から選択される、組成物の総質量に対して0.1~8質量%の可塑剤と含む、アスファルト組成物であって、ポリマー可塑剤が、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、アスファルト組成物が見出された。
【0029】
本発明の更なる態様によると、以下の工程:
a) 出発アスファルトを110~190℃の温度に加熱する工程、
b) 所望の量のイソシアネート及び所望の量のそれぞれの可塑剤を添加する工程であって、所望の添加剤を添加する順序が決定的なものではないか、又はそれぞれのイソシアネート及びそれぞれの可塑剤を別々に混合し、混合物として添加する、工程、
c) 工程b)の後に、反応混合物を、110~190℃の範囲の温度で少なくとも2時間にわたって撹拌するか、又は2~180秒の範囲の時間にわたって均質化する工程、並びに任意選択的に
d) 反応の終了をIR分光法によって決定する工程
を含み、反応が酸素雰囲気下にある、アスファルト組成物を調製するための方法が提供される。
【0030】
それによって、本発明の対象が達成される。更に、アスファルト混合組成物を調製するためのアスファルト組成物の使用及び舗装用途におけるアスファルト混合組成物の使用が提供される。
【0031】
驚くべきことに、本発明によるイソシアネートと可塑剤との組合せを含むアスファルト組成物及び関連するアスファルト混合組成物が、わだち掘れ抵抗の増加、疲労挙動の改善、改善された低温挙動と組み合わされたより良好な弾性特性を示すことを見出すことができた。技術水準の再生剤とは対照的に、本発明は、高いRAP比率を含むアスファルト混合組成物の良好なわだち掘れ及び疲労挙動をもたらし、更に、i)RAPからの強くエージングされたバインダーを高比率で含有するバインダーブレンドの軟化点が低下し、ii)高いRAP含有量を有する対応するアスファルト混合組成物の圧縮温度が低下し得て、且つ混合物の作業性が改善され、iii)対応するアスファルト混合物の耐低温亀裂性が改善される。
【0032】
この理論に縛られるわけではないが、これは、ここでは、熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートと、それぞれのアスファルトのアスファルテン及びマルテンに分類される異なる分子種を有する可塑剤との異なる反応によるものであると考えられている。生じる性能を得るためには、コロイド構造の特定の形態が必要である。熱硬化性反応性化合物は、フェノール、カルボン酸、チオール、無水物及び/若しくはピロール基、又はアスファルト成分からの任意の反応性基と反応し、アスファルテンをまとめて結合し、得られるアスファルト組成物中により大きな粒子をもたらす。それに加えて、可塑剤は、マルテン相を改質し、改質されたアスファルトの改善されたコロイド構造の形成を補助し、それによって、特に、対応するアスファルト混合物の改善された耐低温亀裂性及び高いRAP含有量を有する混合物の改善された作業性に関して、予期されていなかった性能をもたらす。安定性が改善されることによって、これは、例えば、典型的には多量のRAPが使用されるサブベース層の寸法を縮小する機会を提供することができる。これによって、コスト及び材料が節約され、CO2排出量が削減される。
【0033】
好ましい実施形態は、特許請求の範囲及び明細書で説明される。好ましい実施形態の組合せは、本発明の範囲内にあると理解される。
【0034】
本発明によると、アスファルト組成物は、熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートと、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アゼレート類、アセテート類、ブチレート類、バレリエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、ジベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、ホスフェート類、セバケート類、スルホンアミド類、エポキシエステル類、トリメリテート類、グリセロールエステル類、スクシネート類、鉱油、及びポリマー可塑剤、又はそれらの混合物からなる群から選択される、組成物の総質量に対して0.1~8質量%の可塑剤とを含み、ポリマー可塑剤は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
一般に、本発明で使用されるアスファルトは、既知の任意のアスファルトであり得、一般に、任意のビチューメン化合物を包含する。これは、ビチューメン、アスファルトバインダー、又はアスファルトと呼ばれる材料のいずれかであり得る。例えば、蒸留ビチューメン、ブロービチューメン、高真空ビチューメン及びカットバックビチューメン、並びにまた、例えば、アスファルトコンクリート、鋳造アスファルト、アスファルトマスチック及び天然アスファルトがある。例えば、80/100又は180/220の針入度(penetration)を有する直接蒸留アスファルトが使用され得る。例えば、アスファルトはフライアッシュを含んでいなくてもよい。
【0036】
好ましくは、アスファルトは、20~30、30~45、35~50、40~60、50~70、70~100、100~150、160~220、250~330の針入度、又は52~16、52~22、52~28、52~34、52~40、58~16、58~22、58~28、58~34、58~40、64~16、64~22、64~28、64~34、64~40、70~16、70~22、70~28、70~34、70~40、76~16、76~22、76~28、76~34、76~40の性能グレードを有し、より好ましくは、アスファルトは、30~45、35~50、40~60、50~70、70~100、100~150、160~220の針入度、又は52~16、52~22、52~28、52~34、52~40、58~16、58~22、58~28、58~34、58~40、64~16、64~22、64~28、64~34、70~16、70~22、70~28、76~16、76~22の性能グレードを有し、最も好ましくは、アスファルトは、40~60、50~70、70~100、100~150の針入度、又は52~16、52~22、52~28、52~34、52~40、58~16、58~22、58~28、58~34、64~16、64~22、64~28、70~16、70~22、76~16、76~22の性能グレードを有する。
【0037】
一般に、熱硬化性反応性化合物は、それぞれのアスファルトのアスファルテン及びマルテンに分類される異なる分子種と化学的に反応し得る化合物であり、アスファルトの物理的特性を幅広い温度範囲にわたってより一定に保つコロイド構造の特定の形態を生成すること及び/又はアスファルトが曝される温度範囲にわたって物理的特性を改善することにさえ役立つ。
【0038】
本発明によると、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの量は、アスファルト組成物の総質量に対して8.0質量%以下である。アスファルト組成物の総質量に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、最も好ましくは3.0質量%以下である。本発明によると、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの量は、アスファルト組成物の総質量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.7質量%、最も好ましくは少なくとも0.9質量%である。例えば、アスファルト組成物中の熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの量は、0.5質量%~3.8質量%の範囲、0.8質量%~2.7質量%の範囲、1.0質量%~3.9質量%の範囲、1.1質量%~2.0質量%の範囲、1.8質量%~3.2質量%の範囲、2.1質量%~3.7質量%の範囲、又は0.5質量%~3.5質量%の範囲にあり得る。
【0039】
本発明による熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートは、アスファルトと相容性であることを前提として、任意のイソシアネートであり得、好ましくは、これは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ポリマーMDI、モノマーMDI、MDIプレポリマーであり、より好ましくは、これは、TDI、ポリマーMDI、モノマーMDIであり、最も好ましくは、これは、ポリマーMDI、モノマーMDI、例えばポリマーMDIである。
【0040】
一般に、TDIは、当技術分野で知られており、トルエンジイソシアネート(TDI)として知られており、これは、異なる異性体で生じる有機化合物である。本発明によると、TDIの既知の異性体又は異なる異性体の混合物のいずれも、アスファルトと相容性であることを前提として、使用することができる。好ましくは、これは、純粋な2,4-TDIであるか、又は2,4及び2,6TDIの混合物であり、より好ましくは、これは、2,4及び2,6-TDI異性体の混合物、例えば、2,4及び2,6-TDI異性体の80/20又は65/35混合物である。
【0041】
一般に、HDIは、当技術分野で知られており、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)として知られている。本発明によると、既知のHDIのいずれも、アスファルトと相容性であることを前提として、使用することができる。
【0042】
一般に、MDIプレポリマーは、当技術分野で知られており、ポリマーMDIとポリオールとの反応生成物である。MDIプレポリマーの一部としてのポリマーMDIは、当技術分野で知られており、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとして知られており、ポリアリーレンポリイソシアネート又はポリフェニルメタンポリイソシアネートとも呼ばれる。これは、例えば4,4'-、2,2'-及び2,4'-異性体のような異性体を様々な量で含み得る。好ましくは、4,4'MDI異性体の量は、26%~98%の範囲、より好ましくは30%~95%の範囲、最も好ましくは35%~92%の範囲にある。好ましくは、ポリマーMDIの二環含有量は、20%~62%の範囲、より好ましくは26%~48%の範囲、最も好ましくは26%~42%の範囲にある。これはまた、カルボジイミド、ウレトンイミン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、尿素又はビウレット基を含む、修飾変異体も含み得る。以下では、これらすべてをpMDIと呼ぶ。プレポリマーを調製するために使用されるポリオールは、アスファルトと相容性であることを前提として、本分野で使用可能な任意のポリオールである。本発明で使用される任意の高分子量ポリオールを使用することができ、これは、少なくとも50、好ましくは50~10000、より好ましくは500~5000の平均ヒドロキシル当量を有する、ポリウレタンの製造に使用される任意のポリオール又はそれらの混合物であり得る。これらのポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール等であり得る。好ましいポリオールは、ポリエーテル(特にポリプロピレングリコール)、ポリエステル(特に芳香族ポリエステル)、及びポリオレフィン(特にポリブタジエン)ポリオールである。ポリオールの官能価は、好ましくは2~4、より好ましくは2~3、最も好ましくは2である。1つの特に好ましいポリオールは、ポリプロピレングリコール(PPG)、例えばPPG2000である。当業者に知られている方法を使用してプレポリマーを製造することができる。プレポリマーのNCO値は、幅広い範囲内で変化し得る。これは、約6~30、好ましくは約9~25であり得る。実際に、ポリオール/pMDIの比は、2/98~80/20の質量比で変化し得る。
【0043】
一般に、ポリマーMDIは当技術分野で知られており、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとして知られており、ポリアリーレンポリイソシアネート又はポリフェニルメタンポリイソシアネートとも呼ばれる。これは、例えば、4,4'-、2,2'-及び2,4'-異性体のような異性体を様々な量で含み得る。好ましくは、4,4'MDI異性体の量は、26%~98%の範囲、より好ましくは30%~95%の範囲、最も好ましくは35%~92%の範囲にある。好ましくは、ポリマーMDIの二環含有量は、20%~62%の範囲、より好ましくは26%~48%の範囲、最も好ましくは26%~42%の範囲にある。
【0044】
これはまた、カルボジイミド、ウレトンイミン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、尿素又はビウレット基を含む、修飾変異体も含み得る。以下では、これらすべてをpMDIと呼ぶ。好ましくは、本発明によって使用されるpMDIは、少なくとも2.3、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも2.7、例えば、2.8、2.9又は3.0の平均イソシアネート官能価を有する。
【0045】
一般に、ポリマーMDIの純度は、いかなる値にも限定されることはなく、好ましくは、本発明によって使用されるpMDIは、1~100ppm、より好ましくは1~70ppm、最も好ましくは1~60ppmの鉄含有量を有する。
【0046】
一般に、モノマーMDI(mMDI)は、当技術分野で知られており、メチレンジフェニルジイソシアネートとして知られている。これは、例えば4,4'-、2,2'-及び2,4'-異性体のような異なる異性体の形態で生じ得る。本発明によると、mMDIの既知の異性体又は異なる異性体の混合物のいずれも、アスファルトと相容性であることを前提として、使用することができる。好ましくは、これは、純粋な4,4'-MDI、2,4'-MDIと4,4'-MDIとの混合物、2,2'-MDI含有量が低減された2,4'-MDIと4,4'-MDIとの混合物であり、より好ましくは、これは、純粋な4,4'-MDI、2,4'-MDIと4,4'-MDIとの混合物であり、最も好ましくは、これは純粋な4,4'-MDIである。好ましくは、4,4'MDI異性体の量は、40~99.5%の範囲、より好ましくは44%~99%の範囲、最も好ましくは46%~98.5%の範囲にある。
【0047】
これはまた、カルボジイミド、ウレトンイミン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、尿素又はビウレット基を含む、修飾変異体も含み得る。以下では、これらすべてをmMDIと呼ぶ。好ましくは、本発明によって使用されるmMDIは、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.1、最も好ましくは少なくとも2.15、例えば、2.2、2.3又は2.4の平均イソシアネート官能価を有する。
【0048】
一般に、可塑剤は、可塑性を高めるか、又は材料の粘度を下げ、それらの物理的特性を変更する、添加剤である。これらは、ポリマー鎖間の引力を減少させて、ポリマー鎖をより柔軟にする。本発明によると、既知の可塑剤のいずれも、アスファルトと相容性であることを前提として、使用することができる。
【0049】
好ましくは、可塑剤は、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アゼレート類、アセテート類、ブチレート類、バレリエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、ジベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、ホスフェート類、セバケート類、スルホンアミド類、エポキシエステル類、トリメリテート類、グリセロールエステル類、スクシネート類、鉱油、及びポリマー可塑剤、又はそれらの混合物からなる群から選択され、ポリマー可塑剤は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
最も好ましくは、可塑剤は、オルトフタレート類、テレフタレート類、シクロヘキサノエート類、アルキルスルホネート類、アジペート類、ベンゾエート類、シトレート類、マレエート類、及び鉱油、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
好ましいオルトフタレート類は、(DINP)ジイソノニルフタレート、(DIDP)ジイソデシルフタレート、(DPHP)ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、(DEHP)ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、(DBP)ジブチルフタレート、(DIBP)ジイソブチルフタレート、(BBP)ベンジルブチルフタレート、又はそれらの混合物であり得る。最も好ましいオルトフタレート類は、(DINP)ジイソノニルフタレートであり得る。
【0052】
好ましいテレフタレート類は、(DEHTP)ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート、(DBT)ジイソブチルテレフタレート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいテレフタレートは、(DEHTP)ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレートであり得る。
【0053】
最も好ましいシクロヘキサノエートは、(DINCH)1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルであり得る。
【0054】
好ましいアゼレート類は、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート、(DIDA)ジイソデシルアゼレート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいアゼレートは、(DIDA)ジイソデシルアゼレートであり得る。
【0055】
好ましいアセテート類は、2-エトキシエチルアセテート、グリセリルトリアセテート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいアセテートは、グリセリルトリアセテートであり得る。
【0056】
好ましいブチレート類は、1,2,3-プロパントリイル-トリブタノエート(トリブチリン)、2,2,4-トリメチル-1,3ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいブチレートは、2,2,4-トリメチル-1,3ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)であり得る。
【0057】
最も好ましいバレリエートは、吉草酸のペンタエリトリトールエステル(PETV)であり得る。
【0058】
最も好ましいアルキルスルホネートは、フェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステルであり得る。
【0059】
好ましいアジペート類は、(DEHA)ジエチルヘキシルアジペート(ビス(2-エチルヘキシル)アジペート)、(DINA)ジイソノニルアジペート(ビス(7-メチルオクチル)アジペート)、(DIDA)ジイソデシルアジペート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいアジペート類は、(DINA)ジイソノニルアジペート(ビス(7-メチルオクチル)アジペート)であり得る。
【0060】
好ましいベンゾエート類は、(INB)イソノニルベンゾエート、(IDB)イソデシルベンゾエート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいベンゾエートは、(INB)イソノニルベンゾエートであり得る。
【0061】
好ましいジベンゾエート類は、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいジベンゾエート類は、ジプロピレングリコールジベンゾエートであり得る。
【0062】
好ましいシトレート類は、(ATBC)アセチルトリブチルシトレート、(TBC)トリブチルシトレート、(TEC)トリエチルシトレート、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいシトレート類は、(ATBC)アセチルトリブチルシトレートであり得る。
【0063】
最も好ましいマレエートは、マレイン酸ジブチルエステルであり得る。
【0064】
好ましいホスフェート類は、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TEHP)、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいホスフェートは、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TEHP)であり得る。
【0065】
好ましいセバケート類は、ジメチルセバケート(DMS)、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジブチルセバケート(DBS)、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいセバケートは、ジメチルセバケート(DMS)であり得る。
【0066】
最も好ましいスルホンアミドは、N-ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)であり得る。
【0067】
好ましいエポキシエステル類は、エポキシ化大豆油(ESBO)、エポキシ化アマニ油(ELO)、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいエポキシエステルは、エポキシ化アマニ油(ELO)であり得る。
【0068】
最も好ましいトリメリテートは、(TOTM)トリス-2-エチルヘキシルトリメリテートであり得る。
【0069】
最も好ましいグリセロールエステルは、完全にアセチル化されたモノグリセリドであり得る。
【0070】
好ましいスクシネート類は、ジエチルスクシネート(DES)、ジメチルスクシネート(DMS)、又はそれらの混合物であり得る。
最も好ましいスクシネートは、ジエチルスクシネート(DES)であり得る。
【0071】
ポリマー可塑剤は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、1,2-プロパンジオールオクチルエステルを有するヘキサン二酸ポリマー、並びに1,2-プロパンジオールアセテートを有するヘキサン二酸ポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
最も好ましいポリマー可塑剤は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールイソノニルエステルを有するヘキサン二酸ポリマーであり得る。
【0072】
好ましくは、可塑剤は、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジイソブチルテレフタレート、ジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、及びフェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステル、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0073】
より好ましくは、可塑剤は、ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート、フェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステル、及びジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0074】
最も好ましくは、可塑剤は、ジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(DINCH)である。
【0075】
本発明によると、アスファルト組成物中の可塑剤又は可塑剤の混合物の量は、アスファルト組成物の総質量に対して8.0質量%以下である。アスファルト組成物の総質量に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、最も好ましくは3.0質量%以下である。本発明によると、アスファルト組成物中の可塑剤又は可塑剤の混合物の量は、アスファルト組成物の総質量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.7質量%、最も好ましくは少なくとも0.9質量%である。例えば、アスファルト組成物中の可塑剤又は可塑剤の混合物の量は、0.5質量%~3.8質量%の範囲、0.8質量%~2.7質量%の範囲、1.0質量%~3.9質量%の範囲、1.1質量%~2.0質量%の範囲、1.8質量%~3.2質量%の範囲、2.1質量%~3.7質量%の範囲、又は0.5質量%~3.5質量%の範囲にあり得る。
【0076】
それぞれの用途に応じてアスファルト組成物の特性を適合させるために、当技術分野で知られている更なる任意選択的な添加剤を本発明による組成物に添加してもよい。添加剤は、例えばワックスであり得る。これらのワックスは、アスファルトバインダー組成物中の更なる添加剤として使用される場合、官能化若しくは合成ワックス、又は天然に存在するワックスであり得る。更に、ワックスは、酸化されていても、又は酸化されていなくてもよい。合成ワックスの非排他的な例としては、エチレンビス-ステアラミドワックス(EBS)、フィッシャー・トロプシュワックス(FT)、酸化フィッシャー・トロプシュワックス(FTO)、ポリオレフィンワックス、例えば、ポリエチレンワックス(PE)、酸化ポリエチレンワックス(OxPE)、ポリプロピレンワックス、ポリプロピレン/ポリエチレンワックス、アルコールワックス、シリコーンワックス、石油ワックス、例えば、微結晶ワックス又はパラフィン、及び他の合成ワックスが挙げられた。官能化ワックスの非排他的な例としては、アミンワックス、アミドワックス、エステルワックス、カルボン酸ワックス、及び微結晶ワックスが挙げられる。天然に存在するワックスは、植物、動物若しくは鉱物、又は他の供給源に由来し得る。天然ワックスの非排他的な例としては、植物性ワックス、例えば、カンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ジャパンワックス、及びホホバ油;動物性ワックス、例えば、ビーズワックス、ラノリン、及びクジラワックス;並びに鉱物ワックス、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、及びセレシンが挙げられる。前述のワックスの混合物も好適であり、例えば、ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュ(FT)ワックスとポリエチレンワックスとのブレンドが挙げられ得る。
【0077】
酸化防止剤は、これらの材料の強度及び柔軟性の損失を引き起こすポリマーの酸化分解を防止するために、アスファルトバインダー組成物のための更なる添加剤として従来の量で使用され得る。
【0078】
任意選択的な添加剤に関する従来の量は、それぞれのアスファルト組成物の総量に対して0.1~5質量%の範囲にある。例えば、従来の量は、0.2~3質量%、0.5~2.8質量%、又は0.6~2.5質量%である。
【0079】
一般に、熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの量及び可塑剤の量は、それぞれのアスファルトの組成に依存し得る。85未満の針入度を有する硬質アスファルトの場合、より少ない熱硬化性反応性化合物、例えばpMDIが必要になり得、85超の針入度を有する軟質アスファルトの場合、より多い量のそれぞれの熱硬化性反応性化合物、例えばpMDIが必要になり得る。この理論に縛られるわけではないが、ここでは、異なるアスファルトではアスファルテンの濃度が異なるため、熱硬化性反応性化合物の量を再調整する必要があると考えられている。85超の針入度に対応する軟質アスファルトでは、アスファルテンが希釈され、そのため、濃度が低下し、それによって、より良好な性能を達成するために、より多くの量のそれぞれの熱硬化性反応性化合物、例えばpMDIと、アスファルト組成物の調製方法の酸素雰囲気によって供給され得るより多くの酸化とが必要になる。それぞれのポリマーが相互作用すると考えられるそれぞれのアスファルトのマルテン相についても同じことが想像できる。
【0080】
一般に、少なくとも64の高温限度を有する性能グレードに対応する85未満の針入度を有するアスファルトの場合、アスファルト組成物中のポリマーMDI、エポキシ樹脂、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの量は、0.1~3.0質量%の範囲であり得、好ましくは、熱硬化性反応性化合物の量は、2.5質量%以下、最も好ましくは2.3質量%以下、特に2.0質量%以下であり、熱硬化性反応物の量は、アスファルト組成物の総質量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも0.7質量%、最も好ましくは少なくとも1.0質量%である。
【0081】
一般に、64以下の高温限度を有する性能グレードに対応する85超の針入度を有するアスファルトの場合、アスファルト組成物中のポリマーMDI、エポキシ樹脂、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される熱硬化性反応性化合物の量は、2.0質量%~10.0質量%の範囲にあり得、好ましくは、熱硬化性反応性化合物の量は、5.0質量%以下、最も好ましくは4.5質量%以下、特に4.0質量%以下であり、熱硬化性反応物の量は、アスファルト組成物の総質量に対して、少なくとも2.0質量%、好ましくは少なくとも2.5質量%、より好ましくは少なくとも2.7質量%、最も好ましくは少なくとも3.0質量%である。
【0082】
上記に加えて、使用されるアスファルトの特性に応じて可塑剤の量を調整することもできる。熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの可塑剤に対する質量パーセント比は、80:1~1:80の範囲、好ましくは10:1~1:10の範囲、より好ましくは5:1~1:5の範囲、最も好ましくは3:1~1:3の範囲、例えば、2:1~1:2又は1:1であり得る。
【0083】
一般に、アスファルトを改質することによって、異なる物理的特性に関する性能を改善することができ、例えば、弾性応答の増加を達成することができる。
【0084】
アスファルトの添加剤としてのイソシアネートと可塑剤との組合せは、相乗効果をもたらし、このことは、イソシアネートと可塑剤との組合せを含むアスファルトが、驚くべきことに、個々の成分のみを含むアスファルトよりもはるかに良好な性能を示すことを意味する。
【0085】
本発明のアスファルト組成物は、従来技術の任意の古典的なアスファルト組成物として使用することができる。本発明のアスファルト組成物は、以下のものの製造に特に有用であり得る:
- 塗料及びコーティング、特に防水用のもの、
- 目地を埋めて亀裂を塞ぐためのマスチック、
- 骨材(アスファルト組成物の約5~20%を占める)、例えばアスファルト混合物を提供するために石と混合された、道路、飛行場、運動場等の表面仕上げのためのグラウト及び熱間注入表面。
- 上記のような表面仕上げのための熱間コーティング
- 上記のような表面仕上げのための表面コーティング
- アスファルトエマルション
- ウォームミックスアスファルト(WMA)
- ホットミックスアスファルト(HMA)
【0086】
更に、本発明は、以下の工程:
a) 出発アスファルトを110~190℃の温度に加熱する工程、
b) 所望の量のイソシアネート及び所望の量のそれぞれの可塑剤を添加する工程であって、所望の添加剤を添加する順序が決定的なものではないか、又はそれぞれのイソシアネート及びそれぞれの可塑剤を別々に混合し、混合物として添加する、工程、
c) 工程b)の後に、反応混合物を、110~190℃の範囲の温度で少なくとも2時間にわたって撹拌するか、又は2~180秒の範囲の時間にわたって均質化する工程、並びに任意選択的に
d) 反応の終了をIR分光法によって決定する工程
を含み、反応が酸素雰囲気下にある、本発明によるアスファルト組成物を調製するための方法に関する。
【0087】
例えば、本発明の方法は、工程a)及び/又は工程c)において110~190℃の温度で実施することができる。好ましくは、温度は、110~180℃の範囲、より好ましくは115~170℃の範囲、最も好ましくは120~165℃の範囲にあり、例えば、温度は、121~162℃の範囲にある。
【0088】
一般に、工程a)、b)及び工程c)における温度は、110~190℃の範囲にあり、工程ごとに異なり得る。好ましくは、3つの工程のそれぞれにおける温度は、同じであり、110~190℃の範囲にあり、より好ましくは、同じであり、110℃~170℃の範囲にあり、最も好ましくは、同じであり、110℃~165℃の範囲にある。
【0089】
本発明によると、アスファルト組成物を調製するための方法の工程b)では、熱硬化性反応性化合物としての所望の量のイソシアネート及び所望の量の可塑剤を撹拌下で添加する。まずイソシアネートを添加し、その後、所望の量の可塑剤を添加しても、又はその逆でもよい。イソシアネート及び可塑剤は、撹拌しながら同時に添加しても、又は混合物として添加してもよい。所望の量は、両方の成分の組成物の総質量に対して0.1~8質量%の範囲にあり得る。
【0090】
一般に、量はまた、電位差滴定によって決定され得、ここでは、アスファルト中の反応性基の数を決定し、それぞれの熱硬化性化合物の反応性基の当量に相関させる。滴定法は、当技術分野で知られている。
【0091】
一般に、異なる供給元からのアスファルトは、原油がどのリザーバからのものであるか、及び精製所での蒸留プロセスに応じて、組成が異なる。しかしながら、熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネートの反応性基の累積総量は、3.1~4.5mgKOH/gの範囲にあり得る。
【0092】
例えば、50~70又は70~100の針入指数を有するアスファルトは、pMDIの化学量論量が0.8~1.2質量%となる。アスファルト組成物の調製中の高温下でのアスファルト成分の酸化敏感性のために、更なる過剰のイソシアネートを使用して、新たに形成された官能基と反応させる。
【0093】
本発明によると、方法工程c)は、工程b)の後に実施される。反応混合物は、110~190℃の範囲の温度で少なくとも2時間にわたって撹拌され、好ましくは、混合時間は少なくとも2.1時間であり、より好ましくは、混合時間は少なくとも2.2時間であり、最も好ましくは、混合時間は少なくとも2.5時間である。110~190℃の範囲の温度で少なくとも2時間にわたって撹拌した後に、熱硬化性化合物の反応性基とアスファルトの反応性基との架橋反応、並びに酸化による架橋反応が完了する。架橋反応を完了するためには、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも2.1時間、より好ましくは少なくとも2.2時間、最も好ましくは少なくとも2.5時間が必要である。
【0094】
代替として、反応混合物を、110℃~190℃の範囲の温度で、2~180秒の範囲の時間、好ましくは2~60秒の時間、より好ましくは5~40秒の時間、より好ましくは8~30秒の時間、より好ましくは10~25秒の時間、最も好ましくは12~20秒の時間にわたって均質化することができる。均質化は、1つ又は複数の動的混合要素を用いて、より好ましくは、1つ若しくは複数の循環ポンプ及び/又は高せん断ミキサ及び/又は1つ若しくは複数の撹拌機及び/又は1つ若しくは複数のスクリュを用いて、より好ましくは、1つ又は複数の撹拌機を用いて達成される。熱硬化性反応性化合物、可塑剤、及びそれぞれのアスファルトのこの均質化プロセス中には、反応性基の架橋反応が誘導されるだけで、完了はしない。
【0095】
架橋反応の完了は、例えば、各アスファルトと熱硬化性反応性化合物と可塑剤との混合物(1)を、例えば110~240℃の範囲の温度で粒状材料に添加し、5~180秒の範囲の時間にわたって再び均質化する、アスファルト混合組成物を製造する方法(2)で行われる。そのような方法は、当技術分野で知られており、例えばEP 19198042.4に詳細に記載されている。粒状材料の表面積が大きいことを理由に、架橋反応の完了は、撹拌下の他の変法よりも速くなる。
【0096】
(2)における添加は、混合物(1)の少なくとも一部を粒状材料の少なくとも一部に注入することによって達成されることが好ましい。(2)における添加は、混合物(1)の少なくとも一部を、投与ポンプを用いて粒状材料の少なくとも一部に注入することによって達成されることが特に好ましい。
【0097】
(2)における均質化は、1つ又は複数の動的混合要素を用いて、より好ましくは、1つ若しくは複数の撹拌機及び/又は1つ若しくは複数のスクリュを用いて、より好ましくは、ダブルシャフト強制ミキサ(ツインシャフトパグミル)を用いて達成されることが好ましい。
【0098】
(2)における均質化は、混合デバイス内で行われることが好ましい。混合デバイスは、アスファルト混合プラントの一部であることが特に好ましい。
【0099】
(2)における均質化が混合デバイス内で行われる場合、粒状材料は、(1)のアスファルト混合物を添加する前に混合デバイスに添加されることが好ましい。
【0100】
(2)において、添加及び均質化は、同時に行われることが好ましい。
【0101】
(c)及び/又は(2)、より好ましくは(c)及び(2)は、バッチプロセス又は連続プロセスとして行われることが好ましい。(c)及び/又は(2)、より好ましくは(c)及び(2)は、連続プロセスとして行われることが特に好ましい。
【0102】
本発明によると、アスファルト組成物を調製するための方法及びアスファルト混合組成物を製造する方法(2)は、酸素雰囲気下で実施される必要がある。好ましくは、酸素雰囲気中の酸素濃度は、1~21体積%の範囲にあり、より好ましくは、酸素雰囲気中の酸素濃度は、5~21体積%の範囲にあり、最も好ましくは、酸素雰囲気中の酸素濃度は、10~21体積%の範囲にあり、例えば、本発明の方法は、空気下又は酸素の飽和雰囲気下で実施される。
【0103】
本発明の方法は、出発材料としての特定のアスファルトに限定されることはなく、このことは、熱硬化性化合物としてのイソシアネート及びポリマーをPmAに添加するか、又はPmAを未使用のビチューメンで希釈し、これを本発明による改質方法の出発材料として使用することによって、市販のポリマー改質アスファルト(PmA)も本発明の方法によって更に改質することができることを意味する。また、市販のPmAを、本発明の方法によって合成された改質アスファルトとブレンドしてもよい。
【0104】
一般に、この方法は、1つの反応容器、例えばコンテナ内での実施に限定されることはない。それぞれのアスファルトは、第1の工程において、酸素下にて、例えば温度110℃~190℃の上記の条件下で、熱硬化性反応性化合物としてのイソシアネート及び可塑剤と反応させることができる。次いで、アスファルトを冷却し、異なる反応容器に移送し、移送後に、酸素下での総反応時間が満たされるように加熱することができる。
【0105】
更に、本発明は、アスファルト混合組成物を調製するためのアスファルト組成物の使用、及び舗装用途のための使用に関する。
【0106】
本発明によるアスファルト組成物を使用するアスファルト混合組成物に提供される粒状材料は、100質量%の粒状材料に対して、5~100質量%の再生アスファルト舗装を含むことが好ましく、より好ましくは、粒状材料は、100質量%の粒状材料に対して、10~90質量%、より好ましくは15~80質量%、より好ましくは20~70質量%、より好ましくは25~60質量%、より好ましくは30~50質量%、より好ましくは35~45質量%の再生アスファルト舗装を含む。
【0107】
本発明によるアスファルト組成物の例
Z1:熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して1.2~3.5質量%のpMDI、及び組成物の総質量に対して1.5~3.2質量%のDINCH。
Z2:熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して1.2~3.5質量%のpMDI、及び組成物の総質量に対して0.5~2.2質量%のビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート。
Z3:熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して1.0~2.0質量%のpMDI、及び組成物の総質量に対して2.0~3.2質量%のフェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステル。
Z4:熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して1.0~2.3質量%のpMDI、及び組成物の総質量に対して0.5~1.5質量%のDINCH
Z5:熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して1.2~3.5質量%のmMDI、及び組成物の総質量に対して1.5~3.2質量%のビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート
Z6:熱硬化性反応性化合物としての、組成物の総質量に対して1.2~3.5質量%のmMDI、及び組成物の総質量に対して0.5~2.2質量%のフェノールの(C10~C21)アルキルスルホン酸エステル。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0108】
実施例及び比較例
特性評価方法
a)アスファルト試験
【0109】
DIN EN 1427に準拠した軟化点(「環球法」)
肩付き真鍮リングに鋳込まれたアスファルトの2つの水平ディスクを、それぞれが鋼球を支えている間、液体槽内で制御された速度で加熱する。軟化点は、アスファルトに包まれた各ボールが25±0.4mmの距離を落下できるように2つのディスクが十分に軟化する温度の平均として報告する。
【0110】
DIN EN 12607-1に準拠したローリング薄膜オーブン試験(RTFOT又はRTFO試験)
アスファルトを、オーブン内の円筒形のガラスボトルで、75分にわたって163℃で加熱する(実行するごとに8本のボトルを使用することができる)。ボトルを15rpmで回転させ、加熱した空気を、4000mL/分で、各ボトルにその最下点で吹き込む。熱及び空気の影響は、オーブン処理の前後に測定した物理的試験値の変化から決定する。RTFO試験では、製造(混合)中、混合物輸送中、及び配置/敷設中のエージング(=アスファルトバインダーの短期エージング)がシミュレートされる。
【0111】
DIN EN 14769に準拠した圧力エージング容器(PAV)
RTFO試験による短期エージングを受けたサンプルを、標準的なステンレス鋼製のパン内に入れ、2.10MPaまで空気で加圧された容器内で指定された調整温度(90℃、100℃又は110℃)で20時間にわたってエージングする。温度は、アスファルトバインダーのグレード(用途)に応じて選択する。最後に、サンプルを真空脱気する。この試験では、耐用寿命にわたるエージング(長期エージング)がシミュレートされる。
【0112】
DIN EN 14770、ASTM D7175に準拠した動的せん断レオメータ(DSR)
動的せん断レオメータ試験システムは、平行板、試験試料の温度を制御する手段、荷重デバイス、並びに制御及びデータ収集システムで構成されている。これは、アスファルトバインダーのレオロジー特性を決定するために使用される。複素せん断弾性率は、荷重下での変形に対するアスファルトバインダーの剛性又は抵抗の指標である。複素せん断弾性率及び位相角は、線形粘弾性領域におけるアスファルトバインダーのせん断変形に対する抵抗を定義する。
【0113】
「Bitumen-Typisierungs-Schnell-Verfahren」(BTSV)-BTSV温度及びBTSV位相角の決定
直径25mmのアスファルトバインダー試験試料を、DSRデバイス内において、定義された周波数で、平行な金属板の間に押し付ける。平行板のうちの一方は、この場合、1.59Hz及び角偏向振幅で、もう一方に対して振動している。温度は、1.2℃/分の一定速度で上昇する。測定は、20℃で開始する。一定速度での加熱は、15kPaの複素弾性率に達するまで進行する。この時点での温度及び位相角は、BTSV温度(TBTSV、[℃];TBTSVがバインダーの硬度とよく相関するため、軟化点の代わりに代替的に使用することもでき、すなわち、硬質バインダーは、高いTBTSVを特徴とし、軟質バインダーは、低いTBTSVを特徴とする)及びBTSV位相角(δBTSV、[°];バインダーの弾性の尺度であり、すなわち、例えば舗装グレードのアスファルトバインダーのような低い弾性特性を有するバインダーは、高いδBTSVを特徴とし、その一方で、例えばポリマー改質アスファルトバインダーのような改質されたバインダーは、低いδBTSVを特徴とする)として定義される。
(「Das Bitumen-Typisierungs-Schnell-Verfahren」、Alisovら、Strasse und Autobahn、2018年8月;「Modifzierung bestimmen」、M.Sutor-Fiedler、Asphalt&Bitumen 05/2017)
【0114】
アスファルトバインダー粘度の決定
直径25mmのアスファルトバインダー試験試料を、DSRデバイス内において、定義されたせん断速度で、平行な金属板の間に押し付ける。150℃で、粘度を10 1/秒のせん断速度で決定する。
【0115】
DIN EN 14770に準拠した温度スイープ
この試験の目的は、DSRデバイスを用いてアスファルトバインダーの複素せん断弾性率及び位相角を測定することである。直径8又は25mmのアスファルトバインダー試験試料を、定義された周波数及び温度で、平行な金属板の間に押し付ける。平行板のうちの一方は、この場合、1.59Hz及び角偏向振幅で、もう一方に対して振動している。必要な振幅は、試験が線形挙動の領域内で行われるように選択される必要がある。これを、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、及び90℃で繰り返す。
【0116】
DIN EN 16659、ASTM D7405に準拠した多重応力クリープ回復試験(MSCRT又はMSRC試験)
MSCRTは、せん断クリープ下でアスファルトバインダーにおける弾性応答の存在を決定し、指定温度(60℃)で2つの応力レベル(0.1及び3.2kPa)において回復するために用いられる。これは、DSRデバイスを用いて実行される。25mmのアスファルトバインダー試験試料を1秒にわたって一定の応力下にセットし、次いで、9秒にわたって回復させる。10回のクリープ及び回復サイクルを0.100kPaのクリープ応力で実行し、次いで、3.200kPaのクリープ応力で10サイクル行う。
【0117】
DIN EN 14771、ASTM D6648に準拠したベンディングビームレオメータ(BBR)
中間点に加えられる一定の荷重がかかったアスファルトバインダーの単純支持された角柱(prismatic)ビームの中間点のたわみを決定する。角柱状の試験試料を温度制御された液体槽に入れ、一定の試験荷重で240秒にわたって荷重をかける。試験荷重(980±50mN)及び試験試料の中間点のたわみは、コンピュータ処理されるデータ収集システムを使用して、時間に対してモニタリングする。試験試料の中間点での最大曲げ応力は、試験試料の寸法、支持体間の距離、並びに8.0、15.0、30.0、60.0、120.0及び240.0秒の荷重時間で試験試料に加えられる荷重から計算する。特定の荷重時間に対する試験試料の剛性は、最大曲げ応力を最大曲げひずみで割ることによって計算する。
【0118】
b)アスファルト混合組成物の試験
繰り返し圧縮試験(CCT)-TPアスファルト-StB Teil 25 B1、DIN EN 12697-25:2016に準拠
一軸繰り返し圧縮試験を、アスファルト混合試料の変形挙動を決定するために使用する。この試験では、試験が実行されるのと同じ温度である50±0.3℃で、試料を150±10分にわたって調節する。調節時間後に、試料を万能試験機にセットし、周期的に荷重をかける。各サイクルは1.7秒続き、荷重時間は0.2秒であり、一時停止時間は1.5秒である。適用される上限荷重は0.35MPaであり、下限荷重は0.025MPaである。サイクル数及び変形を記録する。試験は、10,000回の荷重サイクルが完了するか、変形が40%を超えたら終了する。
【0119】
間接引張強度試験-TPアスファルト-StB Teil 23、DIN EN 12697-23:2003に準拠
間接引張強度試験によって、アスファルト混合試料の疲労挙動を決定する。これは、指定された変形速度(この場合、50±0.2mm/分)及び試験温度(この場合、20±2℃)で円筒形の試料をその垂直直径面全体に荷重をかけることによって行う。破損時のピーク荷重を記録し、使用して、試料の間接引張強度を計算する。
【0120】
一軸引張応力試験及び熱応力拘束試料試験-DIN EN 12697-46:2012に準拠したTPアスファルト-StB Teil 46A(LTT=低温試験)に準拠
一軸引張応力試験及び熱応力拘束試料試験を採用し、欧州規格EN 12697-46:2012に従って実行し、アスファルト混合試料の低温挙動を決定する:
i)熱応力拘束試料試験(TSRST):試料の変形を拘束しながら、温度を所定の冷却速度で下げる。
ii)一軸引張強度試験(UTST):低温亀裂のリスクを評価するために、熱収縮によって引き起こされる応力をそれぞれの引張強度と比較する。
【0121】
アスファルト混合組成物の低温亀裂は、冷却中の熱収縮から生じ、アスファルト混合物に引張応力をもたらす。舗装層の低温挙動は、両方の試験で模倣される。
【0122】
TPアスファルト-StB Teil 22 DIN EN 12697-22:2003に準拠したホイールトラッキング試験
一定の制御された温度条件下での、荷重をかけたゴムホイールに繰り返し通過させたアスファルト混合組成物の変形(わだち掘れ)深さをホイールトラッキング試験によって決定する。典型的には、50℃で10,000サイクルが実行される。
【0123】
TPアスファルト-StB Teil 10 DIN EN 12697-10に準拠した圧縮性
アスファルト混合組成物の圧縮性を以下のように決定する:マーシャル試料を、EN 12697-30に従って、試料の各面に100回の圧縮打撃を使用して、アスファルト混合組成物から調製する。厚さの変化を各打撃後に測定する。その後、実験結果から数式を導出する。それぞれの式パラメータによって、調査されたアスファルト混合組成物の圧縮性の特性評価が可能になる。
【0124】
アスファルト混合組成物からのアスファルトバインダーの回収(回収アスファルト/回収アスファルトバインダー)
アスファルト分析機を用いて、約3kgのアスファルト混合組成物をトリクロロエチレンと混合する。骨材を、約60分かかるプロセスでアスファルトバインダーから分離する。この手順が済んだら、およそ600mlのトリクロロエチレンとアスファルトとの溶液が得られる。次いで、溶液を部分真空及び空気流に曝しながら、ロータリーエバポレータの回転蒸留フラスコを加熱した油浴に部分的に浸すことによって、溶液を蒸留させる。このプロセスには2つの段階がある。段階1は、60分かかり、90℃、圧力40kPa、及び回転速度75rpmで行われる。段階2は、160℃、2kPa、及び回転速度75rpmで行われる。アスファルトバインダーの種類及びアスファルト混合物のアスファルトバインダー含有量に応じて、100~150gの間のアスファルトバインダーを回収して、次いで、必要に応じて試験にかける。
【0125】
a)アスファルトバインダーの試験
長期エージングされた50/70アスファルトバインダーの調製、及びこれと質量混合比75:25のエージングされていない(ニート)バインダー70/100との混合物の調製
50/70の針入グレードを有する2kgの長期エージングされたアスファルトバインダーを、4つの続いて起こるRTFOTエージング手順、すなわち、50/70の針入グレードを有するニートアスファルトバインダーを用いた163℃での4×75分のエージング(合計300分)を実行することによって調製した。1回の実行(163℃で300分)で、ボトルあたり35g+/-0.5gのアスファルトバインダー、すなわち、8×35g=280gの長期エージングされたバインダーを調製することができる。エージングの実行が完了した後に、長期エージングされたサンプルをすべて1つの缶に入れ、120~140℃に加熱し、短時間撹拌して均質性を達成した。
【0126】
均質化された長期エージングされたアスファルトバインダー1kgを、70/100の針入グレードを有するニートアスファルトバインダーとブレンドした。質量混合比は、75:25(長期エージング:ニート)であった。混合は、一定の撹拌下にて120~140℃で1分未満実行した。続いて、混合物を120gの部分に分割し、これをアスファルトバインダーの改質のためのサンプルとして用いた。
【0127】
イソシアネートと可塑剤との混合物の調製:
アスファルトバインダーの改質のために、イソシアネートと可塑剤との混合物500gを、2.7の平均イソシアネート官能価を有するポリマージフェニルメタンジイソシアネート150g(以下「As20」と称する)と可塑剤350g(Hexamoll(登録商標)DINCHとして購入したジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸)とを室温で短時間撹拌して混合することによって調製した。As20とHexamoll(登録商標)DINCHとの混合物は、以下では「As20-DINCH混合物」と称する。
【0128】
改質されたアスファルトバインダー組成物を調製するための一般的な手順
エージングされていない(ニート)50/70バインダー(Table 1(表1)、サンプル2)、又は長期エージングされた50/70バインダーとエージングされていない(ニート)70/100(Table 1(表1)、サンプル5及び6)バインダーとの75:25の混合物(質量)のいずれかを用いたアスファルトバインダーの改質を以下のように実行した。
【0129】
予熱したオーブンにサンプルを入れることによって、それぞれのアスファルトバインダー120gを空気下で150℃に加熱した。1.8g(アスファルトバインダーの使用量に対して1.5質量%)又は6g(アスファルトバインダーの使用量に対して5.0質量%)のAs20又はイソシアネート-可塑剤混合物(=As20:Hexamoll(登録商標)DINCHの質量で3:7の混合物)のいずれかを溶融アスファルトバインダーに添加した(Table 1(表1)を参照)。続いて得られた混合物を数秒間(10秒未満)撹拌して均質性を達成する。その後、サンプルを35g±0.5gの部分に分割して、短期エージングのローリング薄膜オーブン試験を実行した。この試験では、混合プロセス中のアスファルトのエージング、続いて、アスファルト混合物の敷設に至るまでの建設現場へのアスファルト混合組成物の輸送がシミュレートされる。エージング後に、改質されたアスファルトを室温で保管するか、又は以下のように更なる試験に用いる:軟化点/BTSV温度(TBTSV/℃;軟化点の代わりに代替的に使用することもできる)、BTSV位相角(δBTSV/°)、及び粘度(@150℃)の決定(Table 1(表1)を参照)。
【0130】
【0131】
アスファルト混合組成物の作業性は、アスファルトバインダーの粘度に直接関係しており、すなわち、粘性の高いアスファルトバインダーは、アスファルト混合物の敷設中に圧縮の問題を引き起こす。アスファルトバインダーのエージングが、バインダー粘度及び軟化点/BTSV温度の両方の上昇をもたらすことは、当技術分野で知られている。これはまた、一方では、高比率のエージングされたバインダー、すなわち、高比率の再生アスファルト舗装(RAP)を含有するアスファルト混合組成物の圧縮/加工がより困難であることを意味する。他方では、軟化点/BTSV温度の上昇は、アスファルト混合物が硬くなっていること、すなわち、高温での安定性が上昇していることを意味する。アスファルトバインダーのBTSV位相角を見ると、位相角が小さいほど、アスファルト混合物の柔軟性/弾性/より低い脆性の点でより良好な特性、したがって、より良好な性能が反映される。典型的には、75°未満のBTSV位相角が、改質されたアスファルトに特徴的である(例えば、ポリマー改質ビチューメン;「Modifzierung bestimmen」、M.Sutor-Fiedler、Asphalt&Bitumen 05/2017を参照)。
【0132】
Table 1(表1)に見ることができるように、As20によるエージングされていないアスファルトバインダー50/70の改質によって、粘度及び軟化点/BTSV温度の両方が上昇する。更に、位相角が減少する。したがって、そのようなバインダーを含有するそれぞれのアスファルト混合組成物のより良好な性能が期待できる。
【0133】
未改質のアスファルトバインダー50/70(サンプル3)の長期エージングは、粘度及び、特に軟化点/BTSV温度の大幅な上昇をもたらす。これに対抗するために、例えば、pen70/100等の未改質のより柔らかいアスファルトバインダーを添加することができ、これは、サンプル4に示されている。75:25の質量比は、75%のRAPを含有するアスファルト混合組成物に典型的である。そのような混合物は、例えばサブベース層に使用される。
【0134】
長期エージングされた50/70バインダーとエージングされていない(ニート)70/100バインダーとの75:25の混合物(質量)(サンプル5)を改質すると、粘度及び軟化点/BTSV温度が予想通り増加し、BTSV位相角が減少する。それに応じて改質されたバインダーの粘度は、ポリマー改質ビチューメンの範囲内にある。粘度が高いことを理由に、そのようなアスファルトバインダーを含有するアスファルト混合物では、圧縮の問題が予想され得る。驚くべきことに、熱硬化性反応性化合物(As20)と可塑剤(Hexamoll(登録商標)DINCH)との組合せを用いることによって、アスファルトバインダーの粘度及び軟化点/BTSV温度を大幅に減少させることができ、すなわち、対応するアスファルト混合物(サンプル6)の作業性が改善されることが見出された。更に、位相角は不利な影響を受けず、すなわち、位相角は、サンプル5と比較してわずかしか増加しない。興味深いことに、達成されるBTSV性能特性は、ポリマー改質ビチューメン(例えば、PmB 25/55-55)に典型的である。したがって、実施例によるバインダーを含有するアスファルト混合組成物は、性能が大幅に押し上げられると期待されており、アスファルト混合物の良好な作業性が得られ、それと同時に、高比率の再生アスファルト舗装材料を舗装のために実現することができる。
【0135】
更なる利点には、例えば、以下のものがある:粘度の低下を理由とした敷設温度の低下と、それによるビチューメン排出物(ビチューメン蒸気及びエアロゾル)の低減、RAPの使用が制限されている舗装層のRAP含有量の増加(例えば、50質量%のRAPしかポリマー改質ビチューメンとの組合せに許容されないベース層)、バインダーの軟化点が非常に高いRAP材料の使用(すなわち、RAP材料のエージングに関する制限がより少ない)、安定性の上昇を理由としたサブベース層の寸法の縮小、及びそれによるコスト及び原材料の節約、並びにCO2排出量の削減。
【0136】
b)アスファルト混合組成物の試験
エージングされていない及びエージングされたアスファルトバインダーの理想的な混合物を用いた上述のアスファルトバインダーの試験は、As20-DINCH混合物(本発明による添加剤)の利点をすでに実証している。しかしながら、理想的なバインダーブレンドは、アスファルト混合組成物において存在する実際の条件を表してはいない。そこでは、RAP材料に含有されるエージングされたアスファルトが骨材に付着しており、混合プロセス中に添加されるエージングされていない(ニート)アスファルトバインダーと完全且つ均質には混合されていない。更に、アスファルトの性能データは、必ずしもアスファルト混合物の性能を映しているわけではない。したがって、参照添加剤あり/なし(w/o)のアスファルト混合組成物の試験を実行した。参照添加剤は、RAP材料の軟化点を下げ、材料特性を復元し、それによってより多くの量のRAPの使用を可能にするために使用される、技術水準の再生剤である。
【0137】
アスファルト混合組成物を調製するための手順
Table 2(表2)に列挙されている4つのサンプルそれぞれについて、バッチ1つあたり40kg(骨材+RAP材料;アスファルトバインダー及び添加剤に追加、Table 2(表2)を参照)の総質量を有する2つのバッチを調製した。実施例1及び比較例1の場合、アスファルトバインダー70/100を、それぞれAs20-DINCH混合物(本発明による添加剤)及び参照添加剤と予め混合した。各プレミックスのバッチサイズは、1200gであり、以下のように調製した:i)アスファルトバインダー70/100を130~150℃に加熱することによって溶融した、ii)972gの溶融アスファルトバインダーを秤量して別個の缶に入れた、iii)228gの本発明による添加剤(As20:Hexamoll(登録商標)DINCHの3:7の混合物)又は参照添加剤を撹拌しながら130~150℃で溶融アスファルトバインダーに添加した、iv)撹拌を1分未満実行して均質性を達成した、v)その後、調製したままのプレミックスを対応するアスファルト混合組成物の調製に直ちに使用した。用いた参照添加剤は、敷設中の混合物の良好な作業性を提供するためにRAP含有アスファルト混合組成物中のアスファルトバインダーの軟化点及びそれぞれのアスファルト混合組成物の粘度を低下させる、一般的に使用されている市販の再生剤である。
【0138】
骨材、RAP、アスファルトバインダー/アスファルトバインダー添加剤プレミックスを、Table 2(表2)に示されているように、それぞれのアスファルト混合組成物のために秤量し、続いて、170℃で10分にわたって実験室用ミキサ(70kgの最大バッチサイズを許容)で撹拌した。骨材ふるい分級物、総アスファルトバインダー、及びRAP含有量は、AC 22 TS舗装層に対応する。RAP材料のアスファルト含有量は、3.8質量%であった。5質量%の添加量は、未改質の変形形態(参照2を参照:RAPからの1140gのバインダー+404gのニートバインダー70/100)の総アスファルト含有量(RAPからのアスファルト+エージングされていない(ニート)アスファルト)を指す。改質されたバインダーの体積をほぼ一定に保つために(実施例1及び比較例1)、ニートバインダーの量は、添加剤の量だけ減らす(すなわち、参照2と比較して76g少ない)。
【0139】
混合後に、調製されたアスファルト混合組成物の20kgの部分をバケツに充填し、オーブン(サンプルを内部に配置する前に150℃に予熱した)内にて150℃で1時間にわたって保管した。保管後に、マーシャル試料を圧縮性試験のために調製した。更に、繰り返し圧縮試験(CCT)及び低温試験(LTT)のために2つのアスファルト混合物板を調製した。アスファルトバインダーの特性(TBTSV、δBTSV、BBR)は、対応するアスファルト混合組成物の回収アスファルトバインダーから決定した(先の回収プロセスの説明を参照)。アスファルトバインダー及びアスファルト混合物の試験結果をTable 3(表3)にまとめる。
【0140】
【0141】
【0142】
アスファルトバインダーの性能
Table 3(表3)に見ることができるように、RAPの比率が増加すると、アスファルトバインダーの軟化点/BTSV温度が、アスファルト混合組成物に関して増加する(参照1a及び1bを比較)。更に、低温挙動は、予想通り悪化する(より高い温度では、300MPaの剛性又は0.3のm値に達した)。
【0143】
75質量%のRAPを含有するアスファルト混合組成物にAs20-DINCH混合物(5質量%)を用いると(実施例1)、軟化点/BTSV温度を69.3℃から67.8℃に下げることができる。更に、BTSV位相角は、72.0°から68.0°に大幅に減少し、低温挙動が著しく改善される(参照1bと比較して低い温度で、300MPaの剛性又は0.3のm値に達した)。BTSV位相角がより低いことを理由に、アスファルト混合物の柔軟性/弾性/より低い脆性の点ではるかにより良好な特性、したがって、より良好な性能が期待される。
【0144】
参照添加剤(比較例1)は、アスファルトバインダーの軟化点/BTSV温度を69.3℃から60.2℃に大幅に下げる。BTSV位相角は、わずかに増加し、すなわち、対応するアスファルト混合組成物の性能は、より悪いと予想されており、未改質の変形形態(参照1b)と同じレベルにさえない。
【0145】
アスファルト混合物の性能
アスファルト混合組成物の試験は、アスファルトバインダーの試験の結果と一致している。以下の結論を導き出すことができる:
・ 本発明による添加剤(As20-DINCH混合物)は、それぞれのアスファルト混合組成物の変形挙動(CCTによって決定される)に関して参照添加剤よりも優れている。参照添加剤を含有するアスファルト混合組成物の変形挙動は、添加剤なしの参照よりも更に悪い。これは、バインダー調査の結果と一致している。
・ 実施例1及び比較例1の低温挙動は、ほぼ同じレベルにあり、どちらも、添加剤なしの参照例よりも優れている。
・ アスファルトバインダーの粘度低下(アスファルトバインダーの試験の結果を参照)を理由に、本発明による添加剤(As20-DINCH混合物)は、参照1b及び比較例1と比較して、低温でのより良好な圧縮性を可能にする(Table 3(表3)を参照、115℃及び100℃;より低い値は、アスファルト混合組成物のより良好な圧縮性と相関している)。したがって、混合物の作業性は、本発明による添加剤(As20-DINCH混合物)によって改善される。更に、アスファルト混合物の製造及び敷設時の温度低下も可能になる。
【0146】
c)(バッチ)アスファルト混合プラントでの実験
実験室での調査の結果を、以下に説明されるように、(バッチ)アスファルト混合プラントで実験を実行することによって実際の規模に変換した。
【0147】
(バッチ)アスファルト混合プラントにおける50質量%のRAPを含有するアスファルト混合組成物の調製-添加剤は使用しない(比較例2)
バッチサイズは3500kgである。アスファルト混合組成物の粒度曲線はAC 22 BSであった。アスファルト混合物は、50質量%の再生アスファルト(骨材+アスファルト)及び50質量%の未使用の材料を含む。アスファルトと骨材との混合物中の総アスファルト含有量は、4.5質量%、すなわち、バッチ3500kgあたりアスファルト157.5kgであった。アスファルト157.5kgのうちの84kgは再生アスファルト(4.8質量%)に由来し、残りの73.5kgは未改質(舗装グレード)アスファルトpen70/100(DIN EN 1426による7~10mmの針入度)の添加に由来する。粒度分布は、Table 4(表4)に示されているように調整し、ここで、バイパスは、AC 22 BS舗装層に準拠し、且つプラントオペレータによって手動で調整される、未使用の粒状材料(充填材なし)の混合物を表す。アスファルト混合物の製造後のふるい分級物及びバインダー含有量の分析をTable 5(表5)に示す。
【0148】
未使用の粒状材料及び再生アスファルトを、互いに別々に予熱し、続いて、6秒にわたって混合した(プレミックス)。140~155℃の最終的なアスファルト混合組成物の温度を達成できるように、加熱力及び混合時間を調整した。165~175℃の温度に予熱された73.5kgの未改質(舗装グレード)アスファルトpen70/100を秤量してアスファルト秤に入れた。アスファルトを、プレミックスされた材料(170℃以下の温度を有する未使用の骨材と再生アスファルトとの混合物)と一緒に、混合ユニット(ダブルシャフト強制ミキサ)に添加した。得られる混合物を更に混合し、ここで、更なる混合の総時間は30秒である。プロセスのこの段階で得られる最終的なアスファルト混合組成物の温度は、145~150℃であると決定された。続いて、アスファルト混合組成物をサイロに放出し、次いで、ホイールローダーに直接的に放出した(すなわち、保存時間なし)。続いて、アスファルトバインダーの試験(上記のようにアスファルトバインダーの回収後に実行)及びアスファルト混合組成物の試験(Table 6(表6))のためにサンプルを採取した。
【0149】
(バッチ)アスファルト混合プラントにおける50質量%のRAPを含有するアスファルト混合組成物の調製- 5質量%のAs20-DINCH混合物(本発明による添加剤)を用いる(実施例2)
アスファルト混合プラントには、本発明による添加剤(As20:Hexamoll(登録商標)DINCHの3:7の混合物)をアスファルト混合プラントのアスファルト秤(撹拌容器)に投与することを可能にするカスタマイズされた投与システム(加熱可能な投与ライン、投与ポンプ)が備えられていた。更に、アスファルト秤には、i)As20-DINCH混合物が投与され、ii)アスファルト20kgの最小充填レベルに達したときに作動する撹拌機が備えられていた。添加剤の投与の量及び速度、並びに混合は、アスファルト混合プラントのプロセス制御システムによって制御される。
【0150】
バッチサイズは3500kgである。アスファルト混合組成物の粒度曲線はAC 22 BSであった。アスファルト混合物は、50質量%の再生アスファルト(骨材+アスファルト)及び50質量%の未使用の材料を含む。アスファルトと骨材との混合物中の総アスファルト含有量(添加剤がバインダーを改質するため、添加剤を含む)は、4.5質量%、すなわち、バッチ3500kgあたりアスファルト157.5kg(改質)であった。アスファルト157.5kgのうちの84kgは再生アスファルト(4.8質量%)に由来し、65.5kgは未改質(舗装グレード)アスファルトpen70/100(DIN EN 1426による7~10mmの針入度)の添加に由来し、8.0kgのAs20-DINCH混合物を添加した。添加剤の量は、比較例2で与えられた未改質の変形形態に基づいて計算し、すなわち、総(未改質)バインダー(=再生アスファルトに由来するアスファルト+添加された未改質(舗装グレード)アスファルトpen70/100=157.5kg)に対して5.0質量%であった。実施例2の改質されたバインダーの体積をほぼ一定に保つために、ニートバインダーの量は、As20-DINCH混合物の量だけ減らし、すなわち、比較例2と比較して8.0kg少ない。
【0151】
粒度分布は、Table 4(表4)に示されているように調整し、ここで、バイパスは、AC 22 BS舗装層に準拠し、且つプラントオペレータによって手動で調整される、未使用の粒状材料(充填材なし)の混合物を表す。アスファルト混合物の製造後のふるい分級物及びバインダー含有量の分析をTable 5(表5)に示す。
【0152】
未使用の粒状材料及び再生アスファルトを、互いに別々に予熱し、続いて、6秒にわたって混合した(プレミックス)。140~155℃の最終的なアスファルト混合組成物の温度を達成できるように、加熱力及び混合時間を調整した。165~175℃の温度に予熱された65.5kgの未改質(舗装グレード)アスファルトpen70/100を秤量して撹拌容器(=アスファルト秤)に入れた。次いで、8.0kgのAs20-DINCH混合物を撹拌(1500rpm)しながらアスファルトに添加し、次いで、得られた混合物を更に撹拌し、ここで、投与速度は、0.1L/秒~2.0L/秒の間に設定し、更なる撹拌の時間は、10秒に設定する。得られる改質されたアスファルトを、プレミックスされた材料(170℃以下の温度を有する未使用の骨材と再生アスファルトとの混合物)と一緒に、混合ユニット(ダブルシャフト強制ミキサ)に添加した。得られる混合物を更に混合し、ここで、更なる混合の総時間は30秒である。プロセスのこの段階で得られる最終的なアスファルト混合組成物の温度は、145~150℃であると決定された。続いて、アスファルト混合組成物をサイロに放出し、次いで、ホイールローダーに直接的に放出した(すなわち、保存時間なし)。続いて、アスファルトバインダーの試験(上記のようにアスファルトバインダーの回収後に実行)及びアスファルト混合組成物の試験(Table 6(表6))のためにサンプルを採取した。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
アスファルトバインダーの性能
本発明による添加剤(As20-DINCH混合物)をアスファルト混合プラントで50質量%のRAPを含有するアスファルト混合組成物(実施例2)に使用すると、BTSV温度は、54.6℃から61.7℃に上昇する(Table 6(表6))。したがって、比較的低い軟化点が上昇すると、それによって、高温でのより良好なアスファルト混合物の安定性がもたらされ(実施例2)、非常に高い軟化点(先の実施例1及び参照1bを参照)が低下すると、それによって、より柔らかい材料がもたらされる。更に、BTSV位相角は、75.9°から66.5°に大幅に減少し、低温挙動は、同様のレベルのままである(参照2を参照)。BTSV位相角がより低いことを理由に、アスファルト混合物の柔軟性/弾性/より低い脆性の点でより良好な特性、したがって、より良好な性能が期待される。更に、Jnr値(MSCR試験によるもの)は、1.55 1/kPaから0.26 1/kPaに減少した。すなわち、バインダーは、比較例2で適用されているように、重い荷重(1000万~3000万のESAL又はJnr<2の低速移動トラフィック(slow-moving traffic))のみの代わりに、極度トラフィック荷重(extreme traffic load)(3000万超のESAL及びJnr<0.5のスタンディングトラフィック(standing traffic);1ESAL(等価単軸荷重)=80kN)について指定される。
【0157】
アスファルト混合物の性能
アスファルト混合物の性能の試験(ハンブルグホイールトラッキング試験、圧縮性、CCT、LTT)に見ることができるように、本発明による(As20-DINCH混合物)は、比較例よりも著しく優れている(Table 6(表6)):混合物のより良好な圧縮性/作業性、より良好なわだち掘れ及び疲労挙動、より良好な低温性能。これは、前述のアスファルトバインダーの試験の結果と一致している。興味深いことに、アスファルトバインダーの試験とは対照的に、アスファルト混合物の低温試験(LTT)から決定されるような低温挙動は、破断温度が-26.4℃から-31.2℃に低下したため、改善することさえできた。
【0158】
結論として、アスファルトバインダーの試験及びアスファルト混合組成物の試験の両方によって、工業規模で、実験室調査からの発見が確認され、本発明による添加剤(As20-DINCH混合物)の性能及び利点が示される。
【国際調査報告】