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特表2023-531444改変された末端基および増強された肺送達を有するポリ(アミン-co-エステル)ポリマー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】改変された末端基および増強された肺送達を有するポリ(アミン-co-エステル)ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/685 20060101AFI20230714BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20230714BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C08G63/685
A61K47/59
A61K9/14
A61K48/00
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578631
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 US2021034462
(87)【国際公開番号】W WO2021257262
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/041,739
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サルツマン, ダブリュー. マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ユーハン
(72)【発明者】
【氏名】グラン, モリー
(72)【発明者】
【氏名】スベリ, アレクサンドラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4J029
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB27
4C076CC15
4C076EE59
4C084AA13
4C084MA41
4C084MA55
4C084NA13
4C084ZA59
4J029AA05
4J029AB01
4J029AB02
4J029AC02
4J029AE06
4J029BH01
4J029CA02
4J029DA07
4J029EG00
4J029EG10
4J029HA01
4J029HB01
4J029KH01
(57)【要約】
ポリ(アミン-co-エステル)ポリマー、それらから活性薬剤が負荷されたポリプレックスおよび粒子を形成する方法、ならびに最適な取り込みを伴う核酸薬剤の送達のためにそれらを使用する方法を開発した。実施例は、露出したカルボン酸および/またはヒドロキシル基と組み合わせた重要な分子量、ならびに作製する方法を実証する。典型的には、組成物は、対照の他のトランスフェクション試薬と比較して、毒性が低いか、薬物送達により効率的であるか、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、組成物は、in vivo送達に好適であり、対象に全身投与して、疾患または状態を処置することができる。PEG化ポリ(アミン-co-エステル)ポリマーとの混合中に、特定のアミンまたはヒドロキシル基含有末端基を有するポリ(アミン-co-エステル)ポリマーについて、吸入による肺へのin vivo送達を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化28】
のポリマーであって、式中、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、Rは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である、
ポリマー。
【請求項2】
R1および/またはR2が、
【化29】
ではない、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーから形成されるポリプレックスまたは粒子が、R1および/またはR2が、
【化30】
からなる対応するポリプレックスまたは粒子と比べて、mRNAの、改善された負荷、改善された細胞トランスフェクション、改善された細胞内エンドソーム放出、またはそれらの組合せを示す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーが、式II:
【化31】
の構造を有し、式中、JおよびJは、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、式III:
【化32】
の構造を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
Zが、Z’と同じである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
nが、4、10、13、または14である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
mが、5、6、または7である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
が、置換または無置換アルキルである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
重量平均分子量が、狭い多分散性ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される場合、約2,000ダルトン~20,000ダルトン、好ましくは、約2,000ダルトン~約10,000ダルトン、最も好ましくは、約2000ダルトン~約7,000ダルトンである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
が、R4と同じである、請求項4に記載のポリマー。
【請求項12】
R3および/またはR4が、独立して、
【化33-1】
【化33-2】
からなる群より選択される、請求項4に記載のポリマー。
【請求項13】
J1が、-O-または-NHであり、Jが、-C(O)NH-もしくは-C(O)O-、またはそれらの組合せである、請求項4に記載のポリマー。
【請求項14】
、R、またはその両方が、第一級アミン基を含有し、必要に応じて1個または複数の第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項15】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて1個または複数のアミン基を含有する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項16】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、請求項4に記載のポリマー。
【請求項17】
およびRの少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、請求項4に記載のポリマー。
【請求項18】
、R、またはその両方が、-無置換C~C10アルキレン-Aq-無置換C~C10アルキレン-Bq、-無置換C~C10アルキレン-Aq-置換C~C10アルキレン-Bq、-置換C~C10アルキレン-Aq-無置換C~C10アルキレン-Bq、または-置換C~C10アルキレン-Aq-置換C~C10アルキレン-Bqであり、式中、Aqは、存在しないかまたは-NR-であり、Bqは、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンであり、Rは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである、請求項4に記載のポリマー。
【請求項19】
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)が、構造
【化34】
を有し、式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項20】
Zが、Z’と同じである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項21】
Zが、Oであり、かつZ’が、Oであり、Zが、NR’であり、かつZ’が、NR’である、請求項20に記載のポリマー。
【請求項22】
Zが、Oであり、かつZ’が、NR’であるか、またはZが、NR’であり、かつZ’が、Oである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項23】
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、必要に応じて、Zも、Oである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項24】
mが、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、必要に応じて、Zも、Oである、請求項23に記載のポリマー。
【請求項25】
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mが、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpが、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4であり、必要に応じて、Zも、Oである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項26】
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mが、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rが、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、または例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルであり、必要に応じて、Zも、Oである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項27】
nが、14、必要に応じて、ペンタデカラクトン(PDL)であり、mが、7、必要に応じて、セバシン酸であり、oおよびpが、2、必要に応じて、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)である、請求項19に記載のポリマー。
【請求項28】
式II:
【化35】
の構造を有する、請求項1に記載のポリマーであって、式中、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式Iについて上記に記載される通りであり、
およびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式IIにおけるRおよびRは、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
ポリマー。
【請求項29】
が、-O-または-NH-であり、
が、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である、
請求項28に記載のポリマー。
【請求項30】
が、Rと同一であり、必要に応じて、Rおよび/またはRが、直鎖状である、請求項28に記載のポリマー。
【請求項31】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて、R、R、またはその両方が、ヒドロキシル基および1個または複数のアミン基、必要に応じて、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、請求項30に記載のポリマー。
【請求項32】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、請求項28に記載のポリマー。
【請求項33】
およびRの少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、請求項28に記載のポリマー。
【請求項34】
式III:
【化36】
の構造を有する、請求項1に記載のポリマーであって、式中、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式Iについて上記に記載される通りであり、
およびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式IIにおけるRおよびRは、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
ポリマー。
【請求項35】
が、-O-または-NH-であり、
が、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である、
請求項34に記載のポリマー。
【請求項36】
が、Rと同一であり、必要に応じて、Rおよび/またはRが、直鎖状である、請求項34に記載のポリマー。
【請求項37】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて、R、R、またはその両方が、ヒドロキシル基および1個または複数のアミン基、必要に応じて、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、請求項34に記載のポリマー。
【請求項38】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、請求項34に記載のポリマー。
【請求項39】
およびRの少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、請求項34に記載のポリマー。
【請求項40】
前記ポリマーの重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、または2,000ダルトン超である、請求項19~39のいずれかに記載のポリマー。
【請求項41】
前記ポリマーの重量平均分子量が、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである、請求項40に記載のポリマー。
【請求項42】
1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)またはトリアミン(ZおよびZ’=NR’)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製される請求項19~41のいずれかに記載のポリマーであって、2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミンもしくはアミン-ジオールモノマーが使用される場合、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る、ポリマー。
【請求項43】
そのポリプレックスまたは粒子に形成される、請求項19~42のいずれかに記載のポリマー。
【請求項44】
封入された1つまたは複数の核酸を有する、そのポリプレックスまたは粒子に形成される、請求項43に記載のポリマー。
【請求項45】
前記ポリプレックスまたは粒子が、Rおよび/またはRが、
【化37】
からなるものではない、またはそれを含まないポリマーから形成される、請求項44に記載のポリマー。
【請求項46】
そのポリプレックスまたは粒子に形成される請求項44に記載のポリマーであって、前記ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)が、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされた前記ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)、すなわち、PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)を含有する混合物中にある、ポリマー。
【請求項47】
前記PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)が、構造
【化38】
を含有し、式中、m’およびm’’は、独立して、0または1であるが、ただしm’+m’’は1または2であることを条件とし、
式XIにおけるJおよびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式XIの一部の形態では、Jが、-O-または-NH-であり、式XIの一部の形態では、Jが、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である、
請求項46に記載のポリマー。
【請求項48】
1つまたは複数の治療用、診断用、もしくは予防用核酸薬剤、またはそれらの組合せをin vivoで投与する方法であって、請求項1~47のいずれかに記載のポリプレックスまたは粒子の形態のポリマーを細胞またはそれを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【請求項49】
細胞を前記粒子またはポリプレックスと接触させることによって細胞をトランスフェクトすることを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリプレックスまたは粒子が、肺に投与される、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年6月19日に出願された米国出願第63/041,739号の利益および優先権を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が支援した研究または開発に関する記載
本発明は、国立衛生研究所によって付与されたEB000487の下で政府の支援により行われた。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明の分野は、一般に、特に肺への、診断剤、予防剤および/または治療剤、特に、核酸系薬剤の改善された送達のためのポリマー組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
遺伝子送達のための非ウイルスベクターは、限定的な免疫原性についてのそれらの可能性、大きなサイズの遺伝子材料を収容および送達する能力、ならびにそれらの表面構造の改変についての可能性に起因して、過去数十年にわたって多くの注目を集めてきた。非ウイルスベクターの主要なカテゴリーとしては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられる。Felgnerおよび同僚によって開拓されたカチオン性脂質由来ベクターは、非ウイルス遺伝子送達のために最も広く検討されている系のいくつかを表している(Felgner, et al. Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure. PNAS, 84, 7413-7417 (1987))(Templeton, et al. Improved DNA: liposome complexes for increased systemic delivery and gene expression. Nat. Biotechnol. 15, 647-652 (1997))(Chen, et al. Targeted nanoparticles deliver siRNA to melanoma. J. Invest. Dermatol. 130, 2790-2798 (2010))。
【0005】
カチオン性ポリマー非ウイルスベクターは、それらの合成における柔軟性および特定の生物医学的適用のための構造改変を理由として、ますます注目を集めている。カチオン性脂質系およびカチオン性ポリマー系は両方とも、静電相互作用を通して負に帯電したDNAとの凝縮複合体を形成することによって、遺伝子を送達し、複合体形成は、DNAを分解から保護し、その細胞取り込みおよび核への細胞内輸送を促進する。
【0006】
カチオン性ポリマーおよびDNAの間で形成されるポリプレックスは、一般に、カチオン性脂質およびDNAの間で形成されるリポプレックスよりも安定であるが、両方とも、血清構成要素および塩を含有する生理液中で不安定である場合が多く、複合体をばらばらにするか、または凝集させる傾向がある(Al-Dosari, et al. Nonviral gene delivery: principle, limitations, and recent progress. AAPS J. 11, 671-681 (2009))(Tros de Ilarduya, et al. Gene delivery by lipoplexes and polyplexes. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010))。加えて、いくつかの研究は、アニオン性ポリマー、またはさらにネイキッドDNAが、ある特定の条件下であるレベルのトランスフェクションを提供することができることを示しているが、脂質およびポリマーの両方によるトランスフェクションは、通常、表面に正味の正電荷を有するポリプレックスまたはリポプレックスをもたらす過剰な電荷を有する材料を必要とする(Nicol, et al. Gene. Ther. 9, 1351-1358 (2002))(Schlegel, et al.. J. Contr. Rel. 152, 393-401 (2011))(Liu, et al, AAPS J. 9, E92-E104 (2007))(Liu, et al. Gene Ther. 6, 1258-1266 (1999))。in vivoで循環系に注射されると、正の表面電荷は、負に帯電した血清分子または細胞構成要素の膜との複合凝集体の迅速な形成を開始し、次いで、これは、細網内皮系(RES)によって除去される。
【0007】
より重要なことに、これまでに開発された多くのカチオン性ベクターは、実質的な毒性を呈し、これが、それらの臨床適用性を制限している(Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010))(Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011))(Felgner, et al. J. Biol. Chem. 269, 2550-2561 (1994))(Kafil, et al. BioImpacts 1, 23-30 (2011))(Lv, et al. J Contr. Rel. 114, 100-109 (2006))。これはまた、電荷に依存すると思われ、複合体の表面上の過剰な正電荷は、細胞膜などの細胞構成要素と相互作用し、クラスリン媒介性エンドサイトーシス、イオンチャネル、膜受容体、および酵素の活性、または細胞生存シグナル伝達などの正常な細胞プロセスを阻害し得る(Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011))(Felgner, et al. J. Biol. Chem. 269, 2550-2561 (1994))(Kafil, et al. BioImpacts 1, 23-30 (2011))。
【0008】
結果として、カチオン性脂質は、多くの場合、動物およびヒトにおいて急性炎症応答を引き起こす一方で、PEIなどのカチオン性ポリマーは、赤血球の形質膜を不安定化し、細胞壊死、アポトーシスおよびオートファジーを誘導する(Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010))(Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011))(Lv, et al. J. Contr. Rel. 114, 100-109 (2006))。これらの望ましくない効果を理由として、より低い電荷密度を有する高効率の非ウイルスベクターに対する必要性が存在する。
【0009】
ジエステルとアミノ置換ジオールとの酵素共重合を経て形成される生分解性ポリ(アミン-co-エステル)のファミリーの合成は、Liu, et al. J. Biomed. Mater. Res. A 96A, 456-465 (2011)およびJiang, Z. Biomacromolecules 11, 1089-1093 (2010)において議論されている。さまざまな鎖長を有するジエステル(例えば、スクシネートからドデカンジオエートまで)を、窒素上にアルキル(メチル、エチル、n-ブチル、t-ブチル)またはアリール(フェニル)置換基のいずれかを有するジエタノールアミンと共重合させた。リパーゼ触媒の高い耐性は、共重合反応をアミノ官能基の保護および脱保護なしで1ステップで完了させることを可能にした。弱酸性条件下でのプロトン化の際に、これらのポリ(アミン-co-エステル)は、DNAを容易に凝縮し、ナノサイズのポリプレックスを形成する。スクリーニング研究は、これらの材料の1つであるポリ(N-メチルジエチレンアミンセバケート)(PMSC)が、Lipofectamine 2000およびPEI14などの主要な市販製品の効率に匹敵する効率で、HEK293、U87-MG、および9Lを含む各種の細胞をトランスフェクトしたことを明らかにした。PMSCは、遺伝子送達のために以前に使用されていたが、酵素的に合成された材料の送達効率は、任意の以前に報告されたものよりもおよそ5桁高かった(Wang, et al. Biomacromolecules 8, 1028-1037 (2007))(Wang, et al. Biomaterials 28, 5358-5368 (2007))。しかしながら、これらのポリ(アミン-co-エステル)は、in vivoでの核酸の全身送達には有効ではなかった。これは、これらのポリマーおよび遺伝子材料によって形成されるポリプレックスが、(1)in vivo適用に対して十分な効率を有していない、および/または(2)血液中で十分に安定ではなく、循環の間に崩壊または凝集するという事実に起因し得る。
【0010】
したがって、高いトランスフェクション効率および低い毒性を有する核酸の効率的な全身的なin vivoまたはin vitro送達に好適な非ウイルスベクターについての必要性が残されている。
【0011】
分子量、ポリマー組成、および/または末端基を容易に制御および改変することができるポリマーナノ担体についての必要性も存在する。
【0012】
したがって、本発明の目的は、治療剤、診断剤、および/または予防剤、特に核酸を、in vivoまたはin vitroで効果的に送達することができる改善されたポリマー、ならびにそれらを作製および使用する方法を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、in vitroで高効率で遺伝子材料を細胞に効果的に送達することができ、核酸のin vivo送達に好適な改善されたポリマー、およびそれを作製する方法を提供することである。
【0014】
本発明の目的はまた、in vivoでの核酸の肺送達のために改善されたポリマーを使用する方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Felgner, et al. Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure. PNAS, 84, 7413-7417 (1987)
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【非特許文献17】Wang, et al. Biomaterials 28, 5358-5368 (2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
改変された末端基を有するポリ(アミン-co-エステル)ポリマーは、治療剤、診断剤、および/または予防剤、特に、核酸系薬剤を、それらから形成されたポリプレックスおよび粒子に形成して、送達するために使用される。これらは、RNAなどの核酸カーゴ、より具体的にはmRNAの、改善された負荷、改善された細胞トランスフェクション、改善された細胞内エンドソーム放出、またはそれらの組合せを示す。実施例は、露出したカルボン酸および/またはヒドロキシル基と組み合わせた重要な分子量、ならびに作製する方法を実証する。改変ポリマーはまた、注射によって投与された場合に特定の組織において優先的な取り込み、および肺系に投与された場合に高レベルの取り込みを示す。典型的には、組成物は、対照の他のトランスフェクション試薬と比較して、毒性が低いか、薬物送達により効率的であるか、またはそれらの組合せである。
【0017】
式Iの構造を有するポリマーを開示する。
【化1】
[式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’(式中、R’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)であり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である]
【0018】
一部の形態では、Zは、Z’と同じである。
【0019】
一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、Oである。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、Oである。
【0020】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0021】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0022】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpは、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0023】
一部の実施形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rは、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルである。一部の形態では、Zも、Oである。
【0024】
一部の形態では、nは、14(例えば、ペンタデカラクトン、PDL)であり、mは、7(例えば、セバシン酸)であり、oおよびpは、2(例えば、N-メチルジエタノールアミン、MDEA)である。
【0025】
一部の実施形態では、ポリプレックスまたは粒子は、Rおよび/またはRが、 からなるものではない、またはそれを含まないポリマーから形成される。
【0026】
一部の形態では、ポリマーは、式IIの構造を有する。
【化2】
[式中、JおよびJは、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである]
【0027】
一部の形態では、Jは、-O-または-NH-である。
【0028】
一部の形態では、Jは、-C(O)NH-または-C(O)O-である。
【0029】
一部の形態では、Rは、Rと同一である。
【0030】
好ましくは、Rおよび/またはRは、直鎖状である。
【0031】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基、および1個または複数のアミン基、好ましくは、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない。
【0032】
一部の形態では、RおよびRの少なくとも1つは、ヒドロキシル基を含有しない。
【0033】
一部の形態では、ポリマーは、式IIIの構造を有する。
【化3】
【0034】
特定の実施形態では、x、y、および/またはqの値は、ポリマーの重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、2,000ダルトン超であるようなものである。一部の形態では、ポリマーの重量平均分子量は、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである。
【0035】
ポリマーは、1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)またはトリアミン(ZおよびZ’=NR’)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製することができる。2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミンもしくはアミン-ジオールモノマーが使用される実施形態では、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る。
【0036】
一部の実施形態では、ポリマーは、約2kDa~20kDa、または約2kDa~約10kDa、または約2kDa~約5kDaである。
【0037】
ポリマーは、1つまたは複数の治療剤、診断剤、および/または予防剤がその中に封入されているマイクロ粒子および/またはナノ粒子を形成するために使用することができる。封入および送達される薬剤は、小分子薬剤(例えば、2,000、1500、1,000、750、または500ダルトン未満の分子量を有する非ポリマー性薬剤)、または高分子(例えば、オリゴマーまたはポリマー)、例えば、タンパク質、酵素、ペプチド、核酸などであり得る。粒子は、薬剤のin vivoおよび/またはin vitro送達のために使用することができる。
【0038】
一部の実施形態では、ポリマーは、本明細書でポリプレックスと称されるポリマー性ナノ粒子ポリヌクレオチド担体を形成するために使用することができ、これは、ポリヌクレオチドをin vitroおよびin vivoで細胞に送達するために有効である。
【0039】
肺への送達を含む送達のための改善された性質を有するポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)を開発した。
【0040】
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、構造
【化4】
[式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’(式中、R’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)であり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である]
を含有する。
【0041】
一部の形態では、Zは、Z’と同じである。
【0042】
一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、Oである。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、Oである。
【0043】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0044】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0045】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpは、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0046】
一部の実施形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rは、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルである。一部の形態では、Zも、Oである。
【0047】
一部の形態では、nは、14(例えば、ペンタデカラクトン、PDL)であり、mは、7(例えば、セバシン酸)であり、oおよびpは、2(例えば、N-メチルジエタノールアミン、MDEA)である。
【0048】
一部の形態では、ポリマーは、式II:
【化5】
[式中、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式Iについて上記に記載される通りであり、
およびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式IIにおけるRおよびRは、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである]
の構造を含有する。
【0049】
一部の形態では、Jは、-O-または-NH-である。
【0050】
一部の形態では、Jは、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である。
【0051】
一部の形態では、Rは、Rと同一である。
【0052】
好ましくは、Rおよび/またはRは、直鎖状である。
【0053】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基、および1個または複数のアミン基、好ましくは、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない。
【0054】
一部の形態では、RおよびRの少なくとも1つは、ヒドロキシル基を含有しない。
【0055】
一部の形態では、ポリマーは、式III:
【化6】
[式中、R、R、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式IIについて上記に記載される通りである]
の構造を含有する。
【0056】
特定の実施形態では、x、y、および/またはqの値は、ポリマーの重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、2,000ダルトン超であるようなものである。一部の形態では、ポリマーの重量平均分子量は、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである。
【0057】
ポリマーは、1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)またはトリアミン(ZおよびZ’=NR’)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製することができる。2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミンもしくはアミン-ジオールモノマーが使用される実施形態では、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る。
【0058】
一部の実施形態では、ポリマーは、約2kDa~20kDa、または約2kDa~約10kDa、または約2kDa~約5kDaである。
【0059】
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、1つまたは複数のメッセンジャーリボ核酸がその中に封入されている、ポリプレックス、マイクロ粒子、および/またはナノ粒子を形成するために使用することができる。一部の形態では、ポリプレックスまたは粒子は、Rおよび/またはRが、
【化7】
からなるものではない、またはそれを含まないポリマーから形成される。
【0060】
一部の形態では、ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされたポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)、すなわち、PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)を含有する混合物中にある。
【0061】
一部の形態では、PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、構造
【化8】
[式中、m’およびm’’は、独立して、0または1であるが、ただしm’+m’’は1または2であることを条件とし、
式XIにおけるJおよびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-である]
を含有する。
【0062】
式XIの一部の形態では、Jは、-O-または-NH-である。式XIの一部の形態では、Jは、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である。
【0063】
送達は、ポリマーの選択、ポリマーをポリアルキレングリコールなどの親水性ポリマーと混合することまたはコンジュゲートすること、末端基およびその混合物、ならびに分子量を制御することにより最適化することができる。
【0064】
実施例は、送達の増強、ならびに細胞への直接投与後、注射などによる全身投与後、または肺への投与(肺送達)後の高レベルのトランスフェクションを実証する。PEGと混合またはコンジュゲートされた規定の分子量のPACEは、肺細胞において高レベルのトランスフェクションで、mRNAを含有するポリプレックスを産生し、肺投与後に、他の組織においてほとんど産生されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1-1】図1は、式Iに組み込まれ得るRおよびR基を示す。
図1-2】図1は、式Iに組み込まれ得るRおよびR基を示す。
図2図2は、実施例2に示される方法によって合成された5kDaまたは10kDaのいずれかのMWを有するPACE-COOHおよびPACE-MAEのトランスフェクション効率を示す棒グラフである。統計学的有意性は、スチューデントのt検定によって決定した(次の通り示す:*、P<0.05;***、P<0.001)。
図3-1】図3Aは、10%のPDL含有量、分子量が2kDa、5kDa、10kDa、および20kDaの古典的PACEを使用したMWの効果(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図3Bは、10kDaの古典的PACEポリマーを使用したPDL含有量の効果(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図3Cは、10%のPDL含有量でMWが5kDaの酸性PACEおよび古典的PACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。結果を、二連で実行された3つの独立した実験の平均±SDとして表す。
図3-2】図3Aは、10%のPDL含有量、分子量が2kDa、5kDa、10kDa、および20kDaの古典的PACEを使用したMWの効果(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図3Bは、10kDaの古典的PACEポリマーを使用したPDL含有量の効果(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図3Cは、10%のPDL含有量でMWが5kDaの酸性PACEおよび古典的PACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。結果を、二連で実行された3つの独立した実験の平均±SDとして表す。
図4図4は、発動プロセス(日数での発動時間)の間のaPACEポリマーの重量平均MW(Da)の進化を示す線グラフである(5kDa-下側の線、10kDa-中央の線、20kDa-上側の線)。
図5-1】図5Aは、それぞれのMWについて好ましい発動時間を実証する発動時間(日)に応じたルシフェラーゼmRNAトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す線グラフである(線は、20kDa-0日で下側のデータポイント;10kDa 0日で中央のデータポイント;5kDa-0日で上側のデータポイントとして特定した)。図5Bは、非発動PACE、およびそれらの好ましい発動時間(5kDaのポリマーについて5日、10kDaのポリマーについて10日、および20kDaのポリマーについて30日、**p<0.005)で異なる初期MWの発動PACEを使用したトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図5Cは、mRNA:TransIT複合体(下側の線)と比較した、mRNA:aPACEポリプレックス(5kDa 5日、10kDa 10日、20kDa 30日(上側の線のクラスター))の細胞毒性プロファイル(細胞生存率(%))を示す線グラフである。図5Dは、異なる発動の温度を使用したaPACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)の棒グラフである(**p<0.005)。すべての結果を、二連で実行された3つの独立した実験の平均±SDとして表す。
図5-2】図5Aは、それぞれのMWについて好ましい発動時間を実証する発動時間(日)に応じたルシフェラーゼmRNAトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す線グラフである(線は、20kDa-0日で下側のデータポイント;10kDa 0日で中央のデータポイント;5kDa-0日で上側のデータポイントとして特定した)。図5Bは、非発動PACE、およびそれらの好ましい発動時間(5kDaのポリマーについて5日、10kDaのポリマーについて10日、および20kDaのポリマーについて30日、**p<0.005)で異なる初期MWの発動PACEを使用したトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図5Cは、mRNA:TransIT複合体(下側の線)と比較した、mRNA:aPACEポリプレックス(5kDa 5日、10kDa 10日、20kDa 30日(上側の線のクラスター))の細胞毒性プロファイル(細胞生存率(%))を示す線グラフである。図5Dは、異なる発動の温度を使用したaPACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)の棒グラフである(**p<0.005)。すべての結果を、二連で実行された3つの独立した実験の平均±SDとして表す。
図5-3】図5Aは、それぞれのMWについて好ましい発動時間を実証する発動時間(日)に応じたルシフェラーゼmRNAトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す線グラフである(線は、20kDa-0日で下側のデータポイント;10kDa 0日で中央のデータポイント;5kDa-0日で上側のデータポイントとして特定した)。図5Bは、非発動PACE、およびそれらの好ましい発動時間(5kDaのポリマーについて5日、10kDaのポリマーについて10日、および20kDaのポリマーについて30日、**p<0.005)で異なる初期MWの発動PACEを使用したトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図5Cは、mRNA:TransIT複合体(下側の線)と比較した、mRNA:aPACEポリプレックス(5kDa 5日、10kDa 10日、20kDa 30日(上側の線のクラスター))の細胞毒性プロファイル(細胞生存率(%))を示す線グラフである。図5Dは、異なる発動の温度を使用したaPACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)の棒グラフである(**p<0.005)。すべての結果を、二連で実行された3つの独立した実験の平均±SDとして表す。
図6-1】図6Aは、TransIT、5kDaの非発動PACE、5日間発動した5kDaのaPACE、10kDaの非発動PACE、または10日間発動した10kDaのaPACEを使用したmRNA(合計で20mg)のIV投与6時間後のEPO血中濃度を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(****p<0.0001)。図6Bは、ビヒクル(下側の線)、TransIT(中央の線)、10日間発動した10kDaのaPACE(上側の線)を使用したmRNA(合計20mg)のIV投与後のEPO産生の時間経過を示す線グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(***p<0.001および*p<0.05)。図6C~6Fは、酢酸緩衝液、遊離mRNAまたはmRNA:aPACEポリプレックスのIV投与24時間後および7日後の血液化学(AST(図6C)、ALT(図6D)、尿素(図6D)、クレアチニン(図6F))分析を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SEMとして提示する。
図6-2】図6Aは、TransIT、5kDaの非発動PACE、5日間発動した5kDaのaPACE、10kDaの非発動PACE、または10日間発動した10kDaのaPACEを使用したmRNA(合計で20mg)のIV投与6時間後のEPO血中濃度を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(****p<0.0001)。図6Bは、ビヒクル(下側の線)、TransIT(中央の線)、10日間発動した10kDaのaPACE(上側の線)を使用したmRNA(合計20mg)のIV投与後のEPO産生の時間経過を示す線グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(***p<0.001および*p<0.05)。図6C~6Fは、酢酸緩衝液、遊離mRNAまたはmRNA:aPACEポリプレックスのIV投与24時間後および7日後の血液化学(AST(図6C)、ALT(図6D)、尿素(図6D)、クレアチニン(図6F))分析を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SEMとして提示する。
図6-3】図6Aは、TransIT、5kDaの非発動PACE、5日間発動した5kDaのaPACE、10kDaの非発動PACE、または10日間発動した10kDaのaPACEを使用したmRNA(合計で20mg)のIV投与6時間後のEPO血中濃度を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(****p<0.0001)。図6Bは、ビヒクル(下側の線)、TransIT(中央の線)、10日間発動した10kDaのaPACE(上側の線)を使用したmRNA(合計20mg)のIV投与後のEPO産生の時間経過を示す線グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(***p<0.001および*p<0.05)。図6C~6Fは、酢酸緩衝液、遊離mRNAまたはmRNA:aPACEポリプレックスのIV投与24時間後および7日後の血液化学(AST(図6C)、ALT(図6D)、尿素(図6D)、クレアチニン(図6F))分析を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SEMとして提示する。
図6-4】図6Aは、TransIT、5kDaの非発動PACE、5日間発動した5kDaのaPACE、10kDaの非発動PACE、または10日間発動した10kDaのaPACEを使用したmRNA(合計で20mg)のIV投与6時間後のEPO血中濃度を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(****p<0.0001)。図6Bは、ビヒクル(下側の線)、TransIT(中央の線)、10日間発動した10kDaのaPACE(上側の線)を使用したmRNA(合計20mg)のIV投与後のEPO産生の時間経過を示す線グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(***p<0.001および*p<0.05)。図6C~6Fは、酢酸緩衝液、遊離mRNAまたはmRNA:aPACEポリプレックスのIV投与24時間後および7日後の血液化学(AST(図6C)、ALT(図6D)、尿素(図6D)、クレアチニン(図6F))分析を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SEMとして提示する。
図7図7は、ポリプレックス上のmRNA負荷に対するPACE末端基(番号は実施例5において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。
図8-1】図8Aは、図8B~8Dに示される結果を生じる機構の概略図である。図8Bは、ポリプレックスの細胞取り込みに対するPACE末端基(番号は表1において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。図8Cは、エンドソームエスケープに対するPACE末端基(番号は表1において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。図8Dは、トランスフェクション効率に対するPACE末端基(番号は表1において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。
図8-2】図8Aは、図8B~8Dに示される結果を生じる機構の概略図である。図8Bは、ポリプレックスの細胞取り込みに対するPACE末端基(番号は表1において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。図8Cは、エンドソームエスケープに対するPACE末端基(番号は表1において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。図8Dは、トランスフェクション効率に対するPACE末端基(番号は表1において特定された末端基に対応する)の効果を示す棒グラフである。
図9-1】図9A~9Cは、トランスフェクション効率(fluc活性として表される)、ならびにmRNA負荷(図9A)、取り込み(図9B)、およびエンドソームエスケープ(図9C)を含むトランスフェクションの異なるステップの線形相関を示すプロットである。
図9-2】図9A~9Cは、トランスフェクション効率(fluc活性として表される)、ならびにmRNA負荷(図9A)、取り込み(図9B)、およびエンドソームエスケープ(図9C)を含むトランスフェクションの異なるステップの線形相関を示すプロットである。
図10図10A~10Bは、mRNAポリプレックスのin vitro翻訳速度が、トランスフェクション効率と相関しないことを実証するグラフである。mRNA、ddRLuc-Fc、およびPACEを含有するポリプレックスは、細胞によってエンドサイトーシスされ、次いで、ルシフェラーゼ遺伝子をコードするmRNAが放出され、翻訳される。図10Aは、ルシフェラーゼの発現(expire)の量(log)対翻訳速度(AU)のグラフである。図10Bは、翻訳速度(AU)対封入効率のグラフである。
図11図11は、表1のポリマー2、4、14、15、16、17、20、25、27および31について、pH4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、および6.0でのトランスフェクション効率(パーセント)のグラフである。結果は、異なる末端基を有するPACEポリプレックスについての最適な酢酸ナトリウム緩衝液のpHを実証する。
図12-1】図12Aは、PEGなしと比較するポリプレックスのサイズに対するPEGの効果のグラフである(0.25%のPACE-PEGまたは1%のPACE-PEGのいずれかで時間をわたってサイズの変化なしと比較した経時的な凝集(分)を示す)。図12Bは、PACE-PEGの含有量(%)が0、0.05、01.0、0.25、0.50、および1の関数として、表1のポリマー14、15、16、17、25、27および31についてのトランスフェクション効率(%)のグラフである。図12Cは、同じPACE-PEG混合物のEGFP発現のグラフであり、PEGがEGFP発現を増加させたことを示す。
図12-2】図12Aは、PEGなしと比較するポリプレックスのサイズに対するPEGの効果のグラフである(0.25%のPACE-PEGまたは1%のPACE-PEGのいずれかで時間をわたってサイズの変化なしと比較した経時的な凝集(分)を示す)。図12Bは、PACE-PEGの含有量(%)が0、0.05、01.0、0.25、0.50、および1の関数として、表1のポリマー14、15、16、17、25、27および31についてのトランスフェクション効率(%)のグラフである。図12Cは、同じPACE-PEG混合物のEGFP発現のグラフであり、PEGがEGFP発現を増加させたことを示す。
図13-1】図13Aは、サイズ(nm)および多分散性に対する0%、0.01%、0.1%、1%または10%のDSPE-PEGの有効性のグラフである。図13Bは、表1のポリマー14、15、16、17、25、27および31についてのトランスフェクション効率(%)に対するDSPE-PEG含有量の有効性(effective)のグラフである。図13Cは、EGFP発現に対するDSPE-PEG濃度(0、0.05、0.10、0.25、0.50、1.0、2.5、および5%)の効果のグラフである。
図13-2】図13Aは、サイズ(nm)および多分散性に対する0%、0.01%、0.1%、1%または10%のDSPE-PEGの有効性のグラフである。図13Bは、表1のポリマー14、15、16、17、25、27および31についてのトランスフェクション効率(%)に対するDSPE-PEG含有量の有効性(effective)のグラフである。図13Cは、EGFP発現に対するDSPE-PEG濃度(0、0.05、0.10、0.25、0.50、1.0、2.5、および5%)の効果のグラフである。
図14図14Aおよび14Bは、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、腸について、I.P.注射6時間後(図12A)およびI.V.注射6時間後(図12B)の生物発光分布によって測定されたポリプレックスの体内分布を示すIVIS画像からのデータのプロットである。
図15図15は、肺投与後の生物発光分布によって測定されたポリプレックスの体内分布のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
発明の詳細な説明
I.定義
「ポリプレックス」という用語は、本明細書において使用される場合、典型的には、1つまたは複数のポリヌクレオチドが、その中に封入されている、その内部に分散されている、および/またはその表面と会合している、ポリマー性のマイクロ粒子および/もしくはナノ粒子またはミセルを指す。
【0067】
粒子という用語は、マイクロスフェア、マイクロカプセル、マイクロ粒子、ナノスフェア、ナノカプセル、およびナノ粒子を含む。「マイクロ粒子」という用語は、すべてが約1000ミクロン未満の平均の寸法を有するマイクロスフェアおよびマイクロカプセルを含む。マイクロ粒子は、球状または非球状であってもよく、任意の規則的なまたは不規則な形状を有していてもよい。構造が、直径が約1ミクロン(1000nm)未満である場合、「ナノスフェア」、「ナノカプセル」、および「ナノ粒子」という対応する当技術分野で認識されている用語が利用され得る。ある特定の実施形態では、ナノスフェア、ナノカプセルおよびナノ粒子の集団は、約500nm、200nm、100nm、50nm、10nm、または1nmの平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子の平均直径は、約200nm~約600nm、好ましくは、約200~約500nmである。「直径」という用語は、本明細書では、物理的直径または流体力学的直径のいずれかを指すために使用される。本質的に球状の粒子の直径は、物理的直径または流体力学的直径を指し得る。非球状粒子の直径は、流体力学的直径を優先的に指し得る。本明細書で使用される場合、非球状粒子の直径は、粒子の表面上の2点間の最大直線距離を指し得る。複数の粒子を指す場合、粒子の直径は、典型的には、粒子の平均直径を指す。粒子直径は、限定されるものではないが動的光散乱を含む、当技術分野における各種の技法を使用して測定することができる。
【0068】
本明細書で一般的に使用される場合、「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または合理的な利益/リスク比に見合った他の問題もしくは合併症なく、ヒトおよび動物の組織、臓器、および/または体液と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0069】
「生体適合性」という用語は、本明細書で使用される場合、それら自体が宿主(例えば、動物またはヒト)に対して毒性でもなく、宿主において毒性濃度でモノマー性もしくはオリゴマー性サブユニットまたは他の副産物を生成する速度で分解もしない(材料が分解する場合)、1つまたは複数の材料を指す。
【0070】
「生分解性」という用語は、本明細書で使用される場合、材料が、その構成要素サブユニットに、または例えば、より小さな(例えば、非ポリマー性)サブユニットへの材料の生化学的プロセスによる消化で、分解または破壊されることを意味する。
【0071】
「持続放出」は、本明細書で使用される場合、物質の全量が一度に生物学的に利用可能にされるボーラス型投与とは対照的に、長期間にわたる物質の放出を指す。
【0072】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、当技術分野で認識されている用語であり、注射などの経腸および局所投与以外の投与の様式を含み、限定されないが、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内および胸骨内(intrastemal)の注射および注入が挙げられる。
【0073】
「界面活性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、液体の表面張力を低下させる薬剤を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「一過性」は、数時間、数日または数週間の期間にわたる非組み込み導入遺伝子の発現を指し、発現の期間は、ゲノムに組み込まれるか、または宿主細胞における安定なプラスミドレプリコン内に含有される場合の遺伝子の発現のための期間よりも短い。
【0075】
本明細書で使用される場合、「プロモーター部位」はDavanloo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:2035-39 (1984)によって記載されるバクテリオファージから、または別の供給源から元々は単離されたDNA依存性RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼが、Chamberlin, et al., Nature, 228:227-231 (1970)によって記載されるように、高い特異性で結合するヌクレオチドの配列である。
【0076】
本明細書で使用される場合、「ポリ(A)」は、ポリアデニル化によってmRNAに付着した一連のアデノシンである。一過性発現のための構築物の好ましい実施形態では、ポリAは、50~5000、好ましくは、64超、より好ましくは、100超、最も好ましくは、300または400超である。ポリ(A)配列は、局在化、安定性、または翻訳の効率などのmRNA機能性をモジュレートするために、化学的にまたは酵素的に改変することができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、ポリペプチドまたはタンパク質を潜在的にコードし得る塩基の配列を含有する一連のヌクレオチドである。オープンリーディングフレームは、開始コード配列(開始コドン(initiation codonまたはstart codon))および終止コドン配列(終結コドン)の間に位置する。
【0078】
「構築物」という用語は、1つまたは複数の単離されたポリヌクレオチド配列を有する組換え遺伝子分子を指す。
【0079】
「発現制御配列」という用語は、別の核酸配列の転写および/または翻訳を制御および調節する核酸配列を指す。原核生物に好適な制御配列としては、例えば、プロモーター、必要に応じて、オペレーター配列、リボソーム結合部位などが挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが公知である。
【0080】
「遺伝子」という用語は、その鋳型またはメッセンジャーRNAを通して、特定のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に特徴的なアミノ酸の配列をコードするDNA配列を指す。「遺伝子」という用語は、RNA産物をコードするDNA配列も指す。遺伝子という用語は、ゲノムDNAに関して本明細書で使用される場合、介在する非コード領域および調節領域を含み、5’末端および3’末端を含むことができる。
【0081】
ポリペプチドという用語は、タンパク質およびその断片を含む。ポリペプチドは、それらが、「異種」である、すなわち、細菌細胞によって産生されるヒトポリペプチドなどの利用される宿主細胞に対して外来性であることを意味する「外因性」であり得る。ポリペプチドは、アミノ酸として含有する。アミノ酸配列は、アミノ末端からカルボキシ末端への方向で左から右に書かれ、次の通り示される3文字または1文字のコードのいずれかによって表される:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、 E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、およびバリン(Val、V)。
【0082】
「バリアント」は、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとは異なるが、必須の性質を保持するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。ポリペプチドの典型的なバリアントは、アミノ酸配列において、別の参照ポリペプチドとは異なる。一般に、参照ポリペプチドおよびバリアントの配列が全体的に密接に類似し、多くの領域において同一であるように、相違は限定的である。バリアントおよび参照ポリペプチドは、1つまたは複数の改変(例えば、置換、付加、および/または欠失)によってアミノ酸配列において異なっていてもよい。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよく、またはそうでなくてもよい。ポリペプチドのバリアントは、対立遺伝子バリアントなどの天然に存在するものであってもよく、またはこれは、天然に生じることが知られていないバリアントであってもよい。
【0083】
改変および変化は、ポリペプチドの特徴を有意に変更しないポリペプチドの構造において行うことができる(例えば、保存的アミノ酸置換)。例えば、ある特定のアミノ酸は、活性の明らかな喪失なく、配列中の他のアミノ酸と置換することができる。そのポリペプチドの生物学的機能活性を定義するのはポリペプチドの相互作用能力および特質であるので、ある特定のアミノ酸配列の置換は、ポリペプチド配列中で行い、それにもかかわらず同様の性質を有するポリペプチドを得ることができる。そのような変化を行う際に、アミノ酸のヒドロパシー指数を考慮することができる。ポリペプチドにおける相互作用的な生物学的機能を付与する際のヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている。ある特定のアミノ酸は、類似のヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸と置換することができ、依然として、類似の生物活性を有するポリペプチドをもたらすことが公知である。同様のアミノ酸の置換は、特に、それによって作出される生物学的に機能的等価なポリペプチドまたはペプチドが、免疫学的実施形態における使用について意図される場合に、親水性に基づいて行うこともできる。アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、およびサイズに基づく。
【0084】
「ラクトン」および「ラクトン単位」という用語は、環状エステルを含む化合物、または環状エステルにおけるエステル結合の切断から生じる鎖式化学構造を記載するために使用される。例えば、ラクトンは、下記に示される環状エステル、および対応するラクトン由来鎖式構造:
【化9】
[nは、整数である]
を記載するために使用される。鎖式構造は、限定されるものではないが、加溶媒分解、例えば、加水分解、および酵素的切断を含む、当技術分野において公知の方法を経て形成される。
【0085】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族基のラジカルを指し、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。
【0086】
好ましい実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格中に30個またはそれよりも少ない炭素原子(例えば、直鎖についてC~C30、分枝鎖についてC~C30)、好ましくは、20個またはそれよりも少ない、より好ましくは、15個またはそれよりも少ない、最も好ましくは、10個またはそれよりも少ない炭素原子を有する。1~30の間の骨格炭素原子の数のすべての整数値が、直鎖または分枝鎖アルキルについて企図され、開示される。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造中に3~10個の炭素原子を有し、より好ましくは、環構造中に5、6、または7個の炭素を有する。3~10の間の環炭素原子の数のすべての整数値が、シクロアルキルについて企図され、開示される。
【0087】
「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、本明細書、実施例、および特許請求の範囲の全体にわたって使用される場合、「無置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、その後者は、炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の水素を置き換える1個または複数の置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられる。
【0088】
炭素の数が他に明示されない限り、「低級アルキル」は、本明細書で使用される場合、上記で定義されるアルキル基を意味するが、その骨格構造中に1~10個の炭素、より好ましくは、1~6個の炭素原子を有する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、類似の鎖長を有する。本出願全体にわたって、好ましいアルキル基は、低級アルキルである。好ましい実施形態では、本明細書でアルキルとして指定される置換基は、低級アルキルである。
【0089】
炭化水素鎖上で置換される部分は、適切である場合、それら自体が置換され得ることが当業者に理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF、-CN等が挙げられ得る。シクロアルキルも同じ様式で置換され得る。
【0090】
「アリール」は、本明細書で使用される場合、C~C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、または二複素環式(bihetereocyclic)の環系を指す。一部の形態では、環系は、3~50個の炭素原子を有する。広義の「アリール」は、本明細書で使用される場合、0~4個のヘテロ原子を含み得る5、6、7、8、9、10および24員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ピレン、コランニュレン、コロネン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。環構造中にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「アリール複素環」または「複素芳香族」とも称され得る。芳香環は、1つまたは複数の環位置で、限定されるものではないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(または4級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族部分、-CF、-CN;およびそれらの組合せを含む1個または複数の置換基で置換され得る。
【0091】
「アリール」という用語は、2個またはそれよりも多くの炭素が2つの隣接する環と共通である2つまたはそれよりも多くの環式環を有する多環式環系(すなわち、「縮合環」)も含み、ここで、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環式環または環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/または複素環であり得る。複素環式環の例としては、限定されるものではないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシンドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。環の1つまたは複数は、「アリール」について上記で定義されたように、置換され得る。
【0092】
「アルコキシ」は、酸素架橋を通して付着した示された炭素原子の数を有する上記で定義されたアルキル基を指す。アルコキシの例としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0093】
第一級アミンは、アンモニア中の3個の水素原子のうちの1個が置換もしくは無置換アルキル基または置換もしくは無置換アリール基によって置き換えられる場合に生じる。第二級アミンは、1個の水素と一緒に、窒素に結合した2個の有機置換基(置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換アリール、またはそれらの組合せ)を有する。第三級アミンでは、窒素は3個の有機置換基を有する。
【0094】
「置換された」は、本明細書で使用される場合、モノマー上の1個もしくは複数の原子または原子の群が、置き換えられる原子または原子の群とは異なる1個もしくは複数の原子または原子の群で置き換えられていることを意味する。一部の実施形態では、モノマー上の1個または複数の水素は、1個または複数の原子または原子の群で置き換えられる。水素を置き換えることができる官能基の例は、定義において上記に列挙されている。一部の実施形態では、得られるモノマー/ポリマーの化学的および/または物理的性質、例えば、電荷または親水性/疎水性などを変える1個または複数の官能基を付加することができる。例示的な置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ニトロ、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられる。
【0095】
II.ポリマー
ポリ(アミン-co-エステル)、ポリ(アミン-co-アミド)、またはそれらの組合せを含むポリマー、ならびにそれらから形成されるポリプレックスおよび固体コア粒子。ポリ(アミン-co-エステル)は、WO2013/082529号、WO2017/151623号、WO2017/197128号、米国公開出願第2016/0251477号、米国公開出願第2015/0073041号、および米国特許第9,272,043号で議論されている。
【0096】
遺伝子材料を送達するために使用される場合、ポリマーのトランスフェクション効率は、ポリマー上の末端基に強く依存する。ポリマー中のジエステルモノマーをセバシン酸などの二酸で置換すると、ヒドロキシルおよびカルボキシル末端基の混合物を有するポリマーを得ることができる。これらの2個の末端基は両方とも、1,1’-カルボジイミダゾールで活性化することができる。活性化された生成物は、アミン含有分子と反応して、新しい末端基を有するポリマーを生じることができる。
【0097】
ポリマーをさらに加水分解して、-OHおよび-COOHなどのより活性な末端基を放出することができ、これらは両方とも、典型的には、ポリマーを、例えば制御温度(例えば、37℃または100℃)で、数日間または数週間インキュベートすることによる、ポリマー中のエステル結合の加水分解(本明細書では「発動」とも称される)に由来し得る。一部の実施形態では、ポリマーは、加水分解されず、したがって「非発動」と称され得る。
【0098】
一部の実施形態では、ポリマー中の疎水性モノマーの含有量は、ポリプレックスを形成するために使用される場合の同じ疎水性モノマーの含有量と比べて、増加される。ポリマー中の疎水性モノマーの含有量を増加させると、RNAを含む核酸の存在下で固体コアナノ粒子を形成することができるポリマーが形成される。
【0099】
ポリプレックスとは異なって、これらの粒子は、緩衝水または血清中でのインキュベーションの間、または動物への投与(例えば、注射)の際に、長期間安定である。それらはまた、長期の活性(例えば、siRNA媒介ノックダウン)をもたらす核酸(例えば、siRNA)の持続放出を提供する。
【0100】
A.ポリマー構造
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、式I:
【化10】
[式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’(式中、R’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)であり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である]
として示される構造を有する。
【0101】
およびR’基の例としては、限定されるものではないが、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体および異性体、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、キシリルなどが挙げられる。
【0102】
特定の実施形態では、x、y、および/またはqの値は、ポリマーの重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、2,000ダルトン超であるようなものである。一部の形態では、ポリマーの重量平均分子量は、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである。
【0103】
ポリマーは、1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)、トリアミン(ZおよびZ’=NR’)、またはヒドロキシ-ジアミン(Z=OかつZ’=NR’、またはZ=NR’かつZ’=O)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製することができる。2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミン、アミン-ジオール、もしくはヒドロキシ-ジアミンモノマーが使用される実施形態では、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る。
【0104】
一部の形態では、ラクトン単位の組成パーセントは、約10%~約100%であり、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される。モル比に関して表すと、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)含有量は、約0.1~約1、すなわち、x/(x+q)は約0.1~約1である。好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は約10~約24であり、より好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は約12~約16である。最も好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は、12(ドデカラクトン)、15(ペンタデカラクトン)、または16(ヘキサデカラクトン)である。一部の形態では、Zは、Z’と同じである。
【0105】
一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、Oである。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、Oである。
【0106】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0107】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0108】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpは、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0109】
一部の実施形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rは、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルである。一部の形態では、Zも、Oである。
【0110】
一部の形態では、nは、14(例えば、ペンタデカラクトン、PDL)であり、mは、7(例えば、セバシン酸)であり、oおよびpは、2(例えば、N-メチルジエタノールアミン、MDEA)である。
【0111】
一部の実施形態では、ポリプレックスまたは粒子は、R1および/またはR2が、対応するポリプレックスに関連しないポリマーから形成され、ここで、R1および/またはR2は、
【化11】
からなる、またはそれを含む。
【0112】
一部の実施形態では、ポリマーから形成されるポリプレックスまたは粒子は、R1および/またはR2が、
【化12】
からなる、またはそれを含む対応するポリプレックスと比べて、核酸カーゴ、例えば、RNA、より詳細には、mRNAの、改善された負荷、改善された細胞トランスフェクション、改善された細胞内エンドソーム放出、またはそれらの組合せを示す。
【0113】
一部の形態では、ポリマーは、式IIの構造を有する。
【化13】
[式中、JおよびJは、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、
およびRは、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである]一部の形態では、R、R、またはその両方の分子量は、500ダルトンもしくはそれ未満、200ダルトンもしくはそれ未満、または100ダルトンもしくはそれ未満である。
【0114】
一部の形態では、Jは、-O-または-NH-である。
【0115】
一部の形態では、Jは、-C(O)NH-または-C(O)O-である。
【0116】
一部の形態では、Rは、Rと同一である。
【0117】
好ましくは、Rおよび/またはRは、直鎖状である。
【0118】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、第一級アミン基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、第一級アミン基、および1個または複数の第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。
【0119】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基、および1個または複数のアミン基、好ましくは、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない。
【0120】
一部の形態では、RおよびRの少なくとも1つは、ヒドロキシル基を含有しない。
【0121】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、-無置換C~C10アルキレン-Aq-無置換C~C10アルキレン-Bq、-無置換C~C10アルキレン-Aq-置換C~C10アルキレン-Bq、-置換C~C10アルキレン-Aq-無置換C~C10アルキレン-Bq、または-置換C~C10アルキレン-Aq-置換C~C10アルキレン-Bq(式中、Aqは、存在しないかまたは-NR-であり、Bqは、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンであり、Rは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)である。
【0122】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、図1に示される基から選択される。
【0123】
一部の形態では、ポリマーは、式IIIの構造を有する。
【化14】
【0124】
モノマー単位は、1つまたは複数の位置で、1個または複数の置換基により置換することができる。例示的な置換基としては、限定されるものではないが、アルキル基、環状アルキル基、アルケン基、環状アルケン基、アルキン、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ニトロ、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられる。
【0125】
ポリマーは、生体適合性である。さまざまな環のサイズの容易に利用可能なラクトンは、低い毒性を持つことが公知であり、例えば、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(p-ジオキサノン)などの小さなラクトンから調製されたポリエステルは、臨床適用において使用されている市販の生体材料である。大きな(例えば、C16~C24)ラクトンおよびそれらのポリエステル誘導体は、ハチなどの生物において特定されている天然産物である。16~24個の環炭素原子を含有するラクトンが、具体的に企図され、開示される。
【0126】
一部の形態では、ポリマーは、温度制御された加水分解を経てさらに活性化され、それによって、1個または複数の活性化された末端基を露出させることができる。1個または複数の活性化された末端基は、例えば、ヒドロキシルまたはカルボン酸末端基であり得、これらは両方とも、ポリマー内のエステル結合の加水分解を経て生じ得る。活性化されたポリマーは、約5~25kDa、好ましくは、約5~10kDaの重量平均分子量を有することができる。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、許容されるパラメーター内のわずかな変動を意味する。明確性のために、「約」は、所与の値の±10%を指す。一部の形態では、活性化されたポリマーは、一方の末端にRまたはR、他方の末端にヒドロキシルまたはカルボン酸末端基を含有し、加水分解を介して生じる。
【0127】
一部の形態では、ポリマーは、式IVの構造を有する。
【化15】
【0128】
一部の形態では、ポリマーは、式Vの構造を有する。
【化16】
【0129】
一部の形態では、ポリマーは、式VIの構造を有する。
【化17】
[式中、X’は、-OHまたは-NHR’である]
【0130】
式VI、V、およびVIは、中間生成物の構造である。それらは、式I、IIまたはIIIの構造を有する多種多様なポリマーを合成するために使用することができる。
【0131】
肺への送達を含む送達のための改善された性質を有するポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)を開発した。
【0132】
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、構造
【化18】
[式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’(式中、R’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)であり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である]
を含有する。
【0133】
一部の形態では、Zは、Z’と同じである。
【0134】
一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、Oである。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、Oである。
【0135】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0136】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0137】
一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpは、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0138】
一部の実施形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rは、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルである。一部の形態では、Zも、Oである。
【0139】
一部の形態では、nは、14(例えば、ペンタデカラクトン、PDL)であり、mは、7(例えば、セバシン酸)であり、oおよびpは、2(例えば、N-メチルジエタノールアミン、MDEA)である。
【0140】
一部の形態では、ポリマーは、式II:
【化19】
[式中、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式Iについて上記に記載される通りであり、
およびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式IIにおけるRおよびRは、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである]
の構造を含有する。
【0141】
一部の形態では、Jは、-O-または-NH-である。
【0142】
一部の形態では、Jは、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である。
【0143】
一部の形態では、Rは、Rと同一である。
【0144】
好ましくは、Rおよび/またはRは、直鎖状である。
【0145】
一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基、および1個または複数のアミン基、好ましくは、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。一部の形態では、R、R、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない。
【0146】
一部の形態では、RおよびRの少なくとも1つは、ヒドロキシル基を含有しない。
【0147】
一部の形態では、ポリマーは、式III:
【化20】
[式中、R、R、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式IIについて上記に記載される通りである]
の構造を含有する。
【0148】
特定の実施形態では、x、y、および/またはqの値は、ポリマーの重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、2,000ダルトン超であるようなものである。一部の形態では、ポリマーの重量平均分子量は、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである。
【0149】
ポリマーは、1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)またはトリアミン(ZおよびZ’=NR’)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製することができる。2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミンもしくはアミン-ジオールモノマーが使用される実施形態では、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る。
【0150】
一部の実施形態では、ポリマーは、約2kDa~20kDa、または約2kDa~約10kDa、または約2kDa~約5kDaである。
【0151】
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、1つまたは複数のメッセンジャーリボ核酸がその中に封入されている、ポリプレックス、マイクロ粒子および/またはナノ粒子を形成するために使用することができる。一部の形態では、ポリプレックスまたは粒子は、Rおよび/またはRが、
【化21】
からなるものではない、またはそれを含まないポリマーから形成される。
【0152】
一部の形態では、ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされたポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)、すなわち、PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)を含有する混合物中にある。
【0153】
一部の形態では、PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、構造
【化22】
[式中、m’およびm’’は、独立して、0または1であるが、ただしm’+m’’は1または2であることを条件とし、
式XIにおけるJおよびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-である]
を含有する。
【0154】
式XIの一部の形態では、Jは、-O-または-NH-である。式XIの一部の形態では、Jは、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である。
【0155】
B.ポリマーを作製する方法
ポリマーは、一般に、合成ポリマーから改変される。例示的な合成ポリマーとしては、ラクトン、ジアルキル酸、およびジアルキルアミンから形成されるポリ(アミン-co-エステル)が挙げられる。リパーゼなどの酵素触媒を使用するラクトン、ジアルキル酸、およびジアルキルアミンからのポリ(アミン-co-エステル)の合成のための方法も提供する。例示的なラクトンは、米国特許公開第20170121454号に開示されている。一部の形態では、ポリ(アミン-co-エステル)は、スキーム1に示すようにして調製される。
スキーム1:未改変ポリ(アミン-co-エステル)の調製
【化23】
【0156】
モノマーのモル比(例えば、ラクトン:アミノジオール:二酸)は、例えば、約10:90:90~約90:10:10で変わり得る。一部の実施形態では、比は、10:90:90、20:80:80、40:60:60、60:40:40、または80:20:20である。重量平均分子量は、狭い多分散性ポリスチレン標準を使用するGPCによって決定される場合、例えば、約2,000ダルトン~約50,000ダルトン、好ましくは、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5000ダルトン~約20,000ダルトン、最も好ましくは、約5000ダルトン~約10,000ダルトンで変わり得る。
【0157】
ポリマーの疎水性は、ラクトンのパーセンテージを、例えば、約10%~約100%(ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される)で変えることによって調整することができる。ポリマーの分子量は、第2段階の反応時間、例えば、約8時間~約72時間を調整することによって、調整することができる。
【0158】
酵素法は、多様な鎖構造および調整可能な疎水性を有するポリマーの合成を可能にする。一部の実施形態では、疎水性は、ラクトンモノマーの環サイズおよび/またはモル量を変えることによって変わる。広範囲の環サイズを有するラクトン(例:C~C24、好ましくは、C~C24、より好ましくは、C~C16)をコモノマーとして使用することができる。反応は、アミノ基の保護および脱保護なしで単一ステップで行うことができる。そのようなアミノ保有コポリエステルは、従来の有機金属触媒が、有機アミンに感受性であるか、またはそれによって不活性化する場合が多いので、そのような触媒を使用して調製することは極めて困難である。これらの触媒は、大きなラクトン環モノマーを重合するのに非効率的であることも公知である。酵素触媒は、酵素の高い活性および選択性、ならびに得られる金属を含まない高純度の生成物により、生物医学ポリマーを生成することについての明確な利点を有する。
【0159】
式IV、V、またはVIの構造を有するポリマーは、式VIIの未改変ポリマーを1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と、約1:10~約1:60、好ましくは、約1:40のモル比で反応させることを介して合成することができる。
【0160】
式IまたはIIの構造を有するポリマーは、当技術分野において公知のカップリング反応を使用する式VIIの未改変ポリマーの末端基の改変を介して得ることができる。例えば、式IIIの構造を有するポリマーは、(1)式VIIの未改変ポリマーをCDIと反応させて、式IVのポリマーを得るステップ、および(2)式IVのポリマーをR-NHおよびR-NHと反応させるステップを介して合成することができる。一部の形態では、R、R、またはその両方は、図1に示されるものから選択される。好ましくは、RおよびRは、同じである。
【0161】
あるいは、式IIIの構造を有するポリマーは、(1)式VIIの未改変ポリマーをCDIと反応させて、式VまたはVIのポリマーを得るステップ、(2)ステップ(1)からのポリマー中の-COOH基または-X’基を保護するステップ、(3)ステップ(2)からの保護されたポリマーをR-NHまたはR-NHと反応させるステップ、(4)ステップ(3)からのポリマー中の-COOH基または-X’基を脱保護するステップ、および(5)ステップ(4)からの脱保護されたポリマーをR-NHまたはR-NHと反応させるステップを介して合成することができる。
【0162】
式I、II、またはIIIのポリマーの加水分解媒介活性化は、最大で30日間またはそれよりも長く、温度制御された様式で行うことができる。加水分解の長さは、活性化されるポリマーの分子量に応じて変わり得る。より大きい分子量のポリマー(例えば、約20~25kDa)は、より長い期間、例えば、約30~40日間、最適に加水分解される。より小さな分子量のポリマー(例えば、約5~7kDa)は、より短い期間、例えば、約4~10日間、最適に加水分解される。
【0163】
一部の形態では、ポリマーは、約30℃~42℃、または最高で約100℃の範囲のいずれかの温度で加水分解される。PACEポリマーは、約35℃~40℃、例えば、約37℃の温度で加水分解することができる。
【0164】
一部の形態では、ポリマーは、例えば、約1atmで加水分解される。より高い圧力は、プロセスを加速する(例えば、約1~約100atmの圧力)。プロセスについての速度は、作製される特定の製剤について、当業者によって決定されるであろう。
【0165】
得られる加水分解生成物の重量平均分子量は、約5kDa~約25kDa、好ましくは、約5~約10kDaで変わり得る。
【0166】
好ましくは、ポリマー中のエステル結合の1つまたは複数が加水分解される。加水分解生成物は、一方の末端にRまたはR、他方の末端に加水分解を介して生じたカルボキシルまたはヒドロキシル基を有し得る。
【0167】
PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)は、(i)ラクトン、(ii)二酸/ジエステル、ならびに(iii)アミンジオールおよび/またはトリアミンに加えて、末端カルボキシル、ヒドロキシル、またはアミン基を含有するPEGを反応物に添加することができることを除いて、スキーム1に記載された条件と類似の条件下で合成することができる。
【0168】
III.ポリマーから形成されるマイクロ粒子
ポリマーは、1つまたは複数の治療剤、診断剤、または予防剤がその中に封入されているマイクロ粒子および/またはナノ粒子を調製するために使用することができる。薬剤は、粒子内に封入され、粒子を形成するポリマーマトリックス内に分散され、粒子の表面に共有結合的にもしくは非共有結合的に会合するか、またはそれらの組合せであり得る。
【0169】
他の実施形態では、ポリマーは、生体適合性および生分解性である。粒子によって封入されたおよび/または粒子に会合した核酸は、ポリマーマトリックスの拡散および分解を含む異なる機構を通して放出され得る。放出の速度は、ポリマーのモノマー組成、したがって分解の速度を変えることによって制御することができる。例えば、単純な加水分解が分解の主な機構である場合、ポリマーの疎水性を増加させると、分解の速度が遅くなり、したがって、放出の期間が増加し得る。すべての場合に、ポリマー組成は、有効量の核酸が放出されて、所望の目的/結果を達成するように選択される。
【0170】
ポリマーを使用して、各種の治療剤、予防剤または診断剤のいずれかを、封入し、それと混合し、またはイオン的にもしくは共有結合的にカップリングさせることができる。多種多様な生物学的に活性な材料を、ポリマーによる部位への送達のために、または生体接着、細胞付着、細胞成長の増強、細菌成長の阻害、および血餅形成の防止など、ポリマーに性質を付与するために、封入または組み込むことができる。
【0171】
一部の形態では、封入および送達される薬剤は、小分子薬剤(すなわち、2,000、1500、1,000、750、または500ダルトン未満の分子量を有する非ポリマー性薬剤)、または高分子(例えば、オリゴマーまたはポリマー)、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸などであり得る。好適な小分子活性薬剤としては、有機化合物、無機化合物、および/または有機金属化合物が挙げられる。粒子は、薬剤のin vivoおよび/またはin vitro送達のために使用することができる。
【0172】
好適な治療剤および予防剤の例としては、合成無機化合物および合成有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖および他の糖、脂質、ならびに治療的、予防的または診断的活性を有するDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列としては、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。例えば、1モルあたり100~500,000グラムまたはそれよりも多くの、広範囲の分子量を有する化合物を封入することができる。好適な材料の例としては、抗体、受容体リガンド、および酵素などのタンパク質、接着ペプチドなどのペプチド、糖および多糖、合成有機薬物または合成無機薬物、ならびに核酸が挙げられる。封入することができる材料の例としては、酵素、血液凝固因子、ストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子などの阻害剤または血餅溶解剤;免疫化のための抗原;ホルモンおよび増殖因子;ヘパリンなどの多糖;アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムなどのオリゴヌクレオチド、ならびに遺伝子治療における使用のためのレトロウイルスベクターが挙げられる。ポリマーは、細胞および組織を封入するために使用することもできる。
【0173】
粒子に組み込まれ得る例示的な治療剤としては、限定されるものではないが、腫瘍抗原、CD4+T細胞エピトープ、サイトカイン、化学療法剤、放射性核種、小分子シグナル伝達阻害剤、光熱アンテナ(photothermal antenna)、モノクローナル抗体、免疫学的危険シグナル伝達分子(immunologic danger signaling molecule)、他の免疫治療薬、酵素、抗生物質、抗ウイルス薬(特に、HIVまたはB型肝炎もしくはC型肝炎の処置のためのプロテアーゼ阻害剤単独またはヌクレオシドとの組合せ)、抗寄生生物薬(蠕虫、原虫)、増殖因子、成長阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗体およびその生理活性断片(ヒト化抗体、一本鎖抗体、およびキメラ抗体を含む)、抗原およびワクチン製剤(アジュバントを含む)、ペプチド薬、抗炎症薬、免疫調節薬(自然免疫系を活性化するトール様受容体に結合するリガンド、適応免疫系を動員および最適化する分子、細胞傷害性Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞およびヘルパーT細胞の作用を活性化または上方調節する分子、ならびにサプレッサーまたは調節性T細胞を不活性化または下方調節する分子を含む)、細胞(樹状細胞および他の抗原提示細胞を含む)への粒子の取り込みを促進する薬剤、ビタミンなどの栄養補助食品、およびオリゴヌクレオチド薬(DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、低分子干渉RNA、リボザイム、リボヌクレアーゼPの外部ガイド配列、および三重鎖形成剤を含む)が挙げられる。
【0174】
代表的な抗がん剤としては、限定されるものではないが、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシルおよびイホスファミド)、代謝拮抗薬(例えば、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、フルダラビン、およびフロクスウリジン)、有糸分裂阻害薬(タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル(decetaxel)、ならびにビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンを含む)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、およびエピルビシン、ならびにアクチノマイシン、例えば、アクチノマイシンDを含む)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシン、およびブレオマイシンを含む)、トポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン、例えば、カンプトテシン、イリノテカン、およびトポテカン、ならびにエピポドフィロトキシンの誘導体、例えば、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドを含む)、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、他の抗VEGF化合物;サリドマイド(THALOMID(登録商標))およびその誘導体、例えば、レナリドミド(REVLIMID(登録商標));エンドスタチン;アンジオスタチン;受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、パゾパニブ、アキシチニブ、およびラパチニブ;トランスフォーミング増殖因子αまたはトランスフォーミング増殖因子β阻害剤、ならびに上皮増殖因子受容体に対する抗体、例えば、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))およびセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))が挙げられる。
【0175】
例示的な免疫調節剤としては、サイトカイン、キサンチン、インターロイキン、インターフェロン、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、増殖因子(例えば、TNF、CSF、GM-CSFおよびG-CSF)、ホルモン、例えば、エストロゲン(ジエチルスチルベストロール、エストラジオール)、アンドロゲン(テストステロン、HALOTESTIN(登録商標)(フルオキシメステロン))、プロゲスチン(MEGACE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、PROVERA(登録商標)(酢酸メドロキシプロゲステロン))、およびコルチコステロイド(プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)が挙げられる。
【0176】
粒子と会合することができる免疫学的アジュバントの例としては、限定されるものではないが、TLRリガンド、C型レクチン受容体リガンド、NOD様受容体リガンド、RLRリガンド、およびRAGEリガンドが挙げられる。TLRリガンドとしては、リポ多糖(LPS)およびその誘導体、ならびにリピドAおよびその誘導体、例えば、限定されるものではないが、モノホスホリルリピドA(MPL)、グリコピラノシルリピドA、PET-リピドA、および3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドAが挙げられ得る。
【0177】
粒子は、抗原および/またはアジュバント(すなわち、免疫応答を増強する分子)も含み得る。ペプチド、タンパク質、およびDNAに基づくワクチンを使用して、さまざまな疾患または状態に対する免疫を誘導し得る。細胞性免疫は、ウイルス感染細胞を検出および破壊するために必要である。ほとんどの従来のワクチン(例えば、タンパク質に基づくワクチン)は、体液性免疫のみを誘導することができる。DNAに基づくワクチンは、体液性免疫および細胞性免疫の両方を誘導することができるので、DNAに基づくワクチンは、ウイルスまたは寄生生物に対してワクチン接種するための固有の手段となる。加えて、DNAに基づくワクチンは、従来のワクチンよりも潜在的に安全である。DNAワクチンは、製造および貯蔵のために、相対的により安定で、より対費用効果が高い。DNAワクチンは、2つの主要な構成要素-DNA担体(または送達ビヒクル)および抗原をコードするDNA-からなる。DNA担体は、DNAを分解から保護し、特定の組織または細胞へのDNAの侵入および効率的なレベルでの発現を促進することができる。
【0178】
代表的な診断剤は、X線、蛍光、磁気共鳴画像法、放射能、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)および陽電子放射断層撮影(PET)によって検出可能な薬剤である。超音波造影剤は、典型的には、ガス、例えば、空気、酸素、またはパーフルオロカーボンである。例示的な診断剤としては、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種、ならびにX線イメージング剤が挙げられる。
【0179】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して生成される粒子は、80%未満、75%未満、70%未満、60%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満の薬剤を含有する。一部の実施形態では、薬剤は、薬学的に活性な薬剤の混合物であってもよい。負荷パーセントは、封入される薬剤、粒子を調製するために使用されるポリマー、および粒子を調製するために使用される方法を含む各種の要因に依存する。
【0180】
粒子は、薬物の制御放出を提供し得る。例えば、未変更粒子は、粒子を形成する薬物の拡散の速度および/またはポリマーの分解の速度に基づいて、経時的に、有効量の薬物の放出を提供し得る。ポリマー組成物は、ポリマーの分解挙動、およびしたがって送達される薬剤の放出速度/時間を操作するために変えることができる。あるいは、粒子は、送達される1種または複数の薬剤の持続放出または遅延放出などの制御放出を提供するために、1つまたは複数の材料でコーティングすることができる。
【0181】
持続放出および遅延放出材料は、当技術分野において周知である。リパーゼによって加水分解される脂肪酸の固体エステルは、マイクロ粒子または薬物粒子に噴霧コーティングすることができる。ゼインは、天然の水不溶性タンパク質の例である。これは、噴霧コーティングによって、または湿式造粒技法によって、薬物含有マイクロ粒子または薬物粒子上にコーティングすることができる。天然の水不溶性材料に加えて、消化酵素の一部の基質は、架橋手順で処理することができ、不溶性ネットワークの形成をもたらす。化学的および物理的手段の両方によって開始されるタンパク質を架橋する多くの方法が報告されている。架橋を得るための最も一般的な方法の1つは、化学架橋剤の使用である。化学架橋剤の例としては、アルデヒド(グルテルアルデヒドおよびホルムアルデヒド)、エポキシ化合物、カルボジイミド、およびゲニピンが挙げられる。これらの架橋剤に加えて、酸化糖および天然糖が、ゼラチンを架橋するために使用されている。架橋はまた、酵素的手段を使用して達成され得、例えば、トランスグルタミナーゼは、海産物を架橋するためのGRAS物質として承認されている。最後に、架橋は、熱処理、UV照射およびガンマ線照射などの物理的手段によって開始することができる。
【0182】
薬物含有マイクロ粒子または薬物粒子を取り囲む架橋タンパク質のコーティング層を生成するために、水溶性タンパク質を、マイクロ粒子上に噴霧コーティングし、その後、上記に記載される方法の1つによって架橋することができる。あるいは、薬物含有マイクロ粒子は、コアセルベーション-相分離によって(例えば、塩の添加によって)、タンパク質内にマイクロカプセル化され、その後、架橋され得る。この目的のためのいくつかの好適なタンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、およびグルテンが挙げられる。
【0183】
多糖は、架橋して、水不溶性ネットワークを形成することもできる。多くの多糖について、これは、主なポリマー鎖を架橋するカルシウム塩または多価カチオンとの反応によって達成することができる。ペクチン、アルギン酸塩、デキストラン、アミロースおよびグアーガムは、多価カチオンの存在下で架橋に付される。反対に帯電した多糖の間の複合体を形成することもでき、ペクチンおよびキトサンは、例えば、静電相互作用を介して複合体化することができる。
【0184】
当技術分野において公知の制御放出ポリマーとしては、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられる。
【0185】
ある特定の好ましい実施形態では、アクリルポリマーは、1つまたは複数のアンモニオメタクリレートコポリマーから構成される。アンモニオメタクリレートコポリマーは、当技術分野において周知であり、低含有量の第四級アンモニウム基を有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全に重合したコポリマーとしてNF XVIIに記載されている。
【0186】
好ましい一実施形態では、アクリルポリマーは、商品名EUDRAGIT(登録商標)でRohm Pharmaから市販されているようなアクリル樹脂ラッカーである。さらに好ましい実施形態では、アクリルポリマーは、それぞれ、商品名EUDRAGIT(登録商標)RL30DおよびEUDRAGIT(登録商標)RS30DでRohm Pharmaから市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。EUDRAGIT(登録商標)RL30DおよびEUDRAGIT(登録商標)RS30Dは、低含有量の第四級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのコポリマーであり、アンモニウム基の残りの中性の(メタ)アクリル酸エステルに対するモル比は、EUDRAGIT(登録商標)RL30Dでは1:20、EUDRAGIT(登録商標)RS30Dでは1:40である。平均分子量は、約150,000である。EUDRAGIT(登録商標)S-100およびEUDRAGIT(登録商標)L-100も好ましい。コード指定のRL(高透過性)およびRS(低透過性)は、これらの薬剤の透過性の性質を指す。EUDRAGIT(登録商標)RL/RS混合物は、水および消化液に不溶性である。しかしながら、これを含むように形成された多粒子系は、水溶液および消化液中で膨潤性および透過性である。
【0187】
EUDRAGIT(登録商標)RL/RSなどのポリマーは、望ましい溶解プロファイルを有する持続放出製剤を最終的に得るために、任意の所望の比で一緒に混合され得る。望ましい持続放出多粒子系は、例えば、100%のEUDRAGIT(登録商標)RL、50%のEUDRAGIT(登録商標)RLおよび50%のEUDRAGIT(登録商標)RS、ならびに10%のEUDRAGIT(登録商標)RLおよび90%のEUDRAGIT(登録商標)RSから得られ得る。当業者は、例えば、EUDRAGIT(登録商標)Lなどの他のアクリルポリマーも使用され得ることを認識するであろう。
【0188】
他の制御放出材料としては、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンが挙げられる。親水性ポリマーとしては、限定されるものではないが、セルロースポリマー、例えば、メチルおよびエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびCarbopol(登録商標)934、ポリエチレンオキシド、ならびにそれらの混合物が挙げられる。脂肪化合物としては、限定されるものではないが、カルナウバワックスおよびトリステアリン酸グリセリルなどのさまざまなワックス、ならびに硬化ヒマシ油もしくは硬化植物油を含むワックス型物質、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0189】
遅延放出をもたらすための好適なコーティング材料としては、限定されるものではないが、セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム;アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成されるもの、ならびに商品名EUDRAGIT(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt、Germany)で市販されている他のメタクリル樹脂、例えば、EUDRAGIt(登録商標)L30D-55およびL100-55(pH5.5およびそれよりも高いpHで可溶性)、EUDRAGIT(登録商標)L-100(pH6.0およびそれよりも高いpHで可溶性)、EUDRAGIT(登録商標)S(より高いエステル化度の結果としてpH7.0およびそれよりも高いpHで可溶性)、ならびにEUDRAGITS(登録商標)NE、RLおよびRS(透過性および拡張性の異なる程度を有する水不溶性ポリマー);ビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸フタル酸ビニル、酢酸クロトン酸ビニルコポリマー、およびエチレン-酢酸ビニルコポリマー;酵素的に分解可能なポリマー、例えば、アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガム;ゼインならびにシェラックが挙げられる。
【0190】
A.ポリヌクレオチドのトランスフェクションのための組成物
ポリカチオン性ポリマーの遺伝子送達能力が、ポリマーの分子量、疎水性、および電荷密度を含む複数の要因に起因することが発見されている。多くの合成ポリカチオン性材料は、非ウイルス遺伝子送達のためのベクターとして試験されているが、ほぼすべてが、それらの低い効率または高い毒性に起因して有効ではない。以前に記載されたほとんどのポリカチオン性ベクターは、高い電荷密度を呈し、これは、有効なDNA凝縮のための主要な要件と考えられている。結果として、それらは、in vitroで高効率で遺伝子を送達することが可能であるが、過剰な電荷密度に関連する毒性を理由として、in vivo適用は限定されている。
【0191】
高分子量のポリマー、特に、ターポリマー、ならびにラクトンとジアルキルジエステルおよびアミノジオールとの酵素触媒共重合を使用してそれらを作製する方法を開示する。これらのポリ(アミン-co-エステル)ターポリマーは、低い電荷密度を有する。加えて、それらの疎水性は、特定の環サイズを有するラクトンコモノマーを選択することによって、およびポリマー中のラクトン含有量を調整することによって、変えることができる。ラクトン-ジエステル-アミノジオールターポリマーの高い分子量および増加した疎水性は、低い電荷密度を代償して、最小限の毒性で効率的な遺伝子送達を提供する。
【0192】
好ましい実施形態では、ターポリマーは、低減された毒性で効率的な遺伝子送達を呈する。ターポリマーは、著しくより効率的な市販の非ウイルスベクターであり得る。例えば、ターポリマーは、ルシフェラーゼ発現アッセイに基づくPEIおよびLIPOFECTAMINE(登録商標)2000などの市販の非ウイルスベクターよりも100倍超効率的であり得るが、これらの市販の非ウイルスベクターと比較して、最大で0.5mg/mlの毒性の用量で最小限の毒性を呈する。好ましくは、ターポリマーは、核酸のin vitroおよびin vivoトランスフェクションの両方に好適な濃度で非毒性である。例えば、一部の実施形態では、ターポリマーは、細胞トランスフェクションの他のアプローチと比較して、より少ない非特異的細胞死を引き起こす。
【0193】
下記でより詳細に記載するように、一部の実施形態では、ターポリマーは、20%のPDLを含有するω-ペンタデカラクトン-セバシン酸ジエチル-N-メチルジエタノールアミンターポリマー(ターポリマーIII-20%PDLとも称される)である。
【0194】
IV.ポリマーから形成されるミセル
A.ミセルの性質
1.ミセルサイズ
PEGブロック含有ポリマーなどのポリマーを、ミセルを調製するために使用することができる。平均ミセルサイズは、典型的には、約100~約500nm、好ましくは、約100~約400nm、より好ましくは、約100~約300nm、より好ましくは、約150~約200nm、最も好ましくは、約160~約190nmの範囲であり、これは、血清タンパク質の存在下で7.4の生理的pHで安定であった。コポリマーは、高い血液適合性を持ち、溶血および凝集を誘発する最小限の活性を呈する。
【0195】
2.表面電荷
ミセルのサイズおよびゼータ電位は、ミセルを収容する水性媒体のpHが変わると有意に変化することが見出された。例えば、サイズ-pHおよびゼータ-pHの曲線の傾向は、異なるPDL含有量(11%、30%、および51%)を有する3つのPEG2K-PPMSコポリマーのミセルについて著しく類似する。ミセル試料の平均サイズは、媒体pHを7.4から5.0に下げると徐々に増加し、次いで、pH値が5.0を下回るとほぼ一定のままであることが明らかである。ミセルについて観察されるこのpH応答挙動は、pHを7.4から5.0に下げる際に予想され、ミセルのPPMSコアは、プロトン化され、より親水性になり、このようにして、水性媒体からより多くの水分子を吸収して、ミセルの膨潤を引き起こす。ミセルコアは、pH5.0ですでに完全にプロトン化されており、結果として、ミセルのサイズは、pHが5.0からさらに下がってもかなり一定のままである。7.4~5.0のpH値のミセルサイズ変化の大きさに対するPEG2K-PPMSコポリマー中のPDL含有量の効果も注目に値する。PDL含有量の減少およびコポリマー中の3級アミノ基含有量の増加により、ミセルコアがプロトンおよび水分子を吸収する能力が増加すると予想される。そのため、pHが7.4から5.0に下がると、平均ミセルサイズの変化は、PEG2K-PPMS-30%PDL(184nm~214nm)およびPEG2K-PPMS-51%PDL(163nm~182nm)と比較して、PEG2K-PPMS-11%PDL(200nm~234nm)についてより顕著であった(図5A)。
【0196】
水性媒体中のミセルのゼータ電位も、かなりのpH依存性を呈する。生理学的およびアルカリ性pH(7.4~8.5)で、ブランクPEG2K-PPMSコポリマーミセルの表面電荷は負であり、これは、媒体のpHが酸性範囲(4.0~6.0)に下がると正に変化した。例えば、PEG2K-PPMS-11%PDL、PEG2K-PPMS-30%PDL、およびPEG2K-PPMS-51%PDLのミセルは、pH7.4で、それぞれ、-5.8、-7.1、-5.1mVのゼータ電位値を持ち、より低いpH5.0で、対応して、+7.6、+5.8、+4.0mVに変わった。上記の議論に基づいて、pHに対するこの表面電荷依存性は、異なる媒体pHでのミセルのPPMSコアのプロトン化または脱プロトン化に起因する。アルカリ性pH(7.4~8.5)で、ミセル中のアミノ基のほとんどは、おそらくプロトン化されず、ミセル粒子は、ミセルによるPBS中のHPO42-および/またはH2PO4-アニオンの吸収に起因して負に帯電したままである。特に、pH8.5で、ゼータ電位値は、PEG2K-PPMS-11%PDL、PEG2K-PPMS-30%PDL、およびPEG2K-PPMS-51%PDLについて、それぞれ、-8.1mV、-7.9mV、-9.0mVであった。pHを7.4から5.0に下げると、ミセルPPMSコア中の第三級アミノ部分は、ほとんどプロトン化され、ミセルは正に帯電した粒子に変わる。一貫して、3つのミセル試料の中で、プロトンを吸収する最大の能力を有するPEG2K-PPMS-11%PDLミセルは、pH4.0~5.0で最も高いゼータ電位値を示したが、最も小さいプロトン化能力を有するPEG2K-PPMS-51%PDLミセルは、最も低いゼータ電位を示した。生理学的pHでのミセルの負の表面電荷が、ミセルと血液中の血清タンパク質との相互作用を軽減し、それらのin vivo循環時間を延長することができるので、媒体pHに対する観察されたミセル表面電荷応答は非常に望ましい。他方で、およそ6.5の腫瘍細胞外pHでの正の表面電荷への反転は、標的腫瘍細胞によるこれらのミセルの取り込みを増強し得る。
【0197】
粒子/ミセルの表面電荷は、PBS溶液(0.01M、pH=7.4)中でわずかに負であり、ミセルのin vivo薬物送達適用のために有益である。ほぼ中性の表面電荷(-10~+10mVのゼータ電位)を有するナノ粒子は、細網内皮系(RES)によるそれらの取り込みを減少させ、血液中の循環時間を延長することができることが公知である。ミセルの負の表面電荷は、アニオンとPEGシェルのエーテル基またはPPMSコアのアミノ基との間の水素結合相互作用を介したミセル粒子によるPBS中のHPO 2-および/またはHPO アニオンの吸収から生じ得る。両親媒性ブロックコポリマーミセルについて、ミセルの外側シェル中の親水性鎖セグメント(例えば、PEG)が、ミセルコアにおいて電荷を遮蔽することができ、長鎖ブロックが短鎖ブロックよりもゼータ電位を低減するのにより有効であると期待される。したがって、有意に低いゼータ電位値が、PEG2K-PPMSコポリマーミセルと比較して、PEG5K-PPMSコポリマーミセルについて観察された。
【0198】
コポリマーミセルは、pH応答性である:媒体pHを7.4から5.0に下げると、ミセルサイズは、ミセルサイズを有意に増加させる一方で、ミセル表面電荷は、負電荷から正電荷に反転した。相応して、DTX封入コポリマーミセルは、pH7.4で徐々に持続的な薬物放出を示したが、酸性のpH5.0ではDTX放出を著しく加速した。不十分な酸素灌流に起因する乳酸蓄積の結果として、腫瘍微小環境が典型的には弱酸性(例えば、5.7~7.0)であることが公知であるので、この現象を、腫瘍部位での薬剤の放出を改善するために利用することができる。対照的に、正常組織および血液の細胞外pHは、わずかに塩基性である(pH7.2~7.4)。そのため、pH応答性であり、酸性pHがトリガーになって、薬物放出を加速することができる抗がん薬が負荷されたミセルについて、増強された薬物送達効率が期待される。さらにまた、よりさらに酸性の条件(pH=4.0~6.0)は、エンドサイトーシス経路を介して腫瘍細胞によるミセルの取り込み後、エンドソームおよびリソソームにおいて遭遇し、これは、薬物封入ミセルの細胞毒性をさらに増加させることがある。
【0199】
V.治療剤、予防剤および診断剤
ポリマーは、さまざまなポリマー組成物を形成することができ、これは、各種の生分解性医療デバイスを調製するため、および薬物送達のために有用である。PHAコポリマーから調製されるデバイスは、広範囲の異なる医療適用のために使用することができる。そのような適用の例としては、治療剤、予防剤または診断剤の制御放出;薬物送達;組織工学足場;細胞封入;標的化送達;生体適合性コーティング;生体適合性インプラント;誘導された組織再生;創傷包帯剤;整形外科用デバイス;補てつおよび骨セメント(接着剤および/または構造用フィラーを含む);および診断が挙げられる。
【0200】
ポリマーを使用して、各種の治療剤、予防剤または診断剤のいずれかを、封入し、それと混合し、またはイオン的にもしくは共有結合的にカップリングさせることができる。多種多様な生物学的に活性な材料を、ポリマーによる部位への送達のために、または生体接着、細胞付着、細胞成長の増強、細菌成長の阻害、および血餅形成の防止などのポリマーに性質を付与するために、封入または組み込むことができる。
【0201】
好適な治療剤および予防剤の例としては、合成無機化合物および合成有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖および他の糖、脂質、ならびに治療的、予防的または診断的活性を有するDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列としては、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。広範囲の分子量を有する化合物は、例えば、1モルあたり100~500,000グラムまたはそれよりも多くを封入することができる。好適な材料の例としては、抗体、受容体リガンド、および酵素などのタンパク質、接着ペプチドなどのペプチド、糖および多糖、合成有機薬物または合成無機薬物、ならびに核酸が挙げられる。封入することができる材料の例としては、酵素、血液凝固因子、ストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子などの阻害剤または血餅溶解剤;免疫化のための抗原;ホルモンおよび増殖因子;ヘパリンなどの多糖;アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムなどのオリゴヌクレオチド、ならびに遺伝子治療における使用のためのレトロウイルスベクターが挙げられる。ポリマーは、細胞および組織を封入するために使用することもできる。代表的な診断剤は、X線、蛍光、磁気共鳴画像法、放射能、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)および陽電子放射断層撮影(PET)によって検出可能な薬剤である。超音波診断剤は、典型的には、ガス、例えば、空気、酸素、またはパーフルオロカーボンである。好ましい実施形態では、ポリマーは、核酸の送達のために使用される。
【0202】
A.ポリヌクレオチド
下記でより詳細に議論されるように、ターポリマーは、細胞を核酸でトランスフェクトするために使用することができる。したがって、ターポリマーおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドを含むポリプレックスも開示する。
【0203】
ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のタンパク質、機能性核酸、またはそれらの組合せをコードすることができる。ポリヌクレオチドは、単シストロン性または多シストロン性であり得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、複遺伝子性である。
【0204】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞にトランスフェクトされ、染色体外のままである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞に導入され、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。下記でより詳細に議論されるように、組成物は、遺伝子治療の方法において使用することができる。遺伝子治療の方法は、細胞の遺伝子型を変更するポリヌクレオチドの細胞への導入を含み得る。ポリヌクレオチドの導入は、遺伝子組換えを介して内因性遺伝子を修正、置き換え、または他の方法で変更することができる。方法は、欠陥遺伝子、異種遺伝子、またはオリゴヌクレオチドなどの小型核酸分子の置き換えコピー全体の導入を含み得る。例えば、修正遺伝子は、宿主のゲノム内の非特異的な場所に導入することができる。
【0205】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ベクターに、またはその一部に組み込まれる。遺伝子配列ならびに適切な転写および翻訳制御エレメントを含有する発現ベクターを構築する方法は、当技術分野において周知である。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技法、合成技法、およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。発現ベクターは、一般に、調節配列、ならびに例えば、目的のポリヌクレオチドであり得る挿入されるコード配列の翻訳および/または転写に必要なエレメントを含有する。コード配列は、所望の遺伝子産物の発現を制御するのを助けるプロモーターおよび/またはエンハンサーに作動可能に連結され得る。生命工学において使用されるプロモーターは、意図される種類の遺伝子発現の制御に従って、異なる種類のものである。それらは、一般に、構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたは発生段階特異的プロモーター、誘導性プロモーター、および合成プロモーターに分けることができる。
【0206】
例えば、一部の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、当技術分野において公知のプロモーターまたは他の調節エレメントに作動可能に連結されている。そのため、ポリヌクレオチドは、発現ベクターなどのベクターであり得る。原核生物系または真核生物系における発現のためのポリヌクレオチドの操作は、組換え発現における当業者に一般に公知の技法によって行われ得る。発現ベクターは、典型的には、1つまたは複数のプロモーターの制御下にある組成物の1つを含む。コード配列をプロモーターの「制御下」にするために、リーディングフレームの翻訳開始部位の5’末端を、一般に、選択されたプロモーターの約1~50ヌクレオチド「下流」(すなわち3’)に配置する。「上流」プロモーターは、挿入されたDNAの転写を刺激し、コードされる組換えタンパク質の発現を促進する。これが、ここで使用される文脈における「組換え発現」の意味である。
【0207】
各種の宿主発現系においてタンパク質またはペプチド発現を達成するために、適切な核酸および転写/翻訳制御配列を含有する発現ベクターを構築するための多くの標準的な技法が利用可能である。発現に利用可能な細胞型としては、限定されるものではないが、組換えファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたE.coliおよびB.subtilisなどの細菌が挙げられる。これらのベクターのいずれかが、ポリマーを使用してパッケージングおよび送達され得ることは認識されるであろう。
【0208】
哺乳動物細胞における使用のための発現ベクターは、通常、複製起点(必要により)、発現される遺伝子の前に位置するプロモーターを、任意の必要なリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列と一緒に含む。複製起点は、SV40もしくは他のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)供給源に由来し得るなどの外因性の起源を含むようなベクターの構築によって提供され得るか、または宿主細胞染色体複製機構によって提供され得る。ベクターが宿主細胞染色体に組み込まれる場合、後者が、多くの場合に十分である。
【0209】
プロモーターは、哺乳動物細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)に由来していてもよい。さらに、そのような制御配列は、宿主細胞系と適合性であるという条件で、所望の遺伝子配列に通常関連するプロモーターまたは制御配列を利用することも可能であり、望ましくあり得る。
【0210】
いくつかのウイルスに基づく発現系が利用され得、例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40(SV40)に由来する。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、両方ともSV40ウイルスの複製起点も含有する断片としてウイルスから容易に得られるので、有用である。HindIII部位からウイルス複製起点に位置するBglI部位の方へ伸びているおよそ250bpの配列が含まれているという条件で、より小さいまたはより大きいSV40断片も使用され得る。
【0211】
アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合では、コード配列は、アデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三要素(tripartite)リーダー配列にライゲーションされ得る。次いで、このキメラ遺伝子は、in vitroまたはin vivo組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)における挿入は、生存可能で、感染した宿主においてタンパク質を発現することができる組換えウイルスをもたらすであろう。
【0212】
特定の開始シグナルも、組成物の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルとしては、ATG開始コドンおよび隣接配列が挙げられる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを、追加的に提供する必要があってもよい。当業者は、この必要性を決定し、必要なシグナルを提供することが容易に可能であろう。開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームとインフレーム(またはインフェーズ)でなければならないことが周知である。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の両方の各種の供給源のものであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントまたは転写ターミネーターの包含によって増強され得る。
【0213】
真核生物の発現では、典型的には、元のクローニングされたセグメント内に含有されていなかった場合に、適切なポリアデニル化部位を転写単位に組み込むことも望ましいであろう。典型的には、ポリA付加部位は、転写終結の前の位置のタンパク質の終結部位の約30~2000ヌクレオチド「下流」に配置される。
【0214】
組換えタンパク質の長期間の高収量産生のため、安定発現が好ましい。例えば、タンパク質をコードする構築物を安定に発現する細胞系が操作され得る。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりもむしろ、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるベクター、および選択マーカーで形質転換することができる。外来性DNAの導入後、操作された細胞を、富化培地中で1~2日間成長させてもよく、次いで、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをそれらの染色体に安定に組み込み、成長して増殖巣(focus)を形成することを可能にし、次に、クローニングし、細胞系に拡大することができる。
【0215】
好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドカーゴは、mRNAなどのRNAである。mRNAは、目的のポリペプチドをコードすることができる。
【0216】
一部の実施形態では、mRNAは、5’末端にキャップおよび/または3’ポリ(A)テールを有し、これは、細胞において、リボソーム結合、翻訳の開始、およびmRNAの安定性をモジュレートすることができる。
【0217】
B.目的のポリペプチド
ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の目的のポリペプチドをコードすることができる。ポリペプチドは、任意のポリペプチドであり得る。例えば、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、生物に治療効果もしくは予防効果を提供するポリペプチド、または生物における疾患または障害を診断するために使用することができるポリペプチドであり得る。例えば、がん、自己免疫障害、寄生生物、ウイルス、細菌、真菌または他の感染症の処置のために、発現されるポリヌクレオチドは、免疫系の細胞に対するリガンドまたは受容体として機能するポリペプチドをコードしてもよく、または生物の免疫系を刺激または阻害するように機能することができる。下記の実施例で議論されるように、TNF関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)をコードするポリヌクレオチドは、がんを処置する方法においてポリプレックスを使用して腫瘍細胞に送達することができる。
【0218】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、生物において欠陥があるポリヌクレオチドを補充または置き換える。
【0219】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、選択マーカー、例えば、薬物耐性選択マーカーなどの真核細胞において有効である選択マーカーを含む。この選択マーカー遺伝子は、選択的培養培地において成長した形質転換宿主細胞の生存または成長に必要な因子をコードすることができる。典型的な選択遺伝子は、抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、カナマイシン、ゲンタマイシン、Zeocin、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質をコードし、栄養要求性の欠乏を補完し、または培地から差し引かれた重要な栄養素を供給する。
【0220】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子を含む。レポーター遺伝子は、典型的には、宿主細胞に存在しないか、または発現していない遺伝子である。レポーター遺伝子は、典型的には、一部の表現型変化または酵素的性質を提供するタンパク質をコードする。そのような遺伝子の例は、Weising et al. Ann. Rev. Genetics, 22, 421 (1988)に提供されている。好ましいレポーター遺伝子としては、グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子およびGFP遺伝子が挙げられる。
【0221】
C.機能性核酸
ポリヌクレオチドは、機能性核酸であり得るか、またはそれをコードすることができる。機能性核酸は、標的分子と結合すること、または特定の反応を触媒することなどの特定の機能を有する核酸分子である。機能性核酸分子は、以下の非限定的なカテゴリーに分けることができる:アンチセンス分子、siRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、RNAi、および外部ガイド配列。機能性核酸分子は、標的分子が有する特定の活性のエフェクター、阻害剤、モジュレーター、および刺激剤として作用することができ、または機能性核酸分子は、任意の他の分子とは無関係にde novo活性を持ち得る。
【0222】
機能性核酸分子は、DNA、RNA、ポリペプチド、または炭水化物鎖などの任意の高分子と相互作用することができる。そのため、機能性核酸は、標的ポリペプチドのmRNAまたはゲノムDNAと相互作用することができ、またはそれらは、ポリペプチドそれ自体と相互作用することができる。多くの場合に、機能性核酸は、標的分子と機能性核酸分子との間の配列相同性に基づいて他の核酸と相互作用するように設計される。他の状況では、機能性核酸分子と標的分子との間の特異的認識は、機能性核酸分子と標的分子との間の配列相同性に基づいていないが、むしろ特異的認識が起こるのを可能にする三次構造の形成に基づく。
【0223】
アンチセンス分子は、標準または非標準的な塩基対形成のいずれかにより標的核酸分子と相互作用するように設計される。アンチセンス分子および標的分子の相互作用は、例えば、RNAseH媒介RNA-DNAハイブリッド分解により標的分子の破壊を促進するように設計される。あるいは、アンチセンス分子は、転写または複製などの標的分子において通常行われるであろう処理機能を中断するように設計される。アンチセンス分子は、標的分子の配列に基づいて設計することができる。標的分子の最もアクセス可能な領域を見出すことによるアンチセンス効率の最適化のための多くの方法がある。例示的な方法としては、in vitro選択実験、ならびにDMSおよびDEPCを使用するDNA改変研究が挙げられる。アンチセンス分子は、10-6、10-8、10-10、または10-12未満またはそれに等しい解離定数(K)で標的分子と結合することが好ましい。
【0224】
アプタマーは、好ましくは特定の方法で、標的分子と相互作用する分子である。典型的には、アプタマーは、ステムループまたはGカルテットなどの定義された二次および三次構造にフォールドされる15~50塩基長の範囲の小さな核酸である。アプタマーは、ATPおよびテオフィリンなどの小分子、ならびに逆転写酵素およびトロンビンなどの大きな分子に結合することができる。アプタマーは、10-12M未満の標的分子からのKで非常に強固に結合することができる。アプタマーが、10-6、10-8、10-10、または10-12未満のKで標的分子と結合することが好ましい。アプタマーは、非常に高い特異性で標的分子に結合することができる。例えば、標的分子と分子上の単一の位置のみで異なる別の分子との間の結合親和性において10,000倍超の相違を有するアプタマーが単離されている。アプタマーは、バックグラウンド結合分子とのKの多くとも10分の1、100分の1、1000分の1、10,000分の1、または100,000分の1の標的分子とのKを有することが好ましい。ポリペプチドなどの分子について比較を行う場合、バックグラウンド分子は異なるポリペプチドであることが好ましい。
【0225】
リボザイムは、分子内または分子間のいずれかの化学反応を触媒することができる核酸分子である。リボザイムは、分子間反応を触媒することが好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムなどの天然系において見られるリボザイムに基づくヌクレアーゼまたは核酸ポリメラーゼ型の反応を触媒する、いくつかの異なる種類のリボザイムがある。天然系では見られないが、特定の反応をde novoで触媒するように操作されているいくつかのリボザイムもある。好ましいリボザイムは、RNAまたはDNA基質を切断し、より好ましくは、RNA基質を切断する。リボザイムは、典型的には、標的基質の認識および結合とその後の切断により核酸基質を切断する。この認識は、多くの場合、標準または非標準の塩基対の相互作用に主に基づく。標的基質の認識が標的基質配列に基づくので、この性質は、リボザイムを、核酸の標的特異的切断の特に良好な候補にする。
【0226】
三重鎖形成性機能性核酸分子は、二本鎖または一本鎖核酸のいずれかと相互作用することができる分子である。三重鎖分子が標的領域と相互作用すると、三重鎖と呼ばれる構造が形成され、そこには、ワトソン-クリックおよびフーグスティーン塩基対形成の両方に依存する複合体を形成するDNAの3つの鎖がある。三重鎖分子は、高い親和性および特異性で標的領域と結合することができるので、好ましい。三重鎖形成分子が、10-6、10-8、10-10、または10-12未満のKで標的分子と結合することが好ましい。
【0227】
外部ガイド配列(EGS)は、複合体を形成する標的核酸分子と結合する分子であり、これは、RNase Pによって認識され、次いで、標的分子を切断する。EGSは、選択したRNA分子を特異的に標的化するように設計することができる。RNAse Pは、細胞内のトランスファーRNA(tRNA)のプロセシングを支援する。細菌RNAse Pは、標的RNA:EGS複合体に天然のtRNA基質を模倣させるEGSを使用することによって、実質的に任意のRNA配列を切断するために動員され得る。同様に、真核生物EGS/RNAse PのRNAの指向性切断を利用して、真核細胞内の所望の標的を切断することができる。各種の異なる標的分子の切断を容易にするためにEGS分子を作製および使用する方法の代表例は、当技術分野において公知である。
【0228】
遺伝子発現は、RNA干渉(RNAi)により非常に特異的な様式で効果的にサイレンシングすることもできる。このサイレンシングは、元々は二本鎖RNA(dsRNA)の添加により観察された(Fire, et al. (1998) Nature, 391:806-11;Napoli, et al. (1990) Plant Cell 2:279-89;Hannon, (2002) Nature, 418:244-51)。dsRNAが細胞に侵入すると、RNase III様酵素であるダイサーによって、3’末端に2つのヌクレオチドオーバーハングを含有する21~23ヌクレオチド長の二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)に切断される(Elbashir, et al. (2001) Genes Dev., 15:188-200;Bernstein, et al. (2001) Nature, 409:363-6;Hammond, et al. (2000) Nature, 404:293-6)。ATP依存性ステップでは、siRNAは、一般にRNAi誘導サイレンシング複合体(RISC)として公知のマルチサブユニットタンパク質複合体に組み込まれ、これが、siRNAを標的RNA配列にガイドする(Nykanen, et al. (2001) Cell, 107:309-21)。ある時点でsiRNA二重鎖がほどけ、アンチセンス鎖がRISCに結合したままであり、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼの組合せによって相補的mRNA配列の分解を方向付けると思われる(Martinez, et al. (2002) Cell, 110:563-74)。しかしながら、iRNAもしくはsiRNAの効果またはそれらの使用は、任意の種類の機構に限定されない。
【0229】
短鎖干渉RNA(siRNA)は、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングを誘導し、それによって、遺伝子発現を減少またはさらに阻害することができる二本鎖RNAである。一例では、siRNAは、siRNAおよび標的RNAの両方の間の配列同一性の領域内で、mRNAなどの相同RNA分子の特異的分解のトリガーになる。例えば、WO02/44321号は、3’オーバーハング末端と塩基対形成した場合に、標的mRNAの配列特異的分解が可能なsiRNAを開示しており、これらのsiRNAを作製する方法について参照により本明細書に組み込まれる。配列特異的遺伝子サイレンシングは、酵素のダイサーによって産生されるsiRNAを模倣する合成の短い二本鎖RNAを使用して哺乳動物細胞において達成することができる(Elbashir, et al. (2001) Nature, 411:494 498)(Ui-Tei, et al. (2000) FEBS Lett 479:79-82)。siRNAは、化学的にもしくはin vitroで合成することができ、または細胞内部でsiRNAにプロセシングされる短い二本鎖ヘアピン様RNA(shRNA)の結果であり得る。合成siRNAは、一般に、アルゴリズムおよび従来のDNA/RNA合成機を使用して設計される。供給業者としては、Ambion(Austin、Texas)、ChemGenes(Ashland、Massachusetts)、Dharmacon(Lafayette、Colorado)、Glen Research(Sterling、Virginia)、MWB Biotech(Esbersberg、Germany)、Proligo(Boulder、Colorado)、およびQiagen(Vento、The Netherlands)が挙げられる。siRNAは、AmbionのSILENCER(登録商標)siRNA構築キットなどのキットを使用して、in vitroで合成することもできる。
【0230】
ベクターからのsiRNAの産生は、より一般には、短ヘアピンRNAse(shRNA)の転写により行われる。例えば、ImgenexのGENESUPPRESSOR(商標)構築キット、ならびにInvitrogenのBLOCK-IT(商標)誘導性RNAiプラスミドおよびレンチウイルスベクターなどのshRNAを含むベクターの生成のためのキットが利用可能である。
【0231】
ポリヌクレオチドの組成物
ポリヌクレオチドは、典型的には、複素環式塩基(核酸塩基)、複素環式塩基に付着した糖部分、および糖部分のヒドロキシル機能をエステル化するリン酸部分を含むDNAまたはRNAヌクレオチドであり得る。主要な天然に存在するヌクレオチドは、複素環式塩基としてウラシル、チミン、シトシン、アデニンおよびグアニン、ならびにホスホジエステル結合によって連結されたリボースまたはデオキシリボース糖を含む。
【0232】
ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA対応物と比べて、標的配列に対する安定性、半減期、または特異性もしくは親和性を改善するように化学的に改変されたヌクレオチドアナログから構成され得る。化学改変としては、核酸塩基、糖部分、ヌクレオチド連結、またはそれらの組合せの化学改変が挙げられる。本明細書で使用される場合、「改変ヌクレオチド」または「化学的に改変されたヌクレオチド」は、複素環式塩基、糖部分またはリン酸部分構成成分の1つもしくは複数の化学改変を有するヌクレオチドを定義する。一部の実施形態では、改変ヌクレオチドの電荷は、同じ核酸塩基配列のDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドと比較して低減される。例えば、オリゴヌクレオチドは、低い負電荷、電荷なし、または正電荷を有することができる。改変は、オリゴヌクレオチドが細胞に侵入する能力、および上記で議論されたような遺伝子発現の阻害などの機能を行う能力を妨げるべきではなく、好ましくは、これを増強すべきである。
【0233】
典型的には、ヌクレオシドアナログは、標準的なポリヌクレオチド塩基へのワトソン-クリック塩基対形成によって水素結合が可能な塩基を支持し、ここで、アナログの骨格は、オリゴヌクレオチドアナログ分子と標準的なポリヌクレオチド(例えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)中の塩基との間の配列特異的な方法でそのような水素結合を可能にする様式で塩基を提示する。好ましいアナログは、実質的に帯電していない、リン含有骨格を有するものである。
【0234】
下記でより詳細に議論されるように、好ましい一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチドである。
【0235】
1.複素環式塩基
主要な天然に存在するヌクレオチドは、複素環式塩基としてウラシル、チミン、シトシン、アデニンおよびグアニンを含む。オリゴヌクレオチドは、それらの核酸塩基構成成分に対する化学改変を含み得る。複素環式塩基または複素環式塩基アナログの化学改変は、標的配列を結合する際の結合親和性または安定性を増加させるために有効であり得る。化学的に改変された複素環式塩基としては、限定されるものではないが、イノシン、5-(1-プロピニル)ウラシル(pU)、5-(1-プロピニル)シトシン(pC)、5-メチルシトシン、8-オキソ-アデニン、シュードシトシン、シュードイソシトシン、5および2-アミノ-5-(2’-デオキシ-ベータ-D-リボフラノシル)ピリジン(2-アミノピリジン)、ならびにさまざまなピロロおよびピラゾロピリミジン誘導体が挙げられる。
【0236】
2.糖改変
ポリヌクレオチドは、改変された糖部分または糖部分アナログを有するヌクレオチドを含有することもできる。糖部分の改変としては、限定されるものではないが、2’-O-アミノエトキシ、2’-O-アミノエチル(amonioethyl)(2’-OAE)、2’-O-メトキシ、2’-O-メチル、2-グアニドエチル(2’-OGE)、2’-O,4’-C-メチレン(LNA)、2’-O-(メトキシエチル)(2’-OME)および2’-O-(N-(メチル)アセトアミド)(2’-OMA)が挙げられる。2’-O-アミノエチル糖部分の置換は、それらが中性pHでプロトン化され、したがってTFOと標的二重鎖との間の電荷反発を抑制するので、特に好ましい。この改変は、リボースまたはデキシリボースのC3’-エンドコンフォメーションを安定化し、二重鎖のプリン鎖におけるi-1リン酸との架橋も形成する。
【0237】
ポリヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチドであり得る。モルホリノオリゴヌクレオチドは、典型的には、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに有効なプリンまたはピリミジン塩基対形成部分を含有する2つより多くのモルホリノモノマーから構成され、これは、1~3原子長のリン含有連結によって一緒に連結され、1つのモノマーのモルホリノ窒素を隣接するモノマーの5’環外炭素に接続する。プリンまたはピリミジン塩基対形成部分は、典型的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシルまたはチミンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特徴は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号に詳述されている。
【0238】
モルホリノに基づくサブユニットの重要な性質としては、典型的には、以下が挙げられる:安定な非帯電骨格連結によりオリゴマー形態で連結する能力;形成されるポリマーが、10~14塩基という短いオリゴマーでも高いTを有する標的RNAを含む相補的塩基標的核酸とハイブリダイズすることができるような、ヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシルまたはイノシン)を支持する能力;オリゴマーが哺乳動物細胞に活発に輸送される能力;およびオリゴマー:RNAヘテロ二重鎖がRNAse分解に抵抗する能力。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、非帯電連結によって接続された塩基対形成部分を保有しているモルホリノに基づくサブユニットを用いる。
【0239】
3.ヌクレオチド間連結
ヌクレオチド間結合は、2つのヌクレオシド部分間の化学連結を指す。DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドのリン酸骨格への改変は、ポリヌクレオチドの結合親和性もしくは安定性を増加させ得るか、またはヌクレアーゼ消化に対するポリヌクレオチドの感受性を低減し得る。限定されるものではないが、ジエチル-エチレンジアミド(DEED)またはジメチル-アミノプロピルアミン(DMAP)を含むカチオン性改変は、オリゴヌクレオチドと標的との間の静電反発を減少させることに起因して特に有用であり得る。リン酸骨格の改変は、ホスホジエステル連結における非架橋酸素の1個に対する硫黄原子での置換も含み得る。この置換は、ホスホジエステル連結の代わりにホスホロチオエートヌクレオシド間連結を作り出す。ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含有するオリゴヌクレオチドは、in vivoでより安定であることが示されている。
【0240】
低減された電荷を有する改変ヌクレオチドの例としては、アキラルおよび非帯電サブユニット間連結を有するリン酸アナログなどの改変ヌクレオチド間連結(例えば、Sterchak, et al., Organic Chem., 52:4202, (1987))、および上記で議論されたようなアキラルサブユニット間連結を有する非帯電モルホリノに基づくポリマー(例えば、米国特許第5,034,506号を参照されたい)が挙げられる。一部のヌクレオチド間連結アナログとしては、モルホリデート、アセタール、およびポリアミド連結複素環が挙げられる。
【0241】
別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ロックド核酸から構成される。ロックド核酸(LNA)は、改変RNAヌクレオチドである(例えば、Braasch, et al., Chem. Biol., 8(1):1-7 (2001)を参照されたい)。LNAは、ペプチド核酸(PNA)/DNAハイブリッドと類似の性質のDNA/DNAハイブリッドよりも安定であるDNAとのハイブリッドを形成する。したがって、LNAは、PNA分子の通りに使用することができる。LNA結合効率は、一部の実施形態では、それに正電荷を加えることによって、増加し得る。市販の核酸合成機および標準的なホスホルアミダイト化学を使用して、LNAが作製される。
【0242】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸から構成される。ペプチド核酸(PNA)は、オリゴヌクレオチドのリン酸骨格が、N-(2-アミノエチル)-グリシン単位を繰り返すことによってその全体が置き換えられ、ホスホジエステル結合が、典型的には、ペプチド結合によって置き換えられる、合成DNA模倣物である。さまざまな複素環式塩基が、メチレンカルボニル結合によって骨格に連結される。PNAは、従来のDNAオリゴヌクレオチドと類似する複素環式塩基の間隔を維持するが、アキラルで中性に帯電した分子である。ペプチド核酸は、ペプチド核酸モノマーから構成される。
【0243】
他の骨格改変としては、ペプチドおよびアミノ酸の変形形態および改変が挙げられる。したがって、PNAなどのオリゴヌクレオチドの骨格構成成分は、ペプチド連結であってもよく、あるいはそれらは、非ペプチドのペプチド連結であってもよい。例としては、アセチルキャップ、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸などのアミノスペーサー(本明細書でO-リンカーと称される)が挙げられ、リシンなどのアミノ酸は、PNAにおいて正電荷が望まれる場合などに特に有用である。PNAの化学的アセンブリーのための方法は周知である。例えば、米国特許第5,539,082号、同第5,527,675号、同第5,623,049号、同第5,714,331号、同第5,736,336号、同第5,773,571号、および同第5,786,571号を参照されたい。
【0244】
ポリヌクレオチドは、必要に応じて、その標的に対するオリゴヌクレオチドの安定性および/または親和性を増加させるために、いずれかまたは両方の末端に1個または複数の末端残基または改変を含む。一般に使用される正電荷部分としては、アミノ酸のリシンおよびアルギニンが挙げられるが、他の正電荷部分も有用であり得る。例えば、リシンおよびアルギニン残基は、ビス-PNAリンカーに付加することができ、またはPNA鎖のカルボキシもしくはN末端に付加することができる。ポリヌクレオチドは、3’-プロピルアミン基を使用して分解を防止するために末端キャップされるようにさらに改変されていてもよい。オリゴヌクレオチドの3’または5’キャッピングの手順は、当技術分野において周知である。
【0245】
VI.ポリプレックスのためのコーティング剤
ポリマーを使用するポリヌクレオチド送達の効率は、ポリプレックス表面上の正電荷によって影響を受け得る。例えば、+8.9mVのポリプレックスのゼータ電位は、循環の間に血液中の負に帯電した血漿タンパク質を引きつけ、それと結合し、細網内皮系(RES)による迅速なクリアランスをもたらし得る。効率はまた、ポリプレックスナノ粒子の不安定性によって影響を受け得る。例えば、下記の実施例において議論されるように、10%の血清を含有するNaAc緩衝液中でインキュベートされたポリプレックス粒子は、15分以内にサイズがほぼ2倍になり、75分後に10倍を上回って増加した。このサイズの増加の結果として、拡大したポリプレックスは、肝臓における取り込みによって循環から除去される可能性がある。したがって、一部の実施形態では、ポリプレックスは、ポリヌクレオチド送達効率を改善するために、処理またはコーティングされる。一部の実施形態では、コーティングは、対照と比較して、ポリプレックスの細胞特異的標的化を改善するか、安定性を改善するか(すなわち、in vivoでのポリプレックスのサイズを安定化する)、in vivoの(すなわち、体循環において)ポリプレックスの半減期を増加させるか、またはそれらの組合せを行う。一部の実施形態では、対照は、コーティングなしのポリプレックスである。
【0246】
腫瘍細胞を標的化するための例示的なポリプレックスコーティングは、ポリE-mRGDである。本明細書で使用される場合、ポリE-mRGDは、3つのセグメントを含有する合成ペプチドを指す:生理学的pHで負に帯電し、したがって、正に帯電したポリプレックスの表面に静電結合することができるポリグルタミン酸(ポリE)ストレッチを含む第1のセグメント;中性リンカーとして機能する中性ポリグリシンストレッチを含む第2のセグメント;ならびにRGDとαβおよびαβとの相互作用により腫瘍内皮と結合するRGD配列を含む第3のセグメント。
【0247】
下記でより詳細に議論されるように、実施例で使用したポリE-mRGDは、III-20%PDL/pLucDNAポリプレックスの表面電荷を反転させた。ポリE-mRGDを、5:1のペプチド/DNA重量比で添加した場合、ポリプレックスのゼータ電位は、+8.9mVから-5.8mVに変化した。ペプチドがコーティングされたポリプレックスは、10%の血清を含有するNaAc緩衝液中でのインキュベーションの際に安定であり、凝集に対して耐性であり、改変ポリプレックスがin vivoでの循環の間にRESによるクリアランスを回避することができることを示した。
【0248】
一実施形態では、ポリE-mRGDは、配列EEEEEEEEEEEEEEEEGGGGGGRGDK(配列番号1)、またはRGDKGGGGGGEEEEEEEEEEEEEEEE(配列番号2)、または配列番号1もしくは2に対して85%、90%、95%、または95%よりも高い配列同一性を有するそれらのバリアントを含む。
【0249】
in vivoでそれらのサイズを維持する電荷中性のまたは負に帯電した粒子を調製するために使用することができる別の例示的なコーティングは、Harris, et al., Biomaterials, 31:998-1006 (2010)に記載されており、非特異的全身投与のためのアミノ酸配列GGGGGGEEEEEEEEEEEEEEEE(配列番号3、ポリ-E)、またはアミノ酸配列GdPdLGdVdRG-GGGGGG-EEEEEEEEEEEEEEEE-CONH2(配列番号4、ポリ-E-Cat)を含むことができ、これらは、脾臓、脊椎、胸骨、および大腿骨への標的化を増加させるポリカチオン配列を含有する。一部の実施形態では、コーティングにおいて使用されるポリペプチドは、配列番号3または4に対して85%、90%、95%、または95%よりも高い配列同一性を有する配列番号3または4のバリアントである。
【0250】
in vitro研究は、免疫グロブリンG(IgG)および補体タンパク質C3のナノ粒子への吸着が、クッパー細胞によるそれらの取り込みを増加させ、血清中でのインキュベーションが、肝灌流後のin vivoでの肝臓取り込みを増加させることを示している(Nagayama, et al., Int. J. Pharm., 342:215-21 (2007))。報告は、ガラクトースがアシアロ糖タンパク質受容体を介してポリマー性遺伝子送達粒子を肝細胞にガイドするために使用することができることも示す(Zhang, et al., J. Controlled Release, 102:749-63 (2005))。
【0251】
A.表面電荷を変更するための組成物
ポリプレックスのポリヌクレオチド送達効率は、生理学的pHで負に帯電する薬剤で粒子をコーティングすることによって改善することができる。好ましくは、負に帯電した薬剤は、ポリプレックスの正に帯電した表面に静電結合することができる。負に帯電した薬剤は、ポリプレックスの電荷を中和するか、またはポリプレックスの電荷を反転させることができる。したがって、一部の実施形態では、負に帯電した薬剤は、ポリプレックスに正味の負電荷を付与する。
【0252】
一部の実施形態では、負に帯電した薬剤は、負に帯電したポリペプチドである。例えば、ポリペプチドは、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはそれらの組合せを含むことができ、その結果、ポリペプチドの全体的な電荷は、中性pHで負である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、または20個を超えるアスパラギン酸残基からなるポリアスパラギン酸ポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチドは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、または20個を超えるグルタミン酸残基からなるポリグルタミン酸ポリペプチドである。他の負に帯電した分子としては、ヒアルロン酸などの小分子(すなわち、1500、100、750、または500ダルトン未満のMW)が挙げられる。
【0253】
粒子の表面上の負電荷を増加させることで、上記に記載される負の相互作用を低減または防止することができ、ここで、より正に帯電した粒子は、循環の間に血液中の負に帯電した血漿タンパク質を引きつけ、結合し、細網内皮系(RES)による迅速なクリアランスをもたらす。一部の実施形態では、粒子のゼータ電位は、約-15mV~約10mV、好ましくは、約-15mV~約8mV、より好ましくは、約-10mV~約8mV、より好ましくは、約-8mV~約8mVである。ゼータ電位は、粒子が安定であり(すなわち、凝集しないなど)、血流から容易に除去されないという条件で、上記の範囲よりも負または正であることができる。ゼータ電位は、表面電荷を変える1つまたは複数の部分で粒子表面をコーティングまたは官能化することによって操作することができる。あるいは、モノマーそれ自体を官能化することができ、および/または追加のモノマーをポリマーに導入することができ、これにより、表面電荷が変わる。
【0254】
B.標的化部分
一部の実施形態では、ポリプレックスは、細胞型または細胞状態に特異的な標的化ドメインまたは標的化シグナルを含む。ポリプレックスに連結され得るか、または連結され得ない部分の例としては、例えば、特定の細胞への分子の送達を提供する標的化部分が挙げられる。標的化シグナルまたは配列は、宿主、組織、臓器、細胞、オルガネラ、非核オルガネラ、または細胞コンパートメントに特異的であり得る。例えば、本明細書の組成物は、ガラクトシル終端高分子で改変して、組成物を肝臓または肝臓細胞に標的化することができる。改変された組成物は、担体のガラクトース残基とこれらの細胞上にのみ大量に高い親和性で存在するアシアロ糖タンパク質受容体との相互作用後に、選択的に肝細胞に侵入する。また、本明細書の組成物は、他の特定の細胞間領域、コンパートメント、または細胞型を標的化することができる。
【0255】
一実施形態では、標的化シグナルは、ベクターおよび細胞膜を互いに十分に近づけて、ベクターの細胞への浸透を可能にするように、標的細胞の表面上に位置するそのリガンドまたは受容体に結合する。本開示の追加の実施形態は、ポリヌクレオチドを特定の組織または細胞型に特異的に送達することを対象とし、ここで、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードすることができるか、または異なるポリヌクレオチドの発現を妨げることができる。細胞に送達されるポリヌクレオチドは、細胞の機能を増強し得るか、またはそれに寄与し得るポリペプチドをコードすることができる。
【0256】
標的化部分は、抗体またはその抗原結合性断片、抗体ドメイン、抗原、T細胞受容体、細胞表面受容体、細胞表面接着分子、主要組織適合性遺伝子座タンパク質、ウイルスエンベロープタンパク質、および規定の細胞に特異的に結合するファージディスプレイによって選択されたペプチドであり得る。
【0257】
当業者は、記載されるポリプレックスの指向性が、単に標的化シグナルを変化させることによって変更することができることを認識するであろう。哺乳動物生物における組織中のほぼすべての細胞型が、ある固有の細胞表面受容体または抗原を持つことは当技術分野において公知である。そのため、細胞表面受容体または抗原に対するほぼあらゆるリガンドを標的化シグナルとして組み込むことが可能である。例えば、ペプチジルホルモンは、そのようなホルモンに対する受容体を持つそれらの細胞への送達を標的化する標的化部分を使用することができる。ケモカインおよびサイトカインは、同様に、それらの標的細胞への複合体の送達を標的化する標的化シグナルとして用いることができる。ある特定の細胞または細胞状態において優先的に発現される遺伝子を特定するために各種の技術が開発されており、当業者は、そのような技術を用いて、目的の標的組織において優先的にまたは固有に発現される標的化シグナルを特定することができる。
【0258】
腫瘍標的化
一実施形態では、標的化シグナルは、腫瘍細胞を選択的に標的化するために使用される。腫瘍細胞は、腫瘍においてのみ発現され得るか、または非腫瘍細胞に存在するが、腫瘍細胞において優先的に提示される、細胞表面マーカーを発現する。そのようなマーカーは、がん細胞へのポリプレックスの送達を増加させるために標的化することができる。
【0259】
例えば、一部の実施形態では、標的化部分は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸配列を含むポリペプチドである。例えば、標的化部分は、RGD配列を含み、RGDとαβおよびαβとの相互作用により腫瘍内皮に結合することができるポリペプチド以外のアルギニン-グリシン-アスパラギン酸-リシン(RGDK、mRGD)であり得る。一部の実施形態では、標的化部分は、ポリペプチド配列R/KxxR/K(ここで「x」は、任意のアミノ酸である)を含み、これは、ニューロピリン-1への結合を可能にする。インテグリンまたはニューロピリン-1との結合は、in vivoでの腫瘍への腫瘍標的化送達および組織透過送達を改善するための2つのアプローチである。類似のアプローチは、in vitroでのリガンド特異的遺伝子送達、ならびにin vivoでの肝臓、脾臓、および骨髄への標的遺伝子送達を促進することが報告されている。
【0260】
他の例示的な腫瘍特異的細胞表面マーカーとしては、限定されるものではないが、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、C反応性タンパク質(CRP)、がん抗原-50(CA-50)、卵巣がんに関連するがん抗原-125(CA-125)、乳がんに関連するがん抗原15-3(CA15-3)、胃腸がんに関連するがん抗原-19(CA-19)およびがん抗原-242、癌胎児抗原(CEA)、癌関連抗原(CAA)、クロモグラニンA、上皮ムチン抗原(MC5)、ヒト上皮特異的抗原(HEA)、ルイス(a)抗原、黒色腫抗原、黒色腫関連抗原100、25、および150、ムチン様癌関連抗原、多剤耐性関連タンパク質(MRPm6)、多剤耐性関連タンパク質(MRP41)、Neu癌遺伝子タンパク質(C-erbB-2)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、P-糖タンパク質(mdr1遺伝子産物)、多剤耐性関連抗原、p170、多剤耐性関連抗原、前立腺特異的抗原(PSA)、CD56、NCAM、EGFR、CD44、ならびに葉酸受容体が挙げられる。一実施形態では、標的化シグナルは、腫瘍細胞表面マーカーに特異的である抗体からなる。
【0261】
抗体
別の実施形態は、標的化シグナルとして作用するポリプレックスに結合した抗体またはその抗原結合性断片を提供する。抗体またはその抗原結合性断片は、ポリプレックスを細胞型または細胞状態に方向付けるために有用である。一実施形態では、ポリプレックスは、抗体結合ドメインであるポリペプチド、例えば、Staphylococcus aureus由来のプロテインAおよびプロテインGなどの抗体に結合することが公知のタンパク質に由来するポリペプチドでコーティングされる。抗体に結合することが公知の他のドメインは、当技術分野において公知であり、置換することができる。抗体結合ドメインは、抗体またはその抗原結合性断片をポリプレックスに連結する。
【0262】
ある特定の実施形態では、標的化シグナルとして機能する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、線状抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはそれらの断片である。代表的な抗体断片は、非ウイルスベクターの抗体結合部分と結合するそれらの断片であり、当技術分野において公知のFab、Fab’、F(ab’)、Fvダイアボディ(diabody)、線状抗体、一本鎖抗体、および二重特異性抗体を含む。
【0263】
一部の実施形態では、標的化シグナルは、ポリプレックスを所望の標的細胞型または細胞状態に方向付ける抗体の全部または一部を含む。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得るが、好ましくは、モノクローナルである。ヒト遺伝子治療の目的のために、抗体は、ヒト遺伝子に由来し得、細胞表面マーカーに特異的であり、当技術分野において公知であるように、ヒト宿主に対する潜在的な免疫原性を低減するように産生される。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子クラスター全体を含有するトランスジェニックマウスは、利用され得る「ヒト」抗体を産生することができる。一実施形態では、そのようなヒト抗体の断片が、標的化シグナルとして用いられる。好ましい実施形態では、ヒト抗体をモデルとした一本鎖抗体が、原核生物培養において調製される。
【0264】
一実施形態では、標的化シグナルは、脳および末梢神経系を含む神経系の細胞に方向付けられる。脳における細胞は、いくつかの型および状態を含み、その型に特異的な固有の細胞表面分子を持つ。さらにまた、細胞型および状態は、共通の細胞表面分子の提示によってさらに特徴付けおよびグループ化することができる。
【0265】
一実施形態では、標的化シグナルは、神経系の細胞の表面において発現される特定の神経伝達物質受容体に方向付けられる。神経伝達物質受容体の分布は、当技術分野において周知であり、当業者は、標的化シグナルとして神経伝達物質受容体特異的抗体を使用することによって、記載される組成物を方向付けることができる。さらにまた、それらの受容体に対する神経伝達物質の指向性を考えると、一実施形態では、標的化シグナルは、神経伝達物質受容体に特異的に結合することができる神経伝達物質またはリガンドからなる。
【0266】
一実施形態では、標的化シグナルは、アストロサイト、ミクログリア、ニューロン、オリゴデンドロサイト(oligodendrite)およびシュワン細胞を含み得る神経系の細胞に特異的である。これらの細胞は、それらの機能、場所、形状、神経伝達物質クラスおよび病理学的状態によってさらに分けることができる。神経系の細胞はまた、それらの分化の状態、例えば、幹細胞によって特定することができる。これらの細胞型および状態に特異的な例示的なマーカーは、当技術分野において周知であり、限定されるものではないが、CD133およびニューロスフェアが挙げられる。
【0267】
一実施形態では、標的化シグナルは、筋骨格系の細胞に方向付けられる。筋細胞は、いくつかの型を含み、その型および状態に特異的な固有の細胞表面分子を持つ。さらにまた、細胞型および状態は、共通の細胞表面分子の提示によってさらに特徴付けおよびグループ化することができる。
【0268】
一実施形態では、標的化シグナルは、筋細胞の表面において発現される特定の神経伝達物質受容体に方向付けられる。神経伝達物質受容体の分布は、当技術分野において周知であり、当業者は、標的化シグナルとして神経伝達物質受容体特異的抗体を使用することによって、記載される組成物を方向付けることができる。さらにまた、それらの受容体に対する神経伝達物質の指向性を考えると、一実施形態では、標的化シグナルは、神経伝達物質からなる。標的化され得る筋細胞において発現される例示的な神経伝達物質としては、限定されるものではないが、アセチルコリン(acetycholine)およびノルエピネフリンが挙げられる。
【0269】
一実施形態では、標的化シグナルは、2つの主要なグループ分けであるI型およびII型からなる筋細胞に特異的である。これらの細胞は、それらの機能、場所、形状、ミオグロビン含有量および病理学的状態によってさらに分けることができる。筋細胞はまた、それらの分化の状態、例えば、筋幹細胞によって特定することができる。これらの細胞型および状態に特異的な例示的なマーカーは、当技術分野において周知であり、限定されるものではないが、MyoD、Pax7、およびMR4が挙げられる。
【0270】
C.リンカー
一部の実施形態では、ポリプレックスは、負に帯電した薬剤および標的化部分の両方でコーティングすることができる。一部の実施形態では、負に帯電した薬剤および標的化部分は、リンカーによって一緒に連結される。リンカーは、ポリペプチド、または当技術分野において公知である任意の他の適切なリンカー、例えば、ポリエチレングリコール(poly ethylene glycol)(PEG)であり得る。
【0271】
一部の実施形態では、リンカーは、生理的pHでおよそ中性の電荷を有するポリペプチドである。一部の実施形態では、リンカーポリペプチドは、ポリグリシンである。例えば、一部の実施形態では、リンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはグリシン残基からなる。好ましい実施形態では、リンカーは、6残基ポリグリシンである。
【0272】
一部の実施形態では、負に帯電した薬剤は、単独で、または標的化部分と組み合わせて、静電相互作用によってポリプレックスに連結される。一部の実施形態では、負に帯電した薬剤、標的化部分、またはそれらの組合せは、ポリマー骨格への共有結合的なコンジュゲーションによってポリプレックスに連結されるか、またはポリマー骨格に付着した側鎖に連結される。
【0273】
D.ポリプレックスのサイズおよび凝集を低減する方法
小さな粒子径を維持することで、肝臓によるクリアランスを制限し、ポリプレックス粒子の標的細胞へのトランスフェクション能力を維持するので、凝集に対する耐性は重要であり得る。したがって、好ましい実施形態では、ポリプレックスは、凝集に対して耐性である。好ましくは、ポリプレックスは、コーティングの有無にかかわらず、約1nm~1000nmの半径、より好ましくは、約1nm~約500nmの半径、最も好ましくは、約15nm~約250nmの半径である。例えば、一部の実施形態では、ポリヌクレオチドが負荷されたコーティングされたポリプレックスは、約150nm~275nmの半径である。
【0274】
ポリヌクレオチド重量のポリマー重量に対する比(ポリヌクレチド:ポリマー)、ポリプレックスコーティングの含有量および量、またはそれらの組合せを使用して、ポリプレックスのサイズを調整することができる。
【0275】
例えば、下記の実施例は、一部の実施形態では、ポリマーとDNAの比が25:1の粒子のトランスフェクション効率が、50:1、100:1、150:1、および200:1のポリマー:DNA比を有する粒子のトランスフェクション効率よりも低いことを示す。特定の製剤に対する最も好ましいポリマー:ポリヌクレオチド比は、当技術分野において公知である方法、例えば、下記の実施例に記載される方法を使用して、経験的に決定することができる。一般に、ポリマー:ポリヌクレオチドの重量:重量比は、好ましくは、約10:1超、より好ましくは、約50:1超、最も好ましくは、約100:1超である。ポリマー:ポリヌクレオチドの重量:重量比は、好ましくは、約10:1~500:1、より好ましくは、約25:1~250:1、最も好ましくは、約50:1~150:1である。一部の実施形態では、ポリマー:ポリヌクレオチドの重量比は、約100:1である。好ましくは、ポリプレックスは、球状の形状を有する。
【0276】
実施例は、一部の実施形態では、コーティング剤分子のポリヌクレオチド分子に対する比(コーティング剤:ポリヌクレオチド)による粒子のトランスフェクション効率も示す。比は重量により表される。特定の製剤に対する最も好ましいコーティング剤:ポリヌクレオチド比は、当技術分野において公知である方法、例えば、下記の実施例に記載される方法を使用して、経験的に決定することができる。一般に、コーティング剤:ポリヌクレオチドの比は、0より大きく、好ましくは、約50:1より低く、より好ましくは、約25:1より低く、最も好ましくは、約10:1より低い。コーティング剤:ポリヌクレオチドの比は、好ましくは、約1:1~10:1、より好ましくは、約2.5:1~7.5:1である。一部の実施形態では、コーティング剤:ポリヌクレオチドの比は、約5:1である。10:1、5:1、および2.5:1のコーティング剤:ポリヌクレオチドの比は、本明細書では、それぞれ、10×、5×、および2.5×とも称される。好ましくは、ポリプレックスは、球状の形状である。
【0277】
E.PEGブロッキング含有ポリマー
ポリマーは、薬物送達、例えば、マイクロ粒子もしくはナノ粒子などの粒子、またはミセルの形成において使用することができ、これは、望ましい期間にわたって制御放出様式で1つまたは複数の治療剤、予防剤、および/または診断剤を放出することができる。
【0278】
pH応答性ミセルナノ担体は、多くの場合、両親媒性ブロックコポリマーの自己アセンブリーを介して形成され、親水性(例えばPEG)の外側シェル、および媒体pHに応答することができる疎水性内部コアからなる。典型的には、媒体pHを中性またはわずかに塩基性から弱酸性に変化させる際に、ミセルコアは、加速された分解を受け、水に完全に溶解性になるか、または水性媒体中で実質的に膨潤する。結果として、生理的pHでの遅い薬物放出速度を有する薬物封入ミセルは、酸性pHがトリガーになって、薬物分子を迅速に下ろす(unload)ことができる。以前の報告におけるミセルコアを構成するポリマーセグメントとしては、ポリ(オルトエステル)、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(L-ヒスチジン)などが挙げられる。以前のミセル系のほとんどでの主な欠点は、コポリマーを調製するために必要な複数のステップ、ならびにポリマー分子量を制御すること、およびコポリマー合成の間にポリマー組成を調整することの難しさである。
【0279】
コポリマーは、pHの関数として放出の速度の変動を呈した。PEG2K-PPMSコポリマー試料(PEG2K-PPMS-11%PDL、PEG2K-PPMS-30%PDL、およびPEG2K-PPMS-51%PDL)のDTX封入ミセルのin vitro薬物放出挙動を、生理学的pHの7.4および酸性pHの5.0の両方で、PBS溶液において研究した。一般に、すべてのミセル試料からのDTX放出は、二相性放出動態に従い、顕著なpH依存性を呈した。DTXが負荷されたPEG2K-PPMSコポリマーミセルは、最初の12時間の間に25~45%の薬物を迅速に放出し、それに続いて、その後の132時間、追加の25~40%の薬物をよりゆっくりと放出する。薬物放出速度に対する媒体pHの影響は、かなりのものである。例えば、インキュベーション期間の最後(144時間)に、PEG2K-PPMS-11%PDL、PEG2K-PPMS-30%PDL、およびPEG2K-PPMS-51%PDLコポリマーのミセルから放出された蓄積DTXの値は、生理学的pHの7.4で、それぞれ、66%、60%、および55%であり、これは、酸性pHの5.0で、85%、81%、および75%に対応して増加する。観察されたPEG2K-PPMSコポリマーミセルからのDTX放出のpHトリガー加速は、媒体pHを7.4から5.0に変化させると、ミセルPPMSコアのプロトン化とサイズ増加に起因してミセルの著しい膨潤を引き起こすという以前の観察と一致する。このpHトリガーのミセルサイズの拡大は、ミセルコアから水性媒体への捕捉されたDTXの拡散および放出を確実に促進するであろう。所与のpHで、DTX放出速度は、おそらく、ミセルコア中の薬物とPPMSマトリックスとの間の相互作用によって制御される。PDLに富むPEG2K-PPMSコポリマーは、それらのミセル内部コアにおいて強い疎水性ドメインを形成して、疎水性DTX分子をより良好に捕捉および保持することが予想されるので、そのようなコポリマーミセルからの薬物放出は、よりゆっくりと持続的であるはずである。この仮説は、7.4および5.0の両方のpHで、PEG2K-PPMSコポリマーミセルからのDTX放出速度が、コポリマーのPPMS鎖セグメントにおけるPDL含有量の増加とともに減少することを示す実験結果によって支持される。
【0280】
腫瘍細胞によるミセルの取り込みの際に、ミセル粒子は、5.5~6.0の範囲のpHでエンドソームにおける捕捉、および4.5~5.0の範囲のpHでリソソームにおける捕捉に付されることが公知である。上記の結果が明らかに示すように、これらの酸性環境は、必然的に、PEG2K-PPMSコポリマーミセルからの速いDTX放出のトリガーとなり、このようにして、薬物が負荷されたミセルの細胞毒性を増強する。コポリマー中のアミノ基は、エンドソームエスケープを促進するプロトンスポンジとして作用するであろう。したがって、PEG2K-PPMSコポリマーミセルによって呈されるpH応答性の性質は、非常に望ましく、それらを、抗がん薬の送達のための優れた担体にする。
【0281】
VII.製剤
製剤は、安全で有効であると考えられる材料から構成される薬学的に許容される「担体」を使用して調製され、望ましくない生物学的副作用または望まない相互作用を引き起こすことなく、個体に投与され得る。「担体」は、活性成分または成分以外の医薬製剤中に存在するすべての構成要素である。「担体」という用語は、限定されるものではないが、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、フィラー、およびコーティング組成物を含む。
【0282】
錠剤および遅延放出剤形を調製するための材料、装置およびプロセスに関する詳細な情報について、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, eds. Lieberman et al. (New York: Marcel Dekker, Inc., 1989)およびAnsel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6.sup.th Ed. (Media, PA: Williams & Wilkins, 1995)を参照されたい。
【0283】
VIII.ポリプレックスを調製する方法
A.粒子を作製するための方法
粒子は、当技術分野において公知の各種の技法を使用して調製することができる。使用される技法は、ナノ粒子を形成するために使用されるポリマー、得られる粒子の所望のサイズ範囲、および封入される材料に対する適合性を含む各種の要因に依存し得る。
【0284】
ナノ粒子を調製するために使用することができる当技術分野において公知の方法としては、限定されるものではないが、高分子電解質縮合(Suk et al., Biomaterials, 27, 5143-5150 (2006)を参照されたい);一重および二重エマルジョン;ナノ粒子成形、ならびに静電的自己アセンブリー(例えば、ポリエチレンイミン-DNAまたはリポソーム)が挙げられる。
【0285】
一実施形態では、負荷された粒子は、典型的には、有機溶媒中のポリマーの溶液を、目的のポリヌクレオチドと混ぜ合わせることによって調製される。ポリマー溶液は、ポリマーを溶媒に溶解または懸濁させることによって調製される。溶媒は、封入される核酸に悪影響を及ぼさない(例えば、不安定化または分解しない)ように選択されなければならない。好適な溶媒としては、限定されるものではないが、DMSOおよび塩化メチレンが挙げられる。溶媒中のポリマーの濃度は、必要により変えることができる。一部の実施形態では、濃度は、例えば、25mg/mlである。ポリマー溶液は、緩衝液、例えば酢酸ナトリウム緩衝液に希釈することもできる。
【0286】
次に、ポリマー溶液を、ポリヌクレオチドなどの封入される薬剤と混合する。薬剤は、それをポリマー溶液と混ぜ合わせる前に、溶媒に溶解して溶液を形成することができる。一部の実施形態では、薬剤は、それをポリマー溶液と混ぜ合わせる前に、生理学的緩衝液に溶解する。ポリマー溶液体積の薬剤溶液体積に対する比は、1:1であり得る。ポリマーおよび薬剤の組合せは、典型的には、トランスフェクションなどのその所望の目的のために溶液を使用する前に、数分間インキュベートして、粒子を形成する。例えば、ポリマー/ポリヌクレオチド溶液を、トランスフェクションのために溶液を使用する前に、2、5、10、または10分より長くインキュベートすることができる。インキュベーションは、室温であり得る。
【0287】
一部の実施形態では、粒子はまた、使用前にコーティング剤を含有する溶液とともにインキュベートされる。粒子溶液は、トランスフェクションのためにポリプレックスを使用する前に、コーティング剤とともに2、5、10、または10分よりも長くインキュベートすることができる。インキュベーションは、室温であり得る。
【0288】
一部の実施形態では、薬剤がポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドは、ポリマーと混合する前に、最初にポリカチオンと複合体化される。複合体化は、ポリヌクレオチドおよびポリカチオンを適切なモル比で混合することによって達成することができる。ポリアミンをポリカチオン種として使用する場合、ポリアミン窒素のポリヌクレオチドリン酸に対するモル比(N/P比)を決定することが有用である。好ましい実施形態では、阻害性RNAおよびポリアミンは、およそ1:1~1:25、好ましくは、約8:1~15:1のN/P比で、一緒に混合されて、複合体が形成される。特定のモル比を達成するために必要なポリアミン溶液の体積は、以下の式:
【数1】
[式中、Mw,inhRNA=阻害性RNAの分子量、Mw,P=阻害性RNAのリン酸基の分子量、ΦN:P=N:P比(ポリアミン由来の窒素の阻害性RNA由来のリン酸の比に対するモル比)、CNH2、stock=ポリアミンストック溶液の濃度、およびMw,NH2=ポリアミンの窒素あたりの分子量]
に従って決定することができる。ポリヌクレオチドをポリカチオンと混合して、ポリヌクレオチドを縮合させる方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国公開出願第2011/0008451号を参照されたい。
【0289】
「ポリカチオン」という用語は、選択されたpH、好ましくは、生理学的pHで、正電荷、好ましくは、少なくとも2つの正電荷を有する化合物を指す。ポリカチオン性部分は、選択されたpH値で、約2~約15の正電荷、好ましくは、約2~約12の正電荷、より好ましくは、約2~約8の正電荷を有する。多くのポリカチオンが当技術分野において公知である。ポリカチオンの好適な構成成分としては、塩基性アミノ酸およびそれらの誘導体、例えば、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リシンおよびヒスチジン;カチオン性デンドリマー;ならびにアミノ多糖が挙げられる。好適なポリカチオンは、直鎖状、例えば、直鎖状テトラリシン、分枝状またはデンドリマーの構造であり得る。
【0290】
例示的なポリカチオンとしては、限定されるものではないが、アクリルアミドおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパントリメチルアミンに基づく合成ポリカチオン、ポリ(N-エチル-4-ビニルピリジン)または類似の4級化ポリピリジン、ジエチルアミノエチルポリマーおよびデキストランコンジュゲート、硫酸ポリミキシンB、リポポリアミン、ポリ(アリルアミン)、例えば、強ポリカチオンのポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリブレン、ならびにポリペプチド、例えば、プロタミン、ヒストンポリペプチド、ポリリシン、ポリアルギニンおよびポリオルニチンが挙げられる。
【0291】
一部の実施形態では、ポリカチオンは、ポリアミンである。ポリアミンは、2個またはそれよりも多くの第一級アミン基を有する化合物である。好適な天然に存在するポリアミンとしては、限定されるものではないが、スペルミン、スペルミジン、カダベリンおよびプトレシンが挙げられる。好ましい実施形態では、ポリアミンは、スペルミジンである。
【0292】
別の実施形態では、ポリカチオンは、環状ポリアミンである。環状ポリアミンは、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,698,546号、WO1993/012096号およびWO2002/010142号に記載されている。例示的な環状ポリアミンとしては、限定されるものではないが、サイクレンが挙げられる。
【0293】
スペルミンおよびスペルミジンは、ODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)の作用によってL-オルニチンから産生されるプトレシン(1,4-ジアミノブタン)の誘導体である。L-オルニチンは、アルギナーゼによるL-アルギニン分解の産物である。スペルミジンは、プトレシン(1,4-ジアミノブタン)の脱炭酸S-アデノシルメチオニン(dcAdoMet)3-アミノプロピル供与体によるモノアルキル化を触媒するスペルミジンシンターゼ(SpdS)によって産生するトリアミン構造である。プトレシンの両方のアミノ基の3-アミノプロピル供与体での正式なアルキル化(formal alkylation)は、対称的なテトラアミンスペルミンが生じる。スペルミンの生合成は、dcAdoMetの存在下でのスペルミンシンターゼ(SpmS)の効果によってスペルミジンに進行する。3-アミノプロピル供与体(dcAdoMet)は、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼによるL-メチオニンの逐次変換によってS-アデノシルメチオニンから誘導され、それに続いてAdoMetDC(S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ)により脱炭酸する。そのため、プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンは、アミノ酸のL-アルギニン(L-オルニチン、プトレシン)およびL-メチオニン(dcAdoMet、アミノプロピル供与体)から誘導される代謝産物である。
【0294】
IX.粒子/ミセルを使用する方法
A.薬物送達
粒子は、有効量の1つまたは複数の治療剤、診断剤、および/または予防剤をそのような処置を必要とする患者に送達するために使用することができる。投与される薬剤の量は、処方する医師によって容易に決定することができ、患者の年齢および体重、ならびに処置される疾患または障害に依存する。
【0295】
粒子は、静脈内、皮下、もしくは筋肉内に注射されるか、鼻もしくは肺系に投与されるか、腫瘍環境内に注射されるか、粘膜表面(膣、直腸、頬側、舌下)に投与されるか、または経口送達のために封入されるかにかかわらず、薬物送達において有用である(本明細書で使用される場合、「薬物」は、治療剤、栄養剤、診断剤および予防剤を含む)。粒子は、乾燥粉末として、水性懸濁物(水、食塩水、緩衝食塩水などの中)、ヒドロゲル、オルガノゲル、もしくはリポソーム、カプセル剤、錠剤、トローチ、または他の標準的な医薬賦形剤中で投与され得る。
【0296】
B.トランスフェクション
組成物は、ポリヌクレオチドの細胞トランスフェクションのためのものであり得る。下記でより詳細に議論されるように、トランスフェクションは、in vitroまたはin vivoで起こり得、遺伝子治療および疾患処置を含む適用において適用することができる。組成物は、対照と比較した場合に、より効率的で、毒性が低く、またはそれらの組合せであり得る。一部の実施形態では、対照は、LIPOFECTAMINE 2000またはポリエチレンイミン(PEI)などの代替トランスフェクション試薬で処理された細胞である。
【0297】
トランスフェクションは、細胞をポリプレックスを含有する溶液と接触させることによって行われる。in vivoの方法について、接触は、典型的には、溶液が対象に投与された後にin vivoで起こる。in vitroの方法について、溶液は、典型的には、細胞の培養物に添加され、数分間、数時間、または数日間、細胞に接触させる。その後、細胞を洗浄して、過剰なポリプレックスを移動させることができる。
【0298】
ポリプレックスによって送達される特定のポリヌクレオチドは、処置される状態または疾患に応じて当業者によって選択することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、目的の遺伝子もしくはcDNA、mRNA、阻害性RNAなどの機能性核酸、tRNA、rRNA、あるいは目的の遺伝子もしくはcDNA、機能性核酸、tRNA、またはrRNAをコードする発現ベクターであり得る。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くのポリヌクレオチドが、組み合わせて投与される。
【0299】
組成物は、in vitroでポリヌクレオチドを細胞に送達する方法において使用することができる。例えば、ポリプレックスは、細胞のin vitroトランスフェクションのために使用することができる。方法は、典型的には、ポリヌクレオチドを細胞の細胞質に導入するための有効量でポリヌクレオチドを含むポリプレックスと細胞を接触させることを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞の遺伝子型または表現型を変化させるための有効量で細胞に送達される。細胞は、対象から単離された初代細胞、または樹立された細胞系の細胞であり得る。細胞は、同種の細胞型のものであり得るか、または異なる細胞型の異種性混合物であり得る。例えば、ポリプレックスは、例えば、フィーダー細胞培養、またはさまざまな分化の状態の混合培養において、異なる型の細胞を持つ不均一細胞系由来の細胞の細胞質に導入することができる。細胞は、細胞培養において無期限に維持することができる形質転換細胞系であり得る。例示的な細胞系は、腫瘍細胞系を含むアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から入手可能なものである。
【0300】
任意の真核細胞をトランスフェクトして、特定の核酸、例えば、代謝遺伝子を発現する細胞、例えば、初代細胞および樹立された細胞系を生成することができる。好適な型の細胞としては、限定されるものではないが、幹細胞、全能性細胞、多能性細胞、胚性幹細胞、内部細胞塊細胞(inner mass cell)、成体幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、および外胚葉、中胚葉、または内胚葉に由来する細胞を含む、未分化細胞または部分的に分化した細胞が挙げられる。好適な分化細胞としては、体細胞、神経細胞、骨格筋、平滑筋、膵臓細胞、肝細胞、および心臓細胞が挙げられる。別の実施形態では、siRNA、アンチセンスポリヌクレオチド(siRNAまたはアンチセンスポリヌクレオチドを含む)または阻害性RNAを、組成物を使用して、細胞にトランスフェクトすることができる。
【0301】
方法は、個別化治療の分野において、例えば、欠陥遺伝子を修復する、細胞を脱分化する、または細胞を再プログラミングするために、特に有用である。例えば、標的細胞は、最初に、当技術分野において公知の方法を使用してドナーから単離され、in vitro(ex vivo)への変化を引き起こすポリヌクレオチドを含むポリプレックスと接触させ、それを必要とする患者に投与される。起源または細胞は、患者またはアログラフィック(allographic)ドナーから直接採取された細胞を含む。好ましい実施形態では、対象に投与される標的細胞は、自家である、例えば、対象に由来するか、または同系である。同種異系細胞は、抗原的に一致した、遺伝的に無関係なドナー(国の登録を通じて特定される)から、あるいは遺伝的に関連する同胞もしくは親から得られるか、またはそれらに由来する標的細胞を使用することによって、単離することもできる。
【0302】
細胞は、陽性および/または陰性選択技法によって選択することができる。例えば、特定の細胞表面タンパク質に結合する抗体は、所望の細胞型を回収するために利用される磁気ビーズおよび免疫原性手順にコンジュゲートされ得る。一過性トランスフェクションの前に標的細胞を富化することが望ましくあり得る。特定の標的細胞について富化された組成物の文脈において本明細書で使用される場合、「富化された」は、天然の細胞の起源において見出されるものよりも高い所望のエレメント(例えば、標的細胞)の割合を示す。細胞の組成物は、細胞の天然起源よりも、少なくとも1桁、好ましくは、2桁または3桁、より好ましくは、10、100、200、または1000桁富化され得る。標的細胞が単離されたら、それらを、当技術分野において公知の確立された方法に従って好適な培地中で成長させることによって繁殖させてもよい。樹立された細胞系もまた、方法のために有用であり得る。細胞は、必要により、トランスフェクション前に凍結保存することができる。
【0303】
次に、細胞を、in vitroで組成物と接触させて、細胞を、修復、脱分化、再分化、および/または再プログラミングする。細胞をモニタリングすることができ、所望の細胞型を、治療的投与のために選択することができる。
【0304】
修復、脱分化、および/または再分化および/または再プログラミングの後、細胞は、それを必要とする患者に投与される。最も好ましい実施形態では、細胞は、同じ患者から単離され、同じ患者に戻して投与される。代替の実施形態では、細胞は、1人の患者から単離され、第2の患者に投与される。方法はまた、後の使用のために長期間保存することができる変更細胞の凍結ストックを生成するために使用することができる。一実施形態では、線維芽細胞、ケラチノサイトまたは造血幹細胞は、患者から単離され、in vitroで修復、脱分化、または再プログラミングされて、患者のための治療用細胞を提供する。
【0305】
C.in vivoの方法
組成物は、in vivoでポリヌクレオチドを細胞に送達する方法において使用することができる。ポリマーが、LIPOFECTAMINE 2000、PEI、およびさらに他のPMSCを含む代替トランスフェクション試薬よりも、ポリヌクレオチドの全身in vivoトランスフェクションについて、より効率的および/または毒性が低いことを発見した。したがって、一部の実施形態では、治療用ポリヌクレオチドを含む細胞特異的ポリプレックスは、疾患、例えば、がんを処置するために、in vivoで全身投与される。
【0306】
一部のin vivoアプローチでは、組成物は、治療有効量で対象に投与される。本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、処置される障害の1つまたは複数の症状を処置、阻害、または軽減するのに十分な投薬量、またはそうでなければ、所望の薬理学的および/または生理学的効果を提供するのに十分な投薬量を意味する。正確な投薬量は、対象に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健康など)、疾患、およびもたらされる処置などの各種の要因に従って変わる。
【0307】
医薬組成物は、非経口的(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経皮的(受動的に、またはイオントフォレーシスもしくは電気穿孔を使用するかのいずれか)、もしくは経粘膜的(鼻、膣、直腸、または舌下)な投与の経路によるか、または生体内分解性挿入物を使用する投与のためのものであり得、それぞれの投与の経路に適した剤形に製剤化することができる。
【0308】
一部の実施形態では、組成物は、全身的に、例えば、静脈内または腹腔内投与によって、標的化された細胞への組成物の送達に有効な量で投与される。他の可能な経路としては、経皮または経口が挙げられる。
【0309】
ある特定の実施形態では、組成物は、局所的に、例えば、処置される部位への直接注射によって投与される。一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の腫瘍に、注射されるか、またはそうでなければ直接投与される。典型的には、局所注射は、全身投与によって達成され得るものよりも高い組成物の増加した局所濃度を引き起こす。一部の実施形態では、組成物は、カテーテルまたはシリンジを使用することによって、適切な細胞に局所的に送達される。そのような組成物を細胞に局所的に送達する他の手段としては、注入ポンプ(例えば、Alza Corporation、Palo Alto、Calif.製)を使用すること、または組成物をポリマー性インプラントに組み込むこと(例えば、P. Johnson and J. G. Lloyd-Jones, eds., Drug Delivery Systems (Chichester, England: Ellis Horwood Ltd., 1987を参照されたい)が挙げられ、これは、インプラントのすぐ近くの領域へのポリプレックスの持続放出をもたらし得る。
【0310】
ポリプレックスは、それを細胞と接触させることによるなどで直接的に、または任意の生物学的プロセスの作用を通じてなどで間接的に、細胞に提供することができる。例えば、ポリプレックスは、生理学的に許容される担体またはビヒクルにおいて製剤化され、細胞を取り囲む組織または流体に注射することができる。ポリプレックスは、単純な拡散、エンドサイトーシス、または任意の能動的なまたは受動的な輸送機構によって、細胞膜を通過することができる。
【0311】
組成物は、遺伝子関連疾患または障害の処置のための遺伝子治療プロトコールにおいて使用することができる。細胞機能障害は、組成物および方法を使用して処置または低減することもできる。一部の実施形態では、遺伝子治療に適した疾患が、特異的に標的化される。疾患は、小児、例えば、18歳未満、典型的には、12歳未満の個体、または成人、例えば、18歳またはそれより年長の個体であり得る。そのため、本開示の実施形態は、ポリヌクレオチドを含むポリプレックスの疾患に冒された細胞へのトランスフェクションによって、疾患と診断された宿主を処置することを対象とし、ここで、ポリヌクレオチドは、治療用タンパク質をコードする。別の実施形態では、阻害性RNAは、タンパク質の発現を低減または排除するために特定の細胞型または状態に方向付けられ、それによって、治療効果を達成する。本開示は、遺伝子の欠陥または異常によって引き起こされる疾患を処置するための遺伝子を、操作すること、増大させること、または置き換えることを包含する。
【0312】
本明細書の組成物で処置することができる好適な遺伝ベースの疾患としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0313】
ミトコンドリア病:アルパース病;バース症候群;β酸化欠損;カルニチン-アシル-カルニチン欠損症;カルニチン欠損症;コエンザイムQ10欠損症;複合体I欠損症;複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;シトクロムcオキシダーゼ(COX)欠損症、LHON-レーベル遺伝性視神経症;MM-ミトコンドリアミオパチー;LIMM-致死性乳児ミトコンドリアミオパチー;MMC-母体ミオパチーおよび心筋症;NARP-神経原性筋力低下、運動失調、および網膜色素変性症;リー病;FICP-致死性乳児心筋症プラス(Fatal Infantile Cardiomyopathy Plus)、MELAS関連心筋症;MELAS-乳酸アシドーシスおよび脳卒中様エピソードを伴うミトコンドリア脳筋症;LDYT-レーベル遺伝性視神経症およびジストニア;MERRF-ミオクローヌスてんかんおよびラッグド-レッド筋線維;MHCM-母性遺伝性肥大型心筋症;CPEO-慢性進行性外眼筋麻痺;KSS-カーンズセイヤー症候群;DM-真性糖尿病;DMDF 真性糖尿病+聴覚消失;CIPO-ミオパチーおよび眼筋麻痺を伴う慢性偽性腸閉塞;DEAF-母性遺伝性聴覚消失またはアミノグリコシド誘発性聴覚消失;PEM-進行性脳症;SNHL-感音性難聴;脳筋症;ミトコンドリア細胞症;拡張型心筋症;GER-消化管逆流;DEMCHO-認知症および舞踏病;AMDF-運動失調、ミオクローヌス;運動不耐容;ESOC てんかん、脳卒中、視神経萎縮症および認知低下;FBSN 家族性両側線条体壊死;FSGS 巣状分節性糸球体硬化症;LIMM 致死性乳児ミトコンドリアミオパチー;MDM ミオパチーおよび真性糖尿病;MEPR ミオクローヌスてんかんおよび精神運動退行;MERME MERRF/MELAS重複病;MHCM 母性遺伝性肥大型心筋症;MICM 母性遺伝性心筋症;MILS 母性遺伝性リー症候群;ミトコンドリア脳心筋症;多系統ミトコンドリア障害(ミオパチー、脳症、失明、難聴、末梢神経障害);NAION 非動脈炎性前部虚血性視神経症;NIDDM 非インスリン依存性真性糖尿病;PEM 進行性脳症;PME 進行性ミオクローヌスてんかん;RTT レット症候群;SIDS 乳幼児突然死症候群;MIDD 母性遺伝性糖尿病および聴覚消失;ならびにMODY 若者の成人発症型糖尿病。
【0314】
核疾患(Nuclear Disease):筋ジストロフィー、エリス-ファンクレフェルト症候群、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、軟骨無形成症、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー-マリー-トゥース症候群、コケイン症候群、捻曲性骨異形成症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、エリス-ファンクレフェルト症候群、進行性骨化性線維異形成症、アルツハイマー病、アンジェルマン症候群、てんかん、本態性振戦、脆弱X症候群、フリートライヒ運動失調症、ハンチントン病、ニーマン-ピック病、パーキンソン病、プラダー-ウィリー症候群、レット症候群、脊髄小脳萎縮症、ウィリアムズ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、貧血、鎌状赤血球、バーキットリンパ腫、ゴーシェ病、血友病、白血病、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ポルフィリン症、サラセミア、クローン病、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症、嚢胞性線維症、聴覚消失、ペンドレッド症候群、緑内障、脳回転状網膜脈絡膜萎縮、副腎皮質過形成症、副腎白質ジストロフィー、コケイン症候群、QT延長症候群、高IgMを伴う免疫不全症、アルポート症候群、エリス-ファンクレフェルト症候群、進行性骨化性線維異形成症、ワールデンブルグ症候群、ウェルナー症候群。
【0315】
感染性疾患:ウイルス-AIDS、AIDS関連症候群、水痘(水疱瘡)、風邪、サイトメガロウイルス感染症、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、流行性耳下腺炎、インフルエンザ、 手足口病、肝炎-単純ヘルペス、帯状疱疹、HPV、インフルエンザ、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、伝染性単核球症、おたふく風邪、灰白髄炎、進行性多巣性白質脳症(Progressive multifocal leukencephalopathy)、狂犬病、風疹、SARS、天然痘(痘瘡)、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎、ウエストナイル病-黄熱病;細菌-炭疽病、細菌性髄膜炎、ブルセラ症、腺ペスト、カンピロバクター症、ネコひっかき病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、淋病、ハンセン病、レジオネラ症、ライ病、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、MRSA感染症、ノカルジア症、百日咳、肺炎球菌性肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱またはRMSF、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、テタヌス、トラコーマ、結核、野兎病、腸チフス、チフス、百日咳;寄生生物-アフリカトリパノソーマ症、アメーバ症、回虫症、バベシア症、シャーガス病、肝吸虫症、クリプトスポリジウム症、嚢虫症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、腸蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、自由生活性アメーバ感染症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、カラアザール、リーシュマニア症、マラリア、横川吸虫症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、蟯虫感染症、疥癬、住血吸虫症、テニア症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症(Trichinellosis)、旋毛虫症(Trichinosis)、鞭虫症、トリパノソーマ症。
【0316】
がん:乳がんおよび卵巣がん、バーキットリンパ腫、慢性骨髄性白血病、結腸がん、肺がん、悪性黒色腫、多発性内分泌腫瘍、神経線維腫症、p53 LieFrauMeni、膵臓がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、フォンヒッペル-リンダウ症候群、多発性嚢胞腎、結節硬化症。
【0317】
代謝障害:副腎白質ジストロフィー、アテローム性動脈硬化症、ベスト病、ゴーシェ病、グルコースガラクトース吸収不良症、脳回転状萎縮症、若年発症糖尿病、肥満、発作性夜間ヘモグロビン尿症、フェニルケトン尿症、レフサム病、タンジール病、テイ-サックス病、副腎白質ジストロフィー、2型糖尿病、ゴーシェ病、遺伝性ヘモクロマトーシス、レッシュ-ナイハン症候群、メープルシロップ尿症、メンケス症候群、ニーマン-ピック病、膵臓がん、プラダー-ウィリー症候群、ポルフィリン症、レフサム病、タンジール病、ウィルソン病、ツェルウェーガー症候群、早老症、SCID。
【0318】
自己免疫障害:多腺性自己免疫症候群、ループス、I型糖尿病、強皮症、多発性硬化症、クローン病、慢性活動性肝炎、関節リウマチ、グレーブス病、重症筋無力症、筋炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、ぶどう膜炎、多発性筋炎、レイノー現象、および脱髄性神経障害、ならびにリウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病(Bechet's disease)、チャーグ-ストラウス症候群、および高安動脈炎などのまれな障害。
【0319】
炎症性障害:脱毛症、捻曲性骨異形成症、エリス-ファンクレフェルト症候群、喘息、関節炎、例えば、変形性関節症、関節リウマチ、および脊椎関節症。
【0320】
加齢関連障害:アルツハイマー病、パーキンソン病、アテローム性動脈硬化症、加齢黄斑変性症、加齢性骨粗鬆症。
【0321】
方法および組成物はまた、組織再生/再生医療、幹細胞移植、可逆的遺伝子改変の誘導、阻害性RNAの発現、認知増強、パフォーマンス増強、およびヒトまたは非ヒト動物に対する美容的変更において、加齢に関連する症状を処置、管理、または低減するために使用することができる。
【0322】
D.トランスジェニック非ヒト動物
組成物および方法はまた、トランスジェニック非ヒト動物を生成するために使用することができる。特に、接合体マイクロインジェクション、核移植、割球電気融合、および胚性幹(ES)細胞サイブリッドの胚盤胞注入は、トランスジェニック動物を作出するための実現可能な戦略をそれぞれ提供している。一実施形態では、胚性幹(ES)細胞を、トランスフェクトし、キメラマウスを生成する手段として哺乳類胚の胚盤胞に注入する。別の実施形態では、胚性幹(ES)細胞を、最初に調製し、それに続いて胚への胚盤胞注入を行う。特定の遺伝子および目的の改変を有する細胞の使用は、トランスフェクトされたDNAの作出およびその結果の研究を可能にする。理論的に、この技法は、任意のポリヌクレオチドを生物全体に移入する見込みを提供する。例えば、方法および組成物は、特定の細胞型または細胞状態で送達されたポリヌクレオチドを持つマウスを作出するために使用することができる。
【0323】
単一細胞性または多細胞性の非ヒト生物、好ましくは、非ヒト哺乳動物、より好ましくは、マウスを、本開示の組成物を非ヒト生物に投与することによって、組成物でトランスフェクトすることができる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、エピソームのままであり、宿主生物のゲノムに安定に組み込まれない。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、目的の遺伝子の発現を防止する。そのため、宿主の特定の細胞におけるポリヌクレオチドの発現は、宿主に投与されるポリヌクレオチドの量によって制御することができる。
【0324】
トランスフェクトされた非ヒト生物は、従来のトランスジェニック生物に対していくつかの利点を有する。例えば、本明細書のトランスフェクトされた生物は、有性生殖なしで、従来のトランスジェニック生物よりも短い時間で生成することができる。また、宿主における目的のポリヌクレオチドの発現は、宿主に投与される目的のポリヌクレオチドの量によって直接調節することができる。目的のポリヌクレオチドの投薬量で制御された発現は、トランスフェクトされた動物において観察される表現型および変化と相関し得る。加えて、誘導性発現および/または複製制御エレメントを、目的のポリヌクレオチドに含ませて、誘導性および投薬量依存性の発現および/または複製を提供することができる。好適な誘導性発現および/または複製制御エレメントは、当技術分野において公知である。さらにまた、特定の細胞型および状態における遺伝子および遺伝子改変の効果は、動物の細胞全体に影響を及ぼすことなく、研究することができる。
【0325】
X.キット
真核生物または原核生物のトランスフェクション、特に、特定の細胞型または細胞状態のトランスフェクションを実施するために必要なエレメントを供給するキットまたはパックも開示する。一実施形態によれば、ポリマー、および必要に応じてポリプレックスコーティング、例えば、標的特異的コーティングを含むキットを提供する。ポリマーは、ユーザーが選択したポリヌクレオチドと組み合わせて、宿主または宿主細胞をトランスフェクトするために使用することができる複合体を形成することができる。ポリプレックスを、コーティングとさらに混合して、細胞型または細胞状態特異的な指向性を提供することができる。
【0326】
キットの個々の構成要素は、各種の容器、例えば、バイアル、管、マイクロタイターウェルプレート、ボトルなどに包装することができる。例えば、陽性対照試料、陰性対照試料、緩衝液、細胞培養培地など、他の試薬は、別々の容器に含め、キットとともに提供することができる。好ましくは、キットは、使用のための指示も含むであろう。
【実施例
【0327】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって、さらに理解されるであろう。
【0328】
解決される課題:タンパク質治療薬は、幅広い疾患に対する高度に有効な医療的処置として使用することができる(Harris et al., Pharmacol. Biochem. Behav. 150e151 48e56 (2016)、Jiang et al., J. Control Release 213 36e44 (2015)、Natarajan et al., Transl. Res. 188 10e26 (2017)、Efremenko et al., J. Control Release 247 175e181 (2017)、Jiang et al., Funct. Mater. 28 (6) 1703982 (2018)、Jiang et al., J. Control Release 231 38e49 (2016))。しかしながら、この治療クラスの臨床使用は、それらの費用および全身投与後の不安定性によって制限されており、持続性の、効率的で、安全な送達を確実にするための新しいアプローチについての必要性を明らかにしている(Carter, Exp. Cell Res. 317 (9) 1261e1269 (2011))。遺伝子治療は、低い投与頻度で持続的なタンパク質分泌の見込みに起因して魅力的である(Weissman, Expert Rev. Vaccines 14 (2) 265e281 (2015))。
【0329】
ウイルスを利用するDNAに基づく療法は、長期のタンパク質発現の可能性を提供するが、それらは、特に、挿入変異誘発のリスク、重度の免疫応答の誘導、およびタンパク質発現レベルの制御の困難さに関して、多くの安全性の懸念も生じる。DNAとは対照的に、mRNAは、核に侵入することなくコードされたタンパク質の発現を誘発し、そのため、挿入変異誘発のリスクを低減しながら、非分裂細胞をトランスフェクトするのにより高い効率を実証している。mRNA療法は、その投薬がスケーラブルであり、処置がサイトゾルにおけるmRNA安定性に一過性に関連するという追加の利点を有する。
【0330】
課題に対する解決手段:ポリマー材料のライブラリーを合成するための「トップダウン」アプローチを本明細書で提供する。ポリ(アミン-co-エステル)(PACE)を、遺伝子送達のために使用した。PACE:pDNAポリプレックスは、最も効率的かつ最も毒性が低い非ウイルスベクターの1つである(Zhou et al., Nat. Mater. 11 (1) 82e90 (2012))。PACEポリマーは、いくつかの重要な特徴を持つように設計された:(1)ポリマーの主鎖におけるエステル連結によって提供される生分解性;(2)高カチオン性ポリマーに関連する毒性を回避しながら、核酸との静電複合体化を可能にする低いカチオン電荷密度;および(3)ポリプレックスを安定化するラクトン基によって提供される疎水性。リパーゼ化学の耐性は、高い化学的多用途性を提供し、モノマー選択を介したポリマー構造のモジュレーションを可能にして、異なる材料のファミリーを容易に生じる。そのような多用途性は、mRNA送達のためのPACE技術を移行する見込みがある。
【0331】
さらなる改変を、肺系への薬剤の送達に有効であることが示されている化学および送達系に対して行った。
【0332】
(実施例1)
PACEポリマーはmRNAを送達することができる
材料および方法
材料
u-ペンタデカラクトン(PDL)、セバシン酸ジエチル(DES)、セバシン酸、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、クロロホルム-d、クロム(III)アセチルアセトネート、エチレンジアミン、エタノールアミン、グリシン、および1,10-カルボニルジイミダゾール(CDI)は、Sigma Aldrich(Saint Louis、MO)から購入し、受領したままで使用した。2-[(2-アミノエチル)(メチル)アミノ]エタノール(AEMAE)は、ChemBridge Corporation(San Diego、CA)から購入した。アクリル樹脂に担持された固定化Candida antarcticaリパーゼB(CALB)(Novozym 435)も、Sigma Aldrichから入手し、使用前に2.0mmHgで、50℃で20時間、乾燥させた。TransIT-mRNAトランスフェクションキットは、Mirus Bio LLC(Madison、WI)から購入した。ルシフェラーゼをコードする改変Fluc mRNAおよびエリスロポエチン(EPO)をコードするマウスEPO mRNAを、TriLink Biotechnologies(San Diego、CA)から購入した。HEK293細胞、Daoy細胞、およびSH-SY5Y細胞は、ATCC(Manassas、VA)から購入した。
【0333】
ポリマー合成
PACE合成を、異なる構造を有するポリマーを生成するためのいくつかの改変を含んで、Zhou et al., Nat. Mater. 11 (1) 82-90 (2012)によって記載されたようにして行った。簡潔には、(1)古典的または酸性のPACEのいずれかを得るために、セバシン酸ジエチルまたはセバシン酸を重合のために使用し、(2)古典的PACEの疎水性を変えるために、異なるパーセンテージのPDL(10%または20%)を反応物に添加し、(3)10%のPDLを含有する古典的PACEの分子量(MW)を変えるために、第2段階の反応時間を、2kDa~20kDaのMWを有するポリマーを得るために、8~72時間で変えた。
【0334】
結果
PACEは、ジエステル/二酸とアミノ置換ジオールおよびラクトンとの酵素共重合により形成されるターポリマーのファミリーである。PACEは、pDNA(Zhou et al., Nat. Mater. 11 (1) 82e90 (2012))、マイクロRNA(Adams et al., Cancer Res. 76 (4) 927e939(2016))、およびsiRNA(Cui et al., Nat. Commun. 8 (1) 191 (2017))を効率的に送達することができる。しかしながら、mRNAとこれらの他の核酸との間の構造的な相違を考えると(Kauffman et al., Nano Lett. 15 (11) 7300e7306 (2015))、既存のPACE構造の改変および/または新しいPACEバリアントの開発が、送達を改善する手段として考慮された。リパーゼ触媒の高い耐性は、特に疎水性およびMWの観点で、構造の多用途性を提供する。DNAの送達およびトランスフェクションのために最も効率的なPACE組成物の1つから開始して(古典的PACE)、mRNAの送達およびトランスフェクションを特異的に改善するために、さまざまなMWおよびラクトン含有量を有する異なるポリマーを合成した。
【化24】
【0335】
PACE合成は、最終ポリマーにおける異なるパラメーターを変えるように改変した。セバシン酸ジエチル(R=CH2CH3)またはセバシン酸(R=H)を使用して、それぞれ、古典的(エステル/OH)末端または酸性(COOH/OH)末端PACEを作製した。古典的PACEにより、合成の第2ステップの持続時間を8時間~72時間で変えて、MWを変えた。PDL含有量(10%または20%)を変えて、ポリマーの疎水性を改変した。
【0336】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、ポリマーのMWを決定した。すべてのPACEポリマーは、mRNAを複合体化し、中性または負の表面電荷を有するナノサイズのポリプレックスを形成することが可能であった。
【0337】
RIBOGREEN(登録商標)アッセイを使用して評価した場合、すべてのポリマーは、55~76%の範囲の効率でmRNAを封入することが可能であった。HEK-293細胞においてルシフェラーゼ(LUC)を発現するmRNAをトランスフェクトする異なるPACEポリマーの能力を使用して、in vitroトランスフェクションの性能をスクリーニングした。異なる構造改変を表すこれらのPACEポリマーはいずれも、陽性対照として使用された市販の薬剤であるTRANSIT(登録商標)と同等のトランスフェクションレベルを提供しなかった(図1A~1C)。しかしながら、ポリマーのMWによるトランスフェクションレベルの明確な傾向が観察された。ポリマーのMWが20kDaから5kDaに減少するにつれて、2桁のトランスフェクション効率(それぞれ、1.1×10RLU/mgおよび4.4×10RLU/mg)の増加が観察された。しかしながら、トランスフェクションのレベルが、遊離mRNAで得られるレベルと同等の2kDaのMWのPACEを使用すると劇的に減少したので、この傾向は5kDaでプラトーになるように見える。以前の研究は、ポリカチオンとポリアニオンとの間の静電的複合体化の強度および安定性が、ポリカチオンの長さとともに指数関数的に増加することを報告している(Akinc et al., Bioconj. Chem. 14 (5) 979e988 (2003)、Tsuchida & Osada, Makromol. Chem. 175 (2) 593e601 (1974)、Choosakoonkriang et al., J. Pharmaceut. Sci. 92 (8) 1710e1722 (2003)、Schaffer et al., Biotechnol. Bioeng. 67 (5) 598e606 (2000))。
【0338】
これらの結果は、非常に短いポリマー(2kDa)が、おそらくmRNAの不十分な複合体化に起因して、トランスフェクションに非効率的であることを示す。2kDaの閾値を上回ると、より短いポリマー(5kDa)は、おそらく細胞内部の高MWのPACEポリプレックスからのmRNAの非効率的な放出に起因して、より高いMWのポリマー(10kDaまたは20kDa)よりもmRNAの送達においてより効率的である。高MWのPACE鎖は、多数の正電荷および疎水性ドメインを含有し、これは、mRNAとの熱力学的に安定な結合をもたらし、ポリプレックスからのその放出を防止する。結果は、効率的なmRNA送達が、ポリマーのMWの精細なバランスに由来することを示し、ポリマー鎖の長さは、mRNAの複合体化およびポリプレックスの安定化を確実にするために十分に長いが、細胞の内側でのmRNAの放出のために十分に短いことが必要である。他方で、10kDaのPACEポリマーのPDL含有量を10%から20%に増加させることは、トランスフェクション効率に有意な影響を及ぼさず(図1B)、これは、pDNAで観察されたものとは逆であり、ポリマー構造がそれぞれの遺伝子材料のモジュレーションから利益を得ることが確認された。
【0339】
これは、2kDa超~10kDa未満、より好ましくは、3kDa~8kDaの範囲、最も好ましくは、5kDaの分子量を有するポリマーが最も効果的であろうことを示す。
【0340】
(実施例2)
PACEトランスフェクション効率はその末端基組成に高度に依存する
材料および方法
ポリマー末端基の改変
異なる末端基を有するPACEを調製するために、親ポリマーを、セバシン酸ジエチルの代わりにセバシン酸を用いて合成し、これは、ヒドロキシルおよびカルボキシル末端基の混合物を有するPACEを与えた。次いで、両方の末端基を、1:40のモル比で、CDIにより、室温で終夜、乾燥ジクロロメタン中で撹拌することによって活性化した。混合物を、脱イオン水で3回洗浄し、それに続いて真空下でDCMを蒸発させて、反応物であるPACE-CDIを得た(下記のスキームを参照されたい)。
【0341】
PACE-CDIを、アミン含有分子と反応させて、新しい末端基を有するPACEを得た。具体的には、グリシンおよびAEMAEを使用して、それぞれ、PACE-COOHおよびPACE-MAEを生成した。コンジュゲーションのために、5mMのグリシンまたはAEMAEを、DMSO中の0.5mMのPACE-CDIと、一定の撹拌下、室温で40時間反応させた。反応後、混合物を、10倍体積の脱イオン水で洗浄し、DCMで抽出し、それに続いて真空下でDCMを蒸発させて、PACE-COOHおよびPACE-MAEを得た。このプロトコールを採用して、10kDaの酸性PACEを合成する場合、5kDaのPACE-CDIおよびエチレンジアミンを、2:1の正確なモル比で添加した。
【化25】
【0342】
上記に示されるように、-COOHまたは-MAE末端基を有するPACEを得るために、CDI活性化(1、2)による酸性PACE、それに続いてアミン含有分子による求核置換(3、4;R=グリシン、またはAEMAE)を行った。
【0343】
ポリマーの特徴付け
1Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker AVANCE 500分光計において記録した。逆ゲート化13C NMRのために、試料を、クロロホルム-d中の50mg/mLのポリマーで調製し、クロム(III)アセチルアセトネート(Cr(acac)3)を、緩和剤として5mg/mLの濃度で添加した。シグナルを、10秒のT1緩和時間を使用して記録した。ポリマーの分子量(MW)を、microSTYRAGELカラム(混合ベッド;細孔サイズ100Å~10Å)を備えたWaters HPLCシステムを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。0.2wt%のトリエチルアミンを含有するクロロホルムを、1mL/分の流速で、溶離液として使用した。2mg/mLの試料濃度および100μLの注入体積を使用した。ポリマーのMWを、Sigma Aldrich(Saint Louis、MO)製の狭い多分散性ポリスチレン標準によって作成された従来の較正曲線に基づいて決定した。Empower II GPCソフトウェアを使用して、GPC機器を実行し、MW算出を行った。
【0344】
ポリプレックスの調製および特徴付け
明示されない限り、ポリマー:mRNAポリプレックスを、25mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)中で100:1のポリマー:mRNA重量比で調製した。in vitro実験のために、10μg mRNA/mLの溶液を調製した:1μLのポリマー溶液(DMSO中に100mg/mL)を、最初に50μLの酢酸ナトリウム緩衝液で希釈した。短時間のボルテックス後、ポリマー溶液を、50mLの酢酸ナトリウム緩衝液で希釈された1μgのmRNAと混合し、再度ボルテックスした。ポリマー:mRNA混合物を、使用前に室温で10分間インキュベートした。in vivo実験のために、酢酸ナトリウム緩衝液中の100μg mRNA/mLの溶液を、同じ方法によって調製した。
【0345】
ポリプレックスの流体力学的直径を、2μg/mLのmRNAの濃度でのDI水へのポリプレックスの希釈後、Malvern Nano-ZS(Malvern Instruments、UK)を使用する動的光散乱(DLS)によって測定した。ゼータ電位を測定するために、同じ溶液を、使い捨てキャピラリーセルにロードし、Malvern Nano-ZSにおいて分析した。
【0346】
ポリプレックスにおけるmRNAの封入効率(EE)を、製造業者の説明書に従って、Quant-IT RiboGreen RNAキット(Invitrogen、番号R11491)を使用して測定した。RiboGreenアッセイは、溶液中の遊離mRNAの量を測定するので、この量を、ポリプレックスを形成するために添加された初期量に対して減算して、ポリプレックス内で複合体化したmRNAの量を得た。
【0347】
細胞培養
HEK293細胞およびSH-SY5Y細胞を、10%のFBSおよび1%のpen/strepで追加補充された4.5g/LのグルコースDMEM培地(Gibco 番号11965)中、37℃および5%のCOで培養した。Daoy細胞を、10%のFBSおよび1%のpen/strepで追加補充された2mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、および1500mg/Lの重炭酸ナトリウムEMEM培地(ATCC 番号30-2003)中、37℃および5%のCOで培養した。
【0348】
in vitroトランスフェクション
Fluc mRNAのin vitroトランスフェクションのために、細胞を、500μLの培地中、75,000個細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種し、接着を確実にするために終夜インキュベートした。培地を、400μLのトランスフェクション培地(10%のFBSを含有するが、pen/strepなしの培養培地)に置き換え、100μLのポリプレックス(合計で1μgのmRNA)をそれぞれのウェルに添加した。遊離mRNA対照のために、1μgのmRNAを、100μLの酢酸緩衝液に希釈し、ウェルに添加した。市販のmRNAトランスフェクションキットであるTransITを、対照として使用した。簡潔には、1μgのmRNAを、100μLのOPTIMEM培地(Gibco 番号11058021)中の0.7μLのブースト試薬および1.1μLのTransIT試薬と混合した。トランスフェクションの24時間後、ルシフェラーゼ発現を測定した。細胞を、200μLの1×溶解緩衝液(Promega、番号E397A)を使用して洗浄および溶解し、-80℃で1回の凍結融解サイクルを行った。次いで、20μLの溶解物を、100μLのルシフェラーゼレポーター試薬(Promega、番号E1483)と混合し、発光を、Glomaxルミノメーター(Promega)において読み取った。溶解物のタンパク質含有量を、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(ThermoFisher、番号23225)を使用して測定した。すべての実験は、二連の3つの独立した試験で実行した。
【0349】
結果
図2は、実施例2に示される方法によって合成された5kDaまたは10kDaのいずれかのMWを有するPACE-COOHおよびPACE-MAEのトランスフェクション効率を示す棒グラフである。統計学的有意性は、スチューデントのt検定によって決定した(次の通り示す:*、P<0.05;***、P<0.001)。
【0350】
セバシン酸ジエチル、PDL、およびMDEAの三元重合によって合成されたPACEは、メチル(セバシン酸ジエチルから)およびヒドロキシル(MDEAから)末端基の混合物を含有する。モノマーのセバシン酸ジエチルを、PACE合成のためにセバシン酸によって置き換えて、酸性PACEを形成した場合、そのmRNAトランスフェクション効率は、2倍になった(図2)。同じポリマー上の異なる末端基は、pDNAのトランスフェクション効率に劇的な影響を及ぼし得る(Sunshine et al., Biomacromolecules 12 (10) 3592e3600 (2011)、Sunshine et al., Mol. Pharm. 9 (11) 3375e3383 (2012))。実験を、末端基組成がmRNAトランスフェクションにも影響を及ぼし得るか、より詳細には、PACE上の改変末端基がmRNA送達を改善し得るかを決定するために設計した。
【0351】
分子量が5kDa周辺のカルボキシルおよびヒドロキシル末端基の混合物を含有する酸性PACEを出発材料として使用した。これらの2つの末端基は両方とも、1,10-カルボニルジイミダゾール(CDI)によって活性化され得、これは、グリシンまたはAEMAEを含むアミン含有分子によってさらに置換されて、それぞれ、カルボキシル(eCOOH)末端基(PACE-COOH)または(メチルアミノ)エタノール(-MAE)末端基(PACE-MAE)を形成した。
【0352】
-COOHまたは-MAE末端基を有するPACEである酸性PACEを、CDI活性化、それに続くアミン含有分子による求核置換(3、4;R=グリシン、またはAEMAE)によって得た。
【0353】
これらの2つのモノマーは、より高いトランスフェクション効率を有する末端基を特定するために、酸性PACEにおいて見られる末端基の天然に存在するミックスを模倣するように選択した。反応機構は、NMR分光法によって確認される通り、両方の末端基について、90%超の変換率を保証した。
【0354】
次に、in vitroでmRNAをトランスフェクトするこれらのポリマーの能力を評価した。図3Aは、10%のPDL含有量、分子量が2kDa、5kDa、10kDa、および20kDaの古典的PACEを使用したMWの効果(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図3Bは、10kDaの古典的PACEポリマーの10または20%のPDLを使用したPDL含有量の効果(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図3Cは、10%のPDL含有量で、MWが5kDaの酸性PACEおよび古典的PACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。結果を、二連で実行された3つの独立した実験の平均±SDとして表す。
【0355】
5kDaのPACE-MAEポリマーが、同じMWのPACE-COOHよりも2桁高いトランスフェクション効率を実証したように、異なる末端基を有するPACE間でトランスフェクション効率に有意差が観察された(図3C)。PACE-MAEは全mRNAの98%を封入し、PACE-COOHは18%しか封入できなかったので、この効果は、これら2つのポリマーのEEの相違によって説明することができる。5kDaより高い分子量の酸性PACEは、技術的な課題(ポリマー鎖が長く成長するにつれて、水の副生成物を除去することの困難さ)に起因して、直接合成されなかったが、10kDaの酸性PACEは、5kDaのポリマーのCDI活性化とそれに続くエチレンジアミン分子による2つのポリマー鎖の架橋によって得ることができる。10kDaの酸性PACEをカルボキシルまたはヒドロキシル末端基のいずれかで改変した場合、そのトランスフェクション効率は、その5kDaの対応物と比較して有意に改善され(図3A)、これは、PACE-COOHおよびPACE-MAEポリマーについて、MWが増加すると、トランスフェクション効率が増加することを意味する。
【0356】
この挙動は、MWが増加するにつれて、トランスフェクション効率が減少する古典的PACEとは劇的に異なり、トランスフェクション効率における末端基の重要性をさらに実証する。PACE-COOHのEEは、MWが5kDaから10kDaに増加した場合に18%から45%に増加したが、PACE-MAEのEEは、実際にはあまり変化せず(5kDaで98%対10kDaで95%)、EEの増加がトランスフェクション効率の改善についての唯一の説明ではないことを示す。
【0357】
これらのデータは、PACE末端基およびMWの寄与が、相加的よりも大きいことを示す。PACE末端基の特質は、そのmRNAとの複合体化の能力に寄与すると思われ、MWは、複合体化においても役割を果たし、エンドソームエスケープおよび/またはサイトゾルにおけるmRNA放出などの下流の生物学的ステップに関与し得る。
【0358】
(実施例3)
mRNA送達のためのPACEの「トップダウン」発動はPACEポリマーを発動した
材料および方法
ポリマーの発動
異なる出発MWを有するポリマー(20~30mg)を、ガラスバイアルの内面に均一に広げ、効率的な空気浸透を確実にする薄膜を形成した。次いで、バイアルを、異なる時間の長さにわたって湿った空気流への暴露を伴って、制御された温度(典型的には、37℃)でインキュベートした。
【0359】
in vitro毒性
PACEポリマーおよびTransITの細胞毒性を評価するために、HEK293細胞を、100μLの培地中、10,000個細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、終夜インキュベートして、接着を確実にした。ポリマー:mRNAポリプレックスまたはTransIT/mRNA複合体を、トランスフェクション実験についてと同じw:w比を使用して形成し、異なる濃度でトランスフェクション培地に希釈した。100μLのポリプレックス含有培地を、ウェルに添加して、0.01~20μg/mLの範囲のmRNAの最終濃度を達成した。24時間のインキュベーション後、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して測定した。すべての実験は、二連の3つの独立した試験で実行した。
【0360】
ポリプレックスの凍結乾燥
PACE:mRNAポリプレックスを、酢酸ナトリウム緩衝液を使用して調製し、異なる濃度のトレハロース溶液(25mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH=5.8中に30mg/mLまたは60mg/mL)を1:1の体積比でポリプレックス懸濁物に添加し、0、15または30mg/mLの最終トレハロース濃度を得た。次いで、混合物を、液体窒素中で急速凍結し、2日間凍結乾燥した。凍結乾燥の最後に、ポリプレックスを、酢酸ナトリウム緩衝液に再懸濁させ、トランスフェクション効率を、HEK293細胞において評価した。トランスフェクションおよび遺伝子発現の特徴付けを、上記に記載される方法を使用して行った。
【0361】
結果
PACEのライブラリーの「ボトムアップ」合成による最初のスクリーニングの後、ポリマーのMWおよび末端基の組成を、mRNAに対するこの材料のトランスフェクション効率を決定する2つの重要なパラメーターとして特定した。MWの効果は、5kDa~10kDaの狭い範囲内で、トランスフェクション効率に有意に影響を及ぼすと思われた。「トップダウン」アプローチは、高MWポリマーの制御された加水分解によりPACEのMWおよび末端基を同時に変えるように適合させた。これを行うことによって、より高いトランスフェクション効率を有するPACE末端基およびMWが、モジュレートされ、特定された。
【0362】
この方法は、発動PACE(aPACE)と呼ばれる新しい材料ファミリーを生成した。これらの生分解性aPACEポリマーは、ごくわずかな毒性で、in vitroおよびin vivoの両方で高いトランスフェクションレベルを与えた。
【0363】
aPACEは、エステル骨格の制御された加水分解によって生成した。適度な温度下での空気への暴露は、PACEの加水分解のために温和な条件を提供し、このようにして、そのMWを減少させ、ヒドロキシルおよびカルボキシル末端基を露出させる。
【0364】
これを確認するために、aPACEを、NMR分光法およびGPCによって特徴付けた。aPACEのNMR分析は、古典的非発動PACEと比較して、ヒドロキシル基ピーク下面積の増加(aPACEおよび古典的PACEについて、それぞれ、58.2および58.9)、およびaPACEにおいて178ppmに明確なカルボキシルのピーク出現が観察されたように、発動プロセスがヒドロキシルおよびカルボキシル末端基の露出をもたらしたことを実証した。GPCは、発動プロセスが、すべてのPACEポリマーのMWを減少させたことを示した(図4)。
【0365】
ポリエステルの加水分解は周知である。これらの反応は、通常、高温、高圧、および/または触媒の存在下で進行し得る。発動が、37℃と比較して100℃で行われると加速され得ることが観察された。しかしながら、より再現性の高いプロセスのために提供されるより温和な温度を使用すると、aPACEの所望の分子量が得られた。
【0366】
mRNAについてのPACEトランスフェクション効率に対する発動プロトコールの効果を調べるために、異なる発動期間で異なる開始MWから生成したaPACEを試験した。aPACEおよびmRNAから生成した自己アセンブル化ポリプレックスは、HEK293細胞のトランスフェクションに高度に有効であり、陽性対照のTransITと同等のルシフェラーゼ発現のレベルをもたらした(図5A~5B)。トランスフェクション効率は、発動時間および発動ポリマーの初期MWに依存し、それぞれの初期MWに最適な発動時間があるように思われた(図5A:5kDaのポリマーについて5日、10kDaのポリマーについて10日、および20kDaのポリマーについて30日)。これらの改善された発動時間について、すべてのaPACEポリマーは、TransITと同等のレベルのトランスフェクションを提供し、それらの非発動対応物と比較して、有意に高いトランスフェクションレベルを提供した(図2、p<0.005)。
【0367】
異なる濃度で細胞毒性について試験した場合、TransITは、かなりの細胞死を誘導したが、類似する量の送達されるmRNAについて、すべてのaPACE製剤は細胞毒性ではなかった(図5C)。
【0368】
20kDaのポリマーを100℃で6時間発動した加速発動プロセスは、20kDaのポリマーを37℃で30日間発動した場合と類似のトランスフェクションレベルをもたらした(図5D)。加速発動プロセスにもかかわらず、37℃と比較して、100℃で発動を行う場合、類似の動態プロファイルが観察された。両プロセスは、トランスフェクション効率が最適まで増加し、それに続いて活性の低下を呈した。この観察は、類似の時間依存性プロセスが、両方の温度で起こっていることを示す。
【0369】
これらのaPACEのMWは、6kDa~8kDaの範囲で互いに近かった。それらのトランスフェクション効率の相違を考慮すると、データは、aPACEのMWの狭い範囲内でトランスフェクション効率の迅速な変化を示し、スクリーニングのための「トップダウン」発動アプローチを使用する価値を強調する。送達ビヒクルは、異なる遺伝子材料の輸送のためにモジュレートされるべきであるので、制御された「トップダウン」発動プロセスは、それぞれの遺伝子材料についてのMWおよび末端基の組合せを最適化するための簡単で強力な方法を構成する。このプロセスの利点は、MWのような重要な要因を微調整する精度、および同じ出発材料から発動段階でポリマーの別々のライブラリーを合成する単純さを含む。全体として、結果は、アプローチが、mRNA送達およびトランスフェクションに合わせたMWおよび末端基の最適な組合せを提供したことを確認した。
【0370】
aPACEの幅広い有効性を確実にするために、これらのポリマーは、ヒト髄芽腫細胞系であるDaoy細胞、およびヒト神経芽細胞腫細胞系であるSH-SY5Y細胞におけるトランスフェクションについても試験した。HEK293細胞において観察されたように、発動プロセスは、両方の細胞系においてPACEトランスフェクション効率を有意に増加させた。
【0371】
aPACE:mRNAポリプレックスに対する凍結乾燥の効果も試験した。トレハロースを凍結保護剤として使用し、トランスフェクション効率を、ポリプレックスの再構成後に、HEK293細胞において評価した。aPACEを用いて調製された凍結乾燥ポリプレックスは、凍結保護剤がない場合でさえ、新鮮なポリプレックスと同じくらい効率的であったが、高濃度のトレハロース(6%)の添加は、トランスフェクション効率をわずか増加させた。
【0372】
(実施例4)
aPACEはin vivoでのmRNA送達に有効である
材料および方法
in vivo研究
すべての動物の作業は、Yale Animal Resource Center(YARC)およびInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のガイドラインに従ってYale Universityにおいて完了した。雌BALB/cマウス(20g、Charles River、Willimantic、CT、USA)を実験のために使用した。
【0373】
PACE:mRNAポリプレックス(mRNAにおいて0.1mg/mL、N=3)、aPACE:mRNAポリプレックス(mRNAにおいて0.1mg/mL、N=3)、TransIT:mRNA複合体(mRNAにおいて0.1mg/mL、N=3)、酢酸ナトリウム緩衝液に希釈された遊離mRNA(mRNAにおいて0.1mg/mL、N=3)または酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH5.8、N=3)を、200μLの体積で、尾静脈を通して静脈内投与した。
【0374】
後眼窩採血(50μL)を、粒子投与前、および注射の6時間後、24時間後、48時間後、72時間後および7日後に行った。採血直後に、血漿を、遠心分離(3000g、10分)によって分離し、さらなる分析まで-80℃で凍結した。血漿中のEPO濃度を、ELISAキット(R&D Systems)を使用して測定した。注射の24時間後および7日後に、肝臓、腎臓、および脾臓を採取し、H&E染色のために処理し、任意の異常な細胞形態について外部の病理学者によってスコア化した。GraphPad Software、La Jolla California USA、www.graphpad.com/)を、グラフ作成および統計分析のために使用した。統計学的有意性は、95%の信頼水準で両側の独立スチューデントのt検定を使用して試験した。
【0375】
結果
治療的に関連するmRNAの送達についてaPACEポリマーを評価するために、EPO発現mRNAを送達するそれらの能力を、マウスにおいて評価した。2つのaPACEポリマー(5日間発動した5kDaのPACEおよび10日間発動した10kDaのPACE)を、試験し、陽性対照のTransIT(これはin vivoでのmRNA送達のためのその証明された有効性のために選択した(Kariko et al., Mol. Ther. 20 (5) 948e953 (2012))と比較した。30日間発動した20kDaのPACEは、形成されたポリプレックスが、in vivo投与に必要な高濃度でのサイズの観点で十分に安定ではなかったので、試験しなかった。
【0376】
EPO mRNA:aPACEポリプレックスを、野生型マウスに静脈内注射して、20mgのmRNAの総用量を送達し、血液を、注射後の異なる時点で採取して、ELISAによってEPOレベルを測定した。最適化されたaPACEポリマーを使用したmRNAポリプレックスは、その後のEPO産生において反映されるように、EPO mRNAの送達における高い有効性を実証した。
【0377】
注射の6時間後、最良の非発動ポリマーであった5kDaの非発動PACEは、陽性対照のTRANSIT(登録商標)(170ng/mL)よりも高い高レベルのEPO(530ng/mL)を産生した。10kDaの非発動PACEは、6時間でより低いEPOレベル(14ng/mL)を産生し、MWが5kDaよりも大きいポリマーから形成されるポリプレックスがより低いトランスフェクション効率を提供するという非作動ポリマーについてin vitroで観察された傾向を確認した。
【0378】
図5Aは、それぞれのMWについて好ましい発動時間を実証する発動時間(日)に応じたルシフェラーゼmRNAトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す線グラフである(20kDaとして特定される線-0日で下側のデータポイント;10kDaとして特定される線 0日で中央のデータポイント;5kDaとして特定される線-0日で上側のデータポイント)。発動した5kDaのPACEは、非発動形態と比較して、EPO産生を有意に増加させなかったが、37℃、10日間にわたる10kDaの発動は、EPOレベルを、1100ng/mLまで有意に増加させた(図5A、p<0.0001)。
【0379】
図5Bは、非発動PACE、およびそれらの好ましい発動時間(5kDaのポリマーについて5日、10kDaのポリマーについて10日、および20kDaのポリマーについて30日、**p<0.005)で異なる初期MWの発動PACEを使用したトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)を示す棒グラフである。図5Cは、mRNA:TransIT複合体(下側の線)と比較した、mRNA:aPACEポリプレックス(5kDa 5日、10kDa 10日、20kDa 30日(上側の線のクラスター))の細胞毒性プロファイル(細胞生存率(%))を示す線グラフである。血液化学および組織学分析は、aPACEが投与の24時間後または7日後、全身毒性を誘発しなかったことを実証した。図5Dは、異なる発動の温度を使用したaPACEのトランスフェクション効率(タンパク質1mgあたりの平均LUC)の棒グラフである(**p<0.005)。
【0380】
図6Aは、TRANSIT(登録商標)、5kDaの非発動PACE、5日間発動した5kDaのaPACE、10kDaの非発動PACE、または10日間発動した10kDaのaPACEを使用したmRNA(合計で20mg)のIV投与6時間後のEPO血中濃度を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(****p<0.0001)。図6Bは、ビヒクル(下側の線)、TransIT(中央の線)、10日間発動した10kDaのaPACE(上側の線)を使用したmRNA(合計20mg)のIV投与後のEPO産生の時間経過を示す線グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SDとして提示する(***p<0.001および*p<0.05)。図6C~6Fは、酢酸緩衝液、遊離mRNAまたはmRNA:aPACEポリプレックスのIV投与24時間後および7日後の血液化学(AST(図6C)、ALT(図6D)、尿素(図6E)、クレアチニン(図6F))分析を示す棒グラフである。結果を、N=3頭の動物の平均±SEMとして提示する。
【0381】
TRANSIT(登録商標)およびaPACEポリプレックスの両方について、EPO産生は、注射の6時間後にピークに達した。酢酸緩衝液(ビヒクル)の注射とそれに続く出血の反復は、経時的にEPO血中レベルのわずかな増加を誘発したが、10kDaの発動PACEポリプレックスの投与後のEPOのレベルは、最大で48時間にわたって、TRANSIT(登録商標)の投与後に得られたレベルと比較して有意に高かった(6時間でp<0.001、ならびに24時間および48時間でp<0.05)。
【0382】
最良のaPACEポリマー(10日間発動した10kDa)を使用すると、有意なEPO産生が、遊離EPOの血中半減期(約2時間)よりも有意に長い最大で48時間にわたって得られた。
【0383】
これらの結果は、PACEの末端基およびMWが、そのmRNAトランスフェクションに影響を及ぼすことを実証する。発動ポリマーにおけるMWおよび末端基の組合せは、in vitroおよびin vivoでの効率的なmRNA複合体化およびトランスフェクションを可能にする一方で、PACEの低いカチオン密度は、低い毒性プロファイルを保証した。
【0384】
(実施例5)
PACE末端基はポリプレックスに対するメッセンジャーRNA負荷に影響を及ぼす
材料および方法
末端基改変PACEポリマーおよびポリプレックスの合成
カチオン性ジオール、セバシン酸ジエチル、およびラクトンから作製されたPACE骨格は、ヒドロキシルおよびメチル末端基の混合物を有する(Zhou, et al., Nature Materials, 11:82-90 (2012). [PMCID: PMC4180913])。
【0385】
異なる末端基を有するPACEを改変するために、親ポリマーを、セバシン酸ジエチルの代わりにセバシン酸を用いて合成し、これは、ヒドロキシルおよびカルボキシル末端基の混合物を有するPACEを与えた。2つの末端基を両方とも、1:40のモル比で、カルボジイミダゾール(CDI)により、室温で終夜、乾燥ジクロロメタン(DCM)中で撹拌することによって活性化した。混合物を、脱イオン水で3回洗浄し、それに続いて真空下でDCMを蒸発させて、反応物であるPACE-CDIを得た:下記および実施例1~4に示されるように、CDI活性化(1、2)、それに続くアミン含有分子による求核置換(3、4)。
【化26】
【0386】
コンジュゲーションのために、5mMのアミン含有分子を、DMSO中の0.5mMのPACE-CDIと、一定の撹拌下、室温で40時間反応させた。反応後、混合物を、10倍体積の脱イオン水で洗浄し、DCMで抽出し、それに続いて真空下でDCMを蒸発させて、新たな末端基を有するPACEを得た。
【0387】
末端基の化学構造を下記に示す。
【化27-1】
【化27-2】
【0388】
Ribogreen mRNA負荷アッセイ
Ribogreenは、メッセンジャーRNAとの結合後に蛍光を発する小さな色素である。PACEとの複合体化の後、メッセンジャーRNAは、色素にアクセス不能になり、より低い蛍光シグナルが観察されるであろう。mRNA、ポリプレックス、およびribogreenを混合し、蛍光をモニタリングした。
【0389】
Cy5 mRNA/ポリプレックス取り込みアッセイ
ddRLuc-Fcタンパク質およびFLucをコードするmRNAを、最初に、PACEポリマーによって共封入(coencapsulate)し、次いで、プロテアソーム阻害剤であるエポキソミシン(epoxomycin)の存在下、Expi293F細胞に7時間供給した。次いで、細胞を、デュアルルシフェラーゼアッセイによってチェックして、RLuc活性を明らかにした(n=4)。データを、TRANSIT(登録商標)(1に設定)に対して正規化した。
【0390】
Cy5標識mRNAは、異なる末端基を有するPACEとポリプレックスを形成し、これを、HEK293細胞に供給した。細胞を、蛍光についてモニタリングした。
【0391】
エンドソームエスケープアッセイ
異なる末端基を有するPACEを使用して、fLuc mRNAを用いて調製したポリプレックスのエンドソームエスケープを、ddRLucシステムで定量化した。
【0392】
結果
PACE末端基は、ポリプレックスに対するメッセンジャーRNA負荷に影響を及ぼす。ribogreenアッセイの結果を、図7に示し、これは、対応するゲル遅延度アッセイと非常に一致する。
【0393】
PACE末端基は、ポリプレックスの細胞取り込みに影響を及ぼす。細胞取り込みアッセイの結果を、図8A~8Dに示す。図8Aは、図8B、8Cおよび8Dにおける結果を生成するために起こっていることの概略図を示し、mRNA封入、取り込みおよびエンドソームエスケープの効率、ならびにトランスフェクション効率を示す。mRNA封入の効率は、Ribogreenアッセイ(n=4)によって定量化した。Cy5標識mRNAを封入したポリマーを、Expi293F細胞に供給し、それに続いてFACSを行って、取り込みレベルを定量化した(n=3)(図8B)。統計的差を、mRNA基を有するそれぞれのポリマー間の独立スチューデントのt検定で分析した。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示し、****はp<0.0001を示し、n.s.は有意差なしを示す。
【0394】
異なる末端基を有するPACEは、細胞によって取り込まれる異なる能力を実証した。PACE末端基は、mRNAのエンドソームエスケープに影響を及ぼす。fLuc mRNAおよび異なる末端基を有するPACEを使用したエンドソームエスケープアッセイの結果を図8Cに示す。
【0395】
PACE末端基化学は、ポリマー性送達システムのトランスフェクション効率に影響を及ぼす。PACEのトランスフェクション効率を、HEK293細胞によって生成されたfluc活性によって測定した。結果を図8Dに示す。
【0396】
図9A~9Cは、トランスフェクション効率(fluc活性として表される)、ならびにmRNA負荷(図9A)、取り込み(図9B)、およびエンドソームエスケープ(図9C)を含むトランスフェクションの異なるステップの線形相関を示す。生物学的ステップがタンパク質産生に近づくにつれて、線形相関のR2値が高くなり、より良好な予測力(predicting power)を示す。
【0397】
(実施例6)
mRNA送達のためのポリマーのライブラリーのエンドソームエスケープの定量化
材料および方法
ポリマー合成
PACE合成を、異なる末端基を有するPACEポリマーを生成するためのいくつかの改変を含んで、上記に記載されるようにして行った。親ポリマーを、セバシン酸を用いて合成し、これは、ヒドロキシルおよびカルボキシル末端基の混合物を有するPACEを与えた。2つの末端基を両方とも、1:40のモル比で、CDIにより、室温で終夜、乾燥ジクロロメタン中で撹拌することによって活性化した。混合物を、脱イオン水で3回洗浄し、それに続いて真空下でDCMを蒸発させて、反応物であるPACE-CDIを得た。
【0398】
次いで、PACE-CDIを、アミン含有化合物(表1)と反応させて、新しい末端基を有するPACEを得た。コンジュゲーションのために、5mMのそれぞれの化合物を、DMSO中の0.5mMのPACE-CDIと、一定の撹拌下、室温で40時間反応させた。反応後、混合物を、10倍体積の脱イオン水で洗浄し、DCMで抽出し、それに続いて真空下でDCMを蒸発させて、P1~P31として記述される新たなポリマー(表1)を得た。
【0399】
ポリマーの特徴付け
H NMRスペクトルを、Agilent DD2 400MHz NMR分光計において記録した。シグナルを、10秒のT緩和時間を使用して記録した。ポリマーの分子量(MW)を、microSTYRAGELカラム(混合ベッド;細孔サイズ100Å~106Å)を備えたWaters HPLCシステムを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。0.2wt%のトリエチルアミンを含有するクロロホルムを、1mL/分の流速で、溶離液として使用した。2mg/mLの試料濃度および100μLの注入体積を使用した。ポリマーのMWを、Sigma Aldrich(Saint Louis、MO、USA)製の狭い多分散性ポリスチレン標準によって作成された従来の較正曲線に基づいて決定した。Empower II GPCソフトウェアを使用して、GPC機器を実行し、MW算出を行った。
【0400】
PACE末端基改変の反応を、NMRスペクトルを使用してモニタリングした。PACEの特徴的なピークは、1~4.5ppmの領域に分布していた。MDEAモノマーが末端基であった場合、その末端側の水素は、それぞれ、4.2(g)から3.6(g’)ppm、および2.7(e)から2.6(e’)ppmにシフトした。CDI活性化は、2つの異なるPACE-CDIコンジュゲーションの形成に起因して、7~8.5ppm領域に分割ピークの形成をもたらした(図S2)。MDEAモノマーの末端側の水素は、それぞれ、3.6(g’)から4.4(g’’)ppm、および2.6(e’)から2.8(e’’)ppmにシフトし、セバシン酸モノマーの末端側の水素は、それぞれ、2.3(c)から2.4(c’’)ppm、および1.5(b)から1.7(b’’)ppmにシフトした。次いで、31個の小分子のコンジュゲーション反応は、7~8.5ppm領域の分割ピークの消失、ならびにg’’、e’’、c’’、およびb’’ピークの移動によって、確認された。
【表1-1】
【表1-2】
【0401】
ポリプレックスの調製および特徴付け
明示されない限り、ポリマー:mRNAポリプレックスを、25mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)中で100:1のポリマー:mRNA重量比で調製した。in vitro実験のために、10μg mRNA/mLの溶液を調製した:1μLのポリマー溶液(DMSO中に100mg/mL)を、最初に50μLの酢酸ナトリウム緩衝液に希釈した。短時間のボルテックス後、ポリマー溶液を、50μLの酢酸ナトリウム緩衝液に希釈された1μgのmRNAと混合し、再度ボルテックスした。ポリマー:mRNA混合物を、使用前に室温で10分間インキュベートした。in vivo実験のために、酢酸ナトリウム緩衝液中の100μg mRNA/mLの溶液を、同じ方法によって調製した。
【0402】
ポリプレックスの流体力学的直径を、2μg/mLのmRNAの濃度での脱イオン水へのポリプレックスの希釈後、Malvern Nano-ZS(Malvern Instruments、UK)を使用する動的光散乱(DLS)によって測定した。ゼータ電位を測定するために、同じ溶液を、使い捨てキャピラリーセルにロードし、Malvern Nano-ZSにおいて分析した。
【0403】
透過型電子顕微鏡(TEM)
2μLのナノ粒子を、TEMグリッド(Electron microscopy sciences、カタログ番号CF400-Cu-TH)に適用した。1分後、液体を、注意深く除去した。次いで、1滴の染色溶液(Nanoprobes、NANO-W)をグリッドの頂部に添加した。1分後、液体を除去した。グリッドを風乾した。画像を、TEM(FEI Tecnai Osiris 200kV TEM)を使用して撮影した。
【0404】
細胞培養
Expi293F(商標)細胞(Thermo Fisher、カタログ番号A14527)を、マイクロプレートシェーカー(VWR、カタログ番号89032-092)で一定に振とうしながら、Expi293(商標)発現培地(Thermo Fisher、カタログ番号A1435102)中、37℃および8%のCOで維持した。
【0405】
ddRLuc-Fc精製
ddRLuc-Fcをコードするプラスミドを、直鎖状ポリエチレンイミン(Polysciences Inc、カタログ番号23966)を使用して、Expi293F細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの60時間後、細胞を回収し、ddRLuc-Fcを、細胞溶解物から精製した。細胞を、0.5~1%のTriton(登録商標) X-100(AmericanBio、カタログ番号AB02025)およびEDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、カタログ番号11873580001)で追加補充されたTBS(10mMのTris、150mMのNaCl、pH7.5)に、4℃で1時間溶解した。次いで、細胞溶解物を、Optima L-100K超遠心機(Beckman Coulter)において、110,000×g、4℃で1時間遠心分離し、それに続く0.22μmフィルター(EMD Millipore、カタログ番号SCGPT01RE)を通した濾過によって清澄化した。プロテインA-SEPHAROSE(登録商標)ビーズ(GE healthcare、カタログ番号17-0780-01)を、濾過した細胞溶解物に添加し、タンパク質結合のために、回転しながら4℃で3時間インキュベートした。ビーズを、TBS中で洗浄し、タンパク質を、100mMのグリシン(pH3.3)で溶出した。次いで、溶出液を、中和し、濃縮し、PBSに緩衝液交換した。
【0406】
PACEポリマーによるFLuc mRNAおよびddRLuc-Fcの共封入
アガロースゲル遅延度アッセイを行って、FLucをコードするmRNAおよびddRLuc-Fcプローブの共封入効率をチェックした。遊離mRNAおよびタンパク質は、封入されたものをローディングウェルに保持しながら、ゲルに移動することが可能であった。
【0407】
水平アガロースゲル電気泳動
5μgのddRLuc-FcおよびFLucをコードする1μgのmRNAを、18μLの総体積中で100μgのポリマーと一緒に混合し、室温で10分間インキュベートした。2μLの10×DNAローディング緩衝液をポリプレックスに添加し、それに続いて1%のアガロースゲルにローディングした。mRNAの移動を、UV光を使用して検出し、タンパク質の移動を、クーマシーブルー染色(Bio-rad、カタログ番号161-0786)によって検出した。
【0408】
ルシフェラーゼアッセイ
Expi293F細胞を、最初に、200nMのエポキソミシン(ApexBio Technology、カタログ番号A2606)中、37℃で30分間処理し、次いで、遊離mRNA(陰性対照)、TRANSIT(登録商標)(Mirus、カタログ番号MIR2250、陽性対照)、またはddRLuc-FcおよびFLuc mRNAを共封入したポリマーを含有する96-V底プレートに、ウェルあたり200,000個細胞で添加した。トランスフェクションの7時間後、細胞を、PBSで3回洗浄し、20μMのz-VAD(OMe)-FMK(Abcam、カタログ番号ab120487)で追加補充された50μLの受動溶解緩衝液(Promega、カタログ番号E1910)に、室温で20分間溶解した。溶解物を、Centro XS LB 960高感度マイクロプレートルミノメーター(Berthold、カタログ番号46970)によってアッセイした。RLuc発光を、native-Coelenterainze(Nanolight Technology、カタログ番号303)を使用して1秒間測定し、FLuc発光を、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、カタログ番号E1501)を使用して3秒間測定した。すべての独立した実験は、三連で実行した。
【0409】
in vitro翻訳(IVT)
mRNAが負荷されたポリプレックスのIVTを、製造業者の説明書に従って、ウサギ網状赤血球ライセートシステム(Promega、カタログ番号L4960)を使用して行った。FLucをコードする1μgのmRNAで負荷されたポリプレックスを、50μLの溶解物混合物中、37℃で75分間インキュベートした。2μLの試料を、15分ごとに反応混合物から採取し、直ちにドライアイス上で凍結した。試料収集後、すべての試料におけるFLuc活性を、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、カタログ番号E1501)を使用して測定した。特定のポリプレックスに対するIVTの速度を、FLuc活性および試料採取の時間の間の線形回帰の傾きとして評価した。
【0410】
封入効率の測定
ポリプレックスにおけるmRNAの封入効率を、製造業者の説明書に従って、Quant-IT RiboGreen RNAキット(Invitrogen、番号R11491)を使用して測定した。RIBOGREEN(登録商標)アッセイは、溶液中の遊離mRNAの量を測定するので、この量を、ポリプレックスを形成するために添加された初期量に対して減算して、ポリプレックス内で複合体化したmRNAの量を得た。
【0411】
蛍光標識細胞分取(FACS)
Expi293F細胞を、5,000個細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートに播種した。12時間後、Cy5 mRNAを封入しているナノ粒子を、それぞれのウェルに添加した。1時間後、細胞を、FACS解析(Life technologies、Attune NxT)のために収集した。
【0412】
結果
結果を図10A~10Bに示す。すべてのポリプレックスのIVT速度を、1時間あたりのFLuc活性の生成によって測定した。FLuc mRNAトランスフェクション結果およびIVT速度、ならびにIVT速度および封入効率の間の単純な線形回帰を、定量化および正規化されたデータを使用して行った。それぞれのデータポイントは、固有の末端基を持つPACEポリマーを表す。直線は最良のフィットを表す。R値にラベル付けする。
【0413】
ポリマー末端基の効果および投与の経路
mRNAポリプレックスのin vitro翻訳速度は、トランスフェクション効率と相関しない。図10Aおよび10Bは、mRNAポリプレックスのin vitro翻訳速度が、トランスフェクション効率と相関しないことを実証するグラフである。すべてのポリプレックスのIVT速度を、1時間あたりのFLuc活性の生成によって測定した。(図10A)FLuc mRNAトランスフェクション結果およびIVT速度、ならびに(図10B)IVT速度および封入効率の間の単純な線形回帰を、定量化および正規化されたデータを使用して行った。それぞれのデータポイントは、固有の末端基を持つPACEポリマーを表す。直線は最良のフィットを表す。R値にラベル付けする。
【0414】
(実施例7)
PACE-PEGブレンドポリプレックスの調製およびPACS-ポリプレックス製剤の肺送達
mRNAに基づくワクチンは、SARS-CoV-2などの新興ウイルス株に容易に適応できる有望な戦略であるが、より多くの研究が、最適なmRNAワクチン製剤を開発するための送達戦略に対して必要である。異なる末端基を有するカチオン性ポリ(アミン-co-エステル)またはPACEのライブラリーは、それが効率的で安全なmRNA送達ビヒクルであることを実証している。
【0415】
COVID-19などの疾患および生じる肺疾患による最近の事象は、肺送達のための改善された製剤が重要であることを明らかにした。以下は、PACEポリプレックスを、in vitroでスクリーニングして、肺へのmRNAの吸入送達のための有望な製剤を特定した研究である。この研究は、mRNAトランスフェクション効率に対するポリエチレングリコール(PEG)の効果、およびナノ粒子の安定化におけるその役割を調べた。追加の研究は、ポリプレックスの肺送達後の肺における高レベルのトランスフェクションを実証した。
【0416】
材料および方法
前述の実施例および表1に記載されるように、異なる末端基を有するPACEポリマーのライブラリーを、A459ヒト肺細胞におけるEGFP mRNAのサイズ、安定性、およびトランスフェクション効率についてスクリーニングした。製剤を最適化するために、ポリプレックスを、4.8~6のpHの範囲の緩衝溶液中で調製し、小体積のPEGコンジュゲート化PACE(PACE-PEG)を組み込んで、ポリプレックスの安定性を改善した。
【0417】
ポリマー合成
PACEポリマーを、上記に記載されるようにして合成した。
【0418】
ポリプレックス製剤
すべてのPACEポリプレックスを、1:100 PACE対mRNAの重量比で形成した。ポリマーを、振とうしながら、37℃で終夜、DMSO(100mg/mL)に溶解した。ポリプレックスを形成するために、mRNAを、25mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8~6.0)に、20~200μg/mLの濃度に希釈した。別の管において、溶解したPACEを、25mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8~6.0)に、2~20mg/mLの濃度に希釈し、15秒間ボルテックスした。次いで、希釈したmRNAおよび希釈したPACEを合わせ、25秒間ボルテックスした。溶液を、使用前に室温で10分間放置して、ポリプレックスを形成させた。ポリプレックスのサイズおよびゼータ電位を、動的光散乱(DLS、Zetasizer Pro、Malvern Analytical)によって特徴付けた。
【0419】
PACE-PEGブレンドポリプレックスを製剤化するために、PACE-PEGおよびPACEを、100mg/mLの濃度でDMSOに別々に溶解した。溶解したPACE-PEGを、溶解したPACEに希釈して(必要により、中間希釈物を用いて)、所望のPACE-PEG濃度のブレンドポリマー溶液を作出した。次いで、ポリプレックスを、上記に記載されるようにして調製した。
【0420】
DSPE-PEG(PEG2k、Nano OCS)でコーティングされたポリプレックスを、DSPE-PEGをDMSOに溶解する(10mg/mL)ことによって形成した。次いで、溶解したDSPE-PEGを、DMSO中のPACE(100mg/mL)と1:10の体積比で合わせた。DMSO中の中間DSPE-PEG希釈を、DSPE-PEGのPACEに対する所望の最終比を達成するために、必要により行った。次いで、ポリプレックスを、上記に記載されるようにして、DMSO中のDSPE-PEG/PACEブレンドをDMSO中のPACEの代わりに用いることによって、形成した。
【0421】
ポリプレックス安定性研究
ポリプレックスの安定性を評価するために、ポリプレックスを、上記に記載されるようにして、酢酸ナトリウム緩衝液中で1mg/mLの最終濃度に製剤化した。20μLのポリプレックス溶液を、1mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)とともに管に添加し、次いで、試料を、振とうインキュベーター(300rpm、37℃)に入れ、DLSによるサイジングのためにさまざまな時点で取り出した。Jiang Y, Lu Q, Wang Y, et al. Quantitating Endosomal Escape of a Library of Polymers for mRNA Delivery. Nano Lett. 2020;20(2):1117-1123. doi:10.1021/acs.nanolett.9b04426
【0422】
in vitroスクリーニング
A549ヒト肺細胞系(ATCC)を、すべてのin vitroスクリーニング実験のために使用した。細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS、Atlanta Biologicals)および50μg/mLのゲンタマイシンで強化されたDMEM:F12(GE Healthcare)の1:1溶液中で成長させ、5%CO下、37℃のインキュベーターに保管した。ポリプレックス送達の24時間前に、細胞を、24ウェルプレートに、ウェルあたり50,000個細胞で播種した。ポリプレックス送達の直前に、細胞培地をリフレッシュし、細胞を、PACEポリプレックスを使用して、0.5μgのEGFP mRNA(Trilink Biotechnologies)で処理した。処理の24時間後、細胞を、PBSですすぎ、TrypLE Express酵素(Thermo Fisher Scientific)で15分間解離させ、次いで、96ウェル丸底プレートに移した。細胞を、PBS中の2%のウシ血清アルブミン(BSA)で1回洗浄し、次いで、製造業者の説明書に従ってZombie Live/Dead Fixable Near IR(Biolegend)で染色した。染色後、細胞を、PBS中の2%のBSAでもう一回洗浄し、次いで、フローサイトメトリー(Attune NxT)によって解析した。結果を、FlowJoバージョン10.6.2において解析した。
【0423】
in vivoアッセイ
すべての動物の作業は、Yale Animal Resource Center(YARC)およびInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のガイドラインに従ってYale Universityにおいて完了した。雄BALB/cマウス(20g、Charles River、Willimantic、CT、USA)を実験のために使用した。酢酸ナトリウム緩衝液に希釈されたPACE:mRNAポリプレックス(0.1mg/mL mRNA、N=3)を、200μLの体積により、静脈内または腹腔内に投与した。in vivo生物発光(光子/秒/cm/sr)を、注射6時間後にIVIS Spectrum(PerkinElmer)によって検出および定量化した。
【0424】
吸入送達
in vivo実験を、10~30週齢のC57BL/6マウス(EGFP mRNA送達)およびBALB/cマウス(FLuc mRNA送達)において行った。ポリプレックス溶液(10mg/mLポリマー)を、投与直前に調製した。吸入送達のために、マウスを、イソフルランで麻酔し、門歯によって吊るした。舌を、ピンセットで引っ込ませ、PACEポリプレックス中の5μgのmRNAを口の奥に投与した。舌を、ポリプレックスが吸入されている10呼吸の間、引っ込ませた位置で保持した。
【0425】
フローサイトメトリーによるEGFP発現の解析のために、マウスを、24時間後に安楽死させた。肺を、10mLのPBS、次いで、1mLのディスパーゼ(50U/mL、Corning Life Sciences)で灌流した。次いで、気管を、鈍らな先端の針で挿管し、肺を、1mLのディスパーゼ(50U/mL)で膨張させ、縫合糸により気管に沿ってしばった。肺を取り出し、さらなる処理まで、氷冷PBS中に入れた。フローサイトメトリー用の単一細胞懸濁物を調製するために、肺組織を、ハサミで2~3mmの小片に刻み、PBS中の5mLのDNase 1(1mg/mL、Roche Diagnostics)およびコラゲナーゼ1(5mg/mL、Worthington Biochemical)で15mLの管に移し、30分間インキュベートした(37℃、振とう)。次いで、組織片を、18ゲージ針を有する5mLのシリンジに3~5回引き出した。最終吸引において、流体を、事前に湿らせた70μmフィルター上に出した。シリンジプランジャーを使用して、フィルター上の残りの組織を穏やかに破壊し、フィルターを、2mLのPBS中の0.5%のBSAですすぎ、得られた細胞懸濁物を、1,200rpmで5分間遠心分離した。残りの赤血球を溶解するために、細胞を、2mLの塩化アンモニウム-カリウム(ACK)溶解緩衝液に再懸濁させ、室温で4分間インキュベートした。次いで、緩衝液を、4mLのPBS中の10%のFBSで中和し、細胞を、70μmフィルターで再濾過し、1,200rpmで5分間遠心分離した。細胞を、PBS中の2%のBSAに再懸濁させ、96ウェル丸底プレートに移し、PBS中の2%のBSAでもう一回洗浄した。細胞を、製造業者の説明書に従ってZombie Live/Dead Fixable Near IR(Biolegend)で染色した。細胞を、PBS中の2%のBSAでもう一回洗浄し、次いで、フローサイトメトリーによって解析した。結果を、FlowJoバージョン10.6.2において解析した。
【0426】
肺におけるルシフェラーゼ発現を、In Vivo Imaging System(IVIS、PerkinElmer)および抽出された肺タンパク質の直接測定によって分析した。mRNA送達の6分後、マウスに、150mg/kgのD-ルシフェリンを腹腔内注射し、イソフルランによって麻酔し、発光シグナルを、32分後にIVISによって検出した。24時間後、マウスに、D-ルシフェリン(150mg/kg)を再注射し、15分後に画像化した。肺、脾臓、肝臓、腎臓、および心臓を取り出し、ex vivo臓器発光を、最初の注射の30分後にIVISによって検出した。次いで、肺および脾臓の組織を刻み、1mLのGlo溶解緩衝液(Promega)を有するPrecellys溶解管(Bertin Instruments)に入れ、6500rpmで、2回、30秒間ホモジナイズした。溶解物を、Eppendorf管に移し、21,000×gで10分間遠心分離して、細胞デブリを除去した。20uLの溶解物を、100uLのD-ルシフェリン(Promega)と合わせ、発光を、ルミノメーターにおいて10秒間測定した。発光値を、製造業者の説明書に従って、Pierce BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific)によって測定された総タンパク質濃度に対して正規化した。
【0427】
結果
pH
図11は、表1のポリマー2、4、14、15、16、17、20、25、27および31について、pH4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、および6.0でのトランスフェクション効率(パーセント)のグラフである。結果は、異なる末端基を有するPACEポリプレックスについての最適な酢酸ナトリウム緩衝液のpHを実証する。PACEトランスフェクション効率は、緩衝液のpHに強く依存し、最適なpHは、ポリマー末端基によって変化する。
【0428】
PEG濃度
図12Aによって示されるように、PACE-PEGの存在は、ポリプレックス安定性を増加させた。
【0429】
図12Bは、PACE-PEGの含有量(%)が0、0.05、01.0、0.25、0.50、および1の関数として、表1のポリマー14、15、16、17、25、27および31についてのトランスフェクション効率(%)のグラフである。図12Cは、同じPACE-PEG混合物のEGFP発現のグラフであり、PEGがEGFP発現を増加させたことを示す。0.05重量%という低いPACE-PEG濃度は、in vitroでほとんどのポリマーのmRNAトランスフェクション効率を低下させたが、1つのポリマー(P14)は、PEG濃度の範囲にわたって高いトランスフェクション効率を維持した。
【0430】
吸入送達のためのmRNAに基づくワクチン製剤の開発は、特に高いトランスフェクション能力を維持しながら粘液バリアを克服する上で、固有の課題がある。PEGコーティングは、多くの場合、粘液を通る浸透を増加させるために用いられるが、しかしながら、PEG適用範囲(coverage)は、トランスフェクション効率が失われないことを確実にするために最適化されなければならない。
【0431】
DSPE-PEG(PEG2k、Nano OCS)でコーティングされたポリプレックスを、DSPE-PEGをDMSOに溶解する(10mg/mL)ことによって形成した。次いで、溶解したDSPE-PEGを、DMSO中のPACE(100mg/mL)と1:10の体積比で合わせた。DMSO中の中間DSPE-PEG希釈を、DSPE-PEGのPACEに対する所望の最終比を達成するために、必要により行った。次いで、ポリプレックスを、上記に記載されるようにして、DMSO中のDSPE-PEG/PACEブレンドをDMSO中のPACEの代わりに用いることによって、形成した。
【0432】
トランスフェクション効率および遺伝子発現に対するPEGの効果を、図13A~13Cに示す。図13Aは、サイズ(nm)および多分散性に対する0%、0.01%、0.1%、1%または10%のDSPE-PEGの有効性のグラフである。図13Bは、表1のポリマー14、15、16、17、25、27および31についてのトランスフェクション効率(%)に対するDSPE-PEG含有量の有効性のグラフである。図13Cは、EGFP発現に対するDSPE-PEG濃度(0、0.05、0.10、0.25、0.50、1.0、2.5、および5%)の効果のグラフである。
【0433】
投与の経路は組織分布に影響を及ぼす
図14Aおよび14Bによって示されるように、I.V.注射およびI.P.注射の6時間後の解剖前の生物発光分布は、ポリプレックスが、注射された場合、最初に脾臓に主に分布し、次いで、脾臓、肝臓および腸に分布していることを示す。
【0434】
対照的に、図15によって示されるように、肺への投与は、驚くべきことに、高い肺濃度を示し、他の組織ではほとんど発現しない。
【0435】
これは、この製剤が、肺に投与された場合に、肺へのmRNAなどの核酸の送達のための効果的で高度に選択的な手段であることを確立した。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
【配列表】
2023531444000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化28】

のポリマーであって、式中、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、Rは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、
およびRは、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である、
ポリマー。
【請求項2】
R1および/またはR2が、
【化29】

ではない、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーから形成されるポリプレックスまたは粒子が、R1および/またはR2が、
【化30】

からなる対応するポリプレックスまたは粒子と比べて、mRNAの、改善された負荷、改善された細胞トランスフェクション、改善された細胞内エンドソーム放出、またはそれらの組合せを示す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーが、式II:
【化31】

の構造を有し、式中、JおよびJは、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、RおよびRは、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、式III:
【化32】

の構造を有する、請求項に記載のポリマー。
【請求項6】
Zが、Z’と同じである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
nが、4、10、13、または14である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
mが、5、6、または7である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
が、置換または無置換アルキルである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
重量平均分子量が、狭い多分散性ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される場合、約2,000ダルトン~20,000ダルトン、約2,000ダルトン~約10,000ダルトンまたは約2000ダルトン~約7,000ダルトンである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
が、R4と同じである、請求項4に記載のポリマー。
【請求項12】
R3および/またはR4が、独立して、
【化33-1】

【化33-2】

からなる群より選択される、請求項4に記載のポリマー。
【請求項13】
およびが、独立して、-C(O)-、-C(O)NH--C(O)O-、-O-または-NH-から選択される、請求項4に記載のポリマー。
【請求項14】
、R、またはその両方が、第一級アミン基を含有し、必要に応じて1個または複数の第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項15】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて1個または複数のアミン基を含有する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項16】
、R、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、請求項4に記載のポリマー。
【請求項17】
およびRの少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、請求項4に記載のポリマー。
【請求項18】
、R、またはその両方が、-無置換C~C10アルキレン-Aq-無置換C~C10アルキレン-Bq、-無置換C~C10アルキレン-Aq-置換C~C10アルキレン-Bq、-置換C~C10アルキレン-Aq-無置換C~C10アルキレン-Bq、または-置換C~C10アルキレン-Aq-置換C~C10アルキレン-Bqであり、式中、Aqは、存在しないかまたは-NR-であり、Bqは、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンであり、Rは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである、請求項4に記載のポリマー。
【請求項19】
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数であり、mが、1~10の整数であり、oおよびpが、1~6の同じ整数であり、必要に応じて、Zも、Oである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項20】
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数であり、mが、1~10の整数であり、Rが、アルキル、またはアリールであり、必要に応じて、Zも、Oである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項21】
nが、1、必要に応じて、ペンタデカラクトン(PDL)であり、mが、7、必要に応じて、セバシン酸であり、oおよびpが、2、必要に応じて、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項22】
1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)またはトリアミン(ZおよびZ’=NR’)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製される請求項1~21のいずれかに記載のポリマーであって、2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミンもしくはアミン-ジオールモノマーが使用される場合、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る、ポリマー。
【請求項23】
そのポリプレックスまたは粒子に形成される、請求項1~22のいずれかに記載のポリマー。
【請求項24】
封入された1つまたは複数の核酸を有する、そのポリプレックスまたは粒子に形成される、請求項3に記載のポリマー。
【請求項25】
前記ポリプレックスまたは粒子が、Rおよび/またはRが、
【化37】

からなるものではない、またはそれを含まないポリマーから形成される、請求項4に記載のポリマー。
【請求項26】
そのポリプレックスまたは粒子に形成される請求項4に記載のポリマーであって、前記ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされた前記ポリマーを含有する混合物中にある、ポリマー。
【請求項27】
前記PEGコンジュゲート化ポリマーが、構造
【化38】

を含有し、式中、m’およびm’’は、独立して、0または1であるが、ただしm’+m’’は1または2であることを条件とし、
式XIにおけるJおよびJは、独立して、存在しないかまたは連結部分であり、必要に応じて、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-から選択される、
請求項6に記載のポリマー。
【請求項28】
1つまたは複数の治療用、診断用、もしくは予防用核酸薬剤、またはそれらの組合せをin vivoで投与する方法において使用するための、請求項1~7のいずれかに記載のポリプレックスまたは粒子の形態のポリマーを含む組成物であって、前記方法は、ポリプレックスまたは粒子の形態の前記ポリマーを細胞またはそれを必要とする個体に投与することを含む、組成物
【請求項29】
前記方法が、細胞を前記粒子またはポリプレックスと接触させることによって細胞をトランスフェクトすることを含む、請求項8に記載の組成物
【請求項30】
前記ポリプレックスまたは粒子が、肺に投与されるものである、請求項8に記載の組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0435
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0435】
これは、この製剤が、肺に投与された場合に、肺へのmRNAなどの核酸の送達のための効果的で高度に選択的な手段であることを確立した。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
式I:
【化28】

のポリマーであって、式中、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、Rは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、
およびR は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である、
ポリマー。
(項目2)
R1および/またはR2が、
【化29】

ではない、項目1に記載のポリマー。
(項目3)
前記ポリマーから形成されるポリプレックスまたは粒子が、R1および/またはR2が、
【化30】

からなる対応するポリプレックスまたは粒子と比べて、mRNAの、改善された負荷、改善された細胞トランスフェクション、改善された細胞内エンドソーム放出、またはそれらの組合せを示す、項目1に記載のポリマー。
(項目4)
前記ポリマーが、式II:
【化31】

の構造を有し、式中、J およびJ は、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、R およびR は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
項目1に記載のポリマー。
(項目5)
前記ポリマーが、式III:
【化32】

の構造を有する、項目1に記載のポリマー。
(項目6)
Zが、Z’と同じである、項目1に記載のポリマー。
(項目7)
nが、4、10、13、または14である、項目1に記載のポリマー。
(項目8)
mが、5、6、または7である、項目1に記載のポリマー。
(項目9)
が、置換または無置換アルキルである、項目1に記載のポリマー。
(項目10)
重量平均分子量が、狭い多分散性ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される場合、約2,000ダルトン~20,000ダルトン、好ましくは、約2,000ダルトン~約10,000ダルトン、最も好ましくは、約2000ダルトン~約7,000ダルトンである、項目1に記載のポリマー。
(項目11)
が、R4と同じである、項目4に記載のポリマー。
(項目12)
R3および/またはR4が、独立して、
【化33-1】

【化33-2】

からなる群より選択される、項目4に記載のポリマー。
(項目13)
J1が、-O-または-NHであり、J が、-C(O)NH-もしくは-C(O)O-、またはそれらの組合せである、項目4に記載のポリマー。
(項目14)
、R 、またはその両方が、第一級アミン基を含有し、必要に応じて1個または複数の第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、項目4に記載のポリマー。
(項目15)
、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて1個または複数のアミン基を含有する、項目4に記載のポリマー。
(項目16)
、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、項目4に記載のポリマー。
(項目17)
およびR の少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、項目4に記載のポリマー。
(項目18)
、R 、またはその両方が、-無置換C ~C 10 アルキレン-Aq-無置換C ~C 10 アルキレン-Bq、-無置換C ~C 10 アルキレン-Aq-置換C ~C 10 アルキレン-Bq、-置換C ~C 10 アルキレン-Aq-無置換C ~C 10 アルキレン-Bq、または-置換C ~C 10 アルキレン-Aq-置換C ~C 10 アルキレン-Bqであり、式中、Aqは、存在しないかまたは-NR -であり、Bqは、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンであり、R は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである、項目4に記載のポリマー。
(項目19)
ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)が、構造
【化34】

を有し、式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、
およびR は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体である、
項目1に記載のポリマー。
(項目20)
Zが、Z’と同じである、項目19に記載のポリマー。
(項目21)
Zが、Oであり、かつZ’が、Oであり、Zが、NR’であり、かつZ’が、NR’である、項目20に記載のポリマー。
(項目22)
Zが、Oであり、かつZ’が、NR’であるか、またはZが、NR’であり、かつZ’が、Oである、項目19に記載のポリマー。
(項目23)
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、必要に応じて、Zも、Oである、項目19に記載のポリマー。
(項目24)
mが、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、必要に応じて、Zも、Oである、項目23に記載のポリマー。
(項目25)
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mが、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpが、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4であり、必要に応じて、Zも、Oである、項目19に記載のポリマー。
(項目26)
Z’が、Oであり、nが、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mが、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rが、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、または例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルであり、必要に応じて、Zも、Oである、項目19に記載のポリマー。
(項目27)
nが、14、必要に応じて、ペンタデカラクトン(PDL)であり、mが、7、必要に応じて、セバシン酸であり、oおよびpが、2、必要に応じて、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)である、項目19に記載のポリマー。
(項目28)
式II:
【化35】

の構造を有する、項目1に記載のポリマーであって、式中、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式Iについて上記に記載される通りであり、
およびJ は、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式IIにおけるR およびR は、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
ポリマー。
(項目29)
が、-O-または-NH-であり、
が、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である、
項目28に記載のポリマー。
(項目30)
が、R と同一であり、必要に応じて、R および/またはR が、直鎖状である、項目28に記載のポリマー。
(項目31)
、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて、R 、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基および1個または複数のアミン基、必要に応じて、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、項目30に記載のポリマー。
(項目32)
、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、項目28に記載のポリマー。
(項目33)
およびR の少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、項目28に記載のポリマー。
(項目34)
式III:
【化36】

の構造を有する、項目1に記載のポリマーであって、式中、Rx、Z、Z’、m、n、o、p、q、x、およびyは、式Iについて上記に記載される通りであり、
およびJ は、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式IIにおけるR およびR は、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
ポリマー。
(項目35)
が、-O-または-NH-であり、
が、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である、
項目34に記載のポリマー。
(項目36)
が、R と同一であり、必要に応じて、R および/またはR が、直鎖状である、項目34に記載のポリマー。
(項目37)
、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、必要に応じて、R 、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基および1個または複数のアミン基、必要に応じて、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する、項目34に記載のポリマー。
(項目38)
、R 、またはその両方が、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない、項目34に記載のポリマー。
(項目39)
およびR の少なくとも1つが、ヒドロキシル基を含有しない、項目34に記載のポリマー。
(項目40)
前記ポリマーの重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、または2,000ダルトン超である、項目19~39のいずれかに記載のポリマー。
(項目41)
前記ポリマーの重量平均分子量が、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである、項目40に記載のポリマー。
(項目42)
1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)またはトリアミン(ZおよびZ’=NR’)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製される項目19~41のいずれかに記載のポリマーであって、2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミンもしくはアミン-ジオールモノマーが使用される場合、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る、ポリマー。
(項目43)
そのポリプレックスまたは粒子に形成される、項目19~42のいずれかに記載のポリマー。
(項目44)
封入された1つまたは複数の核酸を有する、そのポリプレックスまたは粒子に形成される、項目43に記載のポリマー。
(項目45)
前記ポリプレックスまたは粒子が、R および/またはR が、
【化37】

からなるものではない、またはそれを含まないポリマーから形成される、項目44に記載のポリマー。
(項目46)
そのポリプレックスまたは粒子に形成される項目44に記載のポリマーであって、前記ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)が、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされた前記ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)、すなわち、PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)を含有する混合物中にある、ポリマー。
(項目47)
前記PEGコンジュゲート化ポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)が、構造
【化38】

を含有し、式中、m’およびm’’は、独立して、0または1であるが、ただしm’+m’’は1または2であることを条件とし、
式XIにおけるJ およびJ は、独立して、存在しないかまたは連結部分、例えば、-C(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、および-NH-であり、
式XIの一部の形態では、J が、-O-または-NH-であり、式XIの一部の形態では、J が、-C(O)-、-C(O)NH-、または-C(O)O-である、
項目46に記載のポリマー。
(項目48)
1つまたは複数の治療用、診断用、もしくは予防用核酸薬剤、またはそれらの組合せをin vivoで投与する方法であって、項目1~47のいずれかに記載のポリプレックスまたは粒子の形態のポリマーを細胞またはそれを必要とする個体に投与することを含む、方法。
(項目49)
細胞を前記粒子またはポリプレックスと接触させることによって細胞をトランスフェクトすることを含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ポリプレックスまたは粒子が、肺に投与される、項目48に記載の方法。
【国際調査報告】