(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】酵素的核酸伸長を用いたin situ単一細胞解析のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6841 20180101AFI20230714BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230714BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230714BHJP
【FI】
C12Q1/6841 Z
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578732
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 US2021037772
(87)【国際公開番号】W WO2021257795
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513322707
【氏名又は名称】ナノストリング テクノロジーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ドウェイン ダナウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マーク グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】チェミョン チュン
(72)【発明者】
【氏名】ラステム カフィゾブ
(72)【発明者】
【氏名】デ キム
(72)【発明者】
【氏名】エバン ペリッロ
(72)【発明者】
【氏名】トゥシャー ラネ
(72)【発明者】
【氏名】リータン ウー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、部分的には、ユーザー定義の組織領域、ユーザー定義の細胞、及び/又はユーザー定義の細胞内細胞下構造におけるタンパク質及び/又は核酸の発現の、同時且つ多重の空間的な検出及び定量化を行うための、プローブ、組成物、方法、及びキットに基づくものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法であって、
a)前記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、
各種プローブは前記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、前記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;
b)前記組織試料を第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブの前記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、前記少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、
前記第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合した前記ヌクレオチドを含む、形成すること;
c)前記組織試料の少なくとも1つの部位に、前記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の前記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、前記ポリメラーゼを遊離させ、前記組織試料の前記少なくとも1つの部位における前記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;
d)前記組織試料を追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、工程(c)で照射された前記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの前記空間的バーコードドメインの前記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、前記少なくとも1つの結合型プローブの前記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、
前記追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合した前記ヌクレオチドを含む、伸長させること;
e)前記組織試料の前記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの前記空間的バーコードドメインが、前記空間的バーコードドメインが前記組織試料の前記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ
前記組織試料の前記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの前記空間的バーコードドメインが、前記空間的バーコードドメインが前記組織試料の前記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、工程(c)及び工程(d)を反復すること;
f)前記組織試料内の標的分析物に結合した前記プローブを収集すること;並びに、
g)工程(f)で収集された前記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、前記組織試料の前記第1部位及び前記少なくとも第2部位における前記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより前記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、
を含む方法。
【請求項2】
組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法であって、
a)前記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、
各種プローブは前記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、前記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;
b)前記組織試料を第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び第1の複数のポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインの前記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、前記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、
前記第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;
c)前記組織試料の少なくとも1つの部位に、前記可逆的ターミネーターヌクレオチドの前記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、前記可逆的3’ターミネーター部分を遊離させ、前記組織試料の前記少なくとも1つの部位における前記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;
d)前記組織試料を追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び追加の複数のポリメラーゼと接触させることにより、工程(c)で照射された前記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの前記空間的バーコードドメインの前記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、前記少なくとも1つの結合型プローブの前記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、
前記追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して可逆的3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;
e)前記組織試料の前記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの前記空間的バーコードドメインが、前記空間的バーコードドメインが前記組織試料の前記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、
前記組織試料の前記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの前記空間的バーコードドメインが、前記空間的バーコードドメインが前記組織試料の前記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、工程(c)及び工程(d)を反復すること;
f)前記組織試料内の標的分析物に結合した前記プローブを収集すること;並びに、
g)工程(f)で収集された前記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、前記組織試料の前記第1部位及び前記少なくとも第2部位における前記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより前記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、
を含む、方法。
【請求項3】
前記組織試料の前記第1部位における前記少なくとも2つの標的分析物の存在量と、前記組織試料の前記少なくとも第2部位における前記少なくとも2つの標的分析物の存在量とを比較することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリメラーゼが末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ又はその生物活性部分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)前記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドが3’-O-(2-ニトロベンジル)-dATP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dCTP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dGTP若しくは3’-O-(2-ニトロベンジル)-dTTPを含む;又は、
(b)前記3’ターミネーター部分が2-ニトロベンジルを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブが固有分子識別子をさらに含み、前記固有分子識別子が少なくとも約14ヌクレオチド長であることが好ましい、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブが増幅プライマー結合部位をさらに含み、前記増幅プライマー結合部位が少なくとも約24ヌクレオチド長であることが好ましい、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブが定常領域をさらに含み、前記定常領域が少なくとも約12ヌクレオチド長~少なくとも約20ヌクレオチド長であることが好ましい、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブが、5’から3’に向かって、前記標的結合ドメインを、続いて前記増幅プライマー結合部位を、続いて前記固有分子識別子を、続いて前記標的同定ドメインを、続いて前記定常領域を、含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組織試料の前記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの前記空間的バーコードドメインが前記組織試料の前記第1部位に特異的な固有空間的識別子配列を含み、前記組織試料の前記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの前記空間的バーコードドメインが前記組織試料の前記少なくとも第2部位に特異的な固有空間的識別子配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記空間的識別子配列が少なくとも約20個のヌクレオチドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記空間的識別子配列が少なくとも4つの空間的同定ドメインを含み、好ましくは、
(a)前記少なくとも4つの空間的同定ドメインのそれぞれが同数個のヌクレオチドを含み、好ましくはそれぞれの空間的同定ドメインが約1個~約4個のヌクレオチドを含み、好ましくはそれぞれの空間的同定ドメインが約4個のヌクレオチドを含み;又は、
(b)前記少なくとも4つの空間的同定ドメインの少なくとも1つが、同一空間的バーコード内の別の空間的同定ドメインと比較した場合で異なる数のヌクレオチドを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも4つの空間的同定ドメインのそれぞれが3’末端に同一ヌクレオチドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)後且つ工程(f)前に、工程(c)及び工程(d)を反復して、前記組織試料の各部位における前記空間的バーコードドメインを、前記空間的バーコードドメインが前記3’末端に区切りドメインを含むように伸長させることをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(e)後且つ工程(f)前に、前記組織試料の各部位における前記空間的バーコードドメインを、前記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させることをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(e)後且つ工程(f)前に、
(i)工程(c)及び工程(d)を反復して、前記組織試料の各部位における前記空間的バーコードドメインを、前記空間的バーコードドメインが区切りドメインを含むように伸長させること;並びに、
(ii)前記組織試料の各部位における前記空間的バーコードドメインを、前記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させること、
をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(a)前記区切りドメインが少なくとも約4ヌクレオチド長~少なくとも約6ヌクレオチド長である;又は
(b)前記区切りドメインの配列が、前記試料における全ての空間的バーコードに対して同じである、
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリTドメインが少なくとも約14個のヌクレオチドを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)の前記照射が、アークランプ、レーザー、集束UV光源、及び発光ダイオードからなる群から選択される光源によって供給され、前記レーザーは赤外レーザーであることが好ましい、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)の前記照射が2光子励起顕微鏡によって供給される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組織試料の前記第1部位及び前記組織試料の前記第2部位が、x方向及び/又はy方向に約500nm以下、且つ、z方向に約1500nm以下である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記組織試料の前記第1部位及び前記組織試料の前記少なくとも第2部位が、
(a)細胞内である;
(b)それぞれ、1個以下の細胞を含む;又は
(c)それぞれ、10個以下の細胞を含む、
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)の前に、前記組織試料をddTTP(ジデオキシチミジン三リン酸)終結に供することをさらに含み、前記組織試料をddTTP終結に供することは前記組織試料をddTTP及びTdTと接触させることを含むことが好ましい、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程(f)後且つ工程(g)前に、前記収集されたプローブを増幅することをさらに含み、前記収集されたプローブを増幅することは第1増幅プライマー及び第2増幅プライマーの使用を含むことが好ましく、
前記第1増幅プライマーが第1フローセルアダプター配列、第1NGSインデックス配列及び第1シーケンシングプライマー結合部位を含み、及び
前記第2増幅プライマーが第2フローセルアダプター配列、第2NGSインデックス配列及び第2シーケンシングプライマー結合部位を含む、
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1増幅プライマー及び前記第2増幅プライマーの少なくとも一方が、前記区切り配列及び/又は前記ポリTドメインに相補的な核酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月18日に出願された米国仮出願第63/040,651号に基づく優先権及び利益を主張し、当該米国仮特許出願の全内容を参照により援用するものである。
【0002】
配列表
本願は、EFS-Webを介しASCII形式で提出された、その全体が参照によって本明細書に援用される、配列表を含む。上記ASCIIコピーは2021年6月16日に作成されたものであり、「NATE-046_001WO_SeqList.txt」という名称で、サイズは約1.96MBである。
【背景技術】
【0003】
標準的な免疫組織化学法とin situハイブリダイゼーション法では、多くて6~10種タンパク質標的又は核酸標的、典型的には3~4種の標的を同時に検出することが可能である。ユーザー定義の組織領域、ユーザー定義の細胞、及び/又はユーザー定義の細胞内細胞下構造におけるタンパク質及び/又は核酸の発現を、充分に高い解像度で、且つ、最低限のバックグラウンドノイズで、同時且つ多重に検出し定量化するための、プローブ、組成物、方法、及びキットが必要とされている。さらに、そのような系が、多数のエンドユーザーが既に利用可能な既存のシーケンシング技術と共に使用できることが求められている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、組織試料内の核酸配列をin situ合成するための方法であって、a)上記組織試料を少なくとも1つのプローブと接触させることであって、上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、上記プローブはフリーな3’-OH部分を含み、上記標的結合ドメインは組織試料の第1部位における少なくとも1つの標的分子に結合する、接触させること;b)上記フリーな3’-OH部分を少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結し、少なくとも1つの結合型プローブを伸長させることであって、上記少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に(operably)結合したヌクレオチドを含む、伸長させること、c)上記組織試料の第1部位に、上記少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記ポリメラーゼを遊離させ、上記伸長された少なくとも1つの結合型プローブ上にフリーな3’-OH部分を露出させること;並びに、d)核酸配列の合成が完了するまで工程(b)及び工程(c)を反復すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0005】
本開示は、組織試料内の核酸配列をin situ合成するための方法であって、a)上記組織試料を少なくとも1つのプローブと接触させることであって、上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、上記プローブはフリーな3’-OH部分を含み、上記標的結合ドメインは組織試料の第1部位に位置する少なくとも1つの標的分子に結合する、接触させること;b)上記組織試料を少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチド及び少なくとも1つのポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させることであって、上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;c)上記組織試料の第1部位に、上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記3’ターミネーター部分を遊離させ、上記伸長された少なくとも1つの結合型プローブ上にフリーな3’-OH部分を露出させること;並びに、d)核酸配列の合成が完了するまで工程(b)及び工程(c)を反復すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0006】
前述の方法のいくつかの態様では、標的結合ドメインが上記組織試料の少なくとも第2部位における少なくとも1つの標的分子に結合し、当該方法は上記少なくとも第2部位において工程(b)~(d)を反復することをさらに含む。
【0007】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位で合成された核酸配列は、上記組織試料の上記少なくとも第2部位で合成された核酸配列と異なる。
【0008】
本開示は、組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイル(spatially-resolved profile of the abundance)を生成する方法であって、a)上記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;b)上記組織試料を第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメイン(barcode domain)を伸長させ、空間的バーコードドメイン(spatial barcode domain)を形成することであって、上記第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;c)上記組織試料の少なくとも1つの部位に、上記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記ポリメラーゼを遊離させ、上記組織試料の上記少なくとも1つの部位における上記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;d)上記組織試料を追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、工程(c)で照射された上記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインの上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、上記追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;e)上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、工程(c)及び工程(d)を反復すること;f)上記組織試料内の標的分析物に結合した上記プローブを収集すること;並びに、g)工程(f)で収集された上記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、上記組織試料の上記第1部位及び上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより上記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0009】
本開示は、組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイル(spatially-resolved profile of the abundance)を生成する方法であって、a)上記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;b)上記組織試料を第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び第1の複数のポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、上記第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;c)上記組織試料の少なくとも1つの部位に、上記可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記可逆的3’ターミネーター部分を遊離させ、上記組織試料の上記少なくとも1つの部位における上記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;d)上記組織試料を追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び追加の複数のポリメラーゼと接触させることにより、工程(c)で照射された上記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインの上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、上記追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して可逆的3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;e)上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、工程(c)及び工程(d)を反復すること;f)上記組織試料内の標的分析物に結合した上記プローブを収集すること;並びに、g)工程(f)で収集された上記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、上記組織試料の上記第1部位及び上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより上記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0010】
いくつかの態様において、前述の方法は、上記組織試料の上記第1部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量と、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量とを比較することをさらに含むことができる。
【0011】
ポリメラーゼは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ又はその生物活性部分とすることができる。
【0012】
少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dATP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dCTP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dGTP又は3’-O-(2-ニトロベンジル)-dTTPを含むことができる。
【0013】
3’ターミネーター部分は、2-ニトロベンジルを含むことができる。
【0014】
プローブは、固有分子識別子をさらに含むことができる。固有分子識別子は、少なくとも約14ヌクレオチド長とすることができる。
【0015】
プローブは、増幅プライマー結合部位をさらに含むことができる。増幅プライマー結合部位は、少なくとも約24ヌクレオチド長とすることができる。
【0016】
プローブは、定常領域をさらに含むことができる。定常領域は、少なくとも約12ヌクレオチド長~少なくとも約20ヌクレオチド長とすることができる。
【0017】
プローブは、5’から3’に向かって、標的結合ドメイン、続いて増幅プライマー結合部位、続いて固有分子識別子、続いて標的同定ドメイン、続いて定常領域を含むことができる。
【0018】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの空間的バーコードドメインは、上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有空間的識別子配列を含む。前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの空間的バーコードドメインは、上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有空間的識別子配列を含む。
【0019】
空間的識別子配列は、少なくとも約20個のヌクレオチドを含むことができる。
【0020】
空間的識別子配列は、少なくとも4つの空間的同定ドメインを含むことができる。上記少なくとも4つの空間的同定ドメインのそれぞれは、同じ数のヌクレオチドを含むことができる。上記少なくとも4つの空間的同定ドメインの少なくとも1つは、同一空間的バーコード内の別の空間的同定ドメインと比較した場合で異なる数のヌクレオチドを含むことができる。それぞれの空間的同定ドメインは、約1~約4個のヌクレオチドを含むことができる。それぞれの空間的同定ドメインは、約4個のヌクレオチドを含むことができる。上記少なくとも4つの空間的同定ドメインのそれぞれは、3’末端に同じヌクレオチドを含むことができる。
【0021】
前述の方法のいくつかの態様では、上記方法は、工程(e)後且つ工程(f)前に、工程(c)及び工程(d)を反復して、上記組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインが3’末端に区切りドメイン(delimiting domain)を含むように伸長させることをさらに含むことができる。
【0022】
前述の方法のいくつかの態様では、上記方法は、工程(e)後且つ工程(f)前に、上記組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させることをさらに含むことができる。
【0023】
前述の方法のいくつかの態様では、上記方法は、工程(e)後且つ工程(f)前に、工程(c)及び工程(d)を反復して、上記組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインが区切りドメインを含むように伸長させること;並びに(ii)上記組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させること、をさらに含むことができる。
【0024】
区切りドメインは、少なくとも約4ヌクレオチド長~少なくとも約6ヌクレオチド長とすることができる。上記区切りドメインの配列は、試料における全ての空間的バーコードに対して同じである。
【0025】
ポリTドメインは、少なくとも約14個のヌクレオチドを含むことができる。
【0026】
前述の方法のいくつかの態様では、工程(c)の照射は、アークランプ、レーザー、集束UV光源、及び発光ダイオードからなる群から選択される光源に供給させることができる。レーザーは赤外レーザーとすることができる。
【0027】
前述の方法のいくつかの態様では、工程(c)の照射は、2光子励起顕微鏡に供給させることができる。
【0028】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記第2部位は、x方向及び/又はy方向に約500nm以下、且つ、z方向に約1500nm以下とすることができる。
【0029】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位は、細胞内とすることができる。
【0030】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位は、それぞれ、1個以下の細胞を含むことができる。
【0031】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位は、それぞれ、10個以下の細胞を含むことができる。
【0032】
前述の方法のいくつかの態様では、上記組織試料の上記第1部位内及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位内のそれぞれの細胞は、個々に自動的に同定しコード化することができる。
【0033】
前述の方法のいくつかの態様では、上記方法は、工程(a)の前に、上記組織試料をddTTP(ジデオキシチミジン三リン酸(dideoxthymidine-triphosphate))終結に供することをさらに含むことができる。上記組織試料をddTTP終結に供することは、上記組織試料をddTTP及びTdTと接触させることを含むことができる。
【0034】
前述の方法のいくつかの態様では、上記方法は、工程(f)後且つ工程(g)前に、上記収集されたプローブを増幅することをさらに含むことができる。上記収集されたプローブを増幅することは、第1増幅プライマー及び第2増幅プライマーの使用を含むものとすることができ、上記第1増幅プライマーは、第1フローセルアダプター配列、第1NGSインデックス配列及び第1シーケンシングプライマー結合部位を含み、上記第2増幅プライマーは、第2フローセルアダプター配列、第2NGSインデックス配列及び第2シーケンシングプライマー結合部位を含む。上記第1増幅プライマー及び上記第2増幅プライマーの少なくとも一方は、上記区切り配列及び/又は上記ポリTドメインと相補的な核酸配列を含むことができる。
【0035】
上記の態様のいずれも、他のいずれの態様と組み合わせることができる。
【0036】
別途定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書では、文脈によって特に明示されない限り、単数形は複数形も包含し;例としては、「a」、「an」、及び「the」という語は、単数又は複数と理解され、「又は」という語は包括的であると理解される。例として、「要素」は1又は複数の要素を意味する。本明細書の全体を通じて、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記載された要素、整数、若しくは工程、又は要素群、整数群、若しくは工程群の包含を意味するが、他の要素、整数、若しくは工程、又は要素群、整数群、若しくは工程群の排除は意味していないと理解されたい。約は、記載された値の、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、又は0.01%以内と理解することができる。文脈からそうでないことが明らかでない限り、本明細書に提供された全ての数値は「約」という語で修飾されている。
【0037】
本明細書に記載される方法及び材料と類似又は等価の方法及び材料を、本開示の実施又は試験で使用できるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照によって援用される。本明細書に引用された参考文献は、請求項に係る発明に対する先行技術であることを認めるものではない。矛盾が生じる場合、本明細書が、定義も含めて、優先されるものとする。加えて、材料、方法、及び例は、説明のみを目的とし、限定は意図していない。本開示の他の特徴及び利点が、以下の詳細な説明及び請求項から明らかとなろう。
【0038】
上記及びさらなる特徴は、添付の図面を参照しつつ行う以下の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本開示のin situ核酸合成法の例示的な模式図である。
【0040】
【
図2】
図2は、本開示のin situ核酸合成法の例示的な模式図である。
【0041】
【
図3A】
図3Aは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3B】
図3Bは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3C】
図3Cは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3D】
図3Dは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3E】
図3Eは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3F】
図3Fは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3G】
図3Gは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3H】
図3Hは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3I】
図3Iは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3J】
図3Jは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3K】
図3Kは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3L】
図3Lは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3M】
図3Mは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図3N】
図3Nは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【0042】
【
図4A】
図4Aは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4B】
図4Bは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4C】
図4Cは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4D】
図4Dは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4E】
図4Eは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4F】
図4Fは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4G】
図4Gは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4H】
図4Hは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4I】
図4Iは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4J】
図4Jは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4K】
図4Kは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4L】
図4Lは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4M】
図4Mは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【
図4N】
図4Nは、組織試料の少なくとも2つの部位における、少なくとも1つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法の各工程の例示的な模式図である。
【0043】
【
図5A】
図5Aは、本開示の方法で使用することができる2光子励起法の例示的な光学系模式図である。
【0044】
【
図5B】
図5Bは、本開示の方法で使用することができる2光子励起法の例示的な光学系模式図である。
【0045】
【
図6】
図6は、各種プロパギルアミノ(proparglyamino)dNTPの構造を示している。
【0046】
【
図7】
図7は、BP-23354の構造を示している。
【0047】
【
図8】
図8は、例示的なヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体調製法の模式図である。
【0048】
【
図9】
図9は、本開示の方法で使用するための各種可逆的ターミネーターヌクレオチドの構造を示している。
【0049】
【
図10】
図10は、本開示のプローブの例示的な模式図である。
【0050】
【
図11】
図11は、
図10のプローブが、本開示の方法においてTdT伸長を用いて伸長されて空間的バーコードドメインを形成し、上記空間的バーコードドメインが4つの空間同定(ID)ドメインを含む場合の例示的な模式図である。
【0051】
【
図12】
図12は、
図10のプローブが、本開示の方法においてTdT伸長を用いて伸長されて空間的バーコードドメインを形成し、上記空間的バーコードドメインが4つの空間同定(ID)ドメイン及び区切りドメインを含む場合の例示的な模式図である。
【0052】
【
図13】
図13は、
図10のプローブが、本開示の方法においてTdT伸長を用いて伸長されて空間的バーコードドメインを形成し、上記空間的バーコードドメインが4つの空間同定(ID)ドメイン、区切りドメイン及びポリTドメインを含む場合の例示的な模式図である。
【0053】
【
図14A】
図14Aは、本開示の伸長後プローブ、及び本開示の2つの増幅プライマーの例示的な模式図である。
【0054】
【
図14B】
図14Bは、本開示の伸長後プローブ、及び本開示の2つの増幅プライマーの例示的な模式図である。この第2増幅プライマーは3’末端に2つの縮重塩基(「BN」)を含む
【0055】
【
図15】
図15は、本開示のプローブの存在を検査し増幅する増幅実験で使用するためのプライマー設計の例示的な模式図である。
【0056】
【
図16】
図16は、本開示の増幅プライマーを用いた本開示のプローブの増幅の、ゲル電気泳動分析の画像である。
【0057】
【
図17】
図17は、本開示のプローブの存在を検査し増幅する増幅実験で使用するためのプライマー設計の例示的な模式図である。
【0058】
【
図18】
図18は、本開示の増幅プライマーを用いた本開示のプローブの増幅の、ゲル電気泳動分析の画像である。
【0059】
【
図19】
図19は、本開示の方法の一部としての、組織試料からの、プローブを含むDNAの回収を示す図である。
【0060】
【
図20】
図20は、本開示のプローブの例示的な模式図である。
【0061】
【
図21】
図21は、
図20のプローブが、本開示の方法においてTdT伸長を用いて伸長されて空間的バーコードドメインを形成し、上記空間的バーコードドメインが4つの同定(ID)ドメイン、区切りドメイン及びポリTドメインを含む場合の例示的な模式図である。
【0062】
【
図22】
図22は、本開示の方法で2光子型照射を用いて得られる光切断の結果の改善を示す一連の画像である。
【0063】
【
図23】
図23は、シーケンシングを介しプローブを定量化する一環として、組織試料から収集されたプローブを精製する方法の例示的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示は、部分的には、既存のシーケンス法を用いて、ユーザー定義の組織領域、ユーザー定義の細胞、及び/又はユーザー定義の細胞内細胞下構造におけるタンパク質及び/又は核酸の発現の、同時且つ多重の空間的な検出及び定量化を行うための、プローブ、組成物、方法、及びキットに基づくものである。
【0065】
本開示は、第1関心領域(例えば、組織型、細胞(正常細胞及び異常細胞を含む)、並びに細胞内部の細胞下構造)に存在する標的タンパク質及び/又は標的核酸の正体及び存在量と、第2関心領域に存在する標的タンパク質及び/又は標的核酸の正体及び存在量との比較を提供するものである。関心領域及び実行できる比較の数に予め決められた上限はなく、この上限は、試料のサイズに対する関心領域のサイズに関連している。例として、単一の細胞が関心領域を表す場合、切片は数百~数千の関心領域を有し得るが、組織切片が2つのみの細胞型を含む場合、切片は2つのみの関心領域を有し得る(それぞれ1つのみの細胞型を含む)。
【0066】
本開示は、標準的な免疫組織化学法又はin situハイブリダイゼーション法で可能であるよりも高度な多重化を提供するものである。標準的な免疫組織化学的手法は6~10種のタンパク質標的の最大同時検出を可能にするが、3~4種のタンパク質標的であることがより一般的である。同様に、in situハイブリダイゼーション法も、10種未満の核酸標的の同時検出に限定される。本開示は、試料の定められた領域からの、核酸標的及び/又はタンパク質標的の大きな組み合わせの検出を提供するものである。本開示は、デジタル定量化により客観的測定値を増やし、信頼性及び一貫性を増大させることにより、複数の施設間での結果の比較を可能にするものである。
【0067】
当該技術分野において公知の他の方法とは異なり、本開示の方法は、組織試料の特定領域からプローブ/バーコードを抽出するための連続的な流体ステップを必要としない。
【0068】
さらに、デジタルマイクロミラー指向型照射システムを頼りとする当該技術分野において公知の他の方法とは異なり、本開示の方法は、ポイント走査型2光子システムを含む2光子照射システムと適合する。この2光子照射システムは、空間分解能が増加しており、単一細胞、さらには単一細胞内部の細胞下構ほどの小ささの単一の関心領域(ROI)の照射を可能にする。
【0069】
本開示の種々の組成物及び方法の全詳細を本明細書において説明する。
【0070】
本開示の方法
【0071】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、2光子顕微鏡法と光活性化化学を併用して、単一細胞の空間的バーコードをin situで形成させることで、空間分解法における単一細胞分解能での遺伝子発現の定量化を可能にする、「DNAライティング顕微鏡(DNA writing microscope)」と称することができる。
【0072】
本開示は、組織試料内の核酸配列をin situ合成するための方法であって、a)上記組織試料を少なくとも1つのプローブと接触させることであって、上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、上記プローブはフリーな3’-OH部分を含み、上記標的結合ドメインは組織試料の第1部位における少なくとも1つの標的分子に結合する、接触させること;b)上記フリーな3’-OH部分を少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結し、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させることであって、上記少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること、c)上記組織試料の第1部位に、上記少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記ポリメラーゼを遊離させ、上記伸長された少なくとも1つの結合型プローブ上にフリーな3’-OH部分を露出させること;並びに、d)核酸配列の合成が完了するまで工程(b)及び工程(c)を反復すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0073】
上記方法の例示的な模式図を
図1に示す。
図1には、フリーな3’-OHを有するプローブが示されている(上部、「フリーな3’-OHを有するISHプローブ」)。このプローブは、次いで、上記フリーな3’-OH部分を、光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に連結されたヌクレオチドを含むヌクレオチドポリメラーゼ複合体と接触させることで、上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することによって、伸長される。この非限定例では、上記ポリメラーゼは末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)である。上記ヌクレオチド(括弧書きの「N」)は光切断性リンカー(
図1では星形で表されている)を介してTdT分子に動作可能に連結されている。その次の脱保護のステップで、この光切断性リンカーは、上記プローブ及びヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体に、上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光(この非限定例では、上記光は約365nmの波長を有する紫外光である)を照射することにより切断される。これにより、上記ポリメラーゼが伸長後のプローブから遊離し、伸長後プローブ上のフリーな3’-OH部分が露出する。その後、所望の核酸配列が合成し終わるまでこのプロセスが反復され得る。
【0074】
本開示は、組織試料内の核酸配列をin situ合成するための方法であって、a)上記組織試料を少なくとも1つのプローブと接触させることであって、上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、上記プローブはフリーな3’-OH部分を含み、上記標的結合ドメインは組織試料の第1部位に位置する少なくとも1つの標的分子に結合する、接触させること;b)上記組織試料を少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチド及び少なくとも1つのポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させることであって、上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;c)上記組織試料の第1部位に、上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記3’ターミネーター部分を遊離させ、上記伸長された少なくとも1つの結合型プローブ上にフリーな3’-OH部分を露出させること;並びに、d)核酸配列の合成が完了するまで工程(b)及び工程(c)を反復すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0075】
上記方法の模式図を
図2に示す。
図2には、フリーな3’-OH部分を有するプローブが示されている(上部、「フリーな3’-OHを有するISHプローブ」)。このプローブは、その後、このプローブを少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチド及び少なくとも1つのポリメラーゼと接触させることで、上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することにより、伸長される。この非限定例では、上記ポリメラーゼは末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)である。上記ヌクレオチド(括弧書きの「N」)は光切断性リンカー(
図2では星形で表されている)によってターミネーター部分(三角)に動作可能に連結されている。その次の脱保護のステップで、この光切断性リンカーは、上記プローブに、上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光(この非限定例では、上記光は約365nmの波長を有する紫外光である)を照射することにより切断される。これにより、上記ターミネーター部分(三角)が遊離することで、伸長後プローブ上のフリーな3’-OH部分が露出する。その後、所望の核酸配列が合成し終わるまでこのプロセスが反復され得る。
【0076】
本開示は、組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法であって、a)上記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;b)上記組織試料を第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、上記第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;c)上記組織試料の少なくとも1つの部位に、上記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記ポリメラーゼを遊離させ、上記組織試料の上記少なくとも1つの部位における上記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;d)上記組織試料を追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、工程(c)で照射された上記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインの上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、上記追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;e)上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、工程(c)及び工程(d)を反復すること;f)上記組織試料内の標的分析物に結合した上記プローブを収集すること;並びに、g)工程(f)で収集された上記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、上記組織試料の上記第1部位及び上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより上記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0077】
上記方法の非限定例の模式図を
図3A~
図3Nに示す。上記方法は
図3Aにおける試料から始まる。この非限定例では、上記試料は4個の細胞を含み、それぞれの細胞は測定対象である特定の標的mRNAのコピーを少なくとも1つ含んでいる。細胞#1、細胞#2及び細胞#3は上記標的mRNAのコピーを1つ含み、細胞#3は上記標的mRNAのコピーを2つ含んでいる。
【0078】
上記試料は、
図3Bに示されるように、各関心領域(ROI)へと細区画され得る。この非限定例では、各ROIは上記細胞のうちの1つを含む。さらに、各ROIは、当該ROIに固有の、予め割り当てられた、特定の空間的バーコードでもある。この例では、各空間的バーコードは4個のヌクレオチドから構成されており、最初のヌクレオチドは任意のヌクレオチド(「N」で表されている)である。ROI#1の空間的バーコードはNGATであり、ROI#2の空間的バーコードはNATGであり、ROI#3の空間的バーコードはNATTであり、ROI#4の空間的バーコードはNTTAである。本明細書でさらなる説明がなされるように、上記空間的バーコードには任意の数のヌクレオチドを含ませることができ、
図3A~
図3Nに示された4ヌクレオチドの空間的バーコードは例示のみを目的としている。
【0079】
上記方法の第1工程では、
図3Cに示されるように、上記試料は複数のプローブと接触させられ、
図3Cの左上隅に示されているように、上記プローブは、標的mRNAに結合する固有標的結合ドメイン、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメイン、及びフリーな3’-OH部分を含む。上記標的結合ドメインは上記標的mRNAに特異的であり、各細胞内で各標的mRNAにハイブリダイズする。本明細書でさらなる説明がなされるように、上記試料は任意の数の異なる種類のプローブを含む複数のプローブと接触させられる場合があり、各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む。
図3A~
図3Nでは、例示のみを目的として、プローブの種類は1つである。
【0080】
図3Dに示される、上記方法の第2工程では、上記試料を複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることで、空間的バーコードドメインの最初のヌクレオチドが、標的mRNAに結合した各プローブのフリーな3’-OHに連結される。この非限定例では、上記ヌクレオチドポリメラーゼ複合体は、光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してヌクレオチド(「N」)に動作可能に連結されたポリメラーゼTdTを含む。
【0081】
図3Eに示される、上記方法の第3工程では、適切な空間的バーコードを構築するために「A」ヌクレオチドの付加を必要とする各ROIに、上記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光が照射される。この非限定例では、ROI#2及びROI#3が「A」ヌクレオチドの付加を必要とするため、これら2つのROIがこの工程で照射を受けている。上記照射は
図3Eでの稲妻(lighting bolt)形と、照射された細胞の陰影で表されている。この照射の結果、照射後の各ROIの内部では、上記TdT分子が、上記の予め連結されていた「N」ヌクレオチドから遊離され、後の工程で連結が生じ得るフリーな3’-OH部分が露出する。
図3Fは、ROI#2及びROI#3を照射した後の試料を示している。ROI#2及びROI#3の結合型プローブは、光切断の結果として、フリーな3’-OH部分を有している。逆に、Aヌクレオチドの付加を必要としないROI#1及びROI#4の結合型プローブは、TdT分子が手付かずの光切断性リンカーにより、予め連結されていた「N」ヌクレオチドに結合したままであるため、フリーな3’-OH部分を有していない。
【0082】
上記方法は
図3Gへと続き、上記試料が複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させられ、これらのヌクレオチドポリメラーゼ複合体は光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してTdT分子に動作可能に連結したdATP(「A」)を含む。これらのAヌクレオチドは、ROI#2及びROI#3における結合型プローブにのみ連結されるが、これは、これらの結合型プローブが、連結反応を促進できるフリーな3’-OH部分を含む唯一のプローブだからである。ROI#1及びROI#4の結合型プローブの3’末端は結合されたままのTdT分子によって保護されている。このようにして、「A」ヌクレオチドがROI#2及びROI#3における空間的バーコードに付加され、それらのROIで空間的バーコードのさらなる合成がなされる。
【0083】
上記方法は
図3Hへと続き、適切な空間的バーコードを構築するために「T」ヌクレオチドの付加を必要とする各ROIに、上記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光が照射される。この非限定例では、ROI#2、ROI#3及びROI#4が次の工程で「T」ヌクレオチドの付加を必要とするため、これら3つのROIが照射される。この照射の結果、照射後の各ROIの内部では、上記TdT分子が、上記の予め連結されていたヌクレオチドから遊離され、後の工程で連結が生じ得るフリーな3’-OH部分が露出する。
図3Iは、ROI#2、ROI#3及びROI#4を照射した後の試料を示している。ROI#2、ROI#3及びROI#4の結合型プローブは、光切断の結果として、フリーな3’-OH部分を有している。逆に、Tヌクレオチドの付加を必要としないROI#1の結合型プローブは、TdT分子が手付かずの光切断性リンカーにより、予め連結されていたヌクレオチドに結合したままであるため、フリーな3’-OH部分を有していない。
【0084】
上記方法は
図3Jへと続き、上記試料が複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させられ、これらのヌクレオチドポリメラーゼ複合体は光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してTdT分子に動作可能に連結したdTTP(「T」)を含む。これらのTヌクレオチドは、ROI#2、ROI#3及びROI#4における結合型プローブにのみ連結されるが、これは、これらの結合型プローブが、連結反応を促進できるフリーな3’-OH部分を含む唯一のプローブだからである。ROI#1の結合型プローブの3’末端は結合されたままのTdT分子によって保護されている。このようにして、「T」ヌクレオチドがROI#2、ROI#3及びROI#4における空間的バーコードに付加され、それらのROIで空間的バーコードのさらなる合成がなされる。
【0085】
上記方法は
図3Kへと続き、適切な空間的バーコードを構築するために「G」ヌクレオチドの付加を必要とする各ROIに、上記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光が照射される。この非限定例では、ROI#1及びROI#2が次の工程で「G」ヌクレオチドの付加を必要とするため、これら2つのROIが照射される。この照射の結果、照射後の各ROIの内部では、上記TdT分子が、上記の予め連結されていたヌクレオチドから遊離され、後の工程で連結が生じ得るフリーな3’-OH部分が露出する。
図3Lは、ROI#1及びROI#2を照射した後の試料を示している。ROI#1及びROI#2の結合型プローブは、光切断の結果として、フリーな3’-OH部分を有している。逆に、Tヌクレオチドの付加を必要としないROI#3及びROI#4の結合型プローブは、TdT分子が手付かずの光切断性リンカーにより、予め連結されていたヌクレオチドに結合したままであるため、フリーな3’-OH部分を有していない。
【0086】
上記方法は
図3Mへと続き、上記試料が複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させられ、これらのヌクレオチドポリメラーゼ複合体は光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してTdT分子に動作可能に連結したdGTP(「G」)を含む。これらのGヌクレオチドは、ROI#1及びROI#2における結合型プローブにのみ連結されるが、これは、これらの結合型プローブが、連結反応を促進できるフリーな3’-OH部分を含む唯一のプローブだからである。ROI#3及びROI#4の結合型プローブの3’末端は結合されたままのTdT分子によって保護されている。このようにして、「G」ヌクレオチドがROI#2、ROI#3及びROI#4における空間的バーコードに付加され、それらのROIで空間的バーコードのさらなる合成がなされる。この連結の後、ROI#2の結合型プローブは、完全に合成された空間的バーコード「NATG」を有する。
【0087】
図3Nに示されるように各ROIにおける全ての結合型プローブが完全な空間的バーコードを持つまで、前述の工程が、上記4種のヌクレオチド(dATP、dGTP、dTTP及びdCTP)のいずれかを用いて任意の回数反復され得る。各ROIにおける全ての空間的バーコードの完成後、上記結合型プローブは上記試料から洗浄され、収集された後、シーケンスされ得る。収集されたプローブ毎に空間的バーコードをシーケンスすることで、その特定のプローブの由来元であるROIを特定することができ、各ROI内の各標的mRNAの存在量を定量化し、当該標的mRNAの空間分解的な存在量プロファイルを得ることが可能となる。
【0088】
図3A~
図3Nにおけるヌクレオチド付加の順番(すなわちA、次にT、次にG)は、例示のみを目的にしている。本開示の方法では、ROI毎に適切な空間的バーコードを合成するために、任意の順番及び/又は組み合わせで、ヌクレオチドが空間的バーコードに付加され得る。
【0089】
本開示の方法のいくつかの態様では、ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は、光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に連結したヌクレオチドを含む。
【0090】
いくつかの態様では、光切断性リンカーは、アミン-チオールクロスリンカーを含むことができる。いくつかの態様では、アミン-チオールクロスリンカーは、PEG
4-SPDP(2-ピリジルジチオール-テトラオキサテトラデケース(tetraoxatetradecase)-N-ヒドロキシスクシンイミド)を含むことができる。いくつかの態様では、光切断性リンカーは、BP-23354などのマレイミド-NHSカーボネート系クロスリンカーを含むことができる。
図7は、BP-23354の構造を示している。
【0091】
本開示の方法のいくつかの態様では、ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は、Palluk et al. Nature Biotechnology, 2018, Vol. 36, No. 7, pgs. 645-650に記載されたヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体を含むことができ、その内容の全体は参照によって本明細書に援用される。
【0092】
いくつかの態様では、ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体内のヌクレオチドは、ヌクレオチドアナログを含むことができる。いくつかの態様では、ヌクレオチドアナログは、プロパギルアミノ(proparglyamino)dNTPとすることができる。いくつかの態様では、ヌクレオチドアナログは、7-デアザ-7-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dATP、5-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dCTP、7-デアザ-7-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dGRP又は5-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dUTPとすることができる。
図6は、これらの各種プロパギルアミノ(proparglyamino)dNTPの構造を示している。
【0093】
いくつかの態様では、ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は、プロパギルアミノ(proparglyamino)dNTPを、限定はされないがBP-23354などのアミン-チオールクロスリンカーと反応させて、光切断性リンカー-ヌクレオチド「リンカー-dNTP」を形成させることにより、調製することができる。上記リンカー-dNTPのマレイミド部分を、次に、単一の露出したシステイン残基を含む、限定はされないがTdTなどのポリメラーゼと反応させることで、ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体を形成させることができる。
図8は、例示的なヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体調製法の模式図である。
図8では、5-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dCTPを、まず、BP-23354と反応させることで、「リンカー-dCTP」を形成させている。このリンカー-dCTPを次に、単一の露出されたシステインを含むTdTポリメラーゼと反応させることで、「TdT-dCTP」を形成させている。この例では、dCTPは、任意の他のプロパギルアミノ(proparglyamino)dNTPと置き換えることができ、それらのプロパギルアミノdNTPとしては、7-デアザ-7-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dATP、7-デアザ-7-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dGRP又は5-プロパギルアミノ(proparglyamino)-dUTPが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0094】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)又はその生物活性部分とすることができる。いくつかの態様では、上記TdTは、ハツカネズミ(Mus musculus)TdTとすることができる。いくつかの態様では、上記TdTは、ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの短いアイソフォームとすることができ、これは以下のアミノ酸配列を有する:
【化1】
【0095】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの短いアイソフォームの132~510番残基を含むことができる。ハツカネズミ(Mus musculus)TdT 短いアイソフォームの132~510番残基のアミノ酸配列は以下である:
【化2】
【0096】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、188位システインがアラニンに置換され、216位システインがセリンに置換され、302位システインがアラニンに置換され、378位システインがアラニンに置換され、438位システインがセリンに置換されるように、全ての露出した天然システイン残基が除去された、ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの短いアイソフォームの132~510番残基を含むことができる。この配列は、本明細書では「露出したCysがない132~510位ハツカネズミ(Mus musculus)TdT」と称するが、以下のアミノ酸配列を有する:
【化3】
【0097】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、180位のグルタミン酸がシステイン残基と置換された、露出したCysがない132~510位ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの配列を含むことができる。この配列、本明細書ではMmTdT180と称するが、以下のアミノ酸配列を有する:
【化4】
【0098】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、188位のアラニンがシステイン残基と置換された、露出したCysがない132~510位ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの配列を含むことができる。この配列、本明細書ではMmTdT188と称するが、以下のアミノ酸配列を有する:
【化5】
【0099】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、253位のトレオニンがシステイン残基と置換された、露出したCysがない132~510位ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの配列を含むことができる。この配列、本明細書ではMmTdT253と称するが、以下のアミノ酸配列を有する:
【化6】
【0100】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、302位のアラニンがシステイン残基と置換された、露出したCysがない132~510位ハツカネズミ(Mus musculus)TdTの配列を含むことができる。この配列、本明細書ではMmTdT253と称するが、以下のアミノ酸配列を有する:
【化7】
【0101】
いくつかの態様では、ヌクレオチドポリメラーゼ複合体内のポリメラーゼは、マルトース結合タンパク質(MBP)-融合タンパク質とすることができる。いくつかの態様では、MBPが、MBPとポリメラーゼの始めとの間の任意の長さのアミノ酸リンカーにより、ポリメラーゼのN末端に融合されていてもよい。
【0102】
本開示は、組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法であって、a)上記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;b)上記組織試料を第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び第1の複数のポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、上記第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;c)上記組織試料の少なくとも1つの部位に、上記可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記可逆的3’ターミネーター部分を遊離させ、上記組織試料の上記少なくとも1つの部位における上記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;d)上記組織試料を追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び追加の複数のポリメラーゼと接触させることにより、工程(c)で照射された上記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインの上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、上記追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して可逆的3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;e)上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、工程(c)及び工程(d)を反復すること;f)上記組織試料内の標的分析物に結合した上記プローブを収集すること;並びに、g)工程(f)で収集された上記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、上記組織試料の上記第1部位及び上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより上記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、を含む、上記方法を提供するものである。
【0103】
上記方法の非限定例の模式図を
図4A~
図4Nに示す。上記方法は
図4Aにおける試料から始まる。この非限定例では、上記試料は4個の細胞を含み、それぞれの細胞は測定対象である特定の標的mRNAのコピーを少なくとも1つ含んでいる。細胞#1、細胞#2及び細胞#3は上記標的mRNAのコピーを1つ含み、細胞#3は上記標的mRNAのコピーを2つ含んでいる。
【0104】
上記試料は、
図4Bに示されるように、各関心領域(ROI)へと細区画され得る。この非限定例では、各ROIは上記細胞のうちの1つを含む。さらに、各ROIは、当該ROIに固有の、予め割り当てられた、特定の空間的バーコードでもある。この例では、各空間的バーコードは4個のヌクレオチドから構成されており、最初のヌクレオチドは任意のヌクレオチド(「N」で表されている)である。ROI#1の空間的バーコードはNGATであり、ROI#2の空間的バーコードはNATGであり、ROI#3の空間的バーコードはNATTであり、ROI#4の空間的バーコードはNTTAである。本明細書でさらなる説明がなされるように、上記空間的バーコードには任意の数のヌクレオチドを含ませることができ、
図4A~
図4Nに示された4ヌクレオチドの空間的バーコードは例示のみを目的としている。
【0105】
上記方法の第1工程では、
図4Cに示されるように、上記試料は複数のプローブと接触させられ、
図4Cの左上隅に示されているように、上記プローブは、標的mRNAに結合する固有標的結合ドメイン、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメイン、及びフリーな3’-OH部分を含む。上記標的結合ドメインは上記標的mRNAに特異的であり、各細胞内で各標的mRNAにハイブリダイズする。本明細書でさらなる説明がなされるように、上記試料は任意の数の異なる種類のプローブを含む複数のプローブと接触させられる場合があり、各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む。
図4A~
図4Nでは、例示のみを目的として、プローブの種類は1つである。
【0106】
図4Dに示される、上記方法の第2工程では、上記試料を複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び複数の ポリメラーゼと接触させることで、空間的バーコードドメインの最初のヌクレオチドが、標的mRNAに結合した各プローブのフリーな3’-OHに連結される。この非限定例では、上記可逆的ターミネーターヌクレオチドは、光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してターミネーター部分(三角として図示)に動作可能に連結されたヌクレオチド(dNTP、「N」)を含む。この非限定例では、上記ポリメラーゼはTdTである。上記可逆的ターミネーターヌクレオチド及びポリメラーゼとのインキュベーション後、それぞれの結合型プローブは、
図4Eに示されるように、1つのヌクレオチド「N」分だけ伸長されたものとなる。
【0107】
図4Fに示される、上記方法の次の工程では、適切な空間的バーコードを構築するために「A」ヌクレオチドの付加を必要とする各ROIに、上記可逆的ターミネーターヌクレオチド複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光が照射される。この非限定例では、ROI#2及びROI#3が「A」ヌクレオチドの付加を必要とするため、これら2つのROIがこの工程で照射を受けている。上記照射は
図4Fでの稲妻形と、照射された細胞の陰影で表されている。この照射の結果、照射後の各ROIの内部では、上記ターミネーター部分が、上記の予め連結されていた「N」ヌクレオチドから遊離され、後の工程で連結が生じ得るフリーな3’-OH部分が露出する。
図4Gは、ROI#2及びROI#3を照射した後の試料を示している。ROI#2及びROI#3の結合型プローブは、光切断の結果として、フリーな3’-OH部分を有している。逆に、Aヌクレオチドの付加を必要としないROI#1及びROI#4の結合型プローブは、ターミネーター部分が手付かずの光切断性リンカーにより、予め連結されていた「N」ヌクレオチドに結合したままであるため、フリーな3’-OH部分を有していない。
【0108】
上記方法は
図4Hへと続き、上記試料が複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び複数のポリメラーゼと接触させられる。上記可逆的ターミネーターヌクレオチドは、光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してターミネーター部分(三角として図示)に動作可能に連結されたdATP(「A」)を含む。これらのAヌクレオチドは、ROI#2及びROI#3における結合型プローブにのみ連結されるが、これは、これらの結合型プローブが、連結反応を促進できるフリーな3’-OH部分を含む唯一のプローブだからである。ROI#1及びROI#4の結合型プローブの3’末端は結合されたままのターミネーター部分によって保護されている。
図4Iに示されるように、「A」ヌクレオチドがROI#2及びROI#3における空間的バーコードに付加され、それらのROIで空間的バーコードのさらなる合成がなされる。
【0109】
上記方法は
図4Jへと続き、適切な空間的バーコードを構築するために「T」ヌクレオチドの付加を必要とする各ROIに、上記可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な波長の光が照射される。この非限定例では、ROI#2、ROI#3及びROI#4が次の工程で「T」ヌクレオチドの付加を必要とするため、これら3つのROIが照射される。この照射の結果、照射後の各ROIの内部では、上記ターミネーター部分が、上記の予め連結されていたヌクレオチドから遊離され、後の工程で連結が生じ得るフリーな3’-OH部分が露出する。
図4Kは、ROI#2、ROI#3及びROI#4を照射した後の試料を示している。ROI#2、ROI#3及びROI#4の結合型プローブは、光切断の結果として、フリーな3’-OH部分を有している。逆に、Tヌクレオチドの付加を必要としないROI#1の結合型プローブは、ターミネーター部分が手付かずの光切断性リンカーにより、予め連結されていたヌクレオチドに結合したままであるため、フリーな3’-OH部分を有していない。
【0110】
上記方法は
図4Lへと続き、上記試料が複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び複数のポリメラーゼと接触させられる。上記可逆的ターミネーターヌクレオチドは、光切断性リンカー(四角星形として図示)を介してターミネーター部分(三角として図示)に動作可能に連結されたdTTP(「T」)を含む。これらのTヌクレオチドは、ROI#2、ROI#3及びROI#4における結合型プローブにのみ連結されるが、これは、これらの結合型プローブが、連結反応を促進できるフリーな3’-OH部分を含む唯一のプローブだからである。ROI#1の結合型プローブの3’末端は結合されたままのターミネーター部分によって保護されている。
図4Mに示されるように、「T」ヌクレオチドがROI#2、ROI#3及びROI#4における空間的バーコードに付加され、それらのROIで空間的バーコードのさらなる合成がなされる。
【0111】
図4Nに示されるように各ROIにおける全ての結合型プローブが完全な空間的バーコードを持つまで、前述の工程が、上記4種のヌクレオチド(dATP、dGTP、dTTP及びdCTP)のいずれかを用いて任意の回数反復され得る。各ROIにおける全ての空間的バーコードの完成後、上記結合型プローブは上記試料から洗浄され、収集された後、シーケンスされ得る。収集されたプローブ毎に空間的バーコードをシーケンスすることで、その特定のプローブの由来元であるROIを特定することができ、各ROI内の各標的mRNAの存在量を定量化し、当該標的mRNAの空間分解的な存在量プロファイルを得ることが可能となる。
【0112】
図4A~
図4Nにおけるヌクレオチド付加の順番(すなわちA、次にT、次にG)は、例示のみを目的にしている。本開示の方法では、ROI毎に適切な空間的バーコードを合成するために、任意の順番及び/又は組み合わせで、ヌクレオチドが空間的バーコードに付加され得る。
【0113】
本開示の方法のいくつかの態様では、3’ターミネーター部分は、2-ニトロベンジルを含むことができる。
【0114】
本開示の方法のいくつかの態様では、可逆的ターミネーターヌクレオチドは、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dATP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dCTP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dGTP又は3’-O-(2-ニトロベンジル)-dTTPを含むことができる。これらの可逆的ターミネーターヌクレオチドの構造が
図9に示されている。
【0115】
本開示の方法のいくつかの態様では、可逆的ターミネーターヌクレオチドは、その内容の全体が参照によって本明細書に援用される、Wu et al. PNAS, 2007, Vol. 104, No. 42, pgs. 16462-16467に記載されている修飾ヌクレオチドのいずれかを含むことができる。
【0116】
いくつかの態様では、本開示の方法は、組織試料の、少なくとも約10箇所、又は少なくとも約100箇所、又は少なくとも約1,000箇所、又は少なくとも約10,000箇所、又は少なくとも約100,000箇所、又は少なくとも約1,000,000箇所、又は少なくとも約107箇所、又は少なくとも約108箇所、又は少なくとも約109箇所、又は少なくとも約1010箇所、又は少なくとも約1011箇所、又は少なくとも約1012箇所、又は少なくとも約1013箇所、又は少なくとも約1014箇所、又は少なくとも約1015箇所、又はより多くの箇所における、任意の数の標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成するために使用することができる。
【0117】
いくつかの態様では、本開示の方法は、組織試料の任意の数の部位における、少なくとも約3個、又は少なくとも約4個、又は少なくとも約5個、又は少なくとも約6個、又は少なくとも約7個、又は少なくとも約8個、又は少なくとも約9個、又は少なくとも約10個、又は少なくとも約20個、又は少なくとも約30個、又は少なくとも約40個、又は少なくとも約50個、又は少なくとも約60個、又は少なくとも約70個、又は少なくとも約80個、又は少なくとも約90個、又は少なくとも約100個、又は少なくとも約250個、又は少なくとも約500個、又は少なくとも約750個、又は少なくとも約1000個、又は少なくとも約5000個、又は少なくとも約10,000個、又は少なくとも約100,000個の標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成するために使用することができる。
【0118】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料を少なくとも2種のプローブを含む溶液と接触させることは、組織試料を、少なくとも約3種、又は少なくとも約4種、又は少なくとも約5種、又は少なくとも約6種、又は少なくとも約7種、又は少なくとも約8種、又は少なくとも約9種、又は少なくとも約10種、又は少なくとも約20種、又は少なくとも約30種、又は少なくとも約40種、又は少なくとも約50種、又は少なくとも約60種、又は少なくとも約70種、又は少なくとも約80種、又は少なくとも約90種、又は少なくとも約100種、又は少なくとも約250種、又は少なくとも約500種、又は少なくとも約750種、又は少なくとも約1000種、又は少なくとも約5000種、又は少なくとも約10,000種、又は少なくとも約100,000種のプローブと接触させることを含むことができ、上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、各種プローブは少なくとも2つの標的分析物の1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む。
【0119】
本明細書で使用される場合、「空間的に検出する」という語は、その最も広い意味で、試料の特定の関心領域内で特定の標的分析物の存在を確認することを言うのに用いる。空間的に検出することは、試料の特定の関心領域内に存在する特定の標的分析物の量を定量化することを含むことができる。空間的に検出することは、試料の特定の関心領域内の少なくとも第2標的分析物の量と比較して、試料の特定の関心領域内の第1標的分析物の相対量を定量化することをさらに含むことができる。また、空間的に検出することは、同じ試料又は異なる試料の少なくとも第2関心領域内の同じ標的分析物の量と比較して、試料の第1関心領域内の特定の標的分析物の相対量を定量化することを含むことができる。
【0120】
標的分析物
【0121】
本開示の方法及び組成物のいくつかの態様では、標的分析物は、空間的に検出されることになっている試料内の任意の分子とすることができる。標的分析物としては、核酸分子及びタンパク質分子が挙げられるが、これらに限定はされない。標的分析物がタンパク質である場合、このタンパク質を標的タンパク質と呼ぶことがある。標的分析物が核酸である場合、この核酸を標的核酸と呼ぶことがある。標的核酸としては、mRNA分子、マイクロRNA(miRNA)分子、tRNA分子、rRNA分子、gDNA又は試料内に存在する任意の他の核酸を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0122】
本開示の方法のいくつかの態様では、標的分析物は標的核酸である。標的核酸はDNA又はRNAとすることができる。標的核酸はメッセンジャーRNA(mRNA)とすることができる。標的核酸はマイクロRNA(miRNA)とすることができる。
【0123】
プローブ
【0124】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、ポリヌクレオチドとすることができる。いくつかの態様では、プローブは、DNA、RNA又はDNAとRNAとの組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、プローブは、DNAを含むことができる。いくつかの態様では、プローブは、一本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。いくつかの態様では、プローブは、二本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。いくつかの態様では、プローブは、部分的に一本鎖のポリヌクレオチドとすることができる。いくつかの態様では、プローブは、部分的に二本鎖のポリヌクレオチドとすることができる。
【0125】
いくつかの態様では、プローブは、核酸とアミノ酸との組み合わせを含むことができる。非限定例における、プローブはポリヌクレオチドに動作可能に連結した抗体を含むことができ、上記ポリヌクレオチドはDNA、RNA又はDNAとRNAとの組み合わせを含む。
【0126】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、標的結合ドメインを含むことができる。
【0127】
上記標的結合ドメインは、一連のヌクレオチドを含むことができる(例えば、ポリヌクレオチドである)。上記標的結合ドメインは、DNA、RNA、又はそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、上記標的結合ドメインは、DNAを含む。いくつかの態様では、上記標的結合ドメインは、一本鎖ポリヌクレオチドである。
【0128】
標的結合ドメインがポリヌクレオチドである態様では、標的結合ドメインは、標的核酸に直接的又は間接的に結合することができる。標的結合ドメインは、シーケンスプローブの標的結合ドメインに相補的な標的核酸の一部分にハイブリダイズすることにより、標的核酸に直接的に結合することができる。
【0129】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブの上記標的結合ドメインは、試料に存在する標的核酸に(中間オリゴヌクレオチドを介して)間接的にハイブリダイズすることができる。
【0130】
シーケンスプローブの標的結合ドメインは、シーケンスプローブのハイブリダイゼーション及び/又は脱ハイブリダイゼーションの可能性、並びにこれらが起こる速度を調節するように設計されたものとすることができる。一般に、プローブのTmが低くなるほど、当該プローブが標的核酸に/から脱ハイブリダイズする速度は増し、可能性は高くなる。したがって、使用するプローブのTmが低いほど、標的核酸に結合するプローブの数は減少することなる。
【0131】
標的結合ドメインの長さは、部分的に、プローブが標的核酸にハイブリダイズし、ハイブリダイズしたままとなる可能性に影響する。一般に、標的結合ドメインが長くなるほど(ヌクレオチド数が大きくなるほど)、相補的配列が標的ヌクレオチドに存在しにくくなる。逆に、標的結合ドメインが短いほど、相補的配列が標的ヌクレオチドに存在しやすくなる。
【0132】
標的結合ドメインは、任意の数のヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、標的結合ドメインは、少なくとも約2ヌクレオチド長、又は少なくとも約3ヌクレオチド長、又は少なくとも約4ヌクレオチド長、又は少なくとも約5ヌクレオチド長、又は少なくとも約6ヌクレオチド長、又は少なくとも約7ヌクレオチド長、又は少なくとも約8ヌクレオチド長、又は少なくとも約9ヌクレオチド長、又は少なくとも約10ヌクレオチド長、又は少なくとも約11ヌクレオチド長、又は少なくとも約12ヌクレオチド長、又は少なくとも約13ヌクレオチド長、又は少なくとも約14ヌクレオチド長、又は少なくとも約15ヌクレオチド長、又は少なくとも約16ヌクレオチド長、又は少なくとも約17ヌクレオチド長、又は少なくとも約18ヌクレオチド長、又は少なくとも約19ヌクレオチド長、又は少なくとも約20ヌクレオチド長、又は少なくとも約21ヌクレオチド長、又は少なくとも約22ヌクレオチド長、又は少なくとも約23ヌクレオチド長、又は少なくとも約24ヌクレオチド長、又は少なくとも約25ヌクレオチド長、又は少なくとも約26ヌクレオチド長、又は少なくとも約27ヌクレオチド長、又は少なくとも約28ヌクレオチド長、又は少なくとも約29ヌクレオチド長、又は少なくとも約30ヌクレオチド長、又は少なくとも約31ヌクレオチド長、又は少なくとも約32ヌクレオチド長、又は少なくとも約33ヌクレオチド長、又は少なくとも約34ヌクレオチド長、又は少なくとも約35ヌクレオチド長、又は少なくとも約36ヌクレオチド長、又は少なくとも約37ヌクレオチド長、又は少なくとも約38ヌクレオチド長、又は少なくとも約39ヌクレオチド長、又は少なくとも約40ヌクレオチド長、又は少なくとも約41ヌクレオチド長、又は少なくとも約42ヌクレオチド長、又は少なくとも約43ヌクレオチド長、又は少なくとも約44ヌクレオチド長、又は少なくとも約45ヌクレオチド長、又は少なくとも約46ヌクレオチド長、又は少なくとも約47ヌクレオチド長、又は少なくとも約48ヌクレオチド長、又は少なくとも約49ヌクレオチド長、又は少なくとも約50ヌクレオチド長又はより長いヌクレオチド長とすることができる。
【0133】
本開示のプローブは、標的核酸を空間的に検出するために使用することができる。この態様では、上記標的結合ドメインは、標的核酸結合領域とすることができる。上記標的核酸結合領域は、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長である。特定の態様では、上記標的核酸結合領域は、およそ10~500ヌクレオチド長、およそ20~400ヌクレオチド長、およそ25ヌクレオチド長、およそ30~300ヌクレオチド長、およそ35ヌクレオチド長、およそ40~200ヌクレオチド長、又はおよそ50~100ヌクレオチド長である。標的核酸と結合しそれを同定するプローブ及び方法は、例えば、それぞれの全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2003/0013091号明細書、同第2007/0166708号明細書、同第2010/0015607号明細書、同第2010/0261026号明細書、同第2010/0262374号明細書、同第2010/0112710号明細書、同第2010/0047924号明細書、及び同第2014/0371088号明細書に記載されたものである。
【0134】
上記標的結合ドメインは、少なくとも1つの天然塩基を含むものであり得る。上記標的結合ドメインは、天然塩基を含まないものであり得る。上記標的結合ドメインは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログを含むものであり得る。上記標的結合ドメインは、修飾ヌクレオチドもヌクレオチドアナログも含まないものであり得る。上記標的結合ドメインは、少なくとも1つのユニバーサル塩基を含むものであり得る。上記標的結合ドメインは、ユニバーサル塩基を含まないものであり得る。上記標的結合ドメインは、少なくとも1つの縮重塩基を含むものであり得る。上記標的結合ドメインは、縮重塩基を含まないものであり得る。
【0135】
上記標的結合ドメインは、任意の組み合わせの、天然塩基(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の天然塩基)、修飾ヌクレオチド若しくはヌクレオチドアナログ(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ)、ユニバーサル塩基(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上のユニバーサル塩基)、又は縮重塩基(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の縮重性塩基)を含むことができる。組み合わせて存在している場合、特定の標的結合ドメインの天然塩基、修飾ヌクレオチド若しくはヌクレオチドアナログ、ユニバーサル塩基、及び縮重塩基は、任意の順番で配列させることができる。
【0136】
「修飾ヌクレオチド」又は「ヌクレオチドアナログ」という語は、ロックド核酸(LNA)、架橋型核酸(BNA)、プロピン修飾核酸(propyne-modified nucleic acid)、ジップ核酸(zip nucleic acid)(ZNA(登録商標))、イソグアニン、イソシトシン6-アミノ-1-(4-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-1,5-ジヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(PPG)及び2’-O-メチル核酸などの2’-修飾核酸を包含するが、これらに限定はされない。上記標的結合ドメインは、0~6個(例えば、0個、1個、2個、3個、4個、5個又は6個)の修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログを含むことができる。上記修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログはロックド核酸(LNA)であることが好ましい。
【0137】
「ロックド核酸(LNA)」という語は、本明細書で使用される場合、修飾RNAヌクレオチドであって、リボース部分が2’位の酸素と4’位の炭素とを連結するメチレン架橋を含むものを包含するが、これに限定はされない。このメチレン架橋が、A型RNA二本鎖に存在する、ノースコンファメーション(north confirmation)としても知られている、3’-エンドコンファメーション(confirmation)のリボースをロックしている。インアクセシブルRNA(inaccessible RNA)という語を、LNAと同義的に使用することがある。「架橋型核酸(BNA)」という語は、本明細書で使用される場合、ノースコンファメーション(north confirmation)としても知られている、固定された3’-エンドコンファメーション(confirmation)を有する、5員又は6員の架橋型構造を含む修飾RNA分子を包含するが、これに限定はされない。上記架橋型構造はリボースの2’位の酸素をリボースの4’位の炭素に連結している。炭原子、窒原子、及び水素原子を含有する種々の架橋構造が可能である。「プロピン修飾核酸」という語は、本明細書で使用される場合、当該核酸塩基のC5位にプロピン修飾を含むピリミジン、すなわちシトシン及びチミン/ウラシルを包含するが、これらに限定はされない。「ジップ核酸(ZNA(登録商標))」という語は、本明細書で使用される場合、カチオン性のスペルミン部分と複合したオリゴヌクレオチドを包含するが、これらに限定はされない。
【0138】
「ユニバーサル塩基」という語は、本明細書で使用される場合、ワトソン・クリック塩基対の法則には従わないが、標的核酸上に位置する4種の正規塩基(A、T/U、C、G)のいずれにも結合できる、ヌクレオチド塩基を包含するが、これに限定はされない。「縮重塩基」という語は、本明細書で使用される場合、ワトソン・クリック塩基対の法則には従わないが、4種の正規塩基(A、T/U、C、G)のうちの、4種全てではないが、少なくとも2種に結合できる、ヌクレオチド塩基を包含するが、これに限定はされない。縮重塩基はゆらぎ塩基と称されることもあり、これらの語は本明細書では同義的に使用される。
【0139】
いくつかの態様では、「縮重塩基」という語は、核酸分子(例えば、増幅プライマー、プローブなど)上の特定の位置を指して使用されることもあり、複数の核酸分子の文脈においては、独立して、上記複数の核酸分子中の異なる核酸分子上の1又は複数の異なるヌクレオチドとすることができる。非限定例では、複数の4ヌクレオチド長核酸分子は、縮重塩基を4番目のヌクレオチド位置に有する場合があり、この縮重塩基はA、C又はGのいずれかとすることができ、1位、2位及び3位におけるこれらのヌクレオチドは異なる核酸分子間で同じである。すなわち、上記複数の核酸分子中には、4位にAを有する核酸分子、4位にCを有する核酸分子、及び4位にGを有する核酸分子が存在する可能性があり、同時に、上記全ての核酸分子は1位、2位及び3位が同じである。
【0140】
標的分析物が標的タンパク質であるいくつかの態様では、標的結合ドメインはタンパク質標的結合ドメインとすることができる。いくつかの態様では、タンパク質標的結合ドメインは、標的タンパク質に結合する抗体又は抗体フラグメントを含むことができる。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ナノボディ、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、scFV又は多特異的抗体を含む。いくつかの態様では、タンパク質標的結合ドメインは、標的タンパク質に結合するアプタマーを含むことができる。いくつかの態様では、タンパク質標的結合ドメインは、生物試料内の標的タンパク質に特異的に結合できる任意の分子を含むことができる。
【0141】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、標的同定ドメインを含むことができる。
【0142】
標的同定ドメインは、プローブの標的結合ドメインに結合した標的分析物を同定する核酸分子である。上記標的同定ドメインは、上記プローブの標的結合ドメインに結合した上記標的分析物を同定する固有核酸配列を含む。非限定例では、P53タンパク質に結合する標的結合ドメインを有するプローブは、P53に対応する固有核酸配列を有する標的同定ドメインを含み、一方で、P97タンパク質に結合する標的結合ドメインを有するプローブは、P97に対応する固有核酸配列を有する標的同定ドメインを含む。
【0143】
標的同定ドメインは、任意の数のヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、標的同定ドメインは少なくとも約12ヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、標的同定ドメインは、少なくとも約7ヌクレオチド長~少なくとも約17ヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、標的同定ドメインは、少なくとも約2ヌクレオチド長~少なくとも約22ヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、標的同定ドメインは、少なくとも約2ヌクレオチド長、又は少なくとも約3ヌクレオチド長、又は少なくとも約4ヌクレオチド長、又は少なくとも約5ヌクレオチド長、又は少なくとも約6ヌクレオチド長、又は少なくとも約7ヌクレオチド長、又は少なくとも約8ヌクレオチド長、又は少なくとも約9ヌクレオチド長、又は少なくとも約10ヌクレオチド長、又は少なくとも約11ヌクレオチド長、又は少なくとも約12ヌクレオチド長、又は少なくとも約13ヌクレオチド長、又は少なくとも約14ヌクレオチド長、又は少なくとも約15ヌクレオチド長、又は少なくとも約16ヌクレオチド長、又は少なくとも約17ヌクレオチド長、又は少なくとも約18ヌクレオチド長、又は少なくとも約19ヌクレオチド長、又は少なくとも約20ヌクレオチド長、又は少なくとも約21ヌクレオチド長、又は少なくとも約22ヌクレオチド長、又は少なくとも約23ヌクレオチド長、又は少なくとも約24ヌクレオチド長、又は少なくとも約25ヌクレオチド長、又は少なくとも約26ヌクレオチド長、又は少なくとも約27ヌクレオチド長、又は少なくとも約28ヌクレオチド長、又は少なくとも約29ヌクレオチド長、又は少なくとも約30ヌクレオチド長、又は少なくとも約31ヌクレオチド長、又は少なくとも約32ヌクレオチド長、又は少なくとも約33ヌクレオチド長、又は少なくとも約34ヌクレオチド長、又は少なくとも約35ヌクレオチド長、又は少なくとも約36ヌクレオチド長、又は少なくとも約37ヌクレオチド長、又は少なくとも約38ヌクレオチド長、又は少なくとも約39ヌクレオチド長又は少なくとも約40ヌクレオチド長とすることができる。
【0144】
プローブの文脈においては、標的同定ドメインは、当該プローブの標的結合ドメインに結合した標的分析物を同定する核酸配列を含むポリヌクレオチドである。すなわち、標的同定ドメインは、当該標的同定ドメインが取り付けられた標的結合に結合した特定の標的分析物に事前に割り当てられた特定の核酸配列を含む。非限定例では、「標的分析物X」を空間的に検出するように設計された「プローブX」と称されるプローブは、標的同定ドメイン「標的同定ドメインX」に連結された、「標的結合ドメインX」と称される標的結合ドメインを含む。標的結合ドメインXは標的分析物Xに結合し、標的同定ドメインXは、「核酸配列X」と称される、標的分析物Xに対応する核酸配列を含む。したがって、本開示の方法を実施する当業者が、試料内の関心領域のプローブを収集し、シーケンシング後に核酸配列Xを得た場合、当該標的分析物Xが当該関心領域に存在したことを示すものであることが、当業者には理解される。核酸配列Xの量、又はシーケンスリードの数は、関心領域内の標的分析物Xの量を絶対的又は相対的に求める、定量化するために用いることができる。
【0145】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、固有分子識別子(UMI)を含むことができる。
【0146】
いくつかの態様では、固有分子識別子は、少なくとも約9ヌクレオチド長~少なくとも約19ヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、固有分子識別子は、少なくとも約4ヌクレオチド長~少なくとも約24ヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、固有分子識別子は、約14ヌクレオチド長とすることができる。固有分子識別子及びランダム分子タグという語は、本明細書では同義的に使用される。当該技術分野で公知の方法を用いて、固有分子識別子は、シーケンシング前に増幅におけるバイアスを補正するために使用することができる。
【0147】
本開示の方法及び組成物のいくつかの態様では、分子識別子は、少なくとも約5個のヌクレオチド、又は少なくとも約10個のヌクレオチド、又は少なくとも約15個のヌクレオチド、又は少なくとも約20個のヌクレオチド、又は少なくとも約25個のヌクレオチド、又は少なくとも約30個のヌクレオチド、又は少なくとも約35個のヌクレオチド、又は少なくとも約40個のヌクレオチド、又は少なくとも約45個のヌクレオチド、又は少なくとも約50個のヌクレオチドを含むことができる。
【0148】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、増幅プライマー結合部位を含むことができる。本明細書で使用される場合、「増幅プライマー結合部位」という語は、その最も広い意味で、少なくとも1つの増幅プライマーに相補的である、又は少なくとも部分的に相補的である、核酸配列を言うのに使用され、上記増幅プライマーは、PCRなどによりDNA合成及び/又はRNA合成をプライミングするのに充分な、短い一本鎖の、又は部分的に一本鎖のオリゴヌクレオチドである。
【0149】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅プライマー結合部位は、少なくとも約5個のヌクレオチド、少なくとも約10個のヌクレオチド、少なくとも約15個のヌクレオチド、少なくとも約20個のヌクレオチド、少なくとも約25個のヌクレオチド、少なくとも約30個のヌクレオチド、少なくとも約35個のヌクレオチド、少なくとも約40個のヌクレオチド、少なくとも約45個のヌクレオチド、少なくとも約50個のヌクレオチド、少なくとも約55個のヌクレオチド、少なくとも約60個のヌクレオチド、少なくとも約65個のヌクレオチド又は少なくとも約70個のヌクレオチドを含むことができる。
【0150】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、定常領域を含むことができる。いくつかの態様では、定常領域は、組織試料の各部位に対して同じである特定の核酸配列を含むことができる。
【0151】
本開示の方法のいくつかの態様では、定常領域は、少なくとも約1ヌクレオチド長、又は少なくとも約2ヌクレオチド長、又は少なくとも約3ヌクレオチド長、又は少なくとも約4ヌクレオチド長、又は少なくとも約5ヌクレオチド長、又は少なくとも約6ヌクレオチド長、又は少なくとも約7ヌクレオチド長、又は少なくとも約8ヌクレオチド長、又は少なくとも約9ヌクレオチド長、又は少なくとも約10ヌクレオチド長、又は少なくとも約11ヌクレオチド長、又は少なくとも約12ヌクレオチド長、又は少なくとも約13ヌクレオチド長、又は少なくとも約14ヌクレオチド長、又は少なくとも約15ヌクレオチド長、又は少なくとも約16ヌクレオチド長、又は少なくとも約17ヌクレオチド長、又は少なくとも約18ヌクレオチド長、又は少なくとも約19ヌクレオチド長、又は少なくとも約20ヌクレオチド長、又は少なくとも約21ヌクレオチド長、又は少なくとも約22ヌクレオチド長、又は少なくとも約23ヌクレオチド長、又は少なくとも約24ヌクレオチド長、又は少なくとも約25ヌクレオチド長、又は少なくとも約26ヌクレオチド長、又は少なくとも約27ヌクレオチド長、又は少なくとも約28ヌクレオチド長、又は少なくとも約29ヌクレオチド長、又は少なくとも約30ヌクレオチド長とすることができる。
【0152】
本開示の方法のいくつかの態様では、定常領域は、空間的バーコードがin situでプローブに付加された後、上記定常領域が標的同定ドメインと上記伸長した空間的バーコードとの間に位置するように、上記標的同定ドメインとフリーな3’-OH部分との間に位置させることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、上記定常領域は、配列解析の際に空間的バーコードドメインの開始部分を定めるために用いることができる。
【0153】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、5’から3’に向かって、標的結合ドメイン、次いで増幅プライマー結合部位、次いで固有分子識別子、次いで標的同定ドメインを含む、一本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。前記プローブの模式図を
図10に示す。
【0154】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、5’から3’に向かって、標的結合ドメイン、次いで増幅プライマー結合部位、次いで固有分子識別子、次いで標的同定ドメイン、次いで定常領域を含む、一本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。前記プローブの模式図を
図20に示す。
【0155】
本開示の方法のいくつかの態様では、プローブは、5’から3’に向かって、標的結合ドメイン、次いで増幅プライマー結合部位、次いで標的同定ドメイン、次いで固有分子識別子を含む、一本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。
【0156】
各態様では、プローブが、典型的には免疫組織化学(IHC)やin situハイブリダイゼーション(ISH)に使用される濃度未満の濃度で試料に与えられる。あるいは(alternately)、上記濃度は、IHCやISHに使用される濃度より著しく低くてもよい。例えば、上記プローブ濃度は、1/2倍、1/5倍、1/10倍、1/20倍、1/25倍、1/30倍、1/50倍、1/60倍、1/70倍、1/80倍、1/90倍、1/100倍、1/200倍、1/300倍、1/400倍、1/500倍、1/600倍、1/700倍、1/800倍、1/900倍、1/1000倍、1/2000倍、又はそれ以下、及び間の任意の数字であってもよい。各態様では、プローブは、100nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、0.01nM、及びそれ以下の濃度、並びに間の任意の濃度で、与えられる。
【0157】
タンパク質検出の際のバックグラウンドノイズは、インタクトなプローブ分子のネガティブ精製(negative purification)を行うことにより低減することができる。これは、関心領域から溶離液を回収した後、プローブのアフィニティ精製を行うことでなすことができる。
【0158】
本開示の方法のいくつかの態様では、少なくとも1個、又は少なくとも2個、又は少なくとも3個、又は少なくとも4個、又は少なくとも5個、又は少なくとも6個、又は少なくとも7個、又は少なくとも8個、又は少なくとも9個、又は少なくとも10個、又は少なくとも11個、又は少なくとも12個、又は少なくとも13個、又は少なくとも14個、又は少なくとも15個、又は少なくとも16個、又は少なくとも17個、又は少なくとも18個、又は少なくとも19個、又は少なくとも20個、又は少なくとも30個、又は少なくとも40個、又は少なくとも50個、又は少なくとも60個、又は少なくとも70個、又は少なくとも80個、又は少なくとも90個、又は少なくとも100個のプローブが、単一の標的分析物に結合し得る。本明細書で使用される場合、「タイリング(tiling)」という語は、本開示のプローブが2個以上、標的分析物に結合している場合を説明するために使用される。
【0159】
プローブセット、複数のプローブ、複数のプローブを含む溶液は、少なくとも1種のプローブ、すなわち1つの標的を対象とするプローブ、を含むことができる。プローブセットは、少なくとも2種、例えば、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、30種、40種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、200種、300種、400種、500種、600種、700種、800種、900種、1000種、又はそれ以上の種類のプローブを含むことが好ましい。プローブセットは、各種プローブの1又は複数のコピーを含んでもよい。
【0160】
第1のプローブセット、第1の複数のプローブ、又は第1のプローブを含む溶液だけを試料に適用してもよい。あるいは(alternately)、第2(又はより数字が大きい)のプローブセットを後に試料に適用してもよい。上記第1及び第2(又はより数字が大きい)は、核酸のみ、タンパク質のみ、又はその組み合わせを標的としてもよい。
【0161】
本開示では、2以上の標的(すなわち、タンパク質、核酸、又はその組み合わせ)が検出され;3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19 20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、又はそれ以上の標的、及びこれらの間の任意の数字、が検出される。
【0162】
プローブセットは、標的とされる細胞型又は組織型に基づいて予め定められてもよい。例えば、組織が乳がんであれば、プローブセットは、乳がん細胞(例えば、Her2、EGFR、及びPR)に関連するタンパク質を対象とするプローブ及び/又は正常乳房組織に関連するタンパク質を対象とするプローブを含むこととなる。さらに、上記プローブセットは、標的とされる細胞又は組織の発生状態に基づいて予め定められてもよい。あるいは(alternately)、上記プローブセットは、目的の細胞内局在、例えば、核、細胞質、及び膜に基づいて予め定められてもよい。例えば、Foxp3、ヒストンH3、又はP-S6を対象とする抗体は核を標識し、CD3、CD4、PD-1、又はCD45ROを対象とする抗体は細胞質を標識し、PD-L1を対象とする抗体は膜を標識する。
【0163】
空間的バーコードドメイン
【0164】
本開示の方法のいくつかの態様では、空間的バーコードドメインは、組織試料内の特定の関心部位/関心領域に固有である核酸配列を含む空間的識別子配列を含むことができる。このようにして、空間的バーコードが伸長し終わったプローブを収集しシーケンスするとき、ユーザーは、上記空間的バーコードドメインの上記空間的識別子配列を利用することで、プローブがその対応する標的分析物に結合していた場合に、プローブが組織試料のどの関心部位/関心領域にあったかを求めることができる。
【0165】
いくつかの態様では、空間的識別子配列は、少なくとも約1個のヌクレオチド、又は少なくとも約2個のヌクレオチド、又は少なくとも約3個のヌクレオチド、又は少なくとも約4個のヌクレオチド、又は少なくとも約5個のヌクレオチド、又は少なくとも約6個のヌクレオチド、又は少なくとも約7個のヌクレオチド、又は少なくとも約8個のヌクレオチド、又は少なくとも約9個のヌクレオチド、又は少なくとも約10個のヌクレオチド、又は少なくとも約11個のヌクレオチド、又は少なくとも約12個のヌクレオチド、又は少なくとも約13個のヌクレオチド、又は少なくとも約14個のヌクレオチド、又は少なくとも約15個のヌクレオチド、又は少なくとも約16個のヌクレオチド、又は少なくとも約17個のヌクレオチド、又は少なくとも約18個のヌクレオチド、又は少なくとも約19個のヌクレオチド、又は少なくとも約20個のヌクレオチド、又は少なくとも約21個のヌクレオチド、又は少なくとも約22個のヌクレオチド、又は少なくとも約23個のヌクレオチド、又は少なくとも約24個のヌクレオチド、又は少なくとも約25個のヌクレオチド、又は少なくとも約26個のヌクレオチド、又は少なくとも約27個のヌクレオチド、又は少なくとも約28個のヌクレオチド、又は少なくとも約29個のヌクレオチド、又は少なくとも約30個のヌクレオチド、又は少なくとも約31個のヌクレオチド、又は少なくとも約32個のヌクレオチド、又は少なくとも約33個のヌクレオチド、又は少なくとも約34個のヌクレオチド、又は少なくとも約35個のヌクレオチド、又は少なくとも約36個のヌクレオチド、又は少なくとも約37個のヌクレオチド、又は少なくとも約38個のヌクレオチド、又は少なくとも約39個のヌクレオチド又は少なくとも約40個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、空間的識別子配列は、少なくとも約20個のヌクレオチドを含むことができる。
【0166】
本開示の方法のいくつかの態様では、空間的識別子配列は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個又は少なくとも20個の空間的同定ドメインを含むことができる。
図11は、標的結合ドメイン、増幅プライマー結合部位、固有分子識別子及び標的同定ドメインと、加えて、本開示の方法におけるTdT伸長によって合成された空間的バーコードドメインとを含む、本開示のプローブの模式図である。この非限定例では、上記空間的バーコードドメインは、4つ(#1、#2、#3及び#4)の空間的同定ドメインを含む空間的識別子配列を含む。
【0167】
空間的同定ドメインは、少なくとも約1個、又は少なくとも約2個、又は少なくとも約3個のヌクレオチド、又は少なくとも約4個のヌクレオチド、又は少なくとも約5個のヌクレオチド、又は少なくとも約6個のヌクレオチド、又は少なくとも約7個のヌクレオチド、又は少なくとも約8個のヌクレオチド、又は少なくとも約9個のヌクレオチド、又は少なくとも約10個のヌクレオチド、又は少なくとも約11個のヌクレオチド、又は少なくとも約12個のヌクレオチド、又は少なくとも約13個のヌクレオチド、又は少なくとも約14個のヌクレオチド、又は少なくとも約15個のヌクレオチド、又は少なくとも約16個のヌクレオチド又は少なくとも約17個のヌクレオチド、又は少なくとも約18個のヌクレオチド、又は少なくとも約19個のヌクレオチド、又は少なくとも約20個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、空間的同定ドメインは含むことができる
【0168】
本開示の方法のいくつかの態様では、単一の空間的バーコードドメイン内の個々の空間的同定ドメインは、その同じ単一の空間的バーコードドメイン内の別の個々の空間的同定ドメインと比較して、同じ数又は異なる数のヌクレオチドを含むことができる。非限定例では、空間的バーコードドメインは、第1空間的同定ドメイン、第2空間的同定ドメイン、第3空間的同定ドメイン及び第4空間的同定ドメインという、4つの空間的同定ドメインを含んでもよい。上記第1空間的同定ドメインは2個のヌクレオチドを含んでもよく、第2空間的同定ドメインは3個のヌクレオチドを含んでもよく、上記第3空間的同定ドメインは2個のヌクレオチドを含んでもよく、上記第4空間的同定ドメインは4個のヌクレオチドを含んでもよい。このように、この非限定例では、上記第1空間的同定ドメインは上記第3空間的同定ドメインと同じ数のヌクレオチドを含むが、上記第2空間的同定ドメインと上記第4空間的同定ドメインとを比較した場合、異なる数のヌクレオチドを含む。
【0169】
本開示の方法のいくつかの態様では、単一の空間的バーコード内の各空間的同定ドメインは、3’末端に同じヌクレオチド含んでもよい。非限定例では、空間的バーコードドメインは、第1空間的同定ドメイン、第2空間的同定ドメイン、第3空間的同定ドメイン及び第4空間的同定ドメインという、4つの空間的同定ドメインを含んでもよい。この非限定例では、各空間的同定ドメインは、3’末端に「C」ヌクレオチドを含む。このように、上記第1空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-ATC-3’を含んでもよく、第2空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-TGC-3’を含んでもよく、上記第3空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-TAC-3’を含んでもよく、上記第4空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-AAC-3’を含んでもよい。なお、この非限定例では、上記空間的バーコードの各空間的同定ドメインは同じ数のヌクレオチドを含む。
【0170】
本開示の方法のいくつかの態様では、試料内に存在する任意の空間的バーコード内の各空間的同定ドメインは、3’末端に同じヌクレオチド含んでもよい。
【0171】
別の非限定例では、空間的バーコードドメインは、第1空間的同定ドメイン、第2空間的同定ドメイン、第3空間的同定ドメイン及び第4空間的同定ドメインという、4つの空間的同定ドメインを含んでもよい。この非限定例では、各空間的同定ドメインは、3’末端に「C」ヌクレオチドを含む。このように、上記第1空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-AC-3’を含んでもよく、第2空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-GTC-3’を含んでもよく、上記第3空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-TATC-3’を含んでもよく、上記第4空間的同定ドメインはヌクレオチド配列5’-AAC-3’を含んでもよい。なお、この非限定例では、上記空間的バーコードの上記空間的同定ドメインは、異なる数のヌクレオチドを含み(上記第1空間的同定ドメインは2個のヌクレオチドを有し、上記第2空間的同定ドメインは3個のヌクレオチドを有し、上記第3空間的同定ドメインは4個のヌクレオチドを有し、上記第4空間的同定ドメインは3個のヌクレオチドを有する)、各空間的同定ドメインは3’末端に「C」ヌクレオチドを有する。
【0172】
理論に拘束されることを望むものではないが、空間的バーコード内の各空間的同定ドメインが同じ数のヌクレオチドを有しているのか、それとも異なる数のヌクレオチドを有しているのかによって、必要な伸長サイクルの数と、構築可能な異なる空間的バーコードの数、そして結果的には、単一の組織試料上で解析可能な関心領域の数を、決定することができる。例えば、空間的バーコードドメインは、それぞれ1個のヌクレオチドを含む、10個又は11個の空間的同定ドメインを含んでいてもよい。これにより、410~411種類の固有空間的バーコード配列の形成が可能であり、これは、410~411個の異なる関心領域を単一の組織試料上で解析できることを意味している。この構成では、組織試料上で上記バーコードの全てを構築するためには、40~44回の伸長サイクルが必要となる。別の例では、空間的同定ドメインが1個のヌクレオチド~4個のヌクレオチドの範囲の異なる数のヌクレオチドを有することができる場合、およそ210万種の固有空間的バーコードを構築できる。この構成では、空間的バーコードは全長7~28ヌクレオチドとなり、上記バーコードの全てを構築するのに、たった28回の伸長サイクルしか必要とならない。
【0173】
組織試料内の第1部位に対応する空間的バーコードドメインは、組織試料内の第2部位に対応する空間的バーコードドメインより多い数、それより少ない数、又はそれと同じ数の空間的同定ドメインを有してもよい。
【0174】
空間的バーコードドメインは、組織試料内の単一の関心部位/関心領域に特有且つ固有の核酸配列を含むことができる。例えば、空間的バーコードドメイン内の空間的同定ドメインの全てを組み合わせた核酸配列は、組織試料内の単一の関心部位/関心領域に特有且つ固有であり得る。このようにして、空間的バーコードが伸長し終わったプローブを収集しシーケンスするとき、ユーザーは、上記空間的バーコードドメインの配列を利用することで、プローブがその対応する標的分析物に結合していた場合に、プローブが組織試料のどの関心部位/関心領域にあったかを求めることができる。
【0175】
空間的同定ドメインは、少なくとも約1個、又は少なくとも約2個、又は少なくとも約3個のヌクレオチド、又は少なくとも約4個のヌクレオチド、又は少なくとも約5個のヌクレオチド、又は少なくとも約6個のヌクレオチド、又は少なくとも約7個のヌクレオチド、又は少なくとも約8個のヌクレオチド、又は少なくとも約9個のヌクレオチド、又は少なくとも約10個のヌクレオチド、又は少なくとも約11個のヌクレオチド、又は少なくとも約12個のヌクレオチド、又は少なくとも約13個のヌクレオチド、又は少なくとも約14個のヌクレオチド、又は少なくとも約15個のヌクレオチド、又は少なくとも約16個のヌクレオチド又は少なくとも約17個のヌクレオチド、又は少なくとも約18個のヌクレオチド、又は少なくとも約19個のヌクレオチド、又は少なくとも約20個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、空間的同定ドメインは を含むことができる
【0176】
本開示の方法のいくつかの態様では、上記方法は、組織試料の各部位で空間的バーコードドメインが合成された後(例えば、工程(e))、工程(c)及び工程(d)を反復することで、空間的バーコードドメインが3’末端に区切りドメインを含むように組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを伸長することをさらに含むことができる。
【0177】
区切りドメインは、組織試料の各部位に対して同じである特定の核酸配列を含むことができる。区切りドメインは、少なくとも1ヌクレオチド長、又は少なくとも2ヌクレオチド長、又は少なくとも3ヌクレオチド長、又は少なくとも4ヌクレオチド長、又は少なくとも5ヌクレオチド長、又は少なくとも6ヌクレオチド長、又は少なくとも7ヌクレオチド長、又は少なくとも8ヌクレオチド長、又は少なくとも9ヌクレオチド長、又は少なくとも10ヌクレオチド長、又は少なくとも11ヌクレオチド長、又は少なくとも12ヌクレオチド長、又は少なくとも13ヌクレオチド長、又は少なくとも14ヌクレオチド長、又は少なくとも15ヌクレオチド長、又は少なくとも16ヌクレオチド長、又は少なくとも17ヌクレオチド長、又は少なくとも18ヌクレオチド長、又は少なくとも19ヌクレオチド長、又は少なくとも20ヌクレオチド長とすることができる。区切りドメインは、任意の核酸配列を含むことができる。非限定例では、上記区切りドメインは、核酸配列「TCTC」を含むことができる。
図12は
図11のプローブの模式図であり、その空間的バーコードドメインは、区切りドメインを含ませるためにTdT合成によってさらなる伸長がなされたものである。
【0178】
理論に拘束されることを望むものではないが、シーケンス解析の際に区切りドメインの配列を用いて空間的バーコードドメインの終わりを定めることによって、収集されたプローブのシーケンシングを介した定量化を助けることができる。
【0179】
本開示の方法のいくつかの態様では、上記方法は、組織試料の各部位で空間的バーコードドメインが合成された後(例えば、工程(e))、空間的バーコードドメインがポリTドメイン又は他の増幅プライマー結合部位を含むように組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを伸長することをさらに含むことができる。
【0180】
本開示の方法のいくつかの態様では、上記方法は、組織試料の各部位で空間的バーコードドメインが合成された後(例えば、工程(e))、(i)工程(c)及び工程(d)を反復して、上記組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインが区切りドメインを含むように伸長させること;並びに(ii)上記組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させることをさらに含むことができる。
【0181】
図13は
図11のプローブの模式図であり、その空間的バーコードドメインは、区切りドメインを含ませるためにTdT合成によってさらなる伸長がなされ、その後さらに、ポリTドメインを含ませるためにTdT合成によってさらなる伸長がなされたものである。
【0182】
図21は、
図20のプローブの模式図であり、上記プローブは空間的バーコードドメインを含ませるために本開示の方法におけるTdT合成によって伸長されたものであり、上記空間的バーコードドメインは4つの空間的同定ドメイン、区切りドメイン及びポリTドメインを含む。
【0183】
いくつかの態様では、ポリTドメインは、Tヌクレオチドのみから構成されるポリヌクレオチドである。いくつかの態様では、上記ポリTドメインは、少なくとも約1個のTヌクレオチド、又は少なくとも約2個のTヌクレオチド、又は少なくとも約3個のTヌクレオチド、又は少なくとも約4個のTヌクレオチド、又は少なくとも約5個のTヌクレオチド、又は少なくとも約6個のTヌクレオチド、又は少なくとも約7個のTヌクレオチド、又は少なくとも約8個のTヌクレオチド、又は少なくとも約9個のTヌクレオチド、又は少なくとも約10個のTヌクレオチド、又は少なくとも約11個のTヌクレオチド又は少なくとも約12個のTヌクレオチド、又は少なくとも約13個のTヌクレオチド、又は少なくとも約14個のTヌクレオチド、又は少なくとも約15個のTヌクレオチド、又は少なくとも約16個のTヌクレオチド、又は少なくとも約17個のTヌクレオチド、又は少なくとも約18個のTヌクレオチド、又は少なくとも約19個のTヌクレオチド、又は少なくとも約20個のTヌクレオチド、又は少なくとも約25個のTヌクレオチド、又は少なくとも約30個のTヌクレオチド、又は少なくとも約35個のTヌクレオチド、又は少なくとも約40個のTヌクレオチド、又は少なくとも約50個のTヌクレオチド、又は少なくとも約55個のTヌクレオチド、又は少なくとも約60個のTヌクレオチド、又は少なくとも約65個のTヌクレオチド、又は少なくとも約70個のTヌクレオチド、又は少なくとも約75個のTヌクレオチド、又は少なくとも約80個のTヌクレオチド、又は少なくとも約85個のTヌクレオチド、又は少なくとも約90個のTヌクレオチド、又は少なくとも約95個のTヌクレオチド、又は少なくとも約100個のTヌクレオチド、又は少なくとも約125個のTヌクレオチド、又は少なくとも約150個のTヌクレオチド、又は少なくとも約175個のTヌクレオチド、又は少なくとも約200個のTヌクレオチド、又は少なくとも約225個のTヌクレオチド、又は少なくとも約250個のTヌクレオチド、又は少なくとも約275個のTヌクレオチド、又は少なくとも約300個のTヌクレオチド、又は少なくとも約350個のTヌクレオチド、又は少なくとも約400個のTヌクレオチド、又は少なくとも約450個のTヌクレオチド、又は少なくとも約500個のTヌクレオチド、又は少なくとも約2000個のTヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、ポリTドメインは、20個より多いが500個より少ないTヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、ポリTドメインは、20個より多いが2000個より少ないTヌクレオチドを含む。
【0184】
いくつかの態様では、第1結合型プローブの空間的バーコードドメインのポリTドメインは、第2結合型プローブの空間的バーコードドメインのポリTドメインと、同じ長さ又は異なる長さとすることができる。
【0185】
いくつかの態様では、組織試料の各部位における空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長することは、上記試料を、dTTP及びTdTを含む溶液と接触させることを含むことができる。
【0186】
増幅法
【0187】
本開示の方法のいくつかの態様では、シーケンシングを介して定量化することは、組織試料から収集されたプローブを増幅することを含むことができる。
【0188】
いくつかの態様では、組織試料から収集されたプローブを増幅することは、第1増幅プライマー及び第2増幅プローブを用いて上記収集されたプローブを増幅することを含むことができる。いくつかの態様では、組織試料から収集されたプローブを増幅することは、上記収集されたプローブを、上記収集されたプローブにハイブリダイズする第1増幅プライマー及び第2増幅プライマーと接触させることを含むことができる。いくつかの態様では、組織試料から収集されたプローブを増幅することは、当該技術分野において公知の増幅反応を含むことができ、PCRが挙げられるが、これに限定はされない。
【0189】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅は、少なくとも1つのNGSインデックス配列を含むことができる。いくつかの態様では、上記NGSインデックス配列は、i5インデックス配列又はi7インデックス配列である。いくつかの態様では、上記NGSインデックス配列は、当該技術分野において公知の任意のインデックス配列とすることができる。
【0190】
いくつかの態様では、NGSインデックス配列は、少なくとも約1ヌクレオチド長、又は少なくとも約2ヌクレオチド長、又は少なくとも約3ヌクレオチド長、又は少なくとも約4ヌクレオチド長、又は少なくとも約5ヌクレオチド長、又は少なくとも約6ヌクレオチド長、又は少なくとも約7ヌクレオチド長、又は少なくとも約8ヌクレオチド長、又は少なくとも約9ヌクレオチド長、又は少なくとも約10ヌクレオチド長、又は少なくとも約11ヌクレオチド長、又は少なくとも約12ヌクレオチド長、又は少なくとも約13ヌクレオチド長、又は少なくとも約14ヌクレオチド長、又は少なくとも約15ヌクレオチド長、又は少なくとも約16ヌクレオチド長、又は少なくとも約17ヌクレオチド長、又は少なくとも約18ヌクレオチド長、又は少なくとも約19ヌクレオチド長、又は少なくとも約20ヌクレオチド長とすることができる。いくつかの態様では、NGSインデックス配列は少なくとも約8ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、NGSインデックス配列は少なくとも約10ヌクレオチド長である。
【0191】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅プライマーは、i5インデックス配列を含むことができ、上記i5配列は、配列番号8~13及び配列番号20~10,404のいずれか1つに記載の配列、又はその逆相補配列を含む。
【表1】
【0192】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅プライマーは、i7インデックス配列を含むことができ、上記i7配列は、配列番号14~10,404のいずれか1つに記載の配列、又はその逆相補配列を含む。
【表2】
【0193】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅プライマーは、シーケンシングプライマー結合部位を含むことができる。いくつかの態様では、シーケンシングプライマー結合部位は、少なくとも約1ヌクレオチド長、又は少なくとも約2ヌクレオチド長、又は少なくとも約3ヌクレオチド長、又は少なくとも約4ヌクレオチド長、又は少なくとも約5ヌクレオチド長、又は少なくとも約6ヌクレオチド長、又は少なくとも約7ヌクレオチド長、又は少なくとも約8ヌクレオチド長、又は少なくとも約9ヌクレオチド長、又は少なくとも約10ヌクレオチド長、又は少なくとも約11ヌクレオチド長、又は少なくとも約12ヌクレオチド長、又は少なくとも約13ヌクレオチド長、又は少なくとも約14ヌクレオチド長、又は少なくとも約15ヌクレオチド長、又は少なくとも約16ヌクレオチド長、又は少なくとも約17ヌクレオチド長、又は少なくとも約18ヌクレオチド長、又は少なくとも約19ヌクレオチド長、又は少なくとも約20ヌクレオチド長、又は少なくとも約21ヌクレオチド長、又は少なくとも約22ヌクレオチド長、又は少なくとも約23ヌクレオチド長、又は少なくとも約24ヌクレオチド長、又は少なくとも約25ヌクレオチド長、又は少なくとも約26ヌクレオチド長、又は少なくとも約27ヌクレオチド長、又は少なくとも約28ヌクレオチド長、又は少なくとも約29ヌクレオチド長、又は少なくとも約30ヌクレオチド長、又は少なくとも約31ヌクレオチド長、又は少なくとも約32ヌクレオチド長、又は少なくとも約33ヌクレオチド長、又は少なくとも約34ヌクレオチド長、又は少なくとも約35ヌクレオチド長、又は少なくとも約36ヌクレオチド長、又は少なくとも約37ヌクレオチド長、又は少なくとも約38ヌクレオチド長、又は少なくとも約39ヌクレオチド長又は少なくとも約40ヌクレオチド長とすることができる。
【0194】
いくつかの態様では、シーケンシングプライマー結合部位は、少なくとも約9ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、シーケンシングプライマー結合部位は、少なくとも約34ヌクレオチド長である。
【0195】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅プライマーは、シーケンシングに好適なフローセルアダプター配列を含むことができる。本開示の方法で使用される少なくとも1つの増幅プライマーは、配列番号10,405に記載の配列、又はその逆相補配列を含むP5フローセルアダプター配列を含むことができる。本開示の方法で使用される少なくとも1つの増幅プライマーは、配列番号10,406に記載の配列、又はその逆相補配列を含むP7フローセルアダプター配列を含むことができる。
【0196】
いくつかの態様では、フローセルアダプター配列は、約15個~約40個のヌクレオチドを含むことができる。フローセルアダプター配列は、約29個のヌクレオチドを含むことができる。フローセルアダプター配列は、約24個のヌクレオチドを含むことができる。
【0197】
本開示の方法及び組成物のいくつかの態様では、シーケンシングに好適なフローセルアダプター配列は、少なくとも約5個のヌクレオチド、少なくとも約10個のヌクレオチド、少なくとも約15個のヌクレオチド、少なくとも約20個のヌクレオチド、少なくとも約25個のヌクレオチド、少なくとも約30個のヌクレオチド、少なくとも約35個のヌクレオチド 少なくとも約40個のヌクレオチド、少なくとも約45個のヌクレオチド、少なくとも約50個のヌクレオチド、少なくとも約55個のヌクレオチド、少なくとも約60個のヌクレオチド、少なくとも約65個のヌクレオチド、少なくとも約70個のヌクレオチド、少なくとも約75個のヌクレオチド、少なくとも約80個のヌクレオチド、少なくとも約85個のヌクレオチド、少なくとも約90個のヌクレオチド、少なくとも約95個のヌクレオチド、又は少なくとも約100個のヌクレオチドを含むことができる。
【0198】
いくつかの態様では、増幅プライマーはポリAドメインを含むことができる。いくつかの態様では、ポリAドメインは、Aヌクレオチドのみから構成されるポリヌクレオチドである。いくつかの態様では、上記ポリAドメインは、少なくとも約1個、又は少なくとも約2個、又は少なくとも約3個、又は少なくとも約4個、又は少なくとも約5個、又は少なくとも約6個、又は少なくとも約7個、又は少なくとも約8個、又は少なくとも約9個、又は少なくとも約10個、又は少なくとも約11個 又は少なくとも約12個、又は少なくとも約13個、又は少なくとも約14個、又は少なくとも約15個、又は少なくとも約16個、又は少なくとも約17個、又は少なくとも約18個、又は少なくとも約19個、又は少なくとも約20個、又は少なくとも約25個、又は少なくとも約30個、又は少なくとも約35個、又は少なくとも約40個のAヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、ポリAドメインは、少なくとも(at last)約32個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、ポリAドメインを利用して、上記ポリAドメインをポリTドメインにハイブリダイズすることにより、シーケンスプローブを伸長後の空間的バーコードドメインにハイブリダイズすることができる。
【0199】
いくつかの態様では、増幅プライマーは、縮重塩基を含むことができる。いくつかの態様では、増幅プライマーは、少なくとも約2個の縮重塩基を含むことができる。いくつかの態様では、増幅プライマーは、少なくとも約3個、又は少なくとも約4個、又は少なくとも約5個、又は少なくとも約6個、又は少なくとも約7個、又は少なくとも約8個、又は少なくとも約9個、又は少なくとも約10個の縮重塩基を含むことができる。いくつかの態様では、上記縮重塩基は、増幅プライマーの3’末端に位置させることができる。いくつかの態様では、複数の増幅プライマーの文脈では、上記複数の増幅プライマー内の縮重塩基の位置には、Aヌクレオチド、Tヌクレオチド、Cヌクレオチド又はGヌクレオチドがあってもよい。いくつかの態様では、複数の増幅プライマーの文脈では、縮重塩基の位置には、Aヌクレオチド、Cヌクレオチド、又はGヌクレオチドがあってもよい。
【0200】
図14Aは、シーケンシングを介しプローブを定量化する一環として、組織試料から収集されたプローブを増幅する方法の例示的な模式図である。この非限定例では、上記プローブは、標的結合ドメイン、続いて増幅プライマー結合部位、続いて固有分子識別子、続いて標的同定ドメインを有する。この非限定例では、空間的バーコードが上記プローブの3’末端に合成及び伸長されている。上記空間的バーコードドメインはTdT伸長によって合成されたものであり、4つ(#1、#2、#3及び#4)の空間的同定ドメイン、区切りドメイン及びポリTドメインを含む空間的識別子配列を含む。この非限定例では、第1増幅プライマーは、フローセルアダプター配列(P5)、続いてNGSインデックス配列(i5)、続いてシーケンシングプライマー結合部位、続いて上記プローブ上の上記増幅プライマー結合部位と一致する配列を有する。この非限定例では、第2増幅プライマーは、ポリAドメイン、続いてシーケンシングプライマー結合部位、続いてNGSインデックス配列(i7)、続いてフローセルアダプター配列(P7)を有する。これらの増幅プライマーは、図示されているように上記プローブにハイブリダイズさせることができ、これらの増幅プライマーを使用することで、PCRを含むがこれに限定はされない標準的な技術を用いて上記プローブを増幅することができることは、当業者には理解される。
【0201】
図14Bは、シーケンシングを介しプローブを定量化する一環として、組織試料から収集されたプローブを増幅する方法の例示的な模式図である。この非限定例では、上記プローブは、標的結合ドメイン、続いて増幅プライマー結合部位、続いて固有分子識別子、続いて標的同定ドメインを有する。この非限定例では、空間的バーコードが上記プローブの3’末端に合成及び伸長されている。上記空間的バーコードドメインはTdT伸長によって合成されたものであり、4つ(#1、#2、#3及び#4)の空間的同定ドメイン、区切りドメイン及びポリTドメインを含む空間的識別子配列を含む。この非限定例では、第1増幅プライマーは、フローセルアダプター配列(P5)、続いてNGSインデックス配列(i5)、続いてシーケンシングプライマー結合部位、続いて上記プローブ上の上記増幅プライマー結合部位と一致する配列を有する。この非限定例では、第2増幅プライマーは、2つの縮重塩基(3’-NB-5’、ここで、NはA、T、C又はGであり、BはA、C又はGである)、続いてポリAドメイン、続いてシーケンシングプライマー結合部位、続いてNGSインデックス配列(i7)、続いてフローセルアダプター配列(P7)を有する。上記縮重塩基は上記第2増幅プライマーの3’末端に位置する。これらの増幅プライマーは、図示されているように上記プローブにハイブリダイズさせることができ、これらの増幅プライマーを使用することで、PCRを含むがこれに限定はされない標準的な技術を用いて上記プローブを増幅することができることは、当業者には理解される。
【0202】
本開示の方法のいくつかの態様では、増幅プライマーは、アフィニティ部分を含むことができる。アフィニティ部分としては、ビオチンを挙げることができるが、これに限定はされない。増幅プライマーがアフィニティ部分を含む態様では、上記アフィニティ部分に特異的に結合する試薬を用いて増幅後プローブをさらに精製するために、上記アフィニティ部分を用いることができる。アフィニティ部分がビオチンであるいくつかの態様では、増幅後プローブを精製するために、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズを用いることができる。
【0203】
照射法
【0204】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料の部位を照射することは、2光子励起法を用いて上記部位を照射することを含むことができる。いくつかの態様では、上記2光子励起法は、近赤外(NIR)の波長を有する光を用いた2光子励起法である。いくつかの態様では、NIR波長は、約700nm~約1000nmとすることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、2光子励起は、UV(300~405nm)波長での1光子励起法を含む1光子励起法と比較した場合、空間的制限を改善し、励起のクロストークを最小限にすることが可能である。これにより、空間的バーコードを組織試料のより小さく、より輪郭がはっきりとした領域で合成し、本開示の方法の空間分解能及び正確度を増すことができる。
【0205】
いくつかの態様では、2光子励起法は、パターン化2光子照射法とすることができる。パターン化2光子照射法は、試料全体で、励起光の点をラスタースキャンすることを含むことができる。このラスタースキャンは、ガルバノミラー、微小電気機械システム(MEMS)ミラー、音響光学偏向器又はこれらの任意の組み合わせの使用を通じて達成することができる。パターン化2光子照射法は、レーザーをピクセル毎に高速にオンオフ変調することを含むことができる。そのような変調は、音響光学変調器、ポッケルスセル又はこれらの任意の組み合わせの使用を通じて達成することができる。いくつかの態様では、パターン化2光子照射法は、試料全体で、励起光の点をラスタースキャンし、レーザーをピクセル毎に高速にオンオフ変調することを含むことができる。
【0206】
2光子励起法の例示的な光学系模式図を
図5A及び
図5Bに示す。
【0207】
本開示の方法のいくつかの態様では、2光子励起法は、エルビウムファイバーレーザーの使用を含むことができる。いくつかの態様では、エルビウムファイバーレーザーは、約1550nmの波長の光を放出することができる。いくつかの態様では、エルビウムファイバーレーザーからの光を、パルス幅が100フェムト秒未満の約775nmに周波数倍増することができる。
【0208】
本開示の方法のいくつかの態様では、2光子励起法は、780nmのファイバーベースのフェムト秒レーザーの使用を含むことができる。いくつかの態様では、レーザーの反復率は、90フェムト秒未満のクリーンなパルス幅を有する10~80MHzに特定することができる。いくつかの態様では、ビーム品質のM2因子は1.2未満とすることができる。いくつかの態様では、ビーム直径は約1.57mmとすることができる。いくつかの態様では、ビーム新円度は少なくとも94%とすることができる。
【0209】
本発明に2光子照射を適用することで、ユーザー定義の組織領域、ユーザー定義の細胞、及び/又はユーザー定義の細胞内の細胞下構造における、タンパク質及び/又は核酸の発現を検出し定量化する能力に、3つの驚くべき改善がもたらされた。1つ目は、本発明で使用されたような2光子照射が、Z解像度を劇的に改善し、X-Y解像度を多少改善することである。2つ目は、2光子照射では、特徴から離れた視野全体のバックグラウンドも小さくなることである(
図22参照)。3つ目は、おそらく最も重大であるが、1光子UV照射では、細胞構造によって引き起こされる、予想外の回析、散乱及び/又は光パイプ現象が存在することである。これらのアーティファクトは、回析期待値以下に、紫外光を集光する能力を著しく低下させる可能性がある。これらの組織的アーティファクトは、本発明で使用されるような2光子照射では存在しない。
【0210】
関心部位又は関心領域
【0211】
本明細書で使用される場合、「組織試料の部位」及び「関心領域」という語は、同義的に用いられて、内部の1又は複数の標的分析物の存在量が定量化される組織試料の特定の定義された領域を指す。
【0212】
本開示の方法のいくつかの態様では、関心領域は、x方向及び/若しくはy方向に約10nm以上、x方向及び/若しくはy方向に約100nm以上、又は、x方向及び/若しくはy方向に約400nm以上とすることができる。本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料の照射部位は、x方向及び/若しくはy方向に約10nm以上、x方向及び/若しくはy方向に約100nm以上、又は、x方向及び/若しくはy方向に約400nm以上とすることができる。
【0213】
本開示の方法のいくつかの態様では、関心領域は、z方向に約10nm以上、z方向に約500nm以上、又は、z方向に約1500nm以上とすることができる。本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料の照射部位は、z方向に約1500nm以下とすることができる。
【0214】
関心領域は、試料に存在する組織型、細胞型、細胞、又は細胞内の細胞下構造としてよい。
【0215】
まとめると、第1関心領域(例えば、組織型、細胞型(正常細胞及び異常細胞を含む)、並びに細胞内部の細胞下構造)に存在する標的タンパク質及び/又は標的核酸の正体及び存在量と、第2関心領域又はそれ以上の関心領域に存在する標的タンパク質及び/又は標的核酸の正体及び存在量との比較を、本開示の方法を用いて行うことができる。
【0216】
いくつかの態様では、関心領域は単一細胞を含んでもよい。いくつかの態様では、関心領域は、限定はされないが、2個以下の細胞、3個以下の細胞、4個以下の細胞、5個以下の細胞、6個以下の細胞、7個以下の細胞、8個以下の細胞、9個以下の細胞、又は10個以下の細胞などの、複数の細胞を含んでもよい。
【0217】
いくつかの態様では、関心領域は、単一細胞内部の細胞下構造を含んでもよい。
【0218】
いくつかの態様では、組織試料の領域はユーザーによって手動で選ばれてもよく、その領域内の各細胞は自動的に関心領域として確認されエンコードされる。細胞は特定の染色によって確認することができ、ソフトウェアを用いて細胞の境界が定められる。これにより、本明細書に記載の方法及びシステムは、ユーザインタラクションを最小限にして、各細胞を別々にエンコードすることができる。
【0219】
プローブ収集
【0220】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料内の標的分析物に結合したプローブを収集する工程は、組織試料をスクレイピングすること、組織試料をプロテアーゼKで消化すること、又はこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、プロテアーゼK消化を約56℃で少なくとも約1時間行った後、さらなる消化を約90℃で少なくとも約15分間行うことができる。
【0221】
当業者には理解されるように、本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料内の標的分析物に結合したプローブを収集する工程は、AMPure SPRI精製を含むことができる。
【0222】
当業者には理解されるように、本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料内の標的分析物に結合したプローブを収集する工程は、xGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製を含むことができる。
【0223】
いくつかの態様では、xGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製は、組織試料内の標的分析物に結合したプローブに少なくとも1つのキャプチャープローブをハイブリダイズすることを含む。
【0224】
いくつかの態様では、キャプチャープローブは、アフィニティ部分を含むことができる。アフィニティ部分はビオチンとすることができる。
【0225】
いくつかの態様では、キャプチャープローブは、本開示のプローブに相補的な核酸配列の少なくとも1コピーを含むことができる。いくつかの態様では、キャプチャープローブは、本開示のプローブに相補的な核酸配列の少なくとも約2コピーを含むことができる。いくつかの態様では、キャプチャープローブは、本開示のプローブに相補的な核酸配列の少なくとも約3コピー、又は少なくとも約4コピー、又は少なくとも約5コピー、又は少なくとも約6コピー、又は少なくとも約7コピー、又は少なくとも約8コピー、又は少なくとも約9コピー、又は少なくとも約10コピーを含むことができる。本開示のプローブに相補的な核酸配列は、上記プローブ上に位置する増幅プライマー結合部位に相補的であるとすることができる。
【0226】
図23は、シーケンシングを介しプローブを定量化する一環として、組織試料から収集されたプローブを精製する方法の例示的な模式図である。この非限定例では、上記プローブは、標的結合ドメイン、続いて増幅プライマー結合部位、続いて固有分子識別子、続いて標的同定ドメインを有する。この非限定例では、空間的バーコードが上記プローブの3’末端に合成及び伸長されている。上記空間的バーコードドメインはTdT伸長によって合成されたものであり、4つ(#1、#2、#3及び#4)の空間的同定ドメイン、区切りドメイン及びポリTドメインを含む空間的識別子配列を含む。この非限定例では、上記プローブ上の上記増幅プライマー結合部位に相補的な配列を2コピー含む、キャプチャープローブが用いられている。上記キャプチャープローブは、ビオチン部分をさらに含む。上記キャプチャープローブを上記プローブにハイブリダイズさせた後、上記ビオチン部分を5×SSPEバッファー中のストレプトアビジンビーズに結合させる。その後、上記ビーズを、熱5×SSPEと室温(RT)の0.1×SSPEで洗浄してもよい。その後、上記プローブを、熱H
2O中で上記ストレプトアビジンビーズから抽出してもよい。
【0227】
実施例4は、本開示の方法で使用することができるxGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製の非限定例を記載している。当業者には理解されることであるが、実施例4に記載された、試薬の体積、試薬の量、試薬の濃度、特定の工程の長さ、及び特定の工程が行われる温度は変更することができ、特定の試料タイプ及び/又は試料サイズに合うように最適化できる。
【0228】
組織試料の前処理
【0229】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料を少なくとも1つのプローブ又は複数のプローブと接触させる工程は、上記組織試料を、上記少なくとも1つのプローブ又は上記複数のプローブと共に、少なくとも約1時間、又は少なくとも約2時間、又は少なくとも約3時間、又は少なくとも約4時間、又は少なくとも約5時間、又は少なくとも約6時間、又は少なくとも約7時間、又は少なくとも約8時間、又は少なくとも約9時間、又は少なくとも約10時間、又は少なくとも約11時間、又は少なくとも約12時間、又は少なくとも約24時間、又は少なくとも約36時間、又は少なくとも約48時間インキュベートすることを含むことができる。
【0230】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料を少なくとも1つのプローブ又は複数のプローブと接触させる工程は、上記組織試料を、ddTTPで終結されたブロッキングDNAと組み合わせて、上記少なくとも1つのプローブ又は複数のプローブと接触させることを含むことができる。
【0231】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料を少なくとも1つのプローブ又は複数のプローブと接触させる前に、上記組織試料を、ddTTP(ジデオキシチミジン三リン酸)終結に供してもよい。ddTTP終結は、上記組織試料をddTTP及びTdTと接触させることを含むことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、ddTTP終結を行うことで、上記組織試料内の内在性核酸のフリーな3’-OH部分を除去封鎖し、上記内在性核酸が空間的バーコードの伸長時に伸長されることを防止する。
【0232】
本開示の方法のいくつかの態様では、組織試料内の標的分析物に結合したプローブを収集する工程は、ExoIII消化を含むことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、ExoIII消化により、dsDNAを取り除き、ssDNA又は突出3’オーバーハングを有するdsDNAを集積させることができる。
【0233】
ランドマークプローブ及び方法
【0234】
いくつかの態様では、本開示の方法は、試料を、本開示の少なくとも1つの一般的ランドマークプローブと共にインキュベートすることをさらに含むことができる。
【0235】
いくつかの態様では、本開示の方法は、試料内で結合している少なくとも1つの一般的ランドマークプローブを検出することをさらに含むことができる。
【0236】
いくつかの態様では、試料内で結合している少なくとも1つの一般的ランドマークプローブの検出は、試料内の個々の細胞の境界を定めるために利用することができる。試料内の個々の細胞の境界を検出することで、下流の試料内の空間的バーコードの合成のための、空間的パターンを決定することができる。いくつかの態様では、試料内の1又は複数の一般的ランドマークプローブの検出を利用して、蛍光細胞画像を生成し、その後それに、後に収集される遺伝子発現データをマッピングすることで、空間分解的な遺伝子発現プロファイルを生成することができる。
【0237】
いくつかの態様では、一般的ランドマークプローブは、検出可能な標識を含むことができる。いくつかの態様では、上記検出可能な標識は、蛍光ラベルとすることができる。
【0238】
いくつかの態様では、一般的ランドマークプローブは、少なくとも1つの抗体を含むことができる。上記抗体は、少なくとも1つの細胞性マーカーに特異的に結合することができる。いくつかの態様では、上記少なくとも1つの抗体は、少なくとも1つの検出可能な標識に、直接的又は間接的に、連結することができる。
【0239】
細胞性マーカーは、細胞質マーカーとすることができる。細胞性マーカーは、当該技術分野において公知の任意の細胞質マーカーとすることができる。細胞質マーカーの例としては、細胞の細胞質内に独占的に又は主要に位置している特定のタンパク質が挙げられるが、これらに限定はされない。細胞の細胞質内に独占的に又は主要に位置している特定のタンパク質としては、微小管タンパク質、ビメンチン、デスミン及びサイトケラチンを挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0240】
細胞性マーカーは、膜マーカーとすることができる。細胞性マーカーは、当該技術分野において公知の任意の膜マーカーとすることができる。膜マーカーの例としては、独占的に又は主要に、細胞内の特定の膜上にある、それと結合している、又はそれに埋め込まれた、特定のタンパク質が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなタンパク質の例として、ナトリウム・カリウムATPアーゼ、細胞膜カルシウムATPアーゼ(PMCA)、カドヘリンファミリーのタンパク質、CD98、カベオラと結合しているタンパク質(例えばカベオリン)、当該技術分野において公知の任意の内在性膜タンパク質、及び当該技術分野において公知の任意の膜結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0241】
細胞性マーカーは、細胞小器官マーカーとすることができる。細胞小器官マーカーは、当該技術分野において公知の任意の細胞小器官マーカーとすることができる。細胞小器官マーカーの例としては、独占的に又は主要に、特定の細胞小器官(例えば、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、リボソーム、リソソーム、エンドソーム、ペルオキシソーム、オートファゴソーム、又は当該技術分野において公知の任意の他の細胞小器官)と結合している特定のタンパク質が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなタンパク質の例としては、カルレティキュリン(小胞体)、GM130(ゴルジ体)、ATP5A(ミトコンドリア)、TOMM20(ミトコンドリア)、RPS3(リボソーム)、M6PR(リソソーム)、EEA1(エンドソーム)、RAB7(エンドソーム)、カタラーゼ(ペルオキシソーム)、SQSTM1/p62(オートファゴソーム)、及びLC3B(オートファゴソーム)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0242】
細胞性マーカーは、核マーカーとすることができる。核マーカーは、当該技術分野において公知の任意の核マーカーとすることができる。核マーカーの例としては、独占的に又は主要に、細胞の核、又は細胞の核内の特定の下部構造と結合している特定のタンパク質が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなタンパク質の例としては、KDM1、NUP98、ラミンA、ラミンC、ラミン、SC35、フィブリラリン、HP1α、CENPA又は当該技術分野において公知の任意の他の核タンパク質が挙げられるが、これらに限定はされない。また、核マーカーとして、細胞の核酸を染色するためのDAPI又はSYTO9などの核酸染色も挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0243】
いくつかの態様では、本開示の一般的ランドマークプローブは、原形質膜、核膜、小胞体膜、リソソーム膜、又は当該技術分野において公知の任意の他の膜など、細胞における1又は複数の特定の膜を標的とする色素を含むことができる。
【0244】
いくつかの態様では、試料内の個々の細胞の境界を定める目的で、本開示の一般的ランドマークプローブを検出することができる。試料内の個々の細胞の境界を検出することで、下流の試料内の空間的バーコードの合成のための、空間的パターンを決定することができる。いくつかの態様では、試料内の1又は複数の一般的ランドマークプローブの検出を利用して、蛍光細胞画像を生成し、その後それに、後に収集される遺伝子発現をマッピングすることで、空間分解的な遺伝子発現プロファイルを生成することができる。
【0245】
試料
【0246】
本開示のいくつかの態様では、試料は、細胞(初代細胞及び培養細胞株の両方を含む)及び組織(培養組織又は移植組織を含む)を含むが、これらに限定はされない、任意の数の物を含んでもよい。各態様では、組織試料(固定又は未固定)を包埋し、連続切片にし、顕微鏡用スライド上に固定する。周知のように、一対の連続切片は、両方の連続切片に存在する少なくとも1つの細胞を含むこととなる。1つ目の連続切片上に位置する構造及び細胞型は、隣接した連続切片上では同様の位置を有することとなる。上記試料は、スライド上に固定された培養細胞又は分離細胞(固定又は未固定)とすることができる。試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料とすることができる。
【0247】
各態様では、組織試料は、生検腫瘍又はその一部、すなわち臨床的に関連する組織試料である。例えば、上記腫瘍は乳がん由来の腫瘍としてもよい。上記試料は摘出されたリンパ節としてもよい。
【0248】
上記試料は、実質的にいかなる生物からも得ることができ、例えば、植物界、真菌界、及び動物界の多細胞生物が挙げられ;好ましくは、上記試料は動物、例えば哺乳動物から得られる。ヒト試料が特に好ましい。
【0249】
いくつかの態様では、本明細書に記載のプローブ、組成物、方法、及びキットは、状態の診断で使用される。本明細書で使用される場合、状態を診断する、又は状態の診断という語は、状態を予測又は診断すること、状態の素因を判定すること、状態の治療をモニターすること、疾患の治療反応を診断すること、並びに、状態の予後、状態の進行、及び状態の特定の治療に対する反応を診断すること、を包含する。例えば、組織試料を、本明細書に記載のプローブ、方法、又はキットのいずれかによりアッセイすることで、試料における疾患又は悪性細胞型のマーカーの存在及び/又は量を(非疾患状態と比較して)求め、それにより、疾患又はがんを診断又は病期判定できる。
【0250】
一般に、スライドに付着させた試料を、まず、蛍光(例えば、蛍光抗体又は蛍光染色液(例えば、DAPI))を用いてイメージングし、形態、関心領域、目的の細胞型、及び単一細胞を確認してから、同スライド上の試料からタンパク質及び/又は核酸の発現をデジタル処理でカウントすることができる。
【0251】
シーケンシング
【0252】
本開示の方法のいくつかの態様では、シーケンシングを介して定量化することは、当該技術分野において公知の任意のシーケンス法を用いて、a)特定の標的分析物に対応する(すなわち、特定の標的同定ドメインを含む)、及び、b)特定の関心部位/関心領域に対応し結合している(すなわち、空間的バーコードドメイン内に同じ識別子ドメインを含む)、収集されたプローブの数を求めることを含むことができる。
【0253】
シーケンシングは、任意の公知のシーケンス法で行うことができ、次世代シーケンス法、合成によるシーケンシング、大規模並列シーケンス、又は当業者に公知であり実施される任意の他のシーケンス法が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0254】
好ましい態様では、核酸増幅は固相核酸増幅とすることができる。すなわち、さらなる態様において、本発明は、鋳型ポリヌクレオチド分子の固相核酸増幅の方法であって、本開示の方法を用いて5’末端及び3’末端に共通の配列を有する鋳型ポリヌクレオチド分子のライブラリーを作製すること、並びに、上記鋳型ポリヌクレオチド分子が増幅される固相核酸増幅反応を行うこと、を含む方法を提供するものである。核酸増幅及びシーケンシングのための組成物及び方法は、例えば、米国特許第9376678号明細書に記載されており、上記米国特許はその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0255】
「固相増幅」という語は、本明細書で使用される場合、増幅産物の全て又は一部が、形成されながら、固相上に固定されるように、固相上で、又は固相と共同して実行される任意の核酸増幅反応を指す。特に、上記語は、フォワード増幅プライマー及びリバース増幅プライマーの一方又は両方が固相上に固定されることを除いて標準的液相PCRに類似した反応である、固相ポリメラーゼ連鎖反応(固相PCR)を包含する。
【0256】
本発明は一方の増幅プライマーだけが固定される(他方のプライマーは通常、遊離溶解状態で存在する)「固相」増幅法を包含するが、上記固相は、固定されたフォワードプライマー及びリバースプライマーの両方が備わっていることが好ましい。実際には、PCRプロセスが増幅を持続するために過剰なプライマーを必要とすることから、「複数」の同一のフォワードプライマー及び/又は「複数」の同一のリバースプライマーが固相上に固定されて存在することとなる。したがって、本明細書でフォワードプライマー及びリバースプライマーと言う場合、文脈上特に指示がない限り、「複数」の係るプライマーを包含すると解釈されるべきである。
【0257】
当業者(skilled reader)には理解されることであるが、いかなるPCR反応であっても、増幅対象の鋳型に特異的な少なくとも1種のフォワードプライマー及び少なくとも1種のリバースプライマーを必要とする。しかし、ある態様では、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーは、同一配列の鋳型特異的な部分を含んでもよく、また、全く同一のヌクレオチド配列及び構造(任意の非ヌクレオチド修飾を含む)を有してもよい。言い換えれば、1種類のプライマーだけを用いて固相増幅を行うことが可能であり、そのような単一プライマー法も本発明の範囲に包含される。他の態様は、同一の鋳型特異的配列を含むが、その他の構造的特徴においては異なる、フォワードプライマー及びリバースプライマーを用いる場合がある。例えば、1種類のプライマーが、その他には存在しない非ヌクレオチド修飾を含む場合がある。
【0258】
本発明の他の態様では、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーは、配列が異なる鋳型特異的な部分を含んでもよい。
【0259】
固相PCR用の増幅プライマーが、当該プライマーの5’末端において、又はその付近で固相に共有結合で固定され、当該プライマーの鋳型特異的な部分がその同族異型へのアニーリング用にフリーであり、且つ、3’ヒドロキシル基がプライマー伸長用にフリーであることが好ましい。この目的のために、当該技術分野において公知の任意の好適な共有結合手段が使用されてよい。選択される結合化学は、固相の性質と、それに適用されたあらゆる誘導体化又は機能化に依存する。プライマーそれ自体が、結合を容易にする、非ヌクレオチド化学修飾であってもよい、部分を含んでもよい。1つの特定の好ましい態様では、上記プライマーは、ホスホロチオエート又はチオリン酸塩などの硫黄含有求核剤を、5’末端に含んでもよい。固相支持ポリアクリルアミドハイドロゲル(以下で説明される)の場合、この求核剤が、当該ハイドロゲル中に存在する「C」基に結合する。プライマー及び鋳型を固相に結合する最も好ましい手段は、重合アクリルアミド及びN-(5-ブロモアセトアミジルペンチル)アクリルアミド(BRAPA)から構成される、ハイドロゲルに対する、5’ホスホロチオエート結合を介したものである。
【0260】
「クラスター」及び「コロニー」という語は、本明細書では同義的に使用されて、複数の同一の固定された核酸鎖及び複数の同一の固定されていない相補的核酸鎖から構成される、固相上に分散した部位を指す。「クラスター化されたアレイ」という語は、そのようなクラスター又はコロニーから形成されたアレイを指す。この文脈において、「アレイ」という語は、クラスターの規則正しい配列を必要とするものと理解されるべきではない。
【0261】
本発明には、固相増幅によって生成された増幅後核酸をシーケンスする方法も包含される。すなわち、本発明は、上記の本開示の方法により核酸鋳型のライブラリーを増幅することであって、上記のような固相増幅を用いてこのライブラリーを固相上で増幅すること、及び、固相増幅反応で生成された少なくとも1つの増幅後核酸鎖の全体又は一部の配列を決定するための核酸シーケンス反応を実行すること、を含む、核酸シーケンス法を提供するものである。
【0262】
本明細書で言うシーケンスは、ヌクレオチドをフリーな3’ヒドロキシル基に連続的に付加し、5’→3’方向にポリヌクレオチド鎖を合成させる、任意の好適な「逐次合成シーケンス(sequencing-by-synthesis)」手法を用いて実行することができる。付加されたヌクレオチドの性質は、各ヌクレオチドの付加後に決定されることが好ましい。
【0263】
シーケンシングプライマーが全ゲノム増幅反応又は固相増幅反応の産物にアニーリングすることで、シーケンス反応の開始点が与えられてもよい。これに関連して、鋳型ライブラリーの形成時に添加されたアダプターの一方又は両方が、鋳型ライブラリーの全ゲノム増幅又は固相増幅によって得られる増幅産物にシーケンシングプライマーがアニーリングすることを可能にするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0264】
フォワード増幅プライマー及びリバース増幅プライマーの両方が固体表面上に共有結合的に結合される固相増幅反応の産物は、共に5’末端において固相に結合された、固定されたポリヌクレオチド鎖と固定された相補鎖の対がアニーリングすることによって形成される、いわゆる「ブリッジ」構造である。標準的なハイブリダイゼーション条件下では、従来のシーケンシングプライマーのこれらの固定された鎖の一方へのハイブリダイゼーションが、この鎖のその固定された相補鎖へのアニーリングと比較して、優先されるものではないことから、このようなブリッジ構造から構成されるアレイでは非効率的な核酸シーケンス用鋳型しか得られない。
【0265】
より好適な核酸シーケンス用鋳型を得るためには、少なくとも部分的に一本鎖である鋳型を形成する目的で、「ブリッジ」構造における固定された鎖のうちの一方の実質的に全て又は少なくとも一部を除去することが好ましい。このようにして、一本鎖である鋳型の一部が、シーケンシングプライマーへのハイブリダイゼーションに利用可能となる。「ブリッジ」二本鎖核酸構造における一方の固定鎖の全て又は一部を除去するプロセスは、「直線化」と呼ばれる場合もある。
【0266】
ブリッジ形成された鋳型構造は、一方若しくは両方の鎖の制限酵素による切断によって、又は一方の鎖のニッキングエンドヌクレアーゼによる切断によって、直線化されてもよい。他の切断法を制限酵素やニッキング酵素の代替として用いることができ、α間(inter alfa)化学切断(例えば、過ヨウ素酸塩によるジオール結合の切断)、エンドヌクレアーゼを用いた切断による、若しくは熱若しくはアルカリへの暴露による無塩基部位の切断、増幅産物に組み込まれたリボヌクレオチドを切断してそれ以外をデオキシリボヌクレオチドで構成させること、光化学的な切断、又はペプチドリンカーの切断が挙げられる。
【0267】
一方のプライマーだけが共有結合的に固定され、他方は遊離溶解した状態で固相増幅反応が実行される場合、直線化工程は必須でない場合があることは理解されよう。
【0268】
シーケンスに適した直線化した鋳型を得るためには、完全又は部分的に一本鎖状態の、シーケンス用の直線化した鋳型を残すように、増幅によって形成されたブリッジ構造において「不等」量の相補鎖を除去することが必要である。ブリッジ構造の一方の鎖が大幅に又は完全に除去されることが最も好ましい。
【0269】
切断工程に続いて、切断に使用された方法に関わらず、切断反応の産物は、固相に結合していない、切断された鎖の部分を除去するために、変性条件に曝される場合がある。好適な変性条件は、標準的な分子生物学プロトコルを参照することで、当業者(skilled reader)には明らかとなる。
【0270】
変性(及びその後の切断された鎖の再アニーリング)により、部分的又は実質的に一本鎖のシーケンス用鋳型が生成される。次いで、シーケンシングプライマーが鋳型の一本鎖部分にハイブリダイズすることによって、シーケンス反応が開始されてもよい。
【0271】
このように、核酸シーケンス反応は、シーケンシングプライマーを直線化された増幅産物の一本鎖領域にハイブリダイズすること、シーケンス対象である増幅された鋳型鎖の領域に相補的なポリヌクレオチド鎖に1又は複数のヌクレオチドを連続的に組み込むこと、1又は複数の組み込まれたヌクレオチドに存在する塩基を同定すること、及び、それによって、鋳型鎖の領域の配列を決定することを含んでもよい。
【0272】
本発明において使用できる1つの好ましいシーケンス法は、連鎖停止剤として作用し得る修飾ヌクレオチドの使用に依存している。上記修飾ヌクレオチドがシーケンス中の鋳型の領域に相補的な伸長中のポリヌクレオチド鎖に組み込まれると、さらなる配列伸長を誘導するために使用可能なフリーな3’-OH基がなくなるため、ポリメラーゼがさらなるヌクレオチドを付加できない。伸長中の鎖に組み込まれた塩基の性質が決定されたら、3’ブロックを除去して、後続のヌクレオチドの付加を可能にしてもよい。これらの修飾ヌクレオチドを用いて得られた産物を順序付けることで、鋳型DNAのDNA配列を推定することができる。修飾ヌクレオチドのそれぞれが、各組み込み工程で付加された塩基間の識別を容易にするための、特定の塩基に対応することが知られている異なる標識を結合している場合、このような反応は単一の実験で行うことができる。あるいは、修飾ヌクレオチドのそれぞれを別々に含む別々の反応を行ってもよい。
【0273】
修飾ヌクレオチドは、それらの検出を容易にするための標識を有していてもよい。これは蛍光ラベルであることが好ましい。ヌクレオチドの種類ごとに異なる蛍光ラベルを有していてもよい。しかし、上記検出可能な標識は蛍光ラベルである必要はない。組み込まれたヌクレオチドの検出を可能にするいかなる標識も使用できる。
【0274】
蛍光標識ヌクレオチドを検出するための1つの方法は、標識されたヌクレオチドに特異的な波長のレーザー光の使用、又は他の好適な照射源の使用を含む。上記ヌクレオチド上の標識からの蛍光はCCDカメラ又は他の好適な検出手段で検出すればよい。
【0275】
本発明は、ヌクレオチドのポリヌクレオチド鎖への連続的な組み込みに依存した基本的に全てのシーケンス法が使用可能であるため、上記で概説したシーケンス法の使用に限定されることは意図されない。好適な代替技術としては、例えば、ピロシーケンスをベースとした方法、FISSEQ(蛍光in situシーケンス)をベースとした方法、MPSS(超並列署名シーケンス)をベースとした方法、及びライゲーションによるシーケンシングをベースとした方法が挙げられる。
【0276】
ハイブリダイゼーション
【0277】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」という語は、その最も広い意味で、安定な核酸二本鎖の形成を意味して用いられる。一つの態様では、「安定な二本鎖」は、例えば、二本鎖の鎖のTmを約5℃下回る又は約5℃上回る温度、及び低い一価塩濃度、例えば、0.2M未満、又は0.1M未満、又は当業者に公知の塩濃度などの条件下での、ストリンジェントな洗浄によって、二本鎖構造が破壊されないことを意味する。二本鎖は、各鎖の全てのヌクレオチドが他方の鎖のヌクレオチドとワトソン・クリック塩基対形成を行うように、上記二本鎖を構成しているポリヌクレオチド鎖及び/又はオリゴヌクレオチド鎖が互いと二本鎖構造を形成するような、「完全マッチ」をし得る。「二本鎖」という語は、使用することができる、デオキシイノシン、2-アミノプリン塩基を有するヌクレオシド、PNA、及び同種のものなどのヌクレオシドアナログの対合を含むが、これらに限定はされない。二本鎖は少なくとも1つのミスマッチを含むことができ、ここで、「ミスマッチ」という語は、二本鎖内のヌクレオチド対がワトソン・クリック結合を行うことができないことを意味する。
【0278】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション条件」という語は、典型的には約1M未満、より典型的には約500mM未満、さらにより典型的には約200mM未満の塩濃度を含む。ハイブリダイゼーション温度は5℃と低くすることができるが、典型的には22℃超であり、より典型的には約30℃超であり、約37℃超である場合が多い。ハイブリダイゼーションは、通常、ストリンジェントな条件下で、例えば、プローブがその標的分析物に特異的にハイブリダイズする条件下で、実行される。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、状況毎に異なる。長い断片ほど、特異的なハイブリダイゼーションにより高いハイブリダイゼーション温度を必要とし得る。相補鎖の塩基組成及び長さ、有機溶剤の存在、並びに塩基ミスマッチの程度を含む他の要因がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与えることがあるため、いずれか1つのみの絶対尺度よりもパラメーターの組み合わせの方が重要である。ある特定のハイブリダイゼーション条件が、標的結合ドメインの全長と標的分析物との間での二本鎖の形成を促進する。他のハイブリダイゼーション条件では、上記標的結合ドメインのある特定の部分でのみ二本鎖の形成を促進するだけである。
【0279】
本開示の組成物
【0280】
本開示は、本明細書に記載のプローブ、伸長後プローブ又はプローブ中間体のいずれかを含む組成物を提供するものである。
【0281】
好ましい実施形態
【0282】
実施形態1
組織試料内の核酸配列をin situ合成するための方法であって、
a)上記組織試料を少なくとも1つのプローブと接触させることであって、
上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、
上記プローブはフリーな3’-OH部分を含み、
上記標的結合ドメインは組織試料の第1部位における少なくとも1つの標的分子に結合する、接触させること;
b)上記フリーな3’-OH部分を少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結し、少なくとも1つの結合型プローブを伸長させることであって、
上記少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること、
c)上記組織試料の第1部位に、上記少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記ポリメラーゼを遊離させ、上記伸長された少なくとも1つの結合型プローブ上にフリーな3’-OH部分を露出させること;並びに、
d)核酸配列の合成が完了するまで工程(b)及び工程(c)を反復すること、
を含む方法。
【0283】
実施形態2
組織試料内の核酸配列をin situ合成するための方法であって、
a)上記組織試料を少なくとも1つのプローブと接触させることであって、
上記プローブは標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含み、
上記プローブはフリーな3’-OH部分を含み、
上記標的結合ドメインは組織試料の第1部位に位置する少なくとも1つの標的分子に結合する、接触させること;
b)上記組織試料を少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチド及び少なくとも1つのポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させることであって、
上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;
c)上記組織試料の第1部位に、上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記3’ターミネーター部分を遊離させ、上記伸長された少なくとも1つの結合型プローブ上にフリーな3’-OH部分を露出させること;並びに、
d)核酸配列の合成が完了するまで工程(b)及び工程(c)を反復すること、
を含む方法。
【0284】
実施形態3
上記標的結合ドメインが上記組織試料の少なくとも第2部位における少なくとも1つの標的分子に結合し、上記少なくとも第2部位において工程(b)~(d)を反復することをさらに含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0285】
実施形態4
上記組織試料の上記第1部位で合成された上記核酸配列が、上記組織試料の上記少なくとも第2部位で合成された上記核酸配列と異なる、実施形態3に記載の方法。
【0286】
実施形態5
組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法であって、
a)上記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、
各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;
b)上記組織試料を第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、
上記第1の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;
c)上記組織試料の少なくとも1つの部位に、上記ヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体の上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記ポリメラーゼを遊離させ、上記組織試料の上記少なくとも1つの部位における上記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;
d)上記組織試料を追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体と接触させることにより、工程(c)で照射された上記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインの上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、
上記追加の複数のヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体中の少なくとも1つのヌクレオチド-ポリメラーゼ複合体は光切断性リンカーを介してポリメラーゼに動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;
e)上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ、
上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、
工程(c)及び工程(d)を反復すること;
f)上記組織試料内の標的分析物に結合した上記プローブを収集すること;並びに、
g)工程(f)で収集された上記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、上記組織試料の上記第1部位及び上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより上記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、
を含む方法。
【0287】
実施形態6
組織試料の第1部位と少なくとも第2部位とにおける少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成する方法であって、
a)上記組織試料を、標的結合ドメインと標的同定ドメインとを含むプローブを少なくとも2種類含む溶液と接触させることであって、
各種プローブは上記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合する固有標的結合ドメインと、上記標的分析物に特異的な固有標的同定ドメインと、フリーな3’-OH部分とを含む、接触させること;
b)上記組織試料を第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び第1の複数のポリメラーゼと接触させることにより、少なくとも1つの結合型プローブのバーコードドメインのフリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブを伸長させ、空間的バーコードドメインを形成することであって、
上記第1の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、形成すること;
c)上記組織試料の少なくとも1つの部位に、上記可逆的ターミネーターヌクレオチドの上記光切断性リンカーを切断するのに充分な光を照射することで、上記可逆的3’ターミネーター部分を遊離させ、上記組織試料の上記少なくとも1つの部位における上記空間的バーコードドメイン上にフリーな3’-OH部分を露出させること;
d)上記組織試料を追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド及び追加の複数のポリメラーゼと接触させることにより、工程(c)で照射された上記少なくとも1つの部位における少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインの上記フリーな3’-OH部分にヌクレオチドを連結することで、上記少なくとも1つの結合型プローブの上記空間的バーコードドメインを伸長させることであって、
上記追加の複数の可逆的ターミネーターヌクレオチド中の少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドは光切断性リンカーを介して可逆的3’ターミネーター部分に動作可能に結合したヌクレオチドを含む、伸長させること;
e)上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長され、且つ、
上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記空間的バーコードドメインが上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有核酸配列を含むように伸長されるまで、
工程(c)及び工程(d)を反復すること;
f)上記組織試料内の標的分析物に結合した上記プローブを収集すること;並びに、
g)工程(f)で収集された上記プローブをシーケンシングを介して定量化することで、上記組織試料の上記第1部位及び上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量を求め、それにより上記少なくとも2つの標的分析物の空間分解的な存在量プロファイルを生成すること、
を含む方法。
【0288】
実施形態7
上記組織試料の上記第1部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量と、上記組織試料の上記少なくとも第2部位における上記少なくとも2つの標的分析物の存在量とを比較することをさらに含む、実施形態5又は6に記載の方法。
【0289】
実施形態8
上記ポリメラーゼが末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ又はその一部である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0290】
実施形態9
上記少なくとも1つの可逆的ターミネーターヌクレオチドが3’-O-(2-ニトロベンジル)-dATP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dCTP、3’-O-(2-ニトロベンジル)-dGTP又は3’-O-(2-ニトロベンジル)-dTTPを含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0291】
実施形態10
上記3’ターミネーター部分が2-ニトロベンジルを含む、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0292】
実施形態11
上記プローブが固有分子識別子をさらに含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0293】
実施形態12
上記固有分子識別子が少なくとも約14ヌクレオチド長である、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0294】
実施形態13
上記プローブが増幅プライマー結合部位をさらに含む、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0295】
実施形態14
上記増幅プライマー結合部位が少なくとも約24ヌクレオチド長である、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0296】
実施形態15
上記プローブが定常領域をさらに含む、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0297】
実施形態16
上記定常領域が少なくとも約12ヌクレオチド長~少なくとも約20ヌクレオチド長である、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0298】
実施形態17
上記プローブが、5’から3’に向かって、上記標的結合ドメインを、続いて上記増幅プライマー結合部位を、続いて上記固有分子識別子を、続いて上記標的同定ドメインを、続いて上記定常領域を、含む、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0299】
実施形態18
上記組織試料の上記第1部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの空間的バーコードドメインが、上記組織試料の上記第1部位に特異的な固有空間的識別子配列を含む、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0300】
実施形態19
【0301】
上記組織試料の上記少なくとも第2部位における標的分析物に結合した少なくとも1つのプローブの上記空間的バーコードドメインが、上記組織試料の上記少なくとも第2部位に特異的な固有空間的識別子配列を含む、実施形態1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0302】
実施形態20
上記空間的識別子配列が少なくとも約20個のヌクレオチドを含む、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0303】
実施形態21
上記空間的識別子配列が少なくとも4つの空間的同定ドメインを含む、実施形態1~20のいずれか一項に記載の方法。
【0304】
実施形態22
上記少なくとも4つの空間的同定ドメインのそれぞれが同じ数のヌクレオチドを含む、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0305】
実施形態23
上記少なくとも4つの空間的同定ドメインの少なくとも1つが、同一空間的バーコード内の別の空間的同定ドメインと比較した場合で異なる数のヌクレオチドを含む、実施形態1~22のいずれか一項に記載の方法。
【0306】
実施形態24
それぞれの空間的同定ドメインが約1個~約4個のヌクレオチドを含む、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0307】
実施形態25
それぞれの空間的同定ドメインが約4個のヌクレオチドを含む、実施形態1~24のいずれか一項に記載の方法。
【0308】
実施形態26
上記少なくとも4つの空間的同定ドメインのそれぞれが3’末端に同一ヌクレオチドを含む、実施形態1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0309】
実施形態27
工程(e)後且つ工程(f)前に、工程(c)及び工程(d)を反復して、上記組織試料の各部位における上記空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインが3’末端に区切りドメインを含むように伸長させることをさらに含む、実施形態1~26のいずれか一項に記載の方法。
【0310】
実施形態28
工程(e)後且つ工程(f)前に、上記組織試料の各部位における上記空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させることをさらに含む、実施形態1~27のいずれか一項に記載の方法。
【0311】
実施形態29
工程(e)後且つ工程(f)前に、以下をさらに含む、実施形態1~28のいずれか一項に記載の方法:
【0312】
(i)工程(c)及び工程(d)を反復して、上記組織試料の各部位における上記空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインが区切りドメインを含むように伸長させること;並びに、
【0313】
(ii)上記組織試料の各部位における上記空間的バーコードドメインを、上記空間的バーコードドメインがポリTドメインを含むように伸長させること。
【0314】
実施形態30
上記区切りドメインが少なくとも約4ヌクレオチド長~少なくとも約6ヌクレオチド長である、実施形態1~29のいずれか一項に記載の方法。
【0315】
実施形態31
上記区切りドメインの配列が、上記試料における全ての空間的バーコードに対して同じである、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法。
【0316】
実施形態32
上記ポリTドメインが少なくとも約14個のヌクレオチドを含む、実施形態1~31のいずれか一項に記載の方法。
【0317】
実施形態33
工程(c)の照射が、アークランプ、レーザー、集束UV光源、及び発光ダイオードからなる群から選択される光源によって供給される、実施形態1~32のいずれか一項に記載の方法。
【0318】
実施形態34
上記レーザーが赤外レーザーである、実施形態1~33のいずれか一項に記載の方法。
【0319】
実施形態35
工程(c)の照射が2光子励起顕微鏡によって供給される、実施形態1~34のいずれか一項に記載の方法。
【0320】
実施形態36
上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記第2部位が、x方向及び/又はy方向に約500nm以下、且つ、z方向に約1500nm以下である、実施形態1~35のいずれか一項に記載の方法。
【0321】
実施形態37
上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位が細胞内(subcellular)である、実施形態1~36のいずれか一項に記載の方法。
【0322】
実施形態38
上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位がそれぞれ1個以下の細胞を含む、実施形態1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0323】
実施形態39
上記組織試料の上記第1部位及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位がそれぞれ10個以下の細胞を含む、実施形態1~38のいずれか一項に記載の方法。
【0324】
実施形態40
上記組織試料の上記第1部位内及び上記組織試料の上記少なくとも第2部位内のそれぞれの細胞が個々に自動的に同定及びコード化される、実施形態1~39のいずれか一項に記載の方法。
【0325】
実施形態41
工程(a)の前に、上記組織試料をddTTP(ジデオキシチミジン三リン酸)終結に供することをさらに含む、実施形態1~40のいずれか一項に記載の方法。
【0326】
実施形態42
上記組織試料をddTTP終結に供することが上記組織試料をddTTP及びTdTと接触させることを含む、実施形態1~41のいずれか一項に記載の方法。
【0327】
実施形態43
工程(f)後且つ工程(g)前に、上記収集されたプローブを増幅することをさらに含む、実施形態1~42のいずれか一項に記載の方法。
【0328】
実施形態44
上記収集されたプローブを増幅することが第1増幅プライマー及び第2増幅プライマーの使用を含み、
上記第1増幅プライマーが第1フローセルアダプター配列、第1NGSインデックス配列及び第1シーケンシングプライマー結合部位を含み、
上記第2増幅プライマーが第2フローセルアダプター配列、第2NGSインデックス配列及び第2シーケンシングプライマー結合部位を含む、
実施形態1~43のいずれか一項に記載の方法。
【0329】
実施形態45
【0330】
上記第1増幅プライマー及び上記第2増幅プライマーの少なくとも一方が、上記区切り配列及び/又は上記ポリTドメインに相補的な核酸配列を含む、実施形態1~44のいずれか一項に記載の方法。
【実施例】
【0331】
実施例1:本開示のプローブの増幅
【0332】
以下は、本開示のプローブの増幅を検査するための一連の実験である。
【0333】
1つ目の実験において、増幅対象のプローブは、
図15に示されるように、標的結合ドメイン及び増幅プライマー結合部位から構成されたものであった。
図15に示されるように、第1増幅プライマーには標的結合ドメインの配列を含ませ、第2増幅プライマーには上記プローブ上の増幅プライマー結合部位に相補的な配列を含ませた。次いで、これら2つの増幅プライマーを用いて上記プローブを増幅し、予測されるアンプリコンは61bpであった。
図16は、ゲル電気泳動を用いて分析された、上記増幅実験の結果を示している。最初の5つのレーンは、プローブを含めず(NTC、テンプレートなしのコントロール)、TdT及びdTTPと一緒にインキュベートし、その後5ngのヒトDNAに添加した、コントロール増幅反応である。レーン6~10は、25アトモルのプローブを含ませ、TdT及びdTTPと一緒にインキュベートし、その後5ngのヒトDNAに添加した、増幅反応である。コントロール反応では増幅産物は生じず、一方、プローブを用いた増幅反応では予測分子量に増幅産物が生じた。
【0334】
2つ目の実験において、増幅対象のプローブは、
図17に示されるように、標的結合ドメイン及び増幅プライマー結合部位から構成されたものであった。
図17に示されるように、第1増幅プライマーには、フローセルアダプター配列、NGSインデックス配列、シーケンシングプライマー結合部位及び上記プローブの増幅プライマー結合部位の配列を含ませた。第2増幅プライマーには、フローセルアダプター配列、NGSインデックス配列、シーケンシングプライマー結合部位、及びTdT伸長により上記プローブの末端に付加されたポリTドメインにハイブリダイズできるポリAドメインを含ませた。次いで、これら2つの増幅プライマーを用いて上記プローブを増幅し、予測されるアンプリコンは194bpであった。
図18は、ゲル電気泳動を用いて分析された、上記増幅実験の結果を示している。25アトモルのプローブをまず、TdTの存在下又は非存在下でdTTPと共にインキュベートし、TdTを介したポリT伸長を行った。次に、これらの反応物を、別々に5ngの300bpヒトgDNAに添加し、増幅プライマーを用いて増幅した。ゲルのレーン1~5は、TdTによる処理を行わなかったためにポリTドメインを有していないはずのプローブを用いた増幅反応物を含んでいる。予想通り、第2増幅プライマーはポリTドメインのラック(lack)に結合できないため、これらのプローブは増幅されなかった。ゲルのレーン6~8及びレーン10はTdTによる処理を行ったためにポリTドメインを有しているはずのプローブを用いた増幅反応物を含んでいる。これらの増幅反応は予想された分子量に産物をもたらし、TdTによって伸長された本開示のプローブを特異的に増幅するためにポリTドメインを利用できることが示された。
【0335】
まとめると、これらの結果は、本明細書に記載の増幅プライマー及び方法を用いて本開示のプローブを増幅できることを示している。
【0336】
実施例2:in situTdT合成及びプローブ/DNAの回収
【0337】
以下は、TdT及びdTTPと共にインキュベートされた組織試料からのDNAの回収を試験するための一連の実験である。
【0338】
1つ目のコントロール実験群では、新鮮組織試料及び4日経過後の組織試料を、56℃で1時間のプロテアーゼK消化に曝し、次いで、90℃で15分間のさらなる消化に曝した。DNAを、この組織試料から抽出し、Qubit分析に供して、高分子量の二本鎖DNA(dsDNA_高分子量)、低分子量の二本鎖DNA(dsDNA_低分子量)、高分子量の一本鎖DNA(ssDNA_高分子量)、及び低分子量の一本鎖DNA(ssDNA_低分子量)の含量を求めた。この分析の結果を
図19の棒グラフの左側に示す(コントロール実験とラベル)。
図19に示されるように、高分子量画分(>500bp)がdsDNA及びssDNAの両方で確認され、ssDNAが回収されたDNAの約80%を占めた。
【0339】
2つ目の実験群では、組織試料を、ddTTPで終結されたブロッキングDNAと組み合わせて本開示のプローブと共に一晩インキュベートした。次いで、この組織試料を洗浄し、脱水した。次いで、この組織試料を、TdTによるポリTテーリングを可能にするためのTdTの存在下(TdT_組織)又は非存在下(無TdT_組織)で、dTTPと共にインキュベートした。テーリング反応の後、組織試料を、56℃で1時間のプロテアーゼK消化に曝し、次いで、90℃で15分間のさらなる消化に曝した。DNAを、この組織試料から抽出し、Qubit分析に供して、高分子量の二本鎖DNA(dsDNA_高分子量)、低分子量の二本鎖DNA(dsDNA_低分子量)、高分子量の一本鎖DNA(ssDNA_高分子量)、及び低分子量の一本鎖DNA(ssDNA_低分子量)の含量を求めた。この分析の結果を
図19の棒グラフの右側に示す(テーリング実験)。
図19に示されているように、TdTとインキュベートされた組織試料では、高分子量DNAの含量が増加しており、これはポリTテーリング反応が成功したことを示している。実際には、組織上の(on-tissue)テーリングの結果、平均ポリT長が500ヌクレオチドより大きいポリTテールを有するDNAは35%を超えた。次いで、低分子量DNA画分及び高分子量DNA画分をさらに分析して、それらが組織試料に接触したプローブを含有しているかどうかを確認した。プローブに特異的な増幅プライマーを用いた増幅により、プローブが低分子量DNA画分に存在していることが示された。さらに、TdTテーリングに供された組織試料においてより多くのプローブが回収された。
【0340】
まとめると、これらの結果は、TdTを用いて、組織試料内のin situでポリヌクレオチドを伸長できること、及びこれらの伸長後ポリヌクレオチドをその後に収集できることを示している。これらの結果はまた、結合したプローブ上にポリTテールを付加することで、上記プローブの回収を増加させることができることも示している。
【0341】
実施例3:TdTを用いたin situDNA合成
【0342】
以下の実施例は、組織試料内でin situDNA合成を行うためにTdT酵素を使用することができることを示す、一連の実験を記述している。
【0343】
FFPE組織試料(TMA扁桃腺又は3細胞ペレットアレイ、シランコートカバーガラス上に5μm厚)を、以下の2日間プロトコルを用いて作製した:
1日目:
1)試料を60℃でベーキングした後、キシレン及びEtOHを介した脱パラフィンにかけた;
2)試料を100℃で加熱し、プロテアーゼで処理した;
3)基準マーカーを試料上に配置した;
4)試料を、NBF、トリス-グリシン及びスルホ-NHSアセテート(シランをブロックするため)を用いて固定/架橋結合した;及び
5)試料を、プローブの存在下又は非存在下で、100μg/mLキャリアDNA(2000bp未満)と共に、一晩インキュベートした。
2日目:
6)試料を、0.1%Tween20を含有する又は含有しない、2×生理食塩水-クエン酸ナトリウム、50%ホルムアミドを用いて、37℃又は室温で洗浄した;
7)試料を、75μlのTdTテーリングミックス(150ユニットのTdTを含有する又は含有しない、25nmol dTTP)と共に37℃で1.5時間インキュベートし、その後0.2M EDTAを添加することで反応をクエンチした;
8)試料を、EtOHで3回洗浄し、風乾し、4℃で保存した。
【0344】
TdT酵素が試料内で結合したプローブ上にポリTテールを付加したかどうかを判定するため、上記で準備した試料を、100nMのAlexa546標識ポリAオリゴヌクレオチド(15個の「A」ヌクレオチドを含む)で染色した。これらの標識ポリAオリゴヌクレオチドは、TdT酵素によって付加されたあらゆるポリTテールに結合し、蛍光顕微鏡下で検出可能なはずである。ポリAオリゴヌクレオチドを最初に検出した後、ポリAオリゴヌクレオチドを試料から取り除くために、試料に0.0033×塩化ナトリウム-リン酸ナトリウム-EDTA(SSPE)洗浄による処理も行った。細胞がプローブで処理されていたかどうかにかかわらず、細胞は上記ポリA15オリゴヌクレオチドで染色された。理論に拘束されることを望むものではないが、このことは、TdT酵素が、ISHプローブの他に、ブロッキングDNA及び内在性の核DNA上にもポリTテールを付加したことを示している可能性が最も高い。さらに、SSPEは、標識ポリAオリゴヌクレオチドの大部分を細胞から取り除くことができた。
【0345】
上記と同様の実験において、細胞を20nMの標識ポリAオリゴヌクレオチドで染色し、3種類の異なる試料の試験を行った(CCRF-CEM細胞、DAUDI細胞及びMDA-MB-468細胞)。プローブ及びTdTで処理された3種類全ての細胞がポリAオリゴヌクレオチドで染色され、TdT処理によって、細胞内のDNA分子にポリTテールが付加されたことを示している。同じ3種類の試料に、プローブ(「ISHプローブ」)での処理を行うが、TdTでの処理は行わない、コントロール実験も行った。これらのコントロール試料が呈した標識ポリAオリゴヌクレオチドによる染色は低~無であり、上記の実験で観察されたシグナルがTdTによるポリTテーリングに起因していることが示された。
【0346】
まとめると、これらの結果は、TdTによって、組織試料内でのin situDNA合成が実行できることを示している。
【0347】
実施例4:xGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製
【0348】
以下は、本開示の方法で使用できるxGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製の非限定例である。
【0349】
xGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製は以下を含むことができる:
a)組織試料ライセート(未精製又はAmpure精製)を、本開示のプローブに相補的な配列を少なくとも1つ、及びビオチン部分を少なくとも1つを含むキャプチャープローブと共に、95℃の5×SSPE中で30秒間インキュベートし、その後、43℃の5×SSPE中で1時間インキュベートすること;
b)工程(a)より得られた溶液を、ストレプトアビジンコートビーズと共に、38℃の5×SSPE中で10分間、3回インキュベートすること;
c)ビーズを43℃の5×SSPEで2回洗浄し、未結合の分子を除去すること;
d)さらにビーズを室温の0.1×SSPEで3回洗浄し、非特異的結合を減らすこと;並びに
e)ビーズを45℃のH2O中で10分間インキュベートすることで、結合型プローブをビーズから溶離させること。
【0350】
xGenハイブリダイゼーションキャプチャーをベースとした精製は以下を含むことができる:
a)25μlの組織ライセート(約75~125ng/μlの総DNA)又はモックライセート(200ngのhuDNA±25amolのプローブ)を、200pmolのキャプチャープローブと共に、室温の計35μlの5xSSPE緩衝液中で5分間インキュベートすること;
b)工程(a)から得られた溶液を95℃で30秒間さらにインキュベートすること;
c)工程(b)から得られた溶液を43℃で1時間さらにインキュベートすること;
d)工程(c)から得られた溶液を、1mLの50℃ 5×SSPEで2回洗浄された、ストレプトアビジンコート磁性ビーズ110μl(1.1mg)と混合すること;
e)工程(d)から得られた溶液を10回ピペッティングすること;
f)工程(e)から得られた溶液を38℃で10分間3回インキュベートすることであって、それぞれの10分間のインキュベーション中に、溶液を穏やかにボルテックスしてビーズを再懸濁する;
g)磁石でビーズを回収すること;
h)ビーズを100μlの5×SSPEで2回洗浄することであって、各洗浄では43℃で5分間インキュベートを行う;
i)洗浄後のビーズを100μlの0.1×SSPE中に再懸濁すること;
j)ビーズを1mLの0.1×SSPEで3回さらに洗浄すること;
k)洗浄後のビーズを100μlの0.1×SSPE中に再懸濁すること;
l)磁石でビーズを回収すること;
m)ビーズを25μlのH2O中に再懸濁し、45℃で10分間インキュベートして、結合型プローブをビーズから溶離させること、
n)所望により、各精製後溶離液にキャリアDNAを添加して、チューブ上への非特異的な吸収によるプローブのロスを防ぐこと。
【配列表】
【国際調査報告】