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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】軟組織に挿入するための微小電極
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579720
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 SE2021050679
(87)【国際公開番号】W WO2022005386
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2030220-4
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2030219-6
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508194652
【氏名又は名称】ニューロナノ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショウエンボリ、イェンス
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053BB22
4C053CC10
4C053JJ11
(57)【要約】
本発明は、神経組織のような軟組織への埋め込み又はそれに隣接した配置に有用な、微小電極、微小電極プローブ並びに微小電極及び/又は微小電極プローブのアレイに関する。微小電極は、遠位非絶縁性部分及び近位絶縁性部分を有する導電性要素を備える。導電性要素の一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング内に配置され、このケーシングは、導電性要素の非絶縁性部分を被包する。ケーシングは、少なくとも1つの開口と、導電性要素の電気絶縁性部分が軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織、特に神経組織、内分泌組織、及び筋肉組織に、少なくとも部分的に埋め込まれ、又は少なくとも部分的に隣接して配置されるように構成された微小電極であって、
前記微小電極は、近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素を備え、前記導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング(エンベロープ)内に配置され、
前記導電性要素の前記非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成する前記ケーシングによって被包(包囲)され、前記遠位チャンバ内で、前記導電性要素は、軸方向に摺動することができ、(植え込み後に)前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記軟組織との間に流体電気導電性ブリッジを提供する少なくとも1つの開口を有する前記遠位チャンバの前記ケーシングは、前記遠位チャンバと前記組織との間でイオン交換を可能にし、
前記少なくとも1つの開口は、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用であり、
前記ケーシングは、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分が内部で軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素を含む、微小電極。
【請求項2】
前記第1の構造構成要素は、前記ケーシング(エンベロープ)を前記遠位チャンバと近位区画とに区分する、請求項1に記載の微小電極。
【請求項3】
前記電気絶縁性部分の少なくとも一部は、前記遠位チャンバ内に局在化される、請求項1又は2に記載の微小電極。
【請求項4】
前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記電気絶縁性部分との間に、(軸方向移動を可能にする)内腔/隙間が設けられる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項5】
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と(前記少なくとも1つの開口に隣接する)前記軟組織との間の電気インピーダンスは、前記導電性要素の前記非絶縁性部分と、前記近位区画の近位部を囲む組織又は(近位区画がない場合は)前記第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスより低い、請求項1から4までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項6】
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と(前記少なくとも1つの開口に隣接する)前記軟組織との間の電気インピーダンスは、前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記近位区画の近位部を囲む組織又は前記第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスより、少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも25倍低く、好ましくは少なくとも100倍低い、請求項1から5までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項7】
前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分とは、環状チャネルを形成し、(体液で満たされたときの)前記チャネルにわたる電気インピーダンスは、前記遠位ケーシングの1つ又は複数の前記開口の電気インピーダンスより少なくとも5倍高く、好ましくは少なくとも25倍高く、好ましくは少なくとも100倍高く、前記チャネルは、前記第1の構造要素が前記導電性要素に対して軸方向に摺動することを可能にする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項8】
前記第1の構造構成要素は、軸方向において、少なくとも約5μm~最大約10mm、好ましくは約5μm~最大約3mmの広がりを有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項9】
前記ケーシング及び/若しくは前記第1の構造構成要素の最も内側の材料(複数可)、並びに/又は前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の材料は、(それぞれ)摩擦を低減するように選択される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項10】
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記少なくとも1つの開口との間の垂直距離は、前記導電性要素に対する前記ケーシングの軸方向移動時に略同じままであり、任意選択的には20%未満である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項11】
前記遠位チャンバは、第2の構造構成要素を含み、前記第2の構造構成要素は、前記遠位ケーシングに対する前記導電性要素の前記非絶縁性部分の半径方向移動を低減させるように構成され、また、前記第2の構造構成要素に対する前記非絶縁性導電性要素の軸方向移動を可能にするように構成されている、請求項1から10までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項12】
前記第2の構造構成要素は、前記ケーシングの一体部分である、請求項11に記載の微小電極。
【請求項13】
前記第2の構造構成要素は、前記ケーシングとは別個であり、少なくとも部分的に前記ケーシングに取り付けられ、前記非絶縁性導電性要素に摺動可能に接続又は係合されるように構成されている、請求項11又は12に記載の微小電極。
【請求項14】
前記少なくとも1つの開口は、少なくとも約1μmの面積を有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項15】
前記遠位チャンバは、前記遠位ケーシングに複数の開口を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項16】
前記遠位チャンバの最大開口数は、前記遠位ケーシングの構造的硬さ/コンフォメーションを著しく損なうことのない最大開口数によって与えられる、請求項1から15までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項17】
前記遠位チャンバの個々の開口(又は複数の開口)は、約1μm~最大約150000μm以上の面積を有する、請求項1から16までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項18】
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分は、半径方向及び軸方向に撓むことを容易にする、好適には半径方向に撓むことを容易にするセクションを含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項19】
前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記遠位部分は、球形状のような、遠位方向に狭くなる三次元形状を有する、請求項1から18までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項20】
前記遠位チャンバの近位部分は、下方に狭くなり、好ましくは、前記第1の構造構成要素を形成する環状形態を呈し、その内部で、前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記電気絶縁性部分とは、軸方向に摺動することができる、請求項1から19までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項21】
前記ケーシングと隣接する前記軟組織との摩擦は、前記ケーシング及び/若しくは前記第1の構造構成要素の最も内側の材料並びに/又は前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の材料の摩擦より高い、請求項1から20までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項22】
前記ケーシングの最も外側の材料及び/又は最も外側の表面構造は、前記軟組織に対する摩擦を増加するように選択される、請求項1から21までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項23】
前記ケーシングは、内層及び外層である、材料の2つの層を含み、前記内層の材料は、前記外層の材料とは異なり、又は前記内層の表面構造は、前記外層の表面構造とは異なる、請求項1から22までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項24】
前記遠位チャンバの前記ケーシングは、ニードルのような細長い剛性ピンと可逆的に係合するように構成された係合要素を含み、前記ピンは、前記微小電極を前記軟組織に挿入し、又は前記微小電極を前記軟組織に隣接して配置するように構成されている、請求項1から23までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項25】
前記係合要素は、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記遠位部分に含まれる、請求項24に記載の微小電極。
【請求項26】
前記係合要素は、ループ又は網である、請求項24又は25に記載の微小電極。
【請求項27】
前記係合要素は、体液中で分解可能である、請求項24から26までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項28】
前記係合要素は、マイクロファイバ又はナノファイバによって確立された網である、請求項24から27までのうちのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項29】
前記ケーシングは、前記ケーシングと隣接する前記軟組織との摩擦を増加させる手段を含む、請求項1から28までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項30】
摩擦を増加させる前記手段は、前記ケーシングの最も外側の表面に取り付けられたマイクロファイバ又はナノファイバから選択される、請求項29に記載の微小電極。
【請求項31】
前記第1の構造要素と前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の層との間の隙間/内腔は、前記最も外側の層に対する前記第1の構造要素の移動を促進する組成物、特に、脂質、ヒアルロン酸、(シリコーン・オイル又はシリコーン・グリースのような)シリコーン、及びグルコースのような単糖のポリマー、並びにそれらの組み合わせのうちのいずれか1つを含む組成物を含む、請求項1から30までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項32】
前記ケーシングは、回転対称形状、好適には円筒形状を有する、請求項1から31までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項33】
前記近位区画の直径は、近位方向に広くなる、請求項2から32までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項34】
前記遠位チャンバ及び任意選択的に前記近位区画は、薬学的に活性な物質のような少なくとも1つの生物学的に活性な物質を含む、請求項1から33までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項35】
前記近位区画に対して近位に延びる前記導電性要素は、前記近位及び遠位区画内に配置された前記導電性要素の1つ又は複数の材料とは異なる1つ又は複数の材料からなる、請求項1から34までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項36】
前記導電性要素は、導電性金属及び/又は導電性ポリマーのような導電性非金属材料を含む、請求項1から35までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項37】
前記電気導電性要素は、白金、イリジウム、金、タングステン、ステンレス鋼、かかる材料のアマルガム、導電性ポリマー、並びにグラフェン、グラファイト、及びカーボンナノチューブのような炭素含有材料の群から選択される材料を含み、又は前記材料から構成されている、請求項1から36までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項38】
前記ケーシングの前記電気絶縁材料は、生体適合性、非分解性、可撓性のポリマー材料、特に、ポリウレタン、ポリエチレン、ベンゼンを含む主鎖を有するポリマー(例えば、パリレンC及びパリレンMのようなパリレン)、及びテトラフルオロエチレンの重合に基づいたポリマーから選択される、生体適合性、可撓性のポリマーである、請求項1から37までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項39】
前記導電性要素の周りの前記電気絶縁材料は、請求項38の材料及び追加的に(ガラス又はガラス状のような)電気絶縁可撓性無機材料のうちのいずれか1つから選択される、請求項38に記載の微小電極。
【請求項40】
前記遠位チャンバ、及び任意選択的に前記近位区画は、水性体液中で溶解可能又は分解可能であり、乾燥すると前記微小電極に構造的支持を与える生体適合性材料を含む、請求項1から39までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項41】
マイクロファイバ及び/又はナノファイバが、前記ケーシングの前記最も外側の表面に接着取り付けされている、請求項1から40までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項42】
請求項1から41までのいずれか一項に記載の微小電極を含む微小電極プローブであって、前記遠位チャンバ、及び任意選択的に前記近位区画は、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに構造的支持を与える生体適合性材料を含み、前記生体適合性材料は、水性体液中で溶解可能又は分解可能である、微小電極プローブ。
【請求項43】
前記微小電極又は微小電極プローブは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料の埋め込みマトリックスに埋め込まれている、請求項1から41までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42に記載の微小電極プローブ。
【請求項44】
前記微小電極又は微小電極プローブは、要素ホルダを備え、前記電気導電性材料は、前記要素ホルダを介して(近位方向に)延び、前記ホルダは、前記軟組織とは異なる組織、特に骨組織又は結合組織に固定されるように構成されている、請求項1から41までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42又は43に記載の微小電極プローブ。
【請求項45】
前記電気導電性要素は、生体信号の登録及び軟組織の刺激のための装置と電気的な係合状態にある、請求項1から41まで、43、及び44のいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から44までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ。
【請求項46】
前記生体適合性マトリックス材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1から41まで、及び43から45までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から45までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ。
【請求項47】
前記微小電極及び/又は微小電極プローブは、マイクロファイバ又はナノファイバに接着取り付けされている、請求項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極の第1のアレイ。
【請求項48】
前記マイクロファイバは分解性である、請求項47に記載の第1のアレイ。
【請求項49】
請求項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ、又は請求項46若しくは47に記載の第1のアレイの第2のアレイであって、前記微小電極、微小電極プローブ、又は第1のアレイは、好適には略並列に配置され、前記微小電極、微小電極プローブ、又は第1のアレイは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記アレイに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のアレイ・マトリックスに部分的又は完全に埋め込まれている、第2のアレイ。
【請求項50】
前記生体適合性、溶解性、又は分解性材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ、又は請求項47若しくは48に記載の第1のアレイ、又は請求項49に記載の第2のアレイ。
【請求項51】
アレイ・カバーを含む、請求項49又は50に記載の第2のアレイ。
【請求項52】
前記アレイ・マトリックスは、前記アレイ・カバーの遠位面に延びる、請求項51に記載の第2のアレイ。
【請求項53】
前記微小電極及び/又は微小電極プローブは、前記マトリックスの溶解及び分解後、各微小電極が、任意の他の微小電極に対して特に軸方向に移動することができるように配置されている、請求項49から52までのいずれか一項に記載の第2のアレイ。
【請求項54】
前記アレイ・マトリックスの一部を取り囲む、可撓性の非分解性材料のアレイ・ケーシングをさらに含む、請求項49から53までのいずれか一項に記載の第2のアレイ。
【請求項55】
乾燥すると固形であり、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料の外側アレイ・マトリックスに埋め込まれている、請求項54に記載の第2のアレイ。
【請求項56】
前記外側アレイ・マトリックスはそれぞれ、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される生体適合性材料である、請求項49及び55に記載の第2のアレイ。
【請求項57】
請求項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延び、任意選択的に前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを形成するステップと、
前記遠位マトリックスに対して近位に、また、任意選択的な近位マトリックスに対して遠位に、前記絶縁性要素のセクションに摺動促進組成物を塗布するステップであって、前記摺動促進組成物は、前記導電性要素の前記絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進し、前記媒体が任意選択的に、前記導電性要素の前記絶縁層と電気絶縁非分解性材料の第1の層との間に十分な隙間/内腔を提供する、ステップと、
任意選択的に、前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成するステップと、
前記遠位マトリックスと前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆するステップであって、それにより、遠位チャンバ及び第1の構造要素を形成する、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分を被包するケーシングをもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の第1の層との一部を、前記電気導電性要素の前記遠位非絶縁性部分を含む、前記遠位マトリックスの遠位端(前記遠位チャンバの遠位端)の近くで切断するステップであって、それにより、前記遠位区画の遠位開口をもたらす、ステップと、
さらなる遠位先端マトリックスを前記遠位開口の遠位に塗布するステップと、
前記先端マトリックスと前記第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第2の層で被覆するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの前記ケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、ステップと、
を含み、
前記遠位マトリックス及び任意選択的に近位マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記微小電極又はプローブに構造的支持を与え、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される、方法。
【請求項58】
請求項2から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延び、任意選択的に前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを形成するステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成し、それにより、軸方向の広がりを有する前記絶縁性導電性要素の中間セクションを形成するステップであって、前記遠位マトリックスの近位に、また、前記近位マトリックスの遠位に位置決めされた前記中間セクションは、前記遠位マトリックス及び近位マトリックスによって被覆されない、ステップと、
第1の中間マトリックスの薄(最大約5μm)層及び/又は摺動促進組成物を前記絶縁性要素の前記中間セクションに塗布して、前記導電性要素の前記絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進するステップであって、前記第1の中間マトリックス及び/又は組成物は、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の前記第1の層との間に十分な隙間/内腔(環状チャネル)を提供する、ステップと、
遠位マトリックス、近位マトリックス、並びに前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の前記中間セクションであって、中間マトリックス及び/又は摺動促進組成物を含む前記中間セクションを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆するステップであって、それにより、遠位チャンバ、第1の構造要素、及び近位区画を含むケーシングを提供する、ステップと、
任意選択的に、前記遠位チャンバと近位区画との間での前記第1の層の半径方向における狭窄部において電気絶縁非分解性材料の前記第1の層に第2の中間マトリックスを設けるステップと、
前記電気導電性要素の前記遠位非絶縁性部分と電気絶縁材料の前記第1の層との一部を、前記遠位マトリックスの遠位端(前記遠位チャンバの遠位端)の近くで切断するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの遠位開口をもたらす、ステップと、
さらなる遠位先端マトリックスを前記遠位開口の遠位に塗布するステップと、
前記遠位先端マトリックスと前記第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁材料の第2の層で被覆するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの前記ケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、ステップと、
前記第1の層及び任意選択的に第2の層を前記近位マトリックスの周方向環状ゾーンにおいて除去するステップと
を含み、
前記遠位マトリックス、遠位先端マトリックス、近位マトリックス、並びに任意選択的に第1及び第2の中間マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のものであり、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される、方法。
【請求項59】
請求項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分に対して軸方向移動を可能にするように構成された第1の構造要素を提供するステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の周りに、好適には、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から特定の軸方向距離のところに、前記第1の構造要素を位置決めステップと、
水性体液中で溶解可能又は分解可能である近位マトリックスを、前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の周りに塗布するステップであって、前記近位マトリックスは、近位方向に前記第1の構造要素の近位面から延びる、ステップと、
水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを、遠位方向に前記第1の構造要素の遠位面から延び、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に、好適には、最大数ミリメートル延びる前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに塗布するステップと、
電気絶縁非分解性材料の第1の層を、前記近位及び遠位マトリックスと前記第1の構造要素の周囲とに塗布するステップであって、それにより、遠位チャンバ及び近位区画を含むケーシングを形成する、ステップと、
を含み、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層に貫設される、方法。
【請求項60】
前記近位マトリックスは、近位方向に広くなる、請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織、特に神経組織、内分泌組織、筋肉組織及び結合組織に、少なくとも部分的に埋め込まれるか又は少なくとも部分的に隣接して配置されるように構成された微小電極であって、微小電極は、遠位非絶縁性部分及び近位絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素を備え、導電性要素の非絶縁性部分は、電気絶縁非分解性材料のケーシング(エンベロープ)内に配置され、導電性要素の非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成するケーシングによって被包(包囲)され、遠位チャンバ内で、導電性要素は、非絶縁性導電性要素の遠位先端がケーシングに接触することなく軸方向に摺動(移動)することができる、微小電極に関する。遠位チャンバのケーシングは、少なくとも1つの開口を有し、ケーシングは、導電性要素の電気絶縁性部分が内部で軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素を含む。本発明は、微小電極プローブ、微小電極及び/又は微小電極プローブのアレイ、並びに微小電極/微小電極プローブの製造のための方法をさらに包含する。本発明の様々な態様は好ましくは、神経調節及びセンシングに適用される。
【背景技術】
【0002】
植え込み型微小電極及び微小電極セットは、医学及び獣医学において広範囲の用途を有する。
【0003】
神経組織、内分泌組織又は筋肉組織に植え込まれる微小電極は、単一のインプラントを構成するか又は微小電極の束又はアレイのような複数の微小電極を含むインプラントに関連するかに関係なく、監視及び/又は刺激される組織の外側に配置されるデバイス(複数可)を制御するための接続を必要とする。この接続は一般的に、絶縁性の細い可撓性電気リードによって提供される。リードは、様々な種類及びスチフネスの組織をブリッジし、それにより、呼吸、鼓動、頭及び脊柱の動き、頭蓋骨に対する脳の位置並びに加齢による変化によって引き起こされる、互いに対するその頻発な変位によって影響を及ぼされるようになる。この種の組織の動きは、マイクロファイバ、特に光マイクロファイバのような他の細い可撓性インプラントに同様に影響を及ぼし得る。
【0004】
互いに対する組織の動きを観察することができる状況の一例は、電気リードが、硬膜、くも膜、脳脊髄液、及び軟膜を含む空間を介して頭蓋骨及び脳をブリッジする場合である。他の例は、椎骨及び脊髄、筋肉及び隣接繊維シート、末梢神経(迷走神経等)及び周囲軟組織をブリッジするリードである。互いに対する組織のこれらの動きの結果、植え込まれたリードとその境界領域における組織との間に異なる力(例えば、せん断力)が作用し、これは、持続性局所炎症及び組織損傷を引き起こす危険に晒す。さらに、この種のせん断力は、植え込まれた微小電極の活性な非絶縁性部分(接触)の位置に影響を及ぼし得る。電極接触が不安定である結果、経時的に記録又は刺激される特定のニューロン要素、内分泌要素又は筋肉要素の変動も生じ、これは、そのような信号の長期変化を監視及び分析する場合或いは安定した長期刺激が必要である場合に特に問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0086111号明細書
【特許文献2】米国特許第8182496号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Viney C and Bell F I (Curr Opin Solid State Mater Sci. 8 (2005) 164-169)
【非特許文献2】Tissue Eng Part C Methods 17; (2011) 1121-30
【非特許文献3】Tissue Eng Part A 19;7-8(2012) 849-859
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のさらなる目的は、軟組織、特に神経組織、筋肉組織又は内分泌組織に、少なくとも部分的に埋め込まれる(植え込まれる)か又は少なくとも部分的に隣接して配置されるとともに、標的組織の外側に配置された制御装置と電気的に接続されることができる微小電極であって、微小電極に当接するか、又は、植え込みの組織の外側に配置された電極制御装置と微小電極を電気的に接続するリードに当接する組織の動きによる組織刺激を回避又は少なくとも低減する、微小電極を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、植え込まれた微小電極を電極制御装置と電気的に接続するリードに作用する力によりこの微小電極接触の位置がずれることを防止又は低減することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、植え込まれた微小電極の側方移動の自由度の増加を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、軟組織、特に神経組織、筋肉組織又は内分泌組織に、植え込むか又は少なくとも部分的に隣接して配置される、微小電極プローブ又はかかるプローブのアレイであって、水性体液との接触によって微小電極又は微小電極のアレイに変換することが可能な、微小電極プローブ又はかかるプローブのアレイを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、本発明の微小電極プローブ及び微小電極プローブのアレイの製造方法を提供することである。
【0012】
他の目的は、以下の説明から明らかとなる。本発明の一利点は、要素、特に要素の非絶縁性部分と、隣接する軟組織との接触を、回避又は最小限に抑えることである。微小電極の特定の特徴により、周囲軟組織の、すべての空間方向への動き、特に微小電極の主軸と一致する動きに、微小電極が適応することが可能であり、その一方、導電性要素(非絶縁性及び絶縁性部分を含む)が、周囲軟組織と直接接触することなくケーシング内で移動することができる。
【0013】
軟組織に挿入されると、特定の例におけるケーシングは、ケーシングが周囲軟組織と実質的に十分に適合する程度まで周囲軟組織に取り付けることができる。少し言い換えると、ケーシングは、周囲軟組織のいかなる動きについても特定の範囲で適応及び追従する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の提示
本発明は、植え込まれた微小電極の導電性電極(本明細書において導電性要素とも呼ばれる)と、特に神経組織であるが、内分泌組織、外分泌組織、筋肉組織及び結合組織でもある、隣接する軟組織との、直接接触が、電気絶縁非分解性材料のケーシングで導電性要素を被包することによって回避されることができるという洞察に基づいている。ケーシングは、遠位区画を提供し、導電性要素の電気絶縁性部分が内部で軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素を含む。遠位チャンバのケーシングの開口は、導電性要素の非絶縁性部分と軟組織との間に、遠位チャンバと組織との間でイオン交換を可能にする流体電気導電性ブリッジを提供し、少なくとも1つの開口は、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用である。ケーシングは、導電性要素の非絶縁性部分の遠位先端が遠位チャンバのケーシングに対して接触も貫入もしないものであり得るように導電性要素に関連付けられる。
【0015】
電極が経時的に軟組織の同じ部位を監視及び/又は刺激すること、並びに、導電性要素の非絶縁性遠位部分と開口との間の垂直距離(図24、104)が経時的に略同じままであることを維持しつつ、保護ケーシングからの導電性要素の分離及び周囲軟組織へのケーシングの接着可能性によりケーシングがある(有意な)程度まで周囲組織のいかなる動きについても適応することが可能となる。さらに、保護ケーシングからの導電性要素の分離により、微小電極を囲む軟組織が、微小電極によって供給される信号パターン(フィンガープリント)に著しく影響を及ぼすことなく動くことが可能となる。
【0016】
本発明のなおもさらなる利点は、ケーシングが、軟組織に挿入されると、周囲軟組織に相対するケーシングの移動を最小限に抑えるか又は実質的に妨げさえするやり方で軟組織に接着し得ることである。軟組織が動くと、ケーシングは軟組織とともに移動する。ケーシング内の導電性要素からケーシングを分離することは、周囲軟組織に対するケーシングの移動を最小限に抑えるか又は実質的に妨げる重要な特徴である。
【0017】
導電性要素の非絶縁性部分が軸方向に摺動するときに垂直距離は著しく変化することはないため、保護ケーシングから導電性要素を分離することにより、微小電極を囲む軟組織が開口(複数可)に対して導電性要素の非絶縁性遠位部分の垂直距離(図24、104)に著しく影響を及ぼすことなく/この垂直距離を変えることなく動くことが可能となる。
【0018】
本発明の微小電極は好ましくは、非絶縁性導電性要素の高表面積を提供すると同時に軟組織の空間的に非常に特定の部位の刺激及び監視を行う。この構造は、ケーシングが導電性要素に対して移動することも可能にする。したがって、ケーシングは、軟組織の動きに適応することができ、その一方、非絶縁性導電性要素は常に、上記非絶縁性導電性要素を被包するケーシング内に閉じ込められる。
【0019】
本発明をより深く提示する前に、本発明の理解を容易にするためにいくつかの頻発する用語を以下で説明する。
【0020】
「近位」及び「遠位」という用語は、微小電極に電気的に接続されるとともに標的組織(標的組織は刺激/記録が行われるところである)の外側に位置決めされる任意選択的なデバイスに対して本発明の種々の態様の実体を特定するために使用される。近位の実体又は実体の近位部/部分/セクション/部位は、遠位の実体又は実体の遠位部/部分/セクション/部位よりも、任意選択的な電気デバイスに(接続する微小電極/リードの長さに対して)近い。実体の近位部/部分/セクション/部位から実体の遠位部/部分/セクション/部位への移行部は、非常に特定の部位として理解されるべきではなく、むしろ、近位及び遠位への実体の分割又は近位及び遠位としての実体の指定は、そのような実体を互いに対して位置決めする手段である。例えば、微小電極は、少なくとも近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を有する細長い電気導電性要素を備える。導電性要素の近位部分は、電気デバイスのより近くに局在化される。
【0021】
本発明は特に、微小電極及び微小電極プローブに関する。微小電極プローブは、軟組織に挿入されるように設計された微小電極の一形態を構成する。したがって、微小電極プローブは、様々な軟組織への首尾よい挿入を可能にするほど十分な硬さをプローブに与える特定の構成要素を含む。軟組織に挿入されると、微小電極プローブの特定の構成要素は、体液との接触時に溶解及び/又は分解し、微小電極を徐々にin situ微小電極である微小電極に変換する。
【0022】
本発明のすべての態様に共通するのは、微小電極/微小電極プローブが、軟組織に少なくとも部分的に埋め込まれる若しくは挿入されるか又は軟組織に少なくとも部分的に隣接して配置されることである。軟組織は、その最も広い定義では、骨組織のような硬組織を除いた認識できるあらゆる組織に関する。より詳細には、軟組織は、監視されることができる電気フィンガープリントを提供するあらゆる軟組織及び/又は電気刺激を受けやすいあらゆる組織を包含する。特に興味深い軟組織のサブ・グループは、神経組織、内分泌組織、筋肉組織及び結合組織を構成する。軟組織はまた、心室のような、中空の流体空間を包含する。神経組織は、本発明により検査及び刺激するための特に興味深い軟組織である。
【0023】
本発明(微小電極、プロト微小電極、微小電極、アレイ)のすべての態様に共通なのは、遠位チャンバのケーシングが少なくとも1つの開口を含むことである。開口は、複数の目的を果たす。開口は、周囲軟組織と導電性要素の遠位非絶縁性部分との間での荷電粒子の移動に不可欠である。
【0024】
微小電極は、軟組織に植え込まれるか又は軟組織に隣接して位置決めされ得る。隣接とは、微小電極の少なくとも一部が軟組織によって囲まれていないものと理解されたい。特定の軟組織は好ましくは、軟組織に対して隣接した位置決めによる微小電極によって監視及び/又は刺激され得る。脊髄神経組織は有利には、微小電極を脊髄の神経組織に隣接して位置決めすることによって監視及び/又は刺激され得る。
【0025】
本発明のすべての態様は、細長い電気導電性要素を含む。細長い電気導電性要素は、典型的には回転対称である、約数μm、例えば2μm~最大約100μmの範囲の直径又は太さを有する細い電気導電性フィラメントとして理解されることができる。細長い電気導電性要素(非絶縁性及び絶縁性電気導電性要素を含む)は典型的に、約2mm~最大約1mの長さを有する。微小電極のケーシングは典型的に、約50μm~最大約20mm、好適には約500μm~最大約15mmの軸方向の広がりを有する細長い形態である。細長い電気導電性要素は、いくつかのサブ要素を含み得る。電気導電性要素は、電気的に接続される複数のマイクロ・フィラメント又はナノ・フィラメントから構成され得る。導電性要素は、マルチフィラメント要素、例えば撚られたマルチフィラメントとして設計され得る。マルチフィラメント電極要素は通常、同じ直径の単一のフィラメント要素の表面積よりも大きい表面積を有し、したがって、より低いインピーダンスを有する。
【0026】
概して、本発明において、また、その最も一般的な解釈において意図される「可撓性」という用語は、そのような性質を本発明の微小電極及びすべての他の態様に与えて、微小電極のケーシングが周囲軟組織の動きに少なくとも部分的に適応することを可能にするものと解釈されるべきである。
【0027】
ケーシングのうち近位区画を形成する部分は、近位ケーシング又は近位区画のケーシングと示されることもあり、ケーシングのうち遠位チャンバを形成する部分は、遠位ケーシング又は遠位チャンバのケーシングと示されることもある。
【0028】
本明細書において使用される場合の微小電極という用語は、少なくとも、導電性要素と、第1の構造構成要素及び(導電性要素の非絶縁性部分を被包する遠位チャンバのケーシングの部分における)少なくとも1つの開口を含むような態様/実施例のうちのいずれかにおいて説明されるケーシングとを含む。
【0029】
いくつかの実施例では、導電性要素は、ケーシングを遠位チャンバ及び近位区画に区分する第1の構造構成要素を含むケーシング内に配置される。チャンバという用語及び区画という用語は、部分的には明確さを加えるために選択された。さらに、チャンバ及び区画はある程度まで種々の目的を果たし、より重要なことには、遠位チャンバは本質的に、導電性要素の非絶縁性部分を取り囲み、その一方、導電性要素の絶縁性部分は、主として又は少なくとも部分的に近位区画内に配置される。
【0030】
発明の開示
本発明は、微小電極、微小電極プローブ、微小電極及び/又は微小電極プローブの種々のアレイ、並びに、微小電極、微小電極プローブ及びアレイの製造のための方法に関する。
【0031】
より具体的には、本発明は、軟組織、特に神経組織、内分泌組織及び筋肉組織に、少なくとも部分的に埋め込まれるか又は少なくとも部分的に隣接して配置されるように構成された微小電極であって、微小電極は、近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素を備え、導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング(エンベロープ)内に配置され、導電性要素の非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成するケーシングによって被包(包囲)され、遠位チャンバ内で、導電性要素は、軸方向に摺動することができ、遠位チャンバのケーシングは、(植え込み後に)導電性要素の非絶縁性部分と軟組織との間に流体電気導電性ブリッジを提供する少なくとも1つの開口を有することで、遠位チャンバと組織との間でイオン交換を可能にし、少なくとも1つの開口は、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用であり、ケーシングは、導電性要素の電気絶縁性部分が内部で軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素を含む、微小電極に関する。
【0032】
一態様によれば、少なくとも1つの開口は、遠位チャンバのケーシングに対して側方に位置決めされ、好ましくは、導電性要素の軸方向移動時に導電性要素の非絶縁性部分と開口(又は複数の開口)との間の垂直距離が20%を超えて、好適には15%を超えて、好ましくは10%を超えて変化しないように、側方に位置決めされる。
【0033】
導電性要素の非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成する、電気絶縁非分解性材料のケーシング内に配置され、ケーシングは第1の構造構成要素を含む。第1の構造構成要素は、ケーシングが導電性要素に対して軸方向に変位されることを可能にする。第1の構造構成要素が導電性要素の絶縁性部分に対して軸方向に摺動するために、導電性要素の絶縁性部分と第1の構造構成要素との間に隙間/内腔があるものとする。第1の構造構成要素と導電性要素の絶縁性部分との関係は好ましくは、導電性要素の非絶縁性部分と(少なくとも1つの開口に隣接した)軟組織との間の電気インピーダンスが、導電性要素の非絶縁性部分と近位区画の近位部を囲む組織又は近位区画がない場合は第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスよりも低くなるように構成されるものとする。
【0034】
本発明はまた、軟組織、特に神経組織、内分泌組織及び筋肉組織に、少なくとも部分的に埋め込まれるか又は少なくとも部分的に隣接して配置されるように構成された微小電極であって、微小電極は、近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素を備え、導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング(エンベロープ)内に配置され、ケーシングは、ケーシング(エンベロープ)を遠位チャンバ及び近位区画に区分する第1の構造構成要素を含み、導電性要素の非絶縁性部分は、それにより遠位チャンバを形成するケーシング(エンベロープ)によって被包(包囲)され、遠位チャンバのケーシングは、少なくとも1つの開口を含み、第1の構造構成要素は、導電性要素の電気絶縁性部分に対して軸方向に摺動するように構成される、微小電極に関する。
【0035】
導電性要素の絶縁性部分と第1の構造構成要素との間の内腔を通る荷電粒子の制限は、例えば、ケーシングの遠位チャンバ及び近位区画が、組成が異なる水性体液を含む種々の組織内に配置される場合、及び、それら組織間での水性体液の交換が最小限に抑えられるべきである場合に望ましい。これは、例えば、絶縁部のない遠位要素部分付近において神経組織との脳脊髄液の連通を回避する場合に重要である。
【0036】
ケーシングが周囲軟組織のいかなる動きにも追従(適合)することを可能にされる場合、遠位チャンバのケーシングの開口(又は複数の開口)は本質的に、経時的に常に軟組織における略同じ空間部位に位置付けられる。したがって、本発明の微小電極は経時的に常に、軟組織の略全く同じ部位を監視又は刺激する。この特性は概して、いかなる軟組織にとっても重要であり、脳に関連付けられる神経組織のような神経組織にとって特に関連性がある。微小電極の設計は、具体的には、軟組織の略同じ空間部位が、経時的に、また、軟組織が変位する場合であっても、監視及び/又は刺激されるという点で、従来の設計に対して著しく向上している。
【0037】
遠位チャンバのケーシングに含まれる開口は、導電性要素の非絶縁性部分と開口に隣接した軟組織との間での荷電粒子、特にイオンの交換を提供する開口である。したがって、開口は、導電性要素の非絶縁性部分と軟組織との間に流体電気導電性ブリッジを提供することで、遠位チャンバと組織との間でイオン交換を可能にし、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用である。ニューロンのような電気的興奮性細胞は、神経組織、内分泌組織、筋肉組織及び結合組織を含む、電気刺激を受けやすいいかなる組織にも見られる。
【0038】
ケーシングは少なくとも、ケーシング、すなわち、遠位チャンバを画定するケーシングが、導電性要素に対して、具体的には導電性要素の絶縁性部分に対して、軸方向に摺動することを可能にする、第1の構造構成要素を含む。この第1の構造構成要素は任意選択的に、ケーシングの一体部であってもよいが、ケーシングとは別個の要素によって提供されることもできる。微小電極が遠位チャンバしか含まない場合、ケーシングの第1の構造要素は好適には、遠位チャンバのケーシングの近位部分を構成し、この近位部分は、導電性要素の近位電気絶縁性部分との摺動可能な接続を提供すると同時に導電性要素の近位電気絶縁性部分と遠位チャンバのケーシングの近位部分との間のいかなる隙間も通る荷電粒子の交換を最小限に抑える構成に下方へ狭くなる。
【0039】
一実施例では、ケーシングは、ケーシング(エンベロープ)を遠位チャンバ及び近位区画に区分する第1の構造構成要素を含む。遠位チャンバは、少なくとも1つの開口を除き、導電性要素の遠位非絶縁性部分を被包する。
【0040】
被包及び遠位チャンバとは、導電性要素の遠位非絶縁性部分が本質的に、遠位チャンバのケーシングの1つ又は複数の開口を除き、ケーシングによって周囲組織から電気的に隔離されるものと理解されるべきである。多くの場合、導電性要素の絶縁性部分と第1の構造構成要素との間の内腔/隙間/環状チャネルにわたっていくらかの漏れ電流が存在する。
【0041】
製造方法に応じて、第1の構造要素は、ケーシングの一体部であってもよく、代替的に、第1の構造要素は、任意選択的にケーシングの材料とは異なる材料の、ケーシングとは別個の要素である(図23)。
【0042】
ケーシングは、遠位チャンバしか形成しないか又は遠位チャンバ及び近位区画を形成するかにかかわらず、導電性要素に対して特に軸方向に移動することができることが重要である。本発明の一態様では、ケーシングは、導電性要素の遠位非絶縁性部分を被包する。ケーシングは、導電性要素に対して軸方向に移動することができる必要があるため、導電性要素の近位電気絶縁性部分と摺動可能に接続又は係合されるものとする。ケーシングのうち、導電性要素の近位電気絶縁性部分と摺動可能に接続又は係合される部分は、第1の構造構成要素と呼ばれる。
【0043】
「~と摺動可能に接続又は係合される」とは、遠位チャンバと近位区画又は(微小電極に近位区画がない場合は)第1の構造構成要素に対して近位との間のような、遠位チャンバと周囲軟組織との間での、荷電粒子(電子及びイオン等)の移動を実質的に妨げるか又は少なくとも低減しつつも、軸方向移動を可能にする、接続又は係合と理解されたい。言い換えると、導電性要素の近位電気絶縁性部分へのケーシングの取り付けは、同時に軸方向移動を可能にしつつその取り付けの距離にわたって、遠位チャンバと近位区画(又はケーシングが導電性要素の遠位非絶縁性部分のみを被包するのであれば周囲軟組織)との間において、導電性要素の非絶縁性部分と遠位チャンバのケーシングの場合に少なくとも1つの開口に隣接した組織との間よりも高いインピーダンスを与えねばならない。
【0044】
一態様によれば、第1の構造構成要素と導電性要素の近位電気絶縁性部分との間の隙間/内腔/環状チャネルは、荷電粒子の移動を最小限に抑えつつ(したがって、第1の構造構成要素にわたって高いインピーダンスを与えつつ)、組織液中で経時的に略安定しているとともにケーシングの軸方向移動を促進する組成物を含み得る。一態様によれば、荷電粒子の移動を最小限に抑えつつ、組織液中で経時的に略安定しているとともにケーシングの軸方向移動を促進する組成物は、最も外側の層に対して第1の構造要素の移動を促進する組成物、特に、脂質、ヒアルロン酸、シリコーン(シリコーン・オイル又はシリコーン・グリース等)及びグルコースのような単糖のポリマー並びにそれらの組み合わせのうちのいずれか1つを含む組成物であり得る。
【0045】
微小電極、微小電極プローブ及びアレイのような、いくつかの実施例は、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料を含む。乾燥した場合の硬さという用語は、荷重(半径方向荷重又は軸方向荷重)下で材料を曲がらせるのではなく砕けさせる乾燥状態として解釈されたい。
【0046】
有用な生体適合性材料は、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能である。マトリックスとも呼ばれる生体適合性材料は好適には、タンパク質ベース(タンパク質性)の材料、炭水化物ベースの材料、及び様々な分子量のポリエチレングリコールから選択される。好適なタンパク質ベースのマトリックス材料は、典型的にはコラーゲン由来のゼラチンである。好適な炭水化物ベースのマトリックス材料は、グルコースである。生体適合性マトリックス材料は、ゼラチン、グルコース及びポリエチレングリコールから選択され得る。
【0047】
すべての実施例によれば、導電性要素の絶縁性部分を囲む絶縁体は、体液中で非分解性である。絶縁材料は、ケーシングの任意の材料から選択され得る。
【0048】
第1の構造要素がケーシングとは別個である場合、ケーシングへの第1の構造要素の取り付けは荷電粒子の移動を妨げることが重要である。第1の構造要素の材料はまた、電気的に絶縁していなければならない。
【0049】
一態様によれば、第1の構造構成要素は軸方向において、少なくとも約5μm~最大約10mm、好ましくは、約5μm~最大約3mmの広がりを有する。
【0050】
一態様によれば、電気絶縁性部分の少なくとも一部は、遠位チャンバ内に局在化される。
【0051】
さらなる態様によれば、第1の構造構成要素と導電性要素の電気絶縁性部分との間に、内腔/隙間(軸方向移動を可能にする)が設けられる。
【0052】
内腔/隙間は、第1の構造構成要素と導電性要素の電気絶縁性部分との間に形成される環状チャネルとしても意図され得る。
【0053】
第1の構造構成要素と電気絶縁性要素との間の内腔/隙間/環状チャネルが遠位ケーシングに対する導電性要素の半径方向移動を制限すること、及び、この内腔/隙間のインピーダンスが遠位ケーシングの開口(複数可)にわたるインピーダンスよりも高いことが好ましい。
【0054】
さらなる態様によれば、遠位チャンバの近位部分は、下方へ狭くなり、第1の構造構成要素を形成する環状構造を呈し、第1の構造構成要素と導電性要素の電気絶縁性部分とが内部で軸方向に摺動することができる。
【0055】
ケーシング全体が導電性要素に対して典型的には軸方向に移動することができることが重要である。
【0056】
一態様によれば、ケーシング及び/又は第1の構造構成要素の最も内側の材料(複数可)、及び/又は導電性要素の近位電気絶縁性部分の最も外側の材料は(それぞれ)、摩擦を低減するように選択される。
【0057】
第1の構造構成要素は、ケーシングが絶縁性導電性要素に対して軸方向に移動することを可能にする、ケーシング又は非ケーシング構成要素の任意の形状であってもよく、導電性要素の非絶縁性部分と遠位ケーシングの開口(複数可)との間のインピーダンスに対して、遠位チャンバのケーシングの少なくとも1つの開口に隣接した電気的興奮性細胞(ニューロン)の有用な記録及び刺激をもたらすインピーダンスを、第1の構造構成要素にわたって与える。
【0058】
一態様によれば、導電性要素の非絶縁性部分と(少なくとも1つの開口に隣接した)軟組織との間の電気インピーダンスは、導電性要素の非絶縁性部分と近位区画の近位部を囲む組織又は(近位区画がない場合は)第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスよりも低い。
【0059】
さらなる態様によれば、導電性要素の非絶縁性部分と(少なくとも1つの開口に隣接した)軟組織との間の電気インピーダンスは、導電性要素の非絶縁性部分と近位区画の近位部を囲む組織又は第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスよりも少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも25倍低く、好ましくは少なくとも100倍低い。
【0060】
なおもさらなる態様によれば、第1の構造構成要素と導電性要素の近位電気絶縁性部分とは、環状チャネルを形成し、(体液で満たされたときの)チャネルにわたる電気インピーダンスは、遠位ケーシングの1つ又は複数の開口の電気インピーダンスよりも少なくとも5倍高く、好ましくは少なくとも25倍高く、好ましくは少なくとも100倍高く、チャネルは、第1の構造要素が導電性要素に対して軸方向に摺動することを可能にする。
【0061】
導電性要素の非絶縁性部分の軸方向移動が遠位ケーシング内での半径方向位置決めに著しい影響を及ぼさないことが好ましい。好ましくは、導電性要素の非絶縁性部分と遠位チャンバのケーシングの少なくとも1つの開口との間の垂直距離(図24、104)は、導電性要素に対するケーシングの軸方向移動時に略同じままであり、任意選択的には20%未満である。
【0062】
導電性要素の非絶縁性部分の距離の変化は必然的に、(開口に隣接した)監視される組織までの距離の変化をもたらし、この変化は、記録された信号のフィンガープリントに影響を有する。距離の変化は、特有の細胞からの信号を区別する能力を妨げる、記録された信号の振幅変化を引き起こす可能性がある。
【0063】
一態様によれば、遠位チャンバは、遠位ケーシングに対する導電性要素の非絶縁性部分の半径方向移動を低減させるように構成された第2の構造構成要素であって、第2の構造構成要素に対する非絶縁性導電性要素の軸方向移動を可能にするようにも構成されている、第2の構造構成要素を含む。この第2の構造構成要素は、ケーシングの一部を形成し得、したがって、ケーシングの一体部である。しかしながら、第2の構造構成要素は、ケーシングとは別個であってもよい。例えば、第2の構造構成要素は、ケーシングに取り付けられるとともに、導電性要素の非絶縁性部分が軸方向に移動することを可能にする中央チャネルを含む、テフロン(登録商標)であってもよい。
【0064】
一態様によれば、第2の構造構成要素の材料は、ケーシングの材料とは別個であり、少なくとも部分的にケーシングに取り付けられるとともに非絶縁性導電性要素に摺動可能に接続又は係合されるように構成される。
【0065】
遠位チャンバのケーシングは、(植え込み後に)導電性要素の非絶縁性部分と軟組織との間に流体電気導電性ブリッジを提供する少なくとも1つの開口を有することで、遠位チャンバと組織との間でイオン交換を可能にせねばならず、少なくとも1つの開口は、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用である。
【0066】
一態様によれば、少なくとも1つの開口は、少なくとも約1μmの面積を有する。好ましくは、遠位チャンバのケーシングの個々の開口は、約1μm~最大約150000μm以上の面積を有する。
【0067】
さらに、開口は好ましくは、組織による1つ又は複数の開口の閉塞を妨げる特性を有するものとする。グリア細胞が小さな開口を覆い、次いで、ある程度まで遠位チャンバの内部を周囲ニューロンから隔離することができることが観察されている。開口の面積の好ましい範囲は、約20μm~最大約2000μm、好適には、約100~約1500μmである。
【0068】
さらなる態様によれば、遠位チャンバのケーシングは、遠位ケーシングに複数の開口を含む。
【0069】
なおもさらなる態様によれば、遠位チャンバの最大開口数は、遠位ケーシングの構造的硬さ/コンフォメーションを著しく損なうことのない最大開口数によって与えられる。
【0070】
導電性要素の近位絶縁性部分は、軸方向及び半径方向に撓むことを容易にするセグメントを含み得る。
【0071】
一態様によれば、遠位チャンバのケーシングの遠位部分は、遠位方向に狭くなる三次元形状を有する。そのような三次元形状は、球状、放物面状(楕円放物面状)、又は円錐状であり得る。
【0072】
ケーシングは軟組織の動きに適応し、その一方、導電性要素はケーシングに対して移動することができることが好ましい。
【0073】
一態様によれば、ケーシングは、ケーシングと隣接する軟組織との摩擦を増加させる手段を含む。好ましくは、摩擦を増加させる手段は、ケーシングの最も外側の表面に取り付けられるマイクロファイバ又はナノファイバから選択される。
【0074】
したがって、一態様によれば、ケーシングと隣接する軟組織との摩擦は、ケーシング及び/又は第1の構造構成要素の最も内側の材料と導電性要素の近位電気絶縁性部分の最も外側の材料との摩擦よりも高い。
【0075】
さらなる態様は、ケーシングの最も外側の材料及び/又は最も外側の表面構造が軟組織に対する摩擦を増加するように選択されることである。
【0076】
なおもさらなる態様によれば、ケーシングは、材料の2つの層、すなわち内層及び外層を含み、内層の材料は、外層の材料とは異なり、又は、内層の表面構造は、外層の表面構造とは異なる。
【0077】
微小電極は、ニードルのような細長い剛性ピンと可逆的に係合するように構成された係合要素を含み得、剛性ピンは、微小電極を軟組織に挿入するか又は微小電極を軟組織に隣接して配置するように構成されている。係合要素は好適には、微小電極の遠位先端に位置決めされるが、遠位ケーシングに沿って位置決めされることもできる。したがって、係合要素は、遠位ケーシングの遠位先端を含む、遠位ケーシングの遠位部分のような、ケーシングの遠位部分に位置決めされ得る。微小電極が係合要素を含む場合、微小電極は、係合要素と可逆的に係合する剛性ピンを介して軟組織に挿入されるか又は軟組織に隣接して位置決めされ得、(ニードルのような)剛性ピンは、例えば特許文献1によって開示されているように、軟組織へ微小電極を挿入する装置の一部を形成する。微小電極が剛性ピン(微小電極の係合要素と可逆的に係合する)の使用によって挿入されると、微小電極はそれ自体、固有の硬さを呈する必要がない。したがって、係合要素を備える微小電極を用いれば、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料のような、微小電極に硬さを与える任意の材料が、少なくとも部分的に省かれ得る。
【0078】
係合要素は、ループを構成してもよく、又は網を含んでもよい。一態様によれば、係合要素はまた、非分解性又は分解性のマイクロファイバ又はナノファイバを構成してもよく、マイクロファイバ又はナノファイバは、微小電極に接着取り付けされ、典型的にはケーシング、特に、遠位ケーシングのような、ケーシングの遠位セクションに取り付けられる。マイクロファイバは、本明細書において開示されるマイクロファイバ又はナノファイバのいずれかであり得る。
【0079】
一実施例によれば、微小電極は、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブ/微小電極に十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料を含む。微小電極に構造的硬さを与える材料は典型的に、遠位チャンバに見られ、任意選択的に、近位区画又は導電性要素の絶縁性部分の少なくとも一部の周りにも存在する。
【0080】
微小電極はまた、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な材料内に配置され得る。ケーシング及び遠位チャンバ及び任意選択的に近位区画を含む微小電極であって、遠位チャンバ及び任意選択的な近位区画は、十分な硬さを与える生体適合性材料を含まないが、微小電極は、十分な硬さを与える生体適合性材料内に配置される、微小電極が意図され得る。
【0081】
なおもさらなる態様によれば、ケーシングは、回転対称形状、好適には円筒形状を有する。好ましくは、遠位チャンバのケーシングと近位区画のケーシングの少なくとも一部(典型的には近位区画の遠位部分)との半径方向の広がりは、同様又は略同じである。好適には、遠位チャンバと近位区画の少なくとも一部とにわたる半径方向の広がりは、20%を超えては異ならず、典型的には10%を超えては異ならない。
【0082】
なおもさらなる態様によれば、近位区画の直径は近位方向に広くなる。
【0083】
硬さを増加させる生体適合性材料を含む微小電極は、本明細書において微小電極プローブとも呼ばれる。
【0084】
本発明のさらなる態様は、微小電極及び/又は微小電極プローブの、第1のアレイ及び第2のアレイのようなアレイに関する。アレイは、その最も広い定義では、少なくとも2つの微小電極/微小電極プローブを特徴とし、アレイ構造体が、挿入時の配置を実質的に変えることなく、軟組織に植え込まれるか又は軟組織に隣接して位置決めすることが可能であり、さらには第1のアレイの複数の微小電極/プローブが、設定された空間的コンフォメーションで配置される。アレイは典型的に、微小電極及び/又は微小電極プローブ、又は第1のアレイをアレイ・マトリックスに埋め込むことによって提供される。アレイは、様々な三次元形状で配置される複数の個々の微小電極及び/又は微小電極プローブ又は第1のアレイを構成し得る。
【0085】
マイクロファイバ又はナノファイバに接着取り付けされる、微小電極/プローブのアレイは、第1のアレイとして示される。
【0086】
第2のアレイは、アレイ・マトリックスに埋め込まれる少なくとも2つの微小電極/プローブ又は第1のアレイのアセンブリを示す。したがって、第2のアレイは、第1のアレイも含み得る。
【0087】
個々の微小電極/プローブは、第1のアレイ及び第2のアレイの任意の考えられる空間的構成で配置され得る。構成は、種々の空間的構成のうち同じ空間的構成を有する複数の個々の微小電極を各セクションが含む、軸方向セクションを取り囲み得る。
【0088】
アレイ(第1のアレイ及び第2のアレイ)の一実施例によれば、微小電極は実質的に並列して配置される。
【0089】
アレイが、3つ以上のような複数の微小電極を含む場合、1つの微小電極の軸は、微小電極をアレイの軸の周りに半径方向に位置決めされた状態にしたままアレイの主軸と略一致することが好ましい。さらに、微小電極の遠位端は、実質的に微小電極の軸に対して垂直な平面内に配置され得る(図20)。
【0090】
アレイは、微小電極/プローブを互いと関連付ける構成を有し得る。1つのタイプの関係は、微小電極の移動を互いに対して制限する。第1のアレイのマイクロファイバ又はナノファイバとの微小電極の接着取り付けは、微小電極の移動を互いに制限する手段である。微小電極を関連付けるように構成されたアレイは、微小電極の束とも呼ばれ得る。例えば、微小電極のケーシングのような微小電極は、互いに接着取り付けされ得る。代替的に、アレイの微小電極は、軟組織に挿入されると独立的に移動するように配置される。この変形例では、微小電極は、アレイ・マトリックスによってのみ空間的に位置決めされる。
【0091】
一実施例によれば、アレイは、アレイ・カバーを含む。アレイ・マトリックスは、アレイ・カバーの遠位面に延びるように構成され得る。
【0092】
さらなる実施例によれば、アレイ・マトリックスは、本明細書において提示された電気絶縁材料のうちのいずれかのアレイ・ケーシングによって一部が覆われてもよい。
【0093】
なおもさらなる実施例によれば、アレイは、さらなる外側アレイ・マトリックスを含み得る。
【0094】
さらに、本発明はまた、マイクロファイバに接着取り付けされる微小電極のアレイを包含する。好適には、マイクロファイバは、アレイが軟組織に隣接して位置決めされるか又は軟組織に埋め込まれる場合、経時的に、アレイのマイクロファイバの互いの空間的位置決めを実質的に維持することが可能である。
【0095】
本発明のさらなる態様は、微小電極プローブに関する。微小電極プローブは、軟組織への挿入によってプローブの首尾よい植え込みを可能にする特徴を含む。したがって、微小電極プローブは、微小電極に関して、軟組織に挿入されるのに十分な硬さをプローブに与える構成要素を含む。代替的に、微小電極は、微小電極の材料の硬さ、典型的にはケーシングの硬さを変えることによって、プローブに変換され得、例えば材料の温度を一時的に変えることによって、軟組織への微小電極の挿入を可能にする。
【0096】
また、導電性要素の遠位非絶縁性部分は、遠位チャンバに全体的に局在化され、少なくとも1つの開口を除き、ケーシングによって全体的に被包される。
【0097】
一実施例によれば、遠位チャンバの遠位セクションは、遠位方向に狭くなる。好ましくは、遠位チャンバの遠位セクションは、ケーシングと同じ材料を有する。遠位チャンバの遠位セクションは、遠位方向への導電性要素の摺動移動を提供する。
【0098】
少なくとも近位電気絶縁性部分及び非絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素は、電気絶縁材料のケーシング内に少なくとも一部が配置される。本発明のすべての態様の重要な特徴は、電気絶縁非分解性材料のケーシングによる導電性要素の遠位非絶縁性部分の被包であり、したがって、遠位チャンバを形成することである。一実施例によれば、ケーシングは、ケーシング(エンベロープ)を遠位及び近位区画に区分する第1の構造要素を含み、遠位チャンバは、ケーシングの開口を除き、導電性要素の遠位非絶縁性部分を被包する。ケーシングは、いくつかの目的を果たす。ケーシングは、ケーシングが導電性要素に対して軸方向に移動することを可能にするように構成される。さらに、ケーシングは、第1の構造要素を介してケーシングを近位及び遠位チャンバに区分/分割するように構成される。第1の構造要素は、ケーシングの一体部を構成し得る。代替的に、第1の構造要素は、ケーシングに対して隔てられた実体を構成し得る。前者では、第1の構造要素は、ケーシングと同じ材料を共有する。後者では、第1の構造要素は、ケーシングとは異なる材料を有し得る。微小電極は、ケーシングと導電性要素との、特に導電性要素の遠位非絶縁性部分との物理的な接触が最小限に抑えられるように構成されることが好ましい。ケーシングに対する導電性要素の明らかな側方移動は、第1の構造要素の管状構造からの距離に応じて決まる傾向がある。したがって、非絶縁性要素の遠位先端は、ケーシングに対して、導電性要素のうち、管状構造により近い部分よりも、顕著な側方移動を有する傾向がある。
【0099】
原則として、ケーシングは、導電性要素がケーシング内に配置されることができる限り、いかなる形態も有することができる。ケーシングは、導電性要素がケーシングに接触することを回避しようとする取り組みにおいて回転対称であることが好都合であろう。一実施例によれば、ケーシングは、典型的に導電性要素の主軸と通常一致する中心軸に対して回転対称である。ケーシングの三次元形態は、ケーシングの硬さに影響を有し得る。したがって、ケーシングの硬さは、ケーシング材料の選択だけでなくケーシングの三次元形態の選択を通じて調節されることができる。ケーシングの1つの好ましい三次元形態は、円筒形態である。好ましくは、導電性要素は円筒形状のケーシング内に配置され、このケーシングでは、導電性要素は、円筒状に形成されたケーシングの主軸と実質的に一致する。
【0100】
上記に示唆したように、ケーシングは、一般的には導電性要素、特に、遠位チャンバ内に存在する、導電性要素の遠位非絶縁性部分を、周囲軟組織に著しく妨げさせないための主要なファシリテータである。ケーシングは、導電性要素(導電性要素の最も外側の層)と第1の構造構成要素との間の内腔/隙間を介して、近位区画と遠位チャンバとの間に荷電粒子が通ることを可能にする管状構造の形態を有し得る、第1の構造構成要素に取り付けられ得る。第1の構造構成要素がケーシングとは別個の実体である場合、管状構造は、ケーシングに当接及び/又は接着せねばならない。第1の構造構成要素は好適には、導電性要素、特に、導電性要素の電気絶縁性部分と、管状構造との間に、内腔/隙間を提供するように構成された細長い管のような構成体を含む。内腔/隙間の容積は、導電性要素に対する第1の構造構成要素の移動、特に、管状構造の軸方向移動を可能にするものとする。
【0101】
一実施例によれば、隙間/内腔(導電性要素の近位電気絶縁性部分と第1の構造要素との間の空間によって画定される)は、以下の判定基準、すなわち、a)第1の構造要素(例えば、管状構造)が導電性要素に対して移動することを可能にすること、b)管状構造が導電性要素に対して移動することを可能にすると同時にケーシングを導電性要素の軸に対してセンタリングすること、c)一方で近位区画と遠位チャンバとの間に現れる電気インピーダンスと、他方で導電性要素の遠位非絶縁性部分と(周囲)軟組織との間に現れる電気インピーダンスとに関して差をもたらすこと、のうちの少なくとも1つを満たす、軸方向における広がりを有する。
【0102】
近位区画と遠位チャンバとの間に現れる電気インピーダンスは、ある程度まで、軸方向における隙間/内腔の広がりと、第1の構造要素(管状構造)と導電性要素との間の隙間/内腔の容積とに応じて決まる。第1の構造要素の所与の広がりにおいて、隙間/内腔の容積が低減することにより、近位区画と遠位チャンバとの間の電気インピーダンスが増加する。
【0103】
隙間/内腔の軸方向の広がりが大きいほど、導電性要素(及び暗示的に微小電極)の軸に対して垂直な平面内における隙間/内腔の所与の面積においてインピーダンスは高くなる。隙間/内腔の軸方向の広がりの増加はまた、導電性要素と管状構造との摩擦を増加させる傾向がある。隙間/内腔の軸方向の広がりは、管状構造が導電性要素に対して摺動することを可能にしつつ十分に高い電気インピーダンスを与える判定基準を満たさねばならない。
【0104】
一実施例によれば、ケーシングと周囲軟組織との摩擦は、導電性要素とケーシング(第1の構造要素を含む)との摩擦よりも高く、好ましくは著しく高い。摩擦の差は、少なくとも、データの有用なパターンが微小電極から抽出されることができるようなものである。具体的には、摩擦の差は、少なくとも、データの有用なパターンが経時的に軟組織の同じ部位から抽出されることができるようなものである。
【0105】
一実施例によれば、ケーシング(又は第1の構造要素)は、導電性要素の遠位非絶縁性部分と軟組織との間におけるよりも(近位区画と遠位チャンバとの間において)高い電気インピーダンスを与えるように構成される。より具体的には、管状構造によって与えられる電気インピーダンスは、導電性要素の遠位非絶縁性部分と軟組織との間のインピーダンスよりも、好適には少なくとも約5倍高く、好ましくは少なくとも約25倍高く、好ましくは少なくとも約1000倍高い。
【0106】
概して、遠位チャンバを画定する遠位ケーシングの軸方向の広がり、特に非絶縁性導電性要素に遠位の隙間、及び第1の構造要素の軸方向の広がりは、近位接続部に対しての、遠位ケーシングの開口に当接する、典型的には頭蓋骨又は椎骨に局在化された軟組織の通常生じる変位に、部分的に関連付けられる。したがって、ケーシング(又は管状構造)の隙間/内腔の広がりは、それぞれの組織の空間的な動きに依存する。軸方向における隙間/内腔の広がりは、少なくとも約300μm~最大約20mmの広い範囲に及び得る。とりわけ、広がりは、より大きい動物用に比してより小さい動物用にははるかに小さく、また近位接続部を囲む組織に比してあまり動かない軟組織にはより小さいものとすることもできる。
【0107】
ケーシングの材料、及び、導電性要素を囲む最も外側の材料は、軸方向において導電性要素に対する管状構造の移動を促進する目的で選択され得る。
【0108】
ケーシングの材料は、電気絶縁及び非分解性であることが重要である。微小電極が適正に機能するために、ケーシングは、軟組織に位置決めされると、経時的に、すなわち、微小電極の耐用年数にわたって、分解又は溶解されないことが重要である。
【0109】
摺動する第1の構造構成要素の場所における導電性要素を囲む最も外側の材料は、それ自体電気絶縁を構成し得る。さらに、第1の構造構成要素の内面と導電性要素を囲む最も外側の材料との間の隙間/内腔は、導電性要素に対して管状構造体の軸方向移動を促進する組成物(媒体)を含み得る。かかる組成物は、脂質、シリコーン、並びに、ヒアルロン酸及び二糖のポリマーを含む組成物、又は、滑液の特性を擬態する組成物から選択され得る。
【0110】
一実施例によれば、遠位チャンバの遠位端は、遠位エンドキャップとして設けられる。キャップは典型的には、周囲軟組織との相互作用から非絶縁性の遠位先端を保護する形状を有する。さらに、遠位チャンバの遠位端はまた、導電性要素がキャップに貫入することなく軸方向に移動することを可能にする形状及び長さを有するものとする。遠位チャンバの遠位端は好適には、遠位方向に狭くなる形状を有する。遠位チャンバの遠位端は、先の尖った(鋭利な/鋭い)形状をしているか又はドーム状をしていてもよい。遠位チャンバの遠位端は、球形状を有してもよい。
【0111】
微小電極のさらなる実施例は、導電性要素の遠位非絶縁性部分の側方(半径方向)移動を最小限に抑えるように構成された第2の構造構成要素を含む。第2の構造構成要素はまた、導電性要素が軸方向に移動することを可能にするものとする。いくつかの二次的構造構成要素が、導電性要素を中心に位置決めするために遠位チャンバ内に位置決めされ得る。第2の構造構成要素は、ケーシングと一体化されるとともにケーシングの内面に接着され得るか、又は、任意選択的に、ケーシングと同じ材料から作製され得る。代替的に、第2の構造構成要素は、ケーシングとは別個であり、好ましくはケーシング材料以外の材料から作製され得る。ケーシングに対する、特に、開口(複数可)に対する、導電性要素の遠位非絶縁性部分の側方移動は、導電性要素の遠位非絶縁性部分と軟組織との間の最短距離を変え得、したがって、導電性要素の遠位非絶縁性部分と軟組織との間のインピーダンスに影響を有し、このインピーダンスは次いで、測定/刺激に作用し得る。
【0112】
ケーシングは、電気絶縁非分解性材料から作製される。ケーシング材料は、周囲軟組織のあらゆるタイプの空間的な動きに適応する(その空間的な動きとともに移動する)ことができるものとする。
【0113】
微小電極の寸法は、巨視的寸法では硬いが微小電極の寸法では十分に可撓性があるものとなる材料がケーシング用に使用され得るようなものである。したがって、ガラスと呼ばれる任意の材料等の、二酸化ケイ素を含む結晶材料のような、様々な結晶材料が、ケーシング材料として意図され得る。好ましい実施例によれば、電気絶縁材料は、電気絶縁非分解性の可撓性ポリマー材料である。好適な電気絶縁非分解性の可撓性ポリマー材料は、浸漬コーティング、スプレー・コーティング、蒸着又は鋳造、或いはそれらの任意の組み合わせによって配置することができるポリマー材料である。好適な電気絶縁非分解性の可撓性ポリマー材料は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、パリレンC、ポリウレタン、及び、パラ・ベンゼンジイル部分によって例示される6員芳香環構造を含む芳香族部分のような繰り返し芳香族部分の主鎖を含むポリマーを含む。好ましいポリマー材料は、パラ-キシレンの重合によって得られるポリマーである。繰り返し芳香族部分の主鎖を含むポリマーの水素原子は、様々な官能基によって置換され得る。パリレンは、パラ・ベンゼンジイル部分によって例示される6員芳香環構造を含む芳香族部分のような繰り返し芳香族部分の主鎖を含むポリマーの特性を共有する好ましいクラスの電気絶縁可撓性ポリマー材料である。ポリマー材料は、パリレンC及びパリレンMから選択され得る。
【0114】
組織と接触する、電気絶縁材料のような、微小電極のすべての材料は、生体適合性でなければならない。
【0115】
さらなる実施例によれば、導電性要素の近位電気絶縁性部分は、軟組織の空間的な動きに適応するように構成される。導電性要素の近位電気絶縁性部分は、導電性要素の撓み、特に、導電性要素(微小電極)の主軸と部分的に一致する方向への撓みを容易にする少なくとも1つのセクション、及び/又は半径方向への曲げを容易にするセクションを含み得る。導電性要素のこの撓みセクションは、近位区画とホルダとの間で、近位区画に対して近位に局在化され得る。代替的に、撓みセクションは、近位区画内に局在化されてもよい、すなわち、近位区画のケーシング内に完全に配置されてもよい。撓みを容易にするセクションは、導電性要素の近位電気絶縁性部分が(平衡状態での近位絶縁性部分の長さに基づいて)少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約100%だけ伸張されることを可能にする。導電性要素の電気絶縁性部分の伸張(撓み)を容易にするセクションは、以下の形態、すなわち、螺旋形態、ジグザグ形態、蛇行形態、又はそれら形態の任意の組み合わせのうちのいずれかから選択されることができる。
【0116】
電気導電性要素の材料は、軟組織、特に神経組織、内分泌組織又は筋肉組織に植え込むための微小電極の特性を果たすあらゆる電気導電性材料であるものとすることができる。多様な金属が好適であるが、導電性非金属材料も好適である。好適な材料は、微小電極を囲む組織における酸化を低減するか又は排除しさえする、白金、イリジウム、金、タングステン、ステンレス鋼、及びそれらの合金を含む金属又は金属の混合物である。より具体的には、導電性要素の好適な金属は、白金、イリジウム、金、タングステン、ステンレス鋼、及びそれらの合金から選択される。導電性非金属材料は、様々な導電性ポリマー、並びに、グラフェン、グラファイト及びカーボンナノチューブのような炭素含有材料を含む。
【0117】
導電性要素は、単一の金属を有することができるか、又は、種々の金属のうちの2つ以上の部分を含むことができる。代替的に、導電性要素は、2つ以上の超極薄金属ワイヤを含むことができる。1つ又は複数のワイヤの太さは好ましくは、約100nm~1μm又は10μm又はさらには100μmである。2つ以上の超極薄ワイヤは、表面積が最大になるように絡ませられてもよい。
【0118】
近位区画に対して近位に延びる導電性要素の電気絶縁性部分のセクションは、近位区画及び遠位チャンバに配置された部分の1つ又は複数の材料とは異なる1つ又は複数の材料を有することができる。遠位チャンバ内に存在する、導電性要素の非絶縁性部分は、表面のうち、遠位チャンバ内の導電性要素の非絶縁性部分の平均的な表面積よりも高い表面積を有するセクションを呈し得る。好適には、より高い表面積を呈するセクション(複数可)は、遠位チャンバの開口(複数可)の付近に局在化される。遠位チャンバ内に存在する、導電性要素の非絶縁性部分はまた、凹凸セクションを含み得るか又は開口(複数可)の近くに突起を含み得る。凹凸セクション又は突起は、マイクロスケール又はナノスケールである。
【0119】
特許請求の範囲に記載されているように、導電性要素の遠位絶縁性部分は、遠位チャンバ内に完全に局在化される。
【0120】
一実施例によれば、微小電極の動作時に、導電性要素の絶縁性近位部分の最も遠位のセクションは好ましくは、常に遠位チャンバに含まれるものとする。ケーシングは好適には、ケーシングがケーシングの軸方向移動にかかわらず導電性要素の非絶縁性部分を常に十分に取り囲むように、導電性要素に対して位置決めされるものとする。また、導電性要素は、導電性要素の非絶縁性部分の遠位先端が遠位チャンバのケーシングに達しないようにケーシング内に最初に位置決めされるものとする。代替的に、微小電極は、非絶縁性導電性要素の遠位先端がケーシングに接触しないか又はケーシングを穿刺することがないようにケーシング又は導電性要素の軸方向移動を制限する手段を有し得る。
【0121】
ケーシング(例えば、第1の構造要素)は、第1の構造要素がある程度まで導電性要素の絶縁性部分を離れる(及び非絶縁性部分に対して全体的又は部分的に摺動する)見込みが最小限であるか又は実質上存在しない場所に、導電性要素の近位絶縁性部分に対して最初に位置決めされ得る。
【0122】
開口の数はある程度、遠位チャンバの容積、ケーシングの材料(複数可)のタイプ、及び微小電極の動作モードに応じて決まる。軟組織の刺激のために微小電極を使用する場合、軟組織を監視する目的で微小電極を使用する場合よりも大きい開口総面積(多くの開口数)を有することが好ましい場合がある。微小電極が刺激及び監視モードの双方で動作する場合、開口総面積(開口数)は好ましくは、刺激及び監視モードの要求をいずれも満たす範囲内にあるものとする。開口の上限数はある程度まで、(遠位チャンバを被包するケーシングの)遠位チャンバの構造的硬さによって左右され、1つの開口の面積は好ましくは、約20μm~最大約150000μm以上の範囲内である。
【0123】
植え込まれた微小電極は、周囲組織から取り出される必要がある場合がある。取り出しを容易にするために、微小電極は、取り出しを容易にする場所において微小電極にしっかりと取り付けられた可撓性フィラメントを含み得る。かかる可撓性フィラメントの近位部分は、いかなる組織も過度に刺激することなくフィラメントが容易に回収可能であるように位置付けられるべきである。
【0124】
本発明のさらなる態様は、微小電極プローブに関する。既に上記に示唆したように、微小電極プローブは、軟組織に挿入されるように設計された微小電極の一形態を構成する。したがって、微小電極プローブは、様々な軟組織に首尾よく挿入されるのに十分な硬さをプローブに与える特定の構成要素を含む。軟組織に挿入されると、微小電極プローブの特定の構成要素は、体液との接触時に溶解及び/又は分解し、微小電極を徐々にin-situ微小電極である微小電極に変換する。
【0125】
軟組織に埋め込まれるように構成された微小電極のすべての実施例及び構造的特徴は、微小電極プローブに等しく関係があることに留意されたい。
【0126】
微小電極プローブは、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のマトリックスを含む。マトリックスは好適には、タンパク質ベース(タンパク質性)の材料、炭水化物ベースの材料、及び様々な分子量のポリエチレングリコールから選択される。好適なタンパク質ベースのマトリックス材料は、典型的にはコラーゲン由来のゼラチンである。好適な炭水化物ベースのマトリックス材料は、グルコースである。生体適合性マトリックス材料は、ゼラチン、グルコース及びポリエチレングリコールから選択され得る。ケーシングによって被包される遠位チャンバは好ましくは、水性液中で溶解する際にその体積を著しく増加しないマトリックス材料を含むものとする。遠位チャンバのマトリックスは、水性液を吸収した場合のマトリックスの体積増加がマトリックスの溶解/分解によって相殺されるという特性を有し得る。
【0127】
水性液を吸収した場合にその体積を増加するマトリックス材料は好ましくは、埋め込みマトリックスのために、又は、マトリックス体積膨張時に構造的損傷を受けないほど十分に可撓性があるケーシング材料によって与えられるキャビティ/区画のために使用され得る。
【0128】
(上記に具体的に)提示された微小電極の変形例/実施例のうちのいずれかは、微小電極プローブとして提供され得る。
【0129】
微小電極の一変形例は、遠位チャンバを形成する導電性要素の遠位非絶縁性部分を被包するケーシングを含むが、近位区画がない。微小電極のこの「一区画」変形例の微小電極プローブは、遠位マトリックスを含む。導電性要素の近位絶縁性部分の一部の周りに近位マトリックスを有することがさらに好ましい。好ましくは、この近位マトリックスは、遠位チャンバの空間的な半径方向の広がりと同様の空間的な半径方向の広がりを有する。近位マトリックスは、微小電極に挿入する際に使用される剛性ピン/バーを囲み得る。ピンは遠位チャンバと同じ主軸を有することが好ましい。
【0130】
軟組織、特に神経組織、内分泌組織及び筋肉組織への挿入による植え込みのための微小電極プローブは、少なくとも近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を有する細長い電気導電性要素を備え、導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング内に配置され、導電性要素の遠位非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成する、電気絶縁非分解性材料のケーシングによって被包され、遠位チャンバは、少なくとも1つの開口を有し、ケーシングは、遠位チャンバの近位電気絶縁性部分に摺動可能に取り付けられ、遠位チャンバは、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料を含む遠位マトリックスを含み、遠位チャンバは、ケーシングを通る少なくとも1つの開口を含む。
【0131】
軟組織、特に神経組織、内分泌組織及び筋肉組織への挿入による植え込みのための微小電極プローブに関するさらなる態様は、少なくとも近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を有する細長い電気導電性要素を含み、導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング内に配置され、ケーシングは、ケーシング(エンベロープ)を遠位及び近位区画に区分する第1の構造要素を含み、構造要素は、導電性要素の近位電気絶縁性部分に摺動可能に取り付けられ、遠位ケーシングは、少なくとも1つの開口を含み、近位電気絶縁性部分の少なくとも一部は、遠位チャンバ内に局在化され、遠位及び近位区画は、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料を含む遠位及び近位マトリックスを含む。
【0132】
遠位及び近位マトリックスは同じ材料を有さなくともよい。さらに、近位及び遠位マトリックスである、これらマトリックス、又は、プローブ若しくはアレイの任意の他のマトリックスは、薬学的に活性な物質のような生物学的に活性な物質及び遺伝子構築物を含み得る。一実施例によれば、遠位マトリックスは、生物学的に活性な物質を含み得る。
【0133】
生物学的に活性な物質は好適には、抗炎症物質、神経栄養物質、鎮静剤、例えばグルタミン酸塩、グリシン、GABA、ドーパミン、ノルアドレナリン、及びアセチルコリンである伝達物質から選択される。薬学的に活性な物質は好適には、これら物質が遠位チャンバにおける開口(複数可)を通って放出されることができるように遠位チャンバ内に含まれる。生物学的に活性な物質は、微小電極プローブの製造時に、遠位マトリックス、近位マトリックス、埋め込みマトリックス、アレイ埋め込みマトリックス等のマトリックスのうちのいずれか、それらマトリックスのうちのほんの1つ、いくつか又はすべてに添加され得る。一実施例によれば、生物学的に活性な物質は、遠位マトリックスの表面に添加される、及び/又は遠位マトリックス内に含まれる。また、生物学的に活性な物質は、導電性要素に、特に、導電性要素のうち、遠位チャンバ内に位置付けられた遠位非絶縁性部分に塗布されてもよい。
【0134】
一実施例によれば、微小電極プローブはまた、マトリックスを含む遠位区画及び任意選択的に近位区画を特徴とする、微小電極を埋め込むさらなるマトリックスを含み得る。微小電極を埋め込むかかるマトリックスは、埋め込みマトリックスと呼ばれる。
【0135】
近位及び遠位チャンバを含む微小電極プローブが埋め込みマトリックス内に埋め込まれない場合、近位区画と遠位チャンバとの間の空間内に、中間マトリックスと呼ばれるさらなるマトリックスを塗布することが好ましい。中間マトリックスの半径方向の広がりは好適には、近位区画及び遠位チャンバの半径方向の広がりに追従する。
【0136】
微小電極又は微小電極プローブはまた、要素ホルダを備え得る。要素ホルダは好ましくは、硬い材料を含むか又は硬い材料から構成され、遠位面及び近位面を含む。導電性要素の近位絶縁性部分の近位端末セクションが、要素ホルダを遠位面から近位面にかけて貫通することが好ましい。要素ホルダが、要素ホルダの直径よりも小さい直径の、特に、要素ホルダが取り付けられるべき骨における穴の直径以下の直径の円筒管であって、要素ホルダの遠位面から遠位方向に延びる円筒管を含むことが好ましい。管は、ホルダと同じ材料を有するか又は異なる材料を有し、水性体液による分解に対して安定している。
【0137】
さらなる実施例は、微小電極がマイクロファイバに接着取り付けされる、マイクロファイバを含む微小電極のアレイに関する。好適には、マイクロファイバは、微小電極アレイが軟組織に隣接して位置決めされるか又は軟組織に埋め込まれると経時的にアレイの微小電極の相互の空間的な位置決めを実質的に維持することが可能である。マイクロファイバは好ましくは生分解性である。マイクロファイバを含む微小電極のアレイは、軟組織への挿入のために乾燥するとアレイに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料の剛性マトリックス内に配置され得る。十分な硬さを与える生体適合性材料のマトリックスは好ましくは、マイクロファイバの分解率を実質的に上回る率で、体液中で溶解可能/分解可能である。十分な硬さを与える生体適合性材料の剛性マトリックスは好適には、2倍、又は5倍、又は10倍又は20倍、特に100倍以上、マイクロファイバの分解率を上回る、分解/溶解を有する。
【0138】
本発明において使用するマイクロファイバは好ましくは、加水分解、特に酵素的強化加水分解によって分解可能である。本発明のマイクロファイバが不織ナノファイバ又はマイクロファイバ集合体の形態で使用されることが特に好ましい。不織マイクロファイバ集合体は、不規則に絡み合ったマイクロファイバから構成され、局在的な溶解によって及び/又は生体適合性接着剤による接着によって生じる取り付けによって等、不規則的に互いに取り付けられるマイクロファイバを含み得る。
【0139】
ナノファイバ及びマイクロファイバとの一体化による位置的安定化のための時間は、2日又は5日又は10日等の数日~2週又は5週等の数週、場合によっては数か月~数年さえもの範囲に及び得る。ポリ乳酸及びポリ(ラクチド-コ-グリコライド)、ポリ酢酸ビニル及びポリビニル・アルコール並びにそれらの架橋修飾のマイクロファイバ等の、この種の分解性マイクロファイバは、当該技術分野において知られており、その分子量は、好適な分解率をもたらすために様々とすることができる。本発明において使用する他のマイクロファイバは、フィブリン・マイクロファイバ、コラーゲン・マイクロファイバ、ラミニン・マイクロファイバ、フィブロネクチン・マイクロファイバ、架橋ゼラチン・マイクロファイバ、非特許文献1によって開示されるような水性タンパク質溶液から製造されるシルク・マイクロファイバ等の天然及び合成タンパク質マイクロファイバだけでなく、リン酸ガラス・マイクロファイバ、例えば特許文献2に開示されているP4oNa2oCa16Mg24リン酸ガラス・マイクロファイバのような無機マイクロファイバである。本発明のマイクロファイバは、マイクロメートル又はナノメートル直径範囲内にある。エレクトロスピニングされたナノファイバ及びマイクロファイバが特に好ましく、エレクトロスピニングは、本発明のマイクロファイバを製造する好ましい方法である。非特許文献2に開示されたS R Perumcherryらの方法によるような、フィブリノーゲンをエレクトロスピニングすることによるフィブリン・マイクロファイバの網、又は、非特許文献3においてPerumcherryらによって開示されたもののようなポリ(ラクチド-コ-グリコライド)/フィブリン・マイクロファイバの網を有するデバイスを提供することは本発明の範囲内である。自己組織化フィブリン網は、カルシウムが豊富な、フィブリノーゲン及びトロンビンの水溶液を、微小電極に直接塗布し、次いで、架橋のために新たに形成された網に血漿トランスグルタミナーゼ及び/又は第XIII因子の水溶液を塗布することによりマイクロファイバを架橋することによっても製造することができる。
【0140】
マイクロファイバがタンパク質マイクロファイバ及びポリエステル繊維から選択されることが好ましい。好ましい繊維材料は、ポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコライド)、ポリ(グリコライド)、エレクトロスピニングされたアルブミン、糖タンパク質が豊富な粘液物質をベースとした繊維材料を含む。特に好ましい種類のマイクロファイバは、エレクトロスピニングされたマイクロファイバである。本発明の好ましい態様によれば、マイクロファイバは、不織の不規則構造を形成する。マイクロファイバが微小電極及び1つ又は複数の他のマイクロファイバに接着取り付けされることが好ましい。好ましくは、マイクロファイバは、微小電極の軸方向の広がりの50%以上に沿って配置される。本発明において使用するマイクロファイバは、弾性材料又は非弾性材料を有することができる。
【0141】
本発明の別の態様は、微小電極及び微小電極プローブを製造するプロセスに関する。管状構造に応じて、2つの異なる製造プロセスが提示される。図6図16は、管状構造がケーシングの一体部を形成する微小電極/微小電極プローブの製造のためのいくつかの製造段階を示す。図22は、管状構造がケーシングと一体化されておらずケーシングから隔てられている、製造プロセスの一段階を示す。
【0142】
本発明は、微小電極、微小電極プローブ又はアレイを製造する方法であって、方法は、
細長い電気導電性要素を準備することと、
導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆することであって、それにより、導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、被覆することと、
導電性要素の遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延びるとともに任意選択的に導電性要素の遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能な遠位マトリックスを形成することと、
遠位マトリックスに対して近位に、また、任意選択的な近位マトリックスに対して遠位に、絶縁性要素のセクションに摺動促進組成物を塗布することであって、摺動促進組成物は、導電性要素の絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進し、上記媒体が任意選択的に、導電性要素の絶縁層と電気絶縁非分解性材料の第1の層との間に十分な隙間/内腔を提供する、塗布することと、
任意選択的に、導電性要素の近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成することと、
遠位マトリックスと導電性要素の近位電気絶縁性部分の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆することであって、それにより、遠位チャンバ及び第1の構造要素を形成する、導電性要素の遠位非絶縁性部分を被包するケーシングをもたらす、被覆することと、
導電性要素の非絶縁性部分(好ましくは、導電性要素の非絶縁性部分の一部)と電気絶縁非分解性材料の第1の層とを、電気導電性要素の遠位非絶縁性部分を含む、遠位マトリックスの遠位端の近くで切断することであって、それにより、遠位チャンバの遠位開口をもたらす、切断することと、
さらなる遠位先端マトリックスを遠位開口の遠位に塗布することと、
先端マトリックスと第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第2の層と第1の層の少なくとも一部とで被覆することであって、それにより、遠位チャンバのケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、被覆することと、
を含み、
遠位マトリックス及び任意選択的に近位マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると微小電極又はプローブに構造的支持を与え、
遠位チャンバのケーシングの第1の層及び任意選択的に第2の層を通る少なくとも1つの開口が、好適にはレーザ蒸着及び任意選択的にその後のレーザ・ミリングによって設けられる、方法を包含する。
【0143】
本明細書に開示される微小電極、微小電極プローブ、又はアレイを製造する方法のさらなる変形例は、方法が、
細長い電気導電性要素を準備することと、
導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆することであって、それにより、導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、被覆することと、
導電性要素の遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延びるとともに任意選択的に導電性要素の遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能な遠位マトリックスを形成することと、
導電性要素の近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成するとともに、それにより、軸方向の広がりを有する絶縁性導電性要素の中間セクションを形成することであって、遠位マトリックスの近位に、また、近位マトリックスの遠位に位置決めされた中間セクションは、遠位マトリックス及び近位マトリックスによって被覆されない、形成することと、
第1の中間マトリックスの薄(最大約5μm)層及び/又は摺動促進組成物を絶縁性要素の中間セクションに塗布することで、導電性要素の絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進する、塗布することであって、上記第1の中間マトリックス及び/又は組成物は、導電性要素の電気絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の第1の層との間に十分な隙間/内腔(環状チャネル)を提供する、塗布することと、
遠位マトリックスと、近位マトリックスと、導電性要素の近位電気絶縁性部分の中間セクションであって、中間マトリックス及び/又は摺動促進組成物を含む中間セクションとを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆することであって、それにより、遠位チャンバ、第1の構造要素及び近位区画を含むケーシングを提供する、被覆することと、
任意選択的に、遠位チャンバと近位区画との間での第1の層の半径方向における狭窄部において電気絶縁非分解性材料の第1の層に第2の中間マトリックスを設けることと、
電気導電性要素の遠位非絶縁性部分(の一部)と電気絶縁材料の第1の層とを、遠位マトリックスの遠位端(遠位チャンバの遠位端)の近くで切断することであって、それにより、遠位チャンバの遠位開口をもたらす、切断することと、
さらなる遠位先端マトリックスを遠位開口の遠位に塗布することと、
遠位先端マトリックスと第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁材料の第2の層で被覆することであって、それにより、遠位チャンバのケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、被覆することと、
第1の層及び任意選択的に第2の層を近位マトリックスの周方向環状ゾーンにおいて除去することと、を含み、
遠位マトリックス、遠位先端マトリックス、近位マトリックス及び任意選択的に第1及び第2の中間マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥するとプローブに十分な硬さを与えるとともに水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料を有し、
少なくとも1つの開口が、好適には蒸着及び任意選択的にその後のレーザ・ミリングによって、遠位チャンバのケーシングの第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される。
【0144】
微小電極を製造する方法のなおもさらなる実施例は、方法が、
細長い電気導電性要素を準備することと、
導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆することであって、それにより、導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、被覆することと、
導電性要素の近位電気絶縁性部分に対して軸方向移動を可能にするように構成された第1の構造要素を提供することと、
導電性要素の近位電気絶縁性部分の周りに、好適には、導電性要素の遠位非絶縁性部分から特定の軸方向距離のところに、第1の構造要素を位置決めすることと、
近位方向に第1の構造要素の近位面から延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能な近位マトリックスを、導電性要素の近位電気絶縁性部分の周りに塗布することと、
遠位方向に第1の構造要素の遠位面から延びるとともに、導電性要素の遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能な遠位マトリックスを、導電性要素の遠位非絶縁性部分の周りに塗布することと、
電気絶縁非分解性材料の第1の層を、近位及び遠位マトリックスと第1の構造要素の周囲とに塗布することであって、それにより、遠位チャンバ及び近位区画を含むケーシングを形成する、塗布することと、
を含み、
少なくとも1つの開口が、好適には蒸着及び任意選択的にその後のレーザ・ミリングによって遠位チャンバのケーシングの第1の層に貫設される。
【0145】
一態様によれば、近位マトリックスは、近位方向に広くなる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1】本発明の微小電極プローブの植え込みのための神経組織の部位を、その部位を保護する骨に対して垂直な断面で示す図である。
図2】骨に円形穴を設けた後の、図1の部位を同じ断面で示す図である。
図3a】軸方向断面での、本発明の微小電極プローブの概略図である。
図3】植え込み直後の、図3aによる電極を示す図である。
図4】遠位チャンバを通る複数の開口を有する、本発明の微小電極を示す図である。
図5】遠位チャンバを有するが遠位チャンバに対して近位に近位区画がない、本発明の微小電極を示す図である。
図5a】ケーシングとは別個の管状構造を特徴とする、本発明の微小電極を示す図である。
図5b】遠位チャンバ内に構造要素をさらに含む、ケーシングとは別個の管状構造を特徴とする、本発明の微小電極を示す図である。
図6図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図7図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図8図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図9図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図10図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図11図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図12図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図13図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図14図15に示された微小電極プローブに対する連続的な前段階のうちの1つを示す、本発明の微小電極プローブの製造のためのプロセスを示す図である。
図15】軸方向における、本発明の微小電極プローブを示す図である。
図16】埋め込みマトリックスを含む、本発明の微小電極の多様性を示す図である。
図17】埋め込みマトリックス並びに近位及び遠位マトリックスの溶解前の、神経組織に植え込まれた、本発明の微小電極プローブを示す図である。
図18】埋め込みマトリックスの部分溶解状態における、また、本発明の微小電極への変換の一段階における、神経組織に植え込まれた、本発明のプロト微小電極を示す図である。
図19図17の微小電極プローブからin situで形成された本発明の微小電極(in situ微小電極)を示す図である。
図19a図17の微小電極プローブからin situで形成された本発明の微小電極(in situ微小電極)を示す図であり、ケーシングが周囲軟組織の空間的な動きに適応している。
図20】本発明の4つの微小電極プローブのアレイを示す図である。
図21】微小電極プローブの遠位チャンバを通るアレイの管状横断面を示す図である。
図22】ケーシングとは別個の管状構造を特徴とする微小電極を製造する製造ステップの管状構造体を有する半金型を示す図である。
図23】微小電極の変形例に含まれる管状構造体を示す図である。
図24】遠位区画のケーシングの半径方向の広がりが導電性要素の絶縁性部分の半径方向の広がりよりもほんの僅かに広い、本発明の微小電極の変形例を示す図である。
図25】微小電極のアレイを示す図であり、個々の微小電極がマイクロファイバ又はナノファイバのウェブによってともに保持されている。
図26】係合要素を備える微小電極を示す図であり、ケーシングが、周囲軟組織に対するケーシングの摩擦を増加させるマイクロファイバ又はナノファイバを呈する。
【発明を実施するための形態】
【0147】
本発明のいくつかの実施例を以下でより詳細に説明する。実施例は、本発明の一般概念を限定するものと解釈されるべきではない。
【0148】
植え込み及び組織環境の原理
図1図2図3a及び図3は、微小電極を有しない頭蓋骨の横断部分(図1及び図2)、神経組織に植え込まれた微小電極プローブ(図3)、及び微小電極プローブ(図3a)を概略的に示す。神経組織(3)はここでは脳組織であり、脳組織は、頭蓋骨(1)によって保護されており、硬膜、くも膜、軟膜及び脳脊髄液等のいくつかの副層を含む薄層(2)によって頭蓋骨から隔てられている。神経組織(3)は、頭の動きによって頭蓋骨(1)に対して空間的に変位しやすく、この変位は、頭蓋骨(1)と平行な方向(矢印b、b’)及び垂直方向(矢印a、a’)に概略的に示されている。頭蓋骨1と脳組織3との中間の組織(2)が同様に変位するが、必ずしも同程度に変位しない。
【0149】
本発明によるデバイスの植え込み前に、頭蓋骨に円形穴(8)をドリル穿孔することによって脳の望ましい位置へのアクセスが提供される(図2)。
【0150】
本発明のデバイスの次のステップでは、図3aの、本発明の微小電極プローブ(10)、又は微小電極プローブアレイが、穴(8)を通って脳組織(3)に挿入される(図3)。植え込み時、微小電極プローブ(10)は、水性体液との接触によって本発明の微小電極(in situ微小電極)に変換される。十分に機能的なin situ電極は、マトリックス材料が完全に溶解するか又は分解されると形成される。微小電極プローブ(10)は、頭蓋骨において穴(8)に固定される、頭蓋骨及び軟組織を保護するカバー(7)を備える。微小電極(10)は、カバー(7)に取り付けられるとともにカバー(7)を貫通する金属又は他の電気導電性要素(6)を含み、この導電性要素は、体外に配置されるか又は皮膚の下に植え込まれる微小電極制御ユニット(図示せず)と電気通信するためにカバー(7)の近位面から延びる。導電性要素の近位部分(6p)は電気絶縁性であるのに対し、導電性要素の遠位部分(6p)は非絶縁性である。第1の構造構成要素(12)が、ケーシング(13)を近位区画(11p)及び遠位チャンバ(11d)に分割する。遠位チャンバは、導電性要素の遠位非絶縁性部分(6d)と神経組織(3)との間に電流が流れることを可能にする開口(14)をさらに含むケーシングによって被包される。この微小電極では、第1の構造要素はケーシングと一体化されている。第1の構造要素は、ケーシングの一体部分を形成する。したがって、ケーシング及び第1の構造要素は同じ材料を共有する。ケーシング、すなわち、第1の構造要素は、導電性要素の近位絶縁性部分(6p)に摺動可能に接続される。
【0151】
図4図5図5a及び図5bは、マトリックスの完全な溶解後に構成されたものとしての微小電極の3つの変形例を示す。
【0152】
図4は、水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料のマトリックスの完全な溶解後に構成されたものとしての微小電極の一変形例を示す。この変形例は、近位(11p)区画及び遠位チャンバ(11d)を含む。近位区画と遠位チャンバとの間に、導電性要素(6)の近位絶縁性部分(6p)を取り囲む第1の構造構成要素(12)が存在する。図4に見られるように、ケーシング(13)は、遠位チャンバ(11d)を被包する。導電性要素の絶縁性部分(6p)を取り囲む第1の構造構成要素(12)は、導電性要素の近位絶縁性部分の最も外側の層に摺動可能に取り付けられる。ここで、最も外側の層は、導電性要素の近位部分(6p)の絶縁層(15)に相当する。遠位チャンバは、1つの開口の代わりに、4つの開口(14)を有する。4つの開口はすべて、導電性要素(6)、すなわち、導電性要素の遠位非絶縁性部分(6d)及び導電性要素の近位絶縁性部分(6p)が第1の構造構成要素(12)に対して移動した場合(この移動は、遠位チャンバを被包するケーシングに対する導電性要素の移動に一致する)、それら開口に対する導電性要素の遠位非絶縁性部分(6d)の垂直距離が実質的に一定のままであるように軸方向に位置決めされる。非絶縁性導電性要素の遠位先端(16)は、先端が遠位チャンバ(11d)のケーシングの遠位エンドキャップ(17)のケーシングを決して貫通しないほどの移動距離を軸方向に有するものとする。
【0153】
図5は、導電性要素(6)の遠位非絶縁性部分(6d)を被包する遠位チャンバ(11d)しか含まない、微小電極の変形例を示す。ケーシングは、第1の構造要素(一体化された管状構造)(12)に徐々に変換し、第1の構造要素(12)は、導電性要素の近位電気絶縁性部分(6p)に摺動可能に取り付けられている。導電性要素の近位絶縁性部分(6p)は、電気絶縁層(15)を有する。遠位区画は、開口(14)を含む。開口(14)は、導電性要素(6)、すなわち、導電性要素の非絶縁性部分(6d)が軸方向に移動する場合であっても、導電性要素の非絶縁性部分(6d)に対する開口(14)の垂直距離が実質的に一定のままであるように、軸方向に局在化されている。
【0154】
図5aは、ケーシング(材料)(31)、(32)の一部を形成しない第1の構造要素(29)を含む、微小電極の一変形例を示す。テフロン(登録商標)であり得る第1の構造要素は、導電性要素の近位絶縁性部分(6p)を収容するチャネルを含む。第1の構造要素は、第1の構造要素の全周に達し得るリセス(30)を特徴とする。リセスは、第1の構造要素へのケーシング(31)の取り付けを確実にする。導電性要素の近位絶縁性部分と第1の構造要素との間の隙間/内腔(環状チャネル)(29a)は、導電性要素の近位絶縁性部分が第1の構造要素に対して摺動するのに十分である。第1の層(31)及び第2の層(32)を含むケーシングは、パリレンCを有することができる。代替的に、第1の層(31)及び第2の層(32)は、異なる材料から作製されることができる。第2の層(32)は、第1の層の材料とは異なる材料を有し得る。上記第2の層(32)は、第1の層の材料に比して、周囲軟組織に対して増加した摩擦を呈する層であり得る。代替的に、又は付加的に、第2の層の外面は、摩擦誘起表面構造を呈し得る。
【0155】
図5bは、図5aの微小電極の設計要素の多くを共有するが、第2の構造構成要素(SC)が遠位区画(11d)内に位置しているという相違点を有する、一変形例を示す。第2の構造構成要素は、導電性要素の遠位非絶縁性部分(6d)を半径(側方)方向に安定させる。微小電極を囲む軟組織が広範囲に動くことでケーシングが導電性要素に対して広範囲に変位する場合であっても、第2の構造構成要素(SC)が導電性要素の遠位非絶縁性部分(6d)の半径方向移動を安定させる結果、導電性要素の遠位非絶縁性部分6dと開口14との間の垂直距離は経時的に同様のままとなる。
【0156】
本発明の微小電極の製造
図6図16は、ケーシングと一体化された第1の構造構成要素を特徴とする微小電極プローブの一製造方法のいくつかの連続ステップを示す。
【0157】
金属フィラメント(導電性要素)(18)が両端においてフレーム(19)に固定される。金属フィラメントは、特にフィラメントが軸方向に撓むことを可能にするセクション(18a)を含む(図6)。図6aは、導電性要素が軸方向に撓むことを可能にするセクションを含まない導電性要素(18)を有するフレーム(19)を示す。後続ステップでは、フィラメントの一部分(6p)は、電気絶縁非分解性材料(15)によって被覆され、それにより導電性要素の近位絶縁性部分(6p)を形成する。導電性要素(18)の遠位部分(6d)は被覆されず、それにより、導電性要素の遠位非絶縁性部分を形成するための必須条件を提供する。次に(図8)、遠位マトリックス(20d)が、非絶縁性導電性要素の遠位部分と導電性要素の近位絶縁性部分の遠位セクションの一部(21)との周りに半径方向に形成される。マトリックスは導電性要素の近位絶縁性部分の一部(21)も覆うことが重要である。図9では、近位マトリックス(20p)が、導電性要素の近位絶縁性部分(6p)の一部の周りに半径方向に塗布される。中間セクション(22)がマトリックスによって被覆されないままであるか、又は、好ましくは、生体適合性材料のマトリックスの薄層が、水性体液中で溶解可能又は分解可能であるか、又は、導電性要素の絶縁性部分に対して第1の構造要素の移動を促進する組成物等の他の組成物/物質(23)(図10)が、電気絶縁非分解性材料(パリレン等)の第1の層(24)との間に隙間/内腔(環状チャネル)を画定する、導電性要素の周りの中間セクション(23)に塗布される(図11)。マトリックス又は組成物/物質が、導電性要素の近位絶縁性部分の中間セクションの周りに塗布されると、かかる組成物/物質はまた、ケーシング(第1の構造要素)の軸方向移動を促進する、及び/又は近位区画と遠位区画との間の電気インピーダンスを調整し得る。図11は、遠位マトリックス(DM)、中間セクション、及び近位マトリックス(PM)に塗布される電気絶縁非分解性材料の第1の層(24)を示す。さらなるステップ(図12)では、非絶縁性導電性要素(6d)、遠位マトリックス(20d)及び第1の層(24)が、F-Fの断面(図11)において半径方向に切断され、それにより遠位開口(25)が形成され、この遠位開口は、後続ステップ(図13)において、球形の遠位キャップ(先端)マトリックス(26)によって覆われる。図14は、遠位キャップマトリックス(26)を覆う電気絶縁非分解性材料の第2の層(27)と、電気絶縁非分解性材料の第1の電気絶縁層(24)とを示す。開口(14)(図15)が、割り当て部G(図14)において、遠位チャンバを被包するケーシングに貫設される。さらに、第1及び第2の電気絶縁層(24、27)が高さHの周方向帯域の周りで除去され、電気絶縁非分解性材料によって被覆されない環状領域(28、図15)を形成する。開口は、レーザ蒸着及び任意選択的にその後のレーザ・ミリング蒸着によって達成され得る(図15)。
【0158】
周方向帯域の位置決め及び軸方向範囲は、微小電極プローブが貫入する組織のタイプに応じて様々であり得る。
【0159】
開口(又は複数の開口)は好ましくは、非絶縁性要素が軸方向に移動すると非絶縁性要素と開口(複数可)との間の(垂直)距離が略同様のままであるように非絶縁性要素に対して軸方向に位置決めされる。最終ステップ(図16)では、プロト微小電極が、水性体液中で溶解可能又は分解可能な生体適合性材料の埋め込みマトリックス(28)によって覆われる。埋め込みマトリックスは、乾燥大気中でのゼラチンのスプレー・コーティングによって形成することができる。図15及び図16の微小電極はいずれも、軟組織に挿入されるのに適している。したがって、図15及び図16は微小電極プローブを示す。図16はまた、ケーシングの近位面に取り付けられたカバー(7)を示し、このケーシングは、電気絶縁非分解性材料の第1及び第2の電気絶縁層によって形成される。第1及び第2の電気絶縁層は好ましくは、パリレンCを有する。
【0160】
図17図19は、脳組織等の軟組織(3)への導入後の様々な状態における微小電極プローブを示す。図17は、頭蓋骨(1)と、頭蓋骨(1)と脳組織(3)(神経組織)との中間にある、硬膜、くも膜、脳脊髄液、及び軟膜等の組織(2)とを通って、脳組織(3)に挿入された直後、且つマトリックスの溶解前の、微小電極プローブを示す。2つの破線DLは、例えば空間的な動きの傾向に関して種々の特性を有し得る組織領域(2及び3)を示す。
【0161】
図18は、埋め込みマトリックス(28)の部分溶解を示す。
【0162】
図19は、埋め込みマトリックスの完全溶解並びに遠位マトリックス(DM)及び近位マトリックス(PM)の部分溶解後の、微小電極プローブの状態を示す。
【0163】
図19aは、周囲軟組織の空間的な動きを示す、すべてのマトリックスの完全溶解後の微小電極の構成の一例である。電気絶縁非分解性材料の第1及び第2の電気絶縁層を含み得るケーシング(13)は、周囲軟組織の空間的な動きに適応することができる程度に周囲軟組織に取り付けられている(関連付けられている)。微小電極はまた、導電性要素の非絶縁性遠位部分(6d)の移動を安定させる構造構成要素SCも含む。構造構成要素SCは、摩擦を多く有することなく開口14に対して導電性要素の遠位非絶縁性部分との間の(垂直)距離が略同じままであるほど十分に半径方向(側方)に遠位比を安定させつつ、導電性要素の遠位部分6dが軸方向に移動することができるように構成される。ケーシングが周囲組織に取り付けられると、ケーシングの開口は、軟組織が動いている場合であっても経時的に軟組織の略同じ領域と連通する。
【0164】
図20は、4つの微小電極(37a)、(37b)、(37c)、(37d)のアレイを示す。これら微小電極は、アレイ・マトリックス(38)内に埋め込まれている。
【0165】
図21は、アレイ・マトリックス(38)、遠位区画を被包するケーシング(39)、及び導電性要素の遠位非絶縁性部分(40)を示す、割り当て部Pにおけるアレイの横断面を示す。
【0166】
図22は、ケーシングとは異なる材料の第1の構造要素(29)を有する微小電極の製造の際の製造ステップを示す。第1の構造要素は、導電性要素の近位絶縁性部分(36)の周りに位置決めされ、シリコーンの金型の1つの第1の半体(34)内に配置される。金型の第2の半体が金型の第1の半体に対して位置決めされる。近位マトリックス及び遠位マトリックスを鋳造する前に、導電性要素を金型に対して中央に位置決めすることが好ましい。
【0167】
図23は、第1の構造構成要素(29)の斜視図、及び破線として中心軸を示す。
【0168】
図24は、導電性要素(101)を含む微小電極の一変形例を示す。導電性要素の近位部分(106)は、電気絶縁非分解性材料(100)を有する絶縁性であるのに対し、導電性要素の遠位部分(105)は、非絶縁性である。可撓性の電気絶縁非分解性材料のケーシング(107)は、遠位チャンバ(102)を形成する、導電性要素の非絶縁性部分(105)を被包する。遠位チャンバのケーシングは、開口(103)を含む。ケーシングの内側半径方向の広がりは、ケーシングと導電性要素の絶縁性部分(106)との間に、導電性要素に対するケーシングの軸方向移動を可能にする隙間/内腔(108)を提供するようなものである。符号(104)により、導電性要素の非絶縁性部分(105)と開口(103)との間の垂直距離がどのようなものかを見てとれる。
【0169】
図25は、マイクロファイバ又はナノファイバ(205)によって互いに取り付けられた微小電極の第1のアレイを示す。導電性要素(206)、第1の構造構成要素(204)、ケーシング(207)、遠位チャンバ(202)、及び遠位チャンバのケーシングの開口(203)が示されている。簡潔の理由から、導電性要素の絶縁部は示されていない。マイクロファイバ又はナノファイバによって互いに取り付けられた微小電極のアレイは好ましくは、パッチを提供する広がりを有する。個々の微小電極は、パッチ状の広域の広がりを呈するアレイを形成する組み合わされた実質的に1つの平面内の実質的に平行に配置され得る。このタイプのアレイは、脊髄神経組織を監視及び/又は刺激するために塗布され得る。
【0170】
図26は、係合要素(307)を備える微小電極の一変形例を示す。ケーシング(308)は、ケーシングの外面に好ましくは接着取り付けされるマイクロファイバ又はナノファイバの網(306)を呈する。マイクロファイバ又はナノファイバは、周囲軟組織に対してケーシングの摩擦を増加させる。図26はまた、第1の構造構成要素(304)と、導電性要素(301)の周りにあるとともに近位導電性要素の絶縁性部分(309)を囲む絶縁部(300)との間の隙間/内腔(環状チャネル)(305)を示す。明確の理由から、隙間の寸法は誇張されている。係合要素は、ニードル(図示せず)のような細長い剛性ピンと可逆的に係合するように構成されている。ピンは、微小電極を軟組織に挿入するか又は微小電極を軟組織に隣接して配置するようにさらに構成されている。
図1
図2
図3
図3a
図4
図5
図5a
図5b
図6
図6a
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図19a
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織、特に神経組織、内分泌組織、及び筋肉組織に、少なくとも部分的に埋め込まれ、又は少なくとも部分的に隣接して配置されるように構成された微小電極であって、
前記微小電極は、近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素を備え、前記導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング(エンベロープ)内に配置され、
前記導電性要素の前記非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成する前記ケーシングによって被包(包囲)され、前記遠位チャンバ内で、前記導電性要素は、軸方向に摺動することができ、(植え込み後に)前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記軟組織との間に流体電気導電性ブリッジを提供する少なくとも1つの開口を有する前記遠位チャンバの前記ケーシングは、前記遠位チャンバと前記組織との間でイオン交換を可能にし、
前記少なくとも1つの開口は、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用であり、
前記ケーシングは、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分が内部で軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素を含む、微小電極。
【請求項2】
前記第1の構造構成要素は、前記ケーシング(エンベロープ)を前記遠位チャンバと近位区画とに区分する、請求項1に記載の微小電極。
【請求項3】
前記電気絶縁性部分の少なくとも一部は、前記遠位チャンバ内に局在化される、請求項1又は2に記載の微小電極。
【請求項4】
前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記電気絶縁性部分との間に、(軸方向移動を可能にする)内腔/隙間が設けられる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項5】
前記ケーシング及び/若しくは前記第1の構造構成要素の最も内側の材料(複数可)、並びに/又は前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の材料は、(それぞれ)摩擦を低減するように選択される、請求項1からまでのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項6】
前記遠位チャンバは、第2の構造構成要素を含み、前記第2の構造構成要素は、前記遠位ケーシングに対する前記導電性要素の前記非絶縁性部分の半径方向移動を低減させるように構成され、また、前記第2の構造構成要素に対する前記非絶縁性導電性要素の軸方向移動を可能にするように構成されている、請求項1からまでのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項7】
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記少なくとも1つの開口との間の垂直距離は、前記導電性要素に対する前記ケーシングの軸方向移動時に略同じままであり、任意選択的には前記垂直距離は、20%を超えて変化しない、請求項1からまでのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項8】
前記少なくとも1つの開口は、少なくとも約1μmの面積を有する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項9】
前記遠位チャンバは、前記遠位ケーシングに複数の開口を含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項10】
前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記遠位部分は、球形状のような、遠位方向に狭くなる三次元形状を有する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項11】
前記遠位チャンバの近位部分は、下方に狭くなり、好ましくは、前記第1の構造構成要素を形成する環状形態を呈し、その内部で、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分は、軸方向に摺動することができる、請求項1から1までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項12】
前記ケーシングと隣接する前記軟組織との摩擦は、前記ケーシング及び/若しくは前記第1の構造構成要素の最も内側の材料並びに/又は前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の材料の摩擦より高い、請求項1から11までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項13】
前記ケーシングの最も外側の材料及び/又は最も外側の表面構造は、前記軟組織に対する摩擦を増加するように選択される、請求項1から12までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項14】
前記遠位チャンバの前記ケーシングは、ニードルのような細長い剛性ピンと可逆的に係合するように構成された係合要素を含み、前記ピンは、前記微小電極を前記軟組織に挿入し、又は前記微小電極を前記軟組織に隣接して配置するように構成され、前記係合要素は、前記遠位チャンバの前記遠位部分に含まれる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項15】
前記係合要素は、マイクロファイバ又はナノファイバを含む、ループ又は網である、請求項14に記載の微小電極。
【請求項16】
前記係合要素は、体液中で分解可能である、請求項14又は15に記載の微小電極。
【請求項17】
前記ケーシングは、前記ケーシングと隣接する前記軟組織との摩擦を増加させる手段を含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項18】
摩擦を増加させる前記手段は、前記ケーシングの最も外側の表面に取り付けられたマイクロファイバ又はナノファイバから選択される、請求項17に記載の微小電極。
【請求項19】
前記第1の構造要素と前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の層との間の隙間/内腔は、前記最も外側の層に対する前記第1の構造要素の移動を促進する組成物、特に、脂質、ヒアルロン酸、(シリコーン・オイル又はシリコーン・グリースのような)シリコーン、及びグルコースのような単糖のポリマー、並びにそれらの組み合わせのうちのいずれか1つを含む組成物を含む、請求項1から18までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項20】
前記ケーシングは、回転対称形状、好適には円筒形状を有する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項21】
前記近位区画の直径は、近位方向に広くなる、請求項2から20までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項22】
前記遠位チャンバ及び任意選択的に前記近位区画は、薬学的に活性な物質のような少なくとも1つの生物学的に活性な物質を含む、請求項1から21までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項23】
前記近位区画に対して近位に延びる前記導電性要素は、前記近位及び遠位区画内に配置された前記導電性要素の1つ又は複数の材料とは異なる1つ又は複数の材料からなる、請求項1から22までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項24】
前記ケーシングの前記電気絶縁材料は、生体適合性、非分解性、可撓性のポリマー材料、特に、ポリウレタン、ポリエチレン、ベンゼンを含む主鎖を有するポリマー(例えば、パリレンC及びパリレンMのようなパリレン)、及びテトラフルオロエチレンの重合に基づいたポリマー、並びに(ガラス又はガラス状材料のような)可撓性無機材料から選択される、生体適合性、可撓性のポリマーである、請求項1から23までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項25】
前記遠位チャンバ、及び任意選択的に前記近位区画は、水性体液中で溶解可能又は分解可能であり、乾燥すると前記微小電極に構造的支持を与える生体適合性材料を含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項26】
請求項1から25までのいずれか一項に記載の微小電極を含む微小電極プローブであって、前記遠位チャンバ、及び任意選択的に前記近位区画は、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに構造的支持を与える生体適合性材料を含み、前記生体適合性材料は、水性体液中で溶解可能又は分解可能である、微小電極プローブ。
【請求項27】
前記微小電極又は微小電極プローブは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料の埋め込みマトリックスに埋め込まれている、請求項1から25までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26に記載の微小電極プローブ。
【請求項28】
前記微小電極又は微小電極プローブは、要素ホルダを備え、前記電気導電性材料は、前記要素ホルダを介して(近位方向に)延び、前記ホルダは、前記軟組織とは異なる組織、特に骨組織又は結合組織に固定されるように構成されている、請求項1から25までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26若しく27に記載の微小電極プローブ。
【請求項29】
前記電気導電性要素は、生体信号の登録及び軟組織の刺激のための装置と電気的な係合状態にある、請求項1から25まで、27、及び28のいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から28までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ。
【請求項30】
前記生体適合性マトリックス材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1から25まで、及び27から29までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から29までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ。
【請求項31】
前記微小電極及び/又は微小電極プローブは、マイクロファイバ又はナノファイバに接着取り付けされている、請求項1から25まで、及び27から30までのいずれか一項に記載の微小電極、並びに/又は請求項26から30までのいずれか一項に記載の微小電極プローブの第1のアレイ。
【請求項32】
前記マイクロファイバは分解性である、請求項31に記載の第1のアレイ。
【請求項33】
請求項1から25まで、及び27から30までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から30までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ、又は請求項31若しくは32に記載の第1のアレイの第2のアレイであって、前記微小電極、微小電極プローブ、又は第1のアレイは、好適には略並列に配置され、前記微小電極、微小電極プローブ、又は第1のアレイは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記アレイに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のアレイ・マトリックスに部分的又は完全に埋め込まれている、第2のアレイ。
【請求項34】
前記生体適合性、溶解性、又は分解性材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1から25まで、及び27から30までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から30までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ、又は請求項33に記載の第2のアレイ。
【請求項35】
アレイ・カバーを含む、請求項33又は34に記載の第2のアレイ。
【請求項36】
前記アレイ・マトリックスは、前記アレイ・カバーの遠位面に延びる、請求項35に記載の第2のアレイ。
【請求項37】
前記アレイ・マトリックスの一部を取り囲む、可撓性の非分解性材料のアレイ・ケーシングをさらに含む、請求項33から36までのいずれか一項に記載の第2のアレイ。
【請求項38】
乾燥すると固形であり、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料の外側アレイ・マトリックスに埋め込まれている、請求項37に記載の第2のアレイ。
【請求項39】
前記生体適合性材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、請求項38に記載の第2のアレイ。
【請求項40】
請求項1から25まで、及び27から30までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から30までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延び、任意選択的に前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを形成するステップと、
前記遠位マトリックスに対して近位に、また、任意選択的な近位マトリックスに対して遠位に、前記絶縁性要素のセクションに摺動促進組成物を塗布するステップであって、前記摺動促進組成物は、前記導電性要素の電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進し、前記媒体が任意選択的に、前記導電性要素の前記絶縁層と電気絶縁非分解性材料の第1の層との間に十分な隙間/内腔を提供する、ステップと、
任意選択的に、前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成するステップと、
前記遠位マトリックスと前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆するステップであって、それにより、遠位チャンバ及び第1の構造要素を形成する、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分を被包するケーシングをもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の第1の層との一部を、前記電気導電性要素の前記遠位非絶縁性部分を含む、前記遠位マトリックスの遠位端(前記遠位チャンバの遠位端)の近くで切断するステップであって、それにより、前記遠位区画の遠位開口をもたらす、ステップと、
さらなる遠位先端マトリックスを前記遠位開口の遠位に塗布するステップと、
前記先端マトリックスと前記第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第2の層で被覆するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの前記ケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、ステップと、
を含み、
前記遠位マトリックス及び任意選択的に近位マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記微小電極又はプローブに構造的支持を与え、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される、方法。
【請求項41】
請求項2から25まで、及び27から30までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から30までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延び、任意選択的に前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを形成するステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成し、それにより、軸方向の広がりを有する前記絶縁性導電性要素の中間セクションを形成するステップであって、前記遠位マトリックスの近位に、また、前記近位マトリックスの遠位に位置決めされた前記中間セクションは、前記遠位マトリックス及び近位マトリックスによって被覆されない、ステップと、
第1の中間マトリックスの薄(最大約5μm)層及び/又は摺動促進組成物を前記絶縁性要素の前記中間セクションに塗布して、前記導電性要素の前記絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進するステップであって、前記第1の中間マトリックス及び/又は組成物は、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の前記第1の層との間に十分な隙間/内腔(環状チャネル)を提供する、ステップと、
遠位マトリックス、近位マトリックス、並びに前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の前記中間セクションであって、中間マトリックス及び/又は摺動促進組成物を含む前記中間セクションを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆するステップであって、それにより、遠位チャンバ、第1の構造要素、及び近位区画を含むケーシングを提供する、ステップと、
任意選択的に、前記遠位チャンバと近位区画との間での前記第1の層の半径方向における狭窄部において電気絶縁非分解性材料の前記第1の層に第2の中間マトリックスを設けるステップと、
前記電気導電性要素の前記遠位非絶縁性部分と電気絶縁材料の前記第1の層との一部を、前記遠位マトリックスの遠位端(前記遠位チャンバの遠位端)の近くで切断するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの遠位開口をもたらす、ステップと、
さらなる遠位先端マトリックスを前記遠位開口の遠位に塗布するステップと、
前記遠位先端マトリックスと前記第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁材料の第2の層で被覆するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの前記ケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、ステップと、
前記第1の層及び任意選択的に第2の層を前記近位マトリックスの周方向環状ゾーンにおいて除去するステップと
を含み、
前記遠位マトリックス、遠位先端マトリックス、近位マトリックス、並びに任意選択的に第1及び第2の中間マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のものであり、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される、方法。
【請求項42】
請求項1から25まで、及び27から30までのいずれか一項に記載の微小電極、又は請求項26から30までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分に対して軸方向移動を可能にするように構成された第1の構造要素を提供するステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の周りに、好適には、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から特定の軸方向距離のところに、前記第1の構造要素を位置決めステップと、
任意選択的に、水性体液中で溶解可能又は分解可能である近位マトリックスを、前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の周りに塗布するステップであって、前記近位マトリックスは、近位方向に前記第1の構造要素の近位面から延びる、ステップと、
水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを、遠位方向に前記第1の構造要素の遠位面から延び、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に、好適には、最大数ミリメートル延びる前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに塗布するステップと、
電気絶縁非分解性材料の第1の層を、任意選択的に前記近位及び遠位マトリックスと前記第1の構造要素の周囲とに塗布するステップであって、それにより、遠位チャンバ及び近位区画を含むケーシングを形成する、ステップと、
を含み、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層に貫設される、方法。
【請求項43】
前記近位マトリックスは、近位方向に広くなる、請求項40から42までのいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0170
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0170】
図26は、係合要素(307)を備える微小電極の一変形例を示す。ケーシング(308)は、ケーシングの外面に好ましくは接着取り付けされるマイクロファイバ又はナノファイバの網(306)を呈する。マイクロファイバ又はナノファイバは、周囲軟組織に対してケーシングの摩擦を増加させる。図26はまた、第1の構造構成要素(304)と、導電性要素(301)の周りにあるとともに近位導電性要素の絶縁性部分(309)を囲む絶縁部(300)との間の隙間/内腔(環状チャネル)(305)を示す。明確の理由から、隙間の寸法は誇張されている。係合要素は、ニードル(図示せず)のような細長い剛性ピンと可逆的に係合するように構成されている。ピンは、微小電極を軟組織に挿入するか又は微小電極を軟組織に隣接して配置するようにさらに構成されている。
〔条項1〕
軟組織、特に神経組織、内分泌組織、及び筋肉組織に、少なくとも部分的に埋め込まれ、又は少なくとも部分的に隣接して配置されるように構成された微小電極であって、
前記微小電極は、近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分を含む細長い電気導電性要素を備え、前記導電性要素の少なくとも一部は、電気絶縁非分解性材料のケーシング(エンベロープ)内に配置され、
前記導電性要素の前記非絶縁性部分は、遠位チャンバを形成する前記ケーシングによって被包(包囲)され、前記遠位チャンバ内で、前記導電性要素は、軸方向に摺動することができ、(植え込み後に)前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記軟組織との間に流体電気導電性ブリッジを提供する少なくとも1つの開口を有する前記遠位チャンバの前記ケーシングは、前記遠位チャンバと前記組織との間でイオン交換を可能にし、
前記少なくとも1つの開口は、電気的興奮性細胞の記録及び刺激に有用であり、
前記ケーシングは、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分が内部で軸方向に摺動することができる第1の構造構成要素を含む、微小電極。
〔条項2〕
前記第1の構造構成要素は、前記ケーシング(エンベロープ)を前記遠位チャンバと近位区画とに区分する、条項1に記載の微小電極。
〔条項3〕
前記電気絶縁性部分の少なくとも一部は、前記遠位チャンバ内に局在化される、条項1又は2に記載の微小電極。
〔条項4〕
前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記電気絶縁性部分との間に、(軸方向移動を可能にする)内腔/隙間が設けられる、条項1から3までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項5〕
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と(前記少なくとも1つの開口に隣接する)前記軟組織との間の電気インピーダンスは、前記導電性要素の前記非絶縁性部分と、前記近位区画の近位部を囲む組織又は(近位区画がない場合は)前記第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスより低い、条項1から4までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項6〕
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と(前記少なくとも1つの開口に隣接する)前記軟組織との間の電気インピーダンスは、前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記近位区画の近位部を囲む組織又は前記第1の構造構成要素に対して近位の組織との間の電気インピーダンスより、少なくとも5倍低く、好ましくは少なくとも25倍低く、好ましくは少なくとも100倍低い、条項1から5までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項7〕
前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分とは、環状チャネルを形成し、(体液で満たされたときの)前記チャネルにわたる電気インピーダンスは、前記遠位ケーシングの1つ又は複数の前記開口の電気インピーダンスより少なくとも5倍高く、好ましくは少なくとも25倍高く、好ましくは少なくとも100倍高く、前記チャネルは、前記第1の構造要素が前記導電性要素に対して軸方向に摺動することを可能にする、条項1から6までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項8〕
前記第1の構造構成要素は、軸方向において、少なくとも約5μm~最大約10mm、好ましくは約5μm~最大約3mmの広がりを有する、条項1から7までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項9〕
前記ケーシング及び/若しくは前記第1の構造構成要素の最も内側の材料(複数可)、並びに/又は前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の材料は、(それぞれ)摩擦を低減するように選択される、条項1から8までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項10〕
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記少なくとも1つの開口との間の垂直距離は、前記導電性要素に対する前記ケーシングの軸方向移動時に略同じままであり、任意選択的には20%未満である、条項1から9までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項11〕
前記遠位チャンバは、第2の構造構成要素を含み、前記第2の構造構成要素は、前記遠位ケーシングに対する前記導電性要素の前記非絶縁性部分の半径方向移動を低減させるように構成され、また、前記第2の構造構成要素に対する前記非絶縁性導電性要素の軸方向移動を可能にするように構成されている、条項1から10までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項12〕
前記第2の構造構成要素は、前記ケーシングの一体部分である、条項11に記載の微小電極。
〔条項13〕
前記第2の構造構成要素は、前記ケーシングとは別個であり、少なくとも部分的に前記ケーシングに取り付けられ、前記非絶縁性導電性要素に摺動可能に接続又は係合されるように構成されている、条項11又は12に記載の微小電極。
〔条項14〕
前記少なくとも1つの開口は、少なくとも約1μm の面積を有する、条項1から13までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項15〕
前記遠位チャンバは、前記遠位ケーシングに複数の開口を含む、条項1から14までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項16〕
前記遠位チャンバの最大開口数は、前記遠位ケーシングの構造的硬さ/コンフォメーションを著しく損なうことのない最大開口数によって与えられる、条項1から15までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項17〕
前記遠位チャンバの個々の開口(又は複数の開口)は、約1μm ~最大約150000μm 以上の面積を有する、条項1から16までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項18〕
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分は、半径方向及び軸方向に撓むことを容易にする、好適には半径方向に撓むことを容易にするセクションを含む、条項1から17までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項19〕
前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記遠位部分は、球形状のような、遠位方向に狭くなる三次元形状を有する、条項1から18までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項20〕
前記遠位チャンバの近位部分は、下方に狭くなり、好ましくは、前記第1の構造構成要素を形成する環状形態を呈し、その内部で、前記第1の構造構成要素と前記導電性要素の前記電気絶縁性部分とは、軸方向に摺動することができる、条項1から19までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項21〕
前記ケーシングと隣接する前記軟組織との摩擦は、前記ケーシング及び/若しくは前記第1の構造構成要素の最も内側の材料並びに/又は前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の材料の摩擦より高い、条項1から20までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項22〕
前記ケーシングの最も外側の材料及び/又は最も外側の表面構造は、前記軟組織に対する摩擦を増加するように選択される、条項1から21までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項23〕
前記ケーシングは、内層及び外層である、材料の2つの層を含み、前記内層の材料は、前記外層の材料とは異なり、又は前記内層の表面構造は、前記外層の表面構造とは異なる、条項1から22までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項24〕
前記遠位チャンバの前記ケーシングは、ニードルのような細長い剛性ピンと可逆的に係合するように構成された係合要素を含み、前記ピンは、前記微小電極を前記軟組織に挿入し、又は前記微小電極を前記軟組織に隣接して配置するように構成されている、条項1から23までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項25〕
前記係合要素は、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記遠位部分に含まれる、条項24に記載の微小電極。
〔条項26〕
前記係合要素は、ループ又は網である、条項24又は25に記載の微小電極。
〔条項27〕
前記係合要素は、体液中で分解可能である、条項24から26までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項28〕
前記係合要素は、マイクロファイバ又はナノファイバによって確立された網である、条項24から27までのうちのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項29〕
前記ケーシングは、前記ケーシングと隣接する前記軟組織との摩擦を増加させる手段を含む、条項1から28までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項30〕
摩擦を増加させる前記手段は、前記ケーシングの最も外側の表面に取り付けられたマイクロファイバ又はナノファイバから選択される、条項29に記載の微小電極。
〔条項31〕
前記第1の構造要素と前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の最も外側の層との間の隙間/内腔は、前記最も外側の層に対する前記第1の構造要素の移動を促進する組成物、特に、脂質、ヒアルロン酸、(シリコーン・オイル又はシリコーン・グリースのような)シリコーン、及びグルコースのような単糖のポリマー、並びにそれらの組み合わせのうちのいずれか1つを含む組成物を含む、条項1から30までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項32〕
前記ケーシングは、回転対称形状、好適には円筒形状を有する、条項1から31までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項33〕
前記近位区画の直径は、近位方向に広くなる、条項2から32までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項34〕
前記遠位チャンバ及び任意選択的に前記近位区画は、薬学的に活性な物質のような少なくとも1つの生物学的に活性な物質を含む、条項1から33までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項35〕
前記近位区画に対して近位に延びる前記導電性要素は、前記近位及び遠位区画内に配置された前記導電性要素の1つ又は複数の材料とは異なる1つ又は複数の材料からなる、条項1から34までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項36〕
前記導電性要素は、導電性金属及び/又は導電性ポリマーのような導電性非金属材料を含む、条項1から35までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項37〕
前記電気導電性要素は、白金、イリジウム、金、タングステン、ステンレス鋼、かかる材料のアマルガム、導電性ポリマー、並びにグラフェン、グラファイト、及びカーボンナノチューブのような炭素含有材料の群から選択される材料を含み、又は前記材料から構成されている、条項1から36までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項38〕
前記ケーシングの前記電気絶縁材料は、生体適合性、非分解性、可撓性のポリマー材料、特に、ポリウレタン、ポリエチレン、ベンゼンを含む主鎖を有するポリマー(例えば、パリレンC及びパリレンMのようなパリレン)、及びテトラフルオロエチレンの重合に基づいたポリマーから選択される、生体適合性、可撓性のポリマーである、条項1から37までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項39〕
前記導電性要素の周りの前記電気絶縁材料は、条項38の材料及び追加的に(ガラス又はガラス状のような)電気絶縁可撓性無機材料のうちのいずれか1つから選択される、条項38に記載の微小電極。
〔条項40〕
前記遠位チャンバ、及び任意選択的に前記近位区画は、水性体液中で溶解可能又は分解可能であり、乾燥すると前記微小電極に構造的支持を与える生体適合性材料を含む、条項1から39までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項41〕
マイクロファイバ及び/又はナノファイバが、前記ケーシングの前記最も外側の表面に接着取り付けされている、条項1から40までのいずれか一項に記載の微小電極。
〔条項42〕
条項1から41までのいずれか一項に記載の微小電極を含む微小電極プローブであって、前記遠位チャンバ、及び任意選択的に前記近位区画は、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに構造的支持を与える生体適合性材料を含み、前記生体適合性材料は、水性体液中で溶解可能又は分解可能である、微小電極プローブ。
〔条項43〕
前記微小電極又は微小電極プローブは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料の埋め込みマトリックスに埋め込まれている、条項1から41までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42に記載の微小電極プローブ。
〔条項44〕
前記微小電極又は微小電極プローブは、要素ホルダを備え、前記電気導電性材料は、前記要素ホルダを介して(近位方向に)延び、前記ホルダは、前記軟組織とは異なる組織、特に骨組織又は結合組織に固定されるように構成されている、条項1から41までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42又は43に記載の微小電極プローブ。
〔条項45〕
前記電気導電性要素は、生体信号の登録及び軟組織の刺激のための装置と電気的な係合状態にある、条項1から41まで、43、及び44のいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から44までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ。
〔条項46〕
前記生体適合性マトリックス材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、条項1から41まで、及び43から45までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から45までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ。
〔条項47〕
前記微小電極及び/又は微小電極プローブは、マイクロファイバ又はナノファイバに接着取り付けされている、条項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極の第1のアレイ。
〔条項48〕
前記マイクロファイバは分解性である、条項47に記載の第1のアレイ。
〔条項49〕
条項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ、又は条項46若しくは47に記載の第1のアレイの第2のアレイであって、前記微小電極、微小電極プローブ、又は第1のアレイは、好適には略並列に配置され、前記微小電極、微小電極プローブ、又は第1のアレイは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記アレイに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のアレイ・マトリックスに部分的又は完全に埋め込まれている、第2のアレイ。
〔条項50〕
前記生体適合性、溶解性、又は分解性材料は、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される、条項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブ、又は条項47若しくは48に記載の第1のアレイ、又は条項49に記載の第2のアレイ。
〔条項51〕
アレイ・カバーを含む、条項49又は50に記載の第2のアレイ。
〔条項52〕
前記アレイ・マトリックスは、前記アレイ・カバーの遠位面に延びる、条項51に記載の第2のアレイ。
〔条項53〕
前記微小電極及び/又は微小電極プローブは、前記マトリックスの溶解及び分解後、各微小電極が、任意の他の微小電極に対して特に軸方向に移動することができるように配置されている、条項49から52までのいずれか一項に記載の第2のアレイ。
〔条項54〕
前記アレイ・マトリックスの一部を取り囲む、可撓性の非分解性材料のアレイ・ケーシングをさらに含む、条項49から53までのいずれか一項に記載の第2のアレイ。
〔条項55〕
乾燥すると固形であり、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料の外側アレイ・マトリックスに埋め込まれている、条項54に記載の第2のアレイ。
〔条項56〕
前記外側アレイ・マトリックスはそれぞれ、炭水化物ベースの材料、タンパク質ベースの材料、及び非天然ポリマー材料、並びにそれらの混合物から選択される生体適合性材料である、条項49及び55に記載の第2のアレイ。
〔条項57〕
条項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延び、任意選択的に前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを形成するステップと、
前記遠位マトリックスに対して近位に、また、任意選択的な近位マトリックスに対して遠位に、前記絶縁性要素のセクションに摺動促進組成物を塗布するステップであって、前記摺動促進組成物は、前記導電性要素の前記絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進し、前記媒体が任意選択的に、前記導電性要素の前記絶縁層と電気絶縁非分解性材料の第1の層との間に十分な隙間/内腔を提供する、ステップと、
任意選択的に、前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成するステップと、
前記遠位マトリックスと前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆するステップであって、それにより、遠位チャンバ及び第1の構造要素を形成する、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分を被包するケーシングをもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記非絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の第1の層との一部を、前記電気導電性要素の前記遠位非絶縁性部分を含む、前記遠位マトリックスの遠位端(前記遠位チャンバの遠位端)の近くで切断するステップであって、それにより、前記遠位区画の遠位開口をもたらす、ステップと、
さらなる遠位先端マトリックスを前記遠位開口の遠位に塗布するステップと、
前記先端マトリックスと前記第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁非分解性材料の第2の層で被覆するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの前記ケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、ステップと、
を含み、
前記遠位マトリックス及び任意選択的に近位マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記微小電極又はプローブに構造的支持を与え、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される、方法。
〔条項58〕
条項2から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は、
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに軸方向に延び、任意選択的に前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に延びる、水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを形成するステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の少なくとも一部の周りに軸方向に延びる近位マトリックスを形成し、それにより、軸方向の広がりを有する前記絶縁性導電性要素の中間セクションを形成するステップであって、前記遠位マトリックスの近位に、また、前記近位マトリックスの遠位に位置決めされた前記中間セクションは、前記遠位マトリックス及び近位マトリックスによって被覆されない、ステップと、
第1の中間マトリックスの薄(最大約5μm)層及び/又は摺動促進組成物を前記絶縁性要素の前記中間セクションに塗布して、前記導電性要素の前記絶縁層に対して電気絶縁非分解性材料の第1の層の軸方向移動を促進するステップであって、前記第1の中間マトリックス及び/又は組成物は、前記導電性要素の前記電気絶縁性部分と電気絶縁非分解性材料の前記第1の層との間に十分な隙間/内腔(環状チャネル)を提供する、ステップと、
遠位マトリックス、近位マトリックス、並びに前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の前記中間セクションであって、中間マトリックス及び/又は摺動促進組成物を含む前記中間セクションを、電気絶縁非分解性材料の第1の層で被覆するステップであって、それにより、遠位チャンバ、第1の構造要素、及び近位区画を含むケーシングを提供する、ステップと、
任意選択的に、前記遠位チャンバと近位区画との間での前記第1の層の半径方向における狭窄部において電気絶縁非分解性材料の前記第1の層に第2の中間マトリックスを設けるステップと、
前記電気導電性要素の前記遠位非絶縁性部分と電気絶縁材料の前記第1の層との一部を、前記遠位マトリックスの遠位端(前記遠位チャンバの遠位端)の近くで切断するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの遠位開口をもたらす、ステップと、
さらなる遠位先端マトリックスを前記遠位開口の遠位に塗布するステップと、
前記遠位先端マトリックスと前記第1の層の少なくとも一部とを、電気絶縁材料の第2の層で被覆するステップであって、それにより、前記遠位チャンバの前記ケーシングの遠位エンドキャップ形成部を形成する、ステップと、
前記第1の層及び任意選択的に第2の層を前記近位マトリックスの周方向環状ゾーンにおいて除去するステップと
を含み、
前記遠位マトリックス、遠位先端マトリックス、近位マトリックス、並びに任意選択的に第1及び第2の中間マトリックスは、軟組織への挿入のために乾燥すると前記プローブに十分な硬さを与え、水性体液中で溶解可能又は分解可能である生体適合性材料のものであり、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層及び任意選択的に第2の層に貫設される、方法。
〔条項59〕
条項1から41まで、及び43から46までのいずれか一項に記載の微小電極、又は条項42から46までのいずれか一項に記載の微小電極プローブを製造する方法であって、前記方法は
細長い電気導電性要素を準備するステップと、
前記導電性要素の近位部分を電気絶縁層で被覆するステップであって、それにより、前記導電性要素の近位電気絶縁性部分及び遠位非絶縁性部分をもたらす、ステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分に対して軸方向移動を可能にするように構成された第1の構造要素を提供するステップと、
前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の周りに、好適には、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から特定の軸方向距離のところに、前記第1の構造要素を位置決めステップと、
水性体液中で溶解可能又は分解可能である近位マトリックスを、前記導電性要素の前記近位電気絶縁性部分の周りに塗布するステップであって、前記近位マトリックスは、近位方向に前記第1の構造要素の近位面から延びる、ステップと、
水性体液中で溶解可能又は分解可能である遠位マトリックスを、遠位方向に前記第1の構造要素の遠位面から延び、前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分から遠位方向に、好適には、最大数ミリメートル延びる前記導電性要素の前記遠位非絶縁性部分の周りに塗布するステップと、
電気絶縁非分解性材料の第1の層を、前記近位及び遠位マトリックスと前記第1の構造要素の周囲とに塗布するステップであって、それにより、遠位チャンバ及び近位区画を含むケーシングを形成する、ステップと、
を含み、
少なくとも1つの開口が、前記遠位チャンバの前記ケーシングの前記第1の層に貫設される、方法。
〔条項60〕
前記近位マトリックスは、近位方向に広くなる、条項58に記載の方法。
【国際調査報告】