(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】新規な酵素活性測定方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/48 20060101AFI20230714BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z
C12N9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579789
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2021005035
(87)【国際公開番号】W WO2022085882
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0135340
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンウン
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、ソン ベ
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ジェ ヨン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
4B063QQ26
4B063QR41
4B063QR43
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
本出願は、酵素、特にデキストランスクラーゼ(dextransucrase)から糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別し、その活性を測定する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)砂糖にデキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するステップと、
(ii)砂糖及び糖受容体の混合物を用いて、デキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するステップと、
(iii)前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較するステップとを含む、
糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別する方法。
【請求項2】
前記(i)及び(ii)ステップは、順次又は同時に行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較の結果、(i)の遊離グルコース量に比べて、(ii)の遊離グルコース量が減少した場合、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼであると判断するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選別は、デキストランスクラーゼから糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選別は、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別するものであるか、又はその活性測定を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記(ii)ステップの糖受容体は、ステビアである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、酵素、特にデキストランスクラーゼ(dextransucrase)から糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別し、その活性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デキストランスクラーゼ(dextransucrase)は、砂糖からグルコースを遊離させると共に、グルコースの高分子重合反応を触媒することにより、高分子物質であるデキストランやオリゴ糖などの多糖類を生産することができる。あるいは、基質にステビア(ステビオール配糖体)、ポリフェノールなどの物質が存在する場合、デキストランスクラーゼはその広い基質特異性により砂糖からグルコースを遊離させ、その後前記ステビア、ポリフェノールなどにグルコースを転移する糖転移活性を有する。ここで、前述したように糖転移したステビア、ポリフェノールなどは、溶解度が改善されたり、味が向上するなど、産業的価値が向上する。
【0003】
前述したデキストランスクラーゼの活性は、主に遊離したフルクトースを測定することにより、砂糖がフルクトース及びグルコースにどれほど加水分解されたかを分析する還元糖定量法(Determination of Reducing Sugar,DNS)で測定するのが一般的である。しかし、前記方法は、デキストランスクラーゼによる砂糖加水分解の程度を測定することができるにすぎず、糖転移活性は反映されていないという問題がある。すなわち、DNSを用いて改良されたデキストランスクラーゼを選別すると、糖転移活性に優れるデキストランスクラーゼではなく、砂糖加水分解又はデキストランの重合活性に優れるデキストランスクラーゼのみが選別される可能性が高い。
【0004】
しかし、上記問題にもかかわらず、デキストランスクラーゼの活性を測定するには、いまだDNS以外の方法がないので、新規なデキストランスクラーゼ活性測定方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、デキストランスクラーゼによる砂糖加水分解反応後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移反応後の遊離グルコース量の差を測定し、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを迅速かつ効率的に選別又は改良する高速選別法を開発し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、(i)砂糖にデキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するステップと、(ii)砂糖及び糖受容体の混合物を用いて、デキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するステップと、(iii)前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較するステップとを含む、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別する方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本出願の方法は、デキストランスクラーゼによる砂糖加水分解反応後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移反応後の遊離グルコース量の差を測定し、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼの活性を分析することにより、糖受容体への糖転移活性を有し、デキストランスクラーゼ活性に優れる酵素を迅速かつ効率的に選別又は改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】対照群酵素における砂糖加水分解後の遊離グルコース量、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量、並びにそれらの差を示す図である。
【
図2】実験群酵素における砂糖加水分解後の遊離グルコース量、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量、並びにそれらの差を示す図である。
【
図3】各酵素濃度の対照群及び実験群における糖転移の傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0010】
本出願の一態様は、(i)砂糖にデキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するステップと、(ii)砂糖及び糖受容体の混合物を用いて、デキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するステップと、(iii)前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較するステップとを含む、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別する方法を提供する。
【0011】
従来の還元糖定量法(Determination of Reducing Sugar,DNS)は、デキストランスクラーゼが砂糖を加水分解する程度を確認するのには効率的であるが、糖転移活性を測定するには限界があり、具体的には、糖受容体に糖転移したか否かを直接確認するには限界があるので、本出願は、遊離グルコース量の比較により間接的にそれを確認する方法を考案したという点に特徴がある。
【0012】
本出願における「デキストランスクラーゼ(dextransucrase)」とは、微生物から分泌される酵素の一種であり、砂糖からグルコースを遊離させると共に、グルコースの高分子重合反応を触媒することにより、高分子物質であるデキストランやオリゴ糖などの多糖類を生産する酵素、又は基質にステビア(ステビオール配糖体)、ポリフェノールなどの糖受容体が存在する場合、砂糖からグルコースを遊離させ、その後前記ステビア、ポリフェノールなどにグルコースを転移する糖転移活性を有する酵素を意味する。
【0013】
本出願における「糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼ」とは、前述したデキストランスクラーゼのうち、基質にステビア、ポリフェノールなどの糖受容体が存在する場合、砂糖からグルコースを遊離させ、その後前記ステビア、ポリフェノールなどにグルコースを転移する糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを意味する。すなわち、本出願における「糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼ」は、砂糖加水分解活性及び糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼである。
【0014】
前記「糖受容体」とは、糖転移の対象物質を意味し、本出願においては、グルコースを除く天然物であり、具体的にはステビア又はポリフェノールであり、より具体的にはステビアであるが、糖を転移する天然物であればいかなるものでもよい。
【0015】
本出願における「ステビア(stevia)」とは、キク科に属する南アメリカ原産の同名の植物であるステビア(Stevia rebaudiana)の葉から発見された甘味をもたらす化合物である。ステビアは、人体では代謝されず、血糖反応を引き起こさないので、糖を代替する甘味料としても用いられる。前記ステビアは、ステビオール配糖体又はステビオールグリコシド(steviol glycosides)ともいう。
【0016】
本出願の方法において、(i)ステップは、砂糖にデキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するものであってもよい。
【0017】
前記デキストランスクラーゼは、各濃度で添加して反応させるものであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
具体的には、前記(i)ステップは、基質として砂糖とデキストランスクラーゼ酵素液を混合して反応させ、その後各反応時間で加水分解して遊離したグルコース量を定量するものであってもよい。
【0019】
前記遊離グルコース量を定量する方法は、当該技術分野で公知の方法であればいかなるものでもよい。例えば、GOD(Glucose oxidase)-POD(Peroxidase)法、還元糖定量法(Determination of Reducing Sugar,DNS)、RID(Refractive Index Detector)を用いる液体クロマトグラフィー(Liquid Chromatography,LC)などの方法が挙げられる。本出願において、前記遊離したグルコース量を定量する方法は、GOD-POD法であってもよい。
【0020】
本出願の方法において、(ii)ステップは、基質として砂糖及び糖受容体の混合物を用いて、デキストランスクラーゼを反応させて遊離グルコース量を定量するものであってもよい。
【0021】
前記デキストランスクラーゼは、(i)ステップと同一の各濃度で添加して反応させるものであるが、これに限定されるものではない。
【0022】
具体的には、前記(ii)ステップは、砂糖及び糖受容体の混合物とデキストランスクラーゼ酵素液を混合して反応させ、その後各反応時間で加水分解して遊離したグルコース量を定量するものであってもよい。
【0023】
前記遊離グルコース量を定量する方法については前述した通りである。
【0024】
本出願において、前記(i)及び(ii)ステップは、順次又は同時に行われるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本出願の方法において、(iii)ステップは、前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較するものであってもよい。
【0026】
具体的には、前記比較は、(i)の遊離グルコース量の数値から、前記(ii)の遊離グルコース量の数値を引いて比較するものであってもよい。
【0027】
本出願において、前記選別は、デキストランスクラーゼから糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別するものであるが、これに限定されるものではない。
【0028】
具体的には、本出願の方法の(iii)ステップにおいて、前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較した結果、(i)の遊離グルコース量に比べて、(ii)の遊離グルコース量が減少した場合、前記デキストランスクラーゼが糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼであると判断し、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別するものであってもよい。
【0029】
また、本出願の方法の(iii)ステップにおいて、前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較した結果、(i)の遊離グルコース量が(ii)の遊離グルコース量と同程度である場合、前記デキストランスクラーゼが糖受容体への糖転移活性のないデキストランスクラーゼであると判断するものであってもよい。
【0030】
本出願において、前記選別は、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別するものであるが、これに限定されるものではなく、その活性測定を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0031】
具体的には、本出願の方法の(iii)ステップにおいて、前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較した結果、(i)の遊離グルコース量に比べて、(ii)の遊離グルコース量が減少した場合、前記デキストランスクラーゼが糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼであると判断し、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼを選別するものであってもよい。
【0032】
また、本出願の方法の(iii)ステップにおいて、前記(i)の遊離グルコース量と、前記(ii)の遊離グルコース量を比較した結果、(i)の遊離グルコース量に比べて、(ii)の遊離グルコース量が減少し、その数値の減少がデキストランスクラーゼ濃度につれて大きくなった場合、又は他のデキストランスクラーゼに比べて大きくなった場合、数値の減少の程度により、前記デキストランスクラーゼの糖転移活性を測定するものであってもよい。
【0033】
すなわち、(i)の遊離グルコース量に比べて、(ii)の遊離グルコース量が減少した程度が大きいほど、デキストランスクラーゼの糖転移活性が高いと判断することにより、各デキストランスクラーゼの糖転移活性を比較及び/又は測定するものであってもよい。
【0034】
前記(i)ステップの加水分解反応、並びに(ii)ステップの加水分解反応及び糖転移反応は、1時間以内に行われるものであるが、これに限定されるものではない。しかし、酵素によって加水分解反応及び糖転移反応が1時間以降も持続する場合は、特に時間を制限することなく前記反応を行ってもよい。
【0035】
本出願は、砂糖加水分解活性が高く、糖転移活性が低いながらも、多糖類重合活性が高いデキストランスクラーゼは、砂糖を加水分解し、その後グルコースを遊離させるので、遊離グルコース量が増加するが(a)、糖受容体(ステビア,ポリフェノール)を添加すると(b)、糖転移反応に用いられるグルコースが微量であり、反応器内の(a)と同程度のグルコースが残っているので、(a)-(b)の値が0に収斂する(
図3の左)。しかし、砂糖加水分解活性が高く、糖転移活性が高いながらも、多糖類重合活性が低いデキストランスクラーゼは、砂糖を加水分解し、その後グルコースを遊離させるので、遊離グルコース量が増加し(a)、糖受容体(ステビア,ポリフェノール)を添加すると(b)、遊離したグルコースが糖受容体に転移するので、(a)-(b)の値が糖転移したグルコース量となる。ここで、糖受容体(ステビア,ポリフェノール)に対する糖転移活性が増加するにつれて、(a)-(b)の値も増加することが確認された(
図3の右)。
【0036】
よって、デキストランスクラーゼの活性を有する酵素は、前述したようにデキストランスクラーゼの(a)砂糖加水分解、及び(b)多糖類重合又は糖転移反応が完了したら、遊離グルコース量の差を確認することにより、区別及び選別するものであってもよい。
【0037】
実施例
以下、実施例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示するものにすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。これは、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0038】
実施例1
砂糖加水分解後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量の差を用いた糖転移酵素活性の評価
200mMの砂糖溶液にデキストランスクラーゼ(dextransucrase)の各活性における酵素液(0.5,1.0,2.0,3.0U/ml,還元糖定量法(Determination of Reducing Sugar,DNS)による)を添加して加水分解反応を起こさせ、その後遊離したグルコース量を1次的に定量し、200mMのステビアを含む同一濃度の砂糖溶液(200mM)に前記デキストランスクラーゼの各活性における酵素液を添加して加水分解及び糖転移反応を起こさせ、次いで遊離したグルコース量を2次的に定量した。2つの定量値の差が純粋糖転移グルコース量であると仮定し、酵素の糖転移活性を評価することができるか否か確認した。
【0039】
具体的には、砂糖単一基質と、各対照群又は実験群デキストランスクラーゼ酵素液(0.5~3.0U/ml)を混合して反応させ、その後各反応時間で加水分解された遊離グルコース量をGOD(Glucose oxidase)-POD(Peroxidase)法により1次的に定量した(1)。また、砂糖及びステビア混合基質と、各対照群又は実験群デキストランスクラーゼ酵素液(0.5~3U/ml)を混合し、各反応時間の加水分解及び糖転移反応後に遊離したグルコース量をGOD-POD法により2次的に定量した(2)。その後、(1)の定量値から、(2)の定量値を引いて、各酵素濃度において糖転移したグルコース量が傾向性を有するか否か確認した。ここで、砂糖加水分解活性を保有しながらも、糖転移活性が低く、多糖類重合活性が高いロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)ATCC13146由来のデキストランスクラーゼを陰性対照群として用い、砂糖加水分解活性を保有しながらも、糖転移活性が高く、多糖類重合活性が低いラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)DSM20444菌株由来のデキストランスクラーゼを実験群として用いた。
【0040】
実施例2
対照群酵素における砂糖加水分解後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量の差
ロイコノストック・メセンテロイデスATCC13146由来のデキストランスクラーゼを用いて、砂糖加水分解反応後に放出された遊離グルコース量をGOD(glucose oxidase)-POD(Peroxidase)法により1次的に定量し(1)、砂糖、ステビア混合基質を用いて、加水分解/糖転移反応後の反応液中の遊離グルコース量を2次的に定量した(2)。(1)-(2)の値が糖転移反応に用いたグルコース量になるものと予想した。(1)と(2)の値が同等レベルであり、(1)-(2)の値が0に収斂することが確認された(表1)。
【0041】
具体的には、砂糖加水分解活性を保有しながらも、糖転移活性が低く、多糖類重合活性が高い対照群デキストランスクラーゼは、砂糖加水分解後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量(表1)の差が現れず、各活性、各反応時間における傾向性がなく(表2及び
図1)、砂糖加水分解後に放出されたグルコースが直ちに多糖類重合反応の基質として用いられ、反応液から検出された遊離グルコース量が少なかった。
【0042】
【0043】
【0044】
実施例3
実験群酵素における砂糖加水分解後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量の差
ラクトバチルス・マリDSM20444由来のデキストランスクラーゼを用いて、砂糖加水分解反応後に放出された遊離グルコース量をGOD(glucose oxidase)-POD(Peroxidase)法により1次的に定量し(1)、砂糖、ステビア混合基質を用いて、加水分解/糖転移反応後の反応液中の遊離グルコース量を2次的に定量した(2)。(1)-(2)の値が糖転移反応に用いたグルコース量になるものと予想した。糖転移活性が高いほど、(1)-(2)の値が増加することが確認された(表3)。
【0045】
具体的には、砂糖加水分解活性が高く、糖転移活性が高いながらも、多糖類重合活性が低いデキストランスクラーゼは、反応後1時間で各酵素活性における傾向性が明確になることが確認された(表4及び
図2)。
【0046】
【0047】
【0048】
実施例4
砂糖加水分解後の遊離グルコース量と、砂糖加水分解及び糖転移後の遊離グルコース量の差を用いた糖転移酵素活性の再現性評価
実施例1の再現性評価のために、ステビア濃度、酵素濃度を変更して実験を行った。200mMの砂糖溶液にデキストランスクラーゼの各活性における酵素液(0.5,1.0,3.0,5.0U/ml,還元糖定量法(Determination of Reducing Sugar,DNS)による)を添加して加水分解反応を起こさせ、その後遊離したグルコース量を1次的に定量し、100mMのステビアを含む同一濃度の砂糖溶液(200mM)に前記デキストランスクラーゼの活性別酵素液を添加して加水分解及び糖転移反応を起こさせ、次いで遊離したグルコース量を2次的に定量した。2つの定量値の差が純粋糖転移グルコース量であると仮定し、酵素の糖転移活性を評価することができるか否か確認した。
【0049】
具体的には、砂糖単一基質と、各対照群又は実験群デキストランスクラーゼ酵素液(0.5~5.0U/ml)を混合して反応させ、その後各反応時間で加水分解された遊離グルコース量をGOD(Glucose oxidase)-POD(Peroxidase)法により1次的に定量した(1)。また、砂糖及びステビア混合基質と、各対照群又は実験群デキストランスクラーゼ酵素液(0.5~3U/ml)を混合し、各反応時間の加水分解及び糖転移反応後に遊離したグルコース量をGOD-POD法により2次的に定量した(2)。その後、(1)の定量値から、(2)の定量値を引いて、各酵素濃度において糖転移したグルコース量が傾向性を有するか否か確認した(表5及び6)。
【0050】
【0051】
【0052】
その結果、反応初期段階である反応開始後1時間以内に各酵素濃度において糖転移の傾向性が現れたので、糖受容体への糖転移活性を有するデキストランスクラーゼの選別が可能であることが確認された(
図3)。
【0053】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】