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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】水頭症の治療のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/00 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
A61H1/00 311B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580307
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2021055544
(87)【国際公開番号】W WO2021260575
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】102020000015256
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522196984
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ・ポリクリニコ・ウニヴェルシターリオ・アゴスティーノ・ジェメッリ・イエッレチチエッセ
【氏名又は名称原語表記】Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCS
(71)【出願人】
【識別番号】505369114
【氏名又は名称】ウニヴェルスィタ カットリーカ デル サクロ クオーレ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アニール,カルメロ
(72)【発明者】
【氏名】ネビア,ファビオ
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA07
4C046AA35
4C046BB06
4C046DD02
4C046DD36
4C046EE10
4C046FF28
(57)【要約】
本発明は、ユーザの頸部に装着可能なデバイス(100)に関し、このデバイス(100)は、-可動押圧手段(11)が設けられた本体(10)と、-ユーザの心拍数に関連付けられたデータを入力として受信し、かつ対応する出力信号(20’)を生成するように構成された制御ユニット(20)と、を備え、当該出力信号(20’)が、心拍数に従って当該押圧手段(11)の拍動運動を決定し、当該押圧手段(11)は、頸静脈で頸部を圧迫及び圧迫解除するように位置決めされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水頭症の治療のためのユーザの頸部に装着可能なデバイス(100)であって、
- 使用時に頸静脈に位置決めされる可動の押圧手段(11)が設けられた本体(10)と、
- 前記ユーザの心拍数に関連付けられたデータを入力として受信し、かつ対応する出力信号(20’)を生成するように構成された制御ユニット(20)と、を備え、
前記出力信号(20’)が、前記ユーザの心拍数に従って前記押圧手段(11)の拍動運動を決定し、前記押圧手段(11)が、前記頸静脈で前記頸部を圧迫及び圧迫解除するように構成されている、
装着可能なデバイス(100)。
【請求項2】
前記出力信号(20’)が、単一の心拍に関連付けられたパルスを含み、当該パルスが、対応する心拍の初期時点に対して所定の位相シフト(T)を有するトリガ時点(T)において生成される、
請求項1に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項3】
前記出力信号(20’)が、周期的であり、かつ2つの連続する心拍の間に経過する時間(T)よりも短い持続時間(T)を各々が有する複数のパルスを含む、
請求項1又は2に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項4】
前記出力信号(20’)が、三角形又は台形のプロファイルを有するパルスを含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項5】
前記パルスの持続時間が、互いに連続する第1の圧迫時間(T)及び第2の圧迫解除時間(T)を含み、圧迫時間(T)が、圧迫解除時間(T)よりも長い、
請求項2~4のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項6】
圧迫解除時間(T)が、2つの連続する心拍の間に経過する時間の関数として可変である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項7】
前記押圧手段(11)の最大偏位(Pmax)の最終位置及び最小偏位(Pmin)の最終位置が、それぞれ、圧迫時間(T)及び圧迫解除時間(T)に対応する、
請求項5又は6に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項8】
前記制御ユニット(20)が、リアルタイムECG信号を受信するように構成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項9】
押圧運動が、前記制御ユニット(20)によって制御されたステッパモータ又はソレノイドアクチュエータを備える駆動手段(30)を通して得られる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項10】
前記押圧手段(11)の位置を調整するための手段(12)を更に備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の装着可能なデバイス(100)と、前記ユーザの心拍数を検出するための手段(40)と、を備える、
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスの分野に関する。
【0002】
本発明は、具体的には、水頭症の非侵襲的治療のための装着可能なデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
水頭症は、頭蓋内圧亢進症の枠組み、又は「Hakim and Adams’s Triad」としても知られる、「歩行障害」、「認知欠損」、及び「括約筋失禁」を特徴とする症候群に多かれ少なかれ関連付けられる、脳室腔の容積の異常な増加(及び逆に、間質腔の減少)を「視覚的な」特徴とする病状である。
【0004】
このような病状の研究及び治療に関し、最新の仮説の1つは、水頭症の原因を、主に、互いに相関する2つの側面、すなわち、心拍数に関連付けられた髄液(liquoral)(CSF)拍動と、頭蓋から出る静脈血の「非対称」挙動とに関連付け、それらに、頭蓋内容積の変動、ひいてはCSF拍動の変動を補償する頭蓋内系の能力が依存する。
【0005】
脳動脈の周期的拍動などの拍動する律動的事象に関して、このような非対称性は、心臓の活動に結び付けられる結果となり、CSFによって、上矢状静脈洞への入口における遠位部分のいわゆる脳「架橋静脈」(「架橋様」静脈)に伝達される。
【0006】
容器(頭蓋及び硬膜)及び内容物(脳実質)によって構成される集合である頭蓋内系は、収縮期及び拡張期において区別される上述の拍動に対して非対称的に挙動する。換言すれば、収縮期(すなわち、拍動波が頭蓋に到達するとき)における挙動は、拡張期(すなわち、収縮期後の解放期)に対して異なる(すなわち、非対称である)。
【0007】
対称的な挙動の「理想的な」状況であれば、収縮期と拡張期との間に、血管によって提供される圧力及び抵抗、ひいては流量について同じ相対的挙動が存在するであろう。
【0008】
しかしながら、「現実の」状況では、流体の循環に対する抵抗が実際には管の形状によって変わる抵抗系によって決定されるため、頭蓋内系の非対称な挙動が観察される。この意味では、より高い抵抗値、ひいてはより低い流量は、収縮期中の高い圧力値に対応し、一方、より低い抵抗、ひいてはより高い流量は、拡張期中の低い圧力値に対応する。
【0009】
前述したように、このような挙動は、主に、上矢状静脈洞に入る部分における架橋静脈がとる形状(いわゆる「スターリングレジスタ」)によって条件付けられる。
【0010】
収縮期の間、このような血管がとる絞られた形状は、拡張期の間に減少するよりも多くの抵抗を静脈流出に対してもたらす。このようにして、間質液の産生は収縮期中に減少するが、間質液の吸収は拡張期中変わらないままであり、したがって逆に水頭症の形成を誘導する。
【0011】
文献において、このような病状の治療のための異なる新しい手法が知られており、それらは、CSF拍動圧を減少させることを目的とした、人工の、侵襲的で、かつ埋め込み可能なシステムを利用する。
【0012】
ある事例では、このような減少は、ある特定の量の脳脊髄液を除去及び注入することによって得られ、他の事例では、脳脊髄液と直接接触しない、予め確立された容積の好適に選択された流体を膨張及び収縮させることによって得られる。
【0013】
他の既知の解決策は、頸静脈内に小さなバルーンを挿入することを提供し、このバルーンは、「架橋様」脳静脈の入口に配置されたスターリングレジスタを「再開」し、遮断された静脈流を回復するために、「膨張」し、流出する血液の過圧と等しくかつ反対の過圧を生成するように構成されている。
【0014】
しかしながら、この解決策の欠点は、頸静脈の内部で小さなバルーンを膨張させることによって、脳血流が遮断されるという事実にあり、それは、脳の「タンポナーデ」の病理学的機構について既に起こっているため、それに対して、このような解決策が答えを出そうとしていたものである。
【0015】
例えば、米国特許出願公開第2019/262212(A1)号は、患者の身体の生物流体の流れを補助するように構成された刺激機構を通して当該生物流体の移動を補助するための装着可能なデバイス及び方法を開示している。米国特許出願公開第2013/317580(A1)号は、患者に対して非侵襲的な方式で供給される電気パルス及び/又は電磁パルスを投与することによって、発作などの神経学的病状を治療するためのデバイス及び方法を開示している。
【0016】
更に、非侵襲的手法に好適であり、かつ患者を入院させる必要がなくてもこのような病状を効果的に治療することが可能な解決策を提供する必要性が一般に感じられている。
【発明の概要】
【0017】
本発明によって提起され、かつ解決される技術的問題は、上記に示された問題を克服することであり、具体的には、水頭症の非侵襲的治療のためのデバイスを提供することである。
【0018】
これは、請求項1に記載のデバイスによって得られる。
【0019】
本発明の追加の特徴は、対応する従属請求項に記載される。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明は、可動押圧手段が設けられた本体と、制御ユニットと、を備える、ユーザの頸部に装着可能なデバイスを提供する。制御ユニットは、ユーザの心拍数に関連付けられたデータを入力として受信し、かつ対応する出力信号を生成するように構成されており、この出力信号が、心拍数に従って押圧手段の拍動運動を決定する。当該押圧手段は、頸静脈で頸部を圧迫及び圧迫解除するように位置決めされる。
【0021】
本発明の根底にある原理は、自然の病的なCSF拍動を間接的に調整する「対抗拍動」を施すことによって、頭蓋から出る血流のモードを修正する目的で血流に作用することによって水頭症を治療することであることが理解されるであろう。
【0022】
本発明は、すなわち、頸部の頸静脈に適用される経皮的な圧迫及び圧迫解除作用、外部からの好適に律動的かつ周期的な作用を通して頭蓋内拍動の影響を修正することを提案する。
【0023】
頸静脈は、脳静脈の排出マニホールドを表す静脈構造である上矢状静脈洞と直接連通している。本発明のデバイスは、そのような構造の間接的な圧迫及び圧迫解除を通して脳静脈の遠位部分(いわゆるスターリングレジスタ)に対するその作用を展開することによって、有利なことに、脳動脈の拡張に関連するいわゆる頭蓋内「拍動」を修正することを可能にする。
【0024】
この意味では、有利なことに、本発明のデバイスは、「静的」拍動波を決定し、ひいては水頭症の形成に対する頭蓋内拍動の影響を無効にするだけでなく、スターリングレジスタによって決定される非対称性の影響を低減さえする架橋様脳静脈(スターリングレジスタ)の「対抗拍動」を生成する。
【0025】
本発明の装着可能なデバイスの制御ユニットは、好ましくは、心拍数の周波数に対して所定の位相シフトを有する、押圧手段の運動に関連付けられた出力信号を生成するように構成されている。
【0026】
心周期自体に対して特定のオフセットで頸静脈を圧迫及び圧迫解除する押圧手段の拍動運動を通して心周期に律動的な「対抗拍動」を施すことにより、水頭症に起因する「非対称」の影響を無効にするようにスターリングレジスタの形状変動を決定することが可能になる。
【0027】
有利なことに、本発明は、ユーザの頸部に装着可能なコンパクトなデバイスを提供することによって、水頭症の治療のためのプロトコル及び医療処置を簡略化することを可能にし、このデバイスは、患者及び医療従事者の両方の完全な利点になるように完全に非侵襲的な方式で作用する。
【0028】
他の利点は、本発明の特徴及び使用モードとともに、限定目的ではなく例として示された本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の図面に示される図を参照する。
図1】本発明の好ましい実施形態によるデバイスの概略図を示す。
図2】本発明によるデバイスの第1の実施形態を示す。
図3A】好ましい実施形態による本発明のデバイスの構成要素間の動作接続のブロック図を示す。
図3B】本発明のデバイスの動作論理の好ましい実施形態のフロー図を示す。
図4】本発明のデバイスで得られる出力信号の単一パルスの好ましい実施形態のプロファイルのデカルト平面上の表現を示す。
図5図4の出力信号のプロファイルと、本発明のデバイスの制御ユニットに入るデータ、具体的にはECG信号との間の相関関係を、それぞれのデカルト平面上に表して示す。
図6】ECG信号の変動性に対する図5の出力信号のプロファイルの変動性を、それぞれのデカルト平面上に表して示す。
図7】本発明によるデバイスの第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述の図面を参照して本発明を以下に説明する。
【0031】
最初に図1を参照すると、本発明に関する装着可能なデバイスの概略図が示されており、全体として参照符号100で示されている。それを構成する構成要素が、見やすくするために別個に示されている。
【0032】
更に図2を参照すると、好ましい実施形態では、デバイス100は、ユーザの頸部の周りに装着可能なカラーの形態であり、以下で説明されるように、特に水頭症の非侵襲的治療のために構成されている。
【0033】
大まかに言えば、デバイス100は、可動押圧手段11が設けられた本体10と、制御ユニット20と、を備える。装着状態では、デバイス100、具体的には本体10は、好ましくは、ユーザの肩及び/又は胸部に載るように成形される。
【0034】
デバイス100は、上述の構成要素の動作のために、例えば本体10に一体化されたエネルギー供給手段を更に備える。いくつかの変形形態では、デバイス100は、デバイス100に自律性を提供し、かつデバイス100を完全に携帯可能にするように、充電式バッテリを有する電源を含むことができる。代替的に、当該供給手段は、図1の例に概略的に示されるように、低電源電圧に接続するための変圧器50を含むことができる。
【0035】
押圧手段11は、静止状態と作動状態との間で可動である。当該作動状態において、押圧手段11は、ユーザの頸部の領域において、具体的には頸静脈において、圧迫及び圧迫解除を提供するように構成されている。
【0036】
制御ユニット20は、ユーザの心拍数に関連付けられたデータを入力として受信し、かつ、心拍数に従って押圧手段11の拍動運動を決定するために、対応する出力信号20’を生成するように構成されている。
【0037】
特に図2を参照すると、本発明によるデバイス1の本体10の第1の実施形態の変形形態を見ることができる。
【0038】
そのような第1の変形形態によれば、本体10は、ユーザの頸部の周りのデバイス100の位置決めを調整するための手段12によって互いに接続された第1のフレーム要素10’及び第2のフレーム要素10’’を備える。
【0039】
一般に、本体10の全体の形状は、ユーザの頸部を取り囲むように環状である。このような本体10は、実際に頸部を受け入れるのに好適な内部領域10aを画定する。この第1の変形形態では、調整手段12は、当該内部領域10aの幅を変動させるように本体10の形状を修正することを可能にする。
【0040】
図2に示される例では、各フレーム要素10’、10’’が、「腕」のような形状であり、デバイス100がユーザによって装着された状態では、矢状面に対して実質的に頸部の両側に展開することがわかる。
【0041】
フレーム要素10’、10’’は、サイズが異なる頸部にデバイス1を挿入して好適に装着することを可能にするように、互いに接近及び/又は離間することによって調整することができる。
【0042】
調整手段12は更に、押圧手段11が上述の静止状態にあるときに、ユーザの頸部に対する押圧手段11の好適な位置を選択することを可能にする。好ましくは、当該静止状態において、押圧手段11は、ユーザの頸部と接触していない。
【0043】
好ましい実施形態によれば、押圧手段11は、作動状態下で、本体10に対して後退位置と引き出し位置との間で可動であるピストンを備える。
【0044】
引き出し位置では、押圧手段11は、頸静脈で頸部を圧迫することによって頸部と接触している。
【0045】
しかしながら、後退位置では、押圧手段11は、頸部と接触することができるが、頸部に対して行われる圧迫量は、押圧手段が引き出し位置にあるときよりも小さい。
【0046】
好ましい実施形態では、押圧手段11は、ユーザの頸部と接触する表面11aを更に備え、この表面11aは、頸静脈での頸部の自然な屈曲に従うように凹状のプロファイルを有する。
【0047】
好ましくは、デバイス1は、頸部の両側に押圧手段11を備え、図2の変形形態では、各フレーム要素10’、10’’が、それぞれの押圧手段11’、11’’を備える。押圧手段11の運動は、好ましくは同期している。
【0048】
ある実施形態では、上述の調整手段12は、フレーム要素10’、10’’の対応する対向端部を互いに拘束する。調整手段12は、例えば、ガイド/レール又はVelcro(登録商標)の入れ子式結合を含むことができる。調整手段12には、頸部の後方部分及び/又は喉の前部と本体10との接触を快適にするように、変形可能な要素が更に設けられ得る。
【0049】
本体10、具体的には図2に示される例における各フレーム要素10’、10’’は、好ましくは、医療分野で使用するために、プラスチック、低アレルギー性材料で作製される。それは、軽量特徴を有する。
【0050】
本体10は、好ましくはその内部に、押圧手段11を駆動させるためのモータ手段30を更に有する。好ましくは、モータ手段30は、本体10の前方部分10’’’に、又はデバイス100を装着した状態でユーザの胸部に位置決めされる。
【0051】
図3Aを参照すると、モータ手段30は、制御ユニット20によって制御され、上述の図2に示されたデバイス1の第1の変形形態を更に参照すると、ステッパモータ(文字Mで示される)、好ましくは各フレーム要素10’、10’’のためのステッパモータを備える。
【0052】
一般に、モータ手段30には、押圧手段11の位置をリアルタイムで制御するためのエンコーダ(E)が設けられ得、このため、モータ手段30は、制御ユニット20と双方向通信するように構成され得る。
【0053】
デバイス100の使用中、有利なことに、制御ユニット20は、好ましくはその作動状態及び静止状態の両方において、押圧手段11の位置データを常に取得する。例えば、制御ユニット20は、取得された位置データを、デバイス100のディスプレイ上に表示することができる電気信号に変換するように構成されている。このようにして、オペレータは、押圧手段11の拍動運動の時間経過を確認することができる。
【0054】
有利なことに、エンコーダ(E)の存在によって更に、押圧手段11が静止状態にあるとき、例えば各動作サイクルの終わりに、押圧手段11を正しい位置に戻すことが可能になる。このようにして、モータ手段30の機械的公差又はシェリング公差を補償することが可能であり、そうでなければ、位置決め誤差の蓄積を引き起こして、押圧手段11の不整合を決定し、デバイス100の正しい動作を無効にする可能性がある。
【0055】
制御ユニット20は、ユーザの生物物理学的パラメータの検出手段40に動作可能に接続されるように更に構成されている。実施形態では、デバイス100は、当該検出手段40を一体化することができる。
【0056】
検出手段40は、好ましくは、心周期の拍動又はリズムに関連付けられた信号を制御ユニット20への入力として提供するのに好適な1つ以上のセンサを備える。当該入力信号は、好ましくは電気信号であり、例えばECGトレースに関連し得る。
【0057】
実施形態の変形形態では、本体10は、押圧手段11及び制御ユニット20を一体化することができ、好ましくは、検出手段40を更に備える。
【0058】
例として、本発明のデバイス100の代替実施形態を、図6を参照して以下に説明する。
【0059】
このような変形形態では、本体10は、ユーザの頸部を取り囲む1つの単一フレーム要素内に実装された可撓性プラスチックカラーを備える。調整手段12、例えばVelcro(登録商標)を本体10の後方領域に配置して、デバイス100の正しい位置決め及び頸部の周りの可逆的な閉鎖を可能にすることができる。
【0060】
モータ手段30は、押圧手段11’、11’’に結合され、例えば低電圧で電力供給される2つのソレノイドアクチュエータを含むことができる。モータ手段30は、好ましくは、頸部の周囲に沿って本体10上で可動である支持体上に組み立てられる。このようにして、頸静脈における押圧手段11’、11’’の位置を好適に調整することが可能である。
【0061】
図3Aに戻ると、好ましい実施形態によれば、制御ユニット20は、オペレータがデバイス100の動作パラメータを選択することを可能にするように構成されている。この目的のために、制御ユニットは、当該パラメータを設定することが可能な制御手段Pを備える。制御手段Pは、同じ上述のディスプレイ又は専用インターフェースを含むことができる。
【0062】
例えば、検出手段40が受信したデータと同期するために、例えば運動速度及び/又は深さ及び/又はモードなどの、押圧手段11の拍動運動に関連するパラメータを設定することが可能である。
【0063】
この意味では、押圧手段11の運動を制御する制御ユニット20からの出力信号20’は、制御ユニット20自体が入力として受信したデータの関数であるだけでなく、有利なことに、更にオペレータ及び/又はユーザによってプログラム可能であり得る。
【0064】
前述したように、制御ユニット20は、次いで、ユーザの心拍数に関連付けられたデータ、例えば心電計の信号を入力として取得し、かつ対応する出力信号20’を生成し、この出力信号20’が、選択された特徴を有する押圧手段11の運動を決定する。選択された初期時点Tにおいて、制御ユニット20が送信した出力信号20’は、次いで、モータ手段30を制御して、押圧手段11を、心拍数に従った拍動運動を伴う作動状態にする。
【0065】
好ましくは、制御ユニット20は、モータ手段30の吸収電流及び温度を制御するように更に構成されている。このようにして、有利なことに、デバイス100の連続使用後に、温度上昇が、提供されるトルクの減少をもたらし、その結果、押圧手段11によって適用される圧迫/圧迫解除力が低下する場合に、補償を実行することが可能である。いくつかの実施形態の変形形態では、所定の閾値内で、モータ手段30の動作パラメータは、制御ユニット20及び/又は制御手段Pを通して設定することができる。
【0066】
図4及び図5を参照すると、制御ユニット20によって生成される出力信号20’のプロファイルの好ましい実施形態が、制御ユニット20に入力するデータに関連して示されている。当該出力信号20’は、周期的な波形を含み、好ましくは三角形のプロファイルを有する。図4は、当該出力信号20’の単一パルスを示す。出力信号20’の波形のプロファイルは、以下により詳細に説明するように、台形であってもよい。
【0067】
本発明のデバイス100によって生成される出力信号20’の特定のプロファイルは、以下の考察に基づいている。
【0068】
頭蓋内圧の波形、いわゆる「CSF拍動波」は、対応する血液、具体的には脳室内圧力波に関連付けられ、被験者が水頭症に罹患しているか否かという事実に応じて変動する特徴を有する。
【0069】
このような病状を有する患者において、CSF拍動波は、心拍時間に応じてデカルト平面上に表される、実質的に三角形、典型的には不等辺三角形の波形に従う形状を有する。当該不等辺三角形の最も長い辺は時間軸上にあり、最も短い辺は拍動の開始(収縮期)を表し、中間の辺は心臓の押圧が使い果たされ、系が静止し始める時点(拡張期)を表す。
【0070】
本発明によれば、デバイス100によって生成された出力信号20’は、CSF拍動波に対する架橋様脳静脈(スターリングレジスタ)の「対抗拍動」を表す。
【0071】
有利なことに、このような対抗拍動の作用は、好ましくは3つの特徴、すなわち、1)単一心拍毎に較正されること、2)参照する単一心拍の開始に対して一定かつ所定の位相シフトを有すること、更により好ましくは、3)三角波形状を有するが、又は対照となるCSF拍動の波形に類似すること、の組み合わせを有する特定の出力信号20’を生成することによって得られる。この最後の事例では、CSF拍動の波形とは異なり、出力信号20’の最も長い辺は、「対抗拍動」の初期位相、すなわち圧力が増大する状態を表し、一方、出力信号20’の最も短い辺は、「対抗拍動」の最終位相、すなわち圧力が減少する状態を表す。
【0072】
換言すれば、本発明のデバイス100は、頸部の頸静脈に適用される、外部からの好適に律動的かつ周期的な経皮圧迫及び圧迫解除作用を通して、頭蓋内拍動の影響を修正することを可能にすることが理解されるであろう。
【0073】
制御ユニット20は、デバイス100を装着するユーザの心拍数に関連付けられたデータを、好ましくはリアルタイムで取得し、かつ取得したデータに基づいて上述の対応する出力信号20’を生成するように構成されている。
【0074】
図4は、好ましい実施形態による出力信号20’の単一パルスのプロファイルをデカルト平面上に表している。このようなプロファイルは、時間tにおける押圧手段11の圧迫及び圧迫解除運動に対応する。当該運動は、上述の作動状態下での押圧手段11の最大偏位Pmaxの最終位置(最大圧迫に対応する)と最小偏位Pminの最終位置(最小圧迫又は圧迫解除に対応する)との間に含まれる。
【0075】
図からわかるように、出力信号の各パルスは、第1の圧迫時間T及び第2の圧迫解除時間Tを含む。圧迫時間T及び圧迫解除時間Tは、互いに連続しており、単一パルスの周期又は持続時間Tを形成する。好ましくは、当該圧迫時間Tは、当該圧迫解除時間Tより長い。圧迫時間Tが経過すると、押圧手段11は最大偏位Pmaxの位置にある。
【0076】
図4の出力信号20’のプロファイルと、デバイス100の制御ユニット20に入るデータ、具体的にはECG信号との間の相関は、それぞれのデカルト平面上の表現を通して図5に示されている。
【0077】
出力信号20’は、単一の心拍に関連付けられ得るパルスを含み、有利なことに、出力信号20’は、周期的なタイプの信号であり、出力信号20’の各パルスが対応する心拍に関連付けられ得る複数のパルスを含む。好ましくは、出力信号20’のパルスは、2つの連続する心拍の間に経過する時間Tよりも短い持続時間Tを有する。図示された例では、時間Tは、2つの連続するQRSの間に経過する時間を指す。
【0078】
押圧手段11の最大偏位Pmaxは、制御ユニット20のプログラム可能なパラメータであり得る。例えば、最大偏位Pmaxは、押圧手段11の静止状態又は後退位置(押圧手段が作動状態にある場合)に対して、押圧手段11のミリメートル(mm)で表される最大進行を含むことができる。
【0079】
図からわかるように、出力信号20’は、有利なことに、好ましくは300~400ミリ秒に含まれる所定の位相シフトTを有する。有利なことに、当該所定の位相シフトTは、心拍数の周波数に対して一定である(考慮される被験者毎に)。対応する拍動、又はリズム、心拍が開始する時点に対する出力信号20’のトリガ時点Tの位相シフトは、制御ユニット20において設定することができるパラメータであり得る。
【0080】
したがって、押圧手段11を通して得られる当該「対抗拍動」は、水頭症の形成に対する頭蓋内拍動の影響を中和する拍動波を決定するだけでなく、単一の心拍に対して較正されるため、スターリングレジスタによって決定される非対称性の影響さえも低減する。
【0081】
図3Bを参照すると、デバイス100の、具体的には制御ユニット20の動作ロジックの好ましい使用モードを例示するフローグラフが示されている。
【0082】
制御ユニット20は、ECG信号を入力として受信し、QRS値を検出した場合、所定の位相シフトTを処理し、それによって出力信号20’の第1のパルスを生成する必要がある。このような位相シフトが経過すると、時点Tにおいて、制御ユニット20は、拍動運動に従って押圧手段11を駆動させる作動制御をモータ手段30に伝送する。
【0083】
制御ユニット20は、押圧手段11の運動中に押圧手段11の位置を監視する。制御ユニット20が、押圧手段11が後退位置にあることを検出するとき、出力信号20’の当該第1のパルスの持続時間Tが終了する。後続のQRS値が検出されると、制御ユニット20は、所定の位相シフト、好ましくは上述の第1のパルスについて計算された同じ所定の位相シフトを、先行するパルスについて上述したのと同様に押圧手段11を駆動させる目的で、時点T0+1においてモータ手段30を作動させる第2のパルスを生成することによって再び処理する。
【0084】
図6に示す例では、制御ユニット20が、出力信号20’を生成するように構成され得、圧迫解除時間Tは、2つの連続する心拍の間に経過する時間Tの関数として可変であることがわかる。
【0085】
有利なことに、このようにして、正常なケイデンスに対して、例えば何らかのQRS(図6のグラフにおいてTで一般的に示されている)を事前又は事後に決定する心不整脈(期外収縮、様々なタイプの不整脈)を有する患者を扱うことが可能である。圧迫解除位相Tの開始がある特定の位相シフトTを伴って行われる場合、出力信号20’のプロファイルは、図からわかるように、実質的に台形の波形をとる。
【0086】
次いで、制御ユニット20は、有利なことに、パルスが心拍のリズムの変動性の関数として先行する(又は後続の)パルスに対して増加した(又は減少した)圧迫時間Tを含む出力信号20’を生成することによって、制御ユニット20に入るデータに関連付けられ得る信号の波形に従うように構成され得る。
【0087】
追加の態様によれば、本発明は、水頭症を治療するための方法であって、
-ユーザの頸部に装着可能なデバイスを提供するステップであって、デバイスが、可動押圧手段を備えるステップと、
-頸静脈において当該押圧手段の拍動運動を生成するステップと、を含み、
拍動運動が、ユーザの心拍数に従って、好ましくは、その心拍の周波数に対して所定の位相シフトを伴って生成される、方法、に関する。
【0088】
以上、本発明をその好ましい実施形態を参照して説明した。本明細書において例として説明される好ましい実施形態において実装される技術的解決策の各々は、有利なことに、それらの間で異なって組み合わされて、同じ発明の核心に属するが、以下に報告される特許請求の範囲の保護範囲内に全てある他の実施形態を作り出すことができることを意味する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】