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  • 特表-イオパミドールを調製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】イオパミドールを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/14 20060101AFI20230714BHJP
   C07C 237/46 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C07C231/14
C07C237/46
A61K49/04 210
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580886
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021067871
(87)【国際公開番号】W WO2022002953
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2009917.2
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】396019387
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】へナム,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】オムトベット,ローネ
(72)【発明者】
【氏名】ホムスタッド,オレ,マグネ
(72)【発明者】
【氏名】シララヒ,スミハー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ,シウ,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ブルスレタン,マリ
(72)【発明者】
【氏名】ホルマース,ラース,テリエ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H006
【Fターム(参考)】
4C085HH05
4C085JJ01
4C085LL01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC41
4H006AC53
4H006BA92
4H006BB11
4H006BB21
4H006BB25
4H006BC10
4H006BC16
4H006BC19
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM74
4H006BN10
4H006BV25
4H006BV62
(57)【要約】
本発明は、式(II)の化合物を調製する方法であって、(i)下記の構造を有する式(I)の化合物を、ピリジンおよび2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(APC)と反応させて、式(II)の化合物を得るステップを含む、方法を提供する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
の化合物を調製する方法であって、
(i)下記の構造:
【化2】
を有する式(I)の化合物を、ピリジンおよび2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(APC)と反応させて、式(II)の化合物を得るステップを含む、方法。
【請求項2】
(ii)式(II)の化合物を加水分解剤と反応させて、式(III):
【化3】
の化合物を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(i)において、式(I)の化合物を、溶媒中でピリジンおよびAPCと反応させ、好ましくは前記溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(i)における前記溶媒が、
(i)トルエン、THF、アセトニトリル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、ジグリム、グリム、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、ジイソプロピルエーテル、もしくはアセトン、および/もしくはそれらの組合せであるか、または
(ii)トルエン、THF、もしくはアセトニトリル、および/もしくはそれらの組合せであるか、または
(iii)アセトニトリルである、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)において前記加水分解剤を水とともに使用して、pHを、(i)12~14の間、または(ii)12.8~13.7の間、または(iii)およそ13.5に制御する、請求項2から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)における前記加水分解剤が、
(a)塩基水溶液もしくは塩基性イオン交換樹脂であるか、または
(b)NaOH水溶液、KOH水溶液、もしくはアンモニア、および/もしくはそれらの組合せであるか、または
(c)NaOH水溶液である、
請求項2から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップ(i)が、
(a)5℃~75℃、または
(b)15℃~65℃、または
(c)15℃~50℃、または
(d)15℃~30℃、または
(e)40℃~60℃、または
(f)20℃~30℃
の温度で行われる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)が、
(a)5℃~95℃、または
(b)5℃~70℃、または
(c)15℃~75℃、または
(d)15℃~60℃、または
(e)15℃~50℃、または
(f)40℃~60℃、または
(g)20℃~40℃
の温度で行われる、請求項2から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップ(i)において、APCは、少なくとも式(I)の化合物とピリジンとの混合物に、
(i)0~10時間、好ましくは0.5~6時間、より好ましくは1~3時間かけて添加され、および/または
(ii)第1の量で添加され、その後に、冷却およびAPCの第2の量での後続の添加が続き、ここで、前記第1の量および前記第2の量は同じでもあっても異なっていてもよく、好ましくは前記冷却が10℃~40℃の温度までであり、より好ましくは前記冷却が周囲温度までである、
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
APCの添加後、得られた反応混合物は、請求項7および/または請求項9に記載の温度で、好ましくは最長24時間、より好ましくは2~12時間維持される、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(i)において生成された式(II)の化合物が、単離されることなく、ステップ(ii)において反応させられる、請求項2から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式(III)の化合物が精製され、好ましくは前記精製が、脱塩、樹脂処理、蒸留、および結晶化のうち1つまたは複数を含む、請求項2から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
式(III)の化合物を溶媒中に溶解して製剤を生成し、好ましくは、
(i)前記製剤が溶媒をさらに含み、好ましくは前記溶媒が水であり、および/または
(ii)前記製剤が緩衝剤をさらに含み、好ましくは前記緩衝剤がトロメタミンであり、および/または
(iii)前記製剤が錯化剤をさらに含み、好ましくは前記錯化剤がEDTAカルシウム二ナトリウムであり、および/または
(iv)前記製剤がpH調整剤をさらに含み、好ましくは前記pH調整剤が塩酸または水酸化ナトリウムである、
請求項2から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(i)請求項1から11のいずれかに記載の方法によって生成される化合物、もしくは請求項13に記載の方法によって生成される製剤、または
(ii)造影剤としての使用のための、請求項2から12のいずれかに記載の方法によって生成される化合物、もしくは請求項13に記載の方法によって生成される製剤であって、好ましくは、前記化合物は造影剤として対象において使用される、
化合物または製剤。
【請求項15】
式(III):
【化4】
のイオパミドールを生成する方法における中間体としての式(II)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影剤に関し、特に、ヨウ素化X線造影剤を製造する方法に関する。本発明の方法は、既知のそのような方法に勝る、ある特定の利点を提供する。
【背景技術】
【0002】
造影剤(例えばX線撮像における)としてのイオパミドールの使用は十分に確立されている。イオパミドールは下記の構造を有し、本明細書では式(III):
【0003】
【化1】
の化合物として言及される。
【0004】
イオパミドールの製造は、式(III)の化合物の生成、続いて、造影剤としての使用のための製剤の調製を必要とする。通常、化合物は多段階合成で作製され、次に、製剤中に使用される前に精製される。合成ステップの各々において、収率を最適化し、不純物の生成を最小化することが重要である。高価な試薬が使用されるステップでは、そのような試薬の使用を最適化することが特に重要である。ヨウ素化試薬は高価であり、このため、芳香環の三ヨウ素化は重要なステップであり、一般に、全体の合成の中の後期段階で行われる。このステップにおいて、不純物がほとんどなく高収率を得ること、およびヨウ素化剤の消費が最小限であることが特に重要である。
【0005】
イオパミドールは、以前から、図1の反応スキームに表されているような方法によって製造されている。そのような方法は、例えば、国際公開第02/44132号パンフレットに記載されている。この方法には、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶媒、およびSOClなどの有害な腐食性の化学薬品の使用を必要とするという不利点がある。
【0006】
イオパミドールはまた、以前から、図2の反応スキームに表された方法によっても製造されている。この反応スキームでは、5-ニトロイソフタル酸のアルキルエステルを、2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)と最初に反応させて、化合物5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)イソフタルアミド(1,3-ABAとしても既知)を得る。次いで、一塩化ヨウ素を使用して1,3-ABAをヨウ素化する。得られた化合物中の遊離ヒドロキシル基を、数種の異なる方法で、例えば、アセトンを用いてアセタールにするか、酸無水物を用いてエステルにするか、またはアルキルリン酸もしくはアリールリン酸を用いてリン酸エステルにするかして、保護する。次いで、保護した中間体を、2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(APC)でN-アシル化し、脱保護し、加水分解して、イオパミドールを得る。
【0007】
イオパミドールの生成のために、改良された方法が必要である。本発明の方法は、この必要性を満たす。
【0008】
本発明は、イオパミドールを生成する上記の方法に勝る利点を提供する。例えば、本発明の方法は、以前使用されていたものより利用しやすく、制限がなく、環境に優しい溶媒中で行うことができる。加えて、本発明の方法は、以前の方法より少ない工程ステップで行うことができ、大幅なコスト削減をもたらす。特に、図2に示された反応スキームと比較して、本発明の方法は、APCと反応させる前の保護ステップの必要性を回避する。
【発明の概要】
【0009】
一態様において、本発明は、式(II):
【0010】
【化2】
の化合物を調製する方法であって、
(i)下記の構造:
【0011】
【化3】
を有する式(I)の化合物を、ピリジンおよび2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(APC)と反応させて、式(II)の化合物を得るステップを含む、方法を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、本発明の方法によって生成される化合物または製剤を提供する。
【0013】
本発明はまた、式(III):
【0014】
【化4】
のイオパミドールを生成する方法における中間体としての式(II)の化合物の使用も提供する。
【0015】
本発明は、従来の方法と比較して利点を有する。反応順序において、追加の保護ステップと、おそらく追加の脱保護ステップとを導入することになるOH保護基の使用が回避される。REACH Directiveによる厳格な規制の下にあるDMAcまたはDMFのような高沸点溶媒の使用もまた回避され、ひいてはある特定の不純物の形成を阻害する。さらに、本方法は、DMAPなどの高価で有毒な触媒を使用せず、反応時間を短くする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】イオパミドールの以前の製造方法を表す図である。
図2】イオパミドールの以前の製造方法を表す図である。
図3】本発明の方法において実行され得るステップを有する反応スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、式(II):
【0018】
【化5】
の化合物を調製する方法であって、(i)下記の構造:
【0019】
【化6】
を有する式(I)の化合物を、ピリジンおよび2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(APC)と反応させて、式(II)の化合物を得るステップを含む、方法に関する。
【0020】
本方法は、(ii)式(II)の化合物を加水分解剤と反応させて、式(III):
【0021】
【化7】
の化合物を得るステップをさらに含み得る。
【0022】
本発明の方法において実行され得るステップを示す反応スキームが、図3に提示されている。
【0023】
本発明の方法の出発化合物は、任意の適切な方法で作製することができる。
【0024】
例えば、N,N’-置換5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボキサミド類(例えば式(IV)の化合物として下に示されている)は、イオパミドールの合成における中間体として既知である。これらの化合物は、ヨウ素化によって式(I)の化合物を調製するために使用することができる。下の式中、Rは、1,3-ジヒドロキシ-2-プロピル基(R=-CH(CHOH))または2,3-ジヒドロキシ-1-プロピル基(R=-CHCH(OH)CH(OH))を表す。
【0025】
【化8】
【0026】
式(IV)の化合物は、5-ニトロ-1,3-ベンゼンジカルボン酸ジメチルエステル(式(V)の化合物として下に示されている)から出発し、例えば、2-アミノ-1,3-ジヒドロキシプロパン(一般にセリノールとして既知である)を用いて、または1-アミノ-2,3-ジヒドロキシプロパン(一般にイソセリノールとして既知である)を用いて、エステル基をアミド化することによって、次に、得られたN,N’-ビス-置換5-ニトロ-1,3-ベンゼンジカルボキサミドの5-ニトロ基を還元することによって、調製することができる。あるいは、還元反応ステップを最初に実行し、次にアミド化反応ステップを実行してもよい。
【0027】
【化9】
【0028】
そのような方法におけるアミド化反応は、通常、少なくとも化学量論量のセリノールまたはイソセリノール(すなわち、5-ニトロ-1,3-ベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルのモル当たり少なくとも2モルのセリノールまたはイソセリノール)を用いて、低級アルカノールなどのプロトン性有機溶媒の存在下で、および約65℃~約150℃の温度で行われる。そのような方法に関するさらなる詳細は、国際公開第02/44125号パンフレットおよび国際公開第00/29372号パンフレットに記載されている。
【0029】
N,N’-置換5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボキサミド類(例えば、式(IV)の化合物)は、国際公開第00/29372号パンフレットに記載されているように調製することもできる。例えば、塩基性触媒を含有する低級脂肪族アルコールを含む溶媒中で、ジ-低級アルキル5-ニトロイソフタレートを、少なくとも2モル当量の式RNH(例えば、式中、RはCHCH(OH)CHOHまたはCH(CHOH)である)の化合物と反応させて、5-ニトロ-N,N’-ビス(R)イソフタルアミドを含有する溶液を得、5-ニトロ-N,N’-ビス(R)イソフタルアミドを単離せず、前記溶液を触媒作用によって水素添加して、5-アミノ-N,N’-ビス(R)-イソフタルアミドの溶液を得てもよい。
【0030】
本発明の方法のさらなる詳細は以下に提示される。以下に提示される特徴はいずれも、以下に提示される任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0031】
本方法では、ステップ(i)において、式(I)の化合物を、溶媒中でピリジンおよびAPCと反応させる。ステップ(i)における溶媒は、非プロトン性溶媒などの任意の適切な溶媒であってもよい。ステップ(i)における溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、ジグリム、グリム、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、ジイソプロピルエーテルおよびアセトンのうち少なくとも1つであり得る。ステップ(i)における溶媒は、トルエン、THFおよびアセトニトリルのうち少なくとも1つであり得る。ステップ(i)における溶媒は、アセトニトリルであり得る。
【0032】
本方法のステップ(i)は、任意の適切な温度で行うことができる。例えば、ステップ(i)は、5℃~75℃、15℃~65℃、15℃~50℃、15℃~30℃、40℃~60℃または20℃~30℃の温度で行われてもよい。
【0033】
本方法のステップ(i)において、APCは、少なくとも式(I)の化合物とピリジンとの、化合物の混合物に添加されてもよい。本方法のステップ(i)において、APCは、少なくとも式(I)の化合物とピリジンとの混合物に、0~10時間、0.5~6時間または1~3時間かけて添加されてもよい。APCは第1の量で添加されてもよく、その後に、冷却およびAPCの第2の量での後続の添加が続いてもよく、第1および第2の量は同じでも異なっていてもよい。冷却をする場合、10~40℃の温度まで、または周囲温度までであってもよい。
【0034】
ピリジンは3つの重要な機能を有する。第1に、ピリジンの主要な機能は、反応中にHClが生成されるように、塩基として働くことである。遊離HClは、式(II)の化合物の分解を引き起こす。第2に、ピリジンは、反応における共溶媒である。式(II)の化合物は、アセトニトリルを含むほとんどの有機溶媒では分解が困難であるが、ピリジン中では可溶性である。第3に、ピリジンは、反応において触媒として働く。APCが反応混合物に添加されると、APCは最初にピリジンと反応し、アシルピリジニウム複合体を形成する。次いで、アシルピリジニウム複合体は、式(I)の化合物の遊離ヒドロキシル-(OH)基およびアミン(NH)基と反応して、最終的に式(II)の化合物が得られる。
【0035】
APCの添加後、得られた反応混合物は、5℃~75℃、5℃~70℃、5℃~95℃、15℃~75℃、15℃~65℃、15℃~60℃、15℃~50℃、15℃~30℃、40℃~60℃、20℃~40℃または20℃~30℃の温度で維持されてもよい。得られた反応混合物は、これらの温度のうちいずれかで、24時間まで、または2~12時間維持されてもよい。
【0036】
本方法のステップ(i)において生成された式(II)の化合物は、単離されることなく、本方法のステップ(ii)において反応させられてもよい。特に、ステップ(i)において生成された式(II)の化合物を、さらなる反応の前に精製する必要はない。
【0037】
本方法のステップ(ii)は、任意の適切な温度で行われ得る。例えば、ステップ(ii)は、5℃~95℃、5℃~70℃、15℃~75℃、15℃~60℃、15℃~50℃、40℃~60℃または20℃~40℃の温度で行われてもよい。
【0038】
本方法のステップ(ii)は、酸性条件でも塩基性条件でも行われ得る。酸性条件下で行われる場合、任意の適切な酸を使用することができる。例えば、硫酸および/または塩酸を、加水分解剤として使用することができる。
【0039】
本方法では、ステップ(ii)において加水分解剤を水とともに使用して、pHを12~14の間に制御することができる。ステップ(ii)において加水分解剤を水とともに使用して、pHを、12.8~13.7の間、または13~13.6の間、またはおよそ13.5に制御することができる。
【0040】
ステップ(ii)における加水分解剤は、塩基水溶液または塩基性イオン交換樹脂であってもよい。ステップ(ii)における加水分解剤は、NaOH水溶液、KOH水溶液もしくはアンモニア、および/またはそれらの組合せであってもよい。特に、ステップ(ii)における加水分解剤はNaOH水溶液であってもよい。
【0041】
式(III)の化合物は、精製されてもよい。式(III)の化合物は精製され、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99.8%の純度を得ることが望ましい。精製は、任意の適切な精製方法を使用して実現され得る。次の精製方法、すなわち、脱塩(例えば、電気透析またはイオン交換樹脂)、蒸留、1つまたは複数のカラム(例えば、Amberlite XAD1600Nを使用)、水の蒸発、結晶化のうち1つまたは複数を、任意の組合せで使用され得る。例えば、式(III)の化合物は、米国特許出願公開第2011/017673号明細書に記載されている方法に従って精製され得る。
【0042】
式(III)の化合物を使用して、例えば造影剤としての使用のための製剤を調製することができる。製剤は、式(III)の化合物を溶媒(例えば水)中に溶解することによって調製することができる。これにより、製剤を対象に注射することが可能になる。
【0043】
製剤は、溶媒に加えて、緩衝剤、錯化剤およびpH調整剤のうち1つまたは複数をさらに含んでもよい。緩衝剤はトロメタミンであってもよい。錯化剤はEDTAカルシウム二ナトリウムであってもよい。pH調整剤は塩酸および/または水酸化ナトリウムであってもよい。製剤は、式(III)の化合物、水、トロメタミン、EDTAカルシウム二ナトリウムならびに塩酸および/または水酸化ナトリウムを含み得る。
【0044】
本発明はまた、本発明に従って記載される方法によって生成される化合物および/または製剤にも関する。本発明はまた、本発明の方法によって生成される化合物および/または製剤の使用にも関する。特に、本化合物および/または本製剤は、造影剤として(例えば対象において)使用され得る。
【0045】
本発明はまた、イオパミドールを生成する方法における中間体としての式(II)の化合物の使用にも関する。
【実施例
【0046】
本発明を、以下の実施例に関して説明する。
【0047】
[実施例1]
5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(30.0g;42.6mmol)、アセトニトリル(93.0g)およびピリジン(18.5g;234mmol)を、反応器に磁気撹拌しながら添加した。反応媒体を67℃に加熱し、(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(22.0ml;174mmol)を60分かけて添加した。反応混合物を35℃に冷却し、追加量の(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(9.2ml;72.7mmol)を60分かけて添加し、次いで、さらに18時間撹拌しながら静置した。水(150ml)を添加し、次いで50%NaOH(54.4g;680mmol)を慎重に添加した。次いで追加量の50%NaOHを使用してpHを13.5に調整し、45分間撹拌した。35%HClを使用して反応混合物をpH7.0に中和し、有機溶媒を減圧下で留去して、イオパミドールを91.6%のHPLC純度で得た。イオパミドール生成物は、従来の精製方法を使用してさらに精製することができる。
【0048】
[実施例2]
5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(30.1g;42.7mmol)、アセトニトリル(93.0g)およびピリジン(20.4g;258mmol)を、反応器に磁気撹拌しながら添加した。反応器の温度を67.5℃に設定し、(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(31.2ml;246mmol)を60分かけて添加した。添加の4時間後に、反応器を周囲温度に冷却し、水(150ml)を添加し、次いで50%NaOH(54.4g;680mmol)を慎重に添加した。次いで、追加量の50%NaOHを使用してpHを13.5に調整し、30分間撹拌した。35%HClを使用して、反応混合物をpH6.5に中和し、有機溶媒を減圧下で留去して、イオパミドールを91.2%の純度で得た。イオパミドール生成物は、従来の精製方法を使用してさらに精製することができる。
【0049】
[実施例3]
5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(30.0g;42.6mmol)、アセトニトリル(93.0g)およびピリジン(18.5g;234mmol)を、反応器に磁気撹拌しながら添加した。反応器の温度を60℃に設定し、(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(30.6ml;242mmol)を60分かけて添加した。添加の5時間後に、反応器を周囲温度に冷却し、水(150ml)を添加し、次いで50%NaOH(53.2g;665mmol)を慎重に添加した。次いで、追加量の50%NaOHを使用してpHを13.5に調整し、30分間撹拌した。35%HClを使用して、反応混合物をpH7.0に中和し、有機溶媒を減圧下で留去して、イオパミドールを92.5%の純度で得た。イオパミドール生成物は、従来の精製方法を使用してさらに精製することができる。
【0050】
[実施例4]
5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(40.0g;56.7mmol)、アセトニトリル(124g)およびピリジン(20.7g;262mmol)を、反応器に磁気撹拌しながら添加した。反応器の温度を25℃に設定し、(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(43.5ml;344mmol)を30分かけて添加した。反応混合物を、25℃で23時間かけて撹拌し、水(100ml)を添加した。50%NaOH(76.0g;950mmol)を反応混合物にゆっくりと添加して、pHを11.7にした。次いで、さらに50%NaOHを慎重に追加することによってpHを13.6に調整した。30分間撹拌した後に、35%HClを使用してpHを6.9に調整し、有機溶媒を減圧下で留去した。電気透析およびイオン交換樹脂(Purolite PPC150およびPurolite A847)を使用して粗生成物を脱塩し、この溶液をAmberlite XAD1600Nを用いたカラムに通過させることによってさらに精製し、次いで水を蒸発させて、イオパミドールを98.2%の純度で得た。
【0051】
[実施例5]
5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(3.53g;5.00mmol)、トルエン(8.67g)およびピリジン(2.38g;30.0mmol)を、丸底フラスコに磁気撹拌しながら添加した。(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(4.04ml;31.9mmol)を60分かけて添加し、反応混合物を、周囲温度で18時間にわたって撹拌しながら静置した。水(40ml)およびメタノール(40ml)を添加し、25%NaOHを添加することによって、pHを13.5に調整し、維持した。30分間撹拌した後に、反応混合物を酢酸でpH7に中和し、減圧下で濃縮して、イオパミドールを、57%のHPLC純度で、暗褐色の残渣として得た。イオパミドール生成物は、従来の精製方法を使用してさらに精製することができる。
【0052】
[実施例6]
5-アミノ-N,N’-ビス(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(3.53g;5.00mmol)、THF(8.88g)およびピリジン(2.38g;30.0mmol)を、丸底フラスコに磁気撹拌しながら添加した。(S)-2-アセチルオキシプロパノイルクロリド(4.04ml;31.9mmol)を60分かけて添加し、反応混合物を、周囲温度で18時間にわたって撹拌しながら静置した。水(50ml)およびメタノール(20ml)を添加し、25%NaOHを添加することによってpHを13.5に調整し、維持した。30分間撹拌した後に、反応混合物を酢酸でpH7に中和し、減圧下で濃縮して、イオパミドールを、74%のHPLC純度で、黄色残渣として得た。イオパミドール生成物は、従来の精製方法を使用してさらに精製することができる。
【0053】
実施例は、従来どおり実験室規模で実行されたこと、および使用された条件は、本発明を工業規模で実施する場合に適応させることができることを、当業者は理解されるであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】