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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】二軸配向用エチレンコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20230714BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20230714BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20230714BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F2/01
C08F2/06
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581365
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2021055555
(87)【国際公開番号】W WO2022003499
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/045,383
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】3102574
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェレイドゥーン、マリアム
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤール、シヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ライトボディー、オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】オービー、ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ギロン、ブロンウィン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マーク、リソン
(72)【発明者】
【氏名】キャレロ、クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA81
4F071AA84
4F071AA85
4F071AA88
4F071AF08Y
4F071AF16Y
4F071AF20Y
4F071AF23Y
4F071AF30Y
4F071AF32Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4J011DB13
4J011HB04
4J011HB06
4J011HB12
4J011PA49
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA09Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA18Q
4J100AA19Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA15
4J100DA42
4J100FA09
4J100FA19
4J100FA34
4J100FA47
4J100JA58
(57)【要約】
エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含むエチレンコポリマーは、0.940~0.960g/cmの密度、9~12の分子量分布Mw/Mn、及び500,000を超えるMzを有する。エチレンコポリマーは、溶液相重合条件下でマルチゾーン反応器システムで作製され、二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムの調製に有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含むエチレンコポリマーであって、
0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する、上記エチレンコポリマー。
【請求項2】
40~50の組成分布幅指数CDBI25を有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項3】
11,000~12,500の数平均分子量Mnを有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項4】
11,000超12,500未満の数平均分子量Mnを有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項5】
600,000~700,000のZ平均分子量Mzを有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項6】
チタン及びバナジウム触媒残留物の両方を、(エチレンコポリマーの重量に基づいて)チタン0.100~1.5ppm及びバナジウム0.100~1.5ppmの量で含有することをさらに特徴とする、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項7】
単峰性分子量分布を有する、請求項1又は4に記載のエチレンコポリマー。
【請求項8】
0.940~0.956g/cmの密度を有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項9】
1.80~1.90の応力指数を有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項10】
重合したエチレン及び1-ブテンを含む、請求項1に記載のエチレンコポリマー。
【請求項11】
マルチゾーン反応器システムにおいてエチレンコポリマーを作製するための溶液相重合プロセスであって、
当該マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンを含み、第1の重合ゾーンは、入口及び出口を有する第1の管状反応器によって画定され、
当該重合プロセスは、
重合反応を開始するために、溶媒、水素、チーグラー・ナッタ重合触媒、エチレン、及び4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンを、第1の管状反応器の入口に供給する工程;
水素を、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に供給する工程;
を含み、
当該マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加され;
当該マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の20~50重量パーセントが、第1の管状反応器で作製される、上記溶液相重合プロセス。
【請求項12】
前記第2の重合ゾーンが、入口及び出口を有するタンク反応器によって画定される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第3の重合ゾーンが、入口及び出口を有する第2の管状反応器によって画定される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記の第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置が、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記の第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置が、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記タンク反応器が、プラグフロー反応器として運転される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記マルチゾーン反応器システムが、断熱的に運転される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1の管状反応器の入口が、30~150℃の温度である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第1の管状反応器の入口が、150℃未満の温度である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項20】
前記マルチゾーン反応器システムに供給されるエチレンの少なくとも90重量パーセントが、エチレンコポリマーに変換される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項21】
前記チーグラー・ナッタ重合触媒が、チタン、バナジウム及びアルミニウムを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項22】
マルチゾーン反応器システムにおいてエチレンコポリマーを作製するための溶液相重合プロセスであって、
当該マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンを含み、第1の重合ゾーンは、入口及び出口を有する第1の管状反応器によって画定され、
当該重合プロセスは、
重合反応を開始するために、溶媒、水素、チーグラー・ナッタ重合触媒、エチレン、及び4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンを、第1の管状反応器の入口に供給する工程;
水素を、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に供給する工程;
を含み、
当該マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加され;
当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する、上記溶液相重合プロセス。
【請求項23】
エチレンコポリマーを含む二軸配向ポリエチレンフィルムであって、
当該エチレンコポリマーは、エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含み;
当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する、上記二軸配向ポリエチレンフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含み、0.940~0.960g/cmの密度を有するエチレンコポリマーは、溶液相重合条件下でマルチゾーン反応器システムで作製され、二軸配向フィルムの形成に有用である。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエチレン(BOPE:biaxially oriented polyethylene)フィルムは、典型的にはキャストシートとして知られている厚い前駆体(又はベース)フィルムを、機械方向(MD:machine direction)と横方向(TD:transverse direction)の2方向に延伸することによって調製される。延伸は、1回の手順(同時二軸延伸)で行ってもよく、又は2回の連続した手順(順次二軸延伸)で行ってもよい。延伸プロセスにおいて用いられる装置は、一般に「テンターフレーム」ラインと呼ばれる。
【0003】
従来のインフレーションフィルムと比較して、BOPEフィルムは、最大2倍の剛性(引張弾性率)、改善された引張強度、衝撃強度、穿刺抵抗、屈曲亀裂抵抗、及び改善された(すなわち、より低い)光学ヘイズを達成することができる。
【0004】
BOPEフィルムは、多種多様な包装用途に適している。このフィルムの優れた特性により、(異なる種類のポリマーを用いて作製したパッケージとは対照的に)「全ポリエチレンパッケージ」の設計が可能になり、これによりリサイクルが容易になる。
【0005】
テンターフレームプロセスは、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)及び二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BOPET)フィルムの調製に広く使用されている。しかし、ポリエチレンは延伸/二軸配向が比較的困難であり、これがBOPEの商業的使用を制限してきた。それゆえ、BOPEプロセス、テンターフレームにおいて、より優れた「延伸性」を提供するポリエチレンが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一実施形態は、エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含むエチレンコポリマーであり、当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する。
【0007】
本開示の一実施形態は、マルチゾーン反応器システムにおいてエチレンコポリマーを作製するための溶液相重合プロセスであり、当該マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンを含み、第1の重合ゾーンは、入口及び出口を有する第1の管状反応器によって画定され、当該重合プロセスは、重合反応を開始するために、溶媒、水素、チーグラー・ナッタ重合触媒、エチレン、及び4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンを、第1の管状反応器の入口に供給する工程;水素を、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に供給する工程;を含み、当該マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加され;当該マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の20~50重量パーセントが、第1の管状反応器で作製される。
【0008】
本開示の一実施形態は、マルチゾーン反応器システムにおいてエチレンコポリマーを作製するための溶液相重合プロセスであり、当該マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンを含み、第1の重合ゾーンは、入口及び出口を有する第1の管状反応器によって画定され、当該重合プロセスは、重合反応を開始するために、溶媒、水素、チーグラー・ナッタ重合触媒、エチレン、及び4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンを、第1の管状反応器の入口に供給する工程;水素を、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に供給する工程;を含み、当該マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加され;当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する。
【0009】
本開示の一実施形態は、エチレンコポリマーを含む二軸配向ポリエチレンフィルムであり、当該エチレンコポリマーは、エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含み;当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マルチゾーン反応器システムが、第1の管状反応器によって画定される第1の重合ゾーン、タンク反応器によって画定される第2の重合ゾーン、及び第2の管状反応器によって画定される第3の重合ゾーンを含む、本開示の一実施形態の概略図を示す。概略図は、マルチゾーン反応器システムの代表的なものに過ぎず、縮尺通りに描かれていない。マルチゾーン反応器システムへの水素添加のおおよその位置も示されている(位置A及びB)。
図2】本開示に従って作製されたエチレンコポリマー及び比較ポリエチレンの屈折率検出によるゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を示す。
図3】本開示に従って作製されたエチレンコポリマー及び比較ポリエチレンについて得られたフーリエ変換赤外線(GPC-FTIR)検出によるゲル透過クロマトグラフを示す。主鎖炭素1000個あたりの短鎖分岐の数(y軸)として示されるコモノマー含有量は、コポリマーの分子量(x軸)に対して与えられる。下向きの傾斜線(左から右)は、FTIRによって決定された短鎖分岐(炭素原子1000個あたりの短鎖分岐)である。図3から分かるように、発明例1及び2については、一般に、分子量が高くなると短鎖分岐の数が減少するため、コモノマーの取り込みは「正常(normal)」であると言われる。
図4】本開示に従って作製されたエチレンコポリマー及び比較ポリエチレンについて得られたCTREF溶出温度プロファイルを示す。
図5】本開示に従って作製されたエチレンコポリマー及び比較ポリエチレンの示差走査熱量測定分析(DSC)及びプロファイルを示す。
図6】本開示に従って作製されたエチレンコポリマーについて、キャピラリーレオロジーによって得られた見かけのせん断粘度(Pa・s)対見かけのせん断速度(s-1)を示す。
図7】本開示に従って作製されたエチレンコポリマー及び比較ポリエチレンについてのDMA周波数掃引データ(複素粘度η(単位Pa・s)対周波数ω(単位ラジアン/s))を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される場合、「モノマー」という用語は、化学的に反応し、それ自体又は他のモノマーと化学結合してポリマーを形成し得る小分子を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、「α-オレフィン」又は「アルファ-オレフィン」という用語は、3~20個の炭素原子を含み、鎖の一端に二重結合を有する直鎖炭化水素鎖を有するモノマーを説明するために使用され、同等の用語は「直鎖状α-オレフィン」である。アルファオレフィンは、「コモノマー」と呼ばれることもある。
【0013】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレン」又は「エチレンポリマー」という用語は、エチレンポリマーを作製するために使用される特定の触媒又は特定のプロセスにかかわらず、エチレンモノマー及び任意選択で1つ以上の追加のモノマーから生成された高分子を指す。ポリエチレンの分野では、1つ以上の追加のモノマーは「コモノマー」と呼ばれることが多く、しばしばα-オレフィンを含む。「ホモポリマー」という用語は、1種類のモノマーのみを含むポリマーを指す。例えば、「エチレンホモポリマー」は、重合性モノマーとしてエチレンのみを用いて作製される。「コポリマー」という用語は、2種類以上のモノマーを含むポリマーを指す。「エチレンコポリマー」は、エチレン及び他の1種類以上の重合性モノマー(例えば、アルファオレフィン)を用いて作製される。一般的なポリエチレンには、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)又は極低密度ポリエチレン(ULDPE)が含まれ、プラストマー及びエラストマーとしても知られている。ポリエチレンという用語には、エチレンに加えて、2つ以上のコモノマーを含むことができるポリエチレンターポリマーも含まれる。ポリエチレンという用語には、上記のポリエチレンの組合せ又はブレンドも含まれる。
【0014】
本開示では、溶液相重合プロセスをマルチゾーン反応器システムで実施して、エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含むエチレンコポリマーを調製する。
【0015】
本開示では、溶媒、重合性モノマー(例えば、エチレン及び少なくとも1つのアルファオレフィン)、重合触媒成分、及び水素が、マルチゾーン反応器システムに供給される。
【0016】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンによってさらに画定される。
【0017】
本開示の一実施形態では、第1の重合ゾーンは、第1の管状反応器によって画定される。本開示の一実施形態では、第1の重合ゾーンは、第1の管状反応器の上流端に位置する上流入口と、第1の管状反応器の下流端に位置する下流出口と、を有する第1の管状反応器によって画定される。本開示の一実施形態では、第1の重合ゾーンは、第1の管状反応器の上流端に位置する上流入口と、第1の管状反応器の下流端に位置する下流出口と、上流入口と下流出口との間の1つ以上の位置で第1の管状反応器の長さに沿って位置する1つ以上の追加のプロセスフロー入口点と、を有する第1の管状反応器によって画定される。
【0018】
本開示の一実施形態では、第2の重合ゾーンは、タンク(又はオートクレーブ)反応器によって画定される。本開示の一実施形態では、第2の重合ゾーンは、入口及び出口を有するタンク(又はオートクレーブ)反応器によって画定される。本開示の一実施形態では、第2の重合ゾーンは、入口及び出口、並びに入口と出口の間に位置する1つ以上の追加のプロセスフロー入口点を有するタンク(又はオートクレーブ)反応器によって画定される。
【0019】
本開示の実施形態では、タンク反応器は、任意選択で撹拌機を含む撹拌されるタンク反応器である。
【0020】
本開示の一実施形態では、第3の重合ゾーンは、第2の管状反応器によって画定される。本開示の一実施形態では、第3の重合ゾーンは、第2の管状反応器の上流端に位置する上流入口と、第2の管状反応器の下流端に位置する下流出口と、を有する第2の管状反応器によって画定される。本開示の一実施形態では、第3の重合ゾーンは、第2の管状反応器の上流端に位置する上流入口と、第2の管状反応器の下流端に位置する下流出口と、上流入口と下流出口との間の1つ以上の位置で第2の管状反応器の長さに沿って位置する1つ以上の追加のプロセスフロー入口点と、を有する第2の管状反応器によって画定される。
【0021】
図1を参照すると、本開示の一実施形態において、エチレンコポリマーは、それぞれが異なる重合反応器によって画定される3つの重合ゾーンが互いに直列に配置されたマルチゾーン溶液重合プロセスで調製された。第1の重合ゾーンは、第1の管状反応器(反応器1)によって画定され、第2の重合ゾーンは、任意に撹拌されるタンク反応器(反応器2)によって画定され、第3の重合ゾーンは、第2の管状反応器(反応器3)によって画定された。各反応器は、プロセスフローが反応器に入る入口と、プロセスフローが反応器を出る出口と、を有する。管状反応器(反応器1又は反応器3)の場合、入口は管状反応器の上流端に位置し、出口は管状反応器の下流端に位置する。第1管状反応器の入口は、重合プロセス溶媒、重合触媒成分、共触媒、重合性モノマー(例えば、エチレン及びアルファオレフィン)、及び水素などの重合プロセス供給物(第1管状反応器の上流入口にポンプで送られる)を受け取る。重合反応は、第1の管状反応器の上流入口で開始され、プロセスフローが第1の管状反応器の出口に向かって下流にポンプで送られるにつれて、第1の管状反応器の長さ全体にわたって進行する。任意に撹拌されるタンク反応器(反応器2)は、第1の管状反応器からプロセスフローを受け取り、重合反応はタンク反応器内で継続する。第2の管状反応器(反応器3)はタンク反応器からプロセスフローを受け取り、重合反応は第2の管状反応器の長さ全体にわたって継続する。第2の管状反応器の出口で、重合反応は、触媒失活剤を添加することによって停止される。様々な失活剤が知られており、非限定的な例には、脂肪酸、脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、及びアルコールが含まれる。次いで、ポリマーはプロセス溶媒脱揮によって従来の方法で回収することができる(図1には示されていない)。従来の蒸留設備を使用して、溶媒と未反応のコモノマーを回収してもよい(図1には示さず)。
【0022】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、ヒーター、触媒残留物を除去するための任意の吸収器、中間圧力分離器(IPS)、及び一対の二段階蒸気供給低圧分離器(LPS)を含む既知の単位操作を使用して溶液から回収される。次いで、回収されたエチレンコポリマーを押出機でペレット化し、ストリッパーで脱揮して残留溶媒とコモノマーを除去する。
【0023】
本開示の一実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)は、断熱的に運転される。
【0024】
本開示の一実施形態では、タンク反応器(反応器2)は、断熱的に運転される。
【0025】
本開示の一実施形態では、第2の管状反応器(反応器3)は、断熱的に運転される。
【0026】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムは、断熱的に運転される。
【0027】
本開示では、「断熱的に運転される」という語句は、能動的な熱除去機構も能動的な熱付加機構も有しない反応器又はマルチゾーン反応器システムを指す。
【0028】
本開示の一実施形態では、タンク反応器(反応器2)は、任意選択で撹拌機が存在する撹拌されるタンク反応器であるが、タンク反応器は、撹拌なしで運転され、したがって、連続的に撹拌されるタンク反応器としてではなく、代わりに一種のプラグフロー反応器として機能する。本開示では、撹拌機を備えたタンク(又はオートクレーブ)反応器は、撹拌機が停止しているときに「プラグフローモード」で運転していると称される。理論に束縛されることを望むものではないが、タンク反応器(反応器2)を撹拌なしで使用する場合、マルチゾーン反応器システムは、3つの重合反応ゾーンを含む長い管状反応器システムとして説明することができ、各重合反応ゾーンは、異なる直径を有する(及び任意に断熱的に運転する)管状反応器によって画定される。
【0029】
本開示の一実施形態では、溶液相重合プロセスで重合されるモノマーは、エチレン及び1-ブテンである。
【0030】
溶液相重合プロセスには、多種多様な溶媒を使用することができるが、本開示の一実施形態では、溶媒は炭化水素溶媒である。
【0031】
本開示の実施形態では、溶液相重合プロセスに使用される溶媒は、シクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンである。
【0032】
本開示の一実施形態では、溶液相重合で使用されるすべてのモノマー(例えば、エチレン及び1つ以上のアルファオレフィン)は、第1の管状反応器(反応器1)の入口に供給される。本開示の一実施形態では、溶液相重合で使用されるすべてのモノマー(例えば、エチレン及び1つ以上のアルファオレフィン)及び触媒成分(例えば、チーグラー・ナッタ予備触媒成分及び共触媒)は、第1の管状反応器(反応器1)の入口に供給される。これらの実施形態では、理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマー溶液がマルチゾーン反応器システムを通って流れるとき、エチレン(及びアルファオレフィンコモノマー)濃度が減少し、温度が上昇する条件下で追加のポリマーが形成される。このとき、モノマー変換は、タンク反応器(反応器2)及び第2の管状反応器(反応器3)内で、任意選択でこれらの反応器にさらに触媒を添加することなく、継続する。当業者であれば、個々の反応器が温度を測定するための機器を備えている場合、周知の技術を使用して熱及び物質収支を用いて各反応器内でエチレン転化率を推定/決定できることを知っている。
【0033】
本開示の実施形態では、各反応器内で形成されるエチレンコポリマーの量は、例えば、活性重合触媒濃度(これは、予備触媒化合物に対する共触媒化合物のモル比に依存し得る)、モノマー(例えば、エチレン及びアルファオレフィン)濃度、反応器温度、及び重合ホールドアップ時間などのいくつかの変数の関数になる。
【0034】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)、タンク反応器(反応器2)、及び第2の管状反応器(反応器3)のそれぞれにおける重合ホールドアップ時間を調整して、各反応器で作製されるエチレンコポリマーの量を制御する。重合ホールドアップ時間は、重合性モノマーが活性重合触媒の存在下で重合されてエチレンコポリマーを生成する時間である。重合ホールドアップ時間は、プロセスフロー又はスループットレート、反応器の容積、及び重合触媒成分の反応器への供給位置などの変数を変更することによって調整することができる。
【0035】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)における重合ホールドアップ時間は、0.5~100秒、又は1~15秒である。
【0036】
本開示の実施形態では、タンク反応器(反応器2)における重合ホールドアップ時間は、少なくとも0.5分又は1.0~7.0分である。
【0037】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の15~60重量パーセントが、第1の管状反応器(反応器1)で作製される。本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の20~50重量パーセントが、第1の管状反応器(反応器1)で作製される。本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の30~40重量パーセントが、第1の管状反応器(反応器1)で作製される。
【0038】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の60重量パーセント以下が、タンク反応器(反応器2)で作製される。本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の50重量パーセント以下が、タンク反応器(反応器2)で作製される。
【0039】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の約10重量パーセントが、第2の管状反応器(反応器3)で作製される。本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の10重量パーセント未満が、第2の管状反応器(反応器3)で作製される。
【0040】
本開示の一実施形態では、水素は、連鎖移動剤として溶液相重合プロセスで使用される。
【0041】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される。
【0042】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口の上流にある第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される。
【0043】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口に近接する第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される。
【0044】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の長さに沿って入口から25%~75%下流にある第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って2.5m~7.5mにある管状反応器内の少なくとも1つの位置である)。
【0045】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って3.5m~6.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0046】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って4.5m~5.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0047】
本開示の一実施形態では、水素は、第1の管状反応器(反応器1)の入口と、第1の管状反応器の長さに沿って入口から約50%下流にある第1の管状反応器(反応器1)内の少なくとも1つの位置の両方に供給される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って約5mにある管状反応器内の位置である)。
【0048】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0049】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口の上流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0050】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口に近接する第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0051】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0052】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口の上流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0053】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口に近接する第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0054】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0055】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口の上流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0056】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口に近接する第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0057】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97重量パーセント、又は65~95重量パーセント、又は70~95重量パーセント、又は70~90重量パーセント、又は75~97重量パーセント、又は75~95重量パーセント、又は80~95重量パーセント、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0058】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97重量パーセント、又は65~95重量パーセント、又は70~95重量パーセント、又は70~90重量パーセント、又は75~97重量パーセント、又は75~95重量パーセント、又は80~95重量パーセント、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口の上流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0059】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97重量パーセント、又は65~95重量パーセント、又は70~95重量パーセント、又は70~90重量パーセント、又は75~97重量パーセント、又は75~95重量パーセント、又は80~95重量パーセント、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にあってタンク反応器(反応器2)への入口に近接する第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される。
【0060】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から25%~75%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って2.5m~7.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0061】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って3.5m~6.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0062】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って4.5m~5.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0063】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも60重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から約50%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って約5mにある管状反応器内の位置である)。
【0064】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から25%~75%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って2.5m~7.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0065】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って3.5m~6.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0066】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って4.5m~5.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0067】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも70重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から約50%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って約5mにある管状反応器内の位置である)。
【0068】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から25%~75%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って2.5m~7.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0069】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って3.5m~6.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0070】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って4.5m~5.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0071】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から約50%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って約5mにある管状反応器内の位置である)。
【0072】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97、又は65~95、又は70~95、又は70~90、又は75~97、又は75~95、又は80~95、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から25%~75%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って2.5m~7.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0073】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97、又は65~95、又は70~95、又は70~90、又は75~97、又は75~95、又は80~95、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って3.5m~6.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0074】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97、又は65~95、又は70~95、又は70~90、又は75~97、又は75~95、又は80~95、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って4.5m~5.5mにある管状反応器内の位置である)。
【0075】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の60~97、又は65~95、又は70~95、又は70~90、又は75~97、又は75~95、又は80~95、又は80~90重量パーセントが、第1の管状反応器の長さに沿って入口から約50%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加される(明確には、第1の管状反応器が10mの長さを有する場合、水素が供給される「第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置」は、前記管状反応器の入口から下流に、前記管状反応器の長さに沿って約5mにある管状反応器内の位置である)。
【0076】
本開示の実施形態では、溶液相重合プロセスは、105℃~320℃、又は130℃~250℃、又は140℃~230℃の温度で実施することができる。
【0077】
本開示の実施形態では、溶液相重合プロセスは、約4~約20MPa、又は約8~約20MPaの圧力で実施することができる。
【0078】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)内の温度は、50~250℃、又は60~230℃、又は75~230℃の範囲である。
【0079】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)の長さにわたる温度上昇は、20~150℃、又は20~120℃である。
【0080】
本開示の実施形態では、タンク反応器(反応器2)内の温度は、150~320℃、又は200~275℃である。
【0081】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)内の圧力は、8~20MPa、又は10~20MPa、又は12~16MPaである。
【0082】
本開示の実施形態では、タンク反応器(反応器2)内の圧力は、8~20MPa、又は10~20MPa、又は12~16MPaである。
【0083】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)は、250~5,000リットル、又は350~2,500リットル、又は350~1,000リットル、又は400~1,000リットルの容積を有する。
【0084】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)は、50~1000、又は50~750、又は75~500、又は100~500、又は200~400の長さ対直径比を有する。
【0085】
本開示の実施形態では、タンク反応器(反応器2)は、500~5,000リットル、又は1,000~5,000リットル、又は1,500~5,000リットル、又は2,000~5,000リットル、又は2,500~4,500リットルの容積を有する。
【0086】
本開示の実施形態では、第2の管状反応器(反応器3)は、250~5,000リットル、又は500~4,000リットル、又は1,000~3,500リットル、又は1,500~4,000リットル、又は1,500~3,500リットルの容積を有する。
【0087】
本開示の実施形態では、第2の管状反応器(反応器3)は、50~1,000、又は50~750、又は75~500、又は100~500、又は150~350の長さ対直径比を有する。
【0088】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)の容積とタンク反応器(反応器2)の容積との比は、1:15から2:1、又は1:10から1:1、又は1:7.5から1:1、又は1:5から1:1である。
【0089】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)の容積と第2の管状反応器(反応器3)の容積との比は、1:15から2:1、又は1:10から1:1、又は1:7.5から1:1、又は1:5から1:1である。
【0090】
本開示の実施形態では、第2管状反応器(反応器3)の容積は、タンク反応器(反応器2)の容積の約60~約120%、又はタンク反応器(反応器2)の容積の約70~約100%、又はタンク反応器(反応器2)の容積の約75~95%、又はタンク反応器(反応器2)の容積の約75~85%、又はタンク反応器(反応器2)の容積の約80%である。
【0091】
本開示の一実施形態では、圧力及び温度は、マルチゾーン反応器システム内で維持され、形成されたエチレンコポリマーが溶液中に留まる温度及び圧力に維持される。
【0092】
本開示の実施形態では、マルチゾーン反応器システムで作製されたエチレンコポリマーの分子量(したがって、メルトインデックスI)及び分子量分布(M/M)は、以下によって調整することができる:i)第1の管状反応器の入口温度(すなわち、重合プロセス供給流が第1の管状反応器の上流端に入る温度、例えば、重合溶媒温度及びモノマー温度)を変更すること;ii)プロセスに供給される水素の量を変更すること、及び/又は水素がマルチゾーン反応器システムに供給される位置を変更すること、及び/又はマルチゾーン反応器システムに供給される各位置に供給される水素の量を変更すること;並びに、iii)重合触媒の供給速度を変えることにより、全体のエチレン転化率又は第1の管状反応器内で生じるエチレン転化率を変更すること。
【0093】
本開示のさらなる実施形態では、エチレンコポリマーの分子量及び分子量分布は、以下を変更することによって調整することができる:触媒組成(予備触媒成分に対する共触媒のモル比など);第1の管状反応器、タンク反応器、及び/又は第2の管状反応器の平均温度;第1の管状反応器、タンク反応器及び/又は第2の管状反応器の入口又は出口における温度;並びに、タンク反応器及び/又は第2の管状反応器におけるエチレン転化率。
【0094】
本開示の一実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)の入口温度(又は入口に入る溶媒、モノマー及び触媒成分を含む供給混合物の温度)は、30℃~150℃である。本開示のさらなる実施形態において、第1の管状反応器(反応器1)の入口温度は、75℃~150℃、又は90℃~150℃、又は75℃~130℃、又は90℃~125℃である。
【0095】
本開示の実施形態では、第1の管状反応器(反応器1)の入口温度は、150℃未満、又は140℃未満、又は130℃未満、又は125℃未満である。
【0096】
本開示の一実施形態では、マルチゾーン反応器システムに供給されるエチレンの少なくとも70重量パーセント、又は少なくとも75重量パーセント、又は少なくとも80重量パーセント、又は少なくとも85重量パーセント、又は少なくとも90重量パーセントが、エチレンコポリマーに変換される(すなわち、エチレン転化率は、≧70%、又は≧75%、又は≧80%、又は≧85%、又は≧90%である)。
【0097】
<重合触媒>
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、チーグラー・ナッタ重合触媒の存在下で作製され、その例は当業者に周知である。
【0098】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、バナジウムとチタンとアルミニウムを含むチーグラー・ナッタ重合触媒の存在下で作製される。
【0099】
本開示の一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ重合触媒は、3つの触媒成分を含む。
(i)バナジウム予備触媒化合物、VOCl
(ii)チタン予備触媒化合物である四ハロゲン化チタン、TiX(式中、Xはハロゲン化物である);
(iii)共触媒化合物であるトリアルキルアルミニウム、(RAl化合物、又は、共触媒化合物であるアルキルアルミニウムアルコキシド化合物、RAlOR(式中、R、R及びRは、それぞれ、例えばアルキル基などのC1-10ヒドロカルビル基である)。
【0100】
一実施形態では、チタン予備触媒化合物(ii)は、四塩化チタン、TiClである。
【0101】
一実施形態では、共触媒化合物(iii)は、トリエチルアルミニウム、(CAlである。
【0102】
本開示の一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ触媒を作製するために使用される予備触媒化合物である(i)VOClと(ii)TiXのモル比は、V:Tiのモル比が5:95から70:30である。
【0103】
本開示の一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ触媒を作製するために使用される、共触媒化合物である(iii)(RAl又はRAlORからのアルミニウムと、予備触媒化合物である(i)VOCl及び(ii)TiXによって提供される全金属とのモル比は、Al:(V+Ti)のモル比が0.1:1から100:1、又は0.5:1から50:1、又は0.5:1から25:1、又は0.5:1から10:1、又は0.5:1から5:1、又は0.75:1から10:1、又は0.75:1から5:1である。
【0104】
一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ重合触媒は、最初に成分(i)と(ii)を混合し、次いで成分(iii)を添加することによってオンラインで調製される。
【0105】
実施形態では、活性チーグラー・ナッタ重合触媒は、触媒成分(i)、(ii)及び(iii)を、溶媒及び/又は希釈剤の存在下、20℃~150℃、又は20℃~100℃、又は75℃~150℃、又は80℃~100℃の温度で混合することによってインラインで調製される。
【0106】
一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ重合触媒は、触媒成分(i)、(ii)、及び(iii)を、溶媒及び/又は希釈剤の存在下、0.5~30分、又は0.5~15分、又は0.5~10分、又は0.3~3分の時間、混合することによってオンラインで調製され、その調製は、重合ゾーン又は反応器に当該活性触媒を供給する前に行われる。
【0107】
本開示の実施形態では、VOCl化合物とTiCl化合物を、溶媒及び/又は希釈剤の存在下、50:50から90:10、又は60:40から85:15、又は60:40から80:20の重量比(VOClの重量%:TiClの重量%)で最初に混合し、次いで、第1の管状反応器の入口で第1の管状反応器に注入する直前に、トリエチルアルミニウムと混合した。
【0108】
本開示の一実施形態では、VOCl化合物とTiCl化合物を、溶媒及び/又は希釈剤の存在下、80:20からの重量比で最初に混合し、次いで、第1の管状反応器の入口で第1の管状反応器に注入する直前に、トリエチルアルミニウムと混合した。
【0109】
一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ重合触媒の調製に使用される溶媒は、置換されていないか、又はC1-4アルキル基によって置換されていてもよい不活性C6-10炭化水素である。本開示の実施形態で使用することができる適切な溶媒の非限定的な例には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及び水素化ナフサが含まれる。
【0110】
本開示の一実施形態では、活性チーグラー・ナッタ重合触媒の調製に使用される溶媒は、溶液相重合プロセスのためにマルチゾーン反応器システムに供給されるものと同じである。
【0111】
<エチレンコポリマー>
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、マルチサイト触媒系を用いて作製され、その非限定的な例には、当技術分野で周知のチーグラー・ナッタ重合触媒及びクロム触媒が含まれる。
【0112】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、当技術分野で周知のチーグラー・ナッタ重合触媒を用いて作製される。
【0113】
本開示の実施形態において、エチレンコポリマーを作製するためにエチレンと共重合し得るアルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0114】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含む。
【0115】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、エチレン/1-ブテンコポリマーである。
【0116】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、0.940~0.965g/cm、又は0.940~0.963g/cm、又は0.940~0.960g/cm、又は0.940~0.958g/cm、又は0.940~0.956g/cm、又は0.940~0.952g/cm、又は0.940~0.950g/cm、又は0.942~0.960g/cm、又は0.942~0.958g/cm、又は0.942~0.956g/cm、又は0.942~0.952g/cm、又は0.942~0.950g/cmの密度を有する。
【0117】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーのメルトインデックスIは、少なくとも0.50g/10分、又は少なくとも0.75g/10分、又は少なくとも0.80g/10分、又は少なくとも1.0g/10分である。
【0118】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーのメルトインデックスIは、約0.01g/10分~約10.0g/10分、又は約0.1g/10分~約10.0g/10分、又は約0.1g/10分~約5.0g/10分、又は約0.1g/10分~約3.0g/10分、又は約0.5g/10分~約5.0g/10分、又は約0.5g/10分~約3.0g/10分、又は約0.5g/10分~約2.5g/10分であってよい。
【0119】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーのメルトフロー比(MFR)I21/Iは、50を超え、又は60を超え、又は65を超え、又は70を超え、又は75を超える。
【0120】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーのメルトフロー比(MFR)I21/Iは、115未満である。
【0121】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーのメルトフロー比(MFR)I21/Iは、50~120、又は50~115、又は65超~115未満、又は75超~115未満である。
【0122】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、約5,000~約75,000、又は約5,000~約50,000、又は約5,000~約30,000、又は約5,000~約25,000、又は約7,500~約50,000、又は約7,500~約30,000、又は約7,500~約25,000、又は約5,000~約20,000、又は約5,000~約15,000、又は約7,500~約20,000、又は約7,500~約15,000、又は約10,000~約15,000、又は約10,000~約12,500、又は約11,000~約15,000、又は約11,000~約12,500、又は11,000超12,500未満、又は11,000超15,000未満の数平均分子量Mnを有する。
【0123】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、約75,000~約250,000、又は約80,000~約200,000、又は約90,000~約175,000、又は約100,000~約175,000、又は約90,000~約150,000、又は約100,000~約150,000、又は約100,000~約125,000、又は約90,000~約130,000、又は約90,000~約125,000、又は約85,000~約140,000、又は約85,000~約150,000、又は約85,000超~約140,000未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0124】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、少なくとも500,000、又は500,000超、又は少なくとも550,000、又は550,000超、又は少なくとも600,000、又は600,000超のZ平均分子量Mzを有する。
【0125】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、約500,000~約800,000、又は500,000超~約800,000、又は500,000超~800,000未満、又は約500,000~750,000、又は約525,000~約750,000、又は約550,000~約750,000、又は約575,000~約750,000、又は約550,000~約725,000、又は約575,000~約725,000、又は約600,000~約700,000のZ平均分子量Mzを有する。
【0126】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、8.0~12.0、又は8.0超~12.0、又は8.5~12.0、又は9.0~12.0、又は9.0超~12.0未満、9.0~11.5、8.5~11.5、9.0~11.0、8.0~11.0、9.0~10.5、又は9.5~10.5の分子量分布M/Mを有する。
【0127】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、3.5~8.0、又は4.0~8.0、又は4.0~7.5、又は4.0~7.0、又は4.5~7.5、又は4.5~7.0、又は4.5~6.5、又は5.0~7.0、又は5.5~7.0、又は5.0~6.5、又は5.5~6.5、又は5.0超~6.5未満、又は5.0~6.25、又は5.0~6.0のZ平均分子量分布Mz/Mwを有する。
【0128】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、Log10[I/I]/Log10[6.48/2.16]として定義される応力指数を有し、当該応力指数は、1.60~2.00、又は1.65~2.00、又は1.70~2.00、又は1.75~1.95、又は1.75~1.90、又は1.80~1.95、又は1.80~1.90、又は1.80超~1.90未満である。
【0129】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、約500,000以上の高いMz、及び約9.0~約12.0の広い分子量分布(M/M)を有することを特徴とする。
【0130】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、40~75重量%、又は50~70重量%、又は55~70重量%、又は55~65重量%の組成分布幅指数CDBI50を有する。
【0131】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、35~65重量%、又は35~60重量%、又は35~55重量%、又は40~60重量%、又は40~55重量%、又は40~50重量%、又は40重量%超~50重量%未満の組成分布幅指数CDBI25を有する。
【0132】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)において、単峰性プロファイルを有する。「単峰性」という用語は、本明細書では、GPC曲線において明らかな有意なピーク又は極大値が1つだけ存在することを意味すると定義される。単峰性プロファイルには、幅広い単峰性プロファイルが含まれる。また、単峰性プロファイルには、容易に分離することができない、又は明確に定義された固有のピークにデコンボリューションすることができないショルダー又は埋もれたピークも含まれる場合がある。
【0133】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは、GPC-FTIRを用いて測定される正常コモノマー分布プロファイルを有する。GPC-FTIRを用いて測定されるように、コモノマーの取り込みが分子量と共に減少する場合、その分布は「正常(normal)」と記載される。本明細書では、「正常コモノマー分布」という用語は、エチレンコポリマーの分子量範囲にわたって、様々なポリマー画分のコモノマー含有量が実質的に均一ではなく、そのより高い分子量画分が比例的により低いコモノマー含有量を有することを意味するために使用される。GPC-FTIRを用いて測定されるように、コモノマーの取り込みが分子量に対してほぼ一定である場合、コモノマーの分布は「フラット」又は「均一」と記載される。「逆コモノマー分布」及び「部分的に逆コモノマー分布」という用語は、コポリマーについて得られたGPC-FTIRデータにおいて、1つ以上の低分子量成分よりも高いコモノマー取り込みを有する1つ以上の高分子量成分が存在することを意味する。「逆(逆転した)コモノマー分布」という用語は、本明細書では、エチレンコポリマーの分子量範囲にわたって、様々なポリマー画分のコモノマー含有量が実質的に均一ではなく、そのより高い分子量画分が比例的により高いコモノマー含有量を有することを意味するために使用される(すなわち、コモノマーの取り込みが分子量と共に上昇する場合、その分布は、「逆(reverse)」又は「逆転した(reversed)」として記載される)。コモノマーの取り込みが分子量の増加と共に上昇し、その後低下する場合でも、コモノマーの分布は「逆」と見なされるが、「部分的に逆」として記載されてもよい。
【0134】
一実施形態では、エチレンコポリマーは、それを作製するために使用される触媒配合物の化学組成を反映する触媒残留物を含む。当業者は、触媒残留物が、典型的には、例えばエチレンコポリマーにおいて、金属の百万分率によって定量化されることを理解するであろう。ここで、存在する金属は、それを作製するために使用された触媒配合物中の金属に由来する。存在し得る金属残留物の非限定的な例には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及びバナジウムなどの4族から6族の金属が含まれる。
【0135】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、(エチレンコポリマーの重量に基づいて)少なくとも0.050ppmのチタン、又は少なくとも0.100ppmのチタン、又は少なくとも0.250ppmのチタン、又は少なくとも0.300ppmのチタンを有する。
【0136】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、(エチレンコポリマーの重量に基づいて)0.050~3.0ppmのチタン、又は0.050~2.5ppmのチタン、又は0.050~2.0ppmのチタン、又は0.050~1.5ppmのチタン、又は0.050~1.0ppmのチタン、又は0.100~3.0ppmのチタン、又は0.100~2.5ppmのチタン、又は0.100~2.0ppmのチタン、又は0.100~1.5ppmのチタン、又は0.100~1.0ppmのチタン、又は0.250~3.0ppmのチタン、又は0.250~2.0ppmのチタン、又は0.250~1.5ppmのチタン、又は0.250~1.0ppmのチタンを有する。
【0137】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、(エチレンコポリマーの重量に基づいて)少なくとも0.050ppmのバナジウム、又は少なくとも0.100ppmのバナジウム、又は少なくとも0.200ppmのバナジウム、又は少なくとも0.250ppmのバナジウム、又は少なくとも0.300ppmのバナジウムを有する。
【0138】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーは、(エチレンコポリマーの重量に基づいて)0.050~3.0ppmのバナジウム、又は0.050~2.5ppmのバナジウム、又は0.050~2.0ppmのバナジウム、又は0.050~1.5ppmのバナジウム、又は0.050~1.0ppmのバナジウム、又は0.100~3.0ppmのバナジウム、又は0.100~2.5ppmのバナジウム、又は0.100~2.0ppmのバナジウム、又は0.100~1.5ppmのバナジウム、又は0.100~1.0ppmのバナジウム、又は0.200~3.0ppmのバナジウム、又は0.200~2.0ppmのバナジウム、又は0.200~1.5ppmのバナジウム、又は0.200~1.0ppmのバナジウムを有する。
【0139】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーは長鎖分枝を有しないか、測定可能な量の長鎖分枝(「LCB」)を含まない。LCBは、エチレンコポリマーにおける周知の構造現象であり、当業者によく知られている。従来、LCB分析には下記の3つの方法が存在する:すなわち、核磁気共鳴分光法(NMR)(例えば、J.C.Randall著、J.Macromol.Sci.,Rev.,Macromol.Chem.Phys.,1989年、29巻、201頁参照);DRI、粘度計、及び低角度レーザー光散乱検出器を備えた三重検出SEC(例えば、W.W.Yau 及びD.R.Hill著、Int.J.Polym.Anal.Charact.,1996年、 2巻、151頁参照);及び、レオロジー、(例えば、W.W.Graessley著、Acc.Chem.Res.,1977年、10巻、332-339頁参照)。
【0140】
本開示の一実施形態では、約500,000を超えるMz、約9.0~約12.0の分子量分布(M/M)、及び0.5g/10分を超えるメルトインデックスを有することを特徴とするエチレンコポリマーが作製される。理論に束縛されることを望むものではないが、添付の実施例に示すように、上記のマルチゾーン反応器システムを使用し、マルチゾーン反応器システム全体にわたって水素添加の量及び位置を注意深く操作することによって、これらのエチレンコポリマー特性を達成することができることを我々は観察している。
【0141】
<二軸配向プロセス>
本開示の一実施形態では、二軸配向ポリエチレンフィルム又は二軸配向ポリエチレンフィルム構造は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを含む。
【0142】
二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルム又はフィルム構造は、本開示の一実施形態において、テンターフレームプロセスを使用して作製することができる。
【0143】
テンターフレームプロセスは、二軸配向フィルムを調製するために一般的に使用されており、本発明に適している。テンターフレームプロセスは、フィルム製造の当業者にはよく知られている。このプロセスは、シート又はフィルムを形成するためのスロットダイを備えた押出機から開始する。便宜上、この押し出されたシート又はフィルムを、「ベースフィルム」又は「ベースフィルム構造」若しくは「ベース構造」と呼ぶことがある。ベース構造が冷却ロール上で急冷されると、機械方向(MD)延伸又は機械方向配向(MDO)は、表面速度を徐々に増加させながら回転するいくつかのロールを用いてベース構造を引っ張ることによって達成される。MD延伸に続いて、クリップ(チェーンに取り付けられたもの)が移動するシート(又はフィルム、又はウェブ)のエッジをつかみ、オーブンに運ぶ。オーブン内では、ベース構造のエッジが引き離されてシートが広くなり、これにより横方向配向(TDO)が提供される。この配向/延伸により、配向比又は延伸比に比例して、フィルム構造が薄くなる。例えば、機械方向(MD)に5:1の延伸比、横方向(TD)に8:1の延伸比の1ミルの完成BOPEフィルムを調製するには、40ミル厚のフィルム又はシートを用いてプロセスを開始しなければならない。本開示の実施形態では、機械方向(MD)の延伸比は約5:1から約9:1の範囲であってよく、横方向(TD)の延伸比は約7:1から12:1の範囲であってもよいことに留意されたい。さらなる詳細は、教科書「Film Processing Advances」(Kanai他、2014年、Hanser Publishers)に記載されている。
【0144】
二軸配向により、フィルムの靭性、バリア性、光学特性、耐熱性、及び剛性が改善する可能性がある。しかし、従来のポリエチレンは、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)と比較して、延伸性に乏しいおそれがあるため、テンターフレームプロセスにはあまり適していないと一般に考えられている。
【0145】
一実施形態において、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーは、BOPEフィルム又はフィルム構造を作製するために使用される。
【0146】
一実施形態では、BOPEフィルム又はフィルム構造は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを60~100重量%用いて作製される。一実施形態では、BOPEフィルム又はフィルム構造は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを70~90重量%用いて作製される。一実施形態では、BOPEフィルムは、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを80~95重量%用いて作製される。
【0147】
一実施形態では、BOPEフィルム又はフィルム構造は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを60~100重量%用いて作製され、BOPEフィルム又はフィルム構造を作製するために使用される残りのポリマーもポリエチレンである。一実施形態では、BOPEフィルム又はフィルム構造は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを70~90重量%用いて作製され、BOPEフィルム又はフィルム構造を作製するために使用される残りのポリマーもポリエチレンである。一実施形態では、BOPEフィルムは、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを80~95重量%用いて作製され、BOPEフィルム又はフィルム構造を作製するために使用される残りのポリマーもポリエチレンである。理論に束縛されることを望むものではないが、ポリエチレンのみを使用してBOPEフィルム又はフィルム構造を調製すると、ポリマーの混合物で作製されたフィルムと比較して、フィルムをより容易にリサイクルすることができる。
【0148】
ポリマーのブレンドを使用することは、BOPEフィルムを調製する技術分野において知られており、これはまた、本開示の特定の実施形態において企図されている。したがって、本開示の一実施形態において、BOPEフィルム又はフィルム構造は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーを少なくとも60重量%含むポリマーブレンド組成物から調製される。
【0149】
本開示の実施形態において、エチレンコポリマーとのブレンドでの使用に適している他のポリマーのいくつかの非限定的な例には、以下が含まれる。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);中密度ポリエチレン(MDPE);高密度ポリエチレン(HDPE);エラストマー及びプラストマーを含む超低密度ポリエチレン(VLDPE);エチレンのフリーラジカル重合によって調製される高圧低密度ポリエチレン(HPLDPE)。
【0150】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーとのポリマーブレンドで使用されるLLDPEは、0.1~10g/10分、又は0.9~2.3g/10分のメルトインデックス(I)、及び約0.910~約0.935g/cmの密度を有する。
【0151】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーとのポリマーブレンドで使用されるVLPDEは、0.1~10g/10分、又は0.9~2.3g/10分のメルトインデックス(I)、及び約0.890~約0.910g/cmの密度を有する。
【0152】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーとのポリマーブレンドで使用されるMDPEは、0.1~10g/10分、又は0.9~2.3g/10分のメルトインデックス(I)、及び約0.936~約0.949g/cmの密度を有する。
【0153】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマーとのポリマーブレンドで使用されるHDPEは、0.1~10g/10分、又は0.4~0.9g/10分のメルトインデックス(I)及び少なくとも約0.95g/cmの密度を有する。
【0154】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマーとのポリマーブレンドで使用されるHPLDPEは、0.1~10g/10分のメルトインデックス(I)及び約0.92~約0.94g/cmの密度を有する。
【0155】
BOPEフィルムを調製する技術分野では、多層フィルム又はフィルム構造を(未延伸の)出発フィルムとして使用することが知られている。これらの出発フィルムは、延伸される前は比較的厚く、フィルムではなく「シート」と呼ばれることが多い。便宜上、このような未延伸の多層シートを、「ベースフィルム」又は「ベースフィルム構造」若しくは「ベース構造」と呼びことがある。
【0156】
本開示の一実施形態では、適切なベースフィルム構造は、本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーを(ベースフィルム構造の総重量に基づいて)少なくとも60重量%含む。
【0157】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーは、適切なベースフィルム構造における「コア」層として(すなわち、多層ベースフィルム構造の内側層として)使用される。
【0158】
他の層を調製するために使用できるポリマーの例には、上記のLLDPE、MDPE、HDPE、VLPDE及びHPLDPEが含まれる。
【0159】
本開示の一実施形態では、多層ベースフィルム構造は、2つのスキン層(すなわち、ベースフィルム構造の各々の外側表面上の層)と1つ以上のコア層とを含む少なくとも3つの層を含む。
【0160】
本開示の一実施形態では、公開された米国特許第9,676,169号に開示されているように、一方のスキン層はHDPEから作製することができ、他方のスキン層はシール層である。
【0161】
本開示の一実施形態では、シール層は、直鎖状低密度ポリエチレン、LLDPE(例えば、当業者に周知の、いわゆるメタロセン触媒で作製されたLLDPEなど)、プラストマー、エラストマー、又はそれらのブレンドを含んでもよい。
【0162】
一実施形態では、重合したエチレン及び1-オクテンモノマー(並びにそれらとLLDPE、HDPE及び/又はHPLDPEとのブレンド)を含むプラストマーを、シール層に使用することもできる。
【0163】
本開示の一実施形態では、BOPEフィルムの両方のスキン層にプラストマー(又はそのポリマーブレンド)を使用することも企図されている。
【0164】
理論に束縛されることを望むものではないが、スキン層にプラストマーを使用すると、BOPEフィルムの光学特性が改善する可能性がある。
【0165】
本開示の一実施形態では、BOPEフィルムは、本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーを含むコア層を有し、両方のスキン層は、重合したエチレン及び1-オクテンモノマーを含むプラストマーを含む。
【0166】
本開示の一実施形態では、BOPEフィルムは、本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーを含むコア層を有し、両方のスキン層も、本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーを含む。
【0167】
本開示の一実施形態では、少なくとも5つの層を含む多層構造は、プラストマーから作製された2つの外側スキン層と、プラストマーと、プラストマーより高密度のポリエチレンとのブレンドから作製された2つの「スキン(層)に隣接する」層を有する。
【0168】
BOPEフィルムのバリア特性を改善するために「バリア樹脂」の層を使用することが知られている。適切なバリア樹脂の非限定的な例には、エチレンビニルアルコール(EVOH)及びポリアミドが含まれる。
【0169】
本開示で使用されるポリマー(本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーを含む)は、特定の実施形態において、当業者によく知られているように、従来の量で酸化防止剤(ヒンダードフェノール、ホスファイト又は両方のブレンドなど)を含有する。特定の実施形態においてポリマー(本明細書に記載のように作製されたエチレンコポリマーを含む)に添加することができるその他の任意選択の添加剤としては、ブロッキング防止剤、スリップ剤、及び核形成剤(米国特許第9,676,169号に開示されているものなど)が挙げられる。亜鉛グリセロレートを、本開示の特定の実施形態で使用するために、任意の核形成剤として使用することも企図されている(注:亜鉛グリセロレート核形成剤は、IRGASTAB(登録商標)287という商標で市販されている)。
【0170】
本開示に従って調製されたBOPEフィルムは、多種多様な包装用途に使用するのに適している可能性がある。一実施形態では、BOPEフィルムは、ラミネート構造で使用することができ、例えば、BOPEフィルムは、より低密度のポリエチレンから作製されたシーラントウェブにラミネートされるときに、印刷ウェブとして使用することができる。このタイプのラミネート構造は、ポリエチレンの層にラミネートされたポリエステル又はポリプロピレンの層を含む従来のラミネート構造と比較して、より容易にリサイクルすることができる。
【0171】
以下の実施例は、本開示の選択された実施形態を例示する目的で提示され、提示された例は、提示された特許請求の範囲を限定するものではないことが理解される。
【実施例
【0172】
<ポリマーの特性評価と試験方法>
試験の前に、各ポリマー試験片を23±2℃及び相対湿度50±10%で少なくとも24時間コンディショニングし、その後の試験を23±2℃及び相対湿度50±10%で行った。本明細書では、「ASTM条件」という用語は、23±2℃及び相対湿度50±10%に維持されている実験室を指し、試験対象の試験片は、試験前にこの実験室で少なくとも24時間コンディショニングした。ASTMは、米国材料試験協会を指す。
【0173】
<密度>
ポリマー(例:エチレンコポリマー)の密度は、ASTM D792-13(2013年11月1日)を用いて決定した。
【0174】
<メルトインデックスと応力指数>
エチレンコポリマーのメルトインデックスは、ASTM D1238(2013年8月1日)を用いて決定した。メルトインデックス、I、I、I10、及びI21は、それぞれ2.16kg、6.48kg、10kg、及び21.6kgの重量を用いて、190℃で測定した。本明細書では、「応力指数」という用語又はその頭字語「S.Ex.」は、次の関係によって定義される。
S.Ex.=log(I/I)/log(6480/2160)
(式中、IとIは、それぞれ6.48kgと2.16kgの荷重を用いて190℃で測定されたメルトフローレートである)。
【0175】
<中性子放射化(元素分析)>
中性子放射化分析(以下N.A.A.)を用いて、エチレンコポリマー中の触媒金属残留物を以下のように決定した。放射線バイアル(超高純度ポリエチレンで構成され、内部容量7mL)にエチレンコポリマー組成物試料を充填し、試料重量を記録した。空気圧移送システムを用いて、試料をSLOWPOKE(商標)原子炉(Atomic Energy of Canada Limited,オタワ、オンタリオ州、カナダ)内に配置し、半減期の短い元素(例えば、Ti、V、Al、Mg及びCl)の場合は30~600秒、又は半減期の長い元素(例えば、Zr、Hf、Cr、Fe、及びNi)の場合は3~5時間照射した。原子炉内の平均熱中性子束は、5×1011/cm/sであった。照射後、試料を原子炉から取り出してエージングし、放射能を減衰させ、半減期の短い元素は300秒間エージングし、半減期の長い要素は数日間エージングした。エージング後、ゲルマニウム半導体ガンマ線検出器(OrtecモデルGEM55185、Advanced Measurement Technology Inc.,オークリッジ、テネシー州、米国)及びマルチチャネル分析装置(OrtecモデルDSPEC Pro)を使用して、試料のガンマ線スペクトルを記録した。試料中の各元素の量を、ガンマ線スペクトルから計算し、エチレンコポリマー組成物試料の総重量に対する百万分の一で記録した。N.A.A.システムは、Specpure標準(所望の元素の1000ppm溶液(99%を超える純度))で較正した。1mLの溶液(目的の要素)を15mm×800mmの長方形のペーパーフィルターにピペットで取り、風乾した。次いで、濾紙を1.4mLのポリエチレン照射バイアルに入れ、N.A.A.システムで分析した。標準を使用して、N.A.A.手順(カウント/μg)の感度を決定する。
【0176】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)>
エチレンコポリマー試料(ポリマー)溶液(1~3mg/mL)は、ポリマーを1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中で加熱し、オーブン内で150℃で4時間ホイール上で回転させることにより調製した。酸化劣化に対してポリマーを安定化させるために、酸化防止剤(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT))を混合物に添加した。BHT濃度は250ppmであった。ポリマー溶液は、4つのSHODEX(登録商標)カラム(HT803、HT804、HT805、及びHT806)を備えたPL220高温クロマトグラフィーユニットで、流速が1.0mL/分の移動相としてTCBを使用し、濃度検出器として示差屈折率(DRI)を用い、140℃でクロマトグラフにかけた。GPCカラムを酸化分解から保護するために、BHTを250ppmの濃度で移動相に添加した。試料注入量は200μLであった。GPCカラムは、狭い分布のポリスチレン標準で較正した。ASTM標準試験法D6474-12(2012年12月)に記載されているように、Mark-Houwink方程式を使用して、ポリスチレン分子量をポリエチレン分子量に変換した。GPC生データをCIRRUS GPCソフトウェアで処理して、モル質量平均(M、M、M)及びモル質量分布(例えば、多分散度、M/M)を生成した。ポリエチレンの技術分野では、GPCに相当する一般的に使用される用語は、SEC、すなわち、サイズ排除クロマトグラフィーである。
【0177】
<GPC-FTIR>
エチレンコポリマー(ポリマー)溶液(2~4mg/mL)は、ポリマーを1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)で加熱し、オーブン内で150℃で4時間ホイール上で回転させることにより調製した。酸化劣化に対してポリマーを安定化させるために酸化防止剤(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT))を混合物に添加した。BHT濃度は250ppmであった。試料溶液は、4つのSHODEXカラム(HT803、HT804、HT805及びHT806)を備えたWaters GPC 150C クロマトグラフィーユニット上で、流速1.0mL/分の移動相としてTCBを用いて、140℃でクロマトグラフィーにかけ、検出システムは、FTIR分光計と加熱型FTIRフロースルーセルを加熱型搬送ラインを通じてクロマトグラフィーユニットに結合させた。SECカラムを酸化分解から保護するために、BHTを250ppmの濃度で移動相に添加した。試料注入量は300μLであった。生のFTIRスペクトルをOPUS(登録商標) FTIRソフトウェアで処理し、OPUSに関連付けられたChemometricソフトウェア(PLS technique)を用いて、ポリマー濃度及びメチル含有量をリアルタイムで計算した。次いで、ポリマー濃度及びメチル含有量を取得し、CIRRUS GPCソフトウェアでベースライン補正を行った。SECカラムは、狭い分布のポリスチレン標準で較正した。ASTM標準試験法D6474に記載されているように、Mark-Houwink方程式を使用して、ポリスチレン分子量をポリエチレン分子量に変換した。コモノマー含有量は、Paul J.DesLauriers,Polymer 43,pages 159-170(2002);に記載されているように、ポリマー濃度及びPLS技術によって予測されたメチル含有量に基づいて計算され;参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
<短鎖分岐:GPC-FTIR>
炭素原子1000個あたりの短鎖分岐は、分子量の異なるコポリマー画分に対して測定される。片対数スケールのグラフにプロットすると、傾斜線(対数の横X軸に低分子量画分から高分子量画分まで、縦Y軸に短鎖分岐の数)が、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって決定された、分子量の異なる画分の短鎖分岐の分布となる。GPC-FTIR法では、各高分子鎖の末端に位置するメチル基、すなわちメチル末端基を含む総メチル含量を測定する。したがって、生のGPC-FTIRデータは、メチル末端基から寄与分を差し引くことにより補正する必要がある。より明確には、生のGPC-FTIRデータは、短鎖分岐(SCB)の量を過大評価しており、この過大評価は、分子量(M)が減少するにつれて増加する。本開示では、生のGPC-FTIRデータは、2-メチル補正を用いて補正した。所与の分子量(M)で、メチル末端基(N)の数を、以下の式;N=28000/M、を用いて計算し、N(M依存)を生のGPC-FTIRデータから差し引いて、SCB/1000C(2-メチル補正)GPC-FTIRデータを作成した。
【0179】
<示差走査熱量測定(DSC)>
DSC試験は、ASTM D3418に従って実施した。この分析は、ポリマー試料(アルミニウムパンで調製した5~10mg)と参照物質(空のアルミニウムパン)を、DSCセル内で一定速度の温度変化させることによって実行する。試料と参照物質の実際の温度を、試料の温度が時間と共に直線的に上昇又は下降するに伴い、機器によって監視する。試料が、遷移、反応、又は形質転換を受ける場合、その温度変化の速度は、参照物質の温度変化とは異なる。機器(TA Instruments Q2000)を、まずインジウムで較正し、較正後、ポリマー試験片を0℃で平衡化し、10℃/分の加熱速度で温度を200℃に上げ、次いで、溶融物を200℃で5分間等温保持し、次に、溶融物を10℃/分の冷却速度で0℃に冷却して、0℃で5分間維持し、次いで、試験片を10℃/分の加熱速度で200℃に加熱した。次いで、試料と参照物質との間の温度差(DT=Treference-Tsample)を、試料の温度に対してプロットし、示差サーモグラムを作成する。このプロットから、融解ピーク温度(℃)、融解エンタルピー(J/g)、及び結晶化度(%)を決定した。
【0180】
<動的機械分析(DMA)>
小さな歪み振幅での振動せん断測定を実施して、N雰囲気下の190℃、10%の歪み振幅、10ポイントあたり5ポイントで0.02~126rad/sの周波数範囲で線形粘弾性関数を取得した。周波数掃引実験は、5°の円錐角、137μmの切頭、及び25mmの直径の円錐板形状を使用して、TA Instruments DHR3応力制御レオメーターで実行した。この実験では、正弦波の歪み波を適用し、線形粘弾性関数の観点から応力応答を解析した。DMA周波数掃引の結果に基づくゼロせん断速度粘度(η)は、Ellisモデル(R.B.Bird他著「Dynamics of Polymer Liquids.Volume1:Fluid Mechanics」Wiley-Interscience Publications(1987年)228頁を参照)又はCarreau-Yasudaモデル(K.Yasuda(1979年)PhD Thesis,IT Cambridgeを参照)によって予測した。
【0181】
<キャピラリーレオロジー>
Dynisco LCR7000キャピラリーレオメーターから得られたレオロジーデータを使用して、異なる樹脂の異なるせん断速度での粘度プロファイルを取得した。キャピラリー押出レオメーターでは、材料は温度制御されたバレルに保持され、ピストンによって正確な寸法のダイに押し込まれる。ボア寸法、ダイ寸法、及びピストン速度によって、材料に適用される見かけのせん断速度が決まり、力とダイ寸法を用いて、見かけのせん断応力を計算する。せん断粘度は、ポアズイユの法則を用いて、キャピラリーフロー法から取得することができる。


式中、P=キャピラリー全体の圧力降下(N/m);R=キャピラリーの半径(m);L=キャピラリーの長さ(m);Q=体積流量(m/秒);σ=見かけのせん断応力;∂γ/(∂t)=見かけのせん断速度、である。
【0182】
ポアズイユの式を用いて決定されるせん断速度、せん断応力、せん断粘度は、通常、見かけのせん断粘度、見かけのせん断応力、及び見かけのせん断速度と呼ばれる。これは、ほとんどの流体の非ニュートン特性と、ダイ入口及び出口圧力での圧力降下が考慮されていないためである。試験温度は200℃に設定した。この評価では、使用したキャピラリーの長さは30.48mm、ダイの直径は1.524mmであった。
【0183】
<溶融強度>
溶融強度は、Rosand RH-7キャピラリーレオメーター(バレル直径=15mm)を用い、直径2mm、L/D比10:1のフラットダイを190℃で測定する。圧力変換器:10,000psi(68.95MPa)。ピストン速度:5.33mm/分。引取角度:52°。引取増分速度:50~80m/min又は65±15m/min。ポリマー溶融物を、キャピラリーダイから一定速度で押し出し、次いで、ポリマーストランドが破裂するまで、引取速度を上げながら引き伸ばす。力対時間曲線のプラトー領域における力の最大安定値を、ポリマーの溶融強度として定義する。
【0184】
<ビカット軟化点(温度)>
エチレンコポリマー試料のビカット軟化点を、ASTM D1525-07(2009年12月発行)に従って決定した。この試験では、試料がASTM D1525-07の試験条件、すなわち、加熱速度B(120±10℃/hr及び938グラム荷重(10±0.2N荷重))に供したときに、指定された針の貫通が発生する温度を決定する。
【0185】
<CYTSAF/TREF(CTREF)>
エチレンコポリマー(及び比較例)の「組成分布幅指数」(以下CDBI)は、IR検出器(以下CTREF)を備えたCRYSTAF/TREF200+ユニットを用いて使用して測定した。「TREF」という頭字語は、Temperature Rising Elution Fractionation(温度上昇溶出分別)を指す。CTREFは、Polymer Characterization S.A.(Valencia Technology Park,Gustave Eiffel,8,Paterna,E-46980 Valencia,Spain)から提供された。CTREFは、TREFモードで操作され、これは溶出温度、Co/Ho比(コポリマー/ホモポリマー比)、及びCDBI(組成分布幅指数)、すなわち、CDBI50及びCDBI25の関数としてポリマー試料の化学組成を生成する。ポリマー試料(80~100mg)をCTREFの反応容器に入れた。反応容器に35mlの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を充填し、溶液を150℃に2時間加熱することによりポリマーを溶解した。次いで、溶液のアリコート(1.5mL)を、ステンレス鋼ビーズを充填したCTREFカラムに装填した。試料を装入したカラムを、110℃で45分間安定化させた。次いで、温度を0.09℃/分の冷却速度で30℃に下げることにより、カラム内の溶液からポリマーを結晶化させた。次いで、カラムを30℃で30分間平衡化した。次に、TCBを0.75mL/分でカラムに流しながら、結晶化したポリマーをカラムから溶出し、カラムを0.25℃/分の加熱速度で30℃から120℃にゆっくりと加熱した。生のCTREFデータは、Polymer ChARソフトウェア、Excelスプレッドシート、及び社内で開発されたCTREFソフトウェアを使用して処理した。CDBI50は、組成が中央コモノマー組成の中央値の50%以内であるポリマーのパーセントとして定義され;CDBI50は、米国特許第5,376,439号に記載されているように、組成分布硬化及び組成分布曲線の正規化された累積積分から計算した。当業者は、CTREF溶出温度をコモノマー含有量、すなわち、特定の温度で溶出するエチレン/α-オレフィンポリマー画分中のコモノマーの量に変換するために較正曲線が必要であることを理解するであろう。そのような較正曲線の作成は、先行技術、例えば、Wild他著、J.Polym.Sci.,Part B,Polym.Phys.、20(3)巻,441-455頁に記載されており、参照により本明細書に完全に組み込まれる。同様の方法で計算されたCDBI25;CDBI25は、組成が中央コモノマー組成の中央値の25%であるポリマーのパーセントとして定義される。各試料の実行終了時に、CTREFカラムを30分間洗浄し、具体的には、CTREFカラムの温度を160℃にして、TCBを30分間カラムに流した(0.5mL/分)。
【0186】
<フィルム光学>
フィルム光学特性(ベース未延伸多層前駆体フィルム及び延伸多層フィルムのフィルム光学特性)は、以下のように測定した。ヘイズ、ASTM D1003-13(2013年11月15日)、及び45°光沢、ASTM D2457-13(2013年4月1日)。
【0187】
<フィルムエルメンドルフ引裂度>
フィルム引裂性能(ベース未延伸多層前駆体フィルム及び延伸多層フィルムのフィルム引裂性能)は、ASTM D1922-09(2009年5月1日)により決定され、引裂に対する同様の用語は「エルメンドルフ引裂度」(“Elmendorf tear”)である。フィルムの引裂度は、インフレーションフィルムの機械方向(MD)及び横方向(TD)の両方で測定した。
【0188】
<機械特性>
機械方向と横方向(それぞれMDとTD)の両方での引張試験は、ASTM D882に従って実施した。引張特性測定に使用した試験片の幅は1.0インチであった。最初の延伸速度は、5%歪みまで1.0インチ/分であり、その後、破断するまで速度を20.0インチ/分に上げる。グリップ間隔は2.0インチである。測定された機械特性は、引張破断応力(MPaで報告)、降伏時の歪み(%)、降伏応力(MPa)、破断時の歪み(%)、破断応力(MPa)である。1%及び2%割線弾性率(MPa)は、1.0インチ/分の試験速度で、幅1.0インチ、グリップ間隔2インチの試験片を使用して測定する。
【0189】
<水蒸気透過率(WVTR)>
水蒸気透過率(「WVTR」、特定のフィルム厚さ(ミル)で1日あたり100平方インチのフィルムあたりに透過する水蒸気のグラム、又はg/100in/日として表される)は、MOCON(米国、ミネアポリス)によりAmetekという名称で販売されている装置を用い、ASTM F1249-90に従って測定した。この試験は、100°F(37.8℃)及び相対湿度100%の条件で実施した。
【0190】
<酸素透過率(OTR)>
酸素透過率(「OTR」、特定のフィルム厚さ(ミル)で1日あたり100インチあたりのcmで表される)は、MOCON(米国、ミネアポリス)によりAmetekという名称で販売されている装置を用い、ASTM D3985-17に従って測定した。
試験は、23℃、相対湿度0%、1気圧の条件で実施した。98%の窒素(N)と2%の水素(H)の混合物をキャリアガスとして使用し、100%の酸素(O)を試験ガスとして使用した。15分間の試験サイクルにおいて、に酸素フラックスの変化が1%未満となった時点で試験を終了した。報告したデータは、フィルムの厚さで正規化(乗算)しており、4回の試験の平均である。
【0191】
<穿刺抵抗>
フィルム突刺抵抗(ベース未延伸前駆体多層フィルム並びに延伸多層フィルムの)は、ASTM D5748-95に従ってフィルム突刺(J/mm)に関して測定した。フィルム変位は、力(lb)に対して記録し、最大力は、ASTM D5748-95に従って破断時の穿刺力(lb)として報告した。
【0192】
<フィルム厚さ>
ベース未延伸前駆体多層フィルム及び延伸多層フィルムのフィルム厚さは、ASTM D6988-13に従って測定した。
【0193】
<重合プロセス>
エチレンコポリマーは、それぞれが異なる重合反応器によって画定される3つの重合ゾーンが互いに直列に配置されたマルチゾーン溶液重合プロセスで調製された(図1参照)。第1の重合ゾーンは、第1の管状反応器(反応器1)によって画定され、第2の重合ゾーンは、任意に撹拌されるタンク反応器(反応器2)によって画定され、第3の重合ゾーンは、第2の管状反応器(反応器3)によって画定された。各反応器は、プロセスフローが反応器に入る入口と、プロセスフローが反応器を出る出口と、を有する。管状反応器の場合、入口は反応器の上流末端に位置し、出口は反応器の下流末端に位置する。本重合プロセスにおいて、第1の管状反応器からプロセスフローを受け取るタンク反応器(反応器2)は、任意選択で撹拌機が存在する撹拌されるタンク反応器であるが、撹拌なしで運転され、したがって、一種のプラグフロー反応器として機能した。そこで、本開示では、撹拌機を任意選択で備えたタンク反応器は、撹拌機が停止しているときに「プラグフローモード」で運転していると称される。
【0194】
第1の管状反応器(反応器1)は、直径6インチ、長さ36.6メートル、総容積500リットルのパイプであった。第1の管状反応器(反応器1)の開始点である管状反応器の入口(図1の位置A)に、溶媒(シクロヘキサン)、水素、エチレン、及び1-ブテンと共に、チーグラー・ナッタ重合触媒を、注入して重合反応を開始した(注:チーグラー・ナッタ重合触媒成分を、以下でさらに説明するように、第1の管状反応器入口のすぐ上流で一緒にした;図1には示されていない)。水素については、第1の管状反応器の入口から下流であって、第1の管状反応器の長さに沿って約50%にある位置にある、第1の管状反応器の第2の位置(図1の位置B)にも供給した。本溶液相重合プロセスでは、プロセスフローが第1の管状反応器からタンク反応器内に向かい、次いで第2の管状反応器内に移動するにつれて、重合反応が、第1の管状反応器の長さ全体にわたって継続し、タンク反応器(反応器2)内でも継続し、次いで、第2の管状反応器の長さ全体にわたって継続した。第1の管状反応器に沿って配置された8つの温度インジケーターを用いて、重合反応温度プロファイルを監視した。
【0195】
反応器2は、3,640リットルの容積を有するタンク(又は「オートクレーブ」)反応器で、19.1MPaに設定された安全弁によって保護されていた。タンク反応容器は炭素鋼で構成され、入口ノズルはモネルメッキされていた。幅11.4cmの4つのバッフルは、壁から6.35cmの垂直方向に互いに90°の角度で配置され、撹拌機の存在によって容器内で生じる循環作用を阻止した。撹拌機は、それぞれ6つのインペラーブレードを有する5つのハブを備え、反応容器の高さ方向にわたって等間隔に配置した。タンク反応器の撹拌機は、本溶液相重合プロセス中は使用せず(存在していたが、オンにしなかった)、したがってタンク反応器は「プラグフローモード」で運転された。重合反応温度プロファイルを監視するために、タンク反応器全体に配置された温度インジケーターを使用した。タンク反応容器も高圧蒸気でトレースした。
【0196】
反応器3は、直径10インチのパイプを有する第2の管状反応器で、長さは53メートルであった。重合反応温度プロファイルを監視するために、タンク反応器全体に配置された温度インジケーターを使用した。
【0197】
溶液重合プロセスにおける重合は、第2の管状反応器(反応器3)の出口を出る出口流に触媒失活剤を添加することによって停止させた。使用した触媒失活剤はペラルゴン酸であった。
【0198】
溶液吸収剤(活性化アルミニウム)を用いて、チーグラー・ナッタ触媒の金属残留物(バナジウム及びジルコニウム)を微量に除去する。
【0199】
プロセス溶媒からエチレンコポリマーを回収するために、2段階の脱揮プロセスを採用した。すなわち、2つの蒸気/液体分離器を用い、(第2のV/L分離器からの)第2のボトムストリームをギアポンプ/ペレタイザーの組合せに通した。
【0200】
協和化学工業株式会社(東京、日本)によって供給されたDHT-4V(ハイドロタルサイト)は、溶液プロセスにおいて不動態化剤又は酸捕捉剤として使用することができる。プロセス溶媒中のDHT-4Vのスラリーは、第1のV/L分離器の前に添加してもよい。
【0201】
2つの単軸押出機で樹脂生成物をペレット化し、続いて、窒素及び蒸気を供給したストリッパーでペレットを失活させる。
【0202】
ペレット化する前に、エチレンコポリマー組成物の重量に基づいて、1000ppmのIRGANOX(登録商標)1010(一次酸化防止剤)及び1,000ppmのIRGAFOS(登録商標)168(二次酸化防止剤)を添加することによって、エチレンコポリマーを安定化させた。酸化防止剤をプロセス溶媒に溶解し、第1のV/L分離器と第2のV/L分離器の間に添加した。
【0203】
重合反応を行うために使用しれたチーグラー・ナッタ重合触媒は、第1の管状反応器の入口に供給され、次の3つの成分で構成されていた。
(i)バナジウム予備触媒化合物、VOCl
(ii)チタン予備触媒成分である四塩化チタン、TiCl
(iii)共触媒化合物であるトリエチルアルミニウム、(CAl。
VOCl化合物とTiCl化合物を、80/20の重量比で(シクロヘキサン中で)最初に混合し、次いで、第1の管状反応器の入口(図1の位置A)で第1の管状反応器に注入する直前に、トリエチルアルミニウムと混合した。
【0204】
本開示に従ってマルチゾーン反応システムで実施される溶液相重合の詳細を、表1に示す。本開示に従って作製されたエチレンコポリマーの詳細を、比較エチレンコポリマーと共に、表2に示す。比較エチレンコポリマー「比較例3」は、クロム触媒を用いて気相プロセスで作製されたエチレン/1-ヘキセンコポリマーであり、HF-Y450-Aとして、NOVA Chemicals Corporationから入手可能である。
【0205】
本開示に従って作製されたエチレンコポリマー及び比較例のさらなる詳細を、図2図7に示す。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2】
【0208】
表2のデータは、図2と共に、本開示に従って作製されたエチレンコポリマー(発明例1及び2)が広い分子量分布(すなわち、比較的高いMw/Mn)及び適度に高い分子量テールを有することを示しており、この特徴は、気相で作製した比較樹脂(比較例3)にも見られ、BOPEフィルムの調製に有用であることが知られているものであることを示している。本開示のエチレンコポリマー(発明例1及び2)は広い分子量及び比較的高い分子量テールを有するが、それにもかかわらず、それらは比較樹脂(比較例3)よりも高いメルトインデックスIを有する。また、比較樹脂は、非常に高い分子量テールを有し(図2及び表2の比較例3の比較的高いMz値を参照)、本開示に従って作製されたエチレンコポリマーについて観察された値よりも高い。理論に束縛されることを望むものではないが、このような非常に高分子量のテールは、BOPEフィルムを調製する際にゲルの形成に寄与する可能性がある。
【0209】
図3に示すように、本開示に従って作製されたエチレンコポリマー(発明例1及び2)は、一般に、エチレンコポリマーの分子量が増加するにつれて、短鎖分枝(炭素主鎖原子1000個あたりの分枝)の量が減少する。
【0210】
図4に示すように、本開示に従って作製されたエチレンコポリマー(発明例1及び2)のCTREFプロファイルは、気相で作製された比較樹脂(比較例3)について得られたものと同様であり、それはBOPEフィルムの作製に有用であることが知られている。同様のCTREFプロファイルは、本発明例の樹脂と比較樹脂が、同様の量の非晶質(非結晶性)ポリマー相を有することを示している。理論に束縛されることを望むものではないが、適切な量の非晶質、非結晶性ポリマー相を存在させ、処理ウィンドウを拡大する(例えば、フィルムを首尾よく延伸することができる条件の範囲を広げる)ことによって、BOPEプロセス中にベースフィルムを延伸するのに役立つと考えられている。非晶質材料を存在させることにより、シート又はフィルムの軟化を可能にし、結晶相の急激な溶融が起こる前に延伸を促進し、延伸のウィンドウを広げることができる。非晶質材料はまた、延伸プロセス中にシート又はフィルムを弾性にすることもでき、これによりいくらかの歪み硬化が促進され、延伸プロセス中に厚さが均一になる。
【0211】
図5に示すように、本開示に従って作製されたエチレンコポリマー(発明例1及び2)は、気相で作製された比較樹脂(比較例3)について得られたものよりもわずかに低い融点温度を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマーの融点が低いほど、BOPEフィルム構造を作製するための二軸延伸プロセス中に役立つ可能性があり、融点が低いということは、ポリマー内により多くの非晶質材料が存在することを示しており、延伸プロセス中にポリマーシート又はフィルムを早期に軟化するのに役立ち、延伸ウィンドウを改善する。
【0212】
図6は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマー、発明例1及び2が、良好な見かけのせん断粘度を有し、高いせん断減粘挙動を有することを示している。発明例1及び2の両方について、良好なせん断減粘挙動が実証されており、発明例1及び2は、類似の分子量分布(Mw/Mn)及び類似のメルトフロー比(I21/I)を有するが、いくらか異なるメルトインデックスI値を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、良好なせん断減粘挙動は、テンターフレームプロセスでBOPEフィルムを作製するための押出プロセス中に高い生産速度を提供することができる。
【0213】
図7は、本開示に従って作製されたエチレンコポリマー(発明例1及び2)が、気相で作製された比較樹脂(比較例3)と比較して、より低い粘度を有することを示している。
理論に束縛されることを望むものではないが、より低いポリマー粘度は、テンターフレームプロセスでBOPEフィルムを作製するための押出プロセス中の生産速度を改善するのに役立つ可能性がある。
【0214】
<BOPEフィルムの調製>
二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを、以下に記載する条件を用いて、テンターフレームプロセスで調製した。
【0215】
<A.未延伸フィルム(又は「ベース構造」)の調製>
多層(3層)シートは、3つの単軸押出機から12インチのキャスティングダイを通して共押出される。溶融ストリームは、キャスティングダイの前に配置されたフィードブロック内で結合される。ダイから押し出された多層シートは、エアナイフとエッジピンナーを用いて冷却ロールに固定され、冷却ロール上で急冷される。一次冷却ロール温度は65℃に設定した。便宜上、この未延伸の多層シートは、本明細書では「ベース構造」と呼ばれることがある。3つの層のそれぞれで使用されるポリマーの重量は、A/B/Cの形式で示される。例えば、ポリマー全体の10重量%をそれぞれの層が含む2つの外側層(又はスキン層)と、ポリマー全体の80重量%を含むコア層とを有するベース構造は、10/80/10構造と記述される。
【0216】
発明例1及び比較例3を使用して、3層ベースフィルム構造を調製した。すなわち、上述の手順を用いて、A層、B層、及びC層のそれぞれに発明例1又は比較例3を使用し、10/80/10フィルム構造を作製した。
【0217】
これらのベース多層フィルム構造のそれぞれから、以下のパートBに記載の手順を用いて、二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを調製した。
【0218】
<B.二軸配向プロセス>
これらの例では、順次延伸プロセスを使用した。まず、機械方向の延伸/配向を行った。次いで、「配向」シートを横方向に延伸した。
【0219】
機械方向配向(MDO:Machine direction orientation)は、最大260°Fの温度及び最大7.5:1の延伸比で、単段又は多段のショートギャップ延伸プロセスのいずれかを用いて行った。横方向配向(TDO:transverse direction orientation)は、複数のゾーン(予熱ゾーン、延伸ゾーン、アニーリングゾーン、及び最後に1つの冷却ゾーン)で行った。TDO延伸ゾーンの温度は最大270°F、延伸比は最大9:1であった。
【0220】
MDOは、ベースフィルムを予備加熱し、異なる速度で回転している2つのロールの間でシートを延伸することによって実現される。ロールの速度の違いが、延伸比を決定する。延伸は、1組の延伸ロールで行うことも、一連の延伸ロールの上で行うこともできる。延伸は、一般に、フィルムの結晶融解温度(Tm)より低い温度で行われる。次いで、MDOフィルムは、レールに取り付けられたチェーン上のクリップを用いてテンターフレームオーブン内に供給され、予備加熱される。レールが互いに離れるにつれてフィルムのエッジが引っ張られてフィルムが延伸され、その結果、フィルムが横方向に延伸される。フィルムの幅はレール間の距離によって設定され、所望の延伸比を達成するように調整することができる。TDOは、MDOと同等の温度か、わずかに高い温度で行われる。プロセス条件の概要を表3に示す。
【0221】
【表3】
【0222】
発明例1又は比較例3から作製したBOPE多層フィルムの特性を、表4に示す。表4に示すように、発明例1の10/80/10ベース構造から、MD延伸比6.5及びTD延伸比9で二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを調製し、一方で、比較例3の10/80/10ベース構造から、MD延伸比4.75及びTD延伸比8で二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを調製した。
【0223】
【表4】
【0224】
発明例1は、比較例3と同様の密度を有するが、比較例3よりも高いメルトインデックスIを有し、表4のデータが示すように、テンターフレームプロセスにおいてBOPEを作製するために延伸することに成功した。したがって、当業者は、本開示のプロセスに従って作製されたエチレンコポリマーが、テンターフレームプロセスにおいてBOPEを作製するために使用するのに適した0.940~0.960g/cmの範囲の密度を有する、追加的かつ代替的なエチレンコポリマーを提供することを、認識するであろう。
【0225】
本開示の非限定的な実施形態には、以下が含まれる。
【0226】
実施形態A. エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含むエチレンコポリマーであって、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する、エチレンコポリマー。
【0227】
実施形態B. 40~50の組成分布幅指数CDBI25を有する、実施形態Aに記載のエチレンコポリマー。
【0228】
実施形態C. 11,000~12,500の数平均分子量Mnを有する、実施形態A又はBに記載のエチレンコポリマー。
【0229】
実施形態D. 11,000超12,500未満の数平均分子量Mnを有する、実施形態A又はBに記載のエチレンコポリマー。
【0230】
実施形態E. 600,000~700,000のZ平均分子量Mzを有する、実施形態A、B、C、又はDに記載のエチレンコポリマー。
【0231】
実施形態F. チタン及びバナジウム触媒残留物の両方を、(エチレンコポリマーの重量に基づいて)チタン0.100~1.5ppm及びバナジウム0.100~1.5ppmの量で含有することをさらに特徴とする、実施形態A、B、C、D又はEに記載のエチレンコポリマー。
【0232】
実施形態G. 単峰性分子量分布を有する、実施形態A、B、C、D、E又はFに記載のエチレンコポリマー。
【0233】
実施形態H. 0.940~0.956g/cmの密度を有する、実施形態A、B、C、D、E、F又はGに記載のエチレンコポリマー。
【0234】
実施形態I. 1.80~1.90の応力指数を有する、実施形態A、B、C、D、E、F、G又はHに記載のエチレンコポリマー。
【0235】
実施形態J. 重合したエチレン及び1-ブテンを含む、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H又はIに記載のエチレンコポリマー。
【0236】
実施形態K. マルチゾーン反応器システムにおいてエチレンコポリマーを作製するための溶液相重合プロセスであって、
当該マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンを含み、第1の重合ゾーンは、入口及び出口を有する第1の管状反応器によって画定され、
当該重合プロセスは、
重合反応を開始するために、溶媒、水素、チーグラー・ナッタ重合触媒、エチレン、及び4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンを、第1の管状反応器の入口に供給する工程;
水素を、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に供給する工程;
を含み、
当該マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加され;
当該マルチゾーン反応器システムで作製されるエチレンコポリマーの総量の20~50重量パーセントが、第1の管状反応器で作製される、
溶液相重合プロセス。
【0237】
実施形態L. 前記第2の重合ゾーンが、入口及び出口を有するタンク反応器によって画定される、実施形態Kに記載のプロセス。
【0238】
実施形態M. 前記第3の重合ゾーンが、入口及び出口を有する第2の管状反応器によって画定される、実施形態K又はLに記載のプロセス。
【0239】
実施形態N. 前記の第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置が、第1の管状反応器の長さに沿って入口から35%~65%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置である、実施形態K、L又はMに記載のプロセス。
【0240】
実施形態O. 前記の第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置が、第1の管状反応器の長さに沿って入口から45%~55%下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置である、実施形態K、L又はMに記載のプロセス。
【0241】
実施形態P. 前記タンク反応器が、プラグフロー反応器として運転される、実施形態K、L、M、N又はOに記載のプロセス。
【0242】
実施形態Q. 前記マルチゾーン反応器システムが、断熱的に運転される、実施形態K、L、M、N、O又はPに記載のプロセス。
【0243】
実施形態R. 前記第1の管状反応器の入口が、30~150℃の温度である、実施形態K、L、M、N、O、P又はQに記載のプロセス。
【0244】
実施形態S. 前記第1の管状反応器の入口が、150℃未満の温度である、実施形態K、L、M、N、O、P、Q又はRに記載のプロセス。
【0245】
実施形態T. 前記マルチゾーン反応器システムに供給されるエチレンの少なくとも90重量パーセントが、エチレンコポリマーに変換される、実施形態K、L、M、N、O、P、Q、R又はSに記載のプロセス。
【0246】
実施形態U. 前記チーグラー・ナッタ重合触媒が、チタン、バナジウム及びアルミニウムを含む、実施形態K、L、M、N、O、P、Q、R、S又はTに記載のプロセス。
【0247】
実施形態V. マルチゾーン反応器システムにおいてエチレンコポリマーを作製するための溶液相重合プロセスであって、
当該マルチゾーン反応器システムは、第1、第2及び第3の重合ゾーンを含み、第1の重合ゾーンは、入口及び出口を有する第1の管状反応器によって画定され、
当該重合プロセスは、
重合反応を開始するために、溶媒、水素、チーグラー・ナッタ重合触媒、エチレン、及び4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンを、第1の管状反応器の入口に供給する工程;
水素を、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に供給する工程;
を含み、
当該マルチゾーン反応器システムに添加される水素の総量の少なくとも80重量パーセントが、第1の管状反応器の入口から下流にある第1の管状反応器内の少なくとも1つの位置に添加され;
当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する、
溶液相重合プロセス。
【0248】
実施形態W. エチレンコポリマーを含む二軸配向ポリエチレンフィルムであって、
当該エチレンコポリマーは、エチレンと、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファオレフィンとを含み;
当該エチレンコポリマーは、0.940~0.960グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度;ASTM D1238により190℃で2.16キログラムの荷重を用いて測定した、0.5~2.5グラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスI;1.75~1.95の応力指数;11,000~15,000の数平均分子量Mn;9~12の多分散指数(Mw/Mn);及び500,000~800,000のZ平均分子量Mzを有する、二軸配向ポリエチレンフィルム。
【産業上の利用可能性】
【0249】
エチレンコポリマーは、溶液相重合条件下でマルチゾーン反応器システムで作製され、二軸配向フィルムの形成に有用である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】