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特表2023-531562有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤、その製造方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/42 20060101AFI20230714BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230714BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230714BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20230714BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20230714BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20230714BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C04B24/42 Z
C04B28/02
C04B24/26 D
C04B24/26 H
C04B24/38 B
C04B24/12 A
C04B24/16
C04B24/38 Z
C09K3/10 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581579
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2020099414
(87)【国際公開番号】W WO2022000305
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010609890.1
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】515150391
【氏名又は名称】江蘇蘇博特新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SOBUTE NEW MATERIALS CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】522504075
【氏名又は名称】博特新材料泰州有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOTE NEW MATERIALS TAIZHOU CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jiangtai Middle Road (Zhanan South Road), Taixing Economic Development Zone, Taizhou, Jiangsu 225463 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 加平
(72)【発明者】
【氏名】蔡 景順
(72)【発明者】
【氏名】穆 松
(72)【発明者】
【氏名】劉 建忠
(72)【発明者】
【氏名】周 霄騁
(72)【発明者】
【氏名】馬 麒
(72)【発明者】
【氏名】呉 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】洪 錦祥
【テーマコード(参考)】
4G112
4H017
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4G112PB41
4H017AA04
4H017AB15
4H017AD06
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】本願は、有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤、その製造方法及び応用を開示する。
【解決手段】
有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤は、有機ケイ素化合物及びその誘導体、触媒、分散剤、安定剤、界面活性剤、及び水からなる。有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤は、水和過程で、撥水機能を有するとともに、コンクリートの空孔を効果的に充填できることにより、疎水性材料が飽水状態で侵食性媒体の拡散を低減できないという難題を有効に解決するナノ粒子をインサイチュで生成する。ナノ粒子をインサイチュで生成することにより、追加添加するナノ材料に存在する分散ムラ、安定性劣化などの問題を有効に解決し、コンクリートのイオン侵食に対する抵抗性を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤であって、
2~70重量部の有機ケイ素化合物及びその誘導体と、0.01~10重量部の触媒と、0.01~10重量部の分散剤と、0.01~5重量部の安定剤と、界面活性剤と、30~95重量部の水とからなり、
前記有機ケイ素化合物及びその誘導体は、ケイ素原子数1~1000の直鎖又は分岐構造のポリマーであって、分子量が100~100000であり、ケイ酸エステル、アルキルシリケート、アルキルシロキサン、アルケニルシロキサン、機能性ヘテロ原子を含有するアルキルシロキサン又はポリシロキサンからなる群より選択されるポリマーであり、
前記触媒は、中性環境で反応を起こさずに前記有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤をコンクリートに混入したときに反応を起こす、フェノール及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、有機グアニジン及びその誘導体、分子量50~1000の低分子アルコールアミンのいずれか一種であり、
前記分散剤は、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、並びにフマル酸及びその誘導体のいずれか一種又は二種からなるポリマー分散剤であり、
前記安定剤は、多糖、キトサン、セルロースエーテル、ポリアミド、及び/又はポリピロリドンであることを特徴とする、有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤。
【請求項2】
前記界面活性剤は、HLB値5~14のカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び/又はノニオン系界面活性剤であって、Span、Tween、ポリオキシエチレンイソアルコールエーテル、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル四級アンモニウム塩のいずれか一種又はいくつかを任意の割合で組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤。
【請求項3】
前記界面活性剤は、Span、アルキルカルボン酸塩、アルキル四級アンモニウム塩のうち一種または二種を混合したものであることを特徴とする、請求項2に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物及びその誘導体は、γ-アミノプロピルシロキサン、シランオリゴマー、及び/又はアリルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤。
【請求項5】
前記触媒は、リン酸グアニジン、及び/又はp-ベンゾキノンであることを特徴とする、請求項1に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤。
【請求項6】
前記分散剤は、分子量が1000~40000であることを特徴とする、請求項1に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤の製造方法であって、
前記有機ケイ素化合物及びその誘導体と前記分散剤とを反応釜に添加して10℃~200℃まで昇温する工程と、
前記界面活性剤を添加して1時間~24時間撹拌する工程と、
前記触媒と前記安定剤と前記水とを添加して1時間~24時間攪拌を続けて前記有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤を得る工程とを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
コンクリート保護材料として使用されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤の応用。
【請求項9】
前記有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤をセメント系材料の混合過程で前記セメント系材料にゲル化材料の使用量に対する3L/m~50L/mの混合量で添加し、前記セメント系材料が硬化した後に緻密な媒体伝送抵抗材料を形成することを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年6月29日付で中国専利局に提出した、発明の名称が「有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤、その製造方法及び応用」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
本願は機能性材料に関するものであり、コンクリートにおける腐食性媒体伝送抑制に特に適しており、建築材料の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの腐食破壊現象はますます多くなり、深刻な場合には重大な事故を引き起こす。
世界各国の技術者や技能者は、特に経済社会の急速な発展、工学的応用分野の継続的な拡大、過酷な腐食環境の一般化に伴い、鉄筋コンクリートの耐食性の向上に常に関心を持っている。
長時間作用性の耐食性を付与する実用的な対策は、腐食破壊を減らし、構造物を長寿命化するための有効な手段である。
【0003】
コンクリートの耐久性の向上において鍵となるのが、腐食性媒体のコンクリートにおける伝送の低減であり、一般的な技術手段として、水結合材比の低減、鉱物混合材の使用が挙げられる。
水結合材比を低減したり、使用水量を少なくすることにより、生コンクリートのワーカビリティーに大きく影響する。
フライアッシュ、鉱物粉末及びシリカフューム等の鉱物混合材を使用することにより、コンクリートの初期強度が低く、中性化深さが大きくなり、収縮によるひび割れを大きくするおそれがある。
上記のような一般的な技術手段として、主に、空孔の数を減少させ、空孔の構造を最適化することにより、侵食性イオンの伝送可能な経路が減る。
従来の研究により、鉄筋コンクリートの腐食の最も激しい領域は、乾湿交番域及び飛沫帯であることが判明した。
なぜなら、上記した領域には、「エッジウィック効果」に類似した、侵食性イオンの高速伝送と濃化を促進する毛管現象が存在するからである。
そのため、毛管現象の低減は、腐食が最も激しい部位における媒体伝送抑制において鍵となる。
【0004】
通常、毛管現象を低減する技術手段としては、オーバーコーティング、又は媒体伝送抵抗抑制材料のドーピングに分けられる。
コーティング技術としては、浸透タイプの有機シランコーティング、造膜タイプのコーティング(欧州特許第0538555号明細書、欧州特許第0340816号明細書)が公知である。
そのうちシリコーンエマルジョンをコンクリートの表面に塗布することができ、コンクリートの表面に疎水層を形成することにより、腐食性媒体のコンクリート内部への伝送を阻止するが、表面塗布の均一性及び長期使用後の性能の劣化はいずれも媒体伝送に対する抵抗性を低下させる。
【0005】
他のオーバーコーティング用防腐材は、アクリル酸エステル、エポキシ樹脂などを含み、腐食媒体を完全に隔離することができるが、このような防腐材におけるコンクリートとの最大の課題は、接着力の低さや、老化のしやさや、通気がないことなどである。
したがって、外部保護材料を実際に応用するコンクリートの表面に耐久性が不足し、失効した後に構築物の表面から除去されにくい。
【0006】
コンクリートに疎水性材料をドープすることにより、侵食性媒体の伝送を抑制する作用を果たすことができるため、近年、学者や技術者・技能者に研究、注目されるようになってきている。
しかしながら、従来のドープ用疎水性材料自体は、コンクリートの強度の進展に顕著な悪影響を及ぼし、例えばステアリン酸エマルジョンにより一般的にコンクリートの強度を15~30%低下させ(Construction and building materials 227(2019)11678)、工事構造の力学的性能を確保できないおそれがある。
【0007】
中国特許第1106363号明細書には、有機ケイ素化合物を含有する加水分解可能な水エマルジョンを水、無機成分及び選択的な有機成分で製造された硬化前の新鮮なコンクリートに添加して、十分均質に疎水化されたコンクリートを製造する方法が記載されており、ある程度で腐食性媒体の伝送を抑制することができる。
しかし、コンクリートが完全に飽水状態にあると、このような材料は侵食性媒体の拡散に対してほとんど改善効果がなく、飽水状態でのコンクリートにおける侵食性イオンの拡散を増加させる場合があり、それにより媒体の伝送を抑制する効果を達成することができない。
【0008】
中国特許第1233774号明細書、中国特許出願公開第102424542号明細書等には、メチルケイ酸ナトリウム又はナトリウムシラノレートナトリウムメチルシラノレート又は高沸点ナトリウムシラノレート、ナノスケール二酸化ケイ素、アクリルシリコーンエマルション又はスチレンアクリレートエルマション又は純粋なアクリルエルマション、モノエタノールアミン又はジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、脱イオン水などの成分からなるナノシリコン撥水剤が記載されている。
しかし、メチルケイ酸ナトリウムなどの防水材料は、コンクリートの凝結時間に深刻な影響を及ぼし、それにより応用における実際の使用量が非常に限られ、同時に飽水状態で効率的な疎水効果を達成しにくい。
また、コンクリートにナノ材料を添加することによって、飽和状態でのコンクリートにおける媒体拡散をある程度に減少させることができるが、ナノ材料はそれ自体の安定性が低く、コンクリートに混合されると効果的で均一に分散しにくいため、その実際の応用効果が依然として理想的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願の発明は、従来技術の欠点を克服するために、コンクリートのイオン侵食に対する抵抗性を改善する有機ケイ素ナノ前駆体材料を提供する。
有機ケイ素ナノ前駆体材料は、水和過程で、撥水機能を有するとともにコンクリートの空孔を効果的に充填できるため、疎水性材料が飽水状態で侵食性媒体の拡散を低減できないという難題を有効に解決するナノ粒子をインサイチュで生成する。
【0010】
また、ナノ粒子をコンクリートの空孔でインサイチュで生成することにより、追加添加するナノ材料に存在する分散ムラ、安定性劣化などの問題を有効に解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤(「有機ケイ素ナノ前駆体である媒体伝送抑制剤」とも称する)は、2~70重量部の有機ケイ素化合物及びその誘導体と、0.01~10重量部の触媒と、0.01~10重量部の分散剤と、0.01~5重量部の安定剤と、界面活性剤と、30~95重量部の水からなる。
【0012】
前記有機ケイ素化合物及びその誘導体は、ケイ素原子数1~1000の直鎖又は分岐構造のポリマーであって、分子量が100~100000であり、ケイ酸エステル、アルキルシリケート、アルキルシロキサン、アルケニルシロキサン、機能性ヘテロ原子を含有するアルキルシロキサン又はポリシロキサンからなる群より選択されるポリマーである。
【0013】
前記触媒は、フェノール及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、有機グアニジン及びその誘導体、分子量50~1000の低分子アルコールアミンのいずれか一種である。
【0014】
前記分散剤は、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、並びにフマル酸及びその誘導体のいずれか一種又は二種からなるポリマー分散剤である。
【0015】
前記安定剤は、多糖、キトサン、セルロースエーテル、ポリアミド、及び/又はポリピロリドンである。
【0016】
ある有機ケイ素化合物及びその誘導体は、それ自体の水に対する溶解性が低いため、界面活性剤を添加して乳化や微乳化等の処理を行い、有機ケイ素化合物及びその誘導体の多相分散性を向上させる必要がある。
前記界面活性剤は、HLB値5~14のカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤であって、Span、Tween、ポリオキシエチレンイソアルコールエーテル、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル四級アンモニウム塩などである。
好ましい界面活性剤は、Span、アルキルカルボン酸塩、アルキル四級アンモニウム塩のうちの一種又は二種を混合したものである。
【0017】
好ましくは、前記有機ケイ素化合物及びその誘導体は、γ-アミノプロピルシロキサン、シランオリゴマー、及び/又はアリルトリエトキシシランである。
【0018】
好ましくは、前記触媒は、リン酸グアニジン、及び/又はp-ベンゾキノンである。
【0019】
好ましくは、前記分散剤は、分子量が1000~40000である。
【0020】
有機ケイ素化合物は、界面張力が低いというそれ自体の性能特性を有するため、水分及び侵食性媒体の浸潤を効果的に抑制することができ、それにより疎水及び媒体伝送抵抗の効果を奏する。
同時に有機ケイ素官能基は、無機材料、特にコンクリート材料と類似の化学組成を有し、無機セメント系材料の界面に強固な化学結合を形成することができる。
したがって、有機/無機ハイブリッド系を形成し、無機材料表面の物理的、化学的性能を改善する。
【0021】
触媒は、コンクリートの強アルカリ性環境の刺激で、有機ケイ素化合物及びその誘導体とセメントとの水和で生成されたケイ酸塩水和物等に作用させて、コンクリートの空孔内に、酸素、ケイ素、炭素等の元素からなる有機/無機ハイブリッドナノ材料をインサイチュで生成する。
【0022】
本願の際立った特徴は、製造されたナノ前駆体媒体伝送抑制剤の製品系のpH値が中性に近く、触媒が中性に近い製品系において有機ケイ素化合物及びその誘導体の反応を引き起こさず、コンクリートに混合された場合に、コンクリート環境でのセメント水和による強アルカリ性により反応を引き起こし、疎水性ナノ粒子をインサイチュで生成することである。
【0023】
本願では、分散成分を添加することにより、ナノ前駆体をコンクリート内部に均一に分散させることができる一方、分散成分により水和過程において有機ケイ素ナノ前駆体とセメント水和生成物との反応により生成されたナノ粒子がより均一に分散することを促進することができる。
【0024】
本願の最大の特徴は、単なる有機ケイ素化合物によりコンクリートの性能を改善するだけでなく、異なる触媒、分散剤、安定剤及び界面活性剤等と組み合わせることにより、有機ケイ素化合物及びその誘導体をコンクリートの内部に均一に分布させることができるとともに、コンクリートの内部でセメント水和の進行に伴い、水和反応に関与し、疎水性ナノ粒子をインサイチュで生成し、同時にコンクリートのコンパクト性の向上を実現することである。
【0025】
同時に、本願のナノ前駆体は、安定剤成分をさらに含むことにより、有機ケイ素化合物及びその誘導体の水溶液系での安定性を改善する一方、有機ケイ素化合物及びその誘導体と水和生成物の作用後のナノ粒子の安定性を改善する。
【0026】
有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤の製造方法は、有機ケイ素化合物及びその誘導体と分散剤とを反応釜に添加して10℃~200℃まで昇温する工程と、界面活性剤を添加して1時間~24時間撹拌する工程と、触媒と安定剤と水とを添加して1時間~24時間攪拌を続ける工程とを含む。
【0027】
本願に係る有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤の応用方法では、前記有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤をセメント系材料の混合過程で前記セメント系材料にセメントの使用量に対する3L/m~50L/mの混合量で添加し、前記セメント系材料が硬化した後に緻密な媒体伝送抵抗材料を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願の有益な効果をよりよく説明するために、出願内容について実施例を利用して検討する。
6つの実施例サンプルを調製し、よい市販品のDOW SHP 60を使用し、コンクリート性能及び耐媒体伝送性能試験により比較検討する。
【0029】
表1に、具体的な実施例S1~S6の配合比を示す。
【0030】
表1 サンプルの配合比


表1 サンプルの配合比(つづき)
【0031】
表1には、調製されたサンプルの配合比が示されている。
異なる組成及び割合の組み合わせにより、性能が安定したナノ前駆体を製造し、そしてコンクリートに混入する。
表2に、コンクリートの配合比を示す。
【0032】
表2 コンクリートの配合比kg/m
【0033】
異なるサンプルのコンクリート作業性、力学的性質、疎水性及び塩素イオン拡散に対する抵抗性などの性能に対する影響を比較検討した。
そのうち吸水率をBS 1882に準拠して測定し、塩素イオン拡散係数をGB 50082『普通コンクリート中長期耐久性試験方法』におけるエレクトロマイグレーション塩素イオン拡散係数RCM法に準拠して測定し、試験結果を表3に示す。
【0034】
表3 異なるサンプルのコンクリート性能に対する影響
【0035】
試験結果から、有機ケイ素ナノ前駆体媒体伝送抑制剤を添加することにより、コンクリートの作業性及び力学的性能への影響が小さく、同時にコンクリートの吸水率を効果的に低減でき、同種の有機ケイ素撥水剤に比べて疎水性が強く、飽水状態でも塩素イオンの拡散係数を非常に顕著に低下させ、コンクリートのイオン侵食に対する抵抗性を向上できることがわかった。
【国際調査報告】