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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ウィルス感染の低減
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20230714BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230714BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230714BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230714BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A61K9/08
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/22
A61K9/12
A61K9/72
A61K9/107
A61K9/06
A61K31/5375
A61K31/495
A61K31/185
A61K31/133
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/12
A61K47/22
A61K38/28
A61K47/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523677
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2021068425
(87)【国際公開番号】W WO2022003200
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2010271.1
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2013976.2
(32)【優先日】2020-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2018446.1
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2018571.6
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2020320.4
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2105509.0
(32)【優先日】2021-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523001186
【氏名又は名称】フォックスバイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マスード,モハメド アビッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA25
4C076AA93
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC35
4C076DD41
4C076DD50Z
4C076DD51
4C076DD57Z
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076DD70
4C076EE37
4C076EE41
4C076FF70
4C084AA02
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4C084DB34
4C084MA13
4C084MA17
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4C084MA59
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4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC18
4C086BC50
4C086BC73
4C086DA08
4C086EA25
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206FA03
4C206FA44
4C206JA08
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA76
4C206MA79
4C206MA90
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、37℃で6.7~7.9のpHを有し、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療もしくは回復に使用するための、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減に使用するための緩衝液組成物に関する。緩衝液組成物は、N-置換アミノスルホン酸を含み得る。本発明は、緩衝液組成物の調製方法、および緩衝液組成物の濃縮物にも関する。
緩衝液組成物は、対象の風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復方法に、および風媒性ウィルスに感染した対象、または対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製を低減する方法に使用できる。風媒性ウィルスには、コロナウィルス、例えば、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2などのRNAウィルスが挙げられる。
緩衝液組成物は、鼻内噴霧、吸入器もしくは噴霧器により、またはクリーム、ゲルもしくは、乳剤の形態で投与でき、従って、本発明は、緩衝液組成物を含む鼻内噴霧剤、吸入剤、噴霧剤、クリーム、ゲルまたは乳剤にも関する。緩衝液組成物はまた、風媒性ウィルスのウィルス感染症のリスクを減らすマスクまたは他の顔面被覆材にも同様に適用でき、従って、本発明は、緩衝液組成物を含む噴霧剤にも関する。緩衝液組成物はまた、対象により吸入される前に、酸素含有ガスをバブリングするために通過させる容器に入れて使用でき、従って、本発明は、緩衝液組成物を含む容器にも関する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
37℃で6.7~7.9のpHを有し、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療もしくは回復に使用するための、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは前記対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減もしくは防止に使用するための緩衝液組成物。
【請求項2】
(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、を含む水性組成物であって、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復に使用するための、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは前記対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減または防止に使用するための水性組成物。
【請求項3】
前記組成物が、下記を含む水性組成物である、請求項1または2に記載の組成物:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;および
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン。
【請求項4】
(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む、水性組成物。
【請求項5】
(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)トランスフェリンおよび/または鉄イオン、を含む、水性組成物。
【請求項6】
前記組成物が、下記を含む水性組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vii)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【請求項7】
前記組成物が、下記を含む水性組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;
(vii)1~100μモル/Lのトランスフェリン;および
(viii)1~100μモル/Lの鉄イオン。
【請求項8】
下記の1種または複数をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物:
(a)2~11ミリモル/Lのグルコース;
(b)50~150μモル/Lのグリセロール;
(c)7~15μモル/Lのコリンイオン;
(d)5~400μモル/Lのグルタミン酸;
(e)5~200μモル/Lのアスパラギン酸;
(f)100~2000μモル/Lのグルタミン;
(g)20~215μモル/Lのピログルタミン酸;
(h)20~200μモル/Lのアルギニン;
(i)1~250ナノモル/Lのチアミンピロリン酸イオン;
(j)40~100μモル/Lのカルニチン;
(k)5~600mIU/Lのブタまたはヒトインスリン;
(l)20~200μモル/Lのヒアルロン酸;
(m)1~100μモル/Lのトランスフェリン;
(n)20~250μモル/Lのロイシン;
(o)10~100μモル/Lのリノール酸;
(p)200~1000μモル/Lのコレステロール;
(q)20~500μモル/Lのピリドキサール-5-リン酸;または
(r)10~250μモル/Lのキトサン。
【請求項9】
抗生物質をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
37℃で6.7~7.9のpHを有する、請求項2~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、口腔、上気道、下気道、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支または肺中への吸入に好適する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧、口内噴霧、気管支噴霧、点鼻、鼻腔内洗浄、鼻腔内灌流、鼻腔タンポン挿入、うがいまたは含嗽による投与、またはクリーム、ゲル、乳剤、軟膏の形態での投与に好適する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、マスクまたは他の顔面被覆材への適用に好適する、または前記組成物が、対象によるガスの吸入の前に、酸素含有ガスを、組成物を通してバブリングさせるように構成された容器に収容しての使用に好適する、または前記組成物が、対象による空気の吸入の前に、空気中に拡散させるまたは噴霧するために好適する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復に使用するための、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは前記対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減または防止に使用するための、前記風媒性ウィルス感染症が、(i)コロナウィルス(MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択されるコロナウィルスを含む)、インフルエンザウィルス(インフルエンザAウィルス、インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、およびパラインフルエンザウィルスから選択されるインフルエンザウィルスを含む)、ライノウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、風疹ウィルス、またはヒト呼吸器多核体ウィルス、などのRNAウィルス、または(ii)パルボウィルスB19、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス(水痘帯状疱疹ウィルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタイン・バールウィルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6AおよびHHV-6B)、およびヒトヘルペスウィルス7(HHV-7)から選択されるヘルペスウィルスを含む)、ポリオーマウィルス(BKポリオーマウィルスおよびWUポリオーマウィルスから選択されるポリオーマウィルスを含む)または痘瘡ウィルスなどのDNAウィルス、に起因する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
全ての成分を水と混合し、必要に応じ、所望の量にして、必要に応じ、濾過し、必要に応じ、密閉容器中に貯蔵することを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の調製方法。
【請求項16】
水および全ての成分を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の調製のための濃縮物であって、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を形成するために、水で希釈可能である、濃縮物。
【請求項17】
水および炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオン以外の全ての成分を含み、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を形成するために、前記濃縮物が前記炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオンを含む水で希釈可能である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の調製のための濃縮物。
【請求項18】
対象の風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復の方法であって、有効量の請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項19】
風媒性ウィルスに感染した対象、または前記対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製を低減または防止する方法であって、有効量の請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記風媒性ウィルス感染症が、(i)コロナウィルス(MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択されるコロナウィルスを含む)、インフルエンザウィルス(インフルエンザAウィルス、インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、およびパラインフルエンザウィルスから選択されるインフルエンザウィルスを含む)、ライノウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、風疹ウィルス、またはヒト呼吸器多核体ウィルス、などのRNAウィルス、または(ii)パルボウィルスB19、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス(水痘帯状疱疹ウィルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタイン・バールウィルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6AおよびHHV-6B)、およびヒトヘルペスウィルス7(HHV-7)から選択されるヘルペスウィルスを含む)、ポリオーマウィルス(BKポリオーマウィルスおよびWUポリオーマウィルスから選択されるポリオーマウィルスを含む)または痘瘡ウィルスなどのDNAウィルス、に起因する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
対象の風媒性ウィルス感染のリスクを低減する方法であって、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を、マスクまたは他の顔面被覆材に適用することを含む、方法。
【請求項22】
対象の風媒性ウィルス感染のリスクを低減する方法であって、前記対象によるガスの吸入の前に、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を通して、酸素含有ガスをバブリングすることを含む、方法。
【請求項23】
対象の風媒性ウィルス感染のリスクを低減する方法であって、前記対象による空気の吸入の前に、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を前記空気中に拡散させる、または噴霧することを含む、方法。
【請求項24】
(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏。
【請求項25】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏。
【請求項26】
(i)請求項16に記載の濃縮物、および(ii)水を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏。
【請求項27】
(i)請求項17に記載の濃縮物、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオンを含む水、を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏。
【請求項28】
(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物でコートした、またはそれを含浸したマスクまたは他の顔面被覆材。
【請求項29】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物でコートした、またはそれを含浸したマスクまたは他の顔面被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、37℃で6.7~7.9のpHを有し、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療もしくは回復に使用するための、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減に使用するための緩衝液組成物に関する。緩衝液組成物は、N-置換アミノスルホン酸を含み得る。本発明は、緩衝液組成物の調製方法、および緩衝液組成物の濃縮物にも関する。
【0002】
緩衝液組成物は、対象の風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復方法に、および風媒性ウィルスに感染した対象、または対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製を低減する方法に使用できる。風媒性ウィルスには、コロナウィルス、例えば、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2などのRNAウィルスが挙げられる。
【0003】
緩衝液組成物は、鼻内噴霧、吸入器もしくは噴霧器により、またはクリーム、ゲルもしくは、乳剤の形態で投与でき、従って、本発明は、緩衝液組成物を含む鼻内噴霧剤、吸入剤、噴霧剤、クリーム、ゲルまたは乳剤にも関する。緩衝液組成物はまた、風媒性ウィルスのウィルス感染症のリスクを減らすマスクまたは他の顔面被覆材にも同様に適用でき、従って、本発明は、緩衝液組成物を含む噴霧剤にも関する。緩衝液組成物はまた、対象により吸入される前に、酸素含有ガスをバブリングするために通過させる容器に入れて使用でき、従って、本発明は、緩衝液組成物を含む容器にも関する。
【背景技術】
【0004】
全てのウィルスは、体液、くしゃみ分泌液、または水滴などの液体担体を経由して宿主の身体中に侵入することにより、生きている宿主中で感染し、繁殖する。風媒性ウィルスは、疾患が呼出空気の粒子中に存在して伝播するウィルスである。これらの粒子は、エアロゾルを含み、これは、5マイクロメートル未満の直径であり、長期間にわたり風媒性のまま残ることができ、また、比較的短距離で伝染を起こすことができるより大きな液滴も含む。風媒性ウィルスには、(i)コロナウィルス(例えば、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2)、インフルエンザウィルス(例えば、インフルエンザAウィルス、インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、およびパラインフルエンザウィルス)、ライノウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、風疹ウィルス、およびヒト呼吸器多核体ウィルス、などのRNAウィルス、ならびに(ii)パルボウィルスB19、アデノウィルスおよびアデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス(例えば、水痘帯状疱疹ウィルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタイン・バールウィルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6AおよびHHV-6B)、およびヒトヘルペスウィルス7(HHV-7))、ポリオーマウィルス(例えば、BKポリオーマウィルスおよびWUポリオーマウィルス)および痘瘡ウィルスなどのDNAウィルスが挙げられる。
【0005】
風媒性ウィルスは、粘膜表面を経由して、および特に、鼻腔内および他の気道上皮表面を通って、身体に侵入する。鼻腔内および他の気道上皮は、酸性である傾向があり、また、例えば、胃食道逆流によりさらに酸性になり得る。
【0006】
ウィルス外被(カプシド)の構造的特性は、ウィルス増殖に極めて適切である。理由は、外被は、核酸含有物を含有し、保護しなければならず、標的細胞の外膜に口を開けることができなければならず、また、標的細胞中に核酸を誘導するための確実な経路を設けなければならないためである。カプシド上のスパイクタンパク質は、後者の2つの役割を満たし、細胞受容体への結合、およびその後のウィルスと細胞膜の融合を媒介する。2つの7アミノ酸繰り返し領域および疎水性融合体ペプチドを含むモチーフ(Dutch et al,Biosci Rep,2000,vol 20(6),pages 597-612)が、SARS-CoVのスパイクタンパク質中(Hakansson-McReynolds et al,J Biol Chem,2006,vol 281(17),pages 11965-11971)、および他のコロナウィルス中(Xu et al,J Biol Chem,2004,vol 279(47),pages 49414-49419)、ならびにインフルエンザの赤血球凝集素(HA)中(Skehel et al,Annu Rev Biochem,2000,vol 69,pages 531-569)、および他のウィルス中に存在する。
【0007】
ウィルス感染は、ウィルススパイクタンパク質の受容体-結合ドメイン(RBD)により媒介される、ウィルススパイクタンパク質と、標的細胞表面上の特異的受容体または共受容体との結合時に開始される。従って、RBDは、ウィルスの結合、融合および内部移行で重要な役割を果たす。鼻腔内および他の気道上皮中で認められるプロテアーゼは、酸性環境と相まって、スパイクタンパク質の加水分解を引き起こし、スパイクタンパク質が構造変化を受け、それにより、宿主細胞膜への結合が好都合になる。
【0008】
インフルエンザウィルスでは、赤血球凝集素(HA)スパイクタンパク質は、ホモ三量体糖タンパク質であり、これは、ヒト粘膜上皮に結合し、その後、2つの部分を融合する。プロテアーゼ酵素によるHA前駆体タンパク質の切断活性化は、インフルエンザウィルス複製サイクルで不可欠なステップである。HA切断活性化は、ウィルス-エンドソーム膜融合、およびそれに続く、インフルエンザウィルスゲノムの細胞質中への放出に必要である。以前の研究では、HA切断は、気道中に存在する膜結合または細胞外トリプシン様プロテアーゼにより促進される可能性が最も高かった(Hamilton,J Virol,2012,vol 86(19),pages 10579-10586)。
【0009】
コロナウィルスの新株であり、COVID-19パンデミックの原因物質である、SARS-CoV-2は、最初、中国の武漢で2019年に特定された。コロナウィルスのスパイクタンパク質は、インフルエンザHAタンパク質のものとは異なるが、しかし、ウィルス細胞付着の全体機序は類似であり、酸性環境を同様に必要とする。コロナウィルスおよびインフルエンザウィルスの両方は、それらの細胞膜との融合、およびウィルスヌクレオキャプシドの細胞質への送達を誘発するために、エンドソームの酸性環境を必要とする。SARS-CoV-2は、細胞表面結合、準備刺激および内部移行のために、宿主受容体、特にアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)、および宿主プロテアーゼを利用することが最近示された。ACE2は、メタロペプチダーゼのM2ファミリーのメンバーであり、その活性部位で亜鉛結合ドメインとして機能するHEXXHモチーフを含む(Speth et al,The Faseb Journal,2014,https://doi.org/10.1096/fasebj.28.1_supplement.1067.4)。融合前立体構造中のSARS-CoV-2スパイクタンパク質の細胞外の部分の構造は、最近発表され(Wrapp et al,Science,2020,vol 367,pages 1260-1263)、スパイクは、宿主細胞上のACE2に結合する三量体を形成することが示された。エンドソームの酸性環境内でのACE2結合時には、細胞侵入過程の一部として、スパイクは、融合前から融合後立体構造(準備刺激)に変化する。従って、コロナウィルスは、それらのスパイクタンパク質を標的細胞の選択および標的細胞への侵入のために使用し、SARS-CoV-2は、ACE2受容体を内部移行のために、および細胞プロテアーゼTMPRSS2を準備刺激のために使用する。
【0010】
SARS-CoVウィルスのエンベロープはまた、スパイクタンパク質、Sにより形成された顕著な突起部を含む(Li et al,J Virol,2006,vol 80(14),pages 6794-6800)。SARS-CoV-2と同様に、SARS-CoVスパイクタンパク質は、細胞表面上の受容体ACE2への結合により(Li et al,Nature,2003,vol 426,pages 450-454)、およびウィルスと宿主膜を融合することにより(Dave Cavanagh,The coronavirus surface glycoprotein,1995,Plenum Press,New York)、細胞侵入を指示する。いくつかのグループ(Simmons et al,Antiviral Research,2013,vol 100(3),pages 605-614)は、カテプシンおよびII型膜貫通型セリンプロテアーゼをSARS-CoVの細胞活性化因子として特定し、ある種の新たに出現したウィルスは、それらの伝播を促進するために、これらの酵素を介してスパイクタンパク質の活性化を起こす可能性があり、これは、上皮のpHに依存することを示した(Laporte et al,Current Opinion in Virology,2017,vol 24,pages 16-24))。Yangら(J Virol,2004,vol 78(11),pages 5642-5650)は、SARS-CoVの細胞侵入は、スパイク糖タンパク質により媒介され、pH依存性エンドサイトーシスによる樹状細胞移入により強化されることを報告した。Wangら(Cell Research,2008,vol 18,pages 290-301)は、SARS-CoVの宿主細胞への侵入は、クラスリン独立およびカベオラ独立経路を経由したことを報告した。Yangらは、侵入経路は、pH依存性であり(Yang et al,J Virol,2004,vol 78(11),pages 5642-5650)、宿主細胞間質液の酸性環境が必要であることを報告した。
【0011】
オープンリーディングフレーム-9b(ORF-9b)と表記されるSARS-CoVによりコードされるタンパク質は、宿主細胞ミトコンドリアに局在し、ユビキチン化、およびミトコンドリア分裂に関与する宿主タンパク質であるダイナミン様タンパク質1のプロテアソーム分解を誘導することにより、ミトコンドリア伸長をもたらす(Shi et al,J Immunol,2014,vol 193(6),pages 3080-3089)。従って、ミトコンドリアは、ATP産生を増やすように誘導されて、ウィルス複製のためのエネルギーを提供し(Moreno-Altamirano et al,Front Cell Infect Microbiol,2019,vol 9,article 95)、この過程の結果として、宿主細胞のpHを下げるプロトンが放出される。
【0012】
コロナウィルス以外の多くの風媒性ウィルスの感染過程も同様に、pH依存性である。これらのウィルスとしては、例えば、インフルエンザウィルス(Seth et al,J Virol,2003,vol 77(11),pages 6520-6527;Seth et al,J Virol,2003,vol 77(1),pages 167-178;Tong et al,Virology,2002,vol 301,pages 322-333;Skehel et al,Annu Rev Biochem,2000,vol 69,pages 531-569)、麻疹ウィルス(Weiss et al,Am J Biochem & Biotech,2013,vol 9(3),pages 243-254)、風疹ウィルス(Lee et al,Clin Microbiol Rev,2000,vol 13(4),pages 571-587)、パルボウィルスB19(Blumel et al,Transfus Med Hemother,2010,vol 37(6),pages 339-350)、アデノ随伴ウィルス(Salganik et al,J Virol,2012,vol 86(21),pages 11877-11885)、アデノウィルス(Baker et al,Sci Adv,2019,vol 5(9),eaax3567)、水痘帯状疱疹ウィルスなどのヘルペスウィルス(Finnen et al,J Virol,2006,vol 80(21),pages 10325-10334;Girsch et al,J Virol,2019,vol 93(17),e00505-19)、WUポリオーマウィルスなどのポリオーマウィルス(Bhattacharjee et al,Can J Microbiol,2017,vol 63,pages 193-211)、および痘瘡ウィルス(Moss,Viruses,2012,vol 4(5),pages 688-707)が挙げられる。
【0013】
従って、風媒性ウィルス感染過程は、下記のようにまとめることができる:
1.風媒性ウィルス(インフルエンザウィルス、ライノウィルスまたはコロナウィルスなど)が水滴または体液を介して伝播し、鼻を経由して身体に侵入し、鼻腔内粘膜に移動し、そして咽頭および眼も経由する。
2.鼻腔内粘膜は、弱酸性(pH5.5~7.0)であり、胃からの酸逆流(GERD)によりさらに酸性になり得る。
3.鼻腔内上皮中の細胞上で見つかるプロテアーゼ酵素は、高酸性(pH<3)または高アルカリ性(pH>9)環境中で最適に機能するが、生理学的pH(7.2~7.38)では、加水分解速度は、より遅い。プロテアーゼは選択的である(および細胞プロテアーゼTMPRSS2プロテアーゼは、コロナウィルススパイクタンパク質を選択的に加水分解する)。
4.鼻腔内上皮/細胞間質液の酸性環境は、スパイクタンパク質のその立体構造を変化させ、これは、宿主細胞膜との結合を最適化する。
5.ウィルススパイクタンパク質は、細胞膜に結合する。インフルエンザウィルスの場合には、赤血球凝集素(HA)またはノイラミニダーゼ(NA)タンパク質は、細胞膜上のシアル酸に結合する。コロナウィルスの場合には、スパイクタンパク質は、細胞膜中のACE2の二量体に強力に結合する。
6.ウィルスと細胞との融合、および続けて、エンドサイトーシスが起こり、これは、酸性環境(pH<5.5)が必要である。
7.ウィルス細胞外被が開口し、宿主細胞中にウィルス核酸を放出し、ならびにシグナル伝達タンパク質を放出し、これは、ミトコンドリアおよび他の過程を破壊し、最適核酸転写および娘ウィルスの産生を可能にする。
【0014】
緩衝液は、以前は、吸入および鼻腔内投与のために使用されてきた。例えば、Dietherら(Arzneimittelforschung,1982,vol 32(4),pages 406-408)は、吸入により投与されたリン酸およびトリス(THAM)緩衝液の気管支拡張効果について調査した。Davisら(Respiratory Care,2013,vol 58(7),pages 1226-1232)は、薬物送達担体としての緩衝液の潜在的使用の観点から、吸入により投与されたアルカリグリシン緩衝液の安全性について調査した。Washingtonら(Int J Pharm,2000,vol 198(2),pages 139-146)は、ベースラインヒト鼻腔内pHを測定し、pH7.2または5.8の塩化ナトリウム(0.9%)緩衝液、およびpH5.8または5.0のソレンセンのリン酸緩衝液(0.06Mまたは0.13M)を用いて、鼻腔内投与緩衝液のpHに与える効果について調査した。Gernら(The Journal of Infectious Diseases,2007,vol 195,pages 1137-1143)は、低pHのクエン酸/リン酸緩衝液の鼻腔内投与は、ヒト鼻咽頭の表面pHをpH約4.0に一時的に低下させ、ほとんどのヒトライノウィルスの複製を阻害し、インフルエンザウィルスの複製を低減させたが、呼吸器症状は、大きく低減されなかったことを明らかにした。しかしながら、現在まで、中性pHを有する緩衝液が、風媒性ウィルスの複製を低減するために使用されたことはなかった。
【発明の概要】
【0015】
本発明の第1の態様は、37℃で6.7~7.9のpHを有し、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療もしくは回復に使用するための、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減もしくは予防に使用するための緩衝液組成物を提供する。
【0016】
本発明の第1の態様の一実施形態では、緩衝液組成物は、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復で使用するためのものである。
【0017】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、緩衝液組成物は、風媒性ウィルス感染症に感染した対象でウィルス複製の低減または防止(典型的には、低減)に使用するためのものである。
【0018】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態では、緩衝液組成物は、対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減または防止(典型的には、低減)に使用するためのものである。
【0019】
本発明の第1の態様の一実施形態では、緩衝液組成物は、水性組成物である。一実施形態では、緩衝液組成物は水溶液である。
【0020】
本発明の第1の態様の一実施形態では、緩衝液組成物は、グッド緩衝液、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせを含む。
【0021】
本発明の第2の態様は、(i)グッド緩衝液、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、を含む水性組成物を提供し、水性組成物は、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復に使用するためのもの、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減または防止に使用するためのものである。
【0022】
典型的には、本発明の第2の態様の水性組成物は、本発明の第1の態様の緩衝液組成物でもある。
【0023】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態は、(i)N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0024】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態は、(i)N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、および(ii)炭酸水素イオンを含む水性組成物を提供する。
【0025】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0026】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)アミノスルフィン酸、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0027】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)リン酸、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0028】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)亜リン酸、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0029】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)ヘテロアリール(イミダゾールなど)、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0030】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)フェノール酸、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0031】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)アミノ酸(プロリンなど)、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0032】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)ペプチドまたはペプチド等価物、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0033】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)ポリマー緩衝液、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0034】
本発明の第1または第2の態様の別の実施形態は、(i)イオン液体緩衝液、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を提供する。
【0035】
本発明の第2の態様の一実施形態では、水性組成物は、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復で使用するためのものである。
【0036】
本発明の第2の態様の別の実施形態では、水性組成物は、風媒性ウィルス感染症に感染した対象でウィルス複製の低減または防止(典型的には、低減)に使用するためのものである。
【0037】
本発明の第2の態様のさらなる実施形態では、水性組成物は、対象で風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減または防止(典型的には、低減)に使用するためのものである。
【0038】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;および
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン。
【0039】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;および
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン。
【0040】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態では、組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。例えば、本発明の第1または第2の態様の組成物は、0.1~200μモル/Lの亜鉛イオンを含む組成物(水性組成物など)であり得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、現時点では、組成物中に存在する亜鉛イオンは、ACE2の活性を破壊し、風媒性ウィルスの宿主細胞膜への結合を防止し得ると考えられている。また、現時点では、組成物中に存在する亜鉛イオンは、ウィルス、特にコロナウィルスおよびインフルエンザウィルスの複製を低下させ得ると考えられている。
【0041】
亜鉛イオンは、いくつかのレベルで抗ウィルス性である。ウィルスの粘膜繊毛除去(Zanin et al,Cell Host Microbe,2016,vol 19(2),pages 159-168)の重要性に加えて、亜鉛イオンは、ウィルスRNA依存性RNAポリメラーゼにより媒介される細胞質のウィルス複製を直接抑制する(te Velthuis et al,PLoS Pathog,2010,vol 6(11),e1001176)。RNA依存性RNAポリメラーゼは、新規ウィルスゲノムならびにウィルス構造タンパク質の翻訳および産生に必要なサブゲノムRNAの産生に必要である。ウィルスのライフサイクルにおけるさらなるステップは、Mpro(構築中にウィルス構造タンパク質のプロセッシングに関与するプロテアーゼ)を必要とする。Mproはまた、亜鉛イオンの存在下で阻害される(Hsu et al,FEBS Lett,2004,vol 574(1-3),pages 116-120)。炎症促進性サイトカインおよび活性酸素種(ROS)(Wessels et al,Nutrients,2017,vol 9(12),1286)のレベルおよびウィルスの脱殻の阻害(Read et al,Adv Nutr,2019,vol 10(4),pages 696-710)のレベルも、亜鉛イオンのレベルにより影響を受けることが報告されている。
【0042】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態では、組成物は、ホロトランスフェリン、アポトランスフェリンまたはモノフェリックトランスフェリンなどのトランスフェリンをさらに含む。例えば、本発明の第1または第2の態様の組成物は、1~100μモル/Lのトランスフェリンを含む組成物(水性組成物など)であり得る。
【0043】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態では、組成物は、Fe2+またはFe3+などの鉄イオンをさらに含む。例えば、本発明の第1または第2の態様の組成物は、1~100μモル/Lの鉄イオンを含む組成物(水性組成物など)であり得る。
【0044】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態では、組成物は、トランスフェリンおよび鉄イオンをさらに含む。例えば、本発明の第1または第2の態様の組成物は、1~100μモル/Lのトランスフェリンおよび1~100μモル/Lの鉄イオンを含む組成物(水性組成物など)であり得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、現時点では、組成物中に存在するトランスフェリンおよび鉄イオンは、間質液のpHの調節に役立ち、それにより、組成物の有効性を高め得ると考えられている。
【0045】
本発明の第3の態様は、(i)グッド緩衝液、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0046】
典型的には、本発明の第3の態様の水性組成物は、本発明の第1および/または第2の態様の組成物でもある。
【0047】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態は、(i)N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0048】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態は、(i)N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、(ii)炭酸水素イオン、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0049】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0050】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)アミノスルフィン酸、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0051】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)リン酸、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0052】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)亜リン酸、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0053】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)ヘテロアリール(イミダゾールなど)、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0054】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)フェノール酸、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0055】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)アミノ酸(プロリンなど)、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0056】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)ペプチドまたはペプチド等価物、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0057】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)ポリマー緩衝液、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0058】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態は、(i)イオン液体緩衝液、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)亜鉛イオンを含む水性組成物を提供する。
【0059】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;および
(iii)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0060】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;および
(iii)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0061】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vii)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0062】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vii)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0063】
本発明の第3の態様はまた、(i)グッド緩衝液、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物、および(iii)トランスフェリンおよび/または鉄イオンを含む水性組成物を提供する。
【0064】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iii)1~100μモル/Lのトランスフェリン;および
(vi)1~100μモル/Lの鉄イオン。
【0065】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(iii)1~100μモル/Lのトランスフェリン;および
(vi)1~100μモル/Lの鉄イオン。
【0066】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~100ミリモル/L(好ましくは1~12ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;
(vii)1~100μモル/Lのトランスフェリン;および
(viii)1~100μモル/Lの鉄イオン。
【0067】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが0.1~2.5ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(iv)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;
(vii)1~100μモル/Lのトランスフェリン;および
(viii)1~100μモル/Lの鉄イオン。
【0068】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせを含む。これらの緩衝液は、下記でさらに詳細に記載される。好ましくは、組成物は、グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせを含み;好ましくは、組成物は、N-置換アミノスルホン酸を含む。好ましくは、組成物は、炭酸水素イオンまたはその等価物、好ましくは、炭酸水素イオンをさらに含む。
【0069】
グッド緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、グッド緩衝液を含む。一実施形態では、グッド緩衝液は、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0070】
本発明においては、図1に列挙された全ての緩衝液が、グッド緩衝液と見なされる。本発明においては、図1に示すように、グッド緩衝液は、N-置換アミノスルホン酸グッド緩衝液および非スルホン酸グッド緩衝液として分類され得る。
【0071】
アミノスルホン酸緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、アミノスルホン酸を含む。一実施形態では、アミノスルホン酸は、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0072】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、N-置換アミノスルホン酸を含む。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、N-置換アミノスルホン酸グッド緩衝液(BESなど)である。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、N-置換アミノアルキルスルホン酸、例えば、N-置換アミノ(C-Cアルキル)スルホン酸(BESなど)またはN-置換アミノ(C-Cヒドロキシアルキル)スルホン酸である。
【0073】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、N-置換アミノスルホン酸を含む。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、ACES、AMPSO、BES、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、DIPSO、HEPBS、HEPES、HEPPS、HEPPSO、MES、MOBS、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、TABS、TAPS、TAPSO、TES、またはこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、BES、TES、HEPES、PIPES、CAPS、またはこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、BES、DIPSO、TES、TAPS、TAPSO、TABS、またはこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、BES、DIPSO、またはこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、BESである。
【0074】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、N-非置換アミノスルホン酸を含む。一実施形態では、N-非置換アミノスルホン酸は、N-非置換アミノアルキルスルホン酸、例えば、N-非置換アミノ(C-Cアルキル)スルホン酸(タウリンなど)またはN-非置換アミノ(C-Cヒドロキシアルキル)スルホン酸である。
【0075】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、N-非置換アミノスルホン酸を含む。一実施形態では、N-非置換アミノスルホン酸は、タウリン[HN-CHCH-SOH]、3-アミノプロパン-1-スルホン酸[HN-CHCHCH-SOH]、3-アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸[HN-CH-CH(OH)-CH-SOH]、4-アミノブタン-1-スルホン酸[HN-CHCHCHCH-SOH]、またはアミノベンゼンスルホン酸(2-、3-および4-アミノベンゼンスルホン酸を含む)である。一実施形態では、N-非置換アミノスルホン酸はタウリン、またはヒアルロン酸に結合したタウリン、またはキトサンに結合したタウリン、またはカラギーナンに結合したタウリンである。一実施形態では、N-非置換アミノスルホン酸は、タウリンである。
【0076】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルホン酸は、構造
N-(CR-SOH (式I)
または薬学的に許容可能なその塩を有し、式中、
各-Rは、独立に、水素、-Raaa、-CHO、-CORaaa、-COaaa、-SORaaa、-SONH、-SONHRaaa、-SON(Raaa、-SOH、-SOaaa、-SONH、-SONHRaaa、-SON(Raaa、-SOH、-SOaaa、-CONH、-CONHRaaa、-CON(Raaa、-C(NH)NH、-C(NH)NHRaaa、-C(NH)N(Raaa、-C(NRaaa)NHRaaa、-C(NRaaa)N(Raaa、-Raa-Raaa、-Raa-ORaaa、-Raa-SRaaa、-Raa-OH、-Raa-SH、-Raa-CHO、-Raa-CORaaa、-Raa-COH、-Raa-COaaa、-Raa-OCORaaa、-Raa-SORaaa、-Raa-SONH、-Raa-SONHRaaa、-Raa-SON(Raaa、-Raa-SOH、-Raa-SOaaa、-Raa-SONH、-Raa-SONHRaaa、-Raa-SON(Raaa、-Raa-SOH、-Raa-SOaaa、-Raa-NH、-Raa-NHRaaa、-Raa-N(Raaa、-Raa-CONH、-Raa-CONHRaaa、-Raa-CON(Raaa、-Raa-C(NH)NH、-Raa-C(NH)NHRaaa、-Raa-C(NH)N(Raaa、-Raa-C(NRaaa)NHRaaa、-Raa-C(NRaaa)N(Raaa、-Raaaa-(RaaO)-H、-Raaaa-(RaaO)-Raaa、-Raaaa-(RaaO)-CORaaa、-Raaaa-(RaaNR-H、-Raaaa-(RaaNR-Raaa、-Raaaa-(RaaNR-CORaaa、-Raaaa-(RaaNR-CONH、-Raaaa-(RaaNR-CONHRaaa、-Raaaa-(RaaNR-CON(Raaa、-Raaaa-(RaaNR-C(NH)NH、-Raaaa-(RaaNR-C(NH)NHRaaa、-Raaaa-(RaaNR-C(NH)N(Raaa、-Raaaa-(RaaNR-C(NRaaa)NHRaaa、または-Raaaa-(RaaNR-C(NRaaa)N(Raaaであり;
各-Raaは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
各-Raaaは、独立に、C-C30アルキル(好ましくはC-C12アルキルまたはC-Cアルキル)、C-C30アルケニル(好ましくはC-C12アルケニルまたはC-Cアルケニル)、C-C30アルキニル(好ましくはC-C12アルキニルまたはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
各-Raaaa-は、独立に、結合、-CO-,-CO-,-CONH-,-CONR-,-Raa-CO-,-Raa-CO-,-Raa-CONH-,-Raa-CONR-,-Raa-O-,-Raa-NH-,または-Raa-NR-であり;
-Rは、水素、-Rbbb、-CHO、-CORbbb、-CObbb、-SORbbb、-SONH、-SONHRbbb、-SON(Rbbb、-SOH、-SObbb、-SONH、-SONHRbbb、-SON(Rbbb、-SOH、-SObbb、-CONH、-CONHRbbb、-CON(Rbbb、-C(NH)NH、-C(NH)NHRbbb、-C(NH)N(Rbbb、-C(NRbbb)NHRbbb、-C(NRbbb)N(Rbbb、-Rbb-Rbbb、-Rbb-ORbbb、-Rbb-SRbbb、-Rbb-OH、-Rbb-SH、-Rbb-CHO、-Rbb-CORbbb、-Rbb-COH、-Rbb-CObbb、-Rbb-OCORbbb、-Rbb-SORbbb、-Rbb-SONH、-Rbb-SONHRbbb、-Rbb-SON(Rbbb、-Rbb-SOH、-Rbb-SObbb、-Rbb-SONH、-Rbb-SONHRbbb、-Rbb-SON(Rbbb、-Rbb-SOH、-Rbb-SObbb、-Rbb-NH、-Rbb-NHRbbb、-Rbb-N(Rbbb、-Rbb-CONH、-Rbb-CONHRbbb、-Rbb-CON(Rbbb、-Rbb-C(NH)NH、-Rbb-C(NH)NHRbbb、-Rbb-C(NH)N(Rbbb、-Rbb-C(NRbbb)NHRbbb、-Rbb-C(NRbbb)N(Rbbb、-Rbbbb-(RbbO)-H、-Rbbbb-(RbbO)-Rbbb、-Rbbbb-(RbbO)-CORbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-H、-Rbbbb-(RbbNRxx-Rbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-CORbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-CONH、-Rbbbb-(RbbNRxx-CONHRbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-CON(Rbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-C(NH)NH、-Rbbbb-(RbbNRxx-C(NH)NHRbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-C(NH)N(Rbbb、-Rbbbb-(RbbNRxx-C(NRbbb)NHRbbb、または-Rbbbb-(RbbNRxx-C(NRbbb)N(Rbbbであり;
各-Rbbは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
各-Rbbbは、独立に、C-C30アルキル(好ましくはC-C12アルキルまたはC-Cアルキル)、C-C30アルケニル(好ましくはC-C12アルケニルまたはC-Cアルケニル)、C-C30アルキニル(好ましくはC-C12アルキニルまたはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
-Rbbbb-は、結合、-CO-、-CO-、-CONH-、-CONRxx-、-Rbb-CO-、-Rbb-CO-、-Rbb-CONH-、-Rbb-CONRxx-、-Rbb-O-、-Rbb-NH-、または-Rbb-NRxx-であり;
または-Rおよび-Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、4~7員ヘテロ環基を形成し、これは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-R、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、独立に、水素、ハロ、-Rcc-Rccc、-Rcc-ORccc、-Rcc-SRccc、-Rcc-OH、-Rcc-SH、-Rcc-CHO、-Rcc-CORccc、-Rcc-COH、-Rcc-COccc、-Rcc-OCORccc、-Rcc-SORccc、-Rcc-SONH、-Rcc-SONHRccc、-Rcc-SON(Rccc、-Rcc-SOH、-Rcc-SOccc、-Rcc-SONH、-Rcc-SONHRccc、-Rcc-SON(Rccc、-Rcc-SOH、-Rcc-SOccc、-Rcc-NH、-Rcc-NHRccc、-Rcc-N(Rccc、-Rcc-CONH、-Rcc-CONHRccc、-Rcc-CON(Rccc、-Rcc-C(NH)NH、-Rcc-C(NH)NHRccc、-Rcc-C(NH)N(Rccc、-Rcc-C(NRccc)NHRccc、-Rcc-C(NRccc)N(Rccc、-Rcccc-(RcccccO)-H、-Rcccc-(RcccccO)-Rccc、-Rcccc-(RcccccO)-CORccc、-Rcccc-(RcccccNR-H、-Rcccc-(RcccccNR-Rccc、-Rcccc-(RcccccNR-CORccc、-Rcccc-(RcccccNR-CONH、-Rcccc-(RcccccNR-CONHRccc、-Rcccc-(RcccccNR-CON(Rccc、-Rcccc-(RcccccNR-C(NH)NH、-Rcccc-(RcccccNR-C(NH)NHRccc、-Rcccc-(RcccccNR-C(NH)N(Rccc、-Rcccc-(RcccccNR-C(NRccc)NHRccc、または-Rcccc-(RcccccNR-C(NRccc)N(Rcccであり;
各-Rcc-は、独立に、結合、C-Cアルキレン、C-Cアルケニレン、または-(CH-(C)-(CH-であり、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく、
各-Rcccは、独立に、C-C12アルキル(好ましくはC-Cアルキル)、C-C12アルケニル(好ましくはC-Cアルケニル)、C-C12アルキニル(好ましくはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
各-Rcccc-は、独立に、結合、-CO-、-CO-、-CONH-、-CONR-、-Rccccc-CO-、-Rccccc-CO-、-Rccccc-CONH-、-Rccccc-CONR-、-Rccccc-O-、-Rccccc-NH-、または-Rccccc-NR-であり;
各-Rcccccは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
および/または-Rおよび任意の-Rは、それらが結合している原子と一緒に、4~7員ヘテロ環基を形成し、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、それぞれのC-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
および/または任意の2個の-Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、C-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基を形成し、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、各C-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
および/または同じ炭素原子に結合している任意の-Rおよび任意の-Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、C=OまたはC-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基を形成し、C-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基は、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、それぞれのC-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
任意の-(CR)-は、各-O-および-NR-が2個の-(CR)-基に直接結合するように、-O-または-NR-により置換されてもよく、
各-Rは、独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、C-Cアルキル、フェニル、またはベンジルであり、各C-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、水素またはC-Cアルキルであり;
各-Rxxは、水素またはC-Cアルキルであり;
各-Rは、水素またはC-Cアルキルであり;
各-Rは、水素またはC-Cアルキル、または-Rであり;
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり;
各nは、独立に、0、1または2であり;
各pは1、2、3、4、5または6であり;
qは、1、2、3、4、5または6であり;および
各rは、1、2、3、4、5または6である。
【0077】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルホン酸は、構造
N-(CR-SOH (式I)
または薬学的に許容可能なその塩を有し、式中、
-Rは、独立に、水素、-Raaa、-CHO、-CORaaa、-COaaa、-SORaaa、-SONH、-SONHRaaa、-SON(Raaa、-SOH、-SOaaa、-SONH、-SONHRaaa、-SON(Raaa、-SOH、-SOaaa、-CONH、-CONHRaaa、-CON(Raaa、-C(NH)NH、-C(NH)NHRaaa、-C(NH)N(Raaa、-C(NRaaa)NHRaaa、-C(NRaaa)N(Raaa、-Raa-Raaa、-Raa-ORaaa、-Raa-SRaaa、-Raa-OH、-Raa-SH、-Raa-CHO、-Raa-CORaaa、-Raa-COH、-Raa-COaaa、-Raa-OCORaaa、-Raa-SORaaa、-Raa-SONH、-Raa-SONHRaaa、-Raa-SON(Raaa、-Raa-SOH、-Raa-SOaaa、-Raa-SONH、-Raa-SONHRaaa、-Raa-SON(Raaa、-Raa-SOH、-Raa-SOaaa、-Raa-NH、-Raa-NHRaaa、-Raa-N(Raaa、-Raa-CONH、-Raa-CONHRaaa、-Raa-CON(Raaa、-Raa-C(NH)NH、-Raa-C(NH)NHRaaa、-Raa-C(NH)N(Raaa、-Raa-C(NRaaa)NHRaaa、または-Raa-C(NRaaa)N(Raaaであり;
-Raaは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
各-Raaaは、独立に、C-C30アルキル(好ましくはC-C12アルキルまたはC-Cアルキル)、C-C30アルケニル(好ましくはC-C12アルケニルまたはC-Cアルケニル)、C-C30アルキニル(好ましくはC-C12アルキニルまたはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
-Rは、水素、-Rbbb、-CHO、-CORbbb、-CObbb、-SORbbb、-SONH、-SONHRbbb、-SON(Rbbb、-SOH、-SObbb、-SONH、-SONHRbbb、-SON(Rbbb、-SOH、-SObbb、-CONH、-CONHRbbb、-CON(Rbbb、-C(NH)NH、-C(NH)NHRbbb、-C(NH)N(Rbbb、-C(NRbbb)NHRbbb、-C(NRbbb)N(Rbbb、-Rbb-Rbbb、-Rbb-ORbbb、-Rbb-SRbbb、-Rbb-OH、-Rbb-SH、-Rbb-CHO、-Rbb-CORbbb、-Rbb-COH、-Rbb-CObbb、-Rbb-OCORbbb、-Rbb-SORbbb、-Rbb-SONH、-Rbb-SONHRbbb、-Rbb-SON(Rbbb、-Rbb-SOH、-Rbb-SObbb、-Rbb-SONH、-Rbb-SONHRbbb、-Rbb-SON(Rbbb、-Rbb-SOH、-Rbb-SObbb、-Rbb-NH、-Rbb-NHRbbb、-Rbb-N(Rbbb、-Rbb-CONH、-Rbb-CONHRbbb、-Rbb-CON(Rbbb、-Rbb-C(NH)NH、-Rbb-C(NH)NHRbbb、-Rbb-C(NH)N(Rbbb、-Rbb-C(NRbbb)NHRbbb、または-Rbb-C(NRbbb)N(Rbbbであり;
-Rbbは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
各-Rbbbは、独立に、C-C30アルキル(好ましくはC-C12アルキルまたはC-Cアルキル)、C-C30アルケニル(好ましくはC-C12アルケニルまたはC-Cアルケニル)、C-C30アルキニル(好ましくはC-C12アルキニルまたはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
または-Rおよび-Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、4~7員ヘテロ環基を形成し、これは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、独立に、水素、ハロ、-Rcc-Rccc、-Rcc-ORccc、-Rcc-SRccc、-Rcc-OH、-Rcc-SH、-Rcc-CHO、-Rcc-CORccc、-Rcc-COH、-Rcc-COccc、-Rcc-OCORccc、-Rcc-SORccc、-Rcc-SONH、-Rcc-SONHRccc、-Rcc-SON(Rccc、-Rcc-SOH、-Rcc-SOccc、-Rcc-SONH、-Rcc-SONHRccc、-Rcc-SON(Rccc、-Rcc-SOH、-Rcc-SOccc、-Rcc-NH、-Rcc-NHRccc、-Rcc-N(Rccc、-Rcc-CONH、-Rcc-CONHRccc、-Rcc-CON(Rccc、-Rcc-C(NH)NH、-Rcc-C(NH)NHRccc、-Rcc-C(NH)N(Rccc、-Rcc-C(NRccc)NHRccc、または-Rcc-C(NRccc)N(Rcccであり;
各-Rcc-は、独立に、結合、C-Cアルキレン、C-Cアルケニレン、または-(CH-(C)-(CH-であり、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく、
各-Rcccは、独立に、C-C12アルキル(好ましくはC-Cアルキル)、C-C12アルケニル(好ましくはC-Cアルケニル)、C-C12アルキニル(好ましくはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
および/または-Rおよび任意の-Rは、それらが結合している原子と一緒に、4~7員ヘテロ環基を形成し、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、それぞれのC-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
および/または任意の2個の-Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、C-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基を形成し、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、各C-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
および/または同じ炭素原子に結合している任意の-Rおよび任意の-Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、C=OまたはC-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基を形成し、C-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基は、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、-OPH(O)(OH)、およびオキソ(=O)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、それぞれのC-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、-CONH、-OP(O)(OH)、および-OPH(O)(OH)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
任意の-(CR)-は、各-O-および-NR-が2個の-(CR)-基に直接結合するように、-O-または-NR-により置換されてもよく、
各-Rは、独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、C-Cアルキル、フェニル、またはベンジルであり、各C-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、水素またはC-Cアルキルであり;
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり;および
各nは、独立に、0、1または2である。
【0078】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルホン酸は、構造
N-(CR-SOH (式I)
または薬学的に許容可能なその塩を有し、式中、
-Rは、独立に、水素、-Raaa、-CHO、-CORaaa、-COaaa、-Raa-Raaa、-Raa-ORaaa、-Raa-SRaaa、-Raa-OH、-Raa-SH、-Raa-CHO、-Raa-CORaaa、-Raa-COH、-Raa-COaaa、-Raa-OCORaaa、-Raa-NH、-Raa-NHRaaa、または-Raa-N(Raaaであり;
-Raaは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
各-Raaaは、独立に、C-C12アルキル(好ましくはC-Cアルキル)、C-C12アルケニル(好ましくはC-Cアルケニル)、C-C12アルキニル(好ましくはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONHから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
-Rは、水素、-Rbbb、-CHO、-CORbbb、-CObbb、-Rbb-Rbbb、-Rbb-ORbbb、-Rbb-SRbbb、-Rbb-OH、-Rbb-SH、-Rbb-CHO、-Rbb-CORbbb、-Rbb-COH、-Rbb-CObbb、-Rbb-OCORbbb、-Rbb-NH、-Rbb-NHRbbb、または-Rbb-N(Rbbbであり;
-Rbbは、独立に、C-CアルキレンまたはC-Cハロアルキレンであり;
各-Rbbbは、独立に、C-C12アルキル(好ましくはC-Cアルキル)、C-C12アルケニル(好ましくはC-Cアルケニル)、C-C12アルキニル(好ましくはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONHから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
または-Rおよび-Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、4~7員ヘテロ環基を形成し、これは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONH、から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONHから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、独立に、水素、ハロ、-Rcc-Rccc、-Rcc-ORccc、-Rcc-SRccc、-Rcc-OH、-Rcc-SH、-Rcc-CHO、-Rcc-CORccc、-Rcc-COH、-Rcc-COccc、-Rcc-OCORccc、-Rcc-NH、-Rcc-NHRccc、または-Rcc-N(Rcccであり;
各-Rcc-は、独立に、結合、C-Cアルキレン、またはC-Cアルケニレンであり、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく、
各-Rcccは、独立に、C-C12アルキル(好ましくはC-Cアルキル)、C-C12アルケニル(好ましくはC-Cアルケニル)、C-C12アルキニル(好ましくはC-Cアルキニル)、C-Cシクロアルキル、フェニル、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、これらのそれぞれは、(i)1個または複数のハロ基、および/または(ii)-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONHから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基、および/または(iii)C-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、および-CO-(C-Cアルキル)から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、これらのそれぞれは、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
および/または任意の2個の-Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、C-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基を形成し、これらのそれぞれは、1個または複数のハロ基、および/またはC-Cアルキル、フェニル、ベンジル、-O-(C-Cアルキル)、-O-CO-(C-Cアルキル)、-CO-(C-Cアルキル)、-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONHから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく、各C-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロ基および/または-OH、-SH、-NH、-CN、-COH、-SOH、-SOH、および-CONHから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で任意に置換されてもよく;
任意の-(CR)-は、各-O-および-NR-が2個の-(CR)-基に直接結合するように、-O-または-NR-により置換されてもよく、
各-Rは、独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、C-Cアルキル、フェニル、またはベンジルであり、各C-Cアルキル、フェニルまたはベンジル基は、1個または複数のハロおよび/または-OH基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、水素またはC-Cアルキルであり;および
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。
【0079】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルホン酸は、構造
N-(CR-SOH (式I)
を有し、式中、
-Rは、水素またはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、4~7ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、ヘテロ環またはヘテロアリール基は、1個または複数のフルオロ基および/またはC-Cアルキル、ヒドロキシ、SOHおよびCONHから独立に選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されてもよく;
-Rは、水素またはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、4~7ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基であり、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、ヘテロ環またはヘテロアリール基は、1個または複数のフルオロ基および/またはC-Cアルキル、ヒドロキシ、SOHおよびCONHから独立に選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されてもよく;または
-Rおよび-Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、4~7員ヘテロ環基または5~6員ヘテロアリール基を形成し、ヘテロ環基またはヘテロアリール基は、1個または複数のフルオロ基、および/またはC-Cアルキル、ヒドロキシ、SOH、およびCONHから独立に選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されてもよく、各C-Cアルキル基は、1個または複数のフルオロ基および/またはヒドロキシ、SOH、およびCONHから独立に選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されてもよく;
各-Rは、水素、ヒドロキシおよびフルオロから独立に選択され、および/または任意の2個の-Rは、それらが結合している炭素原子と一緒に、C-Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロ環基を形成し、C-Cシクロアルキルまたはヘテロ環基は、1個または複数のフルオロ基、および/またはC-Cアルキル、ヒドロキシ、SOH、およびCONHから独立に選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されてもよく;
各Rは、水素およびフルオロから独立に選択され;および
mは1、2、3、または4である。
【0080】
-Rおよび-Rの両方が水素である場合、 式(I)のアミノスルホン酸は、N-非置換アミノスルホン酸である。-Rおよび-Rの片方または両方が水素以外である場合、 式(I)のアミノスルホン酸は、N-置換アミノスルホン酸である。
【0081】
一実施形態では、-Rおよび-Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、モルホリニルまたはピペラジニル基を形成し、ピペラジニル基は、ヒドロキシおよびSOHから独立に選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されてもよいC-Cアルキルで任意に置換されてもよい。
【0082】
別の実施形態では、-RはHであり、-Rはシクロヘキシルである。
別の実施形態では、-Rは、Hまたは1、2または3個のヒドロキシ基で置換されるC-Cアルキルであり、-Rは、ヒドロキシおよびCONHから独立に選択される1、2または3個の置換基で置換されるC-Cアルキルである。
別の実施形態では、-Rおよび-Rは、水素である。
一実施形態では、Rは水素またはヒドロキシである。
【0083】
一実施形態では、-Rは水素である。
【0084】
一実施形態では、mは、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。別の実施形態では、mは、2、3、4、5、6、7または8である。別の実施形態では、mは、2、3、4、5または6である。別の実施形態では、mは、2、3または4である。別の実施形態では、mは、2または3である。
【0085】
一実施形態では、式(I)のアミノスルホン酸は、-OP(O)(OH)または-OPH(O)(OH)基のいずれも含まない。
【0086】
一実施形態では、式(I)のアミノスルホン酸は、4,000Da以下、2,000Da以下、または1,000Da以下、または500Da以下の分子量を有する。
【0087】
好適なアミノスルホン酸はまた、Grygorenkoら(Tetrahedron,2018,vol 74,pages 1355-1421)およびWO2015/073648で教示されている。これらの両方の文献は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0088】
アミノスルフィン酸緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、アミノスルフィン酸を含む。一実施形態では、アミノスルフィン酸は、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0089】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルフィン酸は、アミノアルキルスルフィン酸、例えば、アミノ(C~Cアルキル)スルフィン酸またはアミノ(C~Cヒドロキシアルキル)スルフィン酸である。
【0090】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルフィン酸は、N-置換アミノスルフィン酸である。一実施形態では、N-置換アミノスルフィン酸は、(HOCHCHN-CHCH-SOHである。
【0091】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルフィン酸は、N-非置換アミノスルフィン酸である。一実施形態では、N-非置換アミノスルフィン酸は、2-アミノエタン-1-スルフィン酸[HN-CHCH-SOH]、3-アミノプロパン-1-スルフィン酸[HN-CHCHCH-SOH]、3-アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-ススルフィン酸[HN-CH-CH(OH)-CH-SOH]、4-アミノブタン-1-スルフィン酸[HN-CHCHCHCH-SOH]、またはアミノベンゼンスルフィン酸(2-、3-および4-アミノベンゼンスルフィン酸を含む)である。一実施形態では、N-非置換アミノスルフィン酸は、2-アミノエタン-1-スルフィン酸、またはヒアルロン酸に結合した2-アミノエタン-1-スルフィン酸、またはキトサンに結合した2-アミノエタン-1-スルフィン酸、またはカラギーナンに結合した2-アミノエタン-1-スルフィン酸である。一実施形態では、N-非置換アミノスルフィン酸は、2-アミノエタン-1-スルフィン酸である。
【0092】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノスルフィン酸は、構造
N-(CR-SOH (式II)
を有し、-R、-R、-R、-Rおよびmは、上記式(I)に対して定義された通りである。誤解を避けるために記すと、上記式(I)に対し概要を述べた-R、-R、-R、-Rおよびmの実施形態は、式(II)の-R、-R、-R、-Rおよびmにも等しく当てはまることに注意されたい。
【0093】
一実施形態では、式(II)のアミノスルフィン酸は、-OP(O)(OH)または-OPH(O)(OH)基のいずれも含まない。
【0094】
一実施形態では、式(II)のアミノスルフィン酸は、4,000Da以下、2,000Da以下、または1,000Da以下、または500Da以下の分子量を有する。
【0095】
アミノスルフィン酸は、キラル硫黄原子を有する。本発明は、アミノスルフィン酸のラセミ混合物、ならびに鏡像異性体が濃縮された、および鏡像異性体として純粋なアミノスルフィン酸を包含する。
【0096】
理論に束縛されるものではないが、現時点では、アミノスルフィン酸は、インビボで対応するアミノスルホン酸に酸化され得ると考えられている。
【0097】
リン酸緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、リン酸を含む。一実施形態では、リン酸は、1~500ミリモル/Lの濃度、または1~200ミリモル/Lの濃度、または1~100ミリモル/Lの濃度、または1~50ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度で存在する。
【0098】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、リン酸は、無機リン酸、例えば、リン酸ナトリウム(NaHPO、またはNaHPOなど)、リン酸カリウム(KHPO、またはKHPOなど)、リン酸カルシウム(Ca(PO、CaHPO、Ca(HPO、またはCaなど)、リン酸マグネシウム(Mg(PO、MgHPO、またはMg(HPOなど)、リン酸亜鉛(Zn(PO、ZnHPO、またはZn(HPOなど)、リン酸鉄(Fe(PO、FeHPO、Fe(HPO、またはFePOなど)、またはこれらの組み合わせである。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、リン酸は、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、またはこれらの組み合わせから選択される無機リン酸である。
【0099】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、リン酸は、有機リン酸、例えば、アルキルリン酸二水素(メチルリン酸二水素、エチルリン酸二水素、プロピルリン酸二水素、またはブチルリン酸二水素など)である。
【0100】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、リン酸は、有機リン酸、例えば、ジアルキルリン酸水素(ジメチルリン酸水素、ジエチルリン酸水素、ジプロピルリン酸水素、またはジブチルリン酸水素など)である。
【0101】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、リン酸は、有機リン酸、例えば、トリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロリン酸(トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸など)である。
【0102】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、リン酸は、有機リン酸、例えば、アミノリン酸などである。一実施形態では、アミノリン酸は、アミノ(C-Cアルキル)リン酸またはアミノ(C-Cヒドロキシアルキル)リン酸である。
【0103】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノリン酸は、構造
N-(CR-OP(O)(OH) 式(III)
を有し、-R、-R、-R、-Rおよびmは、上記式(I)に対して定義された通りである。誤解を避けるために記すと、上記式(I)に対し概要を述べた-R、-R、-R、-Rおよびmの実施形態は、式(III)の-R、-R、-R、-Rおよびmにも等しく当てはまることに注意されたい。
【0104】
一実施形態では、式(III)のアミノリン酸は、4,000Da以下、2,000Da以下、または1,000Da以下、または500Da以下の分子量を有する。
【0105】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、無機リン酸を含まない。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、リン酸を含まない。
【0106】
亜リン酸緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、亜リン酸を含む。一実施形態では、亜リン酸は、1~500ミリモル/Lの濃度、または1~200ミリモル/Lの濃度、または1~100ミリモル/Lの濃度、または1~50ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度で存在する。
【0107】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、亜リン酸は、無機亜リン酸、例えば、亜リン酸ナトリウム(NaHPO、またはNaHPOなど)、亜リン酸カリウム(KHPO、またはKHPOなど)、亜リン酸カルシウム(Ca(PO、CaHPO、またはCa(HPOなど)、亜リン酸マグネシウム(Mg(PO、MgHPO、またはMg(HPOなど)、亜リン酸亜鉛(Zn(PO、ZnHPO、またはZn(HPOなど)、亜リン酸鉄(Fe(PO、FeHPO、Fe(HPO、またはFePOなど)、またはこれらの組み合わせである。
【0108】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、亜リン酸は、有機亜リン酸、例えば、アルキル亜リン酸二水素(メチル亜リン酸二水素、またはエチル亜リン酸二水素など)である。
【0109】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、亜リン酸は、有機亜リン酸、例えば、ジアルキル亜リン酸二水素(ジメチル亜リン酸二水素、またはジエチル亜リン酸二水素など)である。
【0110】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、亜リン酸は、有機亜リン酸、例えば、アミノ亜リン酸などである。一実施形態では、アミノ亜リン酸は、アミノ(C-Cアルキル)亜リン酸またはアミノ(C-Cヒドロキシアルキル)亜リン酸である。
【0111】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノ亜リン酸は、構造
N-(CR-OPH(O)(OH) 式(IV)
を有し、-R、-R、-R、-Rおよびmは、上記式(I)に対して定義された通りである。誤解を避けるために記すと、上記式(I)に対し概要を述べた-R、-R、-R、-Rおよびmの実施形態は、式(IV)の-R、-R、-R、-Rおよびmにも等しく当てはまることに注意されたい。
【0112】
一実施形態では、式(IV)のアミノ亜リン酸は、4,000Da以下、2,000Da以下、または1,000Da以下、または500Da以下の分子量を有する。
【0113】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、無機亜リン酸を含まない。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、亜リン酸を含まない。
【0114】
ヘテロアリール緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾールまたはチアジアゾールなどの1、2または3個の窒素原子を含む5または6員ヘテロアリールを含み、これらのそれぞれは、例えば、1、2または3個のC-Cアルキル基で任意に置換されてもよい。一実施形態では、1、2または3個の窒素原子を含む5または6員ヘテロアリールは、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0115】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、イミダゾールを含む。一実施形態では、イミダゾールは、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0116】
フェノール酸緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、フェノール酸、例えば、ヒドロキシ安息香酸またはヒドロキシケイ皮酸を含む。一実施形態では、フェノール酸は、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0117】
アミノ酸、ペプチドおよびペプチド等価物緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、アミノ酸、ペプチドまたはペプチド等価物を含む。一実施形態では、アミノ酸、ペプチドまたはペプチド等価物は、1~100ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度、または3~8ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で、存在する。
【0118】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノ酸は、α-アミノ酸である。一実施形態では、α-アミノ酸は天然α-アミノ酸である。一実施形態では、α-アミノ酸は、システイン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、またはシトルリンである。一実施形態では、α-アミノ酸は、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、ロイシン、ヒスチジン、またはシトルリンである。
【0119】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノ酸は、β-アミノ酸である。一実施形態では、β-アミノ酸は、3-アミノプロピオン酸または2-アミノ安息香酸(アントラニル酸)である。
【0120】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、アミノ酸は、γ-またはδ-アミノ酸、例えば、4-アミノブタン酸または5-アミノペンタン酸である。
【0121】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、ペプチドはジペプチドである。一実施形態では、ジペプチドは、α-、β-、γ-またはδ-アミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ジペプチドは、α-、β-またはγ-アミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ジペプチドは、α-、β-またはγ-アミノ酸からなる。一実施形態では、ジペプチドは、α-またはβ-アミノ酸からなる。一実施形態では、ジペプチドは、α-アミノ酸からなる。一実施形態では、ジペプチドは両性である。一実施形態では、ジペプチドは、グリシルグリシン、アラニルグルタミン、β-アラニルヒスチジン(カルノシン)、β-アラニル 3-メチルヒスチジン(アンセリン)、グリシルグルタミン、またはこれらのN-置換誘導体(N-アセチル化誘導体など)である。
【0122】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、ペプチドはトリペプチドである。一実施形態では、トリペプチドは、α-、β-、γ-またはδ-アミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、トリペプチドは、α-、β-またはγ-アミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、トリペプチドは、α-、β-またはγ-アミノ酸からなる。一実施形態では、トリペプチドは、α-またはβ-アミノ酸からなる。一実施形態では、トリペプチドは、α-アミノ酸からなる。一実施形態では、トリペプチドは両性である。一実施形態では、トリペプチドは、グルタチオン、リジン-プロリン-バリン(KPV)、またはこれらのN-置換誘導体(N-アセチル化誘導体など)である。
【0123】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、ペプチド等価物はジペプチド等価物である。一実施形態では、ジペプチド等価物は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、アミノスルホン酸および/またはアミノスルフィン酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ジペプチド等価物は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、アミノスルホン酸および/またはアミノスルフィン酸からなる。一実施形態では、ジペプチド等価物は両性である。一実施形態では、ジペプチド等価物は、タウリルタウリン(タウリン二量体)、グルタミルタウリン、アスパルチルタウリン、セリルタウリン、またはこれらのN-置換誘導体(N-アセチル化誘導体など)である。一実施形態では、ジペプチド等価物は、タウリンおよびα-、β-、γ-アミノ酸を含み、例えば、ジペプチド等価物は、グルタミルタウリン、アスパルチルタウリン、セリルタウリン、またはこれらのN-置換誘導体(N-アセチル化誘導体など)である。
【0124】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、ペプチド等価物はトリペプチド等価物である。一実施形態では、トリペプチド等価物は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、アミノスルホン酸および/またはアミノスルフィン酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、トリペプチド等価物は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、アミノスルホン酸および/またはアミノスルフィン酸からなる。一実施形態では、トリペプチド等価物は両性である。一実施形態では、トリペプチド等価物は、タウリン三量体またはそのN-置換誘導体(N-アセチル化誘導体など)である。
【0125】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、ペプチド等価物は、α-アミノ酸およびタウリンを含むか、これらからなるジ、トリまたはテトラペプチド等価物である。
【0126】
好適なペプチド等価物はまた、Grygorenkoら(Tetrahedron,2018,vol 74,pages 1355-1421)、Vertesaljai et al(J Org Chem,2014,vol 79(6),pages 2688-2693)、およびIenagaら(Chem Pharm Bull,1988,vol 36(1),pages 70-77)により教示されている。これらの両方の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
ポリマー緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、ポリマー緩衝液を含む。
【0128】
一実施形態では、ポリマー緩衝液は、キトサン、ポリカチオン(ポリエチレンイミンまたはポリリシンなど)、ヘモグロビン、卵白アルブミン、またはそれらの誘導体のような、それ自体で緩衝液であるポリマーである。
【0129】
別の実施形態では、ポリマー緩衝液は、結合緩衝液であり、すなわち、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチドまたはペプチド等価物で修飾されたデンドリマー、ペプチド、ヒアルロン酸、キトサンまたはカラギーナンなどの緩衝基で修飾されている高分子である。
【0130】
一実施形態では、ポリマー緩衝液の緩衝基(複数可)は、1~500ミリモル/Lの濃度、または1~200ミリモル/Lの濃度、または1~100ミリモル/Lの濃度、または1~50ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度で存在する。
【0131】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチドまたはペプチド等価物は、ヒアルロン酸またはキトサンなどの高分子に結合する。通常、このような実施形態では、N-置換アミノスルホン酸、N-非置換アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチドまたはペプチド等価物が結合する高分子は、水中に溶解または懸濁される。一実施形態では、ポリマーは、水溶性キトサンである。一実施形態では、ポリマーは、ウロカニン酸に結合したキトサンである。一実施形態では、ポリマーは、ウロカニン酸に結合した水溶性キトサンである。
【0132】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、カラギーナン誘導体または類似体を緩衝液として含む。カラギーナンおよびその誘導体および類似体、ならびにそれらの調製物が、例えば、Yamadaら、Carbohydrate Polymers,1997,vol 32,pages 51-55、により開示されている。この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、デンドリマーを緩衝液として含む。
【0134】
デンドリマーは、高度に秩序化され、高度に分岐した高分子である。デンドリマーは、3種の成分:中央コア部、内部樹枝状構造(分岐部)、および機能性表面基を有する外表面、により規定される。典型的には、デンドリマーは、コア部の周りで対称的であり、多くの場合、球状三次元形態をとる。それらの分岐構造は、全分子体積に対し、多数の表面部位を生じる。
【化1】
【0135】
ポリ(アミドアミン)、またはPAMAMは、アミドおよびアミン官能基の反復分岐サブユニットから作られるデンドリマーの一群である。他のデンドリマーと同様に、PAMAMは、全体としての球体様形状および各外側「層」、または世代を有し、指数関数的に多くの分岐点を含む樹枝状分岐からなる内側分子構造を有する。
【0136】
PAMAMは、エチレンジアミンをコア開始剤として用い、下記の2つの反応を交互に行って、外側へ成長させることにより、合成できる。
1.アミノ基末端表面のメチルアクリレートへのマイケル付加(これにより、エステル末端外層を生ずる)、および
2.エチレンジアミンと結合させて、新規アミノ基末端表面を得る。
【化2】
従来のPAMAMは、例えば、表面エステルを対応するカルボン酸(下記スキームの(a)を参照)に加水分解することにより、または表面アミンをカルボン酸(下記スキームの(b)を参照)もしくはスルホン酸(下記スキームの(c)および(d)を参照)などの酸でエンドキャップすることにより、緩衝液へ変換できる。アミンリッチ塩基性コアおよび酸末端表面を有する、得られたPAMAMデンドリマーは、有効な緩衝液である。
スキーム
【化3】
【0137】
例えば、上述のカルボン酸またはスルホン酸で表面修飾され得る、好適なデンドリマーは、Dykes,J Chem Technol Biotechnol,2001,vol 76,pages 903-918;Abbasi et al,Nanoscale Research Letters,2014,vol 9,article 247;Baig et al,IJAPBC,2015,vol 4(1),pages 44-59;Shahi et al,Int J Pharm Sci Rev Res,2015,vol 33(1),pages 187-198;およびGupta et al,J Appl Pharm Sci,2015,vol 5(3),pages 117-122によっても教示されている。これらの全文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0138】
イオン液体緩衝液
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、イオン液体緩衝液を含む。イオン液体緩衝液は、アニオンおよびカチオンから構成される。一実施形態では、緩衝液組成物は、(i)グッド緩衝液(図1に列挙されたものなど)由来のアニオン、α-アミノ酸(プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、ロイシン、ヒスチジンおよびシトルリンを含む上記のものなど天然α-アミノ酸など)、β-アミノ酸(上記のものなど)、アミノスルホン酸(BESおよびタウリンを含む上記のものなど)、またはアミノスルフィン酸(上記のものなど)、および(ii)テトラアルキルアンモニウム(コリニウム、[MeN(CHCHOH)、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムなど)、ジアルキルイミダゾリウム(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムまたは1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムなど)、アルキルピリジニウム(メチルピリジニウムなど)、アルキルピロリジニウム(N-ブチル-N-メチルピロリジニウムなど)、またはテトラアルキルホスホニウム(テトラブチルホスホニウムまたはトリブチルメチルホスホニウムなど)カチオンから選択されるカチオン、を含むイオン液体緩衝液を含む。一実施形態では、緩衝液組成物は、(i)グッド緩衝液(特に、トリシン、TES、CHES、HEPES、BESまたはMES)由来のアニオン、および(ii)コリニウムカチオンを含むイオン液体緩衝液を含む。あるいは、アニオンは、FeCl 、NHSO 、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、またはヨウ化物など)、カルボン酸(酢酸、メトキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、乳酸、ピルビン酸、ピバル酸、安息香酸、サリチル酸、カプリル酸、カプリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、またはヘプタフルオロブトン酸など)、硫酸(アルキル硫酸(硫酸メチルまたは硫酸エチルなど)など)、スルホン酸(アルキルスルスルホン酸(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはヒドロキシメタンスルホン酸など)など)、リン酸(リン酸二水素、アルキルリン酸水素(メチルリン酸水素、エチルリン酸水素、プロピルリン酸水素、またはブチルリン酸水素など)、ジアルキルリン酸(ジメチルリン酸、ジエチルリン酸、ジプロピルリン酸、またはジブチルリン酸など)、またはトリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロリン酸(トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸など))、または亜リン酸(アルキル水素亜リン酸(メチル水素亜リン酸、またはエチル水素亜リン酸など)、またはジアルキル亜リン酸(ジメチル亜リン酸またはジエチル亜リン酸など)など)であり得る。あるいは、カチオンは、アンモニウム([MeNH(CHCHOH)]など)、ペンタアルキルグアニジニウム(N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルグアニジニウムなど)、ジアルキルモルホリニウム(エチルメチルモルホリニウムなど)、またはアルキルピリミジニウム(メチルピリミジニウムなど)カチオンであり得る。
【0139】
本発明の第1の態様の一実施形態では、イオン液体緩衝液は、水溶液などの水性組成物で使用される。本発明の第1の態様の別の実施形態では、イオン液体緩衝液は、非水性培地で使用される。本発明の第1の態様の別の実施形態では、イオン液体緩衝液それ自体が、培地として使用される。
【0140】
本発明の第2または第3の態様の一実施形態では、イオン液体緩衝液は、水溶液中で使用される。
【0141】
イオン液体緩衝液は、MacFarlane et al(Chemical Communications,2010,vol 46,pages 7703-7705),Matias et al(RSC Advances,2014,vol 4,15597-15601),Taha et al(Green Chemistry,2014,vol 16(6),pages 3149-3159)またはTaha et al(Chemistry,2015,vol 21(12),pages 4781-4788)により記載のように調製できる。これらの文献の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、コリン水酸化物は、グッド緩衝液と反応して、イオン液体緩衝液を調製できる。
【0142】
緩衝剤量
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、グッド緩衝液、N-置換アミノスルホン酸(BESなど)、N-非置換アミノスルホン酸(タウリンなど)、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール(イミダゾールなど)、フェノール酸、アミノ酸(プロリンなど)、ペプチド、ペプチド等価物、またはポリマー緩衝液の緩衝基(複数可)は、1~500ミリモル/Lの濃度、または1~200ミリモル/Lの濃度、または1~100ミリモル/Lの濃度、または1~50ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lの濃度で本発明の組成物中に存在する。
【0143】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、2種以上のこれらの緩衝液が本発明の組成物中に使用される場合、すなわち、2種以上のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸塩、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物またはポリマー緩衝液が使用される場合、組成物中に存在する緩衝液または緩衝基の合計濃度は、1~500ミリモル/Lの濃度、または1~200ミリモル/Lの濃度、または1~100ミリモル/Lの濃度、または1~50ミリモル/Lの濃度、または1~12ミリモル/Lである。
【0144】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、少なくとも700μlの1M HCl水溶液(典型的には、少なくとも1000μlの1M HCl水溶液、より典型的には、少なくとも1300μlの1M HCl水溶液)が、100mLの組成物のpHを20℃で1単位だけ変えるために必要である。
【0145】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、少なくとも200μlの1M NaOH水溶液(典型的には、少なくとも250μlの1M NaOH水溶液、より典型的には、少なくとも300μlの1M NaOH水溶液)が、100mLの組成物のpHを20℃で1単位だけ変えるために必要である。
【0146】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、本発明の組成物は、20℃で少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02の緩衝能力を有する。
【0147】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、本発明の組成物で使用される緩衝液は、薬学的に許容可能である。一実施形態では、本発明の組成物中で使用される緩衝液は、FDA(米国食品医薬品局)GRAS(一般に安全と認められる)リストに収載されている。
【0148】
本発明の第1、第2または第3の態様の好ましい実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)BES、イミダゾールおよびタウリンから選択される1種または複数の成分;
(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物;および
(iii)必要に応じて、α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、ロイシン、ヒスチジン、またはシトルリンなどの天然α-アミノ酸)。
【0149】
本発明の第1、第2または第3の態様の第1の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)BES;および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)BES;および(ii)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0150】
本発明の第1、第2または第3の態様の第2の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)イミダゾール;および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)イミダゾール;および(ii)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0151】
本発明の第1、第2または第3の態様の第3の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)イミダゾール;(ii)α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリンなどの天然α-アミノ酸);および(iii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)イミダゾール;(ii)α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリンなどの天然α-アミノ酸);および(iii)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0152】
本発明の第1、第2または第3の態様の第4の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)イミダゾール;(ii)タウリン;および(iii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)イミダゾール、(ii)タウリンおよび(iii)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0153】
本発明の第1、第2または第3の態様の第5の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)タウリン;および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)タウリン、および(ii)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0154】
本発明の第1、第2または第3の態様の第6の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)タウリン;(ii)α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリンなどの天然α-アミノ酸);および(iii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)タウリン、(ii)α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリンなどの天然α-アミノ酸)、および(iii)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0155】
本発明の第1、第2または第3の態様の第7の特に好ましい実施形態では、組成物は、(i)イミダゾール;(ii)タウリン;(iii)α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリンなどの天然α-アミノ酸);および(iv)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物である。好ましくは、組成物は、(i)イミダゾール、(ii)タウリン、(iii)α-またはβ-アミノ酸(例えば、プロリンなどの天然α-アミノ酸);および(iv)炭酸水素イオンを含む水性組成物である。好ましくは、水性組成物は、亜鉛イオンをさらに含む。
【0156】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、0.1~2.5ミリモル/Lの濃度、または1~2.5ミリモル/Lの濃度、または1.1~1.4ミリモル/Lの濃度、または約1.25ミリモル/Lの濃度で存在するカルシウムイオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部のカルシウムイオンは、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウムまたはアスコルビン酸カルシウムを水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部のカルシウムイオンは、塩化カルシウムを水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全てのカルシウムイオンは、塩化カルシウムを水中に溶解することにより供給される。
【0157】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、0.1~2.5ミリモル/Lの濃度、または0.2~0.6ミリモル/Lの濃度、または約0.3~0.5ミリモル/Lの濃度、または約0.45ミリモル/Lの濃度で存在するマグネシウムイオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部のマグネシウムイオンは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウムまたはアスコルビン酸マグネシウムを水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部のマグネシウムイオンは、塩化マグネシウムを水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全てのマグネシウムイオンは、塩化マグネシウムを水中に溶解することにより供給される。
【0158】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンは、5:1~1;1(カルシウムイオン:マグネシウムイオン)のモル濃度比、または4:1~2:1のモル濃度比、または約3:1のモル濃度比で存在する。
【0159】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、カルシウムイオンは、1~2.5ミリモル/Lの濃度で存在し、およびマグネシウムイオンは、0.2~0.6ミリモル/Lの濃度で存在する。別の実施形態では、カルシウムイオンは、1.1~1.4ミリモル/Lの濃度で存在し、およびマグネシウムイオンは、0.3~0.5ミリモル/Lの濃度で存在する。
【0160】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、21~35ミリモル/Lの濃度、または22~29ミリモル/Lの濃度、または約25ミリモル/Lの濃度で存在する炭酸水素イオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部の炭酸水素イオンは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部の炭酸水素イオンは、炭酸水素ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全ての炭酸水素イオンは、炭酸水素ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。
【0161】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、炭酸水素イオンの等価物を含む。一実施形態では、炭酸水素イオンの等価物は、炭酸水素イオンに変換(例えば、加水分解)できる化合物である。一実施形態では、炭酸水素イオンの等価物は、酢酸イオンである。理論に束縛されるものではないが、現時点では、酢酸イオンは、インビボで炭酸水素イオンに変換されると考えられている。一実施形態では、酢酸イオンは、21~35ミリモル/Lの濃度、または22~29ミリモル/Lの濃度、または約25ミリモル/Lの濃度で存在する。一実施形態では、少なくとも一部の酢酸イオンは、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムまたは酢酸第一鉄を水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部の酢酸イオンは、酢酸ナトリウムまたは酢酸亜鉛を水中に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部の酢酸イオンは、酢酸ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全ての酢酸イオンは、酢酸ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。
【0162】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、炭酸水素イオンおよび酢酸イオンなどの炭酸水素イオンの等価物を含む。一実施形態では、炭酸水素イオンおよび酢酸イオンは、合わせて、21~35ミリモル/Lの濃度、または22~29ミリモル/Lの濃度、または約25ミリモル/Lの濃度で存在する。
【0163】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、2.5~6.2ミリモル/Lの濃度、または3~6ミリモル/Lの濃度、または約5ミリモル/Lの濃度で存在するカリウムイオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部のカリウムイオンは、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、アスコルビン酸カリウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸カリウムを水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部のカリウムイオンは、塩化カリウム、硫酸カリウムまたは酢酸カリウムを水中に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部のカリウムイオンは、塩化カリウム、硫酸カリウムを水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全てのカリウムイオンは、塩化カリウムを水中に溶解することにより供給される。
【0164】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、96~126ミリモル/Lの濃度、または100~122ミリモル/Lの濃度、または約118ミリモル/Lの濃度で存在する塩化物イオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部の塩化物イオンは、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化コリン、チアミンピロリン酸クロリドおよび/またはカルニチン塩化物を水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部の塩化物イオンは、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、塩化コリン、チアミンピロリン酸クロリド、および/またはカルニチン塩化物を水中に溶解することにより供給される。
【0165】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、100~150ミリモル/Lの濃度、または115~140ミリモル/Lの濃度、または約135ミリモル/Lの濃度で存在するナトリウムイオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部のナトリウムイオンは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはアスコルビン酸ナトリウムを水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部のナトリウムイオンは、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部のナトリウムイオンは、炭酸水素ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全てのナトリウムイオンは、炭酸水素ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムを水中に溶解することにより供給される。
【0166】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、0.1~200μモル/Lの濃度、または0.1~150μモル/Lの濃度、または0.1~100μモル/Lの濃度、または0.1~50μモル/Lの濃度、または1~10μモル/Lの濃度で存在する亜鉛イオンを含む。一実施形態では、少なくとも一部の亜鉛イオンは、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛(Zn(PO、ZnHPO、またはZn(HPOなど)、亜リン酸亜鉛(Zn(PO、ZnHPO、またはZn(HPOなど)、アスコルビン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛または酸化亜鉛を水に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部の亜鉛イオンは、塩化亜鉛を水中に溶解することにより供給される。別の実施形態では、ほぼ全ての亜鉛イオンは、塩化亜鉛を水中に溶解することにより供給される。一実施形態では、少なくとも一部の亜鉛イオンは、チムリンと一緒に、または亜鉛チムリン複合体の形態で供給される。一実施形態では、ほぼ全ての亜鉛イオンは、チムリンと一緒に、または亜鉛チムリン複合体の形態で供給される。
【0167】
細胞内亜鉛イオン(Zn2+)濃度は、アスコルビン酸イオン、カルシマイシン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、クリオキノール、ジヨードヒドロキシキノリン、ジチオカルバメート(ピロリジンジチオカルバメートなど)、エピガロカテキンガレート、ヒノキチオール、PBT2、ピリチオン、ケルセチン、またはジンコホリンなどの亜鉛-イオノフォアで高めることができる。従って、本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、亜鉛イオンを含み、亜鉛-イオノフォアをさらに含む。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、亜鉛イオンを含み、アスコルビン酸イオン、カルシマイシン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、クリオキノール、ジヨードヒドロキシキノリン、ジチオカルバメート(ピロリジンジチオカルバメートなど)、エピガロカテキンガレート、ヒノキチオール、PBT2、ピリチオン、ケルセチン、またはジンコホリンをさらに含む。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、亜鉛イオンを含み、ピリチオンをさらに含む。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、ピリチオン亜鉛を含む。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、アスコルビン酸亜鉛を含む。
【0168】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、1~100μモル/Lの濃度、または1~50μモル/Lの濃度、または1~25μモル/Lの濃度で存在するトランスフェリンを含む。トランスフェリンは、ホロトランスフェリン、アポトランスフェリンまたはモノフェリックトランスフェリンの形態で使用され得る。
【0169】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、1~100μモル/Lの濃度、または10~100μモル/Lの濃度で存在する鉄イオンを含む。鉄イオンは、Fe2+またはFe3+の形態で使用され得る。一実施形態では、少なくとも一部の鉄イオンは、フマル酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、コハク酸第一鉄、硫酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グリシン酸鉄、硝酸第二鉄、酢酸第一鉄、アスコルビン酸第一鉄、塩化第一鉄または塩化第二鉄を水中に溶解することにより供給される。
【0170】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記の1種または複数をさらに含む水性組成物である:
(a)2~11ミリモル/Lのグルコース;
(b)50~150μモル/Lのグリセロール;
(c)7~15μモル/Lのコリンイオン;
(d)5~400μモル/Lのグルタミン酸;
(e)5~200μモル/Lのアスパラギン酸;
(f)100~2000μモル/Lのグルタミン;
(g)20~215μモル/Lのピログルタミン酸;
(h)20~200μモル/Lのアルギニン;
(i)1~250ナノモル/Lのチアミンピロリン酸イオン;
(j)40~100μモル/Lのカルニチン;
(k)5~600mIU/Lのブタまたはヒトインスリン;
(l)20~200μモル/Lのヒアルロン酸;
(m)1~100μモル/Lのトランスフェリン;
(n)20~250μモル/Lのロイシン;
(o)10~100μモル/Lのリノール酸;
(p)200~1000μモル/Lのコレステロール;
(q)20~500μモル/Lのピリドキサール-5-リン酸;または
(r)10~250μモル/Lのキトサン。
【0171】
一実施形態では、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物がグルコースを含む場合、それは、D-グルコースの形態で使用され得る。一実施形態では、第1、第2または第3の態様の組成物がグルタミン酸を含む場合、それは、L-グルタミン酸の形態で使用され得る。一実施形態では、第1、第2または第3の態様の組成物がアスパラギン酸を含む場合、それは、L-アスパラギン酸の形態で使用され得る。一実施形態では、第1、第2または第3の態様の組成物がグルタミンを含む場合、それは、L-グルタミンの形態で使用され得る。一実施形態では、第1、第2または第3の態様の組成物がカルニチンを含む場合、それは、L-カルニチンの形態で使用され得る。一実施形態では、第1、第2または第3の態様の組成物がロイシンを含む場合、それは、L-ロイシンの形態で使用され得る。
【0172】
一実施形態では、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物がインスリンを含む場合、これは、ヒト組換えインスリンなどのヒトインスリンであり得る。
【0173】
一実施形態では、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物がコリンイオン、チアミンピロリン酸および/またはおよび/またはカルニチンを含む場合、それらは、塩化物塩、硫酸塩、酢酸塩または他の塩として組成物に独立に供給され得る。一実施形態では、塩化物塩が使用される。
【0174】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、ヒアルロン酸、トランスフェリン、ロイシン、リノール酸、コレステロール、またはピリドキサール-5-リン酸の1種または複数を含む。現時点では、これらの成分は、細胞膜機能を保存し得ると考えられている。
【0175】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、キトサンを含む。キトサンは、抗真菌薬および抗菌薬として機能できる。キトサンはまた、緩衝液、肥厚化剤またはゲル化剤、またはトール様受容体調節物質として機能し得る。
【0176】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(a)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸
(好ましくはBES);および
(b)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン。
【0177】
この実施形態では、組成物は、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、グルコース(好ましくは、D-グルコース)、グリセロール、コリンイオン、グルタミン酸(好ましくはL-グルタミン酸)、アスパラギン酸(好ましくは、L-アスパラギン酸)、グルタミン(好ましくはL-グルタミン)、カルニチン(好ましくはL-カルニチン)、チアミンピロリン酸イオン、およびブタまたはヒトインスリン(組換えヒトインスリン)から選択されるものなどの1種または複数の追加の成分をさらに任意に含み得る。
【0178】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(a)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸
(好ましくはBES);
(b)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;および
(c)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0179】
この実施形態では、組成物は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、グルコース(好ましくは、D-グルコース)、グリセロール、コリンイオン、グルタミン酸(好ましくはL-グルタミン酸)、アスパラギン酸(好ましくは、L-アスパラギン酸)、グルタミン(好ましくはL-グルタミン)、カルニチン(好ましくはL-カルニチン)、チアミンピロリン酸イオン、およびブタまたはヒトインスリン(組換えヒトインスリン)から選択されるものなどの1種または複数の追加の成分をさらに任意に含み得る。
【0180】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(a)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸
(好ましくはBES);
(b)0.1~2.5ミリモル/Lのカルシウムイオン;
(c)0.02~2.5ミリモル/Lのマグネシウムイオン;
(d)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(e)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(f)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(g)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(h)必要に応じ、0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0181】
この実施形態では、組成物は、グルコース(好ましくは、D-グルコース)、グリセロール、コリンイオン、グルタミン酸(好ましくはL-グルタミン酸)、アスパラギン酸(好ましくは、L-アスパラギン酸)、グルタミン(好ましくはL-グルタミン)、カルニチン(好ましくはL-カルニチン)、チアミンピロリン酸イオン、およびブタまたはヒトインスリン(組換えヒトインスリン)から選択されるものなどの1種または複数の追加の成分をさらに任意に含み得る。
【0182】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(a)1~12ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸(好ましくはBES);
(b)0.1~2.5ミリモル/Lのカルシウムイオン;
(c)0.02~2.5ミリモル/Lのマグネシウムイオン;
(d)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(e)2.5~6.2ミリモル/Lのカリウムイオン;
(f)96~126ミリモル/Lの塩化物イオン;
(g)100~150ミリモル/Lのナトリウムイオン;
(h)2~11ミリモル/Lのグルコース(好ましくはD-グルコース);
(i)50~150μモル/Lのグリセロール;
(j)7~15μモル/Lのコリンイオン;
(k)5~400μモル/Lのグルタミン酸(好ましくはL-グルタミン酸);
(l)5~200μモル/Lのアスパラギン酸(好ましくはL-アスパラギン酸);
(m)100~2000μモル/Lのグルタミン(好ましくはL-グルタミン);
(n)40~100μモル/Lのカルニチン(好ましくはL-カルニチン);
(o)必要に応じ、1~250ナノモル/Lのチアミンピロリン酸イオン;
(p)必要に応じ、5~600mIU/Lのブタまたはヒトインスリン(好ましくは組換えヒトインスリン);および
(q)必要に応じ、0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン。
【0183】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(a)約5ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸(好ましくはBES);
(b)1.25ミリモル/Lのカルシウムイオン;
(c)約0.45ミリモル/Lのマグネシウムイオン;
(d)約25ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(e)約5ミリモル/Lのカリウムイオン;
(f)約118-119ミリモル/Lの塩化物イオン;
(g)約135ミリモル/Lのナトリウムイオン;
(h)約10ミリモル/LのD-グルコース;
(i)約110μモル/Lのグリセロール;
(j)約10μモル/Lのコリンイオン;
(k)約300μモル/LのL-グルタミン酸;
(l)約20μモル/LのL-アスパラギン酸;
(m)約400μモル/LのL-グルタミン酸;
(n)約50μモル/LのL-カルニチン;
(o)必要に応じ、約40ナノモル/Lのチアミンピロリン酸イオン;
(p)必要に応じ、約28mIU/Lの組換えヒトインスリン;
(q)必要に応じ、約50μモル/Lの亜鉛イオン(あるいは、約10μモル/Lの
亜鉛イオン);
(r)必要に応じ、約50μモル/Lのトランスフェリン(あるいは、約25μモル/Lのトランスフェリン);
(s)必要に応じ、約120μモル/LのL-ロイシン;
(t)必要に応じ、約70μモル/Lのリノール酸;
(u)必要に応じ、約400μモル/Lのコレステロール;および
(v)必要に応じ、約100μモル/Lのピリドキサール-5-リン酸。
【0184】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~500ミリモル/Lの緩衝液(好ましくは、リン酸緩衝液、例えば、
KHPOおよびNaHPOの組み合わせ);および
(ii)0.1~200g/Lの、抗ウィルス活性を有する精油(好ましくは、チョウジ油、ユーカリ油、メボウキ油、ジンジャー油、これらのいずれかの抽出物または成分、またはこれらの組み合わせ)。
【0185】
この実施形態では、組成物は、必要に応じ、亜鉛イオン(好ましくはZnCl)、NaCl、KCl、MgCl、NaHCO、キシリトール、EDTA、CaCl、グリセロール、HPMC、PEG400、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウムおよびヒアルロン酸ナトリウムから選択されるものなどの1種または複数の追加の成分をさらに含み得る。
【0186】
本発明の第1、第2または第3の態様のさらに別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)1~500ミリモル/Lの緩衝液(好ましくは、リン酸緩衝液、例えば、
KHPOおよびNaHPOの組み合わせ);
(ii)0.1~200μモル/Lの亜鉛イオン(好ましくはZnCl);
(iii)0.1~50g/Lのチョウジ油またはその抽出物もしくは成分;
(iv)0.1~50g/Lのユーカリ油またはその抽出物もしくは成分;
(v)0.1~50g/Lのメボウキ油またはその抽出物もしくは成分;
(vi)0.1~50g/Lのジンジャー油またはその抽出物もしくは成分。
【0187】
この実施形態では、組成物は、必要に応じ、NaCl、KCl、MgCl、NaHCO、キシリトール、EDTA、CaCl、グリセロール、HPMC、PEG400、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウムおよびヒアルロン酸ナトリウムから選択されるものなどの1種または複数の追加の成分をさらに含み得る。
【0188】
本発明の第1、第2または第3の態様のさらに別の実施形態では、組成物は、下記を含む水性組成物である:
(i)25~250ミリモル/Lのリン酸緩衝液、例えば、
KHPOおよびNaHPOの組み合わせ);
(ii)0.1~50μモル/Lの亜鉛イオン(好ましくはZnCl);
(iii)21~35ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(iv)0.1~10g/Lのチョウジ油またはその抽出物もしくは成分;
(v)0.1~10g/Lのユーカリ油またはその抽出物もしくは成分;
(vi)0.1~10g/Lのメボウキ油またはその抽出物もしくは成分;および
(vii)0.1~10g/Lのジンジャー油またはその抽出物もしくは成分。
【0189】
この実施形態では、組成物は、必要に応じ、NaCl、KCl、MgCl、キシリトール、EDTA、CaCl、グリセロール、HPMC、PEG400、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウムおよびヒアルロン酸ナトリウムから選択されるものなどの1種または複数の追加の成分をさらに含み得る。
【0190】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、活性剤をさらに含む。一実施形態では、活性剤は、抗生物質、抗ウィルス薬、一酸化窒素産生剤、免疫グロブリン、トール様受容体調節物質、プロトンポンプ阻害剤、リピド、免疫賦活薬、抗炎症剤、防腐剤、または抗真菌剤である。
【0191】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、抗生物質をさらに含む。一実施形態では、抗生物質は、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ペニシリン、ナノマイコプリチン(Nanomycopulitine)、マクロライド抗生物質(例えば、アジスロマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、フィダキソマイシン、またはテリスロマイシン)、またはトリチカム・レペンである。一実施形態では、抗生物質は、10~150mg/Lの濃度、または60~120mg/Lの濃度、または約100mg/Lの濃度で存在する。
【0192】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、抗ウィルス薬をさらに含む。一実施形態では、抗ウィルス薬は、クロルフェニラミン、カルビノキサミン、オセルタミビル、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン、リトナビル、ロピナビル、ダルナビル、D-キシロース、デンドリマー(SPL7013など)、ペプチド性ウィルス融合阻害剤(peptidic viral fusion inhibitor)、ペプチダーゼ阻害剤(カテプシン阻害剤など)、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル抗体など、抗CD3モノクローナル抗体など、フォラルマブなど)、ナノボディ(スパイク-ACE2相互作用を妨害するナノボディ、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、https://doi.org/10.1101/2020.08.08.238469で開示されているNb6またはmNb6-triなど)、硫酸化多糖[カラギーナン(カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、またはCarragelose(登録商標))、フコイダン、硫酸化フカン、硫酸化ガラクタン、または硫酸化グリコサミノグリカン(ヘパリン、6-O-脱硫酸化ヘパリン、エノキサパリン、または6-O-脱硫酸化エノキサパリンなど)など]、イベルメクチン、グレープフルーツ種子抽出物、クロロキンまたはその誘導体または類似体(ヒドロキシクロロキン、フェロキン、デスエチルアモジアキンまたはピリメタミンなど)、キニーネまたはその塩、誘導体または類似体(キニジンまたはメフロキンなど)、ピロナリジン、アルコール(エタノールまたはイソプロパノールなど)、アリールスルホン酸またはジアゼニルアリールスルホン酸(Becht et al,J Gen Vir,1968,vol 2(2),pages 261-268;Akerfeldt et al,J Med Chem,1971,vol 14(7),pages 596-600;およびHoffmann et al,Front Microbiol,2017,vol 8,article 205に記載のものなど;これらの全文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ポビドン-ヨウ素、過酸化水素、サーファクタント、グリチルリチン、18β-グリチルレチン酸、甘草抽出物、レイノウジオール(reynoudiol)、イタドリ抽出物、ビワ抽出物、ピラゾフリン、シクロデキストリン(メルカプトウンデカンスルホン酸修飾シクロデキストリンなど)、テルペン(βカリオフィレン、ユーカリプトールまたはシトラールなど)、カンナビジオール、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、インターフェロン、またはこれらの混合物である。一実施形態では、抗ウィルス薬は、脂肪酸[飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン(酸の)、パルミチンまたはステアリン酸)、オメガ-3不飽和脂肪酸(例えば、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸)、オメガ-6不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸またはアラキドン酸)、またはオメガ-9不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)]、またはこれらの混合物;特に、一実施形態では、抗ウィルス薬はリノール酸である。脂肪酸は、親油性であり、本発明の組成物中でミセルとして配合できる。一実施形態では、抗ウィルス薬は、グリフィスシンポリペプチドまたはその類似体(Q-グリフィスシンなど)である。一実施形態では、抗ウィルス薬は、配列番号1(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2007/064844で開示された配列番号3と同じである)を含むポリペプチドもしくは少なくとも8個の連続アミノ酸を含むそのフラグメント、そのポリペプチドをコードする核酸、またはそのポリペプチドに対する抗体である。一実施形態では、抗ウィルス薬は、抗ウィルス活性を有する精油、例えば、チョウジ油(Syzygium aromaticum)、メボウキ油(Ocimum basilicum)、ジンジャー油(Zingiber officinale)、ユーカリ油(Eucalyptus globulus)、ディル油、ディル種子油、ニクズク油、ケイ皮油、ベイリーフ油、ニンニク油、またはゲラニウム油である。一実施形態では、抗ウィルス薬は、精油に抗ウィルス活性を付与する、オイゲノール、ジンギベレン、ユーカリプトール、ジェンセノン、ウルソル酸、カリオフィレン、またはエストラゴールなどの抗ウィルス薬である。
【0193】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物がチョウジ油、メボウキ油、ジンジャー油、ユーカリ油、ディル油、ディル種子油、ニクズク油、ケイ皮油、ベイリーフ油、ニンニク油、ゲラニウム油、またはこれらの組み合わせを含む場合、組成物中のこれらの油の合計濃度は、0.1~100g/L、または0.1~50g/L、または0.5~40g/L、0.5~25g/L、または1~20g/Lである。
【0194】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、一酸化窒素(NO)産生剤をさらに含む。一実施形態では、一酸化窒素産生剤は、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン、アルギニン、ピルビン酸ナトリウム、セリン、システイン、リジン、キニーネまたはその塩、誘導体もしくは類似体(キニジンまたはメフロキンなど)、クロロキンまたはその誘導体または類似体(ヒドロキシクロロキン、フェロキン、デスエチルアモジアキンまたはピリメタミンなど)、安息香酸デナトニウムなどのデナトニウム塩、アブシンチン、サリシン、フェニルチオカルバミド、ホモセリンラクトン、セスキテルペンラクトン、チオシアン酸ナトリウム、または6-n-プロピルチオウラシルである。
【0195】
鼻腔内の天然起源一酸化窒素は、ヒトにおける一次防御である。一酸化窒素は、侵入ウィルスを殺菌し、ライノウィルス、インフルエンザウィルスおよびコロナウィルスなどのウィルスによる感染およびウィルスの複製の速度および程度を防ぐ/低減するために必要である。従って、本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミンなどの一酸化窒素ドナーをさらに含む。一酸化窒素は、L-アルギニンからの一酸化窒素産生を触媒する一酸化窒素合成酵素の作用によりインビボで産生される。従って、本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、鼻腔内粘膜の一酸化窒素生成を刺激するまたは可能にする、アルギニン(典型的には、L-アルギニンで、通常約40~140μモル/Lの量で)、ピルビン酸ナトリウム(通常約10~115μモル/Lの量で)、セリン(典型的には、L-セリンで、通常約25~160μモル/Lの量で)、システイン(典型的には、L-システインで、通常約1~110μモル/Lの量で)またはリジン(典型的には、L-リジンで、通常約45~205μモル/Lの量で)などの化合物をさらに含む。苦味受容体作動薬は、鼻腔内上皮細胞上の苦味受容体を刺激し、一酸化窒素産生を刺激し得る。従って、本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、キニーネまたはその塩、誘導体もしくは類似体(キニジンまたはメフロキンなど)、クロロキンまたはその誘導体または類似体(ヒドロキシクロロキン、フェロキン、デスエチルアモジアキンまたはピリメタミンなど)、安息香酸デナトニウムなどのデナトニウム塩、アブシンチン、サリシン、フェニルチオカルバミド、ホモセリンラクトン(C4HSL、C6HSLまたはC12HSLなど)、セスキテルペンラクトン、チオシアン酸ナトリウム、または6-n-プロピルチオウラシルなどの苦味受容体作動薬をさらに含む。
【0196】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、免疫グロブリンをさらに含む。一実施形態では、免疫グロブリンは、ニワトリ免疫グロブリンIgYなどの免疫グロブリンIgYである。一実施形態では、免疫グロブリンはウィルス特異的免疫グロブリンである。一実施形態では、免疫グロブリンは、ウィルス特異的ニワトリ免疫グロブリンIgYなどのウィルス特異的免疫グロブリンIgYである。
【0197】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、トール様受容体調節物質(TLR2、TLR3またはTLR4調節物質)をさらに含む。一実施形態では、トール様受容体調節物質は、キトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解生成物、カラギーナン(ラムダカラギーナンなど)、クロロキンまたはその誘導体もしくは類似体(ヒドロキシクロロキン、フェロキン、デスエチルアモジアキンまたはピリメタミンなど)、キニーネまたはその塩、誘導体もしくは類似体(キニジンまたはメフロキンなど)、Pam2Cysまたはその誘導体もしくは類似体、Pam3Cysまたはその誘導体もしくは類似体、またはこれらの混合物である。Pam2CysおよびPam3Cysおよびそれらの誘導体および類似体は、高度に親油性であり、本発明の組成物中でミセルとして配合できる。一実施形態では、トール様受容体調節物質は、ポリイノシン酸および/またはポリシチジル酸および/またはそれらの誘導体などのTLR3調節物質であり、例えば、WO2018/091965で開示されている。この特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0198】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、プロトンポンプ阻害剤をさらに含む。一実施形態では、プロトンポンプ阻害剤は、オメプラゾール、エスオメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾールまたはイラプラゾールである。
【0199】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、脂質をさらに含む。一実施形態では、脂質は、スフィンゴシンまたはその類似体である。
【0200】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、免疫賦活薬をさらに含む。一実施形態では、免疫賦活薬は、ニンニクまたはムラサキバレンギクである。
【0201】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、抗炎症剤をさらに含む。一実施形態では、抗炎症剤は、カモミールまたはサンシキスミレである。
【0202】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、防腐剤をさらに含む。一実施形態では、防腐剤は、塩化セチルピリジニウムである。
【0203】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、抗真菌剤をさらに含む。一実施形態では、抗真菌剤は、キトサン、ポサコナゾール、ナノマイコプリチンまたはアンホテリシンBである。
【0204】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、肥厚化剤またはゲル化剤をさらに含む。一実施形態では、肥厚化またはゲル化剤は、ポリエチレングリコール(PEG400など)、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、モノグリセリド、ジグリセリド、ローカストビーンガム、ポリビニルピロリドン、アルギネート、キトサン、アガロース、ジェランガム、およびカラギーナン(カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、またはCarragelose(登録商標))から選択される。理論に束縛されるものではないが、現時点では、肥厚化またはゲル化剤は、使用中に、対象の細胞膜への組成物の付着を助け得ると考えられている。
【0205】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、クエン酸緩衝液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、乳酸緩衝液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、リン酸緩衝液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、ホウ酸緩衝液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、グリシン緩衝液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、クエン酸、乳酸、リン酸、亜リン酸、ホウ酸およびグリシン緩衝液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、グッド緩衝液以外のどの緩衝液も実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、N-置換アミノスルホン酸緩衝液以外のどの緩衝液も実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、N-置換アミノスルホン酸グッド緩衝液以外のどの緩衝液も実質的に不含である。
【0206】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、血清および/または血清抽出物を実質的に不含である。
【0207】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、膠質浸透圧性物質(oncotic agent)を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、血漿増補液を実質的に不含である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、デキストランを実質的に不含である。
【0208】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液またはイオン液体緩衝液は、水溶液中、37℃で、6.7~7.9、または37℃で6.7~7.7、または37℃で7.1~7.5のpKa値を有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、N-置換アミノスルホン酸は、水溶液中、37℃で7.1~7.5のpKa値を有する。
【0209】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、37℃で6.7~7.9のpHを有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、37℃で6.7~7.7のpHを有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物酸は、37℃で7.0~7.5のpHを有する。
【0210】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、非コロイド状である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、0.9~3.1センチポアズの粘度を有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、268~290ミリオスモル/Lのモル浸透圧濃度、または275~289ミリオスモル/lのモル浸透圧濃度を有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、268~298ミリオスモル/Lのモル浸透圧濃度を有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、ヒト血清と等張性である(約290ミリオスモル/L)。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、12.1~14.3mS/cmの導電率を有する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物の導電率は、ヒト血清の導電率と同等(約12.6mS/cm)である。
【0211】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、溶液または懸濁液、典型的には、水溶液または懸濁液、典型的には、水溶液である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、クリーム、乳剤または軟膏の形態で提供される。
【0212】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、無菌である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能である。
【0213】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、コロナウィルス(MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2など)またはインフルエンザウィルス(インフルエンザAウィルス(H1N1など)インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、またはパラインフルエンザウィルスなど)に対して、殺ウィルス性である。
【0214】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、プロテアーゼ(例えば、カテプシンL、3CL、フューリン、またはDPP4)の阻害に好適する。
【0215】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、コロナウィルス(MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2など)のスパイクタンパク質と、宿主受容体(ACE2受容体など)との間の相互作用の抑制に好適する。
【0216】
本発明の第3の態様の一実施形態では、水性組成物は、風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療もしくは回復に使用するために、または風媒性ウィルスに感染した対象、もしくは対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製の低減もしくは防止(通常は低減)に使用するために、好適する。
【0217】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、口腔、上気道、下気道、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支または肺中への吸入に好適する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧、口内噴霧、気管支噴霧、点鼻、鼻腔内洗浄、鼻腔内灌流、鼻腔タンポン挿入、うがいまたは含嗽による投与、またはクリーム、ゲル、乳剤、軟膏の形態での投与、もしくはこれらの任意の組み合わせ、および類似の適用方法での投与に好適する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、マスクまたは他の顔面被覆材への適用に好適する。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、対象によるガスの吸入の前に、酸素含有ガスを、組成物を通してバブリングさせるように構成された容器に収容しての使用に好適する。一実施形態では、組成物は、対象によるガスの吸入の前に、酸素含有ガスを、組成物を通してバブリングさせる容器に収容される。一実施形態では、容器は、人工呼吸器または医療用酸素供給システムの一部であり得、典型的には、酸素含有ガスは、約95%の酸素および約5%の二酸化炭素を含む。別の実施形態では、容器は、空調装置の一部であり、典型的には、酸素含有ガスは空気である。本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、組成物は、対象による空気の吸入の前に、空気中に拡散または噴霧させるために、好適する。空気は、建造物(例えば、ホテル、オフィス、またはリテール、演芸または競技場)または車(例えば、自動車、貨物自動車、バス、路面電車、飛行機、列車、ボート、または大型船)中の空気であってもよい。
【0218】
本発明の第1、第2または第3の態様の一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、コロナウィルス、インフルエンザウィルス、ライノウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、風疹ウィルス、またはヒト呼吸器多核体ウィルスなどのRNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、コロナウィルス、インフルエンザウィルス、ライノウィルス、麻疹ウィルス、またはムンプスウィルスなどのRNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択されるコロナウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、インフルエンザAウィルス、インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、およびパラインフルエンザウィルスから選択されるインフルエンザウィルスに起因する。
【0219】
本発明の第1、第2または第3の態様の別の実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、パルボウィルスB19、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス、ポリオーマウィルス、または痘瘡ウィルスなどのDNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、エプスタイン・バールウィルスまたはパルボウィルスB19などのDNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、水痘帯状疱疹ウィルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタイン・バールウィルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6AおよびHHV-6B)、およびヒトヘルペスウィルス7(HHV-7)から選択されるヘルペスウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、BKポリオーマウィルスおよびWUポリオーマウィルスから選択されるポリオーマウィルスに起因する。
【0220】
本発明の第4の態様は、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を調製する方法を提供し、該方法は、全ての成分を水と混合し、必要に応じ所望の量にして、濾過し、密閉容器中に貯蔵することを含む。一実施形態では、方法は、例えば、撹拌または振盪することにより、組成物をかき混ぜることをさらに含む。一実施形態では、密閉容器は、無菌である。一実施形態では、密閉容器は、酸素、二酸化炭素および水蒸気不透過性である。
【0221】
本発明の第5の態様は、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物の調製のための濃縮物を提供し、該濃縮物は、全ての成分および水を含み、該濃縮物は、水で希釈して、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物を形成できる。一実施形態では、濃縮物は、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物に比べて、1~50倍、または5~20倍濃縮される。一実施形態では、濃縮物は、無菌である。
【0222】
一実施形態では、本発明の第5の態様の濃縮物は、下記を含む水性の濃縮物であり得る:
(i)10~1000ミリモル/L(好ましくは10~120ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが1.0~25ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)210~350ミリモル/Lの炭酸水素イオンまたはその等価物;
(iv)25~62ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)960~1260ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)1000~1500ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vii)必要に応じ、1~2000μモル/Lの亜鉛イオン。
【0223】
当然のことながら、このような実施形態では、濃縮物は、水で10倍希釈されて、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物を形成し得る。
【0224】
別の実施形態では、本発明の第5の態様の濃縮物は、下記を含む水性の濃縮物であり得る:
(i)10~120ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが1.0~25ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)210~350ミリモル/Lの炭酸水素イオン;
(iv)25~62ミリモル/Lのカリウムイオン;
(v)960~1260ミリモル/Lの塩化物イオン;
(vi)1000~1500ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vii)必要に応じ、1~2000μモル/Lの亜鉛イオン。
【0225】
当然のことながら、このような実施形態では、濃縮物は、水で10倍希釈されて、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物を形成し得る。
【0226】
本発明の第6の態様は、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物の調製のための濃縮物を提供し、該濃縮物は、炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオンを除く、全ての成分および水を含み、該濃縮物は、炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオンを含む水で希釈して、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物を形成できる。一実施形態では、濃縮物は、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物に比べて、1~50倍、または5~20倍濃縮される。一実施形態では、濃縮物は、無菌である。炭酸水素イオンおよびそれらの対カチオンを含む水は、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を水中に溶解することにより調製し得る。炭酸水素イオンの等価物およびそれらの対カチオンを含む水は、酢酸ナトリウムなどの等価物の塩を水中に溶解することにより調製し得る。
【0227】
一実施形態では、本発明の第6の態様の濃縮物は、下記を含む水性の濃縮物であり得る:
(i)10~1000ミリモル/L(好ましくは10~120ミリモル/L)のグッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが1.0~25ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)25~62ミリモル/Lのカリウムイオン;
(iv)960~1260ミリモル/Lの塩化物イオン;
(v)1000~1500ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vi)必要に応じ、1~2000μモル/Lの亜鉛イオン。
【0228】
当然のことながら、このような実施形態では、濃縮物は、炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオンを含む水で10倍希釈されて、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物を形成し得る。
【0229】
別の実施形態では、本発明の第6の態様の濃縮物は、下記を含む水性の濃縮物であり得る:
(i)10~120ミリモル/LのN-置換アミノスルホン酸;
(ii)5:1~1:1のモル濃度比のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであって、前記カルシウムイオンが1.0~25ミリモル/Lである、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン;
(iii)25~62ミリモル/Lのカリウムイオン;
(iv)960~1260ミリモル/Lの塩化物イオン;
(v)1000~1500ミリモル/Lのナトリウムイオン;および
(vi)必要に応じ、1~2000μモル/Lの亜鉛イオン。
【0230】
当然のことながら、このような実施形態では、濃縮物は、炭酸水素イオンまたはその等価物およびそれらの対カチオンを含む水で10倍希釈されて、本発明の第1、第2または第3の態様の水性組成物を形成し得る。
【0231】
本発明の第7の態様は、対象の風媒性ウィルス感染症の治療、予防的治療または回復の方法を提供し、該方法は、有効量の本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0232】
本発明の第7の態様はまた、風媒性ウィルスに感染した対象、または対象の風媒性ウィルス感染症を引き起こすことができる風媒性ウィルスに曝露された対象でウィルス複製を低減または防止する(通常低減する)方法を提供し、該方法は、有効量の本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0233】
本発明の第7の態様の一実施形態では、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物は、例えば、噴霧、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧、口内噴霧、気管支噴霧、点鼻、鼻腔内洗浄、鼻腔内灌流、鼻腔タンポン挿入、うがいまたは含嗽、クリーム、ゲル、乳剤、軟膏、もしくはこれらの任意の組み合わせ、および類似の適用方法の使用により、対象の口腔、上気道(鼻腔、咽頭および/または喉頭を含む)および/または下気道(気管、気管支および/または肺を含む)に適用される。一実施形態では、組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回、またはそれ超で適用される。理論に束縛されるものではないが、現時点では、組成物中の炭酸水素イオンは、組成物の使用中に、呼出空気中の二酸化炭素により補充され得ると考えられている。これは、そうでなければ必要であるはずの、投与頻度を減らし得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、現時点では、本発明の組成物は、対象の細胞膜を正確には被覆しないが、同様に、間質液中に入り、組成物の有効性を高め得ると考えられている。
【0234】
本発明の第7の態様の一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくは、ヒトである。
【0235】
本発明の第7の態様の一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、コロナウィルス、インフルエンザウィルス、ライノウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、風疹ウィルス、またはヒト呼吸器多核体ウィルスなどのRNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、コロナウィルス、インフルエンザウィルス、ライノウィルス、麻疹ウィルス、またはムンプスウィルスなどのRNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択されるコロナウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、インフルエンザAウィルス、インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、およびパラインフルエンザウィルスから選択されるインフルエンザウィルスに起因する。
【0236】
本発明の第7の態様の別の実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、パルボウィルスB19、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス、ポリオーマウィルス、または痘瘡ウィルスなどのDNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、エプスタイン・バールウィルスまたはパルボウィルスB19などのDNAウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、水痘帯状疱疹ウィルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタイン・バールウィルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6AおよびHHV-6B)、およびヒトヘルペスウィルス7(HHV-7)から選択されるヘルペスウィルスに起因する。一実施形態では、風媒性ウィルス感染症は、BKポリオーマウィルスおよびWUポリオーマウィルスから選択されるポリオーマウィルスに起因する。
【0237】
本発明の第8の態様は、対象の風媒性ウィルス感染のリスクを低減する方法を提供し、該方法は、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を、マスクまたは他の顔面被覆材に適用することを含む。典型的には、組成物は、対象がそれを通して呼吸するマスクまたは顔面被覆材の一部に適用される。
【0238】
本発明の第8の態様はまた、対象の風媒性ウィルス感染のリスクを低減する方法を提供し、該方法は、対象によるガスの吸入の前に、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を通して、酸素含有ガスをバブリングすることを含む。典型的には、組成物は、容器中に収容され、酸素含有ガスは、容器中の組成物を通してバブリングされる。一実施形態では、容器は、人工呼吸器または医療用酸素供給システムの一部であり得る。一実施形態では、酸素含有ガスは、約95%の酸素および約5%の二酸化炭素を含む。別の実施形態では、容器は、空調装置の一部であり、酸素含有ガスは空気である。
【0239】
本発明の第8の態様はまた、対象の風媒性ウィルス感染のリスクを低減する方法を提供し、該方法は、対象による空気の吸入の前に、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を空気中に拡散または噴霧させることを含む。空気は、建造物(例えば、ホテル、オフィス、またはリテール、演芸または競技場)または車(例えば、自動車、貨物自動車、バス、路面電車、飛行機、列車、ボート、または大型船)中の空気であってもよい。
【0240】
本発明の第9の態様は、(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏を提供する。
【0241】
本発明の第9の態様はまた、N-置換アミノスルホン酸および炭酸水素イオンを含む水性組成物を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏を提供する。
【0242】
本発明の第9の態様はまた、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏を提供する。
【0243】
本発明の第9の態様はまた、(i)本発明の第5の態様の濃縮物、および(ii)水、を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏を提供し、部分(i)および(ii)は、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏中で別々であっても、一緒であってもよい。
【0244】
本発明の第9の態様はまた、(i)本発明の第6の態様の濃縮物、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物ならびにそれらの対カチオンを含む水、を含む、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏を提供し、部分(i)および(ii)は、噴霧剤、吸入器、噴霧器、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、気管支噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、容器、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏中で別々であっても、一緒であってもよい。
【0245】
本発明の第9の態様の噴霧剤は、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物をマスクまたは他の顔面被覆材に適用するために使用できる。
【0246】
本発明の第9の態様の噴霧剤、鼻内噴霧剤、口内噴霧剤、点鼻薬、鼻腔内洗浄剤、鼻腔内灌流剤、鼻腔挿入タンポン、うがい薬または含嗽薬、クリーム、ゲル、乳剤、または軟膏は、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を、対象の口腔および/または上気道(鼻腔、咽頭および/または喉頭を含む)に投与するために使用できる。
【0247】
本発明の第9の態様の吸入器、噴霧器または気管支噴霧器は、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物を、対象の口腔、上気道(鼻腔、咽頭および/または喉頭を含む)および/または下気道(気管、気管支および/または肺を含む)に投与するために使用できる。一実施形態では、噴霧器は、メッシュ式ネブライザー(VMN)、ジェット噴霧器(JN)または超音波噴霧器である。一実施形態では、噴霧器は、メッシュ式ネブライザー(VMN)である。
【0248】
本発明の第10の態様は、(i)グッド緩衝液、アミノスルホン酸、アミノスルフィン酸、リン酸、亜リン酸、ヘテロアリール、フェノール酸、アミノ酸、ペプチド、ペプチド等価物、ポリマー緩衝液、イオン液体緩衝液、またはこれらの組み合わせ、および(ii)炭酸水素イオンまたはその等価物を含む水性組成物でコートした、またはそれを含浸したマスクまたは他の顔面被覆材を提供する。
【0249】
本発明の第10の態様はまた、N-置換アミノスルホン酸および炭酸水素イオンを含む水性組成物でコートした、またはそれを含浸したマスクまたは他の顔面被覆材を提供する。
【0250】
本発明の第10の態様はまた、本発明の第1、第2または第3の態様の組成物でコートした、またはそれを含浸したマスクまたは他の顔面被覆材を提供する。
【0251】
本発明の第10の態様の一実施形態では、マスクまたは他の顔面被覆材は、空気浸透性材料を含み、空気浸透性材料は、組成物でコートされるかまたはそれを含浸され、マスクまたは他の顔面被覆材は、着用者が空気浸透性材料を通して呼吸することを可能にするように構成される。
【0252】
本発明の第1~第10の態様の一実施形態では、使用される水は蒸留水である。本発明の第1~第10の態様の別の実施形態では、使用される水は滅菌水である。本発明の第1~第10の態様の別の実施形態では、使用される水は超純水である。
【0253】
定義
本発明においては、用語「抗感染薬」は、抗菌剤、抗ウィルス薬および殺ウィルス薬を含み、「抗菌剤」は、抗菌剤および抗真菌剤を含む。用語「感染症」は、「感染病原体」により引き起こされる疾患、障害または状態を意味し、感染病原体は、細菌、または真菌またはウィルスであり得る。
【0254】
「殺ウィルス」剤は、ウィルスを死滅させるかまたはそれらの表面構造を変えることにより、ウィルスを不活化し、それらが宿主細胞に侵入できないようにする。薬剤のためにウィルスが複製する能力を得しなる場合は、その薬剤は「抗ウィルス薬」である。
【0255】
本発明においては、「風媒性ウィルス感染症」は、風媒性ウィルスにより伝染する感染症である。「風媒性ウィルス」は、呼出空気中の粒子で疾患が伝染するウィルスである。これらの粒子は、エアロゾルを含み、これは、5マイクロメートル未満の直径であり、長期間にわたり風媒性のまま残ることができ、また、比較的短距離で伝染を起こすことができるより大きな液滴も含む。風媒性ウィルスには、(i)コロナウィルス(例えば、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2)、インフルエンザウィルス(例えば、インフルエンザAウィルス、インフルエンザBウィルス、インフルエンザCウィルス、およびパラインフルエンザウィルス)、ライノウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、風疹ウィルス、およびヒト呼吸器多核体ウィルス、などのRNAウィルス、ならびに(ii)パルボウィルスB19、アデノウィルスおよびアデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス(例えば、水痘帯状疱疹ウィルス(VZVまたはHHV-3)、エプスタイン・バールウィルス(EBVまたはHHV-4)、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6AおよびHHV-6B)、およびヒトヘルペスウィルス7(HHV-7))、ポリオーマウィルス(例えば、BKポリオーマウィルスおよびWUポリオーマウィルス)および痘瘡ウィルスなどのDNAウィルスが挙げられる。
【0256】
風媒性ウィルス感染は、種々の疾患を引き起こし、例えば、SARS-CoV-2はCOVID-19を引き起こし、インフルエンザウィルスは、インフルエンザを引き起こし、種々の風媒性ウィルスは、ウィルス性扁桃炎を引き起こし得る。
【0257】
本明細書で用いられる場合、「治療」という用語は、根治療法、および回復または緩和療法と同じことを意味する。この用語は、有益な、または所望の生理学的結果を得ることを包含し、臨床的に確立されていても、または確立されていなくてもよい。有益な、または所望の臨床結果としては、検出可能であるか、検出可能でないかに関わらず、症状の改善、症状の予防、ウィルス感染症の程度の軽減、ウィルス感染症の安定化(即ち増悪しないこと)、ウィルス感染症/症状の進行/増悪の遅延または緩徐化、ウィルス感染症/症状の改善または緩和、および寛解(部分または全体に関わらず)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「回復」は、本発明の組成物を投与しなかった場合に比較して、ウィルス感染または症状の程度および/または望ましくない症状発現が低減されること、および/または進行の時間経過が緩徐化もしくは延長されること、を意味する。本明細書で使用される場合、用語「予防的治療」は、予防療法、ならびにウィルス感染症を発症するリスクを減らす療法を意味する。用語「予防的治療」は、ウィルス感染症の発生の回避、およびウィルス感染症の開始の遅延の両方を包含する。
【0258】
「アルキル」基は、線状(すなわち、直鎖)または分岐状であってもよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチルおよびn-ペンチル基が挙げられる。特に断りのない限り、用語「アルキル」は、「シクロアルキル」を包含しない。典型的にはアルキル基は、C-C12アルキル基である。より典型的にはアルキル基は、C-Cアルキル基である。「アルキレン」基は、同様に二価アルキル基と定義される。
【0259】
特に断りのない限り、基が、ハロアルキルまたはハロメチル基など、用語「ハロ」を接頭辞として付けている場合、該当する基が、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから独立に選択される1個または複数のハロ基で置換されていると理解されるべきである。典型的には、ハロ置換基の最大数は、ハロの接頭辞を含まない対応する基での置換に利用可能な水素原子の数のみに限定される。例えば、ハロメチル基は、1、2または3個のハロ置換基を含んでもよい。ハロエチルまたはハロフェニル基は、1、2、3、4または5個のハロ置換基を含んでもよい。同様に、特に断りのない限り、基が特定のハロ基を接頭辞として付けている場合、該当する基は特定のハロ基の1個または複数で置換されていると理解されるべきである。例えば、用語「フルオロメチル」は、1、2、または3個のフルオロ基で置換されたメチル基を指す。
【0260】
同様に、基が、「ヒドロキシアルキル」基など、用語「ヒドロキシ」を接頭辞として付けている場合、該当する基が、1個または複数(例えば、1、2、3、4または5個)のヒドロキシ基で置換されていると理解されるべきである。
【0261】
「アルケニル」基は、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有する不飽和アルキル基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、1,3-ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニルおよび1,4-ヘキサジエニル基が挙げられる。特に断りのない限り、用語「アルケニル」は、「シクロアルケニル」を包含しない。典型的には、アルケニル基は、C-C12アルケニル基である。より典型的には、アルケニル基は、C-Cアルケニル基である。「アルケニレン」基は、同様に二価アルケニル基と定義される。
【0262】
「アルキニル」基は、1個または複数の炭素-炭素三重結合を有する不飽和アルキル基を指す。アルキニル基の例としては、エチニル、プロパルギル、ブタ-1-イニルおよびブタ-2-イニル基が挙げられる。典型的にはアルキニル基は、C-C12アルキニル基である。より典型的にはアルキニル基は、C-Cアルキニル基である。「アルキニレン」基は、同様に二価アルキニル基と定義される。
【0263】
「シクロアルキル」基は、例えば3~7個の炭素原子を含有する飽和ヒドロカルビル環を指し、その例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。特に断りのない限り、シクロアルキル基としては、単環式、二環式または多環式ヒドロカルビル環を挙げることができる。
【0264】
「シクロアルケニル」基は、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有し、例えば3~7個の炭素原子を含有する非芳香族不飽和ヒドロカルビル環を指し、その例としては、シクロペンタ-1-エン-1-イル、シクロヘキサ-1-エン-1-イルおよびシクロヘキサ-1,3-ジエン-1-イルが挙げられる。特に断りのない限り、シクロアルケニル基としては、単環式、二環式または多環式ヒドロカルビル環を挙げることができる。
【0265】
「ヘテロ環基」は、環構造内に1個または複数の炭素原子および1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のヘテロ原子、例えばN、OまたはSを含む非芳香族環式基である。ヘテロ環基の例としては、アゼチニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ジオキソラニル、オキサチオラニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、チアニル、ピペラジニル、ジオキサニル、モルホリニルおよびチオモルホリニル基が挙げられる。一実施形態では、ヘテロ環基は、4~7員である。別の実施形態では、ヘテロ環基は、5~6員である。
【0266】
「ヘテロアリール基」は、環構造内に1個または複数の炭素原子および1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のヘテロ原子、例えばN、OまたはSを含む芳香族環式基である。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリルおよびチアジアゾリル基である。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5~6員である。
【0267】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを包含する。
【0268】
本明細書においては、第1の原子または基が第2の原子または基に「直接結合される」と記載される場合、第1の原子または基が、介在する原子(複数可)または基(複数可)が存在せずに第2の原子または基に共有結合されると理解されるべきである。例えば、基-(C=O)N(CHの場合、各メチル基の炭素原子は、窒素原子に直接結合され、カルボニル基の炭素原子は、窒素原子に直接結合されるが、カルボニル基の炭素原子は、どちらのメチル基の炭素原子にも直接結合されない。
【0269】
ペプチドは、ペプチド結合により結合された2個以上のアミノ酸を含む。ペプチドは2個以上のアミノ酸モノマーを含む高分子である。ペプチド結合は、1つのアミノ酸のカルボン酸基と、別のアミノ酸のアミノ基との間で形成されるアミド結合(-CO-NH-)である。本発明においては、「ペプチド等価物」は、1個または複数のアミノ酸を含み得るが、それはまた、例えば、アミノスルホン酸またはアミノスルフィン酸などの少なくとも1個のアミノ酸等価物も含む。ペプチド等価物は、1個または複数のアミノ酸モノマーを含む高分子であるが、それはまた、例えば、アミノスルホン酸モノマーまたはアミノスルフィン酸モノマーなどの少なくとも1個のアミノ酸等価物モノマーも含む。従って、ペプチド等価物は、(i)C末端アミノ酸等価物または(ii)2個のモノマーを連結する少なくとも1個のペプチド結合ではない結合を有し、例えば、アミノスルホン酸は、スルホンアミド結合(-SO-NH-)により別のモノマーに連結される、またはアミノスルフィン酸は、スルフィンアミド結合(-SO-NH-)により別のモノマーに連結される。
【0270】
本発明においては、pHは、欧州薬局方5.0、ボリューム1、2005、項2.2.3で詳述のように測定できる。
【0271】
緩衝能力(β)は、HおよびOHイオンを吸収または脱着することにより、緩衝液組成物のpHの変化に抵抗する能力を定量化する。酸または塩基が緩衝液組成物に加えられる場合、pH変化に対する効果は、初期pHおよびpH変化に抵抗する緩衝液組成物の能力の両方に応じて、大きく、または小さくなり得る。緩衝能力(β)は、緩衝液組成物のpHを1だけ変えるのに必要な酸または塩基のモルを、緩衝液組成物の体積(リットル)で除算した値、として定義される;これは、無単位数である。
【0272】
本発明の組成物の一部の成分は、組成物中にイオンとして(すなわち、イオン型で)明示的に存在すると言われるが、多くの他の成分も同様に、本発明の組成物中で、イオン型で存在し得ることは理解されよう。
【0273】
本発明の組成物の成分のいずれかは、塩形態で存在し得る。
【0274】
本発明の組成物の成分のいずれかは、限定されないが、12C、13C、H、H(D)、14N、15N、16O、17O、18O、19Fおよび127Iを含む任意の安定同位体、ならびに限定されないが、11C、14C、H(T)、13N、15O、18F、123I、124I、125Iおよび131Iを含む任意の放射性同位元素を含み得る。例えば、ヒスチジンは、L-ヒスチジン-d(α-d、イミダゾール-2,5-d)の形態であり得る。
【0275】
本発明の場合、「実質的に全ての」は、98重量%以上、または99重量%以上、または99.5重量%以上、または99.9重量%以上を意味する。
【0276】
本発明の場合、組成物が、ある成分を「実質的に不含」であるといわれる場合、これは、組成物が、2重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.1重量%以下のその成分を含むことを意味する。
【0277】
本発明においては、化合物の「鏡像異性的に濃縮された」異性体は、40%重量未満の同じ化合物の他の異性体を含む。化合物の「鏡像異性体的に純粋な」異性体は、5重量%未満の、より典型的には2重量%未満の、最も典型的には0.5重量%未満の同じ化合物の他の異性体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0278】
図1】本発明の緩衝液のリストを示す。図1に記載の全ての緩衝液は、グッド緩衝液と見なされる。グッド緩衝液は、図1に示すように、N-置換アミノスルホン酸グッド緩衝液および非スルホン酸グッド緩衝液として分類され得る。
図2】試験緩衝液または対照培地で処理した感染ベロ細胞におけるSARS-CoV-2増殖曲線分析を示す。ウェル当り1x10個のベロ細胞を、試験緩衝液または対照培地で1時間前処理した後、SARS-CoV-2にmoi 0.1で感染させた。吸着を4℃で実施した。その後、感染単層を冷DMEM+0.2%BSAで2回洗浄し、続けて、試験緩衝液または対照培地の存在下、37℃で1時間インキュベーションを行った。1時間後、単層をDMEM-2(FBS 2%)で再度洗浄し、非結合ウィルスを除去した。次に示した時間にわたり細胞をインキュベートし、ウィルス産生量を収集し、感染力のために量を決定した。GraphPad Prism6ソフトウェアを用いてグラフ作成および統計解析を行った。データは、3回反復実験から平均±SDとしてプロットした。*p<0.05;***p<0.001;****p<0.0001。
図3】対照と比較した、種々の希釈度の試験緩衝液による、SARS-CoV-2スパイクシュードタイプレポーター粒子の中和%を示す。SARS-CoV-2スパイクシュードタイプレポーター粒子を、種々の希釈殿試験緩衝液または対照と共に、37℃で1時間インキュベートした。次に、4x10個のHuH7細胞(ヒト肝細胞)を加え、37℃で72時間インキュベートし、その後、発光/ルシフェラーゼ活性を測定することにより感染率を決定した。
【発明を実施するための形態】
【0279】
実施例
実施例1
表1に記載の成分を1Lの滅菌水中で撹拌することにより、緩衝水溶液を調製した。
【表1】
【0280】
実施例2(仮説に基づく例)
表2に記載の成分を1Lの滅菌水中で撹拌することにより、緩衝水溶液を調製した。
【表2】
【0281】
実施例3(仮説に基づく例)
ヒト気管支上皮細胞のウィルス感染を防止または低減する当該緩衝液の能力は、Harcourtら(J Vis Exp,2013,vol 72,e50157)により記載されたものなどの方法を用いて試験され得る。この開示方法では、ヒト気道上皮Calu-3細胞の分極層が、トランスウェル中の液体被覆培養(liquid-covered culture:LCC)で調製され得る。
【0282】
LCCの分極は、経上皮電気抵抗値(TEER)および/またはナトリウムフルオレセインの平衡化(両方の方法はHarcourtらにより記載のとおり)を測定することにより評価され得る。細胞層のウィルス誘導脱分極は、Harcourtらにより記載のように評価され得る。
【0283】
LCCが、無血清EMEMなどの無血清培地中で洗浄される。当該緩衝液が、全ての試験トランスウェルの基底部コンパートメントに加えられる。「非感染」対照群に対して、当該緩衝液が同様に、適切なトランスウェルの頂端部コンパートメントに加えられる。「モック感染」対照群に対して、当該緩衝液中で希釈した不活化ウィルスが、適切なトランスウェルの頂端部コンパートメントに加えられ、「ウィルス感染」試験群に対して、当該緩衝液中で希釈したウィルスが、適切なトランスウェルの頂端部コンパートメントに加えられる。
【0284】
当該緩衝液の細胞層のウィルス誘導脱分極に対する効果は、その後、Harcourtらにより記載のように、TEERおよび/またはナトリウムフルオレセインの平衡化を測定することにより決定され得る。
【0285】
実施例4
表3に記載の成分を1Lの超純水(ATSM I型、25℃で18.2MΩ/cm)中で撹拌することにより緩衝水溶液A、B、CおよびDを調製した。
【表3】
【0286】
実施例5-コロナウィルスの侵入妨害を評価するための緩衝液を用いた抗ウィルス試験
宿主:ベロ-CCL81
ウィルス:SARS-CoV-2(ストック力価 ベロ中で1.67x10PFU/mL)(PFU=プラーク形成単位)
【0287】
I.目的:エンドソーム酸性化およびウィルスの細胞への侵入を妨げる(または低減する)ようにデザインされた試験緩衝液の存在または非存在下でのSARS-CoV-2によるベロ細胞の感染
【0288】
II.試験デザイン:
1.試験前日に、7e4個の細胞を、24ウェルプレートの各ウェルに播種した。24時間後、感染の直前に、ウェル当りの係数細胞数は、1e5個であった。
2.実験で使用したMoi(感染多重度)は、0.1(10細胞毎に1PFU)であった。
3.感染の1時間前に、オーバーレイ培地(DMEM-10)を0.5mLの試験緩衝液または対照培地で置き換えることにより、細胞を試験緩衝液または対照培地で前処理した。
4.試験緩衝液または対照培地中で調製したウィルス種菌を用いて、4℃で吸着を実施した。ウィルス種菌は、100μL/ウェルで計算ウィルス力価を有するように調製された。
5.吸着後、冷結合バッファー(DMEM+0.2%BSA)で2回、単層を洗浄することにより、非結合ウィルスを除去した。
6.吸着後、試験緩衝液または対照培地の存在下で、感染細胞を37℃で1時間インキュベートし、感染を同期させ、侵入を促進した。
7.1時間後、単層をDMEM-2(FBS2%)で3回洗浄した(これは、非結合ウィルスを除去するための追加のステップである)。その後、下記に示した時間にわたり、単層を0.5mLのDMEM-2で被覆し、オーバーレイ中のウィルスを集め、ベロ細胞中のプレートアッセイによる感染力のために量を決定した
8.時点:感染後時間(hpi)1(37℃でのインキュベーションの1時間後)、3、6、24および48時間。
9.GraphPad Prism6ソフトウェアを用いてグラフ作成および統計解析を行った。データは、3回反復実験から平均±SDとしてプロットした。*p<0.05;***p<0.001;****p<0.0001。
III.条件:
試験A.培地=無血清 低pH=5.5調節対照(陰性対照)
・強制的侵入
試験B.培地=無血清 低pH+100mMのNHCl(陽性対照)
・侵入遮断
注意:低pH培地で処理後、ベロ細胞は、丸まり、ウェルから剥離された。プロトコルは多くの洗浄ステップを必要とするので、あまりに多くの細胞が失われる。残りの細胞は、低pH培地をDMEM-2で置換後回収されたが、それらの総数は、他の群との統計の比較のためには、差がありすぎた。同様のことは、試験緩衝液では観察されず、ベロ細胞は、試験緩衝液で処理後、細胞傷害性の徴候を示さなかった。
試験C.培地=実施例4の緩衝液A
試験D.培地=実施例4の緩衝液B
試験E.培地=実施例4の緩衝液C
試験F.培地=実施例4の緩衝液D
試験G.培地=非感染対照-DMEM-2
・ベロ細胞の単相は無傷であり、DMEM-2で処理後、損傷または細胞傷害性の徴候を示さなかった。
試験H.=未処理対照。感染moi 0.1-DMEM-2
【表4】
【0289】
IV.ウィルス:ベロ細胞中のSARS-CoV-2は、実験の日に量を決定した。
プレートカウント:10-4希釈(10倍希釈)で19PFU
感染症の日の力価:1.9x10PFU/ml
【0290】
V.結果:
結果は、図2に図表により表され、この図は、試験緩衝液または対照培地で処理した感染ベロ細胞におけるSARS-CoV-2増殖曲線分析を示す。図から分かるように、実施例4の4種全ての試験緩衝液は、DMEM-2の非処理対照に比べて、少なくとも24時間にわたり、統計的に有意な程度に、ウィルス複製を抑制した。
【0291】
実施例6-作用モードに関する洞察
宿主:HuH7細胞(ヒト肝細胞)
ウィルス:SARS-CoV-2スパイクシュードタイプレポーター粒子
【0292】
I.目的:ウィルス侵入/最初の複製のサイクルの防止または低減に対する緩衝液の効果の試験。緩衝液中のZnCl濃度の低減(100μM~0.39μM)の効果の調査
【0293】
II.試験デザイン:
コロナウィルスの宿主細胞への侵入は、スパイクSタンパク質により媒介される。ベクターウィルス中のエンベロープタンパク質をスパイクSタンパク質で置き換えることにより、SARS-CoV-2スパイクシュードタイプレポーター粒子を、SARS-CoV-2による感染をシミュレートするモデルとして用いた。ベクターウィルスは、レポーター発光遺伝子を含む。標的細胞中の発光を検出することにより、ウィルスを中和する緩衝液の能力、すなわち、ウィルス感染を低減する試験緩衝液の能力、を選別することが可能である。従って、この実験は、初期段階の感染、すなわち、侵入および最初の複製サイクルのみを調査する。
【0294】
緩衝液の希釈および偽ウィルスとのインキュベーション:
1.平底96ウェルプレート(ThermoFisher、#136101)中で、実施例4の緩衝液AおよびBの希釈液(二通りに)を、ウェル当り100μlの総体積中で、1/256の緩衝液の最終希釈液まで調製した。
2.1x10RLUのSARS-CoV-2偽型レンチウィルス粒子を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。
3.第1の縦列(8つの対照ウェル)は、SARS-CoV-2偽型レンチウィルス粒子および細胞のみ(ウィルス対照)を受け、第2の縦列は、細胞のみ(バックグラウンド対照)を受けた。
【0295】
HuH7細胞の調製およびウィルス曝露:
1.接着性HuH7細胞を含むT75から培地を除去し、細胞をPBSで濯いだ。
2.2mlのトリプシンを細胞に加え、細胞を5分間にわたりインキュベーターに戻した。
3.細胞が剥離され、細胞が8mlのFBS含有DMEM中に再懸濁され、ピペッティングによる下層での吸引と上層での吐出により単細胞の懸濁液が生成されたことを、顕微鏡を使って確認した。
4.細胞の濃度を、細胞カウンターを使って測定した。
5.細胞をDMEMで最終濃度の4x10個の細胞/mlに希釈した。
6.4x10個の細胞を含む100μlの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。
7.プレートを37℃、5%CO下で72時間インキュベートした。
【0296】
緩衝液による感染の中和の評価:
1.150μlの培地/上清を各ウェルから取り出し、50μlのSteady-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)を加えた。
2.発光/ルシフェラーゼ活性をCLARIOstar Plate Reader(BMG Labtech)を用いて測定した。
【0297】
Prism8を用いた分析:
1.2016年以前に収集されたプール血清(Sigma)および陽性中和剤の血清に対する、相対的感染率(%)対緩衝液希釈度(log10値)の曲線を、Prism8(GraphPad)を用いてプロットした。
2.非線形回帰(曲線当てはめ)法を用いて、50%を中和する希釈倍数を決定した。
【0298】
III.結果:
結果を図表により図3で表し、これは、%中和対緩衝液希釈度(log10値)を示す。図から分かるように、実施例4の緩衝液AおよびBは、HuH7細胞のSARS-CoV-2スパイクシュードタイプレポーター粒子による感染を、256倍希釈でも、効果的に抑制した。
【0299】
実施例7-合成
本発明による3種の組成物を以下のように調製した。組成物A、BおよびCは、それらが含む精油(ジンジャー油、ユーカリ油、メボウキ油、チョウジ油)の量が、すなわち、それぞれ、合計2%、1%および0.4%で異なる。
【表5】
【表6】
【0300】
製造方法:
第1段階:リン酸緩衝液の調製
1.KHPOを注射用蒸留水(24ml)に溶解し、透明溶液を得た。
2.NaHPOを溶液に加えて撹拌し、透明溶液を得た。
3.注射用蒸留水を加えて体積を100mlにした。
4.緩衝液のpHを検査し、7.2~7.5の範囲にあることを明らかにした。
【0301】
第2段階:水相の調製
1.ポロキサマーを注射用蒸留水(10ml)に溶解した。その後、ヒアルロン酸ナトリウムを加え、混合物を膨潤させて混合物Aを得た。
2.HPMCを注射用蒸留水(10ml)中で膨潤させて混合物Bを得た。
3.NaCl、KCl、MgCl・6HO、NaHCO、キシリトール、EDTA、CaCl・2HO、およびZnClを順次この順に注射用蒸留水(20ml)中に溶解し、混合物Cを得た。
【0302】
第3段階:油相の調製および混合
1.PEG400および全ての精油(ジンジャー油、ユーカリ油、メボウキ油、チョウジ油)を一緒に加え、混合物Dを得た。
2.混合物AおよびBを一緒に混合した後、混合物Cを加えてブレンドを形成した。
3.混合物Dをこのブレンドに加えた後、グリセロールおよび塩化ベンザルコニウムを加えた。
4.以前に作製したリン酸緩衝液を用いて体積を100mlにした。
5.この混合物を8000~9000rpmで15~20分間ホモジナイズした。
6.ホモジナイズした組成物を、Whatmanフィルター(サイズ11μmの濾紙)を通して濾過した。
7.組成物のpHを検査し、7.2~7.7の範囲にあることを明らかにした。1M HClに対する緩衝能力が0.02であることを明らかにした。
8.組成物をスプレーボトル中で懸濁した。
【0303】
実施例8-抗菌/殺菌アッセイ
この試験は、実施例7Bおよび7Cの組成物の抗菌活性を評価するために行った。このアッセイは、供試品(実施例7Bおよび7Cの組成物)が存在する場合、指定サンプリング時間(30秒または60秒)内の好気性微生物集団の変化を測定した。
【0304】
供試品(実施例7Bまたは7Cの組成物)を、室温で指定時間の間(30または60秒)、既知の微生物集団と接触させた。その後、試料を中和して、供試品の抗菌活性を消失させ、生存微生物を計数した。処理前の微生物個体群と比較することにより、パーセント減少率を計算した。
【表7】
【表8】
試験結果を、表6および7にまとめている。実施例7Bおよび7Cの組成物は両方、細菌(サルモネラ・アボニー、黄色ブドウ球菌、大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、およびスタフィロコッカス・エピデルミディスなど)ならびに真菌(アスペルギルス・ブラジリエンシスおよびカンジダ・アルビカンスなど)に対し実質的な抗菌活性を示した。
【0305】
実施例9-SARS-CoV-2およびインフルエンザA(H1N1)に対する殺ウィルス効果
この試験は、実施例7Aの組成物のSARS-CoV-2およびインフルエンザA(H1N1)に対する殺ウィルス活性を評価するためにインビトロで行った。供試品(実施例7Aの組成物)の殺ウィルス活性を、供試品を含むウィルス溶液の液体-液体接触により試験した。2種の試験濃度の供試品を新規コロナウィルスの原因物質(SARS-CoV-2株USA-WA1/2020)およびインフルエンザA原因物質(H1N1 pdm09)と共に5分間インキュベートした。その後、供試品と共にインキュベートしたウィルスを中和し、宿主細胞の集密層に加えた。標準的エンドポイント希釈アッセイにより生存ウィルスを定量化した。Reed-Muench法を用いて、試料のエンドポイント力価(50%の細胞培養物感染投与量、CCID50)を決定し、ネガティブ(水)対照と比べた、供試品のLog減少値(LRV)を計算した(LRV<1は殺ウィルス活性かないことを示し、LRV>1は殺ウィルス活性を示す)。
【0306】
試験デザイン
宿主細胞-SARS-CoV-2: ベロE6、インフルエンザ:MDCK
ウィルスと共に供試品のプレインキュベーション-5分
ウィルス感染後の細胞のインキュベーション-5日
-SARS-CoV-2ウィルスストックをベロE6細胞中でのウィルス増殖により調製した。インフルエンザA(H1N1)ウィルスストックをMDCK細胞中でのウィルス増殖により調製した。使用した試験培地は、10U/mLのトリプシン、1μg/mLのEDTA、および50μg/mLのゲンタマイシンを補充したMEMであった。
-供試品を2種の濃度(90%および50%と呼ばれる)のウィルス溶液と混合し、室温で一緒に5分間インキュベートした。90%-90体積%の実施例7Aの組成物および10体積%のウィルスが存在するように、供試品とウィルス溶液とを混合した。50%-50体積%の実施例7Aの組成物および50体積%のウィルスが存在するように、供試品とウィルス溶液とを混合した。
-接触期間後、溶液を試験培地中での1/10希釈により中和した。
-生存ウィルスを標準的エンドポイント希釈アッセイにより定量化した。
-試験培地中での8種の10倍希釈を用いて試料を系列希釈し、宿主細胞に添加した。
-プレートを5%CO下、37℃でインキュベートした。
-感染後5日目に、プレートをウィルスの細胞変性効果(CPE)の存在または非存在をスコア化した。Reed-Muench法を用いて、試料のエンドポイント力価(50%の細胞培養物感染投与量、CCID50)、および供試品のLog減少値(LRV)を決定した。
【0307】
結果
試験結果を、表8および9にまとめている。
【表9】
【表10】
2種の異なる濃度で5分間試験した場合、実施例7Aの組成物は、SARS-CoV-2およびインフルエンザA(H1N1)に対する殺ウィルス活性を示した。
【0308】
実施例10-インビトロプロテアーゼ阻害
この試験では、COVID-19に関連するカテプシンL、3CL、フューリンおよびDPP4などのプロテアーゼの阻害に対する実施例7Bの組成物の効果を、無細胞アッセイを用いて調査した。カテプシンLは、コロナウィルス表面スパイク糖タンパク質のS1サブユニット切断を媒介し、従って、ヒト宿主細胞中へのコロナウィルス侵入、ウィルスおよび宿主細胞エンドソーム膜融合、および次のラウンドの複製のためのウィルスRNA放出を促進する。3C様プロテアーゼ(3CLpro)は、SARS-CoV複製に不可欠である。DPP4は、スパイク糖タンパク質S1bドメインと相互作用し、ウィルス侵入を促進する。フューリンは、SARS-CoV-2の切断および宿主細胞へのその侵入に関与する。
【0309】
精製プロテアーゼを供試品(実施例7Bの組成物)/陽性対照と共にインキュベートし、対応する蛍光発生的基質を用いて供試品/陽性対照の抑制効果を評価した。
【0310】
試験デザイン
手順
-BPS Bioscience,USによる無細胞生化学的キットを用いて、製造業者のプロトコルに従って、プロテアーゼ阻害アッセイを実施した。
-陽性対照(PC)はキットで提供された。
-実施例7Bの組成物をキット由来のアッセイ緩衝液で希釈し、表10~13に示す目的の最終濃度%の精油を得た。
-蛍光値のパーセンテージ阻害を、酵素対照(すなわち、供試品/陽性対照なし)と比較して決定した。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0311】
結果
試験結果を、表10~13にまとめている。実施例7Bの組成物は、3CL、DPP4、カテプシンLおよびフューリンプロテアーゼの、それぞれ、16%、18.4%、66.7%および45.7%の阻害をもたらした。結果は、実施例7Bの組成物が、酵素対照に比べて、3CL、DPP4、カテプシンLおよびフューリンプロテアーゼの有意な阻害(p<0.01またはp<0.001)をもたらすことを示した。
【0312】
実施例11-スパイクS1-ACE2相互作用の阻害
SARS-CoV2は、鼻腔内粘膜および肺の細胞上に存在するACE2受容体に結合するスパイクS1タンパク質を介して人体に侵入する。スパイクS1タンパク質と、ACE2受容体との結合の阻害は、COVID-19に対する予防的戦略と広く見なされてきた。この試験では、実施例7Bの組成物のスパイクS1タンパク質と、ACE2受容体の結合阻害に対する効果を、セルフリーアッセイで、ELISA様比色分析のキットを用いて調査した。異なる濃度の供試品(実施例7Bの組成物)および陽性対照をACE2阻害剤スクリーニング試薬と共に、96ウェルプレート(ウサギFcタグ付きSARS-CoV-2スパイクS1 RBDでプリコートした)に加え、インキュベートした。さらに、スパイク阻害剤スクリーニング試薬をプレートに加え、インキュベートした。最終的に、プレートを抗ヒスHRPコンジュゲートで処理し、続けて、TMB基質を添加し、光吸収を得て、これを、分光光度計を用いて450nm波長で測定した。
【0313】
試験デザイン
手順
-スパイクS1-ACE2相互作用の阻害を、Cayman Chemical Company,USによる、セルフリーアッセイキット、SARS-CoV-2スパイク-ACE2相互作用阻害剤スクリーニングアッセイキットを用いて、製造業者のプロトコルに従って調査した。
-エモジンを陽性対照(PC)として使用した。
-実施例7Bの組成物を無血清培地で希釈し、表14に示す目的の最終濃度%の精油を得た。
-SARS-CoV2阻害剤対照を内部キット対照として用いた(キットで提供される)。
-スパイクS1-ACE2相互作用の阻害パーセンテージを100%の初期活性と比較して決定した。
【表15】
【0314】
結果
実施例7Bの組成物は、対照に比べて、スパイクS1-ACE2結合を有意に(p<0.001)63.9%阻害した。これらの結果に基づいて、実施例7Bの組成物は、スパイクS1タンパク質とACE2受容体の結合を阻害すると結論付けることができる。
【0315】
実施例12
この実施例は、BES(実施例4で使用される)が、本発明の緩衝液組成物中でタウリンにより置換できることを示すために実施した。
表15に記載の成分を1Lの超純水(ATSM I型、25℃で18.2MΩ/cm)中で撹拌することにより緩衝水溶液A~Fを調製した。
【表16】
6種全ての緩衝液A~Fは、本発明の治療での使用に好適なpHを有する緩衝液組成物であることが明らかになった。
【0316】
実施例13-製造実施例
チアミンピロリン酸クロリドを、0.4mg/mLストック溶液としてミリQエンドトキシン不含精製水中で調製し、暗色ガラスバイアル中で凍結貯蔵した。塩化コリンを、17.45mg/mLストック溶液としてミリQエンドトキシン不含精製水中で調製し、ガラスバイアル中で凍結貯蔵した。ヒト組換えインスリンを、0.5mIU/mLストック溶液として、0.1Nの塩酸でpH2.4に酸性化した、ミリQエンドトキシン不含精製水中で調製し、ガラスバイアル中で凍結貯蔵した。
【0317】
以下の調製では、ミリQエンドトキシン不含精製水を、全体を通して、初期撹拌、および最終希釈に使用した。
【0318】
調製のために、ステンレス鋼容器を8リットルのミリQエンドトキシン不含精製水を満たし、常に撹拌を加えながら、以下の成分を次の順に加えた:642.96gの塩化ナトリウム、37.28gの塩化カリウム、18.38gの塩化カルシウム二水和物、9.14gの塩化マグネシウム六水和物、1.363gの塩化亜鉛、106.61gのN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、必要に応じ、1.84mgのチアミンピロリン酸クロリド(4.6mLのストック溶液を使用)、0.9899gのL-カルニチン、0.1396gの塩化コリン(8mLのストック溶液を使用)、1.013gのグリセロール、必要に応じ、2.8mIUのヒト組み換えインスリン(5.6mLのストック溶液を使用)、0.310gのL-アスパラギン酸ナトリウム塩、180.2gの無水D-グルコース、5.07gのL-グルタミン酸ナトリウム塩および5.84gのL-グルタミン。混合物を完全に溶解するまで撹拌した後、ミリQエンドトキシン不含精製水をさらに加えることにより、最終体積の10リットルを作製した。溶液を、細菌濾過器(0.2μm ザルトブランPH)を通して、100mLの無菌密閉ガラスビンに入れた。この溶液は、使用目的の溶液の10xの濃度である。濃縮物は、暗状態下、3~8℃で5年間まで貯蔵できる。
【0319】
使用のため、100mLの濃縮物を900mLの二重脱イオンまたはミリQエンドトキシン不含精製水で希釈し、2.1gのエンドトキシン不含重炭酸ナトリウムを加えて、1リットルにして、使用まで、8~10℃で貯蔵した。貯蔵安定性のために、貯蔵前に、濃縮物に重炭酸ナトリウムを加えないのが好ましい。
【0320】
本発明は、例示の目的のみで上記されているに過ぎないことは、理解されよう。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。以下の特許請求の範囲のみにより定められる本発明の範囲および主旨を逸脱することなく、様々な変更形態および実施形態を実施することが可能である。
【0321】
配列番号1は、下記の配列である。Xaaは、任意の天然起源アミノ酸であり得る:
【表17】




図1-1】
図1-2】
図2
図3
【国際調査報告】