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特表2023-531585マイクロニードルパッチを用いた最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法、及びマイクロニードルパッチを含む最小侵襲的アトピーの検査キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】マイクロニードルパッチを用いた最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法、及びマイクロニードルパッチを含む最小侵襲的アトピーの検査キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20230718BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230718BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
G01N33/53 P
G01N1/28 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561427
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 KR2020007612
(87)【国際公開番号】W WO2021206218
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0041957
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515167539
【氏名又は名称】ラパス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RAPHAS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ド ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ドン
(72)【発明者】
【氏名】イ、グン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、グァン フン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB09
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB03
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA21
2G052FD09
2G052GA30
(57)【要約】
最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法に関し、一実施例による最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法は、生分解性の高分子ヒアルロン酸からなり、中実構造である複数個のマイクロニードルと、前記複数個のマイクロニードルが形成された基部となる底層と、を含むマイクロニードルパッチを対象体の皮膚に適用するステップと、前記マイクロニードルパッチを対象体の皮膚に付着した状態で、所定の時間維持するステップと、前記所定の時間が経過後、前記マイクロニードルパッチを対象体の皮膚から分離して、定量検査に投入するステップと、前記定量検査ステップにおいて、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着されたインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量を読み取るステップと、前記インターロイキン-4及びインターロイキン-13の量の読み取りに基づき、アトピー性皮膚炎の活性度を測定するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性の高分子ヒアルロン酸からなり、中実構造である複数個のマイクロニードルと、前記複数個のマイクロニードルが形成された基部となる底層と、を含むマイクロニードルパッチを対象体の皮膚に適用するステップと、
前記マイクロニードルパッチを対象体の皮膚に付着した状態で、所定の時間維持するステップと、
前記所定の時間が経過後、前記マイクロニードルパッチを対象体の皮膚から分離して、定量検査に投入するステップと、
前記定量検査ステップにおいて、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着されたインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量を読み取るステップと、
前記インターロイキン-4及びインターロイキン-13の量の読み取りに基づき、アトピー性皮膚炎の活性度を測定するステップと、を含む
ことを特徴とする最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法。
【請求項2】
前記定量検査は、ELISA測定である
請求項1に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法。
【請求項3】
検出されたIFN-gammaの量は、アトピー性皮膚炎の活性度の評価において考慮されない
請求項2に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法。
【請求項4】
前記所定の時間は、マイクロニードルを構成するヒアルロン酸の分子量による溶解速度を考慮して予め決められる
請求項3に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法。
【請求項5】
前記マイクロニードルを構成するヒアルロン酸の分子量が、低分子量から高分子量になるほど、対象体の皮膚への付着時間を延長可能であり、生体検出性能が向上する
請求項4に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法。
【請求項6】
対象体の皮膚から抽出されたタンパク質の量を定量分析可能な装備と、生分解性の高分子ヒアルロン酸からなり、中実構造である複数個のマイクロニードル、及び前記複数個のマイクロニードルが形成された基部となる底層を含むマイクロニードルパッチと、を含み、
前記マイクロニードルパッチが対象体の皮膚に適用され、所定の時間維持後、分離された状態で、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着された対象体のタンパク質が前記装備によって定量分析され、
前記装備は、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着されたインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量を読み取り、
前記インターロイキン-4及びインターロイキン-13の量の読み取りに基づき、アトピー性皮膚炎の活性度が評価される
ことを特徴とする最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キット。
【請求項7】
前記装備によって、ELISA測定が行われる
請求項6に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キット。
【請求項8】
検出されたIFN-gammaの量は、アトピー性皮膚炎の活性度の評価において考慮されない
請求項7に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キット。
【請求項9】
前記所定の時間は、マイクロニードルを構成するヒアルロン酸の分子量による溶解速度を考慮して予め決められる
請求項8に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キット。
【請求項10】
前記マイクロニードルを構成するヒアルロン酸の分子量が、低分子量から高分子量になるほど、対象体の皮膚への付着時間を延長可能であり、生体検出性能が向上する
請求項9に記載の最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルパッチを用いた最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法、及びマイクロニードルパッチを含む最小侵襲的アトピーの検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
病気の治療のための数多くの薬物及び生理活性物質などが開発されたが、薬物及び生理活性物質を身体内に伝達するにあたって、生物学的バリア(biological barrier、例えば、皮膚、口腔粘膜、及び血液脳関門など)の通過問題及び薬物伝達の効率問題は、依然として改善されなければならない点として残っている。
【0003】
薬物及び生理活性物質は、一般に、錠剤剤形またはカプセル剤形で経口投与されるが、数多くの薬物が胃腸管で消化または吸収されるか、肝のメカニズムによって消失するなどの理由で、上記のような投与方法だけでは有効に伝達され得ない。しかも、いくつかの薬物は臓の粘膜を通過して有効に拡散することができない。例えば、特定時間の間隔で薬物を服用しなければならないか、薬を服用できない重篤な患者の場合などは、患者の順応度も問題となる。
【0004】
薬物及び生理活性物質の伝達において、また他の一般的な技術は、従来の注射針(needle)を利用することである。この方法は、経口投与に比べて効果的であるのに対して、注射部位での痛みの随伴及び皮膚の局部的損傷、出血及び注射部位での疾病感染などを引き起こすという問題点があった。
【0005】
上記した経口投与及び皮下注射の問題点を解決するために、パッチ剤を通じての経皮投与方法が用いられる。パッチ剤を使用した経皮投与は、副作用が少なく、患者の順応度が高く、薬物の血中濃度を一定に維持しやすい。
【0006】
上述したような問題点を解決するために、マイクロニードル(microneedle)を含む多様なマイクロ構造体が開発された。マイクロニードルの材質としては、金属及び多様な高分子物質が使われた。最近では、マイクロニードルの材質として、生分解性の高分子物質が脚光を浴びている。
【0007】
生分解性材質のマイクロ構造体を製作するための方法として代表的なものは、モールドを利用した方式である。半導体製造工程を応用して、形成しようとするマイクロ構造体の形状が彫り込まれたモールドを先に製作し、このようなモールドにマイクロ構造体材料を注いで凝固させたてから引き離すと、マイクロ構造体、すなわち、マイクロニードルが形成される。
【0008】
本出願人は、このようなモールディング方式のマイクロ構造体の製作方法を代替できる新たな製作方法として、液滴伸長方式の製作方法について、韓国内外に多数の特許権を取得したことがある。液滴伸長方式を簡単に説明すると、粘性を帯びた生体親和性の高分子物質を基板上に位置したパッチの底層またはパッチに結合される前の底層にスポッティングした後、他の基板上に位置したパッチの底層またはパッチに結合される前の底層に同一の生体親和性高分子物質をスポッティングするかこれを省略し、前記他の基板を反転させ、前記スポッティングされた生体親和性高分子物質側に接近させて最終的には接触するようにし、その後、両基板の間の相対的な距離を離隔させて接触した粘性を有した生体親和性高分子物質が伸びるようにし、このような伸長工程が完了した後、送風を実施して伸長された状態で、形状が固定されるようにし、中間部分を切断して、二つの異なる基板上にそれぞれ同一のマイクロ構造体が形成されるようにする方法である。
【0009】
以上、薬物及び生理活性物質伝達手段としてのマイクロ構造体の技術的意味と、それを製作するための方法などについて簡略に説明した。本出願人は、本発明で、マイクロ構造体を薬物及び生理活性物質の伝達ではなく、新たな用途で活用することを提案しようとする。それは、マイクロ構造体、すなわち、マイクロニードルを含むパッチを最小侵襲的アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis)の検査に活用することである。
【0010】
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う炎症性皮膚疾患であり、アレルギー性鼻炎、気管支喘息とともに、最も代表的なアレルギー性疾患であって、子供では、10-30%の有病率で、乳児と小児においてたくさん発生するが、最近、成人型のアトピー性皮膚炎がたくさん増加している。アトピー性皮膚炎の主な病理機序として、皮膚バリアの異常、免疫学的異常、遺伝的な素因、環境的な素因などが関与する。皮膚バリアの異常は、フィラグリン(Filaggrin)などの皮膚角質形成細胞の分化と関連した数多くの生物学的因子と皮膚バリア脂質の重要な要素であるセラマイドの合成が減少することにより、皮膚バリアの異常がもたらされ、これにより、皮膚乾燥症及びかゆみの症状が引き起こされる。免疫学的異常は、樹状細胞、T細胞、その他、自然免疫細胞(肥満細胞、好酸球、好塩基球、好中球)のような細胞による自然、適応免疫反応が複合的に作用して、TSLP、IL-4、IL-13のような多様なサイトカイン及びケモカインのような炎症反応物質が分泌されることにより、免疫反応が引き起こされ、そのうち、病因において最も核心的なサイトカインの一つが、IL-4及びIL-13であり、最近、このマーカーをターゲットとした多くのバイオ薬剤が開発されて、難治性アトピー性皮膚炎の新たな治療剤として広く用いられており、極めて優れた効果を示している。
【0011】
このようなアトピー性皮膚炎の発症機序と関連した数多くの生物学的物質の変化を観察することが、新たな治療薬物の開発と関連している。このようなアトピー性皮膚炎の新たな発症機序を見出し、治療に対する効果の判定、予後に対する予測検査、新たな治療剤の開発などのためには、アトピー性皮膚炎の病変部位を生検して、組織内のアトピー性皮膚炎と関連した生物学的因子などを分析する方法が最も普遍的である。図1は、このような生検について示している。ところで、生検は、手術医の熟練した技術が必要である。また、患者の苦痛が伴われるので、拒否感が発生し、試験後、生検部位の傷痕が残るという短所があった。このような理由などにより、実際に、人体から一々このような因子を検出するのには大きな困難があり、新技術や新薬開発に障害となっている。このような短所を改善するために、病変部位にテープを脱着して、テープにくっついてきた皮膚材料を分析するテープを用いた非侵襲的ストリッピング方法が提示された。しかしながら、テープにくっついてきた物質は、角質層に限定されるという短所を持っている。これに対して、アトピー性皮膚炎は、角質層、表皮、真皮層における免疫系の異常によって発生する皮膚疾患であるので、生検のように表皮と真皮の両方における組織の採取が重要である。このため、テープストリッピング方法は、アトピー性皮膚炎の新薬開発や発症機序の研究のための一部補助的な方法として用いることができるが、完全な結果は得難い。よって、本発明者(ら)は、皮膚生検、テープストリッピング、及び多種のマイクロ構造体パッチを用いて皮膚材料を取得し、テープまたはマイクロ構造体パッチを用いたストリッピングを介して、皮膚生検を代替することができる程度の皮膚材料が取得されるかを確認して、皮膚生検を代替することができる採取方法の有用性を確認しようとする。
【0012】
このような研究に用いられたマイクロ構造体パッチは、全3種であり、マイクロ構造体パッチの対照群であるマイクロ構造体のない空パッチ、中空状マイクロ構造体パッチ、また、溶解性マイクロ構造体パッチである。対照群である空パッチは、一般に、傷の治癒に主に用いられる親水コロイドパッチでのみ構成されている。中空状マイクロ構造体パッチは、マイクロ構造体の内部のマイクロサイズの断面積を有する孔を介して、痛みと感染危険性を最小化することができ、それとともに、薬物伝達が可能であるという長所を有する。溶解性マイクロ構造体パッチでは、親水コロイドパッチの上に、医薬品レベルのヒアルロン酸成分のマイクロニードルが形成される。マイクロ構造体パッチの製造方法には、上述したモールド方式と伸長方式などがあるが、製造方法によらず、パッチの上にヒアルロン酸成分のマイクロニードルが形成されるものであればよい。皮膚の上にこのようなマイクロ構造体パッチを適用すると、図2に示すように、マイクロ構造体は、角質層を透過して、皮膚の内部まで進入するようになる。本発明者(ら)は、皮膚の内部まで進入したマイクロ構造体に表皮、真皮層にある多くの因子が吸着され得る十分な時間の間パッチを付着し、以降、剥がされたパッチから皮膚材料を取得しようとする。以降、本発明者(ら)は、組織生検、テープストリッピング、3種のマイクロ構造体パッチ法間の比較分析によって、病因において重要なバイオマーカーの検出や発現量の測定の際に、組織生検を代替することができる新たな最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法を提示しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来の組織生検、テープストリッピング方式のアトピー性皮膚炎の検査方法の問題点を解決するためものであることを目的とする。
【0014】
従来の組織生検は、手術医の熟練した技術が必要であり、患者の苦痛が伴われるので、拒否感が発生し、試験後、生検部位の傷痕が残るという短所があった。
【0015】
従来のテープストリッピングは、テープにくっついてきた物質が角質層に限定され、単に補助的な検査方法として用いられるだけで、完全な結果を提供することができないという短所があった。
【0016】
本発明の目的は、既存の組織生検に比べて、苦痛がほとんどなく、傷痕も残らず、患者の使い勝手を高めるとともに、角質層の内部の皮膚因子を採取することにより、既存のテープストリッピングに比べて、分析結果の信頼性を高めることができる、新たな最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法及び最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施例による最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法は、生分解性の高分子ヒアルロン酸からなり、中実構造である複数個のマイクロニードルと、前記複数個のマイクロニードルが形成された基部となる底層と、を含むマイクロニードルパッチを対象体の皮膚に適用するステップと、前記マイクロニードルパッチを対象体の皮膚に付着した状態で、所定の時間維持するステップと、前記所定の時間が経過後、前記マイクロニードルパッチを対象体の皮膚から分離して、定量検査に投入するステップと、前記定量検査ステップにおいて、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着されたインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量を読み取るステップと、前記インターロイキン-4及びインターロイキン-13の量の読み取りに基づき、治療によるアトピー性皮膚炎の活性度を測定するステップと、を含む。
【0018】
本発明の一実施例による最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キットは、対象体の皮膚から抽出されたタンパク質の量を定量分析可能な装備と、生分解性の高分子ヒアルロン酸からなり、中実構造である複数個のマイクロニードル、及び前記複数個のマイクロニードルが形成された基部となる底層を含むマイクロニードルパッチと、を含む。前記マイクロニードルパッチが対象体の皮膚に適用され、所定の時間維持後、分離された状態で、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着された対象体のタンパク質が前記装備によって定量分析される。前記装備は、前記マイクロニードルパッチのマイクロニードルの表面に吸着されたインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量を読み取る。前記インターロイキン-4及びインターロイキン-13の量の読み取りに基づき、アトピー性皮膚炎の活性度が評価される。
【0019】
以外にも、さらなる構成が、本発明による最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法または最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キットにさらに提供され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来の組織生検、テープストリッピング方式のアトピー性皮膚炎の検査方法の問題点が解決される。
【0021】
従来の組織生検は、手術医の熟練した技術が必要であり、患者の苦痛が伴われるので、拒否感が発生し、試験後、生検部位の傷痕が残るという短所があった。
【0022】
従来のテープストリッピングは、テープにくっついてきた物質が角質層に限定され、単に補助的な検査方法として用いられるだけで、完全な結果を提供することができないという短所があった。
【0023】
本発明によれば、既存の組織生検に比べて、苦痛がほとんどなく、傷痕も残らず、患者の使い勝手を高めるとともに、角質層の内部の皮膚因子を採取することにより、既存のテープストリッピングに比べて、分析結果の信頼性を高めることができる、新たな最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査方法及び最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術の皮膚生体の検査方法を示す図である。
図2】本発明による皮膚生体の検査方法を概念的に示す図である。
図3】アトピー性皮膚炎の検査方法と関連した臨床試験に先立って、本発明の概念と密接に関連している最小侵襲的皮膚生体の検査方法について、本発明者(ら)が行った実験(以下、「基礎実験1」という)における4つの対照群を示す図であって、1)マイクロニードルが形成されていない空パッチ、2)金属材質の中実(solid)のマイクロニードル、3)低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチ、4)高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチを示す。
図4】基礎実験1の4つの対照群を用いて、30代年齢の患者群及び60代年齢の患者群に対して、プロコラーゲン1(Pro-Collagen 1)の検出試験を行った結果を示す表である。
図5】基礎実験1の4つの対照群のうち、低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチ及び高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチの生体検査適用前後の長さ変化の測定結果を示す表である。
図6】他の基礎実験(以下、「基礎実験2」という)の結果を示す表であって、ここで用いられた対照群は、1)マイクロニードルが形成されていない空パッチ、2)低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチ、3)高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチであり、それぞれの対照群は、20代年齢の患者群及び60代年齢の患者群に対して、5秒及び60秒間、皮膚に適用された後、剥がされてプロコラーゲン1の検出結果が測定された。
図7】基礎実験2による対照群が、20代年齢の患者群及び60代年齢の患者群に対して、それぞれ10秒及び30秒間、皮膚に適用された後、剥がされてプロコラーゲン1の検出結果が測定された結果を示す表である。
図8】また他の基礎実験(以下、「基礎実験3」という)の結果を示す表であって、ここで用いられた対照群は、1)低分子量のキトサンマイクロニードルパッチ、2)高分子量のキトサンマイクロニードルパッチであり、それぞれの対照群は、5秒、60秒、及び300秒間、皮膚に適用された後、剥がされてプロコラーゲン1の検出結果が測定された。
図9】本発明の効果を検証するための臨床試験に用いられた3種類のパッチを撮影した写真である。
図10】臨床試験の推進スケジュールを示す表である。
図11】臨床試験の対象者に関する情報をまとめた表である。
図12】テープ、空パッチ、HAマイクロニードル、中空状ニードルの4種類の皮膚検体取得手段に付着されたたタンパク質の量を示す表である。
図13】テープ及びマイクロニードルを用いて、それぞれIL-13及びIFN-gammaの発現量を確認した結果を示すグラフである。
図14】テープ及びマイクロニードルを用いて、それぞれIL-13及びIFN-gammaの発現量を確認した結果を示すグラフである。
図15】HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIL-4の発現を、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay:酵素結合免疫吸着検定法)試験を介して測定した表である。
図16】HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIL-13の発現を、ELISA試験を介して測定した表である。
図17】HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIFN-gammaの発現を、ELISA試験を介して測定した表である。
図18】HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIL-4の発現とアトピー性皮膚炎の臨床経過との相関関係を、統計分析(SPSS)を介して確認した結果を示す。
図19】HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIL-13の発現とアトピー性皮膚炎の臨床経過との相関関係を、統計分析(SPSS)を介して確認した結果を示す。
図20】HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIFN-gammaの発現とアトピー性皮膚炎の臨床経過との相関関係を、統計分析(SPSS)を介して確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
後述する本発明についての詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として図示する添付図面を参照する。このような実施形態は、当業者が本発明を充分に実施することができる程度に詳細に説明される。本発明の様々な実施例は、互いに異なるが、互いに排他的である必要はない。後述する詳細な説明は、限定的な意味として行われるものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲の請求項が請求する範囲及びそれと均等な全ての範囲を含む。
【0026】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が、本発明を容易に実施することができるようにするために、本発明のいろいろな好適な実施例について、添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
最小侵襲的皮膚生体の検査方法に関する基礎実験の結果
図2は、本発明による皮膚生体の検査方法を概念的に示す図である。
【0028】
図2の左側上端には、製品名「Therapass」である市販中のマイクロニードルパッチが示されている。この製品は、本出願人の会社から市場に発売して販売中の製品であって、分子量が1000kDaである高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチである。図2の左側下端には、このようなマイクロニードルパッチが皮膚に適用された様子が示されており、さらに具体的には、パッチのマイクロニードルが皮膚の真皮層まで浸透した様子を示す。図2の右側部分には、皮膚炎患者にマイクロニードルパッチが適用された後、パッチのマイクロニードルにくっついてきた皮膚内の蛋白質を活用して生体検査を実施する本発明の代表的な技術的思想が概念的に示されている。ここに表示された用語であるバイオマイニング(Bio-Mining)は、生体検査のために対象体の皮膚内の蛋白質を掘り出すという意味として用いられた。
【0029】
図3は、アトピー性皮膚炎の検査方法と関連した臨床試験に先立って、本発明の概念と密接に関連している最小侵襲的皮膚生体の検査方法について、本発明者(ら)が行った基礎実験1における4つの対照群を示している。この4つの対照群のうち、第1群は、マイクロニードルが形成されていない空パッチである。第2群は、金属材質の中実(solid)のマイクロニードルである。第3群は、低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチである。低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチに用いられたヒアルロン酸の分子量は、110kDaである。第4群は、高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチである。高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチに用いられたヒアルロン酸の分子量は、1000kDaである。
【0030】
図4は、上述した4つの対照群を用いて、30代年齢の患者群及び60代年齢の患者群に対して、プロコラーゲン1の検出試験を行った結果を示す表である。
【0031】
図4のx軸には、空パッチ、低分子量ヒアルロン酸パッチ、及び高分子量ヒアルロン酸パッチが示されている。y軸は、検出されたプロコラーゲン1の単位体積当たり質量がミリリットル当たりピコグラムの単位で表示されている。4つの対照群のうち、金属材質の中実(solid)のマイクロニードルは表示されていない。その理由は、蛋白質の定量そのものが全くなされていないためである。図4に示された「ELISA」は、抗体や抗原に酵素を標識して酵素の活性を測定して抗原-抗体反応の強度とその量を定量的に測定する方法であって、現代の生命工学で利用されている方法を指し示す。この方法は、本発明の実験の全般に用いられた。
【0032】
図4の表において注意深く見なければならないことは、第1対照群である空パッチとの実質的な差別性の有無である。空パッチは、本発明の出願前に存在していた従来技術であって、検出結果が空パッチと実質的に差別化されないのであれば、本発明が生体検出効果の向上に資するところがないということになるからである。図4の結果を見ると、低分子量(110kDa)ヒアルロン酸パッチにおけるプロコラーゲン1の検出量は、空パッチの場合と実質的に差別化されていない。しかし、高分子量(1000kDa)ヒアルロン酸パッチにおけるプロコラーゲン1の検出量は、空パッチ及び低分子量ヒアルロン酸パッチの場合と対比して顕著に増加したことが分かる。
【0033】
マイクロニードルパッチの成分となるヒアルロン酸の分子量によって、どうしてこのように顕著な結果の差別性が示されるのかについて、本発明者らは、実験を持続してその原因を分析したのであり、その原因を分子量の差による皮膚内への溶解速度で探した。現在商用化されているマイクロニードルパッチのマイクロニードル成分は、生体適合性なものであって、生分解性の高分子物質が大勢である。「生体適合性物質」とは、人体に毒性がなく、化学的に不活性な物質を意味する。そして、「生分解性物質」は、生体内で体液、酵素または微生物などによって分解され得る物質を意味する。また、生分解性物質の中では、分子量が小さいほど生体内への溶解速度が速くなり、分子量が大きいほど生体内への溶解速度が遅くなる傾向があると知られている。一方、生体適合性高分子(biocompatible polymer)としては、次のような物質が知られている:
【0034】
ヒアルロン酸(hyaluronicacid;HA)、ゼラチン(gelatin)、キトサン(chitosan)、コラーゲン(collagen)、アルギン酸、ペクチン、カラギナン、コンドロイチン(サルフェート)、デキストラン(サルフェート)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルティティン 、フィブリン、アガロース、フルラン、セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアルコール、アラビアゴム、アルギネート、シクロデキストリン、デキストリン、葡萄糖、果糖、澱粉、トレハロース、グルコース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、フルクトース、ツラノース、メリトース、メレチトース、デキストラン、ソルビトール、キシリトール、パラチニット、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレングリコール-ポリエステル共重合体(poly(ethyleneglycol)/polyester)、キトサン-グリセロールホスフェート(Chitosan/glycerol phosphate)、ポリホスファゼン(Polyphosphazene)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(Poly(ethylene glycol)/poly(propylene glycol))、ポリシアノアクリレート(Polycyanoacrylate)、ポリオルトエステル(Polyorthoester)、ポリヒドロキシエチルメタクリルアミド乳酸(Poly(N-(2-hydroxyethyl)methacrylamide-lactate)、ポリプロピレンホスフェート(Poly(propylene phosphate)等がある。
【0035】
マイクロニードルパッチを皮膚に付着すると、パッチのマイクロニードルが、皮膚の真皮層まで進入する過程で、また、進入後に維持される過程で、生体適合性マイクロニードル構造に蛋白質がくっついてから抽出され得る。ところが、低分子量のヒアルロン酸マイクロニードルは、生体の蛋白質がその表面にくっついても、溶解速度が相対的にはやいため、長時間皮膚に付着される場合、そのもの自体が溶解しながら表面についた蛋白質が流失され得る。このような原因で、図4の実験結果が得られたものと分析された。これを裏付ける結果が図6に示されている。
【0036】
図5は、上述した4つの対照群のうち、低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチ及び高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチの生体検査適用前後の長さ変化の測定結果を示す表である。
【0037】
図5の結果によると、110kDaの低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチのマイクロニードルは、人体の皮膚に付着している間、略30%の長さの減少を示した。一方、1000kDaの高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチのマイクロニードルは、皮膚に付着している間、略10%だけの長さの減少を示した。このような実験結果は、低分子量のヒアルロン酸マイクロニードルは、生体の蛋白質がその表面にくっついても、溶解速度が相対的にはやいため、長時間皮膚に付着する場合、そのもの自体が溶解しながら表面についた蛋白質が流失され得、これが、図4に示された実験結果の原因であることを裏付けている。図4乃至図5に示された第1実施例の実験において、各対照群の皮膚付着時間は5分であった。よって、本発明者らは、皮膚への付着時間を5分よりも減らしてそれぞれ異なる時間の長さの間実験を行う必要を発見し、上述した基礎実験(実験1)とは異なる実験(実験2)を企画した。
【0038】
図6は、上述した基礎実験1とは異なる基礎実験2の結果を示す表であって、ここで用いられた対照群は、1)マイクロニードルが形成されていない空パッチ、2)低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチ、3)高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチであり、それぞれの対照群は、20代年齢の患者群及び60代年齢の患者群に対して、5秒及び60秒間、皮膚に適応された後、剥がされてプロコラーゲン1の検出結果が測定された。低分子量ヒアルロン酸の分子量及び高分子量ヒアルロン酸の分子量は、基礎実験1の場合と同一である。低分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチとしては、本出願人が市販中の美容用途のマイクロニードルパッチが使われ、高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチとしては、本出願人が市販中の医療機器用途のマイクロニードルパッチ(商品名:「Therapass」)が使われた。基礎実験1の実験結果、金属材質の中実のマイクロニードルは、生体蛋白質の抽出性能が非常に不十分であったため、本実施例で対照群として使われていない。
【0039】
図6の実験結果から次の事実が分かる。第一に、5秒の付着時間では、マイクロニードルパッチの空パッチ対比有意味な結果の向上を期待することができない。第二に、60秒の付着時間では、マイクロニードルパッチ(低分子量及び高分子量)が空パッチ対比顕著に優れた生体蛋白質の抽出性能を示す。第三に、60秒の付着時間においても、高分子量マイクロニードルパッチの生体蛋白質の抽出性能が、低分子量マイクロニードルパッチの生体蛋白質の抽出性能よりも優れている。本発明者らは、図6の実験結果に基づき、付着時間が5秒を超え、60秒よりは短い時間帯に対して、さらなる結果を得るために、図7の実験を追加的に進行した。
【0040】
図7は、基礎実験2による対照群が、20代年齢の患者群及び60代年齢の患者群に対して、それぞれ10秒及び30秒間、皮膚に適用された後、剥がされてプロコラーゲン1の検出結果が測定された結果を示す表である。
【0041】
空パッチの場合は、10秒付着時や30秒付着時に結果の有意味な変化がなかったため、図7の表には、30秒付着時の結果のみを表記した。図7の結果から分かることは、次の通りである。第一に、10秒の付着時間でも、空パッチ対比大幅に向上したマイクロニードルパッチ(低分子量及び高分子量)の生体蛋白質の抽出性能を確認することが加能である。第二に、10秒の付着時間では、低分子量マイクロニードルパッチ及び高分子量マイクロニードルパッチの蛋白質抽出性能が大同小異である。第三に、30秒の付着時間では、高分子量マイクロニードルパッチの蛋白質抽出性能が、低分子量マイクロニードルパッチの蛋白質抽出性能をはるかに凌駕している。
【0042】
10秒以上の付着時間を維持する場合、マイクロニードルパッチの生体検査性能が有意味に発揮され得るという点、低分子量マイクロニードルが皮膚に溶解する程度の時間が経過する前である10秒程度の付着時間では、低分子量マイクロニードルパッチが、高分子量マイクロニードルパッチと大同小異の生体検査性能を示すという点を確認したことに図7の実験の技術的な意味があると評価される。
【0043】
最後に、本発明者らは、ヒアルロン酸以外に他の生体適合性高分子物質からなるマイクロニードルパッチが、生体検査用途として活用されるのに適合しているかどうかを調べるために、キトサン材質のマイクロニードルパッチを使って、図9の実験(基礎実験3)を進行した。キトサンは、ヒアルロン酸と同様に、生体適合性高分子物質ではあるものの、生分解性ではない。キトサンは、甲殻類に含まれているキチンを人体に容易に吸収されるように加工した物質であって、老廃した細胞を活性化して、老化を抑制し、免疫力を強化させる効果が知られている。皮膚細胞の活性化の側面でも、効果が立証されて、化粧品の成分物質として広く使われており、皮膚の美容目的のマイクロニードルパッチの成分としても使われている。
【0044】
図8は、基礎実験3の結果を示した表であって、ここで用いられた対照群は、1)低分子量のキトサンマイクロニードルパッチ、2)高分子量のキトサンマイクロニードルパッチであり、それぞれの対照群は、5秒、60秒、及び300秒間、皮膚に適用された後、剥がされてプロコラーゲン1の検出結果が測定された。
【0045】
図8の実験において、低分子量キトサン1の分子量は、50~100kDaである。高分子量キトサン2の分子量は、250~350kDaである。20代年齢の患者群に対して、5秒、1分、5分付着後、プロコラーゲン1の発現を確認した。図8に示す実施例3の実験結果から、本発明者らは、生体適合性高分子物質の中の一つであるキトサンも、ヒアルロン酸と同様に、生体検査のための蛋白質抽出機能を発揮できるということが分かる。本明細書に例示したヒアルロン酸とキトサン以外の多様な他の生体適合性高分子物質も、最小侵襲的皮膚生体検査のためのマイクロニードルパッチ材質の候補群となる可能性は十分にあると言える。
【0046】
新たなアトピー性皮膚炎の検査方法に関する研究結果(臨床試験の実行)
【0047】
まず、図9は、本発明の効果を検証するための臨床試験に用いられた3種類のパッチを撮影した写真である。
【0048】
図9の左側の空パッチは、親水コロイド材質のパッチでのみ構成され、その上に、ニードル構造が形成されていない。中間の中空状パッチは、INCYTO社から商業的に市販中のマイクロニードルであって、長細い金属材質のニードルの中央にマイクロサイズの断面積を有する孔が形成された構造である。右側のヒアルロン酸(HA)マイクロニードルパッチとしては、製品名「Therapass」である市販中のマイクロニードルパッチが示されている。この製品は、本出願人の会社から市場に発売して販売中の製品であって、分子量が1000kDaである高分子量ヒアルロン酸マイクロニードルパッチである。
【0049】
この臨床試験の目標対象者数は、アトピー性皮膚炎患者20名(前腕部)とした。研究期間は、IRB(Institutional Review Board)の承認後、5ヶ月間とした。研究方法は、次のとおりである。
【0050】
1)0週目
-組織検査:3mmの組織検査
-テープストリッピング:d-Squameディスクテープによりストリッピングを15回行う
-タンパク質の抽出:SDSを用いて、テープまたはマイクロニードルパッチのタンパク質を抽出
【0051】
2)2週目
-3種のマイクロニードルパッチの検査:3種のマイクロニードルパッチを5分間付着後、取り外す
-タンパク質の抽出:SDSを用いて、テープまたはマイクロニードルパッチのタンパク質を抽出
【0052】
このように、0週目及び2週目にそれぞれ対象者に対する検査を行い、その検査結果を臨床的経過と比較することにより、検査方法の臨床的有用性を確認した。このような確認の際、タンパク質の定量は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイによるタンパク質の定量として行われ、ELISA測定を行い、IL-4、IL-13、IFN-gammaの定量化を行った。統計分析技法としては、SPSSを用いた。
【0053】
図10は、臨床試験の推進スケジュールを示す表である。上述したように、IRB後、5ヶ月間臨床試験が進行された。試験対象者を募集した後、訪問の0週目に、組織生検、d-squameテープストリッピング、空パッチ、HAマイクロニードル、中空状ニードルのパッチが対象者に適用され、検出手段のそれぞれからタンパク質が分離された。訪問の2週目には、空パッチ、HAマイクロニードル、中空状ニードルのパッチが、対象者に適用され、検出手段のそれぞれからタンパク質が分離された。最終的に、分離されたタンパク質量に対する定量が行われ、IL-4、IL-13、IFN-gammaに対するELISAが行われ、データが分析された。
【0054】
図11は、臨床試験の対象者に関する情報をまとめた表である。図11の表は、本臨床試験に参加した試験対象者の性別、年齢、2週後の症状経過を示している(10番患者の経過に関する「sl improved」という表記は、slightly improved、すなわち、少し好転した経過を意味する)。Failを除いて、計20名の試験対象者が登録されて研究を進行した。図11の表において、他の対象者と区別されて表示された、4番、5番、7番、16番、20番及び26番の対象者は、2次パッチの脱着を拒否して試験対象者から除いた。
【0055】
0週目には、前腕部の組織生検、テープストリッピング、及び3種のマイクロニードルパッチを用いて皮膚材料を取得し、2週目には、3種のマイクロニードルパッチを用いて皮膚材料を取得した。取得した材料は、60mm皿に入れ、直ちに研究室でSDS溶液を用いてタンパク質を抽出し、摂氏マイナス80度で保管した。
【0056】
図12は、テープ、空パッチ、HAマイクロニードル、中空状ニードルの4種類の皮膚検体取得手段に付着されたたタンパク質の量を示す表である。取得した皮膚材料は、BCAアッセイによってタンパク質を定量した。0週目に、テープ、空パッチ、ヒアルロン酸マイクロニードル、中空状ニードルが全て患者に適用された。2週後には、テープを除いて、空パッチ、ヒアルロン酸マイクロニードル、及び中空状ニードルが患者に提供された。健常者には、中空状ニードルを除いて、テープ、空パッチ、ヒアルロン酸マイクロニードルが適用された。
【0057】
定量されたタンパク質の量は、図12のグラフから確認できる(健常者は、IRBに含まれていない)。図12のグラフにおいて、y軸のNET OD(吸光度)値は、「皮膚材料から取得したタンパク質のOD値」-「各パッチのブランク状態のOD値」により求めた。タンパク質の定量結果によって、空パッチまたは中空状ニードルパッチでは、テープやヒアルロン酸マイクロニードルパッチに比べて、タンパク質がほとんど抽出されなかったことが確認された。これにより、非侵襲的方法を用いたターゲット因子の検出のためには、空パッチや中空状ニードルは、適合しないことが確認された。
【0058】
健常者及びアトピー性皮膚炎患者から、組織生検、テープ、マイクロニードルによって取得した材料において、IL-4、IL-13、及びIFN-gammaの発現量を確認した。組織生検の場合、RNAを採取して、qRT-PCR試験によって、IL-4、IL-13、及びIFN-gammaの発現量を確認し、アトピー性皮膚炎患者のサンプルとは異なる健常者では、上記したターゲットの発現が確認されなかった。次に、テープ及びマイクロニードルの場合、タンパク質を採取して、ELISA試験によって、IL-13及びIFN-gammaの発現量を確認した。図13及び図14に示すように、テープを利用した材料では、健常者及びアトピー性皮膚炎患者の両方において、上記したターゲットの発現が確認されなかったが、マイクロニードルパッチを利用した材料では、健常者に比べて、アトピー性皮膚炎患者において、IL-13及びIFN-gammaの発現量が高く確認された。
【0059】
取得した材料内のIL-4、IL-13、IFN-gammaの発現は、ELISA試験を介して測定した。その結果が、図15乃至図17に示される。図15は、HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIL-4の発現を、ELISA試験を介して測定した表である。図16は、HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIL-13の発現を、ELISA試験を介して測定した表である。図17は、HAマイクロニードルを介して臨床試験対象者から取得した皮膚材料内のIFN-gammaの発現を、ELISA試験を介して測定した表である。
【0060】
図15乃至図17の測定結果によって、アトピー性皮膚炎患者の0週目及び2週目の訪問時、ヒアルロン酸マイクロニードルパッチを用いて取得した皮膚材料内のターゲットタンパク質量の変化が確認された。
【0061】
さらに具体的に、図15の測定結果を下記に説明する。
【0062】
1番患者の0週目のIL-4のOD値は0.021である。2週目のIL-4のOD値は0.044である。
【0063】
2番患者の0週目のIL-4のOD値は0.029である。2週目のIL-4のOD値は0.012である。
【0064】
3番患者の0週目のIL-4のOD値は0.026である。2週目のIL-4のOD値は0.017である。
【0065】
6番患者の0週目のIL-4のOD値は0.053である。2週目のIL-4のOD値は0.043である。
【0066】
8番患者の0週目のIL-4のOD値は0.025である。2週目のIL-4のOD値は0.021である。
【0067】
9番患者の0週目のIL-4のOD値は0.072である。2週目のIL-4のOD値は0.141である。
【0068】
10番患者の0週目のIL-4のOD値は0.065である。2週目のIL-4のOD値は0.093である。
【0069】
11番患者の0週目のIL-4のOD値は0.012である。2週目のIL-4のOD値は0.098である。
【0070】
12番患者の0週目のIL-4のOD値は0.053である。2週目のIL-4のOD値は0.095である。
【0071】
13番患者の0週目のIL-4のOD値は0.026である。2週目のIL-4のOD値は0.022である。
【0072】
14番患者の0週目のIL-4のOD値は0.029である。2週目のIL-4のOD値は0.027である。
【0073】
15番患者の0週目のIL-4のOD値は0.034である。2週目のIL-4のOD値は0.025である。
【0074】
17番患者の0週目のIL-4のOD値は0.036である。2週目のIL-4のOD値は0.027である。
【0075】
18番患者の0週目のIL-4のOD値は0.038である。2週目のIL-4のOD値は0.025である。
【0076】
19番患者の0週目のIL-4のOD値は0.023である。2週目のIL-4のOD値は0.021である。
【0077】
21番患者の0週目のIL-4のOD値は0.026である。2週目のIL-4のOD値は0.052である。
【0078】
22番患者の0週目のIL-4のOD値は0.012である。2週目のIL-4のOD値は0.038である。
【0079】
23番患者の0週目のIL-4のOD値は0.031である。2週目のIL-4のOD値は0.017である。
【0080】
24番患者の0週目のIL-4のOD値は0.035である。2週目のIL-4のOD値は0.028である。
【0081】
25番患者の0週目のIL-4のOD値は0.025である。2週目のIL-4のOD値は0.024である。
【0082】
さらに具体的には、図16の測定結果を下記に説明する。
【0083】
1番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0027である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0017である。
【0084】
2番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0072である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0002である。
【0085】
3番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0072である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0017である。
【0086】
6番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0132である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0077である。
【0087】
8番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0062である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0059である。
【0088】
9番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0059である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0069である。
【0089】
10番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0052である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0059である。
【0090】
11番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0052である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0052である。
【0091】
12番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0022である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0062である。
【0092】
13番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0132である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0067である。
【0093】
14番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0072である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0069である。
【0094】
15番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0037である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0042である。
【0095】
17番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0042である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0037である。
【0096】
18番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0027である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0032である。
【0097】
19番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0059である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0049である。
【0098】
21番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0065である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0082である。
【0099】
22番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0102である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0102である。
【0100】
23番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0079である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0079である。
【0101】
24番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0137である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0092である。
【0102】
25番患者の0週目のIL-13のNet OD値は0.0502である。2週目のIL-13のNet OD値は0.0082である。
【0103】
さらに具体的に、図17の測定結果を下記に説明する。
【0104】
1番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0220である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0380である。
【0105】
2番患者の0週目0週目のIFN-gammaのNet OD値は-0.0005である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0410である。
【0106】
3番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0015である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は-0.0045である。
【0107】
6番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0350である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0140である。
【0108】
8番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0395である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0340である。
【0109】
9番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0345である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0640である。
【0110】
10番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0145である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0320である。
【0111】
11番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0515である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0465である。
【0112】
12番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0295である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0340である。
【0113】
13番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0410である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0340である。
【0114】
14番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0380である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0615である。
【0115】
15番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0455である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0560である。
【0116】
17番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0310である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0390である。
【0117】
18番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0405である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0275である。
【0118】
19番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0510である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0415である。
【0119】
21番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0285である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0000である。
【0120】
22番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0160である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0255である。
【0121】
23番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0140である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0260である。
【0122】
24番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0230である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0320である。
【0123】
25番患者の0週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0365である。2週目のIFN-gammaのNet OD値は0.0285である。
【0124】
本発明者(ら)は、ヒアルロン酸マイクロニードルパッチを用いて取得した皮膚材料内のターゲットタンパク質の発現とアトピー性皮膚炎の臨床経過との相関関係を、統計分析(SPSS)を介して確認した。その結果が、図18乃至図20に示される。
【0125】
前記相関関係の統計分析のために、本発明者(ら)は、病変の臨床経過に応じて、点数を異なって与えた。病状が顕著に悪くなったか、少し悪くなったと臨床的判断が行われた12番及び15番患者に対しては-1点、15番以外の全ての患者に対しては1点を与えた。図11の表の最右側に表示された2週間後の臨床経過をみれば、12番患者の場合、「よくも悪くもない(so so)+じんま疹」の症状が表示されており、症状が少し悪くなったと臨床的判断が行われた。15番患者の場合、「悪くなった(aggravated)」と表示されており、症状が顕著に悪くなったと臨床的判断が行われた。残りの患者の場合、病状が維持されるか、良くなったと臨床的判断が行われた。
【0126】
図18乃至図20の上部に示されたグラフのX軸は、臨床経過を示す。このグラフのY軸は、それぞれIL-4、IL-13、及びIFN-gammaの変化量(「2週目でのターゲットの発現量」-「0週目でのターゲットの発現量」)を示す。統計分析の結果、アトピー性皮膚炎の臨床経過とIL-4及びIL-13の変化量との間の有意な相関関係が確認された(p<0.05)。また、統計分析の結果、アトピー性皮膚炎の臨床経過とIFN-gammaの変化量との間には、相関関係がないことが確認された。これにより、非侵襲的方法(ヒアルロン酸マイクロニードルパッチの適用)を用いたターゲット因子検出の臨床的有用性を検証した。まとめると、アトピー症状が緩和した患者において、インターロイキン-4及びインターロイキン-13の検出量が減少し、アトピー症状が悪くなった患者において、インターロイキン-4及びインターロイキン-13の検出量が増加したことが確認され、これから、組織生検のような侵襲的施術無しに、生分解性の高分子ヒアルロン酸マイクロニードルを人体に付着してから取り外した後、病因において重要なバイオマーカーの発現量の変化を測定することにより、医師を含めた医療陣の臨床的判断によらず、信頼できるアトピー性皮膚炎の活性度の測定が可能になった。
【0127】
併せて、生分解性の高分子ヒアルロン酸で形成されるマイクロニードルパッチ、及び人体の皮膚から得られたタンパク質の定量分析が可能な装備で構成される、本発明の一実施例による最小侵襲的アトピー性皮膚炎の検査キットを活用すると、医療関係者の医学的知識または経験に依存せず、予め決まった数値と定量分析装備によって、得られたインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量に関する数値を単純に比較することにより、アトピー性皮膚炎の活性度を容易かつ正確に評価することができる。上述したアトピー性皮膚炎の活性度の評価は、本発明の一実施例によるアトピー性皮膚炎の検査キットに含まれてもよい機能部によって自動で行われてもよい。このような場合、前記機能部は、定量分析装備から得られるインターロイキン-4及びインターロイキン-13の量に関するデータとの比較対象となり、これらとアトピー性皮膚炎の活性度の相関関係に関するデータを保存する保存部と、定量分析装備からデータを伝達されるインターフェース部と、前記保存部に保存されたデータと前記定量分析装備から伝達されたデータとを比較判断して、アトピー性皮膚炎の活性度に関する情報を生成する比較判断部と、前記比較判断部で生成された情報が表示される表示部と、を含んで構成されてもよい。
【0128】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施形態及び図面によって説明されたが、これは、本発明のさらに全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正及び変形を図ることができる。
【0129】
したがって、本発明の思想は、上述された実施例に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等にまたは等価的に変形されたあらゆるものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
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【国際調査報告】