(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】吸入器システム
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
A61M15/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577611
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021066500
(87)【国際公開番号】W WO2021255202
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツゥール,アミール
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン‐エドワーズ,マーク
(57)【要約】
吸入器を備えたシステムが提供される。吸入器は使用計測システムを有している。使用計測システムは対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測するように構成されている。使用計測システムは吸入器の使用に時間を割り当てる。システムはユーザーインターフェースと処理モジュールを備えている。処理モジュールはパラメータから吸入情報を決定し、ユーザーインターフェースを制御して、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるように構成されている。通知は通知時刻に発出される。処理モジュールは通知時刻が吸入器の使用に割り当てられた時間よりも遅れるべく意図的な遅延を生じさせるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサー、メモリおよび送受信機を有する外部装置と、
プロセッサー、メモリおよび送受信機を有する吸入器と、を備え、
前記吸入器の前記プロセッサーは、
対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測し、
前記使用に時間を割り当て、
前記外部装置に、前記吸入器の使用の間の前記気流に関する前記パラメータ、および前記使用に割り当てられた時間を送信するように構成され、
前記外部装置の前記プロセッサーは、
前記吸入器の前記使用の間の前記気流に関する前記パラメータ、および前記使用に割り当てられた時間を受信し、
前記吸入器の前記使用の間の前記気流に関する前記パラメータから吸入情報を決定し、
ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、前記吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるとともに、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後、少なくとも5分となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後、48時間よりも短くなるように設定されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記外部装置の前記プロセッサーは、前記吸入器によって与えられた前記使用に割り当てられた時間に基づいて、前記使用に日時スタンプを割り当てるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が、前記日時スタンプに含まれた日の後の日の予め決定された時刻となるように設定されることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記吸入器は前記パラメータを計測するための圧力センサーまたは音響センサーを有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記吸入器は前記吸入器の使用前、使用中または使用後に作動せしめられるように構成された機械的スイッチを有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記吸入器は、それを通じてユーザーが吸入を実行するマウスピースと、マウスピースカバーとを有し、前記機械的スイッチが、前記マウスピースカバーが動かされてマウスピースを露出させたときに作動せしめられるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記吸入情報が、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されない無吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第1のしきい値以下である低吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第2のしきい値を超えている過吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第1のしきい値よりも大きく、かつ前記第2のしきい値よりも小さく、かつ予め決定された第3のしきい値以下であるが、前記第3のしきい値は前記第1のしきい値と前記第2のしきい値の間の値である適正吸入イベント、および
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第2のしきい値以下で、かつ前記第3のしきい値よりも大きい良好吸入イベントのうちの1つまたは2つ以上を示していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記気流に関する前記値はピーク吸入流量の値であり、前記第1のしきい値が毎分30リットルであり、前記第2のしきい値が毎分200リットルであり、前記第3のしきい値が毎分45リットルであることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記吸入器の前記機械的スイッチは前記吸入器の使用前、または使用中、または使用後に作動せしめられるように構成され、機械的スイッチが作動せしめられた後予め決定された時間が経過し、前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されないとき、無吸入イベントが記録されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記外部装置は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータまたはスマートフォンであり、前記ユーザーインターフェースは前記外部装置のタッチスクリーンであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記ユーザーインターフェースが前記外部装置のスピーカーであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記吸入器が薬剤を有し、前記薬剤は前記吸入器の前記使用の間に前記ユーザーに投与されるようになっており、前記薬剤は、アルブテロール、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、ビランテロール、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジン、グリコピロニウム、フルチカゾンと組み合わされたサルメテロール、アルブテロールと組み合わされたベクロメタゾン、またはホルモテロールと組み合わされたブデソニドであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記吸入情報は、吸入器の使用の間に、吸入器の換気口が塞がれまたは遮られていることを示すエラーメッセージを示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記吸入情報は、前記対象者による前記吸入器の前記使用の間に発生した使用エラーを示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記吸入情報は異なる種類のイベントのうちの1つを表示し、前記外部装置の前記プロセッサーは、異なる前記意図的な遅延が異なる種類のイベントに対して使用されるように、前記意図的な遅延を前記異なる種類のイベントに基づいて決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記外部装置の前記プロセッサーは、前記対象者による前記吸入器の前記使用が、前記良好吸入イベントとは対照的に、前記無吸入イベントまたは前記過吸入イベントに分類されたとき、より短い意図的な遅延を決定するように構成されていることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記外部装置の前記プロセッサーは、前記イベントが、前記低吸入イベントとは対照的に、不適切作動イベントであるとき、より短い意図的な遅延を決定するように構成されていることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
プロセッサー、メモリおよび送受信機を有する吸入器を備え、
前記吸入器の前記プロセッサーは、
対象者による前記吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測し、
前記使用に時間を割り当て、
外部装置に対し、前記吸入器の使用の間の前記気流に関する前記パラメータと、前記使用に割り当てられた時間を送信するように構成され、さらに、
プロセッサー、メモリおよび送受信機を有する外部装置を備え、
前記外部装置の前記プロセッサーは、
前記吸入器の使用の間の前記気流に関する前記パラメータと、前記使用に割り当てられた時間を受信し、
前記パラメータから吸入情報を決定し、
前記対象者への前記吸入情報を提示が前記吸入器の使用に割り当てられた前記時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
プロセッサー、メモリおよび送受信機を有する吸入器を備え、
前記吸入器の前記プロセッサーは、
対象者による前記吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測し、
前記使用に時間を割り当て、
前記吸入器の使用の間の前記気流に関する前記パラメータと、前記使用に割り当てられた時間を送信するように構成され、さらに、
プロセッサー、メモリおよび送受信機を有する外部装置を備え、
前記外部装置の前記プロセッサーは、
前記吸入器の使用の間の前記気流に関する前記パラメータと、前記使用に割り当てられた時間を受信し、
前記パラメータから吸入情報を決定し、
ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、前記吸入情報が利用可能であるとの通知を発出するとともに、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後、少なくとも5分となるように設定されることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後、48時間よりも短くなるように設定されることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記外部装置の前記プロセッサーは、前記吸入器によって与えられた前記使用に割り当てられた時間に基づいて、前記使用に日時スタンプを割り当てるように構成されていることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が、前記日時スタンプに含まれた日の後の日の予め決定された時刻となるように設定されることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記吸入器は前記パラメータを計測するための圧力センサーまたは音響センサーを有していることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項27】
前記吸入器は前記吸入器の使用前、使用中または使用後に作動せしめられるように構成された機械的スイッチを有していることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項28】
前記吸入器は、それを通じてユーザーが吸入を実行するマウスピースと、マウスピースカバーとを有し、前記機械的スイッチが、前記マウスピースカバーが動かされてマウスピースを露出させたときに作動せしめられるように構成されていることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記吸入情報が、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されない無吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第1のしきい値以下である低吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第2のしきい値を超えている過吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第1のしきい値よりも大きく、かつ前記第2のしきい値よりも小さく、かつ予め決定された第3のしきい値以下であるが、前記第3のしきい値は前記第1のしきい値と前記第2のしきい値の間の値である適正吸入イベント、および
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第2のしきい値以下で、かつ前記第3のしきい値よりも大きい良好吸入イベントのうちの1つまたは2つ以上を示していることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項30】
前記気流に関する前記値はピーク吸入流量の値であり、前記第1のしきい値が毎分30リットルであり、前記第2のしきい値が毎分200リットルであり、前記第3のしきい値が毎分45リットルであることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記吸入器の前記機械的スイッチは前記吸入器の使用前、または使用中、または使用後に作動せしめられるように構成され、機械的スイッチが作動せしめられた後予め決定された時間が経過し、前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されないとき、無吸入イベントが記録されることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記外部装置は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータまたはスマートフォンであり、前記ユーザーインターフェースは前記外部装置のタッチスクリーンであることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項33】
前記ユーザーインターフェースが前記外部装置のスピーカーであることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項34】
前記吸入器が薬剤を有し、前記薬剤は前記吸入器の前記使用の間に前記ユーザーに投与されるようになっており、前記薬剤は、アルブテロール、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、ビランテロール、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジン、グリコピロニウム、フルチカゾンと組み合わされたサルメテロール、アルブテロールと組み合わされたベクロメタゾン、またはホルモテロールと組み合わされたブデソニドであることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項35】
対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを受信し、
前記使用に割り当てられた時間を受信し、
前記パラメータから吸入情報を決定し、
ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させ、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせることを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項36】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後、少なくとも5分となるように設定されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後、48時間よりも短くなるように設定されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
日時スタンプが前記使用に割り当てられ、前記意図的な遅延は、前記通知時刻が前記日時スタンプに含まれた日の後の日の予め決定された時刻となるように設定されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記吸入情報が、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されない無吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第1のしきい値以下である低吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第2のしきい値を超えている過吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第1のしきい値よりも大きく、かつ前記第2のしきい値よりも小さく、かつ予め決定された第3のしきい値以下であるが、前記第3のしきい値は前記第1のしきい値と前記第2のしきい値の間の値である適正吸入イベント、および
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第2のしきい値以下で、かつ前記第3のしきい値よりも大きい良好吸入イベントのうちの1つまたは2つ以上を示していることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記気流に関する前記値はピーク吸入流量の値であり、前記第1のしきい値が毎分30リットルであり、前記第2のしきい値が毎分200リットルであり、前記第3のしきい値が毎分45リットルであることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器システム、特に、対象者の吸入器使用に関する情報を対象者に通知するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の多くの呼吸器疾患は、治療が、患者の症状の管理と、回復不能な病変のリスクを減らすための薬剤の生涯にわたる服用とを含む、生涯にわたる病気である。現在、喘息およびCOPDのような病気に対する治療法は存在しない。
治療は2つの形態をとる。第1に、維持管理的な治療の側面では、気道の炎症を減らし、その結果、将来的に症状をコントロールすることが意図されている。維持管理的治療は、典型的に、吸入コルチコステロイドを単独で、あるいは長時間作用性気管支拡張剤および/またはムスカリン拮抗薬と組み合わせて処方することによって行われる。第2に、治療は救急(または救援)治療の側面も有し、この場合、患者は、喘息、咳、胸部圧迫および呼吸困難の激しい発作を緩和するための即効性の気管支拡張剤を投与される。
【0003】
使用監視エレクトロニクスを備えた吸入器が知られている。このような吸入器は、例えば、吸入器が使用されたときに、対象者に当該患者/対象者の技術に関する情報を提供する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、対象者に吸入情報を提供するシステムを提供する。このようなシステムの実施例は、使用計測システムを備えた吸入器を含んでいる。使用計測システムは、対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測するように構成されていう。使用計測システムはまた、当該使用に時間を割り当てる。
【0005】
1実施例によるシステムは、ユーザーインターフェースおよび処理モジュールを備えている。処理モジュールは、パラメータからの吸入情報を決定し、ユーザーインターフェースを制御して、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるように構成されている。通知は通知時刻に発出される。処理モジュールは、通知時刻が吸入器の使用に割り当てられた時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせるように構成されている。
【0006】
対象者は、吸入情報が利用可能であるとの通知に対し、即座に当該吸入情報にアクセスすること、例えばユーザーインターフェースに吸入情報を伝えるようにさせる1つまたは2つ以上のコマンドを入力することによって応答する。吸入情報が、対象者の最初の吸入が不正確に実行されたこと、または最適な吸入ではなかったことを示すような場合、対象者が即座に薬剤をさらに1回吸入することで吸入情報に応答する危険性がある。このようなさらなる吸引は不要であり、このような行為は対象者が薬剤を過剰に服用する危険性を増大させる。
【0007】
吸入情報が利用可能であるとの通知を、吸入器の使用がなされる時刻よりも意図的に遅らせることによって、対象者が後手後手に対応して、薬剤を過剰に服用してしまう危険性が減る。それによって、システムの安全性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1実施例による吸入器のブロック図である。
【
図2】本発明の1実施例による吸入器の使用中の流量対時間のグラフである。
【
図3】本発明の1実施例によるシステムのブロック図である。
【
図4】本発明の1実施例による吸入器の正面図および背面図である。
【
図5】
図4の吸入器の上部キャップの最上面を示す図である。
【
図6】
図4の吸入器のユーザーの装置とのペアリングを説明する図である。
【
図7】本発明の1実施例による方法のフロー図である。
【
図8】本発明の別の実施例による方法のフロー図である。
【
図9】本発明の1実施例によるユーザーインターフェースの1番目の図である。
【
図10】本発明の1実施例によるユーザーインターフェースの2番目の図である。
【
図11】本発明の1実施例によるユーザーインターフェースの3番目の図である。
【
図12】吸入器の1例の正面側から見た斜視図である。
【
図15】
図12の吸入器の上部キャップおよび電子モジュールの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明および具体例は、装置、システムおよび方法の実施例を示すが、説明を目的としているにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システムおよび方法のこれらのおよび他の特徴、態様および長所が、以下の説明、添付の特許請求の範囲の記載および添付図面からより良く理解されるであろう。図面は、単に概略的であり、縮尺通りに描かれてはいないことが理解されるべきである。同一の参照番号が全図面にわたって同一または類似のパーツを示すために使用されることが理解されるべきである。
【0010】
喘息およびCOPDは気道の慢性炎症性疾患である。それらは共に気道閉塞および気管支麻痺の変化しやすく、再発する症状によって特徴づけられる。症状は、喘鳴、咳、胸部圧迫および呼吸困難の発作を含んでいる。
【0011】
症状は、トリガーを回避することおよび薬剤、特に吸入薬を使用することによってコントロールされる。薬剤は、吸入コルチコステロイドおよび吸入気管支拡張剤を含んでいる。
【0012】
吸入コルチコステロイド(ICS)は、呼吸器疾患を長期間コントロールする場合に使用されるステロイドホルモン剤である。それらは、気道炎症を弱めることで機能する。吸入コルチコステロイドは、例えば、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)、フルチカゾン(フルチカゾンプロピオン酸エステル)、モメタゾン(モメタゾンフランカルボン酸エステル)、シクレソニドおよびデクサメタゾン(デクサメタゾンナトリウム)を含んでいる。括弧は、好ましい塩またはエステルの形態を表す。
【0013】
分類が異なる気管支拡張剤は、気道内の異なる受容体をターゲットにしている。一般に使用される2つの分類は、β2刺激薬と抗コリン薬である。
【0014】
β2アドレナリン刺激薬(β2刺激薬)は円滑な筋肉弛緩を誘発するアドレナリン受容体に作用し、気道を拡張させる。長時間作用性β2刺激薬(LABA)は、例えば、ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、サルメテロール(サルメテロールキシナホ酸塩)、インダカテロール(インダカテロールマレイン酸塩)、バンブテロール(バンブテロール塩酸塩)、クレンブテロール(クレンブテロール塩酸塩)、オロダテロール(オロダテロール塩酸塩)、カルモテロール(カルモテロール塩酸塩)、ツロブテロール(ツロブテロール塩酸塩)およびビランテロール(ビランテロールトリフェニル酢酸塩)を含んでいる。短時間作用性β2刺激薬(SABA)は、例えば、アルブテロール(硫酸アルブテロール)を含んでいる。
【0015】
典型的に、短時間作用性気管支拡張剤は、急性気管支収縮からの迅速な救援を提供する(しばしば、「救急薬」または「リリーバー薬」と呼ばれる)一方、長時間作用性気管支拡張剤は、長時間にわたる症状のコントロールおよび予防を支援する。
しかしながら、ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)のような発現が早く、長時間作用性気管支拡張剤のいくつかは、救急薬として使用され得る。すなわち、救急薬は急性気管支収縮からの救援を提供する。救急薬は必要に応じて服用される。救急薬は、また、例えば、ICS-ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、典型的にはブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤のようなコンビネーション製品の形態をとり得る。こうして、救急薬は、好ましくは、SABAまたは発現が速いLABA、より好ましくは、アルブテロール(硫酸アルブテロール)またはホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、さらに好ましくは、アルブテロール(硫酸アルブテロール)からなっている。
【0016】
アルブテロール(サルブタモールとしても知られる)は、典型的に硫酸塩として服用され、本発明における好ましい救急薬である。
【0017】
抗コリン作用薬(抗ムスカリン薬)は、神経伝達物質アセチルコリンを、神経細胞内のその受容体を選択的にブロックすることでブロックする。局所適用に際し、抗コリン作用薬は、主に、気道内に位置するM3ムスカリン授与体に作用し、円滑な筋肉弛緩を生じさせ、気管支拡張を生じさせる。
長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)は、例えば、チオトロピウム(チオトロピウム臭化物)、オキシトロピウム(オキシトロピウム臭化物)、アクリジニウム(アクリジニウム臭化物)、イプラトピウム(イプラトピウム臭化物)、グリコピロニウム(臭化グリコピロニウム)、オキシブチニン(オキシブチニン塩酸塩またはオキシブチニン臭化水素酸塩)、トルテロジン(トルテロジン酒石酸塩)、トロスピウム(トロスピウム塩化物)、ソリフェナシン(ソリフェナシンコハク酸塩)、フェソテロジン(フェソテロジンフマル酸塩)およびダリフェナシン(ダリフェナシン臭化水素酸塩)を含んでいる。
【0018】
これまで、ドライパウダー吸入器(DPI)、圧力式定量吸入器(pMDI)およびネブライザー等を用いた吸入による服用のためにそれらの薬剤を準備し、処方する際に多数のアプローチがなされてきている。
【0019】
GINA(Global Initiative for Asthma:喘息管理に関する国際指針)のガイドラインによれば、段階的アプローチが喘息の治療のためにとられる。
軽症型の喘息を表す第1段階では、患者は硫酸アルブテロール等の必要に応じたSABAを与えられる。患者は、また、SABAが処方されるときはいつも、必要に応じた低用量のICS-ホルモテロールまたは低用量のICSを与えられるかもしれない。第2段階では、通常の低用量のICSがSABAまたは必要に応じた低用量のICS-ホルモテロールと一緒に与えられる。第3段階では、LABAが加えられる。第4段階では、各薬剤の用量が増やされ、第5段階では、さらに、抗コリン作用薬または低用量の経口コルチコステロイド等の追加の治療が含まれる。つまり、各段階は治療計画とみなすことができ、治療はそれぞれ、呼吸器疾患の急性重症度の程度に応じて構成される。
【0020】
COPDは世界中の主要な死因である。COPDは、慢性気管支炎や肺気腫、さらには狭気道を含む異質の長期間にわたる病気である。COPDを患った患者における病変は、主に、気道、肺実質および肺血管系に限定される。それらの病変は、肺のガスを吸い込み、吐き出す健全な能力を低下させる。
【0021】
気管支炎は長期間にわたる気管の炎症によって特徴づけられる。一般的な症状は、喘鳴、呼吸困難、咳および喀痰の喀出を含み、これらの症状はすべて患者の生活の質にとって厄介かつ有害である。気腫はまた長期間にわたる気管支炎症に関係し、この場合、炎症に対する反応によって、肺組織の破壊および進行性の気道狭窄が生じる。やがて、肺組織はその自然な弾力性を失い、拡張する。そうなると、ガス交換機能が低下し、呼吸されたガスがしばしば肺に閉じ込められる。これは、局所化された低酸素症を引き起こし、1回の吸気当たりに患者の血流中に供給される酸素量を減少させる。そして、患者は呼吸困難を経験する。
【0022】
COPDとともに生活する患者は、日々、それらの様々の症状を、一部かもしれないが経験する。病気の重症度は種々の要因によって決定されるが、最も一般的には、病気の進行度と相関がある。それらの症状は、病気の重症度とは無関係に、安定したCOPDを表し、この病状が維持され、種々の薬剤の投与を通じてコントロールされる。治療法は変更され得るが、しばしば、吸入気管支拡張剤、抗コリン作用薬、長時間作用性および短時間作用性β2刺激薬および吸入コルチコステロイドを含んでいる。薬剤はしばしば単一治療としてまたは併用治療として投与される。
【0023】
患者は、GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Inc.:慢性閉塞性肺疾患のためのグローバルイニシアティブ)ガイドラインに定められたカテゴリーを用いて、患者のCOPDの重症度によって分類される。カテゴリーはA~Dからなり、治療法の推奨される最初の選択肢はカテゴリー毎に変わる。患者グループAは、必要に応じて、短時間作用性ムスカリン拮抗薬(SAMA)または短時間作用性β2刺激薬(SABA)を処方される。患者グループBは、長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)または長時間作用性β2刺激薬(LABA)を処方される。患者グループCは、吸入コルチコステロイド(ICS)+LABA、またはLAMAを処方される。患者グループDは、ICS+LABA、および/またはLAMAを処方される。
【0024】
喘息またはCOPD等の呼吸器疾患を患った患者は、日々の基本的な病状の変化の範囲を超えた周期的な増悪に苦しむ。増悪は、追加の治療、つまり維持管理的治療の範囲を超えてなされる治療を必要とする急性の病状悪化である。
【0025】
喘息については、中程度の増悪に対する追加の治療は、SABAおよび経口コルチコステロイドの反復投与および/またはコントロールされた酸素吸入(後者は入院を必要とする)からなる。重大な増悪に対しては、抗コリン作用薬(典型的にイプラトピウム臭化物)、噴霧SABAまたは硫酸マグネシウムが追加される。
【0026】
COPDについては、中程度の増悪に対する追加の治療は、SABA、経口コルチコステロイドおよび/または抗生物質の反復投与からなる。重大な増悪に対しては、コントロールされた酸素吸入および/または呼吸サポート(いずれも入院を必要とする)が加えられる。
【0027】
吸入器を備えたシステムが提供される。吸入器は使用計測システムを有している。使用計測システムは、対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測するように構成されている。使用計測システムはまた吸入器の使用に時間を割り当てる。システムはまたユーザーインターフェースおよび/または処理モジュールを備えている。処理モジュールは、パラメータから吸入情報を決定するように構成されている。処理モジュールはまた、ユーザーインターフェースを制御して、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるように構成されている。通知は通知時刻に発出される。処理モジュールは、通知時刻が吸入器の使用に割り当てられた時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせるように構成されている。
【0028】
用語「意図的な遅延」は、処理モジュールによって実行される意図された遅延をいい、固有のまたは意図的でない遅延とは区別される。用語「意図的な遅延」は、処理モジュールによって、例えば処理モジュールに含まれたクロックモジュールを用いて、吸入器の使用に割り当てられた時間を参照しつつ決定される外因性の遅延を意味する。
【0029】
固有のまたは意図的でない遅延は、例えば、使用計測システムからのパラメータの送信、処理モジュールによる当該パラメータの受信、処理モジュールによるユーザーインターフェースを制御するための制御信号の送信、ユーザーインターフェースによる当該制御信号の受信、および当該制御信号に応答してのユーザーインターフェースによる通知の発出に関係している。
【0030】
意図的な遅延は、例えば、ユーザーインターフェースを制御して通知を発出させるための制御信号の送信を意図的に遅らせるべく実行される。
【0031】
意図的な遅延が吸入器の使用に割り当てられた時間を参照しつつ決定されることによって、特定の固有のまたは意図的でない遅延が通知時刻の決定において考慮される。
【0032】
非限定的な実施例において、処理モジュールは、意図的に実行される遅延が固有のまたは意図的でない遅延が原因で既に実現されていると判定した場合に、ユーザーインターフェースを制御して、当該判定から通知を発出させるべくユーザーインターフェースを制御するまでに生じた意図的でない時間間隔で通知を発出させる。
【0033】
吸入器は薬剤を対象者に投与するように構成されている。吸入器は、例えば、薬剤を収容する薬剤タンクを有している。
【0034】
本発明において本質的ではないが、システムは少なくとも1つの別の吸入器を備えている。少なくとも1つの別の吸入器は、1種類または2種類以上の別の薬剤を対象者に投与するように構成されている。これは、薬剤が当該吸入器を通じて投与されたのと同一の対象者である。少なくとも1つの吸入器の1つまたは2つ以上(またはそれぞれ)は、例えば、別の薬剤を収容する別の薬剤タンクを有している。
【0035】
薬剤および別の薬剤は互いに同一であり、あるいは互いに異なるが、通常、それらは互いに異なっている。
【0036】
非限定的な実施例において、薬剤は必要に応じて患者によって使用される救急薬であり、別の薬剤は予め決定された治療計画に従って患者によって使用される維持管理薬である。
【0037】
救急薬は、上述したようなものであり、典型的には、SABA、またはホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)等の発現が速いLABAからなっている。救急薬は、また、例えば、ICS-ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、典型的にはブデソニド・ホルモテロール(ブデソニド・ホルモテロールフタル酸塩)等のコンビネーション製品の形態を有している。
このようなアプローチは「MART」(maintenance and rescue therapy:維持療法および救済療法)と呼ばれる。
【0038】
非限定的な実施例において、薬剤は、アルブテロール(硫酸アルブテロール)、ブデソニド、ベクロメタゾン(ベクロメタゾンジプロピネート)、フルチカゾン(フルチカゾンプロピオン酸エステルまたはフルチカゾンフランカルボン酸エステル)、ホルモテロール(ホルモテロールフマル酸塩)、サルメテロール(サルメテロールキシナホ酸塩)、インダカテロール(インダカテロールマレイン酸塩)、ビランテロール(ビランテロールトリフェニル酢酸塩)、チオトロピウム(チオトロピウム臭化物)、アクリジニウム(アクリジニウム臭化物)、ウメクリジニウム(ウメクリジニウム臭化物)、グリコピロニウム(グリコピロニウム臭化物)、フルチカゾン(フルチカゾンプロピオン酸エステルまたはフルチカゾンフランカルボン酸エステル)と組み合わされたサルメテロール(サルメテロールキシナホ酸塩)、アルブテロール(硫酸アルブテロール)と組み合わされたベクロメタゾン(ベクロメタゾンジプロピネート)、またはホルモテロール(ホルモテロールフマル酸塩)と組み合わされたブデソニドである
【0039】
より一般的には、薬剤および別の薬剤、およびシステムの別の吸入器に含まれた他の薬剤は、適当な医薬品有効成分を有している。すなわち、任意のクラスの薬剤がシステムに含まれた吸入器によって投与される、言い換えればそれらの吸入器に貯蔵されている。システムは、吸入器によって投与される特定の薬剤とは無関係な使用情報、例えば吸入情報の一元的な取り扱いおよび伝達を可能にする。
【0040】
吸入器は使用計測システムを有している。使用計測システムは対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測するように構成されている。
【0041】
システム(例えば使用計測システム)はまた、気流に関するパラメータから吸入情報を決定する処理モジュールを備えている。処理モジュールは汎用プロセッサー、専用プロセッサー、DSP、マイクロコントローラ、集積回路および/またはハードウェアおよび/またはソフトウェアを用いて、ここで説明された処理モジュールの機能を実行するように構成されたそれらに類するものを含んでいる。処理モジュールは部分的にまたは全体が吸入器、ユーザー装置および/またはサーバーに含まれている。
【0042】
処理モジュールは電源、メモリおよび/または電池を有している。
【0043】
1実施例において、使用計測システムは、パラメータを検出するセンサーを有している。このようなセンサーは、例えば、絶対圧センサーまたは差圧センサーのような圧力センサーを含んでいる。
【0044】
非限定的な実施例において、使用計測システムは、吸入器の使用前、使用中または使用後に作動せしめられるように構成された機械的スイッチを有している。1実施例において、使用計測システムはこのセンサーを機械的スイッチと組み合わせて使用し、対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測する。
【0045】
吸入器は、例えば、それを通じて対象者が吸引を実行するマウスピース、およびマウスピースカバーを有している。かかる実施例において、機械的スイッチは、マウスピースカバーが動かされてマウスピースを露出させたときに作動せしめられるように構成されている。
【0046】
1実施例において、スイッチが作動せしめられ、かつ気流がセンサーによって検出されない場合、気流に関するパラメータは吸入器の使用によっても吸入が行われていないことを表す。吸入情報は、対応する通知によって利用可能なものとして示された吸入情報は、「無吸入イベント」を表す。
【0047】
かかる「無吸入イベント」は、例えば、機械的スイッチが例えばマウスピースカバーが開かれることによって作動せしめられた後予め決定された時間が経過し、センサーによって無吸入が検出されることに基づいて決定される。
【0048】
スイッチが作動せしめられ、センサーが、気流に関するパラメータの、予め決定された第1のしきい値以下の値を検出した場合、パラメータは低吸入イベントが発生したことを表す。対応する通知によって利用可能なものとして示された吸入情報は「低吸入イベント」を表す。
【0049】
スイッチが作動せしめられ、センサーが、気流に関するパラメータの予め決定された第2のしきい値を超える値を検出した場合、パラメータは過吸入イベントが発生したことを表す。対応する通知によって利用可能なものとして示された吸入情報は「過吸入イベント」を表す。
【0050】
非限定的な実施例において、吸入器はそれを通じて空気が吸入器内に吸い込まれる換気口と、対象者により吸入器を用いてた実行された吸入の間に空気をマウスピースに導入する空気流路を有している。上述の「過吸入イベント」は、選択的にまたは付加的に、例えば、ユーザーインターフェースを介して対象者に、吸入器の使用の間に吸入器の換気口が塞がれまたは遮られていることを示すエラーメッセージとして伝えられる。
【0051】
スイッチが作動せしめられ、センサーが、気流に関するパラメータの第1のしきい値よりも大きく、かつ第2のしきい値よりも小さく、かつ前記第1のしきい値と前記第2のしきい値の間の値である予め決定された第3のしきい値以下の値を検出した場合、パラメータは適正吸入イベントが発生したことを表す。対応する通知によって利用可能なものとして示された吸入情報は、「適正吸入イベント」を表す。
【0052】
スイッチが作動せしめられ、センサーが、気流に関するパラメータの第2のしきい値以下で、かつ第3のしきい値よりも大きい値を検出した場合、パラメータは良好吸入イベントが発生したことを表す。対応する通知によって利用可能なものとして示された吸入情報は、「良好吸入イベント」を表す。
【0053】
パラメータ値は検出された気流に比例し、より強い気流に対してより高いパラメータ値が測定される。気流に関するパラメータ値は、例えば、吸入の間のピーク吸入流量(PIF)である。かかる実施例では、予め決定された第1のしきい値は毎分30リットルであり、予め決定された第2のしきい値は毎分200リットルであり、予め決定された第3のしきい値は毎分45リットルである。
【0054】
処理モジュールは、例えば、ユーザーインターフェースを制御して、「無吸入イベント」、「低吸入イベント」、「適正吸入イベント」、「良好吸入イベント」および「過吸入イベント」/「換気口閉塞の可能性」のメッセージ、および/またはピーク吸入流量の値を伝えさせ、例えばディスプレイ表示させる。
【0055】
ピーク吸入流量の実際の値は、例えば、ユーザーインターフェースを通じて伝えられる。選択的にまたは付加的に、ピーク吸入流量は、上述のしきい値の1つまたは2つ以上よりも高いまたは低いとして、例えば、低吸入または無吸入イベントの場合は毎分30リットル以下であるとして、良好吸入イベントの場合は毎分30リットルよりも大きい(が、毎分45リットル以下)として、適正吸入イベントの場合は毎分45リットルより大きい(が、毎分200リットル以下)として、過吸入イベント/換気口閉塞の可能性の場合は毎分200リットルよりも大きいとして知らされる。
【0056】
選択的にまたは付加的に、吸入情報は、「短時間吸入イベント」または「良好吸入イベント」のような吸入継続時間を表す。1実施例では、吸入継続時間について、気流に関するパラメータが4~6秒等の一定のしきい値よりも短い時間続いた吸入を表すとき、「短時間吸入」が考慮される。逆に、パラメータが当該しきい値よりも長時間続いた吸入を表すときは、吸入情報は「良好吸入イベント」を表す。このような実施例では、対応する通知によって利用可能として表示された吸入情報は、「短時間吸入イベント」または「良好吸入イベント」を表す。上で簡単に説明されたように、通知は通知時刻に発出され、通知時刻は吸入器の使用に割り当てられた時間よりも意図的に遅延せしめられる。
【0057】
より一般的には、使用計測システムは、さらに、対象者による吸入器の使用に時間を割り当てるように構成されている。対象者による吸入器の使用に割り当てられた時間は「割り当て時間」とみなされる。
【0058】
使用計測システムは、任意の適当な方法で、計測された使用にこの時間割り当て、例えば、日時スタンプ付与を行う。
【0059】
例えば、使用計測システムは、計測された使用に時間、例えば日時を割り当てるためのクロックモジュールを有している。クロックモジュールは、プロセッサーまたは別の形式の集積回路によって実行される。クロックモジュールは処理モジュールの一部を形成している。クロックモジュールは別個のメモリを有し、または処理モジュールとメモリを共有する。システムの処理モジュールは、特定の実施例では、吸入器のクロックモジュールを処理モジュールの別のクロックモジュールと同期させるように構成されている。
【0060】
例えば上述の機械的スイッチの作動によって吸入器の使用が計測されると、使用計測システムが起動せしめられ、計測された使用と同時に、クロックモジュールによって与えられた時間、例えば日時を割り当てる。
【0061】
システムが2つ以上の吸入器を備えている場合、各吸入器の使用計測システムに含まれた1つまたは2つ以上(またはそれぞれ)のクロックモジュールが、例えば、処理モジュールに含まれた別のクロックモジュールに対して同期せしめられることに留意されたい。
【0062】
別のクロックモジュールは、例えば、処理モジュールが存在する時間ゾーンの時間を受信する。処理モジュールは、例えば、各クロックモジュールに当該時間ゾーンの時間を送信し、それによって、クロックモジュールが、対象者および吸入器が存在する時間に従って同期せしめられることを可能にする。こうして、各パラメータ/吸入器の使用データに対するタイムスタンプの付与は、対象者の地理的な位置における昼間または夜間の時間に対応する。これは、例えば、切迫した呼吸器疾患の増悪のリスクに対する夜間の救急薬の使用との関連で、特に有効である。
【0063】
システムは、例えば、時間ゾーンを跨いで旅行している対象者の昼間および夜間の救急の吸入器の使用を監視する。選択的にまたは付加的に、維持管理薬の服用を対象者に思い出させるべく、システムによって、例えばユーザーインターフェースを介して発出されたリマインダーは、対象者の位置での昼夜の時間が考慮される。
【0064】
さらに、いくつかの実施例において、クロックモジュールは、内部カウンタとして動作することが理解されるべきである。クロックモジュールは、内部カウンタとして動作しているとき、例えば、使用計測システムが、(例えば、マウスピースカバーが初めて開放された後)初めて、エネルギー節約スリープモードから起動せしめられたときに開始される相対カウントを提供する(例えば、地方平均時のような平均太陽時とは対照的に)。
【0065】
システムはユーザーインターフェースを備え、処理モジュールはユーザーインターフェースを制御して、対象者による吸入器の使用の間の気流に関する上述のパラメータから決定された吸入情報が利用可能であるとの通知を発出、例えばディスプレイ表示させる。
【0066】
ユーザーインターフェースは、例えば、吸入情報が伝えられ、例えばディスプレイ表示され得るように構成されている。処理モジュールはユーザーインターフェースを制御し、ユーザーインターフェースを通じてなされた対象者の入力に応答して吸入情報を伝える、例えばディスプレイ表示させるように構成されている。
【0067】
1実施例において、ユーザーインターフェースは、少なくとも部分的にユーザー装置の第1のユーザーインターフェースによって形成されている。ユーザー装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータおよびスマートフォンのうちの少なくとも1つからなっている。
【0068】
非限定的な実施例において、処理モジュールは、少なくとも部分的に、ユーザー装置に含まれた第1の処理モジュールに含まれている。別の非限定的な実施例において、処理モジュールはユーザー装置には含まれていない。処理モジュール(処理モジュールの少なくとも一部)は、例えば、サーバー、例えばリモートサーバーに備えられている。例えば、処理モジュールは、吸入器、ユーザー装置および/またはリモートサーバーの任意の組み合わせ上で実行される。したがって、処理モジュールに関して説明された機能または処理の任意の組み合わせは、吸入器、ユーザー装置および/またはリモートサーバー上に残った処理モジュールによって実行される。例えば、吸入器上に残った使用計測システムは、吸入器において(例えば、ユーザーによる(マウスピースカバーの開放および/またはスイッチの作動のような)吸入器の使用または操作および/または(吸入器の使用の間の気流に関するパラメータ等の)使用情報を取り込む一方、吸入器、ユーザー装置および/またはリモートサーバーの任意の組み合わせ上に残った処理モジュールは、吸入器の使用の間の気流に関するパラメータに基づいて吸入パラメータを計測し、および/または当該吸入パラメータに関係する通知を決定する。
【0069】
処理モジュールは通知時刻に通知を発出するように構成されている。例えば、処理モジュールはユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に通知を発出させるように構成されている。上で簡単に説明されたように、通知時刻は吸入器の使用に割り当てられた時間よりも意図的に遅延せしめられる。
【0070】
対象者/患者/対象者は、吸入器の使用に関する吸入情報が利用可能であるとの通知に対し、この情報に素早くアクセスすることによって応答する。吸入情報が吸入器によって投与された薬剤の不完全な吸入を表している場合、ユーザーが即座に当該薬剤をもう1回吸入することによって反応する危険性がある。このようなさらなる吸入は不要であって、かかる行為はユーザーによる薬剤の過剰な服用の危険性を増大させる。吸入情報が利用可能であるとの通知を、吸入器の使用がなされた時刻よりも意図的に遅らせることによって、ユーザーの後手後手の対応しよって薬剤を過剰に服用するという危険性が低下する。これは、このような意図的な遅延を発生させないシステムに比べて、システムの安全性が改善されることを意味する。
【0071】
例えば、通知時刻は、吸入器の使用に割り当てられた時間の経過後少なくとも5分である(例えば、意図的な遅延は少なくとも5分である)。この遅延によって、対象者が、通知に含まれた吸入情報をきっかけに、当該通知情報が関係する吸入器の使用の後即座に吸入器を再使用することを妨げることができる。
【0072】
選択的にまたは付加的に、通知時刻は、吸入器の使用に割り当てられた時間の経過後48時間よりも短くなるように設定される。こうして、通知は、対象者が、吸入情報が関係する吸入器の使用を思い出す時間枠内において発出される。これは、対象者が通知された吸入情報をフィードバックとして用いて、自己の吸入器の使用に関する誤った技術を正すことを手助けする。
【0073】
他方、吸入情報が吸入器の正しい使用を表す場合、このような時間枠内においてユーザー/対象者に当該吸入情報を通知することによって、対象者の正しい吸入器の使用が奨励されまたは促進される。
【0074】
非限定的な実施例において、使用計測システムは、時間(例えば日時スタンプ)が吸入器の使用に、例えば吸入器の各使用に割り当てられ、通知時刻が、当該使用に割り当てられた時間によって示された日の後の日の予め決定された時刻となるように構成されている。ユーザー/対象者は、例えば、吸入器の使用がなされた日の後の日に通知を受ける。
【0075】
例えば、吸入器の使用がある所定の日の0時0分0秒~23時59分59秒の間であると使用計測システムによって計測された場合、処理モジュールは翌日の0時0分0秒~23時59分59秒の間の予め決定された時刻に通知を発出する。
【0076】
通知は、例えば、吸入器の使用に時間が割り当てられた日の翌日の1時0分0秒、2時0分0秒、3時0分0秒、4時0分0秒、5時0分0秒、6時0分0秒、7時0分0秒、8時0分0秒、9時0分0秒、10時0分0秒、11時0分0秒、12時0分0秒、13時0分0秒、14時0分0秒、15時0分0秒、16時0分0秒、17時0分0秒、18時0分0秒、19時0分0秒、20時0分0秒、21時0分0秒、22時0分0秒、23時0分0秒に発出される。
【0077】
これは、例えば、さらに通知が吸入器の使用に割り当てられた時間の経過後少なくとも5分で八個されるとの上述の条件の対象となる。
【0078】
システムは、例えば、ユーザーが、吸入情報が利用可能であるとの通知を受けた日時スタンプに含まれた日の後の日の予め決定された時刻を選択できるように構成されている。
【0079】
上述された使用計測システムのクロックモジュールと処理モジュールの別のクロックモジュールとの同期は、通知時刻が日時スタンプに含まれた日の後の日に設定され得るようにすることを支援する。
【0080】
本発明によれば、さらに、対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを受信し、当該吸入器の使用、例えば各使用に時間を割り当て、パラメータから吸入情報を決定し、ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に吸入情報を含む通知を発出させることを含む方法が提供される。制御することは、通知時刻を吸入器の使用に割り当てられた時間より遅らせる意図的な遅延を生じさせることを含む。
【0081】
本発明によれば、さらに、コンピュータ上で実行されたとき、上記の方法を実行するように適合せしめられたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムが提供される。1実施例において、コンピュータプログラムコードは部分的にまたは全体がユーザー装置上にある(例えば、ユーザー装置上にあるモバイルアプリケーションとして)。
【0082】
以下においてシステムに関して説明される実施例は、方法およびプログラムにも適用可能である。さらに、以下において方法およびプログラムに関して説明される実施例はシステムにも適用可能である。
【0083】
図1は、非限定的な実施例による吸入器100のブロック図である。吸入器100は、対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測する使用計測システム12を有している。パラメータは、
図1において使用計測システム12を表すブロック、および送信モジュール14を表すブロック間の矢印によって表示されるように、送信モジュール14によって受信される。送信モジュール14はデータを使用パラメータの値に基づいて暗号化し、
図1において送信モジュール14のブロックから出ていく矢印によって表示されるように、暗号化されたデータを送信する。送信モジュール14による暗号化されたデータの送信は、既に説明されたように例えば無線で実行される。
【0084】
使用計測システム12はパラメータを計測するのに用いられる1つまたは2つ以上のコンポーネントを有している。例えば、使用計測システム12は、既に上で説明されたように、例えば、各吸入器の使用前、使用中または使用後に作動せしめられるように構成された機械的スイッチを有している。
【0085】
非限定的な実施例において、吸入器100は薬剤タンク(
図1には示されない)、および薬剤タンクから1回分の救急薬を計り取るように構成された用量計量アッセンブリー(
図1には示されない)を有している。使用計測システム12は用量計量アッセンブリーによる薬剤の計量を記録するように構成されている。この場合、各計量は吸入器100の使用(例えば試みられた使用)を表している。用量計量アッセンブリーの1つの非限定的な実施例が、
図12~16を参照して説明されるだろう。
【0086】
選択的にまたは付加的に、使用計測システム12は異なるやり方でおよび/または付加的なまたは選択的なフィードバックに基づいて各吸入を記録する。例えば、使用計測システム12は、適当なセンサー(
図1では示されない)からのフィードバックが対象者の吸入が発生したことを示している場合、例えば、圧力測定値または流速が吸入に関係づけられた予め設定されたしきい値を超えた場合、および/または圧力変化の継続時間が短時間の吸入または良好な吸入に関係づけられた予め決定されたしきい値を超えた場合、対象者による吸入器の使用または試みられた使用を記録するように構成されている。
【0087】
圧力センサーまたは音響センサー等のセンサーは、例えば、使用計測システム12に含まれて、吸入器の使用、例えば各使用の間の気流に関するパラメータを計測する。圧力センサーまたは音響センサーが使用計測システム12に含まれる場合、圧力センサーは、例えば、用量計量アッセンブリーによって計量された用量が対象者によって吸入されたことを確認するため、あるいはその吸入の程度を評価するために使用される。これについては、
図2および
図12~16を参照してより詳細に説明されるだろう。
【0088】
より一般的には、使用計測システム12は対象者によって実行された各薬剤の吸入の間の気流に関するパラメータを検出するセンサーを有している。言い換えれば、使用パラメータは薬剤の吸入の間の気流に関するパラメータを含んでいる。こうして、少なくとも1つの値は、例えば、検出された吸入パラメータに関する数値を含んでいる。
【0089】
吸入パラメータは、例えば、ピーク吸入流量、吸入量、時間対ピーク吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つを含んでいる。このような実施例において、パラメータはピーク吸入流量、吸入量、時間対ピーク吸入流量および/または吸入継続時間の数値である。
【0090】
圧力センサーは、パラメータを測定するのに特に適している。なぜなら、対象者による吸入の間の気流は、それに関係する圧力変化を測定することによって監視され得るからである。
図12~16を参照してより詳細に説明されるように、圧力センサーは、吸入の間に対象者によって空気および薬剤が吸引される流路内に配置され、あるいは当該流路と流体連絡可能に配置される。適当なフローセンサーによる測定のような、パラメータを測定する別のやり方がまた使用され得る。
【0091】
吸入が生じると、吸入が生じていない場合に比べて、吸入器の気流流路内の圧力が減少する。圧力変化が最大となる点はピーク吸入流量に対応している。圧力センサーは吸入におけるこの点を検出する。
【0092】
吸入に関係した圧力変化は、選択的にまたは付加的に、吸入量を測定するために使用される。これは、例えば、圧力センサーによって測定された吸入の間の圧力変化を用いて、まず吸入の間にわたって流量を測定し、それから全吸入量を導出することによって達成される。
【0093】
吸入に関係した圧力変化は、選択的にまたは付加的に、吸入継続時間を測定するために使用される。吸入継続時間は、例えば、吸入の開始に一致する、圧力センサーによって測定された最初の圧力減少から、吸入が発生していないときの圧力に戻る圧力回復まで記録される。
【0094】
吸入パラメータは、選択的にまたは付加的に、時間対ピーク吸入流量を含んでいる。時間対ピーク吸入流量パラメータは、例えば、吸入の開始に一致する、圧力センサーによって測定された最初の圧力減少から、圧力がピーク吸入流量に対応する最小値に達するまで記録される。
【0095】
図2は、非限定的な実施例による吸入器100の使用の間の流量16対時間18のグラフである。使用計測システム12は、この実施例では、吸入器100のマウスピースカバーが開かれたときに作動せしめられるスイッチの形態の機械的に動作するスイッチを有している。マウスピースカバーはグラフ上の点20で開かれている。この実施例では、使用計測システム12はさらに圧力センサーを有している。
【0096】
マウスピースカバーが開けられたとき、使用計測システム12は、省エネスリープモードから起動し、新たな吸入イベントが記録される。吸入イベントはまた、吸入器100がスリープモードから起動してからどれだけの時間、例えば何ミリ秒経過したかに対応する開放時間を割り当てられる。点22は、点20から経過したキャップ閉鎖または60秒に対応している。点22において検出が停止する。
【0097】
一旦マウスピースカバーが開かれると、使用計測システム12は、圧力センサーを用いて検出されるように、気圧の変化を監視する。気圧変化の開始は吸入イベント時刻24として記録される。気圧変化が最大となる点はピーク吸入流量26に対応する。使用計測システム12は、ピーク吸入流量26を、100ミリリットル単位で測定された、1分当たりの気流として記録する。すなわち、この実施例において、パラメータは毎分100ミリリットル単位でのピーク吸入流量の値である。
【0098】
時間対ピーク吸入流量28は到達すべきピーク吸入流量26に対するミリ秒単位での時間に対応する。吸入継続時間30は、ミリ秒単位での完全な吸入の継続時間に対応する。グラフの下側の領域32はミリリットル単位での吸入量に対応する。
【0099】
ユーザーインターフェースを通じて提供された吸入情報は、付加的にまたは選択的に吸入パラメータを数値として提供するが、1つまたは2つ以上(またはそれぞれ)の吸入イベントの分類を提供する。例えば、ピーク吸入流量が毎分0~30リットルである場合、吸入イベントは「低吸入」(毎分30リットル以下)として分類され、あるいは、マウスピースカバーの開放後60秒以内に吸入が検出されない場合は、「無吸入」として分類される。ピーク吸入流量が毎分45リットルより大きく、200リットル以下である場合、吸入イベントは「良好な吸入」として分類される。ピーク吸入流量が毎分30リットルより大きく、45リットル以下である場合、吸入イベントは「適正」として分類される。既に説明されたように、ピーク吸入流量が毎分200リットルを超える場合、吸入イベントは「換気口閉塞の可能性」または「過吸入イベント」として分類される。
【0100】
吸入器100を用いた吸入に対して期待された方向と反対方向の気流が検出された場合は、吸入イベントは「呼気」として分類される。
【0101】
非限定的な実施例において、吸入器は、正常な吸入に対し、吸入の開始後約0.5秒間で薬剤が投与されるように構成されている。対象者の吸入が、約1.5秒等、0.5秒経過後にピーク吸入流量に達した場合、当該対象者が自己の呼吸器疾患をコントロールすることが難しいことが部分的に示される。ピーク吸入流量に達するまでのこのような時間は、例えば、対象者が切迫した悪化に直面していることを示している。
【0102】
より一般的には、使用計測システム12は、吸入/吸入器の使用を記録し、吸入パラメータを検出するためのセンサー(例えば圧力センサー)、または吸入/吸入器の使用および吸入パラメータの検出の機能を実行するように構成された共通のセンサー(例えば共通の圧力センサー)を使用する。
【0103】
1つまたは2つ以上の圧力センサー、温度センサー、湿度センサー、方位センサー、音響センサーおよび/または光学的センサーのような、任意の適当なセンサーが使用計測システム12に含まれている。圧力センサーは、気圧センサー(例えば大気圧センサー)、差圧センサー、絶対圧センサーおよび/またはそれらに類するものを含んでいる。センサーは微小電気機械システム(MEMS)および/またはナノ電気機械システム(NEMS)の技術を使用する。
【0104】
非限定的な実施例において、使用計測システム12は差圧センサーを有している。差圧センサーは、例えば、対象者が吸入する空気流路の横断面を横切る圧力差を測定するデュアルポート型センサーからなっている。あるいは、シングルポートゲージ型センサーが使用される。後者は吸入が行われている間と吸入が行われていないときとの空気流路内の圧力差を測定する。読取り値の差は吸入に関係づけられた圧力低下に対応する。
【0105】
別の非限定的な実施例において、使用計測システム12は音響センサーを有している。音響センサーは、この実施例では、対象者が吸入器100を通じて吸入を行ったときに発生するノイズを検出するように構成されている。音響センサーは、例えばマイクロフォンを含んでいる。吸入器100は、例えば、対象者が当該吸入器100を通じて吸入を行ったときに回転するように配置されたカプセルを有している。カプセルが回転することで、音響センサーによる検出のためのノイズが発生する。カプセルの回転は、使用および/または吸入パラメータデータを導出するため適当に解読可能なノイズ、例えばガタガタ音をもたらす。
【0106】
アルゴリズムが、例えば、音響データを解読して、使用のデータおよび/または吸入の間の気流に関するパラメータを測定するために使用される。例えば、P.Colthorpe(コルソープ)他、「Adding Electronics to the Breezhler; Satisfying the Needs of Patients and Regulators(ブリーズヘラー(登録商標)への電子機器の追加;患者および当局の要求を満足させること)」、Respiratory Drug Delivery(呼吸器ドラッグデリバリー)、2018年、第1巻、71~80頁に記載されたようなアルゴリズムが使用される。一旦発生した音が検出されると、アルゴリズムは生の音響データを処理し、使用および/または吸入パラメータのデータを生成する。
【0107】
図3は、非限定的な実施例によるシステム10のブロック図である。システム10は、例えば、その代わりに「吸入器アッセンブリー」と呼ばれる。
【0108】
図3に示されるように、システム10は、第1の使用計測システム12Aおよび第1の送信モジュール14Aを有する第1の吸入器100Aを備えている。システム10は、さらに、第2の使用計測システム12Bおよび第2の送信モジュール14Bを有する第2の吸入器100Bを備えている。既に説明されたように、第1の吸入器100Aは第1の薬剤を投与し、第2の吸入器は、第1の薬剤とは異なる第2の薬剤を投与する。
【0109】
図3のシステム10は、さらに、第3の使用計測システム12Cおよび第3の送信モジュール14Cを有する第3の吸入器100Cを備えている。第3の吸入器100Cは、第1および第2の薬剤とは異なる第3の薬剤を投与する。別の実施例では、第3の吸入器100Cはシステム10に含まれず、あるいは、第4および第5の吸入器(図示はされない)が、第1の吸入器100A、第2の吸入器100Bおよび第3の吸入器100Cに加えて備えられる。既に説明されたように、選択的にまたは付加的に、システム10は複数の第1の吸入器100Aおよび複数の第2の吸入器100等々を有している。
【0110】
システム10は、
図3の送信モジュール14A、14Bおよび14Cの1つまたは2つ以上、例えばそれぞれに対応するブロックと、処理モジュール34に対応するブロックとの間の矢印で示されるように、送信モジュール14A、14Bおよび14Cのそれぞれから暗号化されたデータを受信するように構成された処理モジュール34を備えている。既に説明されたように、暗号化された第1、第2および/第3のデータは、無線で処理モジュール34に送信される。処理モジュール34は暗号化されたデータを受信するための適当な受信機または送受信機を有している。ここで説明されたように(
図3には示されない)、処理モジュール34の受信機または送受信機は、送信モジュール14A、14Bおよび14Cと同じ通信プロトコルを実行するように構成され、送信モジュール14A、14B、14Cと同様の通信用ハードウェアおよびソフトウェアを有している。
【0111】
吸入器100A、100B、100Cの1つまたは2つ以上、例えばそれぞれと、処理モジュール35の間のBluetooth(登録商標)による通信は、前者から後者への相対的に高速のデータ伝送を可能にする。例えば、各吸入器100A、100B、100Cが処理モジュール34のBluetoothの到達範囲内にあるとき、処理モジュール34にデータが送信されるのに要する最長の時間は約3分である。
【0112】
処理モジュール34は、ここで説明された処理モジュールに関する機能を実行するように構成された適当なプロセッサーおよびメモリを有している。例えば、プロセッサーは、処理モジュール34の機能を実行するためのコンピュータが実行可能な命令を用いてプログラムされた汎用プロセッサーからなっている。プロセッサーは、処理モジュール34の機能を実行するように構成されたマイクロプロセッサーまたはマイクロコントローラを用いて実行される。プロセッサーは、処理モジュール34の機能を実行するように構成された組み込みプロセッサーまたはディジタル・シグナル・プロセッサーを用いて実行されてもよい。例えば、プロセッサーは、送信モジュール14A、14Bおよび14Cと通信可能で、ここで説明された処理モジュール34の機能を実行可能なスマートフォンまたは他の消費者向け電子機器上において実行されてもよい。例えば、処理モジュール34は、スマートフォンまたは他の消費者向け電子機器にここで説明された処理モジュール34の機能を実行させるアプリケーションを含むスマートフォンまたは他の消費者向け電子機器上において実行される。
【0113】
処理モジュール34は暗号化された第1~第3のデータを、例えば、各識別子を用いることによって互いに区別する。こうして、吸入器100A,100B,100Cのそれぞれから受信された各パラメータは、処理モジュールによって別々に処理され、吸入器100A、100B、100Cのうちの1つからの吸入情報が、吸入器100A、100B、100Cのうちの別の1つから受信された吸入情報と混同されないようになっている。
【0114】
システム10は、さらに、ユーザーインターフェース38を備えている。処理モジュール34は、ユーザーインターフェース38を制御して、吸入器100A、100B、100Cの使用から導出された吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるように構成されている。吸入情報は、例えば、ユーザー/対象者が吸入情報を見るためのリクエストを入力すること、例えば、通知が表示されたタッチスクリーンの一定エリアをタップすることによって、ユーザーインターフェース38を通じてディスプレイ表示されるようになっている。通知は通知時刻に対象者に届けられまたは発出される。この場合、既に説明されたように、通知時刻は、吸入情報が関係する各吸入器100A、100B、100Cの使用、例えば各使用に割り当てられた時間よりも遅れるようになっている。
【0115】
1実施例において、ユーザーインターフェース38は、吸入情報が利用可能であるとの通知とは独立に、ユーザー/対象者が吸入器の使用または試みられた使用に関する吸入情報にアクセス可能となるように構成されている。
【0116】
処理モジュールは、いくつかの実施例において、ユーザーインターフェースを制御して、吸入器の使用または試みられた使用が使用計測システムによって計測されたことの確認を発出させる。しかしながら、このような確認は、ユーザー/対象者に吸入情報が利用可能であることを通知するものではない。この点で、吸入情報が利用可能であるとの通知は、かかる確認の後に発出される。
【0117】
非限定的な実施例において、吸入器の使用または試みられた使用が、例えば、マウスピースカバー108が開閉されたことで計測されたとの確認は、当該イベントの15分間に発出される。このような確認は、例えば、「われわれは貴方のイベントを受け付けました」となる。当該イベントに関する吸入情報を含む通知はその後、意図的な遅延を伴って発出される。
【0118】
例えば、吸入情報が利用可能であるとの通知は、吸入器の使用が行われ、確認がユーザー/対象者に発出された日の後の日になされる。
【0119】
処理モジュール34を表すブロックからユーザーインターフェース38を表すブロックに向かう矢印は、ユーザーインターフェース38に、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させる制御信号を表している。この点で、ユーザーインターフェース38は、吸入情報を表示できる任意の適当なディスプレイ、スクリーン、例えばタッチスクリーン等々を有している。選択的にまたは付加的に、吸入情報はユーザーインターフェース38により、音声メッセージを通じて提供される。かかる実施例では、ユーザーインターフェース38は音声メッセージを配信するための適当なラウドスピーカーを有している。吸入情報を知らせるための多数の方法が使用可能である。
【0120】
通知は、例えば、対象者/ユーザーに吸入情報が利用可能であることを知らせる特定の音声および/またはシンボルを含んでいる。
【0121】
非限定的な実施例において、ユーザーインターフェースに含まれたスクリーン、例えばタッチスクリーンは、ロック状態で、吸入情報が利用可能であるとの通知を提供し、ユーザーによる、例えばピンコードの入力、成功した生体認証等によるスクリーンのロックの解除が行われた後のロック解除状態で、吸入情報がディスプレイ表示され、または少なくとも対象者/ユーザーによるアクセスが可能となる。
【0122】
吸入情報が知らされ得るようにするため、このようにスクリーンのロックが解除されるように要求することによって、対象者/ユーザーの吸入情報が、意図せずに対象者/ユーザー以外の誰かに表示されることが防止される。
【0123】
通知は、例えば、ユーザーに吸入器の前の使用(または試みられた使用)に関する吸入情報を見ることを促すメッセージを含んでいる。既に背爪されたように、かかる吸入器の使用/試みられた使用は、例えば、通知が発出される前日からなされている。スクリーンおよび/またはディスプレイをロック状態から解除する、例えばタップすることによって、通知がユーザーインターフェースに、吸入情報が提供されたデータページを表示させる。
【0124】
別の実施例では、吸入情報は通知に含まれる。通知は、例えば、吸入情報を見せるためにロック状態を解除されるべきスクリーンを備えたまたは備えていないユーザーインターフェースに含まれたスクリーンに表示される。
【0125】
さらに別の実施例では、システムは、ユーザーが、通知が関係する吸入情報を見るために、スクリーンがロック状態から解除されることが必要か否かをユーザーが選択できるように構成されている。
【0126】
送信モジュール14A、14B、14Cはそれぞれ、
図3において(暗号化された)データを処理モジュール34に送信するものとして記載されているが、これは、処理モジュール34から送信されたデータを受信する各吸入器100A、100B、100Cまたはその構成モジュールを排除することを意図したものではない。
【0127】
非限定的な実施例において、クロックモジュール(図面には示されない)が吸入器100A、100B、100Cのそれぞれに含まれて、各パラメータに時間、例えば日時スタンプを割り当てるようになっている。
【0128】
図3には示されないが、処理モジュール34は、いくつかの実施例では、別のクロックモジュールを有している。各吸入器100A、100B、100Cのクロックモジュールは、別のクロックモジュールによって与えられた時間に従って同期せしめられる。別のクロックモジュールは、例えば、処理モジュール34が存在する時間ゾーンの時間を受信する。既に説明されたように、これによって、各吸入器100A、100B、100Cが、対象者および彼らの吸入器100A、100B、100Cが存在する時間に従って同期せしめられる。
【0129】
このような実施例において、処理モジュール34は各吸入器100A、100B、100Cのクロックモジュールを同期させるように構成されている。既に説明されたように、この同期によって、例えば、各吸入器100A、100B、100Cの使用の相対的なタイミングの決定を可能にし、臨床的関連性を有する参照点が提供される。例えば、このような同期によって、対象者による定期的な維持管理薬服用の不作為と、同時期の救急の吸入器使用の増加との相関関係が導き出され得る。
【0130】
1実施例において、処理モジュール34は少なくとも部分的にユーザー装置40に含まれた第1の処理モジュールに含まれている。ユーザー装置40の第1の処理モジュールにおいて各吸入器100A、100B、100Cからの使用データをできるだけ多く処理することによって、各吸入器100A、100B、100Cの電池寿命を有利に延ばすことができる。ユーザー装置40は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータおよびスマートフォンのうちの少なくとも1つからなっている。
【0131】
選択的にまたは付加的に、ユーザーインターフェース38は少なくとも部分的にユーザー装置40の第1のユーザーインターフェースから形成されている。ユーザー装置40の第1のユーザーインターフェースは、例えば、スマートフォン40のタッチスクリーンを有し、またはそれから形成されている。
【0132】
別の非限定的な実施例において、処理モジュールはユーザー装置に含まれていない。処理モジュール(または処理モジュール34の少なくとも一部)は、例えば、サーバー、例えばリモートサーバーに備えられている。
【0133】
非限定的な実施例において、処理モジュール34は、ある与えられた日に、吸入器の使用が前の日に発生したか否かを判定するように構成されている。吸入器の使用が、使用計測システム12によって計測されたものとして、前の日に発生していたと処理モジュール34が判定した場合、処理モジュール34はユーザーインターフェース38を制御して、上記与えられた日に、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるように構成されている。このプロトコルは、通知を吸入器の使用が発生した日の後の日まで遅らせることを必然的に伴っている。
【0134】
特定の実施例において、吸入器100によって投与された薬剤が、フルチカゾン(フルチカゾンプロピオン酸エステルまたはフルチカゾンフランカルボン酸エステル)、またはフルチカゾン(フルチカゾンプロピオン酸エステルまたはフルチカゾンフランカルボン酸エステル)と組み合わされたサルメテロール(サルメテロールキシナホ酸塩)等の維持管理薬であり、処理モジュール34が前の日にこのような使用が発生していないと判定した場合、処理モジュール34は、ユーザーインターフェース38を制御して、ユーザーに対して吸入器100および処理モジュール34間の通信リンクをチェックおよび/または修正するよう要求する同期リクエストを発出させる。
【0135】
吸入器100の送信モジュール14が処理モジュール34と無線通信する実施例では、同期リクエストは、ユーザーに対して、吸入器100を処理モジュール34の無線通信レンジ内、例えば処理モジュール34のBluetoothのレンジ内に位置させるように要求することからなっている。
【0136】
こうして、前の日に維持管理薬を投与する吸入器100の使用がなかったとの処理モジュールの当初の判定は、処理モジュール34が、前の日に使用が実際になされたか否かを確認する情報を取得することにつなげられ得る。
【0137】
さらに、いくつかの実施例において、クロックモジュールが内部カウンタとして動作することが理解されるべきである。クロックモジュールは、内部カウンタとして動作しているとき、(例えば、地方平均時のような平均太陽時とは対照的に)相対カウントを提供する。例えば、吸入器100A、100B、100Cの使用計測システムが、(例えば、マウスピースカバーが初めて開放された後)初めてエネルギー節約スリープモードから起動せしめられたとき、内部カウントを始動させる。その後、使用計測システムによって生成された任意の日時スタンプは、クロックモジュールの内部カウンタに基づく相対時間(カウント)である。コントローラは、250マイクロ秒毎にシステムクロックを周期的に更新する。
【0138】
クロックモジュールが内部カウンタとして動作する場合、通知に対する意図的な遅延は、この相対カウントを用いて決定される。例えば、吸入器100A、100B、100Cの使用計測システムは、対象者による吸入器100A、100B、100Cの使用に対し時間として相対カウントを割り当て、この相対カウントを用いて通知に対する意図的な遅延を決定する。選択的にまたは付加的に、吸入器100A、100B、100Cの使用計測システムは、ユーザー装置40および/またはサーバー(例えば、ユーザー装置40および/またはサーバー上に残った処理モジュール34)に対して、対象者による吸入器100A、100B、100Cの使用に関係づけられた相対カウントと、内部カウンタのその時点のカウントを送信し、ユーザー装置40および/またはサーバーは、使用計測システムの相対カウントおよびその時点のカウントを示す日時スタンプに基づいて地方平均時を決定し、地方平均時を用いて通知に対する意図的な遅延を決定するように構成されている。
【0139】
図4は、1つの非限定的な実施例による吸入器100の外観を示す正面図および背面図である。吸入器100は、上部キャップ102、メインハウジング104、マウスピース108、マウスピースカバー108および換気口126を備えている。マウスピースカバー108はメインハウジング104に蝶番を介して取り付けられ、マウスピース106および換気口126を露出させるべく開閉されるようになっている。既に説明されたように、吸入器100はまた機械的投与カウンタ111を備え、機械的投与カウンタ111による投与計測値は、(使用計測システム12によって計測される使用の前および当該使用時に吸入器100に含まれた総投与回数に基づき)処理モジュールによって決定された残存する投与回数をチェックするために使用される。
【0140】
図4に示された非限定的な実施例において、吸入器100はその表面に印刷されたバーコード42を備えている。バーコード42は、この実施例では、上部キャップ102の頂面に印刷されたクイックリファレンスコード(QRコード(登録商標))からなっている。使用計測システム12および/または送信モジュール14は、例えば、少なくとも部分的に上部キャップ102内に配置され、例えば、(
図4には示されない)電子モジュールのコンポーネントとして配置される。吸入器100の電子モジュールは
図12~15を参照してより詳細に説明されるだろう。
【0141】
図5は、
図4の吸入器100の上部キャップ102を上方から見た図であり、
図5には、QRコードがより明瞭に示されている。QRコード42は、ユーザー装置40がカメラ等のQRコードを読み取るための適当な光学的読取り器を備えている実施例においては、各吸入器100を処理モジュール34とペアリングするための簡便な方法を提供する。
図6は、ユーザー装置40、この実施例ではスマートフォンに含まれたカメラを用いて、吸入器100を処理モジュール34とペアリングしているユーザーを示している。
【0142】
既に説明されたように、このようなバーコード42、例えばQRコードは、吸入器100の各薬剤に割り当てられた識別子を有している。表1は、種々の吸入器100に対するQRコードに含まれた識別子の非限定的な例を提供する。
【0143】
【0144】
表1に示されるように、識別子はさらに、使用前の吸入器の投薬強度および使用前の吸入器の総投与回数を表している。既に説明されたように、処理モジュール34は、前者を、使用情報との組み合わせにおいて、ユーザーインターフェース38を制御して、推奨用量を超えたときに通知を発出させるために使用される。選択的にまたは付加的に、処理モジュール34は、既に説明されたように、使用前の吸入器の総投与回数と使用情報を用いて、吸入器100に残っている投与回数を決定する。
【0145】
吸入器上のバーコード42、例えばQRコードは、例えば、さらに、例えば一連の英数字の形態の、不正なユーザーが吸入器10にアクセスすることを防止するためのセキュリティーキーを有している。処理モジュール34は、セキュリティーキーを有しておれば、暗号化されたデータを復号化できるが、セキュリティーキーを有していないと、暗号化されたデータを復号化することはできない。より一般的には、セキュリティーキーは識別子に含まれている。
【0146】
非限定的な実施例において、システムは、システムに含まれた吸入器の1つまたは2つ以上、例えばそれぞれを単一のユーザーアカウントに制限するように構成されている。
【0147】
かかる実施例において、パスキー、例えばQRコードに含まれたパスキーは、システムの各吸入器と処理モジュールを同期させ得る。パスキー、そして順に、各吸入器からの使用パラメータデータ、例えば吸入および/または使用データは公開されたものである。この公開された吸入データは、単一のユーザーアカウントと同期されるまで特定の対象者に関係づけられることはない。
【0148】
システムは各吸入器を単一のユーザーアカウントに関係づけられるように制限するべく構成されているので、各吸入器は、例えば当該吸入器が紛失しまたは盗まれた場合に、別のユーザーアカウントに同期されることが防止される。こうして、第三者が自己のものではない使用パラメータデータを取得することが防止される。
【0149】
別の非限定的な実施例において、処理モジュール34は、例えば、ユーザーインターフェース、例えばタッチスクリーンを通じた、各識別子を含む英数字キーの手作業による登録によって吸入器100とペアリングされる。
【0150】
非限定的な実施例において、処理モジュール34は、システム10に含まれたそれぞれの吸入器100A、100B、100Cから受信されたパラメータデータ、例えば暗号化されたデータに基づいて使用および/またはシステムエラーを決定する。使用エラーは、例えば、各吸入器100A、100B、100Cの潜在的な誤使用を表している。システムエラーは、各吸入器100A、100B、100Cの使用計測システムおよび/または送信モジュールのような各吸入器100A、100B、100Cのコンポーネントに関する障害を表している。システムエラーは、例えば、各吸入器100A、100B、100Cのハードウェアの障害を含んでいる。ユーザーインターフェース38が処理モジュール34によって制御され、予め決定された使用および/またはシステムエラーに基づき警告または通知を与えるようになっている。
【0151】
使用エラーは、例えば、上述の吸入情報に含まれ、または当該吸入情報を形成する。この点で、使用エラーは、タオ手羽、低吸入イベント、無吸入イベントおよび/または過吸入イベントを表す。
【0152】
使用エラーは、選択的にまたは付加的に、予め決定された時間、例えば60秒を超えてマウスピースカバーが開放されたままになっていること、および上述の機械的スイッチの1回の作動に対して複数回の吸入が記録されたこと、例えば、同一のマウスピースカバー開閉行為の間に2回の吸入が記録されたこと、および正の圧力変化が空気流路中で検出されたことから判定された、空気流路を通じた呼気のうちの1つまたは2つ以上を含んでいる。
【0153】
使用エラーが、予め決定された時間を超えてマウスピースカバーが開放されたままになっていることに関係する場合、吸入器の検出回路は、電池の寿命を延ばすため、予め決定された時間だけ動作している。これは、もしそうでなければ使用計測システムによって検出/計測可能であるが、予め決定された時間の経過後に発生するいずれの事象も、検出/計測され得ないことを意味する。したがって、このエラーをユーザーに通知することは、もしそうでなければ検出可能な事象がマウスピースカバーの開放によってトリガーされた予め決定された時間の経過後には検出され得ないことをユーザーに知らせるという目的にとって役に立つ。
【0154】
上述の呼気に基づく使用エラーは、かかる呼気が、例えば同一のマウスピースカバー開閉行為の間の、機械的スイッチの作動に関して実行された吸入に続いて検出された場合には、記録されないことに留意されたい。
【0155】
システムエラーは、使用計測システムに含まれたメモリ等の、吸入器に含まれたメモリに吸入データを書き込むときに発生する問題(「算出データエラー」)、吸入器のクロックモジュールに関するエラー(「タイムスタンプエラー」)、および吸入に関する情報収集に関するエラー(「吸入パラメータエラー」)のうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0156】
特定の実施例において、システムに含まれた吸入器の1つまたは2つ以上、例えば全てから発生した使用および/またはシステムエラーは、処理モジュールによって収集される。処理モジュールは、さらに、ユーザーインターフェースを制御して、収集された使用および/またはシステムエラーに基づいた警告または通知を発出させるように構成されている。例えば、処理モジュールはユーザーインターフェースを制御して、システムに含まれた吸入器から収集された使用および/またはシステムエラーの数が当該使用および/またはシステムエラーの予め決定された数に達しまたはそれを超えたことに基づいて、警告または通知を発出させる。
【0157】
図7は、1実施例による方法50のフロー図である。方法50は、対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを受信するステップ52と、前記使用に割り当てられた時間を受信するステップ54と、前記パラメータから吸入情報を決定するステップ56と、ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるステップ58とを含んでいる。前記制御するステップは、前記通知時刻を前記使用に割り当てられた時間よりも遅らせる意図的な遅延を生じさせることを含んでいる。
【0158】
この方法50は、例えば、上述のシステム10に含まれた処理モジュール34によって実行される。いくつかの非限定的な実施例において、方法50は、スマートフォンまたはタブレットコンピュータ等のユーザー装置上に残った処理モジュール34によって実行される。
【0159】
図7において、パラメータから吸入情報を決定するステップ56がユーザーインターフェースを制御して、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるステップ58より前に実行されるが、本発明の構成はこれに限定されない。選択的に、例えば通知それ自体が吸入情報を含んでいない実施例では、ステップ56はステップ58の後で実行される。
【0160】
さらに、いくつかの実施例において、方法50は対象者による吸入器の使用に関するパラメータを受信するステップ52を含んでいる。対象者による吸入器の使用に関するパラメータは、(例えば吸入器100のマウスピースカバーが閉位置から開位置まで動かされることで引き起こされる)スイッチの作動、対象者による吸入器の使用の間の気流が使用を示すしきい値を超えていることを示すセンサー(例えば圧力センサーまたは音響センサー)からのフィードバック、および/または吸入器がユーザーによって操作されている(例えば吸入器が5秒等の予め決定された時間振られ、または吸入器が10秒等の予め決定された時間動作に適した特定の向きに保持されている)ことを示すセンサー(例えば加速度計)からのフィードバックの任意の組み合わせを含んでいる。方法は、さらに、前記使用に割り当てられた時間を決定するステップ54と、前記パラメータからのフィードバックを決定するステップ56と、ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させるステップ58とを含んでおり、前記制御するステップは、前記通知時刻を前記使用に割り当てられた時間よりも遅らせる意図的な遅延を生じさせるステップを有している。例えば、通知は、吸入器が予め決定された時間よりも短時間しか振られなかった「短時間シェイクイベント」、吸入器が予め決定された時間正しい向きに保持されなかった「不適切な向きイベント」、またはユーザーが、例えば吸入に先立って1回分の薬剤が計り取られるときに、吸入器を不適切に作動させた「不適切作動イベント」を含んでいる。
【0161】
さらに、いくつかの実施例において、意図的な遅延はイベントの態様に基づいて、例えばイベントが良好吸入イベント、低吸入イベント、無吸入イベント、過吸入イベント、短時間吸入イベント、良好持続イベント、短時間シェイクイベント、不適切な向きイベント、不適切作動イベント等々のいずれに分類されるかに基づいて、その都度異なる。非限定的な1実施例として、意図的な遅延は、吸入イベントが、低吸入イベントまたは良好吸入イベントとは対照的に、無吸入イベントまたは過吸入イベントに分類されるときはより短くなる。非限定的な別の実施例として、意図的な遅延は、吸入イベントが、低吸入イベントまたは短時間シェイクイベントとは対照的に、不適切作動イベントに分類されるときはより短くなる。
【0162】
図8に示されるように、本発明によれば、さらに、処理モジュール、ユーザーインターフェース、および薬剤を投与するように構成された既存の吸入器を備えたシステムに、薬剤を投与するように構成された別の吸入器を追加するステップ72を含む方法70が提供される。この別の吸入器は(別の)使用計測システムおよび(別の)送信モジュールを備え、既存の吸入器は既存の使用計測システムおよび既存の送信モジュールを備えている。かかる使用計測システムおよび送信モジュールは既に上で説明されており、よって、説明を簡単にするため、それらの詳細な説明はここでは省略される。
【0163】
既に説明されたように、方法70は、例えば、別の吸入器またはそのパッケージに印刷されたQRコードのようなバーコードを通じて別の吸入器に備えられた識別子を受信するステップ74を含んでいる。識別子は少なくとも薬剤および薬剤の投薬強度を表している。方法70は、さらに、識別子によって表された別の吸入器の薬剤の投薬強度が既存の吸入器の薬剤の投薬強度とは異なる場合に、ユーザーインターフェースを制御して、少なくとも1つの薬剤通知を出させる処理モジュールを使用するステップ76を含んでいる。
【0164】
少なくとも1つの薬剤通知は、例えば、対象者に別の吸入器の投薬強度が既存の吸入器の投薬強度と異なることを知らせる通知、および/または対象者が既存の吸入器を廃棄することを要求する通知からなっている。
【0165】
本発明によれば、さらに、システムが処理モジュール、ユーザーインターフェースおよび、維持管理薬を投与する既存の吸入器を備えている場合に、システムに追加された別の吸入器の薬剤が別の維持管理薬であるかどうかを判定するステップを含む方法が提供される。
【0166】
別の吸入器は(別の)使用計測システムおよび(別の)送信モジュールを有し、既存の吸入器は既存の使用計測システムおよび既存の送信モジュールを有している。かかる使用計測システムおよび送信モジュールは既に上で説明されており、よって、説明を簡単にするため、それらの詳細な説明はここでは省略される。
【0167】
薬剤が別の維持管理薬かどうかの判定は、例えば、別の薬剤が維持管理薬であるか、または救急薬のような別のタイプの薬剤であるのかを識別する識別子に基づいている。識別子はシステムの処理モジュールによって受信され、処理モジュールは判定を行う。既に説明されたように、このような識別子は、例えば、別の吸入器のQRコードに含まれている。
【0168】
薬剤が別の維持管理薬として識別された場合、方法は、さらに、ユーザーインターフェースを制御して、対象者が既存の吸入器および別の吸入器のうちの一方を選択することを促進させる。その後、リマインダーが、ユーザーの選択に従って、対象者に維持管理薬または別の維持管理薬の服用に関する治療計画に従って既存の吸入器または別の吸入器を使用することを思い出させるためのかかるリマインダーを出させることによって発出される。
【0169】
このようにして、方法(または方法を実行するように構成されたシステム)は、このようなリマインダーを1つの維持管理薬用吸入器に制限する。言い換えれば、例えば、対象者が複数の維持管理薬用吸入器を処方されている場合、ユーザーの選択は、システムに、選択された維持管理薬用吸入器に関するリマインダーは出させるが、選択されていない維持管理薬用吸入器に関するリマインダーは出させない。対象者またはユーザーは、対象者の特定のまたは現行の治療計画に基づいて特定の維持管理薬用吸入器を選択する。
【0170】
選択的にまたは付加的に、方法は、薬剤が別の維持管理薬との判定に基づいて、例えばユーザーインターフェースを通じて、および/または医療機関に維持管理薬通知を送信することによって、システムが維持管理薬および別の維持管理薬を有しているとの警告を発するステップを含んでいる。
【0171】
このような警告は、例えば、ユーザーまたは対象者に、医療機関(および/または医師)に対して複数種類の維持管理薬が自己に処方されていることを確認するように伝えるメッセージを含んでいる。
【0172】
このような実施例は、例えば、対象者が同時に2種類の維持管理薬を処方されている場合、例えば対象者が1つの維持管理薬から別の維持管理薬に移行しつつある場合等に適用し得る。別の吸入器がシステムに追加され、例えば別の吸入器のQRコードがスキャンされたとき、処理モジュールは、例えばユーザーインターフェースを制御することおよび/または対象者の医療機関に警告を送ることによって、警告を出すように構成されている。
【0173】
さらに、コンピュータ上で起動されたとき、上述の方法のいずれかを実行するように適合せしめられたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムが提供される。好ましい実施例において、コンピュータプログラムは、アプリ、例えば、モバイル装置、例えばタブレットコンピュータまたはスマートフォンのようなユーザー装置40に対するアプリの形態を有している。
【0174】
図9は、非限定的な実施例によるユーザーインターフェース38の第1の図である。この実施例では、ユーザーインターフェース38は、スマートフォンの画面を有し、この場合、スマートフォンはユーザー装置40を形成している。番号81は、スマートフォン40によって受信された携帯電話信号の信号強度を表している。番号82は、スマートフォンがWiFiに接続されていることを表している。時刻83は、スマートフォン40の処理モジュール34に含まれた(別の)クロックモジュールによって与えられる。既に説明されたように、この時刻83は、システム10に含まれた吸入器100A、100B、100Cのそれぞれのクロックモジュールを同期させるために使用される。
【0175】
ユーザー装置40の電池寿命84がまたユーザーインターフェース38によってディスプレイ表示される。番号85は、Bluetoothが使用可能であることを示している。携帯電話信号81、WiFi82およびBluetooth85のうちの少なくとも1つが各吸入器100A、100Bと通信するために使用される。既に説明されたように、Bluetoothの使用が好ましい。
【0176】
図9に与えられた画面コピー80Aは、アプリが起動されている間に表示されるスプラッシュスクリーンとみなされる。ボックス86は各吸入器100A、100Bおよび/またはアプリプロバイダーに関するロゴの位置を表している。
【0177】
図10はユーザーインターフェース38の第2の図を提供する。この画面コピー80Bにおいて、ロゴ86はアプリによってサポートされた吸入器100A、100B、100Cの詳細を伴っている。ボックス87は、アプリが吸入器100A、100B、100Cをサポートしていることを伝えるテキストおよび/またはイメージを含んでいる。2つ以上の吸入器100を備えることは本発明において必須要件ではないが、ボックス88は第1の吸入器100Aを表し、ボックス89は第2の吸入器100Bを表し、ボックス90は第3の吸入器を表す。
【0178】
ボックス91は、対象者がアプリの関連したセクションにおいて安全情報および完全な処方箋情報を検討するためのメッセージを提供する。
【0179】
図11はユーザーインターフェース38の第3の図を提供する。このコピー画面80Cはタッチポイントおよび各吸入器100A,100B、100Cの使用に関する情報を提供する。ボックス91は対象者が各吸入器100A、100B、100Cの接続状況、例えばBluetooth接続状況を見ることを可能にするタッチポイントである。
【0180】
ボックス93は警告、リマインダーおよび/または通知を提供する。例えば、ボックス93は対象者が維持管理薬を服用するためのテキストまたは描画されたリマインダーを含んでいる。このような通知の1つは、例えば、上述の吸入除法が利用可能であるとの通知である。
【0181】
ボックス94Aは、例えば時間83に関係した時刻を用いた対象者に対する挨拶を提供する。ボックス94Bは日時を提供する。
【0182】
ボックス95は、天候、気温および/または湿度情報のような対象者の位置における環境情報を提供する。このような情報は対象者が自己の呼吸器疾患を管理することに関係している。処理モジュール34はこのような環境情報を、例えば適当な第三者のインターネットソースから検索し、ユーザーインターフェース34を制御して検索した環境情報をディスプレイ表示させるように構成されている。
【0183】
ボックス96Aは、第1の吸入器100Aの使用に関する第1の使用情報を提供する。例えば、対象者は、これまでの日中、過去7日間、過去30日間等々の第1の吸入器100Aの記録された使用について知らされる。ボックス96Aはまた、対象者に対し将来の特定の時点でダ1の薬剤を服用するようにリマインダーを出す。
【0184】
同様に、ボックス96Bは、第2の吸入器100Bの使用に関する第2の使用情報を提供する。対象者は、例えば、これまでの日中、過去7日間、過去30日間等々の第2n吸入器100Bの記録された使用について知らされる。
【0185】
図11のアイコン97によって、対象者は、自己評価、例えば対象者が、特に自己の呼吸器疾患の症状に関してどのように感じているかに関する毎日の自己評価を入力することができる。この非限定的な実施例において、対象者は、当日どのように感じたかに応じて3つの絵文字型アイコンのうちの1つを選択する。ボックス98は、対象者が自己の毎日の自己評価をセーブするために対象者によって押されるタッチポイントである。
【0186】
図11に示された
図80Cはホーム画面99Aであるが、タブ99B、99Cおよび99Dによって別の画面にアクセスすることもできる。タブ99Bは、対象者が各吸入器100A,100B,100Cからの別の使用情報、例えば上述の吸入情報を提供するデータ画面にアクセスすることを可能にする。タブ99Cは、対象者が処理モジュール34に接続された吸入器100A、100B、100Cを集約する画面にアクセスすることを可能にする。タブ80Cは、対象者が、氏名、誕生日等々の自己に関する個人データを含むプロファイルを見ることを可能にする。
【0187】
図12~
図15はシステム10に含まれた吸入器の非限定的な例を示している。
【0188】
図12は、非限定的な例に係る第1の吸入器装置100、ここからは「吸入器」と呼ばれるの斜視図である。吸入器100は、例えば自己吸入式吸入器である。吸入器100は、上部キャップ102、メインハウジング104および/またはマウスピース106および/またはマウスピースカバー108および/または電子モジュール120および/または換気口126を有している。マウスピースカバー108は蝶番によってメインハウジング104に結合され、マウスピースカバーの開閉によってマウスピース106が露出しまたは収納されるようになっている。この例では蝶番による結合が用いられるが、マウスピースカバー108は別の形式の結合によっても吸入器100に結合され得る。さらに、この例では、電子モジュール120がメインハウジング104の上部において上部キャップ102内に収容されているが、電子モジュール120は、吸入器100のメインハウジング104と一体化されおよび/またはメインハウジング104の内部に収容されてもよい。
【0189】
電子モジュール120は、例えば、上述の使用計測システム12および送信モジュール14を有している。例えば、電子モジュール120は、使用計測システム12の機能を実行するように構成されたプロセッサーおよびメモリ、および/または送信モジュール14を有している。電子モジュール120は、スイッチ、センサー、スライダーおよび/または別の機器またはここで説明されるような吸入器使用情報を決定するように構成された測定装置を有している。電子モジュール120は、送受信機および/または別の通信チップまたは送信モジュール14の送信機能を実行するように構成された回路を有している。
【0190】
図13は、吸入器100の縦断面図である。メインハウジング104の内側に、吸入器100は、薬剤タンク110および用量計量アッセンブリーを有している。例えば、吸入器100は、薬剤タンク110(例えば、ホッパー)、ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク(図示されない)、投薬カップ116、投薬チャンバ117、解砕器121および流路119を有している。薬剤タンク110は、対象者に投与するための、ドライパウダー薬剤等の薬剤を有している。用量計量アッセンブリーは、ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク、投薬カップ116、投薬チャンバ117および解砕器121の組み合わせとして図示されているが、記載されたコンポーネントの部分的な組み合わせを有していてもよく、および/または吸入器100は(例えば吸入器の型式、薬剤の型式等に基づく)異なる用量計量アッセンブリーを有していてもよい。例えば、いくつかの実施例では、薬剤がブリスターストリップに含まれ、1つまたは2つ以上のホイール、レバーおよび/またはアクチュエーターを有する用量計量アッセンブリーはブリスターストリップを前進させ、1回分の薬剤を含む新たなブリスターを開き、当該1回分の薬剤が投薬チャンバおよび/またはユーザーによる吸入のためのマウスピースに利用可能となるようにするように構成されている。
【0191】
マウスピースカバー108が閉位置から開位置まで動かされたとき、吸入器100の用量計量アッセンブリーは1回分の薬剤を準備する。
図13に示された実施例では、閉位置から開位置まで動かされたマウスピースカバー108は、ベローズ112を押し込み、薬剤タンクから1回分の薬剤を投薬カップ116に供給する。その後、対象者は、マウスピース106を通じて吸入を行い、1回分の薬剤を吸引する。
【0192】
対象者の吸入によって生じた気流によって、解砕器121は、投薬カップ116内の薬剤の凝集体を粉砕することによって1回分の薬剤をエアロゾル化する。解砕器121は、流路119を通る気流が特定の速度に達しまたはこれを超えたとき、または特定の範囲内の速度を有するとき、薬剤をエアロゾル化するように構成されている。エアロゾル化されたとき、1回分の薬剤は投薬カップ116から流路119を通って投薬チャンバ117内に流入し、その後、マウスピース106から対象者に供給される。流路119を通る気流が特定の速度に達しないかまたはそれを超えず、あるいは速度が特定の範囲内にないとき、薬剤は投薬カップ116内に残ったままとなる。投薬カップ116内の薬剤が解砕器121によってエアロゾル化されなかった場合、マウスピースカバー108がその後に開放されたときに薬剤の次の1回分は薬剤タンク110から供給されない。すなわち、1回分の薬剤が解砕器121によってエアロゾル化されるまで当該1回分の薬剤は投薬カップ内に残ったままとなる。1回分の薬剤が投与されたとき、投薬が行われたことの確認が吸入器100において、投薬確認情報としてメモリに記憶される。
【0193】
対象者がマウスピース106を通じて吸入しているとき、空気が換気口から進入し、薬剤を対象者に供給するための気流が発生する。流路119は投薬チャンバ117からマウスピース106の端までのび、投薬チャンバ117およびマウスピース106の内側部分を含んでいる。投薬カップ116は、投薬チャンバ117の内部にありまたはこれに隣接している。さらに、吸入器100は、最初、薬剤タンク110内の薬剤の総投薬回数がセットされ、マウスピースカバー108が閉位置から開位置まで動かされるたびに当該総投薬回数から1回ずつ減じられるように構成された投薬回数カウンタ111を有している。
【0194】
上部キャップ102はメインハウジング104に取り付けられている。上部キャップ102は、例えば、メインハウジング104の凹部に係合し得る1または2以上のクリップを用いてメインハウジング104に取り付けられている。上部キャップ102は、結合されたとき、メインハウジング104の一部と重なり合い、例えば、上部キャップ102とメインハウジング104の間に実質的な気密シールが生じるようになっている。
【0195】
図14は、吸入器100の分解斜視図であり、上部キャップ102が取り外されて電子モジュール120が露出した状態を示した図である。
図14に示されるように、メインハウジング104の上面は1または2以上(例えば2つ)のオリフィス146を有している。1つのオリフィス146はスライダー140を受け入れ可能に構成されている。例えば、上部キャップ102がメインハウジング104に取り付けられたとき、スライダー140が1つのオリフィス146を通ってメインハウジング104の上面から突出する。
【0196】
図15は、吸入器100の上部キャップ102および電子モジュールの分解斜視図である。
図15に示されるように、スライダー140は、腕142、ストッパー144および遠位端145を形成している。遠位端145はスライダー140の底部を形成している。スライダー140の遠位端145は、(例えば、マウスピースカバー108が閉位置または部分的に開位置にあるとき)メインハウジング104の内部にあるヨークに当接するように構成されている。遠位端145は、ヨークが半径方向のいずれかにあるとき、ヨークの上面に当接するように構成されている。例えば、ヨークの上面は複数のアパーチャ(図示されない)を有し、スライダー140の遠位端145は、例えば、1つのアパーチャがスライダー140と1列に並ぶか否かにかかわらず、ヨークの上面に当接するように構成されている。
【0197】
上部キャップ102は、スライダースプリング146およびスライダー140を受けるように構成されたスライダーガイド148を有している。スライダースプリング146はスライダーガイド内部に位置している。スライダースプリング146は、上部キャップ102の内面に係合し、スライダー140の上部(例えば、近位端)に係合する。スライダー140がスライダーガイド148の内部に配置されるとき、スライダースプリング146はスライダー140の上部と上部キャップ102の内面との間において部分的に圧縮される。例えば、スライダースプリング146は、マウスピースカバー108が閉じられているとき、スライダー140の遠位端145がヨークに接触しているように構成されている。スライダー145の遠位端145は、また、マウスピースカバー108が開かれまたは閉じられている間、ヨークに接触しているように構成される。スライダー140のストッパー144は、スライダーガイド148に対し、例えば、スライダー140がマウスピースカバー108の開閉またはその逆を通してスライダーガイド148内に保持されるように係合している。ストッパー144およびスライダーガイド148は、スライダー140の上下方向(例えば軸方向)の運動を制限するように構成されている。この制限された運動距離は、ヨークの上下方向の運動の制限距離よりも短い。すなわち、マウスピースカバー108が完全に開いた位置まで動かされるとき、ヨークは上下方向にマウスピース106に向けて動き続けるが、ストッパー144がスライダー140の上下方向の運動を制止し、それによって、スライダー140の遠位端145はもはやヨークに接触しなくなる。
【0198】
より一般的には、ヨークはマウスピースカバー108に機械的に結合されていて、マウスピースカバー108が閉位置から開かれるときにベローズスプリングを圧縮し、その後、マウスピースカバー108が開位置に達したときに当該圧縮されたベローズスプリング114を開放し、それによって、ベローズ112に1回分の薬剤を薬剤タンク110から投薬カップ116に供給させるように構成されている。ヨークは、マウスピースカバー108が閉位置にあるとき、スライダー140に接触している。スライダー140は、マウスピースカバー108が閉位置から開かれるとき、ヨークによって動かされ、マウスピースカバー108が完全に開いた位置をとるとき、ヨークから離されるように設けられている。この構成は、上で既に説明された計量アッセンブリーの非限定的な例とみなされる。なぜなら、マウスピースカバー108が開かれることによって、薬剤の1回分の計量がなされるからである。
【0199】
薬剤の計量の間のスライダー140の運動によって、スライダー140はスイッチ130に係合してスイッチ130を作動させる。スイッチ130は、電子モジュール120を起動し、薬剤の計量を記録させる。スライダー140およびスイッチ130は、電子モジュール120とともに、上で説明された使用計測システム12に含まれるものとみなされる。この例において、スライダー140は、それによって使用計測システム12が計量アッセンブリーによる1回分の薬剤の計量を記録するように構成される手段とみなされ、それによる各計量は対象者が吸入器100を用いて行った吸入を表す。
【0200】
スライダー140によるスイッチ130の作動によって、例えば、電子モジュール120が第1の電力状態から第2の電力状態に遷移し、対象者によるマウスピース108からの吸入を検出する。
【0201】
電子モジュール120は、プリント回路基板(PCB)アッセンブリー122および/またはスイッチ130および/または電源(例えば、電池126)および/または電池ホルダー124を有している。PCBアッセンブリー122は、センサーシステム128および/または無線通信回路129および/またはスイッチ130および/または、1または2以上の発光ダイオード(LED)のような(図示されない)インディケータ等の表面実装部品を有している。電子モジュール120は、コントローラ(例えば、プロセッサー)および/またはメモリを有している。コントローラおよび/またはメモリは、PCB122の部品とは物理的に異なる。あるいは、コントローラおよびメモリは、PCB122に実装された別のチップセットの一部からなり、例えば、無線通信回路129は電子モジュール120に対するコントローラおよび/またはメモリを含んでいる。電子モジュール120のコントローラは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサー、アプリケーションスペシフィックインテグレイティッドサーキット(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の適当な処理装置またはコントロール回路を含んでいる。
【0202】
コントローラは、メモリからデータを読み出し、メモリにデータを記録する。メモリは、取り外し不可能なメモリおよび/または取り外し可能なメモリのような、任意の形式の適当なメモリを含んでいる。取り外し不可能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク、またはその他の任意の形式の記憶装置を含んでいる。取り外し可能なメモリは、加入者IDモジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアディジタル(CD)メモリカードおよびそれらに類するものを含んでいる。メモリは、コントローラの内部に配置される。コントローラは、また、サーバーまたはスマートフォン上等の、電子モジュール120の内部には物理的に配置されないメモリからデータを読み出し、それにデータを記録する。
【0203】
センサーシステム128は、1つまたは2つ以上のセンサーを有している。センサーシステム128は、例えば、上述の使用計測システム12に含まれている。センサーシステム128は、例えば、1または2以上の圧力センサーおよび/または温度センサーおよび/または湿度センサーおよび/または方向センサーおよび/または音響センサーおよび/または光学センサー等の1または2以上の異なる形式のセンサーを有している。1または2以上の圧力センサーは、気圧センサー(例えば、大気圧センサー)および/または差圧センサーおよび/または絶対圧センサーおよび/またはそれらに類するものを含んでいる。センサーは、微小電気機械システム(MEMS)および/またはナノ電気機械システム(NEMS)の技術を使用する。センサーシステム128は、電子モジュール120のコントローラに対し、瞬間的な測定値(例えば、圧力測定値)および/または一定時間にわたって集計された測定値(例えば、圧力測定値)を与えるように構成されている。
図13および
図14に示されるように、センサーシステム128は、吸入器100の流路119の外部に配置されるが、流路と空気圧的に結合されている。
【0204】
電子モジュール120のコントローラは、センサーシステム128から測定値に対応する信号を受信する。コントローラは、センサーシステム128から受信した信号を用いて気流に関するメトリックスを計算し、または決定する。気流に関するメトリックスは、吸入器100の流路119を通る気流のプロファイルを表す。例えば、センサーシステム128が0.3キロパスカル(kPa)の気圧変化を記録したとき、電子モジュール120は、その気圧変化が流路119を通じた約45リットル/分(Lpm)の空気流量に対応していると計算する。
【0205】
図16は、空気流量対圧力のグラフである。
図16に示された空気流量およびプロファイルは単なる例示であり、計算された速度は、吸入器100およびその部品のサイズ、形状およびデザインに依存する。
【0206】
処理モジュール34は、センサーシステム128から受信した信号および/または計算された気流に関するメトリックスを1または2以上の閾値または数値範囲と比較することによって、リアルタイムでのパーソナライズされたデータを、吸入器100がどのように使用されたのか、および/またはその使用が結果として薬剤の完全な投与を生じる可能性があるかどうかに関する評価の一部として生成する。例えば、計算された気流に関するメトリックスが特定の閾値より低い空気流量を伴った吸入に対応するとき、処理モジュール34は、吸入器100のマウスピース106からの吸入が全くないか、または当該マウスピース106からの吸入が不十分であると判定する。また、計算された気流に関するメトリックスが特定の閾値を超える空気流量を伴った吸入に対応するとき、処理モジュール34は、吸入器100のマウスピース106からの吸入が過剰であると判定する。また、計算された気流に関するメトリックスが特定の範囲内にある空気流量を伴った吸入に対応するとき、処理モジュール34は、吸入が良好であると、あるいは、結果的に完全な投薬が生じた可能性があると判定する。
【0207】
圧力測定値および/または計算された気流に関するメトリックスは、吸入器100からの吸入の質または強さを表す。例えば、特定の閾値または数値範囲と比較されたとき、測定値および/またはメトリックスは、関係する吸入を、良好吸入イベント、低吸入イベント、無吸入イベントまたは過剰吸入イベント等の一定のイベントタイプに分類するために使用される。吸入の分類は、対象者のパーソナライズされたデータとして記録された有益なパラメータである。
【0208】
無吸入イベントまたは低吸入イベントは、毎分30リットル以下の空気流量等の、特定の閾値より低い圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。無吸入イベントは、対象者が、マウスピースカバー108を開いた後であって測定サイクルの間に、マウスピース106から吸入を行わなかったときに生じる。また、無吸入イベントまたは低吸入イベントは、対象者による吸入が、解砕器121を作動させる、すなわち投薬カップ116内で薬剤をエアロゾル化するのには不十分な気流しか発生させられなかったとき等の、対象者の吸入が流路119を通じた薬剤の適切な投与を保証するのには不十分であるときに生じる。
【0209】
適正吸入イベントは、毎分30リットルより大きく、毎分45リットル以下等の特定の数値範囲内にある圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。適正吸入イベントは、対象者がマウスピースカバー108を開いた後にマウスピース106から吸入を行い、対象者の吸入によっても、1回分の薬剤のうちの少なくとも1部のみが流路119を通じて投与されただけであるときに生じる。すなわち、吸入は、解砕器121を作動させて少なくとも1部の薬剤を投薬カップ116からエアロゾル化するのには不十分である。
【0210】
良好吸入イベントは、毎分45リットルより大きく、毎分200リットル以下等の低吸入イベントより上の圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。良好吸入イベントは、対象者がマウスピースカバー108を開いた後にマウスピース106から吸入を行い、対象者の努力によって、解砕器121を作動させて投与カップ116内において1回分の薬剤の全てをエアロゾル化するのに十分な気流を発生させたとき等の、対象者の努力によって、流路119を通じた薬剤の適切な投与が保証されるのに十分な吸入がなされたときに生じる。
【0211】
過剰吸入イベントは、200Lpmを超える空気流量等の、良好吸入イベントより上の圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。過剰吸入イベントは、対象者が吸入器100の正常な作動パラメータを超えた吸入を行ったときに生じる。過剰吸入イベントは、また、たとえ対象者が正常な範囲内の吸入を行ったとしても、吸入器100が使用中に適切な位置に配置または保持されていないときにも生じる。例えば、計算された空気流量は、対象者がマウスピース106から吸入を行っている間に、(例えば、1本の指または親指によって)換気口が塞がれまたは遮られたときに毎分200リットルを超える。
【0212】
任意の適当な閾値または数値範囲が特定のイベントを分類するために使用される。いくつかのイベントまたはすべてのイベントが使用される。例えば、無吸入イベントは毎分45リットル以下の空気流量に関係づけられ、良好吸入イベントは毎分45リットルより大きく、毎分200リットル以下の空気流量に関係づけられる。よって、低吸入イベントまたは適正吸入イベントは、場合によっては、全く使用されない。
【0213】
圧力測定値および/または計算された気流に関するメトリックスは、また、吸入器100の流路119を通じた気流の向きも表す。例えば、圧力測定値が負の圧力変化を反映するとき、圧力測定値は流路119を通じてマウスピース106から出ていく気流を表す。圧力測定値が正の圧力変化を反映するとき、圧力測定値は流路119を通じてマウスピース106内に入ってくる気流を表す。したがって、圧力測定値および/または気流に関するメトリックスは、対象者がマウスピース106内に空気を吐き出しているかどうかを判定するために使用され、それによって、対象者が吸入器100を正しく使用していないことを知らせる。
【0214】
吸入器100は、肺機能に関するメトリックスの測定を可能にするための肺活量計またはそれに類似の動作をする装置を有している。例えば、吸入器100は、対象者の肺活量に関係するメトリックスを得るための測定を行う。肺活量計またはそれに類似の動作をする装置は対象者によって吸引されおよび/または吐き出された空気の体積を測定する。歯活量計またはそれに類似の動作をする装置は、圧力トランスデューサー、超音波または水位計を使用して吸引されたおよび/または吐き出された空気の体積の変化を検出する。
【0215】
吸入器100の使用から収集された、または吸入器100の使用に基づいて計算されたパーソナライズされたデータ(例えば、圧力に関するメトリックス、気流に関するメトリックス、肺機能に関するメトリックス、投薬確認情報等々)は、さらに、(部分的にまたは全体的に)外部装置によって計算されおよび/または評価される。
より一般的には、電子モジュール120の無線通信回路129は、送信器および/または受信器(例えば、トランシーバー)だけでなく付加的な電気回路もまた有している。無線通信回路129は、吸入器100の送信モジュール14を含んでおり、または形成している。
【0216】
例えば、無線通信回路129は、Bluetoothチップセット(例えば、Bluetooth低電力チップセット)、ジグビーチップセット、スレッドチップセット等々を有している。よって、電子モジュール120は、圧力測定値および/または気流に関するメトリックスおよび/または肺機能に関するメトリックスおよび/または投薬確認情報および/または吸入器100の使用に関するその他の状況等のパーソナライズされたデータを、スマートフォン40に含まれた処理モジュール34のような、外部処理モジュール34に対し無線で提供する。パーソナライズされたデータは外部装置に対しリアルタイムで提供され、それによって、吸入器100からの、使用回数および吸入器100がどのように使用されたのかを示すリアルタイムデータ、および対象者の肺機能および/または治療に関するリアルタイムデータ等の、対象者に関するパーソナライズされたデータに基づいて、増悪リスクの予測をすることが可能となる。外部装置は、受信した情報を処理し、吸入器100の対象者に対してグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)を介して順守フィードバックを提供するためのソフトウェアを有している。グラフィカル・ユーザーインターフェースはシステム10に含まれたユーザーインターフェースに含まれており、または形成している。
【0217】
気流に関するメトリックスは、吸入/吐出の平均流量および/または吸入/吐出の最大流量(例えば、受信された最大吸入流量)および/または吸入/吐出量および/または時間対吸入/吐出最大および/または吸入/吐出の継続時間のうちの1または2以上等の、吸入器100からリアルタイムで収集されたパーソナライズされたデータを含んでいる。気流に関するメトリックスは、また、流路119を通る気流の向きを表す。すなわち、負の圧力変化はマウスピース106からの吸入に対応する一方、正の圧力変化はマウスピース106への吐き出しに対応する。気流に関するメトリックスの計算に際し、電子モジュール120は、環境条件によって引き起こされる歪みを除去しまたは最小限にするように構成される。例えば、電子モジュール120は、気流に関するメトリックスを計算する前または計算した後、大気圧の変化を考慮に入れるための計算を行う。1または2以上の圧力測定値および/または気流に関するメトリックスは、タイムスタンプを押された後、電子モジュール120のメモリに記録される
【0218】
気流に関するメトリックスに加えて、吸入器100または別の計算装置は、気流に関するメトリックスを用いて付加的なパーソナライズされたデータを生成する。例えば、吸入器100の電子モジュール120および/または処理モジュール34のコントローラは、気流に関するメトリックスを、例えば、最大吸気流量および/または最大呼気流量および/または1秒間努力呼気肺活量(FEV1)等の医療パラメータであると解される対象者の肺機能および/または肺の健康を表す他のメトリックスに翻訳する。吸入器100の処理モジュール34および/または電子モジュール120は、回帰モデル等の数学的モデルを用いて対象者の肺機能および/または肺の健康の尺度を計算する。数学的モデルは、全吸入量およびFEV1間の相関関係を特定する。数学的モデルは、最大吸入流量およびFEV1間の相関関係を特定する。数学的モデルは、全吸入量および最大呼気流量間の相関関係を特定する。数学的モデルは、最大吸入流量および最大呼気流量間の相関関係を特定する。
【0219】
電池126はPCB122の部品に電力を供給する。電池126は、例えば、コイン電池等の、電子モジュール120に電力を供給するための任意の適当な電源からなっている。電池126は再充電可能または再充電不可能である。電池126は電池ホルダー124内に収納されている。電池ホルダー124はPCB122に取り付けられ、電池126が持続的にPCB122に接触するようにおよび/またはPCB122の部品に電気的に接触するようになっている。電池126は、電池126の寿命に影響を及ぼす特定の電池容量を有している。以下にさらに説明するように、電池126からPCB122の1または2以上の部品への電力の分配は、電池126が吸入器100の耐用年数および/またはその内部に含まれた薬剤の有効期間にわたって電子モジュール120に電力供給を行うことが保証されるように管理される。
【0220】
接続された状態で、通信回路およびメモリが電源オンされ、電子モジュール120は、スマートフォン等の外部装置とペアリングされる。コントローラはメモリからデータを検索し、そのデータを外部装置に対し無線で送信する。コントローラはメモリに最新に記憶されたデータを検索し、送信する。コントローラは、また、メモリに最新に記憶されたデータの一部を検索し、送信する。例えば、コントローラはデータのどの部分が既に外部装置に送信されているかを判定し、次いで、まだ送信されていないデータの部分を送信することができる。あるいは、外部装置は、コントローラから、特定の時間の後あるいは外部装置への最新の送信の後に電子モジュール120によって収集されたデータ等の、特定のデータを要求する。コントローラは、もしあれば、メモリからその特定のデータを検索し、検索したデータを外部装置に送信する。
【0221】
電子モジュール120のメモリに記憶されたデータ(例えば、スイッチによって生成された信号および/またはセンサーシステム128によって取得された圧力測定値および/またはPCB122のコントローラによって計算された気流に関するメトリックス)が外部装置に送信される。外部装置は、そのデータを処理、分析し、吸入器100に関係づけられた有益なパラメータを計算する。さらに、モバイルデバイス上にあるモバイルアプリケーションは、電子モジュール120から受信したデータに基づき、ユーザーに対するフィードバックを生成する。例えば、モバイルアプリケーションは、日報、月報、年報を生成しおよび/または対象者に対してエラーイベントの確認または通知を行いおよび/または対象者に対して有益なフィードバックを提供しおよび/またはそれらと同様のことを行う。
【0222】
上で説明された実施例は、本発明の構成を説明するための1例にすぎず、よって本発明の構成を限定するものではない。上で説明された実施例の別の変形例が、当業者によって、本発明の実施において図面、明細書および添付の請求の範囲を研究することからから、理解され、もたらされ得る。特定の手段が互いに異なる引用形式請求項に規定されているという事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示しているわけではない。
【0223】
以下は、ここで説明された種々の実施例の非限定的な変形例である。
【0224】
実施例1.対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを計測し、前記使用に時間を割り当てるように構成された使用計測システムを有する吸入器と、
ユーザーインターフェースと、
前記パラメータから吸入情報を決定し、前記ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、前記吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させ、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間より遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせるように構成された処理モジュールと、を備えたシステム。
【0225】
実施例2.前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後少なくとも5分となるように設定される実施例1のシステム。
【0226】
実施例3.前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後48時間より短くなるように設定される実施例1または実施例2のシステム。
【0227】
実施例4.前記使用計測システムが前記使用に日時スタンプを割り当てるように構成されている実施例1~実施例3のいずれかのシステム。
【0228】
実施例5.前記通知時刻が前記日時スタンプに含まれた日の後の日の予め決定された時刻である実施例4のシステム。
【0229】
実施例6.前記使用計測システムが前記パラメータを計測するセンサーを有している実施例1~実施例5のいずれかのシステム。
【0230】
実施例7.前記使用計測システムが前記吸入器の使用前、使用中または使用後に作動せしめられるように構成された機械的スイッチを有し、選択的に、前記吸入器は、それを通じてユーザーが吸入を実行するマウスピースと、マウスピースカバーとを有し、前記機械的スイッチは、前記マウスピースカバーが動かされて前記マウスピースが露出したときに作動せしめられるように構成されている実施例1~実施例6のいずれかのシステム。
【0231】
実施例8.前記吸入情報は、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されない無吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第1のしきい値以下である低吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第2のしきい値を超えている過吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第1のしきい値よりも大きく、かつ前記第2のしきい値よりも小さく、かつ予め決定された第3のしきい値以下であるが、前記第3のしきい値は前記第1のしきい値と前記第2のしきい値の間の値である適正吸入イベント、および
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第2のしきい値以下で、かつ前記第3のしきい値よりも大きい良好吸入イベントのうちの1つまたは2つ以上を示している実施例1~実施例7のいずれかのシステム。
【0232】
実施例9.前記気流に関する前記値はピーク吸入流量の値であり、前記第1のしきい値が毎分30リットルであり、前記第2のしきい値が毎分200リットルであり、前記第3のしきい値が毎分45リットルである実施例8のシステム。
【0233】
実施例10.機械的スイッチが作動せしめられた後予め決定された時間が経過し、前記使用計測システムによって吸入が計測されないとき、無吸入イベントが記録される実施例7~実施例9のいずれかのシステム。
【0234】
実施例11.前記ユーザーインターフェースが少なくとも部分的にユーザー装置によって形成され、選択的に、前記ユーザー装置は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータおよびスマートフォンのうちの少なくとも1つである実施例1~実施例10のいずれかのシステム。
【0235】
実施例12.前記処理モジュールは少なくとも部分的に、前記ユーザー装置に含まれた第1の処理モジュールに含まれる実施例11のシステム。
【0236】
実施例13.前記吸入器が薬剤を有し、前記薬剤は前記吸入器の前記使用の間に前記ユーザーに投与されるようになっており、選択的に、前記薬剤は、アルブテロール、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、ビランテロール、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジン、グリコピロニウム、フルチカゾンと組み合わされたサルメテロール、アルブテロールと組み合わされたベクロメタゾン、およびホルモテロールと組み合わされたブデソニドから選択される実施例1~実施例12のいずれかシステム。
【0237】
実施例14.対象者による吸入器の使用の間の気流に関するパラメータを受信し、
前記使用に割り当てられた時間を受信し、
前記パラメータから吸入情報を決定し、
ユーザーインターフェースを制御して、通知時刻に、吸入情報が利用可能であるとの通知を発出させ、前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間よりも遅れるようにすべく意図的な遅延を生じさせる方法。
【0238】
実施例15.前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後少なくとも5分となるように設定される実施例14の方法。
【0239】
実施例16.前記通知時刻が前記使用に割り当てられた時間の経過後48時間より短くなるように設定される実施例14または請求項15の方法。
【0240】
実施例17.日時スタンプが前記使用に割り当てられる実施例14~実施例16のいずれかの方法
【0241】
実施例18.前記通知が前記日時スタンプに含まれた日の後の日の予め決定された時刻である実施例17の方法。
【0242】
実施例19.前記吸入情報が、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測されない無吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第1のしきい値以下である低吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入は計測されたが、前記気流に関する値が予め決定された第2のしきい値を超えている過吸入イベント、
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第1のしきい値よりも大きく、かつ前記第2のしきい値よりも小さく、かつ予め決定された第3のしきい値以下であるが、前記第3のしきい値は前記第1のしきい値と前記第2のしきい値の間の値である適正吸入イベント、および
前記吸入器の前記プロセッサーによって吸入が計測され、前記気流に関する値が前記第2のしきい値以下で、かつ前記第3のしきい値よりも大きい良好吸入イベントのうちの1つまたは2つ以上を示している実施例14~実施例18のいずれかの方法。
【0243】
実施例20.前記気流に関する前記値はピーク吸入流量の値であり、選択的に、前記第1のしきい値が毎分30リットルであり、前記第2のしきい値が毎分200リットルであり、前記第3のしきい値が毎分45リットルである実施例19の方法。
【0244】
実施例21.コンピュータ上で起動されたとき、実施例14~実施例20のいずれかの方法を実行するように適合せしめられたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0245】
10 システム
12 使用計測システム
12A 第1の使用計測システム
12B 第2の使用計測システム
12C 第3の使用計測システム
14 送信モジュール
14A 第1の送信モジュール
14B 第2の送信モジュール
14C 第3の送信モジュール
16 流量
18 時間
20 点
22 点
24 吸入イベント時刻
26 ピーク吸入流量
28 時間対ピーク吸入流量
30 吸入継続時間
32 領域
34 処理モジュール
38 ユーザーインターフェース
40 ユーザー装置
42 バーコード
100 吸入器
100A 第1の吸入器
100B 第2の吸入器
100C 第3の吸入器
【国際調査報告】