(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】留出油をトリム脱蝋するためのプロセス及び物質
(51)【国際特許分類】
B01J 29/80 20060101AFI20230718BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20230718BHJP
C10G 45/64 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B01J29/80 M
B01J37/04 102
B01J37/00 D
B01J37/02 101Z
B01J37/06
B01J37/08
B01J37/20
C10G45/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577672
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021031927
(87)【国際公開番号】W WO2021257207
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】スタルザー,マデリン
(72)【発明者】
【氏名】ガット,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】バイ,チュアンシェン
(72)【発明者】
【氏名】オリベリ,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
ここに記載されているのは、2種の異なったゼオライト、特に2種の異なった10MRゼオライトの共押出し成形物、又は1種の10MRゼオライトと1種の12MRゼオライトとの共押出し成形物である脱蝋触媒を、水素添加成分と組み合わせて採用した、新規な、本発明の脱蝋プロセスである。その水素添加成分は、非貴金属成分の混合物、又は貴金属成分の混合物であってよい。この新規な、本発明のプロセスは、いずれもが単一のゼオライト成分である場合に比較して、顕著な、活性の押し上げ(曇り点の引き下げの加速により測定)及び/又は選択率の押し上げ(ディーゼルロスの低減により測定)を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するためのプロセスであって、
効果的な脱蝋条件下で、留出油沸点範囲フィード物の少なくとも一部を脱蝋触媒と接触させて、ディーゼル沸点範囲の製品を形成させるステップを含み、前記脱蝋触媒が、
(a)2種の異なった10員環のゼオライトの共押出し成形物;又は
(b)1種の10員環のゼオライトと1種の12員環のゼオライトとの共押出し成形物;及び
(c)1種の第一の金属及び1種の第二の金属を含む非貴金属成分(前記第一の金属が、ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より選択され;そして前記第二の金属が、クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より選択される)
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記10員環のゼオライトが、EUO、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MWW、MWW、NES、TON、及びそれらの混合物からなる群より選択される骨格タイプを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記10員環のゼオライトが、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、ZSM-23、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記12員環のゼオライトが、
*BEA、BEC、EMT、FAU、LTL、MEI、MOR、MOZ、MTW、MSE、OFF、及びそれらの混合物からなる群より選択される骨格タイプを有する、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記12員環のゼオライトが、ベータ、ZSM-2、ZSM-3、ZSM-20、Y、US-Y、L、ZSM-18、モルデナイト、ZSM-10、ZSM-12、MCM-68、オフレタイト、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記2種の異なった10員環のゼオライトの共押出し成形物が、ZSM-11とZSM-48、又はZSM-11とZSM-23である、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記10員環のゼオライトと前記12員環のゼオライトとの前記共押出し成形物が、ZSM-48とZSM-12とである、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するためのプロセスであって、効果的な脱蝋条件下で、留出油沸点範囲フィード物の少なくとも一部を脱蝋触媒と接触させて、ディーゼル沸点範囲の製品を形成させるステップが含まれ、前記脱蝋触媒が、
(a)2種の異なったゼオライトの共押出し成形物(ここで、前記ゼオライトが、独立して、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択される);又は
(b)1種の10員環のゼオライトと1種の12員環のゼオライトとの共押出し成形物(ここで、前記10員環のゼオライトが、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、ZSM-23、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択され、そして
前記12員環のゼオライトが、ベータ、ZSM-2、ZSM-3、ZSM-20、Y、US-Y、L、ZSM-18、モルデナイト、ZSM-10、ZSM-12、MCM-68、オフレタイト、及びそれらの混合物からなる群より選択される)、及び
(c)パラジウム、白金、及びそれらの混合物からなる群より選択される貴金属成分、
を含む、プロセス。
【請求項9】
前記脱蝋触媒が、バインダーをさらに含み、前記バインダーが、場合によっては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、又はチタニア、及びそれらの混合物を含む、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
水素化処理条件下で、前記留出油沸点範囲フィード物の一部を、水素化処理触媒と接触させるステップをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素化処理触媒が、コバルト、ニッケル、モリブデン、白金、タングステン、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、及びモレキュラーシーブの少なくとも1種を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記水素化処理触媒及び前記脱蝋触媒が、触媒の積み重ね層の中で流体と接触するように配置されるか、又は混合触媒層の中で混じりあわされているか、又はそれらの組合せである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記効果的脱蝋条件が、少なくとも約300℃、たとえば少なくとも約325℃、たとえば少なくとも約350℃、又は少なくとも約400℃の温度を含む、請求項1~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
脱蝋触媒を形成させる方法であって、前記方法が、
(a)第一のゼオライト、第二のゼオライト、及びバインダーを含む混合物を形成させるステップ;
(b)前記混合物を混練して、押出し成形可能なペーストを形成させるステップ;
(c)前記押出し成形可能なペーストを押出し成形して、押出し成形物を形成させるステップ;及び
(c)前記押出し成形物を、約80℃~約200℃の温度で乾燥させて、乾燥させた押出し成形物を形成させるステップ;
(d)前記乾燥させた押出し成形物を、周期律表の第6族の金属イオンの供給源、周期律表の第10族の金属イオンの供給源、及び場合によっては、分散剤を含む溶液に、含浸させて、金属含有押出し成形物を形成させるステップ;及び
(e)前記金属含有押出し成形物を、約80℃~約200℃の温度で乾燥させて、脱蝋触媒を形成させるステップ;
を含む、方法。
【請求項15】
前記混合物が水をさらに含み、前記押出し成形可能なペーストの固形分含量が、約45重量%~55重量%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、押出し成形助剤をさらに含み、前記押出し成形助剤が、水酸化テトラエチルアンモニウム、クエン酸、水酸化ナトリウム、硝酸、methocel(商標)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記脱蝋触媒が硫化される、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記脱蝋触媒を、アンモニウムイオンの供給源と交換させ、水を用いて洗浄し、乾燥させ、そして焼成する、請求項14~16に記載の方法。
【請求項19】
留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するための触媒系であって、
(a)2種の異なった10員環のゼオライトの共押出し成形物;又は
(b)1種の10員環のゼオライトと1種の12員環のゼオライトとの共押出し成形物;及び
(c)1種の第一の金属及び1種の第二の金属を含む非貴金属成分(前記第一の金属が、ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より選択され;そして前記第二の金属が、クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より選択される)
を含む、触媒系。
【請求項20】
留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するための触媒系であって、
(a)2種の異なったゼオライトの共押出し成形物(ここで、前記ゼオライトが、独立して、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択される);又は
(b)1種の10員環のゼオライトと1種の12員環のゼオライトとの共押出し成形物(ここで、前記10員環のゼオライトが、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、ZSM-23、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択され、そして
前記12員環のゼオライトが、ベータ、ZSM-2、ZSM-3、ZSM-20、Y、US-Y、L、ZSM-18、モルデナイト、ZSM-10、ZSM-12、MCM-68、オフレタイト、及びそれらの混合物からなる群より選択される)、及び
(c)パラジウム、白金、及びそれらの混合物からなる群より選択される貴金属成分、
を含む、触媒系。
【請求項21】
前記2種の異なった10員環のゼオライトの共押出し成形物が、ZSM-11とZSM-48との共押出し成形物であるか、又はZSM-23とZSM-48との共押出し成形物である、請求項19又は請求項20に記載の触媒。
【請求項22】
10員環のゼオライトと12員環のゼオライトとの前記共押出し成形物が、ZSM-48とZSM-12とである、請求項19又は請求項20に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第63/040,294号(出願日:2020年6月17日、名称「Process And Materials For Trim Dewaxing Of Distillates」)の利益を主張するものであり、該出願の内容を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0002】
本発明は、炭化水素留出油沸点範囲フィード物の脱蝋のためのプロセス及び触媒、特に、ディーゼル沸点範囲の製品に好適な留出油沸点範囲フィード物を脱蝋するためのそのようなプロセス及び触媒に関する(これに限定される訳ではない)。
【背景技術】
【0003】
この数十年の間、全世界的にディーゼルの需要が高まり、製油所及び第三パーティーの使用者は、製造の際の、低温流動性の制約を受けている。それらの制約を解消するために、多くの製油所は、やむなく、低温流動性を改良する目的で、灯油をブレンドしたり、添加剤を使用したりしている。これらの処理は、多くの場合、費用効率が低く、ある点を超えて低温流動性が変化するまでに、それらの性能が限定されている。
【0004】
留出油フィード物(distillate feeds)の低温流動性を改良するための一つの方法が、脱蝋プロセスによる方法である。脱蝋は、固化しやすい、炭化水素、特に直鎖及びわずかに分岐した鎖のワックス質パラフィンを除去するための、石油留分を処理するための一つの確立されたプロセスである。脱蝋は、溶媒抽出及び結晶化によって実施することができるが、この数年、直鎖及びわずかに分岐した鎖のパラフィンを選択的に触媒転化させることによってワックスを除去するプロセスに焦点があてられるようになってきた。触媒脱蝋プロセスにおいては、ワックス質のパラフィンが、(脱)水素化されるか、クラッキングされるか、及び/又は異性化されて、留出油製品の低温流動性に悪影響を及ぼさない化合物となる。
【0005】
効果的な留出油の触媒脱蝋プロセスにとってキーとなるのは、留出油を(脱)水素化及び/又はクラッキングさせて、より軽質な製品とすることが理由で、収量低下を招くことなくそれらの化合物を異性化させることである。留出油脱蝋のために出現しつつある適用空間(application space)は、トリムサワーサービス(trim sour service)と同一視できるものであった。これらの適用は、一般的には、反応生成物の曇りに、典型的には3~15℃の範囲で微少な調節をする必要性と共通点を有している。提案されているシナリオでは、典型的には、反応器のボトム層に存在している水素化処理触媒のごく一部を、異性化触媒と置き換えることが要求されている。その異性化触媒は、一般的には、酸性の成分(通常はゼオライト)と金属成分とからなっている。その金属成分は、パラフィンを(脱)水素化させてオレフィンとし、次いでそれを酸によって異性化させるように機能している。伝統的に、貴金属たとえば白金が、それらの(脱)水素化への適性が理由で好まれてはいるが、それらの物質は、典型的には、その留出油フィード物の中に存在している硫黄によって、顕著な被毒をこうむる。卑金属(たとえば、非貴金属)は、このタイプの被毒には、より大きな耐性を有しているが、それらはいくぶんかの水素化処理活性を有していると考えられるので、サワーサービスのために好まれている。オレフィンの製造/(脱)水素化と、オレフィンの異性化とのバランスをとることが、高い活性と選択率とを有する触媒の処方には、極めて重要である。
【0006】
そのようなプロセスの一例が、特許文献1に開示されているが、そこでは、ワックス質成分含有炭化水素フィードストックを脱蝋するためのプロセスが開示さており、フィードストックを、脱蝋条件下に、ZSM-48及びMTT骨格タイプのモレキュラーシーブを含む触媒系と接触させることが含まれている。そこで開示されているモレキュラーシーブ、ZSM-48、及びZSM-23、又はそれらの組合せは、クラッキングとは反対に、異性化による脱蝋に対して選択的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,298,403号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの進歩があるにも関わらず、留出油沸点範囲のフィード物のための、改良されたトリム脱蝋プロセス及びそこで使用される触媒、特には、曇り点の引き下げを加速させる(increased cloud point reduction)ための高い活性と、ディーゼルロスの低減(reduced diesel loss)のための上昇された選択率を組み合わせて示すようなプロセス及び触媒が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
非貴金属成分又は貴金属成分の混合物と組み合わせた、2種の異なったゼオライト、特に2種の異なった10員環骨格(10MR)のゼオライト、又は10MRと12員環骨格(12MR)のゼオライトとの共押出し成形物である、脱蝋触媒を採用した脱蝋プロセスが、これら及びその他のニーズに適合するということが、今や見いだされた。
【0010】
一つの態様においては、留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するためのプロセスが開示されている。このプロセスにおいては、2種のゼオライトの共押出し成形物であり、そして第一及び第二の非貴金属を採用した脱蝋触媒が採用されている。このプロセスには、留出油沸点範囲フィード物の少なくとも一部を、効果的な脱蝋条件下で、脱蝋触媒と接触させて、ディーゼル沸点範囲の製品を形成させるステップが含まれていてよい。その脱蝋触媒には、(a)2種の異なった10員環骨格(10MR)ゼオライトの共押出し成形物;又は(b)1種の10MRゼオライトと1種の12員環骨格(12MR)ゼオライトとの共押出し成形物;のいずれかと、非貴金属成分とが含まれていてよい。その非貴金属成分が、複数の金属、たとえば、(c)ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より選択される第一の金属;並びに(b)クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より選択される第二の金属;の組合せであってもよい。
【0011】
また別の態様においては、留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するためのまた別のプロセスが開示されている。このプロセスにおいては、その脱蝋触媒が、やはり2種のゼオライトの共押出し成形物ではあるが、そこでは貴金属が採用されている。そのプロセスには、効果的な脱蝋条件下で、留出油沸点範囲フィード物の少なくとも一部を脱蝋触媒と接触させて、ディーゼル沸点範囲の製品を形成させるステップが含まれていてよい。その脱蝋触媒には、(a)2種の異なった10MRゼオライトの共押出し成形物;又は(b)1種の10MRゼオライトと1種の12MRゼオライトとの共押出し成形物が含まれていてよく、そして場合によっては、1種又は複数の貴金属、たとえば(c)パラジウム、白金、及びそれらの混合物からなる群より選択される貴金属が含まれていてもよい。
【0012】
好都合なことには、その10MRゼオライトが、EUO、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MWW、MWW、NES、TON、及びそれらの混合物からなる群より選択される骨格タイプを有していてよい。それらの骨格の10MRゼオライトは、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、ZSM-23、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0013】
好都合なことには、その12MRゼオライトが、*BEA、BEC、EMT、FAU、LTL、MEI、MOR、MOZ、MTW、MSE、OFF、及びそれらの混合物からなる群より選択される骨格タイプを有していてよい。これらの骨格の12MRゼオライトは、ベータ、ZSM-2、ZSM-3、ZSM-20、Y、US-Y、L、ZSM-18、モルデナイト、ZSM-10、ZSM-12、MCM-68、オフレタイト、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0014】
さらにまた別の態様においては、脱蝋触媒を形成させる方法が提供される。その方法には、数段のステップが含まれる。第一のゼオライト、第二のゼオライト、及びバインダーを含む混合物が形成される。その混合物を混練して、押出し成形可能なペーストを形成させ、それを押出し成形して、押出し成形物を形成させ、それを乾燥させる。その乾燥させた押出し成形物を、第6族の金属イオンの供給源、第10族の金属イオンの供給源、及び場合によっては分散剤を含む溶液を用いて含浸させて、金属含有押出し成形物を形成させる。その金属含有押出し成形物を、約80℃~約200℃の温度で乾燥させて、脱蝋触媒を形成させる。場合によっては、その脱蝋触媒を、アンモニウムイオンの供給源とイオン交換させ、水を用いて洗浄し、乾燥させ、そして焼成する。
【0015】
さらになお別の実施態様においては、留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋させるための触媒が提供される。その触媒は、(a)2種の異なった10MRゼオライトの共押出し成形物;又は(b)1種の10MRゼオライトと1種の12MRゼオライトとの共押出し成形物;及び場合によっては、(c)パラジウム、白金、及びそれらの混合物からなる群より選択される貴金属であってよい。
【0016】
その触媒が、(a)ZSM-11、ZSM-48、ニッケル、及びモリブデン;又は(b)ZSM-48、ZSM-23、ニッケル、及びモリブデン;又は(c)ZSM-48、ZSM-12、ニッケル、及びモリブデンの少なくとも一つを含んでいるのが、好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ある温度幅における、MEL及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す図である。
【
図2】MEL及びMRE(10MR)骨格を含む物質についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示す図である。
【
図3】ある温度幅における、MTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す図である。
【
図4】MTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示す図である。
【
図5】ある温度幅における、各種の金属を担持させた、MTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す図である。
【
図6】各種の金属を担持させた、MTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示す図である。
【
図7】ある温度幅における、MTW(骨格12MR)及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す図である。
【
図8】MTW(12MR)を含む物質及びMRE(10MR)を含む物質についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概要
ここに記載されているのは、2種の異なったゼオライト、特に2種の異なった10MRゼオライトの共押出し成形物、又は1種の10MRゼオライトと1種の12MRゼオライトとの共押出し成形物である脱蝋触媒を、水素添加成分と組み合わせて採用した、新規な、本発明の脱蝋プロセスである。その水素添加成分は、非貴金属成分の混合物、又は貴金属成分の混合物であってよい。この新規な、本発明のプロセスは、いずれもが単一のゼオライト成分である場合に比較して、顕著な、活性の押し上げ(曇り点の引き下げの加速により測定)及び/又は選択率の押し上げ(ディーゼルロスの低減により測定)を示した。驚くべきことには、共押出し成形した物質はさらに、別々のゼオライト成分を物理的に混合した場合よりも、高い活性及び選択率も示す。金属成分と共に物質を共押出し成形することによる、曇り点の引き下げを加速する性能が、異なった10MR骨格、たとえば、MRE、MEL、MTTの共押出し成形物を含む、一連のゼオライト骨格にわたって示され;さらには、そのような10MRゼオライトと12MRゼオライト、たとえばMTWとの共押出し成形物でも、曇り点の引き下げの加速が認められる。共押出し成形された物質についてのこのような性能的優位性は、各種のフィード物にわたっても示される。
【0019】
定義
「骨格タイプ(framework type)」という用語は、本明細書で使用するとき、「Atlas of Zeolite Framework Types」(Ch.Baerlocher,W.M.Meier and D.H.Olson,Elsevier,5th Ed.,2001)に記載された意味合いを有している。
【0020】
本明細書で使用するとき、「ゼオライト」という用語は、「モレキュラーシーブ」という用語と相互に置き換え可能に使用される。
【0021】
本明細書で使用するとき、「周期律表」という用語は、「IUPAC Periodic Table of the Elements」(2013年5月1日付け)を意味しており、これは、「The Merck Index,Twelfth Edition」(Merck & Co.,Inc.,1996)の表紙裏に示されている。
【0022】
留出油フィード物
本発明の脱蝋触媒を使用して脱蝋することが可能なフィードストック(すなわち、フィード物)。そのようなフィードストックは、比較的軽質の留出油留分、たとえば灯油及びジェット燃料から、高沸点ストック、たとえば全原油(whole crude petroleum)、常圧蒸留残油(reduced crudes)、減圧蒸留残油(vacuum tower residue)、サイクルオイル(cycle oil)、合成原油(たとえば、シェール油、タール油(tars and oil)など)、軽油(gas oil)、減圧軽油(vacuum gas oil)、蝋下油(foots oil)、フィシャー・トロプシュ法由来のワックス、及びその他の重質油まで、広い範囲にわたる。16個以上の炭素原子を有する、直鎖のn-パラフィンは単独でも、或いはわずかに分岐した鎖のパラフィンとの共存でも、時によっては、ワックスと呼ばれる。そのフィードストックは、多くの場合、一般的には約350゜F(177℃)より高い沸点を有するC10+フィードストックであろうが、その理由は、より軽質な油では、通常、ワックス質成分を顕著な量では含まないであろうからである。しかしながら、その脱蝋触媒は、特に以下のような、その流動点及び粘度を、ある種の規格限度内に維持する必要があるものには有用である:含蝋油ストック、たとえば中間留出油ストック(軽油、灯油、及びジェット燃料を含む)、潤滑油ストック、加熱油(heating oil)、及びその他の留出油留分。潤滑油ストックは、一般的には230℃(450゜F)より高い温度、より一般的には315℃(600゜F)より高い温度で沸騰するであろう。水素化処理されたストックは、このタイプのストック及びさらにはその他の留出油留分の好都合な供給源であるが、その理由は、それらは通常、顕著な量のワックス質のn-パラフィンを含んでいるからである。そのフィードストックは通常、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族及び複素環式化合物を含むC10+フィードストックであるが、それと共に実質的な量の高級n-パラフィン及びわずかに分岐したパラフィンを含み、それらが、そのフィードストックのワックス質な性質に寄与している。プロセスにおいて、それらのn-パラフィンが異性化されて、分岐したパラフィンになるが、それと同時にいくぶんかのクラッキング又は水素化分解を受けて、液状範囲の物質が生成し、それが、低粘度反応生成物に寄与する。しかしながら、そこで起きるクラッキングの程度は、そのフィードストックの沸点よりは低い沸点を有する反応生成物の収量を低減させて、それによりそのフィードストックの経済的価値が維持できるように、制限される。
【0023】
脱蝋触媒
各種の態様においては、本発明の脱蝋触媒の少なくとも一部には、2種の異なった10員環のゼオライトと非貴金属水素添加成分との共押出し成形物が含まれる。その非貴金属水素添加成分には、第一の金属及び第二の金属が含まれる。その第一の金属は、ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物、好ましくは、ニッケル、又はコバルトからなる群より選択することができる。その第二の金属は、クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物、好ましくは、モリブデン及びタングステンからなる群より選択することができる。
【0024】
その他の態様においては、本発明の脱蝋触媒の少なくとも一部には、1種の10員環のゼオライト及び1種の12員環のゼオライト及び1種の貴金属水素添加成分の共押出し成形物が含まれる。その貴金属水素添加成分は、パラジウム、白金、及びそれらの混合物、好ましくは白金からなる群より選択することができる。
【0025】
本発明の脱蝋触媒に好適である10MR骨格を有するモレキュラーシーブとしては、モレキュラーシーブ、たとえば結晶性アルミノシリケート(たとえば、ゼオライト)が挙げられる。
【0026】
一つ又は複数の実施態様においては、その10MR骨格が、EUO、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MWW、MWW、NES、TON、及びそれらの混合物を含み、それらからなる群より選択される骨格タイプ(これらに限定される訳ではない)を含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらであってよい。そのような10MR骨格を有するゼオライトとしては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):ZSM-50、EU-1(EUO)、ZSM-11(MEL)、ZSM-5(MFI)、ZSM-57(MFS)、ZSM-48(MRE)、ZSM-23(MTT)、EMM-10、MCM-22、MCM-49、MCM-56(MWW)、NU-87(NES)、ZSM-22、Theta-1(TON)、及びそれらの混合物。シリカ対アルミナの比が約(20:1)から約(40:1)までで、ZSM-23構造を有するゼオライトは、時には、SSZ-32とも呼ばれるので、注意されたい。
【0027】
一つ又は複数の実施態様においては、その12MR骨格が、*BEA、BEC、EMT、FAU、LTL、MEI、MOR、MOZ、MTW、MSE、OFF、及びそれらの混合物を含み、それらからなる群より選択される骨格タイプ(これらに限定される訳ではない)を含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらであってよい。そのような12MRゼオライトを有するゼオライトとしては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):ベータ(BEA及びBEC)、ZSM-2、ZSM-3、ZSM-20(EMT)、Y、US-Y(FAU)、ゼオライトL(LTL)、ZSM-18(MEI)、モルデナイト(MOR)、ZSM-10(MOZ)、ZSM-12(MTW)、MCM-68(MSE)、オフレタイト(OFF)、及びそれらの混合物。
【0028】
場合によっては、本発明の脱蝋触媒及びプロセスにおいて採用されるモレキュラーシーブの1種又は、より好ましくは両方が、その脱蝋プロセスにおいて採用される、温度やその他の条件に抵抗性を有するその他の物質と組み合わされていてもよい。そのような物質は、バインダー又はマトリックス物質とも呼ばれる。そのようなバインダー又はマトリックス物質としては、活性及び不活性物質で、合成又は天然由来のゼオライト、さらには無機物質たとえば、クレー、シリカ、及び/又は金属酸化物たとえば、アルミナ、チタニア、及び/又はジルコニアが挙げられる。好ましくは、その脱蝋触媒が(結合された形態で)、場合によっては、重量で、少なくとも約1.2、たとえば、少なくとも約2.0、少なくとも約4.0、又は少なくとも約4.5のゼオライト対バインダーの比率を有している。
【0029】
後者は、天然由来であるか、又はシリカと金属酸化物との混合物を含む、ゼラチン状の沈殿物、ゾル、又はゲルの形態のいずれであってもよい。それぞれのモレキュラーシーブと併用して、すなわちそれらと組み合わせて、活性のある物質を使用することによって、ある種の有機転化反応プロセスにおける触媒の転化率及び/又は選択率を向上させることが可能である。不活性な物質は、そのプロセスにおける転化率の大きさを制御する希釈剤として好適に機能して、それにより、反応速度を調節するための他の手段を採用しなくても、反応生成物を、経済的且つ規則的に得ることができる。多くの場合、結晶性触媒物質に、天然由来のクレー、たとえばベントナイト及びカオリンが組みこまれた。それらの物質、すなわち、クレー、酸化物などは、部分的には、触媒のためのバインダーとして機能する。良好な圧壊強度を有する触媒を提供するのが望ましいが、その理由は、現場では、触媒が、乱暴に扱われることが多く、それにより、その触媒が破損して粉体状物質となる傾向があり、それが、プロセスで問題を起こす原因となるからである。
【0030】
ここで採用されるモレキュラーシーブそれぞれと複合化させることが可能な天然由来のクレーとしては、モンモリロナイト及びカオリンの仲間が挙げられるが、そのようなものとしては、以下のものが挙げられる:サブベントナイト、並びに、Dixie、McNamee、Georgia、及びFloridaクレーと一般に呼ばれているカオリン、又はその他、主たる鉱物成分が、ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトであるもの。そのようなクレーは、元々採鉱されたままの未精製の状態でも、或いは最初に焼成、酸処理、又は化学変性にかけた状態でも、使用することができる。
【0031】
前述の物質に加えて、本発明のモレキュラーシーブは、以下のものと複合化させることもできる:多孔質マトリックス物質たとえば、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、さらには三元組成物たとえば、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、及びシリカ-マグネシア-ジルコニア。そのマトリックスが共ゲル(cogel)の形態であってもよい。これらの成分の混合物もまた、使用することができる。そのバインダーがアルミナであるのが好ましい。
【0032】
共押出された脱蝋触媒を構成する、個々のゼオライトそれぞれにおける、ゼオライト(すなわちモレキュラーシーブ)対マトリックスの相対比率は、広く変化させることができる。その共押出し成形物のゼオライト及びマトリックスについて、そのゼオライト含量は、その複合物の約1~約90重量パーセントの範囲の中、より普通には、約2~約80重量パーセントの範囲とすることができる。共押出しされた触媒の中の個々のゼオライトにおける、ゼオライト/マトリックスの好ましい比率は、個々のゼオライトの合計重量を基準にして、65/35又は80/20である。
【0033】
第一のゼオライト対第二のゼオライトの相対比率もまた、変化させることができる。第一のゼオライト対第二のゼオライトの比率は、少なくとも約25:75、又は少なくとも約50:50、又は少なくとも約65:35、又は少なくとも約75:25、又は少なくとも約85:15、又は少なくとも約90:10とすることができる。第一のゼオライト対第二のゼオライトの比率はさらに、約98:2以下、又は約95:5以下、又は約90:10以下、又は約85:15以下、又は約75:25以下とすることもできる。10MR/マトリックス、又は10MR及び12MR/マトリックスの好ましい組合せにおいては、モレキュラーシーブが、少なくとも約75:25の比率で含まれる。
【0034】
共押出された脱蝋触媒の、それぞれのゼオライトとマトリックス物質との相対比率もまた、広く変化させることができる。共押出された脱蝋触媒の第一のゼオライト対第二のゼオライト対マトリックスの重量比は、その脱蝋触媒の合計重量を基準にして、15/65/20、又は40/40/20、又は70/15/15とすることができる。
【0035】
その脱蝋触媒の中の金属の量は、触媒重量を基準にして、少なくとも0.1重量%、たとえば、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.3重量%、又は少なくとも0.5重量%とすることができる。その触媒の中の金属の量は、追加的又は代替的に、触媒重量を基準にして、20重量%以下、たとえば、10重量%以下、5重量%以下、2.5重量%以下、又は1重量%以下とすることもできる。その金属が、Pt、Pd、他の第8族貴金属、又はそれらの組合せであるような態様では、金属の量を、0.1~5重量%、たとえば0.1~2重量%、0.25~1.8重量%、又は0.4~1.5重量%とすることができる。その金属が、非貴金属の第8族の金属と第6族の金属との組合せであるような実施態様においては、金属の合計量を、0.5重量%~25重量%、たとえば2重量%~20重量%、又は5重量%~18重量%とすることができる。
【0036】
一つ又は複数の実施態様においては、留出油沸点範囲のフィード物をトリム脱蝋させるためのその触媒には、2種の異なった10員環のゼオライト並びに1種の第一の金属及び1種の第二の金属を含む非貴金属成分の共押出し成形物を含むが、その第一の金属は、ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より選択され、そしてその第二の金属は、クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0037】
また別の実施態様においては、留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋させるためのその触媒には、1種の10員環のゼオライト及び1種の12員環のゼオライト及び1種の第一の金属及び1種の第二の金属を含む非貴金属成分の共押出し成形物が含まれるが、その第一の金属は、ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より、好ましくはニッケル又はコバルトから選択され、そしてその第二の金属は、クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より、好ましくはモリブデンから選択される。
【0038】
一つ又は複数の実施態様においては、留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋させるためのその触媒には、2種の異なった10員環のゼオライト、並びにパラジウム、白金、及びそれらの混合物、好ましくは白金からなる群より選択される貴金属の共押出し成形物が含まれる。
【0039】
また別の実施態様においては、留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋させるためのその触媒には、1種の10員環のゼオライト、並びに1種の12員環のゼオライト、並びにパラジウム、白金、及びそれらの混合物からなる群より選択される貴金属の共押出し成形物が含まれる。
【0040】
一つ又は複数の実施態様においては、留出油沸点のフィード物をトリム脱蝋させるためのその触媒には、ZSM-11及びZSM-48の異なった10MRの共押出し成形物、又はZSM-23及びZSM-48の10MRと12MRとの共押出し成形物が含まれる。いくつかの実施態様においては、その非貴金属が、コバルト及びモリブデン、又は好ましくは、ニッケル及びモリブデンである。
【0041】
一つ又は複数の実施態様においては、留出油沸点のフィード物をトリム脱蝋させるためのその触媒には、ZSM-11及びZSM-48の異なった10MRの共押出し成形物、又はZSM-23及びZSM-48の10MRと12MRとの共押出し成形物が含まれる。いくつかの実施態様においては、その貴金属が、パラジウム、好ましくは白金である。
【0042】
脱蝋触媒を作成する方法
脱蝋触媒を作成又は形成させる方法には、複数のステップが含まれる。その方法には、1種の第一のゼオライト、1種の第二のゼオライト、及び場合によっては、1種のバインダー又は担体物質を含むゼオライトの混合物を形成するステップが含まれる。そのゼオライトはバインダーと、各種都合の良い方法で組み合わせることができる。一つの実施態様においては、結合脱蝋触媒(bound dewaxing catalyst)は、ゼオライトとバインダー共に粉体から出発して、水を添加することによってそれらの粉体を組み合わせてペースト化して混合物を形成させ、次いでその混合物を押出成形して、所望のサイズの結合触媒とすることにより、製造することができる。場合によっては、押出成形剤/助剤をさらに使用して、ゼオライトとバインダーとの混合物の押出成形の流動性を改良することもできる。
【0043】
また別の実施態様においては、マラー又はその他の混合機器の中で、ゼオライトの混合物を(追加の水の存在下又は非存在下に)混練して、押出し成形可能なペーストを形成させることもできる。その押出し成形可能なペーストは、(押出し成形助剤の存在下又は非存在下に)押出し成形して、押出し成形物を形成させることができる。その押出し成形物を、約80℃~約200℃の温度で乾燥させて、乾燥させた押出し成形物を形成させることができる。その乾燥させた押出し成形物を、(以下に示す1種又は複数の方法を用いて)処理して、たとえば、周期律表の第6族の金属イオンの供給源、周期律表の第10族の金属イオンの供給源、及び場合によっては分散剤を含む溶液を用いて、水素添加成分を添加して、金属含有押出し成形物を形成させることができる。その金属含有押出し成形物を、約80℃~約200℃の温度で乾燥させて、脱蝋触媒を形成させることができる。
【0044】
たとえば、白金の場合においては、白金金属含有イオンを用いてその物質を処理することにより、そのような成分を、それぞれのモレキュラーシーブの中又は上に含浸させることができる。この目的のために好適な白金化合物としては、クロロ白金酸、塩化第一白金、及び白金アミン錯体を含む各種の化合物が挙げられる。それらを導入するための金属と方法との組合せもまた、使用することができる。
【0045】
一つ又は複数の実施態様においては、そのゼオライト混合物が、水を含んでいてよく、そして/又はその押出し成形可能なペーストの固形分含量が、約45重量%~55重量%である。
【0046】
場合によっては、そのゼオライト混合物に、押出し成形助剤が含まれていてもよいが、その助剤には、水酸化テトラエチルアンモニウム、クエン酸、水酸化ナトリウム、硝酸、methocel(商標)、及びそれらの混合物からなる群を含むか、それらからなるか、又はそれらより選択してよい。
【0047】
その金属の水素添加成分を、各種都合の良い方法で、追加の触媒に添加すればよい。そのような成分は、組成物の中へ交換させたり、その中に含浸させたり、或いは、それと物理的に密に混合することができる。
【0048】
金属の水素添加成分を添加するための一つの方法が、初期湿潤法(incipient wetness)によることができる。たとえば、ゼオライトとバインダーとを組み合わせた後で、その組み合わせたゼオライトとバインダーを、押出成形して触媒粒子とする。次いで、これらの触媒粒子を、好適な金属前駆体を含む溶液に、暴露させる。別な方法として、イオン交換法によって金属を触媒に添加することも可能であるが、その場合には、押出成形をする前に、金属前駆体をゼオライトの混合物(又はゼオライト及びバインダー)に添加してもよい。
【0049】
いくつかの実施態様においては、金属水素添加成分を、含浸法によって触媒粒子に添加することができる。場合によっては、その触媒粒子に卑金属塩を含浸させる場合、その触媒粒子を、分散剤/助剤をさらに含むことが可能な溶液を使用して、含浸させてもよい。
【0050】
含浸法、たとえば初期湿潤法及び/又は溶液中でのイオン交換法による含浸法は、担体を含む触媒の中に金属を導入するための、一般的に使用されている技法である。含浸法においては、担体が、典型的には、含浸のための金属の塩を含む溶液に曝露される。含浸法の際に金属塩の分散に影響を及ぼす可能性がある因子は多く、たとえば、その塩の濃度、その塩溶液のpH、担体物質のゼロチャージポイント(point of zero charge)などであるが、たとえば初期湿潤法及び/又はイオン交換法の含浸の際に、やはり重要となり得るその他の因子が除外される訳ではない。場合によっては、触媒上での所望の金属担持量を達成するために、多段の暴露ステップを実施することも可能である。担体に金属塩水溶液を含浸させた後で、その担体を乾燥させて、過剰の水を除去することができる。その乾燥は、各種都合のよい雰囲気、たとえば空気の下で、約80℃~約200℃の温度で実施するのがよい。場合によっては、しかし好ましくは、その含浸溶液の中に分散剤/助剤が含まれている場合には、その触媒粒子を焼成しないままに残して、後で硫化させる。別な方法では、含浸させた後で、触媒粒子を約250℃~約550℃の温度で焼成することもできる。
【0051】
水溶性の金属塩に加えて、その含浸溶液には、1種又は複数の分散剤/助剤が含まれていてもよい。分散剤は、脱蝋触媒の中で単離された金属を分散させる(meek)ために使用される。分散剤/助剤は、2~10個の炭素を含む有機化合物を含むか、又はそれらであり、約2~約0.6の炭素原子対酸素原子の比率を有することができる。場合によっては、その分散剤/助剤は、カルボン酸を含むか、又はカルボン酸であってよい。好適な分散剤/助剤の例としては、以下のものを挙げることができる。グリコール(たとえば、エチレングリコール)並びにカルボン酸、たとえばクエン酸及びグルコン酸。場合によっては、その分散剤/助剤が、アミン又はその他の窒素含有化合物、たとえばニトリロ三酢酸を含んでいたり、それらであったりしてもよい。何か特別な理論に束縛される訳ではないが、その分散剤/助剤は、含浸法で金属塩から金属酸化物を形成させた後に実施される加熱ステップ及び/又は焼成ステップの間に、その触媒から除去されることが可能であると考えられる。
【0052】
その含浸溶液野中の分散剤/助剤の量は、その溶液の中の金属の量を基準にして選択すればよい。いくつかの態様においては、溶液中での分散剤/助剤対全金属のモル比は、以下のようであってよい:約0.1~約5.0、たとえば、約0.1~約2.0、約0.1~約1.0、約0.2~約5.0、約0.2~約2.0、約0.2~約1.0、約0.3~約5.0、約0.3~約2.0、約0.3~約1.0、約0.4~約5.0、約0.4~約2.0、又は約0.4~約1.0、又は約2。追加的又は代替的に、周期律表の第8族の金属の非貴金属をその含浸溶液の中に存在させるような態様では、分散剤/助剤対周期律表の第8族の金属の非貴金属のモル比は、約0.5~約10、たとえば、約0.5~約5.0、約0.5~約3.0、約1.0~約10、約1.0~約5.0、又は約1.0~約3.0であってよい。
【0053】
担持させた非貴金属系ベース金属及び貴金属系ベース金属を含む脱蝋触媒を形成させてから、そのベース金属を硫化させた後で、硫化させたベース金属触媒を形成させるのに使用する。それらの金属の硫化反応は、各種都合のよい方法、たとえば気相硫化法及び/又は液相硫化法で実施することができる。硫化反応は、一般的には、金属酸化物を含む触媒を、硫黄含有化合物、たとえば元素状硫黄、硫化水素、及び/又は多硫化物と接触させることにより実施することができる。硫化水素は、気相硫化反応に好都合な硫化剤となり得て、約0.1重量%~10重量%の量で水素を含む気相硫化雰囲気中に組み入れることができる。硫化反応は、追加的又は代替的に、多硫化物、たとえばジメチルジスルフィドが混入された(spiked)炭化水素ストリームと水素との組合せを使用して、液相の中で実施することもできる。その硫化反応は、各種都合のよい硫化温度、たとえば150℃~500℃で実施することができる。その硫化反応は、都合のよい硫化圧力、たとえば100psig~1000psig又はそれ以上の圧力で実施することができる。その硫化時間は、その硫化条件に依存して変化する可能性があるが、1時間~72時間の硫化時間が好適である場合が多い。その触媒は、所望であれば、使用前に水蒸気処理をさらにしてもよい。
【0054】
触媒脱蝋プロセス
留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するための本発明の触媒脱蝋プロセスには、留出油沸点範囲フィード物の少なくとも一部を、効果的な処理条件下で、本発明の脱蝋触媒のいずれかと接触させるステップが含まれる。
【0055】
そのプロセスにおける、触媒脱蝋処理域でのプロセス処理条件としては、200℃~450℃、たとえば、270℃~400℃の温度が挙げられる。場合によっては、水素分圧が1.8MPag~35MPag(250psig~5000psig)、たとえば、4.9MPag~20.9MPag、そして水素処理ガス速度が34Nm3/m3(約200SCF/B)~1700Nm3/m3(約10000scf/B)、たとえば、170Nm3/m3(約1000SCF/B)~850Nm3/m3(約5000SCF/B)での、水素共フィードが含まれていてもよい。さらに他の実施態様においては、以下の条件が含まれていてもよい:温度が、600゜F(343℃)~815゜F(435℃)の範囲、水素分圧が、500psig~3000psig(3.5MPag~20.9MPag)、そして水素処理ガス速度が、200Nm3/m3~1020Nm3/m3(約1200SCF/B~約6000SCF/B)。たとえば、サワー条件下で脱蝋ステージを運転するのならば、これら後者の条件が適切となるであろう。その液空間速度(LHSV)は、0.2h-1~10h-1、たとえば0.5h-1~5h-1、及び/又は1h-1~4h-1とすることができる。
【0056】
追加的又は代替的に、脱蝋のための条件は、先行するステージの反応条件、たとえば水素化分解条件及び/又は水素化処理条件を基準にして選択することができる。そのような条件は、先行する触媒層と脱蝋触媒のための層との間の温度差(quench)を利用して、さらに修正することができる。先行する触媒層の出口温度に相当する温度でその脱蝋プロセスを運転する代わりに、温度差を利用して、脱蝋触媒層の開始点での炭化水素ストリームについての温度を低下させることができる。一つの選択肢として、先行する触媒層の出口温度と同じである、脱蝋触媒層の開始点での温度を有するように、温度差を使用することもできる。また別の選択肢は、蝋触媒層の開始点での温度を、先行する触媒層よりも少なくとも10゜F(6℃)低く、たとえば、少なくとも20゜F(11℃)低く、少なくとも30゜F(16℃)低く、又は少なくとも40゜F(21℃)低く、場合によっては最高で150゜F(90℃)低くするために温度差を利用することも可能である。
【0057】
一つの実施態様においては、本発明の脱蝋触媒が、水素化処理触媒と同一のステージ及び/又は同一の反応器及び/又は同一の層に含まれていてよい。そのような脱蝋触媒は、水素化処理触媒と混合されていてよいか、及び/又はそのような脱蝋触媒が、その水素化処理触媒の少なくとも一部に対して、又はその水素化処理触媒の実質全部に対して、(同一の層内、又は別の層の中で)下流側にあってもよい。
【0058】
他の実施態様においては、そのような脱蝋触媒が、いかなる水素化分解触媒ステージよりも、及び/又は一つのステージの中に存在しているいかなる水素化分解触媒よりも下流側の層の中に位置しているのがよい。
【0059】
脱蝋プロセスへの、留出油沸点範囲フィード物を水素化処理することによって、すでに水素化処理されるか又は水素化分解されて、有機の硫黄含有及び窒素含有化学種を顕著な割合で除去された分子に対して、脱蝋を起こさせることが可能となる。留出油フィード物をそのように水素化処理することによって、脱蝋触媒の被毒を低減させ、そのサイクル寿命を長引かせることが可能となる。脱蝋触媒は、一つのステージの中の水素化分解触媒の少なくとも一部として、同一の反応器の中に位置させてもよい。別の方法として、水素化分解触媒を含む反応器からの流出物を、できれば気液分離させた後に、脱蝋触媒を含む別のステージ又は反応器にフィードすることも可能である。さらにその他の態様においては、脱蝋触媒を、水素化処理及び/又は水素化分解触媒の少なくとも一つ層前の(すなわち、プロセスフローに関連して上流側の)触媒層の中で使用することもできる。
【0060】
さらにまた別の選択肢においては、その最終反応ステージにおける脱蝋触媒が、反応器の中の少なくとも一つの層の中で、他のタイプの触媒、たとえば水素化処理触媒と混合されていてもよい。さらにまた別の選択肢においては、水素化分解触媒と脱蝋触媒とを、単一のバインダーを用いて共押出しして、混合官能性の触媒を形成させてもよい。
【0061】
水素化処理プロセス
典型的には、水素化処理を使用して、フィード物の硫黄、窒素、及び芳香族の含量を低減させることができる。水素化処理のために使用される触媒としては慣用される水素化処理触媒、たとえば少なくとも1種の非貴金属(周期律表の第8~10列)、たとえばFe、Co、及び/又はNi、たとえば少なくともCo及び/又はNi、並びに少なくとも1種の第6族の金属、たとえばMo及び/又はWを含むものが挙げられる。そのような水素化用触媒としては、場合によっては、耐火性のサポート(support)/キャリヤ(carrier)、たとえばアルミナ及び/又はシリカの上に含浸されるか又は分散された遷移金属の硫化物が挙げられる。そのサポート/キャリヤ自体は、典型的には、顕著な或いは測定可能なほどの触媒活性を、ほとんど又はまったく有していない。実質的にキャリヤフリー又はサポートフリーの触媒(一般的にバルク触媒と呼ばれている)は、一般的には、それらの担持された相当物よりも高い容積活性を有している。
【0062】
水素化処理は、水素の存在下で実施するのが有利となり得る。したがって、水素ストリームを、水素化処理触媒が位置している、容器/反応ゾーン/水素化処理ゾーンに、フィード又は注入するのがよい。水素(水素「処理ガス」の中に含まれる)を、反応ゾーンに供給するのがよい。処理ガスは、純水素であってもよいし、或いは目的の反応のために十分な量の水素を含み、場合によっては1種又は複数のその他のガス(たとえば、窒素及び/又は軽質炭化水素たとえばメタン、これらは、理想的には、それらの反応又はそれらの反応生成物のいずれにも、妨害や悪影響を与えるものであってはならない)を含む、水素含有ガスであってもよい。不純物、たとえばH2S及びNH3は望ましいものではなく、典型的には、反応器に通すより前に処理ガスから除去するのがよい。反応ステージの中に導入される処理ガスストリームに、水素以外の成分が含まれているような態様においては、その処理ガスには、少なくとも50体積%、たとえば、少なくとも75体積%、少なくとも90体積%、少なくとも95体積%、又は少なくとも99体積%のH2が含まれているのがよい。
【0063】
水素は、100SCF/B(フィード物原料1バレルあたりの標準立方フィートの水素)(約17Nm3/m3)~約1500SCF/B(約250Nm3/m3)の速度で供給することができる。ある種の実施態様においては、水素を、200SCF/B(約34Nm3/m3)~1200SCF/B(約200Nm3/m3)の範囲で送るがよい。水素は、水素化処理反応器/反応ゾーンに入るフィード物原料に併行流的に供給するか、及び/又は別のガス導管を通して水素化処理ゾーンに別途に供給することができる。
【0064】
水素化処理条件としては、以下の条件を挙げることができる:温度が、200℃~450℃、たとえば315℃~425℃;圧力が、250psig(約1.8MPag)~5000psig(約35MPag)、たとえば300psig(約2.1MPag)~3000psig(約20.9MPag);時間基準の液空間速度(LHSV)が、0.1hr-1~10hr-1;そして水素処理速度が、200scf/B(約34Nm3/m3)~10000scf/B(約1700Nm3/m3)、たとえば500scf/B(約85Nm3/m3)~10000scf/B(約1700Nm3/m3)。
【0065】
ここで、実施例及び添付の図面を参照しながら、本発明を特に詳しく説明する。以下の実施例においては、2種の異なった10MR触媒、又は10MR及び12MR骨格触媒を使用することの有益性を、ディーゼル沸点範囲の製品の製造について示す。
【実施例】
【0066】
実施例1:3.4%Ni/14%Mo、65/35のZSM-11/Al2O3(MEL)
65部のZSM-11結晶を、35部のアルミナ(Versal 300(商標)、Honeywell UOPから入手可能)と、マラー中で混合した。6”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の49~53%の範囲の水を添加した。ZSM-11、アルミナ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni:モル比2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。
【0067】
実施例2:3.4%Ni/14%Mo、80/20のZSM-48/SiO2(MRE)
80部のZSM-48結晶を、3部のNaOH、それに続けて10部の固形シリカ(Ultrasil(商標)、Evonikから入手可能)、及び10部のコロイドシリカ(Ludox(商標)HS-40、WR Graceから入手可能)と、マラー中で混合した。1”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の50~60%の範囲の水を添加した。ZSM-48、シリカ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni=2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。
【0068】
実施例3:3.4%Ni/14%Mo、70/15/15のZSM-48/ZSM-11/Al2O3(MEL/MRE)
70部のZSM-48結晶を、2部の水酸化テトラエチルアンモニウム、それに続けて15部のZSM-11及び15部の固形アルミナ(Versal 300(商標))と、マラー中で混合した。1”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の49~53%の範囲の水を添加した。ZSM-48、ZSM-11、アルミナ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni:モル比2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。
【0069】
実施例4:3.4%Ni/14%Mo、65/35のZSM-48/Al2O3、+3.4%Ni/14%Mo、65/35のZSM-11/Al2O3(MEL+MRE)
65部のZSM-48結晶を、35部のアルミナ(Catapal(商標)200、Sasol North Americaから入手可能)と、マラー中で混合した。6”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の49~53%の範囲の水を添加した。ZSM-48、アルミナ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成し、それに続けて、水蒸気を用いて371℃で処理した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni:モル比2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。このZSM-48物質の79部と、上で実施例1に記載したZSM-11物質の21部とを組み合わせて、物理的混合物を調製した。
【0070】
実施例5:3.4%Ni/14%Mo、80/20のZSM-23/Al2O3(MTT)
80部のZSM-23結晶を、20部のアルミナ(Versal 300(商標))と、マラー中で混合した。6”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の49~53%の範囲の水を添加した。ZSM-23、アルミナ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni:モル比2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。
【0071】
実施例6:3.4%Ni/14%Mo、65/35のZSM-12/Al2O3(MTW)
65部のZSM-23結晶を、2部の水酸化テトラエチルアンモニウム及び15部のアルミナ(Versal 300(商標))と、マラー中で混合した。6”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の49~53%の範囲の水を添加した。ZSM-12、アルミナ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni:モル比2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。
【0072】
実施例7:3.4%Ni/14%Mo、40/40/20のZSM-48/ZSM-23/Al2O3(40/40のMRE/MTT)
40部のZSM-48結晶を、40部のZSM-23と混合し、次いで2部の水酸化テトラエチルアンモニウム及び15部のアルミナ(Versal 300(商標))を、マラーに添加した。6”のエクストルーダー上で押出し成形可能なペーストとするのに十分な、全固形分の49~55%の範囲の水を添加した。ZSM-48、ZSM-23、アルミナ、及び水の混合物を押出し成形して、1/16”の柱状物とし、次いでコンベア対流オーブン上、121℃で数時間かけて乾燥させた。その乾燥された押出し成形物を窒素中538℃で予備焼成して、有機テンプレートを分解除去した。次いで、その予備焼成した押出し成形物を、2cc/g/minの飽和空気を用いて、周囲条件下で1時間かけて加湿した。加湿させた後で、1Nの硝酸アンモニウムを用いてその押出し成形物をイオン交換させて、ナトリウムを除去した。次いで、その押出し成形物を、脱イオン水を用いて洗浄して、残存している硝酸イオンを除去した後、121℃で少なくとも4時間かけて乾燥させた。次いでそれを、空気中538℃で焼成した。最小量の水に、クエン酸(クエン酸/Ni:モル比2)及び十分な量の炭酸ニッケル水酸化物四水和物、それに続けてヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物を、重量で、それぞれ3.4%Ni及び14.0%Moの最終担持量を目標として添加した。次いでこの溶液を、押出し成形されたペレットの測定された水細孔容積に等しい、合計容積となるように希釈し、そして、そのペレットに徐々に添加し、次いでそれを、混転させて確実に混合させた。その含浸させたペレットを、121℃で乾燥させた。
【0073】
実施例8:1.7%Ni/7.0%Mo、65/15/20のZSM-48/ZSM-23/Al2O3(1/2のNiMo、40/40のMRE/MTT)
実施例8は、実施例7と同一の方法で調製したが、ただし、最終担持量が、重量で、それぞれ1.7%Ni及び7.0%Moとした。
【0074】
実施例9:3.4%Ni/14%Mo、65/15/20のZSM-48/ZSM-23/Al2O3(65/15のMRE/MTT)
実施例9は、実施例7と同一の方法で調製したが、ただし、65部のZSM-48結晶及び15部のZSM-23結晶を使用した。
【0075】
実施例10:3.4%Ni/14%Mo、15/65/20のZSM-48/ZSM-23/Al2O3(15/65のMRE/MTT)
実施例10は、実施例7と同一の方法で調製したが、ただし、15部のZSM-48結晶及び65部のZSM-23結晶を使用した。
【0076】
実施例11:3.4%Ni/14%Mo、40/40/20のZSM-48/ZSM-12/Al2O3(40/40のMRE/MTW)
実施例11は、実施例7と同一の方法で調製したが、ただし、40部のZSM-48結晶及び40部のZSM-12結晶を使用した。
【0077】
実施例12:性能の評価
上記の実施例における触媒の性能評価で使用されたフィード物の性質を表1に示す。
【0078】
【0079】
80%(v/v)(第一層触媒の容積/第一層と第二層との合計容積)の水素化処理触媒の第一層、その後の、20%(v/v)の脱蝋触媒の第二層を有する、典型的なトリム脱蝋構成に触媒を配した。反応器は、下向き流運転の構成とし、オフガスを、湿式試験メーター及びGCでモニターした。全部の液体反応生成物も捕集し、蒸留シミュレーション並びに残存有機硫黄及び窒素の試験をした。物質収支はいずれも、100±3%に近かった。すべての触媒は、3%硫黄-混入LVGO(軽質減圧ガスオイル)を使用して、ユニット中で硫化させた後で、実際のフィード物に暴露させた。配管から取り出した(lined out)触媒を使用して、試験を完了させたが、両方のフィード物についての条件を表2~4に示す。曇り点は、それぞれの条件にわたっての平均をとった。表2からの条件を使用したすべての運転において、反応生成物の窒素値は、すべての収支において検出不能であった。
【0080】
フィード物1における曇り点の引き下げの温度依存性を試験するための条件セット1を表2に示す。
【0081】
【0082】
フィード物2における曇り点の引き下げの温度依存性を試験するための条件セット2を表3に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
図1は、フィード物1を使用し、条件セット1の下での、ある温度幅における、MEL及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す。具体的には、
図1には、単独でMEL及びMRE骨格を含む物質と共に、それらの物理的混合物(MEL+MRE)及び共押出し成形した形態(MEL/MRE)の性能を示している。図から分かるように、フィード物1での曇り点の引き下げの点では、共押出し成形した物質(MEL/MRE)が、特に温度が高いところでは、物理的に混合したサンプル(MEL+MRE)よりも、顕著に高い活性を示した。この共押出し成形した物質はさらに、MEM骨格及びMRE骨格を単独で含む個々の物質よりも、優れた性能を示している。
【0086】
高い活性の物質に関連して一般的に懸念されるのは、それらがディーゼル範囲の分子を分解してライトエンドとする傾向があることで、その結果ディーゼルロスとなり、これは、経済的に望ましくない。
図2に、MEL骨格及びMRE骨格を含む物質についての、条件セット1の下での、フィード物1についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示している。
図2から明らかになることは、MEL/MRE骨格を含む共押出し成形した物質が、ある温度幅における高い活性を示すだけではなく、MEL骨格単独若しくはMRE骨格単独、又はMEL+MRE骨格の物理的混合物を含む他の物質に比較して、改良されたディーゼル収率も有している。
【0087】
図3は、フィード物2で、条件セット2の下での、ある温度幅における、MTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す。具体的には、MTT及びMRE骨格(10MR)を含む共押出し成形した物質について、ある範囲のMRE/MTT比で試験した。
図3からも分かるように、共押出し成形された物質が活性が向上することは、MEL及びMRE(10MR)骨格、又はフィード物1に限定されるものではない。曇り点の引き下げ性能は、触媒比を選択的に変更することによって、調節することが可能である。この検討においては、65/15及び40/40のMRE/MTTが、MTT単独又はMRE単独で含むいずれの物質よりも高い活性を示すが、その一方で、活性がより低いMTT成分を多く含む物質は、MRE単独の場合よりも活性が低かった。
【0088】
図4に、MTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質についての、条件セット2の下での、フィード物2についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示している。MEL/MRE(10MR)骨格を含む共押出し成形した物質の場合と同様に、MRE/MTT骨格を含む物質はすべて、より低いディーゼルロス、したがって、クラッキングでの異性化で、親物質に比較して改良された選択率を示す。このこともまた、単一のMEL骨格物質又は単一のMRE骨格物質又は単一のMTT(10MR)骨格物質に対する共押出し成形した物質の優位性を示している。
【0089】
骨格及びフィード物を異ならせることに加えて、ゼオライトを共押出しするこの技術は、金属成分を変化させることとも組み合わせることができる。
図5は、フィード物2で、条件セット2の下での、ある温度幅における、異なった金属担持量を有するMTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す。
図6に、異なった金属担持量を有するMTT及びMRE(10MR)骨格を含む物質についての、条件セット2の下での、フィード物2についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示している。
図5及び6では、Ni/Mo金属担持量を50%減量した共押出し成形の40MRE/40MTT物質での活性向上を示している(それぞれ重量で、3.4%Ni/14%Moから、1.7%Ni/7.0%Moへ)。これら
図5及び6からもわかるように、50%の金属担持量を有するMTT及びMRE(10MR)骨格での向上した活性及び選択率が、100%の金属触媒を有する同一のMTT及びMRE(10MR)骨格とほぼ同等であり、これは、単一のMTT骨格又は単一のMRE骨格を含むいずれの物質よりも、改良されている。
【0090】
図7は、フィード物2で、条件セット2の下での、ある温度幅における、MTW(12MR)骨格及びMRE(10MR)骨格を含む物質の曇り点の引き下げ性能を示す。
図8に、MTW(12MR)及びMRE(10MR)骨格を含む物質についての、条件セット2の下での、フィード物2についてのディーゼルロス対曇り点の引き下げを示している。MTW骨格とMRE骨格との組合せを含む物質の場合には、MTW(12MR)骨格単独を含む物質と、MRE/MTWを含む物質の共押出し成形物との間で、同等の活性が観察された(
図7)。しかしながら、その共押出し成形された物質は、MTW単独の場合に比較して、ディーゼル収率において1%の改良を示した(
図8)。このことは、単一の骨格を使用するのに代えて、複数の骨格物質を含む共押出し成形物質の優位性を示している。
【0091】
いかなる理論にも束縛される訳ではないが、異なった骨格の物質(及び場合によってはバインダー)を共押出し成形することにより脱蝋触媒を製造することによって、より密な混合と、改良された骨格物質の均質性が得られ、それによって、触媒の中の酸点へのアクセスが改良され、そして、脱蝋プロセスにおけるディーゼルロスの好ましくない増大を伴うことなく、曇り点の引き下げの加速を示すと考えられる。
【0092】
すべての優先権文書、特許、公刊物、及び特許出願、試験手順(たとえばASTM法)、並びに本明細書で引用されたその他の文書は、参照することにより、そのような開示が、本発明と両立する程度で、且つそのような取込みが許される管轄権の範囲で、本明細書に完全に取り入れたものとする。
【0093】
本明細書において、数値の下限及び上限が記載されている場合には、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が、考慮に入っている。
【0094】
本発明を説明するための実施態様を、特定のものについて記述してきたが、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、各種のその他の変更が明らかであり且つ容易に実施することが可能であることは、理解されたい。したがって、本明細書に添付の請求項の範囲が、本明細書において言及された例及び記述に限定されることが意図されている訳ではなく、むしろ、本発明が関連するものに対して、当業者によってその等価物として扱われるべきすべての特色を含めて、それらの請求項が、本発明に含まれる特許可能な新規性の構成をすべて包含すると解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱蝋触媒であって、
(a)2種の異なった10員環のゼオライト、又は1種の10員環のゼオライトと1種の12員環のゼオライトとから選択される、2種の異なったゼオライトの共押出し成形物;及び
(b)パラジウム、白金、パラジウムと白金との混合物、並びにニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より選択される第一の金属と、クロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より選択される第二の金属との混合物からなる群より選択される金属水素添加成分;
を含む脱蝋触媒。
【請求項2】
前記10員環のゼオライトが、EUO、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MWW、MWW、NES、TON、及びそれらの混合物からなる群より選択される骨格タイプを有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記10員環のゼオライトが、ZSM-50、EU-1、ZSM-11、ZSM-5、ZSM-57、ZSM-48、ZSM-23、EMM-10、EMM-12、EMM-13、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56、NU-87、ZSM-22、Theta-1、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記12員環のゼオライトが、
*
BEA、BEC、EMT、FAU、LTL、MEI、MOR、MOZ、MTW、MSE、OFF、及びそれらの混合物からなる群より選択される骨格タイプを有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記12員環のゼオライトが、ベータ、ZSM-2、ZSM-3、ZSM-20、Y、US-Y、L、ZSM-18、モルデナイト、ZSM-10、ZSM-12、MCM-68、オフレタイト、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記2種の異なったゼオライトの共押出し成形物が、ZSM-11とZSM-48との共押出し成形物、又はZSM-23とZSM-48との共押出し成形物、又はZSM-48とZSM-12との共押出し成形物である、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記金属水素添加成分が、ニッケル、コバルト、及びそれらの混合物からなる群より選択される第一の金属、並びにクロム、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物からなる群より選択される第二の金属を含む非貴金属成分である、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記第一の金属が、ニッケル又はコバルトであり、そして前記第二の金属が、モリブデンである、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
前記金属水素添加成分が、パラジウム、白金、及びそれらの混合物、好ましくは白金からなる群より選択される貴金属である、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
バインダーをさらに含み、前記バインダーが、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、チタニア、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
留出油沸点範囲フィード物をトリム脱蝋するためのプロセスであって、留出油沸点範囲フィード物の少なくとも一部を、
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記脱蝋触媒と、効果的な脱蝋条件下で接触させて、ディーゼル沸点範囲の製品を形成させるステップを含
む、プロセス。
【請求項12】
水素化処理条件下で、前記留出油沸点範囲フィード物の一部を、水素化処理触媒と接触させるステップをさらに含む、
請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素化処理触媒及び前記脱蝋触媒が、触媒の積み重ね層の中で流体と接触するように配置されるか、又は混合触媒層の中で混じりあわされているか、又はそれらの組合せである、
請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記効果的な脱蝋条件が、少なくとも
300℃の温度を含む、
請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記脱蝋触媒を形成させる方法であって、前記方法が:
(a)
前記第一のゼオライト、
前記第二のゼオライト、及びバインダーを含む混合物を形成させるステップ;
(b)前記混合物を混練して、押出し成形可能なペーストを形成させるステップ;
(c)前記押出し成形可能なペーストを押出し成形して、押出し成形物を形成させるステップ;及び
(c)前記押出し成形物を
、80℃
~200℃の温度で乾燥させて、乾燥させた押出し成形物を形成させるステップ;
(d)前記乾燥させた押出し成形物を、
前記金属水素添加成分イオンの供給源を含む溶液を用いて含浸させるステップ;及び
(e)前記金属含有押出し成形物を
、80℃
~200℃の温度で乾燥させて、脱蝋触媒を形成させるステップ;
を含む方法。
【請求項16】
前記混合物が水をさらに含み、前記押出し成形可能なペーストの固形分含量が
、45重量%~55重量%である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が
、水酸化テトラエチルアンモニウム、クエン酸、水酸化ナトリウム、硝酸、methocel(商標)、及びそれらの混合物からなる群より選択される
押出し成形助剤をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記脱蝋触媒が硫化される、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記脱蝋触媒を、アンモニウムイオンの供給源と交換させ、水を用いて洗浄し、乾燥させ、そして焼成する、
請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】