(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】重質留分のための水素化分解触媒
(51)【国際特許分類】
C10G 47/16 20060101AFI20230718BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230718BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230718BHJP
B01J 31/38 20060101ALI20230718BHJP
B01J 29/80 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
C10G47/16
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J37/02 101Z
B01J31/38 M
B01J29/80 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577681
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021037389
(87)【国際公開番号】W WO2021257538
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジア、ジフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビ - ゼン
(72)【発明者】
【氏名】メーセン、テオドラス リュドヴィカス、ミカエル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BB16C
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169CC05
4G169DA06
4G169DA07
4G169EA02Y
4G169EA06
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169EC07Y
4G169EC08Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4G169FA08
4G169FB05
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB50
4G169FB57
4G169FB67
4G169FC02
4G169FC08
4G169ZA05A
4G169ZA05B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF07B
4H129AA02
4H129CA09
4H129DA21
4H129KA12
4H129KB03
4H129KB05
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC10X
4H129KC10Y
4H129KC15X
4H129KC15Y
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KD16X
4H129KD16Y
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129KD41X
4H129NA37
(57)【要約】
本プロセスは、炭化水素フィードを単一段階で水素化分解することを含む。触媒は、周期表の第6族及び第8~第10族からの金属、ならびにクエン酸を含浸させた基材を含む。本水素化分解プロセスにおいて使用される触媒の基材は、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ(ASA)材料、USYゼオライト、及びベータゼオライトを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化分解プロセスであって、
炭化水素フィードを、前記フィードが水素化分解条件下で水素化分解される単一段階の水素化分解ユニットに送ることを含み、前記水素化分解ユニット内の触媒は、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ材料、USYゼオライト、及びベータゼオライトから構成される基材を含み、前記触媒は、クエン酸を含む、前記水素化分解プロセス。
【請求項2】
前記基材は、0.1~40重量%のアルミナ、20~80重量%のASA、0.5~60重量%のUSYゼオライト、及び0.5~40重量%のベータゼオライトを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記フィードは、VGOを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
重質留分(530~700°Fの範囲内で沸騰する)の収率が、55重量%の転化率で少なくとも16重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
留分(380~700°Fの範囲内で沸騰する)の収率が、55重量%の転化率で少なくとも32.5重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒は、前記基材に含浸させたニッケル(Ni)及びタングステン(W)の金属を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒は、前記水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、2~10重量%のニッケル前駆体、及び8~40重量%のタングステン前駆体を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記水素化分解ユニットにおける触媒は、
(a)触媒基材を含む押し出し可能な塊を形成することと、
(b)前記塊を押し出して、成形された押し出し物を形成することと、
(c)前記塊を焼成して、焼成された押し出し物を形成することと、
(d)少なくとも1つの金属塩、溶媒及びクエン酸を含む含浸溶液を調製することと、
(e)前記成形された押し出し物を前記含浸溶液と接触させることと、
(f)前記含浸溶液の溶媒を除去するのに十分な温度で、前記含浸された押し出し物を乾燥させて、乾燥させた含浸押し出し物を形成することと、により調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記含浸溶液は、炭酸ニッケルを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
アルミナ、非晶質シリカアルミナ、USYゼオライト、及びベータゼオライトの基材を含み、前記基材は、クエン酸ならびに周期表の第6族及び第8~第10族から選択される金属を含浸させられる、水素化分解触媒。
【請求項11】
前記基材は、前記基材の乾燥重量を基準にして、5~40重量%のアルミナ、20~30重量%のASA、1~50重量%のUSYゼオライト、及び4~20重量%のベータゼオライトを含む、請求項10に記載の水素化分解触媒。
【請求項12】
前記触媒は、前記基材に含浸させたニッケル(Ni)及びタングステン(W)の金属を含む、請求項10に記載の水素化分解触媒。
【請求項13】
前記触媒は、前記水素化分解触媒の乾燥重量を基準にして、2~10重量%のニッケル前駆体、及び8~40重量%のタングステン前駆体を含む、請求項12に記載の水素化分解触媒。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
触媒的水素化処理は、望ましくない不純物を除去する目的のため、及び/または原料油を改善された生成物に変換する目的のため、炭素質原料油が高温高圧で水素及び触媒と接触させられる石油精製プロセスを指す。水素化処理のプロセスの例は、水素化処置、水素化脱金属、水素化分解、及び水素化異性化プロセスを含む。
【0002】
水素化処理触媒は、典型的には、非晶質酸化物及び/または結晶質細孔性材料(例えばゼオライト)からなる支持体または担体に蒸着された、1つ以上の金属からなる。支持体及び金属の選択は、触媒が利用される特定の水素化処理プロセスに依存する。
【0003】
水素化分解は、石油原油中の高沸点の構成炭化水素を、ガソリン、灯油、ジェット燃料、及びディーゼル油のような、より価値のある低沸点の生成物に変換するために、石油精製所において使用される、触媒的化学的プロセスである。このプロセスは、水素富化雰囲気中で、高温(260~425℃)及び高圧(35~200bar)で行われる。
【0004】
多くの現在の水素化分解触媒は、ジェット燃料及び全中間留分の収率を最大化する。より良好な重質留分の選択性を有する水素化分解触媒は、業界で高く評価されるであろう。
【発明の概要】
【0005】
要約
水素化分解プロセスにおいて本プロセスの新規な触媒を利用することが、重質留分の生成を改善することが発見された。このプロセスは、炭化水素フィードを単一段階で水素化分解することを含む。本水素化分解プロセスの単一段階において使用される触媒は、周期表の第6族及び第8~第10族からの金属を含浸させた基材を含む。単一の水素化分解段階において使用される触媒の基材は、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ(ASA)材料、USYゼオライト、及びベータゼオライトを含む。触媒はまた、具体的にはクエン酸を含む。
【0006】
数ある要因の中でも、本触媒の使用が、単一段階の水素化分解ユニットにおいて多く利点を実現することが発見された。この触媒系は、所望の重質留分生成物に対する改善された選択性をもたらす。金属及びクエン酸の存在と本基材の成分との間の、相乗効果が発見された。
【0007】
好ましい実施形態の説明
本プロセスは、炭化水素フィードを単一のステップで水素化分解することに関する。このプロセスは、重質ディーゼル(沸点530~700°F)の収率及び転化率を改善するように設計されている。このプロセスは、アルミナ、非晶質シリカ-アルミネート(ASA)、USYゼオライト、及びベータゼオライトから構成される基材を含む、特定の触媒を利用する。基材は、周期表の第6族及び第8~第10族から選択された触媒金属、好ましくはニッケル(Ni)及びタングステン(W)で、多くの場合、塩または酸化物として含浸される。「周期表」という用語は、IUPAC Periodic Table of the Elements dated June 22, 2007のバージョンを指し、周期表群の番号付け方式は、Chemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に記載されている通りである。基材は、クエン酸で含浸される。特にニッケルのような金属及び本基材の成分と組み合わせられたクエン酸は、重質留分生成物(沸点530~700°F)(277~371℃)に対する改善された選択性をもたらすことが見出されている。
【0008】
触媒の基材は、基材の乾燥重量を基準にして、約0.1~約40重量%のアルミナ基材、別の実施形態においては約5~約40重量%、または別の実施形態においては約10~約30重量%のアルミナを含むことができる。別の実施形態においては、約20重量%のアルミナを使用することができる。触媒の基材はまた、基材の乾燥重量を基準にして、約20~約80重量%のASA、または別の実施形態においては約20~約30重量%のASAを含むことができる。Yゼオライトは、基材の乾燥重量を基準にして、基材の20~約60重量%を構成することができる。別の実施形態においては、Yゼオライトは、基材の約25~約55重量%、または別の実施形態においては、基材の約30~約50重量%を構成することができる。ベータゼオライトは、基材の乾燥重量を基準にして、基材の0.5~約40重量%を構成することができる。別の実施形態においては、ベータゼオライトは、基材の約1~約30重量%、または別の実施形態においては基材の約4~約20重量%を構成することができる。
【0009】
全体として、一実施形態における最終的な触媒組成物は、触媒の乾燥重量を基準にして、10~30重量%のアルミナ、または別の実施形態においては10~20重量%を含む。一実施形態においては、シリカ-アルミナ(ASA)もまた、触媒の乾燥重量を基準にして、10~30重量%、または別の実施形態においては10~20重量%の量だけ存在することができる。一実施形態におけるYゼオライトは、触媒の乾燥重量を基準にして、触媒組成物の20~50重量%、または別の実施形態においては30~50重量%を構成する。ベータゼオライトは、一実施形態においては、触媒の乾燥重量を基準にして、触媒組成物の5~20重量%、または別の実施形態においては5~10重量%を構成することができる。
【0010】
アルミナは、触媒基材における使用のために既知である任意のアルミナとすることができる。例えば、アルミナは、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ、χ-アルミナ、またはこれらの混合物とすることができる。
【0011】
触媒支持体のASAは、平均メソ細孔径が一般に70Å~130Åである、非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0012】
一実施形態においては、非晶質シリカ-アルミナ材料は、ICP元素分析によって判定される担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量のSiO2を含み、BET表面積は、450~550m2/gであり、全細孔体積は、0.75~1.15mL/gである。
【0013】
別の実施形態においては、触媒支持体は、ICP元素分析によって判定される担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量のSiO2を含有する非晶質シリカ-アルミナ材料であり、BET表面積は、450~550m2/gであり、全細孔体積は、0.75~1.15mL/g、平均メソ孔径は70Å~130Åである。
【0014】
別のサブ実施形態においては、触媒支持体は、0.7~1.3の表面対バルクのシリカ対アルミナ比(S/B比)、及び約10重量%以下の量で存在する結晶性アルミナ相を有する、高度に均質な非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【数1】
【0015】
S/B比を判定するために、シリカ-アルミナ表面のSi/Al原子比は、X線光電子分光法(XPS)を使用して測定される。XPSは、化学分析用電子分光法(ESCA)としても既知である。XPSの侵入深さは50Å未満であるため、XPSにより測定されるSi/Al原子比は、表面化学組成についてのものである。
【0016】
シリカアルミナの特性評価のためのXPSの使用は、W. Daneiell et al. in Applied Catalysis A, 196, 247-260, 2000において発表されている。それ故、XPS技術は、触媒粒子表面の外層の化学組成を測定するのに有効である。表面組成の測定のためには、オージェ電子分光法(AES)及び二次イオン質量分析法(SIMS)のような、他の表面測定技術も使用され得る。
【0017】
別途、組成物のバルクSi/Al比が、ICP元素分析から判定される。次いで、表面Si/Al比をバルクSi/Al比と比較することにより、S/B比及びシリカ-アルミナの均質性が判定される。S/B比がどのように粒子の均質性を定義するかは、以下のように説明される。1.0のS/B比は、粒子全体で材料が完全に均質であることを意味する。1.0未満のS/B比は、粒子表面がアルミニウムで富化されており(またはケイ素が枯渇しており)、アルミニウムが粒子の外面に支配的に位置していることを意味する。1.0超のS/Bは、粒子表面がケイで富化されており(またはアルミニウムが枯渇しており)、アルミニウムが粒子の内部領域に支配的に位置していることを意味する。
【0018】
「ゼオライトUSY」は、超安定化Yゼオライトを指す。Yゼオライトは、3以上のSARを有する合成フォージャサイト(FAU)ゼオライトである。Yゼオライトは、熱水安定化、脱アルミ化、及び同型置換のうちの1つ以上によって超安定化することができる。ゼオライトUSYは、出発(合成されたときの)N-Yゼオライト前駆体よりも高い骨格シリコン含有量を有する、任意のFAU型ゼオライトとすることができる。かかる好適なYゼオライトは、例えば、Zeolyst International, Tosoh Corporation, and JGC Catalyst and Chemicals Ltd. (JGC CC)から市販されている。
【0019】
ゼオライトベータは、交差した12員環のチャネルを伴う直線の12員環のチャネルを有するチャネル3次元結晶構造を有し、約15.3T/1000Å3の骨格密度を有するゼオライトを指す。ゼオライトベータは、Ch. Baerlocher and L. B. McCusker, Database of Zeolite Structures: http://www.iza-structure.org/databases/に記載されたようなBEA骨格を有する。
【0020】
一実施形態においては、ゼオライトベータは、20~400μmol/gのOD酸性度及び800~1500nm2の平均ドメインサイズを有する。一実施形態においては、OD酸性度は、30~100μmol/gである。
【0021】
一実施形態においては、ゼオライトベータは、有機テンプレートを使用して合成的に製造される。3つの異なるゼオライトベータの例が、表1に記載されている。
【表1】
【0022】
全OD酸性度は、FTIR分光法による酸性ヒドロキシル基のH/D交換によって判定された。全OD酸性度を判定する方法は、Emiel J. M. Hensen et. al., J. Phys. Chem., C2010, 114, 8363-8374による文献において記載された方法から適用された。FTIR測定の前に、試料は、1×10-5Torrよりも低い真空下において400~450℃で1時間加熱された。次いで、試料は、C6D6をドーズされて80℃で平衡となった。C6D6のドーズの前後に、OH及びOD伸縮領域についてスペクトルが収集された。
【0023】
平均ドメインサイズは、透過電子(TEM)とデジタル画像分析との組み合わせにより、以下のように判定された:
【0024】
I.ゼオライトベータ試料の調製:
【0025】
ゼオライトベータ試料は、少量のゼオライトベータをエポキシに埋め込み、ミクロトーミングすることにより調製された。好適な手順の説明は、多くの標準的な顕微鏡法の教科書に見出すことができる。
【0026】
ステップ1.ゼオライトベータ粉末の少量の代表部分が、エポキシに埋め込まれた。エポキシが硬化された。
【0027】
ステップ2.ゼオライトベータ粉末の代表部分を含有するエポキシが、80~90nmの厚さにミクロトーミングされた。ミクロトーム切片は、顕微鏡供給業者から入手可能な400メッシュの3mm銅グリッド上に収集された。
【0028】
ステップ3.ゼオライトベータ試料がTEMにおける電子ビーム下で帯電することを防止するため、電気伝導性炭素の十分な層が、ミクロトーミングされた切片上に真空蒸着された。
【0029】
II.TEM撮像:
【0030】
ステップ1.以上に説明された調製されたゼオライトベータ試料が、例えば250,000~1,000,000×のような低倍率で調査され、ゼオライトベータチャンネルが見られる結晶を選択した。
【0031】
ステップ2.選択されたゼオライトベータ結晶が、そのゾーン軸上へと傾けられ、Scherzerの焦点外れの近くに合焦され、画像が2,000,000×以上で記録された。
【0032】
III.平均ドメインサイズ(nm2)を得るための画像解析:
【0033】
ステップ1.以上に説明された記録されたTEMデジタル画像が、市販の画像分析ソフトウェアパッケージを使用して分析された。
【0034】
ステップ2.個々のドメインが分離され、ドメインサイズがnm2で測定された。チャネルビューへの明確な投影がないドメインは、測定に含まれなかった。
【0035】
ステップ3.統計的に有意な数のドメインが測定された。生データは、コンピュータのスプレッドシートプログラムに保存された。
【0036】
ステップ4.記述統計量、及び頻度が判定された。算術平均(dav)または平均ドメインサイズ、及び標準偏差(s)が、以下の式を用いて計算された:
平均ドメインサイズ、dav=(anidi)/(ani)
標準偏差、s=(a(di-dav)2/(ani))1/2
【0037】
一実施形態においては、平均ドメインサイズは、900~1250nm2、例えば、1000~1150nm2である。
【0038】
本明細書で以上に説明されたように、本プロセスの水素化分解触媒は、1つ以上の金属を含有し、この金属は、以上に説明された基材または支持体に含浸される。本明細書に記載される各実施形態について、利用される各金属は、周期表の第6族及び第8~第10族からの元素、及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態においては、各金属は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態においては、水素化分解触媒は、少なくとも1つの6族金属と、周期表の第8~第10族から選択される少なくとも1つの金属と、を含有する。例示的な金属の組み合わせは、Ni/Mo/W、Ni/Mo、Ni/W、Co/Mo、Co/W、Co/W/Mo、及びNi/Co/W/Moを含む。
【0039】
水素化分解触媒中の金属塩材料の総量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、0.1重量%~90重量%である。一実施形態においては、水素化分解触媒は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、2重量%~10重量%のニッケル塩、及び8重量%~40重量%のタングステン塩を含有する。
【0040】
水素化分解触媒の形成において、希釈剤が利用され得る。好適な希釈剤は、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素のような無機酸化物、酸化チタン、クレイ、セリア、及びジルコニア、ならびにこれらの混合物を含む。水素化分解触媒中の希釈剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、0重量%~35重量%である。一実施形態においては、水素化分解触媒中の希釈剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして0.1重量%~25重量%である。
【0041】
本プロセスの水素化分解触媒は、リン(P)、ホウ素(B)、フッ素(F)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の促進剤を含有することができる。水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、0重量%~10重量%である。一実施形態においては、水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、0.1重量%~5重量%である。
【0042】
水素化分解触媒の調製
一実施形態においては、少なくとも触媒支持体を含浸溶液と接触させることによって、金属蒸着が達成される。含浸溶液は、金属硝酸塩または金属炭酸塩のような少なくとも1つの金属塩、及び溶媒を含有し、1~5.5(両端値を含む)のpHを有する(1≦pH≦5.5)。最も重要なことに、含浸液は、クエン酸を更に含有する。一実施形態において、成形された水素化分解触媒は、
(a)アルミナ、非晶質シリカアルミナ(ASA)、USYゼオライト及びベータゼオライトから構成される触媒基材を含有する、押し出し可能な塊を形成することと、
(b)塊を押し出して、成形された押し出し物を形成することと、
(c)塊を焼成して、焼成された押し出し物を形成することと、
(d)成形された押し出し物を、少なくとも1つの金属塩、溶媒、クエン酸を含有し、1~5.5(両端値を含む)のpHを有する(1≦pH≦5.5)含浸溶液と接触させることと、
(e)含浸溶液の溶媒を除去するのに十分な温度で、含浸された押し出し物を乾燥させて、乾燥させた含浸押し出し物を形成することと、により調製される。
【0043】
別の実施形態においては、成形された水素化分解触媒は、
(a)アルミナ、非晶質シリカアルミナ(ASA)、USYゼオライト及びベータゼオライトから構成される触媒基材を含有する、押し出し可能な塊を形成することと、
(b)塊を押し出して、成形された押し出し物を形成することと、
(c)塊を焼成して、焼成された押し出し物を形成することと、
(d)成形された押し出し物を、少なくとも1つの金属塩、溶媒、及びクエン酸を含有する含浸溶液であって、1~5.5(両端値を含む)のpHを有する(1≦pH≦5.5)含浸溶液と接触させることと、
(e)クエン酸の分解温度よりも低いが、含浸溶液の溶媒を除去するのに十分な温度で、含浸された押し出し物を乾燥させて、乾燥させた含浸押し出し物を形成することと、により調製される。
【0044】
別の実施形態においては、成形水素化分解触媒は、
(a)アルミナ、非晶質シリカアルミナ(ASA)、USYゼオライト及びベータゼオライトから構成される触媒基材を含有する、押し出し可能な塊を形成することと、
(b)塊を押し出して、成形された押し出し物を形成することと、
(c)塊を焼成して、焼成された押し出し物を形成することと、
(d)成形された押し出し物を、少なくとも1つの金属塩、溶媒、及びクエン酸を含有する含浸溶液であって、1~5.5(両端値を含む)のpHを有する(1≦pH≦5.5)含浸溶液と接触させることと、
(e)クエン酸の分解温度よりも低いが、含浸溶液の溶媒を除去するのに十分な温度で、含浸された押し出し物を乾燥させて、乾燥させた含浸押し出し物を形成することと、
(f)乾燥させた含浸押し出し物を十分に焼成して、少なくとも1つの金属を酸化物に変換することと、により調製される。
【0045】
一実施形態においては、触媒基材を含有する押し出し可能な塊を形成する際に、弱酸が使用される。例えば、一実施形態においては、0.5~5重量%のHNO3からの希釈されたHNO3酸性水溶液が使用される。
【0046】
一実施形態においては、含浸溶液は、金属炭酸塩を含む。炭酸ニッケルは、本触媒の調製における使用のための好ましい金属炭酸塩である。
【0047】
希釈剤、促進剤及び/または分子篩(利用される場合)は、押し出し可能な塊を形成するときに担体と組み合わされ得る。別の実施形態においては、担体及び(任意選択的に)希釈剤、促進剤及び/または分子篩は、所望の形状に形成される前または後に含浸させることができる。
【0048】
本明細書に記載される各実施形態について、含浸溶液は、1~5.5(両端値を含む)のpHを有する(1≦pH≦5.5)。一実施形態においては、含浸溶液は、1.5~3.5(両端値を含む)のpHを有する(1.5≦pH≦3.5)。
【0049】
含浸液はまた、クエン酸を含む必要がある。クエン酸の存在は、金属及び基材の成分との組み合わせで、重質留分生成物に対する有利な選択性を提供することが見出されている。本明細書に記載される各実施形態について、予め焼成された水素化分解触媒中のクエン酸の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量を基準にして、2重量%~18重量%である。
【0050】
含浸液を形成するために使用される金属塩、クエン酸、及び他の成分に依存して、基本成分の添加の前に、含浸液は、典型的には1未満のpH、かつより典型的には約0.5のpHを有する。含浸液に基本成分を添加して1及び5.5(両端値を含む)へのpH調節(1≦pH≦5.5)に影響を与えることによって、酸濃度が除去されるか、または、焼成の間に、水素化分解触媒に悪影響を与えるのに十分な急速な速度で硝酸アンモニウムの分解を酸触媒しないレベルにまで低減させられる。一実施形態においては、酸濃度が除去されるか、または、焼成の間に、水素化分解触媒のバルク乾燥重量の10重量%超に悪影響を与えるのに十分な急速な速度で硝酸アンモニウムの分解を酸触媒しない(例えば、焼成後の水素化分解触媒のバルク乾燥重量の10重量%超を占める微細なまたは破砕された押し出し物を生成しない)レベルにまで低減させられる。
【0051】
基本成分は、含浸溶液のために選択された溶媒に溶解することができ、触媒の形成または触媒の水素化分解性能に対して実質的に有害でない(基材が、水素化分解触媒の性能に対して測定可能な影響を有さないか、または物質的不利益を与えないことを意味する)、任意の基材とすることができる。触媒の形成に実質的に有害でない基材は、pH補正なしで、水素化分解触媒の性能に基づいて、触媒活性を10°F(5.5℃)超、低減させない。
【0052】
水素化分解触媒が本水素化分解プロセスにおいて使用される場合、1つの好適な基材は、水酸化アンモニウムである。他の例示的な基材は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムを含む。
【0053】
押し出された塊の焼成は、様々なものとなり得る。典型的には、押し出された塊は、752°F(400℃)~1200°F(650℃)の温度で、1時間~3時間の間焼成することができる。
【0054】
好適な溶媒の非限定的な例は、水及びC1~C3アルコールを含む。他の好適な溶媒は、アルコール、エーテル、及びアミンのような極性溶媒を含むことができる。水は、好ましい溶媒である。また、金属化合物が水溶性であり、各々の溶液が形成されること、または両方の金属を含有する単一の溶液が形成されることが好ましい。改質剤は、好適な溶媒、好ましくは水の中で調製することができる。
【0055】
3つの溶媒成分は、任意の順序で混合することができる。すなわち、3つ全てを、同時に一緒にブレンドすることができるか、または任意の順序で順次混合することができる。一実施形態においては、まず水性媒体中で1つ以上の金属成分を混合し、次いで改質剤を添加することが好ましい。
【0056】
含浸溶液中の金属前駆体及びクエン酸の量は、乾燥後の触媒前駆体中のクエン酸に対する金属の好ましい比を達成するように選択されるべきである。
【0057】
焼成された押し出し物は、初期湿潤が達成されるまで、典型的には室温~212°F(100℃)で0.1~100時間の間(より典型的には1~5時間の間)、押し出し物を回転させながら含浸溶液に曝露され、続いて0.1~10時間、典型的には約0.5~5時間、エージングを行う。
【0058】
乾燥ステップは、含浸溶液の溶媒を除去するのに十分であるが、改質剤の分解温度よりも下の温度で実施される。別の実施形態においては、乾燥させた含浸押し出し物は次いで、改質剤の分解温度よりも高い温度、典型的には約500°F(260℃)~1100°F(590℃)で、効果的な量の時間の間、焼成される。本発明は、含浸押し出し物が焼成されるべき場合、温度が意図された焼成温度に上昇させられているまたは高められている期間の間に、乾燥を受けることを企図するものである。この効果的な量の時間は、約0.5~約24時間、典型的には約1~約5時間の範囲となる。焼成は、空気のような流れる酸素含有ガス、窒素のような流れる不活性ガス、または酸素含有ガスと不活性ガスとの組み合わせの存在下で、実行することができる。
【0059】
一実施形態において、含浸された押し出し物は、金属を金属酸化物に変換しない温度で焼成される。更に別の実施形態においては、含浸された押し出し物は、金属を金属酸化物に変換するのに十分な温度で焼成することができる。
【0060】
本発明の乾燥させた及び焼成された水素化分解触媒は、活性触媒を形成するために硫化することができる。触媒を形成するための触媒前駆体の硫化は、反応器への触媒の導入の前に実行することができる(したがって、外部前硫化)か、または反応器内で実行することができる(内部硫化)。
【0061】
好適な硫化剤は、元素硫黄、硫化アンモニウム、ポリ硫化アンモニウム([(NH4)2Sx])、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、チオ尿素CSN2H4、二硫化炭素、二硫化ジメチル(DMDS)、硫化ジメチル(DMS)、ジブチルポリスルフィド(DBPS)、メルカプタン、ターシャリーブチルポリスルフィド(PSTB)、ターシャリーノニルポリスルフィド(PSTN)、水性硫化アンモニウムを含む。
【0062】
一般に、硫化剤は、硫化触媒を形成するために必要とされる化学量論的な量を超える量で存在する。別の実施形態においては、硫化剤の量は、硫化触媒を生成するために少なくとも3対1の硫黄対金属のモル比を表す。
【0063】
触媒は、150°F~900°F(66℃~482℃)の温度で、10分~15日間、101kPa~25000kPaのH2含有ガス圧力下で硫化剤と接触させると、活性硫化触媒に変換される。硫化温度が硫化剤の沸点より低い場合には、プロセスは、一般に、大気圧で実行される。硫化剤/任意選択的な成分の沸点の上では、反応は、一般に、増加された圧力で実行される。本明細書で使用される、硫化プロセスの完了は、金属を例えばCO9S8、MoS2、WS2、Ni3S2等に変換するために必要な化学量論的な硫黄量の少なくとも95%が消費されたことを意味する。
【0064】
一実施形態においては、硫化は、水素、及びH2Sに分解可能な硫黄含有化合物を用いて、気相において完了まで実行することができる。例は、メルカプタン、CS2、チオフェン、DMS、DMDS、及び好適なS含有精製所排出ガスを含む。H2と硫黄含有化合物とのガス混合物は、これらのステップにおいて、同じまたは異なるものとすることができる。気相における硫化は、固定床プロセス及び移動床プロセス(例えば沸騰プロセス及び回転炉のような、触媒が反応器に対して移動するもの)を含む、任意の好適な方法で行うことができる。
【0065】
水素を有する触媒前駆体と硫黄含有化合物との接触は、68°F~700°F(20℃~371℃)の温度において101kPa~25,000kPaの圧力で1~100時間の期間の間、1つのステップで行うことができる。典型的には、硫化は、温度を段階的に増加または上昇させ、完了まで、ある期間にわたって保持されて、行われる。
【0066】
硫化の別の実施形態においては、硫化は、気相で生じ得る。硫化は、2つ以上のステップで行われ、最初のステップは、後続のステップ(複数可)よりも低い温度である。
【0067】
一実施形態においては、硫化は、液相で実行される。最初に、触媒前駆体が、触媒の総細孔容積の20%~500%の範囲内の量で、有機液体と接触させられる。有機液体との接触は、周囲温度から248°F(120℃)までの範囲の温度で行うことができる。有機液体の取り込みの後、触媒前駆体が水素及び硫黄含有化合物と接触させられる。
【0068】
一実施形態において、有機液体は、200°F~1200°F(93℃~649℃)の沸騰範囲を有する。例示的な有機液体は、重油のような石油留分、鉱物性潤滑油のような潤滑油留分、常圧軽油、真空軽油、直留軽油、揮発油、ディーゼル、ジェット燃料及び暖房油のような中間留分、ナフサ、ならびにガソリンを含む。一実施形態においては、有機液体は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満の硫黄を含有する。
【0069】
本プロセスは、単一段階の水素化分解プロセスである。水素化分解プロセスは、炭化水素原料油を水素化分解条件下で本触媒と接触させて、重質(530°F~700°F)留分を含む流出物を単一段階で生成することを含む。一実施形態においては、触媒は、リサイクルありまたはリサイクルなし(貫流型)の単一段階の水素化分解ユニットにおいて、1つ以上の固定床において利用される。任意選択的に、単一段階の水素化分解ユニットは、並行して操作される複数の単一段階のユニットを利用し得る。
【0070】
好適な炭化水素原料油は、ビスブロークン軽油(VGB)、重質コーカー軽油、残留物水素化分解または残留物脱硫から得られる軽油を含む。他の熱分解油、脱歴油、フィッシャー-トロプシュ由来の原料油、FCCユニットからの循環油、重質石炭由来の留分、石炭ガス化副生タール、重質頁岩由来の油、パルプもしくは製紙工場からのものまたは廃棄バイオマス熱分解ユニットからのもののような有機廃油。
【0071】
水素化分解条件は、175℃~485℃の範囲内の温度、1~100の水素対炭化水素電荷のモル比、0.5~350barの範囲内の圧力、及び0.1~30の範囲内の液空間速度(LHSV)を含む。本触媒基材を単一段階の水素化分解プロセスにおいて使用することにより、より望ましい重質留分(530~700°F;277~371℃)生成物の改善が観察されることが見出された。700°F(371℃)未満への約55重量%の合成水素化分解転化率で、生成物の重量を基準にして16重量%超の収率を提供する選択性が観察される。別の実施形態においては、収率は、16.5重量%超である。一実施形態においては、収率は、約16~約20重量%である。収率は、ゼオライトベータ及びクエン酸の使用なしで調製された比較用触媒試料Aと比較して、約55重量%の転化率で少なくとも16%大きい。380~700°F(193~371℃)の範囲内で、及び更には300~700°F(149~371℃)の範囲内で沸騰する留出物の全体的な向上させられた量も達成される。380~700°F(193~371℃)の範囲内では、55重量%の転化率で、収率は少なくとも32.5重量%、一実施形態においては32.5~36重量%となり得る。向上させられた収率は、約55重量%の転化率で比較して、少なくとも2%大きい。
【0072】
例
例1:触媒(試料)A-比較用水素化分解触媒
比較用水素化分解触媒が、以下の手順で調製された:21.0重量部のシリカアルミナ粉(Sasolから取得)、23.0重量部の擬ベーマイトアルミナ粉(Sasolから取得)、56.0重量部のゼオライトY(Zeolyst、JGC CC、Tosohからのもの)が十分に混合された。混合粉末に、希釈されたHNO3酸性水溶液(3重量%)が添加されて、押し出し可能なペーストを形成した。ペーストが、1/16”の非対称四裂片状円筒形状に押し出され、250°F(121℃)で一晩乾燥させた。乾燥させた押し出し物が、過剰の乾燥空気をパージしながら1100°F(593℃)で1時間焼成され、室温に冷却された。
【0073】
メタタングステン酸アンモニウム水和物(AMT)及び硝酸ニッケル六水和物を含有する溶液を使用して、完成触媒のバルク乾燥重量に対して4.0重量%のNiO及び25.1重量%のWO3の目標金属担持量まで、Ni及びWの含浸が行われた。触媒は、212°F(100℃)で2時間乾燥させられ、950°F(510℃)で1時間焼成された。この触媒は、触媒Aと名付けられ、その物理的特性は、以下の表2にまとめられている。
【0074】
例2:試料B及びCの合成
2つの水素化分解触媒試料(試料B及び試料C)が以下のように合成された:
【0075】
触媒基材の合成、2つの試料B及びCは、以下のように調製された同じ基材を共有する:
【0076】
21.0部(乾燥基準)のシリカアルミナ粉(Sasolから取得)、23.0部(乾燥基準)の擬ベーマイトアルミナ粉(Sasolから取得)、45.0重量部(乾燥基準)のゼオライトY(Zeolyst、JGC CC、Tosohからのもの)、及び11.0部のゼオライトベータ(Clariant、China Catalyst Group、Zeolystから取得)を、希釈したHNO3と混合して、53重量%の揮発分と3重量%のHNO3(計算には完全な乾燥基材の重量が使用される)との混合物を得る。次いで、混合物が、1/16”の円筒(L)形状に押し出され、250°F(121℃)で一晩乾燥させた。乾燥させた押し出し物は、過剰の乾燥空気をパージしながら1100°F(593℃)で1時間焼成され、室温に冷却された。
【0077】
金属及びクエン酸の含浸を伴う試料Bの合成:30gのクエン酸、17.5gの炭酸ニッケル(51重量%のNiO)、及び58.8gのATMを含有し、150gの上記触媒基材の水孔容積に等しい体積を有する溶液が、50℃で作製された。金属溶液が次いで、122°F(50℃)で1時間、150g(乾燥基準)の上記触媒基材に含浸させた。次いで、触媒が、212°F(100℃)で2時間乾燥させた。
【0078】
金属の含浸を伴うがクエン酸の含浸を伴わない試料Cの合成:38.8gの硝酸ニッケル六水和物、及び58.8gのATMを含有し、150gの上記触媒基材の水孔容積に等しい体積を有する溶液が、室温で作製された。金属溶液が次いで、室温で1時間、150g(乾燥基準)の上記触媒基材に含浸させた。触媒が、212°F(100℃)で2時間乾燥させられ、950°F(510℃)で1時間焼成された。
【0079】
2つの試料の物性及び化学組成が、試料Aとともに表2に列記される。これらは互いに類似しているが、試料Bの細孔容積は、試料Cのものよりも小さい。
【0080】
【0081】
例3:水素化分解試験
3つの試料の全てが、同じ試験プロトコル(50/50vol%のICR511/触媒試料、直留VGOフィード、2300psigの全圧、6000SCFBのH2レート)で試験された。水素化分解の前処理触媒ICR511の後の流出液中の窒素濃度は、約20ppmに制御された。
【0082】
直留VGO原料油の特性が表3にまとめられている:
【表3】
【0083】
試験結果は表4にまとめられている。
【0084】
クエン酸を有するベータゼオライトは、重質留分(530~700°F)及び全留分(300~700°F)の収率の改善に役立つことが明らかである。ベータ含有触媒系へのクエン酸の添加の相乗効果は、特に重質留分(530~700°F)に対する選択性を改善する。
【表4】
【国際調査報告】