(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】抗B7H4抗体及びその二重特異性抗体および用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230718BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230718BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230718BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230718BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230718BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230718BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230718BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230718BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230718BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230718BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230718BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20230718BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20230718BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230718BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230718BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K14/705
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K35/17
A61K51/10 100
A61K38/43
A61K38/19
A61K47/68
A61P35/00
G01N33/53 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578889
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2021102952
(87)【国際公開番号】W WO2022002012
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010618159.5
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522493078
【氏名又は名称】諾納生物(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nona Biosciences (Suzhou) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Suite 202, Building A3, 218 Xinghu Street, Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 215000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】呉 暁東
(72)【発明者】
【氏名】王 永強
(72)【発明者】
【氏名】陳 飛
(72)【発明者】
【氏名】何 進秋
(72)【発明者】
【氏名】賈 鴿子
(72)【発明者】
【氏名】趙 楚楚
(72)【発明者】
【氏名】陳 慶芳
(72)【発明者】
【氏名】戎 一平
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA12
4C084BA44
4C084DA01
4C084DC01
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA25
4C085AA27
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、B7H4を標的とする抗体またはその変異体、およびB7H4を標的とする抗体を含む二重特異性抗体を開示した。その中で、前記B7H4を標的とする抗体が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記変異体は前記抗体の軽鎖可変領域または重鎖可変領域にアミノ酸突然変異が発生し、且つ前記抗体の機能を維持できる。本発明のB7H4を標的とする抗体は、ヒトB7H4およびカニクイザルB7H4と結合する活性を有し、その他のB7ファミリーメンバーと交差反応がなく;体内及び体外実験は良好な抗腫瘍活性、T細胞を活性化させる活性および内在化活性を呈し、ADC薬物に適している。本発明の二重特異性抗体は、長い半減期を有し、良好な安定性および親水性が保留され、薬効を保証する前提で毒性を小さくした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B7H4を標的とする抗体またはその変異体であって、
前記抗体は軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、その中で、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;
前記変異体は前記抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域にアミノ酸突然変異が発生し、且つ前記抗体の機能を維持でき;好ましく、前記アミノ酸突然変異はアミノ酸の置換であり、前記アミノ酸の置換の数は1-3個である、抗体またはその変異体。
【請求項2】
前記変異体は前記抗体の重鎖可変領域のHCDR2の第3位または第4位、HCDR3の第3位にアミノ酸の置換が発生し、および/または、前記抗体の軽鎖可変領域のLCDR3の第4位にアミノ酸の置換が発生し;好ましく、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、55及び66に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び69に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び38に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、請求項1に記載の抗体またはその変異体。
【請求項3】
前記重鎖可変領域がさらに重鎖可変領域フレームワーク領域HFWRを含み、および/または、前記軽鎖可変領域がさらに軽鎖可変領域フレームワーク領域LFWRを含み、その中で、前記HFWRはヒト抗体の重鎖可変領域フレームワーク領域であり、前記LFWRはヒト抗体の軽鎖可変領域フレームワーク領域であり;好ましく、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 88に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 89に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 93に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 83に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその変異体。
【請求項4】
前記抗体がさらに重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域を含み;好ましく、前記抗体の重鎖定常領域がhIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4から選択され、前記軽鎖定常領域がκ鎖もしくはλ鎖から選択され;より好ましく、前記変異体は前記抗体のFcの第239位および/または第332位にアミノ酸の置換が発生し、好ましく前記アミノ酸はS239Dおよび/またはI332Eに置換される、請求項1-3のいずれか一項に記載の抗体またはその変異体。
【請求項5】
前記抗体は全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFvまたはこれらの抗体から作製されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項1-4のいずれか一項に記載の抗体またはその変異体。
【請求項6】
(1)重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖がSEQ ID NO: 95に示すアミノ酸配列を含み;軽鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、前記重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 112に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 113に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 99に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 100に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 101に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 102に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 106に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 117に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 103に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 112に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 103に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
(2)重鎖を含み、前記重鎖がSEQ ID NO: 132に示すアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
Aタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域を含み、その中で、前記Aタンパク質機能領域は請求項1-6のいずれか一項に記載のB7H4を標的とする抗体であり;前記Bタンパク質機能領域はB7H4を標的としない抗体であり;好ましく、前記B7H4を標的としない抗体はCD3を標的とする抗体であり;より好ましく、前記CD3を標的とする抗体が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、その中で、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;より一層好ましく、前記CD3を標的とする抗体において、前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;または、軽鎖可変領域VLがSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域VHがSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;または、軽鎖可変領域VLがSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域VHがSEQ ID NO: 84に示すアミノ酸配列を含む、B7H4を標的とする二重特異性抗体。
【請求項8】
前記Bタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記Aタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み;その中で、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記Bタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記Aタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み;その中で、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 84に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
(1)前記二重特異性抗体が三種類のポリペプチド鎖を含み:その中で、第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 120に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 121に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 122に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 126に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 127に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 110に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 128に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 129に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 110に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 130に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 129に示すアミノ酸配列を含み;
(2)前記二重特異性抗体が四種類のポリペプチド鎖を含み:その中で、第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 120に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 121に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 122に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 124に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 125に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含む、
という組から選択される、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項12】
遺伝子修飾された細胞であって、
請求項11に記載のキメラ抗原受容体を含み;前記細胞は好ましく真核細胞であり、より好ましくは単離のヒト細胞であり、より一層好ましくはT細胞またはNK細胞などの免疫細胞である、細胞。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体または請求項11に記載のキメラ抗原受容体をコードする、単離の核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の単離の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項15】
形質転換体であって、
請求項14に記載の発現ベクターを含み;前記形質転換体の作製方法は、前記組換え発現ベクターをホスト細胞に形質転換して得られ、その中で前記ホスト細胞は好ましく原核細胞または真核細胞である、形質転換体。
【請求項16】
B7H4を標的とする抗体または二重特異性抗体の作製方法であって、
請求項15に記載の形質転換体を培養し、培養物から前記B7H4を標的とする抗体または二重特異性抗体を獲得するステップを含む、作製方法。
【請求項17】
抗体部分および複合部分を含み、前記抗体部分が請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合部分が検出可能標記物、薬物、トキシン、サイトカイン、放射性核素、酵素、またはされらの組み合わせを含むが、これらに限定されなく、前記抗体部分および複合部分が化学結合またはリンカーによって複合される、抗体薬物複合体。
【請求項18】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、並びに任意に薬学的に許容可能なベクターを含む、薬物組成物。
【請求項19】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の免疫細胞、請求項17に記載の抗体薬物複合体または請求項18に記載の薬物組成物の、癌を治療および/または予防する薬物、試薬キットおよび/または投与デバイスの作製における用途であって、
好ましく、前記癌はB7H4陽性発現の腫瘍であり;より好ましくは、乳癌、卵巣癌および子宮内膜癌であり、前記乳癌は例えばトリプルネガティブ乳癌である、用途。
【請求項20】
サンプルにおけるB7H4を検出する方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を用いて検出を行うことを含み;好ましく、前記検出方法は診断の目的のものではない、方法。
【請求項21】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の免疫細胞、請求項17に記載の抗体薬物複合体および/または請求項18に記載の薬物組成物、および任意に明細書を含む、試薬キット。
【請求項22】
(1)必要な被験者に請求項18に記載の薬物組成物を投与するための輸注モジュール、並びに
(2)任意の薬効モニターモジュール、を含む、投与デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2020/6/30である中国特許出願202010618159.5の優先権を要求している。本願は、前記中国特許出願の全文を引用している。
【0002】
本発明は、生物医薬分野、特に抗B7H4抗体及びその二重特異性抗体および用途に係る。
【背景技術】
【0003】
乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌は、女性によく見られる悪性腫瘍であり、その中で乳癌の発症は女性癌の発症の第1位であり、2018年の国際癌研究機関IARCのデータによると、世界の女性の癌における乳癌の発症率は24.2%であった。これらの癌の治療には、免疫治療と標的治療が現在のホットスポットである。例えば、Her2を標的とするヘセチンは、Her2陽性の乳癌に良い治療効果がある。トリプルネガティブ乳癌(TNBC)については、対応する標的が不足しているため、現在は治療手段が少なく、主に化学療法を中心としている。2019年3月に米国FDAは転移性トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の治療にPD-L1阻害剤Atesolizumabとアルブミン結合型パクリタキセルとの併用を承認したが、トリプルネガティブ乳癌におけるPD-L1の発現は高くなかった。
【0004】
免疫チェックポイント抑制剤は乳癌の中で最も研究されている免疫治療形態である。腫瘍微小環境において免疫チェックポイント分子はしばしば高発現され、T細胞の活性化を抑制し、及びT細胞の枯渇を誘導することにより、腫瘍は免疫系の攻撃から逃れることができる。B7ファミリーとTNFファミリーは2種類の主要な共刺激分子ファミリーであり、B7ファミリーには現在10個の分子があり、それぞれCD80(B7.1)、CD86(B7.2)、B7H1(PD-L1/CD274)、B7-DC(PD-L2/CD273)、B7H2(ICOSL)、B7H3(CD276)、B7H4(B7S1/B7x/Vtcn1)、B7H5(VISTA)、B7H6及びB7H7(HLA2)である。B7ファミリーの複数のメンバーおよびその受容体は、すでに免疫チェックポイントであることが証明されており、例えば、PD-L1/PD1、CTLA4、VISTAなど。
【0005】
B7H4は比較的新しいB7ファミリーのメンバーであり、mRNAレベルでは生体細胞内で広く発現しているが、そのタンパク質レベルの発現は非常に限られており、生体の一部カテーテル上皮細胞上、例えば乳腺カテーテルと小葉、卵管上皮、子宮内膜などの組織にのみ低レベルの発現がある。これに対して、B7H4は、乳癌、特にトリプルネガティブ乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌などの腫瘍細胞上などの様々な腫瘍組織において大量に発現する。発現スペクトルの点から、B7H4は高特異性の腫瘍関連抗原と考えられる。一方、B7H4は新しい免疫チェックポイント分子であり、体外実験により、B7H4はその未知のT細胞表面受容体と相互作用することにより、T細胞の増殖、活性化及びサイトカインの産生を抑制することが証明された。腫瘍細胞は、B7H4分子を高発現し、腫瘍微小環境でB7H4分子を高発現する抑制性マクロファージにより、T細胞の活性化を抑制して免疫逃避を実現する。B7H4の腫瘍上での発現スペクトルはPD-L1と重複しない。抗体によりB7H4を標的とする治療、およびB7H4の負の制御作用を遮断して免疫系を再活性化させることは、B7H4発現陽性の腫瘍の治療に有望な手段である。
【0006】
現在、複数の製薬会社がB7-H4に対するモノクローナル抗体、または薬物との複合体、または二重特異性抗体を開発している。Genentech、BMS、Jounce、江蘇ハウゼンなどは臨床前に開発しており、現在最も急速に進展しているのはFivePrimeの抗B7H4モノクローナル抗体で、現在は臨床I期にあり、そのメカニズムは主にADCC及び免疫チェックポイントの遮断によりT細胞を活性化する。しかし、臨床上には高親和性、高選択性、高生物活性のヒト由来の抗B7H4抗体は存在していない。
【発明の概要】
【0007】
本技術分野における高親和性、高選択性及び高生物活性のヒト由来の抗B7H4抗体の欠乏を解決するために、本発明は特有のHarbourヒト由来マウスプラットフォームを利用して、全ヒト由来の高親和性、高選択性、高生物活性抗B7H4抗体、及び該抗体に基づいて構築されたanti-B7H4抗体×CD3の二重特異性抗体を提供することで、B7H4陽性腫瘍の治療に用途する。
【0008】
本発明の技術態様一は:B7H4を標的とする抗体またはその変異体を提供し、その中で、前記抗体が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、その中で:
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;
前記変異体は前記抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域にアミノ酸突然変異が発生し、且つ前記抗体の機能を維持できる。本発明において、前記アミノ酸突然変異は元のアミノ酸配列に例えばCDRに1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、置換または添加が発生してもよい。好ましく、前記アミノ酸突然変異はアミノ酸の置換であり、前記アミノ酸の置換の数は1-3個である。且つ、前記突然変異のアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、且つ前記抗体と目的とする抗原との結合を維持または改善した;前記少なくとも85%の配列同一性は好ましく少なくとも90%の配列同一性であり;より好ましくは、少なくとも95%、96%、97%または98%の配列同一性であり;最も好ましくは、少なくとも99%の配列同一性である。前記B7H4を標的とする抗体は、本発明において抗B7H4の抗体とも称する。
【0009】
具体的なある実施例において、前記のような抗体またはその変異体の中で、前記変異体は前記抗体の重鎖可変領域のHCDR2の第3位または第4位、HCDR3の第3位にアミノ酸の置換が発生し、および/または、前記抗体の軽鎖可変領域のLCDR3の第4位にアミノ酸の置換が発生する。
【0010】
好ましく、前記HCDR2の第3位のDはGまたはEに置換され、および/または、第4位のGはAに置換され、および/または、前記HCDR3の第3位のGはAに置換され;前記LCDR3の第4位のNはS、RまたはQに置換される。つまり、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、55及び66に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び69に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び38に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
【0011】
具体的なある実施例において、前記のような抗体またはその変異体の中で、前記重鎖可変領域がさらに重鎖可変領域フレームワーク領域HFWRを含み、および/または、前記軽鎖可変領域がさらに軽鎖可変領域フレームワーク領域LFWRを含み、その中で、前記HFWRはヒト抗体の重鎖可変領域フレームワーク領域であり、前記LFWRはヒト抗体の軽鎖可変領域フレームワーク領域である。
好ましく、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 88に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 89に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 93に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 83に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明において、前記アミノ酸突然変異はさらに元のアミノ酸配列に例えばFWRに1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、置換または添加が発生してもよい。好ましく、前記アミノ酸突然変異はアミノ酸の置換であり、前記アミノ酸の置換の数は1-3個である。且つ、前記突然変異のアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、且つ前記抗体と目的とする抗原との結合を維持または改善した;前記少なくとも85%の配列同一性は好ましく少なくとも90%の配列同一性であり;より好ましくは少なくとも95%、96%、97%または98%の配列同一性であり;最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性である。
【0013】
具体的なある実施例において、前記のような抗体またはその変異体の中で、前記抗体がさらに重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域を含む。好ましく、前記抗体の重鎖定常領域がhIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4から選択され、前記軽鎖定常領域がκ鎖もしくはλ鎖から選択され;より好ましく、前記変異体は前記抗体のFcの第239位および/または第332位にアミノ酸の置換が発生し、好ましく前記アミノ酸はS239Dおよび/またはI332Eに置換される。
【0014】
具体的なある実施例において、前記のような抗体またはその変異体の中で、前記抗体は全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvまたはこれらの抗体から作製されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0015】
具体的なある実施例において、前記のような抗体の中で、前記抗体が下記の(1)又は(2)を含み、
(1)重鎖および軽鎖であって、前記重鎖がSEQ ID NO: 95に示すアミノ酸配列を含み;軽鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、前記重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 112に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 113に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 99に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 100に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 101に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 102に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 106に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 117に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 103に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 112に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 103に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含む、重鎖および軽鎖;
(2)重鎖であって、前記重鎖がSEQ ID NO: 132に示すアミノ酸配列を含む、重鎖。
【0016】
「抗体」という用語は、鎖間ジスルフィド結合によって結合された2つの同じ重鎖と2つの同じ軽鎖とからなるテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを含むことができる。免疫グロブリンの重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるため、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンを5つの種類に分かれ、または免疫グロブリンの同種と呼ばれ、すなわちIgM、IgD、IgG、IgA、IgEであり、その対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖とε鎖である。同じ種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成と重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いに応じて、異なるサブクラスに分けることができ、例えばIgGはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域の違いによってκ鎖またはλ鎖に分かれる。5種類のIgのうちの各種類のIgは、いずれもκ鎖またはλ鎖を有してもよい。
【0017】
本願において、本願に記載の抗体軽鎖可変領域はさらに軽鎖定常領域を含んでもよく、前記軽鎖定常領域がヒト由来のκ、λ鎖またはその変異体を含む。本願において、本願に記載の抗体重鎖可変領域はさらに重鎖定常領域を含んでもよく、前記重鎖定常領域がヒト由来のIgG1、2、3、4またはその変異体を含む。
【0018】
軽鎖及び重鎖の中では、可変領域及び定常領域は約12又はそれ以上のアミノ酸の「J」領域を介して連接され、重鎖はまた約3又はそれ以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域はドメインCLからなる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)と経典的な補体系の第1成分(C1q)との結合を含む、免疫グロブリンと宿主組織または因子との結合を媒介することができる。抗体の重鎖と軽鎖のN端に近い約110個のアミノ酸配列の変化は大きく、可変領域(V領域)であり;C端に近い残りのアミノ酸配列は比較的安定であり、定常領域(C領域)である。可変領域は、3つの高可変領域(HVR)と4つのシーケンスが相対的に保存的なフレームワーク領域(FWR)とを含む。3つの高変化領域が抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。各軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)は、3つのCDR領域と4つのFWR領域からなり、アミノ端からカルボキシル基端まで順に並ぶ順序は:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、FWR4である。
【0019】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様二は:B7H4を標的とする二重特異性抗体であって、その中で、Aタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域を含み、その中で、前記Aタンパク質機能領域は前記のようなB7H4を標的とする抗体であり;前記Bタンパク質機能領域はB7H4を標的としない抗体であり;好ましく、前記B7H4を標的としない抗体はCD3を標的とする抗体であり;より好ましく、前記CD3を標的とする抗体が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、その中で、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;より一層好ましく、前記CD3を標的とする抗体において、前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;または、軽鎖可変領域VLがSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域VHがSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;または、軽鎖可変領域VLがSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域VHがSEQ ID NO: 84に示すアミノ酸配列を含む、二重特異性抗体を提供する。
【0020】
具体的なある実施例において、前記のような二重特異性抗体の中で、前記Bタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記Aタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み;その中で、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3。前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3である。
本発明の二重特異性抗体において、前記Bタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記Aタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み;その中で、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列。前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 84に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含む。
【0021】
具体的なある実施例において、前記のような二重特異性抗体の中で、前記二重特異性抗体が下記の組から選択され:
(1)構造はn’-[VL]-CL-c’のポリペプチド鎖-1、n’-[VH]-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-2、および、n’-{VH-L-VL}-h-CH2-CH3-c’またはn’-{VL-L-VH}-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-3であり;その中で、前記ポリペプチド鎖-1およびポリペプチド鎖-2はAタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-3はBタンパク質機能領域であり、または、前記ポリペプチド鎖-1およびポリペプチド鎖-2はBタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-3はAタンパク質機能領域であり;
(2)構造はn’-[VL]-CL-c’のポリペプチド鎖-1、n’-[VH]-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-2、n’-{VH}-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-3およびn’-{VL}-CL-c’のポリペプチド鎖-4であり、または、構造はn’-[VH]-CH-c’のポリペプチド鎖-1、n’-[VL]-CL-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-2、n’-{VH}-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-3およびn’-{VL}-CL-c’のポリペプチド鎖-4であり;その中で、前記ポリペプチド鎖-1およびポリペプチド鎖-2はAタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-3およびポリペプチド鎖-4はBタンパク質機能領域であり、または、前記ポリペプチド鎖-1およびポリペプチド鎖-2はBタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-3およびポリペプチド鎖-4はAタンパク質機能領域であり;
(3)構造はn’-[VH]-CH1-c’のポリペプチド鎖-1、n’-{VH}-CH1-L-[VL]-CL-h-CH2-CH3-c’またはn’-{VH}-CH1-h-CH2-CH3-L-[VL]-CL-c’のポリペプチド鎖-2、n’-{VH}-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-3およびn’-{VL}-CL-c’のポリペプチド鎖-4であり;その中で、前記ポリペプチド鎖-1はA機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-2はn’からc’まで順にAタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域を含み、またははn’からc’まで順にBタンパク質機能領域およびAタンパク質機能領域を含み、前記ポリペプチド鎖-3およびポリペプチド鎖-4はB機能領域であり;または、前記ポリペプチド鎖-1はB機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-2はn’からc’まで順にBタンパク質機能領域およびAタンパク質機能領域を含み、またははn’からc’まで順にAタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域を含み、前記ポリペプチド鎖-3およびポリペプチド鎖-4はA機能領域であり;
(4)構造はn’-[VH]-CH1-L1-{VL-L2-VH}-h-CH2-CH3-c’またはn’-[VH]-CH1-L1-{VH-L2-VL}-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-1、n’-[VH]-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-2およびn’-[VL]-CL-c’のポリペプチド鎖-3であり;その中で、前記ポリペプチド鎖-1がAタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-2および3はBタンパク質機能領域であり、または、前記ポリペプチド鎖-1がAタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-2および3はAタンパク質機能領域であり;好ましく、前記ポリペプチド鎖-1はn’からc’まで順にB機能領域およびA機能領域であり、または、n’からc’まで順にA機能領域およびB機能領域であり;
(5)構造はn’-[VH]-CH1-h-CH2-CH3-L1-{VL-L2-VH}-c’またはn’-[VH]-CH1-h-CH2-CH3-L1-{VH-L2-VL}-c’のポリペプチド鎖-1、n’-[VH]-CH1-h-CH2-CH3-c’のポリペプチド鎖-2およびn’-[VL]-CL-c’のポリペプチド鎖-3であり;その中で、前記ポリペプチド鎖-1がAタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-2および3はBタンパク質機能領域であり、または、前記ポリペプチド鎖-1がAタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域であり、前記ポリペプチド鎖-2および3はAタンパク質機能領域である。
【0022】
ここで、n’はポリペプチド鎖のアミノ端(N末端とも書くことができる)を表し、c’はポリペプチド鎖のカルボキシル端(C末端とも書くことができる)を表し、hはヒンジ領域を表し、L、L1またはL2はコネクタ(またはリンカー)を表し、適切な従来技術のリンカー(L)は繰り返しG4Sアミノ酸配列またはその変異体からなる。例えば、アミノ酸配列(G4S)4または(G4S)3を有するリンカーを使用することができるが、その変異体も使用することができ、例えば、前記G4SのGのうちの1つがQに置換され、例えば、2番目または3番目のGがQに置換され、本発明の好ましいリンカー配列はSEQ ID NO:133-135に示される。「-」は、異なる構造領域を結合するポリペプチド結合を表すか、または異なる構造領域を分離するために使用される。
【0023】
本発明では、「[]」、「{}」はそれぞれ異なる機能領域または構造を表し、例えば、{VL-L-VH}、{VH-L-VL}はscFv構造を表し、[VH]/{VH}、[VL]/{VL}はそれぞれFab構造の重鎖可変領域と軽鎖可変領域である。VHがそれぞれA、Bタンパク質機能領域である場合、それぞれVH_A(すなわち、重鎖可変領域はAタンパク質機能領域)またはVH_B(すなわち重鎖可変領域はBタンパク質機能領域)に表すことができ;同様に、VLがそれぞれA、Bタンパク質機能領域である場合、VL_A(すなわち軽鎖可変領域はAタンパク質リボン)またはVL_B(すなわち軽鎖可変領域はBタンパク質機能領域)に表すことができる。
図28では、描画を容易にするために「[]」、「{}」が除去されているため、VL_B-L-VH_A(軽鎖可変領域はBタンパク質機能領域であり、重鎖可変領域はAタンパク質機能領域であり、Lはコネクタであり、VL_BとVH_Aを連接する)、VH_B-L-VL_A(重鎖可変領域はBタンパク質機能領域であり、軽鎖可変領域はAタンパク質機能領域であり、Lはリンカーであり、VH_BとVL_Aを接続し、例えば構造(1)のポリペプチド鎖-3を参照)なども同様にscFv構造を代表し、単独のVL_ABまたはVH_A(例えば、構造(1)のポリペプチド鎖-1又はポリペプチド鎖-2を参照)は、Fab構造中のBタンパク質機能領域の軽鎖可変領域及びAタンパク質機能領域の重鎖可変領域をそれぞれ表す。本発明において、ポリペプチド鎖-1、-2、-3、または-4はポリペプチド鎖の種類のみを表し、実際にポリペプチド鎖から二重特異性抗体を構成する場合、各ポリペプチド鎖の数は1または2本とすることができ、例えば構造(5)および(6)において、ポリペプチド鎖-1、-2、-3の数は1本であり、ポリペプチド鎖-4の数は2本であり、構造(7)、(8)、(9)及び(10)において、ポリペプチド鎖-1、-2の数は1本であり、ポリペプチド鎖-3の数は2本である。本発明において、ポリペプチド鎖-1は第1ポリペプチド鎖とも呼ばれ、ポリペプチド鎖-2は第2ポリペプチド鎖とも呼ばれ、ポリペプチド鎖-3は第3ポリペプチド鎖とも呼ばれ、ポリペプチド鎖-4は第4ポリペプチド鎖とも呼ばれる。
【0024】
ある好ましい実施例において、前記二重特異性抗体が下記の組から選択され:
(1)前記二重特異性抗体が三種類のポリペプチド鎖を含み:その中で、第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 120に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 121に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 122に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 126に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 127に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 110に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 128に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 129に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 110に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 130に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 129に示すアミノ酸配列を含み;
(2)前記二重特異性抗体が四種類のポリペプチド鎖を含み:その中で、第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 120に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 121に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 122に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 124に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 125に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含む。
【0025】
本発明のタンパク質機能領域は、場合によってFab、scFvまたはVHであってもよく、他の場合にはF(ab)2または全長抗体であってもよく、場合によっては抗体または抗原結合タンパク質または結合タンパク質とも呼ばれる。本発明において、「Fab構造」または「Fabフラグメント」は、軽鎖と重鎖のCH1および可変領域からなる。Fabフラグメントの重鎖は、別のFab重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fc」領域は抗体を含むCH2とCH3ドメインの2つの重鎖フラグメントを含む;2つの重鎖フラグメントは2つ以上のジスルフィド結合及びCH3ドメインの疎水性作用により保持される。「Fab’フラグメント」は、軽鎖と、VHドメインとCH1ドメイン、及びCH1とCH2ドメインとの間の領域を含む重鎖の部分とを含み、これにより、2つのFab’フラグメントの2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成してF(ab’)2フラグメントを形成することができる。前記「F(ab’)2フラグメント」は、2本の軽鎖と、CH1とCH2ドメイン間の定常領域の部分を含む2本の重鎖とを含み、これにより、2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成する。したがって、F(ab’)2フラグメントは、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって保持される2つのFab’フラグメントからなる。用語「Fv」は、抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインからなる抗体フラグメントを指し、定常領域が欠けている。
【0026】
本発明において、前記scFv(single chain antibody fragment、単鎖抗体)は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域及び15~20アミノ酸の短ペプチドを含む、当技術分野における従来の単鎖抗体であってもよい。ここで、VL及びVHドメインは、単一ポリペプチド鎖として産生可能なリンカーにより結合して単価分子を形成する。そのようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH2-VH-リンカー-VL-COOH、またはn’-VL-L-VH-c’またはn’-VH-L-VL-c’として表される一般的な構造を有することができる。
【0027】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様三は、キメラ抗原受容体をて提供し、前記キメラ抗原受容体が本発明技術態様一に記載の抗体または技術態様二に記載の二重特異性抗体。
【0028】
本願において、前記抗体または二重特異性抗体は、T細胞またはNK細胞などの細胞に修飾するためにキメラ抗原受容体(CAR)などに調製するために使用することができる。前記キメラ抗原受容体は、例えば前記の抗体を用いてscFvの形で細胞外抗原結合ドメインのキメラ抗原受容体を含む、当技術分野における従来のキメラ抗原受容体であってもよい。
【0029】
したがって、前記技術問題を解決するために、本発明技術態様四は、遺伝子修飾された細胞を提供し、前記細胞は本発明技術態様一に記載の抗体を含み;前記細胞は好ましく真核細胞であり、より好ましくは単離のヒト細胞であり、より一層好ましくは免疫細胞例えばT細胞(例えばCAR-Tの形態で)、またはNK細胞例えばNK92細胞系である。
【0030】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様五は、単離の核酸を提供し、前記核酸は、前記のような抗体または前記のような二重特異性抗体または本発明技術態様三に記載のキメラ抗原受容体をコードする。
【0031】
前記核酸の作製方法は、当技術分野における従来の作製方法であり、好ましくは、遺伝子クローニング技術により前記抗体をコードする核酸分子を得るステップ、または人工全配列合成方法により前記抗体をコードする核酸分子を得るステップを含む。
【0032】
当業者には、前記の抗体をコードするアミノ酸配列の塩基配列は、置換、欠失、変化、挿入、または添加を適切に導入して、ポリヌクレオチドの同族体を提供することができることが知られている。本発明におけるポリヌクレオチドの同族体は、抗体配列遺伝子をコードする1つまたは複数の塩基を抗体活性を保持する範囲内で置換、欠失、または添加させることによって作製することができる。
【0033】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様六は、発現ベクターを提供し、前記発現ベクターは前記のような単離の核酸を含む。
【0034】
前記組換え発現ベクターは、当技術分野における従来の方法によって得ることができ、即ち、本願に記載された核酸分子を様々な発現ベクターに結合して構築されてなる。前記発現ベクターは、前記核酸分子を収容可能であれば、当該技術分野における従来の種々のベクターであってもよい。
【0035】
好ましく、前記発現ベクターが真核細胞発現ベクターおよび/または原核細胞発現ベクターを含む。
【0036】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様七は、形質転換体を提供し、当該形質転換体は前記のような単離の核酸または発現ベクターを含む。
前記形質転換体の作製方法は当該技術分野における従来の作製方法であってもよく、例えば、前記の組換え発現ベクターを宿主細胞に形質転換することによって作製する。前記形質転換体の宿主細胞は、前記の組換え発現ベクターを安定的に自己複製することを満足させ、それが持ち運ぶ核酸を効果的に発現させることができれば、当技術分野における従来の種々の宿主細胞であってもよい。好ましくは、前記宿主細胞は原核細胞または真核細胞であり、前記原核細胞は好ましくはTG1、BL21(単鎖抗体またはFab抗体を発現する)のようなE.coli細胞であり、前記真核細胞は好ましくHEK293細胞またはCHO細胞(全長IgG抗体を発現する)である。前記組換え発現プラスミドを宿主細胞に形質転換すれば、本発明の好ましい組換え発現形質転換体が得られる。その中、前記形質転換方法は当分野の従来の形質転換方法であり、好ましくは化学形質転換方法、熱刺激方法または電気形質転換方法である。
【0037】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様八は、B7H4を標的とする抗体または二重特異性抗体の作製方法を提供し、その中で、前記作製方法が下記のステップを含み:本発明技術態様七に記載の形質転換体を培養し、培養物から前記B7H4を標的とする抗体または二重特異性抗体を獲得する。
【0038】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様九は、抗体薬物複合体を提供し、前記抗体薬物複合体が抗体部分および複合部分を含み、前記抗体部分が本発明技術態様一に記載の抗体、本発明技術態様二に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合部分が検出可能標記物、薬物、トキシン、サイトカイン、放射性核素、酵素、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されなく、前記抗体部分および複合部分は化学結合またはリンカーによって複合される。
【0039】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様十は、薬物組成物を提供し、その中で、前記薬物組成物が本発明技術態様一に記載の抗体または本発明技術態様二に記載の二重特異性抗体並びに任意に薬学的に許容可能なベクターを含む。好ましくは、薬学的に許容可能なベクターをさらに含む。
【0040】
より好ましくは、前記医薬組成物はさらに、活性成分として他の抗腫瘍抗体を含む。
【0041】
薬学的に許容されるベクターは、当技術分野において通常のベクターであってもよく、このベクターは、任意の適切な生理学的または薬学的に許容される薬物添加剤であってもよい。前記薬物添加剤は、当技術分野における従来の薬物添加剤であり、好ましくは、薬学的に許容される賦形剤、充填剤または希釈剤などを含む。より好ましくは、医薬組成物は、0.01~99.99%の前記抗体および/または前記の二重特異性抗体と、0.01~99.99%の医薬ベクターとを含み、前記百分率は医薬組成物に占める質量パーセントである。
【0042】
本発明による医薬組成物の投与経路は、好ましくは非経口投与、注射投与または経口投与である。前記注射投与は、好ましくは静脈注射、筋肉注射、腹腔注射、皮内注射または皮下注射などの経路を含む。前記医薬組成物は、当技術分野における従来の様々な剤形であり、好ましくは固体、半固体または液体の形態であり、すなわち水溶液、非水溶液または懸濁液であり、より好ましくは錠剤、カプセル、顆粒剤、注射剤または注入剤などである。より好ましくは、血管内、皮下、腹膜内または筋肉内を介して投与される。好ましくは、前記医薬組成物は、エアロゾルまたは粗噴霧剤として投与することができ、すなわち経鼻投与することができ、あるいは、鞘内、髄内または心室内で投与することができる。より好ましくは、前記医薬組成物は、通皮的、経皮的、局所的、腸内、膣内、舌下、または直腸的に投与することもできる。本発明の医薬組成物は、必要に応じて種々の剤形を作製することができ、医師は患者の種類、年齢、体重及び概略の疾患状況、投与方法などの要素に基づいて患者に有益な投与量を決定することができる。投与方法は、例えば注射または他の治療方法を採用することができる。
【0043】
本発明による医薬組成物の投与量レベルは、所望の診断または治療結果に達する組成物の量に応じて調整することができる。投与スキームは、単回注射または複数回注射であってもよく、または調整することもできる。選択された用量レベル及びスキームは、前記医薬組成物の活性及び安定性(すなわち、半減期)、製剤、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、検出及び/又は治療される疾患又は障害、並びに治療される対象の健康状態及び以前の医療歴等を含む様々な要因に依存して合理的に調整される。
【0044】
本発明の医薬組成物の治療上有効な用量は、最初に細胞培養実験又は動物モデル、例えばげっ歯類動物、ウサギ、犬、豚及び/又は霊長類動物において推定することができる。動物モデルはまた、適切な投与濃度範囲及び経路を決定するために使用することができる。その後、ヒトに投与される有用な用量および経路を決定するために使用することができる。一般的に、投与有効量または用量の決定および調整、およびそのような調整のタイミングおよび方法の評価は当業者に知られている。
【0045】
組合せ療法では、前記の抗体、二重特異性抗体、および/または追加の治療または診断剤は、それぞれ単一の薬剤として、所望の治療または診断の実行に適した任意の時間範囲で使用することができる。したがって、これらの単一薬剤は、実質的に同時に(すなわち、単一製剤として、または数分または数時間以内に)投与することができ、または順番に連続的に投与することができる。
【0046】
製剤、用量、投与方法及び測定可能な治療結果の追加指導については、Berkowら(2000)The Merck Manual of Medical Information(Merck医学情報ハンドブック)及びMerck&Co.Inc., Whitehouse Station, New Jersey, Ebadi(1998)CRC Desk Reference of Clinical Pharmacology(臨床薬理学ハンドブック)などの著作を参照する。
【0047】
前記技術問題を解決するために、本発明の技術態様十一は、本発明技術態様一に記載の抗体、前記本発明技術態様二に記載の二重特異性抗体、本発明技術態様三に記載のキメラ抗原受容体、本発明技術態様四に記載の遺伝子修飾された細胞、本発明技術態様九に記載の抗体薬物複合体または本発明技術態様十に記載の薬物組成物の、癌を治療および/または予防する薬物、試薬キットおよび/または投与デバイスの作製における用途を提供する。
【0048】
好ましく、前記癌はB7H4陽性発現の腫瘍であり;前記腫瘍は好ましく乳癌、卵巣癌および子宮内膜癌であり、前記乳癌より好ましくはトリプルネガティブ乳癌。
【0049】
前記技術問題を解決するために、本発明技術態様十二は、サンプルにおけるB7H4を検出する方法を提供し、前記方法は前記のような抗体または二重特異性抗体を用いて検出を行うことを含む。好ましく、前記検出方法は、診断の目的のものではない。
【0050】
本発明の診断の目的のものではない治療又は検査方法は、実験室薬物スクリーニング、予防医学研究及び公衆衛生政策の制定、試薬キットを用いた検査等を含むが、これらに限定されない。当業者は、現代医学は予防医学と臨床医学の2つの部分に分かれていることを知っている。本発明の「診断の目的のものではない検出方法」は、予防医学において環境中に採取されたサンプル(人体分泌物を含む)を検出し、環境が抗原に汚染されているかどうかを判断することができる。実験室では、実験者はまた、本発明の抗体または二重特異性抗体を用いて実験室試薬を検出することで、実験に使用される抗原がB7H4以外の抗原に汚染されていないことを確保し、さらに新たな抗体スクリーニングまたは薬物標的として小分子化合物などをスクリーニングすることに用いられる。
【0051】
前記技術問題を解決するために、本発明技術態様十三は、試薬キットを提供し、前記試薬キットは、本発明技術態様一に記載の抗体、本発明技術態様二に記載の二重特異性抗体、本発明技術態様三に記載のキメラ抗原受容体、本発明技術態様四に記載の遺伝子修飾された細胞、本発明技術態様九に記載の抗体薬物複合体および/または本発明技術態様十に記載の薬物組成物、および任意に明細書を含む。
【0052】
前記技術問題を解決するために、本発明技術態様十四は、投与デバイスを提供し、前記投与デバイスは、(1)必要な被験者に本発明技術態様十に記載の薬物組成物を投与するための輸注モジュール、並びに(2)任意の薬効モニターモジュール、を含む。
【0053】
前記技術問題を解決するために、本発明技術態様十五は、本発明技術態様一に記載の抗体、本発明技術態様二に記載の二重特異性抗体、本発明技術態様三に記載のキメラ抗原受容体、本発明技術態様四に記載の遺伝子修飾された細胞、本発明技術態様九に記載の抗体薬物複合体および/または本発明技術態様十に記載の薬物組成物の、診断、予防および/または腫瘍治療における用途を提供する。好ましく、前記腫瘍は、本発明技術態様八に記載のものである。
【0054】
前記技術問題を解決するために、本発明技術態様十六は、試薬キットを提供し、当該試薬キットは、薬カセットAおよび薬カセットBを含み、前記薬カセットAは本発明技術態様一に記載の抗体、本発明技術態様二に記載の二重特異性抗体、本発明技術態様三に記載のキメラ抗原受容体、本発明技術態様四に記載の遺伝子修飾された細胞、本発明技術態様九に記載の抗体薬物複合体および/または本発明技術態様十に記載の薬物組成物であり、前記薬カセットBは他の抗腫瘍抗体もしくは前記他の抗腫瘍抗体を含む薬物組成物である。前記薬カセットAおよび薬カセットBは、同時に用いることができ、又は先に薬カセットAを使用してから薬カセットBを使用してもよく、又は先に薬カセットBを使用してから薬カセットAを使用してもよく、具体的な使用時の実際の需要に応じて決めることができる。
【0055】
本願で使用するアミノ酸三文字コード及び単文字コードは、当業者に知られているように、又はJ.Biol.Chem, 243, p3558(1968)に記載されている。本明細書で使用されるように、「含有」または「含む」という用語は、組成物および方法が記載された要素を含むが、他の要素を排除するものではないことを意味するが、文脈の理解によっては、「…からなる」場合も含まれる。内容が明示的に提示されない限り、用語「または」は、本発明において用語「および/または」を意味し、それと交換して使用するために使用される。「約」および「ほぼ」は、一般に、測定の性質または精度に鑑みて、測定された量の許容誤差の程度を意味されるべきである。典型的な誤差の程度は、通常、その10%の範囲内であり、より一般的にはその5%の範囲内であり、さらにその2%または1%の範囲内である。本明細書で使用されるように、EC50という用語は、50%の最大効果を引き起こす濃度である半最大効果濃度(concentration for 50% of maximal effect)を意味する。
【0056】
前記各好ましい条件は、当該分野の常識に合致する上で、任意に組み合わせてもよく、すなわち本発明の各好ましい例を得ることができる。
【0057】
本発明に用いられる試薬及び原料はいずれも市販されている。
【0058】
本発明の積極的な進歩効果は、下記のようである。
1、本発明のB7H4を標的とするモノクローナル抗体は、天然に産生された全ヒト抗体であり、ヒトB7H4とカニクイザルB7H4と結合する活性を有し、他のB7ファミリーメンバーと交差反応しない。Fc改造により強いADCC効果があり、体内実験は良好な抗腫瘍活性を示した。その中でPR003369は親和性成熟改造を経た後、より高いT細胞活性を有し、より高い内在化(Internalization)活性を有し、よりADC薬物に適している。
2、本発明のB7H4×CD3二重特異性抗体は、ヒトFcフラグメントの二重特異性抗体構造を有し、FcとFcRnの結合作用が保留され、それにより長い半減期を有する。B7H4端は、ScFvの形態を採用し、軽鎖及び重鎖のミスマッチを簡略化し、同時に良好な安定性と親水性を保持した。CD3端の活性を最適化し、中程度の強度の抗CD3抗体を採用し、薬効を保証する前提で毒性を低下させた。B7H4端抗体とCD3端抗体は、カニクイザルとの良好な結合活性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】初期抗体が細胞表面のヒトB7H4と結合する結果;
【
図2】PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体が上清結合細胞表面のヒトB7H4を発現する結果;
【
図3】初期抗体が細胞表面のカニクイザルB7H4と結合する結果;
【
図4】PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体が細胞表面のカニクイザルB7H4と結合する結果;
【
図5】初期抗体が細胞表面のマウスB7H4と結合する結果;
【
図6】PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体が細胞表面のマウスB7H4と結合する結果;
【
図7】初期抗体が腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4と結合する結果;
【
図8】PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体上清が腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4と結合する結果;
【
図9】PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体が腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4と結合する結果;
【
図10】PR002418とPR001476親和性成熟/DE突然変異抗体PR003369が腫瘍細胞MDA-MB-468表面のB7H4と結合する結果;
【
図11】SK-BR-3腫瘍細胞に対するPR001476およびそのPTM変異体/DE突然変異抗体のADCC殺傷活性を示す図;
【
図12】SK-BR-3腫瘍細胞に対するPR002037およびそのPTM変異体/DE突然変異抗体のADCC殺傷活性を示す図;
【
図13】SK-BR-3腫瘍細胞に対するPR002418、PR002421とFivePrime由来の対照抗体とのADCC殺傷活性の比較;
【
図14】MDA-MB-468、HCC-1954腫瘍細胞に対するPR003369、PR002418、RP002421とFivePrime由来の対照抗体2とのADCC殺傷活性の比較;
【
図15】抗B7H4抗体がB7H4の免疫抑制信号を遮断してT細胞を活性化した結果;
【
図16】抗B7H4抗体のSK-BR-3細胞上の内在化結果;
【
図17】抗B7H4抗体の内在化に媒介される細胞毒性の活性;
【
図18】腫瘍細胞表面における抗体のB7H4結合活性に対するMMAE基架橋の影響;
【
図19】腫瘍細胞上の抗体の内在化活性に対するMMAE基架橋の影響;
【
図20】親和性成熟変異体PR003369-ADCと対照抗体PR000157-ADCの腫瘍細胞殺傷効率;
【
図21】Biacore T200分析ソフトウェア2.0による抗体親和性データの分析;
【
図22】抗B7H4抗体がB7ファミリーの他のメンバータンパク質と交差反応する場合;
【
図23】抗B7H4抗体、PR002418、PR002037、PR003369及び対照抗体の37℃ヒト血清における14日間の安定性;
【
図24】PR002418およびPR002421および対照抗体2のマウス体内における半減期;
【
図25】BALB/c nudeマウスMDA-MB-468腫瘍モデルにおける抗B7H4モノクローナル抗体分子の体内抗腫瘍効果;
【
図26】NSGマウスのヒトPBMC免疫系を再構築するMDA-MB-468腫瘍モデルにおける抗B7H4モノクローナル抗体分子の体内抗腫瘍効果;
【
図27】正常組織(A)及び腫瘍(B)におけるB7H4の発現及びそのIHCスコア統計(C);
【
図28-1】B7H4×CD3二重特異性分子の構造概略図;
【
図28-2】B7H4×CD3二重特異性分子の構造概略図;
【
図28-3】B7H4×CD3二重特異性分子の構造概略図;
【
図29-1】B7H4×CD3二重特異性分子がSK-BR-3細胞(A-D)及びT細胞(E-H)と結合する結果;
【
図29-2】B7H4×CD3二重特異性分子がSK-BR-3細胞(A-D)及びT細胞(E-H)と結合する結果;
【
図30-1】B7H4×CD3二重特異性分子(A-L、「1+1」非対称構造、M-N、「2+1」非対称構造)がT細胞を活性化し、標的細胞を殺傷した結果;
【
図30-2】B7H4×CD3二重特異性分子(A-L、「1+1」非対称構造、M-N、「2+1」非対称構造)がT細胞を活性化し、標的細胞を殺傷した結果;
【
図30-3】B7H4×CD3二重特異性分子(A-L、「1+1」非対称構造、M-N、「2+1」非対称構造)がT細胞を活性化し、標的細胞を殺傷した結果;
【
図30-4】B7H4×CD3二重特異性分子(A-L、「1+1」非対称構造、M-N、「2+1」非対称構造)がT細胞を活性化し、標的細胞を殺傷した結果;
【
図31】NSGマウスのヒトPBMC免疫系を再構築する腫瘍モデル(A、MDA-MB-468モデル;B、HCC-1954モデル)におけるB7H4×CD3二重特異性分子の腫瘍抑制率。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例の形態により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に限定するものではない。以下の実施例に具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法と条件に従って、または商品説明書に従って選択する。
【0061】
実施例1. 抗B7H4抗体分子の獲得
B7H4組換えタンパク質またはB7H4を過剰発現する細胞を用いて実験動物を免疫して、B7H4に特異的に結合する抗体分子を得ることができ、その実験動物がマウス、ラット、ウサギ、羊、ラクダなどであり得る。通常、得られる抗体分子は、非ヒト由来である。非ヒト由来抗体を獲得した後、これらの分子に対して抗体工学技術を利用してヒト化改造を行い、免疫原性を低下させ、薬剤性を高める必要がある。しかし、抗体のヒト化過程には技術的複雑性があり、ヒト化改造を経た分子は、抗原への親和性を低下させることが多い。一方、遺伝子組み換え技術の進歩により、ヒト免疫グロブリン免疫ライブラリを持ち、内因性のマウスの免疫ライブラリを欠損させる遺伝子工学化マウスを育成することができる。Harbour H2L2マウス(Harbour Antibodies BV)は、ヒト免疫グロブリン免疫ライブラリを携帯するトランスジェニックマウスであり、このトランスジェニックマウスが産生する抗体は全ヒト由来の配列を有するため、これ以上のヒト化改造を行う必要はなく、治療性抗体開発の効率を大幅に高めた。
【0062】
1.1. マウス免疫
Harbour H2L2マウスに対して抗原として可溶性組換えヒトB7H4-ECD-mFc融合タンパク質(Sino Biological、#10738-H05H)を用いて複数ラウンドの免疫を行った。抗原タンパク質を免疫アジュバントと混合して免疫原試薬とし、その後皮下による鼠径部注射または腹腔内注射を行った。各免疫サイクルにおいて、各マウスが受けた合計注射量は、100マイクロリットルであった。1ラウンド目の免疫において、各マウスは、50マイクログラムの抗原タンパク質と完全フロイントアジュバント(Sigma、# F5881)を体積比1:1で混合して調製された免疫原試薬による免疫を受けた。その後の免疫増強の各ラウンドにおいて、各マウスは、25マイクログラムの抗原タンパク質とSigma Adjuvant Systemアジュバント(Sigma、#S632)を混合して調製された免疫原試薬による免疫を受けた。免疫増強の間隔は、1ラウンド当たり少なくとも2週間、通常は6~7ラウンドである。免疫時間は、0、14、28、42、56、70、84、98日目であり、そして49、77日目にマウス血清抗体価を測定した。H2L2マウス脾B細胞分離を行う5日前に、マウス1匹あたり25マイクログラムの抗原タンパク質の用量で最後の免疫増強を行った。
【0063】
または、ヒトB7H4を過剰発現するCHO-K1細胞(CHO-K1/huB7H4、HARBOUR BIOMED)を使用して、マウスCD40Lをコードするプラスミドをトランスフェクションした後、それを免疫アジュバントと混合して免疫原試薬を形成し、次にマウスを免疫し、各マウスが毎回5×106個の細胞で免疫され、免疫プロセスがタンパク質免疫と同じでした。
【0064】
1.2. 血清力価検出
特定の時点で、マウス血清を採取し、ELISA法を用いて血清中のB7H4タンパク質に対する抗体結合価を検出し、そしてFACS法を用いて血清中のB7H4を過剰発現する細胞のに対する抗体結合価を検出した。
【0065】
ELISA法では、1μg/mLのhB7H4-ECD-hisタンパク質(Sino Biological、# 10738-H08H)を用いて100μL/ウェルでELISAプレート(corning、9018)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートし、2回洗浄した後、1%BSAを含むPBSTで37℃で2時間遮断し、100μL/ウェルで勾配希釈血清を加えて37℃で1時間インキュベートし、3回洗浄した後、100μL/ウェルで1:5000で希釈されたanti-rat-HRP (sigma、# A5795)を加え、37℃で30分間インキュベートした。3回洗浄した後、100μL/ウェルでTMB基質を加えて約10分間インキュベートし、50μL/ウェルで1NHClを加えて発色を停止させ、450 nmの吸光度(Molecular Devices、Plus 384)を読み込んだ。
【0066】
FACS法では、勾配希釈されたマウス血清をHEK293-B7H4細胞と4℃で1時間インキュベートし、細胞を2回洗浄した後、二次抗体anti rat IgG (H+L) (Life technologies、A11006)を加えて4℃で1時間インキュベートし、2回洗浄した後、再懸濁した細胞をフローサイトメーター(BD、Flibur)で測定した。HEK293細胞をバックグラウンド対照とした。
【0067】
1.3. ハイブリドーマ技術による抗B7H4抗体のスクリーニング
血清力価の高い免疫マウスを選択して一次終免疫を行った後、マウスを処刑し、脾臓細胞とSP2/0ミエローマ細胞(ATCC、CRL-1581)を採取して電気融合を行い、細胞比率は4:1であり、電気融合パラメータはV1:50V、t1:15s、V2:600V、t2:20 μs、t3: 0.5s、n:1、t4: 7s、V+/-: +、fade: onであった。20%FBSとHTを含むDMEMの培養液中に細胞を再懸濁し、1×105/100μL/ウェルでプレートし、24時間後に100μL/ウェルで20%FBSと2×HTを含むDMEMを加え、培養を続ける。その後、上清を採取して抗体価を測定した。一般的に融合後9-15日、タンパク質免疫のマウスは、上清を取ってAcumenで初篩を行い、CHO-K1/huB7H4細胞との結合を検出し;細胞免疫のマウスは、上清を取ってMirrorball(SPT Labtech, mirrorball(登録商標) fluorescence cytometer)で初篩を行い、HEK-293/huB7H4細胞との結合を検出した。陽性のクローンは、その後ELISAとFACSを用いてさらに確認し、ヒトB7H4を過剰発現したCHO-K1細胞株(CHO-K1/huB7H4)、カニクイザルB7H4を過剰発現したCHO-K1細胞株(CHO-K1/cynoB7H4)、マウスB7H4を過剰発現したCHO-K1細胞株(CHO-K1/mB7H4)との結合能を検出した。陽性のウェルは、有限希釈法でさらにサブクローニングし、さらにELISAとFACS法でスクリーニングした。ヒト及びサルB7H4との結合が良好なクローンを選択して配列決定を行った。
【0068】
1.4. B細胞インビトロクローナル技術による抗B7H4抗体のスクリーニング
マウスの脾臓を取り出し、研磨した後、200メッシュのフィルターでろ過し、単細胞懸濁液をマウスメモリーB細胞選別試薬キット(Miltenyi、#130-095-838)に従って選別した。選別された細胞を免疫蛍光染色に供した。
【0069】
B200陽性(BioLegend、#103227)、IgM陰性(BioLegend、#406506)、B7H4特異的陽性細胞(BioLegend、#405207)をフローサイトメーターS3e上で選別した。選別された細胞は、細胞培養96ウェルプレート上に1ウェル当たり5細胞の密度で培養され、細胞培養プレート上に予め照射されたEL4細胞を飼育層細胞として敷設した。
【0070】
培養14日後に培養上清を採取しELISA検出を行い、B7H4タンパク質に結合活性のあるウェルについては、細胞を取り出してRT-PCR(SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(#634892)、I-5(登録商標) 2×High-Fidelity Master Mix(#I5HM-5000)。増幅により得られた軽、重鎖は、overlap PCRによりscFvに結合され、E.coliで発現し、発現された上清にELISA検出を行い、陽性のクローンを配列決定した。
【0071】
1.5. 抗B7H4抗体の配列分析と配列最適化
抗体分子の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列を、従来の配列決定手段を用いて得る。3つのモノクローナル配列を取得した。本実施例において、免疫されたHarbour H2L2マウスから得られた抗B7H4モノクローナル抗体分子の可変ドメインの配列は、ヒト由来抗体配列であり、表1-1にその生殖細胞系遺伝子分析と翻訳後修飾部位(PTM)分析を示す。
【0072】
タンパク質またはポリペプチドアミノ酸鎖は、細胞中で翻訳合成される後、翻訳後修飾(PTM)と呼ばれる化学修飾を導入することがある。抗体にとって、いくつかのPTMの部位は非常に保守的であり、例えば、ヒトのIgG1抗体の定常ドメインの第297位(EU番号)の保守的アミノ酸アスパラギンAsnは通常、グリコシル化修飾を起こして糖鎖を形成するが、この糖鎖構造は抗体構造と関連するエフェクター機能にとって極めて重要である。しかし、抗体の可変ドメイン、特にCDRなどの抗原結合領域にPTMが存在する場合、これらのPTMの存在は、抗原結合に大きな影響を与える可能性があり、抗体の物理化学的性質にも変化をもたらす可能性がある。例えば、グリコシル化、脱アミド、異性化、酸化などはいずれも抗体分子の不安定性または異質性を増加させ、それによって抗体開発の難度とリスクを増加させる可能性がある。したがって、いくつかの潜在的なPTMを回避することは、治療抗体の開発にとって非常に重要である。経験の蓄積に伴い、いくつかのPTMがアミノ酸配列の組成、特に隣接するアミノ酸組成の「パターン」と高度に関連していることが発見され、これによりタンパク質の一級アミノ酸配列から潜在的なPTMを予測することができる。例えば、N-x-S/T(第1位はアスパラギン、第2位はプロリン以外の任意のアミノ酸、第3位はセリンまたはトレオニン)の配列パターンは、N-結合グリコシル化部位を予測する。PTMを引き起こすアミノ酸配列パターンは、生殖細胞系遺伝子配列に由来する可能性があり、例えばヒト生殖細胞系遺伝子フラグメントIGHV3-33はFR3領域に天然にグリコシル化パターンNSTが存在し;体細胞超変異に由来する可能性もある。
【0073】
PTMのアミノ酸配列パターンは、特定のPTMの形成を低減または除去するために、アミノ酸突然変異によって破壊されることができる。抗体配列とPTM配列パターンによって、異なる変異設計方法がある。1つの方法は、NSパターンにおけるNまたはSなどの「ホットスポット」アミノ酸を物理化学的に類似したアミノ酸(NをQに変異させるなど)に置換することである。PTM配列パターンが体細胞超変異に由来し、生殖細胞系遺伝子配列に存在しない場合、別の方法は、配列パターンを対応する生殖細胞系遺伝子配列に置換することである。実際の動作では、同じPTM配列パターンに対して複数の変異設計方法を採用することができる。
【0074】
表1-2は、抗体PR001476及びPR002037の配列をアミノ酸突然変異して得られた新しい抗体分子配列を示す。
【0075】
【0076】
【0077】
1.6. PR001476 抗体の親和性成熟
PR001476という分子を部位特異的突然変異により改造して、そのB7H4への結合親和性を高める。この親和性成熟の方法は2つのラウンドに分けられる。
【0078】
第1のラウンドでは、PR001476という分子の重鎖CDR3と軽鎖CDR3(Chothia CDRで定義)のアミノ酸を点ごとに走査し、複数のアミノ酸位置の単点飽和突然変異ライブラリを構築した。2飽和突然変異ライブラリをスクリーニングし、シグナルが野生型の2倍を超える陽性分子を選び出して配列決定を行い、そしてこれらの陽性分子をさらに鑑定し、そのヒトB7H4に対する結合能に基づいて、いくつかの突然変異ホットスポットを選出した。
【0079】
第2のラウンドでは、第1のラウンドで飽和突然変異が見つかったホットスポットをランダムに組み合わせ、すべての突然変異の組み合わせを含むライブラリを構築した。次に、コンビネーションライブラリをスクリーニングした。陽性分子については、配列決定及びヒトhB7H4への結合能により、いくつかの変異体を選出した。スクリーニングされた変異体は、対応するクローン番号、例えば、PR001476-R1-25B3、PR001476-R1-26D7などで表される。
【0080】
変異体は、哺乳動物の発現ベクターに構築され、タンパク質の発現と精製を行う。次に、FACSとFortebio Octetを用いて変異体とB7H4の結合能を試験した。表1~2のPR003369は、PR001476から誘導される好ましい変異体である。
【0081】
1.7. 組換え抗体の調製と理化学的特性評価分析
1.7.1. 抗体の発現と精製
本実施例は、哺乳動物宿主細胞(例えば、ヒト胎児腎臓細胞HEK 293またはチャイニーズハムスター卵巣細胞CHOおよびそれらの派生細胞)、瞬時トランスフェクション発現およびアフィニティー捕獲分離などの技術を用いて抗体を作製する一般的な方法を紹介した。本方法は、Fc領域を含む標的抗体に適用し;標的抗体は、1つまたは複数のタンパク質ポリペプチド鎖から構成することができ、1つまたは複数の発現プラスミドに由来することができる。
【0082】
抗体ポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコドン最適化法によりヌクレオチド配列に変換し、;コードされたヌクレオチド配列を合成し、宿主細胞と互換性のある発現ベクター上にクローニングする。抗体ポリペプチド鎖をコードするプラスミドを哺乳類宿主細胞に特定の割合で同時にトランスフェクションし、従来の組換えタンパク質発現と精製技術を利用して、正確な折り畳みとポリペプチド鎖アセンブリを有する組換え抗体を得ることができる。具体的には、FreeStyle(登録商標) 293-F細胞(Thermo、#R79007)をFreeStyle(登録商標) F17 Expression Medium培地(Thermo、#A1383504)で拡大培養した。瞬時トランスフェクション開始前に、細胞濃度を6~8×105細胞/mLに調整し、37℃、8%CO2シェーカー中で24時間培養し、細胞濃度は、1.2×106細胞/mLである。培養した細胞を30 mL用意する。抗体ポリペプチド鎖をコードするプラスミドを一定の割合で混合し、合計30μgのプラスミド(プラスミドと細胞の割合は1μg:1 mL)を1.5 mLのOpti-MEM減血清培地(Thermo、#31985088)に溶解し、0.22μm濾過膜で濾過除菌した。さらに1.5 mL Opti-MEMを取り1 mg/mL PEI(Polysciences、#23966-2)120μlに溶解し、5分間静置した。PEIをゆっくりとプラスミドに加え、室温で10分間インキュベートし、培養瓶を揺らしながらプラスミドPEI混合溶液をゆっくり滴下し、37℃、8%CO2シェーカーで5日間培養した。5日後に細胞生存率を観測した。培養物を集め、回転数3300gで10分間遠心分離した後、上清を取った。その後、上清を高速遠心分離して不純物を除去した。PBS pH 7.4緩衝液でMabSelect(登録商標)(GE Healthcare、#71-5020-91)を含む重力カラム(Bio-Rad、#7311550)を平衡化させ、2-5倍のカラム体積で洗浄する。上清サンプルをカラムに通し、カラム体積5~10倍のPBS緩衝液でカラムを洗浄し、pH 3.5の0.1 Mグリシンで目的のタンパク質を溶出し、その後pH 8.0のTris-HClで中性に調整し、最後に限外ろ過管(Millipore、#UFC 901024)でPBS緩衝液または他の成分を含む緩衝液に濃縮交換し、精製された組換え抗体溶液を得た。最後にNanoDrop(Thermo、NanoDrop(登録商標) One)で濃度を測定し、分割し、予備に保存する。
【0083】
1.7.2. SEC-HPLCによるタンパク質純度及び多量体の分析
本実施例は、分析型分子サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いてタンパク質サンプルの純度及び多量体形態を分析した。分析型クロマトグラフィーカラムTSKgel G3000 SWxl(Tosoh Bioscience、#08541、5μm、7.8 mm×30 cm)を高圧液体クロマトグラフィーHPLC(Agilent Technologies、Agilent 1260 Infinity II)に接続し、PBS緩衝液を用いて室温で少なくとも1時間平衡させる。適量のタンパク質サンプル(少なくとも10μg)を0.22μm濾過膜で濾過してシステムに注入し、HPLCプログラムを設定し:PBS緩衝液でサンプルを1.0 mL/分の流速でカラムを流し、最長時間は25分である。HPLCは分析報告書を生成し、サンプル内の異なる分子サイズ成分の滞留時間を報告する。
【0084】
1.7.3. HIC-HPLCによるタンパク質純度と疎水性の分析
分析型疎水相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いてタンパク質サンプルの純度と疎水性を分析した。分析型カラムTSKge1 Buty1-NPR(Tosoh Bioscience、14947、4.6 mm×3.5 cm)高圧液体クロマトグラフィーHPLC(Agilent Technologies、Agilent 1260 Infinity II)に接続し、PBS緩衝液を用いて室温で少なくとも1時間平衡させる。設定方法は、16分間以内に100%移動相A(20 mMヒスチジン、1.8 M硫酸アンモニウム、pH 6.0)から100%移動相B(20 mMヒスチジン、pH 6.0)までの線形勾配、流速を0.7 mL/分、タンパク質サンプルの濃度を1 mg/mL、注入体積を20μl、検出波長を280 nmに設定した。採取後、ChemStationソフトウェアを用いてクロマトグラムを積分し、関連データを計算し、分析報告書を生成し、サンプル内の異なる分子サイズの成分の滞留時間を報告した。
【0085】
1.7.4. DSFによるタンパク質分子の熱安定性の測定
示差走査蛍光法(Differential Scanning Fluorimetry、DSF)は、タンパク質の熱安定性を測定するための一般的な高スループット法である。リアルタイム蛍光定量PCR装置を用いて、折り畳み解除されたタンパク質分子と結合した染料の蛍光強度の変化を監視することにより、タンパク質の変性の過程を反映し、タンパク質分子の熱安定性を反映する。本実施例は、DSF法を用いてタンパク質分子の熱変性温度(Tm)を測定した。10 μgタンパク質を96ウェルPCRプレート(Thermo、#AB-0700/W)に添加し、続いて2μl 100×希釈染料SYPROTM(Invitrogen、#2008138)を添加し、続いて最終体積がウェルあたり40μlになるように緩衝液を添加した。PCRプレートを密封し、リアルタイム蛍光定量PCR装置(Bio-Rad CFX 96 PCR System)に置き、25℃で5分間インキュベートした後、0.2℃/0.2分の勾配で25℃から95℃に徐々に昇温し、試験終了時に温度を25℃に下げた。FRETスキャンモードを使用し、Bio-Rad CFX Maestroソフトウェアを使用してデータ分析を行い、サンプルのTmを算出した。
【0086】
1.8.抗B7H4全ヒト組換え抗体の作製
1.3~1.6で得られた抗B7H4の全ヒト由来IgG抗体と最適化後抗体を1.7.1に記載の方法で作製し、分析した。表1~3及び表1~4は、それぞれ小体積及び大体積の瞬時発現精製の結果を示している。また、従来文献から抗B7H4抗体配列を得て(表1~5)、その後の実験で対照とした。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
1.9.抗B7H4抗体配列と番号
本発明において、前記したCDRのアミノ酸配列は、すべてChothia定義規則に従って示されている。しかし、当業者には、技術分野において様々な方法、例えば、配列可変性に基づくKabat定義規則(Kabatら、免疫学的タンパク質配列、第5版、米国国立衛生研究院、ベセスダ、メリーランド州(1991)を参照)、および構造リング領域の位置に基づくChothia定義規則(JMol Biol 273:927-481997を参照)などの方法で抗体のCDRを定義することができることが知られている。本発明の態様では、可変ドメイン配列中のアミノ酸残基を決定するために、Kabat定義とChothia定義を含むCombined定義規則を使用することもできる。ここで、Combined定義規則は、Kabat定義とChothia定義の範囲を組み合わせ、これに基づいてより広い範囲を取った。詳細は表1-6に示す。当業者は、特に規定がない限り、所与の抗体またはその領域(例えば可変領域)の「CDR」および「相補的決定領域」という用語は、本発明によって説明された前記の既知の態様のいずれかによって規定された相補的決定領域を包含するものと理解すべきである。本発明における保護の範囲は、Chothia定義規則に基づいて示される配列であるが、他のCDRの定義規則に従って対応するアミノ酸配列も本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0091】
【0092】
ここで、Laa-Lbbは、抗体軽鎖のN端から、第aa位(Chothiaコード規則)から第bb位(Chothiaコード規則)までのアミノ酸配列を指すことができ、Haa-Hbbは、抗体重鎖のN端から、第aa位(Chothiaコード規則)から第bb位(Chothiaコード規則)までのアミノ酸配列を指すことができる。例えば、L24-L34は、抗体軽鎖N端から、Chothiaコード規則に従って第24位から第34位までのアミノ酸配列を指すことができ、H26-H35は、抗体重鎖N端から、Chothiaコード規則に従って第26位から第35位までのアミノ酸配列を指すことができる。当業者は、ChothiaでCDRをコード化する際に、いくつかの位置に挿入部位が存在し得ることを認識すべきである(http://bioinf.org.uk/abs/を参照)。
【0093】
表1~7は、本発明の抗B7H4抗体及び対照抗体分子の配列に対応するCDR、可変領域及び軽重鎖の配列番号を示す。PR003366は、PR002410の可変領域配列を用いて構築された単鎖可変領域(scFv)ホモ二量体分子(scFv-Fc構造)である。
【0094】
【0095】
表1~8は、本発明の抗B7H4抗体及び対照抗体分子の配列に対応するフレームワーク領域、Fvの配列番号を示す。
【0096】
【0097】
表1~9は、本発明の抗B7H4抗体及び対照抗体分子の配列に対応するCDR配列を示す。
【0098】
【0099】
実施例2.抗B7H4抗体がB7H4に結合する能力のFACS検出
本実施例は、抗ヒトB7H4のH2L2モノクローナル抗体のヒト/カニクイザル/マウスB7H4とのインビトロ結合活性を研究するためのものである。ヒトB7H4を過剰発現したCHOK1細胞株(CHOK1/hu B7H4、HARBOUR BIOMED)、カニクイザルB7H4を過剰発現したCHOK1細胞株(CHOK1/cyno B7H4、HARBOUR BIOMED)、マウスB7H4を過剰発現したCHOK1細胞株(CHOK1/m B7H4、HARBOUR BIOMED)、及びヒトB7H4を高発現した細胞系SK-BR-3(ATCC(登録商標) HTB-30)細胞レベルでの抗体結合実験を行った。簡単に言えば、CHOK1/hu B7H4細胞、CHOK1/cyno B7H4細胞、CHOK1/m B7H4細胞またはSK-BR-3細胞を消化し、2%BSAを含むPBSで再懸濁する。細胞密度をそれぞれ1×106細胞/mLに調整した。96ウェルV底プレート(Corning、#3894)に100μL細胞/ウェルを接種し、次いで終濃度の2倍の3倍濃度勾配で希釈された測定対象抗体を100μL/ウェルで加えた。細胞を4℃に置き、光を避けて2時間インキュベートした。その後、100μL/ウェルの予冷した2%BSA含有PBSを加えて細胞を2回洗浄し、500 g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。さらに100μL/ウェルの蛍光二次抗体(Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ Fragment Specific、Jackson、#109-545-098、1:500希釈)、4℃で、光を避けて1時間インキュベートした。100μL/ウェルの予冷した2%BSA含有PBSを加えて細胞を2回洗浄し、500 g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。最後に、200μL/ウェルの予冷した2%BSA含有PBSで細胞を再懸濁し、ACEA Novocyte3000フローサイトメーターを用いて蛍光発光信号値を読み取った。
【0100】
抗体の細胞表面のヒトB7H4、カニクイザルB7H4及びマウスB7H4との結合、及び腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4との結合のまとめは、以下の通りである(表2-1、表2-2、表2-3)。ここで、親和性成熟変異体PR003369は、PR002418と比較して、腫瘍細胞への結合が大幅に改善された(表2~3)。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
初期抗体と細胞表面のヒトB7H4との結合の結果は、
図1を参照して、結果は、PR001476、PR002037は比較的に良いヒトB7H4結合活性があり、PR002038の結合活性が比較的に悪い。PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体を発現した上清と細胞表面のヒトB7H4との結合の結果を
図2に示し、その結果、PR002037、PR001476のPTM変異体/DE突然変異は、抗体とヒトB7H4の結合活性に明らかな影響を与えなかった。初期抗体と細胞表面のカニクイザルB7H4との結合の結果を
図3に示し、その結果、PR002037、PR001476は比較的に良いカニクイザルB7H4交差結合活性があり、PR002038の交差結合活性が比較的に悪い、PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体と結合細胞表面のカニクイザルB7H4の結果を
図4に示し、その結果、PR002037、PR001476のPTM変異体/DE突然変異は、抗体とカニクイザルB7H4の交差結合活性に明らかな影響を与えなかった。初期抗体と細胞表面のマウスB7H4との結合の結果を
図5に示し、その結果、PR002037は比較的に良いマウスB7H4交差結合活性があり、PR001476は比較的に弱いマウスB7H4交差結合活性があり、PR002038はマウスB7H4交差結合活性がない。PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体と細胞表面のマウスB7H4との結合の結果を
図6に示し、その結果、PR002037、PR001476のPTM変異体/DE突然変異抗体は、母体と比較して類似のマウスB7H4交差結合活性を維持した。初期抗体と腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4との結合の結果を
図7に示し、その結果、PR002037、PR001476は比較的に良い腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4結合活性があり、PR002038の結合活性は比較的に悪い、PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体上清と腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4との結合の結果を
図8に示し、その結果、PR002037、PR001476のPTM変異体/DE突然変異は、抗体と腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4との結合活性に明らかな影響を与えなかった。PR001476とPR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体と腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4との結合の結果を
図9に示し、その結果、PR002037、PR001476のPTM変異体/DE突然変異抗体は、腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4との結合活性を維持していることを示した。その中で、PR001476のPTM変異体/DE突然変異抗体は、対照抗体1よりも強い結合活性(より低いEC 50)があり;PR002418とPR001476の親和性成熟/DE突然変異抗体PR003369と腫瘍細胞MDA-MB-468表面のB7H4との結合の結果を
図10に示し、PTM変異体PR002418と比較して、親和性成熟変異体PR003369と腫瘍細胞MDA-MB-468表面のB7H4との結合が明らかに向上した。
【0105】
実施例3. ADCC 活性の検出
本実施例は、抗ヒトB7H4のH2L2モノクローナル抗体がin vitroでADCC効果によってNK細胞が標的細胞を殺すことをを媒介する活性ことを研究するためのものである。本実験では、ヒトPBMCをエフェクター細胞とし、B7H4を高発現する細胞系SK-BR-3、MDA-MB-468及びB7H4を中程度に発現する細胞系HCC-1954を標的細胞とした。ACEA社のRTCA機器を用いて標的細胞の電気伝導率を検出して殺傷効率を反映した。96ウェルプレートのe-plateは、最初に50μlの完全培地で平衡化された。SK-BR-3細胞、MDA-MB-468またはHCC-1954細胞を消化し、10%ウシ胎児血清を含むRPM1640完全培地に再懸濁し、4×105/mlに希釈し、e-plate 96プレートに50μl/ウェル、つまり2×104/ウェルでプレートし、37℃で一晩培養した。翌日、2×105PBMCを含む培養液を新鮮な50μlで各ウェルに添加し、その後、50μl 4×の濃度勾配で希釈された抗体を添加し、抗体の最高終濃度は100 nMで、各抗体は合計8つの濃度、2つの繰り返しを設定した。標的細胞の電気伝導率をリアルタイムで測定し、24時間時点のデータを用いて標的細胞殺傷効率を計算し、標的細胞殺傷効率=(1-サンプル/ブランクコントロール)×100%。
【0106】
PR001476及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体のSK-BR-3腫瘍細胞に対するADCC殺傷活性を
図11に示し、その結果、Fc端のDE突然変異(PR002418)は、SK-BR-3腫瘍細胞に対する抗体のADCC殺傷活性を明らかに増強することができる。PR002037及びそのPTM変異体/DE突然変異抗体のSK-BR-3腫瘍細胞に対するADCC殺傷活性を
図12に示し、その結果、Fc端のDE突然変異(PR002421)は、SK-BR-3腫瘍細胞に対する抗体のADCC殺傷活性を明らかに増強することができる。PR002418、PR002421とFivePrimeからの対照抗体のSK-BR-3腫瘍細胞に対するADCC殺傷活性の比較を
図13(ここで、Aはドナー1、Bはドナー2のデータ)に示し、その結果、PR002418は、FivePrimeからの対照抗体に比べて類似したSK-BR-3腫瘍細胞に対するADCC殺傷活性があり、PR002421の殺傷活性はやや弱いことを示した。PR003369、PR002418、RP002421とFivePrimeからの対照抗体2のMDA-MB-468、HCC-1954腫瘍細胞に対するADCC殺傷活性の比較を
図14(ここで、AはMDA-MB-468、BはHCC-1954のデータ)に示し、その結果、PR003369、PR002418、RP002421は、いずれもMDA-MB-468、HCC-1954腫瘍細胞に対するADCC殺傷活性を持ち、殺傷活性はB7H4発現と正の相関があり、すなわちB7H4を高発現するMDA-MB-468細胞上で殺傷活性がより強く、B7H4を中程度に発現するHCC-1954細胞では殺傷活性が弱い。親和性成熟変異体PR003369は、PR002418、PR002421と比較して、ADCC殺傷活性がさらに改善された。
【0107】
実施例4. T細胞を活性化させる活性の検出
抗B7H4抗体がT細胞の免疫チェックポイントを遮断してT細胞を活性化させるの機能ことを検出するために、本実験は、全長B7H4及びscFv形態の抗ヒトCD3抗体OKT3を過剰発現するHEK293T細胞を人工抗原提示細胞(HEK293T/OS8/hB7H4、KYinno)として、ヒトT細胞分離試薬キット(Miltenyi、#130-096-535)を用いてT細胞を説明書の方法で分離し、人工抗原提示細胞とT細胞を共培養し、T細胞活性化に対する抗B7H4抗体の作用を測定した。具体的には、HEK293T-OS8-hB7H4を1×10
4/ウェルの密度をプレートし、一晩培養した。ヒト初代T細胞を分離し、2×10
5/100 μl/ウェルの密度でHEK293T/OS8/hB7H4細胞に添加した。次に、100μL/ウェル、2×終濃度の5倍濃度勾配希釈された測定対象抗体を100μL/ウェルで添加し、その中で、抗体の最高終濃度は10 nMであり、各抗体は合計6つの濃度であり、2つの繰り返しを設定した。培養3日後、上清を回収し、ELISA法によりIFN-γの濃度を検出した。結果は、PR003369、PR002418、PR002421及び対照抗体は、いずれもT細胞活性化を促進することができ、その中で、親和性成熟変異体PR003369がPTM変異体PR002418及び対照抗体2より強いT細胞活性化活性を有し、その作用機序はB7H4とT細胞上のその未知の受容体との間の作用を遮断した可能性がある。抗B7H4抗体がB7H4の免疫抑制信号を遮断してT細胞を活性化させた結果を
図15(ここで、Aはドナー1、Bはドナー2)に示す。
【0108】
実施例5. 抗体内在化実験
抗体の内在化をZenon pHrodo iFL IgG Labeling Reagents試薬キット(Invitrogen、#Z25611)を用いて検出した。この試薬は、蛍光染料付きの二次抗体であり、中性pH時に蛍光を発せず、一次抗体に結合して抗体とともにリソソーム体に内在化され、内在化後に酸性pH環境下で自動的に明るい蛍光を発することができ、FACS方法で検出することができる。具体的な方法は以下の通り:SK-BR-3細胞を収集し、遠心分離して上清を捨てた後、培地で細胞を再懸濁し、細胞濃度を3×10
6/mLに調整した。96ウェルプレートに細胞懸濁液を添加し、50μl/ウェル、次いで37℃の恒温培養箱に入れて一晩インキュベートした。4×の測定対象抗体を準備し、最高濃度は40 nM(4×)、3倍希釈、合計8つの希釈度。4×のZenon溶液を準備し、25μlの測定対象抗体と25μlの4×Zenon標識溶液を混合し、室温で5分間放置した。そして50μl標識された抗体を細胞を含む96ウェルプレートに添加し、37℃の恒温培養箱内で24時間インキュベートした。細胞を消化し、フローサイトメーター上で蛍光値を読み取った。その結果、対照抗体RP000014及び他の抗体と比較して、PR003369は最も高い内在化活性を有することが分かった。SK-BR-3細胞上の抗B7H4抗体の内在化結果を
図16に示す。
【0109】
a-HFc-CL-MMAF試薬(Moradec、#AH-102-AF)を用いて抗体の内在化を検出した。この試薬は、毒性基付きMMAFの二次抗体であり、一次抗体に結合して抗体とともに内在化された後、細胞内で毒性基を放出して標的細胞を殺し、そのメカニズムはADCの作用に似ている。具体的な方法は以下の通り:SK-BR-3細胞を収集し、遠心分離して上清を捨てた後、培地で細胞を再懸濁し、細胞濃度を1×10
5/mLに調整した。96ウェルプレートに細胞懸濁液を添加し、50μl/ウェル、次いで37℃の恒温培養箱に入れて一晩インキュベートした。4×の測定対象抗体を準備し、最高濃度は40 nM(4×)、5倍希釈、合計8つの希釈度。4×のMMAF溶液(4μg/mL) を準備した。細胞を含む96ウェルプレートにそれぞれ25μlの4×測定対象抗体と25μlの4×MMAF溶液、37℃恒温培養箱内で72時間インキュベートした。実験ウェルに100μlのCTG溶液を添加し、マイクロプレートリーダーでCTG発光信号を読み取った。
図17の結果は、対照抗体RP000014および他の抗体と比較して、PR003369が最も高い内在化に媒介された細胞毒性の活性を有することを示している。
【0110】
実施例6.抗体薬物複合(ADC)
本実施例は、ADCコンジュゲーション技術を用いて毒性基MMAEを抗B7H4抗体(PR003369抗体または対照抗体1)に架橋してADCとした。製品の純度パラメータは以下の通りであり、HPLC測定方法は1.7.2と同じである。
【0111】
【0112】
MMAE基架橋後の抗体のB7H4標的への結合活性に影響を与えるかどうかを調べるために、ヒトB7H4を高発現する細胞系MDA-MB-468を用いて細胞レベルでの抗体結合実験を行い、方法は実施例2と同じである。
図18の結果は、MMAE基架橋が抗体の腫瘍細胞表面のB7H4への結合活性に実質的に影響を与えないことを示している。
【0113】
MMAE基架橋後の抗体の内在化活性に影響を与えるかどうかを調べるために、Zenon pHrodo iFL IgG Labeling Reagents試薬キット(Invitrogen、#Z25611)を用いて抗体の内在化を検出した。実験方法は実施例5と同じである。
図19の結果は、MMAE基架橋が腫瘍細胞上の抗体の内在化活性に実質的に影響を与えないことを示している。
【0114】
本実施例は、抗体MMAE基架橋ADCの細胞殺傷活性を研究するためのものである。標的細胞としてB7H4を高発現する細胞系MDA-MB-468を用い、ACEA社のRTCA機器を用いて標的細胞の電気伝導率を検出し、殺傷効率を反映した。96ウェルプレートのe-plateは、最初に50μlの完全培地で平衡化された。MDA-MB-468細胞を消化し、10%ウシ胎児血清を含むRPM1640完全培地に再懸濁し、1×10
5/mLに希釈し、e-plate 96プレートに50μl/ウェル、つまり5×10
3/ウェルでプレートし、37℃で一晩培養した。翌日、ウェルごとに100μl 2×の濃度勾配で希釈された抗体を添加し、抗体の最高終濃度は50 nMであり、各抗体は合計8つの濃度であり、2つの繰り返しを設定した。標的細胞の電気伝導率をリアルタイムで測定し、一般的に96時間時点のデータを用いて標的細胞殺傷効率を計算し、標的細胞殺傷効率=(1-サンプル/ブランクコントロール)×100%。
図20の結果は、親和性成熟変異体PR003369-ADCが対照抗体1-ADCよりも高い腫瘍細胞殺傷効率を有することを示している。
【0115】
実施例7.ヒトB7H4組換えタンパク質に対する抗B7H4抗体の親和性測定
7.1. SPR法による親和性の測定
10×HBS-EP+(GE Healthcare、#BR-1006-69)を10倍希釈した後、実験緩衝液とした。流速を10μl/分に設定し、チップCM5(GE Healthcare、#BR-1005-30)の4つのチャネルにprotein Aをコンジュゲーションし:1)注入時間を800sに設定し、50 mM NHSと200 mM EDCを1:1体積比で新鮮に混合した後、4つのチャネルに注入し、2)protein AをpH4.5の酢酸ナトリウム(GE Healthcare、#BR-1003-50)で20μg/mLに希釈し、各チャンネル800sに注入し、3)チップ表面の残りの活性カルボキシル基を封止するために1M pH8.5のエタノールアミン800sを注入する。封止後も1×HBS-EP+緩衝液平衡装置で2時間平衡化し、protein Aの最終コンジュゲーション量は約2000RUであった。
【0116】
Biacore T200には多循環動力学モードが設定されて、各循環には抗体の捕獲、分析物の結合、及びチップの再生を含む。抗体PR002418、PR002421、対照抗体1、対照抗体2をそれぞれ1μg/mLに希釈し、10μl/分の流速で2、3、4チャンネル30sに注入し、予めコンジュゲーションされたProtein Aによって各抗体を捕獲し、捕獲量は約160 RUであった。ヒトB7-H4(Sino biological、#10738-H08H)を0 nM、1.5625 nM、3.125 nM、6.25 nM、12.5 nM、25 nM、50 nMの濃度勾配で4つのチャンネル(対照抗体1に対して最高濃度100 nMを1つ添加)に順次注入し、流速を30μl/分に設定した。PR002418、PR002421、対照抗体2に対して解離時間を200sに設定し、対照抗体1に対して解離時間を500sに設定し、注入時間はいずれも180 sとした。最後に同様の流速で10 mMグリシン-塩酸 pH1.5(GE Healthcare、#BR-1003-54)30 sを注入し、チップを再生した。
【0117】
Biacore T200分析ソフトウェア2.0を用いて実験結果を分析し、1チャネルを参照チャネルとして控除し、分析モデルは1:1動力学フィッティングモデルを選択した。結果を表7-1と
図21のA-Dに示し、結果は、PR002421が最も高いタンパク質親和性を有することを示した。
【0118】
【0119】
7.2. BLI法による親和性の測定
10×動力学緩衝液(ForteBio、#18-1105)を1×に希釈し、親和性試験及び抗原、抗体の希釈に用いられる。抗原と抗体間の結合動力学分析は、バイオフィルム干渉(BLI)技術を用いて、Octet Red 96e(Fortebio)分子相互作用分析器を用いて行った。
【0120】
抗原と抗体の親和性を測定する場合、センサー回転速度は1000回転/分である。カラムに配置されたAHCセンサー(Fortebio、#18-5060)を試験緩衝液中で10分間平衡させた後、AHCセンサーでB7-H4抗体を捕獲し、捕獲高さは0.7 nmであった。AHCセンサーは、緩衝液中で120s平衡された後、2倍勾配で希釈されたヒトB7-H4(濃度50-3.125 nM及び0 nM)と180s結合し、300s解離した。最後にAHCセンサーを10 mMグリシン-塩酸 pH1.5溶液に浸漬して再生し、センサーに結合したタンパク質を溶出した。
【0121】
Octet Data Analysisソフトウェア(Fortebio、バージョン11.0)を用いてデータ分析を行った場合、0 nMを参照ウェルとし、参照信号(reference subtraction)を差し引いて、「1:1 Global fitting」方法を選択してデータフィッティングを行い、抗原と抗原結合タンパク質との結合の動力学パラメータを算出し、kon(1/Ms)値、kdis(1/s)値及びKD(M)値を得て(表7-2を参照)、その結果、親和性成熟変異体PR003369は、PR002418に比べてタンパク質親和性を有意に向上した。
【0122】
【0123】
実施例8. BLI法を用いた抗B7H4抗体のB7H4に対する結合のエピトープ競合の測定
ForteBio Octet Red96eプラットフォームを用いてB7-H4抗体PR002418、PR002421、対照抗体1、対照抗体2のエピトープ競合実験を行い、実験緩衝液は前記と同じであった。第一段階として、抗体の100%信号を取得し:SAセンサー(Fortebio、#18-5019)を用いてB7-H4(Acro Biosystems、#B74-H82E2-200μg)を捕獲し、捕獲高さは0.25 nmであった。センサーを緩衝液中で120s平衡させた後、100 nMに希釈された各抗体に浸漬し、時間240 s、抗体とB7-H4との結合の最終信号を当該抗体の100%信号として記録した。第二段階、エピトープ競合実験:SAセンサーでB7-H4を捕獲し、捕獲高さは0.25 nmであった。センサーを第1抗体(濃度100nM)に浸漬し、時間240s、さらにSAセンサーを第1抗体と第2抗体の混合物(両抗体の終濃度はいずれも100 nM)に浸漬し、時間240s、センサーを抗体混合物に浸漬した後の信号差を、当該抗体を第2抗体の信号として記録した。抑制率は次式により算出し、
抑制率(%)=(A-B)/A*100
A:ある抗体の100%信号(第一段階から得られる)、B:この抗体を第2抗体の信号として(第二段階から得られる)。
【0124】
得られた抑制率が85(%)を超えると、2種類の抗体のエピトープが完全に重なることを意味し、抑制率が85(%)未満であると、2種類の抗体が結合するエピトープは完全に重ならないことを意味する。
【0125】
表8-1の結果は、PR002418及びPR002421とB7-H4との結合エピトープが異なり、いずれも対照抗体1、対照抗体2のエピトープと異なることを示した。ここで、PR002418は1つの独特なエピトープ(第1のエピトープ)に結合し、PR002421は別のエピトープ(第2のエピトープ)に結合し、対照抗体1、対照抗体2は同じエピトープ(第3のエピトープ)に結合した。
【0126】
【0127】
実施例9. B7ファミリーの他のメンバーとの交差反応性
B7ファミリーのタンパク質(詳しくは表9-1を参照)をそれぞれPBSで1μg/mLに希釈し、96ウェルプレート(Corning、#9018)に加え、1ウェルあたり100μl、4℃で一晩インキュベートした。液体を捨てた後、PBST緩衝液(pH7.4、0.05%tween-20を含む)で3回洗浄し、2%BSAブロッキング液250μlを加え、37℃で1時間インキュベートした。ブロッキング液を廃棄し、PBST緩衝液(pH7.4、0.05%tween-20を含む)で3回洗浄し、測定対象抗原結合タンパク質を10 nMと1 nMの2つの濃度に希釈し、各ウェルに100μlずつ加え、37℃で1時間インキュベートし、同型抗体を対照とした。PBST緩衝液(pH7.4、0.05%tween-20を含む)で3回洗浄した後、5000倍希釈したヤギ抗ヒトF(ab')ガリウムHRP二次抗体(Jackson ImmunoResearch、109-035-097)を加え、37℃の条件下で、光を避けて1時間インキュベートした。PBST緩衝液(pH7.4、0.05%tween-20を含む)を3回洗浄した後、100μl/ウェルTMB(Biopanda、#TMB-S-003)を添加し、室温で約30分間光を避けて放置した。50μl/ウェルの停止液(BBI life sciences、#E661006-0200)を各ウェルに加えて反応をを停止させ、マイクロプレートリーダー(PerkinElemer、#Enspire)で450nm吸光度(OD450)値を測定した。
図22は、本発明の抗体がB7ファミリーの他のメンバータンパク質と交差反応しないことを示す。
【0128】
【0129】
実施例10. 血清安定性分析
30μl抗体を270μl正常ヒト血清中(血清濃度90%)に希釈し、抗体を5分割し、それぞれ37℃で0、1、4、7、14日間インキュベートし、取り出して液体窒素で急速凍結した後、-80℃に保存した。フロー方法は、SK-BR-3細胞上のB7H4に対する抗体の結合を検出した。
【0130】
SK-BR-3またはCHOK1/h B7H4細胞を消化し、2%BSAを含むPBSで再懸濁した。細胞密度をそれぞれ1×10
6細胞/mLに調整した。96ウェルV底プレート(Corning、#3894)に100μL細胞/ウェルで接種した後、終濃度の2倍の3倍濃度勾配で希釈された測定対象抗体を100μL/ウェルで加えた。細胞を4℃に置き、光を避けて2時間インキュベートした。その後、100μL/ウェルの予冷した2%BSAを含むPBSを添加し細胞を2回洗浄し、500 g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。さらに100μL/ウェルの蛍光二次抗体(Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ Fragment Specific、Jackson、#109-545-098、1:500希釈)、4℃で、光を避けて60分間インキュベートした。100μL/ウェルの予冷した2%BSAを含むPBSで細胞を2回洗浄し、500 g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。最後に、予冷した2%BSAを含むPBSで細胞を200μL/ウェルで再懸濁し、ACEA NovoCyte3000フローサイトメーターを用いて蛍光発光信号値を読み取った。
図23の結果は、抗B7H4抗体PR002418、PR002037、PR003369及び対照抗体1、対照抗体2が37℃でヒト血清中で14日間良好な安定性を有することを示している。
【0131】
実施例11. C57BL/6マウス体内の薬物動態
体重18~22グラムの雌性Nu/Nuマウス6匹を選択し、20mg/kgの用量で尾静脈注射により薬物を投与し、1群3匹のマウスは、投与前および投与後15分、24時間(1日)、4日目、および10日目に全血を採取し、もう1群3匹のマウスは、投与前および投与後5時間、2日目、7日目、および14日目に全血を採取した。全血を30分間静置して凝固させ、その後、4℃で2000rpmで5分間遠心分離し、分離した血清サンプルを分析まで-80℃で凍結保存した。本実施例は、ELISA法を用いてマウス血清中の薬物濃度を定量的に測定した。ELISA Fc端全体検出方法は、96ウェルプレートに被覆されたヤギ抗ヒトFcポリクローナル抗体によりマウス血清中のヒトFc含有融合タンパク質を捕獲し、その後HRP標識ヤギ抗ヒトFc第2抗体を加えて検出した。Phoenix WinNonlinソフトウェアバージョン8.2を使用して、非コンパートメント モデル(NCA)を選択して血中濃度データを分析し、その薬物動態を評価した。
【0132】
表11-1は、PR002418、PR002421及び対照抗体2(PR002962)の薬物動態学パラメータである。
図24の結果は、Fc端全体検出方法の下で、前14日間のデータから計算して、PR002418のマウス体内での半減期は約6.56日、PR002421のマウス体内での半減期は約6.64日、対照抗体2のマウス体内での半減期は約5.90日であることを示している。この結果は、PR002418とPR002421のマウス体内での半減期が対照抗体2よりやや長いことを示した。
【0133】
【0134】
実施例12. 抗B7H4抗体の抗腫瘍薬効
12.1. BALB/c nudeマウスMDA-MB-468腫瘍モデル
細胞接種当日に、各BALB/c nudeマウスに1×107 MDA-MB-468腫瘍細胞を皮下接種し、細胞をPBSとMatrigel(1:1)混合液(0.1 mL/匹)に再懸濁し、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積を135 mm3でグループしたところ、25匹のマウスは5群に分けられ、投与周期は週2回、合計12回の投与、腹腔内投与が行われた。投与開始後、体重および腫瘍体積を週2回秤量し、腫瘍体積の算出方法は、腫瘍体積(mm3)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径2。投与後39日目に実験を終了し、すべてのマウスに安楽処理を行った。
【0135】
BALB/c nudeマウスMDA-MB-468腫瘍モデルの体内抗腫瘍効果は
図25を参照して、具体的には、溶媒対照群マウスの投与後39日目の平均腫瘍体積は1054 mm
3であった。試験薬PR002418(5 mg/kg)治療群の投与後39日目の平均腫瘍体積は606 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.015)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は42.45%であった。試験薬PR002418(15 mg/kg)治療群の投与後39日目の平均腫瘍体積は532 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.007)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は49.47%であった。試験薬PR002421(5 mg/kg)治療群の投与後39日目の平均腫瘍体積は665 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差はなく(p値は0.07)、腫瘍抑制率TGI(%)は36.86%であった。試験薬PR002421(15 mg/kg)治療群の投与後39日目の平均腫瘍体積は335 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.018)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は68.23%であった。
【0136】
12.2. NSGマウスのヒトPBMC免疫系を再構築するMDA-MB-468腫瘍モデル
細胞接種当日に、各NCGマウスに5×106 MDA-MB-468腫瘍細胞を皮下接種し、細胞をPBSとMatrigel(1:1)混合液(0.1 mL/匹)に再懸濁し、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積が126 mm3でグループ化されると、30匹のマウスは5群に分けられ、各マウスに5×106ヒトのPBMCを静脈接種し、細胞を200μl PBSに再懸濁した。翌日から投与を開始し、投与周期は週2回、合計8回の投与、腹腔内投与を行った。投与開始後、体重および腫瘍体積を週2回秤量し、腫瘍体積の算出方法は、腫瘍体積(mm3)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径2。投与後36日目に実験観察を終了し、その後すべてのマウスに安楽死処理を行った。
【0137】
ヒトPBMC免疫系がNSGマウスで再構成されたMDA-MB-468腫瘍モデルの体内抗腫瘍効果は、
図26を参照して、具体的には、溶媒対照群マウスの投与後36日目の平均腫瘍体積は942 mm
3であった。試験薬PR002418(15 mg/kg)治療群の投与後36日目の平均腫瘍体積は585 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差はなく(p値は0.073)、腫瘍抑制率TGI(%)は37.91%であった。試験薬PR002421(15 mg/kg)治療群の投与後36日目の平均腫瘍体積は670 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差はなく(p値は0.200)、腫瘍抑制率TGI(%)は28.87%であった。試験薬PR003369(15 mg/kg)治療群の投与後36日目の平均腫瘍体積は354 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.008)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は62.38%であった。試験薬対照抗体2(15 mg/kg)治療群の投与後36日目の平均腫瘍体積は533 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.028)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は43.41%であった。
【0138】
実施例13. 免疫組織化学染色(IHC)
病理組織チップは、Guilin Fanpu Biotech, Inc.から購入した。BRC1021乳癌組織チップ、EMC1021子宮内膜癌組織チップ、OVC1021卵巣癌組織チップ、MNO1021正常組織チップを含む。パラフィン切片は4um厚であり、陽性対照組織を有していた。脱蝋、水洗し;抗原修復:PH6(クエン酸)、125℃で5分加熱、10分放置、その後室温で30分冷却し;水洗後0.3%過酸化水素で5分間洗浄し、その後TBSTで5分間3 回洗浄し、Dakoブロッキング液を直接使用し、室温でインキュベーションボックスで20分間ブロッキングし;ブロッキング液を振り切って、一次抗体を適用し、抗体希釈液はDakoを直接使用して、室温内でインキュベーションボックスで60分間インキュベートして、対照をRabbit IgGに置き換えして;TBSTを3回洗浄し、毎回5分;二次抗体、Anti-Rabbit(EnVision+System-HRPLabelled Polymer)、室温でインキュベーションボックスで30分間インキュベートし、TBSTを3回洗浄し、毎回5分;DAB発色、蒸留水0.85 mL、試薬ABCの順に各試薬50μlを添加し、室温内でインキュベーションボックスで5分間インキュベーションし;蒸留水で洗浄し、ヘマトキシリンで再染色した。顕微鏡下で観察、封止、読み取った。
【0139】
図27の結果には、B7H4は正常組織の副腎、腎皮質、膀胱、乳腺、卵管、食道、尿管、及び子宮内膜で軽微な発現があり、他の組織では発現が見られなかった(
図27、A)。逆に、乳癌、卵巣癌、及び子宮内膜癌で高度に発現された(
図27、B)。例えば卵巣癌では、IHCスコアが2~4点であるのは合計102サンプルの67.65%を占め、子宮内膜癌では、2~4点であるのは合計98サンプルの62.24%を占めた(
図27、C)。
【0140】
実施例14. B7H4×CD3二重特異性抗体の構造と設計
選択された抗B7H4抗体及び抗CD3抗体は、二重特異性抗体を調製するために使用される。このB7H4×CD3二重特異性抗体の調製二重特異性抗体は、一端が腫瘍細胞表面に特異的に発現されたB7H4を識別し、他端がT細胞上のCD3分子に結合する2つの標的に同時に結合することができる。B7H4×CD3二重特異性抗体分子は、腫瘍細胞の表面に結合した後、腫瘍細胞の近くのT細胞を募集し活性化し、腫瘍細胞を殺すことができる。
【0141】
図28のAとBは「1+1」Fab-FC-scFv非対称構造分子である。CとDは「1+1」Fab-FC-crossFab非対称構造を有するB7H4×CD3二重特異性抗体分子である。「1+1」非対称構造分子について、構造(1)及び(2)は、それぞれ対応する抗B7H4抗体の重鎖及び軽鎖、並びに前記抗CD3抗体のscFvポリペプチド鎖を含む3つのタンパク質鎖に関する(
図28、A及びBを参照)。「1+1」非対称構造分子について、構造(3)及び(4)は、それぞれ対応する抗B7H4抗体の重鎖及び軽鎖、並びに前記抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖を含む4つのタンパク鎖に関する(
図28、C及びDを参照)。
【0142】
EとF、GとH、IとJは、「2+1」非対称構造を有するB7H4×CD3二重特異性抗体分子である。「2+1」非対称構造分子について、構造(5)及び(6)は、それぞれ対応する抗B7H4抗体の重鎖及び軽鎖、並びに前記抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖を含む4つのタンパク鎖に関する(
図28、E及びFを参照)。「2+1」非対称構造分子について、構造(7)(8)及び(9)(10)は、それぞれ対応する抗B7H4抗体の重鎖及び軽鎖、及び前記抗B7H4及びCD3抗体のscFvのポリペプチド鎖を含む3つのタンパク質鎖に関する(
図28、G、H、I及びJを参照)。
【0143】
ミスマッチを有する重鎖(例えば抗CD3抗体の2本の重鎖ミスマッチ)の副生成物形成を最小化するために、WO2009080251及びWO2009080252に記載されているように、「knob-hole」変異及び改造されたジスルフィド結合を有する変異のヘテロ二量体Fc領域が使用された。B7H4×CD3二重特異性抗体は、IgG1のFcを有し、FcのCH3上にL234A、L235A及びP329G(EUインデックス番号による)突然変異を持っている。3つまたは4つの異なる哺乳類動物発現ベクターを同時にコトランスフェクションすることによって、それぞれの二重特異性抗体を産生し、それぞれコード化し:1)ヘテロ二量体抗体を産生するためにFc領域に「Hole」変異を携帯して、FcのCH3がL234A、L235A、P329G変異を携帯する、対応する抗B7H4抗体の重鎖。2)ヘテロ二量体抗体を産生するためにFc領域に「knob」変異を携帯して、FcのCH3がL234A、L235A、P329G変異を担持する、対応する抗CD3抗体の重鎖。3)対応する抗CD3抗体の軽鎖。4)対応する抗B7H4抗体の軽鎖。ヒトIgG1 Fc領域の「knob」突然変異はT366W、「Hole」突然変異はT366S、L368A、Y407Vからなる。さらに、「knob」Fc領域を含むS354C及び「Hole」Y349Cは、安定性及びヘテロ二量体抗体収量を増加させるために一対のジスルフィド結合を形成することができる。
【0144】
表14-1、表14-2及び表14-3は、本実施形態により構築されたB7H4×CD3二重特異性抗体分子を示し、表中の構造番号は
図28に対応する。表14-4は、接続ペプチドの配列である。表14-5は、CD3モノクローナル抗体分子に対応する配列番号を示す。B7H4モノクローナル抗体分子は表1~7に由来する。表14-6は、B7H4×CD3二重特異性抗体分子に対応する配列番号を示す。表14-7は、二重特異性抗体分子の第1および第2抗原結合ドメインに対応するCDR配列の配列番号を示す。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
実施例15. B7H4×CD3二重特異性抗体のB7H4に結合する能力のFACS検出
SK-BR-3細胞を消化した。ヒトT細胞分離試薬キット(Miltenyi、#130-096-535)を用いて、説明書の方法に従ってT細胞を分離した。2%BSAを含むPBSで再懸濁した。細胞密度をそれぞれ1×106細胞/mLに調整した。96ウェルV底プレート(Corning、#3894)に100μL細胞/ウェルで接種した後、終濃度の2倍の3倍濃度勾配で希釈された測定対象抗体を100μL/ウェルで加えた。細胞を4℃に置き、光を避けて2時間インキュベートした。その後、100μL/ウェルの予冷した2%BSA含有PBSを加えて細胞を2回洗浄し、500 g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。さらに100μL/ウェルの蛍光二次抗体(Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ Fragment Specific、Jackson、#109-545-098、1:500希釈)、4℃、光を避けて1時間インキュベートした。100μL/ウェルの予冷した2%BSA含有PBSを加えて細胞を2回洗浄し、500 g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。最後に、200μL/ウェルの予冷した2%BSA含有PBSで細胞を再懸濁し、ACEA Novocyte3000フローサイトメーターを用いて蛍光発光信号値を読み取った。
【0154】
「1+1」非対称構造のB7H4×CD3二重特異性抗体分子がSK-BR-3細胞に結合した結果を
図29、A-Cに示す。その結果、二重特異性抗体分子は、腫瘍細胞SK-BR-3表面のB7H4に対して比較的に良い結合活性があることが明らかになった。
図29Aは、抗B7H4端がFab構造である、抗CD3端がScFvポリペプチド鎖である二重特異性抗体分子の結合活性であり、その中で、抗B7H4端がPR001476及びそのPTM変異体抗体のScFvポリペプチド鎖に由来する二重特異性抗体分子PR002849、PR002850及びPR002851は、抗B7H4端がPR002037 PTM変異体抗体のScFvポリペプチド鎖に由来する二重特異性抗体分子PR002852より強い結合活性がある。
図29Bは、抗B7H4端がFab構造である、抗CD3端がCross Fab構造である二重特異性抗体分子の結合活性であり、その中で、抗B7H4端がPR001476及びそのPTM変異体抗体に由来する二重特異性抗体分子PR002855、PR002856及びPR002857は、抗B7H4端がPR002037PTM変異体抗体に由来する二重特異性抗体分子PR002858より強い結合活性がある。
図29Cは、抗B7H4端がScFvポリペプチド鎖である、抗CD3端がFab構造である二重特異性抗体分子の結合活性であり、PR003733とPR003899は、抗B7H4端で同じScFvポリペプチド鎖であるため、その結合活性は一致している。「2+1」非対称構造のB7H4×CD3二重特異性抗体分子とSK-BR-3細胞との結合の結果を
図29、Dに示す。結果は、2価の抗B7H4端も高い結合活性を示した。「1+1」非対称構造のB7H4×CD3二重特異性抗体分子とヒトT細胞との結合の結果を
図29、E-Gに示す。「2+1」非対称構造のB7H4×CD3二重特異性抗体分子とヒトT細胞との結合の結果を
図29、Hに示す。結果は、抗CD3端がFab構造またはScFvポリペプチド鎖のいずれもT細胞表面に結合することができ、弱い抗CD3端の二重特異性抗体分子PR003899はFACSレベルで結合が見られないことが明らかになった。
【0155】
実施例16.T細胞殺傷実験
本実験では、ヒト初代T細胞をエフェクター細胞とし、B7H4を高発現する細胞系SK-BR-3、またはMDA-MB-468、B7H4で発現する細胞系HCC-1954またはB7H4陰性の細胞系MDA-MB-231を標的細胞とした。ACEA社のRTCA機器を用いて標的細胞の電気伝導率を検出して殺傷効率を反映した。96ウェルプレートのe-plateは、最初に50μlの完全培地で平衡化された。標的細胞を消化し、10%ウシ胎児血清を含むRPM1640完全培地に再懸濁し、4×105/mLに希釈し、e-plate 96プレートに50μl/ウェル、つまり2×104/ウェルでプレートし、37℃で一晩培養した。翌日、Miltenyi T細胞分離試薬キット(Miltenyi、#130-096-535)を用いて、説明書に従って初代T細胞を分離した。2×105 T細胞を含む新鮮な培養液を50μlで各ウェルに添加し、その後、50μl 4×の濃度勾配で希釈された抗体を添加し、抗体の最高終濃度は10 nMで、各抗体は合計8つの濃度、2つの繰り返しを設定した。標的細胞の電気伝導率をリアルタイムで測定し、一般的には24時間時点のデータを用いて標的細胞殺傷効率を計算し、標的細胞殺傷効率=(1-サンプル/ブランクコントロール)×100%。上清を24時間回収し、IFN-γの濃度をELISA方法で検出した。ELISA検出方法はIFN gamma Human Uncoated ELISA Kit(Thermo、#88-7316-77)試薬キットの操作説明を参照する。
【0156】
ただし、「1+1」非対称構造のB7H4×CD3二重特異性抗体分子はT細胞を活性化し、標的細胞SK-BR-3を殺傷した結果を
図30、A-Kに示す。
図30のA、Bは、抗B7H4端がFab構造である、抗CD3端がScFvポリペプチド鎖である二重特異性抗体分子の殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生を示し、その中で、抗B7H4端がPR002037PTM変異体抗体のScFvポリペプチド鎖に由来する二重特異性抗体分子PR002852は、最強の殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生を持っている。
図30のC、Dは、抗B7H4端がFab構造である、抗CD3端がCross Fab構造である二重特異性抗体分子の殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生を示し、その中で、抗B7H4端がPR002037PTM変異体抗体に由来する二重特異性抗体分子PR002852は、最強の殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生を持っている。
図30のE、Fは、抗B7H4端がScFvポリペプチド鎖である、抗CD3端がFab構造である二重特異性抗体分子の殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生を示し、強いCD3端を有する二重特異性抗体分子PR003733は、弱いCD3端を有する二重特異性抗体分子PR003899と比較して、その殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生はいずれも後者より高かった。
図30のG-Lは、他の腫瘍細胞MDA-MB-468、HCC-1954及びMDA-MB-231上のPR003733とPR003899の殺傷活性及びサイトカイン分泌を比較した結果であり、その結果、PR003733は、MDA-MB-468、HCC-1954細胞の体外殺傷及びサイトカインIFN-γの産生においてPR003899より高い、MDA-MB-231はB7H4を発現しない陰性対照細胞であり、2つの抗体とも何の作用もなかった。「2+1」非対称構造のB7H4×CD3二重特異性抗体分子はT細胞を活性化し、標的細胞SK-BR-3を殺傷した結果を
図30、M-Nを参照。「2+1」非対称構造の二重特異性抗体分子はいずれもSK-BR-3細胞を殺傷し、サイトカインIFN-γを産生することができ、そして、抗CD3端がCross Fab構造である二重特異性抗体分子PR003001、PR003008は、抗CD3端がScFvポリペプチド鎖である二重特異性抗体分子PR002987、PR002994よりも強い殺傷活性とサイトカインIFN-γの産生を持っている。
【0157】
実施例17. NSGマウスのヒトPBMC免疫系を再構築する腫瘍モデル
細胞接種当日に、各NCGマウスに5×106 MDA-MB-468腫瘍細胞を皮下接種し、細胞をPBSとMatrigel(1:1)混合液(0.1 mL/匹)に再懸濁し、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積が126 mm3でグループ化されると、18匹のマウスは3群に分けられ、各マウスに5×106ヒトのPBMCを静脈接種し、細胞を200μl PBSに再懸濁した。翌日から投与を開始し、投与周期は週1回、合計3回投与、静脈投与を行った。投与開始後、体重および腫瘍体積を週2回秤量し、腫瘍体積の算出方法は、腫瘍体積(mm3)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径2。投与後36日目に実験観察を終了し、その後すべてのマウスに安楽処理を行った。
【0158】
溶媒対照群マウスの投与後36日目の平均腫瘍体積は942 mm
3であった。試験薬PR003733(2 mg/kg)治療群の投与後36日目の平均腫瘍体積は590 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.048)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は37.31%であった。試験薬PR003899(2 mg/kg)治療群は投与後36日目の平均腫瘍体積が0 mm
3であり、腫瘍は完全に消失し、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.0001)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は100%(
図31、Aを参照)であった。
【0159】
HCC-1954モデルでは、細胞接種当日に、各NCGマウスに5×106 HCC-1954腫瘍細胞、細胞をPBSとMatrigel(1:1)混合液(0.1 mL/匹)に再懸濁し、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積が102 mm3でグループ化されると、15匹のマウスは3群に分けられ、各マウスに3×106ヒトのPBMCを静脈接種し、細胞を200μl PBSに再懸濁した。翌日から投与を開始し、投与周期は週1回、合計2回の投与、静脈投与を行った。投与開始後、体重および腫瘍体積を週2回秤量し、腫瘍体積の算出方法は、腫瘍体積(mm3)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径2。投与後16日目に実験観察を終了し、その後、すべてのマウスに安楽処理を行った。
【0160】
溶媒対照群マウスの投与後16日目の平均腫瘍体積は622 mm
3であった。試験薬PR003733(0.5 mg/kg)治療群の投与後16日目の平均腫瘍体積は450 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.1)はなく、腫瘍抑制率TGI(%)は27.64%であった。試験薬PR003899(0.5 mg/kg)治療群の投与後16日目の平均腫瘍体積は322 mm
3であり、溶媒対照群と比較して有意差(p値は0.0028)があり、腫瘍抑制率TGI(%)は48.27%(
図31、Bを参照)であった。
【0161】
2つの腫瘍モデルの薬効試験により、PR003899の薬効はPR003733より優れていることが明らかになった。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B7H4を標的とする抗体またはその変異体であって、
前記抗体は軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、その中で、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;
前記変異体は前記抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域にアミノ酸突然変異が発生し、且つ前記抗体の機能を維持でき;好ましく、前記アミノ酸突然変異はアミノ酸の置換であり、前記アミノ酸の置換の数は1-3個である、抗体またはその変異体。
【請求項2】
前記変異体は前記抗体の重鎖可変領域のHCDR2の第3位または第4位、HCDR3の第3位にアミノ酸の置換が発生し、および/または、前記抗体の軽鎖可変領域のLCDR3の第4位にアミノ酸の置換が発生し;好ましく、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び69に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び38に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含
み;または、
前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、55及び66に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、請求項1に記載の抗体またはその変異体。
【請求項3】
前記重鎖可変領域がさらに重鎖可変領域フレームワーク領域HFWRを含み、および/または、前記軽鎖可変領域がさらに軽鎖可変領域フレームワーク領域LFWRを含み、その中で、前記HFWRはヒト抗体の重鎖可変領域フレームワーク領域であり、前記LFWRはヒト抗体の軽鎖可変領域フレームワーク領域であり;好ましく、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 88に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 89に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 93に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 83に示すアミノ酸配列を含み;または
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその変異体。
【請求項4】
前記抗体がさらに重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域を含み;好ましく、前記抗体の重鎖定常領域がhIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4から選択され、前記軽鎖定常領域がκ鎖もしくはλ鎖から選択され;より好ましく、前記変異体は前記抗体のFcの第239位および/または第332位にアミノ酸の置換が発生し、好ましく前記アミノ酸はS239Dおよび/またはI332Eに置換される、請求項1-3のいずれか一項に記載の抗体またはその変異体。
【請求項5】
前記抗体は全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFvまたはこれらの抗体から作製されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項1-4のいずれか一項に記載の抗体またはその変異体。
【請求項6】
(1)重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖がSEQ ID NO: 95に示すアミノ酸配列を含み;軽鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、前記重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 112に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 113に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 99に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 100に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 101に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 102に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 106に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 117に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 98に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 103に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 112に示すアミノ酸配列を含み;または、
重鎖がSEQ ID NO: 103に示すアミノ酸配列を含み;前記軽鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
(2)重鎖を含み、前記重鎖がSEQ ID NO: 132に示すアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
Aタンパク質機能領域およびBタンパク質機能領域を含み、その中で、前記Aタンパク質機能領域は請求項1-6のいずれか一項に記載のB7H4を標的とする抗体であり;前記Bタンパク質機能領域はB7H4を標的としない抗体であり;好ましく、前記B7H4を標的としない抗体はCD3を標的とする抗体であり;より好ましく、前記CD3を標的とする抗体が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、その中で、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み;前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;より一層好ましく、前記CD3を標的とする抗体において、前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;または、軽鎖可変領域VLがSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域VHがSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;または、軽鎖可変領域VLがSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み;前記重鎖可変領域VHがSEQ ID NO: 84に示すアミノ酸配列を含む、B7H4を標的とする二重特異性抗体。
【請求項8】
前記Bタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記Aタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み;その中で、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 8、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、21及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、23及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 47、54及び67に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 9、24及び35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 46、53及び63に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 10、20及び34に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 48、54及び65に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO: 11、22及び36に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記Bタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、前記Aタンパク質機能領域が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み;その中で、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 76に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 87に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 77に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 80に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 90に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 81に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 78に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含み;または、
前記Bタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 86に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 84に示すアミノ酸配列を含み;前記Aタンパク質機能領域において、軽鎖可変領域がSEQ ID NO: 91に示すアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域がSEQ ID NO: 79に示すアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
(1)前記二重特異性抗体が三種類のポリペプチド鎖を含み:その中で、第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 120に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 121に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 122に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 119に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 126に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 127に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 110に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 128に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 129に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 110に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 130に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 129に示すアミノ酸配列を含み;
(2)前記二重特異性抗体が四種類のポリペプチド鎖を含み:その中で、第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 120に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 121に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 114に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 123に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 122に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 115に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 124に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含み;または、
第一ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 97に示すアミノ酸配列を含み;第二ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 125に示すアミノ酸配列を含み;第三ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 118に示すアミノ酸配列を含み;第四ポリペプチド鎖がSEQ ID NO: 109に示すアミノ酸配列を含む、
という組から選択される、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項12】
遺伝子修飾された細胞であって、
請求項11に記載のキメラ抗原受容体を含み;前記細胞は好ましく真核細胞であり、より好ましくは単離のヒト細胞であり、より一層好ましくはT細胞またはNK細胞などの免疫細胞である、細胞。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体または請求項11に記載のキメラ抗原受容体をコードする、単離の核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の単離の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項15】
形質転換体であって、
請求項14に記載の発現ベクターを含み;前記形質転換体の作製方法は、前記組換え発現ベクターをホスト細胞に形質転換して得られ、その中で前記ホスト細胞は好ましく原核細胞または真核細胞である、形質転換体。
【請求項16】
B7H4を標的とする抗体または二重特異性抗体の作製方法であって、
請求項15に記載の形質転換体を培養し、培養物から前記B7H4を標的とする抗体または二重特異性抗体を獲得するステップを含む、作製方法。
【請求項17】
抗体部分および複合部分を含み、前記抗体部分が請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合部分が検出可能標記物、薬物、トキシン、サイトカイン、放射性核素、酵素、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されなく、前記抗体部分および複合部分が化学結合またはリンカーによって複合される、抗体薬物複合体。
【請求項18】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、並びに任意に薬学的に許容可能なベクターを含む、薬物組成物。
【請求項19】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の
遺伝子修飾された細胞、請求項17に記載の抗体薬物複合体または請求項18に記載の薬物組成物の、癌を治療および/または予防する薬物、試薬キットおよび/または投与デバイスの作製における用途であって、
好ましく、前記癌はB7H4陽性発現の腫瘍であり;より好ましくは、乳癌、卵巣癌および子宮内膜癌であり、前記乳癌は例えばトリプルネガティブ乳癌である、用途。
【請求項20】
サンプルにおけるB7H4を検出する方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を用いて検出を行うことを含み;好ましく、前記検出方法は診断の目的のものではない、方法。
【請求項21】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項11に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の
遺伝子修飾された細胞、請求項17に記載の抗体薬物複合体および/または請求項18に記載の薬物組成物、および任意に明細書を含む、試薬キット。
【請求項22】
(1)必要な被験者に請求項18に記載の薬物組成物を投与するための輸注モジュール、並びに
(2)任意の薬効モニターモジュール、を含む、投与デバイス。
【国際調査報告】