(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】HIF-2α阻害剤とレンバチニブの組み合わせを使用して、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20230718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230718BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230718BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230718BHJP
A61K 31/275 20060101ALI20230718BHJP
C07D 215/233 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K31/275
C07D215/233
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578935
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 US2021038172
(87)【国際公開番号】W WO2021262563
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ペリーニ,ロドルフォ・フルーリー
(72)【発明者】
【氏名】ピネイロ,エレイン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン・ロジェリオ,ジャクリーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA32
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA14
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法であって、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、(a)HIF-2α阻害剤;および(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。このような作用物質を含有するキット、および癌またはフォンヒッペル・リンダウ病の処置のためのこのような作用物質の治療的組み合わせの使用も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法であって、
癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫および黒色腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌がRCCである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RCCが進行RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RCCが、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがあるヒト患者が、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記RCCが転移性RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記RCCがVHL欠損RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を備える、キット。
【請求項10】
前記HIF-2α阻害剤およびレンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書をさらに備える、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
ヒト患者における癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、
またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用。
【請求項12】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫および黒色腫からなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記癌がRCCである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記RCCが進行RCCである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記RCCが、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがあるヒト患者は、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記RCCが転移性RCCである、請求項13に記載の使用。
【請求項18】
前記RCCがVHL欠損RCCである、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
前記HIF-2α阻害剤がベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項20】
前記HIF-2α阻害剤がベルズチファンあり、前記ヒト患者が約40mg~約120mgのベルズチファンを投与され、ベルズチファンが1日1回投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒト患者が40、80または120mgのベルズチファンを投与され、ベルズチファンが1日1回投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト患者が120mgのベルズチファンを投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト患者が8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブを投与され、レンバチニブが1日1回投与される、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
RCCを処置する方法であって、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)120mgのベルズチファン;および
(b)20mgのレンバチニブ
を投与することを含む、方法。
【請求項25】
(a)および(b)が1日1回投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)および(b)が同じ日に投与され、(a)および(b)が逐次にまたは同時に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記その薬学的に許容され得る塩がレンバチニブメシル酸塩である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(a)低酸素誘導因子2α(HIF-2α)阻害剤および(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC))またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための方法が、本明細書において提供される。
【背景技術】
【0002】
腫瘍内の低酸素は、癌の進行の推進力であり、患者の予後不良ならびに化学療法および放射線処置に対する抵抗性と密接に関連している。低酸素誘導因子(HIF-1αおよびHIF-2α)は、低酸素応答経路において中心的な役割を果たす転写因子である。正常酸素条件下では、腫瘍抑制因子であるフォンヒッペル・リンダウ(VHL)タンパク質は、特定のヒドロキシル化プロリン残基に結合し、プロテアソーム分解のためにHIF-αタンパク質を標的とするE3ユビキチンリガーゼ複合体を動員する。低酸素条件下では、HIF-αタンパク質は蓄積して核に入り、嫌気性代謝、血管新生、細胞増殖、細胞生存、細胞外マトリックスリモデリング、pH恒常性、アミノ酸およびヌクレオチド代謝、ならびにゲノム不安定性を調節する遺伝子の発現を刺激する。VHL欠損も、酸素負荷された条件(偽低酸素条件)下で蓄積されたHIF発現をもたらし得る。したがって、HIF-αタンパク質を直接標的とすることは、多方面において腫瘍を攻撃するための絶好の機会を提供する(Keith,et al.,Nature Rev.Cancer 12:9-22,2012)。
具体的には、HIF-2αは、淡明細胞型腎細胞癌腫(ccRCC)における重要な発癌推進因子である(Kondo,K.,et al.,Cancer Cell,1:237-246(2002);Maranchie,J.et al,Cancer Cell,1:247-255(2002);Kondo,K.,et al.,PLoS Biol.,1:439-444(2003))。マウスccRCC腫瘍モデルにおいて、pVHL(フォンヒッペル・リンダウタンパク質)欠損細胞株におけるHIF-2α発現のノックダウンは、pVHLの再導入と同等に腫瘍増殖を阻止した。さらに、HIF-2αの安定化された変異型の発現は、pVHLの腫瘍抑制的役割に打ち勝つことができた。優れたインビトロ効力、薬物動態学的プロファイルおよびマウスモデルにおけるインビボ有効性を有する新規HIF-2α阻害剤であるベルズチファンは、進行腎細胞癌腫を有する患者において有望な結果を示している(Xu,Rui,et al.,J.Med.Chem.62:6876-6893(2019)。
【0003】
フォンヒッペル・リンダウ病(VHL病)は、患者が腎臓癌になりやすいだけでなく(約70%の生涯リスク)、血管芽細胞腫、褐色細胞腫および膵臓神経内分泌腫瘍にもなりやすい常染色体優性症候群である。VHL病は、構成的に活性なHIF-αタンパク質を有する腫瘍をもたらし、これらの大部分はHIF-2α活性に依存する(Maher,et al.Eur.J.Hum.Genet.19:617-623,2011)。HIF-2αは、VHL疾患および活性化変異の両方を介して、網膜、副腎および膵臓の癌に関連している。近年、機能獲得型HIF-2α変異が、赤血球増加症および赤血球増加を伴う傍神経節腫において同定されている(Zhuang,et al.NEJM 367:922-930,2012;Percy,et al.NEJM 358:162-168,2008;およびPercy,et al.Am.J.Hematol.87:439-442,2012)。注目すべきことに、いくつかの公知のHIF-2α-標的遺伝子産物(例えば、VEGF、PDGF、およびサイクリンD1)は、腎臓、肝臓、結腸、肺および脳に由来する癌において極めて重要な役割を果たすことが示されている。実際、重要なHIF-2αによって調節される遺伝子産物の1つであるVEGFを標的とする治療法が、これらの癌の処置に関して承認されている。
【0004】
チロシンキナーゼは増殖因子シグナル伝達の調節に関与しており、したがって癌治療のための重要な標的である。レンバチニブは、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)およびVEGFR3(FLT4))ならびに線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、2、3および4の他、腫瘍増殖に関与する他の血管新生促進性および発癌性経路関連のRTK(血小板由来増殖因子(PDGF)受容体PDGFRα;KITおよびRET癌原遺伝子(RET)を含む)のキナーゼ活性を選択的に阻害する多重RTK(マルチRTK)阻害剤である。特に、レンバチニブは、X線結晶構造解析を通じて確認されたところ、VEGFR2に対する新しい結合様式(V型)を有し、速度論的解析によれば、キナーゼ活性の迅速かつ強力な阻害を示す。
【0005】
低酸素応答は、血管新生および血管新生反応を促進して酸素送達を増加させる遺伝子の上方制御をもたらす。これには、活性化および増殖などのいくつかの内皮細胞応答を調節することができる血管内皮増殖因子(VEGF)の転写活性化が含まれる。VEGFチロシンキナーゼはVEGF受容体シグナル伝達を全身的に遮断することができ、一方、HIF-2α阻害は腫瘍VEGFAの発現および分泌を遮断することができる。VEGF TKIとHIF-2α阻害剤の組み合わせは、毒性を重複させることなくVEGFA分泌およびシグナル伝達の独立した阻害を可能にする。さらに、HIF-2α阻害は、VEGF TKI誘導性HIF-2α活性および抗血管新生耐性を抑制することができる。D.Shweiki,A.Itin,D.Soffer,E.Keshet.Vascular endothelial growth factor induced by hypoxia may mediate hypoxia-initiated angiogenesis.Nature,359(1992),pp.843-845;J.A.Forsythe,B.H.Jiang,N.V.Iyer,F.Agani,S.W.Leung,R.D.Koos,G.L.Semenza.Activation of vascular endothelial growth factor gene transcription by hypoxia-inducible factor 1.Mol Cell Biol,16(1996),pp.4604-4613;Hypoxic stress:obstacles and opportunities for innovative immunotherapy of cancer.Chouaib S,Noman MZ,Kosmatopoulos K,Curran MA.Oncogene.2017 Jan 26;36(4):439-445.doi:10.1038/onc.2016.225.Epub 2016 Jun 27を参照されたい。
【0006】
免疫調節薬および/または(1つまたは複数の)VEGF-TKIを組み合わせた一次(1L)進行RCCの処置には最近進歩が存在しており、現在、第二選択(2L)RCC患者の処置に対しても複数の薬剤が利用可能である。しかしながら、既存のデータは、これらの薬剤で完全寛解を経験する患者はほとんど存在せず、ほぼ全員が進行することを示す。これらの著しい進歩はこれらの患者の処置パラダイムの変化をもたらしたが、1L進行RCC集団と2L+進行RCC集団の両方に対して治療成績を改善するという満たされていない要求がなお存在している。現在、PD-(L)1阻害剤後/VEGF-TKI後2L+進行RCCに対する標準治療(SOC)は存在せず、この状況では大規模な無作為化臨床試験は存在しない。
【0007】
エベロリムスと組み合わせたニボルマブ、カボザンチニブおよびレンバチニブを含む、進行RCCを有する患者における2L+治療のために現在利用可能ないくつかの薬物が存在する。2008年のRECORD1試験以来、以前には進行RCCに対する標準的な2L処置であった単剤エベロリムスと比較して、これらの薬剤は、治療成績に関して有益性を示した。これらの研究はすべて、1L進行ccRCCに対するSOCがVEGF-TKIであった時点で実施されたことには注目すべきである。IO/VEGF-TKIを組み合わせてまたは順次に用いた1L処置後の後続の処置選択肢を調査するための臨床研究はこれまで行われてこなかった。その結果、2L+のPD-(L)1阻害剤後/VEGF-TKI後の進行RCCを有する患者に対する標準治療(SOC)は存在せず、この集団における処置成績を改善するという満たされていない要求がなお存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Keith,et al.,Nature Rev. Cancer 12:9-22,2012
【非特許文献2】Kondo,K.,et al.,Cancer Cell,1:237-246(2002)
【非特許文献3】Maranchie,J.et al,Cancer Cell,1:247-255(2002)
【非特許文献4】Kondo,K.,et al.,PLoS Biol.,1:439-444(2003)
【非特許文献5】Xu,Rui,et al.,J.Med.Chem.62:6876-6893(2019)
【非特許文献6】Maher,et al.Eur.J.Hum.Genet.19:617-623,2011
【非特許文献7】Zhuang,et al.NEJM 367:922-930,2012
【非特許文献8】Percy,et al.NEJM 358:162-168,2008
【非特許文献9】Percy,et al.Am.J.Hematol.87:439-442,2012
【非特許文献10】D.Shweiki,A.Itin,D.Soffer,E.Keshet.Vascular endothelial growth factor induced by hypoxia may mediate hypoxia-initiated angiogenesis.Nature,359(1992),pp.843-845
【非特許文献11】J.A.Forsythe,B.H.Jiang,N.V.Iyer,F.Agani,S.W.Leung,R.D.Koos,G.L.Semenza.Activation of vascular endothelial growth factor gene transcription by hypoxia-inducible factor 1.Mol Cell Biol,16(1996),pp.4604-4613
【非特許文献12】Hypoxic stress:obstacles and opportunities for innovative immunotherapy of cancer.Chouaib S,Noman MZ,Kosmatopoulos K,Curran MA.Oncogene.2017 Jan 26;36(4):439-445.doi:10.1038/onc.2016.225.Epub 2016 Jun 27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法を提供する。
【0010】
本開示はさらに、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を含むキットを提供する。
【0011】
癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を含む、使用も本明細書において提供される。
【0012】
一局面において、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法であって、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0013】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0014】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0015】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0016】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。さらに別の態様において、癌はVHL欠損RCCである。
【0017】
別の局面において、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を備えるキットが本明細書において提供される。
【0018】
ある態様において、キットは、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書をさらに備える。
【0019】
さらに別の局面において、ヒト患者における癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0020】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0021】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。さらに別の態様において、癌はVHL欠損RCCである。
【0022】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0023】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である。さらに別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。さらに別の態様において、癌はVHL欠損RCCである。
【0024】
一態様において、ヒト患者は他の処置に失敗したことがある。別の態様において、PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがあるヒト患者は、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する。
【0025】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用のある態様において、HIF-2α阻害剤は、ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0026】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用のさらに別の態様において、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩はレンバチニブメシル酸塩である。経口投与用のカプセル剤は、4mgまたは10mgのレンバチニブを含有し、それぞれ4.90mgまたは12.25mgのレンバチニブメシル酸塩に相当する。別の態様において、レンバチニブメシル酸塩などのレンバチニブの薬学的に許容され得る塩が投与され、使用すべきレンバチニブの用量が4mgであるとき、医療従事者は、4.90mgのレンバチニブメシル酸塩を投与することを知っているであろう。別の態様において、レンバチニブメシル酸塩などのレンバチニブの薬学的に許容され得る塩が投与され、使用すべきレンバチニブの用量が10mgであるとき、医療従事者は、12.25mgのレンバチニブメシル酸塩を投与することを知っているであろう。本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブを1日1回投与される。
【0027】
本明細書に記載される様々な方法の態様において、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、ヒト患者は約40mg~約120mgのベルズチファンを毎日投与される。いくつかの態様において、ヒト患者は、40、80または120mgのベルズチファンを1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、40mgのベルズチファンを1日1回投与される。別の特定の態様において、ヒト患者は、80mgのベルズチファンを1日1回投与される。別の特定の態様において、ヒト患者は、120mgのベルズチファンを1日1回投与される。
【0028】
したがって、いくつかの態様において、ヒト患者は、
(a)1日1回、40、80または120mgのベルズチファン;および
(b)1日1回、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブ
を投与される。
【0029】
ある態様において、ヒト患者は、
(a)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(b)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与される。
【0030】
特定の態様において、RCCを処置する方法であって、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(b)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与することを含む方法が本明細書において提供される。
【0031】
このような方法のある態様において、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブは、同じ日に投与される。いくつかの態様において、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブは逐次投与される。他の態様において、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブは同時に投与される。
【0032】
本明細書に記載される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの態様において、レンバチニブの薬学的に許容され得る塩-レンバチニブメシル酸塩-を使用することができる。レンバチニブメシル酸塩が使用される場合、レンバチニブメシル酸塩の投与量は、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブが提供するのと等しいモルのレンバチニブを提供するように適切に調整される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、二次プラス(2L+)のプログラム細胞死1/プログラム細胞死リガンド1(PD-[L]1)阻害剤後/血管内皮増殖因子チロシンキナーゼ阻害剤(VEGF-TKI)後の淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する患者におけるレンバチニブと組み合わせたベルズチファン(MK-6482)(実験群B5)の第1相b/2研究の設計概要のスキームを示す。
【
図2A】
図2Aは、各処置群における平均腫瘍体積によって示される、レンバチニブおよびHIF-2a阻害剤(MK-6482)の同時投与の抗腫瘍効果を示す。実験の詳細は実施例2に記載されている。
【
図2B】
図2Bは、各それぞれの群についての個々の増殖曲線における平均腫瘍体積によって示される、レンバチニブおよびHIF-2a阻害剤(MK-6482)の同時投与の抗腫瘍効果を示す。実験の詳細は実施例2に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1.定義
ある特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0035】
数値的に定義されたパラメータ(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤もしくはその抗原結合断片、もしくはレンバチニブの用量、または本明細書中に記載される併用療法による処置時間の長さ)を修飾するために使用される場合の「約」は、パラメータが、そのパラメータについて記載された数値または範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満であることを意味し、適切な場合には、記載されたパラメータは、最も近い整数に丸められ得る。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kg~5.5mg/kgの間で変動し得る。
【0036】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「a」、「an」および「the」などの単語の単数形は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、それらの対応する複数の言及を含む。
【0037】
「投与」または「投与する」という用語は、物質が体外に存在する場合に(例えば、本明細書中に記載されるようなHIF-2α阻害剤およびレンバチニブ)、経口、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達、および/または本明細書に記載されているもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法などによって、物質を患者に注射するか、またはその他物理的に送達する行為を指す。
【0038】
「HIF-2α阻害剤」は、HIF-2αの活性を阻害する任意の化学化合物または生物学的分子を意味する。HIF-2αの別名または同義語には、低酸素誘導因子-2α、内皮PASドメイン含有タンパク質1およびEPAS1が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」項目または「1つまたは複数の」項目という用語はそれぞれ、リストから選択された単一の項目およびリストから選択された2つまたはそれより多くの項目の混合物を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、以下のもの:特異的免疫応答、非特異的免疫応答、特異的応答と非特異的応答の両方、自然応答、一次免疫応答、適応免疫、二次免疫応答、記憶免疫応答、免疫細胞活性化、免疫細胞増殖、免疫細胞分化、およびサイトカイン発現の任意の1つまたは複数に関する。
【0041】
本明細書で使用される「対象」(あるいは「患者」)という用語は、処置、観察または実験の対象であった哺乳動物を指す。哺乳動物は、男性/雄または女性/雌であり得る。哺乳動物は、ヒト、ウシ類(例えば、乳牛)、ブタ類(例えば、ブタ)、ヒツジ類(例えば、ヒツジ)、ヤギ類(例えば、ヤギ)、ウマ類(例えば、ウマ)、イヌ類(例えば、飼育犬)、ネコ(例えば、飼育猫)、ウサギ類(例えば、ウサギ)、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)、プロキオン・ロトール(例えば、アライグマ)からなる群から選択される1つまたは複数であり得る。特定の態様において、対象はヒトである。
【0042】
本明細書で使用される「~を必要とする対象」という用語は、本明細書で定義される癌または感染性疾患と診断されたまたはそれを有すると疑われる対象を指す。
【0043】
本開示によって提供される治療薬および組成物は、任意の適切な経腸投与経路または非経口投与経路を介して投与することができる。「経腸経路」の投与という用語は、消化管の任意の部分を介した投与を指す。経腸経路の例としては、経口、粘膜、口腔および直腸経路、または胃内経路が挙げられる。「非経口経路」の投与は、経腸経路以外の投与経路を指す。非経口経路の投与の例としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、膀胱内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内、皮下または局所投与が挙げられる。本開示の治療薬および組成物は、経口摂取、経鼻胃管、胃瘻管、注射、注入、埋め込み型注入ポンプ、および浸透圧ポンプなどの任意の適切な方法を使用して投与することができる。適切な投与経路および投与方法は、使用されている具体的な治療薬、所望の吸収速度、使用されている具体的な製剤または剤形、処置されている障害のタイプまたは重症度、具体的な作用部位、および患者の状態などのいくつかの要因に応じて異なり得、当業者によって容易に選択され得る。
【0044】
本明細書で使用される「固形癌効果判定基準1.1応答基準」は、必要に応じて、応答が測定されている状況に基づいて、標的病変または非標的病変に関してEisenhauer,E.A.et al.,Eur.J.Cancer 45:228-247(2009)に記載されている定義を意味する。
【0045】
「持続した応答」は、本明細書に記載される処置の停止後の持続した治療効果を意味する。いくつかの態様において、持続した応答は、処置期間と少なくとも同じであるか、または処置期間よりも少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍もしくは3倍長い期間を有する。
【0046】
本明細書で使用される癌を「処置する」または「処置すること」とは、例えば、低下した数の癌細胞、低下した腫瘍サイズ、末梢器官への癌細胞浸潤の低下した割合、または腫瘍転移もしくは腫瘍増殖の低下した割合などの少なくとも1つのプラスの治療効果を達成するために、HIF-2α阻害剤、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の治療的組み合わせを、癌を有するかまたは癌と診断された対象に投与することを意味する。このような「処置」は、本明細書に記載されるように癌の進行の減速、中断、抑止、制御または停止をもたらし得るが、必ずしも癌または癌の症候の完全な排除を示すものではない。癌におけるプラスの治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)を参照)。例えば、腫瘍増殖阻害に関して、NCI基準によれば、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、T/C(%)=処置されたものの腫瘍体積の中央値/対照の腫瘍体積の中央値×100である。いくつかの態様において、本開示の併用療法によって達成される処置は、PR、CR、OR、PFS、DFSおよびOSのいずれでもある。PFSは、「腫瘍進行までの時間」とも呼ばれ、処置中および処置後に癌が増殖しない時間の長さを示し、患者がCRまたはPRを経験した時間の長さの他、患者がSDを経験した時間の長さを含む。DFSは、患者が無疾患状態を保つ処置中および処置後の時間の長さを指す。OSは、無処置または非処置の個体または患者と比較した平均余命の延長を指す。いくつかの態様において、本開示の併用療法に対する応答は、固形癌効果判定基準1.1応答基準を使用して評価されるPR、CR、PFS、DFSまたはORのいずれでもある。癌患者を処置するのに有効な本開示の併用療法のための処置レジメンは、患者の病状、年齢および体重、ならびに対象において抗癌応答を誘発する療法の能力などの因子に応じて変化し得る。本開示の局面のいずれかの態様は、すべての対象においてプラスの治療効果を達成する上で有効ではないことがあり得るが、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ワリス検定(H検定)、ヨンキー・テラプストラ検定およびウィルコクソン検定などの当技術分野で公知の任意の統計学的検定によって決定された場合に、統計的に有意な数の対象においてプラスの治療効果を達成すべきである。
【0047】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」、「併用療法」および「治療的組み合わせ」という用語は、少なくとも1つのHIF-2α阻害剤、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および追加してもよい治療薬がそれぞれ、重複する期間にわたって協調した様式で患者に投与される処置を指す。HIF-2α阻害剤による処置(「HIF-2α阻害剤処置」)の期間は、患者がHIF-2α阻害剤による処置を受ける期間である、すなわち、HIF-2α阻害剤の最初の投与から処置サイクルの最終日までの期間である。レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩による処置(「レンバチニブ処置」)の期間は、患者がレンバチニブによる処置を受ける期間、すなわち、レンバチニブの初回投与から処置サイクルの最終日までの期間である。本明細書に記載される方法および治療的組み合わせにおいて、HIF-2α阻害剤処置は、レンバチニブ処置と少なくとも1日重複する。ある態様において、HIF-2α阻害剤処置とレンバチニブ処置は、同じ期間である。いくつかの態様において、HIF-2α阻害剤処置はレンバチニブ処置の前に始まる。他の態様において、HIF-2α阻害剤処置はレンバチニブ処置の後に始まる。ある態様において、HIF-2α阻害剤処置は、レンバチニブ処置の終了より前に終了する。ある態様において、レンバチニブ処置は、HIF-2α阻害剤処置の終了より前に終了する。
【0048】
「処置レジメン」、「投薬プロトコル」および「投薬レジメン」という用語は、本開示の併用療法における各治療薬の投与の用量およびタイミングを指すために互換的に使用される。
【0049】
「腫瘍」は、癌と診断された対象または癌を有すると疑われる対象に対して適用される場合、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発性腫瘍および続発性新生物を含む。腫瘍の非限定的な例としては、固形腫瘍(例えば、肉腫(軟骨肉腫など)、癌腫(結腸癌腫など)、芽細胞腫(肝芽腫など)など)および血液腫瘍(例えば、白血病(急性骨髄性白血病(AML)など)、リンパ腫(DLBCLなど)、多発性骨髄腫(MM)など)が挙げられる。
【0050】
「腫瘍体積」または「腫瘍サイズ」という用語は、腫瘍の長さおよび幅として測定することができる腫瘍の総サイズを指す。腫瘍サイズは、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、例えばキャリパーを使用して、対象から除去したときの(1つまたは複数の)腫瘍の寸法を測定することによって、または画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CTもしくはMRIスキャンを使用して、体内に存在する間に(1つまたは複数の)腫瘍の寸法を測定することによって決定され得る。
【0051】
それとは反対の明示的な記載がなければ、本明細書に引用されるすべての範囲は包括的である、すなわち、範囲は、範囲の上限および下限の値、ならびにその間のすべての値を含む。一例として、本明細書に記載される温度範囲、パーセンテージ、等価物の範囲などは、範囲の上限および下限、ならびにそれらの間の連続したつながりの任意の値を含む。本明細書で提供される数値、および「約」という用語の使用は、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±10%、±15%および±20%の変動およびそれらの数的等価物を含み得る。必ずしも明示的に記載されているわけではないが、すべての範囲は、含まれるすべての部分範囲を含むことも意図される。例えば、3~7日の範囲は、3、4、5、6および7日を含むことが意図される。さらに、本明細書で使用される「または」という用語は、適切な場合には組み合わされ得る選択肢を示す、すなわち、「または」という用語は、それぞれの列挙された選択肢を別々に含むのみならず、それらの組み合わせも含む。
【0052】
本開示の局面または態様がマーカッシュ群または選択肢のその他のグループ化の観点で記載されている場合、本開示は、全体として列挙された群全体のみならず、群の各メンバーを個別におよび主群のすべての可能な部分群も包含し、群メンバーの1つまたは複数が存在しない主群も包含する。本開示はまた、特許請求の範囲における任意の群メンバーの1つまたは複数の明示的な除外を想定する。
【0053】
別段の定義が為されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、定義を含む本明細書が優先する。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を除外しないことを意味すると理解される。文脈上によって別段の要求がなければ、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」という用語に続く任意の(1つまたは複数の)例は、網羅的または限定的であることを意味しない。
【0054】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料も、本開示の実施または試験において使用することができる。材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0055】
2.HIF-2α阻害剤
HIF-2αの活性を阻害する任意の化学化合物または生物学的分子を含む、本明細書に開示される様々な方法、キットおよび使用において使用することができるHIF-2α阻害剤が本明細書において提供される。
【0056】
いくつかの態様において、HIF-2α阻害剤は、MK-6482、PT2977、3-[(1S,2S,3R)-2,3-ジフルオロ-1-ヒドロキシ-7-メチルスルホニル-インダン-4-イル]オキシ-5-フルオロ-ベンゾニトリル、および3-[[(1S,2S,3R)-2,3-ジフルオロ-2,3-ジヒドロ-1-ヒドロキシ-7-(メチルスルホニル)-1H-インデン-4-イル]オキシ]-5-フルオロベンゾニトリルとしても知られるベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、以下の化学構造を有する。
【化1】
【0057】
ベルズチファンおよびその合成は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第9,969,689号に記載されている。淡明細胞型腎細胞癌腫に対する潜在的処置としてのベルズチファンは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるRui Xu et al.,J.Med.Chem.2019,62,6876-6893に記載されている。黒色腫、RCCまたはCRCを処置するためのPD-1/CTLA-4阻害剤とHIF-2α阻害剤との組み合わせは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,335,388号に記載されている。米国特許出願公開第2018-0042884号は、HIF-2α阻害剤による神経膠芽腫の処置を記載しており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ベルズチファンの経口製剤は、2019年10月23日に出願された国際出願第PCT/US2019/57725号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0058】
3.レンバチニブ
VEGF受容体のキナーゼ活性を選択的に阻害する多重RTK(マルチRTK)阻害剤であるレンバチニブも本明細書において提供される。
【0059】
レンバチニブは、LENVIMA(登録商標)、Eisai Inc.,Woodcliff Lake、NJおよび4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミドとしても知られており、以下の化学構造を有する。
【化2】
【0060】
レバチニブ、その合成および使用は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,253,286号;同第7,612,208号;同第9,006,256号;同第10,259,791号;同第10,407,393号に記載されている。
【0061】
4.HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌を処置する方法
別の局面において、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたは記載されているその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌(例えば、RCC)を処置する方法が本明細書において提供される。
【0062】
ある態様において、癌を処置する方法は、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0063】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0064】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0065】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0066】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である。さらに別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。さらに別の態様において、癌はVHL欠損RCCである。
【0067】
一態様において、ヒト患者は他の処置に失敗したことがある。別の態様において、PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがあるヒト患者は、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する。
【0068】
ある態様において、RCCを処置する方法であって、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0069】
いくつかの態様において、進行RCCを処置する方法であって、進行RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0070】
いくつかの態様において、淡明細胞成分を有する進行RCCを処置する方法であって、淡明細胞成分を有する進行RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0071】
他の態様において、転移性RCCを処置する方法であって、転移性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0072】
さらに他の態様において、再発性RCCを処置する方法であって、再発性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0073】
さらに他の態様において、難治性RCCを処置する方法であって、難治性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0074】
他の態様において、再発性かつ難治性RCCを処置する方法であって、再発性かつ難治性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0075】
他の態様において、VHL欠損RCCを処置する方法であって、VHL欠損RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0076】
ある態様において、癌を処置する方法は、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0077】
本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、RCCを処置するための方法は、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0078】
一態様において、RCCは進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCCである。さらに別の態様において、RCCは転移性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性RCCである。さらに別の態様において、RCCは難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性かつ難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは、VHL欠損RCCである。
【0079】
一態様において、本発明は、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置する方法であって、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)HIF-2α阻害剤(例えば、ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩);および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法を提供する。
【0080】
5.投薬および投与
HIF-2α阻害剤およびマルチRTK阻害剤(例えば、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩)の組み合わせを使用して癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置するための投薬レジメンおよび投与経路が本明細書においてさらに提供される。
【0081】
HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくは本明細書に開示されるその薬学的に許容され得る塩は、例えば、毎日、1週間に1~7回、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月、3ヶ月ごと、半年ごと、毎年などに投与される用量によって投与され得る。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内、または吸入によって投与され得る。ある態様において、用量は静脈内投与される。ある態様において、用量は皮下投与される。ある態様において、用量は経口投与される。処置間隔についての総用量は、一般に少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgであるか、またはそれを超える。対象の血清中の抗体(例えば、抗PD-1抗体)またはその抗原結合断片の所定の標的濃度、例えば0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mLまたはそれより多くを達成するための用量も提供され得る。
【0082】
本明細書に記載される様々な方法の態様において、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、ヒト患者は40~120mgを1日1回投与される。本明細書に記載される様々な方法のさらに他の態様において、40、80または120mgのベルズチファンは1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、40mgのベルズチファンを1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、80mgのベルズチファンを1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、120mgのベルズチファンを1日1回投与される。
【0083】
ある態様において、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩は、経口投与される。いくつかの態様において、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩は、それぞれレンバチニブとして、8、10、12、14、18、20または24mgの1日用量で投与される。
【0084】
したがって、本明細書で提供される様々な方法のいくつかの態様において、ヒト患者は、
(a)40、80または120mgのベルズチファン;および
(b)8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)および(b)は毎日投与される。
【0085】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)120mgのベルズチファン;および
(b)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)および(b)は毎日投与される。
【0086】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)120mgのベルズチファン;および
(b)14mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)および(b)は毎日投与される。
【0087】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)120mgのベルズチファン;および
(b)10mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)および(b)は毎日投与される。
【0088】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)80mgのベルズチファン;および
(b)10mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)および(b)は毎日投与される。
【0089】
ある態様において、ヒト患者は他の処置に失敗したことがある。別の態様において、PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがあるヒト患者は、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する。
【0090】
いくつかの態様において、併用療法における治療薬(例えば、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブ)の少なくとも1つは、その薬剤が同じ症状を処置するための単剤療法として使用されるときに典型的に用いられる同じ投与レジメン(処置の用量、頻度および期間)を用いて投与される。他の態様において、患者は、併用療法において、その薬剤が単剤療法として使用される場合よりも少ない総量の治療薬(例えば、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブ)の少なくとも1つ、例えば、より少ない用量、より少ない頻度の用量、および/またはより短い処置期間を受ける。
【0091】
本明細書に開示される併用療法は、腫瘍を除去するための手術の前または後に使用され得、放射線処置の前、間または後に使用され得る。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書に開示される併用療法は、生物療法剤または化学療法剤で以前に処置されたことがない患者、すなわち処置未経験の患者に投与される。他の態様において、併用療法は、生物療法剤または化学療法剤による従前の治療後に持続した応答を達成することができなかった患者、すなわち、処置を経験した患者に投与される。
【0093】
本明細書に開示される治療的組み合わせは、特定の疾患または症状(癌)の予防、処置、調節、改善、またはリスクの軽減において使用される他の抗癌剤を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の他の活性作用物質と組み合わせて使用され得る。このような他の活性作用物質は、本明細書中に開示される組み合わせにおける治療薬の1つまたは複数と同時にまたは逐次に、そのために一般的に使用される経路および量で投与され得る。
【0094】
1つまたは複数の追加の活性作用物質は、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容され得る塩と同時投与され得る。(1つまたは複数の)追加の活性作用物質は、HIF-2α阻害剤、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される1つまたは複数の同時投与される作用物質とともに単一の剤形で投与することができる。(1つまたは複数の)追加の活性作用物質はまた、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容され得る塩を含有する剤形とは別個の(1つまたは複数の)剤形で投与され得る。
【0095】
6.キット
さらに別の局面において、適切な包装材に包装された、本明細書に開示される治療薬(例えば、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブ)またはその薬学的組成物を備えるキットが本明細書で提供される。キットは、構成要素の説明またはキット中の構成要素のインビトロ、インビボまたはエクスビボでの使用のための説明書を含むラベルまたは添付文書を含んでもよい。
【0096】
いくつかの態様において、キットは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を備える。
【0097】
ある態様において、キットは、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書をさらに備える。
【0098】
一態様において、キットは、(a)1つまたは複数の薬用量のHIF-2α阻害剤;(b)1つまたは複数の薬用量のレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩;ならびに(c)HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書を備える。
【0099】
本明細書の様々なキットにおいては、HIF-2α阻害剤またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容され得る塩のための薬用量を使用することができる。いくつかの態様において、キットは、ある期間の処置(例えば、3、6、12または24週間など)に十分な各成分の薬用量を含む。例えば、キットは、21薬用量の120mgのベルズチファンおよび21薬用量の20mgのレンバチニブ(または等量の、レンバチニブの薬学的に許容され得る塩)を備えることができ、これらは3週間の処置に十分である。または、キットは、42薬用量の120mgのベルズチファンおよび42薬用量の20mgのレンバチニブ(または等量の、レンバチニブの薬学的に許容され得る塩)を備えることもでき、これらは6週間の処置に十分である。
【0100】
いくつかの態様において、キットは、容器、分割された瓶または分割されたホイルの包みなどの、構成要素を別々に保持するための手段を備える。本開示のキットは、異なる剤形の投与、例えば経口および非経口のために、異なる投薬間隔での別個の組成物の投与のために、または別個の組成物の互いに対する用量設定のために使用することができる。
【0101】
7.癌またはフォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置するための治療的組み合わせの使用
さらに別の局面において、ヒト患者における癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ
、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0102】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0103】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0104】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0105】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、癌は、淡明細胞成分を有する進行RCCである。さらに別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは、VHL欠損RCCである。
【0106】
一態様において、ヒト患者におけるRCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0107】
いくつかの態様において、ヒト患者における進行RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0108】
いくつかの態様において、ヒト患者における淡明細胞成分を有する進行RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0109】
他の態様において、ヒト患者における転移性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0110】
さらに他の態様において、ヒト患者における再発性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0111】
さらに他の態様において、ヒト患者における難治性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0112】
他の態様において、ヒト患者における再発性かつ難治性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0113】
他の態様において、ヒト患者におけるVHL欠損RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)HIF-2α阻害剤;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0114】
さらに他の態様において、癌またはフォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0115】
1つの特定の態様において、RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(b)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0116】
一態様において、ヒト患者は他の処置に失敗したことがある。別の態様において、PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがあるヒト患者は、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する。
【0117】
一態様において、RCCは進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCCである。さらに別の態様において、RCCは転移性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性RCCである。さらに別の態様において、RCCは難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性かつ難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは、VHL欠損RCCである。
【0118】
本発明のいくつかの態様を説明してきた。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正が行われ得ることが理解されよう。そのような組み合わせがそれらの態様の説明と一致する程度まで、各態様は、1つまたは複数の他の実施形態と組み合わされ得ることがさらに理解されよう。
【0119】
[実施例]
このセクション(セクションVI)中の実施例は、限定ではなく例示として提供されている。
【0120】
[実施例1]
PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがある、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する患者にベルズチファン(MK-6482)およびレンバチニブを投与する臨床試験。
【0121】
2019年9月6日現在、合計34名の健康な志願者および185名の患者が、5つの進行中の臨床試験においてMK-6482で処置されていた。
【0122】
16名の健康な女性成人志願者における進行中の無作為化、単回投与、2期、2群クロスオーバー第1相試験において、120mgのMK-6482の単回投与のPKに対する食物の影響を調査した。本研究は、高脂肪、高カロリー食はMK-6482曝露の程度に影響を及ぼさないが、最大血漿MK-6482濃度を約35%低下させ、ピークMK-6482曝露までの時間を2時間の中央値差(摂食-絶食)で遅延させることを示した。これらのデータは、臨床的に意味があるとは考えられず、食物ありまたはなしでのMK-6482の投薬を支持する。報告された最も一般的な有害事象(AE)は頭痛(12.5%)であった。
【0123】
様々な進行固形腫瘍を有する参加者におけるMK-6482の忍容性、安全性、PKおよびPD特性を評価するために設計されたFIH第1相試験が進行中である。2019年9月6日の時点で、20から240mgQDおよび120mgBIDまでの範囲の用量漸増部分(パート1A)中の様々な進行固形腫瘍を有する43名の参加者を含む、合計104名の参加者が登録されていた。MTDには到達せず、2つの処置関連DLT:240mgQDコホートにおける1つのグレード4の血小板減少症の事象、および120mgBIDコホートにおける1つのグレード3の低酸素症の事象が観察された。好ましいPK、薬力学および安全性所見に基づいて、さらなる臨床開発のために120mgQD用量が選択された。120mgQDの臨床用量で、進行RCCを有する52名のさらなる参加者を拡大コホート(パート1B)において処置した。用量漸増と拡大コホートの組み合わせでは、最も一般的なAE(参加者の20%以上で発生)は、貧血、疲労、呼吸困難、吐き気および末梢浮腫であった。最も一般的なグレード3のAEは、貧血および低酸素症であった(参加者の5%以上)。MK-6482のtmax中央値は1~2.8時間であり、曝露は用量とともに増加した。15日目の120mgQD拡大コホート(パート1B)における平均定常状態t1/2は15.4時間であり、1日目から15日目まで1.5倍の蓄積をもたらした。15日目の120mgQD拡大コホート(パート1B)における平均定常状態Cmaxは、1.79μg/mL(4.67μM)であった。推定CL/Fは5.22~14.4L/hrであった。推定Vz/Fは106~266Lであり、末梢組織への広範な分布を示唆している。CVは、単回投与後のCmaxについては32~59%およびAUCについては24~48%であり、定常状態でのCmaxについては27~56%およびAUCについては30~64%であった。合計で、以前に処置された進行RCCを有する55名の参加者が、本研究において120mgQDでのMK-6482で処置されている(本研究の用量漸増部分中の3名の患者および本研究の用量拡大部分中の52名の参加者)。固形癌効果判定基準v1.1によって評価された場合、これらの55名の参加者の中で最も良好な応答には、PRを有する11名の参加者(20%)およびSDを有する32名の参加者(58%)が含まれた。
【0124】
VHL病関連RCCを有する参加者における第2相非盲検有効性および安全性試験が進行中である。2019年9月6日の時点で、61名の参加者が120mgQDの用量で登録されていた。有効性データはまだ入手できない。疲労は、グレード3以上の毒性の最も一般的なAEであった(参加者の5%以上によって報告された)。
【0125】
さらに、ccRCCを有する20名の患者が第2相試験で評価されており、18名の健康な成人志願者が第1相バイオアベイラビリティ試験で評価されている。
【0126】
これらの研究からのデータに基づいて、PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIによる進行した疾患に対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行(2L+RCC)を経験したことがある、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する患者(2L)において、120mgのMK-6482と20mgのレンバチニブの組み合わせを評価する。
【0127】
この下位研究の主要有効性目的は、進行ccRCCを有する参加者においてベルズチファンとレンバチニブの抗腫瘍効果を評価することである。具体的には、この研究には、2L+のPD-(L)1阻害剤後/VEGF-TKI後の淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する少なくとも18歳の男性および女性参加者が含まれる。この下位研究では、主要有効性評価項目としてORRを使用する。ORRは、BICRによって評価された場合に固形癌効果判定基準1.1による確認されたCRまたはPRを達成する参加者の割合として定義される。奏効は、最大10個の標的病変および器官当たり最大5個の標的病変を追跡するように改変されている固形癌効果判定基準1.1を使用したBICRに基づく。ORRは、参照群および実験群の抗腫瘍活性を評価するための適切な評価項目である。ORRによって測定される処置効果は、特定の疾患、使用の状況、効果の大きさ、CRの数、奏効の持続性、疾患の状況、腫瘍の位置、利用可能な治療、およびリスクと利益の関係に基づいた直接的な臨床的利益を表すことができる。
【0128】
この下位研究では、DOR、PFS、OSおよびCBRを副次的有効性評価項目として使用する。DORは、CRまたはPRの最初に文書に記録された証拠から、疾患進行または任意の原因による死亡のうちいずれか早い方までの時間として定義される。BICRによって評価される、最大10個の標的病変および器官あたり最大5個の標的病変を追跡するように改変された固形癌効果判定基準1.1によるDORは、有効性のさらなる尺度としての役目を果たし、規制当局および腫瘍学団体の両方によって一般に認められている評価項目である。
【0129】
PFSは、無作為化の日付から、BICRによって固形癌効果判定基準1.1に従って最初に文書に記録されたPDまたは任意の原因による死亡のうちいずれか早い方までの時間として定義される。奏効評価におけるバイアスを最小限に抑えるために、画像はBICRによって読み取られる。PFS事象は、腫瘍増殖を反映することができ、生存利益の決定の前に評価され得る。その決定は、その後の治療によって狂わされることはない。PFSによって測定される処置効果は、特定の疾患、使用の状況、効果の大きさ、疾患状況、転移部位の位置、利用可能な治療、リスクと利益の関係、および重要な疾患部位における進行を遅延もしくは防止すること(例えば、脳または脊椎における新たな病変を遅延させること)またはより毒性の高い治療の投与を遅延させることの臨床的帰結に基づいた直接的な臨床的利益を表すための代用評価項目であり得る。
【0130】
OSは、無作為化臨床試験において新しい抗新生物療法の優位性を実証するためのゴールドスタンダードとして認識されている。OSは、無作為化の日付から任意の原因による死亡の日付までの時間として定義される。
【0131】
CBRは、多くの癌臨床試験で一般的に使用されている副次的評価項目であり{059M4P}、固形癌効果判定基準1.1に従うBICRによる評価に基づいて、6ヶ月以上のSDまたはCRもしくはPRを達成した参加者の割合として定義される。
【0132】
腫瘍サイズ変化は、探索的有効性評価項目であり、初期抗腫瘍活性のシグナルを検出し得る提案された中間評価項目であり{059MRJ}、各ベースライン後評価での最長直径の標的病変の合計およびベースラインからの変化(および%変化)として定義される。
【0133】
少なくとも18歳である、進行した淡明細胞型RCCの組織学的に確認された診断(肉腫様特徴を伴うまたは伴わない)を有する男性/女性参加者が、本研究に登録される。参加者が以下の場合、参加者は本研究に参加する資格を有する。
【0134】
1.局所的に進行した/転移性のccRCCの組織学的に確認された診断(肉腫様特徴を伴うまたは伴わない)、すなわち、AJCCによるステージIVのRCCを有さなければならない。
2.PD-(L)1チェックポイント阻害剤およびVEGF-TKIの両方を順次にまたは組み合わせて用いて、局所的に進行したまたは転移性のRCCに対する全身処置を受けた時または受けた後に疾患進行を経験したことがある。
PD-(L)1チェックポイント阻害剤処置の進行は、以下の基準のすべてを満たすことによって定義される。
・抗PD-(L)1mAbの少なくとも2用量を受けたこと。
・抗PD-(L)1mAbの間または後に、固形癌効果判定基準1.1によって定義されるPDが治験責任医師によって実証された。
・PDは、抗PD-(L)1mAbの最後の用量から12週間以内に文書で記録された。
VEGF-TKI処置の進行は、以下の基準を満たすことによって定義される。
・VEGF-TKIによる処置中または処置後に、固形癌効果判定基準1.1によって定義されたPDが治験責任医師によって実証された。
3.BICRによって評価された場合に固形癌効果判定基準1.1による測定可能な疾患を有すること。以前に照射された領域に位置する病変は、このような病変において進行が実証されている場合、測定可能であると考えられる。
【0135】
本研究の参照群を以下に記載する。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
[実施例2]
HIF-2α阻害剤(MK-6482)とVEGFチロシンキナーゼ阻害剤(レンバチニブ)を組み合わせたVHL欠損腎細胞癌腫異種移植腫瘍モデル。
【0140】
本実施例では、本発明者らは、HIF-2α阻害剤(MK-6482)とVEGFチロシンキナーゼ阻害剤(レンバチニブ)とを組み合わせることによる抗腫瘍上の利益を実証するために、ヒトVHL欠損腎細胞癌腫異種移植腫瘍モデルを使用した前臨床データを提供する。
【0141】
処置開始前に、体重18~21グラムの7週齢の雌SCID Beigeマウスを麻酔し、0.1mLの無血清ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の約95%生存対数期サブコンフルエントUMRC2(5.0×106)細胞の単一細胞懸濁液を後側腹部に皮下接種して、腫瘍発育を開始させた。接種された動物の平均腫瘍体積が約205mm3に達したときに処置を開始した。群あたり10匹のマウスからなる4つの処置群にマウスを対対応させた。処置群は以下からなった:1)0.5%メチルセルロース+0.5%Tween 80(ビヒクル);2)MK-6482;3)レンバチニブ;4)MK-6482+レンバチニブ。ビヒクルおよびMK-6482を、3mg/kg体重で1日2回(BID)経口胃管投与した。レンバチニブは、10mg/kg体重で1日1回(QD)経口投与した。処置は、0日目に開始し、34日目に完了した。腫瘍および体重のキャリパー測定を週に2回行った。統計解析は、研究の終了時、34日目にテューキーの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAによって実施した。
【0142】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、MK-6482+レンバチニブとの併用療法の平均抗腫瘍応答は、MK-6482単剤療法(p<0.0001)またはレンバチニブ単剤療法(p=0.017)より大きかった。MK-6482単剤療法(p=0.003)、レンバチニブ単剤療法(p<0.0001)およびMK-6482+レンバチニブ(p<0.0001)を含むすべての処置群は、ビヒクル対照群と比較して有意な抗腫瘍活性を示した。34日目でのビヒクル処置された動物に対するそれぞれの処置群の腫瘍増殖阻害(TGI)および研究終了時の部分的腫瘍退縮(PR)または完全腫瘍退縮(CR)の観察の要約を以下の表に提供する。
【0143】
【0144】
CRは観察可能な腫瘍が存在しないと定義されたのに対して、PRは処置を開始したときの元の腫瘍サイズよりその体積が小さな腫瘍であった。体重の変化または早期死亡率によって評価した場合、レンバチニブ+MK-6482の組み合わせについての前臨床試験において、新たな安全性シグナルは観察されなかった。
【0145】
上に提供された結果に示されるように、レンバチニブ+MK-6482の組み合わせによる処置は、単独で投与されたときの各薬剤による処置よりも有利である。
【国際調査報告】