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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーカラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20230718BHJP
   G01N 30/50 20060101ALI20230718BHJP
   G01N 30/56 20060101ALI20230718BHJP
   B01D 15/22 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01N30/60 A
G01N30/60 E
G01N30/50
G01N30/56 A
B01D15/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579839
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2021065962
(87)【国際公開番号】W WO2021259689
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】2009557.6
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ペル・ノルマン
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017CB01
4D017DA03
4D017EA05
(57)【要約】
本発明は、内壁(112)を有する管状側壁(110)と、アダプタ組立体(120)と、ベース組立体(125)とを備える、クロマトグラフィーカラム(100、100')に関する。閉鎖床空間(130)は、前記アダプタ組立体(120)と、前記ベース組立体(125)と、前記管状側壁(110)の前記内壁(112)との間に画定される。アダプタ組立体(120)は、前記管状側壁(110)内を前記ベース組立体(125)に対して軸方向に動くことができる。内壁(112)は、クロマトグラフィーカラム(100)の管状側壁(110)の下半分内に配置された少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')を備え、空気および他の流体が、アダプタ組立体がプライミング位置である前記アダプタ組立体が少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')の少なくとも一部と交わるプライミング位置に配置されると、溝(180、180'、180''、180''')を介してアダプタ組立体(120)を通ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーカラム(100、100')であって、
内壁(112)を有する管状側壁(110)と、
アダプタ組立体(120)と、
ベース組立体(125)と、
を備え、
閉鎖床空間(130)が、前記アダプタ組立体(120)と、前記ベース組立体(125)と、前記管状側壁(110)の前記内壁(112)との間に画定され、
前記アダプタ組立体(120)が、前記管状側壁(110)内を前記ベース組立体(125)に対して軸方向に動くことができ、
前記内壁(112)が、前記クロマトグラフィーカラム(100)の前記管状側壁(110)の下半分内に配置された少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')を備え、空気および他の流体が、前記アダプタ組立体がプライミング位置である前記アダプタ組立体(120)が前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')の少なくとも一部と交わるプライミング位置に配置されると、前記溝(180、180'、180''、180''')を介して前記アダプタ組立体(120)を通ることができる、クロマトグラフィーカラム(100、100')。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')が、20cm未満または10cm未満である、ベース組立体(125)からの距離内に設けられる、請求項1に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')が、前記内壁(112)の円周の周りの連続溝である、請求項1または2に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項4】
前記内壁(112)の円周の周りに分配されたいくつかの別個の溝(180'、180'')がある、請求項1または2に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溝(180''')が、前記内壁(112)の円周の少なくとも一部の周りに設けられた螺旋溝(180''')として設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項6】
前記螺旋溝(180''')が、前記ベース組立体(125)から20cm未満から始まり、前記ベース組立体(125)から15cm未満で終わる、請求項5に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項7】
前記アダプタ組立体(120)が、前記アダプタ組立体(120)を貫通する少なくとも1つのプライミング流体通路(171)を備え、各プライミング流体通路(171)が、前記アダプタ組立体(120)の円周の周りのある位置に設けられた第1の端開口(172)を有し、それによって、1つを上回るプライミング流体通路(171)が設けられる場合、前記プライミング流体通路(171)のそれぞれの前記第1の端開口(172)が、前記アダプタ組立体(120)の円周の周りに分配され、それによって、前記少なくとも1つのプライミング流体通路(171)が、前記クロマトグラフィーカラム(100、100')の外部と、前記アダプタ組立体(120)の円周との間の流体の移送のために構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプライミング流体通路(171)のそれぞれの前記少なくとも1つの第1の端開口(172)が、前記アダプタ組立体(120)の2つのスクレーパ(163a、163b)同士の間に設けられ、前記スクレーパが、前記クロマトグラフィーカラム(100、100')の前記管状側壁(110)の前記内壁(112)を封止する、請求項7に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム(100、100')をプライミングする方法であって、
a) アダプタ組立体(120)が内壁(112)の少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')の少なくとも一部と交わりそれによって空気および他の流体が前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')を介して前記アダプタ組立体(120)を通ることができるように、管状側壁(110)内において前記アダプタ組立体(120)をプライミング位置まで下げるステップと、
b) 閉鎖床空間(130)にプライミング液体を充填するために前記プライミング液体を用意するステップと、
c) 空気が前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')を介して前記アダプタ組立体(120)を通ることができるようにより多くのプライミング液体を前記閉鎖床空間(130)に供給することによって、および/または、空気が前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')を介して押し出され得るように前記管状側壁(110)内において前記アダプタ組立体(120)を軸方向に下げることによって、空気を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
ステップc)の後に行われるさらなるステップd)を含み、前記ステップd)が、空気または他の流体がそれ以上前記アダプタ組立体(120)を通ることができないように前記アダプタ組立体(120)が前記少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')から除去されるように、前記管状側壁(110)内において前記ベース組立体(125)から遠ざけるように前記アダプタ組立体(120)を軸方向に上げることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム(100、100')を充填解除する方法であって、
床空間(130)に流体をもたらすことによって、前記クロマトグラフィーカラム(100、100')内にもたらされているクロマトグラフィー媒体の充填床を再懸濁するステップと、
前記クロマトグラフィーカラムのクロマトグラフィー媒体出口(225)を介して再懸濁済みクロマトグラフィー媒体を除去するステップと、
アダプタ組立体(120)が少なくとも1つの溝(180、180'、180''、180''')の少なくとも一部と交わるように、管状側壁(110)内において前記アダプタ組立体(120)をある位置まで下げるステップと、
前記床空間内における任意の残りのクロマトグラフィー媒体の再懸濁のために、流体が前記少なくとも1つのプライミング流体通路(171)のそれぞれの第1の端開口(172)から出て前記溝(180、180'、180''、180''')を介して前記床空間(130)へと流入するように、前記アダプタ組立体(120)を貫通するように設けられた少なくとも1つのプライミング流体通路(171)を通って前記流体を流すステップと、
前記クロマトグラフィー媒体出口(225)を介して再懸濁済みクロマトグラフィー媒体を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプライミング流体通路(171)を通して流体を流すステップが、前記アダプタ組立体(120)が前記溝(180''')が設けられた距離にわたって通過するように、前記管状側壁(110)内において前記アダプタ組立体(120)を軸方向に同時に動かすステップをさらに含み、前記溝が螺旋溝(180''')として設けられ、それによって、前記少なくとも1つの第1の端開口(172)を通って出る流体流が、前記アダプタ組立体(120)の位置に応じて異なる方向から前記螺旋溝(180''')を介して前記床空間(130)内へと移送される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーカラム、クロマトグラフィーカラムをプライミングする方法、およびクロマトグラフィーカラムを充填解除(unpacking)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーカラムは、化学的または生物学的な化合物を分離、精製および単離のための手段を提供する。これらの動作に使用されるカラムのサイズおよび種類は、典型的には、問題とするプロセスのスケールに応じて決まり、典型的には、研究目的には小さなガラスまたはプラスチック壁のカラムが使用され、工業目的にはより大きな金属カラムが用いられる。例えば、クロマトグラフィーカラムは、製造プロセスにおいて、処理液を精製し、そうした液体から目的物質を分離することに使用することができ、典型的な例としては、生物学的製剤とともにファインケミカルおよび医薬品のラージスケールの分取精製が挙げられる。
【0003】
本発明は、プラスチック壁のクロマトグラフィーカラムとより大きな金属壁のクロマトグラフィーカラムの両方に関するが、特に、工業規模のクロマトグラフィーカラムの製造に有用である。工業規模のクロマトグラフィーカラムは、典型的には、上端に、バッファおよび分離されるべき物質がそこを通って管のキャビティ内に配置された媒体床へ分配される液体入口を含む、中空の軸方向垂直管ハウジングと、下端に、物質およびバッファを収集するための液体収集システムとを備える。液体入口と収集システムとの間には、バッファ流体および/または分離精製されるべき物質がそこを通って浸出する粒子状のクロマトグラフィー媒体または床が配置されている。
【0004】
アダプタ組立体は、典型的には、管状ハウジングの上端に取り付けられ、ベース組立体は下端に取り付けられ、そこで底部フランジにボルト締めされている。これらの組立体のそれぞれは、典型的には、強固な受板と、床支持体をさらに支持する分配板(distributor plate)とを備え、床支持体は、メッシュ、スクリーン、フィルター、焼結物、または粒子状媒体の床を保持しながら処理液がクロマトグラフィー床空間またはキャビティに流入およびそこから流出することを可能にする他の流体透過性媒体保持材料の層である。床の高さおよび床の圧縮の調整能力および制御を実現するため、アダプタ組立体は、典型的には、カラム管内部にピストンまたは摺動するアダプタの形態で作られる。カラムに典型的には弁またはノズルによって床媒体が入れられた後、アダプタは、媒体床を圧縮または加圧するために管の底部の方に向けて押しやられ得る。一般に、ベース組立体は、カラム管の底部フランジにボルト締めされた固定構造であるが、いくつかの例では、可動的に摺動可能なピストンまたはアダプタの形態である場合もある。
【0005】
ベース組立体の受板は、一般に、カラムを支持する役目を果たし、それ自体は、ベース組立体の下に突出する出口配管のためのクリアランスを可能にする脚部またはいくつかの他のスタンド装置上で支持されている。
【0006】
液体クロマトグラフィーは、試料中に存在する個々の化合物を分離するための技術である。この技術を用いるとき、試料は、移動相と呼ばれる液体中に溶解され担持される。試料を担持する移動相は、固定相と呼ばれることもある粒子状媒体の床を通って移動させられる。異なる化合物は、媒体を通る異なる移動速度を有することになり、それが試料中の化合物の分離を生じさせる。粒子状媒体の床は、移動相により重力を受けて洗い流されて形成される、および/または、アダプタもしくはピストンによる圧縮によって形成される。カラムが液体クロマトグラフィーによって化合物を分離することに使用され得る前、かつカラムにクロマトグラフィー樹脂が充填される前に、カラム内に閉じ込められた空気を床空間から除去する必要があり、そうでないと、その空気が分離プロセスを妨げることがある。空気は、もとから床空間自体の内部に存在することがある、または関連の管類、ポンプもしくは床支持体のようなカラム構成要素から床空間に入り込む場合もある。液体クロマトグラフィーを行う前に、カラムから空気を除去しようとするときにしばしば問題に直面する。閉じ込められた空気が、固定相内にエアポケットを作り出すことがあり、そこでは、試料と媒体との間の化学的相互作用が起こり得ない。したがって、これらのエアポケットは、試料中の様々な成分の分離に悪影響を及ぼす。
【0007】
特許文献1には、床空間内に閉じ込められた空気の除去を可能にするように特別に設計されたクロマトグラフィーカラムが開示されている。細長い溝は、クロマトグラフィーカラムのハウジングの管状側壁の内壁に設けられている。
【0008】
特許文献1に記載のものによるクロマトグラフィーカラムの問題は、場合により閉じ込められた空気を取り除くために、プライミングプロセス中にカラム全体に純水を充填する必要があることである。このプロセスは、時間がかかるだけでなく、大量の純水を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,820,042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、クロマトグラフィーカラムのプライミングを改善し容易にすることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、充填解除の間カラムからスラリー全部を除去する実現性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、独立請求項による、クロマトグラフィーカラム、クロマトグラフィーカラムのプライミングの方法、クロマトグラフィーカラムの充填解除の方法によって達成される。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、クロマトグラフィーカラムであって、内壁を有する管状側壁と、アダプタ組立体と、ベース組立体とを備え、ここで、閉鎖床空間が、前記アダプタ組立体と、前記ベース組立体と、前記管状側壁の前記内壁との間に画定され、前記アダプタ組立体が、前記管状側壁内を前記ベース組立体に対して軸方向に動くことができ、前記内壁が、前記クロマトグラフィーカラムの管状側壁の下半分内に配置された少なくとも1つの溝を備え、空気および他の流体が、アダプタ組立体がプライミング位置である前記アダプタ組立体が少なくとも1つの溝の少なくとも一部と交わる(intersect)プライミング位置に配置されると、溝を介してアダプタ組立体を通ることができる、クロマトグラフィーカラムが提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、本発明によるクロマトグラフィーカラムをプライミングする方法が提供される。前記方法は、アダプタ組立体が内壁の少なくとも1つの溝の少なくとも一部と交わりそれによって空気および他の流体が前記少なくとも1つの溝を介してアダプタ組立体を通ることができるように、管状側壁内においてアダプタ組立体をプライミング位置まで下げるステップと、閉鎖床空間にプライミング液体を充填するためにプライミング液体を用意するステップと、空気が前記少なくとも1つの溝を介してアダプタ組立体を通ることができるようにより多くのプライミング液体を閉鎖床空間に供給することによって、および/または、空気が少なくとも1つの溝を介して押し出され得るように管状側壁内においてアダプタ組立体を軸方向に下げることによって、空気を除去するステップとを含む。
【0015】
本発明の他の態様によれば、本発明によるクロマトグラフィーカラムを充填解除する方法であって、前記床空間に流体をもたらすことによって、前記クロマトグラフィーカラム内にもたらされているクロマトグラフィー媒体の充填床を再懸濁するステップと、クロマトグラフィーカラムのクロマトグラフィー媒体出口を介して再懸濁済みクロマトグラフィー媒体を除去するステップと、アダプタ組立体が少なくとも1つの溝の少なくとも一部と交わる/流体的に結合するように、管状側壁内においてアダプタ組立体をある位置まで下げるステップと、床空間内における任意の残りのクロマトグラフィー媒体の再懸濁のために、前記流体が少なくとも1つのプライミング流体通路のそれぞれの第1の端開口から出て前記溝を介して床空間へと流入するように、アダプタ組立体を貫通するように設けられた少なくとも1つのプライミング流体通路を通って前記流体を流すステップと、クロマトグラフィー媒体出口を介して再懸濁済みクロマトグラフィー媒体を除去するステップとを含む方法が提供される。
【0016】
したがって、アダプタを、カラムの下半分でありそこの内壁に溝が配置されているプライミング位置まで下げることによって、閉じ込められた空気が除去され得るクロマトグラフィーカラムが提供される。アダプタが溝と直線的に並ぶプライミング位置に配置される、すなわちアダプタが溝の少なくとも一部と交わるように整列されるとき、プライミング液体は、アダプタとベース組立体との間に設けられた比較的小さなコンパートメント内へともたらされる。プライミング液体は、任意の可能性のある空気が少なくとも1つの溝を介してアダプタ組立体を通るまで、もたらされる。あるいは、アダプタ組立体とベース組立体との間の床空間にプライミング液体が充填してあるとき、アダプタは、短い距離だけ押し下げられ、それによって、いくらかのプライミング液体が任意の可能性のある空気とともに少なくとも1つの溝を介してアダプタ組立体に通され得る。クロマトグラフィーカラム壁内のベース組立体の近くの比較的低い位置に少なくとも1つの溝があることにより、カラム全体がプライミングの実施のために充填されなければならない従来の方法に比べてごくわずかな量のプライミング液体しか必要なくなる。これは時間と費用の節約になる。溝がカラムの下半分に位置することのさらなる利点は、溝を、アダプタ組立体の円周の周りに設けられた出口から流体を流すために使用できることである。その場合、そのような流体流は、少なくとも1つの溝を介してアダプタ組立体を通り、そして床空間に流入することができる。これは、クロマトグラフィーカラムの充填解除の間に使用され得る。任意の可能性のある残りのクロマトグラフィー材料は、この流れによって流し出され得る。溝がベース組立体の近くに設けられる場合、溝がカラムの上部に設けられていた従来技術に比べると、これはさらにより有用である。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの溝が、20cm未満または10cm未満である、ベース組立体からの距離内に設けられる。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの溝が、内壁の円周の周りの連続溝である。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、内壁の円周の周りに分配されたいくつかの別個の溝がある。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの溝が、内壁の円周の周りに設けられベース組立体から20cm未満から始まりベース組立体から15cm未満で終わる連続螺旋溝として設けられる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、アダプタ組立体が、アダプタ組立体を貫通する少なくとも1つのプライミング流体通路を備え、ここで、各プライミング流体通路が、アダプタ組立体の円周の周りのある位置に設けられた第1の端開口を有し、それによって、1つを上回るプライミング流体通路が設けられる場合、プライミング流体通路のそれぞれの第1の端開口が、アダプタ組立体の円周の周りに分配され、それによって、前記少なくとも1つのプライミング流体通路が、クロマトグラフィーカラムの外部と、アダプタ組立体の円周との間の流体の移送のために構成される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのプライミング流体通路のそれぞれの前記少なくとも1つの第1の端開口が、アダプタ組立体の2つのスクレーパ同士の間に設けられ、スクレーパが、クロマトグラフィーカラムの管状側壁の内壁を封止する。
【0023】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーカラムをプライミングする方法は、ステップc)の後に行われるさらなるステップd)を含み、前記ステップd)が、空気または他の流体がそれ以上前記アダプタ組立体を通ることができないようにアダプタ組立体が少なくとも1つの溝から除去されるように、管状側壁内においてベース組立体から遠ざけるように前記アダプタ組立体を軸方向に上げることを含む。
【0024】
クロマトグラフィーカラムを充填解除する方法のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのプライミング流体通路を通して流体を流すステップが、アダプタ組立体が溝が設けられた距離にわたって通過するように、管状側壁内においてアダプタ組立体を軸方向に同時に動かすステップをさらに含み、ここで、溝が螺旋溝として設けられ、それによって、少なくとも1つの第1の端開口を通って出る流体流が、アダプタ組立体の位置に応じて異なる方向から螺旋溝を介して床空間内へと移送される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】本発明の1つの実施形態によるクロマトグラフィーカラムの断面図である。
図1b】本発明の1つの実施形態によるクロマトグラフィーカラムの一部の断面図である。
図2a】本発明の1つの実施形態によるクロマトグラフィーカラムの管状側壁の一部の概略図である。
図2b】本発明の他の実施形態によるクロマトグラフィーカラムの管状側壁の一部の概略図である。
図2c】本発明の他の実施形態によるクロマトグラフィーカラムの管状側壁の一部の概略図である。
図3a】本発明の1つの実施形態によるクロマトグラフィーカラムの断面図である。
図3b】アダプタ組立体が下げられた状態にある、図3aに示されるものと同じクロマトグラフィーカラムの断面図である。
図4】本発明の1つの実施形態によるアダプタ組立体の高さに左右される床支持体表面の周りの可動流路の概略図である。
図5】本発明の1つの実施形態によるアダプタ組立体の斜視図である。
図6】本発明の1つの実施形態による方法の流れ図である。
図7】本発明の他の実施形態による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1aは、本発明の1つの実施形態によるクロマトグラフィーカラム100の断面図である。クロマトグラフィーカラム100は、内壁112を有する細長い管状側壁110と、アダプタ組立体120と、ベース組立体125とを備える。前記アダプタ組立体120と、前記ベース組立体125と、前記管状側壁110の前記内壁112との間には、閉鎖床空間130が画定される。前記アダプタ組立体120は、上入口108を備え、前記管状側壁110内で前記ベース組立体125に対して軸方向に動くことができる。前記ベース組立体125の中央には、クロマトグラフィー媒体入口/出口225が設けられる。
【0027】
アダプタ組立体120は、矢印Aの方向に管状側壁110の中央の内部において軸方向に動くことによって動作する円柱形のディスク状構造である。ディスクの円周は、内壁112の面と略同一面になるように適合するような円周である。床空間130は、液体担体(liquid carrier)中に懸濁する粒子状媒体の床を含むように設計される。アダプタ組立体120は、最初はスラリーの形態にある粒子状媒体の床を、その上に押し下げることによって安定させることに使用され、それに続いて、アダプタ組立体120は、クロマトグラフィー分離に適した充填床を達成するために粒子状媒体を圧縮し充填することに使用され得る。アダプタ120が押し下げられると、媒体床の体積によってカラム100が(すなわち、図1aの矢印Aの方向に)減少し、それによって液体担体が粒子状媒体を通ってベース組立体125またはアダプタ組立体120内のポートを通ってカラムから出される。
【0028】
担体液体および粒子状媒体を完全に閉じ込めるために、溶液がアダプタ組立体120を通ることができないことを確実にしなければならない。アダプタ組立体120の円周に設けられる封止組立体160は、アダプタ組立体120と内壁112との間に動的シールを形成することに使用される。封止組立体160の1つの例については、図1bにおいてより良く見ることができる。図1bには、アダプタ組立体120が管状側壁110内の下方位置にある状態の、図1aに示されるものと同じクロマトグラフィーカラム100の一部の断面が示されている。この実施形態では、封止組立体160は、2つの封止装置160a、160bである、上側Oリング161aおよび上側スクレーパ163aを含む1つの上側封止装置160aと、下側Oリング161bおよび下側スクレーパ163bを含む下側封止装置160bとを備える。上側Oリング161aは、アダプタ組立体120の円周にある上側凹部162a内に配置され、下側Oリング161bは、アダプタ組立体120の円周にある下側凹部162b内に配置される。さらに、スクレーパ163a、163bは、内壁112の表面から粒子状媒体を除去するためのブラシとしての役割を果たす。スクレーパ163a、163bは、Oリング161a、161bの外縁に取り付けられた円形のフック状構造をしており、径方向の自由度を可能にするやり方でOリング161a、161bとアダプタ組立体120によって支持されている。圧縮されたOリング161a、161bは、流体密シールを形成するように管状側壁110に対してスクレーパ163a、163bを外へ押し付けるようにそれらに作用する。他の実施形態では、2つの封止装置160a、160bは、Oリングまたは一体型スクレーパシールのような単一シール部材を備え、すなわち別々のOリングおよびスクレーパを必要としない場合もある。さらなる他の実施形態では、封止組立体160は、封止装置を1つだけしか備えず、すなわち上側および下側の封止装置を両方ではなくそのうちの一方だけしか備えない場合もある。
【0029】
次に、図1aおよび図1bの両方を参照して、いくつかのさらなる詳細について述べることにする。アダプタ組立体120は、上部床支持体121aと、上部分配器122aと、アダプタ受板123aとを備える。ベース組立体125は、底部床支持体121bと、底部分配器122bと、底部受板123bとを備える。
【0030】
アダプタ組立体120は、1つまたは複数のプライミング流体通路171を備える。図1bには、1つのそのようなプライミング流体通路171が見える。プライミング流体通路171は、アダプタ組立体120の円周の周りのある位置に設けられた第1の端開口172を有する。1つを上回るプライミング流体通路171がアダプタ組立体120に設けられる場合、異なるプライミング流体通路171のための異なる第1の端開口172がアダプタ組立体120の円周の周りに分配される。プライミング流体通路171は、クロマトグラフィーカラム100の外部とアダプタ組立体120の円周との間の流体の移送のために構成される。したがって、プライミング流体通路171は、クロマトグラフィーカラム100の外に設けられた液体源に、図5に見られる管類401を介して連結され得る。図1aおよび図1bに示されるような実施形態では、第1の端開口172は、アダプタ組立体120の、上側封止装置160aの上側スクレーパ163aと下側封止装置160bの下側スクレーパ163bとの間に設けられる。第1の端開口172は、いくつかの実施形態では、2つの封止装置160a、160bの間の領域をより良好に洗い流すために、下側封止装置160bよりも上側封止装置160aの近くに設けられる場合もある。
【0031】
本発明によれば、内壁112は、少なくとも1つの溝180を備え、その溝180を通して、空気および他の流体が、アダプタ組立体がプライミング位置に配置されているときにアダプタ組立体120を通ることができる。ここで、前記プライミング位置とは、アダプタ組立体が、流体が通ることができるように溝180と直線的に並ぶ位置である。少なくとも1つの溝180は、下側封止装置160bが少なくとも1つの溝180と交わるように整列されるとき、アダプタ組立体120の下に設けられたクロマトグラフィーカラム100の体積、すなわち閉鎖床空間130と、アダプタ組立体120内の流体通路171の第1の端開口172との間に少なくとも1つの流体通路が形成されるように、内壁112内に形成される。少なくとも1つの溝は、カラムのプライミングに必要なプライミング液体の量を制限することができるように、ベース組立体125からある距離内に設けられる。少なくとも1つの溝180をカラムの下半分内に設けることによって、プライミング中、カラムの一部だけにプライミング液体を充填すればよくなる。少なくとも1つの溝180は、クロマトグラフィーカラム100の管状側壁110の下半分内に配置され得る。ここで、下側とは、ベース組立体125の方に向かう方向を示し、すなわち少なくとも1つの溝180は、管状側壁110の上部110aよりもベース組立体125の近くに設けられる。1つの実施形態では、少なくとも1つの溝180は、管状側壁の下3分の1または下4分の1に配置される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は、ベース組立体125の近くに配置されるが、アダプタの下部に少なくとも1つの溝180を通すための場所が与えられる。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝180は、ベース組立体125から、20cm未満(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19cm)の距離内、好ましくは数センチメートル(例えば、約3~5、約3~10cm)内に配置される。少なくとも1つの溝180は、実質的に円周方向とすることができる。前記少なくとも1つの溝180は、その軸方向寸法を有することができる。例えば、前記少なくとも1つの溝180は、ある軸方向距離範囲を超えて管状側壁内に延在してもよい。例えば、そのような軸方向距離範囲は、クロマトグラフィーカラム100内のベース組立体125からの距離の、約2、3、4または5から約20cmまで、約2、3、4または5から約10cmまで、約2、3、4または5から約15cmまで、約10から約20cmまで、約10から約15cmまで、約15から約20cmまでなどとすることができる。少なくとも1つの溝180とベース組立体125との間の距離は、少なくとも1つの溝180の底部181とベース組立体125の底部床支持体121bとの間で測定することができ、その距離は、20cm未満であってもよく、または、本発明の他の実施形態では、10cm未満もしくはさらに5cm未満であってもよい。カラム内における少なくとも1つの溝180の位置を低くするほど、プライミングに必要なプライミング液体の量が少なくなり、プライミングに要する時間が短くなる。さらに、カラムの充填解除の間、媒体床は、少なくとも1つの溝を介して流れをもたらすことによって効果的に洗い流され、下の位置の溝はより効果的になり得る。アダプタ組立体120が低い位置に配置されるとき、すなわち、少なくとも1つの溝180と直線的に並ぶプライミング位置に配置されるとき、流体通路171を介してもたらされる流体流は、媒体床の残りの部分を洗い流すために効果的に使用され得る。したがって、この流体流は、短距離からもたらされることになり、高流量が提供され、それによって媒体が効果的に洗い流され得る。従来システムの場合、充填解除の間、クロマトグラフィー媒体全体を取り除く問題があった。さらに、アダプタ組立体120内に1つを上回る流体通路171を設ければ、媒体床をより効果的に充填解除して洗い流すために、流体流を増加させることができる。しかし、いくつかの種類のクロマトグラフィー媒体の充填解除の場合、少なくとも1つの溝の位置は、最も効果的にするために若干高めにすると好適である場合がある。実施形態によっては、10cmまたはさらに15cmまたは20cmが溝の適当な位置であることもある。図1bにおいて、アダプタ組立体120は、前記溝180と直線的に並ぶように配置されており、管状側壁110の内壁112とアダプタ組立体120の下部との間に通路が設けられていることを見ることができる。空気および他の流体は、溝180を通って下側スクレーパ163bを通り過ぎ、プライミング流体通路171の第1の端開口172に入ることができる。これは、クロマトグラフィーカラムのプライミングの間に行われる。
【0032】
本発明による、上述したようなクロマトグラフィーカラムをプライミングする方法も提供される。方法ステップは、図6の流れ図に示される。方法は、以下のステップを含む。
S1:管状側壁110内においてアダプタ組立体120をプライミング位置まで下げるステップであり、ここで、プライミング位置とは、空気および他の流体が前記少なくとも1つの溝180を通ってアダプタ組立体120を通ることができるように、アダプタ組立体120が内壁112の少なくとも1つの溝180と直線的に並ぶ位置である。
S2:閉鎖床空間130にプライミング液体を充填するようにプライミング液体を用意するステップ。プライミング液体は、水、例えば精製水、またはバッファとすることができる。プライミング液体は、カラムの底部にある入口/出口225を通して、または、底部移動相(これらの図面では見えない)を通してもたらされる。
S3:空気が少なくとも1つの溝180を通ってさらには1つもしくは複数のプライミング流体通路171を通ってアダプタ組立体120を通過することができるように閉鎖床空間130により多くのプライミング液体をもたらすことによって、ならびに/または、空気が少なくとも1つの溝180を通ってさらには1つもしくは複数のプライミング流体通路171を通って押し出され得るように、管状側壁110内においてアダプタ組立体120を軸方向に下げることによって、空気を除去するステップ。
【0033】
場合により、方法は、以下のステップをさらに含む。
S4:アダプタ組立体120が少なくとも1つの溝180から除かれそれによって空気または他の流体がそれ以上アダプタ組立体120を通ることができなくなるように、管状側壁110内においてアダプタ組立体120をベース組立体125から軸方向に上げるステップ。それによって、封止された床空間130に空気が到達しなくなる。このステップの間、閉鎖床空間130内へのプライミング流体の流量は、対応するアダプタの移動速度よりも高く保たれ、すなわち、カラムの高さで測定される流体流量cm/h(すなわちカラムの断面積に応じて決まる)は、カラムの管高さに沿って測定されるアダプタ移動cm/時よりも高く保たれる。それによって、封止された床空間に空気が入らないことが確実にされる。
S5:カラムのプライミング後、通常、スラリーをカラムに導入するステップが、カラム内においてスラリーから媒体床を充填するために行われる。スラリーは、クロマトグラフィー媒体入口/出口225を通して導入される。
【0034】
図2aは、本発明の1つの実施形態によるクロマトグラフィーカラムの管状側壁110の一部を概略的に示している。この実施形態では、1つの連続した溝180が管状側壁110の内壁112の円周の周りに設けられる。溝180は、管状側壁110の下部、すなわち側壁110の、管状側壁110の上部よりもクロマトグラフィーカラム100のベース組立体125の近くに設けられた部分に設けられる。溝180の幅、すなわち管状側壁110の内壁112の高さに沿った延長部は、上側封止装置160aと下側封止装置160bとの間の距離よりも大きくすべきではない。溝180の幅および深さは、上側または下側の封止装置160a、160bが溝180と直線的に並んで配置されるとき、流体を通すのに十分である必要がある。本発明の1つの実施形態では、溝180の幅は、例えば5~60mmの間とすることができる。
【0035】
図2bおよび図2cは、本発明の2つの他の実施形態による2つのクロマトグラフィーカラムの管状側壁110の一部を概略的に示している。これらの2つの実施形態では、管状側壁110の内壁112の円周の周りには、いくつかの別個の溝180'、180''が分配されている。図2bおよび図2cに示されるように、別個の溝180'、180''は、直線または傾いていてよい。
【0036】
図3aは、本発明の他の実施形態によるクロマトグラフィーカラム100'の断面である。図3bは、アダプタ組立体120が溝180'''と直線的に並ぶように下げられている、図3aに示されるものと同じクロマトグラフィーカラム100'の断面である。この実施形態において図1aおよび図1bに関して記載した実施形態と比べて異なる特徴は、溝180'''の設計だけである。他のすべての特徴は同じであり、同じ参照番号で示されており、したがって再度詳細に述べることはしない。この実施形態では、溝180'''は、クロマトグラフィーカラム100'の管状側壁110の内壁112内に設けられた螺旋溝180'''である。溝180'''は、内壁112の円周の周りに設けられた、ベース組立体125から20cm未満から始まりベース組立体125から15cm未満で終わる連続した螺旋溝180'''として設けられる。上述のように、ベース組立体125と溝180'''との間の距離は、溝180'''の底部181とベース組立体125の底部床支持体121bとの間で測定することができる。螺旋溝180'''の最下端182aは、ベース組立体125から、またはベース組立体125の底部床支持体121bから、15cm未満、または他の実施形態では10cm未満もしくは5cm未満に配置され得る。螺旋溝180'''の最上端182bは、ベース組立体125から、またはベース組立体125の底部床支持体121bから、20cm未満、または他の実施形態では15cm未満もしくは10cm未満に配置され得る。カラムに沿った最下端182aと最上端182bとの間の高さの差は、アダプタ組立体120の2つの封止装置160a、160bの間の距離に応じて、例えば2~10cmとすることができる。最下端182aと最上端182bとの間の高さの差は、アダプタ組立体120の上で流体が短く迂回(short circuit)することを回避するために、2つの封止装置160a、160bの間の距離よりも小さくなければならない。最下端182aおよび最上端182bは、図3aに見られるように、内壁112の円周の周りにおいて短い距離だけオーバーラップしてもよい。
【0037】
螺旋溝180'''の利点は、クロマトグラフィーカラムからクロマトグラフィー媒体を充填解除するプロセスが改善され得ることである。この充填解除プロセスについては、以下においてさらに説明する。さらに、螺旋溝の場合、螺旋溝が下側封止装置160bと交わりそれがアダプタ組立体120の異なる位置ごとに異なることになる場合、流体流は下側封止装置160bしか通らないので、下側封止装置160bの外周のより小さな部分により高い流量をもたらすことができることから、プライミングがより効果的になり得る。
【0038】
本発明によればさらに、クロマトグラフィーカラムを充填解除する方法が提供される。この方法の方法ステップは、図7の流れ図に示される。方法ステップは、以下に順次説明する。
A1:前記床空間130に流体をもたらすことによって前記クロマトグラフィーカラム100、100'内に設けられたクロマトグラフィー媒体の充填床を再懸濁するステップ。この流体は、このクロマトグラフィーカラムのこれらの図面では見えないがカラムの底部に設けられている移動相底部からもたらされる。
A2:クロマトグラフィーカラム100、100'のクロマトグラフィー媒体出口を介して再懸濁済みクロマトグラフィー媒体を除去するステップ。
A3:アダプタ組立体120が少なくとも1つの溝180、180'、180''、180'''と直線的に並ぶように、管状側壁110内においてアダプタ組立体120をある位置まで下げるステップ。これは、下側封止組立体160bが(溝が螺旋溝か否かに応じて)少なくとも1つの溝180、180'、180'''の少なくとも一部と交わる、上述のプライミング位置であり得る。
A4:アダプタ組立体120を貫通して設けられた少なくとも1つのプライミング流体通路171を通して流体を流すステップであり、それによって、前記流体は、少なくとも1つのプライミング流体通路171のそれぞれの第1の端開口172から出て、前記少なくとも1つの溝180、180'、180''、180'''を通って床空間130へと流入し、それによって床空間内にある任意の残りのクロマトグラフィー媒体が再懸濁する。
A5:クロマトグラフィー媒体出口を介して再懸濁済みクロマトグラフィー媒体を除去するステップ。
【0039】
少なくとも1つのプライミング流体通路171を通して流体を流すステップA4は、同時に、管状側壁110内においてアダプタ組立体120を軸方向に動かすことを含むことができる。溝が螺旋溝180'''である実施形態には利点がある。それによって、アダプタ組立体120が、溝180'''が設けられている管状側壁110の距離を動かされ、それによって、少なくとも1つのプライミング流体通路171の少なくとも1つの第1の端開口172を出る流体流が、螺旋溝180'''を介して、アダプタ組立体120の位置に応じて異なる方向から床空間130内に入るように移動することになる。これは、溝が螺旋溝180'''である場合のアダプタ組立体120の高さに応じた床支持体表面の周りの可動流路を概略的に示す図4に示されている。クロマトグラフィー媒体出口225は、ベース組立体125の中央に設けられ、そこを通ってクロマトグラフィー媒体が除去される。流体流は、アダプタ組立体の位置に応じて、カラム壁の円周の周りの異なる位置からもたらされる。アダプタ組立体120を動かすことによって、流体流は、円の周りのすべての角度からもたらされ、したがって効果的な充填解除が実現され得る。
【0040】
図5は、本発明の1つの実施形態によるアダプタ組立体120の斜視図である。本発明のこの実施形態では、いくつかのプライミング流体通路171がアダプタ組立体120を貫通して設けられ、前記プライミング流体通路171のそれぞれの第1の端開口172は、アダプタ組立体120の円周の周りに分配される。流体通路171は、1つまたは複数の管類401を介して流体源に連結され得る。この図面ではさらに、上側Oリング161aおよび下側Oリング161b、ならびに上側スクレーパ163aおよび下側スクレーパ163bも見える。アダプタ組立体120を貫通するいくつかのプライミング流体通路171を設けることによって、流体流は、アダプタ組立体120がカラム100の管状側壁110内において溝180と直線的に並ぶように配置されるとき、プライミング流体通路171の第1の端開口172から出てもたらされ、それによって流体流は、アダプタ組立体の円周の異なる位置から溝180、180'''を介して床空間の中心の方に向けて入れられ得る。それによって、あらゆる残りのクロマトグラフィー媒体が効果的に除去され得る。さらに、溝が螺旋溝180'''として設けられる場合、プライミング流体通路171を通る流体の流出と同時にアダプタ組立体を管状側壁110内で軸方向に動かすと、洗浄有効性がさらに向上され得る。
【0041】
内壁112内のベース組立体125の近くの低位置に少なくとも1つの溝180、180'、180''、180'''を設けることと、アダプタ組立体120の円周の周りに分配された第1の端開口172を含む少なくとも1つ、好適には1つを上回るプライミング流体通路171を設けることを組み合わせることは、クロマトグラフィーカラムの効果的なプライミングだけでなく効果的な充填解除について特に有利である。
【0042】
様々な代替実施形態も提供することができる。例えば、様々な標準的な従来のカラムは、その上部(例えば上半分)内にプライミング溝を設けるように修正することもできる。そのような溝は、螺旋として、および/または多チャネル(例えば、弓形、直線状などの)部分などを含めて形成してもよい。したがって、そのような変更形態は、より良好なクロマトグラフィー性能の態様(例えば、充填床)を提供することに使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100、100' クロマトグラフィーカラム
110 管状側壁
110a 上部
112 内壁
120 アダプタ組立体
121a 上部床支持体
121b 底部床支持体
122a 上部分配器
122b 底部分配器
123a アダプタ受板
123b 底部受板
125 ベース組立体
130 床空間
160 封止組立体
160a 上側封止装置
160b 下側封止装置
161a 上側Oリング
161b 下側Oリング
162a 上側凹部
162b 下側凹部
163a 上側スクレーパ
163b 下側スクレーパ
171 プライミング流体通路
172 第1の端開口
180、180'、180''、180''' 溝
181 底部
182a 最下端
182b 最上端
225 入口/出口
401 管類
A 矢印
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】