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特表2023-531712インライン式テンショニング用の係留機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】インライン式テンショニング用の係留機器
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/20 20060101AFI20230718BHJP
   B63B 21/18 20060101ALI20230718BHJP
   B63B 77/00 20200101ALI20230718BHJP
【FI】
B63B21/20 Z
B63B21/18
B63B77/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579864
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021038898
(87)【国際公開番号】W WO2021262980
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/043,403
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519030752
【氏名又は名称】バーデックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】オルーク チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】アタラー ニック
(57)【要約】
係留索に張力を加えるシステムおよび方法が提供される。本システムは、インライン型テンショナを含み、このインライン型テンショナは、取り外し可能なチェーンホイールと、テールチェーンの切り離しおよびROVのドッキングを可能にするよう構成されたテールチェーン切り離しテーブルと、インライン型テンショナと係留チェーンとの摩擦係合力を軽減する低摩擦性パッドを備えたチェーンガイドと、標的リンクストッパとを有し、この標的リンクストッパは、所定の場所で係留索の動きを停止するよう構成されており、その結果、係留索が所定の長さを備えると共に係留索の所定のリンクがインライン型テンショナのラッチの掴みゾーン内に位置決めされるようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係留索に張力を加えるインライン型テンショナであって、前記インライン型テンショナは、
フレームを有し、前記フレームは、係留索のボトムチェーンに結合するよう構成され、
前記フレームに結合されたラッチを有し、前記ラッチは、係留索のトップチェーンを掴むよう位置決めされ、
チェーンホイールを有し、前記チェーンホイールは、少なくとも2つの形態を有し、前記少なくとも2つの形態は、前記チェーンホイールが前記フレームに結合されて、係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされる第1の形態、および前記チェーンホイールが前記フレームから結合解除される第2の形態を含む、インライン型テンショナ。
【請求項2】
前記フレームは、チェーンホイール用ドックを有し、前記チェーンホイール用ドックは、前記第1の形態において前記チェーンホイールを受け入れるよう構成されている、請求項1記載のインライン型テンショナ。
【請求項3】
前記チェーンホイールは、チェーンホイール用フレームに取り付けられている、請求項2記載のインライン型テンショナ。
【請求項4】
前記第1の形態では、前記チェーンホイール用フレームは、前記フレームにピン留めされる、請求項3記載のインライン型テンショナ。
【請求項5】
前記チェーンホイール用フレームは、ピンを備え、前記チェーンホイール用ドックは、漏斗部を備え、前記第1の形態では、前記ピンは、前記漏斗部内に嵌まり、前記第2の形態では、前記ピンは、前記漏斗部から離脱する、請求項3記載のインライン型テンショナ。
【請求項6】
前記チェーンホイール用フレームに結合されたチェーンホイール用ハンドルをさらに有し、前記チェーンホイール用ハンドルは、前記チェーンホイールを吊り上げて該チェーンホイールを前記フレームから取り外すためのラインに結合するよう構成されている、請求項3記載のインライン型テンショナ。
【請求項7】
前記チェーンホイール用フレームは、前記ピンの配向状態を維持するよう構成された釣合おもりを有する、請求項3記載のインライン型テンショナ。
【請求項8】
前記第2の形態では、前記インライン型テンショナの重心は、前記係留索のチェーンラインの下に位置している、請求項1記載のインライン型テンショナ。
【請求項9】
係留索に張力を加えるインライン型テンショナであって、前記インライン型テンショナは、
フレームを有し、前記フレームは、係留索のボトムチェーンに結合するよう構成され、
前記フレームに結合されたラッチを有し、前記ラッチは、係留索のトップチェーンを掴むよう位置決めされ、
前記フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされたチェーンホイールを有し、
前記フレームに結合されたチェーンガイドを有し、前記チェーンガイドは、係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされ、前記ラッチは、前記チェーンホイールと前記チェーンガイドとの間に位置決めされ、
前記チェーンガイドに設けられていて係留索のトップチェーンと摺動的に係合するよう位置決めされたパッドを有し、前記チェーンガイドは、第1の材料から成り、前記パッドは、第2の材料から成り、前記第1の材料と前記第2の材料は、異なっており、前記第2の材料は、前記第2の材料に沿って摺動するトップチェーンに対して、前記第1の材料の示す摩擦係数よりも低い摩擦係数を示す、インライン型テンショナ。
【請求項10】
前記第1の材料は、鋼から成る、請求項9記載のインライン型テンショナ。
【請求項11】
前記第2の材料は、青銅から成る、請求項9記載のインライン型テンショナ。
【請求項12】
前記第2の材料は、乾燥した潤滑性焼結材料から成る、請求項9記載のインライン型テンショナ。
【請求項13】
前記チェーンガイドは、テーパ付き漏斗部を含み、前記パッドは、前記テーパ付き漏斗部の内面上に位置決めされている、請求項9記載のインライン型テンショナ。
【請求項14】
係留索に張力を加えるインライン型テンショナであって、前記インライン型テンショナは、
フレームを有し、前記フレームは、係留索のボトムチェーンに結合するよう構成され、
前記フレームに結合されたラッチを有し、前記ラッチは、係留索のトップチェーンを掴むよう位置決めされ、
前記フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされたチェーンホイールを有し、
前記フレームと一体でありまたは前記フレームに結合されたテールチェーン切り離しテーブルを有し、前記テールチェーン切り離しテーブルは、係留索のテールチェーンを受け取って固定するよう構成されている、インライン型テンショナ。
【請求項15】
前記テールチェーン切り離しテーブルは、テールチェーンを前記テールチェーン切り離しテーブルに固定するテールチェーン係止ピンを有する、請求項14記載のインライン型テンショナ。
【請求項16】
テールチェーン切り離しテーブルは、テールチェーンを縦の配向状態、横の配向状態、またはぶら下がりの配向状態で受け取って該テールチェーンを固定するよう構成されている、請求項14記載のインライン型テンショナ。
【請求項17】
前記テールチェーン切り離しテーブルは、テールチェーンを横の配向状態で受け取るよう構成された軌道およびテールチェーンを縦の配向状態で受け入れるよう構成されたスロットを有する、請求項16記載のインライン型テンショナ。
【請求項18】
前記テールチェーン切り離しテーブルは、有索無人潜水機(ROV)ドックを有し、前記有索無人潜水機ドックは、有索無人潜水機を受け入れて固定するよう構成されている、請求項14記載のインライン型テンショナ。
【請求項19】
前記有索無人潜水機ドックは、有索無人潜水機のピンと係合するよう構成された漏斗部を有する、請求項18記載のインライン型テンショナ。
【請求項20】
係留システムであって、前記係留システムは、
ボトムチェーンおよびトップチェーンを有する係留索を含み、
フレームおよび前記フレームに結合されたラッチを有するインライン型テンショナを含み、前記ボトムチェーンは、前記フレームに結合され、前記ラッチは、前記係留索の前記トップチェーン部分の長さが調節可能であるように前記トップチェーンを選択的に掴むよう位置決めされ、
前記トップチェーンに結合された標的リンクストッパを含み、前記標的リンクストッパは、前記標的リンクストッパが前記インライン型テンショナに係合したときに前記係留索が標的長さを有するように前記トップチェーンに沿って位置決めされている、係留システム。
【請求項21】
前記標的長さの状態では、前記標的リンクストッパは、前記ラッチの船外側に位置決めされ、前記トップチェーンの取り外し可能なリンクは、前記ラッチの反対側に位置決めされ、前記取り外し可能リンクは、前記トップチェーンから選択的に取り外し可能なリンクである、請求項20記載の係留システム。
【請求項22】
前記取り外し可能リンクは、Dリンクである、請求項21記載の係留システム。
【請求項23】
前記標的長さの状態では、前記トップチェーンの所定のリンクが前記ラッチによって掴まれるよう位置決めされている、請求項20記載の係留システム。
【請求項24】
前記標的目標長さの状態では、前記トップチェーンは、所定の張力を有する、請求項20記載の係留システム。
【請求項25】
前記トップチェーンが前記インライン型テンショナを通って第1の方向に動いている状態で、前記標的リンクストッパと前記インライン型テンショナとの係合により、前記第1の方向における前記トップチェーンのそれ以上の動きが阻止される、請求項20記載の係留システム。
【請求項26】
前記標的リンクストッパは、第1の本体および第2の本体を有し、前記第1の本体と前記第2の本体は、前記トップチェーンの一部分周りに互いに結合され、ばねが前記第1の本体と前記第2の本体との間に結合されている、請求項20記載の係留システム。
【請求項27】
前記インライン型テンショナは、チェーンガイドを有し、前記標的長さの状態では、前記標的リンクストッパは、前記チェーンガイドと係合する、請求項20記載の係留システム。
【請求項28】
浮船を係留する方法であって、前記方法は、
フレーム、前記フレームに結合されたチェーンホイール、および前記フレームに結合されたラッチを有するインライン型テンショナを用意するステップを含み、
ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップを含み、
前記ボトムチェーンを前記フレームとアンカーとの間に結合するステップを含み、
前記トップチェーンを前記チェーンホイールに結合し、そして前記トップチェーンの第1の端部を前記浮船に結合するステップを含み、
前記浮船と前記インライン型テンショナとの間の前記トップチェーンの長さを調整し、ついには前記係留索が標的長さを有するようにするステップを含み、前記チェーンホイールは、前記調整中における前記トップチェーンの動きを案内し、
前記係留索が前記標的長さを有したときに前記トップチェーンを前記ラッチで掴むステップを含み、
前記係留索が前記標的長さを有している状態で前記チェーンホイールを前記インライン型テンショナから取り外すステップを含む、方法。
【請求項29】
前記チェーンホイールを取り外す前記ステップは、前記チェーンホイールのチェーンホイール用フレームを前記インライン型テンショナの前記フレームからピンを外すステップ、および前記チェーンホイールを前記インライン型テンショナから吊り上げるステップを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記チェーンホイールを前記インライン型テンショナから吊り上げる前記ステップは、アンカー取り扱い船を用いて実施される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
浮船を係留する方法であって、前記方法は、
フレーム、前記フレームに結合されたチェーンホイール、前記フレームに結合されたラッチ、および前記フレームに結合されたチェーンガイドを有するインライン型テンショナを用意するステップを含み、前記チェーンガイド上にはパッドが位置決めされ、
ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップを含み、
前記ボトムチェーンを前記フレームとアンカーとの間に結合するステップを含み、
前記トップチェーンを前記チェーンホイールに結合し、そして前記トップチェーンの第1の端部を前記浮船に結合するステップを含み、
前記浮船と前記インライン型テンショナとの間の前記トップチェーンの長さを調整し、ついには前記係留索が標的長さを有するようにするステップを含み、前記チェーンホイールは、前記調整中における前記トップチェーンの動きを案内し、
前記係留索が前記標的長さを有したときに前記トップチェーンを前記ラッチで掴むステップを含み、前記ラッチは、前記チェーンホイールと前記チェーンガイドとの間で前記トップチェーンに沿って位置決めされ、
前記トップチェーンの前記長さの前記調整中、前記トップチェーンは、前記パッドに沿って摺動し、前記チェーンガイドは、第1の材料から成り、前記パッドは、第2の材料から成り、前記第1の材料と前記第2の材料は、異なっており、前記第2の材料は、前記第2の材料に沿って摺動するトップチェーンに対して、前記第1の材料の示す摩擦係数よりも低い摩擦係数を示す、方法。
【請求項32】
前記第1の材料は、鋼から成る、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記第2の材料は、青銅から成る、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記第2の材料は、乾燥した潤滑性焼結材料から成る、請求項31記載の方法。
【請求項35】
浮船を係留する方法であって、前記方法は、
フレーム、前記フレームに結合されたチェーンホイール、前記フレームに結合されたラッチ、および前記フレームと一体であるまたは前記フレームに結合されたテールチェーン切り離しテーブルを有するインライン型テンショナを用意するステップを含み、
ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップを含み、
前記ボトムチェーンを前記フレームとアンカーとの間に結合するステップを含み、
前記トップチェーンを前記チェーンホイールに結合し、そして前記トップチェーンの第1の端部を前記浮船に結合するステップを含み、
前記浮船と前記インライン型テンショナとの間の前記トップチェーンの長さを調整し、ついには前記係留索が標的長さを有するようにするステップを含み、前記チェーンホイールは、前記調整中における前記トップチェーンの動きを案内し、
前記係留索が前記標的長さを有したときに前記トップチェーンを前記ラッチで掴むステップを含み、
前記トップチェーンの前記テールチェーンを前記テールチェーン切り離しテーブルに固定するステップを含み、
前記テールチェーンの少なくとも幾分かを前記トップチェーンから取り外すステップを含む、方法。
【請求項36】
前記テールチェーンを固定する前記ステップは、前記テールチェーンを前記テールチェーン切り離しテーブルにピン留めするステップを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記テールチェーンの少なくとも幾分かを前記トップチェーンから取り外す前記ステップは、取り外し可能なリンクを前記テールチェーンから切り離すステップを含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記取り外し可能リンクは、Dリンクである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記取り外し可能リンクは、前記テールチェーン切り離しテーブル上において縦の配向状態、横の配向状態、またはぶら下がりの配向状態にある、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記取り外し可能リンクは、有索無人潜水機を用いて切り離される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記テールチェーンの少なくとも幾分かを前記トップチェーンから取り外す前記ステップに先立って、前記有索無人潜水機を前記テールチェーン切り離しテーブル上にドッキングさせるステップおよび前記有索無人潜水機の位置を前記テールチェーン切り離しテーブル上に固定するステップをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記有索無人潜水機をドッキングさせる前記ステップは、前記有索無人潜水機に設けられたピンを前記テールチェーン切り離しテーブルに設けられた漏斗部内に嵌めるステップを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記テールチェーンの少なくとも幾分かを前記トップチェーンから取り外す前記ステップは、前記テールチェーンのリンクを切断するステップを含む、請求項35記載の方法。
【請求項44】
浮船を係留する方法であって、前記方法は、
フレーム、前記フレームに結合されたチェーンホイール、および前記フレームに結合されたラッチを有するインライン型テンショナを用意するステップを含み、
ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップを含み、
前記ボトムチェーンを前記フレームとアンカーとの間に結合するステップを含み、
前記トップチェーンを前記チェーンホイールに結合し、そして前記トップチェーンの第1の端部を前記浮船に結合するステップを含み、
標的リンクストッパを前記トップチェーンに結合するステップを含み、前記標的リンクストッパは、前記標的リンクストッパが前記インライン型テンショナに係合したときに前記係留索が標的長さを有するように前記トップチェーンに沿って位置決めされ、
前記浮船と前記インライン型テンショナとの間の前記トップチェーンの長さを調整し、ついには前記標的リンクストッパが前記インライン型テンショナに係合するようにするステップを含み、
前記標的リンクストッパが前記インライン型テンショナに係合したときに前記トップチェーンを前記ラッチで掴むステップを含む、方法。
【請求項45】
前記標的リンクストッパと前記インライン型テンショナの係合により、前記トップチェーンのそれ以上のテンショニングが阻止される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記標的リンクストッパは、第1の本体および第2の本体を有し、前記第1の本体と前記第2の本体は、前記トップチェーンの一部分周りに互いに結合され、ばねが前記第1の本体と前記第2の本体との間に結合されている、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記ばねは、前記標的リンクストッパと前記インライン型テンショナとの係合時に縮む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記インライン型テンショナは、チェーンガイドを有し、前記標的リンクストッパは、前記チェーンガイドに係合する、請求項44記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、船を係留するシステムおよび方法ならびに係留索に張力を加えるシステムおよび方法に関する。特に、本開示は、インライン型テンショナを用いて係留索に張力を加えるシステムおよび方法に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,403号(係属中)(発明の名称:Mooring Equipment for Use in In-Line Tensioning)の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
多くの用途では、浮船は、例えば沖合掘削プラットフォーム用途においては係留を必要とする。係留索は、典型的には、船を確実に係留するために少なくともある程度のテンショニング(張力を加えたり調整したりすること)を必要とする。係留およびテンショニングのための一手法では、係留索を張るためにいわゆる「インライン型テンショナ(in-line tensioner:ILT)」が使用される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の幾つかの実施形態は、係留索に張力を加えるためのインライン型テンショナを含む。
【0005】
幾つかの実施形態では、インライン型テンショナは、係留索のボトムチェーンに結合するよう構成されたフレームと、フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを掴むよう位置決めされたラッチと、チェーンホイールを有する。チェーンホイールは、少なくとも2つの形態を有する。少なくとも2つの形態は、チェーンホイールがフレームに結合されて係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされる第1の形態、およびチェーンホイールがフレームから結合解除される第2の形態を含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、インライン型テンショナは、係留索のボトムチェーンに結合するよう構成されたフレームと、フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを掴むよう位置決めされたラッチと、フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされたチェーンホイールと、フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされたチェーンガイドとを有する。ラッチは、チェーンホイールとチェーンガイドとの間に位置決めされる。パッドがチェーンガイドに設けられ、これらパッドは、係留索がインライン型テンショナを通過しているときに係留索のトップチェーンと摺動的に係合するよう位置決めされている。チェーンガイドは、第1の材料から成り、パッドは、第2の材料から成る。第1の材料と第2の材料は、異なっている。第2の材料は、第2の材料に沿って摺動するトップチェーンに対して、第1の材料に沿って摺動するトップチェーンに対して第1の材料の示す摩擦係数よりも低い摩擦係数を示す。
【0007】
幾つかの実施形態では、インライン型テンショナは、係留索のボトムチェーンに結合するよう構成されたフレームと、フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを掴むよう位置決めされたラッチと、フレームに結合されていて係留索のトップチェーンを案内するよう位置決めされたチェーンホイールと、フレームと一体でありまたはフレームに結合されたテールチェーン切り離しテーブルを有する。テールチェーン切り離しテーブルは、係留索のテールチェーンを受け取って固定するよう構成されている。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態は、ボトムチェーンおよびトップチェーンを有する係留索を備えた係留システムを含む。係留システムは、フレームおよびフレームに結合されたラッチを有するインライン型テンショナを含む。ボトムチェーンは、フレームに結合される。ラッチは、係留索のトップチェーン部分の長さが調節可能であるようにトップチェーンを選択的に掴むよう位置決めされている。係留システムは、トップチェーンに結合された標的リンクストッパを含む。標的リンクストッパは、標的リンクストッパがインライン型テンショナに係合したときに係留索が標的長さを有するようにトップチェーンに沿って位置決めされている。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態は、浮船を係留する方法を含む。
【0010】
幾つかの実施形態では、この方法は、フレーム、フレームに結合されたチェーンホイール、およびフレームに結合されたラッチを有するインライン型テンショナを用意するステップを含む。本方法は、ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップ、ボトムチェーンをフレームとアンカーとの間に結合するステップ、およびトップチェーンをチェーンホイールに結合するステップを含む。本方法は、トップチェーンの第1の端部を浮船に結合するステップを含む。本方法は、浮船とインライン型テンショナとの間のトップチェーンの長さを調節し、ついには係留索が標的長さを有するようにするステップを含む。チェーンホイールは、調節中におけるトップチェーンの動きを案内する。本方法は、係留索が標的長さを有したときにトップチェーンをラッチで掴むステップを含む。本方法は、係留索が標的長さを有している状態でチェーンホイールをインライン型テンショナから取り外すステップを含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、本方法は、フレーム、フレームに結合されたチェーンホイール、フレームに結合されたラッチ、およびフレームに結合されたチェーンガイドを有するインライン型テンショナを用意するステップを含む。チェーンガイド上にはパッドが位置決めされている。本方法は、ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップ、ボトムチェーンをフレームとアンカーとの間に結合するステップ、およびトップチェーンをチェーンホイールに結合するステップを含む。本方法は、トップチェーンの第1の端部を浮船に結合するステップを含む。本方法は、浮船とインライン型テンショナとの間のトップチェーンの長さを調整し、ついには係留索が標的長さを有するようにするステップを含む。チェーンホイールは、調整中におけるトップチェーンの動きを案内する。本方法は、係留索が標的長さを有したときにトップチェーンをラッチで掴むステップを含む。ラッチは、チェーンホイールとチェーンガイドとの間でトップチェーンに沿って位置決めされている。トップチェーンの長さの調整中、トップチェーンは、パッドに沿って摺動する。チェーンガイドは、第1の材料を含み、パッドは、第2の材料を含む。第1の材料と第2の材料は、異なっている。第2の材料は、第2の材料に沿って摺動するトップチェーンに対して、第1の材料の示す摩擦係数よりも低い摩擦係数を示す。
【0012】
幾つかの実施形態では、本方法は、フレーム、フレームに結合されたチェーンホイール、フレームに結合されたラッチ、およびフレームと一体であるまたはフレームに結合されたテールチェーン切り離しテーブルを有するインライン型テンショナを用意するステップを含む。本方法は、ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップ、ボトムチェーンをフレームとアンカーとの間に結合するステップ、およびトップチェーンをチェーンホイールに結合するステップを含む。本方法は、トップチェーンの第1の端部を浮船に結合するステップを含む。本方法は、浮船とインライン型テンショナとの間のトップチェーンの長さを調整し、ついには係留索が標的長さを有するようにするステップを含む。チェーンホイールは、調整中におけるトップチェーンの動きを案内する。本方法は、係留索が標的長さを有したときにトップチェーンをラッチで掴むステップを含む。本方法は、トップチェーンのテールチェーンをテールチェーン切り離しテーブルに固定するステップ、およびテールチェーンの少なくとも幾分かをトップチェーンから取り外すステップを含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、本方法は、フレーム、フレームに結合されたチェーンホイール、およびフレームに結合されたラッチを有するインライン型テンショナを用意するステップを含む。本方法は、ボトムチェーンおよびトップチェーンを含む係留索を用意するステップ、ボトムチェーンをフレームとアンカーとの間に結合するステップ、およびトップチェーンをチェーンホイールに結合するステップを含む。本方法は、トップチェーンの第1の端部を浮船に結合するステップを含む。本方法は、標的リンクストッパをトップチェーンに結合するステップを含む。標的リンクストッパは、標的リンクストッパがインライン型テンショナに係合したときに係留索が標的長さを有するようにトップチェーンに沿って位置決めされる。本方法は、浮船とインライン型テンショナとの間のトップチェーンの長さを調整し、ついには標的リンクストッパがインライン型テンショナに係合するようにするステップを含む。本方法は、標的リンクストッパがインライン型テンショナに係合したときにトップチェーンをラッチで掴むステップを含む。
【0014】
本発明のシステム、装置、製品、および/または方法の特徴および利点を詳細に理解することができるように、上記において概要説明した特定の説明が本発明の実施形態を参照して行われるのが良く、かかる実施形態は、本願の一部をなす添付の図面に記載されている。しかしながら、注目されるべきこととして、図面は、種々の例示の実施形態を記載しているに過ぎず、したがって、開示した技術的思想の限定とみなされるべきではなく、というのは、本発明は、他の効果的な実施形態をも含むことができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】係留設備全体を示す図である。
図2A】別の係留システムまたは設備全体を示す図である。
図2B図2Aの係留システムの部分拡大図である。
図3】インライン型テンショナの斜視図である。
図4】インライン型テンショナの平面図である。
図5】インライン型テンショナの側面図である。
図6】インライン型テンショナの端面図である。
図7】インライン型テンショナの斜視図であり、チェーンがこのインライン型テンショナに係合している状態を示す図である。
図8】チェーンホイールを取り外した状態のインライン型テンショナを示す図である。
図9A】標的リンクストッパの斜視図である。
図9B】標的リンクストッパの端面図である。
図9C】標的リンクストッパの側面図である。
図9D図9Bの標的リンクストッパのA‐A線矢視断面図である。
図9E】標的リンクストッパの別の斜視図である。
図10A】チェーンガイドに係合した標的リンクストッパの斜視図である。
図10B】チェーンガイドに係合させた標的リンクストッパの側面図である。
図11】チェーンホイールが取り付けられたインライン型テンショナを示す図である。
図12A】横の配向状態で切り離しリンクを含むテールチェーン切り離しテーブル上に固定されたテールチェーンを示す図である。
図12B】縦の配向状態で切り離しリンクを含むテールチェーン切り離しテーブル上に固定されたテールチェーンを示す図である。
図12C】ぶら下がりの配向状態で切り離しリンクを含むテールチェーン切り離しテーブル上に固定されたテールチェーンを示す図である。
図13A】テールチェーンがテールチェーン切り離しテーブルに固定された状態のインライン型テンショナを示す図である。
図13B】チェーンホイールがインライン型テンショナから吊り上げられた状態で図13Aのインライン型テンショナを示す図である。
図14】テールチェーン切り離しテーブルのところでドッキングされたROV(有索無人潜水機)を示す図であり、リンクをテールチェーン切り離しテーブルから取り外した状態を示す図である。
図15】係留索に結合されかつチェーンホイールが取り付けられていない状態のインライン型テンショナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のある特定の観点は、船を係留するとともに係留索に張力を加えるシステムおよび方法を含む。本発明は、インライン式テンショニング技術を用いまたはこれを組み込んで、船を係留するとともに係留索に張力を加えるシステムおよび方法を含む。本発明の実施形態は、係留索内に位置決めでき、またはこれに沿って位置決めでき、かつ係留索を引き締めるために用いることができるインライン型テンショナを含む。以下に詳細に説明するように、本明細書において開示するインライン型テンショナの実施形態は、(1)取り外し可能なチェーンホイール、(2)チェーンとの摩擦係合力を減少させる低摩擦性パッドを備えたチェーンガイド、(3)所定の場所で係留索の動きを停止させる標的リンクストッパ、(4)テールチェーンを係留索から切り離すことができる切り離しテーブル、(5)またはこれらの組み合わせを含む。
【0017】
係留設備全体
【0018】
図1は、本明細書において開示するインライン型テンショナシステムおよび方法を利用することができる例示の係留システムまたは設備全体を示す図である。図1は、係留状態の風力タービン12を示しているが、本明細書において開示するインライン型テンショナシステムおよび方法は、係留型風力タービンへの使用には限定されず、他の構造体、例えば、石油・ガス掘削および生産プラットフォーム、船舶、または他の浮き構造物を係留するために使用できる。
【0019】
図示のように、係留設備全体10は、係留索16を介して海底14に係留されている風力タービン12を含む。係留索16は、海底14に固定されたチェーン18(ボトムチェーン)を含む。チェーン18は、インライン型テンショナ20に結合されている。係留索16は、ワイヤ22(トップチェーン)を含み、このワイヤ22は、チェーン18と反対側でインライン型テンショナ20に結合されている。係留索16は、ワイヤ22に結合されたHリンク24、およびチェーン26を介してHリンク24に結合されたトリプレート(tri-plate)28を含む。チェーン、ロープまたはワイヤ30(例えば、最小破断荷重チェーン)がトリプレート28と風力タービン12の交換可能な強化点32との間に結合されている。
【0020】
図2Aおよび図2Bは、係留索のテンショニングの際にアンカー取り扱い船の使用を実証している別の係留システムを示している。係留システム34は、風力タービン48を係留するよう位置決めされた係留索42を含む。係留索42は、インライン型テンショナ40を介しチェーン鎖46(トップチェーン)に結合されたアンカーチェーン44(ボトムチェーン)を含む。アンカー取り扱い船36は、ワイヤまたはチェーン38を引っ張るよう位置決めされ、かかるワイヤまたはチェーンは、インライン型テンショナ40に結合されるとともにチェーン46に結合されまたはチェーン46と一体である。ワイヤまたはチェーン38を引っ張ると、その結果として、チェーン46のテンショニングが行われ、それにより係留索42のテンショニングが行われる。
【0021】
図1図2Bに示された係留システムは、本明細書において開示するシステムおよび方法を係留作業に使用できる係留システムの例である。当業者であれば理解されるように、本明細書において開示するインライン型テンショナシステムおよび方法を他の係留システムおよび構成において使用することができる。
【0022】
インライン型テンショナ
【0023】
本発明のある特定の実施形態は、インライン型テンショナを含む。図3図8を参照すると、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るインライン型テンショナが図示されている。インライン型テンショナ101(ILT101とも呼ばれる)は、係留索を受け入れてこれと結合するとともに係留索の位置を動かさないようにして係留索に所望の張力および所望の長さを与えるよう構成されている。インライン型テンショナ101は、フレーム103を有する。フレーム103は、インライン型テンショナ101のラッチのためのラッチハウジングとなるとともにインライン型テンショナ101のチェーンホイールを取り付けるためのマウントとなる。フレーム103は、インライン型テンショナ101の主要本体であるのが良い。
【0024】
フレーム103は、泥マット107(例えば、スキッド)に取り付けられている。泥マット107は、インライン型テンショナ101に例えばタガーウインチ(tugger winches)によってアンカー取り扱い船(AHV)のデッキ周りに動くことができる機能を提供し、この泥マットは、インライン型テンショナ101をアンカー取り扱い船の船尾ローラー上に張力(最大1000kNであるのが良い)下で配備する際に生じる荷重に耐えるための構造体となる。泥マット107はまた、海底に配置できるILT101の表面となる。例えば、泥マット107をあらかじめ敷設された係留索への取り付け時に海底に配置されても良く、あるいは、泥マット107は、係留索が交換されている間に海底に配置されても良い。
【0025】
ILT101は、チェーン135(アンカーチェーンまたはボトムチェーンとも呼ばれる)に結合される。例えば、チェーン135を、例えばチェーンコネクタ141によりILT101のフレーム103に固定的に結合されるのが良い。チェーンコネクタ141は、ブッシュ143を介してチェーン135およびフレーム103(103aのところで)に結合される(例えば、ピン連結部によりこれらにピン留めされる)。ブッシュ143は、ガルバニック絶縁作用をもたらすための複合ブッシュであるのが良い。ブッシュ143は、設計上の全係留荷重(係留索のMBL)に耐えることができる材料を含むのが良い。幾つかの実施形態では、ブッシュ143は、低摩擦性支持材料を含む。幾つかの実施形態では、チェーン135は、「受動型チェーン連結部」であり、したがって、チェーン135の長さは、調整可能ではない(すなわち、受動型である)。すなわち、チェーン135の一端がアンカーに取り付けられるとともに、他端がILT101に取り付けられている状態において、アンカーとILT101との間のチェーン135の長さは、変わらない(変化しない)。
【0026】
ILT101は、チェーン131(トップチェーンまたはワークチェーンとも呼ばれる)に結合される。ILT101とチェーン131との間の連結部は、「能動型チェーン連結部」であり、したがって、チェーン131の長さは、調整可能である。すなわち、AHVをILT101のチェーンホイールおよびラッチと関連して用いると、チェーン131の長さおよび張力が調節可能であり、それによりチェーンに結合される構造体の係留が可能である。例えば、AHVは、チェーン131を手繰り寄せまたは繰り出すことができ、それによりチェーン131に加わる張力を増減することができる。
【0027】
図7に示されているように、受動型チェーン連結部は、ILT101の底端部のところに配置され、能動型チェーン連結部は、ILT101の頂端部のところに配置され、チェーンホイール115は、受動型チェーン連結部と能動型チェーン連結部との間に位置決めされる。幾つかの実施形態では、受動型チェーン連結部は、フレーム103をチェーン135から切り離すROV作動型ピン連結部(図示せず)を含む。係留索に加わる張力を除くと、ROV作動型ピン連結を所望の場合に安全かつ確実に解除することができる。
【0028】
取り外し可能なチェーンホイール
【0029】
ILT101は、取り外し可能なチェーンホイール115を含む。図3図7に示されたチェーンホイール115の実施形態は、二重チェーンホイールであるが、本明細書において開示するシステムおよび方法は、二重チェーンホイールとの使用には限定されない。チェーンホイール115は、場所103bのところでフレーム103に取り付けられている(例えば、ピン留めされている)。具体的に説明すると、チェーンホイール115は、チェーンホイール取り付けフレーム153を有し、このチェーンホイール取り付けフレーム153は、フレーム103にピン留めされている。チェーンホイール115は、チェーンホイールアクスル152を介してチェーンホイール取り付けフレーム153に回転可能に取り付けられており、その結果、チェーンホイール115は、チェーンホイール取り付けフレーム153に対して回転することができるようになっている。
【0030】
フレーム103は、チェーンホイール115を受け入れてこれを固定するよう構成されたチェーンホイール用ドック、例えば漏斗部159およびピン157を有するのが良い。チェーンホイール取り付けフレーム153は、突き刺しピン161を有する。突き刺しピン161は、フレーム103の嵌合相手の漏斗部159内に嵌まり込むよう位置決めされている。かくして、突き刺しピン161およびこれと嵌合する漏斗部159は、チェーンホイール取り付けフレーム153とフレーム103の係合および離脱を可能にする。幾つかの実施形態では、チェーンホイール取り付けフレーム153は、チェーンホイール115をILT101へのチェーンホイール115の設置の際にフレーム103上の定位置に下降させるときに、突き刺しピン161が所望の配向状態(例えば、縦)のままにするのを容易にするための釣合おもりを有する。チェーンホイール取り付けフレーム153は、ピン157によりフレーム103にピン留めされている。チェーンホイールおよびチェーンホイール用フレームは、図示の特定の構造には限定されず、取り外し可能なチェーンホイールを提供するようILTに選択的に取り付けられたりこれから取り外されたりすることができる他の構造体を有することができる。かくして、本明細書において開示する取り外し可能チェーンホイール115は、少なくとも2つの形態を有する。少なくとも2つの形態は、チェーンホイール115がフレーム103に結合されてトップチェーン131を案内するよう位置決めされる第1の形態と、チェーンホイール115がフレーム103から結合解除されてILT101から取り外される第2の形態とを含む。
【0031】
作用を説明すると、チェーンホイール115が回転し、チェーン131が手繰り寄せられまたは繰り出されているとき(例えば、AHVを介して手繰り寄せられまたは繰り出されているとき)、チェーン131を案内する。幾つかの実施形態では、チェーンホイール115は、チェーンに係合するよう設計された表面外形を有する1つ以上(例えば、2つ)の鎖車の輪郭形状を有し、かつチェーンリンクの形状にならう(これと合致する)よう形作られたチェーン接触領域を有し、それにより、局所応力が最小限に抑えられる。幾つかの実施形態では、チェーンホイール115は、少なくとも2本の異なるサイズのチェーンに係合してこれらを案内することができる二重チェーンホイールである。他の実施形態では、チェーンホイール115は、たった1つのサイズのチェーンと共に使用可能に設計された単一のチェーンホイールである。チェーンホイール115が二重チェーンホイールである実施形態では、二重チェーンホイールは、小サイズの調節チェーンとの係合から係留チェーンとの係合までのシームレスな移行部をもたらすよう構成されている。例えば、コネクタ(リンクカプラ)が、2本の互いに異なるサイズのチェーンを連結するとともに、二重チェーンホイールに係合し、それによりチェーンのサイズ間の移行を容易にすることができる。例えば、チェーンホイール115は、米国特許出願公開第2019/0092599号(以下、第´599号出願公開という)明細書に開示されたチェーンホイールと同一でありまたはこれに類似しているのが良く(このことには限定されない)、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。また、第´599号出願公開明細書に開示されたリンクカプラは両方とも、小サイズの調節チェーンを大サイズの係留チェーンに連結するために使用できる。リンクカプラと二重チェーンホイールの使用により、2本の異なるサイズのチェーンは、チェーンホイール115上に「クロック制御状態」のままでいるとともに、チェーン支持のためのチェーンホイール115の適当なポケット中に落下し、それにより少なくともチェーンリンクに加わる曲げを減少させることができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、チェーンホイール115は、外部グリース潤滑の使用を必要としないで、取り付けフレーム153に対する回転抵抗を最小限におさめる2つの自潤性ブッシュを備えている。
【0033】
ハンドル173が、チェーンホイール取り付けフレーム153に結合されている。作用を説明すると、ハンドル173は、例えばフレーム103への設置のために、およびフレーム103からの取り外しのために、チェーンホイール115およびチェーンホイール取り付けフレーム153を操作する(例えば、動かす)ために用いられるのが良い。例えば、ウインチまたはクレーン(例えばAHV上に搭載されている)のワイヤ、ロープまたはチェーンがチェーンホイール115およびチェーンホイール取り付けフレーム153をフレーム103から吊り上げ、またはチェーンホイール115およびチェーンホイール取り付けフレーム153をフレーム103上に下降させるためにハンドル173に係合するのが良い。チェーンホイール115を容易に取り外したり再び取り付けたりすることができようにすることにより、チェーンホイール115が使用されていないときに、ILT101の重量を減少させるようチェーンホイール115を取り外すことが可能であり、しかも例えばチェーンを手繰り寄せまたは繰り出すための作業が可能であるようにチェーンホイール115を再び取り付けることが可能である。ILT101の重量を減少させることにより、ILT101の良好な長期間性能がもたらされ、水柱に取り残された可動部品の数が減少し、それにより海洋生物付着および腐食に対する懸念が軽減し、ILT101の重心をチェーンラインの下の位置にシフトさせ、その結果、テンショニング後における係留索のねじれの発生が減少するようにし、可動部品(例えば、チェーンホイール軸受)の良好な維持性が得られ、あるいはこれらの組合せが得られる。本明細書において用いられる「チェーンライン」は、係留索の延長線と一致する想像上のラインである。かくして、ILT101の重心がチェーンラインの下に位置している状態では、ILT101の重心は、チェーンラインよりも海底に近くなる。
【0034】
また、チェーンホイール115を取り外すことができることにより、チェーンホイール115を多数の互いに異なるインライン型テンショナに使用したり再使用したりすることができ、それにより、係留作業に必要なチェーンホイール115の全個数が減少し、かくして、係留作業の全体的コストが減少する。漏斗部159およびピン161は、フレーム103上へのチェーンホイール115の容易なドッキングを可能にし、というのは、ピン161を漏斗部159と整列させて、ピン161を漏斗部中に挿入することにより、チェーンホイール115が正確な位置にかつ正確な配向状態でドッキングされるようになっているからである。加うるに、ドッキングされたチェーンホイール115をフレーム103に固定するピン157は、ROV作動可能であるのが良く、それによりフレーム103へのチェーンホイール115の容易な固定が可能になる。ピン157、ピン161、および漏斗部159の逆の作業により、フレームからのチェーンホイール115の取り外しが容易になる。
【0035】
低摩擦性パッドを備えたチェーンガイド
【0036】
ILT101は、チェーンガイド117を有する。チェーンガイド117は、チェーン131をILT101中にそのラッチに向かって案内するよう位置決めされるとともに構成されている。チェーンガイド117は、チェーンを案内するテーパ付きの漏斗部であるのが良い。ガイド117は、例えば、チェーンがILT101から側方に位置がずれていて、それと同時に回されている場合(例えば、最大約20゜)、有用な場合がある。チェーンガイド117およびフレーム103は、アノード119を備えており、アノード119は、カソード防食を可能にする。チェーンガイド117(チェーンガイドシュー)は、フレーム103の船外側端部のところに位置決めされている。図示の実施形態では、チェーンガイド117は、二重“V”字形の漏斗部であり、この二重“V”字形漏斗部は、チェーンリンクに接触して、チェーンの手繰り寄せ中にチェーンをチェーンホイール115およびラッチ145中に正しく導き入れるのを助ける。しかしながら、本明細書において開示するチェーンガイドは、この特定の実施形態には限定されない。
【0037】
チェーンガイド117には低摩擦性パッド118が設けられている。低摩擦性パッド118は、チェーンガイド117を通過したチェーン131に係合するよう位置決めされている。低摩擦性パッド118は、チェーン131が下に位置するチェーンガイド117の表面に沿って摺動する(低摩擦性パッド118が設けられていない状態で)ことによって示される摩擦の程度と比較して、チェーン131が手繰り寄せまたは繰り出し中に低摩擦性パッド118の表面に沿って摺動するときに減少した摩擦力を呈する。例えば、低摩擦性パッド118は、下に位置するチェーンガイド117の材料とは異なる材料を含むのが良い。幾つかの実施形態では、低摩擦性パッド118は、チェーン131の材料とは異なる材料を含む。低摩擦性パッド118の材料は、係留チェーン131が下に位置するチェーンガイド117の材料に沿って摺動した場合に下に位置するチェーンガイド117の材料によって示される摩擦係数と比較して、チェーン131が低摩擦性パッド118に沿って摺動しているときに、係留チェーン131に対して低い摩擦係数を示す材料であるのが良い。幾つかの実施形態では、チェーンガイド117と係留チェーン131は両方とも、同一の材料、例えば鋼を含む。理論によって束縛されるわけではないが、海水中においてチェーンガイドの平板鋼に沿って摺動する鋼係留チェーンは、代表的には、約0.25~0.5のCoFを示す。かくして、海水中において低摩擦性パッド118に沿って摺動する鋼係留チェーンのCoFは、0.5未満、0.25未満、または0.2未満であるのが良い。チェーン131とチェーンガイド117との係合摩擦力を減少させることによって、低摩擦性パッド118は、ILT101およびチェーン懸垂線は、チェーン131がAHVから引き上げられるときに上昇と下降を繰り返す傾向を減少させる。すなわち、低摩擦性パッド118は、係留索のテンショニング中の摩擦力を減少させ、かくして、チェーンガイド117を擦るチェーンの静摩擦力に起因して、ILT101を繰り返し持ち上げたり落下させたりする傾向を減少させる。チェーン131とのチェーンガイド117のインターフェースのところでの低摩擦性パッド118により提供される摩擦力の減少により、低摩擦性パッド118が設けられていないその他の点では同一のILTと比較して、係留作業の良好な制御が容易である。
【0038】
ラッチ
【0039】
チェーンガイド117は、チェーン131をILT101のラッチ145まで案内する。ラッチ145は、ILT101のチェーンストッパでありまたはその一部をなす。ラッチ145は、フレーム103に結合されるとともにILT101を通過しているチェーン131と係合するよう位置決めされている。ラッチ145は、開くよう動作可能であり、その結果、これらラッチ145がILT101を通過しているチェーンリンクの邪魔にならないようになっている。ラッチ145はまた、閉じるよう動作可能であり、その結果、ラッチ145は、ILT101を通過しているチェーンリンクに係合する(これにラッチ留めする)ようになっている。幾つかの実施形態では、ラッチ145は、チェーンの延びる方向に対するラッチ145の配向状態を変化させるよう回転可能であり、その結果、ラッチ145は、縦のリンクと横のリンクの両方に係合するよう回転することができるようになっている。本明細書で用いられる「横の(flat)リンク」および「縦の(vertical)リンク」という用語は、当業者であればよく理解されるように、互いに90゜または実質的に90゜の角度をなして差し向けられたチェーン上の隣り合うリンクを示している。例えば、米国特許第10,272,973号(第´973号特許)明細書は、横のリンクと縦のリンクの両方に係合するようラッチを回転させることができる回転可能なチェーンストッパを開示している。幾つかの実施形態では、本明細書において開示されるラッチは、第´973号特許明細書に開示された回転可能なラッチと同じでありまたはこれに類似しており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの実施形態では、ラッチ145は、チェーンリンクを抱きかかえるように構成されるとともに形作られた機械加工異形ポケットを有するラッチ爪を含み、かくして、チェーン接触面積が最大にされるとともに、チェーン摩耗が減少する。幾つかの実施形態では、ラッチ145は、チェーンの種々の配向を可能にする回転可能なラッチであり、それにより、ラッチ145およびチェーンに加わる芯ずれ力を減少させる。幾つかの実施形態では、ラッチ145は、チェーンがラッチ145に嵌まり込むとともに、生じる場合のある局所撓みがチェーンには加わらずラッチ145に加わるようにするよう、チェーンの材料よりも硬度の低い材料を含む。
【0040】
ラッチ145は、チェーンが手繰り寄せられているときに、チェーンによって機械的に開かれるのが良い。図示の実施形態は、2つのラッチ145を含み、これら2つのラッチは、同期リンク機構127によりこれらの動きを同期させるよう互いに機械的に連結されている。ラッチ145の閉じ力は、これらラッチ145と結合してラッチ145を付勢して閉じ状態にする機械式ばね125(ラッチ閉じばね)によって提供されるのが良い。ラッチ145の閉じ力を提供する別の方法は、特定の用途に応じて、釣合おもり、空気圧もしくは油圧ばね、またはこれら方法の組み合わせの使用を含む。幾つかの実施形態では、ROVは、ラッチ145の遠隔操作のために使用されても良く、ダイバーがラッチ145を操作しても良く、または、上述のAHVまで引き回された機械式ワイヤがラッチ145を操作しても良い。例えば、ラッチ145は、所望であれば、チェーンの繰り出し中にROVまたはダイバーによって開き位置(チェーンの邪魔にならない位置)にピン留めされるのが良い。
【0041】
ILT101は、ラッチ145の位置を固定するラッチロック121、およびラッチ145を開くラッチ開きハンドル123を有する。例示の一実施形態では、ラッチ145を開き位置にピン留めするため、ROVは、ラッチロックピン121をねじるよう操作され、それにより、ロック開き機構を作動させる。ラッチ145を開くと、ラッチ145は、開き位置の状態で自動的に動かなくなることができる。チェーンの張力を除いた後にROVによってまたはチェーンを短い距離(例えば、1つのチェーンピッチ未満または約1.5個分のチェーンリンク)だけ手繰り寄せることによってラッチ145を開くのが良く、ついには、第1のリンクがラッチ145の底部に接触し、そしてラッチ145を開き位置に押し、この時点で、ロック開き機構体は、ラッチ145をチェーン繰り出し可能に開き状態に保つ。チェーン繰り出しが完了すると、ROVを操作して、ラッチロック121のハンドルを引き、それによりラッチロック121を解除し、するとラッチ145は、自動的に閉じることになる。インライン型テンショナ101の幾つかの実施形態では、ラッチ145の遠隔操作は、フレーム103に取り付けられた油圧シリンダによって制御され、そして上述のデッキまで引き回されたホースおよび/または配管によって制御されても良く、あるいは、音響および/または無線遠隔装置(例えば、AHVのデッキ)によって制御されても良い。
【0042】
幾つかの実施形態では、ラッチ145は、チェーンを2つの異形ラッチ上に支持することによってチェーン応力を減少させる仕方で係留チェーンを停止させるよう設計されている。本明細書において開示するインライン型テンショナ101は、係留索の最小破断荷重(MBL)に等しい保持能力を備えている。
【0043】
チェーン切り離しテーブル
【0044】
ILT101は、テールチェーン切り離しテーブル109を有する。テールチェーン切り離しテーブル109は、チェーン131のテールチェーン部分を受け入れてこれを固定するよう構成された構造体であり、このテールチェーン切り離しテーブルは、チェーン131のテールチェーン部分の切り離しまたは切断を行う構造体となる。幾つかの実施形態では、テールチェーン切り離しテーブル109は、チェーンの切り離しに用いられるROVを受け入れてこれを固定するよう構成されたドッキングステーションを有する。例えば、テールチェーン切り離しテーブル109は、ROVのドッキングまたは突き刺しピンを受け入れるよう構成された漏斗部または管111を有するのが良く、その結果、ROVは、チェーン切り離し作業のためにILT101上にドッキングすることができるようになっている。当業者であれば理解されるように、漏斗部または管は、テールチェーン切り離しテーブル109上のROVおよび突き刺しピンに設けられるのが良い。また、当業者であれば理解されるように、テールチェーン切り離しテーブルは、ROVを受け入れてこれを固定することができる他の構造体を有しても良く、かかるテールチェーン切り離しテーブルは、ピンおよび漏斗部を含むことには限定されない。
【0045】
テールチェーン切り離しテーブル109は、テールチェーンを係留索から切り離すために使用されるのが良い。幾つかの実施形態では、係留索に張力を加えた後、残りのテールチェーン(調整チェーンまたはワークチェーン)は、懸垂線中の重量を減少させ、係留索のねじれを最小限に抑え、そして長いテールチェーンが水柱にぶら下がっていることに起因する将来の再連結の際の厄介さをなくすために切り離される。テールチェーンの切り離し前に、テールチェーンをILT101のテールチェーン切り離しテーブル109上に寝かせて、例えばROV操作ピンによりこれに固定する。例えば、テールチェーン切り離しテーブル109上に位置決めされると、チェーン131は、チェーン係止ピン129によりピン留めされるのが良い。テールチェーンがテールチェーン切り離しテーブル109にいったんピン留めされまたは違ったやり方で固定されると、テールチェーン切り離しテーブル109上にドッキングされたROVは、テールチェーンの少なくとも一部分を取り外すよう動作するのが良い。テールチェーンの少なくとも一部分の取り外しでは、テールチェーンのリンクを切断し、またはテールチェーンのDリンク(または他の取り外し可能なリンク)を取り除くのが良い。
【0046】
幾つかの実施形態では、テールチェーン切り離しテーブル109は、テールチェーンを取り外すための作業をチェーンラインの外部で実施することができるようチェーンラインの外部に位置決めされる。例えば、図7に示されているように、テールチェーン切り離しテーブル109は、チェーンライン(チェーン131,135と同軸の想像上のライン)から上方に弓形になる。
【0047】
標的リンクストッパ
【0048】
本明細書に開示する幾つかの実施形態は、標的リンクストッパ(TLS)を含む。図9A図9Eを参照すると、一実施形態としての標的リンクストッパ113(TLS113)が図示されている。TLS113は、チェーンに沿う所定の場所で係留索のトップワークチェーンに取り付けられ、そして係留索のテンショニング中に所望の長さおよび所望の張力でチェーンの移動を停止するよう構成されている。例えば、TLS113は、係留索のテンショニングを停止させるよう位置決めされるのが良く、その結果、係留索の所定のチェーンリンクがILT101のラッチ145によって掴まれるように位置決めされるようになっている。TLS113は、係留索のテンショニングを停止させるよう位置決めされるのが良く、その結果、係留索の所定のチェーンリンクがテールチェーン切り離しテーブル109上に位置決めされて切断または取り外されるようになっている。作用を説明すると、ILT101が目標となるリンクを越えて行き過ぎると、ILT101は、追加のチェーンを繰り出して目標となる係留索の長さに戻すことが要求される場合がある。かくして、TLS113は、チェーンの行き過ぎを阻止しまたは減少させることができる。
【0049】
TLS113は、第2の本体端部124に結合された(例えば、ピン留めされた)第1の本体端部122を有する。TLS113は、互いにピン留めされた2つの部分を含むのが良い。例えば、本体部分133aは、ピン126により本体部分133bにピン留めされるとともにヒンジ137によりヒンジ留めされるのが良く、その結果、本体部分133a,133bをヒンジ137回りに回動させることによって開かれるのが良く(部分的に分離されるのが良く)、そして係留索周りに固定されるのが良く、次に、係留索周りに閉じられてピン126によって係留索にピン留めされるのが良い。TLS113は、ばね押し機構体を有し、かかるばね押し機構体は、互いに嵌まり合ったチャンバ132,134内に位置決めされたばね165を含む。各ばね165は、TLS113に加わった衝撃荷重を吸収するよう構成されており、その結果、TLS113とILT101の衝突時、各ばね165は、縮み、第2の本体端部124は、第1の本体端部122に向かって動くようになっている。各ばね165は、第1および第2の本体端部122,124のそれぞれの互いに嵌まり合ったチャンバ132,134内に収容されている。TLS113は、TLS113とILT101との係合をインターフェースするようTLS113上に位置決めされた潰れパッド167を有する。潰れパッド167は、TLS113に加わる衝撃荷重を吸収するのを助ける。
【0050】
幾つかの実施形態では、TLS113は、ROV適合性であり、その結果、TLS113を、ROVを用いて取り付け、取り出し、そして配備の前後に再び取り付けることができるようになっている。
【0051】
図10Aおよび図10Bを参照すると、ばね押しTLS113が、チェーン131およびILT101と係合した状態で図示されている。TLS113は、配備およびテンショニング作業前にチェーン131上に位置決めされる。ピン126を取り外すことにより、TLS113を作業完了後に取り外すことができる(例えば、ROVを用いて)。TLS113がチェーン131上の所望の場所に取り付けられた状態で、TLS113は、ILT101と(例えば、チェーンガイド117と)係合することによって、チェーン131上の停止装置としての役目を果たす。チェーンガイド117は、衝撃荷重を受け止めてこれを軽減するようTLS113とインターフェースする。TLS113がILT101と係合すると、TLS113の少なくとも幾分かの圧縮がTLS113のばね(ばね165)の圧縮の結果として起こる場合がある。TLS113とILT101の係合により、チェーン131のそれ以上の動きが止められ、その結果、チェーン131の所望のリンクがILT101内に位置決めされてこの中にラッチ留めされるようになり(ラッチ145によって)、そして係留索が所望の長さおよび/または所望の張力を有するようになる。すなわち、TLS113をチェーン131の所定のリンクがラッチ145の掴みゾーン内に位置決めされた時点でチェーン131の動きを停止するようチェーン131に沿って位置決めされるのが良い。「掴みゾーン」は、ラッチ145が閉じ位置に入ったときに、掴みゾーン内に位置しているチェーンリンクがラッチ145によって掴まれてラッチ留めされる位置である。
【0052】
幾つかの実施形態では、TLS113は、ILT101の幾何学的形状と合致する相手方の幾何学的形状を有し、その結果、TLS113およびILT101の表面接触フェースが荷重を広い表面積にわたって分散させるよう互いに合致するようになっている。幾つかの実施形態では、TLS113は、TLS113がチェーンガイド117を通ることができず、それによりTLS113とチェーンガイド117との係合時に係留索のそれ以上のテンショニングを阻止するような形状および/または寸法を有する。
【0053】
当業者であれば理解されるように、本明細書において開示する標的リンクストッパは、図9A図10Bに示された特定の構造には限定されず、係留索と結合することができ、かつ標的リンクストッパとインライン型テンショナとの係合時に係留索のテンショニングを停止させることができる他の構造を含むことができる。
【0054】
作用
【0055】
次に、係留索のテンショニングの際のILT101の作用について説明する。図11を参照すると、ILT101は、チェーン135と結合状態で図示されている。チェーン135は、海底(図示せず)のところでアンカー(図示せず)まで延びている。ILT101はまた、上側部分131aおよび下側部分131bを含むチェーン131に結合されている。上側部分131aは、ILT101から係留中の構造体(図示せず)(例えば、風力タービンタワー)まで延びている。下側部分131bは、ILT101からアンカー取り扱い船(図示せず)まで延びている。作用を説明すると、アンカー取り扱い船は、チェーン131を巻き取ることによりまたは巻き出すことによってチェーン131を手繰り寄せまたは繰り出す。チェーン131の所望の長さおよび/またはチェーン131に加わる張力がいったん達成されると、ILT101のラッチは、チェーン131をラッチ留めしてチェーン131の位置をILT101に対して固定するために用いられる。幾つかの実施形態では、チェーン131の所望の長さおよび/またはチェーン131に加わる張力は、図10Aおよび図10Bに示されているように、標的リンクストッパがILT101に係合すると生じるよう定められる。
【0056】
チェーンホイール115がテンショニング作業中に係留索が張力を受けている間、係留荷重に対する反作用がラッチ145によって生じる。係留作業中、チェーンホイール115は、LLLC(登録商標)連結リンクおよびメッセンジャーチェーンを通すよう構成されているのが良く、かくして、様々な係留、テンショニング、および再テンショニング作業の必要を満たす。チェーンホイール115の反作用の元になる予備張力荷重は、代表的には、ラッチ145が支持する(または支持するよう設計されている)係留索のMBLと比較して、比較的小さい。チェーンホイール115に加わるチェーン張力は、ラッチ145が閉じ位置でチェーンと係合すると(すなわち、チェーンにラッチ留めされると)除かれる。
【0057】
図12A図12Cを参照すると、ILT101のラッチでチェーン131をラッチ留めした後、チェーン131bの下側部分(テールチェーン)をテールチェーン切り離しテーブル109上に横たえてピン129によりピン留めする。幾つかの実施形態では、テーブル109へのチェーン131bのピン留めは、テーブル109にドッキングされたROVを用いて実施される。チェーン131bの下側部分は、取り外し可能なリンク130a~130cを有する。取り外し可能リンク130a~130cは、開閉可能なチェーンリンクであり、したがって、取り外し可能リンク130a~130cをチェーン131の残部に選択的に取り付けたりこれから取り外したりすることができるようになっている。例えば、取り外し可能リンク130a~130cは、Dリンクなどであるのが良い。取り外し可能リンク130aは、このリンク130aが軌道114上に位置決めされた状態で図12Aではテーブル109上に横の配向状態で示されている。取り外し可能リンク130bは、このリンク130bがスロット112内に位置決めされた状態で図12Bではテーブル109上に縦の配向状態で示されている。取り外し可能リンク130cは、テーブル109から上方に延びた状態で図12Cではテーブル109上のぶら下がりの配向状態で示されている。取り外し可能なリンクをILT101に通して縦または横の配向状態でチェーンホイール115にかけるのが良く、それにより係留設置施工業者にどの配向状態がテンショニング後の取り外しにとって好ましいかを選択する能力を与える。
【0058】
図13Aおよび図13Bを参照すると、チェーン131bの端部をテールチェーン切り離しテーブル109上の定位置にピン留めすると、チェーンホイール115をILT101から取り外すのが良いが、その手段として、例えば、チェーンホイール115の各側の2つのROV適合性ピンを取り外し、次にAHVを用いてチェーンホイール115を上方に手繰り上げる。チェーンホイール115をILT101のフレーム103から切り離してこれから吊り上げる。例えば、ワイヤ175をAHVに設置されているウインチまたはクレーンから下降させるのが良い。ワイヤ175は、チェーンホイール115を持ち上げるためにハンドル173と係合するフック176を有するのが良い。
【0059】
テールチェーン切り離しテーブル109は、チェーン131bを位置決めして固定することができる構造体となるとともに、ROVがチェーン131bを切り離すためにテールチェーン切り離しテーブル109に係合するためのドックとなる。作業を容易にするとともにチェーンの切り離しの際にROVを安定化するために、テールチェーン切り離しテーブル109のドックは、ROVに係合してこれと係止関係をなすようにするための係止特徴部を備えるのが良いインターフェース漏斗部111を備える。インターフェース漏斗部111により、ROVをテールチェーン切り離しテーブル109上にドッキングさせることができる。ROVドッキングインターフェース漏斗部111を切り離しテーブル109の両側に位置決めしてILT101のいずれの側からも接近するオプションをROVオペレータに提供する。ROVのマニピュレータはROVをテーブル109上に保持するには不要なので、ドッキングされたROVのマニピュレータの全てがテールチェーンの切り離しに用いられるわけではない(切り離しテーブル109上への保持のためにROVマニピュレータのうちの1つを用いるというよりも)。ROVのドッキングにより、ROVは、チェーン係止ピン129が取り外されているときにチェーン係止ピン129を落とさないように容易に制御できる。切り離しテーブル109上のチェーン係止ピン129は、切り離し作業を容易にするために用いられる。チェーン係止ピン129は、ROVによって案内されて捕捉されるのが良く、したがって、チェーン係止ピン129を落下させる恐れが減少する。チェーン係止ピン129は、係留荷重経路の外側に位置決めされ、このチェーン係止ピンは、係留索の寿命に関する腐食要件を満たすよう構成されているのが良い。チェーン係止ピン129は、チェーン131のリンク上にピン留めされることによってチェーン131の位置を切り離しテーブル109上に固定する。
【0060】
図14を参照すると、チェーンホイール115は、ILT101から取り外され、ROV201は、チェーン131の取り外し可能リンクをチェーン131の残部から切り離すための作業を行うことができるようテーブル109上にドッキングされている。ROV201の突き刺しピン203が漏斗部111内に嵌めこまれている。取り外し可能リンク130は、テンショニングの完了後に係留チェーンからのワークチェーン131の切り離しを可能にする。最終の係留長を正確に計算することができる(例えば、標的リンクストッパ113を用いて)ので、チェーン131のリンク130の位置もまた正確に計算することができ、その結果、リンク130をチェーン131に沿う正確な場所に設置することができるようになっている。リンク130は、リンク130にねじ込まれた(例えば、高い強度をもたらすとともに、ピンがそれ自体弛んで抜ける傾向がないように戻り止め式であるACMEねじを用いてねじ込まれた)ピン171を取り外すことによって取り外し可能である。ピン171のこの取り外しは、ROV201を用いて達成できる。安全性がさらに得られるように、セイフティーワイヤ(図示せず)を用いて、ピン171が作業中に完全にねじ込まれたままに保たれるようにするのが良い。かかる実施形態において、ピン171を取り外す前に、ROV201を用いてセイフティーワイヤを切断するのが良い。一実施例では、ピン171の端部は、ROVトルクツールに取り付けられた雄型駆動ビットに合致する内部六角形空所を有する。ROV201を漏斗部111およびピン203を介してテーブル109に剛結することができるようにすることにより、ROV201は、トルクツールを安全に用いることができる。すなわち、ROV201を漏斗部111およびピン203(または他のドッキング構造体)によりテーブル109に剛結することができるようにすることにより、切り離しという仕事を行っている間、ROV201による「スイミング(swimming)」が阻止されまたは軽減され、その結果、ROV201は、リンク130の切り離し中、ILT101に対して静的でありまたは実質的に静的であるようになっている。幾つかの実施形態では、ROV201のうちの1つのマニピュレータ205aがトルクツールを用いてピン171を取り外すために用いられると、ROV201の別のマニピュレータ205bを用いてピン171を捕捉することができ、その結果、ピン171が海底に落下する恐れが減少するようになっている。テールチェーンの切り離しを、取り外し可能リンクの取り外しを含むものとして説明したが、他の実施形態では、リンクをワークチェーンから切断しても良い。例えば、ROVは、切断工具を作動させてワークチェーンのリンクを切断しても良い。
【0061】
ワークチェーン131が、配備前にAHVに搭載されたILT101中に取り付けられる場合、チェーンリンクの配向状態をあらかじめ選択することができる。本発明のILT101は、チェーンリンクの任意の配向状態に対応することができる。かくして、本発明のILT101を用いると、係留設置施工業者は、特定の用途および状況における使用にとってどのチェーンリンクの配向状態が最も好都合かを決定することができ、かかるチェーンリンク配向状態は、チェーンラインが特定の向きを有するようにすることには限定されない。かくして、本発明のILT101は、テールチェーンの切り離しにとって多数の位置に対応した設計上の融通性を有する。
【0062】
図15は、係留索中に組み込まれていて、チェーン131aをチェーン135に連結しているILT101を示しており、チェーン部分131bは、ピン129によりILT101にピン留めされている。
【0063】
係留索のテンショニングの完了後、追加のチェーンの繰り出しが必要になった場合、ROV連結リンクは、チェーン切り離しテーブル109上に残されているワークチェーンの最後の露出リンクに戻って連結されるのが良い。切り離しテーブル109は、再連結のために利用できるとともに接近可能であるような仕方でチェーンの最後のリンクをいずれかの配向状態で(すなわち、縦または横の配向状態)で再連結することができるよう構成されている。連結リンクの配向状態および位置に関する3つの異なるオプションが上述したように、図12A図12Cに示されている。チェーン131およびチェーン135が配備に先立ってAHVに連結されている状態で、配備に先立って将来の再連結のためにどの配向状態が最善でありかつ最も容易であるかについての決定を行うことができる。図示のように、切り離しテーブル109は、垂直リンクの受け取りのためのスロット112、および横のリンクを受け入れるための軌道114を有する。しかしながら、切り離しテーブル109は、これらの特定の構造には限定されず、かかる切り離しテーブルは、縦の配向状態または横の配向状態のチェーンリンクの受け入れおよび固定のための他の構造を含むことができる。
【0064】
切り離しテーブル109の構成における融通性についての別の特徴は、追加の長さのチェーン(例えば、より多くのチェーンが手繰り寄せのために必要である場合)を切り離す必要がある場合、水中ダイヤモンドソー型チェーンカッターを用いるのが良く、オプションとして、これには改造が施される。例えば、差し込みピンまたは他のドッキング構造体が切り離しテーブル109に設けられている受け入れ漏斗部111または他のドッキング構造体とドッキングする(これらとインターフェースする)ために、カッターに設けられるのが良い。かくして、切り離しテーブル109は、ワークチェーン131を固定することができ、そして切り離しを行うためのROVかダイヤモンドワイヤーソーを用いたチェーンカッターかのいずれかのためのドッキングステーションとしての役目を果たすことができる構造体となる。
【0065】
浮船
【0066】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示した係留方法および機器は、種々の形式の多くの船、例えば、油田掘削または産出プラットフォーム、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)船、沖合浮体式洋上風力発電所基礎、浮体式養魚場、または任意他の沖合浮体式構造物に使用される。本明細書において開示したAHVは、1基以上のウインチ、クレーン、シャークジョー、船尾ローラー、ROV、および船の係留に使用できる他の装置を含む船舶であるのが良い。
【0067】
係留索
【0068】
本明細書において開示する係留索は、ラインの1つ以上の区分を含むのが良く、これら区分の各々は、同種の材料または異種の材料で構成できる。係留索の種々のセグメントは、シャックル、Hリンク、または他のコネクタにより互いに結合されるのが良い。ボトムチェーン135は、海底でアンカーに結合されたパイルフォアランナーであるのが良い。アンカーは、サクションパイル、被動パイル、ドラッグ埋め込みアンカー、重力アンカー、トーピード形アンカー、または改訂に位置決めされる別の形式のアンカーであるのが良い。ボトムチェーン135は、船を現場に曳航する前に、現場の海底にあらかじめ敷設されて海中保管されても良く、あるいは、船を現場に曳航した後に海底に敷設されても良い。
【0069】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示したインライン型テンショナは、重量および費用を節減した状態で係留索を引き締めるために係留索チェーンよりも小さいワークチェーンを用いるよう構成されている。
【0070】
特定の実施形態および機器を図示するとともに本明細書において説明したが、当業者であれば理解されるように、本明細書において開示した方法、システム、および装置は、説明したこれらの特定の実施形態には限定されない。
【0071】
本発明の実施形態および利点を詳細に説明したが、理解されるべきこととして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、かかる実施形態の種々の変更、置換、および変形が可能である。さらに、本発明の範囲は、明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法およびステップについての特定の実施形態には限定されるものではない。本開示から当業者であれば容易に理解されるように、本明細書において説明した対応の実施形態と実質的に同一の機能を実行しまたは実質的に同一の結果をもたらす現時点において存在しまたは後で開発されるべきプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを本開示にしたがって利用することができる。したがって、特許請求の範囲の記載は、かかる特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内に、かかるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを含むものである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15
【国際調査報告】