(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】プラスチックポリマー生物変換プロセス
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20230718BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20230718BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/16 20060101ALI20230718BHJP
C12P 7/6409 20220101ALI20230718BHJP
C12N 9/04 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
C12N1/00 S
C12N1/00 F
C12P21/00 A
C12N1/20 A
C12N1/12 B
C12N1/14 C
B29B17/02
C12N1/16 D
C12P7/6409
C12N9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579964
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 US2021039128
(87)【国際公開番号】W WO2021263125
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128751
【氏名又は名称】ジョージア・ステート・ユニヴァーシティ・リサーチ・ファウンデーション・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミフレテアブ、メルハウィ
(72)【発明者】
【氏名】スタブルフィールド、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート、エリック
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4F401
【Fターム(参考)】
4B064AD88
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4F401FA02Y
(57)【要約】
ポリマー材料に由来するポストコンシューマー廃棄物からの汚染を低減するための組成物及び方法が開示される。本方法は、ポリマー材料を解重合させることと、任意選択的に、解重合ポリマー材料を生物変換することと、を伴い、その産物を、他の生物変換プロセスのための原料として使用して、生化学物質及び他の付加価値のある生物学的産物を作製することができる。いくつかの実施形態において、解重合ポリマー材料を使用して、培養培地を作製することができる。培養培地は、細菌、藻類及び真菌を含む微生物、又は酵素からバイオ製品を産生するのに好適である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレン含有プラスチック材料を生物変換する方法であって、前記方法が、
(a)前記ポリアルキレン含有プラスチック材料を熱分解して、解重合残分を得ることと、
(b)任意選択的に、前記解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、培養培地を形成することであって、使用される場合、前記界面活性剤が、合成非イオン性生分解性界面活性剤を含む、形成することと、
(c)酵素又は生物を前記培養培地に導入することと、
(d)前記酵素又は前記生物によって産生される少なくとも1つの産物を蓄積させることと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(c)が、脂肪酸生合成経路を発現するか、ポリアルキレン残分の代謝を増強するか、脂肪酸生合成経路を介してポリアルキレン由来化合物の流束を増加させるか、前記培地からのポリアルキレン残分の取り込みを増加させるか、又はこれらの組み合わせである酵素又は生物を導入することを含む、先行請求項に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)が、遺伝子を含む生物を導入することを含み、前記遺伝子が、ポリアルキレン残分の代謝を増強する酵素をコードするか、又は脂肪酸生合成経路を介してポリアルキレン由来化合物の流束を増加させるために必須の酵素をコードする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)が、遺伝子を含む生物を導入することを含み、前記遺伝子が、前記培地からのポリアルキレン残分の取り込みを増加させる輸送タンパク質をコードする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生物が、組換え生物、又は天然に存在する生物である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアルキレン含有プラスチック材料が、ポリエチレン(高密度ポリエチレン及び/又は低密度ポリエチレンを含む)、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレン及び/又は低密度ポリプロピレンを含む)、又はこれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアルキレン含有プラスチック材料が、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%のポリプロピレンを含むか、又はポリプロピレンから本質的になる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアルキレン含有プラスチック材料が、ポストコンシューマー廃棄材料である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアルキレン含有プラスチック材料が、プラスチック繊維材料、プラスチックフィルム、発泡体、又はキャスト若しくは非キャストプラスチック包装材料等のプラスチック物品である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱分解することは、前記ポリアルキレン含有プラスチック材料の無希釈物又は異種混合物を、350℃以上、例えば、400℃~600℃、又は400℃~500℃の温度まで加熱することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記解重合残分が、1つ以上の分岐鎖C
6~36アルコール、1つ以上の分岐鎖C
6~36アルケン、又はこれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記解重合残分が、少なくとも50重量%、若しくは少なくとも70重量%の前記分岐鎖C
6~36アルコール、分岐鎖C
6~36アルケン、若しくはこれらの組み合わせを含むか、又はこれらから本質的になる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記培養培地が、2:1~10:1、好ましくは4:1の炭素と窒素の重量比を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記培養培地が、界面活性剤を含み、好ましくは、前記界面活性剤が、ポリソルベート界面活性剤から本質的になる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
産生された前記産物が、脂肪酸産物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
産生された前記産物が、ポリヒドロキシアルカノエートではない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ポリエステル、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせから選択されるプラスチック材料から培養培地を作製する方法であって、前記方法が、
(a)前記プラスチック材料を、10以上のpHを有する水性混合物中で加熱して、解重合残分を得ることと、
(b)前記解重合残分と、生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、酸性、中性、又は塩基性のpH(例えばpH6.8~10)を有する培養培地を形成することと、を含む、方法。
【請求項18】
ポリエステル、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせから選択されるプラスチック材料を生物変換する方法であって、前記方法が、
(a)前記プラスチック材料を、10以上のpHを有する水性混合物中で加熱することによって解重合させ、解重合残分を得ることと、
(b)前記解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、培養培地を形成することと、
(c)酵素又は生物を前記培養培地に導入することと、
(d)前記酵素又は前記生物によって産生される産物を蓄積させることと、を含む、方法。
【請求項19】
前記培養培地が、塩基性pH、例えば、6.8~9.5、又は6.8~8のpHを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記プラスチックポリエステル材料を、アルコールを含み、かつ10以上のpHを有する水性混合物中で加熱して、解重合残分を得ることと、
(b)前記解重合残分と水とを混合し、任意選択的に、そのpHを調整して、10未満のpHを有する混合物を形成することであって、前記解重合残分及び水が、少なくとも1:100の重量比である、形成することと、
(c)前記混合物を、窒素源を含む補助剤とブレンドして、7以下の塩基性pHを有する培養培地を形成することと、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
脂肪酸生合成経路を発現するか、ポリエステル若しくはポリウレタン残分の代謝を増強するか、脂肪酸生合成経路を介してポリエステル若しくはポリウレタン由来の化合物の流束を増加させるか、前記培地からのポリエステル若しくはポリウレタン残分の取り込みを増加させるか、又はこれらの組み合わせである酵素又は生物を前記培養培地に導入することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ポリエステル若しくはポリウレタン残分の代謝を増強する酵素をコードするか、又は脂肪酸生合成経路を介してポリエステル若しくはポリウレタン由来の化合物の流束を増加させるのに必須の酵素をコードする遺伝子を含む生物を前記培養培地に導入することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記培地からのポリエステル若しくはポリウレタン残分の取り込みを増加させる輸送タンパク質をコードする遺伝子を含む生物を前記培養培地に導入することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記プラスチック材料を解重合させるための前記水性混合物が、10~13、又は12~13のpHを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記水性混合物が、乳化剤、好ましくはエタノール又はグリコール等のアルコールを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記水性混合物が、DMSOを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記水性混合物を、300℃以上、例えば、300℃~500℃、又は320℃~400℃の温度で加熱する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記プラスチックポリエステル又はポリウレタン材料を加熱することが、熱分解を含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記プラスチック材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はこれらの組み合わせ等のポリエステルを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記解重合残分が、1つ以上のアルコール、1つ以上のアルデヒド、1つ以上のカルボン酸、又はこれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記プラスチック材料が、ポリウレタンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ステップb)からの前記混合物を、100℃を超える温度で、好ましくは10psiより高い高圧で加熱することによって滅菌することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記解重合残分を、遠心分離、濾過、洗浄、又はこれらの組み合わせによって処理することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
産生された前記産物が、脂肪酸産物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
産生された前記産物が、ペプチド、好ましくはトリペプチドを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
産生された前記産物が、ポリヒドロキシアルカノエートではない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ポリスチレン含有プラスチック材料から培養培地を作製する方法であって、前記方法が、
(a)前記ポリスチレン含有プラスチック材料を、酸化剤、スチレンオキシド、又はアセトンのうちの2つ以上を含む混合物中で解重合させ、解重合残分を得ることと、
(a)前記解重合残分と、生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、塩基性pHを有する培養培地を形成することと、を含む、方法。
【請求項38】
ポリスチレン含有プラスチック材料を生物変換する方法であって、前記方法が、
(a)前記ポリスチレン含有プラスチック材料を、酸化剤、スチレンオキシド、又はアセトンのうちの2つ以上を含む混合物中で解重合させ、解重合残分を得ることと、
(b)前記解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合することと、
(c)酵素又は生物を培養培地に導入することと、
(d)前記酵素又は前記生物によって産生される少なくとも1つの産物を蓄積させることと、を含む、方法。
【請求項39】
ステップ(c)が、脂肪酸生合成経路を発現するか、ポリスチレン残分の代謝を増強するか、脂肪酸生合成経路を介してポリスチレン由来化合物の流束を増加させるか、前記培地からのポリスチレン残分の取り込みを増加させるか、又はこれらの組み合わせである酵素又は生物を前記培養培地に導入することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(c)が、ポリスチレン残分の代謝を増強する酵素をコードするか、又は脂肪酸生合成経路を介してポリスチレン由来化合物の流束を増加させるのに必須の酵素をコードする遺伝子を含む生物を前記培養培地に導入することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(c)が、前記培地からのポリスチレン残分の取り込みを増加させる輸送タンパク質をコードする遺伝子を含む生物を前記培養培地に導入することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記混合物が、エマルションである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記解重合残分が、スチレンオキシドを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記プラスチック材料が、非生分解性プラスチック材料である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記方法が、前記解重合残分と、前記界面活性剤とを混合することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記界面活性剤が、生分解性界面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記培養培地が、水、アセテート、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトース、リボース、スーパーオプティマルブロス(SOB)培地、カタボライト抑制スーパーオプティマルブロス(SOC)培地、ニュートリエントブロス、ニュートリエント寒天、最小培地、Luria-Bertani培地、胞子形成ブロス、酵母抽出物、ペプトン、これらの組み合わせ、又はこれらの改変から選択される補助剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記生物が、細菌、藻類、又は真菌から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記生物が、土壌生息生物である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記生物が、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Beijerinckia属、又はRhodococcus属、例えば、Streptomyces coelicor、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorecens、又はRhodococcus rhodochrousから選択される細菌である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記生物が、Pichia属、Rhodotorula属、Candida属、Debaryomyces属、Aspergillus属、Penicillium属、又はYarrowia属、例えば、Debaryomyces hansenii、Candida famata、Pichia pastoris、Rhodotorula glutinis、又はYarrowia lipolyticから選択される真菌である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記生物が、Chlorella属から等の藻類である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記酵素又は前記生物が、脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ、脂肪族アルコールオキシダーゼ、脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ、シトクロムP450オキシダーゼ、又はこれらの組み合わせから選択される酵素を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法によって調製される、脂肪酸組成物。
【請求項55】
オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、安息香酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、又はこれらの混合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪酸組成物。
【請求項56】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法によって調製される、培養培地。
【請求項57】
培養培地であって、
(a)1つ以上の分岐鎖C
6~36アルコール及び1つ以上の分岐鎖C
6~36アルケンを含む、熱分解された解重合ポリアルキレン残分と、
(b)合成非イオン性生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含む、培養培地。
【請求項58】
前記熱分解された解重合ポリアルキレン残分が、少なくとも50重量%、若しくは少なくとも70重量%の分岐鎖C
6~36アルコール、分岐鎖C
6~36アルケン、又はこれらの組み合わせを含むか、又はこれらから本質的になる、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項59】
前記分岐鎖C
6~36アルコール及び前記分岐鎖C
6~36アルケンが、1:1~5:1、又は1.5:1~3:1の重量比で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項60】
前記熱分解されたポリアルキレン残分が、前記培養培地中の炭素源の少なくとも45モル%又は少なくとも55モル%を構成する、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項61】
培養培地であって、
(a)解重合ポリエステル残分、解重合ポリウレタン残分、又はこれらの組み合わせから選択される、解重合残分と、
(b)生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含み、
前記培養培地が、9以上のpHを有する、培養培地。
【請求項62】
培養培地であって、
(a)解重合ポリエステル残分と、
(b)窒素源を含む補助剤と、を含み、
前記培養培地が、7以下のpHを有する、培養培地。
【請求項63】
前記解重合ポリエステル残分を含み、前記解重合ポリエステル残分が、1つ以上のアルコール、1つ以上のアルデヒド、1つ以上のカルボン酸、又はこれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項64】
前記解重合残分が、前記培養培地中の炭素源の少なくとも45モル%又は少なくとも55モル%を構成する、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項65】
培養培地であって、
(a)非生分解性ポリウレタンプラスチック材料を、10以上のpHを有する水性混合物中で加熱することによって生成される、解重合ポリウレタン残分、又はこれらの組み合わせと、
(b)窒素源を含む補助剤と、を含み、
前記培養培地が、7以下のpHを有する、培養培地。
【請求項66】
前記解重合残分が、前記培養培地中の炭素源の少なくとも90モル%~最大100モル%を構成する、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項67】
培養培地であって、
(a)スチレンオキシドを含む解重合ポリスチレン残分と、
(b)生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含む、培養培地。
【請求項68】
前記解重合ポリスチレン残分が、前記培養培地中の炭素源の少なくとも45モル%又は少なくとも55モル%を構成する、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項69】
生分解性界面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項70】
培養培地が、水、アセテート、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトース、リボース、スーパーオプティマルブロス(SOB)培地、カタボライト抑制スーパーオプティマルブロス(SOC)培地、ニュートリエントブロス、ニュートリエント寒天、最小培地、Luria-Bertani培地、胞子形成ブロス、酵母抽出物、ペプトン、これらの組み合わせ、又はこれらの改変から選択される補助剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項71】
脂肪酸生合成経路を発現する酵素又は生物を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項72】
前記生物が、細菌、藻類、又は真菌から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項73】
前記生物が、土壌生息生物である、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項74】
前記生物が、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Beijerinckia属、又はRhodococcus属、例えば、Streptomyces coelicor、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorecens、又はRhodococcus rhodochrousから選択される細菌である、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項75】
前記生物が、Pichia属、Rhodotorula属、Candida属、Debaryomyces属、Aspergillus属、Penicillium属、又はYarrowia属、例えば、Debaryomyces hansenii、Candida famata、Pichia pastoris、Rhodotorula glutinis、又はYarrowia lipolyticから選択される真菌である、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項76】
前記生物が、Chlorella属から等の藻類である、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【請求項77】
前記酵素又は前記生物が、脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ、脂肪族アルコールオキシダーゼ、脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ、又はこれらの組み合わせから選択される酵素を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の培養培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月25日に出願され、「PLASTIC POLYMER BIOCONVERSION PROCESS」という表題の米国仮特許出願第63/044,010号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、培養培地に関し、具体的には、培養培地を調製するためのポリマー材料のリサイクルに関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチック等のポリマー材料は、非常に有用であり、経済的な材料である。特に、プラスチックは、様々なタイプの環境薬剤及び化学薬剤に抵抗性であることが可能であり、したがって、それらから作製された製品が、長期間にわたって、かつ種々の条件にわたって、その完全性を維持することを可能にする。加えて、多くのプラスチックは、その強度に比して軽量であり、保管及び輸送にとって実用的である。逆に、プラスチックを有用かつ経済的にする特徴は、環境におけるその持続性及び広範囲にわたる分布を引き起こす。
【0004】
市販のプラスチックは、環境において分解しないか、又は完全に分解しない。典型的には、市販のプラスチックは、機械的作用によって、そのポリマー特徴を保持する小片に分解される。しかしながら、天然条件下では、プラスチックポリマーの微生物生体内変換は、一般に限定的である。例えば、多くのポリマーと同様に、大きなサイズの分子は、微生物による取り込み及び触媒作用を妨害し得る。加えて、合成ポリマーが生分解される速度は、その生体異物分子構造によっても制限され得る。環境内の非生分解性材料を低減することに対する必要性が存在する。特に、ポリマー材料をリサイクルするための方法に対する必要性が存在する。本明細書に記載の組成物及び方法は、これらの必要性及び他の必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0005】
ポリマー材料に由来するポストコンシューマー廃棄物からの汚染を低減するための組成物及び方法が開示される。本方法は、ポリマー材料を解重合させることと、任意選択的に、解重合ポリマー材料を生物変換することと、を伴い、その産物を、他の生物変換プロセスのための原料として使用して、生化学物質及び他の付加価値のある生物学的産物を作製することができる。いくつかの実施形態において、解重合ポリマー材料を使用して、培養培地を作製することができる。したがって、ポリマー廃棄材料から培養培地を作製する方法が開示される。
【0006】
いくつかの態様において、ポリアルキレン含有プラスチック材料から培養培地を作製する方法であって、(a)ポリアルキレン含有プラスチック材料を熱分解して、解重合残分を得ることと、(b)解重合残分と、生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、培養培地を形成することと、を含む、方法が開示される。更なる態様において、ポリアルキレン含有プラスチック材料を生物変換する方法であって、(a)ポリアルキレン含有プラスチック材料を熱分解して、解重合残分を得ることと、(b)任意選択的に、解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、培養培地を形成することと、c)酵素又は生物を培養培地に導入することと、d)酵素又は生物によって産生される少なくとも1つの産物を蓄積させることと、を含む方法が開示される。
【0007】
ポリアルキレン含有プラスチック材料は、高及び/又は密度ポリアルキレン含有プラスチック材料を含み得る。いくつかの場合において、ポリアルキレン含有プラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの場合において、ポリアルキレン含有プラスチック材料は、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%のポリプロピレンを含むか、又はポリプロピレンから本質的になる。ポリアルキレン含有プラスチック材料は、プラスチック繊維材料等のプラスチック物品であり得る。熱分解することは、ポリアルキレン含有プラスチック材料の無希釈物又は異種混合物を、350℃以上、例えば、400℃~600℃、又は400℃~500℃の温度まで加熱することを含み得る。得られた解重合残分は、1つ以上の分岐鎖C6~36アルコール、1つ以上の分岐鎖C6~36アルケン、又はこれらの組み合わせを含み得る。例えば、解重合残分は、少なくとも50重量%、若しくは少なくとも70重量%の分岐鎖C6~36アルコール、分岐鎖C6~36アルケン、又はこれらの組み合わせを含み得るか、又はこれらから本質的になり得る。
【0008】
いくつかの態様において、ポリエステル、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせから選択されるプラスチック材料から培養培地を作製する方法が開示される。本方法は、a)プラスチック材料を、10以上のpHを有する水性混合物中で加熱して、解重合残分を得ることと、b)解重合残分と、生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、酸性、中性、又は塩基性のpHを有する培養培地を形成することと、を含み得る。更なる態様において、ポリエステル、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせから選択されるプラスチック材料を生物変換する方法が開示される。本方法は、a)プラスチック材料を、10以上のpHを有する水性混合物中で加熱することによって解重合させ、解重合残分を得ることと、b)解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、培養培地を形成することと、c)酵素又は生物を培養培地に導入することと、d)酵素又は生物によって産生される少なくとも1つの産物を蓄積させることと、を含み得る。本方法は、補助剤と混合する前に、解重合残分を遠心分離処理するステップ、解重合残分を濾過するステップ、解重合残分を洗浄するステップ、又はこれらの組み合わせを更に含み得る。
【0009】
特定の態様において、プラスチックポリエステル材料から培養培地を作製する方法が開示される。本方法は、a)プラスチックポリエステル材料を、アルコールを含み、かつ10以上のpHを有する水性混合物中で加熱して、解重合残分を得ることと、b)解重合残分と水とを混合し、任意選択的に、そのpHを調整して、10未満のpHを有する混合物を形成することであって、解重合残分及び水が、少なくとも1:100の重量比である、形成することと、(c)混合物を、窒素源を含む補助剤とブレンドして、6.8~10のpHを有する培養培地を形成することと、を含み得る。更なる態様において、プラスチックポリエステル材料を生物変換する方法が開示される。本方法は、a)プラスチックポリエステル材料を、アルコールを含み、かつ10以上のpHを有する水性混合物中で加熱することによって解重合させ、解重合残分を得ることと、b)解重合残分と水とを混合し、任意選択的に、そのpHを調整して、10未満のpHを有する混合物を形成することであって、解重合残分及び水が、少なくとも1:100の重量比である、形成することと、c)混合物を、窒素源を含む補助剤とブレンドして、酸性、中性、又は塩基性のpHを有する培養培地を形成することと、d)酵素又は生物を培養培地に導入することと、e)酵素又は生物によって産生される産物を蓄積させることと、を含み得る。本方法は、ステップb)からの混合物を、100℃を超える温度で、好ましくは10psiより高い高圧で加熱することによって滅菌するステップを更に含み得る。
【0010】
いくつかの場合において、プラスチック材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はこれらの組み合わせ等のポリエステルを含む。ポリエステル含有プラスチック材料から形成される解重合残分は、1つ以上のアルコール、1つ以上のアルデヒド、1つ以上のカルボン酸、又はこれらの組み合わせを含み得る。他の場合において、プラスチック材料は、ポリウレタンを含む。ポリエステル又はポリウレタンプラスチック材料を解重合する際に使用される水性混合物は、10~13、又は12~13のpHを有し得る。水性混合物は、乳化剤又は有機溶媒、好ましくはアルコール、DMSO、又はこれらの組み合わせを更に含み得る。混合物を、300℃以上、例えば300℃~500℃、又は320℃~400℃の温度で加熱し得る。
【0011】
いくつかの態様において、ポリスチレン含有プラスチック材料から培養培地を作製する方法であって、a)ポリスチレン含有プラスチック材料を、酸化剤、スチレンオキシド、又はアセトンのうちの2つ以上を含む混合物中で解重合させ、解重合残分を得ることと、b)解重合残分と、合成非イオン性生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合して、塩基性pHを有する培養培地を形成することと、を含む、方法が開示される。更なる態様において、ポリスチレン含有プラスチック材料を生物変換する方法であって、a)ポリスチレン含有プラスチック材料を、酸化剤、スチレンオキシド、又はアセトンのうちの2つ以上を含む混合物中で解重合させ、解重合残分を得ることと、b)解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合することと、c)酵素又は生物を培養培地に導入することと、d)酵素又は生物によって産生される産物を蓄積させることと、を含む方法が開示される。ポリスチレン混合物は、エマルションであり得る。いくつかの場合において、解重合残分は、スチレンオキシドを含む。
【0012】
いくつかの例において、本明細書に記載のポリマー材料から調製される培養培地は、熱分解された解重合ポリアルキレン残分を含み得る。例えば、培養培地は、1つ以上の分岐鎖C6~36アルコール、1つ以上の分岐鎖C6~36アルケンと、合成非イオン性生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含み得る。熱分解されたポリアルキレン残分は、培養培地中の炭素源の少なくとも45モル%又は少なくとも55モル%を構成し得る。他の例において、培養培地は、解重合ポリエステル残分、解重合ポリウレタン残分、又はこれらの組み合わせから選択される、解重合残分と、生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含んでいてもよく、培養培地は、9以上のpHを有する。解重合残分が、解重合ポリエステル残分である場合、培養培地は、1つ以上のアルコール、1つ以上のアルデヒド、1つ以上のカルボン酸、又はこれらの組み合わせを含み得る。更なる例において、スチレンオキシドを含む解重合ポリスチレン残分と、生分解性界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含む、培養培地も開示される。
【0013】
培養培地は、界面活性剤を更に含み得る。界面活性剤は、生分解性界面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含み得るか、又はこれらから本質的になり得る。培養培地は、水、アセテート、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトース、リボース、スーパーオプティマルブロス(SOB)培地、カタボライト抑制スーパーオプティマルブロス(SOC)培地、ニュートリエントブロス、ニュートリエント寒天、最小培地、Luria-Bertani培地、胞子形成ブロス、酵母抽出物、ペプトン、これらの組み合わせ、又はこれらの改変から選択される補助剤を更に含み得る。
【0014】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載の培養培地は、細菌、藻類、及び真菌を含む微生物から、又は遺伝子、又は酵素からバイオ製品を産生するのに好適である。酵素又は微生物が使用される実施形態において、酵素又は微生物は、脂肪酸生合成経路を発現し、プラスチック材料からの残分(例えば、ポリアルキレン残分、ポリエステル若しくはポリウレタン残分、又はポリスチレン残分)の代謝を増強し、脂肪酸生合成経路を介してプラスチック由来化合物の流束を増加させ、培地からのプラスチック残分の取り込みを増加させるか、又はこれらの組み合わせであり得る。生物が使用される実施形態において、生物は、遺伝子を含んでいてもよく、遺伝子は、プラスチック残分の代謝を増強する酵素をコードし得るか、又は脂肪酸生合成経路を介してプラスチック由来化合物の流束を増加させるのに必須の酵素をコードし得る。生物が使用される更なる実施形態において、生物は、遺伝子を含んでいてもよく、遺伝子は、培地からのプラスチック残分の取り込みを増加させる輸送タンパク質をコードし得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、微生物は、土壌生息微生物であり得る。例えば、微生物は、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Beijerinckia属、又はRhodococcus属からの細菌であり得る。細菌の具体例としては、Streptomyces coelicor、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Beijerinckia indica、及びRhodococcus rhodochrousが挙げられる。いくつかの実施形態において、微生物は、Pichia属、Rhodotorula属、Candida属、Aspergillus属、Penicillium属、又はYarrowia属からの真菌であり得る。例えば、微生物は、脂質を形成し貯蔵する(油脂形成性)酵母であり得る。菌類の具体例としては、Pichia pastoris、Rhodotorula glutinis、Candida maltosa、Debaryomyces hansenii、Candida famata、Aspergillus oryzae、Penicillium roqueforti、及びYarrowia lipolyticaが挙げられる。いくつかの実施形態において、微生物は、Chlorella属から等の藻類であり得る。いくつかの実施形態において、酵素は、脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ、脂肪族アルコールオキシダーゼ、脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ、又はこれらの組み合わせから選択され得る。代替的に、微生物は、上述の酵素を含み得る。
【0016】
培養培地から産生される産物は、バイオポリマー、酵素、又は細胞代謝産物であり得る。いくつかの場合において、脂肪酸等の細胞代謝産物は、培養培地から収集することができる。脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、安息香酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】OP4培地中のY.lipolyticaの成長を示す。(
図2A)「界面活性剤対照」培地に対する、OP4培地中の成長。成長を、細胞乾燥重量として測定した。「界面活性剤対照」には、OP4培地中に見られる全ての乳化剤、窒素、リン、及び微量栄養源が含まれていたが、PP由来の化合物は含まれなかった。(
図2B)Y.lipolytica成長の間に使用されたOP4培地。OP4濃度の変化を重量測定法で測定した。脂肪族アルコールの消費を、GC/MSによって測定した。各データセットについてプロットされる平均±SD。
【
図3】OP4培地構成要素上での成長を示す。成長を重量測定法で測定した。ANOVAによって決定される統計的有意性。p<0.05の場合、試料は、有意差があるとみなされた。同じ小文字又は大文字の文字を共有する処理は、互いに有意差はない。
【
図4】0.3%w/wのシクロヘキサンを含む場合及び含まない場合の富栄養培地上でのY.lipolyticaの成長を示す。成長を、光学密度(600nm)として測定した。スチューデントのt検定によって決定される統計的有意性。(**)は、処理試料と未処理対照との間の有意差(p<0.01)を示す。
【
図5】OP4培地中での成長の間の脂肪酸産生を示す。細胞を96時間後に撮像した。倍率400倍。(
図5A)左がOP4培地、右及び界面活性剤対照。なお、脂質封入体は黄色である。(
図5B)デジタル画像分析によって定量化された、平均ナイルレッド蛍光。
【
図6】界面活性剤対照に対する、OP4培地上での成長の間のY.lipolyticaによる脂肪酸産生の分析を示す。(
図6A)総脂肪酸(FA)収量。(
図6B)炭素数ごとのFAの分布。(
図6C)飽和FA及び不飽和FAの分布(
図6D)不飽和FAの分布。
【
図7】脂肪酸産生に対する、炭水化物含有培地と比較した脂質含有培地の影響を示す。分析前に、細胞を120時間かけて成長させた。
【
図8】OP5培地上で成長したY.lipolyticaの脂肪酸収量を示す。
【
図9】C.famataによるPTTの生物変換を示す。48時間で、基質、細胞及びSCO中の総C=0.11モル、又は初期C投入量の45パーセント。120時間で、測定されたC=初期C投入量の54パーセント。また、48時間目の単一細胞油(SCO)形成=初期基質Cの12.5パーセント。EPSは120時間目にのみ測定した。挿入図:成長及び産物形成の図。
【
図10】C.famataによるポリエステル由来成長培地(PTTl)取り込みを示す。LPLC-分光光度法によって測定されたテレフタル酸(TPA)相、GC-FIOによって測定されたアルコール相。
【
図11】C.famataによる産物形成を示す。左が48時間目の脂肪酸。右が120時間目の多糖類。GC/MSによる分析。
【
図12】PTTl培地組成を示す。アルカリ加水分解の後、PTTl培地中の最大のPTT由来分子は、650未満の分子量(MW)を有する。最も豊富に含まれる画分は、ほぼ300のMWを有する。ESI-MSによる分析。
【
図13】ポリスチレン及び酵母抽出物を含有する対照培養培地を示す。
【
図14】Pseudomonas putia KT2440を有するポリスチレン培地を示す。
【
図15】Candida famataを有するポリスチレン培地を示す。
【
図16】Candida famataを有するポリスチレン培地を示す。
【
図17】環境単離物を有するポリウレタン培地を示す。
【
図18】pH8におけるPTT2(ポリエステル由来)培地中の油脂形成性酵母であるYarrowia lipolyticaの成長を示すグラフである。
【
図19】pH8におけるPTT2(ポリエステル由来)培地中のEscherichia coli(グラム陰性)及びBacillus subtilis(グラム陽性)といった2種類の細菌の成長を示すグラフである。
【
図20】pH8におけるPTT2(ポリエステル由来)培地中のCandida famataの成長を示すグラフである。1g/Lの濃度のPTT培地を、以下の接種源を使用して接種した(OD600)。A2-0.4及びA3-4.5。
【
図21】pH8におけるPTT2(ポリエステル由来)培地中のCandida famataの成長を示すグラフである。1g/L(A3 PTT)及び5g/L(A4 PTT)の濃度のPTT培地を、以下の接種源を使用して接種した(OD600)。A4-16及びA3-4.5。
【
図22】C.famataの成長の間のPTT1溶液中の代謝産物の蓄積を示す画像である。明視野顕微鏡による画像、25時間の成長後の倍率1000倍。
【
図23】溶液中に蓄積する代謝産物の結晶を示す画像である。倍率10倍。小さな丸い緑色の酵母細胞に注目されたい。
【
図24】落射蛍光顕微鏡で撮像された、
図26と同じ結晶を示す画像である。ローダミンフィルターセットを使用した蛍光に注目されたい。倍率10倍。
【
図25A-25D】ポリプロピレンの2つの供給源から培地を調製したことを示す。(
図25A)OP5培地を、バージンアモルファスPPペレットから調製した。(
図25B)PCOP5培地を、PPから作られたポストコンシューマーデンタルフロスパッケージングから調製した。(
図25C~25D)対応するPP油の炭素組成は、大部分が分岐鎖脂肪族アルコールであった。それ以外には、組成に類似性はほとんどなかった。
【
図26A-26C】OP4培地中の成長と比較して、OP5培地中の成長が、Yarrowia lipolyticaによる細胞内脂肪酸含有量を増加させたことを示す。
図26A:バイオマス。
図26B:脂肪酸力価。
図26C:脂肪酸含有量。
【
図27A-27B】OP5培地中の成長の間の脂肪酸産生動態を示す。
図27A:5日目の油脂形成相から貯蔵脂質転換相への遷移は、成長培地に由来する残留非代謝化合物であるヘキシルデカノールの蓄積の増加と一致していた。
図27B:Y.lipolyticaによって産生される優勢な脂肪酸は、オレイン酸である。回収産物中の脂肪酸の割合は、一般に、実験の過程にわたって安定であったが、5日目にその他の産物の増加が加速した。
【
図28A-28B】基質取り込みの分析を示す。
図28A:重量測定分析により、成長培地の同化を測定した。
図28B:120時間のY.lipolyticaの後に、OP5使用済培地で検出された炭素化合物の代謝。GC/MSによる分析。
【
図29】OP5培地構成要素の各々から調製された培地上での成長後のバイオマス及び脂肪酸力価の比較を示す。バイオマス力価は、大文字の文字が異なる場合に、有意差がある(p<0.05)。脂肪酸力価は、小文字の文字が異なる場合に、有意差がある(p<0.05)。
【
図30】Y.lipolytica成長及び脂肪酸産生に対するC/N比の影響を示す。バイオマスは、20及び40のC/N比で最も大きかった(縦棒は、星印が付けられており、同じ数の星印は、互いに有意差がない、p<0.05)。細胞内脂肪酸含有量は、80のC/N比で最も高かった(同じ文字を有する棒グラフは、有意差がない、p<0.05)。脂肪酸力価に対するC/N比の有意な影響はなかった。
【
図31】Y.lipolytica成長及び脂肪酸産生に対する浸透圧の影響を示す。細胞成長は、NaClによって阻害された(同じ文字を有する棒グラフは、有意差がない、p<0.05)。脂肪酸産生又は細胞内脂肪酸含有量に対するNaClの有意な影響はなかった。
【
図32A-32C】ポストコンシューマープラスチックが、脂肪酸産生に悪影響を及ぼすことを示す。
図32A:OP5又はPCOP5培地のいずれかの上で成長した細胞についての成長、総回収産物及び脂肪酸蓄積。
図32B:OP5培地中で成長した細胞についての産物プロファイル。
図32C:PCOP5培地中で成長した細胞についての産物プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載される材料、化合物、組成物、物品、及び方法は、開示される主題の具体的な態様の以下の詳細な説明及びそこに含まれる実施例、並びに図面を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0019】
本発明の材料、化合物、組成物、物品、及び方法を開示し、記載する前に、以下に記載される態様が特定の合成方法又は特定の試薬に限定されず、当然ながら変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語が、単に特定の態様を記載する目的のためであり、特定の用語が本明細書で具体的に定義されない限り、限定することが意図されないことも理解されたい。
【0020】
また、本明細書全体を通して様々な刊行物が参照される。開示される主題が属する技術分野の状態をより完全に説明するために、それらの刊行物の開示は、本明細書において、それらの全体が参照により本出願に組み込まれる。開示される参考文献はまた、参考文献による文章で考察され、それらに含まれる材料について、個別にかつ具体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
定義
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という用語、及びこの用語の他の形態、例えば、「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、含むがそれらに限定されないことを意味し、例えば、他の添加剤、構成要素、整数、又はステップを除外することを意図していない。
【0022】
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」といった単数形は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば、「組成物(a composition)」との言及は、2つ以上のかかる組成物の混合物を含み、「生物(an organism)」との言及は、かかる生物のうちの2つ以上を含み、「プラスチック材料(the plastic material)」との言及は、2つ以上のかかるプラスチック材料の混合物を含む等である。
【0023】
「遺伝子」という用語は、生物学的機能と関連する核酸の任意のセグメントを指すために広く使用される。遺伝子には、それらの発現に必要なコード配列及び/又は調節配列が含まれる。例えば、遺伝子は、その調節配列を含め、mRNA、機能性RNA、又は特定のタンパク質を発現する核酸断片を指す。遺伝子は、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する非発現DNAセグメントも含む。
【0024】
遺伝子は、目的の供給源からクローニングすること、又は既知若しくは予測された配列情報から合成することを含む、種々の供給源から得ることができ、所望のパラメータを有するように設計された配列を含み得る。加えて、「遺伝子」又は「組換え遺伝子」は、オープンリーディングフレームを含み、少なくとも1つのエクソン及び(任意選択的に)イントロン配列を含む、核酸分子を指す。「イントロン」という用語は、タンパク質に翻訳されず、一般にエクソン間に見出される所与の遺伝子中に存在するDNA配列を指す。
【0025】
「天然に存在する」、「ネイティブ」又は「野生型」は、人工的に生成されるものとは異なるものとして天然で見出され得る物体を説明するために使用される。例えば、天然の供給源から単離することができ、実験室で意図的に修飾されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するヌクレオチド配列は、天然に存在するものである。更に、「野生型」は、正常な遺伝子、又は任意の既知の変異を有しない天然に見出される生物を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「組換え核酸」、例えば、「組換えDNA配列又はセグメント」という用語は、任意の適切な細胞源から誘導若しくは単離されており、その後インビトロで化学的に変化してもよく、その結果、その配列が、天然に存在しないか、又は外因性DNAで形質転換されていないゲノム中に配置されるように配置されていない天然に存在する配列に対応する、核酸、例えば、DNAを指す。供給源に「由来する」予め選択されたDNAの一例は、所与の生物内で有用な断片として特定され、次いで、本質的に純粋な形態で化学的に合成される、DNA配列であろう。供給源から「単離された」かかるDNAの一例は、化学的手段によって、例えば、制限エンドヌクレアーゼの使用によって、上述の供給源から切り離されるか、又は除去され、その結果、遺伝子工学の方法論によって、本発明で使用するために更に操作(例えば、増幅)され得る、有用なDNA配列であろう。
【0027】
「非生分解性」という用語は、広義には、プラスチックシート、チューブ、ロッド、プロファイル、形状、大規模ブロック等の少なくとも1つのプラスチック材料から作製され、測定される場合に変化し得るいくつかの特性の消失を引き起こす一般的な環境条件下で、天然に存在する微生物の作用からその化学構造の顕著な変化を受けない少なくとも1つのポリマーを含有する、「非生分解性ポリマープラスチック」又は「非生分解性ポリマー含有材料」を指すために使用される。ASTM小委員会D20.96は、生分解性プラスチックの領域における標準を開発した。プラスチックは、可塑剤、鉱物又は有機充填剤、酸化防止剤、スリップ剤、及び熱安定化剤等の他の基質又は添加剤を更に含有し得る。より好ましくは、非生分解性ポリマープラスチックは、パッケージング等の製造品、カーペット等の繊維材料、農業用フィルム、使い捨て品等である。これを、有機廃棄物又は化学構成要素(石鹸、界面活性剤等)等の他の廃棄物と混合することができる。非生分解性プラスチックポリマー材料は、よく知られており、ポリマーリサイクルの分野で使用されている。本明細書は、カーペット繊維を作製するために使用されるもの等の好適な非生分解性ポリマー材料のリストを列挙している。本明細書で開示される方法において、非生分解性ポリマープラスチック材料を解重合及び/又は分散させ、生体利用可能なポリマー混合物を形成することができる。
【0028】
組成物及び方法
ポリマー材料を処理する組成物及び方法が、本明細書で開示される。特定の実施形態において、ポリマー材料に由来するポストコンシューマー廃棄物からの汚染を低減する方法が開示される。本方法は、ポリマー材料を解重合させることと、任意選択的に、解重合ポリマー材料を生物変換することと、を含んでいてもよく、その産物を、他の生物変換プロセスのための原料として使用して、生化学物質及び他の付加価値のある生物学的産物を作製することができる。ポリマー材料は、プラスチック材料であり得る。本明細書で使用される「プラスチック」及び「プラスチック材料」という用語は、成型可能であり、押出成形可能であり、その使用又は適用に応じて無限の種々の形状及び形態を想定可能な任意の有機ポリマーを指す。いくつかの例において、プラスチック材料は、炭化水素に由来する合成ポリマーである。更なる例において、プラスチック材料は、生分解に抵抗性であり、その立体的に嵩高い構造、疎水性、及び高分子量に起因して、効率的な微生物異化を受けることができない。いくつかの場合において、プラスチック材料は、熱可塑性ポリマー(熱にさらされると軟化し、室温まで冷却されると元の状態に戻るポリマー)から本質的になる。しかしながら、他の場合において、プラスチック材料は、性能及び寿命を改善するための様々な添加剤と混合された熱可塑性ポリマー樹脂を含む。これらの添加剤としては、材料を強化する炭素及びシリカ等の無機充填剤、材料を柔軟にする可塑剤、熱安定化剤及び紫外線安定化剤、難燃剤、並びに着色剤が挙げられる。他の一般的な添加剤としては、酸化防止剤(例えば、有機ホスフェート酸化防止剤)、スリップ剤(例えば、重金属系スリップ剤)、帯電防止構成要素、衝撃改質剤、着色剤、酸捕捉剤、X線蛍光剤、放射線不透明充填剤、表面改質剤、溶融安定化剤、清澄化剤を含む核化剤、難燃剤、有機充填剤、及び他のポリマー、強化剤、及び熱安定化剤が挙げられる。
【0029】
本明細書に開示される方法に有用なポリマー材料は、天然又は合成のホモポリマー又はコポリマーを含み得る。ホモポリマー又はコポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、又は架橋されていてもよい。いくつかの例において、ポリマー材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、レーヨン、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ABSコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル、ポリペプチド、タンパク質、セルロース、ウール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの例において、ポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ナイロン(ポリアミド)酢酸セルロース、ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、これらのコポリマー、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0030】
いくつかの例において、ポリマー材料は、ナイロンを含む。ナイロンは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン77、ナイロン91、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/66/610、又はこれらの組み合わせに由来し得る。
【0031】
いくつかの例において、ポリマー材料は、ポリエステルを含む。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ポリブチレンテレフタレート繊維(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT)等のポリアルキレンテレフタレートに由来し得るか、又は他の芳香族ポリエステルに由来し得る。
【0032】
いくつかの例において、ポリマー材料は、高及び/又は密度ポリアルキレン含有プラスチック材料を含み得るポリアルキレンを含む。ポリアルキレンは、一般構造CnH2n+2を有してもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの例において、ポリマー材料は、ポリプロピレンを含む。ポリマー材料は、50重量%以上のポリプロピレン、例えば、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、又は最大100重量%のポリプロピレンを含み得る。ポリマー材料は、50重量%から最大100重量%のポリプロピレン、例えば、60重量%~100重量%、75重量%~100重量%、50重量%~98重量%、60重量%~98重量%、75重量%~95重量%、又は60重量%から最大90重量%のポリプロピレンを含み得る。
【0033】
いくつかの例において、ポリマー材料は、スチレン、α-メチルスチレン、o-クロロスチレン、又はビニルトルエンを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、スチレンを含み得る。スチレンは、ポリマー材料の重量に基づいて、5重量%以上の量であり得る。例えば、スチレンは、ポリマー材料の重量に基づいて、7重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、又は70重量%以上の量であり得る。いくつかの実施形態において、スチレンは、ポリマー材料の重量に基づいて、100重量%以下、95重量%以下、85重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下の量であり得る。いくつかの実施形態において、スチレンは、ポリマー材料の重量に基づいて、50重量%から最大100重量%、例えば、60重量%~100重量%、75重量%~100重量%、50重量%~98重量%、60重量%~98重量%、75重量%~95重量%、又は60重量%から最大90重量%の量であり得る。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、ポリスチレンを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、ポリスチレンから本質的になる。
【0034】
いくつかの例において、ポリマー材料は、ポリウレタンを含む。ポリウレタンは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上に由来し得る。例えば、ポリウレタンは、芳香族イソシアネート、例えば、トルエンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、ナフタレン1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’異性体との混合物、水素化キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニル-ジメチルメタンジイソシアネート、ジ-及びテトラアルキル-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、又はこれらの組み合わせに由来し得る。他の例において、ポリウレタンは、脂環式ジイソシアネート、例えば、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアナト-シクロヘキサン、m-若しくはp-テトラメチルキシレンジイソシアネート、ダイマー脂肪酸ジイソシアネート、又はこれらの組み合わせに由来し得る。更なる例において、ポリウレタンは、脂肪族ジイソシアネート、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメトキシブタン1,4-ジイソシアネート、ブタン 1,4-ジイソシアネート、ヘキサン1,6-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、リジンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、又はこれらの組み合わせに由来し得る。ポリマー材料は、50重量%以上のポリウレタン、例えば、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、又は最大100重量%のポリウレタンを含み得る。ポリマー材料は、50重量%から最大100重量%のポリプロピレン、例えば、60重量%~100重量%、75重量%~100重量%、50重量%~98重量%、60重量%~98重量%、75重量%~95重量%、又は60重量%から最大90重量%のポリウレタンを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、アミノ酸、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、アミン、ジアミン、及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーに由来するホモポリマー又はコポリマーを含み得る。例えば、ホモポリマー又はコポリマーは、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、アミノウンデカン酸、アミノラウリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、カプロラクタム、ラウロラクタム、6-アミノヘキサン酸、ヘキサメチレンアミン、及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーに由来し得る。
【0035】
ポリマー材料中に存在するポリマー(ホモポリマー又はコポリマーを含む)は、5,000Da以上(例えば、7,000Da以上、8,000Da以上、10,000Da以上、12,000Da以上、13,000Da以上、14,000Da以上、15,000Da以上、17,000Da以上、20,000Da以上、25,000Da以上、35,000Da以上、50,000Da以上、75,000Da以上、100,000Da以上、150,000Da以上、200,000Da以上、又は250,000Da以上)の重量平均分子量を有し得る。いくつかの場合において、ポリマー材料中に存在するポリマー(ホモポリマー又はコポリマーを含む)は、250,000Da以下(例えば、200,000Da以下、150,000Da以下、100,000Da以下、75,000Da以下、50,000Da以下、40,000Da以下、35,000Da以下、30,000Da以下、25,000Da以下、20,000Da以下、18,000Da以下、16,000Da以下、15,000Da以下、14,000Da以下、12,000Da以下、10,000Da以下、9,000Da以下、8,000Da以下、7,000Da以下、6,000Da以下、又は5,000Da以下)の重量平均分子量を有し得る。いくつかの場合において、ポリマー材料中に存在するポリマー(ホモポリマー又はコポリマーを含む)は、5,000Da~250,000Da、5,000Da~100,000Da、5,000Da~50,000Da、5,000Da~25,000Da、10,000Da~200,000Da、10,000Da~100,000Da、10,000Da~50,000Da、又は10,000Da~25,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、熱可塑性物品を含む、プラスチック物品であり得る。したがって、本開示のいくつかの態様において、プラスチック汚染を低減する方法、特に、環境に入り込むポストコンシューマー廃棄プラスチックの量を低減する方法が開示される。いくつかの例において、プラスチック物品は、繊維材料を含み得る。例えば、プラスチック物品は、酢酸セルロースの天然若しくは合成有機繊維、ポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリアルキレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、若しくはポリヘキサメチレンアジパミド等の合成ポリアミド、又はこれらの組み合わせを含み得る。本明細書に記載の方法を使用して処理することができるプラスチック物品の他の好適な例としては、プラスチックフィルム、発泡体、キャスト若しくは非キャストプラスチック包装材料、プラスチック容器、包装材料、クレジットカード、電子部品、建築材料、データ記憶デバイス、自動車及び航空機部品、床敷物、接着剤、コーティング、絶縁発泡体、玩具、家電製品、電話機、機械ねじ、歯車、動力工具ケーシング、衣料品及び布地、カーペット繊維、産業用廃棄プラスチック、並びにパイプが挙げられる。いくつかの例において、ポリマー材料は、廃棄カーペット材料であり得る。
【0037】
ポリマー材料を処理するための溶媒は、本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、溶媒は、ポリマー材料を解重合させ、溶解し、及び/又は分散させることができる。「分散させる」及び「分散させること」とは、本明細書で使用される場合、液体連続相全体へのポリマー材料の1つ以上の粒子相、固体粒子、又は液滴の分布を指す。本明細書で使用される「解重合させる」及び「解重合させること」は、ポリマーを、モノマー単位、オリゴマー単位、ポリマー単位へと分解すること、及び/又はポリマーの完全な分解を指す。解重合は、加水分解、鎖切断、又は酸化等の当該技術分野において既知の任意の好適なプロセスによって行うことができる。ポリマー材料を処理するための好適な溶媒としては、酸、塩基、油、非極性有機溶媒、酸化溶媒、乳化溶媒、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの例において、溶媒は、150℃以下の沸点を有する酸を含み得る。例えば、溶媒は、塩酸等の無機酸、ギ酸、酢酸等の短鎖有機酸、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの例において、溶媒は、塩基を含み得る。例えば、溶媒は、水性混合物が10以上のpHを有するように、酸化ナトリウム等の塩基を含む水性混合物であり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、触媒を含み得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、過マンガン酸カリウム等の酸化剤を含み得る。
【0038】
いくつかの例において、溶媒は、油であり得る。「油」は、本明細書で使用される場合、脂肪、脂肪族基質、ワックス、ワックス様基質、及びこれらの混合物を含み得る。好適な脂肪及び脂肪族基質としては、脂肪族アルコール(例えば、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、セチル、又はセトステアリルアルコール)、脂肪酸及び誘導体(限定されないが、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド(モノ-、ジ-、及びトリ-グリセリド)を含む、並びに水素化脂肪を挙げることができる。好適なワックス及びワックス様材料としては、天然又は合成ワックス、炭化水素、及び通常のワックスが挙げられる。本明細書で使用される場合、ワックス様材料は、通常は室温で固体であり、約30~300℃の融点を有する任意の材料であると定義される。ポリマー材料を処理するために使用することができる油の具体例としては、パラフィン油、オリーブ油、ポリイソブテン油、水素化ポリイソブテン油、ポリデセン油、ポリイソプレン油、ポリイソプロペン油、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、カプリン酸、ラウリン酸、ネオデカン酸、ピーナッツ油、トウモロコシ油、及びゴマ油等の植物油、水素化綿実油、水素化ヒマシ油、商品名Sterotex(登録商標)で入手可能な水素化油、ステアリン酸、ココアバター、ステアリルアルコール、蜜蝋、グリコワックス、カスターワックス、カルナウバワックス、パラフィン、キャンデリラワックス、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、油は、テルペンを含み得る。テルペンは、いくつかの実施形態において、ポリマー材料の分散特性を増加させることができる。好適なテルペンとしては、モノテルペンを挙げることができる。いくつかの例において、テルペンは、植物由来の精油に由来し得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、界面活性剤を、本明細書に開示されるポリマー材料を処理する方法で使用することができる。界面活性剤を、ポリマー材料及び/又は解重合残分と組み合わせることができる。界面活性剤は、いくつかの実施形態において、表面張力を低下させ、それによってポリマー材料の乳化、発泡、分散、拡散、及び湿潤特性を増加させることができる。好適な界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤であり得る。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、生分解性である。本明細書で使用される「生分解性」という用語は、培養培地中に通常存在する条件下で分解が行われる材料又は基質を指す。生分解性界面活性剤は、天然に一般的に見出される環境条件にさらされると、物理的溶解及び/又は化学分解を受け得るか、及び/又は微生物によって破壊され得るか、又は比較的短時間に(2~15ヶ月以内に)自然に破壊され得る。
【0040】
好適なアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、及び硫酸イオンを含有するものが挙げられる。アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホネート及びアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、及びアルキルサルフェートが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、限定されないが、四級アンモニウム化合物、例えば、ポリオキシエチレン及びココナツアミンが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル-4-オレエート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、PEG-150ラウレート、PEG-400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、例えば、TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート20)及びTWEEN(登録商標)80(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、乳化ワックス、グリセリルモノオレエート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、ポリオキシエチレン水素化タローアミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N-ドデシルベータ-アラニンナトリウム、N-ラウリルベータ-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート(myristoamphoacetate)、ラウリルベタイン及びラウリルスルホベタインが挙げられる。いくつかの実施形態において、本方法は、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を両方とも利用する。いくつかの例において、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、オクチル硫酸ナトリウム(SOS)、ビス(2-エチルチオキシル)-スルホコハク酸ナトリウム、TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート20)及びTWEEN(登録商標)80(ポリソルベート80)等のTWEEN(登録商標)、C8~C22及び他の脂肪酸等の脂肪酸、C8~C22脂肪族アルコール、ポリオール、並びにこれらの組み合わせから選択され、これらを使用することができる。いくつかの実施形態において、合成非イオン性生分解性界面活性剤を、本明細書に開示されるポリマー材料を処理する方法で使用する。合成非イオン性生分解性界面活性剤の例としては、TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート20)及びTWEEN(登録商標)80(ポリソルベート80)等のポリソルベート界面活性剤が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、界面活性剤(特に、ラムノリピッド等の糖脂質)は、本明細書に開示されるポリマー材料を処理する方法では使用されない。
【0042】
培養培地
本明細書に記載されるように、ポストコンシューマー廃棄物からのプラスチック汚染を低減する方法が開示される。プラスチック汚染を低減するいくつかの態様において、本方法は、プラスチック廃棄物の経済的価値に帰すること、すなわち、それを価値化することを含むため、廃棄物は、容易に廃棄されなくなる。特に、プラスチック廃棄物を、生物変換プロセスのための原料として使用して、生化学物質及び他の付加価値のある生物学的産物を作製することができる。いくつかの実施形態において、ポリマー材料、好ましくはプラスチック廃棄材料を使用して、培養培地を調製することができる。培養培地は、本明細書に記載のポリマー材料に由来する1つ以上の炭素源を含有し得る。いくつかの実施形態において、培養培地は、1つ以上の炭素源を含有していてもよく、1つ以上の炭素源の少なくとも1つは、廃棄カーペット材料等のプラスチック材料に由来し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、1つ以上の炭素源は、ポリマー材料から得られる解重合残分を(炭素源として)含み得る。いくつかの例において、解重合残分は、ポリアルキレンポリマー材料、ポリスチレンポリマー材料、ポリウレタンポリマー材料、又はポリエステルポリマー材料に由来し得る。解重合残分は、ポリマー材料に由来する、ポリマー、モノマー、オリゴマー、又はこれらの組み合わせを含み得る。例えば、(炭素源としての)解重合残分としては、アミノ酸、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、ラクタム、アミン、ジアミン、ポリアミン、アルケン、アルカン、ポリアルキレン、ケトン、アルコール、アルデヒド、それらのオリゴマー若しくはポリマー、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。(炭素源としての)解重合残分の具体例としては、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、アミノウンデカン酸、アミノラウリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、カプロラクタム、ラウロラクタム、6-アミノヘキサン酸、ヘキサメチレンアミン、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、培養培地は、ポリアルキレンの熱分解に由来する解重合残分を(炭素源として)含み得る。ポリアルキレン(例えばポリプロピレン)の熱分解は、他の構成成分の中でも特に、アルケン、アルコール、アルカン、アルキン、アルデヒド、ケトンから選択される1つ以上の解重合残分を含み得る。特に、ポリアルキレンの熱分解により、主要構成要素として分岐鎖アルケン及び分岐鎖アルコールの混合物を得ることができる。いくつかの例において、解重合残分は、分岐鎖脂肪族アルコール、分岐鎖アルケン、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。培養培地は、分岐鎖C6~36アルコール、分岐鎖C6~36アルケン、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される解重合残分を含み得る。存在し得る分岐鎖アルケンとしては、2,4-ジメチルヘプタ-1-エン、2,4,6,8-テトラメチル-1-ウンデセン、1,4-ジメチル-デセン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。存在し得る分岐鎖脂肪族アルコールとしては、2-ヘキシル-1-デカノール、2-メチル-1-デカノール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
1つ以上の分岐鎖脂肪族アルコールは、解重合残分の総重量に基づいて、30重量%以上(例えば、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の分岐鎖脂肪族アルコールは、解重合残分の総重量に基づいて、30重量%から最大90重量%(例えば、30重量%~75重量%、40重量%~75重量%、40重量%~60重量%、45重量%~75重量%、又は45重量%~60重量%)の量で存在し得る。1つ以上の分岐鎖脂肪族アルコールは、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、2重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の分岐鎖脂肪族アルコールは、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%超から最大90重量%(例えば、5重量%~75重量%、10重量%~75重量%、10重量%~60重量%、15重量%~75重量%、又は15重量%~60重量%)の量で存在し得る。
【0046】
1つ以上の分岐鎖脂肪族アルケンは、解重合残分の総重量に基づいて、10重量%以上(例えば、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、又は35重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の分岐鎖アルケンは、解重合残分の総重量に基づいて、10重量%から最大50重量%(例えば、10重量%~45重量%、15重量%~45重量%、15重量%~35重量%、20重量%~45重量%、又は20重量%~35重量%)の量で存在し得る。1つ以上の分岐鎖脂肪族アルケンは、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、2重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の分岐鎖脂肪族アルケンは、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%超から最大90重量%(例えば、5重量%~75重量%、10重量%~75重量%、10重量%~60重量%、15重量%~75重量%、又は15重量%~60重量%)の量で存在し得る。
【0047】
分岐鎖脂肪族アルコール及び分岐鎖アルケンの両方は、解重合残分の総重量に基づいて、50重量%以上(例えば、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、又は90重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、分岐鎖脂肪族アルコール及び分岐鎖アルケンは、解重合残分の総重量に基づいて、50重量%から最大95重量%(例えば、50重量%~90重量%、50重量%~85重量%、50重量%~80重量%、60重量%~95重量%、60重量%~85重量%、65重量%~95重量%、又は65重量%~80重量%)の量で存在し得る。分岐鎖脂肪族アルコール及び分岐鎖アルケンは、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、2重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、分岐鎖脂肪族アルコール及び分岐鎖アルケンは、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%超から最大90重量%(例えば、5重量%~75重量%、10重量%~75重量%、10重量%~60重量%、15重量%~75重量%、又は15重量%~60重量%)の量で存在し得る。
【0048】
解重合残分(例えば、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリスチレン、又はポリウレタンに由来するもの)は、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%以上(例えば、2重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上)の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、解重合残分(例えば、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリスチレン、又はポリウレタンに由来するもの)は、培養培地中の炭素源の総重量に基づいて、0重量%超から最大100重量%(例えば、5重量%~95重量%、25重量%~95重量%、50重量%~95重量%、5重量%~75重量%、10重量%~75重量%、10重量%~60重量%、15重量%~75重量%、又は15重量%~60重量%)の量で存在し得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、培養培地は、1:10~10:1、1:5~10:1、1:1~10:1、2:1~10:1、又は2:1~4:1の炭素窒素比率を含む。
【0050】
培養培地は、好適な補助剤も含有し得る。補助剤は、水、アセテート、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトース、リボース、スーパーオプティマルブロス(SOB)培地、カタボライト抑制スーパーオプティマルブロス(SOC)培地、ニュートリエントブロス、ニュートリエント寒天、最小培地、Luria-Bertani培地、胞子形成ブロス、酵母抽出物、ペプトン、及びこれらの組み合わせ、又はこれらの改変から選択され得る。培養培地中に存在する補助剤のうちの1つ以上は、追加の炭素源を提供し得る。例えば、界面活性剤、酵母抽出物、又はグルコースは、培養培地中の追加の炭素源として機能し得る。いくつかの実施形態において、培養培地は、ポリマー材料に由来する炭素源と、水、M9等の最小塩培地、及びこれらの組み合わせから選択される補助剤と、を含み得る。
【0051】
いくつかの例において、培養培地は、酸性、中性、又は塩基性のpHを有し得る。例えば、培養培地は、8以上、例えば、8~12、8~11、8~10、8.5~11、8.5~10、又は8.5~9.5のpHを有し得る。他の例において、培養培地は、酸性から中性のpHを有し得る。例えば、解重合残分を水と混合し、そのpHを調整して、10未満のpHを有する混合物を形成し、その後、混合物と、窒素源を含む補助剤とをブレンドして、7以下の酸性から中性のpHを有する培養培地を形成することができる。これらの実施形態において、培養培地は、7以下、例えば、5.5~7、6~7、又は6.2~6.8のpHを有し得る。いくつかの例において、培養培地は、6.8~10、6.8~9.5、又は6.8~8のpHを有し得る。
【0052】
方法
本明細書に記載のポリマー材料を処理する方法が開示される。本明細書に記載されるように、ポリマー材料を使用して、培養培地を形成することができる。したがって、本明細書に記載のポリマー材料から培養培地を調製する方法が開示される。
【0053】
本明細書に記載されるように、ポリマー材料は、ポストコンシューマー廃棄物に由来し得る。ポリマー材料は、フレーク、チップ、ペレット等の形態等の好適な形態で提供され得る。培養培地は、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して調製され得る。いくつかの実施形態において、培養培地を調製する方法は、(a)ポリマー材料を解重合及び/又は分散させて、解重合残分及び/又は分散残分を得ることと、(b)解重合残分及び/又は分散残分と1つ以上の補助剤とを組み合わせて培養培地を形成することと、を含み得る。特定の実施形態において、ステップ(a)で得られる残分は、解重合残分を含む。特定の実施形態において、ステップ(a)で得られる残分は、分散残分を含む。特定の実施形態において、ステップ(a)で得られる残分は、解重合残分及び分散残分を含む。いくつかの例において、本方法は、(a)ポリマー材料を解重合及び/又は分散させて、解重合残分及び/又は分散残分を得るステップの前に、ポリマー材料を溶融させるステップを含み得る。例えば、ナイロン66を含有するポリマー材料を、ナイロンポリマーを解重合及び/又は分散させる前に、ナイロン66の融点である260℃まで加熱してもよい。
【0054】
解重合することは、ポリマー材料を熱分解して、解重合残分を得ることを含み得る。本明細書で使用される「熱分解させる」及び「熱分解」という用語は、当該技術分野における従来の意味を与えられ、触媒の使用の有無にかかわらず行われ得る、熱単独による、化合物(例えば、ポリマー材料)を、1つ以上の他の熱力学的に安定な基質、例えば、揮発性有機化合物、気体、及びコークスに変換することを指すために使用される。ポリマー材料が熱分解する温度は、本方法で使用される具体的なポリマー材料に基づいて変動する。例えば、ポリプロピレンを、350℃以上、例えば400℃~600℃、又は400℃~500℃の温度まで加熱することにより、熱分解させることができる。一般に、本方法は、350℃以上(例えば、375℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、700℃以下、650℃以下、600℃以下、550℃以下、350℃~700℃、350℃~650℃、又は400℃~600℃)の温度で材料の無希釈物又は異種混合物を熱分解することによって、ポリマー材料(例えば、ポリアルキレン含有プラスチック材料)を解重合させ、解重合残分を得ることを含み得る。本明細書で使用される「無希釈物」という用語は、溶媒が反応混合物に存在しないか、又は反応混合物から除外された状態を指す。代替的に、「無希釈物」という用語は、反応の溶媒が反応剤の1つである反応条件も指し得る。「異種」混合物は、不均一な組成を有する混合物を指す。特に、「異種」混合物は、反応混合物中に存在する溶媒を含み得る。
【0055】
他の実施形態において、解重合することは、ポリマー材料をアルカリ性の水性混合物中で加熱して、解重合残分を得ることを含み得る。アルカリ性の水性混合物は、10以上、例えば、10~14、10~13、10~12、11~13、11~12、又は12~13のpHを有し得る。水性混合物は、アルコール(例えば、エタノール)、DMSO、又はこれらの組み合わせ等の乳化有機溶媒を更に含み得る。ポリマー材料がアルカリ性の水性混合物中で解重合する温度は、本方法で使用される特定のポリマー材料に基づいて変動する。例えば、ポリエステルを、300℃以上、例えば300℃~500℃、又は320℃~400℃の温度まで加熱することにより、解重合させることができる。一般に、本方法は、300℃以上(例えば、325℃以上、350℃以上、375℃以上、400℃以上、425℃以上、450℃以上、475℃以上、500℃以上、550℃以下、525℃以下、500℃以下、300℃~550℃、350℃~550℃、又は320℃~500℃)の温度で水性混合物中で加熱することにより、ポリエステル又はポリウレタン含有プラスチック材料等のポリマー材料を解重合させて、解重合残分を得ることを含み得る。
【0056】
更なる実施形態において、ポリマー材料を解重合することは、ポリマー材料と乳化剤及び/又は酸化剤とを接触させて混合物を形成することを含み得る。例えば、ポリスチレンを化学的に解重合させ、次いで、それを乳化する化合物を使用して可溶化させ得る。いくつかの実施形態において、本方法は、スチレンオキシドとアセトンの混合物中でポリスチレンを解重合させることを含み得る。代替的に、過マンガン酸カリウム等の酸化剤を使用して、ポリスチレンを解重合させ、それによって、スチレンオキシド及び/又はスチレンオキシド様分子を形成することができる。
【0057】
他の実施形態において、ポリマー材料を解重合及び/又は分散させることは、ポリマー材料を溶媒と接触させて混合物を形成することを含み得る。溶媒は、有機酸、150℃以下の沸点を有する有機酸、無機酸、塩基、非極性有機溶媒、油、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリマー材料を解重合及び/又は分散させることは、ポリマー材料及び溶媒を含有する混合物を加熱することを更に含み得る。いくつかの例において、混合物を、溶媒の沸点まで加熱することができる。例えば、混合物を、50℃以上(例えば、75℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、300℃以上、300℃以下、250℃以下、200℃以下、150℃以下、50℃~300℃、50℃~250℃、又は50℃~200℃)まで加熱することができる。
【0058】
解重合及び/又は分散中に使用される溶媒の量は、当業者によって決定され得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、ポリマー材料と溶媒との最適なブレンド及び/又は分散を容易にするような量であり得る。いくつかの例において、溶媒とポリマー材料との体積比は、10:1以上であり得る。例えば、溶媒とポリマー材料との体積比は、10:1~1000:1、例えば、10:1~100:1、又は50:1~100:1であり得る。
【0059】
解重合残分及び/又は分散残分を含む混合物を、補助剤と組み合わせる前に更に処理し得る。いくつかの実施形態において、解重合残分及び/又は分散残分を、補助剤と組み合わせる前に処理(例えば、精製)し得る。解重合残分及び/又は分散残分を処理することは、残分から不溶性ポリマー粒子を分離すること(例えば、遠心分離することによって)、固体解重合残分から可溶性構成要素を分離すること、残分を含む混合物を中和すること、残分を洗浄すること、残分から1つ以上の溶媒を除去すること、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの例において、解重合残分及び/又は分散残分を、遠心分離処理、濾過、中和、蒸発、蒸留(真空蒸留を含む)、すすぎ、及びこれらの組み合わせによって処理し得る。
【0060】
解重合残分及び/又は分散残分を本明細書に記載の1つ以上の補助剤と組み合わせて、培養培地を形成することができる。例えば、解重合残分及び/又は分散残分を、水又は最小培地と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、解重合残分及び/又は分散残分と補助剤とを含む混合物のpHを調整することができる。一般に、pHは、例えば、水酸化ナトリウム又は塩酸を使用して、6.7以上、6.7~10、6.8~10、又は6.2~6.8等の酸性、中性、又は塩基性のpHに調整することができる。
【0061】
いくつかの例において、ポリマー材料から培養培地を作製する方法は、(a)ポリマー材料を溶媒と共に加熱して、ポリマー材料を解重合及び/又は分散させ、混合物を形成することと、(b)混合物を処理して樹脂を形成することと、(c)樹脂と1つ以上の補助剤とを組み合わせて、培養培地を形成することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)ポリマー材料を溶媒と共に加熱するステップの前に、ポリマー材料を溶融させることを更に含み得る。
【0062】
他の例において、ポリマー材料から培養培地を作製する方法は、(a)ポリマー材料を熱分解し、解重合残分を形成することと、(b)解重合残分と1つ以上の補助剤とを組み合わせて、培養培地を形成することと、を含み得る。
【0063】
本明細書に開示される培養培地を、微生物を培養するために使用することができる。いくつかの実施形態において、微生物は、細菌、藻類、又は真菌を含み得る。いくつかの例において、微生物は、土壌生息微生物であり得る。いくつかの実施形態において、微生物は、Bacillus属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Beijerinckia属、又はRhodococcus属の細菌であり得る。例えば、細菌は、Streptomyces coelicor、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Beijerinckia indica、Rhodococcus rhodochrous、及びこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態において、微生物は、Pichia属、Rhodotorula属、Candida属、Aspergillus属、Penicillium属、又はYarrowia属の真菌であり得る。例えば、真菌は、脂質を形成し貯蔵する酵母であり得る。菌類の具体例としては、Pichia pastoris、Rhodotorula glutinis、Candida maltosa、Debaryomyces hansenii、Candida famata、Aspergillus oryzae、Penicillium roqueforti、及びYarrowia lipolyticaが挙げられる。いくつかの実施形態において、微生物は、藻類であり得る。具体例としては、Chlorella属からの藻類を挙げることができる。いくつかの例において、生物は、Pseudomonas(例えば、Pseudomonas aeruginosa若しくはPseudomonas oleovorans)、Acinetobacter(例えば、Acinetobacter calcoaceticus)、又はBurkholderia cepaciaではない。
【0064】
また、培養培地を使用して、バイオポリマー、酵素、又は細胞代謝産物等のバイオ製品を産生することができる。いくつかの実施形態において、培養培地を使用して、バイオポリマーを産生することができる。バイオポリマーは、例えば、ポリエステル(例えば、ポリヒドロキシアルカノエート)又は多糖類を含む任意の所望のバイオポリマーであり得る。いくつかの例において、バイオポリマーは、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート)のコポリマー、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、又はヒドロキシ末端ポリヒドロキシブチレートのコポリマーであり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、培養培地を使用して、脂質又はペプチド等の細胞代謝産物を産生することができる。脂質は、例えば、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、安息香酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、又はこれらの組み合わせに由来する脂質を含む、使用される宿主細胞/酵素/遺伝子に応じて任意の所望の脂質であり得る。ペプチドは、例えば、ジペプチド及びトリペプチドを含む、使用される宿主細胞/酵素/遺伝子に応じて任意の所望のペプチドであり得る。
【0066】
バイオ製品を産生するための方法は、バイオ製品の生合成経路を発現する宿主細胞(生物)又は酵素を本明細書に開示される培養培地に導入することを含み得る。酵素又は宿主細胞(生物)が使用される実施形態において、酵素又は宿主細胞は、脂肪酸生合成経路を発現し、プラスチック材料からの残分(例えば、ポリアルキレン残分、ポリエステル若しくはポリウレタン残分、又はポリスチレン残分)の代謝を増強し、脂肪酸生合成経路を介してプラスチック由来化合物の流束を増加させ、培地からのプラスチック残分の取り込みを増加させるか、又はこれらの組み合わせであり得る。宿主細胞は、本明細書に開示される微生物のうちのいずれか1つであり得る。例えば、宿主細胞は、真菌、細菌、又は藻類から選択され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞又は酵素は、バイオ製品の生合成経路をコードする1つ以上の組換え配列を含有し得る。生物が使用される実施形態において、生物は、遺伝子を含んでいてもよく、遺伝子は、プラスチック残分の代謝を増強する酵素をコードするか、又は脂肪酸生合成経路を介してプラスチック由来化合物の流束を増加させるのに必須の酵素をコードする。生物が使用される更なる実施形態において、生物は、遺伝子を含んでいてもよく、遺伝子は、培地からのプラスチック残分の取り込みを増加させる輸送タンパク質をコードする。
【0067】
バイオ製品を産生するための方法は、宿主細胞を培養することによって宿主細胞中でバイオ製品を合成し、蓄積することを含み得る。宿主細胞を培養するための好適な条件は、当業者によって容易に特定することができる。例えば、好適な条件は、本明細書に記載の適切な炭素源を含有し、バイオ製品の生合成経路の遺伝子から必要な配列の発現(すなわち、遺伝子産物の産生)を得るのに十分な時間にわたって宿主細胞を成長させてバイオ製品を産生する適切な培地を含み得る。次いで、バイオ製品を宿主細胞から回収することができる。バイオ製品を回収することは、宿主細胞からバイオ製品を分離することを含んでいてもよく、例えば、バイオ製品が、宿主細胞内のその産生中又は後に宿主細胞の作用によって押し出されないか、又は分泌されない。
【0068】
いくつかの実施形態において、バイオポリマーを産生するための方法は、所望のバイオポリマーの生合成経路を発現する宿主細胞を培養培地に導入することと、宿主細胞を培養することによって宿主細胞中にバイオポリマーを蓄積させることと、宿主細胞によって産生されるバイオポリマーを回収することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、酵素を産生するための方法は、所望の酵素の生合成経路を発現する宿主細胞を培養培地に導入することと、宿主細胞を培養することによって宿主細胞中に酵素を蓄積させることと、宿主細胞によって産生される酵素を回収することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、細胞代謝産物を産生するための方法は、所望の代謝産物の生合成経路を発現する宿主細胞を培養培地に導入することと、宿主細胞を培養することによって宿主細胞中に細胞代謝産物を蓄積させることと、宿主細胞によって産生される細胞代謝産物を回収することと、を含み得る。
【0069】
ポリマー材料を生物変換して細胞代謝産物(例えば、脂質)を産生する方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、ポリマー材料(例えば、ポリアルキレン含有プラスチック材料)を熱分解して、解重合残分を得ることと、任意選択的に、解重合残分と、界面活性剤、窒素源、リン酸源、炭水化物源、鉱物源、又はこれらの組み合わせから選択される補助剤とを混合することと、脂肪酸生合成経路を発現する酵素又は脂肪酸生合成経路を発現する生物を培養培地に導入することと、酵素又は生物によって産生される少なくとも1つの脂肪酸を蓄積させることと、を含み得る。
【0070】
本明細書に記載されるように、プラスチック材料(例えば、ポストコンシューマー廃棄物)は、添加剤を含み得る。添加剤は、プラスチック材料を生物変換する際に課題を提示する場合がある。いくつかの実施形態において、ポリマー材料を生物変換して細胞代謝産物を産生するための方法は、ポリマー材料を解重合する前又は後に、ポリマー材料の添加剤内容物を特定し、分離し、及び/又は低減することを更に含み得る。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法がどのように作製され、評価されるかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示され、純粋に例示的であることが意図され、本開示の範囲を限定することは意図されない。別段の指示がない限り、部は、重量部であり、温度は、℃であるか、又は周囲温度であり、圧力は、大気圧又はその付近である。
【0072】
実施例:脂肪酸産生のためのYarrowia lipolyticaによる熱解重合されたポリプロピレンの微生物生物変換
世界中の国々が経済的に成長するにつれて、プラスチックの生産及び廃棄物の生成が増加し続ける。この実施例は、ポリプロピレン(PP)から付加価値のある脂肪酸(FA)を産生するための熱分解に基づく生物変換プロセスを詳細に説明する。PPペレットを熱分解によって解重合させ、主に分岐鎖脂肪族アルコール及びアルケンからなる油を生成した。この油を、生分解性界面活性剤及び微量栄養素と混合し、機械的に均質化した。得られた培地OP4を、Yarrowia lipolytica株78-003による発酵に使用した。Y.lipolyticaは、312時間にわたって、脂肪族アルコールの86%を含め、基質の80%より多くを同化した。Y.lipolyticaは、界面活性剤に基づく対照培地中での成長の間の216mg L-1と比較して、最大492mg L-1の脂質を産生した。オレイン酸、リノール酸、及びステアリン酸を含むC18化合物が主要な産物であり、続いてC16化合物であるパルミチン酸及びパルミトレイン酸であった。産物の2パーセントは、C20化合物であった。産物の大部分は、不飽和FAであった。疎水性基質(OP4培地、ヘキサデカン)上での成長を、親水性基質(グルコース、デンプン)上での成長と比較した。得られたFAプロファイルは、疎水性培地上での成長の間に短鎖脂肪酸が存在しないことを明らかにしており、このことは、エクスノボでのFA生合成と一致する所見であった。全体として、OP4培地中の成長の間のY.lipolyticaによるFAプロファイルは、天然基質上で成長している間のFAプロファイルと類似していた。ここで説明されるプロセスは、ポストコンシューマープラスチック廃棄物を管理するための代替的なアプローチを与える。
【0073】
緒言:プラスチック汚染は、範囲が拡大し続ける環境上の脅威である。2000年には1億8000万トンが生産され、そこから2015年には、世界中で3億2000万トンを超えるプラスチック製品が生産された。1950年以降の平均化合物年平均成長率(CAGR)は8.6%であり(Geyer et al.2017)、世界のプラスチック廃棄物生成と一人当たりの国民総所得との間の強い相関関係(Geyer et al.2017)と組み合わせると、プラスチック生産及び廃棄物生成は、世界中の開発途上国が経済的に成長し続けるにつれて、増加し続ける可能性が高い。心配なことは、歴史的な傾向が続くと、プラスチックのかなりの部分が環境に到達すると予測され得る。1950年以降に生成した推定63億トンのプラスチック廃棄物のうち、12%が焼却され、9%がリサイクルされ、およそ49億トンのプラスチックが埋め立て地及び海洋及び土壌生態系に蓄積されたまま残る(Geyer et al.2017)。
【0074】
プラスチック汚染に対する解決策の1つの側面は、環境に入り込むポストコンシューマープラスチックの量を低減することである。この目標を達成する際の重要な要素は、ポストコンシューマープラスチック廃棄物に経済的価値を与えること、すなわち、それを価値化することであるため、容易に廃棄されなくなる。標準的なプラスチックリサイクル技術は、一般に、初期の製品よりも低品質の材料が得られ、「ダウンサイクル(downcycling)」、又は価値の喪失が生じる(Mantia 2004)。対照的に、プラスチック廃棄物をリサイクルするための生物学的アプローチは、経済的に持続可能である可能性がある。プラスチック廃棄物を、生物変換プロセスのための原料として使用して、生化学物質及び他の付加価値のある生物学的産物を作製し、アップサイクルをもたらす可能性がある。このコンセプトの根拠としては、以下の2つの部分がある。第1に、いくつかの種類のポストコンシューマープラスチックを、不安定な分子の混合物へと解重合することができ(4)、第2に、微生物は、プラスチック由来培地上で成長させるにつれて、トリアシルグリセロール、有機酸、酵素、及び他の生物学的産物を合成することができる。このアプローチを使用して、プラスチック廃棄物のリサイクルと関連する費用を正当化する産物を作製することができる。
【0075】
ポリプロピレン(PP)は、世界のプラスチック市場シェアのほぼ25パーセントを占めている(Geyer et al.2017)が、今日までに、PPのための微生物生物変換プロセスは報告されていない。PPの微生物代謝の課題は、その高い分子量、疎水性及び酵素攻撃に抵抗する分子構造に起因する、その低い生体利用可能性である(Arutchelvi et al.2008、Jeyakumar et al.2013、Longo et al.2011)。PP由来オリゴマーを生成するための解重合前処理が、微生物生物変換に好適な成長培地の産生を補助し得ると仮定した。熱分解を使用して、PPを解重合させ、酸化し、次いで、生分解性界面活性剤を使用して、得られた生成物を、微生物成長に好適な水性培地中に分散させた。油脂形成性酵母Yarrowia lipolyticaを発育させるために、PP由来の成長培地を使用した。Y.lipolyticaは、多様な基質上で成長し、脂肪酸、有機酸、細胞外酵素及び他のタンパク質を含む多種多様な細胞内及び細胞外のタンパク質を産生する(Abghari and Chen 2014、Ageitos et al.2011、Aggelis 2002、Beopoulos et al.2008、Bialy et al.2011、Fickers et al.2005、Rakicka et al.2015、Xu et al.Xue et al.2013、Zhang et al.2014)。この実施例において、FAを産生させるために、PP由来培地中でY.lipolyticaを発育させた。
【0076】
方法
ポリプロピレン成長培地の調製:125mlのホウケイ酸平底フラスコ中、バージンアモルファスポリプロピレン(Mw=14,000)を3gバッチ中、540℃で190分間熱分解することによって、ポリプロピレン由来培地であるOP4培地を調製した。得られた熱分解油(15g L-1で)を、以下の追加の化合物と組み合わせた。5.4g L-1のTween-80(登録商標)、4.5g L-1のオレイン酸、1.25g L-1の(NH4)2SO4、2.5g L-1のKH2PO4、及び0.830g L-1のMgSO47H2O。この混合物を、携帯用食品グレードホモジナイザーで乳化させ、121℃、15psiで70分間オートクレーブ処理した。
【0077】
化学物質及び試薬:バージンポリプロピレンペレット及びオレイン酸を、Sigma Aldrich(Millipore Sigma,USA)から購入した。Tween80(登録商標)、クロロホルム、メタノール、シクロヘキサン、ヘキサン、及び使用される全ての培養化合物は、研究グレードのものであり、Fisher Chemicals(Fisher Scientific,USA)から購入した。
【0078】
培養及び成長条件:Yarrowia lipolytica株78-003(ATCC株46483)が、この実施例で使用された唯一の株であった。Y.lipolyticaのグリセロール凍結させたストックを調製し(1ml、OD600=20)、-80℃で保管した。全ての実験について、凍結アリコートを解凍し、50mlの5%グルコース培地(50g L-1のグルコース及び3g L-1の酵母抽出物からなる)を含有する250mlのエレンマイヤーフラスコに添加した。各接種したフラスコを、200rpmで振とうしつつ、30℃で一晩インキュベートした。インキュベートした後、1mlの試料を抜き取り、10,000rpmで2分間遠心分離処理し、ペレットを50mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で2回洗浄した。Y.lipolyticaを、50mlのOP4培地を含有する500mlのエレンマイヤーフラスコを使用して培養した。このフラスコに、0.3(OD600ml-1)の接種密度で一晩培養したものを接種し、200rpmで振とうしつつ30℃でインキュベートした。
【0079】
OP4のいくつかのバージョンを調製して、脂質及びバイオマス収量に対する培地構成要素の影響を評価した。「窒素及び微量鉱物のみ」培地は、1.25g L-1の(NH4)2SO4、1.25g L-1の酵母抽出物、2.5g L-1のKH2PO4、及び0.830g L-1のMgSO47H2Oからなっていた。「界面活性剤のみ」培地は、微量鉱物又は窒素を含まず、5.4g L-1のTween-80(登録商標)及び4.5g L-1のオレイン酸で構成されていた。「PPのみ」培地は、界面活性剤を何ら含まないOP4培地であったが、12g L-1の熱分解ポリプロピレン、1.25g L-1の(NH4)2SO4、1.25g L-1の酵母抽出物、2.5g L-1のKH2PO4、及び0.830g L-1のMgSO4・7H2Oで構成されていた。「界面活性剤対照」培地は、5.4g L-1のTween-80(登録商標)、4.5g L-1のオレイン酸、0.25g L-1の(NH4)2SO4、1.25g L-1の酵母抽出物、2.5g L-1のKH2PO4、及び0.830g L-1のMgSO47H2Oで構成されていた。
【0080】
FAプロファイル実験に使用されるヘキサデカン培地は、5%v/vのヘキサデカン、5g L-1の酵母窒素ブロス(w/アミノ酸)、0.5g L-1のKH2PO4、及び0.25g L-1のMg2SO4からなっていた。
【0081】
FAプロファイル実験に使用されるデンプン培地は、50g L-1の加水分解デンプン、2g L-1の酵母窒素ブロス(w/アミノ酸)、0.5g L-1のKH2PO4、及び0.25g L-1のMg2SO4からなっていた。培地は、5.4g L-1のTween-80(登録商標)、1.25g L-1の(NH4)2SO4、2.5g L-1のKH2PO4、及び0.830g L-1のMgSO4からなっていた。FAプロファイル実験に使用されるグルコース(5%)培地は、50g L-1のグルコース、及び3g L-1の酵母抽出物からなっていた。
【0082】
油液滴産生を撮像するための顕微鏡:改変したナイルレッド染色法(Rostron and Lawrence 2017)を利用して、Y.lipolytica細胞内中性脂質を染色した。発酵後培養物の試料アリコート(1ml)を抜き取り、遠心分離処理し、ペレットを0.9%のNaClで2回洗浄した。ペレットを、0.15M KCIを含む1.0mlの10mM PBSに懸濁させ、00600を10に調整した。工業用グレードのナイルレッド粉末(Millipore Sigma、USA)をアセトンに溶解して、10mg mL-1溶液を作製し、暗状態で、10μLを1.0mlの細胞試料(50mMのPBSに懸濁させ、ODが約5.0になるように較正した)に添加し、試料をボルテックス撹拌し、室温で(暗状態で)およそ15分間インキュベートした。Zeiss LSM 510共焦点顕微鏡(Zeiss、USA)を使用して、染色した細胞を視覚化した。共焦点分析に10μLの試料を使用した。細胞を488nmで励起させ、発光を543nmで撮像した。
【0083】
細胞内脂質定量化:改変したBligh及びDyerの抽出(Bligh and Dyer 1959)を使用して、酵母試料から脂質を抽出した。発酵後のOP4培養物を抜き取り、予め計量しておいた50mlのコニカルチューブに等分し、チューブを遠心分離処理し、ペレットを0.9%のNaClで2回洗浄した。ペレットを、BT3.3 EL Lyophilizer Tabletop(SP Scientific、USA)を使用して一晩凍結乾燥させ、計量し、2:1v/vのクロロホルム:メタノール混合物に懸濁させ(50mgの細胞乾燥重量当たり5ml)、20kHz、20%振幅で、パルス処理(合計20分間の作業時間について、40秒間はオン、20秒間はオフ)を用い、Sonic Dismembrator(Fisher Scientific、USA)を使用して超音波処理した。クロロホルム層を採取し、窒素流下で乾燥させた。乾燥した脂質を計量し、2.5mlのナトリウムメトキシド(0.1M)を用いた塩基触媒エステル化を介して、GC/MS分析のために誘導体化した(Milanesio et al.2013)。200μlの硫酸(>95%)を使用して反応をクエンチし、各試料に2.5mlのヘキサンを添加し、次いで、ボルテックス撹拌し、遠心分離処理した(5000rpmで5分間)。上部のヘキサン層から1.5mlをGC/MS分析のために抜き取った。
【0084】
脂質プロファイルのGC/MS分析:5977A質量分析計検出器に接続し、Agilent J&W HP-5ms UIキャピラリーカラム(30mm×0.25mm×0.25μm)を備えたAgilent 7890Aガスクロマトグラフ(GC)を用い、FAプロファイルを特性決定した。1μLの試料を、入口温度275℃のスプリットレスモードで、キャリアガスとして1ml min-1の流速でヘリウムを使用して、Agilent 7693 Automatic Liquid Samplerを介して注入した。GCオーブン温度を60℃で1分間保持し、100℃まで急上昇させた(速度:25℃ min-1、1分間保持する)。次いで、オーブン温度を200℃まで上昇させた(速度:25℃ min-1、1分間保持する)。次いで、オーブン温度を220℃まで上昇させ(速度:S℃ min-1、7分間保持する)、次いで、300℃の終了温度まで上昇させた(速度:25℃ min-1、2分間保持する)。試料分析中に、C8-C24 FAME分析標準を外部標準として使用した(Sigma Aldrich、USA)。
【0085】
GC/MSによる熱分解油の特性決定:3gの熱分解油を、200mlのクロロホルム(Sigma Aldrich、USA)に溶解し、1.5μLのアリコートをGC/MSによって分析した。GC法(Guzik et al.2014)を使用して、ポリプロピレン熱分解油を特性決定した。1μLの希釈した熱分解油を、入口温度275℃及びスプリット比2:1で、自動液体サンプラーを介して注入した。このオーブン法は、30℃で1時間、次いで100℃まで急上昇させ(速度:7.5℃ min)、次いで、300℃まで急上昇させた(速度10℃ min-1、2分間保持する)。
【0086】
基質分解分析:基質分解分析は、重量測定法及びGC/MSの両方を介して行った。分析のために、発酵前及び発酵後のOP4培地の10mlのアリコートを採取した。培地を遠心分離処理し(7000rpmで10分間)、予め計量しておいたコニカルチューブに5mlの培地を移し、培地の濡れた状態の重量を記した。試料を凍結乾燥し、計量し、乾燥細胞重量を、ヘキサン、クロロホルム及び脱イオン水の1:1:1v/v混合物(15ml)に懸濁させ、試料が完全に溶解するまでボルテックス撹拌した。その後、上部のヘキサン層を1.5ml抜き取り、GC/MS分析に使用した。
【0087】
成長測定:1mlのY.lipolytica一晩培養物をペレット化し(10,000rpm、10分間)、ペレットをSOmM PBSで2回洗浄し、次いで、最終OD600が15に達するように、1mlの50mM PBSに再懸濁させた。接種源を使用して、文書に示される初期光学密度で、成長細胞を含む全ての実験に接種した。設定された時点で、1mlのアリコートを抜き取り、Eppendorf 6131 Biophotometer(Eppendorf、USA)を使用して、OD600測定を行った。
【0088】
成長の重量測定分析のために、50mlのアリコートを抜き取り、10,000rpmで10分間遠心分離処理し、上清を廃棄し、細胞ペレットを50mMのPBSで2回洗浄し、一晩凍結乾燥させた後に計量した。
【0089】
シクロヘキサン毒性アッセイ:酵母麦芽ブロス(10gL-1のデキストロース、5g L-1の麦芽抽出物、3g L-1のペプトン、及び5g L-1の酵母抽出物)を使用して、Y.lipolyticaを発育させた。一晩培養物の1mlアリコート(接種密度:0.30[600nm])を使用して、50mlの酵母麦芽ブロスのみ、又は0.23%w/vのシクロヘキサンを含む酵母麦芽ブロスのいずれかに接種した。選択した時点で1mlの試料を抜き取り、成長を分光光度(600nm)によって測定した。
【0090】
結果
ポリプロピレンの熱解重合:バージンアモルファスポリプロピレン(PP)ペレットの熱分解によって油様流体が生成し、急速に冷却するとワックス状になった。PP油のGC/MS分析によって、調製されたバッチ全体にわたって、およそ18の異なる化合物を特定した。PP油の80%超は、分岐鎖化合物であり、分岐鎖脂肪族アルコール(50.9%)及び分岐鎖アルケン(25.1%)が、利用可能な全ての炭素源のおよそ75%を構成していた(
図1)。検出された分岐鎖アルケンは、全てC
nH
2n化合物であり、最も豊富に含まれる化合物は、2,4-ジメチルヘプタ-1-エン約14%)であり、続いて2,4,6,8-テトラメチル-1-ウンデセン(約6%)及び1,4-ジメチル-デセン(約5%)であった。検出された分岐鎖脂肪アルコールは、C
nH
2n+2化合物であり、2-ヘキシル-1-デカノール約41%)が主要な化合物であり、続いて2-メチル-1-デカノール(約10%)であった。
【0091】
OP4培地中のY.lipolyticaの成長及び活性の分析:「界面活性剤対照」培地との比較:モルC基準で、OP4培地中の総炭素の48.9パーセントは、生分解性界面活性剤に由来するものであった。培地中の炭素の残りは、PP油中に見出され、微量が、補充された酵母抽出物に由来するものであった。OP4中のPP油がY.lipolytica成長及び生化学的産物の形成に寄与した程度を決定するために、「界面活性剤対照」培地に対して、OP4培地中で成長したY.lipolyticaの活性を比較する一連の実験を行った。「界面活性剤対照」は、PP油を含有しないことを除き、OP4培地と組成が同一であった。
【0092】
Y.lipolytica成長の測定:PP油がY.lipolytica成長に寄与した程度を決定するために、細胞成長を重量測定法で測定した。その分析は、細胞をOP4培地上で成長させた場合に、平均27%のバイオマスの減少を示した(
図2a)。バイオマスの蓄積は、72時間後にピークに達した。バイオマスは、192時間目までの間、2.4g L
-1以上を維持していた。
【0093】
成長の間のOP4培地取り込み:成長の間のOP4培地取り込みの程度を決定するために、溶液中に残っている培地の質量を測定した。OP4培地の80パーセント超が、13日(312時間)後に取り込まれていた(
図2b)。OP4培地は、51パーセントの脂肪族アルコールを含有しており、これはPPに由来し、熱分解中に産生される。PPに由来する培地構成要素がY.lipolyticaによって取り込まれたかどうかを決定するために、培地中の脂肪族アルコール濃度の変化をGC/MSによって分析した(
図2b)。OP4培地中の脂肪族アルコールのおよそ51%が、120時間目までにY.lipolyticaによって取り込まれ、312時間目までに脂肪族アルコールの86%が使用された。総FA及び脂肪族アルコールの取り込みは、実験の過程にわたって同様の様式で生じた。
【0094】
成長及びFA産生に対するOP4構成要素の影響:OP4培地は、Y.lipolyticaの全体的な成長に寄与するいくつかの構成要素を含有する。細胞成長に対する培地の個々の構成要素の影響を決定するために、一連の比較を行った(
図3)。酵母抽出物は、補充窒素源として使用され、最大測定バイオマスのおよそ25パーセントに寄与していた。「界面活性剤のみ」及び「界面活性剤対照」処理の比較は、収量を増加させるために、補充窒素及び塩が必要であることを確認するものであった。「PPのみ」及び「OP4」処理を比較すると、培地中の界面活性剤の存在が、収量を6倍より多く増加させることが示された。一方で、「OP4」及び「界面活性剤のみ」処理、又は「PPのみ」及び「窒素及び微量鉱物のみ」処理の比較により、成長培地中のPP油がY.lipolytica成長を阻害することが決定された。OP4培地中のPP油は、成長を阻害したが、FA収量を有意に増加させた(表1)。
表1:OP4培地又はその構成要素中の成長の間のY.lipolyticaによる細胞内脂質収量。
【表1】
a ANOVAによって決定される有意性。p<0.05の場合、試料は、有意に異なるとみなされた。
b 同じ小文字の文字を共有する処理は、互いに有意差はない。
【0095】
Y.lipolytica成長に対するシクロアルカンの影響:環状アルカンは、Y.lipolytica及び他の産業用酵母にとって成長不良基質であることが他の場所で報告されている(Beam and Perry 1974、Das and Chandran 2011、Mauersberger et al.1996)。OP4は、0.15±0.08パーセント(w/v)の環状アルカンを含有する。環状アルカンが、OP4培地中に見出される濃度でY.lipolyticaの成長を阻害したかどうかを決定するために、0.23パーセント(w/v)のシクロヘキサンを添加したか、又は添加していない富栄養培地中の成長(
図4)を比較した。代表的な環状アルカンとしてシクロヘキサンを選択した。シクロヘキサンの存在は、72時間目までに対照細胞に対して細胞成長を低減し、その差は120時間にわたって持続した。成長阻害の程度は、実験の過程にわたって6パーセント~32パーセントの範囲であった。
【0096】
脂質蓄積の顕微鏡分析:OP4培地又は「界面活性剤対照」培地中で成長したY.lipolytica細胞による脂質蓄積を、ナイルレッド染色、及び共焦点顕微鏡、次いで定量的画像分析によって分析した。細胞脂質含有量の差は、複合的に染色した細胞において、明らかに顕著であった(
図5a)。OP4培地中で成長した細胞は、界面活性剤系の培地中で成長した細胞と比較して、凝集する傾向があった。OP4培地中で成長した細胞の平均蛍光は、界面活性剤系の培地中で成長した細胞の平均蛍光のほぼ2倍であり(p<0.05)、OP4培地中で細胞が成長したときに、より大きな脂質蓄積を示している(
図5b)。
【0097】
界面活性剤対照に対する、OP4培地中の成長の間の脂肪酸収量:PPが、Y.lipolyticaによる脂肪酸の産生に寄与した程度を決定するために、OP4培地中で成長した細胞と、界面活性剤系の培地で成長した細胞との間のFA産生の比較を行った。GC/MS分析により、脂質収量を決定した。FA収量は、Y.lipolyticaがOP4培地上で成長したとき、「界面活性剤対照」培地と比較して有意に高かった(
図6a)。このことは、実験の過程で測定された各時点について正しかった。Y.lipolyticaは、72~120時間の間に、その脂質の大部分のほとんどを生成した。産生されたFAの大部分は、C18であり、続いてC16であり、240時間目には少量のC20及び微量のC14FAを伴っていた(
図6b)。産生されたFAの大部分は、不飽和であり、「界面活性剤対照」とOP4培地との間に、飽和FAに対する不飽和FAの割合に有意差はなかった(
図6c)。しかしながら、実験の進行に伴って産生された飽和FAの割合は有意に増加した。72時間~240時間の間に、不飽和FAの分率は、10±1パーセント~35±8パーセントまで増加した(p<0.05)。産生されたFAの大部分は、モノ不飽和C18:1FAであった(
図6d)。
【0098】
FA産生に対する脂質又は炭水化物の影響:油脂形成性酵母は、多くの場合、炭水化物上で成長し、デノボ生合成によってFAを産生する。対照的に、OA4培地は、PP解重合及び生分解性界面活性剤に由来する炭化水素を含有し、エクスノボでのFA生合成を誘導する可能性が高い。OP4培地の組成がどのようにFA産生に影響したかを理解するのに役立つように、Y.lipolyticaを、炭素源として脂質又は炭水化物を含有する培地中で成長させた(
図7)。調べた基質は、グルコース(5%)、デンプン(2%)、ヘキサデカン(5%)、及びOP4培地(1.5%のPP由来化合物)であった。OP4培地中に見出される代表的な疎水性基質として、ヘキサデカンを選択した。C18FAオレイン酸は、ヘキサデカンを除く各培地中の成長の間にY.lipolyticaによって産生された優勢なFAであった。C16及びC18のFA分布は、炭水化物に基づく基質及びOP4の両方で成長した細胞間で一致しており、ヘキサデカンで成長した細胞では逸脱が生じた。パルミチン酸又はパルミトレイン酸といったC16FAは、2番目に豊富であり、それに続いてC18ステアリン酸であった。ヘキサデカン含有培地において、飽和パルミチン酸が、産生された主なFAであった。Y.lipolyticaをOP4又はヘキサデカン含有培地中で成長させると、5つのFAのみを産生した。対照的に、グルコース及びデンプン上で成長したY.lipolyticaのFAプロファイルは、これより複雑であり、より短鎖のFAであるミリスチン酸、ドデカン酸、ペンタデカン酸、及びトリデカン酸を含め、10の異なるタイプのFAを産生した。
【0099】
OP4のPP含有量が、産生されたFA産物のタイプに影響を及ぼしたかどうかを決定するために、「界面活性剤対照」培地に対して、OP4培地中の成長からのFAプロファイルを比較した(表2)。いくつかの特徴が明らかであった。第1に、192時間目を除き、「界面活性剤対照」よりも、OP4培地中で産生されたFAのうち、パルミトレイン酸が、より大きな分率であった。逆に、120時間目を除く各時点で、パルミチン酸分率は、「界面活性剤対照」において、より大きかった。第2に、192時間目で、「界面活性剤対照」に対して、OP4培地中のオレイン酸の分率の急上昇があった。最後に、非常に長鎖の脂肪酸(C20以上)は、OP4培地中で成長した細胞にのみ見出された。
表2:OP4培地又は界面活性剤対照培地中で成長したY.lipolyticaの脂肪酸プロファイル。
【表2】
a P値は、指定の時間に存在する総FAのパーセントである。平均±SD。
b 各時間点で、スチューデントのt検定を使用して、産生された各化合物の量に有意差があるかどうかを評価した。有意に大きい値(p<0.05)は、太字で示される。
c n.d.;検出されない。
d 化合物としては、ヘプタデカン酸及びトリデカン酸が挙げられる。
【0100】
考察
プラスチック廃棄物を生物変換プロセスに使用することが可能な場合、環境に排出されないようにするためのインセンティブが存在する。この実施例において、PP熱分解から生成された化合物を、Y.lipolyticaによって、産業又は他の多様な用途での使用に好適な脂肪酸に変換することができることが示された。OP4培地中の成長の間にY.lipolyticaによって産生されたFAの収量は、関連する生物変換プロセスと同等であった。OP4培地中のY.lipolytica 78-003の成長によって、2.34g L-1のCDW、基質に対するバイオマスの収量0.13g gC-1、及び基質に対するFAの収量0.03g gC-1(0.54g L-1のFA)が得られた。同様に、Y.lipolyticaを、OP4培地と疎水性及び炭素含有量が類似したFAを豊富に含む原料である5g L-1の食品油廃棄物上で成長させた場合、収量は、6日後に3g L-1CDW及び0.75g L-1FAであった。一般に、疎水性基質上での油脂形成性酵母の成長の間に、より低いFA蓄積が観察され、FAの収量を増加させるために、追加の対策を行わなければならない。
【0101】
PP由来の成長基質上でY.lipolyticaを発育させることは、FA産生に影響を与えたか?OP4培地中のFA産生と、「界面活性剤対照」中のFA産生とを比較することによって、FAプロファイルのいくつかの差が明らかであり、パルミトレイン酸分率の増加、C20化合物の存在、及びより大きな産物収率が顕著であった。一方で、OP4培地中の成長の間にこの実施例で測定されたC16及びC18FAプロファイルと、他人によって報告されたFAプロファイルとを比較すると、類似性が明らかであった(表3)。これらのデータは、Y.lipolyticaのFAプロファイルが、基質の特徴ではなく、細胞代謝によって影響を受けることを示唆している。加えて、疎水性基質(OP4培地、ヘキサデカン)上で成長した細胞についてのFAプロファイルと、親水性基質(グルコース、デンプン)上で成長した細胞についてのFAプロファイルを比較することによって、いくつかの差が明らかであり、炭水化物培地上での成長の間に産生されたFAの大きな多様性が顕著であった。一般に、観察されたFAプロファイルは、グルコース及びデンプン上での成長の間のデノボ脂質合成と一致しており、窒素枯渇後にFAが二次代謝産物として形成され、OP4培地及びヘキサデカン上での成長の間に炭素貯蔵及びエクスノボでの脂質合成が必要となり、FA合成は、疎水性物質を脂質へと同化しつつ、成長及び維持のためにそれらを同時に利用する、成長に組み合わされたプロセスである。全体として、このデータは、PP由来培地中のY.lipolyticaによるFA産生が、天然に存在する基質上での成長の間のFA産生に類似しているという見解を裏付けるものである。
【0102】
提示されたデータに関する2つの追加点について、更なる注釈が必要である。第1に、Y.lipolyticaは、「界面活性剤対照」のようには、OP4培地中で広範囲に成長しなかった。その最も可能性の高い説明は、対照には存在しなかったPPと関連する成長阻害性化合物(主に環状アルカン)が存在したことである。環状アルカンは、同化の間の疎水性基質酸化を主に担うP450モノオキシゲナーゼが、環状アルカンを酸化することができないため、Y.lipolyticaにとって十分な成長基質ではない。この実施例は、最小で0.23%w/vの環状アルカン濃度が成長を妨げたことを示している。顕著なことに、OP4培地上での成長の間のバイオマス収量が低いにもかかわらず、FA収量は、有意に高かった。栄養素の制限を含む、細胞ストレス(Aggelis 2002、Andre et al.2009、Beopoulos et al.2008、Kitcha and Cheirsilp 2011、Klug and Daum 2014、Kuttiraja et al.2016)は、Y.lipolyticaによるFA貯蔵を増加させる。化学毒性は、同様のストレス応答を引き起こした可能性がある。第2に、OP4培地のPP構成要素は、Y.lipolyticaの成長及びFA産生に寄与した。この結果は、以下の3つの方式で明らかであった。1)実験の間の成長培地質量の変化の重量測定分析によって、培地の81%がY.lipolyticaによって取り込まれたと決定した。OP4培地の非PP構成要素が全て最初に消費されたとしても、これらは培地の半分未満であり、このことは、Y.lipolyticaによって取り込まれた基質の少なくとも30%がPP由来であったことを意味している。2)OP4培地中の分岐鎖脂肪族アルコールの濃度は、実験の過程で86%まで低下した。これらの化合物は、PP油の最も豊富な成分であり、OP4培地中の生分解性界面活性剤の一部ではなかった。この濃度の低下は、Y.lipolyticaが、PP油の少なくとも1つの主要な構成要素を同化したことを示す。3)Y.lipolyticaは、OP4培地上で成長した場合、「界面活性剤対照」上で成長した場合よりもかなり多くのFAを産生し、このことは、PP由来化合物がFA産生に寄与していることを示している。
【0103】
Y.lipolyticaによるFAの産生は、発酵条件を変化させることによって、及び代謝工学によって、最適化することができる。例えば、食品油廃棄物由来の成長培地に10g L
-1のグルコースを補充すると、バイオマス収量が3g L
-1~13g L
-1まで増加し、それに伴い、FA収量が0.75g L
-1~7.3g L
-1まで増加した。加えて、成長基質の生体利用可能性を増加させることができ、例えば、廃棄調理油の生物変換は、成長培地の超音波処理によって増強され、FA産生を増加させる。FA分解及び再動員遺伝子であるPoxl-6及びTGL4が阻害されたとき、250g L
-1のグリセロール上で成長させたY.lipolyticaは、15.5g L
-1の脂質収量を得ることができ、脂質含有量は、31%のCDWを構成する。Qiao(2015)は、Y.lipolyticaステアリルcoAデサチュラーゼ、アセチル-CoAカルボキシラーゼ、及びジアシルグリセリドアシル-トランスフェラーゼ遺伝子の同時過剰発現が、迅速な細胞成長及び高い脂質力価(55g L
-1)を有する株を生じさせたことを決定した。グルコース又はグリセロール等の炭素源を添加すると、接種源の成長の間にバイオマス蓄積が起こりやすくなり、より大きな微生物集団は、PP由来化合物のより迅速な取り込み及びより大きなFA蓄積をもたらすはずであると考えられる。代替的に、脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ、脂肪族アルコールオキシダーゼ、及び脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼを含むエクスノボでのFA生合成を担う酵素が過剰発現すると、末梢経路による異化よりもFA蓄積が起こりやすくなり、収量の増加をもたらすと考えられる。全体として、生物変換は、プラスチック廃棄物のための最終的なリサイクル解決策の一部となり得る。
表3:本研究及び他の研究において様々な培地上で成長するY.lipolyticaのC16及びC18FAプロファイル。値は、パーセンテージとして報告される。
【表3】
a n.d.;検出されない。
【0104】
実施例:ポリエステル及びポリウレタンの生物変換
ポリエステル(PET及びPTT)及びポリウレタン(PU)の生物変換のためのプロセスが開発されてきた。このプロセスは、アルカリ加水分解に基づく解重合プロセス、乳化剤、及びアルカリ性pHに耐性のある微生物を伴う。ポリエステル由来成長培地は、本明細書においてPTT1培地と称される。
【0105】
方法:1gのPTT繊維を、4mlの工業用グレードのエタノール(100パーセントエタノール)、1mlのDMSO+0.41gのNaOH(18パーセントw/v)に添加する。混合物を、300~350℃で加熱しつつ、45~60分間環流させ、環流により、エタノールが蒸発することなく混合物を加熱することができる。繊維を解重合させるための加熱プロセスは、以下の通りである。最初の5分間は撹拌せず、次いで10分間撹拌し、その間に繊維は白色基質へと結晶化する。所定時間の残りについて加熱/環流を継続し、次いで、系を冷却した。生成物は、白色結晶を含む青色がかったスラリーである。生成物は、ポリプロピレン、炭酸カルシウム及び接着剤等の残留カーペット材料も含有し得る。青色がかった液体は、アルコール画分であり、PTTに由来するアルコール可溶性構成要素(プロパノール、プロパナール)を含有する。白色結晶は、TPAである。環流中のpHは、12~13であり、スラリーのpHは、12~12.5である。スラリーを遠心分離処理して、アルコール画分及びTPA画分を分離してもよく、又はスラリーを、NaOHを使用してpH=11若しくは12に調整した水溶液に添加してもよい。この後者のステップを使用して、PTT1培地を作製する。PTT1培地において、記載された内容物を、混合しながら、1リットルのpH調整した水に添加し、添加した化合物は、沈殿しない。得られた溶液のpHを、典型的にはHCl及びNaOHを使用して、9.5に調整する。300mg/lの酵母抽出物をN源として添加する。酵母抽出物は、pHを下げる可能性があるので、NaOHを用いて再び9.5になるように上方調整すべきである。pHが低くなり過ぎると(通常は8.5程度)、TPAが沈殿することに留意されたい。pHを調整したら、培地を、白色沈殿を産生することなく、15PSI、121℃で20分間、オートクレーブ処理し得る。
【0106】
培地を生物変換プロセスで使用するために、アルカリ性pHに耐性のある微生物を使用しなければならない。産業用酵母Candida famataを使用した。この株は、9.5~10.5のpH耐性レベルを有し、油脂形成性である。
【0107】
特徴:生体触媒(微生物)がpHに耐性である場合、アルカリ性pHでのみ可溶性のままである材料を含有する水溶液が、生物変換プロセスに好適であることが示されている。ポリエステルは、アルコール(例えば、グリセリン)以外の試薬を使用して、解重合させることができる。しかしながら、これらの懸濁液は、水溶液中で沈殿を形成する。また、ポリエステルがアルコール中で解重合される場合、得られる化学構成要素の全てが可溶性のままであり、すなわち、エタノールが乳化剤として作用し、これらを水と混合することができることも示されている。加えて、アルコールがエタノールである場合、ポリエステルと共に生体触媒微生物によって代謝することができ、言い換えると、生分解性である。PET及びPTTを成長培地内で一緒に処理し得る。Candida famataは、PTT1培地中の成長の間に脂肪酸を蓄積する。
【0108】
PUプロセス:PET/PTT培地を作製するために本明細書に記載されているプロセスも、ポリウレタン(PU)を含有する成長培地を作製するために機能する。予備データは、PU含有培地を使用して真菌を成長させることができることを示している。
【0109】
ポリスチレンプロセス:ポストコンシューマーPSを炭素源として使用して微生物を発育させ、生物変換プロセスにおいて付加価値のある化学物質を産生することができる。PSを化学的に解重合させ、次いで、それを乳化する化合物を使用して可溶化させる。その後、解重合PSを水に添加し、微量栄養素を添加して成長培地を作製する。PSは、付加プラスチックであるため、加水分解することができない。この障害を克服するため、PSを、スチレンオキシド(SO)及びアセトンの混合物に溶解した。この混合物は、水性懸濁液になる。SOは、PSを溶解する乳化剤として作用する。PSの各分子は、SOの分子によって囲まれていると考えられる。次いで、アセトンは、水中でPS/SOミセルを可溶化するように作用する。関与する分子の各々は、いくつかの微生物によって生分解可能である。
【0110】
方法:ビーカー中、700ulのアセトンを300uLのSOに添加する。ボルテクサーで20分間十分に混合し、粘性液体を調製する。この粘性溶液に、60mgのアリコート中の700mgのPS発泡体を添加する。各アリコートを上述の溶液に添加した後、十分にボルテックス撹拌して溶解させなければならない。より多くのPSが添加されるにつれて、混合物は、より粘性になり、最終的には透明金色のゲルとなる。PS発泡体の溶解を補助するために、追加のアセトンを添加し得る。ゲルを水に添加して懸濁液を作製し、水の体積は、所望の最終濃度に応じて、100ml~1000mlであり得る。1リットル当たり0.3gの酵母抽出物を添加する。
【0111】
結果:培地において、ミセルは明らかである(倍率400倍)。Candida famataを培地に添加したところ、少なくとも培地に耐性があり、死滅しないことが顕微鏡的に観察された。コンブチャ(kombucha)を接種した濃縮培養物は、培地中で成長した酵母の単離をもたらした。注:より少ない試薬を使用する改変法において、PSを可溶化することが可能な場合がある。提案されたアプローチにおいて、過マンガン酸カリウム等の強力な酸化剤を使用して、PSを、自己乳化混合物を作製することができるSO及びSO様分子に酸化することができた。
【0112】
OP4及びOP5:このプロセスを使用して、熱解重合及び発酵を介して、ポリプロピレンを単一細胞油(SCO)及び付加価値のある化学物質に変換する。この開示において、発酵プロセスに使用された生物は、Yarrowia lipolytica 78-003(ATCC指定46483)であった。
【0113】
関連技術の説明:使用中の現在のプロセスは、ポリプロピレンの熱解重合と、解重合ポリプロピレンの微生物生物変換とを組み合わせた二段階プロセスを使用しない。本明細書に記載のプロセスは、以下の少なくとも2つの目的(1)産業用酵母のための原料としてポリプロピレンを使用すること、及び(2)ポリプロピレン原料から付加価値のある化学物質を作り出すこと、を有する。
【0114】
ポリプロピレンの熱解重合:125mlの平底沸騰フラスコ、凝縮器、500mlの濾過フラスコ、540℃の能力を有するホットプレート、及び3gのポリプロピレン(PP)を使用する。3gのPPを沸騰フラスコに添加し、無酸素環境を作り出すために、凝縮器に接続する前に、沸騰フラスコに窒素を十分に流す。上述の流した沸騰フラスコを、チューブを介して凝縮器に接続し、密封された接続を作り出す。穴の開いたストッパーを使用して、凝縮器及び沸騰フラスコの両方に、また、濾過フラスコに対して沸騰フラスコを、チューブで接続する。濾過フラスコは、ストッパーで密封されているサイドアームに接続したチューブを有する。ホットプレートを540℃まで加熱し、沸騰フラスコ中のPPを500℃まで上げる。PPを500℃に到達させ、次いで、PPを更に180分間加熱する。約80分後、フラスコは、「PP油」と称される解重合PPを含有する。
【0115】
「OP5」PP培地プロトコル:PP油を、およそ60℃まで冷却した後、1mlのTween80と混合し、得られたPP油-Tween80混合物を150mlの水と混合し、250mlのスクリュートップパイレックス(登録商標)瓶に移し、次いで、携帯型のホモジナイザーを用い、高設定で均質化する。
【0116】
同時に、均質化したPP油-Tween80混合物の各150mlバッチについて、アミノ酸を含まない1gの酵素抽出物、500mgの酵母抽出物、250mgのMg2SO4、及び500mgのKH2PO4を、50mlの脱イオン水を含有する100mlのホウケイ酸ガラス瓶に添加し、全ての栄養素が溶液状態になるまで混合物を撹拌する。次いで、均質化した混合物及び栄養素溶液を120℃で20分間、オートクレーブ処理する。オートクレーブ処理したら、栄養素混合物を、均質化したPP及びTween80混合物に滅菌方法で添加する。
【0117】
OP4及びOP5培地の特徴:OP4及びOP5培地は両方とも、元の配合物であるOPIよりも1リットル当たり実質的に多くのPPを含有する。OP5培地は、OP4プロトコルの改善型である。OP5培地は、乳化剤としてのオレイン酸の必要性を除外する。
【0118】
結果:0.60の接種密度でY.lipolyticaを用いて120時間発酵させた後(各々が50mlのOP5培地を含む500mlのエレンマイヤーフラスコを使用して3個の複製物で行われる)、Y.lipolyticaは、911mg/Lの平均脂質収量を産生した(
図8)。この収量は、同じ時点でOP4培地中の成長の間にY.lipolyticaによって産生された脂肪酸の収量のほぼ2倍であった。この脂質収量内で産生された優勢な脂肪酸は、オレイン酸であり、続いて、リノール酸、パルミチン酸、安息香酸、ステアリン酸、及びパルミトレイン酸であった(
図8)。
【0119】
図9~17は、様々な解重合残分の生物変換からの結果を示す。
【0120】
実施例:PTT/PET培地の改善:中性pH、産物蓄積。
概要:この実施例は、中性pHを必要とする微生物のためのポリエステル由来成長培地を作製するためのアプローチを説明する。前述の実施例において、解重合PTT又はPETがアルカリ性pHで溶液中に残っているポリエステル由来成長培地を説明した。この培地は、アルカリ性pHで依然として代謝的に活性な微生物による生物変換プロセスで使用するのに好適であったが、中性pHでの成長に適応した微生物を発育させるのには好適でなかった。以前の配合物であるPTT1において、pHがアルカリ性から中性まで下がるにつれて、解重合ポリエステル化合物に由来する沈殿が形成されることが観察された。対照的に、本発明の例示的な配合物において、ポリエステル由来分子は、中性pHで懸濁したままである。これの意義は、生物変換及び他のバイオプロセスに使用される多数の産業的に重要な微生物が、中性pHで最良に機能することである。この実施例に記載の方法は、グラム陰性生物Escherichia coli、Yarrowia lipolyticaを含む酵母、及びBacillus subtilis等のグラム陽性菌を含む多様な微生物を発育させるのに好適なプラスチック由来成長培地をもたらす。本実施例に記載の中性pH培地は、アルカリ性培地PTT1と区別するためにPTT2と称される。
【0121】
加えて、Candida famataが、ポリエステル由来培地(PTT1又はPTT2のいずれか)中で成長した場合に、顕著な量の緑色産物が細胞外に蓄積することが観察された。C.famataは、生物学的合成されたリボフラビンの産業用供給源として知られている。
【0122】
方法:以下のプロトコルを使用して、ポリエステルを解重合させた。1gのPTT繊維を、4mlの工業用グレードのエタノール(100パーセントエタノール)、1mlのDMSO及び0.41gのNaOH(18パーセントw/v)に添加した。混合物を、300~350℃で加熱しつつ、45~60分間環流させた(環流により、エタノールが蒸発することなく混合物を加熱することができる)。繊維を解重合させるための加熱プロセスは、以下の通りであった。最初の5分間は撹拌せず、次いで10分間撹拌し、その間に繊維は白色基質へと結晶化する。所定時間の残りについて加熱/環流を継続し、次いで、系を冷却した。生成物は、白色結晶を含む青色がかったスラリーであった。ポリプロピレン、炭酸カルシウム及び接着剤等のいくつかの残留カーペット材料が、混合物中に存在し得る。青色がかった液体は、アルコール画分であり、PTTに由来するアルコール可溶性構成要素(プロパノール、プロパナール)を含有する。白色結晶は、テレフタル酸(TPA)である。環流中のpHは、12~13であり、スラリーのpHは、12~12.5であった。
【0123】
スラリーを遠心分離処理して、アルコール画分及びTPA画分を分離したか、又はNaOHを使用して、そのpHを11若しくは12に調整した水溶液に添加した。PTT2培地において、記載の内容物を、混合しながら、1リットルのpH調整した水に添加した(添加した化合物は、沈殿しなかった)。得られた溶液のpHを9.5に調整し(典型的にはHCl及びNaOHを使用して)、その後、この溶液を瓶に詰め、121℃、15psiで30分間、オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理した後、溶液を冷却した。その後、濾過滅菌した酵母抽出物(300mg/L)をN源として添加した。得られたpHは、6.7~6.8であった。PTT1培地とは対照的に、PTT2培地は、得られた中性pHで沈殿しなかった。
【0124】
1g/Lの溶液を作製するためのこの実施例で記載のアプローチを、必要な試薬の量をそれに比例して増加させることによって、5g/Lまでスケールアップすることができる。すなわち、5g/L溶液について、20mLの100%エタノール、5mLのDMSO、2.1gのNaOHを添加する。
【0125】
代謝産物の産生:PTT1又はPTT2中のC.famataの成長の間に、接種密度が好適な濃度であることを条件に、白色がかった緑色代謝産物が検出される。現在のデータは、0.4(600nm)の接種密度は低すぎ、一方で、16(600nm)の接種密度は高すぎるが、4.5のOD600で、成長の間に顕著な量の代謝産物が蓄積することを示す。代謝産物は、トリペプチドの特徴と一致する。
【0126】
PTT2培地中の多様な微生物の成長:PTT2培地は、ポリエステル(PET及びPETポリマー)に由来する。プラスチック由来化合物は、中性pHでは水溶液中に可溶性のままであるため、PTT1培地とは異なる。
図18及び19において、培地は、pH8であり、ポリエステル由来材料の濃度は、5g/Lである。
図18は、油脂形成性酵母であるYarrowia lipolyticaの成長を示す。
図19は、Escherichia coli(グラム陰性)及びBacillus subtilis(グラム陽性)といった2種類の細菌の成長を示す。
【0127】
PTT2培地中の成長の間のCandida famataからの産物の蓄積:Candida famata(CF)は、元来リボフラビンを産生するために使用されていた産業用酵母である。CFは、PTT1及びPTT2培地中で成長し、蓄積する有色化合物を産生する。
【0128】
図20において、1g/Lの濃度のPTT培地を、以下の接種源を使用して接種した(OD600)。A2-0.4及びA3-4.5。緑色顔料が産生され、この顔料はA3処理において最もよく見え、A2に処理においてはわずかに見えただけであった。このことは、より高い細胞密度で交換され、より高い摂取密度でより良い成長をもたらす補因子が存在することを示唆している。10時間目の緑色顔料産生は、細胞成長の結果としての鉄濃度の低減に対応している可能性がある。鉄分が少ないと、リボフラビン産生が引き起こされる可能性がある。
【0129】
図21において、1g/L(A3 PTT)及び5g/L(A4 PTT)の濃度のPTT培地を、以下の接種源を使用して接種した(OD600)。A4-16及びA3-4.5。6時間目までは、A3の蓄積したバイオマスは、A4と同等であった。A4のいずれの時間点でも、緑色顔料は検出されなかった。
【0130】
PTT1中の成長の間の25時間目のC.famataは、培養物上清から緑色がかった白色の産物を形成し、遠心分離処理中にペレットと共に蓄積した。
【0131】
PTT1中の成長の間の35時間目のC.famataは、空気-液体界面で表面付着細胞上の沈殿として蓄積した緑色がかった白色の産物を形成する。
【0132】
図22は、C.famataの成長の間のPTT1溶液中の代謝産物の蓄積を示す。画像は、明視野顕微鏡によるものであり、25時間の成長後の倍率1000倍である。
【0133】
図23は、溶液中に蓄積する代謝産物の結晶を示す。倍率10倍。小さな丸い緑色の酵母細胞に注目されたい。結晶は、細胞の外側で凝集する分泌されたペプチドから生じると仮定される。
【0134】
図24は、落射蛍光顕微鏡で撮像された同じ結晶を示す。ローダミンフィルターセットを使用した蛍光に注目されたい。倍率10倍。また、DAPI及びFITCフィルターセットを使用して、蛍光を注目した。
【0135】
実施例:成長培地及び発酵パラメータを最適化することによって、Yarrowia lipolyticaによるポリプロピレンの生物変換及び脂質生合成を増強する
環境におけるプラスチック廃棄物は、解決する新しいアプローチを必要とする困難な問題である。油脂形成性酵母Yarrowia lipolyticaによる生物変換と熱分解を組み合わせた、改善されたポリプロピレン(PP)アップサイクルプロセスが記載される。バージンPPを使用して、pH、接種密度、C/N比、及び浸透圧を最適化し、脂肪酸力価が1.9g L-1までほぼ4倍に増加し、細胞脂肪酸含有量が41%であり、この値は、プラスチックから脂質への微生物生物変換について今日まで報告されている最も高い含有量であった。接種密度3(OD600nm)、pH6.0及びC/N比80:1で最も高い脂肪酸力価が達成された。塩化ナトリウムを添加することによって培地浸透圧を増加させることは、細胞成長に悪影響を及ぼし、脂肪酸力価は改善しなかった。最大の脂肪酸力価は、細胞成長と脂質生合成のバランスをとる条件下で生じた。ポストコンシューマーPPを使用すると、脂肪酸力価は、有意に低かった(0.13g L-1)。全体として、本研究は、プラスチックの微生物生物変換と関連する可能性及び課題を示す。
【0136】
緒言:環境におけるプラスチック汚染は、解決する革新的な戦略を必要とする困難な問題である。付加価値のある産物を産生するためのプラスチックの微生物生物変換は、解決策の一部である可能性がある。上の実施例において、油脂形成性酵母Yarrowia lipolyticaを使用して脂肪酸を産生するポリプロピレン(PP)の微生物生物変換を記載した。このプロセスは、熱分解を使用してPPを解重合させ、炭水化物及び脂肪族アルコールを豊富に含む油を生じた。この油を、オレイン酸を含む生分解性界面活性剤を使用する栄養素を補充した水溶液に混合し、OP4と命名されたPP由来成長培地を得た。Y.lipolyticaは、OP4の80%より多くを同化することができ、最大440mg L-1の脂肪酸力価が生じ、そのうちの51%がPP由来であった。OP4培地を使用するPP生物変換の可能性を示した後、必要な補助剤が少ないPP由来成長培地、及びより多くの産物を得ることができるプロセスを開発した。この実施例において、オレイン酸を含まず、その炭素の77パーセントがポリプロピレンに由来するPP由来成長培地であるOP5培地を記載する。OP5培地中のY.lipolyticaの成長の間に産物収量を増加させるためのいくつかのアプローチを試験し、次いで、生物変換プロセスにおいてポストコンシューマーPP廃棄物を使用することの影響を検討した。
【0137】
Y.lipolyticaが、高濃度で脂質の細胞内貯蔵物を蓄積する能力は、脂肪酸、すなわち「単一細胞油」の持続可能な供給源として、非常に大きな関心をもたらす。Y.lipolyticaの細胞脂質含有量は、細胞のバイオマスの70パーセント以上を占め得る。更に、Y.lipolyticaは、プラットホーム化学物質であるコハク酸を含む、ある範囲の商業的に重要な生化学物質を産生するための微生物細胞工場として使用するために操作されている。重要なことに、Y.lipolyticaは、幅広い基質特異性を有しており、ポストコンシューマー廃棄物を標的とする発酵プロセスのための必須の特徴である、幅広い範囲の化学物質の投入を使用することが可能である。Y.lipolyticaは、エクスノボでの生合成によって脂質成長基質を使用し、廃棄調理油及び動物製品廃棄物を含む油性疎水性廃棄物をアップサイクルすることができる。OP5培地を調製するために使用されるPP油は、多様な疎水性化合物で構成され、Y.lipolyticaによる生物変換にとって良好な基質である可能性がある。この実施例において、本願発明者らは、Y.lipolyticaによるOP5培地の生物変換の間の産物力価を増加させるいくつかの成長条件を評価し、次いで、生物変換プロセスに対する、ポストコンシューマーPP廃棄物を使用することの影響を検討した。
【0138】
材料及び方法
化学物質及び試薬:バージンアモルファスポリプロピレンペレット(Mw=14,000)を、Sigma Aldrich(Millipore Sigma,USA)から購入した。Tween80(登録商標)、クロロホルム、メタノール、シクロヘキサン、及びヘキサン、並びに全ての培養化合物は、研究グレードのものであり、Fisher Chemicals(Fisher Scientific、USA)から購入した。
【0139】
ポリプロピレン成長培地の調製:OP5培地を以下のように調製する。125mlの平底ホウケイ酸フラスコを使用して、540℃で195分間かけて、3gバッチでバージンPPペレット、又は剪断されたポストコンシューマーPPのいずれかを熱分解させた。熱分解油を(15g L-1で)、5.4g L-1のTween-80(登録商標)、5g L-1の酵母窒素塩基、2.5g L-1のKH2PO4、2.5g L-1の酵母抽出物、及び1.25g L-1のMgSO4・7H2Oと組み合わせた。この混合物を、携帯用食品グレードホモジナイザーで乳化させた。乳化剤としてのオレイン酸が欠如していることを補うため、OP5培地の均質化時間を90秒(OP4培地についての混合時間)~3分間まで増加させた。得られた均質化培地を、121℃、15psiで30分間オートクレーブ処理した。
【0140】
培養及び発酵条件:Yarrowia lipolytica ATCC株46482が、本研究で使用された株であった。-80℃で保管したY.lipolyticaの1mlの60%グリセロールストックから、一晩培養物を調製した。全ての実験について、凍結した細胞を解凍し、これを使用して、50又は100mlのYeast-Extract-Peptone-Dextrose培地(10g L-1の酵母抽出物、20g L-1のペプトン、及び20g L-1のデキストロース)を含有する250mlのエレンマイヤーフラスコに接種した。接種したフラスコを、200rpmで一晩振とうしつつ、30℃で一晩インキュベートした。一晩培養物の1mlアリコートを抜き取り、これを使用して、吸光度によって酵母成長を測定した。全ての振とうフラスコ発酵を、50mlのOP5培地を含有する500mlのエレンマイヤーフラスコを使用して培養した。3個の複製物のフラスコに、様々な接種密度(OD600ml-1)でY.lipolyticaの一晩培養物を接種し、200rpmで振とうしつつ30℃でインキュベートした。
【0141】
成長測定:Y.lipolytica成長測定を、分光光度及び重量測定分析で行った。1mlのY.lipolytica培養物アリコートを抜き取り、Eppendorf 6131 Biophotometer(Eppendorf、USA)を使用して、600nmでの光学密度によって成長を測定した。重量測定法を使用して成長測定のために、発酵後に50ml体積の培養物を抜き取り、7,000rpmで遠心分離処理した。上清をデカンテーションし、保管し、細胞ペレットを50mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で2回洗浄した。次いで、細胞を液体窒素中で急速凍結させ、BT3.3 EL Lyophilizer Tabletop(SP Scientific、USA)を使用して一晩凍結乾燥させ、計量した。
【0142】
顕微鏡:明視野顕微鏡画像を、AmScope MD35カメラアタッチメントを備えたAmScope BL120c顕微鏡(United Scope、USA)を使用して、倍率1000倍で撮影した。スライドを、120時間の成長後にY.lipolyticaを含有する10μlのOP5培地を無菌状態でピペッティングすることによって調製した。染色は使用されなかった。
【0143】
発酵の最適化:発酵最適化実験のために、pH、接種密度、浸透圧、又は炭素-窒素比を変化させた。pH実験のために、OP5培地のpHを、2.0MのH2SO4又は4.0MのNaOHを使用して、4.0、5.0、又は6.0に調整した。Corning320pH計(Corning、USA)を使用してpHを測定した。接種密度実験を開始するために、OP5培地に、1.0、3.0、又は6.0の接種密度で接種した。Y.lipolytica一晩培養物から1mlのアリコートを回収し、600nmでの吸光度によって接種密度を測定した。吸光度の読みに基づいて、所望の接種密度に対応する体積の細胞を、一晩培養物から回収し、4,000rpmで遠心分離処理した。ペレット化した細胞を、50mMのPBS溶液で2回洗浄し、これを使用してOP5培地に接種した。浸透圧実験のために、NaCl塩を使用して、培地の浸透圧を変化させた。培地のオートクレーブ処理の前に、NaClを、0.75、1.5、及び3g L-1の濃度でOP5に添加した。炭素-窒素比実験のために、オートクレーブ処理の前にOP5培地に添加される酵母抽出物(10%窒素w/vを含有する)及び酵母窒素塩基(15%窒素w/vを含有する)の量を修正するによって、OP5培地中の窒素含有量を変化させ、培地pH6.0及び接種密度3.0を使用し、20、40、80、及び100の炭素-窒素比を試験した。選択されたパラメータを変化させた後、振とうフラスコ発酵を120時間かけて行い、その後に、細胞を処理し、バイオマス及び脂質産物形成を以下に記載されるように分析した。
【0144】
基質同化分析:OP5培地中の成長基質の取り込みを重量測定法で測定した。50mlの発酵前又は使用済のいずれかのOP5培地を、50mlのコニカルチューブに添加し、凍結乾燥させた。全ての水分を除去した後、残った培地の質量を計量し、発酵前後の培地固形分の質量の差として、基質の取り込みを決定した。
【0145】
OP5培地構成要素のGC/MS分析:本願発明者らは、GC/MSによって、発酵の間のOP5培地の有機成分の消費を定量化した。液-液抽出を使用して、OP5培地中のY.lipolyticaの成長の前後の有機成分を収集した。50mlのヘキサンを、50mlの発酵前又は使用済のOP5培地に添加し、混合物を250mlのスクリューキャップナルゲンチューブに移し、テフロン(登録商標)テープで密封し、30℃、150rpmで24時間振とうした。インキュベートの後、試料を5000rpmで10分間遠心分離処理し、1.5mlのヘキサン(上側)層を抜き取り、GC/MS分析に使用した。Guzik(2014)のGC法を使用して、ヘキサン層の成分を特性決定し、定量化した(Guzik et al.,2014)。以下に、GC/MS機器及びプロトコルについての詳細を説明する。1μlを、入口温度275℃で、自動液体サンプラーを介して注入した。このオーブン法は、30℃で1時間、次いで100℃まで急上昇させ(速度:7.5℃ min-1)、次いで、300℃まで急上昇させた(速度10℃ min-1、2分間保持する)。分離したピークを、MassHunter(登録商標)Qualitative Analysisソフトウェア(Agilent、USA)を使用して定量化した。
【0146】
OP5培地構成要素:産物力価に対する影響:OP5培地の様々な構成要素を使用して、培地を作製した。各構成要素の培地を、脱イオン水を使用して作製し、0.1MのHCL又は0.1MのNaOHを使用して、pH6.0まで緩衝化した。Tween(登録商標)80のみの培地は、5.4g L-1のTween(登録商標)80界面活性剤のみを含有していた。PPのみの培地は、15g L-1のPP油のみで構成されていた。Tween(登録商標)80+栄養素の培地は、5.4g L-1のTween(登録商標)80界面活性剤、5g L-1の酵母窒素塩基、2.5g L-1のKH2PO4、2.5g L-1の酵母抽出物、及び1.25g L-1のMgSO4・7H2Oで構成されていた。
【0147】
50mlの培地を含有する500mlのエレンマイヤーフラスコで、構成要素培地実験を行い、Y.lipolyticaを接種密度1.0で接種した。試料を30℃で120時間、振とうインキュベーターに入れた。発酵後、試料を50mlのコニカルチューブに移し、4,000rpmで10分間遠心分離処理した。上清をデカンテーションし、細胞を50mMのPBSで2回洗浄した後に凍結乾燥させ、上述のように計量し、以下のセクションに記載されるように、脂質を抽出し、定量化した。
【0148】
細胞内脂質定量化:以前に使用された改変したBligh及びDyerの抽出を使用して、酵母試料から脂質を抽出した。発酵後のOP5培養物を抜き取り、予め計量しておいた50mlのコニカルチューブに分注した後に4,000rpmで遠心分離処理し、ペレットを50mMのPBS溶液で2回洗浄した。ペレットを凍結乾燥させ、計量し、2:1v/vのクロロホルム:メタノール混合物に懸濁させ(50mgの細胞乾燥重量当たり5ml)、20kHz及び20%振幅で、パルス処理(合計20分間の作業時間について、40秒間はオン、20秒間はオフ)を用い、Sonic Dismembrator(Fisher Scientific、USA)を使用して超音波処理した。クロロホルム層を抜き取り、予め計量しておいたコニカルチューブに等分し、次いで、窒素流下で乾燥させた。乾燥させた脂質を計量し、脂質収量を決定した。
【0149】
乾燥した脂質を計量し、2.5mlのナトリウムメトキシド(0.1M)を用いた塩基触媒エステル化を介して、GC/MS分析のためにメチル化した。200μlの硫酸(>95%)を使用して反応をクエンチし、各試料に2.5mlのヘキサンを添加し、次いで、ボルテックス撹拌し、10,000rpmで10分間、遠心分離処理した。上部のヘキサン層から1.5mlをGC/MS分析のために抜き取った。
【0150】
脂質プロファイルのGC/MS分析:5977A質量分析計検出器に接続し、Agilent J&W HP-5ms UIキャピラリーカラム(30mm×0.25mm×0.25μm)を備えたAgilent 7890Aガスクロマトグラフを用い、脂肪酸プロファイルを特性決定した。1μLの試料を、入口温度275℃のスプリットレスモードで、キャリアガスとして1ml min-1の流速でヘリウムを使用して、Agilent 7693 Automatic Liquid Samplerを介して注入した。GCオーブン温度を60℃で1分間保持し、100℃まで急上昇させた(速度:25℃ min-1、1分間保持する)。次いで、オーブン温度を200℃まで上昇させた(速度:25℃ min-1、1分間保持する)。次いで、オーブン温度を220℃まで上昇させ(速度:5℃ min-1、7分間保持する)、次いで、300℃の終了温度まで上昇させた(速度:25℃ min-1、2分間保持する)。試料分析中に、C8-C24 FAME分析標準を外部標準として使用した(Sigma Aldrich、USA)。
【0151】
GC/MSによるポストコンシューマーPP油の特性決定:3gのポストコンシューマーPP油を、250mlのクロロホルム(Sigma Aldrich、USA)に溶解し、1.5μLのアリコートをGC/MSによって分析した。GC法を使用して、ポリプロピレン熱分解油を特性決定した。1μLの希釈した熱分解油を、入口温度275℃で、自動液体サンプラーを介して注入した。このオーブン法は、30℃で1時間、次いで100℃まで急上昇させ(速度:7.5℃ min-1)、次いで、300℃まで急上昇させた(速度10℃ min-1、2分間保持する)。
【0152】
統計的分析:有意性は、Microsoft Excelと共に含まれるデータ分析パッケージを用いた不等分散を仮定して、一元配置若しくは二元配置ANOVA、又はスチューデントのt検定を使用して分析した。実験は、最低でも3個の複製物で実施した。
【0153】
結果
OP5培地組成:微生物生物変換は、プラスチック廃棄物を付加価値のある生化学物質へとアップサイクルする可能性がある。以前の研究において、本願発明者らは、PPの熱解重合を使用して、Y.lipolyticaを成長させ、脂肪酸を産生させるのに好適な微生物成長培地を作製することができることを示した。この実施例において、本願発明者らは、乳化剤としてオレイン酸を必要としなかった、改善されたPP由来培地を報告している。オレイン酸を除去することによって、PPに由来する炭素の量は、OP4培地中の51パーセントからOP5培地中の77パーセントまで増加した。
【0154】
OP5培地中のPP油は、主に、2-ヘキシル-1-デカノール及び2-メチル-1-デカノールを含む分岐鎖脂肪族アルコール(59%)、並びに2,4ジメチル-ヘプテン及び2,6ジメチル-オクテンといった分岐鎖アルケン(16%)で構成されていた(
図25C)。これは、51%の分岐鎖脂肪族アルコール及び25%の分岐鎖アルケンを含有するOP4培地中で使用されるPP油と同様であった。均質化の後、培地は、乳白色の外観を有しており、ロータリーシェーカーで振とうすることによって、発酵プロセス中、均質に混合されたままであった。混合しない場合、培地中の疎水性構成要素は、24~48時間の期間にわたって、小さな液滴へと凝集した。添加される乳化剤としてオレイン酸を含有し、室温で最大3日間の期間にわたって均質化されたままであったOP4培地とは異なり、OP5培地は、常に混合しなければ、2時間以内に分離した。これを補うために、発酵前の分離を防ぐために、均質化及び滅菌から1時間以内に培地を使用した。
【0155】
実験の過程にわたって、OP5は、解重合PPが小さな液滴(直径50μm未満)に凝集したものが培地全体に分散した、コロイド懸濁液を形成した。顕微鏡によって、これらの液滴は、Y.lipolyticaと会合し、液滴の周囲に細胞凝集体を形成することが示された。
【0156】
OP4培地に対する、OP5培地上での成長及び脂質生合成:10日間にわたる、OP4培地に対するOP5培地中のY.lipolyticaの成長を比較して、培地の組成が、細胞収量、脂肪酸力価、又は細胞内脂肪酸含有量に影響を及ぼすかどうかを決定した(
図26)。OP5培地上で成長した細胞は、OP4培地上で成長した細胞と同等の脂肪酸収量を有していた。OP5上で成長した細胞は、OP4上で成長した細胞の最大脂質収量と同様の、0.43g L
-1の細胞内脂肪酸収量に達した。細胞がOP5培地中で成長したときのバイオマス収量は低く(p<0.05)、生成した最大バイオマスは1.1g L
-1であったため、OP4培地上で成長したY.lipolyticaの半分に満たなかった。細胞バイオマスは低かったが、細胞脂質含有量は、OP5で成長した細胞が、測定した各時点でOP4対応物よりも高い脂質含有量を有していたため、顕著に増加した。OP5上で成長した細胞は、OP4上で成長した細胞についてわずか18パーセントであったのと比較して、35パーセントの最大平均細胞脂肪酸含有量を達成することができた。これらの所見は、OP4培地中のオレイン酸が、Y.lipolyticaによるバイオマス形成に利益をもたらしたことを示唆していた。対照的に、OP5培地中の高い割合の分岐鎖化合物は、Y.lipolytica成長を遅らせた可能性がある。OP5培地中に好ましい成長基質が存在しないことは、Y.lipolyticaに貯蔵脂質を合成させるようにシグナルを送る細胞ストレスを増加させた可能性がある。
【0157】
OP5培地代謝の動態:2つの異なる生理学的活性を有する相が、上述の10日間の実験にわたって明らかであった(
図27A)。最初の5日間の間、Y.lipolyticaは、正の脂肪酸蓄積率によってわかるように、油脂形成相にあった。脂肪酸貯蔵は、最初の3日間で最も迅速に起こった。5日目以降に、細胞内脂肪酸含有量が減少し、このことは、貯蔵脂質転換相への遷移を示している。3日目から始まる脂肪酸貯蔵率の低下と同時に、2-ヘキシル-1-デカノール(HD)の増加が、回収産物において測定された。HDは、OP5培地の主成分である(
図25)。経時的なHD蓄積のパターンは、油脂形成相中のHD代謝、その後、貯蔵脂質産生が3日目に遅くなり始めたときの蓄積と一致していた。一方で、経時的なHD蓄積のパターンは、細胞膜に吸着した汚染物質として回収産物に入り込むHDとは一致しなかった。もしそうであれば、HD濃度は、バイオマスと相関関係にあり、実験の経過にわたって異なる変化パターンに従っていた(
図26B)。
【0158】
回収脂肪酸の組成は、10日間の実験の過程でほとんど一致していた(
図27B)。オレイン酸は、主要な産物であり、3日目以降の蓄積脂肪酸の少なくとも60パーセントであった。リノール酸は、他のほとんど特定することができない産物が蓄積し始める5日目までに、回収産物において次に豊富な化合物であった。他の産物には、総回収産物の3パーセントに達する濃度で抗菌活性を有する天然に存在する生物活性化合物である2,4-ジ-tert-ブチルフェノール(2,4-DTPB)が含まれていた。2,4-DTPBの存在は、Y.lipolyticaがその環境において枯渇した栄養素濃度に適応するため、他の産物の蓄積が、競合応答の一部であり得ることを示唆していた。一般に、回収脂肪酸のプロファイルは、OP5培地中に見出されるPP油の組成とは異なっていた。油脂形成性酵母は、エクスノボでの生合成の間に疎水性基質を修飾する能力が注目されており、成長基質と比較して、蓄積脂質のプロファイルが変化した。
【0159】
発酵の間のOP5培地基質取り込み及びPP利用:Y.lipolyticaによるOP5培地取り込みの速度を決定し、同化された成分のプロファイル決定をするために、実験を行った。大部分の基質同化を、192時間にわたって重量測定法で測定した。Y.lipolyticaは、120時間までに大部分のOP5基質の39パーセントを取り込み、この量は、同じ時点までに53パーセントが同化されたときのOP4培地上で成長したときの量よりも低かった(
図28A)。192時間までに、Y.lipolyticaは、OP4培地上で成長させたときの71%と比較して、大部分のOP5基質の62パーセントを同化した。2つの培地についての基質同化の全体的な傾向は、類似していた。Vasiliadou(2018)は、不飽和脂肪酸についてY.lipolyticaによる濃度依存的取り込みを報告しており、25~35g L
-1の濃度で、より大きな脂質生合成を有していた。この実施例において、OP5培地の作業濃度は、15g L
-1であった。より高い濃度は、より広範な脂質貯蔵を促進することが可能である。加えて、基質取り込み速度が低いと、貯蔵脂質の分解を引き起こす可能性があり、このプロセスは、成長培地に第2の基質を添加することによって遅延する可能性があるプロセスである。
【0160】
使用済のOP5培地と比較した、発酵前OP5培地の組成の分析を行い、発酵プロセス中にどのPP油成分がY.lipolyticaによって取り込まれたかを決定した(
図28B)。OP5培地をt=0時間及びt=120時間でヘキサン内に抽出し、回収した分析物をGC/MSによって定量化した。その分析は、検出された全てのPP油成分のピーク面積の89~99パーセントの低減を示した。
【0161】
界面活性剤Tween(登録商標)80を含む、OP5培地構成要素は、Y.lipolyticaの成長及び脂質生合成に影響を及ぼす可能性がある。OP5培地中の成長の間のY.lipolytica脂質生合成に対する個々の培地構成要素の寄与を決定するために、細胞を、PP(「PPのみ」)、Tween(登録商標)80(「Tween(登録商標)80のみ」)、又はOP5培地マイナスPP油(「Tween(登録商標)80+栄養素」)から厳密に構成される培地上で成長させた(
図29)。バイオマス及び脂肪酸力価を、OP5培地中の成長からのものと比較した。OP5培地上で成長した細胞は、「Tween(登録商標)80+栄養素」上で成長した細胞と比較すると、2.6倍高いバイオマス力価値及び5.0倍高い脂肪酸力価を有していた。OP5培地からの脂肪酸力価を、「Tween80+栄養素」の脂肪酸力価と比較することによって、産生された脂肪酸の80パーセント(1.6g L
-1)が、PP由来の炭素の起因するものであり、残り(0.4g L
-1)は、Tween(登録商標)80からの炭素に起因するものであると決定された。この分析は、産物において測定された脂肪酸の大部分が、PPの生物変換からのものではなく、Tween(登録商標)80に由来するという可能性を除外した。脂肪酸収量(消費したPP1グラム当たり産生された脂肪酸のグラム数)は、19パーセントであった。
【0162】
開始時の培地pH及び接種密度は、成長及び脂質生合成に著しく影響を及ぼす:油脂形成性酵母による脂質貯蔵は、ストレスに対する生理学的適応である。これにより、細胞成長の条件が悪い場合に細胞当たりの脂質産生が最大になり、低いバイオマスをもたらすため、脂質力価を最大化するのに課題が生じる。逆に、細胞成長の条件が許容的である場合、脂質貯蔵は低い。これらの挙動は、2箇所で提示されたデータにおいて、明らかであった。第1に、OP5培地中のY.lipolytica成長に対する、OP4培地中のY.lipolytica成長の比較は、OP4培地中の成長の間に、より大きなバイオマス蓄積を示したが、OP5培地中の成長の間に有意に高い細胞脂肪酸含有量を示した(
図26)。これらの結果は、OP4培地中の容易に同化されたオレイン酸の存在と相関関係にあり、これはOP5培地中には存在しなかった。
【0163】
pH、接種密度、C:N比、及び浸透圧を含む、他者によるY.lipolytica代謝産物産生に影響を及ぼすことが報告されているいくつかの異なるパラメータを検討した。第1に、pH及び接種密度が、成長、産物収量及び細胞脂質含有量に及ぼす影響を調査した(表4)。これは、様々な接種密度(1、3及び6)で、様々な初期pH(4.0、5.0、及び6.0)でOP5培地を接種することによって行われた。pH=4.0及び低い接種密度(よりストレスの多い条件)では、成長は最も低く、細胞当たりの脂肪酸含有量は最も大きかった。逆に、pH=6.0及び高い接種密度(より許容的な条件)では、成長は最も大きかったが、細胞当たりの脂肪酸含有量は最も低かった。最も高い全体的な脂肪酸力価は、pH=6.0及び接種密度3.0(その他と比較して中間的な条件のセット)で起こった。これらの条件下では、成長も、細胞当たりの脂肪酸含有量も最も高くはなかったことが注目される。これらの所見は、以前の試験と同等であり、Y.lipolyticaの接種サイズが、発酵の間に成長及び産物形成の両方に影響を及ぼし、接種密度が低いほど、細胞脂質含有量がより高くなる方に向かい、接種密度が高いほど、バイオマスが良くなることを示した。本明細書では以降、全ての更なる実験について、接種密度3.0及びpH=6.0を使用した。接種密度1及びpH=4で成長が最も低く(1.3g L
-1)、接種密度6及びpH=5で最も高い(11.9g L
-1)ことがわかった(表4)。逆に、細胞当たりの脂質含有量は、接種密度1及びpH=4で最も高く(1.4g L
-1)、接種密度1、pH=5で最も低かった(0.5g L
-1)(表4)。最も高い全体的な脂質収量は、接種密度3、pH=6のときであった。本明細書では以降、全ての更なる実験について、接種密度3及びpH=6を使用した。
表4.OP5培地中のY.lipolyticaの成長及び脂質産生に対するpH及び接種密度(ID)の影響。
ab接種密度は、t=0でのOP5培地中の細胞の600nmでの細胞の光学密度として示される。
【表4】
aバイオマス及び脂質収量の数値は、g L
-1として示される。
bID、接種密度(光学密度、600nm)。詳細については「方法」を参照されたい。
c脂肪酸含有量は、バイオマスに対する脂肪酸質量の比率である。
【0164】
炭素と窒素の比の最適化は、脂質収量を改善する。いくつかの環境因子は、培地のC/N比及び浸透圧を含む、Y.lipolyticaにおける産物形成に影響を及ぼすことが示されている。80以上のC/N比は、脂肪酸力価の増加を引き起こした(
図30)。C/N比が大きくなると、窒素不足のシグナルが送られ、Y.lipolyticaがデノボでの生合成によって疎水性基質を代謝するときに、脂質貯蔵を引き起こすことができる。対照的に、疎水性基質のエクスノボでの生合成は、窒素非依存性である。脂肪酸の存在は、デノボでの生合成を頻繁に抑制するが、両方のプロセスが同時に生じ得ることが認識されている。開始時の接種密度及び培地pHを最適化した後、C/N比を検討して、最適な脂質生合成のための最良の比を選択した。OP5振とうフラスコ発酵を、接種密度3及び培地pH6で120時間かけて行い、20、40、80、及び100のC/N比を分析した。
図30に見られるC/N比を増加させることに対する応答は、PP由来疎水性化合物のエクスノボでの生合成に加えて、Y.lipolyticaをOP5培地中で成長させたときにデノボでの生合成が起こることを示した。この結果は、PP油に加えて、少なくとも1つの非疎水性基質が成長培地中に存在したことを示唆している。デノボでの生合成を補助し得るOP5培地中の可能性のある親水性化合物は、Tween80からのポリソルビタン部分である。Y.lipolyticaにおけるエリスリトール形成に顕著に影響を及ぼす浸透圧の増加は、脂肪酸形成に対して正の影響を有していなかった(
図31)。全体として、パラメータの最適化により、脂肪酸力価1.6g L
-1が得られ、これは元々の発育条件と比較して、脂肪酸力価のほぼ4倍の増加であった。これは、プラスチック生物変換プロセスから今日までに報告された最も高い産物力価であり、それぞれPP(0.44g L
-1)又はPE(0.5g L
-1)からの以前の脂肪酸及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)力価を超えるものであった。
【0165】
ポストコンシューマーポリプロピレンが、Y.lipolytica脂質生合成に影響を及ぼす:例示されるプロセスの現実的な適用可能性をシミュレーションするために、本願発明者らは、OP5培地(バージンPPペレットに由来する)及びPCOP5培地(ポストコンシューマーPPパッケージングに由来する)中の成長の間のY.lipolyticaによる脂質生合成を比較した(
図25)。バージン及びポストコンシューマーPP熱分解油の炭素プロファイルは、両方のPP油源が、多数の分岐鎖脂肪族アルコールを有していたという点で類似していた。バージンPP油は、20種類の異なる化合物を含有しており、炭素化合物の大部分(51%)は、分岐鎖脂肪族アルコールであり、続いて、分岐鎖アルケン(16%)、環状化合物(12%)、及び直鎖アルケン(6%)であった。比較すると、ポストコンシューマーPP油において、25種類の異なる炭素化合物が見出され、これらの61パーセントは分岐鎖脂肪族アルコールであり、続いて、環状化合物(15%)、分岐鎖アルケン(8%)及び直鎖アルコール(8%)であった。
【0166】
PCOP5培地中のY.lipolytica成長の間のバイオマス力価は、OP5培地中の成長の間に測定されたものと同等であった(
図32)。対照的に、PCOP5で成長させた細胞からの総回収産物は、OP5で成長させた細胞から回収された量のおよそ3分の1であり、細胞脂肪酸含有量は、PCOP5培地中で成長した細胞から顕著に低下し、OP5で成長させた細胞によって産生される量のわずか6%であった。全体として、PCOP5培地中の成長後のY.lipolyticaからの総回収産物は、20パーセント未満の脂肪酸を含有しており、残りは、HD及び他の産物で構成されていた。
【0167】
バージンPPとは異なり、ポストコンシューマーPPは、安定性及び寿命を促進するための添加剤を含有する。PPパッケージングに使用される最も一般的な添加剤のいくつかには、酸化防止剤、スリップ剤及び熱安定化剤が含まれる。本願発明者らは、UV照射によって引き起こされる酸化ストレスを遅らせるために使用される化合物である重金属系スリップ剤及び有機ホスフェート酸化防止剤が、Y.lipolyticaにおける脂質生合成を妨げ得ると仮定した。酸化防止剤が、反応性酸素種が脂質蓄積を誘導することを防止することによって、肝細胞における脂質生合成を妨げ得ることが示されている。カドミウム、スズ、及び鉛等の重金属は、真核細胞におけるERストレス及び脂質過酸化を増加させ、Y.lipolytica脂質生合成に悪影響を及ぼす可能性があることも示されている。全体として、PCOP5培地中の成長後の回収産物の組成は、HDから脂肪酸への生物変換の障害を示し、HD蓄積を引き起こした。加えて、回収産物中の高い割合の他の化合物は、PCOP5に由来する炭素の多くが他の代謝経路にチャネリングされたことを示唆していた。対照的に、OP5培地中の成長の間に、他の産物は、成長の5日後まで、他の産物が蓄積し始めなかった(
図27A)。まとめると、ポストコンシューマーPPに由来する成長培地は、バージンPPと比較して、その代謝と関連する更なる複雑さを有する。
【0168】
Y.lipolyticaは、炭素が豊富なときに貯蔵脂質を蓄積し、栄養素が不足したときに代謝活動を補助するためにこの貯蔵物を使用するように進化してきた。Y.lipolyticaによる単一細胞油の産生を最適化するには、貯蔵脂質消費を最小限にしつつ、脂質貯蔵を最大化する必要がある。この目的を達成するために、貯蔵脂質転換を妨害すること、脂質生合成から炭素を吸い上げる競合代謝経路を除外すること、適応的実験室進化(ALE)による脂質産生能力を増強させた株を選択することを含む、多様な戦略が開発されてきた。特定のプラスチックに関連する脂質生合成の阻害剤を取り扱うようにY.lipolyticaを操作することで、産物力価を増加させる可能性がある。例えば、有機ホスフェート分解を補助する遺伝子を導入することで、細胞脂質含有量を改善した。代替的に、成長培地の組成を改変することによって、脂質生合成の効率を増加させることもできる。Patel and Matsakas(2019)は、廃棄調理油の超音波処理が、成長基質中の脂肪酸の鎖長を短くすることによって、単一細胞油の収量を増加させたことを報告した。一般に、プラスチックに適応した油脂形成性酵母の集合を開発することは、単一細胞油産生のための投入物としてプラスチック廃棄物を使用するために不可欠である。
【0169】
OP5又はPCOP5培地中で成長したY.lipolytica細胞についての脂肪酸プロファイル:OP5及びPCOP5上で120時間成長したY.lipolytica細胞についての細胞内FAプロファイルを分析した。FAプロファイルは、いずれかの培地上で成長した細胞について、複雑ではなく、各FAプロファイルにおいて、4つのFAのみが検出された。OP5及びPCOP5の両方について、パルミチン酸は、優勢なFAであり、OP5で成長させた細胞について検出されたFAの72パーセント、PCOP5で成長させた細胞について81パーセントであった。ペンタデカン酸は、OP5で成長させた細胞中に存在し、検出されたFAプロファイルの8.1パーセントであったが、PCOP5で成長させた細胞には存在しなかった。全体として、FAプロファイルは、細胞をOP5上で成長させた場合、PCOP5上で成長させた場合と比較して、有意差はなかった。
【0170】
考察:微生物生物変換は、プラスチック廃棄物を付加価値のある生化学物質へとアップサイクルする可能性がある。以前の実施例において、PPの熱解重合を使用して、Y.lipolyticaを成長させ、脂肪酸を産生させるのに好適な微生物成長培地を作製することができることを示した。本実施例において、乳化剤としてオレイン酸を必要としなかった、改善されたPP由来培地を開発した。オレイン酸を除去することによって、PPに由来する炭素の量は、OP4培地中の51パーセントからOP5培地中の80パーセントまで増加した。加えて、発酵条件を最適化することによって、脂質収量は、Y.lipolyticaをOP4培地中で成長させた場合の収量と比較して、4倍超多かった。これらの改善は、PPアップサイクルのための生物学的プロセスを開発する上で顕著な進歩である。
【0171】
油脂形成性酵母による脂質貯蔵は、ストレスに対する生理学的適応である。これにより、細胞成長の条件が悪い場合に細胞当たりの脂質産生が最大になり、低いバイオマスをもたらすため、脂質収量を最大化するのに課題が生じる。逆に、細胞成長の条件が許容的である場合、脂質貯蔵は低い。これらの挙動は、2箇所で提示されたデータにおいて、明らかであった。第1に、OP5培地中のY.lipolytica成長に対する、OP4培地中のY.lipolytica成長の比較は、OP4培地中の成長の間に、より大きなバイオマス蓄積を示したが、OP5培地中の成長の間に有意に高い細胞脂質含有量を示した。これらの結果は、OP4培地中の容易に同化されたオレイン酸の存在と相関関係にあり、これはOP5培地中には存在しなかった。第2に、pH=4及び低い接種密度(よりストレスの多い条件)では、成長は最も低く、細胞当たりの脂質含有量は最も大きかった。逆に、pH=6及び高い接種密度(より許容的な条件)では、成長は最も大きかったが、細胞当たりの脂質含有量は最も低かった。最も高い全体的な脂質収量は、pH=6及び接種密度3(その他と比較して中間的な条件のセット)で起こった。これらの条件下では、成長も、細胞当たりの脂質含有量も最も高くはなかったことが注目される。これらの所見は、以前の試験と同等であり、Y.lipolyticaの接種サイズが、発酵の間に成長及び産物形成の両方に影響を及ぼし、接種密度が低いほど、より高い細胞脂質含有量を好み、接種密度が高いほど、バイオマス成長が良くなることを示した。
【0172】
最も効果的であった接種密度及びpHを出発点として使用し、次いで、追加の変数を最適化することによって、より高い脂質収量を追求することに決定した。いくつかの環境因子は、培地のC/N比及び浸透圧を含む、Y.lipolyticaにおける産物形成に影響を及ぼすことが示されている。80以上のC/N比は、脂質収量を更に増加させた。C/N比がより大きくなると、窒素不足のシグナルが送られ、多くの場合、脂質貯蔵が起こった。対照的に、Y.lipolyticaにおけるエリスリトール形成に顕著に影響を及ぼす浸透圧の増加は、脂質形成の正の影響を有していなかった。全体として、パラメータの最適化は、元々の発育条件と比較して、脂質収量の4倍超の増加をもたらした。
【0173】
本プロセスの現実的な適用可能性をシミュレーションするために、アモルファスバージンPPとは異なり、安定性及び寿命を促進するための添加剤を含有するポストコンシューマーPPを調査した。PPパッケージングに使用される最も一般的な添加剤のいくつかには、酸化防止剤、スリップ剤及び熱安定化剤が含まれる。PCOP5培地中の成長の間に、成長に悪影響はなかったが、脂質収量は、OP5培地中の成長と比較して、有意に低下したことが決定された。UV照射によって引き起こされる酸化ストレスを遅らせるために使用される化合物である重金属系スリップ剤及び有機ホスフェート酸化防止剤が、Y.lipolyticaにおける脂質生合成を妨げ得ると仮定した。酸化防止剤は、反応性酸素種が脂質蓄積を誘導することを防止することによって、肝細胞における脂質生合成を妨げ得ることが示されている。カドミウム、スズ、及び鉛等の重金属は、真核細胞におけるERストレス及び脂質過酸化を増加させ、Y.lipolytica脂質生合成に悪影響を及ぼす可能性があることも示されている。
【0174】
ポストコンシューマーPPをアップサイクルし、産物収量を更に増加させるために、どのようなアプローチを追求することができるか?成長条件を最適化することに加えて、Y.lipolyticaゲノムを変化させることが有益であり得る。異種有機ホスフェートヒドロラーゼ遺伝子を導入することで、Y.lipolyticaが有機ホスフェート添加剤を分解するのを補助し、おそらく脂質蓄積を増加させ得る。操作された代謝産物の解毒は、他の場所で使用されている。例えば、阻害性キシロース濃度を減少させるための外因性遺伝子の導入は、リグノセルロースの生物変換を改善した。類似の戦略が、PP生物変換に利益をもたらし得る。重金属がY.lipolytica活性に及ぼす影響は、Y.lipolytica二型及びバイオフィルム形成に対するそれらの影響以外には、あまり理解されていない。脂肪酸産生に対するそれらの影響を軽減するためのステップは、げっ歯類腸におけるカドミウム取り込みを軽減する二価金属イオントランスポーター遺伝子であるDMT1遺伝子をY.lipolyticaゲノム内に組み込むことを含み得る。加えて、細胞脂質含有量を改善するためのいくつかの代謝操作戦略が調査されてきた。これらの戦略としては、脂質異化遺伝子に対する機能喪失変異の導入、及び天然の脂質生合成遺伝子の過剰発現が含まれる。一般に、脂質収量を改善するために使用することができるいくつかのアプローチが存在し、プラスチックアップサイクルのための生物学的プロセスの可能性は、追加の調査を必要とする。
【0175】
添付の特許請求の範囲の組成物及び方法は、本明細書に記載される特定の組成物及び方法によって範囲が限定されず、これらは、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示として意図され、機能的に等価である任意の組成物及び方法は、特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。本明細書で示され、説明されるものに加えて、組成物及び方法の様々な改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。更に、本明細書で開示される特定の代表的な材料及び方法ステップのみが具体的に説明されるが、材料及び方法ステップの他の組み合わせも、具体的に列挙されていないとしても、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。したがって、ステップ、要素、構成要素、又は成分の組み合わせは、本明細書で明示的に言及されてもよいが、ステップ、要素、構成要素、及び成分の他の組み合わせは、明示的に記載されていないにもかかわらず、含まれる。本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語及びその変形語は、「含む(including)」という用語及びその変形語と同義に使用され、開放的で非限定的な用語である。「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、様々な実施形態を説明するために本明細書で使用されてきたが、「~から本質的になる」及び「~からなる」という用語は、より具体的な実施形態を提供するために、「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用されてもよく、また、開示される。本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、「the」といった単数形は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の参照物を含む。
【国際調査報告】