(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】結合モジュレーター
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20230718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230718BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230718BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230718BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230718BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230718BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230718BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K45/00
A61K47/68
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
C07K16/00 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580899
(86)(22)【出願日】2021-06-26
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 US2021039276
(87)【国際公開番号】W WO2021263221
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501133
【氏名又は名称】アリマブ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Allymab, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】バチュ,ジャヤント ベンカタ ナゲンドラ エス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD66
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084MA05
4C084NA13
4C084ZB081
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4C084ZB111
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4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、結合モジュレーター(BMOD)システムを提供する。BMODは、標的分子および/または治療分子(TOAT)と結合し、BMOD-TOAT(BMODT)複合体を形成できる。BMODがTOATに結合すると、BMODはTOATおよび/またはBMODT複合体の様々な特性に影響を与え得る。最初のBMODはTOATに結合して、TOATの特性に影響を与えるBMODT複合体を形成し、1以上の追加のBMODがそのBMODTに結合してBMODTの特性をさらに変更できる。これを利用して、BMODT複合体の形成に用いたTOATよりも高い効果および機能を有するBMODT複合体を形成できる。この高い有効性は、BMOD(複数可)によってエフェクター細胞との結合が増した結果であり得る。また、BMODを抗体に結合させることにより、抗体バイオベターを作ることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの結合モジュレーター(BMOD);および
少なくとも1つの標的化および治療用薬剤(TOAT)
を含み、ここで、少なくとも1つのBMODは、少なくとも1つのTOATに結合している、BMOD-TOAT(BMODT)複合体。
【請求項2】
BMODまたはトルゥモジュレーターが、抗CD3 scFv、抗CD16 scFv、ナノボディ、抗体ベースの分子(複数可)、免疫グロブリンベースの分子(複数可)、BiTe、BiKe、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、ヌクレオチド、合成レクチン、免疫グロブリン結合ペプチド、Fc結合ペプチド、アルブミン結合ペプチド、Fc結合リガンド、非カノニカルアミノ酸を有するFcIII-scFv融合タンパク質、非カノニカルアミノ酸を有するFcIIIベースの融合タンパク質、ncAA(複数可)とscFvを融合したFcIIIペプチド、免疫グロブリンベースの融合分子(複数可)、抗体フラグメント、免疫グロブリンフラグメント、抗体誘導体、免疫グロブリンフラグメント、ncAA(複数可)を有するペプチド、ncAA(複数可)を含む融合タンパク質、結合インターフェース、ncAA(複数可)を有する結合インターフェース、ncAA(複数可)を有する融合タンパク質、人工免疫グロブリンベースの融合分子(複数可)、プロテインA、配列番号1-42の1以上を含むタンパク質、配列番号1-42の1以上を含むペプチド、配列番号1-42の1以上の配列を含むタンパク質、配列番号1-42の1以上の配列を組み合わせたタンパク質、サイトカイン(複数可)、アルブミン、双性イオンアミノ酸、プロテインG、糖鎖結合分子および炭水化物からなるリストから選択される、請求項1記載のBMODT複合体。
【請求項3】
TOATが、生物製剤、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、Fabフラグメント、免疫グロブリン(複数可)、エピトープに結合できる分子、抗原に結合できる分子、自己抗原に結合できる分子、生物学的関連物質に特異的に結合できる分子、リガンド、IgG、抗生物質、治療剤および治療の成分からなるリストから選択される、請求項1記載のBMODT複合体。
【請求項4】
BMODがリンカーにより、またはリンカーなしでTOATに結合している、請求項2記載のBMODT複合体。
【請求項5】
請求項1記載のBMODT複合体を提供するために、結合モジュレーター(BMOD)を治療剤(TOAT)に結合させる方法であって、
BMODおよびTOATを混合する工程、および
混合工程からBMODTを生成する工程
を含む、方法。
【請求項6】
BMODおよびTOATを混合することが、PEDIP反応、化学反応、光反応、非放射線関与反応または近接型反応においてBMODおよびTOATを混合することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
PEDIP反応においてBMODおよびTOATを混合することが、化学反応、光化学反応またはFc結合ペプチドを用いることをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
PEDIP反応を用いて、scFv、アフィマー、アプタマー、ナノボディ、結合インターフェース、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、免疫グロブリン、免疫グロブリン誘導体、免疫グロブリンフラグメント、非トキシン、無毒結合インターフェース、非トキシン結合インターフェースおよびBMODの少なくとも1つを、TOATまたは抗体に結合させることをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の少なくとも1つのBMODT複合体を含む療法剤を投与する方法であって、
患者から生体情報を収集する工程;
生物学的データを解析し、バイオマーカー(複数可)を決定する工程;
バイオマーカーデータに基づき、BMODまたは人工scFvを選択する工程;
バイオマーカーデータに基づき、TOATまたは抗体を選択する工程;
BMODまたは人工scFvをTOAT/抗体に結合させる工程;および
BMODT複合体を該患者に投与する工程
を含む、方法。
【請求項10】
BMODT複合体を含む療法剤が、癌、自己免疫疾患、希少疾患、炎症性疾患、内科疾患および内科病状のうちの少なくとも1つを診断または処置するために用いられる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該TOAT、トルゥモジュレーター、BMODTおよびBMODのうち少なくとも1つが、固体支持体、半固体支持体、CD3、CD16、PD-L1、CTLA-4、PD1、NKG2D、IL-6、TNF、HER2、CD20、EGFR、IL-17R、IL-12、IL-23、VEGF、GD-2、ダビガトラン、CD20、BLYS、BAFF、Fc、IgG Fc領域、IL-5、PCSK9、PDGFR、C.difficile トキシンB、マクロファージ、免疫細胞、人工細胞、エフェクター細胞、CD33、CD123、CD22、FIXa、FX、IL-5R aサブユニット、CD47、チェックポイント阻害剤、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、ウイルスタンパク質、自己抗原、微生物タンパク質、ヒトインビトロタンパク質、細菌タンパク質、IgE、IL-12/23、P-セレクチン、病原体、CD4、CD19、RSV、CD52、ITGA4、VEGF-A、C5、IL-1B、TNFa、IL-6R RANKL、BLyS、CD30、炭疽菌 PA, EGFR2、a4B7 インテグリン、IL-17a、CD38、SLAMF7、IL-23 p19、EpCAM、BAFF、Tau、βアミロイド、アミロイドβ、Fc受容体(複数可)、IL-4Ra、第IXa因子、第X因子、FGF23、CCR4、CGRP、IgE Fc領域、Fc領域、CGRPR、フォン・ヴィレブランド因子に結合する、請求項2記載のBMODT複合体。
【請求項12】
BMODT複合体が、スーパーブロッカーを含み、そこでTOATが、TOATと同一または類似の標的化、結合性または特異性特性を有するBMODで修飾されるか、またはそれと結合されている、請求項1記載のBMODT複合体。
【請求項13】
BMODT複合体が、変動ブロッカーを含み、そこでTOATが、TOATの標的と関連する、結合する、またはそれと同じクラスの標的に対する標的化、結合性または特異性特性を有するBMODで修飾されているか、またはそれと結合されている、請求項1記載のBMODT複合体。
【請求項14】
BNODT複合体が、コンボブロッカーを含み、そこでTOATが、TOATの標的と一緒にまたは組み合わせて標的とされる標的に対する標的化、結合性または特異性特性を有するBMODで修飾されているか、またはそれと結合されている、請求項1記載のBMODT複合体。
【請求項15】
BMODが、TOAT結合剤、トルゥモジュレーター、抗HAMA、ライダー、吸着防止剤およびデイムナイザーを含む複数部分を含む、請求項1記載のBMOD。
【請求項16】
BMODが、ENシステムがTOATに結合しているときにTOATおよびBMODT複合体の性能および効力を増大させるエンハンサー(EN)システムを含む、請求項1記載のBMOD。
【請求項17】
免疫グロブリンに基づき、TOATに結合し、かつIgGおよび抗体を含む、免疫グロブリンエンゲージャー(IgENG)システムをさらに含む、請求項16記載のENシステム。
【請求項18】
IgENGが、抗体ベースの治療剤または免疫グロブリンベースのTOATのADCC、TDCC、ADCP、CDC、半減期、曝露、薬力学的特性、薬物動態学的特性、効力、機能および細胞毒性の少なくとも1つを増加または減少させるために用いられる、請求項17記載のIgENGシステム。
【請求項19】
IgENGシステムが、それが基づくTOATと比較したとき、増加した特異性および価数でBMODT複合体を作成するために用いられる、請求項18記載のIgENGシステム。
【請求項20】
BMODが、DIMシステムがTOATに結合しているとき、TOATおよびBMODT複合体の性能および有効性を低下させるように配置されたディミニッシャー(DIM)システムを含む、請求項1記載のBMOD。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫学、免疫療法およびタンパク質工学の分野に関し、具体的には、抗体、エンゲージャー、バイオベター(biobetter)、結合インターフェース、治療薬、治療用抗体、改良抗体、結合インターフェース、およびタンパク質工学に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療用抗体は、様々なヒト悪性腫瘍および自己免疫疾患において、全生存時間を延長し、または疾患の進行を抑制し得る有効な医薬品として認識されている。モノクローナル抗体の高い親和性および特異的結合は、標的免疫療法の開発の基礎となっており、ここで、治療用分子は、抗体によって特異的に結合される抗原を発現する細胞へ送達するために抗体に結合される。また、ヒト抗体定常領域のエフェクター機能を組み込んだ組換え抗体も作製されている。このように、治療用抗体は非標識型または非共役型で有効である。悪性腫瘍の処置には、抗体依存性細胞傷害(ADCC)誘導能および補体活性化能を含むエフェクター機能が有用である。IgEの阻害などのエフェクター機能は、自己免疫疾患またはアレルギーの処置に有用である。治療用抗体の例としては、抗CD20抗体のリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、抗CD80抗体のガリキシマブ、抗CD23抗体のルミリキシマブなどが挙げられる。RITUXAN(登録商標)は、B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)およびB細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)の低悪性度型および高悪性度型を含む、様々なリンパ系悪性腫瘍を有する患者に有効であることが証明されている。ガリキシマブおよびルミリキシマブは両方とも、B細胞悪性腫瘍および自己免疫/アレルギー疾患の処置のための臨床治験または前臨床治験で成功を収めている。
【0003】
オリゴ糖は、物理的安定性、プロテアーゼに対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動態および特異的生物活性などの治療用糖タンパク質の有効性に関連する特性に大きな影響を与え得る。このような特性は、オリゴ糖の有無だけでなく、その特異的構造にも依存して変わり得る。オリゴ糖の構造と糖タンパク質の機能との間には、いくつかの一般論が可能である。例えば、ある種のオリゴ糖は、特定の糖鎖結合タンパク質との相互作用により、血流からの糖タンパク質の迅速なクリアランスを仲介する一方、他のオリゴ糖は、抗体と結合し、望ましくない免疫反応を引き起こし得る。最近の研究では、糖化が抗体エフェクター機能に寄与していることも示されている。
【0004】
特に再発または難治性の疾患において、持続的な寛解または疾患の完全回復を達成できるよう、抗体医薬およびその他の治療薬の有効性を改善させることが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、結合モジュレーター(BMOD)システムを構築することにより、先行技術の欠点を克服する。BMODは、標的化および/または治療用分子(TOAT)と結合して、BMOD-TAOT(BMODT)複合体を形成できる。なお、本明細書中、BMODTおよびBMODT複合体という用語は互換的に用いられ、適切な使用法は当業者には明らかであり得る。BMODがTOATに結合すると、BMODはTOATおよび/またはBMODT複合体の様々な特性に影響を与え得る。BMODおよびTOATの結合は、BMODT複合体を作製し得る。BMODTは、同じ標的または作用を有する既存の生物製剤の改良版であり得るバイオベターであり得る。バイオベターは、改善された安全性、有効性および/または製造容易性などを有し得る。BMODTは、既存の生物薬剤および/または分子の改良版となり得る、改良された薬剤および/または抗体であり得る。改良された薬剤および/または抗体は、開発中であり得る、および/または改善された安全性、有効性および/または製造容易性などを有し得る。BMODは、BMODT複合体の様々な特性に影響を与え得る。換言すれば、最初のBMODがTOATに結合してBMODT複合体を作製し、TOATの特性に影響を与え、1以上の追加のBMODがそのBMODTに結合してBMODTの特性をさらに変更できる。換言すれば、最初のBMODがTOATに結合して、TOATの特性および/またはそれとは異なる特性を有するBMODT複合体を作製し、1以上の追加のBMODがそのBMODTに結合してBMODTの特性をさらに変更することができる。BMODTに結合する後続のBMODは、BMODTの特性にさらに修飾的な影響を与え得る。これを利用して、BMODT複合体の作製に用いたTOATよりも高い効果および/または機能を有するBMODT複合体を作製できる。この高い有効性は、BMODによってエフェクター細胞との結合が高まった結果であり得る。例えば、現在の抗体医薬の多くは、フコシル化によって効き目が弱くなることがある。このフコシル化は、抗体とナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などのエフェクター細胞との相互作用の有効性を低下させ得る。BMODはこれらのエフェクター細胞にも結合でき、このBMODに抗体などのTOATを結合させると、BMODT複合体を形成し、このBMODT複合体はTOATおよびBMODの両方を介してエフェクター細胞と相互作用でき、より効果的に相互作用を誘導し得る。このBMODの技術は、新しい治療法の開発および古い治療法の救済につながる。BMOD技術は、細胞傷害能および結合可能性/結合能を含め、現在の治療薬および/またはTOATの有効性および/または機能性を改善できる。
【0006】
例示的な態様において、BMOD-TOAT(BMODT)複合体を提供し、少なくとも1つの結合モジュレーター(BMOD)および少なくとも1つの標的化および/または治療用薬剤(TOAT)を含み、ここで、少なくとも1つのBMODは少なくとも1つのTOATに結合している。BMODまたはトルゥモジュレーター(trumodulator)は、抗CD3 scFv、抗CD16 scFv、ナノボディ、抗体ベースの分子(複数可)、免疫グロブリンベースの分子(複数可)、BiTe、BiKe、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、ヌクレオチド、合成レクチン、免疫グロブリン結合ペプチド、Fc結合ペプチド、アルブミン結合ペプチド、Fc結合リガンド、非天然型アミノ酸を有するFcIII-scFv融合タンパク質、非天然型アミノ酸を有するFcIIIベースの融合タンパク質、ncAA(複数可)を有するFcIIIペプチドとscFvの融合分子、抗体フラグメント、免疫グロブリンフラグメント、抗体誘導体、免疫グロブリンフラグメント、ncAA(複数可)を有するペプチド、ncAA(複数可)を含む融合タンパク質、結合インターフェース、ncAA(複数可)を有する結合インターフェース、ncAA(複数可)を有する融合タンパク質、人工免疫グロブリンベースの融合分子(複数可)、プロテインA、配列番号1-42(本明細書に添付の配列表より)の1以上の配列を含むタンパク質、配列番号1-42の1以上の配列を含むペプチド、配列番号1-42の1以上の配列を含むタンパク質、配列番号1-42、配列番号1-42の1以上の配列を組み合わせたタンパク質、サイトカイン(複数可)、アルブミン、双性イオンアミノ酸、プロテインG、糖鎖結合分子、および炭水化物からなるリストから選択され得る。例示的に、TOATは、生物製剤、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、Fabフラグメント、免疫グロブリン(複数可)、エピトープに結合できる分子、抗原に結合できる分子、自己抗原に結合できる分子、生物学的に関連する物質に特異的に結合できる分子、リガンド、IgG、抗生物質、治療剤および治療剤成分からなるリストより選択できる。BMODはリンカーにより、またはリンカーなしでTOATに結合できる。
【0007】
一態様において、BMODT複合体を提供するように、上記で定義のBMODをTOATに結合させる方法は、BMODおよびTOATを混合する工程、およびそれによって、混合工程からBMODTを作製する工程を含む。BMODおよびTOATを混合する工程は、PEDIP反応、化学反応、光反応、非放射線関与反応(non-radiation involved reaction)、または近接ベースの反応においてBMODおよびTOATを混合することをさらに含み得る。また、PEDIP反応におけるBMODおよびTOATの混合は、化学反応、光化学反応またはFc結合ペプチドを用いることを含む。TOATまたは抗体に、scFv、アフィマー、アプタマー、ナノボディ、結合インターフェース、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、免疫グロブリン、免疫グロブリン誘導体、免疫グロブリンフラグメント、非トキシン、無毒結合インターフェース、非トキシン結合インターフェースおよびBMODのうち少なくとも1つを、PEDIP反応を用いて結合させることができる。
【0008】
一態様では、少なくとも1つのBMODT複合体を含み、(a)患者から生物学的データを収集し、(b)生物学的データを分析してバイオマーカー(複数可)を決定し、(c)バイオマーカーデータに応じてBMODまたは人工scFvを選択し、(d)バイオマーカーデータに応じてTOATまたは抗体を選択し、(e)BMODまたは人工scFvをTOAT/抗体に結合させ、BMODT複合体を患者へ点滴/投与する方法を含む、治療剤投与法を提供する。BMODT複合体を含む療法は、癌、自己免疫疾患、希少疾患、炎症性疾患、内科的疾患および/または内科的状態の診断または治療に使用できる。
【0009】
一態様において、BMODT複合体は、TOAT、トルゥモジュレーター、BMODTおよびBMODの少なくとも1つが、固体支持体、半固体支持体、CD3、CD16、PD-L1、CTLA-4、PD1、NKG2 D、IL-6、TNF、HER2、CD20、EGFR、IL-17 R、IL-12、IL-23、VEGF、GD-2、ダビガトラン、CD20、BLYS、BAFF、Fc、IgG Fc領域、IL-5、PCSK9、PDGFR、C.difficile トキシンB、マクロファージ、免疫細胞、人工細胞、エフェクター細胞、CD33、CD123、CD22、FIXa、FX、IL-5 Raサブユニット、CD47、チェックポイント阻害剤、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、ウイルス性タンパク質、自己抗原、微生物性タンパク質、ヒトインビトロタンパク質、細菌性タンパク質、IgE、IL-12/23、P-セレクチン、病原体、CD4、CD19、RSV、CD52、ITGA4、VEGF-A、C5、IL-1B、TNFa、IL-6R RANKL、BLyS、CD30、炭疽菌由来PA、EGFR2、a4B7 インテグイン、IL-17a、CD38、SLAMF7、IL-23 p19、EpCAM、BAFF、Tau、βアミロイド、アミロイドβ、Fc受容体(複数可)、IL-4Ra、第IXa因子、第X因子、FGF23、CCR4、CGRP、IgE Fc領域、Fc領域、CGRPRおよびフォン・ヴィレブランド因子に結合するように、提供される。BMODTは、スーパーブロッカーであってよく、そこでTOATは、TOATと同一または類似の標的化、結合性または特異性特性を有するBMODで修飾されているか、またはそれと結合されている。BMODT複合体は、変動ブロッカーであってよく、そこでTOATは、TOATの標的と関連する、結合する、または同じクラスの標的に対する標的化、結合性または特異性特性を有するBMODで修飾されているか、またはそれと結合されているBMODT複合体であり得る。BMODT複合体は、コンボブロッカー(combo blocker)であってよく、そこでTOATが、TOATの標的と一緒にまたは組み合わせて標的とされる標的に対して、標的化、結合性または特異性特性を有するBMODで修飾されているか、またはそれと結合されているコンボブロッカーであり得る。BMODは、TOAT結合体、トルゥモジュレーター、抗HAMA、ライダー(rider)、吸着防止剤およびデイムナイザー(deimmunizer)などの複数部分から構成できる。BMODは、エンハンサー(EN)システムがTOATに結合しているときに、TOATおよびBMODT複合体の性能および効力を増加させるENシステムを含み得る。免疫グロブリンエンゲージャー(IgENG)システムは、免疫グロブリンに基づいて、TOATに結合するENシステムを提供でき、IgGおよび抗体を含む。IgENGは、抗体ベースの治療薬または免疫グロブリンベースのTOATのADCC、TDCC、ADCP、CDC、半減期、曝露、薬力学的特性、薬物動態学的特性、効力、機能性および細胞毒性の少なくとも1つを増加または減少するために使用できる。IgENGシステムは、そのベースとなるTOATと比較して、特異性および価数が向上したBMODT複合体を生成するために使用できる。ディミニッシャー(diminisher;DIM)システムを提供でき、BMODを含む。DIMシステムがTOATに結合されると、TOATおよびBMODT複合体の性能および効力が低下するように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下に、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】
図1aは、例示的な態様による、BMODT複合体およびその構成要素を示す模式図である。
図1bは、例示的な態様による、BMODがリンカーでTOATに結合されるBMODT複合体を示す模式図である。
図1cは、例示的な態様による、TOATを示す模式図である。
図1dは、例示的な態様による、可能な部分を有するBMODの模式図である。
【
図2】
図2aは、例示的な態様による、リンカーを用いずに抗体のFc領域に結合するBMODを有する抗体ベースのBMODT複合体の模式図である。
図2bは、例示的な態様による、リンカーを用いずに抗体のFab領域に結合するBMODを有する抗体ベースのBMODT複合体の模式図である。
図2cは、例示的な態様による、リンカーを用いた、抗体のFab領域の抗原結合部位の近くにBMODが結合する抗体ベースのBMODT複合体の模式図である。
図2dは、例示的な態様による、リンカーを用いた、抗体のFab領域の抗原結合部位から離れた位置にBMODが結合した抗体ベースのBMODT複合体の模式図である。
図2eは、例示的な態様による、リンカーを使用した、抗体のFc領域にBMODが結合した抗体ベースのBMODT複合体の態様を示す模式図である。
図2fは、例示的な態様による、少なくとも1つのリンカーを用いて、抗体のFc領域に結合するBMODを有する抗体ベースのBMODT複合体の模式図である。
図2gは、例示的な態様による、リンカーを用いて抗体のFc領域の一部に結合するBMODを有する抗体ベースのBMODT複合体の模式図である。
【
図3】
図3aは、例示的な態様による、リンカーを有するBMODT複合体の態様を形成するためにBMODに結合された免疫グロブリンベースのTOATの模式図である。
図3bは、例示的な態様による、リンカーを用いずにBMODT複合体の態様を形成するためにBMODに結合された免疫グロブリンベースのTOATの模式図である。
図3cは、例示的な態様による、少なくとも1つのリンカーを用いて複数のTOAT体に結合するBMODを有するBMODT複合体の模式図である。
【
図4】
図4は、例示的な態様による、BMODT複合体の製造およびBMODT複合体の投与のためのプロセスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、結合モジュレーター(BMOD)システムを構築することにより、先行技術の欠点を克服する。BMODは、標的化および/または治療用薬剤(TOAT)と結合し、BMOD-TAOT(BMODT)複合体を形成できる。BMODがTOATに結合すると、BMODはTOATおよび/またはBMODT複合体の種々の特性に影響を与え得る。BMODおよびTOATの結合は、BMODT複合体を形成し得る。BMODTは、同じ標的または作用を有する既存の生物製剤の改良版であり得るバイオベターであり得る。バイオベターは、安全性、有効性および/または製造の容易性などが改善されたものであり得る。BMODTは、既存の生物薬剤および/または分子の改良版となり得る、改良された薬剤および/または抗体であり得る。改良された薬剤および/または抗体は、開発中であってよく、ならびに/あるいは安全性、有効性および/または製造容易性などが改善されていてもよい。BMODは、BMODT複合体の様々な特性に影響を与え得る。換言すれば、最初のBMODがTOATに結合してBMODT複合体を作製し、TOATの特性に影響を与え、1以上の追加のBMODがBMODTに結合して該BMODTの特性をさらに変更することができる。換言すれば、最初のBMODがTOATに結合して、TOATの特性および/またはそれとは異なる特性を有するBMODT複合体を作製し、1以上の追加のBMODがそのBMODTに結合してBMODTの特性をさらに変更することができる。BMODTに結合する後続のBMODは、BMODTの特性に対してさらなる修飾効果を与え得る。これを用いて、BMODT複合体(複数可)の作製に用いたTOATよりも高い効果および/または機能を有するBMODT複合体を作製できる。この高い有効性は、BMOD(複数可)によってエフェクター細胞との結合が増加した結果であり得る。例えば、現在の多くの抗体ベースの治療法は、フコシル化によって有効性が低下する可能性がある。このフコシル化は、抗体とナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などのエフェクター細胞との相互作用の有効性を低下させる可能性がある。BMODもこのエフェクター細胞に結合でき、このBMODに抗体などのTOATを結合させると、BMODT複合体を形成し、BMODT複合体はTOATおよびBMODの両方を介してエフェクター細胞と相互作用でき、より効果的に相互作用を導くことができる。このBMOD技術は、新しい治療法の開発および古い治療法の救済につながる。BMOD技術は、細胞毒性能および関与の可能性(potential/ability)を含め、現在の治療薬および/またはTOATの有効性および/または機能性を改善できる。
【実施例】
【0012】
図1aは、BMODT複合体およびその構成要素を示す模式図である。標的化および/または治療用物質は、TOAT100と称され得る。結合モジュレーター(BMOD)システムは、結合モジュレーター、BMODシステムまたはBMOD101と称され得る。BMOD101は、標的化および/または治療用TOAT(複数可)に結合して、BMOD-TAOT(BMODT)複合体103を形成することができる。TOAT100は、分子間相互作用、分子間力および/または親和性に基づく相互作用によりBMOD101に結合し、BMODT複合体103を形成できる。1つのTOATに複数のBMODを結合させることができる。1つのBMODに複数のTOATを結合させることができる。複数のTOATに複数のBMODを結合させることができる。BMODT複合体103におけるBMOD101とTOAT100との間の結合(複数可)は、化学結合、共有結合、光反応性結合、高親和性相互作用、生物物理的相互作用および/または生物物理的相互作用の組合せが挙げられ得る。BMOD101がTOAT100に結合されると、BMOD101は、TOAT100および/またはBMODTの種々の特性に影響を与え得る。BMODは、BMODT複合体の一部でありながら、場合によっては外部環境と相互作用し、BMODT複合体全体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、BMODが他の分子または原子と結合したり相互作用したりすると、BMODT複合体全体の立体構造が変化し得る。1以上の追加のBMODが既存のBMODT複合体に結合することもでき、追加のBMOD(複数可)はBMODT複合体の全体としての特性にさらに影響を与えることができる。影響を受ける様々な特性は、TOAT100及び/又はBMODT複合体103の特性を変更、変調、制御、又はその他の方法で影響を与えることを含むことができる。影響を受ける様々な特性は、結合特性、機能性、有効性、流体力学的直径、TOAT100および/またはBMODT複合体103の半減期、または他の様々な特性に影響を与えることを含み得る。BMOD101は、生体分子、タンパク質、ナノボディ、scFv、抗体ベース分子(複数可)、免疫グロブリンベース分子(複数可)、BiTe、BiKe、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、アフィボディ(affibody)、ナノ粒子、アプタマー、親和リガンド、シュピーゲルマー(spiegelmer)、ナノボディ、生体適合分子、分子、核酸、生物学的に関連のある物質と結合し得る分子、生物学的に関連する物質と結合できる分子構造、合成レクチン、タンパク質結合分子、生体分子結合生体分子、免疫グロブリン結合ペプチド、Fc結合ペプチド、Fc結合リガンド、プロテインA、プロテインG、トランスフェリン、ヒアルロン酸、FcIIIペプチド-SCFv融合タンパク質、融合タンパク質、糖鎖結合分子、および/または炭水化物であり得る。TOAT(記載されたTOAT100はその一例であることに留意されたい)は、薬剤、分子、分子構造、低分子、高分子、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、結合剤、Fabフラグメント、細胞、免疫グロブリン(複数可)、エピトープに結合できる分子、抗原に結合できる分子、自己抗原に結合できる分子、生物学的関連物質に特異的に結合できる分子、抗体フラグメント、抗体誘導体、リガンド、IgG、抗生物質、治療薬および/または治療薬の成分であり得る。BMOD101とTOAT100との間の結合力および/または分子力は、共有結合、イオン結合、光反応性結合、分子間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、化学結合、分子間相互作用、ファンデルワールス力、分子間相互作用および/または親和力に基づく相互作用を用いて作成され得る。BMOD101とTOAT100との間の結合力および/または分子力は、共有結合、イオン結合、光反応性結合、分子間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、化学結合、分子間相互作用、ファンデルワールス力、分子間相互作用および/または親和性に基づく相互作用であり得る(それらの組合せおよび複数を含む)。BMODT複合体および/またはTOATの結合特性、効力、細胞毒性、流体力学的直径および/または半減期は、BMODがTOATに結合した後に変化し得る。BMODT複合体103および/またはTOAT100の結合特性、流体力学的直径および/または半減期は、BMOD101がTOAT100に結合した後に変化し得る。TOATおよびまたはBMODT複合体の結合特性の変化は、親和性の変化、アビディティの変化、TOAT100が結合できる分子数の変化、TOAT100が結合できる分子の変化、結合の強さ、親和性、結合親和性の強さ等を含み得る。半減期の変化には、半減期の増加、半減期の減少が含まれ得る。細胞毒性の変化には、細胞毒性の増加、細胞毒性の減少が含まれ得る。効力の変化には、効力の増加、効力の減少が含まれ得る。流体力学的直径の変化には、流体力学的直径の増加および減少が含まれ得る。BMODシステム101は、TOAT結合体109およびトルゥモジュレーター111を含み得る。TOAT結合体109は、BMODシステム101とTOAT100との間の結合を可能にし、および/または容易にできる。TOAT結合体109は、Fc結合ペプチド、ペプチド、抗薬物抗体、生物学的薬剤に結合できる分子、バイオインターフェース(biointerface)、親和性表面、親和性ペプチド、親和性分子、非古典的アミノ酸(複数可)を有するFc結合ペプチド、アミノ酸、融合タンパク質、FcIII、Fc結合配列、非古典的アミノ酸(複数可)を有するFcIIIペプチド、非古典的アミノ酸(複数可)を有するFc結合配列、非古典的アミノ酸(複数可)を有するFc結合アミノ酸配列、Fc結合アミノ酸配列、免疫グロブリン結合ペプチド、プロテインA、および/または結合性リガンドであり得る。トルゥモジュレーター111は、TOAT100および/またはBMODT複合体103の結合特性、機能性、効力、特異性、選択性、流体力学的直径および/または半減期を含む種々の特性に影響を及ぼし得る。TOAT100および/またはBMODT103の種々の特性に影響を与えることは、特性を変更、改変、制御および/またはその他の方法で影響を与えることを含み得る。TOAT結合体109は、トルゥモジュレーター111と化学的に結合できる。TOAT結合体109は、トルゥモジュレーター111に融合できる。BMOD101は、TOAT結合体109および/またはトルゥモジュレーター111を含む融合タンパク質および/または融合分子であり得る。BMOD101は、非古典的アミノ酸(複数可)を含み得るラベルおよび/またはタグを有するトルゥモジュレーター111を含み得る。BMOD101は、TOAT結合体109、トルゥモジュレーター111および/またはトルゥモジュレーター111の人工/改変されたバージョンを含み得る融合タンパク質および/または融合分子であり得る。BMOD101は、非古典的アミノ酸(複数可)を含み得るトルゥモジュレーター111および/またはTOAT結合体109を含み得る。TOAT100および/またはBMOD101は、ペプチド合成、タンパク質合成、遺伝子構築物の翻訳、および/または他の合成/構築手段で製造できる。BMOD101は、化学結合を用いず、および/または、2つの別個の分子構造を結合させることなく製造できる。一態様において、トルゥモジュレーター111は、共役されることなく、および/または共役化学を用いることなく、TOAT結合体109に結合され得る。TOAT結合体109を含むように設計されたトルゥモジュレーター111は、BMOD101と結合できる。BMOD101は、トルゥモジュレーター111および/またはTOAT結合体109を含み得る。BMOD101は、トルゥモジュレーター111および/またはTOAT結合体109を含む融合タンパク質または融合分子であり得る。一態様において、TOAT結合体109は、ペプチド結合でトルゥモジュレーター111に結合され得る。PEptide-DIrected Photo-cross-linking(PEDIP)反応は、BMOD101をTOAT100に共役、結合、連結および/または接続するために用いられ得る。BMODおよびTOATを混合し、放射線を照射することにより、両者を共役、結合、連結および/または接続して、BMODT複合体を作製することができる。以下でさらに詳細に説明するように、トルゥモジュレーター111は、生体分子、タンパク質、ナノボディ、scFv、抗体ベース分子(複数可)、免疫グロブリンベース分子(複数可)、BiTe、BiKe、免疫グロブリン、抗体、アフィマー、アフィボディ、ナノ粒子、アプタマー、抗体誘導体、抗体フラグメント、結合インターフェース、親和性リガンド、シュピーゲルマー、ナノボディ、生体適合分子、分子、核酸、生物学的に関連する物質と結合できる分子、生物学的に関連する物質と結合できる分子構造、合成レクチン、タンパク質結合分子、生体分子結合生体分子、免疫グロブリン結合ペプチド、Fc結合ペプチド、Fc結合リガンド、プロテインA、プロテインG、トランスフェリン、ヒアルロン酸、FcIIIペプチド-SCFv融合タンパク質、融合タンパク質、糖鎖結合分子および/または炭水化物であり得る(それらの組合せおよび複数を含む)。
【0013】
エンハンサー(EN)システムは、ENシステムがTOAT100に結合しているときに、TOAT100および/またはBMODT複合体103の性能および/または有効性を増大させ得るBMODシステム101であり得る。エンハンサーシステムは、エンハンサーまたはENシステムと称され得る。ENシステムの一態様において、トルゥモジュレーター111は、TOAT100および/またはBMODT複合体103の有効性を高めるために用いられ得る。一態様において、ENシステムのトルゥモジュレーター111は、性能および/または有効分子(PERFEFF)であり得る。一態様において、ENシステムのトルゥモジュレーター111は、PERFEFFを標的とし、および/またはPERFEFFに結合できる。PERFEFFは、BMODシステム101、TOAT100および/またはBMODT複合体103の効力および/または性能を向上させることができる分子であり得る。PERFEFFは、標的化および/または結合されたときに、BMODシステム101、TOAT100、および/またはBMODT複合体103の効力および/または性能を増加させることができる分子であり得る。PERFEFFとは、細胞傷害性反応を引き起こすことができる何らかの分子、細胞傷害性反応の誘発および/または調節に寄与できる何らかの物質、望ましい反応、誘発された反応、標的を示す生体分子、標的細胞を示す生体分子、および/または細胞傷害性反応に寄与できる何らかの物質であり得る。PERFEFFの例としては、CD16、PD-1、PD-L1、CTLA-4、およびCD3を標的とする、および/またはCD3に結合する分子を挙げることができる。一態様において、トルゥモジュレーター111は、分子またはその分子の誘導体であり得、この場合、分子は、scFv、アフィマー、Fab領域、免疫グロブリン、結合インターフェース、ナノボディ、エピトープに結合できる分子、分子、TOAT融合タンパク質、TOAT融合分子、生物学的に関連する物質に特異的に結合できる分子、アプタマー、アフィボディ、TOAT、薬剤、トランスフェリン、ヒアルロン酸、合成レクチン、ペプチド、FcIIIペプチド-SCFv融合タンパク質、非古典的アミノ酸によるFcIIIペプチド-SCFv融合タンパク質、融合タンパク質、抗体、シュピーゲルマー、ポリエチレングリコール(PEG)などである。一態様において、トルゥモジュレーター111は、TOATであり得る。一態様において、TOATは、トルゥモジュレーター111であり得る。様々な態様において、TOATを作るために用いられ得る、または用いることができる薬剤は、トルゥモジュレーターを作成するために用い得る、または用いることができる。一態様において、ENシステムは、TOATに結合して、TOATのそれら/それよりも大きな流体力学的直径および/または半減期を有するBMODT複合体を作成するために用いられ得る。一態様において、ENシステムのトルゥモジュレーターは、PERFEFFへの標的化および/または結合を増加または最大化できる。一態様において、ENシステムのトルゥモジュレーターは、抗性能および/または効力分子(APERFEFF)に対する標的化および/または結合を最小化、低減または回避できる。APERFEFFは、標的化および/または結合されたとき、TOATおよび/またはBMODT複合体の効力および/または性能を低下させることができる。APERFEFFは、回避すべき標的分子および/または標的分子であり得る。APERFEFFは、BMODおよび/またはBMODT複合体の態様におけるトルゥモジュレーター111とできる。
【0014】
ディミニシャー(DIM)システムは、DIMシステムがTOAT100に結合されているときに、TOAT100および/またはBMODT複合体103の性能および/または効力を低下させることができるBMODシステム101であり得る。ディミニシャーシステムは、ディミニシャーとも呼ばれ得る。ディミニシャーシステムは、アフコシル化抗体、抗体、免疫グロブリンなどを含む、TOATの毒性を緩和および/または低減するために用いられ得る。ディミニシャーシステムの一態様において、トルゥモジュレーター111は、TOAT100および/またはBMODT複合体103の性能および/または効力を減少させるために用いられ得る。一態様において、DIMシステムのトルゥモジュレーター111は、APERFEFFであり得る。一態様において、DIMシステムのトルゥモジュレーター111は、APERFEFFを標的とし、および/またはAPERFEFFに結合できる。一態様において、DIMシステムのトルゥモジュレーター111は、生物学的に関連する分子を何も標的としておらず、および/または何も結合していなくてよく、ならびに/あるいは生物学的に関連のない分子を標的とし、および/またはそれと結合し得る。一態様では、トルゥモジュレーターは、(その環境中の)他の分子と一応相互作用することがあっても、特に何かに結合することを意図していない。これを利用して、半減期特性の延長または影響を与えることができる。一態様において、DIMシステムのトルゥモジュレーター111は、PERFEFFへの標的化および/または結合を最小化、低減または回避できる。一態様において、DIMシステムのトルゥモジュレーター111は、APERFEFF体への標的および/または結合を増加または最大化できる。一態様において、DIMシステムのトルゥモジュレーター111は、PERFEFFへの標的化および/または結合を減少させるか、または最小化できる。配列番号1~42と称される添付の配列表を参照のこと。種々の態様において、トルゥモジュレーター111は、scFv、ナノボディ、アフィマー、Fab領域、免疫グロブリン、エピトープに結合できる分子、生物学的に関連する物質に特異的に結合できる分子、アプタマー、シュピーゲルマー、アルブミン、ペプチド、アルブミン結合ペプチド(配列番号40など)、FcRn結合ペプチド(配列番号36-39など)、抗CD16 scFv(配列番号42など)、抗CD3 scFv(配列番号41など)、抗体、自己抗原、自己抗原フラグメント、抗体、抗体フラグメント、抗体誘導体、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、免疫グロブリン誘導体、アフィボディ、生物学的薬剤、scFvに融合されたFcIIIペプチド、scFv(配列番号1-2、4-11、16-28および35のような)に融合したncAA(複数可)を有するFcIIIペプチド、ペプチド/タンパク質(配列番号3、12-15および29-34のような)に融合したncAA(複数可)を有するFcIIIペプチド、アフィニティリガンド、アミノ酸、グリシン、セリン、Gly3Serリピート、グリシンおよびセリンの組合せ、Gly4Serリピート、PEGなど(の組合せおよびそれらの複数を含む)であり得る。種々の態様において、トルゥモジュレーター111は、scFv、ナノボディ、アフィマー、Fab領域、免疫グロブリン、エピトープに結合できる分子、生物学的に関連する物質に特異的に結合できる分子、アプタマー、シュピーゲルマー、アルブミン、結合インターフェース、アミノ酸、Gly4Serリピート、PEGなどを用いて作成できる。一態様において、DIMシステムは、TOAT100に結合して、TOAT100の流体力学的直径よりも大きいBMODT複合体103を作成するために用いられ得る。一態様において、DIMシステムは、TOAT100に結合して、TOAT100の半減期よりも大きな半減期を有するBMODT複合体103を作成するために用いられ得る。上記の化合物に適用できる様々な配列表を、限定されない例として本願に添付される。種々の態様において、BMOD 101は、scFv、ナノボディ、アフィマー、Fab領域、免疫グロブリン、エピトープに結合できる分子、生物学的に関連する物質に特異的に結合できる分子、アプタマー、シュピーゲルマー、アルブミン、ペプチド、アルブミン結合ペプチド(配列番号40など)、FcRn結合ペプチド(配列番号36-39など)、抗CD16 scFv(配列番号42など)、抗CD3 scFv(配列番号41など)、抗体、自己抗原、自己抗原フラグメント、抗体、抗体フラグメント、抗体誘導体、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、免疫グロブリン誘導体、アフィボディ、生物学的薬剤、scFvに融合されたFcIIIペプチド、ncAA(複数可)をscFvに融合したFcIIIペプチド(配列番号1-2、4-11、16-28および35のような)、ncAA(複数可)をペプチド/タンパク質に融合したFcIIIペプチド(配列番号3、12-15および29-34のような)、アフィニティリガンド、アミノ酸、グリシン、セリン、Gly3Serリピート、グリシンおよびセリンの組合せ、Gly4Serリピート、PEG等(の組合せおよびそれらの複数を含む)であり得る。
【0015】
一態様において、BMODシステム101におけるトルゥモジュレーター111は、センサーである分子、および/または、診断および/または連続モニタリングの目的に適用できる分子であり得る。
【0016】
図1bは、BMODがTOATとリンカーを介して結合されたBMODT複合体を示す模式図である。TOAT100は、リンカー105でBMOD101と結合し、BMODT複合体107を形成できる。リンカー105は、共有結合、イオン結合、光反応性結合、分子間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、化学結合、共有結合、イオン結合、分子間相互作用、ナノ粒子(複数可)、ファンデルワールス力、分子間相互作用、グリシン、セリン、Gly3Serリピート、グリシンおよびセリンの組合せ、Gly4Serリピート、分子間力、セリン、グリシン、アミノ酸、PEptide-DIrected 光-クロスリンク(PEDIP)反応、合成アミノ酸、非プロテイン性アミノ酸、親和性相互作用、架橋、水素結合、タンパク質-タンパク質インターフェース、分子インターフェース、および/または親和性ベースの相互作用(の組合せおよびその複数を含む)であり得る。リンカー105は、共有結合、イオン結合、光反応性結合、分子間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、化学結合、共有結合、イオン結合、分子間相互作用、ナノ粒子(複数可)、ファンデルワールス力、分子間相互作用、分子間力、セリン、架橋剤、グリシン、アミノ酸、PEptide-DIrected 光-クロスリンク(PEDIP)反応、合成アミノ酸、非プロテイン性アミノ酸、親和性相互作用、水素結合、タンパク質-タンパク質インターフェース、分子インターフェース、および/または親和性ベースの相互作用などを用いて作成することができる。BMODT複合体103は、BMODT複合体107ととても類似したおよび/または同じ特性を有し得る。1つのTOATに複数のBMODを結合させることができる。1つのBMODに複数のTOATを結合させることができる。複数のTOATに複数のBMODを結合させることができる。
図1aおよび1bに注目すると、BMODT複合体103は、BMODT複合体の一般形態(リンカーを有するまたは有しない)であり得、BMODT複合体107は、リンカーを有する一般形態の特定のバージョンまたは態様であり得る。リンカー105は、BMODT複合体の安定性を向上させ、全体的な性能を向上させ得る。リンカー105は、BMODT複合体の分解リスクを低減できる。リンカー105は、BMODT複合体の薬理作用、生体内分布、安定性、生体適合性を向上させることができる。分解のリスク低減は、BMODT複合体の保管、管理、安全性、性能において非常に重要な意味を有し得る。リンカー105は、少なくとも1つの結合長であり得る。BMOD101は、非古典的アミノ酸(複数可)を含むことができるトリモジュレータ111、リンカー105および/またはTOAT結合体109を含み得る。BMOD101は、トルゥモジュレーター111、リンカー105、非古典的アミノ酸(複数可)、および/または非古典的アミノ酸(複数可)を含み得るTOAT結合体109を含み得る。BMOD101は、TOAT100の放射線誘起部位特異的複合体に用いることができる。BMOD101とTOAT100との結合には、放射線による部位特異的な複合体化を利用できる。TOAT100には、BMOD101を架橋させることができる。一態様では、BMODT複合体を作成するために単一の複合体のみを使用できる。一態様において、BMODT複合体を作成するために用いられる唯一の複合体は、BMODをTOATに共役させることであり得る。一態様において、BMODT複合体を作成するために用いられる唯一の複合体は、PEDIP反応を用いてBMODをTOATに複合体化することであり得る。一態様において、近接誘導部位特異的複合体は、当業者にとって明らかであるべき方法で、BMOD101をTOAT100に結合させるために用いられ得る。一態様において、非放射線誘発部位特異的複合体は、当業者に明らかであるべき方法で、BMOD101をTOAT100に結合するために用いられ得る。リンカーなしでTOAT100に結合したBMOD101は、BMOD101とTOAT100の間の結合強度に分子内力の寄与よりも分子間力の寄与が大きいBMODT複合体を形成することができる。リンカー105などのリンカーでTOAT100に結合したBMOD101は、分子内力が寄与するよりも分子間力がBMOD101とTOAT100の間の結合強度に寄与しないBMODT複合体を作成することができる。
【0017】
BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107は、低免疫原性、生体適合性および/または生分解性であり得る。BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107は、ヒト化でき、免疫原性が低下するように操作でき、および/または望ましい応答を生成するように操作できる。BMOD101の一態様は、免疫学的シナプスに適合および/または機能できる特定のサイズおよび/または流体力学的直径のBMODT複合体を作成するために使用できる。BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107は、FcRn抗体リサイクル経路の対象とできる。BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107のFcRnに対する親和性および/または結合特性は、生物医薬および分子工学的アプローチによって改変および/または最適化することができる。この改変/修飾により、BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107は、血清中での半減期特性および/または時間量が変化し得る。BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107の溶出pHを含むpH特性は、BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107がその意図する機能を発揮できるように改変することができる。BMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107の溶出pHは、生理学的に適切なpH(複数可)になり得ないように、またはBMOD101、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107がTOAT(例えばTOAT100など)、APERFEFF体、および/またはPERFEFF体から分解または解離/溶出しないように、設計/改変され得る。BMOD101、BMODT複合体103、および/またはBMODT複合体107を用いて、BMODまたはBMODT複合体ベースの療法の1単位が、単なるTOATベースの療法の1単位よりも有効であり得るため、療法のためのTOATの用量を低くできるかまたは低用量をもたらし、および/または低用量のTOATで多くの患者を処置するために用いられ得る。
【0018】
BMOD101は、TOAT100に結合して、T細胞エンゲージャーのように作用することを含む、細胞エンゲージャーであり得るまたは細胞エンゲージャーのように作用し得る、BMODT複合体103および/またはBMODT複合体107を作成するために用いられ得る。例えば、TOAT100が抗EpCAM抗体であり、抗CD3 scFvを含むBMOD101が抗EpCAM抗体と結合してBMODT複合体103および/またはBMODT複合体107を形成するために用いられたとき、カツマキソマブと機能的に類似する二特異性抗体を形成し得る。また、T細胞と結合したり、および/または連結したりし得る。
【0019】
図1cは、TOATを示す模式図である。抗体102は、TOATの一例である。Fab領域104(本明細書中の抗体では薄い網掛けで描かれている)およびFc領域106は、抗体102の一部である。TOATの他の例は、Fc領域、ペプチボディ、Fc-融合タンパク質、融合タンパク質などが挙げられる。TOATは、アバタセプト、ベンリスタ、リツキシマブ、トラスツズマブなどを含み得る。
【0020】
図1dは、BMODおよびBMODに含まれ得る部分を示す模式図である。BMOD101は、抗HAMA117、ライダー119、吸着防止剤113、および/またはデイムナイザー115をさらに含み得る。抗HAMA117は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)に結合する分子、および/またはHAMAがBMODおよび/またはBMODT複合体に結合することを阻止/阻害する分子であり得る。ライダー119は、BMODおよび/またはBMODT複合体の半減期を増加させるために、環境物質などの分子に結合できる分子であり得る。環境物質は、BMODおよび/またはBMODT複合体が存在する環境に存在する分子であり得る。環境物質の例としては、アルブミンが挙げられる。一態様において、ライダー119は、アルブミン結合ペプチドであり得る。一態様において、ライダー119は、アミノ酸の配列であり得る。吸着防止剤113は、BMODおよび/またはBMODT複合体に対するタンパク質コロナの形成を抑制/阻害し、ならびに/あるいはBMODおよび/またはBMODT複合体の流体力学的直径を減少/最小化できる分子、双性イオン性分子を含むアミノ酸(複数可)であり得る。一態様では、別の分子を吸着防止剤113に共役させることができる。一態様において、別の分子は、吸着防止剤113に結合され、TOAT結合体109に結合されないことが可能である。一態様において、トルゥモジュレーター111は、吸着防止剤113に複合体化され、TOAT結合体109に複合体化されないことが可能である。一態様において、BMOD101は、TOAT結合体109、吸着防止剤113、および/またはトリモジュレータ111を含んでいてよく、トリモジュレータ111は吸着防止剤113に共役され得る。一態様において、BMOD101は、TOAT結合体109、吸着防止剤113、および/またはトルゥモジュレーター111を含み得、トルゥモジュレーター111は、吸着防止剤113に結合され得、TOAT結合体109には結合されない。脱免疫剤115は、BMODおよび/またはBMODT複合体の免疫原性を低下させることができる分子であり得る。脱免疫剤115は、PEG付着/コーティング、CD47分子ベースの付着/コーティング、アミノ酸の配列、Gly3Serリピート、Gly4Serリピート、アミノ酸のリピート、および/またはPD-L1分子ベースの付着/コーティングであり得る。BMOD101は、BMODを修飾し、BMODおよびBMODT複合体の他の特性に影響を与え、ならびに/あるいはBMODおよびBMODT複合体の他の特性を同様に付与および/または減じることができる部分をさらに含み得る。
【0021】
BMODの一部は、BMODの他の部分として機能する可能性がある。一態様では、1つの部分が2以上の機能を有し得、他の部分の機能も充足し得る。一態様において、トルゥモジュレーターとしては、抗HAMA117、ライダー119、吸着防止剤113、および/またはデイムナイザー115が挙げられる。一態様では、トルゥモジュレーターは、複数の部分の特性を有し得る。
【0022】
図2aは、リンカー105などのリンカーを用いずに、BMODが抗体のFc領域に結合した抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、抗体のFc領域106上で抗体102と結合している。BMOD101は、分子間力、親和性に基づく相互作用、水素結合、タンパク質-タンパク質インターフェース、および/または分子インターフェースを用いて、このような方法で抗体102と結合できる。一態様において、免疫グロブリンエンゲージャー(IgENG)システムは、IgGおよび抗体102を含む免疫グロブリンベースのTOATに、リンカー105および/または共有結合を用いて、または用いずに結合するENシステムであり得る。また、IgENGシステムはIgENGと表記することもできる。IgENGは、抗体ベースの療法剤のADCC、T細胞指向性細胞傷害(TDCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、半減期、曝露、有効性、機能性、および/または細胞毒性を高めるために用いられ得る。IgENGは、抗体ベースの療法剤のADCC、TDCC、ADCP、CDC、半減期、曝露、有効性、機能性、および/または細胞毒性を低下させるために用いられ得る。IgENGシステムは、免疫グロブリンベースの分子を二重特異性、三重特異性、四重特異性、二価、三価、四価、多価および/または多重特異性にするために用いられ得る。これにより、免疫グロブリンベースの療法剤の有効性を大幅に向上させ得る。
【0023】
図2bは、リンカーを用いることなく、BMODが抗体のFab領域に結合する抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、抗体のFab領域104上で抗体102と結合している。BMODがFc領域および/またはFab領域に結合することで、異なる効果および性能を有するBMODT複合体を形成できる。これは、抗体の特定の部分に結合すると、その結合インターフェースの親和性に影響を与え得るためである。BMODT複合体の全体的なアビディティも影響を受け得る。
【0024】
図2cは、リンカーを用いて抗体のFab領域の抗原結合部位付近にBMODが結合した抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、リンカー105を用いて、抗体のFab領域104上で抗体102と結合している。リンカー105は、共有結合、イオン結合、光反応性結合、分子間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、化学結合、共有結合、イオン結合、分子間相互作用、ファンデルワールス力、分子間相互作用、親和性ベースの相互作用、セリン、グリシン、アミノ酸、合成アミノ酸、非タンパク質性アミノ酸、ナノ粒子、PEptide-DIrected 光-クロスリンク(PEDIP)反応、光反応、部位特異的修飾、部位特異的反応、水素結合、タンパク質-タンパク質インターフェース、分子インターフェース、および/または親和性ベースのインターフェースであり得るか、またはそれらを用いて作成され得る。一態様において、複数のリンカー105は、BMOD(複数可)およびTOAT(複数可)を連結/結合できる。一態様において、リンカー105は、BMOD101をn末端でFab領域104に結合させる。BMODとFc領域およびFab領域の結合は、リンカーの有無にかかわらず、異なる有効性および性能を有するBMODT複合体をもたらし得る。これは、抗体の特定の部分に結合すると、その結合インターフェースの親和性に影響を与え得るためである。
【0025】
図2dは、リンカーを用いた抗体のFab領域の抗原結合部位付近にBMODが結合していない抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、リンカー105を用いて、抗体のFab領域104上で抗体102と結合している。一態様において、リンカー105は、BMOD101をc末端でFab領域104に結合させる。BMODがFc領域および/またはFab領域に結合することで、異なる効果および性能を有するBMODT複合体を形成できる。これは、抗体の特定の部分に結合すると、その結合インターフェースの親和性に影響を与え得るためである。
【0026】
図2eは、リンカーを用いてBMODが抗体のFc領域に結合した抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、リンカー105を用いて、抗体のFc領域106上で抗体102と結合している。一態様において、リンカー105は、BMOD101をc末端でFc領域106に結合させている。一態様において、BMODおよび/またはBMODT複合体は、TOATであり得る。一態様において、TOATを作成するために用いられるまたは用い得る薬剤はまた、BMODおよび/またはBMODT複合体を作成するために用いられるまたは用いられ得る。一態様において、BMODおよび/またはBMODT複合体は、操作されたおよび/または標識されたTOATであり得る。BMODT複合体は、複数のTOATを互いに結合させ得る。BMODがFc領域および/またはFab領域に結合することで、異なる効果および性能を有するBMODT複合体を形成できる。これは、抗体の特定の部分に結合すると、その結合インターフェースの親和性に影響を与え得るためである。BMODT複合体の全体的なアビディティも影響を受け得る。
【0027】
図2fは、少なくとも1つのリンカーを用いて抗体のFc領域の一部に結合するBMODを有する、またはTOAT内にBMODを有する、抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、複数のリンカー105を用いて、抗体のFc領域106上で抗体102と結合している。各リンカーは、リンカー105の異なる態様であり得る。例えば、1つの単位は共有結合であり、別のリンカーは分子間力に基づく相互作用/結合であり得る。BMOD101は、複数の方法で抗体102に結合され得る。別の例は、BMODを二重特異性T細胞エンゲージャーのリンカー領域に挿入して、BMODT複合体を作成することである。
【0028】
図2gは、リンカーを用いてBMODが抗体のFc領域の一部に結合した抗体ベースのBMODT複合体の一態様を示す模式図である。BMOD101は、リンカー105を用いて、抗体のFc領域106上で抗体102と結合している。一態様において、BMOD 101は、CD16、CD3および/またはFc領域を活性化および/または結合する分子を含み得る。リンカー105は、Fc結合ペプチド(非古典的アミノ酸(複数可)を含むまたは含まない)および共有結合(光反応性の手段で作成されたものを含む)の組合せであり得る。化学反応性および/または光反応性であり得るものを含むFc結合ペプチドであるリンカー部分は、抗体102のFc領域106に結合し、次いで抗体102と化学的に反応しおよび/または光反応的に抗体102と相互作用して化学結合および/または共有結合のような結合を形成するために用いられ得る。一態様において、Fc結合ペプチドは、近接性に基づいて反応できる。一態様では、BMODがFc領域の(機能的な)部分に結合して、Fc領域の機能を低下させるように、DIMシステムを使用できる。一態様では、これを用いて、TOATがカツマキソマブであり得るDIMシステムを含み得るBMODT複合体を作成できる。一態様において、カツマキソマブに基づくBMODT複合体は、より低い副作用を有し、および/または治療上の利点を提供し得る。一態様では、これはクッパー細胞などの特定の白血球の相互作用の減少に起因し得る。一態様において、DIMシステムに基づくBMODT複合体は、Fc領域を非機能性にするために用いられ得る。一態様において、免疫グロブリンエンゲージャー(IgENG)システムは、IgGおよび抗体102を含む免疫グロブリンベースのTOATに、リンカー105および/または共有結合を用いて、または用いずに結合するENシステムであり得る。また、IgENGシステムはIgENGと表記され得る。IgENGは、抗体ベースの療法剤のADCC、T細胞指向性細胞傷害性(TDCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、半減期、曝露、有効性、機能性、および/または細胞毒性を高めるために用いられ得る。IgENGは、抗体ベースの療法剤のADCC、TDCC、ADCP、CDC、半減期、曝露、有効性、機能性、および/または細胞毒性を低下させるために用いられ得る。IgENGシステムは、免疫グロブリンベースの分子を二重特異性、三重特異性、四重特異性、二価、三価、四価、多価、および/または多重特異性にするために用いられ得る。これにより、免疫グロブリンを用いた治療の効果を大幅に向上させ得る。
【0029】
PEDIP反応により、抗体にscFvを付加できる。PEDIP反応を用いて抗体などのTOATにscFvなどのBMODを付加することは、多くの利点がある。これにより、抗体を含むBMODT複合体をより簡便な方法で製造できる。抗体にscFvなどのBMODを付加することにより、修飾された抗体は、NK細胞エンゲージャー、T細胞エンゲージャー、マクロファージエンゲージャー、単球エンゲージャーなどになり得る。scFvは、NK細胞、T細胞、マクロファージ、単球などに結合して、それらを連結させ得る。抗体にscFvなどのBMODを付加することで、修飾抗体は“スーパーブロッカー”になり得る。スーパーブロッカーは、TOAT、生物学的製剤、および/または抗体が、抗体/TOATと同一または類似の標的、結合性および/または特異性特性を有するBMODで修飾/結合され得るBMODT複合体であり得る。例えば、スーパーブロッカーは、PD-1にも結合できるBMOD(複数可)で結合した抗PD-1抗体となり得る。scFvなどのBMODを抗体に付加することで、修飾された抗体は“変動ブロッカー(vary blocker)”または“variblocker”となり得る。変動ブロッカーは、TOAT、生物学的製剤、および/または抗体が、抗体/TOATの標的と関連するまたは結合する(または同じクラスの)標的に対する標的化、結合性および/または特異性特性を有するBMODで修飾/結合され得るBMODT複合体であり得る。例えば、変動ブロッカーは、CTLA-4などの別のチェックポイント阻害剤に結合できるBMOD(複数可)で結合された抗PD-1抗体であり得る。scFvなどのBMODを抗体に付加することで、修飾抗体は“コンボターゲッター(combo targetter)”または“コンボブロッカー(combo blocker)”となり得る。コンボターゲッターまたはコンボブロッカーは、TOAT、生物学的製剤および/または抗体が、抗体/TOATの標的とともに、および/またはそれと組合せて標的とできる標的に対する標的化、結合性および/または特異性特性を有するBMODで修飾/結合され得るBMODT複合体であり得る。コンボブロッカーは、併用療法を単純化するため、および/または、コンボブロッカーが併用療法と同じ標的の組合せを標的とする(または共同標的とする)ために使用できる。併用療法の相乗効果をコンボブロッカーで実現できる。一態様では、BMODは、FcフラグメントまたはFc領域であり得る。一態様において、BMODは、アルブミン、アルブミン分子の一部、アルブミンに結合できる分子、および/またはポリエチレングリコール(PEG)であり得る。一態様では、BMODT複合体を作成するために、TOATに結合した1つまたは2つ以上のBMODが存在し得る。
【0030】
図3Aは、リンカーを有するBMODT複合体の態様を形成するためにBMODに結合された免疫グロブリンベースのTOATの態様を示す模式図である。TOAT100は、リンカー105を用いてBMOD101に結合されている。TOAT100としては、scFv(複数可)、BiTe(複数可)、免疫グロブリンベースの分子、結合特性を有する分子等が挙げられる。
【0031】
図3bは、リンカーを用いることなくBMODT複合体の態様を形成するためにBMODに結合された免疫グロブリンベースのTOATの態様を示す模式図である。TOAT100は、BMOD101に結合されている。TOAT100は、分子間力、タンパク質インターフェース、生体分子インターフェース、および/または高親和性相互作用を用いてBMOD101に結合され得る。
【0032】
図3cは、少なくとも1つのリンカーを用いて複数のTOAT体に結合するBMODを有する、またはTOAT内にBMODを有する、BMODT複合体の態様を示す模式図である。BMODはTOATまたは複数のTOAT内に含まれ得る。一態様では、BMOD101は、リンカー105を用いてTOAT100に結合され、リンカー105を用いて別のTOAT100に結合される。一態様では、BMOD101は、リンカー105を用いてTOAT100と、リンカー105を用いて別のTOAT100とに、結合され得る。一態様において、BMOD101は、TOAT100の部分間および/またはTOAT100内に組込まれ得、リンカー(複数可)105を用いて(TOAT100の部分)へ結合することができる。一態様において、抗体のFc領域は、BMODによって置換され得る。一態様では、BMODは複数のFab領域を結合できる。一態様では、BMODはBiTeの構成要素を結合および/または連結できる。
【0033】
BMODT複合体の配列および/または一般的な構造の例としては、TOAT配列/領域-リンカー配列/領域-BMOD配列/領域が挙げられる。具体的には、CD16に対する光反応性部分-scFvを有するトラスツズマブ-Fc結合ペプチド、CD3に対する光反応性部分-scFvを有するトラスツズマブ-Fc結合ペプチドを挙げ得る。一態様において、非古典的アミノ酸またはncAA(複数可)は、光反応性アミノ酸およびp-ベンゾイルフェニルアラニン(pBpa)を含む光反応性アミノ酸類縁体(複数可)を含む。一態様において、BMODまたはトルゥモジュレーターは、配列番号1~42で示されるタンパク質、配列番号1~42で示されるペプチド、配列番号1~42で示される配列を有するタンパク質、配列番号1~42で示される配列、および配列番号1~42の何れかの組合せを有するタンパク質からなるリストより選択される。
【0034】
図4は、BMODT複合体の製造および/またはBMODT複合体の投与に用いることができるプロセスの一態様を示す表である。400において、要すれば、診断または情報収集の手順(複数可)および/または試験(複数可)を実施する。これにより、より文献情報をもとにその後の意思決定を行うことができ、精密医療、生産、および/またはエンジニアリングに役立てることができる。402で、(a)TOAT、BMOD、および何れかのリンカーを選択し、適切な方法でBMODをTOATに結合させることにより、BMODT複合体を作成する。BMODは、PEDIP反応を用いて結合させることができる。404で、BMODT複合体ベースのアプローチが患者の癌の処置などの用途に適切であるかどうかを決定する。406で、用途に適した方法でBMODT複合体ベースのアプローチを適用する。診断または情報収集の手順および/または検査に基づいて、TOATおよび/またはBMODで標的とする分子を決定できる。例えば、患者がHer2陽性乳癌であると(例えば、生検および/または液体生検によって)決定された場合、抗Her2抗体などのTOATを選択でき、ならびに/あるいはCD16、CD3および/またはHer2に結合できるBMODを選択して、BMODT複合体を作製できる。医療用途のバイオマーカーを決定またはその他の方法で特定し、その情報に基づいてTOATおよびBMODの適切な組合せを選択し、適切なBMODT複合体を製造および/または投与できる。バイオマーカーはパターンであったり、分析であったりする。基礎科学研究、診断目的、治療目的など、さまざまな場面で活用される。PEDIP反応を用いてBMODT複合体を作製したり、BMODをTOATに結合させることは、新規かつ非常に有用である。現在までに、PEDIP反応は、scFv、アフィマー、アプタマー、ナノボディ、結合インターフェース、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、免疫グロブリン、免疫グロブリン誘導体、免疫グロブリンフラグメント、非トキシン、無毒結合インターフェース、および/またはBMODをTOATまたは抗体に結合するためには使用されていない。PEDIP反応を用いることで、BMODT複合体を短時間で効率的に作ることができる。PEDIP反応を用いることで、BMODをTOATおよび/またはTOATの特定の部分に高度に標的化および/または特異化できる。PEDIP反応を用いてBMODT複合体を作成することは、TOATの製造/生産プロセスの最後または後段に加えることができる工程であり得る。BMODをTOATに共役させることは、新規のプロセスであり得る。
【0035】
一態様において、BMODは、抗体を機能的にアフコシル化できるBMODT複合体を作成するために用いられ得る。これは、一態様において、BMODが、ADCCを行う細胞などのエフェクター細胞に(強化された)方法で結合できれば、ADCCを行う細胞などのエフェクター細胞への抗体の結合を強化するために用い得るためである。一態様において、BMOD配列は、配列番号1~42を含み得る。
【0036】
一態様において、BMODは、それが基づくTOATよりも高い(そして潜在的により多様な)細胞毒性能を有し得るBMODT複合体を作成するために用いられ得る。一態様において、BMODは、バイオシミラー医薬品(biosimilar drug)および/またはバイオベター医薬品(biobetter drug)となり得るBMODT複合体を製造するために用いられ得る。
【0037】
一態様では、BMODを用いて、エンゲージャーのように動作できるBMODT複合体を作成することができる。一態様では、BMODは、(複数の)細胞に機能的に結合できるBMODT複合体を作成するために用いられ得る。一態様において、BMODは、二重特異性T細胞エンジャーが達成し得る機能を機能的に達成し得るBMODT複合体を作成するために用いられ得る。一態様において、BMODは、多特異性細胞(複数可)エンジャーであり得るBMODT複合体を作成するために用いられ得る。このBMODT複合体は、複数の細胞に結合したり、活性化したりできる。このBMODT複合体は、標的細胞、免疫細胞、NK細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、および/またはCTLに結合できる。例えば、CD19に結合できるTOATおよびCD3に結合できるBMODに基づくBMODT複合体は、ブリナツモマブと同様の機能を達成でき、半減期の特性がより優れている。
【0038】
BMODT複合体は、流体力学的直径、表面電荷、双性イオン挙動の程度、他の分子との結合、結合特性などの違いにより、その基となったTOATの半減期とは異なる半減期を血液などの液体および/または流体システム中で有し得る。
【0039】
以上、本発明の例示的な態様について詳細に説明した。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変および追加を行うことができる。上述した種々の態様の各々は、複数の特徴を提供するために、他の記載された態様と組み合わされてもよい。さらに、上記では、本発明の装置および方法の多数の別個の態様を説明したが、本明細書に記載されたものは、本発明の原理の適用を例示したものに過ぎない。例えば、種々の態様において、BMODT複合体としては、抗体に結合しているscFv、または免疫系の様々な他の構成要素に結合しているscFvが挙げられる。例えば、種々の態様において、BMODは、BMODT複合体を作成するために、何れかの生物学的薬剤と結合できる。また、本明細書で用いる“垂直”、“水平”、“上昇”、“下降”、“下”、“上”、“横”、“前”、“後”、“左”、“右”、“前方”、“後方”等の各種方向・方位用語(およびその文法的変形)は、相対的慣用としてのみ用いられ、重力作用方向等の固定座標系に対する絶対方位として用いられることはないものとする。さらに、所定の測定値、値または特性に関して“実質的に”または“ほぼ”という用語が用いられる場合、それは所望の結果を得るための通常の動作範囲内にあるが、システムの許容誤差(例えば1~2%)内の固有の不正確さおよび誤差による多少の変動を含む量を意味する。また、本明細書で用いる用語“プロセス”および/または“プロセッサ”は、様々な電子ハードウェアおよび/またはソフトウェアベースの機能およびコンポーネントを含むように広義に解釈されるべきである。さらに、記載されたプロセスまたはプロセッサは、他のプロセスおよび/またはプロセッサと組み合わせたり、様々なサブプロセスおよび/またはプロセッサに分割したりできる。このようなサブプロセスおよび/またはサブプロセッサーは、本明細書の態様に従って、様々に組み合わせることができる。同様に、本明細書における何れかの機能、プロセスおよび/またはプロセッサは、電子ハードウェア、プログラム指示の非一時的コンピュータ可読媒体からなるソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの組合せを用いて実装できることが明示的に企図されている。従って、本明細書は、あくまで例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【配列表】
【国際調査報告】