(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】インスリン生成機能および送達機能を有するように皮膚組織をリプログラミングするための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/89 20060101AFI20230718BHJP
C12N 15/17 20060101ALI20230718BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230718BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230718BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C12N15/89 Z ZNA
C12N15/17
C12N15/63 Z
C12M1/00 A
A61M37/00 514
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581416
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021039083
(87)【国際公開番号】W WO2022005891
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】セーン,チャンダン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,サシュワティ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,マニシェカール
(72)【発明者】
【氏名】シン,カナイヤ
【テーマコード(参考)】
4B029
4C267
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB11
4C267AA71
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB23
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB42
4C267CC01
4C267CC05
4C267GG01
4C267GG16
4C267HH08
(57)【要約】
出生後(成人および若年の)組織をインスリン生成性細胞へリプログラミングするための組成物ならびにインビトロおよびインビボでの方法が本明細書で開示される。これらの組成物および方法は、糖尿病治療の開発を含む、様々な目的に有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体細胞組織の細胞を、インスリンおよびCペプチドを産生するようにリプログラミングする方法であって、
配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;
配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で
配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列
を含むDNAを、体細胞組織の細胞の細胞内へ送達するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
第1、第2、第3、および第4の核酸配列がそれぞれ、インビボで、体細胞組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の発現ベクターが体細胞組織の細胞へトランスフェクトされ、該発現ベクターが第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、該2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、該2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、単一の発現ベクターに位置する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
体細胞が皮膚細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
細胞内送達が組織ナノトランスフェクションを介する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
細胞が、インビボでトランスフェクトされる皮膚組織の皮膚細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
糖尿病を有する対象において血中グルコースレベルを正常化する方法であって、該方法が、インビボで、標的皮膚組織を、インスリンを産生するようにリプログラミングするステップを含み、該方法が、
標的皮膚組織の細胞をリプログラミング組成物と、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で、接触させるステップを含み、該リプログラミング組成物が、
配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;および
配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で、
配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列
を含む、上記方法。
【請求項10】
膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列;
転写因子MafAをコードする第2の核酸配列;
グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列;および任意で、
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列
を含み、該第1、第2、第3、および任意の第4の核酸配列のそれぞれが真核生物制御配列と作動可能に連結されている、組成物。
【請求項11】
第1の核酸配列が、配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;
第2の核酸配列が、配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;
第3の核酸配列が、配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;および
前記任意の第4の核酸配列が、配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、
請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、該2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、該2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
多重コード配列が第1、第2、第3、および任意での第4の核酸配列の4つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
第1、第2、第3、および第4の核酸配列が非ウイルス性ベクターの一部である、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
出生後皮膚組織のインビボでのトランスフェクションを行って、皮膚組織を、インスリン生成性であるように誘導するためのキットであって、該キットが
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;ならびに
膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列、および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含む、リプログラミングカクテル
を含む、上記キット。
【請求項17】
ナノトランスフェクションデバイスが、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つまたは複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、請求項16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月29日に出願された米国仮特許出願第63/045,440号の優先権を主張し、その開示は、本明細書に明らかに組み入れられる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組入れ
本明細書と同時に提出されかつ以下の通り識別される、コンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表は、全体として参照により組み入れられる:2021年6月9日に作成され、「337064_ST25.txt」と名付けられた、23キロバイトのACII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0003】
真性糖尿病は、現在、世界中で少なくとも2億人の人々を苦しめている。1型糖尿病は、この数の約10%を占め、ランゲルハンス膵島におけるインスリン分泌性β細胞の自己免疫性破壊に起因する。生存は1日複数回のインスリン注射に依存する。2型糖尿病は、罹患した個体の残りの90%を占め、有病率は増加しつつある。2型糖尿病は、常にではないが、しばしば肥満に関連し、以前は遅発性または成人性糖尿病と呼ばれたが、現在、より若い個体において出現が増加している。2型糖尿病は、インスリン抵抗性と不十分なインスリン分泌の組合せによって引き起こされる。
【0004】
糖尿病、特に2型糖尿病は、21世紀において世界的規模の流行として浮上した。腎臓、脚、足、眼、心臓、神経、および血液循環を冒すものを含む、多数の長期合併症は、コントロール不良の糖尿病に起因する。これらの状態の防止は、生活習慣の改変および薬物療法を必要とする総合的治療を必要とする。いくつかの有効な抗糖尿病薬が利用可能であり、一般的には、安全でかつ耐容性が良い。しかしながら、全ての現在利用可能な薬物療法は、その疾患が進行するにつれて、効果が低くなり、たいていの患者は、最終的にインスリンを必要とする。
【0005】
糖尿病の発生は、膵島質量の実質的な減少に関連づけられる。診断の時点において、膵島質量の90%より多くが、1型糖尿病(T1D)患者において失われており、およそ50%が、2型糖尿病(T2D)患者において失われている。T1DとT2Dの両方についての最適な処置と考えられる、膵島新生のための有望な刺激を求めて、多くの試みがなされている。本明細書で開示されているように、患者自身の皮膚組織を、インスリン生成性でありかつインスリンを産生する細胞へ変換するための組成物および方法が提供される。そのような組成物および方法は、既存の処置に対して、糖尿病を処置する代替的または補充的方法を提供すると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、例えば、皮膚細胞などの非膵臓の体細胞を含む、出生後(成人および若年の)組織の体細胞を、インスリン生成性でありかつインスリンを患者の血流へ放出するようにリプログラミングするための組成物およびインビボ方法が提供される。一態様において、出生後皮膚組織は、インスリン生成性になりならびに任意で、インスリンおよびCペプチドの産生を含む膵臓β細胞の特性を示す(すなわち、膵臓β様細胞)ように、インビボでリプログラミングされる。より特に、体細胞は、β細胞関連ペプチドのカクテルまたは前記β細胞関連ペプチドの独特なカクテルをコードする核酸配列をトランスフェクトされて、トランスフェクトされた体細胞(例えば、皮膚組織)が、インスリン生成性であり、ならびに/または、そうでなければインスリンおよび/もしくはCペプチドを産生しない細胞において、インスリンおよび/もしくはインスリンCペプチドを産生するように誘導され得る。
【0007】
一態様によれば、出生後皮膚組織は、トランスフェクト化細胞内で膵臓十二指腸ホメオボックス1(Pancreatic And Duodenal Homeobox 1)(PDX-1)、転写因子MafA、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)、および任意で、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)の発現を惹起または増強する核酸配列を、出生後哺乳動物皮膚組織の細胞にトランスフェクトすることにより、インスリン生成性であるようにリプログラミングされる。一態様において、出生後皮膚組織は、PDX-1をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、GLP-1Rをコードする第3の核酸配列;および任意で、FGF21をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列をトランスフェクトされ、前記第1、第2、第3、および任意の第4の核酸配列のそれぞれが、トランスフェクト化細胞においてタンパク質PDX-1、MafA、GLP-1R、および任意で、FGF21の発現(転写および翻訳)を可能にする制御配列と作動可能に連結されている。一態様によれば、出生後皮膚組織は、第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む組成物をトランスフェクトされ、任意で、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、別々のプラスミドに提供される。一態様において、出生後皮膚組織は、第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む組成物をトランスフェクトされ、前記第1、第2、第3、および第4の核酸のうちの2つ以上が単一のプラスミドに位置し、一態様において、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列の4つ全部が単一のプラスミドに位置する。
【0008】
一態様によれば、配列番号2と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含む第1の核酸配列、配列番号4と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含む第2の核酸配列、配列番号6と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含む第3の核酸配列、および任意で、配列番号8と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含む第4の核酸配列を含み、前記核酸配列が哺乳動物細胞へトランスフェクトされた場合、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、おのおののタンパク質PDX-1、MafA、GLP-1R、およびFGF21の発現(転写および翻訳)を可能にする制御配列と作動可能に連結されている、リプログラミングカクテルが提供される。一態様において、第1、第2、第3、および第4の核酸配列は、哺乳動物細胞において作動可能であるが、PDX-1、MafA、GLP-1R、および任意でFGF21タンパク質をコードするヒト遺伝子と作動可能に連結されている天然プロモーターとは異なる異種性プロモーターと作動可能に連結されている。
【0009】
一態様において、インスリン生成性でありかつ体細胞組織(例えば、皮膚組織)の細胞の内部からその細胞の外部へインスリンを放出するように皮膚組織をリプログラミングするための組成物が、提供される。一態様において、リプログラミング組成物は、配列番号1と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有する配列を含む第1の核酸配列、配列番号3と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有する配列を含む第2の核酸配列、配列番号5と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有する配列を含む第3の核酸配列、および配列番号7と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有する配列を含む第4の核酸配列を含む。一態様において、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれを含み、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、哺乳動物細胞においてコード化タンパク質の発現を可能にする制御配列と作動可能に連結されている、非ウイルス性ベクターが提供される。一態様において、非ウイルス性ベクターは、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、一態様において、真核生物プロモーターは、異種性プロモーターである。
【0010】
本開示によれば、標的出生後皮膚組織は、本明細書に開示されたリプログラミングカクテルのいずれかを、当業者に知られた任意の形質転換技術を用いて、トランスフェクトされ得る。一態様によれば、リプログラミングカクテルの核酸は、ナノトランスフェクション(TNT)によって、より特に、実施例1に記載されおよび
図2A~2Dに示されたTNTデバイスを用いて、インビボで皮膚細胞のサイトゾルへ導入される。
【0011】
一態様によれば、体細胞組織のインビボでのトランスフェクションを行い、前記体細胞組織の細胞を、インスリン生成性になりかつ患者の循環系へインスリンを放出するように誘導するためのキットが提供される。一態様において、トランスフェクト化細胞は、インスリンの産生および放出を含む、膵臓β細胞の特性を示す。一態様において、キットは、使い捨てナノトランスフェクションデバイスおよびリプログラミングカクテルを含む。一態様において、ナノトランスフェクションデバイスは、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つもしくは複数のコンパートメントまたはリプログラミングカクテルを含むカートリッジを有する中空マイクロニードルアレイを含む。一態様において、中空マイクロニードルアレイは、デバイスのコンパートメントへ負荷される溶液との接触のために位置する電極(すなわち、任意で金めっきまたは銀めっきされた、陰極)、および患者の皮膚の皮内への挿入のために位置するニードル対電極(すなわち、陽極)を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列、および任意で、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含む。一態様によれば、ナノトランスフェクションデバイスは、リプログラミングカクテル溶液をあらかじめ負荷される。
【0012】
一態様によれば、1型または2型糖尿病を処置するための方法であって、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列、および任意で、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含むリプログラミングカクテル溶液が、インビボで体細胞のサイトゾルへ、任意でナノトランスフェクション(TNT)によって、導入される、方法が提供される。一態様において、処置を必要とする患者において糖尿病を処置しおよび/または血中グルコースレベルをコントロールする方法は、本開示のリプログラミングカクテルを患者の皮膚組織の細胞へ、1カ月ごとに、8~12週間ごとに、10~15週間ごとに、または15~18週間ごとに1回、インビボでトランスフェクトするステップを含む。
【0013】
一態様において、糖尿病を有する対象において血中グルコースレベルを正常化する方法であって、前記方法が、標的皮膚細胞を、インスリンを産生するようにインビボでリプログラミングするステップを含み、前記方法が、前記標的皮膚細胞をリプログラミング組成物と、前記リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で、接触させるステップを含む、方法が提供される。一態様において、トランスフェクション組成物は、配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列、配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列、配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列、および任意で、配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列を含み、前記第1、第2、第3、およびさらなる核酸配列が、ヒト皮膚細胞への導入により、コード化タンパク質の発現を可能にする制御配列と作動可能に連結されている。一態様において、核酸配列の細胞取込みは、ナノトランスフェクション(TNT)の使用を通して誘導される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】中空マイクロニードルにより媒介されて、剥離した皮膚上で行われる、中空マイクロニードルアレイを有するチップに基づいたTNTプロセスの概略図である。プラスミドDNA溶液(5)は、リザーバー(1)において保持され、中空マイクロニードルアレイの複数のマイクロニードル(2)と流体連通している。プラスミドDNA溶液(5)は、マイクロ秒レベルで与えられる方形電気パルス下、表皮層(3)および真皮層(4)を含む皮膚組織へ送達される。
【
図2A】
図2A~2Dは、様々なナノチャネルおよびマイクロニードルアレイを有するTNTチップの概略図を提供する。
図2Aは、全くニードル構造を欠くTNTチップを示す。
図2Bは、平らな先端を有するI型中空マイクロニードルアレイを示す。
図2Cは、鋭い先端および中心にある穿孔を有するII型中空マイクロニードルアレイを示す。
図2Dは、鋭い先端および中心からずれた穿孔を有するIII型中空マイクロニードルアレイを示す。各型のTNTチップについて、横断面図もまた示されている。
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、ストレプトゾトシン(STZ)誘発性糖尿病マウスにおいて血中グルコースレベルを低下させることにおける、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)、転写因子MafA、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)、および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含むトランスフェクションカクテル(「PMGF」カクテル)の有効性を示す2つの別々の実験のグラフである。PMGFカクテルの皮膚細胞取込みは、レンチウイルス粒子の使用により誘導された。ストレプトゾトシン(STZ)およびレンチウイルス粒子の投与は、矢印で示されている。血中グルコースレベルは、対照と比べて、レンチウイルス粒子によるPMGFカクテル(Lenti
PMGF)を受けたストレプトゾトシン(STZ)誘発性糖尿病マウスにおいて、有意に低下した。
【
図4A】
図4A~4Cは、ストレプトゾトシン(STZ)誘発性糖尿病マウスにおいて血中グルコースレベルを低下させることにおける、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)、転写因子MafA、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)、および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含むトランスフェクションカクテル(「PMGF」カクテル)の有効性を示す3つの別々の実験のグラフである。マウスは、2つの異なる群、1)対照および2)TNTによるリプログラミング因子(TNT
PMGF)を投与されるマウスに分けられた。リプログラミングカクテルにおいて、37.5μgの各コンポーネントP/M/G/Fが用いられた。等量の対照プラスミドが対照群へ送達された。そのデータは、PMGFリプログラミング因子カクテルのTNT媒介性送達が、マウスのストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける血中グルコースレベルの低下をもたらす、出生後皮膚におけるインスリン生成性細胞の形成を生じる組織リプログラミングをもたらすことを示している。
【
図5A】
図5A~5Cは、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)についての結果を示すグラフである。IPGTTは、腹腔内注射されたグルコース負荷の身体からのクリアランスを試験するために用いられる。この試験は、グルコース代謝およびインスリン分泌における障害を検出する。この実験について、グルコースの溶液(D-グルコース、2g/kg体重)が腹腔内(IP)注射により投与される前に、マウスは、絶食させられ、空腹時血中グルコースレベルが決定された。その後、血中グルコースレベルは、次の120分間の間、異なる時点(0分、15分、30分、60分、90分、および120分)において尾静脈から測定された。2g/kg体重におけるグルコースの腹腔内注射は、血中グルコース濃度の上昇を引き起こし、そのグルコース濃度は、TNT
PMGF群において120分以内に基底レベルへ戻ったが、対照群においては戻らなかった。この実験は、TNT介入後の7週間の間に追跡されたSTZ誘発性糖尿病動物(
図4A~C)において行われたことに留意されたい。対照群は、TNTによるニセ(対照)プラスミドで処理されるSTZ誘発性糖尿病群であり、その群において、グルコースの低下は見られなかった(
図4A~C)。それゆえに、
図5Aの対照群において、血中グルコース低下効果は認められず、マウスは、高血糖性範囲における上昇した血中グルコースを示した。したがって、これらのマウスについてのベースライングルコースレベルは、TNT-PMGF群(約300mg/dl)と比較して、約550mg/dlの範囲であった。ベースライン血中グルコースレベルは、
図5Bおよび5Cにおいて示された高レスポンダーにおいては、よりずっと低かった(約200~250mg/dl)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本発明を記載および主張することにおいて、以下の専門用語が、下記に示された定義に従って用いられる。
【0016】
本明細書で用いられる場合、用語「約」は、述べられた値または値の範囲より、10パーセント、大きいまたは小さいことを意味するが、いかなる値または値の範囲も、このより広い定義だけに限定されることを意図するものではない。用語「約」が前に付く各値または値の範囲はまた、述べられた絶対的な値または値の範囲の態様を包含することも意図される。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「精製された」および同様の用語は、生来のまたは天然の環境において分子または化合物に通常、付随した夾雑物を実質的に含まない形をとる分子または化合物の単離に関する。本明細書で用いられる場合、用語「精製された」は、絶対的な純度を必要としない;むしろ、それは、相対的な定義として意図される。用語「精製されたポリペプチド」は、非限定的に核酸分子、脂質、および糖質を含む他の化合物から分離されているポリペプチドを記載するように本明細書で用いられる。
【0018】
用語「単離された」は、言及された物質が、それの本来の環境(例えば、それが天然に存在するならば、天然環境)から取り出されることを必要とする。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、その天然の系で共存する物質の一部または全部から分離された、同じポリヌクレオチドは、単離されている。
【0019】
組織ナノトランスフェクション(TNT)は、ナノスケールで、核酸配列およびタンパク質を細胞のサイトゾルへ送達する能力があるエレクトロポレーションに基づいた技術である。より特に、TNTは、アレイされたナノチャネルを通しての、非常に強くかつ集中的な電場を用い、並んでいる組織細胞メンバーに優しくナノポアを形成し、カーゴ(例えば、核酸またはタンパク質)を細胞へ電気泳動的に運ぶ。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「調節エレメント」または「制御配列」は、エンハンサー、プロモーター、5’および3’の非翻訳領域を含む、機能性遺伝子の非翻訳領域であり、宿主細胞のタンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する。そのようなエレメントは、それらの強度および特異性の点で異なり得る。「真核生物制御配列」は、エンハンサー、プロモーター、5’および3’の非翻訳領域を含む、機能性遺伝子の非翻訳領域であり、哺乳動物細胞を含む真核細胞において、真核細胞の宿主細胞のタンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「プロモーター」は、遺伝子の転写開始部位に対して相対的に固定された位置にある場合に機能するDNAの1つまたは複数の配列である。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび転写因子の基本的な相互作用に必要とされるコアエレメントを含有し、上流エレメントおよび応答エレメントを含有することができる。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「エンハンサー」は、転写開始部位からの距離とは無関係に機能するDNAの配列であり、転写ユニットの5’側か3’側のいずれかにあり得る。さらに、エンハンサーは、イントロン内に、加えて、コード配列自体の内にあり得る。それらは、通常、長さが10bpから300bpの間であり、シスに機能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。プロモーターのように、エンハンサーもまた、しばしば、転写の制御を媒介する応答エレメントを含有する。エンハンサーは、発現の制御を決定する場合が多い。
【0023】
「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノムにおいて所定の遺伝子と天然で連結されているものである。「外因性」または「異種性」エンハンサー/プロモーターは、その遺伝子の転写が、連結されたエンハンサー/プロモーターによって指示されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)を用いて遺伝子の近位に配置されているものである。本明細書で用いられる場合、細胞に関して外因性配列は、その細胞の外部にある供給源からその細胞へ導入されている配列である。
【0024】
本明細書で用いられる場合、用語「非コード化(非標準の)アミノ酸」は、以下の20個のアミノ酸のいずれのL-異性体でもない任意のアミノ酸を包含する:Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr。
【0025】
本明細書で用いられる場合、用語「同一性」は、2つ以上の配列間の類似性に関する。同一性は、同一の残基の数を残基の総数で割り、その結果に100を掛けて、パーセンテージを得ることにより、測定される。したがって、正確に同じ配列の2つのコピーは100%同一性を有し、一方、互いに比べてアミノ酸欠失、付加、または置換を有する2つの配列はより低い程度の同一性を有する。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool、Altschulら、(1993)J.Mol.Biol.215:403~410)などのアルゴリズムを用いるものなどのいくつかのコンピュータプログラムが、配列同一性を決定するのに利用可能であることを当業者は認識しているだろう。
【0026】
本明細書で用いられる場合、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーションが一般的には、プローブと標的配列との間に少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%配列同一性があるならば、起こるだろうことを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCI、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%デキストラン硫酸、および20μg/ml変性剪断化の、サケ精子DNAなどのキャリアDNAを含む溶液中での一晩のインキュベーション、その後、0.1×SSC中、およそ65℃でハイブリダイゼーション支持体を洗浄することである。他のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知されており、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、特に11章に例示されている。
【0027】
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容される担体」は、標準の医薬品担体のいずれをも含み、例えば、リン酸緩衝食塩水、水、油/水または水/油乳剤などの乳剤、および様々な型の湿潤剤が挙げられる。その用語はまた、ヒトを含む動物における使用について、米国連邦政府の規制当局により承認された、または米国薬局方に収載された作用物質のいずれをも包含する。
【0028】
本明細書で用いられる場合、用語「リン酸緩衝食塩水」または「PBS」は、塩化ナトリウムおよびリン酸ナトリウムを含む水溶液を指す。PBSの異なる処方は当業者に知られているが、この発明の目的として、句「標準PBS」は、最終濃度の、137mM NaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KCl、および7.2~7.4のpHを有する溶液を指す。
【0029】
本明細書で用いられる場合、用語「処置すること」は、特定の傷害もしくは状態に関連した症状の軽減、および/または前記症状を防止もしくは除去することを含む。
本明細書で用いられる場合、薬物の「有効」量または「治療的有効量」は、所望の効果を与えるための薬物の無毒だが、十分な量を指す。「有効」である量は、対象によって、または対象内でも時間と共に、個体の年齢および全身状態、投与様式、ならびにその他同種類のものによって、異なる。したがって、正確な「有効量」を特定することは常に可能とは限らない。しかしながら、任意の個々の症例における適切な「有効」量は、日常的な実験を用いて、当業者により決定され得る。
【0030】
本明細書で用いられる場合、アミノ酸「置換」は、1個のアミノ酸残基の異なるアミノ酸残基による置き換えを指す。
本明細書で用いられる場合、用語「保存的アミノ酸置換」は、以下の5つの群の1つの群内での交換として本明細書で定義される:
I.小さい脂肪族の、無極性またはわずかに極性の残基:
Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II.極性の負に荷電した残基およびそれらのアミド:
Asp、Asn、Glu、Gln;
III.極性の正に荷電した残基:
His、Arg、Lys;オルニチン(Orn)
IV.大きい脂肪族の無極性残基:
Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン(hCys)
V.大きい芳香族残基:
Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン、ナフチルアラニン(Nal)
本明細書で用いられる場合、さらなる指定なしでの用語「患者」は、医師の監督下であろうとなかろうと、治療的ケアを受ける任意の温血脊椎動物の飼いならされた動物(例えば、非限定的に、家畜、ウマ、ネコ、イヌ、および他のペットを含む)およびヒトを包含することを意図される。
【0031】
用語「担体」は、化合物または組成物と組み合わせたとき、その化合物または組成物の、それの意図された使用または目的のために、調製、保存、投与、送達、有効性、選択性、または任意の他の特徴を、助けまたは促進する、化合物、組成物、物体、または構造体を意味する。例えば、担体は、活性成分のいかなる分解も最小限にし、かつ対象におけるいかなる有害副作用も最小限にするように選択され得る。
【0032】
用語「阻害する」は、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメータの減少を指す。これは、活性、応答、状態、または疾患の完全な消失を含み得るが、それに限定されない。これはまた、例えば、天然または対照レベルと比較しての、活性、応答、状態、または疾患における10%低下を含み得る。したがって、低下は、天然または対照レベルと比較しての、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または間の任意の量の低下であり得る。
【0033】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合または改変型ペプチド結合、例えば、ペプチドイソスターなどによって互いに連結されたアミノ酸を指し、20個の遺伝子コード化アミノ酸以外の修飾アミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然のプロセスか、または当技術分野において周知されている化学修飾技術によるかのいずれかによって改変され得る。改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシ末端を含むポリペプチド内の至る所で生じ得る。同じ型の改変は、所定のポリペプチドのいくつかの部位において同じまたは様々な程度で存在し得る。また、所定のポリペプチドは、多くの型の改変を有し得る。改変には、非限定的に、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、共有結合性架橋または環化、フラビンの共有結合性付着、ヘム部分の共有結合性付着、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合性付着、脂質または脂質誘導体の共有結合性付着、ホスファチジルイノシトールの共有結合性付着、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システインまたはピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、およびアルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性付加が挙げられる(Proteins-Structure and Molecular Properties第2版、T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company、New York(1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1~12(1983)参照)。
【0034】
用語「アミノ酸配列」は、ペプチド結合によって一緒に連結された2個以上のアミノ酸のひと続きを指し、アミノ酸連結の順序は、アミノ酸残基を表す略語、文字、記号、または語のリストによって指示される。本明細書で用いられるアミノ酸略語は、アミノ酸についての通常の一文字コードであり、以下のように表現される:A、アラニン;B、アスパラギンまたはアスパラギン酸;C、システイン;D、アスパラギン酸;E、グルタメート、グルタミン酸;F、フェニルアラニン;G、グリシン;H、ヒスチジン;I、イソロイシン;K、リジン;L、ロイシン;M、メチオニン;N、アスパラギン;P、プロリン;Q、グルタミン;R、アルギニン;S、セリン;T、スレオニン;V、バリン;W、トリプトファン;Y、チロシン;Z、グルタミンまたはグルタミン酸。
【0035】
本明細書で用いられる場合、句「核酸」は、DNAかまたはRNAかまたはDNA-RNAハイブリッド、一本鎖かまたは二本鎖、センスかまたはアンチセンスに関わらず、ワトソン・クリック塩基対形成によって相補核酸とのハイブリダイゼーションの能力がある、天然に存在するまたは合成のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。核酸はまた、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU)、および非ホスホジエステルヌクレオシド間連結(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル連結)も含み得る。特に、核酸には、非限定的に、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「ヌクレオチド」は、塩基部分、糖部分、およびリン酸部分を含有する分子である。ヌクレオチドは、ヌクレオシド間連結を形成するそれらのリン酸部分および糖部分を通して、一緒に連結され得る。用語「オリゴヌクレオチド」は、一緒に連結された2個以上のヌクレオチドを含有する分子を指すために用いられる場合がある。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン-9-イル(A)、シトシン-1-イル(C)、グアニン-9-イル(G)、ウラシル-1-イル(U)、およびチミン-1-イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分は、リボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、五価のリン酸である。ヌクレオチドの非限定的例は、3’-AMP(3’-アデノシン一リン酸)または5’-GMP(5’-グアノシン一リン酸)である。ヌクレオチド類似体は、塩基部分、糖部分、および/またはリン酸部分へのある種の修飾を含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドへの修飾は、当技術分野において周知されており、それには、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、および2-アミノアデニン、加えて、糖部分またはリン酸部分における修飾が挙げられる。
【0037】
ヌクレオチド置換体は、ペプチド核酸(PNA)など、ヌクレオチドと類似した機能的性質を有するが、リン酸部分を含有しない分子である。ヌクレオチド置換体は、ワトソン・クリックまたはフーグスティーン様式で核酸を認識するが、リン酸部分以外の部分を通して一緒に連結されている分子である。ヌクレオチド置換体は、適切な標的核酸と相互作用したとき、二重らせん型構造に適合することができる。
【0038】
用語「ベクター」または「構築物」は、外来遺伝子物質を別の細胞へ運ぶ媒体として用いられるDNA分子を示し、その別の細胞内で、それは複製および/または発現することができる。用語「発現ベクター」は、細胞による発現に適した形で(例えば、転写調節エレメントと連結された)遺伝子構築物を含有する任意のベクター(例えば、プラスミド、コスミド、またはファージ染色体)を含む。プラスミドが、ベクターの一般的に用いられる形であるため、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に用いられる。さらに、本発明は、等価の機能を果たす他のベクターを含むことを意図される。
【0039】
用語「送達媒体」は、細胞による核酸の取込みを促進する任意の部分を定義し、ウイルス送達系と、核酸を含有するカチオン性ポリマー、リポソーム、エクソソーム、およびナノ粒子などの非ウイルス性送達系の両方を含む。
【0040】
用語「作動可能に連結された」は、核酸の別の核酸配列との機能的関係を指す。プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳終止部位、ならびに他のシグナル配列は、他の配列と作動可能に連結され得る核酸配列の例である。例えば、DNAの転写調節エレメントとの作動可能な連結は、そのようなDNAの転写が、そのDNAを特異的に認識し、結合し、かつ転写するRNAポリメラーゼによってそのプロモーターから開始されるような、DNAとプロモーターとの間の物理的および機能的関係を指す。
【0041】
本明細書で用いられる場合、略語「PMGF」は、タンパク質PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21をコードする核酸配列を含む1つまたは複数のプラスミドの組合せを示す。
【0042】
態様
本明細書で開示されているように、機能性インスリンペプチドを産生し、かつ患者の循環系へ送達する組織へ、非インスリン産生性出生後組織を変換するために組織および細胞にトランスフェクトするための組成物および方法が提供される。本開示は、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21を含むタンパク質の組合せを発現するように改変された細胞が、特徴的なベータ細胞マーカーである、インスリンおよびCペプチドを発現するという発見に基づいている。したがって、タンパク質PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21の細胞濃度を上昇させることが、皮膚の非侵襲性インスリン生成性リプログラミングにおいて有効であることが見出されている。さらに、哺乳動物皮膚の細胞におけるPDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21の過剰発現が、インビボで、皮膚組織をインスリン生成性組織へリプログラミングし、そのようなリプログラミングされた組織におけるインスリン産生のレベルは、ストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスにおける血中グルコースレベルを正常化レベルへ抑えるのに十分であり得る。
【0043】
転写因子PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21をコードするアミノ酸配列(表1)および核酸配列(表2)は、当技術分野において知られている。ヒト配列が本明細書に開示されているが、ヒト型を含むこれらのタンパク質の他の哺乳動物型は、当技術分野において知られており、開示された方法に用いることができる。
【0044】
表1に示された配列と少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列が本発明に含まれる。
【0045】
表2に示された核酸配列と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列が、本発明に含まれる。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
ポリヌクレオチドは、皮膚組織へ、遺伝子銃、そのような送達に適したマイクロ粒子もしくはナノ粒子、そのような送達に適したリポソームもしくは他の膜結合性ベシクル、裸のDNAもしくはウイルスに基づいたベクターの注射、または3次元ナノチャネルエレクトロポレーション、組織ナノトランスフェクション(TNT)デバイス、もしくは深部局所組織ナノエレクトロインジェクションデバイスを用いるエレクトロポレーションによるトランスフェクションによって送達され得る。いくつかの態様において、ウイルスベクターを用いることができる。しかしながら、他の態様において、ポリヌクレオチドは、ウイルス性に送達されない。
【0057】
皮膚組織などの非膵臓の体細胞組織を含む出生後体細胞組織をインスリン生成性細胞へリプログラミングするための本発明の組成物および方法は、インビトロとインビボの両方で適用できる。
【0058】
エレクトロポレーションは、細胞膜の透過性を増加させ、カーゴ(例えば、リプログラミング因子)を細胞へ導入させるために、電場が細胞に印加される技術である(
図1参照)。エレクトロポレーションは、外来DNAを細胞へ導入するための一般的な技術である。
図2A~2Dは、インビボで体細胞にトランスフェクトするために用いることができるマイクロチャネルおよびマイクロニードルのアレイの例を提供する。そのようなデバイスに関する追加の詳細は、米国特許出願第62/903,298号および第62/877,060号に記載されており、その開示は、参照により明らかに組み入れられる。
【0059】
組織ナノトランスフェクションは、アレイされたナノチャネルを通して非常に強くかつ集中的な電場を印加し、その印加が、並んでいる組織細胞メンバーに優しくナノポアを形成し、カーゴを細胞へ電気泳動的に運ぶことにより、カーゴ(例えば、リプログラミング因子)の細胞への直接的なサイトゾル送達を可能にする。
【0060】
一態様において、開示された組成物は、体重1kgあたり約0.1ng~約100g、体重1kgあたり約10ng~約50g、体重1kgあたり約100ng~約1g、体重1kgあたり約1μgから約50mgまで、体重1kgあたり約1mgから約500mgまで、および体重1kgあたり約1mgから約50mgまでの非経口投与と等価の用量で投与される。あるいは、治療的有効用量を達成するように投与される、開示された組成物の量は、体重1kgあたり約0.1ng、1ng、10ng、100ng、1μg、10μg、100μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、500mg、またはそれ以上である。
【0061】
ポリペプチドまたは機能性核酸を発現するために、ヌクレオチドコード配列が、適切な発現ベクターへ挿入され得る。したがって、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21からなる群から選択されるタンパク質をコードする3つ以上の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む非ウイルス性ベクターであって、前記3つ以上の核酸配列が発現調節配列と作動可能に連結されている、非ウイルス性ベクターもまた開示される。いくつかの態様において、核酸配列は、単一の発現調節配列と作動可能に連結され、各コード配列は、真核生物配列内リボソーム進入部位で先導される。他の態様において、核酸配列は、3つ以上の別々の発現調節配列と作動可能に連結される。いくつかの態様において、非ウイルス性ベクターはプラスミドを含む。
【0062】
遺伝子配列ならびに適切な転写および翻訳調節エレメントを含有する発現ベクターを構築するための方法は、当技術分野において周知されている。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えが挙げられる。そのような技術は、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y.、1989)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons、New York、N.Y.、1989)に記載されている。
【0063】
いくつかの態様において、PDX-1、MafA、GLP1R、および任意で、FGF21をコードする核酸配列は、それぞれ別々に、真核生物発現調節配列と連結されており、任意で、前記PDX-1、MafA、GLP1R、およびFGF21をコードする核酸配列のそれぞれが、異種性真核生物プロモーターと連結されている。
【0064】
一態様において、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントは、多重遺伝子のまたはポリシストロニックな構築物を作製するために用いられる。IRESエレメントは、5’メチル化キャップ依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回し、内部部位において翻訳を開始することができる。IRESエレメントは、異種性オープンリーディングフレームと連結され得る。複数のオープンリーディングフレームが一緒に転写され、それぞれがIRESによって分離され、ポリシストロニックなメッセージを生じる。IRESによって、各オープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームにアクセスできる。複数の遺伝子が、単一のプロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現して、単一のメッセージを転写することができる。
【0065】
任意で発現調節配列と作動可能に連結された、本明細書に開示された1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する非ウイルス性ベクターが開示される。そのような非ウイルス性ベクターの例には、単独での、または適切なタンパク質、多糖、もしくは脂質製剤と組み合わせてのオリゴヌクレオチドが挙げられる。非ウイルス性方法は、ウイルス性方法を凌ぐある特定の利点を提示し、単純なラージスケール製造および低い宿主免疫原性がまさにその2つである。以前、遺伝子の低レベルのトランスフェクションおよび発現が、非ウイルス性方法を不利な立場に留めていた;しかしながら、ベクター技術の最近の進歩により、ウイルスのものと類似したトランスフェクション効率を有する分子および技術が生み出されている。適切な非ウイルス性ベクターの例は当業者に知られている。
【0066】
一態様において、PDX-1、MafA、GLP1R、およびFGF21をコードする核酸は、送達媒体の非存在下で細胞のサイトゾルへ送達される。一態様において、エレクトロポレーションが、PDX-1、MafA、GLP1R、およびFGF21をコードする核酸の取込みを刺激するために用いられる。
【0067】
本明細書に開示された組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に用いることができる。「薬学的に許容される」とは、生物学的にまたは別段に望ましくないことはない物質を意味し、すなわち、その物質は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく、またはそれが含有される薬学的組成物の他のコンポーネントのいずれとも有害な様式で相互作用することなく、本核酸またはベクターと共に対象へ投与され得る。担体は、当業者に周知されているように、当然ながら、活性成分のいかなる分解も最小限にするように、および対象においていかなる有害な副作用も最小限にするように、選択される。
【0068】
適切な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)A.R.Gennaro編、Mack Publishing Company、Easton、PA1995に記載されている。典型的には、薬学的に許容される塩の適切な量は、製剤を等張性にするように製剤中に用いられる。
【0069】
薬学的に許容される担体の例には、食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられるが、それらに限定されない。その溶液のpHは、好ましくは、約5から約8まで、より好ましくは、約7から約7.5までである。さらなる担体には、本核酸を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物が挙げられ、そのマトリックスは、成形物、例えば、フィルム、リポソーム、またはマイクロ粒子の形をとる。例として、投与されることになっている組成物の投与経路および濃度に依存して、ある特定の担体がより好ましいことは当業者に明らかであろう。
【0070】
薬学的担体は、当業者に知られている。これらは、最も典型的には、薬物のヒトへの投与のための標準担体であり、それには、滅菌水、食塩水、および生理的pHにおける緩衝液などの溶液が挙げられる。組成物は、筋肉内にまたは皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者に用いられる標準手順に従って投与される。
【0071】
薬学的組成物は、選んだ分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤、およびその他同種類のものを含み得る。薬学的組成物はまた、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、およびその他同種類のものなどの1つまたは複数の活性成分を含み得る。
【0072】
局所投与のための製剤には、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐剤、スプレー、液体、および粉末が挙げられ得る。通常の薬学的担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤、およびその他同種類のものが必要または望ましくあり得る。
【0073】
組成物のいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸などの有機酸との反応により、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、ならびにモノ-、ジ-、トリアルキル、およびアリルアミン、および置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応により、形成された薬学的に許容される酸付加塩または塩基付加塩として投与される可能性がある。
【0074】
本明細書に開示された、薬学的組成物を含む組成物は、望まれるのが局所的処置かまたは全身的処置かに、および処置されるべきエリアに依存して、いくつかの方法で投与され得る。例えば、開示された組成物は、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、腔内に、または経皮的に、投与され得る。組成物は、局所的鼻腔内投与または吸入による投与を含む、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射により、腹腔内注射により、経皮的に、体外的に、眼に、膣に、直腸に、鼻腔内に、局所的に、などで投与され得る。
【0075】
一態様によれば、患者の体細胞は、標的組織においてタンパク質PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21の細胞内濃度を増強することにより、インスリン生成性であるようにリプログラミングされる。PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21の細胞内濃度は、当業者に知られた標準分子生物学的技術のいずれかを用いて増強することができる。一態様において、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21の細胞内濃度は、それぞれの天然PMGF遺伝子への制御エレメント(例えば、異種性プロモーターまたはエンハンサーエレメント)の導入により、またはDNAメチル化およびクロマチンリモデリングをターゲットする遺伝子サイレンサーもしくはエピジェネティックマニピュレータなどの他の因子を導入することにより、増強することができる。一態様において、それぞれのPMGFタンパク質をコードする天然遺伝子は、例えばCRISPR技術の使用を含む、標準遺伝子編集技術を用いて、それらの発現を増強するように改変される。あるいは、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21ポリペプチドの細胞内濃度はまた、外因性コンポーネント(例えば、タンパク質および核酸)の皮膚細胞のサイトゾルへの導入により達成することができ、前記外因性コンポーネントが、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21の細胞内濃度を直接的または間接的に増強する。一態様において、導入される外因性コンポーネントは、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を増強する核酸配列(例えば、DNA、mRNA、miRNA、およびRNAi)を含む。一態様において、細胞へ導入される外因性コンポーネントは、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21ポリペプチドのそれぞれをコードするDNAである。
【0076】
本発明によれば、核酸および/またはタンパク質は、標的細胞のリプログラミングを誘導するために、皮膚細胞などの出生後体細胞のサイトゾルへ導入される。高分子を細胞へ導入するための標準技術のいずれも、本発明に従って用いることができる。公知の送達方法は、大まかに、2つの型に分類することができる。第1の型において、機械的、熱的、または電気的な手段を含む膜破壊に基づいた方法が、細胞膜の連続性を破壊して、所望の高分子の直接的な侵入のための透過処理を増強するために用いることができる。第2の型において、様々なウイルス、エクソソーム、ベシクル、およびナノ粒子カプセルを用いる、担体に基づいた方法が、担体ペイロードの送達のための、エンドサイトーシスおよび細胞の融合プロセスによる担体の取込みを可能にする。
【0077】
透過処理に基づいた破壊送達の方法の中で、エレクトロポレーションは、普遍的なツールとしてすでに確立されている。電場分布の綿密な調節により、最小限の細胞毒性で、高効率の送達が達成され得る。一態様によれば、PDX1、MafA、GLP1R、およびFGF21ポリペプチドをコードする核酸配列は、組織ナノトランスフェクション(TNT)の使用を通して体細胞のサイトゾルへ送達される。
【0078】
組織ナノトランスフェクション(TNT)は、少しの実験手順の必要性もなしに、インビボでの免疫監視下で組織機能の直接的な変換を引き起こす、プラスミド、RNA、およびオリゴヌクレオチドを生きている組織へ送達する起電性遺伝子移入技術である。インビボの組織リプログラミングのために一般的に用いられるウイルス遺伝子移入と違って、TNTは、ウイルス送達媒体の必要性をなくし、したがって、ゲノム組込みまたは細胞形質転換のリスクを最小限にする。
【0079】
インビボでのリプログラミングの現在の方法は、インビボまたはインビトロで細胞にトランスフェクトし、その後、植え込むことを含み得る。本発明の一態様は、細胞のインビトロでのリプログラミング、その後、移植を必要とするが、細胞植込みは、低い生存率および不十分な組織組込みに見舞われる場合が多い。さらに、インビトロで細胞にトランスフェクトすることは、追加の規制上および実験上の困難を伴う。
【0080】
一態様によれば、体細胞は、本明細書に開示されているようなリプログラミングカクテルをインビボでトランスフェクトされる。バルクのインビボでのトランスフェクションのための一般的な方法は、ウイルス性送達媒体、非ウイルス性送達媒体、またはエレクトロポレーションの送達である。ウイルスベクターは、リプログラミングカクテルの非膵臓の体細胞への送達のために本開示に従って用いることができるが、ウイルスベクターは、望ましくない免疫反応を潜在的に惹起する弱点を負う。加えて、多くのウイルスベクターは遺伝子の長期発現を引き起こし、それは、遺伝子治療のいくつかの適用については有用であるが、持続性遺伝子発現が必要ではなくまたはむしろ望まれず、一過性トランスフェクションが実行可能な選択肢である場合の適用については除外される。ウイルスベクターはまた、望ましくない副作用を生じ得る、挿入変異誘発およびゲノム組込みを伴う。しかしながら、一態様によれば、リポソームまたはエクソソームなどのある特定の非ウイルス性担体は、インビボで、リプログラミングカクテルを体細胞へ送達するために用いることができる。
【0081】
TNTは、少しの実験手順の必要性もなしに、インビボでの免疫監視下で組織機能の直接的な変換を引き起こす、限局性遺伝子送達のための方法を提供する。TNTをプラスミドと共に用いることにより、遺伝子の過剰発現を時間的にかつ空間的に調節することが可能である。TNTでの空間的調節は、他の組織のトランスフェクションなしに、皮膚組織の一部分などの標的エリアのトランスフェクションを可能にする。
【0082】
実施例においてより詳細に開示されているように、核酸配列を含む負荷された薬物の効率的な皮膚性送達を可能にする中空ニードルアレイ構造がデザインされている。(
図2B~2Dに概略的に示されているような)穿孔直径のサイズがnmからμmまでの範囲である、3つの異なる型のシリコン中空ニードルアレイが、TNT適用のために調製され得る。1秒足らずで、本明細書に開示されたシリコン中空ニードルアレイは、マウス、ラット、およびヒト組織において特定の深さまでの活性因子の送達を可能にする。
【0083】
一態様によれば、細胞および組織をリプログラミングし、より特に、インビボで皮膚組織をリプログラミングするための組成物が提供される。一態様において、その組成物は、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列;転写因子MafAをコードする第2の核酸配列;グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列;および任意で、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含み、前記第1、第2、第3、および任意の第4の核酸配列のそれぞれが、哺乳動物細胞を含む真核細胞において、前記コード化タンパク質の発現を可能にする制御配列と作動可能に連結されている。一態様において、組成物は、第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれを含む。一態様において、組成物は、第1、第2、第3、および第4の核酸配列、ならびに薬学的に許容される担体からなり、任意で、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、異種性プロモーターと作動可能に連結されている。
【0084】
一態様によれば、リプログラミングカクテル溶液が提供され、前記溶液が、配列番号2と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;配列番号4と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;配列番号6と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および配列番号8と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする任意の第4の核酸配列を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、配列番号2、4、6、および8のタンパク質をコードする精製または単離された核酸配列を含む。
【0085】
一態様によれば、リプログラミングカクテル溶液が提供され、前記溶液が、配列番号2と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;配列番号4と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;配列番号6と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および配列番号8と少なくとも80%、85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列を含む。
【0086】
一態様によれば、リプログラミングカクテル溶液が提供され、前記溶液が、配列番号2のペプチドをコードする第1の核酸配列;配列番号4のペプチドをコードする第2の核酸配列;配列番号6のペプチドをコードする第3の核酸配列;および配列番号8のペプチドをコードする第4の核酸配列を含み、任意で、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、異種性プロモーターと作動可能に連結されている。
【0087】
一態様によれば、リプログラミングカクテル溶液は、第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む複数の非ウイルス性発現ベクターを含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、真核細胞内でコード化タンパク質の発現を可能にする、プロモーター、加えて、他の制御配列と作動可能に連結された第1、第2、第3、および第4の核酸配列の1つをそれぞれが含む、4つの別個のプラスミドを含む。一態様において、前記第1、第2、第3、および第4の核酸のうちの2つ以上が、発現ベクターに位置し、前記発現ベクターが、多重コード配列と作動可能に連結された単一のプロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上を含み、配列内リボソーム進入部位が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する。
【0088】
一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、1つだけの別個の型のプラスミド/発現ベクターを含み、前記プラスミド/発現ベクターが、多重コード配列を形成するように一緒に連結された第1、第2、第3、および第4の核酸配列の4つ全部を含み、前記多重コード配列が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列の4つ全部を含み、それぞれが配列内リボソーム進入部位によって進められ、全部が、哺乳動物細胞において作動可能である前記単一のプロモーターと作動可能に連結されている。一態様において、プラスミド/発現ベクターは、非ウイルス性発現ベクターである。一態様によれば、リプログラミングカクテル溶液は、真核細胞または哺乳動物組織の内部へ核酸を送達するエレクトロポレーション効率を増強する試薬をさらに含む。
【0089】
本開示の一態様は、PDX-1、MafA、GLP1R、および任意で、FGF21からなる群から選択される転写因子/タンパク質をコードする3つ以上の核酸配列を含むポリヌクレオチドに向けられる。PDX-1、MafA、GLP1R、およびFGF21タンパク質は、ヒトタンパク質などの哺乳動物タンパク質であり得る。一態様において、コード化PDX-1、MafA、GLP1R、およびFGF21タンパク質は、それぞれ、配列番号2、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号2、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列と、1~10個、1~5個、もしくは1~3個のアミノ酸置換、挿入、もしくは欠失の分だけ、異なるペプチド、または配列番号2、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列と、1~10個、1~5個、もしくは1~3個のアミノ酸置換、任意で保存的アミノ酸置換の分だけ、異なるペプチドを含む。
【0090】
一態様において、非ウイルス性ベクターを含むリプログラミングカクテル溶液が提供され、前記ベクターが、PDX-1、MafA、GLP1R、およびFGF21からなる群から選択されるタンパク質をコードする3つ以上の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含み、前記3つ以上の核酸配列が、任意で、発現調節配列と作動可能に連結されている。核酸配列のそれぞれは、個々に、真核細胞における発現に必要とされる単一のプロモーターおよび他の制御配列と作動可能に連結され得、または代替として、複数の核酸配列が、単一のプロモーターの調節下で発現することができる。
【0091】
一態様によれば、リプログラミングカクテル溶液は、ペプチド、より特に、一態様において、以下を含む組成物が提供される:
配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチド;
配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチド;
配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチド;
配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチド;および
任意で、真核細胞の内部へタンパク質を送達する効率を増強する試薬。
【0092】
さらなる態様は、(a)タンパク質PDX-1、MafA、GLP1R、および任意で、FGF21、またはタンパク質PDX-1、MafA、GLP1R、および任意で、FGF21タンパク質をコードするポリヌクレオチドを体細胞の細胞内へ送達するステップにより、インスリン生成性細胞、任意で膵臓β細胞のインスリン生成性特性を有する細胞(すなわち、膵臓β様細胞)へ、体細胞をリプログラミングするための方法に向けられる。一態様において、体細胞は、皮膚細胞であり、より特に、トランスフェクト化細胞は、インビボでリプログラミングカクテル溶液を、任意でウイルス性送達媒体の非存在下で、トランスフェクトされた皮膚組織の皮膚細胞である。一態様において、PDX-1タンパク質、MafAタンパク質、GLP1Rタンパク質、および任意で、FGF21タンパク質、またはPDX-1タンパク質、MafAタンパク質、GLP1Rタンパク質、および任意で、FGF21タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、当業者に知られた任意の標準技術を用いて細胞内に送達される。一態様において、細胞内送達は、細胞膜と相互作用して、内容物を細胞へ送達する能力があるウイルスベクターまたは他の送達媒体を介してである。一態様において、細胞内送達は、3次元ナノチャネルエレクトロポレーション、組織ナノトランスフェクションデバイスによる送達、または深部局所組織ナノエレクトロインジェクションデバイスによる送達を介してである。一態様において、リプログラミングカクテルは、シリコン中空ニードルアレイを用いる組織ナノトランスフェクション(TNT)を通して、インビボで出生後皮膚組織細胞のサイトゾルへ送達される。
【0093】
一態様において、インスリンおよびCペプチドを産生するように、非膵臓の体細胞組織をリプログラミングし、任意で、インビボで出生後皮膚組織の細胞をリプログラミングする方法は、本開示のリプログラミングカクテル溶液のいずれかを前記非膵臓の体細胞組織の細胞内へ、任意でTNTにより、送達するステップを含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、裸のDNAを含みまたはそれからなり、前記裸のDNAが、配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で、配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、裸のDNAを含みまたはそれからなり、前記裸のDNAが、第1、第2、第3、および第4の核酸のそれぞれを含む。本明細書に開示された第1、第2、第3、および第4の核酸配列のいくつかが、別個のプラスミドもしくは発現ベクターに位置し得、または個々のプラスミドもしくは発現ベクターに一緒に群としてクラスター化され得る。一態様において、第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが全て、単一のプラスミドまたは発現ベクターに、個々のプロモーターの調節下で別々の遺伝子として、または単一のプロモーターの調節下で単一の多重遺伝子構築物として、位置する。
【0094】
一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、1つまたは複数の別個の発現ベクターを含み、前記発現ベクターのそれぞれが、前記第1、第2、第3、および第4の核酸のうちの2つ以上を発現ベクターの一部として含み、前記発現ベクターが、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む。一態様において、前記第1、第2、第3、および第4の核酸のそれぞれが、単一の発現ベクターに、多重コード配列の一部として位置し、前記多重コード配列が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位、ならびに前記多重コード配列の転写を駆動させる単一のプロモーターをさらに含む。
【0095】
一態様において、標的出生後皮膚組織を、インスリンを産生するようにインビボでリプログラミングするステップを含む、糖尿病を有する対象において血中グルコースレベルを正常化する方法が提供される。一態様において、前記方法は、本開示のリプログラミングカクテル溶液のいずれかを標的皮膚組織の細胞のサイトゾルへ送達するステップを含む。細胞にトランスフェクトするための公知の技術のいずれも用いることができ、例えば、TNTが挙げられる。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;および配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で、配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、配列番号1と少なくとも95%配列同一性を有する第1の核酸配列;配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有する第2の核酸配列;配列番号5と少なくとも95%配列同一性を有する第3の核酸配列;および任意で、配列番号7と少なくとも95%配列同一性を有する第4の核酸配列を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、配列番号1と少なくとも95%配列同一性を有する第1の核酸配列;配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有する第2の核酸配列;配列番号5と少なくとも95%配列同一性を有する第3の核酸配列;および配列番号7と少なくとも95%配列同一性を有する第4の核酸配列を含む。
【0096】
一態様において、体細胞組織(すなわち、皮膚もしくは脂肪もしくは別の非膵臓の体細胞組織、または膵臓の体細胞組織)の、体細胞をインスリン生成性細胞へ変換するための直接的な組織リプログラミングにより、糖尿病または前糖尿病患者を処置するための方法であって、任意で、前記リプログラミング化細胞が、膵臓β細胞(すなわち、膵臓β様細胞)の特性を有する、方法が提供される。本明細書に開示されているような方法により生じたリプログラミング化細胞は、内因性β細胞が分泌するインスリンの少なくとも15%もしくは少なくとも25%もしくは少なくとも30%を分泌し、または代替として、いくつかの態様において、リプログラミング化細胞は、インスリンを分泌すること、およびインスリンCペプチドの検出を含む適用可能なバイオマーカーが陽性になることなどの、内因性膵臓β細胞の少なくとも2つの特性を示す。
【0097】
一態様によれば、1型もしくは2型糖尿病を処置し、および/または血中グルコースレベルを正常レベル(すなわち、70mg/dLから100mg/dLの間)へ抑えるための方法であって、患者の体細胞組織が、ポリペプチド膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)、転写因子MafA、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)、および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)の細胞内濃度の上昇を生じるように誘導される、方法が提供される。一態様において、それらのポリペプチドのレベルの増加は、ポリペプチド膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列、および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする第4の核酸配列を、インビボで、皮膚細胞のサイトゾルへ導入することにより、達成される。一態様において、前記核酸配列は、標的組織の細胞のサイトゾルへナノトランスフェクション(TNT)によって導入される。
【0098】
一態様によれば、出生後皮膚組織のインビボでのトランスフェクションを行い、前記皮膚組織を、インスリン生成性になり、任意で、膵臓β細胞の特性を示すように誘導するためのキットが提供される。一態様において、キットは、使い捨てナノトランスフェクションデバイスおよびリプログラミングカクテルを含む。一態様において、ナノトランスフェクションデバイスは、一連のマイクロチャネルを含むシリコンウエハーを含む。一態様において、ナノトランスフェクションデバイスは、複数のシャフトを含み、前記複数のシャフトのそれぞれが、導電性である外面を有し、前記複数のシャフトのそれぞれが、前記複数のシャフトの互いと電気的に結合しており、前記複数のシャフトのそれぞれが、近位端から遠位端まで伸び、前記複数のシャフトのそれぞれが、一次チャネル内部を、近位端から遠位端へ伸びる対応するシャフトへ規定し、前記一次チャネルが近位端で開いておりかつ遠位端で閉じており、前記複数のシャフトのそれぞれが、1つまたは複数のマイクロチャネルをさらに規定し、前記1つまたは複数のマイクロチャネルのそれぞれが、前記一次チャネルから、対応するシャフトの壁へ伸び、前記1つまたは複数のマイクロチャネルのそれぞれが、10マイクロメートル未満の直径を有する。キットは、複数の電極をさらに含み得、前記複数の電極のそれぞれが、前記複数の電極の互いと電気的に結合しており、前記複数の電極が、電圧が複数のシャフトと複数の電極の間に印加されたとき、複数のシャフトのそれぞれの軸と垂直に電場が生じる。
【0099】
一態様によれば、出生後皮膚組織のインビボでのトランスフェクションを行って、前記皮膚組織を、インスリン生成性になるように誘導するためのキットであって、前記キットが、使い捨てナノトランスフェクションデバイスおよびリプログラミングカクテルを含み、前記ナノトランスフェクションデバイスが、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つまたは複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、キットが提供される。一態様において、ナノトランスフェクションデバイスは、
図2B~2Dに示されているように、平らな先端を有するI型中空マイクロニードルアレイ、鋭い先端を有するII型中空マイクロニードルアレイ、ならびに鋭い先端および中心からずれた穿孔を有するIII型中空マイクロニードルアレイからなる群から選択される。一態様において、I型、II型、およびIII型マイクロニードルアレイの円柱状のニードルの長さは、約210μmであり、外径が約50μmであり、ニードルの中心に位置する中空チャネルの直径は約6μmである。2つの隣接したニードル間の間隔は約150μmである。一態様において、裏面孔の直径は約20μmであり、その間隔は、中空マイクロニードルと同じである。II型およびIII型マイクロニードルは、類似した送達結果を生じると予想されるが、追加の機能性がある。平らな先端とは異なって、II型ニードルアレイの鋭さは、組織への挿入に必要とされる挿入力を低減することにおいてより良い性能を生み出す。
図2Dに示されたIII型シリコン中空ニードルアレイは、鋭い先端および中心からずれた穿孔を有する。その中空穿孔は、挿入中に組織の目詰まりの発生率を減少させるために、ニードルの中心から約15μmずれるように、デザインされる。
【0100】
一態様において、中空マイクロニードルアレイは、デバイスのコンパートメントへ負荷される溶液と接触するために位置する電極(すなわち、任意で金めっきまたは銀めっきされる、陰極)、および患者の皮膚の皮内への挿入のために位置するニードル対電極(すなわち、陽極)を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列、および任意で、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含む。一態様によれば、ナノトランスフェクションデバイスは、リプログラミングカクテル溶液をあらかじめ負荷される。
【0101】
態様1によれば、体細胞組織の出生後細胞を、インスリンおよびCペプチドを産生するようにリプログラミングする方法であって、前記方法が、前記体細胞組織の細胞の細胞内へ、任意でウイルス性送達媒体の非存在下で、以下を含むDNAを送達するステップを含む、方法が提供される:
配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;
配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で
配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列。
【0102】
態様2によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列がそれぞれ、インビボで、前記体細胞組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、態様1に記載の方法が提供される。
【0103】
態様3によれば、1つまたは複数の発現ベクターが、前記体細胞組織の細胞へトランスフェクトされ、前記発現ベクターが前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む、態様1または2に記載の方法が提供される。
【0104】
態様4によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、前記発現ベクターが、前記第1、第2、第3、および第4のうちの2つ以上の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含み、任意で、前記第1の核酸配列が、配列番号2と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含み;前記第2の核酸配列が、配列番号4と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含み;前記第3の核酸配列が、配列番号6と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含み;および前記第4の核酸配列が、配列番号8と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする配列を含み;任意で、前記第1の核酸配列が配列番号1の配列を含み、前記第2の核酸配列が配列番号3の配列を含み、前記第3の核酸配列が配列番号5の配列を含み、および前記第4の核酸配列が配列番号17配列を含む、態様1~3のいずれか一つに記載の方法が提供される。
【0105】
態様5によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、単一の発現ベクターに位置し、任意で、前記発現ベクターが、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれを含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、配列内リボソーム進入部位が、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する、態様1~4のいずれか一つに記載の方法が提供される。
【0106】
態様6によれば、体細胞が皮膚細胞である、態様1~5のいずれか一つに記載の方法が提供される。
態様7によれば、細胞内送達が組織ナノトランスフェクションを介してである、態様1~6のいずれか一つに記載の方法が提供される。
【0107】
態様8によれば、細胞が、インビボでトランスフェクトされる皮膚組織の皮膚細胞である、態様1~7のいずれか一つに記載の方法が提供される。
態様9によれば、糖尿病を有する対象において血中グルコースレベルを正常化レベルへ低下させる方法であって、前記方法が、インビボで、標的皮膚組織を、インスリンを産生するようにリプログラミングするステップを含み、前記リプログラミングステップが、標的皮膚組織の細胞をリプログラミング組成物と、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で、接触させることを含み、前記リプログラミング組成物が、配列番号2と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;配列番号4と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;および配列番号6と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で、配列番号8と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列を含む、方法が提供される。
【0108】
態様10によれば、体細胞組織の出生後細胞を、インスリンおよびCペプチドを産生するようにリプログラミングすることにおける使用のための組成物が提供される。一態様において、組成物は、
膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列であって、任意で、前記第1の核酸配列が、配列番号2と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする、第1の核酸配列;
転写因子MafAをコードする第2の核酸配列であって、任意で、前記第2の核酸配列が、配列番号4と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする、第2の核酸配列;
グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列であって、任意で、前記第3の核酸配列が、配列番号6と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする、第3の核酸配列;および任意で、
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする第4の核酸配列であって、任意で、前記第4の核酸配列が、配列番号8と少なくとも95%、99%、または100%配列同一性を有するペプチドをコードする、第4の核酸配列
を含み、前記第1、第2、第3、および任意の第4の核酸配列のそれぞれが、真核生物制御配列と作動可能に連結されている。
【0109】
態様11によれば、
第1の核酸配列が、配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;
第2の核酸配列が、配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;
第3の核酸配列が、配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;および
任意の第4の核酸配列が、配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、
態様10に記載の組成物が提供される。
【0110】
態様12によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む、態様10または11に記載の組成物が提供される。
態様13によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上が、発現ベクターの一部であり、前記発現ベクターが、前記2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、態様10~12のいずれか一つに記載の組成物が提供される。
【0111】
態様14によれば、前記多重コード配列が前記第1、第2、第3、および任意の第4の核酸配列の4つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ前記単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、態様10~13のいずれか一つに記載の組成物が提供される。
【0112】
態様15によれば、第1、第2、第3、および第4の核酸配列が非ウイルス性ベクターの一部である、態様10~14のいずれか一つに記載の組成物が提供される。
態様16によれば、出生後皮膚組織のインビボでのトランスフェクションを行って、前記皮膚組織を、インスリン生成性であるように誘導するためのキットであって、前記キットが
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;ならびに
膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列;および任意で、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含む、リプログラミングカクテル溶液
を含む、キットが提供される。
【0113】
態様17によれば、ナノトランスフェクションデバイスが、前記リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つまたは複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、態様16に記載のキットが提供される。
【0114】
態様
態様1によれば、体細胞組織の細胞を、インスリンおよびCペプチドを産生するようにリプログラミングする方法であって、
配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;
配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で
配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列
を含むDNAを、前記体細胞組織の細胞の細胞内へ送達するステップを含む、方法が提供される。
【0115】
態様2によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列がそれぞれ、インビボで、前記体細胞組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、態様1に記載の方法が提供される。
【0116】
態様3によれば、1つまたは複数の発現ベクターが前記体細胞組織の細胞へトランスフェクトされ、前記発現ベクターが前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む、態様1または2に記載の方法が提供される。
【0117】
態様4によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、前記発現ベクターが、前記2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、態様1~3のいずれか一つに記載の方法が提供される。
【0118】
態様5によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、単一の発現ベクターに位置する、態様1~4のいずれか一つに記載の方法が提供される。
態様6によれば、体細胞が皮膚細胞である、態様1~5のいずれか一つに記載の方法が提供される。
【0119】
態様7によれば、細胞内送達が組織ナノトランスフェクションを介してである、態様1~6のいずれか一つに記載の方法が提供される。
態様8によれば、細胞が、インビボでトランスフェクトされる皮膚組織の皮膚細胞である、態様7に記載の方法が提供される。
【0120】
態様9によれば、糖尿病を有する対象において血中グルコースレベルを正常化する方法であって、前記方法が、インビボで、標的皮膚組織を、インスリンを産生するようにリプログラミングするステップを含み、前記方法が、
前記標的皮膚組織の細胞をリプログラミング組成物と、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で、接触させるステップであって、前記リプログラミング組成物が、
配列番号2と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第2の核酸配列;および
配列番号6と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第3の核酸配列;および任意で、
配列番号8と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする第4の核酸配列
を含む、方法が提供される。
【0121】
態様10によれば、リプログラミング組成物が、
配列番号2を含むペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4を含むペプチドをコードする第2の核酸配列;
配列番号6を含むペプチドをコードする第3の核酸配列;および
配列番号8を含むペプチドをコードする第4の核酸配列
を含む、態様9に記載の方法が提供される。
【0122】
態様11によれば、
膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列;
転写因子MafAをコードする第2の核酸配列;
グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列;および任意で、
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする第4の核酸配列
を含み、前記第1、第2、第3、および任意の第4の核酸配列のそれぞれが真核生物制御配列と作動可能に連結されている、組成物が提供される。
【0123】
態様12によれば、
前記第1の核酸配列が、配列番号2と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードし;
前記第2の核酸配列が、配列番号4と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードし;および
前記第3の核酸配列が、配列番号6と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードし;および任意で、
前記第4の核酸配列が、配列番号8と少なくとも85%、95%、または99%配列同一性を有するペプチドをコードする、
態様11に記載の組成物が提供される。
【0124】
態様13によれば、リプログラミング組成物が
配列番号2を含むペプチドをコードする第1の核酸配列;
配列番号4を含むペプチドをコードする第2の核酸配列;
配列番号6を含むペプチドをコードする第3の核酸配列;および
配列番号8を含むペプチドをコードする第4の核酸配列
を含む、態様11または12に記載の方法が提供される。
【0125】
態様14によれば、
第1の核酸配列が、配列番号2と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;
第2の核酸配列が、配列番号4と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;
第3の核酸配列が、配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードし;および任意で、
第4の核酸配列が、配列番号8と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、
態様11に記載の組成物が提供される。
【0126】
態様15によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む、態様14に記載の組成物が提供される。
態様16によれば、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のうちの2つ以上が、発現ベクターの一部であり、前記発現ベクターが、前記2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記2つ以上の第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、態様11~15のいずれか一つに記載の組成物が提供される。
【0127】
態様17によれば、前記多重コード配列が前記第1、第2、第3、および任意での第4の核酸配列の4つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ前記単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、態様16に記載の組成物が提供される。
【0128】
態様18によれば、第1、第2、第3、および第4の核酸配列が非ウイルス性ベクターの一部である、態様11~17のいずれか一つに記載の組成物が提供される。
態様19によれば、出生後皮膚組織のインビボでのトランスフェクションを行って、前記皮膚組織を、インスリン生成性であるように誘導するためのキットであって、前記キットが
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;ならびに
膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)をコードする第1の核酸配列、転写因子MafAをコードする第2の核酸配列、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)をコードする第3の核酸配列、および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)をコードする核酸配列を含む第4の核酸配列を含む、リプログラミングカクテル
を含む、キットが提供される。
【0129】
態様20によれば、ナノトランスフェクションデバイスが、前記リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つまたは複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、態様19に記載のキットが提供される。
【実施例】
【0130】
実施例1
皮膚組織をインスリン生成性にするリプログラミング
手順の詳細:
インビボでの組織リプログラミング(レンチウイルス媒介性およびTNT媒介性)
8週齢の雄マウス(C57Bl/6、Jackson laboratories、カタログ番号000664)において、50mg/kgストレプトゾトシン(STZ、カタログ番号-S0130Millipore Sigma)を腹腔内注射により連続した5日間、投与することにより、糖尿病を誘発させた。膵島のベータ細胞を選択的に破壊する薬物STZは、マウスにおいて、血中グルコースの上昇(最高400~500mg/dL)をもたらして、糖尿病を発症させる。血中グルコースのモニタリングについて、マウスを6時間、絶食させ、血中グルコースを、Contour血中グルコースメーター(カタログ番号-9545C)および試験紙(カタログ番号-7099)を用いて、7日ごとに測定した。
【0131】
レンチウイルス媒介性PMGFリプログラミングについて、PMGF群のマウスに、PDX-1、MafA、GLP-1R、FGF21を過剰発現するレンチウイルスを3日間、1日おき(1日目、3日目、および5日目)に後部背面皮膚の皮内に注射した(各リプログラミング因子について107個の粒子/mLの力価でマウスあたり100μl)。対照マウスに、いずれのリプログラミング因子も含まないレンチウイルスを含有する対照ベクターを注射した(107個の粒子/mLの力価でマウスあたり100μl)。マウスレンチウイルスは、Applied Biological Materials Inc.、Richmond、BC、Canadaからカタログ番号LV002で購入された。
【0132】
TNT媒介性PMGFリプログラミングについて、処置されるべきエリアをまず、TNTの24~48時間前に裸にした。その後、皮膚を、剥離して、表皮において、死んだ/ケラチンの細胞層を除去し、有核細胞を露出させた。TNTデバイスを、剥離された皮膚表面の上に直接、置いた。PMGFプラスミドカクテルを、0.05~0.1μg/μlの濃度でリザーバー中に負荷した。金めっき電極(すなわち、陰極)をプラスミド溶液中に浸漬し、一方、24Gニードルの対電極(すなわち、陽極)を、TNTプラットフォーム表面と並置して、皮内に挿入した。その後、パルス電気刺激(すなわち、振幅250Vおよびパルスあたり10秒間の持続時間の10回のパルス)を電極に与えて、露出した細胞膜にナノポアを形成し、プラスミドカーゴをナノチャネルを通して細胞へ運んだ。PMGF(PM:G:F)プラスミドを、1:1:1モル比で混合した。リプログラミングカクテルにおいて、37.5μgの各コンポーネントPM/G/Fを用いた。
【0133】
等量の対照プラスミドを、対照マウス群へ送達した。他に規定がない限り、対照検体は、ブランクのリン酸緩衝食塩水(PBS)/ニセのプラスミド溶液でのTNT処置を含んだ。ニセ(空ベクター)PDX-1-MafA、GLP-1R、およびFGF-21プラスミドを、プラスミドDNA精製キット(ZymoPURE II Plasmid Midiprep Kit、カタログ番号D4201)を用いて調製し、Nanodrop 2000c分光光度計(Thermoscientific)からDNA濃度を取得した。PDX-1-MafA、GLP-1R、FGF-21プラスミドを、Applied Biological Materials Inc.、Richmond、BC、Canada、カタログ番号C315によるGFP(PDX-1-MafA)、td-Tomato(GLP-1R)、またはCFP(FGF-21)を用いて構築した。血中グルコースモニタリングについて、マウスを6時間、絶食させ、血中グルコースを、Contour血中グルコースメーター(カタログ番号-9545C)および試験紙(カタログ番号-7099)を用いて、7日間ごとに測定した。
【0134】
腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)
IPGTTを用いて、腹腔内注射されたグルコース負荷の身体からのクリアランスを試験した。この試験は、TNT介入後7週間目に行った。この試験は、グルコース代謝およびインスリン分泌における障害を検出する。この実験について、グルコースの溶液(D-グルコース、Gibco、カタログ番号15023-021、2g/kg体重)を腹腔内(IP)注射により投与する前に、マウスを6時間、絶食させ、空腹時血中グルコースレベルを決定した。その後、血中グルコースレベルを、次の120分間の間、異なる時点(0分後、15分後、30分後、60分後、90分後、および120分後)において尾静脈から測定した。
【0135】
免疫組織化学法および顕微鏡観察
組織学的実験について、安楽死させたマウスからの摘出された皮膚および膵臓を、パラフィン中に包埋し、インスリン産生細胞、インスリン(Abcam、ab7842,1:100希釈)およびCペプチド(Abcam、ab14181、1:100希釈)の特徴的な抗体での免疫組織化学法のために処理した。その後の、適切な蛍光タグ付き二次抗体(Alexa488タグ付き抗モルモット、1:200;Alexa568タグ付き抗ウサギ、1:200)とのインキュベーションおよびDAPIでの対比染色により、そのシグナルを可視化した。画像を、レーザー走査型共焦点顕微鏡(Olympus FV 1000フィルター/スペクトル)により捕獲した。
【0136】
共焦点画像は、リプログラミング化皮膚においてインスリンおよびCペプチドの形成を示した。組織学的試験について、安楽死させたマウスからの摘出された皮膚および膵臓を、パラフィン中に包埋し、インスリン産生細胞、インスリン(Abcam、ab7842,1:100希釈)およびCペプチド(Abcam、ab14181、1:100希釈)の特徴的な抗体での免疫組織化学法のために処理した。リプログラミング化皮膚は、形態において膵島様クラスターであるインスリン生成性細胞を示し、膵島ベータ細胞の特徴的なマーカーである、豊富なインスリンおよびCペプチドの産生を有した。皮膚におけるCペプチド発現は、リプログラミング化皮膚におけるインスリンの新規形成の証拠を提供する。興味深いことに、対照皮膚においてそのような構造体は見出されなかった。したがって、そのデータは、PMGFリプログラミング因子カクテルが、マウスのストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける血中グルコースレベルの調節をもたらす、出生後皮膚におけるインスリン生成性細胞の形成を生じる組織リプログラミングをもたらすことを示した。TNT処置から24時間後のマウス皮膚の共焦点顕微鏡観察画像により、PDX-1-MafA膵臓転写因子の発現が明らかにされた。
【配列表】
【国際調査報告】