(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】金属切削用刃先交換式ドリル工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/05 20060101AFI20230718BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B23B51/05 T
B23B51/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581451
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2021060483
(87)【国際公開番号】W WO2022002457
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カールバーリ, ホーカン
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA01
3C037BB17
3C037BB18
3C037DD01
3C037DD07
3C037FF08
(57)【要約】
穿孔シャフト(102)およびマウントシャンク(103)を有する細長いドリル本体(101)と、インサート座(106)内の穿孔シャフト(102)の遠位端(105)に装着された中心ドリルインサート(104)であって、インサート座(106)がインサート座(106)の底部に対してインサートを保持するように構成される、中心ドリルインサート(104)と、中心ドリルインサート(104)からチップを誘導して形成するように構成された、穿孔シャフト(102)のドリルフルート(107)であって、ドリルフルート(107)が、ドリルフルート(107)の遠位端(109)にチップ形成面(108)を含む、ドリルフルート(107)と、を含む金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)であって、チップ形成面(108)が、中心ドリルインサート(104)のためのインサート座(106)の底部に対して垂直であり、チップ形成面(108)が、中心ドリルインサート(104)の周縁角部(110)から、チップ形成面(108)と仮想内接球(302)との交点によって形成される曲線(302)上の点(301)までの距離Xを隔てて配置され、仮想内接球の中心(303)が、穿孔シャフト(102)の遠位端(105)の中心と一致し、仮想内接球の半径が、インサート(104)の周縁角部(110)によって規定され、ドリル工具Dcの直径で割った距離Xは、穿孔直径に対するチップ直径の比を示すチップパラメータAに等しく、チップパラメータAは、0.3≦A≦0.5であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔シャフト(102)およびマウントシャンク(103)を有する細長いドリル本体(101)と、
インサート座(106)内の前記穿孔シャフト(102)の遠位端(105)に装着された中心ドリルインサート(104)であって、前記インサート座(106)が前記インサート座(106)の底部に対して前記インサートを保持するように構成される、中心ドリルインサート(104)と、
前記中心ドリルインサート(104)からチップを誘導して形成するように構成された、前記穿孔シャフト(102)のドリルフルート(107)であって、前記ドリルフルート(107)が、前記ドリルフルート(107)の遠位端(109)にチップ形成面(108)を含む、ドリルフルート(107)と、
を含む金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)であって、
前記チップ形成面(108)が、前記中心ドリルインサート(104)のための前記インサート座(106)の前記底部に対して垂直であり、
前記チップ形成面(108)が、前記中心ドリルインサート(104)の周縁角部(110)から、前記チップ形成面(108)と仮想内接球(302)との交点によって形成される曲線(302)上の点(301)までの距離Xを隔てて配置され、前記仮想内接球の中心(303)が、前記穿孔シャフト(102)の前記遠位端(105)の中心と一致し、前記仮想内接球の半径が、前記インサート(104)の前記周縁角部(110)によって規定され、
ドリル工具Dcの直径で割った距離Xは、穿孔直径に対するチップ直径の比を示すチップパラメータAに等しく、
前記チップパラメータAは、0.3≦A≦0.5である、ことを特徴とする、金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項2】
前記チップパラメータAが0.37≦Aであることを特徴とする、請求項1に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項3】
前記チップパラメータAがA≦0.42であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項4】
曲線(302)上の前記点(301)が前記曲線(302)の中間点上にあることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項5】
前記チップ形成面(108)が、金属切削用ドリル工具(100)の長手方向軸に対して半径方向に距離w≧Dc/4だけ延在し、Dcが前記金属切削用ドリル工具(100)の直径であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項6】
前記チップ形成面(108)が、前記チップ形成面(108)の全長にわたって前記インサート座(106)の前記底部に対して垂直であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項7】
前記インサート(104)の頂部から前記チップ形成面(108)までの半径方向距離d1がd1=Dc・Pであり、Pが0.04≦P≦0.08であり、かつ、Dcが前記ドリル工具の前記直径であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【請求項8】
前記インサート(104)の頂部から前記チップ形成面(108)までの半径方向距離d1がd1=Dc・Pであり、Pが0.04≦P≦0.06であり、かつ、Dcが前記ドリル工具(100)の前記直径であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削用刃先交換式ドリル工具に関し、より詳細には、中心ドリルインサートを備えた金属切削用刃先交換式ドリル工具に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のサブトラクティブ製造では、穿孔は重要な作業であり、特に金属の穿孔は要求の厳しい作業であることが判明している。
【0003】
金属穿孔では、交換可能な金属切削インサートを備えたドリル工具が、特にCNC作業においてしばしば使用される。前述のタイプのドリル工具は、マウントシャンクおよび穿孔シャフトを有する細長いドリル本体を含む。穿孔シャフトの遠位端には、穿孔の中心領域から材料を切断するための中心インサートと、孔の周辺領域の材料を切断するための周辺インサートと、が配置される。良好な穿孔作業を達成するために、チップの排出およびチップの制御は、表面仕上げおよび穿孔速度にとって最も重要である。しかし、チップの排出および制御は、プロセスの安全性および信頼性にとっても非常に重要である。特に、中心インサートのためのチップ制御およびチップ排出は、要求が厳しいことが分かる。中心インサートによって切断されるチップは、縁部の周縁端部がインサートの縁部の中心端部よりも長いチップを切断するという事実に起因して、螺旋円錐の形状である。チップ形成の別の重要なパラメータは、好ましくは十分に長いが長すぎないチップの長さである。チップが長くなりすぎると、チップがドリル工具を絡ませ、プロセスの安全性を低下させ、穿孔された穴の表面損傷を引き起こす可能性があり、短すぎるチップはまた、ドリル工具からのチップ排出の問題を引き起こす可能性があり、当然ながら、プロセスの安全性および信頼性に悪影響を及ぼす。
【0004】
チップの排出および制御を改善するためのドリルフルートを有するドリル工具を提供することは、当技術分野において周知である。これにより、連続的なチップを形成し、切断ゾーンから離れるように向けることができる。しかしながら、長すぎるチップの問題は、ドリルフルートでは対処されない。
【0005】
したがって、良好なチップ排出を達成し、形成されるチップが長すぎることを防止するために、金属切削用ドリル工具の幾何学的形状をさらに改善する必要性が依然として残っている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、改善されたチップ制御を可能にする金属切削用ドリル工具を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に定義された特徴を有する金属切削用刃先交換式ドリル工具によって達成される。
【0008】
本発明による金属切削用刃先交換式ドリル工具は、穿孔シャフトおよびマウントシャンクを有する細長いドリル本体と、インサートをインサート座の底部に対して保持するように構成されたインサート座内の穿孔シャフトの遠位端に装着された中心ドリルインサートと、を含む。金属切削用刃先交換式ドリル工具は、中心ドリルインサートからチップを誘導して形成するように構成された穿孔シャフトのドリルフルートをさらに含み、ドリルフルートはドリルフルートの遠位端にチップ形成面を含む。金属切削用刃先交換式ドリル工具は、チップ形成面が、中心ドリルインサートのためのインサート座部の底部に対して垂直であり、チップ形成面が、中心ドリルインサートの周縁角部から、チップ形成面と仮想内接球との交点によって形成される曲線上の点までの距離Xを隔てて配置され、仮想内接球の中心が穿孔シャフトの遠位端の中心と一致し、仮想内接球の半径がインサートの周縁角部によって規定され、ドリル工具Dcの直径で割った距離Xが穿孔直径に対するチップ直径の比を示すチップパラメータAに等しいことを特徴とする。チップパラメータAは、0.3≦A≦0.5である。
【0009】
一実施形態によれば、チップパラメータAは、0.37≦Aである。このようにして、最小値よりも大きい直径を有するチップが形成される。
【0010】
一実施形態によれば、チップパラメータAは、A≦0.42である。これにより、最大値よりも小さい直径のチップを形成することができる。
【0011】
一実施形態によれば、曲線上の前記点は、前記曲線の中間点上にある。
【0012】
一実施形態によれば、前記チップ形成面が、金属切削用ドリル工具の長手方向軸に対して半径方向に距離w≧Dc/4だけ延在し)、Dcは金属切削用ドリル工具の直径であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の金属切削用刃先交換式ドリル工具。このようにして、十分なサイズのチップ形成面が形成される。
【0013】
一実施形態によれば、前記チップ形成面は、その全長にわたってインサート座の底部に対して垂直である。
【0014】
一実施形態によれば、インサートの頂部からチップ形成面までの半径方向距離d1は、d1=Dc・Pであり、ここで、Pは0.04≦P≦0.08であり、Dcはドリル工具の前記直径である。このようにして、効率的なチップ排出が達成される。
【0015】
一実施形態によれば、インサートの頂部からチップ形成面までの半径方向距離d1は、d1=Dc・Pであり、ここで、Pは0.04≦P≦0.06であり、Dcはドリル工具の前記直径である。このようにして、さらに効率的なチップ排出が達成される。
【0016】
本発明のさらなる利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による金属切削用刃先交換式ドリル工具の斜視図である。
【
図2】
図1に開示した金属切削用刃先交換式ドリル工具の上面図である。
【
図3】仮想内接球を有する、
図1および
図2に開示した金属切削用刃先交換式ドリル工具の穿孔シャフトの遠位端の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
穿孔シャフト102およびマウントシャンク103を有する細長いドリル本体101を含む、金属切削用刃先交換式ドリル工具100を示す
図1を参照する。金属切削用刃先交換式ドリル工具は、インサートをインサート座106の底部に対して保持するように構成されたインサート座106内の穿孔シャフト102の遠位端105に装着された中心ドリルインサート104と、中心ドリルインサート104からチップを誘導して形成するように構成された穿孔シャフト102のドリルフルート107と、をさらに含む。ドリルフルート107は、ドリルフルート107の遠位端109にチップ形成面108を含む。金属切削用刃先交換式ドリル工具は、チップ形成面108が、中心ドリルインサート104のためのインサート座106の底部に対して垂直であり、チップ形成面108が、
図3に見られるように、中心ドリルインサート104の周縁角部110から曲線302上の点301までの距離Xを隔てて配置されていることを特徴とする。曲線は、チップ形成面108と仮想内接球309との交点によって形成される。仮想内接球の中心303は、穿孔シャフト102の遠位端105の中心と一致し、仮想内接球の半径は、インサート104の周縁角部110によって規定され、ドリル工具Dcの直径で割った距離Xは、穿孔直径に対するチップ直径の比を示すチップパラメータAに等しい。チップパラメータAは、0.3≦A≦0.5である。
【0019】
本発明者らは、このようなチップパラメータAを上記の間隔に有することによって、良好なチップ形成プロセスが達成され、直径X=A・Dcを有するチップが形成されることを認識した。形成されるチップの直径は、穿孔作業において形成される螺旋状チップの直径であり、これは、穿孔シャフトを設計するための重要なパラメータである。チップの直径は、穿孔シャフト内の材料の量を最適化するために使用されてもよく、これは、より強い穿孔シャフトが得られ得ることを意味する。このようにして、穿孔シャフトは、チップ制御およびチップ排出を維持しながら強度を高めるように設計することができる。
【0020】
一実施形態では、チップパラメータAは0.37≦Aである。このようにして、最小値よりも大きい直径を有するチップが得られる。
【0021】
一実施形態では、チップパラメータAは、A≦0.42である。このようにして、最大よりも小さい直径を有するチップが得られる。
【0022】
ここで再び
図3を参照すると、穿孔シャフト102の遠位端105の中心に配置された仮想内接球309が示されている。仮想内接球309の中心303は、穿孔シャフト102の遠位端105の中心と一致する。仮想内接球の半径は、インサート104の周縁角部110によって規定される。周縁角部は、ドリル工具100の長手方向軸に対して半径方向の周縁角部および軸方向の周縁角部である。言い換えれば、周縁角部110は、ドリル工具100に対するインサート104の半径方向に最も外側かつ軸方向に最も外側の角部であり、したがって、穿孔時に形成される孔の壁に最も近いインサートの有効な角部である。曲線302は、チップ形成面108と仮想内接球309との交点によって形成される。
【0023】
図3において、曲線302上の前記点301は、前記曲線302の中間点上にある。しかし、曲線302と周縁角部110との間の幾何学的関係により、点301は、図示するように距離Xの長さに大きな影響を与えることなく、曲線302上のどこにでも配置することができる。距離Xは、周縁角部110から点301までの最短距離である。
【0024】
図2に示すように、前記チップ形成面108は、金属切削用ドリル工具100の長手方向軸に対して半径方向に距離w≧Dc/4だけ延在し、ここでDcは金属切削用ドリル工具100の直径である。
【0025】
図2は、前記チップ形成面108がインサート座106の底部に対してその全長にわたって垂直であることを示している。
【0026】
図2はまた、インサート104の頂部201からチップ形成面108までの半径方向距離d1を示す。この半径方向距離d1は、d1=Dc・Pであり、ここで、Pは、0.04≦P≦0.08であり、Dcは、ドリル工具100の前記直径である。この距離d1は、チップ排出にとって重要であり、Pは好ましくは0.04≦P≦0.06である。
【国際調査報告】