(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】爪製剤と治療レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20230718BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230718BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230718BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20230718BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20230718BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230718BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20230718BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230718BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230718BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230718BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20230718BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230718BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K38/39
A61K9/08
A61K47/59
A61K31/4188
A61K8/64
A61K8/65
A61K8/86
A61K8/49
A61P31/10
A61K45/00
A61Q3/02
A61K8/41
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581466
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 GB2021051685
(87)【国際公開番号】W WO2022003367
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508066991
【氏名又は名称】ノバビオティクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVABIOTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】デボラ オニール
(72)【発明者】
【氏名】デリー マーサー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076BB40
4C076CC31
4C076DD51
4C076EE23H
4C076FF21
4C083AC531
4C083AC861
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD431
4C083CC28
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE50
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA24
4C084DA40
4C084MA17
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB321
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB26
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB32
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、局所爪適用のための水性製剤に関する。本発明はまた、真菌性爪感染の治療に使用するための組成物にも関し、組成物は所定の期間にわたって適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所爪適用のための水性組成物であって、
a)タンパク質、および
b)ポリエチレングリコール(PEG)500~PEG8000、
を含む、水性組成物。
【請求項2】
膜形成組成物である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
PEGが1000~6000の平均分子量を有し、
任意に、PEGが4000~6000の平均分子量を有する、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項4】
10~80%v/vのPEGを含み、
任意に、約40%~60%v/vのPEGを含む、請求項1~3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項5】
前記タンパク質は、コラーゲンおよび/またはケラチンである、請求項1~4のいずれか一項記載の水性組成物。
【請求項6】
前記水性組成物は、爪増強剤を含み、
任意に、爪増強剤がビオチンである、請求項5に記載の水性組成物。
【請求項7】
爪の処理のための化粧方法であって、
請求項1~6のいずれかに記載の水性組成物を爪に塗布することを含む、方法。
【請求項8】
前記水性組成物が、爪上にフィルムを形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質が、ペプチドにおいて0または1の置換を受けた4~15のアルギニンを含む抗真菌性環状ペプチドである、請求項1~6のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項10】
a)プロテアーゼ阻害剤、任意に、メタロペプチダーゼ阻害剤、
b)ケラチン、または
c)コラーゲン、
のいずれか1つまたは複数をさらに含む、請求項9に記載の水性組成物。
【請求項11】
a)ペプチドにおいて0または1の置換を受けた4~15アルギニンを含む抗真菌性環状ペプチド、および
b)プロテアーゼ阻害剤、任意に、メタロペプチダーゼ阻害剤、
を含む、水性組成物。
【請求項12】
前記メタロペプチダーゼ阻害剤は、エンドプロテアーゼ阻害剤であり、
任意に、
a)ファンガリシン(fungalysin)ファミリー(M36)の阻害剤、または
b)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、請求項10または11に記載の水性組成物。
【請求項13】
前記ペプチドが約1%w/v~20%w/vで存在する、請求項9~12のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項14】
前記ペプチドが5~9個のアルギニン残基を含む、請求項9~13のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項15】
前記抗真菌性環状ペプチドは、酸性塩形態であり、
任意に、酢酸塩である、請求項9~14のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項16】
請求項9~15に記載の水性組成物を含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬としての使用のための請求項9~16のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項18】
局所的に塗布される、真菌性爪感染の治療または予防に使用するための、請求項17に記載の水性組成物。
【請求項19】
前記真菌爪感染が皮膚糸状菌によって引き起こされる、請求項18に記載の使用のための水性組成物。
【請求項20】
爪の表面に毎日投与される、請求項18または19に記載の使用のための水性組成物。
【請求項21】
7~28日間にわたって毎日塗布される、請求項20に記載の使用のための水性組成物。
【請求項22】
ペプチドにおいて0または1の置換を受けた4~15アルギニンを含む抗真菌性環状ペプチドを含む、真菌爪感染の治療または予防に使用するための組成物であって、
7~28日間にわたって爪の表面に毎日塗布適用される、組成物。
【請求項23】
前記治療が3~12カ月毎に繰り返される、請求項20~22のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記抗真菌性環状ペプチドが、酸性塩形態であり、
任意に、酢酸塩である、請求項22または23に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記抗真菌性環状ペプチドが、前記組成物の約1%w/v~20%w/vで存在する、請求項22~24のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項26】
前記組成物が、請求項9~16のいずれかの水性組成物である、請求項22~23に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
組成物を爪に塗布するためのデバイスであって、
請求項1~6または9~16のいずれかに記載の組成物を含む、デバイス。
【請求項28】
前記デバイスは、前記組成物を爪に塗布するためのブラシを備え、
任意に、前記デバイスは、ネイルペン、または、ボトルおよびブラシである、請求項27記載のデバイス。
【請求項29】
爪上にフィルムを形成するための、局所用爪組成物におけるPEG500~8000の使用であって、
前記局所用爪組成物はタンパク質を含む水性組成物である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪への局所適用に適したタンパク質を含有する水性組成物に関する。本発明はまた、組成物の化粧品(コスメティクス)への使用および真菌爪感染の治療を含む医薬としての組成物の使用に関する。本発明はまた、組成物を含有するデバイス、組成物を爪に適用するのを補助するデバイス、およびタンパク質を含有する爪組成物におけるフィルム形成剤としてのPEGの使用を含む。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を、爪に容易に適用することができ、したがって、局所適用に適し、かつタンパク質の有効性を維持する液体組成物に製剤化することは、複雑なプロセスである。
本発明は、そのような組成物を提供する。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様によれば、局所爪適用のための水性組成物が提供され、該組成物は、以下を含む:
a)タンパク質
b)ポリエチレングリコール(PEG)500~PEG8000。
【0004】
有利には、これらの分子量(mwt)でPEGを含む水性組成物の使用は、爪への塗布に続いて速やかに乾燥し、爪上にフィルムの形成を可能にして、ユーザが製品が爪の表面を保護するために塗布された爪の領域を見ることができるようにする組成物を提供する。従って、この組成物は、フィルム形成(成膜)剤としてPEGを用いた成膜組成物である。
【0005】
PEGは、1000および6000の平均分子量、例えば、3000~6000または4000~6000のような1500~6000の平均分子量を有することができる。組成物は、10~80%v/vPEG、例えば40~60%v/vPEGを含むことができる。
【0006】
タンパク質は、コラーゲンおよび/またはケラチンであり得る。組成物は、爪エンハンサー、例えばビオチンを含んでもよい。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、爪の処理のための化粧(コスメティック)方法を含み、この方法は、上記の組成物を適用することを含む。塗布(適用)後、組成物は爪上にフィルムを形成することができる。
【0008】
代わりに、タンパク質は、ペプチドにおいて0または1の置換を受ける4~15のアルギニンを含む抗真菌性環状ペプチドであり得る。すなわち、組成物は、局所爪適用のための抗真菌性(防菌)水性組成物である。
【0009】
抗真菌性組成物は、さらに、以下のいずれか1つまたは複数を含み得る:
a)プロテアーゼインヒビター、場合によりメタロペプチダーゼインヒビター、
b)ケラチン、
c)コラーゲン、または
d)爪エンハンサー、例えば、ビオチン。
【0010】
さらなる態様では、以下を含む水性組成物が提供される:
a)ペプチドにおいて0または1の置換を受ける4~15アルギニンを含む抗真菌性環状ペプチド、および
b)プロテアーゼ阻害剤、任意に、メタロペプチダーゼ阻害剤。
【0011】
メタロペプチダーゼ阻害剤は、エンドプロテアーゼ阻害剤、任意に、
a)真菌類ファミリー(M36)の阻害剤、または
b)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり得る。
【0012】
環状ペプチドは、組成物の約1%w/v~20%w/vで存在し得る。環状ペプチドは、5~9のアルギニン残基を含み得る。抗真菌性環状ペプチドは、酸性塩形態、任意に、酢酸であり得る。
【0013】
さらなる態様において、上記の抗真菌性水性組成物のいずれかを含む医薬組成物が提供される。
【0014】
さらなる態様において、抗真菌性組成物は、医薬としての使用のために提供される。
【0015】
使用は、組成物が局所的に適用される、真菌性爪感染の治療または予防のためであり得る。真菌性爪感染は、皮膚糸状菌によって引き起こされることがある。組成物は、必要に応じて7~28日間にわたって毎日塗布することができる。
【0016】
さらなる態様では、真菌爪感染の治療または予防に使用するために、ペプチドにおいて0または1の置換を受ける4~15アルギニンを含む抗真菌性環状ペプチドが提供され、ここで、組成物は7~28日間にわたって毎日適用される。この組成物は、3分から35分にわたって爪の表面まで乾燥させることができる。組成物は、上記の水性組成物のいずれでもよい。この治療は3~12ヵ月毎に繰り返される。抗真菌性環状ペプチドは、酸性塩形態、任意に、酢酸であってもよい。ペプチドは、組成物の約1% w/v~20% w/vで存在し得る。使用のための組成物は、抗真菌性環状ペプチドを含む上記の組成物のいずれかであり得る。
【0017】
さらなる態様では、記載される組成物のいずれかを適用するように構成されたデバイスが提供される。デバイスは、ネイルペンであってもよい。
【0018】
さらなる態様において、PEG500~8000の使用は、タンパク質を含む水性局所爪組成物におけるフィルム形成剤として提供される。
【0019】
以下、本発明を、添付の図面を参照してのみ例示のために説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】Roehm Lacquer(ロームラッカー)1およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum(トリコフィトン・ルブルム、紅色白癬菌)NCPF118の代謝活性。
【
図2】Roehm Lacquer2およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum NCPF118の代謝活性。
【
図3】Roehm Lacquer3およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum NCPF118の代謝活性。
【
図4】Roehm Lacquer4およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum NCPF118の代謝活性。
【
図5】Roehm Lacquer5およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum NCPF118の代謝活性。
【
図6】Ancor Lacquer C(アナコールラッカーC)およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum NCPF118の代謝活性。
【
図7】2d Lacquer(2dラッカー)およびPEG4000製剤中のNP213に曝露したT. rubrum NCPF118の代謝活性。
【
図8】水および任意に10%ペプチドを含む50% PEG濃度での異なるmwt PEG組成物の切除爪上の平均乾燥時間を示す。各々のケースにおいて3回の反復を用いた。
【
図9】メタロプロテアーゼ阻害剤、EDTA(100μM)の、0.75%(w/v)ヒト爪に対する、216時間、T. rubrum NCPF118の増殖中のNovexatin(登録商標)(ノベキサチン)(NP213)の抗真菌効果に対する影響。
【
図10】メタロプロテアーゼ阻害剤、EDTA(100μM)の、0.75%(w/v)ヒト爪対する、216時間、T. interdigitale (トリコフィトン・インテルディギターレ)NCPF335の増殖中のNovexatin(登録商標)(NP213)の抗真菌効果に対する影響。
【
図11】メタロプロテアーゼ阻害剤、EDTAが、168時間インキュベーション後のT. rubrum NCPF118およびT. interdigitale NCPF335の代謝活性に及ぼす影響。
【
図12】T. rubrum NCPF118およびT. interdigitale NCPF0335に対するNP213の活性に対するフェニルアラニン(F)またはリジン(K)残基の単一アルギニン残基の置換の効果。
【
図13】T. rubrum NCPF118およびT. interdigitale NCPF0335に対するNP213の活性に対するフェニルアラニン(F)またはリジン(K)残基の単一アルギニン残基の置換の効果。
【
図14】ペプチドとPEGを組み合わせたフィルムの写真。
【
図15】NP213濃度(% w/v)と時間(d)がT. rubrum NCPF118に対するNP213の抗真菌効果に及ぼす影響。
【
図16】ネイルアプリケーターデバイスの実施例:ネイルボトルとハケ。
【
図17】ネイルアプリケーターデバイスの実施例:ネイルペン。
【発明を実施するための形態】
【0021】
組成物
組成物は水性であり、それは水を含むことを意味する。組成物は溶液である、すなわち組成物は液体である。組成物は、粒子フリーであり得、組成物中のペプチドの未溶解粒子、例えば、未溶解結晶が存在しないことを意味する。当業者は、例えば、溶液を遠心分離し、遠心管の底部にある粒子、例えば、ペプチドの結晶を視覚的にチェックすることによって、溶液が粒子を含まないかどうかを決定することができる。あるいは、実施例3に記載したような目視検査を用いてもよい。
【0022】
組成物は局所組成物である。すなわち、組成物は局所適用に適している。
【0023】
タンパク質
「タンパク質」とは、ペプチド結合によって互いに結合された複数のアミノ酸残基を意味する。「タンパク質」という用語は、より長いアミノ酸残基並びにより短い長さのアミノ酸のペプチドを包含する。
【0024】
タンパク質は、爪の外観を増強または改善する有効性を有する任意のものであってもよい。例えば、爪を強化するタンパク質。例えば、タンパク質は、ケラチンおよび/またはコラーゲンであり得る。これらのタンパク質のアミノ酸配列は知られている。タンパク質は、全長タンパク質コラーゲンまたはケラチンであってもよい。あるいは、コラーゲンまたはケラチンは、爪の強度を増加させるために全長タンパク質の活性の全部または一部を保持する短縮型または突然変異型であってもよい。
【0025】
あるいは、このタンパク質は爪の医学的治療のための治療活性を有する。
【0026】
化粧法
この組成物は、爪の化粧料処理方法で使用することができる。化粧品とは、爪の外観を改善するための非医学的治療を意味する。
【0027】
ペプチド
タンパク質はペプチドであってもよい。例えば、治療的活性のあるペプチド。これは、その塩、すなわち、薬学的に許容される塩を含む。ペプチドは爪の真菌感染に対して活性を有することができ、すなわち、ペプチドは抗真菌ペプチドである。
【0028】
ペプチドは環状ペプチドであってもよい。ペプチドの骨格環化のための方法は、当技術分野において公知である。環状ペプチドは、4~15個のアミノ酸、例えば4~14個のアミノ酸、4~9個のアミノ酸、4~8個のアミノ酸、または4~7個のアミノ酸を含むかまたはこれらからなる。ペプチドは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。ペプチドは、7個のアミノ酸からなる。ペプチドは、ポリアルギニンペプチドであり得る。例えば、環状R‐R‐R‐R‐R‐R‐Rである。この環状アルギニン7量体(7‐mer)ペプチドは、以下の実施例ではNP213と呼ばれる。
【0029】
環状ペプチドの残基の一つは、別の残基と交換することができる。そのような変形例は、例えば、実施例6で説明した方法を用いてインビトロで試験した場合、対応する非変形例ペプチドの少なくとも約10%、50%、60%、70%、80%、90%または同等の生物学的活性を有することができる。保存的アミノ酸はしばしば利用される。すなわち、類似の化学的および物理的性質を有するアミノ酸の置換である。従って、例えば、保存的アミノ酸置換は、リジンまたはイソロイシンに対するアルギニンの交換を含むことができる。ヒスチジンおよび非天然のカチオン性アミノ酸を含む他のカチオン性アミノ酸もまた置換され得る。また、本発明者らは、抗真菌活性を有するペプチドを生じるために、フェニルアラニンとアルギニンとを交換することも示した。置換が導入された後、例えば、実施例6で説明した方法を用いて、変異体を生物学的活性についてスクリーニングする。
【0030】
ペプチド中のアミノ酸は、DまたはLアミノ酸であり得る。例えば、ペプチド中のアミノ酸は、90%または95%、98%または99%のLアミノ酸であってよい。ペプチドの活性は、真菌の細胞膜を破壊し、透過させることによって作用するペプチドのカチオン電荷の結果である。
【0031】
ペプチドの定義には、既知の異性体(構造、ステレオ‐、立体配座および立体構造)、ペプチド模倣物、上記アミノ酸の構造類似体、およびそれらが自然に(例えば、翻訳後修飾)または化学的に修飾されたものも含まれ、それらには、リン酸化、グリコシル化、スルホニル化および/またはヒドロキシル化が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
ペプチドの定義には、ペプチドの塩形態も含まれる。例えば、酸性塩形態。これらには、酢酸、塩酸塩およびトリフルオロアセテート/トリフルオロ酢酸(TFA)塩形態が含まれる。例えば、NP213(R‐R‐R‐R‐R‐R‐R)アセテートである。さらに酢酸を組成物に加えてもよい。
【0033】
ペプチドは一般に合成ペプチドである。ペプチドは、例えば、固相ペプチド合成法により、酵素触媒ペプチド合成法により、または組換えDNA技術の補助を用いて、in vitroで合成することができる単離、精製ペプチドまたはその変形例であってもよい。
【0034】
組成物はペプチドの0.01~20%を含み得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20%などである。例えば、5~15%、8~12%などである。割合(パーセンテージ)は、重量対体積比(w/v)である。すなわち、グラム単位のペプチドの重量をミリリットル単位の最終溶液の体積で割ったものに100を乗じたものである。典型的には、ペプチドは、まず水にペプチドを溶解し、次いで、ペプチドおよび水溶液を液化PEG中で最終溶液に必要な濃度に希釈することによって調製される。
【0035】
実施例ペプチドは、以下の通りである:
1)環状R‐R‐R‐R‐R‐R‐R
2)環状R‐R‐R‐R‐R‐R‐F
3)環状R‐R‐R‐R‐R‐R‐K
【0036】
PEG
本明細書で使用されるPEGは、エチレンオキシドの重合体であるポリエチレングリコールである。重合体の分子量は、典型的には、PEGに続く数字によって示され、例えば、PEG8000は、8000g/molの分子量を有する。
【0037】
PEGは、PEG1000~6000であってもよい。PEGは、PEG1000、PEG1500、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG5000、PEG6000、PEG7000またはPEG8000であり得る。すなわち、平均分子量(mwt)がそれぞれ4000g/molまたは3000g/molであるPEG、またはより高い平均分子量のPEG(例えば、PEG6000またはPEG8000)である。
【0038】
PEGの濃度は%(v/v)である。固体の場合、PEGは溶融され、次いで、H2Oに溶解される環状ペプチドとの溶液として混合される。より低い分子量のPEGは、室温で、例えばPEG1000以下で液体である。PEG1000およびより重いPEGは、典型的には、室温(すなわち、<30℃)で全て固体である。
【0039】
組成物は、上記PEGのいずれかの10~80%を含むことができる。例えば、組成物は、20~70%のPEGまたは30~60%のPEGまたは40~60のPEGを含むことができる。例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80% v/vである。例えば、45~50% PEG v/vである。
【0040】
組成物は、約60%までのv/v PEG、例えば約40%から60%までのv/v PEGを含むことができる。一実施形態では、組成物は、40%~55% v/vのPEGを含む。別の実施形態では、組成物は45%~50% v/vのPEGを含む。
【0041】
組成物は、47.5~約55% v/v PEG4000または約47.5~約60% v/v PEG3000を含むことができる。PEGは、約50% v/vのPEG4000を含むことができる。あるいは、PEGは、約52.5% v/vのPEG3000を含むことができる。
【0042】
PEGとペプチドの併用
例示的組成物は、2~20%のペプチド(w/v)、例えば、1までの置換を有するポリアルギニン7量体(7‐mer)、および40~80%のPEG 1000-PEG8000(v/v)を含む。EDTAは、少なくとも15μMの濃度でこの組み合わせに添加することができる。
【0043】
組成物は、5~10%のペプチド(w/v)および40~55%のPEG1000~8000(v/v)を含むことができる。
組成物は、5~12.5%のペプチド(w/v)および40~55%のPEG1000~6000(v/v)を含むことができる。
組成物は、5~15%のペプチド(w/v)および40~55%のPEG1000~3000(v/v)を含むことができる。
【0044】
単位
製剤の調製方法の一例として:
50%(v/v)PEG4000中で10%(w/v)のNP213溶液を調製するために、使用したすべての材料をインキュベーター中で37℃に予備加温してから調製作業を開始し、液化PEGの正確な分配を確実にし容易にした。NP213は、滅菌脱イオン水(純度18MΩ)中の水溶液として400mg/mlの濃度で調製し、0.22μmシリンジフィルターで濾過し、無菌性を確認し、製剤調製の使用直前に37℃まで予備加温した。20gのPEG4000(室温で固体;融点53~58℃)を、マイクロ波オーブン中のガラスビーカー中で、透明な溶液が得られるまで、低出力で融解した。PEG4000の温度を70℃を超えてはならなかった。液化後、5mlのPEG4000を滅菌したガラス製万能瓶に移し、37℃インキュベーターに入れ、37℃まで30~60分間平衡化させた。これに2.5mlのNP213(400mg/ml;40%(w/v))を添加し、予め加温した滅菌脱イオン水(18MΩ純度)で体積を10mlにした。溶液を室温(18~20℃)で暗所に保存した。
【0045】
プロテアーゼ阻害剤
組成物は、プロテアーゼインヒビター、場合によりメタロペプチダーゼインヒビターを含んでもよい。プロテアーゼインヒビターとは、プロテアーゼ、すなわち真菌プロテアーゼの活性を阻害する化合物を意味する。
【0046】
プロテアーゼ阻害剤は、システインプロテアーゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤であり得る。システインプロテアーゼ阻害剤の例には、抗疼痛性二塩酸塩、キモスタチン、N‐エチルマレイミド、ロイペプチン、α2-マクログロブリン、E‐64およびフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)が含まれる。セリンプロテアーゼ阻害剤の例には、4‐(2‐アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド(AEBSF/Pefabloc)、アプロチニン、ロイペプチン、セルピンおよびフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)が含まれる。アスパルチルプロテアーゼ阻害剤の例には、ペプスタチン、α2‐マクログロブリン、リトナビル、インジナビル、ザンキレン、アリスキレンおよびLY‐450139が含まれる。
【0047】
プロテアーゼ阻害剤の濃度は、0.5μM~500μMであり得る。例えば、15μM~500μMである。例えば、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μM、またはこれらの濃度内の任意の範囲である。
【0048】
メタロペプチダーゼ阻害剤は、エンドプロテアーゼ阻害剤、例えば、真菌類ファミリー(M36)のインヒビターであり得る。例えば、メタロペプチダーゼ阻害剤のグループには、アザペプチドインヒビター、ヒドロキサメート含有インヒビター、ホウ素含有インヒビター、カルボン酸含有インヒビター、小分子インヒビター、キレート化インヒビター、ペプチドインヒビター、ジアゾインヒビター、DNAアプタマーインヒビター、RNAアプタマーインヒビター、リン含有インヒビター、ハロケトンインヒビター、メタロペプチダーゼのポリフェノールインヒビター、ケトメチレンインヒビター、チオールインヒビター、チイランインヒビター、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)インヒビター、セレニウム含有インヒビターおよびシラネジオールインヒビターまたはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0049】
これらのグループ内の個々の例には、以下が含まれる:
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール-ビス(β‐アミノエチルエーテル)‐N,N,N’,N’-テトラ酢酸)、ベスタチン、2,2′-ビピリジル1,10-フェナントロリン一水和物、ホスホラミドン二ナトリウム塩、ドキシサイクリンヒクラート、マリマスタット、バチマスタット、ガラルジン、アラトリオプリラート、アナカルジック酸、エブセレン、グリコプリラット(glycoprilat)、4-メチル-1-(S)-({5-[(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イルメチル)-カルバモイル]-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-カルボニル}-アミノ)-インダン-5-カルボン酸、ナマリド(namalide)、プルプリン、レガセピン1、レガセピン2、サルビアノール酸B、トリプトリド、2-ベンジル-4-オキソ-5,5,5-トリフルオロペンタン酸、p-ヨード-D-フェニルアラニンヒドロキサメート、4,4’-ホスフィニコビス(ブタン-1,3-ジカルボン酸)、アルファ-リポ酸、L-ブタンボロン酸、グリコール酸、チオルチン、2-ベンジル-4-オキソ-5,5,5-トリフルオロペンタン酸、エピガロカテキン-3-ガレート、ミリセチン、ヒノキフラボン、チメロサール。
【0050】
組成物中のメタロペプチダーゼインヒビターの濃度は、少なくとも15μMであり得る。例えば、15μM~500μMである。例えば、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μM、またはこれらの濃度内の任意の範囲であり得る。
【0051】
インヒビターはEDTAまたはEGTAであり得、EDTAの濃度は少なくとも15μMであり得る。例えば、15~150μMであり得る。組成物中のEDTAまたはEGTAの濃度は、少なくとも50μMであり得る。例えば、100μMであり得る。
【0052】
爪のエンハンサーおよび他の追加の化合物
他の化合物を組成物に添加することもできる。例えば、タンパク質およびペプチドの爪への浸透を促進する他の化合物である。あるいは、爪の外観を増強する化合物(爪エンハンサー(nail enhancer)と呼ばれる)を添加してもよい。爪エンハンサーはビオチンまたは光学増白剤(蛍光染料/明色化剤)であってもよい。組成物は、顔料および/または香料をさらに含んでもよい。
【0053】
組成物は、尿素または有機溶媒を含まないこととしてもよい。
【0054】
医薬組成物
本組成物は治療的有用性を有する。従って、組成物は、1以上の薬学的に許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、防腐剤、潤滑剤、または当業者に公知の他の材料、および任意に他の治療剤をさらに含む医薬組成物であり得る。
【0055】
真菌感染症
本明細書に記載される組成物は、薬剤として、特に真菌爪感染に対して有用性を有する。
【0056】
本明細書で言及される真菌感染は、真菌、典型的には皮膚糸状菌のような病原性真菌種によって引き起こされる感染である。例えば、Trichophyton rubrum(紅色白癬菌)のようなTrichophyton(トリコフィトン属)、Microsporum(ミクロスポルム属)またはEpidermophyton(エピデルモフィトン属)に属する。
【0057】
この真菌は、一般に白癬(tinea)感染から分離されるもの、例えば、tinea unguium(爪白癬)、tinea corporis(体部白癬)、tinea capitis(頭部白癬)、tinea cruris(股部白癬)、tinea faciae(顔面白癬)、および tinea pedis(足白癬)感染などの皮膚糸状菌(dermatophyte)である。皮膚糸状菌は、Trichophyton spp.(白癬菌属)の分離株である可能性がある。皮膚糸状菌は、Trichophyton spp.(トリコフィトン属)、Arthroderma spp.(アルスロデルマ属)、Microsporum spp.(ミクロスポルム属)、Lophophyton spp. 、Nannizzia spp.(ナニジア属)、Epidermophyton spp.(エピデルモフィトン属)、Paraphyton spp. 、Guarromyces spp. 、または、Ctenomyces spp.からの分離株であり得る。皮膚糸状菌は、以下の種:T. benhamiae、T. bullosum、T. concentricum、T. equinum、T. eriotrephon、T. erinacei、T. interdigitale、T. mentagrophytes、T. quickeanum、T. rubrum、T. schoenleinii、T. simii、T. soudanense、T. tonsurans、T. verrucosum、T. violaceum、E. floccosum、N. aenygmaticum、N. corniculate、N. duboisii、N. fulva、N. gypsea、N. incurvata、N. nana、N. persicolor、N. praecox、P. cookei、P. cookiellum、P. mirabile、L. gallinae、M. audouinii、M. canis、M. ferrugineum、A. amazonicum、A. ciferrii、A. cuniculi、A. curreyi、A. erboreum、A. flavescens、A. gertleri、A. gloriae、A. insigulare、A. lenticulare、A. melis、A. multifidum、A. onychocola、A. phaseoliforme、A. quadrifidum、A. redellii、A. silverae、A. thuringiensis、A. tuberculatum、A. unicatum または、A. verpertilii由来であり得る。
【0058】
代替的に、真菌は、Candida spp.(カンジダ属)、典型的には、Candida albicans(カンジダ・アルビカンス)、Candida krusei(カンジダ・クルセイ)、C. glabrata(C.グラブラタ)、C. guillermondii(C.ギレルモンジイ)、C. famata(C.ファマータ)、C. parapsilosis(C.パラプシローシス)、C. tropicalis(C.トロピカリス)、C. sake(C.サケ)、Malassezia furfur(マラセチア・フルフール)、および、Trichosporon spp.(トリコスポロン属)などの酵母であってもよい。
【0059】
本発明のさらなる態様によれば、真菌は、Acremonium spp.(アクレモニウム属)(例えば、A. roseogriseum)、Alternaria spp. 、Arthrographis kalrae、Aspergillus spp.(アスペルギルス属)(A. flavus、A. fumigatus、A. terreus、A. ustus、A. sydowii、A. versicolorを含む)、Bipolaris spp. 、Botryodiplodia theobromae、Chrysosporium (Geomyces) pannorum、Cladosporium spp. 、Fusarium spp. (F. oxysporum、F. proliferatum、F. solaniを含む)、Geotrichium candidum、Nattrassia spp. 、Onychocola canadensis、Paecilomyces spp. 、Penicillium spp.(ペニシリウム属)、Phyllostricta sydowii、Pyrenochaeta unguis-hominis、Scopulariopsis brevicaulis、Scytalidium spp.(S. didmidiatum、S. hyalinumを含む)、Synchephalastrum racemosum、Trichoderma spp.(トリコデルマ属)、および Ulocladium spp.
などの非皮膚糸状菌であり得る。
【0060】
治療
ペプチドにおいて0または1の置換を受ける4~15のアルギニンを含む抗真菌環状ペプチドを含む組成物は、爪真菌症のような真菌爪感染の治療に有用である。任意に、この組成物は、PEGおよび/またはプロテアーゼ阻害剤および/または上記の他の添加剤を含む水性組成物である。
【0061】
本明細書に記載された組成物の治療有効量を感染が疑われる爪に塗布し、該組成物を爪の表面に広げ、該組成物が乾燥するのを待って、任意に、例えば、約24時間後に塗布を繰り返す、すなわち、治療は少なくとも1日に1回である、工程を含む爪感染を治療する方法が提供される。また、治療は、1日2~3回塗布してなされることもある。
【0062】
典型的な爪治療は、改善、すなわち爪の外観の向上および爪内の真菌負荷の低下の前に、48週間以上の使用を必要とする。対照的に、上記の環状ペプチド組成物は、改善が見られるまでに7~11日しか必要としない。したがって、治療は、7~11日間またはそれ以上、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16日間、毎日適用され得る。あるいは、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27または28日まで、重症感染症に対して処理を継続することができる。その後、治療は中止される。感染症の再発を防ぐために、3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、9カ月ごと、12カ月ごとに治療を行う。例えば、治療は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16日、3ヶ月、または6ヶ月、9カ月、または12カ月なされ得る。または、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日間、3、6、9、または12ヶ月ごとに治療を適用してもよい。
【0063】
例えば、治療は、21日間、3~6ヶ月毎に毎日の治療することとしてもよい。また、9~12ヶ月ごとに投与することとしてもよい。
【0064】
初回治療で感染を排除するために、用量を比較的多くしてもよい。例えば、7~11日間または上記のいずれかの治療期間について8~10%である。
【0065】
再感染の予防は、より低用量であることとしてもよい。例えば、上記のいずれかの治療期間、例えば、7~11日、3~6ヶ月ごと、については、1~7%を毎日投与する。9または12ヶ月ごとに治療することで予防を継続することとしてもよい。
【0066】
あるいは、全ての用量はペプチドの2% w/vであってもよい。例えば、第1の(最初の)治療は、少なくとも1日に1回適用されるペプチドの2% w/vであることとしてもよい。この治療を7~28日間続けることとしてもよい。その後、1日に2% w/vを、3~6ヶ月ごとに7~28日間、その後の塗布(または9~12ヵ月ごと)に投与することにより防止することもできる。
【0067】
あるいは、この投与は、3~9%、例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%であってもよい。
【0068】
治療は爪表面および周囲の皮膚への局所的手段の適用である。治療の局所的適用は、組成物が爪のアクセス可能な側(爪床から離れた露出側)に直接適用され、必要に応じて爪の自由縁(遊離縁は爪床を越えて伸びる爪の部分である)に適用されることを意味する。
【0069】
PEG製剤は、迅速に乾燥するだけでなく、PEGの存在により、患者が爪上に溶液のフィルムを見ることができる。これにより、患者は、見落とされた領域を認識し、次いで、患者は、爪の全表面にわたって確実に覆われるように再適用することができる。すなわち、製剤は膜形成配合物である。この製剤はまた、爪の表面を保護するバリアとして作用し、ペプチド中の再感染およびシールを防止する。
【0070】
フィルムとは、爪の表面に形成された、薄くて可視非粘着性の層を意味する。以下の乾燥時間は、このフィルムを形成するのに要した時間に関係する。フィルムの一例を
図14に示す。
【0071】
デバイス
典型的には、局所適用は、滴下剤、ピペット、スポンジまたはハケのようなアプリケーターを用いて適用される。
【0072】
この組成物を爪に塗布するためにデバイスを使用することができる。デバイスは、例えば、ネイルペン(
図17)またはブラシアプリケータを備えたボトル(
図16)であってもよい。
【0073】
治療を適用するためのアプリケータは、スポンジまたはハケであってもよい。有利には、アプリケータを使用することにより、制御された量の組成物を爪上に置くことができる。さらに有利には、スポンジまたはハケを使用することにより、組成物を爪の表面上に均一に、またはほぼ均一に広げることができる。
【0074】
乾燥時間
本明細書で用いられる乾燥時間または「期間にわたる乾燥」とは、所定量の組成物が爪上で乾燥し、フィルムを形成するのに要する平均時間を意味する。乾燥した組成物は、触れると乾燥している、すなわち触っても粘着性が残っていない組成物である。一般に、ニトリル手袋を着用する場合、爪が乾いていれば手袋は爪に付着しない。
【0075】
乾燥時間は、適用されるときの室温、適用される量、爪の大きさ、爪の温かさ(使用者の体表面温度によって決定される)、組成物が爪の上にどの程度よく分布しているかを含むが、これらに限定されない多くの要因の影響を受ける。乾燥時間は、典型的には、約19~22oCの室温で評価される。
【0076】
本明細書で用いられるように、比較的少ない乾燥時間は、所定量の組成物が、適用から約35分未満で接触するように乾燥することを意味する。例えば、3分から35分の間の時間帯である。
【0077】
本明細書で使用される予め定められた量は、約10μl以下を意味する。すなわち、爪1mm2当たり約0.1μl以下である。
【0078】
組成物量
一例として、患者はNP213の10%(w/v)溶液を用いて、1日1回、28日間、爪に組成物を塗布することができる。爪あたり10μlを使用する場合、計算は次のようになる:
10%=100mg/ml=10μl中1mg
これは、上記の28日間の治療コースで、爪1本あたり28mgに相当する。
【0079】
より大きな足の爪の場合、より多くの組成物、例えば、1日当たり150μlまで使用することができる。
【0080】
用途
PEG500~8000は、爪組成物の膜形成剤として有用であることが見出されている。したがって、水性局所爪組成物におけるフィルム形成剤としてのPEG500~8000の使用が提供される。このフィルム形成剤は、タンパク質含有爪組成物に特に有用である。これは、フィルムを形成するために使用される通常のネイルラッカーは、有機溶媒を含有するので、タンパク質に適していないからである。その代わりにPEGを用いることによって、タンパク質はその効力を維持する。さらに、PEGは典型的な有機溶媒のように爪を損傷しない。従って、PEG使用の有利な効果は、1)タンパク質含有組成物のためのより良い担体、2)迅速に乾燥する膜を形成する性能、および3)爪を損傷する有機溶媒の回避である。
【0081】
本明細書の文脈において、「備える(comprising)」は、「含む(including)」と解釈される。
【0082】
特定の要素を含む本発明の態様はまた、関連する要素「からなる」または「実質的に~からなる」代替の実施形態に拡張することが意図される。
【0083】
技術的に適切な場合、本発明の実施形態を組み合わせることができる。
【0084】
特許および出願のような技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
本明細書に具体的におよび明示的に記載される実施形態は、単独で、または1つ以上のさらなる実施形態と組み合わせて、免責事項の基礎を形成することができる。
【0086】
実施例
実施例1:PEGと比較した従来の溶剤ベースのネイルラッカー中のペプチドの処方
本発明者らは、使用者がペプチドがどこに適用されたかを見ることができるペプチド製剤を見いだし、ペプチドの有効性を維持しようとした。
NP213(環状アルギニン7量体(7‐mer)ペプチド:環状R-R-R-R-R-R-R、抗真菌活性を有することが知られている4-15量体の代表として、実施例5を参照)の活性は、爪真菌症の治療のために他の局所抗真菌薬(AnacorおよびRoehmによって製造されたもの)と共に以前に使用されていた爪ラッカーの選択において試験された。これらのラッカーは、フィルム形成可能であり、使用者は、抗真菌処理によって被覆された領域を見ることができる。しかし、NP213は、既知の爪ラッカーでは効果的でなかった。
【0087】
次いで、本発明者らは、これらの伝統的ラッカーから離れて、NP213のために異なる処方を試験した。PEGは環状ペプチドの有効性を維持し、適用時にフィルムの形成を可能にした。上述したように、これにより、使用者は、どのエリアがペプチドで処理されたかを見ることができる。
【0088】
局所治療用の現在のネイルラッカーとPEGとの比較を行った。
NP213(5および10% w/v)を50%(v/v)PEG4000中に配合した。
【0089】
あるいは、NP213をラッカー製剤に0、5または10%(w/v)の濃度で溶解/懸濁した。10μlの各ラッカーを平底96ウェルプレートのウェルの基部(ベース)に三連ウェルで塗布し、90分間乾燥させた。
【0090】
3×103のcfu T. rubrum(紅色白癬菌) NCPF118の接種材料を1×RPMI‐1640液状媒体中で調製し、ラッカーを含有する全てのウェルおよびラッカーを含有しない対照ウェル(増殖対照)に200μlを添加した。プレート当たりさらに3つのウェルには、無菌対照として役立つための接種物を含まない200μlのRPMI‐1640液状媒体が含まれた。
【0091】
各ウェルに、最小量のアラマーブルー溶液(0.0025%(w/v)最終濃度)を添加した。代謝活性の変化(細胞生存率指標アラマーブルーの代謝による)に基づいて抗真菌活性を測定した。代謝活性を蛍光(Ex 530nm/Em 590nm)によって24時間毎に168時間までモニターした。
ラッカーの組成は以下の通りであった:
【0092】
【0093】
結果:
Roehmラッカー1で調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図1)。
【0094】
Roehmラッカー2で調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図2)。
【0095】
Roehmラッカー3で調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図3)。
【0096】
Roehmラッカー4で調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図4)。
【0097】
Roehmラッカー5で調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図5)。
【0098】
アナコールラッカーCで調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図6)。
【0099】
2dラッカーで調製した場合、T. rubrum NCPF118に対する10%(w/v)NP213の抗真菌活性は、50%(v/v)PEG4000で調製した場合の5%(w/v)NP213および10%(w/v)NP213の活性と比較して、より低かった(高い代謝活性によって証明されるように)(
図7)。
【0100】
結果概要:
水およびPEGは、ペプチドの有効性を維持する上で優れた製剤であることがわかった。
T. rubrum NCPF0118に対する5または10%(w/v)NP213の抗真菌活性を評価したところ、試験したラッカー製剤はいずれも水および50% PEG4000より優れていなかった。
【0101】
PEG組成物は、真菌感染を治療するだけでなく、爪を水和し、その状態を改善する、すなわち、爪は感染または外傷から回復する可能性が高い。これは、現在使用されている爪フレンドリーではない有機溶媒ラッカーとは対照的である。
【0102】
実施例2:各種PEG溶液は、局所爪適用に適した短い乾燥時間を提供する
ペプチドNP213(7量体(7mer)の環状ポリアルギニン)を、水で40重量%/容量の溶液に調製した。次いで、この40%溶液を安全キャビネット内でsdH2Oを用いて20%溶液に希釈した。種々のmwt PEG溶液を用いた。PEGは、以下のように電子レンジで溶融された:
PEG400‐既に液体(Sigma Cat No P3265 Lot 054k0063)
PEG1500‐フレーク(Fluka Cat No 86101 Lot 1164516)
PEG2000‐フレーク(Sigma Cat No 84797 Lot BCBD7108V)
PEG3000‐フレーク(Sigma Cat No 81227 Lot BCBB2865)
PEG4000‐フレーク(Fluka Cat No 95904 Lot 1206119)
【0103】
250μlのPEGおよび250μlの20%のペプチドを添加して、2mlのマイクロ遠心チューブ(丸底)中に直ちに50%のPEG、10%のペプチド、40%の水溶液を得た。インキュベーター中で30℃まで加温したトリミングされた先端を用いて、250μlのPEGをマイクロ遠心管に添加し、次いで250μlの20%ペプチドを添加した。溶液の外観は、冷却し、溶液を反転させることによって混合した後に観察された。
【0104】
PEG+水(ペプチドなし)については、50%溶液を2mlのクライオバイアル(0.5ml PEGおよび0.5ml sdH
2O)中に調製し、一晩放置して、PEGが溶液から出たかどうかを確認した。結果を示した。
・PEG400‐溶液中に残留
・PEG1500‐溶液中に残留
・PEG2000‐溶液中に残留
・PEG3000‐溶液中に残留
・PEG4000‐ほとんど溶液中に残留
足指士によって得られた爪を徹底的に洗浄し、ほぼ等しいサイズの4つの爪に切断した。爪は安全キャビネットの小さなペトリ皿に入れた。それぞれの溶液10μlを爪に加え、台上に22℃での乾燥時間を記録した。結果をテーブル1および
図8に示す。
【0105】
【0106】
結果サマリ:
PEGを用いたペプチド製剤は、局所爪適用に適した乾燥時間を示した。乾燥時間はすべて、フィルムを形成するのに要した時間に関する。上述のように、フィルムは、ユーザが製品がどこに適用されたかを見ることができるので、望ましい。伝統的なラッカーはこのフィルムを供給するが、それらは抗真菌活性を阻害するので、ペプチドと両立しなかった。本発明者らは、PEGがフィルム形成組成物を生成し、ペプチドの抗真菌活性がPEG中で維持されるという点で、重要なことに環状ペプチドと適合性であることを見出した。
【0107】
実施例3 各種PEGおよびペプチド製剤の長期安定性
材料
PEGの種類、濃度、ペプチド濃度の範囲を評価した:
【0108】
【0109】
製剤は、透明で目盛り付きのスクリューキャップ付きガラスバイアルで調製し、毎日/週単位でフィジカル的な外観を評価した。
【0110】
PEG1000: Thermo-Fisher; Cat no. 10752621; Lot no. A0369980
PEG1500: Sigma-Aldrich; Cat no. 86101; Lot no. 1164516
PEG2000: Sigma-Aldrich; Cat no. 84797; Lot no. BCBD7108V
PEG3000: Sigma-Aldrich; Cat no. 81227; Lot no. BCBB2865
PEG4000: Sigma-Aldrich; Cat no. 95904; Lot no. 1206119
PEG8000: Melford Laboratories Ltd; Cat no. P0808; Lot no. 19659
Novexatin(ノベキサチン)(上記NP213、7量体(7‐mer)環状ポリアルギニンとも呼ばれる): Polypeptide Laboratories; Lot no. GAP 10149; 97.93% purity; 65.10%ペプチド
Graduated Screw Top Vial(固形キャップ/テフロンライナー): Sigma-Aldrich; Cat no. 27505-U; Lot no. 78573
【0111】
方法:
全てのガラス製品とプラスチック製品は、37℃に予熱した後、配合作業を開始し、PEG溶液の正確な分配を確実かつ容易にした。
NP213の溶液をsdH2O(18MΩ)中で400g/Lの濃度で調製し、調製調製の使用直前に37℃まで予備加温した。
【0112】
固体PEGフレーク/結晶を、透明な溶液が得られるまで、マイクロ波オーブン中でガラスユニバーサルボトル中で低出力で溶融した。直ちに、適切な容量のPEGを2mlのガラスバイアルに移し、最終容量を予め加温したsdH2O(18MΩ)および/または濃縮ペプチド溶液で1mlに調製した。均一性を保証するために、製剤を反転によって混合した。
【0113】
製剤は室温(18~20℃)で暗所に保存し、2時間後および最初の数週間は毎日、その後は、不定期間について週単位で評価した。製剤外観と周囲温度をMicrosoft Excelに記録した。
【0114】
結果:
0%(w/v)ペプチド:
47.5、50.0、52.5 & 55.0% (v/v) PEG1000
47.5、50.0、52.5 & 55.0% (v/v) PEG1500
47.5、50.0、52.5 & 55.0% (v/v) PEG2000
47.5、50.0、52.5 & 55.0% (v/v) PEG3000
47.5、50.0、52.5 & 55.0% (v/v) PEG4000
47.5、50.0、52.5 & 55.0% (v/v) PEG8000
【0115】
PEG1000、PEG1500およびPEG2000溶液は、33週間まで透明で非粘性のままであった。PEG3000溶液は、最初は透明で非粘性であったが、8~9日後に粘性となり、少なくとも33週間は同じままであった。PEG4000およびPEG8000溶液は≧48週間、透明で粘稠なであった。この実験は48週間後に終了した。
【0116】
Novexatinの結果:
Novexatin(NP213)製剤を、5.0、7.5、10.0、12.5および15.0%(w/v)ペプチドのPEG1000、PEG4000およびPEG8000溶液中で調製した。
【0117】
PEG1000/Novexatin製剤は、15.0%(w/v)のNP213については少なくとも34週間、その他のすべてのNP213濃度については少なくとも37週間、透明で非粘性の溶液のままであった。
【0118】
5.0および7.5%(w/v)のNP213を含有するPEG4000/Novexatin製剤は、少なくとも31週間、透明で粘性のある溶液のままであった。10.0および12.5%(w/v)のNP213を含有するPEG4000/Novexatin製剤は、52.5%(v/v)のPEGを含有する溶液を除いて、少なくとも31週間、透明な粘性溶液のままであった。10.0および12.5%(w/v)のNP213を含有し、52.5%(v/v)のPEGを含有するPEG4000/Novexatin製剤は、即時調製時に小さな白色結晶(NP213、PEGではない)を含有していたが、室温で24時間インキュベートした後、結晶は透明な粘性溶液に溶解し、少なくとも31週間そのままであった。15.0%(w/v)のNP213を含有し、52.5%(v/v)のPEGを含有するPEG4000/Novexatin製剤は、即時調製時に小さな白色結晶(NP213、PEGではない)を含有していたが、48時間の室温でのインキュベーション後、結晶は50.0および52.5%(v/v)のPEGの透明な粘性溶液に溶解し、少なくとも28週間はそのままであった。
【0119】
5.0および7.5%(w/v)のNP213を含有するPEG8000/Novexatin製剤は、少なくとも31週間、透明で粘性のある溶液のままであった。10.0%のNP213を含むPEG8000/Novexatin溶液は、52.5および55.0%(v/v)のPEGを含む溶液を除いて、少なくとも31週間、透明で粘性のある溶液のままであった。10.0%(w/v)のNP213を含有し、52.5または55.0%(v/v)のPEGを含有するPEG8000/Novexatin製剤は、即時調製時に小さな白色結晶(NP213であって、PEGではない)を含有していたが、室温で24時間インキュベートした後、結晶は透明な粘性溶液に溶解し、少なくとも31週間そのままであった。12.5% NP213および47.5%(v/v)のPEG8000を含有するPEG8000/Novexatin溶液は、少なくとも31週間、透明な粘性溶液のままであった。12.5%のNP213および50.0または52.5%(v/v)のPEGを含むPEG8000/Novexatin溶液は、即時調製時に小さな白色結晶(NP213であって、PEGではない)を含んでいたが、室温で24時間インキュベートした後、結晶は透明な粘性溶液に溶解し、少なくとも31週間そのままであった。
【0120】
PEG8000/Novexatin溶液は、15.0%のNP213と47.5%または50.0%(v/v)のPEG8000を含有し、少なくとも32週間、透明な粘性溶液のままであった。52.5%(v/v)のPEGおよび15.0%(w/v)のNP213を含有するPEG8000/Novexatin溶液は、即時調製時に小さな白色結晶(NP213であって、PEGではない)を含み、37日間残留したが、それらは溶解し、少なくともさらに24週間、透明な粘性溶液のままであった。
【0121】
発明の概要:
溶解ペプチドなしで調製した全てのPEG製剤は、少なくとも48週間、透明な溶液のままであった。PEG1000(47.5~55.0%(v/v))およびNovexatin(5.0~15.0%(w/v))を含有する全てのPEG製剤は、透明で非粘性の溶液であり、少なくとも32~34週間そのままであった。
PEG4000(47.5~55.0%(v/v))およびNovexatin(5.0~15.0%(w/v))を含有する全てのPEG製剤は、透明な溶液であり、少なくとも19週間はそのままであった。
PEG8000(47.5~55.0%(v/v))およびNovexatin(5.0~15.0%(w/v))を含有する全てのPEG製剤は、透明な溶液であり、少なくとも19週間はそのままであった。
【0122】
実施例4:EDTAおよび他のプロテアーゼ阻害剤は、種々の爪真菌病原体に対して抗真菌活性も有する:NP213(環状ポリアルギニンペプチド、すなわち環状R-R-R-R-R-R-R)の最小阻害濃度(MIC)および最小殺真菌濃度(MFC)に対するプロテアーゼ阻害剤の効果
MICを決定するための抗真菌感受性試験は、糸状菌のブロス微量希釈手順によって実施された(M38‐A2)(Clinical & Laboratory Standards Institute (CLSI). 2008. Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Filamentous Fungi; Approved Standard - Second Edition (M38-A2). Clinical and Laboratory Standards Institute, Wayne, PA)。この実験は、各実験において三重の試料により三重に行った。NP213のタンパク質分解安定性は、以下のプロテアーゼ阻害剤;セリンプロテアーゼ(1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド;PMSF)、メタロプロテアーゼ(100μMエチレンジアミン四酢酸;EDTA)、アスパルチルプロテアーゼ(1mg/LペプスタチンA)およびシステインプロテアーゼ(10μMトランス-エポキシスクシニル-L-ロイシルアミド(4-グアニジノ)ブタン;E-64)の存在下で、上述のようにNP213 MICをT. rubrum NCPF118およびT. interdigitale NCPF335に対して測定することによって評価した。これらの濃度のプロテアーゼ阻害剤は、T. rubrum NCPF118またはT. interdigitale NCPF0335の成長に影響を及ぼさなかった。
【0123】
修正抗真菌薬感受性試験手順
抗真菌薬感受性試験は、上述のように実施されたが、以下の修正を施した。RPMI-1640培地は、0.0025%(w/v)AlamarBlue(商標)(hermoFisher Scientific, UK)を含む、10 mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0中の0.5%(w/v)粉末爪、皮膚ケラチンまたは羊毛ケラチン懸濁液の代わりに使用された。ヒト爪は、適切な倫理的承認(RECリファレンス:05/S801/115)の後に、陥入爪による爪剥離後のドナー由来のものを、NHS足病専門家(NHS Grampian)から入手した。足病医の診断に基づいて、全ての爪は無病であった。爪を小片に切断し、乳鉢と乳棒で液体窒素中の微粉末に粉砕した。これに続いて、粉末爪を細かいメッシュのふるいに通し、ふるい爪粉末を用いて、pH 7.0の20mMリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁液を調製した。爪粉末懸濁液を、121℃で20分間高圧蒸気滅菌した。ヒツジの羊毛および人間皮膚ケラチンを、ABCR GmbHから入手した。
【0124】
代謝活性は、蛍光(Ex530nm/Em590nm)により、24時間毎に216時間まで、または接種した対照群では、防黴剤の非存在下で、高い代謝活性(100000U)が観察されるまでモニターした。対照として、抗菌薬感受性試験をRPMI‐1640培地で行い、MICを光学濃度と代謝活性の両方を測定することにより測定した。pH 7.0のリン酸ナトリウム緩衝液のみでは、皮膚糸状菌の成長はサポートされなかった(データは示されていない)。この実験は、各実験において三重の試料で三重に行った。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
RPMI‐1640液体培地における皮膚糸状菌T. rubrum NCPF118およびT. interdigitale NCPF335に対するNP213の抗真菌活性に対する他のプロテアーゼ阻害剤の影響。MICはブロス微量液体希釈法(CLSI、2008)で測定した。メタロプロテアーゼ阻害剤‐100μM EDTA;セリンプロテアーゼ阻害剤-1mg/L PMSF;システインプロテアーゼ阻害剤-10μM E64;アスパルチルプロテアーゼ阻害剤‐1mg/L ペプスタチン。プロテアーゼ阻害剤は、試験した濃度でRPMI‐1640液体培地中のいずれの分離株の成長も阻害しなかった。
【0129】
結果概要
EDTAおよびベスタチンを含むメタロプロテアーゼ阻害剤は、環状ペプチドの抗真菌作用を増強した。
【0130】
実施例5:ペプチドは、請求項に記載のアミノ酸温度範囲にわたって抗真菌活性を有する
抗真菌薬感受性試験は、CLSI Approved Standard M38‐A2に記載されているブロス微量希釈法により実施した。すべてのペプチドを滅菌脱イオン水(40mg/ml)に溶解し、必要になるまで-20oCで保存した。すべての実験は、各実験において3つのサンプルを用いて3回実施した。
【0131】
【0132】
結果概要
クレームされた範囲にわたる環状ペプチドは、異なる種の真菌にわたって抗真菌活性を示す。
【0133】
実施例6:置換体は抗真菌活性を保持する
抗真菌薬感受性試験は、CLSI Approved Standard M38‐A2に記載されているブロス微量希釈法により実施した。すべてのペプチドを滅菌脱イオン水(40mg/ml)に溶解し、必要になるまで‐20oCで保存した。すべての実験は、各実験において3回のサンプルを用いて3回実施した。
【0134】
結果概要
その結果を
図12と
図13に示す。RおよびFの置換は、環状ペプチドの活性に悪影響を及ぼさない。
【0135】
実施例7:現在使用されている抗真菌治療よりも速い環状ペプチドによる治療
環状ペプチドが抗真菌効果をもたらすのに要した時間を試験した。
【0136】
実験室条件下で爪真菌症をシミュレートし、NP213の抗真菌効果を試験するため、皮膚糸状菌爪感染の実験モデルを最適化した。不活性担体として、そして湿潤雰囲気を提供するために、無菌水寒天プレートを、90mmシャーレ(ペトリ皿)(滅菌脱イオン水中1.5%(w/v)寒天)中で調製した。シャーレを3つのセクションに分け、各セクションに滅菌シリコーンゴム管(直径1cm、高さ3mm)を個々に配置し、プレート当たり3つの爪断片を検討した。これにより、爪と寒天表面またはシャーレの蓋との間の直接接触が防止された。寒天はNP213を含むカチオン性ペプチドに結合し、それらの拡散および還元活性を阻害する成分を含むので、このようなセットアップが必要であった。シリコンチューブは酸素と二酸化炭素に透過性があり、その使用により、真菌の成長を支えるために酸素へのアクセスが確保された。その直径は、爪断片を安定に支持するのに十分に小さかった。非感染のヒト爪(倫理的承認のもとに採取)を、所定の大きさに切断する前に、すべての残留表皮および残基を洗浄し(およそ4つの断片を大人の雄型の大爪から採取)、その表面積および厚さをマイクロメーターを用いて測定した。爪断片を10mlの脱イオン水に浸し、134℃で20分間オートクレーブすることによって滅菌した。次いで、試料を腹側(爪床側、凹状)表面を上向きにしてシリコンチューブリング上に取り付けた。爪サンプルを割り当てて、各治療に対して同様の平均サイズおよび厚さの爪を提供した。爪を乾燥させ、30℃の湿潤雰囲気下で7日間インキュベートし、無菌性を確認した。それぞれの爪断片を、滅菌した0.15M NaCl(爪の表面積1cm2あたり0.01mlの胞子懸濁液)中に、Trichophyton spp.(白癬菌)の約2×107の胞子を含む胞子懸濁液を含む、その腹側表面に接種した。実験1はTrichophyton rubrum(紅色白癬菌)NCPF0118で行った。実験2はTrichophyton rubrum ATCC-MYA‐4438で行った。実験3はTrichophyton rubrum S52d0で行った。脱水を避けるため、滅菌脱イオン水タンクを入れた密閉プラスチックボックス内で30℃で14日間シャーレをインキュベートしたところ、爪断片の表面全体に菌糸の成長がはっきりと認められた。同じシャーレ内の爪は、常に同じ真菌の接種および処理に曝露され、交差汚染のリスクを軽減した。
【0137】
すべての爪断片をNP213または対照を爪の背側に塗布して処理した。爪の背面(凸面)は、通常は環境にさらされている部分である。抗真菌剤を毎日(0.01ml/cm2爪表面積)塗布し、滅菌爪ラッカーブラシ(はけ)アプリケーターで爪領域の表面に分布させた。7、14、28日間NP213で毎日処理した後、6%(w/v)ポリアネトールスルホン酸(PASA)を含有する1mlのSAB培地を含む滅菌2.0mlマイクロ遠心チューブに、100mgの滅菌した0.5mm径ガラスビーズとともに、爪断片を移し、残留NP213を中和した。チューブの内容物をビーズ泡立て器を用いて1分間十分に混合して、計数のために爪マトリクスから真菌細胞を放出させ、3%(w/v)PASAを含有するサブローデキストロースブロス中で段階的10倍希釈物を調製した。試料をジャガイモデキストロースカンテン培地に平板培養し、30℃で14日間培養し、コロニーを計数した。
【0138】
結果概要
その結果を
図15に示す。これらは、抗真菌作用が治療開始から11日以内にみられることを示している。これは、少なくとも爪に何らかの改善がみられる前に、しばしば48週間の治療を必要とする現在の抗真菌治療とは対照的である。
【国際調査報告】