(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】コーティング組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 197/00 20060101AFI20230718BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230718BHJP
【FI】
C09D197/00
C09D7/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581498
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 IB2021055904
(87)【国際公開番号】W WO2022003616
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ザファル, アシャル
(72)【発明者】
【氏名】ハグ, カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】アルムクヴィスト, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】アレスコフ, ディミトリ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA251
4J038JA17
4J038JA25
4J038JA32
4J038JA53
4J038KA03
4J038KA06
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA09
(57)【要約】
本発明は、最大100%のバイオベース含有量を含有するコーティング組成物を調製する方法に関する。コーティング組成物は、様々な用途において、金属、紙および木材基材をコーティングするために使用される。コーティング組成物を調製するための方法は、凝集しており、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有するリグニンを提供する工程と、凝集したリグニンを有機溶媒に溶解する工程と、溶液と架橋剤とを混合してコーティング組成物を得る工程、とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物を調製するための方法であって、
凝集しており、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有するリグニンを提供する工程と、
凝集したリグニンを有機溶媒に溶解する工程と、
溶液と架橋剤とを混合してコーティング組成物を得る工程、
とを含む方法。
【請求項2】
a)リグニンを圧縮する工程であって、1重量%~45重量%の水分含有量を有するリグニンはロール圧縮によって凝集され、ロールはキャビティを有し、ロール圧縮に使用される各キャビティの深さは0.1mm~10mmである工程と、
b)工程a)からの圧縮リグニンを粉砕工程に供する工程と、続いて、
c)ふるい分け工程であって、工程b)の製品をふるい分けに供して100μm未満の粒径を有する粒子を除去し、制御された粒度分布を有する最終凝集リグニンを製造し、粒度分布はふるい分け工程で使用されるふるい分けスクリーンの多孔度によって支配され、工程c)の後に保持される粒子の10重量%未満は、100μm未満の粒径を有する工程と、
d)工程c)の製品を有機溶媒に溶解する工程と、
e)工程d)の溶液を架橋剤と混合してコーティング組成物を得る工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リグニンはいかなる添加剤も添加することなく凝集されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)で使用されるリグニンは、5重量%~10重量%の水分含有量を有する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒は、ケトン、エステル、アルコール、グリコールエーテル、炭化水素またはエーテルもしくはそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
架橋剤は、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アルコキシル化グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールトリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、イソソルビドジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、2~9個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1~5個のプロピレングリコール単位を有するプロピレングリコールジグリシジルエーテル、炭水化物のジグリシジル-、トリグリシジル-またはポリグリシジルエーテル、炭水化物のジグリシジル-、トリグリシジル-またはポリグリシジルエステル、サリチル酸、バニリン酸または4-ヒドロキシ安息香酸のジグリシジルエーテルまたはジグリシジルエステル、エポキシ化またはグリシジル置換された植物系フェノール化合物またはエポキシ化された植物系油、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン、p-(2,3-エポキシプロポキシ-N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン、ビス-ヒドロキシメチルフランのジグリシジルエーテル、および/または3~6個の炭素原子の直鎖炭素鎖を有する末端ジオールのジグリシジルエーテル、ならびにグリシジルアミン、ジグリシジルアミン、トリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミン、グリシジルアミド、ジグリシジルアミド、トリグリシジルアミド、ポリグリシジルアミド、グリシジルエステル、ジグリシジルエステル、トリグリシジルエステル、ポリグリシジルエステル、グリシジルアジド、ジグリシジルアジド、トリグリシジルアジド、ポリグリシジルアジド、グリシジルメタクリレート、ジグリシジルメタクリレート、トリグリシジルメタクリレートまたはポリグリシジルメタクリレートから選択される官能基を有する架橋剤から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング組成物を基材の表面に塗布する、基材上にコーティング組成物を提供する方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング組成物を基材の表面に塗布し、硬化させてコーティングを得る、基材上にコーティングを提供する方法。
【請求項9】
紙、木材または金属から選択される基材上にコーティングを調製するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法により得られたコーティング組成物の使用。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得られたコーティング組成物でコーティングされた紙、木材または金属。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大100%のバイオベース含有量を含有するコーティング組成物を調製する方法に関する。コーティング組成物は、様々な用途において、金属、紙および木材基材をコーティングするために使用される。
【背景技術】
【0002】
コーティング産業で使用される樹脂は、ほとんどが化石系原料に基づいている。化石系原料の使用は、二酸化炭素排出量や毒性が高いため、懸念されている。
【0003】
コーティング業界では、配合物が高含有量のバイオベースおよび再生可能材料を使用するようにコーティング配合物を改善する傾向がある。政府および非政府機関は、コーティング中のバイオベースの含有量を定量化するための規制やガイドラインを策定している。しかし、依然としてバイオベースの含有量は通常まだ少なく、バイオベース製品の数は限られている。
【0004】
欧州特許第2935411号明細書は、リグニンおよび様々な架橋剤に基づく金属の保護コーティングのためのリグニン系コーティング配合物を記載している。
【0005】
溶媒型コーティングの場合、方法に不必要な追加の水を持ち込まないように、最小限の水分量を有するリグニン製品を利用する必要がある。多くの有機溶媒は水と混和しないため、水分量が30~40%(重量基準)の湿潤リグニンを使用することは不可能である。しかしながら、0~5%(重量基準)の最小水分含有量を有するリグニンの取り扱いは、いくつかの問題を提示する。その中には、取り扱い中のリグニンが粉塵雲を形成することが含まれる。これらの粉塵雲は、十分に高い濃度の可燃性物質が空気中に浮遊している場合、さらに粉塵爆発に至る可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、先行技術の問題のうちの1つ以上に対する解決策を提供する。本発明による方法の特定の利点は、粉塵を形成する微粒子が、粉塵爆発の危険性が著しく低減される程度まで低減されることである。
【0007】
したがって、本発明は、コーティング組成物を調製するための方法であって、
凝集しており、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有するリグニンを提供する工程と、
凝集したリグニンを有機溶媒に溶解する工程と、溶液と架橋剤とを混合してコーティング組成物を得る工程、
とを含む方法に関する。
【0008】
より具体的には、本発明は、コーティング組成物を調製するための方法であって、
a)リグニンを圧縮する工程であって、1重量%~45重量%の水分含有量を有するリグニンはロール圧縮によって凝集され、ロールはキャビティを有し、ロール圧縮に使用される各キャビティの深さは0.1mm~10mmである工程と、
b)工程a)からの圧縮リグニンを粉砕工程に供する工程と、続いて、
c)ふるい分け工程であって、工程b)の製品をふるい分けに供して100μm未満の粒径を有する粒子を除去し、制御された粒度分布を有する最終凝集リグニンを製造し、粒度分布はふるい分け工程で使用されるふるい分けスクリーンの多孔度によって支配され、工程c)の後に保持される粒子の10重量%未満は、100μm未満の粒径を有する工程と、
d)工程c)の製品を有機溶媒に溶解する工程と、
e)工程d)の溶液を架橋剤と混合してコーティング組成物を得る工程と
を含む方法に関する。
【0009】
本発明はまた、本発明による方法で得られたコーティング組成物を使用して調製されたコーティングに関する。
【0010】
本発明はまた、本発明の方法による方法で得られたコーティング組成物でコーティングされた基材に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の工程a)における圧縮は、圧縮されるリグニンに添加剤を添加せずに行うことが好ましい。
【0012】
本明細書を通して、「リグニン」という表現は、任意の種類のリグニン、例えば広葉樹、針葉樹または一年生植物に由来するリグニンを包含することが意図される。好ましくは、リグニンは、例えばクラフト法で生成されるアルカリ性リグニンである。好ましくは、リグニンは、本発明による方法で使用される前に精製または単離されている。リグニンは、黒液から単離されてもよく、場合により、本発明による方法で使用する前にさらに精製されてもよい。精製は、典型的には、リグニンの純度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%、99.5%または99.9%であるようなものである。したがって、本発明の方法に従って使用されるリグニンは、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満の不純物を含有する。次いで、リグニンを、国際公開第2006031175号に開示されている方法を使用することによって黒液から分離することができる。
【0013】
圧縮され、粉砕され、ふるい分けされたリグニンが使用されると想定される用途に反対に悪影響を及ぼす可能性がある結合剤または他の成分が存在しないため、圧縮された製品の使用をより容易にするので、本質的にリグニンのみである材料、すなわち添加剤が存在しない材料に対して工程a)で圧縮を行うことが特に有益である。
【0014】
好ましくは、リグニンは、圧縮前、すなわち本発明による方法の工程a)の前に乾燥される。リグニンの乾燥は、当該技術分野で公知の方法および装置によって行われる。工程a)で使用されるリグニンは、1重量%~45重量%の水分含有量を有する。好ましくは、本発明による圧縮前のリグニンの水分含有量は、25重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満である。乾燥中の温度は、80℃~160℃の範囲が好ましく、100℃~120℃の範囲がより好ましい。
【0015】
乾燥後に得られるリグニン粉末は、1μm~2mmの範囲の広い粒度分布を有し、これはマイクロメートルの範囲の方に著しく偏っており、かなりの割合の粒子が1~200マイクロメートルの範囲の直径を有することを意味する。爆発特性と粒度分布との間に強い相関関係が存在することが当該技術分野で知られており(BIA-Report 13/97 Combustion and explosion characteristics of dusts)、すなわち、粒子が小さいほど、爆発の危険性がより深刻である。直径100マイクロメートル未満の粒子は、ここでは微粒子と見なされる。
【0016】
リグニンのロール圧縮は、リグニン粒子を凝集させるために、ローラーコンパクターによって達成することができる。本発明は、圧縮、粉砕およびふるい分けの3つの工程を含む方法である。
【0017】
圧縮工程a)では、一次中間製品が生成される。ここで、微細リグニン粉末は、通常、ホッパを通して供給され、水平または垂直供給スクリューによって圧縮ゾーンに搬送され、そこで材料は、規定のギャップを有する圧縮ローラーによってフレークに圧縮される。供給スクリューの速度と圧縮ゾーン内の圧力発生を制御することで、均一な密度のフレークを得ることができる。圧縮ゾーン内の圧力発生は、好ましくは、圧縮ロールの回転速度によって監視および制御することができる。粉末がローラー間で引き込まれると、ニップ領域と呼ばれる場所に入り、材料の密度が増加し、粉末はフレークまたはリボンに変換される。使用されるロールは空洞を有する。ロール圧縮に使用される各キャビティの深さは、0.1mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、より好ましくは1mm~5mm、または1mm~3mmである。圧縮中に加えられる特定の押圧力は、圧縮に使用される装置に応じて変化し得るが、1kN/cm~100kN/cmの範囲であり得る。圧縮を実施するのに好適な装置は、当該技術分野で既知である。
【0018】
好ましくは、工程a)で使用されるリグニンは、リグニンの少なくとも25重量%が1μm~100μmの粒径を有するような粒度分布を有する粉末の形態で提供される。
【0019】
本方法の粉砕工程b)において、圧縮工程からの一次中間製品は、回転造粒機、ケージミル、ビーターミル、ハンマーミルまたはクラッシャーミルおよび/またはそれらの組み合わせなどによって、粉砕またはグラインディングに供される。この工程中に、二次中間製品が生成される。
【0020】
本方法のふるい分け工程c)において、粉砕工程b)からの二次中間製品を、スクリーニングとも呼ばれるふるい分けなどの物理的画分によってスクリーニングして、この工程におけるふるいまたはスクリーンの多孔度によって設定された規定の粒度分布を有する凝集リグニンである最終製品を得る。ふるいまたはスクリーンは、100μm未満の直径を有するほとんどの粒子がスクリーンを通過し、排除され、好ましくは圧縮工程に戻されるが、100μmを超える直径を有するほとんどの粒子は保持され、ふるい分け工程および本発明による方法の製品となるように選択される。ふるい分けは、2つ以上の工程で行うことができ、すなわち、工程b)からの粉砕された材料が2つ以上のスクリーンまたはふるいを順次通過するようにふるい分けを行うことができる。2つ以上の異なるスクリーニング多孔度を有するスクリーニング段階を使用することにより、より明確な粒度分布を有するいくつかの画分が得られる。
【0021】
1つの実施形態では、ロール構成は、ニップ領域内の粉末がローラー表面に沿って軸方向に封止されるような構成において、第1ロールが環状リムを有するような構成である。
【0022】
1つの実施形態では、ロール構成は、ニップ領域がローラー表面に沿って軸方向に静止板で封止されるような構成である。
【0023】
ニップ領域が確実に封止されることにより、完全に円筒形のニップローラーと比較して、ローラーの軸方向端部における粉末の損失が最小限に抑えられる。
【0024】
工程c)で得られたリグニンは、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有することが好ましく、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~2.0mmの範囲内の直径を有することがより好ましい。
【0025】
本明細書で使用される場合、有機溶媒とは、他の1つまたは複数の物質を溶解するために使用される炭素系物質を意味する。有機溶媒は、炭素系であるため、その構造中に少なくとも1つの炭素原子を有する。有機溶媒はまた、少なくとも1つの水素原子を有する。本明細書で使用される場合、有機溶媒は25℃で液体である。
【0026】
好ましくは、工程d)で使用される有機溶媒は、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルアミルケトン(MAK)、イソフロン)、エステル(酢酸ブチル、酢酸エチル、メトキシプロピルアセテート(MPA)、ブチルグリコールアセテート)、アルコール(ブタノール、イソプロパノール)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルグリコールエーテルなど)、または炭化水素(ナフサ、キシレンなど)またはエーテルもしくはそれらの混合物から選択される。
【0027】
本発明に従って調製されるコーティング組成物は、有機溶媒以外の溶媒を1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0重量%含有することが好ましい。
【0028】
コーティング組成物において、リグニン(乾燥重量)と架橋剤の総量との重量比は、好ましくは1:10~10:1の範囲である。結合樹脂中のリグニンの量は、リグニンの乾燥重量およびコーティング組成物の総重量として計算して、好ましくは5重量%~50重量%である。
【0029】
工程e)で使用される架橋剤は、好ましくは、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アルコキシル化グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールトリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、イソソルビドジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、2~9個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1~5個のプロピレングリコール単位を有するプロピレングリコールジグリシジルエーテル、炭水化物のジグリシジル-、トリグリシジル-またはポリグリシジルエーテル、炭水化物のジグリシジル-、トリグリシジル-またはポリグリシジルエステル、サリチル酸、バニリン酸または4-ヒドロキシ安息香酸のジグリシジルエーテルまたはジグリシジルエステル、エポキシ化またはグリシジル置換された植物系フェノール化合物またはエポキシ化された植物系油、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン、p-(2,3-エポキシプロポキシ-N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン、ビス-ヒドロキシメチルフランのジグリシジルエーテル、および/または3~6個の炭素原子の直鎖炭素鎖を有する末端ジオールのジグリシジルエーテル、ならびにグリシジルアミン、ジグリシジルアミン、トリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミン、グリシジルアミド、ジグリシジルアミド、トリグリシジルアミド、ポリグリシジルアミド、グリシジルエステル、ジグリシジルエステル、トリグリシジルエステル、ポリグリシジルエステル、グリシジルアジド、ジグリシジルアジド、トリグリシジルアジド、ポリグリシジルアジド、グリシジルメタクリレート、ジグリシジルメタクリレート、トリグリシジルメタクリレートまたはポリグリシジルメタクリレートから選択される官能基を有する架橋剤から選択される。
【0030】
添加剤は、工程d)またはe)において、コーティング組成物の重量に基づいて1~20重量%の量で添加することができる。好適な添加剤としては、タンニン、溶媒、界面活性剤、促進剤、触媒、分散剤および充填剤、ならびに硬化剤が挙げられる。そのような充填剤および/または硬化剤の例としては、石灰石、セルロース、炭酸ナトリウム、およびデンプンが挙げられる。
【0031】
リグニンと架橋剤との反応性は、工程a)の圧縮の前に、グリオキシル化、エーテル化、エステル化、またはリグニンのヒドロキシル含有量またはカルボン酸含有量またはアミン含有量もしくはチオール含有量が増加する任意の他の方法によってリグニンを修飾することによって増加させることができる。
【0032】
工程e)で得られたコーティング組成物は、当業者に既知の任意の方法で基材に塗布することができる。いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、基材上に噴霧またはロールコーティングされる。コーティング組成物は、既知の顔料および乳白剤で着色および/または乳白化され得る。したがって、例えば、噴霧、圧延、浸漬、およびフローコーティングの塗布方法は、透明および着色コーティングの両方に使用することができる。好適な基材としては、金属、紙および木材が挙げられる。
【0033】
基材への塗布後、コーティングは、約20℃~約300℃の範囲の温度、あるいは完全な硬化を達成するのに十分な時間にわたってより高い温度で熱硬化されてもよい。
【0034】
好ましくは、コーティング組成物およびコーティングはそれぞれホルムアルデヒドを含まない。
【実施例】
【0035】
実施例1
粒径0.5~1.5mmの顆粒化リグニンを使用してリグニン溶液を調製した。250mLのプラスチックカップ中の70gのエチレングリコールモノブチルエーテル(EGME)に、30gのリグニン顆粒を常温で添加し、リグニン溶液を調製した。リグニン顆粒が完全に溶解するまで、リグニン顆粒をオーバーヘッドスターラーで撹拌した。
【0036】
50gのリグニン溶液および15gのポリグリセロールポリグリシジルエーテルを100mlのプラスチックカップに秤取し、木製棒で2分間撹拌し、コーティング組成物を調製した。このコーティング配合物を、フィルムアプリケーターを使用してアルミニウム金属シート上に塗布した。その後、金属シートを200℃のオーブンで10分間焼成した。
【0037】
硬化したコーティングは、メチルエチルケトン(MEK)での30回のダブルラブに耐えることができ、100%の接着性(クロスハッチテープオフ法による)、1Hの鉛筆硬度を有し、0Tで金属シートを曲げることによるクラックはなかった。コーティングされたパネルを、コーティング面を外側にして曲げ戻した。エッジにクラックがない場合、結果は0Tと報告した。沸騰水中で1時間後、フィルムは白化しなかった。
【0038】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正および変形が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、そのような他の修正および変形が行われ得ることは明らかである。
【国際調査報告】