(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】炭素-ケイ素複合材料粉末の製造方法および炭素-ケイ素複合材料粉末
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20230718BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20230718BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230718BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230718BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230718BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230718BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01M4/134
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/13
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581501
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 IB2021055941
(87)【国際公開番号】W WO2022003633
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ウォットラー, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】マッソン, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】レンネマルク, レナ
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072DD05
4G072EE10
4G072GG02
4G072GG03
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4G072LL02
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4G072UU30
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
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5H050DA03
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5H050GA05
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本開示は、炭素-ケイ素複合材料粉末の製造方法に関するものであり、該方法は、リグニンである炭素含有前駆体を提供すること、少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供すること、少なくとも前記炭素含有前駆体と前記ケイ素含有活物質とを溶融混合して溶融混合物を得る工程、前記溶融混合物を非繊維状で提供し、等方性中間複合材料を提供するように溶融混合物を冷却すること、前記等方性中間複合材料に熱処理を施すこと(前記熱処理は炭化工程を含み、炭素-ケイ素複合材料を提供する)、および前記炭素-ケイ素複合材料粉末を提供するように前記炭素-ケイ素複合材料を微粉砕することを含む。また、本開示は、上記方法により得られる炭素-ケイ素複合材料粉末、該炭化ケイ素複合材料粉末を含むリチウムイオン電池などの非水系二次電池用負極、および非水系二次電池の負極における該炭化ケイ素複合材料粉末の使用に関する。
【選択図】
図3e
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-ケイ素複合材料粉末の製造方法であって、
-炭素含有前駆体を提供することであって、炭素含有前駆体はリグニンである、提供すること、
-少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供すること、
-少なくとも2つの成分を溶融混合物に溶融混合することであって、前記炭素含有前駆体は1つの成分を構成し、各ケイ素含有活物質は1つの成分を構成し、前記溶融混合は120~250℃の温度で行われる、溶融混合すること、
-非繊維状の前記溶融混合物を提供し、等方性中間複合材料を提供するように前記非繊維状の前記溶融混合物を冷却すること、
-前記等方性中間複合材料に熱処理を施すことであって、前記熱処理は炭素-ケイ素複合材料を提供するように炭化工程を含む、熱処理を施すこと、および
-前記炭素-ケイ素複合材料粉末を提供するように前記炭素-ケイ素複合材料を微粉砕すること
を含む、方法。
【請求項2】
炭素含有前駆体が、クラフトリグニンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リグニンが、好ましくは0.1μm~3mmの平均粒径を有する粒子形態で提供される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ケイ素含有活物質が、ケイ素元素、亜酸化ケイ素、ケイ素-金属合金またはケイ素-金属炭素合金の群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ケイ素含有活物質が、好ましくはマイクロサイズまたはナノサイズの粒子形態で提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
炭素含有前駆体が、溶融混合工程において0.5~30重量%の前記少なくとも1つのケイ素含有活物質と混合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの分散添加剤を提供する工程をさらに含む請求項1~6のいずれか一項に記載の方法であって、溶融混合工程で溶融混合される成分が前記少なくとも1つの分散添加剤を含む、方法。
【請求項8】
前記分散添加剤が、モノエーテル、ポリエーテル、モノアルコール、ポリアルコール、アミン、ポリアミン、カーボネート、ポリカーボネート、モノエステル、ポリエステルおよびポリエーテル脂肪酸エステルの群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分散添加剤が、ポリエチレンオキシドおよび分岐ポリエーテル脂肪酸エステルの群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
炭素含有前駆体が、溶融混合工程において0.5~30重量%の前記少なくとも1つのケイ素含有活物質および0.5~10重量%の前記少なくとも1つの分散添加剤と混合される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
グラファイトおよび/または炭素粒子を提供する工程をさらに含む請求項1~10のいずれか一項に記載の方法であって、溶融混合工程で溶融混合される成分が、前記グラファイトおよび/または炭素粒子を含む、方法。
【請求項12】
溶融混合が、混練、コンパウンドまたは押出によって実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融混合工程の前に、溶融混合される前記成分のうちの少なくとも2つを予混合する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記予混合が、乾式混合、乾式粉砕、湿式粉砕、溶融混合、溶液混合、噴霧コーティング、噴霧乾燥および/または分散混合によって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炭化が、700~1300℃の温度で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記熱処理が、前記炭化工程の前に1つ以上の初期加熱工程をさらに含み、各初期加熱工程が250~700℃の温度で実施される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の初期加熱工程の後および前記炭化工程の前に微粉砕工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記熱処理の前に前記等方性中間複合材料を粉砕する工程または微粉砕する工程をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素-ケイ素複合材料粉末が、5~25μmの平均粒径を有する粉末粒子を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記炭素-ケイ素複合材料粉末が粉末粒子を含む請求項1~19のいずれか一項に記載の方法であって、好ましくは化学蒸着によって炭素-ケイ素複合材料粉末粒子を炭素コーティングする工程をさらに含む、方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法によって得られる、炭素-ケイ素複合材料粉末。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法により得られる炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む非水系二次電池用負極。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法により得られる炭素-ケイ素複合材料粉末の、非水系二次電池の負極における活物質としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭素-ケイ素複合材料粉末の製造方法、および該方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末に関する。さらに、本開示は、リチウムイオン電池などの非水系二次電池用の負極であって、該方法により得られる炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む負極に関する。また、本開示は、リチウムイオン電池などの非水系二次電池の負極における活物質としての、該方法により得られる炭素-ケイ素複合材料粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池は、何度も充電および放電することができる電気電池であり、すなわち充電式電池である。例えば、リチウムイオン電池は、今日、携帯用電子機器および電気自動車に一般的に使用されている。リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度、高い動作電圧、低い自己放電および低いメンテナンス要件を有する。
【0003】
リチウムイオン電池では、放電時にリチウムイオンが負極から電解質を通って正極に流れ、充電時に戻る。今日、典型的には、正極の材料としてリチウム化合物、特にリチウム金属酸化物が利用され、負極の材料として炭素質材料が利用されている。
【0004】
グラファイト(天然または合成グラファイト)は、今日、ほとんどのリチウムイオン電池の負極の材料として利用されている。グラファイトは、50~300mV vs.Li/Li+の低電位で372mAh/g(LiC6の化学量論に対応)の理論容量を提供し、これはセルレベルでの高いエネルギー密度に変換される。さらに、通常1000~数1000サイクルにわたって安定した充放電性能を提供する。
【0005】
グラファイトの代替物は、グラファイト長距離秩序を欠くハードカーボン(難グラファイト化性非晶質炭素)およびソフトカーボン(易グラファイト化性非晶質炭素)などの非晶質炭素材料である。非晶質炭素は、唯一の活性電極材料として、またはグラファイト(および/または他の活性材料)との混合物として使用することができる。
【0006】
非晶質炭素はリグニンから得ることができる。リグニンは芳香族ポリマーであり、これは例えば木材の主要成分であり、地球上で最も豊富な炭素源の1つである。近年、パルプ製造方法から高度に精製された固体および微粒子化された形態でリグニンを抽出する技術の開発および商品化により、石油化学産業から現在供給されている主に芳香族化学前駆体の再生可能な代替物として大きな注目を集めている。リグニン由来の非晶質炭素は、典型的には難黒鉛化性、すなわちハードカーボンである。
【0007】
ハードカーボンは、通常、室温と低温の両方で非常に良好な充放電速度性能(グラファイトよりも高い)を示し、これは高出力システム、急速充電装置、低温用途などに望ましい。ハードカーボンの電気化学的充放電は、約1.3V vs.Li/Li+~<0V vs.Li/Li+で行われ、電極電位を容量にわたってプロットした場合、約0.1V vs.Li/Li+を超える着実に傾斜した電位領域およびこの値を下回る拡張された電位プラトー領域を含む。平均電極電位は、グラファイトよりも高い。それらのより低い幾何学的密度およびより高い平均電極電位のために、それらはグラファイトよりもセルレベルでより低い使用可能なエネルギー密度を与える。
【0008】
グラファイトおよび非晶質炭素に共通していることは、充電(Li挿入)および放電(Li脱挿入)中の体積変化が小さいことである(グラファイト約10体積%について)。これは、電極材料および電極の良好な機械的安定性をもたらし、良好なサイクル安定性を維持するのに役立つ。
【0009】
グラファイトと非晶質炭素の両方は、電解質の熱力学的安定性窓の外側の電位範囲で作用する。最初の充電中、電解質は分解され、分解生成物の一部は電極表面に保護層、いわゆる「固体電解質界面」(SEI)を形成する。SEIの形成は、ほとんどが最初の充電中に不可逆的に電荷を消費し、最初の(数回の)サイクルで不可逆的な容量損失をもたらし、初期クーロン効率を低下させる(ICE、または第1サイクル充放電効率)。SEIが完全に形成されると、電解質分解が終了し、可逆的サイクルが可能になる。
【0010】
グラファイトと非晶質炭素のサイクル中の体積変化が小さいため、SEIの機械的歪みは小さく、一度完全に形成されたSEIは多かれ少なかれ安定なままであり、SEI形成による不可逆容量損失は(次に)ゼロに低下する。
【0011】
さらに別の代替的な負極材料はケイ素である。元素Siは、3579mAh/g(反応に対応:4 Si+15 Li++15 e-←→Li15Si4)の超高理論容量、およびこの値に近い実用容量を提供する。しかしながら、純粋なSiの使用は、充電および放電中に生じる膨大な体積変化によって妨げられ、これは260体積%の範囲内であり、通常、機械的歪みならびに電極の亀裂および崩壊をもたらす。これは、不可逆容量損失(サイクル可能なSiの損失による)を引き起こし、クーロン効率(最初のサイクルおよびその後のサイクル)を低下させ、サイクル寿命を短縮する。この問題は、Si(および、クラッキング後、Siフラグメント)に強い共有結合を形成する特別な結合剤(カルボキシメチルセルロース誘導体またはポリアクリレートなど)を使用することによって部分的に緩和することができる。
【0012】
グラファイトおよび非晶質炭素と同様に、Siは電解質の安定窓の外側で作用し、SEIが形成され、不可逆的な容量損失をもたらし、初期のクーロン効率を低下させる。しかしながら、充放電中の膨大な体積変化のために、一度完全に形成されたSEIは安定ではないが破損する可能性があり、次のサイクルで修復する必要があり得る。この修復は、第1のサイクルに続くサイクルにおいても、追加の不可逆的容量損失をもたらし、クーロン効率を低下させる。この状況は、Si電極に特に適合したSEIを生成するフルオロエチレンカーボネート(FEC)などの特別な電解質および電解質添加剤を使用することによって部分的に緩和できることが示されている。
【0013】
Si電極のある程度の安定化は、純粋な元素Siの代わりにSiリッチ化合物を使用することによって達成することができる。Siリッチ化合物は、亜酸化Si(0≦x≦2のSiOx)、Si合金(例えば、SiFex、SiFexAly、またはSiFexCyなど)、およびSiが豊富な他の化合物を含む。一例は、亜酸化ケイ素SiOxである。SiOxの構造を記述するために様々なモデルが提唱されている。最も一般的には、SiOxは、ナノメートルスケールで相互分散したSiとSiO2の混合物として記載されている。
【0014】
SiOxは2段階で反応することが提唱されている。簡単にするために、x=1の場合を考える:第1のSiOは、4 SiO+4 Li++4 e-→Li4SiO4+3 Siの反応に従って不可逆的に反応し、608mAh/gの不可逆容量損失をもたらす。第2の工程において、およびその後の全ての充放電サイクルの間、放出されたSiは、4 Si+15 Li++15 e-←→Li15Si4の反応に従って可逆的に反応し、1710mAh/gの可逆容量をもたらす。したがって、理論的な初期クーロン効率は73.8%になるため、元素Siの場合(理論的な初期クーロン効率は100%)よりも低い。しかしながら、純粋な元素Siと比較して、Li取り込み、したがってSiOxの体積変化は著しく小さく、したがってサイクル安定性が改善される。SiOxに関する同様の考察は、反応するSiが安定化マトリックス内で希釈される他のSi化合物にも当てはまる。
【0015】
サイクル安定性を過度に犠牲にすることなく、SiまたはSiリッチ化合物(本明細書では一般にケイ素含有活物質またはSiXとして示される)の大容量を利用する一般的な経路は、少量のSiXをグラファイト電極に添加することである。例えば、グラファイトに添加された元素Si 1重量%ごとに、可逆容量は約10%増加する。したがって、SiまたはSiリッチ化合物の添加を用いて、非晶質炭素の可逆容量を増加させることができる。
【0016】
炭素とSiXとの市販の複合材料、例えばグラファイトとSiXとの複合材料は、今日、典型的には、以下の工程のうちのいずれか1つを含む方法によって製造される。
・例えば高エネルギー混合またはミリング技術を使用した、電極調製前のグラファイトとSiXの混合
・グラファイト/SiXコア/シェル材料を得るための、例えば化学蒸着(CVD)による、ケイ素含有活物質の薄層によるグラファイトのコーティング
・SiX/炭素コア/シェル材料を得るための、例えば湿式化学法による、薄い炭素層を有するSiX粒子のコーティング
・電極調製時のグラファイトとSiXの配合
【0017】
上記の方法におけるSiXの成分は、その安定性を高めるために表面予備酸化または炭素コーティングされてもよい。さらに、炭素とSiX材料との複合材は、その安定性を高めるために追加的に炭素コーティングされてもよい。
【0018】
二次電池の電極の材料として利用される場合、グラファイト/炭素とSiXとの複合材料は、通常、粉末形態で提供され、バインダーと混合されて電極を形成する。
【0019】
米国第2014/0287315A1号には、Si/C複合材を製造する方法が記載され、該方法は、ケイ素を含有する活物質を提供することと、リグニンを提供することと、活物質をリグニンを含有するC前駆体に接触させることと、不活性ガス雰囲気中で少なくとも400℃の温度でリグニンを炭素に変換することによって活物質を炭化することとを含む。ケイ素系活物質は、リグニンと共に粉砕したり、リグニンと物理的に混合したりすることができる。
【0020】
しかしながら、上記のような粉砕またはコーティングなどの方法によって得られたグラファイト/炭素およびSiXの複合材料では、単一成分は、通常、互いに隣接して(グラファイト/炭素の隣のSiX)または互いに重なって(グラファイト/炭素の表面の上のSiXまたはSiXの表面の上のグラファイト/炭素)存在する。したがって、Siの良好で均一な分散を維持しながら、SiX負荷量は制限される。さらに、SiXまたはグラファイト/炭素とSiXとの複合体がカーボンコーティングされていない限り、SiXは、複合体が負極の活物質として使用される二次電池のバインダーおよび電解質と直接接触し、上記のサイクル安定性およびクーロン効率に関する全ての問題を引き起こす。それにより、特別な結合剤および電解質が必要とされる。
【0021】
このため、炭素-ケイ素複合材料粉末の製造方法には、未だ改良の余地がある。
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、炭素-ケイ素複合材料粉末を製造するための改善された方法を提供することであり、該方法は、再生可能な炭素源の使用を可能にし、従来技術の方法の欠点の少なくともいくつかを排除または緩和し、リチウムイオン電池などの二次電池の負極における活物質としての使用に適した改善された炭素-ケイ素複合材料粉末を提供する。
【0023】
上述の目的、ならびに本開示に照らして当業者によって実現される他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に示される第1の態様によれば、炭素-ケイ素複合材料粉末を製造するための方法が提供され、該方法は、
-炭素含有前駆体を提供すること(炭素含有前駆体はリグニンである)、
-少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供すること、
-少なくとも2つの成分を溶融混合物に溶融混合すること(該炭素含有前駆体は1つの成分を構成し、各ケイ素含有活物質は1つの成分を構成し、該溶融混合は120~250℃の温度で行われる)、
-該溶融混合物を非繊維状で提供し、等方性中間複合材料を提供するように該非繊維状の該溶融混合物を冷却すること、
-該等方性中間複合材料に熱処理を施すこと(該熱処理は炭素-ケイ素複合材料を提供するように炭化工程を含む)、および
-該炭素-ケイ素複合材料粉末を提供するように該炭素-ケイ素複合材料を微粉砕すること、
を含む。
【0025】
本発明は、リグニン(炭素含有前駆体)と少なくとも1つのケイ素含有活物質とを120~250℃の温度で溶融混合(すなわち、組み合わされた機械的エネルギーおよび熱的エネルギーを使用する)によって混合して溶融混合物を提供することによって、ケイ素含有活物質の高い充填量およびケイ素含有活物質の良好または高い分散度が得られる場合があるという意外な認識に基づいている。第1の態様に係る方法の溶融混合は、炭素含有前駆体の炭素がまだプラスチックまたは液体である段階(および硬質炭素に変換された状態の前)でケイ素含有活物質の組み込みを可能にする。したがって、ケイ素含有活物質は、炭素内および炭素表面の両方に(従来技術の方法のように炭素の隣または炭素の表面だけでなく)、良好または高度に微細かつ均一に分散させることができる。これにより、ケイ素含有活物質の良好なまたは高い分散度を維持しながら、ケイ素含有活物質の高い充填量を得ることができる。
【0026】
さらに、ケイ素含有活物質の分散が炭素内および炭素の表面の両方で良好または高度に均一であることは、ケイ素含有活物質の大部分が炭素に囲まれており、したがってリチウムイオン電池などの二次電池の活物質として利用される場合、電解質と直接接触していないことを意味する。これにより、従来技術の材料に関連するケイ素含有活物質の表面での電解質還元およびケイ素含有活物質上に形成されるSEIの不安定性に関連する問題が軽減される。また、リチウムイオン電池などの二次電池の活物質として利用される場合、ケイ素含有活物質は、電気化学的な充放電中に膨張および収縮し、材料に機械的歪みを引き起こす。周囲の炭素マトリックスは、膨張するケイ素含有活物質を安定化させるのに役立つ。
【0027】
さらに、非繊維状の溶融混合物を提供し、等方性中間複合材料を提供するように非繊維状の溶融混合物を冷却し、炭素-ケイ素複合材料(したがって等方性である)を提供するように、炭化工程を含む熱処理に等方性中間複合材料を供し、炭素-ケイ素複合材料を微粉砕することにより、等方性の炭素-ケイ素複合材料の粉末を得る。リチウムイオン電池などの二次電池の負極において、活物質として等方性炭素-ケイ素複合材料の粉末を用いることは、等方性が、異方性材料を用いる場合に比べて、活物質、ひいては電極の特性をより均一にすることができることを意味するため、有利である。例えば、異方性材料の代わりに等方性の炭素-ケイ素複合材料を活物質として二次電池の負極に用いると、充放電時の電極体積変化がより均一になる。
【0028】
したがって、本発明の第1の態様による方法を使用することにより、改善された炭素-ケイ素複合材料の粉末を得ることができ、これは、ケイ素含有活物質の高い負荷および高いまたは良好な分散度を有し、リチウムイオン電池などの二次電池の負極において活物質として使用される場合の利点を暗示する等方性である。さらに、リグニンが炭素含有前駆体として利用されるため、再生可能な炭素源を利用することができる。
【0029】
「炭素-ケイ素複合材料」および「炭素-ケイ素複合材料粉末」などの語句における「炭素-ケイ素複合材」という用語は、本明細書では、炭素および1つ以上のケイ素含有活物質を含む複合材、例えば、炭素および元素状ケイ素を含む複合材、炭素および1つ以上のケイ素リッチ化合物を含む複合材、または炭素、元素状ケイ素および1つ以上のケイ素リッチ化合物を含む複合材を指す。
【0030】
本明細書で使用される「炭素含有前駆体」という用語は、本開示の炭素-ケイ素複合材料の炭素マトリックス材料の炭素源として使用される炭素前駆体材料を指す。本開示によれば、炭素含有前駆体はリグニンである。
【0031】
本明細書で使用される「リグニン」という用語は、炭化炭素-ケイ素複合材料、すなわち導電性炭素-ケイ素複合材料を製造するための炭素源として使用することができる任意の種類のリグニンを指す。該リグニンの例は、木材、例えば針葉樹リグニン、広葉樹リグニン、および環状植物由来のリグニンなどの植物原料から得られるリグニンであるが、これらに限定されない。また、リグニンを化学合成することもできる。
【0032】
好ましくは、リグニンは、本開示による方法で使用される前に精製または単離されている。リグニンは、黒液から単離されてもよく、本開示による方法で使用する前に任意でさらに精製されてもよい。精製は、典型的には、リグニンの純度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%であるようなものである。したがって、本開示の方法に従って使用されるリグニンは、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の不純物、例えばセルロース、灰および/または水分を含有する。
【0033】
好ましくは、炭素含有前駆体は、1%未満の灰、より好ましくは0.5%未満の灰を含む。
【0034】
リグニンは、オルガノソルブ方法またはクラフト方法などの異なる分画方法によって得ることができる。例えば、リグニンは、国際公開第2006031175号に開示される方法またはLignoBoost方法と呼ばれる方法を使用することによって得ることができる。
【0035】
好ましくは、本開示の第1の態様の方法で使用される炭素含有前駆体は、クラフトリグニン、すなわちクラフト方法によって得られたリグニンである。好ましくは、クラフトリグニンは硬材または軟材から得られ、最も好ましくは軟材から得られる。
【0036】
好ましくは、第1の態様の方法で利用される炭素含有前駆体は乾燥材料である。好ましくは、炭素含有前駆体は、5%未満の水分を含む。第1の態様の方法で利用される炭素含有前駆体は、好ましくは0.1μm~3mmの平均粒径を有する、粉末などの粒子形態で提供されてもよい。
【0037】
本明細書で使用される「ケイ素含有活物質」(SiX)という用語は、炭素-ケイ素複合材料の(電池)容量増強材料として使用することができ、したがって炭素化炭素-ケイ素複合材料、すなわち導電性炭素-ケイ素複合材料を製造するために使用することができるケイ素含有材料を指す。
【0038】
本明細書で使用される「ケイ素含有活物質」(SiX)という用語は、純粋な元素SiおよびSiリッチ化合物の両方を包含する。Siリッチ化合物は、亜酸化Si(0≦x≦2のSiOx)、Si合金(例えば、SiFex、SiFexAly、またはSiFexCyなど)、およびSiが豊富な他の化合物を含む。SiOxの構造を記述するために様々なモデルが提唱されている。最も一般的には、SiOxは、ナノメートルスケールで相互分散されたSiとSiO2の混合物として説明される。上記のケイ素含有活物質(SiX)は、結晶性または非晶質の形態で提供されてもよく、さらに、安定性を高めるために表面予備酸化または炭素コーティングされてもよい。
【0039】
したがって、いくつかの実施形態では、方法の第1の態様で利用される各ケイ素含有活物質は、元素ケイ素、亜酸化ケイ素、ケイ素-金属合金またはケイ素-金属炭素合金の群から選択される。亜酸化ケイ素は、0≦x≦2のSiOxであってもよい。ケイ素-金属合金は、例えばSiFexまたはSiFexAlyなどの任意の適切なケイ素-金属合金であってもよい。ケイ素-金属炭素合金は、例えばSiFexCyであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、1つのケイ素含有活物質が利用され、すなわち、少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供する工程は、1つのケイ素含有活物質を提供することを含む。いくつかのこれらの実施形態では、ケイ素含有活物質は元素ケイ素である。いくつかのこれらの実施形態では、ケイ素含有活物質は、0≦x≦2の亜酸化ケイ素SiOxである。いくつかのこれらの実施形態では、ケイ素含有活物質は、例えばSiFexまたはSiFexAlyなどのケイ素-金属合金である。いくつかのこれらの実施形態では、ケイ素含有活物質は、例えばSiFexCyなどのケイ素-金属炭素合金である。
【0041】
いくつかの実施形態では、2つ以上のケイ素含有活物質が利用され、すなわち、少なくとも1つのケイ素含有活物質を提供する工程は、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のケイ素含有活物質を提供することを含む。次いで、各ケイ素含有活物質は、溶融混合工程において溶融混合される成分を構成する。次いで、各ケイ素含有活物質は、上述のケイ素含有活物質から選択することができる。一例では、ケイ素含有活物質として、ケイ素元素および亜酸化ケイ素が提供される。別の例では、2つの異なる亜酸化ケイ素がケイ素含有活物質として提供される。さらなる例では、コーティングされていないケイ素元素およびコーティングされたケイ素元素は、ケイ素含有活物質として提供される。またさらなる例では、炭素コーティングされた元素ケイ素および亜酸化ケイ素がケイ素含有活物質として提供される。
【0042】
ケイ素含有活物質は、好ましくは粒子形態、好ましくはマイクロサイズまたはナノサイズで提供される。「マイクロサイズの粒子形態」とは、本明細書では、ケイ素含有活物質が粒子形態であり、例えば1~50μmなどのマイクロメートル範囲の平均粒径を有する粒子であることを意味する。「ナノサイズの粒子形態」とは、本明細書では、ケイ素含有活物質が粒子形態であり、例えば1~999nmなどのナノメートル範囲の平均粒径を有する粒子であることを意味する。
【0043】
典型的には、粒子形態のケイ素含有活物質の平均粒径は、5nm~5μmであり得る。
【0044】
粒子形態のケイ素含有活物質は、溶融混合の前、すなわち炭素含有前駆体への添加の前に、少なくとも部分的に酸化または炭素コーティングされてもよい。また、ケイ素含有活物質は、結晶質または非晶質の形態で提供されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、炭素含有前駆体は、溶融混合工程において、0.5~30重量%、または1~15重量%、または2~10重量%の少なくとも1つのケイ素含有活物質と混合される。したがって、これらの実施形態では、合計0.5~30重量%、または1~15重量%、または2~10重量%のケイ素含有活物質が、溶融混合工程において炭素含有前駆体と混合される。
【0046】
上述のように、第1の態様の方法の溶融混合工程は、少なくとも2つの成分を溶融混合物に溶融混合することを含み、炭素含有前駆体は1つの成分を構成し、各ケイ素含有活物質は1つの成分を構成する。したがって、溶融混合する工程は、炭素含有前駆体およびケイ素含有活物質のみを溶融混合することを含んでもよい。しかしながら、代替的に、溶融混合する工程は、炭素含有前駆体、ケイ素含有活物質、および1つ以上のさらなる成分を溶融混合することを含んでもよい。さらなる成分は、例えば、1つ以上の分散添加剤によって構成されてもよい。溶融混合工程では溶媒を利用しない。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の態様による方法は、少なくとも1つの分散添加剤を提供する工程をさらに含み、溶融混合工程で溶融混合される成分は、少なくとも1つの分散添加剤を含む。したがって、これらの実施形態では、溶融混合工程は、少なくとも炭素含有前駆体、ケイ素含有活物質および少なくとも1つの分散添加剤を溶融混合することを含む。
【0048】
分散添加剤は、モノエーテル、ポリエーテル、モノアルコール、ポリアルコール、アミン、ポリアミン、カーボネート、ポリカーボネート、モノエステル、ポリエステルおよびポリエーテル脂肪酸エステルの群から選択され得る。例えば、分散添加剤は、ポリエチレンオキシド(PEO)および分岐ポリエーテル脂肪酸エステル(TWEENなど、例えばTWEEN 80)の群から選択することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、1つの分散添加剤が提供され、溶融混合工程において他の成分と溶融混合され、分散添加剤はPEOである。いくつかの実施形態では、1つの分散添加剤が提供され、溶融混合工程において他の成分と溶融混合され、分散添加剤は分岐ポリエーテル脂肪酸エステル(TWEENなど、例えばTWEEN 80)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、炭素含有前駆体は、溶融混合工程において、0.5~30重量%、または1~15重量%、または2~10重量%の少なくとも1つのケイ素含有活物質および0.5~10重量%、または1~7重量%の少なくとも1つの分散添加剤と混合される。したがって、これらの実施形態では、合計0.5~30重量%、または1~15重量%、または2~10重量%のケイ素含有活物質および合計0.5~10重量%、または1~7重量%の分散添加剤が、溶融混合工程において炭素含有前駆体と混合される。しかしながら、分散添加剤の量は、利用される分散添加剤の種類に依存する。
【0051】
上述のように、第1の態様の方法の溶融混合工程は、120~250℃の温度、例えば150~200℃の温度で行われる。好ましくは、溶融混合は、1~60分、例えば1~30分または1~25分で行われる。
【0052】
上述のように、120~250℃の温度でのリグニン(炭素含有前駆体)とケイ素含有活物質との溶融混合は、ケイ素含有活物質の高い充填量およびケイ素含有活物質の良好または高い分散度が得られる場合があることを意味する。第1の態様に係る方法の溶融混合は、炭素含有前駆体の炭素がまだプラスチックまたは液体である段階(および硬質炭素に変換された状態の前)でケイ素含有活物質の組み込みを可能にする。したがって、ケイ素含有活物質は、炭素内および炭素の表面の両方に(従来技術の方法のように炭素の隣または炭素の表面だけでなく)、良好または高度に微細かつ均一に分散させることができる。したがって、第1の態様による方法は、炭素含有前駆体の炭素が、埋め込まれたケイ素含有活物質と、表面の一定の割合を覆うケイ素含有活物質とを含むことをもたらす。
【0053】
第1の態様の方法の溶融混合において、上述のような少なくとも1種の分散添加剤も含むことによって、意外にも、炭素含有前駆体の炭素におけるケイ素含有活物質の分散度がさらに改善されることが見出された。したがって、それによって、ケイ素含有活物質の均一な分散がさらに改善され、等方性である炭素-ケイ素複合材料の粉末を得ることができ、これはリチウムイオン電池などの二次電池の負極の活物質として使用する場合に利点を意味する。
【0054】
さらに、(1または複数の)分散添加剤の選択に応じて、(1または複数の)分散添加剤の使用により、とりわけ溶融粘度を低く保つことができ、溶融物を安定に保つことができ、したがって加工性が向上することも意味し得る。例えば、分散添加剤PEO、およびTWEEN、例えばTWEEN 80は、加工性に有利なさらなる当該特性を提供する。
【0055】
第1の態様の方法の溶融混合工程は、ケイ素含有活物質に加えてさらなる複合成分の組み込みも可能にする。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる複合成分は、溶融混合工程で溶融混合される1つ以上の成分を構成し、すなわち、1つ以上のさらなる複合成分は、溶融混合工程で炭素含有前駆体およびケイ素含有活物質ならびに分散添加剤などの任意の他の成分と共に溶融混合される。例えば、さらなる複合成分は、グラファイト粒子、炭素粒子、SnまたはSn化合物、転換酸化物MOXまたは硫化物MSX(MはLiと可逆的に反応することができる金属である)、およびLiと反応し、炭素-ケイ素複合材料のLi貯蔵容量に寄与するか、またはLiと反応せず、炭素-ケイ素複合材料の他の成分を安定化させるのに役立つ任意の他の材料であってもよい。
【0056】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、グラファイトおよび/または炭素粒子を提供する工程をさらに含み、溶融混合工程で溶融混合される成分が、グラファイトおよび/または炭素粒子を含む。
【0057】
第1の態様の方法の溶融混合工程は、任意の適切な装置によって実行することができる。溶融混合工程は、例えば、混練、コンパウンド、押出により行うことができる。したがって、溶融混合工程は、例えば、ニーダー、コンパウンダーまたは押出機で実施することができる。溶融混合は、本質的に、製造された溶融混合物の溶融材料が等方性であることを意味する。
【0058】
第1の態様の方法における溶融混合の後、上述のように、溶融混合物は、非繊維状で提供され、等方性の中間複合材料を提供するように非繊維状で冷却される。好ましくは、溶融混合物は、例えば室温などの常温に冷却される。したがって、溶融混合および冷却が終了した後、等方性の中間複合材料が提供される。
【0059】
溶融混合物は、溶融混合が終了した後に、溶融混合装置内または溶融混合装置外に非繊維状で提供され、非繊維状で冷却されて等方性中間複合材料を提供することができる。例えば、溶融混合物は、溶融混合装置の内部または外部に塊(mass)または塊(lump)として提供されてもよく、この塊(mass)または塊(lump)は繊維状ではなく、塊(mass)または塊(lump)は、非繊維状で冷却された後、等方性中間複合材料の塊(mass)または塊(lump)を提供する。したがって、例えば押出機が溶融混合装置として利用される場合、溶融混合物は非繊維状で押し出されて等方性材料を生成し、押し出された溶融混合物は非繊維状で常温に冷却されて等方性中間複合材料を提供する。別の例では、ニーダーが溶融混合装置として利用され、それによって溶融混合物は、溶融混合が完了した後にニーダー内に塊(mass)または塊(lump)として提供され、常温に冷却されて等方性中間複合材料を提供する。
【0060】
溶融混合物を溶融混合終了後に非繊維状で提供し、非繊維状で溶融混合物を冷却することにより、溶融混合物の溶融材料の等方性特徴が維持され、すなわち、製造された中間複合材料は等方性である。
【0061】
本明細書で使用される「非繊維状」という用語は、繊維、糸(thread)、糸(yarn)、フィラメント、ストランドまたは任意の他の細長い形態の形状を有さない形態を指す。
【0062】
例えば「等方性中間複合材料」および「等方性炭素-ケイ素複合材料」などの語句で材料仕様について本明細書で使用される「等方性」という用語は、材料が等方性の特徴、すなわち少なくとも顕微鏡レベル(すなわち、マイクロメートルスケールで)で、全方向において少なくとも本質的な均一性を有することを示す。「全方向において少なくとも本質的な均一性」とは、全方向におけるC/Si複合材料粒子または中間C/Si複合材料粒子の少なくとも本質的に均一な構造(原子スケールでの結晶学的秩序)、テクスチャ(結晶子で構成された粒子内の細孔の配置)および形態(結晶子および細孔で構成され得る粒子の外形)があり、炭素マトリックス内のSiXの好ましい形態学的および構造的配向がないことを意味する。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法は、溶融混合工程の前に少なくとも2つの成分を予混合する工程をさらに含む。このように、予混合工程では、溶融混合工程で溶融混合する成分のうちの少なくとも2つを予混合する。次いで、さらなる成分を溶融混合工程で添加することができる。
【0064】
予混合工程を含む実施形態では、炭素含有前駆体および少なくとも1つのケイ素含有活物質は、予混合工程において予混合されてもよい。2つ以上のケイ素含有活物質の使用を含む実施形態では、1つ以上のケイ素含有活物質を炭素含有前駆体と予混合することができ、1つ以上のさらなるケイ素含有活物質を溶融混合工程で添加することができる。1つ以上の分散添加剤が炭素含有前駆体およびケイ素含有活物質と溶融混合される場合、1つ以上の分散添加剤はまた、予混合工程に含まれてもよく、例えば、炭素含有前駆体およびケイ素含有活物質と予混合されてもよく、および/または溶融混合工程で添加されてもよい。一代替形態では、ケイ素含有活物質が溶融混合工程で添加される間に、1つ以上の分散添加剤が炭素含有前駆体と予混合されてもよい。別の代替形態では、炭素含有前駆体を溶融混合工程で添加しながら、1つ以上の分散添加剤をケイ素含有活物質と予め混合してもよい。
【0065】
例えば、予混合は、乾式混合(すなわち、溶媒なし)、乾式粉砕、湿式粉砕、溶融混合、溶液混合、噴霧コーティング、噴霧乾燥および/または分散混合によって行うことができる。好ましくは、予混合は乾式混合によって行われる。予混合は、1つ以上のサブ工程で実行することができる。
【0066】
上述のように、得られた等方性中間複合材料は熱処理に供され、熱処理は炭素-ケイ素複合材料を提供するように炭化工程(すなわち、炭化の工程)を含む。
【0067】
炭化工程の炭化は、複合材料の炭素含有量を増加させるように行われ、700~1300℃、好ましくは900~1200℃の範囲の炭化温度で行われてもよい。炭化工程は、常温などの開始温度から、700~1300℃、好ましくは900~1200℃の範囲内の目標炭化温度までの温度勾配を含み得る。目標炭化温度での持続時間(滞留時間)は、1~180分、好ましくは1~120分、最も好ましくは30~90分であり得る。例えば、バッチ式における加熱速度は、1~100℃/分であってもよい。バッチ式を連続モードで実行する場合、加熱速度は、瞬間注入ホットゾーンに近づくよりもさらに高くなり得る。あるいは、炭化は、700~1300℃、好ましくは900~1200℃の範囲内の目標炭化温度に達する前に、様々な加熱速度および中間温度を使用して、1つ以上の温度サブ工程で行われてもよい。
【0068】
炭化は、不活性ガス、例えば窒素もしくはアルゴン、または不活性ガス混合物中で、周囲圧力または加圧もしくは減圧下で行われる。あるいは、炭化は減圧下で行われる。炭化は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。任意の適切な反応器を炭化工程に利用することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法の熱処理は、炭化工程からなる。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法の熱処理は、上述の炭化工程と、炭化工程の前のさらなる1つ以上の初期加熱工程とを含む。各初期加熱工程は、複合材料を予備炭化するように、とりわけ揮発性物質を除去するために実施され、バッチ式または連続式として実施することができる。各初期加熱工程は、250~700℃、好ましくは400~600℃の範囲の温度で実施することができる。各初期加熱工程は、常温などの開始温度から250~700℃、好ましくは400~600℃の範囲内の目標初期加熱温度までの温度勾配を含み得る。目標初期加熱温度での持続時間(滞留時間)は、1~180分、好ましくは3~120分であり得る。例えば、温度勾配の加熱速度は、1~100℃/分であってもよい。あるいは、各初期加熱工程の初期加熱は、250~700℃、好ましくは400~600℃の範囲内の目標初期加熱温度に達するために、様々な加熱速度および中間温度を使用して1つ以上の温度サブ工程で実行されてもよい。さらに代替的には、2つ以上の初期加熱工程が含まれる場合、1つ以上の初期加熱工程は、上述のように目標初期加熱温度までの温度勾配を含むことができ、1つ以上の初期加熱工程は、上述のように1つ以上の温度サブ工程を含み得る。初期加熱は、炭化について上述したように、同じ種類の反応器および不活性ガスもしくは不活性ガス混合物中で、または減圧下で行うことができる。
【0071】
上述したように、第1の態様の方法の熱処理の炭化によって得られた炭素-ケイ素複合材料を微粉砕して、炭素-ケイ素複合材料粉末を得る。微粉砕は、例えば、カッティングミル、ブレードミキサー、ボールミル、ハンマーミルおよび/またはジェットミルを使用して、任意の適切な方法によって行うことができる。任意で、分級および/またはふるい分けによる微粒子/粗粒子の選択は、微粉砕後に行われてもよい。
【0072】
炭素-ケイ素複合材料の微粉砕および任意の微粒子/粗粒子の選択は、例えばレーザー回折によって測定して、5~25μmの平均粒径を有する粉末粒子を含む炭素-ケイ素複合材料粉末を得るように行うことができる。
【0073】
第1の態様の方法は、炭素-ケイ素複合材料を微粉砕する工程に加えて、1つ以上のさらなる粉砕工程または微粉砕工程を含んでもよい。上述のように、熱処理は、炭化工程に加えて、1つ以上の初期加熱工程も含み得る。第1の態様の方法は、1つ以上の初期加熱工程の後であるが炭化工程の前に、1つ以上のさらなる粉砕工程または微粉砕工程を含んでもよく、または任意の初期加熱工程間に1つ以上のさらなる粉砕工程または微粉砕工程を含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法は、熱処理の前に等方性中間複合材料を粉砕する工程または微粉砕する工程を含む。したがって、これらの実施形態では、等方性中間複合材料は、熱処理が開始される際に微粉砕または粉砕された形態である。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法の熱処理は、少なくとも1つの初期加熱工程および炭化工程を含み、粉砕工程または微粉砕工程は、初期加熱工程と炭化工程との間に実行される。したがって、次いで、粉末形態または破砕形態で予備炭化された中間炭素-ケイ素複合材料の炭化が行われる。したがって、これらの実施形態では、炭素-ケイ素複合材料は、熱処理が終了した後に粉末形態または破砕形態であり、次いで、炭素-ケイ素複合材料粉末を提供するためにさらなる微粉砕工程(すなわち、上述の微粉砕工程)に供される。任意で、これらの実施形態はまた、熱処理の前に等方性中間複合材料を粉砕する工程または微粉砕する工程を含んでもよい。次いで、等方性中間複合材料は、熱処理が開始された際にも粉末形態または破砕形態である。
【0076】
任意で、分級および/またはふるい分けによる微粒子/粗粒子の選択は、任意の粉砕工程または微粉砕工程の後に行われてもよい。
【0077】
炭素ケイ素複合材料を微粉砕する工程によって得られた炭素ケイ素複合材料粉末は、例えば、化学蒸着(CVD)による炭素コーティング、ピッチコーティング、熱および/または化学精製、熱処理、粒径調整、ならびに他の電極材料とのブレンドなどのさらなる処理を受けて、例えば、その電気化学的性能をさらに改善することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、炭素-ケイ素複合材料粉末は粉末粒子を含み、第1の態様の方法は、好ましくは化学蒸着によって、炭素-ケイ素複合材料粉末粒子を炭素コーティングする工程をさらに含む。
【0079】
本明細書に示される第2の態様によれば、第1の態様に係る方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末が提供される。第2の態様に係る炭素ケイ素複合材料粉末は、第1の態様を参照して上述したようにさらに定義することができる。
【0080】
第1の態様に係る方法により得られた炭素-ケイ素複合材料粉末は、リチウムイオン電池などの非水系二次電池の負極における活物質として用いられることが好ましい。そのような負極を製造するために使用される場合、そのような負極を形成するための任意の適切な方法を利用することができる。負極の形成において、炭素-ケイ素複合材料粉末は、さらなる成分と共に加工されてもよい。そのようなさらなる成分は、例えば、炭素-ケイ素複合材料粉末を電極に形成するための1つ以上の結合剤、カーボンブラック、カーボンナノチューブもしくは金属粉末などの導電性材料、および/またはグラファイトもしくはリチウムなどのさらなるLi貯蔵材料を含んでもよい。例えば、結合剤は、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カルボキシメチルセルロース、天然ブタジエンゴム、合成ブタジエンゴム、ポリアクリレート、ポリ(アクリル酸)、アルギネートなど、またはそれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されない。任意で、例えば1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、水またはアセトンなどの溶媒が処理中に利用される。
【0081】
本明細書に示される第3の態様によれば、第1の態様に係る方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末を活物質として含む、リチウムイオン電池などの非水系二次電池用の負極が提供される。第3の態様に係る負極の炭素-ケイ素複合材料粉末は、第1の態様を参照して上述したようにさらに定義することができる。
【0082】
本明細書で例示する第4の態様によれば、第1の態様に係る方法によって得られる炭素-ケイ素複合材料粉末の、リチウムイオン電池などの非水系二次電池の負極における活物質としての使用が提供される。第4の態様の炭素ケイ素複合材料粉末は、第1の態様を参照して上述したようにさらに定義することができる。
【0083】
リチウムイオン電池などの二次電池は、何度も充電および放電することができる電気電池であり、すなわち充電式電池である。例えば、リチウムイオン電池は、今日、携帯用電子機器および電気自動車に一般的に使用されている。リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度、高い動作電圧、低い自己放電および低いメンテナンス要件を有する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1a-b】実施例2に記載されるように、リグニンおよびケイ素の初期ボールミリングによって得られたHC/Si複合材料粉末のSEM(1a)およびSEM-EDX(1b、炭素のみ)画像である。
【
図1c】実施例2に記載されるように、リグニンおよびケイ素の初期ボールミリングによって得られたHC/Si複合材料粉末のSEM-EDX(1c、ケイ素のみ)画像である。
【
図2a】実施例3に記載されるように、分散添加剤なしで溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末のSEM(2a)画像である。
【
図2b-c】実施例3に記載されるように、分散添加剤なしで溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末のSEM-EDX(2b、炭素のみ)、(2c、ケイ素のみ)画像である。
【
図3a-b】実施例4に記載されるように、PEO(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末のSEM画像である。
【
図3c-d】実施例4に記載されるように、PEO(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末のSEM-EDX(3c、炭素のみ)、(3d、ケイ素のみ)画像である。
【
図3e-f】実施例4に記載されるように、PEO(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末の断面SEM(3e)およびSEM-EDX(3f、炭素のみ)画像である。左側の楕円形構造/粒子は、HC/Si試料の一部ではないが、試料調製からの加工品、すなわち断面のHC/Si試料を固定するために使用されるエポキシ樹脂である。
【
図3g】実施例4に記載されるように、PEO(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末の断面SEM-EDX(3g、ケイ素のみ)画像である。左側の楕円形構造/粒子は、HC/Si試料の一部ではないが、試料調製からの加工品、すなわち断面のHC/Si試料を固定するために使用されるエポキシ樹脂である。
【
図4a】実施例7に記載されるように、TWEEN80(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末のSEM画像である。
【
図4b-c】実施例7に記載されるように、それぞれ、TWEEN80(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末のSEM-EDX(4b、炭素のみ)、(4c、ケイ素のみ)画像である。
【
図5a-b】実施例8に記載されるように、それぞれ、TWEEN80(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末のSEM(5a)およびSEM-EDX(5b、炭素のみ)画像である。
【
図5c】実施例8に記載されるように、TWEEN80(分散添加剤)と溶融混合することによって得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末のSEM-EDX(5c、ケイ素のみ)画像である。
【
図6】実施例9に記載されるように、溶融混合によって得られたHC/Si複合材料粉末の電気化学的挙動を示す図である。
【実施例】
【0085】
実施例1:純ハードカーボン(HC)(比較例)
針葉樹クラフトリグニンを、N2流下、500℃のN2中、10℃/分の加熱速度および500℃で1時間の滞留時間(初期加熱)を用いて熱処理した。室温に冷却した後、得られたケークを粉砕した。粉砕物を、N2下、1000℃で、10℃/分の加熱速度および1000℃で1時間の滞留時間を用いて熱処理した(炭化)。冷却後、実験室用流動床対向ジェットミルおよび単輪分級機を使用して炭化材料を粉砕および分級して、レーザー回折によって測定して10μmの平均粒径を有する炭素粉末を得た。
【0086】
実施例2:ボールミリングにより得られたHC/Si複合材料粉末(比較例)
針葉樹クラフトリグニンを実験用ミキサーを使用してSi粒子(一次粒径200nm)と混合した。次いで、混合物をボールミルに移し、20Hzで3分間粉砕した。次いで、得られたリグニン/Si混合物を、実施例1の材料と同じ方法で熱処理し、粉砕し、分級して、平均粒径10μmのHC/Si複合材料粉末を得た。
図1a~
図1cは、得られたHC/Si複合材料粉末のSEM(1a)およびSEM-EDX(1b、炭素のみ)、(1c、ケイ素のみ)画像である。
【0087】
実施例3:分散添加剤なしで溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末
実験用ミキサーを使用して、針葉樹クラフトリグニンを5重量%のSi粒子(一次粒径200nm)と予混合(乾式混合)した。次いで、ニーダー(バンバリーローターを備えたHAAKE(商標)Rheomix OS Lab Mixer)を用いて、160℃の設定温度で20分間、混合物を溶融混合した。室温まで冷却した後、ニーダーで溶融混合物(すなわち、等方性中間複合材料)の塊を得た。次いで、材料を、カッティングミル(0.5mmのカットオフふるいを備える)を用いて粉砕した。次いで、得られたリグニン/Si混合物を実施例1に従って熱処理し、粉砕し、分級して、13重量%未満のSiおよび10μmの平均粒径を有するHC/Si複合材料粉末を得た。
図2a~
図2cは、それぞれ、得られたHC/Si複合材料粉末のSEM(2a)およびSEM-EDX(2b、炭素のみ)、(2c、ケイ素のみ)画像である。SEM写真(2a)から明らかなように、高いケイ素充填率および高度なケイ素分散が得られる。
【0088】
実施例4:PEOと溶融混合することによって得られた13重量%未満のSiを有するHC/Si複合材料粉末
実験用ミキサーを使用して、針葉樹クラフトリグニンを5重量%のSi粒子(一次粒径200nm)および5重量%のPEO(Mw=1500g/mol)と予混合(乾式混合)した。次いで、ニーダー(バンバリーローターを備えたHAAKE(商標)Rheomix OS Lab Mixer)を用いて、160℃の設定温度で20分間、混合物を溶融混合した。室温まで冷却した後、ニーダーで溶融混合物(すなわち、等方性中間複合材料)の塊を得た。次いで、材料を、カッティングミル(0.5mmの粗いカットオフふるいを備える)を用いて粉砕した。次いで、得られたリグニン/Si混合物を、実施例1の材料と同じ方法で熱処理し、粉砕し、分級して、13重量%未満のSiおよび平均粒径10μmのHC/Si複合材料粉末を得た。
図3a~
図3gは、得られたHC/Si複合材料粉末のSEM(3a~3b)およびSEM-EDX(3c、炭素のみ)(3d、ケイ素のみ)画像、ならびに得られたHC/Si複合材料粉末の断面SEM(3e)およびSEM-EDX(3f、炭素のみ)(3g、ケイ素のみ)画像である。
図3e~
図3gの左側の楕円形構造/粒子は、HC/Si試料の一部ではないが、試料調製からの加工品、すなわち断面のHC/Si試料を固定するために使用されるエポキシ樹脂であることに留意されたい。SEM/SEM-EDXの両方から、マトリックス中のケイ素の高い充填量が得られ、ケイ素が表面および内部に断面写真によって非常に均一に分布していることが明らかである。また、
図2a~2cのSEM画像と比較した場合、分散添加剤(PEO)の使用は、炭素マトリックスにおけるケイ素の分散度のさらなる改善をもたらすことが、
図3a~
図3gのSEM像からも明らかである。
【0089】
実施例5:PEOと溶融混合することによって得られた2.0重量%のSiを有するHC/Si複合材料粉末
実験用ミキサーを使用して、針葉樹クラフトリグニンを0.9重量%のSi粒子(一次粒径200nm)および5重量%のPEO(Mw=1500g/mol)と予混合(乾式混合)した。次いで、ニーダー(バンバリーローターを備えたHAAKE(商標)Rheomix OS Lab Mixer)を用いて、160℃の設定温度で20分間、混合物を溶融混合した。室温まで冷却した後、ニーダーで溶融混合物(すなわち、等方性中間複合材料)の塊を得た。次いで、材料を、カッティングミル(0.5mmのカットオフふるいを備える)を用いて粉砕した。次いで、得られたリグニン/Si混合物を実施例1に従って熱処理し、粉砕し、分級して、2.0重量%のSiおよび10μmの平均粒径を有するHC/Si複合材料粉末を得た。
【0090】
実施例6:PEOと溶融混合することによって得られた4.8重量%のSiを有するHC/Si複合材料粉末
実験用ミキサーを使用して、針葉樹クラフトリグニンを2.0重量%のSi粒子(一次粒径200nm)および5重量%のPEO(Mw=1500g/mol)と予混合(乾式混合)した。次いで、ニーダー(バンバリーローターを備えたHAAKE(商標)Rheomix OS Lab Mixer)を用いて、160℃の設定温度で20分間、混合物を溶融混合した。室温まで冷却した後、ニーダーで溶融混合物(すなわち、等方性中間複合材料)の塊を得た。次いで、材料を、カッティングミル(0.5mmのカットオフふるいを備える)を用いて粉砕した。次いで、得られたリグニン/Si混合物を実施例1に従って熱処理し、粉砕し、分級して、4.8重量%のSiおよび10μmの平均粒径を有するHC/Si複合材料粉末を得た。
【0091】
実施例7:TWEENと溶融混合することによって得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末
実験用ミキサーで、針葉樹クラフトリグニンを5重量%のSi粒子(一次粒径200nm)と予混合(乾式混合)した。次いで、ニーダー(バンバリーローターを備えたHAAKE(商標)Rheomix OS Lab Mixer)を用いて、160℃の設定温度で20分間、混合物を溶融混合し、ニーダーで加熱した直後に5重量%のTWEEN 80を添加した。室温まで冷却した後、ニーダーで溶融混合物(すなわち、等方性中間複合材料)の塊を得た。次いで、材料を、カッティングミル(0.5mmの粗いカットオフふるいを備える)を用いて粉砕した。次いで、得られたリグニン/Si混合物を実施例1に従って初期加熱(ただし炭化なし)によって熱処理し、実施例1に従って粉砕および分級して、平均粒径10μmの予備炭化中間体C/Si複合材料粉末を得た。
図4a~
図4cは、それぞれ、得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末のSEM(4a)およびSEM-EDX(4b、炭素のみ)、(4c、ケイ素のみ)画像である。Siが高度に均一に分布していることは、SEM/SEM-EDXの両方から明らかである。
【0092】
実施例8:TWEENと溶融混合することによって得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末
針葉樹クラフトリグニン(90g)を水(1リットル)に分散させ、Ultraturraxミキサーを用いて室温で5分間混合しながらTWEEN 80(5g)を添加した。次の工程では、ナノケイ素(200nm)を添加し、混合を室温でさらに5分間続けた。その後、混合物を濾過し、真空中80℃(10mbar)で乾燥させた。その後、ニーダー(バンバリーローターを備えたHAAKE(商標)Rheomix OS Lab Mixer)を用いて、160℃の設定温度で20分間、試料を溶融混合し、さらに実施例7に記載の処理を行った。
図5a~
図5cは、それぞれ、得られた予備炭素化中間体C/Si複合材料粉末のSEM(5a)およびSEM-EDX(5b、炭素のみ)、(5c、ケイ素のみ)画像である。Siが高度に均一に分布していることは、SEM/SEM-EDXの両方から明らかである。
【0093】
実施例9:溶融混合により得られたHC/Si複合材料粉末の電気化学的挙動
実施例6のHC/Si複合材料粉末から、または実施例1の純HCから電極を調製し、以下のように電気化学的に特徴付けた:82重量%のHC/SiまたはHCを、1-メチル-2-ピロリドンに溶解した8重量%のポリ(フッ化ビニリデン)バインダーと混合し、ドクターブレード方法を介してCu箔上にコーティングし、乾燥させた。ガラス繊維セパレータと、電解質としてエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート(重量比で1:1)に溶解した1M LiPF
6とを使用して、HC/SiまたはHC電極、Li金属対電極、およびLi金属参照電極から実験型3電極セルを構築した。74.4mA/g(AM)の比電流を使用して、5mV vs.Li/Li+~1.5V vs.Li/Li+でセルの定電流充放電を行った。ここで、g(AM)は電極の活物質のグラムを表す。
図6は、HC/Siおよび純粋なHC材料の放電電位曲線を比較する。Siを添加することにより、容量を約120mAh/g増加させることができた。Siの存在および充放電方法へのその関与は、0.1V vs.Li/Li
+未満の電位プラトーの延長により、および0.4~0.5V vs.Li/Li
+の第2の電位プラトーの出現により認められる。
【0094】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正および変形が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、そのような他の修正および変形が行われ得ることは明らかである。
【国際調査報告】