(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】新規なアテロコラーゲンおよびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20230718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230718BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230718BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230718BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230718BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20230718BHJP
C07K 1/14 20060101ALN20230718BHJP
C07K 1/12 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
C07K14/78 ZNA
A61P35/00
A61P35/04
A61K47/69
A61K47/42
A61K45/00
C12N15/115 Z
C07K1/14
C07K1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581508
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2021008154
(87)【国際公開番号】W WO2022005155
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0079224
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0084609
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519232334
【氏名又は名称】インターオリゴ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INTEROLIGO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】#902, F, A-DONG, 66, BEOLMAL-RO, DONGAN-GU, ANAYANG-SI, GYEONGGI‐DO, 14058, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,セ・ナ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ド・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ダ・ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン・ウク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジ・ア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB32
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA17
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045CA40
4H045EA20
4H045GA01
(57)【要約】
本発明は、新規なアテロコラーゲンおよびその用途に関するものである。より詳細には、前記アテロコラーゲンは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析において、前記β鎖に対するピーク面積(Sβ)が前記α鎖に対する2番目のピーク面積(Sα2)よりも大きな特徴を有することにより、生理活性物質を担持すると、体内での生理活性物質の急激な初期放出を低下させるか、または遅すぎる初期放出による生理活性物質の効果減少を調節することができる。また、本発明のアテロコラーゲンは、優れた癌転移抑制効果を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式1または構造式2の繰り返し単位を有するα鎖と、前記α鎖の二量体であるβ鎖と、前記α鎖の三量体であるγ鎖とを含み、
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析において、前記β鎖に対するピーク面積(S
β)が前記α鎖に対する2番目のピーク面積(S
α2)よりも大きい、アテロコラーゲン。
[構造式1]
Gly-Pro-X
(構造式1中、Glyはグリシン、Proはプロリン、Xはグリシンおよびプロリンではないアミノ酸残基である。)
[構造式2]
Gly-Y-Hyp
(構造式2中、Glyはグリシン、Yはグリシンおよびヒドロキシプロリンではないアミノ酸残基、Hypはヒドロキシプロリンである。)
【請求項2】
前記α鎖は、α1鎖またはα2鎖の少なくとも1つであり、前記β鎖は、前記α1鎖およびα1鎖の二量体、α1鎖およびα2鎖の二量体、またはα2鎖およびα2鎖の二量体である、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
【請求項3】
前記α鎖は、α1鎖またはα2鎖の少なくとも1つであり、前記γ鎖は、前記α1鎖、α1鎖およびα2鎖の三量体である、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
【請求項4】
前記S
βおよびS
α2は、下記数式1を満たす、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
[数式1]
1.1≦S
β/S
α2≦5
【請求項5】
前記S
βは、下記数式2を満たす、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
[数式2]
0.2≦S
β/(S
α1+S
α2+S
β+S
γ)≦0.5
(式中、S
α1は前記α鎖に対する1番目のピーク面積であり、S
γはγ鎖に対するピーク面積である。)
【請求項6】
前記α鎖は100kDa~150kDaの分子量を有する、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
【請求項7】
前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、下記表1の条件下で行われる、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
【表1】
【請求項8】
前記S
βは、前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グラフにおける溶出時間13.0分~13.7分ピークの積分値である、請求項7に記載のアテロコラーゲン。
【請求項9】
前記S
α2は、前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)クロマトグラムにおける溶出時間13.7分~14.2分ピークの積分値である、請求項7に記載のアテロコラーゲン。
【請求項10】
前記アテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮に1℃~10℃で0.5~12時間タンパク分解酵素を処理して得られたものである、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
【請求項11】
前記タンパク分解酵素は、真皮100g当たりに0.1×10
7unit~3.0×10
7unitで処理される、請求項10に記載のアテロコラーゲン。
【請求項12】
前記アテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮にタンパク分解酵素を処理するステップと、
前記タンパク分解酵素が処理された真皮に塩基性溶液を添加し、pHを8~9に調整して前記タンパク分解酵素を不活性化するステップと、
前記タンパク分解酵素が不活性化された試料に酸性溶液を処理し、試料のpHを3~4に調整するpH調整ステップとを含む方法で製造される、請求項1に記載のアテロコラーゲン。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のアテロコラーゲンと、前記アテロコラーゲンに担持された薬物とを含む薬物送達体。
【請求項14】
前記アテロコラーゲンは、複数の空隙を有する構造体であり、前記空隙は、平均直径が10μm~100μmである、請求項13に記載の薬物送達体。
【請求項15】
前記薬物送達体は、手術後の残存癌部位に移植または注入される、請求項13に記載の薬物送達体。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載のアテロコラーゲンと、前記アテロコラーゲンに担持された抗癌剤とを含む、癌転移抑制剤。
【請求項17】
前記癌は、膵臓癌、乳癌、肝癌、大腸癌、卵巣癌、頭頸部癌または膠芽細胞腫である、請求項16に記載の癌転移抑制剤。
【請求項18】
前記癌転移抑制剤は、手術後の残存癌部位に移植または注入される、請求項16に記載の癌転移抑制剤。
【請求項19】
前記抗癌剤は、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質またはアプタマーである、請求項16に記載の癌転移抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアテロコラーゲンおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、真皮、靭帯、骨などに見られる細胞外マトリックス(extracellular matrix)であり、人体の総タンパク質の約30%を占めている。コラーゲンは、その周辺において細胞が一定の秩序を備えて集合し、組織や器官の基本構造を形成することができる。そのため、生体の損傷部位を再生するために、損傷部位の人工組織代替物の基礎マトリックス(matrix)としてコラーゲンを利用する事例が多数ある。また、コラーゲンは位置する組織によってその種類が異なるが、最も豊富なタイプのコラーゲンは約300kDaの分子量を持ち、3つのポリペプチドで構成されるI型コラーゲン(Type I collagen)である。I型コラーゲンは皮膚、靭帯、骨などのほとんどすべての組織に大量に含まれているため、組織工学で最も広く利用されている。コラーゲンの分子構造には、N末端およびC末端領域に位置する非らせん状のテロペプチド領域および三重らせん領域が含まれる。三重らせん領域は種間で保存されて低い免疫原性を示すのに対して、テロペプチド領域は高い免疫原性を示す。そこで、コラーゲンを医薬品や化粧品などの原料として使用するために、タンパク分解酵素(protease)を処理してテロペプチド領域を除去し、コラーゲンと類似した特性を保持するアテロコラーゲン(atelocollagen)を利用する。
【0003】
従来の方法で製造されたアテロコラーゲンを薬物送達体として使用する場合には、i)担持された薬物が均一でなく表面に高濃度で担持され、ii)薬物を担持して体内に移植すると、初期に薬物が過剰放出され、経時に伴って薬物の放出が急激に減少して薬物の体内持続時間が短くなる問題が発生してしまう。薬物送達体の場合、副作用を最小限に抑え、治療効果を最大化することが重要である。そのためには、最適な薬物放出速度で薬物を長時間均一に放出することが重要であるが、従来のアテロコラーゲン薬物送達体は、薬物の過剰な初期放出により、最適の治療効果が期待できない欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なアテロコラーゲンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、新規なアテロコラーゲンを含む薬物送達体を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、新規なアテロコラーゲンを含む癌転移抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.下記の構造式1または構造式2の繰り返し単位を有するα鎖と、前記α鎖の二量体であるβ鎖と、前記α鎖の三量体であるγ鎖とを含み、
高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)分析において、前記β鎖に対するピーク面積(Sβ)が前記α鎖に対する2番目のピーク面積(Sα2)よりも大きい、アテロコラーゲン。
[構造式1]
Gly-Pro-X
(構造式1中、Glyはグリシン、Proはプロリン、Xはグリシンおよびプロリンではないアミノ酸残基である。)
[構造式2]
Gly-Y-Hyp
(構造式2中、Glyはグリシン、Yはグリシンおよびヒドロキシプロリンではないアミノ酸残基、Hypはヒドロキシプロリンである。)
【0008】
2.前記項目1において、前記α鎖は、α1鎖またはα2鎖であり、前記β鎖は、前記α1鎖およびα1鎖の二量体、α1鎖およびα2鎖の二量体、またはα2鎖およびα2鎖の二量体である、アテロコラーゲン。
【0009】
3.前記項目1において、前記α鎖は、α1鎖またはα2鎖であり、前記γ鎖は、前記α1鎖、α1鎖およびα2鎖の三量体である、アテロコラーゲン。
【0010】
4.前記項目1において、前記Sβ及びSα2は、下記数式1を満たす、アテロコラーゲン。
[数式1]
1.1≦Sβ/Sα2≦5
【0011】
5.前記項目1において、前記Sβは、下記数式2を満たす、アテロコラーゲン。
[数式2]
0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.5
(式中、Sα1は、前記α鎖に対する1番目のピーク面積であり、Sγは、γ鎖に対するピーク面積である。)
【0012】
6.前記項目1において、前記α鎖は、100kDa~150kDaの分子量を有する、アテロコラーゲン。
【0013】
7.前記項目1において、前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、下記表1の条件下で行われる、アテロコラーゲン。
【0014】
【0015】
8.前記項目7において、前記Sβは、前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析クロマトグラムの溶出時間13.0分~13.7分ピークの積分値である、アテロコラーゲン。
【0016】
9.前記項目7において、前記Sα2は、前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析クロマトグラムの溶出時間13.7分~14.2分ピークの積分値である、アテロコラーゲン。
【0017】
10.前記項目1において、前記アテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮に1℃~10℃で0.5~12時間タンパク分解酵素を処理して得られたものである、アテロコラーゲン。
【0018】
11.前記項目10において、前記タンパク分解酵素は、真皮100g当たりに0.1×107unit~3.0×107unitで処理される、アテロコラーゲン。
【0019】
12.前記項目1において、前記アテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮にタンパク分解酵素を処理するステップと、
前記タンパク分解酵素が処理された真皮に塩基性溶液を添加し、pHを8~9に調整して前記タンパク分解酵素を不活性化するステップと、
前記タンパク分解酵素が不活性化された試料に酸性溶液を処理し、試料のpHを3~4に調整するpH調整ステップとを含む方法で製造される、アテロコラーゲン。
【0020】
13.前記項目1~12のいずれかに記載のアテロコラーゲンと、前記アテロコラーゲンに担持された薬物とを含む、薬物送達体。
【0021】
14.前記項目13において、前記アテロコラーゲンは、複数の空隙を有する構造体であり、前記空隙は、平均直径が10μm~100μmである、薬物送達体。
【0022】
15.前記項目13において、前記薬物送達体は、手術後の残存癌部位に移植または注入される、薬物送達体。
【0023】
16.前記項目1~12のいずれかに記載のアテロコラーゲンと、前記アテロコラーゲンに担持された抗癌剤とを含む、癌転移抑制剤。
【0024】
17.前記項目16において、前記癌は、膵臓癌、乳癌、肝癌、大腸癌、卵巣癌、頭頸部癌または膠芽細胞腫である、癌転移抑制剤。
【0025】
18.前記項目16において、前記癌転移抑制剤は、手術後の残存癌部位に移植または注入される、癌転移抑制剤。
【0026】
19.前記項目16において、前記抗癌剤は、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質またはアプタマーである、癌転移抑制剤。
【発明の効果】
【0027】
本発明のアテロコラーゲンは、α2鎖に対して高いβ鎖の含有量を有することにより、従来のアテロコラーゲンとは異なる物性(例えば、優れた粘度)を示すことができる。
【0028】
本発明のアテロコラーゲンに生理活性物質を均一に担持することができる。
【0029】
本発明のアテロコラーゲンに生理活性物質を担持することにより、体内での生理活性物質の遅すぎる初期放出による生理活性物質の効果の減少を調節することができる。すなわち、本発明のアテロコラーゲンに生理活性物質を担持すると、体内での生理活性物質の放出速度を調節することができ、最終的には、生理活性物質の放出を制御して体内での生理活性物質の効能を増大させることができる。
【0030】
本発明のアテロコラーゲンは、優れた癌転移抑制効果を示すことができる。
【0031】
本発明のアテロコラーゲンは、生分解され得る。
【0032】
本発明の製造方法は、アテロコラーゲンのα鎖、β鎖またはγ鎖の含有量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析チャート(クロマトグラム)の例を示す。
【
図2】
図2は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析チャート(クロマトグラム)の例を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態の分析条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析グラフ(クロマトグラム)の例を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態によるアテロコラーゲンの製造方法のフローチャートを示す。
【
図5】
図5は、ミニメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置(Minimate TFF system)を用いてアテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液をアテロコラーゲン-緩衝液で置換する方法を示す。
【
図6】
図6は、一実施形態のアテロコラーゲンの癌転移抑制効果のメカニズムを示す。
【
図7】
図7は、比較例のアテロコラーゲンの癌転移抑制効果のメカニズムを示す。
【
図8】
図8は、SDS-PAGEにより、pH中性のアテロコラーゲン溶液の純度を確認した結果を示す。
【
図9】
図9は、HPLC溶出時間別のアテロコラーゲンのピークを分取(prep)した後、SDS-PAGEで分析して、HPLC分析クロマトグラムにおけるアテロコラーゲン鎖の分布を確認した結果を示す。
【
図10】
図10は、実施例のアテロコラーゲンと比較例(市販)のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフを示す。
【
図11】
図11は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図12】
図12は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフを示す。
【
図13】
図13は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図14】
図14は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図15】
図15は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図16】
図16は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図17】
図17は、比較例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図18】
図18は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図19】
図19は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図20】
図20は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図21】
図21は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図22】
図22は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図23】
図23は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図24】
図24は、実施例のアテロコラーゲンを同一条件でHPLC分析して得たグラフにおける各ピークの面積を数値化した図である。
【
図25】
図25は、実施例のアテロコラーゲンと比較例のアテロコラーゲンをSDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)で分析した結果を示す。
【
図26】
図26は、走査電子顕微鏡を用いて実施例及び比較例のアテロコラーゲンの構造を観察した結果を示す。
【
図27】
図27は、走査電子顕微鏡を用いて薬物が担持された実施例及び比較例のアテロコラーゲンの構造を観察した結果を示す。
【
図28】
図28は、実施例1のアテロコラーゲンの引張強度試験の結果のグラフおよび詳細数値である。
【
図29】
図29は、実施例31のアテロコラーゲンの引張強度試験の結果のグラフおよび詳細数値である。
【
図30】
図30は、比較例2のアテロコラーゲンの引張強度試験の結果のグラフおよび詳細数値である。
【
図31】
図31は、固形のアテロコラーゲン薬物送達体(パッチ型アテロコラーゲン薬物送達体を含む)を製造するステップを示す。
【
図32】
図32は、ザイモグラフィー(Zymography)を利用してMMP-2及びMMP-9の活性を確認した結果を示す。
【
図33】
図33は、MMP-2およびMMP-9が過剰発現した培地における、比較例のアテロコラーゲン薬物送達体と実施例のアテロコラーゲン薬物送達体からの薬物放出効果を比較したグラフを示す。
【
図34】
図34は、ゲムシタビンを担持したパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果を示す。
【
図35】
図35は、[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を担持したパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果を示す。
【
図36】
図36は、ゲムシタビンを担持したゾル-ゲル型アテロコラーゲン薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果を示す。
【
図37】
図37は、[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を担持したゾル-ゲル型アテロコラーゲン薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果を示す。
【
図38】
図38は、[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を担持したパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体における薬物放出効果を確認したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を説明する。
【0035】
本発明は、新規なアテロコラーゲンを提供する。
【0036】
本発明は、α鎖と、前記α鎖の二量体であるβ鎖と、前記α鎖の三量体であるγ鎖とを含み、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析において、前記β鎖に対するピーク面積(Sβ)が前記α鎖に対する2番目のピーク面積(Sα2)よりも大きいアテロコラーゲンを提供する。
【0037】
用語「ピークの面積」とは、HPLC分析グラフに存在する当該ピークを有する山の面積を意味し、前記各ピークを有する山およびその面積は、通常のクロマトグラフィー分析法によって定義される。
【0038】
「ピークの面積」とは、HPLC分析チャート(クロマトグラム)において、特定のピークに対応する溶出時間直前の変曲点での溶出時間(または特定のピークに対応する溶出時間直前の山とベースラインとの交点での溶出時間)から、当該ピークに対応する溶出時間直後の変曲点での溶出時間(または当該ピークに対応する溶出時間直後の山とベースラインとの交点での溶出時間)までの検出量を積分した値を意味し得る。「ベースライン」とは、HPLC分析チャートにおける検出値が0で、横軸に平行な線を意味する。
【0039】
特定のピークを有する山の面積を求める方法について、以下の例示を挙げて説明する。特定のピークを有する山の面積の求め方は、以下の例示に限定されず、通常のクロマトグラフィー分析法によって求めることができる。
【0040】
面積を求めようとする特定のピークの溶出時間前に他のピークを有する山(ここで、前記他のピークを有する山は、前記特定のピークを有する山と隣接し、前記他のピークを有する山と前記特定のピークを有する山との間には変曲点が存在する。)が存在し、前記特定のピークの溶出時間後に存在するまた他のピークを有する山(ここで、前記また他のピークを有する山は、前記特定のピークを有する山と隣接し、前記また他のピークを有する山と前記特定のピークを有する山との間には変曲点が存在する。)が存在する場合、前記特定のピークを有する山の面積を求める方法について、
図1を参照して具体的に説明する。
【0041】
図1において、前記第1ピーク10を有する山の面積とは、前記第1ピーク10よりも溶出時間が早い第3ピーク30を有する山と第1ピーク10を有する山との間に存在する第1変曲点a1に相当する溶出時間ta1から、前記第1ピーク10よりも溶出時間が遅い第2ピーク20を有する山と第1ピーク10を有する山との間に存在する第2変曲点a2に相当する溶出時間ta2までの検出量を積分した値を意味する(
図1を参照)(ここで、前記第3ピーク30は、第1ピーク10の前に存在し、前記第3ピーク30を有する山と前記第1ピーク10を有する山は隣接している。また、前記第2ピーク20は、前記第1ピーク10の後に存在し、前記第2ピーク20を有する山と前記第1ピーク10を有する山は隣接している。)。すなわち、
図1における左下に傾いている斜線部分の面積1を意味する。
【0042】
同様に、
図1において、前記第2ピーク20を有する山の面積とは、前記第2ピーク20よりも溶出時間が早い第1ピーク10を有する山と第2ピーク20を有する山との間に存在する第2変曲点a2に相当する溶出時間ta2から、前記第2ピーク20よりも溶出時間が遅い第4ピーク40を有する山と第2ピーク20を有する山との間に存在する第3変曲点a3に相当する溶出時間ta3までの検出量を積分した値を意味する(
図1を参照)(ここで、前記第1ピーク10は、前記第2ピーク20の前に存在し、前記第1ピーク10を有する山と前記第2ピーク20を有する山は隣接している。また、前記第4ピーク40は、前記第2ピーク20の後に存在し、前記第4ピーク40を有する山と前記第2ピーク20を有する山は隣接している。)。すなわち、
図1における右下に傾いている斜線部分の面積2を意味する。
【0043】
面積を求めようとする特定のピークの溶出時間前に、前記特定のピークを有する山とベースラインとの交点が存在し(ここで、前記交点と前記特定のピークとの間には他のピークが存在しない。)、前記特定のピークの溶出時間後に、また他のピークを有する山(ここで、前記また他のピークを有する山は、前記特定のピークを有する山と隣接し、前記また他のピークを有する山と前記特定のピークを有する山との間には変曲点が存在する。)が存在する場合、前記特定のピークを有する山(
図2の第1ピーク10に対応する。)の面積を求める方法について、
図2を参照して具体的に説明する。
【0044】
図2において、前記第1ピーク10を有する山の面積とは、前記第1ピーク10の溶出時間t10よりも早い時間に現れるベースラインbと前記第1ピーク10を有する山との交点b1に相当する溶出時間tb1から、前記第1ピーク10よりも溶出時間が遅い第2ピーク20を有する山と第1ピーク10を有する山との間に存在する第1変曲点a1に相当する溶出時間ta1までの検出量を積分した値を意味する(
図2を参照)(ここで、前記交点b1と前記第1ピーク10との間には他のピークが存在しない。また、前記第2ピーク20は前記第1ピーク10の後に存在し、前記第2ピーク20を有する山と前記第1ピーク10を有する山は隣接している。)。すなわち、
図2における左下に傾いている斜線部分の面積1を意味する。
【0045】
一方、
図2において、前記第2ピーク20を有する山の面積とは、前記第2ピーク20よりも溶出時間が早い第1ピーク10を有する山と第2ピーク20を有する山との間に存在する第1変曲点a1に相当する溶出時間ta1から、前記第2ピーク20よりも溶出時間が遅い第3ピーク30を有する山と第2ピーク20を有する山との間に存在する第2変曲点a2に相当する溶出時間ta2までの検出量を積分した値を意味する(
図2を参照)(ここで、前記第1ピーク10は前記第2ピーク20の前に存在し、前記第1ピーク10を有する山と前記第2ピーク20を有する山は隣接している。また、前記第3ピーク30は前記第2ピーク20の後に存在し、前記第3ピーク30を有する山と前記第2ピーク20を有する山は隣接している。)。すなわち、
図2における横軸と平行な線で表示された部分の面積2を意味する。
【0046】
面積を求めようとする特定のピークの溶出時間後に、前記特定のピークを有する山とベースラインとの交点が存在し(ここで、前記交点と前記特定のピークとの間には他のピークが存在しない。)、前記特定のピークの溶出時間前にまた他のピークを有する山(ここで、前記また他のピークを有する山は、前記特定のピークを有する山と隣接し、前記他のピークを有する山と前記特定のピークを有する山との間には変曲点が存在する。)が存在する場合、 前記特定のピークを有する山(
図3の第2ピーク20に対応する。)の面積を求める方法について、
図3を参照して具体的に説明する。
【0047】
図3において、前記第2ピーク20を有する山の面積は、前記第2ピーク20よりも溶出時間が早い第1ピーク10を有する山と第2ピーク20を有する山との間に存在する第2変曲点a2に相当する溶出時間ta2から、前記第2ピーク20の溶出時間t20よりも遅い時間でベースラインbと前記第2ピーク20を有する山との交点b2に相当する溶出時間tb2までの検出量を積分した値を意味する(
図3を参照)(ここで、前記交点b2と前記第2ピーク20との間には他のピークが存在しない。また、前記第1ピーク10は、前記第2ピーク20の前に存在し、前記第1ピーク10を有する山と前記第2ピーク20を有する山は隣接している。)。すなわち、
図3における横軸と平行な線で表示された部分の面積2を意味する。
【0048】
一方、
図3において、前記第1ピーク10を有する山の面積とは、前記第1ピーク10よりも溶出時間が早い第3ピーク30を有する山と第1ピーク10を有する山との間に存在する第1変曲点a1に相当する溶出時間ta1から、前記第1ピーク10よりも溶出時間が遅い第2ピーク20を有する山と第1ピーク10を有する山との間に存在する第2変曲点a2に相当する溶出時間ta2までの検出量を積分した値を意味する(
図3を参照)(ここで、前記第3ピーク30は第1ピーク10の前に存在し、前記第3ピーク30を有する山と前記第1ピーク10を有する山は隣接している。また、前記第2ピーク20は前記第1ピーク10の後に存在し、前記第2ピーク20を有する山と前記第1ピーク10を有する山は隣接している。)。すなわち、
図3における左下に傾いている斜線部分の面積1を意味する。
【0049】
前記各ピークの面積は、当該ピークを示す物質の含有量に比例する。すなわち、本発明のアテロコラーゲンは、アテロコラーゲンに含まれるβ鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも高いものである。具体的には、前記含有量の単位はw/v%であってもよい。
【0050】
用語「アテロコラーゲン」とは、コラーゲンのN末端およびC末端に位置するテロペプチドが除去されたものであり、コラーゲンの特性を維持しつつ免疫原性が除去されたものである。アテロコラーゲンは、天然に存在するコラーゲンからN末端およびC末端のテロペプチドを除去することによって製造されたものであってもよい。例えば、本発明のアテロコラーゲンは、1型または2型のコラーゲンからN末端およびC末端のテロペプチドを除去することによって製造されたものであってもよい。
【0051】
用語「コラーゲン」とは、細胞外マトリックスの大部分を占めるタンパク質であり、組織の構造を形成したり、細胞間または細胞とマトリックスとの相互作用に関与したりするものである。コラーゲン分子(Collagen molecule)は、基本構成単位であるα鎖の3本がねじれてヘリックス構造を形成した分子であり、α鎖はGly-A-B(Glyはグリシン、A及びBはアミノ酸であり、A及びBの少なくとも一つは、プロリンまたはヒドロキシプロリンである。)の繰り返し単位を有し、約1000個のアミノ酸からなるペプチドであってもよい。コラーゲンは、組織内での機能、配列などによって非常に多様な種類が存在する。代表的なコラーゲンの種類としては、I型コラーゲンとII型コラーゲンがある。I型コラーゲンは、2本のα1鎖と1本のα2鎖で構成され、II型コラーゲンは、3本のα1鎖で構成される。
【0052】
本発明のアテロコラーゲンに含まれるα鎖は、Gly-A-B(Glyはグリシン、A及びBはアミノ酸であり、A及びBの少なくとも一つは、プロリンまたはヒドロキシプロリンである。)の繰り返し単位を有することができる。
【0053】
例えば、本発明のアテロコラーゲンに含まれるα鎖は、下記の構造式1または構造式2の繰り返し単位を有することができる。
【0054】
[構造式1]
Gly-Pro-X
(構造式1中、Glyはグリシン、Proはプロリン、Xはグリシンおよびプロリンではないアミノ酸残基である。)
【0055】
[構造式2]
Gly-Y-Hyp
(構造式2中、Glyはグリシン、Yはグリシンおよびヒドロキシプロリンではないアミノ酸残基、Hypはヒドロキシプロリンである。)
【0056】
α鎖は、α1鎖またはα2鎖のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0057】
β鎖は、前記α1鎖およびα1鎖の二量体、α1鎖およびα2鎖の二量体、またはα2鎖およびα2鎖の二量体であってもよい。
【0058】
γ鎖は、α1鎖、α1鎖およびα2鎖の三量体であってもよい。
【0059】
前記α鎖は、100kDa~150kDaの分子量、例えば、100kDa、105kDa、110kDa、115kDa、120kDa、125kDa、130kDa、131kDa、132kDa、133kDa、134kDa、135kDa、136kDa、137kDa、138kDa、139kDa、140kDa、145kDaまたは150kDaの分子量を有するものであってもよい。
【0060】
前記β鎖は、180kDa~270kDaの分子量を有するものであってもよい。
【0061】
前記γ鎖は、280kDa~350kDaの分子量を有するものであってもよい。
【0062】
本発明のアテロコラーゲンは、前記α鎖、β鎖およびγ鎖に加えて、付随的な成分(例えば、水、塩、バッファーなど)をさらに含むことができる。
【0063】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、SβおよびSα2は、下記数式1を満たすものであってもよい。
【0064】
[数式1]
1.1≦Sβ/Sα2≦5
【0065】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/Sα2の値は、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1.1~5、1.1~4.5または1.2~4.5であってもよい。本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/Sα2の値は、1.1~5.0、1.5~4.5、2.0~4.0または2.5~3.5であってもよい。本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/Sα2の値は、1.1~1.9、2.0~2.9または3.0~4.5であってもよい。
【0066】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/Sα2は下記式を満たすことができる:1≦Sβ/Sα2≦5、1.1≦Sβ/Sα2≦4.5、1.2≦Sβ/Sα2≦4.5、1.5≦Sβ/Sα2≦4.5、2.0≦Sβ/Sα2≦4.0、2.5≦Sβ/Sα2≦3.5または2.0≦Sβ/Sα2≦3.0。
【0067】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβは下記数式2を満たすものであってもよい。
【0068】
[数式2]
0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.5
(式中、Sα1は前記α鎖に対する1番目のピーク面積であり、Sγはγ鎖に対するピーク面積である。)
前記(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は、アテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、アテロコラーゲンに由来する各ピークの面積の合計を意味する。
【0069】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は下記式を満たすことができる:0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.5、0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.4、0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.3または0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.25。
【0070】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は下記式を満たすことができる:0.2≦Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.3、0.3<Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.4、0.4<Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)≦0.5。
【0071】
α鎖に対する1番目のピークは、α1鎖に対するピークであり、α鎖に対する2番目のピークは、α2鎖に対するピークである。α鎖に対するピークの順序は、溶出時間を基準に区分される。すなわち、α鎖に対する1番目のピークの溶出時間は、α鎖に対する2番目のピークの溶出時間よりも早い。
【0072】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は、0.1~0.5、0.11~0.45、0.12~0.45または0.13~0.45であってもよい。例えば、本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sβ/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22, 0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49または0.5であってもよい。
【0073】
本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sα2/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は、0.05~0.3または0.05~0.25であってもよい。例えば、本発明のアテロコラーゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、Sα2/(Sα1+Sα2+Sβ+Sγ)は、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29または0.3であってもよい。
【0074】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、オクタデシル官能基が付着したシリカ固定相で充填された逆相C18カラムを用いることができるが、試料を分析できるものであれば、その種類は限定しない。
【0075】
一実施形態によれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、下記表1の条件下で行うことができる。
【0076】
【0077】
最適な分析のために、高速液体クロマトグラフィーの分析条件を変更できるが、これにより本発明のアテロコラーゲンの性質が変わるものではない。高速液体クロマトグラフィーの分析結果として得られるグラフは、縦軸に検出量または検出強度を、横軸に溶出時間を示すことができる。
【0078】
一実施形態によれば、Sβは、表1の条件下で行われた高速液体クロマトグラフィーのグラフにおける溶出時間が13.0分~13.7分であるピークを有する山の面積であってもよい。一実施形態によれば、Sα2は、表1の条件下で行われた高速液体クロマトグラフィーグラフにおける溶出時間が13.7分~14.2分であるピークを有する山の面積であってもよい。
【0079】
前述のように、本発明のアテロコラーゲンではβ鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも高いが、従来のアテロコラーゲンでは、全アテロコラーゲンに対してβ鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも低い(従来のアテロコラーゲンの場合、β鎖に対するピークの面積(Sβ)は、α2鎖に対するピークの面積(Sα2)と等しいか、またはα2鎖に対するピークの面積(Sα2)よりも小さい。)。これは、後述する本発明のアテロコラーゲンの製造方法、例えば、実施段階および実施条件の違いによるものであり得る。
【0080】
本発明のアテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮に1℃~10℃で0.5~12時間の間、タンパク分解酵素を処理して得られたものであってもよい。
【0081】
本発明のアテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮に18℃~30℃で3時間未満の間、タンパク分解酵素を処理して得られたものであってもよい。
【0082】
本発明のアテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮にタンパク分解酵素を処理し、1℃~15℃で12時間以下、および18℃~30℃で3時間未満反応させて得られたものであってもよい。
【0083】
タンパク分解酵素は、真皮100g当たりに0.1×107unit~3.0×107unit、0.5×107unit~2.5×107unit、0.8×107unit~2.3×107unit、1.0×107unit~2.0×107unit、1.3×107unit~1.8×107unitで処理されてもよい。
【0084】
本発明のアテロコラーゲンは、哺乳類由来の真皮にタンパク分解酵素を処理するステップと、前記タンパク分解酵素が処理された真皮に水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを8~9に調整して前記タンパク分解酵素を不活性化するステップと、前記タンパク分解酵素が不活性化された試料に酸性溶液を処理し、試料のpHを3~4に調整するpH調整ステップとを含む方法で製造することができる。
【0085】
本発明のアテロコラーゲンは哺乳類由来であってもよく、哺乳類はヒト、ブタ、ウシ、ニワトリなどであってもよい。本発明のアテロコラーゲンは哺乳類の組織由来であってもよく、前記組織は皮膚、尾、軟骨、骨、腱、靭帯などであってもよい。
【0086】
本発明のアテロコラーゲンは様々な形態で製剤化することができ、例えば水溶液、分散液、ゲル、粉末、タブレット、パッチ、フィルム、スポンジ、フォームまたはマトリックスなどの形態で製剤化することができる。
【0087】
また、本発明は新規なアテロコラーゲンの製造方法を提供する。
【0088】
前記製造方法は、(a)哺乳類の真皮サンプルにタンパク分解酵素を処理するステップを含む。
【0089】
タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記哺乳類はヒト、ブタ、ウシ、ニワトリなどであってもよい。前記タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記真皮は尾、軟骨、骨、腱または靭帯から得られるものであってもよい。前記タンパク分解酵素は、ペプシン、パパイン、アルカラーゼ(alcalase)およびカタラーゼ(catalase)の少なくとも1つであってもよい。一実施形態によれば、前記タンパク分解酵素はペプシンであってもよい。前記真皮サンプルは、哺乳類の真皮に酢酸を添加して均質化したものであってもよい。
【0090】
タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記タンパク分解酵素は、真皮100g当たりに0.1×107unit~3.0×107unit、0.5×107unit~2.5×107unit、0.8×107unit~2.3×107unit、1.0×107unit~2.0×107unit、1.3×107unit~1.8×107unitで処理されてもよい。一実施形態によれば、前記タンパク分解酵素は、真皮100g当たりに1.5×107unitで処理されてもよい。
【0091】
タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記タンパク分解酵素は、1℃~30℃、1℃~25℃、1℃~15℃、1℃~10℃、1℃~8℃、2℃~6℃または3℃~5℃で処理されてもよく、一実施形態によれば、前記タンパク分解酵素は4℃で処理されてもよい。タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記タンパク分解酵素は24時間以下で処理されてもよい。例えば、前記タンパク分解酵素は0.1時間~24時間、0.2時間~20時間、0.3時間~18時間、0.4時間~16時間、0.5時間~12時間、1時間~5時間または1.5時間~3時間処理されてもよい。
【0092】
タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記タンパク分解酵素は1℃~15℃で12時間以下処理されてもよい。一実施形態によれば、前記タンパク分解酵素は4℃で1.5時間~11.5時間(例えば、4℃で1.5時間~3時間、4.5時間、11.5時間)処理されてもよい。一実施形態により、タンパク分解酵素が4℃で13時間未満、例えば0.5時間~12時間処理される場合には、タンパク分解酵素を不活性化するステップを行わなくても、β鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも高い本発明のアテロコラーゲンを得ることができる。
【0093】
タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記タンパク分解酵素は18℃~30℃で3時間未満で処理されてもよい。一実施形態によれば、前記タンパク分解酵素は、18℃~24℃で1.5時間処理されてもよい。一実施形態により、タンパク分解酵素がRT(Room temperature)で3時間未満処理される場合には、タンパク分解酵素を不活性化するステップを行わなくても、β鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも高い本発明のアテロコラーゲンを得ることができる。
【0094】
タンパク分解酵素を処理するステップにおいて、前記タンパク分解酵素は1℃~15℃で12時間以下、18℃~30℃で3時間未満処理されてもよい。一実施形態によれば、前記タンパク分解酵素は、4℃で1.5時間~11.5時間、RTで3時間未満処理されてもよい。
【0095】
このように、本発明のアテロコラーゲンは、前述のタンパク分解酵素を処理するステップでタンパク分解酵素が処理される条件によって、α鎖、β鎖およびγ鎖の含量比を調節することができる。一実施形態によれば、タンパク分解酵素を処理するステップにおけるペプシンの使用量、反応温度または時間を変えることによって、α鎖、β鎖およびγ鎖の含量比を調節することができる。
【0096】
前記製造方法は、(b)前記真皮サンプルにおいて、前記タンパク分解酵素を不活性化するステップをさらに含むことができる。
【0097】
タンパク分解酵素を不活性化するステップは、タンパク分解酵素が処理された真皮サンプルに塩基性溶液(例えば、水酸化ナトリウム溶液)を添加してタンパク分解酵素を不活性化するものであってもよい。一実施形態により、前記タンパク分解酵素を不活性化するステップを行うと、β鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも高い本発明のアテロコラーゲンが得られることを確認した。
【0098】
タンパク分解酵素を不活性化するステップは、1℃~10℃、1℃~8℃、1℃~5℃、1℃~4℃で行うことができる。
【0099】
タンパク分解酵素を不活性化するステップは、タンパク分解酵素が処理された真皮サンプルに塩基性溶液を添加して、pHが8~12、8~11、8~10または8~10になるように調整するものであってもよい。
【0100】
水酸化ナトリウム溶液は、1~28M、1~25M、1~20M、1~15Mまたは1~10Mであってもよい。
【0101】
前記製造方法は、(c)前記タンパク分解酵素が不活性化された試料に酸性溶液を処理し、試料のpHを3~4に調整するpH調整ステップをさらに含むことができる。
【0102】
このように、本発明のアテロコラーゲンは、前述のタンパク分解酵素を不活性化するステップ及びpH調整ステップをすべて含む方法により製造することによって、α鎖、β鎖およびγ鎖の含量比を調節することができる。
【0103】
前記製造方法は、(d)前記pHが調整された真皮試料の上澄液に塩化ナトリウム溶液を添加し、沈殿物を得るステップをさらに含むことができる。
【0104】
前記真皮試料の上澄液は、脂肪または不純物が除去されたものであってもよい。
【0105】
沈殿物を得るステップにおいて、前記上澄液は、pHが3~4に調整された試料を遠心分離して収集したものであり、遠心分離によって脂肪および不純物が除去されたものであってもよい。
【0106】
前記製造方法は、(e)前記沈殿物を洗浄及び/又は濾過するステップをさらに含むことができる。前記濾過するステップによって、より高純度の精製アテロコラーゲンを得ることができる。
【0107】
前記製造方法によって得られたアテロコラーゲン及び/又は精製アテロコラーゲンは、凍結乾燥して保存することができる。
【0108】
一実施形態によれば、本発明のアテロコラーゲンは、前述の方法で製造されたアテロコラーゲンまたは精製アテロコラーゲンを酸に溶解した後、緩衝液を添加して透析濾過して得られたアテロコラーゲン分散液であってもよい。
【0109】
一実施形態によれば、本発明のアテロコラーゲンは、前述の方法で製造された後、凍結乾燥して保存されたアテロコラーゲンを酸に溶解した後、緩衝液を添加して透析濾過して得られたアテロコラーゲン分散液であってもよい。
【0110】
一実施形態によれば、本発明のアテロコラーゲンは、豚皮を切片化するステップと、豚皮から真皮を得るステップと、得られた真皮に酢酸を添加して均質化するステップと、均質化した真皮サンプルにペプシンを処理するステップと、真皮サンプル中でペプシンを不活性化するステップと、ペプシンが不活性化されたサンプルのpHを調整するステップと、pHが調整された真皮サンプルから脂肪や不純物が除去された上澄液を収集するステップと、収集した上澄液に塩化ナトリウム溶液を加え、塩析して沈殿物を得るステップと、得られた沈殿物をエタノールで洗浄するステップと、洗浄された沈殿物を溶媒に溶かして濾過するステップとを含む方法により製造することができる(
図4を参照)。
【0111】
さらに、本発明は、アテロコラーゲンを含む薬物送達体を提供する。
【0112】
本発明の薬物送達体は、前述のアテロコラーゲンと、前記アテロコラーゲンに担持された生理活性物質とを含む。本発明の薬物送達体は、生理活性物質の送達に使用することができる。
【0113】
本発明の薬物送達体は、様々な形態、例えば分散液、ゲル、粉末、タブレット、パッチ、フィルム、スポンジ、フォーム、マトリックスなどに製造することができる。
【0114】
本発明の薬物送達体におけるアテロコラーゲンは、固形のアテロコラーゲン構造体であってもよい。
【0115】
本発明の薬物送達体におけるアテロコラーゲンは、複数の空隙を有するアテロコラーゲン構造体であってもよい。
【0116】
本発明の薬物送達体は、薬物送達体に含まれるアテロコラーゲンのα1鎖、α2鎖、β鎖及びγ鎖の含量比によって物性(例えば、空隙の大きさ、空隙と空隙との間の開放程度、生分解速度、薬物担持量、薬物担持パターン、薬物放出速度、初期薬物放出速度、および薬物放出プロファイルなど)を調節することができる。
【0117】
前記物性は、本発明による薬物送達体の臨床適用状況(例えば、担持される薬物、移植される人体部位、適応症など)を考慮して最適な薬効を示すように調節することができる。
【0118】
本発明のアテロコラーゲンを用いて製造された複数の空隙を有するアテロコラーゲン構造体は、β鎖の含有量がα2鎖の含有量とほぼ同じかまたはα2鎖の含有量よりも小さい従来のアテロコラーゲンを用いて同様の方法で製造された構造体よりも空隙の平均直径が小さい(表3及び
図26を参照)。一実施形態によれば、前記空隙は、平均直径が10μm~100μm、20μm~90μm、30μm~80μm、または3μm~75μmであってもよい。本発明のアテロコラーゲンを用いて製造された、複数の空隙を有するアテロコラーゲン構造体は、両方が開いた空隙を有する構造体であってもよい。
【0119】
本発明のアテロコラーゲンを用いて製造された固形のアテロコラーゲン構造体は、β鎖の含有量がα2鎖の含有量とほぼ同じかまたはα2鎖の含有量よりも小さい従来のアテロコラーゲンを用いて同様の方法で製造された構造体よりも引張強度が小さい。一実施形態によれば、本発明のアテロコラーゲンを凍結乾燥して製造した横20mm、縦3mm、厚さ2mmのアテロコラーゲン構造体を対象として、構造体の長さ軸方向に10.0mm/minの速度で均一に張力をかけて材料が切断されるまでの最大張力を測定する方法によって測定した引張強度は、0.05~0.30N/mm2であってもよい。例えば、本発明のアテロコラーゲンを凍結乾燥して製造した横20mm、縦3mm、厚さ2mmのアテロコラーゲン構造体を対象として、構造体の長さ軸方向に10.0mm/minの速度で均一に張力をかけて材料が切断されるまでの最大張力を測定する方法によって測定した引張強度は、0.05~0.30N/mm2、0.1~0.25N/mm2、または0.15~0.20N/mm2であってもよい。
【0120】
本発明のアテロコラーゲンは、β鎖に対するピークの面積(Sβ)がα2鎖に対するピークの面積(Sα2)に等しいかまたはα2鎖に対するピークの面積(Sα2)よりも小さい従来のアテロコラーゲンよりも粘性が高い。一実施形態によれば、本発明のアテロコラーゲンを用いて、コラーゲン濃度1.0%、pH6.8~7.4(中性)となるように製造したアテロコラーゲン溶液を対象として、回転型レオメーターを用いた分析方法により測定した粘度は1.0~3.0Pa・sであってもよい。例えば、本発明のアテロコラーゲンを用いて、コラーゲン濃度1.0%、pH6.8~7.4(中性)となるように製造したアテロコラーゲン溶液を対象として、回転型レオメーターを用いた分析方法により測定した粘度は1.0~3.0Pa・s、1.5~2.5Pa・sまたは1.8~2.0Pa・sであってもよい。
【0121】
本発明のアテロコラーゲンから製造された固形のアテロコラーゲン構造体及び/又は固形のアテロコラーゲン構造体を含む薬物送達体は、高い粘性を示すので、体内に移植して容易に付着することができる。また、本発明のアテロコラーゲンから製造された固形のアテロコラーゲン構造体及び/又は固形のアテロコラーゲン構造体を含む薬物送達体は、高い粘性を示すので、体内に移植して容易に曲げることができ、屈曲のある領域(例えば、体内の移植部位)に容易に付着することができる。
【0122】
本発明のアテロコラーゲンを含む薬物送達体は、担持された生理活性物質の急激な初期放出を減少させるか、または遅すぎる初期放出による生理活性物質の効果の減少を調節することができる。本発明のアテロコラーゲンを含む薬物送達体は、担持された生理活性物質の放出が持続する時間を最適な範囲に調節することができる。
【0123】
本発明のアテロコラーゲンを用いて製造された薬物送達体は、β鎖に対するピークの面積(Sβ)がα2鎖に対するピークの面積(Sα2)に等しいかまたはα2鎖に対するピークの面積(Sα2)よりも小さい従来のアテロコラーゲンを用いて製造した薬物送達体に比べて、担持された生理活性物質の放出が遅すぎることを阻害することにより、生理活性物質の効能を増強することができる。これは、アテロコラーゲンのα2鎖に対するβ鎖の含有量が増加することで生分解速度が調節できるためであるとも考えられる。
【0124】
生理活性物質は公知の物質であってもよく、低分子化合物、高分子化合物、アプタマー、核酸、ヌクレオチド、タンパク質またはポリペプチドなどであってもよい。
【0125】
生理活性物質は、抗癌剤、抗生剤などを含むことができるが、これらに限定されるものではなく、薬学的に許容可能な生理活性物質であれば種類に制限なく使用することができる。生理活性物質は1種を担持しても、1種以上を担持してもよい。
【0126】
抗癌剤は、アルキル化剤(Alkylating agents)として、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、イホスファミド(Ifosfamide)、プロカルバジン(Procarbazine)、ブスルファン(Busulfan)、カルムスチン(Carmustine)、ロムスチン(Lomustine)、ダカルバジン(Dacarbazine)、シスプラチン(Cisplatin)などを含むことができる。抗癌剤は、抗代謝物質(Antimetabolites)として、メトトレキサート(Methotrexate)、フルオロウラシル(5-Fluorouracil)、カペシタビン(Capecitabine)、シトシンアラビノシド(Cytosine Arabinoside)、ゲムシタビン(Gemcitabine)などを含むことができる。抗癌剤は、ビンカアルカロイド(Vinca Alkaloid)系の天然物質として、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビンクリスチン(Vincristine)などを含むことができる。抗癌剤は、タキサン(Taxane)薬物として、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)などを含むことができる。エピポドフィロトキシン(Epipodophyllotoxin)薬物としては、エトポシド(Etoposide)などを含むことができる。抗癌剤は、カンプトテシン(Camptothecin)薬物として、トポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)などを含むことができる。抗癌剤は、抗腫瘍性抗生物質(Antitumor Antibiotics)として、マイトマイシンC(Miitomycin-C)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin)などを含むことができる。抗癌剤は、酵素系薬物として、アスパラギナーゼ(L-asparaginase)などを含むことができる。抗癌剤は、ウレア(Urea)系薬物として、ヒドロキシウレア(Hydroxyurea)などを含むことができる。チロシンキナーゼ(Tyrosine Kinase)阻害剤としては、リツキシマブ(Rituximab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、イマチニブ(Imatinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)などを含むことができる。抗癌剤は、免疫抗癌剤として、オプジボ、キイトルーダ、ヤーボイ、テセントリク、キムリア、イエスカルタなどを含むことができる。抗癌剤は、薬学的に許容可能な塩または水和物の形態であってもよい。
【0127】
本発明の薬物送達体は、体内に移植または注入されるものであってもよい。
【0128】
本発明の薬物送達体は、手術後の開腹状態で手術部位に付着、塗布または挿入されるものであってもよい。一実施形態によれば、本発明の薬物送達体は、癌手術後の開腹状態で癌切除部位に付着、塗布または挿入されるものであってもよい。一実施形態によれば、本発明の薬物送達体は、癌手術後の開腹状態で残存癌部位に付着、塗布または挿入されるものであってもよい。
【0129】
本発明の薬物送達体は、皮下移植されるものであってもよい。本発明の薬物送達体は、皮膚、粘膜などに付着または塗布されるものであってもよい。本発明の薬物送達体は、口腔内、胃腸管内などに挿入されるものであってもよい。
【0130】
本発明の薬物送達体は、公知の薬物送達体の製造方法で製造されたものであってもよい。
【0131】
一実施形態によれば、本発明の薬物送達体は、以下のステップを含む方法で製造されたものであってもよい。
【0132】
本発明のアテロコラーゲンを酢酸ナトリウム溶液に0.5~3重量%添加し、pH2~4を維持しながら撹拌するステップと、
前記アテロコラーゲンが添加された酢酸ナトリウム溶液(以下、「アテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液」)に緩衝液を添加し、前記酢酸ナトリウム溶液を前記緩衝液で置換してアテロコラーゲン-緩衝液(以下、「アテロコラーゲン分散液」)を得るステップとを含むことができる。
【0133】
前記薬物送達体を製造する方法は、前述のステップで得られた前記アテロコラーゲン分散液に生理活性物質を分散させるステップをさらに含むことができる。
【0134】
前記緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline、PBS)であってもよい。
【0135】
前記アテロコラーゲン分散液を得るステップにおいて、前記緩衝液は、ミニメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置(Minimate(登録商標)TFF system、PALL)を用いてアテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液に添加し、ダイアフィルトレーション (diafiltration)過程によって前記酢酸ナトリウム溶液が前記緩衝液で置換されるものであってもよい。
【0136】
図5は、ミニメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置(Minimate TFF system)でアテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液をアテロコラーゲン-緩衝液で置換する方法の模式図である。
【0137】
本発明は、前述のアテロコラーゲンを含む癌転移抑制剤を提供する。
【0138】
本発明の癌転移抑制剤は、前述のアテロコラーゲンと、前記アテロコラーゲンに担持された抗癌剤とを含むものであってもよい。
【0139】
前記抗癌剤は、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質またはアプタマーであってもよい。抗癌剤については前述の通りであるので、具体的な内容を省略する。
【0140】
前記癌は、膵臓癌、乳癌、肝癌、頭頸部癌、大腸癌、卵巣癌または膠芽細胞腫であってもよい。
【0141】
癌の転移は、癌細胞が組織に浸潤して発生するものであり、タンパク質の分解に必須となる酵素であるマトリックス・メタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase、MMP)の中でも特にMMP-2とMMP-9により細胞外マトリックスと基底膜が分解されることにより、細胞の浸潤が起こることが知られている(
図6の上図を参照)。
【0142】
前述のように、β鎖の含有量がα2鎖よりも高い本発明のアテロコラーゲンを癌組織に移植すると、転移抑制効果が示されるが、これはMMP-2とMMP-9が本発明のアテロコラーゲンを認識及び分解することにより、相対的に癌疾患を有した個体の体内に存在する細胞外マトリックスと基底膜が分解されないためであると言える(
図6を参照)。また、本発明のアテロコラーゲンがMMP-2とMMP-9により認識および分解されることにより、これに担持されている生理活性物質(例えば、抗癌剤)が放出され、癌細胞が死滅する効果が示され得る。
【0143】
一方、β鎖の含有量がα2鎖と同じかまたは小さいアテロコラーゲン(比較例)は、癌組織に移植しても転移抑制効果が示されないが、これはMMP-2とMMP-9が、β鎖の含有量がα2鎖と同じかまたは小さいアテロコラーゲンを認識および分解できず、癌疾患を有した個体の体内に存在する細胞外マトリックスと基底膜を分解するためであると言える(
図7を参照)。
【実施例】
【0144】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明することとする。
【0145】
1.アテロコラーゲン(Atelocollagen, AC)の製造
1)実施例1
図4のフローチャートを参照して実施例1の製造方法を説明する。
【0146】
(1)ステップ:豚皮の準備および切片化のステップ
豚皮を水道水で3回洗浄し、一次精製水で3回洗浄した後、2kg(20cm×20cm)に分けて-20℃の冷凍庫に保存した。冷凍した豚皮を4℃で2時間静置して解凍した後、1.5cm×8cmの大きさに切断し、0.5M酢酸を5L加えて一晩静置し、豚皮が膨潤することを確認した。
【0147】
(2)ステップ:真皮を得るステップ
膨潤した豚皮を取り出し、豚皮の表皮層及び脂肪層をナイフを用いて除去する真皮作業を行い、表皮層及び脂肪層が除去された組織(真皮)を1.5cm×1.5cmの大きさに切断した。真皮に新しい0.5M酢酸をさらに5L添加し、数時間静置した後、ふるいを用いて真皮のみを濾過回収した。精製水10Lを用いて真皮を洗浄した。洗浄過程を合計5回繰り返した。洗浄を終えた真皮にエタノール20Lを加えた後、4℃で一晩攪拌した。一晩攪拌を終えた後、真皮のみを回収し、新しいエタノール20Lを加え、さらに4℃で1時間攪拌した。ふるいを用いて真皮のみを回収し、1時間程度静置してエタノールを除去した。このようにして脂肪が除去された真皮を適当な重量(250g)に小分けして-80℃の冷凍庫に保存した。
【0148】
(3)ステップ:真皮を均質化するステップ
冷凍保存した真皮(250g)に0.5M酢酸を0.625L加えた後、30分間静置して解凍した。このとき、0.5M酢酸の体積は真皮100g当たり0.25Lであることが好ましい。ふるいを用いて、解凍された真皮のみを回収し、1時間程度静置して0.5M酢酸を除去した。下記の均質化ステップは、4℃で行った。250gの真皮と三次蒸留水2Lをミキサーに入れて2分間粉砕した後、さらに精製水2Lを加えて2分間粉砕した。粉砕した組織に0.5M酢酸を4L加えた。このとき、0.5M酢酸の体積は真皮250g当たり4Lであることが好ましい。さらにホモジナイザー(Homogenizer)を用いて組織を3分間均質化した。均質化した組織に、さらに0.5M酢酸を4.5L添加した。攪拌機を用いて攪拌しながらpH2.5以下であるかを確認し、pH2.5以上の場合は少量の4M塩酸溶液でpHを調整した。攪拌機を用いて3時間低速攪拌した。
【0149】
(4)ステップ:均質化した真皮サンプルにペプシンを処理するステップ
以下のペプシンを処理するステップでは、4℃で真皮100g当たり1.5×107unitのペプシンを添加し、真皮サンプルと処理したペプシンとがよく混合されるように4℃で一晩低速撹拌した。
【0150】
(5)ステップ:ペプシンを不活性化するステップ
以下のペプシンを不活性化するステップは、4℃で行った。ペプシンを処理したサンプルに10M水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌し、pHが8~9になるように調整し、さらに10分間撹拌してペプシンを不活性化した。
【0151】
(6)ステップ:pHを調整するステップ
塩基処理によるペプシンの不活性化後、4M塩酸溶液を加えて撹拌し、pH3.4になるように調整し、さらに10分間撹拌した。
【0152】
(7)ステップ(下記の(7-1)ステップ及び(7-2)ステップを含む):pHが調整された真皮サンプルの上澄液を収集して塩析するステップ
(7-1)ステップ:pHが調整されたサンプルを遠心分離機を用いて4℃の条件で10分間7800rpmで遠心分離した後、上澄液の表面の脂肪層を除去して残りの上澄液を収集した。脂肪層が除去された上澄液をふるいに更に一回濾過して上澄液のみを収集した。
(7-2)ステップ:最終的に得られた上澄液に5M塩化ナトリウム溶液をゆっくり添加し、4℃で15分間攪拌した後、4℃で24時間または一晩静置して塩析した。このとき、5M塩化ナトリウム溶液の体積は、上澄液の重量100g当たり16.3mlであることが好ましい。塩析後、遠心分離機を用いて4℃の条件で10分間7800rpmで遠心分離した。遠心分離後、上澄液を除去して沈殿物を得た。
【0153】
(8)ステップ(下記の(8-1)ステップ及び(8-2)ステップを含む):沈殿物を洗浄するステップ
(8-1)ステップ:塩析ステップで得られた沈殿物に100g当たり1Lのエタノールを加えた後、4℃の条件で一晩撹拌して一次洗浄を行った。遠心分離機を用いて、4℃の条件で10分間7800rpmで遠心分離を行った。
(8-2)ステップ:遠心分離後に得られた沈殿物に、さらに100g当たり1Lのエタノールを加えた後、4℃の条件で6時間撹拌して二次洗浄を行った。遠心分離機を用いて、4℃の条件で10分間7800rpmで遠心分離を行い、生成物を得た。
【0154】
2)実施例2
実施例1と同様にして製造する一方、前記(6)~(8)ステップを行わずに生成物を得た。
【0155】
3)実施例3
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7)~(8)ステップを行わずに生成物を得た。
【0156】
4)実施例4
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップ(すなわち、(8-1)及び(8-2)ステップ)を行わずに生成物を得た。
【0157】
5)実施例5
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8-2)ステップを行わずに生成物を得た。
【0158】
6)実施例6
実施例1と同様にして製造する一方、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を24時間行って生成物を得た。
【0159】
7)実施例7
実施例1と同様にして製造する一方、前記(6)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を24時間行って生成物を得た。
【0160】
8)実施例8
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を24時間行って生成物を得た。
【0161】
9)実施例9
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を24時間行って生成物を得た。
【0162】
10)実施例10
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8-2)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を24時間行って生成物を得た。
【0163】
11)実施例11
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行って生成物を得た。
【0164】
12)実施例12
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を3時間行って生成物を得た。
【0165】
13)実施例13
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4.5時間行って生成物を得た。
【0166】
14)実施例14
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を11.5時間行って生成物を得た。
【0167】
15)実施例15
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で1.5時間行って生成物を得た。
【0168】
16)実施例16
実施例1と同様にして製造する一方、前記(6)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行って生成物を得た。
【0169】
17)実施例17
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行って生成物を得た。
【0170】
18)実施例18
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0171】
19)実施例19
実施例16と同様にして製造する一方、前記(8-2)ステップを行わずに、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0172】
20)実施例20
実施例1と同様にして製造する一方、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0173】
21)実施例21
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を0.25時間行って生成物を得た。
【0174】
22)実施例22
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を1.5時間行って生成物を得た。
【0175】
23)実施例23
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を11.4時間行って生成物を得た。
【0176】
24)実施例24
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を14.2時間行って生成物を得た。
【0177】
25)実施例25
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0178】
26)実施例26
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行って生成物を得た。
【0179】
27)実施例27
実施例1と同様にして製造する一方、前記(6)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行って生成物を得た。
【0180】
28)実施例28
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行って生成物を得た。
【0181】
29)実施例29
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0182】
30)実施例30
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8-2)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0183】
31)実施例31
実施例1と同様にして製造する一方、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0184】
32)実施例32
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を0.25時間行って生成物を得た。
【0185】
33)実施例33
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を1.5時間行って生成物を得た。
【0186】
34)実施例34
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を11.4時間行って生成物を得た。
【0187】
35)実施例35
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を14.2時間行って生成物を得た。
【0188】
36)実施例36
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)でペプシンを0.75×107unit添加し、前記(4)ステップを1.5時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0189】
37)実施例37
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行って生成物を得た。
【0190】
38)実施例38
実施例1と同様にして製造する一方、前記(6)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行って生成物を得た。
【0191】
39)実施例39
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行って生成物を得た。
【0192】
40)実施例40
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0193】
41)実施例41
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8-2)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0194】
42)実施例42
実施例1と同様にして製造する一方、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0195】
43)実施例43
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で8時間行って生成物を得た。
【0196】
44)実施例44
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で8時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行って生成物を得た。
【0197】
45)実施例45
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7-2)ステップ及び前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行って生成物を得た。
【0198】
46)実施例46
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を5時間行って生成物を得た。
【0199】
47)実施例47
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を10時間行って生成物を得た。
【0200】
48)実施例48
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を12.5時間行って生成物を得た。
【0201】
49)実施例49
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を14時間行って生成物を得た。
【0202】
50)実施例50
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を15時間行って生成物を得た。
【0203】
51)実施例51
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を4℃で1.5時間およびRT(Room temperature)で2.68時間行い、前記(7)ステップで前記塩析を17時間行って生成物を得た。
【0204】
52)比較例1
市販のアテロコラーゲンを比較例1として用意した(Matrixen-PSP、SK バイオランド社製)。
【0205】
53)比較例2
市販のアテロコラーゲンを比較例2として用意した(COLTIX(登録商標)Tendoregen、ユビオシス社製)。
【0206】
54)比較例3
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに生成物を得た。
【0207】
55)比較例4
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を24時間行って生成物を得た。
【0208】
56)比較例5
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)を13時間行って生成物を得た。
【0209】
57)比較例6
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で20時間行って生成物を得た。
【0210】
58)比較例7
実施例1と同様にして製造する一方、前記(6)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で20時間行って生成物を得た。
【0211】
59)比較例8
実施例1と同様にして製造する一方、前記(7)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で20時間行って生成物を得た。
【0212】
60)比較例9
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で20時間行って生成物を得た。
【0213】
61)比較例10
実施例1と同様にして製造する一方、前記(8-2)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で20時間行って生成物を得た。
【0214】
62)比較例11
実施例1と同様にして製造する一方、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で20時間行って生成物を得た。
【0215】
63)比較例12
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で3時間行って生成物を得た。
【0216】
64)比較例13
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で4.5時間行って生成物を得た。
【0217】
65)比較例14
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で11.5時間行って生成物を得た。
【0218】
66)比較例15
実施例1と同様にして製造する一方、前記(5)~(8)ステップを行わずに、前記(4)ステップ(ペプシンを処理するステップ)をRT(Room temperature)で13時間行って生成物を得た。
【0219】
2.pH中性のアテロコラーゲン溶液の製造
(1)高純度のアテロコラーゲンの製造
前記「1.アテロコラーゲン(Atelocollagen, AC)の製造」で製造された実施例及び比較例で得られたものに0.02Mウレア溶液を加えた後、4℃の条件で一晩攪拌した。このとき、0.02Mウレア溶液の体積は、アテロコラーゲン100g当たり1.4Lであることが好ましい。セントラメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置(Centramate Tangential Flow Filtration(TFF)system)またはミニメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置(Minimate TFF system)を用いた前記アテロコラーゲン溶液の限外濾過(Ultrafiltration)およびダイアフィルトレーション(Diafiltration)過程を行うことにより、高純度のアテロコラーゲンを得た。得られたアテロコラーゲン溶液に0.5M水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、pH7とした。このようにして製造した中性のアテロコラーゲンをジップロック(登録商標)に、薄く平らに小分けし、-80℃の超低温冷凍庫に保存した。凍結乾燥機の予備凍結(-40℃)を最低1時間以上行った後、-80℃の超低温冷凍庫に保存中のアテロコラーゲンを凍結乾燥機に入れて凍結乾燥を行った。凍結乾燥が完了したアテロコラーゲンは、適当な大きさに切って真空包装した後、冷蔵保存した。
【0220】
(2)pH中性のアテロコラーゲン溶液の製造
三次滅菌水55mlと99%以上の純度の酢酸(Acetic acid)溶液45mlに酢酸ナトリウム(Sodium acetate, CH3CO2Na)2.4gを溶かして、酢酸ナトリウム溶液(0.3M Sodium acetate, 45% Acetic acid)を製造した。その後、pH測定器(pH meter)を用いて、酢酸ナトリウム溶液(0.3M Sodium acetate、45% Acetic acid)のpHが3.0となるように滴定した。攪拌機を用いて酢酸ナトリウム溶液を攪拌しながら、前記「2.(1)高純度のアテロコラーゲンの製造」で製造された高純度の実施例及び比較例のものそれぞれを0.5~3重量%添加し、一晩攪拌してアテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液を得た。
【0221】
アテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液をアテロコラーゲン-リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline, PBS)溶液で置換するために、ミニメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置(Minimate(登録商標)Tangential Flow Filter system, PALL)を用いてダイアフィルトレーション(Diafiltration)を行った。具体的には、連続式定量送液ポンプ(Peristaltic pump、プングリム社製)にメンブレン(Minimate TFF capsule、PALL)を取り付けてミニメイト・タンジェンシャルフロー濾過装置 (Minimate(登録商標)Tangential Flow Filter system)を準備した。このとき、メンブレンの空隙の大きさは100kDaであることが好ましい。準備したシステムにアテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液とリン酸緩衝生理食塩水リザーバー(PBS reservoir)を接続し(
図5を参照)、酢酸ナトリウム溶液を濾過物チューブ(Filtrate tube)を介して、残りの溶液を透過残留物チューブ(Retentate tube)を介して移動させた。1X PBS溶液をPBSリザーバー(PBS reservoir)に添加してアテロコラーゲン溶液の水位を一定に維持し、透析濾過を行った。最初に供給したアテロコラーゲン-酢酸ナトリウム溶液の10倍に相当する体積の1X PBS溶液を用いて透析濾過を継続し、これによりバッファー交換(Buffer exchange)を行った。バッファー交換が完了した後、濾過物チューブ(Filtrate tube)を通して透過されて出てくる溶液のpHが中性pHであるかを確認した。バッファー交換が完了したpH中性のアテロコラーゲン溶液を回収して4℃で冷蔵保存した。
【0222】
(3)pH中性のアテロコラーゲン溶液中のアテロコラーゲンの純度の確認
SDS-PAGE電気泳動法を用いて、前記「2.(2)pH中性のアテロコラーゲン溶液の製造」で製造されたアテロコラーゲン溶液中のアテロコラーゲンの純度を確認した。具体的には、前記「2.(1)高純度のアテロコラーゲンの製造」で製造された実施例1を0.5M酢酸溶液に0.3重量%で溶解して対照群として使用した。前記「2.(2)pH中性のアテロコラーゲン溶液の製造」で製造されたアテロコラーゲン溶液(pH中性のアテロコラーゲン・サンプル)を0.5M酢酸溶液に10倍希釈し、アテロコラーゲン分析サンプルを作製した。5Xサンプルバッファーが1Xになるようにサンプルと混合し、85℃で5分間加熱した。6%SDS-PAGEゲルに準備したサンプルをロードし、電気泳動した。電気泳動は、90Vで30分間展開した後、電圧を120Vに上げ、ゲルマーカー(gel marker)のサイズのうち、75kDaがゲルの下端に下がるまで展開した。ゲル中でサンプルがよく分離されると、ゲルを取り出してCoomassie Brilliant Blue R250 Staining Solution(BIO-RAD)によって常温で2時間または4℃で16時間以上染色した。ロッカー(Rocker)の上で染色したゲルをデステイン溶液(De-staining solution)で洗浄し、アテロコラーゲンバンドがよく見えるようにした。前記の分析方法により、前記「2.(2)」で製造されたpH中性のアテロコラーゲン・サンプルの純度を確認することができた(
図8を参照)。
【0223】
3.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によるアテロコラーゲンの鎖含有量の比較
(1)HPLC分析におけるアテロコラーゲンの各鎖の分布の確認
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)機器を用いてアテロコラーゲン・サンプルを分取(prep)した後、SDS-PAGE分析して、HPLC分析におけるアテロコラーゲン鎖の分布を確認した。
【0224】
アテロコラーゲンを含む0.5M酢酸溶液を5.0μg/ulの濃度で製造し、Agilent HPLC装置を使用して分析した。検出器としてはUV検出器(UV detector)(220nm)を使用した。カラムは逆相カラムRP C18カラム、移動相はバッファーA:0.1% TFA in DW、バッファーB:0.1% TFA in ACNを用いてgradientに設定し、流速は1ml/minとした。まず、前記アテロコラーゲン・サンプルを30μl注入(injection)し、クロマトグラムから4つのアテロコラーゲンピークを確認した。アテロコラーゲン・サンプルを100μl注入し、クロマトグラムで滞留時間が11分~14.5分であるピークのみを分取し、分取した分画(fraction)を再分析してピーク分離度を確認した。分離度が確認された分画のうち、アテロコラーゲンのメインピークのみを収集し、ピークごとにSDS-PAGE分析を行った。
【0225】
分析の結果、溶出時間が最も小さいピーク1はγ鎖に対するピーク、2番目に小さいピーク2はα1鎖に対するピーク、3番目に小さいピーク3はβ鎖に対するピーク、最も大きいピーク4はα2鎖に対するピークであることが確認できた(
図9を参照)。
【0226】
(2)HPLC分析によるアテロコラーゲンの鎖含有量の比較
分析試料は、前記「2.(1)高純度のアテロコラーゲンの製造」で製造された高純度の実施例及び比較例のそれぞれを0.5M酢酸溶液に溶かして2.5μg/ulの濃度で製造した。
【0227】
分析条件としては、アジレント(Agilent)HPLC機器を使用し、検出器としては、UV検出器(220nm)を使用した。カラムは逆相カラムRP C18カラム、移動相はバッファーA:0.1% TFA in D.W、バッファーB:0.1% TFA in ACNを用いてgradientに設定し、流速は1ml/minとした。
【0228】
実施例及び比較例を高速液体クロマトグラフィーで分析して各鎖に相当するピークを含む山の下の面積を測定したところ、実施例1~51はβ鎖に対するピークの面積(S
β)がα2鎖に対するピークの面積(S
α2)よりも大きいことを確認した。これに対して、比較例1~15は、β鎖に対するピークの面積(S
β)がα2鎖に対するピークの面積(S
α2)と等しいか小さいことを確認した(
図10~
図24を参照)。すなわち、本発明のアテロコラーゲンは、従来の他のアテロコラーゲンとは異なり、β鎖の含有量がα2鎖よりも高くなっている。このような鎖含有量の差は、本発明のアテロコラーゲンの物性および効果に影響を及ぼし得る。
【0229】
より具体的には、市販のアテロコラーゲン(比較例1及び2)は、β鎖の含有量がα2鎖とほぼ等しいか、またはα2鎖に比べて小さくなっている。これに対して、本発明のアテロコラーゲンは、β鎖の含有量がα2鎖に比べて大きく、具体的にはα2鎖に対するβ鎖の含有量が1.1以上5以下であった(
図10~11を参照)。
【0230】
また、ペプシンを不活性化するステップ(実施例1に記載の(5)ステップ)を行って製造したアテロコラーゲンは、そうでない場合に比べて、α2鎖に対するβ鎖の含有量が大きいことが確認できた(
図12~13、16、19及び24を参照)。
【0231】
ペプシンを不活性化するステップ(実施例1に記載の(5)ステップ)を行わなくても、ペプシンを処理するステップ(実施例1に記載の(4)ステップ)を4℃で13時間未満行った場合には、α2鎖に対するβ鎖の含有量が大きいことが確認できた。これに対して、ペプシンを処理するステップを13時間以上行った場合には、α2鎖の含有量がβ鎖よりも大きい結果を示した(
図14及び22を参照)。
【0232】
ペプシンを不活性化するステップ(実施例1に記載の(5)ステップ)を行わなくても、ペプシンを処理するステップ(実施例1に記載の(4)ステップ)をRTで3時間未満行った場合には、α2鎖に対するβ鎖の含有量が高くなることが確認できた。これに対して、ペプシンを処理するステップをRTで3時間以上行った場合には、α2鎖の含有量がβ鎖よりも高い結果を示した(
図15、17及び19を参照)。
【0233】
また、前述の実施例及び比較例において、前記(1)ステップ~(8)ステップをすべて行って得られたアテロコラーゲン(実施例及び比較例)の各鎖含有量、およびβ鎖:α2鎖の割合を下記表2に示す。
【0234】
【0235】
前記分析結果によると、i)アテロコラーゲンの製造において、ペプシンを不活性化するステップ(実施例1に記載の(5)ステップ)及び/又はペプシンを不活性化した後にpHを調整するステップ(実施例1に記載の(6)ステップ)を含むか、または、ii)真皮にペプシンを処理するステップ(実施例1に記載の(4)ステップ)を特定の温度と反応時間(例えば、4℃で13時間未満行うか、またはRT(Room temperature)で3時間未満行う)の条件で行うことにより、α2鎖に対してβ鎖の含有量が高いアテロコラーゲンを製造することができる。上の結果により、アテロコラーゲンの製造過程において、特定ステップの実施有無またはペプシン処理条件(ペプシン処理時間、ペプシン処理温度など)によって、アテロコラーゲンのβ鎖:α2鎖の割合を調節できることを確認した。
【0236】
4.SDS-PAGE分析によるアテロコラーゲンの鎖含有量の比較
前記「2.(3)pH中性のアテロコラーゲン溶液中のアテロコラーゲンの純度の確認」方法と同様の方法により、SDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)分析を行った。分析結果として得られたゲルの写真をImageJプログラムを用いて、相対的なgel band intensityを測定したところ、実施例1のβ鎖に対するバンドの厚さが、比較例1または2のβ鎖に対するバンドの厚さよりも顕著に厚いことを確認した。すなわち、比較例に比べて実施例のアテロコラーゲンのβ鎖の含有量がより大きいことを確認した(
図25参照)。
【0237】
5.アテロコラーゲンの物性の分析
(1)固形のアテロコラーゲン構造体の製造
実施例及び比較例で製造された高純度のアテロコラーゲンをシリコンモールドに注ぎ、凍結乾燥して、固形のアテロコラーゲン構造体を製造した。
【0238】
具体的には、高純度のアテロコラーゲン溶液をシリコンモールドに一定量分注した。アテロコラーゲン溶液を分注したシリコンモールドを-20℃で4時間以上一次凍結した。一次凍結が完了したサンプルをシリコンモールドから分離して滅菌ディッシュまたはプレートに移した後、-80℃で2時間以上二次凍結した。凍結乾燥機のコールドトラップの温度が-80℃になるように予備凍結を行った後、凍結乾燥機にアテロコラーゲンのサンプルを入れて16時間以上凍結乾燥した。凍結乾燥した固形のアテロコラーゲン構造体は、4℃で冷蔵保存した。
【0239】
(2)走査電子顕微鏡(Scanning Electron Micro Scope, SEM)を用いたアテロコラーゲンの構造の観察
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Micro Scope, SEM)を用いて、アテロコラーゲンのβ鎖及びα2鎖の割合によってアテロコラーゲンの構造が変化するかどうかを確認した。実施例1、実施例42、実施例31、比較例1及び比較例2のアテロコラーゲン溶液を凍結乾燥して、直径10mm、高さ5mmの円形サンプルを作製した。白金コート装置を用いて、製造されたサンプルの表面をコーティングした。その後、SEMチャンバーに入れて、10.0~15.0kVの高電圧を加え、サンプルの上端(Surface)、側面(Cross)、下端(Bottom)を50倍、100倍、500倍、1000倍の倍率で測定した。その後、同一倍率で製造したサンプルの空隙直径を測定し、空隙の平均直径および標準偏差を算出した。
【0240】
測定の結果、実施例1、42及び31のアテロコラーゲン・サンプルは、いずれも両方が開いた空隙を含み、α2に対するβ鎖の含有量が高くなるほど空隙の平均直径が小さくなることを確認することができた(
図26及び表3を参照)。これに対して、比較例1はいずれか一方が塞いだ空隙、比較例2はいずれか一方が広く、もう一方が狭い空隙を含み、比較例1及び比較例2は空隙の平均直径が実施例に比べて顕著に大きな結果を示した。この結果は、β鎖とα2鎖の含量比によって物性が変わり得ることを示唆する。
【0241】
【0242】
(3)アテロコラーゲンの引張強度の測定
アテロコラーゲンのβ鎖とα2鎖の割合によってアテロコラーゲンの強度が変化するかどうかを確認した。
実施例1及び31のアテロコラーゲン溶液および比較例2のアテロコラーゲン溶液を凍結乾燥して、20mm×3mm×2mmサイズの引張強度試験用物質を製造した。引張圧縮試験機(MCT-1150)を用いて、試験用物質の長さ軸方向に10.0mm/minの速度で均一に張力をかけ、物質が切断されるまでの最大張力を測定し、引張強度(Maximum stress)および引張変形(Maximum tensile Strain)の値を算出した。β鎖の含有量がα2鎖の含有量よりも大きい実施例と小さい比較例との間の引張強度および引張変形の値は有意な差を示した(表4、
図28~30を参照)。
【0243】
【0244】
(4)アテロコラーゲンの粘度の測定
アテロコラーゲンのβ鎖とα2鎖の割合によってアテロコラーゲンの粘度が変化するかどうかを確認した。
実施例1、実施例42及び実施例31のアテロコラーゲン溶液および比較例2のアテロコラーゲンをコラーゲン濃度1.0%、pH6.8~7.4(中性)となるように調製した。回転式レオメータ(TA instrument Ltd.,ARES-G2)を用いて、前記調製したアテロコラーゲン溶液の10℃での粘度η(Pa・s)を測定した。剪断速度1(1/s)の条件で実施例1は比較例2よりも高い粘度ηを有することが確認できた。同じ条件下で、実施例1、実施例42及び実施例31の粘度ηは、α2鎖の含有量に対するβ鎖の含有量の比が増加するほど多少減少した(表5参照)。
【0245】
【0246】
6.アテロコラーゲン薬物送達体の製造および物性の分析
(1)固形のアテロコラーゲン薬物送達体の製造
実施例及び比較例で製造された高純度のアテロコラーゲンと薬物を混合し、円形のシリコンモールドに注ぎ、凍結乾燥して、薬物(ゲムシタビン又は[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体])が担持された固形のアテロコラーゲン薬物送達体を製造した。[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]としては、[TGG]4-TTG-[TGG]5配列(配列番号1)の5’末端に(Gem)2が結合した薬物を用いた(Gem:ゲムシタビン、(Gem)2: 2つのゲムシタビン)。
【0247】
具体的には、高純度のアテロコラーゲンに薬物(例えば、ゲムシタビン又は[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体])を添加した後、マルチミキサー(SLRM-3、MYLAB)を用いて常温で30分間均一に混合した。その後、アテロコラーゲン-薬物混合物を円形のシリコンモールドに一定量分注した(
図31の上の写真)。アテロコラーゲン-薬物混合物が分注された円形のシリコンモールドを-20℃で4時間以上一次凍結した。一次凍結が完了したサンプルを円形のシリコンモールドから分離して滅菌ディッシュまたはプレートに移した後、-80℃で2時間以上二次凍結した。凍結乾燥機のコールドトラップの温度が-80℃になるように予備凍結した後、凍結乾燥機にアテロコラーゲン・サンプルを入れて16時間以上凍結乾燥した(
図31の下左の写真)。凍結乾燥した固形のアテロコラーゲン薬物送達体を4℃で冷蔵保存した。
【0248】
(2)走査電子顕微鏡(Scanning Electron Micro Scope, SEM)を用いたアテロコラーゲン薬物送達体の構造の観察
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Micro Scope, SEM)を用いて、アテロコラーゲンのβ鎖とα2鎖の割合によって、薬物が担持されたアテロコラーゲン薬物送達体の構造が変化するかどうかを確認した。実施例1、実施例42、実施例31、比較例1及び比較例2のアテロコラーゲン溶液と[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を混合した溶液を凍結乾燥して、直径10mm、高さ5mmの円形サンプルを製造した。白金コート装置を用いて、製造されたサンプルの表面をコーティングした。その後、SEMチャンバーに入れて15.0kVの高電圧を加え、サンプルの上端(Surface)、側面(Cross)、下端(Bottom)を50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍の倍率で測定した。その後、同一倍率で作製したサンプルの空隙直径を測定し、空隙の平均直径および標準偏差を算出した。
【0249】
測定の結果、薬物が担持された実施例1のアテロコラーゲン・サンプルは、両方が開いた空隙を含み、α2に対するβ鎖の含有量が高くなるほど空隙の平均直径が小さくなることを確認することができた(
図27及び表6を参照)。これに対して、比較例1及び比較例2は、いずれか一方が広く、もう一方が狭い空隙を含んでいた。この結果は、β鎖とα2鎖の含量比によって物性が変わり得ることを示唆する。
【0250】
【0251】
(3)アテロコラーゲン薬物送達体の薬物放出試験
アテロコラーゲンのβ鎖とα2鎖の割合によって、アテロコラーゲン薬物送達体の薬物放出パターンが変化するかどうかを確認した。
前記「6.(1)固形のアテロコラーゲン薬物送達体の製造」方法と同様にする一方、凍結乾燥が完了した後、アテロコラーゲン・サンプルをアクリルプレートを用いてパッチ型に圧着した(
図31の下右の写真)。1つのパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体当たり、前記[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]2mgが担持されるように製造した。より具体的には、実施例1、実施例42及び実施例31のアテロコラーゲン溶液と[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を混合した溶液を凍結乾燥して製造した直径10mmのパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体を溶出液に入れた後、37℃の条件で時間帯別に溶出する薬物を測定した。アテロコラーゲン薬物送達体から放出される[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]の濃度をAbs、260mmでUVで測定したところ、β鎖の含有量が増加するほど薬物が徐々に放出されることを確認した(
図38参照)。
【0252】
7.パッチ型アテロコラーゲン薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果
実施例1のアテロコラーゲンに薬物を担持したパッチ型薬物送達体と、比較例2のアテロコラーゲンに薬物を担持したパッチ型薬物送達体とで、薬物放出による癌細胞の死滅および転移抑制効果を比較した。
【0253】
実験の結果、実施例1のアテロコラーゲンで製造されたパッチ型薬物送達体は膵臓癌および転移抑制において優れた効果を示したが、比較例2のアテロコラーゲンで製造されたパッチ型薬物送達体は膵臓癌の抑制効果も低く、腹腔内の他の組織、すなわち肝臓、腎臓および腹膜などへの転移が起こったことを確認した。これは、癌転移を誘発するMMP-2及びMMP-9が本発明のアテロコラーゲン(実施例)をよく認識することにより、本発明のアテロコラーゲン(実施例)で製造されたパッチ型薬物送達体が分解され、薬物がよく放出されるからであると考えられる。これに対して、MMP-2及びMMP-9が比較例のアテロコラーゲンをよく認識できないため、比較例のアテロコラーゲンで製造されたパッチ型薬物送達体はよく分解されず、担持された薬物がよく放出できず、癌細胞の死滅および転移抑制の効果が良好でないものと考えられる(
図6、7参照)。
【0254】
パッチ型アテロコラーゲン薬物送達体からの担持薬物の放出効果とパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体による腫瘍抑制および癌転移効果を確認した具体的な実験方法および結果について下記(1)~(3)に示す。
【0255】
(1)パッチ型アテロコラーゲン薬物送達体の製造
前記「2.(2)pH中性のアテロコラーゲン溶液の製造」で製造されたpH中性のアテロコラーゲン溶液と薬物を混合し、円形のシリコンモールドに注ぎ、凍結乾燥して、薬物(ゲムシタビンまたは配列番号1の5’末端に(Gem)2が結合した薬物[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体])が担持されたアテロコラーゲンパッチを製造した。
【0256】
具体的には、pH中性のアテロコラーゲン溶液に薬物(例えば、ゲムシタビン又は[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体])を添加した後、マルチミキサー(SLRM-3、MYLAB)を用いて常温で30分間均一に混合した。その後、アテロコラーゲン-薬物混合物を円形のシリコンモールドに一定量分注した(
図31の上の写真)。アテロコラーゲン-薬物混合物が分注された円形のシリコンモールドを-20℃で4時間以上一次凍結した。一次凍結が完了したサンプルを円形のシリコンモールドから分離して滅菌ディッシュまたはプレートに移した後、-80℃で2時間以上二次凍結した。凍結乾燥機のコールドトラップの温度が-80℃になるように予備凍結した後、凍結乾燥機にアテロコラーゲン・サンプルを入れて16時間以上凍結乾燥した(
図31の下左の写真)。凍結乾燥したアテロコラーゲン・サンプルをアクリルプレートを用いてパッチ型に圧着した後(
図31の下右の写真)、アルミニウムポーチに入れて密封した。包装されたパッチ型アテロコラーゲン薬物送達体を4℃で冷蔵保存した。
【0257】
(2)パッチ型アテロコラーゲン薬物送達体の膵臓癌細胞株における薬物放出効果
膵臓癌細胞株のBXPC-3を3日間培養し、MMP-2とMMP-9が過剰発現した培地(CM培地)と、MMP-2とMMP-9が発現していない培地(コントロール培地)を準備した。ザイモグラフィー(Zymography)を用いて、MMP-2及びMMP-9の活性を確認した(
図32参照)。
【0258】
MMP-2及びMMP-9活性が過剰発現したCM培地において、実施例1のアテロコラーゲン薬物送達体と比較例2のアテロコラーゲン薬物送達体から、担持された薬物([GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体])がよく放出されるかどうかを確認した。放出される[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]およびゲムシタビンの濃度をそれぞれAbs.260nmでUVで測定した。実験の結果、実施例1のアテロコラーゲンを用いて製造されたパッチ型薬物送達体は、コントロール培地と比較してCM培地でよりよく溶けた。その結果、薬物送達体に含有された[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]及びゲムシタビンの放出がより良好であることを確認した。これにより、実施例1のアテロコラーゲンは、MMP-2及びMMP-9により、よく認識されることが分かった。また、CM培地において、比較例2のアテロコラーゲン薬物送達体に比べ、実施例1のアテロコラーゲン薬物送達体がパッチ内に含有された[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]とゲムシタビンを効果的に放出させることを確認した(
図33参照)。
【0259】
(3)パッチ型アテロコラーゲン薬物送達体の膵臓癌マウスモデルにおける残存癌の除去後の腫瘍抑制及び転移抑制効果
1)ゲムシタビンが担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果
実施例1のアテロコラーゲンにゲムシタビン0.12mgを担持したパッチ型薬物送達体(以下、「Gem/AC[実施例1]パッチ型薬物送達体」)と比較例2のアテロコラーゲンにゲムシタビン0.12mgを担持したパッチ型薬物送達体(以下、「Gem/AC[比較例2]パッチ型薬物送達体」)をorthotopic膵臓癌マウスに移植し、残存腫瘍の抑制及び腹腔内の他の臓器への転移抑制有無を観察した。
【0260】
具体的には、Balb/c-nude(male、6週齢、21匹)および特定のベクター(vector)の置換でルシフェラーゼ(luciferase)を発現する5×10
5BxPC3癌細胞株(BXPC-3-Luc細胞)25ulを用意した。腹腔麻酔したマウスの腹部を切開して膵臓を取り出して準備し、BXPC-3-Luc細胞を膵臓に注入して膵臓癌マウスモデルを作製した。2週間後、ルシフェラーゼ・イメージング(luciferase imaging)を行って腫瘍を確認した。腫瘍はルシフェリン(luciferin)を用いて測定した。自己蛍光を減らすために、画像撮影の1週間前に膵臓癌マウスモデルに無蛍光飼料を提供した。腹腔麻酔したマウスの腹部を切開して膵臓癌を除去した後、残りの腫瘍部位にGem/AC[比較例2]パッチ型薬物送達体またはGem/AC[実施例1]パッチ型薬物送達体を移植した。ルシフェラーゼ・イメージング(Luciferase imaging)を用いて、腫瘍サイズおよび転移有無を確認した。各薬物送達体を挿入して30日が経過した後、実験動物をex-vivoで腫瘍および臓器別転移有無を確認した。その結果、Gem/AC[比較例2]パッチ型薬物送達体に比べて、Gem/AC[実施例1]パッチ型薬物送達体の方が優れた腫瘍抑制及び転移抑制効果を示した(
図34参照)。
【0261】
2)[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]が担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果
前記「7.(3)-1)ゲムシタビンが担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果」の方法と同様にする一方、担持された薬物として[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を用いて、残存腫瘍の抑制および腹腔内の他の臓器への転移抑制有無を観察した。
【0262】
より具体的には、実施例1のアテロコラーゲンに[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]2mgを担持したパッチ型薬物送達体(以下、「Gem-aptamer[実施例1]パッチ型薬物送達体」)と、比較例2のアテロコラーゲンに[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]2mgを担持したパッチ型薬物送達体(以下、「Gem-aptamer[比較例2]パッチ型薬物送達体」)をorthotopic膵臓癌マウスに移植して残存腫瘍の抑制および腹腔内の他の臓器への転移抑制有無を観察した。その結果、Gem-aptamer[比較例2]パッチ型薬物送達体が移植されたマウスでは、脾臓、腹膜および腎臓などへの癌転移が見られたが、Gem-aptamer[実施例1]パッチ型薬物送達体が移植されたマウスでは、腹腔内転移が全く見られず、腫瘍サイズも小さいことを確認した(
図35参照)。
【0263】
8.ゾル-ゲル型アテロコラーゲン薬物送達体(薬物が担持されたアテロコラーゲンゾル-ゲル)の腫瘍抑制及び転移抑制効果
(1)ゾル-ゲル型アテロコラーゲン薬物送達体の製造
0.5%~3.0%濃度のpH中性のアテロコラーゲン溶液100μLに薬物(ゲムシタビン又は[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体])を添加した後、マルチミキサー(SLRM-3、MYLAB)を用いて常温で30分間均一に混合した。または、0.5%~3.0%濃度のpH中性のアテロコラーゲン溶液100μLと薬物をそれぞれ2つのシリンジに添加した後、2つのシリンジを連結してピストン往復によって均等に混合した。
【0264】
(2)ゾル-ゲル型アテロコラーゲン薬物送達体の膵臓癌マウスモデルにおける残存癌の除去後の腫瘍抑制及び転移抑制効果
1)ゲムシタビンが担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果
「7.(3)-1)ゲムシタビンが担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果」の方法と同様にする一方、実施例1のアテロコラーゲンで製造されたゾル-ゲルにゼムシタビン0.12mgを担持した薬物送達体(以下、「Gem/AC[実施例1]ゾル-ゲル薬物送達体」)と、比較例2のアテロコラーゲンで製造されたゾル-ゲルにゲムシタビン0.12mgを担持した薬物送達体(以下、「Gem/AC[比較例2]ゾル-ゲル薬物送達体」)をorthotopic膵臓癌マウスに注入して、残存腫瘍の抑制および腹腔内の他の臓器への転移抑制有無を観察した。その結果、Gem/AC[比較例2]ゾル-ゲル薬物送達体が注入されたマウスでは脾臓、腹膜などへの癌転移が見られたが、Gem/AC[実施例1]ゾル-ゲル薬物送達体が注入されたマウスでは腹腔内転移が全くなかった(
図36参照)。
【0265】
2)[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]が担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果
「8.(2)-1)ゲムシタビンが担持された薬物送達体の腫瘍抑制及び転移抑制効果」の方法と同様にする一方、担持された薬物として[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]を用いて、残存腫瘍の抑制および腹腔内の他の臓器への転移抑制有無を観察した。
【0266】
実施例1のアテロコラーゲンで製造されたゾル-ゲルに[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]2mgを担持した薬物送達体(以下、「Gem/aptamer[実施例1]ゾル-ゲル型薬物送達体」)と、比較例2のアテロコラーゲンで製造されたゾル-ゲルに[GRO-アプタマー及びゲムシタビン接合体]2mgを担持した薬物送達体(以下、「Gem/aptamer[比較例2]ゾル-ゲル型薬物送達体」)をorthotopic膵臓癌マウスに注射し、残存腫瘍の抑制および腹腔内の他の臓器への転移抑制有無を観察した。
【0267】
その結果、Gem/aptamer[比較例2]ゾル-ゲル型薬物送達体が注入された場合に比べて、Gem/aptamer[実施例1]ゾル-ゲル型薬物送達体が注入されたマウスでは腫瘍サイズが小さいことを確認した(
図37参照)。
【符号の説明】
【0268】
1,2:HPLCピークを有する山の面積
10,20,30,40:HPLCピーク
a1,a2,a3:HPLCピークを有する山と山との間の変曲点
b:HPLCクロマトグラムのベースライン
t10,t20:HPLCピークに相当する溶出時間
ta1,ta2,ta3:2つのHPLCピークを有する山の間の変曲点に相当する溶出時間
tb1,tb2:ベースラインとHPLCピークを有する山の交点に相当する溶出時間
【配列表】
【国際調査報告】