(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230718BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230718BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230718BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230718BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230718BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230718BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230718BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230718BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/139
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M10/052
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581560
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2021068336
(87)【国際公開番号】W WO2022003159
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤラマンチリ,シバ・ファニ・クマール
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ22
5H029CJ24
5H029CJ30
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050FA02
5H050GA22
5H050GA24
5H050GA29
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、カソード(4)を調製(100)するステップと、アノード(6)を調製(400)するステップと、カソード(4)とアノード(6)との間に配置されるための固体電解質(8)を調製(200)するステップと、を含む、固体電池(2)の製造方法であって、固体電解質(8)がコーティングプロセスによって調製され、コーティングプロセスがPVDコーティングを含む、固体電池(2)の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード(4)を調製(100)するステップと、
アノード(6)を調製(400)するステップと、
前記カソード(4)と前記アノード(6)との間に配置されるための固体電解質(8)を調製(200)するステップと、
を含む、固体電池(2)の製造方法において、
前記固体電解質(8)がコーティングプロセスによって調製され、前記コーティングプロセスがPVDコーティングを含むこと、
を特徴とする、固体電池(2)の製造方法。
【請求項2】
前記カソード(4)が、熱堆積プロセスによって、好ましくは熱スプレー堆積プロセスによって、調製(100)されること、
を特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アノード(6)が、PVDコーティングプロセスによって調製(400)され、前記調製(400)が、好ましくはレーザ表面構造化及び/又は3Dテクスチャリングを含むこと、
を特徴とする、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記カソード(4)と前記固体電解質(8)との間、及び/又は前記アノード(6)と前記固体電解質(8)との間の接触を改善するために少なくとも1つの接触層(10)を調製することを含み、前記接触層(10)が好ましくはリチウム化合物を含み、前記接触層(10)が特にリチウム合金の形態で形成されること、
を特徴とする、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記接触層(10)が、PVDコーティングプロセスによって、好ましくはアーク堆積プロセス及び/又はマグネトロン・スパッタリング・プロセス、特に高出力パルス・マグネトロン・スパッタリング・プロセスによって調製されること、
を特徴とする、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記カソード(4)、前記固体電解質(8)及び前記アノード(6)が、1つまた1つと調製され、前記カソード(4)、前記固体電解質(8)及び前記アノード(6)が好ましくは各々、塗布プロセスによって調製され、前記カソード(4)が特に、前記固体電解質(8)が前記カソード(4)に塗布され、次いで前記アノード(6)が前記固体電解質(8)に塗布される前に、最初に塗布されること、
を特徴とする、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、少なくとも1つの後処理ステップ(300)を含み、前記後処理ステップ(300)が、好ましくは、
マイクロアロイ化ステップ、
化学量論的調整ステップ、
微細構造調整ステップ、
準安定相形成ステップ、のうちの少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、異なる堆積技術を含み、好ましくは薄膜堆積技術と厚膜堆積技術とを組み合わせ、前記方法が特に、スプレー堆積技術及び/又はアーク堆積技術及び/又はマグネトロンスパッタ堆積技術及び/又は反応性PVD堆積技術及び/又はパルスレーザ堆積技術及び/又はホットカレンダ技術のうちの少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする、
先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カソード(4)と、
アノード(6)と、
前記カソード(4)と前記アノード(6)との間に配置された固体電解質(8)と、
を備える、特に先行する請求項のうちの1項によるプロセスによって製造された、固体電池(2)であって、
前記固体電解質(8)がPVDコーティング構造の形態であること、
を特徴とする、固体電池(2)。
【請求項10】
前記カソード(4)及び/若しくは前記アノード(6)並びに/又は前記固体電解質(8)が、多層構造を有すること、
を特徴とする、
請求項9に記載の固体電池(2)。
【請求項11】
前記カソード(4)が、50から100μmの間、好ましくは70から90μmの間の層厚を有すること、
を特徴とする、
請求項9又は10に記載の固体電池(2)。
【請求項12】
前記カソード(4)が、好ましくはNMC合金の形態の、リチウム化合物を含むこと、
を特徴とする、
請求項9~11のいずれか1項に記載の固体電池(2)。
【請求項13】
前記アノード(6)が、1から10μmの間、好ましくは5から7μmの間の層厚を有すること、
を特徴とする、
請求項9~12のいずれか1項に記載の固体電池(2)。
【請求項14】
前記アノード(6)が、グラファイト及び/又はリチウム及び/又はシリコンを含むこと、
を特徴とする、
請求項9~13のいずれか1項に記載の固体電池(2)。
【請求項15】
前記固体電解質(8)が、1から10μmの間、好ましくは3から5μmの間の層厚を有すること、
を特徴とする、
請求項9~14のいずれか1項に記載の固体電池(2)。
【請求項16】
前記固体電解質(8)が、酸化物の形態であり、前記酸化物が、好ましくはリチウムを含むこと、
を特徴とする、
請求項9~15のいずれか1項に記載の固体電池(2)。
【請求項17】
少なくとも1つの接触層(10)が、接触を改善するために設けられており、前記接触層(10)が、好ましくは、前記カソード(4)と前記固体電解質(8)との間、及び/又は前記アノード(6)と前記固体電解質(8)との間に配置されており、前記接触層(10)が特に、リチウム化合物を含むこと、
を特徴とする、
請求項9~16のいずれか1項に記載の固体電池(2)。
【請求項18】
請求項9~17のいずれか1項に記載の固体電池(2)を備える、原動機付き運搬手段、特に電気式運搬手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池の製造方法、及び特に本発明による方法によって製造された固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式電池は近年絶え間なく発展しており、現在では様々な方法で使用することができる。ハイブリッド又は電気式運搬手段におけるそれらの使用に加えて、充電式電池はまた、再生可能な源からの電気を貯蔵するために使用されることも知られている。電池は、アノード、カソード及び電解質を有する。異なるアノード及びカソード材料に加えて、使用される電解質も様々であり得る。ハイブリッド又は電気式運搬手段における使用のための今日の電池は、通常、液体又はゲル状の電解質を有する。電解質として適した液体は、それらが容易に可燃性でありしたがって大きな安全上のリスクを表す、という不利点を有する。電解質は、電池から外へ漏れ、及び熱若しくは短絡又は類似のものによって点火される可能性がある。特に運搬手段構造では、このようなシナリオは事故において珍しくない。
【0003】
この理由のため、固体電池の導入の一部として、可燃性液体電解質を固体不燃性電解質で置き換えるアプローチが知られている。不利なことに、これまでに知られているプロセスによって製造された固体電解質を有する固体電池は、いくつかの重大な不利点を有する。
【0004】
特に、既知の固体電池における、電極と固体電解質との間の接触面は、小さいものにすぎず、これは、とりわけ、そのような電池の化学的及び電気化学的安定性の低さをもたらす。さらに、既知の固体電解質は、一般に、低いイオン移動度及び電圧許容範囲のみを有する。さらに、必要な薄い電解質層及び薄いアノード層の製造は、プロセス技術の観点から困難である。さらに、アノードの膨張及び不均一なリチウム堆積の問題は、既知のプロセスを使用して製造される固体電池において、しばしば生じる。後者は最終的に、望まれないデンドライト成長、及びしたがって固体電池の破壊をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記の不利点を少なくとも部分的に克服することである。特に、本発明の目的は、固体電池の製造のためのプロセスを提供することであり、ここで、それは、簡単かつ安価な態様で行うことができ、かつ、様々に使用することができる長持ちする信頼性をもって安定して動作可能な高性能電池の製造を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、請求項1の特徴を有する方法、請求項9の特徴を有する固体電池、及び請求項18の特徴を有する原動機付き運搬手段によって解決される。本発明のさらなる特徴及び詳細は、従属請求項、明細書及び図面による。本発明による方法に関連して説明される特徴及び詳細はまた、当然ながら、各場合において、本発明による固体電池又は本発明による原動機付き運搬手段に関連して適用され、逆もまた同様であり、その結果、本開示に関して本発明の個別の態様は相互に、参照され、又は常に参照されることができる。
【0007】
本発明によれば、固体電池の製造方法が提供される。本発明による方法は、カソードを調製するステップと、アノードを調製するステップと、カソードとアノードとの間に配置されるための固体電解質を調製するステップと、を含む。本発明による方法はさらに、固体電解質がコーティングプロセスによって調製され、コーティングプロセスがPVDコーティングを含むこと、を特徴とする。
【0008】
したがって、本発明によれば、少なくとも本発明による固体電解質が、固体電池の製造プロセスにおけるコーティングプロセスを介して製造され、かつコーティングプロセスがPVDコーティングを含むことが、提供される。固体電池を製造するための既知の方法とは対照的に、コーティングプロセスによる本発明による固体電解質の製造は、電極と固体電解質との間の界面を増大することを可能にする。さらに、コーティングプロセス、特にPVDコーティングプロセスを使用することによって、高い導電率を有する薄い電極構造を製造することが可能であり、それによって、可能な電圧範囲は減少しない。本発明によるプロセスの機能、特に本発明によるプロセスの個別のステップの相互作用を、以下でより詳細に説明する。
【0009】
好ましくは、コーティングプロセスは、PVDコーティングプロセスとして、特に、例えば高性能パルス・マグネトロン・スパッタリング・プロセス又は反応性アーク堆積などの、反応性PVDコーティングプロセスとして形成される。本発明のプロセスに従って製造された固体電池は、好ましくは、原動機付き運搬手段、特に電気式運搬手段において使用することができる。しかしながら、本発明による方法に従って製造された固体電池は、他の電池式運搬手段又は静止装置においても使用できることが理解される。本発明の文脈において、固体電池は、好ましくは電池であって、電解質が固体材料、固体電解質から形成される電池として理解することができる。特に、固体電池は、固体蓄電池として設計することができる。本発明の文脈において、固体電解質は、固体材料、すなわち特に当座の動作温度で固体である材料として理解することもでき、それによって、イオンによって伝わる電流が流れるように、イオンが伝導され得る。
【0010】
特に薄いカソード層であっても、特に正確かつ意図的に制御可能な製造の範囲内で、本発明によれば、有利なことに、熱堆積プロセスによって、好ましくは熱スプレー堆積プロセスによってカソードが調製されることが、提供され得る。
【0011】
薄いアノード層の、特に正確かつ意図的に制御可能な製造の文脈において、本発明によれば、有利なことに、PVDコーティングプロセスによってアノードが調製され、調製が好ましくはレーザ表面構造化及び/又は3Dテクスチャリングを含むことも、提供され得る。
【0012】
方法が、カソードと固体電解質との間、及び/又はアノードと固体電解質との間の接触を改善するために少なくとも1つの接触層を調製することを含み、接触層が好ましくはリチウム化合物を含み、接触層が特にリチウム合金の形態で形成されることが、電極と固体電解質との間の接触面を最適化するためにさらに提供されてもよい。そのような最適化された接触面は、特に、固体電池の改善された化学的及び電気化学的安定性を可能にする。そのため、接触層は、好ましくは、電極層と固体電解質との間に位置するべきである。
【0013】
意図的に変更可能な接触層の文脈において、本発明によれば、接触層が、PVDコーティングプロセスによって、好ましくはアーク堆積プロセス及び/又はマグネトロン・スパッタリング・プロセス、特に高出力パルス・マグネトロン・スパッタリング・プロセスによって調製されることが、さらに提供され得る。
【0014】
簡単、迅速なコスト最適化された製造の文脈において、本発明によれば、カソード、固体電解質及びアノードが、1つまた1つと調製され、カソード、固体電解質及びアノードが好ましくは各々、塗布プロセスによって調製され、カソードが特に、固体電解質がカソードに塗布され、次いでアノードが固体電解質に塗布される前に、最初に塗布されることも、提供され得る。塗布プロセスは、このようにして互いと特に良好に調整され得る。塗布プロセスは、好ましくは、コーティングプロセスとして、特にPVDコーティングプロセスとして行うことができる。あるいは、固体電解質のみが、PVDプロセスを含むコーティングプロセスによって製造され、カソード及びアノードが、他のプロセスによってそれらの製造の後に固体電解質に接続されることも、提供され得る。
【0015】
カソード、アノード及び固体電解質の構造の目標とされる適合、特に固体電解質の伝導率の増加の可能性に関して、方法が少なくとも1つの後処理ステップを含むことが考えられ、後処理ステップは、好ましくは、
マイクロアロイ化ステップ、
化学量論的調整ステップ、
微細構造調整ステップ、
準安定相形成ステップ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
マイクロアロイ化は、特に、さらなる金属の最小限の追加分、例えば総質量の0.1重量%までが金属又は合金に追加されるプロセスとして、理解することができる。化学量論的調整は、化学量論比の目標とされる調節として理解することもできる。微細構造調節は、構造比の目標とされる調節として理解することもできる。最後に、準安定相形成は、準安定相の目標とされる調節として理解することができる。後処理は、特に固体電解質の塗布又は調製の後に、行うことができる。
【0017】
特に柔軟に調節可能な構造とともに、個別のプロセスステップの柔軟な適合の範囲内で、方法が、異なる堆積技術を含み、好ましくは薄膜堆積技術と厚膜堆積技術とを組み合わせ、方法が特に、スプレー堆積技術及び/又はアーク堆積技術及び/又はマグネトロンスパッタ堆積技術及び/又は反応性PVD堆積技術及び/又はパルスレーザ堆積技術及び/又はホットカレンダ技術のうちの少なくとも1つを含むことも、提供され得る。さらに、例えばPLDなどの、技術も使用することができる。
【0018】
本発明の別の目的は、特に上述の方法によって製造された、固体電池である。本発明によれば、固体電池は、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に配置された固体電解質とを備え、固体電解質は、PVDコーティング構造の形態である。したがって、本発明による固体電池はまた、本発明によるプロセスを参照して既に詳細に説明したのと同じ利点を示す。
【0019】
カソード、アノード及び固体電解質の特性の変更に関して高い柔軟性を確保するために、本発明によれば、カソード及び/若しくはアノード並びに/又は固体電解質が多層構造を有することが、さらに提供され得る。
【0020】
本発明による固体電池の高い化学的及び電気化学的安定性のために、50から100μmの間、特に70から90μmの間の層厚をカソードが有することが、提供され得る。好ましくは、層厚は、>20μm、より好ましくは>40μm、特に>60μmとすることができる。
【0021】
高いイオン移動度及び広い電圧許容範囲に関して、好ましくはNMC合金の形態の、リチウム化合物をカソードが含む場合、それは有利であり得る。本発明の文脈において、NMC合金は、好ましくは、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物であると理解される。有利には、カソードは、リチウムリッチNMC合金、例えばNMC333合金又はNMC811合金の形態であり得る。いくつかのNMC変種について、ニッケル、マンガン及びコバルトの比を示す短い呼称が一般的である。例えば、LiNi0,333Mn0,333Co0,333O2は、簡潔に、NMC111と、又はNMC333とも呼ばれ、LiNi0,8Mn0,1Co0,1O2は、NMC811と呼ばれる。さらに、リチウム、ニッケル、マンガン、コバルト及び酸素に加えて、カソードはまた、硫黄を含んでもよい。好ましくは、カソードは、200mAh/gを超える容量を有する固体電池において使用され得る。
【0022】
イオン移動性が妨げられないことを確保するための安定した丈夫な構造に関して、1から10μmの間、好ましくは5から7μmの間の層厚をアノードが有する場合、それは有利であり得る。有利には、ここでの層厚は、<40μm、好ましくは<20μm、特に<10μmとすることができる。
【0023】
個別のニーズに適合させることができる効果的に動作可能な固体電池に関して、アノードがグラファイト及び/又はリチウム及び/又はシリコンを含むことも、提供され得る。したがって、アノードは、特に230kWh/kgまでのより低い容量の実施形態の範囲内では、例えば純粋グラファイト電極の形態で設計することができる。他方では、いくぶんより高い容量の文脈においては、シリコンドープされたグラファイト電極を使用することが、理にかなっている場合がある。さらに、例えば650Wh/kgを超える特に高い容量の文脈においては、純粋リチウム電極、特に3Dリチウム電極を使用することが考えられる。
【0024】
電極と固体電解質との間の界面の表面の最適な適合性の文脈において、本発明によれば、有利なことに、それにおいて固体電解質が1から10μmの間、好ましくは3から5μmの間の層厚を有することが、提供され得る。
【0025】
高い導電率を確保することの文脈において、固体電解質が酸化物の形態であり、酸化物が好ましくはリチウムを含むことも、提供され得る。固体電解質は、例えば、LGPS、例えばLi10GeP2S12、又はLLZO、例えばLi7La3Zr2O12の形態であり得る。高いLi+含有量に加えて、このような適切な電解質材料を使用することによって、活物質に対する界面の有無にかかわらず1~5Vの広い電気化学的安定範囲を達成することができる。
【0026】
少なくとも1つの接触層が、接触を改善するために設けられており、接触層が、好ましくは、カソードと固体電解質との間、及び/又はアノードと固体電解質との間に配置されており、接触層が特に、リチウム化合物を含むことが、電極構造と固体電解質との間の接触を最適化し層間の最適な界面構造を作り出すためにさらに提供され得る。これにより、接触層は、特にリチウム合金の形態で形成することができる。
【0027】
本発明の目的はまた、上述の固体電池を備える、原動機付き運搬手段、特に電気式運搬手段を提供することである。したがって、本発明による固体電池は、本発明による方法を参照して既に詳細に説明したのと同じ利点を提供する。電気式運搬手段は、ハイブリッド運搬手段などを意味すると理解することもできることが理解される。
【0028】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、本発明の実施形態が図面を参照して詳細に説明される、以下の説明から明らかになるであろう。特許請求の範囲及び明細書において言及される特徴は、個別に又は任意の組合せで、本発明に不可欠であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】本発明による固体電池の第1の実施形態を示す図である。
【
図1b】本発明による固体電池の第2の実施形態を示す図である。
【
図1c】本発明による固体電池の第3の実施形態を示す図である。
【
図1d】本発明による固体電池の第4の実施形態を示す図である。
【
図1e】本発明による固体電池の第5の実施形態を示す図である。
【
図2】第1の実施形態による固体電池を製造するための、本発明による方法の個別のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aは、約230kWh/kgのエネルギー密度を提供するはずである、本発明による固体電池2の第1の実施形態を示す。
【0031】
図1aから認識できるように、本発明による固体電池2は、カソード4と、アノード6と、カソード4及びアノード6の間に配置された固体電解質8とを備える。これにより、固体電解質8は、PVDコーティング構造の形態である。
【0032】
第1の実施形態によれば、カソード4は、NMC、特にNMC333から作られ、アノード6は、グラファイトから作られる。固体電解質はさらに、第1の実施形態によればリチウム化合物から作られるのであり、特にLPSなどの硫化物系電解質から作られる。NMCカソード粒子はまた、同じ電解質でコーティングされてもよい。
【0033】
図1bは、約350kWh/kgのエネルギー密度を提供するはずである、本発明による固体電池2の第2の実施形態を示す。
【0034】
第2の実施形態によれば、カソード4は、NMC、特にNMC811から作られ、アノード6は、グラファイトとシリコンとの組合せから作られる。第2の実施形態による固体電解質はまた、リチウム化合物から作られてもよい。
【0035】
図1cは、約500kWh/kgのエネルギー密度を提供するはずである、本発明による固体電池2の第3の実施形態を示す。
【0036】
第3の実施形態によれば、カソード4は、NMC811から作られ、アノード6は、3Dリチウムアノードから作られる。これにより、第3の実施形態による固体電解質はまた、リチウム化合物から作られてもよい。
【0037】
図1dは、約200kWh/kgのエネルギー密度を提供するはずである、本発明による固体電池2の第4の実施形態を示す。
【0038】
第4の実施形態によれば、カソード4は、NMC811から作られ、アノード6は、3Dリチウムアノードから作られる。これにより、第4の実施形態による固体電解質はまた、リチウム化合物、特にLLZOから作られる。
【0039】
図1eは、約200kWh/kgのエネルギー密度を提供するはずである、本発明による固体電池2の第5の実施形態を示す。
【0040】
第5の実施形態によれば、カソード4は、NMC811から作られ、アノード6は、グラファイトから作られる。これにより、第5の実施形態による固体電解質は、同様にLLZOから作られる。
【0041】
カソード4及び/若しくはアノード6並びに/又は固体電解質8は、多層構造の形態で調製されてもよく、カソード4は、50から100μmの間、好ましくは70から90μmの間の層厚を有してもよい。
【0042】
しかしながら、アノード6は、1から10μmの間、好ましくは5から7μmの間のより小さい層厚を有してもよい。
【0043】
さらに、固体電解質8は、1から10μmの間、好ましくは3から5μmの間のより小さい層厚を有してもよい。
【0044】
図1a~
図1eにおける図示から明らかではないことは、アノード4、カソード6及び固体電解質8に加えて、少なくとも1つの接触層10も、電極4、6と固体電解質8との間の接触を改善するために設けられてもよいことである。
【0045】
図2は、第1の実施形態による固体電池2を製造するための、本発明による方法の個別のステップを示す。
【0046】
図2から認識できるように、本発明による方法本発明による方法は、カソード4を調製100するステップと、アノード6を調製400するステップと、
カソード4とアノード6との間に配置されるための固体電解質8を調製200するステップであって、固体電解質8がコーティングプロセスによって調製され、コーティングプロセスがPVDコーティングを含む、ステップと、を含む。
【0047】
図2から認識できるように、カソード4、固体電解質8及びアノード6は、1つまた1つと調製され、カソード4、固体電解質8及びアノード6は好ましくは各々、塗布プロセスによって調製され、カソード4は、固体電解質8がカソード4に塗布され、次いでアノード6が固体電解質8に塗布される前に、最初に塗布される。
【0048】
アノードを固体電解質8に塗布する最後のステップの前に、後処理ステップ300は、行われ、後処理ステップ300は、マイクロアロイ化及び/又は化学量論的調整及び/又は微細構造的調整及び/又は準安定相形成を含んでもよい。
【0049】
実施形態の上記の説明は、例の文脈においてのみ本発明を説明する。当然ながら、実施形態の個別の特徴は、本発明の範囲から離れることなく自由に互いと組み合わせることができ、ただしそれが技術的に理にかなっていることが条件である。
【符号の説明】
【0050】
2 固体電池
4 カソード
6 アノード
8 固体電解質
10 接触層
100 カソードの調製
200 固体電解質の調製
300 後処理
400 アノードの調製
【国際調査報告】