(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】溶液を用いないセンサ較正
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20230719BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G01R27/02 R
G01N27/04 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575766
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 US2021038346
(87)【国際公開番号】W WO2021262630
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513307933
【氏名又は名称】パーカー-ハネフィン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PARKER-HANNIFIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Blvd. Cleveland, OH 44124 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ギバート,シャーリーン・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】デルマー,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】ピギン,ディーン
【テーマコード(参考)】
2G028
2G060
【Fターム(参考)】
2G028BB01
2G028BB20
2G028BC10
2G028CG02
2G028DH03
2G028DH12
2G028HN12
2G028MS02
2G060AA06
2G060AC02
2G060AF08
2G060HC01
2G060HC02
2G060HC13
(57)【要約】
水溶液用の導電率センサのための較正デバイス。上記較正デバイスは、上記導電率センサのセンサ電極と電気的に結合するよう構成された第1のコネクタを含む。上記コネクタは更に、上記センサ電極のうちの少なくとも2つの間に、制御された電圧の印加を提供するよう構成される。第1の抵抗器は、上記少なくとも2つのセンサ電極の間に接続され、上記第1のコネクタに結合される。上記抵抗器は、上記少なくとも2つのセンサ電極の間の電流の流れが電気化学的較正用溶液の特性を再現するように、ある値を有する。特定の実施形態では、上記較正デバイスは、pHセンサ又は溶存酸素センサ用に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液用の導電率センサのための較正デバイスであって、前記較正デバイスは、
前記導電率センサのセンサ電極と電気的に結合するよう構成された第1のコネクタであって、前記コネクタは更に、前記センサ電極のうちの少なくとも2つの間に、制御された電圧の印加を提供するよう構成される、第1のコネクタ;及び
前記少なくとも2つのセンサ電極の間に接続され、前記第1のコネクタに結合される、第1の抵抗器であって、前記抵抗器は、前記少なくとも2つのセンサ電極の間の電流の流れが電気化学的較正用溶液の特性を再現するように、ある値を有する、第1の抵抗器
を備える、較正デバイス。
【請求項2】
前記抵抗器に接続され、導電率モニタにも接続される第2のコネクタを更に備える、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項3】
前記第1のコネクタは、前記導電率センサの少なくとも4つのセンサ電極と電気的に結合するよう構成され、前記較正デバイスは更に、前記第1の抵抗器、第2の抵抗器、及び第3の抵抗器を有する抵抗器ネットワークを備え、ここで前記3つの抵抗器はそれぞれ、前記4つのセンサ電極のうちの異なる2つの間に結合される、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項4】
前記第1の抵抗器の抵抗値は40.2オームであり、前記第2及び第3の抵抗器の抵抗値はそれぞれ221オームである、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項5】
前記第1の抵抗器の抵抗値は38~42オームである、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項6】
前記第1の抵抗器の抵抗値は40.2オームである、請求項5に記載の較正デバイス。
【請求項7】
較正される前記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするよう構成された温度較正回路を更に備える、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項8】
前記温度較正回路は、1対の抵抗器に結合されたスイッチング素子を含む、請求項7に記載の較正デバイス。
【請求項9】
前記1対の抵抗器のうちの一方の抵抗値は200~300オームであり、前記1対の抵抗器のうちの第2の抵抗器の抵抗値は1.5~2.5キロオームである、請求項8に記載の較正デバイス。
【請求項10】
前記1対の抵抗器のうちの一方の抵抗値は226オームであり、前記1対の抵抗器のうちの第2の抵抗器の抵抗値は2.1キロオームである、請求項8に記載の較正デバイス。
【請求項11】
外部電源への接続のために構成された端子を更に含む、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項12】
水溶液用の導電率センサを較正するための方法であって:
前記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現するステップ;
前記2つの電極の間に流れる電流を測定するステップ;及び
測定された前記電流が所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、前記導電率センサが良好に較正されているかどうかを判定するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
前記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現する前記ステップは、前記2つの電極の間に抵抗器を接続するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの抵抗器を前記導電率センサの複数の電極それぞれに接続する抵抗器ネットワークを提供するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
較正される前記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現する前記ステップは、較正デバイスを前記導電率センサの複数の電極に接続するステップであって、前記較正デバイスは、前記複数の電極それぞれに結合される1つ以上の抵抗器を含む、ステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
較正デバイスを前記導電率センサの複数の電極に接続する前記ステップは、較正デバイスを、較正される前記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするための温度較正回路と接続するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
導電率センサを較正するための方法であって:
a.前記センサの2つの電極の間に、制御された電圧を印加するステップ;
b.前記センサを制御された温度に維持しながら前記2つの電極の間の電流を感知するステップ;及び
c.感知された前記電流が前記センサの合格を示す所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、前記センサの導電率を算出するステップ
を含む、方法。
【請求項19】
制御された電圧を印加する前記ステップは、外部電源から定電圧を印加するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、水溶液用の導電率センサの較正のためのシステム及び方法、又は電位(電圧)の変化若しくは電子の損失/利得を感知して導電率、pH、溶存酸素(DO)、若しくは他の適用可能な応答の測定値に変換するいずれの電気化学センサ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液の導電率は、水の、電流を伝導する能力の尺度である。溶液中に存在するイオンが多ければ多いほど、その導電率は上昇する。温度もまた導電率に影響を及ぼす。溶液の温度が上昇するにつれて、これに対応して、溶液中に溶解される材料の溶解度が上昇し、結果として導電率が上昇する。
【0003】
電気が流れるためには、荷電粒子(例えばイオン)の移動が必要である。固体NaCl又はKCl結晶では電気の流れは発生しない。この固体はでイオンで構成されるものの、これらは結晶格子内で非常に緊密に保持されるため、電流が流れることはない。しかしながら、水溶液中ではこれらのイオンは移動でき、これにより電気の流れが可能となる。
【0004】
水溶液導電率センサの従来の製造プロセスには、センサを較正するために、導電率溶液が所定の許容可能な導電率及び温度範囲内にある必要がある。センサ較正中にこれらの要件が確実に満たされるようにするためには、複数の課題が存在する。例えば、導電率溶液の導電率は非常に変化しやすい場合があり、場合によっては、セットとセットとの間に導電率溶液を補充した後に、導電率の変動が観察される。更に、較正中の比較的一定の溶液温度を、(即ち水浴温度の調整に起因する)変動なしに維持するのは困難である場合がある。
【0005】
更に、センサの良好な較正は、参照用のサードパーティー導電率及び温度プローブの正確度に依存し得る。仕様を維持するためには、サードパーティープローブの日常的な外部からの較正が必要である。しかしながら多くの例では、複数のサードパーティープローブを互いに比較した場合、これらは温度又は導電率の読み取り値に関して互いに一致しない。
【0006】
多数の従来の較正装置では、センサチェーンに沿って温度損失が起こり、これは制御が困難である場合がある。典型的には、導電率溶液は未使用のもので、NIST認証を受けたものでなければならない。較正の後、センサを徹底的に清掃しなければならず、これは従来の導電率センサのコスト及び製造時間を増大させる。更に、センサ本体及び導電率溶液が必要な温度に到達するためには、安定時間が必要である。これにより、操作者がセンサ及び溶液温度を絶えず監視する必要がある場合がある。
【0007】
上述の問題の結果として、場合によっては、新たに製造された導電率センサの較正合格率は、較正の1回目の試行においてわずか25~30%となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、上述の問題のうちの多くに対処する、水溶液用の導電率センサの較正のためのシステム及び方法に関する。本発明の上述の及び他の利点、並びに本発明の更なる特徴は、本明細書に提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明の実施形態は、水溶液用の導電率センサのための較正デバイスを提供する。上記較正デバイスは、上記導電率センサのセンサ電極と電気的に結合するよう構成された第1のコネクタを含む。上記コネクタは更に、上記センサ電極のうちの少なくとも2つの間に、制御された電圧の印加を提供するよう構成される。第1の抵抗器は、上記少なくとも2つのセンサ電極の間に接続され、上記第1のコネクタに結合される。上記抵抗器は、上記少なくとも2つのセンサ電極の間の電流の流れが電気化学的較正用溶液の特性を再現するように、ある値を有する。
【0010】
ある特定の実施形態では、上記較正デバイスは、上記抵抗器に接続され、導電率モニタにも接続される第2のコネクタを有する。特定の実施形態では、上記第1のコネクタは、上記導電率センサの少なくとも4つのセンサ電極と電気的に結合するよう構成され、上記較正デバイスは更に、上記第1の抵抗器、第2の抵抗器、及び第3の抵抗器を有する抵抗器ネットワークを含み、ここで上記3つの抵抗器はそれぞれ、4つのセンサ電極のうちの異なる2つの間に結合される。ある特定の実施形態では、上記第1の抵抗器の抵抗値は40.2オームであり、上記第2及び第3の抵抗器の抵抗値はそれぞれ221オームである。
【0011】
本発明の別の実施形態では、上記第1の抵抗器の抵抗値は38~42オームである。更に特定の実施形態では、上記第1の抵抗器の抵抗値は40.2オームである。上記較正デバイスは更に、較正される上記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするよう構成された温度較正回路を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記温度較正回路は、1対の抵抗器に結合されたスイッチング素子を含む。特定の実施形態では、上記1対の抵抗器のうちの一方の抵抗値は200~300オームであり、上記1対の抵抗器のうちの第2のものの抵抗値は1.5~2.5キロオームである。更に特定の実施形態では、上記1対の抵抗器のうちの一方の抵抗値は226オームであり、上記1対の抵抗器のうちの第2のものの抵抗値は2.1キロオームである。上記較正デバイスは更に、外部電源への接続のために構成された端子を含んでよい。
【0012】
別の態様では、本発明の実施形態は、水溶液用の導電率センサを較正するための方法を提供する。上記方法は、上記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現するステップ、2つの電極の間に流れる電流を測定するステップ、及び測定された上記電流が所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、上記導電率センサが良好に較正されているかどうかを判定するステップを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記方法は更に、2つの電極の間に抵抗器を接続するステップを含む。上記方法は、少なくとも1つの抵抗器を上記導電率センサの複数の電極それぞれに接続する抵抗器ネットワークを提供するステップも含んでよい。更に、上記方法の実施形態は、較正される上記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするステップを必要とする。
【0014】
上記方法のある特定の実施形態は、較正デバイスを上記導電率センサの複数の電極に接続するステップを含む。上記較正デバイスは、上記複数の電極それぞれに結合される1つ以上の抵抗器を含む。更に上記方法は、較正デバイスを、較正される上記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするための温度較正回路と接続するステップを必要とし得る。
【0015】
更に別の態様では、本発明の実施形態は、導電率センサを較正するための方法を提供する。上記方法は、上記センサの2つの電極の間に、制御された電圧を印加するステップ、上記センサを制御された温度に維持しながら上記2つの電極の間の電流を感知するステップ、及び感知された上記電流が上記センサの合格を示す所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、上記センサの導電率を算出するステップを含む。この方法の実施形態は、外部電源から定電圧を印加するステップを含む。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、水溶液用の導電率センサのための較正デバイスを含み、上記較正デバイスは、2つのセンサ電極の間に制御された外部電圧を印加するか、又は代替実施形態では、電気化学的較正用溶液の特性を再現するための一連の抵抗器及び/若しくはコンデンサを有する2つのセンサ電極の間に電流を供給し、これにより、較正プロセス中の溶液と上記センサ電極との直接的な接触の必要性が排除される。
【0017】
本発明の他の態様、目的及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」を添付の図面と併せて解釈した場合に、「発明を実施するための形態」から更に明らかになるであろう。
【0018】
本明細書に組み込まれて本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明の複数の態様を図示し、本説明と併せて本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による較正デバイスの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による、
図1の較正デバイスで使用される抵抗器ネットワークを示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のある実施形態により、抵抗器ネットワークがどのように第1及び第2のコネクタに結合されているかを示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明のある実施形態による、
図1の較正デバイスで使用される温度較正回路の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明のある実施形態による導電率センサで使用される較正デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を特定の好ましい実施形態に関して説明するが、本発明をこれらの実施形態に限定する意図はない。むしろ意図されているのは、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内に含まれるあらゆる代替例、修正例及び均等物を包含することである。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、制御された外部電圧を複数のセンサ電極のうちの2つの間に印加することによって、溶液を用いない較正プロセスを支援する、水溶液用の導電率センサを含む。本発明の実施形態では、上記制御された外部電圧は定電圧であり、これは外部電源によって提供できる。代替実施形態では、電流をこれら2つの電極の間に供給してよい。上述のセンサ電極は、電気化学的較正用溶液の特性を再現するための一連の抵抗器及び/又はコンデンサを有してよく、これにより、較正プロセス中の上記センサ電極と上記電気化学的較正用溶液との間の直接的な接触の必要性が排除される。
【0022】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、導電率センサに関するものであるが、当業者は、本発明の技術及び範囲を、pH及び/若しくは溶存酸素の測定、又は電位の変化(電圧)若しくは電子の損失/利得の感知を伴ういずれの他の用途にも、全く同様に適用できることを認識するだろう。
【0023】
特定の公称導電率における電流と電圧との関係は一般に、以下に示した様式で特徴づけることができる。センサ抵抗は、以下のように導電率読み取り値に関連する:
導電率=(Ic-Im)/V;
ここでIcはアナログデジタル変換器(Analog to Digital Converter:ADC)からの生の電流であり;
Imはゼロレベルの励磁電流であり;
Vはアナログデジタル変換器(ADC)からの生の電圧である。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「ゼロレベルの励磁電流(Zero Level of Excitation Current)」は、二次巻線の端子が開放されている場合に、通常の電圧が一次巻線端子に印加されたときに変圧器の一次巻線内を流れる、少量の電流を指す。この電流は、変圧器励磁電流と呼ばれ、変圧器の動作中は常に流れている。励磁電流は、変圧器のコアの内部の磁場を維持するために必要であり、二次巻線上の負荷とは略無関係である。
【0025】
導電率センサの従来の較正のある特定の例では、12.88ミリジーメンス(mS)の導電率の溶液を用いて、1点較正を実施してよい。この例では、電圧が33,872±1,069ボルトであり、電流が394,871±53,662ミリアンペアである場合、導電率は12,880マイクロジーメンス(μS)又は12.88ミリジーメンス(mS)と読み取られる。良好に較正されたセンサを示すためには、電圧が印加されたときに導電率モニタによって感知及び測定される電流レベルが、394,871±53,662ミリアンペアの範囲内である必要がある。
・電圧は12880μSに対して制御される(テーブルから)。
・導電率は公称値:12880μSである。
【0026】
【0027】
予想を超える電流値は、較正機器又は導電率センサに問題がある可能性があることの指標であり、このような問題は追加の検査を必要とする。
【0028】
本発明に関して、導電率較正プロセスは、25℃で12.88ミリジーメンス(mS)の公知の導電率を有する溶液を用いた較正の代替として設計された。しかしながら、上述したように、このプロセスの変形例は、pHセンサ又はDOセンサのための従来の較正プロセスの代替として使用できる。これを導電率に対して達成するために、請求対象のシステムは、公知の導電率の溶液の特性をシミュレートするよう動作する。請求対象のシステム及び方法により、25℃の温度制御チャンバでの公知の12.88mS液の使用を必要とする既存の較正装置のプロセスとは対照的な、(周囲室温における)より制御された繰り返し可能な較正装置のプロセスが可能となる。
【0029】
図1は較正デバイス100の斜視図である。
図1に示されているように、較正デバイス100はハウジングを含んでいないが、デバイス100の市販用の実施形態はハウジング内に配置されることが想定される。
図1に示されている較正デバイス100の実施形態は、回路基板102を含み、この回路基板102は、回路基板102の第1の側面において導電率センサに、そして上記第1の側面の反対側の回路基板102の第2の側面において導電率モニタ(図示せず)に接続されるよう構成される。しかしながら、本発明の代替的実施形態において、センサ及びモニタを回路基板102の同じ側面に接続できるようにする可能性があることも想定される。本発明の代替的実施形態では、回路基板102は、pHセンサ、DOセンサ等に接続されるよう構成される。
【0030】
較正デバイス100は、2つの副回路を活用することにより、上述の目的を達成する。1つの受動副回路は導電率のためのものであり、1つの能動副回路は温度補償のためのものである。受動導電率副回路は、12.88mSの導電率に相当する抵抗ネットワークからなり、これについては以下でより詳細に説明する。較正プロセス中、抵抗ネットワークは導電率センサの電極信号ラインに接続される。これにより、12.88mSに相当する導電率フィードバック応答が生成され、これは導電率モニタに返される。
【0031】
ある特定の実施形態では、導電率センサは第1のコネクタ104で回路基板102に接続され、導電率モニタは第2のコネクタ106で回路基板102に接続される。導電率モニタは図示されていないが、当業者は、導電率モニタは、第2のコネクタ106への接続を介して、センサの電極間に流れる電流を検出することにより、導電率センサの良好な較正に関する判定を可能とするために使用されるものであることを認識するだろう。導電率センサはまた、導電率センサ電極に印加される電圧を制御し、以下で説明される温度較正回路の動作を開始させる。
【0032】
図1では、第1のコネクタ104及び第2のコネクタ106は、使用しないときにコネクタ端子を保護するためのキャップ108で覆われる。較正デバイス100は、導電率モニタと導電率センサとの間で接続される3つの抵抗器:R1 110、R3 112、及びR5 114を有する抵抗器ネットワークを含む。本発明のある具体的実施形態では、R1の抵抗値は221オームであり、R3の抵抗値は40.2オームであり、R5の抵抗値は221オームである。
【0033】
図2、3は、本発明のある実施形態による較正デバイス100において使用される回路構成の概略図である。
図2、3は、3つの抵抗器R1 110、R3 112、R5 114を有する上述の抵抗器ネットワークを示す。
図3に示されているように、3つの抵抗器R1 110、R3 112、R5 114は導電率センサに接続された第1のコネクタ104に結合され、また導電率モニタに接続された第2のコネクタ106にも結合される。
【0034】
図2、3に示されているように配設された抵抗器ネットワークは、請求対象の導電率較正システム及び方法の形成に役立つものであり、これは本実施形態では、励磁(EX+/-)及び感知(SN+/-)EX+、SN+、SN-、及びEX-信号ラインにまたがって配置されたこれらの特定の抵抗器を用いて12.88mS液をシミュレートする。ある特定の実施形態では、これら4つの信号ラインはそれぞれ、導電率センサ118のセンサ電極120に接続される(
図5を参照)。
図2、3は、どのようにして3つの抵抗器R1 110、R3 112、R5 114が信号ラインにまたがって実装されているかを示す。221オームという例示的な値を有する抵抗器R1 110は、EX-とSNS-との間に接続される。40.2オームという例示的な値を有する抵抗器R3 112は、SNS-とSNS+との間に接続される。221オームという例示的な値を有する抵抗器R5 114は、SNS+とEX-との間に接続される。
【0035】
導電率は温度に依存するため、導電率センサの良好な較正の要件のうちの1つは、センサ本体の温度安定性に関連する。理想的には、導電率センサは、温度制御されたシステムの内部に25℃で長期間保管され、全ての導電率センサの温度が安定していること(例えば熱カメラが温度均一性を示すこと)が観察される。
【0036】
図4は、本発明のある実施形態による較正デバイス100において使用される温度較正回路140の概略図である。温度較正回路140は、較正中に温度抵抗器ネットワークをシリアルデータ(SDA)信号ライン142に適用することによって、25℃環境をシミュレートする。本発明のある特定の実施形態では、抵抗器ネットワークは2つの抵抗器:R17 144、R19 146を含む。ある具体的実施形態では、R17 144の抵抗値は226オームであり、R19 146の抵抗値は2.1キロオームである。
図4に示されているスイッチ部品U3 148は、較正中に導電率モニタ(U3のピン15、10を参照)によってトリガされて、温度較正回路140を適用する。温度較正回路140は、較正中にセンサが25℃であると信じるようセンサを効果的に「だます(trick)」ために、25℃を目標とする。
【0037】
具体的実施形態では、較正プロセス中、能動副回路、即ち温度較正回路140が、試験中の導電率センサの温度較正回路140に、ファームウェア制御された電圧バイアスを印加する。これは、試験中の導電率センサの温度較正回路140に、周囲室温と最も一般的に関連付けられる25℃に対応する電圧で応答させる。ある特定の実施形態では、上記電圧バイアス信号は第2のコネクタ106を介して送達され、電圧は導電率モニタ内でファームウェアによって制御される。これにより、センサ較正中に温度補償を適用し、較正オフセット値を導電率センサの不揮発性メモリに書き込む前に温度補償を削除するための、正確なタイミング設定が可能となる。
【0038】
試験において、温度較正回路140を用いた上述の温度較正方法は、この方法を用いて較正されたユニットが、従来法で較正された導電率センサと同等の又はより優れた標準偏差のパーセンテージを有することが分かったため、効果的であると証明された。各導電率センサは較正後に、読み取り出力(導電率読み取り値)に適用される固有の較正係数(Calibration Factor:CF)及び温度オフセット(Temperature Offset:TO)値を与えられる。続いて操作者は、予期されるCF値及びTO値を、較正後に導電率センサを合格として分類するか不合格として分類するかの指標として観察する。不合格となったものは典型的には分離されて検査され、これらの最終的な廃棄が決定される。
【0039】
図5は、本発明のある実施形態による導電率センサ118において使用される較正デバイス100の概略図である。較正デバイス100の概略図が示されており、ここで較正デバイス100は導電率センサ118の4つの電極120に接続されている。較正デバイス100の代替実施形態は、4つ未満又は5つ以上の電極120を有してよい。
図5の実施形態では、較正デバイス100は外部電源152から動力を供給されるが、較正デバイス100の代替実施形態は例えばバッテリで動力供給されることが想定される。
【0040】
図5に示されている通り、較正デバイス100のコネクタ部分は、制御された電圧を導電率センサ118の4つの電極120のうちの少なくとも2つに印加するよう構成される。このコネクタ部分はまた、4つのセンサ電極120を真っ直ぐにするという更なる機能を提供し得る。電極の間隔(即ち直径、高さ及び距離)は導電率センサ118において重要であるため、これは有用な機能であり得る。電極120が近すぎると、電流は電極120間でアークを発生させ、読み取り値に誤差が生じる。電極120の間隔が離れすぎていると、電流が電極120間で効果的に流れず、読み取り値に誤差が生じる。
【0041】
試験において、この導電率較正方法は効果的であると証明された。本明細書に記載されている、溶液を用いない方法によって較正された導電率センサ118は、従来法で較正されたセンサと概ね一致する導電率値を報告した。全体として、試験により、導電率センサ118は従来法で較正された導電率センサと同等の又はより優れた機能を果たすことが確認された。
【0042】
従って、上で説明したように、制御された外部電圧を(一連の抵抗器を有する)導電率センサ118の複数のセンサ電極120のうちの少なくとも2つに印加することにより、溶液を用いない較正デバイス100は、導電率溶液によって搬送される電流を再現し、これにより導電率センサ118を較正する際の実際の溶液の必要性が排除される。続いて電流を導電率モニタで測定して、センサ118が許容可能な値の所定の範囲内にあるかどうかを決定できる。
【0043】
更に、請求対象の較正デバイス100が、水溶液用の導電率センサ118の製造及び較正に関する他の特定の利点を提供することを確認できる。上で説明したように、本発明の代替的実施形態では、これらの利点は、pHセンサ又はDOセンサの製造及び較正に関しても実現できる。具体的には、請求対象のシステム及び方法により、較正のコストが削減され、顧客へのリードタイムが改善され、歩留まりが向上し、較正プロセスにより製品が汚染されるリスクが低下する。更に較正デバイス100は、より一貫した較正により、センサの仕様の正確度及び公差を改善する。
【0044】
本明細書中で参照した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別にかつ具体的に参照によって援用されることが示され、またその全体が本明細書中に記載されている場合と同等に、参照によって本明細書に援用される。
【0045】
本発明を記述する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)、用語「ある(a、an)」、「その、上記/前記(the)」、及び類似の指示物の使用は、本明細書中に特段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されていない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。用語「…を備える/含む(comprising)」、「…を有する(having)」、「…を含む(including)」、「…を含有する(containing)」は、特段の記載がない限り、非制限的な用語(即ち「…を含むがそれに限定されない(including, but not limited to)」を意味する)として解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の列挙は単に、本明細書中に特段の指示がない限り、該範囲内にある個々の値それぞれに個別に言及する簡略化された方法として機能することを意図したものであり、個々の値はそれぞれ、個別に本明細書中に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書中に特段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されていない限り、いずれの好適な順序で実施できる。本明細書中で提供されるいずれのあらゆる例、又は例示を表す語句(例えば「…等(such as)」)は単に、本発明をより明らかにすることを意図したものであり、特段の主張がない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる語句も、請求対象となっていないいずれの要素を本発明の実施に必須のものとして指示するものとして解釈してはならない。
【0046】
本発明の実施に関して本発明者らが把握している最良の態様を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載されている。これらの好ましい実施形態の変形例は、以上の記述を読めば当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこれらの変形例を適宜採用することを期待し、また本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図している。従って本発明は、準拠法によって許可されるような、本明細書に添付されている特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修正形態及び均等物を含む。更に、本明細書中に特段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されていない限り、全ての可能な変形形態での上述の要素のいずれの組み合わせが、本発明に包含される。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液用の導電率センサのための較正デバイスであって、前記較正デバイスは、
前記導電率センサのセンサ電極と電気的に結合するよう構成された第1のコネクタであって、前記コネクタは更に、前記センサ電極のうちの少なくとも2つの間に、制御された電圧の印加を提供するよう構成される、第1のコネクタ;
前記少なくとも2つのセンサ電極の間に接続され、前記第1のコネクタに結合される、第1の抵抗器であって、前記抵抗器は、前記少なくとも2つのセンサ電極の間の電流の流れが電気化学的較正用溶液の特性を再現するように、ある値を有する、第1の抵抗器;及び
較正される前記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするよう構成された、温度較正回路
を備える、較正デバイス。
【請求項2】
前記抵抗器に接続され、導電率モニタにも接続される第2のコネクタを更に備える、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項3】
前記第1のコネクタは、前記導電率センサの少なくとも4つのセンサ電極と電気的に結合するよう構成され、前記較正デバイスは更に、前記第1の抵抗器、第2の抵抗器、及び第3の抵抗器を有する抵抗器ネットワークを備え、ここで前記3つの抵抗器はそれぞれ、前記4つのセンサ電極のうちの異なる2つの間に結合される、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項4】
前記第1の抵抗器の抵抗値は40.2オームであり、前記第2及び第3の抵抗器の抵抗値はそれぞれ221オームである、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項5】
前記第1の抵抗器の抵抗値は38~42オームである、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項6】
前記第1の抵抗器の抵抗値は40.2オームである、請求項5に記載の較正デバイス。
【請求項7】
前記温度較正回路は、1対の抵抗器に結合されたスイッチング素子を含む、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項8】
前記1対の抵抗器のうちの一方の抵抗値は200~300オームであり、前記1対の抵抗器のうちの第2の抵抗器の抵抗値は1.5~2.5キロオームである、請求項7に記載の較正デバイス。
【請求項9】
前記1対の抵抗器のうちの一方の抵抗値は226オームであり、前記1対の抵抗器のうちの第2の抵抗器の抵抗値は2.1キロオームである、請求項7に記載の較正デバイス。
【請求項10】
外部電源への接続のために構成された端子を更に含む、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項11】
水溶液用の導電率センサを較正するための方法であって:
前記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現するステップ;
前記2つの電極の間に流れる電流を測定するステップ;及び
測定された前記電流が所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、前記導電率センサが良好に較正されているかどうかを判定するステップ
を含む、方法。
【請求項12】
前記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現する前記ステップは、前記2つの電極の間に抵抗器を接続するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの抵抗器を前記導電率センサの複数の電極それぞれに接続する抵抗器ネットワークを提供するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
較正される前記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記導電率センサの2つの電極の間に電圧を印加して、電気化学的較正用溶液の特性を再現する前記ステップは、較正デバイスを前記導電率センサの複数の電極に接続するステップであって、前記較正デバイスは、前記複数の電極それぞれに結合される1つ以上の抵抗器を含む、ステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
較正デバイスを前記導電率センサの複数の電極に接続する前記ステップは、較正デバイスを、較正される前記導電率センサに対する25℃環境をシミュレートするための温度較正回路と接続するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
導電率センサを較正するための方法であって:
a.前記センサの2つの電極の間に、制御された電圧を印加するステップ;
b.前記センサを制御された温度に維持しながら前記2つの電極の間の電流を感知するステップ;及び
c.感知された前記電流が前記センサの合格を示す所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、前記センサの導電率を算出するステップ
を含む、方法。
【請求項18】
制御された電圧を印加する前記ステップは、外部電源から定電圧を印加するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記温度較正回路及び前記第1の抵抗器は、同一の回路基板上に配置される、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項20】
前記温度較正回路及び前記抵抗器ネットワークは、同一の回路基板上に配置される、請求項3に記載の較正デバイス。
【請求項21】
前記温度較正回路は、2つ以上の抵抗器のネットワークに結合されたスイッチ部品を含む、請求項1に記載の較正デバイス。
【請求項22】
前記スイッチ部品は、導電率モニタによってトリガされるよう構成される、請求項21に記載の較正デバイス。
【請求項23】
前記温度較正回路は、前記温度抵抗器ネットワークを、導電率モニタに接続されたシリアルデータラインに適用することによって、較正中に25℃環境をシミュレートするよう構成される、請求項22に記載の較正デバイス。
【国際調査報告】