(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ナノ細孔支持構造及びその製造
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20230719BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230719BHJP
B82Y 35/00 20110101ALI20230719BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
G03F7/20 501
B82Y35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577455
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 GB2021051029
(87)【国際公開番号】W WO2021255414
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ミリス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー,ケン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジェイムス アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ハイド,ジェイソン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィルトシャー,リチャード ケネス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マッケンドリー,ジョナサン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】グレイシー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クライヴ ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ペラ,イオアナ
(72)【発明者】
【氏名】サンゲーラ,ガーディアル シン
(72)【発明者】
【氏名】ハイランド,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オルティス バハモン,ペドロ ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,マーク デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マケット,ポール レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,ロドリ リース
【テーマコード(参考)】
2G060
2H197
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AF15
2G060AG03
2G060AG11
2G060FA10
2G060FA17
2G060JA07
2G060KA09
2H197AB11
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA10
2H197JA14
(57)【要約】
複数のウェルを画定する壁を備える壁層と、ウェルの各々にわたって壁から延在するオーバーハングと、を備える、ナノ細孔支持構造が開示され、オーバーハングは、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成されたアパーチャを画定する。ナノ細孔支持構造を備えるナノ細孔感知デバイス、並びにナノ細孔支持構造及びナノ細孔感知デバイスを製造する方法が更に開示される。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ細孔支持構造であって、
複数のウェルを画定する壁を備える壁層と、
前記ウェルの各々にわたって前記壁から延在するオーバーハングであって、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成されたアパーチャを画定する、オーバーハングと、を備える、ナノ細孔支持構造。
【請求項2】
前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部を更に備える、請求項1に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項3】
前記突出部が、前記それぞれのウェルの内側の前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する内側突出部を含む、請求項2に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項4】
前記突出部が、前記それぞれのウェルの外側の前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する外側突出部を含み、及び/又は前記ナノ細孔支持構造が、前記ウェル間の前記壁層の外側表面の範囲の横方向に突出する外側突出部を備える、請求項2又は3に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項5】
各アパーチャについて、前記外側突出部が、前記アパーチャを少なくとも部分的に取り囲み、かつそこから後退したそれぞれの突出部壁を画定する、請求項4に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項6】
前記突出部壁が、前記アパーチャを部分的に取り囲み、かつその中に隙間を有する、請求項5に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項7】
各突出部壁が、メニスカスが前記それぞれのアパーチャ内に少なくとも部分的に延在するように、前記それぞれのアパーチャにわたって前記メニスカスが形成されることを可能にするように構成されている、請求項5又は6に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項8】
前記突出部壁が、前記アパーチャの75%~95%を取り囲む、請求項5~7のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項9】
各アパーチャについて、前記突出部壁を画定する、前記アパーチャに向かって面する内側表面と、前記アパーチャから離れて面する外側表面と、を備える、複数の周辺外側突出部を備える、請求項5~8のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項10】
前記外側表面が、微細パターン化構造を含む、請求項9に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項11】
前記周辺外側突出部間の領域に配置された中間外側突出部を更に備える、請求項9又は10に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項12】
前記中間外側突出部のうちの1つ以上が、微細パターン化構造を含む、請求項11に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項13】
前記突出部が、前記オーバーハングによる無極性媒体の保持を増加させるように配置されている、請求項2~12のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項14】
前記突出部が、前記オーバーハングの剛性を増加させるように配置されている、請求項2~513のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項15】
前記ウェルが、それぞれのベースを有する、先行請求項のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項16】
前記壁層が、前記ベースを更に画定する、請求項15に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項17】
前記ナノ細孔支持構造が、基板を更に備え、前記壁層が、前記基板に固定されており、前記基板が、前記ウェルの前記ベースを画定する、請求項15に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項18】
前記オーバーハング及び前記壁層が、硬化したネガ型フォトレジスト材料を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項19】
前記ウェル内に配設されたバリアを更に備え、前記バリアが、前記ネガ型フォトレジスト材料を硬化させるための波長の電磁放射の散乱を低減することが可能である、請求項18に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項20】
前記ウェルが、それぞれのベースを有し、前記バリアが、前記ベースから前記オーバーハングまで延在する、請求項19に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項21】
前記バリアが、前記壁から前記ウェル内に内向きに延在する、請求項19又は20に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項22】
前記バリアが、それらの範囲に沿って前記ウェル内に内向きに湾曲している、請求項21に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項23】
前記壁層及び前記オーバーハングが、一緒に固定されているそれぞれの成形された構成要素である、請求項1~17のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項24】
それぞれのアパーチャにわたって延在する膜を更に備え、任意選択的に、前記膜のうちの少なくともいくつかに挿入されたナノ細孔も備える、先行請求項のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造。
【請求項25】
ナノ細孔感知デバイスであって、
第1及び第2のチャンバと、
先行請求項のいずれか一項に記載のナノ細孔支持構造を備える平面構造であって、前記平面構造が、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に延在し、かつ前記ナノ細孔支持構造のそれぞれのウェル及びアパーチャを含む、複数の流体通路が提供されており、前記アパーチャが、前記第1のチャンバ内に開口している、平面構造と、
前記ナノ細孔と前記第2のチャンバとの間のそれぞれの通路内の流体電位を感知するように配置されている電極と、を備える、ナノ細孔感知デバイス。
【請求項26】
前記通路が、前記電極と前記第2のチャンバとの間に流体抵抗器部分を備える、請求項25に記載のナノ細孔感知デバイス。
【請求項27】
前記平面構造が、更なる層を備え、前記流体抵抗器部分が、前記更なる層内に形成されている、請求項25又は26に記載のナノ細孔感知デバイス。
【請求項28】
前記第1及び第2のチャンバが、前記平面構造の反対側にあり、前記通路が、前記平面構造を通って延在する、請求項25~27のいずれか一項に記載のナノ細孔感知デバイス。
【請求項29】
前記第1及び第2のチャンバ内に駆動電極を更に備える、請求項25~28のいずれか一項に記載のナノ細孔感知デバイス。
【請求項30】
ナノ細孔支持構造の製造方法であって、複数のウェルを画定する壁を備える壁層を形成することと、前記壁から前記ウェルにわたって延在するオーバーハングを形成することであって、前記オーバーハングが、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成されたアパーチャを画定する、形成することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部を形成することを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記突出部が、前記それぞれのウェルの内側の前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する内側突出部を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記突出部が、前記それぞれのウェルの外側の前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する外側突出部を含み、及び/又は前記方法が、前記ウェル間の前記壁層の外側表面の範囲の横方向に突出する外側突出部を形成することを含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
各アパーチャについて、前記外側突出部が、前記アパーチャを少なくとも部分的に取り囲み、かつそこから後退したそれぞれの突出部壁を画定する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記突出部壁が、前記アパーチャを部分的に取り囲み、かつその中に隙間を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
各突出部壁が、メニスカスが前記それぞれのアパーチャ内に少なくとも部分的に延在するように、前記それぞれのアパーチャにわたって前記メニスカスが形成されることを可能にするように構成されている、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
各アパーチャについて、前記突出部壁を画定する、前記アパーチャに向かって面する内側表面と、前記アパーチャから離れて面する外側表面と、を備える、複数の周辺外側突出部を形成することを含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記外側表面が、微細パターン化構造を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記周辺外側突出部間の領域に配置された中間外側突出部を形成することを更に含む、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記突出部が、前記オーバーハングによる無極性媒体の保持を増加させるように配置されている、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記突出部が、前記オーバーハングの剛性を増加させるように配置されている、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ウェルのベースを形成することを更に含む、請求項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記壁層が、前記ベースを構成する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させることと、前記ネガ型フォトレジスト材料を前記ナノ細孔支持構造の形で硬化させるように、前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させることと、前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む、請求項30~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記方法が、
未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させることと、
前記ネガ型フォトレジスト材料を前記ナノ細孔支持構造の形で硬化させるように、多重露光技術を用いて前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させることと、
前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
多重露光技術を用いて前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させる前記工程が、前記ネガ型フォトレジスト材料を前記オーバーハングの形で、及び前記壁層の少なくとも上部セクションを、前記オーバーハングよりも深いレベルまで硬化させるように実行される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
多重露光技術を用いて前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させる前記工程が、前記ネガ型フォトレジスト材料を別個の露光工程で露光させることを含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
多重露光技術を用いて前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させる前記工程が、前記ネガ型フォトレジスト材料を強度の空間変調を用いて露光させることを含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項49】
未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させ、多重露光技術を用いて前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させる前記工程を実施する前に、
未硬化のネガ型フォトレジスト材料の初期層を堆積させることと、
前記ネガ型フォトレジスト材料を前記壁層の下部セクションの形で硬化させるように、前記ネガ型フォトレジスト材料の初期層を露光させることと、を含む、初期段階を実施することを更に含み、
多重露光技術を用いて露光される前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料が、前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料の初期層上に更なる層として堆積される、請求項45~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、前記ネガ型フォトレジスト材料を、前記オーバーハング、及び前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部の形で硬化させるように、前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法が、前記ネガ型フォトレジスト材料を、前記オーバーハング、及び前記それぞれのウェルの内側の前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する内側突出部の形で硬化させるように、多重露光技術を用いて前記ネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が、
未硬化のネガ型フォトレジスト材料のオーバーハング層を堆積させることと、
ネガ型フォトレジスト材料を前記オーバーハングの形で硬化させるように、前記ネガ型フォトレジスト材料の第1の層を露光させることと、
未硬化のネガ型フォトレジスト材料の前記オーバーハング層上に、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の上部層を堆積させることと、
前記ネガ型フォトレジスト材料を、前記それぞれのウェルの外側の範囲の横方向に突出する外側突出部の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の前記上部層を露光させることと、を含む、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去する前記工程が、前記ネガ型フォトレジストが前記オーバーハング及び前記突出部の形で硬化された後にのみ実施される、請求項50~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記方法が、
未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第1の層を堆積させることと、
ネガ型フォトレジスト材料を、前記壁層及び前記ウェル内に配設されるバリアの形で硬化させるように、前記ネガ型フォトレジスト材料の前記第1の層を露光させることと、
前記第1の層の前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去して、前記ウェル及び前記バリアを形成することと、
未硬化のネガ型フォトレジスト材料の前記第1の層上に未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第2の層を堆積させることと、
ネガ型フォトレジスト材料を前記オーバーハングの形で硬化させるように、前記ネガ型フォトレジスト材料の前記第2の層を露光させることであって、前記バリアが、前記露光において適用される電磁放射の散乱を低減するように成形される、露光させることと、
前記第2の層の前記未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記ウェルが、それぞれのベースを有し、前記バリアが前記ベースから前記オーバーハングまで延在する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記バリアが、前記壁から前記ウェル内に内向きに延在する、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記バリアが、それらの範囲に沿って前記ウェル内に内向きに湾曲している、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記方法が、複数のウェルを画定する壁を備える前記壁層を形成することと、前記オーバーハングを別個の工程で形成することであって、前記オーバーハングが、前記壁から前記ウェルにわたって延在するように前記壁層に固定されている、形成することと、を含む、請求項30~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記壁層を形成する前記工程が、基板上に前記壁層を成形することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記基板が、その上に形成された電極を有し、前記壁層が、前記電極を前記ウェル内に位置させるように前記基板上に成形される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記オーバーハングを形成する前記工程が、前記オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部を有する前記オーバーハングを成形することを含む、請求項58~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記突出部が、前記それぞれのウェルから離れるように突出する外側突出部を含み、前記オーバーハングを形成する前記工程が、前記壁層上の前記外側突出部を有する前記オーバーハングを成形することを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記オーバーハングを形成する前記工程が、前記壁層上に前記オーバーハングを成形することを含む、請求項58~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
それぞれのアパーチャにわたって延在する膜を形成することと、任意選択的に、前記膜のうちの少なくともいくつかにナノ細孔を挿入することも更に含む、請求項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
ナノ細孔感知デバイスの製造方法であって、
請求項30~63のいずれか一項に記載の方法によってナノ細孔支持構造を作製することと、
ナノ細孔感知デバイスを作製することと、を含み、前記ナノ細孔感知デバイスが、
第1及び第2のチャンバと、
前記ナノ細孔支持構造を備える平面構造であって、前記平面構造が、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に延在し、かつ前記ナノ細孔支持構造のそれぞれのウェル及びアパーチャを含む、複数の流体通路が提供されており、前記アパーチャが、前記第1のチャンバ内に開口している、平面構造と、
前記ナノ細孔と前記第2のチャンバとの間のそれぞれの通路内の流体電位を感知するように配置されている電極と、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ細孔支持構造、及びナノ細孔支持構造の製造方法に関する。
【0002】
ナノ細孔センサは、ポリマー分子などの単一分子を含む幅広い種を感知するために開発されている。既知のナノ細孔センサデバイスは、Oxford Nanopore Technologies Ltd.によって製造及び販売されているMinION(商標)である。その中のナノ細孔ベースの感知は、高抵抗両親媒性膜内に位置する生物学的ナノ細孔を通るイオン電流フローの測定を利用する。MinION(商標)は、ナノ細孔センサのアレイを有する。例えば、DNAなどのポリマー分析物などの分子がナノ細孔を移行されるとき、イオン電流の変動の測定を使用して、DNA鎖の配列を判定し得る。タンパク質などのポリヌクレオチド以外の分析物を検出するためのナノ細孔デバイスもまた、参照によりその全体が本明細書に援用されるWO2013/123379から既知である。
【0003】
ナノ細孔が位置する両親媒性膜は、典型的には支持構造上で支持される。そのような構造の多くの設計が既知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用されるUS2015/265994は、膜のアレイのための支持体の設計を開示している。US2015/265994は、ウェルとして機能する、それらの間に隙間のない内側陥凹を画定する内側部分と、内側部分から外側に延在し、それらの間に隙間を有する、支柱のように見える外側部分と、を備える、ナノ細孔支持構造を開示している。そのようなナノ細孔支持構造では、外側部分(支柱)は、内側部分の内側陥凹(ウェル)のフットプリントの外側にある。支持された膜は、内側陥凹の開口部にわたって延在する。したがって、実際の膜は、相対的に大きく、これは、大きい膜のキャパシタンスを生み出し、膜の機械的な堅牢性を低下させる。しかしながら、内側陥凹のサイズが低減される場合、内側陥凹内の流体のリザーバの容積が低減し、したがってより早く排出される。したがって、内側陥凹のサイズは、膜特性と内側陥凹内の利用可能な流体の体積との間で均衡化される。
【0004】
例えば、US2015/265994に開示されているナノ細孔支持構造から既知であるのは、膜特性と内側陥凹内の利用可能な流体の体積との間の均衡だけでなく、それらは膜に影響を与えることが見出されており、アクセス孔が各ウェルの底部において開口しているこのタイプのナノ細孔支持構造を使用する場合、膜は、支持構造全体にわたって移動可能である。膜の表面張力によって生じる余分な圧力により、ウェル内の溶液は、アクセス孔を通してゆっくりと排出される傾向があり、膜は、最終的に崩壊する。
【0005】
望ましい特性を有する膜を確実に形成することは、常に困難である。より安定している膜の形成を促進し、それらが使用される感知用途により良好に適した特性を有する改善された支持構造を提供することが有利である。
【0006】
本発明は、そのような改善されたナノ細孔支持構造、及びそれらを製造する方法に関する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、複数のウェルを画定する壁を備える壁層と、ウェルの各々にわたって壁から延在するオーバーハングであって、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成されたアパーチャを画定する、オーバーハングと、を備える、ナノ細孔支持構造が提供される。
【0008】
オーバーハングを含めることで、膜を形成することができるアパーチャを画定する。これは、実際の膜のサイズ及び面積を低減しながら、ウェルのサイズを大きくすることを可能にする。更に、これは、膜のキャパシタンスを低減させ、膜の安定性を改善する。アパーチャのサイズは、ウェルのサイズとは無関係に選択することもでき、ナノ細孔支持構造の設計パラメータにより高い柔軟性を提供する。ウェルのサイズは、深さ及び/又は断面積において増加され得る。ウェルのサイズを増加させると、より多くの緩衝溶液をウェル内に保存することを可能にし、そのようなナノ細孔支持構造を含むナノ細孔感知デバイスが、緩衝液が枯渇するまでにより長い期間動作することを可能にする。
【0009】
いくつかの実施形態では、壁は、くぼみ又は突出部などの無極性媒体、例えば油を保持する特徴部なしで提供され得る。壁は、特徴部がないものとすることができる。壁は、実質的に滑らかであり得る。無極性媒体保持特徴部を有しない壁を提供することは、無極性媒体がウェル内の電極上に侵入することなく、それらの壁又はそれらのそれぞれのベースに電極を有するウェルが、より大きい深さ及びアスペクト比で提供され得るという利点を有する。これにより、より大きいウェルの容積及びより多くの量のレドックス電極メディエータをウェル内に提供することが可能になり、動作時のデバイスの寿命を延ばすことが可能になる。
【0010】
他の実施形態では、壁には、突出部などの無極性媒体制御特徴部が提供され得る。オーバーハングから延在する壁全体又は壁の一部にわたって延在し得る、そのような無極性媒体制御特徴部。
【0011】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔支持構造は、オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部を更に備える。突出部は、オーバーハングの表面及び構造特性を更に制御することを可能にし、それによって、ナノ細孔支持構造及びそれが内部で機能する感知デバイスの性能を改善する。
【0012】
いくつかの実施形態では、突出部は、それぞれのウェルの内側のオーバーハングの範囲の横方向に突出する内側突出部、及び/又はそれぞれのウェルの外側のオーバーハングの範囲の横方向に突出する外側突出部を含む。内側及び外側突出部は、ウェルの内側及び外側の両方のオーバーハングの表面及び構造特性の制御を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、突出部は、オーバーハングによる無極性媒体の保持を増加させるように配置されている。ナノ細孔支持構造のオーバーハングの表面上の無極性媒体の保持は、ナノ細孔支持構造上での膜の形成を促進する。代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、ナノ細孔支持構造は、ウェル間の壁層の外側表面の範囲の横方向に突出する外側突出部を備える。いくつかの外側突出部は、壁層の外側表面及び1つ以上のオーバーハングの両方から延在し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、各アパーチャについて、外側突出部は、アパーチャを少なくとも部分的に取り囲み、かつそこから後退したそれぞれの突出部壁を画定する。突出部壁を提供することにより、メニスカスがそれぞれのアパーチャ内に少なくとも部分的に延在するように、それぞれのアパーチャにわたってメニスカスが形成されることを可能にし得る。メニスカスのこのより優れた制御は、アパーチャ内の膜の形成を助けるために使用され得、膜形成を促進するための前処理の必要性を回避し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔支持構造は、各アパーチャについて、突出部壁を画定する、アパーチャに向かって面する内側表面と、アパーチャから離れて面する外側表面と、を備える、複数の周辺外側突出部を備える。周辺外側突出部のうちの1つ以上の内側表面及び/又は外側表面は、微細パターン化構造を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、外側突出部は、周辺外側突出部間の領域に配置された中間外側突出部を更に含む。中間外側突出部は、膜の形成に使用される無極性媒体を、アパーチャにわたって送達及び制御するのに役立ち得る。1つ以上の中間外側突出部は、微細パターン化構造を含み得る。特に、1つ以上の中間外側突出部のうちの1つ以上の表面は、微細パターン化構造を含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、突出部は、オーバーハングの剛性を増加させるように配置されている。これは、損傷の可能性を低減させ、それによって、構造の寿命を改善し、デバイスの性能の一貫性を改善する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ウェルは、それぞれのベースを有する。ウェルのベースは、電極又は更なるアパーチャなど、ナノ細孔感知デバイスにおいて重要な更なる構造を支持するために使用され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、壁層は、ベースを更に画定する。これは、壁層を画定する同じプロセスの一部としてベース層を形成することができるため、いくつかの用途において好都合であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔支持構造は、基板を更に備え、壁層は、基板に固定されており、基板は、ウェルのベースを画定する。別個の基板を使用してベースを画定することは、製造方法によっては有利である場合があり、この場合、壁層に使用されるものとは異なる材料を使用してベースを画定することが望ましい。
【0021】
いくつかの実施形態では、オーバーハング及び壁層は、硬化したネガ型フォトレジスト材料を含む。これは、レジストの露光を制御することによって、フォトレジスト材料を所望の構造に形成することができるため有利である。
【0022】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔支持構造は、ウェル内に配設されたバリアを更に備え、バリアは、ネガ型フォトレジスト材料を硬化させるための波長の電磁放射の散乱を低減することが可能である。散乱は、不所望の領域でフォトレジスト材料の露光を引き起こす可能性があり、それによってナノ細孔支持構造の構造がその意図した設計から変化する。バリアは、光の散乱を低減することでこの影響を低減する。
【0023】
ウェルがそれぞれのベースを有するいくつかの実施形態では、バリアは、ベースからオーバーハングまで延在する。これにより、バリアによって提供される散乱の低減が改善され、いくつかの実施形態では、バリアがオーバーハングに構造的支持を提供することも可能になる。
【0024】
いくつかの実施形態では、バリアは、壁からウェル内に内向きに延在し、任意選択的に、バリアは、それらの範囲に沿ってウェル内に内向きに湾曲している。これは、特に製造方法のいくつかの実施形態において、バリアが構造的支持を提供する能力を改善することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、壁層及びオーバーハングは、一緒に固定されているそれぞれの成形された構成要素である。成形は、フォトレジストの使用に対して代替的な製造方法であり、ナノ細孔支持構造が形成される材料の要件によっては好ましい場合がある。
【0026】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔支持構造は、それぞれのアパーチャにわたって延在する膜を更に備え、任意選択的に、膜のうちの少なくともいくつかに挿入されたナノ細孔も備える。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、ナノ細孔感知デバイスであって、第1及び第2のチャンバと、本発明の第1の態様によるナノ細孔支持構造を備える平面構造であって、平面構造は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に延在し、かつ当該ナノ細孔支持構造のそれぞれのウェル及びアパーチャを含む、複数の流体通路が提供されており、アパーチャは、第1のチャンバ内に開口している、平面構造と、ナノ細孔と第2のチャンバとの間のそれぞれの通路内の流体電位を感知するように配置されている電極と、を備える、ナノ細孔感知デバイスが提供される。
【0028】
ナノ細孔感知デバイスは、膜のアレイを含み得、各膜はそれぞれのアパーチャにわたって提供されている。各膜はナノ細孔を含み得る。
【0029】
上で考察されるように、本発明の第1の態様のナノ細孔支持構造は、それらの構造的及び電気的特性に関して利点を提供する。したがって、これらのナノ細孔支持構造を備えるナノ細孔感知デバイスは、その設計の改善された信頼性及び柔軟性を有する。例えば、ナノ細孔支持構造は、膜全体の圧力を均衡化させ、膜をアパーチャの位置にピン止めすることに寄与する。これにより、ナノ細孔と第2のチャンバとの間の通路を提供するために使用することができる底部の開口部又は貫通孔を有するウェルと互換性があるものになる。
【0030】
いくつかの実施形態では、通路は、電極と第2のチャンバとの間に流体抵抗器部分を備えることができる。これらの流体抵抗器部分は、電極と第1のチャンバとの間のナノ細孔を通る抵抗に匹敵する、電極と第2のチャンバとの間の流体抵抗を引き起こすことができる。これにより、流体電位の測定のための有利な構成が可能になる。
【0031】
いくつかの実施形態では、平面構造は、更なる層を備え、流体抵抗器部分は、更なる層内に形成されている。流体抵抗器部分を更なる層に配置することにより、ナノ細孔支持構造の壁層又は基板によって流体抵抗器部分を形成する必要がある場合と比較して、追加の設計柔軟性が可能になる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のチャンバは、平面構造の反対側にあり、通路は、平面構造を通って延在する。これにより、ナノ細孔を通るイオンの流れが可能になり、ナノ細孔を通過する分子の特性の測定を可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔感知デバイスは、第1及び第2のチャンバ内に駆動電極を更に備える。これらにより、電圧を印加して2つのチャンバ間でイオン電流を駆動し、ナノ細孔を通過する分子の特性の測定を可能にする。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、ナノ細孔支持構造の製造方法であって、複数のウェルを画定する壁を備える壁層を形成することと、壁からウェルにわたって延在するオーバーハングを形成することであって、オーバーハングは、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成されたアパーチャを画定する、形成することと、を含む、方法が提供される。
【0035】
上で考察されるように、オーバーハングを含むナノ細孔支持構造を形成することは、膜を形成することができるアパーチャを画定する。これは、実際の膜のサイズ及び面積を低減しながら、ウェルのサイズを大きく保つことを可能にする。更に、これは、膜のキャパシタンスを低減させ、膜の安定性を改善する。アパーチャのサイズは、ウェルのサイズとは無関係に選択することもでき、ナノ細孔支持構造の設計パラメータにより高い柔軟性を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は、オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部を形成することを更に含む。突出部は、オーバーハングの表面及び構造特性を更に制御することを可能にし、それによって、ナノ細孔支持構造の性能を改善する。
【0037】
いくつかの実施形態では、突出部は、それぞれのウェルの内側のオーバーハングの範囲の横方向に突出する内側突出部、及び/又はそれぞれのウェルの外側のオーバーハングの範囲の横方向に突出する外側突出部を含む。内側及び外側突出部は、ウェルの内側及び外側の両方のオーバーハングの表面及び構造特性の制御を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、突出部は、オーバーハングによる無極性媒体の保持を増加させるように配置されている。ナノ細孔支持構造の表面上の無極性媒体の保持は、ナノ細孔支持構造上の膜の形成を促進する。
【0039】
いくつかの実施形態では、突出部は、オーバーハングの剛性を増加させるように配置されている。これは、損傷の可能性を低減させ、それによって、構造の寿命を改善し、デバイスの性能の一貫性を改善する。
【0040】
いくつかの実施形態では、方法は、ウェルのベースを形成することを更に含む。上記のナノ細孔感知デバイスに関連して述べられるように、ウェルのベースは、電極又は更なるアパーチャなど、ナノ細孔感知デバイスにおいて重要な更なる構造を支持するために使用され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、壁層はベースを構成する。これは、ベース層を壁層と同時に形成することができるため、いくつかの用途において好都合であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をナノ細孔支持構造の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料を露光させることと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む。フォトレジスト材料を使用して構造を形成することは、光学技術を使用して構造を正確にパターン化することができ、多重露光及び/又は堆積並びに除去工程を使用して、異なる領域の構造を制御することができるため、有利であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をナノ細孔支持構造の形で硬化させるように、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させることと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む。単一の除去工程を伴う多重露光技術を使用することは、下側の露光層がレジスト構造の望ましくない移動を防止するために他の層を支持している状態で複数のフォトレジスト層を堆積することができるため、有利である。
【0044】
いくつかの実施形態では、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる工程は、ネガ型フォトレジスト材料をオーバーハングの形で、及び壁層の少なくとも上部セクションを、オーバーハングよりも深いレベルまで硬化させるように実行される。異なる深さまで露光させることは、フォトレジストの追加層を堆積させる必要なく両方の構造を形成することを可能にし、これは、製造時間を低減することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる工程は、ネガ型フォトレジスト材料を別個の露光工程で露光させることを含む。これは、利用可能な光学機器の機能に応じて、例えば、広い領域にわたって均一な照明のみが可能である場合に好ましい場合がある。
【0046】
いくつかの実施形態では、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる工程は、ネガ型フォトレジスト材料を強度の空間変調を用いて露光させることを含む。これは、例えば、別個の露光工程のために複数のマスクを作成する必要性を排除することができるため、有利であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させ、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる当該工程を実施する前に、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の初期層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料を壁層の下側セクションの形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の初期層を露光させることと、を含む、初期段階を実施することを更に含み、多重露光技術を用いて露光される未硬化のネガ型フォトレジスト材料は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の初期層上に更なる層として堆積される。この多重堆積技術は、より深いウェルの形成を可能にすることができ、これは、いくつかの用途において有利である。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、ネガ型フォトレジスト材料を、オーバーハング、及びオーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む。突出部は、オーバーハングの表面及び構造特性を更に制御することを可能にし、それによって、ナノ細孔支持構造の性能を改善する。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、ネガ型フォトレジスト材料を、オーバーハング、及びそれぞれのウェルの内側のオーバーハングの範囲の横方向に突出する内側突出部の形で硬化させるように、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料のオーバーハング層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をオーバーハングの形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第1の層を露光させることと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料のオーバーハング層上に、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の上部層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料を、それぞれのウェルの外側の範囲の横方向に突出する外側突出部の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の上部層を露光させることと、を含む。
【0051】
内側及び外側突出部は、ウェルの内側及び外側の両方のオーバーハングの表面及び構造特性の制御を提供する。突出部の下にオーバーハングが適切に形成されるために、フォトレジストを使用して外側突出部を形成するには、追加の堆積工程が必要である。
【0052】
いくつかの実施形態では、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去する工程は、ネガ型フォトレジストがオーバーハング及び突出部の形で硬化された後にのみ実施される。複数の堆積工程を伴う実施形態では、全ての硬化工程の後に単一の工程で全ての未硬化フォトレジストを除去することは、製造プロセスの効率を改善し、硬化中にフォトレジストの下側層が上層を支持することを可能にする。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第1の層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料を、壁層及びウェル内に配設されるバリアの形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第1の層を露光させることと、第1の層の未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去して、ウェル及びバリアを形成することと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第1の層上に未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第2の層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をオーバーハングの形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第2の層を露光させることであって、バリアは、露光において適用される電磁放射の散乱を低減するように成形される、露光させることと、第2の層の未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む。バリアの使用は、望ましくない領域でフォトレジストの硬化を引き起こし、構造の欠陥につながる可能性のある散乱を防止する。バリアはまた、複数の堆積工程を伴う実施形態において、未硬化のフォトレジストの少なくとも一部が工程間で除去される場合に、より高い層に構造的支持を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、方法は、複数のウェルを画定する壁を備える壁層を形成することと、オーバーハングを別個の工程で形成することであって、オーバーハングは、壁からウェルにわたって延在するように壁層に固定されている、形成することと、を含む。別個の工程を実施することは、製造方法の柔軟性を改善することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、壁層を形成する工程は、基板上に壁層を成形することを含む。成形は、例えば、ナノ細孔支持構造に使用される材料に応じて、いくつかの状況において有利であり得る。基板上に壁層を成形することは、壁層を基板に好都合に接合させる。
【0056】
いくつかの実施形態では、基板は、その上に形成された電極を有し、壁層は、電極をウェル内に位置させるように基板上に成形される。電極を実施することができ、基板は壁層とは異なる材料から形成される。これは、電極の設計及び製造の柔軟性を改善する。
【0057】
いくつかの実施形態では、オーバーハングを形成する工程は、オーバーハングの範囲の横方向に突出する突出部を有するオーバーハングを成形することを含む。いくつかの実施形態では、突出部は、それぞれのウェルから離れるように突出する外側突出部を含み、オーバーハングを形成する工程は、壁層上の外側突出部を有するオーバーハングを成形することを含む。いくつかの実施形態では、オーバーハングを形成することは、壁層上にオーバーハングを成形することを含む。突出部は、上で考察されるような利点を有する。突出部は、アパーチャの周りに同心円状に構成することができる。オーバーハングを壁層とは別個に成形し、それらを壁層上に成形することは、壁層及びオーバーハングの材料をより柔軟に選択することができ、使用される正確な成形プロセスに応じて必要であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、それぞれのアパーチャにわたって延在する膜を形成することと、任意選択的に、膜のうちの少なくともいくつかにナノ細孔を挿入することも更に含む。これにより、ナノ細孔支持構造がナノ細孔感知デバイスに組み込まれる準備が整う。いくつかの実施形態では、膜は、平面方向に延在する。
【0059】
本発明の第4の態様によれば、ナノ細孔感知デバイスの製造方法であって、本発明の第3の態様による方法によってナノ細孔支持構造を作製することと、ナノ細孔感知デバイスを作製することと、を含み、ナノ細孔感知デバイスは、第1及び第2のチャンバと、ナノ細孔支持構造を備える平面構造であって、平面構造は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に延在し、かつ当該ナノ細孔支持構造のそれぞれのウェル及びアパーチャを含む、複数の流体通路が提供されており、アパーチャは、第1のチャンバ内に開口している、平面構造と、ナノ細孔と第2のチャンバとの間のそれぞれの通路内の流体電位を感知するように配置されている電極と、を備える、方法が提供される。
【0060】
第5の態様によれば、ナノ細孔アレイ支持構造を作製する方法であって、電極のアレイを備える平面基板を提供する工程と、基板上に壁層を提供してウェルを形成する工程であって、各ウェルは電極を備える、提供する工程と、電極を洗浄して、壁層を提供する工程から生じたいかなる残留物も除去する工程と、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成された対応するアパーチャのアレイを画定する上部層を壁層上に提供する工程と、を含む、方法が提供される。
【0061】
壁層及び/又は上部層は、成形プロセスによって形成され得る。
【0062】
上部層は、ウェルの各々にわたって壁から延在するオーバーハングを備え得、オーバーハングは、ナノ細孔の挿入に好適な膜を支持するように構成されたアパーチャを画定する。
【0063】
電極を洗浄する工程は、電極の表面をプラズマ処理、化学処理、UV処理、熱処理及びレーザ処理のうちの少なくとも1つに曝露する工程を含み得る。
【0064】
方法は、対応するアパーチャのアレイにわたって膜のアレイを形成する工程を更に含み得る。
【0065】
方法は、アレイの膜の各々にナノ細孔を提供する工程をまた更に含み得る。
【0066】
上部層を追加する前に洗浄プロセスを提供することにより、表面に損傷を与え、表面が膜を形成するのに最適でなくなる可能性がある洗浄プロセスに上部層が供されないことを確実にしながら、電極を洗浄することを可能にする。
【0067】
より良好な理解を可能にするために、本発明の実施形態は、添付の図面を参照して非限定的な例としてここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1b】は、
図1aのナノ細孔支持構造のアレイの平面図である。
【
図1c】は、ナノ細孔支持構造内の二重層を例解する。
【
図2】代替形態を有するナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図3】ナノ細孔支持構造を組み込んだナノ細孔感知デバイスの側断面図である。
【
図4】突出部を有するウェルのオーバーハングの側断面図である。
【
図5a】フォトレジストを使用する第1の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図5b】フォトレジストを使用する第1の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図5c】フォトレジストを使用する第1の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図5d】フォトレジストを使用する第1の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図5e】フォトレジストを使用する第1の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図6a】フォトレジストを使用する第2の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図6b】フォトレジストを使用する第2の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図6c】フォトレジストを使用する第2の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図6d】は、膜が内部に形成された、得られたナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図7a】オーバーハングのないナノ細孔支持構造の比較例の側面図である。
【
図7b】は、膜が内部に形成された、第2の製造方法を使用して作製されたナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図8a】フォトレジストを使用する第3の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図8b】フォトレジストを使用する第3の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図9a】フォトレジストを使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図9b】フォトレジストを使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図9c】は、得られたナノ細孔支持構造の平面図である。
【
図10a】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10b】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10c】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10d】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10e】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10f】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10g】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10h】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10i】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10j】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10k】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図10l】成形を使用する第4の製造方法の工程中のナノ細孔支持構造の側面図である。
【
図11】従来のナノ細孔支持構造、及びナノ細孔支持構造の時間に対する開口細孔電流のグラフである。
【
図12】ナノ細孔支持構造のアパーチャの可能な形状を示す。
【
図13】壁のベースに電極を有する基板に接続されたタレット状ウェルアレイ構造を有する、感知デバイス又はその構成要素の概略断面図である。
【
図14a】
図13の構成要素を作製するために使用することができるプロセス工程の断面図である。
【
図14b】
図13の構成要素を作製するために使用することができるプロセス工程の断面図である。
【
図14c】
図13の構成要素を作製するために使用することができるプロセス工程の断面図である。
【
図14d】
図13の構成要素を作製するために使用することができるプロセス工程の断面図である。
【
図14e】
図13の構成要素を作製するために使用することができるプロセス工程の断面図である。
【
図14f】
図13の構成要素を作製するために使用することができるプロセス工程の断面図である。
【
図15】フィンを短くした突出部を有する成形型の斜視図である。
【
図16】区画のベースに陥凹が提供された、改善されたウェルアレイ構造の単一区画の斜視図である。
【
図17a】コーティング、穿孔、充填、及びエッチングされた基板に接続されたタレット状ウェルアレイ構造を有する、ウェルアレイ構造が接続される前の、感知デバイス又はその構成要素を形成するための方法工程の概略断面図である。
【
図17b】コーティング、穿孔、充填、及びエッチングされた基板に接続されたタレット状ウェルアレイ構造を有する、ウェルアレイ構造が接続される前の、感知デバイス又はその構成要素を形成するための方法工程の概略断面図である。
【
図17c】コーティング、穿孔、充填、及びエッチングされた基板に接続されたタレット状ウェルアレイ構造を有する、ウェルアレイ構造が接続される前の、感知デバイス又はその構成要素を形成するための方法工程の概略断面図である。
【
図17d】コーティング、穿孔、充填、及びエッチングされた基板に接続されたタレット状ウェルアレイ構造を有する、ウェルアレイ構造が接続される前の、感知デバイス又はその構成要素を形成するための方法工程の概略断面図である。
【
図17e】コーティング、穿孔、充填、及びエッチングされた基板に接続されたタレット状ウェルアレイ構造を有する、ウェルアレイ構造が接続される前の、感知デバイス又はその構成要素を形成するための方法工程の概略断面図である。
【
図19a】金属フィルムでコーティングする前の基板を通るビアの断面図である。
【
図19b】金属フィルムでコーティングする前の基板を通るビアの断面図である。
【
図20a】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図20b】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図20c】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図20d】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図20e】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図20f】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図20g】一方の側に金属化コーティングを有するシートから感知デバイスを形成するための、ビアの形成及び充填、並びに他方の側でのシート内のウェルアレイ構造の形成を含む、方法工程の概略断面図である。
【
図21】分析物(TBA)による細孔のブロック中に得られた電流測定のスクリーンショットの図であり、細孔は、本発明の感知構造上に支持された膜に挿入されている。
【
図22a】両側に金属フィルムを有するシートを貫通した導電性ビアの断面図である。
【
図22b】は、一方の側に金属フィルム、及び他方にスクリーン印刷されたパッドを有するシートを貫通した導電性ビアの断面図である。
【
図23a】パッドに接続された導電性ビアの断面図と位置合わせされた基板表面のトラック及びパッドの概略平面図である。
【
図23b】は、断面の概略図、及び毛管停止部を有するパッドの平面図である。
【
図25】本明細書に開示された技術を使用して形成された基板上にセンサを形成する層の断面図である。
【
図26a】単一の材料層でオーバーハングを製造するために行われる工程である。
【
図26b】単一の材料層でオーバーハングを製造するために行われる工程である。
【
図26c】単一の材料層でオーバーハングを製造するために行われる工程である。
【
図26d】単一の材料層でオーバーハングを製造するために行われる工程である。
【
図27】基板に形成されたウェルの、ウェルを作成するために適所のオーバーハング層がウェルに取り付けられる状態の断面図である。
【
図28】外側突出部を有するナノ細孔支持構造の概略上面図である。
【
図29a】外側突出部を有するナノ細孔支持構造の概略上面図である。
【
図29b】は、外側突出部を有するナノ細孔支持構造の側断面図である。
【
図30】代替形態の外側突出部を有する外側突出部を有するナノ細孔支持構造の上面図である。
【0069】
図1a及び1bは、既知の問題が低減されるナノ細孔支持構造1を示している。ナノ細孔支持構造1は、膜7を支持し、それによって、膜7に挿入されたナノ細孔8を支持するように設計されている。ナノ細孔8は、ナノ細孔8を通るイオン電流フローの測定を用い得るナノ細孔ベースの感知を可能にするために使用される。DNAなどの分子がナノ細孔8を移行すると、分子の特徴付けを可能にするイオン電流フローの変化が生成される。好適な膜7及びナノ細孔8の例を、以下で更に考察する。
【0070】
ナノ細孔支持構造1は、複数のウェル4を画定する壁3を備える壁層2を備える。明確にするために単一のウェルが
図1aに例解されているが、
図1bに示されているように、複数のウェル4は、規則的な平面アレイの平面に配置され得、規則的な平面アレイは、アレイの平面に対して垂直なウェル4の縦軸に沿って見たときに繰り返し構造を有する(
図1における垂直方向)。アレイは、直線グリッド又は六角形レイアウトで配置することができる。
図1bは、簡潔にするために9個のウェル4のみを示しているが、一般に、ナノ細孔支持構造1は、任意の数、典型的には9個よりはるかに多く、例えば1000個以上、更には最大で1000000個以上のオーダーのウェルを有し得る。
【0071】
ウェル4の壁3は、ウェルのベース11から垂直に延在することができる。ウェル4のフットプリントは円形であり得るが、これは必須ではなく、例えば正方形、長方形、楕円形、又は六角形などの他の形状が使用され得る。いくつかの実施形態では、ウェル4は、例えば角柱の形状を有する、少なくとも1つの軸に沿って実質的に一定の断面を有する。いくつかの実施形態では、ウェル4は、一定の断面を有していない場合がある。例えば、ウェル4は、半球又は「ディンプル」の形態であり得る。
【0072】
ナノ細孔支持構造1は、ウェル4の各々にわたって壁3から延在するオーバーハング5を備える。オーバーハング5は、ウェル4の縦軸に沿ってウェル4の上部範囲を画定する。オーバーハング5は、ウェル4のアレイの平面に対して平行であり、かつウェル4の縦軸に対して垂直な平面内に延在する。ウェル4が円筒形である
図1では、オーバーハング5は壁3に対して垂直に延在しているが、これはウェル4が他の形状を有する場合には当てはまらない場合がある。オーバーハング5は、壁3からウェル4の中央に向かって内向きに延在する。オーバーハング5は、ウェル4の縦軸の周りで実質的に対称であり得、それにより、ウェル4の周囲の全ての点で壁3から同じ距離だけ延在するが、これは必須ではなく、ウェル4は、ウェル4の縦軸の周りで対称ではない異なる形状を有し得る。
【0073】
オーバーハング5は、ナノ細孔8の挿入に好適な膜7を支持するように構成されたアパーチャ6を画定する。アパーチャ6は円形であり得るが、他の実施形態では正方形などの他の形状を有し得る。アパーチャ6の形状は、ウェルの断面などのウェル4の形状とは無関係であり得る。
【0074】
アパーチャ6はまた、より複雑な形状を有し得、例えば、アパーチャ6の中央に向かって内向きに延在するその周囲の1つ以上の部分を有する。そのような形状の例が
図12に示されており、ここで、黒い部分はアパーチャ6を示す。これらは、アパーチャ6の外周の周りのフィンガ構造、又はアパーチャ6に歯車の外観を与える規則的に離間された三角形の特徴部の形態を採り得る。そのような構造は、膜形成を促進するために使用される油をより良好に送達し、制御するのに役立つ。
【0075】
オーバーハング5によって画定されるアパーチャ6を使用することにより、ウェル4のサイズと、ウェル4を覆うのに必要な膜7のサイズとを切り離すことが可能になる。特に、アパーチャ6のサイズは、ウェル4の直径に対して限定することができる。アパーチャ6におけるこの限定は、実際の膜のサイズ及び面積を低減することができるため、膜7のキャパシタンスが低減され、膜7の安定性が改善される。
【0076】
また、膜7がナノ細孔支持構造1上に形成されるときの前処理工程の必要性を排除し得る。そのような前処理工程は、ナノ細孔支持構造1への膜7の接着を促進するために、ナノ細孔支持構造1上に無極性媒体を流すことを含み得る。限定されたアパーチャ6を有することにより、この工程を不要にし得る。
【0077】
限定されたアパーチャ6は、膜7全体の圧力を更に均衡化させることができ、膜7をアパーチャ6の位置にピン止めする。特に、膜7の上面及び底面は、同じ面(すなわち、アパーチャ6を画定するオーバーハング5の端面)から延在し得る。これは、膜7の深さを低減させ、ウェルの縦軸に沿った膜7の対称性を改善し、これが更に、以下で記載するように、使用中の膜7の移動及びウェル4の排出につながり得るいかなるバイアスも低減させる。これにより、ウェル4のベース10に開口部又は貫通孔を有するウェル4の使用が可能になる。
【0078】
ウェル内の二重層を、
図1cに示されているように構成することができ、ウェル内の流体のメニスカスが、アパーチャ6を少なくとも部分的に通って突出し、一方で、シスチャンバ内の流体のメニスカスがアパーチャに向かって延在し、二重層界面を形成する。膜を形成する二重層界面は、オーバーハング5の面によって画定される平面によって画定されるアパーチャの領域に近接することができる。二重層界面は、アパーチャの上縁と同じ高さにすることができる。膜を形成するメニスカスは非対称であり得る。
図1cは、
図28及び29に関連して以下で考察する、外側突出部51aを示している。
【0079】
更に、より大きい膜7を必要とせずに、ウェル4のサイズを増加させることができ、これは、多くの状況で有利である。特に、これにより、より高いイオン電流がナノ細孔8を通してより長い期間維持されることを可能にすることができる。
図11は、(i)最も下のトレースに示されているような、オーバーハング5を欠くナノ細孔支持構造1の従来の設計を通して測定された開口細孔電流と、(ii)最も上のトレースに示されているような、本発明によるアパーチャ6を画定するオーバーハング5を有するナノ細孔支持構造1とを比較する。従来の設計では、開口細孔電流がより急速に降下し、これは、メディエータ溶液が枯渇するにつれて、25時間未満後に急激にゼロに低下する。対照的に、オーバーハング5を有するナノ細孔支持構造1を通る開口細孔電流は、よりゆっくりと下がり、40時間後でもその元の値の約50%のままである。この溶液の枯渇の問題は、ウェル4と別個の第2のチャンバ32を提供することによって対処することもできるが、これについては以下で更に考察する。
【0080】
ウェル4のサイズは、一般に、深さを増加させること、及び/又は深さに対して横断方向の断面積(すなわちフットプリント)を増加させることによって、増加され得る。しかしながら、断面の増加は、アレイ全体のアパーチャ6の密度を低減させるため、高密度アレイを提供するために、深さを増加させることが好ましい。
【0081】
典型的には、ウェルの幅:深さのアスペクト比は、少なくとも1:3、好ましくは少なくとも1:5、より好ましくは少なくとも1:10であり得る。この文脈における「幅」は、円形であるウェル4の場合には直径であり得るか、又は断面積の平方根などの特徴的な幅であり得る。
【0082】
典型的には、アパーチャの幅対ウェルの幅のアスペクト比は、少なくとも2:3、好ましくは1:2~1:5の範囲であり得るが、最大で1:10であり得る。この文脈における「幅」は、円形であるウェル4の場合には直径であり得るか、又は断面積の平方根などの特徴的な幅であり得る。
【0083】
典型的には、ウェル4は少なくとも50μm、好ましくは少なくとも120μmの深さを有し得るが、これは限定的ではなく、ウェルは例えば最大で1mmの深さを有することができる。
【0084】
支柱の高さは、支柱の高さ対ウェルの深さのアスペクト比を1:10~1:200の範囲にすることができるように、5μm~30μmの範囲にすることができる。
【0085】
ウェル4は、それぞれのベース10を有する。ベース10は、ウェル4の縦軸に沿ってウェル4の下部範囲を画定する。ベース10は、ウェル4のアレイの平面に対して平行な平面内に延在する。
図1では、ベース10は、ナノ細孔支持構造1の壁3に対して垂直であるが、一般に、これはウェル4の形状によっては当てはまらない場合がある。
【0086】
ナノ細孔支持構造1は、基板20を更に備える。基板20は、壁層2とは異なる材料から形成され得る。例えば、基板20は、シリコン又はプラスチック、例えばKapton(商標)から形成され得る。壁層2は、基板20に固定されており、基板20は、ウェル4のベース10を画定する。壁層2は、基板20上に直接形成し得るか、又は別個に形成して後続の工程で基板20に固定し得る。
【0087】
ナノ細孔支持構造1は、ウェル4のベース10上に形成された電極11を備えることができ、ウェルは、水溶液であることができるイオン溶液で充填することができる。イオン溶液は、可溶性電極メディエータ、例えばフェリ/フェロシアン化合物を含むことができる。
【0088】
ウェル4が閉じられている例では、電極11を使用して、ウェル4の外側の基準に対するウェル4内のイオン電流を測定することができる。例えば
図3に示されているタイプの、ウェルが通路の一部を形成する例では、電極11を使用して、ウェル4内の流体電位を測定することができる。
【0089】
図1aは、それぞれのアパーチャ6にわたって延在する膜7と、膜7に挿入されたナノ細孔8とを示している。ナノ細孔8は生物学的ナノ細孔であり得、膜7はその中に挿入された生物学的ナノ細孔を有することができる。膜7は、例えばリン脂質二重層から形成された両親媒性膜であり得る。しかしながら、本発明によるナノ細孔支持構造1を備えるナノ細孔感知デバイス30が、膜7及びナノ細孔8なしで提供され得る。この場合、エンドユーザは、膜7を形成し、ナノ細孔8をそこに挿入する工程を実行する。
【0090】
図2は、ウェル4がそれぞれのベース10を有するが、壁層2がベース10を更に画定する代替形態を有するナノ細孔支持構造1を示している。この場合、ベース10及び壁層2は同じ材料から形成され、必須ではないが、同じ製造工程で形成され得る。壁層2がベース10を画定する場合でも、ナノ細孔支持構造1は、依然として基板20を備え得、壁層2は、基板20に固定されている。
【0091】
図1又は2に示されているようなナノ細孔支持構造1は、ナノ細孔感知デバイスに組み込まれ得る。ウェル4が閉じられているときの1つの可能なアプローチは、例えば
図1に示されているように、チャンバ25内に開口するアパーチャ6を有するナノ細孔支持構造1を提供することである。
【0092】
別のアプローチは、ナノ細孔支持構造1を2つのチャンバ間に配置し、ウェル4をそれらのチャンバ間の通路の一部を形成するように配置することであり、その例をここで記載する。
【0093】
図3は、以下のように配置されたナノ細孔感知デバイス30を示している。ナノ細孔感知デバイス30は、第1のチャンバ31と、第2のチャンバ32と、を備え、第1のチャンバ31と第2のチャンバ32との間に平面構造40を有する。第1及び第2のチャンバ31、32は流体で充填されている。第1及び第2のチャンバ31、32は、
図3に概略的に示されているが、任意の好適な構造を有して配置され得る。第1及び第2のチャンバ31、32は、閉鎖され得るか、又は内部の溶液の流れを可能にするフローセルの一部として配置され得る。
図3では、ウェル4は、第1のチャンバ31及び第2のチャンバ32の両方から別個である。しかしながら、
図1及び2に示されているようないくつかの実施形態では、第2のチャンバ32はウェル4自体によって提供される。ウェル4が第2のチャンバ32から別個である場合、各ウェル4はそれ自体の第2のチャンバ32を有し得るか、又は代替的には、1つ以上のウェル4が共通の第2のチャンバ32を共有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ細孔感知デバイス30のウェル4の全てが、単一の第2のチャンバ32を共有し得る。
【0094】
平面構造40には、第1のチャンバ31と第2のチャンバ32との間に延在する複数の流体通路41が提供されている。したがって、流体通路41は流体で充填されており、第1及び第2のチャンバ31、32を流体的に接続する。流体通路41の各々は、第1及び第2のチャンバ31、32に接続されているため、ナノ細孔8は、流体連通の平行経路内にある。複数の流体通路41は、平面構造40にわたる二次元のアレイに配置され得る。
【0095】
図3では、平面構造40の構成は示されていないため、流体通路41は概略的に示されている。平面構造40及び流体通路41の構成は、以下で詳細に記載する。
【0096】
この例では、第1及び第2のチャンバ31、32が平面構造40の反対側にあるため、流体通路41は平面構造40を通って延在する。しかしながら、代替として、第1及び第2のチャンバ31、32は、平面構造40の同じ側の異なる位置に配置され得る。
【0097】
この例では、駆動電極33、34が、第1及び第2のチャンバ31、32内に提供されている。使用中、駆動電極33、34にわたって、したがって各流体通路41にわたって電位差を印加して、第1のチャンバ31と第2のチャンバ32との間で分析物を流動させるように誘導し得る。駆動電極33、34は、全ての流体通路41にわたって実質的に同じ電位差を印加するように構成され得る。追加的又は代替的に、ナノ細孔感知デバイス30は、他の技術を使用して、流体通路41を通る分析物の流れを誘導するように構成することができる。
【0098】
第1のチャンバ31は、シスチャンバとして機能し、ナノ細孔感知デバイス30によって分析される分析物を保持し得る。第2のチャンバ32は、トランスチャンバとして機能し、第1のチャンバ31から分析物を受容し得る。
【0099】
したがって、平面構造40は、それぞれの流体通路41にわたって延在する膜7内のナノ細孔8を支持する。
【0100】
流体通路41にはそれぞれ、ナノ細孔8と第2のチャンバ32との間のそれぞれの流体通路41内の流体電位を感知するように配置された電極11が提供されている。分析物がナノ細孔8を通過するとき、イオン電流フローの変化によって引き起こされる電位の変動が、電極11によって検出される。したがって、所与の流体通路41内のナノ細孔8及び電極11は、ナノ細孔センサデバイス30内のそれぞれのセンサとして作用する。平面構造40は、一緒に固定されたナノ細孔支持構造1及びベース層42を備える。
図3に示されているように、ベース層42は、この例ではナノ細孔支持構造1の基板20に取って代わるが、代替として、
図1又は2に示されているようなナノ細孔支持構造1全体は、ベース層42に固定され得る。
【0101】
ナノ細孔支持構造1は、流体通路41にわたって延在する膜7内のナノ細孔8を支持するように構成されている。特に、ナノ細孔支持構造1には、第1のチャンバ31に開口するウェル4が提供されている。ウェル4は、流体通路41の一部を形成し、したがって、それらのベース10に開口部を有する。
【0102】
すでに説明したように、ウェル4は、流体通路41にわたって延在する、具体的にはウェル4の開口部にわたって延在する膜7を支持し、それによってナノ細孔8を支持するように構成されている。ナノ細孔支持構造1は、ウェル4を画定する壁3を備える壁層2を含む。
【0103】
ベース層42は、ナノ細孔支持構造1と第2のチャンバ32との間にあり、以下の層を含む。ベース層42は、この例ではナノ細孔支持構造1の基板20によって形成された半導体ウェハ43を含む。半導体ウェハ43は、回路層44を支持する。回路層44は、電極11に接続された回路構成要素を備える。回路構成要素は、電極11における流体電位が外部回路によって感知されることを可能にすることができる。
【0104】
流体通路41は、電極11と第2のチャンバ32との間の流体抵抗器の機能を提供することができる。「間」は、流体移動の意味で使用され、そのため、電極11と第2のチャンバ32との間の流路は、流体抵抗器部分50を含む。流体抵抗器部分50は、全ての実施形態において、電極11と第2のチャンバ32との間に完全に物理的に位置していない場合がある。より具体的には、流体通路41は、ベース層42を通って延在し、ベース層42に形成された流体抵抗器部分50と直列に流体的に接続された、上述のようなウェル4を含む。流体抵抗器部分は、回路層44を通って延在する回路層アクセス孔80と、半導体ウェハ43を通って延在するとともに、回路層アクセス孔80に流体的に接続されたウェハアクセス孔82と、を備える。
【0105】
流体抵抗器部分50は、流体抵抗器を形成するように構成されている。このようにして、流体通路41は、電極11と第2のチャンバ32との間に流体抵抗器を提供するように構成されている。
【0106】
ウェハアクセス孔82は、流体抵抗器部分50及び流体通路41の一部を形成し、その寸法は、流体抵抗器部分50の流体抵抗を判定するように構成することができる。ウェハアクセス孔82は、流体抵抗器として機能するように構造的及び幾何学的に構成されている。これは、ウェハアクセス孔82のアスペクト比を規定することによって達成することができる。追加的又は代替的に、回路層アクセス孔80の寸法を流体抵抗器として機能するように構成するなど、ウェハアクセス孔82に流体抵抗を実装するための他の技術を使用することができる。
【0107】
ウェハアクセス孔82の流体抵抗は、その寸法、特にそのアスペクト比を変更することによって、並びに、第1及び第2のチャンバ31、32内の流体のイオン濃度を変更することによって変更することができる。例えば、ウェハアクセス孔82は、抵抗を増加させるために高いアスペクト比を有して構成することができる。追加的又は代替的に、ウェハアクセス孔82内の流体は、ウェハアクセス孔82の抵抗を増加させるために、第1及び第2のチャンバ31、32内の流体と比較してより低いイオン濃度を有することができる。第1及び第2のチャンバ31、32内でより高いイオン濃度を維持することは、信号対雑音比を改善する。
【0108】
その結果、流体通路41は、電極11にわたって分圧器を形成する。
【0109】
ナノ細孔8の抵抗は、電極11と第1のチャンバ31との間の分圧器の第1の脚に存在する。ウェル4は、ナノ細孔8と比較して最小限の流体抵抗を有するように設計されている。
【0110】
流体抵抗器部分50の流体抵抗は、電極11と第2のチャンバ32との間の分圧器の第2の脚に存在する。回路層アクセス孔80及びウェハアクセス孔82は、流体抵抗器部分50の流体抵抗と比較して無視できる流体抵抗を提供するように設計され得るが、これは必須ではなく、追加の流体抵抗を提供するように設計され得る。
【0111】
分圧器の結果として、電極11によって流体通路41内で感知された流体電位は、流体通路41、ひいてはナノ細孔8を通って流れる電流の感知を可能にする。これが、ナノ細孔感知を可能にする。
【0112】
流体通路41、特に流体抵抗器部分50は、流体通路41が流体で充填されているときに分圧器の2つの脚の抵抗が実質的に一致し、第1及び第2のチャンバ31、32内の流体の抵抗に比して相対的に高くなるように構成することができ、それによって、第1及び第2のチャンバ31、32の抵抗が測定にあまり影響を与えない。
【0113】
信号対雑音比は、分圧器の2つの脚の流体抵抗が同等であるように選択することによって最適化され得る。しかしながら、これは必須ではなく、流体抵抗器部分50の流体抵抗は、依然として許容可能な信号対雑音比を取得しながら、他の要因を考慮に入れるために変更され得る。分圧器の第2の脚の流体抵抗が分圧器の第1の脚の抵抗よりも大幅に低い場合、例えば、分圧器の第2の脚の流体抵抗が、分圧器の第1の脚の抵抗の10%以下、例えば、その2%である場合に、許容可能な信号対雑音比が達成され得る。いくつかの実施形態では、分圧器の第2の脚の流体抵抗の下限は、所望の信号対雑音比によって設定され得る。
【0114】
分圧器の第2の脚、具体的には流体抵抗器部分50の流体抵抗の選択において考慮され得る他の要因は、以下の通りである。
【0115】
第2の脚の流体抵抗が増加するにつれて、イオンの拡散が減少し、細孔近くのイオンの枯渇が増加し、それにより、信号が取得される典型的な事象のタイムスケールにわたって信号の減衰が引き起こされる。この影響によって制限される利用可能な読み取り時間を増加させるために、流体抵抗器部分150の流体抵抗は、低減され得る。多くの実施形態では、この要因が、流体抵抗器部分50の流体抵抗に上限を課し得る。
【0116】
流体抵抗器部分50の流体抵抗が増加するにつれて、ナノ細孔8の両端の電圧の変動が増加し、これは信号処理を複雑にする可能性がある。この影響を制限するために、流体抵抗器部分50の流体抵抗は低減され得る。流体抵抗器部分50の流体抵抗を低減させることは、帯域幅を増加させ得るか、又は流体通路41内の追加のキャパシタンスのための余裕を提供し得る。
【0117】
これらの要因を考慮に入れると、分圧器の第2の脚の流体抵抗は、典型的にはナノ細孔8の抵抗の最大50%、又は最大25%、ナノ細孔8の抵抗よりも低くなり得る。いくつかの実施形態では、分圧器の第2の脚の最適な流体抵抗は、ナノ細孔8の抵抗の約10%であり得る。
【0118】
分圧器の第2の脚の流体抵抗対分圧器の第1の脚の抵抗の比を低減させるとき、信号対雑音比は、その抵抗比に直接比例しない。例えば、いくつかの実施形態では、分圧器の第2の脚の流体抵抗がナノ細孔8の抵抗の約10%である場合、信号対雑音比は、その最適値の約30%である。
【0119】
図3に例解されているオーバーハングは、その全体が参照により本明細書に援用されるWO2020/183172に記載され、示されている感知デバイスに実装することができる。
【0120】
ここで、上述のナノ細孔支持構造1の様々な製造方法を記載する。これらの方法は、ウェル4のベース10が別個の基板20によって形成される、
図1に示されているナノ細孔支持構造1に具体的に言及するが、ウェルのベース10が壁層2の一部によって形成される、
図2に示されているナノ細孔支持構造1にも同等に適合させることができる。
【0121】
図4の例に示されているように、方法のいくつかは、オーバーハング5の範囲の横方向に突出する突出部51、52を更に備えるオーバーハング5をもたらす。以下で更に考察されるように、いくつかの実施形態では、これは、オーバーハング5の上にフォトレジスト材料の追加の層を堆積(又は積層)することによって達成され得る。突出部51、52は、膜7を支持するか、又は油(若しくはより包括的には無極性媒体)がナノ細孔支持構造1上に保持される場所を制御するように作用し得る。この理由から、突出部51、52は、油制御特徴部(又はより包括的には無極性媒体制御特徴部)とも称され得る。いくつかの実施形態では、突出部51、52の油保持特性は、電極11の電気的性能を低減させ得る、油が電極11を覆うことを防止するのに役立ち得る。
【0122】
ウェル4の壁3も、油(又はより包括的には無極性媒体)の制御を考慮して設計され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、壁3には、特徴部がない場合がある。これは、ウェルを充填し、膜を形成し、膜にナノ細孔を挿入するプロセス中に壁が意図的に無極性媒体に曝されないためであるものとすることができ、そのため、制御特徴部は必要ない。これは、壁3上の無極性媒体の捕集を低減することができ、これは、例えば、電極11上の無極性媒体の捕集を低減するために、いくつかの状況において有利であり得る。
【0124】
他の実施形態では、壁3には、突起などの無極性媒体制御特徴部を提供することができる。そのような無極性媒質制御特徴部は、オーバーハング5からベース11まで壁3全体にわたって延在し得るか、又はオーバーハング5に隣接する壁3の一部、例えば、
図4の例における領域60のみに提供され得る。例として、突出部52は、オーバーハング5とウェル4の壁との間の境界面に提供することができる。例として、ウェル3の壁は、US2015/265994に開示されているようなフィン状の特徴部を組み込むことができる。
【0125】
突出部51、52は、それぞれのウェル4の内側のオーバーハング5の範囲の横方向に突出する内側突出部52と、それぞれのウェル4の外側のオーバーハング5の範囲の横方向に突出する外側突出部51と、を備える。突出部51、52は、ウェル4の縦軸と同じである同じ軸に沿って反対方向に延在する。しかしながら、これは必須ではなく、概して、外側及び内側突出部51、52は、互いに異なる軸に沿って、及び/又はウェル4の縦軸とは異なる軸に沿って延在し得る。
図4の突出部51、52は、実質的に正方形の形状を有するが、突出部51、52の特定の用途又は意図される機能に応じて、他の形状も可能である。
【0126】
典型的な突出部51、52は、小さい支柱のアレイ、又は小さいフィンガを有する支柱のアレイである。特に、突出部51、52は、オーバーハング5による無極性媒体の保持を増加させるために使用され得る。これは、アパーチャ6における膜7の正確な形成を促進するのに有利である。追加的又は代替的に、突出部51、52を使用して、オーバーハング5の剛性を増加させることができる。剛性は、例えば、壁3からオーバーハング5上に延在する(内側突出部52の場合)、又は壁3の上からオーバーハング5上に延在する(外側突出部51の場合)、直線的又は湾曲した隆起部をオーバーハング5上に形成することによって増加され得る。
【0127】
図4の実施形態は、内側突出部52及び外側突出部51の両方を備えるが、代替として、オーバーハング5は、内側突出部52のみ又は外側突出部51のみを備え得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、外側突出部51は、各アパーチャ6を少なくとも部分的に取り囲む突出部壁101を画定するように形成され得る。
図28は、そのような実施形態を示している。そのような実施形態では、外側突出部51は、それぞれのウェル4の外側のオーバーハング5の範囲の横方向、及び/又はウェル4間の壁層2の外側表面の範囲の横方向(すなわち、第1のチャンバ31に面する壁層31の表面)に突出し得る。壁層2又はオーバーハング5のいずれかに形成される外側突出部51は、以下でより詳細に記載するプロセスを使用して形成することができる。
【0129】
図28は、多数のウェル4を備え、それぞれのオーバーハング4がアパーチャ6を画定する、ナノ細孔支持構造1の上面図を示している。明確にするために、例解されたウェル4のうちの1つのみが、図面において完全に表記されている。4つのウェル4のみが例解されているが、任意の数のウェル4及び対応する特徴部が使用され得ることが理解されるべきである。
【0130】
各アパーチャ6について、外側突出部51は、アパーチャ6を少なくとも部分的に取り囲み、かつそこから後退したそれぞれの突出部壁101を画定する複数の周辺外側突出部51を備える。例解された実施形態では、外側突出部51は、アパーチャ6ごとに、複数の周辺外側突出部51aを備える。周辺外側突出部51aは、それらのそれぞれのアパーチャ6の周りに部分的に配置され、周辺外側突出部51a間に隙間を残す。周辺外側突出部51aは、突出部壁101を画定する、アパーチャに向かって面する内側表面と、アパーチャから離れて面する外側表面と、を備える。周辺外側突出部51aは、アパーチャの周りに同心円状に配置することができる。
【0131】
例解された実施形態では、3つの周辺外側突出部51aが各アパーチャ6に提供されている。1つを含む、他の任意の数の周辺外側突出部51aを使用して、各アパーチャの周りに周辺壁101を画定することができる。周辺外側突出部51aの数は、2~20個の間で変更することができる。周辺外側突出部51aのうちの1つ以上は、複数のアパーチャ6に共通であり得る。
【0132】
突出部壁101は、メニスカスがそれぞれのアパーチャ6内に少なくとも部分的に延在するように、メニスカスをそれぞれのアパーチャ6にわたって形成することを可能にするように構成されている。特に、アパーチャの上の突出部壁101の高さ、及び/又はアパーチャ6と突出部壁との間の距離(すなわち、突出部壁101がアパーチャ6の縁部からどれだけ後退しているか)は、アパーチャ6内に少なくとも部分的に延在するメニスカスが形成されることを可能にするように構成することができる。概して、突出部壁6は、上部流体と下部流体との間の界面がFakir状態にあるようなものであり得る。Fakir状態を形成するための条件は、Afferrante et al、J.Phys.:Condens.Matter 22(2010)325107(参照により本明細書に援用される)において考察されている。メニスカスのこの制御は、アパーチャにおける膜の形成を補助するために使用することができ、膜形成を促進するための前処理の必要性を回避することができる。
【0133】
例解された実施形態では、周辺外側突出部51aは、それらの間に隙間を有して配置されるため、突出部壁101はアパーチャを部分的にのみ取り囲む。突出部壁101は、アパーチャの約85%を取り囲んで
図28に示されているが、壁内の隙間は、突出部壁がアパーチャ6を含めて75%~95%を取り囲むように、サイズを変更することができる。ここで、取り囲まれたパーセンテージは、全円(すなわち360°)に対する突出部壁101の総方位角範囲(アパーチャ6の中央に対する極座標で考えた場合)の比率に等しい。そのようなカバー範囲は、周辺壁101内のメニスカスを制御することと、隙間を通ってアパーチャ6に向かう無極性媒体の流れを可能にすることとの間の均衡を提供する。
【0134】
例解された実施形態の外側突出部51は、中間外側突出部51bを更に備える。中間外側突出部51bは、周辺外側突出部51a間の領域に配置されている。中間外側突出部51bは、無極性媒体の流れを更に補助し、突出部壁101内への緩衝液の湿潤を制限する。例解された中間突出部51bは、実質的に三角形の断面を有するが、他の形状の断面を使用することができる。
【0135】
図29a及び29bは、
図28のナノ細孔支持構造1の更なる図を例解している。
図29aは、単一のアパーチャ6の周りの外側突出部51a、51bを示している。図から分かるように、周辺外側突出部51a及び中間外側突出部51bの両方が、アパーチャ6の周りに同心円状に配置されている。中間外側突出部51bは、
図28のように、複数のアパーチャ6間で共有され得るが、単一のアパーチャ6の視点から見た場合、1組の中間外側突出部51bが、アパーチャ6の周りに、アパーチャ6及び周辺外側壁51aと同心円状に配置され得る。
【0136】
図29bは、個々のウェル4の断面を示しており、そのウェル4の周辺外側突出部51bを例解している。
図29a及び29bは、ナノ細孔支持構造1の様々な構成要素の例示的な相対寸法を例解している。これらの寸法は、例としてのみ提供されており、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0137】
図28の実施形態では、周辺外側突出部51aの内側表面及び外側表面は実質的に滑らかである。他の実施形態では、内側表面及び/又は外側表面は、微細パターン化構造を含み得る。
図30は、周辺外側突出部51aの外側表面が微細パターン化構造102を有するような実施形態を示している。微細パターン化構造102は、無極性媒体の流れを更に補助し、アパーチャ6から離れる湿潤を制限することができる。微細パターニングは、成形構造の処理によって形成することができ、以下でより詳細に記載するように、成形構造を使用して外側突出部51を形成する。微細パターニングは、1つ以上の中間外側突出部51aの1つ以上の表面にも使用することができる。例として、
図28の中間外側突出部51b上に、実質的に正方形の外形を有する歯として微細パターン化構造が提供されているが、他の形状を実施することができる。微細パターン化構造102は、膜の形成に使用される油を保持することができる。周辺外側突出部51a間の隙間は、ウェルアレイの表面にわたって膜を形成するときに使用される油の流れを容易にすることができる。隙間内で膜が下降し、膜が破裂するのを阻止するために、微細パターン化構造102は、隙間と位置合わせして構成することができ、膜を支持するように機能する一方で、油が構造間の表面にわたって流れることを可能にする。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の中間外側突出部51bは、中間外側突出部51bの1つ以上の表面上に微細パターン化構造102を備え得、微細パターン化構造は、周辺外側突出部51a間の隙間に向かって延在する。
【0138】
1つのタイプの方法は、露光時間を制御する複数の露光工程を使用すること、又はグレースケール露光技術を使用して、単一の最終現像工程のみでオーバーハング構造を形成することを含む。最初に、ナノ細孔支持構造1がネガ型フォトレジスト材料の露光及び硬化を使用する方法によって形成され、それによって、オーバーハング5及び壁層2が硬化したネガ型フォトレジスト材料を含む例を記載する。そのような方法は、概して、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をナノ細孔支持構造1の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料を露光させることと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をナノ細孔支持構造1の形で硬化させるように、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させることと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む。このタイプの多重露光方法の例が
図5に示されている。この例では、ナノ細孔支持構造1は、オーバーハング構造の多重露光によって形成され、1回の最終現像工程のみを伴う。
【0140】
図5では、この方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させ、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる当該工程を実施する前に、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の初期層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料を壁層2の下部セクションの形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の初期層を露光させることと、を含む、初期段階を実施することを含む。これは、初期層が露光される
図5aに示されている。
【0141】
図5bでは、多重露光技術を用いて露光される未硬化のネガ型フォトレジスト材料が、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の初期層上に更なる層として堆積される。続いて、ネガ型フォトレジスト材料をオーバーハング5の形で、及び壁層2の少なくとも上部セクションを、オーバーハング5よりも深いレベルまで硬化させるように、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる工程が実行される。
【0142】
図5において、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる工程は、別々の露光工程でネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む。これは、
図5c及び
図5dに示されている。
図5cでは、ネガ型フォトレジスト材料はオーバーハング5の形で硬化される。
図5dでは、別個の露光工程で、ネガ型フォトレジスト材料が、壁層2の少なくとも上部セクションの形で、オーバーハング5よりも深いレベルまで硬化される。
図5eでは、未硬化のフォトレジスト材料を全て除去するために、ネガ型フォトレジスト材料の層のスタック全体に対して単一の現像工程が実施される。
図5cよりも
図5dにおけるより深いレベルへのフォトレジスト材料の硬化は、様々な方法で達成され得る。例えば、フォトレジスト材料は、
図5cよりも
図5dにおいてより長い時間露光され得るか、又はフォトレジスト材料を露光させるために使用される光の強度が、
図5cよりも
図5dにおいてより高くなり得る。
【0143】
このタイプの技術は、フォトレジスト材料の特定の選択によって容易にすることができる。例えば、厚いSU-8のような永久フォトレジスト材料の有利な特性は、露光中/露光後の材料の吸収係数の変化により、露光プロセス中に露光光が上から下に徐々に透過することである。これにより、露光タイミングを正しく選択して、レジスト層の上部のみを露光させることが容易になる。これは、複数回の露光と組み合わせて、未露光のフォトレジスト材料を下に残しながら、オーバーハング5を露光させることを可能にする。これは、多重露光技術を用いて露光される未硬化のネガ型フォトレジスト材料を堆積させる前に初期層を現像する必要がないことを意味し、未硬化のフォトレジスト材料は、後続の工程中に上のフォトレジスト材料の支持体として自然に作用することができる。
【0144】
多重露光技術は、2つの別個の露光工程で提供される2つの異なる露光レベルに限定されない。代替的なアプローチは、グレースケールリソグラフィ/露光である。この技術では、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させる工程は、ネガ型フォトレジスト材料を強度の空間変調を用いて露光させることを含む。これは、露光量に応じて、フォトレジスト材料の硬化部分の様々な厚さ(レジストの合計厚さまで)を形成するために使用することができる。このようにして、アパーチャ6の断面を容易に調整して、正しい膜7の形成を促進することができる。
【0145】
上で述べられるように、いくつかの実施形態では、方法は、ネガ型フォトレジスト材料を、オーバーハング5及びオーバーハング5の範囲の横方向に突出する突出部51、52の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む。突出部は、内側突出部52及び/又は外側突出部51であり得る。
【0146】
内側突出部が形成されるいくつかの実施形態では、方法は、ネガ型フォトレジスト材料を、オーバーハング5及びそれぞれのウェル4内のオーバーハング5の範囲の横方向に突出する内側突出部52の形で硬化させるように、多重露光技術を用いてネガ型フォトレジスト材料を露光させることを含む。内側突出部52は、多重露光技術においてオーバーハング5と同時に形成され得る。例えば、
図5cに示されている工程では、フォトレジスト材料をより深くまで露光させ、内側突出部52を形成するために、オーバーハング5に沿ったいくつかの点で、より大きい露光強度又は露光時間を提供することができる。代替的には、露光強度は、単一の露光工程で空間変調され得る。多重露光又はグレースケール露光技術は、オーバーハング5の下の未露光のフォトレジスト材料の支持体を使用して、オーバーハング表面の上部だけでなく、オーバーハング5の下にもこれらの突出部を形成することを可能にする。これは、より良好な膜形成、より照光な油制御及び膜全体の安定性をもたらすことができる。
【0147】
図6は、外側突出部51及び内側突出部52の両方が形成される方法の実施形態を示している。この実施形態では、方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料のオーバーハング層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をオーバーハング5の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第1の層を露光させることと、を含む。これは、
図5b~5dに示されている工程に対応するが、壁3の頂部が
図5dに示されているものと同様にこの時点で形成されることは必須ではない。オーバーハング5及び突出部51、52を完全に形成した後に、壁3の頂部を形成し得る。
【0148】
オーバーハングの形成に続いて、方法は、
図6aに示されているように、未硬化のネガ型フォトレジスト材料のオーバーハング層上に未硬化のネガ型フォトレジスト材料の上部層を堆積させることを含む。次に、
図6bに示されているように、ネガ型フォトレジスト材料をそれぞれのウェル4の外側の範囲の横方向に突出する外側突出部51の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第2の層を露光させる工程が実施される。
図6bでは、内側突出部52は、外側突出部51と同時に形成される。これは、内側突出部52が形成される領域において、フォトレジスト材料をより高い強度で、又はより長い時間露光させることによって達成することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、
図6bに示されているように、外側突出部51は内側突出部52の真上にある。これは、内側突出部52が形成される場合、フォトレジスト材料の上部層も同様に露光されるためである。外側突出部51が内側突出部52の真上にない場合、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の上部層が堆積される前に、内側突出部が形成されなければならない。未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去する工程は、ネガ型フォトレジストがオーバーハング5及び突出部51、52の形で硬化された後にのみ実施される。この最終現像工程は
図6cに示されており、未露光の(したがって未硬化の)フォトレジスト材料を全て除去する。これに続いて、膜7を、
図6dに示されているように、油及びポリマーを使用してアパーチャ6にわたって形成することができる。しかしながら、上で述べられるように、膜の形成はエンドユーザによって実施することができるため、
図6dに示されている工程は、製品の出荷前に実施されない場合がある。
【0150】
外側突出部51は、内側突出部52と一致して、オフセットして、又はそれらの組み合わせで形成することができる。これは、別個の積層及び露光工程によって達成することができる。ナノ細孔支持構造1が電圧感知を可能にする電極11を備える場合、各ウェル4は、流体抵抗器部分50に接続するための流体通路41の形のアクセス孔を底部に有する。US2015/265994に開示されているような既知の構造を使用して、アクセス孔を有するウェルにわたって膜が形成される場合、膜の表面張力からの追加の圧力、又は流体内の圧力摂動でさえ、流体通路41を通して液体を押し、膜7がウェル4の底部に圧潰するまで、ウェル4から緩衝溶液をゆっくりと排出することができる。
【0151】
対照的に、オーバーハング5により、アパーチャ6にわたって形成された膜7は、(i)低減されたサイズ、したがってその安定性を増加させること、(ii)その定常状態での表面張力が最小であること、(iii)大部分が平面的な表面、及び(iv)オーバーハングの厚さによって制御可能な浅い深さのうちの1つを有する。膜7をアパーチャ6から押しやるいかなる小さい摂動も、膜のサイズを増加させ、これは、エネルギー的に好ましくない。
図7に例解されているように、これらの特徴のうちの1つ以上は、膜7をアパーチャ6の位置に効果的に固定するように機能し、電圧感知用途のために長期間安定した膜7を形成するのを助けることができる。
【0152】
図7aは、オーバーハング5のないナノ細孔支持構造を示している。膜7のサイズが大きいことは、膜7が長期的に安定しないことを意味する。対照的に、
図7bは、本発明によるナノ細孔支持構造1を示している。より小さいアパーチャ6は、膜7がはるかに小さく、長期的により安定することを意味する。本明細書で考察される全ての例において、オーバーハング5及びアパーチャ6の構造は、以前のナノ細孔支持構造で必要であったような、使用中に油/膜の表面コーティングがウェル4の底部に侵入する必要性を取り除く。油/膜混合物がオーバーハング5(及び、例えば
図7bに見られる支柱/フィンガの形の、存在する任意の突出部)を覆っている限り、ナノ細孔支持構造1は必要な油制御及び膜支持機能を提供する。これにより、ウェル構造の材料の選択の柔軟性が高くなり、この理由は、ウェルが、油の付着を促進するために以前は必要であった壁層2を構成する疎水性材料に限定されないためである。親水性の壁層2及び/又はベース10は、流体抵抗器の充填及び気泡耐性に関して有用であり得る。これはまた、油が適用される前処理工程を排除することができ、それによって、ナノ細孔支持構造1を使用してナノ細孔感知デバイス30を組み立てるプロセスを簡素化する。必要なのは、ウェル4を真空引き又は加圧充填し、緩衝溶液を前面から排出して取り出し、オーバーハング5及び可能性としては突出部51、52が存在するウェル4の上部に油/膜混合物を追加し、シスチャンバを通して溶液を流すことだけである。
【0153】
初期層が露光及び現像された後に堆積されたフォトレジスト材料の追加層を使用してオーバーハング5を生成しようとする試みは、露光プロセスの信頼性が必要以上に低下するという課題を生じる可能性がある。第一に、ウェル4の上に懸架されたフォトレジスト材料の追加の層の下の支持の欠如により、追加の層がウェル4にわたって垂れ下がり、湾曲する。第二に、ウェル4の現像された構造により光キャビティが形成される。これにより、後続の露光工程からの光が、硬化したフォトレジスト材料の境界から散乱される。その結果、硬化したフォトレジスト材料の部分的に露光された薄いフィルムが、未露光領域への屈折/散乱光のために、最終現像工程の後、意図したアパーチャ6にわたって残る。これらの影響が、
図8に例解されている。
図8aは、未露光のフォトレジスト材料の後続の層がウェル4内に垂れ下がっていることを示している。望ましくない垂れ下がりに加えて、フォトレジスト材料の層のマスク下部分に向かって光が屈折/反射され、フォトレジスト材料の望ましくない領域が露光される。その結果、後続の現像工程に続いて、硬化したフォトレジスト材料の部分的に露光されたフィルムが、
図8bに示されているようにアパーチャ6をシールする。
【0154】
これらの影響を最小限に抑える1つの方法は、すでに上で述べた多重露光技術である。代替的に又は追加的に、ウェル4内の追加の支持構造をフォトレジスト材料の第1の層に提供することができるため、フォトレジスト材料の後続の層の垂れ下がりを低減することができる。これらの支持構造は、バリア70とも称され得る。そのような実施形態では、ナノ細孔支持構造1は、ウェル4内に配設されたバリア70を更に備え、バリア70は、ネガ型フォトレジスト材料を硬化させるための波長の電磁放射の散乱を低減することが可能である。
【0155】
バリア70を含むナノ細孔支持構造1を形成する方法は、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第1の層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料を、壁層2及びウェル4内に配設されるバリア70の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第1の層を露光させることと、第1の層の未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去して、ウェル4及びバリア70を形成することと、未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第1の層上に未硬化のネガ型フォトレジスト材料の第2の層を堆積させることと、ネガ型フォトレジスト材料をオーバーハング5の形で硬化させるように、ネガ型フォトレジスト材料の第2の層を露光させることであって、バリア70は、露光において適用される電磁放射の散乱を低減するように成形される、露光させることと、第2の層の未硬化のネガ型フォトレジスト材料を除去することと、を含む。
【0156】
図9aに示されているように、バリア70は、ウェル4内の光の屈折/反射を低減し、また、懸架されたフォトレジスト材料層の垂れ下がりを低減することができる。
図9bは、未硬化のフォトレジスト材料の現像及び除去後、アパーチャ6が空いていることを示している。
図9a及び
図9bでは、ウェル4は、それぞれのベース10を有し、バリア70は、ベース10からオーバーハング5まで延在する。
【0157】
底部に流体通路41を有しないウェル4の場合、ウェル4の容積が非常に重要であり、ナノ細孔支持構造1の実行時間に比例する。したがって、バリア70の剛性に大きい影響を与えることなく、バリア70の体積を最小限に抑えることが望ましい。フォトレジスト材料の懸架される層を保持するための小さい体積の剛性バリア70を設計する方法は多数ある。バリア70は、懸架されるフォトレジスト材料の追加の層がはるかに短い距離しか横断せず、したがって垂れ下がらないことを意味する。
図9cは、ナノ細孔支持構造1の上面図においてそのようなバリア70の例を示している。より暗い領域は、フォトレジスト材料の第1の層を示しており、5葉の湾曲したバリア70がはっきりと見える。バリア70は、壁3からウェル4内に内向きに延在する。バリア70は、それが占める体積を最小限に抑えるように設計されており、
図9cでは、バリア70は、それらの範囲に沿ってウェル4内に内向きに湾曲している。湾曲は剛性を増加させ、ウェル4の中央から光を反射/ブロックするのに役立つ。フォトレジスト材料の第2の層は、暗緑色領域及び明緑色領域の両方を覆い、膜7を形成するためのはるかに小さいアパーチャ6を残す。
【0158】
これまで、ナノ細孔支持構造1を形成する全ての方法は、フォトレジスト材料の層の露光を伴うものであった。代替的には、ナノ細孔支持構造1は、成形によって形成され得る。この場合、壁層2及びオーバーハング5は、一緒に固定されるそれぞれの成形構成要素である。成形を使用したナノ細孔支持構造1の製造方法の一例が
図10に示されている。この方法は、複数のウェル4を画定する壁3を含む壁層2を形成することと、オーバーハング5を別個の工程で形成することであって、オーバーハング5は、壁3からウェル4にわたって延在するように壁層2に固定される、形成することと、を含む。
【0159】
壁層2を形成する工程は、この例ではシリコンで形成された基板20上に壁層2を成形することを含む。これは、
図10a~10dに示されている。
図10aでは、未硬化の成形剤102が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から形成された壁層成形型100に真空充填されている。この例では、壁3の高さHは約90μmである。基板20は、この例では白金で形成された、その上に形成された電極11を有する。
図10bでは、壁層2が基板20上に成形されて電極11をウェル4内に位置させるように、壁層成形型100が電極11と位置合わせされる。未硬化の成形剤102を基板20上及び壁層成形型内に圧縮するために圧力が加えられる。
【0160】
図10cでは、成形剤は、紫外線(UV)の照射によって硬化され、硬化した成形剤104が壁層2の形状になる。この例では、波長が約365nmのUV光が使用されている。成形剤の選択に応じて、成形剤を加熱するなど、他の方法を使用して成形剤102を硬化させ得る。
図10dでは、壁層成形型100が取り外される。場合によっては、これにより、
図10dに示されているように、電極11の表面にわたって硬化した成形剤104の薄層が残り得る。これは、ナノ細孔支持構造1が組み込まれるナノ細孔感知デバイス30の電気的性能を妨げる可能性があるため、望ましくない。この層を除去するために、「デスカム」として既知のプロセスが実施される。これは、
図10eに例解されており、電極11の表面を洗浄するために酸素プラズマ又はレーザを適用することができる。この工程は、硬化した成形剤104の層が電極11上に残されているかどうかに応じて、方法の全ての実施形態では必要ではない場合がある。
【0161】
基板20上に壁層2を形成した後、オーバーハング5を別個に形成する。これは、
図10f~10iに例解されている。
図10fでは、未硬化の成形剤102が、PDMSで形成されたオーバーハング成形型110に真空充填されている。この例では、オーバーハングは約30μmの厚さを有し、オーバーハングが壁層2に固定されると、ウェル4のアパーチャ6が約10μm~約60μm、好ましくは約40μmになるように構成されている。オーバーハング成形型110は、複数のオーバーハング5が同時に形成され、正しい位置合わせ及び離間を有して対応する壁3上に直接配置されて複数のウェル4のアパーチャ6を画定するように構成されている。これは、複数のウェル4を同時に形成することができることを意味し、それにより、オーバーハング5を別々に形成し、それらを対応する壁3と個別に位置合わせしなければならないことと比較して、製造速度を増加させる。
【0162】
図10gでは、オーバーハング成形型110は、この例ではオーバーハング成形型110と同じPDMS材料で形成されたベース112上に圧縮されている。未硬化の成形剤102をオーバーハング成形型110内に圧縮するために圧力が加えられる。任意選択的に、
図10hに示されているように、部分硬化工程が実施される。これにより、オーバーハング5の正しい形状の保持が促進される一方で、オーバーハング5を壁層2に固定するために使用することができるオーバーハング5のいくらかの変形が依然として許容される。
図10iでは、オーバーハング成形型110がベース112から取り外され、オーバーハング部分103によって例解されているように、オーバーハング5はオーバーハング成形型110とともに留まる。これは、ベース112を剥がして、オーバーハング5の部分的に硬化された成形アレイが依然として存在し、壁層2と位置合わせされて固定される準備が整った状態で保持される、予め位置合わせされたオーバーハング成形型110を残すことによって達成される。
【0163】
図10j~10lは、オーバーハング5を形成する工程において、オーバーハング5が壁層2に固定される方法を例解している。オーバーハング5を形成することは、壁層2上にオーバーハング5を成形することを含む。
図10jでは、オーバーハング5を有するオーバーハング成形型110が、基板20上の壁層2と位置合わせされている。オーバーハング成形型110が接地すると、オーバーハング5を壁層2の上部に対して圧縮するために圧力が加えられる。
図10kでは、UV光を適用してオーバーハング5を硬化させ、それらを壁層2に接合させる。
図10lでは、オーバーハング成形型110が取り外され、完成したナノ細孔支持構造1が残る。任意選択的に、成形剤を更に硬化させるために、追加の加熱工程が実施され得るが、これは、低減又は完全に省略することができる。追加的又は代替的に、工程10iと10jとの間に酸素プラズマ洗浄工程を適用することができる。これは、電極11の表面を洗浄するように機能するだけでなく、このプロセスは、硬化した成形剤104の表面に、オーバーハング部分103への結合を強化する接着特性を残す。
【0164】
図10f~10iでは、オーバーハング5を形成する工程は、オーバーハング5の範囲の横方向に突出する突出部を有するオーバーハング5を成形することを含む。特に、突出部は、それぞれのウェル4から離れるように突出する外側突出部51を含み、オーバーハング5を形成する工程は、壁層2上の外側突出部を有するオーバーハング5を成形することを含む。この例では、外側突出部51は、約15μmのオーバーハング5上の高さを有する。突出部はまた、それぞれのウェル4の内側のオーバーハング5の範囲の横方向に突出する内側突出部を含み得る。
【0165】
成形された構成要素の表面上のいかなる残留物のプラズマ洗浄に対しても、追加的又は代替的に、例えばPDMSスタンプは、成形されたチップの表面エネルギーの変動につながる残留オリゴマーDMS材料を成形剤の表面に残すことがあり、溶媒抽出を使用して、未反応のDMSオリゴマーなどの不要な残留物を除去することができる。
【0166】
上記の例では、ウェルアレイ構造2は、電極11を有する基板20に取り付けられる。基板は:プリント回路基板、レーザアブレーションされたプラスチックシートから作製されたプラスチックインタポーザ、シリコンインタポーザ、及び電極として機能する露出端子をその片面に有する特定用途向け集積回路(ASIC)の表面のうちの1つを含むことができる。基板20は、片側の表面にレーザアブレーションされたウェルアレイ構造を有するプラスチックシートであり得る。プラスチックシートは、金属フィルムでコーティングすることができる。
【0167】
ウェルアレイ構造2は:成形されたポリマー102などの成形された材料、三次元印刷物、又はパターン化されたフォトレジスト材料のうちの1つを含むことができる、単一の構成要素から形成することができる。三次元印刷物は、誘電体インク(UV硬化性アクリレート)、疑似ポリイミドインク、ポリエーテルケトン、ポリ乳酸、誘電体セラミック、例えばLi2MoO4及びセラミック粒子の水溶液、ポリエーテルイミド並びにポリイミドを含む材料から作製することができる。
【0168】
代替的には、ウェルアレイ構造2は、2つの別個の層を含むことができる。すなわち、ウェルアレイ構造は、ウェル層2、例えば硬化した成形剤104を形成するベース層、及びオーバーハング層5を有することができる。したがって、オーバーハング層5は、ウェルアレイ構造2から別のレベル又は層で延在すると言える。
【0169】
ベース層2は、デバイス100の永久層として構成することができ、オーバーハングを画定する支持層5は、そこから取り外し可能に取り付けることができ、デバイスを再使用又は位置決めし直すために処理することを可能にする。
【0170】
ウェル4を画定するベース層2は:成形されたポリマー102、三次元印刷層、レーザアブレーションされたプラスチックシートから作製されたプラスチックインタポーザ、パターン化されたフォトレジスト材料、ガラス、シリコン又は二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含むことができる。ベース層は、基板20に接続されたときにウェル4を画定するためのアパーチャを有する貫通孔を画定する壁3のアレイを有する。
【0171】
オーバーハングを画定する支持層5は:成形されたポリマー102、三次元印刷層、レーザアブレーションされたプラスチックシートから作製されたプラスチックインタポーザ、パターン化されたフォトレジスト材料、ガラス又は二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含むことができる。支持層は、ウェル4にわたって両親媒性膜を形成するために油の保持を支持する突出部51、52の形の支柱を有する。代替的には、支持層は、固体ナノ細孔又はハイブリッドナノ細孔(固体アパーチャに位置付する生物学的ナノ細孔)を含むことができる。
【0172】
本明細書の教示、以下の製造方法及び例に照らして、基板20、ウェルアレイを画定するベース層2、及びオーバーハングを画定する支持層5の様々な組み合わせが構成可能である。
【0173】
図13は、3つのみが示されているウェル4のアレイ上に複数のナノ細孔を支持するための、ナノ細孔感知デバイス30又はその一部を作製するために使用することができるナノ細孔支持構造1の例を示している。感知デバイスは、電極11のアレイが位置する表面10を有する基板20を有する。電極11は、見られるように、ウェルの底部のアパーチャ又は開口領域158で露出されている。電極は、電子回路に接続するか、又は電子回路上に構成することができる。基板20上には、基板20に接続されたときにウェル4を画定するためのアパーチャ158を有する貫通孔160を画定する壁3のアレイを有するウェルアレイ構造2がある。ウェルアレイ構造は基板20に直接接続することができるが、この接続は接着層162で示されている。追加的又は代替的に、接続は、接着面又は他のそのような結合材料若しくは方法を使用することができる。基板20に接続されるとき、ウェル4及びアパーチャ158を画定する貫通孔は、当該ウェルアレイ構造のウェルのベースが電極によって少なくとも部分的に画定されるように、電極11のアレイと位置合わせされる。ウェルのベースは、基板20の表面10によって少なくとも部分的に画定することもできる。
【0174】
感知デバイス30を形成するために、ウェルのアレイ上で複数のナノ細孔を支持する前に、基板20を提供することができる。換言すると、基板がウェルアレイ構造に接続された後で、基板又はウェルアレイ構造に対する、感知デバイス30の性能に悪影響を与える更なる処理又は製造工程が必要ない。
【0175】
片側に支柱164及び他方の側にアパーチャ158を有するウェルアレイ構造2も別個に提供される。基板及びウェルアレイ構造を別個に提供することにより、それらが製造される条件が他の構成要素に何ら害を及ぼすことなく、それらを製造することができる。
【0176】
基板20は表面10上に電子回路を有することができるか、又は基板はプリント回路基板であることができる。電子回路及び電極は、特定用途向け集積回路(ASIC)の表面に提供することができる。
【0177】
ウェルアレイ構造を別個に提供することは、基板10の表面上にウェルアレイ構造2を形成することを含むことができ、すなわち、基板20が提供された後で、表面10を、ウェルアレイ構造が形成されるベースとして使用することができる。ウェルアレイ構造は、成形してから基板に適用することができるか、又は基板表面10上に直接成形することができる。
【0178】
電極11は、基板202の表面10の一部として
図13に示されている。代替的な例では、基板に貫通孔を提供し、導電性材料を充填して導電性ビアを提供することができ、ビアの露出部分は、ウェルアレイ構造のアパーチャ158においてウェル4のベースを少なくとも部分的に形成する電極として機能する。
【0179】
ウェルアレイ構造は、10ミクロン~1000ミクロン、好ましくは10ミクロン~500ミクロン、より好ましくは100ミクロン~500ミクロンの厚さを有することができる。ウェルの深さは、約5ミクロン~約1500ミクロン、好ましくは10ミクロン~500ミクロン、より好ましくは100ミクロン~500ミクロンであり得る。ウェルアレイ構造におけるウェル間のピッチは、約10~約1000ミクロン、好ましくは10ミクロン~500ミクロン、より好ましくは20ミクロン~100ミクロンであり得る。貫通孔は、200ミクロン未満、好ましくは10ミクロン~200ミクロンの直径を有することができる。
【0180】
感知デバイス30が形成された後、膜にナノ細孔を挿入する前に、ウェル4に液体を投入し、ウェルにわたる膜を形成することができる。膜は、(i)両親媒性膜を含み、生物学的ナノ細孔を支持し、(ii)固体膜を含み、固体ナノ細孔を有し、(iii)固体膜を含み、当該固体膜内の孔に生物学的ナノ細孔を支持することができる。
【0181】
感知デバイス30は、多くの方法で製造することができる。感知デバイスの機能は、異なる材料を使用して異なる方法でそれ自体を製造することができる基板20及びウェルアレイ構造2など、本明細書に記載される異なるモジュール構成要素の混合物を組み込むことによって実装することもできる。しかしながら、全体として、重要な要素、すなわち基板20及びウェルアレイ2は、センサ製造の後の段階で一緒に接続される。本明細書の例の多くにおいて、ウェルアレイ構造2は、取り外して新しい基板と交換することができるように、基板に取り外し可能に取り付けることができ、したがって感知デバイスをリサイクル可能にする。一例では、感知デバイス30を形成することは、貫通孔160を有するウェルアレイ構造2を形成することと、接着層162であり得る、パターン化された接着面を、ウェルアレイ構造2又は基板20のうちの少なくとも一方に更に提供することであって、当該パターン化された接着面は、接着剤のない複数の部分を画定する、更に提供することと、を含む。
【0182】
接着剤のない部分は、電極11をウェルアレイ構造の貫通孔に露出させる、パターン化された接着面の孔又は空隙などの領域であり得る。パターン化された接着面は、例えばこの面をUV光又はプラズマ処理に曝露することによって、接続面に接着特性を与えるように調製又は処理された、ウェルアレイ構造2又は基板20の表面10のうちの1つでもあり得る。
【0183】
ウェルアレイ構造2は、その表面上に位置する電極6のアレイが単一のウェルの一部を少なくとも部分的に画定するように、接着層162を使用して基板20と位置合わせされて接続される。
【0184】
基板20は、電極11を有する電子回路を支持するか又は組み込んでおり、当該電極と接触するか、又は電極を備える当該ウェルアレイ構造とは独立して形成される。接着層162の接着面を加熱して、ウェルアレイ構造の基板への接着を補助することができる。加熱は、電子回路の構成要素のガス放出温度未満の温度に制限することができる。追加的又は代替的に、電磁放射を使用して、ウェルアレイ構造を基板20に接着することができる。接着層162は、接着前に露光される光パターン化可能な接着剤であり得る。追加的又は代替的に、ウェルアレイ構造及び/又はウェルのベースに位置する電極は:露出面の洗浄、及び露出面の特性を一時的に変化させて本質的に接着性、例えば粘着性にすることのうちの少なくとも1つを行うように機能するプラズマ処理に曝露することができる。
【0185】
図13に示されているように、接着層162は、ウェルアレイ構造又は基板に対して独立した層であり得る。しかしながら、接着層162は、ウェルアレイ構造又は基板のうちの1つに組み込むことができる。あるいは、接着層162は、加熱などによって接着特性を有するように修飾されたウェルアレイ及び/又は基板の領域であり得る。
【0186】
本発明の1つの例示的な方法は、ウェルアレイ構造2を基板20とは別個に製造し、次いでそれらを最適に処理した後で組み合わせることを可能にする。この方法は、(i)TOKYO OHKA KOGYO CO.,LTD.(TOK)から入手可能である約120ミクロン厚の厚いフィルムフォトレジストから独立型のマイクロ流体ウェルアレイ構造2を作製することと、(ii)感光性接着剤(同様にTOKから入手可能)、レーザカット接着剤又は液体接着剤のうちの少なくとも1つを用いて独立型のパターン化された接着層162を作製し、基板/レジスト界面の湿潤を制御するか、又はウェルアレイ構造若しくは基板の表面が接着特性を有するように調製することと、(iii)基板20上への接着剤の位置合わせ及び配置、例えばロボットによる配置と、(iv)マイクロ流体構造2の位置合わせ及び配置、例えばロボットによる配置と、(v)例えばUV露光又は加熱を使用して材料を架橋させる後処理と、から構成される。
【0187】
より詳細には、フォトレジストは、犠牲層上に積層される厚いフィルムラミネートの形態を採ることができる。犠牲層は、例えば、Siウェハ上にスピンコーティングすることができるOmnicoat(RTM)又はポリスチレンであり得る。シリコン層の使用は、ウェルアレイ構造を、接続先の基板とは独立して製造することを可能にする1つの技術にすぎない。本明細書で記載するように、構成要素を別個に作製することにより、一方の構成要素の製造プロセスが他方に悪影響を与えることが回避される。
【0188】
リソグラフィ工程中のマスクへの付着を低減するために、プロセス後の加熱プロセスが採用されるか、又は付着を回避するためにマスクを前もって処理することができる。
【0189】
他の表面との接続により発生するラミネートにおける応力を最小限に抑えるため、処理後の温度制御が採用される。
【0190】
接着層が感光性接着剤から作製される場合、複数のビアが提供され、これは、貫通孔160を延在するよう機能するように、マイクロ流体構造のアパーチャ158と位置合わせされる。接着層162は、ウェルアレイ構造2と同じ表面エネルギーを有するように選択することができる。例として、接着層162は、TOK(NC-00075S、厚さ20um及び50um)から取得することができる。
【0191】
独立型のパターン化された接着層を形成する他の方法は:レーザ加工機を使用して、感圧接着層(PSA)などの既存の接着材料において適切なビアをアブレーションすること、液体接着剤、並びにウェルアレイ構造及び基板の界面において制御湿潤を使用すること、エアロゾルスプレー又はマイクロドロップディスペンサを使用すること、液体接着剤による毛管現象を使用することを含む(がこれらに限定されない)。接着材料は、ウェルアレイ構造と同じ表面エネルギーを有することができる。
【0192】
ベーキングにより、完全な架橋を確実にすることを達成することができる。ベークの温度は、例えば、PCB上に存在するポリマーであり得る基板20のガス放出温度よりも低くなるように制限される。
【0193】
例えばSiウェハ上にウェルアレイ構造2を独立して形成した後、Siウェハは除去される。除去工程は、接着を使用して基板に取り付ける前のトルエンによるリフトオフを含むことができる。
【0194】
接着層は接着面であり得、すなわち、ウェルアレイ構造は、アパーチャ158に隣接する面に接着特性を有する。これは、ウェルアレイ構造をハードベークせず、残留溶媒及び/又は未架橋の材料を残すことによって達成することができる。接着を可能にするために、熱及び圧力を使用することができる。
【0195】
ウェルアレイ構造は、スタンプ転写プロセスでその表面に転写された接着剤の薄いフィルムを有することができる。スタンプは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作製することができる。スタンプは、接着剤の転写量を制御するために細い毛を有することができる。PDMSの表面エネルギーは、その低い表面エネルギーのため、毛の上部に留まる接着剤の量を制御するのに適している。スタンプ転写は、ウェルアレイ構造2に優先的に行われる。これは、基板が、その上に電極を有することができ、一方で、毛のレイアウト及び密度を、基板20上の電極表面への接着剤のいかなる転写も阻止するように配置することができ、ウェルアレイ構造への接着剤の適用が、この転写が生じることを軽減するためである。
【0196】
別の例では、感知デバイス30を形成することは、成形技術を使用してウェルアレイ構造2を形成することを含む。これは、基板20の製造とは独立して達成することができる。ウェルアレイ構造の独立した形成は、後続の除去及び基板への適用の前に基準面上で行うことができるか、又は代替的に、成形は基板上で直接行うことができる。
【0197】
成形例の基本的な工程が、
図14a~14fに例解されている。最初に、ディスペンサ166が、例として、電極11を有する基板20の表面上に、以下ではポリマー102と称される成形剤102を堆積させる。ポリマー102は、基板の表面にわたって均一に分散される。
【0198】
別個に、第2の工程において、ポリマー102を成形型100内に供給し、成形型は、形成されるウェルアレイ構造2のネガである。成形型100は、マスター168から製造することができ、当該マスターは、形成されるウェルアレイ構造と同一である。研究及び開発の過程において、本発明者らは、現在のMinION(RTM)のウェルアレイ構造を使用することを選択したが、本発明の例はそれに限定されない。代替的には、成形型100は、マスターなしで最初から製造することができる。このようにして、成形型を作成するときの欠陥を軽減することができる。
【0199】
第3の工程では、
図14cに示されているように、ポリマー102で充填され、均一に覆われた成形型100を、成形型のどの部分も露出しないように、ポリマー102で覆われた基板20と位置合わせする。位置合わせは、突出部170が電極11と位置合わせして対応するように、成形型100と基板20とを1つにまとめる。
【0200】
第4の工程では、成形型100及び基板20が圧力下で1つにまとめられると、突出部170が電極の表面から余分なポリマーを絞り出す。成形型100の弾性特性は、成形型100が、ドーム形電極、不均一な表面特徴、又は基板20の表面の湾曲など、基板20の表面のばらつきに適合及び適応することを可能にする。第5の工程において、ポリマー102を、成形型が基板から分離される前に硬化し、第6の工程において、基板20に付着したポリマーを残す。ポリマーはウェルアレイ構造2になっている。
【0201】
図15及び16は、成形型100と、成形型100が製造することができる、結果として生じるポリマー102の形状を示している。突出部170は、フィン172と、ポリマーの形成中に電極からポリマーを除去する延長部174とを有して示されている。ウェルアレイ構造2の目的は、WO2014/064443に明確に記載されている。既知の技術から評価することができないことは、改善されたウェルアレイ構造を有するナノ細孔感知デバイスの製造プロセス及びその後の性能を最適化するために必要な成形技術及びハードウェアの適応である。
図16は、3つの陥凹176など、ウェルアレイ構造上に膜を形成する前に、前処理油の分散を制御することができる特徴を示している。この例では、陥凹は長方形のノッチ又は溝として示されている。陥凹は、等しく離間させることができるが、前処理油などを保持するための陥凹又はポケットの任意の数又は配置であり得る。陥凹は、区画4の底部に油が溜まり、電極11を覆うことを阻止するように機能する。
【0202】
突出部170は、各区画4の貫通孔を形成し、電極11からポリマーを変位させるように機能する。平坦な電極の部分的な汚れが発生し、電極表面の一部を覆う成形材料のフィルムが残る可能性がある。これに対抗するために、突出部170には、
図15に示されているように、突出部の端部で湾曲若しくはドーム状にすることができる延長部、又は次第に小さくなるディスクの階段状延長部が提供されている。成形型100の突出部の端部におけるこれらの延長部174の目的は、成形型のエラストマが圧縮されるときに、液体成形材料であるポリマーに圧力勾配を生成することである。これは、成形型が電極表面に適合して電極と接触するときに、液体を押し出すように機能する。
図15では、フォトリソグラフィの欠陥により中央にディンプルが存在する。この欠陥の結果として、成形剤がディンプルに蓄積することを可能にし、一方で、電極の周囲の領域が空になる。成形剤がディンプルに蓄積することを可能にするために、突出部の上部に1つ以上のディンプルを提供することができる。ディンプルは、例えば、星形、例えば5角形の星であり得る。
【0203】
代替的には、成形型100を基板に対して配置することができ、成形剤102を成形型と基板との間に注入してから、成形剤を硬化させて基板に固定するように処理することができる。次いで、成形型を取り外して、基板上にウェルアレイ構造を残すことができる。
【0204】
成形剤102は、ポリ(メチルメタクリレート)などのポリマーとして記載されてきた。ポリマーは、成形型100の下側に堆積される前に溶媒に溶解することができる。例えば、PS(35KDa)を、500mg/mLのクロロホルムに溶解することができる。成形後、成形型を基板から取り外す前に、ポリマーを加熱して溶媒を蒸発させることができる。
【0205】
成形剤中の溶媒の量は、溶媒の一部を吸収してある程度の構造的剛性を失いやすい場合には、成形型100の寸法のいかなる変化も阻止するように選択することができる。
【0206】
成形型は、熱可塑性とすることができるか、又はポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコン材料で作製することができる。マスター168は、シリコンウェハなどの頑丈で寸法的に安定した材料から作製することができる。
【0207】
成形剤は、二液型熱硬化エポキシ又はUV硬化性材料であり得る。熱硬化エポキシは、UV硬化性エポキシよりも硬化が遅く、成形型を所定の位置により長時間保持する必要があることが見出された。
【0208】
成形材料は、エポキシ、アクリルアミド/メタクリルアミド、ポリエステル、スチレン共重合体、ビニル、ポリウレタン(イソシアネート/アミン化学)又はポリイミドのうちの1つ以上を含むことができる。
【0209】
様々な製造業者について多数の成形材料が利用可能であり:パーツ6-621、431、3069、3069-GEL、3099及び1072-Mを含むDYMAX(RTM)の材料;パーツAA 3321 LC、AA 3936、3922、3921、3311、3301、及び3211を含むLOCTITEの材料;パーツ7108、7156、及び7159を含むEPOXIESの材料;パーツNOA81、NOA61、NOA88、及びNOA83Hを含むNORLAND PRODUCTS INCORPORATEDの材料;パーツUV10MED、UV22DC80-1MED、UV10、UV10TKLO-2、UV16、及びUV15LVを含むMasterBondの材料;パーツOG198-54、MED-OG198-54、OG142-87及びOG-112を含むEpoxy Technologyの材料;パーツ4UV80及びUV605を含むPermabondの材料、並びにパーツ「322」を含むOstemerの材料を含む。例として、2つの好適な材料は、Masterbond(RTM)のパーツUN10MED及びEpoTek(RTM)のパーツOG198-54からのものであった。ウェルアレイ構造2と基板20との間の接続は、半永久的であり得る。換言すれば、ウェルアレイ構造2及び基板20は、形成されたウェルアレイ構造を取り外して別の基板に再適用することができるように、剥がすことができる。あるいは、取り外した後、その位置に新しいウェルアレイ構造を形成することができる。このようにして、基板及び関連するデバイス又は構成要素をリサイクルすることができる。
【0210】
上記のプロセスは、貫通孔を通して電極にアクセスすることができるように基板にウェルアレイ構造を形成又は取り付けることを記載しているが、電極11は、それらの表面を洗浄するために更なる処理を受けることができる。洗浄は、化学洗浄又はプラズマ処理のうちの少なくとも一方を含むことができる。
【0211】
本発明の成形型100は、既知のTSV4上に独立して形成することができ、これは、ウェルアレイ構造2の表面エネルギーに対する処理の影響を最小限に抑えるか、又は成形型は、プリント回路基板などの基板上に独立して形成することができる。
【0212】
図16に示されているような、油制御のための微細な特徴部を有するウェルアレイを成形することができるが、ウェル4の形状は、
図1~4に示されているものと同様に形成することができ、すなわち、特徴部のない壁3を有するウェル4を電極11に隣接して形成することができ、一方で、フィン172に類似した突出部51、52を有する上部オーバーハング5層を形成することができる。本明細書の成形例は、
図16に示されているような20:1の範囲の高アスペクト比及び複雑な構造を有する特徴部を有するウェルを成形することができることを示している。したがって、成形により、高アスペクト比のウェル及び/又は3:1~2:1の範囲のより低いアスペクト比を有するオーバーハング5を作成することができる。
【0213】
本発明の更なる例では、改善された基板20は、上述のものに対して代替的な材料及び製造方法を使用することができる。これは、費用対効果が高い消耗品の、高スループットかつ低材料費のセンサを製造することを可能にすることができる。この例では、レーザ加工及びスクリーン印刷法を使用して一体化された電極を提供する。この方法は、リールトゥリール又はパネルトゥパネル処理と互換性がある。
【0214】
例として、
図17a~eは、その上にウェルアレイ構造2を形成することができる基板20に電極11を提供するために行うことができる段階的な工程を例解する。この方法は、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る熱可塑性ホイルのシート180を取ることを伴う。厚さは、約0.5mm以下である。金属フィルム182が、メタライゼーションプロセスを使用して、見られるように上面及び下面に形成されている。メタライゼーションプロセスは、スパッタリングであり得、適用される金属は、例えば、銀、金、又は白金であり得る。メタライゼーションは、シートの表面に形成される再配線(RDL)を提供する。
【0215】
図17aは、金属フィルム182を有するそのようなシート180を示している。
図17bに示されているように、レーザを使用して、金属化フィルムを通る複数のビア184を機械加工する。次いで、ビア184は、導電性ビア186を提供するために硬化される前に、炭素又は銀ペーストなどの導電性ペーストで充填される。各導電性ビア186は、約200~約300オームの低い抵抗を有する。ペーストは、スクリーン印刷を使用して充填することができる。スクリーン印刷すると、
図17cに示されているように、ビア184の開口部に余剰なペーストのドーム形マッシュルーム状領域が形成されることにより、導電性ビア186と金属フィルム182との間の接触が増加する。このオーバーフローは、シート180の各側の金属フィルム間の接続を提供するように機能することができる。その後、
図17dに示されているように、RDLパターンが上面及び底面の金属フィルム182上に形成され、片側又は両側に電極11を含む、接触トラック188、トラック188、又は接触パッド188などの特徴部188を有する回路を提供する。
図17eは、電極11を画定し、アパーチャ158を閉じ、かつウェルアレイ構造2の区画4の底部を画定するために、金属フィルム142の一部を保持することができる方法を示している。
【0216】
上述のように、ウェルアレイ構造2は、(i)別個の接着層を伴う若しくは伴わないフォトレジスト層、又は(ii)成形型100を使用して独立して形成することができる。成形型の使用は、トラック188及び/又は導電性ビア186のドーム状の端部によって生じる不均一な表面に適応し、基板20の表面の高さのばらつきに適応するのに特に適している。
【0217】
金属フィルム182を実装するために、シート180は、電極11及び任意の回路部を画定するためにレーザアブレーションを後に使用する前に、シート上に金属をスパッタリングすることによって形成することができる。一例として、高純度の電極11を提供するために、白金をPEEKシート上にスパッタリングすることができる。センサデバイス30が動作しているときに電子移動を最大限に高めるために、高品質の電極を提供することができる。
【0218】
図18は、金属フィルム182の、電極又は他の回路部との界面の寸法に対するビア184の形状の影響を例解している。レーザ穿孔によってシート180の表面に形成されたビアのアパーチャのサイズが、導電性ビアの接触領域のサイズに影響を与えることは明らかである。
図17bで形成されたビアは、平行な側面と、表面に小さいアパーチャを作成する高アスペクト比とを有し、その後、シート180の表面への露出が最小限になる。スクリーン印刷で充填すると、小さいドーム形の接点が形成される。実際には、ビア184の形状は、シート180の厚さ及び穿孔の幾何学的形状、すなわちレーザ穿孔プロセスによって決まる。シート180の表面の利用を最大限に高めるために、ビア184及び導電性ビア186のフットプリントは最小限に抑えられるべきである。
【0219】
シート180を金属化フィルム182でコーティングし、穿孔し、次に、形成されたビア184を導電性ペーストで充填することの代替として、金属化表面のない裸のシートを最初に穿孔し、次に物理蒸着(PVD)プロセスを使用してコーティングすることができる。PVD金属コーティングは、シートの平面からビア184内に延在するように形成することができ、これにより、
図18に示されているものとは代替的な導電性ビア186を形成する。
【0220】
実際には、
図17bに示されているように、シートの片側から他方の側に垂直に延在する高アスペクト比のビア184は、表面の非常に小さいアパーチャ及び90度のテーパ角度を有する。その結果、アクセスが制限されるため、シートの表面から最も離れたビアの壁をPVDコーティングすることは困難である。
【0221】
図19aは、片側から穿孔されたシート及び平坦な側面を有するビアを形成する金属コーティング182コーティングの寸法を示しており、一方で、
図19bは、両側から穿孔されたシート、及び隆起した又はくびれた側面を有するビアを形成する、その後適用されたPVDコーティング182を示している。シートの平面とそこから延在するビアの側面との間の角度がテーパ角度である。したがって、片側又は両側のテーパ角度は、90度を超える。
【0222】
図19aに示されているように、シート180の片側のみでテーパ角度が90度を超える場合、ビアの一方の開口部のサイズは、他方よりも大きい。この場合、一方の側と他方の側とのアパーチャサイズ又は直径の比は、約1:4、又は好ましくは約1:3、より好ましくは約1:2であり得る。この構成では、ビアの壁全体がコーティングされるように、片側にPVDを受け入れるアパーチャを有する。
【0223】
図19bに示されているように、両側から穿孔すると、シート180の両側で90度を超えるテーパ角度が得られる。開口部は異なるサイズを有することができるが、ビアは実質的に対称であることができ、見えるように、水平方向及び垂直方向の2本の対称線を有するように見える。この場合、片側と比較した反対側のアパーチャサイズ又は直径の比は、約1:1になり得る。これは、シートの表面から見て、また両側から見て、ビアのフットプリントを最小限に抑える。更に、
図19bの構成では、ビアの壁全体がコーティングされるように、ビアの両側がPVDを受け入れる。
【0224】
図20a~20gは、上述の基板20及びウェルアレイ構造2の機能をナノ細孔感知用の単一部品の構成要素に組み込むハイブリッドウェルアレイ190の製造工程を示している。同様の参照符号は同様の特徴部を指す。ハイブリッドウェルアレイ190の製造は、
図20aに示されているようなシートを提供するために、片側のみに形成された金属フィルム182を有するか、又は片側のみに堆積された金属フィルムを有するシート180から始まる。
図20bに示されているように、通気孔192が、シートの、金属フィルムとは反対側に穿孔され、その後、シート180の、通気口192とは反対側の金属フィルムを通して部分ビア184が穿孔される。得られた構造は、シートの一方の側から他方の側に延在するビア184を有することが
図20cにおいて分かり、当該ビアは、広い穿孔部分及び狭い通気口192を有する。
図20d及び20eでは、ビア184の広端部は、導電性ビア186に接続された回路を形成するために、金属フィルムがトリミングされる前に、導電性ペーストで充填される。通気口は狭すぎて、導電性ペーストを充填又は完全に充填することができないことに留意されたい。通気口の目的は、捕捉された空気がビアの充填を防止することを阻止することによって、ビアの広い部分を完全に充填することを可能にすることである。その後、
図20fに示されているように、シート180の通気口192側を処理して支柱164を形成した後、
図20gに示されているように、それらの支柱の周囲の材料を除去して区画4の壁3を画定し、導電性ビア186を露出させる。
【0225】
基板20上の電極11の特性は、感知デバイス30の性能に影響を与える。上述のように、シート180は、金属でスパッタリングされ、続いてレーザアブレーションされ得る。ポリ(エーテルエーテルケトン)PEEKシートに白金をスパッタリングすることで、最適な性能が達成された。その後、ビア184を充填することができる。区画4のベースは、
図17eに例として示されているように、導電性ビア186に接続された、スパッタリングされた金属フィルム182によって画定することができる。導電性ビア186は、150オーム~300オーム、又は200オーム~300オームの抵抗値を有する低抵抗電気接点を提供するように構成されている。
【0226】
シート180のために選択された材料はPEEKであった。例では、シートは二重光沢仕上げで0.25mmの厚さを有するものとした。PEEKは:Samtec z-arrayコネクタ(https://www.samtec.com/connectors/high-speed-board-to-board/high-density-arrays/zray)などの、コネクタとの信頼性の高い接続を提供するための機械的安定性を含む、多くの要因のうちの少なくとも1つに基づいて選択され、PEEKは、剥離することなく高解像度のトラック及び隙間を形成することを可能にする、スパッタリングされた白金層との良好な接着特性を有ており、PEEKは、高アスペクト比のレーザ穿孔ビアホールを達成するのに好適である。同等の性能で好適であることが見出されている他の材料は、ポリエーテルイミド(PEI)を含む。
【0227】
スパッタリングの前に、シート180は、スパッタリングチャンバ内に装填する前に、例えばエタノールで洗浄される。例では、50nmの白金をフィルムの両側にコーティングした。
【0228】
レーザを使用して、金属化シート180をパターン化し、穿孔した。パターンレーザは、例えば、SMIレーザ(MSV-301)とすることができる。穿孔レーザは、例えば、直接書き込みレーザ(MSV-101UV)とすることができる。
【0229】
ビア184の充填は、DEK(商標)スクリーン印刷プロセスを使用して実行した。銀インクを使用して裏側からビアを充填した後、パネルを裏返して表側のビアをキャップした。次いで、インクを110℃のオーブンで硬化させた。
【0230】
例の各々において、感知デバイス30の性能を、既知の構造及びウェハの代わりに、組み合わせられたウェルアレイ構造2及び基板20、又はハイブリッドウェルアレイ190を有する既知のMinION(RTM)デバイスを製造することによって評価した。組み付け後、ウェルアレイ構造を流体で充填し、区画2にわたって形成された膜に生物学的ナノ細孔を装着した。評価中、適当な性能の指標は:孔の両端に180mVが印加された状態での約180~200pAの開口細孔電流、開口細孔電流に対する約2~3pAの標準偏差の雑音レベル、及びセットアップにおける追加の高いRC時定数がないことを示す、鮮明なトロンビン結合アプタマー(TBA)事象を含む。TBAの使用の詳細は、WO2014/064443に記載されている。例の各々においてTBAを用いたイオンチャネル記録は、
図21に示されているような結果を明らかにし、これは、細孔を介して測定されたイオン電流が分析物(TBA)によってブロックされていることを示しており、細孔は、上述のように、プラスチックシート180で作製された基板20上のフォトレジストで作製されたウェルアレイ構造2上に支持された膜に挿入されている。
【0231】
多数の例が、両側に金属フィルム182を有するシート180を有し、トラック及び/又は接触パッドが当該又は各金属フィルムに形成されているものとして記載されている。より低コストの代替手段として、シートの片側を金属フィルムでコーティングすることができ、一方で、接触パッドは金属化されていない側にスクリーン印刷されるため、金属のパターニングは必要ない。ビア140を充填し、接触パッドを単一工程で形成することができる。
図22aは、両側に金属フィルムを有するシートの概略図を示しており、導電性ビア186がそれを貫通して接触パッド188に接続されている。両方の金属フィルム182の表面がトリミングされており、この概略図は、実際のパッドの画像の上から示されている。
図22aの例では、金属フィルムは白金である。
【0232】
図22bは、片側に金属フィルムを有するシートの概略図であり、シート180上に導電性ビア186がスクリーン印刷されるとき、接触パッド188が同時に形成されている。導電性ビア186及び接触パッド188は両方とも、この例では銀である同じ材料を有する。
【0233】
スクリーン印刷プロセス中に形成されたビア184、トラック188、又は接触パッド188の密度は、制御されたペーストの広がりによって影響を受ける。チャネル密度は、トラック又はパッドのサイズ、それらの隙間及び印刷サイズの組み合わせによって規定される。印刷中のインクの広がりを防止することは、印刷サイズを厳密に規定するために重要である。これはまた、導電性ペーストの堆積及び広がりを制御することで短絡を阻止する。スクリーン印刷されたインクが広がるのを阻止するために、ビア184に隣接して毛管停止部194を形成することができる。トラックに隣接する導電性ビア186の平面図が、導電性ビア186を有し、シートの下にPCBを有するシート180の断面図と位置合わせされて
図23aに示されている。電極を形成する導電性ビア186の直径は100ミクロンであるが、毛管停止部は、ビア184によって作成されたアパーチャの周りに延在して示されており、これが印刷直径を110ミクロンに制限する。
図23bは、毛管停止部194の幾何学的形状をより詳細に示している。溝が、シート180のビア184のアパーチャに隣接するが、そこから離間して形成されている。アパーチャの高さは、シート180と同じ平面にあり、溝は、シート内に延在している。示されている例では、溝は、トラックがシート180の平面に沿って延在することを可能にするためにビアを包囲していない。毛管停止部の溝は、インクの広がりを防止するピン止め点を提供する効果的な方法である。
【0234】
シート180に選択した材料は、ナノ細孔感知デバイス30におけるウェルアレイ構造としてのその用途を考慮に入れた。シート材料の分散成分に必要な値は40~55mN/mであり、極性成分は<3mN/m未満でなければならない。
図24に示されているように、PEI、PEEK、PC、及びPETの接触値を評価し、それらの特性を表にした。これらの材料の評価中、レーザアブレーションプロセスによるそれらの本来の表面特性も重要である。これらの表面特性は、酸化を最小限に抑えるアブレーション工程中の雰囲気に基づいて調整することができる。
【0235】
バルク特性の維持に依存せずに必要な表面エネルギーを取得するために、プロセスは:必要な表面特性を達成するために修飾することができる、アブレーション後に表面に残る官能基(シラン)、及びプラズマ処理/薄いフィルム蒸着を用いた表面コーティングを伴うことができる。
【0236】
上記のデバイス及びデバイスを形成する方法で記載したように、感知デバイス30は、電極11を有する基板20に取り付けられたウェルアレイ構造2を有することができる。ウェルアレイ構造2は、単一の構成要素から形成することができる。代替的に、ウェルアレイ構造2は、2つの別個の層、すなわち、ウェル層2を形成するベース層及びオーバーハング層5を含むことができる。
【0237】
上述のような異なる技術を使用して製造された層の組み合わせを組み込んだ感知デバイス30の例が
図25に示されている。
【0238】
図25は、ビア184、及び電極11を画定するパターン化された表面を有するようにレーザエッチングされた金属フィルム182を有するシート180を使用して形成された基板20を含む。電極は、導電性ビア186を介して基板の反対側に接続し、パッド188に接触する。代替的に、シート及び金属フィルムは、プリント回路基板によって実装され得るか、又は露出した電極を有するASICデバイスの表面上に提供され得る。ウェルアレイ構造2は、壁によって画定され、電極11の上に位置するウェル4を有して基板20上に形成されている。ウェルアレイ構造は、3D印刷、成形、レーザエッチングされたプラスチック、又はエッチングされたラミネートシートから形成することができる。
【0239】
ウェルアレイ構造2及び電極11は、ウェルアレイ構造2上に提供されるオーバーハング5層の取り付け前にプラズマ洗浄することができ、同様に、3D印刷、成形、レーザエッチングされたプラスチック、又はエッチングされたラミネートシートから形成することができる。オーバーハング層5は、ウェルアレイ構造2に取り外し可能に取り付けることができる。突出部51は、ウェルの外側のオーバーハング上に示されており、オーバーハングの他の面、すなわち電極に面する、及び/又はオーバーハング層によって画定される平面内に延在する面に同様に適用することができる。
【0240】
ウェルアレイ構造2及びオーバーハング層を作製するために使用される技術は、本明細書で教示される異なる技術から作製することができる。一例として、ウェルアレイ構造2は、成形から形成された高アスペクト比のウェルを有する。ウェルのアスペクト比は、ウェルの深さ及び幅によって規定され、これは、ウェルアレイ構造材料2によって影響を受け、約3:1を超えることができる。オーバーハング層も、成形型から、又は代替的にはレーザアブレーションされたプラスチックシート180から形成することができる。フィルムの厚さと突出部51、52の高さとの間のアスペクト比は、ウェルのアスペクト比よりも低く、約2:1まで低くすることができる。
【0241】
図26a~26dは、単一の裸のシート180にオーバーハングを製造するために行われる工程であり、約2:1を超え得る低アスペクト比の突出部を、見られるように上面にレーザ形成することができ、その後、ウェル4を画定する壁3を作成するためにシートが穿孔される。上記の
図19に関連して記載したように、オーバーハングが単一の層に形成されるように、穿孔してテーパ状の壁が形成されることに留意されたい。穿孔された後、壁3の表面は、電極11及び接触パッド188を形成するために、好ましくは白金スパッタリングでコーティングされる。白金コーティングは、レーザを使用してトリミングすることができる。最後に、電極11及び接触パッドを有する基板20の表面上にクロージャ196を適用して、ウェル4のベースを画定することができる。クロージャは、更なる基板20であり得る。
【0242】
任意の電極材料を適用することができ、感知目的で特に好適であるため、白金が例として提案されている。レーザがシート180を真っ直ぐ通過することを可能にすることで、電極又は他のそのような構造がレーザ穿孔の性能を阻止しないため、製造プロセスが改善される。角度の付いた穿孔には、レーザ穿孔の使用が適している。レーザ穿孔は、突出部などの低アスペクト比の特徴部の形成にも好適である。単一のパーツにオーバーハング材料層を組み込むことで、製造プロセスを簡素化することができる。シートを通るレーザ穿孔後及びその後の電極コーティングは、円筒形ウェル4のベースにおける電極と比較して増加した表面積を有する電極をもたらすことができる。
【0243】
図27は、レーザエッチングされたシート180であり得る基板又はウェル4を画定するブラインドビア198を有するPCB上に形成された感知デバイス30の一部である。ウェルは、ウェル内の電極11の面積を増加させるためにテーパ状側面を有することができ、これはカバレッジをより容易にもする。レーザ穿孔には形状の制約がなく、様々な形状のウェルプロファイルを形成することができる。基板は、ビア184、186を充填し、基板20の片側に接触パッド186を作成する前に、レーザエッチングで処理される。ウェル4は同様に、好ましくは白金でコーティングされて、ウェル内の電極11及び接触パッドを画定する。電極は、ビア186への接続のためにウェルから延在する。ウェルは、突出部51を有する、取り付け前の基板の上に示されているオーバーハング5層によってキャップされる。
【0244】
ナノ細孔支持構造1を形成するための代替的な方法も可能である。いくつかの実施形態では、UV放射はUVA放射である。いくつかの実施形態では、UV放射は、UVレーザ(例えば、ガスレーザ、レーザダイオード、又は固体レーザ)によって提供される。いくつかの実施形態では、UV放射は、UVランプを使用して提供される。いくつかの実施形態では、UV放射は高強度UV放射である。異なる構成要素に方法の組み合わせが使用され得る。例えば、一部の構成要素には成形が使用され得、他の構成要素はフォトレジスト材料から形成され得る。電極などの一部の構成要素は、エッチング、任意選択的に、化学エッチングによって形成され得る。
【0245】
例えば上記の方法のうちのいずれかを使用してナノ細孔支持構造1を作製した後、ナノ細孔支持構造1を使用して、例えば、
図3に示されているようなナノ細孔感知デバイス30を作製し得る。この場合、ナノ細孔支持構造1は、平面構造40に組み込まれており、ナノ細孔感知デバイス30は、平面構造40を組み込んで組み立てられる。
【0246】
図1及び2は、アパーチャ6にわたって延在する膜7、及び膜7に挿入されたナノ細孔8を示しているが、いくつかのタイプのナノ細孔支持構造1は、膜7及びナノ細孔8なしで提供され得る。その場合、ナノ細孔支持構造1のエンドユーザは、膜7を形成し、ナノ細孔8をその中に挿入させる工程を実行する。
【0247】
膜7及びナノ細孔8の例は以下の通りである。
【0248】
ナノ細孔支持構造1の1つのタイプでは、ナノ細孔8は生物学的ナノ細孔であり、膜7はその中に挿入された生物学的ナノ細孔8を有することができる。
【0249】
膜7は、親水性及び親油性の両方を有する、リン脂質などの両親媒性分子から形成された層である両親媒性層であり得る。両親媒性分子は、合成又は天然に存在するものであり得る。天然に存在しない両親媒性物質及び単層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、それらには、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。膜7は、トリブロック又はジブロックコポリマー膜であり得る。
【0250】
膜7は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される、WO2014/064443又はWO2014/064444に開示されている膜のうちの1つであり得る。これらの文献は、好適なポリマーも開示している。
【0251】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドの結合を促進するために化学修飾又は官能化され得る。
【0252】
両親媒性層は、単層であっても二重層であり得る。
【0253】
膜7は、脂質二重層であり得る。好適な脂質二重層は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される、WO2008/102121、WO2009/077734、及びWO2006/100484に開示されている。脂質二重層を形成するための方法は、当該技術分野で既知である。脂質二重層は通常、Montal及びMueller(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の方法で形成される。
【0254】
ナノ細孔8は、任意の膜貫通細孔であり得る。ナノ細孔8は、生物学的又は人工的であり得る。好適なナノ細孔8は、タンパク質細孔、ポリヌクレオチド細孔、及び固体細孔を含むが、これらに限定されない。ナノ細孔8はDNAオリガミ細孔であり得る(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。
【0255】
膜貫通タンパク質細孔は、それを通ってイオンが流れ得るバレル又はチャネルを含み得る。膜貫通タンパク質細孔のバレル又はチャネルは、通常は、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド又は核酸との相互作用を促進するアミノ酸を含む。
【0256】
本発明に従って使用するための膜貫通タンパク質細孔は、β-バレル細孔又はα-ヘリックスバンドル細孔に由来し得る。膜貫通細孔は、例えばMsp、α-溶血素(α-HL)、ライセニン、CsgG、ClyA、Sp1、及び溶血性タンパク質フラガセトキシンC(FraC)に由来し得るか、又はそれらに基づき得る。膜貫通タンパク質細孔は、CsgGに由来し得る。CsgG由来の好適な細孔は、WO2016/034591に開示されている。膜貫通細孔は、ライセニンに由来し得る。ライセニン由来の好適な細孔は、WO2013/153359に開示されている。
【0257】
分析物(例えばタンパク質、ペプチド、小分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチドを含む)は試料中に存在し得る。分析物は、任意の好適な試料であり得る。分析物は、生物学的試料であり得る。本明細書に記載される方法の任意の実施形態は、任意の有機体又は微生物から取得された又は抽出された分析物に対してインビトロで実行され得る。有機体又は微生物は、通常は、古細菌、原核生物、又は真核生物であり、通常は、植物界、動物界、真菌界、モネラ界、及び原生生物界の五界のうちの1つに属する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される様々な態様の方法は、任意のウイルスから取得された又は抽出された分析物に対してインビトロで実行され得る。
【0258】
分析物は、生物学的、工業的、又は環境的などのあらゆるソースに由来する液体試料であり得る。分析物は、体液を含み得る。体液は、ヒト又は動物から取得され得る。ヒト又は動物は、疾患を有する、疾患を有する疑いがある、又は疾患の危険性があるものであり得る。分析物は、尿、リンパ液、唾液、粘液、精液、又は羊水であり得るが、全血、血漿、又は血清であり得る。典型的には、分析物は、ヒト由来であるが、代替的には、別の哺乳動物由来、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、若しくはブタなどの商業的家畜由来であり得るか、又は代替的には、ネコ若しくはイヌなどの愛玩動物由来であり得る。代替的に、分析物は植物由来のものであり得る。
【0259】
分析物は、非生物学的試料であり得る。非生物学的試料は、流体試料であり得る。塩化カリウムなどのイオン塩を試料に添加して、ナノ細孔を通るイオン流動を実現し得る。
【0260】
ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であり得る。ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、二本鎖であり得る。
【0261】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含み得る。ポリヌクレオチドは、当該技術分野において既知の任意の合成核酸であり得る。
【0262】
ポリヌクレオチドは、天然型であっても人工であり得る。
【0263】
方法は、ポリヌクレオチドの2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の特性を測定することを伴い得る。1つ以上の特性は、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、及び(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否か、から選択することができる。
【0264】
ナノ細孔は、WO2014/064443に開示されているような複数のナノ細孔を含むアレイの一部であり得る。ポリヌクレオチドは、WO2013/041878及びWO2014/135838に開示されているように、ナノ細孔のアレイを移行され得、電流などのパラメータを経時的に測定し、ここから、ポリヌクレオチドの配列が判定され得る。好適な電気的測定が、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、及び国際出願WO2000/28312に記載されている。他のタイプの測定、例えば、蛍光測定及びFET測定などの光学的測定が実行され得る。光学的測定及び電気的測定は、同時に実行され得る。例えば、Heron AJ et al.,J Am Chem Soc.2009;131(5):1652-3)を参照のこと。
【0265】
ポリヌクレオチドは、標識され得、測定が実行されて、標識の測定からポリヌクレオチド配列を判定し得る。分析物は、WO2014/074922に開示されているようなエキスパンドマーであり得る。
【0266】
二次構造は、様々な方法で測定され得る。例えば、方法が電気的測定を伴う場合、二次構造は、滞留時間の変化又は細孔を通って流れるイオン電流の変化を使用して測定され得る。これは、一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドの領域を識別することを可能にする。
【0267】
いかなる修飾の有無も測定され得る。方法は、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質によって、又は1つ以上の標識、タグ、若しくはスペーサによってポリヌクレオチドが修飾されているか否かを判定することを含み得る。特異的修飾は、細孔との特異的相互作用をもたらすことになり、これは下記の方法を使用して測定することができる。
【0268】
本明細書に記載される様々な態様のいくつかの実施形態では、方法は、標的ポリヌクレオチドを更に特徴付けることを伴い得る。標的ポリヌクレオチドが細孔と接触するとき、標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特性を示す1つ以上の測定は、ポリヌクレオチドが細孔に対して移動する際に行われる。
【0269】
方法は、ポリヌクレオチドが修飾されているか否かを判定することを伴い得る。いかなる修飾の有無も測定され得る。方法は、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質によって、又は1つ以上の標識、タグ、若しくはスペーサによってポリヌクレオチドが修飾されているか否かを判定することを含み得る。
【0270】
本発明はまた、標識ポリヌクレオチドなどの標的分析物を特徴付けるための装置を提供する。装置は、本明細書に開示されているような複数の細孔と、複数の膜と、を備える。複数の細孔は、複数の膜内に存在し得る。細孔及び膜の数は、同等にすることができる。単一の細孔は、各膜に存在することができる。
【0271】
標的分析物を特徴付けるための装置は、複数の膜内に、本明細書に開示されているような又は細孔のアレイを含み得る。
【0272】
装置は、方法を実行するための指示書を更に備えることができる。装置は、分析物分析のための任意の従来の装置、例えば、アレイ又はチップであり得る。方法に関連して上で考察される実施形態のうちのいずれも、本発明の装置に同等に適用可能である。装置は、本明細書に開示されているようなキットに存在する特徴のうちのいずれかを更に備え得る。
【0273】
装置は、本明細書に開示されているような方法を実行するように設定することができる。
【0274】
装置は、複数の細孔及び膜を支持可能であり、細孔及び膜を使用して分析物の特徴付けを実施するように動作可能であるナノ細孔感知デバイス30と、特徴付けを実施するために材料を送達する少なくとも1つのポートと、を備えることができる。
【0275】
代替的には、装置は、複数の細孔及び膜を支持可能であり、細孔及び膜を使用して分析物の特徴付けを実施するように動作可能であるナノ細孔感知デバイス30と、特徴付けを実施するために材料を保持する少なくとも1つのリザーバと、を備えることができる。
【0276】
装置は、膜及び複数の細孔及び膜を支持可能であり、細孔及び膜を使用して分析物の特徴付けを実施するように動作可能であるセンサデバイスと、特徴付けを実施するために材料を保持する少なくとも1つのリザーバと、少なくとも1つのリザーバからセンサデバイスへ材料を制御可能に供給するように構成されている流体システムと、それぞれの試料を受容するための1つ以上の容器と、を備えることができ、流体システムは1つ以上の容器からセンサデバイスへ分析物を選択的に供給するように構成されている。
【0277】
装置は、WO2009/077734、WO2010/122293、WO2011/067559、又はWO00/28312に記載されているもののうちのいずれかであり得る。
【0278】
例えば、移行の速度、分析物の拒絶などの、ナノ細孔に対する分析物の移動の制御は、参照によりその全体が本明細書に援用される、WO2016/059427に開示されているシステム及び方法によって管理することができる。ナノ細孔センサによる分析物の拒絶は、ナノ細孔からの分析物の排出を含み得る。
【0279】
上記の説明及び図面における特徴は、本明細書の教示に照らして交換可能であり、互換性がある。本発明は、純粋に例として上で記載されており、本発明の趣旨及び範囲内で修正を行うことができ、これは、記載された特徴の均等物及び本明細書に記載された1つ以上の特徴の組み合わせに及ぶ。本発明はまた、本明細書に記載又は示唆された任意の個々の特徴にある。
【国際調査報告】